(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】生存微細藻類を貯蔵するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020560977
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(85)【翻訳文提出日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 IL2019050489
(87)【国際公開番号】W WO2019211851
(87)【国際公開日】2019-11-07
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519266421
【氏名又は名称】バクサ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】バシャン オハド
(72)【発明者】
【氏名】ベルツィン アイザック
(72)【発明者】
【氏名】バシャン オデッド
(72)【発明者】
【氏名】コーチャー サム シー.
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB04
4B029DB19
4B029DD06
(57)【要約】
生存藻類を貯蔵するための装置が開示される。装置は、少なくとも部分的に光を透過する密閉容器であって、生存藻類水産養殖物を所定の温度で保持するように構成される、密閉容器と、 密閉容器に光を供給するための少なくとも1つの光源と、密閉容器にCO
2を供給するためのCO
2源と、密閉容器内の空気を循環させるための空気循環システムと、少なくとも1つの光源を制御して、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、少なくとも4週間にわたって藻類の繁殖を阻止する量で、密閉容器の内部空間を照射するためのコントローラと、を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存藻類を貯蔵するための装置であって、
少なくとも部分的に光を透過する密閉容器であって、生存藻類水産養殖物を所定の温度に保持するように構成されている、密閉容器と、
前記密閉容器に光を供給するための少なくとも1つの光源と、
前記密閉容器にCO
2を供給するためのCO
2源と、
前記密閉容器内の空気を循環させるための空気循環システムと、
前記少なくとも1つの光源を制御して、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、少なくとも4週間にわたって藻類が繁殖するのを阻止する量の光を前記密閉容器に供給するためのコントローラと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記CO
2源を制御して、前記藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、前記藻類が繁殖するのを阻止する量のCO
2を供給するように、さらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
光の強度および時間は、前記生存藻類の種類、前記密閉容器のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
CO
2の前記量は、前記生存藻類の種類、前記密閉容器のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記所定の温度を調整するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記密閉容器を保持するように適合された制御温度チャンバをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記密閉容器の内部の1つまたは複数の状態を感知するための少なくとも1つのセンサをさらに備え、前記コントローラは、感知された前記1つまたは複数の状態に基づいて前記装置の1つまたは複数の制御可能な構成要素を制御するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
酸化剤源をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記酸化剤源から前記密閉容器に供給される酸化剤のタイミングおよび量を制御して、前記生存藻類水産養殖物を害することなく、望ましくない微生物の成長を阻止するのに十分であるように、さらに構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
循環させた前記空気を加湿する加湿器をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記密閉容器は、0.5~20Lの容積を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
生存藻類を貯蔵するための装置の中で、生存藻類の集団を制御するための方法であって、
前記装置に含まれる密閉容器の中に貯蔵された藻類水産養殖物の中で、空気を循環させるステップと、
前記藻類水産養殖物にCO
2を供給するステップと、
を含み、
前記密閉容器に貯蔵された前記藻類水産養殖物に制御された量の光放射を供給するステップであって、4週間超にわたって、水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、前記藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分な量の光を供給する、方法。
【請求項13】
水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、前記藻類水産養殖物を生存状態で保つのに十分な制御された量のCO
2を、前記藻類水産養殖物に供給するステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、前記藻類水産養殖物を生存状態に保つために、前記藻類水産養殖物の温度を制御するステップ
をさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記藻類水産養殖物に酸化剤を供給するステップ
をさらに含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化剤を供給するステップは、所定のタイミングで所定の用量の酸化剤を供給するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
循環させた前記空気を加湿するステップ
をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記空気の加湿量は、スマート容器に貯蔵された前記藻類水産養殖物中の水の量が実質的に一定に保たれるように決定される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、藻類を貯蔵する分野に関し、より具体的には、生存藻類を貯蔵するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖で、人工的に成長される多くの生物は、藻類(微細藻類または大型藻類のいずれか)で栄養補給される。魚類、軟体動物および甲殻類などの生物、例えば、シーバス、マダイ、アワビ、二枚貝、エビなどは、それらの生命の少なくともいくつかの段階において、生存藻類で栄養補給されることを必要とする。生存藻類は、乾燥藻類または冷凍藻類などの任意の他の代替物よりも高い栄養価を有する。藻類は、製品の貯蔵寿命を延ばし、より安価な貯蔵および/または輸送方法、例えば、海上輸送が使用できるようにするために、乾燥または冷凍される。生存微細藻類は、水産養殖で、冷却したまま(例えば、冷蔵庫中で)維持される場合、4週間まで生存し得る。したがって、現在、生存藻類の流通には、高価な航空輸送を使用することが必要である。
【0003】
いくつかの水産養殖物の孵化場は、その孵化場自体で生存藻類/微細藻類を成長させるが、このプロセスは、藻類密度を低くすること(例えば、0.5g/L微細藻類)に制限され、複雑で、高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、4週間を超える期間、例えば、2ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、およびそれ以上にわたって、生存微細藻類を貯蔵することを可能にし得る貯蔵装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの態様は、生存藻類を貯蔵するための装置に関連し得る。この装置は、少なくとも部分的に光を透過する密閉容器であって、生存藻類水産養殖物を所定の温度で保持するように構成される、密閉容器と、密閉容器に光を供給するための少なくとも1つの光源と、密閉容器にCO2を供給するためのCO2源と、密閉容器内の空気を循環させるための空気循環システムと、少なくとも1つの光源を制御して、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、少なくとも4週間にわたって藻類の繁殖を阻止する量で、密閉容器の内部空間を照射するためのコントローラと、を含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、コントローラは、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、藻類の繁殖を阻止する量のCO2を供給するように、さらに構成されてもよい。いくつかの実施形態では、光の強度および時間は、生存藻類の種類、密閉容器の内部空間のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、CO2の量は、生存藻類の種類、密閉容器の内部空間のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、コントローラは、所定の温度を調整するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、装置は、密閉容器を保持するように適合された制御温度チャンバをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、装置は、密閉容器内の1つまたは複数の状態を感知するための少なくとも1つのセンサをさらに含むことができ、コントローラは、1つまたは複数の感知された状態に基づいて装置の1つまたは複数の制御可能な構成要素を制御するように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、装置は、酸化剤源をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、生存藻類水産養殖物を害することなく、望ましくない微生物の成長を阻止するのに十分であるように、酸化剤源から密閉容器に供給される酸化剤のタイミングおよび量を制御する(例えば、調整する、変更する、または他の方法で操作する)ようにさらに構成されてもよい。いくつかの実施形態では、装置は、循環させた空気を加湿するための加湿器をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、密閉容器は、0.5~20Lの容積を有してもよい。
【0009】
本発明のいくつかの追加の態様は、生存藻類を貯蔵するための装置内の生存藻類の集団を制御する方法を対象とすることができる。この方法の実施形態は、装置に含まれる密閉容器の中に貯蔵された藻類水産養殖物の中で空気を循環させるステップと、藻類水産養殖物にCO2を供給するステップと、密閉容器内に貯蔵された藻類水産養殖物に、制御された量の光放射を供給するステップと、を含むことができる。いくつかの実施形態では、光は、4週間超にわたって、水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分な量で供給される。
【0010】
