(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ノロウイルスワクチン製剤及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20220207BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220207BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220207BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220207BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220207BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20220207BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61P31/14
A61P37/04
A61K39/12
A61K39/39
C07K14/08
C12N15/40 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535827
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 US2019067961
(87)【国際公開番号】W WO2020132510
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507028479
【氏名又は名称】タケダ ワクチン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マスダ,タイセイ
(72)【発明者】
【氏名】シャーウッド,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】メンデルマン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ベイナー,フランク
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085CC08
4C085EE01
4C085FF02
4C085GG03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】ノロウイルスワクチン製剤及び方法に関する。
【解決手段】本発明は、ワクチン、特にノロウイルス用ワクチンの分野に関する。更に、本発明は、ワクチン組成物を調製する方法、及びヒト、特に小児患者におけるノロウイルスに対する防御免疫応答を誘導し、評価する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小児対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘導するための方法であって、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)を含む組成物を、前記組成物を少なくとも初回用量及び2回用量で投与することを含む投与計画で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記組成物が、ノロウイルス遺伝子群IのVLP及びノロウイルス遺伝子群IIのVLPを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、ノロウイルス遺伝子群I遺伝子型1(GI.1)のVLP及びノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)のVLPを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記GII.4 VLPが、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4の流行株のコンセンサス配列の発現から得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記GII.4 VLPが、配列番号1の配列を含むカプシドタンパク質を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、約50μgのノロウイルス遺伝子群IのVLP及び約150μgのノロウイルス遺伝子群IIのVLPを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記小児対象が、約6週齢~約9年齢の間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記小児対象が、約6週齢~約6月齢の間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、3用量で前記対象に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記小児対象が、約6月齢~約9年齢の間である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、2用量以下で前記対象に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記初回及び2回用量が、約1か月、約2か月、又は約3か月おきに前記対象に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記初回用量が、前記対象が約5月齢であるときに投与され、且つ前記2回用量が、前記対象が約7月齢であるときに投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記対象に筋肉内投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、少なくとも1つのアジュバントを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、単一のアジュバントを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウムである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、500μgの水酸化アルミニウムを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の投与前の前記対象における前記力価と比較して、ノロウイルス特異的血清抗体価の少なくとも3倍の増加を誘発する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
許容できる安全性特性に関連している、及び/又は前記組成物の投与が、前記小児対象において十分な耐容性がある、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対して交差反応性を誘導する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
小児対象においてノロウイルスに対する防御免疫を誘発する方法における使用のための、遺伝子群IノロウイルスVLP及び遺伝子群IIノロウイルスVLPを含む組成物。
【請求項23】
前記ノロウイルス遺伝子群IのVLPが、遺伝子群I遺伝子型1(GI.1)のVLPであり、且つ前記ノロウイルス遺伝子群IIのVLPが、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)のVLPである、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記GII.4 VLPが、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4の流行株のコンセンサス配列の発現から得られる、請求項23に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記GII.4 VLPが、配列番号1の配列を含むカプシドタンパク質を含む、請求項24に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
約50μgのノロウイルス遺伝子群IのVLP及び約150μgのノロウイルス遺伝子群IIのVLPを含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記小児対象が、約6週齢~約9年齢の間である、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記小児対象が、約6週齢~約6月齢の間である、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
3用量で前記対象に投与される、請求項28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記小児対象が、約6月齢~約9年齢の間である、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
2用量以下で前記対象に投与される、請求項30に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
少なくとも初回用量及び2回用量で前記対象に投与され、ここで前記初回用量及び2回用量が、約1か月、約2か月、又は約3か月おきに前記対象に投与される、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
前記初回用量が、前記対象が約5月齢であるときに投与され、且つ前記2回用量が、前記対象が約7月齢であるときに投与される、請求項32に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記対象に筋肉内投与される、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
少なくとも1つのアジュバントを含む、請求項22~34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項36】
単一のアジュバントを含む、請求項22~34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項37】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウムである、請求項35又は36に記載の使用のための組成物。
【請求項38】
500μgの水酸化アルミニウムを含む、請求項22~34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項39】
前記組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対して交差反応性を誘導する、請求項22~38のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項40】
小児対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘発するための方法における、遺伝子群IノロウイルスVLP及び遺伝子群IIノロウイルスVLPを含む組成物の使用。
【請求項41】
