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特表2022-514614レーザ源、レーザデバイス、及び組織を切除する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】レーザ源、レーザデバイス、及び組織を切除する方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/23 20060101AFI20220204BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220204BHJP
   H01S 3/092 20060101ALI20220204BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20220204BHJP
   H01S 3/11 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
H01S3/23
H01S3/00 A
H01S3/092
H01S3/0941
H01S3/00 F
H01S3/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535737
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019086514
(87)【国際公開番号】W WO2020127866
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】01596/18
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518454612
【氏名又は名称】アドバンスト オステオトミー ツールズ - エーオーティー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ, アルフレド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ボルンセン, クラウス オラフ
(72)【発明者】
【氏名】パイアー, ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】ケルンベルガー, ラインハルト
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AE01
5F172AE03
5F172AF02
5F172AF03
5F172DD06
5F172EE02
5F172EE13
5F172NN05
5F172NR22
5F172NS01
5F172ZZ03
(57)【要約】
レーザ源(101)は、(i)1つのタイプの組織を除去するための、第1の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のプライマリアブレーティングレーザビーム(162)を生成するよう適合されている第1のビーム生成構成(111、112、113)と、(ii)プライマリレーザビーム(162)により除去される1つのタイプの組織とは異なる別のタイプの組織を除去するための、第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルと、第2の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のセカンダリアブレーティングレーザビーム(163)を生成するよう適合されている第2のビーム生成構成(121、122、123)と、(iii)第3の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅より短く、第2の時間的パルス幅より短い第3の時間的パルス幅と、を有する少なくとも1つのパルスを持つパルス状の分析レーザビーム(161)を生成するよう適合されている第3のビーム生成構成(121、122、123、126)と、(iv)プライマリアブレーティングレーザビームと、セカンダリアブレーティングレーザビーム(163)と、分析レーザビーム(161)と、を整列させ、レーザ源(101)が、レーザビーム(160)を同じ伝播進路に沿って伝播させるよう適合されているビーム整列要素を持つビーム配向光学系(125)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ源(101)であって、
第1の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のプライマリアブレーティングレーザビーム(162)を生成するよう適合されている第1のビーム生成構成(111、112、113)と、
前記第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルと、第2の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のセカンダリアブレーティングレーザビーム(163)を生成するよう適合されている第2のビーム生成構成(121、122、123)と、
第3の発光スペクトルと、前記第1の時間的パルス幅より短く、前記第2の時間的パルス幅より短い第3の時間的パルス幅と、を有する少なくとも1つのパルスを持つパルス状の分析レーザビーム(161)を生成するよう適合されている第3のビーム生成構成(121、122、123、126)と、
前記プライマリアブレーティングレーザビーム(162)と、前記セカンダリアブレーティングレーザビーム(163)と、前記分析レーザビーム(161)と、を整列させ、前記レーザ源(101)が、前記レーザビーム(160)を同じ伝播進路に沿って伝播させるよう適合されているビーム整列要素を持つビーム配向光学系(125)と、
を含む、レーザ源(101)。
【請求項2】
前記第1のビーム生成構成(111、112、113)は、前記プライマリアブレーティングレーザビームを生成する第1の利得媒質(111)を有し、前記第2のビーム生成構成(121、122、123)は、前記セカンダリアブレーティングレーザビームを生成する、前記第1の利得媒質とは異なる第2の利得媒質(121)を有する、請求項1に記載のレーザ源(101)。
【請求項3】
前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)は、前記第2の利得媒質(121)を含む、請求項2に記載のレーザ源(101)。
【請求項4】
前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)は、ジャイアントパルスフォーマを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項5】
前記ジャイアントパルスフォーマは、Qスイッチングデバイスなどの光電子素子を有する、請求項4に記載のレーザ源(101)。
【請求項6】
前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)は、2つのレゾネータミラーを含み、前記ジャイアントパルスフォーマは、前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)の前記2つのレゾネータミラーの1つが載置されるロテータを有する、請求項4に記載のレーザ源(101)。
【請求項7】
前記第1の発光スペクトルは、約2,900nmから約3,000nmの範囲、約2,950nmから約2,980nmの範囲、若しくは約2,960nmから約2,970nmの範囲、又は約2,964nmの最大値を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項8】
前記第2の発光スペクトルは、約1,000nmから約1,100nmの範囲、約1,050nmから約1,080nmの範囲、若しくは約1,060nmから約1,070nmの範囲、又は約1,064nmの最大値を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項9】
前記第3の発光スペクトルは、約500nmから約560nmの範囲、若しくは約520nmから約540nmの範囲、又は約532nmの最大値を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項10】
前記ビーム配向光学系(125)は、前記プライマリアブレーティングレーザビームと、前記セカンダリアブレーティングレーザビーム(163)と、前記分析レーザビーム(161)と、を組み合わせるよう配置されているビーム組み合わせ要素(170)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項11】
前記第1の時間的パルス幅と、前記第2の時間的パルス幅とは、約1μsから約1msの範囲、又は、約150μsから約300μsの範囲にある、請求項1から10のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項12】
前記第3の時間的パルス幅は、約1psから約100nsの範囲、又は、約1nsから約50nsの範囲にある、請求項1から11のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項13】
前記第1のビーム生成構成(111、112、113)、前記第2のビーム生成構成(121、122、123)、及び/又は前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)の光源として、少なくとも1つのフラッシュランプ(112、122)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項14】
前記第1のビーム生成構成(111、112、113)、前記第2のビーム生成構成(121、122、123)、及び/又は前記第3のビーム生成構成の光源として、少なくとも1つのレーザダイオードを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のレーザ源(101)。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のレーザ源(101)と、
前記ビーム配向光学系(125)を調整するよう構成されているコントロールユニット(190)と、
を含む、レーザデバイス(100)。
【請求項16】
対象組織にあたる前記分析レーザビーム(161)により生成された、プルームのデブリにおける組織タイプを識別するよう適合されているプルーム分析アレンジメント(180)をさらに含む、請求項15に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項17】
前記コントロールユニット(190)は、前記プルーム分析アレンジメントにより識別された前記組織タイプに依存して、前記レーザ源(101)の前記第1のビーム生成構成(111、112、113)、又は、前記レーザ源(101)の前記第2のビーム生成構成(121、122、123)のいずれかを自動的にアクティブにするよう構成されている、請求項16に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項18】
