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特表2022-514376噴霧可能なシリコーンポリマー分散体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】噴霧可能なシリコーンポリマー分散体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20220203BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220203BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220203BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220203BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220203BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20220203BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220203BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L83/04
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/20
C08K7/22
C08K3/00
B05D7/24 301E
B05D1/02 Z
B05D1/28
B05D1/36 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535647
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2019060824
(87)【国際公開番号】W WO2020128773
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/781,640
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ベツィグ, ディクラン
(72)【発明者】
【氏名】コルカン, アダム ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AC92
4D075AE03
4D075BB04X
4D075BB60Z
4D075BB65X
4D075CA03
4D075CA18
4D075CA33
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DC15
4D075DC16
4D075EA10
4D075EA23
4D075EA25
4D075EB24
4D075EB43
4D075EB51
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC22
4D075EC24
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC37
4D075EC51
4J002CP031
4J002CP032
4J002DA117
4J002DH007
4J002DJ007
4J002DL006
4J002FA096
4J002FD206
4J002FD207
4J002GH01
4J038DL031
4J038HA196
4J038HA446
4J038JA32
4J038KA06
4J038KA14
4J038KA21
4J038MA07
4J038NA13
4J038PB04
4J038PB06
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
噴霧可能なポリマー分散体は、(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマーと、(b)ポリシロキサンと、(c)断熱剤と、(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体とを含む。基材上に耐食性コーティングを生成する方法であって、基材の少なくとも一部分上にポリマー分散体を噴霧することと、構成成分(a)および(b)の各々を湿気硬化させて、基材上にモノリシックコーティングを形成することとを含む方法、ならびに噴霧可能なポリマー分散体で少なくとも部分的にコーティングされた基材も、本発明に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧可能なポリマー分散体であって、
(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマーと、
(b)ポリシロキサンと、
(c)断熱剤と、
(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体と、を含む、分散体。
【請求項2】
前記有機担体(d)が、溶媒のブレンドを含み、前記溶媒が、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、キシレン、トルエン、ミネラルスピリット、酢酸メチル、シクロヘキサン、炭酸ジメチル、および/またはパラクロロベンゾトリフルオリドである、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記断熱剤が、ミクロスフェアを含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
