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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】人工知能を備えた透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20220203BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20220203BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20220203BHJP
   A61M 60/585 20210101ALI20220203BHJP
   A61M 60/849 20210101ALI20220203BHJP
   A61M 1/28 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61M1/14
A61M60/113
A61M60/37
A61M60/585
A61M60/849
A61M1/28 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535730
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 US2019066438
(87)【国際公開番号】W WO2020131651
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】16/228,863
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508180910
【氏名又は名称】フレセニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ラインフェルナー、ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】マナッキル、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077KK25
(57)【要約】
医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約することは、新しい状態が、否認不可能な方法で医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定することと、いずれの動作パラメータもいずれの制約の外にない場合に新しい状態を受諾することと、少なくとも1つの動作パラメータが制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に医療機器を以前の有効状態に戻すこととを含む。適応的最適化は、人工知能をその関連する入力と共に使用して提供され得る。医療機器は透析システムであり得る。制約データは、例えば、SHA256ハッシュを使用する制約データの一方向性ハッシュ値と共に医療機器に提供され得る。一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名され得る。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約する方法であって、
新しい状態が、否認不可能な方法で前記医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定することと、
いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾することと、
少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻すことと
を備える、方法。
【請求項2】
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療機器は透析システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記システムは、前記システムのオペレータまたは前記医療機器から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって初期状態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記医療機器によって自動的に検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し、前記スーパバイザモジュールは、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に前記動作モジュールを以前の状態に戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、前記動作モジュールによって提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約するソフトウェアを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記ソフトウェアは、
新しい状態が、否認不可能な方法で前記医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、
いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾する実行可能コードと、
少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードと
を備える、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記医療機器は透析システムである、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供される、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記システムは、前記システムのオペレータまたは前記医療機器から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって初期状態で提供される、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記医療機器によって自動的に検出される、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し、前記スーパバイザモジュールは、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に前記動作モジュールを以前の状態に戻す、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、前記動作モジュールによって提供される、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
透析システムであって、
透析装置と、
非一時的コンピュータ可読媒体内のソフトウェアを実行するプロセッサを有する制御ユニットと
を備え、前記ソフトウェアは、前記透析装置を動作させ、前記透析システムの状態の適応的最適化を制約し、前記ソフトウェアは、新しい状態が、否認不可能な方法で前記透析システムに提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾する実行可能コードと、少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードとを含む、透析システム。
【請求項22】
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、請求項21に記載の透析システム。
【請求項23】
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供され、前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、請求項21に記載の透析システム。
【請求項24】
前記制御ユニットは、動作モジュールと、前記動作モジュールから状態データを受信し、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定するスーパバイザモジュールとをさらに含む、請求項21に記載の透析システム。
【請求項25】
前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に、前記動作モジュールを以前の状態に戻す、請求項24に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療透析システムに関し、より具体的には、人工知能を使用する医療透析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
透析装置は、腎疾患の治療に使用することで知られている。透析方法の2つのタイプは、血液透析(HD)と腹膜透析(PD)である。血液透析中、患者の血液が血液透析装置の透析器を通り、同時に、透析液も透析器を通る。透析器内の半透膜は、透析器内で血液を透析液から分離し、透析液および血流間で拡散および浸透交換が行われることを可能にする。腹膜透析中、患者の腹膜腔には、透析液または透析溶液が周期的に注入される。患者の腹膜の膜裏(membranous lining)が、溶液および血流間で拡散および浸透交換が行われることを可能にする天然の半透膜として作用する。PDサイクラーとも呼ばれる自動腹膜透析装置が腹膜透析プロセス全体を制御するように設計されており、腹膜透析プロセスを、付き添う臨床スタッフなしに通常一晩中自宅で行うことができる。
【0003】
多くの異なるタイプのシステムが、人工知能とともに使用されると提供される適応動作から利益を得る。そのようなシステムでは、人工知能システムにフィードバックを提供するデータ入力に基づいて動作パラメータが修正される。例えば、音声認識システムは、成功および失敗を示すデータ入力に基づいて適応および向上することができる。適応的最適化は、音声認識システムの動作状態を改正する人工知能処理によって提供され得る。透析システムは、人工知能によって提供される適応的最適化から利益を得ることができるが、そのような適応は、ひとりでに、透析システムを最初に意図したように動作させないリスクを冒し、患者に損害が及ぶ可能性がある。加えて、透析システムの設計および動作は、米国の食品医薬品局(FDA)によって規制されているので(他の国は同様の規制制度を有する)、人工知能によって提供される適応的最適化により、トレース可能/反復可能ではない方法で、承認された設計パラメータからシステムが逸脱する恐れがあり、その結果、適応後にモジュールの状態関連データの整合性がなくなる。
