(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】急性心房細動の処置のためのサルカルディン投与
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4025 20060101AFI20220204BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K31/4025
A61P9/00
A61P9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534215
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 US2019066003
(87)【国際公開番号】W WO2020123824
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512123949
【氏名又は名称】フヤ バイオサイエンス インターナショナル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,スザンヌ,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ゲイリー,ティー.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA36
4C086ZA38
(57)【要約】
【解決手段】サルカルディンを、必要としている被験体に投与するための組成物および方法が本明細書で提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、医薬組成物は、
QRS、PDur、PR、およびQTcFの増加、
を含む汎ECGパラメータの変化を生じさせる、医薬組成物。
【請求項2】
N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、医薬組成物は、
JTpの減少、およびTpTeへの影響またはTpTeの増加がないこと、
を含むECGパラメータ変化を生じさせる、医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物はECGパラメータ変化を生じさせるために、被験体へ20mg~1000mgの投与量で投与される、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記投与量は20mg~600mgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬学的に許容可能な塩は、以下の式で表されている請求項1~4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【化1】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の医薬組成物を、必要とする被験体に投与する方法であって、それによって、QRS、PDur、PR、TpTe、およびQtcFが被験体において増加し、およびJTpが被験体において減少する、方法。
【請求項7】
N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、医薬組成物は、被験体における化合物のCmaxが、600mgの化合物の投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生成する、医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容可能な塩は以下の式で表されている、請求項7に記載の医薬組成物。
【化2】
【請求項9】
前記医薬組成物は、約20mg~600mgの医薬組成物を被験体に投与した後、約40msecを超えて逸脱しないQTの変化をもたらす、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1つに記載の医薬組成物を必要とする被験体に投与する方法であって、それによって、医薬組成物は、被験体における化合物のCmaxが、600mgの化合物の投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生成する、方法。
【請求項11】
心房細動(AF)を処置する方法であって、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、それによって、QRS、PDur、PR、およびQtcFを増加させ、およびJTpを減少させ、およびTpTeへ効果または増加をもたらさない、方法。
【請求項12】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約20mg~約1000mgの投与量範囲で投与される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約20mg~約600mgの投与量範囲で投与される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
心房細動(AF)を処置する方法であって、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、約60mg~約800mgの投与量で、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含む、方法。
【請求項15】
投与終了時の心房細動(AF)を処置する方法であって、治療上有効な量のサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、前記ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度が約370ng/mL~約8000ng/mLであり、サルカルディンの前記血漿濃度が約1時間以内に少なくとも約75%減少する、方法。
【請求項16】
投与終了時の前記ヒト被験体のサルカルディンの前記血漿濃度は約5000ng/mL~約6000ng/mLである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約400mg~約800mgの投与量で投与される請求項14~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約500mg~約700mgの投与量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約600mgの投与量で投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サルカルディンの薬学的に許容可能な塩が投与される、請求項11~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
