(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】過剰摂取および報酬に基づく障害を処置するための、組成物、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20220203BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20220203BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20220203BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220203BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220203BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220203BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P25/36
A61P25/32
A61P25/30
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535535
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 US2019067513
(87)【国際公開番号】W WO2020132263
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511151008
【氏名又は名称】イージス セラピューティクス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】516272881
【氏名又は名称】オーピアント ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マッジオ エドワード ティー.
(72)【発明者】
【氏名】クリスタル ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】エリソン マーク
(72)【発明者】
【氏名】スコルニック フィル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB25
4C076CC01
4C076DD19R
4C076DD23D
4C076DD49Q
4C076DD69N
4C076FF14
4C076FF34
4C076FF39
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA59
4C086NA10
4C086ZC39
(57)【要約】
ナルトレキソンを含む薬学的組成物を充填した装置を含む、鼻腔送達用に適合された薬物製品が提供される。前記薬物製品を用いてアルコール使用障害および関連する状態を処置する製剤および方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む、鼻腔内製剤。
【請求項2】
約10mg/mL~約40mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約150μLの体積中に含む、鼻腔内製剤。
【請求項3】
以下:
等張剤;
防腐剤;
安定化剤;
吸収促進剤;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
をさらに含む、請求項1または請求項2記載の製剤。
【請求項4】
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgの等張剤;
約0.001mg~約0.1mgの防腐剤;
約0.1mg~約0.5mgの安定化剤;
約0.05mg~約2.5mgの吸収促進剤;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項3記載の製剤。
【請求項5】
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%の等張剤;
約0.001%~約0.1%の防腐剤;
約0.1%~約0.5%の安定化剤;
約0.05%mg~約2.5%の吸収促進剤
を含む、請求項3記載の製剤。
【請求項6】
等張剤がNaClであり、
防腐剤が塩化ベンザルコニウムであり、
安定化剤がエデト酸二ナトリウムであり、
吸収促進剤がアルキルサッカライドである、
請求項4または請求項5記載の製剤。
【請求項7】
アルキルサッカライドがドデシルマルトシドである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgのNaCl;
約0.001mg~約0.1mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.15mg~約0.5mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.05mg~約2.5mgのドデシルマルトシド;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
約0.1mg~約0.5mgのドデシルマルトシドを含む、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
約0.25mgのドデシルマルトシドを含む、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
約0.2mgおよび約0.3mgのエデト酸二ナトリウムを含む、請求項8記載の製剤。
【請求項12】
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3mg~約0.7mgのNaCl;
約0.02mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.3mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.25mgのドデシルマルトシド;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項9記載の製剤。
【請求項13】
水の量が、約80~約120μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項10記載の製剤。
【請求項14】
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項11記載の製剤。
【請求項15】
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%のNaCl;
約0.001%~約0.1%の塩化ベンザルコニウム;
約0.15%~約0.5%のエデト酸二ナトリウム;
約0.05%~約2.5%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、請求項7記載の製剤。
【請求項16】
約0.1%~約0.5%のドデシルマルトシドを含む、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
約0.25%のドデシルマルトシドを含む、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
約0.2%および約0.3%のエデト酸二ナトリウムを含む、請求項15記載の製剤。
【請求項19】
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3%~約0.7%のNaCl;
約0.02%の塩化ベンザルコニウム;
約0.3%のエデト酸二ナトリウム;
約0.25%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、請求項17記載の製剤。
【請求項20】
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項19記載の製剤。
【請求項21】
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項20記載の製剤。
【請求項22】
ナルトレキソンが塩酸ナルトレキソンである、請求項1~21のいずれか一項記載の製剤。
【請求項23】
約1.2mg、約1.6mg、約2.0mg、もしくは約3.0mgのナルトレキソンまたは相当量の塩酸ナルトレキソンを含む、請求項22記載の製剤。
【請求項24】
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む鼻腔内製剤を対象に投与する段階
を含む、方法。
【請求項25】
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む第1の鼻腔内製剤を対象に投与する段階、および
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む第2の鼻腔内製剤を投与する段階
を含む、方法。
【請求項26】
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約10mg/mL~約30mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約150μLの体積中に含む、鼻腔内製剤、を対象に投与する段階
を含む、方法。
【請求項27】
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約10mg/mL~約40mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約250ulの体積中に含む、第1の鼻腔内製剤、を対象に投与する段階、および
約10mg/mL~約40mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、体積中、つまり約50~約250μL中に含む、第2の鼻腔内製剤、を投与する段階
を含む、方法。
【請求項28】
第1の鼻腔内製剤を投与して約1時間~約3時間後に第2の鼻腔内製剤が投与される、請求項25または請求項27記載の方法。
【請求項29】
鼻腔内製剤が、以下:
等張剤;
防腐剤;
安定化剤;
吸収促進剤;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
をさらに含む、請求項24~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
鼻腔内製剤が、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgの等張剤;
約0.001mg~約0.1mgの防腐剤;
約0.1mg~約0.5mgの安定化剤;
約0.05mg~約2.5mgの吸収促進剤;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
鼻腔内製剤が、以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%の等張剤;
約0.001%~約0.1%の防腐剤;
約0.1%~約0.5%の安定化剤;
約0.05%mg~約2.5%の吸収促進剤
を含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
等張剤がNaClであり、
防腐剤が塩化ベンザルコニウムであり、
安定化剤がエデト酸二ナトリウムであり、
吸収促進剤がアルキルサッカライドである、
請求項30または請求項31記載の方法。
【請求項33】
アルキルサッカライドがドデシルマルトシドである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
鼻腔内製剤が、以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgのNaCl;
約0.001mg~約0.1mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.15mg~約0.5mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.05mg~約2.5mgのドデシルマルトシド;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
鼻腔内製剤が約0.1mg~約0.5mgのドデシルマルトシドを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
鼻腔内製剤が約0.25mgのドデシルマルトシドを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
鼻腔内製剤が約0.2mg~約0.3mgのエデト酸二ナトリウムを含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
鼻腔内製剤が、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3mg~約0.7mgのNaCl;
約0.02mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.3mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.25mgのドデシルマルトシド;および
約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%のNaCl;
約0.001%~約0.1%の塩化ベンザルコニウム;
約0.1%~約0.5%のエデト酸二ナトリウム;
約0.05%~約2.5%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、請求項33記載の方法。
【請求項42】
鼻腔内製剤が約0.1%~約0.5%のドデシルマルトシドを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
鼻腔内製剤が約0.25%のドデシルマルトシドを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
鼻腔内製剤が約0.2%~約0.3%のエデト酸二ナトリウムを含む、請求項41記載の方法。
【請求項45】
鼻腔内製剤が、以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3%~約0.7%のNaCl;
約0.02%の塩化ベンザルコニウム;
約0.3%のエデト酸二ナトリウム;
約0.25%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、請求項43記載の方法。
【請求項46】
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
ナルトレキソンが塩酸ナルトレキソンである、請求項24~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
鼻腔内製剤が約1.2mg、約1.6mg、約2.0mg、もしくは約3.0mgのナルトレキソンまたは相当量の塩酸ナルトレキソンを含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
オピオイド過剰摂取を処置する、請求項24~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
報酬に基づく障害を処置する、請求項24~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
報酬に基づく障害が物質使用障害である、請求項48記載の方法。
【請求項53】
物質使用障害がアルコール使用障害である、請求項48記載の方法。
【請求項54】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取前に投与される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約1~2時間前に投与される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約0.5~約1時間前に投与される、請求項54記載の方法。
【請求項57】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約10~約30分前に投与される、請求項54記載の方法。
【請求項58】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約5~約10分前に投与される、請求項54記載の方法。
【請求項59】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取と同時に投与される、請求項53記載の方法。
【請求項60】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取開始後0.5時間以内に投与される、請求項53記載の方法。
【請求項61】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、1日に1回~4回、対象に投与される、請求項24~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、対象による必要に応じて1日を通して約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの用量で投与される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、午前中に約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの第1の用量として投与され、アルコール消費前に必要に応じて、約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの、後の用量として投与される、請求項35記載の方法。
【請求項64】
複数の用量を含み、各用量が請求項1~23のいずれか一項記載の鼻腔内製剤を含む、
オピオイド過剰摂取を経験しているかまたは報酬に基づく障害を有する対象への薬学的製剤の鼻腔送達用に適合された、マルチドーズ装置。
【請求項65】
各用量で約0.05~約0.15mLの製剤が対象に送達される、請求項59~64のいずれか一項記載の装置。
【請求項66】
各用量で約0.1mLの製剤が対象に送達される、請求項65記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.119条(e)に基づいて、2018年12月20日に出願された米国特許出願第62/782,943号および2018年12月20日に出願された米国特許出願16/311,944号に係る優先権の恩典を主張する。両出願の全開示が本願の開示の一部と見なされ、その全体が本願の開示において参照により組み入れられる。本願はまた、PCT公開番号WO2017/223566およびWO2018/089709の開示を、その全体が本明細書において書かれているように参照により組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して薬学的組成物に関し、より詳細には、ナルトレキソンおよびその形態を含む鼻腔内製剤、ならびに、オピオイド過剰摂取などの状態およびその症状ならびにアルコール使用障害などの障害の処置における、ナルトレキソンおよびその形態を含む鼻腔内製剤の使用方法に関し、該方法はオピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンの鼻腔内製剤を投与する段階を含む。
【背景技術】
【0003】
背景情報
