(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】流体から水を除去する装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20220204BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20220204BHJP
B01D 1/14 20060101ALI20220204BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D53/26 220
B01D1/14 A
F24F3/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531097
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 AU2019051088
(87)【国際公開番号】W WO2020113257
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517141524
【氏名又は名称】インテックス ホールディングス ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロジャー
【テーマコード(参考)】
3L053
4D052
4D076
【Fターム(参考)】
3L053BC10
4D052AA08
4D052CB00
4D052DA01
4D052HA12
4D052HB01
4D076AA16
4D076BA30
4D076CA19
4D076CD04
4D076EA18X
4D076EA20X
4D076FA15
4D076HA20
4D076JA04
(57)【要約】
複数の回転する薄い円板を備え、槽から水を蒸発させる装置であって、円板の一部は、槽内に延長し、この槽は、水を含み、水を円板に付着させる。空気を、円板に貫流させ、円板に付着した水を蒸発させ、円板が回転して槽に戻ると、水を冷やす。空気を吸湿剤溶液上の円板に貫流させると、吸湿剤溶液に含まれた水が蒸発し、溶液の水含有量が減少するため、本装置は、吸湿剤溶液から水を除去することもできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転する薄い円板を備え、槽から水を蒸発させる装置であって、
該円板の一部は、前記槽内に延長し、
前記槽は、水を含み、該水を前記円板に付着させ、これにより、空気は、前記円板に貫流して、前記円板に付着した前記水を蒸発させ、前記円板が回転して前記槽に戻ると、前記水を冷やす、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
複数の回転する薄い円板を備え、吸湿剤溶液から水を除去する装置であって、
該円板の一部は、槽内に延長し、
前記槽は、前記吸湿剤溶液を含み、前記吸湿剤溶液を前記円板に付着させ、これにより、空気は、この溶液上の前記円板に貫流して、前記吸湿剤溶液に含まれた水を蒸発させ、溶液の水含有量を減少させる、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
前記円板は、気流の方向に回転する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記円板は、10rpm~100rpmの回転数で回転する、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を吸収した、液体状の吸湿剤溶液から水分を除去する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿材料を利用して、空気の一次流から水分を除去する除湿システムが知られている。吸湿材料は、周囲温度で、あるいはそれ以上の温度で、水を吸収する。続いて、吸収材料を加熱することで、吸収した水を除去し、再度、空気流からの水分除去に利用できるようになる。
【0003】
種々の金属塩の既知の特性として、吸湿性がある。これにより、塩が完全に溶けて、水と塩からなる水溶液になるまで、空気中の水蒸気を塩が吸収する。そのような塩として、塩化カルシウムが挙げられる。吸湿材料として塩化カルシウムを使用することは、既に知られており、潜在的用途として、空気清浄システム、特に、吸着式空気調和器内の吸湿剤として使用される。
【0004】
従来技術において、空気から水を除去する特性を有する機器で、固形または粒状の塩化カルシウムを使用することが記載されている。
【0005】