前記ミクロスフェアが、不動態化剤を含む、請求項3に記載の分散体。
【請求項5】
構成成分(a)~(d)に加えて、以下から選択される不動態化剤:酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、金属修飾リン酸亜鉛、金属修飾ホスホシリケート、および/または金属修飾ボロシリケートをさらに含み、前記金属が、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、モリブデン、マグネシウム、および/またはアルミニウムを含む、請求項1に記載の分散体。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、フェニル基を実質的に含まない、請求項1に記載の分散体。
【請求項7】
前記ポリシロキサンが、フェニル基を全く含まない、請求項1に記載の分散体。
【請求項8】
基材上にコーティングを生成する方法であって、請求項1に記載の分散体を基材の少なくとも一部分上に噴霧することと、各構成成分(a)および(b)を硬化させて、前記基材上にモノリシックコーティングを形成することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記モノリシックコーティングが、少なくとも100mil厚であるコーティングを生成するために、前記分散体を前記基材を覆って1パスで噴霧することによって生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノリシックコーティングが、少なくとも500mil厚であるコーティングを生成するために、前記分散体を前記基材を覆って1パスで噴霧することによって生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記分散体が、前記基材と前記分散体との間にコーティングまたは処理層がない状態で、前記基材上に直接噴霧される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記RTVポリマーが、単一構成成分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記RTVポリマーが、結合剤構成成分と架橋構成成分とを含む2部反応混合物から生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載のポリマー分散体から形成されたコーティング。
【請求項15】
前記コーティングが、少なくとも部分的に硬化される、請求項14に記載のコーティング。
【請求項16】
請求項1に記載の分散体、またはそれから形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材。
【請求項17】
前記分散体が、モノリシックコーティングとして湿気硬化される、請求項16に記載の基材。
【請求項18】
前記基材が、金属である、請求項16に記載の基材。
【請求項19】
請求項16に記載の基材を含む、工業用加工部品。
【請求項20】
前記部品が、反応器、排気筒、改質装置、蒸留塔、配管、バルブ、熱交換器、ボイラー、または貯蔵タンクを含む、請求項19に記載の工業用加工部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧可能なポリマー分散体、それから形成されたコーティング、およびそのようなコーティングの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属パイプなどの部品を断熱するために使用される噴霧可能なコーティングは、典型的には、噴霧可能な水性アクリルエマルジョンまたはエポキシ結合剤を使用する。これらのほとんどは、所望のフィルム厚を達成するために複数のコートで塗布されなければならず、腐食制御のためのプライマー、ならびに透湿性および紫外線防止のためのシーラーコートが必要である。熱負荷下では、これらの系は、300°F(150℃)を超える温度に曝露されると、5~7年後に劣化する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマーと、(b)アルコキシポリシロキサンと、(c)断熱剤と、(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体とを含む、噴霧可能なポリマー分散体を含む。基材上にコーティングを生成する方法であって、基材の少なくとも一部分上にポリマー分散体を噴霧することと、構成成分(a)および(b)の各々を硬化させて、基材上にモノリシックコーティングを形成することとを含む方法、ならびに噴霧可能なポリマー分散体で少なくとも部分的にコーティングされた基材も、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明が、明示的に反対の定めがある場合を除き、様々な代替の変形およびステップの順序をとり得ることが理解されるべきである。さらに、任意の実施例以外で、または別段の指示がない限り、例えば、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表すすべての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ均等物の原則の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数を考慮して、かつ通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0005】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は本質的に、それぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含む。
