(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】地中熱交換用杭
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20220204BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D5/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534393
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2019016100
(87)【国際公開番号】W WO2020130379
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0162939
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ドン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ノー、 ミュン-ヒュン
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041CA01
2D041CB01
2D041DA03
2D041EB10
2D046CA01
(57)【要約】
本発明は、従来の縦筋を、例えば、高強度の鋼管のような管部材で代替することで、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができる地中熱交換用杭に関し、これは、杭の中心を取り囲むように配置された複数の管部材と、上記複数の管部材をそれぞれ同一水平面で支持する複数のフープ筋とが締結されて形成された網構造体と、上記網構造体が埋め込まれるように上記網構造体の周囲に形成されたコンクリート部と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の中心を取り囲むように配置された複数の管部材と、前記複数の管部材をそれぞれ同一水平面で支持する複数のフープ筋とが締結されて形成された網構造体と、
前記網構造体が埋め込まれるように前記網構造体の周囲に形成されたコンクリート部と、
を含む地中熱交換用杭。
【請求項2】
前記管部材は、800MPa以上の降伏強度を有する金属管で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の地中熱交換用杭。
【請求項3】
何れか1つの管部材の端部と、隣接した他の1つの管部材の端部とを連結する連結管をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の地中熱交換用杭。
【請求項4】
管部材の端部同士、または管部材の端部と連結管の端部とを連結する連結部材をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の地中熱交換用杭。
【請求項5】
前記連結部材は、管形状の本体と、前記本体の両側内周面にそれぞれ形成されたねじ締結部と、を含み、
前記管部材の端部と、前記連結管の端部には、外周面にねじ締結部が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の地中熱交換用杭。
【請求項6】
前記連結部材と、前記管部材の端部または前記連結管の端部との間にはシール部材が介在されていることを特徴とする、請求項5に記載の地中熱交換用杭。
【請求項7】
前記管部材は、外周面に凹凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の地中熱交換用杭。
【請求項8】
前記凹凸部は転造加工により形成されたねじ山部であることを特徴とする、請求項7に記載の地中熱交換用杭。
【請求項9】
前記複数の管部材と前記複数のフープ筋は、互いに交差する交差点において針金で縛られて固定されることを特徴とする、請求項1に記載の地中熱交換用杭。
【請求項10】
前記管部材は、前記コンクリート部の外周面に隣接して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の地中熱交換用杭。
【請求項11】
前記杭の外部に露出した自由端を有する2つの管部材のうち一方には、熱伝達流体を供給する流入管が連結され、他方は、熱伝達流体を排出する流出管に連結されることを特徴とする、請求項3に記載の地中熱交換用杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の主鉄筋を、例えば、高強度の鋼管のような管部材で代替することで、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができる地中熱交換用杭に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物などのような構造物の荷重を地中の堅い地層まで伝達し、構造物を安全に支持するためには、基礎を施工するようになる。基礎工法のうち深い基礎として分類されるものは、鋼管杭、PHCパイル、場所打ち杭などが代表的である。
【0003】
場所打ち杭は、鋼管杭やPHCパイルと異なって、既製品として製作して現場に搬入・施工するのではなく、現場で縦筋と横筋で鉄筋網を製作してケーシング内に建て込み、コンクリートを打設する方式により施工する。この際、鉄筋網の長さ方向の補強材として用いられる縦筋(主鉄筋)は、約12mの長さと、60~100kg程度の重さを有し、鉄筋網を人力で製作するため、安全性及び施工性が低下する。
【0004】
一方、地中熱による冷暖房をする地中熱交換用杭は、例えば、場所打ち杭中に別途熱交換用パイプを挿入して施工するが、このような施工は、経済性及び施工性に劣るため商用化されていない状況である。