前記プルーム分析アレンジメント(180)は、親水性の組織タイプと、疎水性の組織タイプと、を識別するよう適合されている、請求項17に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項19】
前記コントロールユニット(190)は、前記プルーム分析アレンジメント(180)により識別された前記組織タイプが親水性の組織タイプであれば、前記レーザ源(101)の前記第1のビーム生成構成(111、112、113)をアクティブにし、前記プルーム分析アレンジメント(180)により識別された前記組織タイプが疎水性の組織タイプであれば、前記レーザ源(101)の前記第2のビーム生成構成(121、122、123)をアクティブにするよう構成されている、請求項16、17、及び18に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項20】
前記コントロールユニット(190)は、前記プルーム分析アレンジメント(180)により識別された前記組織タイプが、親水性の組織タイプ又は疎水性の組織タイプであれば、前記第1のビーム生成構成(111、112、113)と、前記第2のビーム生成構成(121、122、123)と、を同時にアクティブにするよう構成されている、請求項19に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項21】
前記コントロールユニット(190)は、前記対象組織を除去し、前記プルームを伴う前記デブリを生成するために、前記レーザ源(101)の前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)をアクティブにするよう構成されている、請求項15から20のいずれか一項に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項22】
前記プライマリアブレーティングレーザビーム(162)又は前記セカンダリアブレーティングレーザビームがあたった対象組織を冷却するよう構成されている冷却システムをさらに含む、請求項15から21のいずれか一項に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項23】
前記コントロールユニット(190)は、前記プライマリアブレーティングレーザビーム(162)と、前記セカンダリアブレーティングレーザビーム(163)と、前記分析レーザビーム(161)と、のパルスを同期させるよう構成されている、請求項15から22のいずれか一項に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項24】
前記第3のビーム生成構成(121、122、123、126)は、前記第1のビーム生成構成(111、112、113)又は前記第2のビーム生成構成(121、122、123)の構成要素を含む、請求項15から23のいずれか一項に記載のレーザデバイス(100)。
【請求項25】
請求項15から24のいずれか一項に記載のレーザデバイス(100)を用いて組織を切除する方法であって、
前記レーザ源(101)の前記ビーム配向光学系(125)が前記レーザ源(101)の前記レーザビーム(160)を配向する、前記レーザデバイス(100)のオペレーションのエリアに組織を配置することと、
前記レーザデバイス(100)の前記レーザ源(101)が、前記第3のレーザビーム生成構成により生成された分析レーザビーム(161)を伝播させることと、
前記組織にあたる前記分析レーザビーム(161)により生成された、デブリのプルームにおける、主たる組織タイプを識別することと、
前記識別した主たる組織タイプにあう、前記第1のビーム生成構成(111、112、113)又は前記第2のビーム生成構成(121、122、123)のいずれかを選択することと、
前記レーザ源(101)の前記選択された第1のレーザ生成構成(111、112、113)又は第2のレーザ生成構成(121、122、123)を用いて前記組織を除去することと、
を含む方法。
【請求項26】
前記主たる組織タイプを識別することと、前記第1のビーム生成構成(111、112、113)又は前記第2のビーム生成構成(121、122、123)を選択することと、は、前記レーザデバイスの前記プルーム分析アレンジメントにより自動的に実行される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
除去ジオメトリを予め定めることを含み、前記対象組織は、前記レーザ源(101)の前記選択された第1のレーザ生成構成(111、112、113)又は第2のレーザ生成構成(121、122、123)により、前記除去ジオメトリに沿って除去される、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
インビトロ法である、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルに係るレーザ源に関し、特に、そのようなレーザ源を有するレーザデバイスと、組織を切除する方法と、に関する。複数のレーザビームを伝播させるよう構成されているそのようなレーザ源は、多くのアプリケーション又は分野において有益となり得る。
【背景技術】
【0002】
種々の技術分野において、素材を切除することと、穴あけすることと、について、素材にレーザビームを適用する機器の使用がますます一般的になってきている。今日の産業用アプリケーションでは、そのような切除することと、穴あけすることと、が普及している。なぜならそれらは、ワークピースを高い精度にて、効率的かつフレキシブルに加工できるからである。また、骨や軟骨などの、人又は動物の硬組織を切除することについて、レーザを用いて切除することと、穴あけすることと、の適用がますます進んでいる。例えば、コンピュータ支援外科手術では、切除器具としてレーザビームを使用することが知られている。特に、例えば、国際公開第WO2011/035792A1号では、コンピュータにより支援され、ロボットによりガイドされたレーザによる骨切除医療デバイスが説明されている。これは、骨、及び、他の人又は動物の硬組織並びに軟組織をも、正確かつ穏やかに穴あけすることと、切除することと、を可能にする。
【0003】
より具体的には、軟生体組織のレーザによる組織除去が、皮膚病学、泌尿器学、腫瘍学、神経外科学、及び他の分野において使用されている。ここでは、組織の切除と、血液の凝固と、が重要である。そのような目的に、フラッシュランプ(flash lamp又はFL)又はレーザダイオード(laser diode又はLD)のいずれかにより励起されるスペクトルの赤外線(infrared又はIR)部においてレーザ発振する、ロッドの形態に加工された種々の固体状のガラス又は結晶に埋め込まれた、ツリウム(Thulium又はTm)、ホルミウム(Holmium又はHo)、ネオジム(Neodymium又はNd)、又はエルビウム(Erbium又はEr)などの、異なるレーザシステムが、一般的に使用されている。また、LDは、出血を止める目的に使用される。ネオジム:イットリウム-アルミニウム-ガーネット(neodymium:yttrium aluminium garnet又はNd:YAG)レーザは、泌尿器学、歯科医術、及び他の口腔外科のエリアにおいて、軟組織の切除に使用される。低輝度Nd:YAGレーザは、網膜剥離に対しても、他の眼科手術においても使用される。Nd:YAGレーザのための別の主たるエリアは、機械的な脂肪吸引術に対して、より早い治癒、少ない出血、及び少ない有害事象と、良好な結果と、を提供する脂肪分解である。また、これらのレーザは、多くの皮膚病学のアプリケーションと、形成外科のアプリケーションと、に使用される。さらに、COレーザがまた、これらの分野において過去にも使用されている。
【0004】
例えば、外科手術において、組織を切除又は除去する際にしばしば遭遇する状況は、切除の深さが増すと共に、又は、切除に沿って、対象組織のタイプが変化することである。同質でない組織におけるそのような組織タイプの変化は、レーザによる除去の効率を下げ得る場合がある、又は、いくつかの場合では、切除又は除去プロセスを止めさえもする場合がある。例えば、大腿骨を横方向に完全に切除するなど、骨を切除する際には、皮質骨及び海綿様骨である外部硬質部から、脂肪組織を広く構成する中央部、つまり、髄質まで、組織は変化する。これらの2つのタイプの組織は、2つの異なる明確な波長のレーザビームにより、より効率的に除去される。これは主に、所与のレーザビームを用いて除去される骨組織が、十分な水分を含む一方で、内部の脂肪組織は、含水が無いか、又は、無視できるほどの量であるものの、それが、異なるレーザビームを用いて良好に除去されるからである。除去効率を上げることが知られている、水溶液のスプレーを使用して表面を冷却する場合でも、脂肪組織は疎水性であり、除去プロセス、例えば、水分により強力に吸収される、3μm前後のエルビウム:イットリウム-アルミニウム-ガーネット(erbium:yttrium aluminium garnet又はEr:YAG)レーザの輝線からのビーム波長を使用する際の切除効率は、依然として効率的なものではない。
【0005】
したがって、同質でない対象組織を効率的に切除することを可能にするデバイス、システム、又は方法の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明によると、この必要性は、独立請求項1の特徴により画定されるようなレーザ源と、独立請求項15の特徴により画定されるようなレーザデバイスと、独立請求項25の特徴により画定されるような方法と、により解決する。好ましい実施形態は、従属請求項が対象とするものである。
【0007】
1つの態様では、本発明は、レーザ源であって、(i)第1の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のプライマリアブレーティングレーザビームを生成するよう適合されている第1のビーム生成構成と、(ii)第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルと、第2の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のセカンダリアブレーティングレーザビームを生成するよう適合されている第2のビーム生成構成と、(iii)第1又は第2の発光スペクトルと同じとすることができる第3の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅より短く、第2の時間的パルス幅より短い第3の時間的パルス幅と、を有する少なくとも1つのパルスを持つパルス状の分析レーザビームを生成するよう適合されている第3のビーム生成構成と、(iv)プライマリアブレーティングレーザビームと、セカンダリアブレーティングレーザビームと、分析レーザビームと、を整列させ、レーザ源が、レーザビームを同じ伝播進路に沿って伝播させるよう適合されているビーム整列要素を持つビーム配向光学系と、を含む、レーザ源である。
【0008】
対象組織は、特に、人又は動物の生まれついての硬組織又は軟組織とすることができる。具体的には、対象組織は、骨組織、又は、大腿骨などの骨とすることができる。
【0009】
