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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20220204BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20220204BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220204BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G02B21/06
G01N21/64 E
G01N21/64 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535934
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2019086299
(87)【国際公開番号】W WO2020127726
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018133509.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019110869.1
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー クネーベル
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA03
2H052AA08
2H052AA09
2H052AA10
2H052AB01
2H052AB17
2H052AB24
2H052AC06
2H052AC09
2H052AC16
2H052AC18
2H052AC27
2H052AD32
2H052AF07
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
本発明は、試料(14)のうちの少なくとも1つの選択された領域を照明するための広視野照明ユニット(12)と、第1の検出ビーム経路(18)および第2の検出ビーム経路(20)を生成するためのビームスプリッタユニット(16,16’)とを有する顕微鏡(10)に関する。顕微鏡(10)はさらに、試料(14)のうちの選択された領域の画像を記録するための、第1の検出ビーム経路(18)の内部に配置されたカメラ検出ユニット(22)と、試料(14)のうちの選択された領域の内部に位置する所定の部分領域を検出するための、第2の検出ビーム経路(20)の内部に配置された点検出ユニット(24)と、を含む。ビームスプリッタユニット(16,16’)の物体側で、第1の検出ビーム経路(18)および第2の検出ビーム経路(20)の内部に検出対物レンズ(26)が配置されており、当該検出対物レンズ(26)は、カメラ検出ユニット(22,22’)および点検出ユニット(24)のための共通の検出対物レンズとして設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(10)であって、前記顕微鏡(10)は、
試料(14)のうちの少なくとも1つの選択された領域を照明するための広視野照明ユニット(12)と、
第1の検出ビーム経路(18)および第2の検出ビーム経路(20)を生成するためのビームスプリッタユニット(16,16’)と、
前記試料(14)のうちの前記選択された領域の画像を記録するための、前記第1の検出ビーム経路(18)の内部に配置されたカメラ検出ユニット(22,22’)と、
前記試料(14)のうちの前記選択された領域の内部に位置する所定の部分領域を検出するための、前記第2の検出ビーム経路(20)の内部に配置された点検出ユニット(24)と、
前記ビームスプリッタユニット(16,16’)の物体側で、前記第1の検出ビーム経路(18)および前記第2の検出ビーム経路(20)の内部に配置されていて、前記カメラ検出ユニット(22,22’)および前記点検出ユニット(24)のための共通の検出対物レンズとして設けられている検出対物レンズ(26)と、
を有する顕微鏡(10)。
【請求項2】
前記顕微鏡(10)は、制御ユニット(28)を含み、
前記制御ユニット(28)は、少なくとも前記点検出ユニット(24)を、前記点検出ユニット(24)を用いて実施可能な測定のための、前記試料(14)の前記所定の部分領域および/または所定の時点に依存して制御する、
請求項1記載の顕微鏡(10)。
【請求項3】
前記試料(14)の前記所定の部分領域および/または前記所定の時点は、事前に設定されて前記制御ユニット(28)内に保存されている、
請求項2記載の顕微鏡(10)。
【請求項4】
前記顕微鏡(10)は、前記制御ユニット(28)に結合された画像処理ユニット(30)を含み、
前記画像処理ユニット(30)は、
前記試料(14)の前記所定の部分領域および/または前記所定の時点を、前記カメラ検出ユニット(22,22’)によって記録された画像のうちの少なくとも1つに基づいて特定し、
前記試料(14)の前記所定の部分領域および/または前記所定の時点を、前記点検出ユニット(24)を制御するために前記制御ユニット(28)に供給する、
請求項2記載の顕微鏡(10)。
【請求項5】
前記制御ユニット(28)は、前記試料(14)の前記所定の部分領域および/または前記所定の時点に依存して、前記広視野照明ユニット(12)を制御する、
請求項2から4までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項6】
前記ビームスプリッタユニット(16,16’)は、前記制御ユニット(28)によって切り替え可能なミラー要素によって形成されており、
前記切り替え可能なミラー要素は、
