(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ガスを放出するためのインジェクション装置、プロセスガスを供給するためのプロセスガスシステム及び材料を熱的又は熱化学的に処理する装置と方法。
(51)【国際特許分類】
F27D 7/02 20060101AFI20220203BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20220203BHJP
F27B 9/30 20060101ALI20220203BHJP
B01J 6/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
F27D7/02 Z
F27B9/04
F27B9/30
B01J6/00 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535616
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085911
(87)【国際公開番号】W WO2020127460
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018133362.5
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520086885
【氏名又は名称】ウォンチュン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】アリアン エスフェハニアン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヒップ
【テーマコード(参考)】
4G068
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
4G068BA05
4G068BB10
4G068BC04
4G068BC11
4G068BD01
4G068BD05
4K050AA02
4K050AA04
4K050BA16
4K050CC07
4K050CC08
4K050CC10
4K050CG29
4K050EA08
4K063AA05
4K063AA06
4K063AA15
4K063BA12
4K063CA03
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA32
4K063DA34
(57)【要約】
ガス(54)、特にプロセスガス(54)を材料(12)、特にか焼すべきバッテリカソード材料(14)へ放出するためのインジェクション装置(56)であって、少なくとも1つの入口(58)を有し、その入口を通してインジェクション装置(56)へガス(54)が供給可能であり、かつ少なくとも1つの出口(60)を有し、その出口を通してガス(54)がインジェクション装置(56)から放出可能であり、その入口と出口がガス(54)のための流路(62)によって互いに接続されている。本発明によれば、流路(62)が、外部から周囲雰囲気が接近できる熱交換器ハウジング(68)を備えた熱交換器(64)を有しており、その熱交換器ハウジング内に通路配置(70)が収容されている。通路配置(70)が第1の流れ通路(72.1)と第2の流れ通路(72.2)を有し、それらの間に方向変換領域(74.1)が次のように、すなわち第1と第2の流れ通路(72.1、72.2)が異なる主な流れ方向を有するガス(54)によって貫流可能であるように、配置されている。本発明はさらに、ガス(54)を供給するためのプロセスガスシステム(52)及び材料を熱処理又は熱化学処理するための装置(10)と方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料(12)上へ、特にか焼すべきバッテリカソード材料(14)上へ、ガス(54)、特にプロセスガスを放出するためのインジェクション装置であって、
a)少なくとも1つの入口(58)を有し、前記入口を通してインジェクション装置(56)へガス(54)が供給可能であり、かつ少なくとも1つの出口(60)を有し、前記出口を通してガス(54)がインジェクション装置(56)から放出可能であり、前記入口と前記出口がガス(54)用の流路(62)によって互いに接続されている、
ものにおいて、
b)流路(62)は、外部から周囲雰囲気(66)が到達できる熱交換器ハウジング(68)を備えた熱交換器(64)を有し、前記熱交換器ハウジング内に通路配置(70)が収容されており、
c)通路配置(70)は第1の流れ通路(72.1)と第2の流れ通路(72.2)を有し、前記第1と第2の流れ通路の間には、異なる主な流れ方向を有するガス(54)が前記第1と第2の流れ通路(72.1、72.2)を貫流できるように、方向変換領域(74.1)が形成されている、
ことを特徴とするインジェクション装置。
【請求項2】
通路配置(70)が第3の流れ通路(72.3)を有し、前記第3の流れ通路と第2の流れ通路(72.3、72.2)の間に、前記第2の流れ流路と第3の流れ通路(72.2、72.3)が異なる主な流れ方向を有するガス(54)が貫流できるように、第2の方向変換領域(74.2)が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクション装置。
【請求項3】
第1、第2及び第3の流れ通路(72.1、72.2、72.3)が、蛇行流れ行程(94)を定める、ことを特徴とする請求項2に記載のインジェクション装置。
【請求項4】
第1と第2の流れ通路(72.1、72.2)、第1の第3の流れ通路(72.1、72.3)あるいは第2と第3の流れ通路(72.2、72.3)が共通の平面(E
S)を定め、かつ第3(72.3)もしくは第2(72.2)あるいは第1(72.1)の流れ通路(72)が前記平面(E
S)に関して変位して、あるいは角度をもって配置されている、ことを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項5】
前記通路配置(70)が、1つ又は複数の他の流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)を有し、それぞれの他の流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)の前にそれぞれ方向変換領域(74;74.1、74.2、74.3)を有し、異なる主な流れ方向を有するガス(54)が、連続する2つの流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)を貫流可能である、ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項6】
1つ又は複数の流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)内にコア構造(98)が形成されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項7】
