(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】化合物層を堆積させる真空システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C23C14/34 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535816
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2019079314
(87)【国際公開番号】W WO2020126175
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518031387
【氏名又は名称】エヴァテック・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ウェンツ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・トライチェヴスキー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ツェラー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・クラッツァー
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029BA58
4K029BB02
4K029BB07
4K029CA06
4K029DA01
4K029DA02
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4K029DA06
4K029DA08
4K029DC04
4K029DC09
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4K029DC34
4K029DC35
4K029DC39
4K029EA04
4K029EA08
4K029EA09
4K029FA05
4K029GA01
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA09
(57)【要約】
スパッタリングによって少なくとも1つの板状基板上に化合物層を堆積させる真空装置であって、中心軸(A)の周りに側壁を備えた真空チャンバ(11)であって、-プロセスガス用の少なくとも1つの入口(13)と、-不活性ガス用の少なくとも1つの入口(14)と、-基板ハンドリング開口(15)と、-スパッタ区画(18)の中央下部領域に基板(4)支持部として形成された静電チャック(6)を含む台座(5)であって、台座(5)は電気的に絶縁された方式で取り付けられるとともに第1の電圧源(21)の第1の極に接続され、台座(5)はさらに、スパッタプロセスが有効であるとき、ターゲット(1)に向かうかつターゲット(1)から離れるように上部位置から下部位置へかつ下部位置から上部位置へ鉛直方向に移動可能である、台座(5)と、-マグネトロンスパッタ源(22)であって、マグネトロンスパッタ源(22)は、スパッタ源の前面でターゲット(1)を含み、かつスパッタ源の背面でマグネットシステム(23)を含み、ターゲット(1)は、電気的に絶縁された方式でチャンバ(11)のスパッタ区画(18)の頂部(19)で中央領域に取り付けられるとともに第2の電圧源(25)の第1の極に接続されている、マグネトロンスパッタ源(22)と、-ターゲット(1)の周りかつ基板支持部およびESC(6)を含む台座(5)の少なくとも上部の周りで輪になり、これによってスパッタ区画の側壁(12)を形成するアノードであって、電気的にグランドに接続されている、アノード(2)と、-流路(26)によってスパッタ区画の底部(20)に接続されたポンプ区画(17)であって、流路は、台座の上部位置および下部位置ならびに上部位置と下部位置との間の任意の位置において本質的に同じ流れコンダクタンスを提供するように設計されている、ポンプ区画(17)と、を含む、チャンバと、ポンプ区画(17)に接続された真空ポンプシステム(16)と、を含む、真空装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングによって少なくとも1つの板状基板上に化合物層を堆積させる真空装置であって、
中心軸(A)の周りに側壁を備えた真空チャンバ(11)であって、
- プロセスガス用の少なくとも1つの入口(13)と、
- 不活性ガス用の少なくとも1つの入口(14)と、
- 基板ハンドリング開口(15)と、
- スパッタ区画(18)の中央下部領域に基板(4)支持部として形成された静電チャック(6)を含む台座(5)であって、前記台座(5)は、電気的に絶縁された方式で取り付けられるとともに第1の電圧源(21)の第1の極に接続され、前記台座(5)はさらに、スパッタプロセスが有効であるとき、ターゲット(1)に向かうかつ前記ターゲット(1)から離れるように上部位置から下部位置へかつ前記下部位置から前記上部位置へ鉛直方向に移動可能である、台座(5)と、
- マグネトロンスパッタ源(22)であって、前記マグネトロンスパッタ源(22)は、前記マグネトロンスパッタ源の前面で前記ターゲット(1)を含み、かつ前記マグネトロンスパッタ源の背面でマグネットシステム(23)を含み、前記ターゲット(1)は、電気的に絶縁された方式で前記真空チャンバ(11)の前記スパッタ区画(18)の頂部(19)で中央領域に取り付けられるとともに第2の電圧源(25)の第1の極に接続されている、マグネトロンスパッタ源(22)と、
- 前記ターゲット(1)の周りかつ前記基板支持部および前記ESC(6)を含む前記台座(5)の少なくとも上部の周りで輪になり、これによって前記スパッタ区画の前記側壁(12)を形成するアノード(2)であって、電気的にグランドに接続されている、アノード(2)と、
- 流路(26)によって前記スパッタ区画の底部(20)に接続されたポンプ区画(17)であって、前記流路は、前記台座の前記上部位置および前記下部位置ならびに前記上部位置と前記下部位置との間の任意の位置において本質的に同じ流れコンダクタンスを提供するように設計されている、ポンプ区画(17)と、
を含む、真空チャンバと、
前記ポンプ区画(17)に接続された真空ポンプシステム(16)と、
を含む、真空装置。
【請求項2】
前記流路は、前記台座の前記上部位置から前記下部位置への移動中、および前記上部位置と前記下部位置との間の任意の位置において同じ流れ面積を有するように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流路は、前記基板支持部および前記ESCの下方の領域において前記台座の周りで輪になっている少なくとも1つの環状ポンプチャネル(27)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ポンプチャネルの少なくとも2つの円筒状または/およびリング状の周囲壁(2、8、9)間の少なくとも1つの特徴的距離(w