第1の切り替え状態では、前記試料(14)から発せられた検出光が前記カメラ検出ユニット(22,22’)へと向けられるように構成され、
第2の切り替え状態では、前記試料(14)から発せられた検出光が前記点検出ユニット(24)へと向けられるように構成されている、
請求項2から5までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項7】
前記ビームスプリッタユニット(16,16’)は、前記制御ユニット(28)によって制御可能なマイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)によって形成されており、
前記マイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)は、
前記選択された領域から発せられた検出光のうちの、前記試料(14)の前記所定の部分領域に対応付けられた少なくとも1つの第1の部分が前記点検出ユニット(24)へと向けられるように構成され、
前記選択された領域から発せられた検出光のうちの、前記第1の部分に対して相補的な第2の部分が前記カメラ検出ユニット(22,22’)へと向けられるように構成されている、
請求項2から5までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項8】
前記ビームスプリッタユニット(16,16’)は、中性のビームスプリッタまたはダイクロイックミラーによって形成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項9】
前記顕微鏡(10)は、第1のチューブレンズ(32)を含み、
前記第1のチューブレンズ(32)は、前記検出対物レンズ(26)と前記ビームスプリッタユニット(16,16’)との間に配置されており、
前記第1のチューブレンズ(32)は、前記カメラ検出ユニット(22,22’)と前記点検出ユニット(24)とによって共通に利用される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項10】
前記顕微鏡(10)は、第1のチューブレンズ(32)および第2のチューブレンズ(34)を含み、
前記第1のチューブレンズ(32)は、前記ビームスプリッタユニット(16,16’)と前記カメラ検出ユニット(22,22’)との間に配置されており、
前記第2のチューブレンズ(34)は、前記ビームスプリッタユニット(16,16’)と前記点検出ユニット(24)との間に配置されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項11】
前記点検出ユニット(24)は、前記制御ユニット(28)によって制御可能な傾斜ミラー(36)を含み、
前記傾斜ミラー(36)は、前記ビームスプリッタユニット(16,16’)の像側で前記第2の検出ビーム経路(20)内に配置されている、
請求項2から10までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項12】
前記点検出ユニット(24)は、前記ビームスプリッタユニット(16,16’)とは異なる、前記制御ユニット(28)によって制御可能なマイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)(38)を含み、
前記マイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)(38)は、前記ビームスプリッタユニット(16,16’)の像側で前記第2の検出ビーム経路(20)内に配置されている、
請求項2から10までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項13】
前記点検出ユニット(24)は、前記試料(14)の前記所定の部分領域から発せられた検出光がスペクトル分解されて検出されるように構成されている、
請求項1から12までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項14】
前記点検出ユニット(24)は、前記点検出ユニット(24)に入射してきた光束をスペクトル分割する分散要素を含み、
前記点検出ユニット(24)は、スペクトル分割された前記光束を検出するための、複数の検出器ユニットからなる装置として構成されたスペクトル検出器を含む、
請求項1から13までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項15】
前記広視野照明ユニット(12)は、光シートを生成するように構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【請求項16】
前記検出対物レンズは、前記広視野照明ユニット(12)の照明対物レンズとして構成されている、
請求項1から15までのいずれか1項記載の顕微鏡(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のうちの少なくとも1つの選択された領域を照明するための広視野照明ユニットを有する顕微鏡に関する。顕微鏡はさらに、試料のうちの選択された領域の画像を記録するためのカメラ検出ユニットを含む。
【背景技術】
【0002】
以下ではとりわけ空間分解式の検出器が含まれた検出ユニットを意味するカメラ検出ユニットを有する顕微鏡は、従来技術から公知である。カメラ検出ユニットにより、検出プロセスを並列化することが可能となる。なぜなら、カメラ検出ユニットを用いると、試料のうちの選択した領域の画像をただ1回の測定で作成することができるからである。しかしながら、カメラ検出ユニットは、例えば蛍光寿命顕微鏡(“fluorescence lifetime imaging microscopy”,FLIM)または蛍光相関分光法(“fluorescence correlation spectroscopy”,FCS)のような特定の顕微鏡用途のために必要とされる時間分解能および/またはスペクトル分解能を有していない。
