(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】高速波長変換層による紫外検出
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20220204BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20220204BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20220204BHJP
C09K 11/87 20060101ALI20220204BHJP
C09K 11/85 20060101ALI20220204BHJP
C09K 11/65 20060101ALI20220204BHJP
H04B 10/67 20130101ALI20220204BHJP
【FI】
H01L31/02 D
C09K11/61
C09K11/66
C09K11/87
C09K11/85
C09K11/65
H04B10/67
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535271
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2019060181
(87)【国際公開番号】W WO2020128686
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319003493
【氏名又は名称】キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブーン・エス・オイ
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン・キー・ング
(72)【発明者】
【氏名】オスマン・エム・バクル
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム・ドゥルサン
(72)【発明者】
【氏名】ルトファン・シナトラ
(72)【発明者】
【氏名】マラット・ルトフリン
【テーマコード(参考)】
4H001
5F849
5K102
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001XA01
4H001XA06
4H001XA07
4H001XA12
4H001XA17
4H001XA20
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4H001XA35
4H001XA37
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4H001XA46
4H001XA50
4H001XA53
4H001XA55
4H001XA56
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4H001XA82
5F849BA03
5F849BA09
5F849BB01
5F849HA06
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5F849HA09
5F849JA11
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5F849XB05
5K102AA52
5K102AL24
5K102PB02
5K102PH37
5K102RB04
5K102RD28
(57)【要約】
ハウジング(204)と、ハウジング(204)に取り付けられ、第1の波長範囲をもつ第1の光(240)を吸収することと、第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲をもつ第2の光(242)を発することとを行うように構成される高速波長変換層(220)と、ハウジング(204)に取り付けられ、第2の波長範囲をもつ第2の光(242)を吸収することと、電気信号(244)を発生することとを行うように構成される有効面(202A)を有する高速光検出器(202)とを含む高速波長変換受信器(200)。光検出器(202)の有効面(202A)は完全にハウジング(204)内に置かれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速のペロブスカイトベースの波長変換受信器(200)であって、
ハウジング(204)と、
前記ハウジング(204)に取り付けられ、第1の波長範囲をもつ第1の光(240)を吸収することと、前記第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲をもつ第2の光(242)を発することとを行うように構成される高速波長変換層(220)と、
前記ハウジング(204)に取り付けられ、前記第2の波長範囲をもつ前記第2の光(242)を吸収することと、電気信号(244)を発生することとを行うように構成される有効面(202A)を有する高速光検出器(202)とを備え、
前記光検出器(202)の前記有効面(202A)が完全に前記ハウジング(204)内に置かれ、
前記第1の光が紫外(UV)光であり、前記第2の光が可視光である、高速のペロブスカイトベースの波長変換受信器(200)。
【請求項2】
前記高速波長変換層(220)の材料が、少なくともメガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成される、請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記高速波長変換層が、50ns未満の寿命を有する有機金属または無機ハライドペロブスカイトである、請求項1に記載の受信器。
【請求項4】
前記高速波長変換層がABX
3ペロブスカイトナノ結晶を含み、AがCs
+、Rb
+、CH
3NH
3
+およびHC(NH
2)
2
+から選択され、BがPb
2+、Sn
2+、Ge
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、Cu
2+、Fe
2+、Pd
2+およびEu
2+から選択され、XがハロゲンCl
-、Br
-またはI
-である、請求項1に記載の受信器。
【請求項5】
前記高速波長変換層がCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶を含む、請求項1に記載の受信器。
【請求項6】
前記高速光検出器がSiまたはIII族窒化物ベースの光検出器である、請求項1に記載の受信器。
【請求項7】
前記高速光検出器が、波長選択的応用のために前記第1の光に対してではなく前記第2の光に対して高速を求める、請求項1に記載の受信器。
【請求項8】
前記ハウジングの壁、前記高速光検出器、および前記高速波長変換層が形成される基板がチャンバを画定し、前記高速光検出器の前記有効面が完全に前記チャンバ内部に置かれる、請求項1に記載の受信器。
【請求項9】
前記第1の光から可視光を除去するために、前記高速波長変換層にわたって置かれる高反射光学素子と、
前記高反射光学素子にわたって置かれるUV透明マイクロレンズと、
前記UV透明マイクロレンズに取り付けられる被覆ノイズフィルタと
を更に備える、請求項1に記載の受信器。
【請求項10】
前記高速光検出器にわたってUV透明基板が直接形成され、前記UV透明基板にわたって前記高速波長変換層が直接形成される、請求項1に記載の受信器。
【請求項11】
前記高速波長変換層の側部を挟むクラッド層を更に備え、
前記高速波長変換層が前記高速光検出器上に直接形成される、
請求項1に記載の受信器。
【請求項12】
前記クラッド層の屈折率が前記高速波長変換層の屈折率より小さい、請求項11に記載の受信器。
【請求項13】
高速のペロブスカイトベースの波長変換受信器(700)であって、
球状内部チャンバ(714)を有するハウジング(710)であって、前記球状内部チャンバ(714)が、第1の波長範囲をもつ第1の光(240)を受信するための入口ポート(710A)を有し、前記第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲をもつ第2の光(242)を放出するための出口ポート(710B)を有する、ハウジング(710)と、
前記球状内部チャンバ(714)内部に設けられ、前記第1の光(240)を吸収することと、前記第2の光(242)を発することとを行うように構成される高速波長変換層(220)と、
前記出口ポート(710B)に設けられ、前記第2の波長範囲をもつ前記第2の光(242)を吸収することと、電気信号(244)を発生することとを行うように構成される有効面(202A)を有する高速光検出器(202)とを備え、
