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特表2022-514409メッキ密着性及び耐食性に優れたメッキ鋼材及びその製造方法
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  • 特表-メッキ密着性及び耐食性に優れたメッキ鋼材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】メッキ密着性及び耐食性に優れたメッキ鋼材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/14 20060101AFI20220203BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C23C14/14 C
C23C14/58 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535736
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2019017843
(87)【国際公開番号】W WO2020130554
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165285
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ホン、 ソク-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 ウ-ソン
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA23
4K029AA24
4K029BA02
4K029BA18
4K029BA21
4K029BB02
4K029BC01
4K029EA01
4K029EA08
4K029GA01
(57)【要約】
本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材は、素地鉄及び上記素地鉄の表面に形成されたメッキ層を含み、上記メッキ層は、Zn単相、Mg単相、MgZn合金相及びMgZn11合金相を含み、上記Zn単相は、15~19体積%の割合で上記メッキ層内に含まれ、上記素地鉄と隣接した上記メッキ層の下部t/2領域における上記Zn単相の割合は、上記メッキ層表層部側の上記メッキ層の上部t/2領域における上記Zn単相の割合よりさらに大きいとよい(但し、ここでtはメッキ層の厚さ(μm)を意味する。)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鉄及び前記素地鉄の表面に形成されたメッキ層を含み、
前記メッキ層は、Zn単相、Mg単相、MgZn合金相及びMgZn11合金相を含み、
前記Zn単相は、15~19体積%の割合で前記メッキ層内に含まれ、
前記素地鉄と隣接した前記メッキ層の下部t/2領域における前記Zn単相の割合は、前記メッキ層表層部側の前記メッキ層の上部t/2領域における前記Zn単相の割合よりさらに大きい(但し、ここでtはメッキ層の厚さ(μm)を意味する)、メッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材。
【請求項2】
前記Mg単相は、13~20体積%の割合で前記メッキ層に含まれる、請求項1に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材。
【請求項3】
前記MgZn合金相は、前記MgZn11合金相よりさらに大きい割合で前記メッキ層に含まれる、請求項1に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材。
【請求項4】
前記MgZn11合金相は、18~22体積%の割合で前記メッキ層に含まれる、請求項3に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材。
【請求項5】
前記メッキ層は、2~10μmの厚さ(t)を有する、請求項1に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材。
【請求項6】
PVD(Physical Vapor Deposition)法により素地鉄上に第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層を順次に形成してメッキ鋼材を提供する段階と、
前記メッキ鋼材を加熱して合金化熱処理して合金化メッキ鋼材を提供する段階と、
前記合金化メッキ鋼材を冷却する段階とを含み、
前記メッキ鋼材を提供する段階において、
前記第2のMgメッキ層は、前記第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層の合計厚さに対して30~35%の厚さを有するように形成され、
