(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01L1/16 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547921
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079500
(87)【国際公開番号】W WO2020089211
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516371494
【氏名又は名称】ヨアネウム・リサーチ・フォルシュングスゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】521185745
【氏名又は名称】アルペン-アドリア-ウニヴェルジテート クラーゲンフルト
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヨハン・ミュールバッヒャー-カレル、
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト・ツァングル、
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・ゴルト
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・ヤコピック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・チェップ
(57)【要約】
少なくとも第1の基板、対象物の接近を取得するための静電容量センサおよび圧力を取得する圧電センサを含むセンサ装置であって、前記静電容量センサは前記第1の基板の第1の面上に配置され、前記圧力センサは前記第1の基板の第2の面上に配置され、前記第2の面は前記第1の面に対向しており、あるいは前記静電容量センサ及び前記圧電センサが前記基板の同一面上に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置(1)であって、
少なくとも一つの第1の基板(3)と、
対象物の接近を取得するための静電容量センサ(4)と、
圧力または圧力変化を取得する圧電センサ(5)とを備え、
前記静電容量センサが前記第1の基板(3)の第1の面上に配置され、前記圧力センサ(5)が前記第1の基板(3)の第2の面上に配置され、前記第2の面が前記第1の面に対向しており、または、前記静電容量センサ(4)および前記圧電センサ(5)が前記基板(3)の同一面上に配置されている、
センサ装置。
【請求項2】
請求項1において、
第2の基板(10)を備え、
前記静電容量センサ(4)が前記第1の基板(3)上に配置されており、
前記圧電センサ(5)が前記第2の基板(10)上に配置されており、
前記第2の基板(10)が前記第1の基板(3)の上にラミネートされている、
センサ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記静電容量センサ(4)の底面積が実質的に前記圧電センサ(5)の底面積に一致し、かつ/または、前記静電容量センサ(4)および前記圧電センサ(5)がセンサスタック(2)を形成する、
センサ装置。
【請求項4】
請求項の1ないし3のいずれかにおいて、
前記静電容量センサ(4)と前記圧電センサ(5)との間にシールド(7)を有する、
センサ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記シールド(7)が、前記第1の基板(3)の前記静電容量センサ(4)とは反対側を向く面上に配置されている、
センサ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記静電容量センサ(4)が、
電極層(4a)と、
下部電極(4b)とを備え、
前記電極層(4a)と前記下部電極(4b)とが、前記第1の基板(3)または第1の誘電絶縁層(4c)によって互いに絶縁されている、
センサ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記圧電センサ(5)が、
好ましくはPEDOT:PSSから形成される下部電極層(5a)と、
強誘電体共重合体層(5b)と、
