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特表2022-514485膝関節用内部人工器官セット及び器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】膝関節用内部人工器官セット及び器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532961
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2019084424
(87)【国際公開番号】W WO2020120475
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18211379.5
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591151602
【氏名又は名称】ヴァルデマール・リンク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Waldemar Link GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】イェンゼン,ハルム-イフェン
(72)【発明者】
【氏名】リンク,ヘルムート デー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC12
4C097CC18
4C097MM10
(57)【要約】
膝関節用内部人工器官セットは、さまざまなサイズのモジュール式膝関節内部人工器官を備えている。各膝関節用内部人工器官は、脛骨構成要素(2)を有している。大腿骨構成要素(3)は、脛骨構成要素と関節で接続されて協働する連結要素を有し且つ大腿骨に固定するための軸(5)を有している。セットにはさまざまなサイズの軸が含まれている。大腿骨構成要素(3)では、軸の形状は連結要素に対向する遠位端(51)から軸の近位自由端(52)へ先細りとなる。軸の遠位端(51)に長円形断面が設けられ、軸の近位自由端(52)に円形断面が設けられている。軸のサイズが増大するほど、長円形断面によって画定される楕円率は増大する。さまざまなサイズが楕円率に応じて好ましくは等級付けられている。セットは、特定の髄管に対してさまざまなサイズを用いて優れた適合を可能とする。楕円率のサイズに応じた類別のおかげで、カスタムメイドモデルによって提供されるのに匹敵する強固な固定が、少数の所定のサイズによって達成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
さまざまなサイズのモジュール式膝関節用内部人工器官を含む膝関節用内部人工器官セットであって、各膝関節用内部人工器官は、
脛骨の近位端に固定するための脛骨構成要素(2)と、
大腿骨の遠位端に固定するための大腿骨構成要素(3)と
を備え、
前記大腿骨構成要素(3)は、前記脛骨構成要素と関節で接続されて協働するための連結要素を含み且つ前記大腿骨の髄管に固定するための軸(5)を含んでおり、
前記セットはさまざまなサイズの軸を含んでおり、
前記大腿骨構成要素(3)において、前記軸の形状は、前記連結要素に対向する前記軸の遠位端(51)から、前記軸の近位自由端(52)へ先細りとなるように選択されて、前記軸の前記遠位端(51)に長円形断面を有し、前記軸の前記近位自由端(52)に円形断面を有するように設計されており、
前記軸の前記サイズが増大するほど、前記長円形断面によって画定される楕円率は増大し、
前記さまざまなサイズは、前記楕円率に応じて好ましくは等級付けられている、膝関節用内部人工器官セット。
【請求項2】
前記長円形断面(55)は、長軸(55b)がML方向にあり、端軸(55a)がAP方向にある種類の楕円率を有し、
前記短軸に対する上記長軸の比率は、好ましくは1.1と1.4との間の範囲にあり、
さらに好ましくは、前記楕円率(55)は楕円形である、
請求項1に記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項3】
楕円率の大きさは、異なるサイズの前記軸(5)間で異なっており、
具体的には、前記軸の前記サイズが増大するほど、楕円率の大きさが増大する、
請求項1又は2に記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項4】
前記軸はそれぞれ、前記髄管の内壁を圧迫するように設計された側壁(53)を有している、
請求項1~3のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項5】
前記軸は、一端の長円形特に楕円形の断面と他端の円形断面との間の円錐形の遷移体に対応する、側面(53)を有している、
請求項1~4のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項6】
前記軸(5)は湾曲しており、少なくとも1000mm、さらに好ましくは1200mmと1800mmとの間の範囲、さらに好ましくは1400mmと1600mmとの間の、曲率半径(R)を有する曲率で好ましくは弱く湾曲している、
請求項1~5のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項7】
前記軸(5)の前記AP方向及びML方向における前記曲率は異なっており、
好ましくは、前記軸はAP方向に強く湾曲しており、
さらに好ましくは、ML方向に湾曲していない、
請求項1~6のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項8】