塩化カルシウムの難点として、固形または粒状の塩が吸着した水に溶けるまで、吸着処理が継続し、得られた水溶液を包みの中に収容しなければならないという点が挙げられる。該包みは、水蒸気を通しつつ、水溶液を通さないもので、無水塩化カルシウムと湿潤空気とを接触させる。
【0006】
従来技術は一般的に、吸着チラーでの使用や、直接または間接接触型気化冷却の効率を改善する手段に関する。物質移動装置により、吸湿剤が空気流から水分を吸収する。その後、吸湿材料は、直射日光により加熱され、吸収した水分が除去されることで、再利用可能となる。
【0007】
本発明では、塩化カルシウムを液体の状態で使用し、周囲温度、あるいはそれに近い温度で、空気から水蒸気を吸収する。これにより、空気流から水蒸気をある程度除去するため、12℃未満まで空気を冷やさなければならないという要件を回避できる。塩化カルシウム溶液は、ある程度希釈されていても、一般的な室温および湿度において、それ自体の二倍の重さの水を吸収することができる程度の吸湿性を発揮する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、塩化カルシウム等の吸湿材料を気流に当て、水を除去する装置を提供することにある。熱交換器により、吸湿剤溶液を、確実に、この処理に適した温度にする。
【0009】
本発明の別の目的は、吸湿剤溶液を利用して、水を気流に吸収させる装置を提供することにある。吸湿剤溶液は、その後、溶液から抽出して、再利用できる。
【0010】
本発明のさらなる別の目的は、水を槽から引き上げた円板を回転させて、水を蒸発させることで、槽内の水を冷やすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態において、槽から水を蒸発させる装置が提案されている。本装置は、複数の回転する薄い円板を備え、円板の一部は、槽内に延長し、槽は、水を含み、水を円板に付着させ、これにより、空気は、円板に貫流して、円板に付着した水を蒸発させ、円板が回転して槽に戻ると、水を冷やす。
【0012】
本発明の別の形態において、吸湿剤溶液から水を除去する装置が提案されている。本装置は、複数の回転する薄い円板を備え、円板の一部は、槽内に延長し、槽は、吸湿剤溶液を含み、吸湿剤溶液を円板に付着させる。これにより、空気は、この溶液上の円板に貫流して、吸湿剤溶液に含まれた水を蒸発させ、溶液の水含有量を減少させる。
【0013】
円板は、気流の方向に回転することが好ましい。
【0014】
円板は、10rpm~100rpmの回転数で回転することが好ましい。
【0015】
なお、上述したいずれの形態も、上述した他の形態が有する特徴のいずれかを含んでいてもよく、また、以下に説明する実施形態が有する特徴のいずれかを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
当業者が本発明を実施するに足る情報が記載された、以下の「発明を実施するための形態」に基づいて、本発明の好ましい特徴、実施形態、変形例を明らかにする。「発明を実施するための形態」は、前述した本発明の「発明の概要」の範囲を、なんら限定するものではないと理解されたい。「発明を実施するための形態」は、以下の図面を参照する。
【
図1】
図1は、本発明に係る装置の模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に示す本発明の詳細な説明は、添付の図面を参照する。図面および以下の説明を通して、同一の構成要素を参照する際は、可能な箇所については、同一の参照符号を付す。図面に示す特定の構成要素の寸法は、理解のしやすさや図解の目的において、修正および/または誇張され得る。
【0018】
図面は、本発明に係る装置を概念的に示しており、塩化カルシウムから水を除去することを目的としているが、他の塩で水を吸収してもよい。装置10は、複数の薄い円板14が取り付けられるシャフトを備える。円板の厚さは、一般的には、1mm未満であり、金属材料からなることが多い。円板同士は、数ミリメートル離れており、スペーサ(不図示)を使用して、位置固定されていてもよい。円板の一部は、塩化カルシウム溶液18の入った槽16内に位置している。空気20は、流入口22を通って、槽内に流れ込み、円板14間を通過した後、流出口24から流れ出る。円板は、気流の方向26に回転する。回転速度は、多くの場合、10rpm~100rpmで有り得るが、1rpm~200rpmで変化してもよく、水損率によって、一定ではなく、可変であってもよい。言うまでもなく、モーターやその他手段(不図示)によって回転が生じる。円板の枚数は、槽の大きさや、塩化カルシウムを利用して空気中の水分を除去するシステム全体の大きさによって変更してもよい。