この方法のいくつかの実施形態は、さらに、または代替として、水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分な制御された量のCO2を、藻類水産養殖物に供給するステップを含んでもよい。この方法のいくつかの実施形態は、水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、藻類水産養殖物を生存状態に保つために、藻類水産養殖物の温度を制御するステップを含むことができる。本方法のいくつかの実施形態は、藻類水産養殖物に酸化剤を供給するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、酸化剤を供給するステップは、所定のタイミングで所定の用量の酸化剤を供給するステップを含んでもよい。
【0011】
この方法のいくつかの実施形態は、循環させた空気を加湿するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、空気の加湿量は、スマート容器に貯蔵された生存藻類水産養殖物中の水の量が実質的に一定に保たれるように決定される。
【0012】
本発明と見なされる主題は、本明細書の最後の部分において特に指摘され、明確に特許請求がなされる。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点とともに、その構成および動作方法の両方に関して、添付の図面とともに読まれるときに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に従って、生存藻類を貯蔵するための装置の概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態に従って、生存藻類を貯蔵する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明を簡略で明確なものにするために、図に示される要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されるであろう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために、他の要素に対して誇張されることがある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応または類似する要素を示すために、図面の間で繰り返されることがある。
【0015】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細について述べる。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの特定の詳細がなくても実施され得ることが理解されるであろう。他の例では、本発明を曖昧にしないようにするために、周知の方法、手順、および構成要素を詳細に説明していない。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態による装置および方法によって、水産養殖での生存藻類(例えば、微細藻類および大型藻類)の保存寿命を、比較的長い貯蔵期間(例えば、12ヶ月)に延ばすことが可能になり得る。いくつかの実施形態による方法および装置によって、流通方法として、輸送(例えば、海上で)を使用することを可能にし得る。いくつかの実施形態では、貯蔵中、藻類の栄養価は、新たに収穫された藻類の栄養価として維持されてもよい。いくつかの実施形態では、密閉容器内で生存藻類を長期間にわたって(例えば、輸送中または貯蔵中に)保つためには、藻類水産養殖物を生存状態で保つのには十分であるが、藻類が繁殖するのには不十分な量のCO2および光を藻類に供給する必要がある。そのような場合、容器内の藻類の量および密度は、藻類の活力を維持しながら、実質的に一定に保たれてもよい。
【0017】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に従って、生存藻類を貯蔵するための装置100の概略図である
図1を参照する。装置100は、密閉容器10と、少なくとも1つの光源20と、空気循環システム30と、CO
2源32と、コントローラ50とを含むことができる。いくつかの実施形態では、装置100は、加湿器34、酸化剤源50、および/またはセンサ60をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、生存藻類水産養殖物15は、4週間を超える期間にわたって、例えば、2ヶ月、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上にわたって、装置100の中に貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、生存藻類水産養殖物15は、任意のタイプの藻類(例えば、微細藻類および大型藻類)、例えば、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、テトラセルミス属(Tetraselmis)、イソクリシス属(Isochrysis)、パブロバ(Pavlova)、タラシオシラ・ワイスフロッギー(Thalassiosira weissflogii)、タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira Pseudonana)、スピルリナ属(Spirulina)、クロレラ属(Chlorella)およびキートケロス属(Chaetoceros)を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、密閉容器10は、光に対して少なくとも部分的に透明であってもよく、例えば、密閉容器10は、透明なポリマーまたはガラスから作製されてもよく、あるいは透明なポリマーまたはガラスから作製された少なくとも1つの窓を含んでもよい。いくつかの実施形態では、密閉容器10は、生存藻類水産養殖物15を所定の温度、例えば、4℃で保つように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、密閉容器10は、0.5~20Lの容積を有してもよい。