上部電極層(5c)と、
をさらに備えたセンサ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記センサ装置の表面(6)を保護するためのラッカー層(9)を備え、前記ラッカー層(9)が前記静電容量センサ(4)の前記電極層(4a)上に形成されている、
センサ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記シールド(7)と前記圧電センサ(5)との間に第2の誘電絶縁層(8)を備えた、
センサ装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記センサ装置(1)が、
前記静電容量センサ(4)からの第1の信号(16)を検出するための接近検知装置(17)を備え、前記第1の信号(16)が接近信号であり、または、
前記圧電センサ(5)からの第2の信号(18)を検出するための接触検出装置(19)を備え、前記第2の信号(18)が接触信号である、
センサ装置。
【請求項11】
操作装置であって、
少なくとも一つの操作フィンガー(14)を有し、個々の操作フィンガー(14)が、それぞれ請求項1ないし10のいずれかに記載のセンサ装置(1)を少なくとも1つ含む、
操作装置。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の前記センサ装置(1)の使用であって、
とくに協働環境における操作装置に対する対象物の接近および操作装置のグリップ工程における保持力の触覚的検知のための前記センサ装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボットアームが同時に異なる工程段階を実施する製造ラインやマンマシン複合環境などの協働ロボット環境において、異なるロボットアーム間または人とロボットの間で衝突が生じ得る。したがって、ロボットアームには環境認識のためのセンサが装備される。センサに用いられる従来の圧力または触感方式は、機械的または空気的スイッチ、炭素繊維、導電性シリコンゴム、導電性エラストマー、ピエゾダイオードまたは歪ゲージを使用する。近年、ますます開発され採用されている技術は、静電容量式または抵抗式タッチ、超音波表面弾性波方式タッチ、赤外線タッチおよび投影型静電容量式タッチである。しかしながら、これらの技術を用いた協働ロボットの高速駆動には限界がある。非接触および接触センサを用いて確実に対象物に接近、グリップおよび操作することについても満足には実施できていない。
【0003】
したがって、環境認識のため、および/または、ロボットアームによって対象物を確実にグリップして操作するための改良されたセンサを提供することにある。
【0004】
この課題は、独立クレームに記載される発明によって解消される。有利な実施形態は従属クレームより得られる。
【発明の概要】
【0005】
本発明によると、少なくとも第1の基板、対象物の接近を取得するための静電容量センサおよび圧力または圧力変化を取得する圧電センサを含むセンサ装置が提供されており、静電容量センサは第1の基板の第1の面上に配置され、圧力センサは第1の基板の第2の面上に配置され、第2の面は第1の面に対向しており、または、静電容量センサおよび圧電センサは、基板の同一面上に配置されている。
【0006】
静電容量センサ(Pセンサ)と圧電センサ(Cセンサ)をそれぞれ同一の基板上の同一面または対向する面上に配置することにより、両センサの利点を組み合わせて一体化されたセンサ装置を得る。とくにこの配置によって圧電センサによる対象物の接近の検出および静電容量センサによる圧力または保持力の決定が可能となる。
【0007】
Cセンサ、Pセンサおよび基板は、フィルムとして構成されて柔軟性を有し得る。これにより、例えばロボットグリッパの広範囲に亘ってセンサを装備し、センサは丸みを帯びた支持台にも適応可能である。
【0008】
Cセンサは動作、とくに対象物の接近を接触前の領域において2つの電極間の静電容量変化(相対測定モード)または1つの電極とGNDとの間の容量変化(シングルエンド測定モード)によって、または複数の電極間および/またはGNDとの静電容量と材料分布の空間的再構成との組み合わせ(電気容量トモグラフィECT)によって検出する。
【0009】