「レーザ」という言葉は、一般的に、レーザビームを生成するよう構成されている、又は、電磁放射の誘導放出に基づく光増幅のプロセスを通して光を放射するデバイス又はアレンジメントに関し得る。レーザは、「放射の誘導放出による光増幅(light amplification by stimulated emission of radiation)」に対する頭字語である。レーザは、それが、光をコヒーレントに放射するという点において、他の光源とは異なり得る。そのような空間的なコヒーレンスは、レーザが、狭いスポットに焦点が合うことを可能にし、これは、切除又はリソグラフィなどのアプリケーションを可能にする。ビーム生成構成は、いくつかの例では、レーザと呼ばれる場合がある。
【0010】
「パルス」又は「レーザパルス」という言葉は、好適には、特定の時間的幅、形状、及びパワーを有する、所与の波長の、比較的短い時間のレーザビームに関し得る。レーザパルスを生成することに関連して、「ファイアリング(firing)」という言葉がここでは使用される。これは、所与の電圧、電流、及び時間的プロファイルの電圧のパルスがもたらされるよう、レーザ源のビーム生成構成又はレーザの1つをアクティブにすることを指す。
【0011】
一般的に、パルス状のレーザビームによる組織除去は、種々の物理的効果により生じる。最も一般的な場合では、レーザ光は、プロテイン、脂質、コラーゲン、及び/又は他の生体化合物などの分子により吸収される。吸収されたレーザエネルギの変換は熱を導き、強力で迅速な温度上昇が生じる。このプロセス中、ほとんどの場合、組織における分子は直接分解され、除去スポットから排出されるデブリに変換される。これは、熱的性質の直接アブレーションプロセスによる除去と呼ぶことができる。そのようなプロセスは、後続の治癒を不可能にする組織の炭化を不必要に導き得る。したがって、除去に対する条件を正確に最適化し、これを、切除プロセス中に制御しなければならない。
【0012】
この直接アブレーションに加えて、水スプレーを使用して、除去が行われた組織の領域を冷却し、これを湿らせる場合には、間接アブレーションプロセスもある。レーザビームにより除去が行われた組織の表面に凝結した水滴及び/又は水膜は、レーザビームパルスにより提供される多くの運動エネルギを用いて断片化することができる。これらの断片は組織の壁に衝突し、これらはしたがって、除去され得る。そのようなプロセスは、特定の条件において、例えば、歯の組織の場合において、つまり、歯科医術のアプリケーションにおいて、主に又は単一に、除去に貢献するものでもあり得る。骨の外科手術における例は、骨及びコラーゲン組織などの硬組織の間接若しくは冷間除去、又は、大腿骨の中央の脂肪部、つまり、大腿骨の髄質などの、疎水性の組織の間接アブレーションであり得る。
【0013】
本発明に関連して、レーザビームを用いて、組織、特に、生体組織を切除することについて、機械的なツールを使用する際に推定されるような、軟組織と硬組織との間に差異を作ることはそれほど重要ではないが、水分を含む細胞など、親水性又は水分を含む組織と、神経組織及び脂肪組織の細胞など、低水分量にも関連する疎水性の組織と、を区別することがより適切である、ということが認められている。さらに、これらの組織の疎水性という特徴により、除去が行われた表面上には、水分は付着も凝結もできない。これは、上記の間接アブレーションプロセスが効率的に適用されないことを暗示する。むしろ、そのような場合では、直接アブレーションプロセスが有益である。なぜなら、対象の疎水性の組織により効率的に吸収されるよう、適切な波長を選択できるからである。実際に、大腿骨における髄質のそれなどの、疎水性の表面上では、水性スプレーからの水滴からの水膜は、それ自体、その表面からすぐになくなり、表面が乾き、間接アブレーションがまったく生じないか、これが生じてもごくわずかである、ということが認められている。より具体的には、疎水性の組織の、レーザによる除去の問題を克服するには、親水性の組織に使用されるそれら以外の波長を有するレーザビームが、良好な結果を導く。例えば、Nd:YAGレーザの使用は、脂質と、多くの生体学的に疎水性の素材と、の除去に適している。これらの場合における除去は、主に、上記に画定されるような、レーザエネルギの直接吸収に基づいている。つまりこれは、直接アブレーションプロセスである。一方、脂肪及び脂質は、一般的に、より高い温度に耐えて、化学的により安定している。しかし、脂肪及び脂質は主に溶解し、レーザパルスの影響の下で脱離し得る。脂肪及び脂質の分解、又はそれらの炭化は、ここでは、非常に些細なプロセスである。
【0014】
上述するように、組織を切除する際の重要な課題は、推測的に、除去レーザが直面する組織のタイプが何かを知り、どのタイプのアブレーティングレーザビーム波長を、後続のレーザパルスに使用するかを決定することである。この目的のために、本発明に係るレーザ源は、例えば、高温プラズマを誘起し、いずれの好適な分析方法により分析されるデブリの形態の、少量の対象組織を除去するための、1つ又はそれ以上のサンプリングパルス、つまり、分析レーザビームの1つ又はそれ以上のパルスを送ることを提供する。分析方法により、対象組織が、1%を超える水分など、効率的な除去を誘起するのに十分な量の水分を有することが判定されると、レーザ源がアクティブにされ、識別した組織により適した、プライマリアブレーティングレーザビーム又はセカンダリアブレーティングレーザビームのいずれの1つが放射され得る。その逆もしかりで、分析した組織が、直接アブレーションのそれぞれに対して十分な水分を含んでいないことがわかると、及び/又は、その表面が疎水性である場合は、レーザ源がアクティブにされ、プライマリアブレーティングレーザビーム又はセカンダリアブレーティングレーザビームの他の1つが放射され得る。特に、レーザ源は、分析レーザビームが連続して、又は、定期的に提供され、識別した組織タイプに対応する、適切なプライマリアブレーティングレーザビーム又はセカンダリアブレーティングレーザビームが放射されるよう、作動させることができる。そのようなプロセスは、切除又は除去プロセス全体を通して継続することができる。例えば、髄質に直面する前に、大腿骨の皮質部の除去に多くのレーザパルスが必要であることを考慮すると、プライマリ又はセカンダリレーザビームのパルスのそれぞれの後に、分析レーザビームを放つ必要は必ずしもない。むしろ、髄質に直面するまで、プライマリ及びセカンダリアブレーティングレーザビームのいずれの5以上のパルス毎に分析レーザビームをレーザ発振させることで、十分とすることができる。実際に、同じ同軸の伝播進路をシェアする、波長が異なる2つ又はそれ以上のタイプのレーザビームを提供するレーザ源を有することは、異なる生体組織を切除することにおける高いフレキシビリティを提示する、多くの異なるモードのオペレーションを可能にする。
【0015】
伝播進路に関連して使用される「同軸」という言葉は、異なる光線の伝播軸間の空間的関係に関する。これは、複数のパルス状のレーザビームを有することにより起因し得る時間的関係に関する意味はない。さらに、同軸はまた、特に、比較的近い並列方向でもあり得る。
【0016】
本発明によると、明確な発光スペクトルと、明確な時間的パルス幅と、を有するパルスを持つ、同軸又は同じ伝播進路のプライマリ及びセカンダリレーザビームを生成するレーザ源は、対象組織に依存して、2つ又はそれ以上の異なる除去のモードを提供することを可能にする。特に、レーザ源は、フリーランニングモードでの、Er:YAGレーザビーム生成構成のレーザビームなどの、プライマリアブレーティングレーザビームから、フリーランニングモードでの、Nd:YAGレーザビーム生成構成のレーザビームなどの、セカンダリレーザビームにスイッチできる。頭字語「Er」は、エルビウムを表す。頭字語「Nd」は、ネオジムを表す。頭字語「YAG」は、イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAl12)を表す。フリーランニングモードにて作動するレーザは、レゾネータが、パルス短縮デバイスを有していないが、励起光源の(例えば、フラッシュランプ又はレーザダイオードの時間幅と同様の)時間的プロファイルをほぼ模倣する場合のレーザ発光を指し得る。さらに、このスイッチングは、分析レーザビームにより除去されたサンプル組織を用いて識別された組織タイプに基づくことができる。例えば、腫瘍領域を切除する際には、アクティブな腫瘍素材が広がること、又は、感染の領域から、感染性のある素材が広がること、を回避するために、より高いスポット温度を有することが好適となり得る。追加的に、Nd:YAGレーザビームは、血液の凝固を支援し、外科手術のフィールド及び進路をクリヤに維持することを助け得る。
【0017】
本発明に係るレーザ源は、少なくとも3つのレーザビームに対して、多くのレーザファイアリングシーケンス又はモードに使用できる。例えば、分析レーザビームは、プライマリ及び/又はセカンダリアブレーティングレーザビームの頻度と同じ頻度にて、最終的にシフトが少なく、互いに重ならないよう、及び、分析システムにとって、除去が行われる組織を識別するのに十分な時間があるよう、一定に放つことができる。しかし、このレーザファイアリングモードのオペレーションは、プロセス全体を遅らせる場合がある。大腿骨を横方向に切除するような場合では、ファイアリングシーケンスは、分析レーザビーム及び分析システムが、大腿骨の外部皮質部を識別すると、10のレーザパルスなどの、所与の数のレーザパルスが、分析レーザビームからの次のパルスが再度放たれる前に、アブレーティングレーザビームのいずれから放たれるよう、用意され得る。この場合、分析レーザビームの頻度又は繰り返し率は、プライマリ又はセカンダリアブレーティングレーザビームの頻度の1/10とすることができる。さらに、分析レーザビームの1つを超えるパルスを放ち、除去が行われる組織の識別が、高い精度のものであることを確かにすることができる場合もある。例えば、大腿骨を横方向に切除する場合のこの例は、皮質骨に対する正しいレーザが、髄質に直面するまで継続する、アブレーティングレーザビームのファイアリング頻度とは独立するものとできる。さらに、レーザ源は、3つのレーザビームのいずれの2つの後続のパルス間の時間が一定である必要が必ずしもないように作動させることができる。例えば、分析レーザビームにより生成されるデブリを分析するために使用される分析方法が、1秒の1/10などの、分析のためのいくらかの時間を必要とする場合、プライマリ又はセカンダリアブレーティングレーザビームは、識別した組織のタイプに依存して、レーザビームのどちらかを放つためのトリガ信号などを待つべきである。
【0018】
したがって、本発明に係るレーザ源は、異なるタイプの組織を有する、骨などの、同質でない対象組織を効率的に切除することを可能にする。より具体的には、骨が、2つのタイプの組織を有する場合、例えば、大腿骨、ここでは、1つの組織が、親水性、つまり、直接アブレーションに対してかなりの量の水分を有するものであり、他の組織が、疎水性、例えば、スプレーからの含水が、切除又は穴の表面に付着しない、及び/又は、無視できるほどに少量の水分を有する場合、異なる波長を持つパルス状のレーザアブレーティングビームを使用することが、非常に有益である。ここに提案するレーザ源では、大腿骨又は他の同様の組織を切除することは、例えば、皮質部にプライマリアブレーティングレーザビームを使用し、髄質にセカンダリアブレーティングレーザビームを使用することにより、より容易なものとできる。
【0019】
