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特表2022-514417ナノセルロースを含む繊維材料を有機酸又は有機酸塩で処理する方法
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  • 特表-ナノセルロースを含む繊維材料を有機酸又は有機酸塩で処理する方法 図1
  • 特表-ナノセルロースを含む繊維材料を有機酸又は有機酸塩で処理する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ナノセルロースを含む繊維材料を有機酸又は有機酸塩で処理する方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20220203BHJP
   C08J 7/14 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
D21H11/18
C08J7/14 CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535773
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2019061181
(87)【国際公開番号】W WO2020128996
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1851644-3
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】リーティケイネン、カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ニーレン、オットー
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
【テーマコード(参考)】
4F073
4L055
【Fターム(参考)】
4F073AA17
4F073BA03
4F073BB01
4F073EA01
4F073EA11
4F073EA36
4F073EA42
4F073EA60
4L055AF09
4L055AF10
4L055AF46
4L055AG06
4L055AG16
4L055AG27
4L055AG34
4L055AG35
4L055AG46
4L055AG47
4L055AG94
4L055AH47
4L055BE08
4L055CF41
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA13
4L055EA19
4L055EA20
4L055EA31
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA22
4L055FA30
4L055GA50
(57)【要約】
本発明は、ナノセルロースを含む表面処理繊維材料を調製する方法であって、繊維材料を有機酸又はその塩で表面処理する方法に関する。繊維材料自体も提供される。本技術によって、工業規模で稼働しながら、繊維材料の水蒸気透過率(WVTR)を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロースを含む表面処理繊維材料を調製する方法であって、
a.ナノセルロースを含む懸濁液から繊維材料を形成する工程と、
b.有機酸又は有機酸塩を含む溶液で繊維材料を表面処理して、少なくとも3の表面pHを有する、繊維材料のバリア特性が改善された、表面処理繊維材料を得る工程と
を含む、上記方法。
【請求項2】
天然ナノセルロースを含み、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは15%未満のヘミセルロース含有量を有する懸濁液から、繊維材料が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
懸濁液が、修飾ナノセルロース、好ましくはリン酸化ナノセルロース又はカルボキシメチル化ナノセルロースを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
表面処理繊維材料が、4超、好ましくは4~9の間、さらにより好ましくは4~8の間の表面pHを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
有機酸が、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸及び尿酸からなる群から選択され、好ましくはクエン酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
有機酸塩が、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸及び尿酸からなる群から選択される有機酸、好ましくはクエン酸の塩である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面処理工程の後に、好ましくは高温で、表面処理繊維材料を乾燥させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
任意の乾燥工程の前、場合により、表面処理工程の前に、中和剤を用いて繊維ウェブ又はナノセルロース懸濁液を中和処理する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
繊維材料を乾燥させて、1重量%を超える、好ましくは50重量%を超える固形分を得る、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
