(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(54)【発明の名称】二機能性抗PD-1/IL-7分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220204BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220204BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220204BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220204BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220204BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220204BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220204BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220204BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220204BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220204BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220204BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220204BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220204BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220204BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220204BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220204BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220204BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220204BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220204BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220204BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220204BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K19/00 ZNA
C07K16/18
C07K14/54
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N15/62 Z
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K45/00
A61K35/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/04
A61P15/00
A61P11/04
A61P1/16
A61P17/00
A61P11/00
A61P11/02
A61P1/02
A61P27/16
A61P13/02
A61P13/12
A61P31/12
A61P31/22
A61P31/18
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536209
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2019085791
(87)【国際公開番号】W WO2020127377
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】オロール・モレロ
(72)【発明者】
【氏名】ジュスティーヌ・デュラン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC551
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA67
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB33
4C087ZC55
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗PD-1抗体及びIL-7を含む二機能性分子及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片;並びに
(b)ヒトインターロイキン7(IL-7)又はその断片若しくはバリアント
を含む二機能性分子であって、
前記抗体又はその断片は、好ましくはペプチドリンカーにより、融合タンパク質として、前記ヒトIL-7又はその断片若しくはバリアントに共有結合で連結されている、二機能性分子。
【請求項2】
前記ヒトIL-7又はその断片のN末端は、前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続されている、請求項1に記載の二機能性分子。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項1又は2に記載の二機能性分子。
【請求項4】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含み、
- 前記重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列に含むか又はからなり、
- 前記重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列に含むか又はからなり、
- 前記重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択され、
- 前記軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、
- 前記軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、
- 前記軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項5】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2はT、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択されるVH;並びに(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中XはG又はTであるVLを含むか又はからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項6】
前記抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号24のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);及び(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)を含むか又はからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項7】
前記抗PD1抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、PDR001、並びにモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項8】
前記IL-7又はそのバリアントは、野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項9】
前記IL-7は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項10】
前記IL-7は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%の同一性を示すIL-7バリアントであり、前記バリアントは、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対する前記IL-7バリアントの親和性を低減させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、前記IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項11】
前記少なくとも1つの変異は、(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群である、請求項10に記載の二機能性分子。
【請求項12】
前記IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、並びにC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む、請求項10に記載の二機能性分子。
【請求項13】
前記IL-7バリアントは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、請求項10に記載の二機能性分子。
【請求項14】
前記IL-7バリアントは、D74E、D74Q、及びD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、請求項10に記載の二機能性分子。
【請求項15】
前記IL-7バリアントは、配列番号53~66に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から8及び10のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項16】
前記IL-7バリアントは、配列番号54、56,又は63に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる、請求項1から8及び10のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及びヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖定常ドメイン、好ましくはIgG1又はIgG4重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項18】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択され、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項19】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E.17、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項20】
前記抗体又はその断片は、好ましくは、(GGGGS)
3、(GGGGS)
4、(GGGGS)
2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)
3からなる群から選択されるリンカー配列により、より好ましくは(GGGGS)
3により、IL-7又はそのバリアントに連結されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項21】
前記抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含み、前記抗体又はその断片は、リンカー(GGGGS)
3によりIL-7バリアントに連結されている、請求項12から16のいずれか一項に記載の二機能性分子。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の二機能性分子をコードする単離された核酸分子又は単離された核酸分子の群。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸又は核酸分子の群を含むベクター。
【請求項24】
請求項23に記載のベクター、又は請求項22に記載の核酸若しくは核酸分子の群を含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項1から21のいずれか一項に記載の二機能性分子を産生するための方法であって、請求項24に記載の宿主細胞を培養する工程、及び任意選択で前記二機能性分子を単離する工程を含む方法。
【請求項26】
請求項1から21のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項22に記載の核酸又は核酸分子の群、請求項23に記載のベクター、又は請求項24に記載の宿主細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
追加の療法剤、好ましくは、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二重特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、及びペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せからなる群において選択される追加の療法剤を更に含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
医薬として使用するための、請求項26又は27に記載の医薬組成物、請求項1から21のいずれか一項に記載の二機能性分子、請求項22に記載の核酸若しくは核酸分子の群、又は請求項23に記載のベクター、又は請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項29】
がんからなる群から選択される疾患の治療に使用するための、請求項28に記載の医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞。
【請求項30】
前記がんは、PD-1及び/又はPD-L1の発現を伴う血液悪性腫瘍又は固形腫瘍、例えば、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、及び急性骨髄性白血病からなる群から選択されるがん、ウイルスにより誘発されるか又は免疫不全と関連するがん、例えば、カポジ肉腫(例えば、カポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);子宮頸がん、肛門がん、陰茎がん、及び外陰扁平上皮がん、及び中咽頭がん(例えば、ヒトパピローマウイルスと関連する);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫、及びリンパ増殖性障害(例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);肝細胞癌(例えば、B型及び/又はC型肝炎ウイルスと関連する);メルケル細胞癌(例えば、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連する);及びヒト免疫不全ウイルス感染(HIV)感染症と関連するがんからなる群から選択されるがん、並びに転移性又は非転移性のメラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん、及び子宮頸がんからなる群から選択されるがんからなる群から選択される、請求項29に記載の医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞。
【請求項31】
放射線療法、又は追加の療法剤、好ましくは、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二重特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、及びペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せからなる群において選択される追加の療法剤と組み合わせて使用するための、請求項28から30のいずれか一項に記載の医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞。
【請求項32】
感染性疾患、好ましくは慢性感染性疾患、更により好ましくは慢性ウイルス感染症の治療に使用するための、請求項28に記載の医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞。
【請求項33】
前記感染性疾患は、HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、はしかウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、及びアルボウイルス脳炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる、請求項32に記載の医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、抗PD1抗体又はその抗体断片を含む二機能性分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
脱阻害のためにT細胞阻害チェックポイントを治療用抗体で標的とする手法は、鋭意研究されている分野である(総説は、Pardoll、Nat Rev Cancer.、2012年;12巻:253~264頁を参照)。適応免疫の免疫チェックポイントを標的にすることは、数多くのがんに対処する優れた治療有効性を、但し限られた割合の患者において、示す。免疫チェックポイント療法と他の免疫療法戦略との組合せは、前臨床モデルでは優れた効率を示しているが、臨床では依然として困難である。
【0003】
免疫細胞活性化は、共刺激シグナルと共阻害シグナルとのバランスを統合することにより制御される。T細胞受容体(TCR)媒介性T細胞活性化は、共刺激シグナル及び共阻害シグナルの両方によりモジュレートされる。抗原非依存性の第2のシグナルは、応答に対して特異性を付与する、抗原ペプチド-MHC複合体とTCRとの相互作用により提供される第1のシグナルを修飾する。T細胞共刺激及び共阻害経路は、幅広い免疫調節機能を有し、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、及び調節性T細胞、並びにナイーブT細胞を制御する。こうした経路の療法的モジュレーションは、がんを治療するための効果的な新戦略へと橋渡しされつつある(総説は、Schildbergら、44巻(5号)、Immunity、2016年を参照)。免疫応答の調節に関する進行中の研究は、がん療法の開発の標的となり得る複数の免疫学的経路の同定に結び付いている。そうした分子は、本明細書では免疫チェックポイント共活性化因子又は共阻害因子と呼ばれる(総説は、Sharmaら、Cell、161巻(2号)、2015年及びPardoll、Nature Reviews Cancer、12巻(4号)、2012年を参照)。
【0004】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1、CD279としても知られている)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面タンパク質分子である。プログラム細胞死タンパク質1は、Tリンパ球及びBリンパ球並びにマクロファージ上に発現され、細胞の運命及び分化に役割を果たす。PD-1に結合するとT細胞活性化を下方制御することが示されている、PD-1の2つのリガンドPD-L1及びPD-L2が同定されている(Freemanら(2000年)J Exp Med 192巻:1027~34頁;Latchmanら(2001年)Nat Immunol 2巻:261~8頁;Carterら(2002年)Eur J Immunol 32巻:634~43頁)。PD-1とそのリガンドとの相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少、及びがん性細胞による免疫回避をもたらす。特に、PD1ライゲーションは、T細胞に対するTCR刺激の下流におけるシグナルを低減してT細胞応答を阻害し、活性化及びサイトカイン産生の減少をもたらす。
【0005】
PD-1/PD-L1療法は、非常に幅広い血液がん及び固形がんの第一及び第二選択療法としての治療がFDAにより承認されているが、RECIST基準に規定されているような、30%を上回る腫瘍サイズの低減に基づく客観的応答は、がんサブタイプ間で大きく変動する。
【0006】
難治性ホジキンリンパ腫(65~85%)(Borcherding Nら、J Mol Biol.、2018年7月6日;430巻(14号):2014~2029頁)又は高マイクロサテライト不安定性結腸がん(MSI-H、25%~80%)又はメルケル細胞がん(56%)では、高い奏効率が観察された。
【0007】
抗PD-1療法が第一選択治療として使用されるメラノーマ患者(24~44%)及び非小細胞肺がん患者(12.8~43.7%)では、中程度の客観的奏効率が観察される。療法から利益を受けるのは患者の一部のみであるが、PD-1/PD-L1治療は、古い標準治療である化学療法と比較して全生存を向上させた。
【0008】
一部の固形腫瘍では、特に膵臓がん、非MSI結腸直腸がん、胃がん、及び一部の乳がんでは、臨床応答は低いか又は全く観察されなかった(Borcherding Nら、J Mol Biol.、2018年7月6日;430巻(14号):2014~2029頁)。
【0009】
複数の機序が記載されており、PD-1/PD-L1チェックポイント療法に対する有効性及び抵抗性がこのように異なることを説明することができ、特に、そうした機序の幾つかは、(1)メモリーT細胞の形成障害、(2)T細胞浸潤障害、(3)腫瘍特異的T細胞の生成が不十分であること、(4)T細胞の機能が不適切であること、及び(5)調節性T細胞により誘導される免疫抑制性微小環境等の、T細胞生物学に関する。IL-7シグナル伝達を標的とする治療との組合せは、T細胞浸潤を刺激し、T細胞エフェクター能力を持続させ、調節性T細胞の拡大増殖及び生存を刺激することなく長期持続性メモリーT細胞応答を促進することにより、抗PD-1抵抗性患者を克服するための良好な戦略であり得る。
【0010】
インターロイキン-7は、IL-2スーパーファミリーの免疫賦活性サイトカインメンバーであり、適応免疫系において重要な役割を果たし、B細胞及びT細胞により媒介される免疫応答を促進する。このサイトカインは、T細胞及びB細胞の生存及び分化、リンパ球細胞の生存、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の刺激により、免疫機能を活性化する。また、IL-7は、リンパ組織インデューサー(LTi)細胞を介してリンパ節の発生を調節し、ナイーブT細胞又はメモリーT細胞の生存及び分裂を促進する。更に、IL-7は、IL-2及びインターフェロン-γの分泌を促進することにより、ヒトの免疫応答を増強する。IL-7の受容体は、ヘテロ二量体であり、IL-7Rα(CD127)及び共通γ鎖(CD132)からなる。γ鎖は、全ての造血細胞タイプで発現されるが、IL-7Rαは、主にB及びTリンパ球前駆細胞、ナイーブT細胞、並びにメモリーT細胞を含むリンパ球により発現される。調節性T細胞でのIL-7Rα発現は、より高いレベルを発現するエフェクター/ナイーブT細胞と比較して低いことが観察され、そのため、こうした2つの集団を区別するための表面マーカーとしてCD127が使用される。IL-7Rαは、NKとしての自然リンパ球細胞及び腸管関連リンパ組織(GALT)由来T細胞でも発現される。IL-7Rα(CD127)鎖は、TSLP(腫瘍間質リンホポエチン)と共有されており、CD132は、IL-2、IL-4、IL-9、IL-15、及びインターロイキン-21と共有されている。2つの主要なシグナル伝達経路:(1)ヤヌスキナーゼ/STAT経路(つまり、Jak-Stat-3及び5)並びに(2)ホスファチジル-イノシトール-3キナーゼ経路(つまり、PI3K-Akt)が、CD127/CD132により誘導される。IL-7投与は、患者の耐容性が良好であり、CD8細胞及びCD4細胞の拡大増殖、並びにCD4+ T調節性細胞の相対的減少に結び付く。組換えネイキッドIL-7又は抗体のFcのN末端ドメインに融合されたIL-7が、臨床で試験されている。後者は、Fcドメインとの融合によりIL-7半減期が延長され、治療の長期持続効率が増強されるという理論的根拠に基づく。IL-2はTreg及びTエフェクター細胞の両方に対して作用するのに対し、IL-7はTエフェクター細胞を選択的に活性化するので、IL-2シグナル伝達を標的とするのに比べ、IL-7シグナル伝達を標的とした方がより有望であるはずである。
【0011】
抗PD1免疫療法の有効性を増加させ、患者の潜在的な抗PD-1抵抗性を克服するための、IL-7シグナル伝達を標的とする併用療法の開発は、T細胞浸潤を刺激し、T細胞エフェクター能力を持続させ、調節性T細胞の拡大増殖及び生存を刺激することなく長期持続性メモリーT細胞応答を促進するための良好な戦略であり得る。実際、抗PD-1療法は、疲弊したT細胞でのCD127発現を増加させ、それによりIL-7に応答するそれらの能力を増加させ、インターフェロン-γ(IFN-γ)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の同時産生を向上させる(Paukenら、Science. 2016年12月2日;354巻(6316号):1160~1165頁、Shi et al.ら、Nat Commun.2016年8月8日;7巻:12335頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,585,089号
【特許文献2】米国特許第5,693,761号
【特許文献3】米国特許第5,693,762号
【特許文献4】米国特許第5,821,337号
【特許文献5】米国特許第7,527,791号
【特許文献6】米国特許第6,982,321号
【特許文献7】米国特許第7,087,409号
【特許文献8】米国特許第6,180,370号
【特許文献9】国際公開第15161311号
【特許文献10】国際公開第17127664号
【特許文献11】国際公開第18136626号
【特許文献12】国際公開第18190719号
【特許文献13】国際公開第19060750号
【特許文献14】国際公開第19170677号
【特許文献15】国際公開第2014/194302号
【特許文献16】国際公開第2017/040790号
【特許文献17】国際公開第2017/19846号
【特許文献18】国際公開第2017/024465号
【特許文献19】国際公開第2017/025016号
【特許文献20】国際公開第2017/132825号
【特許文献21】国際公開第2017/133540号
【特許文献22】国際公開第2006/121168号
【特許文献23】米国特許出願公開第20030044423号
【特許文献24】国際公開第01/58957号
【特許文献25】国際公開第2013006490号
【特許文献26】国際公開第2016/161270号
【特許文献27】国際公開第2018/085469号
【特許文献28】国際公開第2018/129553号
【特許文献29】国際公開第2011/155607号
【特許文献30】米国特許第8,552,156号
【特許文献31】欧州特許第2581113号
【特許文献32】米国特許出願第2014/044728号
【特許文献33】国際公開第18025178号
【特許文献34】国際公開第19179388号
【特許文献35】国際公開第19179391号
【特許文献36】国際公開第19174603号
【特許文献37】国際公開第19148444号
【特許文献38】国際公開第19120232号
【特許文献39】国際公開第19056281号
【特許文献40】国際公開第19023482号
【特許文献41】国際公開第18209701号
【特許文献42】国際公開第18165895号
【特許文献43】国際公開第18160536号
【特許文献44】国際公開第18156250号
【特許文献45】国際公開第18106862号
【特許文献46】国際公開第18106864号
【特許文献47】国際公開第18068182号
【特許文献48】国際公開第18035710号
【特許文献49】国際公開第18025178号
【特許文献50】国際公開第17194265号
【特許文献51】国際公開第17106372号
【特許文献52】国際公開第17084078号
【特許文献53】国際公開第17087588号
【特許文献54】国際公開第16196237号
【特許文献55】国際公開第16130898号
【特許文献56】国際公開第16015675号
【特許文献57】国際公開第12120125号
【特許文献58】国際公開第09100140号
【特許文献59】国際公開第07008463号
【特許文献60】国際公開第2008132601号
【特許文献61】欧州特許第2320940号
【特許文献62】国際公開第19152574号
【特許文献63】国際公開第08076560号
【特許文献64】国際公開第10106051号
【特許文献65】国際公開第11014438号
【特許文献66】国際公開第17096017号
【特許文献67】国際公開第17144668号
【特許文献68】国際公開第19232484号
【特許文献69】国際公開第16028656号
【特許文献70】国際公開第16106302号
【特許文献71】国際公開第16191643号
【特許文献72】国際公開第17030823号
【特許文献73】国際公開第17037707号
【特許文献74】国際公開第17053748号
【特許文献75】国際公開第17152088号
【特許文献76】国際公開第18033798号
【特許文献77】国際公開第18102536号
【特許文献78】国際公開第18102746号
【特許文献79】国際公開第18160704号
【特許文献80】国際公開第18200430号
【特許文献81】国際公開第18204363号
【特許文献82】国際公開第19023504号
【特許文献83】国際公開第19062832号
【特許文献84】国際公開第19129221号
【特許文献85】国際公開第19129261号
【特許文献86】国際公開第19137548号
【特許文献87】国際公開第19152574号
【特許文献88】国際公開第19154415号
【特許文献89】国際公開第19168382号
【特許文献90】国際公開第19215728号
【特許文献91】国際公開第06015886号
【特許文献92】国際公開第10006071号
【特許文献93】国際公開第10084158号
【特許文献94】国際公開第18077926号
【特許文献95】国際公開第96/34103号
【特許文献96】国際公開第94/04678号
【特許文献97】欧州特許第314415号
【特許文献98】国際公開第2004/018681号A2
【特許文献99】米国特許第7960514号
【特許文献100】欧州特許第1904635号
【特許文献101】国際公開第2006061219号
【特許文献102】米国特許第5,108,921号
【特許文献103】米国特許第5,354,844号
【特許文献104】米国特許第5,416,016号
【特許文献105】米国特許第5,527,5285号
【特許文献106】国際公開第2018/053106号、36~43頁
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Pardoll、Nat Rev Cancer.、2012年;12巻:253~264頁
【非特許文献2】Schildbergら、44巻(5号)、Immunity、2016年
【非特許文献3】Sharmaら、Cell、161巻(2号)、2015年
【非特許文献4】Pardoll、Nature Reviews Cancer、12巻(4号)、2012年
【非特許文献5】Freemanら(2000年)J Exp Med 192巻:1027~34頁
【非特許文献6】Latchmanら(2001年)Nat Immunol 2巻:261~8頁
【非特許文献7】Carterら(2002年)Eur J Immunol 32巻:634~43頁
【非特許文献8】Borcherding Nら、J Mol Biol.、2018年7月6日;430巻(14号):2014~2029頁
【非特許文献9】Paukenら、Science. 2016年12月2日;354巻(6316号):1160~1165頁
【非特許文献10】Shi et al.ら、Nat Commun.2016年8月8日;7巻:12335頁
【非特許文献11】Jiang, Y.、Li, Y.、及びZhu, B(Cell Death Dis 6巻、e1792(2015年))
【非特許文献12】Wahlら、1983年、J. Nucl. Med. 24巻:316頁
【非特許文献13】Riechmann、1999年、Journal of Immunological Methods 231巻:25~38頁
【非特許文献14】Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, and U.S. Department of Health and Human Services, 1991年
【非特許文献15】Stitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第四版)Lange Medical Publications社、ロスアラモス、米国カリフォルニア州、及びその中で引用されている参考文献
【非特許文献16】Harlow及びLane(1988年)ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL CSH Press社
【非特許文献17】Goding(1986年)MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE(第二版)Academic Press社、ニューヨーク市、米国ニューヨーク州
【非特許文献18】Winter及びMilstein、Nature、1991年、349巻:293~299頁
【非特許文献19】Riechmannら、Nature、332巻、323頁(1988年)
【非特許文献20】Verhoeyenら、Science、239巻、1534頁(1988年)
【非特許文献21】Raderら、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A.、1998年、95巻:8910~8915頁
【非特許文献22】Steinbergerら、J. Biol. Chem.、2000年、275巻:36073~36078頁
【非特許文献23】Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、1989年、86巻:10029~10033頁
【非特許文献24】Almagro, J.C.及びFransson, J.、Front. Biosci. 13巻(2008年)1619~1633頁
【非特許文献25】Kashmiri, S.V.ら、Methods 36巻(2005年)25~34頁
【非特許文献26】Padlan, E.A.、Mol. Immunol. 28巻(1991年)489~498頁
【非特許文献27】Dall'Acqua, W.F.ら、Methods 36巻(2005年)43~60頁
【非特許文献28】Osbourn, J.ら、Methods 36巻(2005年)61~68頁
【非特許文献29】Klimka, A.ら、Br. J. Cancer 83巻(2000年)252~260頁
【非特許文献30】Gao S H、Huang K、Tu H、Adler A S.、BMC Biotechnology. 2013年:13巻:55頁
【非特許文献31】Si-Yang Liuら、J. Hematol. Oncol.10巻:136頁(2017年)
【非特許文献32】Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest 第五版(1991年)
【非特許文献33】Al-Lazikaniら、1997年、J. Mol. Biol、273巻:927~948頁
【非特許文献34】MacCallumら、1996年、J. Mol. Biol. 262巻:732~745頁
【非特許文献35】Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、2003年、27巻:55~77頁
【非特許文献36】Honegge及びPluckthun、J. Mol. Biol、2001年、309巻:657~70頁
【非特許文献37】Angal Sら(1993年)Mol. Immunol.、30巻:105~8頁
【非特許文献38】Edelman, G.M.ら、Proc. Natl. Acad. USA、63巻、78~85頁(1969年);www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html#refs
【非特許文献39】Bitarら、Front. Immunol.、2019年、10巻
【非特許文献40】Scheffら、Pharm Res.、2011年、28巻、1081~9頁
【非特許文献41】Coliganら(編)、Current protocols in immunology、10.19.1~10.19.11頁(Wiley Interscience社、1992年)
【非特許文献42】「Antibody engineering: a practical guide」W. H. Freeman and Company社(1992年)
【非特許文献43】Sambrook、Ausubel、Bebbington、「Expression of Antibody Genes in Nonlymphoid Mammalian Cells」 in 2 METHODS: A companion to methods in enzymology 136巻(1991年)
【非特許文献44】Murray(編)、Gene transfer and expression protocols (Humana Press社1991年)
【非特許文献45】Sambrookら(編)、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第二版(Cold Spring Harbor Press社1989年)
【非特許文献46】Ausubelら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Wiley Interscience社1987年)
【非特許文献47】Brown(編)、MOLECULAR BIOLOGY LABFAX(Academic Press社1991年)
【非特許文献48】Graham, F.L.ら、J. Gen Virol.、36巻(1977年)59~74頁
【非特許文献49】Mather, J.P.、Biol. Reprod.、23巻(1980年)243~252頁
【非特許文献50】Mather, J.P.ら、Annals N.Y. Acad. Sci.、383巻(1982年)44~68頁
【非特許文献51】Urlaub, G.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻(1980年)4216~4220頁
【非特許文献52】Yazaki, P.及びWu, A.M.、Methods in Molecular Biology、248巻、Lo, B.K.C.(編)、Humana Press社、トトワ、米国ニュージャージー州(2004年)、255~268頁
【非特許文献53】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins社、第21版(2005年)
【非特許文献54】Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A編(1980年)
【非特許文献55】Iwaiら、(2005年)、Int. Immunol.17:133~144
【非特許文献56】Chraaら、2018年、J Leukoc Biol.2018;1~13
【非特許文献57】Antoniaら、Immuno-oncology combinations: a review of clinical experience and future prospects. Clin. Cancer Res. Off. J. Am. Assoc. Cancer Res. 20、6258~6268、2014
【非特許文献58】Allgauer Aら、J. Immunol.2015)
【非特許文献59】Liu Wら、J Exp Med. 2006年7月10日
【非特許文献60】Liu Wら
【非特許文献61】Seddiki Nら、J exp Med 2006年7月10日
【非特許文献62】Codarri Lら、2007年
【非特許文献63】Heninger AKら、J immuonl 2012年12月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、組合せ免疫療法の検証及び開発は、生物療法のコスト、及びそのような免疫療法の機会が限られていることにより、著しく制限されている。したがって、当技術分野には、T細胞を標的とし、適応免疫応答、特にT細胞免疫応答に対して有効でポジティブな効果を有する、特にがんに対する安全な免疫療法のための新しい向上された物質に対する重要な必要性が依然として存在する。本発明者らは、本明細書で開示した発明により著しい進歩を成し遂げた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、数多くの療法適用に、特にがんの治療に有望である、抗hPD-1抗体及びヒトIL-7を含む二機能性分子を提供する。本発明は、PD-1に対して高い結合親和性を示し、そのリガンドPD-L1及びPD-L2と強力に競合する、ヒトPD-1を特異的に標的とする抗体の開発に基づく。驚くべきことに、IL-7のN末端を、抗hPD-1抗体のFc領域のC末端に融合させることにより、CD127(IL7受容体)に対するその高い親和性を内因性IL-7と同程度に保存することが可能になり、強力なIL-7R活性化が示唆される。また、FcドメインをIL-7に融合させることにより、産物半減期が延長される。更に、本明細書で開示の二機能性抗PD1/IL-7分子は、PD-1+ T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積、及びPD-1+ T細胞上でのIL-7の再局在化を可能にする。特に、抗PD-1/IL-7二機能性分子は、サイトカイン(例えば、IFNγ)分泌及びインテグリン(例えば、アルファ4及びベータ7及びLFA-1)発現により反映される、未感作の、部分的に疲弊した及び完全に疲弊したT細胞サブセットの増殖及び活性化を誘導する。そのような抗hPD-1/IL-7二機能性分子は、関連する抵抗性機序を克服し、抗PD-1免疫療法の有効性を向上させる能力を有する。
【0016】
第1の態様では、本発明は、
(a)
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含む抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片;並びに
(b)ヒトインターロイキン7(IL-7)又はその断片
を含む二機能性分子であって、
抗体又はその断片は、好ましくはペプチドリンカーにより、融合タンパク質として、ヒトIL-7又はその断片に共有結合で連結されている、二機能性分子に関する。
【0017】
特に、ヒトIL-7又はその断片のN末端は、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続されている。
【0018】
一態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0019】
特定の態様では、本発明は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)
を含むか又はからなる抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む二機能性分子であって、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくはH、A、Y、N、及びEからなる群において選択され、
-軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなる、
二機能性分子に関する。
【0020】
特に、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2はT、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくはH、A、Y、N、及びEからなる群において選択されるVH;並びに(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中XはG又はTであるVLを含むか又はからなる。
【0021】
より詳細には、本発明は、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む二機能性分子であって、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、
(i)配列番号24のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH);及び(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むか又はからなる、二機能性分子に関する。
【0022】
或いは、抗PD1抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、PDR001、並びにモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4からなる群から選択される。
【0023】
特に、IL-7又はそのバリアントは、野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はからなる。特定の態様では、IL-7は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0024】
或いは、IL-7は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示すIL-7バリアントであり、バリアントは、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低下させ、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。
【0025】
特に、少なくとも1つの変異は、(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R;又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群であってもよい。
【0026】
一態様では、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、並びにC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。
【0027】
別の態様では、IL-7バリアントは、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0028】
