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特表2022-514389光パターンを補正する方法および自動車用照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】光パターンを補正する方法および自動車用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20220203BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20220203BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20220203BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20220203BHJP
   F21S 41/141 20180101ALI20220203BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20220203BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20220203BHJP
   F21S 41/14 20180101ALI20220203BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20220203BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALN20220203BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20220203BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20220203BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220203BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20220203BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20220203BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
F21V7/00 590
F21V14/04
F21S41/663
F21S41/141
F21S41/16
F21S41/153
F21S41/14
H01L33/58
B60Q1/14
F21W102:20
F21W102:13
F21Y115:30
F21Y115:15
F21Y115:20
F21Y115:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535688
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2019083876
(87)【国際公開番号】W WO2020126527
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18214262.0
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、ミムン
【テーマコード(参考)】
3K339
5F142
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA07
3K339BA08
3K339BA18
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA02
3K339DA05
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA03
3K339HA05
3K339KA06
3K339LA06
5F142AA12
5F142CB11
5F142DB35
5F142EA34
5F142GA29
(57)【要約】
本発明は、自動車用照明装置によって提供される光パターンを補正する方法であって、光パターンが少なくとも光源のマトリックス配列によって提供される方法に関する。本方法は、光度が低い第1のゾーン(1)を有するハイビームパターンを投影する第1のステップを備え、第1のゾーンは、4つの辺を有する長方形の縁を有する。第2のステップは、第1のゾーンの縁の4つの辺のそれぞれにいくつかのピクセルを提供することで、上側のぼかしゾーン(2)、下側のぼかしゾーン(3)、左側のぼかしゾーン(4)、および右側のぼかしゾーン(5)を生成することを備える。最後のステップは、列に沿って延びる上側のぼかしゾーン(2)のぼかしパターン、列に沿って延びる下側のぼかしゾーン(3)のぼかしパターン、行に沿って延びる左側のぼかしゾーン(4)のぼかしパターン、および行に沿って延びる右側のぼかしゾーン(5)のぼかしパターンを生成することを備え、各行または列の光度が、第1ゾーンの光度からハイビームパターンの光度へと適合するようになっている。これらのステップを実行するように構成された自動車用照明装置も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用照明装置によって提供される光パターンを補正する方法であって、前記光パターンが少なくとも光源のマトリックス配列により提供される、前記方法において、