ナルトレキソンは当初、オピオイドの多幸作用を阻止する効果があるという理由からオピオイド依存を治療するために開発された。オピオイド嗜癖の治療には1984年から経口投与用ナルトレキソン錠剤製剤が用いられている。コンプライアンスを改善するために、1ヶ月またはそれより長期で1回の間隔で投与される長時間作用性デポ型ナルトレキソンが開発された。臨床試験からのデータによって、デポ製剤はオピオイドを使用する状態に戻ることを減らすのに有効なことが証明された。現在、FDAによって認可された月1回投与用ナルトレキソン(Vivitrol(登録商標))の筋肉内徐放製剤が1種類、経口製剤が1種類ある。これらの製剤は、ナルトレキソン中毒を常時防止するのに十分なナルトレキソン量の比較的定常な状態を維持することを目的とする。
【0004】
関連するが、若干異なる問題であるオピオイド過剰摂取は重大な公衆衛生問題である。2017年に、約72,000人が薬物過剰摂取で死亡した。これらの大部分である約49,000人にオピオイドが関与していた。これらの死亡のうち19,000件以上に非メサドン合成物質以外の処方薬オピオイド鎮痛薬が関与し、ほぼ3,300件にメサドンが関与し、約16,000件にヘロインが関与した。これらの死亡のうちほぼ30,000件がフェンタニルおよび関連する合成オピオイドに起因し、例年にわたって著しく増加している。まとめると、2016年に、オピオイドに関連する過剰摂取死亡の数はH.I.V.関連死のピーク数と銃器関連死のピーク数をはるかに超え、過去9年にわたって激増した。オピオイド過剰摂取を逆転させる有効な治療法が依然として必要とされている。
【0005】
その一方で、オピオイドまたはアルコールなどの他の乱用物質が関与することが多いが、脳の快中枢、報酬中枢、および強化中枢を刺激する他の活動も関与し、これらの物質の不健康な過剰量の消費またはこれらの行動への没頭につながる「報酬に基づく(reward-based)」障害の治療法も依然として必要とされている。
【0006】
例えば、アルコールは脳の報酬回路を刺激することができ、途切れることのない飲酒を強化することができる。十分に重度になった問題のある飲酒はアルコール使用障害(AUD)の医学的診断が下される。2014年に米国では18歳以上の約6.8パーセント(1630万人の成人)にAUDがあった。これは1060万人の男性と570万人の女性を含む。さらに、2014年には、推定679,000人の12~17歳の青少年(この年齢群の2.7%)にAUDがあった。2012年には330万件の死亡、すなわち全世界の死亡の5.9パーセント(男性については7.6%、女性については4.0%)がアルコール消費に起因した(WHO Global Status Report on Alcohol and Health, 2014)。
【0007】
米国においてAUDと診断されるためには、精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)(DSM)に概説される、ある特定の基準を満たさなければならない。例えば、DSMの第5版では同じ12ヶ月の期間中に11の基準のうち2つを満たした個体は全てAUDの診断を受ける。AUDの重篤度-軽度、中等度、または重度-は、満たされた基準の数に基づいている。欧州では、個体はアルコール使用障害特定検査(Alcohol Use Disorders Identification Test)(AUDIT)を用いてスクリーニングされる。AUDがある人は過度に飲酒し、その結果として自身と他人を両者とも脅かす可能性がある。
【0008】
アルコール乱用は、重大かつ反復性の有害結果をもたらす飲酒パターンである。アルコール中毒者は学校、仕事、または家族の重大な義務を果たすことを怠る場合がある。アルコール依存症(アルコール依存とも知られる)がある人はアルコール使用の確実なコントロールを失っており、いったん飲み始めたら断酒できないことが多い。アルコール依存は耐性(同じ「酔った状態(high)」に達するには、もっと多く飲酒する必要がある)と、飲酒を突然止めた場合の離脱症状を特徴とする。離脱症状には、悪心、発汗、不穏状態、被刺激性、振戦、幻覚、および痙攣が含まれる場合がある。
【0009】
問題飲酒には複数の原因があり、遺伝的要因、生理学的要因、心理学的要因、および社会的要因の全てが役割を果たしている。全ての個体が、それぞれの原因の影響を等しく受けているわけではない。AUDがある一部の人では衝動性、低い自尊心、および承認欲求などの心理学的形質が不適切な飲酒を刺激する。遺伝的要因あると一部の人は特にアルコール依存になりやすい。AUDは、大量飲酒を、いやなことを回避する唯一の方法とする生理学的変化を引き起こすことがあり、AUDがある個体は酒を飲んで部分的に離脱症状を軽減または回避することがある。
【0010】
AUDなどの報酬に基づく行動(reward-based behavior)に関連する障害がある人は、医師、栄養士、精神科医、心理学者、医療ソーシャルワーカー(clinical social worker)を含む医療専門家から、または12ステップアルコホーリクスアノニマスミーティング(12-step Alcoholic Anonymous meeting)に参加することでカウンセリングと心理学的療法を求めることができる。しかしながら、様々な理由により、このような情報源へのアクセスとその受容と成功が限定されている場合がある。
【0011】
AUDなどの報酬に基づく行動に関連した障害を治療するための薬物療法の使用に対する大きな耐性は長く残り、最新の証拠から、AUD治療において薬物療法はあまり使用されていないことが分かっている。欧州では経口ナルメフェンが認可されており、患者は飲酒中に服用することができる。しかしながら、2015年1月時点で米国では、AUD治療専用にジスルフィラム、アカンプロサート、および経口用または徐放性の注射用ナルトレキソンが米食品医薬品局によって認可された唯一の薬物である。しかしながら、これらの薬は全て、治療開始前に禁酒することができるか、またはアルコール離脱症状を終えた入院患者が服用しなければならない。従って、飲酒し続けているAUD対象を治療する薬が依然として必要とされている。
【0012】
非薬物報酬に基づく障害は物質使用障害と同様の心理パターンおよび行動パターンで現れる。特に、人間の身体的、精神的、社会的、または経済的な幸福に対してマイナスの結果を招く嗜癖行為に苦しんでいる対象では、渇望、行動のコントロール不全、耐性、離脱症状、および高い再発率が認められる(例えば、Marks, 1990; Lejoyeux et al, 2000; National Institute on Drug Abuse (NIDA) et al, 2002; Potenza, 2006;およびOlsen, 2011を参照されたい)。薬物報酬および非薬物報酬も同様の生理学的発現を示す。例えば、ヒトでの脳機能イメージング研究から、ギャンブル(Breiter et al, 2001)、買い物(Knutson et al, 2007)、オルガズム(Komisaruk et al, 2004)、ビデオゲームの遊興(Koepp et al, 1998; Hoeft et al, 2008)、およびおいしそうな食べ物を見ること(Wang et al, 2004)は乱用薬物と同じ脳領域(すなわち、中脳皮質辺縁系(mesocorticolimbic system)および扁桃体延長部(extended amygdala))の多くを活性化することが分かっている(Volkow et al, 2004)。
【0013】
ナルトレキソンの鼻腔内(IN)製剤には、針も徐放製剤も用いることなく、オピオイド過剰摂取の逆転と、報酬に基づく障害の処置に用いられる潜在能力がある。研究から、経口または注射の形で投与されるナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストはオピオイド過剰摂取を逆転でき、飲酒およびそのオペラント反応を低減できることが分かっているが、このような状態を処置するための簡単、迅速、かつ適合する手段が、依然として大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
概要
ナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液を含む鼻腔内製剤が本明細書において開示される。
【0015】
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害、例えば、アルコール使用障害(AUD)を処置する方法であって、治療的有効量のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含むIN製剤を対象に投与する段階を含む、方法も本明細書において開示される。
【0016】
オピオイド過剰摂取を経験している、または報酬に基づく障害、例えば、アルコール使用障害(AUD)を有する対象への、治療的有効量の本明細書において開示される薬学的製剤を含む、薬学的組成物の鼻腔送達用に適合された装置も本明細書において開示される。ある特定の態様において、前記装置はプレプライミングされている。ある特定の態様において、前記装置は使用前にプライミングすることができる。ある特定の態様において、前記装置はシングルドーズ装置である。ある特定の態様において、前記装置はマルチドーズ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一様目盛で12時間までの、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の平均ナルトレキソン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【
図2】片対数目盛で12時間までの、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の平均ナルトレキソン血漿中濃度対時間プロファイルを示す。
【
図3】一様目盛で12時間までの、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の平均6β-ナルトレキソール(主要なナルトレキソン代謝製品)血漿中濃度対時間プロファイル(端は12時間で切り捨て)を示す。
【
図4】片対数目盛で12時間までの、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の平均6β-ナルトレキソール(主要なナルトレキソン代謝製品)血漿中濃度対時間プロファイル(端は12時間で切り捨て)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
以下の態様は、本明細書に開示の発明をさらに説明する。
【0019】
以下が、本明細書において提供される:
態様1:
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む、鼻腔内製剤。
【0020】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様2:
約10mg/mL~約40mg/mL(好ましくは約10mg/mL~約30mg/mL)のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の体積中に含む、鼻腔内製剤。
【0021】
本開示は、以下の態様をさらに提供する:
態様3:
以下:
等張剤;
防腐剤;
安定化剤;
吸収促進剤;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
をさらに含む、態様1または態様2記載の製剤。
【0022】
態様4:
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgの等張剤;
約0.001mg~約0.1mgの防腐剤;
約0.1mg~約0.5mgの安定化剤;
約0.05mg~約2.5mgの吸収促進剤;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様3記載の製剤。
【0023】
態様5:
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%の等張剤;
約0.001%~約0.1%の防腐剤;
約0.1%~約0.5%の安定化剤;
約0.05%mg~約2.5%の吸収促進剤
を含む、態様3記載の製剤。
【0024】
態様6:
等張剤がNaClであり、
防腐剤が塩化ベンザルコニウムであり、
安定化剤がエデト酸二ナトリウムであり、
吸収促進剤がアルキルサッカライドである、
態様4または態様5記載の製剤。
【0025】
態様7:
アルキルサッカライドがドデシルマルトシドである、態様6記載の製剤。
【0026】
態様8:
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgのNaCl;
約0.001mg~約0.1mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.15mg~約0.5mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.05mg~約2.5mgのドデシルマルトシド;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様7記載の製剤。
【0027】
態様9:
約0.1mg~約0.5mgのドデシルマルトシドを含む、態様8記載の製剤。
【0028】
態様10:
約0.25mgのドデシルマルトシドを含む、態様9記載の製剤。
【0029】
態様11:
約0.2mgおよび約0.3mgのエデト酸二ナトリウムを含む、態様8記載の製剤。
【0030】
態様12:
以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3mg~約0.7mgのNaCl;
約0.02mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.3mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.25mgのドデシルマルトシド;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様9記載の製剤。
【0031】
態様13:
水の量が、約80~約120μLの最終体積を実現するのに十分である、態様10記載の製剤。
【0032】
態様14:
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、態様11記載の製剤。
【0033】
態様15:
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%のNaCl;
約0.001%~約0.1%の塩化ベンザルコニウム;
約0.15%~約0.5%のエデト酸二ナトリウム;
約0.05%~約2.5%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、態様7記載の製剤。
【0034】
態様16:
約0.1%~約0.5%のドデシルマルトシドを含む、態様15記載の製剤。
【0035】
態様17:
約0.25%のドデシルマルトシドを含む、態様16記載の製剤。
【0036】
態様18:
約0.2%および約0.3%のエデト酸二ナトリウムを含む、態様15記載の製剤。
【0037】
態様19:
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3%~約0.7%のNaCl;
約0.02%の塩化ベンザルコニウム;
約0.3%のエデト酸二ナトリウム;
約0.25%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、態様17記載の製剤。
【0038】
態様20:
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、態様19記載の製剤。
【0039】
態様21:
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、態様20記載の製剤。
【0040】
態様22:
ナルトレキソンが塩酸ナルトレキソンである、態様1~21のいずれかに記載の製剤。
【0041】
態様23:
約1.2mg、約1.6mg、約2.0mg、もしくは約3.0mgのナルトレキソンまたは相当量の塩酸ナルトレキソンを含む、態様22記載の製剤。
【0042】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様24:
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む鼻腔内製剤を対象に投与する段階
を含む、方法。
【0043】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様25:
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む第1の鼻腔内製剤を対象に投与する段階、および
約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を含む第2の鼻腔内製剤を投与する段階
を含む、方法。
【0044】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様26:
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約10mg/mL~約40mg/mL(好ましくは約10mg/mL~約30mg/mL)のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の体積中に含む、鼻腔内製剤、を対象に投与する段階
を含む、方法。
【0045】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様27:
対象においてオピオイド過剰摂取または報酬に基づく障害を処置する方法であって、
約10mg/mL~約40mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、約50~約250ulの体積中に含む、第1の鼻腔内製剤、を対象に投与する段階、および
約10mg/mL~約40mg/mLのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液
を、体積中、つまり約50~約250μL中に含む、第2の鼻腔内製剤、を投与する段階
を含む、方法。
【0046】
態様28:
第1の鼻腔内製剤を投与して約1時間~約3時間後に第2の鼻腔内製剤が投与される、態様25または態様27記載の方法。
【0047】
態様29:
鼻腔内製剤が、以下:
等張剤;
防腐剤;
安定化剤;
吸収促進剤;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
をさらに含む、態様24~28のいずれかに記載の方法。
【0048】
態様30:
鼻腔内製剤が、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgの等張剤;
約0.001mg~約0.1mgの防腐剤;
約0.1mg~約0.5mgの安定化剤;
約0.05mg~約2.5mgの吸収促進剤;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様29記載の方法。
【0049】
態様31:
鼻腔内製剤が、以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%の等張剤;
約0.001%~約0.1%の防腐剤;
約0.1%~約0.5%の安定化剤;
約0.05%mg~約2.5%の吸収促進剤
を含む、態様29記載の方法。
【0050】
態様32:
等張剤がNaClであり、
防腐剤が塩化ベンザルコニウムであり、
安定化剤がエデト酸二ナトリウムであり、
吸収促進剤がアルキルサッカライドである、
態様30または態様28記載の方法。
【0051】
態様33:
アルキルサッカライドがドデシルマルトシドである、態様32記載の方法。
【0052】
態様34:
鼻腔内製剤が、以下:
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1mg~約1.2mgのNaCl;