少なくとも2つの流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)が互いに対して平行に延びている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項8】
熱交換器(64)及び/又は流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)の1つ又は複数が、少なくとも部分的に、円形、楕円形、弓形状、扇形状、多角形、特に三角形、四角形、特に台形、不等辺四辺形又は矩形、5角形、6角形、あるいはそれ以上の多角形の形状の横断面を有している、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項9】
流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)の1つ又は複数が、それぞれの主な流れ方向において、少なくとも部分的に変化する横断面を有している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項10】
熱交換器ハウジング(68)及びその中に形成されている流れ通路(72;72.1、72.2、72.3、72.4)の壁が、1つ又は複数の材料からなり、前記材料がλ≧50Wm
-1K
-1、好ましくはλ≧75Wm
-1K
-1、特に好ましくはλ≧100Wm
-1K
-1の固有の熱伝導率を有している、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項11】
通路配置(70)が、少なくとも部分的に流れ案内構造によって形成されており、前記流れ案内構造が熱交換器ハウジング(68)内へ挿入可能、かつその中に取り外し可能に固定できる、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項12】
熱交換器ハウジング(68)が、少なくとも1つのハウジングキャップ(104)を有し、前記ハウジングキャップが特に通路配置(70)の一部を提供する、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項13】
ハウジングキャップ(104)が、少なくとも1つの入口(58)及び/又は出口(60)を有し、前記入口を通して熱交換器(64)へガス(54)が供給可能であり、前記出口を通してガス(54)が熱交換器(64)から流出可能である、ことを特徴とする請求項12に記載のインジェクション装置。
【請求項14】
インジェクション装置(56)が、1つ又は複数のインジェクションノズル(76a)を備えたノズル配置(76)を有し、前記インジェクションノズルを用いて、処理すべき材料(12)へ向けてガス(54)を放出可能である、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のインジェクション装置。
【請求項15】
ノズル配置(76)が、熱交換器(64)によって包囲されている、ことを特徴とする請求項14に記載のインジェクション装置。
【請求項16】
プロセスガス(54)、特に材料(12)、特にバッテリカソード材料(14)を熱的又は熱化学的に処理する、特にか焼するためのプロセスガス(54)を、プロセス室(20)内へ供給するためのプロセスガスシステムにおいて、
プロセスガスシステム(52)が、請求項1から15のいずれか1項に記載のインジェクション装置(56)を少なくとも1つ有している、ことを特徴とするプロセスガスシステム。
【請求項17】
材料(12)、特にバッテリカソード材料(14)を熱的又は熱化学的に処理するため、特にか焼するための装置であって、
a)ハウジング(16;16a、16b、16c、16d)を有し、
b)ハウジング(16;16a、16b、16c、16d)内にあるプロセス室(20)を有し、
c)移送システム(28)を有し、前記移送システムを用いて材料(12)又は材料(12)を装填した支持構造(40)が移送方向(30)においてプロセス室(20)内へ、あるいはそれを通して、移送可能であり、
d)加熱システム(45)を有し、前記加熱システムを用いて、プロセス室(20)内に行き渡ったプロセス室雰囲気(66)が加熱可能であり、
e)プロセスガスシステム(52)を有し、前記プロセスガスシステムを用いてプロセス室(20)へ、材料(12)の熱処理又は熱化学処理に必要なプロセスガス(54)が供給可能である、
ものにおいて、
f)プロセスガスシステム(52)が、請求項16に記載のプロセスガスシステム(52)であって、プロセスガス(54)がインジェクション装置(56)によって材料(12)へ、あるいは材料(12)を装填した支持構造(40)へ所望に放出可能であり、
g)熱交換器(64)の回りをプロセス室雰囲気(66)が流れることができ、かつ/又は前記熱交換器(64)に熱照射することができ、プロセスガス(54)が受動的に加熱可能であるように、インジェクション装置が配置されている、ことを特徴とする装置。
【請求項18】
材料(12)、特にバッテリカソード材料(14)を熱処理又は熱化学処理するため、特にか焼するための方法であって、それにおいて
a)材料(12)又は材料(12)を装填された支持構造(40)がプロセス室(20)を通して、材料(12)を熱処理する装置(10)へ移送され、
b)プロセス室(20)内に行き渡ったプロセス室雰囲気(66)が加熱され、
c)プロセス室(20)へ、熱処理又は熱化学処理に必要なプロセスガス(54)が供給される、
ものにおいて、
d)プロセスガス(54)がプロセス室(20)内に配置されている熱交換器(64)によって加熱されることを特徴とする方法。
【請求項19】
プロセスガス(54)は、プロセス室雰囲気(66)の温度に実質的に相当する温度にてプロセス室(20)へ供給される、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17に記載の装置(10)が使用される、ことを特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを放出するためのインジェクション装置、プロセスガスを供給するためのプロセスガスシステム及び材料、特にバッテリカソード材料を熱的又は熱化学的に処理する、特に、か焼(kalzinieren)するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置によって、かつこの種の方法によって、たとえば、炉内でリチウム-イオン-バッテリを形成する際に、特殊な雰囲気内で、特に不活性な、あるいは酸素を含む雰囲気内で、粉末状のカソード材料のか焼が行われる。
【0003】
粉末状のカソード材料は、たとえばリチウムを含む遷移金属前駆体であって、それが炉内でリチウム遷移金属酸化物にか焼される。このプロセスにおいて、水酸化リチウム前駆体が使用されるか、炭酸リチウム前駆体が使用されるかによって、リチウムを含む遷移金属前駆体から水(H2O)あるいは二酸化炭素(CO2)が排ガスとして遊離する。
【0004】