サルカルディン硫酸塩が投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約15分~約2時間の期間にわたって投与される、請求項11~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30分~約1時間の期間にわたって投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30分の期間にわたって投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
AFは急性AFである、請求項11~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
AFは発作性AFである、請求項11~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
AFは再発性AFである、請求項11~24のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本出願は、2018年12月13日出願の米国仮特許出願第62/779,056号、および2019年6月6日出願の第62/858,324号の優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の全体は参照によって本明細書に引用される。
【0002】
本発明の教示は、サルカルディン(sulcardine)を必要とする被験体へ投与するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1および特許文献2(これらの各々はその全体を参照することで本明細書に引用される)は、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(以下「サルカルディン」)、およびその薬学的に許容可能な塩の活性、加えてサルカルディンの様々な使用、およびサルカルディンを治療上有効な量で被験体へ投与する方法を記載する。
【0004】
Chenらは、ヒトへ経口投与した時のサルカルディンの薬物動態プロファイルを報告する。非特許文献1を参照。
【0005】
様々ではあるが望ましい薬物動態プロファイルを達成するために、ヒトを対象とする代替的なサルカルディン投与のための製剤と方法を開発する必要が今なお存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,541,464号
【特許文献2】米国特許第8,637,566号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chen et al., “Pharmacokinetics, safety, and tolerability of sulcardine sulfate: an open-label, single-dose, randomized study in healthy Chinese subjects”, Fundamental & Clinical Pharmacology. 31 (2017) 120-125
【発明の概要】
【0008】
一実施形態において、本明細書では、治療上有効な量のサルカルディンを投与するための医薬組成物が提供される。一実施形態において、本明細書では、治療上有効な量のサルカルディンの強化された、および、より安全な投与のための医薬組成物が提供される。
【0009】
一実施形態において、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、被験体における医薬組成物のCmaxが、600mgの医薬組成物の投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生じさせる。
【0010】
一実施形態において、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、被験体における化合物のCmaxが、600mgの化合物の投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生じさせる。
【0011】
一実施形態において、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、実施例に例示されているECGの変化などの望ましい薬物動態的および薬力的な効果を示す。
【0012】
本医薬組成物を使って様々な方法が実現可能である。
【0013】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(atrial fibrillation)(AF)を処置する方法が提供され、方法は、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、それによって、一時的であるが、QRS、PDur、PR、およびTpTeを堅調に増加させ、JTpを減少させる。一実施形態において、特定の理論に限定されず、これらのECGパラメータの変化は、血流、および心臓などの血管が多い臓器から二次コンパートメントへの薬剤の迅速な固有の再分配と組み合わされた静脈注入による血流中の薬剤の迅速な蓄積に関連付けられる。このようなプロファイルは心房細動から洞調律への一時的にリンクしたカーディオバージョンに関連する関連ECGパラメータの迅速で大きな変化につながり、その後、薬剤再分配時のECGパラメータの変化が迅速に逆転し、QT、QRS、およびTpTeの延長に関する催不整脈事象のリスクが軽減する。
【0014】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、方法は、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、約60mg~約800mg、一実施形態において約180mg~約800mg、一実施形態において約200mg~約800mg、および一実施形態において約400mg~約800mgの投与量で、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含む。
