(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】がん処置
(51)【国際特許分類】
C12N 9/24 20060101AFI20220204BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220204BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20220204BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20220204BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220204BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220204BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20220204BHJP
A61K 35/74 20150101ALN20220204BHJP
【FI】
C12N9/24 ZNA
C07K19/00
A61P35/00
A61K38/47
A61K47/62
A61K47/55
A61K47/65
C12N15/31
C12N15/56
A61K35/74 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532429
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 GB2019053448
(87)【国際公開番号】W WO2020115495
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521038094
【氏名又は名称】オミデオン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン コナリス
(72)【発明者】
【氏名】グレアム ロジャーズ
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC05
4B050DD02
4B050LL01
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA04
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZB261
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC43
4C087BC61
4C087CA16
4C087CA44
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、細胞増殖を調節し、特定のがんの処置に有用である、分子を、異種分子のためのデリバリーシステムとして提供する。開示された分子は、特定のクラスの遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) グリオーマ、
(b) 肺がん、
(c) 乳がん、
(d) 膵臓がん及び
(e) 卵巣がん
からなる群より選択されるがんの処置又は予防における使用のためのシアル酸結合分子。
【請求項2】
シアル酸結合分子のシアル酸結合部分が、
(i) CBM及び/又は
(ii) CBM40及び/又は
(iii) 2個、3個又は4個以上のCBM及び/又は
(iv) 2個、3個又は4個以上のCBM40
を含む、から本質的になる、又はからなる、請求項1に記載の使用のための請求項1に記載のシアル酸結合分子。
【請求項3】
シアル酸結合分子が、ビブリオ・コレレNanHシアリダーゼのシアル酸結合ドメイン及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼのシアル酸結合ドメインを含む、請求項1又は2に記載の使用のための請求項1又は2に記載のシアル酸結合分子。
【請求項4】
ビブリオ・コレレNanHシアリダーゼが、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の使用のための請求項3に記載のシアル酸結合分子。
【請求項5】
ストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼが、配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の使用のための請求項3に記載のシアル酸結合分子。
【請求項6】
シアル酸結合分子が、2個以上のビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ及び/又は2個以上のストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の使用のための請求項3から5のいずれか一項に記載のシアル酸結合分子。
【請求項7】
シアル酸結合分子が、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の使用のための請求項3から6のいずれか一項に記載のシアル酸結合分子。
【請求項8】
シアル酸結合タンパク質又はシアル酸結合タンパク質のシアル酸結合部分が、Vc2CBM又はVc4CBM又はSp2CBM又はVc2CBMTD又はVc4CBM又はSp2CBMTDを含む、から本質的になる、又はからなる、請求項1から7のいずれかに記載の使用のための請求項1から7のいずれかに記載のシアル酸結合分子。
【請求項9】
1個又は複数の細胞をシアル酸結合分子と接触させることを含む、種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するインビトロ式の方法。
【請求項10】
1種以上の遺伝子が、
(a) DNA損傷修復に関連付けられた又は関係付けられた遺伝子、
(b) 細胞代謝に関連付けられた遺伝子、
(c) 細胞周期に関連付けられた又は関係付けられた遺伝子、
(d) 転写リプレッサーに関連付けられた、関係付けられた又はコードする遺伝子、
(e) アポトーシスに関連付けられた又は関係付けられた遺伝子、
(f) 細胞接着に関連付けられた又は関係付けられた遺伝子、
(g) 細胞の運動性に関連付けられた又は関係付けられた遺伝子、
(h) 微小管制御に関連付けられた又は関係付けられた遺伝子及び
(i) 細胞増殖因子に関連付けられた、関係付けられた又はコードする遺伝子
からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
遺伝子が、
(a) ERCC5
(b) DDB2
(c) DKC1
(d) ERCC3及び/又は
(e) POLB
からなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法
【請求項12】
遺伝子が、
(a) SLC2A1、
(b) ARNT、
(c) ATP5A1、
(d) COX5A、
(e) G6PD、
(f) LDHA、
(g) UQCRFS1、
(h) GAPDH及び/又は
(i) HPRT1
からなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
遺伝子が、
(a) AURKA、
(b) BMP1、
(c) CCND3、
(d) CDC20、
(e) E2F4、
(f) MCM2、
(g) MK167、
(h) PINX1、
(i) SKP2及び/又は
(j) WEE1
からなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子が、SNAI3である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子が、
(a) ANOL3、
(b) CASP2及び/又は
(c) CASP7
からなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項16】
遺伝子が、CDH2である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子が、TEP1である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子が、ACTBである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子が、VEGFCである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項20】
(a) 膵臓がん及び
(b) 乳がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのVc2CBM。
【請求項21】
(a) 乳がん及び
(b) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのVc4CBM。
【請求項22】
(a) グリオーマ
(b) 乳がん及び
(c) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置又は予防における使用のためのSp2CBM。
【請求項23】
卵巣がんの処置における使用のためのSp2CBMTD及び/又はVc2CBMTD。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばグリオーマがん、肺がん、膵臓がん及び乳がんを含むがん等の細胞増殖障害の処置における使用のための分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫に由来しない糖タンパク質である一部のレクチンは、悪性細胞においてアポトーシスを誘導する能力を示し、したがって、抗がん特性を実証している。この現象は、部分的には、免疫細胞を対象とするこれらのレクチンと特定のグリカン受容体との相互作用によって起きる(Yauら、2015)。
【0003】
このようなレクチンの一つは、α2,6シアリルラクトースによってグリコシル化された細胞受容体に結合する毒素である、ヤドリギのビスカミン(Viscumin)である(Muthingら、2002)。ビスカミンは、2種のサブユニットA及びBからなる、57kDaのヘテロダイマーである。Aサブユニットは、リボソームを無効化することにより、タンパク生成を妨害することによって、毒性効果をもたらすが、Bサブユニットは、グリカン結合機能を示す。レクチンは、インビトロ及びインビボにおいてピコモル細胞毒性を実証しており、臨床試験の被検体では、推奨用量の上限が6μg/kgである(13分の半減期)(Zwierzinaら、2011)。
【0004】
細胞の遊走及び増殖を防止する能力(及びこの結果としての抗がん特性)を実証した別の植物レクチンは、マキア・アムレンシス種子レクチン又はMASL(Maackia amurensis seed lectin)である(Ochoa-Alvarezら、2012;Astaritaら、2012)。このレクチンは、ナノモル効力(約300nM)を示す細胞傷害性のものでもあり、種々のヒトがんにおいて過剰発現するα2,3シアリル化ムチン型膜貫通糖タンパク質であるポドプラニンの結合(Katoら、2005;Schachtら、2005;Shibaharaら、2006)によって、効果をもたらす。
【0005】
WO2018/055373では、細胞増殖を調節する方法並びに細胞増殖障害及び/又は分化障害の処置及び/又は予防における、炭水化物結合モジュールを含むシアル酸結合分子の使用を記述している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の治療上の選択肢には抵抗があり、比較的不足してもいるため、特定のがんの処置は、宿主において良好な忍容性が示されており、治療可能性を有する、さらなる分子の提供を要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yauら、2015
【非特許文献2】Muthingら、2002
【非特許文献3】Zwierzinaら、2011
【非特許文献4】Ochoa-Alvarezら、2012
【非特許文献5】Astaritaら、2012
【非特許文献6】Katoら、2005
【非特許文献7】Schachtら、2005
【非特許文献8】Shibaharaら、2006