前記軸(5)は、遠位軸端における等価直径の7倍未満、好ましくは5倍未満、さらに好ましくは2倍より大きい長さを有する短軸として設計されている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項9】
前記軸の自由端(52)は丸み付けられたドーム形状を有しており、
好ましくは前記自由端(52)は全周にわたって丸み付けられている、
請求項1~8のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項10】
前記軸(5)の1つに前記連結要素(4)を接続するアダプタ(6)が設けられ、
アダプタ(6)は好ましくは様々な長さで設けられている、
請求項1~9のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項11】
前記アダプタ(6)は、調整可能な角度で固定されており、好ましくは2つのコーン及び/又は複数の歯を備えている、
請求項10に記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項12】
セメントを用いて固定するための軸(5*)及びセメントを使用せずに固定するための軸(5)が設けられ、
前記セメントを用いて固定するための前記軸はそれぞれ、セメントを使用せずに固定するための対応する軸に対する所定のアンダサイズ(58)を有している、
請求項1~11のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項13】
セメントを用いて固定するための軸(5*)は、滑らかな側面を有しており又は好ましくは最大5つの溝(59*)を備えており、及び/又はセメントを使用せずに固定するための前記軸は波形側面を有している、
請求項12に記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項14】
前記軸(5)の前記サイズは、好ましくは、ML寸法に応じて、具体的には好ましくはモジュール寸法に基づいて規則的に等級付けられている、
請求項1~13のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項15】
前記軸の前記大きさは、おおむね1から2の範囲で拡がっており、
前記モジュール寸法は、8と14との間、さらに好ましくは10と12との間のさまざまなサイズが存在するように好ましくは選択される、
請求項14に記載の膝関節用内部人工器官。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1つに記載の前記膝関節用内部人工器官セットから膝関節内部人工器官の大腿骨構成要素を移植するための器具キットであって、
前記大腿骨構成要素(3)は、軸(5)と連結要素(4)とを有しており、
前記器具キットは、
大腿骨(93)の前記髄管の前記遠位端に、前記軸を受け入れる寸法となる空洞を形成するための工具(13)と、
前記大腿骨の前記遠位端に、前記連結要素のための座を製造するためのゲージ(216)と、
前記軸を受け入れるように作成された前記空洞における、前記軸の位置を決定するための、深さ計測装置(7)と、
前記大腿骨構成要素を前記大腿骨の前記遠位端に移植するための、任意の挿入器具(18)と
を備え、
前記深さ計測装置(7)は、前記軸(5)、及び/又は、前記軸を前記連結要素に固定するためのアダプタ(6)、の要求される長さを表示するように設計されている器具キット。
【請求項17】
角度計測装置(8)がさらに設けられており、前記角度計測装置は前記髄管における前記軸(5)の回転角度を決定するように設計されており、
好ましくは、前記髄管内での前記軸の回転方向のための別個のインジケータ(82)が設けられている、
請求項16に記載の器具キット。
【請求項18】
前記深さ計測装置(7)及び前記角度計測装置(8)は結合された要素として設計されている、
請求項17に記載の器具キット。
【請求項19】
別個のアライメントゲージ(88)が設けられており、前記アライメントゲージは、軸と連結要素との間の相対回転を決定するように、連結要素(4)と軸(5)との間の前記遷移部に配置され得る、
請求項17又は18に記載の器具キット。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか1つに記載の膝関節用内部人工器官セットから膝関節用内部人工器官の大腿骨構成要素を移植する方法であって、前記大腿骨構成要素は、軸と連結要素とを有しており、
膝関節用内部人工器官の前記移植用の膝関節を用意し、
前記軸を受け入れるため前記大腿骨の前記遠位端に空洞を形成し、
ゲージを用いて前記大腿骨の前記遠位端に前記連結要素のための座を製造し、
前記空洞における前記軸の位置を決定し、
前記大腿骨構成要素を、その軸と前記連結要素と共に挿入し、
前記軸の適切なサイズが、前記膝関節用内部人工器官セットから選択される方法。
【請求項21】
ML寸法に基づいて前記軸の適切なサイズを選択し、及び/又は、
前記軸を前記連結要素に固定するためのアダプタの長さを、前記空洞の深さを計測することによって決定して、対応するアダプタを選択し、及び/又は、
前記髄管内での前記軸の回転角度を決定するために角度位置を計測し、ここで前記軸の前記髄管における回転方向は好ましくは別個のインジケータによって決定され、及び/又は、
前記髄管内での前記軸の回転角度を決定するために角度位置を計測し、ここで前記軸の前記髄管における回転方向が、好ましくは別個のインジケータによって、好ましくは軸と連結要素との間の回転の相対角度を特に前記アダプタを用いて設定することによって、決定される、