ch)が、前記台座(5)の前記上部位置および前記下部位置ならびに前記上部位置と前記下部位置との間の任意の位置において一定であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ターゲット(1)と前記アノードとの間の前記ターゲットの周囲で輪になって、電気的に絶縁されたターゲットリング(3)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ターゲットリングは導電性材料で作製され、前記スパッタ区画に向かういかなる見通し線からも隠れている少なくとも1つのセラミックリングによってグランドおよびターゲット電位から絶縁されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記台座上へ電気的に絶縁されて前記基板支持部および取り付けられた基板を包囲してリングシールド(7)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記リングシールド(7)は第3の電圧源に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記台座の表面および前記ESCの表面の少なくとも1つは、それぞれのバックガス入口(30、31)に接続された開チャネル(28、29)を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
両表面がバックガス入口を備えた開チャネルを含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
両バックガス入口が、共通またはそれぞれの別個のガス供給部への1つの共通またはそれぞれの別個のフィードスルー(32)に接続されていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ターゲットは少なくとも1つの金属元素を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ターゲットは少なくとも2つの金属元素を含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ターゲットは合金ターゲットまたは粉末冶金的焼結ターゲットであることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記アノードは一体型アノードとして製造されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記アノードの上部周囲もしくは下部周囲に沿って、または前記上部周囲もしくは前記下部周囲の周りにガス供給手段が取り付けられていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ガス供給手段は、その周囲に沿って割り当てられた分配開口を備えたガスリング(33)、および円形分配ギャップ(35)を備えた前記アノードに統合されたチャネル構造(34)またはそれぞれ割り当てられた分配開口および/またはさらなる分配チャネルの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第1の電圧源は第1のRF電源であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の電圧源(25)は、パルスDC電源、またはDC電源および第2のRF電源であり、これによって少なくとも前記DC電源はアダプタネットワークによってスパッタ電極に接続されていることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、前記第1のRF源および前記第2のRF源間の位相関係を調整する調整手段(36)を含むことを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、ターゲット電圧、前記ターゲットの活性スパッタリング表面で測定されるプラズマ発光の強度またはラインパターン、ガス組成、のプロセスパラメータの少なくとも1つに依存して反応性ガスの流れを制御する制御手段(37)を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
グランドに接続されている暗空間シールド(8)が、少なくとも前記台座(5)のベース(5’)の周りで輪になって暗空間距離に設けられていることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記暗空間シールド(8)は前記ポンプチャネルの1つの側壁を形成することを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
台座温度または基板温度測定デバイス(38)の少なくとも1つが設けられていることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記ターゲットは、
- アルミニウム(AlまたはAlMe)、
- アルミニウムスカンジウム(AlScまたはAlScMe)、
- アルミニウムクロム(AlCrまたはAlCrMe)、
- マグネシウムハフニウム(AlMgHfまたはAlMgHfMe)、
の材料の少なくとも1つまたはこれらの混合物からなり、AlSc、AlCrまたはAlMgHfは常に少なくとも1%のより低濃度にある主要金属を含むため、Meは、それぞれの層および2つまたは3つの主要金属の混合物の全体的な金属含有量を基準にして、0.1原子パーセントから10原子パーセントの濃度の少なくとも1つのさらなる金属を表すことを特徴とする、請求項1から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つのロードロックチャンバ、移送手段(52)、および少なくとも3つの処理モジュールを含む、少なくとも1つの板状基板を処理するマルチチャンバ真空システム(MCS)であって、第1の処理モジュールが、基板の表面をエッチングするように構成されたPVEモジュール(P1)であり、第2の処理モジュールが、前記基板の前記表面に対するスパッタリングによって金属層を堆積させるように構成された金属スパッタモジュール(P2)であり、第3の処理モジュールが、請求項1から25のいずれか一項に記載の装置に従って構成された化合物スパッタモジュール(P4)である、マルチチャンバ真空システム(MCS)。
【請求項27】
550℃から900℃の間のアニーリング温度T
Aに基板を加熱するように構成されたアニーリングモジュール(P3)である第4のプロセスモジュールを含む、請求項26に記載のMCSシステム。
【請求項28】
前記アニーリングモジュールは、60秒から180秒以内に前記アニーリング温度T
Aに前記基板を加熱するように構成されていることを特徴とする、請求項26に記載のMCSシステム。
【請求項29】
PVEモジュール(P1’)、金属スパッタモジュール(P2’)、および化合物スパッタモジュール(P4’)の少なくとも1つの少なくともさらなる1つを含むことを特徴とする、請求項26から28のいずれか一項に記載のMCSシステム。
【請求項30】
ロードロックチャンバ(55)およびプロセスモジュール(P1、…P4’)が、中央ハンドラチャンバ(51)の周りに円形または多角形の方式で配置されていることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載のMCSシステム。
【請求項31】
ロードロックチャンバ(55’、55”)およびプロセスモジュール(P1、…P4’)が線形の方式で配置され、前記ハンドラは線形ハンドラ(たとえば少なくとも1つの輸送ベルトまたは輸送チェーン)であることを特徴とする、請求項26から29のいずれか一項に記載のMCSシステム。