いくつかの実施形態では、密閉容器10は、100mLを上回り、50Lを下回る容積を有してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、装置100は、制御温度チャンバ5または5a、例えば、4℃に冷却された冷蔵庫に貯蔵するために配置されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、装置100は、密閉容器を保持するように適合された制御温度チャンバ5を含むことができる。いくつかの実施形態では、コントローラ50は、所定の温度を調整するように構成されてもよい。例えば、コントローラ50は、藻類水産養殖物を生存状態に保つが、藻類の繁殖を阻止するために、制御温度チャンバ5または5a内の温度を制御することができる。制御温度は、藻類のタイプに従って、決定されてもよく、例えば、ナンノクロロプシス属の藻類は、4~8℃でより良好に貯蔵されてもよく、スピルリナ属の藻類は、8~10℃でより良好に貯蔵されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光源20によって、例えば、密閉容器10の1つまたは複数の透明壁を介して、あるいは少なくとも1つの透明窓を介して、密閉容器10に光を供給することが可能になり得る。少なくとも1つの光源20は、藻類を成長させるのに適した波長の光を供給するように構成することができる任意のランプを含むことができる。例えば、少なくとも1つの光源20は、赤色光、黄色光、緑色光、および青色光のLEDアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、光の強度および少なくとも1つの光源20の照明時間は、藻類水産養殖物15を生存状態に保つが、藻類の繁殖を、例えば、少なくとも4週間抑制するのに十分な強度および十分な時間で、密閉容器10に光を供給するように、コントローラ50によって制御されてもよい。例えば、10~1000μE/m
2/秒の光合成有効放射(PAR)を、藻類水産養殖物15が密閉容器10に貯蔵されている限り(例えば、1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月およびそれ以上)、毎日、最大で8時間にわたって(例えば、5時間、6時間、7時間にわたって)、少なくとも1つの光源20によって容器10に供給することができる。光源20は、密閉容器10の外部にあるように
図1に示されているが、光源20は、容器10の内部にあってもよいことを理解されるべきである。さらに、2つ以上の光源20が使用されてもよく、これらの光源20のそれぞれは、容器10の内部または外部のいずれかに配置されてもよいことを理解されるべきである。
【0021】
いくつかの実施形態では、容器10内の藻類に供給される光の強度(例えば、PAR)および時間は、生存藻類のタイプ、密閉容器10のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、藻類水産養殖物の体積、藻類密度、および提供される光の量の間に直接的な関係があってもよい。これは、藻類水産養殖物15内で光が移動する「経路」によるものであってもよい。したがって、各種容積(例えば、1L、5L、および10L)の容器10が全て同じ断面寸法を有し得る(例えば、矩形タンクの1つの寸法が10cmであり得る)場合、供給されるPARの量は(光源20が10cmの寸法を有する辺に垂直に位置する場合)同じであり得る。そのようなケースでは、全ての容器に提供されるPARの量は、50~200μE/m2/秒であってもよい。正確な量は、藻類の種類および必要な藻類密度に従って決定され得る。例えば、10g/Lの微細藻類を含む藻類水産養殖物は、50μE/m2/秒のPARを必要とし得るが、200g/Lの微細藻類を含む水産養殖物は、200μE/m2/秒のPARを必要とし得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、空気循環システム30によって、密閉容器10内で空気を循環させることが可能になり得る。空気循環システム30は、空気ポンプ(図示せず)と、空気を容器10に供給するためのパイプライン38とを含むことができる。いくつかの実施形態では、供給される空気容量は、密閉容器10のサイズおよび容積に従って決定されてもよく、例えば、1Lの容器は、2.5~7.5L/分の空気を供給されてもよく、また10Lの容器は、5~15L/分の空気を供給されてもよい。いくつかの実施形態では、容器10は、容器10の上部に蓄積され得る過剰な空気を放出するための弁を備えてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、加湿器34を使用して、循環させた空気を加湿することができる。いくつかの実施形態では、容器10内に保持された藻類水産養殖物15内を循環する空気は、水産養殖物を脱水することができ、このようにして、藻類水産養殖物15内の水の量を減少させ、藻類を害することができる。したがって、藻類水産養殖物15の脱水を低減または排除するために、循環させた空気を加湿することもできる。加湿器34は、水を含み得るベッセルを含むことができ、加湿器に導入された空気は、加湿器34を出て密閉容器10に入る前に、泡立てられ、水と混合されて、加湿され得る。いくつかの実施形態では、ベッセルに入る空気は、ベッセルから水が経時的に蒸発しないようにするために飽和されなければならない。
【0024】