【0004】
したがって、許容可能な動作パラメータおよび規制要件に従うように透析システムを維持し、状態関連データの整合性を提供する方法で人工知能を使用して透析システムのモジュールの適応を容易にするための機構を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載のシステムによれば、医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約することは、新しい状態が、否認不可能な方法で医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定することと、いずれの動作パラメータもいずれの制約の外にない場合に新しい状態を受諾することと、少なくとも1つの動作パラメータが制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に医療機器を以前の有効状態に戻すこととを含む。適応的最適化は、人工知能と人工知能への関連する入力を共に使用して提供され得る。医療機器は透析システムであり得る。制約データが、制約データの一方向性ハッシュ値と共に医療機器に提供され得る。一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュであり得る。一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名され得る。本システムは、システムのオペレータまたは医療機器から処置を受ける患者にしたがって初期状態で提供され得る。オペレータまたは患者は、医療機器によって自動的に検出され得る。動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し得、スーパバイザモジュールは、動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に動作モジュールを以前の状態に戻す。状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、動作モジュールによって提供され得る。
【0006】
さらに本明細書に記載のシステムによれば、非一時的コンピュータ可読媒体が、医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約するソフトウェアを含む。このソフトウェアは、新しい状態が、否認不可能な方法で医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、いずれの動作パラメータもいずれの制約の外にない場合に新しい状態を受諾する実行可能コードと、少なくとも1つの動作パラメータが制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードとを含む。適応的最適化は、人工知能と人工知能への関連する入力を共に使用して提供され得る。医療機器は透析システムであり得る。制約データが、制約データの一方向性ハッシュ値と共に医療機器に提供され得る。一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュであり得る。一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名され得る。本システムは、システムのオペレータまたは医療機器から処置を受ける患者にしたがって初期状態で提供され得る。オペレータまたは患者は、医療機器によって自動的に検出され得る。動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し得、スーパバイザモジュールは、動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に動作モジュールを以前の状態に戻す。状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、動作モジュールによって提供され得る。
【0007】
さらに本明細書に記載のシステムによれば、透析システムが、透析装置と、非一時的コンピュータ可読媒体内のソフトウェアを実行するプロセッサを有する制御ユニットとを含む。ソフトウェアは、透析装置を動作させ、透析システムの状態の適応的最適化を制約する。ソフトウェアは、新しい状態が、否認不可能な方法で透析システムに提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、いずれの動作パラメータもいずれの制約の外にない場合に新しい状態を受諾する実行可能コードと、少なくとも1つの動作パラメータが制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードとを含む。適応的最適化は、人工知能と人工知能への関連する入力を共に使用して提供され得る。制約データが、制約データの一方向性ハッシュ値と共に医療機器に提供され得、一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュであり得る。制御ユニットはまた、動作モジュールと、動作モジュールから状態データを受信し、動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定するスーパバイザモジュールとを含み得る。スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に、動作モジュールを以前の状態に戻し得る。
【0008】
(単一の認証マスタ鍵を使用して)各AIモジュールを認証するためにSHA256ハッシュアルゴリズムおよび監督/認証モジュールを利用することにより、適用されたAIが医療機器の安全かつ効果的な状態を無効にすることが防止され、これは重要な要件である。AI機能が組み込まれた医療機器が依然としてFDA準拠の有効な状態と矛盾しない安全かつ効果的な状態を保持しながら、AIの強力な機能(適応的最適化、すなわち機能的、動作的、およびユーザエクスペリエンス等)を使用することができる。
【0009】
本明細書に記載のシステムの実施形態および特徴について、以下に簡単に説明する図面のいくつかの図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に記載のシステムの一実施形態による血液透析システムの斜視図を示す。
図2】本明細書に記載のシステムの一実施形態による腹膜透析システムの斜視図を示す。
図3】本明細書に記載のシステムの一実施形態による複数の透析システムを備える設備を示す。
図4】本明細書に記載のシステムの一実施形態による透析システムのためのセンサアセンブリを示す。
図5】本明細書に記載のシステムの一実施形態によるコンピュータシステムの一例を示す。
図6】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、状態を変更する動作モジュールに関連して実行される処理を例示するフロー図である。
図7】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、ファクトリモジュール、スーパバイザモジュール、および複数の動作モジュールを示す概略図である。
図8】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、ファクトリモジュールからスーパバイザモジュールに状態制約データを転送することに関連して実行される処理を例示するフロー図である。
図9】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、動作モジュールの状態変化に対処するスーパバイザモジュールに関連して実行される処理を例示するフロー図である。
図10】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、透析システム、工場出荷試験システム、人工知能ベースの最適化アルゴリズム、認証監督エンジン、動的動作データセット、および静的動作データセットを示す概略図である。
図11】本明細書に記載のシステムの一実施形態による異なる構成要素間のフローを例示する概略図である。
【詳細な説明】
【0011】
本明細書に記載のシステムは、人工知能によって提供される動作モジュールが有効な状態から許容できないくらい逸脱しないように、動作モジュールの適応的最適化を制約するための機構を提供する。動作モジュールが適応して変化するときに、制御モジュールが動作モジュールに制約を課す。制約は、デジタル署名された暗号学的一方向性ハッシュ(cryptographic one-way hash)を使用して否認を防止する方法で制御モジュールに提供される。同様に、デジタル署名された暗号学的一方向性ハッシュを使用して否認を防止する方法で、状態情報および状態制御情報が、制御モジュールと動作モジュールとの間で交換される。加えて、動作モジュールのための状態データが、否認を防止するために、そのデジタル署名された一方向性ハッシュと共にセキュアに保存され得る。一方向性ハッシュは、SHA256ハッシュアルゴリズムを使用し得る。
【0012】
図1は、血液回路を部分的に形成する使い捨て血液構成要素セット104に接続された血液透析装置102を含む血液透析システム100の斜視図を示す。血液透析処置中、オペレータは、血液構成要素セット104の患者動脈ライン106および患者静脈ライン108を患者に接続する。血液構成要素セット104は、空気は通過させるが液体は通過させない自己密閉通気アセンブリを含む排気デバイス112を含む。結果として、処置中に血液回路を通る血液が空気を含む場合、排気デバイス112は空気を大気に出す。
【0013】