【0015】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、方法は、治療上有効な量のサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、前記ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度は投与終了時に約1400ng/mL~約8000ng/mL、および一実施形態において約4000ng/mL~約8000ng/mLであり、前記サルカルディンの血漿濃度は約1時間以内に少なくとも約75%減少する。
【0016】
本明細書で提供される組成物および方法の多様な実施形態において、サルカルディンの薬学的に許容可能な塩はサルカルディン硫酸塩である。一実施形態において、サルカルディンの薬学的に許容可能な塩はサルカルディン硫酸塩三水和物である。
【0017】
本教示のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、実施例、および添付の請求項を参考にして、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
当業者は、以下に記載されている図面は例示目的のために過ぎないことを理解する。この図面は、本教示の範囲をあらゆる方法で制限することを意図したものではない。
【0019】
【
図1】
図1は、投与された平均(95% Cl)サルカルディン(ng/mL)をY軸に、時間(時)をX軸に示すグラフである。描写されるように、様々な投与量で投与されるサルカルディンは約0.5時間でピーク血漿濃度(Cmax)に達し、約1.0時間でほとんど除去または単離される。
【
図2A】
図2Aは、サルカルディンによる処置と時間によりΔΔPRを表す。
【
図2B】
図2Bは、サルカルディンによる処置と時間によりΔΔQRSを表す。
【
図2C】
図2Cは、サルカルディンによる処置と時間によりΔΔQTcFを表す。
【
図2D】
図2Dは、サルカルディンによる処置と時間によりΔΔHRを表す。
【
図3A】
図3Aは、ΔPRに関するサルカルディン濃度と効果の関係性を表す。
【
図3B】
図3Bは、ΔQRSに関するサルカルディン濃度と効果の関係性を表す。
【
図3C】
図3Cは、ΔQTcFに関するサルカルディン濃度と効果の関係性を表す。
【
図3D】
図3Dは、ΔHRに関するサルカルディン濃度と効果の関係性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I 定義
本明細書で使用されている用語とフレーズは、特に明記されていない限り、以下のような意味を持つ。
【0021】
本明細書において使用されるように、特に指定のない限り、サルカルディンの化学名は、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドであり、以下の構造を有する。
【0022】
【0023】
本明細書において使用されるように、特に指定のない限り、サルカルディン硫酸塩は以下の構造を有する。
【0024】
【0025】
一実施形態では、サルカルディン硫酸塩は、サルカルディン硫酸塩三水和物である。
【0026】
本明細書において使用されるように、特に指定のない限り、「Cmax」は最高血漿中濃度を意味する。
【0027】
本明細書において使用されるように、特に指定のない限り、「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、組成物または剤形の成分の用量、量、または重量パーセントに関連して使用されるとき、指定された用量、量、または重量パーセントから得られるものと同等の薬理効果をもたらすと当業者に認められる用量、量、または重量パーセントを意味する。ある実施形態では、「約」および「およそ」という用語は、この文脈で使用されるとき、指定された用量、量、または重量パーセントの30%以内、20%以内、15%以内、10%以内、または5%以内の用量、量、または重量パーセントを表す。
【0028】
「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置する(treating)」は、予防および/または治療目的のための医薬組成物または製剤の投与を指すように本明細書で使用される。「治療的処置(therapeutic treatment)」という用語は、すでに不整脈などの疾病がある患者に処置を施すことを指す。ゆえに、好ましい実施形態では、処置するとは、治療上有効な量の抗不整脈剤の哺乳動物への投与を指す。
【0029】
処置の対象である「被験体(subject)」は、原核細胞、真核細胞、組織培養物、組織、または、動物、例えば、ヒトを含む哺乳動物である。処置を受けるヒト以外の動物は、例えば、サル、マウス、イヌ、ラビットなどのウサギ、家畜、競技用動物、およびペットである。本明細書で使用されるように、特に指定のない限り、「患者(patient)」はヒト被験体である。
【0030】
本明細書で用いられる「抗不整脈剤(anti-arrhythmic agent)」は、被験体内における不整脈の処置または関連症状の軽減の治療効果を有する分子を指す。不整脈の非限定的例を挙げると、心房細動などの上室性頻脈性不整脈、心室性期外収縮、心室頻拍、および心室細動がある。一態様において、不整脈剤はサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩である。別の態様において、不整脈剤はサルカルディン硫酸塩である。
【0031】
本明細書で使用されるように、サルカルディンの薬学的に許容可能な塩は、不整脈の処置において有用な製剤の活性薬剤であり得る。このようなサルカルディン塩の例は、(A)酢酸塩、ホウ酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、塩酸塩、臭化物、塩化物、ヨウ化物、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、およびフルオロリン酸塩などの無機酸塩、(B)アムソン酸塩(amsonate)(4,4-ジアミノスチルベン-2,2-二硫酸塩)、酒石酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩(camsylate)、エジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、グルタミン酸塩、グルコン酸塩、グルセプト酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1-メテン-ビス-2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩、エンボン酸塩(einbonate))、パモ酸塩、パントテン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラメート(suramate)、プロピオン酸塩、吉草酸塩、フィウナレート(fiunarate)、フマル酸塩、および酒石酸塩などの有機酸塩、ならびに、(C)サルカルディンのナトリウム、カリウム、リチウム、およびカルシウム塩などのアルカリ金属塩およびアルカリ類塩である。この文脈において、薬学的に許容可能な塩は、その構造内に、1つよりも多くの荷電原子、したがって、1つ以上の対イオンを有し得る。