【0006】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間(およびそれらを含む)、すなわち、1に等しいまたは1を超えるの最小値および10に等しいまたは10未満の最大値を有する、すべての部分範囲を含むことが意図される。
【0007】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、本出願では、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つの」を意味する。例えば、「1つの」ポリマー、「1つの」架橋剤などは、これらの項目のうちのいずれかのうちの1つまたは1つより多くを指す。
【0008】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という移行句(および他の同等の用語、例えば、「含有する(containing)」および「含む(including)」)は、「非限定的」であり、不特定の事柄を包含するように限定されていない。「含む」という観点から記載されているが、「から本質的になる」および「からなる」という用語もまた、本発明の範囲内である。
【0009】
本発明の噴霧可能なポリマー分散体は、(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマーと、(b)アルコキシポリシロキサンと、(c)断熱剤と、(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体とを含む。本発明の噴霧可能分散体は、追加のコーティングを必要とすることなく、十分な腐食防止および断熱を提供する単一コートにおいて、好適なフィルム厚(例えば、100milまたは500mil)で、基材に塗布され得る。「噴霧可能な」とは、組成物が、コーティング組成物のための従来の噴霧装置を使用して基材に塗布され得ることを意味する。
【0010】
RTVシリコーンポリマー
RTVシリコーンポリマーとは、室温(例えば、20~25℃)で硬化可能であり、水分および/または触媒の存在下で硬化され得る、硬化性ポリシロキサンを意味する。好適なポリシロキサンは、式(I)を有し、
【化1】
式中、各Rは独立して、アセトキシ、アルコキシ、オキシム、またはアミン基であり、nは、ポリシロキサンの分子量(Mw)が10,000~100,000であるように選択され(本明細書に開示されるすべてのMwは、較正のためにポリスチレン標準を使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されている)、例えば、ELASTOSIL E951およびELASTOSIL M4444(Wacker Chemical Corporation,Adrian,MI)などが市販されている。他の好適なRTVシリコーンポリマーは、当該技術分野で周知であるような分岐状または網状構造を有し、ヒドロキシル基または加水分解基などの反応基を含み得る。湿気硬化性(moisture curable)または湿気硬化(moisture curing)とは、ポリシロキサンが、典型的には、周囲雰囲気中で利用可能であり(すなわち、水分として)、ならびに硬化性コーティング組成物中に存在する水を使用して、さらに重合および/または架橋されることを意味する。アルコキシ基などの加水分解基を有するRTVシリコーンポリマーについては、水がポリシロキサン上の基を加水分解し、遊離ヒドロキシル基をもたらす。水は、ポリシロキサン上のアルコキシ基を加水分解し、遊離ヒドロキシル基をもたらす。遊離ヒドロキシル基間の後続の縮合反応において、ポリシロキサンは、硬化されるとみなされる。この反応機構は、加水分解-縮合機構として説明され得、反応は典型的には、チタン酸アルキル(加水分解反応)および強塩基(縮合反応)で触媒される。
【0011】
RTVシリコーンポリマーは、単一構成成分、または2つもしくは2つより多くの構成成分の組み合わせを含むことができる。例えば、RTVシリコーンポリマーは、例えば、ビニル基を有するポリシロキサンを含む結合剤部分と、例えば、水素化物基を有するポリシロキサンを含む架橋部分とを含む、2部ポリマー系から生成されてもよい。触媒(例えば、2つの部分のうちの1つと共に提供され得る白金触媒)の存在下で2つの部を混合すると、結合剤部分および架橋部分は、ビニル基で重合する。
【0012】
ポリシロキサン
RTVシリコーンポリマー(a)とは異なる、または本明細書で使用される「シリコーン中間体」と、本明細書で称されることがある、ポリシロキサン(b)には、一般式(II)を有するポリシロキサンを含み、
【化2】