【0003】
米国特許第6867899号明細書からは、試料を照明するための光源と、試料から発せられた検出光を検出する分光計と、を含む共焦点顕微鏡が公知である。顕微鏡はさらに、音響光学偏向器(AOD)を含み、この音響光学偏向器(AOD)は、光源から発せられた照明光を試料へと向け、試料から発せられた検出光を分光計へと向ける。分光計は、点検出器、すなわち非空間分解式の検出器である。選択された領域の画像は、分光計を用いた複数回の順次の測定で、つまり連続して生成される。この場合には、実際に必要とされるよりも多数の高分解能データが生成されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、並列検出の利点と、連続検出の利点とを組み合わせた顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、請求項1記載の特徴を有する顕微鏡によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明による顕微鏡は、試料のうちの少なくとも1つの選択された領域を照明するための広視野照明ユニットと、第1の検出ビーム経路および第2の検出ビーム経路を生成するためのビームスプリッタユニットと、を含む。顕微鏡はさらに、試料のうちの選択された領域の画像を記録するための、第1の検出ビーム経路の内部に配置されたカメラ検出ユニットと、試料のうちの選択された領域の内部に位置する所定の部分領域を検出するための、第2の検出ビーム経路の内部に配置された点検出ユニットと、を含む。ビームスプリッタユニットの物体側で、第1の検出ビーム経路および第2の検出ビーム経路の内部に検出対物レンズが配置されており、当該検出対物レンズは、カメラ検出ユニットおよび点検出ユニットのための共通の検出対物レンズとして設けられている。
【0007】
カメラ検出ユニットは、とりわけマルチチャネルカメラまたはカラーカメラとして構成可能である。点検出ユニットは、複数の検出器を含むこともできる。とりわけ、点検出ユニットの1つまたは複数の検出器は、点ごとの検出のため、すなわち非空間分解式の検出のために使用される1つまたは複数の面検出器であり得る。これに代えて、点検出ユニットの複数の検出器のうちの一部を、点検出器、すなわち非空間分解式の検出器によって形成して、点検出ユニットの複数の検出器のうちの別の一部を、非空間分解式の検出器のために使用される面検出器によって形成することも可能である。とりわけ、試料のうちの選択された領域の複数の点を同時に検出することができる。このことは、例えば、検出のために使用される光を、マイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)によって複数の異なる点検出器に、または点検出ユニットの面検出器の複数の異なる領域に分配することによって実施可能である。
【0008】
本発明による顕微鏡は、並列検出を行うカメラ検出ユニットの利点と、連続検出を行う点検出ユニットの利点と、を組み合わせたものである。カメラ検出ユニットとは、とりわけ空間分解式の検出ユニットであると理解されるべきであり、その一方で、点検出ユニットは、非空間分解式の検出ユニットであると理解されるべきである。カメラ検出ユニットは、選択された領域の大量の画像を高速に、かつ試料を傷めずに記録する。点検出ユニットは、選択された領域の内部に位置する所定の部分領域を、高時間分解能および/または高スペクトル分解能で高速に検出する。したがって、本発明による顕微鏡は、とりわけ、高分解能スペクトルの効率的な測定のため、単一分子分析のため、または特定の顕微鏡用途(例えば、FLIMまたはFCSなど)において使用可能である。本発明による顕微鏡は、動的なプロセスおよびイベントを所期のように観察および追跡することも可能にする。前述した用途では、多くの場合、試料のうちの選択された領域全体を高時間分解能および/または高スペクトル分解能で検出する必要がない。
【0009】
一般的に、点検出ユニットは、例えば同等のカメラ検出ユニットの画素(ピクセル)の数の分だけ検出が高速である。なぜなら、ここでは、1回の測定につきただ1つのピクセルだけを読み取ればよいからである。好ましくは、点検出ユニットは、MHzレートで測定を実施するように構成されている。カメラ検出ユニットのフレームレートは、一般的に、カメラ検出ユニットのわずか数行のセンサ要素だけを読み取ることによって最大化可能である。しかしながら、基本的に、読み出されるべき列の数を削減することによってフレームレートを上げることはできない。したがって、カメラ検出ユニットの最高速度は、ここでは例えばそれぞれ2500ピクセルの8行のセンサ要素を使用した場合、同等の電子機器、すなわちとりわけ増幅器およびアナログ-デジタルコンバータを有する点検出器の場合に達成可能である速度よりも、典型的には20000倍低くなる。
【0010】
点検出器は、検出ビーム経路内において例えばフィルタ/ビームスプリッタ光学系によって誘発される焦点収差に対して十分に非感受性である。なぜなら、点検出器は、光強度のみを測定し、光強度の分布は測定しないからである。これにより柔軟性が向上し、例えば、ビーム経路のうちのコリメートされていない部分においても、斜めに配置されるフィルタを使用することが可能となり、ひいては省スペースかつ低コストの光学系を使用することが可能となる。
【0011】