酸素を含む雰囲気を維持するために、プロセス室へ新鮮なプロセスガスが供給されて、プロセス室雰囲気を連続的又は間欠的に排気することにより、生じた水(H2O)又は二酸化炭素(CO2)が燃焼室から除去される。排気によって、ガス粒子圧の低い空間が生じ、それによって同様に、新鮮なプロセスガスの連続的な追加供給が必要となる。
【0005】
しかし原則的に、この種の装置と方法は、他の材料の熱処理のためにも使用され、それらの材料は、たとえば、プロセスガスの影響のもとでしかるべく熱的又は熱化学的に処理されなければならない製品である場合もある。
【0006】
この種の炉内の温度は、2000℃まで昇温することがあり得る。以下において、本発明は、上述したカソード材料の熱処理の例を用いて説明される。この種の材料をか焼する際の温度は、本来知られているように、処理すべき材料及び使用される炉の種類に依存する。
【0007】
材料をか焼するための、市場で知られた装置と方法において、プロセス室内へ吹き込まれるプロセスガスは、処理すべき材料に到達する途上で、すでにプロセス室内に存在している雰囲気と混合される。したがって、最終的に材料へ達するこの混合気は、一方で、比較的小さい濃度のプロセスガスを有し、他方では特に、すでにプロセス室雰囲気内に存在する排ガスを有している。したがって処理すべき材料におけるプロセスガスの効果は、満足できるように調節することはできず、材料を包む雰囲気の管理と制御は、限定的にのみ可能である。
【0008】
さらにこの種の処理においては、炉のプロセス室内の熱的水準を一定に維持することが必要である。これを保証するためには、プロセスガスをプロセス室内にゆき渡る温度まで適切に加熱しなければならない。通常、プロセスガスのこの加熱は、積極的に、すなわち熱を発生させるために必要なエネルギを消費しながら加熱ユニットによって行われる。積極的に加熱されたプロセスガスは、その後、たとえば、大部分は炉の外部にあるが、一部は炉壁内でも案内されるガス導管内で送風機から発生されたガス流によって、処理が行われている所へ、及びバッテリカソード材料の回りの近傍領域内へ案内される。熱エネルギの損失を回避するためには、炉の外部で案内されるガス導管を断熱するために、コストのかかる複雑な措置が必要である。
【0009】
しかし、供給されるプロセスガスの温度は、通常、プロセス室雰囲気の温度よりもずっと低い。供給されるプロセスガスは、処理すべき材料へ達する前に充分に加熱されていないことが多く、もしくはそこへ達するまでに熱エネルギを失うので、不完全な反応がもたらされる場合がある。さらに、より冷たいプロセスガスが、材料担体から、あるいは移送システムの他のコンポーネントから熱を吸収する場合があり、それによって熱応力がもたらされることがあり、それがより高い摩耗及び場合によっては炉の構成物質及び構成部品の早期の不具合をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、上述した従来技術の欠点を克服し、かつプロセス室内に存在する熱を最適にスムーズかつエネルギ効率よくガス/プロセスガスへ伝達する、ガスを供給するためのインジェクション装置、プロセスガスを供給するためのプロセスガスシステム及び熱的又は熱化学的に処理するための装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、ガス、特にプロセスガスを材料、特にか焼すべきバッテリカソード材料へ放出するためのインジェクション装置によって解決され、本発明のインジェクション装置は、
a)インジェクション装置へガスを供給できる少なくとも1つの入口と、インジェクション装置からガスを放出できる少なくとも1つの出口を備え、入口と出口はガス用の流路によって互いに接続されており、
b)流路(Stroemunngseg)は、外部から周囲雰囲気が到達できる熱交換器ハウジングを備えた熱交換器を有し、熱交換器ハウジング内に通路配置が収容されており、
c)通路配置は第1の流れ通路(Stroemungskanaelen)
と第2の流れ通路を有し、第1と第2の流れ通路の間には、異なる主な流れ方向を有するガスが第1と第2の流れ通路を貫流できるように、方向変換領域が形成されている。
【0012】
この種のインジェクション装置を用いてすでにプロセス室内にあるプロセス室雰囲気の熱をプロセスガスの加熱に有効に利用することができ、それが全体としてトータルの効率の改良をもたらす。そのために、存在するプロセス室雰囲気が熱交換器ハウジングの周囲を流れるように、或いは、熱交換器ハウジングが少なくとも存在するプロセス室雰囲気によって包囲さており、それによって熱伝達が可能になるように、インジェクション装置は炉等の中に配置されている。炉雰囲気から、もしくは炉内部空間からインジェクション装置への熱伝達は、流れだけでなく、場合によっては放射によって支配的に行われる。炉内に流れが生じない場合でも、熱が伝達される。
【0013】
したがって熱交換器ハウジングは、ほぼ流れのない、あるいは特に静的なプロセス室雰囲気内に、配置することができる。以下においては、例として、熱交換器ハウジングの回りを、移動するプロセス室雰囲気が流れることを前提としている。
【0014】
それぞれ適用領域に応じて、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口が、対称軸に関して互いに対して実質的に鏡対称に、あるいは非対称に配置されていると、好ましい場合がある。
【0015】
さらに、通路配置が第1と第2の流れ通路に加えて、第3の流れ通路を有する場合も、効果的であって、その場合には、第3の流れ通路と第2の流れ通路の間に、第2と第3の流れ通路が異なる主な流れ方向を有するガスが貫流できるように、第2の方向変換領域が形成されている。好ましくは流れ通路は、通路配置の内部で蛇行流れ行程を定める。
【0016】
蛇行流れ行程は、2次元のS字流れ行程で存在することができ、あるいはまた、たとえば巻かれた流れ行程を定める、3次元の通路配置としても存在することができ、それにおいて流れは少なくとも2回方向変換され、かつ方向変換は、互いに対して角度を有する、特に、互いに対して垂直の2つの平面内で行われる。
【0017】
この目的のために、好ましくは、第1と第2、第1と第3あるは第2と第3の流れ通路が共通の平面を定め、第3の、もしくは第2の、あるいは第1の流れ通路がこの平面に関して変位して、あるいは角度をもって配置されている。流れ通路をこのように配置する場合に、流れ通路を通って流れるガスは、1回は定められた平面の内部で、そして一回は定められた平面から他の平面へ、したがってたとえば左/右又は上/下へ向かって、方向変換される。その場合に、それぞれの流れ通路内の主な流れ方向に対して20°から180°の角度の方向変換が、好ましい。たとえば180°の方向変換は、以前の流れ通路の主な流れ方向に対して逆方向へ、主な流れ方向の変化をもたらす。
【0018】
通路配置が、3つの流れ通路に加えて1つ又は複数の他の流れ通路及びそれぞれの他の流れ通路の前に、それぞれ方向変換領域を有しており、異なる主な流れ方向を有するガスが、2つの連続する流れ通路を貫流可能であると、効果的である。
【0019】