血液構成要素セット104は、血液透析装置102の前側に取り付けられたモジュール130に固定される。モジュール130は、血液回路に血液を循環させることが可能な血液ポンプ132を含む。モジュール130は、血液回路を流れる血液をモニタリングすることが可能な他の様々な計器も含む。モジュール130はドアを含み、このドアは、図1に示すように、閉じているときに、モジュール130の前面と協働して、血液構成要素セット104を受容するサイズおよび形状である区画を形成する。閉じた位置で、ドアは、血液構成要素セット104の特定の血液構成要素を、モジュール130の前面上に露出した対応する計器に対して押圧する。
【0014】
オペレータは、血液ポンプモジュール134を使用して血液ポンプ132を動作させる。血液ポンプモジュール134は、ディスプレイウィンドウ、開始/停止キー、上キー、下キー、濃度調整キー、および動脈圧ポートを含み得る。ディスプレイウィンドウは、血液ポンプ動作中の血流量設定を表示する。開始/停止キーは血液ポンプ132の開始および停止を行う。上下キーは、血液ポンプ132の速度を増加および減少させる。濃度調整キーは、動脈ドリップチャンバにおける流体の濃度を上げる。制御部は、物理的なボタン/スイッチ/アクチュエータ等として存在し得るか、またはタッチスクリーンアクセス可能ディスプレイ118上のグラフィカルユーザインターフェース内に全体的に存在し得るか、またはそれらの何らかの組み合わせであり得る。
【0015】
血液透析装置102は、透析器110、他の様々な透析液構成要素、および血液透析装置102に接続された透析液ラインによって形成された透析液回路をさらに含む。これらの透析液構成要素および透析液ラインの多くが、血液透析装置102の筐体103の内部にあるので、図1では見えない。処置中、血液ポンプ132が血液回路に血液を循環させる間、透析液ポンプ(図示せず)が透析液回路に透析液を循環させる。
【0016】
透析液容器124が透析液供給ライン126を介して血液透析装置102に接続される。ドレインライン128および限外濾過ライン129も、血液透析装置102から延びている。透析液供給ライン126、ドレインライン128、および限外濾過ライン129は、透析液回路の一部を形成する、血液透析装置102の筐体103の内部の様々な透析液構成要素および透析液ラインに流体接続されている。血液透析中、透析液供給ライン126は、新しい透析液を、透析液容器124から、血液透析装置102の内部に位置する透析液回路の部分に搬送する。上述のように、新しい透析液は、透析液回路を形成する、透析器110を含む様々な透析液ラインおよび透析液構成要素を循環する。以下で説明するように、透析液が透析器110を通るとき、患者の血液から毒素を捕集する。結果として得られる使用済み透析液は、透析液回路からドレインに、ドレインライン128を介して搬送される。処置中に限外濾過が行われるとき、使用済み透析液(以下で説明する)と患者から引き出された余分な体液の組合せが、限外濾過ライン129を介してドレインに搬送される。
【0017】
透析器110は、患者の血液のためのフィルタとしての役割をする。透析液は、上述のように、血液と共に透析器110を通る。透析器110内の半透性構造(例えば、半透膜および/または半透性マイクロチューブ)は、透析器110を通る血液および透析液を分離する。この構成により、透析液が患者の血液から毒素を捕集することが可能となる。透析器110を出る濾過済み血液が患者に戻される。透析器110を出る透析液は、血液から除去された毒素を含み、一般的に「使用済み透析液」と呼ばれる。使用済み透析液は、透析器110からドレインへのルートで送られる。
【0018】
薬品ポンプ192も血液透析装置102の前側から延びている。薬品ポンプ192は、血液構成要素セット104のシリンジ178を保持するように構成されたクランピング機構を含むシリンジポンプである。薬品ポンプ192は、シリンジ178の軸に沿ってシリンジ178のプランジャを移動させるように構成されたステッパモータも含む。ステッパモータのシャフトは、ステッパモータが第1の方向に動作すると、シャフトがプランジャをシリンジに押し込み、第2の方向に動作すると、シャフトがプランジャをシリンジ178から抜くように、プランジャに固定される。よって薬品ポンプ192は、使用中に薬品送出ライン174を介してシリンジ178から血液回路の中に液剤(例えばヘパリン)を注入するため、または使用中に薬品送出ライン174を介して液体を血液回路からシリンジ178の中に引き込むために使用され得る。
【0019】
血液透析装置102は、ディスプレイ118から信号を受信し、ディスプレイ118に信号を送信するように構成された制御ユニット101(例えば、プロセッサ)と、制御パネル120と、通信モジュール107(例えば、近距離無線通信(NFC)トランシーバ、センサ、またはカメラ)とを含む。制御ユニット101はまた、サーバ(例えば、インターネットサーバ)、別の透析システム、または別のネットワークリソースと通信することもできる。様々な例において、サーバとの通信は、電気通信ネットワーク上のワイヤレス通信を介したものであってもよいし、サーバへの有線イーサネット(登録商標)接続を介したものであってもよいし、および/またはUSBドライブを使用するなどの、サーバと透析システム100との間でのコンピュータ可読媒体の物理的移動を介したものであってもよい。制御ユニット101は、ディスプレイ118、制御パネル120、および通信モジュール107によって受信された信号に少なくとも部分的に基づいて、血液透析装置102の動作パラメータを制御する。
【0020】
ディスプレイ118は、患者のバイタルサイン、透析処置の動作パラメータ、および血液透析プロセスに関連する制御を含み得るユーザインターフェースを提示する。例えば、動作パラメータは、限外濾過パラメータ、血液ポンプ速度および透析液に関連付けられた情報、ヘマトクリット値警告レベル、血圧アラーム限界、薬剤注入パラメータ等を含み得る。ディスプレイ118はタッチスクリーンを含み得、オペレータは、それを通して血液透析装置102と相互動作して制御し得る。例えば、オペレータは、血液透析プロセスに関連付けられた様々な処置パラメータを入力し得る。
【0021】
通信モジュール107は、デバイスがそのワイヤレス通信範囲内にあるときに、短距離ワイヤレスデバイス、例えば、オペレータまたは患者のIDカード105、スマートカード、またはスマートフォンを検出し、それと通信するように構成される。通信モジュール107とIDカード105との間の通信は、短距離ワイヤレス技術プロトコル、例えば、NFCプロトコルなどのRFIDプロトコルまたはBluetooth(登録商標)プロトコルによって容易にされる。IDカード105は、透析装置102のオペレータまたは患者に関連付けられているので、通信モジュール107は、オペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報を検出する。通信モジュール107は、オペレータまたは患者に関連付けられた情報を制御ユニット101に通信する。これに応答して、制御ユニット101は、例えば、本明細書に参照により援用される米国特許出願公開第2017/0168688号に記載されているように、血液透析装置102に動作を実行させ得る。同様に、IDカード105が通信モジュール107のワイヤレス通信範囲から外れたとき(例えば、IDカード105が通信モジュール107のワイヤレス通信範囲にある状態から通信モジュール107のワイヤレス通信範囲にない状態に移ったとき)、通信モジュール107は、オペレータまたは患者がもう存在しないことを示す信号を制御ユニット101に送り得る。これに応答して、制御ユニット101は、血液透析装置102に動作を実行させ得る。
【0022】
通信モジュール107はまた、例えば、顔認識、手のひら/指紋および虹彩認識を含むことができる生体認証プロセスを通して、オペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報を検出し得る。通信モジュールは、ユーザの顔、指/手のひら、または目の画像を撮影し、画像に関連付けられた情報を使用してユーザを識別することができるセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。これは、画像に関連付けられた情報をデータベース内のプロファイル情報と比較することによって達成され得る。別の代替として、IDカード105は、例えば、スマートフォン、タブレット等のデバイス上のアプリ(または同様のもの)として実装され得、通信モジュール107は、アプリからの識別情報および/またはデバイスによって直接(すなわち、スマートフォンのオペレーティングシステムを介して)提供される識別情報に基づいて、特定のオペレータまたは患者の存在を検出し得る。
【0023】
制御ユニット101は、通信モジュール107からオペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報を受信し、その情報を、データベースに格納された複数のユーザ(オペレータおよび/または患者)についてのインターフェース構成プロファイルと比較する。データベースは、透析システム100に関連付けられた記憶デバイス上に格納され得るか、または外部記憶デバイス(例えば、異なる透析システムに関連付けられた記憶デバイスまたはサーバ)に位置し得る。比較に基づいて、制御ユニット101は、オペレータまたは患者のインターフェース構成プロファイルを取り出し得る。ディスプレイ上に現れる特定のユーザインターフェースは、取り出されたインターフェース構成プロファイルに基づき得る。例えば、ユーザインターフェースを構成する動作パラメータおよび透析制御は、取り出されたインターフェース構成プロファイルから決定され得る。加えて、オペレータまたは患者の識別情報およびオペレータのスーパバイザの識別情報も表示され得る。
【0024】
制御ユニット101は、オペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報および/または透析装置102の動作パラメータを記憶デバイスまたはモバイルデバイスに通信し得る。例えば、制御ユニット101は、オペレータまたは患者の識別情報をスーパバイザに通信し得る。制御ユニット101は、オペレータに関連付けられたインターフェース構成プロファイルからスーパバイザを識別し得る。スーパバイザへの通信は、スーパバイザに関連付けられたモバイルデバイスへのテキストメッセージ、電子メール、ソーシャルメディアタイプの投稿、またはボイスメールの形態であり得る。代替的または追加的に、オペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報がデータベースに格納され得る。オペレータまたは患者の識別情報および動作パラメータを格納または通信することにより、透析プロセスの追跡が可能となり得る。例えば、オペレータが透析手順を正しく実行していない場合に、スーパバイザが介入し得る。別の例では、権限のないユーザがシステムを使用しようとした場合に、スーパバイザは、権限のないユーザが行った変更を取り消し得る。
