(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理を実行するためのプラズマ源のための電極構成
(51)【国際特許分類】
C23C 14/32 20060101AFI20220203BHJP
H05H 1/48 20060101ALI20220203BHJP
H01J 37/32 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C23C14/32 A
H05H1/48
H01J37/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535676
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2019083897
(87)【国際公開番号】W WO2020126530
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517251823
【氏名又は名称】エリコン サーフェス ソリューションズ エージー、プフェッフィコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェッター、イェルク
【テーマコード(参考)】
2G084
4K029
5C101
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084BB05
2G084BB06
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5C101AA31
5C101AA36
5C101DD03
5C101DD17
5C101DD25
5C101DD30
(57)【要約】
基板のエッチ深さ及び/又はエッチ同質性を改善するために、本発明による1つ又は複数の蒸発器と2つ又はそれ以上の電極とをもつプラズマ源が提案される。2つ以上の電極の使用は、電極における異なる電流の使用と、電流の時間選択性印加とを可能にし、したがってプラズマ生成の改善された制御が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ壁によって囲まれたプラズマ処理エリアとプラズマ源とを備える、プラズマ処理を実行するための真空チャンバであって、前記プラズマ源が、
前記チャンバに接続されたアーク・アノードを用いたカソード真空アーク蒸発のためのカソード(110、210、220、310、320、330)であって、前記チャンバ中の前記チャンバ壁上に構成された、カソード(110、210、220、310、320、330)と、
前記カソードから放出された粒子と金属イオンとを遮蔽するためのシールド(115、230、332、333、334)であって、前記シールド(115、230、332、333、334)が、前記カソード(110、210、220、310、320、330)の前に構成され得るような形で前記真空チャンバ中に設けられた、シールド(115、230、332、333、334)と、
前記チャンバ中に構成され、前記カソード(110、210、220、310、320、330)から離間した電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)と
を備え、
前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)が、前記カソード(110、210、220、310、320、330)から放出された電子を収集するための2次元表面を備えることと、前記2次元表面が表面法線に対する第1の直交延長部と第2の直交延長部とを有し、前記第1の直交延長部が前記第2の直交延長部に直角であり、前記第2の直交延長部に対する前記第1の直交延長部の長さ比が0.1と1との間であることとを特徴とする、真空チャンバ。
【請求項2】
前記第2の直交延長部に対する前記第1の直交延長部の前記長さ比が0.2と1との間、特に0.4と1との間、特に1であり、及び/又は前記2次元表面面積が5~2000cm
2との間、特に25~320cm
2の範囲内であり、及び/又は前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)が少なくとも部分的に前記チャンバ壁中に構成された、請求項1に記載の真空チャンバ。
【請求項3】
前記2次元表面が構造化を有し、前記構造化の最大深さと前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の前記2次元表面のより小さい直交延長部との比が高々0.4であり、及び/又は前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の前記2次元表面が矩形、円形又は楕円形である、請求項1又は2に記載の真空チャンバ。
【請求項4】
前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)が、前記カソード(110、210、220、310、320、330)を備えるチャンバ壁上に又は別のチャンバ壁上に設けられ、前記カソード(110、210、220、310、320、330)と前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)との間の距離が1cm~200cmとの間、好ましくは5~150cm、特に10~100cmの範囲内である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【請求項5】
前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の電流密度が0.1~5A/cm
2の間、特に0.1~4A/cm
2の間、特に0.2~2A/cm
2の間であり、及び/又は前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の電圧が5~100Vの間、特に10~100Vの間、特に20~60Vの間であり、及び/又は前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の電力密度が0.25~500W/cm
2の間、特に1~400W/cm
2の間、特に4~120W/cm
2の間であり、及び/又は約80cm
2の面積の前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の電流が5~400Aの間、特に10~300Aの間、特に20~200A、特に好ましくは10と150Aの間である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【請求項6】
前記電極が、コーティング・ソースとして設計され、前記コーティング・ソースが蒸発器として又はプラズマ電極として使用され得るような形で電源(121、241、341、131、251、351)に接続され得る、請求項1から5までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【請求項7】
複数の電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)及び/又は複数のカソード(110、210、220、310、320、330)、特に2つの電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)及び2つのカソード(110、210、220、310、320、330)、特に3つの電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)及び3つのカソード(110、210、220、310、320、330)を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【請求項8】