好適には、第1のビーム生成構成は、プライマリアブレーティングレーザビームを生成する利得媒質を有し、第2のビーム生成構成は、セカンダリアブレーティングレーザビームを生成する、第1の利得媒質とは異なる第2の利得媒質を有する。レーザ源を設定する際に、レーザ源の意図するアプリケーションのために、これらの利得媒質を選ぶことができる。特に、関係するタイプの組織の切除又は除去に適したアブレーティングレーザビームを生成することを可能にするために、適切な利得媒質を具現化することができる。
【0020】
第3のビーム生成構成は、分析レーザビームを生成する、それ自身の利得媒質を有することができる。この第3の利得媒質は、第1及び第2の利得媒質のいずれと同じ、又は、これらとは異なるものとすることができる。しかし、好適には、第3のビーム生成構成は、第2の利得媒質を好適に含む。このようにして、第3の利得媒質を、セカンダリアブレーティングレーザビームを生成することと、同様に、分析レーザビームを生成することと、に使用することができる。そのような実施形態では、第3の発光スペクトルはまた、第2の発光スペクトルと好適に同じである。これは、レーザ源の、特に効率的な実装を可能にする。
【0021】
好適には、第3のビーム生成構成は、ジャイアントパルスフォーマを含む。このコンテキストでは、「ジャイアントパルスフォーマ」という言葉は、ギガワットのピーク電力などの、比較的高いピーク電力を有するレーザビームパルスのフォーメーションに関する。これは、パルスコンプレッサと呼ぶこともできる。なぜなら、好適な実施形態では、ジャイアントパルスは、パルスを圧縮することにより形成されるからである。そのようなジャイアントパルスフォーマは、対象組織にあたる分析レーザビームからの結果としてのデブリの分析に特に適したレーザビームパルスを整形すること、又は、生成することを可能にする。特に、これは、すべてのタイプの組織を、非選択的に、ではあるが、比較的少量のみ除去する、比較的短いものの、高いエネルギのレーザパルスを提供することを可能にする。
【0022】
1つの好適な実施形態では、ジャイアントパルスフォーマは、アクティブなQスイッチングデバイスなどの、光電子素子を有する。そのような光電子素子又はアクティブなQスイッチングデバイスは、生体組織などの、関係する対象組織に特に適した、非常に高度なジャイアントレーザパルスを効率的に提供することを可能にする。
【0023】
別の好適な実施形態では、第3のビーム生成構成は、2つのレゾネータミラーを含み、ジャイアントパルスフォーマは、第3のビーム生成構成の2つのレゾネータミラーの1つが載置される、電気機械的なロテータを有する。レゾネータミラーが回転することにより、ジャイアントパルスは、2つのレゾネータミラーが、短時間に適切に整列された際に、比較的シンプルな手段により生成することができる。
【0024】
別の実施形態では、パッシブなQスイッチング素子又はデバイスを使用することができる。パッシブなQスイッチングについては、光度が閾値を超えると、その内部での伝達が増す材料を含む可飽和吸収体を使用することができる。その材料は、イオン添加結晶、可漂白色素、又はパッシブな半導体であってよい。吸収体のロスは、初期的には高いものの、いくらかのレーザ発振アクションを許容するには、依然として十分低い。多くの量のエネルギが、このようにして、利得媒質に蓄えられる。電力が増えるにしたがい、レーザビームが吸収体を飽和させる。これは、レゾネータのロスをすばやく減らす。これは、吸収体を、ロスが低い状態とし、蓄えられたエネルギの効率的な抽出を可能にし得る。ジャイアントパルスと呼ばれる、ピーク電力が高い、非常に短いパルスが、したがって生成される。このパルスの後に、吸収体は、その高ロス状態に戻る。
【0025】
ここで使用する「Qスイッチングモード」又は「Qスイッチング」という言葉は、内腔における、光電気機械的なプロセス、又は、レーザ光をゲーティングして、短いレーザパルスの光を生成するために、可飽和吸収体を用いて行われるプロセスに関し得る。ここでは、アクティブ及びパッシブなQスイッチングデバイスが好適である。Qスイッチングは、レーザの光レゾネータ内に可変減衰器を置くことにより達成できる。減衰器が機能していると、利得媒質を出る光は帰ってこなくなり、レーザ発振が生じることができない。この腔内の減衰は、光レゾネータのQ係数又は線質係数における減少に対応する。可変減衰器は、したがって、一般的に、この目的のために使用される際に、「Qスイッチ」と呼ばれる。高Q係数は、往復毎の低レゾネータロスに対応する。その逆もしかり。初期的に、レーザ媒質は、Qスイッチが、低Q係数を持つ光レゾネータを作る利得媒質への光のフィードバックを防ぐよう設定されている間に、励起され得る。これは、反転分布を作るが、レーザのオペレーションは、まだ生じることができない。なぜなら、レゾネータからのフィードバックがないためである。誘導放出の率は、媒質に入る光の量に依存するため、利得媒質に蓄えられるエネルギの量は、媒質が励起されると共に増え得る。自発的な放射及び他のプロセスからのロスにより、蓄えられたエネルギは、一定時間後に、いくらかの最大レベルに到達できる。媒質は、飽和した利得と言うことができる。この時点にて、Qスイッチデバイスは、低Qから高Qに迅速に変わり、フィードバックと、誘導放出による光増幅のプロセスと、が始まることを可能にする。利得媒質にすでに蓄えられている多くの量のエネルギにより、レーザレゾネータにおける光度を非常に迅速に上げることができる。これはまた、媒質に蓄えられたエネルギを比較的すぐに減少させる場合がある。最終的な結果として、レーザから出力される、高いピーク輝度を有し得る、短いパルスの光とすることができる。
【0026】
好適には、第1の発光スペクトルは、約2,900nmから約3,000nmの範囲、約2,950nmから約2,980nmの範囲、若しくは約2,960nmから約2,970nmの範囲、又は約2,964nmの最大値を有する。そのような発光スペクトルは、親水性の組織を除去することに特に効率的である。ここで使用する「親水性」という言葉は、直接アブレーションが達成できるよう、非常に多量の水分を有する、あるタイプの組織に関し得る。例えば、そのような発光スペクトルは、大腿骨などの骨の皮質部を切除すること、又は、除去することに特に適し得る。そのような発光スペクトルは、例えば、Er:YAGビーム生成構成により生成することができる。
【0027】
好適には、第2の発光スペクトルは、約1,000nmから約1,100nmの範囲、約1,050nmから約1,080nmの範囲、若しくは約1,060nmから約1,070nmの範囲、又は約1,064nmの最大値を有する。ここで使用する「疎水性」という言葉は、スプレーからの水分が、表面に本質的に付着しない、及び/又は、約1%未満などの、無視できるほどの量の水分を有する、あるタイプの組織に関し得る。そのような発光スペクトルは、例えば、Nd:YAGビーム生成構成により生成することができる。これは、大腿骨などの骨の髄質などの疎水性の組織を除去することに、特に効率的であり得る。Nd:YAGビーム生成構成の1つの利点は、それが、2つのモードにて作動可能ということであり得る。フリーランニングオペレーションでは、これは、約100μsから約400μsなどの長いパルスと、約100mJから約1Jなどの高い電力と、を作る。これは、ユニバーサル組織レーザデバイス(universal tissue laser又はUTL)デバイスにおけるセカンダリアブレーティングレーザビームにとって理想的なレーザである。
【0028】
Nd:YAGレーザ又はプライマリアブレーティングレーザビームの基本的なレーザ発振スペクトルは、疎水性の組織の除去に適した、非常に便利な赤外線(infrared又はIR)スペクトル領域に収まる、1,064nmとすることができる。同じレーザ又はレーザスペクトルを、1,064nmの、その基本的なレーザ発振スペクトルのいずれにおける分析(つまり、分析レーザビーム)に使用することができる。代替的に、第3の発光スペクトルは、好適には、約500nmから約560nmの範囲、若しくは約520nmから約540nmの範囲、又は約532nmの最大値を有する。特に、その第2のハーモニックバージョン(second-harmonic version又はSHG)における第3の発光スペクトルは、532nmのビームのスペクトルの可視部にあるものとできる。そのようなSHGは、リン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen-phosphate又はKDP)結晶などの周波数倍増結晶を使用する、特殊な条件の下で生成できる。SHG効果は、パルスピーク電力の観点から、非線形プロセスであるため、そのような可視周波数は、Nd:YAGレーザが、Qスイッチングデバイスを用いて作動している際に得られるそれらのように、レーザパルスが比較的短い(例えば、20ns未満の)際に、より効率的に得ることができる。532nmのビームの時間的プロファイルは、1,064nmのビームの時間的プロファイルと同様とすることができる、又は、それよりも若干短くすることができるが、その輝度は、基本的な輝度の何分の一かなど、さらに低くすることができる。周波数倍増結晶は通常、腔外に置かれ、腔内Qスイッチングデバイスの背後にあり、入ってくる1,063nmのビームに関して、特定の角度に調整される。レーザビームの双方は、周波数倍増結晶に対して、同軸に出現し得る。したがって、1つ又は別のレーザビームを使用するためには、2つの波長の1つをブロックするフィルタ、又は、2つの色を分ける二色性ミラー又はプリズムを使用する必要がある。
【0029】
さらに、同じ利得媒質は、μJなどの低電力パルスにおいて、約10nsから約20nsに、したがって、分析レーザビームにとって理想的に、パルスを短くする、Qスイッチングデバイスなどの、内腔光素子(つまり、光レゾネータ内)又は光電子素子を用いて機能し得る。又は、パルスが、より長い時間幅を有する場合、パルス毎のエネルギはまた、組織の除去並びにイオン化、及び/又は、デブリにおける断片の電子励起を維持できるよう、より高くあるべきである。重要なことは、パルスエネルギ/時間幅として画定されるピーク電力が、後続の段落に例示するように、高いままとなることであり得る。Nd:YAGレーザを使用することの追加的な利点は、組織の出血を、伝統的な組織炭化効果を用いることなく、必要に応じて減らすことができることである。また、アブレーティングレーザビームの前の、nsからμsなどの、短い、正確な時間フレーム内の、約2から約6などの、一式の複数のレーザパルスは、衝撃波を減らすことができる、及び/又は、表面を用意することができる、及び、切除速度を上げることができる。
【0030】
レーザによる除去、同様に、デブリにおける断片のイオン化における、潜在的な関連のパラメータは、パルス毎のエネルギだけでなく、ピーク電力を判定する、パルスの時間幅である。例えば、200μsに広がる1Jのエネルギを有する、フリーランニング中のEr:YAG又はNd:YAGレーザのパルスの、上記の典型的な場合について、ピーク電力は、5kWの量となる。一方、例えば、15nsに広がる100mJのエネルギを有する、QスイッチされたNd:YAGレーザについて、ピーク電力は、6.7MWである。これは、同じレーザがフリーランニングモードにて実行される際のものの千倍である。これらの値を、10Wにて、こちらもまた10Wの非常に低いピーク電力にて作動する連続波(continuous wave又はcw)レーザのそれらと比較することもまた、重要となり得る。これは、cwレーザが、レーザによる除去に適していないという事実を説明する。
【0031】
