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特表2022-514396ピストンレスエンジンを制御するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ピストンレスエンジンを制御するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/032 20160101AFI20220203BHJP
【FI】
H02P25/032
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535708
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 GB2019053667
(87)【国際公開番号】W WO2020128515
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1821016.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514035084
【氏名又は名称】リバティーン エフピーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッカリル,サミュエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴィール,マシュー
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540BB06
5H540EE02
5H540EE05
5H540EE06
5H540EE08
5H540EE10
5H540EE11
5H540EE14
5H540EE15
5H540EE16
5H540FA00
5H540FB02
5H540FB03
5H540FC02
5H540FC10
(57)【要約】
フリーピストンムーバを制御する方法であって、目標制御変数の閉ループ制御のための制御パラメータセットを生成するステップであって、このセットは、ストローク閾値関数とフィードフォワード電流関数とフィードバック項関数と制御パラメータセット遷移条件のうちの1つまたは複数と、目標制御変数関数とを有する、ステップと、前記制御パラメータセットを、制御するストロークの開始前にインストークコントローラに送信するステップと、フューチャストロークコントローラを使用して、前記フリーピストンムーバの任意の将来のストロークに対する前記制御パラメータセットの構成要素のうちの1つまたは複数を修正するステップと、修正された前記制御パラメータセットを、任意の将来のストロークの制御のために前記インストロークコントローラに送信するステップとを含むことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーピストンムーバを制御する方法であって、
目標制御変数の閉ループ制御のための制御パラメータセットを生成するステップであって、このセットは、ストローク閾値関数とフィードフォワード電流関数とフィードバック項関数と制御パラメータセット遷移条件のうちの1つまたは複数と、目標制御変数関数とを有する、ステップと、
前記制御パラメータセットを、制御するストロークの開始前にインストークコントローラに送信するステップと、
フューチャストロークコントローラを使用して、前記フリーピストンムーバの任意の将来のストロークに対する前記制御パラメータセットの1つまたは複数の構成要素を修正するステップと、
修正された前記制御パラメータセットを、任意の将来のストロークの制御のために前記インストロークコントローラに送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御パラメータセットの生成後のストローク中のフリーピストンムーバのパフォーマンスを示すベース変数をサンプリングするステップと、
目標制御変数関数を参照して、測定されたベース変数を使用して、少なくとも1つの目標制御変数を生成するステップと、
前記測定された制御変数および前記目標制御変数を使用して、少なくとも1つの制御変数誤差を決定するステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御変数誤差を使用して、電流コントローラに入力される電流需要の出力を生成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2のフリーピストンムーバのパフォーマンスを示す第2のベース変数をサンプリングするステップと、
第2の目標制御変数関数を参照して、前記測定された第2のベース変数を使用して、少なくとも1つの第2の目標制御変数を生成するステップと、
前記測定された第2の制御変数および前記第2の目標制御変数を使用して、少なくとも1つの第2の制御変数誤差を決定するステップと、
前記第2の制御変数誤差を使用して、第2の電流コントローラに入力される電流需要の出力を生成するステップと、
次のストロークまたは任意の将来のストロークに影響を及ぼし得るフューチャストロークコントローラを使用して、前記フリーピストンムーバの将来のストロークのために前記第2の目標制御変数関数を修正するステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1のムーバと前記第2のムーバの一方または両方のムーバの測定された変数が所定のストローク遷移閾値に等しくなったときに、前記第2のムーバの測定された制御変数または測定されたベース変数と前記第1のムーバの対応する測定された制御変数または測定されたベース変数との間の差を反映するFPM同期誤差を測定するステップと、
需要入力を提供するステップと、
をさらに含み、
フューチャストロークコントローラは、前記測定された電流と前記電流需要と前記FPM同期誤差と前記需要入力の少なくとも1つに基づいて、少なくとも1つのフリーピストンムーバに対する後続のストロークのために前記制御パラメータセットを修正する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目標制御変数関数は、測定されたベース変数に対応する配列要素を参照することによって目標制御変数を決定可能なベース変数の値および目標制御変数の値の配列であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
現在のストロークおよび少なくとも1つの後続のストロークに対する目標制御変数関数の値は、共通の配列に格納されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記目標制御変数関数は、前記測定されたベース変数を適用することによって前記目標制御変数を算出可能な数式であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記目標制御変数関数は、前記測定されたベース変数を入力することによって前記目標制御変数を決定可能なシミュレーションモデルであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の目標制御変数関数は、測定された第2のベース変数に対応する前記配列要素を参照することによって第2の目標制御変数を決定可能なベース変数の値および目標制御変数の値の配列であることを特徴とする請求項4を引用する請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の目標制御変数関数は、前記測定された第2のベース変数を適用することによって前記第2の目標制御変数を算出可能な数式であることを特徴とする請求項4を引用する請求項5から7および10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の目標制御変数関数は、前記測定された第2のベース変数を入力することによって前記第2の目標制御変数を決定可能なシミュレーションモデルであることを特徴とする請求項4を引用する請求項5から7、10および11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フューチャストークコントローラは、前記2つのフリーピストンムーバのための同期コントローラから入力を受信することを特徴とする請求項3を引用する請求項4または6または7に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のFPMおよび前記第2のFPMの前記制御パラメータセットに対する同期変更は、互いに方向が反対であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のFPMおよび前記第2のFPMの前記制御パラメータセットに対する同期変更は、互いに大きさが同じであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
フリーピストンムーバとインストロークコントローラとフューチャストロークコントローラのうちの1つまたは複数の測定可能な出力を記録するステップをさらに含む請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
診断コントローラを使用して履歴のストローク傾向を監視するステップをさらに含む請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
任意のコントローラに関連する動作ライセンスの有効性をチェックし、前記ライセンスが無効である場合、動作を制限することまたは警告を発生することを含むアクションを行うステップをさらに含む請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
サービスに対する請求を行うか、またはライセンスされた使用義務に準拠することを保
証する課金方法に対する使用メトリックを示すデータの通信を行うステップをさらに含む請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記制御パラメータセットは前記フィードフォワード電流関数を含み、前記フィードフォワード電流関数は、ベース変数の値の範囲または制御変数の値の範囲に対するフィードフォワード電流の値を含むことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記電流需要は、少なくとも1つのフィードバック電流需要の値と1つのフィードフォワード電流需要の値とを加算することによって、前記測定されたベース変数に対して算出されることを特徴とする請求項3、または請求項3を引用する請求項4または6または7、または請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記フューチャストロークコントローラは、1つまたは複数の測定されたベース変数の値に対応するフィードバック電流需要の値の所定割合の値を、フィードフォワード電流関数によって測定されたベース変数の各値に関連付けられたフィードフォワード電流需要の値に加えることによって、将来のストロークのためのフィードフォワード電流関数を調整することを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記インストロークコントローラは、前記フューチャストロークコントローラの計算ループレートの少なくとも2倍の計算ループレートで動作していることを特徴とする請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載の方法を実行するためのフリーピストンムーバを制御するシステムまたは装置であって、
電流コントローラとインストロークコントローラとフューチャストロークコントローラとを有し、
前記電流コントローラは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、トライアック(TRIAC)、ソリッドステートリレー(SSR)、または他のタイプの電力リレーの少なくとも1つの回路スイッチング素子を制御するための少なくとも1つのゲートコントローラを含む
ことを特徴とするシステムまたは装置。
【請求項25】
前記インストロークコントローラの計算ループレートは、前記フューチャストロークコントローラの計算ループレートの少なくとも2倍であることを特徴とする請求項24に記載のシステムまたは装置。
【請求項26】
前記ゲートコントローラおよび前記電流フィードバックコントローラは、同じ場所に配置されることを特徴とする請求項24または25に記載のシステムまたは装置。
【請求項27】
前記ゲートコントローラおよび前記電流フィードバックコントローラは、シングルエンドスイッチの一方向または双方向電気回路と差動スイッチの一方向または双方向電気回路と1つまたは複数の光ファイバおよび関連するトランシーバとのうちの1つまたは複数を有するシリアル通信手段によって物理的に分離およびリンクされていることを特徴とする請求項24または25に記載のシステムまたは装置。
【請求項28】
前記ゲートコントローラは、少なくともデシリアライザおよびゲートスイッチング回路をさらに有することを特徴とする請求項27に記載のシステムまたは装置。
【請求項29】
前記ゲートコントローラは、1つまたは複数のセンサコントローラまたはセンサをさら
に有することを特徴とする請求項27または28に記載のシステムまたは装置。
【請求項30】
プログラマブルマイクロコンピュータ上で実行されると、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合されたコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項31】
インターネットに接続されたコンピュータ上で実行されると、請求項24から29のいずれか1項に記載のシステムにダウンロードされるように適合された請求項30に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
