(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】MUC18に特異的な抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220204BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220204BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220204BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220204BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220204BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220204BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220204BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220204BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220204BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/18
C07K19/00
C07K14/705
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
G01N33/53 D
G01N33/536 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536072
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 US2019067387
(87)【国際公開番号】W WO2020132190
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/122567
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521017240
【氏名又は名称】マルチチュード インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MULTITUDE INC.
【住所又は居所原語表記】Room 132, Building 4, 333 Guiping Road, Xuhui District, Shanghai 200233, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ジュンリ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,シュ-フェイ
(72)【発明者】
【氏名】メン,シュン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA16
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
MUC18(MCAMまたはCD146としても知られる)に特異的な抗体ならびに治療および診断目的のためのその使用が提供される。また本明細書に提供されるのは、MUC18を結合する細胞外抗原結合性フラグメントを含むキメラ抗原受容体(CAR)およびこれを発現する免疫細胞である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CL070325である参照抗体と同じヒトMUC18のエピトープに結合する、ヒトMUC18に結合する単離された抗体。
【請求項2】
(a)重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含む重鎖可変領域(V
H)、および
(b)軽鎖CDR1(LC CDR1)、軽鎖CDR2(LC CDR2)、および軽鎖CDR3(LC CDR3)を含む軽鎖可変領域(V
L)、
を含み、
ここで、HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3は、集合的に、参照抗体のHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3と少なくとも85%同一であり、および/または、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3は、集合的に、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3と少なくとも85%同一である、請求項1または2に記載の単離された抗体。
【請求項3】
V
Hは、参照抗体と同じHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含み、および/または、V
Lは、参照抗体と同じLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含む、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項4】
V
Hは、参照抗体のHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3と比べて、5個までのアミノ酸残基バリエーションを集合的に含有する、HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含み、および/または、V
Lは、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDRと比べて、5個までのアミノ酸残基バリエーションを集合的に含有する、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含む、請求項2に記載の単離された抗体。
【請求項5】
V
Hは、参照抗体のV
Hと少なくとも少なくとも85%同一であり、および/または、V
Lは、参照抗体のV
Lと少なくとも85%同一である、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項6】
参照抗体と同じV
Hおよび/または参照抗体と同じV
Lを含む、請求項5に記載の単離された抗体。
【請求項7】
ヒトMUC18に特異的に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
ヒトMUC18および非ヒトMUC18と交差反応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
非ヒトMUC18は、霊長類MUC18である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
抗体は、完全長抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
IgG分子である、請求項10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号1に示すV
Hおよび/または配列番号2に示すV
Lを含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
単鎖抗体である、請求項1~9または12~13のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗MUC18抗体を集合的にコードする核酸または一組の核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸を含むベクターまたは一組のベクター。
【請求項17】
発現ベクターである、請求項16に記載のベクターまたは一組のベクター。
【請求項18】
請求項16または17に記載のベクターまたは一組のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
(i)MUC18に結合する抗原結合性フラグメントを含む細胞外ドメイン、
(ii)膜貫通ドメイン、および
(iii)1以上の細胞内シグナリングドメイン
を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項20】
抗原結合性フラグメントは、単一鎖抗体フラグメント(scFv)である、請求項19に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項21】
scFvは、請求項14で表される、請求項20に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項22】
膜貫通ドメインは、CD28またはCD8受容体に由来する膜貫ドメインを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項23】
(iii)はCD3ζからのシグナリングドメインを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
(iii)は、同時刺激性シグナリングドメインを含む、請求項19~23のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
同時刺激性シグナリングドメインは、4-1BB、CD7、CD27、CD28、CD40、OX40、ICOS、GITR、HVEM、TIM1、またはLFA-1受容体からである、請求項24に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項26】
請求項19~25のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸を含むベクター。
【請求項28】
請求項19~27のいずれか一項に記載のキメラ受容体を発現する宿主細胞。
【請求項29】
免疫細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
免疫細胞はT細胞である、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
(i)請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体、請求項15~17または26~27のいずれか一項に記載の核酸または一組の核酸、または請求項18または28~30のいずれか一項に記載の宿主細胞;および(ii)薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項32】
請求項31に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、MUC18
+細胞の数を低減する方法。
【請求項33】
対象は、がんを有するか、または有すると疑われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
MUC18
+細胞の存在を検出する方法であって、
i.MUC18
+細胞を有すると疑われる試料を、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体と接触させること、ここで、抗体は標識剤と抱合されている、および、
ii.抗体の試料中の細胞への結合に基づいて、試料中のMUC18
+細胞の存在を検出すること
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
CD146または黒色腫細胞接着分子(MCAM)としても知られているMUC18は、主に細胞接着において機能する膜貫通当タンパク質である。それは、血管平滑筋を含む、血管組織内の内皮細胞において検出可能なレベルで発現される。注目すべきことに、MUC18は、ヒト悪性黒色腫において、具体的には、転移性病変および進行性原発腫瘍において、過剰発現される。それは、したがって、がんの処置および診断の両方における使用のための、抗MUC18抗体などの有効なMUC18アンタゴニストを開発するのに非常に重要である。
【発明の概要】
【0002】
本発明の概要
本開示は、少なくとも一部が、MUC18に特異的な数多の抗体の開発に基づいている。かかる抗体は、標的MUC18抗原に対する高い結合親和性および/またはMUC18+細胞に対する高い阻害活性を示した。
【0003】
結果的に、本開示の一側面は、MUC18に結合する単離された抗体(抗MUC18抗体)を特色とし、ここで、この抗体は、CL070325である参照抗体と同じヒトMUC18のエピトープを結合する。参照抗体の構造特色は、本明細書に提供される。
【0004】
いくつかの態様において、抗MUC18抗体は、重鎖可変領域(VH)を含んでいてもよく、ここで、重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)は、集合的に、参照抗体のHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3と、少なくとも85%(例として、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%以上)同一である。いくつかの場合において、抗体は、上記参照抗体の1つと同じHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含むVHを含んでいてもよい。他の態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、参照抗体のHC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3と比べて、5、4、3、2、または1個までの突然変異(単数または複数)を集合的に含有する、HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含むVHを含んでいてもよい。
【0005】
代替的にまたは加えて、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、軽鎖可変領域(VL)を含んでいてもよく、ここで、軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)は、集合的に、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3と、少なくとも85%(例として、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%以上)同一である。いくつかの場合において、抗体は、上記の参照抗体の1つと同じLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含んでいてもよい。他の態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3と比べて、5、4、3、2、または1個までの突然変異(単数または複数)を集合的に含有する、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含んでいてもよい。
【0006】
いくつかの例において、本明細書に記載の抗MUC18は、上記参照抗体の1つと同じ重鎖および/または軽鎖CDRを含む。いくつかの場合において、かかる抗MUC18抗体は、参照抗体と同じVHおよび/またはVLを含んでいてもよい。
【0007】
本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかは、ヒトMUC18に特異的に結合してもよい。いくつかの場合において、抗MUC18抗体は、ヒトMUC18および霊長類MUC18などの非ヒトMUC18と交差反応してもよい。抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。いくつかの例において、それは、キメラ抗体であり得る。
【0008】
いくつかの態様において、抗MUC18抗体は、完全長抗体(例として、IgG分子)またはそれらの抗原結合性フラグメントであり得る。代替的に、それは、単鎖抗体であり得る。
【0009】
別の側面において、本開示は、本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかを集合的にコードする核酸または一組の核酸(例として、2つの核酸)、および、抗MUC18抗体をコードする核酸(単数または複数)を含むベクターまたは一組のベクター(例として、2つのベクター)を特色とする。いくつかの場合において、ベクターまたはベクターセットは、発現ベクター(単数または複数)であり得る。また、本明細書に提供されるのは、核酸(単数または複数)またはベクター(単数または複数)を含む宿主細胞である。さらに、本開示は、本明細書に記載の抗MUC18を作製するための方法を提供し、抗体についてのコード配列を含むベクターまたはベクターセットを含む宿主細胞を培養すること、ここで、コード配列は好適なプロモーターに操作可能に連結されている、および、このようにして産生された抗体を、例えば、宿主細胞または培養培地から収集すること、を含む。
【0010】
さらに、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、これは、(i)MUC18を結合する抗原結合性フラグメントを含む細胞外ドメイン、(ii)膜貫通メイン、および(iii)1以上の細胞内刺激性ドメインを含み得る。抗原結合性フラグメントは、本明細書に記載の参照抗体のいずれかと同じヒトMUC18のエピトープを結合し得る。いくつかの例において、抗原結合性フラグメントは、参照抗体のいずれかと同じHC CDRおよび/またはLC CDRを含んでいてもよい。かかる抗原結合性フラグメントは、参照抗体と同じVHおよびVLを含んでいてもよい。いくつかの例において、抗原結合性フラグメントは、単一鎖抗体(scFv)であり得る。
【0011】
