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特表2022-514729固定色の水性ゲルインクの調製方法およびその水性ゲルインク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】固定色の水性ゲルインクの調製方法およびその水性ゲルインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20220207BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C09D11/16
B43K8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021523635
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(85)【翻訳文提出日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2019081633
(87)【国際公開番号】W WO2020104367
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】18306553.1
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(71)【出願人】
【識別番号】521172561
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ デ オート アルサス
(71)【出願人】
【識別番号】521174152
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ ルシェルシュ サイエンティフィーク(シー.エヌ.アール.エス.)
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムギン,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラル,フェリエル
(72)【発明者】
【氏名】スパンゲンベルグ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】メティロン,ロメイン
(72)【発明者】
【氏名】アルベンジ,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
4J039AB01
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC49
4J039BC54
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE23
4J039CA09
4J039EA16
4J039EA45
4J039GA11
4J039GA26
(57)【要約】
本発明は、固定色の水性ゲルインクをその場で調製するための方法であって、(i)還元剤として4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、(ii)ステップ(i)で調製した水性インクのゲルベースのマトリックスに金属塩の溶液を添加して、金属ナノ粒子が中に分散した固定色の水性ゲルインクを得るステップと、を含む方法に関する。本発明はまた、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金属ナノ粒子を含む、本発明の方法に従って得られる固定色の水性ゲルインクに関する。最後に、本発明は、本発明による固定色の水性ゲルインクを含む筆記具に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定色の水性ゲルインクをその場で調製するための方法であって、
(i)還元剤として4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、
(ii)ステップ(i)で調製した前記水性インクのゲルベースのマトリックスに金属塩の溶液を添加して、金属ナノ粒子が中に分散した固定色の水性ゲルインクを得るステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)の前記水性インクのゲルベースのマトリックス中の4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸の濃度が、0.1~2モル.L-1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属塩の溶液が、金塩(Au3+)の溶液である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(ii)の前記水性インクのゲルベースのマトリックス中の金属塩の濃度が、0.0001~0.5モル.L-1の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)で得られた前記金属ナノ粒子が、球形状または多面体形状、好ましくは多面体形状を有する金属ナノ粒子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金属ナノ粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、固定色の水性ゲルインク。
【請求項7】
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸の量が、前記水性ゲルインクの総重量に対して10~30重量%の範囲である、請求項6に記載の水性ゲルインク。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項6または請求項7に記載の水性ゲルインク。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子が1~100nm、好ましくは10~60nmの範囲の平均粒径を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項10】