請求項30に記載のコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フリーピストンムーバを制御する方法およびシステム
本発明は、FPLG(Free Piston Linear Generator)、LMRC(Linear Motor Reciprocating Commpor)、FPGAE(Free Piston Gas Expander)、LMRP(Linear Motor Reciprocating Pump)、LMRA(Linear Motor Reciprocating Actuator)、または他の種類のリニアパワーシステム(Linear Power System)製品に組み込まれるフリー
ピストンムーバ(FPM;Free Piston Mover)の制御方法および制御システムに関する
【0002】
これらの種々のリニアパワーシステム(LPS)製品には、1つまたは複数のFPMが組み込まれていることが知られている。それぞれの場合において、フリーピストンムーバの直線動作によって連結されるリニア電気機械システムおよびリニア熱流体システムがある。
【0003】
このような製品の最適なシステム性能には、典型的には、効率、再現性、精度、信頼性、および同期(2つ以上のFPMが組み込まれたリニアパワーシステム製品の場合)の組み合わせが求められる。最適なシステム性能は、FPM動作の正確な制御に大きく左右される。
【0004】
FPMが組み込まれた製品を利用可能な市場全体では、年間1000億ドルおよび年間2億ユニットを超える。この市場において最も採用されている用途はFPLG製品であり、従来の内燃機関を車両および分散発電に置換する可能性を有する。
【0005】
今日まで、FPMが組み込まれた製品の商業的利用は、ピストンの動作を制御して最適なシステム性能を達成する既存の制御方法や制御システムの性能不足の足かせを受け続けている。専門家は、FPMが組み込まれた製品のピストン動作の制御は、FPMが組み込まれた製品の汎用性における最も手付かずの課題であると指摘している。
【0006】
本発明の分野および本発明の背景を説明する目的で、以下の専門用語の定義を用いる。
【0007】
リニア電気機械(Linear Electrical Machine。「LEM」と称する):モータまたは発電機として機能する電気機械であり、使用時にLEM内の可動部分またはアセンブリに作用するリニア電磁力を発生させる電気機械。この力は、LEM内に配置された1つ以上の導電性コイルを流れる電流の変調によって変化する。モータまたは発電機として動作するとき、LEM内の固定部分や固定アセンブリとLEM内の可動部分または可動アセンブリとの間の相対動作も存在する。
【0008】
ステータ(Stator):LEM内の部品またはアセンブリは、通常、LEMが動作するシステムに対して固定されている。
【0009】
トランスレータ(Translator):LEM内の部品またはアセンブリは、通常、ステージに対して移動する。
【0010】
リニア電気機械システム(Linear Electro-Mechanical System;「LEMS」と称する):LEMとリニア軸受およびリニアシールなどの他の機械的要素とを備える物理的システムであり、トランスレータに作用する力には、他の機械的要素に関連する摩擦力とともにLEMによって印加されるリニア電磁力や、外部システムから機械的に結合される他の
力が含まれる。
【0011】
リニア熱流体システム(Linear Thermo-Fluidic System;「LTFS」と称する):作業チャンバ(working chamber)と、ピストンの線形動作によって作業チャンバの容積が
変化する可動ピストンとを備える物理システム。作業チャンバは、ピストンの線形動作を通じて、作業チャンバ内で膨張または圧縮されるか、または作業チャンバ内に入れられるか、または作業チャンバの外部に配置される、作業流体を含む。LTFSはまた、作業チャンバからの作業流体の導入および排出のためのバルブを有してもよい。作業チャンバ内の作業流体の圧力は、ピストンに作用する力を生み、この力は、例えば、(i)作業流体の圧縮率、(ii)ピストンの動き、(iii)LTFS内のバルブを介して、または化学反応(例えば燃焼)の結果として、または流体注入(例えば水もしくは燃料噴射器によるもの)によって生じる、作業チャンバ内の流体のモルの上昇または減少、(iv)作業チャンバの壁への/壁からの熱伝達の結果として、および/または作業チャンバ内の化学反応(例えば、燃料と酸化剤との間の燃焼)の結果としての作業チャンバへの/チャンバからの熱の付加または除去、(v)作業流体内の相変化、を含む複数の要因に依存する。
【0012】
ピストン(Piston):LTFS内の移動要素によって、LTFS内の作業チャンバの容積が変化する。
【0013】
リニアパワーシステム(Linear Power System;「LPS」と称する):少なくとも1
つのLEMSおよび1つのLTFSを備える製品またはシステムであって、LEMS内のLEMのトランスレータが、固定リンケージまたは構成要素を介してLTFSのピストンに組み込まれるか、あるいは機械的に結合される、製品またはシステム。このようなシステムでは、LPSの性能は、LEMSサブシステムおよびLTFSサブシステムの性能によって決まり、これらのサブシステムの効率、再現性、精度、信頼性および耐久性に関連して決まる。LTFSの作業チャンバが燃料エネルギーをピストンに作用する機械仕事に変換する燃焼チャンバである場合、LPSの性能は、燃焼反応のタイミング、速度、および完全性、ならびにこの反応の後に生じる作業チャンバのガス内で結果として生じる排出に依存する。これらの特性によるLPSのシステム性能は、LEMS内のトランスレータの動きおよびLFTS内のピストンに大きく依存し、これらは共に結合され、時間と共に変化する直線動作の共通のプロファイルで移動する。
【0014】
フリーピストンムーバ(Free Piston Mover;「FMS」と称する):LPS内の共通の
可動部分または可動アセンブリは、LEMS内のトランスレータとして、またLTFS内のピストンとして機能する。
【0015】
フリーピストンリニアジェネレータ(Free Piston Linear Generator;「FPLG」と称する):LTFSの作業チャンバが燃焼チャンバであり、LEMSの出力が電力である、LPSが組み込まれた内燃機関発電システム。FPLGはまた、典型的には、燃料供給、点火、チャージ空気圧縮、冷却、エンジン管理システム、排気後処理システム、ならびに機械的取り付け要素および密封要素を含む内燃エンジンジェネレータに必要な補助システムを含む。このタイプのシステムは、フリーピストンエンジン(Free Piston Engine;「FPE」と称する)とも呼ばれる。
【0016】
リニアモータ往復圧縮器(Linear Motor Reciprocating Compressor;「LMRC」と
称する):LTFSの作業チャンバがガスコンプレッサ作業チャンバであるLPSが組み込まれたシステムであり、LTFSは、入口圧力で気相の作業流体を受け入れ、専用に設計および構成されたバルブの配置によって高圧の気体の作業流体を排出する。このシステムでは、LPS内のLEMSは、電力を使用して、気相の作業流体を圧縮するために機械的仕事を印加するリニアモータとして働く。
【0017】
フリーピストンガスエキスパンダ(Free Piston Gas Expander;「FPGE」と称する):LTFSの作業チャンバがガスエキスパンダの作業チャンバである、LPSが組み込まれたシステムであり、例えば有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)発電機
。このシステムでは、LTFSは、典型的には、入口圧力で気相作業流体を受け入れ、専用に設計および構成されたバルブの配置によって低圧の気体の作業流体を排出する。作業流体は、液相または二相混合物(例えば、液相および気相の混合物)として許容または排出されてもよいが、気相膨張プロセスは、典型的には、作業チャンバ容積の膨張時に発生する。このシステムでは、LPS内のLEMSはリニアジェネレータとして機能し、作業流体の膨張時にピストンに加えられた機械的仕事の結果として電力を生成する。
【0018】
リニアモータ往復ポンプ(Linear Motor Reciprocating Pump;「LMRP」と称する
):LTFSの作業チャンバが往復ポンプ作業チャンバである、LPSが組み込まれたシステムであり、LTFSは、入口圧力で液相の作業流体を受け入れ、専用に設計および構成されたバルブの配置によって高圧の液体を排出する。このシステムでは、LPS内のLEMSは、電力を使用して、液相の作業流体の圧力を増大させ、ポンピング流量および摩擦損失を克服するために機械的仕事を印加するリニアモータとして機能する。
【0019】
リニアモータ往復アクチュエータ(Linear Motor Reciprocating Actuator;「LMR
A」と称する):LTFSの作業チャンバがFPMに力を加えるバウンスチャンバ(bounce chamber)またはプリロードチャンバ(preload chamber)である、LPSが組み込ま
れたシステム。このシステムでは、LPS内のLEMSは、FPMと外部システムとの間の機械的リンク機構または結合によって外部システムに作用する所望の力または機械的動作を発生させるために電力を使用して、リニアモータとして機能する。
【0020】
ストローク(Stroke):本明細書で説明する事象の定義に従って、ストローク開始イベントとストローク終了イベントとの間のベース変数(例えば、時間または位置)に関して測定されるFPMの動作周期または動作期間。FPMが組み込まれたLPSは、典型的には、複数の連続的なストロークを通して機能を実現し、LPSのシステム性能は、複数の連続的なストロークにわたる集約されたシステム性能の結果である。
【0021】
本発明が適用可能な一例では、FPMが「2ストローク」燃焼サイクルを作動させるFPLGの一部を形成する場合、連続ストロークは、燃焼サイクルの動力/排気ストロークおよび導入/圧縮ストロークに対応し得る。この例では、2つの連続するストロークが完全なサイクルを形成し、FPLGのパフォーマンスは、複数の連続するサイクルの集約されたパフォーマンスの結果となる。
【0022】
現在のストローク:FPMの動作がインストロークコントローラ(In-Stroke Controller)の動作によって有効である現在発生しているストローク。
【0023】
次のストローク:現在のストロークの直後のストローク。
【0024】
未来のストローク:次のストロークを含む現在のストロークに続く任意のストローク。
【0025】
電流:説明を明確にするため、電流(current)という用語は、電流の流れを指すため
に排他的に使用され、時間的な意味では用いない。また、現在(present)という用語は
、対応する将来または過去のイベント、アクション、ステータスまたは記述に関して、本発明の態様のイベント、アクション、ステータスまたは環境の説明(例えば、「現在」のストロークや変数の「現在」の値)の相対的時間を示すために使用される。
【0026】
フリーピストンムーバ(FPM)は、リニア熱流体システム(LTFS)内のピストンおよびリニア電気機械システム(LEMS)内のトランスレータの両方として機能する往復動作要素であり、これらのシステムは、例えば、多数のタイプのリニア電力システム(LPS)のうちの1つ、例えば、FPLG、LMRC、FPGAE、LMRP、LMRAを形成する。
【0027】
LPSの重要な特徴は、各ストロークが第1の点から第2の点までのピストンの動きによって典型的に説明されるマルチストローク装置とみなせることである。例えば、単一の作業チャンバを含む単一のピストンFPLGにおいて、ストロークは、典型的には、FPMの速度がゼロに近く、最小および最大の作業チャンバ容積(「上死点(Top Dead Centre)」および「下死点(Bottom Dead Centre)」と呼ばれる)に対応する2点間の点とし
て説明される。FPMが「2ストローク」燃焼サイクルを作動させるFPLGの一部を形成する本発明の1つの実施形態では、連続ストロークは、燃焼サイクルの動力/排気ストロークおよび導入/圧縮ストロークに対応する。この例では、2つの連続するストロークが完全な燃焼サイクルを形成し、FPLGの性能は、複数の連続する燃焼サイクルの集約された性能となる。
【0028】
LPSの一部を形成するFPMのいくつかの利点は、LPS内のリニア熱流体システム(LTFS)の向上した性能を基に、LPS内のリニア電気機械システムによって適用される向上した動作制御の結果として実現される。例えば、フリーピストンリニアジェネレータ(FPLG)の場合、以下の利点が挙げられる。
・高効率、低排出燃焼。燃焼開発者に周知の先進的なクラスの燃焼方法として、低温燃焼(Low Temperature Combustion;LTC)が知られており、その一例が、ホモジニアス電荷圧縮(Homogeneous Charge Compression Ignition;HCCI)およびスパークアシス
ト圧縮(Spark Assisted Compression Ignition;SACI)である。このクラスの燃焼
方法は、燃焼速度、高い圧縮比、および低いピーク温度を基にした効率的で低排出燃焼の可能性を提供する。いずれの場合においても、燃焼プロセスは、燃焼室内で高い圧縮比で圧縮された希薄混合気燃焼によって実質的にあるいは完全に実現される。
【0029】
圧縮比はデトネーションを達成するのに十分であるが過度な比率とならないようにし、さもなければガス圧縮によるピークチャンバ温度が上昇して、上昇した温度と圧力での給気において窒素と酸素の望ましくない反応が原因で、有害な排気ガスが放出される可能性がある。デトネーションをうまく達成するために必要な圧縮比は、壁温度、充填空気温度、筒内充填動作、燃料/空気当量比、燃料/空気混合、および以前のサイクルからチャンバ内に残留する燃焼残留排気ガスおよび未燃残残留排気ガスの割合を含む、燃焼室内の条件に依存する。これらの条件は、サイクルごとに異なる。各燃焼事象の結果は、例えば、燃焼室内の圧力上昇のタイミングおよび大きさならびに排気中の条件によって測定され、圧縮比、より広範には、その燃焼サイクルの圧縮および膨張ストローク中のピストン動作プロファイルが最適であったかどうかの指標を提供する。