本明細書に記載のCARのいずれかにおいて、膜貫通ドメインは、CD28またはCD8に由来する膜貫通ドメインを含み得る。代替的にまたは加えて、1以上の細胞内刺激性ドメインは、CD3ζからのシグナリングドメイン、および任意に、4-1BB、CD7、CD27、CD28、CD40、OX40、ICOS、GITR、HVEM、TIM1、またはLFA-1からであり得る、同時刺激性シグナリングドメインを含み得る。本明細書に記載のCARのいずれかをコードする核酸、これを含むベクター、および、CARを発現する宿主細胞はまた、本開示の範囲内である。いくつかの例において、CARを発現する宿主細胞は、T細胞などの免疫細胞である。
【0012】
もう1つの側面において、本開示は、(i)本明細書に記載の抗MUC18抗体、これをコードする核酸または一組の核酸、あるいは、本明細書に記載のCAR構築物のいずれかを発現する宿主細胞の1以上、および、(ii)薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
その上、本開示は、MUC18+細胞の数を低減する方法を特色とし、この方法は、本明細書に記載の医薬組成物のいずれかの有効量を、これを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの態様において、対象は、がん、例えば、上皮がんを有するかまたはこれを有すると疑われるヒト患者であり得る。また本開示の範囲内であるのは、本明細書に記載の標的疾患(例として、上皮がんなどのがん)のいずれかの処置における使用のための、または、標的疾患の処置のための医薬の製造における使用のための、本明細書に記載の医薬組成物である。
【0014】
加えて、本開示は、MUC18+細胞の存在を検出する方法を特色とし、この方法は、(i)MUC18+細胞を有すると疑われる試料を、標識剤と抱合された、本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかと接触させること;および(ii)抗体の試料中の細胞への結合に基づいて、試料中のMUC18+細胞の存在を検出することを含む。いくつかの場合において、試料は、上皮がんなどの、がんを有する危険があるか、または、これを有すると疑われるヒト患者に由来する。
【0015】
本発明の1以上の態様の詳細は、以下の説明において示される。本発明の他の特色または利点は、以下の図面および数個の態様の詳細な記載から、および、添付の請求項からもまた明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、抗MUC18 CARレンチウイルスのCD3
+T細胞への形質導入効率を示す図を包含する。
【0017】
【
図2】
図2A~2Eは、様々なMUC18
+細胞株に対して抗原依存性細胞傷害を誘導する際の抗MUC18 CAR
+T細胞の効果を示すグラフを包含する。
図2A:抗MUC18 CAR
+T細胞は、MUC18
-細胞(SKOV-3)において抗原依存性細胞傷害を誘導しないことを示すグラフ。
図2B~2E:抗MUC18 CAR
+T細胞は夫々、MUC18
+細胞株A375、SK-MEL-2、GAK、およびHMV-II細胞に対して抗原依存性細胞傷害を誘導する際に有効であることを示すグラフ。
【0018】
【
図3】
図3A~3Eは、様々なMUC18
+細胞株と同時培養されたときに、IL-2の分泌を誘導する際の、MUC18 CAR
+T細胞の効果を示すグラフを包含する。
図3A:抗MUC18 CAR
+T細胞は、MUC18
-細胞(SKOV-3)と同時培養されるとき、IL-2の分泌を誘導しないことを示すグラフ。
図3B~3E:抗MUC18 CAR
+T細胞が、夫々、MUC18
+細胞株A375、SK-MEL-2、GAK、およびHMV-II細胞と同時培養されるとき、IL-2の分泌を誘導する際に有効であることを示すグラフ。
【0019】
【
図4】
図4A~4Eは、様々なMUC18
+細胞株と同時培養されたときに、IFNγの分泌を誘導する際の、MUC18 CAR
+T細胞の効果を示すグラフを包含する。
図4A:抗MUC18 CAR
+T細胞が、MUC18
-細胞(SKOV-3)と同時培養されるとき、IFNγの分泌を誘導しないことを示すグラフ。
図4B~4E:抗MUC18 CAR
+T細胞が、夫々、MUC18
+細胞株A375、SK-MEL-2、GAK、およびHMV-II細胞と同時培養されるとき、IFNγの分泌を誘導する際に有効であることを示すグラフ。
【0020】
【
図5】
図5Aは、対照T細胞と比べて、A375異種移植マウスモデルにおいて腫瘍体積を低減する、抗MUC18 CAR
+T細胞の能力を示すグラフを包含する。
図5Bは、対照T細胞と比べて、GAK異種移植マウスモデルにおいて腫瘍体積を低減する、抗MUC18 CAR
+T細胞の能力を示すグラフを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な記載
本明細書に開示されるのは、数多の抗MUC18抗体であり、これらは、標的MUC18抗原への高い結合親和性および/またはMUC18+細胞に対する高い阻害活性を包含する、優れた特色を示した。
【0022】
結果的に、本明細書に提供されるのは、MUC18に結合することができる抗体、これをコードする核酸、抗体-薬物抱合体(ADC)および抗MUC18抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)、および治療および診断目的の両方のためのそれらの使用である。また本明細書に提供されるのは、抗体および/またはADCならびにこれを含むCARの治療的および/または診断的使用のためのキット、ならびに、抗MUC18抗体を産生するための方法である。
【0023】
MUC18へ結合する抗体
本開示は、MUC18を結合する抗体を提供し、これは、CD146または黒色腫細胞接着分子(MCAM)としても公知である。ヒトにおいて、MUC18は、MCAM遺伝子(NCBI遺伝子ID:4162)によってコードされている。MUC18は、ヒト悪性黒色腫において、具体的には、転移性病変および進行性原発腫瘍において、過剰発現される。その細胞の接着機能性から生じて、MUC18は、黒色腫細胞と血管系の細胞要素との間の接触点として作用し得る。この接触は、黒色腫病変および腫瘍の脈管構造への浸透、および、炎症の間の白血球の血管外移動を可能にする。MUC18は、加えて、FYNおよびPTK2/FAK1のチロシンリン酸化の引き金を引くと考えられている。さらに、黒色腫患者における上昇したMUC18発現レベルはまた、予後および生存不良のマーカーであると実証されてきた。よって、この受容体は、標的がんの処置および診断のための標的および/またはバイオマーカーとして機能し得る。
【0024】
結果的に、本明細書に開示の抗MUC18抗体は、それ自体でまたは他の部分に抱合することによって、例えば、抗体-薬物抱合体を形成するように治療剤に抱合されて、または、キメラ抗原受容体中の細胞外抗原結合ドメインであることによって、本明細書に記載のとおりの標的がんを処置および/または診断する際に使用され得る。細胞表面MUC18(例として、MUC18+がん細胞)を発現する疾患細胞を除去するための、MUC18+細胞を標的とする細胞療法はまた、本開示の範囲内である。
【0025】
抗体(互換的に複数形態で使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等々などの標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書に使用されるとき、用語「抗体」は、無傷の(すなわち、完全長)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合性フラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単一鎖(scFv)、それらの突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ナノボディー、線状抗体、単一鎖抗体、多重特異性抗体(例として、二重特異性抗体)および必要とされる特異性の抗原認識部位を含むいずれかの他の改変された立体配置の免疫グロブリン分子(抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合的に改変された抗体を含む)を包含する。
【0026】
抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、またはIgM(またはそれらのサブクラス)などの、いずれかのクラスの抗体を包含し、および、抗体は、具体的なクラスのものである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに分類され得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、および、これらのうちの数個は、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、夫々、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミュウと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0027】
典型的な抗体分子は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、これらは大抵、抗原結合に関与する。VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として知られるより保存された領域によって分散される、「相補性決定領域」(「CDR」)としても知られる、高頻度可変性の領域にさらに分類され得る。各VHおよびVLは、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。フレームワーク領域およびCDRの程度は、当該技術分野において知られている方法論、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、および/またはcontact定義を使用して正確に同定することができ、これらのすべては、当該技術分野において周知である。例として、Kabat, E.A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, Chothia et al., (1989) Nature 342:877; Chothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917, Al-lazikani et al (1997) J. Molec. Biol. 273:927-948;および Almagro, J. Mol. Recognit. 17:132-143 (2004)を参照のこと。またhgmp.mrc.ac.ukおよびbioinf.org.uk/absを参照のこと。
【0028】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、MUC18を結合し、および、MUC18の活性を、少なくとも50%(例として、60%、70%、80%、90%、95%またはこれを超えて)阻害することができる。インヒビター効能の基準を提供する、見掛けの阻害定数(KiappまたはKi,app)は、酵素活性を低減するのに要求されるインヒビターの濃度に関連し、および、酵素濃度に依存していない。本明細書に記載の抗MUC18抗体の阻害活性は、当該技術分野において知られているルーチンの方法によって決定することができる。
【0029】
抗体のK
i,
app値は、反応の程度(例として、酵素活性)に関して、種々の濃度の抗体の阻害効果を測定することによって決定され得る;インヒビターの濃度の関数として、修正モリソン式(方程式1)に、擬一次速度定数(v)における変化を適合させることにより、見掛けのKi値の概算を生じる。競合的インヒビターについては、Ki
appは、K
i,
app 対 基質濃度のプロットの線形回帰分析から抽出したy切片から得ることができる。
【数1】
【0030】
Aがvo/Eに等価であるとき、インヒビター(I)の不在下の酵素反応の初速度(vo)は、全酵素濃度(E)によって除算される。
【0031】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、MUC18抗原またはその抗原エピトープについて、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5pMまたはこれ未満のKiapp値を有し得る。いくつかの態様において、抗MUC18抗体は、第一の標的について、第二の標的と比べて低いKiappを有し得る。Kiappにおける差異(例として、特異性または他の比較について)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000または105倍であり得る。
【0032】
本明細書に記載の抗体は、マウス、ラット、ヒト、またはいずれの他の起源(キメラのまたはヒト化抗体を含む)のものであり得る。かかる抗体は、天然に存在しない、すなわち、ヒトの行為(例として、所望される抗原またはそのフラグメントでかかる動物に免疫付与する)なしでは動物中で産生されないであろう。
【0033】
本明細書に記載の抗体のいずれかは、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得る。「モノクローナル抗体」は、均一な抗体集団を指し、および「ポリクローナル抗体」は、不均一な抗体集団を指す。これらの2つの用語は、抗体の供給源または抗体が作製される様式を限定しない。
【0034】
一例において、本明細書に記載の方法で使用される抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するそれらの抗原結合性フラグメントである、非ヒトの形態(例として、マウス)の抗体を指す。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望される特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体または輸入されたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含んでいてもよいが、抗体性能をさらに改良および最適化するために含まれる。
【0035】
一般に、ヒト化抗体は、実質的に全ての、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインを含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、および、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は最適にはまた、少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。抗体は、WO99/58572に記載されるように、改変されたFc領域を有し得る。他の形態のヒト化抗体は、1以上のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つ)を有し、これらは、元の抗体に関して変更されており、これはまた、元の抗体からの1以上のCDRに「由来した」1以上のCDRと呼ばれる。ヒト化抗体はまた、親和性成熟を包含し得る。
【0036】
別の例において、本明細書に記載の抗体は、キメラ抗体であり得、これは、ヒト抗体からの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を包含し得る。キメラ抗体は、第一の種からの可変領域または可変領域の一部および第二の種からの定常領域を有する抗体を指す。典型的には、これらのキメラ抗体において、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、1種の哺乳動物(例として、マウス、ウサギ、およびラットなどの非ヒト哺乳動物)由来の抗体の可変領域を模倣するが、定常領域は、ヒトのような別の哺乳動物に由来する抗体の配列に相同である。いくつかの態様において、アミノ酸改変は、可変領域および/または定常領域において行われ得る。
【0037】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、対応する標的抗原またはそのエピトープに特異的に結合する。抗原またはエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当該技術分野において十分に理解された用語である。分子は、それが代替的な標的と反応するよりも特定の標的抗原と、より頻繁に、より迅速に、より長い期間、および/または、より高い親和性で反応する場合、「特異的結合」を示すといわれる。抗体は、それが他の物質に結合するよりも、高い親和性、結合活性、より容易に、および/またはより長い期間結合する場合、標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」。例えば、MUC18抗原またはその抗原エピトープに特異的に(または優先的に)結合する抗体は、同じ抗原中の他の抗原または他のエピトープに結合するよりも、高い親和性、結合活性、より容易に、および/またはより長い期間、この標的抗原を結合する抗体である。
【0038】
この定義を用いて、例えば、第一の標的抗原に特異的に結合する抗体は、第二の標的抗原に特異的または優先的に結合してもよいし、しなくてもよいことがまた理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも、排他的な結合を要求しない(それは包含し得るけれども)。いくつかの例において、標的抗原またはそのエピトープに「特異的に結合する」抗体は、他の抗原または同じ抗原中の他のエピトープに結合しなくてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、ヒトMUC18を特異的に結合する。いくつかの例において、非ヒトMUC18抗原へのその結合活性は、従来のアッセイにおいて検出可能ではないか、または、非常に低く、当業者に公知の有意な生物学的有意性を有さないだろう。他の例において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、例えば、ヒトMUC18と非ヒトMUC18(例えば、非ヒト霊長類、マウスまたはラットなどの実験動物からのMUC18)との間で、異なる種からのMUC18と交差反応し得る。