【0009】
課題を解決するための手段
例として、ファミリー40 CBM(CBM40)に属するものを含めてひとまとめにして炭水化物結合モジュール(CBM)として知られているグループに属する部分を含む分子が挙げられる、シアル酸を結合させる分子は、細胞増殖及び/又は成長を調節するために使用することが可能であり、がん等の細胞増殖障害の処置及び/又は予防において使用され得る。特に、開示されたシアル酸結合分子(炭水化物結合モジュールCBM、特にファミリー40 CBM(CBM40に属するものを含む)は、グリオーマ、乳がん、肺がん、膵臓がん、メラノーマ(A2058)及び卵巣がんの処置及び/又は予防において使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、上記分子、特に、特定のファミリー40 CBMを含む、から本質的になる、又はからなる上記分子をいくつかの特定のがんの処置に使用することができるという発見に基づいている。実際、本明細書において提供されているデータにより、CBMを含む分子はがんの処理に概ね有用であり得るが、特定の分子は、特定のがんの処置及び/又は予防に適用されたときに予期せぬ有効性(又は効力)を示すことが示されている。したがって、シアル酸結合分子(CBMを含むシアル酸結合分を含む)は、1種以上のがん型、特に、
(i) グリオーマ、
(ii) 乳がん、
(iii) 肺がん、
(iv) 膵臓がん、
(v) メラノーマ及び
(vi) 卵巣がん
からなる群より選択されるがん型の処置及び/又は予防に特に有用である。
【0011】
上記を鑑みて、本開示は、
(i) グリオーマ、
(ii) 乳がん、
(iii) 肺がん、
(iv) 膵臓がん、
(v) メラノーマ及び
(vi) 卵巣がん
からなる群より選択される1種以上のがんの処置における使用のためのシアル酸結合分子を提供する。
【0012】
さらに、本開示は、
(i) グリオーマ、
(ii) 乳がん、
(iii) 肺がん、
(iv) 膵臓がん、
(v) メラノーマ及び
(vi) 卵巣がん
からなる群より選択される1種以上のがんの処置のための医薬の製造のためのシアル酸結合分子の使用を提供する。
【0013】
本開示は、
(i) グリオーマ、
(ii) 乳がん、
(iii) 肺がん、
(iv) 膵臓がん、
(v) メラノーマ及び
(vi) 卵巣がん
からなる群より選択されるがんを処置する方法であって、
治療有効量のシアル酸結合分子を、それを必要としている被検体に投与することを含む、方法も提供する。
【0014】
上記使用のためのシアル酸結合分子、上記使用、上記医薬及び/又は上記方法は、グリオーマ又は乳がん又は肺がん又は膵臓がん又はメラノーマ又は卵巣がんの処置及び/又は予防に応用され得る。本明細書を通して疑義をなくすために、開示されたシアル酸結合分子は、CBM40及び/又はVcCBM若しくはSpCBMを含む、又はからなる、又はから本質的になるシアル酸結合分子を含む、シアル酸結合分子を含むが、必ずしもこのようなシアル酸結合分子に限定されるとは限らない。
【0015】
上記個別のがんのそれぞれの処置及び/又は予防において有用であることに加えて、開示されたシアル酸結合分子のそれぞれは、これらのがんのうちの2種、3種、4種又は6種すべての処置及び/又は予防において有用であり得る。例えば、開示されたシアル酸結合分子は、グリオーマ、乳がん、肺がん、及び膵臓がんからなる群より選択される1種以上のがんの処置及び/又は予防において使用することができる。
【0016】
本明細書を通して、「含む」、「備える」及び/又は「具備する」という用語は、本発明の態様及び実施形態が特定の1つ又は複数の特徴を「備える」ことを表すのに使用されている。これらの用語は、関連する1つ又は複数の特徴「から本質的になる」又は「からなる」態様及び/又は実施形態も包含することができることを理解されたい。
【0017】
本明細書において使用されているとき、「シアル酸結合分子」という用語は、シアル酸に結合する能力を示す分子及び化合物を包含することに留意されたい。これらの分子は、任意の形態をとることができ、及び/又は、任意のクラスの分子又は化合物に属することができる(例えば、これらの分子は、タンパク質、ペプチド、炭水化物及び抗体であってよい。)。さらに、「シアル酸」という用語は、N置換又はO置換ノイラミン酸のすべての形態を包含し、これらのノイラミン酸のすべての合成の形態、天然の形態及び/又は変更された形態を含む。シアル酸は、細胞表面分子、糖タンパク質及び糖脂質の成分として見受けられることがある。ほとんどの場合、シアル酸は、細胞膜及び/又はタンパク質に接続された糖鎖の端部(末端領域)に存在する。例えば、ヒトの上気道の細胞の中には、α-2,6連結したシアル酸受容体を含むものもあるし、α-2,3連結したシアル酸受容体を含むものもある。シアル酸ファミリーは、C4位、C5位、C7位、C8位及びC9位のアセチル化、グリコシル化、ラクトン化及びメチル化から生じ得る複数(およそ50種)の誘導体を包含する。すべてのこのような誘導体は、「シアル酸」という用語に包含されるものとする。さらに、シアル酸は、Gal及びGalNAcにα(2,3)若しくはα(2,6)連結していることが見受けられ、又は、別のシアル酸にα(2,8)若しくはα(2,9)連結していることが見受けられる。したがって、「シアル酸」という用語が本明細書を通して使用されているが、この「シアル酸」という用語は、シアル酸のすべての誘導体、アナログ又はバリアント(天然のもの又は合成により作製さたもの)、並びに、シアル酸を含むモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー又はコンカテマーを含むと理解することが重要である。
【0018】
したがって、本開示の(上記及び本明細書の他の場所に記載の使用のための)シアル酸結合分子は、上記シアル酸のすべての形態、及び、細胞、例えばほ乳類細胞の表面上に存在するシアル酸のあらゆる形態を含む、シアル酸に対するアフィニティを示す部分を含む。これらの様々なシアル酸の形態は、ひとまとめにして「シアル酸部分」と呼ばれることもある。本開示のシアル酸結合分子は、シアル酸に対するアフィニティを示し、したがって、1個以上のシアル酸部分に結合/連接し、及び/又は会合することができる。したがって、「シアル酸結合分子」という用語は、シアル酸部分に結合し、又は結合しない場合は連接若しくは会合する能力を保持している、シアル酸結合分子全体の任意のフラグメントをさらに包含し得る。
【0019】
使用のためのシアル酸結合分子は、単一のシアル酸結合分子(例えば、モノマー分子又は一価分子)、又は代替的には、2個以上のシアル酸結合分子(2個以上の分子は、同じであっても異なっていてもよい。)、例えば、ポリマー分子又は多価分子を含む、からなる、又はから本質的になることができる。
【0020】
使用のためのシアル酸結合分子は、「炭水化物結合モジュール」(CBM)として知られるシアル酸結合分子のうちの1種以上を含む、から本質的になる、又はからなることができる。使用に適したCBMは、シアル酸に対するアフィニティを示す。炭水化物結合モジュールは、複数のファミリーに分類され、ファミリー40 CBM(CBM40)のメンバーとして分類されたCBMは、有用であり得る。ファミリー40 CBMは、およそ200個の残基からなる分子を包含し、大抵の場合、GH33シアリダーゼのN末端に見受けられる。ファミリー40 CBMは、GH33シアリダーゼのβプロペラに挿入された状態で見受けられることもある。
【0021】
使用のための例示的な炭水化物結合モジュールは、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)NanHシアリダーゼ(VcCBM:CBM40)のシアル酸結合ドメイン、及び/又は、等価な(若しくは相同な)ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)NanAシアリダーゼ(SpCBM:やはり、CBM40)のドメインを含むことができる。当然ながら、他の有機体中に存在する類似する又は相同なシアル酸結合モジュールは、「CBM」及び「CBM40」という用語の範囲に包含されるべきである。
【0022】
例示的なビブリオ・コレレNanHシアリダーゼアミノ酸配列は、アクセッション番号A5F7A4として寄託されており、配列番号1(781個のアミノ酸)として以下に再現されている。
MRFKNVKKTA LMLAMFGMAT SSNAALFDYN ATGDTEFDSP AKQGWMQDNT NNGSGVLTNA
DGMPAWLVQG IGGRAQWTYS LSTNQHAQAS SFGWRMTTEM KVLSGGMITN YYANGTQRVL
PIISLDSSGN LVVEFEGQTG RTVLATGTAA TEYHKFELVF LPGSNPSASF YFDGKLIRDN
IQPTASKQNM IVWGNGSSNT DGVAAYRDIK FEIQGDVIFR GPDRIPSIVA SSVTPGVVTA
FAEKRVGGGD PGALSNTNDI ITRTSRDGGI TWDTELNLTE QINVSDEFDF SDPRPIYDPS
SNTVLVSYAR WPTDAAQNGD RIKPWMPNGI FYSVYDVASG NWQAPIDVTD QVKERSFQIA
GWGGSELYRR NTSLNSQQDW QSNAKIRIVD GAANQIQVAD GSRKYVVTLS IDESGGLVAN
LNGVSAPIIL QSEHAKVHSF HDYELQYSAL NHTTTLFVDG QQITTWAGEV SQENNIQFGN
ADAQIDGRLH VQKIVLTQQG HNLVEFDAFY LAQQTPEVEK DLEKLGWTKI KTGNTMSLYG
NASVNPGPGH GITLTRQQNI SGSQNGRLIY PAIVLDRFFL NVMSIYSDDG GSNWQTGSTL
PIPFRWKSSS ILETLEPSEA DMVELQNGDL LLTARLDFNQ IVNGVNYSPR QQFLSKDGGI
TWSLLEANNA NVFSNISTGT VDASITRFEQ SDGSHFLLFT NPQGNPAGTN GRQNLGLWFS
FDEGVTWKGP IQLVNGASAY SDIYQLDSEN AIVIVETDNS NMRILRMPIT LLKQKLTLSQ
N
配列番号1のCBM領域は、アミノ酸残基25~216であるが、この配列は、配列番号2であってもよい。
【0023】
例示的なストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼアミノ酸配列は、アクセッション番号P62575として寄託されており、配列番号3(1035個のアミノ酸)として以下に再現されている。
MSYFRNRDID IERNSMNRSV QERKCRYSIR KLSVGAVSMI VGAVVFGTSP VLAQEGASEQ
PLANETQLSG ESSTLTDTEK SQPSSETELS GNKQEQERKD KQEEKIPRDY YARDLENVET
VIEKEDVETN ASNGQRVDLS SELDKLKKLE NATVHMEFKP DAKAPAFYNL FSVSSATKKD
EYFTMAVYNN TATLEGRGSD GKQFYNNYND APLKVKPGQW NSVTFTVEKP TAELPKGRVR
LYVNGVLSRT SLRSGNFIKD MPDVTHVQIG ATKRANNTVW GSNLQIRNLT VYNRALTPEE
VQKRSQLFKR SDLEKKLPEG AALTEKTDIF ESGRNGKPNK DGIKSYRIPA LLKTDKGTLI
AGADERRLHS SDWGDIGMVI RRSEDNGKTW GDRVTITNLR DNPKASDPSI GSPVNIDMVL
VQDPETKRIF SIYDMFPEGK GIFGMSSQKE EAYKKIDGKT YQILYREGEK GAYTIRENGT
VYTPDGKATD YRVVVDPVKP AYSDKGDLYK GNQLLGNIYF TTNKTSPFRI AKDSYLWMSY
SDDDGKTWSA PQDITPMVKA DWMKFLGVGP GTGIVLRNGP HKGRILIPVY TTNNVSHLNG
SQSSRIIYSD DHGKTWHAGE AVNDNRQVDG QKIHSSTMNN RRAQNTESTV VQLNNGDVKL