【0030】
したがって、効率的で低排出LTCのためのピストン動作プロファイルは、好ましくは、本サイクルの直前の燃焼イベントの測定結果または分析的な推論結果に応じてストロークごとに適合されるべきである。
【0031】
FPLGでは、FPMの動きをストロークごとに制御することができ、圧縮比ならびに圧縮および膨張プロファイルのリアルタイム制御および調整の可能性を提供する。このようにして、FPLGは、前のサイクル内の対応する燃焼ストロークの燃焼結果に応じて各サイクルにおけるFPM動作を適応させることによってLTCを達成する手段を提供する。FPMの動作制御は、数秒、数分、数時間、またはより長い期間にわたって性能に影響を及ぼす変動を補償するために、圧縮比ならびに圧縮および膨張プロファイルの適応を可
能にする。これらは、過渡プロセス、ならびに暖機、経時的な摩耗、および燃料品質の変動などの現象から生じ得る。
【0032】
・燃料の柔軟性。従来のディーゼル燃料および石油燃料に加えて、環境的または経済的な利点から、広範囲の代替内燃機関燃料が普及している。これらは、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas;CNG)、液体天然ガス(Liquid Natural Gas;LNG)、液体石油ガス(Liquid Petroleum Gas;LPG)、ロウウェルヘッドガス(Raw Well-Head Gas
)、バイオエタノール、バイオディーゼル、メタノール、バイオガス、シンガスおよび水素を含む。これら種々の新しい燃料は、各燃料が最適な燃焼のために異なる圧縮比を必要とすることがあるので、エンジン開発者にとっての課題となる。加えて、これらのいくつかの燃料は、製造方法(例えば、バイオガス、シンガス、RWG)や、または異なる燃料ブレンドが組み合わされるときに内燃機関を供給する燃料タンク内で生じる混合(例えば、バイオエタノール)が原因で、本質的に変質しやすい。
【0033】
FPLGにおいて、圧縮比ならびに圧縮および膨張プロファイルのリアルタイム制御および調整の可能性は、FPLGが最適燃焼のための圧縮比を達成することを可能にし、燃料組成の変動を補償する。さらに、FPLGに対する初期または既定の較正圧縮比(calibration compression ratio)の目標は、制御ソフトウェアによって構成され得る。共通
のFPLG設計は、最小の物理的変化を伴う種々の燃料タイプのために構成され得るので、このソフトウェア構成の可能性は、FPLG生産者に大きな経済的利点をもたらす。
【0034】
・低振動。対向するピストンFPLGにおいて、周期的な燃焼負荷によって生成されるねじり振動励起の除去は、FPLGマウントを介して周囲構造または環境内に伝達される非常に低い振動励起負荷をもたらし得る。
【0035】
・高速の需要応答。電力は、始動モータを使用する複数のサイクルの間、エンジンをクランクする必要なく、動作の最初の2または3ストローク以内にFPLGから生成することができる。これらの初期ストロークの間に低い壁温度による燃焼室ガスに対する冷却効果は、従来の内燃機関内で失火または不完全燃焼となる可能性があるが、最初の数サイクルまたはストロークの間、より高い圧縮比を使用することによって、FPLG用に補償することができる。
【0036】
同様の利点は、LPS内のリニア熱流体システム(LTFS)の強化された性能に基づいて他のタイプのLPSにおいても得られ、LPS内のリニア電気機械システムに適用可能な強化された動作制御の結果として可能になる。例えば、リニアモータ往復圧縮器(LMRC)の場合、ガスコンプレッサの全体的な効率は、入口ポートおよび出口ポートにおける流れ損失に対するガス流速の影響によるFPMの動作に依存する。流れ損失を最小にするにはFPMを正確に制御することが望ましく、理想的なFPM動作プロファイルを変化される熱過渡および他の動作変数や環境変数の可能性を低減または制限するためにはこの制御が望ましい。
【0037】
上記の利点は、主に、各ストローク内のFPM動作プロファイルの正確かつリアルタイムの制御に一般に必要とされる一連のステップが複雑であるため、既知の制御方法では完全に実現することはできない。これらのストローク内制御ステップは、典型的には以下を含む。
1.実際のFPM動作を示す動的変数の測定
2.測定変数のデジタル値への変換
3.デジタル値のダイナミックコントローラへの送信
4.測定されたFPMの位置または時間に基づく目標制御変数の算出
5.目標制御変数の誤差項の算出
6.目標の応答(例えば、LEMSによってFPMに加えられる目標電磁力)の算出
7.LEMSによってFPMに加えられる目標電磁力を達成するための、LEMS内のコイル当たりの目標電流の算出
8.LEMS内のコイル当たりの実際の電流の測定
9.LEMSのコイル当たりの電流誤差項の算出
10.各コイルゲートドライバで実行されるスイッチング応答の算出
11.LEMSおよびパワーエレクトロニクスの電流制限を観察し、各コイルゲートドライバでのスイッチング応答の実行
【0038】
これらのステップは、典型的には、LTFSおよび/または完全なLPSの最適な動作のために目標制御変数の誤差項を十分に低減するために、各ストロークの過程で順次または独立して複数回繰り返すことができる。
【0039】
多くの従来技術のシステムおよび方法では、FPMのストローク内制御を実行するために存在する。例えば、欧州特許公報EP1740804には、以下のステップを含むFPMのストローク内制御のための制御方法が開示されている。
1)ストローク中にFPMに作用する力を予測すること。
2)FPMがストロークに沿ったある位置で所望の状態に到達するのに必要な電磁力を推定すること。
【0040】
このような従来技術のシステムには、以下の2つの欠点がある。
【0041】
第1に、それらは、電流需要制御マージン(Current Demand Control Margin)を含む
過去のシステム性能を考慮して、有効な制御に必要な電流需要制御マージンを維持するために、フューチャ(将来の)ストロークの制御を適切に調整することができない。結果として、このような制御システムは、飽和する傾向がある、すなわち、要求された電流が、電流を供給するLEMSおよび/またはパワーエレクトロニクス回路および装置の容量を超え、結果として、ストローク内コントローラによって生成される電流需要がさらに変化しても、LEMS内のコイルに流れる電流を適応的に変化させることができない。
【0042】
第2に、それらは、複数の連続ストロークにわたるシステム変化および傾向を適切に予測および補償することができず、複数のストロークにわたる最適なシステム性能を達成または維持することができない。
【0043】
欧州特許公報EP1740804のような多くの従来技術では、所定のストロークの間にFPMの性能に関する測定を実行するかまたはデータを取得し、測定が実行される同じストローク内でFPMの動作を調整することで、FPMのストローク内制御に焦点を当てた制御システムが提案されている。したがって、欧州特許公報EP1740804に開示されるような方法は、現在のストロークの後にシステムの動作および性能最適化に関係する、すなわち、現在のストロークに沿った特定の位置で所望の基準条件または状態に到達するために、効果が限定的な電磁力を印加することでFPMの移動質量の軌道を変化させることを目的としており、完全なストロークコントローラとしては動作しない。
【0044】
したがって、フリーピストンムーバのフューチャ(将来の)ストロークに対する制御パラメータの適切なセットを決定することにより、電流需要制御マージンを維持し、経時的にシステム変化を補償する、上記の2つの欠点を克服する改善された方法が求められている。
【0045】
本発明の説明のために、以下の追加の専門用語定義を用いる。
【0046】
フリーピストンムーバ制御システム(Free Piston Mover Control System):1つまたは複数のフリーピストンムーバが組み込まれたLPSのための制御システム。フリーピストンムーバ制御システムは、1つまたは複数のフューチャストロークコントローラ(Future Stroke Controller)および1つまたは複数のインストロークコントローラ(In-Stroke Controller)を含み、以下も組み込むことができる。
同期コントローラ
ロギング、分析および診断コントローラ
各FPM用の電流コントローラ
【0047】
フューチャストロークコントローラ(Future-Stroke Controller):その目的は、外部の需要入力(例えば、ハイブリッド車両のパワートレイン制御ユニットなどの自動化されたコントローラによって、またはLPSのユーザによって生成される電力出力に対する需要)を満たし、次の制御パラメータセット(Control Parameter Set;COPS’)を生
成し、これをインストロークコントローラに発行することによって、LPSの最適なシステム性能に寄与することである。2つ以上のFPMが組み込まれたLPSの場合、最適なシステム性能には、同期誤差の最小化が必要となる場合がある。最適なシステム性能はまた、予想される将来の需要入力(例えば、LEMSおよび/またはLTFS内の表面および材料の温度、ならびに燃料供給、充填空気および軸受サブシステムの動作に使用されるガスリザーバの圧力)の準備時にシステム状態の維持が必要となる場合がある。
【0048】
フューチャストロークコントローラは、次の制御変数目標関数CVt(BV)’、次のストローク閾値関数ST(BV,CV)’のうちの1つ以上を生成するために、遅延入力、同期コントローラ、およびロギング、分析および診断コントローラのうちの1つ以上から入力を取得する制御目標関数ジェネレータ(Control Target Function Generator)を
含む。そして、遷移条件(Transition Condition;CTC’)のセットが、インストロークコントローラによる次の制御パラメータセットの使用期間を決定する。制御目標関数ジェネレータはまた、フィードフォワード電流関数ジェネレータによって適用される前に、次の制御変数目標関数CVt(BV)’によって説明される動的動作プロファイルを達成するために必要とされる予想電流値に対応する「ベースライン」の次のフィードフォワード電流関数(「QFF0(BV,CV)’」と称する)を生成してもよい。
【0049】
また、フューチャストロークコントローラは、複数のストロークの過程にわたるインストロークコントローラの動作に応答して修正された、次のフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)’を生成するためにインストロークコントローラ内のCVフィードバックコントローラからの入力を取り得る、フィードフォワード電流関数ジェネレータを有してもよい。
【0050】
また、フューチャストロークコントローラは、適応された次のフィードバック項関数FBT(BV,CV)’を生成するフューチャストロークコントローラ内のフィードフォワード電流関数ジェネレータからの入力を取り得るフィードバック項関数ジェネレータを有してもよく、これにより、複数のストロークの過程にわたる次のフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)’の変化を考慮することができる。
【0051】
フューチャストロークコントローラは、平均値モデル(Mean Value Model)ベースの手法によって制御パラメータセットの1つまたは複数の構成要素を生成することができる。MVMベースのアプローチは、典型的には、各離散ストローク内の変動を無視し、1つまたは複数のストロークにわたる平均値に基づいてすべてのプロセスおよび効果を取り扱う。
【0052】
フューチャストロークコントローラは、ロギング、分析および診断コントローラによっ
て提供されるマルチストロークの履歴および傾向分析データを参照して、次の制御パラメータセットの1つまたは複数の構成要素を生成することもできる。
【0053】
フューチャストロークコントローラのインストロークコントローラとの重要な相違点は、フューチャストロークコントローラの次の制御パラメータセット(COPS’)出力は、ストロークごとに生成してストロークコントローラに送信する必要がない一方で、インストロークコントローラの電流需要出力は典型的にはストロークごとに数回更新されることである。したがって、フューチャストロークコントローラは、インストロークコントローラと比較してより低い計算ループレートで動作するマルチレートコントローラとして機能し得る。したがって、インストロークコントローラとフューチャストロークコントローラの機能を分割することにより、これらのコントローラごとに別個の、区別された、専門的な方法およびプロセッサアーキテクチャを適用することができ、これにより、フューチャストロークコントローラの機能がインストロークコントローラの機能を実行するように設計されたプロセッサアーキテクチャによって実行された場合に可能になるよりも、より最適化された次の制御パラメータセットを提供できる。例えば、次の制御パラメータセットの生成および調整に対する平均値モデルベースのアプローチが複雑になると、これをインストロークコントローラに適用できなくなるため、フューチャストロークコントローラなどのより高度な制御および監視システムに好適である。
【0054】
また、インストロークコントローラでは、機能が1つまたは複数の単純な計算ステップおよびフィードバック制御ループの迅速な繰り返しに対する制限を課すことがあり、通常、ストロークあたり2回以上の動作中断が発生しないが、この機能分離により、インストロークコントローラの性能を強化できる。
【0055】