等しい数の電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)とカソードとを備えるか、又はカソードよりも多い数の電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)、特に2つの電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)と単一のカソード、特に3つの電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)と単一のカソードとを備えるか、又は電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)よりも多い数のカソード(110、210、220、310、320、330)、特に2つのカソード(110、210、220、310、320、330)と単一の電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)、特に3つのカソード(110、210、220、310、320、330)と単一の電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)とを備える、請求項7に記載の真空チャンバ。
【請求項9】
前記作業面を形成する前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)の一部が、前記電極の冷却された一部、特に前記電極の水で冷却された一部であり、前記電極の前記冷却された一部が、特に、直接冷却され得るか、又は冷却体上に構成された、請求項1から8までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【請求項10】
前記電極(120、120a、130、140、240、250、340、350、360)が、グラファイト、銅炭素合金、鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、又はアルミニウム・チタン、クロム、若しくはバナジウムなどの導電性蒸発器材料を含み、及び/又は前記カソードが、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、又は酸素ゲッタリング材料を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の真空チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、少なくとも1つのプラズマ源を有する真空チャンバに関し、特に、特定の電極構成がプラズマ処理の効率の向上を可能にする、プラズマ・チャンバ内に構成された基板の表面にプラズマ処理を実行するためのプラズマを生成するためのプラズマ源を有する真空チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
一方では、カソードとアノードとの間に十分に高い電圧を印加することによる、定義された低圧のアルゴン又は別の希ガスなどのガスを通る電流の通過によって形成される電気グロー放電が、プラズマ生成のために使用され得る。他方では、低圧プラズマの形態のガス又はガス混合気のプラズマ生成は、電子源によって与えられ、好適な電極によって定義されたエネルギーまで加速される、高エネルギー電子とガスとの相互作用によって達成され得る。そのような電子源は、たとえば、好適に遮蔽されたアーク・カソードと、アーク電子を受けるアーク・アノードとからなるカソード真空アーク蒸発器であり得る。ガス・プラズマ生成のために、これらのアーク電子は、好適な電極を用いて除去され、高エネルギーで加速される。このようにして生成されたガス・プラズマは基板の様々なプラズマ処理のために使用され得る。たとえば、このようにして生成された不活性ガス・イオン(たとえば、アルゴン・イオン)は基板のイオン浄化のために役立つ。プラズマ中に励起され、必要な場合、分解された化合物、並びにガス及びガス混合気の霧化された分子は、基板の熱化学処理のために、又はさらには被覆蒸着のために使用され得る。形態、構成及び動作パラメータに関して、好適な電極を用いて、処理目的に関して定義された様式で、局所的なプラズマ生成を調整することが重要である。1つの目的は、電極が処理空間中に妨害する様式で突出せず、電極が高出力密度で印加され得、電極ができる限り維持することが容易であるような形で、電極を設計することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、チャンバ壁によって囲まれたプラズマ処理エリアと、プラズマ源とを有する、プラズマ処理を実行するための真空チャンバに関する。ここで、プラズマ源は、カソードがチャンバ中のチャンバ壁上に構成された、チャンバに接続されたアーク・アノードを用いたカソード真空アーク蒸発のためのカソードと、シールドがカソードの前に構成され得るような形でチャンバ壁上に設けられた、カソードから放出された粒子と金属イオンとを遮蔽するためのシールドと、チャンバ中に構成され、カソードから離間した電極とを備える。ここで、電極は、カソードから放出された電子を収集するための2次元表面を備える。2次元表面は表面法線に対する第1の直交延長部(orthogonal extension)と第2の直交延長部とを有し、第1の直交延長部は第2の直交延長部に直角であり、第2の直交延長部に対する第1の直交延長部の長さ比は0.1と1との間である。特に、本発明による電極は、好適な電流供給デバイスによって少なくとも一時的にアノード的に切り替えられ得る。
【0004】
以下では、いくつかの概念が序論として簡略化された形態で提示され、それらについては後でより詳細に説明する。
【0005】
本発明による真空チャンバは、特に、基板の局所的に調整可能な処理を可能にし、改善するために、及び真空チャンバのプラズマ分布を制御するために使用され得る。
【0006】
プラズマ源の電子源は、アーク電源に接続された、好適なシールドをもつアーク蒸発器のアーク・カソードであり得る。アーク電源の正極は、本発明によるアーク・アノードとして簡単な様式でチャンバ壁に接続され得る。アーク電子収集電極は、別の電源の正極に接続され、したがって電子受取電極である。この電極は、この電極の方向においてアーク電子を加速するために使用される。これらの加速された電子は、ガス・プラズマを励起し、電極の実質的に2次元の表面上で収集される。一般的な工業カソード真空アーク蒸発器が電子源として使用され得る。
【0007】
動作モードに応じて、カソードの電源と電極の電源とは切り替えられ、制御され得る。本発明による電極は、アノードと、コーティング・ソース(カソード真空アーク蒸発器、スパッタリング・ソース、すなわち、ターゲットとして)の両方として動作させられ得る。この目的で、電源は、コーティング・ソースとしての動作のために負にバイアスされ、アノードとしての動作のために正にバイアスされる。
【0008】
電子源として使用され得るカソード真空アーク蒸発器の前に、真空アーク蒸発から入力された熱に耐えられるような形で設計されたシールドが、好ましくは設けられる。そのようなシールドの1つのエリアの寸法決定は、基板の気化を回避するために、蒸発させられるべき表面を備える、カソード真空アーク蒸発器のエリア全体よりも大きくなるべきである。