FMRGLTGDLQ VATSKDGGVT WEKDIKRYPQ VKDVYVQMSA IHTMHEGKEY IILSNAGGPK
RENGMVHLAR VEENGELTWL KHNPIQKGEF AYNSLQELGN GEYGILYEHT EKGQNAYTLS
FRKFNWDFLS KDLISPTEAK VKRTREMGKG VIGLEFDSEV LVNKAPTLQL ANGKTARFMT
QYDTKTLLFT VDSEDMGQKV TGLAEGAIES MHNLPVSVAG TKLSNGMNGS EAAVHEVPEY
TGPLGTSGEE PAPTVEKPEY TGPLGTSGEE PAPTVEKPEY TGPLGTAGEE AAPTVEKPEF
TGGVNGTEPA VHEIAEYKGS DSLVTLTTKE DYTYKAPLAQ QALPETGNKE SDLLASLGLT
AFFLGLFTLG KKREQ
配列番号3のCBM領域は、アミノ酸残基121~305であるが、この配列は、配列番号4であってもよい。
【0024】
したがって、本開示の様々な態様及び実施形態におけるシアル酸結合分子としての使用のためのCBMは、配列番号1若しくは2の配列又はこの配列のシアル酸結合フラグメントを有するタンパク質又はペプチド含むことができる。
【0025】
有用なシアル酸結合分子は、V.コレレのnanH遺伝子(シアリダーゼをコードする)のシアル酸結合ドメイン(配列番号1によって規定されている)、又は、別の有機体中に存在する等価な若しくは相同な遺伝子(例えば、S.ニューモニエの等価な/相同なnanAシアリダーゼ遺伝子。配列番号3を参照されたい。)によってコードされるタンパク質性部分を含んでもよい。
【0026】
使用のためのシアル酸結合分子は、配列番号1及び2のV.コレレシアリダーゼ分子の概ね残基1、5、10、15、25又は30(すなわち、1~30又はその間にある任意のアミノ酸残基)から、概ね残基150、175、200、210、216、220~781(その間にあるあらゆる残基を含む、150~781までの任意の残基)までを含むことができる。例えば、使用のためのシアル酸結合分子は、上記配列番号1の残基25から概ね残基216までに対応する配列を有するペプチドを含むことができる。
【0027】
さらなる適切なシアル酸結合分子は、配列番号3若しくは4の配列又はこの配列のシアル酸結合フラグメントを有するタンパク質又はペプチドを含んでもよい。例えば、有用なシアル酸結合分子は、ストレプトコッカス・ニューモニエnanA遺伝子(シアリダーゼをコードする)のシアル酸結合ドメインによってコードされるタンパク質性部分を含んでもよい。例えば、使用のためのシアル酸結合分子は、配列番号3及び4のS.ニューモニエシアリダーゼ分子の概ね残基80、90、100、110、120、121~130(すなわち、その間にあるあらゆる残基を含む、概ね残基80~130のいずれか)から、概ね残基250、275、300、305、310、320~1035(すなわち、概ねその間にあるあらゆる残基を含む、概ね250~1035までの任意の残基)までを含むことができる。例えば、使用のためのシアル酸結合分子は、上記配列番号3の残基121から概ね残基305までに対応する配列を有するペプチドを含むことができる。
【0028】
使用のためのシアル酸結合分子は、1個以上のCBMを含むことができる。適切なシアル酸結合分子は、単一の又は単独のCBM、例えば、単一のVcCBM又は単一のSpCBMを含むことができる。
【0029】
使用のためのシアル酸結合分子は、複数の又はいくつかの(すなわち、2個以上の)CBMを含むことができる。複数のCBMを含むシアル酸結合分子は、「多価シアル酸結合分子」又は「多価CBM」と呼ばれることがある。多価CBMは、例えば、2個以上のVcCBM又は2個以上のSpCBMを含むことができる。多価CBMは、異なるCBMの混合物、例えば1個以上のVcCBMと1個以上のSpCBMとの混合物を含むことができる。
【0030】
例えば、多価CBM分子、(例えば、Vc2CBM及び/又はVc4CBM分子)は、アミノ酸/ペプチドリンカーによって連結された複数の(同一の又は異なる)CBMを含むコンストラクトとして調製されてもよい。各CBM(例えば、VcCBM及び/又はSpCBM)は、例えば5個、10個又は15個のアミノ酸を含むペプチドによって、別のCBM(例えば、VcCBM及び/又はSpCBM)に結合することができる。例として、次のペプチドのうちの任意の1個以上は、2個以上のCBMを連結して、多価CBMを生成するために使用することができる:
(i) 5個のアミノ酸リンカー: ALNGS
LQALG
GGNSG
(ii) 10個のアミノ酸リンカー: ALNGSGGGSG
LQALGGGGSL
(iii) 15個のアミノ酸リンカー: ALNGSGGGSGGGGSG
【0031】
例示的なVc/Sp1、2、3又は4CBMは、次の形態をとることができる。
【化1】
以下、上記図式を式1と呼ぶものとする。
【0032】
したがって、Vc/Sp1、2、3、4CBM分子は、上記式1に従うことができ、式中、ペプチドリンカーA、B及び/又はCは、(i)、(ii)及び/又は(iii)として上記に提示のリンカーの選択肢から選択される。例えば、VcCBM又はSpCBMは、式1に提示のVc/SpCBM1として示されたCBMモジュールのみを含んでもよい。Vc2CBM又はSp2CBMは、任意選択によりペプチドリンカーAによって隔てられていてもよい、式1に提示のVc/SpCBM1及びVc/SpCBM1として示されたCBMモジュールを含んでもよい。Vc3CBM又はSp3CBMは、任意選択によりペプチドリンカーA及びBによって隔てられていてもよい、式1に提示のVc/SpCBM1、Vc/SpCBM2及びVc/SpCBM3として示されたCBMモジュールを含んでもよい。Vc4CBM又はSp4CBMは、任意選択によりペプチドリンカーA、B及びCによって隔てられていてもよい、式1に提示のVc/SpCBM1、Vc/SpCBM2、Vc/SpCBM3及びVc/SpCBM4として示されたCBMモジュールを含んでもよい。
【0033】
「VcCBM40」又は「SpCBM40」という用語は、ビブリオ・コレレ(NanHシアリダーゼ)又はストレプトコッカス・ニューモニエnanAに由来するすべてのファミリー40 CBMだけでなく、これらに由来するシアル酸結合フラグメントも包含することに留意されたい。実際、式1に示されたVcCBM単位又はSpCBM単位のそれぞれは、
(i) ビブリオ・コレレNanHシアリダーゼCBM、
(ii) ビブリオ・コレレNanHシアリダーゼCBMのビブリオ・コレレNanHシアリダーゼCBMシアル酸結合フラグメント、
(iii) ストレプトコッカス・ニューモニエnanAシアリダーゼCBM及び
(iv) ストレプトコッカス・ニューモニエnanAシアリダーゼCBMのストレプトコッカス・ニューモニエnanAシアリダーゼCBMシアル酸結合フラグメント
からなる群より選択することができる。
【0034】
したがって、式1に示された分子のVcCBM単位又はSpCBM単位のそれぞれは、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
したがって、様々な本発明の態様及び実施形態(使用、使用のためのシアル酸結合分子、方法及び医薬)は、
(i) 1個以上のVcCBM、
(ii) 2個(以上)のVcCBM、
(iii) 3個又は4個のVcCBM、
(iv) 1個以上のSpCBM、
(v) 2個(以上)のSpCBM、
(vi) 多価CBM及び
(vii) 変更されたCBM
からなる群より選択されるシアル酸結合分子を含む、からなる、又はから本質的になるシアル酸結合分子を活用することができる。
【0036】
使用のためのシアル酸結合分子は、オリゴマー化ドメインをさらに含んでもよい。適切なオリゴマー化ドメインは、マルチマー構造、例えばトリマーを形成するように自己会合する能力を示すことができる。使用のためのオリゴマー化ドメインは、上記オリゴマー化特性を有する任意の分子又はこの分子の任意の機能的フラグメントを含むことができる。例えば、1個以上(例えば、2個)のシアル酸結合分子(例えば、CBM)は、オリゴマー化ドメインに結合、連接又は融合することができ、得られたシアル酸結合分子::オリゴマー化ドメイン「融合物」は後で、細胞増殖及び/若しくは活性を調節するため、並びに/又は、本明細書に記載の疾患及び/若しくは状態のいずれかを処置若しくは予防するための分子として、(1個以上の他のこのような「融合物」と一緒に)使用することができる。
【0037】
適切なオリゴマー化ドメインは、例えば、シュードモナス・エルギノーザシューダミニダーゼ(Pseudomonas aeruginosa pseudaminidase)に由来し得る。例示的なシュードモナス・エルギノーザシューダミニダーゼ配列のアミノ酸配列は、アクセッション番号PAO579として寄託されており、配列番号5(438個のアミノ酸)として以下に再現されている。
MNTYFDIPHR LVGKALYESY YDHFGQMDIL SDGSLYLIYR RATEHVGGSD GRVVFSKLEG
GIWSAPTIVA QAGGQDFRDV AGGTMPSGRI VAASTVYETG EVKVYVSDDS GVTWVHKFTL
ARGGADYNFA HGKSFQVGAR YVIPLYAATG VNYELKWLES SDGGETWGEG STIYSGNTPY
NETSYLPVGD GVILAVARVG SGAGGALRQF ISLDDGGTWT DQGNVTAQNG DSTDILVAPS
LSYIYSEGGT PHVVLLYTNR TTHFCYYRTI LLAKAVAGSS GWTERVPVYS APAASGYTSQ
VVLGGRRILG NLFRETSSTT SGAYQFEVYL GGVPDFESDW FSVSSNSLYT LSHGLQRSPR
RVVVEFARSS SPSTWNIVMP SYFNDGGHKG SGAQVEVGSL NIRLGTGAAV WGTGYFGGID
NSATTRFATG YYRVRAWI
配列番号5のオリゴマー化ドメインは、アミノ酸残基333~438であるが、この配列は、配列番号6であってもよい。
【0038】
したがって、使用のためのオリゴマー化ドメインは、配列番号5によって規定されたP.エルギノーザシューダミニダーゼトリマー化ドメイン(PaTD)の概ね残基250、275、300、310、320、333、340~350(すなわち、概ねその間にあるあらゆる残基を含む、概ね残基250~概ね残基350)から、概ね残基400、410、420、430又は438(すなわち、概ねその間にあるあらゆる残基を含む、概ね残基400から残基438までの概ね任意の残基)までを含むことができる。例えば、有用なシアル酸結合分子は、配列番号6の残基333~438を含むオリゴマー化ドメインを活用することができる。
【0039】
使用のためのシアル酸結合分子は、
図1に提示されたCBMをベースとする分子のうちの1種以上を含んでもよい。例えば、適切なシアル酸結合分子は、任意選択によりオリゴマー化ドメイン(PaTD又はPaTDのオリゴマー化フラグメント等)に融合、結合又はコンジュゲート化していてもよい2個以上のVcCBMを含む(から本質的になる、又はからなる)ことができる。シアル酸結合分子は、2個の融合(又は結合)したVcCBMであって、オリゴマー化ドメインに融合した、VcCBM(例えば、
図1に示された分子Vc2CBMTDを参照されたい。)を含む、からなる、又はから本質的になることができる。
【0040】
使用のための他のシアル酸結合ドメインは、任意選択によりオリゴマー化ドメイン(PaTD又はPaTDのオリゴマー化フラグメント等)に融合、結合又はコンジュゲート化していてもよい2個以上のSpCBMを含むことができる。使用のためのシアル酸結合分子は、2個の融合(又は結合)したSpCBMであって、オリゴマー化ドメインに融合した、SpCBM(例えば、
図1に示された分子Sp2CBMTDを参照されたい。)を含む、からなる、又はから本質的になることができる。
【0041】
本開示のシアル酸結合分子、すなわち、(がん及び/又は本明細書に記載の特定のがんを処置するための)医薬の製造における使用のためのシアル酸結合分子、本明細書に記載の方法(がん及び/又は本明細書に記載の特定のがんの処置又は予防のための方法)と、がん及び/又は本明細書に記載の特定のがんの処置及び/又は予防における使用のための組成物とにおける使用のためのシアル酸結合分子は、