式中、各R基は、最大6個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく、式中、mは、アルコキシポリシロキサンのMwが最大8,000であるように選択される。各R基は、最大2個の炭素原子を有するアルコキシ、ウレタン、アシレート、またはエポキシド基であり得る。ポリシロキサン(b)は、フェニル基などのアリール基を実質的に含まなくてもよく、または全く(1つも)含まなくてもよい。アリール基は、硬化中にコーティング組成物を通る水分の移動を遮断し、それによって湿気硬化性ポリシロキサンの湿気硬化プロセスを妨害すると考えられる。アリール基を実質的に含まないとは、存在する任意のそのような基が、コーティング組成物の硬化中に透湿性に影響を与えないことを意味する。好適なアルコキシポリシロキサンは、DOWSIL 2405(Dow Chemical Company,Midland,MI)など、市販されている。
【0013】
断熱剤
本発明の分散体は、断熱剤を含む。断熱剤とは、基材に塗布される得られるコーティングの断熱特性を増強する構成成分を意味する。例えば、流体が高温で流れる金属パイプなどの加熱された金属基材に塗布されると、そうでなければ素手で接触することが不快または危険になるであろう、本発明に従って生成されるコーティングは、加熱された金属基材からの断熱を提供する。好適な断熱剤としては、ガラス、ボロシリケート、またはケイ酸アルミニウムから生成される中空ミクロスフェアなどのミクロスフェアが挙げられる。中空ミクロスフェアは、典型的には、空気またはガスが充填されたその内部によって、さらなる断熱性を提供する。ある特定の断熱剤(例えば、ミクロスフェア)はまた、分散体中の不動態化剤としても機能し得る。不動態化も提供する好適な断熱剤としては、ケイ酸ナトリウムが挙げられる。不動態化とは、構成成分が、例えば、非反応性部分または不動態部分を下層の基材の上に形成することによって、それに耐食性を提供することを意味する。不動態化剤として機能しない断熱剤が使用される場合、酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、金属修飾リン酸亜鉛、金属修飾ホスホシリケート、および/または金属修飾ボロシリケートなどの不動態化助剤が分散体中に含まれ得、金属は、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、モリブデン、マグネシウム、および/またはアルミニウムを含む。
【0014】
有機担体
本発明の分散体は、RTVシリコーンポリマー(a)またはアルコキシポリシロキサン(b)を最適に溶解しないが、代わりに分散体の形態でその懸濁を可能にする、有機担体を含む。本明細書で使用される場合、「分散体」という用語は、1つの分散相(ポリマー(a)および(b))が第2の連続相(有機担体)中に分散される、2相系を指す。好適な有機担体としては、ケトン、脂肪族および芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素などの溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、これらの溶媒は、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、キシレン、トルエン、ミネラルスピリット、酢酸メチル、シクロヘキサン、炭酸ジメチル、パラクロロベンゾトリフルオリド、およびこれらの組み合わせから選択され得る。有機担体は、例えば、上に列挙したものから選択される、単一の溶媒または溶媒のブレンドを含んでもよい。2つの溶媒を組み合わせて使用する場合、溶媒の比は、1:1から10:1まで変動し得る。特定の溶媒および/またはこれらの比は、その中のRTVシリコーンポリマー(a)およびアルコキシポリシロキサン(b)の懸濁を達成するように選択され得る。
【0015】
本発明の分散体は、RTVシリコーンポリマー(a)、ポリシロキサン(b)を断熱剤(c)と合わせることによって、担体(d)中に、必要に応じて不動態化助剤および/または以下に記載されるものなどの任意の他の必要に応じた構成成分を含有する分散体を形成することによって生成され得る。水分および触媒の存在下で基材上に分散体を噴霧すると、RTVシリコーンポリマー(a)およびアルコキシポリシロキサンポリマー(b)は、湿気硬化などによって硬化し、さらに一緒に反応し、および/または得られるそれぞれのポリマー鎖を互いに貫通させ合うことができる。本発明の分散体中のポリマーの湿気硬化に好適な触媒としては、必要に応じて、チタン酸アルキル(チタン酸テトラ-n-ブチルなど)および有機スズ化合物(ジブチルスズジラウレートなど)が挙げられる。
【0016】
本発明の分散体は、周囲条件、例えば、室温(20~25℃)または5~38℃の範囲で硬化可能である。常温硬化性コーティング組成物は、(a)RTVシリコーンポリマー、(b)ポリシロキサン、および(c)断熱剤、ならびに有機担体(d)を含み得る。RTVシロキサンポリマー(a)は、分散体の総重量に基づいて、6重量(wt.)%もしくは6重量%を超える、例えば、8重量%もしくは8重量%を超える、または10重量%もしくは10重量%を超える量で本発明の分散体中に存在し得、および/または29重量%もしくは29重量%を下回って、または25重量%もしくは25重量%を下回って、または21重量%もしくは21重量%を下回ってで、本発明の分散体中に存在し得る。RTVシリコーンポリマーは、分散体の総重量に基づいた重量%で、6~29、例えば、8~25もしくは10~21の重量%の範囲、またはこれらの終点を使用して組み合わせた別の範囲で、分散体中に存在し得る。ポリシロキサン(b)は、分散体の総重量に基づいて、1重量%もしくは1重量%を超える、例えば、2重量%もしくは2重量%を超える、または3重量%もしくは2重量%を超える量で本発明の分散体中に存在し得、および/または10重量%もしくは10重量%を下回って、または8重量%もしくは8重量%を下回って、または6重量%もしくは6重量%を下回ってで、存在し得る。