このようにして、たとえばハウジング内で、提供される組み込み空間を効率的に利用することができる。特にその他においてハウジングが変化しない場合に、流れ横断面の必要な低減は、一方でガス用の接触面の増大をもたらし、他方ではガスの流れ速度の上昇をもたらし、それが全体として、移動する区間あたりガス流へ伝達される熱エネルギを増大させる。
【0020】
熱交換器を貫流するガスへの熱交換器からの熱伝達の効率をさらに高めるために、1つ又は複数の流れ通路内にコア構造が形成されていると、効果的である。これらのコア構造を用いて、流れ通路を貫流するガスが熱的に相互作用する温度伝達領域が、コア構造をもたない流れ通路の流れ伝達領域に比べて増大される。その場合にコア構造は、流れ案内部材に、あるいは熱交換器ハウジングの内側面に、配置することができる。しかしそれらは、流れ通路内にガス用の環状空間を形成するように、配置することもできる。このような配置においては、コア構造は、好ましくは、終端側において熱交換器ハウジングの内側面に結合することができる。
【0021】
コア構造が中実のコアボディであると、効果的であり得る。しかしまた、コア構造が貫流開口部を有し、流れ通路を貫流するガスが同様に貫流開口部も貫流し、これによってコアボディの外側面以外でも熱エネルギを吸収することができると、効果的であり得る。
【0022】
コアボディに関しては、さらに、コアボディが少なくとも部分的に流れ方向において、円形、楕円形、弓形状、扇形状、多角形状、特に三角形状、四角形状、特に台形状、不等辺四辺形状あるいは矩形、五角形、六角形又はそれ以上の多角形状の横断面を有していると、効果的である。コアボディは、流れ通路の容積がそのほかにおいては実質的に変化しない場合に、温度伝達に関与する温度伝達領域をさらに増大させるために、折り込み及び/又は折り返しを有することができる。その場合にこれらの折り込み及び/又は折り返しは、コアボディに規則的又は不規則に設けることができる。
【0023】
好ましい形態において、少なくとも2つの流れ通路が互いに対して平行に延びている。さらに熱交換器及び/又は流れ通路の1つ又は複数が、少なくとも部分的に、円形、楕円形、弓形状、扇形状、多角形状、特に三角形状、四角形状、特に台形状、不等辺四辺形状あるいは矩形、五角形、六角形又はそれ以上の多角形状の横断面を有することができる。
【0024】
その場合に1つ又は複数の流れ通路は、それぞれの主な流れ方向において少なくとも部分的に、断面の形状及び/又は断面の大きさにおいて変化する横断面を有することができる。
【0025】
熱交換器によって吸収された熱エネルギのできるだけ多くを、加熱すべきガスへ伝達することができるようにするために、熱交換器ハウジングとその中に形成されている流れ通路の壁とが、1つ又は複数の、特に熱伝導性の材料で構成すると、効果的である。好ましくは1つ又は複数の材料は、λ≧50Wm-1K-1の固有の熱伝導率を有し、好ましくはλ≧75Wm-1K-1及び特に好ましくはλ≧100Wm-1K-1の熱伝導率を有している。
【0026】
そのために特に適した材料は、たとえば金属成分を有する材料、たとえば元素金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物あるいは金属炭化物である。金属成分は、好ましくは、銅(Cu)、錫(Sb)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、カリウム(Ka)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)及びタンタル(Ta)を有することができる。特に炭化ケイ素(SiC)と銅合金を有する熱交換器が、熱伝導率が高いために、本発明に係るインジェクション装置に適している。特に温度が400℃を越える場合には、熱交換器は主として金属セラミック材料を有する。各場合において、支配的な温度において、か焼すべき材料を汚染することがあり得る金属又は金属化合物の遊離をもたらさない材料が使用される。
【0027】
そのほかにおいて、さらに、通路配置が少なくとも部分的に、熱交換器ハウジング内へ挿入可能かつその中に取り外し可能に固定できる、流れ案内構造によって形成可能であると、好ましい場合がある。流れ案内構造は、たとえば流れ案内部材を結合することによって形成することができる。この構造的形態の利点は、熱交換器ハウジングを、たとえば中空体として提供することができ、かつ、インジェクション装置の組み立て前に、通路配置を形成するための流れ案内構造を熱交換器ハウジング内へ挿入できることである。流れ案内構造の取り外し可能な固定が、ユーザーに、熱交換器の内部でガスが移動すべき区間をそれぞれの製造ステップの必要条件に適合させることを、可能にする。
【0028】
熱交換器ハウジングがハウジングキャップを有し、そのハウジングキャップが特に通路配置の一部を備えると、効果的である。この場合において、熱交換器と通路配置の一部は一体的に、たとえば押出プロフィール又は圧延プロフィールとして形成することができる。その場合、ハウジングキャップによって、熱交換器が完全なものとなる。代替的に、ハウジングキャップを取り外して、別体の流れ案内構造を熱交換器ハウジング内へ挿入することもでき、その後ハウジングキャップが取り付けられる。
【0029】
その場合に、ハウジングキャップが方向変換領域を定めると、効果的である。
【0030】
特に好ましい形態において、インジェクション装置が、1つ又は複数のインジェクションノズルを備えたノズル配置を有しており、そのインジェクションノズルを用いてガスが、処理すべき材料へ向けて放出可能である。
【0031】
その場合にノズル配置は、熱交換器から独立した構成部分とすることができるが、熱交換器に含まれることも可能である。
【0032】
プロセスガス、特に材料、特にバッテリカソード材料を熱処理又は熱化学処理、特にか焼するためのプロセスガスをプロセス室内へ供給するための、本発明に係るプロセスガスシステムにおいて、上述した課題は、プロセスガスシステムが、インジェクション装置について上述した特徴の少なくともいくつかを有する、本発明に係るインジェクション装置を少なくとも1つ使用することによって、解決される。
【0033】
材料、特にバッテリカソード材料を熱処理又は熱化学処理、特にか焼するための装置であって、
a)ハウジングを有し、
b)ハウジング内に設けられたプロセス室を有し、
c)移送システムを有し、その移送システムを用いて材料又は材料を装填された支持構造が移送方向においてプロセス室内へ、あるいはプロセス室を通って移送可能であり、
d)加熱システムを有し、その加熱システムによってプロセス室内に行き渡ったプロセス室雰囲気が加熱可能であり、かつ
e)プロセスガスシステムを有し、それを用いてプロセス室へ、材料を熱処理又は熱化学処理するために必要なプロセスガスが供給可能である、
ものにおいて、上述した課題は、
f)プロセスガスシステムが、このようなプロセスガスシステムであって、プロセスガスがインジェクション装置によって材料又は材料を装填した支持構造へ所望に放出可能であり、
g)熱交換器の回りをプロセス室雰囲気が流れることができ、かつ/又は熱交換器に熱照射可能であって、それによってプロセスガスが受動的に加熱可能であるように、インジェクション装置が配置されている、
ことによって解決される。
【0034】
