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特表2022-514568免疫系のモジュレーションのための生物工学的スキャフォールドおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】免疫系のモジュレーションのための生物工学的スキャフォールドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220204BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220204BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/30 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P37/02
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/56
A61K47/58
A61K47/59
A61K47/61
A61K47/62
A61K47/60
A61K47/64
A61K35/28
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P25/00
A61P1/04
A61P29/00
A61P13/12
A61P21/04
A61P9/00
A61P7/06
A61P37/08
A61K38/20
A61K38/27
A61K38/22
A61K38/19
A61K38/18
A61K31/395
A61K38/30
A61K38/17
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535040
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 US2019066086
(87)【国際公開番号】W WO2020131582
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/780,727
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/798,100
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】514291680
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シャー, ニサーグ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マオ, アンジェロ エス.
(72)【発明者】
【氏名】カー, マシュー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー, デイビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スカデン, デイビッド ティー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC03
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC20
4C076CC21
4C076EE06A
4C076EE10A
4C076EE13A
4C076EE16A
4C076EE17A
4C076EE23A
4C076EE24A
4C076EE30A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE41A
4C076EE42A
4C076EE43A
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA01
4C084DA13
4C084DA14
4C084DA15
4C084DA18
4C084DA19
4C084DB01
4C084DB22
4C084DB52
4C084DB55
4C084DB56
4C084DB58
4C084DB59
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA36
4C084ZA55
4C084ZA68
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZC35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC58
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA55
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZC35
4C086ZC75
4C087BB44
4C087BB63
4C087BB65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA55
4C087ZA68
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象において免疫系をモジュレートする組成物および方法を提供する。本明細書に開示される組成物および方法は、T細胞の欠損および/または調節不全と関連する疾患を処置および/または予防する手段を提供する。上記組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において免疫系をモジュレートするための組成物であって、
多孔性スキャフォールドと、
スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、かつ前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記増殖因子が、スキャフォールドの体積を基準として、約0.03ng/mm~約350ng/mmで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
対象において免疫系をモジュレートするための組成物であって、
多孔性スキャフォールドと、
スキャフォールドの体積を基準として、約0.03ng/mm~約350ng/mm、かつ前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む、組成物。
【請求項4】
前記スキャフォールドが、ヒドロゲルを含む、請求項1~3に記載の組成物。
【請求項5】
前記スキャフォールドが、クリオゲルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記スキャフォールドが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、アルギネートまたはアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ポリ(リシン)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記スキャフォールドが、アルギネート、アルギネート誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記スキャフォールドが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記スキャフォールドが、約1μm~100μmの直径を有する細孔を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記スキャフォールドが、マクロ細孔を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記マクロ細孔が、約50μm~80μmの直径を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記スキャフォールドが、異なるサイズのマクロ細孔を含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記スキャフォールドが、注射可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記スキャフォールドが、メタクリル化アルギネート(MA-アルギネート)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記スキャフォールドが、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記スキャフォールドが、クリックヒドロゲルまたはクリッククリオゲルを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記スキャフォールドが、クリックアルギネート、クリックゼラチン、またはクリックヒアルロン酸を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記スキャフォールドが、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズおよびバルクヒドロゲルを含み、前記ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズが、前記スキャフォールドを対象に投与した後、前記バルクヒドロゲルポリマースキャフォールドよりも少なくとも10%急速に分解される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズが、酸化アルギネートを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記細胞が、幹細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記幹細胞が、造血幹細胞である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞が、前駆細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組織または前記器官が、骨組織または造血系組織を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組織または前記器官が、前記組成物を前記対象に投与してから約7~21日後に形成される、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組織または前記器官が、前記組成物を前記対象に投与してから約14日後に形成される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記細胞が、間質細胞である、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記スキャフォールドが、約100μm~約10cmのサイズである、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記スキャフォールドが、約10mm~約100mmのサイズである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記スキャフォールドが、約30mmのサイズである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記増殖因子が、形質転換増殖因子タンパク質ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属するタンパク質を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記増殖因子が、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、増殖分化因子(GDF)-1、GDG-2、GDF-3、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-15、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、Nodal、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記増殖因子が、BMP-2を含む、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
前記増殖因子が、TGF-β1を含む、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項34】
前記増殖因子が、約5ng~約500ngで存在する、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記増殖因子が、約5ng~約250ngで存在する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記増殖因子が、約5ng~約200ngで存在する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記増殖因子が、約200ngで存在する、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記増殖因子が、約6ng/mm~約10ng/mmで存在する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記増殖因子が、約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在する、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記増殖因子が、前記増殖因子が前記スキャフォールドに組み込まれた後少なくとも12日間、その生体活性を保持する、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記T細胞前駆細胞が、T細胞へと分化することができる、請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記T細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記T細胞が、Tregを含む、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項44】
前記分化因子が、Notch受容体に結合する、請求項1~43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記Notch受容体が、Notch-1受容体、Notch-2受容体、Notch-3受容体、Notch-4受容体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記分化因子が、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項44または45に記載の組成物。
【請求項47】
前記分化因子が、前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項1~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記分化因子が、クリックケミストリーを利用して前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記分化因子が、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)ケミストリー、NHSおよびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)ケミストリー、アビジン-ビオチン反応、アジドおよびジベンゾシクロオクチンケミストリー、テトラジンおよびトランスシクロオクテンケミストリー、テトラジンおよびノルボルネンケミストリー、またはジスルフィドケミストリーを利用して、前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項47または48に記載の組成物。
【請求項50】
前記分化因子が、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μgの量で存在する、請求項1~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記分化因子が、スキャフォールド当たり約1μg~約100μgの量で存在する、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記分化因子が、スキャフォールド当たり1μg~約10μgの量で存在する、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記分化因子が、スキャフォールド当たり約6μgで存在する、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記分化因子が、前記分化因子が前記スキャフォールドに組み込まれた後少なくとも約3ヶ月間、その生体活性を保持する、請求項1~53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
前記動員される細胞が、移植細胞である、請求項1~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記動員される細胞が、移植細胞ではない、請求項1~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記動員される細胞が、自家である、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記動員される細胞が、同種である、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
前記動員される細胞が、異種である、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
前記分化した細胞が、前記スキャフォールドから遊走することができる、請求項1~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記分化した細胞が、前記組成物を対象に投与した後に、前記対象における組織にホーミングすることができる、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記細胞の前記スキャフォールドへの前記動員を促進することができる、ホーミング因子をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記ホーミング因子が、間質細胞由来因子(SDF-1)を含む、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
対象において免疫系をモジュレートする方法であって、前記対象に、請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物を投与し、それによって、前記対象において前記免疫系をモジュレートするステップを含む、方法。
【請求項65】
対象において免疫過剰反応性を低減させる方法であって、前記対象に、請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それによって、前記対象において免疫過剰反応性を低減させるステップを含む、方法。
【請求項66】
移植を受ける対象においてドナーキメラ化を増加させる方法であって、前記対象に、請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それによって、前記対象においてドナーキメラ化を増加させるステップを含む、方法。
【請求項67】
対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進するための方法であって、前記対象に、請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与し、それによって、前記対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進するステップを含む、方法。
【請求項68】
前記対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む、請求項64~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記組成物が、前記対象への前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の投与と同時またはその後に、前記対象に投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記対象の体重1キログラム当たり約1×10~約50×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、前記対象に投与される、請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
前記対象の体重1キログラム当たり約1×10~約1×10個の造血幹細胞または造血前駆細胞が、前記対象に投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記対象においてT細胞の再構成を増強させる、請求項64~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
T細胞新生を増強させる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記増強されたT細胞新生が、増強されたT細胞受容体切除サークル(TREC)によって特徴付けられる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記対象においてT細胞多様性を増強させる、請求項64~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記T細胞多様性が、増強されたT細胞受容体(TCR)レパートリーによって特徴付けられる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
制御性T(Treg)細胞のレベルを増加させる、請求項64~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が、免疫系の欠陥を有するヒトである、請求項64~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記対象が、免疫老化に起因して免疫系の欠陥を有する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記対象が、30歳を上回る、40歳を上回る、50歳を上回る、60歳を上回る、70歳を上回る、または80歳を上回る、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記対象が、先天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する、請求項78~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記対象が、後天性免疫不全を有する、請求項78~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
対象において免疫過剰反応性を低減させる方法であって、前記対象に、
多孔性スキャフォールドと、
前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む組成物を投与し、
それによって、前記対象において免疫過剰反応性を低減させるステップを含む、方法。
【請求項84】
移植を受ける対象においてドナーキメラ化を増加させる方法であって、前記対象に、
多孔性スキャフォールドと、
前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む組成物を投与し、それによって、前記対象においてドナーキメラ化を増加させるステップを含む、方法。
【請求項85】
対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進するための方法であって、前記対象に、
多孔性スキャフォールドと、
前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む組成物を投与し、それによって、前記対象においてバランスの取れたT細胞再構成をもたらすステップを含む、方法。
【請求項86】
免疫系の欠陥を有するヒトの免疫系をモジュレートする方法であって、前記ヒトに、
多孔性スキャフォールドと、
前記スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、前記スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、
前記動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、分化因子と
を含む組成物を投与し、それによって、前記ヒトの免疫系をモジュレートするステップを含み、
前記ヒトが、免疫老化、先天性免疫不全、または後天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する、
方法。
【請求項87】
前記スキャフォールドが、ヒドロゲルを含む、請求項83~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記スキャフォールドが、クリオゲルを含む、請求項83~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記スキャフォールドが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、アルギネートまたはアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ポリ(リシン)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項83~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記スキャフォールドが、アルギネート、アルギネート誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項83~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記スキャフォールドが、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む、請求項83~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記スキャフォールドが、マクロ細孔を含む、請求項83~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記マクロ細孔が、約1μm~約100μmの直径を有する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記マクロ細孔が、約50μm~80μmの直径を有する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記スキャフォールドが、異なるサイズのマクロ細孔を含む、請求項92~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記スキャフォールドが、注射可能である、請求項83~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記スキャフォールドが、メタクリル化アルギネート(MA-アルギネート)を含む、請求項83~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記スキャフォールドが、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体を含む、請求項83~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記スキャフォールドが、クリックヒドロゲルまたはクリッククリオゲルを含む、請求項83~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記スキャフォールドが、クリックアルギネート、クリックゼラチン、またはクリックヒアルロン酸を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記スキャフォールドが、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズおよびバルクヒドロゲルを含み、前記ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズが、対象に投与した後、前記バルクヒドロゲルよりも少なくとも10%急速に分解される、請求項83~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズが、酸化アルギネートを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞が、幹細胞または前駆細胞である、請求項83~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記細胞が、造血幹細胞、造血前駆細胞、組換え造血幹細胞、組換え造血前駆細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記細胞が、造血骨髄細胞、動態化末梢血細胞、組換え造血骨髄細胞、組換え動態化末梢血細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項83~102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記組織または前記器官が、骨組織または造血系組織を含む、請求項83~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記組織または前記器官が、前記組成物を前記対象に投与してから約7~21日後に形成される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記組織または前記器官が、前記組成物を前記対象に投与してから約14日後に形成される、請求項83~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
少なくとも2つの組成物が、前記対象に投与される、請求項107または108に記載の方法。
【請求項110】
前記組成物が、類似のサイズのものである、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞が、間質細胞である、請求項83~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記スキャフォールドが、約100μm~約10cmのサイズである、請求項83~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記スキャフォールドが、約10mm~約100mmのサイズである、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記スキャフォールドが、約30mmのサイズである、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記増殖因子が、形質転換増殖因子タンパク質ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属するタンパク質を含む、請求項83~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記増殖因子が、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、増殖分化因子(GDF)-1、GDG-2、GDF-3、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-15、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、Nodal、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質を含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記増殖因子が、BMP-2を含む、請求項115または116に記載の方法。
【請求項118】
前記増殖因子が、TGF-β1を含む、請求項115または116に記載の方法。
【請求項119】
前記増殖因子が、前記増殖因子が前記スキャフォールドに組み込まれた後少なくとも12日間、その生体活性を保持する、請求項83~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記T細胞前駆細胞が、T細胞へと分化することができる、請求項83~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記T細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記リンパ球が、Tregを含む、請求項119または120に記載の方法。
【請求項123】
前記分化因子が、Notch受容体に結合する、請求項83~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記Notch受容体が、Notch-1受容体、Notch-2受容体、Notch-3受容体、Notch-4受容体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記分化因子が、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項123または124に記載の方法。
【請求項126】
前記分化因子が、前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項83~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記分化因子が、クリックケミストリーを利用して前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記分化因子が、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)ケミストリー、アビジン-ビオチン反応、アジドおよびジベンゾシクロオクチンケミストリー、テトラジンおよびトランスシクロオクテンケミストリー、テトラジンおよびノルボルネンケミストリー、またはジスルフィドケミストリーを利用して、前記スキャフォールドに共有結合により連結されている、請求項126または127に記載の方法。
【請求項129】
前記分化因子が、前記分化因子が前記スキャフォールドに組み込まれた後少なくとも約3ヶ月間、その生体活性を保持する、請求項83~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記動員される細胞が、移植細胞である、請求項83~129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記動員される細胞が、移植細胞ではない、請求項83~129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記動員される細胞が、自家である、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記動員される細胞が、同種である、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
前記動員される細胞が、異種である、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
前記分化した細胞が、前記スキャフォールドから遊走することができる、請求項83~134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記分化した細胞が、前記組成物を対象に投与した後に、前記対象における組織にホーミングすることができる、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記組成物が、前記細胞の前記スキャフォールドへの前記動員を促進することができるホーミング因子をさらに含む、請求項83~136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記ホーミング因子が、間質細胞由来因子(SDF-1)を含む、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記増殖因子が、約1ng~約1000μgで存在する、請求項83~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記増殖因子が、約1ng~約1000ngで存在する、請求項83~139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記増殖因子が、約5ng~約500ngで存在する、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記増殖因子が、約5ng~約250ngで存在する、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記増殖因子が、約5ng~約200ngで存在する、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記増殖因子が、約200ngで存在する、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記増殖因子が、スキャフォールドの体積を基準として、約0.03ng/mm~約350ng/mmで存在する、請求項83~144のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記増殖因子が、約6ng/mm~約10ng/mmで存在する、請求項145に記載の組成物。
【請求項147】
前記増殖因子が、約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在する、請求項146に記載の組成物。
【請求項148】
前記対象の体重1キログラム当たり約5×10~約50×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、前記対象に投与される、請求項83~147に記載の方法。
【請求項149】
前記対象の体重1キログラム当たり約5×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、前記対象に投与される、請求項148に記載の方法。
【請求項150】
前記造血細胞が、造血幹細胞、造血前駆細胞、組換え造血幹細胞、組換え造血前駆細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項148または149に記載の方法。
【請求項151】
前記造血細胞が、造血骨髄細胞、動態化末梢血細胞、組換え造血骨髄細胞、組換え動態化末梢血細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項148または149に記載の方法。
【請求項152】
前記対象において自己免疫を低減させる、請求項83および87~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
自己免疫疾患を予防または処置する、請求項83および87~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、リウマチ性関節炎、乾癬、関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、脈管炎、悪性貧血、セリアック病、およびアレルギーからなる群から選択される疾患である、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