前記高速波長変換層(220)の材料が、少なくともメガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成され、前記第1の光が紫外(UV)光であり、前記第2の光が可視光である、高速のペロブスカイトベースの波長変換受信器(700)。
【請求項14】
前記高速波長変換層が、50ns未満の寿命を有する有機金属または無機ハライドペロブスカイトである、請求項13に記載の受信器。
【請求項15】
前記高速波長変換層がABX
3ペロブスカイトナノ結晶を含み、AがCs
+、Rb
+、CH
3NH
3
+およびHC(NH
2)
2
+から選択され、BがPb
2+、Sn
2+、Ge
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、Cu
2+、Fe
2+、Pd
2+およびEu
2+から選択され、XがハロゲンCl
-、Br
-またはI
-であり、前記高速光検出器がSiベースである、請求項13に記載の受信器。
【請求項16】
前記高速波長変換層がCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶を含み、前記高速光検出器がSiまたはIII族窒化物ベースの光検出器である、請求項13に記載の受信器。
【請求項17】
前記球状内部チャンバ上の高UV反射コーティングと、
前記高速波長変換層が直接形成される高透明基板と
を更に備える、請求項13に記載の受信器。
【請求項18】
紫外(UV)光を使用して情報を送信するための方法であって、
前記情報を符号化した第1のUV光(240)を発するステップ(1500)と、
高速のペロブスカイトベースの波長変換層(220)において、前記第1のUV光(240)を受信するステップ(1502)と、
前記高速波長変換層(220)により、前記第1のUV光と異なる波長を有する第2の光(242)を再び発し、前記第2の光が可視光である、ステップ(1504)と、
高速光検出器(202)により、前記第2の光(242)を前記符号化情報を保持した電気信号(244)へ変換するステップ(1506)と、
処理ユニット(208)により、前記電気信号(244)から前記符号化情報を復号化するステップ(1508)とを含み、
前記高速波長変換層(220)の材料が、少なくともメガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成される、方法。
【請求項19】
前記高速波長変換層がCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶を含み、前記高速光検出器がSiベースである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記高速波長変換層が、50ns未満の寿命を有する有機金属または無機ハライドペロブスカイトである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記高速波長変換層がABX
3ペロブスカイトナノ結晶を含み、AがCs
+、Rb
+、CH
3NH
3
+およびHC(NH
2)
2
+から選択され、BがPb
2+、Sn
2+、Ge
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、Cu
2+、Fe
2+、Pd
2+およびEu
2+から選択され、XがハロゲンCl
-、Br
-またはI
-であり、前記高速光検出器がSiベースである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月17日に出願された、「UV DETECTION WITH HIGH-SPEED WAVELENGTH-CONVERTING PEROVSKITE-BASED LAYER」という名称の米国仮特許出願第62/780,580号の優先権を主張するものであり、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示される主題の実施形態は、概して、紫外(UV)光を検出するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、光検出器のためにUV応答性を向上させかつ同時にUV高検出速度を提供するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光無線通信(OWC)が、380nmから800nmに及ぶ可視光通信(VLC)および200から380nmに及ぶ紫外(UV)ベースの通信を含め、相当な注目を引いてきたが、これはOWCが、より高い帯域幅およびより低い待ち時間を必要とする、第5世代(5G)無線通信以降のために重要な役割を果たし得るためである。既存の規制された無線周波数(RF)通信と比較して、OWCは、UVから数百THzまでの可視波長に至るアンライセンスかつセキュアな帯域幅を提供して、RFネットワークにおける輻輳帯域幅を緩和する。VLCのために、ギガビット毎秒(Gbps)台の高データレートが、見通し(LOS)構成において異なる変調方式を使用して広く実証されてきた。しかしながら、この構成自体は、完全な通信システムには不十分である。
【0004】
間接的なRF信号伝送経路を模倣することが、OWCのためのロバストな解決策を提供する上で重要である。幸いにも、UV波長域における光102を使用するシステム100は、
図1に例示されるように、レイリーおよびミーの両散乱106を通じて、様々な障害物107により大いに散乱され、したがってUV光源104とUV光受信器108との間に、非常に必要とされる非見通し(NLOS)通信経路を構成する。この経路は、LOS通信における指向、捕捉および追尾(PAT)の厳しい要件を軽減することになる。更には、UVベースの通信は、特にオゾン層122による強吸収によりソーラーブラインドUVC領域121(100~280nm)において、その低背景太陽放射のためVLCと比較して極めて魅力的である。そのUV光がUVA(315~400nm)、UVB(280~315nm)およびUVC(100~280nm)へ分割されることに留意されたい。
図1は、UV光120が太陽によって発せられ、そしてUVC光121がオゾン層122によって吸収される一方でUVAおよびUVB光124がオゾン層を通して透過されるのを図示する。UVCスペクトルでの低ノイズフロア自由空間通信が、低視認性条件におけるミサイル検出および航空機着陸などの多種多様な応用も可能にするであろう。
【0005】
信頼できるUVベースの通信リンクが、特にUVC領域において、光無線通信システムのための新分野を確立して、モノのインターネット(IoT)および水中のモノのインターネット(IoUT)を有効にするであろう。UVベースの通信リンクの重要性にもかかわらず、送受信器技術の制限が、この技術の現在の進歩を妨げている。受信器端に関しては、UV~可視領域にわたる高性能フォトダイオードまたはマルチピクセル検出器が様々な実際的応用のために必要とされる。
【0006】
OWC分野において、大型光電子増倍管(PMT)が、その広スペクトル範囲および高信号対雑音(SNR)比のため依然として使用されている。しかしながら、PMTは、高電力消費、大型形状係数および高コストを欠点とする。対照的に、コンパクトかつ小フットプリントのIII族窒化物ベースの光検出器(PD)、例えばAlGaN、AlNおよびBNベースのPDは、高コスト材料および基板開発を欠点とする。高暗電流に関連する欠陥状態および結晶転位の存在が設計プロセスを複雑にし、かつUVベースの通信システムのためのこれらのPDの更なる展開を遅らせる。
【0007】
他方で、低コストかつ技術的に成熟したシリコン(Si)ベースのPDが広く市販されている。にもかかわらず、シリコン層への高エネルギーUV光子の低侵入度(例えば、深UVからUVA領域に関しては20nmより小さい)のため、既存のSiベースのPDの応答性は、400nm未満の波長に対して0.1A/Wより小さい。UVC~UVA帯域における実際的な通信に関しては、この低応答性は通信リンクのSNRを低下させることになり、望ましくない。
【0008】
上述の問題を回避しようとする最近の努力がここで述べられるが、これらの技術が高速光無線通信には適切でないことが留意される。SiベースのPDのUV応答性を向上させるための発光材料として共役ポリマー薄膜がまず使用された[1]。この手法は、SiベースのPDがより高い応答性を呈する可視波長域において再び発せられる高エネルギーUV光子を吸収する発光薄膜の使用を探究するものである。SiベースのPDと統合される、ホウ酸リン酸バナジン酸イットリウム:Eu(Y(V,PO4)0.9(BO3)0.1:Eu)に基づく別のダウンコンバート発光材料も以前の研究[2]において実証された。しかしながら、両発光材料は、ミリ秒台までの長い減衰時間を有すると知られており、したがって高速変調には適切でない。高速変調は、本明細書において、メガからギガビット毎秒の範囲の速度で光度の変化に応答することが可能である材料によって呈されるとして定義される。VLCのためのナノパターン化された発光太陽集光器(LSC)も[3]において調査された。しかしながら、[3]におけるSuperYellow蛍光発光体はUV領域における吸収低下を呈しており、その動作を可視波長域だけに制限してしまう。[4]において述べられる別の手法は、電子増倍電荷結合素子(EMCCD)ベースのイメージセンサとのMaPbBr3ベースのペロブスカイト量子ドットの統合を実証した。しかしながら、現在の手法のいずれも、OWCに適当である高速ダウンコンバート光検出器を達成していない。