材料、特にバッテリカソード材料を熱処理又は熱化学処理、特にか焼するための方法であって、
a)材料又は材料を装填した支持構造が、材料を熱処理するための装置のプロセス室を通して移送され、
b)プロセス室内に行き渡ったプロセス室雰囲気が加熱され、かつ
c)プロセス室へ、熱処理又は熱化学処理に必要なプロセスガスが供給される
ものにおいて、上述した課題は、
d)プロセスガスが、プロセス室内に配置されている熱交換器によって加熱されることによって解決される。
【0035】
好ましくは、プロセスガスは、プロセス室雰囲気の温度に実質的に相当する温度にてプロセス室へ供給することができる。
【0036】
さらに、この方法において、材料を熱処理又は熱化学処理するための上述した装置を使用すると、効果的である。
【0037】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、プロセスガスシステムによって材料を熱的又は熱化学的に処理するための装置を示す縦断面図であって、そのプロセスガスシステムを用いてプロセスガスがインジェクション装置によってプロセスシステム内へ案内される。
【
図2a】
図2aは、
図1に示す装置の横断面を示しており、熱交換器がプロセス室内に配置されているインジェクション装置の実施例を有する。
【
図2b】
図2bは、
図1に示す装置の横断面を示しており、熱交換器がプロセス室内に配置されているインジェクション装置の実施例を有する。
【
図2c】
図2cは、
図1に示す装置の横断面を示しており、熱交換器がプロセス室内に配置されているインジェクション装置の実施例を有する。
【
図3a】
図3aは、熱交換器の部分断面を有する、
図2aのインジェクション装置を示している。
【
図3b】
図3bは、熱交換器の部分断面を有する、
図2bのインジェクション装置を示している。
【
図4a】
図4aは、本発明に係る熱交換器の第1の実施例を示す斜視図である。
【
図4b】
図4bは、本発明に係る熱交換器の第1の実施例を示す斜視図である。
【
図5a】
図5aは、本発明に係る熱交換器の第2の実施例を示す斜視図である。
【
図5b】
図5bは、本発明に係る熱交換器の第2の実施例を示す斜視図である。
【
図6a】
図6aは、熱交換器の第3の実施例を示す斜視図である。
【
図6b】
図6bは、熱交換器の第3の実施例を示す斜視図である。
【
図7a】
図7aは、熱交換器の第4の実施例を示す斜視図である。
【
図7b】
図7bは、熱交換器の第4の実施例を示す斜視図である。
【
図8a】
図8aは、熱交換器の他の実施例を示す横断面図である。
【
図8b】
図8bは、熱交換器の他の実施例を示す横断面図である。
【
図8c】
図8cは、熱交換器の他の実施例を示す横断面図である。
【
図9a】
図9aは、熱交換器の第8の実施例を示す斜視図である。
【
図9b】
図9bは、熱交換器の第8の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
まず、
図1から
図2cを参照する。これらにおいて、符号10は、材料12を熱的又は熱化学的に処理するための装置を示している。以下において、この装置10は、簡単にするために炉10と称する。
図2aから
図2cにおいては、見やすくする理由から、
図1において符号が付された構成部分及び構成部品の全部が、あらためて参照符号はつけられているわけではない。
【0040】
材料12は、たとえば冒頭で説明したバッテリカソード材料14とすることができ、それは、バッテリを形成する際に炉10内で熱処理することによりか焼されなければならない。
【0041】
炉10は、底16a、天井16b及び2つの垂直の側壁16cと16dを備えたハウジング16を有しており、そのハウジングが内部空間18を画成し、その中にプロセス室20がある。したがってハウジング16は、プロセス室20のハウジングを形成している。場合によっては、炉10の内部空間18は、ハウジング16を包囲する別体のハウジングによって定めることができる。
図1から認識できるように、プロセス室20は、ハウジング16の入口22と出口24の間に延びており、その入口と出口はそれぞれゲート26によって閉鎖可能である。別の方法として、開放した入口22と開放した出口24、あるいは、その一方で、それぞれ気密の二重ゲートロックを設けることができ、それを用いて炉内の雰囲気を周囲雰囲気から分離することが保証される。
【0042】
材料12は、移送システム28を用いて移送方向30にプロセス室20を通って移送される;移送方向30は、
図1のみに矢印で示されている。この実施例において、炉10は連続炉として、具体的にはプッシャータイプの炉として構成されており、炉10を通して移送システム28が材料12を移送する。そのために移送システム28は移送軌道32を有しており、それに沿って、例えば、公知のように、複数の載置床34、いわゆるトレイが滑り移動される。
図1において、1つの載置床のみに参照符号が設けられている。
【0043】
移送システム28は、駆動される送りパンチ38を備えた送り装置36を有しており、その送りパンチが載置床34を外側から入口22を通してプロセス室20内へ送り込む。その場合にこの載置床34は、すでにプロセス室20内にある、移送方向30において第1の載置床34に対して当接し、それによってプロセス室20内にあるすべての載置床34が1つずつ場所をずらし、移送方向30において最後の載置床34が出口24を通ってプロセス室20から送り出される。
【0044】
特に示されていない変形例において、連続炉に関して例えば公知の他の設計も可能である。ここで単に例として挙げると、ローラ炉、コンベアベルト炉、チェーン移送炉、連続移動炉などがある。代替的に炉10は、バッチ炉として形成することもでき、それは1つの出入口のみを有しており、それを通して材料12がプロセス室20内へ移送され、かつ再びその出入口から出るように移送される。この場合においてプロセス室20内への材料12の個々のチャージは、この出入口を通して移送方向30に移送され、熱処理され、その後再び移送方向30とは逆の方向において出入口を通してプロセス室20から取り出されて、このようにして全体としてプロセス室20を通して移送される。
【0045】
材料12は、その性質に従って、移送システム28等を用いて移送することができ、その場合にたとえば載置床34上に直接載置することができる。これはたとえば、材料12が構造的な半製品である場合に、可能である。
【0046】
この実施例において、材料12を装填された支持構造40が設けられており、その支持構造は、バッテリカソード材料14の場合には燃焼シェル42として形成されており、その燃焼シェルは、英語の専門用語では、いわゆるSaggarと称される。これらの支持構造40は、例えば公知のように、複数の平面を有する棚状の移送フレーム44になるように互いに重ねることができ、その場合にこの実施例において、バッテリカソード材料14を装填した3つの支持構造40が移送フレーム44を形成し、かつそれぞれ1つの載置床34がこの種の移送フレーム44を支持する。1つの移送フレーム44につき、2又は3より多い、たとえば4、5、6又はそれより多い平面も考えられる;可能な平面の数は、大体においてプロセス室20と支持構造40の高さに依存する。変形例においては、移送フレーム44は、たとえば金属又はセラミックからなる、別々の構成部分であって、それが複数の平面内に支持構造40を収容する。