Pセンサは、圧力に比例する表面荷電を生成することにより力を検出する(分極)。一体化センサは、例えばロボット上でCセンサによって接近とPセンサによって接触の力を検出し、これにより、対象物のグリップを質的に改良する。接近情報は、例えばロボットアームを正確によりよいグリップ位置へと調整するために用いられ得る。Pセンサによる力の測定は、対象物を確実にグリップする機能を有する(すなわち、ロボットが対象物を落とさないように十分な力であると同時に、これを損傷しないように強すぎない力でグリップする)。ここでCセンサは、常にグリップすべき対象物に向かうように配向されている。PセンサはCセンサによって覆われている。
【0010】
CセンサとPセンサとを基板、すなわち単一のフィルム上で一体化することで一体化されたセンサ装置の柔軟性が向上する。
【0011】
圧電式力測定の利点は、例えば静電容量式力測定などのその他の方法と比べて、センサ構造のために弾性材料が不要である点にある。この種の弾性材料(例えば「発泡プラスティック」)は動的挙動、ヒステリシス効果および経時変化(不可逆的変形、硬化)が悪く、よって耐用年数が短い。これに比べて圧電式力測定の方が、機械的にはるかに安定するように実現可能である。これに対して、純然たる静電容量式タッチセンサおよび接近センサ(例えば「タッチスクリーン」)は、作用する力を決定することはできず、接触された面を決定する。加えて多くの材料(例えば絶縁性プラスティック)には使用できない。これに対して純然たる圧電式センサは、接近工程を登録することはできない。しかしながら、両センサの原理を組み合わせることにより、接近のみならず接触をも量的に取得することが可能である。
【0012】
本発明の一実施形態において、センサ装置は第2の基板を備え、静電容量センサが第1の基板上に配置され、圧電センサが第2の基板上に配置され、第2の基板は第1の基板上にラミネートされている。こうしてPセンサおよびCセンサが異なる基板上に配置されている(バックプレーン/フロントプレーン概念)。これにより、歩留まりに関するリスクを軽減できるのは、まずは2つの構成要素が互いに独立して製造されて評価され得るからである。これにより、製造工程においてそれぞれ高性能のCセンサおよびPセンサを選択することが可能となり、最終製品の廃物を減らすことが可能となる。
【0013】
第1の基板は、第2の基板に対してラミネートによって接続される。ラミネートによってCセンサおよびPセンサが、簡単且つ安価な方法で互いに一体化センサ上へと接続される。
【0014】
本発明の一実施形態において、静電容量センサの底面積が実質的に圧電センサの底面積と一致しており、かつ/または、静電容量センサおよび圧電センサがセンサスタックを形成する。各センサは、同一の第1の基板上または第1の基板または第2の基板上に重なるように配置されており、複数の層を含むセンサスタックを形成する。CセンサとPセンサの各底面積が一致することにより、各接近領域(検出された対象物が接近の後、センサ装置と接触する領域)において力をも検出することが可能となる。換言すると、いずれのセンサも他のセンサに対する「死角」を有しない。
【0015】
両センサのラミネートには、適切な担持フィルムと顕著ではあるが大きすぎない可塑性とによって気泡なく貼り付けることができ、一体化センサ装置の機械的特性に大きな影響を与えない、約30μmの厚さを有する両面粘着フィルム(医療分野において使用される)を使用することが可能である。正確な位置合わせのために、ラミネートは、より硬い補助フィルム上に固定された、両面粘着フィルムによって完全に覆われているCセンサを用いて実施され得る。この上にPセンサを展開し、正確に位置合わせすることが可能である。
【0016】
本発明の一実施形態において、センサ装置は静電容量センサと圧電センサとの間にシールドを備える。CセンサのみならずPセンサもが互いに独立して機能することが可能であり相互作用が生じないようにするため、CセンサはPセンサに対してシールドによって遮蔽される。CセンサのPセンサからの遮蔽は、Cセンサの下部電極とPセンサの下部電極層との間のシールド電極を必要とする。したがって、バッファ層はシールド電極として構成されており、電気的にアース接続されている。
【0017】