骨の切除に関係する外科的アプリケーションについて、先述する発光スペクトルを持つパルス状のアブレーティングレーザビームを使用することは、非常に有益なものとすることができる。したがって、上記の発光スペクトルを持つアブレーティングレーザビームを伝播させるレーザ源は、皮質部に対してプライマリアブレーティングレーザビームを使用し、髄質に対してセカンダリアブレーティングレーザビームを使用することにより、大腿骨などの骨を容易に切除することを可能にする。
【0032】
好適には、ビーム配向光学系は、プライマリアブレーティングレーザビームと、セカンダリアブレーティングレーザビームと、分析レーザビームと、を組み合わせるよう配置されているビーム組み合わせ要素を含む。一般的に、異なる波長を持つビームを同軸に組み合わせるための、考えられる方法は、3つある。第1の方法は、二色性ミラーを介して組み合わせることに関係する。このミラーは、より高い波長を持つレーザビームを反射し、より低い波長を持つレーザビームを伝達する。第2の方法は、光機械的なデバイスに関係する。ここでは、例えば、1つ又は2つの調整可能ミラーが、電気機械的なスライド上に載置される。このスライドは、ビームのそれぞれを選択することができる、2つの位置を有することができる。第3の方法は、検流計デバイスなどの回転軸上に載置されたミラーを用いて、ビームを組み合わせることに関係する。いずれの方法であっても、異なるレーザ源の異なる発散をそれぞれマッチさせ、個別のレーザビームのそれぞれを平行にし、ビームを、個別に、レーザビームの適切な平行配列のための異なるミラーに偏向させることに必要な、いくつかの光機械素子がある。いくつかの実施形態では、ビーム混合構造に伝達される分析レーザビームを有することが好都合となり得る。ビームが、同軸に、又は、並列に組み合わせられ、多くの場合において、ビームが、パルスからなることを考慮する場合、異なるパルス状のビームは通常、同じ空間において、同時に伝播しない。この場合、同軸又は並列のコンセプトは、同じ空間を通して、若干異なる時間に伝播する2つのパルス状のビームを指すことができる。
【0033】
好適には、第1の時間的パルス幅と、第2の時間的パルス幅と、は、約1μsから約1msの範囲、又は、約150μsから約300μsの範囲にある。そのような、比較的長いレーザパルスは、対象組織を切除又は穴あけするために組織を除去することに、特に適切なものとすることができる。
【0034】
好適には、第3の時間的パルス幅は、約1psから約100nsの範囲、又は、約1nsから約50nsの範囲にある。そのような、比較的短いレーザパルスは、Ca++、Na、Kなどのイオン、同様に、他のイオン、分子、又は組織の断片が、同時に電子的に励起され、分析の目的に、例えば、レーザ誘起ブレイクダウン分光法(laser-induced breakdown spectroscopy又はLIBS)により、それに悪影響を及ぼすことなく、容易に検出されるよう、高温にある組織の短いかけらを除去することに特に適し得る。
【0035】
好適には、レーザ源は、第1のビーム生成構成、第2のビーム生成構成、及び/又は第3のビーム生成構成のための光源として、少なくとも1つのフラッシュランプを含む。これにより、ビーム生成構成のそれぞれに、それ自身のフラッシュランプを装備することができる。又は、より効率的には、いずれのビーム生成構成を組み合わせるために、フラッシュランプを使用することができる。特に、1つフラッシュランプを、第1のビーム生成構成のための光源として提供することができ、別の1つのフラッシュランプを、第2のビーム生成構成と、第3のビーム生成構成と、の双方のための光源として提供することができる。
【0036】
そのようなフラッシュランプは、レーザパルスが放射されるよう、光パルスを利得媒質に提供することを可能にする。これは、感熱性材料に関連して特に有益である。例えば、単一のレーザパルスの形状、時間的幅、及びエネルギ量を、骨組織などの、いずれのタイプの組織を除去することに適切なものとすることができる。FLは、特定の場合において、レーザダイオードなどの他の励起光源と比較して、いくらかの不都合な点を有する場合があるが、単一の励起光源が、感熱性材料に対して実施できるような場合など、比較的低いパルス繰り返し率を用いて作動する場合、典型的には、FLの、ランプに特有の利点が優勢となる。
【0037】
好適には、レーザ源は、第1のビーム生成構成、第2のビーム生成構成、及び/又は第3のビーム生成構成のための光源として、少なくとも1つのレーザダイオードを含む。そのような、レーザダイオードにより励起されるレーザは、上記のフラッシュランプに対する代替物とすることができる。これは、いくつかのアプリケーションにおいて有益とすることができる。
【0038】
効率的な実施形態では、第3のビーム生成構成は、第1のビーム生成構成又は第2のビーム生成構成の構成要素を含む。例えば、第3のビーム生成構成は、第1又は第2のビーム生成構成のいずれと同じ利得媒質を含むことができる。
【0039】
別の態様では、本発明は、レーザデバイスである。特に、レーザデバイスは、上述するようなレーザ源と、ビーム配向光学系を調整するよう構成されているコントロールユニットと、を含む。そのようなレーザデバイスは、本発明及びその好適な実施形態に係るレーザ源に関連して上述するプロセス、効果、及び利点を効率的に実装し、達成することを可能にする。
【0040】
好適な実施形態では、レーザデバイスは、対象組織にあたる分析レーザビームにより生成された、プルームのデブリにおける組織タイプを識別するよう適合されているプルーム分析アレンジメントをさらに含む。
【0041】
ここで使用する「プルーム(plume)」という言葉は、レーザによる除去により誘起される燃焼又は炭化プロセスの産物に関することができ、臭気分子、煙、エアロゾル、及びデブリと呼ばれるものを含むことができる。より具体的には、レーザによる除去のコンテキストにおいて、プルームは、対象組織にあたったレーザビームにより排出されたいずれの物質を、デブリと簡単に言う、又は、これを含む。その結果として、プルームに関連して、「デブリ(debris)」という言葉は、対象組織の、揮発性の、小さい固体のかけら、煙、エアロゾル、臭気分子など、対象組織の除去からもたらされるいずれの分子に関し得る。
【0042】
ここで使用する「物質(substance)」という言葉は、単一の物質、複数の物質の混合物、又は、所与の数の質量若しくは分子のパターン、若しくは、いずれの分光パターン、などに関し得る。
【0043】
現代の外科手術では、外科医が、手術中に利用可能な、すべての考えられる情報を得、手術時間と、最も可能性のあるものとして、第2の治療介入と、を減らすよう、治療介入中に組織を「オンライン」にて分析する必要性が高まっている。例えば、腫瘍の精管切除術では、治療介入中の組織の情報が、健康な組織と、がんに侵された組織と、を区別するために必要である。例えば、腫瘍の認識において、正確な腫瘍境界の検出は、骨内の腫瘍の除去などにおける、外科的治療介入中の主な課題を表す。そのような場合では、外科医は、切除している、腫瘍のまわりの組織が健康であるか、又は、がんに侵された細胞を含むか、を知る必要がある。このタスクのために、多くの生体検査により通常行われる分析はとても遅く、外科医は、がんのある組織をより確実に除去するために、追加的な組織を切除することを選択する。実際に、近年の技術的進歩にも関わらず、生体検査には時間がかかり、やや煩わしい手順となっている。さらに、標準的な生体検査は時に、手術後に行われ、生体検査の結果によっては、後続の外科的治療介入に進まなければならない場合がある。換言すると、そのようなプロセスは、生体検査の結果によって、外科医及び患者が望むように、治療介入中に対処することを不可能にする。したがって、切除中のオンライン分析は、腫瘍のある組織のみを切除し、外科手術時間を短縮するために必要な情報を与えることができる。
【0044】
同様に、レーザデバイスのプルーム分析アレンジメントは、最適なアブレーティングレーザビームを選択できるよう、対象組織の、迅速で、信頼性の高い識別を提供することを可能にする。特に、プルーム分析アレンジメントをレーザデバイスに実装することにより、いずれの外部分析手段などから独立したオペレーションを提供できる。
【0045】
そのようなレーザデバイスの背後にあるオペレーションの原理は、分析レーザビームが、対象組織からのデブリを伴う、プルーム、又は、マイクロプラズマを生成するということである。このプルームは、すべてのレーザパルスが対象組織にあたった後に、入ってくるアブレーティングレーザビームの略方向に沿って、反対方向に伝播する。そのようなデブリは、分子、原子、細胞の断片、同様に、デブリの形態のイオン及び電子を含む。デブリの組成は、除去が行われた組織を示すものである。したがって、これは、除去された組織のタイプの性質、又は、「シグニチャ」とすることができる。
【0046】
これにより、コントロールユニットは、好適には、プルーム分析アレンジメントにより識別された組織タイプに依存して、レーザ源の第1のビーム生成構成、又は、レーザ源の第2のビーム生成構成のいずれかを自動的にアクティブにするよう構成されている。より具体的には、プルーム分析アレンジメントは、好適には、親水性の組織タイプと、疎水性の組織タイプと、を識別するよう適合されている。
【0047】
このようにして、レーザデバイスは、医療的治療介入、特に、外科的治療介入中に、親水性の組織と、疎水性の組織と、を正確に切除することと、組織を分析することと、を、比較的迅速で正確な様式にて、好適には、外科的治療介入の時間内に、可能にする。提案するレーザデバイスは、光学的な生体検査により、手術後の、時間のかかる生体検査の必要性を除外し得、したがって、第2の治療介入を回避し得る。
【0048】
プルーム分析アレンジメントは、レーザスペクトロスコープを含むことができる。レーザスペクトロスコープは、レーザ誘起蛍光(laser induced fluorescence又はLIF)スペクトロスコープ、コヒーレント反ストークスラマン散乱スペクトロスコープ(coherent anti-Stokes Raman scattering spectroscope又はCARS)、レーザ光音響スペクトロスコープ(laser photo-acoustic spectroscope又はLPAS)、レーザ誘起ブレイクダウンスペクトロスコープ(laser induced breakdown spectroscope又はLIBS)、原子発光スペクトロスコープ(atomic emission spectroscope又はAES)、AES/LIBS、共鳴多光子イオン化(resonance-enhanced multi-photon ionization又はREMPI)スペクトロスコープ、質量スペクトロスコープ(mass spectroscope又はMS)、イオン移動度スペクトロスコープ(ion mobility spectroscope又はIMS)などの、分子が、それらの衝突断面積により分けられるシステム、又は弾性散乱(elastic scattering又はES)スペクトロスコープを含むことができる。特定のレーザスペクトロスコープの選択は、目前の具体的な問題に依存し得る。また、いくつかのアプリケーションでは、複数のそれらのレーザスペクトロスコープを、1つの、単一のレーザデバイスに組み合わせることが好適であり得る。例えば、光干渉断層撮影(optical coherence tomography又はOCT)と、LIBSと、質量分析法(mass spectrometry又はMS)と、の組み合わせが、特に有益なものとなり得る。