【0039】
本明細書に使用されるとき、用語「MUC18」、「MCAM」、「CD146」または「黒色腫細胞接着分子」は、いずれかの好適な種、例として、ヒト、非ヒト霊長類などの非ヒト哺乳動物、または齧歯類(例として、マウスまたはラット)のMUC18を指す。MUC18は、細胞接着において主に機能する膜貫通糖タンパク質である。例示のヒトMUC18のアミノ酸配列は、以下に提供される(NCBI受託番号NP_006491もまた参照のこと):
【化1】
【0040】
他の種からのMUC18分子は、当該技術分野で周知であり、および、それらのアミノ酸配列は、公的に入手可能なデータベース、例えば、GenBankまたはNCBIから検索することができる。
【0041】
いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの抗MUC18抗体は、標的抗原(例として、ヒトMUC18)またはその抗原性エピトープについて好適な結合親和性を有する。本明細書に使用されるとき、「結合親和性」は、見掛けの会合定数またはKAを指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書に記載の抗MUC18抗体は、標的抗原または抗原性エピトープについて、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M、またはそれ未満の結合親和性(KD)を有し得る。増大した結合親和性は、減少したKDに対応する。第二の抗原と比べて高い、第一の抗原についての抗体の結合親和性は、第二の抗原を結合するためのKA(または数値KD)よりも高い、第一の抗原を結合するためのKA(またはより小さい数値KD)によって指し示され得る。
【0042】
かかるケースにおいて、抗体は、第二の抗原(例として、第二の立体配座の同じ第一のタンパク質またはその模倣体;または第二のタンパク質)と比べて、第一の抗原(例として、第一の立体配座の第一のタンパク質またはその模倣体)について特異性を有する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、異なる種のMUC18への結合親和性と比較して高い、ヒトMUC18への結合親和性(より大きいKAまたはより小さいKD)を有する。結合親和性(例として、特異性または他の比較について)における差異は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000または105倍であり得る。いくつかの態様において、抗MUC18抗体のいずれかは、標的抗原またはその抗原性エピトープへの抗体の結合親和性を増大するために、さらに親和性成熟され得る。
【0043】
結合親和性(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例として、蛍光アッセイを使用する)を包含する、様々な方法によって決定され得る。結合親和性を評価するための例示の条件は、HBS-P緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、0.005%(v/v)界面活性剤P20)中である。これらの技法を使用して、標的タンパク質濃度の関数として、結合された結合タンパク質の濃度を測定することができる。結合された結合タンパク質の濃度([Bound])は、一般に、以下の方程式によって、遊離の標的タンパク質([Free])の濃度に関連する:
[Bound] = [Free]/(Kd+[Free])
【0044】
しかしながら、正確なKAの決定を行うことは必ずしも必要ではない。なぜなら、ときには、例として、ELISAまたはFACS分析などの方法を使用して決定された親和性の定量的な測定値を得ることは十分であるからであり、それは、KAに比例し、およびよって、親和性の定量的な測定値を得るために、または、親和性の推測を得るために、例として、機能的アッセイ、例として、インビトロまたはインビボアッセイにおける活性によって、より高い親和性が、例として、2倍高いかどうかを決定するなどの比較のために、使用できる。
【0045】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、本明細書に提供される参照抗体の1つと同じMUC18抗原(例として、ヒトMUC18)のエピトープに結合するか、または、MUC18抗原に結合する参照抗体に対して競合する。本明細書に提供される参照抗体は、CL070325を包含し、その各々の構造上の特色は、本明細書に提供される。本明細書に記載の参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、参照抗体と正確に同じエピトープまたは実質的に重複するエピトープ(例として、3未満の非重複アミノ酸残基、2未満の非重複アミノ酸残基、または、1のみの非重複アミノ酸残基を含有する)に結合してもよい。
【0046】
2つの抗体が、お互いに競合して、同族抗原に結合するのを妨げるかどうかは、当該技術分野で周知の競合アッセイによって決定され得る。かかる抗体は、当業者に公知のように同定され得る(例として、実質的に類似の構造上の特色(例として、相補性決定領域)を有するもの、および/または、当該技術分野で公知のアッセイによって同定されるもの)。例えば、競合アッセイは、参照抗体の1つを使用して行われ、候補抗体が、参照抗体と同じエピトープに結合するか、または、MUC18抗原へのその結合に対して競合するかを決定することができる。
【0047】
本明細書に記載の抗MUC18抗体は、重鎖可変領域(VH)を含んでいてもよく、これは、(a)CL070325におけるような重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)(GYSITSGYY(配列番号4));(b)CL070325におけるような重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)(INYGGTN(配列番号5));(c)CL070325におけるような重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)(ARGNNDGGFAY(配列番号6));または(d)(a)~(c)のいずれか1つの組み合わせを含み得る。
【0048】
代替的にまたは加えて、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、軽鎖可変領域(VL)を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含んでいてもよく、これは、(a)CL070325におけるような軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)(SSVSSTY(配列番号7));(b)CL070325におけるような軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)(RAS);(c)CL070325におけるような軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)(HQWSGYPYT(配列番号8));または(d)(a)~(c)のいずれかの組み合わせを含み得る。
【0049】
本明細書に提供される参照抗体の重鎖および軽鎖CDRは、当該技術分野で周知のIMGTアプローチに基づいて決定される。いくつかの場合において、本明細書に開示される抗MUC18抗体は、本明細書に開示される参照抗体のいずれかと同じ重鎖および軽鎖CDRを含み得る。同じVHおよび/またはVLCDRを有する2つの抗体は、同じアプローチ(例として、本明細書に記載のもの、および/または当該技術分野において知られているもの)によって決定されるとき、それらのCDRが同一であることを意味する。
【0050】
いくつかの例において、本明細書に開示の抗MUC18抗体は、CL070325と同じV
Hおよび/またはV
L配列を含んでいてもよく、これらは、以下に提供される(CDRは太字):
【化2】
【0051】
また、本開示の範囲内であるのは、本明細書に開示のとおりの参照抗MUC18抗体(例として、CL070325)のいずれかの機能的バリアントである。機能的バリアントは、参照抗体の重鎖および軽鎖CDR領域の1以上において、5(例として、4、3、2、または1)までのアミノ酸残基バリエーションを含み、および、実質的に同様の親和性を有する(例として、同じオーダーのKD値を有する)MUC18抗原の同じエピトープを結合することができる。いくつかの場合において、機能的バリアントの重鎖および/または軽鎖CDRの各々は、参照抗体のカウンターパートCDRと比べて2以下のアミノ酸残基バリエーションを含有する。いくつかの例において、機能的バリアント中の重鎖および/または軽鎖CDRの各々は、参照抗体中のカウンターパートCDRと比べて、1以下のアミノ酸残基バリエーションを含有する。
【0052】
一例において、アミノ酸残基バリエーションは、保存的アミノ酸残基置換である。本明細書に使用されるとき、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされたタンパク質の相対的な電荷またはサイズ特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に公知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製され得、かかる方法は、かかる方法を編集する参考文献、例として、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkにおいて見出される。アミノ酸の保存的置換は、以下のグループ内のアミノ酸の中で行われた置換を包含する:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。
【0053】
いくつかの態様において、抗MUC18抗体は、参照抗体の重鎖CDRに少なくとも80%(例として、85%、90%、95%、または98%)集合的に同一である重鎖CDR、および/または、参照抗体の軽鎖CDRに、少なくとも80%(例として、85%、90%、95%、または98%)集合的に同一である軽鎖CDRを含む。いくつかの態様において、抗MUC18抗体は、いずれかの参照抗体の重鎖可変領域と少なくとも80%(例として、85%、90%、95%、または98%)同一である重鎖可変領域(VH)および/または参照抗体の軽鎖可変領域と少なくとも80%(例として、85%、90%、95%、または98%)同一である軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0054】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、KarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993において改変されるように、KarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを使用して決定される。かかるアルゴリズムは、Altschul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、score=50、wordlength=3を用いて実施され、目的のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載されるように利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するとき、夫々のプログラムのデフォルトパラメータ(例として、XBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。
【0055】
本開示はまた、本明細書に開示の参照抗MUC18抗体のいずれかの生殖細胞系列バリアントを提供する。生殖細胞系列バリアントは、対応する生殖細胞系列の配列に対する、その親抗体と比べて、フレームワーク領域において1以上の突然変異を含有する。生殖細胞系列バリアントを作製するために、親抗体またはこの一部(例として、フレームワーク配列)の重鎖または軽鎖可変領域配列を、抗体生殖細胞系列配列データベース(例として、bioinfo.org.uk/abs/、vbase2.org、またはimgt.org)に対する問合せ配列として使用して、親抗体によって使用される対応する生殖細胞系列配列、および、生殖細胞系列配列と親抗体との間のフレームワーク領域の1以上におけるアミノ酸残基バリエーションを同定することができる。1以上のアミノ酸置換は、次いで、生殖細胞系列配列に基づいて親抗体に導入されて、生殖細胞系列バリアントを産生することができる。
【0056】
いくつかの場合において、本明細書に開示の参照抗体の機能的バリアントは、参照抗体のヒト化抗体である。例は、以下を包含する:
【化3】
【0057】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかの重鎖はさらに、重鎖定常領域(CH)またはこの一部(例として、CH1、CH2、CH3、またはそれらの組み合わせ)を含み得る。重鎖定常領域は、いずれかの好適な起源、例として、ヒト、マウス、ラット、またはウサギのものであり得る。1つの特定の例において、重鎖定常領域は、ヒトIgG(ガンマ重鎖)からである。必要な場合、本明細書に記載のとおりの抗MUC18抗体は、改変された定常領域を含み得る。例えば、それは、免疫学的に不活性な、例として、補体媒介性溶解の引き金とならず、または、抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない、改変された定常領域を含み得る。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号に記載の方法を使用して評価され得る。他の態様において、定常領域は、Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624;PCT出願番号PCT/GB99/01441;および/またはUK特許出願番号9809951.8において記載されるように改変される。
【0058】
本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかはさらに、軽鎖可変領域および任意に当該技術分野で知られているいずれかのCLであり得る軽鎖定常領域を包含する軽鎖を含み得る。いくつかの例において、CLは、カッパ軽鎖である。他の例において、CLは、ラムダ軽鎖である。抗体重鎖および軽鎖の定常領域は、当該技術分野において周知である(例として、IMGTデータベース(imgt.org)またはvbase2.org/vbstat.php.において提供されるもの、これらの両方は、本明細書に参照により援用される)。
【0059】
抗MUC18抗体の調製
本明細書に記載のとおりのMUC18を結合することができる抗体は、当該技術分野において知られている任意の方法によって作成され得る。例えば、Harlow and Lane, (1998) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照のこと。
【0060】
いくつかの態様において、標的MUC18抗原(例として、ヒトMUC18)に特異的な抗体は、従来のハイブリドーマ技術によって作成され得る。任意に、KLHなどの担体タンパク質にカップリングされた、完全長標的抗原またはそのフラグメントは、その抗原に結合する抗体を生成するための宿主動物を免疫付与するために使用され得る。宿主動物の免疫付与のルートおよびスケジュールは一般に、本明細書にさらに記載されるような、抗体刺激および産生のための確立された、および、従来の技法に従う。マウス、ヒト化、およびヒト抗体の産生のための一般的な技法は、当該技術分野において知られており、および、本明細書に記載されている。ヒトを含む任意の哺乳動物対象またはそこからの抗体産生細胞は、ヒトを包含する、哺乳動物ハイブリドーマ細胞株の産生のための基礎として機能するように操作され得ることが企図される。典型的には、宿主動物は、本明細書に記載されるものを含む、免疫原の量で、腹腔内に、筋肉内に、経口的に、皮下に、足底内に、および/または皮内に接種される。
【0061】