第1ゾーン(1)を有するハイビームパターン(10)を投射するステップであって、前記第1ゾーン(1)の光度が前記ハイビームの光度の半分以下であり、かつ、前記第1ゾーンは4つの辺を有する長方形の縁を有している、前記ステップと、
前記第1ゾーンの縁の前記4つの辺の各々に所定の数のピクセルを提供し、これにより上側のぼかしゾーン(2)、下側のぼかしゾーン(3)、左側のぼかしゾーン(4)および右側のぼかしゾーン(5)を生成するステップと、
列に沿って延びる上側のぼかしゾーン(2)のぼかしパターン、列に沿って延びる下側のぼかしゾーン(3)のぼかしパターン、行に沿って延びる左側のぼかしゾーン(4)のぼかしパターン、および行に沿って延びる右側のぼかしゾーン(5)のぼかしパターンを生成し、各行または列の光度が前記第1ゾーンの光度からハイビームパターン(10)の光度へと適合するようにするステップと、
を備えた方法。
【請求項2】
ぼかしパターンの同じ行または列に沿った光度の勾配が0.4よりも低く、この勾配Gが、同じ行または列の2つの隣接するピクセルP1およびP2の間で、次式G=log(l1)-log(l2)(但し、l1はピクセルP1における光度であり、l2はピクセルP2における光度であり、単位cdで測定される)に従って測定されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各ぼかしパターンが線形であり、ピクセルP1、P2の後にあるピクセルP3の輝度l3が、l3=l2+(l2-l1)(但し、l1はP1の光度であり、l2はP2の光度である)で表される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
各ぼかしパターンが、そのぼかしパターンの最初と最後のピクセルにおいて0に等しい勾配を有し、最大勾配が0.4である、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各ぼかしゾーンの前記所定のピクセルの数は、ハイビームパターンの光度と第1ゾーンの光度の差に依存する、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のゾーンは第1速度で変位することを意図しており、各ぼかしゾーンの前記所定のピクセルの数は前記第1速度に依存する、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各ぼかしゾーンの前記所定のピクセルの数は、式N=a・S(但し、Nは前記所定のピクセルの数、aは0.02から0.025の間の定数、Sは1秒あたりの度(degree per second)で測定される前記第1速度である)に従い前記第1速度に対して線形の関係を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各ぼかしゾーンの前記所定のピクセルの数は、式N=a・S(但し、Nは前記所定のピクセルの数、aは0.06から0.07の間の定数、Sは1秒あたりの度(degree per second)で測定される前記第1速度である)に従い前記第1速度に対して線形の関係を有している、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
各ぼかしゾーンの前記所定のピクセルの数は、前記ハイビームパターンの光度と前記第1ゾーンの光度との差に依存する第1基準と、前記第1速度に依存する第2基準との間の最大数として選択される、請求項5に従属する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ハイビームパターンを提供するよう構成されたソリッドステート光源のマトリックス配列であって、前記ハイビームパターンが第1ゾーンを有し、前記第1ゾーンの光度が前記ハイビームパターンの光度の半分以下である、前記マトリックス配列と、
請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを達成するための制御手段と、
を備えた自動車用照明装置。
【請求項11】
前記マトリックス配列は少なくとも2000個のソリッドステート光源を備えている、請求項10に記載の車載用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用照明装置の分野に関するものであり、特にグレアフリー機能を使用する際の光のパターンの補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グレアフリー機能とは、ヘッドランプの前方に1台以上の車両が検出された場合に、ハイビームパターンを提供する方法である。この機能は、強度の低い光ビームが投射される空白の「トンネル部」を使用することを含み、これによりドライバーは高い視認性を確保しつつ、他のドライバーに迷惑をかけないようにすることができる。
