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特表2022-514785患者の血糖値を調節する自動システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】患者の血糖値を調節する自動システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20220207BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20220207BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
G16H20/17
A61M5/168 550
A61B5/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536252
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 FR2019053237
(87)【国際公開番号】W WO2020128387
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1873812
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507362786
【氏名又は名称】コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ブラン,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ドロン,エレオノール-マエヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヌーブ,エマ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066QQ11
4C066QQ61
4C066QQ77
4C066QQ82
5L099AA25
(57)【要約】
【解決手段】本明細書は、血糖センサ(101) 、インスリン注射デバイス(103) 及び処理・制御ユニット(105) を備えた、患者の血糖値を調節するための自動システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血糖値を調節する自動システムであって、
- 血糖センサ(101) 、
- インスリン注射デバイス(103) 、及び
- 処理・制御ユニット(105)
を備えており、
前記処理・制御ユニット(105) は、
a) 前記血糖センサによる血糖の測定結果に基づき、次の起こり得る低血糖を検出するステップ(501, 503)、
b) ステップa)で検出された低血糖を回避するために補償する血糖不足を表す値BGdebt、及びステップa)で検出された低血糖が始まるまでの残り時間を表す値Thypo を決定するステップ(505, 507)、
c) 患者が、ステップb)で決定された血糖不足BGdebtを内因性グルコース産生によって補償し得るのに必要な継続時間を表す値Tautosugaring を決定するステップ(509) 、
d) ステップc)で決定された値Tautosugaring を値Thypo-THと比較するステップ(511) 、
e) ステップd)で値Tautosugaring が値Thypo-TH以上であると決定されると、前記インスリン注射デバイス(103) によって患者に注射されるインスリンの流れの遮断を制御する(517, 519)、及び/又は患者が糖を再度摂取する必要があることを患者に示すべく前記自動システムのユーザインターフェースデバイスを介してアラートを開始するステップ
を有する、低血糖を最小限にする方法(HM)を実行するように構成されており、
THは所定の時間マージンであることを特徴とする自動システム。
【請求項2】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップc)で、患者の内因性血糖上昇率を表す値EGE を決定し、その後、前記処理・制御ユニット(105) によって値Tautosugaring を、
Tautosugaring = BGdebt/EGE [数式18]
の式に従って計算することを特徴とする請求項1に記載の自動システム。
【請求項3】
ステップc)で、前記処理・制御ユニット(105) によって値EGE を、患者の血糖履歴及びインスリン注射履歴の分析により計算することを特徴とする請求項2に記載の自動システム。
【請求項4】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップe)で、残り時間Thypo の終わりでの患者の今後の血糖の推定値predBG△Thypoを決定することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の自動システム。
【請求項5】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップe)の後、
f) 推定値predBG△Thypo を所定の低血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ(515) 、
g) ステップf)で推定値predBG△Thypo が前記低血糖閾値BGlimhypo より小さいと決定されると、前記血糖センサ(101) で測定された患者の現在の血糖を表す値BG(t0)を値BGlimhypo+T1と比較するステップ、及び
h) ステップg)で値BG(t0)が値BGlimhypo+T1より小さいと決定されると、前記自動システムのユーザインターフェースデバイスを介してアラートを開始し、患者に糖を再度摂取する必要があることを示すステップ(519)
を実行するように構成されており、
T1は所定の血糖値マージンであることを特徴とする請求項4に記載の自動システム。
【請求項6】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップb)で、患者に関して決定された最大血糖低下率nGRClim 、患者に関して推定された平均血糖低下率nGRCmean、及び患者に関して推定された現在の血糖低下率nGRCcurrent に基づき、低血糖が始まるまでの残り時間の3つの推定値Thypolim, Thypomean, Thypocurrentを夫々決定することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の自動システム。
【請求項7】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップd)で継続時間Tautosugaring を値ThypoMIN-THと比較するように構成されており、ThypoMINは、3つの残り時間Thypolim, Thypomean, Thypocurrentの内の最短時間であることを特徴とする請求項6に記載の自動システム。
【請求項8】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップe)で、残り時間Thypolimの終わり、残り時間Thypomean の終わり及び残り時間Thypocurrentの終わりでの患者の今後の血糖の3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentを夫々計算するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の自動システム。
【請求項9】
前記処理・制御ユニットは、ステップe)の後、
f’) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの各々を所定の低血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ、及び