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節用内部人工器官セット、特に膝関節用内部人工器官の大腿骨構成要素と、大腿骨構成要素を大腿骨の遠位端に移植するための挿入工具に関する。膝関節用内部人工器官の大腿骨構成要素は、脛骨構成要素と協働し、これら2つの構成要素が膝関節用人工器官を基本的に構成する。本セットは、さまざまなサイズの膝関節用人工器官から構成されている。
【背景技術】
【0002】
生来の膝関節の全体置換用の膝関節用人工器官は長い間既に知られている。典型的に歯、膝関節用人工器官は、大腿骨構成要素と脛骨構成要素とを有しており、外科医による移植の際に、大腿骨の遠位端と、対応して脛骨の近位端とに組付けられる。大腿骨構成要素は、生来の膝関節のヒンジ機能をまねるように脛骨構成要素と協働する。この目的に関して、2つの構成要素は接合片と固定用の軸とをそれぞれ有している。このような人工膝関節は全人工膝関節とも称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者のさまざまな解剖学的状態に適合させるため、膝関節用人工器官は複数のサイズで利用可能である。シリーズで製造されるモジュール式膝関節用内部人工器官の場合、構成部品はさまざまなサイズにおいて比較的安価に入手可能であるが、それぞれの解剖学的状態への適用はしばしば十分でない。したがって、人工関節を大腿骨の髄管にセメントにより埋め込んで固定する必要があるかもしれない。しかしながら、これは不十分な長期間における安定性という欠点をしばしば有する。セメントの緩みによって、その結果、大腿骨構成要素の軸が大腿骨にもはや強固に固定されなくなることが生じ得る。多くの場合、特に顆状骨の減少に関して、軸は、一般的に、荷重伝達に重要であり、人工関節の案内に不可欠である。緩みが生じた場合、人工関節が機能しなくなるという結果と共に、これらの機能のいずれも、もはや満し得ない。その後、再手術が要求される。この問題は、それぞれの解剖学的状態に適合するように個別に軸を製造することによって対処され得る。これは、大腿骨のCTスキャンの後に、それによって随管の個別形状を判断して軸を成形するように実行可能である。しかしながら、これはカスタムメイドモデルを必要とする。これは、よいフィット性とそれゆえのよい長期間の安定性との利点を有するが、非常に高価である。
【0004】
本発明の目的は、2つの異なるアプローチの利点を互いに組み合わせることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る解決策は、独立請求項の特徴にある。有用な展開は従属請求項の主題である。
【0006】
さまざまなサイズのモジュール式膝関節用内部人工器官を含む膝関節用人工器官セットにおいて、各膝関節用内部人工器官は、脛骨の近位端に固定するための脛骨構成要素と、大腿骨の遠位端に固定するための大腿骨構成要素とを有している。大腿骨構成要素は、脛骨構成要素と関節でつながって協働するための連結要素を含み且つ大腿骨の髄管に固定するための軸を含んでいる。上記セットは、さまざまなサイズの軸を含んでいる。大腿骨構成要素において、軸の形状が、連結要素に対向する遠位端から軸の近位自由端まで先細りとなるように選択され、遠位端に長円形の断面を有し、軸の近位自由端において円形断面を有するように設計されており、軸のサイズが増大するにつれて長円形断面によって画定される楕円率が増大することが、本発明によって規定されている。ここで、さまざまなサイズは楕円率に応じて好ましくは等級付けされている。
【0007】
本発明は、軸の断面設計を請求項に記載の方法で変更することによって、大腿骨及びその髄管の解剖学的状態に対するさまざまなサイズの特によい適合を達成できることを認識した。遠位端における長円形状は、自由端における円形の形態への遷移と相まって、骨における大腿骨構成部品の回転防止及び強固なフィットをもたらす。軸は、それ故、有利にも耐荷重軸となり、従来技術において優勢な事例であるような単なる案内機能を担うだけでなく、保持及び固定機能をも確保する。この利点を利用して、少数の所定のサイズでシリーズで製造される軸が、患者の特定の解剖学的構造に適合させたカスタムメイドの軸のうち大部分の備えであったものに匹敵する、しっかりとした固定を可能とするセットを形成できる。その結果、人工関節の適合性と長期間の安定性が格段に向上する。これまでの経験から、特にインプラントの緩みのリスクに晒される肥満した患者にとっても、内在する合併症を伴う再手術のリスクが減少する。
【0008】
本発明のメリットは、シャフトのサイズ等級を決めるのは楕円率であることを認識したことである。これは、それ故、軸の長さをサイズの決定パラメータとして考慮していた従来のアプローチとは異なっている。管理可能な数のサイズで、特によいフィットが達成されることは全くの驚きです。
【0009】
いくつかの用語がまず以下に説明される。
【0010】
ML方向は内側から側方に向かって延びる方向を意味するものと理解される。ML方向は体の矢状面に対して横断するように延びているので、横方向である。解剖学では、横軸とも称されるので、膝関節の屈曲動作の軸と広くは一致する(必ずしも正確ではないが)。
【0011】
ML寸法とは、ML方向における寸法、例えばML方向における楕円率の大きさを意味するものと理解される。
【0012】
AP方向は前から後へ、つまり体の前から後へ延びる方向を意味するものと理解される。この方向は体の前頭面を横断する。それは、解剖学では矢状軸とも称され、矢状面に対して直交している。
【0013】
AP寸法とは、AP方向における寸法、例えばAP方向における楕円率の大きさを意味するものとして理解される。上述した方向の全ては、内部人工器官の挿入(移植)状態に関するものである。
【0014】
楕円率はその長円形断面によって画定される。楕円率の大きさは断面の大きさに依存する。楕円率の楕円率程度は、長軸の短軸に対する比、例えばそのML寸法とそのAP寸法との間の比率によって表される。この比率が大きいほど、断楕円率の程度が大きく且つ円形状からの逸脱が大きくなる。