約0.001mg~約0.1mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.15mg~約0.5mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.05mg~約2.5mgのドデシルマルトシド;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様33記載の方法。
【0053】
態様35:
鼻腔内製剤が約0.1mg~約0.5mgのドデシルマルトシドを含む、態様34記載の方法。
【0054】
態様36:
鼻腔内製剤が約0.25mgのドデシルマルトシドを含む、態様35記載の方法。
【0055】
態様37:
鼻腔内製剤が約0.2mg~約0.3mgのエデト酸二ナトリウムを含む、態様34記載の方法。
【0056】
態様38:
鼻腔内製剤が、
約1mg~約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3mg~約0.7mgのNaCl;
約0.02mgの塩化ベンザルコニウム;
約0.3mgのエデト酸二ナトリウム;
約0.25mgのドデシルマルトシド;および
約50~約250μL(好ましくは約50~約150μL)の最終体積を実現するのに十分な量の水
を含む、態様36記載の方法。
【0057】
態様39:
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、態様38記載の方法。
【0058】
態様40:
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、態様39記載の方法。
【0059】
態様41:
以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.1%~約1.2%のNaCl;
約0.001%~約0.1%の塩化ベンザルコニウム;
約0.1%~約0.5%のエデト酸二ナトリウム;
約0.05%~約2.5%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、態様33記載の方法。
【0060】
態様42:
鼻腔内製剤が約0.1%~約0.5%のドデシルマルトシドを含む、態様41記載の方法。
【0061】
態様43:
鼻腔内製剤が約0.25%のドデシルマルトシドを含む、態様42記載の方法。
【0062】
態様44:
鼻腔内製剤が約0.2%~約0.3%のエデト酸二ナトリウムを含む、態様41記載の方法。
【0063】
態様45:
鼻腔内製剤が、以下:
約1%~約3%のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩;
約0.3%~約0.7%のNaCl;
約0.02%の塩化ベンザルコニウム;
約0.3%のエデト酸二ナトリウム;
約0.25%のドデシルマルトシド;および
水
を含む、態様43記載の方法。
【0064】
態様46:
水の量が、約50~約150μLの最終体積を実現するのに十分である、態様45記載の方法。
【0065】
態様47:
水の量が、約100μLの最終体積を実現するのに十分である、態様46記載の方法。
【0066】
態様48:
ナルトレキソンが塩酸ナルトレキソンである、態様24~47のいずれかに記載の方法。
【0067】
態様49:
鼻腔内製剤が約1.2mg、約1.6mg、約2.0mg、もしくは約3.0mgのナルトレキソンまたは相当量の塩酸ナルトレキソンを含む、態様48記載の方法。
【0068】
態様50:
オピオイド過剰摂取を処置する、態様24~49のいずれかに記載の方法。
【0069】
態様51:
報酬に基づく障害を処置する、態様24~49のいずれかに記載の方法。
【0070】
態様52:
報酬に基づく障害が物質使用障害である、態様48記載の方法。
【0071】
態様53:
物質使用障害がアルコール使用障害である、態様48記載の方法。
【0072】
態様54:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取前に投与される、態様53記載の方法。
【0073】
態様55:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約1~2時間前に投与される、態様54記載の方法。
【0074】
態様56:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約0.5~約1時間前に投与される、態様54記載の方法。
【0075】
態様57:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約10~約30分前に投与される、態様54記載の方法。
【0076】
態様58:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取の約5~約10分前に投与される、態様54記載の方法。
【0077】
態様59:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取と同時に投与される、態様53記載の方法。
【0078】
態様57:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、アルコール摂取開始後0.5時間以内に投与される、態様53記載の方法。
【0079】
態様58:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、1日に1回~4回、対象に投与される、態様24~57のいずれかに記載の方法。
【0080】
態様59:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、対象による必要に応じて1日を通して約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの用量で投与される、態様58記載の方法。
【0081】
態様60:
ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤が、午前中に約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの第1の用量として投与され、アルコール消費前に必要に応じて、約1.2mg、約1.6mg、約2mg、または約3mgの、後の用量として投与される、態様58記載の方法。
【0082】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様61:
複数の用量を含み、各用量が態様1~23のいずれかに記載の鼻腔内製剤を含む、
オピオイド過剰摂取を経験しているかまたは報酬に基づく障害を有する対象への薬学的製剤の鼻腔送達用に適合された、マルチドーズ装置。
【0083】
態様62:
各用量で約0.05~約0.2mL(好ましくは約0.05~約0.15mL)の製剤が対象に送達される、態様61に記載の装置。
【0084】
態様63:
各用量で約0.1mLの製剤が対象に送達される、態様62記載の装置。
【0085】
以下もまた、本明細書において提供される:
態様64:
「約1mg~約4mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む」の場合、含まれる量が約3mgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩である;あるいは
前記方法が「約10mg/mL~約40mg/mL(好ましくは約10mg/mL~約30mg/mL)のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む」を記載している場合、含まれる濃度が約30mg/mLmgのナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩である、
前記態様のいずれか一つに記載の製剤、方法、または装置。
【0086】
態様64:
本明細書において開示される実施例に記載の製剤から選択される製剤も提供される。
【0087】
上記の任意の態様と、これらの態様のいずれか1つまたは複数の組み合わせが相互排他的でなければ、これらが組み合わされ得る態様も提供される。
【0088】
定義
以下の用語が本明細書において用いられる時には、示された意味を有する。
【0089】
値の範囲が開示され、他で特定しない限り、この表記は数字そのものと、数字の間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、両端の値の間で、および両端の値を含めて、整数でもよく、連続していてもよい。例として、用量は整数単位で表されるので、「2~6つの用量」という範囲は、2つ、3つ、4つ、5つ、および6つの用量を含むことが意図される。例として、「1~3μM(マイクロモル濃度)」という範囲は、1μM、3μM、およびその間の全ての任意の数の有効数字(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図されることと比較されたい。
【0090】
本明細書で使用する「約」という用語は、「約」が修飾する数値を、ある範囲内の変数であると示して、このような値を修飾することが意図される。グラフまたはデータの表に示された誤差範囲または平均値に対する標準偏差などの特定の範囲が説明されていない場合、「約」という用語は、説明された値を含む範囲、有効数字を考慮してその数字を切り上げまたは切り捨てることによって含まれる範囲、および、記載された値±20%を含む範囲、のうち、より大きいものを意味すると理解しなければならない。
【0091】
本明細書で使用する「吸収促進剤」という用語は、薬理学的に活性な薬物の吸収を改善するために製剤に含まれる機能的賦形剤を指す。この用語は、通常、溶解度を高めるのではなく膜浸透を強化することによって吸収を増やす機能をもつ薬剤を指す。従って、このような薬剤は浸透促進剤と呼ばれる時もある。吸収促進剤の例には、アプロチニン、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、カプリン酸、セラミド、塩化セチルピリジニウム、キトサン、シクロデキストリン、デオキシコール酸、デカノイルカルニチン、ドデシルマルトシド、EDTA、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、グリコフロール、グリコシル化スフィンゴシン、グリチルレチン酸、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、laureth-9、ラウリン酸、ラウロイルカルニチン、ラウリル硫酸ナトリウム、リゾホスファチジルコリン、メントール、ポロキサマー407またはF68、ポリ-L-アルギニン、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリソルベート80、プロピレングリコール、キラヤサポニン、サリチル酸、ナトリウム塩、β-シトステロール-β-D-グルコシド、ヤシ脂肪酸スクロース(sucrose cocoate)、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロジヒドロフシジン酸、およびテトラデシルマルトシドが含まれる。アルキルサッカライド(例えば、非イオン性アルキルサッカライド界面活性剤、例えば、グリコシド結合によって糖部分に結合したアルキルグリコシド、およびエステル結合によって糖部分に結合した、脂肪族炭化水素鎖からなる脂肪酸のスクロースエステル)、シクロデキストリン(疎水性分子と共に封入体を形成する、中心空洞がある、6個以上の単糖ユニットで構成される環式オリゴ糖。主として薬物溶解度および溶解を増加させるのに、ならびに低分子量薬物吸収を強化するのに用いられてきた)、キトサン(キチンの脱アセチルから生成される直鎖カチオン性多糖類)、ならびに胆汁酸塩およびその誘導体(例えば、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、およびタウロジヒドロフシジン酸ナトリウム)は最も許容される吸収促進剤の中にある傾向がある。例えば、Aungst, AAPS Journal 14(1):10-8, 2011; Maggio, J. Excipients and Food Chem. 5(2):100-12, 2014を参照されたい。
【0092】
本明細書で使用する「嗜癖」という用語は、有害結果があるのにもかかわらず強迫観念に駆られて報酬刺激に没頭することを特徴とする医学的状態を指す。本明細書で使用する「嗜癖行為」という用語は、報酬と強化を両方とも与える行動を指す。
【0093】
本明細書で使用する「アゴニスト」という用語は、受容体と相互作用し、それを活性化し、それによって、その受容体に特有の生理学的応答または薬理学的応答を開始する部分を指す。本明細書で使用する「アンタゴニスト」という用語は、受容体の、アゴニスト(例えば、内因性リガンド)と同じ部位に競合結合するが、活性化型の受容体によって開始する細胞内応答を活性化せず、それによって、アゴニストまたは部分的アゴニストによる細胞内応答を阻害することができる部分を指す。アンタゴニストはアゴニストまたは部分的アゴニストの非存在下ではベースライン細胞内応答を減らさない。「インバースアゴニスト」という用語は、内因型の受容体または構成的に活性化される型の受容体に結合し、活性化型の受容体によって開始するベースライン細胞内応答を、アゴニストまたは部分的アゴニストの非存在下で観察される通常の基礎活性レベル以下に阻害する部分を指す。
【0094】
「アルコール使用障害」という用語は、USにおいて精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM、最新改訂版、現在はDSM-V)に示された基準によって、または対応する広く受け入れられている標準書、例えば、世界保健機関のICD(疾病および関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)、最新改訂版、現在、ICD-10)に示された同様の基準によって定義される。関連する用語および障害には、「アルコール乱用」および「アルコール依存」(DSM-IVにおいて用いられる)、「アルコールの有害使用(alcohol harmful use)」および「アルコール依存症候群」(ICD-10において用いられる)、ならびにアルコール依存症が含まれる。
【0095】
本明細書で使用する「抗菌性防腐剤」という用語は、微生物学的安定性を維持するために薬学的組成物に添加される、抗菌特性をもつ薬学的に許容される賦形剤を指す。化合物は防腐剤と安定剤の両方の働きをする。
【0096】
本明細書で使用する「疾患」という用語と、「障害」、「症候群」、および(医学的状態のような)「状態」は、これらの全てが、正常機能を損なう、ヒトもしくは動物の身体の、またはその部分の1つの異常な状態を反映し、典型的には極めて特徴的な徴候および症状で現れ、ヒトまたは動物の寿命または生活の質を下げるので、おおむね同義であることが意図され、かつ区別なく用いられる。
【0097】
「薬学的組成物」という用語は、「薬学的製剤」または単に「製剤」という用語と区別なく本明細書で用いられ、活性のある薬学的成分(すなわち、原薬)と少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤または担体の組み合わせを示す。
【0098】
本明細書で使用する「相当」という用語は、指定された重量の塩酸ナルトレキソンと等モルの、オピオイドアンタゴニストであるナルトレキソンおよびその薬学的に許容される塩の重量を指す。
【0099】
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、薬物療法の活性成分と一緒に製剤化され、長期安定化、固体製剤の増量、または最終剤形中にある活性成分の治療的強化、例えば、薬物吸収の促進、粘度の低下、もしくは溶解度の向上の付与の目的で含められる、天然物質または合成物質を指す。
【0100】
本明細書で使用する「治療的有効用量」という用語は、疾患を処置するのに、疾患の1つまたは複数の観察可能な症状を減らすのに、あるいは患者が現在経験している状態の後に引き続いて起こることが多い、もっと重篤な状態の発症もしくは進行を遅らせるのに、またはその症状を和らげるのに有効な用量を指す。治療的有効用量は疾患の全症状を無くす可能性があるが、必ずしも疾患の全症状を完全に無くす必要はない。
【0101】
「処置を必要とする」という用語、および処置について言及している時の「必要とする」という用語は区別なく用いられ、対象が処置から利益を得るという、ケアをする人(例えば、医師、看護師、ナース・プラクティショナー)が下す判断を指す。
【0102】
本明細書で使用する、2つの態様は、一方が他方とは異なるものであると定義されている時に相互排他的である。例えば、塩酸ナルトレキソンの量が3mgと指定されている態様は、塩酸ナルトレキソンの量が2mgと指定されている態様と相互排他的である。しかしながら、塩酸ナルトレキソンの量が4mgと指定されている態様は、約10%未満の前記薬学的組成物が鼻腔を離れてドレナージを介して鼻咽頭または外部に排出される態様と相互排他的でない。
【0103】
本明細書で使用する「ナロキソン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和化合物を指す。ナロキソンのCAS登録番号は465-65-6である。ナロキソンの他の名称には、17-アリル-4,5a-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン;(-)-17-アリル-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン;4,5a-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-17-(2-プロペニル)モルフィナン-6-オン;および(-)-12-アリル-7,7a,8,9-テトラヒドロ-3,7a-ジヒドロキシ-4aH-8,9c-イミノエタノフェナントロ[4,5-bcd]フラン-5(6H)-オンが含まれる。塩酸ナロキソンは無水(CAS登録番号357-08-4)でもよく、二水和物(CAS番号51481-60-8)も形成する。これは、Narcan(登録商標)、Nalone(登録商標)、Nalossone(登録商標)、Naloxona(登録商標)、Naloxonum(登録商標)、Narcanti(登録商標)、およびNarcon(登録商標)を含む様々な商品名で販売されている。
【0104】
本明細書で使用する「ナルトレキソン」という用語は、以下の構造:
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和化合物を指す。ナルトレキソンのCAS登録番号は16590-41-3である。ナルトレキソンの他の名称には、17-(シクロプロピルメチル)-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン;(5α)-17-(シクロプロピルメチル)-3,14-ジヒドロキシ-4,5-エポキシモルフィナン-6-オン;および(1S,5R,13R,17S)-4-(シクロプロピルメチル)-10,17-ジヒドロキシ-12-オキサ-4-アザペンタシクロ[9.6.1.01,13.05,17.07,18]オクタデカ-7(18),8,10-トリエン-14-オンが含まれる。「ナルトレキソン」という用語は「塩酸ナルトレキソン」を含む。塩酸ナルトレキソン(CAS登録番号16676-29-2)は、商品名Antaxone(登録商標)、Depade(登録商標)、Nalorex(登録商標)、Revia(登録商標)、Trexan(登録商標)、Vivitrex(登録商標)、およびVivitrol(登録商標)で販売されている。
【0105】
本明細書で使用する「メチルナルトレキソン」という用語は、以下の構造:
の化合物であるカチオン(5α)-17-(シクロプロピルメチル)-3,14-ジヒドロキシ-17-メチル-4,5-エポキシモルフィナニウム-17-イウム-6-オンを含む薬学的に許容される塩を指す。式中、X
-は、薬学的に許容されるアニオンである。臭化メチルナルトレキソン(CAS登録番号75232-52-7)は商品名レリストール(登録商標)で販売されている。
【0106】
本明細書で使用する「ナルメフェン」という用語は、以下の構造:
の化合物である17-シクロプロピルメチル-4,5α-エポキシ-6-メチレンモルフィナン-3,14-ジオールを指す。塩酸ナルメフェン(CAS登録番号58895-64-0)は商品名Nalmetrene(登録商標)、Cervene(登録商標)、Revex(登録商標)、Arthrene(登録商標)、およびIncystene(登録商標)で販売されている。
【0107】
本明細書で使用する「外鼻孔」という用語は「鼻孔」と同義である。
【0108】
「オピオイドアンタゴニスト」という用語は、ナルトレキソンおよびその薬学的に許容される塩に加えて、ナロキソン、メチルナルトレキソン、およびナルメフェン、ならびにその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の態様において、オピオイドアンタゴニストは塩酸ナルトレキソンである。ある特定の態様において、オピオイドアンタゴニストはナロキソンである。ある特定の態様において、オピオイドアンタゴニストは臭化メチルナルトレキソンである。ある特定の態様において、鼻腔内投与は、本明細書に記載の装置を用いて成し遂げられる。
【0109】
本明細書で使用する「薬学的組成物」という用語は、オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンの塩、溶媒和化合物、および水和物を含むが、これに限定されない少なくとも1種類の活性成分を含む組成物を指す。これによって、前記組成物は、哺乳動物(例えば、非限定的にヒト)において、指定された有効なアウトカムを得るための使用の対象となる。
【0110】
本明細書で使用する「強化刺激」という用語は、これらと対になる行動を繰り返す可能性を高める刺激を指す。
【0111】
本明細書で使用する「報酬刺激」という用語は、対象の脳が、本質的に良いものだと、または取り組むべきものであると解釈する刺激を指す。典型的には、報酬刺激によって対象の脳にドーパミンが放出される。
【0112】
本明細書で使用する「報酬に基づく障害」は、報酬に基づく行動に関連する障害であり、使用者は有害結果にもかかわらず報酬刺激に没頭し続ける、および/または報酬刺激に溺れる。報酬に基づく障害には、物質使用障害、例えば、アルコール使用障害、ならびに嗜癖、ならびに活動没頭(activity engagement)障害、例えば、ギャンブル障害(強迫観念に駆られたギャンブル)、摂食障害(過食、神経性大食症(bulimia nervosa))、窃盗症、放火症などが含まれる。
【0113】
本明細書で使用する「対象」という用語は「患者」と同義であることが意図され、治療的有効量のオピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンまたはその塩を用いた処置から利益を得る可能性が高い状態にある、任意の哺乳動物(好ましくはヒト)を指す。
【0114】
「物質使用障害」という用語は、USにおいて精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM、最新改訂版、現在はDSM-V)に示された基準によって、または対応する広く受け入れられている標準書、例えば、世界保健機関のICD(疾病および関連保健問題の国際統計分類、最新改訂版、現在、ICD-10)に示された同様の基準によって定義される。関連する用語および障害には「物質乱用」および「物質依存」(DSM-IVで用いられる)が含まれる。アルコールおよび/または薬物を繰り返し使用することで、臨床的または機能的に重大な機能障害、例えば、健康問題、身体障害が引き起こされ、仕事、学校、または家庭での重大な義務を果たさなくなる場合に、物質使用障害が発生している。DSM-5によれば、物質使用障害の診断はコントロール不全、社会的機能障害、リスクを伴う使用、および薬理学的基準の証拠に基づいている。物質使用障害の焦点になり得る物質には、乱用物質、例えば、オピオイド、アルコール、タバコ、カンナビノイド、興奮薬、例えば、コカインおよびアンフェタミン、抑制剤、例えば、ベンゾジアゼピン、幻覚剤、吸入剤などが含まれる。アルコール使用障害は物質使用障害である。物質使用障害は「報酬に基づく障害」だとみなされる場合がある。
【0115】
本明細書で使用する「張性薬剤」という用語は、製剤のオスモル濃度を改変する、例えば、等張にする化合物を指す。張性薬剤には、デキストロース、ラクトース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、グリシンなどが含まれる。
【0116】
本明細書で使用する「処置する」、「処置」などは、対象において障害の原因、進行、重篤度、もしくは障害の症状の1つもしくは複数を低減もしくは排除するように、または疾患を別のやり方で有益に変えるように障害を寛解させることを意味する。
【0117】
本明細書で使用する「AUC」という用語は、薬物血漿中濃度-時間曲線下面積を指す。本明細書で使用する「AUC0-t」という用語は、t=0から最後の測定可能な濃度までの、薬物血漿中濃度-時間曲線下面積を指す。本明細書で使用する「AUC0-∞」または「AUC0-inf」という用語は、∞(無限大)まで外挿された薬物血漿中濃度-時間曲線下面積を指す。
【0118】
本明細書で使用する「バイオアベイラビリティ(F)」という用語は、投与部位から吸収され、未変化形態で体循環に到達する薬物用量の画分を指す。本明細書で使用する「絶対的バイオアベイラビリティ」という用語は、吸収された薬物の画分がそのIVバイオアベイラビリティと関連する時に用いられる。これは、以下の式:
を用いて計算され得る。
【0119】
相対的バイオアベイラビリティ(F
rel)という用語は、薬物投与の2つの異なる血管外経路を比較するのに用いられ、以下の式:
を用いて計算され得る。
【0120】
本明細書で使用する「クリアランス(CL)」という用語は、薬物が排出される速度を薬物の血漿中濃度で割ったものを指し、単位時間当たりの、薬物が完全に除去される血漿の体積を表す。CLは、排出速度定数(λ)に分布容積(Vd)を掛けたものに等しい。「Vd」は、血漿中と同じ濃度で体内に存在する薬物量を含むのに必要な液体体積である。本明細書で使用する「見かけのクリアランス(CL/F)」という用語は、薬物のバイオアベイラビリティを考慮していないクリアランスを指す。これは、AUCを上回る用量の比である。
【0121】
本明細書で使用する「Cmax」という用語は、観察された最大血漿中濃度を指す。
【0122】
本明細書で使用する「t1/2」または「半減期」という用語は、薬物の半分が身体から排出されるのに必要な時間、または薬物濃度が半分に低下するのに必要な時間を指す。
【0123】
本明細書で使用する「変動係数(CV)」という用語は、試料の標準偏差と試料の平均の比を指す。「変動係数(CV)」はパーセントで表されることが多い。
【0124】
本明細書で使用する「信頼区間」という用語は、指定されたパーセントの確率で、パラメータの真の平均値を含む値の範囲を指す。
【0125】
本明細書で使用する「排出速度定数(λ)」という用語は、身体から薬物が除去される、分数で表した速度を指す。この速度は一次速度で一定であり、体内の薬物濃度に依存しない。λは、(y対数目盛上にある)血漿中濃度-時間線の傾きである。本明細書で使用する「λz」という用語は終末相排出速度定数を指す。薬物血漿中濃度-時間曲線の「終末相」とは片対数グラフにプロットした時の直線である。終末相中に薬物濃度を減らす主な機構が身体からの薬物排出であるので、終末相は「排出相」とも呼ばれることが多い。終末排出相の特色は血漿中にある薬物と末梢分布容積中にある薬物の相対的割合が一定のままであることである。この「終末相」の間に、薬物は急速な分布容積およびゆっくりとした分布容積から血漿に戻り、代謝または腎臓排出によって血漿から恒久的に除去される。
【0126】
オピオイドアンタゴニスト
オピオイド受容体アンタゴニストは、よく認められているクラスの化学薬品である。オピオイド受容体アンタゴニストは科学文献および特許文献において詳述されている。ナルトレキソンおよびその活性代謝物6β-ナルトレキソールはμ-オピオイド受容体(MOR)、κ-オピオイド受容体(KOR)、およびδ-オピオイド受容体(DOR)におけるオピオイドアンタゴニストであり、アゴニスト特性がない。ナルトレキソンはオピオイド受容体を可逆的にブロックし、それによってオピオイドの効果を弱めることによって働く。アルコール依存におけるその作用機序は完全には理解されていないものの、理論により限定されないが、主要な全ての乱用薬物が活性化すると考えられている、嗜癖に関連する主要な報酬中枢と考えられているドーパミン作動性中脳辺縁系経路(脳におけるリスク-報酬分析の一次中枢の1つ、および三次快中枢)を、ナルトレキソンは、調節する可能性が高い。その作用機序は、内因性アヘン剤、例えば、アルコールの存在下で生産が増大するテトラヒドロパパベロリンに対する拮抗作用である可能性がある。
【0127】
ナルトレキソンは塩酸塩として市販されている。塩酸ナルトレキソン(17-(シクロプロピルメチル)-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン)はオピオイド中毒患者の処置において多幸感作用を阻止するのに用いられる。これは、静脈内投与されたオピオイドに対する身体的依存を著しく阻止し、オピオイド依存症からの離脱症状を刺激するが、患者はナルトレキソンに対する耐性または依存を発症しない。ナルトレキソンはまたアルコール依存症の処置において、特に心理社会的療法と組み合わされた時にアルコール渇望を低減するのにも有効である。
【0128】
ナルトレキソンが経口ではなく鼻腔内投与された場合、バイオアベイラビリティはかなり高い。ナルトレキソンは経口投与された時に胃腸管からほぼ完全に吸収されるのにもかかわらず、6-β-ナルトレキソールへの迅速かつ大規模な初回通過代謝を受ける。結果として、体循環に到達するナルトレキソン量は限定される。ナルトレキソンの経口バイオアベイラビリティは5%と低いことが報告されている。Gonzalez and Brogden, Drugs 35:192-213, 1988。本明細書において示された研究から、ナルトレキソンの経口バイオアベイラビリティは同様に低く、約9%であることが見出された。
【0129】
治療的有効量の、オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンを含む、患者への薬学的組成物の鼻腔送達を用いた処置方法が本明細書において提供される。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は約1~約4mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、治療的有効量は約1~約3mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は約1.2mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は約1.6mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は約2.0mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。ある特定の態様において、1用量あたりの治療的有効量は約3.0mgの塩酸ナルトレキソンに相当する。治療効力を実現するために複数の用量が連続して服用されてもよい。ある特定の態様において、オピオイドアンタゴニストは無水塩酸ナルトレキソンである。
【0130】
本明細書に記載の薬学的組成物の態様の多くはナルトレキソンを用いて説明および例示されるが、本明細書の開示に基づいて他のオピオイドアンタゴニストを鼻腔送達用に適合することができる。実際に、本明細書中の開示から、本明細書に記載の装置および薬学的組成物は他のオピオイドアンタゴニストに適している可能性があることは当業者に容易に明らかになるはずである。本明細書に記載のオピオイド受容体アンタゴニストには、μ-オピオイド、κ-オピオイド、およびδ-オピオイド受容体アンタゴニストが含まれる。有用なオピオイド受容体アンタゴニストの例には、ナルトレキソン、ナロキソン、メチルナルトレキソン、およびナルメフェンが含まれる。他の有用なオピオイド受容体アンタゴニストが当技術分野において公知である(例えば、米国特許第4,987,136号)。
【0131】
薬学的製剤
オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンを含む薬学的組成物も提供される。ある特定の態様において、薬学的組成物は、オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンと、薬学的に許容される担体とを含む。担体は製剤の他の成分と適合するという意味では「容認可能(acceptable)」でなければならず、そのレシピエントに過度に害をなしてはならない。本発明の一部の態様は、オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンと、薬学的に許容される担体とを混合する工程を含む、薬学的組成物を生成する方法を含む。薬学的組成物は、本明細書に記載の装置を用いて鼻腔に直接適用される。スプレーの場合、これは、例えば、定量噴霧スプレーポンプ(metering atomizing spray pump)によって成し遂げられ得る。
【0132】
液体調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルジョン、例えば、水または水-プロピレングリコール溶液が含まれる。液体調製物中のさらなる成分には、抗菌性防腐剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、安息香酸、フェニルエチルアルコールなど、およびその混合物;界面活性剤、例えば、ポリソルベート80NF、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートなど、およびその混合物;張性薬剤、例えば、デキストロース、ラクトース、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、グリシンなど、およびその混合物;ならびに懸濁剤、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムNF、ポリアクリル酸、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、キサンタンガムなど、およびその混合物が含まれる場合がある。
【0133】
理想的には、AUDを処置するためにオピオイドアンタゴニストがアルコール摂取前に鼻腔内投与された場合、オピオイドアンタゴニストは素早く、すなわち、約15分~約30分以内に吸収される、および/または約25~約40分の最大血漿中濃度までの時間(Tmax)を生じる。例えば、ある特定の態様において、オピオイドアンタゴニストは投与後、最初の15分以内に吸収され、最大血漿中濃度までの時間(Tmax)は25分以下である。または、オピオイドアンタゴニストは投与後、最初の30分以内に吸収され、Tmaxは40分以下である。
【0134】
吸収促進剤、例えば、アルキルサッカライド(本明細書においてアルキルグリコシドとも呼ばれる)、シクロデキストリン、およびキトサンを使用すると、ナルトレキソンが吸収される速度が速くなり、Tmaxが短くなる可能性がある。このような吸収促進剤は、典型的には、2つの主な鼻吸収機構である細胞間の密着結合の開口部を介した傍細胞輸送と、小胞担体を介した細胞を通過する経細胞輸送またはトランスサイトーシスに影響を及ぼすことによって働く。
【0135】
様々な局面において、本発明のアルキルグリコシドは、アルキルグリコシド、例えば、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシル-α-またはβ-D-マルトシド、-グルコシドまたは-スクロシド;アルキルチオマルトシド、例えば、ヘプチル、オクチル、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシル-β-D-チオマルトシド;アルキルチオグルコシド、例えば、ヘプチル-またはオクチル1-チオα-またはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アルキル鎖にアミド結合によって結合されたパラチノーゼおよびイソマルタミン(isomaltamine)の誘導体;アルキル鎖に尿素によって結合されたイソマルタミンの誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド;ならびにスクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドを含む場合があるが、これに限定されない。
【0136】
従って、上記のように、疎水性アルキルは、望ましい疎水性と糖類部分の親水性に応じて任意の望ましいサイズから選択しなければならない。例えば、アルキル鎖の好ましい範囲の1つは約9~約24個の炭素原子である。さらにより好ましい範囲は約9~約16個、または約14個の炭素原子である。同様に、好ましいグリコシドの中には、9個、10個、12個、13個、14個、16個、18個、20個、22個、または24個の炭素原子のアルキル鎖、例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルスクロシド(sucroside)、グルコシド、およびマルトシドなどとグリコシド結合によって結合したマルトース、スクロース、およびグルコースも含まれる。これらの組成物はアルコールまたは脂肪酸とオリゴ糖まで分解されるので無毒であり、かつ両親媒性である。さらに、疎水性アルキル基と親水性糖類との間の結合は、数ある可能性の中で特に、グリコシド結合、チオグリコシド結合、アミド結合、ウレイド結合、またはエステル結合を含んでもよい。
【0137】
本明細書において使用する「糖類」は直鎖または環の形をした単糖、オリゴ糖、もしくは多糖類、または糖鎖を形成するための、その組み合わせを含む。オリゴ糖は、2個以上の単糖残基を有する糖類である。従って、糖類の例には、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラロース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。
【0138】
一態様において、例示的なアルキルサッカライドはアルキルマルトシドである。アルキルマルトシドは、二糖マルトースとアルコールのグリコシドである。典型的なアルキルマルトシドは、ドデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、およびヘキサデシルマルトシドであり、それぞれ、マルトースにグリコシド結合した、12個、14個、および16個の炭素直鎖アルコールからなる。例示的な態様において、アルキルグリコシドはテトラデシルマルトシドである。
【0139】
例えば、アルキルサッカライドの1つが、1-O-n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド(代わりに、ラウリル-β-D-マルトピラノシド、ドデシルマルトピラノシド、ドデシルマルトシド、Intravail(登録商標)、およびDDM;C24H46Q11とも呼ばれる)である。アルキルサッカライドは市販の食品およびパーソナルケア製品に用いられ、食品用途の「一般に安全とみなされている」(Generally Recognized as Safe)(GRAS)物質として指定されている。これらは、無臭、無味、無毒、非変異原性、およびドレイズ検査において25%濃度まで非感作性(non-sensitizing)の非刺激性の経粘膜吸収促進剤である。アルキルサッカライドは、経上皮電気抵抗の減少によって示されるように傍細胞透過性を高めることによって吸収を増加させる。アルキルサッカライドはまたトランスサイトーシスも増加させる可能性がある。この効果は長続きしない。他のアルキルサッカライドにはテトラデシルマルトシド(TDM)およびスクロースドデカノエートが含まれる。