【0025】
制御ユニット101は、インターフェース構成プロファイルを追加または修正するように構成され得る。オペレータまたは患者は、オペレータまたは患者に関連付けられた短距離ワイヤレスデバイス、例えば、IDカード105またはスマートフォンを登録し、所望のインターフェース構成プロファイルを入力し得る。これは、ディスプレイ118上のタッチスクリーン、制御パネル120、または透析システム100の一部ではない売店を通して行うことができる。
【0026】
制御ユニット101は、血液透析システム100のアラームを検出し、アラームに基づいて、ディスプレイ118上に現れるユーザインターフェースを変更するように構成され得る。アラームは、動作パラメータの値が基準を満たすと生じ得る。例えば、アラームは、透析液の導電率が特定の値を上回ると生じ得る。これは、看護師からの即時の注意を必要とし得、したがって、ディスプレイ118上に現れるユーザインターフェースは、看護師によって予期され、および/または看護師によく知られた形態に変更され得る。
【0027】
図2は、カート204上に据え付けられたPDサイクラー(PD装置とも呼ぶ)202を含む腹膜透析(PD)システム200の斜視図を示す。PDサイクラー202は、筐体206、ドア208、およびカセットインターフェース(図示せず)を含み、このカセットインターフェースは、カセットインターフェースと閉じたドア208との間に形成されたカセット区画内に使い捨てPDカセット212が配設されるとカセット212に接触する。ヒータトレイ216が、筐体206の上部に配置される。ヒータトレイ216は、透析液のバッグ(例えば、透析液の5リットルバッグ)を収容するようなサイズおよび形状である。PDサイクラー202はまた、例えばPD治療のセットアップ、開始、および/または終了を可能にするために、ユーザ(例えば患者)が操作することができるディスプレイ218および追加の制御パネル220も含む。
【0028】
透析液バッグ222は、カート204の側面の指状物から吊り下げられ、ヒータバッグ224は、ヒータトレイ216に配置される。透析液バッグ222およびヒータバッグ224は、それぞれ、透析液バッグライン226およびヒータバッグライン228を介してカセット212に接続される。透析液バッグライン226は、使用中に透析液を透析液バッグ222からカセット212に通すために使用され得、ヒータバッグライン228は、使用中に透析液をカセット212およびヒータバッグ224間で前後に通すために使用され得る。さらに、患者ライン230およびドレインライン232がカセット212に接続される。患者ライン230は、カテーテルを介して患者の腹部に接続され得、使用中に透析液をカセット212および患者の腹膜腔間で前後に通すために使用され得る。ドレインライン232は、ドレインまたはドレイン受けに接続され得、使用中に透析液をカセット212からドレインまたはドレイン受けに通すために使用され得る。透析液が通る様々な構成要素が透析液回路を形成する。
【0029】
PDシステム200は、血液透析システム100と同様に、制御ユニット201、ディスプレイ218、および互いに通信し、ならびに短距離ワイヤレスデバイス(例えば、IDカード105またはスマートフォン)と通信する通信モジュール207を含む。血液透析システム100と同様に、PDシステム200は、制御ユニット201および通信モジュール207などの構成要素を使用して、オペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報を検出し、インターフェース構成プロファイルに基づいて、ディスプレイ218上に現れるユーザインターフェースを変更し得る。PDシステム200は、オペレータまたは患者が、PDシステム200に関連付けられた記憶デバイスまたは外部記憶デバイス(例えば、サーバ)に記憶され得るインターフェース構成プロファイルを追加または修正することを可能にする。さらに、PDシステム200の制御ユニット201は、PDシステム200のアラームに基づいてディスプレイ218上に現れるユーザインターフェースを変更し得る。
【0030】
図3は、複数の透析システム305a~305dおよび中央サーバ310を含む設備300の一例を示す。透析システム305a~305dは、互いに通信し、および中央サーバ310と通信し得る。一実装形態では、インターフェース構成プロファイルのデータベースは、中央サーバ310に格納され得る。透析システム、例えば、透析システム305aが、特定のオペレータまたは患者を検出すると、透析システム305aは、そのオペレータまたは患者に関連付けられたインターフェース構成プロファイルを、サーバに格納されたデータベースから取り出し得る。透析システム305aはまた、サーバに格納されたデータベースのインターフェース構成プロファイルを追加または変更し得る。第1の透析システム(例えば、システム305a)上で作業しているオペレータが、別の透析システム(例えば、システム305b)によって検出されると、第2の透析システムのディスプレイのユーザインターフェースは、オペレータのインターフェース構成プロファイルに基づいて再構成され得る。加えて、オペレータは、第1の透析システムからログアウトされ得る。透析システムが特定のオペレータまたは患者を検出すると、そのオペレータまたは患者の識別情報に関連付けられた情報が、外部デバイス、例えば、セル電話315または中央サーバ310もしくはその両方に送信され得る。加えて、透析システムの動作パラメータおよび制御に関連付けられたデータもまた、外部デバイスまたは中央サーバもしくはその両方に送信され得る。
【0031】
オペレータまたは患者の識別に基づいて表示を修正し、動作パラメータを初期化することに加えて、本明細書に記載のシステムは、提供された入力データに基づいて透析システム100、200のモジュールの動作をインテリジェントに適応させ得る。適応され得る動作パラメータは、ディスプレイ118、218、ならびに透析液および/または血流モータ(単数または複数)の速度、ヒータトレイ216の温度、データサンプリングレート、アラーム限界等を含む。動作パラメータを適応させるために使用される入力データは、透析液流量、血流量(血液透析システム100の場合)、膜貫通圧、流体透明度(fluid clarity)(PDシステム200の場合)、流体温度、流体導電率、空気検出、血中O2レベル(血液透析システム100の場合)、ナトリウム含有量、および患者血圧、患者体温、他の患者パラメータなどの患者情報を含み、場合によっては、ディスプレイ118、218のうちの1つで回答され得る患者/オペレータクエリに対する応答を含む。入力データ収集の少なくとも一部が自動化され得るが(例えば、流体流量)、他のデータはユーザ(オペレータまたは患者)によって手動で入力され得る。
【0032】
図4を参照すると、センサアセンブリ400は、上述したライン106、108、230(図4には図示せず)のうちの1つなどの患者ラインに両端で接続された流管402を含む。患者からの血液(血液透析装置100の場合)または透析液流体(PD装置200の場合)は、流管402を通り、患者に入り、および/または患者から出る。センサアセンブリ400は、透明度センサ404、IR温度センサ405、導電率センサ406、流量センサ407、接触温度センサ408、空気検出器409、および圧力センサ410を含む。透明度センサ404は、流管402を通る患者からの体液の曇り度を測定する。IR温度センサ405は、IR光と、センサ405の近位にある流管402の一部分に置かれたIR透過窓(図示せず)とを使用して、流管402を通る流体の温度を測定する。導電率センサ406は、流管402を通る流体の導電率を測定し、これは、PDサイクラー202から患者へと通過する透析液流体中の塩分濃度など、流体の化学成分の有用な指標であり得る。接触温度センサ408は、例えば、従来の温度接触センサを使用し、場合によっては流管402の対応する部分に高熱伝導材料を有することにより、流管402を通る流体の温度を測定し得る。流量センサ407は、流管402を通る流体の流量を測定する。センサアセンブリ400は、任意の適切な有線または無線機構を使用して電力を受け取り得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、透析システム100、200は、センサ404~410に結合されたワイヤ(図示せず)を使用してセンサ404~410のうちの1つまたは複数と通信し得る。ワイヤは、センサ404~410のうちの1つまたは複数を透析システム100、200に直接接続し得る。代替的に、ワイヤは、場合によってはネットワークを介して、透析システム100、200への多重化接続を提供する有線通信モジュール(図示せず)に接続し得る。さらに代替的に、センサアセンブリ400は、センサ404~410の各々と透析システム100、200との間のワイヤレス通信を提供するワイヤレス通信デバイス414を含み得る。ワイヤレス通信デバイス414および透析システム100、200の両方と通信するネットワークに接続するために、セキュアなインターネットゲートウェイを介した接続を含む、任意の適切なワイヤレス通信プロトコルが使用され得る。ローカルおよび外部両方の構成要素間の接続、ネットワーク、およびデータ伝送は、制御されてもよいし、および/またはそうでない場合、適切なネットワークインフラストラクチャを用いてそのような機能を促進するシステムに組み込まれてもよく、そのシステムは、いくつかの実装形態では、接続医療システム(connected health system)と呼ばれ得る。接続医療システムなどにおいて、医療機器をセキュアに接続、ペアリング、および/またはモニタリングするためのシステムのさらなる説明については、“Remote Monitoring Interface Device and Mobile Application for Medical Devices”と題する米国特許出願公開第20160206800号(Tanenbaum他)、“Associating Dialysis Accessories Using Near Field Communication”と題する米国特許第9800663号(Arrizza)、“Short-Range Wireless Communication for a Dialysis System”と題する米国特許出願公開第20170087290号(Medina他)、“Secure Network-Based System for Communication of Clinical Data”と題する米国特許出願公開第20170076069号(Moissl他)、“Remote Control of Dialysis Machines”と題する米国特許第9178891号(Wang他)を参照し、これらのすべての開示は参照により本明細書に援用される。