g’) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の1つが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、患者の現在の血糖を表す値BG(t0)が値BGlimhypo+T1より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案し、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の2つが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、値BG(t0)が値BGlimhypo+T2より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案し(519) 、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、値BG(t0)が値BGlimhypo+T3より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案するステップ
を実行するように構成されており、
T1は所定の血糖値マージンであり、T2は血糖値マージンT1より大きい所定の血糖値マージンであり、T3は血糖値マージンT2より大きい所定の血糖値マージンであることを特徴とする請求項8に記載の自動システム。
【請求項10】
前記処理・制御ユニット(105) に連結されて患者の身体活動を測定して、患者の身体活動の時間変化を表す信号iap(t)を前記処理・制御ユニット(105) に伝えるためのデバイス(107) を更に備えていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の自動システム。
【請求項11】
前記処理・制御ユニット(105) は、信号iap(t)を考慮して、ステップa)で次の起こり得る低血糖を検出する、及び/又はステップc)で値Tautosugaring を決定することを特徴とする請求項10に記載の自動システム。
【請求項12】
前記処理・制御ユニット(105) は、ステップc)で、患者に注射するインスリンの量を表す信号と信号iap(t)の減少関数である時定数τIOBap の減少指数関数との乗算によって定められる、患者のインスリンオンボードの量を表す信号IOB(t)を決定し、前記身体活動の強度が上昇するときのインスリンの作用速度の上昇をモデル化することを特徴とする請求項11に記載の自動システム。
【請求項13】
前記時定数τIOBap は、
τIOBap = C/iap(t) [数式19]
として定められ、Cは1~100 の範囲内のパラメータであることを特徴とする請求項12に記載の自動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、人工膵臓とも称される自動血糖調節システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膵臓は、糖尿病患者の血糖症(又は血糖)履歴、食事履歴及びインスリン注射履歴に基づき糖尿病患者のインスリン摂取を自動的に調節することを可能にするシステムである。
【0003】
このタイプの調節システムの例が、本出願人によって既に出願されている特許出願である国際公開第2018/055283号パンフレット(DD16959/B15018)及び国際公開第2018/055284号パンフレット(DD17175/B15267)に特に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の人工膵臓の性能を向上させることができ、特に患者を高血糖又は低血糖の状態にするリスクを更に制限できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、実施形態は、患者の血糖値を調節する自動システムであって、
- 血糖センサ、
- インスリン注射デバイス、及び
- 処理・制御ユニット
を備えており、
前記処理・制御ユニットは、
a) 前記血糖センサによる血糖の測定結果に基づき、次の起こり得る低血糖を検出するステップ、
b) ステップa)で検出された低血糖を回避するために補償する血糖不足を表す値BGdebt、及びステップa)で検出された低血糖が始まるまでの残り時間を表す値Thypo を決定するステップ、
c) 患者が、ステップb)で決定された血糖不足BGdebtを内因性グルコース産生によって補償し得るのに必要な継続時間を表す値Tautosugaring を決定するステップ、
d) ステップc)で決定された値Tautosugaring を値Thypo-THと比較するステップ、
e) ステップd)で値Tautosugaring が値Thypo-TH以上であると決定されると、前記インスリン注射デバイスによって患者に注射されるインスリンの流れの遮断を制御する、及び/又は患者が糖を再度摂取する必要があることを患者に示すべく前記自動システムのユーザインターフェースデバイスを介してアラートを開始するステップ
を有する、低血糖を最小限にする方法を実行するように構成されており、THは所定の時間マージンであることを特徴とする自動システムを提供する。
【0006】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップc)で、患者の内因性血糖上昇率を表す値EGE を決定し、その後、前記処理・制御ユニットによって値Tautosugaring を、
Tautosugaring = BGdebt/EGE [数式1]
の式に従って計算する。
【0007】
実施形態によれば、ステップc)で、前記処理・制御ユニットによって値EGE を、患者の血糖履歴及びインスリン注射履歴の分析により計算する。
【0008】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップe)で、残り時間Thypo の終わりでの患者の今後の血糖の推定値predBG△Thypoを決定する。
【0009】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップe)の後、
f) 推定値predBG△Thypo を所定の低血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ、
g) ステップf)で推定値predBG△Thypo が前記低血糖閾値BGlimhypo より小さいと決定されると、前記血糖センサで測定された患者の現在の血糖を表す値BG(t0)を値BGlimhypo+T1と比較するステップ、及び
h) ステップg)で値BG(t0)が値BGlimhypo+T1より小さいと決定されると、前記自動システムのユーザインターフェースデバイスを介してアラートを開始し、患者に糖を再度摂取する必要があることを示すステップ
を実行するように構成されており、T1は所定の血糖値マージンである。
【0010】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップb)で、患者に関して決定された最大血糖低下率nGRClim 、患者に関して推定された平均血糖低下率nGRCmean、及び患者に関して推定された現在の血糖低下率nGRCcurrent に基づき、低血糖が始まるまでの残り時間の3つの推定値Thypolim, Thypomean, Thypocurrentを夫々決定する。
【0011】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップd)で継続時間Tautosugaring を値ThypoMIN-THと比較するように構成されており、ThypoMINは、3つの残り時間Thypolim, Thypomean, Thypocurrentの内の最短時間である。
【0012】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップe)で、残り時間Thypolimの終わり、残り時間Thypomean の終わり及び残り時間Thypocurrentの終わりでの患者の今後の血糖の3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentを夫々計算するように構成されている。