別の態様では、IL-7バリアントは、D74E、D74Q、及びD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0029】
好ましくは、IL-7バリアントは、配列番号53~66に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。更により好ましくは、IL-7バリアントは、配列番号54、56、又は63に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0030】
特定の態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及びヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖定常ドメイン、好ましくはIgG1又はIgG4重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む。
【0031】
より具体的な態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む。
【0032】
別のより具体的な態様では、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG4重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含む。
【0033】
任意選択で、抗体又はその断片は、好ましくは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択されるリンカー配列により、より好ましくは(GGGGS)3又は(GGGS)3により、IL-7又はそのバリアントに連結されている。
【0034】
非常に具体的な態様では、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含み、抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインに由来する軽鎖定常ドメイン、及び任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択され、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する、ヒトIgG1重鎖定常ドメインに由来する重鎖定常ドメインを含み、抗体又はその断片は、リンカー(GGGGS)3によりIL-7バリアントに連結されている。
【0035】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示の通りの二機能性分子をコードする単離された核酸配列若しくは単離された核酸分子の群、本明細書で開示の通りの核酸若しくは核酸分子の群を含むベクター、及び/又は本明細書で開示の通りの核酸若しくは核酸分子の群を含むベクターを含む宿主細胞に関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、二機能性分子を産生するための方法であって、本明細書で開示の通りの宿主細胞を培養する工程、及び任意選択で二機能性分子を単離する工程を含む方法に関する。
【0037】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示の通りの二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0038】
任意選択で、医薬組成物は、好ましくは、以下のものからなる群において選択される追加の療法剤を更に含む:アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二重特異的T細胞誘導(Bi-Specific T cell Engager))抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質(intercalating antibiotics)、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤(hypomethylating agent)、チェックポイント阻害剤、及びペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せ。
【0039】
特に、医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞は、医薬として使用するためのものである。
【0040】
最後に、本発明は、医薬として使用するための、好ましくは、がん、好ましくは、以下のものからなる群から選択されるがんの治療に使用するための、本明細書で開示の通りの医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞に関する:PD-1及び/又はPD-L1の発現を伴う血液悪性腫瘍又は固形腫瘍、例えば、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、及び急性骨髄性白血病からなる群から選択されるがん、ウイルスにより誘導されるか又は免疫不全と関連するがん、例えば、カポジ肉腫(例えば、カポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);子宮頸がん、肛門がん、陰茎がん、及び外陰扁平上皮がん、及び中咽頭がん(例えば、ヒトパピローマウイルスと関連する);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫、及びリンパ増殖性障害(例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);肝細胞癌(例えば、B型及び/又はC型肝炎ウイルスと関連する);メルケル細胞癌(例えば、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連する);及びヒト免疫不全ウイルス感染(HIV)感染症と関連するがんからなる群から選択されるがん、並びに転移性又は非転移性のメラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん、及び子宮頸がんからなる群から選択されるがん。
【0041】
任意選択で、二機能性分子、医薬組成物、単離された核酸分子若しくは単離された核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞は、放射線療法、又は好ましくは以下のものからなる群において選択される追加の療法剤と組み合わせて使用するためのものである:アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二重特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、及びペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せ。
【0042】
本明細書で開示の通りの医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞、又は使用は、T調節性細胞(T regulator cell)の抑制活性を阻害するために、Tエフェクター細胞を活性化するために、及び/又は未感作の部分的に疲弊した及び完全に疲弊したT細胞の増殖を刺激するために使用するためのものである。
【0043】
また、本明細書で開示の通りの医薬組成物、二機能性分子、核酸若しくは核酸分子の群、ベクター、又は宿主細胞、又は使用は、感染性疾患、好ましくは、慢性感染性疾患、更により好ましくは慢性ウイルス感染症の治療に使用するためのものであってもよい。好ましくは、感染性疾患は、HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、はしかウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、及びアルボウイルス脳炎ウイルスからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。(A)抗PD1(■)、抗PD1VL-IL7(o)及び抗PD1VH-IL7(●)を、組換えPD1(rPD1)へのそれらの結合について比較した。(B)その重鎖又は/及び軽鎖上でIL7に融合した抗PD1抗体由来のキメラBicki(●)対ヒト化Bicki(■)の比較:抗PD1VH-IL7(左のグラフ)、抗PD1VL-IL7(中央のグラフ)又は抗PD1VH及びVL-IL7(右のグラフ)。分子を、異なる濃度でヒトPD1組換えタンパク質でコーティングしたプレート上に加えた。(C)キイトルーダ(●)及びオプジーボ(■)骨格で構築したBicki抗PD-1/IL-7のPD-1結合を、ヒトPD1組換えタンパク質でコーティングしたプレート上で異なる濃度で試験した。
【
図2】PD-1/PD-L1及びPD1/PDL2相互作用を遮断するBicki抗PD1-IL7分子のアンタゴニスト能。(A)ELISAアッセイ:PD-L1を、Maxisorpプレートに固定化し、複合体抗体+ビオチン化組換えヒトPD-1を加えた。この複合体を、固定濃度のPD1(0.6μg/mL)で生成し、異なる濃度の抗PD1(■)、抗PD1VH-IL7(●)又は抗PD1VL-IL7(o)抗体を試験した。(B)抗PD1抗体、抗PD1VH-IL7又は抗PD1VL-IL7抗体と予めインキュベートしたヒトPD-L2組換えタンパク質上のPD-1組換えタンパク質のビアコア(Biacore)による親和性評価。ヒト組換えPD-L2を、CM5ビオチップ(biochip)上に固定化し、複合体抗体(200nM)+組換えヒトPD-1(100nM)を加えた。データを、ビアコアにより測定した相互作用の相対的応答の%:100%=PD-1相対的応答で表す。
【
図3】Bicki抗PD1-IL7分子は、ヒトPBMCにおける生体外(ex vivo)でのSTAT5リン酸化により測定される、IL-7Rシグナル伝達経路を刺激する。健常ボランティアの末梢血から単離したPBMCを、組換えIL-7(rIL7)(灰色●)+/-抗PD1(灰色▽)、抗PD1VH-IL7(■)又は抗PD1VL-IL7(●)と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、MFI pSTAT
*%pSTAT5+集団を計算することにより得て、基準に合わせ(100%=rIL-7 57.5nM)、2回の独立した実験における3人の異なるドナーの平均を表す。
【
図4】Bicki抗PD1-IL7は、インビトロ(in vitro)でT細胞活性化を増強する。(A)Discover'x PD-1 Path Hunterバイオアッセイ:ベータ-gal断片に融合した操作したPD-1受容体(ED)及び相補ベータ-gal断片に融合した操作したSHP1(EA)を安定的に発現するジャーカット(Jurkat)T細胞。抗PD1アンタゴニスト抗体の添加により、PD-1シグナル伝達を遮断し、これにより、生物発光シグナル(RLU)の喪失を導く。抗PD1(■)又は抗PD1VH-IL7(●)を、異なるモル濃度で試験した。データを、RLU(相対的発光シグナル)で表す。(B)Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞 (抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を共培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを添加後、発光を定量し、T細胞活性化を反映する。連続モル濃度の抗PD1抗体+/-組換えIL-7(rIL-7)又はBicki抗PD1VH-IL7又は抗PD1VL-IL7抗体を試験した。各ドットは、1回の実験のEC50を表す。(C)NFATを刺激するキイトルーダ又はオプジーボ骨格で構築したBicki抗PD-1/IL-7の能力。T細胞活性化も、Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイを使用し、試験した。キイトルーダ単独又はオプジーボ単独(●)対ペムブロリズマブVH IL-7又はニボルマブVH IL-7(○)を、異なる濃度で試験した。
【
図5】Bicki抗PD1-IL7分子は、IFNg分泌を増強する。健常ボランティアの末梢血から単離したT細胞を、OKT3/PDL1でコーティングしたプレート(それぞれ、2及び5μg/mL)で、アイソタイプ対照、抗PD1+/-rIL7、抗PD1VH-IL7、抗PD1VL-IL7、アイソタイプVH-IL7の存在下、最終抗体濃度5μg/mlで刺激した。刺激の5日後、分泌されたIFNγを、サンドイッチELISAにより容量を決定した。結果は、4人のドナーの代表例である(n=2の実験)。
【
図6】Bicki抗PD1-IL7は、T細胞増殖を組換え溶解性IL-7と同様の程度まで刺激する。健常ボランティアの末梢血から単離したPBMC細胞を、抗CD3/CD28で刺激した。刺激の24時間後、PBMCを回収し、OKT3/PDL1コーティングプレート(それぞれ、2及び5μg/mL)上、rIL-7又はBicki抗PD1VH-IL7の存在下で再刺激した。(A)固定容量(29nM BiCKI若しくは3.2nM rIL-7)又は(B)複数用量のrIL-7(□)抗PD1単独又は抗PD1VH-IL7(●)又は抗PD1VL-IL7(■)又はアイソタイプVH IL-7(▲)を試験した。刺激の5日後、T細胞増殖を、3Hチミジン取り込みにより評価した。データを、基準に合わせ(100%=rIL7 10nM)、3人の異なるドナーで得た平均を表す。EC50(pM)は、T細胞増殖の50%に達するのに必要な濃度を指す。
【
図7】Bicki抗PD1VH-IL7は、T細胞表面上でのインテグリンの発現を刺激する。ヒトPBMCを、分子なし(灰色のヒストグラム)で、又はrIL-7/rIL-2若しくはrIL-7(50ng/mL)若しくは抗PD-1若しくは抗PD1VH-IL7(5μg/mL)と3日間インキュベートした。(A)アルファ4及びベータ7インテグリン細胞表面発現解析。FACSをLSRにより解析し、データを、各ドナーについて対照(未処理)の蛍光の平均に対応する1に基準を合わせた倍加変化で表す。(B)LSRを使用した、FACSによる、LFA-1細胞表面発現解析(CD11a及びCD18)。結果を、平均蛍光として表す。各ドットは、3回の独立した実験の1人のドナーを表す。
【
図8】疲弊したT細胞をもたらす、T細胞の慢性抗原刺激のモデライゼーション。ヒトPBMCを、CD3 CD28コーティングプレート(3μg/mL OKT3及び3μg/mL CD28.2抗体)上で、3日毎に繰り返し刺激した。(A)刺激の24時間後、T細胞を、PD-1、Lag3及びTim3阻害受容体について染色した。発現を、蛍光色素標識抗体を使用したフローサイトメトリー及びFACS LSRIIにより解析した。データを、3人のドナー(1人のドナー=1つの曲線)についての陽性細胞の%で表す。(B)T細胞増殖能を、各刺激の5日後に、チミジン3H取り込みにより決定した。(C)各刺激の24時間後、上清IFNg分泌を、ELISA(pg/ml)により解析した。
【
図9】疲弊したT細胞のIL7経路活性化:各刺激の48時間後のSTAT5のリン酸化を測定することによる、rIL-7又はBicki抗PD1VH-IL7との細胞の15分間のインキュベートに対する疲弊したT細胞の応答。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。(A)灰色のヒストグラムは、rIL7で処理した細胞を表し、黒色のヒストグラムは、Bicki抗PD1VH-IL7で処理した細胞を表す。データは、基準に合わせ(MFI pSTAT
*%pSTAT5集団)、4人の異なるドナーの代表例である。(B)pSTAT5のED50を、各刺激についてpMで決定し、pSTAT5活性化の50%を達成するのに必要なrIL-7(■灰色)又はBicki抗PD1VH-IL7(■黒色)の濃度を指す。
【
図10A】IL-7刺激の際の疲弊したT細胞の増殖。ヒトPBMCを、CD3 CD28コーティングプレート(3μg/mL OKT3及び3μg/mL CD28.2抗体)で繰り返し刺激した。各刺激の24時間後、T細胞を、OKT3コーティングプレート(2μg/mL)上、抗PD1、rIL-7又はBicki抗PD1-IL7(抗PD1VH-IL7若しくは抗PD1VL-IL7)の存在下で再刺激した。H3取り込みアッセイを、5日目に行い、T細胞増殖を決定した。刺激(STIM)3、4及び5の後の1人のドナーからの未処理の増殖データを、示す(H3取り込み(cpm))。
【
図10B】IL-7刺激の際の疲弊したT細胞の増殖。ヒトPBMCを、CD3 CD28コーティングプレート(3μg/mL OKT3及び3μg/mL CD28.2抗体)で繰り返し刺激した。3回刺激したT細胞は、それ以上刺激しない(刺激なし)か、又は抗CD3(StimOKT3)、抗CD3+組換えPDL1(Stim OKT3/PDL1)若しくは抗CD3+組換えPDL2(StimOKT3/PDL2)コーティングプレート(それぞれ、2及び5μg/mL)上で再刺激した。H3取り込みアッセイを、5日目に行い、データを基準に合わせた(1=アイソタイプ抗体でのH3取り込み)。n=4人のドナー及び2回の異なる実験。
【
図11】CD8エフェクターT細胞の増殖に対するTreg抑制活性。CD8+エフェクターT細胞及びCD4+CD25高CD127低Tregを、健常ドナーの末梢血から単離し、細胞増殖ダイ(CD8+T細胞についてCPDe450)で染色した。次に、Treg/CD8+Teffを、比1:1で、OKT3コーティングプレート(2μg/mL)上、rIL-7、抗PD-1、抗PD-1+rIL-7、抗PD1VH-IL7の存在又は非存在下で5日間共培養した。エフェクターT細胞の増殖を、細胞蛍光測定により解析した。(A)データは、CD8 Tエフェクター細胞集団におけるCPDマーカーの喪失に基づき、増殖Teff単独(黒色のヒストグラム)又はTregと共培養したTeff(灰色のヒストグラム)+/-SEMの%を表す(4回の異なる実験でn=4人のドナー)。(B)Treg増殖を、異なる等モル用量のIL-7(▲)、IL-2(●)、IL-15(■)又は抗PD1VH-IL7(▼)とインキュベート後、CPD増殖ダイを使用し、評価した。
【
図12】ヒト化マウスモデルにおけるBicki抗PD1-IL7抗体のインビボ(in vivo)での有効性。ヒトPBMCを、マウスに腹腔内注射した。抗PD1抗体単独又はBicki抗PD1VH-IL7(5mg/kg)で1週間に2回処理した。注射の16日後に、血液を回収し、マウスを屠殺した。(A)末梢のヒトCD3 T細胞のパーセンテージを、ヒトCD45+細胞集団においてフローサイトメトリーにより解析した。各ドットは、1匹のマウスを表す。(B)ヒトIFNgを、血漿中でELISAにより用量決定した。各ドットは、1匹のマウスを表す。(C)ヒトCD3+細胞の浸潤を、免疫組織蛍光により、大腸、肝臓及び肺において定量した。近位及び遠位の大腸、肝臓並びに肺を、Tissue Tek(登録商標)OCTにおいて包埋し、Dapi及びヒトCD3について染色した。各ドットは、1匹のマウスを表し、大腸について、各ドットは、3つの切片のCD3+カウントの平均を表す。
【
図13】ヒト腫瘍浸潤リンパ球の免疫表現型。T細胞を、腎臓がん(△)(▽)、転移性結腸直腸(□)、膵臓がん(○)、肝細胞癌(●)(◇)から抽出し、CD3、CD4、CD8、PD-1、CD127及びCD132について染色した。免疫蛍光を、FACS LSRIIにより解析した。データを、CD4+CD3+又はCD8+CD3+集団について表す。
【
図14】生体外腫瘍での腫瘍内調節性T細胞又はエフェクターT細胞のSTAT5活性化。細胞を、シュワン腫(▼)、腎臓(○)、肝細胞癌(□)(■)、転移性結腸直腸(●)又は膵臓がん(▲)患者の腫瘍から抽出し、rIL-7又はBicki抗PD1VH-IL7(29nM)で15分間処理した。次に、細胞を固定し、透過処理し、pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))、CD3及びFoxp3について染色した。ヒストグラムは、CD3+FoxP3+集団(T調節性細胞)又はCD3+FoxP3-(エフェクターT細胞)におけるpSTAT5蛍光平均を表す。
【
図15】Bicki抗PD1-IL7での処理後のヒトがん生検のIFNγ分泌のインビトロ研究:ヒト腫瘍の生検を、完全培地中で潰して、細胞を分けた。細胞を、完全培地中に、濃度5μg/mLのアイソタイプ対照、抗PD1、B12-IL7アイソタイプ対照抗体(アイソタイプ-VH IL-7)、抗PD-1+組換えIL-7、又は抗Bicki抗PD1VH-IL7と共に、再懸濁した。48時間後、上清を回収し、IFNγ分泌を、MSDテクノロジー(Meso scale Discovery)を使用し、解析した。A. 結腸直腸がん細胞での結果を表し、B. 個々の腫瘍(CC:結腸直腸癌生検、HCC:肝細胞癌生検、KC:腎臓がん)での結果を表す。
【
図16】Bicki抗PD1VH-IL7での処理後の腫瘍内調節性T細胞又はエフェクターT細胞のSTAT5活性化。(A)結腸直腸がん、シュワン腫、腎臓がん又は肝細胞癌の腫瘍内に入り込んだ腫瘍内FoxP3 Treg細胞のパーセンテージ。(B)結腸直腸癌(●)、シュワン腫(○)及び膵臓がん(□)由来の細胞を、rIL7又は抗PD1VH-IL7(29nM)での処理(15分間のインキュベート)後、FoxP3-CD3+エフェクターT細胞対FoxP3-CD3+Treg細胞におけるSTAT5活性化について解析した。次に、細胞を固定し、透過処理し、pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))、CD3及びFoxp3について染色した。
【
図17】bicki IL-7変異体のPD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を、固定化し、抗体を、異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼ結合抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。(A)抗PD1抗体及びアミノ酸D74、Q22、Y12F、M17、Q11、K81で変異したIL-7を含む二機能性分子のPD-1結合。(B)アミノ酸W142で変異したIL-7を含む二機能性分子のPD-1結合。(C)IL-7のジスルフィド結合で変異した(SS1、SS2及びSS3変異)二機能性分子のPD-1結合。この図において試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図18】変異したIL-7に融合したIgGのCD127結合ELISAアッセイ。PD-1組換えタンパク質を、プレート上に固定化し、次に、二機能性抗PD-1 IL-7分子を、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino照会10975-H08H)と予めインキュベートし、ウェルに加えた。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体+ペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。(A)アミノ酸D74、Q22、M17、Q11、Y12F、K81で変異したIL-7を含む二機能性分子のCD127結合。(B)アミノ酸W142で変異したIL-7を含む二機能性分子のCD127結合。
【
図19】STAT5リン酸化により測定した、異なる二機能性分子のIL-7-7Rシグナル伝達経路。健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMCを、二機能性抗PD-1 IL-7分子と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。CD3 T細胞におけるMFI pSTAT5を計算することにより、データを得た。(A)アミノ酸D74、Q22、M17、Y12F、Q11、K81で変異したIL-7を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5活性化。(B)アミノ酸W142で変異したIL-7を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT活性化。(C)抗PD-1 IL-7 WT(●灰色)と比較した、IL-7、SS2(●黒色)及びSS3(▲)のジスルフィド結合におけるIL-7変異を含む抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5活性化。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図20】抗PD-1 IL-7二機能性分子のマウスにおける薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを1回用量静脈内注射した。血清中における分子の濃度を、ELISAにより、注射後の複数の時間ポイントで評価した。(A)IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色);IgG4-G4S3 IL7 D74E(●黒色)の注射。(B)IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色)又はIgG4-G4S3 IL7 W142H(●黒色)の注射。(C)IgG4-G4S3 IL7 WT(■灰色);IgG4-G4S3 IL7 SS2(●)又はIgG4-G4S3 IL7 SS3(▲)の注射。(D)各分子のPK対ED50 pSTAT5(nM)から計算した曲線下面積(AUC)間の相関。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図21】抗PD-1とIL-7の間のジスルフィド結合の付加は、pSTAT5活性化を減少させ、一方、インビボで薬物曝露を増加させる。(A)抗PD-1 IL-7二機能性分子WT(灰色●)又は追加のジスルフィド結合を有する抗PD-1 IL-7二機能性分子(黒色●)での処理後の、ヒトPBMCでのpSTAT5活性化により測定したIL7Rシグナル伝達。(B)抗PD-1 IL-7二機能性分子WT(灰色●)又は追加のジスルフィド結合分子を有する抗PD-1 IL-7二機能性分子(黒色●)のマウスにおける薬物動態。マウスに、抗PD-1 IL7二機能性分子を含む1回用量を静脈内注射した。血清中の分子の濃度を、注射後複数の時間ポイントでELISAにより評価した。この図で試験した全ての分子を、IgG4mアイソタイプ及びFcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図22】PD-1結合ELISAアッセイ。ヒト組換えPD-1(rPD1)タンパク質を固定化し、抗体を、異なる濃度で加えた。顕色を、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトFc抗体で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。(A)IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7WT二機能性分子(▲黒色)、IgG1mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子(■)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(◇)のPD-1結合。(B)別の実験では、IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(■)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(▲)のPD-1結合を試験した。
【
図23】IgG1N298A又はIgG4アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のCD127結合ELISAアッセイ。抗体骨格により標的化される組換えタンパク質を、固定化し、次に、IL-7に融合した抗体を、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino照会10975-H08H)と予めインキュベートした。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。(A)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(▲黒色)、又はIgG1mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●黒色)のCD127結合。(B)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(▲黒色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●黒色)のCD127結合。(C)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS3 二機能性分子(●灰色)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子(▲黒色)又は抗PD-1 IL-7 WT 二機能性分子IgG1m(●黒色)のCD127結合。(D)アイソタイプIgG1mを含む抗PD-1 W142H二機能性分子(●黒色)又はアイソタイプIgG1m+YTE(●灰色)のCD127結合。アイソタイプIgG1mを含む抗PD-1 D74E二機能性分子(▲黒色)又はアイソタイプIgG1m+YTE(▲灰色)のCD127結合も試験した。この図で試験した全ての分子を、FcとIL-7ドメインの間のGGGGSGGGGSGGGGSリンカーで構築した。
【
図24】IgG1N298A又はIgG4アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のIL-7Rシグナル伝達解析。ヒトPBMC又はジャーカットPD1+CD127+細胞を、抗PD-1 IL7二機能性分子と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。CD3 T細胞におけるpSTAT5の%を計算することにより、データを得た。(A)IgG4mアイソタイプ(●灰色)又はIgG1mアイソタイプ(▲黒色)を含む変異D74Eを有する二機能性分子抗PD-1 IL-7の処理後の、ヒトPBMC上のpSTAT5シグナル伝達。(B)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2(●灰色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2(▲黒色))の処理後のヒトPBMC上でのpSTAT5シグナル伝達。(C)IgG4mアイソタイプ又はIgG1m(▲黒色)を含む抗PD-1 IL-7 SS3(●灰色)の処理後のヒトPBMC上でのpSTAT5シグナル伝達。(D) (左パネル)IgG4m(●灰色)又はIgG1m(▲黒色)アイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7 WTの処理後の、ジャーカットPD1+CD127+細胞におけるpSTAT5シグナル伝達。(右パネル)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 SS2(●灰色)又はIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS2(▲黒色)の処理後のpSTAT5シグナル伝達。
【
図25】抗PD-1 IL-7変異二機能性分子は、インビトロでT細胞活性化を増強する。Promega PD-1/PD-L1バイオアッセイ:(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATが誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞 (抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を共培養した。BioGlo(商標)ルシフェリンを添加後、発光を定量し、T細胞活性化を表す。連続モル濃度の抗PD1抗体+/-組換えIL-7(rIL-7)又は抗PD1IL7二機能性分子を試験した。各ドットは、1回の実験のEC50を表す。(A)IgG4mアイソタイプを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色)又は抗PD-1(▲)又は抗PD-1+rIL-7(○)のNFAT活性化。(B)抗PD-1 IL-7 D74E IgG4m(●)、PD-1 IL-7 D74E IgG1m(▲点線)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。(C)IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 W142H 二機能性分子(●)、IgG1mを含むPD-1 IL-7 W142H二機能性分子(▲点線)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。(D)IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子(●)、及び抗PD-1単独(黒色▲)のNFAT活性化。
【
図26】IgG1m又はIgG4mアイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子の薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを含む1回用量を静脈内注射した。血清中の薬物の濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。(A)IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色の平坦線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子(●灰色の破線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子(▲黒色の破線)、IgG4mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(○黒色の平坦線)、IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子(○破線の黒色の平坦線)、IgG4を含む抗PD-1 IL-7 SS3(■平坦線)、及びIgG1mを含む抗PD-1 IL-7 SS3(■破線)の薬物動態。(B)IgG1mを含む抗PD-1 IL-7 D74E、D74Q、W142H、D74E+W142H変異二機能性分子の薬物動態。
【
図27】IgG1 N298A+K444Aアイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子の薬物動態。マウスに、アイソタイプIgG1N298A(■)又はアイソタイプIgG1m+K444A変異アイソタイプ(●)を含む抗PD-1 IL7 D74E二機能性分子の1回用量を静脈内注射した。抗体の濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。
【
図28】リンカーの長さは、薬物動態に有意に影響しないが、IL-7Rシグナル伝達の刺激を減少させる。(A)異なるリンカー(GGGGS)、(GGGGS)2、(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子の薬物動態。(B)異なるリンカー(GGGGS)、(GGGGS)2。(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 D74二機能性分子の薬物動態。(C)異なるリンカー((GGGGS)2、(GGGGS)3)で構築した抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子の薬物動態。マウスに、IL-7野生型又は変異IL-7に融合したIgGを含む1回用量を静脈内注射した。IL-7に融合したIgGの濃度を、注射後複数の時間ポイントで、ELISAにより評価した。(D)リンカーなし又はGGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)3リンカーで構築した抗PD-1 IL-7二機能性分子のpSTAT5シグナル伝達。
【
図29】抗PD-1 IL-7変異体は、PD-1-CD127+細胞よりPD-1+CD127+細胞を選択的に標的にする。CD127+を発現するジャーカット細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するジャーカット細胞を、45nM 抗PD-1 IL-7二機能性分子で染色し、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で明らかにした。データは、PD1-細胞CD127+ジャーカット細胞上で得た平均蛍光に対するPD-1+CD127+ジャーカット細胞上の平均蛍光の比を表す。このアッセイにおいて、抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 D74E二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7W142H二機能性分子IgG1m、抗PD-1 IL-7 SS2二機能性分子IgG4m、抗PD-1 IL-7 SS3二機能性分子IgG1mを試験した。
【
図30-1】抗PD-1 IL-7分子は、T細胞の増殖を増強し、カニクイザルにおける前臨床安全性を示す。PD-1-CD127+細胞よりPD-1+CD127+細胞を標的にする。カニクイザルに、1回用量のbicki抗PD-1 IL-7WT(6.87nM/kg(n=2))又は34.35nM(n=1))を静脈内注射した。血液解析を、注射の15日後又は4時間まで行った。(A)リンパ球カウントを、Bicki 抗PD-1 IL-7 WTを6.87nM/kg(n=2)で注射して、複数の時間ポイントで末梢血において評価した。(B)CD4/CD8又はB細胞の増殖を、Bicki抗PD-1 IL-7WTを6.87nM/kg(n=2)で注射して、Ki67/CD4/CD8及びCD19マーカーを使用し、フローサイトメトリーにより評価した。(C)Bicki抗PD-1 IL-7WTを6.87nM/kg(n=2)で注射して、複数の時間ポイントで、CD3+T細胞におけるpSTAT5を、FACSにより解析した。(D/E/F/G/H)生化学及び細胞血液解析を、複数の時間ポイントで評価した。
【
図31】本発明によるBicki抗PD1-IL-7の作用機序の説明。
【発明を実施するための形態】
【0045】
緒言
本発明の抗体は、特異的な抗PD-1効果と、抗PD-1抗体に融合されたヒトインターロイキン7の効果とを組み合わせたものであるため、二機能性である。実際、本発明は、抗PD-1抗体及びIL-7を含む二機能性分子であって、インターロイキンは、抗PD-1抗体のポリペプチド鎖に、抗体の軽鎖若しくは重鎖のいずれか又は両方又はその断片に共有結合で連結されている、二機能性分子に関する。抗PD-1抗体又はその断片の鎖及びIL-7は、融合タンパク質として調製される。この特定の態様では、IL-7のN末端は、抗PD-1抗体又はその断片の鎖のC末端に、任意選択でペプチドリンカーを介して連結されている。
【0046】
当業者に公知であるように、腫瘍細胞は、多数のがんで観察されるT細胞疲弊と呼ばれる現象のため、T細胞により十分に排除されない場合がある。例えば、Jiang, Y.、Li, Y.、及びZhu, B(Cell Death Dis 6巻、e1792(2015年))により説明されているように、腫瘍微小環境における疲弊したT細胞は、阻害性受容体の過剰発現、エフェクターサイトカイン産生及び細胞溶解活性の減少に結び付き、がん排除の失敗、及び一般にはがんの免疫回避に結び付く場合がある。したがって、疲弊したT細胞の回復は、がん治療のために起想される臨床戦略である。
【0047】
PD-1は、T細胞疲弊を調節する主要な阻害性受容体である。実際、高PD-1発現を示すT細胞は、がん細胞排除能力の減少を示す。抗PD1治療用化合物、特に抗PD1抗体は、PD1-PDL1相互作用(T細胞上のPD1及び腫瘍細胞上のPDL1)の阻害効果及びT細胞疲弊を阻止するためのがん治療に臨床使用されている。しかしながら、抗PD1抗体は、疲弊したT細胞の「再」活性化を可能にするのに必ずしも十分に効率的ではない。
【0048】
本出願人は、本明細書にて、本発明による二機能性抗PD1-IL-7分子が、抗PD-1単独と比較して、T細胞、特に疲弊したT細胞の活性化(NFAT媒介性活性化)を強化することを示す。特に、抗PD1-IL-7二機能性分子は、サイトカイン(例えば、IFNγ)分泌により反映されるような、未感作の部分的に疲弊した及び完全に疲弊したT細胞サブセットの増殖及び活性化を誘導する。そのような抗PD1-IL-7二機能性分子は、関連する抵抗性機序を克服し、抗PD-1免疫療法の有効性を向上させる能力を有する。
【0049】
本出願人は、特に、抗PD1-IL-7二機能性分子と、i)PD1及びii)IL-7受容体を発現する単一のT細胞との相互作用が、NFAT経路(TCRシグナル伝達)の予期しない活性化に結び付き、T細胞活性化に対して、特に疲弊したT細胞に対してポジティブな効果を示し、腫瘍性細胞を排除するT細胞の能力を高めることを示す。
【0050】
これは、一方では、本発明の二機能性分子のIL-7がIL-7受容体を標的として、PSTAT5経路を活性化し、他方では、二機能性分子の抗PD1部分が、PD-1/PD-L1相互作用を阻止することを意味する。BICKI分子は、同じ細胞上のIL-7及びPD-1を両方とも標的とする。これは、TCR(NFAT)シグナル伝達の相乗的活性化をもたらす。これは、抗PD1抗体及びIL-7の組合せを別々に(2つの別々の化合物として)使用した場合には決して観察されない。この活性化は、PD-L1を標的とする二機能性分子では提供することができない。実際、当技術分野では、PD-L1は、腫瘍細胞上に発現され、T細胞等の免疫細胞では発現されないことが公知である。
【0051】
加えて、二機能性抗PD1/IL-7分子は、PD-1+ T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積、及びPD-1+ T細胞上でのIL-7の再局在化を可能にする。このようにPD-1+ T細胞付近にIL-7が蓄積されることは、こうしたT細胞を活性化又は再活性化するために高用量のIL-7を必要とする疲弊したT細胞の状況では、特に興味深い。
【0052】
T細胞活性化に対する相乗効果は、本発明の特定の抗PD-1抗体だけでなく、2つの他の参照抗PD-1、すなわちオプジーボ及びキイトルーダでも観察されている。
【0053】
加えて、二機能性抗PD1/IL-7分子は、腫瘍へのT-細胞浸潤を促進する能力を有する。今日では、腫瘍部位でのT細胞浸潤の欠如が、抗PD1抗体による治療の有効性に対する主要な障害であることを考慮すると、この能力は、抗PD-1抗体による治療を最適化するために有利である。
【0054】
更に、二機能性抗PD1/IL-7分子は、Treg媒介性阻害効果を阻止する。したがって、二機能性分子は、Treg細胞ではなくTエフェクター細胞を特異的に活性化することができるが、抗PD1抗体は、Tエフェクター細胞に対するTreg抑制活性を阻害することはできない。したがって、本発明者らは、二機能性抗PD1-IL7分子が、調節性T細胞を温存させつつエフェクターT細胞の増殖及び生存を刺激することにより、T調節性免疫バランスに対してT細胞エフェクターを有利にすることを示した。
【0055】
加えて、IL7抗PD-1二機能性分子は他の利点を有する。
【0056】
さらに、本発明者らは、IL7抗PD-1二機能性分子が、T調節性細胞(Treg)よりも優勢にTエフェクター細胞(Teff)を活性化することを示す。IL7抗PD-1二機能性分子は、T Regの増殖を促進しないこと、T Regの不活化を誘導すること、及びT細胞、特に疲弊したT細胞の活性化を誘導することという利点を有する。
【0057】
IL7抗PD-1二機能性分子は、非常に有利な投与量を可能にし、有利な治療指数(致死用量(DL50)と治療的に効率的な用量との比)を呈する。特に、IL7は、典型的には、10~1500μg/Kg、有利には200~1200μg/Kgの範囲で患者に使用することができ、1200μg/Kg等の高用量でも患者に十分に耐容性である。したがって、IL7抗PD-1二機能性分子は、治療用化合物を、成分である化合物の投与量が適切になるように及び最終産物の投与量が適切になるように産生することが可能である。実際、IL7の十分に耐容性である高用量(例えば、IL7の場合はおおよそ1,2mg/kg)は、抗体では約2mg/kgの量に対応し、これは、患者に投与するのに十分な用量である。
【0058】
IL7抗PD-1二機能性分子は、上記で言及されている医学的必要性を満たすための重要な標的である、部分的にしか疲弊していない疲弊T前駆細胞を本質的に標的とすることが可能であるという利点を有する。加えて、同様のT細胞疲弊と関連するウイルス感染症の場合、慢性的活性化が重要であり、したがって、ウイルス病理は、本出願の新しい産物が標的とする病理の範囲に含まれる。
【0059】
最後に、特定の態様では、本発明者らは、IL-7変異体又はバリアントを含む二機能性分子を設計した。IL-7変異体又はバリアントは、i)野生型IL-7の親和性と比較してIL-7受容体(IL-7R)に対する親和性が低減されること、及びii)野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態が向上されることにより特徴付けられる。第一に、二機能性分子におけるIL-7バリアントの使用は、二機能性分子のin vivo薬物動態を増加させるために重要である。第二に、その受容体に対するIL-7バリアントの親和性を減少させることにより、二機能性分子が、二機能性分子の抗PD-1抗体部分により標的T細胞に選択的に結合し、そうした細胞に対して特異的な効果を提供する能力だけでなく、同じT細胞に対する二機能性分子の2つの部分の作用に関連付けられる相乗効果を活用する能力も増加する。IL-7バリアントを有する二機能性分子は、PD-1の良好な結合及びアンタゴニスト活性を有する。加えて、二機能性分子は、PD-1に対するその親和性とIL-7Rに対するその親和性との間に好適な平衡を提供する。驚くべきことに、本発明者らは、IgG1重鎖定常ドメインを有する二機能性分子が、IgG4重鎖定常ドメインを有する同じ分子と比較して、IL-7バリアントの活性向上(pStat5シグナル、相乗効果、及びCD127結合)を示すことを観察した。加えて、抗体とIL-7との間にリンカー(GGGGS)3を使用すると、IL-7バリアントの活性(pStat5シグナル及びCD127結合)が最大化される。
【0060】
本発明の二機能性分子は、特に、以下の利点の1つ又は幾つかを有する。
【0061】
- 二機能性分子は、未感作の部分的に疲弊した及び完全に疲弊したT細胞サブセットの増殖を誘導するが、抗PD1/PDL1療法のように、部分的に疲弊したT細胞だけの増殖は誘導しない。より詳細には、二機能性分子は、T細胞活性化の相乗効果を有する。
- 二機能性分子は、腫瘍内に入り込んだPD-1+疲弊T細胞付近又はその上にあるIL-7をへと特異的に局在化させ、より高濃度のIL-7を必要とする細胞の標的化を可能にする。二機能性分子は、特に、PD-1+ T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積、及びPD-1+ T細胞上でのIL-7の再局在化を誘導する。
- 抗PD-1の遮断は、疲弊したT細胞を活性メモリーT細胞へと再プログラムすることができず、腫瘍の長期クリアランスが制限されるが、二機能性分子は、IL-7の存在を介してメモリーT細胞の形成、生存、及び増殖を促進する。したがって、二機能性分子は、持続的で拡大されたメモリーT細胞応答を介して継続的な抗腫瘍免疫を誘導する。
- 抗PD1/PD-L1療法有効性は、既存のT細胞浸潤物及びT細胞エフェクター機能、特にIFNγシグネチャに関連付けられるが、二機能性分子は、エフェクターT細胞の増殖及びIFNγを分泌するそれらの能力を相乗効果的に増加させる。