本発明の一実施形態において、シールドが第1の基板上の静電容量センサとは反対側を向く面に配置されている。この配置において、シールドはスクリーン印刷によって第1の基板の背面上に直接被着され得る。被着は製造工程において、Pセンサを第1の基板上に製造するのと共に実施し得る。シールドはPセンサの一部ではないものの、例えば(高い表面伝導率を有する)銀ペーストを第1の基板の裏面に印刷することでこれに一体化することが可能である。これにより製造が全体的に簡素化される。
【0018】
本発明の一実施形態において、静電容量センサは電極層と下部電極とを備え、電極層および下部電極は、第1の基板または第1の誘電絶縁層によって互いに絶縁されている。第1および第2の基板が用いられる一体化センサ装置の各実施形態においては、第1の基板が電極層とCセンサの下部電極との間の第1の誘電絶縁層の機能を担う。これにより、第1の誘電絶縁層を省略することが可能である。第1の基板のみが設けられる各実施形態においては、Cセンサの機能を確証するために第1の誘電絶縁層によって電極層を下部電極から絶縁する必要がある。
【0019】
本発明の一実施形態において、圧電センサは、好ましくはPEDOT:PSSによって形成される下部電極層、強誘電体共重合体層(5b)および上部電極層を備える。Pセンサはスクリーン印刷によって製造することができ、印刷工程を繰り返すことによって層のスタックが製造される。Pセンサを構成する層のスタックは下部電極層を含む。下部電極層は、約1μmの厚さを有するPEDOT:PSSによって形成され得、第1または第2の基板上に成膜される。その後、例えば約5μmの厚さを有し、感圧性を有する、PVDF:TrFE(70:30)から形成される強誘電体共重合体層および再度1μmの厚さを有するPEDOT:PSSから形成される上部電極層が分割された4×2配列になるよう形成される。印刷後、共重合体(PVDF:TrFE)中の強誘電体結晶(PVDF)は優先方向を持たない。ポーリング処理によって強誘電体結晶を約200V/μmの電界で整列させ、これにより層の圧電感度が確立される。また、ポーリング処理を行うことで、機能や感度に関する結論を導き出すことができるため、歩留まりや感度のばらつきに関するデータを得ることが可能である。したがって、ポーリング処理はPセンサの製造における工程管理として機能する。4×2配列は、グリップ時の接触点を検知するように設計されている。4×2配列は、接点の8ピクセル解像度を表す。用途に応じて(数および形状を含む)分割を変更することが可能である。静電容量センサの電極の形状についても同様である。
【0020】
本発明の一実施形態において、センサ装置はセンサ装置の表面を保護するためのラッカー層を備え、ラッカー層は静電容量センサの電極層の上に形成されている。ラッカー層は、対象物をグリップしかつ/または取り扱う際の接触による影響からセンサ装置を保護する。
【0021】
本発明の一実施形態において、センサ装置は、シールドと圧電センサとの間において第2の誘電絶縁層を備える。第2の誘電絶縁装置は、Pセンサの下部電極層を導電層であり周囲電位にあるシールドから絶縁する。第2の基板を備える本発明による各実施形態においては、第2のPET基板が第2の誘電絶縁層の機能を担う。
【0022】
本発明の第2の態様によると、一体化された圧電および静電容量センサの製造方法が提供されており、本方法は、第1の基板を準備すること、第1の基板の第1の面上に静電容量センサを配置すること、第1の基板の第2の面上に記圧力センサを配置することを含み、基板の第1の面は第2の面に対向している。本方法は、フィルムの形において広範囲に亘る本発明によるセンサを製造するために工業的に拡張可能なアプローチを提供するものである。
【0023】
一実施形態において、本方法は、第2の基板を準備することを含む。準備は、静電容量センサを第1の基板上に成膜すること、圧電センサを第2の基板上に成膜すること、および第1の基板を第2の基板上にラミネートすることをさらに含む。Pセンサのみならず、Cセンサもが共に第1の基板の上、または個々に第1の基板と第2の基板との上に成膜される。ここで成膜は、工業的に拡張可能な印刷工程によって層毎に実施されるため、センサを構成する多層のフィルムが生成される。これにより、センサは工業規模において安価に製造することが可能となる。
【0024】