【0003】
しかし、このトンネル部には2つの欠点がある。
【0004】
第一の欠点は、ハイビーム機能に関連した高い光度値と、トンネル部のはるかに低い光度値との間の高いコントラストに関連する。このシャープな不連続性は視覚的な不快感を引き起こすことがある。
【0005】
さらに、このトンネル部の動的挙動に関する第二の欠点がある。トンネル部の影響を受けるオブジェクト(物体)がヘッドランプに対して相対的に動くと、光源がこの動きに適応しなければならず、そのためにその光のピクセルがギクシャクした挙動を示すことがある。
【0006】
これらの問題はこれまで解決されていないため、解決策が求められている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項1に記載の光パターンの補正方法および請求項10に記載の自動車用照明装置によって、グレアフリーの機能を提供するための代替の解決策を提供するものである。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0008】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術的および科学的な用語を含む)は、当該技術分野で慣習的に使用されているものとして解釈される。さらに、一般的に使用されている用語も、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化された意味か、あるいは過度に形式的な意味ではなく、関連する技術分野で慣習的に使用されているものとして解釈されるべきであることが理解される。
【0009】
本文中の「備える(comprises)」という用語およびその派生語(「備えている(comprising)」など)は、除外的な意味で理解されるべきではなく、つまり、これらの用語は、記述・定義されているものがさらなる要素やステップなどを含む可能性を除外するものと解釈されるべきではない。
【0010】
発明の第1の側面によれば、自動車用照明装置によって提供される光パターンを補正する方法であって、前記光パターンが少なくとも光源のマトリックス配列により提供される、前記方法が提供され、前記方法は、
第1ゾーンを有するハイビームパターンを投射するステップであって、前記第1ゾーンの光度が前記ハイビームの光度の半分以下であり、かつ、前記第1ゾーンは4つの辺を有する長方形の縁を有している、前記ステップと、
前記第1ゾーンの縁の前記4つの辺の各々に所定の数のピクセルを提供し、これにより上側のぼかしゾーン、下側のぼかしゾーン、左側のぼかしゾーン、および右側のぼかしゾーンを生成するステップと、
列に沿って延びる上側のぼかしゾーンのぼかしパターン、列に沿って延びる下側のぼかしゾーンのぼかしパターン、行に沿って延びる左側のぼかしゾーンのぼかしパターン、および行に沿って延びる右側のぼかしゾーンのぼかしパターンを生成し、各行または列の光度が前記第1ゾーンの光度からハイビームパターンの光度へと適合するようにするステップと、
を備えている。
【0011】
ぼかしパターンは2つの課題を解決することを目的としている。第1の課題は、ハイビームパターンの高輝度から他の車両を保護することを目的とした第1ゾーンの輝度とハイビームパターンとの間のシャープなコントラストによる視覚的な不快感である。第2の課題は、この第1ゾーンが保護すべき車両の動きに追従して移動することにより生じる視覚的な不快感である。ぼかしゾーンを設けることにより全体的な輝度変化が抑制され、この動きがよりスムーズに感じられるようになる。
【0012】
いくつかの特定の実施形態では、ぼかしパターンの同じ行または列に沿った光度の勾配は、0.4よりも低く、勾配Gは、同じ行または列の2つの隣接するピクセルP1およびP2の間で、以下の式に従って測定される。
G=log(l1)-log(l2)
ここで、l1はピクセルP1の光度、l2はピクセルP2の光度であり、測定単位はcdである。
【0013】
勾配はシャープネスの観点から制限されており、これによりドライバーはぼかしゾーンが連続しているように感じる。
【0014】
いくつかの特定の実施形態では、各ぼかしパターンは線形であり、これによりピクセルP1およびP2の後にあるピクセルP3の光度l3は
l3=l2+(l2-l1)
であり、
ここで、l1はP1の光度であり、l2はP2の光度である。
【0015】
線形のぼかしパターンにより、各ぼかし値の算出が容易であり、視覚的な快適さを得ることができる。
【0016】
他の特定の実施形態では、各ぼかしパターンは、当該ぼかしパターンの最初のピクセルと最後のピクセルで0に等しい勾配を有し、最大勾配が0.4である。
【0017】