【請求項32】
前処理および後処理モジュール(pp
12、pp
34、pp
56)の少なくとも1つが前記ロードロックチャンバ(55、55’、55”)の少なくとも1つと動作可能に接続されていることを特徴とする、請求項26から31のいずれか一項に記載のMCSシステム。
【請求項33】
少なくとも1つの板状基板(4)の少なくとも1つの側に圧電コーティングを生成する方法であって、請求項1から32のいずれか一項に記載の装置またはMCS上で実行されるスパッタプロセスを含む、方法。
【請求項34】
少なくとも1つのマイナーメタルMe
mおよび/またはスカンジウムを含む圧電AlN膜またはそれぞれのAlN膜が堆積し、これによってAlNの六角構造が保存されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
層は、
- 窒化アルミニウム(AlN、AlMeN)、
- 窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN、AlScMeN)、
- 窒化アルミニウムクロム(AlCrN)または
- 窒化マグネシウムハフニウム(MgHfN、MgHfMeN)、
の材料の少なくとも1つまたはこれらの混合物を含むか、またはそれからなり、Meは、それぞれの層の全体的な金属含有量を基準にして、0.1原子パーセントから10原子パーセントの濃度の少なくとも1つのさらなる金属を表すことを特徴とする、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の電圧源は、0Wから100Wで、2MHzから30MHzの周波数で駆動される第1のRF源であることを特徴とする、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の電圧源は、50kHzから400kHzのパルス周波数で駆動されるパルスDC源であることを特徴とする、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の電圧源は、アダプタネットワークによって互いに接続されたDC源および第2のRF源を含み、これによってターゲット電極は0.9MHzから30MHzのパルス周波数で駆動されることを特徴とする、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
- 前記第1の電圧源の電力、
- 前記第2の電圧源の電力、
- 前記DC源および前記第2のRF源の電力の商、
- 前記パルスDC源のデューティサイクル、
- 基板表面とターゲット表面との間の距離、
- 前記絶縁リングシールドに印加される定義された(DC、RF)電圧、
- 前記圧電層の高堆積温度、
- 少なくともシードおよび/または金属(底部)層をアニールするアニーリングステップ、
のプロセスパラメータの少なくとも1つによって、膜応力、ロッキングカーブ、半値全幅、損失角度δ、またはスパッタ堆積層でコーティングされた基板の表面粗さが最適化されることを特徴とする、請求項33から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
- 真空処理チャンバ(11)のスパッタ区画(18)に平坦な基板を提供するステップと、
- 物理蒸気エッチング(PVE)によって前記基板の一面をエッチングするステップと、
- 第1の金属堆積ステップにおいてスパッタリングによって前記エッチングされた基板表面上に第1の金属層(Me1)を堆積させるステップと、
- 後続の化合物堆積ステップの化合物堆積温度T
COMPより少なくとも50℃高いアニーリング温度T
Aでアニーリングステップにおいて前記金属層(Me1)をアニーリングするステップと、
- 第1の化合物堆積ステップにおいて反応性スパッタリングによって前記金属層(Me1)の外面上に温度T
COMPで第1の化合物層(Comp1)を堆積させるステップと、
- 第2の金属堆積ステップにおいてスパッタリングによって前記第1の化合物層の外面上に第2の金属層(Me2)を堆積させるステップと、
を含むことを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記PVEステップと前記第1の金属堆積ステップとの間に金属または反応性スパッタリングによってシード層(Seed)が設けられることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記アニーリングステップは別のアニーリングオーブンにおいて適用されることを特徴とする、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
さらなる処理ステップが別の処理システムにおいて適用されることを特徴とする、請求項33から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記さらなる処理ステップは、前記化合物層(Comp1)が堆積する前の前記金属層(Me1)の構造化ステップを含むことを特徴とする、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、請求項1に記載の化合物層のスパッタ堆積のための真空装置、請求項25に記載のマルチチャンバシステム(MCS)および請求項32に記載のコーティングされた状態の本質的に二次元の平坦な基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォン、電気周波数フィルタ、超音波発生器、センサおよびアクチュエータのような圧電デバイスの小型化がいまだに進行中であるため、圧電材料の、特に圧電層およびコーティングの材料特性がますます重要になっている。このような特性は、θ/2θのX線回折パターンによって示されるとともにロッキングカーブの狭いFWHM値で表される、均一で高度に配向された微細構造、および低tanδ値などによって表される低誘電損失特性である。圧電AlN膜を他の金属と合金化することによって圧電応答を改善することができ、これによってAlNの六角構造が依然として保存されることがよく知られている。工業用の最も有望な材料は、Sc濃度が43at%までのScである。他の知られている材料はCrおよびMgHfである。しかしながら、大量生産におけるこのようなコーティングの品質は、それぞれの装置およびシステムの要件ならびに厳密なプロセス制御に直接関連する層パラメータの非常に厳密な再現性に依存することが見出された。現状技術の真空機器についての多くの努力および進歩にもかかわらず、このようなデバイスのためのコーティングを製造するために必要とされる高度な精度および性能に対する急速に高まる需要を満たすために必要なすべての問題に対処する適切な技術的規定をこれまで確立することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、圧電層およびコーティングの堆積、ならびに、ウエハのような、それぞれコーティングされた基板の製造を可能にする装置およびマルチチャンバシステム(MCS)を提供することであり、これによってより良好なプロセス制御が提供される。このようなプロセス制御は、圧電層の堆積中の最小化された圧力変動、および以下で詳細に議論するような圧電層内の応力制御を改善するあらゆる方策に関して、より良好な真空レジームを含むことができる。背景技術で言及されたような圧電層材料に関して、本発明の例および実施形態が実用性の理由からいくつかの材料により議論され得るという事実に関係なく、本発明はこのような現状技術の材料の改良に向けられていることに言及されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の真空装置は、非常に異なるタイプの層に用いることができるが、本質的にスパッタリングによって少なくとも1つの板状基板上に化合物層を堆積させるときにプロセスの安定性および再現性を改善するいくつかの設計特徴を有する。このような特徴は、