1つの有利な発展形態では、顕微鏡は、制御ユニットを含む。制御ユニットは、少なくとも点検出ユニットを、点検出ユニットを用いて実施可能な測定のための、試料の所定の部分領域および/または所定の時点に依存して制御する。制御ユニットによって制御される測定は、例えば手動で制御される測定よりも、試料の所定の部分領域の検出に関連して、かつ/または所定の時点に依存して格段により正確に実施される。とりわけ、例えばFLIMのような特定の顕微鏡用途では、点検出ユニットによる検出が正確に所定の時点に実施されることが必要である。制御ユニットは、とりわけ、試料の所定の部分領域の限局、照明強度の設定、および/または試料もしくは試料の所定の部分領域を照明するために使用される光の波長もしくは波長範囲の設定を実施することができる。さらに、とりわけ顕微鏡がFLIM測定に使用される場合には、制御ユニットは、パルス照明を、カメラ検出ユニットおよび/または点検出ユニットによる検出と同期させることができ、すなわち、照明光パルスを放出する時点の検出および/または制御を、蛍光信号のとりわけ時間分解式の検出と同期させることができる。
【0012】
さらなる有利な発展形態では、試料の所定の部分領域および/または所定の時点は、事前に設定されて制御ユニット内に保存されている。例えば、試料の所定の部分領域および/または所定の時点は、操作者によって入力可能である。とりわけ、所定の部分領域および/または所定の時点を入力するための基礎として、試料のうちの選択された領域の、カメラ検出ユニットによって記録された画像を使用することができる。例えば、操作者は、カメラ検出ユニットによって記録された複数の画像のうちの1つの画像の内部の関心領域(“region of interest”,ROI)を、所定の部分領域として選択することができる。
【0013】
さらなる有利な発展形態では、顕微鏡は、制御ユニットに結合された画像処理ユニットを含む。画像処理ユニットは、試料の所定の部分領域および/または所定の時点を、カメラ検出ユニットによって記録された画像のうちの少なくとも1つに基づいて特定し、試料の所定の部分領域および/または所定の時点を、点検出ユニットを制御するために制御ユニットに供給する。画像処理ユニットは、例えば操作者によって手動で決定するよりも、試料の所定の部分領域および/または所定の時点をより高速かつより正確に決定することを可能にする。
【0014】
画像処理ユニットとは、とりわけインテリジェントな画像処理ユニットであり、すなわち、試料のうちのどの部分領域内において詳細な測定を実施する価値があるかを、例えばとりわけ機械学習方法を使用して学習したユニットである。時系列測定の前にユーザによってイベント、例えば特定のタンパク質の発現を規定することができると、さらに有利である。この発現は、とりわけ、特定の箇所において測定された蛍光信号の増加によって現れる可能性がある。これらのイベントを、試料の特定の部分領域内で点検出ユニットによって検出するためのトリガとして使用することができる。画像処理ユニットは、とりわけ特定のイベント、例えば前述した発現に反応するように訓練されたものであってもよい。
【0015】
有利な発展形態によって実施される方法の1つの可能な実施形態は、以下の通りである。すなわち、光シートによって照明された試料が、カメラ検出ユニットによって試料を傷めることなく、例えば数時間にわたって時系列に記録される。記録された画像データは、訓練済みの、またはユーザによって事前に構成済みの画像処理ユニットにより、特定の画像領域内における増幅された信号、または一般的に信号強度の変化のようなイベントについて検査される。イベントが確認されると、顕微鏡は、短時間で点検出モードに切り替わり、特定された画像領域を検査する。
【0016】
点検出ユニットにより、励起された蛍光の寿命の測定を実施することができる。とりわけカメラ検出ユニットが、マルチチャネルカメラまたはカラーカメラとして構成されている場合には、マルチチャネルカメラまたはカラーカメラによって記録されたデータを、例えば制御ユニットによって染料に応じて分離するために、高分解能スペクトルを特定することができる。このような分離は、「スペクトルアンミキシング(spectral unmixing)」とも呼ばれる。マルチチャネルカメラによって記録されたデータの「スペクトルアンミキシング」による分離は、基本的に、さらなる情報がなくても可能であるが、カメラベースの検出におけるチャネルの数は、基本的に3~4チャネルに制限されている。試料から発せられた光のスペクトル特性に関する追加的な情報を、アルゴリズム(または訓練済みの画像処理ユニット)に提供することにより、マルチチャネルカメラによって記録された画像の「スペクトルアンミキシング」を支援するために、格段に多数のチャネルによって高分解能スペクトルを追加的に測定することが有用であろう。
【0017】
さらなる有利な発展形態では、制御ユニットは、試料の所定の部分領域および/または所定の時点に依存して、広視野照明ユニットを制御する。これにより、例えばFLIMのような特定の顕微鏡用途において必要とされる、広視野照明と、点検出ユニットによって実施される測定と、の同期が可能となる。
【0018】
さらなる有利な発展形態では、ビームスプリッタユニットは、制御ユニットによって切り替え可能なミラー要素によって形成されている。切り替え可能なミラー要素は、第1の切り替え状態では、試料から発せられた検出光がカメラ検出ユニットへと向けられるように、かつ第2の切り替え状態では、試料から発せられた検出光が点検出ユニットへと向けられるように構成されている。これにより、カメラ検出ユニットまたは点検出ユニットを選択的に用いて検出を実施することを機械的な手法で可能にする、単純な構造のビームスプリッタが実現されている。カメラ検出ユニットによって検出された画像内において欠落しているピクセルを、とりわけ点検出ユニットの検出によって補足することができる。
【0019】