ハイブリドーマは、Kohler, B.and Milstein, C.(1975) Nature 256:495-497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を使用して、または、Buck, D. W., et al., In Vitro, 18:377-381 (1982)によって改変されるように、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製され得る。X63-Ag8.653が挙げられるが、これに限定されない、入手可能な骨髄腫株、および、the Salk Institute, Cell Distribution Center, San Diego, Calif., USAからのものは、ハイブリダイゼーションにおいて使用され得る。一般に、技法は、ポリエチレングリコールなどの膜融合を使用して、または、当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞およびリンパ球様細胞を融合することを包含する。融合後、細胞は、融合培地から分離され、ハイブリダイズしていない親細胞を除去するために、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの培地選択的な増殖培地で増殖される。本明細書に記載の培地のいずれかは、血清を補充されるかまたは補充されずに、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用され得る。細胞融合技法の別の代替手段として、EMB不死化B細胞を使用して、本明細書に記載の抗MUC18モノクローナル抗体を産生することができる。ハイブリドーマは、拡大およびサブクローニングされ、所望される場合、上清は、従来の免疫アッセイ手順(例として、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫アッセイ、または蛍光免疫アッセイ)による抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0062】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、MUC18活性と干渉することができるモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマのすべての誘導体、子孫細胞を包含する。かある抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用して、インビトロまたはインビボで増殖され得る。モノクローナル抗体は、培養培地または体液から、所望される場合、アンモニウムスルファート沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの、従来の免疫グロブリン精製手順によって、単離され得る。望ましくない活性は、存在する場合、例えば、固相に付着した免疫原から作成された吸着剤の上に調製物を流すこと、および、免疫原から所望される抗体を溶出または放出することによって、除去され得る。免疫付与される種において免疫原性であるタンパク質(例として、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのサイログロブリン、または大豆トリプシンインヒビター)に、二機能性または誘導化剤(例えば、マレイミドベンゾイル、スルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は、異なるアルキル基である)を使用して抱合された、標的抗原または標的アミノ酸配列を含有するフラグメントを用いる宿主動物の免疫付与は、抗体の集団(例として、モノクローナル抗体)を生じ得る。
【0063】
所望される場合、目的の(例として、ハイブリドーマによって産生される)抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)は、配列決定され得、および、ポリヌクレオチド配列は、次いで、発現または増殖のためにベクターにクローニングされ得る。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクターに維持され得、および、宿主細胞は、次いで、今後の使用のために拡大および凍結され得る。代替手段において、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」するかまたは親和性(親和性成熟)または抗体の他の特徴を改善するために遺伝子操作に使用され得る。例えば、定常領域は、抗体がヒトにおける臨床試験および処置に使用されるとき、免疫応答を回避するために、ヒト定常領域により類似するように操作され得る。抗体配列を遺伝子学的に操作して、標的抗原に対するより大きい親和性およびMUC18の活性を阻害する際のより高い有効性を得ることは所望され得る。1以上のポリヌクレオチド変更が、抗体に対して行われ、および、標的抗原に対するその結合特異性を依然として維持することは、当業者に明らかであろう。
【0064】
他の態様において、完全ヒト抗体は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することによって得られ得る。より所望される(例として、完全ヒト抗体)またはより強固な免疫応答を産生するように設計されたトランスジェニック動物はまた、ヒト化またはヒト抗体の生成のために使用され得る。かかる技術の例は、Amgen, Inc. (Fremont, Calif.)からのXenomouse(登録商標)およびMedarex, Inc. (Princeton, N.J.)からのHuMAb-マウス(登録商標)およびTCマウス(商標)である。別の代替手段において、抗体は、ファージディスプレーまたは酵母技術により組み換えで作成され得る。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;およびWinter et al., (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455を参照のこと。代替的に、ファージディスプレー技術(McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553)を使用して、非免疫付与ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体および抗体フラグメントを産生することができる。
【0065】
いくつかの態様において、MUC18抗原に結合することができる抗体は、抗体ライブラリ、例えば、ファージディスプレー抗体ライブラリまたは酵母ディスプレー抗体ライブラリから単離することができる。一例において、本明細書に記載の抗MUC18抗体は、モノクローナル抗体ライブラリから、例えば、US2015/0153356に開示される方法に従って、単離することができ、この関連する開示は、本明細書において参照される目的または主題のために、本明細書に参照により援用される。
【0066】
無傷の抗体(完全長抗体)の抗原結合性フラグメントは、ルーチンの方法を介して調製され得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体分子のペプシン消化、および、F(ab’)2のジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFabフラグメントによって産生され得る。
【0067】
ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、および二重特異性抗体などの、遺伝子学的に改変された抗体は、例として、従来の組換え技術を介して産生され得る。一例において、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例として、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離し、および配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として機能する。一旦単離されると、DNAは1以上の発現ベクター中に配置され、これは次いで、組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得るために、他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ得る。例として、PCT公開番号WO87/04462を参照のこと。DNAは、次いで、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(Morrison et al., (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851)、または、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全てまたは一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって、改変することができる。このやり方で、「キメラの」または「ハイブリッド」抗体などの、標的抗原の結合特異性を有する、遺伝子学的に改変された抗体を調製することができる。
【0068】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技法は、当該技術分野において周知である。例として、Morrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851;Neuberger et al. (1984) Nature 312, 604;およびTakeda et al. (1984) Nature 314:452を参照のこと。
【0069】
ヒト化抗体を構築するための方法は、当該技術分野において周知である。例として、Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033 (1989)を参照のこと。一例において、親の非ヒト抗体のVHおよびVLの可変領域は、当該技術分野において知られている方法に従って、三次元分子モデリング分析に供される。次に、正確なCDR構造の形成のために重要であると予測されるフレームワークアミノ酸残基が、同じ分子モデリング分析を使用して同定される。並行して、親の非ヒト抗体のものと相同なアミノ酸配列を有するヒトVHおよびVL鎖は、検索問合せ配列として、親VHおよびVL配列を使用して、いずれかの抗体遺伝子データベースから同定される。ヒトVHおよびVLアクセプター遺伝子は、次いで選択される。
【0070】
選択されるヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域は、親の非ヒト抗体またはその機能的バリアントからのCDR領域と置き換えられ得る。必要な場合、CDR領域と相互作用する際に重要であると予測される親鎖のフレームワーク領域内の残基(上記参照のこと)は、ヒトアクセプター遺伝子中の対応する残基について置換するために使用され得る。
【0071】
単鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによって、組換え技術を介して調製することができる。好ましくは、可動性リンカーは、2つの可変領域間に組み込まれる。代替的に、単一鎖抗体の産生のために記載される技法(米国特許第4,946,778号および同第4,704,692号)は、ファージまたは酵母scFvライブラリを産生するために適合され、および、MUC18に特異的なscFvクローンは、ルーチンの手順に従って、ライブラリから同定され得る。陽性クローンは、MUC18活性を阻害するものを同定するためのさらなるスクリーニングに供され得る。
【0072】
当該技術分野において知られている、および、本明細書に記載の方法に従って得られた抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して特徴づけることができる。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、または、「エピトープマッピング」である。例えば、Harlow and Lane, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999の11章に記載されるような抗体-抗原複合体の結晶構造を解析すること、競合アッセイ、遺伝子フラグメント発現アッセイ、および合成ペプチドをベースとしたアッセイを包含する、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴づけるための、当該技術分野において知られている多くの方法が存在する。追加の例において、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープは、線状エピトープ(すなわち、単一の一続きのアミノ酸に含有され得る)、または、必ずしも、単一の一続き(一次構造直線配列)に含有されないアミノ酸の三次元相互作用によって形成される立体配座エピトープであり得る。変化する長さのペプチド(例として、少なくとも4~6アミノ酸長)は単離または合成され(例として、組換えで)、および、抗体を用いる結合アッセイに使用され得る。別の例において、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列に由来する重複のペプチドを使用し、および、抗体による結合を決定する系統的なスクリーニングにおいて決定することができる。
【0073】
遺伝子フラグメント発現アッセイに従って、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為にまたは特定の遺伝子構築物によってのいずれかでフラグメント化され、および、抗原の発現されるフラグメントと、試験される抗体との反応性が、決定される。遺伝子フラグメントは、例えば、PCRによって産生され、および次いで、放射性アミノ酸の存在下で、インビトロで転写され、タンパク質に翻訳され得る。抗体の、放射性標識された抗原フラグメントへの結合は、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。あるエピトープはまた、ファージ粒子の表面上に提示される無作為のペプチド配列の大きなライブラリ(ファージライブラリ)を使用することによって同定され得る。代替的に、重複のペプチドフラグメントの規定されたライブラリは、単純な結合アッセイにおける試験抗体への結合について試験され得る。追加の例において、抗原結合ドメインの変異誘発、ドメイン交換実験およびアラニン走査変異誘発は、エピトープ結合に要求され、充分な、および/または必要な残基を同定するために、実施され得る。例えば、ドメイン交換実験は、MUC18ポリペプチドの様々なフラグメントが、密接に関連するが抗原的に別個のタンパク質からの配列と、置き換えられ(交換され)ている標的抗原の突然変異体を使用して実施され得る。突然変異体MUC18への抗体の結合を評価することによって、具体的な抗原フラグメントの、抗体結合への重要性を評価することができる。
【0074】
代替的に、競合アッセイは、同じ抗原に結合することが知られている他の抗体を使用して、実施され、抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定することができる。競合アッセイは、当業者に周知である。
いくつかの例において、抗MUC18抗体は、以下に例示されるような組換え技術によって調製される。
【0075】
本明細書に記載のとおりの抗MUC18抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローニングされ得、各ヌクレオチド配列は、好適なプロモーターに操作可能に連結している。一例において、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列の各々は、別個のプロモーターに操作可能に連結している。代替的に、重鎖および軽鎖の両方が同じプロモーターから発現されるように、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、単一のプロモーターと操作可能に連結し得る。必要な場合、内部リボソーム進入部位(IRES)は、重鎖コード配列と軽鎖コード配列との間に挿入され得る。
【0076】
いくつかの例において、抗体の2つの鎖をコードするヌクレオチド配列は、2つのベクターにクローニングされ、これは、同じまたは異なる細胞に導入され得る。2つの鎖が異なる細胞において発現される場合、これらの各々は、これを発現する宿主細胞から単離することができ、および、単離された重鎖および軽鎖は、好適な条件下で混合およびインキュベートされ、抗体の形成を可能にする。
【0077】
一般に、抗体の1つまたは全ての鎖をコードする核酸配列は、当該技術分野において知られている方法を使用して、好適なプロモーターに操作可能に連結した、好適な発現ベクターにクローニングされ得る。例えば、ヌクレオチド配列およびベクターは、好適な条件下で、制限酵素と接触されて、お互いに対形成できる各分子上に、相補的な末端を創出し、および、リガーゼを用いて一緒に連結される。代替的に、合成核酸リンカーは、遺伝子の末端に連結され得る。これらの合成リンカーは、ベクター中の具体的な制限部位に対応する核酸配列を含有する。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の産生における使用のための宿主細胞のタイプに依存するだろう。
【0078】
サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTRなどのウイルスLTR、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、大腸菌lac UV5プロモーター、および単純ヘルペスtkウイルスプロモーターを包含するが、これらに限定されない、種々のプロモーターが、本明細書に記載の抗体の発現のために使用され得る。
【0079】
調節可能なプロモーターもまた使用することができる。かかる調節可能なプロモーターは、lacオペレータ保有哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節するための転写モジュレーターとして大腸菌からのlacリプレッサーを使用するもの[Brown, M. et al., Cell, 49:603-612 (1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの[Gossen, M. and Bujard, H., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551 (1992);Yao, F. et al., Human Gene Therapy, 9:1939-1950 (1998);Shockelt, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6522-6526 (1995)]を包含する。他の系は、FK506ダイマー、エストラジオールを使用するVP16またはp65、RU486、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)、またはラパマイシンを包含する。誘導システムは、Invitrogen、ClontechおよびAriadから入手可能である。
【0080】