【0032】
「有効な量(effective amount)」、「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」、および「薬学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)」というフレーズは、治療効果をもたらす、現在開示されている抗不整脈剤などの活性薬剤の量を示す。処置において有用な活性薬剤の投与量が治療上有効な量である。よって、治療上有効な量は、臨床試験結果および/またはモデル動物研究によって判定された望ましい治療効果をもたらす量である。特定の実施形態において、活性薬剤はあらかじめ決められた投与量で投与される。よって、治療上有効な量は投与された量である。この量は、患者の身長、体重、性別、年齢、および病歴によって異なり得る。
【0033】
「担体(carrier)」または「賦形剤(excipient)」は、化合物の投与を促進するために、例えば、化合物の放出および/またはバイオアベイラビリティを制御するために用いられる化合物または材料である。固形担体は、例えば、でんぷん、乳糖、リン酸二カルシウム、スクロース、およびカオリンを含む。液体担体は、例えば、滅菌水、生理食塩水、緩衝液、非イオン性界面活性剤、ならびに、油、ピーナツ油、およびごま油などの食用油を含む。加えて、当該分野において一般的に用いられている多様なアジュバントが含まれ得る。これらおよび他のこのような化合物は、例えば、以下の文献に記載されている:Merck Index,Merck&Company,Rahway,N.J。医薬組成物中に含まれる多様な成分についての検討について、例えば、以下の文献に記載されている:Gilman et al.(Eds.)(1990);GOODMAN AND GILMAN’S:THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,8thEd.,Pergamon Press。
【0034】
「薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」、および「薬学的に許容可能な賦形剤(pharmaceutically acceptable excipient)」というフレーズは、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、等張、および吸収遅延剤などを指す。薬学的活性物質に対するこのような媒体、および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が当該活性成分と不適合である場合以外は、当該媒体または薬剤の処置組成物中での使用が考えられる。補助活性成分も組成物に含まれ得る。適切な薬学的に許容可能な賦形剤を非限定的に挙げると、緩衝液、希釈剤、張性剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、およびこれらの混合物がある。
【0035】
「緩衝液(buffer)」という用語は、薬学調製物のpHを安定させる薬学的に許容可能な賦形剤を意味する。適切な緩衝液は当該分野において周知であり、文献に記載されている。薬学的に許容可能な緩衝液は、限定されないが、グリシン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸塩緩衝液、コハク酸緩衝液、およびリン酸緩衝液を含む。使用した緩衝液から独立して、pHは約2~約9の範囲、または約2.5~約7の範囲、または約3~約5の範囲、または約3の値で、当該分野において公知の酸または塩基、例えば、コハク酸、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸、およびクエン酸、水酸化ナトリウム、ならびに水酸化カリウムを用いて、調整可能である。適切な緩衝液としては、限定されないが、グリシン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カコジル酸塩、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、およびクエン酸塩が挙げられる。一態様において、緩衝液はグリシン緩衝液である。別の態様において、緩衝液はヒスチン緩衝液である。緩衝液の濃度は、約1mM~約100mM、または約2mM~約40mM、または約5mM~約20mMであり得る。
【0036】
II 使用方法
AFの処置における薬学的治療の目的は、正常洞調律に対する高速カーディオバージョンを誘導するために、急性AF処置しているのか、または発作性AFを処置しているのか、または薬剤の長期投与によるAF再発を予防しようとしているのかに応じて異なる。頻繁な再発歴のない患者の急性AFまたは発作性AFの場合、そして、おそらくある程度の再発性AFの場合にも、再発性AFはいずれにしても急性カーディオバージョンに対してより耐性があるが、目的は、典型的には単一の薬剤投与量の投与または制限された投与回数の投与によって、現在AFエピソードを患っている患者に迅速に薬学的にカーディオバージョンを誘導することである。代替的に、再発性AFエピソードの予防には慢性的な予防処置が必要になることもある。
【0037】