需要入力:例えば、電力出力、動作周波数、動作ストローク長、圧縮比、圧縮率、作業流体流量、またはそれらの組み合わせなど、LPSからの必要な出力を指定するFPMコントローラへの高度なまたは監視の入力は、1つまたは複数のFPMの動作の制御を介して達成される。
【0056】
需要入力は、LPSのエンドユーザによって、または例えばエンジン制御ユニット(ECU)もしくはハイブリッド車両のパワートレイン制御ユニット(PCU)などの別の自動化されたコントローラによって生成され得る。
【0057】
需要入力は、LPSの1つまたは複数の所定の動作点に対応する出力を生成するために、追加のストロークコントローラに対する要件を示す1つまたは複数の信号を含む。さらに、需要入力は、予想される将来の需要入力の準備ができている状態でシステム状態を維持するために、追加のストロークコントローラがLEMSを操作することを可能にする1つまたは複数の信号を含む。
【0058】
共通の需要入力信号は、各々が共通のリニア電力システム内のフリーピストンムーバを制御する複数のリニア電力コントローラに提供されてもよく、その結果、これらの連続電力コントローラは、共にリニア電力システムの「分配制御ユニット」として機能する。
【0059】
インストロークコントローラ(「プレゼントストロークコントローラ(Present Stroke
Controller)」とも称する):その目的は、電流コントローラに入力される電流需要出
力を生成することによって、現在のストローク内の1つまたは複数の制御変数誤差を最小化することである。電流需要出力は、コイル内の電流を変調するために使用され得る任意の信号、すなわち、電圧信号、電流信号、または当業者に公知の任意の他の適切な電気信号を意味する。
【0060】
ストロークイベントの終了後に、インストロークコントローラは、現在使用されている制御パラメータセットの構成要素を次の制御パラメータセットの対応する構成要素に置き換えることができる。この置換は、各ストローク終了イベント後のストロークの間に行われてもよい。あるいは、この置換は、制御パラメータ遷移条件(Control Parameter Transition Condition)のセットにおいて指定された基準を満たした後に、2つ以上のストロークの後に実行されてもよい。
【0061】
インストロークコントローラは、権限縮小コントローラ(Reduced Authority Controller)または低権限コントローラ(Low Authority Controller:LAC)として動作してもよい。
【0062】
CVフィードバックコントローラ(CV Feedback Controller):制御変数エラーに基づいて電流遅延Qtの成分を算出するインストロークコントローラ内の閉ループフィードバックコントローラ。フィードバックコントローラは、「比例-積分-微分(「PID」コントローラとも称する)、または状態空間モデルベースのコントローラなどのいくつかのタイプの多入力多出力(MIMO)コントローラのうちの1つである。
【0063】
電流コントローラ(Current Controller):その目的は、LPS内のLEMの1つまたは複数の電気コイルを流れる測定電流値(「Qm」と称する)と、電流コントローラ内の電流フィードバックコントローラによってインストロークコントローラから入力される電流受領Qtとの差を最小化することである。
【0064】
電流フィードバックコントローラは、ゲートスイッチングコマンド信号をゲートコントローラに送信し、次にゲートコントローラは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor;IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、トラ
イアック(Triode for Alternating Current;TRIAC)、ソリッドステートリレー(Solid State Relay;SSR)、または他のタイプの電力リレーなどの少なくとも1つの
回路スイッチング素子を含む電流スイッチング装置に電圧を印加する。電流スイッチング装置の動作は、LPS内のLEMの少なくとも1つの電気コイル内で電流を流すかまたは変化させる。
【0065】
電流コントローラは、個々のコイル内に流れる電流が他のコイルから独立するように個々のコイル内に流れる電流を制御してもよい。この場合、電流需要Qt入力(すなわち、インストロークコントローラからの出力)は、独立した電流需要値のセット、すなわち、電流値のセット、電圧値のセット、または任意の他の適切な値のセットに対応し、それぞれが個々のコイルにおける必要な電流に対応する。
【0066】
電流コントローラは、直列に接続されたコイルの各グループ(各グループが「相」)内の電流が他のものから独立しており、LEMが「N相」(Nは整数)機械として動作し、コイルのグループ内を流れる電流を制御することができる。Nが1、2、3および6であるN相機械は、この分野の当業者に周知である。この場合、電流需要Qt入力(すなわち、インストロークコントローラからの出力)は、独立した電流需要値のセット、すなわち、直列に接続されたコイルの各グループにおける必要な電流に対応する、目標電流を算出することができる値または値のセットに対応する。
【0067】
代わりに、相ごとの電流需要は、ステージ内のトランスレータの測定された位置を参照することによって、総需要電流Qtまたは「Q電流需要」から決定されてもよい。このように多相電気機械における相電流需要への「Q電流需要」のマッピングは、転流として知られており、この分野の当業者に周知である。
【0068】
電流需要は、コイルまたはコイルのセットにおける目標電流を計算することができる値または値のセットとすることができる。例えば、N相機械の場合、電流需要はQ電流需要に対応し、固定子に対する並進器位置を参照することによって、相当たりの個々の電流需要を計算することができる。したがって、独立して制御されたコイルを有する機械の場合、(たとえば、必要な力出力に関連する)総電流需要を生成することができ、固定子に対する並進器位置を参照して、コイル当たりの個々の電流需要を算出することができる。
【0069】
同期コントローラ(Synchronisation Controller):その目的は、FPMの同期誤差を最小化することである。これは、例えば、いくつかの理由で望ましい場合がある。
・LPSを経由して周囲構造に伝えられる正味の周期的な力を低減し、それによってLPSのノイズおよび振動を低減し、LPSの信頼性および動作寿命を向上させる。
・2つのFPMが共通のLTFS(例えば、対向するピストンFPLG)を共有して、2つのFPMの同期動作の結果として共通のLTFS内の作業チャンバの同時かつ追加の容積変化を達成し、それによって制御された一貫した圧縮または膨張プロセスを達成する。
【0070】
同期コントローラの機能は、フューチャストロークコントローラ内で、またはFPMコントローラの一部を形成する別個のコントローラとして実行されてもよい。
【0071】
ロギング、分析および診断コントローラ(Logging, Analytics and Diagnostic Controller;「LADコントローラ」とも称する):その目的は、(i)生データ、ならびにL
PSまたは構成要素の最近の性能、現在の状態、および予想される残り動作寿命が推定され得る後処理データおよび分析を提供すること、ならびに(ii)警告および故障状況を識別し、制御目標関数ジェネレータの入力、COPS繊維条件のトリガ、ストローク終了イベントのトリガ、システムシャッドダウンコマンドなどの制御出力を生成することによって、損害およびシステム障害のリスクを低減することを含むコントローラ。
【0072】
LADコントローラは、フューチャストロークコントローラからのCOPSデータ、測定された制御変数、測定されたベース変数、および他のセンサ出力を含む生データの複数のチャネルを記録することができる。LADコントローラは、外部ソース、例えば、環境データ、ローカルデータ、および車両間データからのデータを記録および処理することができる。
【0073】
後処理および分析方法は、履歴データの傾向分析、閾値分析、ヒストグラム分析、統計プロセス制御、ならびに人工知能の新分野において一般に適用される高度なパターン識別および認識分析技術を含む。そのような傾向およびパターン分析は、熱過渡現象、摩耗、腐食、堆積、疲労、材料脆化、燃料変動、およびシステムの外部の動的環境要因などの要因による、複数のストロークにわたる性能の変化を示す。
【0074】
LADコントローラは、生データ、後処理済みデータ、および/または分析結果(「LAD」とも称する)をフューチャストロークコントローラおよび/またはインストロークコントローラに、ローカルもしくはリモートの記憶もしくは決定機能に提供し、これらの機能に基づいて、システム障害警告、システムステータス警告、または他のシステム更新を記録または送信することもできる。
【0075】
制御パラメータセット(Control Parameter Set;「COPS」とも称する):CVt
(BV)と、ST(BV,CV)、QFF(BV,CV)、FBT(BV,CV)およびCTCのうちの1つまたは複数とを含む、インストロークコントローラによって使用される制御関数および/または制御パラメータのセット。
【0076】
次の制御パラメータセット(「COPS’」とも称する):COPS遷移条件が満たされた場合に、インストロークコントローラによって使用される関数のセット。CVt(BV)’と、ST(BV,CV)’、QFF(BV,CV)’、FBT(BV,CV)’およびCTC’のうちの1つまたは複数とを含む。
【0077】
COPS遷移条件(COPS Transition Condition;「CTC」とも称する):COPS
をCOPS’にいつ置換するかを決定するためのインストロークコントローラによって適用される論理条件のセット。これらは、例えば、(i)COPSが使用されたストロークの累積数、(ii)ベース変数の定義された制限値、(iii)制御変数または制御変数誤差の定義された制限値、(iv)定義された最大累積持続時間、(v)システム温度、同期誤差、またはLADコントローラ、同期コントローラからの他の入力を含むシステム性能の他の尺度を含む。フューチャストロークコントローラ、インストロークコントローラ、電流コントローラ、またはセンサ。
【0078】
ベース変数(Base Variable;「BV」とも称する):変数、典型的にはFPMの位置
または経過時間は、典型的には、本ストローク内の任意の時点に測定可能または算出可能である。
【0079】
測定ベース変数(Measured Base Variable;「BVm」とも称する):1つ以上のセンサから導出されるベース変数の測定値。
【0080】
制御変数(Control Variable;「CV」とも称する):FPM動作、LPS性能(例えば、FPM位置、FPM速度、FPM加速、作業チャンバ圧力、作業チャンバ入口/排出流量、または作業流体温度)またはLPS状態(例えば、FPM動作エネルギーと、所与の時点におけるLEMSおよびLTFSに蓄積される他の形態のエネルギーとを含む総システムエネルギー)を示す測定可能または算出可能な変数は、LEMに印加される電流によって影響を受ける可能性があり、典型的には、現在のストローク内の任意の時点に測定可能である。
【0081】
目標制御変数(Target Control Variable;「CVt」とも称する):その値がその時
点におけるベース変数の関数であるストローク内の任意の時点における制御変数の目標値。目標制御変数は、典型的には、インストロークコントローラの設定値または需要入力である。
【0082】
測定制御変数(Measured Control Variable;「CVm」とも称する):1つ以上のセ
ンサから導出される制御変数の測定値。
【0083】
目標制御変数関数(Target Control Variable Function;「CVt(BV)」とも称する):少なくとも1つの目標制御変数が、少なくとも1つの測定ベース変数を参照して任意の時点に決定されることを可能にする決定論的関数。CVt(BV)関数は、いくつかの形態で、例えば、(i)測定ベース変数を参照して目標制御変数を決定するための、BV値および対応するCV値の表セット、(ii)数式またはアルゴリズム、(iii)LPSのシミュレーションモデル、を参照して検索される。各場合において、関数は、少なくとも1つの測定ベース変数の少なくとも1つの目標制御変数の論理的かつ決定論的なマッピングを、現在のストロークの間に提供する。
【0084】
制御変数誤差(Control Variable Error;「CVe」とも称する):本発明のストローク内の任意の時点における制御変数(すなわち、[CVm-CVt]または[CVt-CVm])の目標値と測定値との差。
【0085】
ストローク開始(Start of Stroke;「SOS」とも称する):前のストロークのスト
ローク終了イベントに対応するイベント。
【0086】
ストローク終了(End of Stroke;「EOS」とも称する):ストローク遷移閾値条件
またはストローク遷移トリガ条件のいずれかが満たされるときに満たされるイベント。
【0087】
ストローク遷移閾値条件(Stroke Transition Threshold Condition):測定されたベ
ース変数がストローク遷移閾値に等しいとき、または測定された制御変数がストローク遷移閾値に等しいときの条件。
【0088】
ストローク遷移処理条件(Stroke Transition Trigger Condition):例えば、同期コ
ントローラからの同期トリガ(「STR」とも称する)またはLADコントローラからの診断トリガ(「DTR」とも称する)のような、インストロークコントローラの外部のトリガ信号またはイベントによってストローク遷移が引き起こされる代替ストローク遷移条件。
【0089】
ストローク遷移閾値(Stroke Transition Threshold Value;「ST」とも称する):
ベース変数または制御変数の閾値は、ストロークイベントの終了を決定するために、ストロークコントローラ内のストローク遷移制御ステップによって使用される。