【0015】
円形断面とは、概ね円形の構成を意味するものと理解される。
【0016】
等価直径とは、円形状の場合には直径を意味し、非円形状の場合には平均直径を意味するものと理解される。セメントを用いない移植用に設計された同じサイズの軸と比較して、セメントで接合される移植用に設計された軸の場合に存在する可能性のある、潜在的なアンダサイズは等価直径の決定に考慮されない。
【0017】
長円形の断面は、好ましくは長軸がML方向にあり短軸がMP方向にある楕円率を有しており、好ましくは長軸の短軸に対する比率が1.1と1.4との間の範囲にある。軸方向関係の驚くべき狭いバンドにある楕円率のこの特別な構成によれば、本発明が認識するように、著しくよいフィットを達成することができる。これは、楕円率を楕円形にすることによってさらに向上させることができる。
【0018】
本発明の特に好ましい形態によれば、楕円率の構成は、楕円率の大きさがさまざまなサイズの軸の間で異なり、具体的には楕円率の大きさが軸のサイズが増大するにつれて増大するように提供される。ここで、さまざまなサイズにわたって画定された態様で楕円率を変更することは有利であるという驚くべき事実が利用される。さまざまなサイズの間の楕円率が形状において同一ではないが(そのサイズの点でのみ異なる)、楕円率が体系的に変えられる形状であるべきであるという方法で、これは便宜的に行われる。特に、軸のさまざまなサイズに対する非常に優れた相関性を提供するのは特に楕円率の大きさであるということを認識したことは、本発明のメリットである。本構成によれば、本発明は、サイズに関する決定パラメータとして軸長さを主に考慮していた従来のアプローチとは離れている。軸の理論的な厚みもサイズに関する決定パラメータとして使用されない。先行技術は、各サイズが楕円率のそれ自身の異なる大きさを有する場合の、膝関節用内部人工器官用のさまざまなサイズの軸のセットを作成することについての示唆は含んでいない。特によいフィットが管理可能な数のサイズにより得られることは全く驚くべきことである。
【0019】
膝関節内部人工器官は、モジュール式であり、さまざまなサイズの軸が設けられており、連結要素に選択的に接続され得る。
【0020】
軸はそれぞれ、好ましくは、髄管の内壁に対して圧迫するように設計された側面を有している。さらに又は代りに、軸はそれぞれ、一端部における長円形、特に楕円形の断面と、他端部における円形断面との間の円錐形の遷移体に対応する、側面を有している。これは、広い表面領域にわたって接触が達成されることを意味しており、骨への荷重の好ましい導入と骨における好ましい圧力の分配とに至る。これにより、荷重支持容量と長期間安定性とが向上する。
【0021】
軸は、特にチタン製でありセメントを使用しない場合、70から120GPaの範囲の弾性係数を有するように設計されている。それ故、生理学的に好ましい範囲にあり、一方で骨に対するより力の伝達を確保でき、他方で弾性係数が異なって不適切な場合に起こりやすい骨の変質を抑制できる(Wolffの変態法則)。
【0022】
さらに、軸は、有利なことに湾曲しており、つまり少なくとも1000mmの曲率半径を有する曲率を備えた弱い湾曲であり得る。このような、比較的弱い曲率によれば、軸の明確な位置決め及びそれによる膝関節内部人工器官の全体としての明確な位置決めが、骨において達成され得る。ここで、本発明は、典型的には、大腿骨の髄管が全体的には直線状ではなくわずかな曲率を有しているという事実を利用している。軸も同様に湾曲を有しているおかげで、好ましい位置がそれ故に作成される。外科医にとって、これは軸がいわば自分自身で位置決めすることを意味する。これは、向上した接触およびそれによる軸と骨との間の向上した力の伝達を確保するだけでなく、位置的に正確な移植をも確保する。いずれの曲率も、AP方向及びML方向においてさまざまなサイズを有するように好ましくは設計される。軸がAP方向においてより強く湾曲しているのが特に好ましい。これは、軸がML方向において全く湾曲を有していない、つまり湾曲していない程度にさえ至ってもよい。特に、軸は好ましくは一次元的に湾曲しており、それ故、曲率の平面は1つのみある。これは、効率的に生産できよい永久固定をさらに許容する、比較的単純な基本形状を結果として生じる。
【0023】
遠位端の軸の等価直径の7倍未満の長さを有する短い軸として軸を設計することが好都合である。この種の短い軸は、一方では比較的広いコーン角度を有するのでより普遍的な適合性を可能にするという利点を供給し、他方では短い軸が骨に深く入り込みにくいのでバクテリア又は他の細菌が骨に深く入り込むというリスクが低減するという、移植の成功及び患者の健康に関して特に価値のある利点を供給する。短い軸は、したがって、さらに短くなるように、好ましくは軸の遠位端における等価直径の5倍未満、より好ましくは2倍より大きい長さを有するように好都合にも設計されてもよい。人工関節の入り込み深さはそれ故さらに低減されており、最小の長さによって、力の伝達のための利用可能な十分に広い表面領域が依然としてあること、及び十分な案内があることが確保されている。
【0024】
軸の自由端は、丸み付けられたドーム形状を好都合にも有している。このような軸の先端は、例えば半球状に似ているが、大腿骨の髄管への軸のより単純化された導入及び挿入を許容する。さらに、このような設計は、非外傷性であって、骨の敏感な内部を保護する。自由端が全周にわたって丸み付けられていると特に有用である。
【0025】