中心軸(A)の周りに側壁を備えた真空チャンバであって、
- プロセスガス用の少なくとも1つの入口と、
- 不活性ガス用の少なくとも1つの入口と、
- 基板ハンドリング開口と、
- スパッタ区画の中央下部領域に基板支持部として形成された静電チャックを含む台座であって、台座は電気的に絶縁された方式で取り付けられるとともに、たとえば装置のシステム制御ユニットによって制御されるスイッチによって、第1の電圧源の第1の極に接続され、これによって静電チャック(ESC)とともにバイアス電極が構成され、スパッタプロセスが有効であるとき台座は、ターゲットに向かうかつターゲットから離れるように上部処理位置から下部処理位置へかつ下部処理位置から上部処理位置に鉛直方向に移動可能であり、これによりターゲットの寿命を超えて基板上の膜応力を制御し、進行するターゲットエロージョンを補償することが可能になる、台座と、
- マグネトロンスパッタ源であって、マグネトロンスパッタ源は、スパッタ区画に向かう前面で、たとえば金属または合金のターゲットを含み、かつスパッタ源の背面でマグネットシステムを含み、マグネトロンスパッタ源は、冷却バックプレート、および/またはターゲット材料とマグネットシステムとの間の、たとえば水冷フランジを追加で備えることができ、ターゲットは、電気的に絶縁された方式でチャンバのスパッタ区画の頂部領域における中央領域に取り付けられるとともに、たとえば装置のシステム制御ユニットによって制御されるさらなる電気スイッチによって、第2の電圧源の第1の極に接続され、これによってスパッタ電極のスパッタ面を形成する、マグネトロンスパッタ源と、
- ターゲットの周りでかつ基板支持部およびESCを含む台座の少なくとも上部の周りで輪になり、これによってスパッタ区画の側壁を形成する、本質的に円筒状のアノードであって、電気的にグランドに接続されている、アノードと、
- ポンプ区画であって、流路(flow labyrinth)によってスパッタ区画の底部に接続されて、スパッタ区画からポンプ区画内へのいわゆる「プラズマスピルアウト(plasma spill out)」を防止し、これによって、プロセスの不安定性、プラズマ出力の寄生損失およびポンプ設備への潜在的な損傷のようなよく知られた欠点とともに、プラズマがポンプ区画に入り、流路は、台座の上部位置および下部位置ならびに上部位置と下部位置との間の任意の位置において本質的に同じ流れコンダクタンスを提供するように設計されている、ポンプ区画と、
を含む、チャンバと、
ポンプ区画(17)に接続された真空ポンプシステム(16)と、
を含む。
【0005】
スパッタプロセスの実行中の台座の移動は、当業者によって知られているように、システム制御ユニットによって制御されるステッピングモータまたは他の位置決め手段によって実行することができる。
【0006】
流路のこのような特性を実現する1つの設計は、上部位置から下部位置への移動中に同じ流れ面積を有する流路を提供することであり得る。さらなる一実施形態において流路は、基板支持部およびESCの下方の領域において台座の周りで輪になっている少なくとも1つの環状ポンプチャネルを含むことができる。これによってポンプチャネルの少なくとも2つの円筒状または/およびリング状の周囲壁間の少なくとも1つの特徴的距離(wch)を、台座の上部処理位置および下部処理位置ならびに上部処理位置と下部処理位置との間の任意の位置において一定に保つことができる。流路のこのような特徴は、本発明のすべての実施形態と組み合わせることができる。
【0007】
さらなる修正例において装置は、ターゲットとアノードとの間のターゲットの周囲で輪になって取り付けられている、電気的に絶縁されたターゲットリングを有することができる。ターゲットリングは、導電性材料、たとえば金属、合金または炭素で作製することができ、スパッタ区画に向かういかなる見通し線からも、たとえばアノードおよび/またはターゲットシールドによって隠されている少なくとも1つのアイソレータによって、グランドおよびターゲット電位から絶縁されている。同時に、ターゲットとターゲットリング、およびターゲットリングとアノードのような、それぞれの隣接する導電性コンポーネント間の暗空間距離が観察され、これは、スパッタプロセスに用いられる0.1Paから13.3Pa(1mTorr~100mTorr)の間の通常のプロセス圧力で約2mmから10mmの間であり得る。これによって導電性表面領域の形成のためにアイソレータを交換する必要なしに、ターゲットリング上での浮遊電位の形成を、スパッタプロセス中に長期間保証することができる。少なくとも1つの、たとえば少なくとも部分的にリング状のアイソレータは、アノード上またはアノードのチャネル構造に配置することができ、アルミナ、窒化ホウ素などのようなセラミック材料を含むことができる。
【0008】
さらなる一実施形態においてリング状リングシールドが、台座上へ電気的に絶縁されて取り付けられ、基板支持部、支持部上に取り付けられたウエハおよび任意でESCを包囲している。本発明の装置のリングシールドは、プロセスの必要性に従って電圧を調整する第3の電圧源に接続することができ、これは、スパッタされた層の膜応力に影響を与えるさらなる変数として用いることができる。
【0009】
ESC表面および/または台座表面は、少なくとも1つのそれぞれのバックガス入口に接続されている、数マイクロメートルまたはさらにはサブマイクロメートルの深さの開放構造を含むことができる。両表面がバックガス入口と接続された開放構造を含むとき、Arのような熱伝達不活性ガスをESC表面と取り付け基板との間に適用して基板温度を制御するとともに、台座表面とESCとの間に適用してESC温度を制御することができる。これによって両方の少なくとも1つのバックガス入口を1つの共通の、または、異なるバックガス圧力が用いられるべきときはそれぞれの別個のフィードスルーに接続することができる。これによって冷却/加熱ガス用の共通またはそれぞれの別個のガス供給部が共通または別個のフィードスルーに接続されて基板および/または台座の温度を制御する。開放構造は、多数の、たとえばテーブルのような、それぞれの表面上に均等に広がっている支持ポイント、または、たとえばクモの巣または迷路のような、ESCおよび/または台座の表面におけるチャネル構造を備えた、いわゆるメンサ構造(mensa-structure)とすることができる。たとえば表面のレーザ構造化によって両方の構造を表面に適用することができる。別個の圧力供給部およびフィードスルーで、台座とESCとの間のバックガス圧力をより高く選択することができ、これによってより高速な熱交換を行うことができる。
【0010】