【0009】
したがって、既存の光検出器と適合する高速UV光通信を提供する新たな手法の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、ハウジングと、ハウジングに取り付けられ、第1の波長範囲をもつ第1の光を吸収することと、第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲をもつ第2の光を発することとを行うように構成される高速波長変換層と、ハウジングに取り付けられ、第2の波長範囲をもつ第2の光を吸収することと、電気信号を発生することとを行うように構成される有効面を有する高速光検出器とを含む高速波長変換受信器がある。光検出器の有効面は完全にハウジング内に置かれる。
【0011】
別の実施形態によれば、球状内部チャンバを有するハウジングであって、球状内部チャンバが、第1の波長範囲をもつ第1の光を受信するための入口ポートを有し、第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲をもつ第2の光を放出するための出口ポートを有する、ハウジングと、球状内部チャンバ内部に設けられ、第1の光を吸収することと、第2の光を発することとを行うように構成される高速波長変換層と、出口ポートに設けられ、第2の波長範囲をもつ第2の光を吸収することと、電気信号を発生することとを行うように構成される有効面を有する高速光検出器とを含む高速波長変換受信器がある。高速波長変換層の材料が、少なくともメガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成される。
【0012】
更に別の実施形態によれば、紫外(UV)光を使用して情報を送信するための方法があり、同方法は、情報を符号化した第1のUV光を発するステップと、高速波長変換層において、第1のUV光を受信するステップと、高速波長変換層により、第1のUV光と異なる波長を有する第2の光を再び発するステップと、高速光検出器により、第2の光を符号化情報を保持した電気信号へ変換するステップと、処理ユニットにより、電気信号から符号化情報を復号化するステップとを含む。高速波長変換層の材料が、少なくともメガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成される。
【0013】
本発明のより完全な理解のために、ここで添付の図面と併せて以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】障害物の存在下でUV光を使用する通信システムを例示する図である。
【
図2】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための高速波長変換層を使用する受信器を例示する図である。
【
図3】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための高速波長変換層を使用する別の受信器を例示する図である。
【
図4】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための高速波長変換層を使用する更に別の受信器を例示する図である。
【
図5】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための高速波長変換層を使用する更に別の受信器を例示する図である。
【
図6A】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための、クラッド層間に挟まれる高速波長変換層を使用する受信器を例示する図である。
【
図6B】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための、クラッド層間に挟まれる高速波長変換層を使用する受信器を例示する図である。
【
図7】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための、球状容器内部に置かれる高速波長変換層を使用する受信器を例示する図である。
【
図8】第1の波長を有する入射光を第1の波長と異なる第2の波長を有する出射光へ変換するための高速波長変換層を使用する受信器を製作するための方法のフローチャートである。
【
図9A】高速波長変換層を形成するCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶の透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【
図9B】高速波長変換層を形成するCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶の透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【
図9C】CsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶の吸収および光ルミネセンス(PL)スペクトルを示す図である。
【
図9D】高速波長変換層の372nm励起に続いて所与の波長で監視された時間分解PL減衰トレースを示す図である。
【
図10】裸のSiベースのPDの測定応答性スペクトルを示す図である。
【
図11A】0から-20Vの逆バイアスによるSiベースのPDのI-V曲線を示す図である。
【
図11B】裸の構造、UV石英、およびUV石英上のCsPbBr
3ペロブスカイト層によるSiベースのPDの応答性スペクトルを示す図である。
【
図11C】UV石英基板上のCsPbBr
3ペロブスカイト層の有無によるSiベースのPDの外部量子効率(EQE)を示す図である。
【
図11D】前の図に提示された受信器の比検出能および雑音等価電力(NEP)を図示する。
【
図12】光無線通信のための蛍光体ベースのデバイスおよび前の図に提示された受信器の比較を例示する表である。
【
図13A】前の図に提示された受信器の変調帯域幅を測定するための構成を例示する図である。
【
図13B】所与の入力光へのそのような受信器の正規化周波数応答を例示する図である。
【
図14A】前の図に提示された受信器のデータ伝送特性を測定するための構成を例示する図である。
【
図14B】従前の受信器によるデータ伝送のビット誤り率(BER)を例示する図である。
【
図14C】前の図に提示された受信器によるデータ伝送のBERを例示する図である。
【
図15】UV光および高速波長変換層を有する受信器を使用してデータを伝送するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の以下の説明は添付の図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は同じまたは同様の要素を識別する。以下の詳細な説明は本発明を限定しない。代わりに、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。以下の実施形態は、簡略化のため、UV通信のために無機ベースのペロブスカイトナノ結晶と共に高速色変換光検出器を使用するシステムに関して述べられる。しかしながら、次に述べられる実施形態は無機材料に限定されるのではなく、それらは入射UV光を可視光へ波長変換し、そしてSiベースの光検出器または他の従来の光検出器に可視光を供給する有機材料と共に使用され得る。
【0016】
本明細書の全体を通じて「1つの実施形態」または「一実施形態」への参照は、一実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通じて様々な場所における句「1つの実施形態に」または「一実施形態に」の出現は、必ずしも同じ実施形態を参照しているわけではない。更に、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。
【0017】