オペロンを有するリプレッサーを包含する調節可能なプロモーターが使用され得る。一態様において、大腸菌からのlacリプレッサーは、転写可能なモジュレーターとして機能し、lacオペレータ保有哺乳動物プロモーターからの転写を調節することができ[M. Brown et al., Cell, 49:603-612 (1987)];Gossen and Bujard (1992);[M. Gossen et al., Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を転写アクチベーター(VP16)と組み合わせて、tetR哺乳動物転写アクチベーター融合タンパク質tTa(tetR-VP16)を創出し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要前初期プロモーター由来のtetO保有最小プロモーターと組み合わせて、tetR-tetオペレータシステムを創出し、哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御する。一態様において、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。テトラサイクリンオペレーターがCMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に位置する場合、tetR-哺乳動物の細胞転写因子融合誘導体よりもむしろ、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)単独で、強力なトランスモジュレーターとして機能し、哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御することができる(Yao et al., Human Gene Therapy)。このテトラサイクリン誘導性スイッチの1つの特定の利点は、その調節可能な効果を得るために、テトラサイクリンリプレッサー-哺乳動物細胞トランスアクチベーターまたはリプレッサー融合タンパク質の使用を必要としないことであり、これは、いくつかの場合において、細胞に毒性であり得る(Gossen et al., Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992);Shockett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6522-6526 (1995))。
【0081】
加えて、ベクターは、例えば、以下のいくつかのまたはすべてを含有し得る:哺乳動物細胞における安定なまたは一過的な形質導入体の選択のためのネオマイシン遺伝子などの、選択可能なマーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの前初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結およびRNAプロセシングシグナル;SV40ポリオーマ複製起点および正しいエピソームの複製のためのColE1;内部リボソーム結合部位(IRES)、多用途の複数のクローニング部位;ならびにセンスおよびアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。導入遺伝子を含有するベクターを産生するための好適なベクターおよび方法は、当該技術分野において周知および利用可能である。
【0082】
本明細書に記載の方法を実践するのに有用なポリアデニル化シグナルの例は、これらに限定されないが、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、およびSV40ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0083】
抗体のいずれかをコードする核酸を含む1以上のベクター(例として、発現ベクター)は、抗体を産生するための好適な宿主細胞に導入され得る。宿主細胞は、抗体またはそのポリペプチド鎖の発現のために好適な条件下で培養され得る。かかる抗体またはそのポリペプチド鎖は、従来の方法、例として、親和性精製を介して、培養された細胞から(細胞または培養物上清から)回収することができる。必要ならば、抗体のポリペプチド鎖は、抗体の産生を可能にする好適な期間の間、好適な条件下でインキュベートされ得る。
【0084】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体を産生するための方法は、本明細書にも記載されるような、抗MUC18抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターに関わる。組換え発現ベクターは、従来の方法、例として、カルシウムホスファート媒介性トランスフェクションによって、好適な宿主細胞(例として、dhfr-CHO細胞)に導入され得る。ポジティブな形質転換体宿主細胞は、選択され、および、抗体を形成する2つのポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養され、これは、細胞からまたは培養培地から回収され得る。必要な場合、宿主細胞から回収された2つの鎖は、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートされ得る。
【0085】
一例において、2つの組換え発現ベクターが提供され、1つは、抗MUC18抗体の重鎖をコードし、もう1つは、抗MUC18抗体の軽鎖をコードする。2つの組換え発現ベクターの両方は、従来の方法、例として、カルシウムホスフェート媒介性トランスフェクションによって、好適な宿主細胞(例として、dhfr-CHO細胞)に導入され得る。代替的に、発現ベクターの各々は、好適な宿主細胞に導入され得る。ポジティブな形質転換体は、選択され、および、抗体のポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養される。2つの発現ベクターが同じ宿主細胞に導入される場合、本明細書で産生される抗体は、宿主細胞からまたは培養培地から回収され得る。必要な場合、ポリペプチド鎖は、宿主細胞からまたは培養培地から回収され得、および次いで、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートされる。2つの発現ベクターが、異なる宿主細胞に導入される場合、これらの各々は、対応する宿主細胞からまたは対応する培養培地から回収され得る。2つのポリペプチド鎖は次いで、抗体の形成のために好適な条件下でインキュベートされ得る。
【0086】
標準的な分子生物学技法を使用して、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞を形質転換し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、および、培養培地から抗体を回収する。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはタンパク質G結合マトリックスを用いる親和性クロマトグラフィーによって単離され得る。
【0087】
本明細書に記載の抗MUC18抗体の重鎖、軽鎖またはその両方をコードする核酸、これを含有するベクター(例として、発現ベクター)のいずれか;およびベクターを含む宿主細胞は、本開示の範囲内である。
【0088】
抗体-薬物抱合体
本開示はまた、本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかを含む、抗体-薬物抱合体を提供し、これは、治療剤に共有結合している。用語「抗体-薬物抱合体」または「ADC」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の抗MUC18抗体および治療剤が共有結合的に連結されている抱合体を指す。一般に、この抗体-薬物抱合体は、抗MUC18抗体、治療剤、および任意に抗体と治療剤との間のリンカーを包含し得る。ADCは、治療剤をMUC18+細胞に送達することによって治療効果を増加させ得、これは、抗体、とりわけ、MUC18+がん細胞によって標的化される。抗体-薬物抱合体は、当該技術分野において知られている、抗体-薬物抱合体を調製する様々な方法によって調製され得る。
【0089】
本明細書に記載のADC中の治療剤は、毒素、化学治療剤、抗生物質、ADP-リボシルトランスフェラーゼ、放射性同位体または核酸分解酵素であり得る。いくつかの場合において、治療剤は、細胞傷害剤である。例としては、これらに限定されないが、アントラサイクリン、アウリスタチン(例として、アウリスタチンEまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE))、カンプトテシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、ツブリシン、ヘミアステリン、スプライソスタチン、プラジエノリド、およびカリケアマイシンを包含する。
【0090】
いくつかの態様において、抗MUC18抗体および治療剤は、リンカーを介して接続されている。かかるリンカーは、切断可能なリンカー、例えば、あるpH条件下で切断可能な(pH感受性リンカー)、プロテアーゼにより切断可能な(プロテアーゼ感受性のリンカー)、またはグルタチオンの存在下で切断可能な(グルタチオン感受性のリンカー)であり得る。いくつかの例において、リンカーは、プロテアーゼ切断部位を含み、これは、好適なプロテアーゼによって認識可能なおよび/または切断可能な2~5個のアミノ酸残基を含有し得る。かかるペプチドは、天然に存在するアミノ酸残基、天然に存在しないアミノ酸残基、またはそれらの組み合わせを含み得る。一例において、ペプチドリンカーは、ジペプチドリンカーであり得る。例としては、バリン-シトルリン(val-cit)リンカー、フェニルアラニン-リシン(phe-lys)リンカー、またはマレイミドカプロン酸-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(vc)リンカーを包含する。代替的に、リンカーは、切断不能なリンカー、例として、任意に置換されたアルカンまたはチオエーテルを含むリンカーであり得る。
【0091】
いくつかの例において、リンカーは、抗体と共有結合を形成し得る官能基を含み得る。例示の官能基は、これらに限定されないが、マレイミド基、ヨードアセトアミド基、ビニルスルホン基、アクリラート基、アクリルアミド基、アクリロニトリル基、またはメタクリラート基を包含する。いくつかの場合において、リンカーは、1以上の反応性アミンを含有し得、これらに限定されないが、アセチル-リシン-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(AcLys-VC-PABC)またはアミノPEG6-プロピオニルを包含する。例として、WO2012/059882を参照のこと。他の例示のリンカーは、スルホスクシニミジル-4-[Nマレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシラート(smcc)を包含する。スルホ-smcc抱合は、スルフヒドリル(チオール、--SH)と反応するマレイミド基を介して生じるが、そのスルホ-NHSエステルは、一級アミンに対して反応性である(リシンおよびタンパク質またはペプチドN末端において見出されるように)。
【0092】
いくつかの例において、リンカーは、分子スペーサー、例えば、式I:
【化4】
の部分を含み得、式中、R
1は、任意に置換されたC
1-6アルキル(例として、C
1-3アルキル)、任意に置換されたフェニル、任意に置換されたC
2-6アルキレン、任意に置換されたC
2-6アルケニレン、任意に置換されたC
2-6アルキニレン、または任意に置換されたトリアゾールである;および/またはXは、O、S、またはNであり得る。
【0093】
細胞傷害剤または他の治療剤を抗体に抱合するための方法は、当該技術分野において知られており、および、様々な刊行物におおいて記載されている。例えば、化学的改変は、リジン側鎖アミンを介して、または、抱合反応が生じる鎖間ジスルフィド結合を還元することにより活性化されたシステインススルフヒドリル基を介してのいずれかで、抗体において行われ得る。例として、Tanaka et al., FEBS Letters 579:2092-2096, (2005)、およびGentle et al., Bioconjug. Chem. 15:658-663, (2004)を参照のこと。規定の化学量論での特定の薬物抱合のための抗体の特定の部位において操作される反応性システイン残基が記載されている。例として、Junutula et al., Nature Biotechnology, 26:925-932, (2008)を参照のこと。アシルドナーグルタミン含有タグおよび/またはトランスグルタミナーゼおよびアミンの存在下でのポリペプチド操作により反応性となった内在性グルタミン、例として、反応性アミンで改変された細胞傷害剤を使用する抱合はまた、WO2012/059882、Strop et al., Chem. Biol. 20(2):161-167 (2013)、およびFarias et al., Bioconjug. Chem. 25(2):245-250 (2014)に記載されている。かかる刊行物の関係のある開示は、本明細書に参照される目的および主題のために、参照により援用される。
【0094】
キメラ抗原受容体(CAR)およびこれを発現する免疫細胞
本開示はまた、MUC18を標的にするキメラ抗原受容体およびこれを発現する免疫細胞を特色とする。本明細書に開示のとおりのキメラ抗原受容体(CAR)は、これを発現する免疫細胞(例として、T細胞)の結合特異性を、上皮由来がん細胞などのMUC18+細胞に再指向させ、それにより、例として、免疫細胞のエフェクター活性を介して、標的疾患細胞を除去する、人工細胞表面受容体である。CAR構築物はしばしば、少なくとも1つの細胞内シグナリングドメインに融合された、細胞外抗原結合ドメインを含む。Cartellieri et al., J Biomed Biotechnol 2010:956304, 2010。単鎖抗体フラグメント(scFv)であり得る細胞外抗原結合ドメインは、MUC18抗原に特異的であり、および、細胞内シグナリングドメインは、免疫細胞の活性化に繋がる細胞シグナリングを媒介し得る。そのため、MUC18に特異的なCAR構築物を発現する免疫細胞は、MUC18を発現する疾患細胞(例として、腫瘍細胞)に結合し、免疫細胞の活性化および疾患細胞の除去に繋がり得る。
【0095】
本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかを使用して、本明細書にまた記載されるCAR構築物を産生することができる。例えば、抗MUC18抗体のVHおよびVL ドメインは、細胞内シグナリングドメイン(単数または複数)に融合され、従来の組換え技術を使用してCAR構築物を産生することができる。いくつかの例において、抗MUC18のVHおよびVLドメインは、scFvフラグメントを形成するために、ペプチドリンカーを介して接続される。
【0096】
本明細書に開示のCAR構築物は、1以上の細胞内シグナリングドメインを含み得る。いくつかの例において、CARは、免疫受容体チロシンをベースとした活性化モチーフ(ITAM)を包含する細胞内シグナリングドメインを含む。かかる細胞内シグナリングドメインは、CD3ζからであり得る。加えて、CAR構築物は、1以上の同時刺激性シグナリングドメインをさらに含み得、これは、同時刺激性受容体から、例えば、4-1BB(CD137)、CD7、CD27、CD28、CD40、OX40、ICOS、GITR、HVEM、TIM1、またはLFA-1からであり得る。
【0097】
本明細書に開示のCAR構築物は、膜貫通ヒンジドメインをさらに含み得、これは、好適な細胞表面受容体、例えば、CD28またはCD8から得ることができる。
【0098】
また提供されるのは、本明細書に開示のとおりの抗MUC18 CARのいずれかをコードする単離された核酸分子およびベクター、および、核酸分子またはベクターを含む、宿主免疫細胞(例として、T細胞およびナチュラルキラー細胞)などの宿主細胞である。MUC18特異的抗原結合性フラグメントを含む、抗MUC18 CARを発現する免疫細胞は、MUC18を発現するがんの処置のために使用され得る。よって、また本明細書に提供されるのは、MUC18を発現するがんを有する対象を選択すること、および、MUC18標的CARを発現する免疫細胞の治療有効量を対象に投与することにより、MUC18+がんを有する対象を処置する方法である。
【0099】
医薬組成物
本明細書に記載のとおりの、抗MUC18抗体、これをコードする核酸または核酸セット、これを含むベクター、またはベクターを含む宿主細胞、ならびに、抗MUC18抗体を含むADCおよび/またはMUC18標的CARを発現する免疫細胞は、薬学的に許容し得る担体(賦形剤)と混合されて、標的疾患の処置における使用のための医薬組成物を形成することができる。「許容し得る」は、担体が組成物の活性成分と適合性でなければならず(および好ましくは、活性成分を安定化することができる)および処置される対象に有害ではないことを意味する。緩衝液を包含する薬学的に許容し得る賦形剤(担体)は、当該技術分野において周知である。例として、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed。(2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hooverを参照のこと。
【0100】
本発明の方法において使用される医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または安定剤を、凍結乾燥された製剤または水性溶液の形態で含み得る。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover)。許容し得る担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度において、レシピエントに対して非毒性であり、および、ホスファート、シトラート、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを包含する抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストランを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例としてZn-タンパク質錯体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を包含し得る。