【0009】
本発明の一実施例では、1つ又は複数の電子収集電極が非冷却電極の形態で処理チャンバ中に導入され得る。しかしながら、非冷却電極の使用は、電極に印加され得る電力の制限につながり得る。この理由で、冷却電極、たとえば、水冷電極が有利には使用される。この場合、作業面を形成する電極の一部が、好ましくは冷却される。
【0010】
100Vまでの電圧と400Aまでの電流とを与えることができる1つ又は複数の一般的な電源(すなわち、電流源)が、電極のための電源として使用され得る。この場合、0.1~5A/cm2の間の電流密度と、0.5~500W/cm2の間の出力密度とが電極において達成され得る。
【0011】
0.01Pa~10Paの範囲内の合計ガス圧力、好ましくは0.1Pa~2Paの範囲内のガス圧力がプラズマ処理中のチャンバ中で維持されるべきである。処理目的に応じて純粋なガス又はガス混合気として使用される一般的なガスは、アルゴン、水素、窒素又は炭化水素ガス(たとえば、C2H2、アセチレン)である。
【0012】
本発明による真空チャンバは、複数の電極と、複数のカソード、特にカソード真空アーク蒸発器の両方を備えることができる。ここで、いくつかのカソード、特にカソード真空アーク蒸発器は単一のシールド又はいくつかのシールドを有し得る。1つのシールドをもついくつかのカソード、特にカソード真空アーク蒸発器は、有利には真空チャンバ中の少なくとも1つの電極を用いて構成され得る。特に、真空チャンバはまた、等しい数の電極とカソード(特にカソード真空アーク蒸発器)か、又はカソード(特にカソード真空アーク蒸発器)よりも多い電極か、又は電極よりも多いカソード(特にカソード真空アーク蒸発器)を備え得る。ここで、電極及びカソードは真空チャンバ中の異なるロケーション(壁、天井、床)に構成され得る。真空チャンバ中のプラズマ分布は、電極及びカソード(特にカソード真空アーク蒸発器)の構成と数の両方を介して調整され得る。さらに、たとえば、基板上のエッチング深さ及び/又はエッチング同質性の改善がイオン・エッチング・プロセスにおいて達成され得る。2つ以上の電極の使用は電極上の異なる電流の使用並びに電流の時間選択性印加を可能にし、したがってプラズマ生成の改善された制御が可能になる。
【0013】
電極における電子電流は、電極電圧を調整することによって調整され得る。電極電圧が低いと、電子電流が低くなり、プラズマ・アクティビティが低くなる。
【0014】
1つ又は複数の電極における一般的な最大電子電流はカソードの真空アーク蒸発器の電流(アーク電流)の約120%で選択されるべきである。たとえば、カソード真空アーク蒸発器が、0.5Paのアルゴン圧のアルゴンを収容する真空チャンバ中の電子源として使用され、カソード真空アーク蒸発器が100Aのアーク電流で動作させられる場合、総電極電流は約120Aに調整されるべきである。これは、1つの電極における電流か、又は2つ以上の電極が使用される場合は個々の電極における個々の電流の和が、120Aに調整されるべきであることを意味する。
【0015】
複数の電極が、それらが真空チャンバの高さにわたって分配されるような形で1つの(又はより多くの)チャンバ壁に沿って構成されるとき、電極を最大電流で、若しくは処理に依存する最適化された電流で動作させるために、又は異なる電極に異なる電圧を印加することによって、電極を最大電流で並列に動作させるために、電極が切り替えられ得るように、各電極は別個の電源上で又は電源の特定のグループ上で動作させられ得る。電極電圧の一般的な値は10V~50Vの範囲内であり、一般的な電極電流は10A~200Aの範囲内である。局所的なプラズマ密度を調整するために、これらは異なる電流で動作させられる。これは、均一処理の目標、たとえば、イオン清浄化を設定するために役立つことができる。
【0016】
チャンバ中でプラズマを生成するためにアルゴン・ガス流と水素ガス流との混合気がチャンバに供給されるとき、プラズマは、1つ又は複数の電子源と、カソードから放出された電子を受けるための2次元表面を有する1つ又は複数の電極とによって生成され、このようにして生成されたプラズマは、プラズマに暴露された表面のイオン清浄化のためのプラズマとして使用され得る。窒素ガス流がさらにチャンバ中に導入される場合、このようにして生成されたプラズマに暴露された表面において、口語的に窒化と呼ばれる、熱化学処理が行われ得る。
【0017】
さらに、本発明は、コーティング・プロセスを実行するために、たとえば、ダイヤモンド様炭素(DLC:diamond-like carbon)コーティングを堆積するために使用され得る。水素化アモルファスカーボン(a-C:H)タイプDLC層が堆積されるべき場合、アセチレン(C2H2)ガス流とアルゴン・ガス流との混合気がチャンバに供給されるべきである。
【0018】
高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HiPIMS)プロセス又はプラズマ増強化学蒸着(PA-CVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)プロセスを含む、物理気相蒸着(PVD)アーク蒸発プロセス又はPVDスパッタリング・プロセスなど、真空コーティング・プロセスを実行するように設計された、ほぼすべてのコーティング・デバイスが、本発明によるプラズマ処理プロセスを実行するために適応され得る。
【0019】
本発明による構成では、電子加速電極は、電極の長さと、しばしば矩形又は円形又は楕円形である断面との間の関係という意味で、空間的に線形でない。実質的に、2次元電極が使用される。これは、2次元表面が表面法線に対する第1の直交延長部と第2の直交延長部とを有し、第1の直交延長部が第2の直交延長部に直角であることを意味する。第2の直交延長部に対する第1の直交延長部の長さ比は0.1と1との間である。第2の直交延長部に対する2次元表面は円形、楕円形、しかしまた矩形であり得るか、又は他の好適な形状を有し得る。2次元表面が円形である場合、第1の直交延長部及び第2の直交延長部は、特に2次元表面の直径に対応する。2次元表面が矩形である場合、第1の直交延長部は第1の縁部長さに対応し、第2の直交延長部は2次元表面の第2の縁部長さに対応する。2次元表面が楕円形である場合、第1の直交延長部及び第2の直交延長部は、特に2次元表面の対頂点(opposite vertices)からの距離に対応する。2次元という用語は、とりわけ、電子が実質的に平坦な表面に衝突することをも指す。しかしながら、表面自体は表面の製造又は使用によりある構造を有し得る。この構造化は、コーティング・ソースとして使用されるときの、電極の浸食により起こり得る。電極は、電極がもはやスムーズな又は一定の構造/縁部を有しないような形で、浸食により浸食され得る。そのような構造化され、浸食された電極はまた、本発明の構想内で実質的に平坦であると考えられる。電極の2次元表面の構造化の最大深さと、(本発明による第1の直交延長部又は第2の直交延長部に関して)より小さい直交延長部との間の比は、高々0.4、特に高々0.3、特に高々0.2である。したがって、構造化の最大深さは、常に、より小さい直交延長部よりも小さいべきである。
【0020】
最も簡単な場合、好ましくは100mmの電極直径を有する円形電極が動作させられる。この場合、電極は、真空チャンバの壁に取り付けられ得、少なくとも部分的にチャンバ壁中にも構成され得る。電極が少なくとも部分的にチャンバ壁中に構成される場合、これは、電極がコーティング・チャンバ中に著しく突出しないという明確な利点を有する。上記で説明したように、いくつかの2次元電極がある場合、電極は異なるチャンバ壁に取り付けられ得る。たとえば、2つの2次元電極が設置された場合、2つの2次元電極は、好ましくは対向するチャンバ壁上に構成される。もちろん、いくつかの2次元電極が隣接して及び/又はいくつかの2次元電極が同じチャンバ壁上に構成される可能性もある。この場合、第1及び第2の電極は、それらがチャンバ壁上で上下に又は並んで動作させられるとき、好ましくは20~400mm、好ましくは200mmの距離を有する。