本発明の更なる特に有利な態様によれば、連結要素を軸の1つに接続するアダプタが設けられており、さまざまな長さのアダプタが好ましくは設けられる。プラグイン式アダプタのようなアダプタの設計が好都合である。このようにして、適切なアダプタを選択することによって、長さの変更が他の軸の必要なしに達成され得る。それ故、本発明に係る膝関節用内部人工器官セットのために追加のサイズを要求することなく、患者の各解剖学的状態に対するより正確な適合が単純な方法において達成され得る。アダプタは、有利なことに、それぞれの角度の点で調整可能に設計されており、具体的には、それぞれの角度位置において固定され得る。軸と連結要素との間の画定された相対的な回転がそれ故、設定されて確保され得る。これは、同様に、本発明に係る膝関節用内部人工器官セットの、患者それぞれの解剖学的状態に対する適合性を、セットに必要とされる追加の軸モデルなしに、向上させる。この目的のために、アダプタは、2つのコーンとして好都合にも設計され、若しくは複数の歯を備えている。後者の選択肢は形状に合わせて角度を調整できるという利点を供給する一方で、前者は角度の無段階に調整できるという利点を供給する。
【0026】
膝関節用内部人工器官セットは、セメントで固定する軸と、セメントを使用しないで固定する軸も好都合にも有している。それ故、さまざまな要件に対して柔軟に対応することが可能である。ここで、セメントで固定する軸は、セメントを使用しない固定用の対応する軸に対して所定のアンダサイズを好ましくは有している。これは、手術中でさえも必要に応じて、セメントを使用しない軸をセメントで固定されるより多く又はより少ない同じ大きさの軸と交換することを可能にする。本発明に係る膝関節用内部人工器官セットの適用範囲はそれ故かなり拡がる。ここで、セメントで固定する軸は滑らかな側面を有しており任意で少数の溝(最大5)を備えている一方で、セメントを使用せずに固定する軸は波形側面を好ましくは有していることが、規定される。典型的には、側面の波形化の場合、少なくとも16、好ましくは少なくとも20の波形ストリップが軸の円周上に軸方向に延びて配置されている。波形は、セメントを使用しない移植の場合に初期固定の安全性を特に増大させて、側面の滑らかな設計又は少数の溝はしたがってセメントでの固定を向上させる。
【0027】
サイズに関して、軸は、ML寸法に応じて、具体的には規則的な方法で、好ましくは等級付けされている。規則的なステップでの等級付けが有用であることが分かっている。規則性は、例えば、数列(プログレッション)、具体的には線形数列、対数数列、又は等比数列によって、提供され得る。モジュール寸法に基づいた規則的な級数が特に好ましい。モジュール寸法(a)は2つの直接に連続するサイズ間のサイズステップに対応しており、セットのうち最小のサイズと最大のサイズもモジュール寸法に基づいて決定される。これは、例えば、最小サイズがモジュール寸法aの約10から15倍(例えば、13・a)に対応し、最大サイズがモジュール寸法aの約20から30倍(例えば、23・a)に対応するように、行うことができる。1つの寸法だけ、すなわちモジュール寸法aを特定することによって、それ故、好適な級数とそれによるセットの軸に関するサイズの選択とを達成することができる。軸が1:2の範囲のサイズの比率でおおよそ延びていると特に好ましく、モジュール寸法aは8と14との間、より好ましくは10と12との間のさまざまなサイズで存在するように、好ましくは選択される。
【0028】
本発明は、膝関節用内部人工器官セットから膝関節用内部人工器官のうち大腿骨構成要素を移植するための器具キットにさらに拡張する。すでに上述したように、膝関節用人工器官の大腿骨構成要素は、軸及び連結要素を有している。器具キットは、軸を受け入れる寸法となるように空洞を大腿骨の髄管の遠位端に形成する工具と、大腿骨の遠位端に連結要素用の座を製造するためのゲージと、軸を受け入れるように作成された空洞における軸の位置決めを決定する深さ計測装置と、大腿骨の遠位端に大腿骨構成要素を移植するための挿入器具とを有している。深さ計測装置は、軸を連結要素に固定するための軸及び/又はアダプタの要求される長さを示すように設計されている。この器具キットによれば、深さ計測装置は、軸を骨内に正確に位置決めするために使用され得る。深さ計測装置は、セットのさまざまなサイズに対応していることが理解される。深さ計測装置は、それ故、外科医が軸を空洞に正確に位置決めすることを可能にする。これは、装着精度が向上し、膝関節用内部人工器官の機能不全のリスクが効果的に打ち消される。
【0029】
さらに、角度計測装置が提供され得る。角度計測装置は、髄管内での軸の回転角度を決定するように設計されている。それ故、特に、上述したように湾曲した軸が随管内の好ましい位置を採用する場合に、その角度位置が検出されて決定され得る。この角度も、それにより最適なフィットを達成するように、移植の際に膝関節用内部人工器官の軸について設定されなければならない。好ましい方向は左側及び右側の両方に回転可能であって、左と右は体側に依存して内側と外側を交互に表しているので、別個のインジケータが髄管内の軸の回転方向のために好都合にも設けられている。このインジケータによれば、インジケータは参照されてそれにより気付かれることを必要とするのみなので、左と右との間または内側と外側との間の取り違えのリスクが大幅に減少する。インジケータは、例えば、パンチマーキング又は角度計測装置上の他の構造的要素として設計され得る。深さ計測装置は及び角度計測装置は、有利なことに、結合された要素として設計される。これは、部品の数を低減させて、取り扱いを単純化する。
【0030】
別個のアライメントゲージも提供され得る。アライメントゲージは、連結要素と軸との間の遷移部に好都合にも配置されており、軸と連結要素との間の相対的な回転を決定するように設計されている。それ故、随管における軸の回転について角度計測装置によって決定される角度が軸と連結要素との間の相対回転として、好ましくは相対回転がアダプタによって設定されるような方法で、制御され得る。このようにして、軸が自身を好ましい位置に配置したときに連結要素が正確に方向付けられるように、軸が正確に位置合わせされる。膝関節用内部人工器官の正確な角度での装着は、それ故、かなりより信頼性が高くより容易になる。