【0101】
いくつかの例において、本明細書に記載の医薬組成物は、抗体(またはこれをコードする核酸またはADC)を含有するリポソームを含み、これは、Epstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985);Hwang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号において記載されるような、当該技術分野において知られている方法によって調製され得る。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に記載されている。具体的に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG-誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる、逆相蒸発方法によって生成され得る。リポソームは、規定された孔のサイズのフィルターを通して押し出され、所望される直径を有するリポソームを生産する。
【0102】
抗体、これをコードする核酸(単数または複数)、またはADCはまた、例えば、コアセルベーション技法によって、または、界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリラート(methacylate))マイクロカプセルに夫々封入され得、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションに封入され得る。かかる技法は、当該技術分野において知られている。例として、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)を参照のこと。
【0103】
他の例において、本明細書に記載の医薬組成物は、持続放出型式で製剤化され得る。持続放出調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを包含し、このマトリックスは、成形された物品、例としてフィルム、またはマイクロカプセルの形態で存在する。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸および7エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよびリュープロリドアセタートから構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、スクロースアセタートイソブチラート、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0104】
インビボ投与のために使用される医薬組成物は、滅菌されなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。治療的抗体組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルに配置される。
【0105】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口または直腸投与、または吸入またはガス注入による投与のための、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液または懸濁液、または坐薬などの単位投与形態であり得る。
【0106】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分は、医薬担体、例として、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウムまたはガムなどの従来の錠剤成分、および他の医薬希釈剤、例として、水と混合されて、本発明の化合物の均一な混合物を含有する固体予備製剤組成物、または、その非毒性の薬学的に許容し得る塩を形成することができる。これらの製剤組成物を均一と称するとき、活性成分は、組成物全体に均等に分散されて、組成物は、錠剤、丸薬およびカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分され得ることを意味する。この固体予備製剤組成物は、次いで、本発明の活性成分の0.1~約500mgを含有する上記のタイプの単位剤形に細分される。新規組成物の錠剤または丸薬は、コーティングまたは他に、持続的な作用の利点を与える剤形を提供するように配合され得る。例えば、錠剤または丸薬は、内部投薬量および外部投薬量の構成要素を含み得、後者は、前者の上のエンベロープの形態である。2つの構成要素は、胃での崩壊に耐え、および、内部構成要素を十二指腸まで無傷で通過させることまたは放出を遅延させることを可能にするように機能する腸溶性層によって分離され得る。様々な材料が、かかる腸溶性層またはコーティングに使用され得、かかる材料としては、数多のポリマー酸およびポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよびセルロースアセタートなどの材料との混合物が挙げられる。
【0107】
好適な表面活性剤は、とりわけ、ポリオキシエチレンソルビタン(例として、Tween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例として、Span(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性剤を包含する。表面活性剤を含む組成物は、便宜上、0.05~5%表面活性剤を含むだろう、および0.1~2.5%であり得る。他の成分、必要であれば、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容し得るビヒクルは添加され得ることが理解されるだろう。
【0108】
好適なエマルションは、イントラリピッド(商標)、リポシン(商標)、インフォニュトロール(Infonutrol)(商標)、リポファンジン(Lipofundin)(商標)およびリピフィサン(Lipiphysan)(商標)などの市販の脂肪エマルションを使用して調製され得る。活性成分は、混合前のエマルジョン組成物に溶解され得るか、代替的に、それは、油(例として、大豆油、紅花油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油または扁桃油)ならびにリン脂質(例として、卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)および水と混合される際に形成されるエマルジョンに溶解され得る。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースが添加されて、エマルジョンの浸透圧を調整してもよいことが理解されるだろう。好適なエマルションは、典型的には、20%までの油、例えば、5~20%を含有するだろう。
【0109】
エマルション組成物は、抗体をイントラリピッド(商標)またはその構成要素(大豆油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製され得るものであり得る。
吸入またはガス注入のための医薬組成物は、薬学的に許容し得る、水性のまたは有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはそれらの混合物および粉末を包含する。液体または固体組成物は、上に示されるような、好適な薬学的に許容し得る賦形剤を含有し得る。いくつかの態様において、組成物は、局部または全身効果のために、経口または経鼻呼吸ルートによって投与される。
【0110】
好ましい滅菌された薬学的に許容し得る溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧溶液は、噴霧デバイスから直接的に吸入されてもよいし、噴霧デバイスは、フェースマスク、テントまたは間欠的陽圧呼吸機に付着されてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口的にまたは経鼻的に投与され得る。
【0111】
処置および診断の方法
本明細書に記載のとおりの、抗MUC18抗体、これをコードする核酸または核酸セット、これを含むベクター、抗MUC18抗体を含むADC、およびMUC18標的CARを発現する免疫細胞(例として、T細胞またはNK細胞)は、MUC18+がん細胞などのMUC18+疾患細胞を阻害および/または除去するのに有用であり、それにより、MUC18+疾患細胞に関連する疾患または障害の処置に利益となる。
【0112】
本明細書に記載の方法を実践するために、本明細書に記載の医薬組成物の有効量は、処置が必要な対象(例として、ヒト)に、静脈内投与、例として、ある期間にわたってボーラスとしてまたは連続的な注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、吸入または局所ルートによって、などの好適なルートを介して投与され得る。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を包含する、液体製剤のための市販の噴霧器は、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧され得、および、凍結乾燥された粉末は、再構成後に噴霧され得る。代替的に、本明細書に記載のとおりの抗体は、フッ化炭素製剤および定量噴霧式吸入器を使用してエアロゾル化されてもよく、凍結乾燥されたおよび製粉された粉末として吸入されてもよい。
【0113】
本明細書に記載の方法によって処置される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。哺乳動物は、これらに限定されないが、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが挙げられる。処置を必要とするヒト対象は、MUC18+疾患細胞に関連する標的疾患/障害を有する、これを有する危険のある、または、これを有すると疑われる、ヒト患者であり得る。いくつかの態様において、MUC18+疾患細胞は、がん細胞、例えば、上皮がん細胞(すなわち、上皮細胞に由来する)である。例としては、これらに限定されないが、卵巣がん細胞、乳房がん細胞、腎がん細胞、肺がん細胞、結腸直腸がん細胞、および脳がん細胞が挙げられる。標的疾患または障害を有する対象は、ルーチンの医療検査、例として、実験室試験、器官機能的試験、CTスキャン、または超音波によって同定することができる。かかる標的疾患/障害のいずれかを有すると疑われる対象は、疾患/障害の1つ以上の症状を示し得る。疾患/障害の危険のある対象は、その疾患/障害についての危険因子の1以上を有する対象であり得る。
【0114】
本明細書に使用されるとき、「有効量」は、単独で、または、1以上の他の活性剤と組み合わせてのいずれかで、対象に治療効果を付与するのに必要とされる各活性剤の量を指す。いくつかの態様において、治療効果は、MUC18活性またはMUC18+細胞の活性の低減である。抗体またはこれを含む治療剤(例として、ADCまたはCAR-T細胞)の量が、治療効果を達成するかどうかの決定は、当業者に明らかであろう。有効量は、当業者に認識されるとおり、処置される具体的な状態、状態の重症度、個々の患者パラメータ(年齢、体調、サイズ、性別および体重を包含する)、処置の期間、同時治療の性質(もしあれば)、特定の投与ルート、および、健康実践者の知識および経験の範囲内の類似の因子に依存して、変化する。これらの因子は、当業者に周知であり、および、わずかルーチンの実験法を用いて取り組まれ得る。一般に、個々の構成要素またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従う最も高い安全用量が使用されることが好ましい。
【0115】
半減期などの経験的考察は、一般に、投薬量の決定に貢献するだろう。例えば、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などの、ヒト免疫系に適合する抗体は、抗体の半減期を延長させ、および、宿主の免疫系によって抗体が攻撃されるのを妨げるために、使用することができる。投与の頻度は、治療の経過によって決定および調整することができ、および、必ずしもそうではないが、一般に、標的疾患/障害の処置および/または抑制および/または回復および/または遅延に基づいている。代替的に、抗体の持続性連続的放出製剤が適切であり得る。持続放出を達成するための、様々な製剤およびデバイスが、当該分野において知られている。
【0116】
一例において、本明細書に記載のとおりの抗体の投薬量は、1以上の抗体投与を与えられる個体において経験的に決定され得る。個体は、アンタゴニストの漸増投薬量を与えられる。アンタゴニストの有効性を評価するために、疾患/障害の指標に従い得る。
【0117】
一般に、本明細書に記載されるとおりの、抗MUC18抗体またはこれを含むADCのいずれかの投与のために、初回候補投薬量は、約2mg/kgであり得る。本開示の目的のために、典型的な毎日の投薬量は、上記の因子に依存して、およそ、0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~300μg/kg~3mg/kgのいずれかから、30mg/kg~100mg/kgまたはそれ以上までの範囲であり得る。数日またはそれ以上にわたる反復投与については、状態に依存して、所望される症状の抑制が生じるか、充分な治療レベル達成されて、標的疾患または障害、またはその症状が軽減されるまで、処置は持続される。例示の投薬レジメンは、約2mg/kgの初回用量、これに続き約1mg/kgの抗体の毎週の維持用量、またはこれに続き隔週約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかしながら、他の投薬量レジメンは、実践者が達成しようとする薬物動態崩壊のパターンに依存して、有用であり得る。例えば、週に1~4回の投薬が、企図される。いくつかの態様において、約3μg/mg~約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kgなど)の範囲の投薬が使用され得る。いくつかの態様において、投薬頻度は、毎週1回、2週に1回、4週に1回、5週に1回、6週に1回、7週に1回、8週に1回、9週に1回、または、10週に1回;または毎月1回、2月に1回、または3月に1回、またはそれより長くに1回である。この治療の進行は、従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投薬レジメン(使用される抗体を含む)は経時的に変化し得る。
【0118】
本開示の目的のために、本明細書に記載のとおりの適切な抗体の投薬量は、使用される、特異的抗体、抗体、および/または非抗体ペプチド(またはそれらの組成物)、疾患/障害のタイプおよび重症度、抗体が予防または治療目的に投与されるかどうか、先の治療、患者の臨床履歴およびアンタゴニストに対する応答、および主治医の裁量に依存するだろう。典型的には、臨床医は、投与量が所望される結果を達成するまで、抗体を投与するだろう。いくつかの態様において、所望される結果は、血栓症の減少である。投薬量が所望される結果を結果として生じるかどうかを決定する方法は、当業者に明らかであろう。1以上の抗体の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的または予防的であるか、および、熟練実践者に公知の他の因子に依存して、連続的または断続的であり得る。抗体の投与は、予め選択された期間にわたり、本質的に連続的であり得、または、間隔をあけた一連の用量、例として、標的疾患または障害を発症する前、間、後のいずれか、であり得る。
【0119】
本明細書に使用されるとき、用語「処置する(こと)」は、標的疾患または障害、疾患/障害の症状、または、疾患/障害に向かう素因を有する対象への、障害、疾患の症状、または疾患または障害に向かう素因を治癒(cure)、治癒(heal)、軽減、緩和、変更、治療、寛解、改善、または影響する目的での、1以上の活性剤を包含する組成物の適用または投与を指す。
【0120】
標的疾患/障害を軽減することは、疾患の発症または進行を遅らせること、または、疾患重症度を低減することを包含する。疾患を軽減することは、必ずしも、根治的結果を必要としない。本明細書で使用される場合、標的疾患または障害の発症を「遅らせること」は、疾患の進行を、延期させ、妨げ、遅らせ、遅延させ、安定化させ、および/または延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の履歴および/または処置される個体に依存して、様々な時間の長さであり得る。疾患の発症を「遅延させる」または軽減する、あるいは、疾患の開始を遅らせる方法は、この方法を使用しないときと比較すると、所定の時間枠で疾患の1以上の症状の発症の可能性を低減する、および/または、所定の時間枠で症状の程度を低減する方法である。かかる比較は、典型的には、統計学的に有意な結果を得るのに充分な、数他の対象を使用する臨床研究に基づいている。
【0121】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の最初の徴候および/または後に続く進行を意味する。疾患の発症は、当該技術分野において周知である標準的な臨床技法を使用して、検出可能であり、および評価され得る。しかしながら、発症はまた、検出可能ではないかもしれない進行を指す。本開示の目的のために、発症または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、および発病を包含する。本明細書に使用されるとき、標的疾患または障害の「発病」または「発生」は、最初の発病および/または再発を包含する。
【0122】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体は、標的抗原の1つまたは両方の活性を、インビボで少なくとも20%(例として、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれより多く)阻害するのに充分な量で、処置の必要がある対象に投与される。他の態様において、抗体は、標的抗原の活性レベルを、少なくとも20%(例として、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはこれより多く)低減する際に有効な量で投与される。