移植片対宿主病(GVHD)を軽減する、請求項83、84、および87~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記GVHDが、前記対象への造血幹細胞移植(HSCT)と関連している、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記組成物が、造血幹細胞移植(HSCT)と同時またはその後に投与される、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記GVHDが、固形臓器移植と関連している、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記組成物が、前記移植の前に対象に投与される、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記GVHDが、急性GVHDである、請求項155~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記GVHDが、慢性GVHDである、請求項155~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
GVHD関連の罹患率、GVHD関連の死亡率、またはGVHD関連の長期生存率の低下を軽減する、請求項155~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記移植が、造血幹細胞移植(HSCT)である、請求項84および87~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記ドナーキメラ化の増加が、T細胞キメラ化を含む、請求項84、87~151、および163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記T細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはTreg細胞を含む、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記バランスの取れたT細胞再構成が、末梢血において約0.9~約2.5の恒常性CD4+:CD8+T細胞比によって特徴付けられる、請求項85および87~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記ヒトが、免疫老化に起因して免疫系の欠陥を有する、請求項86~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記ヒトが、30歳を上回る、40歳を上回る、50歳を上回る、60歳を上回る、70歳を上回る、または80歳を上回る、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
前記ヒトが、先天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する、請求項86~151、167、および168のいずれか一項に記載の方法。
【請求項170】
前記ヒトが、後天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する、請求項86~151および167~169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
制御性T(Treg)細胞のレベルを増加させる、請求項83~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
前記組成物が、注射によって投与される、請求項83~171のいずれか一項に記載の方法。
【請求項173】
前記注射が、皮下注射である、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
ニードルと、
請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物を含む、リザーバと、
プランジャーと
を備える、シリンジ。
【請求項175】
請求項1~63のいずれか一項に記載の組成物と、
前記組成物を投与するための説明書と
を含む、キット。
【請求項176】
前記対象に、骨髄から血液への幹細胞または前駆細胞の移動を誘導するのに有効な量の幹細胞動態化剤または前駆細胞動態化剤を投与するステップをさらに含む、請求項83~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項177】
前記幹細胞動態化剤または前記前駆細胞動態化剤が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、GM-CSF、G-CSF、プレリキサフォル、PDGF、TGF-ベータ、NGF、IGF、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポチエン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記幹細胞動態化剤または前記前駆細胞動態化剤が、前記組成物の投与の前、同時、または後に投与される、請求項176または177に記載の方法。
【請求項179】
前記対象に、治療有効量の電磁放射線を投与するステップをさらに含む、請求項176~178のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月17日に出願された米国仮出願第62/780,727号および2019年1月29日に出願された米国仮出願第62/798,100号の利益を主張する。前述の出願のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたHL129903、EB015498、EB014703、およびEB023287のもとに、政府の支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
造血幹細胞移植(HSCT)を受ける患者における長期免疫不全は、生命を脅かす血液または骨髄の疾患、例えば、多発性骨髄腫および白血病を管理する際の最も重大な障害の1つのままとなっている。移植の前に、レシピエントは、罹患細胞を破壊するための状態調節の細胞毒性放射線および化学療法レジメンを受ける。状態調節プロセスの副作用は、獲得免疫系のT細胞およびB細胞の破壊の結果としての重篤なリンパ球減少症である。TおよびB細胞数の劇的な低減ならびにその多様性の低減によって特徴付けられる重大な移植後免疫不全は、1~2年間継続し得る。免疫不全に関連する重篤な日和見感染(約30%)、がん再発(急性骨髄性白血病については50%を上回る)、および移植片対宿主病(GVHD)(約40%)は、最も一般的な併発症であり、HSCTを受けた患者における罹患率および死亡率の原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HSCT後の免疫系の再構成を改善するのに有用である新規な組成物および方法が必要とされている。また、HSCTと関連するリスクを低減させ、患者の予後を改善することができる組成物および方法も、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
対象の免疫系をモジュレートするための新規な組成物および方法が、本明細書において開示される。本明細書に開示される組成物および方法は、T細胞の欠損および/または調節不全と関連する疾患を処置および/または予防する手段を提供する。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートするための組成物を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む。一実施形態では、増殖因子は、スキャフォールドの体積を基準として、約0.03ng/mm~約350ng/mmで存在する。
【0007】
別の態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートするための組成物を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールドの体積を基準として約0.03ng/mm~約350ng/mm、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む。
【0008】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、ヒドロゲルを含む。一実施形態では、スキャフォールドは、クリオゲルを含む。別の実施形態では、スキャフォールドは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、アルギネートまたはアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ポリ(リシン)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。さらに別の実施形態では、スキャフォールドは、アルギネート、アルギネート誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。なお別の実施形態では、スキャフォールドは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。
【0009】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、約1μm~100μmの直径を有する細孔を含む。一実施形態では、スキャフォールドは、マクロ細孔を含む。別の実施形態では、マクロ細孔は、約50μm~80μmの直径を有する。さらに別の実施形態では、スキャフォールドは、異なるサイズのマクロ細孔を含む。
【0010】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、注射可能である。
【0011】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、メタクリル化アルギネート(MA-アルギネート)を含む。
【0012】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体を含む。
【0013】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、クリックヒドロゲルまたはクリッククリオゲルを含む。一実施形態では、スキャフォールドは、クリックアルギネート、クリックゼラチン、またはクリックヒアルロン酸を含む。
【0014】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズおよびバルクヒドロゲルを含み、ここで、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズは、スキャフォールドを対象に投与した後、バルクヒドロゲルポリマースキャフォールドよりも少なくとも10%急速に分解される。一実施形態では、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズは、酸化アルギネートを含む。
【0015】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、細胞は、幹細胞である。一実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞である。
【0016】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、細胞は、前駆細胞である。
【0017】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、組織または器官は、骨組織または造血組織を含む。一実施形態では、組織または器官は、組成物を対象に投与してから約7~21日後に形成される。別の実施形態では、組織または器官は、組成物を対象に投与してから約14日後に形成される。
【0018】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、細胞は、間質細胞である。
【0019】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、約100μm~約10cmのサイズである。一実施形態では、スキャフォールドは、約10mm~約100mmのサイズである。別の実施形態では、スキャフォールドは、約30mmのサイズである。
【0020】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、形質転換増殖因子タンパク質ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属するタンパク質を含む。一実施形態では、増殖因子は、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、増殖分化因子(GDF)-1、GDG-2、GDF-3、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-15、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、Nodal、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質を含む。別の実施形態では、増殖因子は、BMP-2を含む。さらに別の実施形態では、増殖因子は、TGF-β1を含む。
【0021】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、約5ng~約500ngで存在する。一実施形態では、増殖因子は、約5ng~約250ngで存在する。別の実施形態では、増殖因子は、約5ng~約200ngで存在する。さらに別の実施形態では、増殖因子は、約200ngで存在する。なお別の実施形態では、増殖因子は、約6ng/mm~約10ng/mmで存在する。なお別の実施形態では、増殖因子は、約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在する。
【0022】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、増殖因子がスキャフォールドに組み込まれた後少なくとも12日間、その生体活性を保持する。
【0023】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、T細胞前駆細胞は、T細胞に分化することができる。一実施形態では、T細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞を含む。別の実施形態では、T細胞は、Tregを含む。
【0024】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、分化因子は、Notch受容体に結合する。一実施形態では、Notch受容体は、Notch-1受容体、Notch-2受容体、Notch-3受容体、Notch-4受容体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、分化因子は、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0025】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、分化因子は、スキャフォールドに共有結合により連結されている。一実施形態では、分化因子は、クリックケミストリーを利用してスキャフォールドに共有結合により連結されている。別の実施形態では、分化因子は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)ケミストリー、NHSおよびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)ケミストリー、アビジン-ビオチン反応、アジドおよびジベンゾシクロオクチンケミストリー、テトラジンおよびトランスシクロオクテンケミストリー、テトラジンおよびノルボルネンケミストリー、またはジスルフィドケミストリーを利用して、スキャフォールドに共有結合により連結されている。
【0026】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μgの量で存在する。一実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり約1μg~約100μgの量で存在する。別の実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり1μg~約10μgの量で存在する。さらに別の実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり約6μgで存在する。
【0027】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、分子因子は、分化因子がスキャフォールドに組み込まれた後少なくとも約3ヶ月間、その生体活性を保持する。
【0028】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、動員される細胞は、移植細胞である。一実施形態では、動員される細胞は、自家である。別の実施形態では、動員される細胞は、同種である。さらに別の実施形態では、動員される細胞は、異種である。
【0029】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、動員される細胞は、移植細胞ではない。
【0030】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、分化した細胞は、スキャフォールドから遊走することができる。一実施形態では、分化した細胞は、組成物を対象に投与した後に、対象における組織にホーミングすることができる。
【0031】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、組成物は、細胞のスキャフォールドへの動員を促進することができるホーミング因子をさらに含む。一実施形態では、ホーミング因子は、間質細胞由来因子(SDF-1)を含む。
【0032】
一態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートする方法であって、本発明の前述の組成物を投与し、それによって対象において免疫系をモジュレートすることによる、方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、対象において免疫過剰反応性を低減させる方法であって、本発明の前述の組成物を投与し、それによって対象において免疫過剰反応性を低減させることによる、方法を提供する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、移植を受ける対象においてドナーキメラ化を増加させる方法であって、本発明の前述の組成物を投与し、それによって対象においてドナーキメラ化を増加させることによる、方法を提供する。
【0035】
なおも別の態様では、本発明は、対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進する方法であって、本発明の前述の組成物を投与し、それによって対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進することによる、方法を提供する。
【0036】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。一実施形態では、組成物は、対象への前記造血幹細胞または造血前駆細胞の投与と同時またはその後に、対象に投与される。別の実施形態では、対象の体重1キログラム当たり約1×10~約50×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、対象に投与される。さらに別の実施形態では、対象の体重1キログラム当たり約1×10~約1×10個の造血幹細胞または造血前駆細胞が、対象に投与される。
【0037】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、方法は、対象においてT細胞の再構成を増強させる。一実施形態では、方法は、T細胞新生を増強させる。別の実施形態では、増強されたT細胞新生は、増強されたT細胞受容体切除サークル(TREC)によって特徴付けられる。
【0038】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、方法は、対象においてT細胞多様性を増強させる。一実施形態では、T細胞多様性は、増強されたT細胞受容体(TCR)レパートリーによって特徴付けられる。
【0039】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、方法は、制御性T(Treg)細胞のレベルを増加させる。
【0040】
上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態では、対象は、免疫系の欠陥を有するヒトである。一実施形態では、対象は、免疫老化に起因して免疫系の欠陥を有する。別の実施形態では、対象は、30歳を上回る、40歳を上回る、50歳を上回る、60歳を上回る、70歳を上回る、または80歳を上回る。一実施形態では、対象は、先天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。さらに別の実施形態では、対象は、後天性免疫不全を有する。
【0041】
別の態様では、本発明は、対象において免疫過剰反応性を低減させる方法であって、対象に、組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含み、それによって、対象において免疫過剰反応性を低減させる。
【0042】
なおも別の態様では、本発明は、移植を受ける対象においてドナーキメラ化を増加させる方法であって、対象に、組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含み、それによって、対象においてドナーキメラ化を増加させる。
【0043】
さらに別の態様では、本発明は、対象においてバランスの取れたT細胞再構成を促進するための方法であって、対象に、組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含み、それによって対象においてバランスの取れたT細胞再構成をもたらす。
【0044】
なおも別の態様では、本発明は、免疫系の欠陥を有するヒトの免疫系をモジュレートする方法であって、ヒトに、組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含み、それによって、ヒトの免疫系をモジュレートし、ここで、ヒトは、免疫老化、先天性免疫不全、または後天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。
【0045】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、ヒドロゲルを含む。一実施形態では、スキャフォールドは、クリオゲルを含む。別の実施形態では、スキャフォールドは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、アルギネートまたはアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ポリ(リシン)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。さらに別の実施形態では、スキャフォールドは、アルギネート、アルギネート誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。さらに別の実施形態では、スキャフォールドは、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーまたはコポリマーを含む。
【0046】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、細孔を含む。一実施形態では、細孔は、約1μm~約100μmの直径を有する。別の実施形態では、細孔は、約50μm~80μmの直径を有する。さらに別の実施形態では、スキャフォールドは、異なるサイズの細孔を含む。
【0047】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、注射可能である。一実施形態では、スキャフォールドは、メタクリル化アルギネート(MA-アルギネート)を含む。別の実施形態では、スキャフォールドは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体を含む。
【0048】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、クリックヒドロゲルまたはクリッククリオゲルを含む。一実施形態では、スキャフォールドは、クリックアルギネート、クリックゲル化、またはクリックヒアルロン酸を含む。
【0049】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズおよびバルクヒドロゲルを含み、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズは、対象に投与した後、バルクヒドロゲルよりも少なくとも10%急速に分解される。一実施形態では、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズは、酸化アルギネートを含む。
【0050】
上記の態様の様々な実施形態では、細胞は、幹細胞または前駆細胞である。一実施形態では、細胞は、造血幹細胞、造血前駆細胞、組換え造血幹細胞、組換え造血前駆細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、細胞は、造血骨髄細胞、動態化末梢血細胞、組換え造血骨髄細胞、組換え動態化末梢血細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0051】
上記の態様の様々な実施形態では、組織または器官は、骨組織または造血組織を含む。一実施形態では、組織または器官は、組成物を対象に投与してから約7~21日後に形成される。別の実施形態では、組織または器官は、組成物を対象に投与してから約14日後に形成される。さらに別の実施形態では、少なくとも2つの組成物が、対象に投与される。なおも別の実施形態では、組成物は、類似のサイズのものである。
【0052】
上記の態様の様々な実施形態では、細胞は、間質細胞である。
【0053】
上記の態様の様々な実施形態では、スキャフォールドは、約100μm~約10cmのサイズである。一実施形態では、スキャフォールドは、約10mm~約100mmのサイズである。別の実施形態では、スキャフォールドは、約30mmのサイズである。
【0054】
上記の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、形質転換増殖因子タンパク質ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属するタンパク質を含む。一実施形態では、増殖因子は、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、増殖分化因子(GDF)-1、GDG-2、GDF-3、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-15、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、Nodal、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質を含む。別の実施形態では、増殖因子は、BMP-2を含む。さらに別の実施形態では、増殖因子は、TGF-β1を含む。
【0055】
上記の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、増殖因子がスキャフォールドに組み込まれた後少なくとも12日間、その生体活性を保持する。
【0056】
上記の態様の様々な実施形態では、T細胞前駆細胞は、T細胞へと分化することができる。一実施形態では、T細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、制御性T細胞(Treg)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される細胞を含む。別の実施形態では、T細胞は、Tregを含む。
【0057】
上記の態様の様々な実施形態では、分化因子は、Notch受容体に結合する。一実施形態では、Notch受容体は、Notch-1受容体、Notch-2受容体、Notch-3受容体、Notch-4受容体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、分化因子は、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0058】
上記の態様の様々な実施形態では、分化因子は、前記スキャフォールドに共有結合により連結されている。一実施形態では、分化因子は、クリックケミストリーを利用して前記スキャフォールドに共有結合により連結されている。別の実施形態では、分化因子は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)ケミストリー、アビジン-ビオチン反応、アジドおよびジベンゾシクロオクチンケミストリー、テトラジンおよびトランスシクロオクテンケミストリー、テトラジンおよびノルボルネンケミストリー、またはジスルフィドケミストリーを利用して、スキャフォールドに共有結合により連結されている。
【0059】
上記の態様の様々な実施形態では、分化因子は、分化因子がスキャフォールドに組み込まれた後少なくとも約3ヶ月間、その生体活性を保持する。
【0060】
上記の態様の様々な実施形態では、動員される細胞は、移植細胞である。一実施形態では、動員される細胞は、自家である。別の実施形態では、動員される細胞は、同種である。さらに別の実施形態では、動員される細胞は、異種である。
【0061】
上記の態様の様々な実施形態では、動員される細胞は、移植細胞ではない。
【0062】
上記の態様の様々な実施形態では、分化した細胞は、スキャフォールドから遊走することができる。一実施形態では、分化した細胞は、組成物を対象に投与した後に、対象における組織にホーミングすることができる。
【0063】
上記の態様の様々な実施形態では、組成物は、細胞のスキャフォールドへの動員を促進することができるホーミング因子をさらに含む。一実施形態では、ホーミング因子は、間質細胞由来因子(SDF-1)を含む。
【0064】
上記の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、約1ng~約1000μgで存在する。一実施形態では、増殖因子は、約1ng~約1000ngで存在する。別の実施形態では、増殖因子は、約5ng~約500ngで存在する。さらに別の実施形態では、増殖因子は、約5ng~約250ngで存在する。なお別の実施形態では、増殖因子は、約5ng~約200ngで存在する。なお別の実施形態では、増殖因子は、約200ngで存在する。
【0065】
上記の態様の様々な実施形態では、増殖因子は、スキャフォールドの体積を基準として、約0.03ng/mm~約350ng/mmで存在する。一実施形態では、増殖因子は、約6ng/mm~約10ng/mmで存在する。別の実施形態では、増殖因子は、約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在する。
【0066】
上記の態様の様々な実施形態では、対象の体重1キログラム当たり約5×10~約50×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、対象に投与される。一実施形態では、対象の体重1キログラム当たり約5×10個の造血幹細胞および/または造血前駆細胞が、対象に投与される。別の実施形態では、造血細胞は、造血幹細胞、造血前駆細胞、組換え造血幹細胞、組換え造血前駆細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、造血細胞は、造血骨髄細胞、動態化末梢血細胞、組換え造血骨髄細胞、組換え動態化末梢血細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0067】
上記の態様の様々な実施形態では、方法は、対象において自己免疫を低減させる。
【0068】
上記の態様の様々な実施形態では、方法は、自己免疫疾患を予防または処置する。一実施形態では、自己免疫疾患は、1型糖尿病、リウマチ性関節炎、乾癬、関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、脈管炎、悪性貧血、セリアック病、およびアレルギーからなる群から選択される疾患である。
【0069】
上記の態様の様々な実施形態では、方法は、移植片対宿主病(GVHD)を軽減する。一実施形態では、GVHDは、対象への造血幹細胞移植(HSCT)と関連している。別の実施形態では、組成物は、造血幹細胞移植(HSCT)と同時またはその後に投与される。さらに別の実施形態では、GVHDは、固形臓器移植と関連している。さらに別の実施形態では、組成物は、移植の前に対象に投与される。なお別の実施形態では、GVHDは、急性GVHDである。一実施形態では、GVHDは、慢性GVHDである。別の実施形態では、方法は、GVHD関連の罹患率、GVHD関連の死亡率、またはGVHD関連の長期生存率の低下を軽減する。
【0070】
上記の態様の様々な実施形態では、移植は、造血幹細胞移植(HSCT)である。
【0071】
上記の態様の様々な実施形態では、ドナーキメラ化の増加は、T細胞キメラ化を含む。一実施形態では、T細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、またはTreg細胞を含む。
【0072】
上記の態様の様々な実施形態では、バランスの取れたT細胞再構成は、末梢血において約0.9~約2.5の恒常性CD4:CD8T細胞比によって特徴付けられる。
【0073】
上記の態様の様々な実施形態では、ヒトは、免疫老化に起因して免疫系の欠陥を有する。一実施形態では、ヒトは、30歳を上回る、40歳を上回る、50歳を上回る、60歳を上回る、70歳を上回る、または80歳を上回る。
【0074】
上記の態様の様々な実施形態では、ヒトは、先天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。
【0075】
上記の態様の様々な実施形態では、ヒトは、後天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。
【0076】
上記の態様の様々な実施形態では、方法は、制御性T(Treg)細胞のレベルを増加させる。
【0077】
上記の態様の様々な実施形態では、組成物は、注射によって投与される。一実施形態では、注射は、皮下注射である。
【0078】
本発明のなおもさらなる態様では、本発明は、シリンジを提供する。シリンジは、ニードル、上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態の組成物を含むリザーバ、およびプランジャーを含む。
【0079】
本発明のなおもさらなる態様では、本発明は、キットを提供する。キットは、上記の態様または本明細書に記載される本発明の任意の他の態様の様々な実施形態の組成物、および組成物を投与するための説明書を含む。
【0080】
上記の態様の様々な実施形態では、方法は、対象に、骨髄から血液への幹細胞または前駆細胞の移動を誘導するのに有効な量の幹細胞動態化剤または前駆細胞動態化剤を投与するステップをさらに含む。一実施形態では、幹細胞動態化剤または前駆細胞動態化剤は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、GM-CSF、G-CSF、プレリキサフォル、PDGF、TGF-ベータ、NGF、IGF、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポチエン、またはこれらの組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、幹細胞動態化剤または前駆細胞動態化剤は、組成物の投与の前、同時、または後に投与される。さらに別の実施形態では、方法は、対象に、治療有効量の電磁放射線を投与するステップをさらに含む。
【0081】
本発明の他の特性および利点は、以下の詳細な説明および図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1A~1E、1J、および1Mは、アルギネート-PEG-DLL4に基づく骨髄クリオゲル(BMC)がDLL4およびBMP-2を提示し、共通リンパ球前駆体(CLP)を優先的に増大させることを示す。図1F~1I、1Kおよび1Lは、BMC生体活性の広範囲の特徴付けを示す。
【0083】
図1A図1Aは、共有結合により架橋結合したBMCの製作についての概略図である。
【0084】
図1B図1Bは、BMCの代表的な横断的走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。スケールバー、1mm。
【0085】
図1C図1Cは、BMCの横断面内の細孔の形状および構造の代表的なSEMである。スケールバー=200μm。
【0086】
図1D図1Dは、封入されたBMP-2および共有結合により係留されたDLL4の放出カイネティクスを示す(群当たりn=5)。
【0087】
図1E図1Eは、メタクリレートリンカーを用いた修飾の前後のDLL4の結合カイネティクスを測定する表面プラズモン共鳴を示す。
【0088】
図1F図1Fは、MC3T3-E1前骨芽細胞においてアルカリホスファターゼ酵素活性を使用して測定したプールされた放出されたBMP-2の生体活性を、BMCに組み込まれることがないBMP-2(ネイティブなBMP-2)およびBMP-2が添加されていない培地(成長培地)と比較して示す。
【0089】
図1G図1Gは、MC3T3-E1前骨芽細胞におけるアルカリホスファターゼ酵素活性を使用した放出後に別々の時間間隔で数量化したBMP-2の生体活性を示す。
【0090】
図1H図1Hは、比色定量アッセイを使用して測定したノッチリガンドDLL-4のin vitro生体活性を示す。
【0091】
図1I図1Iは、二重BMC(上の行)およびブランクBMC(下の行)についての異なる時間間隔でのCHO-K1+2xHS4-UAS-H2B-Citrine-2xHS4 cH1+hNECD-Gal4esn c9ノッチ-レポーター細胞株におけるシトリン発現の代表的な蛍光顕微鏡画像を示す。
【0092】
図1J図1Jは、単離されたマウス造血幹細胞・前駆細胞およびヒト造血幹細胞・前駆細胞のCLPへのin vitro分化をポリマー骨格上のメタクリレート基の官能化の程度に応じて示す(n=5)。
【0093】
図1K図1Kおよび1Lは、in vitroで7日間培養した後のマウス造血細胞(図1K)およびヒト造血細胞(図1L)の増大倍率および生存能力を示す。
図1L図1Kおよび1Lは、in vitroで7日間培養した後のマウス造血細胞(図1K)およびヒト造血細胞(図1L)の増大倍率および生存能力を示す。
【0094】
図1F~1I、1Kおよび1Lにおけるデータは、n=5の平均±s.d.であり、3回の独立した実験からの代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【0095】
図1M図1Mは、成長培地、ブランク、単一因子BMCおよび二重因子BMCにおいて数量化されたLin共通リンパ系および骨髄系マウス前駆細胞の割合を示す。
【0096】
図1Bおよび1Cにおける画像および細孔サイズ数量化は、10回の独立した反復実験の代表である。図1D、1Jおよび1Mにおけるデータは、5回の337回の実験的反復実験の平均±s.d.を示し、3回の独立した実験の代表である。別個の試料を個別にアッセイした。
【0097】
図2B~2Kは、BMCのin vivoにおける配置および宿主への組込みを示す。図2A、2L、および3B~3Fは、BMCの広範なin vivo特徴付けを示す。
【0098】
図2A図2Aは、移植に使用するための系列枯渇前および系列枯渇後の骨髄細胞の代表的なフローサイトメトリープロファイルを示す(5回の独立した実験)。
【0099】
図2B図2Bは、L-TBI、HSCTの投与およびBMCの同時注射のスケジュールを示す。B6マウスに、1000cGy(1線量)を用いて照射処置し、その後、系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI後48時間以内に5×10個を移植した。
【0100】
図2C図2Cは、BMP-2およびDLL-4の種々の組合せをBMCに含めて送達した後の時間に応じたin vivoにおけるBMC小結節の体積を示す。
【0101】
図2D図2Dは、BMC(赤色)内で同定されたドナーGFP+細胞(緑色)の共焦点顕微鏡画像を示す。
【0102】