繊維材料が、脱水前又は脱水中に少なくとも1つの架橋剤で処理することによって部分的に架橋されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面処理前の繊維材料が、ASTM F-1249に従って10-50gsmの坪量で、適切には50g/m/24h超、又はより好ましくは80g/m/24h超、最も好ましくは100g/m/24h超(23℃、50% RH)の水蒸気透過率(WVTR)値を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面処理及び乾燥/硬化後の繊維材料が、ASTM F-1249に従って10~50gsmの坪量で、1~30cc/m/24h(23℃、50% RH)の範囲の水蒸気透過率(WVTR)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
形成プロセスが、基板(substrate)上へのキャスティング又は湿式堆積又はコーティングであり、繊維材料が基板から除去されない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
繊維材料が膜又はコーティング、好ましくは膜である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
表面処理される繊維材料が、1~100g/mの範囲、より好ましくは10~50g/mの範囲の坪量を有する自立膜であり、場合により、自立膜がキャリア基板上に直接付着される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
繊維材料が、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃、又は最も好ましくは少なくとも60℃の平均温度で、少なくとも1時間、より好ましくは2時間、最も好ましくは少なくとも6時間、ロール又はシート形態で後硬化される(post-cured)、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
繊維材料が、0.1重量%のデンプン、好ましくは1重量%を超えるデンプン、最も好ましくは2重量%を超えるデンプンを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
処理溶液が、以下の添加剤、ナノ粘土、リグニン、デンプン、MFC、又はセルロース誘導体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
繊維材料が、少なくとも0.5重量%の酸化ナノセルロース、好ましくは5重量%を超える酸化ナノセルロース、最も好ましくは10重量%を超える酸化ナノセルロースを含有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
酸化ナノセルロースが、50%超、好ましくは60超、より好ましくは70%超の結晶化度を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
3を超える表面pHを有し、ナノセルロース及び有機酸を含む繊維材料であって、ASTM F-1249及び10~50gsmの坪量による、1~20cc/m/24h(38℃、85% RH)の範囲の水蒸気透過率(WVTR)値を有する、上記繊維材料。
【請求項22】
天然ナノセルロースを含み、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは15%未満のヘミセルロース含有量を有する、請求項21に記載の繊維材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ナノセルロースを含む表面処理繊維材料を調製する方法であって、繊維材料を有機酸又は有機酸塩で表面処理する方法に関する。繊維材料自体も提供される。本技術によって、工業規模で稼働しながら、繊維材料の水蒸気透過率(WVTR)を改善することができる。
【背景技術】
【0002】
ナノセルロース膜の水分感受性の問題は、良好な酸素バリアなど、水蒸気誘発膨潤のいくつかの理論及び可能な効果を含む多くの科学論文に記載されており、例えばWang,J.らによる総説(Moisture and Oxygen Barrier Properties of Cellulose Nanomaterial-Based Films,ACS Sustainable Chem.Eng.,2018,6(1),pp 49-70)を参照されたい。セルロース結晶性の役割に加えて、ポリマー添加剤(Kontturi,K.,Kontturi,E.,Laine,J.,Specific water uptake of thin films from nanofribrillar cellulose,Journal of Materials Chemistry A,2013,1,13655)及び多様な疎水性コーティング溶液のいくつかが提案されている。
【0003】
手短に言えば、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)特性(結晶性、電荷、粒径)、ならびにニート膜の形成されたネットワークの特性(膨潤、架橋など)の両方がバリア特性に影響を及ぼす。
【0004】
いくつかの架橋剤が、特許及び科学文献において提案されている。これらの上記の解決策の多くに伴う問題は、それらが工業的にスケーラブルではなく、高速又は大規模製造構想にも適していないことである。ナノセルロースの混合及び修飾は技術的に困難であり、腐食、不均衡なウェットエンド電荷、ウェットエンドでの堆積、材料及び繊維の保持力の不足の問題につながる可能性がある。完成紙料中の架橋剤の使用はまた、無制御レベルの不均一な架橋及びゲル形成をもたらし、それは、脱水速度ならびにその後の膜及びバリア品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