【0123】
医学の当業者に公知の、従来の方法は、処置される疾患のタイプまたは疾患の部位に依存して、対象へ医薬組成物を投与するために使用され得る。この組成物はまた、他の従来のルートを介して投与され得、例として、経口的に、非経口的に、吸入噴霧によって、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、口腔内に、膣内にまたは移植リザーバを介して投与される。用語「非経口」は、本明細書に使用されるとき、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入技法を包含する。加えて、それは、1月、3月、または6月デポ注射可能なまたは生分解性の材料および方法を使用するなどの、注射可能なデポルートの投与を介して、対象に投与され得る。いくつかの例において、医薬組成物は、眼内にまたは硝子体内に投与される。
【0124】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、およびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)などの様々な担体を含有し得る。静脈内注射のために、水溶性抗体は、点滴方法によって投与され得、それによって、抗体および薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬製剤は、注入される。薬学的に許容し得る賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー溶液または他の好適な賦形剤を包含し得る。筋肉内調製物、例として、抗体の好適な可溶性塩形態の滅菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、または5%グルコース溶液などの医薬賦形剤に溶解され、および投与され得る。
【0125】
一態様において、抗体は、部位特異的または標的局部送達技法を介して投与される。部位特異的または標的局部送達技法の例は、抗体の様々な移植可能デポ供給源または注入カテーテル、留置カテーテル、または針カテーテルなどの局部送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の移植可能デバイス、部位特異的担体、直接注射、または直接適用を包含する。例として、PCT公開番号WO00/53211および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
【0126】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、またはサブゲノムポリヌクレオチドを含有する治療組成物の標的送達もまた、使用され得る。受容体媒介性DNA送達技法は、例えば、Findeis et al., Trends Biotechnol. (1993) 11:202;Chiou et al., Gene Therapeutics: Methods and Applications Of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff, ed.) (1994);Wu et al., J. Biol. Chem. (1988) 263:621;Wu et al., J. Biol. Chem. (1994) 269:542;Zenke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87:3655;Wu et al., J. Biol. Chem. (1991) 266:338に記載されている。
【0127】
ポリヌクレオチド(例として、本明細書に記載の抗体をコードするもの)を含有する治療組成物は、遺伝子治療プロトコルにおける局部投与のために、約100~約200mgの範囲のDNAで投与される。いくつかの態様において、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、および約20μg~約100μgまたはこれより多くの範囲の濃度のDNAはまた、遺伝子治療プロトコルの間に使用され得る。
【0128】
本明細書に記載の治療的ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源であり得る(一般に、Jolly, Cancer Gene Therapy (1994) 1:51;Kimura, Human Gene Therapy (1994) 5:845;Connelly, Human Gene Therapy (1995) 1:185;および Kaplitt, Nature Genetics (1994) 6:148)を参照のこと)。かかるコード配列の発現は、内在性哺乳動物または異種プロモーターおよび/またはエンハンサーを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成的または調節性のいずれかであり得る。
【0129】
所望されるポリヌクレオチドの送達のためのウイルスベースのベクター、および、所望される細胞における発現は、当該技術分野において周知である。例示のウイルスベースのビヒクルは、これらに限定されないが、組換えレトロウイルス(例として、PCT公開番号WO90/07936;WO94/03622;WO93/25698;WO93/25234;WO93/11230;WO93/10218;WO91/02805;米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号;GB特許第2,200,651号;およびEP特許第0 345 242号)、アルファウイルスベースのベクター(例として、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR 1249;ATCC VR-532))、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例として、PCT公開番号WO94/12649、WO93/03769;WO93/19191;WO94/28938;WO95/11984およびWO95/00655を参照のこと)を包含する。Curiel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147において記載されるような死滅アデノウイルスに連結されたDNAの投与もまた、使用され得る。
【0130】
これらに限定されないが、殺傷したアデノウイルス単独に連結したかまたは連結されていないポリカチオン凝縮DNA(例として、Curiel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147を参照のこと);リガンド連結DNA(例として、Wu, J. Biol. Chem. (1989) 264:16985を参照のこと);真核細胞送達ビヒクル細胞(例として、米国特許第5,814,482号;PCT公開番号WO95/07994;WO96/17072;WO95/30763;およびWO97/42338を参照のこと)および核電荷中和または細胞膜との融合を包含する、非ウイルス送達ビヒクルおよび方法はまた、使用され得る。裸のDNAもまた、使用され得る。例示の裸のDNA導入方法は、PCT公開番号WO90/11092および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT公開番号WO95/13796;WO94/23697;WO91/14445;およびEP特許番号0524968に記載されている。追加のアプローチは、Philip, Mol. Cell. Biol. (1994) 14:2411、およびWoffendin, Proc. Natl. Acad. Sci. (1994) 91:1581に記載されている。
【0131】
本明細書に記載の方法において使用される、具体的な投薬量レジメン、すなわち、用量、タイミングおよび反復は、具体的な対象および対象の病歴に依存するだろう。
【0132】
MUC18標的CARを発現する免疫細胞が疾患処置に使用されるとき、患者は、1キログラムの体重あたり約105~1010またはこれより多くの細胞(細胞/Kg)の範囲で、Tリンパ球またはNK細胞などの免疫細胞の治療的に有効な用量を注入することにより処置され得る。しばしば、所望される応答が達成されるまで患者が耐えることができるほどの回数で、注入は反復され得る。適切な注入用量およびスケジュールは、患者ごとに異なるであろうが、具体的な患者を処置する医者によって決定され得る。典型的には、108またはこれより多くの細胞/Kgまで上昇する、およそ106細胞/Kgの初回用量が注入されるだろう。IL-2は、注入細胞を拡大するために同時投与される。IL-2の量は、1平方メートルの体表面あたり、約1~5×106国際単位であり得る。
【0133】
いくつかの態様において、1より多くの抗体、または、抗体の組み合わせ、および、別の好適な治療剤が、処置が必要な対象に投与され得る。抗体、ADCおよび/またはこれを含むCAR-T細胞は、薬剤の有効性を増強および/または補完するように機能する他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0134】
標的疾患/障害のための処置有効性は、当該技術分野において周知の方法によって評価され得る。
本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかは、試料中のMUC18+細胞の存在またはレベルを検出するために使用され得る。かかる診断アッセイは、インビトロまたはインビボで実施され得る。
【0135】
診断用途のために、本明細書に記載のとおりの抗MUC18抗体は、診断目的のために、インビボまたはインビトロで、検出可能な標識(例として、造影剤(contrast agent)などの造影剤(imaging agent)と抱合され得る。本明細書に使用されるとき、「抱合された」または「付着された」は、好ましくは、2つの実体の間の会合の治療的/診断的利益が実現される充分な親和性で、2つの実体が、会合することを意味する。2つの実体間の会合は、直接またはポリマーリンカーなどのリンカーを介してのいずれかであり得る。抱合されたまたは付着されたは、共有または非共有結合ならびに、例として、他の実体上またはその中に1つの実体の捕捉、または、ミセルなどの第三の実体上またはその中にいずれかまたは両方の実体の捕捉、などの他の形態の会合を包含し得る。
【0136】
一例において、本明細書に記載のとおりの抗MUC18抗体は、検出可能な標識に付着され得、これは、アプタマーが、インビトロまたはインビボで、検出、測定、および/または定量され得るように、直接または間接的にのいずれかで、検出可能なシグナルを放出することができる化合物である。かかる「検出可能な標識」の例は、これらに限定されないが、蛍光標識、化学発光標識、比色標識、酵素マーカー、放射性同位体、およびビオチンなどの親和性タグを包含することが意図される。かかる標識は、アプタマーに、従来の方法により、直接的または間接的に、抱合され得る。
【0137】
いくつかの態様において、検出可能な標識は、インビボでMUC18+細胞を画像化するための好適な剤であり、これは、放射性分子、放射性医薬品、または鉄オキシド粒子であり得る。インビボ画像化に好適な放射性分子は、これらに限定されないが、122I、123I,124I、125I、131I、18F、75Br、76Br、76Br、77Br、211At、225Ac、177Lu、153Sm、186Re、188Re、67Cu、213Bi、212Bi、212Pb、および67Gaを包含する。インビボ画像化に好適な例示の放射性医薬品は、111Inオキシキノリン、131Iヨウ化ナトリウム、99mTcメブロフェニン、および99mTc赤血球、123Iヨウ化ナトリウム、99mTcエキサメタジム、99mTc大凝集アルブミン、99mTcメドロナート、99mTcメルチアジド、99mTcオキシドロネート、99mTcペンテタート、99mTc過テクネチウム酸、99mTcセスタミビ、99mTc硫黄コロイド、99mTcテトロホスミン、タリウム-201、およびキセノン133を包含する。報告剤はまた、色素、例として、フルオロフォアであり得、これは、組織試料において、MUC18+細胞によって媒介される疾患を検出する際に有用である。
【0138】
インビトロで診断アッセイを実施するために、抗MUC18抗体は、MUC18+細胞を含有すると疑われる試料と接触され得る。抗体および試料は、抗体のMUC18抗原への結合を可能にする好適な期間の間、好適な条件下でインキュベートされ得る。かかる相互作用は、次いで、ルーチンの方法、例として、ELISAまたはFACSを介して検出され得る。インビボで診断アッセイを実施するために、標識に抱合された、好適な量の抗MUC18抗体は、調査が必要な対象に投与され得る。標識された抗体の存在は、ルーチンの方法によって標識から放出されるシグナルに基づいて検出され得る。
【0139】
処置および診断における使用のためのキット
本開示はまた、MUC18+疾患を阻害および/または除去し、したがって、かかる疾患細胞に関連する疾患/障害を軽減することにおける使用のためのキットを提供する。かかるキットは、抗MUC18抗体、これを含むADC、または、MUC18標的CARポリペプチドを発現する免疫細胞、例として、本明細書に記載のもののいずれか、を含む、1以上の容器を包含し得る。
【0140】
いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従う使用のための指示書を含み得る。含有される指示書は、本明細書に記載されるような、標的疾患を処置、発病を遅らせ、または、疾患を軽減するための、抗MUC18抗体、ADCまたは免疫細胞の投与の説明を含み得る。キットは、さらに、個体が標的疾患を有するかどうかを同定することに基づいて、処置に好適な個体を選択する説明を含み得る。さらに他の態様において、指示書は、標的疾患の危険のある個体に、抗体、ADCまたは免疫細胞を投与することの説明を含む。
【0141】
抗MUC18抗体、これを含むADC、またはMUC18標的CARを発現する免疫細胞の使用に関する指示書は、一般には、投薬量、投薬スケジュール、および意図される処置のための投与ルートに関する情報を包含する。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例として、複数用量パッケージ)または単位用量以下であり得る。本発明のキットに提供される指示書は、典型的には、標識またはパッケージ挿入物(例として、キットに包含される紙シート)上の書面の指示書であるが、機械読み取り可能な指示書(例として、磁気または光学的保管ディスク上に保有される指示書)もまた許容し得る。
【0142】
標識またはパッケージ挿入物は、組成物が、上皮がんなどの、MUC18+細胞に関連する疾患または障害を処置し、発症を遅らせ、および/またはこれを軽減するために使用されることを指し示す。指示書は、本明細書に記載の方法のいずれかを実践するために提供され得る。
【0143】
本発明のキットは、好適なパッケージング中に存在する。好適なパッケージングは、これらに限定されないが、バイアル、瓶、ジャー、柔らかいパッケージング(例として、密封されたマイラーまたはプラスチックバッグ)等を包含する。また、企図されるのは、吸入器などの特定のデバイス、経鼻投与デバイス(例として、アトマイザ)またはミニポンプなどの注入デバイスと組み合わせて使用するためのパッケージである。キットは、滅菌されたアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、または、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器はまた、滅菌されたアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1の活性剤は、本明細書に記載されるような、抗MUC18抗体、これを含むADC、または、MUC18標的CARを発現する免疫細胞である。
【0144】
キットは、任意に、緩衝液および解釈情報などの追加の構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器および容器上またはこれに関連する標識またはパッケージ挿入物を含む。いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0145】
また、本明細書に提供されるのは、試料中のMUC18+細胞を検出することにおける使用のためのキットである。かかるキットは、本明細書に記載の抗MUC18抗体のいずれかを含み得る。いくつかの場合において、抗MUC18抗体は、本明細書に記載のもののような検出可能な標識に抱合され得る。本明細書に使用されるとき、「抱合された」または「付着された」手段は、好ましくは、2つの実体の間の会合の治療的/診断的利益が実現するまで、充分な親和性を有し、2つの実体が会合することを意味する。2つの実体間の会合は、直接またはポリマーリンカーなどのリンカーを介しての会合のいずれかであり得る。抱合されたまたは付着されたとは、共有または非共有結合、ならびに、捕捉、例として、1つの実体の他の実体上またはその中での捕捉、または、ミセルなどの、いずれかまたは両方の実体の、第三の実体上またはその中での捕捉などの他の会合形態、を包含し得る。
代替的にまたは加えて、キットは、抗MUC18抗体に結合することができる二次抗体を含み得る。キットはさらに、MUC18+を検出するための抗MUC18抗体を使用するための指示書を含む。
【0146】
一般的な技法