【0047】
炉10は、市場から知られ、かつ図式的にのみ、
図1だけに示唆される加熱システム45を有しており、その加熱システムによって炉内20に行き渡った雰囲気が加熱可能である。この雰囲気は、既知のように、対流、電磁熱放射あるいは熱拡散によって加熱することができる。その場合に、例としての加熱システムは、ヒートラジエータ部材、ファンヒーティング部材などを有することができ、それらは炉底16a、炉の天井16b及び/又は垂直の側壁16c、16dのいずれかに、あるいはその中に、かつ/又はプロセス室20内に、分配して配置することができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、循環空気加熱システムが考えられ、それを用いて炉雰囲気がプロセス室20から吸い出され、加熱ユニットによって加熱されて、再びプロセス室20内へ吹き込まれる。
【0048】
材料12を熱処理する場合に、排ガス46が生じることがあり、その排ガスはプロセス室20から引き出されなければならない。この種の排ガス46が、
図2aから
図2cに破線で示唆されており、かつ参照符号を有している。バッテリカソード材料14をか焼する場合に、排ガス46として、たとえば水(H
2O)又は二酸化炭素(CO
2)が生じる。さらにリチウム(Li)を含む相が遊離されることがある。
【0049】
排ガス46をプロセス室20から除去することができるようにするために、
図2a、2b及び2cにおいて認識される吸い出しシステム48が設けられており、その吸い出しシステムはハウジング16の底16a内に吸い出し開口部50を有しており、それを介して排ガス46をプロセス室20から吸い出すことができる。そのためにさらに必要であって、例えば公知の、送風機、導管、フィルタなどの構成部品は、見やすくするために、特には示されていない。
【0050】
炉10内で材料12を熱処理することができ、その材料を熱処理する際にプロセスガスが必要である。言及されるバッテリカソード材料14においては、効果的にか焼するために、たとえば酸素(O2)が必要であって、その酸素は調整された空気の形式でプロセス室20内へ吹き込まれる。したがってこの場合において、空気は、この種のプロセスガスを形成する。その中に含まれる酸素(O2)は、金属酸化物を形成する際に分解されて、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)が生じる。他のプロセスにおいては、他のプロセスガスが必要になることがあり得る。多くのプロセスにおいて、酸素で富化された空気又は純粋な酸素が必要となり、この種のプロセスガスの酸素割合は、21%から100%となることがある。摩擦のない熱的又は熱化学的な処理のために発用とされるプロセスガスとして、不活性ガス、たとえば希ガスも考えられる。
【0051】
したがって炉10は、プロセスガスシステム52を有しており、それを用いてプロセス室20へ、熱処理のために必要な、プロセスガス54を供給することができる。
【0052】
プロセスガスシステム52自体は、少なくとも1つのインジェクション装置56を有しており、それが
図3aと3bに図式的に示されており、かつそれを用いてガス、ここではプロセスガス54を材料12上へ放出することができる。
図1は、複数のインジェクション装置56を示しており、その場合にいくつかだけが参照符号を有している。インジェクション装置56は、
図3aと3bにのみ示された入口58を有しており、それを通してインジェクション装置にプロセスガス54を供給することができ、かつ少なくとも1つの出口60を有し、それを通してプロセスガス54をインジェクション装置56から放出することができる。入口58と1つ又は複数の出口60は、プロセスガス54が貫流することができる流路62によって流体的に互いに接続されている。
【0053】
流路62は、周囲雰囲気、ここではプロセス室20内に行き渡ったプロセス室雰囲気66へ外部から到達できる熱交換器ハウジング68を備えた、熱交換器64を有しており、その熱交換器ハウジングは、以下においてはWTハウジング68と称される。WTハウジング68内に通路配置70が収容されており、その通路配置が少なくとも2つの流れ通路72を有している。
【0054】
プロセス室雰囲気66の熱が利用され、かつプロセスガス54へ伝達されることによって、熱交換器64を通して、プロセスガス54が出口60への流路62上で加熱される。
【0055】
図3aは、2つの流れ通路72、すなわち第1の流れ通路72.1と第2の流れ通路72.2を有する通路配置70を示している;
図2aも、このように形成されたインジェクション装置56を示している。
図3bは、3つの流れ通路72を有する通路配置70を示しており、それにおいて第3の流れ通路72.3が形成されている;この種のインジェクション装置56は、
図2bと2cも示しており、それについては下で再度詳しく説明する。見やすくするために、同じ構成部分とコンポーネントは、以下においては必ずしも再度参照符号を有するわけではない。
【0056】
プロセスガス54は流れ通路72を貫流可能であって、図示されない変形例においては、WTハウジング68内で別個に案内されるパイプ部材として形成することもできる。通路配置70において、異なる主な流れ方向を有するプロセスガス54が2つの連続する流れ通路72を貫流するように、流れ方向に連続する2つの流れ通路72の間に、方向変換領域74が形成されている。具体的には、第1の流れ通路72.1と第2の流れ通路72.2の間に方向変換領域74.1が形成されており、かつ
図3bに示す変形例においては、さらに第2の流れ通路72.2と第3の流れ通路72.3の間に第2の方向変換領域74.2が形成されている。
【0057】
方向変換領域74は、プロセスガス54の主な流れ方向が変更される領域である。主な流れ方向という概念は、流れ通路72を通るプロセスガス54の流れ方向を考える場合に、流れ通路72内に発生し得る乱流又は渦流が考慮されないことを表すものである。方向変換は、特に方向変換領域74によって通路行程が急激に変化することにより、たとえば方向変換領域74内のU字状の通路行程によって、もたらすことができる。方向変換領域74の前の主な流れ方向が方向変換領域74の後ろの主な流れ方向とは異なる限りにおいて、通路行程の湾曲状の変化も、方向変換領域内に形成することができる。
【0058】
プロセスガス54を材料12上へ放出することができるようにするために、インジェクション装置56はさらにノズル配置76を有しており、ノズル配置76は複数のインジェクションノズル76aを有し、それらを用いてプロセスガス54を処理すべき材料12へ向けて放出することができる。ノズル配置76は、
図3aに示されるように、WTハウジング68内に組み入れることができる。ノズル配置76は、
図3bに示すように、別体のユニットとすることもできる。
【0059】