【0049】
レーザスペクトロスコープは、プルームのデブリにおける物質を正確に識別することと、それらを定量化することと、を可能にする。そのようなスペクトロスコープはまた、特定のレーザビームを用いて、リアルタイムにて、発生したプルームを厳密に調査することをも可能にする。したがって、これは、物質を、ほぼリアルタイムの時間に、又は、少なくとも、治療介入の時間内に識別できるよう、比較的迅速な分析を可能にする。「リアルタイム」という言葉は、この点について、レーザデバイスのオペレーションに関し得る。ここでは、パルス状のアブレーティングレーザビームが、いずれの制限なく提供され、プルームの評価が、オペレーション中に行われる。レーザデバイスのオペレーション中の、本質的な遅延、特に、中断が防がれる。
【0050】
レーザスペクトロスコープを有するレーザデバイスはまた、プルームにおける、排出されたデブリの代わりに、たった今除去を行った領域の表面に残る組織を判定又は分析することにも使用することができる。具体的な実施形態では、プルーム分析アレンジメントが、残っている組織のみを分析することが可能であり、対象組織を除去するレーザビームにより生成された、プルームのデブリにおける物質が、適切に識別されない、ということでさえもあり得る。
【0051】
好適には、コントロールユニットは、プルーム分析アレンジメントにより識別された組織タイプが親水性の組織タイプであれば、レーザ源の第1のビーム生成構成をアクティブにし、プルーム分析アレンジメントにより識別された組織タイプが疎水性の組織タイプであれば、レーザ源の第2のビーム生成構成をアクティブにするよう構成されている。これにより、コントロールユニットは、好適には、プルーム分析アレンジメントにより識別された組織タイプが、親水性の組織タイプ又は疎水性の組織タイプであれば、第1のビーム生成構成と、第2のビーム生成構成と、を、同時にアクティブにするよう構成されている。
【0052】
好適には、コントロールユニットは、対象組織を除去し、プルームを伴うデブリを生成するために、レーザ源の第3のビーム生成構成をアクティブにするよう構成されている。このようにして、対象組織の分析を特に有益なものとすることができる。
【0053】
好適には、レーザデバイスは、プライマリアブレーティングレーザビーム又はセカンダリアブレーティングレーザビームがあたった対象組織を冷却するよう構成されている冷却システムをさらに含む。
【0054】
好適には、コントロールユニットは、プライマリアブレーティングレーザビームと、セカンダリアブレーティングレーザビームと、分析レーザビームと、のパルスを同期させるよう構成されている。コントロールユニットは、追加的に、種々の他のタスクを行うよう構成することができる。特に、コントロールユニットは、レーザデバイス全体を、又は、その多くの部位を制御するセントラルコントロールユニットとすることができる。コントロールユニットは、コンピュータ又は処理ユニット、データストレージ、及びメモリなどを含むことができる。
【0055】
さらに別の態様では、本発明は、上述するようなレーザデバイスを用いて組織を切除する方法である。この方法は、(i)レーザ源の配向光学系がレーザ源のレーザビームを配向する、レーザデバイスのオペレーションのエリアに組織を配置することと、(ii)レーザデバイスのレーザ源が、第3のレーザビーム生成構成により生成された分析レーザビームを伝播させることと、(iii)組織にあたる分析レーザビームにより生成された、デブリのプルームにおける、主たる組織タイプを識別することと、(iv)識別した主たる組織タイプにあう、第1のビーム生成構成又は第2のビーム生成構成のいずれかを選択することと、(v)レーザ源の選択された第1のレーザ生成構成又は第2のレーザ生成構成を用いて、組織を除去することと、を含む。
【0056】
そのような方法は、本発明及びその好適な実施形態に係るレーザデバイスに関連して上述するプロセス、効果、及び利点を効率的に実施し、達成することを可能にする。
【0057】
これにより、主たる組織タイプを識別することと、第1のビーム生成構成又は第2のビーム生成構成を選択することと、は、好適には、レーザデバイスのプルーム分析アレンジメントにより自動的に実行される。
【0058】
この方法は、好適には、除去ジオメトリを予め定めることを含み、対象組織は、レーザ源の選択された第1のレーザ生成構成又は第2のレーザ生成構成により、その除去ジオメトリに沿って除去される。これにより、切除ジオメトリを、一連の隣接する対象スポットにより予め定めることができ、レーザパルスのそれぞれが、その一連の隣接する対象スポットの、予め定めた対象スポットにて、対象にあたる。2つの後続のレーザパルスのそれぞれは、一連の隣接するスポットの2つの異なる対象スポットにある対象にあたることができる。これら2つの対象スポットは、互いに隣接しない。また、単一の除去パルスが、対象の組織全体を切除することに十分でない場合に直面する、最も一般的な場合について、プロセスは、外科的プロセスが完了するまで、同じ進路を多数回スウィープすることにより、繰り返すことができる。
【0059】
依然としてさらに、この方法は、インビトロ法とすることができる、又は、代替的に、インビボ法とすることができる。
【0060】
本発明に係るレーザ源、本発明に係るレーザデバイス、及び本発明に係る方法の態様を、例示的実施形態によって、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】その含水、同様に、分析している組織の識別に依存して、組織の除去のための、本発明に係る方法の実施形態を行うことに適した、本発明に係るレーザデバイスの実施形態における、本発明に係るレーザ源の実施形態のセットアップの模式図を示す。
図2図1のレーザデバイスのさらなる構成要素の模式的詳細図を示す。
図2a図1のレーザ源により生成された2つのアブレーティングレーザビームの、互いのタイミングを示し、ここで、Δtは、代替的なモードにおける、それらの間の時間シフト又は遅延である。
図2b】他のアブレーティングレーザビームの2つのレーザショット後に、1つのアブレーティングレーザビームが放たれている、図1のレーザ源により生成された2つのアブレーティングレーザビームのタイミングを示す。
図2c図1のレーザ源により生成された分析レーザビームのみが放たれている際のタイミングを示す。
図2d】他のアブレーティングレーザビームの2つのレーザショット後に、1つのアブレーティングレーザビームが放たれている、図1のレーザ源により生成された2つのアブレーティングレーザビームのタイミングを示す。
図3a図1のレーザ源と組み合わせて使用される、2つの考えられるパワーサプライの模式図を示す。
図3b図1のレーザ源と組み合わせて使用される、2つの他の考えられるパワーサプライの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下の説明では、利便性を理由として特定の用語を使用するが、これらは本発明を制限することを意図しない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下(under)」、及び「上(above)」という用語は、図面における各方向を示す。用語としては、明確に説明する用語、それらの派生語、及び、同様の意味を持つ用語が含まれる。また、「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」などの空間的に相対的な用語を使用して、図面に示すような、1つのエレメント又は特徴の、別のエレメント又は特徴との関係を説明する場合がある。これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す位置及び向きに加えて、使用中又は作動中の各デバイスの異なる位置及び向きを含むことを意図する。例えば、図面内のデバイスの上下が逆になっている場合、他のエレメント又は特徴の「下(below)」又は「下(beneath)」と説明されているエレメントは、その他のエレメント又は特徴の「上(above)」又は「上(over)」となる。したがって、「下(below)」という例示的な用語は、上(above)及び下(below)の位置及び向きの双方を含み得る。各デバイスは、他に(90度回転されて、又は、他の向きに)向けられてよく、ここで使用する空間的に相対的な記述子によりしたがって解釈されてよい。同様に、種々の軸に沿う動き、及び、それらを中心とする動きの説明は、種々の特別なデバイスの位置及び向きを含む。
【0063】
種々の態様及び理解を助けるための実施形態の図面及び説明において繰り返しを回避するため、多くの特徴が、多くの態様及び実施形態に共通することが理解されるべきである。説明又は図面からの、ある態様の省略は、その態様が、その態様を組み込む実施形態から欠落していることを暗示しない。その代わりに、その態様は、明確にするためや、冗長な説明を回避するために省略されてよい。このコンテキストにおいて、以下は、本明細書の他の部分にも言える:図面を明確にするために、図面が、本明細書の直接関連する部分に説明されていない参照符号を含む場合、それは、以前又は以降の説明セクションに付託される。さらに、明快さのために、図面において、ある部分のすべての特徴に参照符号が提供されていない場合、それは、同じ部分を示す他の図面に付託される。2つ又はそれ以上の図面内の同じ番号は、同じ又は同様のエレメントを表す。
【0064】
図1は、本発明に係るレーザ源101の実施形態を装備し、本発明に係る方法の実施形態を実施する、本発明に係るレーザデバイス100の実施形態を示す。レーザデバイス100はまた、以下では、ユニバーサル組織レーザデバイス(universal tissue laser device)100又はUTLデバイス100とも呼ぶ。
【0065】
レーザ源101は、第1の利得媒質としてのEr:YAGソリッドステートロッド111を励起するよう配列されている第1のフラッシュランプ(FL)112と、Er:YAGソリッドステートロッド111がはめ込まれている2つの第1のレゾネータミラー113と、を含む。第1のフラッシュランプ112と、Er:YAGソリッドステートロッド111と、2つの第1のレゾネータミラー113と、は、共に、第1のビーム生成構成110を形成する。これは、第1のレーザ110とも呼ぶ。第1のビーム生成構成110は、以下により詳細に説明する、第1の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状のプライマリアブレーティングレーザビーム162を生成するよう適合されている。
【0066】
レーザ源101は、第2の利得媒質としてのNd:YAGロッド121を励起するよう配列されている第2のフラッシュランプ(FL)122と、Nd:YAGロッド121がはめ込まれている2つの第2のレゾネータミラー123と、光電子素子として、Qスイッチングデバイス126と、をさらに含む。第2のフラッシュランプ122と、Nd:YAGソリッドステートロッド121と、2つの第2のレゾネータミラー123と、は、共に、第2のビーム生成構成120を形成する。これは、第2のレーザ120とも呼ぶ。さらに、同じ第2のフラッシュランプ122と、Nd:YAGソリッドステートロッド121と、2つの第2のレゾネータミラー123と、は、Qスイッチングデバイス126と共に、第3のビーム生成構成120を形成する。これは、第2又は第3のレーザ120とも呼ぶ。第2のビーム生成構成120は、以下により詳細に説明する、第1の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つ、パルス状のセカンダリアブレーティングレーザビーム163を生成するよう適合されている。第3のビーム生成構成120は、以下により詳細に説明する、第3の発光スペクトルと、第1の時間的パルス幅より短く、第2の時間的パルス幅より短い第3の時間的パルス幅と、を有するパルスを持つパルス状の分析レーザビーム161を生成するよう適合されている。