前記ノロウイルス遺伝子群IのVLPが、遺伝子群I遺伝子型1(GI.1)のVLPであり、且つ前記ノロウイルス遺伝子群IIのVLPが、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)のVLPである、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記GII.4 VLPが、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4の流行株のコンセンサス配列の発現から得られる、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記GII.4 VLPが、配列番号1の配列を含むカプシドタンパク質を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記組成物が、約50μgのノロウイルス遺伝子群IのVLP及び約150μgのノロウイルス遺伝子群IIのVLPを含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
前記小児対象が、約6週齢~約9年齢の間である、請求項40~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
前記小児対象が、約6週齢~約6月齢の間である、請求項40~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
前記組成物が、3用量で前記対象に投与される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記小児対象が、約6月齢~約9年齢の間である、請求項40~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記組成物が、2用量以下で前記対象に投与される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記組成物が、少なくとも初回用量及び2回用量で前記対象に投与され、ここで前記初回用量及び2回用量が、約1か月、約2か月、又は約3か月おきに前記対象に投与される、請求項40~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記初回用量が、前記対象が約5月齢であるときに投与され、且つ前記2回用量が、前記対象が約7月齢であるときに投与される、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記組成物が、前記対象に筋肉内投与される、請求項40~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記組成物が、少なくとも1つのアジュバントを含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記組成物が、単一のアジュバントを含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウムである、請求項53又は54に記載の使用。
【請求項56】
前記組成物が、500μgの水酸化アルミニウムを含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項57】
前記組成物が、前記組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対して交差反応性を誘導する、請求項40~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項58】
小児対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘導するための方法であって、
(i)前記対象の歳を判定するステップと;
(ii)(a)前記歳が少なくとも約6週齢であるが6月齢未満である場合、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)を含む組成物を、前記組成物を3分割用量で投与することからなる投与計画で、前記対象に投与するステップ、及び
(b)前記歳が少なくとも6月齢であるが9年齢未満である場合、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)を含む組成物を、前記組成物を2分割用量で投与することからなる投与計画で、前記対象に投与するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001] 本出願は、2018年12月20日出願の米国仮特許出願第62/782,733号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
[0002] 本願とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される:配列表のコンピュータで読み込み可能な形式のコピー(ファイル名:LIGO_028_01WO_SeqList_ST25、2019年12月13日が記録日、ファイルサイズが5キロバイト)。
【背景技術】
【0003】
[0003] ノロウイルスは、非細菌性胃腸炎を集団発生させる唯一且つ最も重要な原因であることが明らかになった、培養不可能なヒトカリシウイルスである(Glass et al., 2000; Hardy et al., 1999)。ノロウイルスの臨床的重大性は、感度が高い分子診断アッセイが発達する前は過小評価されていた。プロトタイプの遺伝子群(genogroup)Iノーウォークウイルス(NV)のゲノムのクローン化、及び組み換えバキュロウイルス発現系からのウイルス様粒子(VLP)の産生により、ノロウイルス感染の広まりを明らかにするアッセイが発達した(Jiang et al. 1990; 1992)。
【0004】
[0004] ノロウイルスは、非セグメント化RNAゲノムを含む1本鎖のプラス鎖RNAウイルスである。ウイルスのゲノムは3つのオープンリーディングフレームをコードし、そのうち後者の2つはそれぞれメジャーなカプシドタンパク質及びマイナーな構造タンパク質の産生を規定する(Glass et al. 2000)。真核生物発現系で、高レベルに発現すると、NVのカプシドタンパク質、及び特定の他のノロウイルスは自己組織化して、天然のノロウイルスビリオンを構造的に模倣するVLPになる。透過電子顕微鏡で見ると、VLPは、ヒトの糞便サンプルから分離した感染性ビリオンと、形態学的に識別不能である。
【0005】
[0005] ノロウイルスに対する免疫応答は複雑であり、防御の相関関係はまさに現在解明中である。天然のウイルスで実施したヒトボランティアの調査は、粘膜由来の記憶免疫応答が感染からの短期の防御を提供することを実証し、ワクチン媒介性の防御が実行可能であることを示唆した(Lindesmith et al. 2003; Parrino et al. 1977; Wyatt et al., 1974)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] ノロウイルスに対するヒトの防御免疫は謎のままである。何故なら、ヒトの防御免疫応答の指標がまだ明白に識別されていないからである(Herbst-Kralovetz et al. (2010) Expert Rev. Vaccines 9(3), 299-307)。当該技術分野では、特に幼児及び小児などの脆弱な患者集団において、ノロウイルス感染に対する防御免疫を誘発するための安全で有効な方法を同定することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
[0007] 本開示は、ヒト小児対象においてノロウイルスに対する防御免疫を誘発する方法であって、ノロウイルスVLPを含むワクチン組成物を有効量で対象に非経口で投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、組成物は、遺伝子群IノロウイルスVLP及び遺伝子群IIノロウイルスVLPを含む。実施形態では、本方法は、少なくとも初回用量及び2回用量の組成物を対象に投与することを含む。本開示はまた、小児対象においてノロウイルスに対する防御免疫を誘発する方法における使用が意図される、遺伝子群IノロウイルスVLP及び遺伝子群IIノロウイルスVLPを含む組成物を提供する。本開示は、小児対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘発するための方法における、遺伝子群IノロウイルスVLP及び遺伝子群IIノロウイルスVLPを含む組成物の使用を更に提供する。
【0008】
[0008] 一態様では、本明細書に提供される方法及び使用において有用な組成物は、ノロウイルス遺伝子群I遺伝子型1(GI.1)のVLP及びノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)のVLPを含む。幾つかの実施形態では、GII.4 VLPは、ノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4の流行株(circulating strains)のコンセンサス配列の発現から得られる。特定の実施形態では、GII.4 VLPは、配列番号1の配列を含むカプシドタンパク質を含む。幾つかの実施形態では、かかるVLPは、本明細書中で「GII.4c」と称される。
【0009】
[0009] 実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用において有用な組成物は、組成物中に約15μg~約150μgの各VLP型を含む。特定の実施形態では、組成物は、約15μgのGI.1 VLP及び約15μgのGII.4 VLP;又は約15μgのGI.1 VLP及び約50μgのGII.4 VLP;又は約50μgのGI.1 VLP及び約50μgのGII.4 VLP;又は約50μgのGI.1 VLP及び約150μgのGII.4 VLPを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、1つ又は複数のアジュバントを更に含む。幾つかの実施形態では、組成物は、単一のアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、水酸化アルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、500μgの水酸化アルミニウムを含む。幾つかの実施形態では、組成物は、筋肉内投与用に配合される。したがって、幾つかの実施形態では、本開示は、小児対象において防御免疫を誘発するための方法であって、本明細書に記載のようなGI.1及びGII.4 VLPを含み、且つ500μgの水酸化アルミニウムを更に含む組成物の筋肉内投与を含む方法を提供する。
【0010】
[0010] 実施形態では、小児対象は、約6週齢~約9年齢の間である。さらなる実施形態では、組成物は、2又は3用量で対象に投与される。幾つかの実施形態では、小児対象は、約6週齢~約6月齢の間である。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、3用量以下(例えば、1、2、又は3用量)の本明細書に提供される組成物の投与を含み、ここで対象は、約6週齢~約6月齢の間である。さらなる実施形態では、対象は、約6週齢~約6月齢の間であり、且つ組成物は、2又は3用量で投与される。さらなる実施形態では、対象は、約6週齢~約6月齢の間であり、且つ組成物は、正確に3用量で投与される。幾つかの実施形態では、対象は、約6週齢~約6月齢の間であり、且つ組成物は、少なくとも3用量で投与される。幾つかの実施形態では、小児対象は、約6月齢~約1年齢の間である。幾つかの実施形態では、小児対象は、約1年齢~約4年齢の間である。幾つかの実施形態では、小児対象は、約4年齢~約9年齢の間である。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、2用量以下、例えば1用量又は2用量の本明細書に提供される組成物の投与を含み、ここで対象は、約6月齢~約9年齢の間(例えば、約6月齢~約1年齢の間;約1年齢~約4年齢の間;又は約4年齢~約9年齢の間)である。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、正確に2用量の本明細書に提供される組成物の投与を含み、ここで対象は、約6月齢~約9年齢の間(例えば、約6月齢~約1年齢の間;約1年齢~約4年齢の間;又は約4年齢~約9年齢の間)である。