【0090】
ストローク閾値関数(Stroke Threshold Function;「ST(BV,CV)」とも称す
る):少なくとも1つの測定ベース変数および/または測定制御変数を参照して、任意の時点に少なくとも1つのストローク変換閾値を決定することを可能にする決定関数。ST(BV,CV)関数は、多数の形式、例えば、(i)ST値および対応するCV値および/またはBV値の表セットとして表現され、STは、測定ベース変数および/または測定制御変数値、(ii)数式またはアルゴリズム、(iii)LPSのシミュレーションモデル、を参照して検索される。各場合において、関数は、現在のストロークの間に、少なくとも1つの測定ベース変数または測定制御変数の少なくとも1つのストローク変換閾値への論理的かつ確定的なマッピングを提供する。
【0091】
次の目標制御変数関数(Next Target Control Variable Function;「CVt(BV)
’」とも称する):フューチャストローク中にインストロークコントローラによって使用されると、フューチャストロークコントローラによって決定される目標制御変数関数。
【0092】
次のストローク閾値関数(Next Stroke Threshold Function;「ST(BV,CV)’」とも称する):将来のストローク中にインストロークコントローラによって使用され、フューチャストロークコントローラによって決定される、ストローク閾値関数。
【0093】
フィードフォワード電流関数(Feed Forward Current Function;「QFF(CV,B
V)’」とも称する):少なくとも1つのフィードフォワード電流値が、少なくとも1つの測定ベース変数および/または測定制御変数を参照して任意の時点に決定されることを可能にする決定関数。QFF(BV,CV)関数は、いくつかの形態では、例えば、(i)QFF値の表セットであり、測定基本変数および/または測定制御変数値を参照してQFF値を決定可能な対応するCV値および/またはBV値、(ii)数式またはアルゴリズム、(iii)LPSのシミュレーションモデル、として表現される。各場合において、関数は、現在のストローク中の少なくとも1つのフィードフォワード電流値への少なくとも1つの測定ベース変数または測定制御変数の論理的かつ決定論的なマッピングを提供する。
【0094】
次のフィードフォワード電流関数(Next Feed Forward Current Function;「AFF(
CV,BV)’」とも称する):フューチャストロークコントローラによって決定され、フューチャストローク中にインストロークコントローラによって使用されるフィードフォワード項関数。
【0095】
フィードバック項関数(Feedback Terms Function;「FBT(BV,CV)」とも称
する):少なくとも1つのフィードバック項(例えば、PIDコントローラにおける比例ゲイン項、積分ゲイン項、または微分ゲイン項)が、少なくとも1つの測定ベース変数および/または測定制御変数を参照して任意の時点に決定されることを可能にする決定関数。FBT(BV,CV)関数は、いくつかの形態で、例えば、(i)フィードバック項値の表セットであり、測定ベース変数および/または測定制御変数値を参照してフィードバック項を決定可能な対応するCV値および/またはBV値、(ii)数式またはアルゴリズム、(iii)LPSのシミュレーションモデル、として表現される。各場合において、関数は、現在のストローク中の少なくとも1つのフィードバック項値への少なくとも1つの測定ベース変数または測定制御変数の論理的かつ決定的なマッピングを提供する。
【0096】
次のフィードバック項関数(Next Feedback Terms Function;「FBT(BV,CV)’」と称する):フューチャストローク中にインストロークコントローラによって使用され、フューチャストロークコントローラによって決定されるフィードバック項関数。
【0097】
電流需要(Current Demand;「Qt」とも称する):電流コントローラに発行される目標電流需要出力は、典型的には、フィードバック電流需要QFBとフィードフォワード電流需要QFFの和または他の数学的組み合わせから構成される。目標電流需要出力とは、コイル内の電流を変調するために使用される任意の信号、すなわち、電圧信号、電流信号、または当業者に周知の任意の他の適切な電気信号を意味する。
【0098】
フィードバック電流需要(Feedback Current Demand;「QFB」とも称する):電流
需要Qtの成分は、少なくとも1つのCVフィードバックコントローラの出力の総和または他の数学的組み合わせによって、インストロークコントローラ内で算出される。
【0099】
フィードフォワード電流需要(Feed Forward Current Demand;「QFF」とも称する
):Qtの成分は、測定されたベース変数および/または測定された制御変数を参照して、フィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)を使用してインストロークコントローラ内で算出されるが、典型的には、制御変数誤差項を参照しない。
【0100】
電流制限(Current Limit;「QCL」とも称する):瞬時ピークまたは平均ピークの
電流容量制限は、電流コントローラまたは電流スイッチング装置などの構成要素、またはLEM内のコイルに固有のものである。電流が正の方向に流れ、正の値で測定されるとき、対応する電流制限も正の値を有し、ポジティブ電流制限(Positive Current Limit;「QCL+」とも称する)と呼ばれる。電流が負方向に流れ、負の値で測定されるとき、対応する電流制限も負の値を有し、ネガティブ電流制限(Negative Current Limit;「QCL-」とも称する)と呼ばれる。
【0101】
電流需要制御マージン(Current Demand Control Margin;「QCM」)電流制限と電
流制限との間の最小絶対差、すなわち、より小さな[QVL+-Qt]および[Qt-QCL-]。電流需要制御波形がゼロ以下であるとき、電流コントローラは飽和していると呼ばれる。この条件において、電流スイッチング装置の回路保護機能は、LEMコイル電流をQCL+またはQCL-に制限することができ、Qtの小さな変化は、1つまたは複数のLEMコイルに流れる電流にほとんどあるいは全く影響を及ぼさない。結果として、インストロークコントローラは、QCMがゼロを超えて上昇するまでFPMに作用する力を変調することができない。したがって、正の電流需要制御波形を維持することは、FP
Mの各ストロークにわたって連続的にピストン動作の制御をインストロークコントローラが発揮できるように、フューチャストロークコントローラにとって重要な機能である。
【0102】
リードFPM(Lead FPM):バランスのとれたFPMの組が組み込まれたLPSでは、先頭のFPMは、最初にそのストローク伝達閾値条件に達するFPMである。理想的な完全平衡システムでは、LPS内の各LEMSおよび各LTFSは、物理的に同一であり、各FPMは、同一のCOPSの適用を通じて同等のFPMコントローラによって制御され、各FPMは、各ストローク遷移閾値条件を同時に到達する。理想的ではないシステムでは、LEMSシステムおよびLTFSシステムの各対の間の小さな物理的差は、結果として、一方のFPMが他方のFPMよりも先にそのストローク伝達閾値条件に到達する結果として、各FPMに作用する異なる力をもたらす。例えば、2つの別個のFPMに作用する2つの別個の燃焼室を有するFPLGシステムでは、各燃焼室における燃焼プロセスのタイミングおよび完全性の差異は、各FPMに作用する力が異なる可能性がある。
【0103】
ラギングFPM(Lagging FPM):バランスのとれたFPMの組が組み込まれたLPS
では、リードFPMがそのストローク伝達閾値条件に達しても、ラギングFPMはストローク伝達閾値条件に達しない。
【0104】
FPM同期誤差(FPM Synchronisation Error;「SE」、「SECV」、「SEBV
」とも称する)(i)リードFPMの測定された制御変数と、バランスのとれたFPMの組が組み込まれたLPSにおけるラギングFPMの対応する測定された制御変数との間の差であり、それぞれ、リードFPMがSECVと呼ばれるストローク終了イベントに到達した時点に測定される。または、(ii)リードFPMの測定されたベース変数と、バランスのとれたFPMの組が組み込まれたLPSにおけるラギングFPMの対応する測定されたベース変数との差であり、リードFPMがSEBVと呼ばれるストローク終了に達する時点に測定される。
【0105】
センサ:ベース変数(例えば、位置または時間)、制御変数例えば、位置、速度、加速度、または圧力)、またはシステム性能を示すか、またはシステム性能に影響を及ぼす別の変数(例えば、温度)を測定し、電気信号を発生する装置。センサ装置の例として、リニアエンコーダ(光学的、磁気的、およびホール効果型を含む)、ロータリーエンコーダ(光学的、磁気的、およびホール効果型を含む)、加速度計、圧力センサ、および近接装置(容量性、誘導性、または光学的型を含む)が挙げられる。この定義において、インストロークコントローラに対して経過時間または絶対時間信号を測定またはレポートするシステムクロックも、センサとみなされる。
【0106】
センサコントローラ:センサからの電気信号を受信、処理、変換、または送信する装置。
【0107】
ゲートコントローラ:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、トライアック(TRIAC)、ソリッドステートリレー(SSR)、または他のタイプの電力リレーなどの電力スイッチング装置に電圧を印加する装置。
【0108】
統合ゲート(Integrated Gate)およびセンサコントローラ:ゲートコントローラおよ
びセンサコントローラの機能が組み合わされた装置。本発明では、フリーピストンムーバを制御する方法が提供され、この方法は、以下のステップを含む。目標制御変数の閉ループ制御のための制御パラメータセットを生成するステップであり、このセットは目標制御変数関数と以下の1つまたは複数を含み、
ストローク閾値関数
フィードフォワード電流関数
フィードバック項関数
制御パラメータセット遷移条件
制御パラメータセットを、制御されるストロークの開始前にインストロークコントローラに送信するステップと、フューチャストロークコントローラを使用してフリーピストンムーバの後続のストロークのために制御パラメータセットの構成要素のうちの1つまたは複数を修正するステップと、修正された制御パラメータセットを、任意のフューチャストロークの制御のためにインストロークコントローラに送信するステップ。
【0109】
本発明は、欧州特許公報EP1740804とは対照的に、FPMのフューチャストロークのために制御パラメータセットを適応させて入力需要信号に応答させ、十分な電流制御振幅が維持されるようにし、経時的なシステム変化を補償するフリーピストンムーバのためのフューチャストロークコントローラである。
【0110】
本発明が複数のリニア電力システム用途において提供する重要な利点は、以下を含む。・効率の向上
・振動の低減
・起動時間が短縮
・動作寿命の長期化
・メンテナンスコストの低減
・FPLG用途における排気の低減
・FPLG用途における燃料の柔軟性
これらは、インストロークコントローラによって使用される制御パラメータセットに適用される継続的な適応によって実現される。これらの適応は、以下のように、LPSシステムの特性および入力に対する経時的な変化を補償するために、フューチャストロークコントローラによって計算および生成される。
・入力需要信号の変動
・熱過渡現象
・腐食、脆化、表面堆積および他の形態の材料または表面劣化
・外部加速度(external acceleration)および振動負荷ならびにセンサおよび制御シス
テムの性能に影響を及ぼす電磁ノイズなどの環境要因
・FPLGにおける燃料組成の変動
・FPLGにおける、壁温度、充填空気温度、筒内充填動作、燃料/空気当量比、燃料/空気混合、および以前のサイクルからチャンバ内に存在する燃焼および未燃残留排気ガスの割合など、燃焼室内の条件の変動
【0111】
マルチFPMシステムでは、バランスのとれたFPM動作の同期を改善することによって、振動の低減が達成される。この結果は、同期誤差を補正するための各FPMコントローラの次の目標制御変数関数に対して行われる調整を含む、次の制御パラメータセットに対するフューチャストロークコントローラによって行われる適応調整を通じて達成される。
【0112】
1つまたは複数のFPMが組み込まれた種々のLPS製品において、ストローク中のFPM動作は、非線形変化を示す力によって作用される、すなわち、力は、FPM位置とともにまたは時間とともに線形的に変化しない。非線形変化を示す力の例は、以下を含む。・LPS内でLEMSによって生成される電磁コギング力
・LEMS内のリニアベアリングおよびリニアシールに関連付けられる摩擦力
・バルブ開閉イベントの結果としてのLPS内のLTFS内のガス力
・FPLGにおける、燃焼反応によって生じるガス力
【0113】
上記の場合、これらの非線形力は、以下により構成される。
・1サイクルから次のサイクルまで実質的に同じであり、1つまたは複数の以前のストロークにおける変数の測定に基づいて、および/またはLPS内のプロセスのシミュレーションによって予測可能な、有意な割合。
・実質的に予測不能であり、典型的にはLTFS(例えば、FPLG内のサイクル間燃焼変動)内の複雑なおよび/または無秩序なプロセスの結果として変化するより小さい割合。
【0114】
非線形挙動を示すシステムの制御は、多くの種類のコントローラにとって困難であることは当業者に周知なところである。例えば、PIDコントローラは、制御変数の非線形変化に起因して生じる大きな誤差項に起因してアンダーシュートまたはオーバーシュート制御応答を生じる傾向がある。
【0115】