圧電化合物を堆積させるため、ターゲットは、AlNを堆積させるためのAlのような少なくとも1つの金属元素またはAlScNを堆積させるためのAlおよびSc、AlCrNを堆積させるためのAlおよびCrもしくはAlMgHfNを堆積させるためのAl、MgおよびHfのような少なくとも2つの金属元素を含むことができる。プロセスガスは反応性ガスとして窒素を含むことになる。ターゲットは、合金ターゲットまたは粉末冶金的細孔緊密焼結(powder metallurgically pore-tightly sintered)ターゲットとすることができる。細孔緊密焼結とは、理論密度に近い密度のターゲットを意味し、これはたとえばスパークプラズマ焼結によって達成することができる。
【0011】
アノードは、アノードにおける均一な熱流を可能にするために一体型アノードとして製造することができる。加えて、加熱/冷却ユニットに接続された加熱/冷却回路をアノードとともに予見してポンプまたはアイドル時間中にアノードを焼き戻し、スパッタプロセス中にアノードを冷却することができる。さらに、アノードの上部周囲もしくは下部周囲に沿って、または上部周囲もしくは下部周囲の周りにガス供給手段を取り付けることができる。このようなガス供給手段は、その内側、外側、上部または下部周囲に沿って割り当てられた分配開口を備えたガスリング、および円形分配ギャップまたはそれぞれ割り当てられた入口開口および/またはさらなる入口チャネルを備えたアノードに統合されたチャネル構造の少なくとも1つを含むことができる。チャネル構造は、ターゲットの周りのアノードの頂部近くで予見することができ、これによって、アノード自体に、またはアノードとチャネルに位置し得る浮遊ターゲットリングとの間にチャネルを形成することができる。
【0012】
第1の電圧源は、2MHz~30MHzの間で駆動することができる第1のRF電源とすることができ、これによって多くの場合、13.56MHzの電源で十分であろう。
【0013】
第2の電圧源は、パルスDC電源、または第2のRF電源と組み合わされたDC電源とすることができる。DC電源が第2のRF電源と組み合わされるとき、少なくともDC電源は、アダプタネットワーク、たとえばローパスフィルタによってスパッタ電極に接続され、有害な入力RFに対してそれを保護する。第1のRF源とパルスDC電源または第2のRF源との間の位相関係を調整するため、装置は調整手段を含むことができる。これは、システム制御ユニット(SPU)に統合された調整ユニットによって、またはSPUに接続されたサブ制御ユニットとして実現することができる。これによって位相内モードまたは定義された位相外モードをプロセスの必要性に従って調整することができる。パルスDC電源は、50%から90%のデューティサイクルおよび7kWから14kWの電力で50kHzから400kHzの周波数範囲で駆動することができる。
【0014】
さらに、装置は、ターゲット電圧、ターゲットの活性スパッタリング表面からのプラズマ発光の特徴的パラメータ、ガス組成、のプロセスパラメータの少なくとも1つに依存して反応性ガスの流れを制御する制御手段を含むことができる。プラズマ発光の特徴的パラメータは、たとえばプラズマ発光モニタ(PEM)によって測定される特徴的な発光線または特徴的な線パターンの強度とすることができる。ガス組成は、RGAのようなプロセスガス分析システムによって測定することができる。
【0015】
ESC、台座および台座ベースのRF給電部分の少なくとも1つの周りの寄生プラズマを回避するため、グランドに接続された暗空間シールドを、少なくとも台座のベースの周りで輪になって、暗空間距離(上を参照)に設けることができる。このような暗空間シールドは、ポンプチャネルの1つの側壁を形成することがあり、台座とともに移動することができる。このような環状ポンプチャネルを形成する第2の、中心軸Aに関して、外側の側壁は、暗空間シールドに取り付けられてこれとともに移動可能であるか、あるいは固定アノードに取り付けられるかまたはその一部である第2のチャネルシールドによって形成することができる。
【0016】
加えて、台座温度および基板温度測定デバイスの少なくとも1つを設けて、たとえば電気温度測定デバイスで台座温度を制御し、かつ/または、基板の裏面の高温計のような光学測定デバイスで基板温度を制御すべきである。このような温度測定デバイスは、たとえばSPUならびに台座および/またはESCの支持面の下方のそれぞれの加熱および冷却流体回路と接続された加熱および冷却ユニットを介して、基板温度を制御するために用いられる。標準的なプロセスでは、バックプレートまたはターゲットフランジを焼き戻しまたは冷却するために台座、アノードおよびマグネトロンスパッタ源に供給する1つの加熱および冷却ユニットで十分であり得ることに言及されるべきである。しかしながら、より厳密な温度制御を必要とするプロセスでは、台座用の別個の加熱および冷却ユニットならびにマグネトロン源およびアノード用の別個の冷却/焼き戻しユニットの方が適しているであろう。これによって台座のおよびしたがって基板の厳密な温度制御が、高度にテクスチャ化された化合物層を生成する1つのキーであることが証明されている。たとえば100℃よりも高い堆積温度では、台座の表面における加熱および冷却ユニットに加えて、またはその代わりに、抵抗ヒータプレートを統合することができる。
【0017】
さらなる修正例においてターゲットは、
- AlまたはAlMeを表すアルミニウム、
- AlScまたはAlScMeを表すアルミニウムスカンジウム、
- AlCrまたはAlCrMeを表すアルミニウムクロム、
- MgHfまたはMgHfMeを表すマグネシウムハフニウム、
の材料の少なくとも1つまたはこれらの混合物からなり、AlSc、AlCrまたはMgHfは常に、任意のさらなるマイナーメタルMeの存在に関係なく、少なくとも1%のより低濃度にある主要金属を含むため、Meは、それぞれの層および2つの主要金属の混合物の全体的な金属含有量を基準にして、0.1原子パーセントから10原子パーセントの濃度の少なくとも1つのさらなる、たとえばマイナーメタルを表す。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つのロードロックチャンバ、移送手段、および少なくとも3つの処理モジュールを含む、少なくとも1つの板状基板を処理するマルチチャンバ真空システム(MCS)に関し、これによって第1の処理モジュールを、基板の表面をエッチングするように構成されたPVEモジュール(P1)とすることができ、第2の処理モジュールを、基板の表面に対するスパッタリングによって金属層を堆積させるように構成された金属スパッタモジュール(P2)とすることができ、第3の処理モジュールを、前述の請求項の装置に従って構成された化合物スパッタモジュール(P4)とすることができる。
【0019】
MCSシステムはまた、550℃から900℃の間のアニーリング温度TAに基板を加熱するように構成されたアニーリングモジュール(P3)とすることができる第4のプロセスモジュールであって、60秒から180秒以内にそのアニーリング温度TAに基板を加熱するように構成することができる、第4のプロセスモジュールを含むことができる。
【0020】
さらなる一実施形態においてMCSシステムはまた、PVEモジュール(P1’)、金属スパッタモジュール(P2’)、および化合物スパッタモジュール(P4’)の少なくとも1つの少なくともさらなる1つを含むことができる。
【0021】
このようなMCSの実施形態のいずれかで少なくとも1つのロードロックチャンバおよびプロセスモジュール(P1、…P4’)を、中央ハンドラチャンバの周りに円形または多角形の方式で配置することができる。代替の一実施形態においてロードロックチャンバおよびプロセスモジュール(P1、…P4’)を線形の方式配置することができ、ハンドラは、線形ハンドラ、たとえば少なくとも1つの輸送ベルトまたは輸送チェーンとすることができる。