金属ナノ粒子の量が、前記水性ゲルインクの総重量に対して0.05~3重量%の範囲である、請求項6~9のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項11】
水の量が、前記水性ゲルインクの総重量に対して50~95重量%の範囲である、請求項6~10のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項12】
前記水性ゲルインク内の前記金属ナノ粒子間の距離が100nm未満である、請求項6~11のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項13】
グリコールエーテルからなる群から選択される溶剤を、好ましくは前記水性ゲルインクの総重量に対して5~35重量%の範囲の量でさらに含む、請求項6~12のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項14】
1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびそれらの混合物からなる群から選択される抗菌剤を、好ましくは前記水性ゲルインクの総重量に対して0.01~0.5重量%の範囲の量でさらに含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項15】
トリトリアゾール、ベンゾトリアゾール、およびそれらの混合物からなる群から選択される腐食防止剤を、好ましくは前記水性ゲルインクの総重量に対して0.05~1重量%の範囲の量でさらに含む、請求項6~14のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項16】
消泡剤を、好ましくは前記水性ゲルインクの総重量に対して0.05~1重量%の範囲の量でさらに含む、請求項6~15のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項17】
キサンタンガム、アラビアガム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるレオロジー変性剤を、好ましくは前記水性ゲルインクの総重量に対して0.08~2重量%の範囲の量でさらに含む、請求項6~16のいずれか一項に記載の水性ゲルインク。
【請求項18】
固定色の水性ゲルインクを用いて筆記する方法であって、請求項6~17のいずれか一項に記載の固定色の水性ゲルインクを用いて媒体上に筆記するステップを含む、方法。
【請求項19】
筆記具であって、
-請求項6~17のいずれか一項に記載の固定色の水性ゲルインクを含むアキシャルバレルと、
-前記アキシャルバレルに収容された前記水性ゲルインクを供給するペン本体と、を含む、筆記具。
【請求項20】
ゲルペン、フェルトペン、修正液、マーカー、好ましくはゲルペンからなる群から選択される、請求項19に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定色の水性ゲルインクをその場で調製するための方法、ならびに本発明の方法に従って得られた4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金属ナノ粒子を含み、染料および顔料を含まない固定色の水性ゲルインクに関する。本発明はまた、本発明による固定色の水性ゲルインクを含む筆記具に関する。
【0002】
本発明の主な目的の1つは、水性ゲルインク中に通常存在する、刺激性であり、アレルギーを引き起こすという欠点を有するすべてのタイプの染料および顔料を置き換えることである。
【0003】
この目的のために、本願発明者らは、染料および顔料を含む従来の水性ゲルインクを、ナノ粒子ベースの新しいものと置き換えることにより、筆記時に固定色の新しい水性ゲルインクを得ることができる特定の方法を開発した。本発明の枠組み内で開発された方法はまた、水性媒体中で実施されるという利点を示し、したがって「環境に優しい方法」である。さらに、本発明の方法は、低温範囲で実施され、生態学的に実行可能な方法で機能し、また生態学的要件も考慮に入れる。
【0004】
本発明は、固定色の水性ゲルインクをその場で調製するための方法であって、
(i)還元剤として4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するステップと、
(ii)ステップ(i)で調製した水性インクのゲルベースのマトリックスに金属塩の溶液を添加して、金属ナノ粒子が中に分散した固定色の水性ゲルインクを得るステップと、を含む方法に関する。
【0005】
本発明の意味において、「その場で」という用語は、本発明の水性ゲルインク中に存在する金属ナノ粒子が、水性インクのゲルベースのマトリックス中で直接合成されることを意味する。
【0006】
本発明の意味において、「固定色」という用語は、本発明の水性ゲルインクの色が、媒体上への塗布の前後で、特に7暦日(1週間)にわたって、目視観察によって同じであることを意味する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、媒体は、吸収性支持体が多孔質基材である吸収性支持体であり、より好ましくは、紙、厚紙および繊維からなる群から選択される吸収性支持体である。
【0008】
本発明の目的のために、「インク」という用語は、筆記具、特にペンで使用されることを意図された「筆記用インク」を意味することを意図している。筆記用インクは、印刷機で使用され、同じ技術的制約、したがって同じ仕様を有しない「印刷用インク」と混同してはならない。実際、筆記用インクは、筆記具のチャネルよりも大きいサイズの固体粒子を含んではならず、これは、必然的に不可逆的に筆記が停止されることになる、筆記具の詰まりを回避するためである。さらに、使用される筆記具に好適なインク流量、特に100~500mg/200mの筆記流量、有利には150~400mg/200mの筆記流量を可能にしなければならない。また、筆記媒体を汚すことを回避するために、十分に急速に乾く必要がある。また、経時的な移染(出液)の問題を回避する必要がある。したがって、本発明によるインクは、それが意図される筆記具、特にペンに適しているであろう。