【0034】
図5を参照すると、制御ユニット101または制御ユニット201を実装するために使用され得るコンピュータシステム500をブロック図が示す。システム500は、プロセッサ510、メモリ520、記憶デバイス530、および入力/出力インターフェース540を含む。構成要素510、520、530、540の各々は、例えば、システムバス550を使用して相互接続され得る。プロセッサ510は、システム500内での実行のために命令を処理することが可能である。プロセッサ510は、シングルスレッドプロセッサ、マルチスレッドプロセッサ、または量子コンピュータであり得る。プロセッサ510は、メモリ520内および/または記憶デバイス530上に記憶された命令を処理することが可能である。プロセッサ510は、センサアセンブリ400からの信号を受信すること、信号に基づくデータを、記憶されたデータ、例えば、温度値のルックアップテーブルに記憶されたデータと比較すること、および本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、入力データに基づいて透析システム100、200のモジュールの動作を適応させることなどの動作を実行し得る。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムの一部または全部の構成要素が、密閉型プログラマブルゲートアレイ(SPGA:sealed programmable gate array)を使用して実装され得る。
【0035】
メモリ520は、システム500内に情報を記憶する。いくつかの実装形態では、メモリ520はコンピュータ可読媒体である。メモリ520は、例えば、揮発性メモリユニットまたは不揮発性メモリユニットであり得る。記憶デバイス530は、システム500に大容量記憶を提供することが可能である。いくつかの実装形態では、記憶デバイス530は、非一時的コンピュータ可読媒体である。記憶デバイス530は、例えば、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、ソリッドデートドライブ、フラッシュドライブ、磁気テープ、または他の何らかの大容量記憶デバイスを含み得る。記憶デバイス530は、代替的に、クラウド記憶デバイス、例えば、ネットワーク上に分散し、かつネットワークを使用してアクセスされる複数の物理記憶デバイスを含む論理記憶デバイスであり得る。
【0036】
入力/出力インターフェース540は、システム500に入力/出力動作を提供する。いくつかの実装形態では、入力/出力インターフェース540は、ネットワークインターフェースデバイス(例えばイーサネットカード)、シリアル通信デバイス(例えばRS-232 I/Oポート)、および/またはワイヤレスインターフェースデバイス(例えば、802.11カード、3Gワイヤレスモデム、または4Gワイヤレスモデム)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実装形態では、入力/出力デバイスは、入力データを受信し、出力データを他の入力/出力デバイス、例えば、キーボード、プリンタ、およびディスプレイデバイス118/218、センサユニット400等に送るように構成されたドライバデバイスを含む。いくつかの実装形態では、モバイルコンピューティングデバイス、モバイル通信デバイス、および他のデバイスが使用される。
【0037】
いくつかの実装形態では、入力/出力インターフェース540は、少なくとも1つのアナログ・デジタルコンバータ541を含む。アナログ・デジタルコンバータは、アナログ信号をデジタル信号、例えば、プロセッサ510による処理に好適なデジタル信号に変換する。いくつかの実装形態では、1つまたは複数の感知要素(例えば、図1に示す通信モジュール107または図2に示す通信モジュール207またはセンサユニット400)は、アナログ・デジタルコンバータ541と通信している。いくつかの実装形態では、システム500はマイクロコントローラである。マイクロコントローラは、単一の電子回路パッケージにコンピュータシステムの複数の要素を含むデバイスである。例えば、単一の電子回路パッケージは、プロセッサ510、メモリ520、記憶デバイス530、および入力/出力インターフェース540を含み得る。
【0038】
本明細書に記載のシステムは、人工知能を使用して、透析システム100、200のモジュールが入力(フィードバック)に基づいてその動作を適応させることを可能にする。例えば、システムは、反復ごとに血流量および透析液流量を変更し、結果として生じる拡散クリアランスを測定することによって、効率的に透析器移送を最適化するために使用され得る。ニューラルネットワークなどの任意の適切な人工知能機構が使用され得る。
【0039】
図6を参照すると、モジュールが人工知能を使用して適応することに関連して実行されるステップをフロー図600が例示する。フロー図600によって例示される処理は、本明細書の他の箇所で説明するコンピュータシステム500によって、またはシステム100、200のうちの1つの内部もしくは外部のいずれかに提供される別の処理システム(図示せず)によって実行され得る。加えて、フロー図600が例示する処理によって提供される適応的最適化は、患者ごとに、オペレータごとに、デバイス全体に対して、または任意の他の適切なグループに対して提供され得る。すなわち、フロー図600によって例示される適応処理は、適応的最適化が患者ごとに個別化されるように患者ごとに実行され、適応的最適化がオペレータごとに個別化されるようにオペレータごとに実行され、適応的最適化がデバイス全体に提供されるようにデバイス全体に対して実行され、したがって、各患者および各オペレータまたは他の何らかの適切なグループに等しく適用され得る。適応され得るシステムの動作モジュールは、システムとのオペレータユーザインターフェース相互動作、最適化自動較正機能、自動システム雑音低減および補償(電気的および機械的)、データトランスポート最適化、透析と切換えの合計時間の最適化、ハードウェアおよびソフトウェアモニタリング、ハウスキーピング、障害モニタリング、ならびに関連する応答管理、診断、現場サービス応答の最適化等を含む。一般に、システムの任意の動作態様が、人工知能を使用して適応され得る。
【0040】
フロー図600についての処理は、第1のステップ602で開始し、ここでシステムが初期状態に設定される。初期状態は、製造時に決定されてもよいし、またはそうでない場合、スーパバイザモジュール(supervisor module)(本明細書の他の箇所でより詳細に説明する)または他の何らかの外部ソースによってシステムに入力されてもよい。例えば、初期状態は、血流量の初期値および透析液流量の初期値を含み得る。いくつかの場合において、初期状態は、本明細書の他の箇所で説明するように、自動的に検出され得る特定のオペレータおよび/または患者に基づき得る。ステップ602のあとにステップ604が続き、ここで入力がシステムに提供される。本明細書の他の箇所で説明するように、人工知能によって適応されている各動作モジュールは、適応的最適化を実行している人工知能の動作のための適切なデータ入力を受信する。例えば、ユーザインターフェース相互動作を適応させる人工知能は、異なるユーザインターフェースオプションが提示されたときのオペレータの回答/選択を示すデータを入力として受信し得る。別の例として、効率的に透析器移送を最適化する人工知能は、入力として、透析器尿素クリアランスの速度を受信し得る。
【0041】
ステップ604のあとにステップ606が続き、ここでシステムは、人工知能を使用して、受信した入力データにしたがって動作パラメータを適応させる。一般に、行われる特定の適応的最適化は、入力データ、使用される人工知能機構(例えば、ニューラルネットワーク)、および人工知能の適応的最適化の特定の目的(例えば、効率的に透析器移送を最適化する)に依存する。ステップ606のあとにテストステップ608が続き、ここで、ステップ606において適応的最適化が適用された後のモジュールの状態が許容可能であるかどうかが決定される。人工知能を使用する適応的最適化は有用であり得るが、適応的最適化が、患者にとって安全でない、またはそうでない場合有害である可能性がある方法でシステムを動作させないことが重要である。これは、スーパバイザモジュールによって実施され、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
【0042】
ステップ608において、モジュールの新しい状態が許容可能でないと決定された場合、制御は、テストステップ608からステップ612に移行し、ここでモジュールの状態が以前の状態に復元される/戻される。以前の状態は、初期状態(すなわち、上述したステップ602で設定された状態)、ステップ606の実行直前のモジュールの状態、または別様に許容可能な他の何らかの状態のいずれかであり得る。以前の状態は、元の有効な状態であり得る。ステップ612のあと、制御はもう一度反復するためにステップ604に移行して戻る。ステップ608において動作モジュールの状態が許容可能であると決定された場合も、ステップ604がステップ608に直接続くことに留意されたい。
【0043】
図7を参照すると、図700が、ファクトリモジュール(factory module)702、スーパバイザモジュール704、および複数の動作モジュール706~708間の関係を例示する。スーパバイザモジュール704および動作モジュール706~708は、血液透析システム100またはPDシステム200などの透析システム上に提供され、ファクトリモジュール702は、透析システムの外部にあり、透析システムの製造時点で提供されてもよいし、または場合によっては透析システムの保守と関連して提供されてもよい。本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、ファクトリモジュール702は、セキュアかつ否認不可能な方法で、スーパバイザモジュール704に制限/制約を提供して、スーパバイザモジュール704は、それらを、セキュアかつ否認不可能な方法で、動作モジュール706~708の各々に適応的最適化/状態変化に対する制限/制約を提供するために使用する。