図2E-F】図2Eおよび2Fは、骨殻(緑色の矢印)および造血組織(黄色の矢印)を有する、注射の3週間後の二重機能化BMCの代表的なマイクロコンピュータ断層撮影法(microCT、スケールバー=1mm)画像化(図2E)および組織学的検査(スケールバー=1mm)(図2F)を示す。
【0103】
図2G図2Gは、注射後種々の時点での皮下組織におけるBMC(青色)の画像を示す。
【0104】
図2H-I】図2Hおよび2Iは、移植後10日目、30日目、40日目および90日目の、血管が同定された(青色の矢印)BMCの組織学的Verhoeff-Van Gieson染色切片(図2H)およびこれらの切片内の血管密度の数量化(図2I)を示す。
【0105】
図2J図2Jおよび2Kは、移植後10日目、20日目、40日目、60日目および90日目の、アルギネートが同定された(赤色の糸様染色)BMCの組織学的Safranin-O染色切片(図2J)およびこれらの切片内のアルギネートの接近可能領域の数量化(図2K)を示す。
図2K図2Jおよび2Kは、移植後10日目、20日目、40日目、60日目および90日目の、アルギネートが同定された(赤色の糸様染色)BMCの組織学的Safranin-O染色切片(図2J)およびこれらの切片内のアルギネートの接近可能領域の数量化(図2K)を示す。
【0106】
図2L図2Lは、移植後所定の時間間隔で皮下組織から抽出されたBMCの端の画像を示す。BMCのコラーゲンとの境界(青色-緑色)および細胞との境界(黒色)が同定され、一部の切片では、Safranin-O染色(10×対物レンズ拡大率)を使用したアルギネート(赤色)が観察される。
【0107】
図2Cのデータは、5回の実験的反復実験の平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。図2D~2G、および2Jの画像は、4つの独立した試料の代表である。図2Iおよび2Kのデータは、8つの試料からの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、ns、有意でない、チューキー事後検定を伴うANOVA)。別個の試料を個別にアッセイした。図2Lのデータは、n=5の平均±s.d.であり、2回の独立した実験からの代表である。
【0108】
図3A、および3G~3Pは、in vivoにおけるドナー細胞のBMCへの動員および胸腺前駆体の播種の増強を示す。
【0109】
図3A図3Aは、BMP-2とDLL-4の組合せを含有するBMCおよびブランクBMCにおけるドナー由来GFP+細胞の総数および型を示す。
【0110】
図3B図3Bは、移植後28日目の骨髄およびBMC(二重およびBMP-2のみ)の代表的なフローサイトメトリープロファイルを示す。ドナーGFP、骨髄系、HSC、リンパ系予備刺激された多分化能前駆体(LMPP)、CLPおよび骨髄系前駆体が同定される。
【0111】
図3C図3Cは、BMCおよび内在性骨髄における宿主間葉系間質細胞ならびに代表的なフローサイトメトリープロットを示す。Sca-1前駆体がCD45細胞の画分として表されている。CD44発現細胞、CD73発現細胞、CD29発現細胞、CD105発現細胞およびCD106発現細胞がSca-1前駆体の画分として表されている。
【0112】
図3D図3Dは、皮下注射後20日目の骨およびBMCにおける骨アルカリホスファターゼ(bALP)およびOil-red-O(ORO)の数量化を示す(n=6~7)。
【0113】
図3E図3Eは、移植後10日目、35日目および70日目の移植のみのマウスおよび二重BMCで処置したマウス由来の骨髄細胞を使用したコロニー形成単位アッセイを示す。
【0114】
図3F図3Fは、回収されたBMCにおけるホーミング因子SDF-1αおよびリンパ球前駆体を支持するサイトカインIL-7の濃度を示す。BMP-2 BMCを用いて処置したHSCT後のマウス、および二重BMCを用いて処置したHSCT後のマウスを分析し、同じ群の骨髄におけるサイトカイン濃度と比較した。
【0115】
図3C~3Fのデータは、それぞれn=4、n=7、n=4およびn=4の平均±s.d.であり、2回の独立した実験からの代表である。図3Bのデータは、n=10からであり、2回の独立した実験からの代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【0116】
図3G図3Gは、BMP-2BMCおよび二重因子BMCにおけるドナーGFP+CLPの絶対数およびLy6D-CLPのパーセンテージを示す。
【0117】
図3H図3Hは、HSCT後のマウスから回収されたBMCを亜致死量で照射したマウスに外科的移植するための実験構成の概略図を示す。
【0118】
図3I図3Iは、BMCの外科的移植の20日後に胸腺において数量化されたダブルポジティブ(DP)、シングルポジティブ(SP)CD4+およびSP CD8+細胞を示す。
【0119】
図3J図3Jは、移植後の多数の時点における最も低い細胞用量を用いたBMC処置と比較した系列枯渇移植された細胞用量に応じて数量化された初期T系列前駆体(ETP;CD44+CD25-c-kit+)の総数と、代表的なFACSプロットを示す(各時点で5回の実験的反復実験、2回の独立した実験)。
【0120】
図3K-M】図3K~3Pは、移植後の多数の時点における、異なる処置条件にわたって比較した初期T系列前駆体(ETP;CD44+CD25-c-kit+)、DN2(CD44+CD25-)、DN3(CD44+CD25-)、DP、SP4、SP8胸腺細胞サブセットの総数を示す。
図3N-O】図3K~3Pは、移植後の多数の時点における、異なる処置条件にわたって比較した初期T系列前駆体(ETP;CD44+CD25-c-kit+)、DN2(CD44+CD25-)、DN3(CD44+CD25-)、DP、SP4、SP8胸腺細胞サブセットの総数を示す。
図3P図3K~3Pは、移植後の多数の時点における、異なる処置条件にわたって比較した初期T系列前駆体(ETP;CD44+CD25-c-kit+)、DN2(CD44+CD25-)、DN3(CD44+CD25-)、DP、SP4、SP8胸腺細胞サブセットの総数を示す。
【0121】
図3A、3G、および3K~3Pに関しては、マウスに、5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI 375(1×1000cGy)後48時間以内に移植した。図3Hおよび3Iでは、最初のマウスのセットには、5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI後48時間以内に移植した。その後のマウスのセットはSL TBI(1×500cGy)を受け、その後の細胞移植は伴わなかった。図3Jでは、マウスに、5×10個~5×10個の系列枯渇GFP細胞を移植した。図3Aでは、全群を移植のみの対照と比較した(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。図3Aのデータは、群当たり10匹のマウスの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である。図3G、および3I~3Pのデータは、図3I~3Pの各時点での群当たり5匹のマウスからの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である。比較は、図3Jでは最も低い細胞用量群に対するものであり、図3I~3Pでは移植のみの群に対するものであった(*P<0.05、**P<385 0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。別個の試料を個別にアッセイした。
【0122】
図3Q~3Tは、移植後の胸腺の細胞充実性および重量の広範な特徴付けを示す。B6マウスに、1×1000cGyのL-TBI線量を照射し、その後、5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI後48時間以内に移植し、図に記載されている通り処置した。
【0123】
図3Q図3Qは、移植の32日後および42日後に数量化された総胸腺細胞を示す。
【0124】
図3R図3Rは、HSCTの12日後から42日後の間に数量化された胸腺の重量を示す。
【0125】
図3S図3Sは、HSCTの22日後に数量化したmTEC、cTEC、線維芽細胞および内皮細胞を示す。
【0126】
図3T図3Tは、HSCTの22日後の、異なる処置条件にわたって比較した初期T系列前駆体(ETP;CD44CD25c-kit)、DN2(CD44CD25)、DN3(CD44CD25)、DP、SP4、SP8胸腺細胞サブセットの総数を示す。
【0127】
BMCなし(移植のみ)のHSCT後のマウス、BMP-2 BMCを用いて処置したHSCT後のマウス、および二重BMCを用いて処置したHSCT後のマウスの胸腺を回収し、秤量し、照射処置していないマウスと比較した。図3Q、3S、および3Tにおける全群を移植のみの対照と比較する。HSCTの10日後、BMCを外植し、500cGyのSL-TBIを照射したB6マウスの第2のセットの皮下ポケットに外科的に入れた。値は絶対数として表されている。図3Q~3Tのデータは、各時点における群当たり5匹のマウスからの平均±s.d.を表し、少なくとも2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【0128】
図4A、および4D~4Lは、BMCによって媒介されるT細胞再構成の増強を示す。図4B、4C、4M、および4Nは、HSCT後の血液細胞分析の広範な特徴付けを示す。
【0129】
図4A図4Aは、HSCT後のマウスの末梢血におけるCD3+CD4+およびCD3+CD8+の合計を示す。B6マウスに1×1000cGyのL-TBI線量を照射した。マウスにその後、5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI後48時間以内に移植し、図に示されている通り処置した。
【0130】
図4B図4Bは、5回の独立した実験からの、GFP+ドナー造血幹細胞および前駆細胞を移植したC57BL/6JマウスにおけるHSCT後の免疫細胞再構成を測定するための代表的なFACSゲーティング戦略を示す
【0131】
図4C図4Cは、in vivoにおけるB細胞および骨髄細胞の再構成を示す。B6マウスに、1×1000cGyのL-TBI線量を照射し、その後、5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞をL-TBI後48時間以内に移植した。BMCなし(移植のみ)のHSCT後のマウス、BMP-2 BMCを用いて処置したHSCT後のマウス、および二重BMCを用いて処置したHSCT後のマウスの末梢血を分析し、測定された数を放射線前の免疫細胞濃度と比較した。
【0132】
図4D図4D~4Fは、血液(図4D)、脾臓(図4E)および骨髄(図4F)におけるCD4+T細胞とCD8+T細胞の比の回復の測定を、時間に応じて示す。図4Aにおけるものと同様に同じ群との比較に関して照射処置していないマウスを伴う。図4Aおよび4D~4Fでは、BMCなし(移植のみ)で処置したHSCT後のマウス、ボーラスBMP-2およびDLL-4注射で処置したHSCT後のマウス、BMP-2を含有するBMC(BMP-2 BMC)で処置したHSCT後のマウス、またはBMP-2およびDLL4を含有するBMC(二重BMC)で処置したHSCT後のマウスを分析した。
図4E-F】図4D~4Fは、血液(図4D)、脾臓(図4E)および骨髄(図4F)におけるCD4+T細胞とCD8+T細胞の比の回復の測定を、時間に応じて示す。図4Aにおけるものと同様に同じ群との比較に関して照射処置していないマウスを伴う。図4Aおよび4D~4Fでは、BMCなし(移植のみ)で処置したHSCT後のマウス、ボーラスBMP-2およびDLL-4注射で処置したHSCT後のマウス、BMP-2を含有するBMC(BMP-2 BMC)で処置したHSCT後のマウス、またはBMP-2およびDLL4を含有するBMC(二重BMC)で処置したHSCT後のマウスを分析した。
【0133】
図4G-H】図4G~4Lでは、B6マウスに500cGyのSL-TBIを照射し、その後、5×10個の系列枯渇骨髄細胞を放射線後48時間以内に移植した。移植の28日後に二重BMCを用いた処置を行ったSL-TBI syn-HSCTマウス、および二重BMCを用いた処置を行わなかったSL-TBI syn-HSCTマウスの脾臓におけるDP胸腺細胞(図4G)SP4胸腺細胞(図4H)およびSP8胸腺細胞(図4I)ならびに末梢性CD4+T細胞(図4J)およびCD8+T細胞(図4K)およびB細胞(図4L)の総数。図4A、4D~4Fのデータは、各時点について群当たりn=8のマウスの平均±s.d.を表し、少なくとも3回の独立した実験の代表である。図4G~4Lのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
図4I-J】図4G~4Lでは、B6マウスに500cGyのSL-TBIを照射し、その後、5×10個の系列枯渇骨髄細胞を放射線後48時間以内に移植した。移植の28日後に二重BMCを用いた処置を行ったSL-TBI syn-HSCTマウス、および二重BMCを用いた処置を行わなかったSL-TBI syn-HSCTマウスの脾臓におけるDP胸腺細胞(図4G)SP4胸腺細胞(図4H)およびSP8胸腺細胞(図4I)ならびに末梢性CD4+T細胞(図4J)およびCD8+T細胞(図4K)およびB細胞(図4L)の総数。図4A、4D~4Fのデータは、各時点について群当たりn=8のマウスの平均±s.d.を表し、少なくとも3回の独立した実験の代表である。図4G~4Lのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
図4K-L】図4G~4Lでは、B6マウスに500cGyのSL-TBIを照射し、その後、5×10個の系列枯渇骨髄細胞を放射線後48時間以内に移植した。移植の28日後に二重BMCを用いた処置を行ったSL-TBI syn-HSCTマウス、および二重BMCを用いた処置を行わなかったSL-TBI syn-HSCTマウスの脾臓におけるDP胸腺細胞(図4G)SP4胸腺細胞(図4H)およびSP8胸腺細胞(図4I)ならびに末梢性CD4+T細胞(図4J)およびCD8+T細胞(図4K)およびB細胞(図4L)の総数。図4A、4D~4Fのデータは、各時点について群当たりn=8のマウスの平均±s.d.を表し、少なくとも3回の独立した実験の代表である。図4G~4Lのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.を表し、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【0134】
図4M図4Mは、BMで処置したマウスおよび移植のみのマウスにおける移植後28日目の胸腺細胞(DP、SP4、SP8)および脾細胞(CD4+、CD8+、B220+)におけるドナーおよび宿主キメラ化のHSCT後の代表的なFACSプロットを示す。
【0135】
図4N図4Nは、移植の28日後に亜致死的に照射処置したマウスにおける宿主キメラ化(CD45.2)およびドナーキメラ化(CD45.1)の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
【0136】
図4Mおよび4Nでは、B6マウスに500cGyのSL-TBIを照射し、その後、5×10個の系列枯渇骨髄細胞を放射線後48時間以内に移植した。1つの群はBMCで処置した。図4Cのデータは、各時点における群当たり5匹のマウスからの平均±s.d.を表す。図4C、4M、および4Nのデータは、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【0137】
図5A、5B、5D~5G、5I、5J、および5L~5Pは、NSG-BLTマウスおよび同種HSCT後のマウスにおけるT細胞の再構成の増強およびGVHDの軽減を示す。図5H、5K、および5Qは、BMCにより生成されたT細胞および培養により生成されたT細胞前駆体の広範なフローサイトメトリー特徴付けを示す。
【0138】
図5A-B】図5A、5B、および5Dは、例示的なフローサイトメトリープロットを伴う、75日目のヒト化NSG-BLTマウスにおける、CD4+:CD8+比(図5D)でのCD3+T細胞の再構成(図5A)およびCD19+B細胞の再構成(図5B)を示す。
【0139】
図5C図5Cは、NSG-BLTマウスにおける血液細胞分析の広範な特徴付けを示す。図5Cは、移植後の2つの時点での、BMC処置を行ったまたは行っていないNSG-BLTマウスの骨髄から数量化されたプレB CFUを示す。データは、n=4の平均±s.d.であり、1つの実験における単一のドナーに由来するものである(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
図5D図5A、5B、および5Dは、例示的なフローサイトメトリープロットを伴う、75日目のヒト化NSG-BLTマウスにおける、CD4+:CD8+比(図5D)でのCD3+T細胞の再構成(図5A)およびCD19+B細胞の再構成(図5B)を示す。
【0140】
図5E図5Eは、75日目の例示的なフローサイトメトリープロットである。
【0141】
図5F図5Fおよび5Gは、NSG-BLTマウスの生存率(群当たりn=10)(図5F)ならびにNSG-BLTマウスの胸腺および脾臓におけるヒト制御性T細胞の再構成(図5G)を示す。
図5G図5Fおよび5Gは、NSG-BLTマウスの生存率(群当たりn=10)(図5F)ならびにNSG-BLTマウスの胸腺および脾臓におけるヒト制御性T細胞の再構成(図5G)を示す。
【0142】
図5A、5B、および5D~5Gでは、異種ヒト化BLT(骨髄-肝臓-胸腺)マウスを生成し、以前に記載されている通り使用した(Brainard, D.M. et al., Induction of robust cellular and humoral virus-specific adaptive immune responses in human immunodeficiency virus-infected humanized BLT mice. Journal of virology 83, 7305-7321 (2009))。同じ供給源由来のヒトドナー組織を有する、BMCなし(NSG-BLT)のマウスおよび二重BMC(NSG-BLT+二重BMC)のマウスを分析した。
【0143】
図5H図5Hは、CD4細胞の中でのFoxP3細胞ならびに胸腺および脾臓におけるTreg細胞を同定するために使用したアイソタイプの代表的なフローサイトメトリープロファイルを示す(3回の独立した実験)。
【0144】
図5I-J】図5Iおよび5Jは、同種移植したBalb/cマウスの胸腺および脾臓におけるドナー由来の制御性T細胞の生存率(図5I)および再構成(図5J)を示す。図5Iおよび5Jでは、BALB/cJレシピエントマウスに850cGyのL-TBIを受けさせた。放射線後48時間以内に、マウスに同種GFP 5×10個の系列枯渇GFP BM細胞+10個のGFP脾細胞を移植した。1つの群は同時に二重BMCで処置した。
【0145】
図5K図5Kは、OP9-DL1細胞と共培養した14日後の選別されたHSC(Lin-ckitSca-1)およびCD44/CD25発現T細胞前駆体の代表的なFACSプロファイルを示す(2回の独立した実験)。
【0146】
図5L図5L~5Pは、BMCまたはOP9-DL1由来プロT細胞を用いて処置したマウスにおけるT細胞再構成の比較を示す。Balb/cJレシピエントマウスに850GyのL-TBIを受けさせ、OP9-DL1培養物由来の同種GFP T細胞前駆体5×10個+同系HSC 10個または二重BMC+系列枯渇同種GFP BM細胞5×10個のいずれかを与えた。移植を受けたマウス424における移植の28日後の胸腺のDP胸腺細胞(図5L)およびSP4胸腺細胞(図5M)およびSP8胸腺細胞(図5N)ならびに脾臓における末梢性CD4+T細胞(図5O)およびCD8+T細胞(図5P)の総数。a~dのデータは、425試験の開始時のn=10のマウスの平均±s.d.であり、3匹のドナーの代表である。
図5M-N】図5L~5Pは、BMCまたはOP9-DL1由来プロT細胞を用いて処置したマウスにおけるT細胞再構成の比較を示す。Balb/cJレシピエントマウスに850GyのL-TBIを受けさせ、OP9-DL1培養物由来の同種GFP T細胞前駆体5×10個+同系HSC 10個または二重BMC+系列枯渇同種GFP BM細胞5×10個のいずれかを与えた。移植を受けたマウス424における移植の28日後の胸腺のDP胸腺細胞(図5L)およびSP4胸腺細胞(図5M)およびSP8胸腺細胞(図5N)ならびに脾臓における末梢性CD4+T細胞(図5O)およびCD8+T細胞(図5P)の総数。a~dのデータは、425試験の開始時のn=10のマウスの平均±s.d.であり、3匹のドナーの代表である。
図5O-P】図5L~5Pは、BMCまたはOP9-DL1由来プロT細胞を用いて処置したマウスにおけるT細胞再構成の比較を示す。Balb/cJレシピエントマウスに850GyのL-TBIを受けさせ、OP9-DL1培養物由来の同種GFP T細胞前駆体5×10個+同系HSC 10個または二重BMC+系列枯渇同種GFP BM細胞5×10個のいずれかを与えた。移植を受けたマウス424における移植の28日後の胸腺のDP胸腺細胞(図5L)およびSP4胸腺細胞(図5M)およびSP8胸腺細胞(図5N)ならびに脾臓における末梢性CD4+T細胞(図5O)およびCD8+T細胞(図5P)の総数。a~dのデータは、425試験の開始時のn=10のマウスの平均±s.d.であり、3匹のドナーの代表である。
【0147】
図5Gおよび5Jのデータは、n=7のマウスの平均±s.d.である。図5Iのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.である。図5G、5I、および5Jのデータは、2回の独立した実験の代表である。図5L~5Pのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.であり、2回の独立した実験の代表である。別個の試料を個別にアッセイした(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA)429)。
【0148】
図5Q図5Qは、ckit、および胸腺におけるETPを同定するために使用したアイソタイプの代表的なフローサイトメトリープロファイルを示す。
【0149】
図6A~6Hは、T細胞出力の定量的分析、免疫レパートリーおよびマウスにおける再生T細胞を用いたワクチン接種を示す。
【0150】
図6A-B】図6Aおよび6Bは、マウスにおける(a)単離された胸腺(図6A)および脾臓(図6B)のシグナルジョイントT細胞受容体切除サークル(sjTREC)分析を示す。
【0151】
図6C図6Cは、BMCおよび移植マウスにおける配列決定されたCDR3ベータ鎖のVおよびJセグメントによって分析されたT細胞の抗原受容体の多様性を示す。各棒は単一のクローンを表す。プロットはマウスにおけるT細胞の深さ(棒の長さ)および多様性(棒の数)を提示する。試料を各群についてマウス5匹からプールし、複合データが表されている。
【0152】
図6D図6Dは、ワクチン接種による抗原特異的ドナーT細胞応答の分析のスケジュールを示す。
【0153】
図6E図6Eおよび6Fは、syn-HSCT(図6E)およびアロHSCT(図6F)後にワクチン接種したマウスにおいて数え上げられたSIINFEKL-四量体ドナーCD8+T細胞を示す。
図6F図6Eおよび6Fは、syn-HSCT(図6E)およびアロHSCT(図6F)後にワクチン接種したマウスにおいて数え上げられたSIINFEKL-四量体ドナーCD8+T細胞を示す。
【0154】
図6G図6Gおよび6Hは、HSCT後22日目および42日目に、440のOP9-DL1T細胞前駆体(precursor)群および二重のBMC処置群の脾細胞を刺激し、表面マーカーおよび細胞内サイトカインについて、CD45.1に特異的な抗体、CD4に特異的な抗体、IFN-γに特異的な抗体およびTNF-αに特異的な抗体を使用して染色したことを示す。細胞をCD4+またはCD8+ドナー細胞に対してゲーティングし、IFN-γ陽性細胞およびTNF-α陽性細胞について分析した。図6A~6Cおよび6Eでは、B6レシピエントに1000cGyのL-TBIおよび5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞を受けさせた。BMCなし(移植のみ)のHSCT後のマウス、BMP-2 BMCを用いて処置したHSCT後のマウス、および二重BMCを用いて処置したHSCT後のマウスを分析し、移植もワクチンを受けていない照射処置していないマウスと比較した。図6Bでは、sjTRECを10個のCD4脾細胞に対して正規化する。図6F~6Hでは、Balb/cJレシピエントマウスに850GyのL-TBIを受けさせ、OP9-DL1培養物由来の同種GFP T細胞前駆体5×10個+同系HSC 10個または二重BMC+系列枯渇同種GFP BM細胞5×10個のいずれかを与えた。図6Aおよび6Bのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.であり、図6Eおよび6Fのデータは、n=5のマウスの平均±s.d.であり、図6Gおよび6Hのデータは、n=7のマウスの平均±s.d.である。全ての実験は、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
図6H図6Gおよび6Hは、HSCT後22日目および42日目に、440のOP9-DL1T細胞前駆体(precursor)群および二重のBMC処置群の脾細胞を刺激し、表面マーカーおよび細胞内サイトカインについて、CD45.1に特異的な抗体、CD4に特異的な抗体、IFN-γに特異的な抗体およびTNF-αに特異的な抗体を使用して染色したことを示す。細胞をCD4+またはCD8+ドナー細胞に対してゲーティングし、IFN-γ陽性細胞およびTNF-α陽性細胞について分析した。図6A~6Cおよび6Eでは、B6レシピエントに1000cGyのL-TBIおよび5×10個の系列枯渇同系GFP BM細胞を受けさせた。BMCなし(移植のみ)のHSCT後のマウス、BMP-2 BMCを用いて処置したHSCT後のマウス、および二重BMCを用いて処置したHSCT後のマウスを分析し、移植もワクチンを受けていない照射処置していないマウスと比較した。図6Bでは、sjTRECを10個のCD4脾細胞に対して正規化する。図6F~6Hでは、Balb/cJレシピエントマウスに850GyのL-TBIを受けさせ、OP9-DL1培養物由来の同種GFP T細胞前駆体5×10個+同系HSC 10個または二重BMC+系列枯渇同種GFP BM細胞5×10個のいずれかを与えた。図6Aおよび6Bのデータは、n=10のマウスの平均±s.d.であり、図6Eおよび6Fのデータは、n=5のマウスの平均±s.d.であり、図6Gおよび6Hのデータは、n=7のマウスの平均±s.d.である。全ての実験は、2回の独立した実験の代表である(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、チューキー事後検定を伴う分散分析(ANOVA))。
【発明を実施するための形態】
【0155】
発明の詳細な説明
I.定義
本発明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語を、最初に定義する。
【0156】
本明細書に別途定義されない限り、本発明と関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。用語の意味および趣旨は、明確であるべきだが、しかしながら、潜在的曖昧さがある場合には、本明細書に提供される定義が、任意の辞書または外部の定義よりも優先される。
【0157】
本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語、ならびに類似の参照物の使用は、本明細書において別途示されるかまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方(すなわち、1つまたは複数)を含むと解釈されるものとする。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」という用語は、別途示されない限り、拡張可能であると解釈されるものとする(すなわち、「含むが限定されない」ことを意味する)。本明細書における値の範囲に関する記述は、本明細書に別途示されない限り、単純に、列挙されたかまたはその範囲内に入るそれぞれの別個の値を個別に参照する簡略化された方法としての機能を果たすことを意図し、それぞれの別個の値は、それが個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0158】
「約」または「およそ」という用語は、通常、所与の値または範囲の5%以内、またはより好ましくは1%以内を意味する。
【0159】
一般に、「処置」または「処置すること」という用語は、疾患、疾患の症状、または疾患の素因を治癒(cure)、治癒(heal)、軽減、解放、変更、治療、緩和、改善、または影響する目的での、患者への治療剤の付与もしくは投与、または患者に由来する単離された組織もしくは細胞系への治療剤の付与もしくは投与として定義され、前記患者は、疾患、疾患の症状、または疾患の素因を有する。したがって、処置することには、抑制すること、阻害すること、予防すること、処置すること、またはこれらの組合せが含まれ得る。処置することとは、とりわけ、持続的な進行までの時間を長引かせること、寛解を早めること、寛解を誘導すること、寛解を増大させること、回復を加速させること、代替的な治療法の有効性を増加させるかもしくはそれに対する耐性を減少させること、またはこれらの組合せを指す。「抑制すること」または「阻害すること」とは、とりわけ、症状の発症を遅延させること、疾患の再発を予防すること、再発エピソードの回数もしくは頻度を減少させること、症候性エピソード間の期間を長引かせること、症状の重症度を低減させること、急性エピソードの重症度を低減させること、症状の数を低減させること、疾患関連症状の発生を低減させること、症状の持続期間を低減させること、症状を緩和すること、続発性症状を低減させること、二次感染を低減させること、患者の生存期間を延長すること、またはこれらの組合せを指す。一実施形態では、症状は、原発性であるが、別の実施形態では、症状は続発性である。「原発性」とは、障害、例えば、糖尿病の直接的な結果である症状を指し、一方で続発性とは、一次的原因に由来するかまたはその結果である症状を指す。症状は、疾患または病態の任意の顕在化であり得る。
【0160】
したがって、本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」という用語は、本明細書に記載される組成物の任意の投与を含み、(i)疾患の素因があり得るが疾患の病理もしくは症候を経験しておらず、それを示してもいない対象において、疾患が発生するのを予防すること、(ii)疾患の病理もしくは症候を経験しているか、もしくはそれを示している対象において、疾患を阻害すること(すなわち、病理および/もしくは症候のさらなる発達を停止させること)、または(iii)疾患の病理もしくは症候を経験しているか、もしくはそれを示している対象において、疾患を緩和すること(すなわち、病理および/もしくは症候を逆転させること)が含まれる。
【0161】
疾患または障害の「処置」、「予防」、または「緩和」は、そのような疾患または障害の発症を遅延または予防すること、そのような疾患または障害と関連する状態の進行、悪化または増悪、その症状の進行または重症度を逆転、軽減、緩和、阻害、遅延、または停止させることである。一実施形態では、疾患または障害の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0162】
処置の有効性は、障害を診断するための任意の公知の方法と関連して判定される。障害の1つまたは複数の症状の軽減は、組成物が臨床上の有益性を付与することを示す。上記の治療方法のうちのいずれかを、例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サル、および最も好ましくはヒトを含む、任意の好適な対象に適用することができる。
【0163】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本発明のヒドロゲルまたは埋込み可能な薬物送達デバイスを投与することにより利益を得ることができる任意の対象を含む。「対象」という用語は、動物、例えば、脊椎動物、両生類、魚類、哺乳動物、非ヒト動物が含まれ、ヒトおよび霊長類、例えば、チンパンジー、サルなどが含まれる。本発明の一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0164】
「対象」という用語には、生産用家畜、例えば、畜牛、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ロバ、ラクダ、バッファロー、ウサギ、ニワトリ、七面鳥、カモ、ガチョウ、およびハチ、ならびに家庭のペット、例えば、イヌ、ネコ、飼育されている鳥、および観賞魚、ならびに同様にいわゆる試験動物、例えば、ハムスター、モルモット、ラット、およびマウスも含まれる。
【0165】
II.免疫系をモジュレートするための組成物
本発明は、対象の免疫系をモジュレートする組成物および方法を特徴とする。本発明の組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールドに細胞を動員するおよび/または組織もしくは器官の形成を誘導するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む。
【0166】
本発明の組成物および方法は、先行技術に優る利点を提供する。例えば、本発明の組成物および方法は、胸腺のT細胞前駆体シーディング、T細胞新生、およびT細胞受容体レパートリーの広範化を増強させる。さらに、本発明の組成物および方法は、同種HSCT後のドナーCD4+制御性T細胞生成および生存期間の改善を促進する。T細胞前駆体の養子移入と比較して、本発明の組成物および方法は、ドナーキメラ化、T細胞生成を増加させ、刺激に対してより強力な抗原特異的T細胞応答を誘導する。本発明の組成物は、T細胞再生およびHSCTにおけるGVHDの軽減に対する、投与が容易な既製のアプローチを表し得る。
【0167】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法はまた、当該技術分野において教示されるものと比較して、有意に低減されたレベルの増殖因子、例えば、1ng~約1000μgの増殖因子、または1ng~約1000ngの増殖因子の使用から生じる毒性を低減する。加えて、本発明の組成物および方法は、驚くほど増強された活性を呈し、それによって、低減された数の細胞を移植した際にも同等の有効性が可能である。
【0168】
スキャフォールド
本発明の組成物は、スキャフォールド、例えば、ポリマースキャフォールドを含む。スキャフォールドは、1つまたは複数の生体材料を含み得る。好ましくは、生体材料は、非毒性である、かつ/または非免疫原性である、生体適合性材料である。本明細書で使用される場合、「生体適合性材料」は、対象の生体組織内に埋め込まれるかまたはそれに隣接して配置された場合に、経時的に有意な免疫応答も有害な組織反応も、例えば、毒性反応も有意な刺激も誘導しない、任意の材料を指す。
【0169】
スキャフォールドは、非生体分解性または生体分解性である生体材料を含み得る。ある特定の実施形態では、生体材料は、非生体分解性材料であってもよい。例示的な非生体分解性材料としては、金属、プラスチックポリマー、またはシルクポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ポリマースキャフォールドは、生体分解性材料を含む。生体分解性材料は、物理的もしくは化学的作用、例えば、水和のレベル、熱、酸化、もしくはイオン交換、または付近の細胞もしくは存在細胞による細胞作用、例えば、酵素、ペプチド、もしくは他の化合物の同化によって、分解され得る。ある特定の実施形態では、ポリマースキャフォールドは、非分解性材料および分解性材料の両方を含み得る。
【0170】
一部の実施形態では、スキャフォールド組成物は、温度、pH、水和状態、および細孔性、架橋密度、種類、およびケミストリー、または主鎖連結の分解に対する感受性からなる群から選択される、物理的パラメーターに基づいて、所定の速度で分解され得る。あるいは、スキャフォールド組成物は、化学的ポリマー比に基づいて、所定の速度で分解される。例えば、単にラクチドから構成される高分子量ポリマーは、数年間の期間、例えば、1~2年間にわたって分解され、一方でラクチドとグリコリドの50:50混合物から構成される低分子量ポリマーは、数週間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、または10週間のうちに分解される。高分子量高グルロン酸アルギネートから構成されるカルシウム架橋ゲルは、in vivoにおいて、数ヶ月間(1ヶ月間、2ヶ月間、4ヶ月間、6ヶ月間、8ヶ月間、10ヶ月間、または12ヶ月間)から数年間(1年間、2年間、または5年間)で分解され、一方で低分子量アルギネートおよび/または部分的に酸化されたアルギネートから構成されるゲルは、数週間のうちに分解されるであろう。
【0171】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される1つまたは複数の化合物またはタンパク質(例えば、増殖因子、分化因子、およびホーミング因子)は、共有結合または非共有結合により、スキャフォールド組成物に連結または結合される。様々な実施形態では、本明細書に開示される1つまたは複数の化合物またはタンパク質は、スキャフォールド組成物の構造または細孔に組み込まれるか、またはその中に存在する。
【0172】
一部の実施形態では、スキャフォールドは、改変された、例えば、酸化または還元された、生体材料を含む。改変、例えば、酸化の程度は、約1%~約100%で変動し得る。本明細書で使用される場合、改変の程度は、官能基で改変された生体材料上の部位のモルパーセンテージを意味する。例えば、改変の程度は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であり得る。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。例示的な改変された生体材料、例えば、ヒドロゲルとしては、還元アルギネート、酸化アルギネート、MA-アルギネート(メタクリル化アルギネート)、またはMA-ゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
本発明においてスキャフォールドとして使用するのに好適な例示的な生体材料としては、グリコサミノグリカン、シルク、フィブリン、MATRIGEL(登録商標)、ポリ-エチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N-ビニルピロリドン)、(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリe-カルポラクトン(carpolactone)(PCL)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンフマレート(PPF)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリヒドロキシ酪酸、加水分解ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリエチレンアミン、アルギン酸のエステル;ペクチニン酸;およびアルギネート、完全もしくは部分酸化アルギネート、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、ヘパリン硫酸、キトサン、カルボキシメチルキトサン、キチン、プルラン、ジェラン、キサンタン、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデキストラン、コンドロイチン硫酸、カチオン性グアー、カチオン性デンプン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、生体材料は、アルギネート、完全または部分酸化アルギネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0174】
本発明のスキャフォールドは、外部表面を含み得る。代替として、または追加として、スキャフォールドは、内部表面を含み得る。本発明のスキャフォールドの外部表面または内部表面は、固形であっても多孔性であってもよい。スキャフォールドの細孔サイズは、直径が約10nm未満、約100nm~20μm、または約20μmを上回る、例えば、最大1000μmであり得る。例えば、細孔は、ナノ細孔性、マイクロ細孔性、またはマクロ細孔性であり得る。例えば、ナノ細孔の直径は、約10nm未満であり、マイクロ細孔の直径は、約100nm~20μmの範囲であり、マクロ細孔の直径は、約20μmを上回る、例えば、約50μmを上回る、例えば、約100μmを上回る、例えば、約400μmを上回る、例えば、600μmを上回るか、または800μmを上回る。一部の実施形態では、細孔の直径は、約50μm~約80μmである。