【0022】
このようなMCSの実施形態で前処理および後処理モジュール(pp12、pp34、pp56)の少なくとも1つをロードロックチャンバの少なくとも1つと動作可能に接続することができる。
【0023】
本発明はまた、コーティングされた本質的に二次元の平坦な基板、たとえばウエハを、スパッタプロセスによって製造する方法を含み、これによってアルミニウム含有ターゲットが上で議論したような装置においてスパッタされる。これによって圧電AlN膜を少なくとも1つのマイナーメタルMemと合金化することによって圧電応答を改善することができ、これによってAlNの六角構造が依然として保存される。Mefは、スパッタされたアルミニウムターゲットに合金化することができるSc、Cr、MgまたはHfの少なくとも1つとすることができる。このような方法は、少なくとも1つの圧電層の堆積を含むことができる。この層は、
- 窒化アルミニウム(AlN、AlMeN)、
- 窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN、AlScMeN)、
- 窒化アルミニウムクロム(AlCrN)または
- 窒化マグネシウムハフニウム(MgHfN、MgHfMeN)、
の材料の少なくとも1つまたはこれらの混合物からなり得、Meは、それぞれの層の全体的な金属含有量を基準にして、0.1原子パーセントから10原子パーセントの濃度の少なくとも1つの、たとえばマイナーメタルを表す。
【0024】
第1の電圧源は、バイアス電極に接続され、それぞれの圧電層の成長を妨げることを回避するために0Wから100Wまたはさらに低い0Wから30Wの非常に穏当なバイアス電力を用いて2MHzから30MHzの周波数で駆動される第1のRF源とすることができる。一方第2の電圧源は、ターゲット電極に接続され、7kWから14kWの電力で、50kHzから400kHzのパルス周波数で駆動されるパルスDC源とすることができる。さらに、オフ期間中に正の電圧を印加することができる。
【0025】
あるいは、第2の電圧源は、アダプタネットワークによって互いに接続されたDC源および第2のRF源ならびにターゲット電極を含むことができ、これによって第2のRF源は、0.9MHzから30MHzのパルス周波数で駆動することができる。
【0026】
層のいくつかの特徴を最適化するため、これは、ウエハ表面の上のコーティングの、それぞれスパッタ堆積層の応力および/または応力分布を可能な限り最小化および/または均等化することであり得、たとえば、後続の厚さもしくは応力の測定に依存する一連のプロセスにわたって、かつ/またはその場のプロセス制御によるプロセス中、たとえば、光学膜厚測定もしくはそれぞれのその場の応力測定に依存して、
- 第1の電圧源の電力、
- 第2の電圧源の電力、
- パルスDC源のデューティサイクル、
- DC源および第2のRF源の電力の商、
- いくつかのプロセスサイクルにわたるターゲットエロージョンの影響のバランスを取るためにも効果的に用いることができるであろう、基板表面とターゲット表面との間の距離、
- 絶縁リングシールドに印加される定義された(DC、RF)電圧、
- 圧電層の高堆積温度、
- 少なくともシードおよび/または底部層をアニールするアニーリングステップ、
のプロセスパラメータの少なくとも1つを段階的または連続的に変えることができる。
【0027】
さらに、単に例示的に言及された層またはコーティングの特徴を上記のプロセスパラメータによって、たとえばウエハのロッキングカーブとして調整することができ、これは平面波トポグラフィのような回折トポグラフィ法、特にロッキングカーブに沿ったそれぞれの連続トポグラフィで測定することができる。代わりに用いることができる良好な近似は、それぞれの測定されたX線回折図のいくつかの特徴的な結晶線の半値全幅(FWHM)の決定である。
【0028】
同じことが、コーティングされた層の表面粗さの寄与、および電磁エネルギーの層固有の散逸を定量化して損失角度δまたは対応する損失tanδとして与えることができる誘電損失を指す。例を以下に挙げる。
【0029】
例および図
ここで例および図を用いて本発明をさらに例示する。これらの図はすべて単に概略的かつ簡略化されて描かれており、同じ参照符号は同じまたは類似の機能性の特徴を指す。上へ、上に、下方および上方または左および右のように頂部または底部という用語を参照すると、このような用語は使いやすさのために、または図を参照してのみ、限定的な方法でなく用いられ、そのため同じ発明の概念が、鉛直または傾斜した位置にターゲットおよび基板の両方を有する別の装置のタイプに適用されるのであれば、ウエハおよびターゲットが現在とは反対の水平位置にある頂部および底部の構成も、たとえば左および右の構成に、またはその逆に適用することができることに言及されるべきである。同じことが、他のチャンバ対称性、たとえば(直)角度の形状にも移送することができる図示するような例のそれぞれの設計から生じる円筒状およびリング状構造を指す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図7】二重冷却/加熱ガス供給部を備えた台座である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、流路26によってガス流に関してともに接続されたスパッタ区画18およびポンプ区画17に分割された二部分真空チャンバ10を含む発明のスパッタ装置の概要を示す。この実施形態において装置は装置軸Aの周りに、本質的に円筒状のセットアップを有する。ターゲット径r
tおよびスパッタ区画18の側壁を形成するアノード2の内径r
aを基板に従って、たとえばウエハサイズに従って選択することができる。200mmウエハではターゲット径r
tは250mmから400mmから選択することができ、内径r
aは300mmから450mmから選択することができる。側壁11は、ターゲット1およびマグネットシステム23を含む、スパッタ区画18の頂部の、マグネトロンスパッタ源22のアノード2として設計されている。さらに、高価なまたは機械的に弱いターゲット材料の場合はターゲットバックプレート24を設けることができる。ターゲット1とアノード2との間に、絶縁されて取り付けられているが導電性のターゲットリング3が、ターゲット1の周りのアノード2の上部周囲に配置されたリングまたはセラミック支持部の形態のセラミックアイソレータ43上に配置されている。ターゲットリング3は浮遊電位上にある。アイソレータ43は、入口ギャップ35とともに、反応性ガス、希釈剤不活性ガスの添加ありまたはなしの異なる反応性ガスの混合物とすることができるプロセスガスのための入口13を与えるチャネル構造34内のスパッタ区画18に向かうあらゆる見通し線に対して隠れて位置している。
図1に示すような実施形態において入口ギャップ35はアノードとターゲットリング3との間に形成されている。プロセスガス用の代替または追加の入口を、アノードの低部周囲近くにガスリング33の形で設けることができる。これによってプロセスガスと不活性ガスとの供給を分割することができ、これは一例として、図示するようにポンプ区画17に配置することができるリモートガスリング33を介してのみプロセスガスが供給され、かつ不活性スパッタガスのみが上部入口13に提供されるときに、ターゲットの被毒を防止するのに役立つことができる。