いくつかの実施形態では、CO2は、CO2源32によって密閉容器10内の藻類水産養殖物15に供給されてもよい。CO2は、藻類水産養殖物15が光の存在下で光合成を行うための栄養を提供することができる。いくつかの実施形態では、CO2源32は、CO2を提供するための任意のリザーバまたはタンク(例えば、加圧風船または補給ライン)であってもよい。いくつかの実施形態において、CO2は、密閉容器10に直接的に供給されてもよい。追加または代替として、密閉容器10内を循環する空気にCO2を、(図示されているように)供給することもできる。いくつかの実施形態では、CO2は、空気を加湿する前後のいずれかに、供給されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、一定容量のCO2が、CO2源32から容器10に連続的に提供されてもよい。例えば、1Lの藻類には、0.5~5体積%のCO2で富化された0.5~2L/分の空気を供給することができる。いくつかの実施形態では、制御された量のCO2が容器10に供給されてもよいが、これは、例えば、少なくとも1つの光源20が照らししているときだけである。したがって、コントローラ50は、CO2が密閉容器10に提供され得る容量および/または時間を制御してもよい。いくつかの実施形態では、供給され得るCO2の量は、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、繁殖を可能にするには不十分であり、したがって、藻類の繁殖が阻止される。供給されるCO2の量は、生存藻類の種類、密閉容器のサイズ、および必要な生存藻類密度のうちの少なくとも1つに基づいて決定されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、装置100は、1つまたは複数のセンサ60、例えば、pHセンサ、温度計、流量計などを含むことができる。1つまたは複数のセンサ60は、密閉容器10内の1つまたは複数の状態を感知するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ50は、1つまたは複数のセンサ60からの読み取り値に反応してもよく、感知された1つまたは複数の状態に基づいて装置の1つまたは複数の制御可能な構成要素を制御してもよい。例えば、センサ60は、pHセンサであってもよく、コントローラ50は、容器10内に保持された藻類水産養殖物15内で測定したpH値に従って、CO2源32からのCO2の供給を制御してもよい。コントローラ50は、測定されたpHレベルが最小設定pHレベル未満である場合、CO2の量(例えば、容量および/または期間)を増大させてもよい。別の例では、センサ60は、温度計であってもよく、コントローラ50は、センサ60によって測定される藻類水産養殖物15の温度に従って、制御温度チャンバ5内の温度を制御してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサ60は、容器10に近接して配置することができ、1つまたは複数の周囲状態、例えば、周囲温度および湿度を測定することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、容器10内に保持された藻類水産養殖物15内に望ましくない微生物(例えば、細菌)が蓄積するのを防止するために、例えば、酸化剤を、貯蔵時間全体の間、藻類水産養殖物15に定期的に供給してもよい。酸化剤源40は、コントローラ50に関連するメモリに格納された所定の様態に従って、容器10に酸化剤を供給することも、あるいはセンサ60から受信した読み取り値に応答して供給することもできる。いくつかの実施形態では、酸化剤源40から密閉容器10に供給される酸化剤のタイミングおよび量は、生存藻類水産養殖物を害することなく、望ましくない微生物の成長を阻止するのに十分であり得る。例えば、藻類水産養殖物15の1L当たり、0.55mgの投与量の遊離塩素を、暗い期間中(光源20がオフのとき)、毎日、提供することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、コントローラ50は、プロセッサ(例えば、チップ)と、本発明のいくつかの実施形態による方法を実行するための命令を記憶するためのメモリとを含むことができる。メモリは、制御された量の光、制御された量のCO2、制御された量の酸化剤および/または制御された温度を容器10に供給するための命令を含んでもよい。
【0029】
次に、本発明のいくつかの実施形態に従って、生存藻類を貯蔵する装置における生存藻類の集団を制御する方法のフローチャートである
図2を参照する。
図2に示されるような方法の実施形態は、例えば、コントローラ50の制御下で、装置100(
図1)によって実行されてもよい。ボックス210では、装置に含まれる密閉容器の中に貯蔵された藻類水産養殖物の中で空気を循環させることができる。例えば、空気循環システム30によって供給される空気は、装置100に含まれる密閉容器10内に貯蔵された藻類水産養殖物15内で循環させてもよい。ボックス220では、藻類水産養殖物にCO
2を供給することができる。例えば、CO
2源23から密閉容器10に供給され得るCO
2の量は、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分であるが、藻類が繁殖するのを阻止する。CO
2を、容器10に直接的に供給することも、あるいは循環させた空気に供給することもできる。
【0030】
ボックス230では、密閉容器内に貯蔵された藻類水産養殖物に、制御された量の光放射を供給することができる。例えば、少なくとも1つの光源20は、藻類水産養殖物15に、4週間超にわたって、水産養殖で藻類が繁殖するのを阻止しながら、藻類水産養殖物を生存状態に保つのに十分な量の光を供給することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、ボックス240において、藻類水産養殖物の温度を制御して、藻類水産養殖物を生存状態に保ちながら、水産養殖で藻類が繁殖するのを低減/阻止することができる。いくつかの実施形態では、ボックス250において、藻類水産養殖物に酸化剤を供給することができる。いくつかの実施形態では、酸化剤は、所定のタイミングで所定の用量で提供されてもよい。ボックス260に示すように、循環させた空気を加湿することができる。いくつかの実施形態では、空気の加湿量は、密閉容器に貯蔵された生存藻類水産養殖物中の水の量が実質的に一定に保たれるように決定されてもよい。
【0032】
本発明の特定の特徴を本明細書に例示し、説明してきたが、多くの修正、置換、変更、および当量が、当業者には今や思い浮かぶであろう。したがって、特許請求の範囲は、そのような修正および変更全てを本発明の技術思想及び技術的範囲に含まれるものとして、保護することを意図していることを理解されたい。
【国際調査報告】