これに代わる有利な発展形態では、ビームスプリッタユニットは、制御ユニットによって制御可能なマイクロミラーアクチュエータユニット(“digital mirror device”,DMD)によって形成されている。マイクロミラーアクチュエータユニットは、選択された領域から発せられた検出光のうちの、試料の所定の部分領域に対応付けられた少なくとも1つの第1の部分が点検出ユニットへと向けられるように、かつ選択された領域から発せられた検出光のうちの、第1の部分に対して相補的な第2の部分がカメラ検出ユニットへと向けられるように構成されている。これにより、マイクロミラーアクチュエータユニットは、試料の所定の部分領域から発せられる検出光全体を、たとえこの所定の部分領域が複雑な幾何形状を有している場合であっても、点検出ユニットへと向けることが可能となる。これによって所定の部分領域全体を、一回の測定で検出することが可能となる。さらに、マイクロミラーアクチュエータユニットの複数のミラーは、それぞれ、例えば単一のガルバノメータミラーよりも小さい質量を有し、これにより、マイクロミラーアクチュエータユニットによって形成されているビームスプリッタユニットをより高速に切り替えることが可能となる。マイクロミラーアクチュエータユニットの切り替えを、わずか数マイクロ秒以下の範囲内で実施することができ、したがって、カメラ検出ユニットのただ1回の露光時間の間にも、試料の1つの点または複数の領域における点検出ユニットによる高速の点分解式の測定が可能である。
【0020】
マイクロミラーアクチュエータユニットは、わずか数マイクロメートルの大きさの、個々に制御可能である多数の切り替え可能なマイクロミラーから構成されている。それぞれのマイクロミラーは、第1の切り替え状態では、試料から発せられた検出光をカメラ検出ユニットへと向けるように、かつ第2の切り替え状態では、試料から発せられた検出光を点検出ユニットへと向けるように構成されている。
【0021】
これに代わるさらなる有利な発展形態では、ビームスプリッタユニットは、中性のビームスプリッタ(中性ビームスプリッタ)、偏光ビームスプリッタ(偏向を行うビームスプリッタ)、またはダイクロイックミラーによって形成されている。この場合には、ビームスプリッタユニットは、機械的な可動部品を有していないので、誤差が発生しにくい。さらに、そのようなビームスプリッタユニットの使用は、比較的低い製造コストに結び付いている。このようなビームスプリッタユニットにより、検出光を、色(ダイクロイックミラー)に応じて、かつ/または偏光方向(偏光ビームスプリッタ)に応じて分割することができる。
【0022】
さらなる有利な発展形態では、顕微鏡は、第1のチューブレンズを含む。第1のチューブレンズは、検出対物レンズとビームスプリッタユニットとの間に配置されており、カメラ検出ユニットと点検出ユニットとによって共通に利用される。この発展形態は、特に省スペースである。なぜなら、ここでは、ビームスプリッタユニットの像側で第1の検出ビーム経路内および第2の検出ビーム経路内に配置される別個のチューブレンズの必要性がなくなるからである。
【0023】
これに代わる有利な発展形態では、顕微鏡は、第1のチューブレンズおよび第2のチューブレンズを含む。第1のチューブレンズは、ビームスプリッタユニットとカメラ検出ユニットとの間に配置されている。第2のチューブレンズは、ビームスプリッタユニットと点検出ユニットとの間に配置されている。
【0024】
1つの有利な発展形態では、点検出ユニットは、制御ユニットによって制御可能な傾斜ミラーを含み、傾斜ミラーは、ビームスプリッタユニットの像側で第2の検出ビーム経路内に配置されている。制御ユニットは、とりわけ、所定の部分領域から発せられた検出光のうちの少なくとも一部が検出されるように、傾斜ミラーを制御する。これによって所定の部分領域を、複数回の連続的な測定で走査し、完全に連続して検出することが可能となる。
【0025】
さらなる有利な発展形態では、点検出ユニットは、ビームスプリッタユニットとは異なる、制御ユニットによって制御可能なマイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)を含み、マイクロミラーアクチュエータユニット(DMD)は、ビームスプリッタユニットの像側で第2の検出ビーム経路内に配置されている。このマイクロミラーアクチュエータユニットのそれぞれのマイクロミラーは、第1の切り替え状態では、試料から発せられた検出光を第2の検出ビーム経路に沿って検出ユニットへと向けるように、かつ第2の切り替え状態では、試料から発せられた検出光を例えば吸収体またはさらなる検出ユニットへと向けるように構成されている。マイクロミラーアクチュエータユニットは、好ましくは、カメラ検出ユニットの画像平面に対して共役な平面内に配置されている。
【0026】
さらなる有利な発展形態では、点検出ユニットは、試料の所定の部分領域から発せられた検出光がスペクトル分解されて検出されるように構成されている。例えば、点検出ユニットは、ファイバ結合分光計を含むことができる。これにより、高分解能スペクトルデータの生成に加えて、とりわけ、カメラ検出ユニットを用いただけでは不可能な、所定の部分領域内において重なり合っている蛍光体の識別も可能になる。
【0027】
好ましくは、点検出ユニットは、当該点検出ユニットに入射してきた光束をスペクトル分割する分散要素を含む。点検出ユニットは、スペクトル分割された光束を検出するための、複数の検出器ユニットからなる装置として構成されたスペクトル検出器を含む。これにより、試料の所定の部分領域のスペクトル分解式の検出が可能になる。
【0028】
さらなる有利な発展形態では、広視野照明ユニットは、光シートを生成するように構成されている。光シートを用いることにより、試料の薄い層を照明して、蛍光へと励起することができる。これにより、広視野照明のためのその他の方法の場合よりも高解像度が達成される。
【0029】