【0013】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップe)の後、
f’) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの各々を所定の低血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ、及び
g’) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の1つが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、患者の現在の血糖を表す値BG(t0)が値BGlimhypo+T1より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案し、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の2つが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、値BG(t0)が値BGlimhypo+T2より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案し、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentが前記低血糖閾値BGlimhypo より小さい場合であって、値BG(t0)が値BGlimhypo+T3より小さい場合のみ、患者に糖の再摂取を提案するステップ
を実行するように構成されており、
T1は所定の血糖値マージンであり、T2は血糖値マージンT1より大きい所定の血糖値マージンであり、T3は血糖値マージンT2より大きい所定の血糖値マージンである。
【0014】
実施形態によれば、前記自動システムは、前記処理・制御ユニットに連結されて患者の身体活動を測定して、患者の身体活動の時間変化を表す信号iap(t)を前記処理・制御ユニットに伝えるためのデバイスを更に備えている。
【0015】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、信号iap(t)を考慮して、ステップa)で次の起こり得る低血糖を検出する、及び/又はステップc)で値Tautosugaring を決定する。
【0016】
実施形態によれば、前記処理・制御ユニットは、ステップc)で、患者に注射するインスリンの量を表す信号と信号iap(t)の減少関数である時定数τIOBap の減少指数関数との乗算によって定められる、患者のインスリンオンボードの量を表す信号IOB(t)を決定し、前記身体活動の強度が上昇するときのインスリンの作用速度の上昇をモデル化する。
【0017】
実施形態によれば、前記時定数τIOBap は、
τIOBap = C/iap(t) [数式2]
として定められ、Cは1~100 の範囲内のパラメータである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0019】
図1】実施形態に係る患者の血糖値を調節するための自動システムの例を概略的に示すブロック図である。
図2】患者の血糖値の今後の傾向を予測するために図1の自動システムで使用され得る生理学的モデルを示す簡略図である。
図3図1の自動システムによって実行され得る自動血糖調節法の例を示す図である。
図4図1の自動システムによって実行される自動血糖調節法の実施形態の例を示す図である。
図5図4の自動血糖調節法の実施形態を更に詳細に示す図である。
図6】患者の内因性グルコース産生を表す値を決定する方法の例を示す図表である。
図7】患者の内因性グルコース産生を表す値を決定する方法の例を示す別の図表である。
図8】実施形態に係る患者の血糖値を調節する自動システムの別の例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態に共通する構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有してもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよい。
【0021】
明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用なステップ及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、記載された調節システムの血糖値測定デバイス及びインスリン注射デバイスは詳述されておらず、記載された実施形態は、既知の血糖値測定デバイス及びインスリン注射デバイスの全て又は大部分と適合する。更に、記載された調節システムの処理・制御ユニットのハードウェア実装は詳述されておらず、このような処理・制御ユニットの形成は、本開示の機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0022】
「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。
【0023】
図1は、患者の血糖値を調節する自動システムの実施形態を概略的に示すブロック図である。
【0024】
図1の自動システムは、患者の血糖値を測定することができるセンサ101 (CG)を備えている。通常動作では、センサ101 は、患者の身体の上に又は身体の内部に、例えば腹部のレベルに常時置かれてもよい。センサ101 は、例えばCGM (持続血糖モニタリング)型センサ、すなわち、患者の血糖値を連続的に又は相対的に高い頻度で(例えば少なくとも20分に一回、好ましくは少なくとも5分に一回)測定することができるセンサである。センサ101 は、例えば皮下血糖センサである。
【0025】
図1の自動システムは、インスリン注射デバイス103 (PMP) 、例えば皮下注射デバイスを更に備えている。インスリン注射デバイス103 は、例えば患者の皮膚の下に埋め込まれた注射針に連結されたインスリン槽を有するインスリンポンプ型の自動注射デバイスであり、ポンプは、決められた量のインスリンを決められた時間に自動的に注射すべく電気的に制御されてもよい。通常動作では、インスリン注射デバイス103 は、患者の身体の内部に又は身体の上に、例えば腹部のレベルに常時置かれてもよい。
【0026】
図1の自動システムは、一方では血糖センサ101 に、例えばワイヤリンク又は無線リンク(無線)によって接続されて、他方ではインスリン注射デバイス103 に、例えばワイヤ又は無線リンクによって接続された処理・制御ユニット105 (CTRL)を更に備えている。処理・制御ユニット105 は、動作中、センサ101 によって測定される患者の血糖値に関するデータを受けて、決められた量のインスリンを決められた時間に患者に注射すべくインスリン注射デバイス103 を電気的に制御することができる。この例では、処理・制御ユニット105 は、患者によって摂取されたグルコースの量の時間変化を表すデータcho(t)を、詳述されていないユーザインターフェースを介して受けることが更にできる。
【0027】
処理・制御ユニット105 は、特にセンサ101 によって測定された血糖値の履歴、インスリン注射デバイス103 によって注射したインスリンの履歴及び患者による炭水化物摂取の履歴を考慮して、患者に注射するインスリンの量を決定することができる。このために、処理・制御ユニット105 は、例えばマイクロプロセッサを有する(詳述されない)デジタル計算回路を有している。処理・制御ユニット105 は、例えば患者によって一日中及び/又は一晩中携帯される携帯機器であり、例えば以下に記載されるタイプの調節法を実行するように構成されたスマートフォン型機器である。
【0028】