【0011】
[0011] 幾つかの実施形態では、本開示は、本明細書に提供される組成物の方法及び使用を提供し、ここで初回及び2回用量は、約1か月、約2か月、又は約3か月おきに対象に投与される。さらなる実施形態では、本方法は、3用量の組成物の投与を含み、ここで2回及び3回用量は、約1か月、約2か月、又は約3か月おきに対象に投与される。幾つかの実施形態では、初回用量は、小児対象に、該対象が約3月齢、約4月齢、約5月齢、約6月齢、約7月齢、約8月齢、約9月齢、約10月齢、約11月齢、又は約12月齢であるときに投与され、2回用量は、該対象が約5月齢、約6月齢、約7月齢、約8月齢、約9月齢、約10月齢、約11月齢、約12月齢、約13月齢、又は約14月齢であるときに投与される。例えば、幾つかの実施形態では、初回用量は、小児対象に、該対象が約5月齢であるときに投与され、2回用量は、対象が約7月齢であるときに投与される。
【0012】
[0012] 幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、組成物の投与前の対象におけるノロウイルス特異的血清抗体価と比較して少なくとも3倍又は少なくとも4倍増加した上記抗体価を誘導する。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、許容できる安全性特性に関連する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、小児対象に安全に投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、小児対象において十分な耐容性(tolerance)がある。例えば、本明細書に提供される組成物は、試験した最高用量(例えば、50μgのGI.1 VLP及び150μgのGII.4 VLP)及び試験した最高の用量数(例えば、2又は3用量)で小児対象に投与されるときであっても十分な耐容性がある。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、統計学的に有意な安全な有害事象特性に関連する。幾つかの実施形態では、本方法は、統計学的に有意な低い有害事象発生率及び/又は重症度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、有害事象の低い発生率を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、重篤な有害事象の低い発生率を有する。幾つかの実施形態では、本方法は、重篤な有害事象の無視できる発生率を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用は、異なるワクチン組成物を利用する同等の方法及び使用と比較して、有害事象発生率のより低い頻度及び/又は重症度を有する。
【0013】
[0013] 幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用により、組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対する交差反応性が誘導される。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用により、組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対する免疫応答が誘導される。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される方法及び使用により、組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株に対する対象における防御免疫が誘導される。組成物中に存在しない1つ又は複数のウイルス株は、組成物中に存在しないノロウイルス株、及び/又は組成物中で代表的でないノロウイルス株であり得る。例えば、組成物中に存在しないノロウイルス株は、GI.1又はGII.4ノロウイルス株以外の株であり得る;又はGII.4cコンセンサス配列を得るために使用される株の1つでないGII.4ノロウイルス株であり得る。
【0014】
[0014] 幾つかの態様では、本開示は、小児対象におけるノロウイルス感染に対する防御免疫の誘導における使用が意図される方法、使用、及び組成物であって、(i)対象の歳を判定するステップと、(ii)(a)その歳が少なくとも約6週齢であるが6月齢未満である場合、ノロウイルスVLPを含む本明細書に提供される組成物を、組成物を3分割用量で投与することからなる投与計画で対象に投与するステップと;(ii)(b)その歳が少なくとも6月齢で且つ約9年齢未満である場合、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)を含む組成物を、組成物を2分割用量で投与することからなる投与計画で対象に投与するステップと、を含む、方法、使用、及び組成物を提供する。さらなる実施形態では、組成物は、その歳が少なくとも6月齢で且つ約8年齢未満、約7年齢未満、約6年齢未満、約5年齢未満、約4年齢未満、約3年齢未満、約2年齢未満、又は約1年齢未満である場合、組成物を2分割用量で投与することからなる投与計画で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な説明
【
図1】[0015]小児患者における第2相臨床試験の設計の模式図である。
【
図2】[0016]
図2A~
図2Dは、pan-Ig力価によって測定された、GI.1及びGII.4ノロウイルスに対する抗体応答率(seroresponse rate,SRR)を示す。各棒グラフでは、4つの投与グループは、左から右へ、15/15;15/50;50/50;及び50/150である。コホート1の1-用量グループ(ワクチン/プラセボ;V/P)が棒グラフの最上行に示される(
図2A)。コホート1の2-用量グループ(ワクチン/ワクチン;V/V)が棒グラフの2行目に示される(
図2B)。コホート2の2-用量グループ(ワクチン/ワクチン/プラセボ;V/V/P)が3行目に示される(
図2C)。コホート2の3-用量グループ(ワクチン/ワクチン/ワクチン;V/V/V)が4行目に示される(
図2D)。抗体応答率は、(57日目(投与2から28日後)又は140日目(投与3から28日後)、力価において≧4倍の増加であった。図面中、グループ1(4~<9年齢)は4-8yとして示され;グループ2及び2a(12月齢~<4年齢)は1-3yとして示され;グループ3(6月齢~12月齢)は6-11moとして示され;且つグループ4(6週齢~6月齢)は6-25wkとして示される。
【
図3】[0017]
図3A~
図3Dは、組織-血液群抗原(HBGA)-阻害価によって測定された、GI.1及びGII.4ノロウイルスに対するSRRを示す。各棒グラフでは、4つの投与グループは、左から右へ、15/15;15/50;50/50;及び50/150である。コホート1の1-用量グループ(V/P)が棒グラフの最上行に示される(
図3A)。コホート1の2-用量グループ(V/V)が棒グラフの2行目に示される(
図3B)。コホート2の2-用量グループ(V/V/P)が3行目に示される(
図3C)。コホート2の3-用量グループ(V/V/V)が4行目に示される(
図3D)。抗体応答率は、(57日目(投与2から28日後)又は140日目(投与3から28日後)、力価において≧4倍の増加であった。図面中、グループ1(4~<9年齢)は4-8yとして示され;グループ2及び2a(12月齢~<4年齢)は1-3yとして示され;グループ3(6月齢~12月齢)は6-11moとして示され;且つグループ4(6週齢~6月齢)は6-25wkとして示される。
【
図4】[0018]
図4A~
図4Dは、歳グループ及びアームによるGI.1に特異的なHBGA阻害幾何平均抗体価(GMT)を示す。各グラフでは、4つの投与グループは、左から右へ、15/15;15/50;50/50;及び50/150である。コホート1の1-用量グループ(V/P)が棒グラフの最上行に示される(
図4A)。コホート1の2-用量グループ(V/V)が棒グラフの2行目に示される(
図4B)。コホート2の2-用量グループ(V/V/P)が3行目に示される(
図4C)。コホート2の3-用量グループ(V/V/V)が4行目に示される(
図4D)。GMTは、共分散(ANCOVA)モデルの分析を用いて、ベースライン力価(1日目)に対して調節された。
【
図5】[0019]
図5A~
図5Dは、歳グループ及びアームによるGII.4cに特異的なHBGA阻害GMTを示す。各グラフでは、4つの投与グループは、左から右へ、15/15;15/50;50/50;及び50/150である。コホート1の1-用量グループ(V/P)が棒グラフの最上行に示される(
図5A)。コホート1の2-用量グループ(V/V)が棒グラフの2行目に示される(
図5B)。コホート2の2-用量グループ(V/V/P)が3行目に示される(
図5C)。コホート2の3-用量グループ(V/V/V)が4行目に示される(
図5D)。GMTは、共分散(ANCOVA)モデルの分析を用いて、ベースライン力価(1日目)に対して調節された。
【
図6A】[0020]グループ1(4~<9年齢)におけるGI.1に特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図6B】[0020]グループ1(4~<9年齢)におけるGII.4cに特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図7A】[0021]グループ2(1~<4年齢)におけるGI.1に特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図7B】[0021]グループ2(1~<4年齢)におけるGII.4cに特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図8A】[0022]グループ3(6~<12月齢)におけるGI.1に特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図8B】[0022]グループ3(6~<12月齢)におけるGII.4cに特異的なIgAについてのGMTを示す。2-用量グループ内の患者は実線で示され、1-用量グループ内の患者は点線で示される(2用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図9A】[0023]グループ4(6週齢~<6月齢)におけるGI.1に特異的なIgAについてのGMTを示す。3-用量グループ内の患者は実線で示され、2-用量グループ内の患者は点線で示される(3用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図9B】[0023]グループ4(6週齢~<6月齢)におけるGII.4cに特異的なIgAについてのGMTを示す。3-用量グループ内の患者は実線で示され、2-用量グループ内の患者は点線で示される(3用量時点でのプラセボ投与後に取得された測定値の場合)。
【
図10】[0024]グループ2対象(1~<4年齢)に対する2用量の二価GI.1/GII.4cノロウイルスワクチンの投与後の他のノロウイルス株に対する交差反応性を示す。
【
図11A】[0025]グループ3対象(6~<12月齢)に対する二価GI.1/GII.4cノロウイルスワクチンの投与後の他のノロウイルス株に対する交差反応性を示す。初回投与後の交差反応性を示す。
【
図11B】[0025]グループ3対象(6~<12月齢)に対する二価GI.1/GII.4cノロウイルスワクチンの投与後の他のノロウイルス株に対する交差反応性を示す。2回投与後のより高い交差反応性を示す。