【0009】
さらに、「筆記用インク」は、筆記中の漏出を回避するために、流動性が高すぎてはならない。しかしながら、筆記動作の流れを容易にするために、十分に流動的である必要がある。
【0010】
本発明の特定の場合において、筆記用インクは「ゲルインク」(したがってチキソトロピー性インクに相当する)であり、20℃で、静止状態(0.01s-1のせん断速度)で測定された粘度は、例えば60mmの円錐および1°の角度を有するMalvern KINEXUSなどのコーン・プレート型レオメーターなどの同じレオメーターを使用して、20℃で100s-1のせん断速度で測定された粘度とは異なり、特により高くなる。特定の実施形態では、これらの条件下で測定された本発明によるゲルインクの粘度は、1s-1のせん断速度では、1,000~7,000mPa.s、有利には2,000~5,000mPa.s、より有利には2,500~3,500mPa.sの範囲であり、5,000s-1のせん断速度では、有利には5~50mPa.s、より有利には7~40mPa.s、さらにより有利には10~20mPa.sである。有利には、そのような粘度は、40℃および20%の相対湿度で少なくとも3ヶ月保管されている間安定であり、特に粘度は50%を超えて低下することはない。より有利には、筆記後数分での静的漏出を回避するために、せん断後の静止時の粘度への復帰は非常に迅速であり、有利には最大で数分である。
【0011】
本発明において、ステップ(i)で調製された水性インクのゲルベースのマトリックスは、50~95重量%、好ましくは60~90重量%、より好ましくは70~85重量%の水を含み得る。
【0012】
ステップ(i)で調製された水性インクのゲルベースのマトリックスはまた、溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー変性剤などの古典的なゲルインク成分を含み得る。ステップ(i)の水性インクのゲルベースのマトリックスを調製するために使用されるゲルインク成分について、本発明の固定色の水性ゲルインクの主題に関連して、以下に大部分説明される。
【0013】
還元剤4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸は、溶液の形態または粉末の形態で添加することができる。還元剤は、金属塩を金属元素に還元する(すなわち、酸化状態:0)。
【0014】
好ましい実施形態では、ステップ(i)の水性インクのゲルベースのマトリックス中の還元剤4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸の濃度は、0.1~2モル.L-1、好ましくは0.2~1モル・L-1、より好ましくは0.3~0.8モル.L-1の範囲である。
【0015】
本発明において、金属塩の溶液は、有利には金塩(Au3+)の溶液であり、より有利には塩化金(III)三水和物HAuCl.3HOの溶液である。金属塩を還元剤と接触させると、金属ナノ粒子が形成される。
【0016】
好ましい実施形態では、ステップ(ii)の水性インクのゲルベースのマトリックス中の金属塩の濃度は、0.0001~0.5モル.L-1、好ましくは0.001~0.1モル.L-1、より好ましくは0.002~0.08モル.L-1の範囲である。
【0017】
ステップ(i)で調製された水性インクのゲルベースのマトリックスへの金属塩の溶液の添加は、
-連続注入により、より明るい色の水性ゲルインクを得ることができ、または
-1滴ずつ滴下して、より暗い色の水性ゲルインクを得ることができる。
【0018】
好ましい実施形態では、ステップ(ii)で得られる金属ナノ粒子は金ナノ粒子である。別の好ましい実施形態では、金属ナノ粒子は、球形状または多面体形状、好ましくは多面体形状、より好ましくは三角形、正方形、長方形の形状を有する。
【0019】
好ましい実施形態では、金属塩と還元剤4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸とのモル比は、0.1~20%、好ましくは1~15%の範囲である。
【0020】
本発明はまた、本発明の方法に従って得られる固定色の水性ゲルインクに関し、前記水性ゲルは、還元剤としての4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金属ナノ粒子を含む。
【0021】
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金属ナノ粒子は、本発明の方法の主題に関して上記で定義された通りである。
【0022】
本発明の固定色の水性ゲルインクにおいて、還元剤4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸の量は、水性ゲルインクの総重量に対して、有利には10~30重量%、より有利には12~25重量%の範囲である。
【0023】
本発明の固定色の水性ゲルインクにおいて、金属ナノ粒子は有利には金ナノ粒子である。本発明の固定色の水性ゲルインク中に存在する金属ナノ粒子は、好ましくは球形状または多面体形状、より好ましくは多面体形状、さらにより好ましくは三角形、正方形、長方形の形状を有する。
【0024】
本発明の固定色の水性ゲルインクにおいて、本発明の金属ナノ粒子は、好ましくは1~100nm、より好ましくは10~60nmの範囲の平均粒径を有する。この平均粒径は、規格ISO9001:2015に従って、2D画像(顕微鏡:JEOL ARM 200)の分析によって測定される。
【0025】