繊維材料の処理の効率を上げる方法、及び、特に高い相対湿度でのバリア特性を強化する方法について課題が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、有機酸又は有機酸塩を含む溶液で処理したナノセルロース繊維材料について有望な結果を見出した。
【0007】
ナノセルロースを含む表面処理繊維材料を調製する方法が提供され、前記方法は、
a.ナノセルロースを含む懸濁液から繊維材料を形成する工程と、
b.有機酸又は有機酸塩を含む溶液で繊維材料を表面処理して、表面pHが少なくとも3である、繊維材料のバリア特性が改善された、表面処理繊維材料を得る工程とを含む。
【0008】
繊維材料、特に繊維膜材料も提供される。本方法及び材料のさらなる特徴は、以下の本文及び特許請求の範囲に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】表面処理繊維材料を調製する方法の第1の実施形態のフローチャートを示す。
図2】表面処理繊維材料を調製する方法の第2の実施形態のフローチャートを示す。
図3】表面処理繊維材料を調製する方法の第3の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記のように、ナノセルロースを含む表面処理繊維材料を調製する方法が提供される。
【0011】
本方法は、
a.ナノセルロースを含む懸濁液から繊維材料を形成する工程と、
b.有機酸又は有機酸塩を含む溶液で繊維材料を表面処理して、表面pHが少なくとも3である、繊維材料のバリア特性が改善された、表面処理繊維材料を得る工程とを含む。
【0012】
繊維材料の表面のpHは、最終生成物、すなわち乾燥生成物で測定される。「表面pH」は、新鮮な純水を表面に流して測定する。5回の並行測定を行い、平均pH値を計算する。センサーに純水又は超純水を流し、次いで紙試料を湿気のある/湿ったセンサー表面に置き、30秒後にpHを記録する。測定には標準pH計を使用する。「表面pH」は、3超、好ましくは4超、好ましくは4~9の間、さらにより好ましくは4~8の間であるべきである。
【0013】
繊維材料
この方法で使用される繊維材料は、ナノセルロースを含む懸濁液から形成される。一実施形態では、ナノセルロースは、天然ナノセルロース又はリン酸化ナノセルロースなどの非誘導体化又は化学修飾ナノセルロースである。ヘミセルロース含有量は、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは15%未満であるべきである。
【0014】
ナノセルロース懸濁液は、1つ又は複数のグレードのナノセルロース及び繊維、例えば天然ナノセルロース及びリン酸化ナノセルロース、又はナノセルロースと他のセルロース繊維、例えばクラフト繊維との混合物も含むことができる。
【0015】
ナノセルロース(ミクロフィブリル化セルロース(MFC)又はセルロースミクロフィブリル(CMF)とも呼ばれる)は、本出願の文脈において、少なくとも1つの寸法が100nm未満であるナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味するものとする。ナノセルロースは、部分的又は完全にフィブリル化したセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。セルロース繊維は、好ましくは、形成されたナノセルロースの最終比表面積が、交換した溶媒及び凍結乾燥材料についてBET法を用いて決定される場合、約1~約300m/g、例えば1~200m/g、又はより好ましくは50~200m/gになる程度までフィブリル化される。
【0016】
ナノセルロースを作製するための様々な方法、例えば、シングルパス又はマルチパス精製、予備加水分解、その後の精製又は高剪断分解又はフィブリルの単離が存在する。ナノセルロース製造をエネルギー効率良く、かつ持続可能にするために、通常、1つ又は複数の前処理工程が必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、酵素的又は化学的に前処理されて、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすことができる。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に修飾されてもよく、その場合、セルロース分子は、元のセルロースに見られるもの以外の(又はそれ以上の)官能基を含む。そのような基としては、とりわけ、カルボキシメチル、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル介在酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上記の方法の1つで修飾又は酸化された後、繊維をナノセルロースに分解することがより容易である。
【0017】
ナノフィブリルセルロースは、いくらかのヘミセルロースを含み得、量は植物源によって決まる。前処理された繊維、例えば加水分解された、予め膨潤された、又は酸化されたセルロース原材料の機械的分解は、精製機、粉砕機、ホモジナイザー、コロイダー(colloider)、摩擦粉砕機、超音波ソニケーター、単軸又は二軸スクリュー押出機、フルイダイザー、例えばマイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー又はフルイダイザー型ホモジナイザーなどの適切な装置を用いて行われる。MFC製造方法に応じて、製品はまた、微粉、又はナノ結晶セルロース、又は、木材繊維もしくは製紙プロセスに存在する、例えば他の化学物質を含有し得る。製品はまた、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子を含有し得る。