【
図12A】[0026]グループによる、臨床試験における各投与後の応答型局所AEの概要を提示する。指定されたAEを指定された強度(軽度、中等度、重度)で経験した対象の%が、グループ1(最上行)、グループ2(上から2行目)、グループ2a(上から3行目)、及びグループ3(最下行)について示される。応答型局所AEは、各投与後7日以内に記録された。パーセンテージは、すべての局所AEにおける100×対象の数/N
T及び個体のAE症状における100×対象の数/N
Sとして計算された(式中、N
T=安全性セットにおける対象の数及びN
S=その症状について評価された安全性セットにおける対象の数)。グラフ中のアノテートされたパーセンテージは、「最も近い偶数の整数に端数処理する」変換に従い四捨五入されている。
【
図12B】[0026]グループによる、臨床試験における各投与後の応答型局所AEの概要を提示する。グループ4における指定されたAEを指定された強度で経験した対象の%を示す。応答型局所AEは、各投与後7日以内に記録された。パーセンテージは、すべての局所AEにおける100×対象の数/N
T及び個体のAE症状における100×対象の数/N
Sとして計算された(式中、N
T=安全性セットにおける対象の数及びN
S=その症状について評価された安全性セットにおける対象の数)。グラフ中のアノテートされたパーセンテージは、「最も近い偶数の整数に端数処理する」変換に従い四捨五入されている。
【
図13A】[0027]グループによる、臨床試験における各投与後の応答型全身AEの概要を提示する。指定されたAEを指定された強度で経験した対象の%が、グループ1(上行)、グループ2(下行)について示される。応答型全身AEは、各投与後7日以内に記録された。発熱は応答型全身AEと考えられ;グラフにおいては、発熱は、軽度、38.0℃~<38.5℃;中等度、38.5℃~<39.0℃;及び重度、≧39℃として類別された(しかし、発熱強度グレーディングは、全体としてAEに対する強度グレーディングにおける軽度として表される)。パーセンテージは、すべての全身AEにおける100×対象の数/N
T及び個体のAE症状における100×対象の数/N
Sとして計算された(式中、N
T=安全性セットにおける対象の数及びN
S=その症状について評価された安全性セットにおける対象の数)。グラフ中のアノテートされたパーセンテージは、「最も近い偶数の整数に端数処理する」変換に従って四捨五入されている。
【
図13B】[0027]グループによる、臨床試験における各投与後の応答型全身AEの概要を提示する。指定されたAEを指定された強度で経験した対象の%が、グループ2a(上行)、及びグループ3(下行)について示される。応答型全身AEは、各投与後7日以内に記録された。発熱は応答型全身AEと考えられ;グラフにおいては、発熱は、軽度、38.0℃~<38.5℃;中等度、38.5℃~<39.0℃;及び重度、≧39℃として類別された(しかし、発熱強度グレーディングは、全体としてAEに対する強度グレーディングにおける軽度として表される)。パーセンテージは、すべての全身AEにおける100×対象の数/N
T及び個体のAE症状における100×対象の数/N
Sとして計算された(式中、N
T=安全性セットにおける対象の数及びN
S=その症状について評価された安全性セットにおける対象の数)。グラフ中のアノテートされたパーセンテージは、「最も近い偶数の整数に端数処理する」変換に従って四捨五入されている。
【
図13C】[0027]グループによる、臨床試験における各投与後の応答型全身AEの概要を提示する。グループ4における指定されたAEを指定された強度で経験した対象の%を示す。応答型全身AEは、各投与後7日以内に記録された。発熱は応答型全身AEと考えられ;グラフにおいては、発熱は、軽度、38.0℃~<38.5℃;中等度、38.5℃~<39.0℃;及び重度、≧39℃として類別された(しかし、発熱強度グレーディングは、全体としてAEに対する強度グレーディングにおける軽度として表される)。パーセンテージは、すべての全身AEにおける100×対象の数/N
T及び個体のAE症状における100×対象の数/N
Sとして計算された(式中、N
T=安全性セットにおける対象の数及びN
S=その症状について評価された安全性セットにおける対象の数)。グラフ中のアノテートされたパーセンテージは、「最も近い偶数の整数に端数処理する」変換に従って四捨五入されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
[0028] 本発明は、対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘発する方法であって、対象が小児ヒト対象である、方法に関する。特に、本発明は、少なくとも2用量のノロウイルスVLPを含むワクチンを対象に非経口で投与することにより、小児対象においてノロウイルスに対する防御免疫を誘発する方法を提供する。発明者は、意外にも、ノロウイルスVLPを含む組成物が、小児対象に有効で安全に投与可能であり、それら対象においてノロウイルス感染に対する防御免疫を誘発し得ることを発見している。2又は3用量のノロウイルスVLPを含むワクチン組成物のヒト小児対象への投与により、ノロウイルス感染及び疾病に対する防御免疫応答を示す、迅速で頑強な血清転換(例えば、抗原特異的血清抗体価におけるワクチン接種前レベルを少なくとも3倍上回る増加)が誘導された。小児対象は6週齢程度の若さであり、防御免疫応答の誘発が、許容できる安全性特性に関連して達成された。
【0017】
[0029] 本明細書に提供される方法に従って投与される、15μg~150μgの各VLP型を含む投与計画は、小児対象において安全で有効であった。一実施形態では、小児対象に投与されるワクチン組成物は、約50μgのノロウイルス遺伝子群I遺伝子型1(GI.1)のVLP、及び異なるGII.4株のコンセンサス配列から生成される約150μgのノロウイルス遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)のVLPを含む。さらなる実施形態では、GII.4 VLPは、配列番号1に従うカプシドタンパク質を含む。さらなる実施形態では、組成物は、500μgの水酸化アルミニウムを更に含む。
【0018】
[0030] 本発明は、1つ又は複数のノロウイルス抗原を含むワクチン組成物を提供する。本明細書では、「ノロウイルス」(Norovirus)、「ノロウイルス(NOR)」(Norovirus (NOR))、「ノロウイルス」(norovirus)及びその文法的同義語は、カリシウイルス科のノロウイルス属の一つを意味する。幾つかの実施形態では、ノロウイルスは、ヒト又は非ヒト哺乳類に感染可能である関連した1本鎖のプラス鎖RNA非エンベロープイルスのグループを含むことができる。幾つかの実施形態では、ノロウイルスはヒトに急性胃腸炎を引き起こすことがある。ノロウイルスは、電子顕微鏡で見ると画定された表面構造又は凸凹の縁部を有する小型球形構造ウイルス(SRSV)と呼ぶこともできる。
【0019】
[0031] ノロウイルスには少なくとも5つの遺伝子群(GI、GII、GIII、GIV、及びGV)が含まれる。GI、GII、及びGIVノロウイルスはヒト感染性であり、GIIIノロウイルスは主にウシ科に感染する。GVは最近、マウスから分離されている(Zheng et al.(2006) Virology, Vol. 346: 312-323)。代表的なGIIIはJena及びNewbury株であり、Alphatron、Fort Lauderdale、及びSaint Cloud株はGIVの代表である。GI及びGIIグループは、遺伝子分類(Ando et al. (2000) J. Infectious Diseases, Vol. 181(Supp2):S336-S348; Lindell et al. (2005) J. Clin. Microbiol., Vol. 43(3): 1086-1092)及び/又は流行病若しくは伝染病に基づく分類に基づき、遺伝子クラスター又は遺伝子型に更に分離することができる。本明細書で使用する遺伝子クラスタという用語は、遺伝子型という用語と区別なく使用される。遺伝子群I内には、今日までに8つのGIクラスタが(プロトタイプウイルスの株名で)知られている。すなわち、GI.1(ノーウォーク(NV-USA93))、GI.2(サウサンプトン(SOV-GBR93));GI.3(デザートシールド(DSV-USA93)、又はGI.3.2000);GI.4(クルーズシップウイルス/チバ(Chiba-JPN00)、又はGI.4.2000);GI.5(318/マズグローブ(Musgrov-GBR00));GI.6(ヘッセ(Hesse-DEU98));GI.7(Wnchest-GBR00);及びGI.8(Boxer-USA02)である。遺伝子群II内には、今日までに19のGIIクラスタが(プロトタイプウイルスの株名で)知られている。すなわち、GII.1(ハワイ(Hawaii-USA94));G11.2(スノウマウンテン/メルクシャム(Msham-GBR95));GII.3(トロント(Toronto-CAN93)、又はGII.3.1999);GII.4(ブリストル/ローズデール(Bristol-GBR93)、GII.4.2006b、又はGII.4.2012);GII.5(290/ヒリンドン(Hilingd-GBR00));GII.6(269/シークロフト(Seacrof-GBR00));GII.7(273/リーズ(Leeds-GBR00));GII.8(539/アムステルダム(Amstdam-NLD99));GII.9(378(VABeach-USA01))、GII.10(Erfurt-DEU01);GII.11(SW9180JPN01);GII.12(Wortley-GBR00);GII.13(Faytvil-USA02);GII.14(M7-USA03);GII.15(J23-USA02);GII.16(Tiffin-USA03)、又はGII.17.2015;GII.17(CSE1-USA03);GII.18(QW101/2003/US)及びGII.19(QW170/2003/US)である。
【0020】
[0032] 本明細書では「ノロウイルス」には組み換えノロウイルスのウイルス様粒子(rNOR VLP)も意味する。幾つかの実施形態では、少なくとも、例えばSf9細胞中のバキュロウイルスベクターなどから細胞中のORF2によってコードされたノロウイルスカプシドタンパク質が組み換え型により発現すると、その結果、カプシドタンパク質がVLPへと自然に自己組織化することがある。幾つかの実施形態では、少なくとも、例えばSf9細胞中のバキュロウイルスベクターなどから細胞中のORF1及びORF2によってコード化されたノロウイルスタンパク質が組み換え型により発現すると、その結果、カプシドタンパク質がVLPへと自然に自己組織化することがある。VLPは構造的にノロウイルスに類似しているが、ウイルス性RNAゲノムが欠如し、したがって感染性ではない。したがって、「ノロウイルス」は欠損粒子を含む感染性又は非感染性粒子となり得るビリオンを含む。
【0021】
[0033] ノロウイルスの例は、一般に当該技術分野で公知であり、例えば米国特許出願公開第2013-0273102号及び米国特許出願公開第2011-0195113号(それら各々の全内容は参照により本明細書で援用される)に開示されたものを含む。新しい株が同定され、それらの遺伝子配列が利用可能になるとき、当業者は、通常の技能を用いて、本発明の組成物及び方法におけるこれら同時期の株を使用し、VLPを利用することができるであろう。したがって、本開示は、本明細書に記載のように小児対象において防御免疫を誘発するための組成物及び方法における使用に適した抗原として、かかる株から作製されたVLPを投与することを包含する。
【0022】