前記第1のZnメッキ層は、前記第3のZnメッキ層の厚さに対して1.1~4倍の厚さを有するように形成される、メッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法。
【請求項7】
前記メッキ鋼材を提供する段階において、
前記第1のZnメッキ層、前記第2のMgメッキ層及び前記第3のZnメッキ層は、2~10μmの合計厚さ(t)を有するように形成される、請求項6に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法。
【請求項8】
前記メッキ鋼材を提供する段階は、
前記第1のZnメッキ層の形成後、常温まで冷却する第1の中間冷却段階と、
前記第2のMgメッキ層の形成後、常温まで冷却する第2の中間冷却段階と、
前記第3のZnメッキ層の形成後、常温まで冷却する第3の中間冷却段階とを含む、請求項6に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法。
【請求項9】
前記合金化メッキ鋼材を提供する段階において、
前記メッキ鋼材は180~220℃の温度範囲で加熱され、
前記メッキ鋼材の加熱時間は120~160秒である、請求項6に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法。
【請求項10】
前記合金化メッキ鋼材を冷却する段階において、
前記合金化メッキ鋼材は5~15℃/sの冷却速度で常温まで冷却される、請求項6に記載のメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Zn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法に関するものであって、詳しくは、メッキ密着性及び耐食性を同時に確保したZn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陰極方式を通じて鉄の腐食を抑制する亜鉛メッキ法は、防食性能及び経済性に優れ、高耐食特性を有する鋼材の製造に広く使用されている。亜鉛がメッキされた亜鉛メッキ鋼材は、腐食環境に露出された時、鉄より酸化還元電位の低い亜鉛が先に腐食されて、鋼材の腐食が抑制されるという犠牲方式(Sacrificial Corrosion Protection)の特性を有し、これと共にメッキ層の亜鉛が酸化されながら鋼板表面に緻密な腐食生成物を形成させて、酸化雰囲気から鋼材を遮断することにより鋼材の耐腐食性を向上させる。
【0003】
しかし、産業の高度化により大気汚染が増加し、それにより腐食環境が深化しており、資源及びエネルギーの節約に対する厳しい規制によって従来の亜鉛メッキ鋼材よりさらに優れた耐食性を有する鋼材開発の必要性が高くなっている。その一環として、当技術分野ではZn-Mg合金メッキ鋼材に関する研究が多様に進められてきた。
【0004】
しかし、既開発されたZn-Mg合金メッキ鋼材の場合、母材との密着力に劣り、加工時に剥離が起こるなどの多くの問題を内包している。かかる問題を解決するためにメッキ層の組成を変えるか、多層のメッキ層を構成するか、メッキ層と母材との間に粘着面を構成する等の様々な方法が提案されているが、依然としてメッキ密着性の劣化問題を克服できていない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0775241号公報(2007.11.12.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの側面によると、メッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法を提供することができる。
【0007】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全般的な内容から本発明の追加的な課題を理解するのに何ら困難もない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材は、素地鉄及び上記素地鉄の表面に形成されたメッキ層を含み、上記メッキ層は、Zn単相、Mg単相、MgZn合金相及びMgZn11合金相を含み、上記Zn単相は、15~19体積%の割合で上記メッキ層内に含まれ、上記素地鉄と隣接した上記メッキ層の下部t/2領域における上記Zn単相の割合は、上記メッキ層表層部側の上記メッキ層の上部t/2領域における上記Zn単相の割合よりさらに大きいとよい(但し、ここでtはメッキ層の厚さ(μm)を意味する。)。
【0009】
上記Mg単相は、13~20体積%の割合で上記メッキ層に含まれてもよい。
【0010】
上記MgZn合金相は、上記MgZn11合金相よりさらに大きい割合で上記メッキ層に含まれてもよい。
【0011】
上記MgZn11合金相は、18~22体積%の割合で上記メッキ層に含まれてもよい。
【0012】
上記メッキ層は、2~10μmの厚さ(t)を有してもよい。
【0013】