【0021】
チャンバ壁上の2次元電極の構成は、真空チャンバの内側に線形電極をもつ最新技術と比較して、特に以下の利点を有する。真空チャンバの内側、特に真空チャンバの中心のプラズマ処理エリアはより広い空きスペースを与える。この空きスペースにより、したがって、チャンバのより良い使用が達成され得る。チャンバのより良い使用のために、真空チャンバ内に作成された空きスペースにより、処理されるべき基板を分配させるためのより広いスペースがあるので、処理されるべき基板は真空チャンバ内でより良く分配され得る。このようにして、特に、処理されるべき基板がチャンバ中でより均等に構成され得る場合、基板の表面の均一なプラズマ処理も可能にされ得る。本発明による構成のさらなる利点は、本発明によるこれらの電極の簡単な冷却が可能になることである。本発明による電極中に存在するような2次元表面は、もちろん、線形電極において可能であるよりも冷却することがはるかに容易で効果的である。電子受容面の冷却は直接(水流)又は間接であり得る。間接は冷却体への好適な電極材料のクランピングである。
【0022】
プラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの場合、とりわけ、磁石システムも使用され得る。磁石システム又は複数の磁石システムは、真空チャンバ(チャンバ)中のプラズマの分布を調整するために使用され得る。特に、磁石システムは、2次元電極におけるプラズマの分布を制御するために使用され得る。
【0023】
(以降、単に蒸発器とも呼ばれる)カソード真空アーク蒸発器に基づく電子源のカソードの材料は、好ましくは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はアルミニウム(Al)であり得る。カソードは、チタン合金及び/又はジルコニウム合金及び/又はアルミニウム並びにアルミニウム合金からも製造され得る。もちろん、カソードの材料は、別の好適な要素、別の好適な合金、又は、脱ガス(outgassing)若しくは漏れによって引き起こされる真空チャンバ中の残留ガス(たとえば、水、酸素)の吸着に有利である別の好適な金属からも製造され得る。電子源として役立つ、真空アーク蒸発器のカソードのそのような特性により、とりわけ、プラズマ・プロセスを実行するためのより良い真空品質も達成され得る。最新技術から知られる、カソード真空アーク蒸発器のすべての可能なターゲット材料は電極材料として好適である。この場合、とりわけ、純粋な炭素、又は銅炭素合金などの合金から製造された炭素ターゲットが電極材料として使用され得る。鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、又はアルミニウム・チタン、クロム、若しくはバナジウムなどの導電性蒸発器材料も電極材料として好適である。
【0024】
本発明の一実施例では、本発明による電極は、(アーク電子を受ける)アノードとして使用され得、したがって、特に一時的にアノード的に切り替えられ得る。さらに、第2の電極は、さらに、本発明による真空チャンバ中に構成され得、カソードから離間したさらなる第3の電極も構成され得る。第2のカソード、及び第2のカソードから離間した第4の電極も、本発明による真空チャンバ中に設けられ得、第1のカソードから放出された電子は選択的に第3の電極に向かって流れ、第2のカソードから放出された電子は選択的に第4の電極に向かって流れる。
【0025】
実際には、第2のカソードも真空チャンバ中に構成され得、第1のカソードから放出された電子は選択的に第1の電極に流れ、第2のカソードから放出された電子は選択的に第2の電極に流れる。本発明の一実施例では、真空チャンバは、電極に接続された第1の電源を備える。さらに、本発明による真空チャンバは、第2の電極に接続された第2の電源を備え得る。
【0026】
第1の電源は、第1の電流が第1の電極に供給を受け得るような形で設計され得、第2の電源は、第2の電流が第2の電極に供給を受け得るような形で設計され得る。この場合、第1の電流は第2の電流と異なり得、第1の電極は、第1の時間間隔中に第1の電流を供給され得、第2の電極は、第2の時間間隔中に第2の電流を供給され得る。第1の時間間隔と第2の時間間隔とは重複することができる。さらに、第1の電流は第2の電流に等しくなり得、第1の時間間隔は第2の時間間隔と異なり得る。代替として、第1の電流は第2の電流と異なり得、第1の時間間隔は第2の時間間隔に等しい。
【0027】
本発明の実例及び好ましい実施例
本発明による一実施例によれば、たとえば
図2に表されているように、プラズマ処理を実行するための真空チャンバは、好ましくは、エリアがチャンバ壁によって囲まれた、プラズマ処理を実行するためのエリアと、チャンバ内のチャンバ壁上に構成され、電源に接続された、カソード真空アーク蒸発器の少なくとも1つのアーク・カソードを備えるプラズマ源とを備え、電源の正極は、アーク電子を収集するアーク・アノードとして簡単な様式でチャンバ壁に接続される。カソード真空アーク蒸発器の前にはシールドがある。電子を受ける電極がチャンバ壁に取り付けられる。この電極は、アーク電子がこの電極に向かって加速され得るように、さらなる電源の正極に接続される。ガス・プラズマを生成するこの電極は、アーク放電によって生成された電子を収集するための実質的に2次元の表面を有する。好ましくは、第1の電極の2次元表面は5と2000cm
2との間、好ましくは25と320cm
2との間の範囲内である。
【0028】
本発明による別の実施例の場合、プラズマ処理を実行するための真空チャンバは、以下のように、エリアがチャンバ壁によって囲まれた、プラズマ処理を実行するためのエリアと、チャンバ内のチャンバ壁上に構成され、電源に接続された、少なくとも1つのカソードを備えるプラズマ源と、チャンバ壁のうちの1つに、少なくとも1つのカソードから離間してチャンバ内に構成された第1の電極と、さらなるチャンバ壁のうちの1つに、少なくとも1つのカソードから離間してチャンバ内に構成された第2の電極と、第1の電源とを備え、第1の電源は第1の電極に又は第1及び第2の電極に接続され、第1及び第2の電極として指定された2つの電極の各々は、アノードとして動作させられ、各場合において、少なくとも第1のカソードから放出された電子を収集するための2次元表面を備える。カソードから放出された電子を収集するための2次元表面は第1の電極と第2の電極の両方にとって5と2000cm2との間、好ましくは25と320cm2との間の範囲内にある。
【0029】
さらなる実施例によれば、プラズマ源は、以下のように、真空気密チャンバと、チャンバ中に構成された第1のカソードと、チャンバ中に構成された第2のカソードと、チャンバ中に第1のカソードから離間して構成された第1の電極と、チャンバ中に第2のカソードから離間して構成された第2の電極とを備え、第1のカソードから放出された電子は選択的に第1の電極に向かって流れ、第2のカソードから放出された電子は選択的に第2の電極に向かって流れる。
【0030】
すべての図面において及び説明全体にわたって、同じ参照符号は同じ要素、特徴及び構造を指定する。これらの要素の相対サイズ及び表現は、明快、説明又は便宜の理由で、縮尺がずれていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】プラズマ処理を実行するための知られている真空チャンバの例を示す図である。
