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特表2022-514762測定ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステムの動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】測定ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステムの動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20220207BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
G01N27/26 371A
G01N27/416 331
G01N27/416 376
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535911
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081040
(87)【国際公開番号】W WO2020126231
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018222624.5
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァール
(57)【要約】
測定ガス中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステム(100)の動作方法である。センサシステム(100)は、測定ガス中の窒素酸化物を検出する少なくとも1つの第1の測定ユニット(152)と、測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定ユニット(156)とを有する。この方法は、測定ガスについての所定の条件下で第1の測定ユニット(152)の第1の測定信号値を検出することと、測定ガスについての当該所定の条件下で第2の測定ユニット(156)の第2の測定信号値を検出することと、第1の測定信号値からの第2の測定信号値の偏差値を特定することと、偏差値に基づいて補正値を形成することと、補正値と第2の測定ユニットの第2の測定信号とに基づいて第2の測定ユニットの補正された第2の測定信号を形成することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステム(100)の動作方法であって、
前記センサシステム(100)は、前記測定ガス中の窒素酸化物を検出する少なくとも1つの第1の測定ユニット(152)と、前記測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定ユニット(156)とを有する、方法において、
・前記測定ガスについての所定の条件下で前記第1の測定ユニット(152)の第1の測定信号値を検出することと、
・前記測定ガスについての前記所定の条件下で前記第2の測定ユニット(156)の第2の測定信号値を検出することと、
・前記第1の測定信号値からの前記第2の測定信号値の偏差値を特定すること、
・前記偏差値に基づいて補正値を形成することと、
・前記補正値と前記第2の測定ユニットの第2の測定信号とに基づいて、前記第2の測定ユニットの補正された第2の測定信号を形成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記測定ガス中の窒素酸化物の割合の閾値を下回ることである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒素酸化物の前記閾値は、前記測定ガス中のアンモニアの割合の20%、有利には7%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の測定信号値を前記第1の測定信号値により除算し、続いて逆数を形成することによって前記補正値を形成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記補正された第2の測定信号を、前記第2の測定信号に前記補正値を乗算することによって形成する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の測定信号値からの前記第2の測定信号値の前記偏差値が、前記偏差値についての所定の閾値、10%と50%との間の割合、有利には10%と25%との間の割合を上回る場合にのみ前記補正値を形成する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の測定ユニット