【0175】
一部の実施形態では、本発明のスキャフォールドは、様々な幾何形状(例えば、ディスク、ビーズ、ペレット)、ニッチ、平面層(例えば、薄シート)で組織化されている。例えば、直径が約0.1~200ミリメートル、例えば、5、10、20、40、または50ミリメートルのディスクが、皮下に埋め込まれてもよい。ディスクは、0.1~10ミリメートル、例えば、1、2、または5ミリメートルの厚さを有し得る。ディスクは、患者への投与のために容易に圧縮または凍結乾燥される。皮下投与のための例示的なディスクは、以下の寸法を有する:8ミリメートルの直径および1ミリメートルの厚さ。
【0176】
一部の実施形態では、スキャフォールドは、複数の構成要素および/またはコンパートメントを含み得る。ある特定の実施形態では、複数コンパートメントのデバイスは、同様にまたは異なってドープされたゲルまたは他のスキャフォールド材料の連続した層を標的部位に付与することによって、in vivoでアセンブルされる。例えば、デバイスは、ニードルを使用して、前に注射した材料の中心に次の内部層を順に注射し、それによって同心回転楕円体を形成することによって、形成される。ある特定の実施形態では、材料を前に注射した層の異なる位置に注射することによって、非同心コンパートメントが、形成される。複数ヘッドの注射デバイスは、コンパートメントを並行かつ同時に押出成形する。層は、医薬組成物が異なってドープされた類似または異なる生体材料から作製される。あるいは、コンパートメントは、その親水性/疎水性特徴またはそれぞれのコンパートメント内の二次相互作用に基づいて、自己組織化される。ある特定の実施形態では、複数構成要素のスキャフォールドは、必要に応じて、層のそれぞれが異なる物理的性質、例えば、ポリマーのパーセンテージ、ポリマーの架橋のパーセンテージ、ヒドロゲルの化学組成、細孔寸法、細孔性、および細孔アーキテクチャ、剛性、靭性、延性、粘弾性、中に組み込まれる増殖因子、分化因子、および/もしくはホーミング因子、ならびに/または中に組み込まれる任意の他の組成物によって特徴付けられる、複数の同心層に構築される。
【0177】
ヒドロゲルおよびクリオゲルスキャフォールド
ある特定の実施形態では、本発明のスキャフォールドは、1つまたは複数のヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、架橋したポリマー鎖のネットワークを含むポリマーゲルである。ヒドロゲルは、通常、親水性であるポリマー鎖を含む組成物である。ヒドロゲルのネットワーク構造は、それらが有意な量の水を吸収することを可能にしている。一部のヒドロゲルは、高度に伸縮性かつ弾性であり、その他には、粘弾性のものがある。ヒドロゲルは、水が分散媒であるコロイドゲルとして見いだされることもある。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、その有意な含水量に起因して、高度に吸収性の(99%を上回る水(体積/体積)を含有し得る)天然ポリマーまたは天然組織と極めて似た程度の可撓性を有する合成ポリマーである。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、適切なせん断応力が印加されると、変形可能なヒドロゲルが劇的かつ可逆的に圧縮され(最大でその体積の95%)、注射可能なマクロ細孔が事前形成されたスキャフォールドが得られる特性を有し得る。ヒドロゲルは、治療適用に、例えば、治療剤、例えば、小分子、細胞、および生物製剤のin vivo送達のためのビヒクルとして、使用されている。ヒドロゲルは、一般に多糖類、例えば、アルギネートから産生されている。多糖類は、それらの特性および結果として得られるヒドロゲルの特性をモジュレートするように化学的に操作されていてもよい。
【0178】
本発明のヒドロゲルは、多孔性であっても非多孔性であってもよい。好ましくは、本発明の組成物は、多孔性ヒドロゲルから形成される。例えば、ヒドロゲルは、細孔の直径が約10nm未満であるナノ細孔性であってもよく、細孔の直径が好ましくは約100nm~20μmであるマイクロ細孔性であってもよく、または細孔の直径が約20μmを上回る、より好ましくは約100μmを上回る、さらにより好ましくは約400μmを上回る、マクロ細孔性であってもよい。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、直径が約50~80μmの細孔を有するマクロ細孔性である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、直径が約400~500μmの整列した細孔を有するマクロ細孔性である。多孔性ヒドロゲル製品を調製する方法は、当該技術分野において公知である。(例えば、米国特許第6,511,650号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0179】
ヒドロゲルは、いくつかの異なる剛性、半剛性、可撓性、ゲル状の自己アセンブルする液晶または流体組成物、例えば、ペプチドポリマー、多糖類、合成ポリマー、ヒドロゲル材料、セラミック(例えば、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイト)、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、金属、および金属合金から構築され得る。組成物は、当該技術分野において公知の方法、例えば、射出成形、事前形成構造体の凍結乾燥、印刷、自己アセンブリ、位相反転、溶媒流延、溶融加工、ガス発泡、繊維形成/加工、粒子浸出、またはこれらの組合せを使用して、ヒドロゲルにアセンブルされる。アセンブルされたデバイスは、次いで、処置しようとする個体の身体に埋め込まれるかまたは投与される。
【0180】
ヒドロゲルを含む組成物は、いくつかの方法で、in vivoにおいてアセンブルすることができる。ヒドロゲルは、ゲル化材料から作製されるが、これは、その非ゲル化形態で身体に導入され、in situでゲル化する。組成物の成分を、アセンブルが生じる部位に送達する例示的な方法としては、ニードルもしくは他の押出ツールによる注射、スプレー、ペイント、または組織部位における蒸着方法、例えば、カニューレによって挿入されるアプリケーションデバイスを使用した送達が挙げられる。一部の実施形態では、非ゲル化または未形成のヒドロゲル材料は、身体への導入前または導入されている間に、少なくとも1つの医薬組成物と混合される。結果として生じるin vivo/in situでアセンブルされたデバイス、例えば、ヒドロゲルは、少なくとも1つの医薬組成物の混合物を含有する。
【0181】
ヒドロゲルのin situアセンブリは、ポリマーの自発的結合の結果として、または相乗的もしくは化学的に触媒される重合により生じ得る。相乗的または化学的触媒は、アセンブリ部位またはその付近におけるいくつかの内因的要因もしくは条件、例えば、身体の場合は体温、イオン、もしくはpHによって開始されるか、または操作者によってアセンブリ部位に提供される外的要因もしくは条件、例えば、非ゲル化材料が導入された後にそこに誘導される光子、熱、電気、音、もしくは他の照射によって開始される。エネルギーは、放射線ビームによって、または熱もしくは光伝導体、例えば、ワイヤもしくは光ファイバケーブルもしくは超音波トランスデューサーによって、ヒドロゲル材料に誘導される。あるいは、例えば、ニードルを通過することによって、かかっていたせん断応力が解放された後に再架橋するせん断減粘性材料、例えば、両親媒体が、使用される。
【0182】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、ex vivoでアセンブルされてもよい。一部の実施形態では、ヒドロゲルは、注射可能である。例えば、ヒドロゲルは、マクロ細孔性スキャフォールドとして、体外で作製される。身体に注射する際、細孔が潰されてゲルが非常に小さくなり、ニードルを通るように適合することが可能となる。例えば、国際公開第WO2012/149358号、およびBencherif et al., 2012, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109.48:19590-5を参照されたく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0183】
in vivoおよびex vivoの両方におけるヒドロゲルデバイスのアセンブリに好適なヒドロゲルは、当該技術分野において周知であり、例えば、Lee et al., 2001, Chem. Rev. 7:1869-1879に記載されている。自己アセンブリによるアセンブリのための両親媒性ペプチドのアプローチは、例えば、Hartgerink et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5133-5138に記載されている。せん断減粘後の可逆的ゲル化のための方法は、Lee et al., 2003, Adv. Mat. 15:1828-1832において例証されている。
【0184】
ある特定の実施形態では、例示的なヒドロゲルは、ポリマー、ナノ粒子、ポリペプチド、および細胞を含む、材料の封入と適合性のある材料から構成される。例示的なヒドロゲルは、アルギネート、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-アクリレート、アガロース、ヒアルロン酸、または合成タンパク質(例えば、コラーゲンもしくは操作されたタンパク質(すなわち、自己アセンブリペプチドベースヒドロゲル))から製造される。例えば、市販入手可能なヒドロゲルとしては、BD(商標)PuraMatrix(商標)が挙げられる。BD(商標)PuraMatrix(商標)ペプチドヒドロゲルは、細胞培養のための既定の3次元(3D)微小環境を作るために使用される合成マトリックスである。
【0185】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは、全体または部分的に生体分解性の生体適合性ポリマーマトリックスである。ヒドロゲルを形成することができる材料の例としては、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ポリマー、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、天然および合成多糖類、ポリアミノ酸、例えば、ポリペプチド、特に、ポリ(リシン)、ポリエステル、例えば、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ-イプシロン.-カプロラクトン、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特に、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変されたスチレンポリマー、例えば、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ならびにグラフトコポリマーを含む上記のもののコポリマーが挙げられる。合成ポリマーおよび天然に存在するポリマー、例えば、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンリッチゲルを含むがこれらに限定されないものもまた、使用することができる。「誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、化学反応によって類似の化合物から導出される化合物を指す。例えば、酸化反応によってアルギネートから導出される酸化アルギネートは、アルギネートの誘導体である。
【0186】
埋込み可能な組成物は、回転楕円体、立方体、多面体、柱体、円筒形、桿状体、ディスク、または他の幾何形状を含むがこれらに限定されない、実質的にあらゆる規則的または不規則な形状を有し得る。したがって、一部の実施形態では、インプラントは、約0.5~約10mmの直径および約0.5~約10cmの長さの円筒形態のものである。好ましくは、その直径は、約1~約5mmであり、その長さは約1~約5cmである。
【0187】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、球状形態のものである。組成物が球状形態である場合、その直径は、一部の実施形態では、約0.5~約50mmの直径の範囲に及び得る。一部の実施形態では、球状インプラントの直径は、約5~約30mmである。例示的な実施形態では、直径は、約10~約25mmである。
【0188】
ある特定の実施形態では、スキャフォールドは、クリックヒドロゲルおよび/またはクリッククリオゲルを含む。クリックヒドロゲルまたはクリオゲルは、ヒドロゲルまたはクリオゲルポリマー間の架橋が、ポリマー間でのクリック反応によって促進される、ゲルである。それぞれのポリマーは、クリック反応において有用なさらなる官能基のうちの1つを含み得る。クリック反応における官能基対の高い特異性レベルを考慮して、クリックケミストリーによるヒドロゲルデバイスの形成よりも前またはそれと同時に、活性化合物を、事前形成したデバイスに添加することができる。クリックヒドロゲルを形成するために使用することができるクリック反応の非限定的な例としては、銅Iに触媒されるアジド-アルキン環化付加、歪み促進型アシズ(assize)-アルキン環化付加、チオール-エン光カップリング、ディールズ-アルダー反応、逆電子要求ディールズ-アルダー反応、テトラゾール-アルケン光クリック反応、オキシム反応、チオール-マイケル付加、およびアルデヒド-ヒドラジドカップリングが挙げられる。クリックヒドロゲルの非限定的な態様は、Jiang et al., 2014, Biomaterials, 35:4969-4985に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
様々な実施形態では、クリックアルギネートが利用される(例えば、2015年10月8日に公開されたPCT国際特許出願公開第WO 2015/154078号を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0190】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル)系により、細胞(例えば、幹細胞、例えば、造血幹細胞(HSC)の浸潤および輸送)のための空間を作りながら、1つまたは複数の薬剤(例えば、増殖因子、例えば、BMP-2、および/または分化因子、例えば、DLL-4を送達することができる。一部の実施形態では、本発明によるヒドロゲル系により、造血幹細胞(HSC)および/または造血前駆細胞増強/動員因子として作用するBMP-2、ならびに造血幹細胞および/または造血前駆細胞のT細胞系統指定を促進する分化因子としてのDLL-4を送達する。
【0191】
一部の実施形態では、クリオゲル組成物、例えば、MA-アルギネートから形成されたものは、局所ニッチ、例えば、T系統指定を増強させるための特定のニッチを作り出すことによって、送達プラットフォームとしての機能を果たし得る。一部の実施形態では、クリオゲルは、細胞、例えば、動員される幹細胞または前駆細胞、ならびに本発明の様々な例示的な薬剤、例えば、増殖因子および/または分化因子の遭遇を制御することができる局所ニッチを作り出す。ある特定の実施形態では、細胞および本発明の例示的な薬剤は、小さな体積に局在化され、細胞および薬剤の接触を、空間および時間において定量的に制御することができる。
【0192】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル)は、増殖因子および分化因子の両方の送達を空間および時間的に調整するように操作することができ、可能性として、動員される細胞、例えば、造血幹細胞または前駆細胞の分化および/または指定を調節することによって、全体的な免疫モジュレーション機能を増強させることができる。ある特定の実施形態では、細胞および増殖因子/分化因子は、小さな体積に局在化され、空間および時間的な因子の送達を、定量的に制御することができる。増殖/分化因子は、局所的に放出され、全身送達される薬剤、例えば、増殖因子とは対照的に、全身作用はほとんど想定されない。
【0193】
クリオゲルまたはヒドロゲルが作製されるポリマー組成物の例は、本開示全体を通じて記載されており、これには、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン、ヘパリン、デキストラン、カロブガム、PEG、PEG-コ-PGAおよびPEG-ペプチドコンジュゲートを含むPEG誘導体が挙げられる。これらの技法は、任意の生体適合性ポリマー、例えば、コラーゲン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、またはポリ(アクリル酸)(PAAc)に適用することができる。例えば、特定の実施形態では、組成物は、アルギネートに基づくヒドロゲル/クリオゲルを含む。別の例では、スキャフォールドは、ゼラチンベースのヒドロゲル/クリオゲルを含む。
【0194】
クリオゲルは、凍結向性(cryotropic)ゲル化(または凍結ゲル化)技法を使用して産生される高度に多孔性の相互接続した構造体を有する材料のクラスである。クリオゲルはまた、高度に多孔性の構造を有する。典型的には、活性化合物は、クリオゲルの細孔/壁構造の凍結形成後に、クリオゲルデバイスに添加される。クリオゲルは、高い細孔性、例えば、ポリマー架橋の高い密度によって特徴付けられる薄い細孔壁に少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%の細孔によって特徴付けられる。本明細書で使用される場合、「細孔性」という用語は、スキャフォールドの体積に対する細孔の体積のパーセンテージを指す。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。クリオゲルの壁部は、典型的に、緻密かつ高度に架橋しており、それによって、恒久的な変形も実質的な構造損傷もなしにニードルを通じて対象内に圧縮して入れることが可能である。
【0195】
様々な実施形態では、細孔壁部は、少なくとも約10、15、20、25、30、35、または40%(重量/体積)のポリマーを含む。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。他の実施形態では、細孔壁部は、約10~40%のポリマーを含む。一部の実施形態では、約0.5~4%(重量/体積)のポリマー濃度(凍結ゲル化前)が使用され、濃度は、凍結ゲル化が完了すると実質的に増加する。クリオゲルのゲル化の非限定的な態様および凍結ゲル化後のポリマー濃度の増加は、Beduer et al., 2015 Advanced Healthcare Materials 4.2: 301-312において考察されており、この全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
ある特定の実施形態では、凍結ゲル化は、重合-架橋反応が疑似凍結反応溶液において行われる技法である。凍結ゲル化技法の非限定的な例は、2014年8月14日に公開された米国特許出願公開第20140227327号に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。相分離によって得られる従来的なマクロ細孔性ヒドロゲルと比較したクリオゲルの利点は、その高い可逆的変形性である。クリオゲルは、極めて柔らかいが、その形状を変形と再形成が可能である。ある特定の実施形態では、クリオゲルは、非常に頑丈であり得、高レベルの変形、例えば、伸張およびねじれに耐えることができ、またその溶媒内容物を排出するために機械力下において圧搾することもできる。アルギネートクリオゲルの改善された変形特性は、反応系の非凍結液体チャネルの高い架橋密度に起因する。
【0197】
凍結ゲル化プロセスにおいて、マクロモノマー(例えば、メタクリル化アルギネート)溶液の凍結中に、マクロモノマーおよび開始剤系(例えば、APS/TEMED)が、氷の結晶間のチャネル内の氷濃縮物から排出され、その結果、反応はこれらの非凍結液体チャネルにおいてのみ生じることになる。重合後、および氷が溶けた後、多孔性材料が産生され、その微細構造は、形成された氷の負の複製物である。氷の結晶は、ポロゲンとして作用する。所望される細孔サイズは、部分的には、凍結ゲル化プロセスの温度を変更することによって、達成される。例えば、凍結ゲル化プロセスは、典型的に、溶液を、-20℃で急速に凍結させることによって行われる。この温度を、例えば、-80℃まで低下させることにより、より多くの氷の結晶が得られ、より小さな細孔が生じるであろう。一部の実施形態では、クリオゲルは、少なくともメタクリル化(MA)-アルギネートおよびMA-PEGの低温重合によって産生される。一部の実施形態では、クリオゲルは、少なくともMA-アルギネート、増殖因子、分化因子、およびMA-PEGの低温重合によって産生される。
【0198】
一部の実施形態では、本発明はまた、ゼラチンスキャフォールド、例えば、ゼラチンヒドロゲル、例えば、ゼラチンクリオゲルも特徴とし、これらは、生体材料に基づく治療法のための細胞反応性プラットフォームである。ゼラチンは、部分的加水分解によってコラーゲンから導出されるポリペプチドの混合物である。これらのゼラチンスキャフォールドは、他の種類のスキャフォールドおよびヒドロゲル/クリオゲルとは異なる利点を有する。例えば、本発明のゼラチンスキャフォールドは、細胞の結合、増殖、および生存を支持し、細胞によって、例えば、酵素、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(例えば、組換えマトリックスメタロプロテイナーゼ-2および-9)の作用によって分解される。
【0199】
ある特定の実施形態では、事前に作製されたゼラチンクリオゲルは、対象(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ブタ、またはウマ)に皮下注射されると、急速にそのおよそ元々の形状を取り(「形状記憶」)、注射後の有害な宿主免疫応答(例えば、免疫拒絶)をほとんど誘起しないかまたは誘起しない。
【0200】
一部の実施形態では、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル)は、改変されたポリマーを含み、例えば、ポリマー分子の部位は、メタクリル酸基(メタクリレート(MA))またはアクリル酸基(アクリレート)で改変されている。例示的な改変されたヒドロゲル/クリオゲルは、MA-アルギネート(メタクリル化アルギネート)またはMA-ゼラチンである。MA-アルギネートまたはMA-ゼラチンの場合、50%が、アルギネートまたはゼラチンのメタクリル化の程度に相当する。これは、1つおきの反復単位が、メタクリル化基を含むことを意味する。メタクリル化の程度は、約1%~約100%で変動し得る。好ましくは、メタクリル化の程度は、約1%~約90%で変動する。
【0201】
ある特定の実施形態では、ポリマーはまた、メタクリル化基の代わりにアクリル化基で改変されていてもよい。そのため、産物は、アクリル化ポリマーと称されるであろう。メタクリル化(またはアクリル化)の程度は、ほとんどのポリマーについて変動し得る。しかしながら、一部のポリマー(例えば、PEG)は、100%の化学的改変であっても、その水溶性特性を維持する。架橋後、ポリマーは、通常、ほぼ完全なメタクリレート基変換に達し、およそ100%の架橋効率を示す。本明細書で使用される場合、「架橋効率」という用語は、共有結合により連結されているマクロモノマーのパーセンテージを指す。例えば、ヒドロゲル中のポリマーは、50~100%が架橋している(共有結合)。架橋の程度は、ヒドロゲルの耐久性と相関する。したがって、改変されたポリマーの架橋のレベルが高いこと(90~100%)が、望ましい。
【0202】
例えば、高度に架橋したヒドロゲル/クリオゲルポリマー組成物は、少なくとも約50%のポリマー架橋(例えば、約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%、列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される)によって特徴付けられる。高いレベルの架橋は、構造に機械的堅牢性を与える。好ましくは、架橋のパーセンテージは、約100%未満である。組成物は、フリーラジカル重合プロセスおよび凍結ゲル化プロセスを使用して形成される。例えば、クリオゲルは、メタクリル化ゼラチン、メタクリル化アルギネート、またはメタクリル化ヒアルロン酸の低温重合によって形成される。一部の実施形態では、クリオゲルは、約1.5%(重量/体積)またはそれ未満(例えば、約1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、またはそれ未満、列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される)の濃度のメタクリル化ゼラチンのマクロモノマーまたはメタクリル化アルギネートのマクロモノマーを含む。一部の実施形態では、メタクリル化ゼラチンまたはアルギネートマクロモノマー濃度は、約1%(重量/体積)である。
【0203】
ある特定の実施形態では、クリオゲルは、少なくとも約75%(体積/体積)の細孔、例えば、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(体積/体積)、またはそれよりも多い細孔を含む。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。一部の実施形態では、細孔は、相互接続されている。相互接続性がなければ、水がゲル内に捕捉されてしまうため、相互接続性は、ヒドロゲルおよび/またはクリオゲルの機能に重要である。細孔の相互接続性は、構造の内外への水(および他の組成物、例えば、細胞および化合物)の通過を可能にする。ある特定の実施形態では、完全に水和した状態では、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル)は、少なくとも約90%の水(水の体積/スキャフォールドの体積)(例えば、約90~99%、少なくとも約92%、95%、97%、99%、またはそれよりも多い)を含む。例えば、クリオゲルの体積のうちの少なくとも約90%(例えば、少なくとも約92%、95%、97%、99%、またはそれよりも多い)は、細孔に含まれる液体(例えば、水)からできている。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。ある特定の実施形態では、圧縮または脱水されたヒドロゲルにおいて、その水の最大約50%、60%、70%が、不在であり、例えば、クリオゲルは、約25%未満(例えば、約20%、15%、10%、5%、またはそれ未満)の水を含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、本発明のクリオゲルは、細胞が通るのに十分に大きい細孔を含む。例えば、クリオゲルは、直径が約20~500μm、例えば、約20~30μm、約30~150μm、約50~500μm、約50~450μm、約100~400μm、約200~500μmの細孔を含む。一部の実施形態では、水和した細孔サイズは、約1~500μm(例えば、約10~400μm、約20~300μm、約50~250μm)である。ある特定の実施形態では、クリオゲルは、直径が約50~80μmの細孔を含む。
【0205】
一部の実施形態では、注射可能なヒドロゲルまたはクリオゲルは、アミノ、ビニル、アルデヒド、チオール、シラン、カルボキシル、アジド、またはアルキンからなる群から選択される官能基の付加によって、さらに官能化される。代替として、または追加として、クリオゲルは、さらなる架橋剤(例えば、複数アームのポリマー、塩、アルデヒドなど)の付加によってさらに官能化される。溶媒は、水溶性であってもよく、特に、酸性またはアルカリ性であってもよい。水溶性溶媒は、水混和性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、DMF、DMSO、アセトン、ジオキサンなど)を含み得る。
【0206】
クリオゲルについては、低温架橋が鋳型において生じ得、クリオゲル(注射され得る)は、分解可能であり得る。細孔サイズは、使用される主溶媒の選択、ポロゲンの組み込み、適用される凍結温度および速度、架橋条件(例えば、ポリマー濃度)によって、ならびに使用されるポリマーの種類および分子量によっても制御することができる。クリオゲルの形状は、鋳型によって決定され得、したがって、製造者によって所望される任意の形状を取ることができ、例えば、様々なサイズおよび形状(ディスク、円筒、正方形、ストリングなど)が、低温重合によって調製される。
【0207】
注射可能なクリオゲルは、マイクロメートル規模からセンチメートル規模で調製することができる。例示的な体積は、数百μm(例えば、約100~500μm)~約10cmで変動する。ある特定の実施形態では、例示的なスキャフォールド組成物は、約100μm~100mmのサイズである。様々な実施形態では、スキャフォールドは、約10mm~約100mmのサイズである。ある特定の実施形態では、スキャフォールドは、約30mmのサイズである。
【0208】
一部の実施形態では、クリオゲルは、水和され、化合物がロードされ、シリンジまたは他の送達装置にロードされる。例えば、シリンジは、事前充填され、使用まで冷蔵保管される。別の例では、クリオゲルは、脱水され、例えば、凍結乾燥され、必要に応じて化合物(例えば、増殖因子または分化因子)がゲルにロードされ、乾燥状態または冷蔵で保管される。投与の前に、クリオゲルをロードしたシリンジまたは装置を、送達しようとする化合物を含有する溶液と接触させてもよい。例えば、クリオゲルが事前ロードされたシリンジのバレルに、生理学的に適合性のある溶液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)を充填する。あるいは、クリオゲルを、所望される解剖学的部位に投与し、続いて、必要に応じて他の成分、例えば、増殖因子および/もしくは分化因子を含有する生理学的に適合性のある溶液、または本明細書に開示される1つもしくは複数の化合物と一緒に、投与してもよい。クリオゲルは、次いで、再水和され、in situにおいてその形状完全性を取り戻す。ある特定の実施形態では、クリオゲルの設置後に投与されるPBSまたは他の生理学的溶液の体積は、一般に、クリオゲル自体の体積の約10倍である。
【0209】
クリオゲルはまた、圧縮したときに、クリオゲル組成物が、構造完全性および形状記憶特性を維持するという利点も有する。例えば、クリオゲルは、中空のニードルによって注射可能である。例えば、クリオゲルは、ニードル(例えば、例えば、1.65mmの内径を有する16ゲージ(G)のニードル)を通過した後、そのおよそ元々の幾何形状に戻る。他の例示的なニードルサイズは、16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、22ゲージ、24ゲージ、26ゲージ、28ゲージ、30ゲージ、32ゲージ、または34ゲージのニードルである。注射可能なクリオゲルは、中空構造体、例えば、超微細ニードル、例えば、18~30Gのニードルを通過するように設計されている。ある特定の実施形態では、クリオゲルは、ニードルを通過した後、短い期間、例えば、約10秒未満、約5秒未満、約2秒未満、または約1秒未満で、そのおよそ元々の幾何形状に戻る。
【0210】
クリオゲルは、任意の好適な注射デバイスを使用して、対象に注射され得る。例えば、クリオゲルは、シリンジを使用してニードルを通じて注射され得る。シリンジには、プランジャー、ニードル、および本発明の組成物を含むリザーバが含まれ得る。注射可能なクリオゲルはまた、カテーテル、カニューレ、またはステントを使用して、対象に注射されてもよい。
【0211】
注射可能なクリオゲルは、ロッド、正方形、ディスク、球体、立方体、ファイバ、泡沫体の形態で、所望される形状に鋳型成形され得る。一部の事例では、クリオゲルは、ディスク、円筒形、正方形、長方形、またはストリングの形状である。例えば、クリオゲル組成物は、約100μm~10cmのサイズ、例えば、10mm~100mmのサイズである。例えば、クリオゲル組成物は、約1mmの直径~約50mmの直径(例えば、約5mm)である。必要に応じて、クリオゲルの厚さは、約0.2mm~約50mm(例えば、約2mm)である。
【0212】
3つの例示的なクリオゲル材料系が、以下に記載されている。
【0213】
a)メタクリル化ゼラチンクリオゲル(CryoGeIMA)-メタクリル化ゼラチンを利用した例示的なクリオゲルおよび結果は、2014年8月14日に公開された米国特許出願公開第2014-0227327号に詳細に記載されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0214】
b)メタクリル化アルギネートクリオゲル(CryoMAアルギネート)-メタクリル化アルギネートを利用した例示的なクリオゲルおよび結果は、2014年8月14日に公開された米国特許出願公開第2014-0227327号に記載されており、この全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
c)ラポナイトナノ板片を用いたクリックアルギネートクリオゲル(CryoClick)-基材は、クリックアルギネートである(2015年10月8日に公開されたPCT国際特許出願公開第WO 2015/154078号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一部の例では、基材は、ラポナイト(化粧品など多数の消費者向け製品に使用される市販入手可能なシリケートクレイ)を含有する。ラポナイトは、大きな表面積および高い負電荷密度を有し、これにより、静電相互作用によって様々なタンパク質および他の生物学的に活性な分子上の正に荷電した部分に吸着することが可能となっており、それによって、薬物ロードが可能である。低濃度の薬物を有する環境に置かれると、吸着された薬物は、持続様式でラポナイトから放出される。この系は、基材単独と比較して、様々な薬剤、例えば、増殖因子のより柔軟なアレイの放出を可能にする。
【0216】
本主題の様々な実施形態は、細孔形成スキャフォールド組成物を含む送達ビヒクルを含む。例えば、細孔(例えば、マクロ細孔)は、ヒドロゲルを対象に注射した後、ヒドロゲル内にin situで形成される。周囲のヒドロゲル(バルクヒドロゲル)内の犠牲ポロゲンヒドロゲルの分解によってin situで形成される細孔は、細胞の動員および輸送、ならびに本発明の任意の組成物または薬剤、例えば、増殖因子、例えば、BMP-2、分化因子、またはホーミング因子、またはこれらの任意の組合せの放出を促進する。一部の実施形態では、犠牲ポロゲンヒドロゲル、バルクヒドロゲル、または犠牲ポロゲンヒドロゲルおよびバルクヒドロゲルの両方は、本発明の任意の組成物または薬剤、例えば、増殖因子、分化因子、および/もしくはホーミング因子、またはこれらの任意の組合せを含み得る。
【0217】
様々な実施形態では、細孔形成組成物は、レシピエント動物、例えば、哺乳動物対象の身体に存在する場合、経時的にマクロ細孔性となる。例えば、細孔形成組成物は、犠牲ポロゲンヒドロゲルおよびバルクヒドロゲルを含み得、ここで、犠牲ポロゲンヒドロゲルは、バルクヒドロゲルよりも少なくとも約10%急速に(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%急速に)分解される。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。犠牲ポロゲンヒドロゲルは、分解されて、その場所にマクロ細孔が残り得る。ある特定の実施形態では、マクロ細孔は、相互接続された開口マクロ細孔である。一部の実施形態では、犠牲ポロゲンヒドロゲルは、(i)水中への可溶性が高い(低い可溶性インデックスを含む)、(ii)2005年6月2日に公開された米国特許出願公開第2005-0119762号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるプロテアーゼに媒介される分解モチーフに架橋している、(iii)長いバルクヒドロゲルポリマーのものと比較してより急速に分解する短いポリマーを含む、(iv)(例えば、酸化によって)バルクヒドロゲルよりも加水分解により分解可能となるように改変されている、かつ/または(v)バルクヒドロゲルと比較して酵素分解性が高いため、バルクヒドロゲルよりも急速に分解され得る。
【0218】
様々な実施形態では、スキャフォールドは、重合後に、1つまたは複数の活性化合物がロードされる(例えば、含浸される)。ある特定の実施形態では、デバイスまたはスキャフォールドポリマー形成材料は、重合前に、1つまたは複数の活性化合物と混合される。一部の実施形態では、デバイスまたはスキャフォールドポリマー形成材料は、重合前に、1つまたは複数の活性化合物と混合され、次いで、重合後に、同じものをさらにか、または1つもしくは複数の追加の活性化合物がロードされる。
【0219】
一部の実施形態では、組成物またはスキャフォールドの細孔サイズまたは総細孔体積は、デバイスまたはスキャフォールドからの化合物の放出に影響を及ぼすように選択される。例示的な細孔性(例えば、ナノ細孔性、マイクロ細孔性、およびマクロ細孔性スキャフォールドおよびデバイス)ならびに総細孔体積(例えば、スキャフォールドの体積の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%、またはそれよりも多い)は、本明細書に記載されている。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。細孔サイズおよび総細孔体積の増加により、組織、例えば、骨髄またはその付近に送達することができる化合物の量が増加する。一部の実施形態では、細孔サイズまたは総細孔体積は、活性成分が組成物またはスキャフォールドから出る速度を増加させるように選択される。様々な実施形態では、活性成分は、例えば、細孔腔から拡散され得る活性成分と比較して長期間にわたる活性成分のスキャフォールドまたはデバイスからの継続的な放出を達成するために、ヒドロゲルまたはクリオゲルのスキャフォールド材料に組み込まれ得る。
【0220】
細孔性は、細胞のデバイスおよびスキャフォールドへの動員、ならびにデバイスおよびスキャフォールドからの物質の放出に影響を及ぼす。細孔は、例えば、ナノ細孔性、マイクロ細孔性、またはマクロ細孔性であり得る。例えば、ナノ細孔の直径は、約10nm未満である。マイクロ細孔は、直径が約100nm~約20μmの範囲である。マクロ細孔は、直径が約20μmを上回る(例えば、約100μmを上回るかまたは約400μmを上回る)。例示的なマクロ細孔サイズとしては、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、約500μm、約550μm、および約600μmの直径が挙げられる。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。マクロ細孔は、真核生物細胞が、組成物の内外に移動することを可能にするサイズのものである。1つの例では、マクロ細孔性組成物は、直径が約400μm~約500μmの細孔を有する。好ましい細孔サイズは、用途に依存する。ある特定の実施形態では、細孔は、約50μm~約80μmの直径を有する。
【0221】
様々な実施形態では、組成物は、1つの層またはコンパートメントが作製され、1つまたは複数の化合物が含浸またはコーティングされる、1段階で製造される。例示的な生体活性組成物は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、組成物は、1つの層またはコンパートメントが作製され、1つまたは複数の化合物が含浸またはコーティングされ、続いて、第2、第3、第4、またはそれよりも多い層の構築が行われ、続いてそれに1つまたは複数の化合物の含浸またはコーティングが順に行われる、2つまたはそれよりも多い(3つ、4つ、5つ、6つ、....10個、またはそれよりも多い)段階で製造される。一部の実施形態では、それぞれの層またはコンパートメントは、その他のものと同一であるか、または生体活性組成物の数もしくは混合物によって、ならびに異なる化学的、物理的、および生物学的特性によって、互いに区別される。ポリマーは、分子量、分解の速度、およびスキャフォールド形成の方法を制御することによって、特定の適用のために製剤化することができる。カップリング反応を使用して、生体活性剤、例えば、分化因子をポリマー骨格に共有結合により結合させることができる。
【0222】
一部の実施形態では、1つまたは複数の化合物は、表面吸収、物理的拘束、例えば、相変化を使用してスキャフォールド材料に物質を捕捉することを含む、公知の方法を使用して、スキャフォールド組成物に付加される。例えば、増殖因子は、水相または液相にある間にスキャフォールド組成物と混合され、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)の変化後に、液体が、ゲル化または固化し、それによって、生体活性物質を捕捉する。一部の実施形態では、例えば、アルキル化またはアクリル化剤を使用した共有結合によるカップリングを使用して、定義される構成におけるスキャフォールド上での化合物の安定な長期提示が提供される。そのような物質の共有結合によるカップリングのための例示的な試薬は、以下の表に提供される。