【
図2】第1の実施例による、電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図2a】さらなる実施例による、矩形電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図2b】さらなる実施例による、電極と電源との間にスイッチをもつ、電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図2c】さらなる実施例による、電源の極性を反転させるためのスイッチをもつ、電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図3】別の実施例による、電源をもつ、本発明による2つの電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図4】さらなる実施例による、2つの電源をもつ、本発明による2つの電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図5】さらなる実施例による、本発明による電極と2つのカソードとを用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図6】さらなる実施例による、本発明による2つの電極と2つのカソードとを用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図7】さらなる実施例による、本発明による2つの電極と2つのカソードとを用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図8】さらなる実施例による、本発明による3つの電極と3つのカソードとを用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図8a】さらなる実施例による、本発明による3つの電極と3つのカソードと用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図9】別の実施例による、異なるチャンバ壁上で、本発明による3つの電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【
図9a】別の実施例による、異なるチャンバ部分上で、本発明による3つの電極を用いたプラズマ処理を実行するための本発明による真空チャンバの概略表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面には、1つ又は複数の実施例を含む例が記載されている。この点について、本発明は、記載されている例に限定されない。たとえば、実施例の1つ又は複数の特徴はまた、別の実施例において実現されるか、又は別のタイプのデバイスにおいてさえ与えられ得る。
【0033】
物理気相蒸着(PVD)又はダイヤモンド様炭素コーティングによるコーティングなどのコーティング・プロセスを実行する前に、アーク・アシスト・グロー放電プロセス(またイオン・エッチング・プロセスとしても知られている)が1つ又は複数の基板上で実行され得る。この場合、イオン・エッチング・プロセスは、表面を整えるか、又は調整するために使用される、すなわち、基板表面は、加熱され、イオン衝撃によってエッチングされる。この調整は基板とコーティングとの間のボンディングを改善する。
図1に、従来のイオン・エッチング・システムが表されている。
図1の本システムは、チャンバ1の両側に構成された蒸発器7(以下で、蒸発器という用語はカソード真空アーク蒸発器のアーク・カソードの略である)をもつ真空チャンバ1を備える。蒸発器7は、直流電源8に接続され、40Vの電圧と最高300Aの電流とで動作させられ得る。シャッター又はシールド12は、チャンバ1の壁に接続され、対応する電極7が遮蔽されるか又は遮蔽されないかのいずれかであるようにシャッター12が回転され得るような形で回転可能に構成される。線形電極13がチャンバに接続され、蒸発器7から等しく離間される。線形電極13は、スイッチ15、16、17を介して電流源11、14に接続され得、動作状態において電極3に沿って等しい電圧を有する。電流源11、14は、さらにチャンバ1の壁に接続され、スイッチ15、16を介して回転可能な基板ホルダー10に随意に接続され得る。アルゴンなどのガスがガス源6から弁5を介して入口4を通ってチャンバ1に入れられ得る。アーク放電が点火されると、電子が蒸発器7によって生成され、線形電極13に向かって加速される。電子はアルゴン・ガス原子を励起し、したがって部分的にイオン化されたアルゴン原子を生成し、そのアルゴン原子は、コーティングのために基板9を整えるために基板9の表面上に堆積される。このシステムは直流電源8、11、14と回転基板ホルダー10とのみによって調整され得る。したがって、本システムは、限られたイオン化と、線形電極13によるプラズマ活性化の限られた調整可能性と、チャンバ1中の同質性の限られた調整可能性とを特徴とする。
【0034】
次に、プラズマ源の実施例が
図3、
図4及び
図9に概略的に表されている。チャンバ100(すなわち、以下でチャンバと呼ぶ、本発明による真空チャンバ)中の電子の流れをより良く制御することが可能であるために、
図1による線形電極を備えるデバイスの場合とは異なり、チャンバ中に構成され得る、カソードから放出された電子を収集するための2次元表面を有する、本発明による複数の電極120、130、140が設けられる。この構成の極めて重要な利点は、電極をチャンバの1つ又は複数の壁上に配置する可能性であり、それにより、チャンバ中でプラズマを用いて処理されるべき基板の分配の改善が可能になる。結果として、プラズマ処理のためのチャンバ中のエリアがより良く利用され、その結果、効率が高くなり得る。たとえば、真空気密チャンバ100が
図3又は
図4に概略的に表されている。蒸発器110は、チャンバ100中に設けられ、チャンバ110の壁中に又は壁上に直接構成され得る。蒸発器110は、チタン及び/又は蒸発のためのものである任意の他の金属など、1つ又は複数の金属を含むことができる。電源又は動力源の負極は蒸発器110に接続され、したがってカソードの形態の蒸発器110を接続する。たとえば、蒸発器110がトリガユニットによって点火されると、本発明による電極によって加速されたアーク電子が放出され、チャンバ110中に入れられたアルゴン(Ar)、ネオン(Ne)或いは1つ又は複数の任意の他の好適なガスなどの1つ又は複数のガスと衝突し、したがってプラズマを生成する。次いで、プラズマのイオンは、後続のコーティング・プロセスのために、たとえば、清浄化又はエッチングによって基板の表面を整えるために、チャンバ100中に設けられた(ここに図示されていない)1つ又は複数の基板の表面を衝撃する。1つ又は複数のシールド115は、シールド115が蒸発器110と基板との間に随意に配置され得るように、チャンバ100中に移動可能に設けられる。したがって、シールド115は、アークプロセスの点火の前に、このプロセス中に基板を蒸発器110による汚染から保護するために、回転されるか、又はさもなければ蒸発器の前に移動され得る。アークが存在しない場合、シールドは別の好適な位置に移動され得る。
【0035】
図3及び
図4によれば、2つの電極、第1の電極120及び第2の電極130がチャンバ100中に設けられている。第1及び第2の電極120、130は少なくとも1つの電源又は電流源の正極に接続され、それによって第1及び第2の電極120、130を第1及び第2のアノードとして接続する。たとえば、