一実施形態によれば、ハイブリッドのSiベースの光検出デバイスが、高速ソーラーブラインドUV通信のためのUV-可視色変換層として高光ルミネセンス量子収量(PLQY)および急速光ルミネセンス(PL)減衰時間のCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶(NC)を組み込む。ドロップキャストCsPbBr3ペロブスカイトNCの容易な形成が、UV領域における約73%までの高PLQYおよび強吸収となる。NC層の追加により、商用のシリコンベースの光検出器と比較してソーラーブラインド領域の応答性のほぼ3倍の改善および外部量子効率(EQE)の約25%の上昇が観察された。その上、時間分解光ルミネセンス測定が372nmUV励起源下で4.5nsの減衰時間を実証し、したがって急速色変換層としてのこの層の可能性を示した。278nmソーラーブラインドUVC発光ダイオード(LED)と併せてハイブリッドCsPbBr3-シリコン色変換光検出方式を使用して、ソーラーブラインド通信における34Mbpsまでの有意に高いデータレートが達成された。これらの実験は、UV通信のための組成調整可能なペロブスカイトベースの蛍光体および低コストのシリコンベースの光検出器の統合高速光受信器設計の実現可能性を実証する。
【0018】
他のダウンコンバート発光材料とは対照的に、全無機鉛ハライドペロブスカイト(CsPbX3、式中X=Cl、BrおよびI)が、それらの容易な溶液処理可能な合成、制御可能な可視発光スペクトル、高光ルミネセンス量子収量および低光学利得閾値のため新たな種類の光電子応用のための材料として現れた。その上、新規なパッシベーション技術および鉛ハライドペロブスカイト上のファブリペロー(FP)マイクロキャビティを使用する最近の手法も、超安定自然放射増幅光(ASE)およびレーザ特性さえ誘導すると証明された。そのような進歩は、アップコンバージョンレーザおよび高解像度光学顕微鏡などの高性能光デバイスを実現するために不可欠である。CsPbBr3ナノ結晶(NC)は、他の有機ハライドペロブスカイト、例えば塩化物およびヨウ化物ベースのペロブスカイトNCと比較して高空気安定特性を有する。加えて、CsPbBr3 NCは、高吸収係数の他に光検出に適切なバンドギャップを有し、最近では低線量X線シンチレータにおける使用のために実証された。
【0019】
発明者らは、無機ペロブスカイト材料だけでなく、一部の有機材料も高速波長変換材料として使用され得ることを観察した。したがって、一実施形態は、50ns未満の寿命の高速無機および/または有機周波数ダウンコンバート層を含むことができる。有機ベースの周波数ダウンコンバート層の例は次の通りである:約180psの寿命を有するBEH-PPV(ポリ[2,5-ビス(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン])および約35psの寿命を有するPTB7(ポリ[[4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル][3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル]])。SY-PPV(SuperYellowコポリマー)は、約1.9nsの寿命を有しており、他の光波長でも使用され得る。1つの応用では、高速波長変換層は、式ABX3(式中AはCs+、Rb+、CH3NH3
+およびHC(NH2)2
+から選択され、BはPb2+、Sn2+、Ge2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Fe2+、Pd2+およびEu2+から選択され、XはハロゲンCl-、Br-またはI-である)ならびに1~50nsの寿命を有する有機金属または無機ハライドペロブスカイトを含むことができる。更に別の応用では、有機金属ハライドペロブスカイトは、約100から1,000ミクロンの厚さを有することができる。本実施形態において、高速波長変換層の長さおよび幅は、ミクロンスケールからセンチメートルスケール以上にさえ、特定の使用法に基づいて設計できる。
【0020】
一実施形態によれば、UVC通信リンクのための新規な受信器が提示され、この受信器はハイブリッドCsPbBr3-シリコン色変換光検出方式を使用しており、CsPbBr3層がUV光を可視光へ変換し、そしてシリコン(SiベースのPD)がCsPbBr3層からの可視光を電気信号へ変換する。緑色スペクトル領域におけるSiベースのPDの応答性および外部量子効率(EQE)は、UV領域におけるそれらより有意に高い。UV石英基板上の高PLQYドロップキャストCsPbBr3ペロブスカイトNC層は、入射UV光を緑色波長域へ効果的にダウンコンバートして、UV領域における光検出性能向上を実現できる。このハイブリッド光検出器の測定小信号変調帯域幅は高周波変調の実現可能性を確証する。それに応じて、送信器として278nmソーラーブラインドUVC LEDおよび受信器としてハイブリッドCsPbBr3-シリコン色変換器を使用して高速ソーラーブラインドUVC通信リンクが実証された。この構成は、高感度かつ高速のUVベースの通信のための成熟したシリコンファウンドリベースの光検出器プラットフォームにおける色変換発光材料として高PLQYかつ高速CsPbBr3ペロブスカイトNC層を使用することの実現可能性を実証する。
【0021】
新規な受信器が、ここで
図2に関して述べられる。
図2は、ハウジング204内に設けられるSiベースの光検出器(PD)202および、同じくハウジング204内に設けられる透明基板222上に形成される高速波長変換層220を有する受信器200を図示する。PD202は、可視光を吸収し、そしてそれを電気信号へ変換するように構成される有効面202Aを有する。1つの実施形態において、PD202は、有効面202Aが完全に、後述されるチャンバ224内に設けられるようにハウジング204に対して配置される。2つの導線206Aおよび206Bが光検出器202に電気接続されるのが図示されており、それらは、光変換によって発生される電流を処理ユニット208に導くように構成される。処理ユニット208は、プロセッサ209、メモリ211および電源213、例えば電池を含んでよい。
【0022】
透明基板222、PD202およびハウジング204の壁によって形成されるチャンバ224は0および1mm間の高さHを有する。チャンバ224の高さHがゼロとは異なる場合、チャンバは、ガス、例えば窒素を保つように、または真空条件下にあるように構成される。これは、チャンバが、窒素もしくは別のガスで充填された後にまたはいずれのガスも抜かれて空にされた後に受信器200の環境から密封されることを意味する。
【0023】
PD202は、高速である任意の公知のSiベースの光検出器、またはSiベースのアバランシェ光検出器(APD)、または他のIII族窒化物ベースの光検出器でよい。高速波長変換層220は本実施形態においてCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶層であり、ナノ結晶は、約506nm波長での20nmの半値全幅の発光の他に高光ルミネセンス量子収量(PLQY)を有する。溶液および膜形態でのPLQYは、それぞれ約100%および約72%である。しかしながら、上述したように、高速波長変換層220のために他の無機または有機材料が使用されてよい。本明細書において、簡略化のため、高速波長変換層220がCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶を含むことが前提とされる。
【0024】
高速波長変換層220は、高UV透明基板、例えば非晶質ガラス、石英または溶融シリカ上に形成される。ハウジング204は、ハウジングの壁を通していかなる光を受けるまたは漏らすことも望まれないので、可視およびUVスペクトルの光に対して不透明である任意の材料から形成されてよい。
【0025】
本実施形態に関しては、第1の波長範囲(本実施形態においてはUV範囲)を有する第1の光240が高速波長変換層220によって吸収され、そしてダウンコンバートされ(周波数の点で)、そしてチャンバ224内部に、第2の波長範囲(この例では可視波長範囲内)を有する第2の光242として再び発せられる。可視光242は、次いで高速PD202によって吸収され、そして電気信号244へ変換されて、導線206Aおよび206Bに沿って、処理ユニット208に伝送される。本実施形態において、可視波長域の高反射レンズが追加され得る。
【0026】
この配置の効率を改善するために、1つの実施形態において、
図3に例示されるように、可視光を除去しかつ主にUV光を通過させるために、高速波長変換層220にわたって高反射光学素子226が置かれる。高反射光学素子226は、1つの応用では、UV領域における≧90%の透過および可視波長域における≧99%の反射を可能にするためにカスタム設計され得るダイクロイックフィルタ(Rocky Mountain Instrument Co.、CO、USAによって製造)である。
【0027】