好ましい実施形態によれば、本発明の水性ゲルインク内の金属ナノ粒子間の距離は、100nm未満であり、好ましくは10~50nmで変動し、より好ましくは15~30nmで変動する。
【0026】
本発明の固定色の水性ゲルインクにおいて、金属ナノ粒子の量は、水性ゲルインクの総重量に対して、有利には0.001~0.1重量%、より有利には0.005~0.008重量%の範囲である。
【0027】
本発明の固定色の水性ゲルインクにおいて、水の量は、水性ゲルインクの総重量に対して、有利には50~95重量%、より有利には60~90重量%、さらにより有利には70~85重量%の範囲である。
【0028】
本発明の固定色の水性ゲルインクはまた、以下に記載されるように、溶剤、抗菌剤、腐食防止剤、消泡剤、レオロジー変性剤などの古典的なゲルインク成分を含み得る。これらのゲルインク成分は、本発明の方法のステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスに添加される。
【0029】
本発明の水性ゲルインクは、溶剤を含み得る。使用可能な溶剤の中で、以下の
-トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノールなどのグリコールエーテル、
-アルコール:イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのC-C15の直鎖または分枝鎖アルコール、
-酢酸エチルまたは酢酸プロピルなどのエステル、
-炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンなどの炭酸エステル、
-メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン、および
-それらの混合物などの水に混和性の極性溶剤が挙げられる。
【0030】
好ましい実施形態では、溶剤は、グリコールエーテルからなる群から選択され、より好ましくは、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレン-グリコール-モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに有利な実施形態では、溶剤は、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
有利には、溶剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して5~35重量%、より有利には9~30重量%、さらにより有利には11~25重量%の範囲の量で存在する。
【0032】
本発明の水性ゲルインクは、イソチアゾリノン(ThorによるACTICIDE(登録商標))などの、好ましくは1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびそれらの混合物からなる群から選択される抗菌剤を含み得る。
【0033】
有利には、抗菌剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して0.01~0.5重量%、より有利には0.1~0.2重量%の範囲の量で存在する。
【0034】
本発明の水性ゲルインクは、好ましくはトリトリアゾール、ベンゾトリアゾール、およびそれらの混合物からなる群から選択される腐食防止剤を含み得る。
【0035】
有利には、腐食防止剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して0.05~1重量%、より有利には0.07~0.5重量%、さらにより好ましくは0.08~0.15重量%の範囲の量で存在する。
【0036】
本発明の水性ゲルインクは、消泡剤、好ましくはポリシロキサン系消泡剤、より好ましくは変性ポリシロキサンの水性エマルジョン(SynthronによるMOUSSEX(登録商標)、EvonikによるTEGO(登録商標)Foamexなど)を含み得る。
【0037】
有利には、消泡剤は、本発明の水性ゲルインク中に、水性ゲルインクの総重量に対して0.05~1重量%、より有利には0.1~0.5重量%、さらにより有利には0.2~0.4重量%の範囲の量で存在する。
【0038】
本発明の水性ゲルインクは、好ましくはキサンタンガム、アラビアガム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、ゲル化効果を生じさせることができるレオロジー変性剤を含み得る。
【0039】
有利には、レオロジー変性剤は、水性ゲルインクの総重量に対して0.08~2重量%、より好ましくは0.2~0.8重量%、さらにより好ましくは0.3~0.6重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
本発明の固定色の水性ゲルインクはまた、
-水酸化ナトリウムおよびトリエタノールアミンなどのpH調整剤、
-潤滑剤、
-合体剤、
-架橋剤、
-湿潤剤、
-可塑剤、
-酸化防止剤、および
-UV安定剤などの他の添加剤を含み得る。
【0041】
存在する場合、これらの添加剤は、本発明の方法のステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスに添加される。
【0042】
本発明はまた、本発明による固定色の水性ゲルインクを用いて、媒体、好ましくは吸収性支持体が多孔質基材である吸収性支持体、より好ましくは紙、厚紙、または繊維上に筆記するステップを含む、固定色の水性ゲルインクを用いた筆記方法に関する。
【0043】
媒体、好ましくは吸収性支持体が多孔質基材である吸収性支持体、より好ましくは紙、厚紙、または繊維上に、本発明の固定色の水性ゲルインクを用いて筆記した後、媒体上に塗布された水性ゲルインク中の金属ナノ粒子間の距離は1μm未満であり、好ましくは1nm~500nmで変動し、より好ましくは100~200nmで変動する。
【0044】
最後に、本発明は、筆記具に関し、この筆記具は、
-本発明による水性ゲルインクを含むアキシャルバレルと、