【0044】
本明細書の他の箇所で説明するように、動作モジュール706~708は、システムとのオペレータユーザインターフェース相互動作、自動較正機能、自動システム雑音低減および補償(電気的および機械的)、データトランスポート、透析と切換えの合計時間、ハードウェアおよびソフトウェア動作、ハウスキーピング、障害モニタリング、ならびに関連する応答管理、診断、現場サービス応答等のうちの1つまたは複数を制御する透析システムのハードウェアおよびソフトウェア部分を含み得る。スーパバイザモジュール704は、人工知能によって提供される動作モジュール706~708の適応的最適化を制約して、動作モジュール706~708の各々を、安全かつ効果的な方法で動作することと矛盾せず、かつモジュール706~708の各々に対する以前の規制上の承認と矛盾しない状態に維持する。スーパバイザモジュール704は、上述したステップ608におけるテストを扱い、ここで、人工知能を使用して変更された後の特定の動作モジュールの状態が許容可能であるかどうかが決定される。
【0045】
本明細書の一実施形態では、透析システムが製造されるとき(または保守に関連して製造後しばらくして)、動作モジュールに対する制約のセットが決定され得る。同じモデルの透析システムの異なる特定のユニットが、較正差および/または場合によっては異なる展開シナリオに起因して異なる制約を使用することが可能であることに留意されたい。ファクトリモジュール702は、制約データをスーパバイザモジュール704に提供し、制約データの暗号学的一方向性ハッシュを提供する。本明細書の一実施形態では、暗号学的一方向性ハッシュはSHA256ハッシュであるが、任意の適切な暗号学的一方向性ハッシュを使用してよい。ファクトリモジュール702はまた、秘密/公開暗号鍵ペアも有し得、公開鍵をスーパバイザモジュール704に提供し得る。本明細書の一実施形態では、公開鍵は、X.509PKI規格の下で信頼できる機関によって署名されたデジタル証明書が付いて提供され得る。次いでファクトリモジュール702は、制約データの暗号学的一方向性ハッシュのデジタル署名をスーパバイザモジュール704に提供し得る。次いでスーパバイザモジュール704は、ファクトリモジュール702の公開鍵を使用して、制約データのデジタル署名された暗号学的一方向性ハッシュのソースを検証し得、次いで一方向性ハッシュ値を使用して、受信した制約データを認証し得る。秘密鍵がファクトリモジュール702の外部のいずれのパーティにも開示されていないと仮定すると、唯一の可能なソースはファクトリモジュール702であるので、この機構により制約データの否認が防止されることに留意されたい。
【0046】
図8を参照すると、制約データをスーパバイザモジュールに提供することに関連してファクトリモジュール702によって実行されるステップをフロー図800が例示する。処理は第1のステップ802で開始し、ここでファクトリモジュール702は制約データを決定する。一般に、特定の動作モジュールにかけられる制約は、特定のモジュールのために使用される初期値、ならびに安全かつ効果的な処置を提供するのに必要な任意の限界値の決定に基づいて決定される。制約のうちのいくつかは、臨床経験に基づいて経験的に決定され得る。制約のうちのいくつかが、少なくとも部分的に、規制上の考慮事項に基づくことも可能であり、ここで、いくつかの動作パラメータの値が、規制上の承認を以前に受けたことに関連して特定の動作モジュールのために使用された値を超えることは許されない。
【0047】
ステップ802のあとにステップ804が続き、ここで、制約データの一方向性ハッシュ値(例えば、SHA256)が計算される。ステップ804のあとにステップ806が続き、ここで、ファクトリモジュール702は、一方向性ハッシュ値のデジタル署名を提供する。ステップ806のあとにステップ808が続き、ここで、ファクトリモジュール702は、制約データ、制約データの一方向性ハッシュ値、および制約データの一方向性ハッシュ値のデジタル署名をスーパバイザモジュールに提供する。フロー図800によって例示される処理が、透析システムが最初に製造されたとき、または透析システムが動作可能となった後の後続の保守と関連して実行され得ることに留意されたい。
【0048】
スーパバイザモジュール704が、動作モジュール706~708へのセキュアかつ否認不可能なデータ転送のために使用され得る秘密鍵および対応する公開鍵を有することも可能である。ファクトリモジュール702からスーパバイザモジュール704へのデータの転送の場合と全く同様に、スーパバイザモジュール704からのデータは、最初にデータの一方向性ハッシュを(例えば、SHA256一方向性暗号学的ハッシュ機構を使用して)決定し、一方向性ハッシュ値にデジタル署名し、次いでデータ、一方向性ハッシュ値、および一方向性ハッシュ値のデジタル署名を転送することによって、動作モジュール706~708の各々に転送され得る。同様に、動作モジュール706~708の各々は、スーパバイザモジュール704へのセキュアかつ否認不可能なデータ転送を提供するために使用され得る秘密鍵および対応する公開鍵を有し得る。動作モジュールの新しい状態が許容可能であるかどうかを決定すること(上述したフロー図600のテストステップ608)に関連して、およびモジュールの状態を復元する/戻すこと(上述したフロー図600のステップ612)に関連して、スーパバイザモジュール704と動作モジュール706~708との間でデータを転送することについては、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
【0049】
図9を参照すると、スーパバイザモジュール704が、動作モジュールの新しい状態が許容可能であるかどうかを決定し、新しい状態が許容可能でない場合に動作モジュールの状態を復元する/戻すことに関連して実行される処理を、フロー図900が例示する。処理は、第1のステップ902で開始し、ここで、スーパバイザモジュール704は、テストされている動作モジュール(すなわち、動作モジュール706~708のうちの1つ)から新しい状態についての状態データを受信する。本明細書の一実施形態では、状態データは、状態データの一方向性ハッシュ値(例えば、SHA256を使用する)および一方向性ハッシュ値のデジタル署名と共に提供される。一方向性ハッシュ値およびデジタル署名と共にデータを提供することが、データをセキュアかつ否認不可能にすることに留意されたい。いくつかの実施形態では、スーパバイザモジュール704は、(アーカイブ目的のために)状態データを記憶し得、データに対して一方向性ハッシュ(例えば、SHA256)を実行し、一方向性ハッシュにデジタル署名し得る。データの否認不可能なスナップショットは、後続の診断に、または特定の動作状態の証拠として有用であり得る。
【0050】
ステップ902のあとにテストステップ904が続き、ここで、本明細書の他の箇所で説明するように、セキュリティモジュール704は、状態データを検査して、新しい状態の動作パラメータのいずれかが、ファクトリモジュール702からセキュリティモジュール704に以前に転送された制約データの一部として提供されたいずれかの制約の外にあるかどうかを決定する。いずれの新しい動作パラメータもいずれの制約の外にない場合、制御は、ステップ904からステップ906に移行し、ここで、スーパバイザモジュール704から、テストされている動作モジュールに確認が送られる。確認を受信すると、動作モジュールは新しい状態で動作を開始する。ステップ906のあとに処理は完了する。テストステップ904において、新しい動作パラメータの少なくとも1つが制約の外にあると決定された場合、制御は、ステップ904からステップ908に移行し、ここで、以前の状態についてのデータが動作モジュールに送られ、動作モジュールを以前の状態に戻す。ステップ906のあとに処理は完了する。以前の状態は、初期状態、新しい状態を決定する直前の動作モジュールの状態、または許容可能な他の何らかの以前の状態のいずれかであり得る。一般に、以前の状態は、以前の有効な状態である。ステップ908のあとに処理は完了する。
【0051】
図10を参照すると、図1000が、透析システム1002に入力を提供し、透析システム1002から出力を受信する患者/看護師/医師1004に結合された透析システム1002を示す。透析システム1002はまた、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、ベースラインデータおよび制約を提供する工場出荷試験システム(factory acceptance test system)1006にも結合され得る。工場出荷試験システム1006が、透析システムに断続的に結合され、例えば、透析システム1002が製造されるときや、透析システム1002が製造日後にメンテナンスされるときに使用され得ることに留意されたい。いくつかの実施形態では、工場出荷試験システム1006は、通常、患者との透析システム1002の動作中には存在しない。
【0052】
透析システム1002は、動的動作データセット1012にデータを提供し、認証監督エンジン1014からデータを受信する、1つまたは複数の人工知能ベースの最適化アルゴリズム1008を含む。認証監督エンジン1014は、本明細書の他の箇所で説明するように、重要なパラメータを制約するための機構を含み、制御値テーブル、ガード/コンプライアンスエンフォーサ、AI固有学習規則、および動的システムベースラインデータのローディングおよびモニタリングに対処するための機構を含み得る。認証監督エンジン1014は、工場出荷試験システム1006が存在するときに、工場出荷試験システム1006とデータを交換する。認証監督エンジン1014はまた、静的動作データセット1016からのデータも受信する。静的動作データセット1016は、動的動作データセット1012によって提供されるデータについての静的(固定)対応物を含む。本明細書の一実施形態では、動的動作データセット1012および静的動作データセット1016の両方は、システム固有動作パラメータ、システム較正データ、システム構成データ、システムアラーム限界、および安全動作限界についての静的および動的な対応データ、ならびに埋め込み型プロセッサ/FPGAブートコードを含む。工場出荷試験システム1006は、認証を提供し、静的動作データセット1016から認証監督エンジン1014へのデータのコピーを容易にする。