図3に例示される実施形態において、高速光検出器202上へ入射光240を焦束するためにUV透明マイクロレンズ228も追加され得る。UV透明マイクロレンズ228は、高反射光学素子226の上に直接設けられてよい。1つの応用では、必要とされる検出波長に応じて、信号対雑音比を向上させるためにマイクロレンズ228に被覆ノイズフィルタ230が追加され得る。被覆ノイズフィルタ230は、ショートパス、ロングパス、エッジパスおよび/またはバンドパスフィルタを含むように選択されてよい。被覆ノイズフィルタ230は、UV透明マイクロレンズ228上のどこに置かれてもよい。
【0028】
図3に例示された実施形態は、ここで述べるように変更できる。例えば、
図4に例示される実施形態は、高速波長変換層220およびその透明基板222が、透明基板222がPD202と直接接触しているようにPD202に向けて移動されたことを除いて、
図3のそれと同様である。これは、チャンバ224が今では高速波長変換層220、ハウジング204の壁および光学素子226によって画定されることを意味する。このようにして、入射光240は、フィルタ230および光学素子226によってフィルタリングされて到達UV光241を得る。到達UV光241は、マイクロレンズ228によって高速波長変換層220上へ焦束されており、それが可視光242を発生して、PD202に衝突し電気信号244を発生させる。
【0029】
更に別の実施形態において、
図5に例示されるように、光学素子226は、高速波長変換層220と直接接触しているように移動され、したがって、チャンバ224は今では、光学素子226、ハウジング204の壁およびマイクロレンズ228によって画定される。前述したように、チャンバ224はゼロおよび1mm間の高さHを有してよい。
【0030】
更に別の実施形態において、
図6Aおよび
図6Bに例示されるように、高速波長変換層220は、クラッド層610および612間に挟まれ、かつUV透明基板なしで、高速光検出器202上へ直接統合される。光学素子226は高速波長変換層220上へ直接形成される。
図6Aおよび
図6Bの実施形態がPD202上に直接形成される高速波長変換層220を図示するが、1つの変形では、高速波長変換層220がまず透明層222上に形成され、そして透明層がPD202に直接取り付けられることが可能である。
【0031】
クラッド層610および612により、高速波長変換層220から再び発せられる可視光は、境界における全内部反射(TIR)により垂直ジグザグ様式で、高速光検出器202上へ直ちに伝搬できる。屈折率n
2を有するクラッド層には、高速波長変換層220のそれ(屈折率n
1)より低い屈折率、すなわちn
2<n
1を有することが必要とされる。
図6Bに図示されるように、可視波長域の高反射マイクロレンズ228が追加され得る。マイクロレンズ228は、UV領域における≧90%の透過および可視波長域における≧99%の反射を可能にするダイクロイックフィルタでよい。
【0032】
高速波長変換層220は、ここで
図7に関して述べられるように高速光検出器に結合されるマイクロ積分球へ実装され得る。受信器700は、内部チャンバ714を有する、マイクロ積分球を形成するハウジング710を有する。内部チャンバ714の形状は球状であり、それはハウジング710の内面712によって画定される。ハウジング710は、UV光240を受信するための入口ポート710A、および発生された可視光242をハウジング710から出させるための出口710Bを有する。1つの実施形態において、ハウジング710は単一の入口および単一の出口を有する。このようにして、全てではないにしても大部分の受信UV光240が最終的に高速波長変換層220によって可視光242へ変換され、そして全てではないにしても大部分の可視光242が次いで、内部チャンバ714外部に置かれるPD202によって収集される。PD202は出口710Bに置かれる。ハウジング710の内面712の球状形状のため、UV光も可視光も、UV光の全てまたは大部分が可視光へ変換されるまでおよび可視光の全てまたは大部分がPD202に供給されるまで、チャンバ714内部で多重反射を経験することに留意されたい。したがって、そのような受信器は、可視光へのUV光の非常に高い変換率およびPD202への可視光の高い収集率も有する。高速波長変換層220はその高透明基板222上に形成され、そしてそれは、例えば懸下ロッド720で球状内面712の中央に吊り下げられてよい。1つの応用では、内面712は高UV反射コーティング、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を有してよい。同様の性質を有する他の材料が使用されてよい。
【0033】
上述した全ての実施形態に共通するのは、高速波長変換層220の化学組成が、例えば400および800nm間の所望の出力可視波長を達成するように選択され得るということである。例えば、上述したCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶層220が使用される場合、UV光は緑色光へ変換される。しかしながら、高速波長変換層220の化学組成に応じて、UV光を青色もしくは赤色光または可視域における任意の他の所望の波長へ変換することが可能である。
【0034】
高透明基板222上に高速波長変換層220を形成するための方法が、ここで
図8に関して述べられる。この例に関しては、高速波長変換層220は、CsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶を含むと見なされる。プロセスは、ステップ800において基板222を設けることによって開始する。基板はUV石英でよい。ステップ802において、基板が洗浄され、ステップ804において基板上へCsPbBr
3ペロブスカイト溶液がドロップキャストされ、そしてステップ806において基板上のドロップキャストされたペロブスカイト溶液が、例えば1時間、空気中で乾燥される。次いで、ステップ808において、高速波長変換層220および高透明基板222がハウジング204においてPD202と組み合わされて、受信器200を形成する。
【0035】
ステップ804に関して、CsPbBr3 QD溶液は、例えばQuantum Solutions LLC(www.quantum-solutions.com)から市販されている。QDは、表面上のリガンドとしてオレイン酸およびオレイルアミンを有しており、ほぼ20mg/mLのQD濃度で、トルエンに分散される。トルエンを使用してQD溶液を希釈することによって準備され、解析のためにフォルムバール/カーボン被覆300メッシュ銅TEMグリッド上へドロップキャストされた試料にTEMが行われた。CsPbBr3 NC層は、光学特性評価のためにUV石英基板上へドロップキャストされ乾燥されて溶媒蒸発させた。
【0036】
図9Aおよび
図9Bは、受信器200および700のために使用されるCsPbBr
3ペロブスカイトNCの透過型電子顕微鏡(TEM)および高解像度TEM(HR-TEM)像を示す。
図9Bに示される対応するHR-TEM像は、ほぼ6.39±0.6nmの平均サイズの立方NCを現す。
図9Cは、CsPbBr
3ペロブスカイトNCの吸収900および光ルミネセンス(PL)910スペクトルを図示する。CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220が、ほぼ506nmでの19nmの狭い半値全幅(FWHM)の急激なPL発光912を有することが留意される。同時に、UV領域902における強吸収も観察される。加えて、
図9Dに例示されるように372nm励起に続いて506nmで監視されたPL減衰トレースから、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の光励起電子および正孔間の放射再結合時間920が測定された。PL寿命減衰プロファイルは506nmで収集された。減衰曲線920には、ほぼ4.5±0.1nsの寿命の単一の指数関数がフィットでき、したがって高速発光材料としてのこの層の可能性を示す。
【0037】
加えて、発明者らは、トルエンに分散されて石英基板上へドロップキャストされたCsPbBr3ペロブスカイトNCのPLQYを測定し、それが溶液形態では1に近い一方で薄膜形態では約73%に低減されると分かった。これらの測定は、CsPbBr3ペロブスカイトNC層が、Siベースの受信器のためのその他のダウンコンバート材料、例としてアルミニウムトリス-(8-ヒドロキシキノリン)(Alq3)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、ビス-(8-ヒドロキシキナルジン)-クロロガリウム(Gaq’2Cl)、フルオレンコポリマーおよびSuperYellowのPLQYより有意に高いPLQYを有することを実証する。他の有機ベースの発光材料と比較して、PLQYの点の改善は、次元低下(3Dバルク層から0D NCへ)による再結合速度上昇の他に、結果としてNCの表面欠陥低減ならびにオレイン酸およびオレイルアミンリガンドによる表面パッシベーションになる固有の合成方法に大きく起因する。この方法を使用して、ペロブスカイトNCは、環境の変動に影響されにくく、したがって周囲環境下で薄膜の形態でさえ、より高いPLQYをもたらす。その上、約30~52%のPLQYおよび数十nsのPL減衰時間の市販されているCdSeベースのNCと比較して、CsPbBr3ペロブスカイトNCによって達成されるPLQYが有意に高く、同時にPL減衰時間が速い(<5ns)ことが明らかである。