【表1】
【0223】
アルギネートスキャフォールド
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、アルギネートヒドロゲルを含む。アルギネートは、分子量、分解の速度、およびスキャフォールド形成の方法を制御することによって、特定の適用のために製剤化することができる多目的な多糖類に基づくポリマーである。アルギネートポリマーは、(1-4)-結合型β-D-マンヌロン酸(M単位)モノマーおよびα L-グルロン酸(G単位)モノマーという2つの異なるモノマー単位から構成され、これは、ポリマー鎖に沿って均等かつ連続的な分布で変動し得る。アルギネートポリマーは、二価カチオン(例えば、Ca+2、Mg+2、Ba+2)に対して強い親和性を有する多価電解質系であり、これらの分子に曝露されると、安定なヒドロゲルを形成する。Martinsen A., et al., 1989, Biotech. & Bioeng., 33: 79-89を参照されたい)。例えば、カルシウム架橋アルギネートヒドロゲルは、歯科適用、創傷被覆、軟骨細胞移植に、および他の細胞型のマトリックスとして、有用である。理論に束縛されることを望むものではないが、G単位は、カルシウム架橋を使用して優先的に架橋され、一方でクリック反応に基づく架橋は、G単位またはM単位に対してより無差別である(すなわち、GおよびM両方の単位が、クリックケミストリーによって架橋され得る)と考えられている。アルギネートスキャフォールドおよびそれを作製するための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、2017年5月4日に公開された国際特許出願公開第WO2017/075055 A1号を参照されたく、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0224】
本発明の文脈において有用なアルギネートポリマーは、約20kDa~約500kDa、例えば、約20kDa~約40kDa、約30kDa~約70kDa、約50kDa~約150kDa、約130kDa~約300kDa、約230kDa~約400kDa、約300kDa~約450kDa、または約320kDa~約500kDaの平均分子量を有し得る。1つの例では、本発明において有用なアルギネートポリマーは、約32kDaの平均分子量を有し得る。別の例では、本発明において有用なアルギネートポリマーは、約265kDaの平均分子量を有し得る。一部の実施形態では、アルギネートポリマーは、約1000kDa未満、例えば、約900kDa未満、約800kDa未満、約700kDa未満、約600kDa未満、約500kDa未満、約400kDa未満、約300kDa未満、約200kDa未満、約100kDa未満、約50kDa未満、約40kDa未満、約30kDa未満、または約25kDa未満の分子量を有する。一部の実施形態では、アルギネートポリマーは、約1000kDa、例えば、約900kDa、約800kDa、約700kDa、約600kDa、約500kDa、約400kDa、約300kDa、約200kDa、約100kDa、約50kDa、約40kDa、約30kDa、または約25kDaの分子量を有する。一実施形態では、アルギネートポリマーの分子量は、約20kDaである。
【0225】
カップリング反応を使用して、生体活性剤、例えば、原子、化学基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸塩基、糖、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体を、ポリマー骨格に共有結合により結合させることができる。
【0226】
「アルギネートポリマー」という用語と互換可能に使用される「アルギネート」という用語には、改変されていないアルギネートまたは改変されたアルギネートが含まれる。改変されたアルギネートとしては、酸化アルギネート(例えば、1つもしくは複数のアルゴキサレート(algoxalate)モノマー単位を含む)および/または還元アルギネート(例えば、1つもしくは複数のアルゴキシノール(algoxinol)モノマー単位を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、酸化アルギネートは、1つもしくは複数のアルデヒド基を含むアルギネート、または1つもしくは複数のカルボキシレート基を含むアルギネートを含む。他の実施形態では、酸化アルギネートは、例えば、1つまたは複数のアルゴキサレート単位を含む、高度酸化アルギネートを含む。酸化アルギネートはまた、比較的少数のアルデヒド基(例えば、モル基準で15%未満、例えば、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%のアルデヒド基または酸化)も含み得る。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。「アルギネート」または「アルギネートポリマー」という用語はまた、アルギネート、例えば、改変されていないアルギネート、酸化アルギネートもしくは還元アルギネート、またはメタクリル化アルギネートもしくはアクリル化アルギネートも含み得る。アルギネートはまた、任意の数のアルギン酸誘導体(例えば、カルシウム、ナトリウム、もしくはカリウム塩、またはプロピレングリコールアルギネート)を指し得る。例えば、国際公開第WO1998012228A1号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0227】
ヒアルロン酸
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒアルロン酸ヒドロゲルを含む。ヒアルロン酸(HA、コンジュゲート塩基ヒアルロネート)は、結合組織、上皮組織、および神経組織全体に広く分布しているアニオン性非硫化グリコサミノグリカンである。細胞外マトリックスの主要な成分の1つであるヒアルロン酸は、細胞増殖および遊走に有意に寄与する。天然のヒアルロン酸は、関節軟骨、筋肉結合組織、および皮膚の重要な成分である。
【0228】
ヒアルロン酸は、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンがβ-(1→4)およびβ-(1→3)のグリコシド結合で交互に連結されたものから構成される二糖類のポリマーである。ヒアルロン酸は、25,000個の二糖類リピートの長さであり得る。ヒアルロン酸のポリマーは、サイズが5,000~20,000,000Daの範囲に及び得る。ヒアルロン酸は、シリコンも含み得る。
【0229】
ヒアルロン酸は、その構成成分である二糖類の立体化学に部分的に起因して、エネルギー的に安定である。それぞれの糖分子上の嵩高い基は、立体的に好ましい位置にあるが、より小さな水素は、あまり好ましくない軸位置にある。
【0230】
ヒアルロン酸は、多くの哺乳動物、例えば、ヒトに存在する、ヒアルロニダーゼと称される酵素のファミリーによって分解され得る。ヒアルロン酸はまた、非酵素反応によっても分解され得る。これらとしては、酸およびアルカリ加水分解、超音波破壊、熱分解、ならびに酸化剤による分解が挙げられる。
【0231】
その高い生体適合性および組織の細胞外マトリックスにおけるその共通した存在に起因して、ヒアルロン酸は、組織操作研究において、生体材料スキャフォールドとして、ヒドロゲル、例えば、クリオゲルを形成するために使用される。ヒアルロン酸ヒドロゲルは、架橋を通じて形成される。ヒアルロン酸は、治療用分子を宿主に送達するための所望される形状に、ヒドロゲル、例えば、クリオゲルを形成することができる。ヒアルロン酸は、本組成物における使用のために、チオール、メタクリレート、ヘキサデシルアミド、およびチラミンを結合させることによって、架橋され得る。ヒアルロン酸はまた、ホルムアルデヒドまたはジビニルスルホンと直接的に架橋させることもできる。
【0232】
「ヒアルロン酸」という用語は、改変されていないヒアルロン酸または改変されたヒアルロン酸を含む。改変されたヒアルロン酸としては、酸化ヒアルロン酸および/または還元ヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。「ヒアルロン酸」または「ヒアルロン酸ポリマー」という用語はまた、ヒアルロン酸、例えば、改変されていないヒアルロン酸、酸化ヒアルロン酸もしくは還元ヒアルロン酸、またはメタクリル化ヒアルロン酸もしくはアクリル化ヒアルロン酸も含み得る。ヒアルロン酸はまた、任意の数のヒアルロン酸誘導体も指し得る。
【0233】
多孔性および細孔形成スキャフォールド
本発明のスキャフォールドは、非多孔性であってもよく、多孔性であってもよい。ある特定の実施形態では、本発明のスキャフォールドは、多孔性である。スキャフォールド組成物の細孔性は、デバイスを通る細胞の遊走に影響を及ぼす。細孔は、ナノ細孔性、マイクロ細孔性、またはマクロ細孔性であり得る。例えば、ナノ細孔の直径は、約10nm未満である。マイクロ細孔は、直径が約100nm~約20μmの範囲である。マクロ細孔は、直径が約20μmを上回る(例えば、約100μmを上回るかまたは約400μmを上回る)。例示的なマクロ細孔サイズとしては、約50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、および600μmの直径が挙げられる。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。マクロ細孔は、真核生物細胞が、組成物の内外に移動することを可能にするサイズのものである。ある特定の実施形態では、マクロ細孔性組成物は、直径が400μm~約500μmの細孔を有する。細孔のサイズは、異なる目的で調節され得る。例えば、細胞動員および細胞放出については、細孔直径は、50μmを上回り得る。ある特定の実施形態では、マクロ細孔性組成物は、直径が約50μm~約80μmの細孔を有する。
【0234】
一部の実施形態では、スキャフォールドは、対象に投与する前に、細孔を含む。一部の実施形態では、スキャフォールドは、細孔形成スキャフォールド組成物を含む。細孔形成スキャフォールドおよび細孔形成スキャフォールドを作製するための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許公開第US2014/0079752A1号を参照されたく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、細孔形成スキャフォールドは、最初から多孔性ではないが、レシピエント動物、例えば、哺乳動物対象の身体に存在している間に経時的にマクロ細孔性となる。ある特定の実施形態では、細孔形成スキャフォールドは、ヒドロゲルスキャフォールドである。細孔は、異なる時点で、例えば、投与から、すなわち、対象の身体に存在してから、約12時間後、または1、3、5、7、もしくは10日後またはそれよりも後に、形成され得る。
【0235】
ある特定の実施形態では、細孔形成スキャフォールドは、第1のヒドロゲルおよび第2のヒドロゲルを含み、ここで、第1のヒドロゲルは、第2のヒドロゲルよりも少なくとも約10%急速に(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約2倍急速に、または少なくとも約5倍急速に)分解される。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。ある特定の実施形態では、第1のヒドロゲルは、分解されてその場所に細孔を残すポロゲンを含む。例えば、第1のヒドロゲルは、ポロゲンであり、分解後にin situで得られる細孔は、最初のポロゲンのサイズの25%以内、例えば、最初のポロゲンのサイズの20%以内、15%以内、または10%以内である。好ましくは、結果として得られる細孔は、最初のポロゲンのサイズの5%以内である。列挙された値の中間の値および範囲は、本発明の一部であることが意図される。第1のヒドロゲルは、その物理的、化学的、および/または生物学的特性の違いに起因して、第2のヒドロゲルよりも急速に分解され得る。ある特定の実施形態では、第1のヒドロゲルは、水中への可溶性が高い(低い溶解度インデックスを含む)ため、第2のヒドロゲルよりも急速に分解される。ある特定の実施形態では、第1のヒドロゲルは、米国特許公開第US2005/0119762A1号に記載されるプロテアーゼに媒介される分解モチーフに架橋しているため、より急速に分解され、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
ある特定の実施形態では、第1のヒドロゲル組成物(ポロゲン)を形成するために使用されるポリマーの分子質量は、およそ50キロダルトン(kDa)であり、第2のヒドロゲル組成物(バルク)を形成するために使用されるポリマーの分子質量は、およそ250kDaである。短いポリマー(例えば、ポロゲンのもの)は、長いポリマー(例えば、バルク組成物のもの)と比較して、より急速に分解される。ある特定の実施形態では、組成物は、糖基の存在(例えば、アルギネート組成物のおよそ3~10%の糖)に基づいて、より加水分解で分解可能となるように改変される。ある特定の実施形態では、ポロゲンヒドロゲルは、分解に対してより感受性となるように、化学的に改変され、例えば、酸化されている。一部の実施形態では、ポロゲンヒドロゲルは、バルクヒドロゲルと比較して、より酵素分解可能である。複合(第1および第2のヒドロゲル)組成物は、例えば、組成物に曝露され、ポロゲンヒドロゲルを分解する酵素を含有する体液に、浸透性である。一部の実施形態では、第2のヒドロゲルは、第1のヒドロゲルの周囲に架橋され、すなわち、ポロゲン(第1のヒドロゲル)は、バルク(第2の)ヒドロゲルに完全に物理的に捕捉される。
【0237】
本明細書に開示されるクリック試薬は、バルクヒドロゲルまたはポロゲンヒドロゲルにおいて提供され得る。例示的な実施形態では、クリック試薬、例えば、ポリマーまたはナノ粒子は、バルクヒドロゲルにおいて提供される。
【0238】
ある特定の実施形態では、ヒドロゲルマイクロビーズ(「ポロゲン」)が形成される。ポロゲンは、非分解性であるか、またはポロゲンと比較して遅い速度で分解されるかのいずれかである、「バルク」ヒドロゲルに封入される。ヒドロゲルの形成またはin vivoで所望される部位への注射の直後の複合材料は、細孔が欠如している。続いて、ポロゲン分解によりin situにおける細孔の形成が生じる。細孔のサイズおよび分布は、ポロゲン形成およびバルクヒドロゲルを形成するポリマーとの混合の間、制御される。
【0239】
一部の実施形態では、細孔形成スキャフォールドにおいて利用されるポリマーは、天然に存在するか、または合成で作製される。1つの例では、ポロゲンおよびバルクの両方のヒドロゲルは、アルギネートから形成される。
【0240】
ある特定の実施形態では、ポロゲン形成に好適なアルギネートポリマーは、5,000~500,000ダルトンの分子量を有する。ポリマーは、必要に応じて、急速な分解を促進するために、さらに改変される(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでの酸化によって(Bouhadir et al., 2001, Biotech. Prog. 17:945-950、参照により本明細書に組み込まれる)。ある特定の実施形態では、ポリマーは、同軸気流を有するネブライザーを通じた二価カチオン浴(例えば、Ca2+またはBa2+)への押出によって架橋されて、ヒドロゲルマイクロビーズが形成される。より高い気流速度により、より低いポロゲン直径が得られる。
【0241】
一部の実施形態では、ポロゲンヒドロゲルマイクロビーズは、酸化アルギネートを含有する。例えば、ポロゲンヒドロゲルは、約1~50%(重量/体積)の酸化アルギネートを含有し得る。例示的な実施形態では、ポロゲンヒドロゲルは、約1~10%の酸化アルギネートを含有し得る。一実施形態では、ポロゲンヒドロゲルは、約7.5%の酸化アルギネートを含有する。
【0242】
ある特定の実施形態では、ポロゲンを形成するために使用される二価イオンの濃度は、約5~約500mMで変動し得、ポリマーの濃度は、約1重量%~約5重量%/体積である。しかしながら、バルク相よりも有意に小さいポロゲンを産生するいずれの方法も、好適である。ポロゲンケミストリーは、宿主タンパク質および/もしくは細胞と相互作用するか、または宿主タンパク質および/もしくは細胞との相互作用を阻害するポロゲンを産生するように、さらに操作することができる。
【0243】
バルクヒドロゲルの形成に好適なアルギネートポリマーは、約5,000~約500,000Daの分子量を有する。ポリマーは、バルクヒドロゲルがポロゲンよりも緩徐に分解される限り、分解を促進するようにさらに改変してもよい(例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでの酸化によって)。ポリマーはまた、細胞応答を制御するための生物学的合図を提示するように、改変されてもよい(例えば、インテグリン結合接着ペプチド、例えば、RGD)。また、ポロゲンまたはバルクヒドロゲルのいずれも、細胞応答をさらに制御するための生体活性因子、例えば、オリゴヌクレオチド、増殖因子、または薬物を封入し得る。バルクヒドロゲルを形成するために使用される二価イオンの濃度は、約5~約500mMで変動し得、ポリマーの濃度は、約1重量%~約5重量%/体積である。バルクポリマーの弾性係数は、その目的で、例えば、幹細胞または前駆細胞を動員するために、調整される。
【0244】
本明細書に記載されるヒドロゲルを生成することに関する方法としては、以下が挙げられる。Bouhadir et al., 1999, Polymer, 40: 3575-84(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、過ヨウ素酸ナトリウムによるアルギネートの酸化について記載しており、反応を特徴付けている。Bouhadir et al., 2001, Biotechnol. Prog., 17: 945-50(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、アルギネートジアルデヒドを形成するための高分子量アルギネートの酸化(アルギネートジアルデヒドは、アルギネート中の糖のうちのある特定のパーセント、例えば、5%が、酸化されてアルデヒドを形成する、高分子量(M)アルギネートである)、およびヒドロゲルが急速に分解するようにするための適用について記載している。Kong et al., 2002, Polymer, 43: 6239-46(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、グルロン酸(GA)リッチアルギネートの重量平均分子量(M)を、GA含量を実質的に低減することなく低減させるためのガンマ線照射の使用について記載している(例えば、ガンマ線照射は、マンヌロン酸、アルギネートのMAブロックを選択的に攻撃する)。アルギネートは、GAブロックおよびMAブロックから構成され、アルギネートに剛性(弾性係数)を提供するのはGAブロックである。Kong et al., 2002, Polymer, 43: 6239-46(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、高MのGAリッチアルギネートと、照射した低Mの高GAアルギネートの二成分の組合せが、カルシウムと架橋して剛性ヒドロゲルを形成するが、これは、同じ全体重量濃度の高MのGAリッチアルギネートのみから作製されたヒドロゲルよりも急速に分解され、また低い溶液粘度を有することを示している。Alsberg et al., 2003, J Dent Res, 82(11): 903-8(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、照射した低MのGAリッチアルギネートから作製されたヒドロゲルの分解プロファイルについて、骨組織操作における適用とともに記載している。Kong et al., 2004, Adv. Mater, 16(21): 1917-21(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、ガンマ照射手技および酸化反応を組み合わせることによるヒドロゲルの分解プロファイルの制御、ならびに軟骨操作への適用について記載している。
【0245】
水素生体材料の分解を制御するための技法は、当該技術分野において周知である。例えば、Lutolf MP et al., 2003, Nat Biotechnol., 21: 513-8(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、哺乳動物酵素(MMP)により分解するように操作されたポリ(エチレングリコール)に基づく材料について記載している。Bryant SJ et al., 2007, Biomaterials, 28(19): 2978-86(米国特許第7,192,693号B2、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、マクロ規模の細孔を有するヒドロゲルを産生するための方法について記載している。細孔鋳型(例えば、ポリ-メチルメタクリレートビーズ)を、バルクヒドロゲル内に封入し、次いで、アセトンおよびメタノールを使用して、バルクヒドロゲルはインタクトなまま残しながら、ポロゲンを抽出する。Silva et al., 2008, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 105(38): 14347-52(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国公開第2008/0044900号)は、アルギネートスポンジからの内皮前駆細胞の展開について記載している。スポンジは、アルギネートヒドロゲルを形成し、次いでそれを凍結乾燥させることによって(氷の結晶が細孔を形成する)、作製される。Ali et al., 2009, Nat Mater(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、樹状細胞を動員し、抗腫瘍応答を誘起するようにそれらをプログラムするための多孔性スキャフォールドの使用について記載している。Huebsch et al., 2010, Nat Mater, 9: 518-26(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、封入された間質幹細胞の分化を制御するためのヒドロゲル弾性係数の使用について記載している。
【0246】
一部の実施形態では、スキャフォールド組成物は、相互接続された開口マクロ細孔を含む。代替として、または追加として、スキャフォールド組成物は、細孔形成スキャフォールド組成物を含む。ある特定の実施形態では、細孔形成スキャフォールド組成物は、犠牲ポロゲンヒドロゲルおよびバルクヒドロゲルを含み得、ここで、細孔形成スキャフォールド組成物は、マクロ細孔が欠如している。例えば、犠牲ポロゲンヒドロゲルは、前記細孔形成スキャフォールドを対象に投与した後に、バルクヒドロゲルよりも少なくとも10%急速に分解され、その場所にマクロ細孔が残り得る。一部の実施形態では、犠牲ポロゲンヒドロゲルは、分解されて前記マクロ細孔を形成するポロゲンの形態にある。例えば、マクロ細孔は、例えば、約10~400μmの直径を有する細孔を含み得る。
【0247】
増殖因子
本発明の組成物は、増殖因子を含み得る。「増殖因子」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の成長、増殖、治癒、および/または細胞分化を刺激することができる薬剤を指す。ある特定の実施形態では、増殖因子は、ポリペプチドである。増殖因子ポリペプチドは、典型的に、シグナル伝達分子として作用する。ある特定の実施形態では、増殖因子ポリペプチドは、サイトカインである。
【0248】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、組成物を対象に投与した後に、細胞をスキャフォールドに動員することができる。動員される細胞は、自家であり得る。例えば、動員される細胞は、対象に由来する間質細胞であり得る。ある特定の実施形態では、自家細胞は、対象の幹細胞(例えば、臍帯幹細胞)であり得る。動員される細胞はまた、同系、同種、または異種であってもよい。本明細書で使用される場合、「同系」という用語は、遺伝子的に同一であるか、または移植を許容するのに十分に同一であり、かつ免疫学的に適合性があることを指す。例えば、同系細胞としては、一卵性の双子から得られた移植細胞を挙げることができる。本明細書で使用される場合、「同種」という用語は、遺伝子的には類似でないが、同じ種の個体に由来する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、異なる種に由来し、したがって、遺伝子的に異なる細胞を指す。
【0249】
例えば、動員される細胞は、移植におけるドナー細胞であり得る。ある特定の実施形態では、移植は、造血幹細胞移植(HSCT)である。本明細書で使用される場合、HSCTは、通常、骨髄、末梢血、または臍帯血に由来する複能性造血幹細胞または造血前駆細胞の移植を指す。HSCTは、自家(患者自身の幹細胞もしくは前駆細胞が使用される)、同種(ドナーに由来する幹細胞もしくは前駆細胞)、同系(一卵性の双子に由来)、または異種(異なる種に由来する)であり得る。
【0250】
本発明の増殖因子は、投与された組成物の内部またはその周囲の組織または器官の形成を誘導し得る。ある特定の実施形態では、組織または器官は、骨組織または造血組織である。組織形成は、組成物のスキャフォールドに制限され得る。
【0251】
ポリペプチド(例えば、増殖因子ポリペプチド)を組み込む方法は、当該技術分野において公知である。米国特許第8,728,456号、同第8,067,237号、および同第10,045,947号、米国特許公開第US20140079752号、国際特許公開第WO2017/136837号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。増殖因子ポリペプチドの放出は、制御することができる。ポリペプチド(例えば、増殖因子ポリペプチド)の制御放出の方法は、当該技術分野において公知である。米国特許第8,728,456号、同第8,067,237号、同第10,045,946号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、増殖因子(例えば、BMP-2)は、長期間、例えば、7~30日間またはそれよりも長い期間にわたって放出され得る。増殖因子の制御放出は、スキャフォールド内の組織または器官の形成のタイミングに影響を及ぼし得る。ある特定の例では、増殖因子の放出は、本発明の組成物の皮下注射後1~2週間以内の機能的活性骨結節または組織の形成を目標として制御される。
【0252】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、長期間にわたってその生体活性を保持する。「生体活性」という用語は、本明細書で使用される場合、薬剤、例えば、増殖因子の有益または有害な作用を指す。増殖因子の生体活性は、任意の適切な手段によって測定することができる。例えば、BMP-2の生体活性は、骨結節もしくは組織の形成を誘導する、および/またはスキャフォールドに細胞を動員するその能力によって、測定することができる。ある特定の例では、増殖因子は、増殖因子をスキャフォールドに組み込んだ後、少なくとも10日間、12日間、14日間、20日間、または30日間、その生体活性を保持する。
【0253】
例示的な増殖因子としては、骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポチエン(TPO)、ミオスタチン(GDF-8)、増殖分化因子-9(GDF9)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF-2)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、およびインターロイキンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0254】
一部の実施形態では、増殖因子は、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属するタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、TGF-βスーパーファミリーは、構造的に関連する細胞制御性タンパク質の大きな群である。TGF-βスーパーファミリーには、以下の4つの主要なサブファミリーが含まれる:TGF-βサブファミリー、骨形成タンパク質および増殖分化因子、活性化およびインヒビンサブファミリー、ならびに様々な多様なメンバーを含む群。TGF-βスーパーファミリーに由来するタンパク質は、2つの鎖が単一のジスルフィド結合によって連結されているホモまたはヘテロ二量体として活性である。TGF-βスーパーファミリータンパク質は、保存された細胞表面セリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼ受容体ファミリーと相互作用し、SMADと称される保存されたタンパク質ファミリーを使用して、細胞内シグナルを生成する。TGF-βスーパーファミリータンパク質は、基本的な生物学的プロセスの制御、例えば、増殖、発達、組織恒常性、および免疫系の制御において、重要な役割を果たす。
【0255】
例示的なTGF-βスーパーファミリータンパク質としては、AMH、ARTN、BMP10、BMP15、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8A、BMP8B、GDF1、GDF10、GDF11、GDF15、GDF2、GDF3、GDF3A、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDNF、INHA、INHBA、INHBB、INHBC、INHBE、LEFTY1、LEFTY2、MSTN、NODAL、NRTN、PSPN、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3およびTGF-β4が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、増殖因子は、BMP2である。
【0256】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、骨形成タンパク質(BMP)を含む。本明細書で使用される場合、BMPは、サイトカインおよびメタボロゲンとしても知られている増殖因子の群に属するタンパク質である。BMPは、骨および軟骨の形成を誘導し、重要な形態形成シグナルの群を構成し、身体全体の組織アーキテクチャを統合し得る。BMPシグナル伝達の不在または欠損は、疾患または障害における重要な因子であり得る。
【0257】
ある特定の実施形態では、BMPは、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、BMPは、BMP-2である。BMP-2は、骨および軟骨の発生において重要な役割を果たす。BMP-2は、様々な細胞型において骨芽細胞の分化を強力に誘導することができる。
【0258】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、TGF-βサブファミリータンパク質を含む。本明細書で使用される場合、TGF-βサブファミリータンパク質またはTGF-βは、4つの異なるアイソフォーム(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、およびTGF-β4)を含む多機能性サイトカインである。活性化TGF-βは、他の因子と複合体を形成して、1型および2型受容体サブユニットから構成されるTGF-β受容体と結合するセリン/スレオニンキナーゼ複合体を形成する。TGF-βの結合後、2型受容体キナーゼは、シグナル伝達カスケードを活性化する1型受容体キナーゼをリン酸化および活性化する。これは、異なる下流基質および制御性タンパク質の活性化をもたらし、多数の免疫細胞の分化、走化性、増殖、および活性化において機能する異なる標的遺伝子の転写を誘導する。
【0259】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、TGF-β1を含む。TGF-β1は、CD4+T細胞からの、制御機能を有する誘導Treg(iTreg)および炎症促進性サイトカインを分泌するT17細胞の両方の誘導において役割を果たす。TGF-β1単独では、Foxp3の発現および活性化されたヘルパーT細胞からのTreg分化に関与する。
【0260】
増殖因子(例えば、BMP-2またはTGF-β1)は、内因的供給源から単離することができるか、またはin vivoもしくはin vitroで合成することができる。内因性増殖因子ポリペプチドは、健常なヒト組織から単離され得る。合成増殖因子ポリペプチドは、鋳型DNAの宿主生物または細胞、例えば、哺乳動物またはヒト細胞系へのトランスフェクションまたは形質転換の後に、in vivoで合成される。あるいは、合成増殖因子ポリペプチドは、無細胞翻訳または当該技術分野において認識されている他の方法、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)によってin vitroで合成され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0261】
ある特定の実施形態では、増殖因子(例えば、BMP-2またはTGF-β1)ポリペプチドは、組換えであってもよい。一部の実施形態では、増殖因子ポリペプチドは、哺乳動物増殖因子ポリペプチドのヒト化誘導体である。増殖因子ポリペプチドが導出される例示的な哺乳動物種としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サル、または霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、増殖因子は、組換えヒトタンパク質である。一部の実施形態では、増殖因子は、組換えネズミ(マウス)タンパク質である。一部の実施形態では、増殖因子は、組換えマウスタンパク質のヒト化誘導体である。
【0262】
ある特定の実施形態では、増殖因子ポリペプチドは、in vivoでのタンパク質安定性を増加させるように改変されていてもよい。ある特定の実施形態では、増殖因子ポリペプチドは、免疫原性が高くまたは低くなるように操作されていてもよい。「免疫原性(immunogenic)」および「免疫原性(immunogenicity)」という用語は、特定の物質、例えば、タンパク質、抗原、またはエピトープが、ヒトまたは他の動物の身体において免疫応答を引き起こす能力を指す。
【0263】
ある特定の実施形態では、増殖因子は、スキャフォールド当たり約0.001nmol~約1000nmol、またはスキャフォールド当たり約0.001~約100nmol、またはスキャフォールド当たり約0.001nmol~約1nmolで存在し得る。
【0264】
一部の実施形態では、増殖因子は、スキャフォールド当たり約1ng~1000マイクログラムで存在し得る。例えば、増殖因子は、約1μg~約1000μg、約1μg~500μg、約1μg~約200μg、約1μg~約100μg、約1μg~約50μg、または約1μg~10μgの量で存在し得る。
【0265】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ナノグラム量の増殖因子(例えば、約1ng~約1000ngのBMP-2)を含む。例えば、増殖因子は、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、約10ng~約200ng、約25ng~約200ng、約50ng~200ng、約100ng~200ng、および約200ngの量で存在し得る。ナノグラム量の増殖因子はまた、制御様式で放出される。ナノグラム量の増殖因子および/または制御放出は、高用量の増殖因子を使用し準最適な放出動態を有する他の送達系と比較して、本発明の組成物および方法の毒性の低減に寄与し得る。
【0266】
様々な実施形態では、スキャフォールドに存在する増殖因子の量は、スキャフォールドのサイズに応じて変動し得る。例えば、増殖因子は、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位の増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、約5ng/mm~25ng/mm、約6ng/mm~約10ng/mm、または約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在し得る。
【0267】
一部の実施形態では、増殖因子の量は、約300ng/mm~約350μg/mm、例えば、約400ng/mm~約300μg/mm、約500ng/mm~約200μg/mm、約1μg/mm~約100μg/mm、約5μg/mm~約50μg/mm、約10μg/mm~約25μg/mmで存在し得る。
【0268】
分化因子
本発明の組成物は、分化因子を含み得る。本明細書で使用される場合、分化因子は、細胞、例えば、動員された細胞の分化を誘導することができる薬剤である。ある特定の実施形態では、分化因子は、ポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「分化」、「細胞分化」、「細胞の分化」、または他の類似の用語は、細胞が1つの細胞型から別のものへと変化するプロセスを指す。ある特定の実施形態では、細胞は、より特化した種類へ、例えば、幹細胞または前駆細胞からT細胞前駆細胞へと変化する。分化は、単純な接合子から複雑な組織および細胞型の系へと変化しながら、多細胞生物の発生中に多数回生じる。成体幹細胞は組織修復中および正常な細胞代謝回転中に分裂し、完全に分化した娘細胞を作るため、分化は、成体期においても継続される。分化は、細胞のサイズ、形状、膜電位、代謝活性、およびシグナルに対する応答性を変化させ得る。これらの変化は、遺伝子発現における高度に制御される改変に起因し得る。
【0269】
分裂中の細胞には、細胞が他の細胞型へと分化する能力である細胞分化能が、複数レベル存在する。より高い分化能は、多数の細胞型が導出され得ることを示す。胎盤組織を含むすべての細胞型へと分化することができる細胞は、全能性として知られている。成体生物のすべての細胞型へと分化することができる細胞は、多能性として知られている。哺乳動物、例えば、ヒトの場合、多能性細胞には、胚性幹細胞および成体多能性細胞が含まれ得る。人工多能性幹(iPS)細胞は、ある特定の転写因子、例えば、Oct4、Sox2、c-Myc、およびKIF4の発現の誘導によって、線維芽細胞から作製され得る。複能性細胞は、複数の異なるが緊密に関連する細胞型へと分化することができるものである。小能性細胞は、複能性よりもさらに限定されるが、依然としていくつかの緊密に関連する細胞型へと分化することができる。最後に、単能性細胞は、1つの細胞型にしか分化することができないが、自己再生が可能である。
【0270】
ある特定の実施形態では、本発明の分化因子は、幹細胞または前駆細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する。本明細書で使用される場合、「T細胞前駆細胞」という用語は、最終的にTリンパ球(T細胞)へと分化することができる前駆細胞を指す。「リンパ球」という用語は、本明細書で使用される場合、脊椎動物(例えば、ヒト)の免疫系における白血球のサブタイプの1つを指す。リンパ球としては、ナチュラルキラー細胞、T細胞、およびB細胞が挙げられる。リンパ球は、幹細胞が骨髄内でいくつかの種類の血液細胞へと分化するプロセスである造血発生中の、別個のリンパ球型へと分化する前の、リンパ系共通前駆体を起源とする。
【0271】
一部の実施形態では、T細胞前駆細胞は、リンパ系共通前駆細胞を含む。「リンパ系共通前駆細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、T系統細胞、B系統細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含むリンパ球が生じる、最初期のリンパ系前駆細胞を指す。様々な実施形態では、T細胞前駆細胞は、T細胞コンピテントリンパ系共通前駆細胞を含む。「T細胞コンピテントリンパ系共通前駆細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、T系統前駆細胞へと分化するリンパ系共通前駆細胞を指す。T細胞コンピテントリンパ系共通前駆細胞は、通常、バイオマーカーLy6Dの欠如によって特徴付けられる。本発明の組成物は、骨髄の重要な特徴を模倣し、幹細胞または前駆細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する、異所性ニッチを作製し得る。