[0034] ワクチン組成物中のノロウイルス抗原は、ペプチド、タンパク質、又はウイルス様粒子(VLP)の形態であり得る。好ましい実施形態では、ノロウイルス抗原はVLPを含む。本明細書で使用する「ウイルス様粒子又はVLP」は、ノロウイルスのカプシドタンパク質コード化配列から産生され、感染性ノロウイルス粒子と同様の抗原特徴を含むウイルス様粒子、フラグメント、集合体、又はその一部を指す。ノロウイルス抗原は、カプシド単量体、カプシド多量体、VLPのタンパク質又はペプチドフラグメント、又はその集合体又は混合物の形態であり得る。ノロウイルス抗原タンパク質又はペプチドは、当技術分野で知られている方法を使用して産生した変性形態でもあり得る。
【0023】
[0035] 本発明のVLPは、VP1及び/又はVP2タンパク質などの完全長ノロウイルスカプシドタンパク質、又は特定のVP1又はVP2誘導体から当技術分野の標準的方法を使用して形成することができる。あるいは、VLPの形成に使用されるカプシドタンパク質は、切断されたカプシドタンパク質である。幾つかの実施形態では、例えばVLPの少なくとも1つが切断したVP1タンパク質を含む。他の実施形態では、VLPはすべて切断されたVP1タンパク質を含む。切断は、N又はC末端切断でもよい。切断されたカプシドタンパク質は、適切機能性カプシドタンパク質誘導体である。機能性カプシドタンパク質誘導体は(必要に応じて、適切にアジュバントを与えると)完全長カプシドタンパク質で構成されたVLPによって生じる免疫応答と同じ方法で免疫応答を生じさせることができる。幾つかの実施形態では、本開示方法における使用のための本明細書に提供される組成物は、切断されたカプシドタンパク質を含む。他の実施形態では、本開示方法における使用のための本明細書に提供される組成物は、切断されたカプシドタンパク質を含まないか、又は40%、30%、20%、10%、5%、1%、若しくはそれ以下の切断されたカプシドタンパク質を含むように精製されている。
【0024】
[0036] VLPは、多量VP1タンパク質及び/又は微量VP2タンパク質を含有することができる。幾つかの実施形態では、各VLPは、一価VLPをもたらす唯一のノロウイルス遺伝子群からのVP1及び/又はVP2タンパク質を含有する。本明細書で用いられるとき、用語「一価」は、抗原タンパク質が単一のノロウイルス遺伝子群に由来することを意味する。例えば、VLPは、遺伝子群Iのウイルス株からのVP1及び/又はVP2(例えば、ノーウォークウイルス(Norwalk virus)からのVP1及びVP2)、若しくは遺伝子群I株のコンセンサス配列を含有する;又はVLPは、遺伝子群IIのウイルス株からのVP1及び/又はVP2(例えば、GII.4株からのVP1及び/又はVP2)、若しくはGII.4株のコンセンサス配列(例えば、GII.4c、本明細書中の配列番号1)を含有する。好ましくは、VLPは、主にVP1タンパク質からなる。
【0025】
[0037] 本発明の一実施形態では、組成物は一価VLPの混合物を含み、組成物は、単一のノロウイルス遺伝子群からのVP1及びVP2が、複数のウイルス株から得られた異なるノロウイルス遺伝子群からのVP1及びVP2(例えばノーウォークウイルス及びヒューストンウイルス)で構成されたVLPと混合されたVLPを含む。純粋に例示により、組成物はノロウイルス遺伝子群Iの1つ又は複数の株からの一価VLPを、ノロウイルス遺伝子群IIの1つ又は複数の株からの一価VLPと一緒に含有することができる。株は、所与の時間におけるその流行(circulation)優位性に基づいて選択することができる。特定の実施形態では、ノロウイルスVLP混合物はGI.1及びGII.4ウイルス株で構成される。ノロウイルスVLP混合物は、ノーウォークの株、及び遺伝子群IIノロウイルス由来のコンセンサスカプシド配列で構成することが、更に好ましい。流行するノロウイルス配列由来のコンセンサスカプシド配列、及びこのような配列で作成されるVLPについては、WO2010/017542号で説明され、これは参照により全体を本明細書に組み込むものとする。例えば、一実施形態では、遺伝子群II遺伝子型4(GII.4)ウイルス株由来のコンセンサスカプシド配列は、配列番号1の配列を含む。このVLPは、本明細書中で「GII.4c」と称される。したがって、幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は一価VLPの混合物を含み、1つの一価VLPは遺伝子群Iノロウイルス(例えばノーウォーク)からのカプシドタンパク質を含み、他の一価VLPは配列番号1の配列を含むコンセンサスカプシドタンパク質を含む(GII.4c)。
【0026】
[0038] 組成物中のVLPの組み合わせは、各VLP型の免疫原性を低下させないことが好ましい。特に、本発明の組み合わせVLP組成物が、ワクチン中に提示された各ノロウイルス遺伝子型及び/又は遺伝子群によって感染に対する免疫を誘発できるように、本発明の組み合わせのノロウイルスVLP間に干渉がないことが好ましい。実施形態では、組み合わせ中の所与のVLP型に対する免疫応答は、個々に測定した場合に同じVLP型の免疫応答の少なくとも50%、好ましくは100%、又はほぼ100%である。更に、特許請求された組成物は、組成物中に存在しないウイルス株に対する交差反応性を誘導することができる。例えば、特許請求された組成物は、組成物中で代表的でない他のノロウイルス遺伝子型及び/又は他のノロウイルス遺伝子群に対する交差反応性を誘導することができる。交差反応性を誘導する組成物又は方法は、他のウイルス株に対する免疫応答を誘導してもよく;及び/又は他のウイルス株に対する対象における防御免疫を誘発することができる。
【0027】
[0039] 例えば、本明細書に提供される組成物の対象への投与は、他の遺伝子群I株(GI.1以外);他の遺伝子群II株(GII.4cを生成する株以外);及び/又は他の遺伝子群(遺伝子群I及び遺伝子群II以外)に対する免疫を誘導することができる。非限定例として、本明細書に提供される組成物は、GII.4.2006b,GII.4.2012,GI.3.2000,GI.4.2000,GII.3.1999、及びGII.17.2015から選択される1つ又は複数の株に対する免疫を誘導することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、GII.4.2006bに対する免疫を誘導することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、GII.4.2012に対する免疫を誘導することができる。免疫応答は、例えば、本明細書中の例の中で例示される通り、抗体応答により適切に測定することができる。
【0028】
[0040] 多価VLPは、個々のカプシドタンパク質が別個に発現し、その後に組み合わせてVLPを形成することによって産生することができる。あるいは、複数のカプシドタンパク質が同じ細胞内で1つ又は複数のDNA構築物から発現することができる。例えば、複数のDNA構築物は、形質転換するか、又は宿主細胞に導入することができ、各ベクターが異なるカプシドタンパク質をコードする。あるいは、複数のカプシド遺伝子を有し、共有プロモータ又は複数の個々のプロモータに制御された単一のベクターを使用することができる。適宜、IRESエレメントをベクターに組み込むこともできる。このような発現戦略を使用し、同時発現したカプシドタンパク質を、その後のVLP形成のために同時精製するか、又は多価VLPを自然形成させ、次にそれを精製することができる。好ましい多価VLP産生プロセスは、様々なノロウイルス遺伝子型からVP1タンパク質などのVLPカプシドタンパク質又は誘導体を調製することと、タンパク質を混合することと、多価VLPを産生するためにタンパク質を集合させることとを含む。VP1タンパク質は、粗抽出物の形態であるか、部分的に精製されているか、又は混合前に精製することができる。様々な遺伝子群の集合した一価VLPは、分解し、一緒に混合して、多価VLPへと再集合させることができる。タンパク質又はVLPは、組み合わせる前に少なくとも部分的に精製することが好ましい。任意選択で、集合後に多価VLPのさらなる精製を実行することができる。
【0029】
[0041] 多価VLPを使用する場合、VLPの成分を最終的な混合VLPに所望の比率で混合することが好ましい。例えば、ノーウォーク及びヒューストンウイルス(又は他のノロウイルス株)からの部分的に精製したVP1タンパク質を同量混合すると、各タンパク質がほぼ同量である多価VLPが提供される。多価VLPを含む組成物は、参照により本明細書に組み込まれたWO98/44944号、WO00/45841号など、当技術分野で知られる解決法で安定させることができる。
【0030】
[0042] 本発明の組成物は、ノロウイルスVP1及びVP2タンパク質又は誘導体に加えて、他のタンパク質又はタンパク質フラグメントを含むことができる。他のタンパク質又はペプチドも、本発明の組成物と同時投与することができる。任意選択で、組成物は非ノロウイルス抗原を配合するか、それと同時投与することもできる。これらの抗原は、他の疾病に対する防御を提供できることが適切である。
【0031】
[0043] VP1タンパク質又は機能性タンパク質誘導体は、VLPを形成できることが適切であり、VLPの形成は、例えばサイズ排除クロマトグラフィ、電子顕微鏡及び動的レーザ光散乱などの標準的技術で評価することができる。
【0032】
[0044] 本発明の抗原分子は、これが自然に発生する生体から分離して精製することによって調製することができるか、又は組み換え技術によって調製してもよい。ノロウイルスVLP抗原は、Sf9又はH5細胞などの昆虫の細胞から調製することが好ましいが、大腸菌などの任意の適切な細胞、又は例えば酵母、S.ポンベ、ピチア・パストリ又は他のピチア発現系などのイースト細胞、又はCHO又はHEK系などの哺乳類細胞発現も使用することができる。組み換え法又は合成によって調製する場合、ペプチドを構成するアミノ酸の1つ又は複数の挿入、削除、反転又は置換を実行することができる。上記抗原はそれぞれ、実質的に純粋な状態で使用することが好ましい。
【0033】
[0045] 昆虫細胞の培養でノロウイルスVLPを産生する手順は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする米国特許第6,942,865号で以前に開示されている。簡潔に言うと、ウイルスカプシド遺伝子(ORF2)及び微量構造遺伝子(ORF3)を含有するゲノムの3’末端からのcDNAをクローン化する。ウイルスカプシド遺伝子を有する組み換えバキュロウイルスは、クローン化されたcDNAから構築される。ノロウイルスVLPは、Sf9又はH5昆虫細胞培養で産生される。
【0034】
[0046] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、ノロウイルス抗原と組み合わせた1つ又は複数のアジュバントを含む。水酸化アルミニウム又は鉱物油などのアジュバントは、抗原を急速な異化作用から保護するように設計された物質を含有する。適切なアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバント及びフロイント完全アジュバント(Pifco Laboratories, Detroit, Mich.);メルクアジュバント(Merck Adjuvant)65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.);水酸化アルミニウム((Al(OH)3)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛の塩;アシル化チロシンアシル化糖の不溶性懸濁液;カチオン又はアニオン誘導の多糖類;ポリホスファゼン;生分解性微小球;及びクイルA(Quil A)として市販されている。幾つかの実施形態では、アジュバントは、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)である。さらなる実施形態では、アジュバントは、水酸化アルミニウムであり、且つ各組成物中に、約10μg、約25μg、約50μg、約75μg、約100μg、約125μg、約150μg、約175μg、約200μg、約225μg、約50μg、約275μg、約300μg、約350μg、約375μg、約400μg、約425μg、約450μg、約475μg、約500μg、約525μg、約550μg、約575μg、約600μg、約625μg、約650μg、約675μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、又は約1000μgの量で存在する。特定の実施形態では、組成物は、水酸化アルミニウムを約500μgの量で含む。