(i) (トリマー化ドメインに融合したストレプトコッカス・ニューモニエの2個のCBM(CBM40)を含む、から本質的になる、又はからなる)Sp2CBMTD、
(ii) (トリマー化ドメインに融合したビブリオ・コレレの2個のCBM(CBM40)を含む、から本質的になる、又はからなる)Vc2CBMTD、及び、
(iii) (4個のビブリオ・コレレのCBM(CBM40)を含む、から本質的になる、又はからなる)Vc4CBM
を含む、から本質的になる、又はからなる。
【0042】
本明細書に記載の様々な実施形態及び態様における使用のための例示的な分子は、
図1においては、Vc2CBMTD、Vc4CBM及びSp2CBMTDとして提示されている。Vc2CBM及びVc4CBMは、V.コレレのシアリダーゼをコードするnanH遺伝子のファミリー40シアル酸結合ドメイン(CBM)をベースとする縦列反復多価タンパク質として解することもできる。Sp2CBMは、S.ニューモニエのシアリダーゼをコードするnanA遺伝子のファミリー40シアル酸結合ドメイン(CBM)をベースとする、縦列反復多価タンパク質として解することもできる。
【0043】
「シアル酸結合分子」、「CBM」及び/又は「CBM40」という用語(本明細書において使用されているすべて)は、本明細書に記載のシアル酸結合分子のいずれかの変更された形態を含み得る。さらに、「変更された」という用語は、参照配列に比較して1個以上の変異を含む分子を包含する。
【0044】
「参照配列」は、任意の野生型CBM配列であってよい。例えば、参照配列は、野生型ファミリー40 CBM配列、例えば、ビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼの野生型CBM配列(他の有機体中に存在する類似する又は相同なCBM(CBM40を含む)が、「CBM」という用語の範囲に包含され、及び/又はCBM参照配列として包含されるべきであることを理解されたい。)を含む、から本質的になる、又はからなることができる。有用なシアル酸結合分子(本明細書に記載の有用な多価CBMを含む)が由来し得る参照配列は、本明細書に記載の特定の配列(例えば、配列番号1、2、3、4及び5)のいずれかを含むことができる。
【0045】
例えば、使用のための変更されたCBM配列は、特定の又は特に定めた野生型CBMに由来し得る。有用な変更されたCBM配列は、1個以上の変異を含む野生型CBM配列を含んでもよい。
【0046】
1個以上の変異は、機能的なものであってもよい。変異は例えば、使用のためのCBMの一次配列全体を改変することができるが、CBMの特性を(実質的に)改変することができない。したがって、変更されたCBMの配列が、この配列が由来する野生型配列とは異なっていてもよいが、変更されたCBMの全体的機能は、野生型CBMの全体的機能と(実質的に)同一である。代替的には、1個以上の変異は、野生型CBM(例えば、変更されたCBMが由来する野生型CBM)に特徴的な生理学的、生物学的、免疫学的及び/又は薬理学的特性のうちの1種以上を個別に(及び/又は独立に)又は集合的に(例えば、相乗的に)調節する(改善又は抑制/阻害する)ことができる。特に、1個以上の変異は、
(i) CBMの免疫原性(若しくは抗原性)を改変することができ、及び/又は
(ii) (CBM若しくは変更されたCBMを含む任意のマルチマー分子の)有効性を改変する(例えば、改善する)ことができ、及び/又は
(iii) CBMの熱安定性を調節する(例えば、改善する)ことができ、及び/又は
(iv) CBMの可溶度を調節する(例えば、改善する)ことができ、及び/又は
(v) 分子のインビボ半減期を調節する(例えば、改善する)ことができる。
【0047】
「変異」は、野生型CBM分子に対する何らかの改変を含み得る。例えば、「変異」という用語は、例えば、
(i) 1個以上のアミノ酸置換(野生型アミノ酸のうちの1個以上が、別の(異なる)アミノ酸と入れ替えられている又は取り替えられている。「置換」という用語は、保存的アミノ酸置換を含む。)、及び/又は、
(ii) 1個以上のアミノ酸欠失(野生型アミノ酸残基の1個以上が、除去されている。)、及び/又は、
(iii) 1個以上のアミノ酸付加/挿入(追加のアミノ酸残基が、野生型(又は参照)一次配列に付加されている。)、及び/又は、
(iv) 1個以上のアミノ酸/配列逆位(通常、一次配列中の2個以上の連続するアミノ酸が、逆転している。)、及び/又は、
(v) 1個以上のアミノ酸/配列重複(アミノ酸又は一次アミノ酸配列の一部(例えば、一続きの5~10個のアミノ酸)が、繰り返されている。)
を包含することができる。したがって、有用な変更されたCBM(すなわち、医療目的での使用及び本明細書に記載の方法における使用のためのCBM)は、本明細書に記載の変異のうちの1種以上を含むことができる。
【0048】
非限定的な例として、下記のものは、本明細書に記載の様々な使用のための(例えば、本明細書に記載の様々ながんを処置又は予防する方法における使用のための)シアル酸結合分子を生成するために使用することができる個別の単位(「HEX」単位と呼ばれる)を代表する。
(i)HEX1
CBM1(L170T V239A V246G I286A Y292E)-----CBM2(L170T V239A V246G I286A Y292E)-----TD(S342D L348D R403K)
(ii)HEX2
CBM1(V239A V246G I286A Y292E)----CBM2(V239A V246G I286A Y292E)----TD(S342D R403K)
(iii)HEX3
CBM1(V239A V246G I286A)-----CBM2(V239A V246G I286A)-----TD(S342D R403K)
(iv)HEX4
CBM1(V239A V246G)-----CBM2(V239A V246G)-----TD(S342D)
(v)HEX5
CBM1(V239A V246G)-----CBM2(V239A V246G)-----TD(R403K)
(vi)HEX6
CBM1(V239A V246G)-----CBM2(V239A V246G)-----TD(S342D R403K)
(vii)HEX17
CBM1(V239A V246G A162P)-----CBM2(V239A V246G A162P)-----TD(S342D R403K)
上記HEX単位のいずれかを含む(又はから本質的になる、又はからなる)上記シアル酸結合分子は、ヘキサマー型シアル酸結合分子と呼ばれることもある。適切なHEX単位は、2個の変更されたCBM(上記では、CBM1及びCBM2と表記されている)を含むことが可能であり、各CBMに導入された特定の変異は、丸括弧の中に明確化されている。「----」という記号は、(あるCBMを別のCBMに結合させている、又はCBMをオリゴマー化ドメインに結合させている)アミノ酸リンカーを示すことに留意されたい。いずれの場合においても、各HEX単位中に存在するオリゴマー化ドメイン(「TD」と表記されている)は、単位どうしをコンジュゲート化して、トリマーにする。任意の所与のヘキサマーは、上記単位のうちの1つの同一コピーを3個含むことができるが、当業者ならば、さらなる選択肢が採用可能であることを理解されよう。例えば、HEX単位は、それぞれが異なる変異(本明細書において詳述された選択肢から選択される1種以上の変異)を有する2個のCBMから構成されてもよい。
【0049】
HEX6とHEX17は、追加のA162P変異を除いて同一であることに留意する。このプロリン変異(野生型アラニンの残基162の置換)は、熱安定性を改善する(単一のCBMのTmを3~4℃高める)ことが示されている。プロリン変異の使用に関するさらなる情報は、一般的な手法を記述しているFu 2009、「Increasing protein stability by improving beta-turns」(DOI 10.1002/prot.22509)から入手することができる。プロリン変異は、予測されたCBM分子の免疫原性に影響せず(増加又は減少させず)、他の変異、N末端若しくはC末端又はリガンド結合部位の近くには位置しない。むしろ予想外なことに、熱安定性のほどほどの改善を超えて、A162P変異は、インビボ実験における(特に、他の(例えば、HEX6)HEX単位を含むヘキサマー分子を用いて実施された同じ実験との比較で)顕著な改善を示すシアル酸結合分子を生じさせることに注目した。例えば、変更された分子(特に、HEX17単位を含む分子)は、例えばIL-8を含む炎症性サイトカインを対象とする調節を示す。実際、HEX17単位を含む分子がIL-8の生成に及ぼす調節効果(特に、阻害効果)は、試験された他の変更された分子より改善されていた。
【0050】
Sp2CBMTDのアミノ酸配列(「SpOrig」としても知られる)に比べて、HEX6分子及びHEX17分子のアミノ酸配列は、次のとおりである。
SpOrig GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
HEX6 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
HEX17 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSAT
SpOrig KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
HEX6 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
HEX17 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
SpOrig RVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
HEX6 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
HEX17 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
SpOrig PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
HEX6 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
HEX17 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAF
SpOrig YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
HEX6 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
HEX17 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
SpOrig EKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
HEX6 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
HEX17 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
SpOrig NLTVYNRALTPEEVQKRSGGALGVPDFESDWFSVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
HEX6 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
HEX17 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
SpOrig SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIRLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
HEX6 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
HEX17 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