最初と最後のピクセルは、第1ゾーンとハイビームパターンに直接接触するピクセルであるので、これらのゾーンへのスムーズな移行が保証される。ぼかしパターンの残りの部分は、これらのスムーズな移行ゾーンに適合させており、規格で認められている最大値0.4まで勾配を変化させている。
【0018】
いくつかの特定の実施形態では、各ぼかしゾーンのピクセル数は、ハイビームパターンの光度と第1ゾーンの光度の差に依存する。
【0019】
ピクセル数、つまりぼかしゾーンのサイズを定義する第1基準は、均質性に関連しており、ハイビームパターンの光度と第1ゾーンの光度の差を考慮している。この差が大きいほど、ぼかしゾーンに0.4以下の勾配を与えるために必要なピクセル数が多くなる。
【0020】
いくつかの特定の実施形態では、第1ゾーンは第1速度で変位するように意図されており、各ぼかしゾーンのピクセル数は第1速度に依存する。
【0021】
ピクセル数、つまりぼかしゾーンのサイズを定義する第2基準は、第1ゾーン内に維持しなければならないオブジェクトが動いたことによりこの第1ゾーンが移動するときの滑らかさに関連する。
【0022】
いくつかの特定の実施形態では、各ぼかしゾーンのピクセル数は、式N=a・Sに従って、第1速度に対して線形の関係を有しており、ここでNはピクセル数、aは0.02から0.025の間の定数、Sは度/毎秒(degree per second)で測定される第1速度である。
【0023】
この第1の式は、ぼかしパターンが線形の場合に特に適している。
【0024】
いくつかの特定の実施形態では、各ぼかしゾーンのピクセル数は、式N=a・Sに従って、第1速度に対して線形の関係を有しており、ここでNはピクセル数、aは0.06から0.07の間の定数、Sは度/毎秒で測定される第1速度である。
【0025】
この第2の式は、ぼかしパターンが勾配に依存する場合に特に適している。
【0026】
いくつかの特定の実施形態では、各ぼかしゾーンのピクセル数は、前記ハイビームパターンの光度と前記第1ゾーンの光度との差に依存する第1基準と、前記第1速度に依存する第2基準との間の最大数として選択される。
【0027】
2つの基準のうち最大のものであるぼかしゾーンを選ぶことで、両方の基準を確実に満たすことができる。結果として、このようなぼかしゾーンは、均質性と滑らかさという2つの問題を解決することになる。
【0028】
発明の第2の側面では、本発明は自動車用照明装置を提供し、当該自動車用照明装置は、
ハイビームパターンを提供するよう構成されたソリッドステート光源のマトリックス配列であって、前記ハイビームパターンが第1ゾーンを有し、前記第1ゾーンの光度が前記ハイビームパターンの光度の半分以下である、前記マトリックス配列と、
第1の発明の側面による方法のステップを達成するための制御手段と、
を備えている。
【0029】
用語「ソリッドステート(solid state)」は、半導体を利用して電気を光に変換するソリッドステート(solid state)エレクトロルミネッセンスによる放射された光を意味している。ソリッドステート照明は、白熱灯に比べ、発熱やエネルギー散逸を抑えて可視光を得ることができる。典型的には質量が小さいソリッドステート電子照明装置は、脆いガラス管/球や細長いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に強い。また、それらは、フィラメントの蒸発がないため、照明装置の寿命が延びる可能性がある。この種の照明には、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)を光源とするものがあり、これらは電気フィラメント、プラズマ、ガスとは異なる。
【0030】
この照明装置は、本発明の照明装置の前を走る車両へのグレアを回避することを意図した、改善された第1ゾーンの光パターンを有するグレアフリーのハイビームパターンを提供する。
【0031】
いくつかの特定の実施形態では、マトリックス配列は、少なくとも2000個のソリッドステート光源を含む。
【0032】
本発明は、数千個の光源を持つ最も簡潔なものから、数十万個の光源を持つより高度なものまで、多くの種類の照明マトリックス/アレイベースの技術に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
説明を完成させるために、また、本発明をよりよく理解するために、一連の図面を提供する。前記図面は、本明細書の不可欠な部分を形成し、本発明の実施形態を示しているが、これは本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明をどのように実施することができるかの例示として解釈されるべきである。図面は、以下の図で構成されている。
【0034】
図1図1は、本発明による自動車用照明装置が投射するハイビーム機能の光パターンを示している。
図2a図2aは、本発明による自動車用照明装置におけるぼかしゾーンの形状に関連するグラフィックを示している。