【0018】
ナノセルロースは、広葉樹繊維又は針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から製造することができる。それはまた、微生物源、農業繊維、例えば麦わらパルプ、竹、バガス、又は他の非木材繊維源から作製することもできる。これは、好ましくは、未使用繊維からのパルプ、例えば機械パルプ、化学パルプ及び/又は熱機械パルプを含むパルプから製造される。それはまた、破れた紙又は再生紙から作製することもできる。
【0019】
リン酸化ナノセルロース(リン酸化ミクロフィブリル化セルロースとも呼ばれる;p-MFC)は、典型的には、セルロースパルプ繊維をリン酸などのリン酸化剤と尿素及び水の存在下で反応させ、続いて繊維をフィブリル化してp-MFCにすることによって得られる。1つの特定の方法は、水中のセルロースパルプ繊維の懸濁液を準備し、前記水中懸濁液中のセルロースパルプ繊維をリン酸化剤でリン酸化し、続いて当技術分野で一般的な方法でフィブリル化することを含む。適切なリン酸化剤としては、リン酸、五酸化リン、オキシ塩化リン、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0020】
p-MFCを形成する反応では、セルロース中のアルコール官能基(-OH)がリン酸基(-OPO 2-)に変換される。このようにして、パルプ繊維又はミクロフィブリル化セルロースに架橋性官能基(リン酸基)を導入する。典型的には、p-MFCは、そのナトリウム塩の形態である。
【0021】
天然ナノセルロースの懸濁液を使用して、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは15%未満のヘミセルロース含有量を有する繊維材料を形成することができる。
【0022】
繊維材料を形成するために使用される懸濁液は、典型的には水性懸濁液である。懸濁液は、製紙で知られている追加の化学成分を含み得る。
【0023】
ナノセルロース懸濁液は、カチオン性又はアニオン性ナノセルロース、例えばカルボキシメチル化又はリン酸化ナノセルロースをさらに含み得る。
【0024】
適切には、繊維材料は、少なくとも0.5重量%の酸化ナノセルロース、好ましくは5重量%を超える酸化ナノセルロース、最も好ましくは10重量%を超える酸化ナノセルロースを含有する。酸化ナノセルロースは、50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超の結晶化度を有し得る。
【0025】
懸濁液からの繊維材料の形成プロセスは、基板(substrate)上へのキャスティング(casting)又は湿式堆積又はコーティングであり得、繊維材料は基板から除去されない。本方法で形成された繊維材料は、2つの対向する主面を有すると理解されるべきである。したがって、繊維材料は膜であってもコーティングであってもよく、最も好ましくは膜である。繊維材料は、1~80gsm、好ましくは10~50gsm、例えば10~40gsmの坪量を有する。特にコーティングの場合、坪量は低く、例えば1~10gsm(又は0.1~10gsm)とし得る。
【0026】
本明細書に記載の方法の一態様では、繊維材料は、乾燥させた後、例えば40~99重量%、例えば60~99重量%、80~99重量%又は90~99重量%の固形分を有する間に表面処理される。
【0027】
本明細書に記載の方法の別の態様では、繊維材料は、実質的に脱水及び乾燥される前に、例えば、0.1~80重量%、例えば0.5~75重量%又は1.0~50重量%の固形分を有する間に表面処理される。
【0028】
本明細書に記載の方法の別の態様では、表面処理される繊維材料は、1~100g/mの範囲、より好ましくは10~50g/mの範囲の坪量を有する自立膜である。この自立膜は、キャリア基板上に直接付着させてもよく、又は1つ以上の結合層を介して付着させてもよい。
【0029】
繊維材料は、リン酸化ナノセルロースを含む懸濁液から適切に形成される。典型的には、繊維材料は、0.01~100重量%、例えば0.1~50重量%、適切には0.1~25重量%、例えば0.1~10重量%、又は0.1~5重量%の量のリン酸化ナノセルロースを含む。リン酸化ナノセルロースは、好ましくは高い置換度、すなわち、例えば滴定法によって、又は先行技術に記載されている元素分析の使用によって測定される場合、0.1~4.0mmol/g、好ましくは0.5~3.8mmol/g、より好ましくは0.6~3.0mmol/g、又は最も好ましくは0.7~2.0mmol/gの範囲のリン酸基を有する。
【0030】
繊維材料は、他の繊維材料を含んでいてもよい。例えば、繊維材料は、天然ナノセルロースを1~99.5重量%の量で含み得る。別の態様では、天然ナノセルロースはリグニンを含む。さらなる態様では、繊維材料は、天然ナノセルロースと修飾ナノセルロースの混合物、好ましくはp-MFCを含む。さらに別の態様では、繊維材料は、1~99.5重量%の量の修飾ナノセルロースを含み得、修飾ナノセルロースは、好ましくはカルボキシメチル化ナノセルロース又はリン酸化ナノセルロース(p-MFCとも呼ばれる)である。
【0031】
繊維材料はまた、繊維及びナノ繊維の総量に基づいて1~80重量%の量の通常パルプ繊維を含んでもよい。パルプは、例えば、クラフトパルプ、サルファイト、未漂白パルプ、CTMP、TMP、溶解パルプ、オルガノソルブパルプ、再生パルプ、サルファイトパルプ、非木材パルプ、NSSK、NBSK、SBSK、脱墨パルプなどであり得る。
【0032】