【0032】
スパッタ区画18の底部において、鉛直に移動可能なRF台座(参照符号5および鉛直の二重矢印を参照)が取り付けられ、ウエハ4および台座ベース5’を固定する静電チャック6を含む。台座とともにリングシールド7および暗空間シールド8を上および下に移動することができる。リングシールド7および暗空間シールド8の両方は、台座のRF電位に対して、かつ/または台座5および台座ベース5’のそれぞれのRF支持部分までの暗空間距離において電気的に絶縁されている。しかしながら、暗空間シールド8は接地電位上にある一方、リングシールド7は浮遊電位上にあるか、または別個の電圧源を備えてスパッタ区画18に第3の電極を形成する。ウエハ周囲を包囲するこのような第3の電極7を、たとえばターゲット電力および基板バイアスのような、他の既知の測定値に加えて用いて、圧電活性コーティングの層内の応力および応力分布を最適化することができる。それぞれのフィードスルー32を介して、台座は、台座5およびESC6の加熱および冷却のためにRFライン41および流体ライン42に接続されている。ウエハ4の裏側で温度を制御するために光学温度測定デバイス40、たとえば高温計が用いられ、これは追加の光学フィードスルー32を必要とする。排気区画17の底部または側壁11に、高真空ポンプシステム16に接続するポンプソケットが設けられている。
【0033】
図2から
図5は流路26の異なる修正例を示す。電気的に絶縁されたリングシールド7および暗空間シールド8のような、台座5またはそのベース5’に接続されたすべての部品が台座とともに移動する一方、アノード2およびチャネルシールド9は静止している。プロセスの安定性の理由から、圧力変動をできるだけ低く保つことが重要である。そのため台座のすべてのプロセス関連位置で同じポンプ速度を提供することが重要であり、これは、潜在的なロードおよびデロード位置、たとえば可能な最低位置またはあるいは最高位置を必ずしも含むとは限らない。ターゲット寿命全体にわたる台座の典型的なプロセス関連の移動は、厚いターゲットでは40mmから90mmの範囲であり得、通常の6mmのターゲットでは移動は約15mmから40mmとなり、そのため15mmから90mmの移動であらゆる必要性に対して十分であろう。流路26のすべてのタイプが少なくとも1つの環状ポンプチャネル27を含む。
【0034】
移動中に、特徴的距離(w
ch)、たとえば、最小の流れ面積を画定する流路内のチャネルの特徴的な幅は変化せず、一定を保つことが重要である。スパッタ区画18とポンプ区画17との間の単純な流路による状況を例示するため、
図5において台座の一定の移動距離の間に特徴的距離になり得るいくつかの距離I、II、III、IVが示されている。この例において台座は95mmの全体ストロークを有し、40mmのプロセス関連移動(65mmから95mm、台座の可能な最高位置)用に設計されている。暗空間シールド8とアノードシールド2の最下部の内周r
aiとの間の110cm
2の横断面によって画定される一定の真空および排気条件下で、
図6における図を参照されたい。この範囲内で距離Iは、流路について一定の特徴的距離w
chを画定し、ウエハをターゲット表面に向かって、かつターゲット表面から離れるように移動させて、ターゲットエロージョンを補償し、かつ/またはコーティングのそれぞれの層スタックにおける層応力を制御することができる。より低い移動値になれば、特徴グラフVの太い破線によって示されるように距離IIが流路26の特徴的値になる。しかしながらこのより低い範囲内では、台座フィンがアノードの下部内周の面に近づくとき(破線)に距離IIが小さくなるにつれて流れ面積が恒常的に減少する。移動の下部の終わり(図には示さず)で、台座がゼロmmの移動でアノードに着座する前に距離IIIは特徴的値になる。
図2から
図5でガス入口13は、アノード2とターゲットリング3との間ではなく、アノード2内に統合されている。しかしながら同様の構造を
図2から
図5で用いることも、または逆にアノード一体型ガス入口を
図1の実施形態で用いることもできる。
図5における水平の破線は、リングシールド7の上面の代替のより高い位置を示し、これはいくつかのプロセスパラメータでいくつかの利点を有することができ、実際の発明のあらゆる実施形態と組み合わせることもできる。これによってリングシールドの上面を、チャック6または基板表面またはその間の任意の場所と平面にすることができる。
【0035】
同様の考察を流路26で
図3および
図4で示すように行うことができ、これらは両方とも、流れチャネル内で1つの、それぞれ2回の180°ターンを含み、したがって、流路の入口でのスリット幅がそれぞれの真空条件に従った暗空間距離の必要性に準拠しているか、またはそれぞれ寸法決めされたグリッドでカバーされている限り、スパッタ区画からポンプ区画へのいかなるプラズマスピルアウトをも非常に効果的に防止する。
図3で暗空間シールド8はトラフ状に形成され、トラフの中心にチャネルシールド9が配置され、ともにU状の流れチャネルを画定している。
図4でチャネルはチャネルシールド9に統合され、これはここでアノード2の一部を形成している。これらは、スパッタ区画内のアノード半径r
aと、この場合、暗空間シールド8までの暗空間距離にある下部アノード半径r
aiと、の間に配置されている。たとえば一体のデバイスとしての、または少なくとも密接した熱結合としての、アノードシールド2内の流路26の部分の統合または完全な流路26には、スパッタ区画内のより均等な温度分布に関してメリットがある。
図4でスパッタ区画18から来るチャネルが横方向に2つのS字カーブに分割されて排気区画17内へ入る。この場合、特徴的距離w
ch=w
ch1+w
ch2であり、w
ch1、2は、曲線の流れ矢印を備えたそれぞれのサブチャネルの幅として定義することができる。
【0036】
流路のすべてのタイプで用いられるようなスパッタ区画の30リットル容量では、500l/sから700l/sの排気速度を調整可能にすべきである。これは、用いられるそれぞれの流路26の流れ抵抗のために、排気区画17のポンプソケット44に接続される、たとえばターボ分子ポンプを含む、高真空ポンプシステム16についての約2000l/sの排気速度に相当する。
【0037】
図7は、不活性加熱/冷却ガス用の2つの入口16、すなわちESCに固定されたときのウエハ用の1つのバックガス入口30およびESC用の1つのバックガス入口31を備えた発明の台座5の詳細を示す。それぞれの入口チャネル14は、ガス入口を台座ベース5’の底部でフィードスルー32と接続する。このような構成には、ESCのための背圧をこれによってより高い値に上げることができる一方、ウエハのための背圧は、200mmのウエハではたとえば最大5sccmに非常に制限され、ウエハ4のみが入口30およびチャネル29をスパッタ区画の高真空から分離するためにより高い流れで発生するであろうアーキングを回避するため、両システムに1つの入口のみを備えた構成と比較していくつかのメリットがある。このような構成でESC6は、ウエハの下を入口31からESC6の外側領域に向かって流れるときの加熱/冷却ガスの流れ抵抗を上げるためにウエハに対して開いたチャネル29によってパターニングされた表面を有することができ、加熱/冷却ガスはスパッタ区画の高真空内へ逃げることができる(上部水平矢印参照)。表面パターンは、クモの巣、らせん状、曲がりくねったまたは開チャネル29のメンサ状パターンのような、流路パターンの任意のタイプとすることができ、通路の高さを数μmまたはさらに低く、非常に低くして流れ抵抗を高く保持する。これによってウエハの裏側での均等なガス分布ならびにウエハ支持のための支持点または領域の均等な分布を達成して、ESC6の静電力によるいかなる機械的応力をも回避することができる。冷/温ESC表面ウエハ間のガス分子のための短い経路を提供する高い支持領域と均一に広がった浅いチャネルキャビティの組み合わせのため、結局、たとえばウエハサイズ≧200mmで、ESC表面の異なる点で別々に入口30と組み合わせると、バックガス流および圧力が低くてもウエハの裏側の冷却および加熱を最も効率的に実行することができる。