【0053】
人工知能ベースの最適化アルゴリズム1008は、第1の適応制御アルゴリズム1022および対応する第1の適応補正アルゴリズム1024とデータを交換し、第2の適応制御アルゴリズム1026および対応する第2の適応補正アルゴリズム1028とデータを交換する。例として、第1の適応制御アルゴリズム1022は、流量の変化を表す流量パラメータを入力δFとして受信し得、第1の適応補正アルゴリズム1024は、流量制御パラメータを入力δPとして受信し得る。透析システムでは、以下によって与えられる、透析器の限外濾過率であるKUFを最適化(最大化)することが望ましい。
KUF=V/(T×P)
ここで、Vは透析器の膜を横切る流体の量(ml)であり、Tは時間(hours)であり、Pは圧力(mmHg)である。第1の適応制御アルゴリズム1022および第1の適応補正アルゴリズム1024は、既知の最適化機構を含むいくつかの可能な機構のいずれか1つを使用して、この最適化を実行し得る。しかしながら、安全性/規制上の考慮事項のために、人工知能ベースの最適化アルゴリズム1008のうちの対応する1つが、認証監督エンジン1014によって制約されて、動作パラメータが静的動作データセット1016の値からあまりに逸脱しすぎることを防止する。
【0054】
同様に、第2の適応制御アルゴリズム1026および対応する第2の適応補正アルゴリズム1028が、透析器膜を介して加えられる流体圧力差などの他の動作パラメータを最適化するために使用され得ることに留意されたい。
【0055】
図11を参照すると、概略図1100が、本明細書に記載のシステムの異なる構成要素間のフローを例示する。より具体的には、図1100は、プロセスフローにおけるAIモジュールと監督モジュールの相互動作を示し、モジュールがどのようにリンクおよび接続されるか、およびモジュールがどのように他のモジュールと相互動作するかを示す。図1100はまた、プロセス/動作変数がAIおよび監督モジュールとどのように相互動作するかも例示する。同様のフローが、各AI実装サブアセンブリ/モジュールに適用され得ることに留意されたい。
【0056】
一例の処理システムについて図5で説明したが、上述の主題および機能的動作の実装形態は、他のタイプのデジタル電子回路内で、または本明細書に開示される構造およびそれらの構造的同等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、またはそれらのうちの1つまたは複数の組合せで実装され得る。本明細書に記載の主題の実装形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品、すなわち、処理システムによる実行のための、または処理システムの動作を制御するための、有形のプログラムキャリア、例えばコンピュータ可読媒体上で符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装され得る。コンピュータ可読媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、メモリデバイス、機械可読伝播信号をもたらす組成物、またはそれらのうちの1つまたは複数の組合せであり得る。
【0057】
「コンピュータシステム」という用語は、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含し得、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含む。処理システムは、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムのための実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはこれらのうちの1つまたは複数の組合せを構成するコードを含み得る。
【0058】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、実行可能論理、またはコードとしても知られている)は、コンパイラ型もしくはインタープリタ型言語、または宣言型もしくは手続き型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムなど、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に好適な他の単位などを含む、任意の形式で展開され得る。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応するわけではない。プログラムは、他のプログラムまたはデータ(例えば、マークアップ言語文書内に記憶された1つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部分に、当該プログラム専用の単一ファイルに、または複数の協調されたファイル(例えば1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの部分を記憶するファイル)に記憶され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトに位置する、もしくは複数のサイトにわたって分散し、かつ通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。
【0059】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに好適なコンピュータ可読媒体は、すべての形態の不揮発性または揮発性メモリ、媒体、およびメモリデバイスを含み、例として、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM、EEPROM(登録商標)、およびフラッシュメモリデバイス、磁気ディスク、例えば、内部ハードディスクまたはリムーバブルディスクまたは磁気テープ、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMディスクおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、専用論理回路によって補完またはこれに組み込まれ得る。システムの構成要素は、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体、例えば通信ネットワークによって相互接続され得る。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えば、インターネットを含む。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態について説明した。しかし、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な修正がなされてよいことが理解されよう。したがって、他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の動作モジュールの動作パラメータの適応的最適化を制約する方法であって、
前記動作パラメータの少なくとも1つの値の調整に対応する新しい状態が、前記動作パラメータの少なくとも1つが前記医療機器に提供された複数の制約のうちの少なくとも1つの外にあることをもたらすかどうかを決定することと、ここにおいて、前記制約は否認不可能であり、
前記動作パラメータのいずれもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾することと、
前記動作パラメータの少なくとも1つが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻すことと、ここにおいて、前記制約が、デジタル署名された前記制約の一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供される、
を備える、方法。
【請求項2】
前記適応的最適化は、人工知能モジュールへの関連する入力と前記適応的最適化の特定の目的とに基づいて変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療機器は透析システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記制約の前記一方向性ハッシュ値は、SHA256ハッシュである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記制約の前記一方向性ハッシュは、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記医療機器は、前記システムのオペレータまたは前記医療機器から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって、いずれかの適応的最適化の前に、初期状態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記医療機器によって自動的に検出される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
状態データを記憶する動作モジュールがスーパバイザモジュールに前記状態データを提供し、前記スーパバイザモジュールは、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に前記動作モジュールを以前の状態に戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、前記動作モジュールによって提供される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
透析システムであって、
透析装置と、
非一時的コンピュータ可読媒体内のソフトウェアを実行するプロセッサを有する制御ユニットと