さらなる有利な発展形態では、検出対物レンズは、広視野照明ユニットの照明対物レンズとして構成されている。これによって顕微鏡を、とりわけ省スペースに構成することが可能となる。このような配置は、とりわけ斜め平面顕微鏡法(“oblique plane microscopy”,OPM)および「掃引共焦点整列平面励起(swept confocally-aligned planar excitation)」(SCAPE)顕微鏡法において使用される。
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明を実施例に基づいて添付図面に関連させてより詳細に説明する以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】カメラ検出ユニットと点検出ユニットとを有する顕微鏡の1つの実施例を示す図である。
図2】カメラ検出ユニットと点検出ユニットとを有する顕微鏡のさらなる実施例を示す図である。
図3】カメラ検出ユニットと点検出ユニットとを有する顕微鏡のさらなる実施例を示す図である。
図4】カメラ検出ユニットと点検出ユニットとを有する顕微鏡のさらなる実施例を示す図である。
図5】カメラ検出ユニットと点検出ユニットとを有する顕微鏡のさらなる実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、顕微鏡10aの1つの実施例を示す。顕微鏡10aは、広視野照明ユニット12と、ビームスプリッタユニット16と、カメラ検出ユニット22と、点検出ユニット24と、制御ユニット28と、を含む。
【0033】
広視野照明ユニット12は、光源40と、照明対物レンズ42と、偏向ミラー44と、を含む。光源40は、照明光を生成し、この照明光から、照明対物レンズ42および偏向ミラー44によって物体平面内に位置する光シートが生成される。光シートは、試料14のうちの少なくとも1つの選択された領域を照明する。好ましくは、照明光は、試料14中に存在する蛍光体を蛍光/燐光へと励起する光である。
【0034】
ビームスプリッタユニット16は、試料14の像側に配置されており、図1では例えばビームスプリッタキューブとして構成されている。これに代えて、ビームスプリッタユニット16を、ビームスプリッタプレート、中性密度フィルタ、偏光フィルタ、有彩色もしくは二色フィルタ、ビーム経路内に機械的に挿入可能および摺動可能なミラー、電子的に切り替え可能なミラー、または前述したコンポーネントの種々の特徴を組み合わせたコンポーネントとして構成してもよい。試料14とビームスプリッタユニット16との間には、検出対物レンズ26が配置されている。ビームスプリッタユニット16は、試料14から発せられた検出光を、検出対物レンズ26の通過後に透過によって第1の検出ビーム経路18へと、かつ反射によって第2の検出ビーム経路20へと分割する。第1の検出ビーム経路18および第2の検出ビーム経路20の両方は、物体平面上、すなわち試料14内から開始する。したがって、検出対物レンズ26は、いわば第1の検出ビーム経路18内および第2の検出ビーム経路20内の両方に位置している。
【0035】
カメラ検出ユニット22は、とりわけマルチチャネルカメラまたはカラーカメラとして構成されており、第1の検出ビーム経路18の内部に配置されている。ビームスプリッタユニット16とカメラ検出ユニット22との間には、第1のチューブレンズ32が配置されている。これにより、第1の検出ビーム経路18内に、試料14のうちの選択された領域の画像を記録するための装置が実現されている。
【0036】
点検出ユニット24は、第2の検出ビーム経路20の内部に配置されている。点検出ユニット24は、制御可能な傾斜ミラー36と、検出器46と、例えば(ピンホール)絞り、フィルタ、またはレンズのような、ここでは総称的に参照符号48が付されているさらなる光学要素と、を含む。とりわけ検出器46の前に、(ピンホール)絞りを配置することができる。傾斜ミラー36により、試料14上の個々の点または点状の領域に対応付けられた検出光を検出器46へと向けることができる。互いに垂直な2つの軸線に沿って傾斜ミラーを傾斜させることにより、とりわけ選択された領域の内部に位置する所定の部分領域(例えば、選択された関心領域または複数の異なる蛍光体が重なり合っている領域)を、連続的な測定で完全に検出することができる。検出器46は、第2の検出ビーム経路を介して入射してきた検出光を、高スペクトル分解能および/または高時間分解能で検出するように構成されている。例えば、検出器46は、ファイバ結合分光計またはアバランシェフォトダイオード(“avalanche photodiode”,APD)によって形成されている。検出器46は、点検出ユニット24に入射してきた光束をスペクトル分割する分散素子と、スペクトル分割された光束を検出するための複数の検出器ユニットからなる装置と、によっても形成可能である。
【0037】
ビームスプリッタユニット16と点検出ユニット24との間には、第2の検出ビーム経路20内において第2のチューブレンズ34が配置されている。これにより、第2の検出ビーム経路20内に、いわば共焦点顕微鏡を用いた場合のように所定の領域を連続して検出するための装置が形成されている。
【0038】