本方法の一実施形態において、ラミネートは約30μmの厚さを有する両面粘着フィルムを使用することで実施される。第1の基板のみを使用する本発明の各実施形態に対して、ラミネートは一連の工程がより容易であるという利点を提供する。フィルムの厚さが薄いことでセンサフィルムの機械的特性が実質的に影響を受けない。加えてそれぞれ対応する歩留まりを有するそれぞれ2つの部分センサ(P/C)を互いに接続することも可能である。これにより、最終製品の廃物を減らすことが可能となる。
【0025】
本方法の一実施形態において、静電容量センサの成膜は電極層と下部電極の成膜を含み、インクジェット印刷によって実施される。さらに、圧電センサの成膜は、下部電極層、強誘電体共重合体層および上部電極層の成膜を含み、スクリーン印刷によって実施される。
【0026】
一実施形態において、本方法は、第1の基板の第2の基板に対する位置合わせ、および/または、静電容量センサと圧力センサとの間のシールドの成膜による静電容量センサの圧電センサに対する位置合わせを含む。Cセンサ(例えばECTベースのもの)とPセンサ(例えばPyzoFlex(登録商標)ベースのもの)を組み合わせるには、両センサが複数層のフィルムをなすように互いに対して幾何学的に一体化される。幾何学的な一体化は、Cセンサの幾何学的特性をPセンサの幾何学的特性に対して位置合わせすることによって実施される。Pセンサが第2の基板上に設けられ、Cセンサが第1の基板上に設けられている各実施形態においては、ラミネート時に両基板が互いに対して位置合わせされる。正確な位置合わせのために、ラミネートはより硬い補助フィルム上に固定された、ラミネートによって完全に覆われているCセンサを用いて実施され得る。この上にPセンサを展開し、極めて正確に位置合わせすることが可能である。
【0027】
本方法の一実施形態において、シールドが第2の基板の静電容量センサに対向する面上に配置されるか、シールドが第1の基板の圧電センサに対向する面上に形成されている。シールドは、CセンサおよびPセンサの電気プロセスを切り離すための周辺電位にある電極として機能する。したがって、シールドは、常にCセンサの下部電極(アクティブガード)とPセンサの下部電極層との間に配置されている。Cセンサの下部電極(アクティブガード)には、電極層と同一の信号が付与される。これにより、シールドに対する寄生容量が除去されて、環境からの干渉を低減する。下部電極に代えて別の接地電極を設けることも可能である。このことは相対測定の場合に有利である。バッファ層は、それぞれ下部電極と下部電極層とから絶縁されている必要がある。そのためシールドの両側に絶縁層が設けられている。実施形態によって、各絶縁層のうち一方が第1の基板または第2の基板によって形成され得る。
【0028】
一実施形態において、本方法は、静電容量センサの下部電極と電極層との間における第1の誘電絶縁層の成膜、および/または、シールドと圧電センサにとの間における第2の誘電絶縁層の成膜を含む。第1の誘電絶縁層は、Cセンサの一部であり、基板が1つだけである各実施形態においては、その電極層を下部電極から絶縁する。第2の誘電絶縁層は、基板が1つだけである各実施形態においては、Pセンサの下部電極層をシールドから絶縁する。第1と第2の基板を有する各実施形態においては、各基板が第1および第2の誘電絶縁層の機能を担う。
【0029】
本発明の別の様態によると、少なくとも一つの操作フィンガーを有する操作装置が提供されており、個々の操作フィンガーは、少なくとも一つの本発明によるセンサ装置を含むものである。本発明は、接近センサ(Cセンサ)とタッチセンサ(Pセンサ)の両方が1枚のフィルム上に配置されて相互作用することによって、接近する対象物の位置を決定する可能性と、接触した場合に触覚情報を決定する可能性とを組み合わせたものである。フィルムは、各ロボット/機械の表面上に広範囲に亘って取り付けられ得る。静電容量式のCセンサをフィルム状に構成することによって、その下にある圧電または(圧電および焦電の)Pセンサに大きな悪影響を与えることなく、Pセンサに作用する力を伝達することが可能となる。
【0030】
本発明の別の態様によると、本発明によるセンサ装置は、協働環境において対象物の操作装置に対する接近を決定するために使用される。さらに、態様は、接近を決定するために本発明によるセンサ装置の一般的な使用を含むものである。具体的には、センサ装置から出力される信号が接近信号と接触信号へと分割され得る。これにより、対象物のセンサ装置への接近および対象物によるセンサ装置への接触がそれぞれ別々に検出され得る。