- 二機能性分子は、Treg集団を減少させ、TGFβ(抑制性サイトカイン)の分泌を阻害することにより、免疫抑制性微小環境を減少させることができる。より詳細には、二機能性分子は、Tregを刺激することなく、エフェクターT細胞を特異的に刺激する。
- 二機能性分子では、IL-7が重鎖及び/又は軽鎖のC末端部分に融合されていてもよく、CD127に対するIL7の高い親和性が、ネイキッド/天然IL-7と同様に保存されている。二機能性分子は、IL-7Rの活性化及び半減期の点でより強力であり得る。
- 二機能性分子は、高産生収率で二機能性分子として産生される。
- 二機能性分子は、Tregの数を減少させることにより、腫瘍微小環境内に入り込んだTreg細胞の免疫抑制活性を減少させる。より詳細には、二機能性分子は、Tregを刺激することなく、エフェクターT細胞を特異的に刺激する。
- 二機能性化合物は、インテグリン(つまり、アルファ4及び/又はベータ7及びLFAT)の発現を増加させて、抗PD1応答のみと比較して、組織及び/又は腫瘍へのT細胞浸潤を促進する。特に、二機能性化合物は、T細胞遊走及び腫瘍浸潤を促進する。
- 二機能性分子は、IL-7及びIL-7Rと抗PD-1及びPD-1との間の好適な親和性バランスを保ったまま、IL-7活性及び抗PD-1抗体のアンタゴニスト活性を維持しつつ、in vivo薬物動態を最大化するために、本発明者らにより同定された通りのIL-7バリアント又は変異体を含んでいてもよい。
【0062】
定義
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を本明細書の下記で定義する。追加の定義は、詳細な説明全体にわたって示されている。
【0063】
別様に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及び他の科学用語は、本発明が関する当業者が一般的に理解する意味を有することが意図されている。一部の場合では、明瞭性のため及び/又は容易な参照のため、一般的に理解されている意味を有する用語も本明細書で定義されている。本明細書にそのような定義が含まれている場合でも、当技術分野で一般に理解されている意味と必ずしも異なることを表すとは解釈されるべきではない。本明細書で記載又は参照されている技法及び手順は、一般によく理解されており、当業者により従来の方法論を使用して広く使用されている。
【0064】
本明細書で使用される場合、「インターロイキン-7」、「IL-7」、及び「IL-7」という用語は、哺乳動物内因性分泌性糖タンパク質、特に、野生型哺乳動物IL-7と実質的なアミノ酸配列同一性を有し、例えば、IL-7受容体結合親和性の標準的なバイオアッセイ又はアッセイにおいて実質的に等価な生物学的活性を有するIL-7ポリペプチド、それらの誘導体及びアナログを指す。例えば、IL-7は、i)IL-7ポリペプチドの天然又は天然に存在する対立遺伝子バリアント、ii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な断片、iii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドアナログ、又はiv)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なバリアントのアミノ酸配列を有する組換え又は非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を指す。IL-7は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。この分子の代替的名称は、「プレB細胞増殖因子」及び「リンホポエチン-1」である。好ましくは、「IL-7」という用語は、ヒトIL-7を指す。例えば、ヒトIL-7アミノ酸配列は、約152個アミノ酸(シグナルペプチドが存在しない場合)であり、Genbank受入番号はNP_000871.1であり、遺伝子は染色体8q12-13に位置する。ヒトIL-7は、UniProtKB-P13232に記載されている。
【0065】
本明細書で使用される場合、「野生型インターロイキン-7」、「wt-IL-7」、及び「wt-IL7」という用語は、哺乳動物内因性分泌性糖タンパク質、特に、野生型機能性哺乳動物IL-7と実質的なアミノ酸配列同一性を有し、例えば、IL-7受容体結合親和性の標準的なバイオアッセイ又はアッセイにおいて実質的に等価な生物学的活性を有するIL-7ポリペプチド、それらの誘導体及びアナログを指す。例えば、wt-IL-7は、i)天然又は天然に存在するIL-7ポリペプチド、ii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な断片、iii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドアナログ、又はiv)生物学的に活性なIL-7ポリペプチドのアミノ酸配列を有する組換え又は非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を指す。IL-7wtは、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。この分子の代替名称は、「プレB細胞増殖因子」及び「リンホポエチン-1」である。好ましくは、「wt-IL-7」という用語は、ヒトIL-7(wth-IL7)を指す。例えば、ヒトwt-IL-7アミノ酸配列は、約152個アミノ酸(シグナルペプチドが存在しない場合)であり、Genbank受入番号はNP_000871.1であり、遺伝子は染色体8q12-13に位置する。ヒトIL-7は、例えば、UniProtKB-P13232に記載されている。
【0066】
本明細書で使用される場合、「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「PD1」、「PD-1」、「PDCD1」、「PD-1抗原」、「ヒトPD-1」、「hPD-1」、及び「hPD-1」という用語は、同義的に使用され、CD279としても知られているプログラム死-1受容体を指し、ヒトPD-1のバリアント及びアイソフォーム、並びにPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。PD-1は、免疫応答及び末梢免疫寛容の閾値の重要な調節因子である。PD-1は、活性化T細胞、B細胞、単球、及び樹状細胞上に発現され、そのリガンドであるPD-L1及びPD-L2に結合する。ヒトPD-1は、PDCD1遺伝子によりコードされる。例として、ヒトPD-1のアミノ酸配列は、GenBank受入番号NP_005009に開示されている。PD1は、4つのスプライスバリアントがヒト末梢血単核細胞(PBMC)上に発現される。したがって、PD-1タンパク質としては、完全長PD-1、並びにPD-1Aex2、PD-1Aex3、PD-1Aex2,3、PD-1Aex2,3,4等の、PD-1の選択的スプライシングバリアントが挙げられる。別様の指定がない限り、こうした用語は、PBMCにより天然で発現されるか又はPD-1遺伝子をトランスフェクトした細胞により発現されるヒトPD-1の任意のバリアント及びアイソフォームを含む。
【0067】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のタイプを記述し、その最も広い意味で使用される。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、つまり抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであってもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。別様に具体的に示されていない限り、「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、並びに「抗体断片」又は「抗原結合性断片」(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等)、単鎖(scFv)、それらの変異体、抗体部分を含む分子、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体、及び抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアントを含む、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構成を含む。好ましくは、抗体という用語は、ヒト化抗体を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合性断片」は、抗体の一部、つまり、おそらくはその天然形式において、PD-1に対して抗原結合能を呈する、本発明の抗体の構造の部分に対応する分子を意味する。特に、そのような断片は、対応する4本鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、その抗原に対して同じ又は実質的に同じ抗原結合特異性を呈する。有利には、抗原結合性断片は、対応する4本鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかしながら、対応する4本鎖抗体と比べて低減された抗原結合親和性を有する抗原結合性断片も、本発明内に包含される。抗原結合能は、抗体と標的断片との間の親和性を測定することにより決定することができる。こうした抗原結合性断片も、抗体の「機能的断片」と称することができる。抗体の抗原結合性断片は、抗原、つまりPD1の細胞外ドメインの認識部位を包含し、それにより抗原認識特異性を規定するCDR(相補性決定領域)と称される超可変性ドメイン又はそれらの一部を含む断片である。
【0069】
「Fab」断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab'断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体ヒンジ領域に由来する1つ又は複数のシステインを含む少数の残基が付加されていることが、Fab断片とは異なる。F(ab')断片は、F(ab')2ペプシン消化産物のヒンジシステインのジスルフィド結合を切断することにより産生される。抗体断片の追加の化学的カップリングは、当業者に公知である。Fab及びF(ab')2断片は、インタクト抗体のFc断片を欠如し、動物の循環中からより迅速に除去され、インタクト抗体よりも少ない非特異的組織結合を有する場合がある(例えば、Wahlら、1983年、J. Nucl. Med. 24巻:316頁を参照)。
【0070】
「Fv」断片は、完全な標的認識及び結合部位を含有する、抗体の最小断片である。この領域は、緊密な非共有結合で付随されている、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体(VH-VL二量体)からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面に標的結合部位を画成するのは、この構成においてである。多くの場合、6つのCDRが、抗体に標的結合特異性を付与する。しかしながら、一部の場合では、単一の可変ドメイン(又は標的に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも親和性は低いものの、標的を認識して結合する能力を有することができる。
【0071】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体結合性断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、こうしたドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それにより、scFvは、標的結合のための所望の構造を形成することが可能になる。
【0072】
「単一ドメイン抗体」は、PD-1に対して十分な親和性を呈する単一のVHドメイン又はVLドメインで構成されている。具体的な実施形態では、単一ドメイン抗体は、ラクダ化抗体である(例えば、Riechmann、1999年、Journal of Immunological Methods 231巻:25~38頁を参照)。
【0073】
構造の観点では、抗体は、ジスルフィド結合により相互接続された重(H)鎖及び軽(L)鎖を有していてもよい。軽鎖には、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)の2つのタイプがある。各重鎖及び軽鎖は、定常領域及び可変領域(又は「ドメイン」)を含有する。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる、3つの超可変領域により隔てられている「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域及びCDRの範囲は画定されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, and U.S. Department of Health and Human Services, 1991年を参照。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。好ましくは、CDRはカバット法により画定される。フレームワーク領域は、CDRが鎖間非共有結合相互作用により正しい配向性に位置決めされることを提供するスキャフォールドを形成するように作用する。CDRは、主に、抗原のエピトープに対する結合に関与する。各鎖のCDRは、典型的には、「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」と呼ばれ、N末端から順番に番号が付けられている。本発明による抗体のVLドメイン及びVHドメインは、4つのフレームワーク領域又は「FR」を含んでいてもよく、これらは、当技術分野及び本明細書では、それぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「FR2」、「FR3」、及び「FR4」と呼ばれる。こうしたフレームワーク領域及び相補性決定領域は、好ましくは、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(アミノ末端からカルボキシ末端に)で作動可能に連結されている。「抗体フレームワーク」という用語は、本明細書で使用される場合、VL及び/又はVHのいずれかの可変ドメインの一部を指し、その可変ドメインの抗原結合性ループ(CDR)のスキャフォールドとしての役目を果たす。
【0074】
「抗体重鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちのより大きい方を指す。抗体重鎖のCDRは、典型的には、「HCDR1」、「HCDR2」、及び「HCDR3」と呼ばれる。抗体重鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「HFR1」、「HFR2」、「HFR3」、及び「HFR4」と呼ばれる。
【0075】
「抗体軽鎖」は、本明細書で使用される場合、抗体立体構造に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ軽鎖及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。抗体軽鎖のCDRは、典型的には、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」と呼ばれる。抗体軽鎖のフレームワーク領域は、典型的には、「LFR1」、「LFR2」、「LFR3」、及び「LFR4」と呼ばれる。
【0076】
標的分子に対する抗体の結合に関して、「結合する」又は「結合」という用語は、抗原を認識し、それと接触するペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、分子、及び抗体(抗体断片を含む)を指す。好ましくは、この用語は、抗原-抗体型の相互作用を指す。特定の抗原(例えば、PD-1)又は特定の抗原(例えば、PD-1)上にあるエピトープに関する、「特異的結合」、「特異的に結合する」、「に対して特異的な」、「に選択的に結合する」、及び「に対して選択的な」という用語は、抗体が、特異的な抗原を認識してそれと結合するが、試料内の他の分子を実質的に認識せず結合もしないことを意味する。例えば、PD-1又はPD-1エピトープと特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他のPD-1エピトープ又は非PD-1エピトープとの結合よりも、このPD-1エピトープに、例えば、より高い親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより長期間にわたって、結合する抗体である。好ましくは、「特異的結合」という用語は、10-7Mと等しいか又はそれよりも低い結合親和性を有する、抗体と抗原との接触を意味する。ある特定の態様では、抗体は、10-8M、10-9M、又は10-10Mと等しいか又はそれよりも低い親和性で結合する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「PD-1抗体」、「抗PD-1抗体」、「PD-1 Ab」、「PD-1特異的抗体」、「抗PD-1 Ab」は、同義的に使用され、PD-1、特にヒトPD-1と特異的に結合する、本明細書に記載の通りの抗体を指す。一部の実施形態では、抗体は、PD-1の細胞外ドメインに結合する。特に、抗PD-1抗体は、PD-1抗原に結合することが可能な抗体であり、PD-1媒介性シグナル伝達経路を阻害し、それによりT細胞活性化等の免疫応答を増強する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「二機能性分子」、「二機能性化合物」、「二機能性タンパク質」、「Bicki」、「Bicki抗体」、「二機能性抗体」、及び「二機能性チェックポイント阻害剤分子」という用語は、同じ意味を有し、同義的に使用することができる。こうした用語は、その抗原に特異的な少なくとも1つの領域(例えば、抗体の可変領域に由来する)、及びポリペプチドである少なくとも第2の領域を有することにより1つの抗原を認識する抗体を指す。より具体的には、二機能性分子は、抗体又はその部分、好ましくはその抗原結合性断片と、別のポリペプチド又はそのポリペプチド断片との融合タンパク質である。
【0079】
「キメラ抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、重鎖及び/又は軽鎖の部分が1つの種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる種に由来する抗体又は抗原結合性断片を意味する。例示的な例では、キメラ抗体は、ヒトに由来する定常領域、及びマウス等の非ヒト種に由来する可変領域を含んでいてもよい。
【0080】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体(例えば、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体)を指すことが意図されている。また、「ヒト化抗体」、例えば非ヒト抗体は、ヒト化を受けた抗体を指す。ヒト化抗体は、一般に、1つ又は複数のCDRに由来する残基が、元の抗体の所望の特異性、親和性、及び容量を維持しつつ、非ヒト抗体(ドナー抗体)の少なくとも1つのCDRに由来する残基に置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、所望の特異性、親和性、又は生物学的効果を有する、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ニワトリ抗体、又は非ヒト霊長類抗体等の、任意の好適な非ヒト抗体であってもよい。一部の場合では、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基が、ドナー抗体に由来するフレームワーク領域残基に置き換えられている。或いは、ドナー抗体の選択されたフレームワーク領域残基が、ヒト抗体又はヒト化抗体に由来するフレームワーク領域残基に置き換えられている。ヒトフレームワーク配列内には、追加のフレームワーク領域修飾がなされていてもよい。したがって、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体のいずれにも見出されない残基を含む場合もある。そのようなアミノ酸修飾をなして、抗体機能を更に洗練し、及び/又はヒト化プロセスを増加させることができる。「アミノ酸変化」又は「アミノ酸修飾」とは、本明細書では、ポリペプチドのアミノ酸配列の変化を意味する。「アミノ酸修飾」としては、ポリペプチド配列における置換、挿入、及び/又は欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」又は「置換」とは、本明細書では、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を別のアミノ酸と置き換えることを意味する。「アミノ酸挿入」又は「挿入」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にアミノ酸を付加すること意味する。「アミノ酸欠失」又は「欠失」とは、親ポリペプチド配列の特定の位置にあるアミノ酸を除去することを意味する。アミノ酸置換は、保存的であってもよい。保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、バルク、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。本明細書で使用される場合、「アミノ酸位置」又は「アミノ酸位置番号」は、同義的に使用され、アミノ酸配列中の特定のアミノ酸の位置を指し、一般にアミノ酸の一文字コードで指定される。アミノ酸配列の最初のアミノ酸が(つまり、N末端から開始して)、1位であるとみなされるべきである。
【0081】
保存的置換は、所与のアミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷、嵩高さ、及び/又は疎水性)を有する側鎖(「R基」)を有する別の残基に置き換えることである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないだろう。保存的置換及び対応する規則は、技術水準で十分に記載されている。例えば、保存的置換は、以下の表に反映されているアミノ酸の群内の置換により規定することができる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、その天然環境の成分から分離及び/又は回収された抗体である。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内にあるin situでの抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、例えば、還元若しくは非還元条件下での電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定して、均質になるまで、及び/又は90%、95%、若しくは99%を超える純度まで精製される。
【0086】
「から派生する(derive from)」及び「に由来する(derived from)」という用語は、本明細書で使用される場合、親化合物又は親タンパク質の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書に開示のものと十分に類似しており、当業者であれば、その類似性に基づき、特許請求されている化合物と同じ又は同様の特性、活性、及び有用性を呈することが予想されることになる化合物を指す。例えば、マウス抗体に由来するヒト化抗体は、マウス抗体と同様の特性を共有し、例えば、同じエピトープを認識し、抗体のヒト化に関与する及び/又は増加させる修飾残基を有する類似のVH及びVLを共有する抗体又は抗体断片を指す。
【0087】
「治療」という用語は、疾患又は疾患の症状の療法、防止、予防、及び緩徐等の、患者の健康状態を改善することを目的としたあらゆる行為を指す。この用語は、疾患の治癒的治療及び/又は予防的治療の両方を指す。治癒的治療は、疾患若しくは疾患の症状又はそれが直接若しくは間接に引き起こす苦難を軽減、好転、及び/又は消失、低減、及び/又は安定化する治癒又は治療をもたらす治療であると定義される。予防的治療は、疾患の防止をもたらす治療、並びに疾患の進行及び/若しくは発症又はその発生リスクを低減及び/又は遅延させる治療の両方を含む。ある特定の実施形態では、そのような用語は、疾患、障害、感染症、又はそれと関連する症状の好転又は根絶を指す。他の実施形態では、この用語は、がんの広がり又は悪化を最小限に抑えることを指す。本発明による治療は、必ずしも100%又は完全な治療を示唆するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は療法効果を有すると認識する様々な度合いの治療が存在する。好ましくは、「治療」という用語は、1つ又は複数の活性物質を含む組成物を、例えばPD-1により媒介されるシグナル伝達経路と関連する障害/疾患を有する対象に適用又は投与することを指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「障害」又は「疾患」という用語は、遺伝的若しくは発生上の誤謬、感染、毒、栄養不足若しくは偏り、毒性、又は好ましくない環境要因に起因して、身体の臓器、一部分、構造、又は系が正しく機能しないことを指す。好ましくは、こうした用語は、健康障害又は疾患、例えば、正常な身体的又は精神的機能を妨害する疾病を指す。より好ましくは、障害という用語は、がん等の、動物及び/又はヒトに影響を及ぼす免疫疾患及び/又は炎症性疾患を指す。
【0089】
「免疫疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、対象自体の細胞、組織、及び/又は臓器に対する対象の免疫学的反応により引き起こされる細胞、組織、及び/又は臓器傷害により特徴付けられる対象の状態を指す。「炎症性疾患」という用語は、炎症、例えば慢性炎症により特徴付けられる対象の状態を指す。自己免疫障害は、炎症と関連することも又は関連しないこともある。更に、炎症は、自己免疫障害により引き起こすことも又は引き起こされないこともある。
【0090】
「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、異常細胞の急速で未制御の成長により特徴付けられる疾患であると定義される。がん細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部分へと広がる場合がある。
【0091】
本明細書で使用される場合、「PD-1と関連する又は関係する疾患」、「PD-1陽性がん」、又は「PD-1陽性感染性疾患」という用語は、PD-1発現に起因するか、又はPD-1発現の症状/特徴、つまりPD-1の発現若しくは活性の増加若しくは減少により引き起こされるか、増悪するか、若しくは別様に結び付けられる任意の状態を有するがん若しくは感染症(例えば、ウイルス及び/又は細菌により引き起こされる)を指すことが意図されている。
【0092】
本明細書で使用される場合、「対象」、「宿主」、「個人」、又は「患者」という用語は、成人及び子供を含むヒトを指す。
【0093】
「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、生理学的に好適な担体及び賦形剤等の任意選択の他の化学成分と共に本発明による二機能性分子を含むもの等、活性物質の1つ又は複数の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への活性物質の投与を容易にすることである。本発明の組成物は、任意の従来の投与経路又は使用に好適な形態であってもよい。一実施形態では、「組成物」は、典型的には、活性物質、例えば化合物又は組成物と、薬学的に許容される担体を含む、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、保存剤、又はアジュバント等の不活性(例えば、検出可能な物質又は標識)又は活性の天然に存在する又は天然に存在しない担体との組合せが意図される。「許容されるビヒクル」又は「許容される担体」は、本明細書で言及される場合、医薬組成物の製剤化に有用であることが当業者に公知である任意の公知の化合物又は化合物の組合せである。
【0094】
「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は1つ若しくは複数の他の活性物質との組合せのいずれかで、対象に治療効果を付与するのに必要な活性物質の量、例えば、標的の疾患若しくは障害を治療するために、又は所望の効果を生み出すために必要とされる活性物質の量を指す。「有効量」は、物質、疾患及びその重症度、年齢、身体状態、大きさ、性別、及び体重を含む、治療しようとする対象の特徴、治療の期間、併用療法の性質(該当する場合)、特定の投与経路、並びに医療従事者の知識及び専門性の範囲内の類似要因に応じて様々であろう。こうした要因は、当業者に周知であり、単なる日常的実験作業で対処することができる。一般に、個々の成分又はそれらの組合せの最大用量、つまり、健全な医学的判断による最も高い安全な用量を使用することが好ましい。
【0095】
本明細書で使用される場合、「医薬」という用語は、障害又は疾患に対する治癒的又は防止的特性を有する任意の物質又は組成物を指す。
【0096】
「組み合わせて」という用語は、本明細書で使用される場合、1つよりも多くの療法(例えば、予防剤及び/又は療法剤)の使用を指す。「組み合わせて」という用語の使用は、療法(例えば、予防剤及び/又は療法剤)が疾患又は障害を有する対象に投与される順序を制限しない。
【0097】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「核酸配列」という用語は、等価であり、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、例えば、RNA又はDNA又はそれらのアナログを指す。本発明の核酸(例えば、核酸の成分又は部分)は、天然に存在してもよく、修飾されていてもよく、又は遺伝子操作されていてもよく、単離されていてもよく、及び/又は非天然であってもよい。遺伝子操作された核酸としては、組換え核酸及び合成核酸が挙げられる。
【0098】
「抗PD1抗体をコードする単離された核酸」は、単一のベクター又は別々のベクターにあるそのような核酸分子、及び宿主細胞の1つ又は複数の場所に存在するそのような核酸分子を含む、抗体の重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)をコードする1つ又は複数の核酸分子を指す。本明細書で使用される場合、「核酸構築物」、「プラスミド」、及び「ベクター」という用語は、等価であり、DNA又はRNA等のパッセンジャー核酸配列を宿主細胞内へと移行する役目を果たす核酸分子を指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体構築物をコードするベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドのレシピエント並びに/又は抗体構築物自体のレシピエントであり得るか又はレシピエントである任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図されている。それぞれの物質の細胞への導入は、形質転換及びトランスフェクション等により実施することができる。また、「宿主細胞」という用語は、単一細胞の子孫又は潜在的な子孫を含むことが意図されている。宿主細胞としては、例えば、細菌細胞、微生物細胞、植物細胞、及び動物細胞が挙げられる。
【0100】
「免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球細胞(白血球)、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)、及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)等の、自然免疫及び適応免疫に関与する細胞を指す。特に、免疫細胞は、B細胞、T細胞、特にCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、APC細胞、樹状細胞、並びに単球を含む非網羅的リストにおいて選択することができる。「T細胞」としては、本明細書で使用される場合、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、Tヘルパー1型T細胞、Tヘルパー2型T細胞、Tヘルパー17型T細胞、及び阻害性T細胞が挙げられる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「Tエフェクター細胞」、「Teff」、又は「エフェクター細胞」という用語は、共刺激等の刺激に活性に応答する幾つかのT細胞型を含む免疫細胞の群を記述する。この用語は、特に、抗原を排除するように機能するT細胞を含む(例えば、他の細胞の活性化をモジュレートするサイトカインの産生により、又は細胞傷害活性により)。この用語は、特に、CD4+細胞、CD8+細胞、Treg細胞、細胞傷害性T細胞、及びヘルパーT細胞(Th1及びTh2)を含む。
【0102】
本明細書で使用される場合、「調節性T細胞」、「Treg細胞」、又は「Treg」という用語は、免疫系をモジュレートし、自己抗原に対する耐容性を維持し、自己免疫疾患を防止するT細胞の部分集団を指す。Tregは、免疫抑制性であり、一般にエフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制又は下方制御する。Tregは、バイオマーカーCD4、FOXP3、及びCD25を発現し、ナイーブCD4細胞と同じ系列に由来すると考えられている。
【0103】
「疲弊したT細胞」という用語は、機能不全(つまり「疲弊」)の状態にあるT細胞の集団を指す。T細胞疲弊は、機能の進行性喪失、転写プロファイルの変化、及び阻害性受容体の持続的発現により特徴付けられる。疲弊したT細胞は、サイトカイン産生能力、高い増殖能力、及び細胞傷害能力を喪失し、それにより最終的には自身の除去がもたらされる。疲弊したT細胞は、典型的には、CD62L及びCD127の発現がより低いこと併せて、より高いレベルのCD43、CD69、及び阻害性受容体を提示する。
【0104】
「免疫応答」という用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合は正常なヒト細胞若しくは組織に対する選択的損傷、破壊、又はヒト身体からの排除をもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記の細胞又は肝臓により産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0105】
「アンタゴニスト」という用語は、本明細書で使用される場合、別の物質の活性又は機能性を阻止又は低減する物質を指す。特に、この用語は、参照物質(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)としての細胞受容体(例えば、PD-1)に結合し、それがその通常の生物学的効果(例えば、免疫抑制性微小環境の生成)の全て又は一部を生み出すことを妨げる抗体を指す。本発明による抗体のアンタゴニスト活性は、競合ELISAにより評価することができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、記載されている物質(例えば、抗体、ポリペプチド、核酸等)が、自然界ではそれらと共に存在する他の物質から実質的に分離されているか、又はそれらと比べて濃縮されていることを示す。特に、「単離された」抗体は、その天然環境の成分から同定、分離、及び/又は回収されているものである。例えば、単離された抗体は、(1)ローリー法により決定して抗体の75質量%よりも高くまで、又は(2)還元若しくは非還元条件下のSDS-PAGEで均質になるまで精製されている。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことになるため、組換え細胞内のin situでの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されることになる。
【0107】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用される場合、他方の有無に関わらず、2つの指定の特徴又は成分の各々の具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々があたかも個々に示されているような、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の具体的な開示として解釈されるべきである。
【0108】
「a」又は「an」という用語は、要素の1つ又は要素の1つよりも多くのいずれかが記載されていることが状況から明らかでない限り、それが修飾する要素の1つ又は複数を指すことができる(例えば、「試薬」は、1つ又は複数の試薬を意味することができる)。
【0109】
「約」という用語は、ありとあらゆる値(数値範囲の下限及び上限を含む)に関連して本明細書で使用される場合、最大で+/-10%(例えば、+/-0.5%、+/-1%、+/-1.5%、+/-2%、+/-2.5%、+/-3%、+/-3.5%、+/-4%、+/-4.5%、+/-5%、+/-5.5%、+/-6%、+/-6.5%、+/-7%、+/-7.5%、+/-8%、+/-8.5%、+/-9%、+/-9.5%)の許容可能な逸脱範囲を有するあらゆる値を意味する。値の文字列の先頭における「約」という用語の使用は、値の各々を修飾する(つまり、「約1、2、及び3」は、約1、約2、及び約3を指す)。更に、値のリストが本明細書に記載されている場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%、又は86%)、リストは、その全ての中間値及び小数値(例えば、54%、85.4%)を含む。
【0110】
抗PD-1抗体
本発明による二機能性分子は、抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む第1の実体を含む。
【0111】
本明細書には、特に、ヒトPD-1に結合する抗体が提供されている。一部の態様では、抗体は、ヒトPD-1と、好ましくは、ヒトPD-1の細胞外ドメインと特異的に結合する。一部の態様では、抗体は、完全長ヒトPD-1、PD-1Aex2、PD-1Aex3、PD-1Aex2,3、及びPD-1Aex2,3,4の1つ又は複数と選択的に結合する。
【0112】
一部の態様では、抗PD1抗体は、単離された抗体、特に非天然の単離された抗体である。そのような単離された抗PD1抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製することができる。一部の実施形態では、単離された抗PD1抗体は、少なくとも80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、又は99質量%まで精製される。一部の実施形態では、単離された抗PD1単離抗体は、少なくとも85質量%、90質量%、95質量%、98質量%、99質量%~100質量%の抗体を含む溶液であって、残りの質量は溶媒に溶解した他の溶質の質量を含む溶液として提供される。
【0113】
好ましくは、そのような抗体は、PD-1とそのリガンドの少なくとも1つ(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)との相互作用を阻止又は阻害する能力を有する。「結合を阻止する」又は「相互作用を阻止する」又は「相互作用を阻害する」能力は、本明細書で使用される場合、抗体又は抗原結合性断片が、2つの分子(例えば、PD-1及びそのリガンドPD-L1及び/又はPD-L2)間の結合相互作用を、任意の検出可能な程度に防止する能力を指す。
【0114】
好ましくは、抗PD1抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトPD-L1及び/又はPD-L2のヒトPD-1に対する結合、より好ましくはヒトPD-L1及びPD-L2のヒトPD-1に対する結合のアンタゴニストである。
【0115】
ある特定の実施形態では、抗hPD1抗体又は抗原結合性断片は、PD-1とそのリガンドの少なくとも1つ(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1及びPD-L2)との結合相互作用を少なくとも50%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は、60%よりも大きくてもよく、70%よりも大きくてもよく、80%よりも大きくてもよく、又は90%よりも大きくてもよい。
【0116】
本発明による抗hPD1抗体は、免疫グロブリン、IgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)等の任意のクラスの免疫グロブリン、ヒトPD-1を標的とする非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、又は抗体の他の抗原結合性部分配列等)を含んでいてもよい。好ましくは、本発明による抗hPD-1抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4に、好ましくはIgG4又はIgG1に由来する。
【0117】
一実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む重鎖、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含む可変ドメインを含む軽鎖、並びに重鎖定常ドメインの断片を含む。したがって、重鎖定常ドメインの断片により、抗原結合性断片は、完全な重鎖定常ドメインの少なくとも部分を含むと理解されるべきである。例として、重鎖定常ドメインは、重鎖の少なくともCH1ドメイン、又は重鎖の少なくともCH1及びCH2ドメイン、又は重鎖の少なくともCH1、CH2、及びCH3ドメインを含んでいてもよく、又はからなっていてもよい。重鎖定常ドメインの断片は、重鎖のFcドメインの少なくとも部分を含むものであると定義することもできる。したがって、抗体の抗原結合性断片は、完全な抗体のFab部分、完全な抗体のF(ab')2部分、完全な抗体のFab'部分を包含する。また、重鎖定常ドメインは、例えば、本明細書に例示されている完全な重鎖定常ドメインを含んでいてもよく、又はからなっていてもよく、本明細書には、幾つかの完全な重鎖定常ドメインが記載されている。本発明の特定の実施形態では、及び抗体の抗原結合性断片が、完全な重鎖定常ドメインの部分を含むか若しくはからなる重鎖定常ドメインの断片を含む場合、重鎖定常ドメイン断片は、少なくとも10個のアミノ酸残基からなっていてもよく、又は10~300kのアミノ酸残基、特に210個のアミノ酸残基からなっていてもよい。
【0118】
好ましくは、ヒトPD-1に対する抗体は、モノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、つまり、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。好ましくは、そのようなモノクローナル抗体(mAb)は、マウス、げっ歯動物、ウサギ、ヤギ、霊長類、非ヒト霊長類、又はヒト等の哺乳動物に由来する。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技法は、例えば、Stitesら(編)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(第四版)Lange Medical Publications社、ロスアラモス、米国カリフォルニア州、及びその中で引用されている参考文献;Harlow及びLane(1988年)ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL CSH Press社;Goding(1986年)MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE(第二版)Academic Press社、ニューヨーク市、米国ニューヨーク州に見出すことができる。
【0119】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗hPD1抗体は、キメラ抗体である。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合性断片が含まれる。
【0120】
ある特定の実施形態では、抗hPD1抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、典型的には、CDR(又はそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はそれらの部分)がヒト抗体配列又はヒト化抗体配列に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含む。或いは、一部のFR残基は、抗体の特異性、親和性、及び/又はヒト化が回復又は向上するように置換されていてもよい。また、ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域(Fc)又はヒト化定常領域(Fc)の少なくとも部分を含むだろう。抗体ヒト化の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、以下の文献を参照されたい:Winter及びMilstein、Nature、1991年、349巻:293~299頁;Riechmannら、Nature、332巻、323頁(1988年);Verhoeyenら、Science、239巻、1534頁(1988年);Raderら、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A.、1998年、95巻:8910~8915頁;Steinbergerら、J. Biol. Chem.、2000年、275巻:36073~36078頁;Queenら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、1989年、86巻:10029~10033頁;Almagro, J.C.及びFransson, J.、Front. Biosci. 13巻(2008年)1619~1633頁;Kashmiri, S.V.ら、Methods 36巻(2005年)25~34頁(SDR(a-CDR)移植が記載されている);Padlan, E.A.、Mol. Immunol. 28巻(1991年)489~498頁(「リサーフェシング」が記載されている);Dall'Acqua, W.F.ら、Methods 36巻(2005年)43~60頁(「FRシャッフリング」が記載されている);並びにOsbourn, J.ら、Methods 36巻(2005年)61~68頁、及びKlimka, A.ら、Br. J. Cancer 83巻(2000年)252~260頁(FRシャッフリングに対する「ガイドされた選択(guided selection)」手法が記載されている)、並びに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号;及び第6,180,370号。好ましくは、ヒトPD-1に対するヒト化抗体は、モノクローナル抗体である。
【0121】
特に、ヒト化抗体は、少なくとも80%又は少なくとも85%、より好ましくは少なくとも88%、更により好ましくは少なくとも90%のT20ヒト性スコア(T20 humanness score)、最も好ましくは、85%~95%、好ましくは88%~92%に含まれるT20ヒト性スコアを有するものである。
【0122】