図3に表されているように、共通の電源121が第1の電極120と第2の電極130とに接続され得る。この構成では、第1の電極120と第2の電極130とに等しい電圧が印加され得る。この電圧は、電極120、130の両方に同時に、及び同じ持続時間の間、印加され得る。代替として、
図4によれば、第1の電源121は、第1の時間間隔中に第1の電極120に電流を供給し得、第2の電源131は、第2の時間間隔中に第2の電極130に電流を供給し得る。第1及び第2の時間間隔は、要望通り、別個であるか、又は重複し得る。別の実施例では、第1の電極120が第1の電源121に接続され得、第2の電極130が第2の電源131に接続され得る。したがって、第1の電源121は第1の電極120に第1の電流を供給することができ、第2の電源131は第2の電極130に第2の電流を供給することができる。異なる電流及び/又は異なる時間間隔を使用することによって、本システム中で生成されたプラズマは、影響を受けるか、又は制御されるか、又はさらには均質化され得る。
【0036】
図3及び
図4に表されているように、蒸発器110から放出された電子は第1及び第2の電極120、130の位置に流れる。所望の位置における第1の電極120及び第2の電極130の個々の好適な位置決めにより、チャンバ100中のプラズマ流のより良い制御が可能であり、イオン衝撃及び基板Sのエッチングの制御が改善される結果となる。
図9は、3つの個々の電極、第1の電極120と、第2の電極130と、第3の電極140とが設けられている実施例を示す。したがって、各場合において第1、第2、及び第3の電極120、130、140に向けられる、対応する第1、第2、及び第3の電子経路160が生じる。
図3及び
図4による概略図では、電極120、130は蒸発器110の反対側に構成されている。しかしながら、
図9による概略図では、電極120、130、140は異なるチャンバ部分上に構成されている。しかしながら、第1、第2又は随意に第3の電極の任意の好適な位置決めが、改善されたプラズマ活性化とチャンバ中の同質性とが達成され得るような形で電子流に影響を及ぼすことが可能であることを理解されたい。したがって、チャンバ中の任意の数の電極が電子流を所望の経路に誘導することが可能である。
図3、
図4及び
図9による蒸発器110は、100Aの印加電流とともに使用され得るが、もちろん、任意の他の好適な電流が使用され得る。
【0037】
図6は、いくつかの蒸発器がその中に設けられたプラズマ源のさらなる実施例を示す。チャンバ200は、カソードとして接続された第1の蒸発器210と第2の蒸発器220とを備える。第1及び第2の蒸発器210、220はチャンバ200の壁中に又はさもなければチャンバ200上に設けられ得る。代替として、第1又は第2の蒸発器210、220はチャンバ200の好適な構造上に又はチャンバ200中に構成され得る。回転可能な又はさもなければ可動シールド230が第1及び第2の蒸発器210、220の近くに設けられる。シールド230は、蒸発器210、220の両方を遮蔽するために十分なサイズを有し得る。代替として、チャンバ200は、各場合において第1の蒸発器110と第2の蒸発器220とに関連付けられた第1及び第2のシールドを備えることができる。さらに、第1の電極240及び第2の電極250がチャンバ200中に設けられ、その両方がアノードとして接続される。電子経路260によって表されているように、第1の蒸発器210から放出された電子は第1の電極240に向かって流れ、第2の蒸発器220から放出された電子は第2の電極250に向かって流れる。任意の所望の数の蒸発器が任意の所望の数の個々の電極とともに使用され得ることを理解されたい。したがって、たとえば、
図6のシステムは、電子が第1の蒸発器210から2つの個々の電極に流れ、電子が第2の蒸発器から2つの他の個々の電極に流れるように、2つの蒸発器と4つの個々の電極とを備えることができる。
【0038】
図8による実施例は、特に大きいシステムにおいて使用され得る。蒸発器311、321、331及び電極340、350、360をチャンバの高さに沿って、すなわち、プラズマ処理エリアの高さに沿って構成することによって、いくつかのプラズマ源がチャンバ中に設けられ得、各場合におけるプラズマ源は、少なくとも1つの蒸発器と、1つ又は2つ又はそれ以上の個々の電極とを備える。ここで、各電極は、それ自体の電源による供給を受け得るか、又はさらには切替え可能な電源がいくつかの電極によって同時に使用され得る。
【0039】
図2による実施例は、概略的に表された真空気密チャンバ100と、チャンバ100中に設けられ、チャンバ100の壁上に直接構成され得る蒸発器110とを示す。さらに、負極を有する電源111が設けられる。電源111又は動力源111のこの負極は蒸発器110に接続される。したがって、本実施例では、蒸発器110はカソード110である。表されているように、蒸発器110はアーク電子を放出し、アーク電子は、最初に部分的に抽出され、本発明による電極によって加速され、このようにして作用ガス・アルゴン(Ar)(しばしばネオン(Ne)も又は任意の他の好適なガス又はガスの混合気)を励起し、その結果プラズマを生成する。この目的で、電極への電極電流を可能にする、正の加速電圧が電極120に印加される。電極の制御は、一般に、電圧又は電流によって達成され得るか、又は電極の制御は、電圧と電流との積からなるエネルギーによって達成され得る。プラズマのイオンは、次いで、基板Sの表面に当たり、基板Sは、好ましくは、後続のコーティング・プロセスのために、たとえば清浄化又はエッチングによってそれの表面を整え、活性化するために、チャンバ100中の中央に置かれる様式で設けられる。さらに、シールド115は、シールド115が蒸発器110と基板Sとの間に随意に配置され得るように、
図2のチャンバ100中に移動可能に構成される。したがって、アークプロセスの点火の前に、シールド115は、このプロセス中に基板Sを蒸発器110による汚染から保護するために、回転されるか、又はさもなければ蒸発器110の前に移動され得る。アークが存在しない場合、シールドは別の好適な位置に移動され得る。
【0040】
図2によれば、単一の電極120が設けられている。電極120は電源121の正極に接続され、したがって電極120はアノード120である。アノード120の電流源121において異なる電流及び/又は異なる時間間隔を使用することによって、本システム中で生成され得るプラズマは影響を受け得る。
【0041】
図2に表されているように、蒸発器110から放出された電子は第1及び第2の電子経路150に沿って電極/アノード120の位置に誘導される。したがって、今度は、チャンバ100中で生成され得るプラズマは同じ方向に加速され得る。所望の位置における第1の電極120の好適な位置決めにより、チャンバ100中のプラズマ流のより良い/より容易な制御が可能であり、イオン衝撃及び基板のエッチングの制御が改善される結果となる。
【0042】
図2aによる実施例は、
図2による実施例によるチャンバ100と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。ただし、
図2による第1の電極120の2次元表面は円形であるが、
図2aによる第1の電極120aのカソードから放出された電子を収集するための2次元表面は矩形である。この場合、蒸発器から放出された電子を収集するための2次元表面は、表面法線に対する第1の直交延長部と第2の直交延長部とを有し、第1の直交延長部は第2の直交延長部に直角であり、第2の直交延長部に対する第1の直交延長部の長さ比は0.1と1との間である。円形電極120の場合、第1の直交延長部及び第2の直交延長部は、特に2次元表面の直径に対応する。矩形電極120aの場合、第1の直交延長部は第1の縁部長さに対応し、第2の直交延長部は2次元表面の第2の縁部長さに対応する。