迅速なカーディオバージョンを誘導するための急性AFまたは発作性AFの処置の文脈において、サルカルディンおよびその薬学的に許容可能な塩の有効性は、ピーク血漿濃度の関数であると考えられ、正常洞調律へのカーディオバージョンのための時間を得るために、高血漿レベルを最小限の期間、例えば、数分間から1時間未満にわたって維持する必要がある。その期間後、患者は、他の引き金となる事象が将来の不整脈の発生を引き起こす場合を除いて、継続的な薬剤の薬学的血漿レベルを必要とすることなく、正常洞調律のままであるはずである。AFエピソードの病歴がないか、または限られているタイプの患者は、再発リスクが低く、介入方法にかかわらず、典型的にはよりうまくカーディオバージョンすることができるので、カーディオバージョン後の継続的な薬剤治療の必要性は示されない。急性AFまたは発作性AFの示唆については、薬剤の血液レベル(一定の血漿-時間曲線下薬物濃度面積)を長期間一定に維持することは不要である。このような臨床的状況における薬剤の使用は、心臓を正常洞調律へと迅速に戻すための電気カーディオバージョンの利用に類似している。
【0038】
持続性AFまたは頻繁性再発AFの患者の処置におけるサルカルディンおよびその薬学的に許容可能な塩の有効性は、ピーク血漿濃度ではなく、血漿-時間曲線下面積の関数であると考えられる。以前の重大なAF病歴があり、頻繁なAF再発を経験している患者は、上記の急性コホートよりも再発のリスクがはるかに高い。頻繁なまたは長期的な(慢性)AFエピソード後に、心房はリモデリングすると思われ、患者を将来の事象のより高いリスクにさらすことになる。
【0039】
再発性AFの予防またはカーディオバージョンさせた慢性AFの患者の処置は、薬剤濃度ピークおよびトラフ濃度を、投与期間にわたって、高血漿濃度に関連する有害事象のリスクを最小化し、さらに血液レベルを最小限に薬学的に活性な濃度よりも上に維持する範囲内に維持しておく必要がある。よって、再発性または慢性的なカーディオバージョンさせたAF患者の処置において、例えば、制御放出製剤によって、またはゆっくりとした静脈注入によって、活性薬剤をより長期間にわたって投与することには、果たすべき役割がある。急性/発作性AFの医療現場において、目的は、数分間~1または2時間にわたって、かなり高い血中濃度を達成することで、心臓が薬剤治療に反応して正常洞調律へ戻るための十分な時間を確保することである。この期間にわたって連続的な短期間の点滴によって薬剤をロードすることは、迅速なIV Push法による薬剤投与と違って、血漿濃度ピークを鈍化させ、Icaイオンカルシウムチャネルで活性を有する抗不整脈剤で生じ得る、または、または迷走神経抑制作用を有する抗不整脈剤による低血圧症のリスクを最小化しつつ、カーディオバージョンを得られるのに十分な期間にわたって高い血液レベルを達成することができる。
【0040】
本明細書では、AF、例えば、急性AFまたは発作性AFの処置に適した薬物動態/薬力学(PK/PD)プロファイルを可能にする、被験体におけるサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩の投与のための医薬組成物および方法が提供されている。一実施形態では、特定の理論に制限されることなく、PK/PDプロファイルは、迅速なTmaxおよび高いCmaxのための静脈内投与、不整脈のリスクを下げるための迅速な再分配、ECGの汎電気生理学的効果、ならびに低Tdepリスクを示す、相対するQTc/TpTeおよびjTpのプロファイルの1つ以上の要素によって達成される。一実施形態では、特定の理論に制限されることなく、驚くべきことに、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を特定の投与量および特定の経路で投与し得るが、特定の薬物動態学的および薬力学的なパラメータを用いて測定した場合には、すぐに効果が得られるが、すぐに効果を失うことも発見されている。したがって、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、特定の投与量および特定の投与経路を用いて、より安全かつ効果的に被験体へ投与することができ、有益な結果ももたらす。
【0041】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、
QRS、PDur、PR、およびQTcFの増加、JTpの減少、およびTpTeへの影響または増加がないこと、
を含む汎ECGパラメータの変化を生じさせる。
【0042】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、
QRS、PDur、PR、およびQTcFの増加、JTpの減少、およびTpTeへの影響または増加がないこと、
を含む投与量に比例したECGパラメータの変化を生じさせる。
【0043】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、
QRS、PDur、PR、およびTpTeの増加、
を含む投与量に比例したECGパラメータの変化を生じさせる。
【0044】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、
JTpの減少、
を含む投与量に比例したECGパラメータの変化を生じさせる。
【0045】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、
TpTe時間間隔への影響がないことまたは時間間隔の延長がないこと、
を含む投与量に比例したECGパラメータ変化を生じさせる。
【0046】
一実施形態では、投与範囲は20mg~1000mgである。一実施形態では、範囲は20mg~600mgである。一実施形態では、範囲は60mg~600mgである。
【0047】
一実施形態において、医薬組成物中の薬学的に許容可能な塩はサルカルディン硫酸塩である。
【0048】
一実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されている組成物を、必要とする被験体に投与する方法が提供され、多くのECGパラメータは被験体において変更される。一実施形態では、QRS、PDur、PR、およびTpTeは被験体において増加し、JTpは被験体において減少する。
【0049】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドである化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、被験体における医薬組成物のCmaxが、600mgの医薬組成物を投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1.0時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生成する。
【0050】