個々のインジェクションノズル76aは、単純な流出開口部として形成することができ、それらはたとえば円形開口部、長円形開口部又はスリットとして形成することができる。インジェクションノズル76aは、移動可能にすることができるので、放出される局所的なプロセスガス54の流出方向は、各インジェクションノズル76aについて個別に調節することができる。図においてこれは、特に示されていない。さらにインジェクションノズル76aは、底16a及び/又は移送方向30に関して角度をつけてノズル配置76に配置することができ、それによってプロセスガス54が燃焼シェル42及び/又は材料12へ向けて放出される。その場合のノズル配置76に配置されているすべてのインジェクションノズル76aは、プロセスガス54を様々な角度で、あるいは同一の角度で放出することができる。
【0060】
インジェクション装置56のノズル配置76によって、プロセス室20内のすべての燃焼シェル42と材料12にほぼ均質にプロセスガス54が当接し、かつ供給されるので、すべての燃焼シェル42内の材料12の熱処理が均一な程度において再現可能かつ統一的に遂行される。
【0061】
一方で、このようにしてプロセスガス54がプロセス場所の材料12へ達し、他方では、生じる排ガス46、したがってここでは水(H2O)と二酸化炭素(CO2)がプロセスガス54によって押しのけられ、それによって排ガス46は効果的に吸い出しシステム48によってプロセス室20から吸い出すことができる。
【0062】
プロセスガス54の方向付けされた放出によって、材料12の直接近傍のガス粒子圧が変化し、それがさらにプロセスパラメータへ影響を及ぼし、それによって、生じる生成物の化学的及び物理的な特性に影響をもたらす。さらに得られる生成物の品質を高め、かつそのようにして製造欠陥品を減少させることができる。さらにプロセスガス54を節約することができる。
【0063】
インジェクションノズル76aから方向付けして放出されるプロセスガス54を用いて、さらに、処理すべき材料12の周囲の温度を調節することが可能である;材料12の周囲の温度を均質化することも、かつ、たとえば、プロセスガス54をプロセス室雰囲気66の温度に加熱するために、熱交換器64を通して案内する区間が意図的に充分でない場合に、材料12における所望の均質な温度プロフィールをもたらすこともできる。これらの作用は、プロセスガスシステム52によってプロセスガス54の状態を前もって適切に調整することによっても、インジェクション装置56によってプロセスガス54の放出を適切に調整することによっても、もたらすことができる。
【0064】
インジェクション装置56によるプロセスガス54の放出は、連続的又は脈動的に行うことができる;これは、プロセスガスシステム52の適切な制御と適切な制御手段によって調節される。
【0065】
図2a、2b及び2cは、異なるように構成され、もしくは配置された熱交換器64を有するインジェクション装置56を示しており、それらにおいてノズル配置76のインジェクションノズル76aは、
図1にも示されるように、それぞれ移送軌道32に隣接して垂直線に沿って配置されている。しかし、天井16b及び/又は垂直の側壁16c、16dと、90°ではない角度を形成するインジェクションノズル76aの配置も、本発明に含まれる。
【0066】
図2aには、上述したように、
図3aのインジェクション装置56を有する変形例が示されている。
図2bに示す実施例において、熱交換器64は炉10の天井16bの近傍において移送方向30に対して横方向に延びており、できる限り大きい熱を有するプロセス室雰囲気66の領域をプロセスガス54の加熱に利用することができる。そこでノズル配置76は、炉10の天井16bに沿って案内される熱交換器64から垂直下方へ張り出している。
図2cは、垂直の側壁16cに、移送方向30に対して平行に熱交換器64を配置する、代替的な変形例を示している。
【0067】
図4a、4bは、インジェクション装置56の熱交換器64の第1の実施例を、そして
図5aと5bは第2の実施例を示しており、それらにおいてそれぞれ2つの流れ通路72.1と72.2が設けられており、それらは方向変換領域72.1によって接続されている。WTハウジング68内の2つの流れ通路72.1と72.2及び方向変換領域74.1は流れ案内部材78によって形成されており、その流れ案内部材はある種の分離隔壁80として作用するので、WTハウジング68のハウジング外壁82と流れ案内部材78とによって、第1の流れ通路72.1、方向変換領域74.1及び第2の流れ通路72.2を有する通路配置70が形成されている。
【0068】
このようにして、インジェクション装置56の熱交換器64の内部でプロセスガス54が移動する区間が、出口60への直接的な流路に比較して延長される。好ましくは
図3aから
図10bに示すように、インジェクション装置56の熱交換器64内で移動する区間が、1つ又は複数の方向変換領域74又は1つ又は複数の案内隔壁80のない熱交換器64と比較して、少なくとも2倍長くなる。これは、出口60へ達するまでに吸収すべき熱エネルギの取り入れを最大とするために、プロセスガス54が熱交換器64の内部でできるだけ長い距離移動することを保証する。特に示されていない変形例において、複数の分離隔壁80は長手方向に対して横方向に、たとえばジグザグ配置で、あるいは熱交換器64のハウジング外壁82の対向する長手側に、互いに交互に配置することができる。しかし、プロセスガス54が熱交換器64の内部で移動する区間が、1つ又は複数の案内隔壁80がない場合の少なくとも2倍の長さにはならないような熱交換器64も、本発明に含まれる。
【0069】
図示されない他の実施形態において、複数の案内隔壁80が、プロセスガス流の多数の主な渦流から構成される、熱交換器64を通る乱流が生じるように、配置されている。
【0070】
図4aから
図5bに示す実施例において、熱交換器64の入口84と出口86は、熱交換器64の共通の接続端部88に配置されている。
図4a、4bに示す実施例において、熱交換器64内へのプロセスガス54の流入方向は、熱交換器64からのその流出方向に対して平行であるが、逆向きである。
【0071】
図5aと5bに示す実施例において、熱交換器64の出口86は、プロセスガス54が流入方向に対して垂直に熱交換器64から流出するように、接続端部に形成されている。
図6aと6bに示す、3つの流れ通路72.1、72.2及び72.3と2つの方向変換領域74.1と74.2を有する熱交換器64の実施例において、WTハウジング68は、たとえば正三角形の横断面を有する細長い三角柱として形成されている。
【0072】
3つの流れ通路72.1、72.2、72.3及び2つの方向変換領域74.1、74.2は、長く延びる3つの分離隔壁80.1、80.2及び80.3によって形成されており、それらが横断面において、互いに対して120°の角度で共通の接触ラインをもって星形に配置されている。このようにして分離隔壁の2つ、すなわち分離隔壁80.1、80.2、分離隔壁80.2、80.3及び分離隔壁80.3、80.1並びにWTハウジング68のそれぞれハウジング外壁82が、流れ通路72.1、72.2もしくは72.3を形成する。
【0073】
この変形例において、各流れ通路72.1、72.2、72.3は、それぞれ2つの他の通路72.2と72.3、72.1と72.3もしくは72.1と72.2によって定められる参照平面E