-アキシャルバレルに収容された水性ゲルインクを供給するペン本体と、を含む。
【0045】
本発明の筆記具は、ゲルペン、フェルトペン、修正液、マーカー、好ましくはゲルペンからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】上記に加えて、本発明はまた、本発明の方法および比較例による固定色の水性ゲルインクの調製、ならびに実施例1および2ならびに比較例1および2に従って調製された、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸または他の還元剤を含む水性インクのゲルベースのマトリックス中に分散した金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図1~6に関する、以下の追加の説明から明らかになる他の規定を含む。
図2】同上。
図3】同上。
図4】同上。
図5】同上。
図6】同上。
【実施例
【0047】
実施例1:本発明の方法による、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金ナノ粒子に基づく固定色の水性ゲルインクの調製
最初のステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスを、180gのトリエチレングリコール(溶剤)、48gのポリエチレングリコール(溶剤)、2.3gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、および1.20gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で15分間ホモジナイズし、35℃の温度で加熱した。次に、5gのキサンタンガム(レオロジー変性剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で15分間35℃の温度でホモジナイズした。960gの脱イオン水を混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次に、3.60gのMoussex(登録商標)S9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で30分間35℃の温度でホモジナイズした。得られた水性インクのゲルベースのマトリックスを室温(25℃)で冷却した。次に、得られた水性インクのゲルベースのマトリックス1mLを、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(83264-100ML-F HEPES緩衝液Sigma-Aldrich)の溶液(1M)1mLと混合した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で2分間ホモジナイズした。
【0048】
2番目のステップ(ii)において、100μLの塩化金(III)三水和物(520918-1G Sigma-Aldrich)の溶液(100mM)を400rpmの速度で10分間混合物に導入した。
【0049】
塩化金(III)三水和物の溶液の添加を連続注入によって行ったとき、水性ゲルインクの色は青色になった。
【0050】
塩化金(III)三水和物の溶液の添加を1滴ずつ(10秒ごとに1滴)行ったとき、水性ゲルインクの色は紫色になった。
【0051】
図1は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックス中に分散した金ナノ粒子のTEM画像(装置:JEOL ARM200)を示し、図2は、水性ゲルインクをセルロース紙A4 80g.m-2(INACOPIA Elite)上に塗布した後の金ナノ粒子のSEM画像(装置:MEB Philips XL30)を示し、添加を連続注入によって行った場合である。金ナノ粒子の平均粒径は50nmである。
【0052】
図3は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックス中に分散した金ナノ粒子のTEM画像(装置:JEOL ARM200)を示し、図4は、水性ゲルインクをセルロース紙A4 80g.m-2(INACOPIA Elite)上に塗布した後の金ナノ粒子のSEM画像(装置:MEB Philips XL30)を示し、添加を1滴ずつ行った場合である。金ナノ粒子の平均粒径は30nmである。
【0053】
得られた固定色の水性ゲルインクをセルロース紙に筆記すると、色は青色または紫色(連続注入または1滴ずつにより行った導入による)に発色し、結局変化しなかった。
【0054】
実施例2:本発明の方法による、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸および金ナノ粒子に基づく固定色の水性ゲルインクの調製
最初のステップ(i)において、水性インクのゲルベースのマトリックスを、180gのトリエチレングリコール(溶剤)、48gのポリエチレングリコール(溶剤)、2.3gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、および1.20gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で15分間ホモジナイズし、35℃の温度で加熱した。次に、5gのキサンタンガム(レオロジー変性剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で15分間35℃の温度でホモジナイズした。960gの脱イオン水を混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次に、3.60gのMoussex(登録商標)S9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で30分間35℃の温度でホモジナイズした。得られた水性インクのゲルベースのマトリックスを室温(25℃)で冷却した。次に、得られた水性インクのゲルベースのマトリックス1mLを、0.14gの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES 1M>99.5%、参照:H3375、Sigma-Aldrichから)と混合した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で2分間ホモジナイズした。