【0038】
上述した受信器200および700の利点は、データまたは情報の符号化および復号化を実装する、すなわちUVベースの通信を達成する可能性である。この点に関して、UVベースの受信器200および700の様々な性質が、ここで述べられる。CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220から再び発せられる光の有効な収集に関して、発光材料の追加の有無によるSiベースのPD202の応答性を測定するために、
図7に図示される受信器700が使用された。13mm
2の有効面積の市販のSiベースのPIN接合光検出器(例えば、Thorlabs Inc.、FDS100によって製作)が比較のために使用された。
図10は、商用のSiベースのPDの測定応答性を図示する。応答性がUV領域(<380nm)に向けて有意に低下する(<0.1A/W)ことが明白である。この観察は、周知のように、Siベースの層へのUV光の低侵入度、例えば数十ナノメートルに大きく起因し得る。
【0039】
この問題を回避するために、受信器200または700は、高PLQY CsPbBr
3 NC層220によって吸収されるUV光を、
図10にも図示されるように、SiベースのPDが0.2A/Wまでのより高い応答性を呈する緑色波長域へダウンシフトする。したがって、本質的に、層220を使用することによって、PD202は、UV光の代わりに主に緑色光に曝露される。
【0040】
図11Aは、0Vから-20V(逆バイアス)までの暗条件(線1100)下の他に270nm(線1102)および510nm(線1104)励起源下のSiベースのPD202の測定I-V特性を図示する。270nmおよび510nmの両測定波長に対する入射光度は、ニュートラルデンシティ(ND)フィルタを使用して8.5μW/cm
2に校正された。270nm光源による励起下で発生される光電流は、510nm光源による励起下のそれよりほぼ1桁低い。特に、積分球デバイス700における高UV透明石英基板222上のCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の追加により、ダウンコンバージョン手法は、270nm光源による励起下でさえSiベースのPD202によるより高い吸収を可能にし、したがってより高い光電流を発生し(線1106を参照のこと)、510nm源による励起下のそれに明確に近くなる。しかしながら、CsPbBr
3層220が照明下であるとき、吸収光子の一部分が、強化層の量子収量に応じて、より長い波長で再び発せられる一方で、残りの未吸収または散乱光子の部分は、いかなる光子変換プロセスもなくSiベースのPD202へ流出し得る[1]。これらの光子は、結果としてSiベースのPD202において2つの別個の波長(例えば、510nmおよび270nm)から光発生される追加キャリアになるであろう。
【0041】
提案された色変換CsPbBr
3 NC層220の実際の光発生キャリアを評価するために、発明者らは、積分球700とSiベースのPD202との間に500nmロングパス(LP)フィルタ(例えば、Thorlabs、FELH0500)が装着された結果のI-V特性も測定した。LPフィルタを使用して未吸収UV波長光子がSiベースのPD202によって検出されるのを防止することによって、
図11Aに図示されるように(線1108を参照のこと)、光発生キャリアは、CsPbBr
3 NC層220なしの270nm照明(線1102)下のそれらより高くとどまる。
【0042】
積分球受信器700を使用して、発明者らは、UV波長域においてCsPbBr3ペロブスカイトNC層220の追加の有無によるSiベースのPD202の応答性も測定した。応答性(R)は光検出器のための重要な性能指数であり、それは、次の通りに、発生される光電流(Iphotocurrent)および入射光パワー(Pincident)に基づいて計算できる:
【0043】
【0044】
図11Bは、UVCからUVA全領域(250~380nm)にわたる裸のSi PD202の応答性スペクトル1120および積分球700へのドロップキャストCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の挿入によるPD202のスペクトル1122を図示する。図は、裸のPDセンサおよびUV石英窓に対するスペクトル1124も図示する。測定は10nm間隔でなされた。
【0045】
図11Bは、応答性1122が、特に、SiベースのPDが低応答性を呈すると知られているUVC波長域において、裸のSiベースのPD202の応答性1120より非常に高くとどまることを図示する。この改善は、CsPbBr
3 NC層220の高PLQYおよび高UVC吸収に起因し得る。応答性は、意図されたUV動作波長を越える、CsPbBr
3 NC層220の近帯域端における光吸収低下により長波長に向けて減少する。にもかかわらず、受信器200または700の特性は、有機ベースの発光材料を使用した[1]に匹敵する。[1]における有機ベースの層は、吸収スペクトルから生じる下降により250および300nm間の光応答低下を呈する。
【0046】
比較的に、先に
図9Cに図示されたように、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の吸収スペクトルは短波長域に向けて漸次上昇し、したがって光応答は、深UV波長域においてさえ相対的に安定したままである。その上、[1]における有機ベースの層は、長いPL減衰時間を有するとも知られており、その実際的応用を高速UVベースの通信に限定しかねない。受信器200および700の応答性向上は、特に低強度UVC光源を検出する際にPDの感度およびSNR比を有意に改善し得る。
【0047】
更には、発明者らは、積分球受信器700へのCsPbBr3ペロブスカイトNC層220の追加の有無によるSiベースのPD202の、外部量子効率(EQE)としても知られている、光子変換効率を計算した。EQEは、入射光子に対するフォトダイオードによって発生される電子正孔対の比である:
【0048】
【0049】
式中R
λはA/Wでの応答性であり、λ
incidentはナノメートルでの励起波長であり、hはプランク定数であり、cは真空中の光の速さであり、eは電気素量である。測定応答性に基づいて、裸のSiベースのPD202に対する計算EQE1130および積分球受信器700へのCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の包含によるPD202に対するEQE1132が
図11Cに図示される。CsPbBr3ペロブスカイトNC220を使用することによって、光子吸収向上および光子変換プロセス後の光発生キャリアの増加により、270nmで38%までの高EQE1132が観察される。270nmの波長で外部量子効率の約25%までの増分が観察されたことは注目に値する。UVC波長域において有意に改善されたEQEは、光子吸収向上および光子変換プロセス後の光発生キャリアの増加に起因する。UV波長域における光検出器のEQEが緑色波長域におけるそれ、すなわち510nmで約46.41%より低いままであるので、キャリア増倍プロセスが明白でないことも留意するに値する。
【0050】
ほぼ270nmで観察されたEQEピークは、先に
図9Cに図示されたように、吸収スペクトルのピーク位置と十分に一致しており、ここで300nmを越えるより高い光子吸収を呈する。この現象の結果として、光子数が高いほど長い波長に変換されて、SiベースのPD202はより高い応答性を呈する。270nmでの吸収係数は1.16×10
3cm
-1であると推定されており、ほぼ0.89×10
3cm
-1の350nm帯のそれより比較的高い。
【0051】
PDの性能を評価するための別の関連パラメータ、すなわち比検出能(D*)も以下に示すように方程式(3)に基づいて計算された:
【0052】
【0053】
式中Aはcm
2でのデバイス面積であり、NEPはWHz
-1/2での雑音等価電力であり、eは1.602×10
-19クーロンの電気素量であり、I
dはアンペアでの暗電流であり、R
λはA/Wでの応答性である。ハイブリッドCsPbBr
3-Si光検出受信器200または700のD*1140は、
図11Dに図示されるように、270nmで7.4×10
-12cmHz
1/2W