繊維材料は、リグニンを含んでもよい。リグニンは、化学製品の形態で、又はリグニン含有繊維として存在することができる。リグニンは、形成プロセスの前又はプロセス中に繊維材料に添加することができる。リグニンはまた、表面処理工程中に又はそれと組み合わせて添加することができる。繊維材料をリグニンで処理し、同時に有機酸処理すると、良好な結果を達成できることが分かった。これの利点は、高いRHで良好なOTRを有するだけでなく、リグニンによって提供される他の特徴(抗菌性、UVバリア性など)を有する繊維材料を得ることができることである。また、繊維材料は、リグニン及びナノセルロースを含んでもよい。この態様におけるリグニンの割合は、ナノセルロースの量に基づいて0.1~99%であり得る。
【0033】
繊維材料は、適切には、0.1重量%のデンプン、好ましくは1重量%を超えるデンプン、最も好ましくは2重量%を超えるデンプンを含む。デンプンは、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性であり得、又は化学修飾もしくはグラフト化され得る。これは、加熱されても、ゲル化されても、又は例えば粒子形態であってもよい。好ましいデンプンの1つは、例えばジアルデヒドデンプンである。デンプンの添加によって、バリア特性を促進できることが示されている。
【0034】
繊維材料を形成するために使用される懸濁液は、典型的には水性懸濁液である。懸濁液は、製紙プロセスで知られている追加の化学成分を含み得る。これらの例は、ナノフィラー又はフィラー、例えばナノ粘土、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、SiO、Al、TiO、石膏などであり得る。繊維基板はまた、天然デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン又は両性デンプンなどの強化剤を含有してもよい。懸濁液はまた、強化剤として合成ポリマーを含有し得る。さらなる実施形態では、繊維基板は、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、シリカ、ナノ粘土、ミョウバン、PDADMAC、PEI、PVamなどのリテンション(retention)及びドレナージ(drainage)化学物質も含有し得る。またさらなる実施形態では、繊維材料はまた、染料又は蛍光増白剤、消泡剤、湿潤紙力増強樹脂、殺生物剤、疎水性剤、バリア化学物質、架橋剤など、他の典型的なプロセス化学物質又は機能化学物質を含有してもよい。
【0035】
繊維材料はまた、ナノフィラーなど、1つ以上のフィラーを1~50重量%の範囲で含んでもよい。典型的なナノフィラーは、ナノ粘土、ベントナイト、シリカ又はシリケート、炭酸カルシウム、タルクなどであり得る。好ましくは、フィラーの少なくとも一部は、板状フィラーである。好ましくは、フィラーの1つの寸法は、1nm~10μmの平均厚さ又は長さであるべきである。
【0036】
表面処理の前、繊維材料は、ASTM F-1249に従って10-50gsmの範囲の坪量で、適切には50cc/m/24h超又はより好ましくは80cc/m/24h超、最も好ましくは100cc/m/24h超(23℃、50% RH)、より好ましくは50-1000cc/m/24hの範囲の水蒸気透過率(WVTR)値を有する。場合によっては、得られたWVTR値は、標準的な方法では測定不可能でさえある。
【0037】
表面処理工程前の繊維材料の形成は、
a.ナノファイバーを含むナノセルロース懸濁液を準備する工程、
b.前記懸濁液をワイヤ又はキャリア基板に提供する工程、
c.前記懸濁液を脱水する工程、及び
d.前記ナノセルロース懸濁液を乾燥させて繊維材料を得る工程を含むことができる。
【0038】
繊維材料は、膜形態であることが好ましい。膜は、キャスト成形又はキャストコーティング技術、すなわち金属又はプラスチックベルトなどのキャリア基板上へのナノセルロース懸濁液の堆積によって、又は製紙プロセスにおけるワイヤなどの湿式技術又はその修正版を用いることのいずれかで作製され得る。ベース膜を作製する別の方法は、プラスチック、複合材料、又は紙又は板紙基板などのキャリア表面を使用することであり、その上に膜は直接形成され、除去されない。
【0039】
膜作製中の製造pHは、好ましくは3超、より好ましくは5.5超だが、好ましくは12未満、又はより好ましくは11未満であるべきである。これは、膜の初期OTR値におそらく影響を及ぼすと考えられるからである。
【0040】
有機酸溶液
この方法は、有機酸又は有機酸塩の溶液を必要とする。有機酸成分の溶媒は、主に水(例えば50% v/v超の水)又は純水であるが、他の共溶媒及び添加剤を添加することができる。例えば、有機酸溶液は、多糖類、例えばCMC、デンプン、グアーガム、MFC、又はアニオン性、カチオン性もしくは両性多糖類、又はそれらの混合物をさらに含み得る。有機酸はまた、その誘導体又は誘導体のナトリウム塩、例えばクエン酸誘導体、例えばクエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム又はクエン酸三ナトリウムを含有し得る。
【0041】
「有機酸」という用語は、少なくとも1つのカルボン酸(-COH)基を有する有機分子を意味する。一態様では、有機酸は、2つ以上、又はさらには3つ以上のカルボン酸(-COH)基を含み得る。特定の有機酸は、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等、及びそれらの塩からなる群から選択される。2つ以上の有機酸の混合物が可能である。好ましい有機酸はクエン酸である。
【0042】
溶液は、1つ又は複数の酸、1つ又は複数の塩基、水溶性ポリマー、リグニン、セルロース誘導体、例えばCMC、HEC、EHEC、HPC、HMEHECなど、デンプン、グアーガム、タンパク質、キチン、MFC、又はアニオン性、カチオン性もしくは両性多糖類、又はそれらの混合物をさらに含み得る。