【0038】
ESCの下部側を冷却/加熱するフィードスルー32からバックガス入口31への入口チャネル14は、ここで台座とESCとの間のバックガスチャンバ28として実現されている開チャネル28で終わる。ここから、曲線矢印および下部水平矢印によって表されるように、バックガスは排気区画17へニードルチャネル48およびベースチャネル49を介して流出することができ、両方とも高い流れ抵抗を提供して台座5とESC6との間のより高い背圧を可能にし、これは約0.1hPaから1hPa(10-1mbar~100mbar)とすることができる。絶縁セラミック材料で作製されて少なくとも1つのRF電極47を含むチャック6の加熱は、チャックのベース5’上のヒータプレート46によって提供される。あるいは、または加えて、水冷チャックを用いることができる。
【0039】
4つのプロセスモジュールP
1からP
4および6つまでの前または後処理モジュールpp
12からpp
56を含み、後者がウエハハンドリングレベルの上方および下方にペアで配置されている、マルチチャンバシステムMCS50が
図8に示されている。すべてのモジュールが、ウエハを前処理モジュールから処理モジュールへ移送し、モジュール間でウエハを移送し、最後にウエハを後処理ツールに戻す、自由にプログラム可能なハンドラ52を含む中央ハンドラ区画51の周りに円形または多角形に配置されている。MCSの中および外からの移送は、入ってくるウエハ用のロードロック53および出て行くウエハ用のロードロック54によって行われる。少なくとも1つのさらなるハンドラが、ここで1つのロードロックセクションとして実現されるロードロックチャンバ55から前処理モジュールpp
12へウエハを移送し、後処理モジュールpp
56からロードロックセクションへ再び戻す。前および後処理モジュールpp
12、pp
34、pp
56は、処理または移送されるのを待っているウエハ用のバッファ、加熱ステーション、冷却ステーション、およびアライナーステーションの少なくとも1つを含むことができる。現在のようなプロセスモジュールは、MCS内でアニーリングが実行されるべきときの最小構成を示す。そのためモジュールP1は、PVEステーションを含み、P2は、金属スパッタステーションを含み、かつP3は、加熱されるべき基板表面に面するように平坦なカーボンヒータを含むアニーリングチャンバを含む。アニーリング区画の頂部および底部は冷却された反射面を含み、これによって基板は3本のフィンガの支持によってその外周近くに保持される。最後に、モジュールP4は上述したような発明の化合物スパッタリング装置10を含む。さらなるモジュール、たとえばコーティングの最も厚い層システムのためのスパッタ時間を半分に分割することによって全体のプロセス時間をスピードアップする第2の化合物スパッタモジュール、または2つ以上の金属電極を含む層システムのための第2の金属スパッタモジュールを、ドック56を介して接続することができる。
【0040】
MCSのシステム制御ユニット36は、モジュールのそれぞれのシステムユニットを含むか、または少なくともこのようなユニットのタイミングを制御することができ、システム制御ユニット36内に少なくとも部分的に含まれるか、または制御されるべきそれぞれのモジュールとは別個であり得る、制御手段38、調整手段37、測定手段40、およびセンサ(図示せず)によって、すべてのモジュール内のウエハの移送ならびにプロセスの詳細を制御する。入力/出力ユニット39により、オペレータが単一のプロセスパラメータを修正し、新たなプロセスを自動的にロードすることが可能になる。
【0041】
図9において線形モジュール配置のMCS50’が概略的に示されている。この場合、すべてのプロセスステップについて入ってくるウエハ用のロードロック53と出て行くウエハ用のロードロック54との間に別個のモジュールが設けられ、それぞれ専用のロードロックチャンバ55’および55”が前および後処理モジュールを含むことができるか、またはこのようなモジュールに接続されている(
図8参照)。基板がロードロックチャンバ55’からPVEモジュール1’へ移送されると、プロセスはクリーンなブランクウエハ表面のエッチングで始まり、モジュールP4’におけるスパッタプロセスが続き、薄い化合物層をシード層として堆積させ、これに第1の金属層Me1がモジュールP2において付着される。モジュールP3におけるアニーリングステップ、P1におけるさらなるPVEステップが続いて金属表面を微細化し、さらなる化合物スパッタステップで機能性圧電層Comp1をエッチングされた金属層Me1にモジュールP4において付着させ、最後に第2の金属層Me2の第2の堆積で第2の電極を備えた層スタックをモジュールP2’において完成させ、それから基板がロードロック54を介して真空からロックアウトされる。モジュール間およびモジュールとロードロックチャンバ55’、55”との間のウエハ転送は線形ハンドラ52’によって実行される。
【符号の説明】
【0042】
1 ターゲット、スパッタ電極
2 アノード
3 浮遊ターゲットリング
4 ウエハ
5 RF台座
5’ 台座のベース
6 静電チャック(ESC)
7 リングシールド
8 暗空間シールド
9 チャネルシールド
10 スパッタリング装置
11 真空チャンバ
12 側壁
13 入口プロセスガス
14 入口チャネル不活性加熱/冷却ガス
15 基板ハンドリング開口
16 真空ポンプシステム
17 ポンプ区画
18 スパッタ区画
19 スパッタ区画の頂部
20 スパッタ区画の底部
21 第1の電圧源
22 マグネトロンスパッタ源
23 マグネットシステム
24 バックプレート
25 第2の電圧源
26 流路
27 環状ポンプチャネル
28 開チャネル台座/ESC
29 開チャネルESC/ウエハ
30 バックガス入口ウエハ
31 バックガス入口ESC
32 フィードスルー
33 ガスリング、入口プロセスガス
34 チャネル構造
35 入口ギャップ
36 中央処理ユニット
37 調整手段
38 制御手段
39 I/Oデバイス
40 温度測定デバイス
41 RFライン
42 加熱および冷却ライン
43 アイソレータ
44 ポンプソケット
45 台座フィン
46 ヒータプレート
47 RF電極
48 ニードルチャネル冷却/加熱
49 ベースチャネルチャックヒータ
50 マルチチャンバシステム(MSC)
51 ハンドラ区画
52 ハンドラ
53 ロードロックイン
54 ロードロックアウト
55 ロードロックセクション
56 ドック
Mem マイナーメタル
Me 0.1原子パーセントから10原子パーセントの濃度の(好ましくはマイナー)メタル
P1...P4 プロセスモジュール
pp12...pp56 前または後処理モジュール
rt ターゲット半径
ra アノード半径
ral 下部アノード半径
wch ポンプチャネルの幅
【国際調査報告】