-1であると決定され、同じ測定波長での値が2.5×10
-12cmHz
1/2W
-1の裸のSi光検出検出器202のD*1142より高い。
【0054】
加えて、提案された受信器の雑音関連性能も雑音等価電力(NEP)に基づいて評価された。NEPは、雑音電流に等しい出力光電流を発生して1のSNRをもたらす入力光強度の量として定義される。方程式(3)に基づいて計算されるように、UVC領域において、裸のSiベースの光検出器のためのNEPが、それぞれ250nmおよび270nmに対して1.49×10-13および1.40×10-13WHz-1/2に達すると計算された。CsPbBr3ペロブスカイトNC層220による提案された色変換方式を使用することによって、NEPは、250nmおよび270nmでの同じ測定波長に対して5.75×10-14および4.86×10-14WHz-1/2に1/2桁を超えて低減される。提案された色変換方式を使用することによって、NEPが裸のSiベースのPDのそれと比較して低く、特にUVC波長域において低ノイズフロアおよび検出能向上に寄与する。
【0055】
様々な商用および変更されたSiベースの光検出器に対する新規な受信器の性能の比較が
図12にまとめられる。受信器200/700(表の最後の列に記載される)に関しては、その変調帯域幅が従前のデバイスの一部より低いが、NCが薄膜の形態でドロップキャストされるとき受信器200/700におけるPLQYはほぼ30%有意に高く、したがって光検出を改善できるより高い光子変換効率が呈される。その上、先行の成果と比較して受信器200/700における低い変調帯域幅は、CsPbBr
3ペロブスカイトNCにおける再結合メカニズムの競合するバンド状態および動特性に起因し得る。他の既存のデバイスと比較して、
図12は、新規な受信器設計およびUVベースの通信リンクにおけるSiベースの受信器202との潜在的モノリシック統合のための、高PLQYおよび急速PL減衰時間のCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の優れた性能を示す。
【0056】
UVベースの通信リンクに対するCsPbBr3ペロブスカイトNC層220の光安定性を更に調査するために、発明者らは、強力UVC照明下の周囲環境において24hのPLストレス試験を行った。最初の3hのPL強度の漸増は、減少した溶媒の蒸発およびCsPbBr3ペロブスカイトNCの動特性と関連した追加の放射中心の形成に起因し得る。続く12hにおいて、PL強度は周囲条件下で安定を維持した。光安定性は、数時間以内に低下する他の未処理のCsPbBr3ペロブスカイトNCのそれを上回る。焦束UVC光源下の16hの強力連続照射後のPL強度の低下は、大概は鉛原子の熱劣化および光酸化による。CsPbBr3ペロブスカイトNC層220の性能は、例えば、光安定性および耐水性を改善すると証明された、ペロブスカイトベースのNC薄膜上の強疎水性シリコーン樹脂のコーティングによって更に拡大し得る。
【0057】
UVベースの通信リンクへのCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220の潜在的応用を調査するために、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層の小信号変調帯域幅が、
図13に図示される構成1300を使用して測定された。受信器の発光体および他の部品から帯域幅制約を除去するために、数GHzまでの高変調帯域幅の70mW 375nm UVレーザダイオード(LD)1302ならびに0.2mmのデバイス範囲および5×10
5V/Wまでの調整可能な利得のSiベースのアバランシェ光検出器(APD)202が使用された。UV光は、平凸レンズ1304を通して受信器700の入力710Aに誘導され、そして積分球受信器700内部のCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220上へ焦束された。別の一連の平凸レンズ1306および対物レンズ1308が受信器700の出力ポート710Bに設置されて、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220から再び発せられる光子を収集した。APD202に入る前に、UV光は、500nmロングパスフィルタ1310を使用してフィルタリングされた。
【0058】
コントローラ1320によってLD1302に印加される正弦波AC変調信号を300kHzから3GHzに掃引することによって、
図13Bに図示されるように、CsPbBr
3ペロブスカイトNC220なしのシステムの3dB帯域幅1330は、ほぼ380MHzであると決定される。CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220および500nmロングパスフィルタ1310の追加により、ほぼ70.92MHzの3dB帯域幅1332が得られる。10MHzでの正規化応答の漸次の下降は、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220が受信器700へ挿入されるときにシステムの全体周波数応答から生じる。そのような漸次の下降は-3dB帯域幅内であり、これは、電子ハードウェアまたはソフトウェア処理を使用する最終的なシステム実装において電力事前等化または事後等化を通じて修正できる。
【0059】
SiベースのPD202に関する応答性向上は別として、この帯域幅向上は、UVC通信リンク向けの高速のSiベースのPDとの統合への大きな可能性を有する。短いキャリア再結合寿命(ns程度)を利用することによって、UV励起下の実証された変調帯域幅は、YAM:Eu3+ベース(msec程度)、Sr5(PO4)3-x(BO3)xCl:0.04Eu2+ベース(μsec程度)およびCa8MgLu1-x(PO4)7:xTb3+ベース(msec程度)の蛍光体の場合のそれより有意に高い。加えて、実証された数十MHzの高帯域幅は、いずれの他の蛍光材料より十分に高く、UVベースの応用における高速データ通信へのその可能性を実証する一方でMbps範囲のIEEE802.11a、bおよびg規格の要件を満たす。
【0060】
CsPbBr3ペロブスカイトNC層220において実証された高変調帯域幅は、他のコロイド状半導体NCベースの光検出器、例えばCdSe量子ドット(約50kHz)のそれらも上回る。その上、公開された研究の一部が数百メガヘルツまでの高変調帯域幅を実証したが、それらのデバイスに対してはUV領域における吸収低下および低PLQYも観察されており、UV通信分野におけるこれらの材料の応用を制限している。
【0061】
発明者らは、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220が、オンオフキーイング(OOK)変調方式を使用することによってソーラーブラインドUVC通信リンクにおけるSiベースのPDのための色変換発光材料として使用できることも実証した。OOK変調では、擬似ランダム2進系列(PRBS)2
10-1データ形式が送られて送信器を光変調したが、デジタルデータの1または0は、それぞれ搬送波の有無によって表現された。OOK変調は、
図2に図示される処理デバイス208に実装されてよい。この点に関して、処理デバイス208は、受信器200/700において受信される信号を復号化するように構成されるプロセッサを含んでよい。
図14Aに図示されるように、構成1400が278nm UVC LED1402を含み、受信器700内のCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220を励起する一方で、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220によって発生される緑色発光1404は、SiベースのAPD202に入る前に一連の平凸レンズ1406、対物レンズ1408および500nmロングパスフィルタ1410に通された。6VのDCバイアスおよび2V
p-pのAC変調ピーク間電圧がバイアスティー1420によってLED1402に供給された。バイアスティー1420はDC電源1422におよび送信器端のためのBERテスタ1424に接続される。BERテスタ1424は受信器端におけるBERテスタ1426に電気接続され、そしてBERテスタ1426は、PD202によって発生される電気信号を受信する。様々な電気的パラメータを測定するためにBERテスタに多機能解析ツール1428が接続されてよい。
【0062】
6V DCバイアスでは、発光出力電力は、ほぼ0.8mWであると測定された。UVC LED1402とCsPbBr