(152)及び前記第2の測定ユニット(156)は、単一のセンサ要素に配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の測定ユニット(152)は、第1のセンサ要素(110)に配置されており、前記第2の測定ユニット(156)は、第2のセンサ要素(154)に配置されており、前記第1のセンサ要素(110)は、前記第2のセンサ要素(154)とは異なっており、前記第1のセンサ要素(110)及び前記第2のセンサ要素(154)は、単一のセンサに配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の測定ユニット(152)は、第1のセンサ要素(110)に配置されており、前記第2の測定ユニット(156)は、第2のセンサ要素(154)に配置されており、前記第1のセンサ要素(110)は、前記第2のセンサ要素(154)とは異なっており、前記第1のセンサ要素(110)は、第1のセンサに配置されており、前記第2のセンサ要素(154)は、第2のセンサに配置されており、前記第1のセンサは、前記第2のセンサとは異なっており、前記第1のセンサと前記第2のセンサとは、前記測定ガス内において相互に隣接して配置される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記測定ガスは、内燃機関の排気ガスであり、前記センサシステム(100)は、前記内燃機関のエンジン制御装置と接続され、
前記方法は、前記エンジン制御装置が前記センサシステム(100)にトリガ信号を送信した場合に実施される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定ガスは、内燃機関の排気ガスであり、前記補正された第2の測定信号は、前記排気ガスに注入される尿素溶液の量を制御又は調整するために使用される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実施するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムが格納されている電子記憶媒体。
【請求項14】
請求項13に記載の電子記憶媒体を含む電子制御装置(122)。
【請求項15】
測定ガス中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステム(100)であって、
前記測定ガス中の窒素酸化物を検出する少なくとも1つの第1の測定ユニット(152)と、前記測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定ユニット(156)とを含み、
請求項14に記載の電子制御装置(122)をさらに備えているセンサシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
従来技術から、分子状酸素の存在下において、結合酸素を有する測定ガス成分の還元によって発生する酸素の割合を検出することによって、ガス混合物中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出する多数の方法及びセンサが知られている。
【背景技術】
【0002】
省略されて又は簡略化されて、NOxセンサ又は窒素酸化物センサとも称される、ガス混合物中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサは、例えば、Reif,K.,Deitsche,K-H.等著「Kraftfahrtechnisches Taschenbuch」(Springer Vieweg、Wiesbaden、2014年、第1338~1347頁)に記載されている。
【0003】
今日自動車技術において使用されている窒素酸化物センサ(=NOxセンサ)は、例えばラムダセンサ等の酸素センサと同様に、限界電流の原理に従って機能する。このような窒素酸化物センサは、参照セルとも称されるネルンスト濃淡電池、改変された酸素ポンプセル及び他の改変された酸素ポンプセル、いわゆるNOxセルを含む。排気ガスに曝された外側ポンプ電極と、拡散バリアによって排気ガスから分離されている第1の中空空間内の内側ポンプ電極とが、酸素ポンプセルを形成する。ネルンスト電極も第1の中空空間内に配置されており、共にネルンストセルを形成する参照電極は参照ガス空間内に配置されている。NOxセルは、NOxポンプ電極と対電極とを含む。NOxポンプ電極は、第1の内部中空空間と連通しており、かつ、拡散バリアによって第1の内部中空空間から分離されている第2の中空空間内に配置されている。対電極は、参照ガス空間内に配置されている。第1及び第2の中空空間内の総ての電極は、共通の戻り導体を有している。
【0004】