【0035】
[0047] 適切なアジュバントには、toll様受容体(TLR)アゴニスト、特にtoll様受容体タイプ4(TLR-4)アゴニスト(例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、合成リピドA、リピドA模倣品又は類似物質)、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖類(LPS)、ポリホスファゼン、エマルジョン、ビロゾーム、渦巻形、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマ粒子、微粒子、リポソーム、水中油型乳剤、MF59、及びスクアレンも含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、アジュバントは細菌由来の外毒素ではない。好ましいアジュバントには、3DMPL又はQS21などのTh1型応答を刺激するアジュバントが含まれる。
【0036】
[0048] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、2つのアジュバントを含む。アジュバントの組み合わせは、上記のものから選択することができる。特定の一実施形態では、2つのアジュバントは、MPL及び水酸化アルミニウム(例えばミョウバン)である。別の特定の実施形態では、2つのアジュバントは、MPL及び油である。好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、単一のアジュバントを含む。さらなる実施形態では、単一のアジュバントは、水酸化アルミニウムである。
【0037】
[0049] 「有効アジュバント量」又は「アジュバントの有効量」という用語は、当業者には十分理解されており、鼻洗浄のIgA、血清IgG又はIgMレベル、又はB及びT細胞増殖に関して測定した場合の、投与された抗原に対する免疫応答を刺激することができる1つ又は複数のアジュバントの量、すなわち投与された抗原組成物の免疫応答を増大させる量を含む。免疫グロブリンレベルの適切に効果的な増加は、アジュバントが全くない同じ抗原組成物と比較して、5%超、好ましくは25%超、特に50%超を含む。
【0038】
[0050] 一実施形態では、本発明は非経口投与用に配合されたワクチン組成物を提供し、組成物は水酸化アルミニウム及び緩衝剤と組み合わせた少なくとも2タイプのノロウイルスVLPを含む。緩衝剤は、L-ヒスチジン、イミダゾール、コハク酸、トリス、クエン酸、ビストリス、pipes、mes、hepes、グリシンアミド、及びトリシンからなる群から選択することができる。一実施形態では、緩衝剤はL-ヒスチジン又はイミダゾールである。好ましくは、緩衝剤は約15mM~約50mM、更に好ましくは約18mM~約40mM、又は最も好ましくは約20mM~約25mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、抗原又はワクチン組成物のpHは約6.0~約7.0、又は約6.2~約6.8、又は約6.5である。ワクチン組成物は水性配合とすることができる。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は凍結乾燥粉末であり、水性製剤に再構成される。
【0039】
[0051] 特定の実施形態では、ワクチン組成物は、約15μg~約150μgの各ノロウイルスVLP、より好ましくは約15μg~約50μgの遺伝子群IのVLP及び約50μg~約150μgの遺伝子群IIのVLPを含み得る。したがって、幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの1つのタイプの用量は、ノロウイルスVLPの他のタイプの用量と異なる。例えば、特定の実施形態では、ワクチン組成物は、約15μgの遺伝子群IのVLP及び約50μgの遺伝子群IIのVLPを含む。特定の実施形態では、ワクチン組成物は、約50μgの遺伝子群IのVLP及び約150μgの遺伝子群IIのVLPを含む。他の実施形態では、ワクチン組成物は、約15μgの遺伝子群IのVLP及び約15μgの遺伝子群IIのVLP;又は約50μgの遺伝子群IのVLP及び約50μgの遺伝子群IIのVLPを含む。特定の実施形態では、ヒト小児対象においてノロウイルスに対する防御免疫応答を誘発するための本発明のワクチン組成物は、50μgのGI.1 VLP及び150μgのGII.4c VLP及び500μgの水酸化アルミニウムを含む。
【0040】
[0052] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は更に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない薬学的に許容可能な塩を含む。一実施形態では、薬学的に許容可能な塩は塩化ナトリウムである。薬学的に許容可能な塩の濃度は、約10mM~約200mMでよく、約100mM~約150mMの範囲の濃度が好ましい。本発明のワクチン組成物は、2mM未満の遊離リン酸塩を含有することが好ましい。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は1mM未満の遊離リン酸塩を含む。ワクチン組成物は更に、糖(例えば蔗糖、トレハロース、マンニトール)及び界面活性剤などの薬学的に許容可能な他の賦形剤も含むことができる。
【0041】
[0053] 本明細書で検討するように、本発明の組成物はワクチン製剤として投与するように配合することができる。本明細書で使用する「ワクチン」という用語は、ノロウイルスVLP又は上述したような本発明の他のノロウイルス抗原を含有する製剤を指し、これはヒト、好ましくは小児ヒトに投与することができる形態であり、ノロウイルス感染又はノロウイルスに誘導された疾患を防御及び/又は改善する、及び/又はノロウイルス感染又は疾患の少なくとも1つの症状を軽減するための免疫を誘導するのに十分な防御免疫応答を誘導する。
【0042】
[0054] 本明細書で使用する「免疫応答」という用語は、体液性免疫応答と細胞媒介性免疫応答との両方を指す。体液性免疫応答は、例えば感染因子を中和する、感染因子の細胞進入を阻害する、上記感染因子の複製を阻害する、及び/又は宿主細胞を感染及び破壊から防御するようなBリンパ球によって、抗体の産生を刺激することを含む。細胞媒介性免疫応答は、感染因子に対してTリンパ球及び/又はマクロファージなどの他の細胞によって仲介され、脊椎動物(例えばヒト)によって提示され、感染を防止又は改善するか、その少なくとも1つの症状を軽減する免疫応答を指す。特に、「防御免疫」又は「防御免疫応答」は、感染因子に対する免疫又は免疫応答の誘発を指し、これは脊椎動物(例えばヒト)によって提示され、感染を防止又は改善するか、又はその少なくとも1つの症状を軽減する。具体的には、ワクチンの投与による防御免疫応答の誘導は、急性胃腸炎の1つ又は複数の症状の存在が消失するか減少する、又はこのような症状の持続時間又は重症度が低下することによって明白である。ノロウイルスによる胃腸炎の臨床的症状には悪心、下痢、軟便、嘔吐、発熱、及び全身の倦怠感が含まれる。疾病の症状を軽減又は消失させる防御免疫応答は、集団におけるノロウイルス大発生の蔓延を低下又は停止させる。ワクチンの調製については、ワクチン設計に概略説明されている(「The subunit and adjuvant approach」(編集者Powell M. F.及びNewman M. J.)(1995)、Plenum Press New York)。本発明の組成物は、例えば口腔、胃腸、及び呼吸器(例えば鼻腔)の粘膜のうち1つ又は複数に送達するように配合することができる。本発明の組成物は、非経口注射(例えば静脈内、皮下、皮内、又は筋肉内注射)などの注射によって送達するように配合することができる。
【0043】
[0055] 組成物が非経口注射、例えば静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、皮内、又は筋肉内(i.m.)注射が意図される場合、それは典型的には、少なくとも1タイプのノロウイルスVLP及び任意選択的には少なくとも1つのアジュバントからなる懸濁液(すなわち水性製剤)として配合される。好ましい実施形態では、非経口で配合された(例えば、筋肉内、静脈内、又は皮下用に配合された)液体ワクチンは、ノロウイルス遺伝子群I及び/又は遺伝子群IIのVLP及び水酸化アルミニウムを含む。更に好ましい実施形態では、組成物は、筋肉内注射用に配合される。
【0044】
[0056] 本明細書で上述したワクチン組成物は、使用準備が整うまで凍結乾燥して無水形態で保存することができ、使用時点で希釈剤にて再構成する。あるいは、組成物の様々な成分をキット内で別個に保存する(いずれか、又はすべての成分を凍結乾燥する)ことができる。組成物は、乾燥製剤の場合は凍結乾燥形態のままにし、液体製剤の場合は再構成することができ、使用前に混合するか、患者に別個に投与する。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は液体製剤にてキット内で保存し、針を装備したシリンジなどの送達器具を添付することができる。他の実施形態では、液体ワクチン組成物はキットの送達器具内で保存することができる。例えば、キットは、本明細書で述べたワクチン組成物の液体製剤を収容した事前充填シリンジ、自動注入装置、又は注射ペン器具を含むことができる。
【0045】
[0057] 組成物は、特異的抗原に対する免疫応答を誘発し、及び/又は疾患若しくは感染からの症状及び/又は合併症を予防、軽減、低減、又は治癒し、ひいては集団内でのノロウイルス大発生の蔓延を低下又は停止させるのに十分な量で小児患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。各ワクチン組成物中の抗原の量は、頑強な免疫応答を誘導し、それに伴う有害な副作用が有意でない量として選択される。本開示の発明者は、意外にも、50μgのGI.1 VLP及び150μgのGII.4c VLPの複数回用量レジメンにより、6週齢程度に若い対象を含む小児対象において、ノロウイルス感染に対する防御免疫が安全に誘発されることを見出した。例えば、50μg/150μg(GI.1/GII.4c)製剤の3用量により、6週齢~<6月齢の対象における防御免疫が誘発され;50μg/150μg(GI.1/GII.4c)製剤の2用量により、6月齢~<9年齢の対象における防御免疫が誘発された。
【0046】
[0058] 本明細書に提供される組成物の投与を含む方法及び使用は、小児集団における意外にも安全な有害事象特性に関連し得る。本明細書とともに開示される実施例及び図面において証明される通り、有害事象の発生率は、試験したコホート及び歳グループの各々において許容できる制限内であった。特に、重篤な有害事象(SAE)の発生率は、グループの多くにおいて無視でき、ワクチン関連のSAE又は致死性SAEは、実施例1に記載の試験において報告されなかった。したがって、幾つかの実施形態では、本方法は、ワクチン関連の重篤な有害事象の相対的不在下で実施することができる。幾つかの実施形態では、本組成物の安全性特性は、同等のワクチン組成物に対し、より安全であり、及び/又は統計学的に有意なより低い有害事象発生率に関連する。同等のワクチン組成物は、胃腸炎を引き起こすウイルスを標的にするものであり得る。例えば、同等のワクチン組成物は、ロタウイルス(rotavirus)を標的にするものであり得る。別の同等のワクチン組成物は、アデノウイルス(adenovirus)を標的にするものであり得る。別の同等のワクチン組成物は、インフルエンザウイルス(influenza virus)を標的にするものであり得る。