3ペロブスカイトNC層220との間の距離はこの構成では3.5cmであった一方で、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220からSiベースのAPD202までの距離はほぼ20cmであった。本実施形態において、UVC LED1402が入口ポート710Aに置かれたことに留意されたい。比較のため、発明者らは、
図14Bに図示されるように、CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220および500nmロングパスフィルタ1410なしで、UV LED1402だけの場合に異なるデータレートで達成されるBERも測定した。APD202を照明する光強度を低下させるために1.6の光学濃度(OD)フィルタが使用され、APD前において測定された照明電力はほぼ0.531μWであり、APDの飽和限界を十分に下回った。この前に、システム帯域幅も測定され、3dB帯域幅は、送信器端における制限のため11.13MHzに制限された。UVC LEDだけの場合、最高達成可能データレートは25メガビット毎秒(Mbps)と記録され、1.4x10
-3の測定BERは、3.8x10
-3の順方向誤り訂正(FEC)限界を下回る。
図14Bの差込みは、ほぼ3.88のSNR比の対応するアイダイアグラムおよびFEC限界を超えるデータレートに対するほぼ閉じたアイダイアグラムを示す。
【0063】
色変換CsPbBr
3ペロブスカイトNC層220が使用された場合、UV波長の代わりに緑色波長に対するSiベースのAPD202のより高い光感度のため、
図14Cに図示されるように、34Mbpsのより高いデータレートおよび3.24のSNRが達成される。
図14Cの差込みは、34Mbpsでの対応するアイダイアグラムを示す。CsPbBr
3ペロブスカイトNCの場合、APDを照明する測定光強度は、500nmロングパスフィルタの後で0.508μWである。2つの異なる波長、すなわち278nmおよび506nmでAPDを照明する類似の光強度が与えられると、CsPbBr
3ペロブスカイト層220の場合の出力電圧(V
out)のより高い振幅、より高い受信信号電力および高SNRを以下の方程式に基づいて予想できる:
V
out=P
illuminance×R
λ×G (4)
式中V
outは出力電圧であり、P
illuminanceはAPDを照明する電力であり、R
λは異なる波長でのSiベースのAPDの応答性であり、Gはトランスインピーダンスゲインである。受信器端において色変換発光材料を使用することによって、[3]は、青色LEDを直接使用する通信リンクと比較して信号および光学利得向上を実証した。しかしながら、その成果において、UV波長域において低吸収が観察されており、UVベースの通信リンクへのそれらの材料の応用を制限してしまった。
【0064】
達成されたデータレートは、より複雑な変調方式(例えば、直交周波数分割多重化)、事前等化、ビットローディングおよび電力割当を使用することによって更に改善できる。その上、ソーラーブラインドUVC LEDの変調帯域幅の改善およびUVC LDの実現により、本明細書に述べられるものと同様の受信器に対して、数百メガヘルツまでのより高い変調帯域幅を近い将来に期待できる。
【0065】
新規な受信器200および700は、応答性のほぼ3倍の改善およびEQEのほぼ25%の上昇を示す。これらの受信器は、ハイブリッドCsPbBr3-シリコン色変換器を使用して、ソーラーブラインドUVC通信リンクにおいて70.92MHzの広小信号変調帯域幅および34Mbpsまでの高データレートを達成することが可能であることを実証した。組成調整可能なペロブスカイトベースの蛍光体に基づくこの手法は、高速UV光検出のための低コストかつ成熟したSiベースのデバイスとのモノリシック統合の実現可能性を利用する。以上の説明はCsPbBr3ペロブスカイトNC層220に重点を置いたが、UV光を可視光へ変換するための他の無機または有機材料を使用することが可能である。
【0066】
図15に例示される一実施形態によれば、UV光を使用してデータを伝送するための方法がある。本方法は、情報を符号化した第1のUV光240を発するステップ1500と、高速波長変換層220において第1のUV光240を受信するステップ1502と、高速波長変換層220により第1のUV光と異なる波長を有する第2の光242を再び発するステップ1504と、高速光検出器202により第2の光242を符号化情報を保持した電気信号244へ変換するステップ1506と、処理ユニット208により電気信号244から情報を復号化するステップ1508とを含む。高速波長変換層220の材料が、少なくとも数メガビット毎秒の速度で光度の変化に応答するように構成される。1つの応用では、第2の光は可視光である。同材料はCsPbBr
3ペロブスカイトナノ結晶を含んでよく、そして高速光検出器はSiベースである。
【0067】
開示した実施形態は、UV光を使用するデータ通信のための方法およびシステムを提供する。この説明が本発明を限定するとは意図されないことが理解されるべきである。逆に、実施形態は、代替例、変更例および均等例を包含すると意図され、それらは添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨および範囲に含まれる。更に、実施形態の詳細な説明において、特許請求される発明の包括的な理解を提供するために多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者は、そのような具体的な詳細なしで様々な実施形態が実践され得ることを理解するであろう。
【0068】
本実施形態の特徴および要素が特定の組合せで実施形態に記載されるが、各特徴または要素は、実施形態のその他の特徴および要素なしで単独でまたは本明細書に開示される他の特徴および要素の有無にかかわらず様々な組合せで使用できる。
【0069】
本書面による明細書は、開示される主題の例を使用して、いずれかのデバイスまたはシステムを製作および使用することならびにいずれかの組み込まれた方法を行うことも含め、当業者が同主題を実施することを可能にする。同主題の特許可能な範囲は請求項によって定められ、当業者に想起される他の例を含み得る。そのような他の例は、請求項の範囲内であると意図される。
【0070】
(参考文献)
[1] Levell, J. W., Giardini, M. E. & Samuel, I. D. W. A hybrid organic semiconductor/silicon photodiode for efficient ultraviolet photodetection. Optics Express 18, 3219-3225 (2010).
[2] Kuhlmann, W. Photodetector for ultraviolet light radiation. (2004).
[3] Dong, Y. R. et al. Nanopatterned luminescent concentrators for visible light communications. Optics Express 25, 21926-21934 (2017).
[4] Zhang, M. J. et al. Perovskite quantum dots embedded composite films enhancing UV response of silicon photodetectors for broadband and solar-blind light detection. Advanced Optical Materials 6, 1800077 (2018).
【符号の説明】
【0071】
100 通信システム
102 UV光
104 UV光源
106 レイリーおよびミー散乱
107 障害物
108 UV光受信器
120 UV光
121 UVC光
122 オゾン層
124 UVAおよびUVB光
200 受信器
202 光検出器
202A 有効面
204 ハウジング
206A、206B 導線
208 処理ユニット
209 プロセッサ
211 メモリ
213 電源
220 高速波長変換層
222 透明基板
224 チャンバ
226 光学素子
228 マイクロレンズ
230 被覆ノイズフィルタ
240 第1の光
241 到達UV光
242 第2の光
244 電気信号
610、612 クラッド層
700 受信器
710 ハウジング
710A 入口ポート
710B 出口ポート
712 内面
714 内部チャンバ
720 懸下ロッド
1300 構成
1302 レーザダイオード
1304 平凸レンズ
1306 平凸レンズ
1308 対物レンズ
1310 ロングパスフィルタ
1320 コントローラ
1400 構成
1402 LED
1404 発光
1406 平凸レンズ
1408 対物レンズ
1410 ロングパスフィルタ
1420 バイアスティー
1422 DC電源
1424 BERテスタ
1426 BERテスタ
1428 解析ツール
【国際調査報告】