【0067】
レーザ源101は、プライマリアブレーティングレーザビーム162と、セカンダリアブレーティングレーザビーム163と、分析レーザビーム161と、を整列させ、レーザ源101が、これら3つのレーザビーム160を同じ伝播進路に沿って伝播させるよう適合されているビーム整列要素として、複数のミラーを持つビーム配向整形光学系125を追加的に装備する。ビーム配向光学系125は、異なる発散、又は、プライマリアブレーティングレーザビーム162及び分析レーザビーム161を修正するためのビーム整形光学系171と、組み合わせられたセカンダリ除去及び分析レーザビーム161/163を、プライマリアブレーティングレーザビーム162と組み合わせるための、第1のビーム組み合わせ要素170と、をさらに有する。
【0068】
レーザ源101とは別に、UTLデバイス100は、中央パワーサプライ130と、中央冷却システム140と、UTLデバイス100と、レーザ源101をガイドするロボットなどのさらなる構成要素と、の間の通信のためのバス200と、を含む。
【0069】
UTLデバイス100の追加的構成要素を図2に示す。特に、UTLデバイス100は、コントロールユニット190と、プルーム分析アレンジメントとして、分析ユニット180と、ビーム分割ユニット210と、ビーム焦点合わせ要素211と、Qスイッチングデバイス126のための電子機器132と、をさらに含む。コントロールユニット190は、冷却システム140と、パワーサプライ130と、分析ユニット180と、レーザ源101をガイドするロボットなどの外部構成要素と、に、バス200を介して接続されている。電子機器132は、UTLデバイス100全体に電力を供給するパワーサプライ130に埋め込まれている。
【0070】
ビーム分割ユニット210は、伝播進路に位置する。これは、3つのレーザビーム160を、ビーム焦点合わせ要素211に向けて配向するよう配列されている。それらはここで、焦点が合わせられ、対象組織230に向けて配向される。分析レーザビーム161の、対象組織230との相互作用により、対象組織からの、デブリに変換された組織の断片のいくつかからの、例えば蛍光などの、反射した、又は、放射された光は、光路に沿って戻るようガイドされ、反対方向に伝播し、分析ユニット180により捕らえられる。この光は、分析光164と呼ぶ。これは、分析ユニット180におけるLIBSに使用される。分析ユニット180により捕らえられた分析光164のリアルタイム分析の結果は、コントロールユニット190、及び/又は、除去プロセス又は他のデバイスをさらに制御する他の構成要素により、さらに使用される。
【0071】
ビーム分割ユニット210は、異なる光路を、共線又は並列など、互いに適切に整列させるために、ミラー、二色性ミラー、又はレンズなどの、複数の光機械素子からなることができる。ビーム焦点合わせ要素211は、レンズシステム、反射光学系、又はそれら双方の組み合わせ、とすることができる。好適には、反射光学系として、スキャナミラーが、切除レーザビームと、撮像レーザビームと、の焦点を合わせるよう適合されている。これにより、スキャナミラーは、整列及び制御を簡略にできる、移動可能式スキャニングユニット上に載置される凹状のミラーとすることができる。そのような反射光学系設計は、異なる波長を使用する際にもロスが小さく、色収差がないという利点をさらに有する。このようにして、レーザ除去デバイスの、特定の、効率的なオペレーションが可能となる。
【0072】
分析レーザビーム161は、1,064nmの最大波長を有し、高いエネルギの、短いパルス、つまり、約10nsの時間的幅を有するパルスを供給するために、Qスイッチングデバイス126を使用して操作される。そのような分析レーザビーム161は、分析ユニット180内のレーザ誘起蛍光(laser induced fluorescence又はLIF)により好都合に分析できる、デブリにおける分解産物のいくらかを電子的に励起する高温プラズマを作る。その目的のために、対象組織230にあたる分析レーザビーム161からの、反射した光は、分析光164として、分析ユニット180にガイドされる。さらに、UTLデバイス100はまた、レーザ誘起ブレイクダウン分光法(laser induced breakdown spectroscopy又はLIBS)を用いる分析を適用する。特に、対象組織230上にタイトにその焦点が合う分析レーザビーム161は、プルームを生成する。この中では、対象組織が、生体組織、特に、骨組織である場合に、デブリが、Ca++、Mg++、Na、K、H、O-のイオンだけでなく、他のイオンのいくらかをも有する。これらのイオンは、スペクトルの可視部において、長寿命の、減衰する発光を有する。これは、分析ユニット180において、LIBSを使用して容易にモニタできる。プルームのデブリにおいて検出可能な他の元素は、Fe+++であり、他のイオンも検出可能である。そのように励起された元素の発光強度の比率は、組織のタイプに相互に関係する。識別した組織のタイプに基づき、コントロールユニット190は、アブレーティングレーザビーム162、163のどれを使用するか選択する。LIBS表面分析について、分析レーザビーム161の短いレーザパルスは、元素発光スペクトルを生成することに特に効率的である。しかし、そのようなレーザが、典型的には、ns又はもっと短いパルス内の、少なくとも3,000ケルビンのプラズマを生成できる場合には、他の波長を持つ他のレーザビームも、同じ目的に使用することができる。なぜなら、それらは、対象組織にあまり破壊をもたらさない場合があるからである。
【0073】
原理上は、LIBSは、固体、液体、又は気体などの、その物理的状態に関わらず、いずれの物質を分析できる。なぜなら、すべての元素は、十分に高い温度まで励起されると、特性周波数の光を放つからである。分析する素材の成分が既知であれば、LIBSを使用して、構成元素のそれぞれの相対存在量が評価され得る、又は、不純物の存在がモニタされ得る。LIBSプロセス中には、比較的少量の素材が消費されるため、本技術は、本質的に、破壊をまったくもたらさないか、最低限の破壊しかもたらさないものと見なされ、対象における、1ワット未満の合計平均電力により、除去サイト周辺を加熱することはほぼない。LIBSはまた、数秒の間に結果を導く非常に迅速な技術でもあり、目前の目的、つまり、リアルタイムの目的に特に有益なものとなる。LIBSは、完全な光学技術であり、試料への光学的アクセスのみを必要とする。また、光学的な、非侵襲及び非接触の技術であることから、LIBSは、UTLデバイス100において実施されることに特に適し、効率的なものとなる。
【0074】
技術的には、LIBSは、1つ又は異なるレーザ波長による二重レーザパルスにより行うことができ、ここでは、レーザパルスの双方の間の遅延は、5μs以下の範囲にある。第1のレーザパルスは、きれいで乾いた表面を作るためにのみ使用される一方、第2のパルスは、純然たる組織表面を分析するために使用される。低輝度Er:YAGレーザパルスをフリーランニングモードにて使用し、生体液及び水分を除去する一方、第3のレーザ120のQスイッチングデバイス126をアクティブにすることからの、後続のレーザ短パルスは、純然たる対象組織230にあたる。
【0075】
UTLデバイス100は、その分析レーザビーム161と共に、アブレーティングレーザビーム162、163を用いての後続の切除の前に、組織表面の分析を可能にする。また、プライマリ又はセカンダリアブレーティングレーザビーム162、163のいずれを用いての切除中、分析レーザビーム161の短い分析パルスをいつでも使用して、例えば、LIBSを適用する分析180により好都合に分析される適切なデブリを生成できる。コントロールユニット190は、分析ユニット180により識別された組織タイプにしたがって、適切なアブレーティングレーザビーム162、163をいつでも選択し得る。
【0076】
人の硬組織、特に、骨組織などの物質を除去するために使用されるレーザの中で、水分に強力に吸収される波長である、2,964nmにて発光する固体状のエルビウム(Er)のレーザが、種々の技術的理由に最も適するものとして台頭している。特に、それらは、それらの2,964nmの波長の輝線での水の高吸収を、医療デバイス100に統合して小型化する可能性と、比較的低いサービス要件と、と共に、提供することができる。したがって、このタイプのレーザが、第1のビーム生成構成110において具現化されている。
【0077】
人の硬組織、特に、骨組織などの物質の除去に使用される、同様の利点を有する他のレーザは、同様の波長にて発光する、固体状のホルミウム(Ho)のレーザであるが、これらの後者のレーザは、内科医学に最も適するものとわかっている。なぜなら、これは、例えば、内視鏡を用いて、体内にレーザ光をもたらすために使用される導波管との使用が容易であるからである。Erレーザは、Hoレーザよりも、空中などの自由空間における光の伝播について、観血手術により適している一方、Hoレーザは、例えば、侵襲性が最小限の外科的治療介入に適している。なぜなら、その光が、いずれのタイプの光ファイバ内に発光され得るからである。
【0078】
第1の利得媒質111及び第2の利得媒質121においてそれぞれ採用される、Er:YAG結晶及びNd:YAG結晶、ここで、YAGは、イットリウムアルミニウムガーネット(yttrium aluminium garnet又はYAG=Y3Al5O12)を表す、は、第1及び第2のフラッシュランプ112、122を用いて励起されるが、代替的に、レーザダイオード(laser diode又はLD)を用いても励起され得る。これらは、パルス持続時間を短くするために、フラッシュランプにより励起されるQスイッチされたレーザにしばしば使用される。本発明のコンテキストにおいて、Nd:YAGレーザは、a)第2のビーム生成構成により具現化されるように、励起FLの時間幅に主に依存して、マイクロ秒の範囲における、比較的長いパルスを作る、フリーランニングモードと呼ばれるモードと、同様に、b)第3のレーザビーム生成構成により具現化されるように、ナノ秒の範囲における、短いパルスを生成する、Qスイッチモードと、の双方に使用される。第1のビーム生成構成により具現化されるように、Er:YAGレーザは、100マイクロ秒を超えるパルスを供給するフリーランニングモードにおいて、排他的に使用される。
【0079】
LDにより励起されるLD-Er:YAG及びNd:YAGレーザは、エネルギを伝え、FLにより励起される(つまり、FL-Er:YAG)際のものとは反転する分布を作ることにおいて、より効率的なものとすることができる。これらは、それらの光学系、同様に、それらの電子機器に関して、小型化が容易である。また、LDにより励起されるEr及びNdレーザは、10から20Hzにて通常作動する、FLにより励起されるレーザよりも、kHzの繰り返し率までなどの、高い繰り返し率にて作動させることができる。これらレーザの双方は、フリーランニング又はQスイッチモードにおいて作動させることができる。本発明のコンテキストにおいて、FL励起されるレーザが使用される。