本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材の製造方法は、PVD(Physical Vapor Deposition)法により素地鉄上に第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層を順次に形成してメッキ鋼材を提供する段階と、上記メッキ鋼材を加熱して合金化熱処理して合金化メッキ鋼材を提供する段階と、上記合金化メッキ鋼材を冷却する段階とを含み、上記メッキ鋼材を提供する段階において、上記第2のMgメッキ層は、上記第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層の合計厚さに対して30~35%の厚さを有するように形成され、上記第1のZnメッキ層は、上記第3のZnメッキ層の厚さに対して1.1~4倍の厚さを有するように形成することができる。
【0014】
上記メッキ鋼材を提供する段階において、上記第1のZnメッキ層、上記第2のMgメッキ層及び上記第3のZnメッキ層は、2~10μmの合計厚さを有するように形成することができる。
【0015】
上記メッキ鋼材を提供する段階は、上記第1のZnメッキ層の形成後、常温まで冷却する第1の中間冷却段階と、上記第2のMgメッキ層の形成後、常温まで冷却する第2の中間冷却段階と、上記第3のZnメッキ層の形成後、常温まで冷却する第3の中間冷却段階とを含むことができる。
【0016】
上記合金化メッキ鋼材を提供する段階において、上記メッキ鋼材は、180~220℃の温度範囲で加熱され、上記メッキ鋼材の加熱時間は120~160秒であってもよい。
【0017】
上記合金化メッキ鋼材を冷却する段階において、上記合金化メッキ鋼材は5~15℃/sの冷却速度で常温まで冷却されてもよい。
【0018】
上記課題の解決手段は、本発明の特徴を全て列挙したものではなく、本発明の多様な特徴とそれによる長所と効果は、下記の具体的な実施形態を参照してより詳しく理解されることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によると、耐食性を確保しながらもメッキ密着性が顕著に向上したZn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態により第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層が形成されたメッキ鋼材の断面を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、メッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法に関するもので、以下では、本発明の好ましい実施形態を説明する。本発明の実施形態は様々な形態で変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される実施形態によって限定されるものと解釈されてはならない。本実施形態は当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に本発明をさらに詳しく説明するために提供されるものである。
【0022】
以下では、本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材について詳しく説明する。
【0023】
本発明のZn-Mg合金メッキ鋼材は、素地鉄と素地鉄の表面に形成されたメッキ層とを含む。本発明において素地鉄の合金組成及びその形状については特に限定しない。本発明の素地鉄は、メッキ層の形成に提供される全ての鋼材を含む概念として解釈することができ、例えば、C、Si、Mn、P、Sを含む鋼板または鋼線材であってもよい。
【0024】
本発明のメッキ層はZn及びMgを含み、Zn及びMgは、体積比基準として約1:2の割合でメッキ層に含まれることができる。本発明のメッキ層はZn及びMgを含み、既設定された温度範囲で一定時間合金化処理を通じて提供されるため、合金化された領域と未合金化された領域が混在し得る。未合金化された領域にはZn単相及びMg単相が存在し、合金化された領域にはMg-Zn系合金相が存在することができる。
【0025】
本発明の発明者らは、耐食性及びメッキ密着性を両立可能なZn-Mg系メッキ層について深度のある研究を行い、その結果、Zn-Mg系メッキ層内に含まれるZn単相、Mg単相、Zn-Mg系合金相の分率を最適な範囲で制御する場合、目的とする耐食性及びメッキ密着性を確保可能なことが分かった。
【0026】
Mg-Zn系合金相は、Zn単相及びMg単相に比べて延性が低いため、メッキ層がMg-Zn系合金相のみからなる場合、メッキ密着性の確保側面で好ましくない。よって、本発明は、メッキ層内のZn単相及びMg単相の割合を一定水準以上に確保して、メッキ密着性を向上させようとする。また、Mg-Zn系合金相は、Zn単相及びMg単相に比べて耐食性の改善に有効であるため、メッキ層がZn単相及びMg単相のみからなる場合、耐食性向上の側面で好ましくない。よって、本発明は、メッキ層内にMg-Zn系合金相を導入して耐食性を向上させようとする。