【0043】
溶液は緩衝されていること、すなわち有機酸とアルカリ、好ましくは水酸化ナトリウムとの混合物を含むことが好ましい場合がある。緩衝溶液は、溶液が所望のpHになるまで有機酸溶液にアルカリを添加することによって調製される。使用されるアルカリの量は、使用される有機酸の強度ならびに溶液の所望のpHによって決まる。pHが3~6の間、好ましくは4~5の間の溶液を使用することによって、繊維材料の架橋の改善が達成され得ることが見出された。したがって、溶液のpH、したがって表面処理のpHを制御することによって、改善されたバリア特性を有する繊維材料を製造することができる。
【0044】
処理溶液はまた、以下の添加剤、シリカ、シリケート、ナノ粘土、リグニン、デンプン、MFC、又はセルロース誘導体のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0045】
処理溶液は、レオロジー調整剤、(濡れを制御するための)界面活性剤、又はグルタルアルデヒドもしくはグリオキサールなどの他の形態の架橋剤をさらに含み得る。
【0046】
表面処理
本明細書に開示される方法は、表面処理繊維材料を得るために、有機酸又は有機酸塩を含む溶液で繊維材料を表面処理することを必要とする。表面処理は、繊維材料の一方の表面のみで行われてもよいが、有利には両方の表面で行うこともできる。処理はまた、1つ又は複数の工程で行われる、いわゆる多層化プロセスであってもよい。溶液による表面処理は、繊維材料のバリア特性を改善するであろう材料の架橋を生成する。
【0047】
有機酸溶液が繊維材料全体に厚み方向に浸透しない程度に、繊維材料の片面又は両面を処理するだけで有益であり得る。このようにして、有機酸溶液の量を減らすことができる。別の理由は、強さ特性を保持するために、材料の中間の一部が非架橋材料であることが好ましい場合があることである。有機酸溶液のこのような部分的浸透はまた、繊維材料の一方の表面のみを処理する理由となり得る。
【0048】
一般に、有機酸溶液は、繊維材料の0.05~50gsm、より好ましくは繊維材料の0.1~10gsmの量で適用され得る。
【0049】
表面処理は、湿潤又は乾燥繊維材料に対して行われる。表面処理工程の後に、表面処理繊維材料を、好ましくは高温で乾燥させることができる。この文脈における「高温」での乾燥は、例えば40~240℃の間、又はより好ましくは60~200℃の間、又は最も好ましくは80~180℃の間を意味する。温度は、ウェブの表面温度として測定される。乾燥温度を上昇させることにより、繊維材料のバリア特性が改善されることが分かった。
【0050】
表面はまた、濡れを調整するために、処理の前にコロナ又はプラズマなどで活性化されてもよい。
【0051】
典型的には、繊維材料を脱水し、次いで乾燥させて、1重量%を超える、好ましくは50重量%を超える固形分を得る。
【0052】
一態様では、繊維材料は、少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃、又は最も好ましくは少なくとも60℃の平均温度(内側層、中間層及び外側層の平均温度)で、少なくとも1時間、より好ましくは2時間、最も好ましくは少なくとも6時間ロール又はシート形態で後硬化される。表面処理繊維材料を後硬化させることによって、バリア特性が改善されることが分かった。これはおそらく、材料が高温で処理され、水が除去されて架橋が促進されると生じる、架橋の改善によるものである。
【0053】
一態様では、表面処理繊維材料は、4超、好ましくは4~9の間、さらにより好ましくは4~8の間の表面pHを有する。
【0054】
図2図3に示すように、繊維材料は、脱水前又は脱水中に少なくとも1つの架橋剤で処理することによって、有利には部分的に架橋され得る。したがって、ナノセルロースの繊維材料は、架橋ナノセルロースを含む。そのような架橋剤は、グリオキサール、グルタルアルデヒド、金属塩、及びカチオン性高分子電解質、デンドリマー、又はナノ顔料からなる群から適切に選択される。
【0055】
表面処理工程後、乾燥工程の前に中和剤による中和処理工程を行ってもよい。中和工程は、繊維材料を例えば水で洗浄するか、又はアルカリベースの溶液で処理し、バリア溶液を塗布して材料上に薄いコーティングを作成することによって行うことができる。このようにして、表面pHを所望に応じて制御することができる。
【0056】
繊維ウェブ又はナノセルロース懸濁液の中和処理は、任意の乾燥工程の前、場合により表面処理工程の前に、中和剤を用いて行うことができる。また、基板は、表面処理の前に1つ以上の中和化学物質、例えばCaCO、石灰乳を含有することができ、又は、その際、基紙のpHを有機酸処理の前に7超、又は好ましくは8超、又は最も好ましくは9超に単純に上昇させる。
【0057】
表面処理の典型的な技術は、製紙又は紙変換の分野で一般的なものである。表面処理は、浸漬、噴霧、カーテン、サイズプレス、フィルムプレス、ブレードコーティング、輪転グラビア、インクジェット、又は他の非衝撃もしくは衝撃コーティング方法によって行うことができる。一態様では、表面処理はイオン交換である。表面処理は、圧力下及び/又は超音波下で実施することができる。これにより、有機酸溶液の繊維材料への浸透度合いを制御することができる。
【0058】
本明細書に記載の方法は、1つ以上の追加の工程を含むことができる。例えば、すすぎ工程、又はすすぎ流体中への浸漬工程を表面処理後にさらに含むことができる。好ましくは、方法は、表面処理及び/又はすすぎ工程の後に高温及び/又は高圧で乾燥する工程をさらに含む。
【0059】