「ヒト性」は、一般に、Gao S H、Huang K、Tu H、Adler A S.、BMC Biotechnology. 2013年:13巻:55頁に記載のような、モノクローナル抗体の可変領域のヒト性を定量化するためのT20スコアアナライザー(T20 score analyzer)を使用して測定される。T20ヒト性スコアは、Gaoら(BMC Biotechnol.、2013年、13巻、55頁)により最初に開示された、抗体ヒト化の分野で広く使用されているパラメーターである。T20ヒト性スコアは、通常、ヒト化抗体を規定するために特許出願で使用されている(例えば、国際公開第15161311号、国際公開第17127664号、国際公開第18136626号、国際公開第18190719号、国際公開第19060750号、又は国際公開第19170677号)。
【0123】
T20カットオフヒトデータベース(T20 Cutoff Human Database):http://abAnalyzer.lakepharma.comを使用して抗体配列のT20スコアを計算するためのWebベースのツールが提供されている。T20スコアの計算では、まず、入力であるVH、VK、又はVL可変領域タンパク質配列にカバット付番を割り当て、CDR残基を同定する。完全長配列又はフレームワークのみの配列(CDR残基が除去されている)を、blastpタンパク質-タンパク質BLASTアルゴリズムを使用して、それぞれの抗体データベース内の全ての配列と比較する。各ペアワイズ比較間の配列同一性を取り出し、データベース内の全ての配列を分析した後、配列を、入力配列に対する配列同一性に基づいて高いものから低いものへと並び替える。上位20個の一致配列の同一性パーセントを平均して、T20スコアを得る。
【0124】
「全ヒトデータベース(All Human Databases)」の各鎖タイプ(VH、VK、VL)及び配列長(完全長又はフレームワークのみ)について、T20スコアアナライザーを使用して、各抗体配列をその対応するデータベースでスコア化した。入力配列自体を除外した後、上位20個の一致配列のT20スコア得た(配列1はそれ自体が常に入力抗体であるため、配列2~21の同一性パーセントを平均した)。各グループのT20スコアを、高いものから低いものへと並べ替えた。スコアの減少は、配列のほとんどでほぼ線形的だったが、抗体の下位約15%のT20スコアは急激に減少し始めた。したがって、配列の下位15パーセントを取り除き、残りの配列が、T20カットオフヒトデータベースを形成した。T20スコアカットオフは、新しいデータベース中の配列の最も低いT20スコアを示す。
【0125】
したがって、本発明による二機能性分子に含まれるヒト化抗PD1抗体は、少なくとも80%又は少なくとも85%、より好ましくは少なくとも88%、更により好ましくは少なくとも90%のT20ヒト性スコア、最も好ましくは85%~95%、好ましくは88%~92%に含まれるT20ヒト性スコアを有する。
【0126】
一実施形態では、抗PD1抗体は、以下のものからなる群から選択することができる:ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)、ニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)、ピジリズマブ(CT-011)、セミプリマブ(Libtayo)、カムレリズマブ、AUNP12、AMP-224、AGEN-2034、BGB-A317(チスレイズマブ)、PDR001(スパルタリズマブ)、MK-3477、SCH-900475、PF-06801591、JNJ-63723283、ゲノリムズマブ(CBT-501)、LZM-009、BCD-100、SHR-1201、BAT-1306、AK-103(HX-008)、MEDI- 0680(AMP-514としても知られている) MEDI0608、JS001(Si-Yang Liuら、J. Hematol. Oncol.10巻:136頁(2017年)を参照)、BI-754091、CBT-501、INCSHR1210(SHR-1210としても知られている)、TSR-042(ANB011としても知られている)、GLS-010(WBP3055としても知られている)、AM-0001(Armo)、STI-1110(国際公開第2014/194302号を参照)、AGEN2034(国際公開第2017/040790号を参照)、MGA012(国際公開第2017/19846号を参照)、又はIBI308(国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号、及び国際公開第2017/133540号を参照)、国際公開第2006/121168号に記載のモノクローナル抗体5C4、17D8、2D3、4H1、4A11、7D3、及び5F4。PD-1を標的とする二機能性又は二重特異性分子は、RG7769(Roche社)、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)、FS118(F-star社)、SL-279252(Takeda社)、及びXmAb23104(Xencor社)等も知られている。
【0127】
特定の実施形態では、抗PD1抗体は、ペムブロリズマブ(キイトルーダランブロリズマブ、MK-3475としても知られている)又はニボルマブ(オプジーボ、MDX-1106、BMS-936558、ONO-4538)であってもよい。
【0128】
ヒト化抗hPD1抗体の特定の例は、本明細書の下記にて、そのCDR、フレームワーク領域、並びにFc領域及びヒンジ領域が記載されている。
【0129】
CDR
「相補性決定領域」又は「CDR」は、当技術分野では、抗原特異性及び結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の非隣接配列を指すものとして知られている。所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、以下の文献に記載のものを含む、幾つかの周知の方式のいずれかを使用して容易に決定することができる:Kabatら、(Sequences of Proteins of Immunological Interest 第五版(1991年)「カバット」付番方式);Al-Lazikaniら、1997年、J. Mol. Biol、273巻:927~948頁(「Chothia」付番方式); MacCallumら、1996年、J. Mol. Biol. 262巻:732~745頁(「Contact」付番方式);Lefrancら、Dev. Comp. Immunol.、2003年、27巻:55~77頁(「IMGT」付番方式);並びにHonegge及びPluckthun、J. Mol. Biol、2001年、309巻:657~70頁(「AHo」付番方式)。別様の指定がない限り、本明細書にて特定のCDRを同定するために使用される付番方式は、カバット付番方式である。
【0130】
一実施形態では、二機能性分子は、ヒト化抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む。ヒト化抗体のCDR領域は、マウス抗体に由来してもよく、i)非常に高レベルのヒト化(85%を超える)及び安定性を有する安全なヒト化抗体を提供するように、並びにii)ヒトPD-1に対する結合親和性(KD)が10-7M未満、好ましくは10-8M未満となるように、アンタゴニスト活性(つまり、ヒトPD-L1のヒトPD-1に対する結合の阻害)を保存しつつ、抗体特性、より詳細には哺乳動物細胞で産生する場合のより高い製造性、並びにCOS細胞及びHCO細胞等の哺乳動物細胞でのより高い産生収率を増加させるように、最適化されていてもよい。
【0131】
非常に特定の実施形態では、二機能性分子は、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片、好ましくは
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含むヒト化抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号3の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号12の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0132】
一態様では、二機能性分子は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含むヒト化抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択されるかのいずれかであり、任意選択で、配列番号3の2、3、7、及び8以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号12の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0133】
別の実施形態では、二機能性分子は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含むヒト化抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号4、5、6、7、8、9、10、又は11のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号4、5、6、7、8、9、10、又は11の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号13又は配列番号14の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。
【0134】
別の態様では、二機能性分子は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含むヒト化抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含み、
(a)軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号13のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号13の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(b)軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(c)軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(d)重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(e)重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、並びに
(f)重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号4の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号5のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号5の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号6の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号7の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号8のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号8の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号9のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号9の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号10のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号10の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号11のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号11の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する。
【0135】
別の態様では、二機能性分子は、
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含むヒト化抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含み、
(a)軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号14の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(b)軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(c)軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1、4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(d)重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
(e)重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、並びに
(f)重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号4のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号4の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号5のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号5の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号6のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号6の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号7の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号8のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号8の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号9のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号9の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号10のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号10の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有するか、又は
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号11のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号11の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する。
【0136】
特定の態様では、修飾は、置換、特に保存的置換である。
【0137】
一実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号3のCDR3を含み、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択される重鎖、並びに(ii)配列中XはG又はTである配列番号12のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含む。
【0138】
一実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号3のCDR3を含み、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、及びEからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択される重鎖、並びに(ii)配列中XはG又はTである配列番号12のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含む。
【0139】
一実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号3のCDR3を含み、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、及びEからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択される重鎖、並びに(ii)配列中XはG又はTである配列番号12のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含む。
【0140】
一実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号3のCDR3を含み、配列中、X1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択される重鎖、並びに(ii)配列中XはG又はTである配列番号12のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含む。
【0141】
別の実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4、5、6、7、8、9、10、又は11のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13又は配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖を含むか又はから本質的になる。
【0142】
別の実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号5のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号6のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号7のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号8のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号9のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号10のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号11のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号13のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖
を含むか又はから本質的になる。
【0143】
別の実施形態では、抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号4のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号5のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号6のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号7のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号8のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号9のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号10のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖;又は
(i)配列番号1のCDR1、配列番号2のCDR2、及び配列番号11のCDR3を含む重鎖、並びに(ii)配列番号14のCDR1、配列番号15のCDR2、及び配列番号16のCDR3を含む軽鎖
を含むか又はから本質的になる。
【0144】
フレームワーク
一実施形態では、本発明による抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、フレームワーク領域、特に重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4、並びに軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含む。
【0145】
好ましくは、本発明による抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、ヒトフレームワーク領域又はヒト化フレームワーク領域を含む。「ヒトアクセプターフレームワーク」は、本明細書の目的では、下記で規定されている通りの、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するヒトアクセプターフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列変化を含有してもよい。一部の実施形態では、アミノ酸変化の数は、10個若しくはそれよりも少ないか、9個若しくはそれよりも少ないか、8個若しくはそれよりも少ないか、7個若しくはそれよりも少ないか、6個若しくはそれよりも少ないか、5個若しくはそれよりも少ないか、4個若しくはそれよりも少ないか、3個若しくはそれよりも少ないか、又は2個若しくはそれよりも少ない。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0146】
特に、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号41、42、43、及び44のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域フレームワーク領域(HFR)HFR1、HFR2、HFR3、及びHFR4を含み、任意選択で、HFR3の、つまり配列番号43の27、29、及び32位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、配列番号41のHFR1、配列番号42のHFR2、配列番号43のHFR3、及び配列番号44のHFR4を含む。
【0147】
或いは又はそれに加えて、抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、配列番号45、46、47、及び48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域フレームワーク領域(LFR)LFR1、LFR2、LFR3、及びLFR4を含み、任意選択で、置換、追加、削除、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する。好ましくは、ヒト化抗PD1抗体又は抗原結合性断片は、配列番号45のLFR1、配列番号46のLFR2、配列番号47のLFR3、及び配列番号48のLFR4を含む。
【0148】
VH-VL
本発明による二機能性分子に含まれる抗hPD1抗体のVLドメイン及びVHドメインは、好ましくは、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(アミノ末端からカルボキシ末端に)で作動可能に連結している、3つの相補性決定領域により隔てられている4つのフレームワーク領域を含んでいてもよい。
【0149】
第1の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0150】
第2の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、Eからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択されるかのいずれかであり、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0151】
第3の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、Eからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0152】
別の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0153】
別の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、それぞれ、配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH);
(b)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号27又は配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0154】
別の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号18の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号19の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号20の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号21の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号22の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号23の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号24の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号25の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号27の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号18の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号19の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号20の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号21の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号22のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号22の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号23のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号23の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号24の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL);又は
(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号25の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、並びに(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0155】
特定の態様では、修飾は、置換、特に保存的置換である。
【0156】
CH-CL
一実施形態では、重鎖(CH)及び軽鎖(CL)は、本明細書の上記に記載の通りのVL配列及びVH配列を含む。
【0157】
特定の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、それぞれ、配列番号29、30、31、32、33、34、35、又は36の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖、並びに
(b)配列番号37又は配列番号38のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号37又は配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖
を含む。
【0158】
別の実施形態では、二機能性分子に含まれる抗ヒトPD-1ヒト化抗体又はその抗原結合性断片は、
(a)配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号29の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号30の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号31の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号32の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号33の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号34の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号35の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号36の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号37のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号37の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号29からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号29の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号30の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号31の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号32の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号33からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号33の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号34からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号34の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号35の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖;又は
(a)配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号36の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する重鎖、並びに(b)配列番号38のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、任意選択で、配列番号38の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、若しくは3つの修飾を有する軽鎖
を含む。
【0159】
好ましくは、修飾は、置換、特に保存的置換である。
【0160】
Fc及びヒンジ領域
治療用抗体を開発するための幾つかの研究は、Fc領域の遺伝子操作による抗体特性の最適化に結び付き、それらの必要とされる薬理学的活性にとってより良好に適した分子の生成を可能にした。抗体のFc領域は、その血清半減期、並びに補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)等のエフェクター機能を媒介する。T250Q/M428L及びM252Y/S254T/T256E+H433K/N434F等の、CH2ドメインとCH3ドメインとの界面に位置する幾つかの変異は、FcRnに対する結合親和性及びin vivoでのIgG1の半減期を増加させることが示されている。しかしながら、FcRn結合の増加と半減期の向上との間には、常に直接的な関係性があるとは限らない。治療用抗体の有効性を向上させるための1つの手法は、その血清残留性を増加させることにより、より高い循環レベル、より少ない投与頻度、及び用量の低減を可能にすることである。抗体のエフェクター機能の低減又は増加のいずれかのために、Fc領域を遺伝子操作することが望ましい場合がある。細胞表面分子、特に免疫細胞上の分子を標的とする抗体の場合、エフェクター機能を無効にする必要がある。逆に、腫瘍学的使用を目的とした抗体の場合、エフェクター機能を増加させることにより、療法活性を向上させることができる。4つのヒトIgGアイソタイプは、異なる親和性で、活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa)、阻害性FcγRIIb受容体、及び補体第1成分(C1q)と結合し、非常に異なるエフェクター機能をもたらす。IgGのFcγR又はC1qに対する結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依存する。CH2ドメインの2つの領域は、FcγR及びC1q結合にとって重要であり、IgG2及びIgG4では固有の配列を有する。
【0161】
本発明による抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的には、哺乳動物免疫グロブリンの、更により好ましくは、ヒト免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分を含む。好ましくは、Fc領域は、本明細書に記載の抗hPD-1抗体の一部である。本発明の二機能性分子に含まれる抗hPD1抗体又はその抗原結合性断片は、免疫グロブリンの定常領域、又は定常領域の断片、アナログ、バリアント、変異体、又は誘導体を含んでいてもよい。当業者であれば周知であるように、重鎖定常ドメインのIgGアイソタイプの選択は、特定の機能が必要か否かにとって、及び好適なin vivo半減期の必要性にとって、中心的な関心事である。例えば、がん細胞の選択的根絶のために設計された抗体には、典型的には、補体活性化及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害によるエフェクター媒介性細胞殺傷を可能にする活性アイソタイプが必要である。ヒトIgG1及びIgG3(より短い半減期)アイソタイプは両方とも、特にヒトIgG1アイソタイプ(野生型及びバリアント)は、こうした基準を満たす。特に、重鎖定常ドメインのIgGアイソタイプ(特に、ヒト野生型及びバリアントIgG1アイソタイプ)に応じて、本発明の抗hPD1抗体は、CDC、ADCC、及び/又はADCP機序により、PD-1を発現する細胞に対して細胞傷害性であってもよい。実際、断片結晶化可能な(Fc)領域は、様々なアクセサリー分子と相互作用して、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び補体依存性細胞傷害(CDC)等の間接的エフェクター機能を媒介する。
【0162】
好ましい実施形態では、定常領域は、ヒト免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、及び他のクラスに由来する。更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。好ましくは、抗PD1抗体は、IgG1 Fc領域又はIgG4 Fc領域を含む。更により好ましくは、抗hPD1抗体は、IgG4を安定させるS228Pを有するIgG4 Fc領域を含む。
【0163】
一実施形態では、抗PD1抗体は、短縮型Fc領域又は短縮型Fc領域の断片を含む。一実施形態では、定常領域は、CH2ドメインを含む。別の実施形態では、定常領域は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むか、又はヒンジ-CH2-CH3を含む。或いは、定常領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及び/又はCH3ドメインの全て又は部分を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4重鎖に由来するCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含有する。一部の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4重鎖に由来するCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインを含有する。
【0164】
別の実施形態では、定常領域は、CH2ドメイン及びヒンジ領域の少なくとも部分を含む。ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスに由来してもよい。好ましくは、ヒンジ領域は、変異の有無に関わらず、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他の好適なクラスに由来する。より好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG1重鎖に由来する。一実施形態では、定常領域は、第1の抗体アイソタイプに由来するCH2ドメイン及び第2の抗体アイソタイプに由来するヒンジ領域を含む。特定の実施形態では、CH2ドメインは、ヒトIgG2又はIgG4重鎖に由来し、ヒンジ領域は、変更されたヒトIgG1重鎖に由来する。
【0165】
一実施形態では、定常領域は、Fc受容体に対する親和性を低減するか又はFcエフェクター機能を低減する変異を含有する。例えば、定常領域は、IgG重鎖の定常領域内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有してもよい。
【0166】
別の実施形態では、定常領域は、CH2ドメイン及びヒンジ領域の少なくとも部分を含む。ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他のクラスに由来してもよい。好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他の好適なクラスに由来する。IgG1ヒンジ領域は3つのシステインを有し、そのうちの2つは、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合に関与している。こうした同じシステインは、Fc部分間の効率的で一貫したジスルフィド結合形成を可能にする。したがって、本発明の好ましいヒンジ領域は、IgG1、より好ましくはヒトIgG1に由来する。一部の実施形態では、ヒトIgG1ヒンジ領域内の第1のシステインは、別のアミノ酸、好ましくはセリンに変異されている。IgG2アイソタイプヒンジ領域は、組換え系での分泌中のオリゴマー化及び誤ったジスルフィド結合の可能性を促進する傾向のある4つのジスルフィド結合を有する。好適なヒンジ領域は、IgG2ヒンジに由来してもよく、最初の2つのシステインは各々、好ましくは別のアミノ酸に変異されている。IgG4のヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合の形成が非効率的であることが知られている。しかしながら、本発明の好適なヒンジ領域は、IgG4ヒンジ領域に由来してもよく、好ましくは、重鎖由来部分間のジスルフィド結合の正しい形成を増強する変異を含有する(Angal Sら(1993年)Mol. Immunol.、30巻:105~8頁)。より好ましくは、ヒンジ領域は、ヒトIgG4重鎖に由来する。
【0167】
一実施形態では、定常領域は、第1の抗体アイソタイプに由来するCH2ドメイン及び第2の抗体アイソタイプに由来するヒンジ領域を含む。特定の実施形態では、CH2ドメインは、ヒトIgG4重鎖に由来し、ヒンジ領域は、変更されたヒトIgG1重鎖に由来する。
【0168】
本発明によると、定常領域は、異なる抗体アイソタイプに由来するCH2ドメイン及び/又はCH3ドメイン並びにヒンジ領域、つまりハイブリッド定常領域を含有してもよい。例えば、一実施形態では、定常領域は、IgG2又はIgG4に由来するCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインと、IgG1に由来する変異ヒンジ領域とを含有する。或いは、ハイブリッド定常領域には、別のIgGサブクラスに由来する変異ヒンジ領域が使用される。例えば、2つの重鎖間の効率的なジスルフィド結合を可能にするIgG4ヒンジの変異形態を使用してもよい。また、変異ヒンジは、最初の2つのシステインが各々別のアミノ酸に変異されているIgG2ヒンジに由来してもよい。そのようなハイブリッド定常領域のアセンブリは、米国特許出願公開第20030044423号に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
一実施形態では、定常領域は、下記のTable D(表4)に記載されている変異の1つ又はそれらの任意の組合せを有するCH2及び/又はCH3を含有してもよい。
【0170】
【0171】
特定の態様では、二機能性分子、好ましくは、結合性部分は、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン又はIgG1 Fcドメインを含み、任意選択で、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する。
【0172】
別の態様では、結合性部分は、ヒトIgG4重鎖定常ドメイン又はヒトIgG4 Fcドメインを含み、任意選択で、S228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有する。更により好ましくは、二機能性分子、好ましくは、結合性部分は、IgG4を安定させるS228Pを有するIgG4 Fc領域を含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体のFc領域にアミノ酸修飾を導入して、Fc領域バリアントを生成してもよい。ある特定の実施形態では、Fc領域バリアントは、全てではないが一部のエフェクター機能を有する。そのような抗体は、例えば、in vivoでの抗体の半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能は不必要であるか又は有害である応用において有用であり得る。エフェクター機能の例としては、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体介在性補体媒介性細胞傷害(ADCC)が挙げられる。エフェクター機能を変更する数多くの置換又は欠失が、当技術分野で公知である。
【0174】
一実施形態では、定常領域は、Fc受容体に対する親和性を低減するか又はFcエフェクター機能を低減する変異を含有する。例えば、定常領域は、IgG重鎖の定常領域内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有してもよい。好ましくは、CH2ドメインは、CH2ドメイン内のグリコシル化部位を消失させる変異を含有する。
【0175】
一実施形態では、本発明による抗hPD1は、配列番号39若しくは52の重鎖定常ドメイン及び/又は配列番号40の軽鎖定常ドメイン、特に、配列番号39又は52の重鎖定常ドメイン及び配列番号40の軽鎖定常ドメインを有する。
【0176】
別の実施形態では、本発明による抗hPD1は、配列番号52の重鎖定常ドメイン及び/又は配列番号40の軽鎖定常ドメイン、特に、配列番号52の重鎖定常ドメイン及び配列番号40の軽鎖定常ドメインを有する。
【0177】
【0178】
Fc部分及び非Fc部分の接合部付近のアミノ酸の変更は、Fc融合タンパク質の血清半減期を劇的に増加させることができる(国際公開第01/58957号)。したがって、本発明のタンパク質又はポリペプチドの接合領域は、免疫グロブリン重鎖及びエリスロポエチンの天然に存在する配列と比べて、好ましくは、接合点の約10個アミノ酸以内に入る変更を含有してもよい。こうしたアミノ酸変化は、疎水性の増加を引き起こす場合がある。一実施形態では、定常領域は、C末端リジン残基が置き換えられているIgG配列に由来する。好ましくは、IgG配列のC末端リジンは、血清半減期を更に増加させるために、アラニン又はロイシン等の非リジンアミノ酸に置き換えられている。
【0179】
ヒトIgGの全てのサブクラスは、循環中で切断される抗体重鎖のC末端リジン残基(K444)を有する。血中でのこの切断は、IL-7を放出することにより二機能性分子の生物活性を損なう可能性がある。この問題を回避するため、IgG1ドメイン又はIgG4ドメインのK444アミノ酸をアラニンで置換して、タンパク質分解切断を低減することができる。この変異は、抗体に広く使用される変異である。したがって、一実施形態では、抗PD1抗体は、K444Aからなる少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を含む。
【0180】
一実施形態では、抗PD1抗体は、追加のジスルフィド結合を生成し、二機能性分子の可撓性を潜在的に制限するために、IgGのC末端ドメインに追加のシステイン残基を含む。
【0181】
ある特定の実施形態では、抗体は、それがグリコシル化される程度を増加、減少、又は消失するように変更されていてもよい。
【0182】
チェックポイント阻害剤
本発明者らは、本明細書において、本発明による二機能性分子が、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とPD-1の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、抗PD-1抗体等のチェックポイント阻害剤の効果の最適化に好適であることを示す。特に、T細胞、特に疲弊したT細胞の活性化に対する、より詳細にはTCRシグナル伝達に対する相乗効果が示されている。本発明者らは、特に、二機能性分子に含まれる抗PD-1抗体及びIL-7が同じ免疫細胞上で結合することにより提供される、同じ細胞上での活性化を示す。この相乗効果は、IL-7抗体及び抗PD-1抗体を別々の化合物として使用した場合には決して観察されない。したがって、IL-7Rを発現する免疫細胞上で発現される、PD-1以外の任意の分子、特に疲弊の因子を、本発明による二機能性構築物により誘発させ得ることを起想することができる。したがって、実施形態では、二機能性分子は、免疫細胞上に発現される、PD-1以外の標的に対する抗体又はその抗原結合性断片を含む。例えば、標的は、免疫細胞、特にT細胞の表面に発現される受容体であってもよい。受容体は、阻害剤受容体であってもよい。或いは、受容体は、活性化受容体であってもよい。