【0047】
[0059] 本発明は、ノロウイルスに対する小児対象の防御免疫を誘発するための方法を提供する。本明細書で用いられるとき、「小児対象」及び「小児患者」などは、6週齢以上の幼児であって、9年齢以下の小児を指す。幾つかの実施形態では、「幼児」は、6月齢未満;又は6週齢~<6月齢の間のヒト対象を指し得る。
【0048】
[0060] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、組成物の投与前の対象におけるノロウイルス特異的血清抗体価と比較して、少なくとも3倍増加した抗体価を誘導する。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、組成物の投与前の対象におけるノロウイルス特異的血清抗体価と比較して、少なくとも4倍増加した抗体価を誘導する。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、組成物の投与前の対象におけるノロウイルス特異的血清抗体価と比較して、少なくとも5倍増加した抗体価を誘導する。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は、組成物の投与前の対象におけるノロウイルス特異的血清抗体価と比較して、少なくとも6倍増加した抗体価を誘導する。他の実施形態では、ワクチン組成物は、自然感染で生のノロウイルスに曝露することによって誘導された抗体価と同等のノロウイルスに特異的な血清抗体価を、すなわち組成物を投与する前のヒト対象の抗体価と比較してノロウイルスに特異的な血清抗体の10倍を超える増加を誘導する。特定の実施形態では、ワクチン組成物は、組成物を投与したから7日間以内にノロウイルスに特異的な血清抗体価の増加を誘導する。ワクチン組成物は、静脈内、皮下、又は筋肉内投与経路によって投与することが好ましい。特定の実施形態では、ワクチン組成物はヒト対象に筋肉内投与される。
【0049】
[0061] 本方法の一実施形態では、対象は、ヒト小児対象であり、ワクチンは、ノロウイルス感染の1つ又は複数の症状からの防御をもたらす。小児対象は、約6週齢~約9年齢であり得る。
【0050】
[0062] ノロウイルスはin vitroで培養することができないので、現在使用可能なウイルス中和測定法はない。中和測定法の代用の働きをする機能アッセイは、赤血球凝集抑制(HAI)アッセイである。HAIは、ノロウイルスワクチンに誘導された抗体が、ノロウイルスVLPによる抗原被覆赤血球の凝集を抑制する能力を測定する。ノロウイルスVLPが赤血球抗原(例えば組織-血液型抗原)に結合するからである。このアッセイは炭水化物阻害アッセイとしても知られる。赤血球上の血液型抗原炭水化物に対するウイルス又はVLPの結合を阻害する抗体の機能的能力を示すからである。このアッセイでは、固定量のノロウイルスVLPを、免疫処置した対象からの固定量の赤血球及び血清と混合する。血清サンプルが機能抗体を含有する場合、抗体はVLPに結合し、それにより赤血球の凝集を抑制する。本明細書で使用する「機能抗体」は、ノロウイルス粒子と赤血球抗原との相互作用を抑制することができる抗体を指す。すなわち、機能抗体価は、組織-血液型抗原(HBGA)又は炭水化物阻害抗体価と同等である。ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、上述したHAIアッセイで測定することができる。ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、炭水化物H抗原が微量定量ウェルに結合し、H抗原に結合したノロウイルスVLPが血清の存在下で検出されるELISA系アッセイを使用して測定することもできる(Reeck et al.(2010)、J Infect Dis, Vol. 202(8): 1212-1218を参照)。ノロウイルス特異的機能抗体のレベル上昇は、防御免疫応答の指標となり得る。したがって、一実施形態では、ワクチンの投与は、ワクチンを投与されていないヒトの血清抗体価と比較して、ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価の上昇を含む防御免疫を誘発する。防御免疫応答を示すノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、幾何平均抗価がHAIアッセイで測定して40、50、75、100、125、150、175、200より大きい、又は阻害価(BT)50(ノロウイルスVLPによるH抗原結合が50%阻害)の幾何平均抗体価がH抗原結合アッセイで測定して100、150、200、250、300、350、400、450、又は500より大きいことが好ましい。一実施形態では、ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、HAIアッセイで測定して幾何平均抗体価が40より大きい。別の実施形態では、ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、HAIアッセイで測定して幾何平均抗体価が100より大きい。別の実施形態では、ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、H抗原結合アッセイで測定してBT50の幾何平均抗体価が100より大きい。更に別の実施形態では、ノロウイルス特異的機能抗体の血清抗体価は、H抗原結合アッセイで測定してBT50の幾何平均抗体価が200より大きい。
【0051】
[0063] さらなる態様では、ワクチンの投与は、1つ又は複数のタイプのノロウイルス抗原及び任意選択的には少なくとも1つの有効なアジュバント(例えば水酸化アルミニウム)を含む、少なくとも2用量の抗原又はワクチン組成物を、小児対象に非経口で(好ましくは筋肉内に)投与することにより、IgA粘膜免疫応答及びIgG全身性免疫応答を含む防御免疫応答を誘発する。発明者は、意外にも、本明細書に記載のノロウイルスワクチン組成物の非経口投与により、強力なIgG応答に加えて、小児において頑強なIgA応答が誘導されることを見出している。典型的には、強力なIgA応答は、ワクチンが粘膜投与経路を通じて投与されるときに限って認められる。
【0052】
[0064] 上述したように、本発明のワクチン組成物の投与は、ノロウイルス感染の少なくとも1つの症状を防止及び/又は軽減する。ノロウイルス感染の症状は当技術分野で周知であり、悪心、吐き気、下痢、及び胃痙攣が含まれる。また、ノロウイルスに感染した患者は、軽度の発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、及び疲労を覚えることがある。本発明は、ノロウイルス感染に伴う少なくとも1つの症状を緩和及び/又は軽減するように、本発明のワクチン製剤を対象に投与することにより、ノロウイルス感染を経験している対象に防御免疫応答を誘導する方法も含む。症状の軽減は、主観的又は客観的に、例えば対象の自己評価、臨床医の評価により、又は適切なアッセイ又は測定(例えば体温)、例えばクォリティオブライフの評価、ノロウイルス感染又は追加的症状の進行遅延、ノロウイルス症状の重篤度軽減又は適切なアッセイ(例えば抗体価、RT-PCR抗原検出、及び/又はB細胞又はT細胞活性化アッセイ)を実行することにより判定することができる。有効な応答は、腸管から放出されたウイルスの量を反映する糞便サンプル中のウイルス負荷を直接測定する(例えばRT-PCR)ことによっても判定することができる。客観的評価には動物及びヒトの評価の両方が含まれる。
【0053】
[0065] 本発明は1つ又は複数のノロウイルス抗原に対する抗体を生成する方法も提供し、上記方法は、上述したような本発明のワクチン組成物を対象に投与することを含む。これらの抗体は、当技術分野の日常的方法で分離し、精製することができる。分離したノロウイルス抗原特異的抗体を、診断免疫学的アッセイの開発に使用することができる。これらのアッセイは、臨床サンプル中のノロウイルスを検出し、感染を引き起こす特定のウイルス(例えばノーウォーク、ヒューストン、スノウマウンテンなど)を識別するために採用することができる。あるいは、分離した抗体を、ノロウイルスに感染しやすい対象に投与し、受動性又は短期の免疫を与えることができる。
【0054】
[0066] 次に、以下の実施例で述べる特定の実施形態を参照しながら、本発明を更に詳細に例証する。実施例は、純粋に本発明を例証するものであり、いかなる意味でもその範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
実施例1.小児対象における筋肉内ノロウイルス二価ウイルス様粒子(VLP)ワクチンの用量増大、安全性及び免疫原性の検討
[0067] 臨床試験を実施し、幼児又は小児におけるノロウイルスVLPワクチンの安全で有効な投与レベルを決定した。試験は、6週齢~<9年齢の小児における第2相無作為化プラセボ対照二重盲検安全性及び免疫原性試験であった。試験したコホートは、個別に、6週齢~<6月齢の小児;6月齢~<1年齢の小児;1年齢~<4年齢の小児;及び4年齢~<9年齢の小児を含んだ。ノロウイルスワクチン組成物は、GI.1 VLP及びGII.4 VLP(GI.1/GII.4cの二価VLPワクチン)を含む。4つの異なる用量レベルを試験した。投与レベルの2つは、GI.1及びGII.4のワクチン成分を同じ投与レベルで含み;投与レベルの2つは、GI.1及びGII.4のワクチン成分を2つの異なる投与レベルで含む。試験した用量は、
・15/15μgのGI.1/GII.4cのVLP比、
・15/50μgのGI.1/GII.4cのVLP比、
・50/50μgのGI.1/GII.4cのVLP比、及び
・50/150μgのGI.1/GII.4cのVLP比
であった。
【0056】
[0068] ワクチン組成物はまた、500μgのAl(OH)3(アジュバント)を含んだ。ワクチン組成物は、筋肉内注射を介して対象に投与した。
【0057】
[0069] 2つの異なる投与計画は、
・6月齢~<9年齢の対象(すなわち、6月齢~1年齢グループ、1年齢~<4年齢グループ、及び4年齢~<9年齢グループ)における1用量又は2用量;及び
・6週齢~<6月齢の対象における2又は3用量)
として、個別の患者集団において試験した。
【0058】
[0070] 組み入れ基準は、以下を含んだ:
・登録時、6週齢~9年齢未満の間の男性及び女性参加者
・試験へのエントリー時、病歴、身体検査(バイタルサインを含む)及び治験責任医師の臨床判断により、良好な健康状態であることが判定された
・合法的に認可された代理人(LAR)としての参加者は、試験の性質が地域の規制要件に従って説明された上で、いずれかの試験手順の開始に先立ち、書面のインフォームドコンセントフォーム(ICF)及び任意の要求されるプライバシー認証に署名し、日付を記入する。同意についても、年齢が適合した国特有の規制に応じて得られる
・試験手順に従うことができ、試験の持続期間にわたり対応可能である参加者。
【0059】
[0071] 除外基準は、以下を含んだ:
・ワクチン接種予定日の3日以内に(治験責任医師による評価で)臨床的に有意な活動性感染又は体温が摂氏38.0度(華氏100.4度)以上
・予定されたワクチン投与前24時間以内に解熱薬/鎮痛薬が投与されている
・(治験ワクチンの賦形剤を含む)治験ワクチンに対する公知の過敏症又はアレルギー
・治験責任医師の意見において、試験に参加する能力に干渉することがある、行動若しくは認識障害又は精神疾患