処理・制御ユニット105 は、例えば予測制御法とも称される自動MPC タイプの(「モデルベースの予測制御」)調節法を実行するように構成されており、この方法では、投与するインスリンの量を調節する際に、患者の身体によるインスリンの同化作用及び患者の血糖に与えるこの影響について記述する数学的モデル、例えば生理学的モデルから得られた、患者の血糖値の経時的な今後の傾向の予測結果を考慮する。
【0029】
より具体的には、処理・制御ユニット105 は、注射したインスリンの履歴及び摂取された炭水化物の履歴と所定の数学的モデルとに基づき、予測時間又は予測範囲と称される次の時間、例えば1~10時間に亘る患者の血糖値の予測される経時的な傾向を表す曲線を決定するように構成されてもよい。処理・制御ユニット105 は、この曲線を考慮して、次の予測時間中に患者に注射すべきインスリンの量を決定するため、(数学的モデルに基づき推定される血糖値とは対照的に)患者の実際の血糖値は許容限度の範囲内のままであり、特に高血糖症又は低血糖症のリスクを制限する。
【0030】
以下に更に詳細に記載されるこのような動作モードでは、センサ101 によって測定される実際の血糖値データを、数学的モデルの較正のために主に使用する。
【0031】
図2は、患者の血糖値の今後の傾向を予測するために図1の自動システムで使用される数学的モデルMODEL を示す簡略図である。図2では、数学的モデルは、
患者に注射されるインスリンの量の、時間tに亘る変化を表す信号i(t)が与えられる入力e1、
患者によって摂取されるグルコースの量の、時間tに亘る傾向を表す信号cho(t)が与えられる入力e2、及び
患者の血糖値の、時間tに亘る傾向を表す信号G(t)を与える出力s
を有する処理ブロックの形態で示されている。
【0032】
数学的モデルMODEL は、例えば生理学的モデルであり、例えば入力変数i(t)、入力変数cho(t)及び出力変数G(t)に加えて、経時的に変わる患者の生理学的変数に相当する複数の状態変数を有するコンパートメントモデルである。状態変数及び出力変数G(t)の時間変化は、ブロックMODEL の入力p1に与えられるベクトル[PARAM] によって図2に示されている複数のパラメータを有する微分方程式系により規定されている。生理学的モデルの応答は、ブロックMODEL の入力p2に与えられるベクトル[INIT]によって図2に示されている、状態変数に割り当てられる初期状態又は初期値により更に調整される。
【0033】
例として、モデルMODEL は、Roman Hovorka 等著の「Nonlinear model predictive control of glucose concentration in subjects with type 1 diabetes」という題名の論文(Physiol Meas. 2004; 25:905-920)、及びRoman Hovorka 等著の「Partitioning glucose distribution/transport, disposal, and endogenous production during IVGTT」という題名の論文(Am J Physiol Endocrinol Metab 282:E992-E1007, 2002)に記載されているHovorka モデルと称される生理学的モデルである。より一般には、患者の身体によるインスリンの同化作用及び患者の血糖に与えるこの影響について記述するあらゆる他の生理学的モデルを使用してもよく、例えばChiara Dalla Man等著の「A System Model of Oral Glucose Absorption: Validation on Gold Standard Data」という題名の論文(IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING, VOL. 53, No. 12, 2006年12月)に記載されているCobelli のモデルと称されるモデルを使用してもよい。
【0034】
ベクトル[PARAM] のパラメータの内、一部のパラメータは、所与の患者では一定とみなされてもよい。しかしながら、時間依存性パラメータと以下に称される他のパラメータは経時的に変わり得る。微分方程式系のあるパラメータの変化性のため、使用するモデルの予測が確実に適切なままであるために、例えばセンサ101 によって新たな血糖値を取得する毎に、例えば1~20分毎、例えば5分毎に、使用するモデルを定期的に再較正してもよい。モデルパーソナライゼーションと称されるモデルのこの更新は、図1の自動システムによって、つまり、微分方程式系の時間依存性パラメータを患者で物理的に測定して、その後、処理・制御ユニット105 に送信する必要なく自動的に実行される。
【0035】
図3は、図1の自動システムによって実行され得る自動血糖調節法の例を示す図である。
【0036】
この方法は、モデルを再較正又は更新するステップ301 を有する。このステップ301 中、処理・制御ユニット105 は、インスリン注射デバイス103 によって有効に注射されたインスリンに関するデータと継続時間△Tの過去の観察時間、例えば較正ステップ前の1~10時間、センサ101 によって測定された実際の血糖値に関するデータとを考慮して、モデルの時間依存性パラメータを再推定する方法を実行する。より具体的には、較正ステップ中、処理・制御ユニット105 は、(過去の観察時間中に起こり得る炭水化物摂取及びインスリン注射を考慮して)生理学的モデルに基づき過去の観察時間に亘る患者の行動をシミュレートし、生理学的モデルによって推定された血糖値の曲線を、この同一の観察時間中にセンサによって測定された実際の血糖値の曲線と比較する。その後、処理・制御ユニット105 は、モデルによって推定された血糖値の曲線とセンサによって観察時間中に測定された実際の血糖値の曲線との誤差を表す量を最小化する一組の値を、モデルの時間依存性パラメータに関して検索する。例として、処理・制御ユニット105 は、モデルによって推定された血糖値の曲線とセンサによって観察時間中に測定された実際の血糖値の曲線との間の面積を表す指標mを最小化する一組のパラメータを検索する。指標mは、例えば以下の通り定められる、推定されるグルコースと実際のグルコースとの標準偏差とも称される。
【0037】
【数1】
【0038】
尚、tは離散化された時間変数であり、t0-△Tは過去の観察段階の開始時点に相当し、t0は(例えばモデル較正ステップの開始時点に相当する)過去の観察段階の終了時点に相当し、gは、時間 [t0-△T, t0] 中にセンサ101 によって測定される実際の血糖値の時間変化の曲線であり、ghは、時間 [t0-△T, t0] 中にモデルによって推定される血糖値の曲線である。変形例として、平均二乗偏差を計算するために、変数△Tを、過去の観察時間中に行われる測定の回数で置き換えてもよい。このステップ中に使用される最適なパラメータ検索アルゴリズムは本願では詳述されておらず、記載された実施形態は、コスト関数の最小化によってパラメータ最適化の問題を解決すべく、様々な分野で使用される通常のアルゴリズムと適合する。
【0039】
処理・制御ユニット105 は、ステップ301 中、モデルの時間依存性パラメータに加えて、モデルの状態変数の初期状態(時点t0-△Tでの状態)のベクトル[INIT]を定めて、モデルから患者の行動をシミュレートし得ることに注目すべきである。モデルの状態変数の初期状態を定めるために、第1の可能性として、モデル較正の基となる観察時間前の時間 [t0-△T, t0] に、患者は、注射されるインスリンの流量が一定であり、炭水化物の食事摂取無しで静止状態であったと仮定する。この仮定の下では、微分方程式系の導関数を全て開始時点t0-△Tでゼロとみなしてもよい。そのため、微分方程式系の状態変数の開始時点t0-△Tでの値を分析的に計算してもよい。初期設定を改善するために、別の可能性として、前述した仮定と同様に仮定するが、開始時点t0-△Tで推定される血糖値がセンサによって測定される実際の血糖値と等しいという制約を加える。初期設定を更に改善するために、別の可能性として、モデルの状態変数の初期状態をモデルの時間依存性パラメータのように確率変数とみなす。そのため、状態変数の初期状態をモデルの時間依存性パラメータと同様に決定する。すなわち、処理・制御ユニット105 は、モデルによって推定される血糖値の曲線と過去の観察時間中の実際の血糖値の曲線との誤差を表す量を最小化する一組の初期状態の値[INIT]を検索する。