【0183】
本明細書で使用される場合、「標的」という用語は、免疫細胞の外部表面に発現されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗原、又はエピトープを指す。免疫細胞の表面上での標的の発現に関して、「発現される」という用語は、細胞の外側表面に存在するか又は提示される標的を指す。「特異的に発現される」という用語は、標的が、免疫細胞上で発現されるが、他の細胞タイプ、特に腫瘍細胞等では実質的に発現されないことを意味する。
【0184】
一実施形態では、標的は、健康な対象、又は疾患、特にがん等に罹患している対象の免疫細胞により特異的に発現される。これは、標的が、他の細胞よりも免疫細胞でより高い発現レベルを示すこと、又は標的を発現する免疫細胞の、全ての免疫細胞に対する比が、標的を発現する他の細胞の、全ての他の細胞に対する比よりも高いことを意味する。好ましくは、発現レベル又は比は、2、5、10、20、50、又は100倍高い。発現レベル又は比は、より具体的には、特定のタイプの免疫細胞、例えばT細胞、より具体的にはCD8+ T細胞、エフェクターT細胞、若しくは疲弊したT細胞について、又は特定の状況では、例えば、がん若しくは感染症等の疾患に罹患している対象について決定することができる。
【0185】
一態様では、標的は、免疫チェックポイントである。好ましくは、標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される。このような標的は、下記のTable F(表6)により詳細に記載されている。
【0186】
【0187】
【0188】
したがって、この態様では、本発明による二機能性分子に含まれる抗体又はその抗原断片は、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群から選択される標的に結合する。
【0189】
好ましい態様では、本発明による二機能性分子に含まれる抗体又はその抗原結合性断片は、CTLA-4、BTLA、TIGIT、LAG3、及びTIM3からなる群から選択される。
【0190】
また、Sym023、TSR-022、MBG453、LY3321367、INCAGN02390、BGTB-A425、LY3321367、RG7769(Roche社)等の、TIM3に対する抗体及びTIM3を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。一部の実施形態では、TFM-3抗体は、国際公開第2013006490号、国際公開第2016/161270号、国際公開第2018/085469号、又は国際公開第2018/129553号、国際公開第2011/155607号、米国特許第8,552,156号、欧州特許第2581113号、及び米国特許出願第2014/044728号に記載の通りである。
【0191】
また、イピリムマブ、トレメリムマブ、MK-1308、AGEN-1884、XmAb20717(Xencor社)、MEDI5752(AstraZeneca社)等の、CTLA-4に対する抗体及びCTLA-4を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。抗CTLA-4抗体は、国際公開第18025178号、国際公開第19179388号、国際公開第19179391号、国際公開第19174603号、国際公開第19148444号、国際公開第19120232号、国際公開第19056281号、国際公開第19023482号、国際公開第18209701号、国際公開第18165895号、国際公開第18160536号、国際公開第18156250号、国際公開第18106862号、国際公開第18106864号、国際公開第18068182号、国際公開第18035710号、国際公開第18025178号、国際公開第17194265号、国際公開第17106372号、国際公開第17084078号、国際公開第17087588号、国際公開第16196237号、国際公開第16130898号、国際公開第16015675号、国際公開第12120125号、国際公開第09100140号、及び国際公開第07008463号にも開示されている。
【0192】
また、BMS-986016、IMP701、MGD012、又はMGD013(二重特異性PD-1及びLAG-3抗体)等の、LAG-3に対する抗体及びLAG-3を標的とする二機能性又は二重特異性分子が公知である。抗LAG-3抗体は、国際公開第2008132601号、欧州特許第2320940号、国際公開第19152574号にも開示されている。
【0193】
当技術分野では、hu Mab8D5、hu Mab8A3、hu Mab21H6、hu Mab19A7、又はhu Mab4C7等の、BTLAに対する抗体も公知である。BTLAに対する抗体TAB004は、進行悪性腫瘍を有する対象にて現在臨床治験中である。抗BTLA抗体は、国際公開第08076560号、国際公開第10106051号(例えば、BTLA8.2)、国際公開第11014438号(例えば、4C7)、国際公開第17096017号、及び国際公開第17144668号(例えば、629.3)にも開示されている。
【0194】
当技術分野では、国際公開第19232484号に開示の通りの、BMS-986207又はAB154、BMS-986207 CPA. 9.086、CHA.9.547.18、CPA.9.018、CPA.9.027、CPA.9.049、CPA.9.057、CPA.9.059、CPA.9.083、CPA.9.089、CPA.9.093、CPA.9.101、CPA.9.103、CHA.9.536.1、CHA.9.536.3、CHA.9.536.4、CHA.9.536.5、CHA.9.536.6、CHA.9.536.7、CHA.9.536.8、CHA.9.560.1、CHA.9.560.3、CHA.9.560.4、CHA.9.560.5、CHA.9.560.6、CHA.9.560.7、CHA.9.560.8、CHA.9.546.1、CHA.9.547.1、CHA.9.547.2、CHA.9.547.3、CHA.9.547.4、CHA.9.547.6、CHA.9.547.7、CHA.9.547.8、CHA.9.547.9、CHA.9.547.13、CHA.9.541.1、CHA.9.541.3、CHA.9.541.4、CHA.9.541.5、CHA.9.541.6、CHA.9.541.7、及びCHA.9.541.8等の、TIGITに対する抗体も公知である。抗TIGIT抗体は、国際公開第16028656号、国際公開第16106302号、国際公開第16191643号、国際公開第17030823号、国際公開第17037707号、国際公開第17053748号、国際公開第17152088号、国際公開第18033798号、国際公開第18102536号、国際公開第18102746号、国際公開第18160704号、国際公開第18200430号、国際公開第18204363号、国際公開第19023504号、国際公開第19062832号、国際公開第19129221号、国際公開第19129261号、国際公開第19137548号、国際公開第19152574号、国際公開第19154415号、国際公開第19168382号、国際公開第19215728号にも開示されている。
【0195】
当技術分野では、国際公開第06015886号に開示の通りのCL1-R2 CNCM I-3204、又は国際公開第10006071号、国際公開第10084158号、国際公開第18077926号に開示されている通りの他のもの等の、CD160に対する抗体も公知である。
【0196】
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗CTLA-4抗体又はその抗原結合性断片、好ましくは、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗CTLA-4抗体又はその抗原結合性断片を含む。好ましくは、抗体は、CTLA-4のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対する、IL-7wt、そのバリアント又は変異体の効果とCTLA-4の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対する相乗効果を示すことができる。
【0197】
別の特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗BTLA抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、又はキメラ抗BTLA抗体又はその抗原結合性断片を含む。好ましくは、抗体は、BTLAのアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対する、IL-7wt、そのバリアント又は変異体の効果とBTLAの阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対する相乗効果を示すことができる。
【0198】
別の特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片、好ましくはヒト、ヒト化、又はキメラ抗TIGIT抗体又はその抗原結合性断片を含む。好ましくは、抗体は、TIGITのアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対する、IL-7wt、そのバリアント又は変異体の効果とTIGITの阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0199】
別の特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗LAG-3抗体又はその抗原結合性断片、好ましくは、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗LAG-3抗体又はその抗原結合性断片を含む。好ましくは、抗体は、LAG-3のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対する、IL-7wt、そのバリアント又は変異体の効果とLAG-3の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0200】
別の特定の態様では、本発明による二機能性分子は、抗TIM3抗体又はその抗原結合性断片、好ましくは、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗TIM3抗体又はその抗原結合性断片を含む。好ましくは、抗体は、TIM3のアンタゴニストである。したがって、二機能性分子は、IL-7受容体に対するIL-7バリアント又は変異体の効果とTIM3の阻害効果の遮断とを組み合わせたものであり、T細胞、特に疲弊したT細胞、より詳細にはTCRシグナル伝達の活性化に対して相乗効果を示すことができる。
【0201】
ペプチドリンカー
本発明は、抗PD-1抗体又はその断片とIL-7との間にペプチドリンカーを含んでいてもよい二機能性分子を含む。ペプチドリンカーは、通常、その間がリンカーで接続されている2つのタンパク質要素が、それらの機能を発揮するのに、並びにα-ヘリックス及びβ-フォールドの形成が組換え二機能性分子の安定性に対して及ぼす影響を回避するのに十分な空間的自由度を有することを保証するのに十分な長さ及び可撓性を有する。
【0202】
本開示の態様では、抗hPD1抗体は、好ましくは、ペプチドリンカーによりIL-7に連結されている。言い換えれば、本発明は、鎖、例えば軽鎖又は重鎖又はそれらの断片、好ましくは重鎖又はその断片を有し、ペプチドリンカーを介してIL-7に連結されている、本明細書に詳述されている通りの抗PD1抗体又はその抗原結合性断片を含む二機能性分子に関する。本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、IL-7及び抗PD-1免疫グロブリン配列部分を連結する少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。そのようなリンカーは、立体障害の防止に有用であり得る。リンカーは、通常、長さが3~44個のアミノ酸残基である。好ましくは、リンカーは、3~30個のアミノ酸残基を有する。一部の実施形態では、リンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基を有する。
【0203】
実施形態では、本発明は、上記で規定の通りの抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片及びIL-7を含む二機能性分子であって、抗体の鎖、例えば軽鎖又は重鎖、好ましくは重鎖、更により好ましくは重鎖又は軽鎖のC末端は、ペプチドリンカーにより、IL-7、好ましくはIL-7のN末端に連結されている、二機能性分子に関する。
【0204】
特定の態様では、本発明は、上記で規定の通りの抗hPD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む二機能性分子であって、IL-7は、好ましくはペプチドリンカーにより、上記抗体の重鎖のC末端(例えば、重鎖定常ドメインのC末端)に連結されている、二機能性分子に関する。
【0205】
実施形態では、本発明は、上記で規定の通りの抗PD-1抗体又はその抗原結合性断片を含む二機能性分子であって、IL-7は、好ましくはペプチドリンカーにより、上記抗体の軽鎖のC末端(例えば、軽鎖定常ドメインのC末端)に連結されている、二機能性分子に関する。
【0206】
リンカー配列は、天然に存在する配列であってもよく又は天然に存在しない配列であってもよい。療法目的で使用される場合、リンカーは、好ましくは、二機能性分子が投与される対象において非免疫原性である。リンカー配列の1つの有用な群は、国際公開第96/34103号及び国際公開第94/04678号に記載の通りの、重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。リンカー配列の更に好ましい例は、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3、特に(Gly4Ser)3を含む、様々な長さのGly/Serリンカーである。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。
【0207】
一実施形態では、二機能性分子に含まれるリンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)2、Gly4Ser、Gly3Ser、Gly3、Gly2ser、及び(Gly3Ser2)3からなる群において選択され、好ましくは、(Gly4Ser)3である。好ましくは、リンカーは、(Gly4Ser)4、(Gly4Ser)3、及び(Gly3Ser2)3からなる群から選択される。更により好ましくは、リンカーは、(GGGGS)3である。
【0208】
実施形態では、本発明は、上記で規定の通りの抗PD-1抗体又はその断片を含む二機能性分子であって、抗体又はその断片は、好ましくは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択されるリンカー配列により、更により好ましくは(GGGGS)3によりIL-7に連結されている、二機能性分子に関する。好ましくは、リンカーは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、及び(GGGS)3からなる群から選択される。
【0209】
好ましくは、重鎖、好ましくは、抗PD-1抗体の重鎖のC末端は、可撓性(Gly4Ser)3リンカーを介してIL-7のN末端と遺伝子的に融合されている。融合接合部では、抗体重鎖のC末端リジン残基をアラニンに変異させて、タンパク質分解切断を低減することができる。
【0210】
好ましくは、抗PD-1抗体の重鎖、好ましくは軽鎖のC末端は、可撓性(Gly4Ser)3リンカーを介してIL-7のN末端に遺伝子的に融合されている。融合接合部では、抗体軽鎖のC末端リジン残基をアラニンに変異させて、タンパク質分解切断を低減することができる。
【0211】
IL-7
本発明による二機能性分子は、インターロイキン7、又はそのバリアント若しくは断片を含む追加の又は第2の実体を含む。
【0212】
好ましくは、IL-7タンパク質は、ヒトIL-7又はそのバリアントである。したがって、IL-7又はそのバリアントは、野生型IL-7と、特に配列番号51のタンパク質と少なくとも75%同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0213】
一実施形態では、二機能性分子は、152個アミノ酸の典型的な野生型IL-7ヒトタンパク質(配列番号51)を含む。好ましくは、IL-7タンパク質は、配列番号51のタンパク質である。IL-7タンパク質は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。
【0214】
IL-7タンパク質の「バリアント」は、1つ又は複数のアミノ酸が変更されているアミノ酸配列であると定義される。バリアントは、「保存的」修飾又は「非保存的」修飾を有していてもよい。そのような修飾としては、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を挙げることができる。生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を損なうことなく、どの及び幾つのアミノ酸残基を置換、挿入、又は欠失させることができるかを決定する際の指針は、当技術分野で周知のコンピュータープログラム、例えば、分子モデリング用の又はアライメント作成用のソフトウェアを使用して見出すことができる。特定の態様では、本発明内に含まれるバリアント型IL-7タンパク質は、特に、野生型IL-7と比較して実質的に等価な生物学的IL-7特性を保持するIL-7タンパク質を含む。代替的な態様では、本発明内に含まれるバリアント型IL-7タンパク質は、特に、野生型IL-7と比較して実質的に等価な生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を保持しないIL-7タンパク質を含む。また、IL-7のバリアントは、IL-7の変更されたポリペプチド配列(例えば、酸化形態、還元形態、脱アミノ形態、又は短縮形態)を含む。特に、完全長IL-7タンパク質と同等の生物学的特性を保持するIL-7の短縮型又は断片は、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態では、インターロイキン7は、その任意の生物学的活性断片である。IL-7のバリアントとしては、より好ましくは、SNP、スプライシングバリアント等を含む、天然の遺伝子多型に起因する天然の対立遺伝子バリアントが挙げられる。
【0215】
IL-7タンパク質の生物学的活性は、in vitro細胞増殖アッセイを使用して測定することができる。好ましくは、本発明によるIL-7バリアントは、野生型ヒトIL-7と比較して少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%の、好ましくは、野生型IL-7と比較して少なくとも80%、90%、95%、更により好ましくは99%の生物学的活性を維持する。
【0216】
また、変異型IL-7タンパク質としては、野生型IL-7、特に配列番号51のタンパク質と少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも高い配列同一性を有するポリペプチドが挙げられる。
【0217】
本発明による好ましいIL-7は、配列番号51、欧州特許第314415号、又は国際公開第2004/018681号A2に記載の通りのアミノ酸配列、並びにそれらの任意の天然バリアント及びホモログを含むか又はからなるヒトIL-7ポリペプチドである。
【0218】
一態様では、本発明に使用されるIL-7ポリペプチドは、組換えIL-7である。「組換え」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、組換え発現系から、つまり宿主細胞(例えば、微生物又は昆虫又は植物又は哺乳動物)の培養から、又はIL-7ポリペプチドをコードする核酸分子を含有するように遺伝子操作されているトランスジェニック植物又は動物から得られるか又は由来することを意味する。好ましくは、組換えIL-7は、ヒト組換えIL-7(例えば、組換え発現系で産生されるヒトIL-7)である。
【0219】
また、本発明は、野生型IL-7タンパク質と比較して生物学的活性が増強されたIL-7タンパク質を含む二機能性分子を提供する。例えば、米国特許第7960514号に記載の通り、Cys2-Cys92、Cys34-Cys129、及びCys47-141のジスルフィド結合パターンを有するIL-7タンパク質は、in vivoにて野生型組換えIL-7タンパク質よりも活性である。欧州特許第1904635号等に記載の通り、Asn116は非グリコシル化されているがAsn70及びAsn91はグリコシル化されているIL-7タンパク質等、IL-7を高度にグリコシル化すると、IL-7生物活性が向上する。
【0220】
或いは、本発明は、特に、免疫応答を刺激することができるIL-7内のT細胞エピトープを除去することにより野生型IL-7タンパク質と比較して免疫原性が低減されたIL-7タンパク質を含む二機能性分子を提供する。そのようなIL-7の例は、国際公開第2006061219号に記載されている。
【0221】
また、特定の態様では、本開示は、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子を提供する。「インターロイキン-7変異体」、「変異型IL-7」、「IL-7変異体」、「IL-7バリアント」、「IL-7m」、又は「IL-7v」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
【0222】
この状況では、IL-7バリアント又は変異体は、野生型IL-7と比較して、実質的に等価な生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を保持しない。IL-7変異体又はバリアントは、少なくとも1つの変異を含む。特に、少なくとも1つの変異は、IL-7バリアント又は変異体のIL-7受容体(IL-7R)に対する親和性を減少させるが、IL-7R認識の喪失には結び付かない。したがって、IL-7変異体又はバリアントは、例えば、Bitarら、Front. Immunol.、2019年、10巻等に開示の通り、例えば、pStat5シグナルにより測定して、IL-7Rを活性化する能力を保持する。IL-7タンパク質の生物学的活性は、in vitro細胞増殖アッセイを使用して、又はELISA若しくはFACSでT細胞のP-Stat5を測定することにより測定することができる。好ましくは、本発明によるIL-7バリアントは、生物学的特性(例えば、活性、結合能力、及び/又は構造)を、野生型IL-7、好ましくはwth-IL7と比較して、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、100分の1、250分の1、500分の1、750分の1、1000分の1、2500分の1、5000分の1、又は8000分の1に低減させる。より好ましくは、IL-7バリアントは、IL-7受容体に対する結合の低減を示すが、IL-7Rを活性化する能力を保持する。例えば、IL-7受容体に対する結合は、野生型IL-7と比較して少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。
【0223】
一態様では、IL-7バリアント又は変異体は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して低減させ、ii)IL7バリアントの薬物動態をwt-IL7と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。
【0224】
別の態様では、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、i)IL-7受容体(IL-7R)に対する二機能性分子の親和性を、wt-IL-7を含む二機能性分子のIL-7Rに対する親和性と比較して低減させ、ii)IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wt-IL-7を含む二機能性分子と比較して向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異がwt-IL-7とは異なる。より詳細には、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子は、特にpStat5シグナル伝達を介してIL-7Rを活性化する能力を更に保持する。例えば、IL-7受容体に対する、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の結合は、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%低減されていてもよく、IL-7Rを活性化する能力を、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して少なくとも90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、又は20%保持する。
【0225】
特定の態様では、IL-7バリアント又は変異体は、IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対する親和性の低減を示す。特に、IL-7バリアント又は変異体は、それぞれCD127及び/又はCD132に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127及び/又はCD132に対する親和性の低減を示す。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、CD127に対するwth-IL-7の親和性と比較して、CD127に対する親和性の低減を示す。
【0226】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対する、特にCD132又はCD127に対するIL-7バリアント又は変異体の親和性を、IL-7Rに対するwt-IL-7の親和性と比較して、少なくとも10分の1、100分の1、1000分の1、10000分の1、又は100000分の1に減少させる。そのような親和性比較は、ELISA又はBiacore等の、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0227】
好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7バリアント又は変異体の親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7バリアント又は変異体の生物学的活性を、IL-7 wtと比較して減少させない。
【0228】
或いは、少なくとも1つのアミノ酸変異は、IL-7Rに対するIL-7バリアント又は変異体の親和性を減少させるが、特にpStat5シグナルにより測定して、IL-7mの生物学的活性をIL-7 wtと比較して著しくは減少させない。
【0229】
それに加えて又はその代わりに、IL-7バリアント又は変異体は、野生型IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。特に、本発明によるIL-7バリアント又は変異体は、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の薬物動態を、wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、少なくとも10倍、100倍、又は1000倍向上させる。薬物動態プロファイル比較は、例えば、実施例9に示されているように、薬物をin vivo注射し、複数時点で血清中薬物の投与量ELISA(dosage ELISA)を行うこと等、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0230】
本明細書で使用される場合、「薬物動態」及び「PK」という用語は、同義的に使用され、生体生物に投与される化合物、物質、又は薬物の運命を指す。薬物動態は、特に、解放(つまり、組成物からの物質の放出)、吸収(つまり、血液循環への物質の進入)、分布(つまり、身体にわたる物質の分散又は拡散) 代謝(つまり、物質の変換又は分解)、及び排泄(つまり、生物からの物質の除去又はクリアランス)を表すADME又はLADMEスキームを含む。代謝及び排泄の2つの段階は、消失という表題下で一緒にグループ化することもできる。当業者であれば、消失半減期、消失定率(elimination constant rate)、クリアランス(つまり、単位時間当たりに薬物がクリアランスされる血漿の容積)、Cmax(最大血清中濃度)、及び薬物曝露(曲線下面積により決定される)等、様々な薬物動態パラメーターをモニターすることができる(Scheffら、Pharm Res.、2011年、28巻、1081~9頁)。
【0231】
したがって、IL-7バリアント又は変異体の使用による薬物動態の向上は、上記で言及されているパラメーターの少なくとも1つの向上を指す。好ましくは、向上は、二機能性分子の消失半減期の向上、つまり半減期持続期間又はCmaxの増加を指す。
【0232】
特定の実施形態では、IL-7バリアント又は変異体の少なくとも1つの変異は、IL-7 wtを含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアント又は変異体を含む二機能性分子の消失半減期を向上させる。
【0233】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号51に開示されているもの等、152個アミノ酸の野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)タンパク質と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号51と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を示す。
【0234】
特に、少なくとも1つの変異は、IL-7のアミノ酸74位及び/又は142位に生じる。それに加えて又はその代わりに、少なくとも1つの変異は、アミノ酸2位及び141位、34位及び129位、並びに/又は47位及び92位で生じる。こうした位置は、配列番号51に示されているアミノ酸の位置を指す。
【0235】
特に、少なくとも1つの変異は、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、K81R、D74E、D74Q、並びにD74N、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸置換又はアミノ酸置換の群である。こうした変異は、配列番号51に示されているアミノ酸の位置を指す。したがって、例えば、変異W142Hは、アミノ酸142位にヒスチジンを有するIL-7mを得るために、wth-IL7のトリプトファンをヒスチジンに置換することを表す。そのような変異体は、例えば、配列番号56に記載されている。
【0236】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、C2とC141との間、C47とC92との間、及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために置換のセットを含む。特に、IL-7バリアント又は変異体は、C2とC141との間及びC47とC92との間;C2とC141との間及びC34~C129の間;又はC47とC92との間及びC34~C129の間のジスルフィド結合を破壊するために2セットの置換を含む。例えば、ジスルフィド結合形成を防止するために、システイン残基をセリンに置換してもよい。したがって、アミノ酸置換は、C2S-C141S及びC47S-C92S(「SS2」と称する)、C2S-C141S及びC34S-C129S(「SS1」と称する)、及びC47S-C92S及びC34S-C129S(「SS3」と称する)からなる群から選択することができる。こうした変異は、配列番号51に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、配列番号53~55(それぞれ、SS1、SS2、及びSS3)に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、アミノ酸置換C2S-C141S及びC47S-C92Sを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号54に示されている配列を示す。
【0237】
別の実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ配列番号57~58に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、変異W142Hを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号56に示されている配列を示す。
【0238】
別の実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、D74E、D74Q、及びD74N、好ましくはD74E及びD74Qからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ配列番号63~65に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、変異D74Eを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号63に示されている配列を示す。
【0239】
別の実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/又はK81Rからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。こうした変異は、配列番号51に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ、配列番号59、60、61、62、及び66に示されている配列に具体的に記載されている。
【0240】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はiii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異を含む。
【0241】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、W142H置換と、i)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0242】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、D74E置換と、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含む。
【0243】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、変異C2S-C141S及びC47S-C92Sと、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、及び/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Qからなる少なくとも1つの置換とを含む。
【0244】
一実施形態では、IL-7バリアント又は変異体は、i)D74E及びW142H置換、並びにii)変異C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129Sを含む。
【0245】
IL-7バリアント又は変異体は、そのペプチドシグナルを含んでいてもよく、又はそれを欠いていてもよい。
【0246】
一実施形態では、本発明による二機能性分子は、配列番号53~58又は配列番号63~65に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。更により好ましくは、本発明による二機能性分子は、配列番号54、56、又は63に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなるIL-7バリアントを含む。
【0247】
二機能性分子又は「Bicki」
本発明は、特に、本明細書の上記に開示の通りの、抗hPD1抗体又はその抗体断片及びIL-7を含むか又はからなる二機能性分子を提供し、抗hPD1抗体又はその抗体断片は、好ましくは本明細書の上記に開示の通りのペプチドリンカーにより、特に融合タンパク質として、IL-7に共有結合で連結されている。
【0248】
特に、本発明による二機能性分子は、2つの実体:抗hPD1抗体又はその断片を含むか又はから本質的になる第1の実体;インターロイキン7(IL-7)、好ましくはヒトIL-7を含むか又はから本質的になる第2の実体を含み、こうした2つの実体は、任意選択でペプチドリンカーにより連結されている。
【0249】
特に、本発明による二機能性分子は、1つ、2つ、3つ、又は4つのIL-7分子を含む。特に、二機能性分子は、抗PD-1抗体の軽鎖又は重鎖の1つのみに連結された1分子のみのIL-7を含んでいてもよい。また、二機能性分子は、抗PD-1抗体の軽鎖又は重鎖のいずれかに連結された2つのIL-7分子を含んでいてもよい。また、二機能性分子は、2つのIL-7分子を含んでいてもよく、第1の分子は抗PD-1抗体の軽鎖に連結されており、第2の分子は抗PD-1抗体の重鎖に連結されている。また、二機能性分子は、3つのIL-7分子を含んでいてもよく、それらの2つは、抗PD-1抗体の軽鎖又は重鎖のいずれかに連結されており、最後の1つは、抗PD-1抗体の他の鎖に連結されている。また、最後に、二機能性分子は、4つのIL-7分子を含んでいてもよく、2つの分子は抗PD-1抗体の軽鎖に連結されており、2つの分子は抗PD-1抗体の重鎖に連結されている。したがって、二機能性分子は、本明細書に開示の通り、1~4つの免疫療法剤分子を含む。
【0250】
一実施形態では、軽鎖の1つのみが1つのIL7分子を含むか(例えば、二機能性分子は1つのIL7分子を含む)、重鎖の1つのみが1つのIL7分子を含むか(例えば、二機能性分子は1つのIL7分子を含む)、各軽鎖が1つのIL-7分子を含むか(例えば、二機能性分子は2つのIL7分子を含む)、各重鎖が1つのIL-7分子を含むか(例えば、二機能性分子は2つのIL7分子を含む)、軽鎖の1つのみ及び重鎖の1つのみが1つの免疫療法剤分子を含むか(例えば、二機能性分子は2つのIL7分子を含む)、各軽鎖が1つのIL7分子を含み、重鎖の1つのみが1つのIL7分子を含むか(例えば、二機能性分子は3つのIL7分子を含む)、各重鎖が1つのIL7分子を含み、軽鎖の1つのみが1つのIL7分子を含むか(例えば、二機能性分子は3つのIL7分子を含む)、又は軽鎖及び重鎖が両方とも1つのIL-7分子を含む(例えば、二機能性分子は4つのIL7分子を含む)。
【0251】
一実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)(i)重鎖及び(ii)軽鎖を含む抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片、並びに
(b)ヒトインターロイキン7(IL-7)又はその断片若しくはバリアント
を含むか又はからなり、
抗体重鎖及び/若しくは軽鎖又はそれらの断片は、好ましくは融合タンパク質として、ペプチドリンカーによりIL-7に共有結合で連結されている。
【0252】
好ましくは、本発明による二機能性分子は、
(a)(i)重鎖及び(ii)軽鎖を含むヒト化抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片、並びに
(b)ヒトインターロイキン7(IL-7)又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなり、
抗体重鎖若しくは軽鎖又はそれらの断片は、好ましくは融合タンパク質として、ペプチドリンカーによりIL-7に共有結合で連結されている。
【0253】
好ましくは、そのような二機能性分子は、IL-7のN末端を、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続する少なくとも1つのペプチドリンカーを含み、ペプチドリンカーは、好ましくは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは(GGGGS)3である。
【0254】
好ましくは、IL-7のN末端は、少なくとも1つのペプチドリンカーを介して、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続されている。或いは、IL-7のC末端は、少なくとも1つのペプチドリンカーを介して、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のN末端に接続されている。
【0255】
一実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)(i)重鎖及び(ii)軽鎖を含む抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片、
(b)ヒトインターロイキン7(IL-7)又はそのバリアント若しくは断片、並びに
(c)IL-7のN末端を、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続するペプチドリンカーであって、好ましくは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる。
【0256】
特定の実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEのいずれかであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択され、任意選択で、配列番号3の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号12の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する、
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなり、
抗体重鎖及び/若しくは軽鎖又はそれらの断片は、融合タンパク質として、好ましくはペプチドリンカーによりIL-7に共有結合で連結されている。
【0257】
別の実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)
(i)HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変ドメイン、並びに
(ii)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変ドメイン
を含み、
- 重鎖CDR1(HCDR1)は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR2(HCDR2)は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 重鎖CDR3(HCDR3)は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はDであり、X2は、T、H、A、Y、N、Eからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択されるか、又はX1はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、E、及びSからなる群において選択されるかのいずれかであり、任意選択で、配列番号3の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR1(LCDR1)は、配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号12の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR2(LCDR2)は、配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有し、
- 軽鎖CDR3(LCDR3)は、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する、
抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなり、
抗体重鎖若しくは軽鎖又は両方又はそれらの断片は、融合タンパク質として、好ましくはペプチドリンカーによりIL-7に共有結合で連結されている。
【0258】
別の実施形態では、本発明による二機能性分子は、
(a)
- 配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号1の3位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖CDR1(HCDR1)、
- 配列番号2のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号2の13、14、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖CDR2(HCDR2)、
- 配列番号4、5、6、7、8、9、10、又は11のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号4、5、6、7、8、9、10、又は11の2、3、7、及び8位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖CDR3(HCDR3)、
- 配列番号13又は配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号13又は配列番号14の5、6、10、11、及び16位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖CDR1(LCDR1)、
- 配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖CDR2(LCDR2)、
- 配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号16の1,4、及び6位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖CDR3(LCDR3)
を含むヒト化抗ヒトPD-1抗体又はその抗原結合性断片;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなり、
抗体重鎖若しくは軽鎖又はそれらの断片は、融合タンパク質として、好ましくはペプチドリンカーによりIL-7に共有結合で連結されている。
【0259】
好ましくは、ペプチドリンカーは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは(GGGGS)3である。
【0260】
別の実施形態では、本発明は、
(a)
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含むヒト化抗hPD1抗体;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片;