フューチャストロークコントローラによって適用される適応制御方法は、FPM動作制御精度を改善し、インストロークコントローラがアンダーシュートまたはオーバーシュート制御応答を生じる傾向を低減する。これは、好ましくは、インストロークコントローラによるフィードフォワード電流需要項の使用を通じて達成され、所望の動作プロファイルに必要とされる総電流需要の近似を表し、より小さい割合の電流需要がインストロークコントローラ内のCVフィードバックコントローラによって満たされる。フィードフォワード電流需要は、測定されたベース変数および/または測定された制御変数ならびにフィードフォワード電流関数を参照して、インストロークコントローラ内のフィードフォワード電流計算ステップによって決定される。フィードフォワード電流関数は、今度は、インストロークコントローラによって以前のストロークで生成されたフィードバック電流需要に基づいて、フューチャストロークコントローラ内のフィードフォワード電流関数ステップによって生成される。この適応により、フィードフォワード電流関数は、所与のFPM動作プロファイルを達成するのに必要な電流需要の決定的かつ予測可能な割合を厳密に反映するように、複数のストロークの過程で調整される。必要な電流需要の残りの予測不能な割合は、典型的には、本質的により小さく、より線形であり、したがって、インストロークコントローラ内のCVフィードバックコントローラによってより正確に生成することができる。
【0116】
本発明の制御方法および装置は、FPMに加えられる電磁力を変調することによって、LPSの最適なシステム性能を達成するために一連のストローク(例えば、1ストロークにおける所与の時間または位置における速度軌道によって定義される)の間、FPMムーバの動きを正確に制御するためのFPMムーバの制御へのアプローチを定義する。これは、LTFS内に周期的な燃焼イベントが存在するか否かに関わらず、広範囲のLPS用途に適用可能である。
【0117】
したがって、LTCに対する制御課題の非線形性質に起因して、上述の利点のいくつかがFPLG用途に特有のものであるが、本発明は、本明細書で示す例を含む広範囲のLPS用途に適用可能であり、かつ有用であることが証明される。
【0118】
本発明の方法は、以下のステップをさらに含む。
制御パラメータセットの生成後のストローク中のフリーピストンムーバのパフォーマンスを示すベース変数をサンプリングするステップ。
目標制御変数関数を参照して測定されたベース変数を使用して少なくとも1つの目標制御変数を生成するステップ。
測定された制御変数および目標制御変数を使用して少なくとも1つの制御変数誤差を決定する。
【0119】
本方法は、制御変数誤差を使用して電流コントローラに入力される電流需要出力を生成
するステップをさらに含んでもよい。
【0120】
本方法は、以下のステップをさらに含む。
第2のフリーピストンムーバのパフォーマンスを示す第2のベース変数をサンプリングするステップ。
第2の目標制御変数関数を参照して、測定された第2のベース変数を使用して少なくとも1つの第2の目標制御変数を生成するステップ。
測定された第2の制御変数および第2の目標制御変数を使用して少なくとも1つの第2の制御変数誤差を決定するステップ。
第2の制御変数誤差を使用して第2の電流コントローラに入力される電流需要出力を生成するステップ。
次のストロークまたは任意のフューチャストロークに影響を及ぼし得るフューチャストロークコントローラを使用してフリーピストンムーバのフューチャストロークのために第2の目標制御変数関数を修正するステップ。
【0121】
さらなるステップとして、以下が含まれる。
FPM同期誤差の測定は、第2のムーバの測定された制御変数または測定されたベース変数と第1のムーバの同等の測定された制御変数または測定されたベース変数との間の差を反映し、一方または両方のムーバの測定された変数が所定のストローク遷移閾値に等しくなったときに、測定するステップ。
需要入力を提供するステップ。
ここで、フューチャストロークコントローラは、測定された電流、電流遅延、FPM同期誤差、需要入力のうちの少なくとも1つに基づいて、少なくとも1つのフリーピストンムーバに対する後続のストロークのための制御パラメータセットを修正する。
【0122】
目標制御変数関数は、測定されたベース変数に対応する配列要素を参照することによって目標制御変数を決定可能なベース変数および目標制御変数値の配列とすることができる。
【0123】
現在のストロークおよび少なくとも1つの後続のストロークに対する目標制御変数関数値は、共通の配列に格納することができる。
【0124】
目標制御変数関数は、測定されたベース変数を適用することによって目標制御変数を算出することができる数式とすることができる。
【0125】
目標制御変数関数は、測定されたベース変数を入力することによって目標制御変数を決定することができるシミュレーションモデルとすることができる。
【0126】
第2の目標制御変数関数は、測定された第2のベース変数に対応する配列要素を参照することによって第2の目標制御変数を決定可能なベース変数および目標制御変数値の配列とすることができる。
【0127】
第2の目標制御変数関数は、測定された第2のベース変数を適用することによって第2の目標制御変数を算出することができる数式とすることができる。
【0128】
第2の目標制御変数関数は、測定された第2のベース変数を入力することによって第2の目標制御変数を決定することができるシミュレーションモデルとすることができる。
【0129】
フューチャストロークコントローラは、2つのフリーピストンムーバのための同期コントローラから入力を受信することができる。第1および第2の目標制御変数値への同期変
更は、互いに反対の方向であってもよい。第1および第2の目標制御変数への同期修正は、同じ大きさであってもよい。
【0130】
本発明の方法は、フリーピストンムーバ、インストロークコントローラ、およびフューチャストロークコントローラのうちの1つまたは複数の測定可能な出力を記録するステップをさらに含むことができる。
【0131】
本発明の方法は、診断コントローラを使用して履歴のストローク傾向を監視するステップをさらに含んでもよい。
【0132】
本発明の方法は、任意のコントローラに関連する操作ライセンスの有効性をチェックし、ライセンスが無効である場合、これに限られないが、動作を制限することまたは警告することを含むアクションを行うステップをさらに含んでもよい。
【0133】
本発明の方法は、計算方法で使用する計量を示すデータを通信するステップをさらに含み得る。
【0134】
フィードフォワード電流関数は、ベース変数値の範囲または制御変数値の範囲のフィードフォワード電流需要値を含むこともできる。
【0135】
電流需要は、少なくとも1つのフィードバック電流需要値と1つのフィードフォワード電流需要値とを加算することによって、測定されたベース変数について算出することもできる。
【0136】
フューチャストロークコントローラは、1つまたは複数の測定されたベース変数値に対応するフィードバック電流値の割合を、フィードフォワード電流関数によって測定された各ベース変数値に関連付けられたフィードフォワード電流値に加えることによって、フューチャストロークのためのフィードフォワード電流関数を調節することができる。
【0137】
インストロークコントローラは、フューチャストロークコントローラの計算ループレートの少なくとも2倍の計算ループレートで動作することができる。
【0138】
本発明はまた、上記説明のいずれかによる方法を実施するためのフリーピストンムーバを制御するためのシステムまたは装置を提供し、システムまたは装置は、以下を含む。
電流コントローラ、インストロークコントローラ、およびフューチャストロークコントローラ
電流コントローラは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、トライアック(TRIAC)、ソリッドステートリレー(SSR)、または他のタイプの電力リレーなどの少なくとも1つの回路スイッチング素子を制御するための少なくとも1つのゲートコントローラを含む。
【0139】
インストロークコントローラ内の計算ループレートは、フューチャストロークコントローラ内の計算ループレートの少なくとも2倍とすることができる。
【0140】
ゲートコントローラおよび電流フィードバックコントローラは、同一場所に配置されてもよく、または以下のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されないシリアル通信手段によって物理的に分離および接続されてもよい。
シングルエンドスイッチングの一方向または双方向電気回路。
差動スイッチの一方向または双方向電気回路。
1つ以上の光ファイバおよび関連トランシーバ。
【0141】
ゲートコントローラは、少なくとも非直列化回路およびゲートスイッチング回路をさらに含むことができる。
【0142】
ゲートコントローラは、1つまたは複数のセンサコントローラまたはセンサをさらに含むことができる。
【0143】
本発明は、プログラマブルマイクロコンピュータ上で実行されると上述の方法を実行するように適合されたコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムを提供することができる。
【0144】
また、プログラマブルマイクロコンピュータ上で実行されると上述の方法を実行するように適合され、インターネットに接続されたコンピュータ上で実行されると上述の装置のシステムまたはその構成要素の1つに従ってシステムにダウンロードされるように適合されたコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムを提供することができる。
【0145】
また、上記のコンピュータプログラムを含む、コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
以下の詳細な説明に記載されている実施形態の様々な特徴は、添付の図を参照して検討すると、より完全に理解することができ、同じ番号は同じ要素を指す。
【0147】
図1】断面AA腺を示すLPSの一例の外観図である。
図2】FPMおよびLEMSとLTFSの主要要素を示すAA腺による断面である。
図3】BVが経過時間でありCVが位置であるFPMストロークを示す図である。
図4】BVが位置でありCVが速度であるFPMストロークを示す図である。
図5】BVが位置でありCVが速度であるFPM2ストロークサイクルを示す図である。
図6】LPS内のフリーピストンムーバ用のコントロールシステムの概略図である。
図7】LPS内のフリーピストンムーバ用のコントロールシステム内の構成要素であるコントローラの詳細を示す概略図である。
図8】統合ゲートおよびセンサコントローラを有する電流コントローラの詳細を示す概略図である。
図9】電流需要、電流限界、電流需要制御マージンを示す図である。
図10】複数のストロークにわたってQFBを減少させるQFFの適用例を示す図である。
図11】目標制御変数関数CVt(BV)のテーブルフォームを示す図である。
図12】ストローク閾値関数ST(BV,CV)のテーブルフォームを示す図である。
図13】フィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)のテーブルフォームを示す図である。
図14】CVt(BV)、ST(BV,CV)、QFF(BV,CV)のテーブルフォームを示す図である。
図15】平衡のFPMの組を有するLPS用のコントローラの概略図である。
図16】リモート接続を共有する複数のLADコントローラの概略図である。
【詳細な説明】
【0148】
図1は、リニア電力システム1の一例の機械的アセンブリの簡略化した外観図であり、フリーピストンムーバの動作軸2および断面AAを示している。
【0149】
図2は、LTFSの作業チャンバ4を含む、図1に示されるLPSの例におけるフリーピストンムーバ3ならびにLEMSおよびLTFSの主要な特徴を示す、平面AAを通る断面図である。各々が少なくとも1つのLEMSおよび1つのLTFSを備える多くの代替のLPS実装が可能である。LEMSは、ステージ5と、作業シリンダ8を画定するLPSハウジング6とを含む。この例におけるLPSハウジングの端部は、ハウジング端部構成要素6a、6bによって閉じられる。
【0150】
FPM3は、LEMSのトランスレータとして機能する。図示の例では、FPM3は、LPSハウジング6の周囲のシリンダ8内を移動しながら、固定された中央コア7を通過することができるように端部3aが開放されている。この例では、FPM3は端部3bで閉じられ、作業チャンバ4がシリンダ8内に、LPSハウジング端部6aのシリンダ端壁8aとFPM3の閉じられた端部3bとの間に形成される。
【0151】
フリーピストンリニアジェネレータ(フリーピストンエンジンとも呼ばれる)またはFree Piston Gas ExpanderなどのLPS用途では、作業チャンバ4は、燃焼によって、高圧ガ
スの導入によって、または相変化によって、FPM3の閉鎖端3bに力を印加するために使用され得る。これらのタイプのLPS(例えば、燃料および空気の供給、バルブおよび点火機構)内に含まれ得る関連する特徴は、明確にするために示されていない。
【0152】
図1および図2に示される例示的な実施形態では、2つのさらなる容積4a、4bが、中央コア7とFPM3との間に、FPM3aの開口端の端部に画定される。それぞれはバウンスチャンバ(bounce chamber)として機能し、FPM3の移動によって引き起こされるこれらのチャンバ4a、4b内の圧力の変化は、FPM3の動作エネルギーとバウンスチャンバ4a、4b内の圧縮ガスに蓄えられたエネルギーとの間でエネルギーの交換をもたらす。FPM3は、ステージ5と相互作用してステージ5内を流れる電流に影響を及ぼし、FPM3に作用するリニア電磁力を生成または変化させる1つ以上の磁気透過性または磁化要素(図示せず)を含むように形成される。
【0153】