窒素酸化物センサの動作時には、いわゆるOセル内において、拡散バリアを介して排気ガスと通じている第1の空洞から酸素が除去される。これによって、結果として発生するポンプ電流は、測定ガス流又は排気ガス流内の周囲空気の酸素含有量に比例する。NOxセル内において、窒素酸化物がポンプにより排出される。第2の中空空間内の雰囲気中の窒素酸化物NOxは、一定のポンプ電圧を印加することによって還元又は分解される。第2の中空空間内の測定ガス成分を還元又は分解することによって生成された、有利には窒素酸化物NOxの還元に由来する酸素は、参照ガス空間にポンプにより排出される。従って、結果として、印加されたポンプ電圧は、NOxセルの抵抗に対して、窒素酸化物NOx又は酸素の濃度によって、窒素酸化物NOx又は酸素の含有量に比例して、NOx測定信号を表すポンプ電流をもたらす。
【0005】
いわゆるSCR技術(SCR=選択触媒還元)は、ディーゼルエンジンドライブを搭載した近年の自動車においては、高レベルのNO及びNO浄化を実現するために使用される。ここで、尿素水溶液が、SCR触媒コンバータの上流において排気ガス管に注入される。このような尿素は、触媒コンバータ上の排気ガス温度により分解し、アンモニア(NH)及び二酸化炭素(CO)を生成する。アンモニアは、触媒コンバータによりNO及びNOと反応して、分子状窒素Nを生成する。ここで、排気ガス浄化の効率のために、触媒コンバータ内のある位置、又は、2つの触媒コンバータの間、又は、SCR触媒コンバータの下流において、NO濃度及びNO濃度に加えて、NH濃度を選択的に測定することが有利である。例えば、Reif,K.,Deitsche,K-H.等著「Kraftfahrtechnisches Taschenbuch」(Springer Vieweg、Wiesbaden、2014年、第1338~1347頁)に記載されているような既知の窒素酸化物センサは、二酸化ジルコニウム技術により構築されている。これらは、中央測定手段としてセラミックセンサ要素を含み、セラミックセンサ要素は、集積されている加熱部によって、650乃至850℃の範囲の固定動作温度に加熱される。これによって、ドープされた二酸化ジルコニウムが、電気的なOイオン伝導体になる。測定セルの構造は、ダブルチャンバ原理に基づいた既知の構造に従う。これらのセンサは、総合信号として、NO、NO及びNHを測定する。
【0006】
ここで、他のガス成分を測定するために、NO/NOを測定するセンサに、他の測定セルが装備される。1つ又は複数の、アンモニア測定を行う測定セルを装備することが特に有利である。このセンサは、SCRシステムにおける調整を改善するために使用することが可能である。他の測定量を提供することによって、効率の高い排気ガス浄化の調整が容易になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Reif,K.,Deitsche,K-H.等著「Kraftfahrtechnisches Taschenbuch」(Springer Vieweg、Wiesbaden、2014年、第1338~1347頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
窒素酸化物を検出する第1の測定ユニット又は測定セルと、アンモニアを検出する第2の測定ユニット又は測定セルとを備えた、従来技術から既知のセンサシステム及びその動作方法の利点にも拘わらず、これらにはまだ改良の余地がある。排気ガス中のNHを検出することができる測定セルは、例えば混合電位電極によって形成されており、混合電位電極は、白金等から製造されている平衡電極に対して、電気化学ポテンシャルを生成する。混合電位電極が、動作時間にわたって、排気ガス中において経年劣化することが知られている。この結果、信号は、動作時間にわたって変化し、通常、減少する。その結果、測定エラーが50%まで発生することは稀ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の開示
従って、測定ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステムの動作方法が提案され、この方法は、このようなセンサシステムの既知の動作方法の欠点を少なくとも大部分回避し、電極の経年劣化によるアンモニアの検出時の測定エラーを大幅に低減させることができ又は回避することができる。
【0010】
本発明に係る、測定ガス中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステムの動作方法であって、センサシステムは、測定ガス中の窒素酸化物を検出する少なくとも1つの第1の測定ユニットと、測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定ユニットとを有する、方法は、有利には所与の順序で、以下のステップ、即ち、