(c)抗hPD1抗体の軽鎖及び/又は重鎖とヒトIL-7又はそのバリアント若しくは断片との間の、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含む二機能性分子に関する。
【0261】
好ましくは、IL-7のN末端は、少なくとも1つのペプチドリンカーを介して、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のC末端に接続されている。或いは、IL-7のC末端は、少なくとも1つのペプチドリンカーを介して、抗ヒトPD-1抗体の重鎖又は軽鎖又は両方のN末端に接続されている。
【0262】
別の実施形態では、本発明は、
a)
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含むヒト化抗hPD1抗体;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなる二機能性分子であって、
抗体又はその抗原結合性断片の重鎖及び/又は軽鎖のC末端は、好ましくは(GGGGS)3ペプチドリンカーによりIL-7のN末端に共有結合で連結されている、二機能性分子に関する。
【0263】
別の実施形態では、本発明は、
(a)
(i)配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、それぞれ、配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、
(ii)配列番号27又は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はからなり、任意選択で、配列番号27又は配列番号28の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含むヒト化抗hPD1抗体;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなる二機能性分子であって、
抗体又はその抗原結合性断片の重鎖及び/又は軽鎖のC末端は、好ましくは(GGGGS)3ペプチドリンカーによりIL7のN末端に共有結合で連結して、融合タンパク質を形成する、二機能性分子に関する。
【0264】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片の重鎖のC末端は、IL-7のN末端に共有結合で連結して、融合タンパク質を形成する。好ましくは、抗体又はその抗原結合性断片の重鎖のみが、IL-7に共有結合で連結している。
【0265】
別の実施形態では、本発明は、
a)
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、Eからなる群において選択され、任意選択で、配列番号17の7、16、17、20、33、38、43、46、62、63、65、69、73、76、78、80、84、85、88、93、95、96、97、98、100、101、105、106、及び112位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する重鎖可変領域(VH)、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列中、XはG又はTであり、任意選択で、配列番号26の3、4、7、14、17、18、28、29、33、34、39、42、44、50、81、88、94、97、99、及び105位以外の任意の位置に、置換、付加、欠失、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ、2つ、又は3つの修飾を有する軽鎖可変領域(VL)
を含むヒト化抗hPD1抗体;並びに
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなる二機能性分子であって、
抗体又はその抗原結合性断片の重鎖のC末端は、好ましくは(GGGGS)3ペプチドリンカーによりIL7のN末端に共有結合で連結して融合タンパク質を形成する、二機能性分子に関する。
【0266】
別の実施形態では、本発明は、
a)
(i)配列番号24のアミノ酸配列を含むか又はからなる重鎖可変領域(VH)、
(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含む又はからなる軽鎖可変領域(VL)
を含むヒト化抗hPD1抗体;
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片
を含むか又はからなる二機能性分子であって、
抗体又はその抗原結合性断片の重鎖のC末端は、好ましくは(GGGGS)3ペプチドリンカーによりIL7のN末端に共有結合で連結して融合タンパク質を形成する、二機能性分子に関する。
【0267】
好ましくは、抗体又はその抗体断片は、IgG1ドメイン又はIgG4Fcドメインを有する。
【0268】
一態様では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメインを有し、更により好ましくは、IgG1 Fcドメインは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有する。
【0269】
別の態様では、抗体又はその抗体断片は、任意選択でS228P;L234A/L235A、S228P+M252Y/S254T/T256E、及びK444Aからなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG4 Fcドメインを有し、更により好ましくは、IgG4 Fcドメインは、上記に記載のもの等、変異S228Pを有する。
【0270】
任意選択で、上記で指定の実施形態のいずれかでは、IL-7は、IL-7バリアント又は変異体である。
【0271】
より詳細には、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示し、そのようなIL-7バリアントは、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減させ、ii) IL-7Rを活性化する能力を保持し、及びiii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。より好ましくは、そのような変異体は、i)IL-7Rに対するwth-IL-7の親和性と比較して、IL-7受容体(IL-7R)に対するIL-7バリアントの親和性を低減し、及びii)wth-IL-7を含む二機能性分子と比較して、IL-7バリアントを含む二機能性分子の薬物動態を向上させる。
【0272】
より具体的には、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号51に示されているアミノ酸配列を含むか又はからなる野生型ヒトIL-7(wth-IL-7)と少なくとも75%同一性を示してもよく、そのようなIL-7バリアントは、(i)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129S、(ii)W142H、W142F、若しくはW142Y、(iii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、iv)Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/若しくはK81R、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。
【0273】
IL-7バリアント又は変異体は、C2S-C141S及びC47S-C92S(「SS2」と称する)、C2S-C141S及びC34S-C129S(「SS1」と称する)、並びにC47S-C92S及びC34S-C129S(「SS3」と称する)からなる群から選択される置換の少なくとも1つのセットを含んでいてもよい。こうした変異は、配列番号51に示されるアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、配列番号53~55(それぞれ、SS1、SS2、及びSS3)に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、アミノ酸置換C2S-C141S及びC47S-C92Sを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号54に示されている配列を示す。
【0274】
IL-7バリアント又は変異体は、W142H、W142F、及びW142Yからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含んでいてもよい。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ配列番号57~58に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、変異W142Hを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号56に示されている配列を示す。
【0275】
IL-7バリアント又は変異体は、D74E、D74Q、及びD74Nからなる群から選択される少なくとも1つの変異、好ましくはD74E又はD74Qを含んでいてもよい。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ配列番号63~65に示されている配列に具体的に記載されている。好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、変異D74Eを含む。更により好ましくは、IL-7バリアント又は変異体は、配列番号63に示されている配列を示す。
【0276】
IL-7バリアント又は変異体は、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、及び/又はK81Rからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含んでいてもよい。こうした変異は、配列番号51に示されているアミノ酸の位置を指す。そのようなIL-7バリアント又は変異体は、それぞれ、配列番号59、60、61、62、及び66に示されている配列に具体的に記載されている。
【0277】
IL-7バリアント又は変異体は、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はiii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異を含んでいてもよい。
【0278】
IL-7バリアント又は変異体は、W142H置換と、i)D74E、D74Q、若しくはD74N、好ましくはD74E若しくはD74Q、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含んでいてもよい。
【0279】
IL-7バリアント又は変異体は、D74E置換と、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、並びに/又はii)C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、若しくはC47S-C92S及びC34S-C129Sからなる少なくとも1つの変異とを含んでいてもよい。
【0280】
IL-7バリアント又は変異体は、変異C2S-C141S及びC47S-C92Sと、i)W142H、W142F、若しくはW142Y、及び/又はii)D74E、D74Q、若しくはD74Nからなる少なくとも1つの置換とを含んでいてもよい。
【0281】
IL-7バリアント又は変異体は、i)D74E及びW142H置換、並びにii)変異C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、又はC47S-C92S及びC34S-C129Sを含んでいてもよい。
【0282】
IL-7バリアント又は変異体は、配列番号53、54、55、56、57、58、63、64、又は65に示されているアミノ酸配列を含んでいてもよく又はからなっていてもよい。
【0283】
特定の態様では、IL-7は、本発明によるIL-7バリアントであり、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメインを有し、更により好ましくは、IgG1 Fcドメインは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有する。好ましくは、抗体又はその断片は、(GGGGS)3、(GGGGS)4、及び(GGGS)3からなる群から選択されるリンカーにより、より好ましくは(GGGGS)3により、IL-7又はそのバリアントに連結されている。好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。より好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。更により好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、及びD74Eからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。
【0284】
特定の態様では、本発明による二機能性分子は、
(a)免疫細胞表面、好ましくはT細胞上に発現される標的と特異的に結合し、より好ましくは標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択される、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片、
(b)配列番号51のヒトインターロイキン7又はそのバリアント若しくは断片、並びに
(c)任意選択で、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択される、好ましくは(GGGGS)3であるペプチドリンカー
を含むか又はからなる融合タンパク質である。
【0285】
二機能性抗PD-1分子に関して開示されている上記で詳述されている具体的な態様及び実施形態の全て及びいずれかを、こうした代替的二機能性分子に適用することができる。
【0286】
特定の態様では、本明細書の上記に記載のもの等の抗体又はその抗体断片は、免疫細胞表面、好ましくはT細胞上に発現される標的と特異的に結合し、より好ましくは標的は、PD-1、CD28、CD80、CTLA-4、BTLA、TIGIT、CD160、CD40L、ICOS、CD27、OX40、4-1BB、GITR、HVEM、Tim-1、LFA-1、TIM3、CD39、CD30、NKG2D、LAG3、B7-1、2B4、DR3、CD101、CD44、SIRPG、CD28H、CD38、CXCR5、CD3、PDL2、CD4、及びCD8からなる群、好ましくはPD-1、TIM3、CD244、LAG-3、BTLA、TIGIT、及びCD160からなる群から選択され;IL-7は、本発明によるIL-7バリアントであり、抗体又はその抗体断片は、任意選択でT250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F;E233P/L234V/L235A/G236A+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297A;L234A/L235A;N297A+M252Y/S254T/T256E;K322A;及びK444Aからなる群から選択される、好ましくは、任意選択でM252Y/S254T/T256Eと組み合わせたN297A、及びL234A/L235からなる群から選択される置換又は置換の組合せを有するIgG1 Fcドメインを有し、更により好ましくは、IgG1 Fcドメインは、上記に記載のもの等の、変異N297Aを有する。好ましくは、抗体又はその断片は、(GGGGS)3、(GGGGS)4、及び(GGGS)3からなる群から選択されるリンカーにより、より好ましくは(GGGGS)3により、IL-7又はそのバリアントに連結されている。好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、C47S-C92S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。より好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、W142F、W142Y、D74E、D74Q、並びにD74Nからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。更により好ましくは、IL-7バリアントは、C2S-C141S及びC47S-C92S、C2S-C141S及びC34S-C129S、W142H、及びD74Eからなる群から選択されるアミノ酸置換の群を含む。
【0287】
それらの特異的標的に対する二機能性分子の結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)、又はウエスタンブロットアッセイにより確認することができる。こうしたアッセイの各々では、概して、目的の複合体に対して特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することにより、特定の目的のタンパク質-抗体複合体の存在が検出される。例えば、抗hPD-1抗体/IL-7複合体は、例えば、IL-7又はIL-7の受容体を認識し、特異的に結合する酵素連結抗体又は抗体断片を使用して検出することができる。
【0288】
一部の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、PD-1シグナル伝達経路を、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも100%、又は少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、少なくとも50分の1、少なくとも100分の1、若しくは少なくとも1000分の1に抑制する。
【0289】
好ましくは、そのような二機能性分子は、PD-1とそのリガンド(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)との相互作用を阻止又は阻害する能力を有する。ある特定の実施形態では、二機能性分子は、PD-1とそのリガンド(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)との結合相互作用を少なくとも50%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は、60%よりも大きくてもよく、70%よりも大きくてもよく、80%よりも大きくてもよく、又は90%よりも大きくてもよい。
【0290】
一部の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、PD-1シグナル伝達経路を、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも100%、又は少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、少なくとも50分の1、少なくとも100分の1、若しくは少なくとも1000分の1に抑制する。
【0291】
一部の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、IFNガンマ分泌並びに/又はアルファ4及びベータ7を刺激する。
【0292】
別の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、腫瘍におけるT細胞浸潤を促進する。
【0293】
一部の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、IL-7Rシグナル伝達経路を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも100%、又は少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、若しくは少なくとも1000倍刺激する。
【0294】
他の態様では、本明細書に記載の二機能性分子は、野生型IL-7と比較して実質的に等価な生物学的IL-7特性を保持する。例えば、完全長IL-7タンパク質と同等の生物学的特性を保持する。IL-7タンパク質の生物学的活性は、in vitro細胞増殖アッセイを使用して、又はELISA若しくはFACSでT細胞のP-Stat5を測定することにより測定することができる。好ましくは、本明細書に記載のIL-7二機能性分子は、野生型ヒトIL-7と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%の、好ましくは、野生型IL-7と比較して少なくとも80%、90%、95%、更により好ましくは99%の生物学的活性を維持する。例えば、生物学的活性は、本明細書に記載の二機能性分子がIL-7Rに結合する能力及び/又はIL-7Rに対する結合を野生型IL-7と競合する能力を測定することにより評価することができる。
【0295】
別の例では、本明細書に記載の二機能性分子は、サイトカイン分泌、並びに/又は未感作の部分的に疲弊した及び/若しくは完全に疲弊したT細胞サブセットの増殖を誘導する。
【0296】
二機能性分子の調製 - 二機能性分子コードする核酸分子、それらを含む組換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明の二機能性分子を生成するため、本発明の抗hPD1抗体は、IL-7又はそのバリアントに機能的に連結されている。
【0297】
二機能性分子の両実体は、同じベクターにコードされ、融合タンパク質として産生される。したがって、本明細書に記載の二機能性分子のいずれかをコードする核酸、そうした核酸を含む発現ベクター又は組換えウイルス等のベクター、並びに核酸及び/又はベクターを含む宿主細胞も、本明細書に開示されている。
【0298】
哺乳動物細胞により安定形態で分泌される、本発明による二機能性融合タンパク質を産生するため、二機能性分子をコードする核酸配列を、哺乳動物細胞をトランスフェクトするために一般に使用される発現ベクターにサブクローニングする。抗体配列を含む分子を産生するための基本技法は、Coliganら(編)、Current protocols in immunology、10.19.1~10.19.11頁(Wiley Interscience社、1992年)(この文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に、及び分子の産生に関連する論評が、対応する本文に散在している、W. H. Freeman and Company社の「Antibody engineering: a practical guide」(1992年)に記載されている。
【0299】
一般に、そのような方法は、
(1)適切な宿主細胞を、本発明の組換え二機能性分子をコードするポリヌクレオチド又はそのバリアント又は上記ポリヌクレオチドを含有するベクターでトランスフェクト又は形質転換する工程、
(2)宿主細胞を適切な培地で培養する工程、及び
(3)任意選択で、タンパク質を、培地又は宿主細胞から単離又は精製する工程
を含む。
【0300】
本発明は、上記に開示の通りの二機能性分子をコードする核酸、本発明の核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクター、本発明のベクターで又は組換え二機能性分子をコードする配列で直接的に形質転換された遺伝子操作宿主細胞、及び組換え技法により本発明のタンパク質を産生するための方法に更に関する。
【0301】
核酸、ベクター、及び宿主細胞は、本明細書の下記でより詳細に記載されている。
【0302】
核酸配列
また、本発明は、上記で規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子、又は上記で規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子の群に関する。
【0303】
抗体DNA配列は、例えば、免疫グロブリンを合成する細胞のRNAから増幅してもよく、クローニングした免疫グロブリンを用いたPCRを使用して合成してもよく、既知のシグナルペプチドアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドにより合成してもよい。
【0304】
好ましくは、ペプチドシグナルは、VH及び/若しくはCHについては配列番号49のアミノ酸配列を含むか若しくはからなり、並びに/又はVL及び/若しくはCLについては配列番号50のアミノ酸配列を含むか若しくはからなる。特に、ペプチドシグナルは、CH、VH、CL、及び/又はVLのN末端に存在する。
【0305】
そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。そのような核酸は、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定することができる。
【0306】
特に、上記に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 本明細書に開示の通りの抗hPD-1抗体の可変重鎖ドメインをコードし、任意選択で配列番号49のペプチドシグナルを有する第1の核酸分子、及び
- 本明細書に開示の通りの抗hPD-1抗体の可変軽鎖ドメインをコードし、任意選択で配列番号50のペプチドシグナルを有する第2の核酸分子、及び
- IL-7又はそのバリアント、好ましくはヒトIL-7又はそのバリアントをコードし、任意選択でペプチドリンカーをコードする核酸を介して、第1の核酸若しくは第2の核酸のいずれか又は両方に作動可能に連結した第3の核酸
を含む。
【0307】
好ましくは、上記に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 配列番号17の可変重鎖ドメインをコードし、配列中、X1はD又はEであり、X2は、T、H、A、Y、N、E、及びSからなる群から、好ましくは、H、A、Y、N、及びEからなる群において選択され、任意選択で配列番号49のペプチドシグナルを有する第1の核酸分子、並びに
- 配列番号26の可変軽鎖ドメインをコードし、配列中XはG又はTであり、任意選択で配列番号50のペプチドシグナルを有する第2の核酸分子、並びに
- 配列番号51、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、又は63のヒトIL-7又はそのバリアント若しくは断片をコードし、任意選択でペプチドリンカーをコードする核酸を介して、第1の核酸若しくは第2の核酸のいずれか又は両方に作動可能に連結した第3の核酸分子
を含む。
【0308】
好ましくは、上記に規定の通りの二機能性分子をコードする核酸分子は、
- 配列番号18、19、20、21、22、23、24、又は25に示されているアミノ酸配列の可変重鎖ドメインをコードし、任意選択で配列番号49のペプチドシグナルを有する第1の核酸分子、及び
- 配列番号27又は配列番号28に示されているアミノ酸配列の可変軽鎖ドメインをコードし、任意選択で配列番号50のペプチドシグナルを有する第2の核酸分子、及び
- 配列番号51、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、又は63のヒトIL-7又はそのバリアントをコードし、任意選択でペプチドリンカーをコードする核酸を介して、第1の核酸若しくは第2の核酸のいずれか又は両方に作動可能に連結した第3の核酸分子
を含む。
【0309】
非常に特定の実施形態では、可変重鎖ドメインをコードする核酸分子は、配列番号73に示されている配列を有し、及び/又は可変軽鎖ドメインをコードする核酸分子は、配列番号74に示されている配列を有する。
【0310】
「作動可能に連結した」とは、核酸が、可変重鎖又は軽鎖ドメイン、任意選択でペプチドリンカー、及びIL-7を含むタンパク質融合体をコードすることを意図する。好ましくは、リンカーは、(GGGGS)3、(GGGGS)4、(GGGGS)2、GGGGS、GGGS、GGG、GGS、及び(GGGS)3からなる群から選択され、更により好ましくは(GGGGS)3である。
【0311】
一実施形態では、核酸分子は、単離された、特に非天然の核酸分子である。
【0312】
本発明による二機能性分子をコードする核酸分子又は核酸分子の群は、好ましくは、ベクター又はベクターの群に含まれる。
【0313】
ベクター
別の態様では、本発明は、上記で規定の通りの核酸分子又は核酸分子の群を含むベクターに関する。
【0314】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、遺伝物質を細胞内へと移行させるためのビヒクルとして使用される核酸分子である。「ベクター」という用語は、プラスミド、ウイルス、コスミド、及び人工染色体を包含する。一般に、遺伝子操作されたベクターは、複製起点、マルチクローニングサイト、及び選択可能なマーカーを含む。ベクターはそれ自体が、概して、インサート(導入遺伝子)、及びベクターの「骨格」としての役目を果たすより大きな配列を含むヌクレオチド配列、一般的にはDNA配列である。現代的なベクターは、導入遺伝子インサート及び骨格の他の追加特徴:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、標的指向性配列、タンパク質精製タグを包含してもよい。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、特に、標的細胞において導入遺伝子を発現させるためのものであり、一般に、制御配列を有する。
【0315】
一実施形態では、重鎖コード配列及び軽鎖コード配列の両方、並びに/又は抗PD1抗体の定常領域が、1つの発現ベクターに含まれている。重鎖コード配列及び軽鎖コード配列は各々、好適なプロモーターに作動可能に連結していてもよく、重鎖及び/又は軽鎖は、本発明による免疫療法剤に作動可能に連結している。或いは、重鎖及び軽鎖の発現は両方とも、同じプロモーターにより駆動されてもよい。別の実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖は各々、個々のベクターにクローニングされており、重鎖及び軽鎖の一方又は両方、重鎖及び/又は軽鎖は、本発明による免疫療法剤に作動可能に連結している。後者の場合、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを、両鎖の発現のために1つの宿主細胞に共トランスフェクトすることができ、両鎖はアセンブリして、in vivo又はin vitroのいずれでもインタクト抗体を形成することができる。或いは、重鎖及び軽鎖の各々を発現させるために、重鎖をコードする発現ベクター及び軽鎖をコードする発現ベクターを異なる宿主細胞に導入してもよく、次いで、それらを精製及びアセンブリして、in vitroでインタクト抗体を形成してもよい。
【0316】
当業者であれば、ヒト化抗PD-1抗体又はその抗体断片をコードする核酸分子をベクターにクローニングし、次いで宿主細胞へと形質転換することができる。したがって、本発明は、本発明の抗PD-1抗体又はその断片をコードする核酸分子を含む組換えベクターも提供する。1つの好ましい実施形態では、発現ベクターは、プロモーター、及び分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列、及び任意選択で、スクリーニングのための少なくとも1つの薬物耐性遺伝子を更に含む。
【0317】
好適な発現ベクターは、典型的には、(1)細菌複製起点をコードする原核生物DNAエレメント並びに細菌宿主での発現ベクターの成長及び選択を提供するための抗生物質耐性マーカー;(2)プロモーター等の、転写開始を制御する真核生物DNAエレメント;(3)転写終結/ポリアデニル化配列等の、転写物のプロセシングを制御するDNAエレメントを含有する。
【0318】
当業者に公知である方法を使用して、本明細書に記載の二機能性分子の核酸配列及び転写/翻訳のための適切な調節性成分を含有する発現ベクターを構築することができる。こうした方法としては、in vitro組換えDNA技法、DNA合成技法、in vivo組換え技法等が挙げられる。DNA配列は、発現ベクターにおいてmRNAの合成を指図するための適正なプロモーターに効率的に連結されている。発現ベクターは、翻訳を開始するためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーター等を更に含んでいてもよい。
【0319】
発現ベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、及びエレクトロポレーション等を含む様々な技法を使用して宿主細胞に導入することができる。好ましくは、発現ベクターが、安定形質転換体を産生するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれたトランスフェクト細胞を選択し、増殖させる。ベクターを真核細胞に導入するための技法及び優勢選択マーカーを使用して安定形質転換体を選択するための技法は、Sambrook、Ausubel、Bebbington、「Expression of Antibody Genes in Nonlymphoid Mammalian Cells」 in 2 METHODS: A companion to methods in enzymology 136巻(1991年)、及びMurray(編)、Gene transfer and expression protocols (Humana Press社1991年)に記載されている。好適なクローニングベクターは、Sambrookら(編)、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第二版(Cold Spring Harbor Press社1989年)(以降は「Sambrook」);Ausubelら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Wiley Interscience社1987年)(以降は「Ausubel」);及びBrown(編)、MOLECULAR BIOLOGY LABFAX(Academic Press社1991年)に記載されている。
【0320】
宿主細胞
別の態様では、本発明は、例えば、二機能性分子を産生する目的のための、上記で規定の通りのベクター又は核酸分子又は核酸分子の群を含む宿主細胞に関する。
【0321】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体構築物をコードするベクター、外因性核酸分子、及びポリヌクレオチドのレシピエント;並びに/又は抗体構築物若しくは二機能性分子自体のレシピエントであり得るか又はレシピエントである任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図される。それぞれの物質の細胞への導入は、形質転換及びトランスフェクション等により実施することができる。また、「宿主細胞」という用語は、単一細胞の子孫又は潜在的な子孫を含むことが意図されている。好適な宿主細胞としては、原核細胞又は真核細胞が挙げられ、これらに限定されないが、細菌、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞、並びに昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばマウス、ラット、ウサギ、マカク、又はヒト等の動物細胞も挙げられる。
【0322】
一実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/若しくは抗体のVHを含むアミノ酸配列及び/若しくは抗体の定常領域をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。
【0323】
別の実施形態では、宿主細胞は、二機能性分子の実体を両方とも含むベクターを含む(例えば、形質転換されている)。好ましくは、宿主細胞は、IL-7又はそのバリアント若しくは変異体、好ましくはヒトIL-7又はそのバリアントをコードする第3の核酸に作動可能に連結した、本明細書で開示の通りの抗hPD-1抗体の可変重鎖ドメインをコードする第1の核酸分子及び本明細書で開示の通りの抗hPD-1抗体の可変軽鎖ドメインをコードする第2の核酸分子を含むベクターを含む(例えば、形質転換されている)。
【0324】
また、ヒト化抗PD1抗体を産生するための方法が本明細書で提供される。本方法は、抗体の発現に好適な条件下で、上記で提供されている通りの抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する工程、及び任意選択で宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収する工程を含む。特に、ヒト化抗PD1抗体の組換え生産の場合、例えば、上記に記載の通りの抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞での更なるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入する。
【0325】
本発明の二機能性分子は、好ましくは、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、又は酵母細胞等の真核細胞にて発現される。哺乳動物細胞は、グリコシル化等の好適な翻訳後修飾を提供するため、特に好ましい真核生物宿主である。好ましくは、そのような好適な真核生物宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の真菌;ミチムナ・セパラテ(Mythimna separate)等の昆虫細胞;タバコ等の植物細胞;並びにBHK細胞、293細胞、CHO細胞、NSO細胞、及びCOS細胞等の哺乳動物細胞であってもよい。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40遺伝子を有するCV-1由来細胞(CV-1 in Origin with SV40 genes cell)(COS細胞)、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham, F.L.ら、J. Gen Virol.、36巻(1977年)59~74頁に記載の通りの293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P.、Biol. Reprod.、23巻(1980年)243~252頁に記載の通りのTM4細胞);ヒト上皮腎臓細胞(HEK細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えば、Mather, J.P.ら、Annals N.Y. Acad. Sci.、383巻(1982年)44~68頁に記載の通りのTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR" CHO細胞(Urlaub, G.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻(1980年)4216~4220頁)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;並びにY0、NSO、及びSp2/0等のミエローマ細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説は、例えば、Yazaki, P.及びWu, A.M.、Methods in Molecular Biology、248巻、Lo, B.K.C.(編)、Humana Press社、トトワ、米国ニュージャージー州(2004年)、255~268頁を参照されたい。例えば、懸濁中での成長に適した哺乳動物細胞株が有用であり得る。
【0326】
特に、本発明の宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、及びHEK細胞からなる群から選択される。
【0327】
哺乳動物宿主の場合、発現ベクターの転写及び翻訳調節シグナルは、アデノウイルス、ウシパピローマウイル、又はサルウイルス等のウイルス源に由来してもよく、調節シグナルは、高レベルの発現を示す特定の遺伝子に関連付けられている。また、好適な転写及び翻訳調節配列は、アクチン遺伝子、コラーゲン遺伝子、ミオシン遺伝子、及びメタロチオネイン遺伝子等の哺乳動物遺伝子から得ることができる。
【0328】
本発明による二機能性分子を産生する安定形質転換体は、様々な方法を使用して同定することができる。分子産生細胞を同定した後、宿主細胞を、それらの成長及び二機能性分子の発現に好適な条件下(例えば、温度、培地)で培養する。次いで、二機能性分子を、当技術分野で公知の任意の方法により単離及び/又は精製する。こうした方法としては、これらに限定されないが、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩沈殿等)、遠心分離、浸透による細胞溶解、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー又はゲルクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、任意の他の液体クロマトグラフィー、及びそれらの組合せが挙げられる。例えばColiganよる記載の通り、二機能性分子単離技法としては、特に、プロテインAセファロースによる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを挙げることができる。本発明の二機能性分子の単離には、好ましくは、プロテインAが使用される。
【0329】
医薬組成物及びその投与方法
また、本発明は、本明細書に記載の二機能性分子、本明細書の上記で開示の通りの核酸分子、核酸分子の群、ベクター、及び/又は宿主細胞のいずれかを、好ましくは活性成分又は化合物として含む医薬組成物に関する。製剤は、滅菌することができ、所望の場合は、本発明の二機能性分子、本発明の核酸、ベクター、及び/又は宿主細胞と有害な相互作用をしない薬学的に許容される担体及び賦形剤等の助剤と混合することができる。任意選択で、医薬組成物は、下記に詳述されている通りの追加の療法剤を更に含んでいてもよい。
【0330】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、本明細書の下記に記載の通りの1つ又は複数の薬学的に又は生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、塩、及び抗酸化剤と組み合わせて、本明細書に記載の通りの二機能性分子、本明細書の上記に記載の通りの核酸分子、核酸分子の群、ベクター、及び/又は宿主細胞を含んでいてもよい。望ましくは、本発明による二機能性分子の所望の免疫強化効果に悪影響を及ぼさない薬学的に許容される形態が使用される。投与を容易にするために、本明細書に記載の通りの二機能性分子を、in vivo投与用の医薬組成物へと製作することができる。そのような組成物を製作するための手段は、当技術分野に記載されている(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins社、第21版(2005年)を参照)。
【0331】
特に、本発明による医薬組成物は、局所投与、経腸投与、経口投与、非経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、又は眼内投与等を含む、任意の従来の投与経路用に製剤化することができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、経腸投与経路又は非経口投与経路用に製剤化される。非経口投与用の組成物及び製剤は、緩衝剤、希釈剤、並びにこれらに限定されないが、浸透促進剤、カーダー化合物(carder compound)、及び他の薬学的に許容される担体又は賦形剤等の他の好適な添加剤も含有し得る滅菌水性溶液を含んでいてもよい。
【0332】
医薬組成物は、所望の純度を有する物質を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980年))と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態に調製することができる。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度においてレシピエントに無毒性であり、以下のものが挙げられる:リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤。
【0333】
固形の薬学的に許容されるビヒクルは、香味料、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、色素、フィラー、流動促進剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味料、保存剤、色素、コーティング、又は錠剤崩壊剤としても作用し得る1つ又は複数の物質を含んでいてもよい。好適な固形ビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、及びイオン交換樹脂が挙げられる。薬学的に許容される担体としては、無菌注射用溶液又は分散体の即時調製用の無菌水性溶液又は分散体及び無菌粉末が挙げられる。任意の従来の媒体又は物質が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。
【0334】
本発明による二機能性分子は、水、有機溶媒、エタノール、及びポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)等の薬学的に許容される液体ビヒクル、薬学的に許容される油若しくは脂肪又は両方の混合物、並びにそれらの好適な混合物に溶解又は懸濁することができる。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、湿潤剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤、又は浸透圧調節剤等の他の好適な医薬添加物を含有することができる。経口及び経腸投与用の液体ビヒクルの好適な例としては、水(上記のような添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコールを含む)及びそれらの誘導体、並びに油(例えば、分留ココナッツ油及びピーナッツ油)が挙げられる。非経口投与の場合、ビヒクルは、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピル等の油性エステルであってもよい。滅菌液体ビヒクルは、経腸投与用の滅菌液体形態組成物に有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素又は他の薬学的に許容される噴射剤であってもよい。
【0335】
本発明の医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される塩を更に含んでいてもよい。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的効果を与えない塩を指す。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、及び亜リン酸等の非毒性無機酸に由来するもの、並びに脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の非毒性有機酸に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に由来するもの、並びにN,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、及びプロカイン等の非毒性有機アミンに由来するものが挙げられる。