【0005】
関連先行技術としては、韓国特許登録654151B1(2006年12月5日公告)公報に開示された発明がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、従来の主鉄筋を、例えば、高強度の鋼管のような管部材で代替することで、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができる地中熱交換用杭を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による地中熱交換用杭は、杭の中心を取り囲むように配置された複数の管部材と、上記複数の管部材をそれぞれ同一水平面で支持する複数のフープ筋とが締結されて形成された網構造体と、上記網構造体が埋め込まれるように上記網構造体の周囲に形成されたコンクリート部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によると、従来の縦筋を、例えば、高強度の鋼管のような管部材で代替することで、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができるとともに、施工が便利であって、杭の経済性及び施工性を向上させることができる効果が得られる。
【0009】
また、本発明によると、管部材と地盤との間の距離を最小化し、コンクリート部による熱伝達が円滑に行われるため、地盤の熱が効率的に熱伝達流体に伝達され、これにより、熱交換効率が向上することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による地中熱交換用杭の構成を概略的に示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態による地中熱交換用杭に用いられる管部材の端部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な図面を参照して詳細に説明する。各図面の構成要素に図面符号を付するにあたり、同一の構成要素にはたとえ異なる図面上に表示されたとしてもできるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意すべきである。また、本発明を説明するにあたり、係る公知構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態による地中熱交換用杭の構成を概略的に示した図であり、
図2は
図1のI-I’線に沿った断面図である。
図3は本発明の一実施形態による地中熱交換用杭に用いられる管部材の端部を示した図である。
【0013】
これらの図に示されたように、本発明の一実施形態による地中熱交換用杭は、該杭の中心を取り囲むように配置された複数の管部材11と、これらの管部材をそれぞれ同一水平面で支持する複数のフープ筋12とが締結されて形成された網構造体10と、この網構造体が埋め込まれるように網構造体の周囲に形成されたコンクリート部20と、を含んでいる。
【0014】
本発明の構成の主要特徴の1つは、杭内に主鉄筋を設けることなく、管部材11のみがその役割をするようにしたことである。従来、杭の長さ方向の補強材として用いられていた縦筋(主鉄筋)の代わりに、例えば、約800MPa以上の高い降伏強度を有する高強度の鋼管などのような金属管で管部材を形成することができる。
【0015】
ここで、管部材11が縦筋と同等レベルの直径を有する場合、杭の支持力と構造的な安全を確保するために、管部材は、その中空の形態により縦筋に比べて半分程度に減少した断面積を考慮して、縦筋より少なくとも2倍の強度を有する材質で製作すればよい。これにより、例えば、通常、主鉄筋は約400MPa以上の降伏強度を有しているため、管部材は約800MPa以上の降伏強度を有することが好ましい。
【0016】
このように、従来の縦筋を高強度の金属管である管部材11で代替すると、管部材を、従来に比べて約50%程度軽量化することができる。このような軽量化により、杭の安全性及び施工性を向上させることができる。
【0017】
また、管部材11は、地中熱交換用パイプとして直接用いることができる。そのために、本発明の一実施形態による地中熱交換用杭は、何れか1つの管部材の端部と、隣接した他の1つの管部材の端部とを連結する連結管13をさらに含むことができる。
【0018】
かかる連結管13としては、ほぼU字状の曲管を用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の任意の形状を有するパイプやチューブなどが連結管として採択されてもよい。
【0019】
管部材11を連結管13によりほぼ千鳥状に連結することで、熱伝達流体が複数の管部材を通過しながら地中に留まる時間を最大に延ばすことにより、熱交換効率を極大化することができる。
【0020】
さらに、例えば、PE(ポリエチレン)などの材質からなる熱交換用パイプを別に施工する必要がないため、経済的で、かつ工程が単純であり、施工性に優れた地熱熱交換用杭システムを構築することができ、市場での競争力を向上させることができる。
【0021】
また、管部材11には、後述のフープ筋12と強固に締結されるように、外周面に凹凸部14が形成され得る。このような凹凸部としては、例えば、転造加工により形成されるねじ山部が採用可能であるが、凹凸部の形態が必ずしもこのような例に限定されるものではない。
【0022】
これにより、管部材11が有するねじ山部などのような表面形状により、フープ筋12との締結が容易になるとともに、コンクリートとの付着力も従来の主鉄筋に比べて同等以上に発揮されることができる。
【0023】