【0140】
糖化学では、アノマーとは、アノマー炭素または還元炭素(reducing carbon)とも呼ばれるヘミアセタール(またはヘミケタール)炭素における立体配置の点だけが異なる、糖またはグリコシドの一対の環式立体異性体のいずれかである(αまたはβと呼ばれる)。この構造が、グルコースのアキシアル位でアノマー炭素上のヒドロキシル基をもつものと類似すれば、糖はαアノマーである。しかしながら、このヒドロキシルがエクアトリアル位であれば、糖はβアノマーである。例えば、α-D-グルコピラノースとβ-D-グルコピラノースの2種類の環式型のグルコースがアノマーである。同様に、アルキルグリコシドもアノマーとして生じる。例えば、ドデシルβ-D-マルトシドとドデシルα-D-マルトシドは2種類の環式型のドデシルマルトシドである。2つの異なるアノマーは2つの別個の化学構造であり、従って、異なる物理的特性および化学的特性を有する。本発明の一局面において、本発明のアルキルグリコシドはβアノマーである。例示的な局面において、アルキルグリコシドは、アルキルマルトシドのβアノマー、例えば、テトラデシル-β-D-マルトシド(TDM)である。
【0141】
従って、本発明の一局面において、使用されるアルキルグリコシドは、実質的に純粋なアルキルグリコシドである。本明細書で使用する「実質的に純粋な」アルキルグリコシドとは、約2%未満の他のアノマー型、好ましくは約1.5%未満の他のアノマー型、より好ましくは約1%未満の他のアノマー型を含む、アルキルグリコシドの1種類のアノマー型(αアノマー型またはβアノマー型のいずれか)を指す。一局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシド(alkylgycoside)は98%超のαアノマーまたはβアノマーを含有する。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99%超のαアノマーまたはβアノマーを含有する。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99.5%超のαアノマーまたはβアノマーを含有する。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99.9%超のαアノマーまたはβアノマーを含有する。
【0142】
ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.001重量%~約5.0重量%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.01%~約2.5%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.05%~約2.5%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.1%~約0.5%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.15%~約0.35%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.15%~約0.2%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.18%ドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.2%~約0.3%のドデシルマルトシドを含む。ある特定の態様において、鼻腔内製剤は約0.25%ドデシルマルトシドを含む。
【0143】
0.18%ドデシルマルトシドをスマトリプタンの鼻腔内製剤に添加した時に、最大血漿中濃度はImitrex鼻噴霧器と比較してほぼ4倍に増加し、Tmaxは1~2時間から8~10分に短縮した。全曝露は濃度-時間曲線(AUC)下面積で測定された時に32%増加した。ナルトレキソンの鼻腔内製剤には、針も徐放製剤も使用せずに、AUDの処置に用いられる潜在能力がある。ドデシルマルトシドを含めると、いくつかの用途では薬物動態学的パラメータが改善する場合がある。
【0144】
吸収促進性賦形剤の中には傍細胞経路および/または経細胞経路を変化できるものもあれば、鼻腔内の滞留時間を延長できるか、または代謝変化を阻止できるものもある。吸収促進剤がなければ鼻腔吸収のための分子量制限は約1kDaであるのに対して、薬物を吸収促進剤と一緒に投与すると1~30kDaの分子を吸収することが可能になる。しかしながら、ほとんどの吸収促進剤の鼻腔内投与は鼻粘膜損傷の原因となる可能性がある。Maggio, J. Excipients and Food Chem. 5(2):100-12, 2014。
【0145】
吸収促進剤の例には、アプロチニン、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、カプリン酸、セラミド、塩化セチルピリジニウム、キトサン、シクロデキストリン、デオキシコール酸、デカノイルカルニチン、ドデシルマルトシド、EDTA、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、グリコフロール、グリコシル化スフィンゴシン、グリチルレチン酸、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、laureth-9、ラウリン酸、ラウロイルカルニチン、ラウリル硫酸塩、リゾホスファチジルコリン、メントール、ポロキサマー407、ポロキサマーF68、ポリ-L-アルギニン、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリソルベート80、プロピレングリコール、キラヤサポニン、サリチル酸、β-シトステロール-β-D-グルコシド、ヤシ脂肪酸スクロース、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロジヒドロフシジン酸、およびテトラデシルマルトシドが含まれる。
【0146】
本明細書に記載のオピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンは、当業者に周知の技法を用いて薬学的組成物に製剤化することができる。本明細書において言及されたもの以外に、適切な薬学的に許容される担体が当技術分野において公知である。
【0147】
本明細書に記載のオピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンは、任意で、無機酸および有機酸を含む薬学的に許容される無毒の酸から調製された薬学的に許容される酸添加塩を含む、薬学的に許容される塩として存在してもよい。代表的な酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸(ethenesulfonic acid)、ジクロロ酢酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸など、例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 66:1-19 (1977)に記載される薬学的に許容される塩が含まれるが、これに限定されない。酸添加塩は化合物合成の直接産物として得られる場合がある。別の選択肢では、適切な酸を含有する適切な溶媒に遊離塩基が溶解され、溶媒を蒸発させることによって、または別の方法で塩および溶媒を分離することによって塩が単離される場合がある。本明細書に記載のオピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンは、当業者に公知の方法を用いて標準的な低分子量溶媒と溶媒和化合物を形成する場合がある。
【0148】
従って、ナルトレキソンまたはその塩、例えば、塩酸ナルトレキソンを含む鼻腔内投与用の薬学的製剤が本明細書において提供される。ある特定の態様において、前記製剤は水溶液である。ある特定の態様において、前記製剤は1用量あたり約25~約200μLの水溶液を含む。ある特定の態様において、前記製剤は1用量あたり約50~約200μLの水溶液を含む。ある特定の態様において、前記製剤は1用量あたり約140μL以下を含む。ある特定の態様において、前記製剤は1用量あたり約100μL以下を含む。
【0149】
ある特定の態様において、前記製剤は約1%(w/w)~約4%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1%(w/w)~約3%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1.2%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1.6%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約2%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約3%(w/w)の塩酸ナルトレキソンを含む。
【0150】
ある特定の態様において、前記製剤は約1mg~約4mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1mg~約3mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約2mg~約4mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、または約4.0mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1.2mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約1.6mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約2mgの塩酸ナルトレキソンを含む。ある特定の態様において、前記製剤は約3mgの塩酸ナルトレキソンを含む。
【0151】
本明細書において開示される鼻腔内投与用の水性製剤はまた、薬学的に許容される賦形剤、例えば、1種類または複数種の等張剤、1種類または複数種の防腐剤、1種類または複数種の安定化剤、1種類または複数種の吸収促進剤、ならびにpHを調節する、または溶液を緩衝化する1種類または複数種の薬剤も含んでもよい。
【0152】
ある特定の態様において、鼻腔内製剤は塩化ナトリウム(NaCl)などの等張剤をさらに含む。
【0153】
ある特定の態様において、鼻腔内製剤は、防腐剤および/または界面活性剤である化合物をさらに含む。
【0154】
ある特定の態様において、防腐剤および/または界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、安息香酸、フェニルエチルアルコールなど、およびその混合物;界面活性剤、例えば、ポリソルベート80NF、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートなど、およびその混合物から選択される。
【0155】
ある特定の態様において、鼻腔内製剤は安定化剤をさらに含む。
【0156】
ある特定の態様において、安定化剤はエデト酸二ナトリウム(EDTA)である。
【0157】
ある特定の態様において、薬学的組成物は約100μLの水溶液中にある。
【0158】
ある特定の態様において、前記薬学的組成物が前記患者に鼻腔送達されると、約10%未満の前記薬学的組成物が鼻腔を離れてドレナージを介して鼻咽頭または外部に排出される。
【0159】
鼻腔薬物送達装置およびキット
治療的有効量のオピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む、AUDに罹患している対象への鼻腔送達用に適合された装置の中にある薬学的組成物も提供される。ある特定の態様において、前記装置はプレプライミングされている。ある特定の態様において、前記装置は使用前にプライミングすることができる。ある特定の態様において、前記装置は片手で動かすことができる。
【0160】
鼻腔送達は、全身薬物送達に、特に、迅速な吸収と効果が望まれる場合には、魅力的な経路だとみなされている。さらに、鼻腔送達は、いやな味、不十分なバイオアベイラビリティ、ゆっくりした吸収、薬物分解、胃腸管内での有害事象(AE)に関連する問題に取り組むのに役立つ可能性があり、初回通過代謝と、長期の経口ナルトレキソン使用に関連する肝臓毒性を回避する。
【0161】
液体鼻用製剤は主に水溶液であるが、懸濁液およびエマルジョンも送達することができる。
【0162】
いくつかの救急医療(EMS)プログラムが、FDAに認可されていないやり方ではあるが、認可薬物の既存の技術と既存の医療装置を用いてオピオイドアンタゴニストナロキソンを鼻腔内投与するためのシステムを開発してきた。これは、注射用製剤(1mg/mL)を使用し、市販されている鼻アトマイザー/ネブライザー装置を介して片方の外鼻孔につき1mLを投与することによって成し遂げられてきた。このシステムは、FDAに認可されたナロキソン注射製品(針なしの、ルアーフィット先端部を伴う)と、Mucosal Atomization Device (MAD(商標) Nasal, Wolfe Tory Medical, Inc.)と呼ばれる市販の医療装置を組み合わせている。この独創力は米国針刺し安全防止法(U.S. Needlestick Safety and Prevention Act)(公法律106-430)と合致している。EMSプログラムは、このシステムの制約を認めており、制約の一つは、このシステムが組み立てられておらず、すぐに使用できないことである。この投与方法はナルコーシスの逆転に有効であるように見えるが、前記製剤は鼻腔内に保持されるように一カ所に集まらない。片方の外鼻孔につき1mLの送達体積は、鼻腔内薬物投与に通常利用されている送達体積よりも多い。従って、鼻咽頭内に、または鼻腔から外部に排出されることで鼻腔から薬物が失われる。本明細書に記載の装置は、鼻腔送達専用に最適化され、一カ所に集まり、かつ製剤化された、すぐに使用できる改善された製品である。
【0163】
定量スプレーポンプが導入されてから鼻腔薬物送達市場を席巻してきた。このポンプは典型的に1回の噴霧につき100μL(または25~200μLの範囲、およびそれより多い他の体積)を送達し、インビトロ試験において、放出される用量とプルーム形状の高い再現性を示す。
【0164】
標準的な定量スプレーポンプの例には、Aptar Pharma, Inc.により供給される定量スプレーポンプ、例えば、マルチドーズ「古典的技術プラットフォーム(classic technology platform)」鼻噴霧器装置が含まれる。このような装置は、複数用量(例えば、50用量、100用量、150用量、200用量、60用量、または120用量)の鼻噴霧器製剤を保持するリザーバー、クロージャー(例えば、スクリュー、クリンプ、またはスナップオン)、および単一用量を含むように、1回の操作につき45~1000μL(例えば、50μL、100μL、140μL、150μL、または200μL)の流体を送達するアクチュエーターを備える。アクチュエーターは、用量の計数、ゲル製剤の送達、上下反対の配置での送達などをするように構成されていてもよい。
【0165】
従来のスプレーポンプシステムでは、液体製剤の微生物学的安定性を維持するために抗菌性防腐剤が通常必要とされる。しかしながら、防腐剤が無いシステム、例えば、AptarのAdvanced Preservative Free(APF)システムも利用可能である。AptarのAdvanced Preservative Free(APF)システムは、通気孔が開けられており、汚染を防ぐ空気流用フィルター膜を備え、製剤を酸化するための、金属を用いない流体路を有し、任意の方向に使用することができる。Aptarなどの、さらなる鼻噴霧器装置は、目詰まりを防ぐディスペンサー先端(高粘度および高揮発性の製剤に有用である)、長期の不使用後でも再プライミングを必要としないアクチュエーターなどが付いて最適化されている。
【0166】
粒径およびプルーム形状は、ある一定の限度内で変化してもよく、ポンプの特性、製剤、アクチュエーターのオリフィス、および加えられる力に左右される。鼻噴霧器の液滴サイズ分布は鼻腔内での薬物のインビボ付着に大きな影響を及ぼすので重要なパラメータである。液滴サイズは装置の操作パラメータと製剤の影響を受ける。液滴サイズの一般的な中央値は約30~約100μmになるはずである。液滴が大きすぎる場合(>約120μm)、付着は主に鼻の前方部分で起こる。液滴が小さすぎる場合(<約10μm)、場合によっては吸い込まれ、肺に到達する可能性がある。これは、安全上の理由で避けなければならない。界面活性剤として、塩化ベンザルコニウムは、送達された鼻噴霧器のプルームからの液滴の表面張力に影響を及ぼして、液滴サイズ分布(DSD)が狭い球状または実質的に球状の粒子を生じるだけでなく、液体製剤の粘度にも影響を及ぼすことがある。
【0167】
噴霧後に送達されるプルームのプルーム形状、液滴サイズ、およびDSDは、当技術分野において公知の、適切な、かつ検証および/または較正された分析手順によって、指定された実験条件および計器条件の下で測定することができる。これらには、写真撮影、レーザー回折、およびインパクションシステム(impaction system)(カスケードインパクション(cascade impaction), NGI)が含まれる。プルーム形状、液滴サイズ、およびDSDは、Cmax、Tmaxなどの薬物動態学的アウトカムおよび直線的な用量比例関係に影響を及ぼすことがある。
【0168】
液滴サイズ分布は、D10、D50、D90、スパン[(D90-D10)/D50]の範囲、および10mm未満の液滴のパーセントによって制御することができる。ある特定の態様において、前記製剤のDSDは狭い。ある特定の態様において、前記製剤のD(v,50)は30~70μmであり、D(v,90)は<100μmである。
【0169】
ある特定の態様において、10μm未満の液滴のパーセントは10%未満である。ある特定の態様において、10μm未満の液滴のパーセントは5%未満である。ある特定の態様において、10μm未満の液滴のパーセントは2%未満である。ある特定の態様において、10μm未満の液滴のパーセントは1%未満である。
【0170】
ある特定の態様において、前記製剤は操作によって装置から投薬された時に、楕円比(ovality ratio)が1に近い、均一な円形プルームを生じる。楕円比は、(例えば、「上部」からの)スプレー流の方向と直交するスプレーパターンの最大直径(Dmax)と最小直径(Dmin)の商として計算される。ある特定の態様において、楕円比は±2.0未満である。ある特定の態様において、楕円比は±1.5未満である。ある特定の態様において、楕円比は±1.3未満である。ある特定の態様において、楕円比は±1.2未満である。ある特定の態様において、楕円比は±1.1未満である。ある特定の態様において、楕円比は約±1.0である。
【0171】