・任意の進行性若しくは重度の神経障害、発作性疾患、又は神経炎症性疾患(例えば、ギラン・バレー症候群)の病歴
・以下を含む免疫機能の公知の又は疑われる障害/変化:
・生誕から最初の6か月以内に、滲出性中耳炎(OME)と混同されるべきでない、急性中耳炎(AOM)(AOMは鼓膜の腫脹として定義される)の発症を繰り返した履歴を有する小児<18月齢
・1日目前60日以内の経口ステロイドの慢性使用(≧12週/≧2mg/kg体重/日で≧2週間にわたる20mg/日のプレドニゾンに等しい)(吸入、鼻腔内、又は局所コルチコステロイドの使用が可能である)
・1日目前60日以内の非経口ステロイド(≧12週/≧2mg/kg体重/日で≧2週間にわたる20mg/日のプレドニゾンに等しい)の投与
・1日目前60日以内の免疫賦活薬の投与
・1日目前3か月以内の、又は全試験期間中に予定された非経口、硬膜外若しくは関節内免疫グロブリン製剤、血液製剤、及び/又は血漿誘導体の投与
・1日目前6か月以内の免疫抑制療法薬の投与
・ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)(HIV)感染又はHIV関連疾患
・慢性B型又はC型肝炎感染
・遺伝性免疫不全
・脾臓又は胸腺機能の異常
・出血時間延長に関連することがある既知の出血素因又は任意の病態
・治験責任医師の判断に準じる任意の重篤な慢性又は進行性疾患(例えば、腫瘍、インスリン依存性糖尿病、心疾患、腎疾患、又は肝疾患)
・初回試験訪問の30日前の別の治験薬を用いる任意の臨床試験への参加、又は本試験の実施中の任意の時点での別の臨床試験に参加する意図
・本試験への登録前の14日以内(不活化ワクチンの場合)又は28日以内(生ワクチン場合)に任意の他のワクチンの投与
・試験実施に関与する個人の第一度近親者
・自己免疫疾患の病歴。
【0060】
[0072] 臨床試験設計の模式図を
図1に提示する。コホート1は、グループ1(4年齢~<9年齢)、グループ2(1年齢~<4年齢)、グループ2a(1年齢~<4年齢)、及びグループ3(6月齢~1年齢)における対象を含んだ。グループ2aは、次により若い歳グループに投与する前に、2つの異なる製造ロットの評価を可能にするブリッジンググループである。コホート1における全対象480名には、上で規定された投与レベル(15/15、15/50、50/50、又は50/150)の1つで、1又は2用量のいずれかのGI.1/GII.4 VLPワクチンを投与した。コホート2は、6週齢~<6月齢のグループ4の対象を含んだ。コホート2(グループ4)における全対象360名には、上で規定された投与レベル(15/15、15/50、50/50、50/150)の1つで、2又は3用量のGI.1/GII.4 VLPワクチンを投与した。1日目(1-用量レジメン)、1及び29日目(2-用量レジメン、コホート1)、1及び56日目(2-用量レジメン、コホート2)、又は1、56、及び112日目(3-用量レジメン、コホート2)で、諸用量を投与した。1用量レジメンにおける対象は、29日目、プラセボ注射を受け、2用量のコホート2レジメンにおける対象は、112日目、プラセボ注射を受けた。
【0061】
[0073] 下の表1は、予備プロトコル患者セットにおける人口統計を提示する。
【0062】
【0063】
[0074] 試験の結果によると、すべての投与レベルが免疫原性であることが示された。50/150μgを投与する2-用量レジメンは、6月齢~<5年齢の小児において有効で安全であった。3-用量レジメンは、6週齢~<6月齢の小児において有効で安全であった。
【0064】
免疫原性
[0075] すべての投与レベルの組成物が、6週齢~<6月齢、6~<12月齢、1~<4年齢、及び4~<9年齢の小児の異なる歳の群において免疫原性であった(
図2A~D)。HBGA阻害価に基づき、コホート1の6月齢~<1年齢及び1~<4年齢の小児において、ワクチン組成物の2用量は、1用量よりもよりも免疫原性を示した(
図3A、3B)。pan-Ig及びHBGA阻害価に基づき、コホート2の6週齢~<6月齢の幼児において、ワクチン組成物の3用量は、2用量よりもよりも免疫原性を示した。
【0065】
[0076] グループ3中の患者の大半は、(HBGA GI.1、HBGA GII.4、pan-Ig GI.1、及びpan-IG GII.4による測定として)ベースラインで血清陰性であった。したがって、ワクチンは、主に抗原刺激されていない小児において免疫原性であった。HGBA阻害抗体及びpan-Igによる測定時の免疫応答の類似パターンが、2つの製造ロット(グループ2及びグループ2a;
図2A、2B、3A、3B)を受けた1~<4年齢の小児において認められた。両方の歳のグループ(6月齢~>12月齢及び1~<4年齢)において、2用量のワクチンレジメンは、単回用量レジメンよりも免疫原性であった。
【0066】
[0077] 下の表2は、すべてのアッセイにおいて両VLPに対する定量化の下限(LLoQ)未満のベースライン力価を有する対象における、組み合わせ製剤及び歳グループにおける、GI.1とGII.4の双方に対する抗体応答率(ベースラインと比べて力価における4倍の増加)を示す。
【0067】
【0068】
[0078] グループ3からのデータ同様、表2にまとめたデータは、抗原刺激されていない小児においてワクチンが免疫原性であったことを示す。グループ4(6週齢~<6月齢)において、GI.1に特異的な母子移行抗体(maternal antibody)及びGII.4cに特異的な母子移行抗体の存在が、血清陰性のGI.1に特異的なpan-Ig抗体又はGII.4cに特異的なpan-Ig抗体を有する対象の比較的低い有病率により示唆された。
【0069】
[0079] 50/150組成物は、コホート1の6~<12月齢及び1~<4年齢の小児における2用量後、又はコホート2の6週齢~<6月齢の幼児における3用量後、他の組成物と比較して、最高のGI.1に特異的なHBGA阻害GMT(
図4A~4D)及びGII.4cに特異的なHBGA阻害GMT(
図5A~5D)に関連した。
【0070】
[0080] GI.1に特異的なIGA及びGII.4cに特異的なIgAにおけるGMTを、
図6A~6B(グループ1)、
図7A~7B(グループ2)、
図8A~8B(グループ3)、及び
図9A~9B(グループ4)に示す。
【0071】
[0081] グループ2及び3において、他のロウイルス株に対する交差反応性を試験した。1~<4年齢の小児のサブセット(すなわち、グループ2;組み合わせた組成物グループ)では、ワクチンの2用量後、ヘテロ変異体(heterovariant)GII.4 VLP(GII.4.2006b及びGII.4.2012)との高い交差反応性が認められた(
図10)。6~<12月齢の幼児(すなわち、グループ3、2用量グループ、組み合わせた組成物グループ)では、ワクチンの単回投与後、専ら2つのヘテロ変異体GII.4株のGII.4.2006b及びGII.4.2012との限界交差反応性が生じた(
図11A)。2ワクチン用量後、グループ3の対象は、2つのヘテロ変異体GII.4株とより高い交差反応性を示した(
図11B)。
【0072】
安全性
[0082] ワクチン関連の重篤な有害事象(SAE)又は致死性SAEは報告されなかった。異なるワクチン組成物(15/15、15/50、50/50、及び50/150)における安全性特性は、各小児年齢層において類似し、主に、軽度~中等度の反応源性症状、多くは強度が軽度~中等度であり、重度の症状が比較的希少であり(対象の≦5%)、持続期間は短く、且ついずれのコホートでも2回投与後に、又はコホート2における3回投与後に増強がないことによって特徴づけられた。グループ1、2、2A、及び3における応答型局所有害事象(AE)を
図12Aに示す。グループ4における応答型局所AEを
図12Bに示す。グループ1及び2における応答型全身AEを
図13Aに示す。グループ2a及び3における応答型全身AEを
図13Bに示す。グループ4における応答型全身AEを
図13Cに示す。
【0073】
[0083] 表3は、すべてのグループにわたる28日後のアーム及び用量サブグループによる非応答型AEの概要を提示する。
【0074】
【0075】
[0084] 表4は、すべてのグループにわたるアーム及び用量サブグループによるSAEの概要を提示する。
【0076】
【0077】
[0085] 試験からのデータは、二価ノロウイルスワクチン組成物が、試験において投与された最高用量及び最高数の用量であっても安全であることを示した。応答型AEの頻度とワクチン中の抗原量との間に明白な関連性がなかった。グループ4における2回投与後、又は3回投与後、応答型AEの頻度に増加はなかった。初回ワクチン投与後、グループにわたり、応答型AEは、対象の39%~57%において報告されなかった。2回目ワクチン投与後、グループにわたり、応答型AEは、対象の37%~46%において報告されなかった。3回目投与後、応答型AEの頻度は、プラセボ及びワクチングループにおいて類似した。いずれかのワクチン投与後、疼痛は最もよく見られる局所系であり(≦24%);易怒性(≦29%)及び眠気(≦23%)は、よく見られる全身症状であった。応答型症状は、主に強度が軽度又は中等度であった。同様に、大部分の非応答型AEは、軽度~中等度の強度であり、且つワクチンに無関係であった。対象24名に報告された38のSAEの中で、ワクチンに関係するものは皆無であった。死亡は報告されず、AEによるプロトコルからの逸脱はなかった。
【0078】
[0086] まとめると、試験では、A1(OH)3として500μgのアルミニウムを更に含む、50/150μgのGI.1/GII.4c二価ワクチンの組成物が、6週齢~<9年齢の小児において高度に免疫原性であり、安全であることが示された。安全性懸念は同定されず、それ故、組成物は、患者のこの集団において、2又は3用量の状況であっても許容できる安全性特性を有する。臨床試験を通じて得られた安全性及び免疫原性データに基づき、患者の小児集団には、50μgのGI.1 VLP及び150μgのGII.4 VLPを含む組成物を2又は3用量で投与することができる。例えば、6週齢~<6月齢の患者の集団には、組成物を3用量で安全で有効に投与することができる。6月齢~<9年齢の患者の集団には、組成物を2用量で安全で有効に投与することができる。
【0079】
[0087] したがって、幾つかの実施形態では、本開示は、ノロウイルス感染に対する防御免疫の誘導において使用するための方法、使用及び組成物であって、最初に対象の齢を判定することと、次に対象に投与されるべき用量の数を決定することと、を含む方法、使用及び組成物を提供する。例えば、対象の齢が少なくとも約6週齢であるが6月齢未満である場合、対象には、ノロウイルスVLPワクチンが3分割用量で(例えば、GI.1/GII.4c二価ワクチンが50μg/150μgの投与レベルで)投与され;対象の齢が少なくとも約6月齢であるが9年齢未満である場合、対象には、ノロウイルスVLPワクチンが2分割用量で(例えば、GI.1/GII.4c二価ワクチンが50μg/150μgの投与レベルで)投与される。
【0080】
[0088] 本発明は、上記特定の実施形態に範囲が限定されるものではなく、実施形態は本発明の個々の態様の単一の例証として意図され、機能的に同等の方法及び成分は本発明の範囲に入る。実際、本明細書で図示し、述べたもの以外の本発明の様々な改善が、日常の経験以上のものを使用せずに、以上の既述及び添付図面から当業者には明白になる。このような改善及び同等物は、特許請求の範囲に入るものとする。
【0081】
[0089] 本明細書で言及したすべての出版物、特許及び特許出願は、個々の出版物、特許、又は特許出願をそれぞれ具体的且つ個別的に参照により本明細書に組み込むものとすると示された場合と同じ程度まで参照により本明細書に組み込むものとする。
【0082】
[0090] 本明細書の参照文献の引用又は検討は、それが本発明の先行技術であると承認したことにはならないと解釈されたい。
【配列表】
【国際調査報告】