・測定ガスについての所定の条件下で第1のセンサの第1の測定信号値を検出するステップと、
・測定ガスについての上記所定の条件下で第2のセンサの第2の測定信号値を検出するステップと、
・第1の測定信号値からの第2の測定信号値の偏差値を特定するステップと、
・偏差値に基づいて補正値を形成するステップと、
・補正値と第2のセンサの第2の測定信号とに基づいて、第2のセンサの補正された第2の測定信号を形成するステップと、
を含む。
【0011】
基本的な思想は、NOxセンサの既知の感度を、NHについての補正値を求めるために利用することである。例えば、エンジン、ひいては排気システムの以前に特定された動作状態に対して、又は、エンジン制御装置内の種々の情報の妥当性検査から、NO及びNOが排気管内に存在しているか否かを導出することが可能である。このことが除外し得る場合、又は、これらがごくわずかな量でしか存在しておらず、同時に、NOx(NOx=NO+NO)を測定するセンサ部分において信号が検出され、同時に、NHを測定するセンサ部分において信号が検出される場合には、これにNHが関わっていることが仮定されるべきである。ここで、NHを測定するセンサ部分からの信号を、NOxを測定するセンサ部分の信号と比較することができる。NHセンサ信号のNH特性曲線等価物がNOxセンサのNH特性曲線等価物から偏差している場合には、偏差係数が求められ、補正値が計算され、直ちに補正係数としてNH信号に適用される。従って、NH測定ユニット又は測定セルの測定エラーは、容易に低減又は回避される。
【0012】
発展形態においては、所定の条件は、測定ガス中の窒素酸化物の割合の閾値を下回ることである。これに対応して、補正機能は、例えば、エンジン制御装置において又はセンサ制御装置において動作状態が識別されたときに、例えば、排気管内にNOxが存在していない又はNOxがごくわずかな量でしか存在していないエンジン制御装置によって実行される。
【0013】
発展形態においては、窒素酸化物の閾値は、測定ガス中のアンモニアの割合の20%、有利には7%である。これは、この方法を確実に実施することができる有利な閾値を表す。
【0014】
発展形態においては、補正値は、第2の測定信号値を第1の測定信号値により除算し、続いて逆数を形成することによって形成される。これによって、大きい労力をかけずに補正値を形成することができる。
【0015】
発展形態においては、補正された第2の測定信号は、第2の測定信号に補正値を乗算することによって形成される。これによって、第2の測定信号を容易に補正することができる。
【0016】
発展形態においては、補正値は、第1の測定信号値からの第2の測定信号値の偏差値が、偏差値についての所定の閾値、特に信号の10%と50%との間、有利には10%と25%との間の割合を上回る場合にのみ形成される。これによって、電極の重大な経年劣化エラーのみに基づいて、補正が行われることが保証される。
【0017】
発展形態においては、第1の測定ユニット及び第2の測定ユニットは、単一のセンサ要素に配置されている。例えば、上記の従来技術から知られているように、窒素酸化物センサは、さらなる測定ユニット又は測定セルを含むように拡張される。
【0018】
選択的に、第1の測定ユニットは、第1のセンサ要素に配置されており、第2の測定ユニットは、第2のセンサ要素に配置されており、第1のセンサ要素は、第2のセンサ要素とは異なっており、第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素は、単一のセンサに配置されている。言い換えれば、2つの別個のセンサ要素が、単一のセンサ内に構築される。
【0019】
選択的に、第1の測定ユニットは、第1のセンサ要素に配置されており、第2の測定ユニットは、第2のセンサ要素に配置されており、第1のセンサ要素は、第2のセンサ要素とは異なっており、第1のセンサ要素は、第1のセンサに配置されており、第2のセンサ要素は、第2のセンサに配置されており、第1のセンサは、第2のセンサとは異なっており、第1のセンサと第2のセンサとは、測定ガス内において相互に隣接して配置される。言い換えれば、第1のセンサと第2のセンサとは、相互に隣接して、測定されるべきガス混合物に曝される、物理的に別個に構築されたセンサである。
【0020】
発展形態においては、測定ガスは、内燃機関の排気ガスであり、センサシステムは、内燃機関のエンジン制御装置と接続され、この方法は、エンジン制御装置がセンサシステムにトリガ信号を送信した場合に実施される。これによって、この方法は、エンジン制御装置によって要求された場合にのみ実施され、その結果、所定の条件が存在することが保証される。