異なるタイプの鼻用エアロゾル装置について粒子発生の詳細および機械的原理が説明されている。Vidgren and Kublik, Adv. Drug Deliv. Rev. 29:157-77, 1998に概説される。従来のスプレーポンプは、放出された液体を空気と取り替え、従って、汚染を防ぐために防腐剤が必要とされる。しかしながら、防腐剤の起こり得る悪影響(例えば、鼻粘膜の刺激症状)を示唆する研究により駆り立てられて、ポンプ製造業者は、防腐剤の必要がない様々なスプレーシステムを開発してきた。これらのシステムでは、放出された液体体積を埋め合わせるために折り畳み式バッグ、可動ピストン、または圧縮ガスを使用する(www.aptar.comおよびwww.rexam.com)。放出された液体体積を埋め合わせる、折り畳み式バッグと可動ピストンを用いた解決策には、空気をディップチューブ(dip tube)の中に吸い込んで、後の噴霧を損なうリスクが無く、上下反対にして放出できるという、さらなる利点がある。これは、患者が寝たきりであり、頭を低くして利用することが推奨されるいくつかの製品について、有用な場合がある。防腐剤を回避するのに用いられる別の方法は、放出された液体に取って代わる空気が無菌空気フィルターで濾過される方法である。さらに、システムの中には、アプリケーター先端内での液体の汚染を防ぐために先端にボール弁があるものもある(www.aptar.com)。つい最近、側面操作(side-actuation)型ポンプが設計され、季節性アレルギー性鼻炎および通年性アレルギー性鼻炎の適応症についてフルチカゾンフランカルボン酸エステル(fluticasone furoate)を送達するために導入された。このポンプは、敏感な粘膜表面との接触を避けるために、さらに短い先端を付けて設計された。プライミングおよび再プライミングの必要を少なくするための新たな設計ならびに用量再現性および用量カウンターを改善するための圧点特徴を組み込んだポンプならびに用量管理および安全性を高めるためのロックアウト機構が利用可能である(www.rexam.comおよびwww.aptar.com)。
【0172】
従来の単純な定量スプレーポンプは、プライミングと、表示された数の用量との用量一致を維持するための、ある程度の過剰充填(overfill)を必要とする。従来の単純な定量スプレーポンプは、長期間にわたって毎日投与される薬物に良く適しているが、プライミング手順と、投薬の不十分な管理のために、特殊な装置が選択されない限り、治療可能時間域が狭い薬物には、特に、頻繁に用いられない場合には、あまり適していない。一回投与または単発使用を目的とする高価な薬物およびワクチンの場合、ならびに用量および製剤の厳格な管理が特に重要な場合、シングルドーズまたはバイドーズスプレー装置が好ましい(www.aptar.com)。シングルドーズスプレー装置(MAD(商標))の単純な変形がLMAによって提供されている(LMA, Salt Lake City, UT, USA; www.lmana. com)。スプレー先端のあるノーズピースが標準的な注射器にはめられる。最初に、送達しようとする液体薬物を注射器に引き込み、次いで、スプレー先端を注射器にはめる。この装置は、例えば、慢性副鼻腔炎患者において局所ステロイドを送達するために学術研究において、およびワクチン研究において用いられてきた。一用量用または二用量用の、同じ原理に基づいて予め充填される装置(Accuspray(商標), Becton Dickinson Technologies, Research Triangle Park, NC, USA; www.bdpharma.com)がインフルエンザワクチンFluMist(商標)(www.flumist.com)を送達するのに用いられ、米国市場で成人と小児の両方に認可された。10年前に、スイス企業によって別のインフルエンザワクチンを送達するための二用量用の類似装置が販売された。
【0173】
予めプライミングされたシングルドーズ装置およびバイドーズ装置もまた利用可能であり、リザーバー、ピストン、および旋回チャンバー(swirl chamber)からなる(例えば、Aptar、以前はPfeifferのUDS UnitDose(商標)およびBDS BiDose(商標)装置を参照されたい)。液体が旋回チャンバーを通って押出されると噴霧が形成される。これらの装置は中指と薬指の間に保たれ、アクチュエーター上に親指がある。一部の装置に組み込まれる圧点機構は、操作の力と放出されるプルーム特徴の再現性を確保する。現在、Imitrex(登録商標)(www.gsk.com)およびZomig(登録商標)(www.az.com; Pfeiffer/Aptarシングルドーズ装置)のような市販の鼻用片頭痛薬、市販のインフルエンザワクチンFlu-Mist(www.flumist.com; Becton Dickinsonシングルドーズスプレー装置)、ならびにオピオイド過剰摂取救助用のナロキソン鼻腔内製剤、Narcan Nasal(登録商標)(narcan.com; Adapt Pharma)は、このタイプの装置を用いて送達される。
【0174】
ある特定の態様において、1回の操作につき送達される用量の90%信頼区間は±約2%である。ある特定の態様において、1回の操作につき送達される用量の95%信頼区間は±約2.5%である。
【0175】
歴史上、大きな体積での薬物の鼻腔内投与、例えば、粘膜アトマイザー装置付で適合された注射器からの鼻腔内投与は、前記製剤の一部が外鼻孔から出て、または鼻咽頭を降りて滴となって落ちる傾向があるために難しい状況に遭遇してきた。従って、ある特定の態様において、前記薬学的組成物が前記患者に鼻腔送達されると、前記薬学的組成物の約20%未満が鼻腔を離れてドレナージを介して鼻咽頭または外部に排出される。ある特定の態様において前記薬学的組成物が前記患者に鼻腔送達されると、前記薬学的組成物の約10%未満が鼻腔を離れてドレナージを介して鼻咽頭または外部に排出される。ある特定の態様において、前記薬学的組成物が前記患者に鼻腔送達されると、約5%未満の前記薬学的組成物が鼻腔を離れてドレナージを介して鼻咽頭または外部に排出される。
【0176】
吸入スプレー薬物製品用の現行の容器クロージャーシステム設計は、スプレープルーム発生のために機械的補助もしくは動力補助および/または患者吸気からのエネルギーを用いる、予め計量された提示物および装置計量提示物の両方を含む。予め計量された提示物は、何らかのタイプのユニット(例えば、1個または複数個のブリスターまたは他の空洞)の中に前もって測定された用量または用量画分を備え、ユニットは、その後で製造中に、または使用前に患者によって装置に挿入される。代表的な装置計量ユニットは、患者が起動した時に、装置それ自体によって計量されたスプレーとして送達される複数の用量に十分な製剤を含むリザーバーを有する。
【0177】
新たな鼻腔薬物送達法は、液体および粉末両方の任意のタイプの分散技術に合わせることができ、呼吸を動力源とするBi-Directional(商標)技術である。この概念は、従来の鼻用装置の固有の制約の多くを克服し得る送達方法を提供するために上気道の天然の機能的側面を利用する。呼吸を動力源とするBi-Directional(商標)装置は、最適化された円錐台形状と、鼻弁の第一の部分を機械的に広げる心地よい表面を有する、マウスピースおよびシーリングノーズピースからなる。使用者は、外鼻孔開口部の柔軟性のある軟部組織を密封するまでシーリングノーズピースを片方の外鼻孔の中に滑り込ませ、その場所で、三角形の鼻弁の、スリットの形をした細い部分を機械的に広げる。次いで、使用者は、取り付けられているマウスピースを通して息を吐きだす。装置の抵抗に逆らってマウスピースに息を吐きだすと、軟口蓋(soft palate)(または軟口蓋(velum))は口腔咽頭の陽圧によって自動的に上昇し、鼻腔は呼吸器系の残りから隔てられる。この機構を用いると、一方の外鼻孔から入り、鼻中隔を完全に通過し、反対の外鼻孔を通って出る空気の流れに液体または粉末粒子を放出することが可能になる。
【0178】
無菌充填を用いると装置において防腐剤の使用は必要とされないが、過剰充填は必要とされ、その結果、定量マルチドーズスプレーと同様の廃棄画分が生じる。100μLを放出するために、鼻腔内片頭痛薬Imitrex(商標)(スマトリプタン)およびZomig(商標)(ゾルミトリプタン)に用いられる装置(Pfeiffer/Aptarシングルドーズ装置)に125μLの体積が充填され、バイドーズ設計の場合はその約半分が充填される。無菌薬物製品は無菌処理または最終滅菌法を用いて生成されてもよい。最終滅菌法は、通常、高品質環境条件下で製品容器に充填し、これを密封することを伴う。製品は、工程内製品の微生物内容物および粒子内容物を最小限にするために、ならびにその後の滅菌プロセスがうまくいくことを助けるために、このタイプの環境において充填および密封される。ほとんどの場合、製品、容器、およびクロージャーの生物汚染度は低いが、無菌ではない。次いで、最終容器の中にある製品は、熱または放射線照射などの滅菌プロセスに供される。無菌プロセスでは、最初に、薬物製品、容器、およびクロージャーは、適宜、別々に滅菌法に供され、次に一つにされる。最終容器の中にある製品を滅菌するプロセスはないので、容器が、極めて高い品質の環境で充填および密封されることが重要である。無菌処理は最終滅菌法より多くの変数を伴う。最終製品に無菌状態で組み立てられる前に、最終製品の個々の部分は一般的に様々な滅菌プロセスに供される。例えば、ガラス容器は乾熱に供され、ゴムクロージャーは湿熱に供され、液体剤形は濾過に供される。これらの製造プロセスはそれぞれ検証と管理を必要とする。
【0179】
処置方法
治療的有効量のナルトレキソンまたはその塩もしくは水和物の鼻腔内投与を含む、アルコール使用障害および関連する状態を処置する方法が本明細書において提供される。
【0180】
シンクレア法およびバリエーション
シンクレア法は、飲酒の習慣形成(habit-forming)行動を習慣消去(habit-erasing)行動に変えるために薬理学的消滅-ナルトレキソンなどのオピオイドアンタゴニストの使用を利用するAUD処置法である。この効果は人間のアルコール渇望を嗜癖前の状態に戻す。
【0181】
前記方法は、対象がアルコールを摂取する約1時間前、約2時間前、約3時間前、または約4時間前に経口用量のナルトレキソンを服用することからなる。この摂取前用量の経口ナルトレキソンは身体の行動と報酬サイクルを混乱させ、それによって、飲酒量を増やすのではなく飲酒量を減らしたいと思うようになる。最も重大なことには、研究から、この方法論は療法の有無にかかわらず等しく効果があり、そのため、対象は、実際の身体的結果に悪影響を及ぼすことなく、この処置方法を他の療法と組み合わせるかどうか選択することができる。重要なことに、AUDに対する現在認可されている他の薬物療法処置とは異なり、シンクレア法は、個体が通常の飲酒行動を続けている間に経口ナルトレキソンを使用することを必要とする。結果として、この薬物療法処置プロトコールの維持は禁欲単独よりもかなり高水準であると予想される。
【0182】
シンクレア法を用いると、AUDを6ヶ月以内に消滅することができる。しかしながら、経口ナルトレキソンの効力は、ゆっくりとした発現、非常に低いバイオアベイラビリティによって妨げられる。高レベルの末梢選択的活性代謝物6-β-ナルトレキソールと注射型ナルトレキソンはそれ自体では、例えば、定期的に予定されている間隔で従事者が投与する必要があることを含めて針に関連した明らかな困難を呈する。従って、プレプライミングされた単回使用または複数回使用の鼻噴霧器ポンプに入れた状態でのナルトレキソンの鼻腔内投与と吸収促進剤の使用はAUD処置の結果を著しく改善するはずである。投与のタイミングも効力に影響を及ぼすかもしれない。ナルトレキソンの鼻腔内製剤は急速に吸収され、そのため針を用いることなく作用が素早く発現し、バイオアベイラビリティが高くなる。
【0183】
従って、対象においてアルコール使用障害または関連する状態を処置する方法であって、治療的有効量のナルトレキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む鼻腔内製剤を対象に投与する段階を含む、方法が本明細書において開示される。
【0184】
ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取前に投与される。
【0185】
ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の約1~約2時間前に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の約1時間前に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の約0.5~約1時間前に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の約10~約30分前に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の約5~約10分前に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取の直前に投与される。
【0186】
ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取と同時に投与される。
【0187】
ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取直後に投与される。ある特定の態様において、ナルトレキソンを含む鼻腔内製剤はアルコール摂取開始後1時間以内に投与される。
【0188】
以下の試験により証明されるように、鼻腔内ナルトレキソンは鼻粘膜を介して急速に取り込まれ、血漿中に素早く現れるので、鼻腔内投与を用いると、対象はアルコール摂取直前に、さらにはアルコール摂取と同時に、またはアルコール摂取後にナルトレキソンを服薬し、利益、例えば、渇望などの消滅、低下などを体験することが可能になると予想される。吸収促進剤は、この効果を促すと予想される。
【0189】
ある特定の態様において、アルコール使用障害はアルコール乱用である。ある特定の態様において、アルコール使用障害はアルコール依存である。ある特定の態様において、アルコール使用障害はアルコール依存症である。
【0190】
これらの方法は他の物質使用障害および報酬に基づく障害の処置にも有効なだと予想される。
【0191】
本明細書において開示される方法は、本明細書において、例えば、上記のセクション「薬学的製剤」、上記の態様、および以下の実施例において開示される製剤の様々な態様を投与することによって達成され得る。前記製剤は、当該技術分野において公知の装置、例えば、本明細書中で、「鼻腔薬物送達装置およびキット」という表題のセクションにおいて開示される装置を用いて投与され得る。
【0192】
上記の任意の態様と、他のいずれか1つまたは複数の態様の組み合わせが相互排他的でなければ、これらが組み合わされ得る態様も本明細書において提供される。
【実施例】
【0193】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を証明するために含まれる。以下の実施例は例示のためだけに示され、当業者が本発明を使用するのを助けるために示される。実施例はいかなるやり方でも、本発明の範囲を限定することを目的としない。当業者は、本開示を考慮すれば、開示された具体的な態様に多くの変化を加えることができ、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を入手できることを理解するはずである。
【0194】
実施例1: アルコール使用障害を処置するための鼻腔内ナルトレキソンプロトコール
アルコール使用障害(AUD)がある個体を鼻腔内ナルトレキソンで処置し、禁欲、アルコール消費の低下、および/またはアルコール消費の消失について調べる。AUDがある個体はアルコールを摂取すると内因性オピオイドを放出すると考えられている。これらのオピオイドと脳内受容体との結合がアルコールの正の強化効果を担っている可能性がある。オピオイドアンタゴニスト ナルトレキソンがアルコールからの正の強化をブロックしている間に飲酒しても飲酒とアルコールへの渇望が消失するはずである。
【0195】
プロトコールの一例では、AUDがある対象(例えば、約10~20人)を入院患者として試験施設に収容させる。初回来診は、スクリーニング、診断の確定、インフォームドコンセントの入手という目的にかなう。(例えば、1週間または数週間の)入院滞在中に対象一人一人にプラセボまたは鼻腔内用量のナルトレキソンが与えられた後に、1種または複数種のアルコール飲料が消費される。ナルトレキソンは、アルコール消費の約0.25時間前~約4時間前に、指定された用量で、指定された方法によって投与される。投薬処置の一例は、単回使用または複数回使用のスプレー装置によって送達される、約1~約4mgの塩酸ナルトレキソン/投与を送達する鼻腔内製剤である。投薬処置の別の例は、午前中に第1の用量の3mg塩酸ナルトレキソンを送達し、その後に、必要に応じて、患者によって、1日を通して後の用量の3mg塩酸ナルトレキソンを送達する鼻腔内製剤である。投薬処置のさらに別の例は、1日に12mgまでの塩酸ナルトレキソンを送達する鼻腔内製剤である。ナルトレキソンの鼻腔内製剤はIntravail(登録商標)などの吸収促進剤を含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0196】
鼻腔内ナルトレキソンはアルコール摂取の処置後抑制を改善すると予想される。鼻腔内ナルトレキソンはアルコール渇望を低減し、対象がアルコール渇望の薬理学的消滅を示すのに必要な時間を短縮するとも予想される。
【0197】
投薬の約1時間前に、ECG、血圧、心拍、および呼吸速度を測定し、時間を記録する。投薬の約1時間後および4時間後にECGを繰り返し、時間を記録する。座位(sitting)(5分後)心拍、血圧、および呼吸速度を含むバイタルサインを投薬前と各投薬の約1時間後および4時間後に測定する。有害事象(AE)を記録し、必要であれば処置を終わらせる。投薬前、鼻腔内投与だけの後、投薬の5分後、30分後、60分後、4時間後、および24時間後に鼻腔を検査する。
【0198】
スクリーニング時、入院時、および退院時にECGおよびバイタルサインを1日1回チェックする。バイタルサインはナルトレキソン投与の翌日にも1回チェックする。AEは、対象による自発的報告によって、鼻粘膜を検査することによって、バイタルサイン、ECG、および臨床険査パラメータを測定することによって評価される。
【0199】
実施例2: 薬物動態学的データ分析
ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールのノンコンパートメント薬物動態学的(PK)パラメータ(Cmax、Tmax、AUCo-t、AUCo-∞、t1/2、λz、および見かけのクリアランス(CL/F、ナルトレキソンのみ)を求める。様々なAUD処置プロトコール(例えば、アルキルサッカライドなどの吸収促進剤を伴う、または伴わない4mg鼻腔内;50mg経口錠剤)のPKパラメータを2mg筋肉内(IM)用量のナルトレキソンと比較する。AUCおよびCmaxの用量調節(dose-adjusted)値を計算する。鼻腔内(IN)吸収および経口吸収(PO)吸収の相対程度を用量補正AUCから推定する。ANOVAフレームワーク内で、INおよびPO対IMナルトレキソン処置についてIN変換PKパラメータを比較する。各処置とIMナルトレキソンを比較するために、AUCおよびCmaxパラメータの幾何最小二乗平均の比(IN/IMおよびPO/IM)の90%信頼区間を作成する。これらの90%信頼区間は、log目盛に基づいた最小二乗平均間の差の90%信頼区間の冪乗によって得られる。
【0200】
AEは医薬品規制用語集(MedDRA)基本語の最新バージョンを用いてコーディングされ、器官別大分類(SOC)の名称によって分類される。重篤度、頻度、およびAEと試験薬物の関連性はSOC分類により基本語によって示される。4つの試験期間中に、すなわち、各用量の試験薬物の投与後、次の用量の試験薬物の時またはクリニック退院まで別々のサマリーが提供される。開始日、中止日、重篤度、関連性、アウトカム、および期間を含む、それぞれ個々のAEのリストが提供される。
【0201】
バイタルサイン、ECG、および臨床険査パラメータの臨床的に意義のある変化を投薬セッションにより数およびパーセントで示した。
【0202】
実施例3: 用量選択および吸収促進剤を含む薬学的組成物
鼻腔内ナルトレキソンは任意で吸収促進賦形剤と共に製剤化され得る。
【0203】