ポリシロキサンは、分散体の総重量に基づいた重量%で、10~1、例えば、8~2もしくは6~3の重量%の範囲、またはこれらの終点を使用して組み合わせた別の範囲で、分散体中に存在し得る。断熱剤(c)は、分散体の総重量に基づいて、15重量%もしくは15重量%を超える、例えば、19重量%もしくは19重量%を超える、または23重量%もしくは23重量%を超える量で本発明の分散体中に存在し得、および/または40重量%もしくは40重量%を下回って、または35重量%もしくは35重量%を下回って、または31重量%もしくは31重量%を下回ってで、存在し得る。断熱剤は、分散体の総重量に基づいた重量%で、15~40、例えば、19~35もしくは23~31の重量%の範囲、またはこれらの終点を使用して組み合わせた別の範囲で、本発明の分散体中に存在し得る。有機担体(d)は、分散体の総重量に基づいて、32重量%もしくは32重量%を超える、例えば、37重量%、または42重量%もしくは42重量%を超える量で本発明の分散体中に存在し得、および/または57重量%もしくは57重量%を下回って、または52重量%または52重量%を下回って、または47重量%もしくは47重量%を下回っての量で本発明の分散体中に存在し得る。有機担体は、分散体の総重量に基づいた重量%で、32~57、例えば、37~52もしくは42~47の重量%の範囲、またはこれらの終点を使用して組み合わせた別の範囲で、分散体中に存在し得る。本発明の分散体中に含まれ得る他の構成成分としては、分散体の総重量に基づいた重量%での、金属触媒(少なくとも0.1重量%もしくは最大でも0.5重量%、または0.1~0.5重量%の量で存在する)、レオロジー改質剤(少なくとも1重量%もしくは最大でも5重量%の量、または1~5重量%の範囲で存在する)、および/あるいは不動態化助剤(少なくとも1重量%もしくは最大でも10重量%の量、または1~10重量%の範囲で存在する)が挙げられる。
【0017】
本発明に取り組む当業者は、(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマー、(b)アルコキシポリシロキサン、(c)断熱剤、ならびに(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体の各々についての特定の化合物の選択が、コーティング組成物の特定の用途によって決まることを認識するであろう。例えば、コーティング組成物が金属基材上で使用されることを目的とする場合、当業者は、金属パイプなどの最終用途の環境に応じて、(a)、(b)、および(c)の特定の構成成分を選択して、所望の断熱効果、コーティングビルドの厚さ、基材への接着性、および/または耐熱性を達成し得る。
【0018】
本発明の分散体は、水分捕捉剤(最大5重量%)、顔料、凝集体、レオロジー改質剤、可塑剤、消泡剤、接着促進剤、懸濁剤、チキソトロープ剤、充填材(例えば、ミネラルウール、ウォラストナイト、ストーンウール断熱材、例えば、ROCKWOOL(Rockwool International of Milton,ON)、グラファイト、アルミナ、チタン酸カリウム)、触媒キレート剤(1:10の金属触媒に対する重量比の)、顔料湿潤剤、瀝青およびアスファルト増量剤、沈降防止剤、希釈剤、UV光安定剤、空気放出剤、分散助剤、界面活性剤、またはこれらのいずれかの混合物が挙げられるが、これらに限定されない、1つまたは1つより多くの他の構成成分を含んでもよい。コーティング組成物分野の当業者は、他の一般的な構成成分が分散体に組み込まれ得ることを理解するであろう。分散体は、分散体の総重量に基づいて、最大10重量%のそのような構成成分を含み得る。
【0019】
本発明の分散体は、基材または任意の介在するプライマー層の前処理なしで、金属基材などの基材に直接噴霧塗布され得る(すなわち、「金属に直接(direct to metal)」またはDTM)。単一の噴霧プロセスでは、少なくとも100mil、または少なくとも500mil、または少なくとも1000mil厚のコーティングが、単一のモノリシックコーティングとして基材上に形成され得る。「モノリシックコーティング」とは、コーティング厚を構築するために必要な分散体のその後の塗布なしに、硬化して基材上にコーティングを形成する分散体の単一層が塗布されることを意味する。少なくとも100mil/最大1000mil、例えば、最大500milのコーティング厚を構築するために追加の塗布は必要ない。対照的に、従来のコーティング系は、典型的には、基材の断熱および腐食防止に有効である所望のレベルまでのコーティング厚を構築するために、塗布される各層の硬化を可能にするために、離れた時間間隔でコーティング組成物の層の再塗布を必要とする。基材の腐食防止は、有機担体中に懸濁したときに金属基材に直接塗布され、それによってハイブリッドシリコーン層を形成することができる、RTVシリコーンポリマー(大型のエラストマーポリマー)およびアルコキシポリシロキサンを含む本発明の分散体から調製されたコーティング層を介して達成され得ると考えられる。
【0020】