【0031】
本発明は、本発明に係る膝関節用内部人工器官セットからの個々の膝関節内部人工器官にも関する。
【0032】
本発明は、膝関節用内部人工器官セットからの、膝関節用内部人工器官の大腿骨構成要素を移植する対応する方法にさらに拡張する。大腿骨構成要素は軸と連結要素とを有している。上記方法は、膝関節用内部人工器官の移植用の膝関節を用意し、軸を受け入れるため大腿骨の遠位端に空洞を掘削し、ゲージを用いて大腿骨の遠位端に連結要素用の座を製造し、空洞における軸の位置決めを決定し、軸及び連結要素を有する大腿骨構成要素を挿入することによって特徴付けられている。軸の適切なサイズが膝関節用内部人工器官セットから選択される。
【0033】
本方法のより詳細な説明に関して、上記説明に参照がなされる。
【0034】
本発明は、本発明の有利な実施形態を参照する例示的な方法によって、図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】膝関節に移植された状態における膝関節用内部人工器官の斜視図を示す。
図2a】本発明の例示的な実施形態に係る膝関節用人工関節の大腿骨構成要素の概略的な正面図である。
図2b】本発明の例示的な実施形態に係る膝関節用人工関節の大腿骨構成要素の概略的な側面図である。
図3a】本発明の例示的な実施形態に係る大腿骨構成要素の軸の正面図である。
図3b】本発明の例示的な実施形態に係る大腿骨構成要素の軸の側面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った近位における軸端部の断面図を示す。
図5図3のV-V線に沿った遠位における軸端部の断面図を示す。
図6a】セメントを使用しない移植用の軸を示す。
図6b】セメントを使用する移植用の図6aと同じサイズの軸を示す。
図7図6に係る軸に合わせたやすりを示す。
図8a図6aに係る軸の斜視図を示す。
図8b図6bに係る軸の斜視図を示す。
図9】大腿骨構成要素の、軸及び連結要素間に配置するためのアダプタを示す。
図10a】軸が結合されたアダプタを示す。
図10b図10aとは異なる長さの軸が結合された図10aとは異なる長さのアダプタを示す。
図10c図10a及び図10bとは異なる長さの軸が結合された図10a及び図10bとは異なる長さのアダプタを示す。
図11a】アダプタの斜視図を示す。
図11b】アダプタの詳細表示の斜視図を示す。
図12a】深さ計測装置および角度計測装置が結合されたアダプタの斜視図を示す。
図12b】深さ計測装置および角度計測装置が結合されたアダプタの斜視図を示す。
図13】深さ計測装置および角度計測装置の詳細表示を示す。
図14a】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の1ステップを示す。
図14b】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の図14aとは異なるステップを示す。
図14c】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の図14a及び図14bとは異なるステップを示す。
図14d】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の図14aから図14cとは異なるステップを示す。
図14e】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の図14aから図14dとは異なるステップを示す。
図14f】例示的な実施形態に係る膝関節用内部人工器官の移植の図14aから図14eとは異なるステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
膝関節用内部人工器官は、膝に移植された状態で図1に示されている。図1は切り抜き図であって、膝関節91の周囲の大腿部の領域を示している。脛骨92の(上側の)近位端と、大腿骨の(下側の)遠位端93とが、見られる。生来の膝関節が、脛骨構成要素2と大腿骨構成要素3とを有する膝関節用内部人工器官によって置き換えられており、膝関節用内部人工器官は関節でつなげられた態様で後者と協働する。
【0037】
全体としての膝関節用内部人工器官と、その脛骨構成要素2及び大腿骨構成要素3とは、モジュール構造を有している。大腿骨構成要素3の構造を以下に説明する。大腿骨構成要素3の主要構成要素は図2に示されており、図2aに正面図及び図2bに側面図を示している。大腿骨93の遠位端に組み付けられた大腿骨構成要素3は、その主要構成要素として、連結要素4、軸5及びアダプタ6を含んでいる。連結要素4は、脛骨構成要素2と関節でつながれた相互作用の外向きの顆状突起要素42を有している。顆状突起要素42は、箱状本体41上に配置されており、その近位端に、軸5への接続のための連結片43を含んでいる。
【0038】
軸5は、アダプタ6を介して連結要素4に接続されている。例示的な実施形態には、ピン状のアダプタ6が示されており、アダプタ6は2つのコーンを備えている。アダプタ6は、遠位端により連結片43に組み付けられ、近位端により軸5上の対応する座56(図9参照)組み付けられる。概ねコーン形状の軸5は大腿骨93の髄管に挿入され、髄管は軸5を受け入れるように適切に広げられる。軸5は、セメントを使用しない移植の場合に締り嵌めによって髄管93に保持され得、又はセメントによって固定され得る(不図示)。膝関節用内部人工器官の大腿骨構成要素の移植及び固定は、このように基本的に周知であり、それ故、より詳細に説明する必要はない。