【0272】
ある特定の実施形態では、リンパ球には、T細胞が含まれる。一部の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。本明細書で使用される場合、ナイーブT細胞は、骨髄において分化したT細胞である。ナイーブT細胞には、CD4T細胞、CD8T細胞、および制御性T細胞(Treg)が含まれ得る。
【0273】
ある特定の実施形態では、分化因子は、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する。ある特定の実施形態では、分化因子は、Notchシグナル伝達経路を通じて、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する。Notchシグナル伝達経路は、多数の多細胞生物に存在する高度に保存された細胞シグナル伝達系である。哺乳動物は、Notch1、Notch2、Notch3、およびNotch4と称される4つの異なるNotch受容体を有する。Notchシグナル伝達は、リンパ系共通前駆細胞からのT細胞系統分化において重要な役割を果たす。ある特定の実施形態では、分化因子は、1つまたは複数のNotch受容体に結合し、Notchシグナル伝達経路を活性化する。ある特定の実施形態では、分化因子は、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、分化因子の1つまたは複数のNotch受容体への結合により、Notchシグナル伝達経路が活性化され、T細胞系統分化が誘導される。
【0274】
ある特定の実施形態では、分化因子は、Delta様4(DLL-4)である。DLL-4は、ショウジョウバエDeltaタンパク質のホモログであるタンパク質である。Deltaタンパク質ファミリーには、DSLドメイン、EGFリピート、および膜貫通ドメインによって特徴付けられるNotchリガンドが含まれる。
【0275】
ある特定の実施形態では、分化因子ポリペプチドは、内因的供給源から単離されるか、またはin vivoもしくはin vitroで合成される。内因性分化因子ポリペプチドは、健常なヒト組織から単離され得る。合成分化因子ポリペプチドは、鋳型DNAの宿主生物または細胞、例えば、哺乳動物または培養ヒト細胞系へのトランスフェクションまたは形質転換の後に、in vivoで合成される。あるいは、合成分化因子ポリペプチドは、無細胞翻訳または当該技術分野において認識されている他の方法、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)によってin vitroで合成され、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0276】
ある特定の実施形態では、分化因子ポリペプチドは、組換えであってもよい。一部の実施形態では、分化因子ポリペプチドは、哺乳動物分化因子ポリペプチドのヒト化誘導体である。分化因子ポリペプチドが導出される例示的な哺乳動物種としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サル、または霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、分化因子は、組換えヒトタンパク質である。一部の実施形態では、分化因子は、組換えネズミ(マウス)タンパク質である。一部の実施形態では、分化因子は、組換えマウスタンパク質のヒト化誘導体である。
【0277】
ある特定の実施形態では、分化因子ポリペプチドは、所望される活性を達成するように、例えば、in vivoでのタンパク質安定性を増加させるように改変されていてもよい。ある特定の実施形態では、分化因子ポリペプチドは、免疫原性が高くまたは低くなるように操作されていてもよい。
【0278】
ある特定の実施形態では、分化因子(例えば、DLL-4)は、本発明のスキャフォールドに共有結合により連結されていてもよい。例えば、スキャフォールド材料から放出されるのではなく、分化因子は、ポリマー骨格に共有結合により結合され、組成物の対象への埋込み後に形成される組成物内に保持されてもよい。分化因子をスキャフォールド材料に共有結合により結合またはカップリングさせることにより、そのような分化因子は、組成物を対象に投与した後に形成されるスキャフォールド内に保持されることになり、したがって、本明細書に企図されるように、幹細胞または前駆細胞の分化を促進するために利用可能となるであろう。ある特定の実施形態では、分化因子は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびl-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)ケミストリーを利用して、スキャフォールド材料にコンジュゲートされる。分化因子を共有結合により結合またはカップリングさせる当該技術分野において公知の任意の方法を使用することができ、これらは限定されない。"Bioconjugate Techniques Bioconjugate Techniques (Third Addition)", Greg T. Hermanson, Academic , Greg T. Hermanson, Academic Press, 2013 Press, 2013を参照されたい。一部の実施形態では、分化因子は、クリックケミストリーを利用してスキャフォールドに共有結合により連結されていてもよい。分化因子を共有結合により結合またはカップリングさせる方法としては、アビジン-ビオチン反応、アジドおよびジベンゾシクロオクチン(dibenzocycloocytne)ケミストリー、テトラジンおよびトランスシクロオクテンケミストリー、テトラジンおよびノルボルネンケミストリー、またはジスルフィド結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0279】
ある特定の実施形態では、本発明の分化因子(例えば、DLL-4)は、テザー(例えば、PEG、PEG2k)およびメタクリレート基(MA)をさらに含む。ある特定の実施形態では、分化因子は、メタクリル化DLL-4-PEG2kである。
【0280】
ある特定の実施形態では、共有結合による連結は、スキャフォールドに動員された細胞に分化シグナルを提供するために、スキャフォールド内に分化因子を保持する。例えば、総分化因子のうちの1%未満が、スキャフォールドの外部で検出される。分化因子の生体活性は、スキャフォールドに組み込んだ後、長期間、例えば、少なくとも3ヶ月間、保持され得る。分化因子の生体活性は、任意の適切な方法、例えば、DLL-4については比色分析アッセイによって、測定することができる。
【0281】
ある特定の実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり約0.01nmol~1000nmol、約0.1nmol~100nmol、または約1nmol~10nmolで存在し得る。
【0282】
一部の実施形態では、分化因子は、スキャフォールド当たり約1ng~1000マイクログラムで存在し得る。例えば、分化因子は、約10ng~約500μg、約50ng~約250μg、約100ng~約200μg、約1μg~約100μg、約1μg~約50μg、約1μg~約25μg、約1μg~約10μg、約2μg~約10μg、または約6μgで存在し得る。
【0283】
様々な実施形態では、スキャフォールドに存在する分化因子の量は、スキャフォールドのサイズに応じて変動し得る。例えば、分化因子は、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位の分化因子の量の比)~約350μg/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300μg/mm、約1ng/mm~約250μg/mm、約10ng/mm~約200μg/mm、約0.1μg/mm~約100μg/mm、約0.1μg/mm~約50μg/mm、または約0.1μg/mm~約20μg/mm、約0.1μg/mm~約10μg/mm、約0.1μg/mm~約5μg/mm、約0.1μg/mm~約1μg/mm、約0.1μg/mm~0.5μg/mm、または約0.2μg/mmで存在し得る。
【0284】
ある特定の実施形態では、DLL-4は、スキャフォールド当たり約6μgで存在し得る。
【0285】
ホーミング因子
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、ホーミング因子をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「ホーミング因子」という用語は、細胞、例えば、幹細胞または前駆細胞の指向移動を誘導することができる薬剤を指す。ある特定の実施形態では、本発明のホーミング因子は、付近の応答性細胞において指向型走化性を誘導することができるシグナル伝達タンパク質である。様々な実施形態では、ホーミング因子は、サイトカインおよび/またはケモカインである。
【0286】
ある特定の実施形態では、そのようなホーミング因子を本発明の組成物に含めることにより、細胞(例えば、移植幹細胞および/または前駆細胞)の、対象に投与されたスキャフォールド組成物へのホーミングが促進される。ある特定の態様では、そのようなホーミング因子は、細胞(例えば、移植幹細胞または前駆細胞)の、対象に投与されたスキャフォールド組成物への浸潤を促進する。一部の実施形態では、ホーミング因子は、間質細胞由来因子(SDF-1)を含む。ある特定の実施形態では、ホーミング因子は、材料に封入されている。ある特定の実施形態では、ホーミング因子は、長期間(例えば、約7~30日間またはそれよりも長い期間、約17~18日間)にわたって、材料から放出される。
【0287】
ある特定の実施形態では、ホーミング因子は、長期間にわたってその生体活性を保持する。増殖因子の生体活性は、任意の適切な手段によって測定することができる。ある特定の例では、ホーミング因子は、ホーミング因子をスキャフォールドに組み込んだ後、少なくとも10日間、12日間、14日間、20日間、または30日間、その生体活性を保持する。
【0288】
一部の実施形態では、ホーミング因子は、スキャフォールド当たり約0.01nmol~1000nmol、約0.1nmol~100nmol、または約1nmol~10nmolで存在し得る。
【0289】
一部の実施形態では、ホーミング因子は、スキャフォールド当たり約1ng~1000マイクログラムで存在し得る。例えば、ホーミング因子は、約10ng~約500μg、約50ng~約250μg、約100ng~約200μg、約1μg~約100μg、約1μg~約50μg、約1μg~約25μg、約1μg~約10μg、約2μg~約10μg、または約6μgで存在し得る。
【0290】
様々な実施形態では、スキャフォールドに存在する分化因子の量は、スキャフォールドのサイズに応じて変動し得る。例えば、分化因子は、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位の分化因子の量の比)~約350μg/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300μg/mm、約1ng/mm~約250μg/mm、約10ng/mm~約200μg/mm、約0.1μg/mm~約100μg/mm、約0.1μg/mm~約50μg/mm、または約0.1μg/mm~約20μg/mm、約0.1μg/mm~約10μg/mm、約0.1μg/mm~約5μg/mm、約0.1μg/mm~約1μg/mm、約0.1μg/mm~0.5μg/mm、または約0.2μg/mmで存在し得る。
【0291】
例示的なスキャフォールド組成物
本発明は、対象において免疫系をモジュレートするためのスキャフォールド組成物を提供する。本発明の組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールドでの組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む。
【0292】
一態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートするための組成物であって、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球T細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、組成物を提供する。例えば、増殖因子は、約1ng~約500μg、約1ng~約200μg、約1ng~約100μg、約1ng~約50μg、または約1ng~10μgの量で存在し得る。
【0293】
別の態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートするための組成物であって、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球T細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、組成物を提供する。さらに特定の実施形態では、増殖因子は、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ngで存在する。
【0294】
なおもさらなる態様では、本発明は、対象において免疫系をモジュレートするための組成物であって、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールドの体積を基準として約0.03ng/mm~約350ng/mm、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、組成物を対象とする。様々な実施形態では、増殖因子は、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、約5ng/mm~25ng/mm、約6ng/mm~約10ng/mm、または約6.5ng/mm~約7.0ng/mmで存在し得る。
【0295】
組成物は、増殖因子を制御様式で放出するように設計され得る。低減された量の増殖因子および/または制御放出により、先行技術よりも優れた利点、例えば、高レベルの増殖因子、例えば、BMP-2の使用および準最適な放出動態と関連する毒性の低減が提供される。
【0296】
様々な実施形態では、増殖因子は、骨形成タンパク質、例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-7、BMP-12、BMP-14、またはこれらの任意の組合せである。一部の実施形態では、増殖因子は、BMP-2である。ある特定の実施形態では、増殖因子は、TGF-β、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはこれらの任意の組合せである。特定の実施形態では、増殖因子は、TGF-β1を含む。
【0297】
本発明による組成物の多孔性スキャフォールドは、任意の生体適合性および生体分解性スキャフォールドであり得る。ある特定の実施形態では、多孔性スキャフォールドは、ヒドロゲルまたはクリオゲルを含む。様々な実施形態では、ヒドロゲルまたはクリオゲルは、アルギネートもしくはアルギネート誘導体、ゲル化もしくはゼラチン誘導体、またはヒアルロン酸もしくはヒアルロン酸誘導体を含む。
【0298】
ある特定の実施形態では、本発明の分化因子は、Notch受容体に結合するポリペプチドを含む。様々な実施形態では、分化因子は、Delta様1(DLL-1)、Delta様2(DLL-2)、Delta様3(DLL-3)、Delta様3(DLL-3)、Delta様4(DLL-4)、Jagged 1、Jagged 2、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、分化因子は、DLL-4を含む。ある特定の実施形態では、分化因子は、多孔性スキャフォールドに共有結合により連結されている。
【0299】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、アルギネートもしくはアルギネート誘導体、例えば、メタクリル化アルギネート、またはヒアルロン酸もしくはヒアルロン酸誘導体を含む注射可能なクリオゲルと、骨形成タンパク質、例えば、BMP-2である増殖因子と、Delta様ファミリータンパク質、例えば、DLL-4である分化因子とを含む。増殖因子は、スキャフォールド当たり約200ng、または約6.5ng/mm~7.0ng/mmで存在し得る。
【0300】
III.免疫系をモジュレートする方法
本発明は、対象の免疫系をモジュレートする方法を特徴とする。本発明のある特定の実施形態では、対象の免疫系をモジュレートする方法は、対象に、本発明の1つまたは複数の組成物を投与するステップを含む。組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む。特定の実施形態では、組成物は、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む。
【0301】
ある特定の実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。
【0302】
ある特定の実施形態では、細胞は、幹細胞または前駆細胞である。本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、他の種類の細胞に分化することができ、分裂して同じ種類の幹細胞をさらに産生することができる、生物学的細胞を指す。幹細胞としては、芽細胞の内部細胞塊から単離される胚性幹細胞および様々な組織において見いだされる成体幹細胞が挙げられる。成体の生物において、幹細胞および前駆細胞は、身体の修復系として機能し、成体組織を再補充する。ある特定の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、胎生幹細胞、羊水幹細胞、臍帯幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞である。造血幹細胞は、骨髄およびリンパ球系統の両方の血液細胞を含む、他の血液細胞を生じる幹細胞である。
【0303】
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、特定の種類の細胞へと分化することができる生物学的細胞を指す。前駆細胞は、一般に、幹細胞よりも分化した状態である。典型的には、前駆細胞は、限られた回数しか分裂できない。
【0304】
ある特定の実施形態では、前駆細胞は、芽球細胞、例えば、胸腺細胞、リンパ芽球、骨髄球、または骨髄前駆細胞である。ある特定の実施形態では、前駆細胞は、T細胞前駆細胞へと分化することができる細胞である。ある特定の実施形態では、リンパ球には、T細胞、例えば、ナイーブT細胞が含まれる。
【0305】
ある特定の実施形態では、動態化される細胞は、造血骨髄細胞、または動員末梢血細胞である。
【0306】
ある特定の実施形態では、細胞は、組換え細胞であってもよい。「組換え細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子改変が導入されている細胞を指す。遺伝子改変は、染色体レベルであっても染色体外であってもよい。「染色体レベルの遺伝子改変」とは、細胞のゲノムにおける遺伝子改変、例えば、細胞の染色体における挿入、欠失、および/または置換を指す。染色体外遺伝子改変は、細胞のゲノムに位置しない遺伝子改変を指す。例えば、タンパク質コーディング遺伝子を含むプラスミドが、細胞に導入され得る。プラスミドは、複製し、親細胞から子孫細胞へ伝達され得る。
【0307】
様々な実施形態では、遺伝子改変により、遺伝子が細胞に導入される。導入された遺伝子は、細胞の欠陥のある遺伝子の機能を補い得る。例えば、細胞は、突然変異体欠陥遺伝子を含み得る。遺伝子改変により、野生型機能性遺伝子を細胞に導入して、遺伝子の機能を回復させることができる。一部の実施形態では、遺伝子改変は、ある特定の遺伝子の発現を増加または減少させ得る。例えば、遺伝子改変により、ある遺伝子に特異的な低分子干渉RNA(siRNA)を導入して、遺伝子の発現を阻害してもよい。
【0308】
細胞を遺伝子改変する方法は、当該技術分野において一般に公知であり、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)に記載される方法があり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0309】
ある特定の実施形態では、遺伝子改変は、ゲノム編集としても知られる遺伝子編集によって導入することができる。遺伝子編集は、当業者に生物のDNAを変化させる能力を与える技術の群である。これらの技術は、遺伝子材料を、ゲノム内の特定の位置において付加、除去、または変更することを可能にする。遺伝子編集技術としては、メガヌクレアーゼ系、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)系、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)系、およびCRISPR-Cas系が挙げられるが、これらに限定されない。クラスター化された規則的に間隔が空いた短い回文反構造の繰り返しおよびCRISPR関連タンパク質系の短縮形であるCRISPR-Cas系、特に、CRISP-Cas9は、他の既存のゲノム編集方法よりも高速で安価でより正確かつより効率的である。
【0310】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象が移植を受けた後に、対象の免疫系をモジュレートする方法を特徴とする。例えば、対象は、造血幹細胞移植を受け得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、造血幹細胞移植と同時またはその後に、対象に投与される。
【0311】
ある特定の実施形態では、少なくとも2つの組成物が、対象に投与される。組成物は、類似のサイズのものであり得る。
【0312】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、年齢が30歳を上回るヒトの免疫応答をモジュレートする。例えば、ヒトは、40歳を上回ってもよく、50歳を上回ってもよく、60歳を上回ってもよく、70歳を上回ってもよく、80歳を上回ってもよい。
【0313】
一部の実施形態では、本発明の1つまたは複数の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)は、幹細胞動態化技法と併用して投与され得る。幹細胞動態化は、ある特定の細胞動態化剤を使用して、骨髄から血液中への幹細胞の移動を引き起こすプロセスであり、例えば、Hopman and DiPersio, Advances in Stem Cell Mobilization, Blood Rev., 2014, 28(1): 31-40に記載されており、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような技法はまた、前駆細胞の動態化にも使用され得る。
【0314】
したがって、ある特定の実施形態では、対象には、骨髄から血液中への幹細胞/前駆細胞の移動を誘導するのに有効な量で、幹細胞および/または前駆細胞動態化剤が投与される。放出された幹細胞および/または前駆細胞は、続いて、本発明の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)に動員されて、T細胞前駆細胞へと分化する。幹細胞および/または前駆細胞動態化剤は、組成物(例えば、骨髄クリオゲル)の投与の前、同時、または後に投与され得る。
【0315】
様々な実施形態では、本発明の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)は、対象に、幹細胞および/または前駆細胞動態化剤と併用して投与され得る。特定の実施形態では、対象は、高齢のヒトであり、例えば、ヒトは、30歳を上回ってもよく、40歳を上回ってもよく、50歳を上回ってもよく、60歳を上回ってもよく、70歳を上回ってもよく、または80歳を上回ってもよい。幹細胞および/または前駆細胞動態化剤は、対象自身の幹細胞および/または前駆細胞を骨髄から動態化することができ、そのためこれらの細胞は、本発明の組成物にホーミングし、それによって、他の状態調節または幹細胞移植をともなうことなく、対象においてT細胞の生成を増強することができる。
【0316】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)は、対象に、幹細胞および/または前駆細胞動態化技法ならびに幹細胞移植と併用して投与され得る。移植は、自家、同種、または異種であり得る。
【0317】
一部の実施形態では、1つまたは複数の細胞型の末梢血流への動態化、その産生を刺激することができ、かつ/または機能を改善することができる、治療有効量の1つまたは複数の細胞動態化剤が、投与される。薬剤は、経口、直腸内、静脈内、筋肉内、皮下、またはエアロゾルを含む、任意の所望される投与経路を通じて提供され得る。ある細胞型の末梢血流への動態化、その産生を刺激することができ、かつ/または機能を改善することができる薬剤の一部の非限定的な実施形態としては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、GM-CSF、G-CSF、プレリキサフォル、PDGF、TGF-ベータ、NGF、IGF、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポチエンなどが挙げられる。天然に存在する増殖因子に加えて、増殖因子アナログおよび増殖因子誘導体、例えば、融合タンパク質も同様に使用することができる。一部の実施形態では、方法は、治療有効量のG-CSFおよび治療有効量の電磁放射線の投与を含む。一部の実施形態では、方法は、治療有効量のプレリキサフォルおよび治療有効量の電磁放射線の組合せを投与するステップを含む。一部の実施形態では、治療有効量の電磁放射線は、一部の実施形態では造血幹細胞動態化剤であり得る別の薬剤と組み合わされる。一部の実施形態では、治療有効量の電磁放射線は、G-CSF、GM-CSF、プレリキサフォル、IL-1、IL-2、IL-3、IL-6、PDGF、TGF-ベータ、NGF、IGF、成長ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポチエン、または別の薬剤のうちの2つまたはそれよりも多い組合せと組み合わされる。
【0318】
細胞の動員およびT細胞前駆細胞への分化
一態様では、本発明は、細胞をスキャフォールドに動員し、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導するための方法を特徴とする。具体的には、方法は、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む1つまたは複数の本発明の組成物を、投与するステップを含む。特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、例えば、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。別の特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。なおも別の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。
【0319】
ある特定の実施形態では、増殖因子および/またはホーミング因子は、細胞を本発明のスキャフォールドに動員するように機能する。組成物の分化因子、および必要に応じて増殖因子は、続いて、細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する。
【0320】
一部の実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。
【0321】
ある特定の実施形態では、増殖因子(例えば、BMP-2)および/またはホーミング因子(例えば、SDF-1)は、T細胞前駆細胞へと分化することができる幹細胞または前駆細胞を動員する。分化因子(例えば、DLL-4)は、幹細胞または前駆細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する。ある特定の実施形態では、リンパ球には、ナイーブT細胞が含まれる。ある特定の実施形態では、リンパ球には、T細胞、例えば、CD4T細胞、CD8T細胞、および/または制御性T細胞(Treg)が含まれる。
【0322】
ある特定の実施形態では、動員される細胞は、移植細胞である。移植細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞)は、自家であり得る。例えば、移植細胞は、対象自身の臍帯幹細胞または処置、例えば、放射線処置の前に対象から得られた幹細胞であり得る。移植細胞は、同系、例えば、対象の一卵性の双子から得られた造血幹細胞または前駆細胞であり得る。移植細胞はまた、同種、例えば、同じ種のドナーから得られた造血幹細胞または前駆細胞であり得る。移植細胞はまた、異種、例えば、異なる種から得られた造血幹細胞または前駆細胞であり得る。
【0323】
ある特定の実施形態では、細胞は、対象に由来する骨髄間質細胞であり得る。間質細胞は、器官、例えば、骨髄の結合組織細胞を指す。間質細胞は、その器官(例えば、骨髄)の実質細胞の機能を補助する。骨髄間質細胞は、DLL-4を産生し、これは、T細胞コンピテントリンパ系共通前駆細胞を生成するのに重要な機能的環境を提供する。増殖因子(例えば、BMP-2)はまた、間質細胞の骨系統分化を促進し得る。
【0324】
ある特定の実施形態では、動員される細胞は、幹細胞でも前駆細胞でもない細胞であってもよい。
【0325】
免疫過剰反応性の低減
一態様では、本発明は、対象の免疫過剰反応性を低減させる方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量(例えば、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng)で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0326】
別の態様では、本発明は、対象の免疫過剰反応性を低減させる方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0327】
別の態様では、本発明は、対象の免疫過剰反応性を低減させる方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0328】
一部の実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。
【0329】
免疫系は、正常な生理学的条件下において、免疫恒常性のバランスを維持することができる、緊密に制御されるネットワークである。通常、外来抗原でチャレンジされると、恒常性を回復させることを目的とする特定の適切な応答が、開始される。しかしながら、特定の状況下では、このバランスが維持されず、免疫応答は、過少反応または過剰反応のいずれかとなる。免疫応答が過剰反応すると、これは、自己免疫疾患、アレルギー、および/またはGVHDなどの状態をもたらし得る。
【0330】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象において制御性T細胞(Treg)のレベルを増加させる方法を特徴とする。サプレッサーT細胞としても知られるTreg細胞は、免疫系をモジュレートする、自己抗原に対する耐容性を維持する、ならびに自己免疫疾患を予防および/または処置する、T細胞の部分集団である。Treg細胞は、免疫抑制性であり、一般に、エフェクターT細胞の誘導および増殖を抑制または下方制御する。Treg細胞は、バイオマーカーCD4、FOXP3、およびCD25を発現する。いずれの理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明の方法によるTreg細胞のレベルの増加は、免疫過剰反応性の低減をもたらすと考えられる。
【0331】
自己免疫疾患
特定の態様では、本発明は、自己免疫疾患を予防および/または処置する方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量(例えば、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng)で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」という用語は、対象の免疫系が対象自身の組織を攻撃および/または損傷する疾患、障害、または疾病を指す。例示的な自己免疫疾患としては、1型糖尿病、リウマチ性関節炎、乾癬、関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、アジソン病、グレーブス病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、脈管炎、悪性貧血、およびセリアック病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0332】
ある特定の実施形態では、対象は、Treg細胞が欠損しており、自己免疫疾患を生じる。対象には、本発明の組成物および造血幹細胞または前駆細胞が投与され得る。造血幹細胞または前駆細胞は、対象から得られてもよい。本発明の組成物は、造血幹細胞のTreg細胞への分化を誘導するための増殖因子(例えば、TGF-βファミリータンパク質)を含み得る。
【0333】
アレルギー
ある特定の実施形態では、本発明は、アレルギーを予防および/または処置する方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量(例えば、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng)で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を特徴とする。
【0334】
アレルギー疾患としても知られるアレルギーは、環境内の典型的には無害の物質に対する免疫系の過感受性によって引き起こされるいくつかの状態である。いずれの理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明の方法によるTreg細胞のレベルの増加により、アレルギーを予防および/または処置することができる。
【0335】
GVHD
別の態様では、本発明は、移植片対宿主病(GVHD)に関連する症状を軽減する方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量(例えば、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng)で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。GVHDは、遺伝子的に異なるドナーから移植組織を受容した後の医学状態である。GVHDは、一般に、幹細胞移植、例えば、造血幹細胞移植と関連する。GVHDはまた、他の形態の移植組織、例えば、固形臓器移植にも生じる。
【0336】
ある特定の実施形態では、GVHDは、造血幹細胞移植と関連する。ある特定の実施形態では、GVHDは、固形体臓器移植と関連する。
【0337】
ある特定の実施形態では、本発明は、Treg細胞のレベルを増加させる方法を特徴とする。ある特定の実施形態では、Treg細胞は、移植された造血幹細胞(例えば、ドナー造血幹細胞)から分化する。いずれの理論によって束縛されることを望むものではないが、造血幹細胞移植におけるドナーTreg細胞の増強は、ドナーTreg細胞がGVHD抑制において重要な役割を果たすことを考慮すると、造血幹細胞移植を受ける対象においてGVHD症状の軽減に寄与する可能性が高い。ある特定の実施形態では、本発明は、対象の自家Treg細胞のレベルを増加させる方法を特徴とする。
【0338】
移植を受ける対象におけるドナーキメラ化の増強
別の態様では、本発明は、移植を受ける対象においてドナーキメラ化を増強させる方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、例えば、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。別の特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。なおも別の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。
【0339】
一部の実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。
【0340】
ドナーキメラ化は、通常、対象が造血幹細胞移植を受けるときに生じる。「キメラ化」という用語は、本明細書で使用される場合、非宿主起源のリンパ球造血細胞の存在を指す。全または完全キメラ化は、一般に、ドナーリンパ球造血による宿主の完全な置換えを指す。混合キメラ化は、所与の細胞コンパートメント、例えば、リンパ球内のドナーおよびレシピエント両方の細胞の存在を示す。低いレベルのドナーキメラ化は、同種造血幹細胞または前駆細胞移植におけるT細胞生成の欠損と関連することが多く、これは、患者を、感染作用物質に感受性にし、GVHDに寄与し得る。
【0341】
バランスの取れたT細胞再構成
別の態様では、本発明は、対象においてバランスの取れたT細胞再構成をもたらす方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、例えば、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。別の特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。なおも別の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。
【0342】
一部の実施形態では、対象には、造血幹細胞または前駆細胞がさらに投与される。本発明の組成物は、造血幹細胞または前駆細胞の投与と同時またはその後に、投与され得る。
【0343】
「バランスの取れたT細胞再構成」という用語は、本明細書で使用される場合、CD4:CD8の比が、ある特定の期間、例えば、30日以内に、正常な範囲内となることによって特徴付けられる、T細胞の再構成を指す。例えば、CD4細胞の再構成は、通常、HSCTレシピエントにおいて、遅い。本発明の方法は、CD4T細胞の再構成を加速させ、バランスの取れたT細胞再構成をもたらすことができる。
【0344】
造血幹細胞移植(HSCT)は、複数の障害の治癒的処置であるが、同種HSCTは、T細胞の欠損および調節不全によって制限を受ける。同種HSCTを受ける対象において、通常、CD4T細胞の回復は遅く、末梢血において約0.9~約2.5である正常なCD4/CD8比の逆転が生じる。比は、他の組織または器官では異なり得る。
【0345】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、CD4:CD8比を、正常な範囲に安定させるが、HSCTのみを受ける対象におけるCD4T細胞コンパートメントは、完全には再構成されない。ある特定の実施形態では、バランスの取れたT細胞再構成は、恒常性CD4:CD8比が造血幹細胞移植および本発明の組成物の投与後30日以内に正常な範囲となることによって特徴付けられる。
【0346】
本発明によるある特定の実施形態では、対象、例えば、ヒトは、造血幹細胞移植において、対象の体重1キログラム当たり約1×10~約50×10個の造血幹細胞または前駆細胞を受容する。ある特定の実施形態では、対象は、対象の体重1キログラム当たり約1×10個の造血幹細胞を受容する。
【0347】
本発明の方法は、造血幹細胞またはT細胞前駆体注入を単独で受容する(すなわち、本発明の組成物の処置を受けない)対象と比較して、類似またはより良好な治癒および/または治療的作用をもたらす。例えば、本発明の組成物での処置は、例えば、T細胞前駆体注入単独と比べて低い用量で使用した場合でさえも、胸腺および末梢におけるより多数のT細胞前駆体および機能性T細胞をもたらし得る。一部の実施形態では、類似またはより良好な治癒および/または治療的作用が、HSCT単独で使用される造血幹細胞または前駆細胞の10パーセント(10%)未満を、本発明の組成物と組み合わせて対象に投与した場合に達成され得る。
【0348】