検出対物レンズ26および第2のチューブレンズ34は、図示の実施例では、それぞれの焦点距離を置いて配置された2つのレンズからなる、4fシステムとも呼ばれるシステムを形成している。このような4fシステムは、テレセントリックであり、これによって正の結像特性を有し、例えば倍率は、物体平面と画像平面との間の距離に依存しない。このことはつまり、検出対物レンズ26と第2のチューブレンズ34との間に無限ビーム経路が存在すること、すなわちビーム経路のうちの、光がコリメートされている部分が存在することを意味する。ビームスプリッタユニット16は、光軸の法線に対して傾斜された、2つの媒体の間の界面、例えばガラスと空気との間の界面を画定し、したがって、この無限ビーム経路の内部に配置されている。無限ビーム経路内に配置することにより、収差の発生が回避される。このことは、とりわけ図4に基づいてさらに下の方で説明する実施例との関連において明らかであり、この実施例では、ビームスプリッタユニット16が、コリメートされていないビーム経路内に配置されており、したがって、ビームスプリッタユニット16を透過した(したがって収差を含む)光が、収差に対して非感受性である点検出ユニット24へと向けられる。一般的に、無限ビーム経路(コリメートされた光束)内にあるビームスプリッタは、プレートとして構成可能であるが、その一方で、非無限ビーム経路(集束された光束、または集束されていない光束)内にあるビームスプリッタは、有利には、収差を回避するためにキューブとして実現される。これに対する例外が、図4に示されている。ビームスプリッタプレートは、典型的に、そのスペクトル分割特性に関してビームスプリッタキューブよりも有利であり、低コストであることが多い。
【0039】
これに代わる実施形態では、検出対物レンズ26および第2のチューブレンズ34が、テレセントリック4f光学系を形成しない。それでもなお収差を発生させないようにするために、例えば、検出対物レンズ26は、相応に配置されたチューブレンズと協働して、検出対物レンズ26の試料側平面から到来した光が検出器上に鮮明に結像されるように、ただし、この光が検出対物レンズ26と第2のチューブレンズ34との間でコリメートされることなく延在するように、補正されている。この場合には、結像された試料側平面は、検出対物レンズ26の定義通りの焦点平面とは合同ではない。これに代わるさらなる実施形態も考えられる。重要なのは、検出対物レンズ26と第2のチューブレンズ34との間に焦点が形成されないことである。
【0040】
さらに、レンズ48がテレセントリック4f光学系を形成する。このことにより、傾斜ミラー36によって収差が誘発されないことが保証される。
【0041】
制御ユニット28は、点検出ユニット24を用いた測定のための、試料14の所定の部分領域および/または所定の時点(例えば、試料14において関心のある生物学的イベントの時点)を、制御ユニット28内に保存することができるように構成されている。例えば、所定の部分領域および/または所定の時点は、操作者によって制御ユニット28に入力可能である。制御ユニット28はさらに、画像処理ユニット30を含み、この画像処理ユニット30は、点検出ユニット24を用いた測定のための、試料14の所定の部分領域および/または所定の時点を特定して、制御ユニット28に供給するように構成されている。制御ユニット28はさらに、カメラ検出ユニット22およびビームスプリッタユニット16に接続されており、カメラ検出ユニット22およびビームスプリッタユニット16を制御するように構成されている。とりわけフィルタを、例えば特定の画像領域ごとに柔軟かつ自動的に交換するために、ビームスプリッタユニット16を制御することができる。
【0042】
点検出ユニット24を用いた測定のための、試料14の所定の部分領域および/または所定の時点は、操作者および/または画像処理ユニット30により、とりわけ、試料14のうちの選択された領域の、カメラ検出ユニット22によって記録された画像に基づいて特定される。例えば、画像処理ユニット30は、カメラ検出ユニット22によって記録された画像内において、複数の異なる蛍光体が重なり合っている画素(ピクセル)を識別し、これらの画素を、所定の部分領域として決定することができる。次いで、点検出ユニット24を用いて、スペクトル分解式の測定を実施することができ、このスペクトル分解式の測定により、所定の部分領域の蛍光体の一義的な識別が可能となる。所定の時点を決定するための基礎として、例えば試料14において発生した生理学的イベントまたは神経学的イベントを使用することができ、これらのイベントは、画像処理ユニット30によって識別される。
【0043】
制御ユニット28は、点検出ユニット24の傾斜ミラー36と広視野照明ユニット12とを、点検出ユニット24を用いた測定のための、試料14の所定の部分領域および/または所定の時点に依存して制御する。点検出ユニット24を用いて試料14の所定の部分領域全体が連続的な測定で検出されるように、点検出ユニット24の傾斜ミラー36が、制御ユニット28によって制御される。点検出ユニット24は、測定において走査されるとりわけ点状または円形の領域であって、かつ点検出ユニット24の検出器が積分する領域のサイズが、ピンホール絞りの直径を変更することによって変更されるように、例えば制御ユニット28によって制御される。制御ユニット28はさらに、例えば、広視野照明ユニット12によって生成される照明光の波長を制御することができる。
【0044】
点検出器を光シート照明と組み合わせることによって新たな自由が開かれる。従来の点走査式の共焦点顕微鏡の場合には、個々の測定において積分される領域を容易に変更することはできない。照明ビームの開口数は、照明光の分布を定義する。すなわち例えば、照明される領域を簡単に拡大することはできない。このことは、照明の開口数を絞り込むか、または削減することを必要とし、これに伴って照明焦点の被写界深度が不所望に延長されてしまうだろう。これに代えて、このことを、従来の点走査式の共焦点顕微鏡において使用される点検出器のピンホール絞りの直径を拡大することによって達成してもよい。しかしながら、これにより、検出の被写界深度(深度弁別)が大幅に悪化する。したがって、光シートを用いた照明は、点検出ユニットを用いて走査する際の自由度を高めるための重要な基礎である。検出器を用いた、試料の比較的広い領域にわたって積分される測定により、例えば、測定の感度および/または時間分解能を高めることができる。
【0045】