【0019】
もちろん、円板は、金属材料からなる必要はなく、機械的な安定が保たれるのであれば、実際、プラスチック等のその他適する材質から形成されてもよい。
【0020】
円板が溶液中で回転すると、表面張力により、塩化カルシウムの一部が、非常に薄いコーティングとなって、円板に付着する。円板を貫流した空気は、続いて、溶液中の水の一部を蒸発させるよう動作する。塩化カルシウムは、槽に戻され、所望の量の水が溶液から蒸発するまで、処理を繰り返す。
【0021】
塩化カルシウム溶液が、気流から水を確実に吸収する温度になるよう、熱交換器(不図示)を設けることができる。
【0022】
どれくらいの量の水が蒸発したかを試験する方法は、多く存在する。一部を挙げるならば、槽の水位を測定する方法、槽を出入りする空気の湿度を測定する方法、溶液のpH濃度を測定する方法などが含まれる。
【0023】
溶液から水が充分除去されたことが確認できた際、溶液をシステムに汲み上げて戻してもよく、これにより、水は、空気から除去される(不図示)。
【0024】
円板は、空気に密に触れる溶液の表面積を増加させる役割を担う。したがって、従来技術のように、溶液を湿潤膜や液滴を水塔に汲み上げる必要はない。円板は、表面張力を利用し、液体本体から水を持ち上げる。表面張力とは、一般的に、例えば、水を水滴状に分離させる際の物理量である。
【0025】
溶液本体と接触することで、円板は加熱され、空気に触れている間は一貫して、ある程度の熱エネルギーを、円板表面に付着した溶液の薄膜に伝える。これにより、溶液が周囲温度まで素早く冷却されること(溶液からの水の蒸発を止めてしまう原因となる)を防ぎ、空気流が各円板を貫流する間、溶液を最大限乾燥させることができる。蒸発しなかった液体は、溶液に戻され、下降する円板上で、わずかに濃縮された溶液となる。
【0026】
しかしながら、円板温度は、システム機能において、合理的な動作条件範囲に対し、大きな意味を持つほどのインパクトはなく、本質的特徴ではない。
【0027】
水から液体膜を持ち上げる際にかかる物理量のほとんどは、下降時に戻るため、汲み上げコストにおいて、省エネが実現される。
【0028】
回転円板が弱粘性の汲み上げ動作を行うことにより、溶液がゆっくりと槽内を移動し、蒸発(再生)段階において、溶液が確実に均一に混合される。また、汲み上げ動作により、空気を確実にかき混ぜ、溶液内へ、あるいは溶液外への水粒子の交換が最適化される。つまり、従来の蒸発器の動作時では、水を空気中に移動させるように、空気を湿潤パッドまで行きわたらせる際、汲み上げ損失が増加してしまうところ、それを最小化できる。同様に、吸湿(乾燥)サイクルにおいて、空気から水蒸気を抽出する際、最小限の汲み上げエネルギーコストで、大量の空気を円滑に作用させることができる。
【0029】
以上により、本発明が、元来、空気を乾燥させるために使用されていた塩化カルシウム溶液から、水を除去する他の方法を提供していることは、誰もが認めるところであろう。
【符号の説明】
【0030】
図面は、以下の符号を含む。
10 装置
12 シャフト
14 円板
16 槽
18 塩化カルシウム溶液
20 気流
22 流入口
24 流出口
26 方向
28 コーティング
【0031】
特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、本発明には、さらなる利点および改善点が加えられ得る。最も実用的かつ好ましいと考えられる実施形態において本発明を示し、説明したが、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、そうした実施形態からの派生は認められ得る。本発明は、ここに開示した詳細に限定されるものではなく、いかなる、そして全ての、相当する機器および装置を包含する、特許請求の最大限の範囲が付与されるものである。本明細書中の従来技術に関するいかなる記載も、当分野において、従来技術が広く知られている、あるいは、技術常識の一部分を形成するものだと認めるものでは、決してない。
【0032】
例えば、上述の装置は、水を冷やすのに利用してもよい。円板から水を蒸発させ、円板を冷やし、そして、円板が回転して槽内に戻った際、水を冷やし、そして、冷えた水を吸い上げることで、他の箇所での冷却に使用できる。
【0033】
本明細書および請求項において、「含む」という表現や、その派生形である「含み」、「含んで」といった表現が使用されている場合、上述した各符号が含まれるが、一つ以上の符号をさらに含む場合を除外する意図はない。
【国際調査報告】