【0031】
本発明の意味合いにおける接近は、接近する対象物によるセンサ装置またはセンサ表面の接触を含むものではない。
【0032】
本発明のさらなる態様によると、本発明によるセンサ装置が操作装置のグリップ工程において保持力を触覚的に取得するために使用される。
【0033】
以下において、本発明の様々な例示的な実施形態を詳細に説明する。図面が図示するものは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明によるセンサ装置の第1の例示的な実施形態の概略的な構造を示す図である。
【
図2】本発明によるセンサ装置の第2の例示的な実施形態の概略的な構造を示す図である。
【
図3】静電容量センサの例示的な実施形態を示す図である。
【
図4】圧電センサの例示的な実施形態を示す図である。
【
図5】本発明によるロボットフィンガーの例示的な構造を示す図である。
【
図6】センサ装置が出力する各信号の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明によるセンサ装置1の第1の例示的な実施形態の概略的な構造を示す。センサ装置1は、層のスタック2によって構成されている。層のスタック2は、第1の基板3を含む。第1の基板3の第1の面(図において上面)上には、静電容量センサ4が配置されている。静電容量センサ4は、センサ1に対する対象物の接近を非接触で検知する機能を有する。
【0036】
第1の基板3の第2の面(図において下面)上には、圧電センサ5が配置されている。圧電センサ5は、圧力の検知とこれに伴って対象物がセンサ装置6の表面と接触している場合に対象物がセンサ1に対して付与する保持力を決定する機能を有する。
【0037】
静電容量センサ3は、電極層4aと下部電極4bとによって形成される。電極層4aと下部電極4bの間には第1の誘電絶縁層4cが配置されており、この第1の誘電絶縁層4cが静電容量センサ4の電極層4aと下部電極4bとを互いに絶縁する。電極層4aの各電極には、銀を含むインクを用いることが好ましい。
【0038】
圧電センサ5は、3つの層から形成される。圧電センサ5の第1の層5aは、下部電極層を形成する。下部電極層5aは、PEDOTから形成されることが好ましい。下部電極層5aは、約1μmの厚みを有する。圧電センサ5の第2の層5bは、強誘電体共重合体層であり、70:30%モルの割合におけるPVDF:TrFEから形成されることが好ましく、約5μmの厚みを有する。圧電センサ5の第3の層5cは、上部電極であり、PEDOTから形成されることが好ましく、約1μmの厚みを有する。第1の基板の第2の面上にはシールド(シールドGND)7が配置されている。シールド7は、静電容量センサ4と圧電センサ5を互いに電気的に遮蔽する機能を有する。シールド7には、銀ペーストを用いることが好ましく、電気的にアースと接続されている。
【0039】
センサ装置1は、さらに第2の誘電絶縁層8を有する。第2の誘電絶縁層8は、第1の基板3と圧電センサ5との間に配置されており、圧電センサ5を第1の基板3から絶縁する機能を有する。第1の基板3と第2の誘電絶縁層8との間にはシールド7が配置されている。
【0040】
静電容量センサ4上には、さらなる絶縁層(保護層)9が配置されている。この絶縁層9は、ラッカーによって形成されており、各対象物との接触による圧力を取得する際にセンサ装置1の保護する機能を有する。
【0041】
層のスタック2内において、静電容量センサ4および圧電センサ5が互いに位置合わせされている。静電容量センサ4および圧電センサ5の各底面積が実質的に互いに一致している。センサ装置1全体が柔軟性を有するフィルムを形成する。
【0042】
図2は、本発明によるセンサ装置1の第2の例示的な実施形態の概略的な構造を示す。センサ装置1は、
図1と比べた場合、さらに第2の基板10を有する。第2の基板10は、PET基板である。静電容量センサ4は、第1の基板3上に配置されている、すなわち、電極層4aは第1の基板3上に被着されている。第1の基板3の電極層4aに対向する面上に静電容量センサ4の下部電極4bが配置されている。第1の基板3は、電極層4aを下部電極4bから絶縁する。この電極層は、本実施形態において第1の誘電絶縁層4cの機能を担う。圧電センサ5は、第2の基板10上に配置されている、すなわち各層5a、5b、5cが第2の基板10上に被着されている。第1の基板3と第2の基板10との間にはシールド7が配置されている。第1の基板3はラミネート層11によって第2の基板10と接続されており、ラミネート11は下部電極4bとシールド7との間に配置されている。ラミネート層11は粘着層である。