所定の長さを有する管部材11を連結して用いることができる。そのために、本発明の一実施形態による地中熱交換用杭は、管部材の端部同士、または管部材の端部と連結管の端部とを連結する連結部材30をさらに備えることができる。
【0024】
また、
図3に示されたように、管部材11の端部と、連結管13の端部にはその外周面にねじ締結部15が形成されることができる。
【0025】
連結部材30は、管形状の本体31と、この本体の両側内周面にそれぞれ形成されたねじ締結部32と、を含むことができる。
【0026】
このような連結部材30のねじ締結部32を管部材11の端部または連結管13の端部にあるねじ締結部15に締結固定することで、直列に配置された管部材を連結して長さ方向に延ばすか、または並列に隣接した管部材を千鳥状に連結することができる。
【0027】
さらに、連結部材30と、管部材11の端部または連結管13の端部との間には、Oリングなどのようなシール部材33を介在させることができる。
【0028】
かかるシール部材33により、連結部材30と、管部材11の端部または連結管13の端部との間には水密性が確保され、本発明の地中熱交換用杭に求められる構造性能及び防水性を満たすことができる。
【0029】
複数のフープ筋12が杭の長さ方向(実際には深さ方向)に沿って互いに間隔を置いて配筋されることができる。このようなフープ筋としては、異形鉄筋または螺旋鉄筋を採択することができる。
【0030】
これらのフープ筋12は、複数の管部材11を同一水平面で取り囲むように配置された後、管部材との交差点において針金16で縛られ、複数の管部材にそれぞれ締結固定され得る。
【0031】
このように複数の管部材11と複数のフープ筋12が互いに交差して針金16で縛られ固定されることで、網構造体10が形成される。
【0032】
コンクリート部20は、網構造体10が埋め込まれるように網構造体の周囲にコンクリートが打設され焼成されることで形成され得る。
【0033】
特に、網構造体10がコンクリート部20内でコンクリート部の外周面に隣接して配置されることで、すなわち、熱交換用パイプとして働く管部材11がコンクリート部の外周面に隣接して配置されることで、地盤と熱伝達流体との間の間隔を最小化し、地中熱が熱伝達流体に伝達される効率を極大化することができ、地熱を用いることで消費されるエネルギーを環境にやさしいエネルギーに転換することができる。
【0034】
例えば、本発明の地中熱交換用杭が場所打ち杭に採用される場合、地盤に孔を穿孔してケーシングを設置した後、準備された網構造体10を建て込んでケーシング内に挿入し、コンクリートを打設してコンクリート部20を形成した後、ケーシングを引き抜くことで本発明の地中熱交換用杭を構築することができる。
【0035】
もしくは、杭をPHCパイルのような既製品として製作して現場に搬入する場合には、準備された網構造体10を型枠に配置した後、コンクリートを打設して杭を中実体の形態に製作するか、またはコンクリートの打設後に型枠を回転させることによる遠心力により、杭を、型枠の内側面から所定の厚さを有する打設コンクリートの中空管の形態に製作してもよい。
【0036】
次いで、地盤に孔を穿孔した後、準備された杭を建て込んで孔内に挿入してグラウチングすることで、本発明の地中熱交換用杭を構築することができる。
【0037】
本発明の一実施形態による地中熱交換用杭を構築することにより、地盤には、構造材の設置と同時に、地中熱交換用部材の設置を完了することができる。このように、建築物などのような構造物の基礎のために設置された杭が、地熱熱交換用杭システムとして直ちに利用可能になり、杭の断面積は殆どそのまま維持しながらも、杭の支持力と構造的安定性は、従来の縦筋を用いた杭に比べて減少しない。
【0038】
このように設置された本発明の地中熱交換用杭において、杭の外部に露出した自由端17を有する2つの管部材11のうち一方には、図示しない冷暖房場所の熱交換器により熱伝達流体を供給する流入管が連結され、他方は、流出管に連結されて地熱を受けた熱伝達流体を熱交換器に排出するようにすることができる。
【0039】
このように設置された地中熱による冷暖房装置においては、地面の地中熱が杭に伝達され、この地中熱がさらにコンクリート部20を介して管部材11の内部を流れる熱伝達流体に伝達されるようになり、熱伝達流体が冷暖房場所に移動して循環しながら熱交換を行うことで、冷房または暖房を行うことができる。
【0040】
冷暖房場所の熱交換器で熱交換された流体は、さらに杭の管部材11に戻る過程を繰り返しながら冷暖房を行うことができる。
【0041】
以上のように、本発明によると、従来の縦筋を、例えば、高強度の鋼管のような管部材で代替することで、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができるとともに、施工が便利であって、杭の経済性及び施工性を向上させることができる効果が得られる。
【0042】
また、本発明によると、管部材と地盤との間の距離を最小化し、コンクリート部による熱伝達が円滑に行われるため、地盤の熱が効率的に熱伝達流体に伝達され、これにより、熱交換効率が向上することができる効果がある。
【0043】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示の実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等な範囲内の全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれると解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明は、構造材と地中熱交換用部材を兼用することができ、例えば、建築物などのような構造物を支持する基礎として有用である。
【国際調査報告】