【0043】
図2bによる実施例は、
図2による実施例によるチャンバ100と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。ただし、
図2bによる実施例は、第1の電極120と電源121、122との間に結合されたスイッチ・デバイス123を備える。電源121は、正極がスイッチ・デバイス123のスイッチS1上にある状態で構成され、電源122は、負極がスイッチ・デバイス123のスイッチS2上にある状態で構成される。スイッチS1が閉じており、スイッチS2が開いているとき、電極120は本発明によるプラズマ電極として(すなわち、アノードとしても)使用され得る。スイッチS1が開いており、スイッチS2閉じているとき、電極120は(アーク)コーティング・プロセス又はスパッタリング・プロセス(すなわち、ターゲット)のために使用され得る。
【0044】
図2cによる実施例は、
図2による実施例によるチャンバ100と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。ただし、
図2cによる実施例は、第1の電極120と電源121との間に結合されたスイッチ・デバイス123を備える。電源121は、正極がスイッチ・デバイス123のスイッチS1上にあり、負極がスイッチ・デバイス123のスイッチS2上にある状態で構成される。さらに、電源121の正極は1つのスイッチS3を介して接地に接続され、電源121の負極は1つのスイッチS4を介して接地に接続される。スイッチS1が閉じており、スイッチS2が開いており、スイッチS3が開いており、スイッチS4が閉じているとき、電極120は本発明によるプラズマ電極として使用され得る。スイッチS1が開いており、スイッチS2が閉じており、スイッチS3が閉じており、スイッチS4が開いているとき、電極120は(アーク)コーティング・プロセス又はスパッタリング・プロセスのために使用され得る。
【0045】
図3による実施例は、概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。この場合、第1の電極120及び第2の電極130は同じ電源121又は同じ動力源121の正極に接続される。したがって、第1の電極120及び第2の電極130は第1のアノード120及び第2のアノード130である。アノード120及び130の電流源121において異なる電流及び/又は異なる時間間隔を使用することによって、本システム中で生成され得るプラズマは影響を受け得る。
【0046】
共通の電源が第1の電極120と第2の電極130とに接続されるので、この構成では第1の電極120と第2の電極130とに等しい電圧が印加され得る。この電流は、電極120、130の両方に同時に、及び同じ持続時間の間、印加され得る。
【0047】
図4による実施例は、概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。
図4による実施例では、第1の電源121が第1の電極120に構成され、第2の電源131が第2の電極130に構成される。この場合、特に、第1の電源が第1の電極120に第1の電流を供給することができ、第2の電源が第2の電極130に第2の電流を供給することができるので、本システム中で生成され得るプラズマは、第1の電源121と第2の電源131とにおいて異なる電流及び/又は異なる時間間隔を使用することによって影響を受け得る。ここで、第1及び第2の電流は、プラズマの分布が第1及び第2の電流によって成形され得るように、互いに無関係に調整され得る。ここで、第1の電源121は、第1の時間間隔中に第1の電極120に第1の電流を供給し得、第2の電源131は、第2の時間間隔中に第2の電極130に第2の電流を供給し得る。第1及び第2の時間間隔は、要望通り、別個であるか、又は重複し得る。
【0048】
図2~
図4による実施例では、各場合において単一の蒸発器110が存在し、それにより、プラズマ・アークが少なくとも1つのアノード120、130を用いて生成される。
【0049】
図5は、いくつかの蒸発器がその中に設けられたチャンバ200のさらなる実施例を示す。チャンバ200は、カソードとして接続された、すなわち、第1の電源211の負極と第2の電源221とに接続された、第1の蒸発器210と第2の蒸発器220とを備える。第1及び第2の蒸発器210、220はチャンバ200の壁上に設けられる。代替として、第1又は第2の蒸発器210、220はまた、チャンバ200の壁の好適な構造上に又はチャンバ200中に構成され得る。回転可能な又はさもなければ可動シールド230が第1及び第2の蒸発器210、220の近くに設けられる。シールド230は、蒸発器210、220の両方を遮蔽するために十分なサイズを有し得る。代替として、チャンバ200は、それぞれ第1の蒸発器210及び第2の蒸発器220に関連付けられた、第1のシールド及び第2のシールドを備え得る(ここに図示されていない)。さらに、アノードとして接続された、すなわち、第1の電流源241の正極に接続された第1の電極240がチャンバ200中に設けられる。電子経路260によって表されているように、第1の蒸発器210から放出された電子及び第2の蒸発器220から放出された電子は第1の電極240に向かって流れる。本システムが好適な数の蒸発器と好適な数の電極とを備え得るように、任意の所望の数の蒸発器が任意の所望の数の個々の電極とともに使用され得ることを理解されたい。
【0050】
図6による実施例は、
図5による実施例によるチャンバ200と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ200を示す。ただし、
図6による実施例は、第1の電極240と第2の電極250とが存在する点が
図5と異なる。この場合、第1の電極240及び第2の電極250は同じ電源241又は同じ動力源241の正極に接続される。したがって、第1の電極240及び第2の電極250は第1のアノード240及び第2のアノード250として切り替えられる。
【0051】
共通の電源が第1の電極240と第2の電極250とに接続されるので、この構成では第1の電極240と第2の電極250とに等しい電流が印加され得る。この電流は、電極240、250の両方に同時に、及び同じ持続時間の間、印加され得る。
【0052】
図7による実施例は、
図6による実施例によるチャンバ200と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ200を示す。ただし、
図7による実施例は、第1の電源241が第1の電極240に構成され、第2の電源251が第2の電極250に構成される点が
図6と異なる。ここで、特に、第1の電源は第1の電極240に第1の電流を供給することができ、第2の電源は第2の電極250に第2の電流を供給することができるので、本システム中で生成され得るプラズマは、第1の電源241及び第2の電源251において異なる電流及び/又は異なる時間間隔を使用することによって影響を受け得る。この場合、第1及び第2の電流は、プラズマの分布が第1及び第2の電流によって成形され得るように、単独で調整可能であり得る。ここで、第1の電源241は、第1の時間間隔中に第1の電極240に第1の電流を供給し得、第2の電源251は、第2の時間間隔中に第2の電極250に第2の電流を供給し得る。第1及び第2の時間間隔は、要望通り、別個であるか、又は重複し得る。