【0040】
図3の方法は、ステップ301 の後、患者に注射したインスリンの履歴及び患者によって摂取された炭水化物の履歴を考慮して、ステップ301 で更新された生理学的モデルに基づき、継続時間Tpred の次の予測時間 [t0, t0+Tpred]に亘る、例えば1~10時間の範囲内での患者の血糖値の時間変化を、処理・制御ユニット105 によって予測するステップ303 を更に有する。
【0041】
図3の方法は、ステップ303 の後、ステップ303 で予測された今後の血糖値の曲線を考慮して、次の予測時間 [t0, t0+Tpred]、患者に注射するインスリンの量を処理・制御ユニット105 によって決定するステップ305 を更に有する。このステップ305 の終わりに、処理・制御ユニット105 は、予測時間 [t0, t0+Tpred]中、決定された量のインスリンを供給すべくインスリン注射デバイス103 をプログラムしてもよい。
【0042】
一連のステップ301 、ステップ303 及びステップ305 を規則的な間隔で、例えばセンサ101 によって血糖値を新たに取得する毎に、例えば1~20分毎、例えば5分毎に繰り返してもよい。
【0043】
変形例として、モデルMODEL は、患者の身体で動作する様々な既知の生理機構を考慮せずに、出力G(t)への入力変数の影響を単に観察することによってトレーニングにより決定される一又は複数の式の形態の非生理学的な数学的モデル、例えばARX タイプの自己回帰モデルであってもよい。
【0044】
上述したシステムでは、患者の安全性を保証するために、インスリン注射デバイスの制御をモデルMODEL の出力データのみに基づき行わない。より具体的には、モデルMODEL は、インスリン注射デバイス103 によって投与されるインスリンの流れを遮断する、及び/又は患者に糖の再摂取を提案する、つまり炭水化物の摂取を提案することにより、切迫した低血糖症を予測して防ぐ機能を有する、ハイポミニマイザ(HM)又は低血糖を最小限にするアルゴリズムとも称される安全性キャッピング(chapeau) アルゴリズムと組み合わせて使用される。
【0045】
実際には、ある状況では、数学的モデルMODEL による予測が十分に信頼できない場合があるため、数学的モデルMODEL のみによる予測に基づくインスリン注射デバイス103 の制御では患者の血糖値を正確に調節できない。
【0046】
更に処理・制御回路105 によって実行される低血糖最小化キャッピングアルゴリズムによって、低血糖症の切迫したリスクを予測して、このようなリスクが検出された場合、数学的モデルMODEL の使用に基づく予測制御動作モードを終了し、低血糖症を回避しようとすべく患者に注射するインスリンの流れを減少させるか遮断し、又は患者に糖の再摂取を提案することも可能である。
【0047】
図4は、図1の自動システムによって実行される自動血糖調節法の実施形態を簡略化して示す図である。
【0048】
図4の方法は、低血糖最小化キャッピングアルゴリズムの実行に対応するステップ401 (HM)と、図2及び図3に関連して上述したような数学的モデルMODEL の使用に基づく予測制御動作の実行に対応するステップ403 (MPC) とを有する。
【0049】
処理・制御回路105 は、ステップ401 中、患者に関して記憶された最後のデータに基づき、近い将来に低血糖のリスクがあるか否かを決定する。
【0050】
このようなリスクが検出された場合、処理・制御回路105 は、インスリン注射デバイス103 により患者に投与されるインスリンの流れを減少させるか又は遮断し、更に予測される低血糖の重大性及び/又は切迫性に応じて、例えば本明細書には詳述されていないユーザインターフェースデバイス(アラーム、ディスプレイスクリーンなど)により患者に糖の再摂取を提案してもよい。その後、低血糖のリスクがなくなるまでステップ401 を繰り返す。
【0051】
ステップ401 中、近い将来に低血糖のリスクが検出されない場合、処理・制御デバイス105 はステップ403 を実行する。例として、ステップ403 は、図3の方法のステップ301 、ステップ303 及びステップ305 の1つの反復を有する。ステップ403 の終わりに、ステップ401 を再度実行する。
【0052】
ステップ401 (場合によっては、その後のステップ403 )を例えば規則的な間隔で、例えばセンサ101 によって血糖値を新たに取得する毎に、例えば1~20分毎、例えば5分毎に繰り返す。
【0053】
図5は、図4の自動血糖調節法の実行モードの例を更に詳細に示す図である。より具体的には、図5は、図4の自動血糖調節法のステップ401 中に処理・制御デバイス105 によって実行される低血糖最小化キャッピングアルゴリズムの実施形態を更に詳細に示す。
【0054】
図5の例では、ステップ401 は、調節システムによるあらゆる他の制御がない場合に患者の糖尿病専門医によって処方されてインスリン注射デバイス103 によって注射されるようにプログラムされた患者に特有の流量に相当する患者の基準ベース流量を除いて、いかなる外乱もない場合、特にいかなる新たな血糖摂取及びいかなる新たなインスリン注射もない場合の無限時間での患者の血糖の予測結果に相当する値predBGinf を、処理・制御ユニット105 によって決定する第1のステップ501 を有する。従って、値predBGinf は、患者によって既に摂取された全ての炭水化物が血糖に同化して変換されたときの患者の血糖値を表す。
【0055】
値predBGinf を、図2の数学的モデルMODEL 又はあらゆる他の適合された予測モデルを使用して決定してもよい。
【0056】
好ましい実施形態では、値predBGinf は、
predBGinf = BG(t0)-(IOBimpact(t0)/CR) [数式4]
及び
IOBimpact(t0) = IOB(t0)-COB(t0)×meal_ratio [数式5]
として定められる。
尚、
- BG(t0)は、例えばセンサ101 によって測定された最後の血糖値に相当する、観察時点t0での患者の血糖値である。
- IOB(t0) は、時点t0での患者のインスリンオンボードの量を表す値であり、つまり、患者の体内で時点t0で依然として活性を有する(つまり、血糖に依然として影響を与えることができる)インスリンの量を表す値である。
- COB(t0) は、時点t0での患者の炭水化物オンボードの量を表す値であり、つまり、時点t0で患者の血糖に依然として影響を与える可能性がある、患者によって摂取された炭水化物の量の一部を表す値である。
- meal_ratioは、患者に関してインスリン単位(IU)で、例えばg/IUで補償する摂取炭水化物の量を表す係数である。IUは国際インスリン単位、つまりヒトインスリンの0.0347mgの生物学的等価量を表す。
- CRは、1リットル当たり1グラム(IU/g/l)で血糖を減少させるのに必要なインスリンの量を表す、患者のインスリン感受性係数を表す。
- IOBimpact(t0) は、患者の現在の血糖値BG(t0)に対して患者の血糖値を減少させる、時点t0でのインスリンオンボードの量IOB(t0) の一部を表す。
【0057】
信号IOB(t)を、例えば注射されるインスリンのデータi(t)と注射されるインスリンの血糖吸収への影響の時間変化を表す作用関数hIOBとから処理・制御ユニット105 によって計算する。例として、信号IOB(t)は、以下の通り定められる。
【0058】
【数2】
【0059】
尚、tは離散化された時間変数であり、Kは1より大きい整数であり、kは0~Kの範囲内の整数である。
【0060】
この例では、患者の基準ベース流量無しでIOB を計算することに注目すべきである。言い換えれば、上記の数式6に基づきIOB を計算するために、注射されるインスリンの対象とする量i(t)は、実際には注射されるインスリンの総量iTOT(t) と患者に処方される基準ベース流量iBASE(t)との差である。従って、患者のインスリンの流れを遮断するとき、この量は負である場合がある。これは、図6に関連して以下に更に詳細に記載されるように、患者のIOB が負の値を通過する場合があることを説明する。