このような賦形剤の1つはアルキルサッカライドIntravail(登録商標)である。鼻用製剤中のIntravail(登録商標)の濃度は一般的に0.1重量%~0.2重量%である。本試験では0.25重量%の濃度のアルキルサッカライドを使用する。25%の濃度のIntravail(登録商標)はウサギ眼モデルでは非刺激性であった。経口「無影響量(no observable effect level)」は約20,000~30,000mg/kg体重であった。比較可能な鼻腔内データはないが、経口安全性が基本的に無いことから、鼻腔毒性に必要なアルキルサッカライド量は、本試験において投与される量よりもかなり多いことが示唆される。
【0204】
本試験では、単一用量のナルトレキソンを4種類のやり方: (a)4mg INを滅菌注射用水に溶解した; (b)4mg INを0.25%Intravail(登録商標)と共に滅菌注射用水に溶解した; (c)IM注射液として2mg; および(d)50mg経口錠剤で投与した。鼻腔内投与は経口投与と比較して吸収速度を増加させると予想される。Intravail(登録商標)の添加は鼻腔からの吸収速度をさらに増加させると予想される。
【0205】
実施例4: 鼻腔内ナルトレキソンの薬物動態学的評価
試験の目的
本臨床研究の目的は、2つの部分:ナルトレキソンの2mg筋肉内投薬と比較して、ナルトレキソンの2種類の鼻腔内製剤(Intravail(登録商標)を伴う4mgおよびIntravail(登録商標)を伴わない4mg)と1種類の経口製剤(50mg錠剤)の薬物動態を確かめることと、鼻腔内ナルトレキソンの安全性を、特に、鼻腔刺激症状、例えば、炎症(紅斑、浮腫、およびびらん)ならびに出血に関して確かめることからなった。この目標に向かって、本試験の一次エンドポイントは、2mgのナルトレキソンのIM投薬と比較した、INおよび経口ナルトレキソン製剤の薬物動態学的パラメータ(Cmax、Tmax、AUC0-t、およびAUC0-inf)であった。二次エンドポイントは、有害事象(AE)、バイタルサイン(心拍、座位血圧、および呼吸速度)、心電図(ECG)、臨床険査の変化、ならびに鼻腔刺激症状スケールを用いた鼻腔刺激症状を含んだ。
【0206】
試験デザイン
14人の健常ボランティアが登録し、全ての試験薬物投与とPK評価のための採血を完了した。これは、約14人の健常ボランティアが関与する、入院、非盲検、クロスオーバー試験であった。対象一人一人に、それぞれのナルトレキソン処置: 4mg IN(一方の外鼻孔に40mg/mL溶液の0.1mLスプレーを1回)、4mg+Intravail(登録商標)IN(一方の外鼻孔に、0.25%Intravail(登録商標)を含有する40mg/mL溶液の0.1mLスプレーを1回)、2mgIM、および50mg経口錠剤を与えた。試験全体を完了するために対象は入院施設に13日間滞在した。退院して3~5日後に対象に電話をかけて、退院からのAEおよび併用薬物療法について質問をした。インフォームドコンセントを対象全員から入手し、病歴、理学的検査、臨床化学、凝固マーカー、血液学、感染症血清学、尿検査、尿中薬物およびアルコール毒物学スクリーニング、バイタルサイン、ならびにECGを含む、本試験に参加するの適格性について全員をスクリーニングした。
【0207】
クリニック入院の翌日に、対象に試験薬物を投与し、全ての処置が投与されるまで投薬間に3日のウォッシュアウト期間を設けた。投薬前と、試験薬物を投与して約2.5分後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、45分後、60分後、および2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後、16時間後、24時間後、30時間後、36時間後、および48時間後に分析のために血液を収集した。試験薬物を投与した日に、投薬の約1時間前と、投薬して約1時間後および4時間後に12誘導ECGを行った。投薬前と、投薬して約1時間後および4時間後にバイタルサインを測定した。
【0208】
投薬日の評価順序は、同じ公称時間(nominal time)で予定された時には、ECG、バイタルサイン、次いでPK採血であった。PK採血の目標時間が最も重要とみなされ、採血が、採血の最初の60分間の場合は、予定時間から±1分を過ぎたら、またはその後に予定されていた時点の場合は±5分を過ぎたら、プロトコールから逸脱したとみなされた。ECGおよびバイタルサインは採血の公称時間前、10分期間内に収集した。スクリーニング時、入院時、および退院時にECGとバイタルサインを1日1回チェックした。バイタルサインはナルトレキソン投与の翌日にも1回チェックした。クリニック退院前に最後のPK採血をした後に臨床険査測定を繰り返した。AEは、対象による自発的報告によって、鼻粘膜を検査することによって、バイタルサイン、ECG、および臨床険査パラメータを測定することによって評価した。
【0209】
組み入れ基準および除外基準:
1. 本試験では18~55歳(両端の間を含む)の男性と女性を組み入れた。文書によるインフォームドコンセントを必要とした。対象は、以下:
18~30kg/m2(両端の間を含む)のボディ・マス・インデックス(BMI);
十分な静脈アクセス;
病歴、理学的検査、臨床険査、バイタルサイン、および12誘導ECGによって確かめられる、臨床的に意義のある併発医学的状態がないこと;
本試験全体を通して、および最後の試験薬物投与後90日間(女性の場合は30日間)にわたって経口避妊薬以外の容認できる避妊法を使用することに同意していること;ならびに
入院の72時間前から試験の最後の採血まで、アルコール、>500mg/日のキサンチンを含有する飲料(例えば、Coca-Cola(登録商標)、お茶、コーヒーなど)、もしくはグレープフルーツ/グレープフルーツジュースを摂取しないことに同意していること、または激しい運動に参加しないことに同意していること
がなければならなかった。
【0210】
除外基準は、以下:
異常な鼻腔解剖学的構造、鼻症状(すなわち、鼻づまりおよび/または鼻水、鼻茸など)を含む何らかのIN状態;
スクリーニングおよび薬物投与の前に鼻腔に製品が噴霧されたことがある;
-1日目の前30日以内に治験薬が投与されたことがある;
処方薬もしくはOTC薬、栄養補助食品、ハーブ製品、ビタミンを服用したことがあるか、または疼痛緩和のためにオピオイド鎮痛薬を最近使用したことがある(これらの製品のいずれかを最後に使用してから14日以内);
スクリーニング時または入院時に、アルコール、オピオイド、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン、ベンゾジアゼピン、テトラヒドロカンナビノール(THC)、バルビツレート、またはメサドンの薬物尿検査が陽性である;
病歴に基づいて、以前に、または現在、オピオイド依存、アルコール依存、または他の薬物依存(ニコチンおよびカフェインを除く)がある;
スクリーニングの前月に、平均して一日に20本を超えるタバコを消費したか、またはナルトレキソン投薬の少なくとも1時間前と2時間後に禁煙することができない(もしくは、あらゆるニコチン含有物質の使用を控えることができない)と思われる;
収縮期血圧が90mmHg未満であるか、または140mmHgを上回る;
拡張期血圧が55mmHg未満であるか、または90mmHgを上回る;
呼吸数が8呼吸/分未満であるか、または20呼吸/分を上回る;
標準的な12誘導ECG時にQTcF間隔が男性では>440msec、女性では>450msec;
重大な急性または慢性の医学的疾患(試験責任者の判断);
試験中に併用薬物療法処置が必要になる可能性が高い;
-1日目の前60日以内に献血したか、もしくは輸血を受けたか、または血漿もしくは血小板アフェレーシスを受けた;
妊娠している女性、授乳中の女性、または試験期間中に、もしくは最後のナルトレキソン投与後30日以内に妊娠の計画がある女性;
スクリーニング時に、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、C型肝炎ウイルス抗体(HCVAb)、またはヒト免疫不全症ウイルス抗体(HIVAb)の検査が陽性である;
現在または最近の(スクリーニング前7日以内の)上気道感染;ならびに
基準値上限の>1.5倍の異常な肝機能検査(ALT、AST、総ビリルビン)
を含んだ。
【0211】
試験薬物および投薬
塩酸ナルトレキソン(HCI)はMallinckrodt Pharmaceuticalsから入手した。IN(40mg/mL)製剤はVince&Associatesの薬剤師スタッフが作製した。IN製剤用のビヒクルは滅菌注射用水であった。IM製剤(2mg/mL)はVince&Associatesの薬剤師スタッフが作製した。このビヒクルは滅菌注射用食塩水であった。対象を横になった姿勢(約45度)で、Aptarマルチドーズ装置を用いてINナルトレキソンを投与した。対象には、IN用量のナルトレキソンを投与した時には鼻呼吸しないように指示した。IM注射用ナルトレキソンHCIを23g針を用いて一回の1mL注射で大殿筋に投与した。経口投与用ナルトレキソンHCI(50mg錠剤)を商業的供給業者から調達し、240mL水と一緒に投与した。
【0212】
ナルトレキソンを、1日目、4日目、7日目、および10日目に、以下の順序:4mgのナルトレキソンIN、4mgのナルトレキソン+Intravail(登録商標)IN、2mg IM、および50mg経口で投与した。対象は試験全体を完了するために入院施設に13日間滞在し、4回目の投薬の2日後に退院した。
【0213】
PK評価
PK分析のために、投薬前と、試験薬物投与を開始して2.5分後、5分後、10分後、1.5分後、20分後、30分後、45分後、60分後、ならびに2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後、16時間後、24時間後、30時間後、36時間後、および48時間後に血液(4mL)をヘパリンナトリウム含有チューブに収集した。血漿を全血から分離し、アッセイまで20℃以下で凍結して保管した。ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールの血漿中濃度を、XenoBiotic laboratories, Inc., Plainsboro, New Jerseyにおいて液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析によって求めた。
【0214】
安全性評価
心拍、血圧、および呼吸速度はナルトレキソン投薬の約1時間前と投薬の約1時間後および4時間後に記録した。12誘導ECGは各ナルトレキソン投薬の約1時間前と1時間後および4時間後に入手した。ECGおよびバイタルサインは投薬後採血のための公称時間前10分以内に行った。AEは、試験薬物投与を開始してからクリニック退院まで記録した。AEと、投与されたナルトレキソン投薬のタイプとの間の関連性を明らかにしようとするためにAEを各投薬セッションと比べて記録した。鼻腔検査は、適格性を明らかにする目的で-1日目に、IN投与後のみ、鼻粘膜の刺激症状の証拠を評価する目的で投薬前、INナルトレキソン投与の5分後、30分後、60分後、4時間後、および24時間後に行った。
【0215】
分析
Tmax、AUC0-t、およびAUC0-inf、t1/2、λz、および見かけのクリアランス(CL/F、ナルトレキソンのみ)を含む、ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールのノンコンパートメントPKパラメータを求めた。INおよびPOナルトレキソンの薬物動態学的パラメータ(Cmax、Tmax、およびAUC)をIMナルトレキソンの薬物動態学的パラメータと比較した。AUCおよびCmaxの用量調節値を計算した。INおよびPO吸収の相対程度(INおよびPO対IM)を用量補正AUCから推定した。ANOVAフレームワーク内で、INおよびPO対IMナルトレキソン処置についてln変換PKパラメータ(CmaxおよびAUC)を比較した。各処置とIMナルトレキソンを比較するために、AUCおよびCmaxパラメータの幾何最小二乗平均の比(IN/IMおよびPO/IM)の90%信頼区間を作成した。これらの90%CIは、ln目盛に基づいた最小二乗平均間の差の90%CIの冪乗によって得られた。
【0216】
結果
結果を以下の表1~5に示した。
【0217】
(表1)健常対象に単回IN投与、IM投与、または経口投与した後のナルトレキソンの平均(SD)濃度
【0218】
(表2)健常対象に投与した後のナルトレキソンの平均CV%PKパラメータ
NA=該当なし;Frel=IM用量と比べたバイオアベイラビリティ。IM経路と比べたINまたはPO経路経路のAUCinf/用量の比として計算した。
a:N=13;b:N=12;c:N=10;d:中央値(最小値、最大値)
【0219】
4mgのナルトレキソンをIN投与した後に、投薬後2.5分での平均濃度は0.117ng/mLであった。0.25%Intravail(登録商標)を製剤に添加した時に、平均濃度は2.5分で10倍(1.15ng/mL)になった。投薬後5分で、Intravail(登録商標)を伴うナルトレキソンと、Intravail(登録商標)を伴わないナルトレキソンの平均濃度はそれぞれ11.9ng/mLおよび1.51ng/mLであり、8倍の差があった。0.25%Intravail(登録商標)をIN製剤に添加するとTmaxの中央値が30分から10分に減少し、Cmaxがほぼ3倍になった(15.7対5.35ng/mL)。AUC0-infによって測定した時の全曝露は54%増加した。このことから、Intravail(登録商標)の主効果は上記の程度よりも速く吸収速度を増加させることが分かった。
【0220】
2mgのナルトレキソンIMを投与して2.5分後および5分後のナルトレキソンの平均血漿中濃度はそれぞれ0.678ng/mLおよび1.04ng/mLであった。2mg IMを投薬して20分後の平均Cmax値4.10ng/mLは4mg IN投薬後よりも23%少なく、Intravail(登録商標)がIN製剤の一部であった時と比較して74%少なかった。
【0221】
経口投薬後の平均Cmax値は9.34ng/mLであった。これは、50mgが経口投与されたが、たった4mgのINと比較して、Intravail(登録商標)を伴ってIN投薬後に観察されたものよりも少なかった。
【0222】
ナルトレキソンの平均終末相半減期(t1/2)はIM投与後およびIN投与後に1.97時間~2.52時間であった。経口投薬後のt1/2は6.41時間であった。
【0223】
AUC0-inf値が用量補正された時、0.25%Intravail(登録商標)を伴ったIN投薬後および0.25%Intravail(登録商標)を伴わないIN投薬後のナルトレキソンの相対的バイオアベイラビリティは、それぞれ、IM投与と比較して78%および48%であった。経口用量の相対的バイオアベイラビリティは9%しかなく、これは、胃腸管および肝臓による大量の初回通過代謝があったことを示している。
【0224】
用量調節PKパラメータの統計解析から、IN用量の曝露は、/mgベースで、幾何最小二乗平均(GM)用量調節AUCおよびCmaxの点で、それぞれ、IM用量の約48%または60%であることが示唆された。ナルトレキソンと0.25%Intravail(登録商標)のIN投与によって、Cmaxの点でIM経路よりも大きく(188%の処置間の幾何最小二乗平均比[GMR])、AUCの点でIM経路よりも小さな(76%のGMR)用量調節曝露が得られた。経口経路の場合、用量調節ナルトレキソン曝露のGMRはIM用量の約9%であった。
【0225】
(表3)健常対象への鼻腔内投与または経口投与対筋肉内投与後のナルトレキソン薬物動態学的パラメータの混合効果のANOVA結果
GMR=処置間の幾何最小二乗平均比(参照に対するパーセントで表した)
【0226】
6β-ナルトレキソールの平均Cmax値はIM投与後では1.5ng/mL、IN投与後では約3ng/mLであった。Cmaxは、50mg経口投薬後では90.7ng/mLであった(表2~3)。投与された用量に合わせて調節された時に、Cmax値はIN投薬およびIM投薬で似ていたが(0.833および0.838ng/mL/mg)、経口投与後には約2倍(2.00ng/mL/mg)になった。
【0227】
AUC0-infの値もまた経口投薬後にIN投薬およびIM投薬と比較して大幅に増加した(それぞれ、675h・ng/mLおよび44.0~27.1h・ng/mL)。ナルトレキソン初回通過代謝の程度が大きなことは、ナルトレキソンと比較した6β-ナルトレキソールのAUC0-inf比の点で明白であった。すなわち、IN投薬後およびIM投薬後に比は約2.2~3.7であったのに対して、経口投薬後では25であった。
【0228】
代謝産物のt1/2の平均は12.4~13.9時間であり、投与経路に依存しなかった。
【0229】
(表4)健常対象への単回IN投与、IM投与、または経口投与後の6β-ナルトレキソールの平均(SD)濃度
【0230】
(表5)健常対象に投与した後の6β-ナルトレキソールの平均(CV%)PKパラメータ
*Tmaxについては中央値(最小値,最大値)統計値を示した。他の全ての値は平均(パーセント変動係数)で示した。a:N=13;b:N=12;c:N=10;d:中央値(最小値、最大値)
【0231】
男性と比較して女性で約2倍になった4mg IN投薬後のナルトレキソンの平均Cmaxを除いて、IN、IM、またはPO投与後のナルトレキソンまたは6β-ナルトレキソールのPKパラメータに性別間で臨床上意味のある差はなかった。
【0232】
安全性
全体として、安全性集団内にいる14人の対象のうち10人(71%)が少なくとも1つのAEを経験した(どの投薬期間でも、薬物とのどの関連性でも)。最も頻繁に起こるAEは神経系障害SOCのAEであり(7人の対象、50%)、めまいが、重篤度または属性に関係のない最も頻繁に起こるAEであった(5人の対象、36%)。重度のAEは観察されず、試験薬剤に関連するとみなされた最初の投薬(4mg IN)後のめまいの症例である中等度のAEが一つだけ観察された。3人の対象が予想外のAE(UAE、最新の製品の添付文書に性質、重篤度、または頻度に関して述べられていなかったAEと定義される)を経験した。2件のUAEが試験薬剤に関連しないとみなされ、1件の処置関連UAEは、1日目の投薬(4mg IN)の投与後の軽度失神であった。AE(高血圧、失神、および範囲外の投薬前バイタルサイン)により3人の対象が試験を中断した。
【0233】
実施例5: 鼻腔内ナルトレキソン製剤
以下の表は、障害を処置するための鼻腔内投与用ナルトレキソン製剤の例を示す。表6は、約100μL刻みで供給される単純な水溶液製剤、例えば、上記の実験で用いられた水溶液製剤を示す。
【0234】
【0235】
表7は、賦形剤、例えば、等張剤、安定化剤、および/または防腐剤もしくは界面活性剤として作用する化合物を含む水溶液100μLに溶解した鼻腔内投与用製剤を示す。EDTAはエデト酸二ナトリウムの略語であり、BZKは塩化ベンザルコニウムの略語である。
【0236】
【0237】
pHが3.5~5.5になるのに十分な量の塩酸をさらに含有する例1A~45Aも提供される。酸は、薬学的に許容される酸、例えば、塩酸でなければならない。
【0238】
実施例6: 鼻腔内ナルトレキソン製剤実験
本明細書において開示される、薬学的に適した鼻腔内製品となるナルトレキソン製剤を突き止めるために一連の実験を行った。製剤は、以下の特性:
有効な量のナルトレキソンを含有する;
投与後にナルトレキソンが素早く吸収され、良好なCmaxと比較的短いTmaxが得られる;
室温で溶液を形成し、低温保管条件で溶液のままであるか、または低温保管から取り出された時に溶液に戻る;
微生物で汚染されていない;
保管安定性がある、望ましくない不純物を形成も獲得しない、および/または時間が経つにつれて変色しない;ならびに
鼻膜組織に対して非刺激性である
の少なくとも一部を、ある特定の態様では全てを有するように設計された。
【0239】