一実施形態において、本明細書では、N-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(1-ピロリジニルメチル)ベンジル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である化合物を含む医薬組成物が提供され、医薬組成物は、被験体における化合物のCmaxが、600mgの化合物を投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生成する。
【0051】
一実施形態において、医薬組成物中の薬学的に許容可能な塩はサルカルディン硫酸塩である。
【0052】
一実施形態において、医薬組成物は約20mg~600mgの間の医薬組成物を被験体に投与した後、約40msecを超えて逸脱しないQTの変化を生じさせる。
【0053】
一実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されている医薬組成物を、必要とする被験体に投与する方法が提供され、医薬組成物は、被験体における医薬組成物のCmaxが、600mgの医薬組成物を投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生じさせる。
【0054】
一実施形態において、本明細書では、本明細書で提供されている医薬組成物を、必要とする被験体に投与する方法が提供され、医薬組成物は、被験体における化合物(サルカルディン)のCmaxが、600mgの化合物を投与後約0.5時間で約5000ng/mL~約6000ng/mLであり、および投与後約1時間でCmaxの最大25%であることによって特徴付けられる血漿プロファイルを生じさせる。
【0055】
一実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。
【0056】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、方法は、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、その結果、QRS、PDur、PR、TpTe、およびQtcFの増加、およびJTpの減少を含む汎ECGパラメータが変化する。
【0057】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、その結果、QRS、PDur、PR、TpTeが増加し、およびJTpが減少する。
【0058】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約20mg~約1000mgの投与量範囲で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約20mg~約600mgの投与量範囲で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg~約600mgの投与量範囲で投与される。
【0059】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、方法はサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、約60mg~約800mgの投与量で必要とするヒト被験体に静脈内投与することを含む。一実施形態において、投与量は約100mg~約800mgである。一実施形態において、投与量は約200mg~約800mgである。一実施形態において、投与量は約400mg~約800mgである。
【0060】
一実施形態において、当該ヒト被験体のQT時間間隔は、投与終了時に約40msec以下増加する。一実施形態において、当該ヒト被験体のQT時間間隔は、投与終了時に約10msec~約40msec増加する。一実施形態において、当該ヒト被験体のQT時間間隔は、投与終了時に約20msec~約30msec増加する。
【0061】
一実施形態において、本明細書では、心房細動(AF)を処置する方法が提供され、方法は、治療上有効な量のサルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩を、必要とするヒト被験体に静脈内投与する工程を含み、当該ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度が投与終了時に約370ng/mL~約8000ng/mLであり、当該サルカルディンの血漿濃度が約1時間以内に少なくとも約75%減少する。
【0062】
一実施形態において、当該ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度は投与終了時に約1400ng/mL~約8000ng/mLである。一実施形態において、当該ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度は投与終了時に約2000ng/mL~約8000ng/mLである。一実施形態において、当該ヒト被験体のサルカルディンの血漿濃度は投与終了時に約5000ng/mL~約6000ng/mLである。
【0063】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg~約800mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約180mg~約800mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約360mg~約800mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約400mg~約800mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約450mg~約750mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約500mg~約700mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約550mg~約650mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約600mgの投与量で投与される。