【0021】
発展形態においては、測定ガスは、内燃機関の排気ガスであり、補正された第2の測定信号は、排気ガスに注入される尿素溶液の量を制御又は調整するために使用される。例えば、補正機能は、尿素溶液の注入量を制御又は調整するために、SCR計量制御装置において実行される。
【0022】
さらに、本発明に係る方法の各ステップを実施するために構成されているコンピュータプログラムが提案される。
【0023】
さらに、本発明に係る方法を実施するためのコンピュータプログラムが格納されている電子記憶媒体が提案される。
【0024】
さらに、本発明は、本発明に係る方法を実施するための上述のコンピュータプログラムを備えた本発明に係る電子記憶媒体を含む電子制御装置を含む。
【0025】
最後に、本発明は、測定ガス中の、特に内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の少なくとも一部を検出するセンサシステムにも関し、このセンサシステムは、測定ガス中の窒素酸化物を検出する少なくとも1つの第1の測定ユニットと、測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定ユニットとを含み、このセンサシステムは、そのような電子制御装置をさらに備えている。
【0026】
本発明の枠内においては、固体電解質は、電解特性を有する、即ち、イオン伝導特性を有する物体又は対象物として理解されるべきである。特に、これは、セラミック固体電解質であり得る。これは、固体電解質の原料、ひいては焼結後にはじめて固体電解質になる、いわゆるグリーン体又はブラウン体としての形成物も含む。特に、固体電解質は、固体電解質層として又は複数の固体電解質層から形成されるものとしてよい。本発明の枠内においては、層は、他の要素の上、下又は間にある、ある程度の高さの、平面状に拡張した、均一な塊として理解されるべきである。
【0027】
本発明の枠内においては、電極は、全般的に、電流が固体電解質及び電極を通して維持され得るように、固体電解質に接触することができる要素として理解されるべきである。従って、電極は、イオンが固体電解質に組み込まれ得る及び/又は固体電解質から除去され得る要素を含み得る。典型的に電極は、例えば、金属セラミック電極として固体電解質上に被着され得る又は他の形態により固体電解質と接続され得る貴金属電極を含む。典型的な電極材料は白金サーメット電極である。しかし、基本的には、例えば、金又はパラジウム等の他の貴金属も使用可能である。
【0028】
本発明の枠内においては、加熱要素は、固体電解質及び電極を少なくともそれらの機能温度に、有利にはそれらの動作温度に加熱するために使用される要素として理解されるべきである。機能温度は、固体電解質がイオンに対して伝導性になる温度であり、約350℃である。これは、動作温度とは区別されるべきである。動作温度は、センサ要素が通常動作する温度であり、機能温度よりも高い温度である。動作温度は、例えば、500℃から950℃までであるものとしてよい。加熱要素は、加熱領域及び少なくとも1つの供給ラインを含み得る。本発明の枠内においては、加熱領域は、層構造において、センサ要素の表面に対して垂直な方向に沿って電極と重なる加熱要素の領域として理解されるべきである。加熱領域は、通常、動作中に供給ラインよりも強く加熱されるため、これらを区別することができる。異なる加熱は、例えば、加熱領域が供給ラインよりも高い電気抵抗を有することによって実現され得る。加熱領域及び/又は供給ラインは、例えば、電気抵抗トラックとして形成されており、電圧が印加されることによって加熱される。加熱要素は、例えば、白金サーメットから製造されるものとしてよい。
【0029】
本発明のさらなる任意の細部及び特徴は、図面に概略的に示される有利な実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るセンサシステムの基本構成。
図2】本発明に係る方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の実施形態
図1は、本発明に係る方法を実施するために特に適する、本発明に係るセンサシステム100の基本構成を示している。センサシステム100は、ガス混合物、例えば、内燃機関の排気ガス中の、結合酸素を有する測定ガス成分の、以下においては例示的に窒素酸化物NOxと称される少なくとも一部を検出するように構成されている。
【0032】