を備え、前記ソフトウェアは、前記透析装置を動作させ、前記透析システムの動作パラメータの適応的最適化を制約し、前記ソフトウェアは、前記動作パラメータの少なくとも1つの値の調整に対応する新しい状態が、前記動作パラメータの少なくとも1つが前記透析装置に提供された複数の制約のうちの少なくとも1つの外にあることをもたらすかどうかを決定する実行可能コードと、ここにおいて、前記制約は否認不可能であり、前記動作パラメータのいずれもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾する実行可能コードと、前記動作パラメータの少なくとも1つが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードとを含み、ここにおいて、前記制約が、デジタル署名された前記制約の一方向性ハッシュ値と共に前記透析装置に提供される、
透析システム。
【請求項11】
前記適応的最適化は、人工知能モジュールへの関連する入力と前記適応的最適化の特定の目的とに基づいて変化する、請求項10に記載の透析システム。
【請求項12】
前記一方向性ハッシュ値は、SHA256ハッシュ値である、請求項10に記載の透析システム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、状態データを記憶する動作モジュールと、前記動作モジュールから前記状態データを受信し、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定するスーパバイザモジュールとをさらに含む、請求項10に記載の透析システム。
【請求項14】
前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に、前記動作モジュールを以前の状態に戻す、請求項13に記載の透析システム。
【請求項15】
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュ値が、前記動作モジュールによって提供される、請求項13に記載の透析システム。
【請求項16】
前記制約の前記一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、請求項10に記載の透析システム。
【請求項17】
前記透析システムは、前記システムのオペレータまたは前記透析装置から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって、いずれかの適応的最適化の前に、初期状態で提供される、請求項10に記載の透析システム。
【請求項18】
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記透析装置によって自動的に検出される、請求項17に記載の透析システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本発明のいくつかの実施形態について説明した。しかし、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な修正がなされてよいことが理解されよう。したがって、他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内にある。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約する方法であって、
新しい状態が、否認不可能な方法で前記医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定することと、
いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾することと、
少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻すことと
を備える、方法。
[C2]
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、C1に記載の方法。
[C3]
前記医療機器は透析システムである、C1に記載の方法。
[C4]
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供される、C1に記載の方法。
[C5]
前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、C4に記載の方法。
[C6]
前記一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、C5に記載の方法。
[C7]
前記システムは、前記システムのオペレータまたは前記医療機器から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって初期状態で提供される、C1に記載の方法。
[C8]
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記医療機器によって自動的に検出される、C7に記載の方法。
[C9]
動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し、前記スーパバイザモジュールは、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に前記動作モジュールを以前の状態に戻す、C1に記載の方法。
[C10]
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、前記動作モジュールによって提供される、C9に記載の方法。
[C11]
医療機器の動作モジュールの状態の適応的最適化を制約するソフトウェアを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記ソフトウェアは、
新しい状態が、否認不可能な方法で前記医療機器に提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、
いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾する実行可能コードと、
少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードと
を備える、非一時的コンピュータ可読媒体。
[C12]
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、C11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C13]
前記医療機器は透析システムである、C11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C14]
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供される、C11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C15]
前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、C14に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C16]
前記一方向性ハッシュ値は、公開鍵/秘密鍵ペアの一部である秘密鍵を使用してデジタル署名される、C15に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C17]
前記システムは、前記システムのオペレータまたは前記医療機器から処置を受ける患者のうちの1つにしたがって初期状態で提供される、C11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C18]
前記オペレータまたは前記患者のいずれかは、前記医療機器によって自動的に検出される、C17に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C19]
動作モジュールがスーパバイザモジュールに状態データを提供し、前記スーパバイザモジュールは、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定し、前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に前記動作モジュールを以前の状態に戻す、C11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C20]
前記状態データのデジタル署名された一方向性ハッシュが、前記動作モジュールによって提供される、C19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
[C21]
透析システムであって、
透析装置と、
非一時的コンピュータ可読媒体内のソフトウェアを実行するプロセッサを有する制御ユニットと
を備え、前記ソフトウェアは、前記透析装置を動作させ、前記透析システムの状態の適応的最適化を制約し、前記ソフトウェアは、新しい状態が、否認不可能な方法で前記透析システムに提供された制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定する実行可能コードと、いずれの動作パラメータもいずれの前記制約の外にない場合に前記新しい状態を受諾する実行可能コードと、少なくとも1つの動作パラメータが前記制約のうちの少なくとも1つの外にある場合に前記医療機器を以前の有効状態に戻す実行可能コードとを含む、透析システム。
[C22]
前記適応的最適化は、人工知能と前記人工知能への関連する入力を共に使用して提供される、C21に記載の透析システム。
[C23]
制約データが、前記制約データの一方向性ハッシュ値と共に前記医療機器に提供され、前記一方向性ハッシュは、デジタル署名されたSHA256ハッシュである、C21に記載の透析システム。
[C24]
前記制御ユニットは、動作モジュールと、前記動作モジュールから状態データを受信し、前記動作モジュールによって提供された状態データに基づいて、前記新しい状態が、制約の外にある少なくとも1つの動作パラメータを有するかどうかを決定するスーパバイザモジュールとをさらに含む、C21に記載の透析システム。
[C25]
前記スーパバイザモジュールは、少なくとも1つの動作パラメータが制約の外にある場合に、前記動作モジュールを以前の状態に戻す、C24に記載の透析システム。
【国際調査報告】