本開示の実践は、他に指し示されない限り、分子生物学(組換え技法を包含する)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技法を使用し、これらは、当業者の範囲内である。かかる技法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed. 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1989) Academic Press;Animal Cell Culture (R. I. Rreshney, ed, 1987);Introuction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds. 1993-8) J. Wiley and Sons;Methods in Enzymology (Academic Press、Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.): Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al. eds. 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis, et al., eds. 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: a practice approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds. Harwood Academic Publishers, 1995);DNA Cloning: A practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985≫;Transcription and translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984≫;Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986≫;Immobilized Cells and Enzymes (lRL Press, (1986≫;and B. Perbal, A practical Guide To Molecular Cloning (1984);F.M. Ausubel et al.(eds.)などの文献において十分に説明されている。
【0147】
さらに説明することなく、当業者は、上記の記載に基づいて、本発明をその最大程度まで利用できると考えられる。以下の特定の態様は、したがって、ただ単に説明的であると解釈され、および、本開示の残りをいかなる様式でも制限するものではない。本明細書に引用された全ての刊行物は、本明細書に参照される目的または主題のために参照により援用される。
【0148】
例
例1:抗MUC18抗体の生成
試薬および一般的な方法
ハイブリドーマ細胞培養培地(PFHM-II Protein-Free Hybridoma Medium;#12040077)をThermo Fisherより購入した。
RNAを、標準的なプロトコルおよびThermo FisherからのTRIzol試薬(#15596018)を使用して単離した。結果として生じるcDNA分子を、TakaraからのcDNA合成キット(PrimeScript II 1st strand cDNA synthesis kit;#6210A)を使用して生成した。抗体V領域増幅は、TakaraからのプレミックスTaq(#RR901A)を使用して実施した。標準的なPCRプライマーセット(Ig-Primer Sets #TB326)を、Novagenから得た。遺伝子を、標準的な技法を使用して、EcoRI、HindIII、SalI、およびT4リガーゼ(全てNEBから)の使用を包含し、pET28a(Novagen;#69864)にクローニングした。QIAEX IIゲル抽出キット(QIAgen #20021)を利用して、全てではないが、いくつかのオリゴヌクレオチド分子を精製した。
A375、SK-Mel-2、GAK、HMVII、およびSK-OV-3細胞培養物を、37℃で5%CO2の雰囲気で、独立した単層培養物としてインビトロで維持した。これらの腫瘍細胞は、随時、規則的に継代培養した。
【0149】
抗MUC18抗体を生成するための免疫付与
CL070325は、免疫付与方法論を使用して生成した。手短に言えば、Balc/cマウスを、組換えMUC18タンパク質(ACRO BioSystemsから購入;アミノ酸残基24~559)の筋肉内注射を用いて、6回免疫付与した。
【0150】
抗体クローンの産生
個々のハイブリドーマクローンを、10mLハイブリドーマ細胞培養培地(PFHM-II無タンパク質ハイブリドーマ培地)を含むT25フラスコ中で培養した。細胞を、80%コンフルエントまで、37℃で培養した。培養培地を、次いで除去し、および細胞を、1xPBSで2度洗浄した。TRIzol試薬(1mL vol.)をフラスコに直接添加し、および、細胞を、ピペット混合により溶解した。細胞ライセートを、次いで、T25フラスコから回収し、および全RNAを、標準的な方法を使用して単離した。RNA濃度を、続いて、Nanodrop 2000(Thermo Fisher)を用いて測定した。標準的なcDNAを、次いで、Takara PrimeScript II 1st strand cDNA合成キットプロトコルに従って、単離されたRNAから生成した。結果として生じるcDNAのハイブリドーマV領域の増幅は、NovagenユーザープロトコルTB326に従って実施した。以下の表3に示されるような、プライマー対を、増幅のために使用した:
【0151】
【0152】
PCR産物を、1%アガロースゲルを用いてチェックした。ポジティブなPCR産物を、QIAgenゲル抽出キットを使用して回収し、および続いてプライマー配列に対応する制限酵素(NEBから)を使用して、pET28aベクターにクローニングした。PCR産物挿入を有するpET28aベクターは、DH5α細菌細胞に形質転換し、および、アンピシリンポジティブ寒天プレート上で培養した。各細菌クローンを、MuIgGVH3’-2、MuIgkVL3’-1またはMuIglVL3’-1プライマーを使用するSanger配列決定に送付した。得られた配列を、一貫性について比較し、夫々、標的VHおよびVL配列を確認した。VHおよびVL配列を、次いで、IGMTデータベース(imgt.org/)に基づいて分析し、V領域、フレームおよびVHおよびVLのCDR要素を得た。
【0153】
MUC18へのインビトロ結合活性
CL07032を、ELISA滴定実験を使用する、抗原結合アッセイにおいて試験した。抗体を、変化する濃度の組換えMUC18タンパク質(rタンパク質)とともにインキュベートした。CL070325は、1.56nM結合親和性でMUC18を結合した。
【0154】
例2:抗MUC18 CAR
+T細胞の調製およびインビトロ評価
ヒト化CL070325抗MUC18抗体(V
HおよびV
L)を、CD8ヒンジ領域、CD8膜貫通領域、補助刺激分子4-1BBの細胞内ドメイン、およびCD3ζの細胞内ドメインを有するフレームのキメラ抗原レセプターベクターに挿入した。このベクターはさらに、EF1αプロモーターを含む。抗MUC18 CAR
+をコードする核酸は、239T細胞へのレンチウイルスパッケージングを使用してトランスフェクトした。ヒトCD3+T細胞を、次いで、抗MUC18 CAR+T細胞を産生するために、レンチウイルスで、活性化および形質導入した。上に記載のとおりの抗MUC18 CAR
+T細胞の産生後、各CAR構築物についての形質導入効率を、FACSを使用して決定した(
図1)。ヒト化CL070325 CARを形質導入されたT細胞集団は、>65%CAR
+細胞を構成した。
【0155】
MUC18+黒色腫細胞株(A375、SK-MEL-2、GAK、およびHMV-II細胞)において抗原依存性の細胞傷害およびIFNγ分泌を誘導する、抗MUC18 CAR+T細胞の能力を試験した。低い発現レベルのMUC18を有するSKOV-3細胞を、陰性対照細胞株として利用した。各黒色腫細胞株を、種々の比率のT細胞(エフェクター細胞) 対 標的細胞で、抗MUC18 CAR+T細胞または対照(CD3 T細胞)を投与した。
【0156】
T細胞の標的細胞とのインキュベーション後、標的細胞の特異的な溶解/細胞傷害性を、標準的な方法を使用して評価した(
図2A~2E)。すべてのMUC18
+細胞株において、抗MUC18 CAR
+T細胞の添加は、1:1のT細胞:標的細胞の比率で、およびこれを越えて、抗原依存性細胞傷害を誘導した。対照実験(CARなしでのCD3 T細胞とのインキュベーション)は、特異的な細胞傷害の有意な誘導を導かなかった。
【0157】
同じ投薬実験の間、標的細胞によりインターロイキン-2(IL-2)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)の分泌を誘導する、抗MUC18 CAR
+T細胞の能力を、標準的な方法を使用して評価した(
図3A~3Eおよび
図4A~4E)。すべてのMUC18
+細胞株において、抗MUC18 CAR
+T細胞の添加は、1:1およびこれを超えるT細胞:標的細胞の比率で、高レベルのIL-2およびIFNγを誘導した。対照実験(CARなしでのCD3 T細胞とのインキュベーション)は、IL-2またはIFNγの有意な分泌を導かなかった。
【0158】
例3:抗MUC18 CAR+T細胞のインビボ評価
A375異種移植モデル
マウスは、皮下にA375黒色腫細胞を注射した。A375細胞の注射後、4日目(平均腫瘍サイズ~100mm3)および8日目に、マウスは、皮下にCD3 T細胞(対照)またはヒト化CL070325 CAR+T細胞を、6x106細胞/マウスの濃度で注射した。CAR+T細胞集団は、~50% CAR+細胞を含んでいた。腫瘍体積は、処置の開始の日から1週間に2回測定した。
【0159】
抗MUC18 CAR
+T細胞集団で処置したマウスは、対照T細胞で処置したマウスと比べて、腫瘍成長が低減していた(
図5A)。驚くべきことに、12日目までに、抗MUC18 CAR
+T細胞は、本質的に、A375黒色腫腫瘍を除去した。
【0160】
GAK異種移植モデル
マウスは、皮下に、GAK黒色腫細胞を注射した。GAK細胞の注射後、4日目(平均腫瘍サイズ~150mm
3)および8日目に、マウスは、皮下にCD3 T細胞(対照)またはヒト化CL070325CAR
+T細胞を、6x10
6細胞/マウスの濃度で注射した。CAR
+T細胞集団は、~50%CAR
+細胞を含んでいた。腫瘍体積は、処置の開始の日から、1週あたり3回測定した。
抗MUC18 CAR
+T細胞集団で処置したマウスは、対照T細胞で処置したマウスと比べて、腫瘍成長の低減を有した(
図5B)。驚くべきことに、抗MUC18 CAR
+T細胞は、実験の21日までずっと、GAK黒色腫腫瘍における持続性低減を誘導した。
【0161】
他の態様
本明細書に開示された全ての特色は、任意の組み合わせで併用されてもよい。本明細書に開示された各特色は、同じ、等価な、または同様の目的を果たす代替の特色によって置き換えられ得る。よって、他に明白に規定されない限り、開示された各特色は、等価または同様の特色の一般的なシリーズの単なる一例である。
上記記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、および、その精神および範囲から逸脱することなく、様々な利用および条件に適合させるために、本発明の様々な変更および改変を行うことができる。よって、他の態様はまた、請求項の範囲内である。
【0162】
等価物
数個の本発明の態様が本明細書に記載され、および、説明されているが、当業者は、本明細書に記載の、機能を実施するための、および/または、結果および/または1以上の利点を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に思いつくだろう、および、かかるバリエーションおよび/または改変の各々は、本明細書に記載の本発明の態様の範囲内であるとみなされる。より一般的には、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および立体配置は、例示であること、および、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または立体配置は、本発明の教示が使用される特定の適用または適用に依存するだろうことを、当業者は容易に理解するだろう。当業者は、本明細書に記載の特定の本発明の態様に対する多数の等価物を、理解するだろう、または、わずかルーチンの実験法を使用して確認できるだろう。したがって、上記の態様は、一例としてしてのみ提供されること、および添付の請求項およびその均等の範囲内で、本発明の態様は、具体的に記載されおよび特許請求される以外に実践され得ることが理解されるべきである。本開示の本発明の態様は、本明細書に記載の、個々の特色、システム、物品、材料、キット、および/または方法の各々に関する。加えて、2以上のかかる特色、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、かかる特色、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に一貫しない場合を除き、本開示の範囲内に包含される。
【0163】
本明細書で定義されおよび使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により援用される文献における定義、および/または定義される用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
本明細書に開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用される主題に関して参照により援用され、いくつかのケースにおいて、文献の全体を包含し得る。
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書に使用されるとき、および請求項において、それとは反対に明確に指し示されないかぎり、「少なくとも1の」を意味すると理解されるべきである。
【0164】
本明細書および請求項において本明細書で使用されるとき、句「および/または」は、そのように結合される要素(すなわち、いくつかのケースにおいて接続的に存在し、および、他のケースにおいて分離的に存在する要素)の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を用いて列挙される複数の要素は、同じ様式で(すなわち、「1以上の」要素がそのように結合される)解釈されるべきである。「および/または」の節によって具体的に同定される要素以外の他の要素は、具体的に同定される要素に関連するか関連しないかにかかわらず、任意に存在し得る。よって、非限定例として、「Aおよび/またはB」への参照は、「含む」などのオープンエンドの言葉と併せて使用されるとき、一態様において、Aのみ(任意にB以外の要素を包含する);別の態様において、Bのみ(任意にA以外の要素を包含する);もう1つの態様において、AおよびBの両方(任意に他の要素を包含する);等々を指し得る。
【0165】
本明細書および請求項において本明細書に使用されるとき、「または」は、上に定義されるとおりの「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目を分離するとき、「または」または「および/または」は、包括的(すなわち、多数の要素または要素のリストのうち少なくとも1つ(しかしながら1を超えて包含し得る)、および、任意に列挙されていないさらなる項目の包含)であると理解されるべきである。「~のうち1つのみ」または「~のうち正確に1つ」など、それとは反対を明確に指し示す用語のみ、または、請求項で使用されるとき、「~からなる」は、多数の要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、用語「または」は、本明細書に使用されるとき、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な代替物(すなわち、一方または他方であり、両方ではない)を指し示すのみと理解されるべきである。「~本質的になる」は、請求項で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するべきである。
【0166】
本明細書および請求項において本明細書に使用されるとき、句「少なくとも1の」は、1以上の要素のリストを参照して、要素のリスト中の任意の1以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される各々および全ての要素の少なくとも1つを必ずしも包含する必要はなく、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しないことを理解すべきである。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内に具体的に同定された要素以外の要素が、具体的に同定された要素に関連するかしないかにかかわらず、任意に存在し得ることを可能にする。よって、非限定例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ」(または等価には、「AまたはBの少なくとも1つ」または等価には、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様において、少なくとも1のA(任意に1より多くを包含する)、Bは存在しない(および任意にB以外の要素を包含する)を指す;別の態様において、少なくとも1のB(任意に1を超えて包含する)、Aは存在しない(および任意にA以外の要素を包含する)を指す;もう1つの態様において、少なくとも1のA(任意に1を超えて包含する)、および少なくとも1のB(任意に1を超えて包含する)(および任意に他の要素を包含する)を指す;等々。
【0167】
それとは反対に明確に指し示されない限り、1を超える工程または行為を包含する本明細書で特許請求される任意の方法において、その方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が記載される順序に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】