【0027】
本発明は、メッキ層内のZn単相の割合を15~19体積%に制限することができる。メッキ層内のZn単相の割合が15体積%未満の場合、メッキ鋼材の加工時にZn単相及びMg単相による変形量の吸収効果が十分ではないため、メッキ層剥離が発生するおそれがある。また、メッキ層内のZn単相の割合が19体積%を超える場合、メッキ密着性の確保側面では好ましいが、メッキ層内のMg-Zn系合金相の割合が十分ではなく、メッキ鋼材の耐食性が顕著に劣化する問題が発生するおそれがある。
【0028】
メッキ層内のMg単相の割合は、メッキ層内のZn含量及びMg含量、合金化度によって決められるもので、本発明のメッキ層は、14~20体積%のMg単相を含むことができる。Zn単相の割合制限と同様に、メッキ層内のMg単相の割合が14体積%未満の場合、メッキ密着性が低下するおそれがあり、メッキ層内のMg単相の割合が20体積%を超える場合、メッキ鋼材の耐食性が低下するおそれがある。
【0029】
また、本発明は、素地鉄と隣接したメッキ層の下部t/2領域がメッキ層表層部側の上部t/2領域よりさらに大きい割合でZn単相を含むように制御するため、メッキ密着性をさらに効果的に確保することができる。即ち、メッキ層内で密着性の向上に寄与するZn単相が素地鉄との界面側により多く形成されるように制御するため、メッキ層と素地鉄間の密着性をより効果的に向上させることができる。ここで、tはメッキ層の厚さ(μm)を意味する。
【0030】
Mg-Zn系合金相としては、MgZn11合金相、MgZn合金相、MgZn合金相及びMgZnなどがあるが、本発明者らの研究結果によると、MgZn11合金相及びMgZn合金相が耐食性の向上に効果的に寄与することが確認された。よって、本発明のメッキ層に含まれるMg-Zn系合金相は、MgZn11合金相またはMgZn合金相に制限することができる。但し、合金化された領域がMgZn11合金相だけでなる場合、光沢低下などの問題が発生するおそれがあり、合金化された領域がMgZn合金相だけでなる場合、MgZn合金相の高い脆性によってメッキ層の剥離が加速化する可能性があるため、本発明のメッキ層にはMgZn11合金相及びMgZn合金相が混合して含まれることが好ましい。
【0031】
また、本発明におけるMgZn合金相は、MgZn11合金相よりさらに大きい割合でメッキ層に含まれることが好ましい。MgZn合金相はMgZn11合金相より脆性が強くてメッキ密着性の側面では好ましくないが、MgZn合金相はMgZn11合金相より耐食性の向上に効果的に寄与するだけでなく、本発明のメッキ層は、Zn単相及びMg単相を含み、加工時に変形量の差異を一部吸収するように設計されているため、MgZn合金相がMgZn11合金相よりさらに大きい割合でメッキ層に含まれることが耐食性向上の側面でより好ましい。よって、本発明におけるMgZn11合金相は、18~22体積%の割合でメッキ層に含まれることができ、MgZn合金相はメッキ層の残りの成分を構成することができる。
【0032】
本発明のメッキ層は、2~10μmの厚さを有することができる。メッキ層の厚さが2μm未満の場合、十分な耐食性の向上効果を期待することができず、メッキ層の厚さが10μmを超える場合、経済的な側面で好ましくないからである。
【0033】
以下、本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材を製造するための製造方法について詳しく説明する。但し、以下で説明する製造方法は、本発明のメッキ鋼材を製造する好ましい一例であり、本発明のメッキ鋼材が必ずしも以下で説明する製造方法によってのみ製造されるものではない。
【0034】
本発明の一側面によるメッキ密着性及び耐食性に優れたZn-Mg合金メッキ鋼材は、PVD(Physical Vapor Deposition)法により素地鉄上に第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層を順次に形成してメッキ鋼材を提供する段階と、上記メッキ鋼材を加熱して合金化熱処理して合金化メッキ鋼材を提供する段階と、上記合金化メッキ鋼材を冷却する段階とを含み、上記メッキ鋼材を提供する段階において、上記第2のMgメッキ層は、上記第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層の合計厚さに対して30~35%の厚さを有するように形成され、上記第1のZnメッキ層は、上記第3のZnメッキ層の厚さに対して1.1~4倍の厚さを有するように形成することができる。好ましい第1のZnメッキ層と第3のZnメッキ層との厚さ比は1.3~4:1であるとよく、より好ましい第1のZnメッキ層と第3のZnメッキ層との厚さ比は1.5~4:1であるとよい。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態によって第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層が形成されたメッキ鋼材の断面を概略的に示す図面である。