【0336】
また、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、及びアルファ-トコフェロール等の油溶性抗酸化剤;並びにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、及びリン酸等の金属キレート剤が挙げられる。
【0337】
送達を容易にするために、二機能性分子又はそのコード核酸のいずれかを、シャペロン剤とコンジュゲートしてもよい。シャペロン剤は、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、低密度リポタンパク質、又はグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、又はヒアルロン酸)、又は脂質等の天然に存在する物質であってもよい。また、シャペロン剤は、合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸等の、組換え又は合成分子であってもよい。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)、ポリLアスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリエド)コポリマー(poly(L-lactide-co-glycolied)copolymer)、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、及びポリホスファジンが挙げられる。一例では、シャペロン剤は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、又はミクロスフェアである。そのようなミセル、リポソーム、ナノ粒子、又はミクロスフェアを調製するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;及び第5,527,5285号を参照されたい。
【0338】
医薬組成物は、典型的には、製造及び保管の条件下で無菌及び安定でなければならない。医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に好適な及び/若しくは注射に好適な他の規則正しい構造として製剤化することができる。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングを使用することにより、分散体の場合は、必要とされる粒径を維持することにより、及び界面活性剤を使用することにより維持することができる。
【0339】
一実施形態では、医薬組成物は、植物油、ジメチルアクタミド(dimethylactamide)、ジメチホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)等の種々の担体を含有していてもよい注射用組成物である。静脈内注射の場合、水溶性抗体を点滴法で投与することができ、抗体及び生理学的に許容される賦形剤を含有する製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤としては、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液、又は他の好適な賦形剤を挙げることができる。筋肉内製剤、例えば、抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液等の薬学的賦形剤に溶解し、投与することができる。
【0340】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙されている成分の1つ又は組合せを有する適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、続いて必要に応じて滅菌精密濾過を行うことにより調製することができる。一般に、分散体は、基本分散媒及び上記に列挙されているものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、以前に滅菌濾過された溶液から有効成分+任意の追加の所望の成分の粉末が得られる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることによりもたらすことができる。
【0341】
微生物存在の防止は、滅菌手順、並びに種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばクロロブタノール、フェノール、及びソルビン酸等の含有の両方により保証することができる。また、糖及び塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めることが望ましい場合がある。加えて、注射用薬学的形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の、吸収を遅延させる物質の含有によりもたらすことができる。
【0342】
当業者であれば、本発明の製剤はヒト血液と等張性であってもよく、つまり、本発明の製剤はヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを理解するだろう。そのような等張性製剤は、一般に、約250mOSm~約350mOSmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧型又は氷点降下型(ice-freezing type)浸透圧計により測定することができる。製剤の張性は、張性調整剤を使用して調整される。「張性調整剤」は、製剤の等張性を提供するために製剤に添加することができる薬学的に許容される不活性物質である。本発明に好適な張性調整剤としては、これらに限定されないが、サッカライド、塩、及びアミノ酸が挙げられる。
【0343】
本発明による医薬組成物は、投与の実質的直後に、又は投与後の任意の所定の時点若しくは期間に、有効成分(例えば、本発明の二機能性分子)を放出するように製剤化してもよい。一部の態様では、医薬組成物には、組成物の送達が、治療しようとする部位の感作の前に及び感作を引き起こすのに十分な時間で生じるように、時限放出送達系、遅延放出送達系、及び持続放出送達系を使用することができる。当技術分野で公知の手段を使用して、標的組織又は臓器に到達するまで組成物の放出及び吸収を防止又は最小化するか、又は組成物の時限放出を保証することができる。そのような系は、組成物の反復投与を回避することができ、それにより対象及び医師の利便性を高める。
【0344】
担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、治療される対象、及び特定の投与様式に応じて様々であろう。担体物質と組み合わせて単一剤形を生成することができる活性成分の量は、一般に、療法効果を生み出す組成物の量であろう。
【0345】
対象、レジメン、及び投与
本発明は、医薬として使用するための、又は疾患の治療に使用するための、又は対象に投与するための、又は医薬として使用するための、本明細書で開示の通りの二機能性分子;それをコードする核酸若しくはベクター、宿主細胞、又は医薬組成物、核酸、ベクター、又は宿主細胞に関する。また、本発明は、対象の疾患を治療するための医薬の製造における、本発明の医薬組成物、核酸、ベクター、若しくは宿主細胞、又は抗PD1抗体若しくはその抗体断片及びIL-7若しくはそのバリアントを含む二機能性分子の使用に関する。最後に、本発明は、対象の疾患又は障害を治療するための方法であって、治療有効量の医薬組成物又は抗PD1抗体若しくはその抗体断片及びIL-7若しくはそのバリアントを含む二機能性分子を対象に投与する工程を含む方法に関する。治療の例は、本明細書の下記の「方法及び使用」のセクションでより詳細に説明されている。
【0346】
治療する対象は、ヒト、特に出生前段階のヒト、新生児、子供、乳児、青年、又は成人、特に、少なくとも30歳、40歳の成人、好ましくは少なくとも50歳の成人、更により好ましくは少なくとも60歳の成人、更にいっそう好ましくは少なくとも70歳の成人であってもよい。
【0347】
特に、対象は、PD-1/PD-L1経路が関与し得る疾患、特に、PD-1のリガンドの少なくとも1つ(例えば、PD-L1及び/又はPD-L2)又はPD-1が発現される、特に過剰発現される疾患に罹患している。好ましくは、対象は、がん、更により好ましくはPD1、PD-L1、及び/若しくはPD-L2陽性がん、又はPD-1陽性がんに罹患している。疾患及びがんの例は、本明細書の下記の「方法及び使用」のセクションでより詳細に説明されている。
【0348】
特定の実施形態では、対象は、抗PD1抗体若しくはその抗体断片及びIL-7若しくはそのバリアントを含む本発明による二機能性分子又は本発明による医薬組成物の投与前に、少なくとも1つの治療、好ましくは幾つかの治療方針をすでに受けている。
【0349】
医学分野の当業者に公知である従来法を使用して、治療しようとする疾患のタイプ又は疾患の部位に応じて、本明細書で開示の通りの二機能性分子又は医薬組成物を対象に投与することができる。本組成物は、従来の経路で投与することができ、例えば、経口的に、非経口的に、経腸的に、吸入スプレーで、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、又は移植リザバーを介して投与することができる。「非経口的」という用語は、本明細書で使用される場合、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、腫瘍内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内の注射又は注入技法を含む。非経口的に投与される場合、本発明による医薬組成物は、好ましくは静脈内投与経路により投与される。経腸的に投与される場合、本発明による医薬組成物は、好ましくは経口投与経路により投与される。本組成物は、局所的に投与することもできる。
【0350】
医薬組成物の形態、本発明による医薬組成物又は二機能性分子の投与経路及び投与用量は、当業者であれば、感染症のタイプ及び重症度、患者、特に患者の年齢、体重、性別、及び全身健康状態に応じて調整することができる。本発明の組成物は、局所的治療が所望であるか又は全身的治療が所望であるかに応じて、幾つかの様式で投与することができる。
【0351】
好ましくは、本発明による二機能性分子での又は医薬組成物での治療は、定期的に、好ましくは毎日、毎週、又は毎月、より好ましくは毎日~1、2、3、又は4週間毎で投与される。特定の実施形態では、治療は、1日数回、好ましくは1日2回又は3回投与される。
【0352】
本発明による二機能性分子での又は医薬組成物での治療期間は、好ましくは1日~20週間、より好ましくは1日~10週間、更により好ましくは1日~4週間、更にいっそう好ましくは1日~2週間に含まれる。或いは、治療は、疾患が存続する限り継続させてもよい。
【0353】
本明細書に開示の二機能性分子は、約1ng/kg体重~約30mg/kg体重、1μg/kg~約20mg/kg、10μg/kg~約10mg/kg、又は100μg/kg~5mg/kgの有効用量範囲で、任意選択で1、2、3、又は4週間毎に、好ましくは非経口投与又は経口投与により、特に静脈内投与又は皮下投与により提供することができる。
【0354】
特に、本発明による二機能性分子は、治療用量未満の用量で投与してもよい。「治療用量未満の用量」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患を治療するために一般的に使用される有効単剤療法投与量レベルを下回る用量、又は抗hPD1抗体による有効単剤療法に現在のところ典型的には使用されていない用量を指す。
【0355】
方法及び使用
疾患の処置における使用
本発明の二機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞、組成物及び方法は、多数のインビトロ及びインビボでの有用性並びに適用を有する。例えば、本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞及び/又は医薬組成物は、療法剤、診断剤及び医薬研究として使用することができる。特に、本明細書において提供される二機能性分子、核酸分子、核酸分子の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物のいずれかが、治療方法において、及び/又は治療目的のため使用されてもよい。特に、本明細書において提供される二機能性分子、核酸、ベクター又は医薬組成物は、任意の疾患又は状態、好ましくは、がん、自己免疫疾患、及び感染症又はT細胞機能障害等の免疫不全と関連する他の疾患等のPD-1に関与する任意の疾患又は状態の処置に有用であり得る。なおより好ましくは、本発明は、それを必要とする対象におけるがん、感染性疾患及び慢性ウイルス感染症からなる群から選択される疾患及び/又は障害の処置の方法であって、当該対象に、有効量の上で定義された二機能性分子又は医薬組成物を投与する工程を含む方法に関する。このような疾患の例は、本明細書において以下でより具体的に記載される。
【0356】
特に、本発明による二機能性分子は、PD-1/PD-L1/PD-L2経路とIL7経路の両方を標的にするので、「二機能性チェックポイント阻害剤」と呼ばれる。
【0357】
本発明は、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合の阻害により予防されるか、又は処置され得る病理、疾患及び/又は障害の処置における使用のための、二機能性分子、核酸、核酸の群若しくはそれをコードするベクター、又はそれを含む医薬組成物に特に関する。
【0358】
本発明による二機能性分子は、CD127+免疫細胞、特に、CD127+T細胞を標的にする。このような細胞は、以下の具体的な対象範囲:リンパ節中の常在性リンパ球系細胞(主に、傍皮質内、濾胞における時々の細胞を含む)、扁桃腺(濾胞間領域)、脾臓(主に、白色髄の細動脈周囲のリンパ球系鞘(PALS)及び赤色髄における一部の点在する細胞)、胸腺(主に、髄質中;又は皮質中)、骨髄(点在して分布)、消化管(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、直腸)中のGALT(腸管関連リンパ組織、主に、濾胞間領域及び粘膜固有層中)、胆嚢のMALT(粘膜関連リンパ組織)において見られ得る。それ故、本発明の二機能性分子は、これらの範囲、特に、がんに位置するか、又はそれらが関与する疾患を処置するのに特に興味深い。
【0359】
したがって、疾患、特に、PD-1及び/又はPD-1/PD-L1及び/又はPD-1/PD-L2シグナル伝達経路と関連する疾患を処置する方法であって、処置を必要とする対象に、有効量の本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物のいずれかを投与する工程を含む方法が、本明細書において開示される。患者の生理学的データ(例えば、年齢、大きさ、及び体重)並びに投与経路も、治療有効量が患者に投与されるように、適当な投薬量を決定するために考慮されなければならない。
【0360】
別の態様では、本明細書において開示される二機能性分子は、免疫を増強するために、好ましくは、障害及び/又は疾患を処置するために、対象に、例えば、インビボで投与することができる。したがって、一態様では、本発明は、対象における免疫応答を修正する方法であって、対象における免疫応答が修正されるように、対象に、本発明の二機能性分子、核酸、ベクター又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。好ましくは、免疫応答は、増強されるか、増大されるか、刺激されるか又は上方調節される。二機能性分子又は医薬組成物を使用して、処置を必要とする対象におけるT細胞活性化のような免疫応答を増強することができる。免疫応答の増強は、PD-L1及び/又はPD-L2のPD-1への結合の阻害をもたらし、これにより、免疫抑制環境を低減し、ヒトT細胞の増殖及び/若しくは活性化並びに/又はヒトPBMCによるIFNγ分泌を刺激することができる。
【0361】
本発明は、特に、対象における免疫応答を増強する方法であって、対象における免疫応答が増強されるように、対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0362】
一部の実施形態では、本明細書において記載される二機能性分子の量は、PD-1シグナル伝達を抑制するのに(例えば、対照と比較して少なくとも20%、30%、50%、80%、100%、200%、400%、又は500%、PD-1シグナル伝達を低減するのに)有効である。他の実施形態では、本明細書において記載される二機能性分子の量は、免疫応答(例えば、対照と比較して少なくとも20%、30%、50%、80%、100%、200%、400%、又は500%)を活性化するのに有効である。
【0363】
一部の実施形態では、本明細書において記載される二機能性分子の量は、ヒトPD-L1及び/又はPD-L2のヒトPD-1への結合の阻害(例えば、対照と比較して少なくとも20%、30%、50%、80%、100%、200%、400%、又は500%結合を阻害する)に有効である。
【0364】
一部の実施形態では、本明細書において記載される二機能性分子の量は、ヒトPD-L1及び/又はPD-L2のヒトPD-1への結合のアンタゴニスト活性(例えば、対照と比較して少なくとも20%、30%、50%、80%、100%、200%、400%、又は500%結合を阻害する)を有するのに十分である。
【0365】
本発明はまた、対象における障害及び/若しくは疾患の処置において使用するための、並びに/又は医薬若しくはワクチンとして使用するための、本明細書において記載される二機能性分子;核酸若しくはそれをコードするベクター、又はそれを含む医薬組成物に関する。本発明は、対象における疾患及び/又は障害を処置するための医薬の製造における、本明細書において記載される二機能性分子;核酸若しくはそれをコードするベクター、又はそれを含む医薬組成物の使用に関する。最後に、本発明は、対象における疾患又は障害を処置する方法であって、治療有効量の医薬組成物又は二機能性分子を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0366】
疾患及び/又は障害を有する患者を処置する方法であって、(a)処置を必要とする患者を同定する工程;及び(b)患者に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子、核酸、ベクター又は医薬組成物のいずれかを投与する工程を含む方法が、本明細書において開示される。
【0367】
処置を必要とする対象は、PD-1により仲介されるシグナル伝達経路と関連する疾患を有する、リスクのある、又は疑われるヒトであってもよい。このような患者は、慣習的な検診により同定することができる。例えば、処置に適当な対象は、このような対象が、PD-1、PD-L1及び/又はPD-L2陽性細胞を有するかどうかを調べることにより、同定することができる。好ましくは、「PD-L1陽性腫瘍細胞」又は「PD-L2陽性腫瘍細胞」により、PD-L1又はPD-L2は、それぞれ、腫瘍細胞の少なくとも10%、好ましくは、腫瘍細胞の少なくとも20、30、40又は50%で発現する、腫瘍細胞の集団を指すことが意図される。
【0368】
一実施形態では、処置を必要とする対象は、疾患、好ましくは、PD-1、PDL1及び/又はPDL2陽性疾患、なおより好ましくは、PD-1及び/又はPD-1の少なくとも1つのリガンドが過剰発現している疾患を有する、有することが疑われるか、又はリスクがある患者である。このような対象における、本発明による二機能性分子又は医薬組成物の投与のおかげでのPD-1/PD-L1及び/又はPD-1/PD-L2相互作用の崩壊は、対象の免疫応答を増強し得る。一部の実施形態では、本明細書において記載されるヒト化抗PD-1抗体又は医薬組成物のいずれかは、PD-1陽性細胞を処置するため使用することができる。
【0369】
- がん
PD-1の抗体による遮断は、患者におけるがん性細胞に対する免疫応答を増強することができることは、当該技術分野において知られている。したがって、一態様では、本発明は、個体に、有効量の二機能性分子又は医薬組成物、好ましくは、PD1/PD-L1及び/若しくはPD-1/PD-L2相互作用を崩壊させるか、又は阻害する、並びに/或いはIL7受容体を活性化するための二機能性分子又は医薬組成物を投与することを含む、がんを有する対象における処置における使用のための二機能性分子又は医薬組成物を提供する。
【0370】
一実施形態では、処置を必要とする対象は、疾患、好ましくは、PD-1陽性がん、なおより好ましくは、PD-1が、発現するか、又は過剰発現するがんを有する、有することが疑われる、又はリスクのある患者である。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗PD-1抗体又は医薬組成物のいずれかは、PD-1陽性腫瘍細胞を処置するために使用することができる。例えば、処置に適した患者は、このような患者が、PD-1陽性腫瘍細胞を有するかどうかを調べることにより、同定することができる。
【0371】
別の実施形態では、対象は、がん発症、好ましくは、PD-L1及び/又はPD-L2陽性がんを有する、有することが疑われる、又はリスクのある患者である。一部の実施形態では、本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物のいずれかは、PD-L1及び/又はPD-L2陽性腫瘍を処置するため使用することができる。例えば、処置に適したヒト患者は、このような患者が、PD-L1及び/又はPD-L2陽性がん細胞を有するかどうかを調べることにより、同定することができる。
【0372】
更なる態様では、がん、好ましくは、PD-1、PD-L1及び/又はPD-L2陽性がん、なおより好ましくは、PD-1、PD-L1及び/又はPD-L2が、過剰発現しているがんを処置するのに使用するための二機能性分子又は医薬組成物が、提供される。
【0373】
別の実施形態では、本発明は、がんを処置するための、例えば、対象における腫瘍細胞、好ましくは、PD-1、PD-L1、PD-L2陽性腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬の製造における本明細書において開示される二機能性分子又は医薬組成物の使用を提供する。
【0374】
本開示の態様では、処置されるべきがんは、疲弊したT細胞と関連する。
【0375】
したがって、一実施形態では、本発明は、対象におけるがんを処置する、例えば、腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、対象に、治療有効量の本発明による二機能性分子又は医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。特に、本発明は、がん性細胞の成長が阻害されるように、二機能性分子を使用した対象の処置に関する。
【0376】
本明細書において提供される二機能性分子で処置され得る任意の適当な癌がんは、造血系の癌がん又は固形がんであり得る。このようながんは、癌腫、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、グリオーマ、中皮腫、メラノーマ、胃がん、尿道がん、環境で誘導されたがん及び当該がんの任意の組合せを含む。本発明はまた、転移性がん、特に、PD-L1を発現する転移性がんの処置に有用である(Iwaiら、(2005年)、Int. Immunol.17:133~144)。加えて、本発明は、難治性又は再発性悪性腫瘍を誘導する。
【0377】
好ましくは、処置される、又は予防されるべきがんは、転移性又は非転移性、メラノーマ、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、腎細胞癌腫、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、尿路上皮癌、結腸直腸がん、肝細胞癌、小細胞肺がん、転移性メルケル細胞癌、胃又は胃食道がん及び子宮頸がんからなる群から選択される。
【0378】
特定の態様では、がんは、高発現のPD-1及び/又はPD-L1を有する血液系腫瘍又は固形腫瘍である。このようながんは、血液リンパ系新生物、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病からなる群から選択することができる。
【0379】
特定の態様では、がんは、ウイルスにより誘導されるがん、又は免疫不全と関連するがんである。このようながんは、カポジ肉腫(例えば、カポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);子宮頸部、肛門、陰茎及び外陰部の扁平上皮細胞がん及び中咽頭がん(例えば、ヒトパピローマウイルスと関連する);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、HHV-8原発性滲出性リンパ腫、古典型ホジキンリンパ腫、及びリンパ増殖性障害(例えば、エプスタイン・バーウイルス(EBV)及び/又はカポジ肉腫ヘルペスウイルスと関連する);肝細胞癌(例えば、肝炎B及び/又はCウイルスと関連する);メルケル細胞がん(例えば、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MPV)と関連する);並びにヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)感染症と関連するがんからなる群から選択することができる。
【0380】
処置に好ましいがんは、典型的には、免疫療法に応答性のがんを含む。或いは、処置に好ましいがんは、免疫療法に応答性でないがんである。
【0381】
好ましくは、本明細書において開示される二機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞又は組成物は、予後不良を伴うがんに罹患している対象の処置において使用するためである。本明細書において使用される、用語「予後不良」は、減少した対象生存及び/又は早期のがん進行及び/又は増大した若しくは早期のがん再発及び/又は転移の増大したリスク若しくは出現を指す。特に、予後不良は、Treg細胞の集団が腫瘍に存在するか、又はTreg/Teff比が腫瘍において高い、がんと相関する(Chraaら、2018年、J Leukoc Biol.2018;1~13)。
【0382】
例示の目的、かつ理論により結び付けられることを望まないが、がん細胞死を導く抗がん抗体又は抗がん免疫複合体又は他の現在の抗がん療法での処置は、PD-1により仲介される免疫応答を増強する。したがって、高増殖性疾患(例えば、がん腫瘍)の処置は、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強し得る、同時若しくは連続して、抗がん処置と組み合わされた二機能性分子、又はその任意の組合せを含み得る。好ましくは、二機能性分子は、他の免疫原性剤、標準的ながん処置、又は他の抗体と組合せて使用されて得る。
【0383】
- 感染性疾患
本発明の二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物を使用して、特定の毒素又は病原体に曝露された患者を処置する。したがって、本発明の態様は、好ましくは、対象が、感染性疾患について処置されるように、対象に、本発明による二機能性分子、又はそれを含む医薬組成物を投与する工程を含む対象における感染性疾患を処置する方法を提供する。
【0384】
任意の適当な感染症は、本明細書において提供される、本発明による二機能性分子、核酸、核酸の群、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物で処置されてもよい。
【0385】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスの一部の例は、HIV、肝炎(A、B、又はC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスを含む。
【0386】
特に、本発明の二機能性分子又は医薬組成物を使用して、慢性ウイルス感染症を有する患者を処置し、このような感染症は、レトロウイルス、アネロウイルス、サーコウイルス、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ポリオーマウイルスBK、ポリオーマウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペス1型(HSV-1)、アデノウイルス、単純ヘルペス2型(HSV-2)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、GBウイルスC、パピローマウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎Dウイルス(HDV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV1)、異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス(XMLV)、風疹ウイルス、風疹、パルボウイルスB19、麻疹ウイルス、コクサッキーウイルスからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる。
【0387】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性細菌の幾つかの例は、クラミジア、リケッチア性細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、テタヌス、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、及びライム疾患の細菌を含む。
【0388】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性真菌の幾つかの例は、カンジダ(Candida)(アルビカンス(albicans)、クルセイ(krusei)、グラブラータ(glabrata)、トロピカリス(tropicalis)等)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス(Aspergillus)(フミガーツス(fumigatus)、ニガー(niger)等)、ケカビ属(ムコール(mucor)、アブシディア(absidia)、リゾプス(rhizophus))、スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)並びにヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。
【0389】
本発明の方法により処置可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫の幾つかの例は、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Bal抗dium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleriafowleri)、アカントアメーバ(Acanthamoeba)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、プラスモディウム・ビバックス(Plasmodium vivax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondi)、及びブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0390】
上記の方法の全てにおいて、二機能性分子は、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)のような他の形態の免疫療法、又は腫瘍抗原の提示の増強をもたらす、任意の療法と組み合わすことができる。
【0391】
併用療法
特に、本発明の二機能性分子は、臨床開発中又はすでに市場にある作用剤を用いた、免疫回避機序を克服するための幾つかの他の可能性のある戦略と組合せることができる(Antoniaら、Immuno-oncology combinations: a review of clinical experience and future prospects. Clin. Cancer Res. Off. J. Am. Assoc. Cancer Res. 20、6258~6268、2014のTable 1(表17)参照)。本発明による二機能性分子とのこのような組合せは、
1-適応免疫の阻害を逆転させること(T細胞チェックポイント経路を遮断すること);
2-適応免疫をスイッチングすること(アゴニスト分子、特に、抗体を使用してT細胞共刺激受容体シグナル伝達を促進すること)、
3-自然免疫細胞の機能を改善すること;
4-例えば、ワクチンベースの戦略を通じて、免疫系を活性化すること(免疫-細胞エフェクター機能を増強すること)、
に明白に有用であり得る。
【0392】
したがって、本明細書において記載される二機能性分子又はそれを含む医薬組成物のいずれか及び適当な第2の物質を用いた、本明細書において記載されるPD-1シグナル伝達と関連する疾患のいずれかのための併用療法も、本明細書において提供される。態様では、二機能性分子及び第2の物質は、上で記載された医薬組成物に存在することができる。或いは、本明細書において使用される、用語「組合せ療法」又は「併用療法」は、連続する様式でのこれらの2つの物質(例えば、本明細書において記載される二機能性分子及び追加又は第2の適当な療法剤)の投与を包含し、すなわち、各療法剤は、異なる時間に投与され、並びにこれらの療法剤、又は物質の少なくとも2つの投与が、実質的に同時の様式である。各物質の連続する又は実質的に同時の投与は、任意の適当な経路により影響され得る。物質は、同じ経路により、又は異なる経路により投与することができる。例えば、第1の物質(例えば、二機能性分子)は、経口投与することができ、追加の療法剤(例えば、抗がん剤、抗感染症剤;又は免疫モジュレーター)は、静脈内投与することができる。或いは、選択された組合せの物質は、静脈注射により投与されてもよく、一方、組合せの他の物質は、経口投与されてもよい。
【0393】
別の態様では、本発明は、治療手段、特に、組合せ製品手段に関し、これは、有効成分として、上で定義された二機能性分子及び追加の療法剤を含み、当該有効成分は、別々、連続又は併用療法、特に、併用又は連続使用のため製剤化される。
【0394】
本明細書において使用される、用語「連続する」は、別段特定されない限り、通常の並び又は順序により特徴付けられ、例えば、投薬計画が、二機能性分子及び第2の物質の投与を含む場合、連続する投薬計画は、本発明の二機能性分子の投与を、第2の物質の投与の前、同時、実質的に同時、又は後に含み得るが、両方の物質は、通常の並び又は順序で投与される。用語「別々の」は、別段特定されない限り、一方が他方と離れて維持されることを意味する。用語「同時に」は、別段特定されない限り、同時に生じるか、又はなされることを意味し、すなわち、本発明の物質は、同じ時間に投与される。用語「実質的に同時に」は、物質が、互いに数分以内(例えば、互いに15分以内)に投与されることを意味し、合同投与並びに連続する投与を包含することを意図するが、投与が連続する場合、それは、短い期間(例えば、医師が、2つの化合物を別々に投与するのにかかる時間)だけ時間が離れている。
【0395】
本明細書において記載される任意の組合せは、本明細書において記載される障害又は疾患を処置するための任意の並びで使用され得ることは、考慮されるべきである。本明細書において記載される組合せは、標的の疾患の進行を阻害する又は予防するという有効性、組合せの別の作用剤の副作用を鎮めるという有効性、又は標的の疾患と関連する症状を鎮めるという有効性を含むが、これらに限定されない、多数の因子に基づき選択されてもよい。例えば、本明細書において記載される併用療法は、組合せの各個々のメンバーと関連する副作用のいずれかを低減してもよい。
【0396】
本発明はまた、対象における疾患を処置する方法であって、当該対象に、治療有効量の本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物及び治療有効量の追加又は第2の療法剤を投与する工程を含む方法に関する。
【0397】
本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物が、追加の療法剤と同時に使用されるとき、第2の物質の二機能性分子若しくは医薬組成物のいずれかの半治療投薬量、又は両方の半治療投薬量は、対象、好ましくは、PD-1により仲介される細胞シグナル伝達と関連する疾患又は障害を有する対象、又は発症するリスクがある対象の処置において使用することができる。
【0398】
追加又は第2の療法剤の具体例は、国際公開第2018/053106号、36~43頁において提供される。
【0399】
態様では、追加又は第2の療法剤は、アルキル化剤、血管新生阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤(例えば、Bcl-2ファミリー阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化因子、Bcr-Ablキナーゼ阻害剤、BiTE(二特異的T細胞誘導)抗体、抗体薬物コンジュゲート、生物反応修飾因子、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DVD、白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ(ErbB2)受容体阻害剤、成長因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)-90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法、免疫学的作用剤、アポトーシスタンパク質阻害剤(IAP)の阻害剤、インターカレート抗生物質、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、Jak2阻害剤、ラパマイシン阻害剤の哺乳動物標的、マイクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ阻害剤、多価結合タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリADP(アデノシン二リン酸)-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(Plk)阻害剤、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド/デルトイド植物アルカロイド、低分子阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤、低メチル化剤、チェックポイント阻害剤、ペプチドワクチン等、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、並びにこうした物質の1つ又は複数の組合せを含む、非包括的リストにおいて選択することができる。
【0400】
例えば、追加の療法剤は、化学療法、放射線療法、標的化療法、抗血管新生薬、低メチル化剤、がんワクチン、腫瘍抗原に由来するエピトープ又はネオエピトープ、骨髄チェックポイント阻害剤、他の免疫療法、及びHDAC阻害剤からなる群において選択することができる。
【0401】
好ましい実施形態では、第2の療法剤は、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、細胞療法剤(例えば、CAR-T細胞)、抗生物質及びプロバイオティクスからなる群から選択される。当該免疫療法剤は、腫瘍抗原を標的とする抗体、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される腫瘍抗原を標的とする抗体であり得る。
【0402】
実施形態では、本発明は、上で定義された併用療法に関し、第2の療法剤は、特に、治療ワクチン、免疫チェックポイント遮断剤又は活性化因子、特に、適応免疫細胞(T及びBリンパ球)並びに抗体薬物コンジュゲートの治療ワクチン、免疫チェックポイント遮断剤又は活性化因子からなる群から選択される。好ましくは、本発明による抗hPD-1抗体若しくはその断片のいずれか又は医薬組成物との同時使用のための適当な物質は、共刺激受容体(例えば、OX40、CD40、ICOS、CD27、HVEM若しくはGITR)に結合する抗体、免疫原性細胞死を誘導する物質(例えば、化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、若しくは標的化は療法のための物質)、チェックポイント分子(例えば、CTLA4、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、BTLA、若しくはTIGIT)を阻害する物質、がんワクチン、免疫抑制性酵素(例えば、IDO1若しくはiNOS)を修飾する物質、Treg細胞を標的化する物質、養子細胞療法のための剤、又は骨髄細胞を調節する物質を含む。
【0403】
実施形態では、本発明は、上で定義された併用療法に関し、第2の療法剤は、抗CTLA4、抗CD2、抗CD28、抗CD40、抗HVEM、抗BTLA、抗CD160、抗TIGIT、抗TIM-1/3、抗LAG-3、抗2B4、及び抗OX40、抗CD40アゴニスト、CD40-L、TLRアゴニスト、抗ICOS、ICOS-L並びにB-細胞受容体アゴニストからなる群から選択される適応免疫細胞(T及びBリンパ球)の免疫チェックポイント遮断剤又は活性化因子である。
【0404】
一実施形態では、第2の療法剤は、腫瘍抗原を標的とする抗体、特に、抗Her2、抗EGFR、抗CD20、抗CD19、抗CD52からなる群から選択される腫瘍抗原を標的とする抗体である。
【0405】
組合せ療法はまた、外科手術、化学療法(例えば、ドセタキセル若しくはデカルバジンのような)、放射線療法、免疫療法(例えば、CD40、CTLA-4を標的とする抗体のような)、遺伝子標的化及び調整、並びに/又は免疫-モジュレーター、血管新生阻害剤及びその任意の組合せのような他の物質との二機能性分子の投与の組合せに依拠し得る。
【0406】
キット
本明細書において記載される二機能性分子又は組成物のいずれかは、本発明により提供されるキットに含まれてもよい。本開示は、特に、免疫応答の増強及び/或いはD-1シグナル伝達若しくはIL-7シグナル伝達と関連する疾患(例えば、がん及び/又は感染症)の処置において使用するためのキットを提供する。
【0407】
本発明の文脈において、用語「キット」は、容器、レシピエント又はその逆にパッケージされた2つ以上の成分(そのうち1つが、本発明の二機能性分子、核酸分子、ベクター又は細胞に対応する)を意味する。キットは、1回単位として市販することができる、ある特定の目標を達成するのに十分である製品及び/又は用具のセットとして本明細書において記載することができる。
【0408】
具体的には、本発明によるキットは、
- 上で定義された二機能性分子、
- IL-7又はそのバリアントに結合した抗hPD1抗体若しくはその抗原結合断片、
- 当該二機能性分子をコードする核酸分子若しくは核酸分子の群、
- 当該核酸分子若しくは核酸分子の群を含むベクター、及び/又は
- 当該ベクター若しくは核酸分子若しくは核酸分子の群を含む細胞
を含んでもよい。
【0409】
したがって、キットは、適当な容器手段において、本発明の医薬組成物、及び/又は二機能性分子、及び/又は宿主細胞、及び/又は本発明の核酸分子をコードするベクター及び/又は本発明の核酸分子若しくは関連する試薬を含んでもよい。一部の実施形態では、試料を個体から採取する手段及び/又は試料をアッセイする手段が、提供されてもよい。ある特定の実施形態では、キットは、細胞、バッファー、細胞培地、ベクター、プライマー、制限酵素、塩等を含む。キットはまた、無菌の医薬的に許容されるバッファー及び/又は他の希釈剤を含んでもよい。
【0410】
容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量のパッケージ)又は半単位用量であってもよい。実施形態では、本発明は、1回投与用量単位について上で定義されたキットに関する。本発明のキットはまた、乾燥させた/凍結乾燥させた二機能性分子を含む第1のレシピエント及び水性製剤を含む第2のレシピエントを含んでもよい。本発明のある特定の実施形態では、単一チャンバー及び複数チャンバーの予め充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ)を含有するキットが提供される。
【0411】
本発明のキットは、適当なパッケージ中にある。適当なパッケージは、バイアル、ボトル、ジャー、適応性のあるパッケージ(例えば、密封したマイラ又はプラスチックバック)等を含むが、これらに限定されない。吸入器、鼻の投与装置(例えば、噴霧器)のような特定の装置又はミニポンプのような注入装置と組合せて使用するためのパッケージも意図される。キットは、無菌のアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バック又は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。容器はまた、無菌のアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バック又は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性な物質は、IL-7若しくはそのバリアント、又はIL-7mに結合した抗hPD1抗体を含む、本明細書において記載される二機能性分子である。
【0412】
本発明によるキットに含まれる組成物はまた、シリンジと適合可能な組成物に製剤化されてもよい。この場合において、容器手段自体は、シリンジ、ピペット、及び/又は他のこのような器具であってもよく、その容器から、製剤は、身体の感染範囲に適用されてもよく、並びに/又はキットの他の成分に適用され、及び/若しくは混合されてもよい。或いは、キットの成分は、乾燥させた粉末として提供されてもよい。試薬及び/又は成分が、乾燥粉末として提供されるとき、溶解性組成物は、適当な溶媒の添加により復元することができる。溶媒はまた、別の容器手段において提供されてもよく、投与に適当であり得ることは、予想される。
【0413】
一部の実施形態では、キットは、がん若しくは感染性疾患のための追加の物質を更に含み、追加の物質は、本発明のキットの二機能性分子、若しくは他の成分と組合されてもよく、又はキットにおいて別々に提供されてもよい。特に、本明細書において記載されるキットは、本明細書において上で記載された「併用療法」において記載されたもののような1つ又は複数の追加の療法剤を含んでもよい。キットは、個体のための特定のがんに合わせられ、本明細書において上で記載された個体のためのそれぞれの第2のがん療法を含んでもよい。
【0414】
本明細書において記載される二機能性分子又は医薬組成物の使用に関する指示書は、一般的に、投薬量、投与スケジュール、意図される処置の投与経路、二機能性分子を再構成するための手段及び/又は本発明の二機能性分子を希釈するための手段に関する情報を含む。本発明のキットにおいて提供される指示書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、リーフレット又は指示マニュアルの形態でキットに含まれるペーパーシート)上に書かれた指示書である。一部の実施形態では、キットは、本明細書において記載される方法のいずれかに従い使用するための指示書を含むことができる。含まれる指示書は、免疫応答を増強するため及び/又は本明細書において記載される疾患を処置するための二機能性分子を含む医薬組成物の投与の説明を含むことができる。キットは、その個体が、PD-1シグナル伝達と関連する疾患、例えば、本明細書において記載されるものを有するかどうかの同定に基づき、処置に適当な個体の選択の説明を更に含んでもよい。
【実施例】
【0415】