図2は、顕微鏡10bのさらなる実施例を示す。図2に示されている実施例は、点検出ユニット24が、制御可能な傾斜ミラー36の代わりにマイクロミラーアクチュエータユニット38(“digital mirror device”,DMD)を有するという点で、図1に示されている実施例とは異なる。
【0046】
マイクロミラーアクチュエータユニット38は、ビームスプリッタユニット16の像側で第2の検出ビーム経路20内に、カメラ検出ユニット22の画像平面に対して共役な平面内に配置されている。マイクロミラーアクチュエータユニット38は、多数の切り替え可能なマイクロミラーからなり、これらのマイクロミラーは、数マイクロメートルの大きさであり、例えば制御ユニット28によって個々に制御可能である。マイクロミラーアクチュエータユニット38のそれぞれのマイクロミラーは、第1の切り替え状態では、試料14から発せられた検出光が検出器46へと向けられるように、かつ第2の切り替え状態では、試料14から発せられた検出光が吸収体へと向けられるように構成されている。マイクロミラーアクチュエータユニット38は、カメラ検出ユニット22の画像平面に対して共役な平面内に配置されているので、マイクロミラーアクチュエータユニット38の個々のマイクロミラーを切り替えることにより、カメラ検出ユニット22によって記録された画像の個々の画素にそれぞれ対応付けられた検出光を、所期のように検出器46へと向けることができる。マイクロミラーアクチュエータユニット38は、検出器46に入射してきた検出光を制限することができるので、いわば点検出ユニット24の絞りとして作用する。
【0047】
検出光ビーム20は、コリメートされて検出器46に当たる。すなわち、検出器46上に2つの点が結像されるのではなく、互いに対して傾斜された2つのコリメートされたビーム経路が検出器46に当たる。すなわち、検出器46は、マイクロミラーアクチュエータユニット38によって選択された複数の点にわたって信号を積分する。図2に示されている実施例では、マイクロミラーアクチュエータユニット38は、検出対物レンズ26の焦点平面に対して共役な平面内に位置する。
【0048】
図3は、顕微鏡10cのさらなる実施例を示す。図3に示されている実施例は、一方では、ビームスプリッタユニット16’が、制御ユニット28によって制御されるマイクロミラーアクチュエータユニットによって形成されているという点で、図1に示されている実施例とは異なる。他方では、図3に示されている実施例では、広視野照明ユニット12は、光源40に加えて、光シートを生成するためのシリンダ光学系50を含む。
【0049】
ビームスプリッタ16’を形成するマイクロミラーアクチュエータユニットのそれぞれのマイクロミラーは、第1の切り替え状態では、試料14から発せられた検出光がカメラ検出ユニット22’へと向けられるように、かつ第2の切り替え状態では、試料14から発せられた検出光が点検出ユニット24へと向けられるように構成されている。マイクロミラーアクチュエータユニットの個々のマイクロミラーを切り替えることにより、カメラ検出ユニット22’によって記録された画像の個々の画素にそれぞれ対応付けられた検出光を、所期のように点検出ユニット24へと向けることができる。したがって、所定の部分領域を、その具体的な幾何形状に関係なく1回または複数回の測定で完全に検出することが可能となる。
【0050】
図3に示されている実施例では、第2のチューブレンズ34の必要性がなくなる。なぜなら、点検出ユニットは、高い結像品質を必要としないからである。
【0051】
図4は、顕微鏡10dのさらなる実施例を示す。この実施例では、ビームスプリッタユニット16は、試料14から発せられた検出光から、反射によって第1の検出ビーム経路18を生成し、かつ透過によって第2の検出ビーム経路20を生成する。透過によって誘発される収差は、第2の検出ビーム経路20内に配置された点検出ユニット24を用いた測定にとっては危機的ではない。この配置によれば、ビームスプリッタユニット16の像側に配置される別個のチューブレンズの必要性がなくなる(すなわち、この場合には、図1および図2による顕微鏡10のそれぞれの検出ビーム経路18,20のためのチューブレンズ32,34が省略される)。ビームスプリッタユニット16と検出対物レンズ26との間には、ただ1つのチューブレンズ32が配置されている。
【0052】
図5は、顕微鏡10eのさらなる実施例を示す。図5に示されている顕微鏡10eは、点検出ユニット24が第1の検出器46aおよび第2の検出器46bを含むという点で、図1に示されている顕微鏡10aとは実質的に異なる。図1および図5において、同一のまたは同一の作用を有する要素には、同一の参照符号が付されている。点検出ユニット24のマイクロミラーアクチュエータユニット38は、マイクロミラーアクチュエータユニット16の個々のマイクロミラーを切り替えることにより、カメラ検出ユニット22によって記録された画像の個々の画素にそれぞれ対応付けられた検出光を、第1の検出器46aまたは第2の検出器46bへと選択的に向けることができるように構成されている。点検出ユニット24は、このようにして複数の点を同時に検出することを可能にする。
【0053】
本発明の実施例によれば、カメラ検出の強みと点検出の強みとを、単一の顕微鏡10において組み合わせることが可能になる。
【符号の説明】
【0054】
10a~10e 顕微鏡
12 広視野照明ユニット
14 試料
16,16’ ビームスプリッタユニット
18,20 検出ビーム経路
22,22’ カメラ検出ユニット
24 点検出ユニット
26 検出対物レンズ
28 制御ユニット
30 画像処理ユニット
32,34 チューブレンズ
36 傾斜ミラー
38 マイクロミラーアクチュエータユニット
40 光源
42 照明対物レンズ
44 偏向ミラー
46 検出器
48 光学素子
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】