【0061】
信号COB(t)を、例えば摂取された炭水化物のデータcho(t)と摂取された炭水化物の血糖への影響の時間変化を表す作用関数hCOBとから処理・制御ユニット105 によって計算する。例として、信号COB(t)は、以下の通り定められる。
【0062】
【数3】
【0063】
上記の数式6及び数式7では、量Kは、d=K×Tのように、入力変数IOB(t)及び入力変数COB(t)を計算するために、注射されたインスリン又は摂取された炭水化物の履歴を考慮する継続時間dを定めている。Tは離散化された時間変数のサンプリング期間である。例として、継続時間dは1~600 分の範囲内であり、例えば300 分程度である。
【0064】
作用関数hIOB及び作用関数hCOBは、例えば以下の通り定められる。
【0065】
【数4】
【0066】
尚、τIOB は、例えば5~120 分の範囲内の時定数であり、例えば50分程度の時定数であり、τCOB は、例えばτIOB とは異なる時定数であり、例えば5~120 分の範囲内の時定数であり、例えば40分程度の時定数である。
【0067】
値predBGinf が決定されると、処理・制御デバイス105 は、値predBGinf を所定の血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ503 を実行する。この血糖閾値は、この血糖閾値未満では患者が低血糖症を患っているとみなされる閾値に相当し、例えば70 mg/dl程度である。
【0068】
ステップ503 で、値predBGinf が血糖閾値BGlimhypo 以上である場合(N)、近い将来、患者に低血糖の重大なリスクがないとみなす。この場合、ステップ401 は終了し、処理・制御デバイス105 はステップ403 を実行する。言い換えれば、患者の血糖値の自動調節を、図2及び図3に関連して記載された動作モードに従って、数学的モデルMODEL を使用して行う。
【0069】
ステップ503 で、値predBGinf が血糖閾値BGlimhypo より小さい場合(Y)、近い将来、患者が低血糖を発症するリスクがあるとみなす。
【0070】
次に、処理・制御デバイス105 は、このリスクを評価するためのステップ505 及びステップ507 を実行する。より具体的には、ステップ505 中、処理・制御デバイス105 は、低血糖を阻止するために何も行わない場合に低血糖の重大性又は程度がどの位かを推定し、ステップ507 中、処理・制御デバイス105 は、(時点t0から)どれ位の時間で患者が低血糖を発症するかを決定する。
【0071】
ステップ505 中、処理・制御デバイス105 は、以下の通り定められる患者の推定血糖不足に対応する値BGdebt、すなわち無限時間に亘る血糖予測値と血糖閾値との差を決定する。
BGdebt = BGlimhypo-predBGinf [数式10]
【0072】
値BGdebtは、低血糖を避けるために補償する必要がある血糖割合に対応する。
【0073】
ステップ507 中、低血糖の発症前に(時点t0からの)残り時間Thypo を推定することが望ましい。
【0074】
このために、処理・制御ユニット105 は、患者の血糖低下を表す負の係数nGRCを、例えばmg/dl/min で決定する。その後、低血糖までの残り時間を、以下の通り計算する。
Thypo =(BGlimhypo-BG(t0))/nGRC [数式11]
【0075】
例として、係数nGRCを、
- 患者に関して推定される最大血糖低下を表す係数nGRClim、
- 患者に関して推定される平均血糖低下を表す係数nGRCmean、又は
- 患者に関して推定される現在の血糖低下を表す係数nGRCcurrent
から選択してもよい。
【0076】
係数nGRClim 及び係数nGRCmeanを、例えば患者のデータの履歴、例えば複数週間から複数ヶ月間の期間に亘って調節システムによって記録されたデータの履歴に基づき構築された患者特有のモデルから決定する。調節システムの使用の初めに、十分な量のデータ履歴を取得する前、集団モデルとも称される汎用モデル(言い換えれば、患者に特有でないモデル)を使用して、係数nGRClim 及び係数nGRCmeanを決定してもよい。集団モデルを、例えば比較的長い期間、例えば複数週間から複数ヶ月間に亘る、多数の患者、例えば少なくとも20人の患者の血糖履歴、インスリン注射履歴及び炭水化物摂取履歴を含むデータベースから決定する。
【0077】
係数nGRCcurrent を、例えば10~40分程度の過去の観察時間中にセンサ101 によって測定された血糖低下の、例えば線形の外挿法によって決定してもよい。
【0078】
変形例として、上記の3つの係数nGRClim 、係数nGRCmean及び係数nGRCcurrent の内の1つに基づき、低血糖までの残り時間の1つの推定値Thypo を計算する代わりに、処理・制御回路105 は、3つの係数nGRClim 、係数nGRCmean及び係数nGRCcurrent に基づき、低血糖までの残り時間の3つの推定値Thypolim, Thypomean, Thypocurrentを夫々計算するように構成されてもよい。
【0079】
ステップ505 の後のステップ509 中、処理・制御デバイス105 は、患者に注射されるインスリンの流れを遮断する場合に、ステップ505 中に推定された血糖不足BGdebtが内因性グルコース産生によって補償され得る時間を推定する。実際、インスリンの流れを遮断することにより、有機体、特に肝臓がEGP (「内因性グルコース産生」)と称されるように多量の血糖を自然に生成するため、血糖値を上昇させ得ることが立証されている。従って、インスリン注射がない場合、糖尿病患者は、自身の血糖値が実質的に一定に上昇することが分かる。
【0080】
ステップ509 中、処理・制御回路105 は、インスリンの流れを遮断する場合の血糖の内因性産生による血糖不足BGdebtの自然な補償に必要な継続時間を表す値Tautosugaring を決定する。継続時間Tautosugaring を、以下の通り計算する。
Tautosugaring = BGdebt/EGE [数式12]
尚、EGE(Endogenous Glucose Expansion)は患者の内因性血糖上昇率を表す値である。
【0081】
患者の内因性血糖上昇率を測定するために臨床プロトコルが提供されている。しかしながら、これらのプロトコルは制約されており、定期的に繰り返され得ない。
【0082】
実施形態の態様によれば、患者の血糖履歴及びインスリン注射履歴を分析することにより、処理・制御デバイス105 によって患者の値EGE を推定する。このため、患者毎にEGE パラメータを個別に推定して、その値が経時的に変わる場合にこのパラメータを定期的に実行することが可能になる。
【0083】
処理・制御デバイス105 によって実行されるEGE パラメータを推定する方法が、図6及び図7に示されている。
【0084】
図6は、患者のインスリンオンボードの量IOB (縦座標(mIU ))の時間t(横座標(分))に亘る変化を示す図表である。既に示されているように、この例で検討されるIOB は、患者の基準ベース流量無しで計算される(これは正味のIOB とも称される)。これは、図6に示されているように患者に注射されるインスリンの流れが遮断されるか、又は基準ベース流量に対して減少するときに患者のIOB が負の値を通過し得ることを説明する。
【0085】
患者の内因性血糖上昇率パラメータEGE を推定するために、処理・制御デバイス105 は、測定イベント、すなわち患者のIOB が負である時間範囲、すなわち調節システムが患者の血糖値を内因性グルコース産生によって自然に上昇させようとした時間範囲を特定する。図6は、曲線IOB(t)が負である2つの時間範囲[t1, t2]及び[t3, t4]を(t1<t2<t3<t4で)示す。
【0086】