【0043】
図3は、静電容量センサ4の例示的な実施形態を示す。この静電容量センサは、フィルム状に構成されており、第1の基板3を含み、この第1の基板の上に電極層4aが被着されている。電極層は3つの上部電極から形成され、第1の幾何学模様12を有する。上部電極の下には共通の下部電極4b(アクティブガード層とも称される)がある。上部電極と下部電極は、第1の基板3によって互いに絶縁されている。
【0044】
図4は、圧電センサ5の例示的な実施形態を示す。圧電センサ5は、フィルム状に構成されており、第2の基板10を含み、この第2の基板の上に各層5a、5b、5cが被着されている。圧電センサ5の第1の層5aは、第2の幾何学模様13を有する。圧電センサ5の第1の層5aは、分割されており、4×2配列を形成する。センサ装置1において両センサ4、5の各幾何学模様12、13は互いに位置合わせされている。
【0045】
図5は、本発明による操作フィンガー14の例示的な実施形態を示す。操作フィンガー14は、前面と背面とを有し、背面はセンサ1を制御する機能を有する回路基板15を担持する。センサ装置1は、操作フィンガー14の(見えない)前面上に配置されている。操作フィンガー14の前面は、操作手段のグリップ面を形成してセンサ装置1を担持する。操作フィンガー14は、62mm×62mmの平らなグリップ面を有することが好ましい。動作状態においてセンサ装置1は操作部材14上に配置されている。この場合、センサは、保護層9が検出すべき対象物に対向するセンサ表面6を形成するように位置合わせされる。センサ装置1に対する対象物の接近は、非接触で静電容量センサ4によって検出される。操作部材14によって対象物を扱う場合、圧電センサ5は対象物とセンサ装置6の表面との接触が確立された後に操作部材14と対象物との間に生じる力を決定する。柔軟性を有するセンサスタックフィルムとして各センサを設計することにより力が静電容量センサ4から圧電センサ5に対して機械的に伝達されてこの圧電センサによって測定される。
【0046】
図6は、センサ装置1が出力する信号または出力信号を異なる信号成分に分解する様子を概略的に示す。センサ装置1を形成する層のスタック2は、2つの信号成分を含む信号を生成する。静電容量センサ4は、第1の信号成分16を生成し、この第1の信号成分が接近検知装置17によって接近信号として解釈されて出力される。接近検知装置17は、電気的接続によってセンサスタック2と接続されている。圧電センサ5は、第2の信号成分18を生成し、この第2の信号成分は接触検出装置19によって接触信号として解釈される。接触検出装置19は、電気的接続によってセンサスタック2と接続されている。ここで近接信号は、周囲の空間の三次元再構成(x、y、z)であり得る。しかしながら接近信号は断面画像、すなわち周囲の空間の二次元再構成(x、yまたはy、z)としても解釈され得る。純然たる距離情報(z)を出力することも可能である。この場合、距離の限界値を定義することが可能である。限界値以下になると検出信号を出力する、あるいは距離の限界値を下回った場合に接近信号の出力を制限することが可能である。これにより不要な検出を減らすことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1: センサ装置
2: 層のスタック
3: 第1の基板
4: 静電容量センサ
4a: 電極層
4b: 下部電極
4c: 第1の誘電絶縁層
5: 圧電センサ
5a: 圧電センサの第1の層(下部電極層)
5b: 圧電センサの第2の層(強誘電体層)
5c: 圧電センサの第3の層(上部電極層)
6 センサ装置の表面
7: シールド
8: 第2の誘電絶縁層
9: 保護層
10: 第2の基板
11: ラミネート層
12: 第1の幾何学模様
13: 第2の幾何学模様
14: 操作フィンガー
15: 回路基板
16: 第1の信号成分(接近信号)
17: 接近検知装置
18: 第2の信号成分(接触信号)
19: 接触検出装置
【国際調査報告】