【0064】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約60mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約180mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約360mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約400mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約450mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約500mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約550mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約600mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約650mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約700mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約750mg以上の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は約800mg以上の投与量で投与される。
【0065】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約180mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約360mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約400mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約450mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約500mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約550mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約600mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約650mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約700mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約750mgの投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約800mgの投与量で投与される。
【0066】
一実施形態において、サルカルディンの投与量は、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mg、500mg、510mg、520mg、530mg、540mg、550mg、560mg、570mg、580mg、590mg、およびその間の投与量も含み得る。投与量は、約610mg、620mg、630mg、640mg、650mg、660mg、670mg、680mg、690mg、700mg、710mg、720mg、730mg、740mg、750mg、760mg、770mg、780mg、790mg、800mg、およびその間の投与量も含み得る。また、サルカルディンの投与量は、安全であり、かつ意図した効果があると示されるのであれば、約850mg、900mg、950mg、および1000mgも含み得る。
【0067】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約60mg、180mg、約360mg、または約600mgの投与量、およびその間の投与量で投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約180mg~約600mgの投与量で投与される。
【0068】
一実施形態において、サルカルディンの薬学的に許容可能な塩が投与される。一実施形態において、サルカルディン硫酸塩が投与される。
【0069】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約50mg/mLの濃度の溶液として投与される。一実施形態において、溶液が、患者に50mLの体積で約200mg~500mgの投与量を送達するために、約8mg/mL以下に希釈される。
【0070】
一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約15分~約2時間の期間にわたって、投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30分~約1時間の期間にわたって、投与される。一実施形態において、サルカルディンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約30分の期間にわたって、投与される。
【0071】
一実施形態において、AFは急性AFである。
【0072】
一実施形態において、AFは発作性AFである。
【0073】
一実施形態において、AFは再発性AFである。
【0074】
III 実施例
本開示の態様は、以下の実施例を考慮してさらに理解できるが、これらの実施例は、本開示の範囲をいかなる方法でも限定するものと解釈されるべきではない。
【0075】
実施例1-サルカルディンの投与
HBI-3000(サルカルディン硫酸塩)は、ClinicalTrials.gov 識別名:NCT03397641に提供されているプロトコルによって、ヒト被験体に投与された。そのプロトコルは、内容全体を参考により本明細書に組み込まれている。
【0076】
背景:HBI-3000は、フヤ バイオサイエンス インターナショナル(HUYA Bioscience International)が発症後まもない心房細動(AF)の変換のために開発している、INa-Peak、INa-Late、ICa,L、およびIKrに対するインビトロ阻害効果が比較的バランスのとれた多イオンチャネルブロッカーである。
【0077】
目的:本明細書では、健康な被験体におけるHBI-3000の静脈内投与(iv)による安全性、忍容性、薬学動態、および心電図(electrocardiogram)(ECG)に関する用量漸増単回投与第1相試験の結果が示される。選択されたECGパラメータ、および略語は表1に示されている。