LPS1が1種類のリニアモータまたはアクチュエータとして機能する場合、ステージ5に入力される電力により、FPM3の動作を引き起こされる。LPS1が1種類のリニアジェネレータとして機能する場合、ステージ-(5-)から出力される電力は、FPM3の動作きによって引き起こされる。
【0154】
作業チャンバ4が燃料エネルギーをFPM3に作用する機械的仕事に変換する燃焼室として作用する場合、LPSの性能は、燃焼反応のタイミング、速度、および完全性、ならびに反応後の作業流体内に残る排気に依存する。これらの特性によるLPSのシステム性能は、時間に伴うFPM3のリニア動作のプロファイルに大きく依存する。
【0155】
このため、FPM3のリニア動作を経時的に制御するためには、モーションコントローラが必要となる。
【0156】
図3および図4は、ベース変数に関連するベース変数(時間または位置など)および制御変数(位置または速度など)がFPM動作と共にどのように変化するかを示し、目標制御変数関数CVt(BV)として説明される関連プロファイルを有する。図3において、ベース変数は時間であり、制御変数は位置である。図4において、ベース変数BVは位置であり、制御変数CVは速度である。
【0157】
目標制御変数関数CVt(BV)を使用して、ベース変数の測定値BVmから目標制御変数CVtを生成することができる。測定値BVmを参照して目標制御変数関数CVt(BV)から決定されたCVtの値の軌跡を、実線9として図3および図4に示す。
【0158】
図3および図4において、破線10は、測定値BVmを参照して、ストローク閾値関数ST(BV,CV)10から各例において決定されたストローク変換閾値の軌跡を示す。図3および図4に示す例では、ストローク変換閾値は、測定された制御変数値と同じ単位であり、ストローク変換閾値条件11は、測定された制御変数CVmがストローク変換閾値STに等しい場合に発生する。
【0159】
ストローク閾値関数ST(BV,CV)の代替の実施形態では、ストローク変換閾値は、ベース変数値と同じ単位である。ストローク変換閾値STは、測定された制御変数値CVmに対するストローク閾値関数ST(BV,CV)(10)から決定され、ストローク変換閾値条件11は、測定されたベース変数BVmがストローク変換閾値STに等しいときに発生する。
【0160】
図5は、この例では完全なサイクルを形成する第1の目標制御変数関数CVt(BV)9および次の目標制御変数関数CVt(BV)’9aを示す。ストローク開始イベント12およびストローク終了イベント13におけるBVの値は、この例では、ストローク閾値関数10、10aに関連して決定される連続的なストローク遷移閾値条件イベント11、11aに対応するように示されている。
【0161】
また、図5は、測定された制御変数値および測定されたベース変数値に関して、点線14によってFPM動作の測定された経路も示されており、制御変数目標関数CVt(BV)9の軌跡からのFPM動作の測定された経路14の発散(divergence)も示されている。この発散は、ストローク17内の測定されたベース変数BVm116について示される制御変数誤差CVe15をもたらす。
【0162】
説明を明確にするため、図示の円に沿って時間の経過に伴うFPM動作を示す時計回りの方向を、矢印18で示す。
【0163】
図6は、本発明によるフリーピストンムーバ19のための制御システムの概略図であり、システムにはフューチャストロークコントローラ20が組み込まれている。この例示的な実施形態では、フューチャストロークコントローラ20は、需要入力ソース21、ロギング、分析および診断コントローラ22、および同期コントローラ27、のそれぞれから信号を受信する。さらに、フューチャストロークコントローラは、インストロークコントローラ23からフィードバック電流QFB信号を受信する。
【0164】
需要入力は、LPSのエンドユーザによって、または例えばエンジン制御ユニット(ECU)もしくはハイブリッド車両のパワートレイン制御ユニット(PCU)などの別の自動化されたコントローラによって生成される。この場合、フューチャストロークコントローラ20は、動作準備完了または需要入力コントローラによって要求または利用される他の入力を示すステータス信号を需要入力コントローラに周期的に発行してもよい。
【0165】
また、図6は、任意のシステムパラメータを監視、ロギング、集約、および通信または報告するためのロギング、分析および診断コントローラ22を示し、このシステムパラメータには、これに限られないが、制御に使用されるか否かに関係なくベース変数、(目標および/または測定された)制御変数ならびに傾向、環境センサ入力、およびストローク数および/または操作時間、コールドスタート数、エラーまたは障害、およびサービスに
対する請求に必要となり得るメトリック、またはライセンスされた使用義務とのコンプライアンスを確保するメトリックなどの実行時メトリック(run-time metrics)が含まれる。
【0166】
フューチャストロークコントローラ20は、次の制御パラメータセット(COPS’)と称する出力のセットをインストロークコントローラ23に定期的に発行し、次の制御パラメータセット(COPS’)は、次の目標制御変数関数CVt(BV)’と以下の1つまたは複数を含む。
次のCOPS遷移条件CTC’のセット
次のストローク閾値関数ST(BV,CV)’
次のフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)’
次のフィードバック項関数QFB(BV,CV)’
【0167】
これらの各出力は、フューチャストロークコントローラへの入力を使用して独立して生成してもよいし、以前のバージョンの出力を基に生成してもよいし、フューチャストロークコントローラへの入力を使用して修正されてもよい。
【0168】
フューチャストロークコントローラは、ロギング、分析および診断コントローラ22によって提供されるマルチストローク履歴および傾向分析データを参照して、および/または同期コントローラ27によって提供される同期誤差SEを参照して、次の制御パラメータセットの1つまたは複数の構成要素を生成することができる。
【0169】
インストロークコントローラ23は、次の制御パラメータセットを、測定されたベース変数の値BVmおよび測定された制御変数の値CVmと共に使用して、電流コントローラ25への入力として発行される電流需要出力Qtを決定する。インストロークコントローラ23は、権限縮小コントローラまたは低権限コントローラ(LAC)として動作してもよい。
【0170】
電流コントローラ25は、電流需要出力Qtを測定されたベース変数の値Bvmおよび測定された電流値Qmと共に使用して、LPS1内の1つまたは複数のリニア電気機械ステータの各コイルまたは相に流れる電流値Qのセットを制御し、この電流値Qには、LPS1内に存在するコイルおよび相の数に従って、別個の独立した電流値が含まれてよい。
【0171】
電流Qのセットは、外部の需要入力21を満たし、LPS1の最適なシステム性能に寄与することを目的として、FPMの動作およびLPS1からの出力をもたらす。
【0172】
図7は、フリーピストンムーバの制御システム内の構成要素である以下を含むコントローラの詳細を示す図である。
フューチャストロークコントローラ20
ロギング、分析および診断コントローラ22
同期コントローラ27
インストロークコントローラ23
電流コントローラ25
【0173】
フューチャストロークコントローラ20内において、制御目標関数ジェネレータ26は、次の目標制御変数関数CVt(BV)’と、次のストローク閾値関数ST(BV,CV)’と、遷移条件(CTC’)のセットとを生成し、これらによって次の制御パラメータセットがインストロークコントローラによっていつ使用されるかが決まる。制御ターゲット関数ジェネレータは、遅延入力21、同期コントローラ27、およびロギング、分析および診断コントローラ22から入力を取り込む。
【0174】
また、フューチャストロークコントローラ20内の制御目標関数ジェネレータ26は、現在のストロークの電流制限制御マージンQCMの値をインストロークコントローラ23から受信してもよいし、これらの値をインストロークコントローラ23によって提供されるQFB値から算出してもよいし、これらの値をLPSから測定されたQm値に基づいて算出してもよい。次のストロークコントローラ20は、次の制御パラメータセットの次の目標制御変数関数および他の構成要素を調整して、十分な電流制限制御マージンQCMが将来のストロークにおいて維持されることを保証することができる。
【0175】
また、制御目標関数ジェネレータ26は、フィードフォワード電流関数ジェネレータ28によって適用される前に、次の制御変数目標関数CVt(BV)’によって説明される動的プロファイルを達成するために必要な予想電流値に対応する「ベースライン」となる次のフィードフォワード電流関数(「QFF0(BV,CV)’」とも称する)を生成してもよい。
【0176】
また、フューチャストロークコントローラ20は、インストロークコントローラ23内の制御変数フィードバックコントローラ33からの入力を取得して適合された次のフォワード電流関数QFF(BV,CV)’を生成することで、複数のストロークの過程でインストロークコントローラ23の動作に応答して修正される、フィードフォワード電流関数ジェネレータ28を有してもよい。この修正は、制御変数フィードバックコントローラ33によってフィードフォワード電流関数ジェネレータ28に通信される、QFB、BVm、および/またはCVmの値の各セットに対して、フィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)内の対応するQFF項に対するQFB値の割合の加算という形態を取ってもよい。
【0177】
フューチャストロークコントローラ20は、ストロークコントローラ20内のフィードフォワード電流関数ジェネレータ28からの入力を取得して適合された次のフィードバック項関数FBT(BV,CV)’を生成することで、複数のストロークにわたる次のフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)’の変化を考慮するよう修正される、フィードバック項関数ジェネレータ29を有してもよい。
【0178】
フューチャストロークコントローラ20は、平均値モデル(MVM)ベースの手法を利用する1つまたは複数の制御方法またはプロセスにより、次の制御パラメータセットの1つまたは複数の構成要素を生成することができ、このMVMベースの手法は、この分野の当業者に周知であり、典型的には、個別のストローク内の変動を無視し、1つまたは複数のストロークにわたる平均値に基づいて全体のプロセスおよび効果を扱う。
【0179】
インストロークコントローラ23は、制御パラメータセットセレクタ(Control Parameter Set Selector)(30)を有してもよい。ストローク終了イベント後に、制御パラメータセットセレクタ30は、インストロークコントローラ23によって使用されている制御パラメータセットの構成要素を、フューチャストロークコントローラ20によって提供される次の制御パラメータセット内の対応する構成要素に置き換えることができる。この置換は、各ストローク終了イベント後のストローク時に行われてもよい。あるいは、この置換は、2つ以上のストロークの後に行われてもよく、このストロークは、インストロークコントローラ23によって現在使用されているCOPS遷移条件において設定されている基準を満たした後に行われる。
【0180】
ストローク遷移コントローラ27は、測定されたベース変数BVmおよび/または測定された制御変数CVmを参照してストローク閾値関数ST(BV,CV)を使用して、ストローク終了イベントのタイミングを決定する。ストロークス遷移コントローラ27は、
例えば、同期コントローラからの同期トリガSTRまたはLADコントローラからの診断トリガDTRなどの、インストロークスコントローラの外部のトリガイベントに基づいて、ストローク終了イベントのタイミングを決定してもよい。
【0181】
ストローク遷移コントローラが、ストローク遷移トリガ条件またはストローク遷移閾値条件に基づいてストローク終了イベントを決定すると、ストローク終了信号EOSが制御パラメータセットセレクタ30および同期コントローラ27に送信される。
【0182】
目標制御変数算出ステップ32は、目標制御変数関数CVt(BV)に基づいて、測定されたベース変数BVmを参照して、目標制御変数CVtを決定し、1つまたは複数の目標制御変数CVtを閉ループの制御変数フィードバックコントローラ33に送信する。
【0183】
CVフィードバックコントローラ33は、制御誤差CVe、典型的には、ターゲット制御誤差CVtと測定制御誤差CVmとの差に基づいて、電流遅延QtのQFB成分を算出する。CVフィードバックコントローラ33は、フィードバック項関数FBT(BV,CV)から生成されるフィードバック制御パラメータを利用する「比例積分微分(Proportional-Integral-Derivative)」(「PIDコントローラ」とも称する)とすることができる。あるいは、CVフィードバックコントローラは、状態空間モデルベースのコントローラなどのいくつかの種類の多入力多出力(MIMO)コントローラの1つとして動作してもよい。このようにして、2つ以上の目標制御変数関数を並列に使用して、異なる測定された制御変数および/または測定されたベース変数に基づいて電流遅延Qtの複数のQFB成分を生成することができる。
【0184】
フィードフォワード電流算出ステップ34は、フィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)に基づいて、測定されたベース変数BVmおよび/または測定された制御変数CVmを参照して、電流需要Qtのフィードフォワード電流成分QFFを決定する。次いで、電流需要加算ステップ35は、CVフィードバックコントローラ33からの1つまたは複数のQFB値にQFFを加算し、インストロークコントローラから電流コントローラ25に出力される総電流需要Qtを生成する。
【0185】