【0036】
本発明のメッキ鋼材を提供する段階において、図1に示すように、素地鉄5上に第1のZnメッキ層11、第2のMgメッキ層12及び第3のZnメッキ層13を順次に形成してメッキ層10を形成することができる。合金化以後、メッキ層と素地鉄間の密着力の確保及びメッキ層内の均一な耐食性の確保のためにZn層、Mg層、Zn層の順にメッキ層が形成されることが好ましい。
【0037】
第1のZnメッキ層11、第2のMgメッキ層12及び第3のZnメッキ層13の形成方法は特に制限されるものではないが、PVD(Physical Vapor Deposition)法を用いることができる。また、第1のZnメッキ層11、第2のMgメッキ層12及び第3メッキ層13の相互間の拡散を防止するために、それぞれのメッキ層11、12、13の形成後に常温まで冷却する中間冷却を実施することができる。
【0038】
本発明のメッキ層10は、2~10μmの厚さを有するように形成されてもよい。メッキ層10の厚さが2μm未満の場合、十分な耐食性の向上効果を期待することができず、メッキ層10の厚さが10μmを超える場合、経済的の側面で好ましくないからである。
【0039】
第1のZnメッキ層11、第2のMgメッキ層12及び第3のZnメッキ層13は、それぞれ第1の厚さt1、第2の厚さt2及び第3の厚さt3を有するように形成することができ、第2の厚さt2は、全体メッキ層10の厚さ(t=t1+t2+t3)に対して30~35%の水準で形成することが好ましい。第2の厚さt2が全体メッキ層10の厚さ(t=t1+t2+t3)に対して35%を超える場合、メッキ層10内のMg含量が過多であり、合金化後にメッキ層10内のZn単相の割合が目的とする水準に到達せず、第2の厚さt2が全体メッキ層10の厚さ(t=t1+t2+t3)に対して30%未満の場合、メッキ層10内のMg含量が過小であり、合金化後にメッキ層10内のZn単相の割合が目的とする水準を超えるからである。
【0040】
また、Zn単相は、メッキ層と素地鉄の密着性の向上に寄与するため、合金化以後の素地鉄とメッキ層界面付近にZn単相が多量存在することがメッキ密着性の確保に有利である。よって、本発明は、第1のZnメッキ層11が第3のZnメッキ層13に比べて1.1倍以上の厚さを有するようにメッキ層10を形成(1.1×t3≦t1、μm)し、合金化以後に素地鉄との界面側に相対的に多量のZn単相を形成し、それによりメッキ密着性を効果的に確保することができる。第1のZnメッキ層11の好ましい厚さは、第3のZnメッキ層13厚さの1.3倍以上であるとよく、第1のZnメッキ層11のより好ましい厚さは、第3のZnメッキ層13厚さの1.5倍以上であるとよい。
【0041】
第1のZnメッキ層11の厚さt1が第3のZnメッキ層13厚さt3を4倍以上超える場合、Zn単相が素地鉄に隣接して形成されることによるメッキ密着性の向上効果は飽和することに対し、目的とするMg-Zn系合金相を充分に形成することができないため、耐食性の確保側面で好ましくない。よって、本発明の第1のZnメッキ層11の厚さt1は、第3のZnメッキ層13の厚さt3の4倍以下(t1≦4×t3、μm)に制限することができる。
【0042】
上述したメッキ層が形成されたメッキ鋼材は、180~220℃の温度範囲で120~160秒間加熱されて合金化処理されてもよい。180~220℃の合金化処理の温度範囲は、Zn及びMgの融点及び合金化度の精密な制御を反映した温度範囲であり、120~160秒の合金化時間は、当該温度範囲でメッキ層内に15~19体積%のZn単相を確保するための合金化時間である。
【0043】
合金化処理されたメッキ鋼材は、5~15℃/sの冷却速度で常温まで冷却することができる。
【実施例
【0044】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示して具体化するためのものであるだけで、本発明の権利範囲を制限するためのものではないという点に留意する必要がある。
【0045】
(実施例1)
真空度が10-5torr以下に維持されたチャンバ内に素地鉄を配置し、PVD(Physical Vapor Deposition)法により第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層を順次に形成して各試片を製作した。このとき、各試片のメッキ層の厚さは、下記の表1に記載したように調節した。メッキ層の形成時に素地鉄に別途の熱源を供給せず、それぞれメッキ層の形成時に十分な冷却時間を付与して凝固潜熱により各メッキ層間の拡散が発生しないように調節した。以後、チャンバ内の雰囲気温度を30℃/sの速度で200℃まで昇温して140秒間合金化熱処理した後、10℃/sの速度で常温まで冷却した。
【0046】