【0078】
【0079】
方法:47人の被験体を、8人ずつの被験体の6つのコホートに無作為化し、HBI-3000の5つの内の1つの用量漸増単回投与(表2)またはプラセボを(6:2で)受けさせ2つのコホートは600mgの投与を受けた。HBI-3000の投与量は、20mg(コホートA)から、60mg(コホートB)、180mg(コホートC)、360mg(コホートD)、600mg(コホートE、およびF)までの範囲であった。薬剤は凍結乾燥粉末であって、50mLの溶液として30分かけて静脈注入にて送達されるために、50ml/mlに再構成後、生理食塩水で希釈された。
【0080】
ベースライン、およびその後の11の時点で、継続的な12誘導ホルターECGデータを記録した。各投与量のCmaxにおいて、平均ベースライン、およびプラセボを差し引いた(ΔΔ)ECG時間間隔(QTcF、HR、PR、QRS、およびP波周期[PDur])、およびT波セグメント(JからTピーク[JTp]、TピークからTエンド[TpTe])が算出された。
【0081】
結果:HBI-3000は忍容性が良好であり、投与量を制限する有害事象または不整脈は観察されなかった。
【0082】
表2は、混合効果モデル化で予測された各投与量のCmaxのECGデータをまとめている。HBI-3000は、すべてのECGパラメータに用量比例の変化を誘発した。QRSとPDurの増加はINa-Peak封鎖と一致している。PR時間間隔の増加は、PDurの増加、およびINa-PeakとICa,Lの両方の阻害と一致している。TpTeの延長は、IKr封鎖と一致しており、それとは別にJTpも延長させることが予想される。観察されたJTpの投与量に関連する減少は、HBI-3000がINa-LateとICa,Lを両方阻害することで、IKrに対する効果を相殺することによると考えられる。
【0083】
【0084】
表3は、各投与量における選択された薬物動態データを示す。
【0085】
【0086】
その他の発見:サルカルディン硫酸塩を特定の投与量で投与すると化合物は、ヒト被験体で薬力学的に活性化するだけではなく、すぐに無効になる。言い換えると、化合物を特定の投与量で投与することで、被験体に迅速な効果をもたらし、その後、化合物は被験体の心血管系でもはや有効ではない。この化合物がどのような経路で心血管系から取り除かれたり、単離されたりして、効果が発揮されなくなるのかは、不明である。しかし、上記のプロトコルに従ってサルカルディン硫酸塩を約400mg~約800mgの量で投与すると、この化合物はすぐに効果を発揮し、その後すぐに効果を失うことが発見された。当業者であれば、これらの効果によって、化合物の安全性のプロファイルがさらに向上し、それによって望ましくない副作用を回避する特定の投与量、および/または剤形が調製、および投与されてもよいことを認識するだろう。
【0087】
図1に示すように、サルカルディン硫酸塩が様々な投与量で投与された時、化合物は約0.5時間でCmaxに達し、その後、速やかに血漿から除去または単離された。この効果は、約180mg~約600mgの範囲の投与量で発生した。予想外であったことは、投与はECGパラメータをすぐに変化させ、その後被験体がすぐに定常状態に戻ったことである(
図2A、
図2B、
図2C、および
図2D)。「オン/オフ」スイッチのように、サルカルディン硫酸塩の投与による効果は、予想外に短時間で現れて消える。
【0088】
HBI-3000の全用量を組み合わせた濃度-dECGモデルを
図3A、
図3B、
図3C、および
図3Dに示す。HBI-3000の傾きの周辺の片側95%信頼区間を薄い帯域で表している。
【0089】
結論:これらのデータは、HBI-3000がAFの発症、および維持に関与する複数の心筋イオンチャネルの有力な阻害剤であることを示している。そのJTpの強力な減少は、IKr封鎖に関連する不整脈からの解放を予測できる。これらの結果、および低崔不整脈リスクを示す前臨床データに基づいて、本薬剤は現在、発症後まもないAFにおける第2相試験に入っている。
【0090】
また、当業者であれば、ELISAなどの酵素結合法を用いて、患者の血漿中のサルカルディンの濃度を任意の時点で測定する、様々な方法を認識するだろう。そのような方法は、被験体においてCmaxが達成されているかどうか、および、サルカルディンの投与をいつ終了させるかを決定するのに有用である。
【0091】
サルカルディンの経口投与で予想される半減期が約16時間であることを考慮すると(非特許文献1を参照)、本製剤を本明細書に提供されるように投与することで、迅速な「オン/オフ」プロファイルが得られることは驚くべきことであった。このような予想外の結果は、特許文献1および特許文献2に提供されるように、サルカルディンの投与による意図した効果をより安全に提供する機会をもたらす。さらに、Chenらのようにサルカルディンが被験体にゆっくりと再配分されるのではなく、本発明で製剤化され投与されたサルカルディンが被験体中で迅速に再配分されることは驚くべきことである。またこのことは、サルカルディンをより安全に投与し、催不整脈リスクを低減する方法も提供する。
【0092】
前記の詳細な説明は、当業者が本発明を実行することを支援するために提供されている。しかし、本明細書に記載され、請求された発明は、これらの実施形態が発明のいくつかの態様の説明を意図したものであるため、本明細書に開示された特定の実施形態によって、範囲が限定されるものではない。任意の同等の実施形態が、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、本明細書に示され、説明された変更に加えて、前記の説明から当業者なら、本発明的な発見の真の趣旨、および範囲から逸脱することなく、様々な修正が明らかになる。このような変更も、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0093】
本出願で引用されたすべての出版物、特許、特許出願、およびその他の参考文献は、それぞれの出版物、特許、特許出願、またはその他の参考文献がすべての目的のために全体として参照により組み込まれることが、具体的、および個々に指し示された場合と同じ程度に、すべての目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で参考文献を引用することは、その文献が本発明の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】