このために、センサシステム100は、第1のセンサ要素110を含む。第1のセンサ要素110は、外側ポンプ電極114と内側ポンプ電極116との間に形成されている第1のポンプセル112を含む。多孔質の酸化アルミニウム層118によって第1のセンサ要素110の周囲から分断されている外側ポンプ電極114は、ここでは第1の導電性接続部120を有しており、これを介して、第1のポンプ電流IP1が第1のポンプセル112において生成される。このために、第1の導電性接続部120は、外部の電子制御装置122の端子P1と接続されている。完全な電流回路を得るために、内側ポンプ電極116は同様に、外部の電子制御装置122の共通端子COMへ連通する第2の導電性接続部124を有している。第1のポンプセル112は、第1の中空空間126に接して位置している。第1の中空空間126は、第1のセンサ要素110の内部に位置しており、測定ガスと連通している。第1のポンプセル112において第1のポンプ電流IP1を生成することによって、ガス混合物の分子状酸素から形成される第1の割合の酸素イオンが、第1の中空空間126とセンサ100の周囲との間において搬送される。拡散バリア128は、周囲から第1の中空空間126への入り口経路に設けられている。
【0033】
第1のセンサ要素110は、ネルンスト電極132と参照電極134とを有する電気ネルンストセル130をさらに有している。ネルンスト電極132は、内側ポンプ電極116と共に、共通端子COMへの第2の導電性接続部124を有しているが、参照電極134は、ネルンスト電圧Vs用の外部の電子制御装置122の端子Vsへの別個の導電性接続部136を有している。ネルンストセル130は、参照ガス空間138に接して位置している。測定ガス空間126及び/又はセンサ100の周囲からの第2の割合の酸素イオンは、端子Vsと共通端子COMとの間に参照ポンプ電流を印加することによって、参照ガス空間138へ搬送される。参照ポンプ電流の値は、定められた割合の酸素イオンが参照ガス空間138内に形成されるように設定される。これに関連して、第1のポンプ電流IP1の値も、有利には、測定ガス空間126内の酸素イオンの第1の割合と参照ガス空間138中の酸素イオンの第2の割合との間に、定められた比率が生じるように設定される。
【0034】
ガス混合物にさらに含まれている、結合酸素を有する測定ガス成分、窒素酸化物NOxは、特に拡散によって、ほとんど影響を受けずに、「NOxポンプセル」とも称されることがある、第1のセンサ要素110の第2のポンプセル140に到達する。第2のポンプセル140は、NOxポンプ電極142及びNOx対電極144を有しており、第1のセンサ要素110の内部の第2の中空空間145に接して位置している。2つの電極、NOxポンプ電極142及び/又はNOx対電極144のうちの少なくとも1つは、電圧が印加されると、測定ガス成分NOxからの触媒作用によって、さらなる分子状酸素が生成され得るように構成されている。これは、第2のポンプセル140において形成される。
【0035】
NOxポンプ電極142は、共通端子COMへ連通する導電性接続部146を有しているが、NOx対電極144は、それを介して第2のポンプ電流IP2が第2のポンプセル140に印加され得る導電性接続部146を有している。このために、導電性接続部146は、外部の電子制御装置122の端子P2と接続されている。第2のポンプ電流IP2が第2のポンプセル140に印加されると、さらなる分子状酸素から形成された、ある割合のさらなる酸素イオンが、参照ガス空間138へ搬送される。第2の中空空間145は、拡散バリア147によって第1の中空空間126から分離されている。第1のセンサ要素110は、加熱要素148をさらに有しており、加熱要素148は、2つのリード線150によって、制御装置122の端子HTR+及びHTR-と接続されており、それを介して、加熱電流が加熱要素148に導入され得る。加熱要素148は、加熱電力を生成することによって、第1のセンサ要素110を、所望の温度にすることができる。第2のポンプセル140は、測定ガス中の窒素酸化物を検出する測定セル又は測定ユニット152として形成されている。
【0036】
センサシステム100は、第2のセンサ要素154をさらに含む。第2のセンサ要素154は、測定ガス中のアンモニアを検出する第2の測定セル又は測定ユニット156を含む。このために、第2の測定ユニット156は、少なくとも1つの混合電位電極158及び平衡電極160を有している。平衡電極160は、例えば、白金から製造されている。混合電位電極158は、平衡電極160に対して電気化学ポテンシャルを生成する。第2のセンサ要素154は、電子制御装置と接続されるものとしてよい。選択的に、第2のセンサ要素154は、固有の制御装置と接続されている。
【0037】