【0039】
軸5は、さまざまなサイズにおけるモジュール構成となっている。軸5,5’、5’’のさまざまなサイズの例が、図10a,b,cに示されている。本発明に係る軸5は、特定の方法で形成されている。図3aは軸5を正面図で示し、図3aから、より厚い遠位端51とより薄い近位端52とを有する直線的な円錐形状が見られる。
【0040】
近位端52は、大腿骨93の髄管への軸5の挿入を単純化するため且つ外傷性への影響を低減するために、丸み付けられている。近位端52の図が図4に示されている。したがって、断面54は近端52において円形である。遠位端51の図が図5の断面図に示されている。したがって、遠位端51において、断面55は長円形(oval)、特に楕円形(elliptical)である。ここで、短軸55aはAP方向にあり、長軸55bはML方向にある。軸5の側面53は、したがって、円錐形ではないが、楕円形断面と円形断面との間の遷移表面を形成している。
【0041】
側方から見た側面図において、軸5は同様に円錐形の先細りに設計されているが、この表面では直線ではなく、その代わりに図4bにおいて破線で示される中心線50によって象徴されるように、弱い曲率を備えている。曲率半径Rは、それ故、弱い曲率があるように比較的大きい。図示の例示的な実施形態では、曲率半径Rは1500mmである。
【0042】
軸5の設計に対するさまざまな代替案が図6に示されている。それらは、特に、セメントを使用しない移植用の軸5の設計(図6a参照)と、セメントを使用する移植用の軸5*の設計(図6b参照)とに関する。2つの軸5,5*は、一方ではそれぞれの側面53の設計の点で異なり、他方ではそれぞれの幅の点で異なる。
【0043】
図7を参照すると、図7はやすり13(またはコンプレッサ)を示している。これは、大腿骨93に軸5を受け入れるための空洞を作成するための工具である。空洞が作成されると、大腿骨93の髄管が軸5を受け入れる寸法となる大きさまで拡げられる。これは幅と深さの観点における寸法に適用され、曲率の観点にも適用される(つまりやすり13は軸5と同じように湾曲している)。これは、軸5の正確なフィットを達成するためにかなりの正確性で行われる。セメントを使用しない移植用に設けられる軸5の場合、これは空洞が軸用の締り嵌めが得られる大きさまでのみ拡げられることを意味している。具体的には、これは、空洞を拡げるのに使用される工具が、例えば図7に示されるやすり13等であるが、関連付けられた軸5より幾分小さい幅を有し、すなわち、締り嵌め寸法57よって低減されていることを意味している(図7においてやすり13の両側における点線によって象徴付けられている)。このような締り嵌め寸法の例は各側で0.2mmである。軸5が移植の際に小さな空洞に組み付けられるとき、これはセメントなしでさえ強固な固定を確保する締り嵌めを結果として生じる。固定の安全性を増大させるために、側面53は波形を有していることが、好都合にも提供される。波形は、図8aで示されるように、多数の溝59、図示された例示的な実施形態では具体的には24個の溝を備えている。これは、初期固定の観点及び固定の長期間の安定性の観点の両方において、しっかりとしたフィットを結果として生じる。
【0044】
セメントを用いた移植用に設けられた軸5*は、側面及びその幅の設計において異なっている。側面には波形が設けられていないが少数の溝59*が設けられている。図8bに示されるように、3つの溝が好ましくは設けられており、具体的には側面53の円周上に120°の角度間隔で等間隔に配置されている。幅に関して、セメントを用いた移植用に設けられた軸5*は、少なくとも側面53の領域においてアンダサイズ58によって縮小されている。アンダサイズ58は、ここでは、軸5*が大腿骨93の髄管に固定されるセメントジャケットの厚みを意味している。一例として、図6bは、点線と一点鎖線との間の距離に対応する1mmのセメントジャケットの厚さを示している。さらに、締り嵌めを用いた固定は、軸5*に設けられておらず、このため軸5*は、その幅が締り嵌め寸法57によってさらに縮小されている。この縮小は、セメントを使用する移植用の軸5*またはセメントを使用しない移植用の軸5が最終的に使用されるかによらず、1つの同じやすり13が要求される空洞を作成するのに使用され得るという利点を供給する。このように、固定のタイプによらず、同形のやすりがセットの各軸のサイズに使用され得る。
【0045】
軸5は、アダプタ6を用いて連結要素4上に配置されている。アダプタ6は、近位コーン61及び遠位コーン62を有する2つのコーンとして設計されており、それぞれ切り込まれた領域60を介して一体に接続されている。コーン61は、軸の遠位端において対応する座56に対するコーン接続用に使用されるようになっており、それに応じて、遠位コーン62は連結要素の連結片43上のコーン接続の対応する座に挿入されるようになっている。アダプタは、軸5と連結要素4との間の広く自由な角度調節を可能としており、アダプタ6を用いてコーン接続を共に押し込むことによって、この角度位置が固定される。さらに、固定ねじ65が任意で設けられており、これによりアダプタ6が軸側に固定される。これに対応して、固定手段(不図示)を連結側に設けてもよい。アダプタ6を用いた軸5と連結要素4との間の角度可変性の図が図11aに示されている。両矢印によって象徴化されているように、軸5の角度位置を自由に変えることができる。アダプタ6の前部における軸5との間の遷移は、図11bの詳細図に見られ、そこでは角度マーキング85が角度位置を視認するために軸5上に配置されている。
【0046】