以後、各試片に対してRIR(Reference Intensity Ratio)方法によりメッキ層内のZn単相の割合を測定し、その結果を下記の表1に共に記載した。表1において、上部Zn単相の割合はメッキ層の表層部側に対応するメッキ層上部厚さt/2領域におけるZn単相の体積分率を意味し、下部Zn単相の割合は、素地鉄と隣接した位置に対応するメッキ層下部厚さt/2領域におけるZn単相の体積分率を意味する。各試片に対してメッキ密着性及び耐食性を評価し、その結果を表1に併せて記載した。
【0047】
メッキ密着性は、各試片を180゜角度で曲げ加工した後、ベンディングテスト(bending test)を施して評価した。ベンディング部位に密着性テープ(Nitto tape)を試片全面に貼り付けてから剥がしたとき、合金層が全く付着してこない場合を「優秀」、一部の合金層が付着してくる場合を「不十分」と評価した。
【0048】
耐食性は、各試片を塩水噴霧試験機(TS-CASS)に装入し、国際規格(ASTM B117)によって赤錆発生時間を測定して評価した。このとき、5%塩水(温度35℃、pH7)を利用し、圧縮空気の圧力は0.1MPaに設定して時間当たり15ml/80cmの塩水を噴霧した。試片を配置したチャンバ内の温度は、塩水の温度と同様に35℃と設定した。試片の角から発生する腐食を防止してメッキ層のみの耐食性を評価するために、各試片の角は密着性テープ(Nitto tape)で密封した。かかる耐食性評価試験の結果、赤錆発生時間が300時間以上の場合は「優秀」、200時間以上300時間未満の場合は「不十分」、200時間未満の場合は「不良」と評価することができる。
【0049】
【表1】
【0050】
第1のZnメッキ層が第3のZnメッキ層の厚さに対して1.1倍未満の厚さで具備される試片Aの場合、メッキ層内の下部t/2領域におけるZn単相の割合がメッキ層内の上部t/2領域におけるZn単相の割合より低く、その結果、メッキ密着性が低下したことを確認することができる。
【0051】
一方、第1のZnメッキ層が第3のZnメッキ層の厚さに対して1.1倍以上の厚さで具備される試片B~試片Dの場合、メッキ層内の下部t/2領域におけるZn単相の割合がメッキ層内の上部t/2領域におけるZn単相の割合より高く、その結果、メッキ密着性に優れることを確認することができる。
【0052】
但し、第1のZnメッキ層が第3のZnメッキ層の厚さに対して4倍を超える厚さで具備される試片Dの場合、メッキ密着性は優れることに対し、耐食性は不十分であることを確認することができる。試片Dの場合、メッキ層表層部側のMg-Zn系合金相の割合が目的とする水準に到達せず、相対的に低下した耐食性が具備されるものと把握されることができる。
【0053】
(実施例2)
真空度が10-5torr以下で維持されたチャンバ内に素地鉄を配置し、PVD(Physical Vapor Deposition)法によって第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層を順次に形成して各試片を製作した。このとき、第1のZnメッキ層、第2のMgメッキ層及び第3のZnメッキ層は、それぞれ2.2μm、2μm及び1.8μmの厚さを有するように形成した。メッキ層の形成時に素地鉄に別途の熱源を供給せず、それぞれメッキ層の形成時に十分な冷却時間を付与して凝固潜熱により各メッキ層間の拡散が発生しないように調節した。以後、チャンバ内の雰囲気温度を30℃/sの速度で200℃まで昇温して合金化熱処理した後、10℃/sの速度で常温まで冷却した。このとき、各試片に合金化熱処理時間(チャンバ内の雰囲気温度が200℃で維持された時間)を異ならせ、これを下記の表2に表した。
【0054】
以後、各試片に対してRIR(Reference Intensity Ratio)方法によりメッキ層内のZn単相、Mg単相、MgZn合金相及びMgZn11合金相の割合を測定し、その結果を下記の表2に併せて表した。また、各試片に対して耐食性及びメッキ密着性を評価し、その結果を表2に併せて記載した。耐食性及びメッキ密着性の評価は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0055】
【表2】
【0056】
合金化熱処理時間が120~160秒の範囲を満たす試片3~6の場合、Zn単相の割合が15~19体積%の範囲を満たし、それにより本発明が目的とするメッキ密着性と耐食性を確保することを確認することができる。
【0057】
一方、合金化熱処理時間が160秒を超える試片7~試片9の場合、Zn単相の割合が15体積%未満とメッキ密着性が低下し、合金化熱処理時間が120秒未満の試片1~3の場合、Zn単相の割合が19体積%を超えて耐食性が低下したことを確認することができる。
【0058】
従って、本発明の一側面によると、耐食性を確保しながらもメッキ密着性が顕著に向上されたZn-Mg合金メッキ鋼材及びその製造方法を提供することができる。
【0059】
以上で実施形態を通じて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形態の実施形態も可能である。したがって、以下で記載した請求項の技術的思想と範囲は実施形態に限定されない。
図1
【国際調査報告】