本発明のコーティング組成物がその上に塗布され得る基材は、任意の好適な材料、特に、ある特定の環境において、ブリスター、亀裂、接着不良、および/または腐食などの劣化を受ける可能性がある材料(金属など)から作製され得る。本発明との使用に好適な金属基材は、スズ、アルミニウム、鋼、例えば、ステンレス鋼、スズめっき鋼、クロム不動態化鋼、亜鉛めっき鋼、もしくはコイル鋼、または他のコイル金属、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、銅、マグネシウムおよびこれらの合金、銀および金などの鉄および非鉄材料、ならびにこれらの任意の金属合金を含み得る。そのような基材は、工業装置、化学装置、および/またはプロセス装置の部品の少なくとも一部分であり得る。これらの非限定的な例としては、反応器、排気筒、改質装置、蒸留塔、配管、バルブ、熱交換器、ボイラー、ならびに/または槽(工業用液体、炭化水素燃料、および液体天然ガスなどの材料のための貯蔵タンクを含む)が挙げられる。そのような装置は、食品加工、紙パルプ生産、ならびに農業関連発電などの様々な工業で利用され得る。
【0021】
本明細書に提供される組成物に好適な他の表面は、大きく異なる任意の所望の実質的に固体の材料を含み得る。例えば、本開示の組成物で処理され得る表面の種類には、ガラス;ガラス繊維;炭素繊維複合体;玄武岩繊維複合体;シロキサンおよびセラミック繊維;セラミック、例えば、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニアなど;プラスチック、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ABSポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン;多孔質無機材料、例えば、コンクリート、粘土れんが、大理石、玄武岩、アスファルト、ローム、テラコッタ;有機材料、例えば、木材、皮革、羊皮紙、紙、および布;ならびにコーティングされた表面、例えば、プラスチックエマルジョンペイント、アクリルコーティング、エポキシコーティング、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアルキド樹脂コーティングが含まれる。本明細書で企図される表面または基材はまた、材料の少なくとも2つの層を含み得る。材料の1つの層は、例えば、金属、ガラス、セラミック、プラスチック、木材、または複合材料を含み得る。表面または基材を含む材料の他の層は、ポリマー、モノマー、有機化合物、無機化合物、有機金属化合物、連続層、多孔質およびナノ多孔質層の層を含み得る。
【0022】
本発明はまた、以下の項も対象にするが、これらに限定されない。
【0023】
第1の項は、(a)室温加硫(RTV)シリコーンポリマーと、(b)アルコキシポリシロキサンであり得るポリシロキサンと、(c)断熱剤と、(d)構成成分(a)、(b)、および(c)が懸濁している有機担体とを含む、噴霧可能なポリマー分散体を対象とする。第2の項は、有機担体(c)が、溶媒のブレンドを含み、溶媒が、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、キシレン、トルエン、ミネラルスピリット、酢酸メチル、シクロヘキサン、炭酸ジメチル、および/またはパラクロロベンゾトリフルオリドである、項1に記載の分散体を対象とする。第3の項は、断熱剤がミクロスフェアを含む、項1または2に記載の分散体を対象とする。第4の項は、ミクロスフェアが不動態化剤を含む、項1~3のいずれかに記載の分散体を対象とする。第5の項は、構成成分(a)~(d)に加えて、以下から選択される不動態化剤:酸化マグネシウム、リン酸亜鉛、金属修飾リン酸亜鉛、金属修飾ホスホシリケート、および/または金属修飾ボロシリケートをさらに含み、金属が、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、モリブデン、マグネシウム、および/またはアルミニウムをさらに含む、項1~4のいずれかに記載の分散体を対象とする。第6の項は、ポリシロキサンが、フェニル基を実質的に含まない、項1~5のいずれかに記載の分散体を対象とする。第7の項は、アルコキシポリシロキサンが、フェニル基を全く含まない、項1~6のいずれかに記載の分散体を対象とする。第8の項は、基材上にコーティングを生成する方法を対象とし、方法は、項1~7のいずれかに記載の分散体を基材の少なくとも一部分上に噴霧することと、各構成成分(a)および(b)を硬化させて、基材上にモノリシックコーティングを形成することとを含む。第9の項は、モノリシックコーティングが、少なくとも100mil厚であるコーティングを生成するために、分散体を基材を覆って1パスで噴霧することによって生成される、項8に記載の方法を対象とする。第10の項は、モノリシックコーティングが、少なくとも500mil厚であるコーティングを生成するために、分散体を基材を覆って1パスで噴霧することによって生成される、項8~10に記載の方法を対象とする。第11の項は、分散体が、基材と分散体との間にコーティングまたは処理層がない状態で、基材上に直接噴霧される、項9に記載の方法を対象とする。第12の項は、RTVポリマーが単一構成成分を含む、項8~11のいずれかに記載の方法を対象とする。第13の項は、RTVポリマーが、結合剤構成成分と架橋構成成分とを含む2部反応混合物から生成される、項8~12のいずれかに記載の方法を対象とする。第14の項は、項1~7のいずれかに記載のポリマー分散体から形成されたコーティングを対象とする。第15の項は、コーティングが少なくとも部分的に硬化される、項14に記載のコーティングを対象とする。第16の項は、項1~7のいずれかに記載の分散体で少なくとも部分的にコーティングされた基材を対象とする。第17の項は、分散体が、モノリシックコーティングとして湿気硬化される、項16に記載の基材を対象とする。第18の項は、基材が金属である、項16または17に記載の基材を対象とする。第19の項は、項16~18のいずれかに記載の基材を含む工業用加工部品を対象とする。第20の項は、部品が、反応器、排気筒、改質装置、蒸留塔、配管、バルブ、熱交換器、ボイラー、または貯蔵タンクを含む、項19に記載の工業用加工部品を対象とする。