【0080】
高いパルス状のエネルギのために、FL112、122が使用される。これらはむしろ、効率的ではない。なぜなら、これらは、利得媒質における熱として、エネルギの大半が無駄となる、広域スペクトルの光を作るからである。一方、DLは、シャープな波長の発光を有し、したがって、熱の形態で失われるエネルギは少ない。
【0081】
まとめると、FL-Er:YAGレーザの利点は、比較的高い励起電力(特に、ピーク電力)を生成でき、生成される励起電力の、ワット毎の価格は比較的低く、ランプは適正に頑丈であり、例えば、電圧又は電流のスパイクの影響を受けない、ということである。それらの不都合な点は、寿命が比較的限られており(通常は、約5百万回のショットの点灯を単位として、数百、若しくは、最大で数千の運転時間)、レーザの光変換効率に対する電気エネルギが比較的低く(典型的には、最大で数パーセント)、電気パワーサプライは通常、高電圧を伴い、これは、医療デバイスについては、安全に関する追加的な課題を提起する、ということである。低変換効率は、より高い電力消費だけでなく、高熱負荷をももたらし、これらは、よりパワフルな冷却システムを必要とし得る。
【0082】
特に、人又は動物の組織除去の目的のコンテキストにおいて、FL-Er:YAGに比較して、LD-Er:YAGの不都合な点は、低品質なレーザビーム(つまり、より高いM2)、これは、焦点を合わせることを比較的難しくする、と、例えば、切除する骨などの、組織の壁に残る熱となる、変換されるそれと比較して、デブリに変換される電磁エネルギの比率を下げる、長いパルスにおける、比較的低いピーク電力と、である。
【0083】
特に、フリーランニングFL-Er:YAGの、特定の限度内の、LD-Er:YAGと比較しての利点は、前者のレーザは、400μs未満などの、比較的短いパルスの中で、長い時間ウィンドウを用いて制御でき、これは、壁内を通る熱に関して、デブリに変換される電磁エネルギの比率の向上を、例えば、低ピーク電力において、同じ合計エネルギ(例えば、1ms又はさらに長い時間幅を有するパルスにおいて、10W)を有するLD-Er:YAGと比較して、より長いパルス幅により、可能にし、例えば、骨組織を切除する際の、組織の壁に残る熱と比較して、そのエネルギの大部分が流れる、ということであり得る。
【0084】
レーザの冷却は、多くの場合において、第1及び第2のレーザ110、120の1つのみが、同時にアクティブとなることを考慮して、単一の冷却システム140により具現化される。冷却の配管はしたがって、一直線に繋がれる。つまり、冷却液は、まず、レーザ110、120の内の1つを通り、続いて、レーザ110、120の内の他の1つを通る。
【0085】
上述するように、UTLデバイス100は、バス200を介してUTLデバイス100と通信する、医療デバイス、又は、いずれのデバイスの一部として配置するために、ロボディックデバイス、又は、いずれの他のアクチュエーティングデバイス上に載置できる。これにより、UTLデバイス100は「スレーブ」として構成でき、医療デバイスを「マスタ」として構成できる。
【0086】
図2aから図2dは、考えられるファイアリングシーケンスを用いる、種々のモードのオペレーションの模式図を示す。図2aでは、少量のデブリを用いてプルームを生成し、LIBSを具現化する分析ユニット180を用いて、直面する組織の種類が何であるかを判定するための、分析レーザビーム161のパルスがある。この情報に依存して、プライマリ及びセカンダリアブレーティングレーザビーム162、163のいずれの1つの単一のパルスが放たれる。分析レーザビーム161のパルス、Δτ、と、アブレーティングレーザビーム162、163のいずれのパルスのそれらと、の間の時空間は、同じ繰り返し率、つまり、同じ頻度Δτ(1)である。
【0087】
しかし、直面する組織の量が、多くのアブレーティングレーザビーム162、163のパルスを通して変わらないことを考慮して、ユーザは、図2bに示すように、より長い時間Δτ(2)毎に間隔が空く、さらにより低い繰り返し率にて分析レーザビーム161を放つことを選び得る。そのような場合では、分析レーザビーム161の繰り返し率、Δτ(2)、は好都合に選ばれ得るが、アブレーティングレーザビーム162、163、Δt(1)、のそれの等しい一部とは必ずしもならない。
【0088】
図2cは、図2bに示すものと同様の場合を示し、プライマリアブレーティングレーザビーム162を用いての除去から、セカンダリアブレーティングレーザビーム163への遷移を表示する。
【0089】
図2dは、分析及びアブレーティングレーザビーム161、162、163のいずれの繰り返し率が一定でないファイアリングアレンジメントに対応する。そのような状況は、分析ユニット180が、プルームにおけるデブリの組成、したがって、除去が行われた組織のタイプは何か、を判定することに、より多くの時間を必要とする場合に直面し得え、したがって、パルスのそれぞれが、異なる時空間Δτを有することとなる。
【0090】
図3aは、2つの個別の電源回路からなるパワーサプライ130の、簡略化した模式的概要を描く。1つの回路130.6は、プライマリ又は第1のレーザ110用であり、別の回路130.7は、セカンダリ又は第2のレーザ120用である。追加的な第3の回路132は、Qスイッチングデバイス126を制御するために使用される。3つの回路すべては、パワーサプライコントローラ130.5により制御される。これはまた、冷却システム140をも制御し、パルスセッティング及びフラッシングモードを定義するコントロールユニット190に接続される。
【0091】
電源回路130.6、130.7のそれぞれは、第1のレーザ110又は第2のレーザ120のいずれを放つよう配列されている。電源回路130.6、130.7には、AC、つまり、交流(alternate current)サプライの、画定されたDC、つまり、直流(direct current)電圧への変換を担う充電回路130.1がある。コンデンサユニット130.2は、必要なエネルギを蓄え、充電回路130.1により、画定された電圧レベルまで充電される。コンデンサと充電回路との組み合わせは、すべての適用可能なパルス形状と、FLにおいて必要とされる繰り返し率と、に対して十分なエネルギがあるよう設計される。FL112、122と並列に、FL112、122に印加される数キロボルトの範囲にある高電圧を用いてランプを点火する点火回路130.3がある。FL112、122を点火後に、それらのそれぞれが点火されたままとなるよう、パルス回路130.4内のシマー回路が、DC電圧をランプに印加する。コントローラ130.5は、パルス回路130.4内に統合されたスイッチを用いて、画定されたパルス幅の時間にわたり、FL112、122への回路を閉じる。これは、FL112、122の、所望するパルス幅にわたる点灯を導く。そのようなスイッチは、いずれのハイパワースイッチを用いて実現できる。
【0092】
Qスイッチングデバイス126用のパワーサプライ回路132は、使用されるQスイッチングデバイス126に依存する。例えば、電気光デバイスが使用される場合、パワーサプライ132は、最大で数キロボルトまでの範囲内の高電圧を提供しなければならない。例えば、音響光学デバイスが使用される場合、Qスイッチングパワーサプライ132は、数百のメガヘルツの範囲内の周波数を供給する高無線周波数(radio frequency又はRF)回路を具現化できる。
【0093】
図3bは、図3aと比較して、第1のレーザ110用の2つの電源回路130.6と、第2のレーザ120用の電源回路130.7と、の専用の組み合わせを示す。この実施形態では、電源回路の双方に対して、1つの充電130.1と、1つのコンデンサ回路130.2と、のみが存在する。これは、設計を簡略化するが、第1及び第2のレーザ110、120のパルス生成のフレキシビリティを、いつでも単独で制限する。
【0094】
本発明の各態様及び各実施形態を示す本明細書及び添付の図面は、保護される発明を定義する特許請求の範囲を制限するものと理解するべきではない。換言すると、本発明を、図面及び先述の明細書において詳細に提示して説明したが、そのような図示及び説明は、理解を助けるためのもの、又は、例示的なものとみなし、なんら制限するものではない。種々の機械的、組成的、構造的、電気的、及び作動上の変更が、本明細書及び特許請求の範囲の精神と範囲を逸脱しない範囲において行われてよい。いくつかの例では、既知の回路、構造、及び技術は、本発明を不明瞭にしないために、詳細には示していない。したがって、当業者による、以下の特許請求の範囲の範囲と精神内における変更及び改変が行われてよいことが理解されるべきである。特に、本発明は、上述及び後述する実施形態とは異なる特徴をいずれに組み合わせた、さらなる実施形態を網羅する。例えば、上記の多くの例及び説明は、外科手術の分野にあるが、本発明に内在する原理はまた、他の技術分野にも使用される。特に、本発明は、異なる波長及び/又はパルス幅を用いて好適に切除される、いずれの異質の物質を切除することに有益となり得る。又は、追加的な除去及び/又は分析レーザビームを提供するために、3つを超えるビーム生成構成を有する実施形態において、本発明を実施することができる。
【0095】
本開示はまた、図面に個別に示す、すべてのさらなる特徴をも網羅する。それらは、上述又は後述する説明には記述していないものもある。また、図面及び明細書に説明した実施形態の単一の代替形態、及び、それらの特徴の単一の代替形態は、本発明の対象、又は、開示する対象から免責できる。本開示は、特許請求の範囲、又は、例示的な実施形態において定義する特徴をなす対象、同様に、当該特徴を含む対象を含む。
【0096】
さらに、特許請求の範囲では、「含む(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを排除しない。不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。単一のユニット又はステップは、特許請求の範囲に列挙するいくつかの特徴の機能を満たす場合がある。特定の測定値が、互いに異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、それらの測定値の組み合わせが、利点となるように使用できないということを示さない。属性又は値に関連する、「本質的に(essentially)」、「おおよそ(about)」、「約(approximately)」などの用語はまた、特に、正確なその属性又は正確なその値をそれぞれ定義する。所与の数値又は範囲のコンテキストにおける、「おおよそ(about)」という用語は、例えば、所与の値又は範囲の20%以内、10%以内、5%以内、又は2%以内の、ある値、又は、ある範囲を指す。接合された、又は、接続されたものとして説明するコンポーネントは、電気的又は機械的に直接接合されたものであってよいし、若しくは、1つ又はそれ以上の中間コンポーネントを介して間接的に接合されたものであってよい。特許請求の範囲に記載のいずれの参照符号は、本発明の範囲を制限するものと理解されるべきではない。
図1
図2
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
【国際調査報告】