特定された測定イベント毎に、処理・制御デバイス105 は、以下の通り定められる、血糖値を一定に維持すべくインスリンの不足量を表す値Insulin_missedを計算する。
【0087】
【数5】
【0088】
尚、tstart及びtendは、(インスリン活性がIOB の時間微分であることを考慮した)測定イベントの開始時点及び終了時点を夫々表す。
【0089】
不足しているインスリンが推定されると、不足しているインスリンを患者のインスリン基準ベース流量(IU/h)に対して正規化して、等価時間量Teq にしてもよい。そのため、値Teq は、イベントに関連した患者の基準ベース流れを遮断する等価時間を表す。
【0090】
値Teq が決定されると、処理・制御回路105 は、イベントに関連した患者の血糖上昇量を測定し、血糖上昇量から患者の内因性血糖増加量を推定する。
【0091】
図7は、所与の患者について、基準ベース流れを遮断する等価時間Teq (横座標(分))に応じた、イベント中の患者の自然な血糖上昇量△G(縦座標(mg/dl ))の変化を示す図である。図7は、より具体的には一群のポイント701 を有し、各ポイント701 は、患者の血糖値データ及びIOB 履歴内でデバイス105 によって特定された測定イベントに対応し、このイベントに関してデバイス105 によって決定された一対の値Teq ,△Gを示す。
【0092】
デバイス105 は、この一群の点に基づき、インスリンの基準ベース流れを遮断する等価時間Teq に応じて患者の内因性血糖上昇量△Gの変化を表す直線703 を、線形回帰によって決定する。
【0093】
処理・制御ユニット105 によって患者の内因性血糖上昇率パラメータEGE に割り当てられる値は、図7の例では27mg/dl/h 程度の直線703 の傾きに対応する。
【0094】
パラメータEGE の値を、例えば測定イベントが新たに発生する毎(すなわち、患者のIOB が負の値に推移する毎)にデバイス105 によって再計算してもよい。
【0095】
変形例として、パラメータEGE の値を直線703 の傾きと等しい値として選択するのではなく、デバイス105 は、特定された様々な測定イベント中に患者に関して測定された最小の内因性血糖上昇率と等しい値をパラメータEGE に割り当ててもよい。
【0096】
システムの使用の初めに、デバイス105 によってかなりの数の測定イベントが検出される前、デバイス105 は、パラメータEGE に所定の固定値、例えば上記の方法に従うが多数の患者のIOB 履歴及び血糖履歴に基づき決定された値を割り当ててもよい。
【0097】
継続時間Tautosugaring が決定されると、デバイス105 は、ステップ509 で決定された継続時間Tautosugaring をステップ507 で決定された継続時間Thypo と比較するステップ511 を実行する。より具体的には、この例では、デバイス105 は、値Tautosugaring を値Thypo-THと比較する。尚、THは、所定の固定時間マージンであり、例えば5~30分の範囲内であり、例えば10~15分程度である。
【0098】
ステップ511 で、値Tautosugaring が値Thypo-THより小さい場合(Y)、患者に切迫した低血糖の重大なリスクがなく、モデルMODEL に基づき患者の血糖値を調節し続けることにより、ステップ503 で予測された低血糖を依然として回避することができるとみなす。言い換えれば、患者のインスリンの流れを遮断することにより患者の血糖不足が依然として補償され得るので、ステップ503 で検出された低血糖を短期的な脅威としてみなさない。この場合、ステップ401 は終了し、処理・制御デバイス105 はステップ403 を実行する。言い換えれば、患者の血糖値の自動調節を、図2及び図3に関連して記載された動作モードに従って、数学的モデルMODEL を使用して行う。
【0099】
ステップ511 で、値Tautosugaring が値Thypo-TH以上である場合(N)、近い将来、患者が低血糖を発症するリスクがあるとみなす。
【0100】
ステップ513 中、デバイス105 は、患者へのインスリン注射の流れが完全に遮断されていることを考慮して、患者の今後の血糖値を新たに予測する。より具体的には、デバイス105 は、時点t0+Thypo での患者の今後の血糖を表す値predBG△Thypo を計算する。
【0101】
値predBG△Thypo を、図2のモデルMODEL 又はあらゆる他の適合された予測モデルを使用して決定してもよい。
【0102】
好ましい実施形態では、値predBG△Thypo は、以下の通り定められる。
predBG△Thypo=BG(t0)-(InsulinConsumed/CR)+
(CHOconsumed/SugaringRatio)+EGE×Thypo
[数式14]
【0103】
【数6】
【0104】
尚、SugaringRatio は、摂取した炭水化物が血糖上昇に与える影響をg/g/l (血糖値g/l 当たりのCHO グラム)で表す係数である。
【0105】
この予測により、ステップ401 の新たな反復毎に低血糖が補償されているか否かを確認することができる。
【0106】
値predBG△Thypo が決定されると、処理・制御デバイス105 は、値predBG△Thypo を低血糖閾値BGlimhypo と比較するステップ515 を実行する。
【0107】
ステップ515 で、デバイス105 は、患者の現在の血糖値BG(t0)が低血糖閾値BGlimhypo から十分離れているか否かを更に決定する。より具体的には、ステップ515 で、デバイス105 は値BG(t0)を値BGlimhypo+T1と比較する。尚、T1は所定の血糖値マージンであり、例えば5~20 mg/dlの範囲内である。
【0108】
ステップ515 で、値predBG△Thypo が閾値BGlimhypo 以上である場合、又は値predBG△Thypo が閾値BGlimhypo より小さいが、値BG(t0)が値BGlimhypo+T1以上である場合(N)、低血糖を回避するにはインスリンの流れの遮断が依然として十分であり得るとみなす。
【0109】
この場合、ステップ517 (インスリン遮断)中、デバイス105 は(患者の基準ベース流量を含めて)患者に注射されるインスリンの流れの完全な遮断を制御する。その後、ステップ401 を、患者に糖の再摂取を提案することなく、例えば1~20分の範囲内、例えば5分程度の間隔の後、ステップ501 から繰り返す。
【0110】
ステップ515 で値predBG△Thypo が閾値BGlimhypo より小さく、値BG(t0)が値BGlimhypo+T1より小さい場合(Y)、低血糖が切迫しており、内因性グルコース産生による自然な血糖上昇が低血糖を回避するには十分でないとみなす。
【0111】
この場合、ステップ519 (インスリン遮断+糖摂取)中、デバイス105 は(患者の基準ベース流量を含めて)患者に注射されるインスリンの流れの完全な遮断を制御し、(図面には詳細に示されていない)ユーザインターフェースデバイス、例えばディスプレイスクリーン、アラームなどを更に制御して、低血糖を回避するために炭水化物を摂取する必要があることを患者に示す。その後、ステップ401 を、例えば1~20分の範囲内、例えば5分程度の間隔の後、ステップ501 から繰り返す。
【0112】
ステップ507 で、回路105 が、3つの係数nGRClim 、係数nGRCmean及び係数nGRCcurrent に基づき、低血糖までの残りの時間の3つの推定値Thypolim, Thypomean, Thypocurrentを夫々計算する場合、有利には、以下を行ってもよい。
- ステップ511 で、継続時間Tautosugaring を値ThypoMIN-THと比較する。尚、ThypoMINは3つの継続時間Thypolim ,Thypomean, Thypocurrentの内の最短時間である。
- ステップ513 で、時点t0+Thypolim、時点t0+Thypomean及び時点t0+Thypocurrentでの患者の今後の血糖の3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentを夫々計算する。