軸5は、さまざまな長さを有するさまざまなサイズで利用可能である。それ故、図10bに示される通常の長さの軸、図10aに示される短い軸5’および図10cに示される長い軸5’’がある。例えば、短い軸は通常の長さの軸5よりも30mm短くすることができ、長い軸は通常の長さの軸5より30mm長くすることができる。アダプタ6も、アダプタの長さが軸5の長さよりも短い量により変化するように、さまざまな長さにおいて好都合にも利用可能である。例えば、短いアダプタ6’は、通常の長さのアダプタ6よりも5又は10mm短くすることができ、又は長いアダプタ6’’は、通常のアダプタ6よりも5又は10mm長くすることができる。それ故、適切なアダプタを使用することにより、すでに上述した角度調節機能及び固定機能に加えて、長さの微調節が達成され得る。
【0047】
図12は、結合された深さ計測装置7及び角度計測装置8を示す。この装置は中央開口74を有する略台形状のベースプレート70を含んでいる。移植器具の軸、特にやすり13又はドリルの軸14はこの開口74を通って挿入され得る。この軸は画定された位置にマーキング75を備えている。深さ計測装置7は、半殻状のアタッチメント72を有しており、このアタッチメント72は開口74を一方の半分において縁取っている。深さマーキング73はアタッチメント72の上側に配置されている。角度のついた接触面が、ベースプレート70の後側77に形成されている。移植の際、この接触面が大腿骨93に作成された空洞内に挿入されるやすり13の軸14に配置されて、大腿骨93の遠位端における端面に対して突き当てられる。ベースプレート70はそれ故、大腿骨93に対する画定された位置を採用する。大腿骨93の空洞におけるやすり13の深さはそれ故、深さ計測装置7上の深さマーキング73に基づいてやすり13の軸14上のマーキング75を用いて読み取ることができる。
【0048】
角度計測装置は、それに応じて構成されている。角度計測装置は、同じベースプレート70を使用している。角度目盛り80も設けられている。角度メモリも開口74を縁取るように具体的にその頂部に配置されている。さらに、インジケータ82が設けられており、これはパンチングされた開口として設計され得る。これは、回転、すなわち、インジケータ42に向かう方向又はインジケータ42から離れる方向のいずれかを特徴付ける(視点に依存するために紛らわしい左右の回転表示の代わりとして)。角度目盛り82は、軸14上のマーキング基準81と共に働く(図13参照)。ここで、やすり13が軸5と同じように湾曲しているという事実を活用している。それ故、軸5は、やすり13によって作成される空洞にやすり13自身と同じように位置合わせされる。それ故、やすり13は一種の試用の移植片として使用され得る。しかしながら、独立した試用の移植片を提供することも同様に可能である。角度目盛り80を用いて、大腿骨93の空洞におけるやすり13の角度位置が軸14上のマーキング81及びインジケータ82に基づいて決定され得る。このようにして得られた深さ及び角度に関連する情報を用いて、軸5を連結要素4上の正しい角度位置に取り付けることができ、人工関節を大腿骨93に正しい深さで形成された空洞に挿入できる。
【0049】
移植の個々のステップは図14に示されている。第1ステップ14aでは、大腿骨93の髄管へのアクセスルートが付きぎりまたはドリル11を用いて開けられて、最初に穴が開けられる。やすり13を用いて、髄管が拡げられて、軸5を受け入れる空間がそれ故、作成される。画定された深さを設定するため、停止板12が好都合にも設けられ、停止板はやすり13の軸14上に配置される(図14b参照)。やすり13の軸14上の対応する厚肉部15と相まって、空洞がある深さを超えて拡げられないことがそれ故、確保され得る。髄管は、その後、髄管内で骨皮質への接触に到達するまで、それ自体既知の方法で髄管が徐々に拡げられる。さまざまな長さのやすり13が有利なことに利用可能とされているので、最小のやすりによるフィットが十分にしっかりしない場合、同じサイズ(幅)であるがより長いやすりを選択して、それによって髄管内で安全な骨皮質への接触を確立できる。このような、同じ幅(サイズ)であるが異なる長さのやすりが図14cにおいてやすり13’およびやすり13’’として示されている。
【0050】
その後、それ自体既知の態様でゲージが適用されて、そのうちの1つが図14dにおけるゲージ16として例示的に示されている。その後、必要な切削が、同様にそれ自体既知の態様で大腿骨の遠位端になされる。最終的に必要なアダプタの長さを決定するため、深さ計測装置7が使用される。深さ計測装置は軸14上に配置されて、上述した方法で深さが計測される。深さに応じて、適切な長さのアダプタ6がそれ故、選択され得る。これにより深さの微調整が可能となる。さらに、空洞の角度位置及びそれによる大腿骨93に固定される軸5の角度位置が、上述した態様で決定され得る。大腿骨構成要素3の軸と連結要素との間の遷移部に一時的に配置されたアライメントゲージ88を用いて(別個の試用人工関節が好ましくはここでは使用される)、軸5と連結要素4との間の回転角度が設定される(図14e参照)。最後に、この角度が軸5をアダプタ6上に適切に配置して、コーン接続を使用して軸5を固定するのにも使用される。連結要素4及び軸5を有する大腿骨構成要素3が、このようにして長さ及び(回転)角度の点で正しく設定される。(象徴的に示された)挿入工具18を用いて、その後、大腿骨93の遠位端における準備された部位に移植され得る(図14f参照)。
図1
図2a)】
図2b)】
図3a)】
図3b)】
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図7
図8a)】
図8b)】
図9
図10a)】
図10b)】
図10c)】
図11a)】
図11b)】
図12a)】
図12b)】
図13
図14a)】
図14b)】
図14c)】
図14d)】
図14e)】
図14f)】
【国際調査報告】