SpOrig GYYRVRAWI
HEX6 GYYRVRAWI
HEX17 GYYRVRAWI
【0051】
疑義をなくすために、「HEX17」という用語は、上記変更された多価CBMをさらに包含し、Vc2CBMは、連結、結合又はコンジュゲート化した2個のビブリオ・コレレNanHシアリダーゼCBM単位を含む、から本質的になる、又はからなり、Vc4CBMは、連結、結合又はコンジュゲート化した4個のビブリオ・コレレNanHシアリダーゼCBM単位を含む、から本質的になる、又はからなり、Sp2CBMは、連結、結合又はコンジュゲート化した2個のストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼ単位を含む、から本質的になる、又はからなる。
【0052】
(本明細書に記載の使用及び方法のための)開示された分子は、PCRをベースとするクローニング法を用いて作製することができ、この種の多価分子の作製に適した方法は、例えば、Connarisら、2009(Enhancing the Receptor Affinity of the Sialic Acid-Binding Domain of Vibrio cholerae Sialidase through Multivalency;J.Biol.Chem;第284巻(11);7339~7351頁において記述されている。例えば、HEX17、Vc2CBM、Vc4CBM及びSp2CBMのようなものを含む多価CBM分子は、上記アミノ酸/ペプチドリンカー等のアミノ酸/ペプチドリンカー等によって連結された複数のCBMを含むコンストラクトとして調製されてもよい。
【0053】
上記を鑑みて、本開示は、
(i) (ii) がんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのCBM(上記変更されたCBMを含む)の使用と、(iii) がんを処置及び/又は予防する方法とからなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法における使用のためのCBM(上記変更されたCBMを含む)を提供し、(i)、(ii)及び/又は(iii)のそれぞれに関しては、がんは、
(i) グリオーマ、
(ii) 乳がん、
(iii) 肺がん、
(iv) 膵臓がん、
(v) メラノーマ及び
(vi) 卵巣がん
からなる群より選択される1種以上(例えば、3種、4種、4種、5又は6種すべて)である。
さらに、本開示は、
(1)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法における使用のためのCBM(上記変更されたCBMを含む)と、
(2)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのCBM(上記変更されたCBMを含む)の使用と、
(3)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんを処置及び/又は予防する方法であって、
ある治療有効量のCBM(上記変更されたCBMを含む)を、それを必要としている被検体に投与するステップを含む、方法と、
(4)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのCBM(上記変更されたCBMを含む)と
を提供する。
【0054】
上記実施形態(i)~(iv)のいずれか1つにおいて、CBMは、2個以上のファミリー40 CBMを含む多価CBMであってもよい(又は含むことができる)。上記実施形態(i)~(iv)のいずれか1つにおいて、CBMは、任意選択によりオリゴマー化ドメイン(PaTD又はPaTDのオリゴマー化フラグメント等)に融合、結合又はコンジュゲート化していてもよい2個以上のVcCBM及び/又はSpCBMを含む(から本質的になる、又はからなる)ことができる。CBMは、2個の融合(又は結合)したVcCBM又は2個の融合(又は結合)したSpCBMであって、オリゴマー化ドメインに融合した、VcCBM又はSpCBMを含む、からなる、又はから本質的になることができる(例えば、
図1に示された分子(トリマー化ドメインに融合したビブリオ・コレレの2個のCBM(CBM40)を含む、から本質的になる、又はからなる)Vc2CBMTDと、Vc4CBM(ビブリオ・コレレの4個のCBM(CBM40)を含む、から本質的になる、又はからなる)と、Sp2CBMTDとを参照されたい。)。上記実施形態(i)~(iv)のいずれか1つにおいて、CBMは、上記変更されたCBMであってもよい(又は含むことができる)。本明細書に記載の様々な使用、組成及び方法のためのCBMは、本明細書に記載のCBM、多価CBM及び/又は変更されたCBMの混合物を含むシアル酸結合分子を活用することができることに留意されたい。
【0055】
上記を鑑みて、本開示は、
(i)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法であって、治療目的のある量のビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ(VcCBM)のシアル酸結合ドメイン及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼ(SpCBM)のシアル酸結合ドメインを、それを必要としている患者に投与することを含む、方法における使用のためのビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ(VcCBM)のシアル酸結合ドメイン及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼ(SpCBM)のシアル酸結合ドメインと、
(ii)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ(VcCBM)のシアル酸結合ドメイン及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼ(SpCBM)のシアル酸結合ドメインと、
(iii)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのビブリオ・コレレNanHシアリダーゼ(VcCBM)のシアル酸結合ドメイン及び/又はストレプトコッカス・ニューモニエNanAシアリダーゼ(SpCBM)のシアル酸結合ドメインの使用と、
(iv)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法であって、治療目的のある量のVc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMを、それを必要としている患者に投与することを含む、方法における使用のためのVc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMと、
(v)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのVc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMと、
(vi)
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん、
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのVc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMの使用と、
(vii)
(a) 膵臓がん及び
(b) 乳がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法であって、治療目的のある量のVc2CBMを、それを必要としている患者に投与することを含む、方法における使用のためのVc2CBMと、
(viii)
(a) 膵臓がん及び
(b) 乳がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのVc2CBMと、
(ix)
(a) 膵臓がん及び
(b) 乳がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのVc2CBMの使用と、
(x)
(a) 乳がん及び
(b) 肺がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法
であって、治療目的のある量のVc4CBMを、それを必要としている患者に投与することを含む、方法における使用のためのVc4CBMと、
(xi)
(a) 乳がん及び
(b) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのVc4CBMと、
(xii)
(a) 乳がん及び
(b) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのVc4CBMの使用と、
(xiii)
(a) グリオーマ
(b) 乳がん及び
(c) 肺がん
からなる群より選択されるがんを処置又は予防する方法であって、治療目的のある量のSp2CBMを、それを必要としている患者に投与することを含む、方法における使用のためのSp2CBMと、
(xiv)
(a) グリオーマ
(b) 乳がん及び
(c) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防における使用のためのSp2CBM。
(xv)
(a) グリオーマ
(b) 乳がん及び
(c) 肺がん
からなる群より選択されるがんの処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのSp2CBMの使用と
を提供する。
【0056】
それを必要としている被検体、すなわち実際としては、本明細書において開示されたシアル酸結合分子又は本明細書において開示されたシアル酸結合分子を含む医薬を投与すべき被検体は、
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択されるがん
に罹患している(又は罹患している疑いがある)任意の被検体であり得る。
本発明者らは、Sp2CBMTD及び/又はVc2CBMTDが、卵巣がんの処置及び/又は予防において特に有用なものであり得ることにさらに注目した。したがって、本開示は、
(i) 卵巣がんの処置及び/又は予防における使用のためのSp2CBMTD及び/又はVc2CBMTD、
(ii) 卵巣がんの処置及び/又は予防のための医薬の製造におけるSp2CBMTD及びVc2CBMTDの使用、並びに、
(iii) 治療的観点又は予防的観点から効果的な量のSp2CBMTD及びVc2CBMTDを、それを必要としている被検体に投与することを含む、卵巣がんを処置又は予防する方法
を提供する。
それを必要としている被検体は、卵巣がんの1種以上のマーカー、症状若しくは前兆を有し、及び/又は、卵巣がんにかかりやすい若しくは感染しやすいと診断された、卵巣がんを罹患している被検体であり得ることに留意されたい。本発明者らは、Sp2CBMTDには、卵巣がん細胞を対象とする長期間持続する効果及び/又は残効を示すポテンシャルがあることにも注目した。このような効果(卵巣がん細胞増殖及び/又は成長の調節(例えば、阻害))は持続するものであり得るが、卵巣がん細胞とSp2CBMTDとのあらゆる直接接触より長く持続することができる。言い換えると、卵巣がん細胞を対象とするSp2CBMTDの調節効果は、Sp2CBMTD(又はSp2CBMTDを含む薬物若しくは医薬)が洗浄によって除去され、又はインビボにおけるクリアランスのため除去された後でさえ、明白なものであり得る。