Sに対して変位した平面内に位置している。これについては後に、
図8a、8b及び8cに関連してさらに説明する。
【0074】
これら3つの流れ通路72の場合において、熱交換器64の入口84と出口86は、WTハウジング68の対向する端部に配置されているので、そこにそれぞれ熱交換器64の入口端部90と出口端部92が形成されている。
【0075】
図7aと7bに示す熱交換器64の実施例において、4つの分離隔壁80.1、80.2、80.3及び80.4によって4つの流れ通路72.1、72.2、72.3及び72.4と3つの方向変換領域74が形成されており、第2と第3の方向変換領域74.2と74.3のみが見られる。第3の方向変換領域74.3において、WTハウジングが透過して示されている。WTハウジング68は、たとえば、円形の横断面を有する細長いパイプとして形成されている。
【0076】
4つの流れ通路72のこの構造において、熱交換器64の入口84と出口86は、共通の接続端部88に配置されている。
【0077】
特に図示されない変形例において、1つ又は複数の他の流れ通路72及び各流れ通路72の前のそれぞれ1つの方向変換領域74は、プロセスガス64が異なる主な流れ方向で2つの互いに連続する流れ通路72を貫流するように、通路配置70に設けられている。
【0078】
少なくとも3つの流れ通路72を有する熱交換器64のすべての実施例に共通に、少なくとも3つの流れ通路72が蛇行流れ行程94を定める。この蛇行流れ行程94は、1つ又は複数の互いに平行な平面にわたって延びることができる。
【0079】
図8aから
図8cには、熱交換器64の変形例が示されており、それにおいてWTハウジングは
図7に示す実施例におけるように、円形の断面を有する細長いパイプとして形成されているが、
図6に示す実施例の場合のように、ここでもそれぞれ3つの流れ通路72.1、72.2及び72.3が互いに対して変位して配置されている。
【0080】
上ですでに言及された平面E
Sの1つは、
図8aに示されるように、流れ通路72.1と72.2の横断面の2つの幾何学的重心96.1と96.2の間に定められており、その場合に平面E
Sは、そこでは用紙平面に対して垂直である。第3の流れ通路72.3の第3の幾何学的重心96.3は、上で説明したように、この平面E
Sに対して変位して配置されている。
【0081】
図8aに示す、流れ通路72.1、72.2、72.3の横断面は、この実施例において平坦な分離隔壁80.1、80.2とWTハウジング68のハウジング外壁82とによって定められる扇形状を有している。その場合に横断面において扇形状のこれらの流れ通路72.1、72.2及び72.3は、流れ通路72.1から始まって、それぞれWTハウジング68の円形の横断面の中心点Mを中心に120°の等しい角度だけ回動して配置されている。
【0082】
共通の軸線に沿って配置された3つの分離隔壁80.1、80.2、80.3は互いに等しい、あるいは異なる傾斜角度α、β、γを形成し、その場合に、傾斜角度が異なる場合には、これらは好ましくはα=100°、β=120°及びγ=140°である。
【0083】
図8bには、熱交換器64の異なる実施形態が横断面で示されている。ここでは流れ通路72.1、72.2、72.3の横断面は、面取りした角部97と異なる横断面積とを有している。
【0084】
図8cは、流れ通路72.1、72.2、72.3内に形成されたコア構造98を示しており、それらのコア構造はこの実施例においてコアボディ100によって提供されている。これらのコア構造98によって、熱交換器64の、温度伝達に関与する面積(貫流可能なプロセスガス54が熱交換器64を貫流する間に、この面積と熱的に相互作用する)は、コア構造98を持たない熱交換器64に関して増大されている。さらに、プロセスガス54が貫流可能な流れ通路横断面は、それに比較して減少されており、それによってプロセスガス54は、より高い流れ速度で熱交換器64を貫流することができ、かつプロセスガス54の、温度伝達領域と直接接触する体積割合は増大されている。さらに、より高い流れ速度が、温度伝達の効率を向上させる。
【0085】
図9aと
図9bは、ノズル配置76が熱交換器64に含まれている実施例を示している。そのために、ノズル配置76のインジェクションノズル76aは、WTハウジング68のハウジング外壁82内に統合されている。図示されるように、ここに設けられている第3の流れ通路72.3が分配通路102内へ連通しており、それを介してプロセスガスがインジェクションノズル76へ達する。インジェクションノズル76は、この簡単な形態において、WTハウジング68内の透孔とすることができる。分配通路102は、熱交換器64の一部として作用することもでき、この場合においては、分配通路としてのその機能の他に、熱交換器64の第4の流れ通路72.4も定めており、プロセスガス54が、上流に設けられている第3の方向変換領域74.4を介して、その第4の流れ通路へ流れる。
【0086】
熱交換器64の製造を簡単にするために、
図10aと
図10bに示す実施例において、WTハウジング68は、その対向する端面に取り付け可能なハウジングキャップ104を有している。これらは、通路配置70とWTハウジング68の一部を提供することができる。ハウジングキャップ104は、ここでは方向変換領域74を提供し、さらに1つ又は複数の入口58及び/又は1つ又は複数の出口60を有することができる。したがって熱交換器64は、個別部品として形成し、組み立てる際にハウジングキャップ104を取り付けることによってのみ、完成させることができる。
【0087】
特に図示はされていない、他の変形例において、別体の流れ案内構造がWTハウジング68内へ挿入されて、そこに固定されることによって、通路配置70がWTハウジング68内に形成される。その場合に、流れ案内構造は取り外し可能に固定できるので、必要に応じて、たとえば使用されている流れ案内構造によって形成される通路配置が、プロセスガス54をプロセス室雰囲気66の温度に加熱するのに充分でないことが明らかにされた場合に、他の流れ案内構造に交換できる。
【0088】
ハウジングキャップ104又は挿入可能かつ任意選択的に交換可能な流れ構造を有する上述した技術的思想は、上述したすべての実施例において具現化することができる。
【0089】
本発明によれば、熱交換器ハウジング68、分離隔壁80.1、82.2、82.3、コア構造98及び/又はハウジングキャップ104は、λ≧50Wm-1K-1、λ≧75Wm-1K-1あるいはλ≧100Wm-1K-1の固有の熱伝導率を有する、1つ又は複数の材料からなる。そのために金属成分を有する特別な材料、たとえば元素金属、金属合金、金属酸化物、金属窒化物あるいは金属炭化物を使用することができる。例としての金属として、銅(Cu)、錫(Sb)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、カリウム(Ka)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)及びタンタル(Ta)が挙げられる。
【国際調査報告】