様々な実施形態では、バランスの取れたT細胞再構成はまた、増強されたT細胞新生によっても特徴付けられる。「新生」という用語は、本明細書で使用される場合、新しい細胞の生成を指す。様々な実施形態では、増強されたT細胞新生は、増強されたT細胞受容体切除サークル(TREC)によって特徴付けられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法を使用したT細胞新生は、ベースラインまたは正常な数のTRECを達成する。「ベースラインの数のTREC」という用語は、本明細書で使用される場合、対象が対象の免疫系を損傷する任意の処置を受ける前の対象のTREC数を指す。「正常な数のTREC」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫系に欠陥がない個体のTRECの数を指す。正常な数のTRECは、ある特定の範囲内であり得る。ある特定の実施形態では、TRECは、末梢血細胞におけるTRECを概算することによって、ヒトにおいて定量的かつ非侵襲的な様式で評価することができる。
【0349】
抗原特異的T細胞応答
別の態様では、本発明は、対象において抗原特異的T細胞応答を誘導する方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与し、対象に、抗原を含むワクチンを投与し、それによって対象において抗原特異的T細胞応答を誘導することによる、方法を提供する。特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、例えば、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。別の特定の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。なおも別の実施形態では、対象には、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が投与される。
【0350】
一部の実施形態では、方法は、対象に、造血幹細胞または造血前駆細胞を投与するステップをさらに含む。
【0351】
ある特定の実施形態では、対象は、免疫系の欠陥を有する。本明細書で使用される場合、「免疫系の欠陥」という用語は、感染性疾患およびがんと闘う免疫系の能力に欠陥があるか、またはそれが完全に不在である状態を指す。免疫系の欠陥の多くの事例は、対象の免疫系に影響を及ぼす外来因子に起因する後天的(「続発的」)なものである。これらの外来因子の例としては、HIV感染、年齢、および環境因子、例えば、栄養が挙げられる。ある特定の実施形態では、一部の薬物、例えば、ステロイドによる免疫抑制は、副作用または処置の意図される目的のいずれかであり得る。そのような使用の例としては、(i)抗拒絶措置として臓器移植手術におけるもの、および(ii)自己免疫疾患におけるものなど過剰反応性免疫系を患う患者におけるものが挙げられる。ある特定の実施形態では、がんの一部の治療法、例えば、放射線療法および/または化学療法は、免疫系の欠陥を引き起こす。対象が免疫系の欠陥を有する状態は、「免疫不全」と称される場合がある。
【0352】
ある特定の実施形態では、対象は、造血幹細胞移植を受けている。ある特定の実施形態では、対象は、血液または骨髄のがん、例えば、骨髄腫または白血病を有する。対象は、腫瘍細胞を破壊するための状態調節の細胞毒性放射線および/または化学療法レジメンを受け得、それが、獲得免疫系のT細胞およびB細胞の破壊に起因する重篤なリンパ球減少症をもたらす。
【0353】
ある特定の実施形態では、抗原特異的応答を誘導する方法は、対象に、本発明の組成物および抗原を含むワクチンを投与するステップを含む。
【0354】
免疫欠陥対象における免疫系のモジュレーション
一態様では、本発明は、免疫欠陥対象において免疫系をモジュレートする方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量(例えば、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng)で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の本発明の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0355】
別の態様では、本発明は、免疫欠陥対象において免疫系をモジュレートする方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0356】
なおも別の態様では、本発明は、免疫欠陥対象において免疫系をモジュレートする方法であって、対象に、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位での増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む、1つまたは複数の組成物を投与することによってそれを行う、方法を提供する。
【0357】
一部の実施形態では、対象には、造血幹細胞または前駆細胞がさらに投与される。
【0358】
ある特定の実施形態では、放出された幹細胞および/または前駆細胞が本発明の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)に動員されるように、対象には、幹細胞および/または前駆細胞動態化剤がさらに投与される。幹細胞/前駆細胞動態化剤は、本発明の組成物(例えば、骨髄クリオゲル)の投与の前、同時、または後に投与され得る。
【0359】
一部の実施形態では、免疫系の欠陥は、免疫老化によって引き起こされる。「免疫老化」という用語は、本明細書で使用される場合、自然な年齢の進行によってもたらされる免疫系の悪化を指す。これには、感染に応答する宿主の能力、および特にワクチン接種による長期免疫記憶の発達の両方が関与する。免疫老化は、高齢集団において多数の病理学的に有意な健康上の問題をもたらす、多因子状態である。免疫老化は、造血幹細胞の自己複製能力の低減と関連する。免疫老化を有する対象は、CD4+/CD8+比の低減、T細胞受容体(TCR)多様性の抗原認識レパートリーの縮小、および/または抗原刺激に応答した増殖の減損を示し得る。免疫老化は、若齢、例えば、ヒトにおける30歳でも生じ得る。
【0360】
一部の実施形態では、対象は、先天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。本明細書で使用される場合、「原発性免疫不全」としても知られる「先天性免疫不全」は、免疫系の主要な構成要素のうちの1つまたは複数における欠損、不在、または欠陥を指す。これらの障害は、遺伝子的に決定され、典型的には、乳児期または小児期に、高頻度、慢性、または日和見の感染症として現れる。分類は、欠損、不在、または欠陥のある免疫系の主要な構成要素に基づく。診断は、試験、例えば、差次的WBC数、絶対リンパ球数、定量的免疫グロブリン(Ig)測定、および抗体力価で確認される。処置は、通常、感染を管理および予防するための予防的抗生物質からなる。原発性免疫不全障害における予後は、変動的であり、具体的な障害に依存する。
【0361】
例示的な先天性免疫不全障害としては、先天性B細胞免疫不全、例えば、ブルトン無ガンマグロブリン血症、選択的IgA欠損、分類不能型免疫不全、先天性T細胞免疫不全、例えば、ディジョージ症候群、常染色体優性高免疫グロブリンE症候群、IL-12受容体欠損、慢性粘膜皮膚カンジダ症、IPEX症候群(免疫調節不全、多腺性内分泌障害、腸疾患、X連鎖)、先天性混合免疫不全、例えば、重症複合免疫不全(SCID、バブルボーイ病、グランツマン-リニカー症候群、無リンパ球症)、ウィスコット-アルドリッチ症候群、高IgM症候群、毛細血管拡張性運動失調症、先天性好中球および食細胞障害、例えば、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、1型白血球接着不全症、チェディアック-ヒガシ症候群、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、重症先天性好中球減少症、先天性補体欠損症、例えば、末端補体欠損症、C3欠損症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0362】
ある特定の実施形態では、対象は、後天性免疫不全に起因して免疫系の欠陥を有する。本明細書で使用される場合、「後天性免疫不全」という用語は、対象の免疫系に影響を及ぼす外来因子に起因する免疫不全を指す。続発性免疫不全としても知られる後天性免疫不全は、様々な免疫抑制剤、例えば、栄養失調、加齢、特定の医薬または処置(例えば、化学療法(細胞毒性剤)、疾患改変抗リウマチ薬、臓器移植後の免疫抑制薬、グルココルチコイド、放射線療法)、ならびに環境毒素、例えば、水銀および他の重金属、殺虫剤、ならびに石油化学製品、例えば、スチレン、ジクロロベンゼン、キシレン、およびエチルフェノールにより生じ得る。医薬については、「免疫抑制」という用語は、一般に、免疫系の機能を減少させる有益な作用および可能性のある有害作用の両方を指すが、「免疫不全」という用語は、一般に、感染の危険性の増加という有害作用のみを指す。
【0363】
多くの特定の疾患は、直接的または間接的に免疫抑制を引き起こす。これには、多数の種類のがん、特に、骨髄および血液細胞のもの(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫)、ならびにある特定の慢性感染症が含まれる。免疫不全はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる後天性免疫不全症候群(AIDS)の特徴でもある。HIVは、少数のTヘルパー細胞に直接的に感染し、また、他の免疫系応答を間接的に損傷させる。貧血、甲状腺機能低下症、糖尿病、および低血糖症を含むがこれらに限定されない、様々なホルモンおよび代謝障害もまた、免疫不全を引き起こし得る。喫煙、アルコール中毒、および薬物乱用もまた、免疫応答を低下させる。
【0364】
いずれの理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明の組成物および方法によって提供されるバランスの取れたT細胞再構成および抗原特異的T細胞応答は、免疫系の欠陥を有する対象の免疫系をモジュレートすることができる。
【0365】
IV.キット
本明細書に記載される組成物のいずれも、キットに含めることができる。非限定的な例では、キットには、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が含まれる。特定の実施形態では、キットには、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000ng、例えば、約5ng~約500ng、約5ng~約250ng、約5ng~約200ng、または約200ng、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のT細胞前駆細胞への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が含まれる。別の特定の実施形態では、キットには、多孔性スキャフォールドと、スキャフォールド当たり約1ng~約1000μg、例えば、約1ng~約500μg、約5μg~約250μg、または約10μg~約100μg、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が含まれる。なおも別の実施形態では、キットには、多孔性スキャフォールドと、約0.03ng/mm(スキャフォールドの体積に対する重量単位の増殖因子の量の比)~約350ng/mm、例えば、約0.1ng/mm~約300ng/mm、約0.5ng/mm~約250ng/mm、約1ng/mm~約200ng/mm、約2ng/mm~約150ng/mm、約3ng/mm~約100ng/mm、約4ng/mm~約50ng/mm、または約5ng/mm~25ng/mmなど、かつスキャフォールド内の組織または器官の形成を誘導し、スキャフォールドに細胞を動員するのに有効な量で存在する、増殖因子と、動員された細胞のリンパ球への分化を誘導する分化因子とを含む組成物が、含まれる。
【0366】
一部の実施形態では、キットには、本明細書の他の箇所に記載される組成物が含まれる。
【0367】
特定の実施形態では、キットは、組成物を投与するためのシリンジまたは代替的な注射デバイスを含む。具体的な実施形態では、事前充填シリンジまたは注射デバイスには、組成物が事前充填される。
【0368】
キットには、本発明の組成物を対象に投与するための試薬または説明書がさらに含まれてもよい。それは、1つまたは複数の試薬も含み得る。
【0369】
キットの構成要素は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかでパッケージングされてもよい。キットの容器手段には、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段が含まれ、その中に、構成要素が配置され、好ましくは、好適にアリコートされ得る。キット内に1つを上回る構成要素が存在する場合、キットはまた、一般に、追加の構成要素が別個に配置され得る第2、第3、またはその他の追加の容器を含むことになる。キットは、滅菌の薬学的に許容される緩衝液および/または他の希釈剤を格納するための第2の容器手段も含み得る。しかしながら、様々な組合せの構成要素が、1つのバイアルに含まれてもよい。本発明のキットはまた、典型的に、本発明の組成物、例えば、免疫系をモジュレートするための組成物を格納するための手段、および任意の他の試薬容器を、商用販売のための緊密に封止した状態で含むであろう。
【0370】
キットの構成要素が、1つおよび/または複数の溶液中で提供される場合、その溶液は、水溶液であり、滅菌水溶液が、特に好ましい。しかしながら、キットの構成要素は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または構成要素が、乾燥粉末として提供される場合、粉末は、好適な溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒が、別の容器手段で提供され得ることも想定される。
【0371】
本発明を、以下の実施例によってさらに例証するが、これらは、制限と解釈されるものではない。本明細書に引用されている全ての引用資料、例えば、参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、および技術は、引用中に明示的に言及されていない場合であっても、参照により本出願に組み込まれる。引用資料および本出願の記述に矛盾がある場合には、本出願における記述が優先されるものとする。
【0372】
節および表の見出しは、制限することを意図するものではない。
【実施例
【0373】
要約
同種造血幹細胞移植(HSCT)は、多数の障害に対する治癒的処置であるが、T細胞の欠陥および調節不全によりその有用性が限定される。本明細書では骨髄におけるT細胞リンパ球新生の特色を模倣するバイオマテリアルに基づくスキャフォールドを報告する。骨髄クリオゲル(BMC)は、骨形成タンパク質-2を放出して間質細胞を動員し、ノッチリガンドデルタ様リガンド-4を提示してマウスおよびヒト造血前駆細胞のT細胞系列特異化を容易にする。マウスにおいてHSCT時にBMCを皮下注射することにより、胸腺によるT細胞前駆体の播種、T細胞新生およびT細胞受容体レパートリーの多様化が増強された。末梢性T細胞再構成がマウスHSCTでは約6倍およびヒト異種HSCTでは約2倍に増加した。さらに、BMCにより、ドナーCD4+制御性T細胞生成が促進され、同種HSCT後の生存が改善された。T細胞前駆体の養子移入と比較して、BMCにより、ドナーキメラ化、T細胞生成およびワクチン接種に対する抗原特異的T細胞応答が増加した。BMCにより、HSCTにおいてT細胞再生を増強し、移植片対宿主病を軽減するための既製の手法を提供することができる。
【0374】
緒言
T細胞は、生命のために重要な抗原特異的免疫の重要なヘルパー、エフェクターかつ制御性細胞である。T細胞の数の減少および機能的欠陥は、先天性免疫不全から自己免疫性のおよび免疫サーベイランスが損なわれた障害までにわたる疾患に原因として関係づけられる(Goronzy, J.J. & Weyand, C.M. Successful and maladaptive T cell aging. Immunity 46, 364-378 (2017);Liston, A., Enders, A. & Siggs, O.M. Unravelling the association of partial T-cell 883 immunodeficiency and immune dysregulation. Nature Reviews Immunology 8, 545-558 884(2008))。同種HSCTでは、T細胞生成に顕著な欠陥が存在し、これは、患者を感染因子にかかりやすくし、また、移植片対宿主病(GVHD)に寄与し得る(Blazar, B.R., Murphy, W.J. & Abedi, M. Advances in graft-versus-host disease biology and therapy. Nature Reviews Immunology 12, 443-458 (2012))。これらの併発症は致死的になり得、HSCTが治癒的になる可能性がある状況でのその使用を限定し得る。ナイーブなヘルパーおよびエフェクターT細胞サブセットのバランスの取れた再構成は、T細胞受容体レパートリーの修復と一緒に、重要なまだ対処されていない臨床的必要のままである(Krenger, W., Blazar, B.R. & Hollander, G.A. Thymic T-cell development in allogeneic stem cell transplantation. Blood 117, 6768-6776 (2011))。
【0375】
移植された造血細胞からの新しいT細胞再生には、骨髄および十分な胸腺機能から生じる(Chaudhry, M.S., Velardi, E., Dudakov, J.A. & Brink, M.R. Thymus: the next (re) generation. Immunological reviews 271, 56-71 (2016))T細胞前駆体の十分なプールの利用可能性が必要である(Zlotoff, D.A. et al. Delivery of progenitors to the thymus limits T-lineage reconstitution after bone marrow transplantation. Blood 118, 1962-1970 (2011))。in vivoにおけるT細胞生成の増強に関する臨床的標準は現在のところ存在しないが、大多数の試みは、サイトカインの使用およびT細胞リンパ球新生の骨髄後相からの細胞に基づく治療に焦点が当てられてきた。しかし、臨床試験において、T細胞増大サイトカインIL-7およびIL-2(Mohtashami, M., Shukla, S., Zandstra, P. & Zuniga-Pflucker, J.C. in Synthetic Immunology 95-120 (Springer, 2016))が主に成熟T細胞サブセットにおいて増加し(Perales, M.-A. et al. Recombinant human interleukin-7 (CYT107) promotes T-cell recovery after allogeneic stem cell transplantation. Blood 120, 4882-4891 (2012))、また、IL-2が毒性によってさらに限定された(Skrombolas, D. & Frelinger, J.G. Challenges and developing solutions for increasing the benefits of IL-2 treatment in tumor therapy. Expert review of clinical immunology 10, 207-217 (2014))。対照的に、IL-22の投与により、前臨床マウス試験における初期の胸腺細胞回復が増強されることが示されている(Dudakov, J.A. et al. Interleukin-22 drives endogenous thymic regeneration in mice. Science 336, 91-95 (2012)。あるいは、一般に遭遇した病原体からの抗原特異的T細胞による保護をもたらすために、養子ドナーT細胞注入が使用されているが(Cobbold, M. et al. Adoptive transfer of cytomegalovirus-specific CTL to stem cell transplant patients after selection by HLA-peptide tetramers. Journal of Experimental Medicine 202, 379-386 (2005);Rooney, C.M. et al. Infusion of cytotoxic T cells for the prevention and treatment of Epstein-Barr virus-induced lymphoma in allogeneic transplant recipients. Blood 92, 1549-1555 (1998))、それには、一過性の応答、GVHDのリスクの増大、およびT細胞疲弊が伴っている。上記の戦略は全て、胸腺依存性T細胞生成を促進するためのT細胞前駆体の十分なプールの利用可能性によって限定されている。T細胞前駆体(precursor)をex-vivoにおいてノッチシグナル伝達の活性化によって頑強に生成することができ、これらの細胞をHSCTと同時投与することにより、胸腺リンパ球新生および胸腺アーキテクチャが、サイトカインの外因的な同時投与を伴わずに改善される(Zakrzewski, J.L. et al. Tumor immunotherapy across MHC barriers using allogeneic T-cell precursors. Nature biotechnology 26, 453 (2008);Van Coppernolle, S. et al. Functionally mature CD4 and CD8 TCRαβ cells are generated in OP9-DL1 cultures from human CD34+ hematopoietic cells. The Journal of Immunology 183, 4859-4870 (2009);Awong, G. et al. Human proT-cells generated in vitro facilitate hematopoietic stem cell-derived T-lymphopoiesis in vivo and restore thymic architecture. Blood 122, 4210-4219 (2013))。しかし、十分な前駆体を生成するためのex-vivo細胞培養は労力を要するものであり、ドナー細胞の胸腺リンパ球新生の一過性の増強しか実証されていない。したがって、この手法の広範にわたる臨床的変換は複雑になる可能性が高い。
【0376】
広範に適用可能な技術を開発することを探求して、ノッチシグナル伝達が活性化されるとナイーブなTリンパ球に分化する能力を有し、胸腺リンパ球新生の主要な供給源である、胸腺移行前の骨髄に存在する共通リンパ球前駆体(CLP)に焦点があてられた(Love, P.E. & Bhandoola, A. Signal integration and crosstalk during thymocyte migration and emigration. Nature Reviews Immunology 11, 469 (2011);Radtke, F., MacDonald, H.R. & Tacchini-Cottier, F. Regulation of innate and adaptive immunity by Notch. Nature Reviews Immunology 13, 427 (2013);Serwold, T., Ehrlich, L.I.R. & Weissman, I.L. Reductive isolation from bone marrow and blood implicates common lymphoid progenitors as the major source of thymopoiesis. Blood 113, 807-815 (2009))。T細胞系列特異化を増強する骨髄ニッチの間質成分は、デルタ様リガンド-4(DLL-4)を産生する、オステオカルシンを発現する骨髄間質細胞からなり、これにより、T細胞コンピテントCLPを生成するために極めて重要な機能的な微小環境がもたらされる(Vionnie, W. et al. Specific bone cells produce DLL4 to generate thymus-seeding progenitors from bone marrow. Journal of Experimental Medicine, jem. 20141843 (2015))。これらの間質細胞はプレコンディショニングのプロセスによって損傷を受け、これはT細胞系列指令機能に影響を及ぼす可能性が高い。さらに、AIDS患者での臨床経験により、成人の胸腺が、以前の機能障害および萎縮にもかかわらず細胞組成およびT細胞新生を著しく改善する能力を有することが示されている(Smith, K.Y. et al. Thymic size and lymphocyte restration in patients with human immunodeficiency virus infection after 48 weeks of zidovudine, lamivudine, and ritonavir therapy. The Journal of infectious diseases 181, 141-147 (2000)。これらの以前の所見により、骨髄におけるT細胞リンパ球新生の特定の生物学的態様に基づくニッチの開発が支持された。
【0377】
ネイティブな胸腺に移動するT細胞前駆体のin vivoにおける産生を助長し、それにより、宿主により駆動される選択を受けさせてより多くのバランスの取れた広範な免疫レパートリーを創出するために、T細胞リンパ球新生骨髄ニッチを工学的に作製することができることが仮定される。この仮説を試験するために、注射可能な、バイオマテリアルに基づくクリオゲル(BMC)スキャフォールドを創出した。BMCスキャフォールドは、骨髄ニッチ内で提示される分子シグナルを組み込むことによりin vivoにおけるT細胞発生を促進する。BMCは、細胞浸潤を可能にする、マクロ多孔性のヒドロゲルに基づくスキャフォールドを含む。BMCは、骨形成タンパク質-2(BMP-2)を放出して、宿主間質細胞の動員およびそれらの骨系列分化を容易にし、生体活性ノッチリガンドDLL-4を予め定義された密度で浸潤性造血細胞に提示する。これらのT系列キューにより、マウスにおける同系(syn)および同種(allo)HSCT後の胸腺による前駆体の播種が増強され、ドナーT細胞再構成が可能になった。BMCにより再構成されたT細胞は機能的であり、T細胞受容体(TCR)レパートリーは多様であり、また、GVHDの誘導が減少した。
【0378】
(実施例1)
生体活性マクロ多孔性骨髄クリオゲル(BMC)はin vitroにおいて造血前駆体を前駆体T細胞に分化させる
スキャフォールドに基づくアルギネート-PEG BMCは、50~80μmの径の細孔と相互接続したマクロ多孔性ヒドロゲルである(図1A~1C)。造血前駆細胞におけるT細胞系列プログラムを促進するために、DLL-4をポリマー骨格に組み込んだ(Radtke, F., MacDonald, H.R. & Tacchini-Cottier, F. Regulation of innate and adaptive immunity by Notch. Nature Reviews Immunology 13, 427 (2013))。新規骨形成を可能にするために(Wozney, J.M. et al. Novel regulators of bone formation: molecular clones and activities. Science 242, 1528-1534 (1988))、低温重合の前に、その後in vivoにおいて可溶性形態で放出させるためにBMP-2を反応混合物に添加した。これらのクリオゲルは、単にタンパク質の徐放性のために設計された以前のクリオゲルとは異なり、固定化されたキュー(DLL-4)および可溶性キュー(BMP-2)の両方を提示する(Koshy, S.T., Zhang, D.K., Grolman, J.M., Stafford, A.G. & Mooney, D.J. Injectable nanocomposite cryogels for versatile protein drug delivery. Acta biomaterialia 65, 36-43 (2018))。
【0379】
この研究では、BMCは、骨および造血組織の成長をさらに支持する。in vitroにおけるBMP-2放出(封入効率90%)では、負荷量の約5%の最初のバーストが示され、次いで、持続的に放出された(図1D)。負荷されたDLL4の総量の1%未満が上清中で検出され、修飾されたDLL-4は修飾されていないタンパク質と同様の結合カイネティクスを有した(図1E)。プールされた放出試料において、放出されたBMP-2の生体活性が、新しく再構成されたBMP-2と比べて90%よりも大きく保持された(図1F)。BMP-2の生体活性は、放出の3日目の95%から12日目の約85%までにわたり、これにより、放出されたBMP-2が高度に活性であることが確認された(図1G)。DLL-4の最も高いin vitro生体活性は、初期の時点、0日目および10日目に見いだされた(図1Hおよび1I)。生体活性はその後の時点では低下したが、それでもなお3ヶ月後にベースラインを上回っていた。BMCの、ノッチシグナル伝達を介して造血前駆体マウスおよびヒト細胞の分化を誘導する能力を測定するために、マウス由来の一次系列を枯渇させた骨髄細胞および臍帯血由来ヒトCD34+造血細胞をBMC中で培養した(図1J)。
【0380】
ゲル当たりおよそ6μgのMA-DLL4に対応する、ポリマー骨格上のMA-COOH基をMA-DLL4を用いて1%官能化で飽和させた共通リンパ球前駆体の増大、およびこの条件をさらなる評価のために選択した。分析した実験条件(図1Kおよび1L)のいずれにおいても全体的なヒトまたはマウス細胞の増大倍率および生存可能数に有意差はなかった。しかし、リンパ球前駆細胞の画分は、DLL-4をBMCに、単独で、またはBMP-2と組み合わせて組み込んだ場合にのみ増強された(図1M)。
【0381】
(実施例2)
BMCはin vivoにおいて造血組織の特色を有する骨小結節を形成する
次に、BMCを、HSCTのマウスモデルにおいて宿主および移植された細胞の輸送を誘導する能力について分析した。致死的全身照射(L-TBI)後、マウスに、ドナーマウス骨髄から単離した系列枯渇造血細胞(5×10個;約93%系列枯渇、図2A)を静脈内に移植し、BMC(細胞を伴わない)を同時に背側側腹部の皮下組織に注射した(図2B)。BMCへの細胞浸潤を肉眼で数量化するために、各皮下小結節のサイズを6週間の期間にわたって測定した(図2C)。BMP-2を伴うBMCでは、移植の10日後までに小結節のサイズが最初の体積のおよそ3倍に急速に増大し、ドナー造血細胞が実質的に浸潤し(図2D)、およそ2週間の期間にわたって局所的な骨小結節が形成された(図2Eおよび2F)。特に、骨形成には血管化が伴い、DLL-4は接近可能なままであり、また、骨はBMCスキャフォールドに制限され、これにより、異所性部位においてこのプロセスにわたってBMCによってもたらされる調節が実証される(図2G~2L)。
【0382】
BMCの内面の層状骨の領域付近の骨小結節において造血組織が目に見えた(図2F)。BMCに浸潤する毛細血管ネットワークは移植の2日後という早期に認められ(図2G)、数量化を10日目に開始した。組織形態計測を使用して、BMC内の血管密度を移植の3ヶ月後まで多数の時間間隔で評価した(図2F)。血管は、10日目までおよそ25血管/mmで存在した(図2I)。血管の密度は70血管/mmまで増加し、30日目の後は一定であった。BMCにおけるアルギネート/DLL-4の分布および接近可能性を数量化するために、Safranin-O染色を使用した組織形態計測分析を実施した。最も早い時点の10日目にはアルギネートのおよそ85%が接近可能であり、これは90日目までに25%まで徐々に低下した(図2I~2K)。アルギネートはいずれの時点でもBMC内の任意の特定の領域に隔離されなかった。
【0383】
(実施例3)
BMCは宿主間質細胞および移植された造血細胞を動員し、増大させる
移植後の様々な時点でのBMCにおける移植された造血細胞の浸潤および細胞組成を評価した。ドナーGFP細胞はBMP-2を含めた場合には増大したが、DLL-4単独の存在下では増大しなかった(図3Aおよび3B)。BMCに存在する間質細胞とネイティブな骨髄は同様であることが見いだされ、BMCで処置したマウスと無処置のマウスでネイティブな骨髄における造血細胞の生着に差異はなく、BMCおよびネイティブな骨髄におけるSDF-1αおよびインターロイキン-7濃度は同様であった(図3C~3G)。
【0384】
BMCに存在する間質細胞を、一般にはマウス間葉系間質細胞に関連する免疫表現マーカー(Sca-1、CD29、CD44、CD73、CD105、CD106)を使用して同定し、移植を受けた469マウスの骨髄と比較した(図3C)。Sca-1間質サブセットはBMCにおいて骨髄と比べて多少増加したが、これらの間質サブセットの全体的な再増殖カイネティクスは2つの組織で同様であった。BMP-2を含有するBMCでは、骨アルカリホスファターゼ(BAP)はネイティブな骨と同等であった(図3D)。Oil Red O(ORO)を使用して脂肪組織を数量化し、BMCではネイティブな骨全体と比べて少ないことが見いだされた。BMP-2を含有するBMCではBMP-2を伴わないBMCと比べて数量化されたOROが多かった(図3D)。BMCが、内在性骨髄における移植された細胞の生着に影響を及ぼすかどうかを測定するために、3つの時点でコロニー形成アッセイを行った(図3E)。二重BMCを用いてまたは用いずに処置したマウスの骨髄由来の細胞から生じるCFUの総数または型に差異は認められなかった。回収されたBMCにおけるホーミング因子間質細胞由来因子-1アルファ(SDF-1α)およびサイトカインであるインターロイキン-7(IL-7)を支持するリンパ球前駆体((Brainard, D.M. et al. Induction of robust cellular and humoral virus-specific adaptive immune responses in human immunodeficiency virus-infected humanized BLT mice. Journal of virology 83, 7305-7321 (2009))の濃度も同じマウス由来の照射処置した骨髄と同等かまたはそれよりも高かった(図2F)。BMCにおいてETP、DN2およびDN3様細胞は検出されなかった。
【0385】
後の時点(移植後>5日)で、BMCにおけるより原始的なドナー造血細胞(HSC)およびリンパ系予備刺激された多分化能前駆体(LMPP)を数量化した。14日目に、単一因子BMP-2または二重因子BMP-2およびDLL-4を含有するBMCにおいて6百万個から7百万個の間の総GFP細胞が数量化された。両群において細胞の80%よりも多くがCD11b骨髄細胞であった。しかし、移植されたドナー細胞におけるCLP画分は二重因子BMC内でのみ増大し、その結果、移植の2週間後にはBMP-2のみを伴うBMCと比べて約100倍の増加がもたらされた(図3A)。移植の6週間後、CLPは二重因子BMCでは約10倍多く、そのうちのそれぞれおよそ30%および70%がT細胞コンピテントLy6Dサブセット内にあった(図3G)。
【0386】
骨髄由来の前駆体T細胞は胸腺に移動してナイーブなT細胞に分化する。BMC由来の細胞が胸腺に移動するかどうかを直接評価するために、二重因子BMCを幹細胞治療と協調させて、致死的に照射処置したマウスの最初のセットに送達した(図3Hおよび3I)。次いで、10日目にこれらのマウスから二重BMCを外植し、亜致死的に照射処置したレシピエントの背側側腹部の皮下に外科的に移植した。BMC移植後20日目に、これらのマウスの胸腺におけるドナーGFPおよび宿主細胞を数量化した。BMCを移植したレシピエントマウスの胸腺におけるGFPDP、SP CD4およびSP CD8細胞を数量化し、T細胞前駆細胞のBMCから胸腺への移動が確認された。別の試験では、二重BMC処置の結果、胸腺におけるETPの数に関して、BMCを伴わずに投与された移植細胞用量での10倍の増加と比較してより大きな増強がもたらされた(図3J)。二重BMCはまた、経時的な胸腺細胞サブセットの生成に関してBMC内に入れた因子のボーラス送達、およびBMP-2のみのBMCよりも有意に優れた(図3K~3P)。
【0387】
胸腺におけるT細胞前駆体の播種に対する細胞用量の影響を分析するために、初期胸腺前駆体(ETP)サブセットをL-TBI後に移植のための漸増用量の系列枯渇細胞で(5×10~5×10個の細胞)数量化した。この用量範囲でETPの用量依存的増強が見いだされた(図3Aおよび3H)。二重機能化BMCを最も低い細胞用量(5×10個の細胞)で投与した場合、胸腺におけるETPが最も高い細胞用量を用いた移植のみの群と比べて5倍に増加した。二重BMCによる処置ではETPが最初に増強され(12日目および42日目に3倍)、その後の時点ではDN2、DN3、DPおよびSP胸腺細胞サブセットの増加が認められた(図3I~3Nおよび図5Q)。12日目から42日目の間、二重BMC処置からのマウスの胸腺細胞充実性および体重は移植のみの群からのマウスよりも有意に高かった。HSCT後22日目に、胸腺の間質サブセット(mTEC、cTEC、線維芽細胞および内皮細胞;図3Sおよび3T)の数に有意差はなかった。
【0388】
(実施例4)
BMCはHSCT後のT細胞再生を増強し、GVHDを軽減する
二重機能化BMCで処置したマウスの末梢血では、移植のおよそ4週間後にT細胞再構成の加速が観察されたが、B細胞にも骨髄細胞再構成にも有意差は観察されなかった(図4A~4C)。血液、脾臓および骨髄中のT細胞サブセットの分析により、二重機能化BMCを有するマウスでは、移植の30日後に脾臓および骨髄においておよび移植の40日後に末梢血において恒常性CD4:CD8T細胞比が回復したことが示された(図4D~4F)。亜致死量の全身照射後にHSCTの状況でBMC処置を使用した場合(SL-TBI)、T細胞再構成が増強された(図4G~4N)。移植後28日目には、BMCで処置したマウスでは移植だけ受けたマウスと比べて、ドナーキメラ化およびDPドナー胸腺細胞の絶対数がそれぞれ1.5倍および2倍であった(図4G)。BMCで処置したマウスでは移植だけ受けたマウスよりも多くのドナーキメラ化およびドナー由来の単一の陽性CD4胸腺細胞の絶対数(それぞれ2倍および3倍)ならびに単一の陽性CD8胸腺細胞(それぞれ1.7倍および15倍)も認められた(図4Hおよび4I)。末梢では、ドナーキメラ化がCD4T細胞(3.5倍)およびCD8T細胞(2.5倍)において高かった。キメラ化またはB細胞の絶対数に差異は観察されなかった。
【0389】
次に、確立された異種NSG-BLTマウスモデルを使用してヒトT細胞再構成の速度を測定した(Brainard, D.M. et al. Induction of robust cellular and humoral virus-specific adaptive immune responses in human immunodeficiency virus-infected humanized BLT mice. Journal of virology 83, 7305-7321 (2009))。BMCで処置したNSG-BLTマウスでは、T細胞再構成の最初の速度の初期の増強、およびB細胞再構成の速度の多少の一過性の低下が認められ(図5Aおよび5B)、BMCで処置したNSG-BLTマウスの骨髄におけるプレB細胞CFUが一過性に少なかった(図5C)。末梢性CD4:CD8T細胞比は、BMCで処置したマウスでは移植後50日目から60日目の間に安定化されたが、一方、対照NSG-BLTにおけるCD4区画は十分には再構成されなかった(図5D)。著しいことに、T細胞再構成の速度の増強によりGVHD関連死の率は加速されなかった。その代わりに、二重機能化BMCを受けたNSG-BLTマウスはNSG-BLTマウスよりも長く生存した(図5F)。このモデルにおいて、BMCで処置したNSG-BLTマウスでは、移植の50日後に、BMCで処置したマウスの胸腺および脾臓におけるCD4FoxP3制御性T細胞(Treg)が2倍であった(図5Gおよび5H)。BMCを受けた同種MHC不適合HSCTマウスモデルにおいて同様の生存の増強が観察され(図5I)、また、このモデルにおいて、移植の15日後にドナー由来CD4FoxP3regがBMCで処置したマウスの胸腺および脾臓においてそれぞれ5倍および4倍であった(図5J)。