【0053】
図5~
図7による実施例では、各場合において2つの蒸発器210、220が少なくとも1つのアノード240、250とともに存在する。
【0054】
図8は、いくつかの蒸発器がその中に設けられたチャンバ300のさらなる実施例を示す。チャンバ300は、カソードとして接続された、すなわち、第1の電源311の負極と、第2の電源321と、第3の電源331とに接続された第1の蒸発器310と、第2の蒸発器320と、第3の蒸発器330とを備える。第1、第2、及び第3の蒸発器310、320、330はチャンバ300の同じ壁上に設けられる。代替として、第1、第2、及び第3の蒸発器310、320、330はまた、チャンバ300の壁の好適な構造上に又はチャンバ300中に構成され得る。さらに、第1、第2、及び第3の蒸発器310、320、330は異なる壁上に、第1及び第3の蒸発器310、330は1つの壁上に、第2の蒸発器320は別の壁上にそれぞれ構成され得る。3つの回転可能な又はさもなければ可動シールド334、332、333が、各場合において第1、第2、及び第3の蒸発器310、320、330の近くに設けられる。代替として、チャンバ300は、蒸発器310、320、330のすべてを遮蔽するために十分なサイズを有するシールドを備え得る。さらに、アノード340、350、360として接続された、すなわち、各場合において正極で第1の電源341、第2の電源351及び第3の電源361に接続された、第1の電極340、第2の電極350、及び第3の電極360がチャンバ300中に設けられる。電子経路によって表されているように、第1の蒸発器310から放出された電子、第2の蒸発器320から放出された電子、及び第3の蒸発器330から放出された電子は3つのアノード340、350、360に向かって流れる。
【0055】
図8による概略図では、電極340、350、360が蒸発器310、320、330の反対側に構成されている。しかしながら、改善されたプラズマ活性化とチャンバ中の同質性とが達成され得るような形で電子流に影響を及ぼすために、第1、第2、及び第3の電極の任意の好適な位置決めが可能であることを理解されたい。したがって、チャンバ中の任意の数の電極が、電子流を所望の経路に向けることが可能である。蒸発器310、320、330に印加された電流は100Aであり得るが、もちろん、任意の他の好適な電流が使用され得る。
【0056】
したがって、
図8による実施例では、3つの蒸発器310、320、330は3つのアノード340、350及び360とともに存在する。
【0057】
図8aは、
図8におけるチャンバと類似する構造をもつチャンバ300のさらなる実施例を示すが、第1の電極340、第2の電極350、及び第3の電極360の電源が異なるエネルギーで動作させられる。とりわけ、異なるエネルギーを使用することによって、プラズマの同質性が改善され得、同様に、プラズマの分布も、それぞれの電源におけるエネルギーを相応して調整することによってより良く制御され得る。
【0058】
図9による実施例は、
図2による実施例によるチャンバ100と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。ただし、
図9による実施例は、第1の電極120、第2の電極130及び第3の電極140が存在する点、並びに、第1の電源121が第1の電極120に構成され、第2の電源131が第2の電極130に構成され、第3の電源141が第3の電極140に構成される点が
図2と異なる。この場合、特に、第1の電源121は第1の電極120に第1のエネルギーを供給し、第2の電源131は第2の電極130に第2のエネルギーを供給することができ、第3の電源141は第3の電極140に第3のエネルギーを供給することができるので、本システム中で生成され得るプラズマは、第1の電源121、第2の電源131、及び第3の電源141において異なるエネルギー及び/又は異なる時間間隔を使用することによって影響を受け得る。この場合、第1、第2、及び第3のエネルギーは、プラズマの分布が第1、第2、及び第3のエネルギーによって成形され得るように、互いに単独で調整可能であり得る。
【0059】
図9は、3つの個々の電極、第1の電極120、第2の電極130、及び第3の電極140がこのようにして設けられている実施例を示す。したがって、各場合において第1、第2、及び第3の電極120、130、140に向けられる、対応する第1、第2、及び第3の電子経路160が生じる。
図13による概略図では、電極120、130、140が蒸発器110の反対側に構成されている。しかしながら、第1、第2又は随意に第3の電極の任意の好適な位置決めが、改善されたプラズマ活性化とチャンバ中の同質性とが達成され得るような形で電子の流れに影響を及ぼすことが可能であることを理解されたい。したがって、チャンバ中の任意の数の電極が電子流を所望の経路に向けることが可能である。
【0060】
図4~
図8から認識され得るように、基板Sは負にも正にもバイアスされ得、それにより、正バイアスは、さもなければすべての電子が基板に流れるので、電極の正バイアスよりも小さくなければならない。もちろん、適切にバイアスされた基板も追加のプラズマ制御のために好適である。さらに、作用ガス及びプロセス・ガスが動作状態にあるチャンバ100、200に供給される。ここで、作用ガスは、好ましくはアルゴン(Ar)及び水素(H
2)であり、プロセス・ガスは、好ましくは窒素(N
2)である。
【0061】
図9aによる実施例は、
図9による実施例によるチャンバ100と類似する構造をもつ概略的に表された真空気密チャンバ100を示す。しかしながら、
図9aによる実施例では、電極120、130、140はチャンバ100のチャンバ壁上に構成されているだけでない。第1の電極120はチャンバ壁上に構成され、第2の電極130はチャンバ天井に構成され、第3の電極140はチャンバ床上に構成される。チャンバ中の電極の構成は、とりわけ、プラズマ分布を制御するために、要望通り調整され得る。
【0062】
図2~
図9aでは、基板Sは負又は正のいずれかにバイアスされ得、正バイアスは、さもなければすべての電子が基板に流れるので、電極の正バイアスよりも小さいべきである。動作状態において、アルゴン(Ar)及び水素(H2)が、好ましくは作用ガスとして供給され得、窒素(N2)が、好ましくはプロセス・ガスとして供給され得る。
【0063】
本出願の構想内で様々な例示的な構成が図示され、説明されたが、任意の数の蒸発器と任意の数の電極とをもつ他の実施例が、当然、本明細書でクレームされる本発明の保護の範囲内に入る。さらに、本発明による真空チャンバは、イオン・エッチング・プロセスのために使用され得、複数の個々の電極を装備され得、それにより、異なる電極に異なる電流が供給され得る。プラズマ活性化とエッチングとを要望通り操作するために、同じ又は異なる電流が、異なる電極に、さらには異なる時間において印加され得る。
【0064】
電子経路150、160、260は、もちろん、シールド115、230、332、333、334の近くを通り、それらのシールドを通過しないので、図中に含まれた電子経路150、160、260は概略的にのみ表されている。
【0065】
本出願の構想内でかなりの数の実施例についてすでに説明したが、さらなる変形体が可能であることは言うまでもない。たとえば、説明された実施例は、好適に組み合わせられ、補足されるか、又は同じ効果を有する等価な特徴によって交換され得る。したがって、そのような他のソリューションも、クレームされる本発明の保護の範囲内に入る。
【国際調査報告】