図2b図2bは、本発明による自動車用照明装置におけるぼかしゾーンの形状に関連するグラフィックを示している。
【0035】
例示された実施形態の要素は、適切な場合には、図面および詳細な説明を通して一貫して同じ参照数字で示されている。
【0036】
1 第1ゾーン
2 上側のぼかしゾーン
3 下側のぼかしゾーン
4 左側のぼかしゾーン
5 右側のぼかしゾーン
10 ハイビームパターン
【発明を実施するための形態】
【0037】
例示された実施形態は、当業者が本明細書に記載されたシステムおよびプロセスを具現化して実施できるように、十分に詳細に説明されている。実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではないことを理解することが重要である。
【0038】
したがって、実施形態は様々な方法で変更することができ、様々な代替形態をとることができるが、その特定の実施形態を例として図面に示し、以下に詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の請求項の範囲内に入るすべての変更、同等物、および代替物が含まれるべきである。
【0039】
図1は、本発明に係る自動車用照明装置が投射するハイビーム機能の光パターンを示している。この自動車用照明装置は、前述した課題を解決するために、ビームパターンの形状を補正する制御手段を備えている。
【0040】
このハイビームパターン10は、当該ハイビームパターンを特徴付ける高い光度からオブジェクト、例えば自動車を保護するための第1ゾーン1を備えている。第1ゾーン1は、ハイビームパターン10の光度の10分の1の光度を有している。この第1ゾーン1は、上側のぼかしゾーン2、下側のぼかしゾーン3、左側のぼかしゾーン4、右側のぼかしゾーン5の4つのぼかしゾーンを備えている。各ぼかしゾーンは、ハイビームパターン10の高い光度と第1ゾーン1の低い光度との間にソフトな移行を提供することを意図している。その結果、上側2および下側3のぼかしゾーンは、このぼかしを縦方向に列で提供し、左側4および右側5のぼかしゾーンは、このぼかしを横方向に列で提供することになる。
【0041】
照明装置は、(複数の)光源のマトリックス配列を有し、2000ピクセルより大きいの解像度を持つ。ただし、プロジェクションモジュールの製造に使用される技術には制限は無い。
【0042】
このマトリックス配列の第1の例は、モノリシックソース(モノリシック光源)を備える。このモノリシックソースは、数列×数行に配置されたモノリシックなエレクトロルミネッセンス素子のマトリックスを備えている。モノリシックマトリックスでは、エレクトロルミネッセンス素子は、共通の基板から成長させることができ、個別的に、あるいはエレクトロルミネッセンス素子のサブセット単位で、選択的にアクティベート(活性化)されるように電気的に接続されている。基板は、主に半導体材料で形成することができる。基板は、1つ以上の他の材料、例えば、非半導体(金属および絶縁体)を備えていてもよい。このように、各エレクトロルミネッセント素子/群は、光ピクセルを形成することができ、したがって、その/それらの材料に電気が供給されると、光を放出することができる。このようなモノリシックマトリックスの構成は、プリント回路基板にはんだ付けされることを意図した従来の発光ダイオードと比較して、選択的に活性化可能なピクセルを相互に非常に近接して配置することを可能にする。モノリシックマトリックスは、共通基板に対して垂直に測定した高さの主寸法が実質的に1マイクロメートルに等しいエレクトロルミネッセント素子を備えていてもよい。
【0043】
モノリシックマトリックスは、マトリックス配列によるピクセル化された光ビームの生成および/または投射の制御がされるように制御センターに結合されている。制御センターは、マトリックス配列の各ピクセルの発光を個別に制御することができる。
【0044】
上に提示したものに代えて、マトリックス配列6は、ミラーのマトリックスに結合された主光源を備えていてもよい。つまり、ピクセル化された光源は、光を放出する少なくとも1つの発光ダイオードにより形成された少なくとも1つの主光源と、光電子素子のアレイ、例えば、「Digital Micro-mirror Device」の頭文字をとってDMDとして知られている主光源からの光線を反射によって投射光学素子に向けることができるマイクロミラーのマトリックスとのアセンブリによって形成されている。必要に応じて、補助光学素子が、少なくとも1つの光源の光線を集めて、マイクロミラーアレイの表面に合焦させて導くようにしてもよい。
【0045】
各マイクロミラーは、光線が投射光学素子に向かって反射される第1の位置と、光線が投射光学素子とは異なる方向に反射される第2の位置の2つの固定位置の間で旋回(揺動)することができる。2つの固定位置は、すべてのマイクロミラーで同じように配向されており、マイクロミラーのマトリックスを支持する基準面に対して、その仕様書で定義されたマイクロミラーのマトリックスの特徴的角度を成している。このような角度は、一般的に20°未満であり、通常は約12°とすることができる。このようにして、マイクロミラーのマトリックスに入射する光ビームの一部を反射する各マイクロミラーは、ピクセル光源の基礎エミッタ(放射器)を形成する。この基礎エミッタを選択的に作動させて基礎光ビームを放出するか否かを決定するためのミラーの位置変更の作動および制御は、制御センターによって制御される。