【0390】
次に、本発明のBMC処置を、OP9-DL1フィーダー細胞を使用してex vivoで生成したダブルネガティブ(DN)2およびダブルネガティブ(DN)3前駆体(precursor)から主になる(>90%)広範に試験されているT細胞前駆体注入手法と比較した(図5K)。HSCT後28日目に、ドナーキメラ化は、BMCで処置したマウスにおいて、DP、SP4およびSP8胸腺細胞集団で有意に高かった(図5L~5N)。脾臓では、ドナーキメラ化がCD4T細胞およびCD8T細胞の両方について多く、また、BMCによる処置ではドナーCD4+T細胞およびCD8+T細胞の絶対数が多いことが見いだされた(図5Oおよび5P)。
【0391】
(実施例5)
BMCは再生T細胞の多様性および機能を増強する
T細胞受容体の多様性(TCR多様性)を胸腺における遺伝子セグメントの確率論的な体細胞組換えによって生じさせた。二重BMCで処置したマウスでは、移植の約6週間後まで胸腺細胞充実性および胸腺の重量が移植のみの対照よりも有意に高かった(図3Qおよび3R)。胸腺の細胞充実性の増大により、同系移植における再生T細胞の機能性および多様性も増強されるかどうかを特徴付けるために、TCR切除サークル(TREC)を数量化した。TRECは、TCR再編成のシグネチャーである。TCRレパートリー分析も行った。移植の1ヶ月後の二重BMCで処置したマウスの胸腺におけるTREC数は照射処置していない対照マウスにおけるTREC数と同様であり、どちらも移植のみのマウスおよびBMP-2 BMCで処置したマウスにおけるものよりも多かった(図6A)。脾臓では、同じ群において照射処置していない対照と比較して全体的に少ない数のTRECが認められたが、二重BMCで処置したマウスはそれでも、移植のみの群および単一因子BMP-2 BMC群と比べてより多くのTREC計数を有した(図6B)。CDR3ベータ鎖におけるTCR VおよびJセグメントの多様性を、BMCで処置し、移植を受けたマウスにおいてHSCTの30日後に、存在するT細胞クローンの数、ならびに各クローンの相対的な存在量を考慮に入れるシンプソン指標(SI)を使用して評価した。二重機能性BMCを有するマウスのSIは、照射処置していない対照マウスのSIの40%であったが、一方、移植単独またはBMP-2 BMCを投与したマウスのSIはより低かった(それぞれ16%および8%)(図6C)。HSCTでは、広範なTCRレパートリーを有するナイーブなT細胞の欠如が免疫学的併発症および日和見感染症のリスクの増大に関連付けられた(Douek, D.C. et al. Assessment of thymic output in adults after haematopoietic stem cell transplantation and prediction of T-cell reconstitution. The Lancet 355, 1875-1881 1076(2000))。二重BMCで処置したマウスの胸腺および末梢においてより多数のTRECが回収されたことは、胸腺リンパ球新生の増強を反映する。二重BMCで処置したマウスでは比較的高頻度の特異的TCRクローンも観察されたが、全体的な多様性がより大きいことにより、より多くのバランスの取れた胸腺由来の再構成が示唆された。
【0392】
再生T細胞の抗原特異的に応答する能力を測定するために、同系移植をワクチン接種し、その後、移植の30日後にモデルタンパク質オボアルブミン(OVA)を用いて攻撃した(図6D)。OVAエピトープ(SIINFEKL)-四量体CD8+T細胞が、二重機能性BMCを受けたマウスにおいて、BMCを受けていない、またはBMP-2を伴うBMCのみを受けた、移植を受けたマウスと比較して有意に高かった(図6E)。同様に、同種移植を受けた二重BMCで処置したマウスでは、ドナー抗原特異的T細胞応答が、プロT細胞治療手法の結果生じたものと比較しておよそ3倍であった(図6F)。ex vivo刺激時のインターフェロン(IFN)-γおよび腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生が、22日目の時点でBMC処置およびT細胞前駆体処置群におけるドナーCD4およびCD8T細胞について同等であったが、BMC由来のT細胞で処置した群の有意に大きな分率ではこれらの因子が42日目に生じたことが見いだされた(図6Gおよび6H)。HSCT後のBMCで処置したマウスにおけるワクチン接種後のCD8T細胞の頑強な抗原特異的生成により、BMC処置には、HSCT後のワクチン接種と組み合わせた使用の潜在性があることが示唆される。
【0393】
(実施例6)
材料および方法
以下の材料および方法を使用して本発明を行った。
【0394】
一般的な方法および統計値
動物試験のサンプルサイズは、追加的な統計学的推定の使用を伴わない以前の研究に基づくものであった(Brainard, D.M. et al. Induction of robust cellular and humoral virus-specific adaptive immune responses in human immunodeficiency virus-infected humanized BLT mice. Journal of virology 83, 7305-7321 (2009);Bencherif, S.A. et al. Injectable cryogel-based whole-cell cancer vaccines. Nature communications 6, 7556 (2015);Palchaudhuri, R. et al. Non-genotoxic conditioning for hematopoietic stem cell 1066 transplantation using a hematopoietic-cell-specific internalizing immunotoxin. Nature biotechnology 34, 738 (2016)))。結果を、GraphPad Prismソフトウェアを使用し、Tukey事後検定を伴う一元配置ANOVAを使用して解析した。ANOVAを使用した場合、群間の分散がバートレット検定によるものと同様であることが見いだされた。生存曲線をログランク(マンテル・コックス)検定を使用して解析した。英数字符号化を使用して、病理試料および血球計数を盲検化した。
【0395】
材料
グルロネート含有量が多いUP LVGアルギン酸ナトリウムをProNova Biomedicalから購入した;2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、塩化ナトリウム(NaCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)、2-アミノエチル メタクリル酸 塩酸塩(AEMA)およびアセトンをSigma-Aldrichから購入した。ACRL-PEG-NH2(3.5kDa)および4arm PEGアクリレート(10kDa)をJenKem Technologyから購入した。
【0396】
骨髄クリオゲル(BMC)製作
骨髄クリオゲルを、以前に記載された技法に従い、いくつかの改変を伴って作製した(Bencherif, S.A. et al. Injectable preformed scaffolds with shape-memory properties. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 109, 19590-19595 (2012)。アルギネートをAEMAと反応させることによってメタクリル化アルギネート(MA-アルギネート)を調製した。アルギン酸ナトリウムを100mMのMES緩衝剤の緩衝液(0.6%(wt/vol)、pH約6.5)中に溶解させた。アルギネート骨格のカルボン酸基を活性化するためにNHSおよびEDCを混合物に添加し、その後、AEMAを添加し(NHS:EDC:AEMAのモル比=1:1.3:1.1)、溶液を室温(RT)で24時間にわたって撹拌した。混合物をアセトン中に沈殿させ、濾過し、真空オーブン中、RTで終夜乾燥させた。脱イオン水中、MA-アルギネートの2.5wt%溶液および4arm PEGアクリレートマクロモノマー(MA-アルギネート:4arm PEGアクリレートのモル比=4:1)を調製し、その後、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(0.5%(wt/vol))および過硫酸アンモニウム(APS)(0.25%(wt/vol))を添加することによってアルギネート-PEG BMCを合成した。ACRYL-PEG-NH2をデルタ様リガンド4(DLL-4)(R&D Systems)とカルボジイミド化学を使用してコンジュゲートした(NHS:EDC:DLL4のモル比=1:1.3:1.1)。BMP-2(R&D Systems)をポリマー溶液に添加した後、低温重合を行った。全ての前駆体(precursor)溶液を4℃まで予冷して重合の速度を低下させた後、凍結した。プレポリマー溶液に開始剤を添加した後、溶液を予冷(-20℃)テフロン(登録商標)の型に迅速に移した。終夜インキュベートした後、ゲルを解凍し、氷上でペトリ皿に収集した。
【0397】
走査電子顕微鏡法(SEM)のために、BMCを漸増濃度の新しく調製したエタノール溶液(30、50、70、90および100%)中でそれぞれ20分間インキュベートした。次いで、BMCをヘキサメチルジシラザン(Electron Microscopy Sciences)中で10分間インキュベートし、デシケーター/真空チャンバー内で少なくとも1時間乾燥させた後、SEMのために封入した。乾燥BMCを、カーボンテープを使用して試料スタブに接着させ、スパッタコーターにおいて白金/パラジウムでコーティングした。試料を、Carl Zeiss Supra 55 VP電界放出走査電子顕微鏡(SEM)での二次的な電子検出を使用して画像化した。
【0398】
生体分子放出の数量化
BMP-2のストック濃度は製造者から分かっており、ELISAを使用して検証した。BMP-2の放出カイネティクス封入効率を決定するため、およびDLL-4の安定なコンジュゲーションを確認するために、BMCを、滅菌PBS1ml中、37℃で振とうしながらインキュベートした。培地を定期的に交換した。上清中に放出された作用物質をELISA(Peprotech)によって検出した。試料を、放出培地中にそれ以上BMP-2が検出可能でなくなるまで放出させた。その後、少なくとも1000Uの酵素アルギネートリアーゼを使用してクリオゲルを消化した。消化産物をBMP-2についてELISAを使用して分析した。クリオゲルおよび放出培地中のBMP-2およびDLL-4の量を既知量の負荷したBMP-2およびDLL-4と比較して、封入効率を算出した。
【0399】
生体分子活性アッセイ
BMP-2生体活性についてのアルカリホスファターゼ活性アッセイ
【0400】
MC3T3-E1サブクローン4細胞を使用して、アルカリホスファターゼアッセイを以前に記載されている通り行った。Macdonald, M.L. et al. Tissue integration of growth factor-eluting layer-by-layer polyelectrolyte multilayer coated implants. Biomaterials 32, 1446-1453 (2011)。細胞を異なる実験条件下で培養した:(1)成長培地、(2)BMCから放出されたBMP-2を補充した分化培地、および(3)ネイティブなBMP-2。
【0401】
DLL-4生体活性についてのノッチ活性化アッセイ
【0402】
DLL-4の、in vivoにおいてこのモルフォゲンを不活性化し得る血清タンパク質に曝露した後のin vitro生体活性を数量化するために以前に特徴付けられたノッチレポーター細胞株、M.Elowitz(Caltech)からの好意の寄贈品であるCHO-K1+2xHS4-UAS-H2B-Citrine-2xHS4 cH1+hNECD-Gal4esn c9を使用した(Sprinzak, D. et al. Cis-interactions between Notch and Delta generate mutually exclusive signaling states. Nature 465, 86 (2010);Nandagopal, N. et al. Dynamic ligand discrimination in the Notch signaling pathway. Cell 172,869-880. e819 (2018))。これらの細胞を、10%Tet System Approved FBS(Clontech)、100U/mlのペニシリン-100μg/mlのストレプトマイシン-0.292mg/mlのL-グルタミン(Gibco)を補充したAlpha MEM Earle’s Salts(Irvine Scientific)中、5%COの存在下、加湿雰囲気中、37℃で成長させた。DLL-4を伴うBMCおよび伴わないBMCの両方を96ウェルプレート中、完全細胞培養培地を用い、細胞を伴わずにインキュベートした。所定の時間間隔で(最大3ヶ月)、ノッチレポーター細胞2万個をウェル中のBMCの上に播種した。24時間後、Zeiss LSM 710共焦点システムを使用して共焦点顕微鏡法を実施した。ノッチリガンドDLL-4との結合に応答した比色定量出力を数量化し、スキャフォールド中のDLL-4生体活性の指標として使用した(図1H)。特に、視野内の各細胞の総YFP蛍光(50~100;ゲル表面の80%よりも多くを包含する視野4~5つ)を算出し、バックグラウンド蛍光を差し引いた。YFP蛍光の中央値を算出し、DLL-4を伴わないBMCに播種された細胞の蛍光の中央値で割り、報告した。
【0403】
表面プラズモン共鳴による親和性決定
【0404】
ノッチ1に対する野生型DLL4およびMA-DLL4の解離定数を、以前に記載されている通りBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用した表面プラズモン共鳴によって決定した(Heliotis, M., Lavery, K., Ripamonti, U., Tsiridis, E. & Di Silvio, L. Transformation of a prefabricated hydroxyapatite/osteogenic protein-1 implant into a vascularised pedicled bone flap in the human chest. International journal of oral and maxillofacial surgery 35, 265-269 (2006)。簡単に述べると、ビオチン化組換えノッチ1を、ストレプトアビジンをコーティングしたセンサーチップ(GE Healthcare)に固定化した。緩衝剤中漸増濃度の野生型メタクリル化DLL4タンパク質を20℃でチップに流した。結合相および解離相を毎分10μlでそれぞれ120秒間および60秒間実施した。BIAcore評価ソフトウェアを使用して定常状態結合曲線を1:1Langmuirモデルに当てはめてKを決定した。
【0405】
骨髄クリオゲル(BMC)でのin vitro細胞培養
【0406】
マウスBM細胞を肢から回収した。粉砕した組織および細胞を70ミクロンのメッシュを通して濾過した。細胞を20ゲージの針を1回通過させることによって単一細胞懸濁液を調製した。血球計を使用して細胞を計数することによって総細胞充実性を決定した。BM細胞を、磁気選択(BD Biosciences)によって成熟免疫細胞(CD3-ε、CD45R/B220、Ter-119、CD11bまたはGr-1を発現する)を枯渇させた。細胞をPacific Blueとコンジュゲートした系列抗体の混合物(CD3に対する抗体、NK1.1に対する抗体、Gr-1に対する抗体、CD11bに対する抗体、CD19に対する抗体、CD4に対する抗体およびCD8に対する抗体)と一緒に、ならびにSca-1特異的抗体およびc-kit特異的抗体と一緒にインキュベートした。FacsAria細胞選別機(BD)を使用して造血細胞(LinSca-1hic-kithi)を単離した。選別された細胞は≧95%純粋であった。ヒト臍帯血由来CD34細胞を購入し(Allcells)、増大補充物(Stemcell Technologies)を使用して7日間増大させた。CD34細胞を正の選択キット(StemCell Technologies)を使用して単離した。96ウェルプレートにPluronic F127(Sigma)を予めコーティングした。各BMCを96ウェルプレートのウェルに個別に入れた。上記の通り単離したマウスまたはヒト細胞1万個を同じウェルに、体積200μlの、10%ウシ胎仔血清(FBS)および1%抗生物質および抗真菌溶液(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアンホテリシンBを含有する)を伴うRPMI(L-グルタミンを伴う)1640中に添加した。マウス細胞に関しては、培地に10ng/mlの幹細胞因子(SCF;R&D Systems)、10ng/mLのFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3L;R&D Systems)および1ng/mLのインターロイキン-7(IL-7;R&D Systems)を補充し、2日目、4日目および6日目に50%培地交換ステップを伴った。ヒト細胞に関しては、培地に100ng/mLのSCF、100ng/mLのFlt3L、100ng/mLのTPO(R&D Systems)、および100ng/mLのIL-7(R&D Systems)を補充した。1週間の培養後、1mg/mlのアルギネートリアーゼ(Sigma)を用いてBMCを消化することによって細胞を単離した。溶液を、70ミクロンのフィルターを通過させ、細胞をFACS分析のために下記の通り処理した。
【0407】
BM移植および血液分析
全ての動物研究はHarvard Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたものであり、国立衛生研究所(National Institutes of Health)ガイドラインおよび関連する倫理的規制に従った。C57BL/6(B6、H-2)、BALB/c(H-2)、C57BL/6(CD 45.1)、CByJ.B6-Tg(UBC-GFP)30Scha/J(GFP)およびNSGマウス(Jackson Laboratories)は雌であり、実験の開始時に6週齢から8週齢の間であった。各実験内の全てのマウスの年齢を釣り合わせ、ランダム化は実施しなかった。動物脱落に関する予め確立した基準は、移植を受けたマウスに所望の細胞用量を注射できないこと、およびヒト化マウスにおける手術後併発症に起因する死亡であった。手順に関連しない健康上の懸念(例えば、不正咬合、重症皮膚炎)は脱落および安楽死の基準であった。
【0408】
移植モデル
全てのTBI実験を、Cs-137 γ-放射線源を用いて実施した。他で記載されている通り、改変を伴わずに、亜致死量のTBI(SL-TBI、B6レシピエント)、1×500cGy+5×10個の系列枯渇骨髄細胞;同系HSCT(syn-HSCT、B6レシピエント)1×1000cGy+5×10~5×10個(図に示されている)の系列枯渇GFP BM細胞;GVHDを伴う同種-HSCT(BALB/c MHC不適合レシピエント)1×850cGy+5×10個の系列枯渇GFP BM細胞+1×10個のGFP脾細胞;GVHDを伴わない同種-HSCT(BALB/c MHC不適合レシピエント)1×850cGy+5×10個の系列枯渇GFP BM細胞または5×10個のin vitroで生成したGFP T細胞前駆体+10個の同系HSC。ヒト化BLT(骨髄-肝臓-胸腺)マウス試験は、MGH and Ragon Institute Human Immune System Mouse Programにより、施設のIACUCによる承認を得て以前に記載されている通り行われた(Brainard, D.M. et al. Induction of robust cellular and humoral virus-specific adaptive immune responses in human immunodeficiency virus-infected humanized BLT mice. Journal of virology 83, 7305-7321 (2009))。移植または分析用のBM細胞を、それぞれ全ての肢または1つの大腿骨を粉砕することによって回収し、上記の通り処理した。マウスに麻酔をかけている間に、滅菌PBS0.2ml中に懸濁させた2つのBMCの皮下注射を背側側腹部に16ゲージの針によって受けさせた。脊椎の各側に1つのBMCを注射し、後肢と前肢のおよそ中間に位置させた。皮下小結節のサイズを、カリパスを使用して小結節の長さ、幅および高さを測定することによって経時的に数量化した。マウスの全てのコホート(一般には10匹のマウス/群)から段階的に採血した。白血球、ヘモグロビン、赤血球、血小板、およびヘマトクリットレベルをCBC分析(Abaxis VetScan HM5)によって数量化した。
【0409】
BMC由来の細胞が胸腺に移動するかどうかを直接評価するために、二重因子BMCを幹細胞治療と協調させて、致死的に照射処置したマウスの最初のセットに送達した(B6レシピエントに、二重因子BMCと共に1000cGyのL-TBIおよび5×10個系列枯渇GFP BM細胞を受けさせた。HSCTの10日後、二重因子BMCを外植し、48時間前にいかなる追加的な細胞移植も伴わずに500cGyのSL-TBIを受けたB6マウスの第2のセットの皮下ポケットにすぐに外科的に移植した。外科手術の20日後、マウスを屠殺し、これらのマウスにおける胸腺細胞を分析した。
【0410】
フローサイトメトリー(FACS)分析
CD8-αに対する抗マウス抗体(53-6.7)、CD3-εに対する抗マウス抗体(145-2C11)、B220に対する抗マウス抗体(RA3-6B2)、CD11bに対する抗マウス抗体(M1/70)、CD25に対する抗マウス抗体(PC61)、CD117に対する抗マウス抗体(2B8)、Sca-1に対する抗マウス抗体(D7)、CD127に対する抗マウス抗体(A7R34)、およびCD45に対する抗ヒト抗体(H130)、CD3に対する抗ヒト抗体(HIT3a)、CD4に対する抗ヒト抗体(SK3)、CD19に対する抗ヒト抗体(HIB19)、CD34に対する抗ヒト抗体(581)、CD38に対する抗ヒト抗体(HB-7)およびCD7に対する抗ヒト抗体(CD7-6B7)、IFN-γに対する抗ヒト抗体(XMG1.1)、TNF-αに対する抗ヒト抗体(MP6-XT22)および対応するアイソタイプ抗体をBioLegendから購入した。抗ヒトCD8(RPA-T8)をBD Biosciencesから購入した。CD44(IM7)をeBioscienceから購入した。SIINFEKL四量体(Alexa Fluor 647 H-2K OVA)をNIH Tetramer Core Facilityから得た。全ての細胞を前方散乱および側方散乱の特徴に基づいてゲーティングして、死細胞を含むデブリを限定した。抗体を製造者の提言に従って希釈した。細胞を蛍光マイナス1対照に基づいてゲーティングし、各マーカーについての細胞染色陽性の頻度を記録した。T細胞、B細胞、および骨髄細胞を数量化するために、血液試料を、赤血球溶解させ抗CD45抗体、抗B220抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、および抗CD11b抗体で染色し、T細胞、B細胞、および骨髄細胞の絶対数を、フローサイトメトリー頻度およびCBC分析によって得られた白血球値を使用して算出した。分析は、血液細胞についてはCD45+および間質細胞についてはCD45-ゲートの範囲内のドナー事象に基づくものであった。
【0411】
骨、脂肪の数量化および組織学的検査
安楽死後、BMCおよび組織を外植した。骨アルカリホスファターゼ(BALP)を使用して骨を数量化するために、BMCおよび大腿骨を粉砕し、ホモジナイズし、70ミクロンのフィルターで濾した。その後、BALP ELISAキット(Creative Diagnostics)を使用し、製造者のプロトコールに従ってBALPを数量化した。Oil Red O染色キット(Biovision)を脂質数量化のために使用した。回収したBMCおよび骨を製造者のプロトコールに従って洗浄し、固定し、処理し、染色した。その後、BMCおよび骨を粉砕し、濾し、等体積に再懸濁させた後、吸光度を測定した(OD492)。組織学的染色のために、組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中に固定した。PFAに固定した試料を、急速脱灰用ギ酸/塩酸混合物(Decalcifying Solution、VWR)を使用して約4時間にわたって部分的に脱灰し、パラフィンワックスに包埋した。試料の切片(5μm)を常套的なトリクローム染色、Safranin-O染色またはVerhoeff-Van Gieson染色で染色した。
【0412】
胸腺T細胞受容体切除サークル(TREC)の数量化
TREC数量化を以前に記載されている通り実施した(Warnke, P. et al. Growth and transplantation of a custom vascularised bone graft in a man. The Lancet 364, 766-770 (2004))。簡単に述べると、BMCを注射した(条件づけ後30日)、照射処置していないC57BL/6マウス、移植を受けたマウス、および移植を受けたマウスから胸腺を回収した。総DNAを、Bullet Blender Storm BBX24機器(Next Advance,Inc.)においてTRIZOL、その後、組織ホモジナイゼーションを使用して抽出した。DNAをUV-Visによって数量化し、試料当たり1μgのDNAをリアルタイムPCRの入力として使用した。マウスsjTRECプラスミドの標準曲線を使用して、試料当たりの単一ジョイントTRECS(sjTREC)の絶対数を算出した。
【0413】
TCR分析
抽出されたリンパ球RNAを、UV-Visを使用して数量化した。各試料由来の等モル量のRNAを配列決定およびバイオインフォマティクス解析のためにiRepertoireに提出し、そこで試料が逆転写され、ベータTCR RNAを特異的に増幅するプライマーセットを使用して増幅された。配列決定の結果から、各試料について総リードおよび独特のCDR3の数の範囲がもたらされた。
【0414】
ワクチン接種および非特異的T細胞-刺激試験
移植の30日後、動物を、オボアルブミン(OVA)100μg、CpG-ODN、100μgおよびGM-CSF、1μgを含有するボーラスワクチンを用いて免疫化した。10日後に、動物をオボアルブミンの静脈内注射で攻撃した。12日目に、ワクチン接種試験で安楽死させたマウスから脾臓を収集した。70μmの細胞濾過器で脾臓を機械的に破壊することによって脾細胞を単離した。回収された組織中の赤血球を溶解させ、白血球を分析のために調製した。非特異的刺激のために、細胞をPMA(10ng/mL)+イオノマイシン(2μM)と一緒に5時間インキュベートした。2時インキュベートした後にブレフェルジンA(10μg/mL)を添加した。次いで、細胞を回収し、洗浄し、T細胞表面抗原に対する、蛍光色素とコンジュゲートした抗体を用いて染色した。その後、細胞を固定し、固定/透過処理溶液キット試薬(BD)を用いて透過処理し、IFN-γ特異的抗体、TNF-α特異的抗体を用いて染色した。
【0415】
考察
ここで、無細胞バイオマテリアルに基づくBMCが、造血幹細胞移植後のT細胞リンパ球新生骨髄ニッチの重要な特色を模倣し、免疫コンピテントT細胞の再生を促進することが実証された。皮下投与されたBMCはin vivoにおいて宿主脈管構造とのインターフェースとなって宿主デバイスインターフェースを形成し、系列指令キューをドナーにより動員された前駆細胞に提示した。BMP-2により、動員された間葉細胞の骨系列分化が誘導され、迅速な血管新生が間接的に促進されることが十分に確立されている(Smadja, D.M. et al. Bone morphogenetic proteins 2 and 4 are selectively expressed by late outgrowth endothelial progenitor cells and promote neoangiogenesis. Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology 28, 2137-2143 (2008)。この研究において、初期の血管新生、その後の、脈管構造の内在性骨髄において観察されるものと一致する密度までの成熟化が観察された(Lafage-Proust, M.-H. et al. Assessment of bone vascularization and its role in bone remodeling. BoneKEy reports 4 (2015))。BMC内で数量化された種々の造血前駆体集団および間質前駆体集団が見いだされたことは、造血が異所性骨小結節において生じるという以前の観察と一致する(Kuznetsov, S.A. et al. The interplay of osteogenesis and hematopoiesis: expression of a constitutively active PTH/PTHrP receptor in osteogenic cells perturbs the establishment of hematopoiesis in bone and of skeletal stem cells in the bone marrow. J Cell Biol 167, 1113-1122 (2004));Song, J. et al. An in vivo model to study and manipulate the hematopoietic stem cell niche. Blood 115, 2592-2600 (2010))。生体活性ノッチリガンドDLL-4をポリマースキャフォールドに組み込むことにより、系列枯渇骨髄移植片を受けた対照と比べてBMCにおけるT細胞前駆体の生成の初期の増強が促進され、胸腺前駆体数の有意な増加が導かれ、対照は同系HSCTおよび同種HSCTの確立されたモデルと一致した(Wils, E.-J. et al. Flt3 ligand expands lymphoid progenitors prior to recovery of thymopoiesis and accelerates T cell reconstitution after bone marrow transplantation. The Journal of Immunology 178, 3551-3557 (2007);Maillard, I. et al. Notch-dependent T-lineage commitment occurs at extrathymic sites following bone marrow transplantation. Blood 107, 3511-3519 (2006)。この所見は、TRECの生成の増強、TCRレパートリーの複雑さの増大およびワクチン接種有効性の増大の観察によって裏付けられる。
【0416】
BMC手法は、HSCT後のT細胞再生を促進する他の戦略とは概念的にかつ実際に別個のものであり、HSCTにおける関連性は、この研究において前臨床試験によって裏付けられる。BMC手法をT細胞前駆体注入と比べて10分の1の用量で使用したところ、胸腺および末梢においてより多数のT細胞前駆体および機能的T細胞がもたらされた。BMC処置はHSCT時に投与することができるという点で他の方法とは異なる。対照的に、T細胞前駆体は、ドナー造血細胞から2~4週間にわたってin vitroで作製され、前臨床モデルにおいて複雑な細胞培養要件を有し、また、患者特異的である。ex-vivo培養を必要とせずにin vivoにおいて移植されたHSCに対するキューを促進するT細胞をもたらすことにより、BMC手法は既製の製品になり得、細胞製造に必要な考慮すべき基盤が回避され(Garber, K.(Nature Publishing Group, 2018)、また、サイトカイン治療の活性が補完され得る。HSCT前により低い線量を使用した場合、BMCにより末梢におけるT細胞再構成が多少増強されたが、胸腺におけるドナー由来T細胞生成およびドナーT細胞キメラ化は有意に増加した。所見から、BMCの適用が低強度のHSCTの状況に関連することが示唆される。
【0417】
異種NSG-BLTマウスにおけるヒトT細胞の再構成の増強は、B細胞再構成の多少の一過性の減少を伴い、これはプレB CFUの対応する減少と一致する。このヒト化マウスモデルがヒト免疫細胞に広範に許容されるので、重要なマウスサイトカインが、このモデルにおけるヒトCD34細胞からのヒトB細胞の発生を含めた造血の誘導に関して非効率的であることも分かっている((Jangalwe, S., Shultz, L.D., Mathew, A. & Brehm, M.A. Improved B cell development in humanized NOD-scid IL2Rγ null mice transgenically expressing human stem cell factor, granulocyte-macrophage colony-stimulating factor and interleukin-3. Immunity, inflammation and disease 4, 427-440 (2016))。BMCを播種する移植された細胞の画分のノッチ活性化により、B細胞特異化を犠牲にしてT細胞特異化が増強される可能性が高い。しかし、B細胞産生の一過性の減少は多少であり、臨床的意義がある可能性は低い。
【0418】
骨小結節の形成は、スキャフォールドの幾何学的形状に制限され、これは、非ヒト霊長類(Ripamonti, U. Bone induction by recombinant human osteogenic protein-1 (hOP-1, BMP-7) in the primate Papio ursinus with expression of mRNA of gene products of the TGF-β superfamily. Journal of cellular and molecular medicine 9, 911-928 (2005))およびヒト(Heliotis, M., Lavery, K., Ripamonti, U., Tsiridis, E. & Di Silvio, L. Transformation of a prefabricated hydroxyapatite/osteogenic protein-1 implant into a vascularised pedicled bone flap in the human chest. International journal of oral and maxillofacial surgery 35, 265-269 (2006);Warnke, P. et al. Growth and transplantation of a custom vascularised bone graft in a man. The Lancet 364, 766-770 (2004))を含めた多くの種において忍容性が良好であった、スキャフォールドにより誘導される骨形成に関する以前の報告と一致する。他のスキャフォールドに基づくシステムを用いた過去の臨床経験では、デバイスのサイズが種間で一定のままにすることができることが示されている(Hodi, S. (2012))。ヒトでの使用のために必要になり得る、より大きな増殖因子用量を用いる場合であっても、このポリマーに基づくヒドロゲルシステムによってもたらされる徐放性により、BMP-2を、現在診療所で使用されている、ボーラス放出として送達され、望ましくない副作用が付随している大きな用量よりも数桁少ない用量で使用することが可能になることが予測される(Carragee, E.J., Hurwitz, E.L. & Weiner, B.K. A critical review of recombinant human bone morphogenetic protein-2 trials in spinal surgery: emerging safety concerns and lessons learned. The Spine Journal 11, 471-491 (2011))。T細胞再生後、BMCは、多くの場合HSCTに使用される他のデバイスと同様に容易に除去することができる、または再吸収されるように生分解性材料で作製することができる(Biffi, R. et al. Use of totally implantable central venous access ports for high-dose chemotherapy and peripheral blood stem cell transplantation: results of a monocentre series of patients. Annals of oncology 15, 296-300 (2004))。
【0419】
同種HSCT後のCD4T細胞回復は通常は遅延し、正常なCD4/CD8比の逆転が導かれる(Li, M.O. & Rudensky, A.Y. T cell receptor signalling in the control of regulatory T cell differentiation and function. Nature Reviews Immunology 16, 220 (2016))。BMCで処置したマウスでは、ヒト化および同種移植を受けたマウスの胸腺および脾臓におけるT細胞のより多くのバランスの取れた再構成およびドナーCD4制御性T細胞(Treg)の増強が認められた。ドナーTregのGVHD抑制における重要な役割を考慮すると(Hoffmann, P., Ermann, J., Edinger, M., Fathman, C.G. & Strober, S. Donor-type CD4+CD25+ regulatory T cells suppress lethal acute graft-versus-host disease after allogeneic bone marrow transplantation. Journal of Experimental Medicine 196, 389-399 (2002))、ドナーTreg生成のBMC媒介性増強は、GVHD様病理の軽減に寄与し、潜在的にTreg増大の重要な制御因子であるTGF-ベータファミリータンパク質によるBMP-2制御を通じてマウスの生存を増強した可能性が高い((Wan, Y.Y. & Flavell, R.A. 'Yin-Yang' functions of transforming growth factor-β and T regulatorycells in immune regulation. Immunological reviews 220, 199-213 (2007))。さらに、同種GVHDモデルにおける時間経過は、既存のT委任または成熟T細胞に影響を及ぼすことに起因するBMCの役割の少なくとも一部と一致する。
【0420】
要するに、これらの所見から、BMCは、HSCT後のT細胞再生を増強することができる投与しやすい既製システムであることが示唆される。BMCシステムをヒトの状況において同様に実施する場合、潜在的に治癒的なHSCTの臨床的適用を限定している免疫学的併発症および日和見感染症を抑止する手段になり得る。
【0421】
参照による組込み
本明細書で言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書のあらゆる定義を含めた本出願が支配する。
【0422】
等価物
常套的な実験だけを使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を当業者は理解されよう、または確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E-F】
図2G
図2H-I】
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K-M】
図3N-O】
図3P
図3Q
図3R
図3S
図3T
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E-F】
図4G-H】
図4I-J】
図4K-L】
図4M
図4N
図5A-B】
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I-J】
図5K
図5L
図5M-N】
図5O-P】
図5Q
図6A-B】
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
【国際調査報告】