以下の図及び実施例は、当業者に、本発明を作製する方法及び使用する方法の完全な開示並びに説明をもたらすために記載され、本発明者らが、彼らの発明であるとみなす範囲を制限することは意図されず、以下の実験が、全てであるか、又は唯一の行われた実験であることを表すことは意図されない。本発明は、その特定の実施形態に照らして記載される一方、様々な変更がなされてもよく、均等物が、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく置き換えられ得ることは、当業者により理解されるべきである。加えて、特定の状況、物質、対象の組成物、方法、方法の工程又は複数の工程を、本発明の目的の精神及び範囲に適合するような多くの修飾が、なされてもよい。このような修飾の全てが、本明細書に添付される請求の範囲内にあることが意図される。
【0416】
(実施例1:Bicki抗hPD1-IL7分子のIL7R及びPD1への結合:)
組換えIL-7サイトカイン(rIL7) (Biorad社、PHP046)、Fcドメインに融合したIL-7(IL7-Fc、CHI-HF-22007 Adipogen社)、及びその重(抗PD1VH-IL7、キメラ形態)又は軽(抗PD1VL-IL7、キメラ形態)鎖上でIL-7に融合したBicki抗PD1抗体のビアコアによる、CD127(A)又はCD132(B)に対する親和性評価。CD127(Sinobiological社、10975-H03H-50)を、CM5バイオチップ上に20μg/mlで固定化し、示したタンパク質を、連続する濃度(0.34;1.03;3.11;9.3;28nM)で加えた。IL7-Fc及び抗PD1-IL7は、二量体形態を有するので、2つの状態反応モデル及び2価モデルを使用して、親和性を解析した。IL-7のCD132に対する親和性を評価するために、複合体CD127/IL-7を、バイオチップ上で行い、次に、CD132受容体(Sinobiological社、10555-H08B)を、異なる濃度125、250、500、1000及び2000nMで加えた。
【0417】
ブリッツ法を、ブリッツ(Forte Bio社;USA;照合C22-2 No 61010-1)で行った。組換えhPD1-His(Sino Biologicals社、Beijing、China;照合10377-H08H)を、10μg/mlでヒスチジン末端によりNi-NTAバイオセンサー(Forte Biosや;USA;照合18-0029)に30秒間固定化した。次に、抗PD1抗体を、20μg/mLで120秒間会合させた。抗PD1抗体の解離を、動態バッファーにおいて120秒間行った。ブリッツプロ1.2ソフトウェアで、解析データを作製し、会合定数(ka)及び解離定数(kd)を計算し、親和性定数KD(ka/kd)を決定した。
【0418】
【0419】
【0420】
結果
本発明者らは、IL-7の、Fc部分のN末端部分への融合(IL7-Fc)が、CD127受容体への親和性を減少させ(Table 1(表7))、一方、予想外に、IL-7の、重鎖のFc領域のC末端部分又は軽鎖の定常ドメインへの融合が、rIL-7と同様の程度までCD127に対するその高親和性を保存することを観察した。これらのデータは、IL-7の抗PD1抗体(重鎖又は軽鎖上)のC末端融合が、従来のIL7-Fc化合物と比較して、IL-7R活性化経路に関してより効力があり、治療上の使用のためのIL7組換えサイトカインと比較して、患者身体への排出半減期に関してより効力があることを示す。
【0421】
Table 2(表8)並びに
図1A及び
図1Bは、Bicki抗PD1-IL7分子(キメラ又はヒト化)が、ヒト組換えPD-1タンパク質に結合することを確認する。ヒト化形態の抗PD-1抗体は、キメラ抗体同様の有効性で、PD-1組換えタンパク質に結合する。しかしながら、
図1Aの部分Aは、抗PD1抗体単独と比較して、Bickiの結合有効性の減少を示す。本発明者らは、他の抗PD-1骨格(ペムブロリズマブ又はニボルマブ)を有するBicki IL7分子を構築した。
図1Cは、これらのBicki分子が、PD-1への良好な結合を保存することを示す。
【0422】
更に、IL7-Fcと比較し、二機能性抗PD1/IL-7分子により、PD-1+T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積及びPD-1+T細胞上でのIL-7の再局在化が可能になる。
【0423】
(実施例2:Bicki抗PD1-IL7分子のPD-1/PD-L1及びPD1-PDL2相互作用を遮断するアンタゴニスト能)
PD-L1を、Maxisorpプレート上に固定化し、複合体抗PD1抗体+ビオチン化組換えヒトPD-1を加えた。この複合体を、固定した濃度のPD1(0.6μg/mL)で生成し、異なる濃度の抗PD-1抗体を試験した。キメラ形態のPD-1抗体を、この試験において使用した。顕色をストレプトアビジンペルオキシダーゼで行い、ビオチン化PD1分子を検出し、TMB基質を使用し、450nmでの比色分析により明らかにした。ヒトPD-L2組換えタンパク質上での抗PD1抗体、抗PD1VH-IL7又は抗PD1VL-IL7抗体と予めインキュベートしたPD-1組換えタンパク質のビアコアによる親和性評価。ヒト組換えPD-L2を、CM5バイオチップ上に固定化し、複合体抗体(200nM)+組換えヒトPD-1(100nM)を加えた。データを、ビアコアにより測定した相互作用の相対的応答の%:100%=PD-1相対的応答で表す。キメラ形態のPD-1抗体を、この実験で使用した。
【0424】
結果
図2に示す通り、Bicki抗PD1-IL7分子は、PD1のPD-L1並びにPD-L2への相互作用を遮断する、非常に良好な能力を呈する。抗PD1単独は、ELISAアッセイにおいてBicki分子と比較してPD1への最大の結合を示した一方、予想外に、PD1-PDL1又はPD-1-PDL2の相互作用の阻害は、抗体とBickiフォーマットの間で同等であり、これにより、本発明のBicki抗PD1-IL7分子が、抗PD1抗体と同様の効力があることを確認した。
【0425】
(実施例3:Bicki抗PD1-IL7分子での刺激後のヒトPBMC上での生体外IL-7Rシグナル伝達経路解析)
ヒト健常ボランティアの末梢血から単離したPBMCを、組換えIL-7、Bicki抗PD1-IL-7(PD-1VH-IL7/PD1VL-IL7)と15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、MFI pSTAT*%pSTAT5+集団を計算することにより得て、基準に合わせ(100%=rIL-7 57.5nM)、2回の独立した実験における3人の異なるドナーの平均を表す。
【0426】
結果
Bicki抗PD1-IL7分子のIL7Rへの結合の解析後、IL7R活性化を、トータルのヒトPBMC中のSTAT5リン酸化又はCD4+及びCD8+T細胞に対するフローサイトメトリーにより測定した。
【0427】
図3は、STAT5リン酸化を、重鎖又は軽鎖に融合したBicki抗PD1-IL7分子を用いて同様に誘導したことを示す。Bicki抗PD1-IL7分子の最高の活性は、組換えIL-7単独と同様であり、EC50約0.7nMであった。
【0428】
(実施例4:Bicki抗PD1-IL7分子で処理したT細胞活性化及び増殖のインビトロ及び生体外での解析)
- 細胞ベースのアッセイ、Discover'x PD-1 Path Hunterバイオアッセイキットを行った。ベータ-gal断片(ED)に融合した操作したPD-1受容体及び補体ベータ-gal断片(EA)に融合した操作したSHP1を安定的に発現するジャーカットT細胞を、ジャーカット細胞のPD-L1発現細胞との共培養において使用し、これにより、PD-1リン酸化並びにED及びEA断片の相補性を強制する操作したSHP-1の動員並びに活性化ベータ-gal酵素の生成をもたらした。基質添加後、ベータGal酵素は、PD-1シグナル伝達活性化に比例する化学発光シグナルを生じる。抗PD-1抗体の添加は、PD-1シグナル伝達を遮断し、これにより、生物発光シグナル(RLU)の喪失を導く。抗PD-1抗体又はBicki抗PD1-IL7分子を、異なるモル濃度で試験した。
【0429】
- プロメガPD-1/PD-L1バイオアッセイキットを行った。2つの細胞株、(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATにより誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを活性化するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を使用した。細胞を共培養するとき、PD-L1/PD-1相互作用は、TCRが仲介する活性化を直接阻害し、これにより、NFAT活性化及びルシフェラーゼ活性を遮断する。抗PD1抗体の添加は、阻害シグナルを遮断し、これにより、NFAT活性化及びルシフェラーゼ合成を導く。BioGlo(商標)ルシフェリンの添加後、発光を定量し、T細胞活性化を反映する。連続モル濃度の抗PD1抗体又はBicki抗PD1-IL7抗体を試験した。
【0430】
- 健常ボランティアの末梢血から単離したヒトPBMC細胞を、抗CD3/CD28でコーティングしたプレート(それぞれ、クローンOKT3及びCD28.2、3μg/mL)で刺激して、PD-1発現を誘導した。刺激の20時間後、PBMCを回収し、組換えIL7(rIL-7)又は重鎖(抗-PD-1 VH IL-7)又は軽鎖(抗PD-1 VL IL-7)上でIL-7に融合した抗PD1抗体の存在下でOKT3/PDL1でコートしたプレート(それぞれ、2及び5μg/mL)上で再刺激した。キメラ形態のBicki抗PD1-IL7抗体を、この試験において、固定した用量(5μg/ml)の抗体又は複数の用量で使用した。刺激後5日目に、T細胞増殖を、3Hチミジン取り込みにより評価し、分泌されたIFN-γを、サンドイッチELISAにより用量測定した。
【0431】
結果
細胞ベースのアッセイにおいてBicki抗PD1-IL7分子がPD-1シグナル伝達を遮断する能力を決定するために、Discover'x PD-1 Path Hunterバイオアッセイキットを行った。結果は
図4Aに示し、これは、Bicki抗PD1VH-IL7が、SHP1活性化の50%を濃度92.1μMで阻害することができることを示す。この結果は、80.66μMである抗PD1単独で得た結果と非常に類似し、これは、PD1経路阻害を導くPD1/PDL1相互作用の良好な阻害性有効性を示している。同時に、T細胞表面でPD1のPDL1との相互作用により誘導した阻害性シグナルの阻害を、NFATバイオアッセイを使用して測定した。
図4Bは、試験した各抗体又は治療組合せのEC50を示す。驚くべき様式で、本発明者らは、試験したBicki抗PD1-IL7分子の両方のEC50が、抗PD1又は抗PD1+rIL7組合せより有意に良好である(Bicki VH-IL7及びVL-IL7について0.41及び0.33nM、PD1及び抗PD1+rIL7について3.6及び6nMの平均)ことを観察した。予想外に、この結果は、Bicki抗PD1-IL7が、抗PD1+IL-7の組合せより、PD-1+Tリンパ球におけるT細胞活性化を誘導するのに有効であることを強調し、これは、Bicki分子のPD1+T細胞に対する相乗効果を示している。
図4Cは、ペムブロリズマブ及びニボルマブで構築したこれらのBicki IL7分子が、抗PD-1単独と比較して同様の相乗効果を有することを示し、これは、本発明が、他の抗PD-1骨格の場合に適し得ることを示唆している。
【0432】
同時に、生体外でのT細胞活性化及び増殖を、抗PD1抗体、rIL7若しくは抗PD1+rIL7又はBicki抗PD1-IL7分子での処置後に試験した。結果を
図5及び
図6に示し、これは、抗PD1に融合したIL7が、IFNg分泌を誘導し、IL7サイトカイン単独と同等の様式でT細胞増殖を誘導することができることを示す。しかしながら、
図6Bは、Bicki分子のT細胞増殖を誘導するより良好な有効性を、50pMを有するIL7サイトカインと比較して、20pMのEC50を示すことにより示す。
【0433】
(実施例5:Bicki抗PD1-IL7分子処置後の細胞表面でのインテグリン発現)
ヒトPBMCを、IL-7(50ng/mL)又は抗PD-1若しくは抗PD1VH-IL7(5μg/mL)と共に3日間インキュベートし、アルファ4(BDbiosciences社、Rungis、France、照会559881)、ベータ7(BDBiosciences社、照会555945)又はLFA-1インテグリン(CD11a/CD18)(BDBiosciences社、CD11a照会555380及びCD18照会557156)について染色した。FACSを、LSRにより解析し、各マーカーについて平均蛍光で表す。データは、3人の異なるドナーを用いた3つの独立した実験を表す。
【0434】
結果
本発明者らは、
図7において、bicki抗PD1-IL7分子が、rIL7と同様にアルファ4及びベータ7腸ホーミングインテグリン及びLFA1インテグリン(CD11a及びCD18)のような一部のインテグリンの過剰発現を刺激することを示す。比較すると、IL-2及びIL-5サイトカインは、これらのインテグリン(a4、ベータ7)の発現を有意に修飾しなかったか、又は少なくとも、IL-7及びBiCki抗PD-1 IL-7と比べ有意に低い程度に発現を修飾した。これらのデータは、IL-7を介した腫瘍部位へのT細胞浸潤を促進するその能力を示すので、これは、PD-1抵抗性結腸直腸がんの処置のための、Bicki抗PD1-IL7分子への関心を支持した。内皮細胞上のそのリガンドICAM-1への結合を通じて、LFA-1は、炎症組織においてT細胞トラフィッキング及び血管外漏出を仲介する。他の研究は、IL-7が、LFA-1及びVLA-4接着分子の発現を刺激し、これにより、T細胞の任意の炎症組織への血管外遊走を促進することを示した。このデータは、抗PD-1/IL-7二機能性分子が、複数のがんサブタイプにおけるT細胞浸潤を促進し得ることを支持する。腫瘍部位でのT細胞浸潤の欠如は、現今では、抗PD1有効性に対する主要な障害である。
【0435】
(実施例6:Bicki抗PD1-IL7分子で処理したナイーブの部分的に疲弊した及び完全に疲弊したT細胞サブセットの増殖及び活性化)
疲弊を導くT細胞の慢性的な抗原刺激
ヒトPBMCを、CD3 CD28でコーティングしたプレート(3μg/mL OKT3及び3μg/mL CD28.2抗体)上で3日毎に繰り返し刺激した。刺激の24時間後、T細胞を、PD-1、Lag3及びTim3阻害受容体について染色して、各刺激後のそれらの疲弊状態を解析した。発現を、蛍光色素標識抗体を使用したフローサイトメトリー及びFACS LSRIIにより、解析した。各刺激の24時間後、T細胞を、CD3/PD-L2でコーティングしたプレート上で再刺激し、増殖能を、各刺激の5日後のチミジン3H取り込みにより決定し、上清へのIFNg分泌を、ELISAにより解析した。疲弊したT細胞のIL-7及びBicki抗PD1-IL7分子に対する応答を、各刺激の48時間後にSTAT5リン酸化により解析した。
【0436】
T細胞を、連続希釈(29nMから出発し、0.29fMまでの、組換えIL-7、IL-7に融合した抗PD-1(PD-1 VH IL-7/PD-1 VL IL-7)又はIL-7に融合したアイソタイプ対照(B12 VH IL-7)と共に15分間インキュベートした。次に、細胞を固定し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。pSTAT5+細胞のパーセンテージを、各刺激後に29nM IL-7又はBicki抗PD1VH-IL7分子で処理した後に解析した。
【0437】
ヒトPBMCを、CD3 CD28でコーティングしたプレート(3μg/mL OKT3及び3μg/mL CD28.2抗体)上で繰り返し刺激した。各刺激の24時間後、T細胞を、抗PD-1、IL-7又はIL-7に融合した抗PD-1(抗D-1 VH IL7又は抗PD-1 VL IL-7)の存在下でOKT3でコーティングしたプレート(2μg/mL)上で再刺激した。H3取り込みアッセイを、5日目に行い、T細胞増殖を決定した。3回刺激したT細胞を、抗CD3、抗CD3+組換えPDL1又は抗CD3+組換えPDL2でコーティングしたプレート(それぞれ、2及び5μg/mL)上で再刺激した。H3取り込みアッセイを、5日目に行った。
【0438】
結果
インビトロでの繰り返しTCR刺激のモデルを使用して、本発明者らは、例えば、免疫原性腫瘍の関係においてT細胞の慢性抗原刺激を概括し、慢性抗原刺激により誘導したT細胞疲弊後の、T細胞がIL-7に応答する能力を特徴付けた(
図8及び
図9)。このモデルでは、T細胞は、刺激に渡り阻害性受容体(Tim3、PD1、Lag3)を高度に発現し、疲弊したT細胞の重要な特徴である、増殖し、サイトカインを分泌するそれらの能力を喪失する(
図8)。文献においてすでに公開されたもの、又は疲弊したT細胞上でのIL7R発現の顕著な減少に基づき推定されるものと対照的に、本発明者らは、部分的及び完全に疲弊したヒトT細胞が、pSTAT5活性化により示す通り、IL-7に依然として応答したこと(
図9)、及びT細胞が完全に疲弊した(5回の刺激)ときでさえ、IL-7が、T細胞増殖の能力を増加すること(
図10)を観察した。しかしながら、T細胞を活性化するのに必要なIL-7の量は増加するので、IL-7に対する感受性は、繰り返し刺激に伴い減少する(
図9B並びに
図10A及び
図10B)。これらのデータは、慢性的に刺激した疲弊したT細胞を活性化するための腫瘍微小環境内における高いIL-7濃度の必要性を正当化する。IL-7半減期を増加させることにより、例えば、抗体又はFc断片組換えタンパク質と融合させることにより、IL-7のこのような高い局所濃度を達することができた。Fc-ドメイン(IL7-Fc)と比較した、IL-7をモノクローナル抗体に融合するという別の利点は、本発明の抗PD1抗体でPD1を標的化することにより、腫瘍内PD-1+疲弊したT細胞、正確には、高濃度のIL-7を必要とする細胞上での密接した又は直接的なIL-7サイトカインの特定の局在化を誘導することである。更に、PD-1+T細胞は、腫瘍微小環境内に蓄積するので、Bicki抗PD1-IL7分子は、PD-1+細胞が蓄積する場所で、IL-7の局所濃度の増加を導く。
【0439】
(実施例7:エフェクターT細胞に対するTreg抑制活性の生体外解析)
CD8+エフェクターT細胞及びCD4+CD25高CD127低Tregを、健常ドナーの末梢血から単離し、細胞増殖ダイ(CD8+T細胞についてCPDe450)で染色した。次に、Treg/CD8+Teffを、比1:1で、OKT3でコーティングしたプレート(2μg/mL)上、rIL-7(10ng/mL、0.58nM)、抗PD1(0.58nM)、抗PD1+rIL-7(0.58nM、bicki抗PD1VH-IL7(0.58nM)の存在下又は不存在下で、5日間共培養した。エフェクターT細胞の増殖を、細胞蛍光測定により解析した。
【0440】
抗PD1療法が、T細胞エフェクター機能を刺激するが、免疫抑制性分子(TGFB、IDO、IL-10...)及び調節性細胞(Treg、MDSC、M2マクロファージ)が、療法の完全な効力を制限する不適な微小環境を生じる。次に、IL-7処理に対する腫瘍内Treg応答の感受性を、エフェクターT細胞の増殖を測定することにより試験した(
図11)。Treg細胞は、低レベルのIL-7R(CD127)を発現するが、それらは、依然として、IL-7処理後にpSTAT5を刺激することができる。抑制アッセイにおいて、Treg及びTエフェクター細胞を共培養することにより、本発明者らは、
図11において、IL-7又はbicki抗PD1-IL7処理が、Tregにより仲介した阻害作用を遮断することを観察した。抗PD1抗体は、Tエフェクター細胞に対するTreg抑制活性を阻害することができない。IL7は、Treg抑制機能を解除することが知られている(Allgauer Aら、J. Immunol.2015)。本発明者らは、
図11において、Bicki抗PD1-IL7分子が、Tregが仲介する阻害を解除し、IL7サイトカインと同様にエフェクターT細胞の増殖を導くことを示す。Treg細胞は、低レベルのIL-7受容体を発現するが、IL-7が、Tregに直接影響し、それらの抑制機能を抑制することは十分に記載されている(Liu Wら、J Exp Med. 2006年7月10日;Liu Wら;Seddiki Nら、J exp Med 2006年7月10日;Codarri Lら、2007年;Heninger AKら、J immuonl 2012年12月15日)。更に、
図11Bは、IL-2及びIL-15が、IL-7及びBicki抗PD-1/IL-7と反対に、両方のTregの増殖を強く刺激するので、IL-7シグナル伝達の標的化が、IL-2及びIL-15シグナル伝達と比較して、より大きく期待できるはずであることを示す。本発明者らは、その実験において、Bicki抗PD1-IL7分子が、調節性T細胞を温存させつつ、エフェクターT細胞増殖及び生存を刺激することにより、T調節性免疫バランスに対してT細胞エフェクターを有利にすることを示す。IL-2が、TregとTエフェクター細胞の両方に作用するのに対し、IL-7は、Tエフェクター細胞を選択的に活性化するので、IL-2シグナル伝達を標的とするのに比べ、IL-7シグナル伝達を標的とした方がより有望であるはずである。
【0441】
(実施例8:ヒト化マウスモデルにおける及び生体外での腫瘍由来のヒトT細胞又は生体外ヒト腫瘍外植片培養物でのBicki抗PD1-IL7分子の有効性)
ヒト化マウスモデル:
1e6ヒトPBMCを、マウスに腹腔内注射した。マウスを、抗PD1抗体又はBicki抗PD1VH-IL7分子(5mg/kg)で毎週2回処置した。注射の16日後、血液を回収し、マウスを屠殺した。ヒトCD3 T細胞のパーセンテージを、ヒトCD45細胞においてフローサイトメトリーにより解析し、ヒトIFNガンマを、血漿においてELISAにより容量決定し、ヒトCD3+細胞の浸潤を、マウスの結腸において、免疫組織蛍光により定量した。近位及び遠位結腸、肝臓並びに肺を、Tissue Tek(登録商標)OCTにおいて包埋した。切片を、Dapi及びヒトCD3について染色した。肝臓及び肺について、CD3浸潤を、pixel2/mm2で定量した。結腸について、CD3+浸潤T細胞をカウントした。
【0442】
異なるがん由来の生体外T細胞研究:
T細胞を、腎臓がん、転移性結腸直腸がん、肝細胞癌、シュワン腫生検から抽出し、CD3、CD4、CD8、PD-1、CD127及びCD132について染色した。免疫蛍光を、FACS LSRIIにより解析した。CD4+CD3+又はCD8+CD3+集団を、解析した。
【0443】
細胞を、組換えIL-7又は抗PD1VH-IL7抗体(29nM)で15分間処理した。次に、細胞を、固定し、透過処理し、pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))、CD3、CD4及びCD8について染色した。次に、細胞を、遠心分離により洗浄し、完全培地において、アイソタイプ対照、抗PD-1、Il-7に融合したB12アイソタイプ(アイソタイプ-VH IL-7)又はIL-7に融合した抗PD-1(抗PD-1 VH IL-7)と、濃度5μg/mLで再懸濁した。48時間後、上清を回収し、IFNγ分泌を、MSDテクノロジー(Meso scale Discovery社)を使用して容量決定した。
【0444】
CD3+T細胞集団における腫瘍内FoxP3 Treg染色。組換えIL-7又は抗PD-1 VHIL7(29nM)での処置(15分間のインキュベート)後のFoxP3-CD3+エフェクターT細胞対FoxP3-CD3+Treg細胞におけるpSTAT5のFacs解析。次に、細胞を固定化し、透過処理し、pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))、CD3及びFoxp3について染色した。
【0445】
結果
ヒト化マウスモデル(
図12)において、本発明者らは、抗PD1抗体及びPBSでの陰性対照と比較して、Bicki抗PD1-IL7分子での処理後に末梢血におけるCD3陽性細胞のパーセンテージの増加及びIFNg分泌の増加を観察し、これにより、Bicki分子が、ヒトT細胞拡大、生存及び活性化を増加させることをインビボで確認した。これらの相違は、結腸、又は肝臓及び肺への多いT細胞浸潤と更に相関し、これにより、Bicki分子のIL-7部分が、炎症組織におけるヒトT細胞遊走を促進することを確認する。
【0446】
ヒト腫瘍のT細胞表現型解析は、腫瘍内T細胞が、PD-1、IL-7R/ガンマ共通鎖(CD127及びCD132)を発現し、これは、Bicki抗PD1-IL7分子が、文献において予想されたものと対照的に、腫瘍内ヒトT細胞を刺激するのに局所的に十分であり得ることを示す(
図13)。実際、腫瘍内T細胞は、pSTAT5染色(
図14)により示す通り、IL-7及びBicki抗PD1-IL7分子に応答し、これは、腫瘍から精製したヒトT細胞において、Bicki抗PD1-IL7分子が、様々な腫瘍サブタイプの処置に有益であり得ることを、生体外で確認する。次に、腫瘍細胞、さらにヒト免疫細胞及び間質細胞を含む全ての腫瘍微小環境も含有する、ヒト腫瘍外植片の生体外培養モデルを使用し、抗PD1、アイソタイプVH-IL7、Bicki抗PD1-IL7分子又はIL-7で処理した(
図15)。T細胞活性化の特定のマーカー及び代替マーカーは、様々な臨床試験において抗PD1に対する応答と関連したので、IFNg分泌を、上清において解析した。本発明者らは、bicki抗PD-1 IL7で処理したヒト腫瘍培養物が、よりIFNgを有意に分泌することを観察し、これにより、IL7が、腫瘍ベッドにおいて局所的に作用し、T細胞活性化を局所的に増加させることを確認した。興味深いことに、Bicki抗PD1-IL7分子で処理したヒト腫瘍細胞培養物は、抗PD1単独又はIL7/アイソタイプVHIL7単独よりIFNgを分泌し、これにより、腫瘍内T細胞を活性化する抗PD-1のIL-7との組合せの相乗効果を示している(
図15B)。がん患者(結腸直腸がん、シュワン腫、腎臓がん及び肝細胞がん)由来の、腫瘍内Treg(FoxP3+)のパーセンテージも解析した。
図16Aは、試験した各がんが、Treg細胞を解除するBicki抗PD1-IL7分子の標的であり得る、Treg細胞を示すことを示している結果を示す。次に、腫瘍内エフェクター(FoxP3-)及びレギュレーターT細胞(FoxP3+)におけるSTAT5活性化(pSTAT5)を、Bicki抗PD1-IL7分子での処理後に解析した。結果を、結腸直腸がん、シュワン腫及び膵臓がん由来の細胞を用いて得て、Bicki分子が、腫瘍内エフェクター及びレギュレーターT細胞においてIL-7R経路を活性化することができることを示す
図16Bに示した。この結果は、Treg抑制活性を抑制しながら、腫瘍内に入り込んだエフェクターT細胞活性化を好むBicki抗PD1-IL7分子のもろ刃のブレードを強調する。
【0447】
(実施例9. IL-7に融合したFcの変異がIL-7Rへの結合及びpSTAT5シグナル伝達を修飾し、インビボの薬理動態を改善する)
IL-7変異体を得るために、IL7のCD127への相互作用に関与するアミノ酸を、類似の性質及び特性を有するアミノ酸で置換した。幾つかの変異、すなわち、Q11E、Y12F、M17L、Q22E、D74E、D74Q、D74N、K81R、W142H、W142F及びW142Yを生成した。
【0448】
システイン残基をセリン残基で置換することにより、IL-7ジスルフィド結合を崩壊させ、置換C2S-C141S+C34S-C129S(<<SS1>>と命名した変異)、又はC2S-C141S+C47S-C92S(「SS2」と命名した変異)、又はC47S-C92S+C34S-C129S(「SS3」と命名した変異)をもたらした。
【0449】
【0450】
【0451】
【0452】
【0453】
【0454】
IL7配列中の1個のアミノ酸の置換は、PD-1受容体に結合するその能力を変更しなかった(
図17A、
図17B及び
図17C)。しかしながら、これらの変異は、生体外でのT細胞アッセイにおけるCD127結合及びpSTAT5シグナル伝達により示される通り、その生物学的活性を変化させる(
図18及び
図19並びにTable 3(表9)及びTable 6(表12))。変異D74E及びW142Hは、Tリンパ球におけるCD127へのIL-7結合とpStat5の活性化の両方を減少させるのに最も効率的な変異である(
図18A、
図18B及び
図19A、
図19B並びにTable 3(表9)及びTable 7(表13))。別の実験において、ジスルフィド結合崩壊の効果を、解析した(
図18C)。高濃度(10μg/ml)で、SS2又はSS3は、IL-7WTから3log偏差で、Tリンパ球においてpStat5を活性化することができた(
図18C及びTable 6(表12))。
【0455】
これらの変異の結合能を確認するために、ビアコアアッセイを行い、KDを決定した(受容体とその抗原の間の平衡解離定数、Table 4(表10)を参照)。変異SS2及びW142Hは、7~57nMに近いKDで、CD127へのより低い親和性を有する。SS3変異は、3μMに近いKDで、CD127に対して最も低い親和性を有する。CD132受容体に対する親和性も、Table 5(表11)に示した通り評価した。この実験において、CD127は、IL-7の不存在下でCD132と二量体を形成するので、IgG4単独を、ベースラインKD親和性として使用した。IL-7変異W142Hは、CD132に結合するが、IgG IL-7WTと比較して5倍高い親和性である。このデータは、変異W142Hが、CD127への結合を減少させ、CD132受容体に対するIL-7の結合を再指示することを示し、これは、
図18に示す通り、T細胞におけるpSTAT5活性化の喪失をもたらす。対照的に、本発明者らは、試験した条件において、SS2変異が、CD132受容体に結合する能力を失うことを観察し、これは、SS2変異が、CD132受容体よりCD127に優先的に結合し、T細胞におけるpSTAT5活性の減少をもたらすことを示唆している(
図19)。
【0456】
インビボで抗PD-1 IL-7の薬理動態/薬理学を決定するために、マウスに、1回用量のIgG-IL-7(34.4nM/kg)を静脈内注射した。血漿薬物濃度を、ヒトIgGに特異的なELISAにより解析した。
図19及びTable 7(表13)は、得られたCmax(注射の15分後の最大濃度)が、理論的濃度より30倍低いので、IgG4 IL-7 WT分子が、迅速な分布を有することを示す。試験した全W142Y、F、H変異は、IL-7WTより5~10倍高いCmaxで、より良好な分布特性を示した(
図19A及びTable 7(表13))。W142H変異は、最大のCmaxを示す。抗PD-1 IL-7 D74E変異はまた、良好なCmaxを示した。変異SS2及びSS3は、IL-7WTより7~13倍高いCmaxの最善のPK特性及び良好な直線性特性曲線を示す。同時に、AUC(曲線下面積)を決定し(Table 7(表13)及び
図20D)、AUCは、薬物曝露及び身体からのそのクリアランス速度の程度への洞察を与える。これらのデータは、AUCは、IL-7変異で増大することを示し、これは、IL-7変異が、改善された薬物曝露を有することを意味している。
図20Dにおいて表す通り、本発明者らは、薬物曝露は、変異体のIL-7効力(pSTAT5 EC50により測定)と相関することを観察した。まとめると、IL-7の親和性は、生成物の薬理動態と相関する。それらの受容体CD127及びCD132に対するIL-7の親和性の減少は、インビボでIL-7二機能性分子の吸収及び分布を改善する。
【0457】
(実施例10:IgGのC末端ドメインでのC末端ドメインでのシステインの付加は、IL7分子の可撓性を減少し、インビボでの薬理動態を改善する)
IgGのC末端ドメインでのC末端ドメインでのシステインの付加も試験して、追加のジスルフィド結合を生成し、IL-7分子の可撓性を潜在的に制限した。この変異を、「C-IL-7」と命名した。
図21は、IgG構造におけるジスルフィド結合の付加が、抗PD-1 IL7 WT二機能性分子と比較して、IL-7のpSTAT5活性を減少させ(
図21A)、インビボでの薬理動態アッセイにおいてCmaxを増加させる(5倍)(
図21B)ことを示す。
【0458】
(実施例11:IgG1N298Aアイソタイプで構築した抗PD-1 IL-7変異体は、IL-7Rへの良好な結合、より良好なpSTAT5シグナル伝達及びインビボでの良好な薬理動態特性を有する)
異なるアイソタイプの抗PD-1 IL-7二機能性分子を、IgG4m(S228P)又はIgG1m (ナンバリング方法に依存したN298A又はN297A)で試験した。IgG4アイソタイプは、インビボでのFabアーム交換を防ぐためのS228P変異を含み、IgG1アイソタイプは、免疫サイトカインの非特異的結合を低減し得るFcγR受容体へのIgG1アイソタイプ結合を抑制するN298A変異(「IgG4m」又は「IgG1N298A」と命名した変異)を含む。次に、抗PD-1 IL-7二機能性分子を、2つの異なるアイソタイプ、N297Aにおいて変異したIgG1(IgG1mと呼ぶ)アイソタイプ及びIgG4 S288Pアイソタイプ (IgG4mと呼ぶ)で構築して、アイソタイプ構造が、IL-7の生物学的活性及びその薬理動態特性を変化させるかどうかを決定した。
【0459】
図22A及び
図22Bは、IgG4m又はIgG1mアイソタイプで構築した抗PD-1 IL7二機能性分子が、PD-1受容体への同じ結合特性を有することを示し、これは、アイソタイプが、VH及びVLのコンフォメーション並びにPD-1に対する抗PD-1抗体の親和性を修飾しないことを示している。しかしながら、本発明者らは、IgG1mアイソタイプが、予想外に、CD127上でのIL-7 D74、SS2及びわずかに、SS3の結合(
図23A、
図23B、
図23C及び
図23D)並びにヒトPBMC上でのpSTAT5活性化(
図24A、
図24B及び
図24C)を改善することを観察した。pSTAT5シグナル伝達におけるこの増加を、別のT細胞株(PD-1及びCD127を発現するジャーカット細胞、
図24Dを参照)上でSS2変異について確認したが、驚くべき様式で、IgG1mアイソタイプは、抗PD-1 IL-7 WT二機能性分子のpSTAT5活性を修飾せず、これは、IgG1mアイソタイプのみが、IL-7変異体の活性を改善することを示唆している。抗PD1抗体及びIL7変異体を含む二機能性分子のTCRが仲介するシグナル伝達を活性化する能力を決定するために、NFATバイオアッセイを行った。結果は、二機能性分子が、TCRが仲介するシグナル伝達(NFAT)を活性化するのに、抗PD1又は抗PD1+rIL7(別々の化合物として)より良好であることを示す
図25Aを示し、これは、PD1+T細胞に対する二機能性分子の相乗効果を示している。次に、本発明者らは、IgG4m及びIgG1mアイソタイプで構築した抗PD-1抗体及びIL-7変異体(変異D74E、W142H又はSS2を含む)を含む二機能性分子の相乗的な能力を評価した(
図25B、
図25C、
図25D)。試験した全ての変異は、NFATシグナル伝達の活性化に対する相乗効果を保存し、活性化のレベルは、pSTAT5シグナル伝達を活性化するそれらの能力、特に、IgG4mとのIL-7 D74Eを含む二機能性分子についての能力と相関する。
【0460】
マウスにおける薬理動態研究は、IgG1アイソタイプが、IL7WT及びSS3分子についての薬物曝露及びW142H分子に対する最小の影響を修飾しないことを示す(
図26A)。これらのデータ全体は、最適化したアイソタイプ(IgG1m)が、インビボでの生成物の良好な薬理動態を保存しながら、変異体の生物学的活性を増強するのに十分であることを示す。IgG1mアイソタイプと共に、他のIL-7変異体:D74N、D74Q及びD74E+W142H変異の組合せを試験した。抗PD-1 IL-7 D74E変異体との相違は、pSTAT5活性化(
図25B)及び薬理動態(
図26B)で観察されなかった。二重変異D74E+W142Hは、W124H IgG1と比較して、同様の特性を示し、D74Qは、D74E変異と比較して、同様の特性を示した。本発明者らはまた、IgG1mアイソタイプ+YTE変異(M252Y/S254T/T256E)を有する二機能性分子を構築した。この変異は、FcRn受容体への結合を増加させることにより、抗体の半減期を増加させることが記載されている。
図23Dに示す通り、YTE変異は、D74又はW142H変異を含む二機能性分子のpSTAT5シグナル伝達を修飾しない。
【0461】
(実施例12:C末端のリジン残基への変異K444Aはインビボで薬理動態に影響しない)
ヒトIgGの全てのサブクラスは、循環中に切断され得る抗体重鎖のC末端のリジン残基(K444)を有する。血中でのこの切断は、IgGに結合したIL-7を放出させることにより、免疫サイトカインの生物活性を損なう可能性がある。この問題を回避するために、IgGドメイン中のK444アミノ酸をアラニンで置換して、タンパク分解切断を低減した。これは、抗体について一般的に使用される変異である。
図27に示す通り、同様の曲線が、IgG WT IL-7及びIgG K444A IL-7の間で得られた。これは、変異が、薬物の薬理動態特性に影響しないことを示唆している。
【0462】
(実施例13:IgG抗体間のリンカーは、インビボで薬理動態を修飾しないが、pSTAT5シグナル伝達の活性化を改善する)
IgG FcドメインとIL-7mの間の異なるリンカーを試験して、可撓性を修飾した。幾つかの条件を試験した(例えば、リンカーなし、GGGGS、GGGGSGGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS)。
【0463】
実施例1及び2について、FcのC末端ドメインとIL-7のN末端ドメインの間のリンカー(G4S)3を、それぞれ、IgG4m-IL7及びIgG1m-IL-7構築に使用した。このリンカーは、高い可撓性及びIL7活性化シグナルの改善を可能にした。IL7のCD127への親和性を低減し、薬理動態を改善するために、リンカーの長さを変動させて(リンカーなし、G4S、(G4S)2又は(G4S)3) 、異なる構築物を試験した。比較のため、IgG1m又はIgG4m Fc IL-7 WTも、様々なリンカーで生成した。
【0464】
薬理動態研究は、リンカーの長さが、試験した構築物:抗PD-1 IL7 WT(
図28A)、抗PD-1 IL-7 D74(
図28B)及び抗PD-1 IL-7 W142H(
図28C)について生成物の分布、吸収及び排出に影響を有さないことを示す。しかしながら、リンカーの長さは、
図28Dに示す通り、pStat5の活性化に影響する。実際、リンカー(G4S)3で構築した抗PD-1 IL7は、(G4S)2又はG4S3リンカーで構築した抗PD-1 IL-7と比較してpSTAT5シグナル伝達の活性化においてより効力があり、リンカーなしで構築した抗PD-1 IL-7と比較してさらにより効力がある。これらのデータは、(G4S)3リンカーの使用が、インビボでの薬物の薬理動態を損なうことなく、IL-7の可撓性を可能にすることを強調する。
【0465】
(実施例14:抗PD-1 IL-7変異体は、PD-1-CD127+細胞よりPD-1+CD127+細胞への優先的結合を可能にする)
次に、本発明者らは、PD-1+T細胞を標的とする抗PD-1 IL-7二機能性分子の能力を評価した。CD127+を発現するジャーカット細胞又はCD127+及びPD-1+を共発現するジャーカット細胞を、45nMの以下の二機能性分子:抗PD-1 IL-7 WT、D74、W142H、SS2及びSS3で染色した。結合を、抗IgG-PE(Biolegend社、クローンHP6017)で検出し、フローサイトメトリーにより解析した。
【0466】
結果:
図29は、抗PD-1 IL-7 WT及びD74変異体が、PD-1+/CD127+細胞対PD-1-/CD127+細胞に対して同様の有効性で結合し、一方、抗PD-1 IL-7変異体SS2、SS3が、PD-1+/CD127+細胞及びPD-1-/CD127+細胞に2~3倍高い有効性で結合することを示す。抗PD-1 IL-7 W142H二機能性分子は、中間の効果を示し、PD-1+/CD127+細胞に1.4倍高い有効性で結合することを示す。まとめると、これらのデータは、Il-7変異が、薬物の良好な薬理動態を可能にするばかりでなく、PD-1+細胞に対する優先的な結合、すなわち、同じ細胞での薬物の標的化を可能にすることを示す。抗PD-1 IL-7は、CD127+ナイーブT細胞より腫瘍微小環境内におけるPD-1+CD127+疲弊したT細胞上でIL-7を濃縮するので、この態様は、インビボでの薬物の生物学的活性についての対象となる。
【0467】
(実施例15:分子bicki抗PD-1 IL-7は、CD4及びCD8 T細胞の増殖を可能にし、カニクイザルにおけるインビボでの前臨床安全性を示す)
カニクイザルに、抗体について6.87nM/kg(n=2)又は34.35nM(n=1)(1mg/kg又は5mg/Kgと均等)を注射した。血液解析を、15日目又は注射の4時間後までに行った。CD4/CD8 T細胞又はB細胞の増殖を、Ki67マーカーを使用して血中でフローサイトメトリーにより評価した。pSTAT5を、細胞の固定及び透過処理後に、複数の時間ポイントで、CD3+T細胞において、FACSにより解析した。
【0468】
結果:
図30A及び
図30Bは、bicki抗PD-1 IL-7の1回注射が、CD4及びCD8 T細胞の増殖を誘導するが、B細胞の増殖を誘導しないことを示す。注射後、pSTAT5の迅速な活性化を、
図30Cに示す通り、1~24時間での最大活性化と共に観察した。薬物を、
図30D/
図30E/
図30F/
図30Gに示す通り、この用量において良好に耐容され安全であり、臨床パラメーター(生化学的及び血液細胞カウント)は、分子の注射後、正常範囲内であるか、又は正常範囲に近かった。これらのデータは、分子が、インビボでT細胞を活性化し、前臨床安全性を示すことができることを示す。
【0469】
結論
Fc部分のC末端ドメインに融合したIL-7サイトカインを含むBicki抗PD1-IL7抗体フォーマットは、CD127受容体への結合を維持し、一方、予想外に、FcのN-末端ドメインに融合したIL7(IL7-Fc)は、その結合能を喪失する。Bickiフォーマットは、患者におけるIL-7R活性化及び排出半減期に関してより効力がある。更に、IL7-Fc化合物との比較において、Bicki抗PD1-IL7抗体フォーマットは、PD-1+T細胞浸潤物におけるIL-7の蓄積及びPD-1+T細胞上でのIL-7の再局在化を可能にし、抗PD1+IL7組換えタンパク質の使用の組合せと比較して、Bickiを使用した場合にT細胞活性化が増大した。更に、Bicki抗PD1-IL7分子は、一方で、インビトロとインビボモデルの両方で、エフェクターT細胞の増殖及びIFNgサイトカインの分泌が反映するそれらの活性化を増加し、他方で、T細胞に対するTreg抑制性機能を解除することにより、単一のもろ刃の剣である。これは、様々な腫瘍タイプ及び症状から単離したヒトT細胞において示され、これは、Bicki抗PD1-IL7分子が、様々な腫瘍サブタイプに有益であり得ることを示唆している。PD-1療法に対する腫瘍抵抗性は、T細胞排除を示す。PD-1応答が、腫瘍浸潤T細胞の量と相関することは知られている。Bicki抗PD1-IL7分子は、細胞表面でのインテグリン発現を増大させ、これは、本発明の二機能性分子が、複数のがんサブタイプにおいて腫瘍へのT細胞浸潤を促進することを示唆している。
【0470】
材料及び方法
PD1結合ELISA
活性ELISAアッセイのため、組換えhPD1(Sino Biologicals社、Beijing、China;照会10377-H08H)を、プラスチック上、0.5μg/mlで炭酸塩バッファー(pH9.2)において固定化し、精製した抗体を加えて、結合を測定した。インキュベート及び洗浄後、ペルオキシダーゼ-標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)を加え、従来方法により明らかにした。
【0471】
ビアコア法を使用した親和性測定
CD127(A)又はCD132(B)についてのその重鎖上でIL-7に融合したIgGのビアコアによる親和性評価。CD127(Sinobiological社、10975-H03H-50)を、CM5バイオチップ上に、20μg/mlで固定化し、示したタンパク質を、連続する濃度(0.35;1.1;3.3;10;30nM)で加えた。親和性を、2つの状態反応モデルを使用し、解析した。CD132に対するIL-7の親和性を評価するために、CD127を、CM5バイオチップ上に固定化し、各IL-7構築物を、濃度30nMで注射した。CD132受容体(Sinobiological社10555-H08B)を、異なる濃度、例えば、31.25、52.5、125、250、500nMで加えた。定常状態親和性モデルを、解析のため使用した。
【0472】
CD127結合ELISA
CD127結合を、サンドイッチELISA法により評価した。抗体骨格により標的化した組換えタンパク質を固定化し、次に、CD127組換えタンパク質(ヒスチジンタグ、Sino ref 10975-H08H)と予めインキュベートしたIL-7融合抗体を、インキュベートした。顕色を、ビオチンに結合した抗ヒスチジン抗体(MBL #D291-6)とペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジン(JI 016-030-084)の混合物で行った。比色分析を、TMB基質を使用し、450nmで決定した。
【0473】
インビボでのpSTAT5解析
ヒト健常ボランティアの末梢血から単離したPBMCを、組換えIL-7、又はIL-7融合IgGと15分間インキュベートした。次に、細胞を固定化し、透過処理し、AF647標識抗pSTAT5(クローン47/Stat5(pY694))で染色した。データを、CD3+T細胞集団におけるMFI pSTAT5を計算することにより、得た。
【0474】
インビボでのIL-7融合IgGの薬理動態
IL-7免疫サイトカインの薬理動態を解析するために、1回用量の分子を、BalbcRJマウス(メス6~9週)に眼窩内注射した。血漿中の薬物濃度を、Il-7融合IgGを含有する固定化抗ヒト軽鎖抗体(クローンNaM76-5F3)希釈血清を使用し、ELISAにより決定した。検出を、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immunoresearch社;USA;照会709-035-149)で行い、従来方法により明らかにした。
【0475】
カニクイザルに、Bicki IL-7を2用量で静脈内注射した。血液を、注射後の複数の時間ポイント(15/30分、1/2/4時間、1/2/3/6/10/14日)で回収して、生化学的及び細胞カウントを解析した。
【0476】
Promega細胞ベースのバイオアッセイを使用したT細胞活性化アッセイ
T細胞活性化を回復させる抗PD-1抗体の能力を、Promega PD-1/PD-L1キット(照会J1250)を使用し、試験した。2つの細胞株、(1)エフェクターT細胞(PD-1、NFATにより誘導するルシフェラーゼを安定的に発現するジャーカット)及び(2)活性化標的細胞(抗原に独立した様式でコグネートTCRを刺激するよう設計したPDL1及び表面タンパク質を安定的に発現するCHO K1細胞)を使用した。細胞を共培養する場合、PD-L1/PD-1相互作用は、TCRが仲介する活性化を阻害し、これにより、NFAT活性化及びルシフェラーゼ活性を遮断する。抗PD-1抗体の添加は、PD-1が仲介する阻害性シグナルを遮断し、これが、NFAT活性化及びルシフェラーゼ合成及び生物発光シグナルの放出を導く。実験を、製造元の推奨に従い行った。PD-1抗体の連続希釈液を試験した。PD-L1+標的細胞の共培養の4時間後、PD-1エフェクター細胞及び抗PD-1抗体、BioGlo(商標)ルシフェリン基質を、ウェルに加え、プレートを、Tecan(商標)ルミノメーターを使用し、読み取った。
【0477】
抗体及び二機能性分子
以下の抗体及び二機能性分子を、本明細書において開示する異なる実験において使用した:ペムブロリズマブ(Keytrudra、Merck社)、ニボルマブ(Opdivo、Bristol-Myers Squibb社)、及び配列番号19、22又は24において定義する重鎖及び配列番号28において定義する軽鎖を含む抗PD1ヒト化抗体又は配列番号71において定義する重鎖及び配列番号72において定義する軽鎖を含む抗PD1キメラ抗体を含む本明細書において開示する二機能性分子。
【配列表】
【国際調査報告】