図1において見て取れるように、第2のセンサ要素154は、第1のセンサ要素110内に配置されており、その結果、第1の測定ユニット152と第2の測定ユニット156とが統合されている。第1のセンサ要素110と第2のセンサ要素154とが、相互に別々に存在し得ることを明確に強調しておく。さらに、第2のセンサ要素154と第1のセンサ要素110とが、1つのセンサ内に配置され得ることを明確に強調しておく。これらは、例えば、共通のセンサハウジングによって包囲されている。さらに、第1の測定ユニット152と第2の測定ユニット156とが、相互に分離されているセンサ内に配置され得ることを明確に強調しておく。これらのセンサは、相互に隣接して、測定ガスに曝される。
【0038】
図2は、本発明に係る、センサ100の動作方法のフローチャートを示している。はじめに、ステップS10において、測定ガスに関する情報を含む又はそれに基づいて測定ガスに関する情報が得られるデータが収集される。示されている実施例においては、内燃機関及び内燃機関の排気システムのデータが求められる。これらのデータは、ステップS12において評価される。示されている実施例においては、内燃機関及び内燃機関の排気システムのデータが評価される。
【0039】
ステップS14においては、評価されたデータに基づいて、測定ガスについての所定の条件が存在しているか否か、又は、測定ガスについての所定の条件が満たされているか否かが検査される。示されている実施例においては、所定の条件は、測定ガス中の窒素酸化物の割合の閾値を下回ることである。換言すれば、測定ガス又は排気ガス中の窒素酸化物濃度が十分に低いか否かが検査される。このために、閾値は、測定ガス中のアンモニアの割合の20%と、有利には7%との間であり得る。ステップS14において値が閾値を上回り、従って、測定ガス又は排気ガス中の窒素酸化物濃度が十分に低くない場合には、ステップS12に戻る。ステップS14において値が閾値を下回り、従って、測定ガス又は排気ガス中の窒素酸化物濃度が十分に低い場合には、ステップS16に進む。即ち、エンジンの、ひいては排気システムの以前に特定された動作状態に対して、又は、エンジン制御装置内の種々の情報の妥当性検査から、排気管内にNO及びNOが存在するか否かを導出することができる。ステップS14において、このことを除外することができ、同時に、NOxを測定する第1の測定ユニット152により信号が検出され、同時に、NHを測定する第2の測定ユニットにより信号が検出される場合には、これにNHが関わっていることが仮定されるべきである。
【0040】
ステップS16において、第1の測定ユニット152の第1の測定信号値と第2の測定ユニット156の第2の測定信号値とが比較される。ここで、第1の測定信号値からの第2の測定信号値の偏差値が特定される。従って、NHを測定する第2の測定ユニット156の信号を、NOxを測定する第1の測定ユニット152の信号と比較することができる。第2の測定ユニット156のNH特性曲線等価物が、第1の測定ユニット152のNH特性曲線等価物から偏差している場合、偏差値が求められる。即ち、窒素酸化物が存在しない又は窒素酸化物がごくわずかな量でしか存在していない場合に、第2の測定信号値と第1の測定信号値との差が求められる。
【0041】
ステップS18において、第1の測定信号値からの第2の測定信号値の偏差値が、偏差値についての所定の閾値、例えば10%と50%との間の割合、有利には10%と25%との間の割合を上回っているか否かが検査される。そうでない場合、このことから、第2の測定ユニット156が経年劣化しておらず又はわずかにしか経年劣化しておらず、従って、第2の測定ユニット156の測定信号を補正する必要がないことが推定され得る。従って、偏差値についての閾値を下回った場合には、ステップS12に戻る。偏差値についての閾値を上回った場合には、第2の測定ユニット156が経年劣化していること、ひいては第2の測定ユニット156の測定信号を補正する必要があることが推定され得る。従って、偏差値についての閾値を上回った場合、ステップS20に進む。ステップS20において、偏差値に基づいて補正値が形成される。補正値は、第2の測定信号値を第1の測定信号値により除算し、続いて逆数を形成することによって形成される。
【0042】
ステップS22において、このようにして形成された補正値が、例えば、電子制御装置122に格納される。ステップS24において、第2の測定ユニット156の補正された第2の測定信号が、補正値及び第2の測定ユニット156の第2の測定信号に基づいて形成される。補正された第2の測定信号は、第2の測定信号に補正値を乗算することによって形成される。換言すれば、補正値は、補正係数として、第2の測定ユニット156のNH信号に直ちに適用される。
【0043】
この方法は、センサシステム100が内燃機関のエンジン制御装置と接続され、エンジン制御装置がセンサシステム100にトリガ信号を送信すると、この方法が実施されることによって、実施され得る。補正された第2の測定信号を、排気ガスに注入される尿素溶液の量を制御又は調整するために使用することができる。
図1
図2
【国際調査報告】