これらのうちの1種以上の処置は、本開示の1個以上のシアル酸結合分子を使用して、これらの疾患のうちの1種以上の症状を処置、改善又は低減することを含み得ることを理解されたい。例として、これらの特定のがんの症状には、例えば、腫瘍及び/又は細胞塊の存在を挙げることができる。したがって、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、腫瘍形成及び/又は腫瘍転移を調節する(例えば、停止、遅延、阻害又は低減する)ために使用することができる。シアル酸結合分子は、腫瘍の全体サイズを縮小するために使用することもできる。大抵の場合、大きい及び/又は浸潤型の腫瘍を含む特定の腫瘍は、最初にサイズを減らしておけば、外科手術による除去がより容易になる。一般的に、化学療法及び/又は放射線療法をベースとする処置を使用して、腫瘍のサイズを縮小することができるが、このような処置は、シアル酸結合分子をベースとする処置によって置きかえられ、及び/又は補強されてもよい。したがって、上記を鑑みて、成功する腫瘍の処置は、観察される又は検出可能な/検出される腫瘍転移レベル、腫瘍形成性の組織内における血管新生レベル及び/又は組織浸潤レベルの低下である、腫瘍サイズの縮小を特徴とし得る。
【0057】
シアル酸分子結合活性を示す分子は、細胞(例えば、グリオーマ細胞、乳がん細胞、肺がん細胞及び/又は膵臓がん細胞)増殖及び/又は活性を調節する能力を示すことができ、したがって、理論に縛られることを望むわけではないが、腫瘍(グリオーマ、肺腫瘍、乳腺腫瘍及び/又は膵臓腫瘍)のサイズに影響を及ぼすシアル酸結合分子(例えば、1個以上のCBM、CBM40、Vc2CBM及び/又はSp2CBMを含む、から本質的になる、又はからなる分子)の能力を支える機構は、シアル酸結合分子の細胞増殖、分化及び/又は代謝を調節する効果に起因し得る。
【0058】
「調節する」という用語は、細胞増殖及び/又は活性の1種以上の態様の何らかの増大又は減少を包含し得る。言い換えると、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、細胞増殖及び/若しくは活性の特定の態様を阻害することができ、又は、細胞増殖及び/若しくは活性の他の態様を誘導若しくは刺激することができる。細胞に適用される「増殖」及び「活性」という用語は、細胞増殖、細胞生存可能性、細胞遊走、細胞代謝、細胞分化及び/又は細胞形態/表現型のうちの1つ以上に関連付けられたプロセス及び/又は現象を包含し得る。「増殖」及び/又は「活性」という用語は、例えば免疫系の特定の化合物、サイトカイン、ケモカイン及び1種以上の環境的要因(光、温度、圧力及び機械的応力等)に対する応答を含む、特定の外因子及び/又は内因性の因子又は刺激に対する細胞の応答をさらに含み得る。したがって、本明細書において開示されたシアル酸結合分子は、細胞応答性のレベルを調節する(阻害、低下又は上昇させる)ために使用することができる。
【0059】
ここで、本発明者らは、本明細書に記載の様々なシアル酸結合分子がいくつかの異なる細胞経路及びプロセスに作用することを発見した。理論に縛られることを望むわけではないが、特に、シアル酸結合分子(例えば、CBM、CBM40、Vc2CBM、Vc4CBM及びSp2CBM)は、細胞代謝、細胞周期、及び/又は、DNA損傷に対する細胞応答を制御する様々な機構の様々な態様に作用することが示唆されている。関連するデータは、以下の表1a及び表1bに転載されている。
【表1】
【0060】
表1a及び表1bは、CBM処置された肺がん細胞におけるRNA遺伝子発現の分析結果を示している。この結果により、これらの(CBM処置された)細胞において、7種の遺伝子は、過剰発現していることが認められ(表1aを参照されたい。)、30種の遺伝子は、過少発現していることが認められた(表1bを参照されたい。)ことが示されている。さらなる分析により、これらの遺伝子は、細胞周期、代謝及びDNA修復経路に関与する遺伝子に相当することが示されている。この結果により、DNA損傷応答に関与する遺伝子(「●」の印がついている)、細胞周期に関与する遺伝子(「〇」の印がついている)及び細胞代謝に関与する遺伝子(「*」の印がついている)が、CBMに最も影響されるように思われることもさらに示されている。
【0061】
したがって、本明細書に記載の様々なシアル酸結合分子、特にCBM、CBM40、VcCBM、SpCBM、Vc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMは、常軌を逸した、欠陥のある、欠損のある又は異常な細胞代謝、細胞周期機能及び/又はDNA損傷修復プロセスに関連付けられたがんの処置及び/又は予防において使用することができる。常軌を逸した、欠陥のある、欠損のある又は異常な細胞代謝プロセス又は機能は、同じ種類の正常な細胞の同じ細胞代謝プロセス又は機能によって示される活性又は機能のレベルに比較した低下したレベルの活性又は機能を示し得る。「正常な」細胞は、健康な、非がん性細胞であり得る。この正常な細胞は、健康な肺細胞、グリア細胞、アストロサイト、膵臓細胞又は乳腺細胞であってもよい。
【0062】
遺伝子発現に与える開示されたシアル酸結合分子(本明細書に記載の様々なCBM及びCBM40を含む分子を含む)の影響は、1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するインビトロ式の方法及びインビボ式の方法に活用することができる。記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞表面上のシアル酸含有受容体へのシアル酸結合分子の結合を可能にする条件下において、1個又は複数の細胞をシアル酸結合分子(本明細書に記載のシアル酸結合分子のいずれか等)と接触させるステップを含むことができる。(これらのインビトロ式の方法及びインビボ式の方法との関連で使用されている)調節されるという用語は、遺伝子の活性、機能及び/又は発現の何らかの態様の何らかの増大又は減少を指し得る。例えば、遺伝子は、遺伝子の発現のレベルが、本明細書に記載のシアル酸結合分子と接触しなかった細胞における同じ遺伝子の発現のレベルに比べて増大記述され得るように調節することができる。
【0063】
上記を鑑みて、記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、DNA損傷修復に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、ERCC5遺伝子、DDB2遺伝子、DKC1遺伝子、ERCC3遺伝子及び/又はPOLB遺伝子のうちの1種以上の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、
(a) ERCC5遺伝子の発現を増加させ、並びに/又は
(b)
(1) DDB2、
(2) DKC1、
(3) ERCC3及び
(4) POLB
からなる群より選択される遺伝子のうちの1種、2種以上若しくはすべての発現を減少させるために使用することができる。
【0064】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞代謝に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、SLC2A1遺伝子、ARNT遺伝子、ATP5A1遺伝子、COX5A遺伝子、G6PD遺伝子、LDHA遺伝子、UQCRFS1遺伝子、GAPDH遺伝子及び/又はHPRT1遺伝子のうちの1種以上の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、
(a) SLC2A1遺伝子の発現を増加させ、並びに/又は
(b)
(1) ARNT、
(2) ATP5A1、
(3) COX5A、
(4) G6PD、
(5) LDHA、
(6) UQCRFS1、
(7) GAPDH及び/若しくは
(8) HPRT1
からなる群より選択される遺伝子のうちの1種、2種以上若しくはすべての発現を減少させる
ために使用することができる。
【0065】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞周期に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、AURKA遺伝子、BMP1遺伝子、CCND3遺伝子、CDC20遺伝子、E2F4遺伝子、MCM2遺伝子、MK167遺伝子、PINX1遺伝子、SKP2遺伝子及び/又はWEE1遺伝子のうちの1種以上の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、
(1) AURKA、
(2) BMP1、
(3) CCND3、
(4) CDC20、
(5) E2F4、
(6) MCM2、
(7) MK167、
(8) PINX1、
(9) SKP2及び/又は
(10) WEE1
からなる群より選択される遺伝子のうちの1種、2種以上又はすべての発現を減少させるために使用することができる。
【0066】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、転写リプレッサーに関係付けられた(又はコードする)1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、SNAI3遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、SNAI3遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0067】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、アポトーシスに関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、ANOL3遺伝子、CASP2遺伝子及び/又はCASP7遺伝子のうちの1種以上の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、
(a) NOL3遺伝子の発現を増加させ、又は
(b)
(1) CASP2及び/若しくは
(2) CASP7
からなる群より選択される遺伝子のうちの1種、2種以上若しくはすべての発現を減少させるために使用することができる。
【0068】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞接着に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、CDH2遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、CDH2遺伝子の発現を減少させるために使用することができる。
【0069】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、テロメラーゼ活性に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、TEP1遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、TEP1遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0070】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞の運動性に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、ACTB遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、ACTB遺伝子の発現を減少させるために使用することができる。
【0071】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、微小管制御に関係付けられた1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、STMN1遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、STMN1遺伝子の発現を減少させるために使用することができる。
【0072】
記述されたインビトロ式の方法及びインビボ式の方法は、細胞増殖因子に関係付けられた(又はコードする)1種以上の遺伝子の発現、機能及び/又は活性を調節するために使用することができる。例えば、本明細書に記載のシアル酸結合分子は、VEGFC遺伝子の発現を調節する(例えば、増加又は減少させる)ために使用することができる。例えば、シアル酸結合分子又は(i) 1個以上のCBM、(ii) 1個以上のCBM40、(iii) 1個以上のVcCBM、(iv) 1個以上のSpCBM、(v) Vc2CBM及び/若しくは(vi) Sp2CBMを含む分子は、VEGFC遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0073】