- ステップ515 で、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの各々を閾値BGlimhypo と比較し、3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentが閾値BGlimhypo 以上である場合のみ、又は
a) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の1つが閾値BGlimhypo より小さく、値BG(t0)が値BGlimhypo+T1以上である場合、
b) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentの内の2つが閾値BGlimhypo より小さく、値BG(t0)が値BGlimhypo+T2(尚、T2は血糖値マージンT1より大きい血糖値マージンである)以上である場合、若しくは
c) 3つの推定値predBG△Thypolim, predBG△Thypomean, predBG△Thypocurrentが閾値BGlimhypo より小さく、値BG(t0)が値BGlimhypo+T3(尚、T3は血糖値マージンT2より大きい血糖値マージンである)以上である場合、
ステップ517 (糖の再摂取を提示することなくインスリンを遮断する)に進む。
【0113】
逆の場合(Y)、インスリン遮断に加えて患者に糖の再摂取を提案する(ステップ519 )。
【0114】
図8は、実施形態に係る患者の血糖値を調節するための自動システムの別の例を概略的に示すブロック図である。図8の自動システムは、実質的に同様に協働すべく配置された、図1の自動システムと同一の要素を備えている。
【0115】
図8の例では、自動システムは、患者の身体活動を測定するためのデバイス107 を更に備えている。デバイス107 は、例えばワイヤリンク又は無線リンク(無線)によって処理・制御ユニット105 に連結されており、患者の身体活動の時間tに亘る変化を表す信号iap(t)を処理・制御ユニット105 に伝える。デバイス107 は、例えば一日中及び/又は一晩中患者によって携帯される携帯機器である。
【0116】
例として、デバイス107 は、(詳述されていない)単純なユーザインターフェースであり、ユーザインターフェースを介して患者は自身の身体活動を申告する。例として、信号iap(t)は、デバイス107 を介して患者が申告した身体的強度のレベルに対応する。デバイス107 は、例えばユーザが自身の現在の身体活動の強度レベルを0~Nの段階で入力することを可能にするキーボードを有している。尚、Nは正の整数であり、例えば3であり、値0は、ゼロ又はごく僅かとみなされる身体活動に対応し、値Nは、患者の最大の身体活動強度レベルに対応する。
【0117】
変形例として、デバイス107 は、患者の身体活動を表す量を測定できる一又は複数のセンサを有している。例として、デバイス107 は、(図8に詳細に示されていない)少なくとも1つのモーションセンサ、例えば加速度計を有している。デバイス107 は、(図8に詳細に示されていない)患者の心拍数のセンサを更に有してもよい。この場合、信号iap(t)は、例えばM. Garnotel 等著の「Prior automatic posture and activity identification improves physical activity energy expenditure prediction from hip-worn triaxial accelerometry」(Journal of Applied Physiology (1985), 2017年11月30日)という題名の論文、又はH. Romero-Ugalde等著の「An original piecewise model for computing energy expenditure from accelerometer and heart rate signals」(Physiological measurement, 2017年7月28日;38(8):1599-1615)という題名の論文に記載されているような、例えばデバイス107 の一又は複数のセンサの出力データから計算される患者のエネルギー消費量を表す信号である。
【0118】
変形例として、信号iap(t)は、デバイス107 の一又は複数のセンサによって測定される信号と、デバイス107 のユーザインターフェースを介して患者によって申告される身体活動強度の信号とを組み合わせた信号であってもよい。
【0119】
図8の自動システムの動作は、図8の自動システムでは処理・制御デバイス105 が自動血糖調節法のステップ401 中に信号iap(t)を考慮する点を除いて、前述した動作と同様である。
【0120】
例として、無限時間で血糖値を予測するステップ501 で、患者の血糖低下率を表す一又は複数の係数nGRC, nGRClim, nGRCmean, nGRCcurrentを、患者の身体活動信号iap(t)に応じて適合させる。特に、使用される血糖低下率の値を、身体活動信号iap(t0) が高いほど高くなるように選択する。
【0121】
更に又は或いは、身体活動がある場合のインスリン作用速度の上昇をモデル化するために減少する新たなインスリン作用時定数を使用してもよい。例として、上記の数式8の時定数τIOB を時定数τIOBap = f(iap(t))と置き換えてもよい。尚、fは、身体活動の強度iap(t)が上昇するときのインスリン作用速度の上昇(ひいてはインスリン作用時定数の減少)をモデル化する減少関数である。
【0122】
例として、関数fは、以下の通り定められる。
τIOBap = f(iap(t)) =C/iap(t) [数式17]
尚、Cは1~100 の範囲内のパラメータであり、例えば実質的に30に相当する。
【0123】
計算は、信号IOB(t)を定めるために上記の数式[数式6]及び[数式8]の例に限定されないことに注目すべきである。より一般的に、信号IOB(t)を定めるために使用される式が何であれ、(e^(-t/τIOBap)の形態で)定数τIOBap の減少指数と患者に注射されるインスリンを表す信号との乗算を含む計算モードを使用してもよい。
【0124】
様々な実施形態及び変形例が述べられている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴を組み合わせてもよいことを理解し、他の変形例が当業者に想起される。特に、記載された実施形態は、本明細書に記載されている数値例に限定されない。
【0125】
上述した例では、予測モデルMODEL の使用に基づきステップ403 で実行される自動血糖調節法を、あらゆる他の自動血糖調節法、例えば決定行列タイプのアルゴリズムを使用して、センサ101 によって測定される現在の血糖値又は過去の一定期間に亘る血糖値の変化の速度(若しくは傾き)のような観察される様々なパラメータに応じて患者に投与するインスリンの量を決定する方法と置き換えてもよいことに更に注目すべきである。
【0126】
更に、図5の方法では、ステップ519 で、患者に糖の再摂取を提案して患者に注射するインスリンの流れを遮断する代わりに、変形例として、患者に注射するインスリンの流れを遮断することなく(ユーザインターフェースデバイスを介して)患者に糖の再摂取を提案してもよい。確かに実際には、患者の血糖値に対する糖の再摂取の効果は、患者の内因性血糖上昇より遥かに速いので、糖の再摂取の場合、患者のインスリンの流れを遮断することなく低血糖を回避できる。
【0127】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第18/73812 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
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図5
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図7
図8
【国際調査報告】