【0024】
本発明の特定の実施形態が、例示の目的で上に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に多数の変更が行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【0025】
以下の実施例は、本発明の一般原理を実証するために提示される。本発明は、提示される特定の実施例に限定されるものとみなされるべきではない。実施例におけるすべての部および百分率は、別段の指示がない限り、重量によるものである。
【実施例
【0026】
表1~10の構成成分を使用して、Cowlesブレードを使用した中速混合下で、清潔な乾燥容器に列挙される構成成分を順次に添加することによって、噴霧可能な分散体を調製した。すべての項目を容器に添加した時点で、それらを30~60分間、または完全に均質化するまで混合した。実施例4では、Cowlesブレードを使用した中速混合下で、清潔な乾燥容器に構成成分を順次に添加した。すべての項目を容器に添加した時点で、それらを30~60分間、または完全に均質化するまで混合した。項目10を別に保持し、中速混合で塗布前に添加した。
【0027】
比較例1
表1の構成成分を使用して、比較分散体を調製した。
【表1】
【0028】
比較例2
表2の構成成分を使用して、比較分散体を調製した。
【表2】
比較例3
【0029】
表3の構成成分を使用して、RTVポリマーおよび断熱剤を有する分散体を調製した。
【表3】
【0030】
実施例4
表4の構成成分を使用して、2K RTVポリマーおよびアルコキシポリシロキサンを断熱剤と共に有する分散体を調製した。
【表4】
【0031】
実施例5
表5の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表5】
【0032】
実施例6
表6の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表6】
【0033】
実施例7
表7の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表7】
【0034】
実施例8
表8の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表8】
【0035】
実施例9
表9の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表9】
【0036】
実施例10
表10の構成成分を使用して、分散体を調製した。
【表10】
【0037】
試験方法
高フィルムビルド決定
【0038】
試料を、ドローダウンを介して、2.5mm(100mil)の乾燥フィルム厚で、3.175mm厚の鋼パネル(ブラスト加工、1~2milのプロファイル、脱脂)に塗布した。24時間乾燥させた後、フィルムを、表11に報告されるように、亀裂の任意の兆候またはコーティング劣化の他の目に見える兆候について評価した。コーティング後、ホットプレートを使用して、パネルを260℃に曝露した。パネルを室温のホットプレート上に置き、次いで、30分間にわたって温度を上げた。目標温度になると、パネルを100時間連続的に曝露し、その後、パネルを周囲温度まで自然に冷却させ、亀裂およびブリスターについて確認した。
【0039】
腐食試験
試料を、ドローダウンを介して、2.5mmの乾燥フィルム厚(DFT)で、100mm×150mm×3.175mm厚の鋼パネル(ブラスト加工、1~2milのプロファイル、脱脂)に塗布した。配合物(比較例2、実施例5、および実施例6)が、2.5mmのDFTの単一コートを可能にしなかった場合、連続するコートの間で16~24時間置いて、目標DFTに到達するために複数のコートを塗布した。1組のパネルを周囲条件下で7日間乾燥させ、その後、それらをホットプレート上で260℃の温度に100時間曝露した。加熱時の亀裂、層間剥離、またはブリスターの観察を行った。別の組のパネルを、試験まで少なくとも2週間、周囲条件下で乾燥させた。
【0040】
コーティングを、10mmの長さのスクライブで下層の基材に人工的に損傷を与え、その後、ASTM B117に従って1500時間腐食環境に曝露した。曝露期間の完了時に、パネルを周囲条件下で24時間乾燥させ、次いで、ASTM D4541に従って接着強度について試験した。この後、パネルをコーティングから剥離し、表12に報告されるように、ASTM D1654に従ってスクライブでの腐食を測定した。
【表11】
【表12】
【0041】
実施例4~10の分散体について、許容可能な特性(フィルムビルドおよび耐食性)の組み合わせが見られたことを理解されたい。比較例1および2は断熱剤がなく、不十分な耐食性を示した。比較例3(ポリシロキサンなし)は、熱安定性試験で不合格であった。実施例8は、腐食抑制剤がないことに起因する可能性が高い、(実施例4~7、9、および10と比較して)やや低い耐食性を示した。
【0042】
本発明の分散体は、表13に要約されるように、他の耐食性コーティングと比較して、500mil厚の単一コーティングにおいて改善された断熱特性を示した。
【表13】
【国際調査報告】