以下の観察を用いて様々な製剤を試験した。50mg/mLナルトレキソンHCl調製物は室温では濁っており、これは溶解が不完全なことを示している。周囲温度で溶解される塩酸ナルトレキソンの溶解限度は約40mg/mLであると確かめられた。その後に、いくつかの調製物を30mg/mLで作製した。さらに、これらの調製物は一定量の(ドデシルマルトシド0.25%)およびNaCl(約0.74%)と、様々な量の防腐剤(塩化ベンザルコニウム、0~0.02%)および安定化剤(EDTA、0~0.3%)をさらに含有した。結晶化挙動と変色を視覚的にモニタリングした。これらの製剤は全て冷蔵条件下で保管された時に結晶を生じた。ナルトレキソン溶液は0~3ヶ月にわたって時間と共に黄色になる傾向がある。0.2%または0.3%EDTAを含有する製剤は黄色溶液を形成しなかったのに対して、0%または0.1%EDTAを含有する製剤は黄変し始めた。0.3%EDTA製剤は最も長い期間にわたって黄変しにくいように見えた。その後に、溶液からの薬物の結晶化を低減する潜在能力があるかどうか様々な共溶媒を評価した。ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、およびベンジルアルコールを試験した。PEG含有製剤は結晶化を阻止しなかった。プロピレングリコール含有製剤は結晶化を阻止したが、高いオスモル濃度をもたらした。高いオスモル濃度は鼻膜組織の刺激症状の原因となると予想された。ベンジルアルコール含有製剤は低濃度では結晶化を阻止した。全固形分が結晶化に関連することが観察され、オスモル濃度を調節するために塩酸ナルトレキソン量を減らして低濃度および少量のNaClを生成することが、冷蔵条件下での保管時に製剤が溶解状態に保つのに役立った。鼻腔内投与に適した4種類のナルトレキソン製剤を以下の実施例7に示した。
【0240】
実施例7: 鼻腔内ナルトレキソンのさらなる製剤
以下は、それぞれがアルコール使用障害を含む障害を処置するための2000液体グラムの与えられた(give)鼻腔内投与用製剤となる、さらなるナルトレキソンバッチ製剤例であり、これらは、例えば、約100μL刻みで供給され得る。
【0241】
以下の例を以下の通りに調製した。風袋をはかったスターラーバー付き4Lバッチ容器に、1800.0グラムの注射用水(WFI)を添加し、混合を開始した。24.0g、32.0g、40.0g、または60.0gの塩酸ナルトレキソン(NH)添加し、5mL WFIで4回リンスしてNH容器をリンスし、目視でNHが溶けるまで混合した。混合しながら5.0g DDMを添加し、目視で溶けるまで混合した。次いで、6.0g EDTAを用いて同じ手順を行った。次に、製剤濃度に応じて初回量が12.6g、11.7g、10.5g、または7.9gのNaClを添加した。NaClを断続的に添加し、目視で溶けるまで添加中に混合した。次に、混合しながら40.0gのBZK 1%原液を添加し、BZK 1%原液容器を10mLのリンス液でリンスし、目視でBZKが溶けるまで混合した。最後に、溶液のpHを較正済みのpHメーターを用いて測定し、5.5以上であれば、10%HClを用いて3.5~5.5になるまで、それに応じて調整した。目標pHは5.0であった。これは、滴下し、滴下中に3~5分間混合することによって行った。次いで、水を約2000.0gまでQ.S.添加し、5分間攪拌した。
【0242】
【0243】
上記の製剤は、上記の例A~Eの手順に従って、および当技術分野において公知の方法に従って試験され得る。これらの製剤のうちいくつかは以下の実施例8において試験されている。これらの製剤の薬物動態学的特性は、オピオイド過剰摂取を処置することを目的とした、ならびにアルコール使用障害によって例示される複数の物質使用障害および他の報酬に基づく障害を処置するために「必要に応じて」使用することを目的とした有効な薬物療法の薬物動態学的特性と一致すると予想される。これらの特性には、これらの製剤を用いて実現できる経口投与と比べて発現が迅速である(Tmaxが短い)、血漿中濃度が高い、半減期が短いことが含まれる。
【0244】
実施例8: 鼻腔内ナルトレキソンの薬物動態学的評価
単一施設、非盲検、無作為化、4シークエンス、4回の治療、4期クロスオーバーパイロット試験を、健常な男性および非妊娠女性対象において完了した。20(20)人の健常対象を登録した。21(20)人の対象が試験を完了し、全試験期間にわたって評価可能なデータを有する。
【0245】
エンドポイント
一次試験エンドポイントは、50mg経口用量の塩酸ナルトレキソン(参照製品、本明細書ではRとも呼ばれる)と比較して、3つの異なる用量(1.2mg、1.6mg、および3mg)の塩酸ナルトレキソン鼻噴霧器(それぞれ、試験製品1、2、および3、本明細書ではT1、T2、およびT3とも呼ばれる)の薬物動態を確かめることと、50mg経口用量に匹敵するナルトレキソン全身曝露を実現することができる試験製品の鼻腔内用量を特定することであった。二次試験エンドポイントは、試験製品の安全性および忍容性、特に、鼻腔刺激症状(例えば、紅斑、浮腫、およびびらん)を評価することであった。
【0246】
組み入れ基準および除外基準
本試験の組み入れ基準は、以下:
書面でのインフォームドコンセント;
同意時に18~55歳(両端の間を含む)の男性または女性対象;
体重≧48kgおよびボディ・マス・インデックス(BMI)18.0~30.0kg/m2(両端の間を含む);
安静時収縮期血圧90~1140mmHg(両端の間を含む)、および拡張期血圧65~90(両端の間を含む);
安静時心拍40~100bpm(両端の間を含む);
安静時呼吸数8~120(両端の間を含む);
十分な静脈アクセスがあること;
理学的検査に臨床的に意義のある異常がないこと;
仰向けになって少なくとも3分後に記録した12誘導ECGに臨床的に意義のある異常がないこと;
血液学、生化学、凝固、および尿検査パラメータに臨床的に意義のある異常がないこと;
抗HIV-1Abおよび抗HIV-2Ab抗体、B型肝炎表面抗原(HBsAg)および抗C型肝炎ウイルス抗体(抗HCVAb)については検査結果が陰性であること;
非喫煙者または元喫煙者(すなわち、前の3ヶ月以内にタバコを含有する製品またはニコチンを含有する製品を絶った人)であること;
(ニコチン嗜癖がなく、対象が試験期間中に禁煙することに同意しているのであれば、タバコを含有する製品またはニコチンを含有する製品をときたま使用することは容認できる);
試験の制約事項(例えば、アルコール消費、メチルキサンチン、食事、運動、避妊、および薬物療法)を受け入れ、それに従おうという意思があること;ならびに
女性であれば、不妊、閉経後であること、または妊娠可能であれば、入院から期間1まで少なくとも4週間にわたって有効な非ホルモン避妊薬もしくはホルモン避妊法を使用することに同意していること、ならびに全試験期間中に安定した血漿中ホルモンレベルを確かなものにするために試験終了まで安定した連続レジメンを継続すること
であった。
【0247】
スクリーニング時の除外基準は、以下:
試験原薬または任意の賦形剤に対する既知の過敏症/アレルギー反応;
他の任意の薬物に対する既知の重度の過敏症反応;
異常な鼻腔解剖学的構造、鼻症状(すなわち、鼻づまり、および/もしくは鼻水、鼻茸など)、鼻炎、ならびに鼻腔吸収に影響を及ぼすことが知られている他の状態を含む任意の鼻状態、または薬物投与前に鼻腔に製品が噴霧されていることがある;
病歴に基づいた以前の、または現在のオピオイド依存、アルコール依存、または他の薬物依存(ニコチンおよびカフェインを除く);
試験という面に関して試験責任者によって臨床的に意義があるとみなされた併発疾患;
試験中に併用処置薬物療法の必要があること;
薬物動態(吸収、分布、代謝、もしくは排出)または対象安全性に影響を及ぼす可能性がある、任意の医学的状態(例えば、消化管潰瘍を含む胃腸潰瘍、腎臓潰瘍、もしくは肝臓潰瘍、炎症性腸疾患、または膵炎)、あるいは外科的状態(例えば、胆嚢切除、胃切除);
現在または最近の(スクリーニング前7日以内の)上気道感染;
QTc間隔が男性の場合は≧450msec、女性の場合は>470msec;
乱用薬物尿検査またはエタノール呼気検査の結果が陽性であること;
前の3ヶ月以内に、(避妊薬を除く)何らかの薬物のデポ注射または移植片が使用されたこと;
前の6ヶ月以内に、平均して、毎週、男性の場合は>14ユニット(12グラム/ユニット)、女性の場合は>7ユニットのアルコールが消費されたこと;
平均して、毎日、>500mgメチルキサンチンに相当するメチルキサンチン含有飲料または食物(例えば、コーヒー、お茶、コーラ、ソーダ、チョコレート)が消費されたこと(100mgのメチルキサンチンは約150mLのコーヒー、300mLのお茶、75mLのホットチョコレート、800mLのコーラ、300mLのエネルギードリンク、または25gチョコレートバーに相当する);
前の2ヶ月以内に何らかの臨床試験に参加したこと、または前の12ヶ月以内に2つを超える臨床試験に参加したこと;
前の2ヶ月以内に、献血もしくは何らかの理由による大量の失血(≧450mL)を受けたか、またはプラスマフェレーシスを受けたこと;
絶食が難しいか、または試験中に出される食事を妨害する可能性がある何らかの食事制限、例えば、ラクトース不耐性、ビーガン、低脂肪、低ナトリウムなどがあること;
どちらの腕でも献血することが難しいこと;
カプセルまたは錠剤の嚥下が難しいこと;
女性であれば、妊娠している女性、授乳中の女性;ならびに
対象が試験に適さないと試験責任者によってみなされた他の任意の状態
であった。
【0248】
入院時の除外基準は、以下:
安静時収縮期血圧90~140mmHg(両端の間を含む)、および拡張期血圧65~90(両端の間を含む);
安静時心拍40~100bpm(両端の間を含む);
安静時呼吸数8~20(両端の間を含む);
QTcF間隔>500msec;
6回以上の拍動の上室性頻拍または3回以上の拍動の心室性頻拍と定義される重大な不整脈;
試験責任者に従って、試験参加により対象を過度のリスクにさらすと思われる、または試験薬物の薬物動態を妨害する可能性がある時間帯で発生した何らかの最近の疾患または状態または処置;
試験責任者の見解で薬物療法が試験薬物の薬物動態を妨害しないか、または対象の安全性を損なわないと思われる場合を除いて、前の14日以内での、ビタミン、栄養補助食品、ハーブサプリメント(セントジョーンズワートを含む)を含む処方または非処方の薬効のある製品の使用(全身吸収がない局所製品または推奨された避妊薬の使用は容認された);
前の72時間以内での、何らかのアルコール製品の消費;
乱用薬物尿検査またはエタノール呼気検査の結果が陽性であること;
妊娠可能な女性であればβ-hCG妊娠尿検査の結果が陽性であること;ならびに
対象が試験期間に適さないと試験責任者によってみなされた他の任意の状態
であった。
【0249】
臨床手順
対象を試験期間中15晩にわたって臨床研究施設に収容した。試験中に各対象は4つの処置期間を経験した。各対象は4つの処置期間それぞれで4種類の処置のうちの1つを受けた。
【0250】
【0251】
無作為化計画に従って、治験製品T1、T2、T3、およびRが様々な順序で投与される、いくつかの処置シークエンスのうちの1つに対象を割り当てた。少なくとも10時間の一晩絶食後に午前中に治験製品を投与した。参照製品を240mLの水と一緒に単一用量として経口投与した(飲み下した)。それぞれの試験製品を2回投与した。対象を直立姿勢にした状態で、1回目の投与を一方の外鼻孔に行い、2時間後に2回目の投与を他方の外鼻孔に行った。予定されていた外鼻孔への鼻噴霧器の投与中は息を止めるように対象に指示した。試験製品は使用前にプライミングされた。プライミング後、投与される用量の重量を求めるために各投与の前後に投薬装置を秤量した。各治験製品の投薬は3日のウォッシュアウト間隔で隔てられた。
【0252】
各試験期間中に、一晩絶食した対象は朝食まで絶食したままであった。朝食は、参照製品投薬の約3時間後と、試験製品投薬の2回目の投与の1時間後に出された。投薬の1時間前から投薬3時間後(試験製品の1回目の投与または参照製品の投与に対して定められる時点)まで液体を飲むことは許されなかった。その他の時間はいつでも水を自由に摂取できた。全ての期間で同一の標準化された食事と軽食が提供された。昼食は朝食の約3時間後に出され、他の全ての食事は臨床施設によって適切な時間で予定された。
【0253】
試料収集および分析
各試験期間中にナルトレキソンと6β-ナルトレキソールの血漿中濃度を求めるために、24の静脈血試料(各4mLの体積)を以下の時点:投薬前ならびに参照製品の投薬および試験製品の1回目の投薬の後、0:02、0:05、0:10、0:15、0:20、0:30、0:45、1:00、2:00、2:05、2:10、2:15、2:20、2:30、2:45、3:00、4:00、5:00、6:00、8:00、12:00、24:00、および48:00時間:分で収集した。
【0254】
ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールの血漿中濃度は、以前に検証された液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)分析法を用いて測定した。
【0255】
Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン8.1(Certara USA Inc, Princeton, NJ)以降を用いて、ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールの薬物動態学的パラメータをノンコンパートメント法とln-線形終末相仮定を用いることで推定した。血液サンプリングの実際の時間を用いて薬物動態学的パラメータを推定した。
【0256】
以下の薬物動態学的パラメータ:
観察された最大血漿中濃度(Cmax);
Cmaxの発生時間(Tmax);
投薬前(時間0)から、数量化できる濃度がある最後のサンプリング時間までの血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC)(AUC0-t);
時間0から無限大までのAUC(AUC0-∞);
見かけの終末排出速度定数(λz);
見かけの終末排出半減期(t1/2;だが、ここでは、それぞれの2用量投与について1つの値が示されていることに留意しなければならない);および
血漿からの薬物の見かけの全クリアランス(CL/F)
を推定した。ナルトレキソンと6β-ナルトレキソールのCmax、Tmax、AUC0-t、およびAUC0-∞は一次エンドポイントであった。
【0257】
混合効果モデルを用いて、ln変換Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞を比較するために分散分析(ANOVA)を行った。シークエンス、期間、および処置をANOVAモデルに独立因子として含めた。Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞について、試験対参照幾何最小二乗平均比(GMR)と、対応する90%信頼区間(CI)を計算した。鼻腔内吸収の相対程度(Frel)(試験対参照)を用量補正AUC0-tから推定した。ノンパラメトリック検定を用いてTmaxを比較した。二次エンドポイントはλz、t1/2、およびCL/Fであった。
【0258】
安全性
安全性は、有害事象、12誘導ECG、バイタルサイン、鼻腔検査、体重測定、嗅覚検査、および臨床検査を評価することによって評価した(フローチャートを参照されたい)。本試験全体を通して有害事象をモニタリングした。
【0259】
結果
結果を以下に、および添付の図に示した。
【0260】
表9は、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の20(20)人の対象のナルトレキソン一次薬物動態学的パラメータの平均と、それぞれの要約統計量を示す。
【0261】
【0262】
表10は、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の20(20)人の対象のナルトレキソン二次薬物動態学的パラメータの平均と、それぞれの要約統計量を示す。
【0263】
【0264】
表11は、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品の1回目の投与後および2回目の投与後の20(20)人の対象の平均ナルトレキソン薬物動態学的パラメータと、それぞれの要約統計量を示す。
【0265】
【0266】
表12は、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の20(20)人の対象の6β-ナルトレキソール一次薬物動態学的パラメータの平均と、それぞれの要約統計量を示す。
【0267】
【0268】
表13は、試験製品1、試験製品2、試験製品3、および参照製品を投与した後の20(20)人の対象の6β-ナルトレキソール二次薬物動態学的パラメータの平均と、それぞれの要約統計量を示す。
【0269】
【0270】
ナルトレキソンのln変換Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞を比較するために、プロトコールに従って混合効果モデルを用いて分散分析(ANOVA)を行った。試験対参照幾何最小二乗平均比(GMR)と、対応する90%信頼区間(CI)を計算した。3つの異なる試験製品(試験製品1、試験製品2、および試験製品3)と参照を比較した結果を表14にまとめた。
【0271】
(表14)ナルトレキソン薬物動態学的パラメータの混合効果ANOVA結果
1LS平均値はC
maxについてはng/mLで示し、AUCについてはng.h/mLで示した。
【0272】
6β-ナルトレキソールのln変換Cmax、AUC0-t、およびAUC0-∞を比較するために、プロトコールに従って混合効果モデルを用いて分散分析(ANOVA)を行った。試験対参照幾何最小二乗平均比(GMR)と、対応する90%信頼区間(CI)を計算した。3つの異なる試験製品(試験製品1、試験製品2、および試験製品3)と参照を比較した結果を表15にまとめた。
【0273】
(表15)ナルトレキソン薬物動態学的パラメータの混合効果ANOVA結果
1LS平均値はCmaxについてはng/mLで示し、AUCについてはng.h/mLで示した。
【0274】
プロトコールに従って、ナルトレキソンの鼻腔内吸収の相対程度(Frel)(試験対参照)を、薬物の用量補正AUC0-t(AUC0-t/D)から推定した。表16は、推定されたパラメータの算術平均および変動係数(CV%)を示す。
【0275】
(表16)ナルトレキソン-鼻腔内吸収の相対程度
n-対象の数
AUC
0-t/D-用量基準化AUC0-t。各試験製品について、Dは、製品の投与された全用量に対応する。
F
rel-鼻腔内吸収の相対程度(試験/参照)
【0276】
プロトコールに従って、各製剤について得られたtmaxを、表17に示したようにノンパラメトリック検定を用いて比較した。
【0277】
(表17)ナルトレキソン: t
maxノンパラメトリック分析
【0278】
他の態様
本明細書において示された詳細な説明は、当業者が本開示を実施するのを助けるために提供される。しかしながら、本明細書において説明および主張された開示は、本明細書において開示される特定の態様によって範囲が限定されてはならない。なぜなら、これらの態様は本開示のいくつかの局面の例示として意図されるからである。あらゆる同等の態様が本開示の範囲内であると意図される。実際に、本明細書において示され、かつ説明されたものに加えて本開示の様々な変更が前述の説明から当業者に明らかになり、これらは本発明の発見の精神または範囲から逸脱しない。このような変更も添付の特許請求の範囲の範囲内であると意図される。
【0279】
本願において引用された米国または外国の参考文献、特許、または出願は全て、その全体が本明細書において書かれているように参照により本明細書に組み入れられる。矛盾が生じた場合は、本明細書において文字どおり開示された資料が優先される。
【0280】
本発明が上記の実施例に関連して説明されたが、本発明の精神および範囲の中に変更および変化が包含されると理解される。従って、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】