これらの方法による表面処理は、繊維材料のバリア特性を改善する。水が材料から除去されると、繊維材料の緻密化が起こることが分かった。緻密化により、有機酸溶液がナノセルロースとより密接に接触し、フィブリルに架橋することができ、これによりバリア特性が改善される。材料が溶液による処理中にいくらかの水分を含む場合、又はカレンダー加工(Calendering)が行われる場合、緻密化が起こる。したがって、カレンダー加工は、有機酸の溶液での処理中又は処理後に実施することができる。
【0060】
また、より高い温度でカレンダー加工を実施して、硬化及び改善された架橋を確保することができる。温度は、例えばT>120℃、又はより好ましくは>140℃、又は最も好ましくは>160℃であるが240℃未満(シリンダー温度)を使用してもよい。
【0061】
表面処理は、機械上で直結して、すなわち膜が作製されると同時に、又は別個の装置、例えば別個のコーティングもしくは印刷ユニットで非直結で行うことができる。
【0062】
表面処理繊維材料
本技術は、本明細書に記載の方法によって得られる繊維材料、ならびに繊維材料自体を提供する。一態様では、繊維材料はナノセルロース膜である。
【0063】
得られた繊維材料は、改善されたバリア特性を有する。バリア特性とは、ガス、酸素、水、水蒸気、脂肪又はグリースなどの生成物のバリア浸透に対する耐性の改善を意味する。
【0064】
表面処理後、繊維材料は、適切には、ASTM F-1249による10~50gsmの坪量で、1~30cc/m/24h(23℃、50% RH)の範囲の水蒸気透過率(WVTR)値を有する。その結果、本発明に従って繊維材料を処理することによって、非常に良好なバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有する材料が達成される。
【0065】
したがって、3を超える表面pHを有し、ナノセルロース及び有機酸を含む繊維膜材料が提供され、この繊維材料は、ASTM F-1249及び10~50gsmの坪量による、1~30cc/m/24h(23℃、50% RH)の範囲の水蒸気透過率(WVTR)値を有する。
【0066】
適切には、坪量は、自立膜である場合は、1~100g/m2、好ましくは10~50g/m2であり、キャリア基板上に直接付着されている場合は、1~100g/m2、最も好ましくは1~30g/m2である。
【0067】
繊維材料は、そのまま、又はプラスチック膜、紙もしくは板紙と積層して使用することができる。繊維膜材料は、ピンホールを実質的に含まないものとする。
【0068】
図1は、表面処理繊維材料を調製する方法のフローチャートを示す。第1の工程は、ナノファイバーを含む懸濁液を準備することである。この懸濁液を第2の工程で脱水し、次いで第3の工程で乾燥させる。第4の工程で有機酸の溶液を塗布し、第5の最終工程で処理された基板を乾燥させる。
【0069】
図2は、図1と同様に、表面処理繊維材料を調製する方法のフローチャートを示すが、ナノファイバー懸濁液に架橋剤を提供する工程を脱水工程の前に追加した。
【0070】
図3は、図2と同様に、表面処理繊維材料を調製する方法のフローチャートを示すが、中和剤を表面に適用する工程を乾燥工程の前に追加した。
【実施例
【0071】
実験
ナノセルロース特性
以下の例で用いたナノセルロースの特性は以下の通りである。
【0072】
使用したナノセルロースの電荷は、総カチオン要求量に応じたナノセルロース0.1g/l又は0.5g/lに対して、0.001Nのp-DADMAC(Mw=107000g/mol)で滴定することによって測定した。実験で使用した試料は、以下の通りである。
i.低DS p-MFC(pH8、0.01M NaClで測定した電荷)=n.1030μeq/g
ii.高DS p-MFC(pH8、0.01M NaCl)=n.1460μeq/g
【0073】
非誘導体化セルロースから作製されたMFCの例は以下の通りである。
iii.クラフトパルプからのMFC(pH調整なし、0.01M NaCl)=-50μeq/g
【0074】
例-膜の表面処理
a)クラフトパルプからのMFCから製造された膜
膜は、上記の非誘導体化ナノセルロース(iii)に記載されているようなクラフトパルプから作製された天然MFC)から調製した。
#1(基準).クエン酸に浸漬していないMFC膜(20gsm)
#2 #1と同じ膜であるが、クエン酸溶液(pH<2)に浸漬した。WVTR特性の明らかな改善が見られる(=WVTRの低下)。シートを30重量%クエン酸溶液に約10秒後浸し、その後ブロッティングペーパーの間に置き、60℃のオーブン中で一晩、重りの下で乾燥させる。
#3 #1と同じ膜であるが、緩衝溶液(クエン酸+NaOH)に浸漬した。非常に低いWVTR値が得られる。緩衝溶液は、溶液のpHが4.0になるまでNaOHをクエン酸溶液に添加することによって調製した。乾燥原理は#2と同じ。
#4 #2と同じであるが、より高い温度で乾燥させた。これらの結果はわずかに改善する。乾燥は60℃ではなく80℃で行った。
#5 #3と同じであるが、より高い温度で乾燥させた。乾燥温度は高いほどよい。乾燥は60℃ではなく80℃で行った。
#6 基準MFC膜(高坪量、30gsm)CA処理なし
#7 #6と同じであるが、低pH(2)のCAで処理した。処理及び乾燥手順は#2と同じ。
#8 #6と同じであるが、より高いpH(4)のCAで処理した。
#9 #6と同じであるが、低pH(2)を有するCAで処理し、より高い温度で乾燥させた。#4と同じ処理手順。
#10 #6と同じであるが、より高いpH(4)のCAで処理し、より高い温度で乾燥させた。
【0075】
実験では、試料を30重量%クエン酸溶液で処理した。使用したMFCは、非誘導体化MFCグレードであった。処理は、溶液に浸漬することによって行った。WVTRは、ASTM F-1249に従って測定した。
【0076】
【表1】
【0077】