【0055】
2番目のステップ(ii)において、450μLの塩化金(III)三水和物(520918-1G Sigma-Aldrich)の溶液(200mM)を400rpmの速度で20分間混合物に導入した。
【0056】
塩化金(III)三水和物の溶液の添加を連続注入によって行ったとき、水性ゲルインクの色は茶色になった。
【0057】
塩化金(III)三水和物の溶液の添加を1滴ずつ(30秒ごとに1滴)行ったとき、水性ゲルインクの色は暗色になった。
【0058】
図5は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む水性インクのゲルベースのマトリックス中に分散した金ナノ粒子のTEM画像(装置:JEOL ARM200)を示し、図6は、水性ゲルインクをセルロース紙A4 80g.m-2(INACOPIA Elite)上に塗布した後の金ナノ粒子のSEM画像(装置:MEB Philips XL30)を示し、添加を1滴ずつ行った場合である。金ナノ粒子の平均粒径は40nmである。
【0059】
得られた固定色の水性ゲルインクをセルロース紙に筆記すると、色は茶色または暗色(連続注入または1滴ずつにより行った導入による)に発色し、結局変化しなかった。
【0060】
比較例1:還元剤としてのグルコースおよび金ナノ粒子に基づく水性ゲルインク(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含まない)の調製
最初のステップにおいて、水性インクのゲルベースのマトリックスを、180gのトリエチレングリコール(溶剤)、48gのポリエチレングリコール(溶剤)、2.3gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、および1.20gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で15分間ホモジナイズし、35℃の温度で加熱した。次に、5gのキサンタンガム(レオロジー変性剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で15分間35℃の温度でホモジナイズした。960gの脱イオン水を混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次に、3.60gのMoussex(登録商標)S9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で30分間35℃の温度でホモジナイズした。得られた水性インクのゲルベースのマトリックスを室温(25℃)で冷却した。次に、得られた水性インクのゲルベースのマトリックス1mLを、グルコース(D(+)-GlucoseDextrose、参照410950010、Acros Organicsから)の溶液(100mM)200μLと混合した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で2分間ホモジナイズした。
【0061】
2番目のステップにおいて、100μLの塩化金(III)三水和物(520918-1G Sigma-Aldrich)の溶液(100mM)を400rpmの速度で10分間混合物に導入した。塩化金(III)三水和物の溶液の添加後、色は透明から黄色に変化し、組成物はゲル化した。組成物は粘度が高すぎてペンで使用できない。
【0062】
比較例2:還元剤としてのβ-シクロデキストリンおよび金ナノ粒子に基づく水性ゲルインク(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含まない)の調製
最初のステップにおいて、水性インクのゲルベースのマトリックスを、180gのトリエチレングリコール(溶剤)、48gのポリエチレングリコール(溶剤)、2.3gのActicide(登録商標)MBS(抗菌剤)、および1.20gのAdditin(登録商標)RC8221(腐食防止剤)を混合することにより調製した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で15分間ホモジナイズし、35℃の温度で加熱した。次に、5gのキサンタンガム(レオロジー変性剤)を混合物に添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で15分間35℃の温度でホモジナイズした。960gの脱イオン水を混合物にゆっくりと添加した。混合物を2時間30分静置した。次に、3.60gのMoussex(登録商標)S9092(消泡剤)を添加した。混合物をホモジナイジングミキサーで15m.s-1の速度で30分間35℃の温度でホモジナイズした。得られた水性インクのゲルベースのマトリックスを室温(25℃)で冷却した。次に、得られた水性インクのゲルベースのマトリックス1mLを、β-シクロデキストリン(C4767-25G Sigma-Aldrich)の溶液(100mM)200μLと混合した。混合物をホモジナイザーミキサーで15m.s-1の速度で2分間ホモジナイズした。
【0063】
2番目のステップにおいて、100μLの塩化金(III)三水和物(520918-1G Sigma-Aldrich)の溶液(100mM)を400rpmの速度で10分間混合物に導入した。塩化金(III)三水和物の溶液の添加後、色は透明から黄色に変化し、組成物はゲル化した。組成物は粘度が高すぎてペンで使用できない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】