シアル酸、特に、細胞結合受容体又は細胞表面受容体の一部であるシアル酸を結合させる分子は、その異種分子を任意の組織又は細胞に対して標的化し、又は任意の組織又は細胞に送達するという目的で他の何らかの異種分子にコンジュゲート化、結合又は接合又は会合していてもよい部分としてさらに応用され得る。この有用性は、開示されたシアル酸結合分子が、特定の細胞表面受容体の中に存在するシアル酸成分に単に結合することを超えて、結合後に(細胞内に)インターナリゼーションした状態になることができるという発見に基づく。
【0074】
上記発見は、本開示のシアル酸結合分子を使用して、本開示のシアル酸結合分子に結合、コンジュゲート化、会合又は接合した要素を、細胞表面に送達するだけでなく、細胞の内部にも送達することができるという示唆に直結している。言い換えると、開示されたシアル酸結合分子(特に、CBM、CBM40、Sp2CBMTD及びVc2CBMTDを含む、から本質的になる、又はからなるシアル酸結合分子)のいずれもが、細胞、例えばがん細胞内にペイロード(payload)を送達するためのコンジュゲート化した/送達用の媒体として活用され得る。
【0075】
(異種要素が何らかの方法でシアル酸結合分子と結合、接合、コンジュゲート化又は会合している)シアル酸::異種要素複合体は、通常ならば、「治療弾頭(therapeutic warhead)」又は「コンジュゲート」としても公知であり得るが、便宜上、本発明者らは、すべてのこのような複合体を「コンジュゲート」と呼ぶこととする。
【0076】
理論に縛られることを望むわけではないが、特定の細胞受容体におけるシアル酸の存在により、本明細書に記載の種類のコンジュゲートは、(シアル酸結合分子にコンジュゲート化した)異種分子を、少なくともシアル酸含有受容体を発現している細胞の表面に送達するための手段として活用することが可能になる。しかしながら、現在では、コンジュゲートは、(コンジュゲートとシアル酸含有受容体との)結合後、インターナリゼーションした状態になることができることが知られており、実際として、これにより、異種部分(例えば、細胞傷害性又は細胞増殖抑制性部分)が細胞の内部に送達される。
【0077】
本明細書に記載のコンジュゲート(すなわち、コンジュゲート化したシアル酸結合分子)は、がんの処置に有用であり得、(がん性細胞及び/又は腫瘍に発現したシアル酸に対するアフィニティを有する)シアル酸結合分子は、特定の細胞の表面だけでなく、これらの細胞の内部にも治療用物質(therapeutic)(例えば、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性部分)を誘導するために使用することができる。当業者ならば、特定の治療剤(例えば、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性作用物質)は、インターナリゼーションされ得る場合に最も効果的であることを理解されよう。これらの治療剤の(すべてではないとしても)多くは、自力では、それら自体のインターナリゼーションに影響を与えることがでない。したがって、開示されたシアル酸結合分子のような分子へのコンジュゲート化は、必要なインターナリゼーションを実現する一方法である。
【0078】
例として、本明細書に記載のシアル酸結合分子(CBMをベースとする分子のいずれかを含む)は、例えば治療用のもの、細胞増殖抑制性のもの及び/又は細胞傷害性のものである1種以上の作用物質にコンジュゲート化していてもよい。
【0079】
便宜上、コンジュゲート化した作用物質は、総称として「異種作用物質」と呼ぶものとする(「異種」という用語は、シアル酸結合分子でないものを意味する。)。異種作用物質は、例えば、シアル酸結合分子の何らかの部分にコンジュゲート化していてもよい治療用、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性部分を含むことができる。例えば、異種作用物質は、シアル酸結合分子の一端又は両端にコンジュゲート化していてもよい。異種部分は、シアル酸結合分子の内部部分にさらに又は代替としてコンジュゲート化(又は融合)していてもよい。異種作用物質はシアル酸結合分子にコンジュゲート化すべきであるが、作用物質は(加えて、作用物質のコンジュゲート化も)、シアル酸結合分子のシアル酸結合特性を(実質的に)妨害せず、消し去らず、又は低下させるべきでないことは、理解されよう。
【0080】
前述のとおり、異種作用物質は、シアル酸を含む細胞又は組織に影響する疾患の処置に有用な薬物であり得る。例えば、このような細胞又は組織は、シアル酸を含有する受容体を発現することができる。本発明のシアル酸結合分子に共有すべきものは、がん等の処置における使用のための化学療法薬であってもよい。異種作用物質は、細胞を死滅させる又は細胞内にアポトーシスを誘導することができる細胞傷害性部分であってもよい。異種作用物質は、細胞が増殖、分化又は分裂しないようにすることができる、細胞増殖抑制性作用物質であってもよい。細胞増殖抑制性作用物質は、細胞周期を停止させることができる。異種作用物質は、特定の細胞を特定の組織に補充し、又は特定の組織内に補充することができる、分子を含むことができる。例えば、異種作用物質は例えば、T細胞を、例えば腫瘍又はがん性組織に補充するための手段として使用することができる、T細胞受容体(TCR)であってよい。
【0081】
したがって、本開示は、シアル酸結合分子コンジュゲートに関する。一実施形態において、本開示は、
治療剤、
細胞傷害性作用物質及び
細胞増殖抑制性作用物質
からなる群より選択される1種以上の作用物質にコンジュゲート化した(結合又は接合又は会合した)シアル酸結合分子を提供する。
【0082】
本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、炭水化物結合モジュール(CBM)であってよい(又はCBMを含むことができる)。本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、ファミリー40 CBM(CBM40)のメンバーであるCBMを含むことができる。本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、1個以上のVcCBM分子を含むことができる。コンジュゲートのシアル酸結合分子が1個以上のVcCBM分子を含む場合、シアル酸結合分子は、任意選択により、オリゴマー化ドメイン、例えば(本明細書に記載の)トリマー化ドメインをさらに含んでもよい。本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、Vc2CBM、Vc4CBM又はVc2CBMTDを含む、からなる、又はから本質的になることができる。
【0083】
本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、1個以上のSpCBM分子を含んでもよい。コンジュゲートのシアル酸結合分子が1個以上のSpCBM分子を含む場合、シアル酸結合分子は、オリゴマー化ドメイン、例えば(本明細書に記載の)トリマー化ドメインをさらに含んでもよい。本明細書に記載のコンジュゲートのいずれかのシアル酸結合成分は、Sp2CBM又はSp2CBMTDを含む、からなる、又はから本質的になることができる。
【0084】
本開示は、本明細書に記載の様々な使用、医薬及び方法における使用のための組成物を提供することができる。したがって、本明細書に記載のシアル酸結合分子のいずれもが、使用のために配合され得る。シアル酸結合分子(1個以上のCBM、CBM40、Vc2CBM、Vc4CBM及び/又はSp2CBMを含む、から本質的になる、又はからなるシアル酸結合分子を含む)は、使用のために配合することもでき、例えば、
(a) グリオーマ、
(b) 乳がん、
(c) 肺がん及び
(d) 膵臓がん
からなる群より選択される1種以上のがんの処置及び/又は予防における使用のために配合することもできる。
【0085】
便宜上、組成物及び配合物等を記述している下記のセクションに関しては、本明細書に記載のシアル酸結合分子と、このシアル酸結合分子を含む任意のコンジュゲート(例えば、シアル酸結合分子::薬物コンジュゲート/融合物)との両方が、「シアル酸結合分子」という一般用語に含まれるものとすることに留意されたい。
【0086】
シアル酸結合分子(又は複数のシアル酸結合分子)は、使用のために治療用組成物又は医薬組成物として配合することができる。様々な組成物が、本明細書に記載のシアル酸結合分子のうちの1種以上を含むことができ、任意の所与の処置が、これらの組成物のうちの1種以上の投与(一緒に、同時に又は別々に)を要求する可能性がある。本明細書に記載の様々なシアル酸結合分子は、経腸投与(経口投与を含む)、非経口投与及び/又は局所投与のために配合することができるが、当業者ならば、厳密な配合が投与経路に応じて変わり得ることは理解されよう。
【0087】
本発明による医薬組成物は、医薬中に慣例的に使用されている物質、例えば、Remington’s The Sciences and Practice of Pharmacy、第22版(Pharmaceutical Press 2012)及び/又はHandbook of Pharmaceutical Excipients、第7版(Roweら編、Pharmaceutical Press、2012)において記述されている物質を含むように、常法により調製することが可能であり、これらの文献及び参考文献の全内容は、参照により組み込む。
【0088】
本開示の治療用組成物又は医薬組成物(本明細書に記載の医薬又は方法(細胞増殖及び/若しくは活性を調節し、並びに/若しくはがんを処置する方法、又は、細胞増殖及び/若しくは活性を調節し、並びに/若しくはがんを処置するための医薬を含む)のいずれかにおける使用のための、シアル酸結合分子を含む組成物)は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤、キャリア、アジュバント及びバッファーと配合されてもよい。本組成物は、例えば経口投与(経粘膜投与を含む)されてもよいし、非経口投与されてもよいし、経腸投与されてもよいし、筋肉内投与されてもよいし、皮下投与されてもよいし、静脈内投与されてもよいし、又は、望ましい効果(この場合、細胞増殖/活性の調節、細胞増殖/活性に関連付けられた疾患/状態の処置若しくは予防、並びに/又は、がん及び/若しくは腫瘍増殖の調節を含む効果)を得るのに有用な他の任意の経路によって投与されてもよい。前述のとおり、選択された投与経路に応じて、配合物の厳密な組成は、変更することができる。
【0089】
シアル酸結合分子を含む被検体に投与するための治療製剤又は医薬製剤は、化合物及び/又は化合物のシアル酸結合特性を失活又は変性させる可能性がある酵素、酸及び他の天然化合物/条件(例えば、免疫系の化合物(抗体を含む)、細胞及びプロセスを含む)の作用からシアル酸結合分子を保護する物質の中にコーティングされ、カプセル化され、又は包み込まれていてもよい。
【0090】
シアル酸結合分子を含む組成物における使用に利用可能なものであり得る様々な標準的な賦形剤及び従来の賦形剤の中でも特に、非経口、経腸、経口(経粘膜を含む)、及び、シアル酸結合分子との間で有害な反応を起こさない他の投与経路に適した、薬学的に許容される有機又は無機器官キャリア物質が挙げられる。
【0091】
非経口投与のためにシアル酸結合分子を調合しようとする場合、組成物は、無菌であってよい。
【0092】
組成物は、オイルをベースとする溶液若しくは水溶液、懸濁液及び/又はエマルションを含むことができる。
【0093】
他の実施形態において、組成物は、例えば(溶ける型の又は生分解性の)フィルム、ペッサリー又はインプラント(座薬を含む)等のインプラントの形態をとり得る。
【0094】
シアル酸結合分子を含む医薬品は、安定剤、湿潤剤、乳化剤、(浸透圧に影響を及ぼすときに使用するための)塩、バッファー、及び/又は、活性化合物との間で有害な反応を起こさない他の物質と混合されてもよい。
【0095】
本明細書に記載のシアル酸結合分子のうちの1種以上は、経口投与用として配合し、経口投与することができる。前述のとおり、経口投与は、経粘膜投与を含むが、この経粘膜投与自体に、鼻腔内投与及び/又は吸入による投与が含まれる。