表面pHは、好ましくは2超、より好ましくは3超、最も好ましくは4超であるべきである。低pHは安全上のリスクであり得、又は機械の腐食を引き起こし得るからである。本発明者らは、それが基板の長期安定性に影響を及ぼし得るとも考えている。
【0078】
表面pHは、新鮮な純水を表面に流して測定する。5回の並行測定を行い、平均pH値を計算する。センサーに純水又は超純水を流し、次いで紙試料を湿気のある/湿ったセンサー表面に置き、30秒後にpHを記録する。
【0079】
表1の結果から分かるように、クエン酸による表面処理後、膜の水蒸気透過率が改善する。処理中により高い表面pHを有することによって、さらには乾燥温度を上昇させることによって、膜のバリア特性がさらに改善されることも分かる。
【0080】
b)リン酸化MFCから製造された膜
膜は、低置換度を有する低リン酸化MFC(上記i)の低DS p-MFC)及び高置換度を有するリン酸化MFC(ii)の高DS p-MFC)から調製した。
【0081】
#1 低DS p-MFC膜(20gsm)をクエン酸溶液に浸漬した。その後、膜を80℃のオーブン内で一晩乾燥させた。その後、試料を150℃で5分間硬化させた。WVTR値を熱硬化前後に測定した。
#2 #1と同じ膜であるが、溶液のpHをNaOHの添加によって4に調整したクエン酸溶液に浸漬した。
#3 25重量%のナノ粒子(Cloisite)を含む高DS p-MFC膜(20gsm)。膜をクエン酸溶液に浸漬した。その後、膜を80℃のオーブン内で一晩乾燥させた。その後、試料を150℃で5分間硬化させた。WVTR値を熱硬化前後に測定した。
【0082】
実験では、試料を30重量%クエン酸溶液で処理した。処理は、試料を溶液に浸漬することによって行った。結果を表2に示す。WVTRは、ASTM F-1249に従って測定した。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果から分かるように、クエン酸による表面処理後、膜の水蒸気透過率が非常に改善する。また、処理中により高い表面pHを有することにより、WVTRがさらに改善されることも分かる。また、表2の結果は、膜の高温での乾燥、さらに後硬化によって膜のWVTR値が改善されることも示す。膜の高温での乾燥及び後硬化により架橋が改善されると考えられる。
【0085】
例-酸化ナノセルロース
以下の例は、クラフトファイバーから作製されたMFCと、高い結晶化度を有するアニオン性酸化ナノセルロース(SuCellose、Innotech materials)との混合物から作製された膜が、本発明による方法を適用した場合にWVTRの増加をもたらすことを示す。
【0086】
例1b:基準の20gsm膜、添加剤なし。クエン酸溶液(pH<2)で処理すると、WVTR(23℃、50% RH)値は37であった。
例2b:試料及び処理は1bと一致するが、5%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは30であった
例3b:試料及び処理は1bと一致するが、10%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは29であった
例4b:試料及び処理は1bと一致するが、25%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは20であった
例5b:試料及び処理は1bと一致するが、50%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは9.6であった
例6b:基準の20gsm膜、添加剤なし。クエン酸溶液(pH4)で処理すると、WVTR(23℃、50% RH)値は2.5であった。
例2b:試料及び処理は6bと一致するが、5%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは1.2であった
例3b:試料及び処理は6bと一致するが、10%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは4.7であった
例4b:試料及び処理は6bと一致するが、25%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは4であった
例5b:試料及び処理は6bと一致するが、50%の酸化ナノセルロースを含むと、WVTRは2.9であった
【0087】
WVTRは、ASTM F-1249に従って測定した。
【0088】
【表3】
【0089】
例-カレンダー加工の効果
これらの例は、カレンダー加工の効果を示す。
【0090】
30gsmの膜を30% CA溶液(pH4)に浸漬し、乾燥させ(80°/一晩)、カレンダー加工の条件、3.5kP/cm2、10m/分、100~140℃、ニップ通過1~3回、上部のソフトニップを用いて、試験PMでカレンダー加工に供した。結果は、非直結プロセスとして行われたにもかかわらず、小さな改善を達成できることを示している。直結、又は予熱器を用いた非直結では、結果が改善されると予想される。
【0091】
表4は、クエン酸溶液(30重量%、pH4)を用いてクエン酸で処理し、80℃/一晩で乾燥させた膜の水蒸気透過率に対する、カレンダー加工(試験PMカレンダー、上部のソフトニップ、1~3回のニップ通過、100~140℃)の効果を示す。WVTRは、ASTM F-1249に従って測定した。
【0092】
【表4】
【0093】
表4に見られるように、カレンダー加工後の膜のWVTRは依然として良好であり、さらに改善されている。したがって、表面処理後の膜をカレンダー加工して、例えばバリア特性を低下させることなく膜の光沢を改善することが可能である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】