【0046】
異なる実施形態では、マトリックス配列は走査型レーザシステムを備えていてもよく、ここでは、レーザ光源がレーザビームで波長変換器の表面を探査するように構成された走査素子に向けてレーザビームを放出する。この表面の画像は、投射光学素子によって捕捉される。
【0047】
走査素子の探査は、人間の目が投射画像の変位を感じない程度の速度で行ってもよい。
【0048】
レーザ光源の点火とビームの走査移動を同期制御することで、波長変換素子の表面に選択的にアクティブにすることができる基礎エミッタのマトリックスを生成することが可能となる。走査手段は、レーザ光の反射により波長変換素子の表面を走査する移動式のマイクロミラーであってもよい。走査手段として挙げられるマイクロミラーは、例えば、MEMS(「Micro-Electro-Mechanical Systems」)タイプのものである。しかし、本発明はこのような走査手段に限定されるものではなく、他の種類の走査手段、例えば、回転要素上に一連のミラーを配置し、要素の回転によりレーザ光による透過面の走査を行うものを用いることができる。
【0049】
別の変形例では、光源は複合化されたものであってもよく、発光ダイオードなどの(複数の)光素子からなる少なくとも1つのセグメントと、モノリシックな光源の表面部分との両方を含んでいてもよい。
【0050】
ぼかしゾーンは、ぼかしゾーン専用のピクセル数である「サイズ」と、光度が高い値から低い値へと適合させる方法である「輝度プロファイルないし形状(shape)」の2つの主な特徴によって定義される。これらの特徴は相互に関連しており、両者の選択は2つの基準に影響される。
【0051】
第一の基準は、均質性の基準である。典型的なハイビームパターンは40000cdの光度を持つ場合があり、第1ゾーンは通常500cdの光度を持つ。結果として、この光度の急変は1つまたは2つのピクセルでは達成されないかもしれない。光度指令勾配(magnitude call gradient)は、2つの隣接するピクセルP1とP2の間の光度の変化を測定するために使用され、通常は、G=log(l1)-log(l2)と定義される。ここで、l1はピクセルP1の光度であり、l2はピクセルP2の光度であり、cdで測定される。
【0052】
この勾配は、標準的な規定によれば、0.4よりも高くしてはならない。上式を用いると、40000cdから500cdまでの許容可能なぼかし領域を提供するためには、最低でも9ピクセルが必要となる。この形状に関連する2つのグラフィックが図2aと2bに示されている。図2aは、第1ゾーンの500cdから、ハイビームパターンの40000cdより大までの光度の変化を示している。図2bは、この変化における勾配の値を示している。最初の2つのピクセルでは、できるだけ早く「増大」させる必要があるため、勾配の値は最大となる。次のピクセルでは、ハイビームゾーンに近いピクセルとハイビームパターンとの間のスムーズな移行を保証するのにちょうど十分な勾配となっている。
【0053】
第2の基準は、保護すべきオブジェクトが移動するこの第1ゾーンの動きの滑らかさに関するものである。この動きは、1秒あたりの度(degree per second)で定義される。なぜなら、ピクセルは、光源のマトリックス配列の解像度に応じて、度の(ごく小さな)一部分(one fraction of degree)を表しているからである。
【0054】
この第2の基準によると、各ぼかしゾーンに必要なピクセル数は、第1ゾーンの速度に依存する。滑らかさは、光のパターンに生じる可視面の変化の数、すなわち不連続部の数として測定される。ぼかしゾーンが高いほど、不連続部は少なくなるが、ハイビームの体験は損なわれる。そのため、各ぼかしプロファイルでは、不連続部の数を最小限にすることが求められる。
【0055】
数値解析によると、線形プロファイルを使用した場合、各ぼかしゾーンのピクセル数がN=a・S(但し、Nはピクセル数、aは1ピクセルあたり0.07度の解像度に対する0.02から0.025の間の定数、Sは1秒あたりの度で測定される第1速度)の式で与えられるとき、不連続部の数は最小で解像度の2倍に等しい。一方、図2aに示すような勾配依存性プロファイルを使用した場合、ピクセル数が上記と同じ式で与えられるが上記と同じ解像度に対してaの値が0.06から0.07の間に設定された場合には、不連続部の数は最小で解像度の2倍に等しい。
【0056】
勾配に依存するプロファイルは、両方の基準に対して良好な解決策を提供し、最終的なぼかしサイズは、第1の基準で提供されるサイズと第2の基準で提供されるサイズの間の最大値として選択される。
図1
図2a
図2b
【国際調査報告】