電流コントローラ25内の電流フィードバックコントローラ36は、電流需要Qtをインストロークコントローラから受信する。電流フィードバックコントローラ36は、LPS1内の各コイルおよび/または相について測定された電流値Qmを受信し、ゲートコントローラ37に出力されるゲートスイッチングコマンド(図7に「1010」として示す)を決定する。
【0186】
電流フィードバックコントローラ36は、総電流需要値Qtから切換式の個別コイル(commutated individual coil)または相電流ターゲットを算出するために、測定されたベース変数BVm(例えば、FPMの)を利用することができる。さらに、電流フィードバックコントローラ36は、測定されたベース変数BVm(例えば、FPMの位置)を利用して、BVmに依存し得るコイル間相互インダクタンスなどのLEM特性を考慮して、ゲートスイッチングコマンドの最適なシーケンスを決定することができる。
【0187】
電流コントローラは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果トランジスタ(FET)、トライアック(TRIAC)、ソリッドステートリレー(SSR)、または他のタイプの電力リレーなどの1つまたは複数の電流スイッチング装置38に電圧を印加するゲートコントローラ37を含む。
【0188】
フューチャストロークコントローラ20、同期コントローラ27、およびLADコントローラ22、インストロークコントローラ23、および電流フィードバックコントローラ
36は、典型的には、埋込み制御システムを備える埋込みファームウェアを有する低電圧デジタル電子機器である。対照的に、ゲートコントローラ37は、1つまたは複数の電流スイッチング装置38内のトライアック(TRIAC)などの高電圧スイッチである高電圧回路に接続され、電流コントローラによって電流が例えばパルス幅変調(PWM)によって変調されるステータコイルの近くに配置されることが好ましい。したがって、ゲートコントローラ37および電流スイッチング装置38は、他のより感度の高いデジタル埋込み制御システム要素20、22、23、27、36から物理的に離され、ステータ近傍の電気的にノイズのある環境からそれらを保護することが好ましい。好ましい実施形態では、電流フィードバックコントローラ36およびゲートコントローラ37は、ノイズ耐性を改善するために差動信号回路スイッチングまたは光ファイバリンクを用いた双方向シリアル通信リンクによって分離および接続される。
【0189】
図8は、センサコントローラ36を示し、センサコントローラ36は、LPS1内のセンサおよびゲートコントローラ37の近くに物理的に配置されることが好ましい。BVm、CVm、およびQmを含む測定のためのLPSセンサ信号は、好ましくは、センサコントローラ36によってデジタル通信され、好ましくは、例えば、それぞれRS-422およびRS-485として一般に知られているANSI TIA/EIA-422規格またはTIA/EIA-485規格などのロバストな差動スイッチング回路を介して、または光ファイバを介して通信される。アナログセンサから生じる測定値の場合、センサコントローラ36はアナログからデジタルへの変換を実行することができる。
【0190】
図8では、センサコントローラ、ゲートコントローラ、および電流スイッチング装置は、統合されたゲートおよびセンサコントローラ39内で組み合わされ、LPS内のコイルの近くに物理的に配置され、電流フィードバックコントローラ36、インストロークコントローラ23、およびフューチャストロークコントローラ20から離れて配置される。ゲートコントローラ37およびセンサコントローラ36のための通信リンクは、独立していてもよく、通常、各端にシリアライザ/デシリアライザ40を有し、確認応答、エラーチェックおよび訂正を可能にする単一の双方向直列リンクに組み合わされてもよい。
【0191】
図9は、FPMの3つの連続ストローク中の瞬時値QtとQCLまたはQCL-との間の最小差に対応する、総電流需要Qt、電流制限QCL+およびQCL-、ならびに電流需要制御マージンQCMを示す。
【0192】
図10は、本発明のFPMコントローラ方法の動作を示す。図10は、LPS内のFPMが所定の固定された目標制御変数関数に従うように本発明による方法を使用して制御されている間に、より長期間の試験における最初の50ストロークの間にLPSから得られた実験試験データを示す。この試験データにおいて、電流需要Qtは、フィードバック電流需要QFBおよびフィードフォワード電流需要QFFの和から構成される。
【0193】
最初の10ストロークの間、QFBは電流需要Qtの大部分を表す。50ストロークの間、フューチャストロークコントローラは、ストローク内の各位置で記録されたQFBの割合を次のフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)’に加算する。この適応の効果は、Qtの90%にわたってストローク40からストローク50までQtがQFFによって提供されるように、QTへのQFFの寄与を徐々に増大させることである。
【0194】
QFBが例えばPIDまたはPIコントローラによって提供される本発明の実施形態では、結果はQFBの制御範囲の減少であり、制御変数誤差CVeの減少、アンダーシュートまたはオーバーシュートの減少した傾向、および電流需要制御マージンQCMの増加を伴う制御精度の改善をもたらす。
【0195】
図11は、目標制御変数関数CVt(BV)が、表形式のCVおよびBVの値の配列を用いて実装される例を示す。この例では、ベース変数BVは、ミリメートル単位の位置であり、制御変数CVは、メートル/秒単位の速度である。
【0196】
図12は、表形式のSTおよびBVの値の配列を用いて、ストローク閾値関数STt(BV,CV)がどのように実装されるかを示す。この例では、ストローク閾値STは、ベース変数BVの位置(ミリメートル単位)に関して定義され、ストローク閾値は、図11に示される制御変数値と同じ単位で表される。
【0197】
図13は、フィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)が、表形式のQFFおよびBVの値の配列を用いて実装される例を示す。この例では、フィードフォワード電流需要値QFFは、ベース変数BVの位置(ミリメートル単位)に関して定義される。
【0198】
図14は、この例では、目標制御変数関数CVt(BV)、ストローク閾値関数STt(BV,CV)、およびフィードフォワード電流関数QFF(BV,CV)が、共通のテーブルに組み込まれる方法を示す。FPM制御方法の代替の実施形態では、フィードバック項関数FBT(BV,CV)を含む制御パラメータセットの他の構成要素を共通のテーブルに組み込むこともできる。この手法は、図7に示すように、次の制御パラメータセットCOPS’をフューチャストロークコントローラから通信すること、および制御パラメータセットCOPSを、制御パラメータセットセレクタ(30)によって次の制御パラメータセットCOPS’と置換することを容易にする。
【0199】
当然ながら、例えば、値が転置されて論理的に広いテーブルとされるなど、制御目的のための上記関数の実装方法が多数存在する。
【0200】
また、次の制御パラメータセット内の各関数は、1つまたは複数のベース変数および/または制御変数を目標制御変数、フィードフォワード電流閾値、ストローク閾値、およびフィードバック項に関連付けるアルゴリズム、シミュレーションモデル、または数式に従って生成することができる。
【0201】
図15は、同期コントローラ27を有するフリーピストンムーバコントローラ19がどのようにフリーピストンムーバのペアを同期させるために使用されるかを示す。図15における説明のため、フリーピストンムーバコントローラ19内のLADコントローラ22への信号およびLADコントローラ22からの信号は省略されている。同期制御は以下のように行われる。
・同じ需要入力が、2つのフューチャストロークコントローラ20に提供され、各コントローラがLPS1内のそれぞれのフリーピストンムーバ3、24を制御する。
・各インストロークコントローラ23、44は、それぞれのFPM3、24に対応するLPSセンサからのインストロークパフォーマンスを評価して、いつストローク遷移閾値条件が発生したかを決定する。
・2つのFPM3、24の一方が他方に先行している場合、そのFPMは「リードFPM(Lead FPM)」と呼ばれ、他方は「ラギングFPM(Lagging FPM)」と呼ばれ、リード
FPMの動作は、システム内の第1のストローク遷移閾値条件をもたらす。
・例えば、FPM13がリードFPMである場合、FPM1用のインストロークコントローラ23は、ストローク遷移閾値条件が発生したときを判定し、ストローク終了信号EOS1を生成し、これを同期コントローラ27に通信する。次に、同期コントローラ27は、FPM2 44のためのストローク内コントローラにストローク遷移トリガSTR2を発行し、直ちにストローク終了イベントが信号EOS2として同期コントローラ27に報告される。
・次に、同期コントローラは、イベントEOS1のタイミングに従って同期誤差SEを決
定する。同期誤差SEは、EOS1イベント時におけるFPM3、24それぞれの測定されたベース変数の値の間の誤差に基づき、この誤差はSEBVと称する。あるいは、同期誤差SEは、EOS1イベント時におけるFPM3、24それぞれの測定された制御変数の値の間の誤差に基づき、この誤差はSECVと称する。
・この同期誤差は、SE2としてFPM2 43のフューチャストロークコントローラに伝えられる。対応する同期SE1誤差が生成され、好ましくはSE2と比較して大きさが同じ反対の値を有し、FPM1 20用のフューチャストロークコントローラに伝えられる。同期コントローラの動作がLPS1の平均動作周波数および全体の出力に実質的に影響を及ぼさないように、SE1およびSE2と大きさが同じ反対の値が好ましい。
・各フューチャストロークコントローラ20、43は、同期誤差の値をその制御目標関数ジェネレータ26への入力として利用することができる。例えば、SEがEOS1でCV1mとCV2mとの間の差として決定された場合、各フューチャストロークコントローラ20、43は、次の目標制御変数関数CV1t(BV1)’の各目標制御変数の値に一定割合のSECVを加えることができる。別の方法として、各追加制御コントローラ20、43は、SECVの大きさに基づいて、次の目標制御変数関数CV1t(BV1)’における各目標制御変数の値に乗算係数または他の数学的演算を適用することができる。
・なお、FPM2 24が先頭FPMである場合や、EOS1またはEOS2におけるBV1mとBV2mとの差としてSEを決定する場合にも、同様の方法や転置方法が適用できることは言うまでもない。
・このようにして、同期コントローラ27の好ましい実施形態である同期コントローラ27は、次の目標制御変数関数CV1t(BV1)’およびCV2t(BV2)’に等しい逆の小さな修正を適用することにより、インストロークコントローラ23、44は、次のストロークで、リードFPMを減速させて、ラギングFPMを加速させる。複数のストロークの間、この連続的かつ反復的な調整は、2つのフリーピストンムーバ3、24の間の持続的な同期誤差を効果的に最小化する効果をもたらす。
【0202】
図16は、1つまたは複数のロギング、分析および診断コントローラ22の遠隔接続性の可能性を示す。各LADコントローラ22によってログに記録された分析および診断データは、フューチャストロークコントローラによってローカルに使用されたり、あるいは問題または報告ステータスの警告に使用されたりする。このデータは、将来の有用な値を判断するためのスケジュールや他のアルゴリズムに従って、あるいは有効期限切れや記憶空間の制約に起因して、記憶され、削除され、または遠隔ホストに通信される。各LADコントローラ22は、FPMコントローラ19のコントローラハードウェアに接続されたり、コントローラハードウェア内に統合されたり、あるいはこれに限定されないが、TCPIPもしくはMODBUSもしくはコントローラエリアネットワーク(CAN)を使用するローカルネットワーク上に配備されたり、WANもしくはワールドワイドウェブ42上のリモートサーバ41上でホストされたりする。また、このアーキテクチャは、複数のロギング、分析および診断コントローラ22間の通信、例えば、ビークルツーインフラストラクチャ(Vehicle-to-Infrastructure)通信に加えてビークルツービークル(Vehicle-to-Vehicle)分析および診断データを共有することを可能にする。
【0203】
本明細書(通信インターフェースおよびプロトコルを含む)で説明するフューチャストロークコントローラ、LADコントローラ、同期コントローラ、インストロークコントローラ、電流コントローラ、ならびにそれらの構成要素のコントローラにおける算出および処理ステップは、統合された電子回路、プログラマブルロジックとして実装可能である。1つまたは複数のプリント回路基板アセンブリ上のアナログ回路またはデジタル回路および埋め込みファームウェアとして、コントローラの機能性またはインターフェース回路の一部または全部のための1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)が組み込まれてもよい。
【0204】
本出願人は、本明細書に記載される個々の特徴および2つ以上の特徴の任意の組み合わせを開示し、そのような特徴または組み合わせは、そのような特徴または特徴の組み合わせが本明細書に開示される任意の問題を解決するかどうかに関わらず、当業者の一般的な知識に照らして、全体として本明細書の開示内容に基づいて実現可能であり、特許請求の範囲を限定するものでもない。また、本出願人は、本発明の態様が、それら個々の特徴または特徴の組み合わせからもたらされるものであってもよいことを示す。上記の説明を鑑みて、本発明の範囲内で種々の変更を加えることができることが当業者に自明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】