【0096】
使用のための組成物は、経口投与に適した固形剤形を含むことができる。このような固形剤形には、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤を挙げることができる。任意の所与の固形剤形において、シアル酸結合分子(又はシアル酸結合分子を含む任意のコンジュゲート)は、少なくとも1種の薬学的に許容される不活性な賦形剤と混合することができる。適切な賦形剤の例は、当業者に公知であるが、例えば、充填剤又は増量剤、保湿剤、湿潤剤、バインダー、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、吸着剤、潤滑剤又はこれらの混合物を挙げることができる。錠剤、丸剤又はカプセル剤は、緩衝剤をさらに含んでもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び/又は顆粒剤等の固形剤形は、胃腸環境及び/又は胃酸から保護するコーティング等のコーティング及びシェルを有するように調製することもできる。
【0097】
固形剤形は、乳白剤を含有してもよく、腸管の特定の部分の中に又は腸管の特定の部分に活性作用物質(この場合、シアル酸結合分子又はシアル酸結合分子を含むコンジュゲート)を確実に時限放出(delayed release)するように配合することもできる。
【0098】
経口投与のための固体状組成物は、各投与量が適切な用量のシアル酸結合分子(又はシアル酸結合分子を含むコンジュゲート)を含有する、単位剤形として配合することができる。任意の所与の固形剤形に含有されるシアル酸結合分子(又はシアル酸結合分子を含むコンジュゲート)の厳密な量は、所期の使用に応じて変化する。固体状組成物は、「単位用量」を含有することができ、単位用量は、処置期間を通して望ましい効果(例えば、細胞増殖及び/又は活性の調節)を生み出すように計算された量のシアル酸結合分子(又はシアル酸結合分子を含有するコンジュゲート)を含有する。
【0099】
経口投与のための液体状剤形は、(前述のとおり)乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤を含むことができる。化合物又は組成物に加えて、液体状剤形は、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤等の当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。
【0100】
シアル酸結合分子は、任意の適切な量で使用することができる。前述のとおり、シアル酸結合分子は、経口投与、経粘膜投与又は非経口投与のために配合することができ、したがって、厳密な配合は、所期の投与経路に依存し得る。任意の所与の用量で存在するシアル酸結合分子の量は、0.1μg~1000μgの範囲であり得、例えば、約0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、1μg、10μg、20μg、25μg、50μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg又は約900μgの量であり得る。約1mg~約1000mgの量を含む、より多いシアル酸結合分子の量のいずれかを使用することもできる。例えば(投与経路及び/又はシアル酸結合分子を投与すべき有機体(例えば、ヒト)に応じて)、約1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、20mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg又は約900mgのシアル酸結合分子が投与され得る。選択されたシアル酸結合分子の量は、特定の体積の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤及び/又はバッファーに配合することができる。必要とされる実際の体積は、投与すべきシアル酸分子の用量、投与経路及び/又は何らかの処置計画の持続期間に依存し得る。賦形剤、希釈剤又はバッファーの体積は、約10μl~5mlであり得る。例えば、シアル酸結合分子(CBM)の必要量は、約15μl、20μl、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、200μl、250μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1ml、2ml、3ml又は4mlと合わせる(又は配合することができる)。例えば、100μgの量のシアル酸結合分子を約250μlの賦形剤と合わせて、シアル酸濃度の最終的な濃度を400μg/mlにすることができる。約0.1μg/ml~1mg/mlの濃度における用量を使用することができ、例えば、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml又は900μg/mlにおける用量が挙げられる。
【0101】
使用の際、細胞増殖及び/又は分化障害(例えば、がん)の処置及び/又は予防の一部として投与されるシアル酸結合分子の用量は、数術、数週間、数か月又は数年にわたって複数回投与することができる。例えば、初回の(又は最初の)投与の後、シアル酸結合分子の用量は、約(±1日又は2日)3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、17日後、21日後、28日後及び/又は35日後に再び投与することができる。任意の所与の日において、特定の用量のシアル酸結合分子は、1回、2回又は3以上投与することができる。毎回、シアル酸結合分子を、(いかなる経路が、適切な処置に影響を及ぼし、又は細胞増殖及び/若しくは分化障害の進行の予防を誘導するために最良であるのかを検討することによって)投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【0102】
次に、次の図面を参照することにより本発明を詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】多価CBM形態の構築ブロック及びシアル酸に対する構築ブロックのアフィニティの図である。a、VcCBM、球体として描画されたα-2,3-シアリルラクトースを有するV.コレレシアリダーゼ(PDB:1w0p)の残基25~216。b、SpCBM、α-2,3-シアリルラクトース(PDB:4c1w)を有するS.ニューモニエNanAシアリダーゼの残基121~305。c、TD、トリマー化ドメイン、虹色になっているP.エルギノーザシューダミニダーゼ(PDB:2w38)の残基333~438;単一色になっている他の2種のモノマー。d、多価形態:分子量、価数、及び、25℃における表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)によって測定されたα2,3-シアリルラクトースに対する結合アフィニティ(VcCBM、Vc2CBM及びVc3CBMのK
D値は、すでに報告されている(Connarisら、2009)。)。縦列反復CBM及びTDに融合したオリゴマー型CBMは、5-アミノリンカーによって連結されている(詳細については、Connarisら、2014)。
【
図2】創傷治癒アッセイの図である。PBS、Sp2CBMTD又はSp2(R274Q)CBMTD;シアル酸結合ヌル変異体(100μg(400μg/ml)による処置後のヒト肺がん細胞株(A549)のスクラッチアッセイデータ。画像は、72時間後の細胞創傷閉塞を示している。
【
図3】GFPタグバリアントを用いたがん細胞へのmCBM40の可視化の図である。(a).MDA.MB.231細胞株を、GFP(1mg/mL)、Sp2CBMTD-GFP(25μg/ml)及びVc2CBMTD-GFP(25μg/ml)と一緒にして10分、1時間及び24時間インキュベートした。次いで、細胞をPBS(2×500μl)で洗浄し、ホルマリンを用いて固定し、DAPIを用いて染色した。(b) A549細胞株を、GFP(1mg/ml)、Sp2CBMTD-GFP(25μg/ml)及びVc2CBMTD-GFP(25μg/ml)と一緒にして10分、1時間及び24時間インキュベートした。次いで、細胞をPBS(2×500μl)で洗浄し、ホルマリンを用いて固定し、DAPIを用いて染色した。次いで、EVOS顕微鏡を用いて細胞をイメージングした。この図により、Sp2CBMTD-GFP及びVc2CBMTD-GFPは、細胞、例えばがん細胞内への異種分子(この例ではGFP)の送達のためのコンジュゲート化した/送達用の媒体として活用され得ることが示されている。
【
図4】増殖データ(BrdU取り込みアッセイ)の図である。異なるがん細胞株(グリオーマ細胞株(T98G)、膵臓がん細胞株(PANC1)、乳がん細胞株(MDA.MB.231)、肺がん細胞株(A549)、結腸がん細胞株(SW620)、メラノーマ細胞株(A2058)及び卵巣がん細胞株(PE014))を、Sp2CBMTD(400μg/ml)、Vc2CBMTD(400μg/mL)、Vc4CBM(400μg/mL)又はPBS(対照)によって処置し、24時間放置した。次いで、細胞をBrdUアッセイに供し、2~6時間インキュベートした。ELISAアッセイを実施して、DNAに取り込まれたBrdUの量を測定した。このアッセイは、細胞成長/増殖を測定するための標準アッセイである。これらのグラフは、(a) Sp2CBMTD(400μg/mL)、(b) Vc2CBM(400μg/mL)及び(c) Vc4CBM(400μg/mL)を、これらのそれぞれに対する対照(PBSによって処置)と、様々ながん細胞株に関して横断的に対比させた場合に観察された阻害%を示している。
【
図5】創傷治癒アッセイの図である。PBS、Sp2CBMTD又はVc2CBMTD(400μg/mL)による処置後のヒト卵巣がん細胞株(SK-OV-3)のスクラッチアッセイデータ。画像は、24時間後、48時間後及び72時間後の細胞の創傷閉塞を示している。結論:他のがん細胞株から得たデータと合致する、転移性卵巣がん細胞株に対するmCBM40活性。
【
図6】創傷治癒アッセイの図である。PBS又はSp2CBMTD(400μg/mL)による処置後のヒト卵巣がん細胞株(SK-OV-3)のスクラッチアッセイデータ。24時間後、創傷を洗浄し(3×500μL PBS)、新たな培地(2%FBS、McCoy 5A培地)を加えた。次いで、処置の洗い落としから24時間後に創傷をイメージングした。画像は、24時間後及び48時間後(処置の洗い落としから24時間後)の細胞の創傷閉塞を示している。結論:Sp2CBMTDは、処置の洗い落とし後でさえ、転移性卵巣がん細胞株SK-OV-3に対する長期間にわたる活性を有する。
【
図7】インビボ忍容性データ(a).100mg/kg、10mg/kg及び1mg/kgの腹腔内送達によって4日ごとに1回(Q4D)送達されたSp2CBMTDに関する、NOGマウス忍容性データ。(b).100mg/kg、10mg/kg及び1mg/kgの腹腔内送達によって4日ごとに1回(Q4D)送達されたVc2CBMTDに関する、NOGマウス忍容性データ。データは、溶媒対照群に対して正規化された体重として示されている。結論:わずかな体重減少が投与後に観察されたが、時間経過に伴って体重回復が観察された。Sp2CBMTDは、10mg/kg及び1mg/kgの腹腔内送達によって、良好な忍容性が示されている。100mg/kgにおいて、Sp2CBMTDは、忍容性が示されている。
【0104】
インビボ忍容性
表.2:インビボ忍容性データ。NOGマウスを用いた14日間Q4D反復投与試験に関する、動物の体重及び概略的な忍容性データ。結論:わずかな体重減少が調査中に観察された。死亡は調査中に観察されなかった。
【表2】
表.3.インビボ忍容性の臨床スコアの表。NOGマウスを用いた14日間Q4D反復投与試験に関する、臨床スコアデータ。一般状態観察(clinical observation)は、1点(有害な一般状態観察なし)及び0点(一般状態観察が示された場合)として採点された。認められた一般状態観察=
*わずかに円背。§わずかにやせ細った外観。結論:ごくわずかな一般状態(clinical sign)が少数の動物に観察された。mCBM40は、IP反復投与を用いて、マウスでは忍容性が示されているであると判定された。
【表3】
【配列表】
【国際調査報告】