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特表2022-514800臓器と組織のエクスビボ保存のための酸素化培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-15
(54)【発明の名称】臓器と組織のエクスビボ保存のための酸素化培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220207BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220207BHJP
   A01N 1/02 20060101ALI20220207BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20220207BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220207BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
C12N5/071
A61L27/36 400
A61L27/36 300
A01N1/02
C12N1/04
C12M3/00 A
C12M1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021545259
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 US2019055797
(87)【国際公開番号】W WO2020077184
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/745,020
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521152057
【氏名又は名称】ヴィルテック バイオ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ウィリアム,リチャード
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C081
4H011
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB01
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG10
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BB25
4B065BD05
4B065BD12
4B065CA44
4C081AB11
4C081BA13
4C081BB08
4C081CD34
4H011BB19
4H011BB20
4H011CA01
4H011CB05
4H011CC03
4H011CD02
4H011DH11
(57)【要約】
【解決手段】酸素化成分と酸素化培地完成品のほか、酸素化成分と酸素化培地完成品を作成する方法を提供する。前記酸素化成分は、ヘモグロビン調製物および赤血球調製物を含む。前記酸素化成分は、ヘモグロビン重量約10%~約99%のヘモグロビン調製物中を含んでおり、ヘモグロビン重量の残余の酸素化成分は赤血球調製物を含んでいる。前記酸素化培地完成品は、酸素化成分と、希釈液や賦形剤などの1つ以上の他の成分とを含んでいる。前記酸素化培地完成品は、臓器または組織をエクスビボで保存するために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分であって、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、酸素化成分。
【請求項2】
前記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約20%~約90%のヘモグロビン調製物を含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項3】
前記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約30%~約80%のヘモグロビン調製物を含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項4】
前記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約40%~約70%のヘモグロビン調製物を含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項5】
前記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約50%~約60%のヘモグロビン調製物を含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項6】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項7】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項8】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項9】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項10】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項11】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含んでいる、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項12】
前記酸素化成分が、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項13】
前記酸素化成分が、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、請求項1に記載の酸素化成分。
【請求項14】
前記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビンを含むが、HBOCを実質的に含まない、請求項1から13のいずれか1つに記載の酸素化成分。
【請求項15】
前記ヘモグロビン調製物はHBOCを含むが、非修飾ヘモグロビンを実質的に含まない、請求項1から13のいずれか1つに記載の酸素化成分。
【請求項16】
前記ヘモグロビン調製物は、ヘモグロビンとHBOCとの混合物を含む、請求項1から13のいずれか1つに記載の酸素化成分。
【請求項17】
前記水性ヘモグロビン希釈剤が乳酸リンゲル溶液またはその修飾形態である、請求項1から16記載のいずれか1つに記載の酸素化成分。
【請求項18】
前記水性赤血球希釈剤が乳酸リンゲル溶液またはその修飾形態である、請求項1から16記載のいずれか1つに記載の酸素化成分。
【請求項19】
酸素化培地完成品であって、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%である請求項1から18のいずれか1つに記載の酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む残余の培地と
を含む、酸素化培地完成品。
【請求項20】
酸素化培地完成品であって、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分であって、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む残余の培地と
を含む、酸素化培地完成品。
【請求項21】
前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約5%~約35%の酸素化成分を含む、請求項20に記載の酸素化培地完成品。
【請求項22】
前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約10%~約30%の酸素化成分を含む、請求項20に記載の酸素化培地完成品。
【請求項23】
前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約15%~約25%の酸素化成分を含んでおり、該酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、請求項20に記載の酸素化培地完成品。
【請求項24】
前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約20%の酸素化成分を含んでおり、該酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、請求項20に記載の酸素化培地完成品。
【請求項25】
エクスビボで使用するために酸素化培地完成品を調製する方法であって、該方法は、
(i)ヘモグロビン調製物を提供する工程であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、工程と、
(ii)赤血球調製物を提供する工程であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、工程と、
(iii)前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように酸素化成分を形成するために、前記ヘモグロビン調製物と前記赤血球調製物とを混合する工程と、
(iv)賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1つの製剤成分、および場合により酸素化培地完成品を製剤化するのに適した他の成分を用いて前記酸素化成分を製剤化する工程と
を含む、方法。
【請求項26】
前記酸素化培地完成品が、ヘモグロビン重量少なくとも約1%の酸素化成分を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酸素化培地完成品が、ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ヘモグロビン調製物の量は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約20%~約90%の量のヘモグロビン調製物を含むように混合される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ヘモグロビン調製物の量は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約30%~約80%のヘモグロビン調製物を含むように混合される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記ヘモグロビン調製物の量は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約70%のヘモグロビン調製物を含むように混合される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記ヘモグロビン調製物の量は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%~約60%のヘモグロビン調製物を含むように混合される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記赤血球調製物が、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含んでいる、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記酸素化成分が、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成され、
前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約15%~約25%の酸素化成分を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分の使用であって、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、使用。
【請求項40】
組織または臓器のエクスビボ保存のための酸素化培地完成品の使用であって、該酸素化培地完成品は、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分であって、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む残余の培地と
を含む、使用。
【請求項41】
前記エクスビボ保存が静的エクスビボ保存である、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記エクスビボ保存が動的エクスビボ保存である、請求項40に記載の使用。
【請求項43】
前記エクスビボ保存が動的エクスビボ保存であり、該動的エクスビボ保存は、前記酸素化培地完成品を濾過する濾過装置を備えるように構成された機械灌流システムの使用を含む、請求項40に記載の使用。
【請求項44】
前記エクスビボ保存が動的エクスビボ保存であり、該動的エクスビボ保存は、前記酸素化培地完成品、賦形剤、または希釈剤に対する連続または半連続供給アセンブリと、前記酸素化培地完成品を連続濾過する濾過装置とを備えるように構成された機械灌流システムの使用を含む、請求項40に記載の使用。
【請求項45】
前記濾過装置が、接線方向流れに基づく濾過装置である、請求項43または44に記載の使用。
【請求項46】
前記臓器が、被移植者へ移植される臓器である、請求項40から45のいずれか1つに記載の使用。
【請求項47】
前記臓器は、肺、心臓、肝臓、または腎臓である、請求項40から45のいずれか1つに記載の使用。
【請求項48】
前記臓器はヒト臓器である、請求項40から45のいずれか1つに記載の使用。
【請求項49】
前記組織は移植片受容者に移植される組織である、請求項40に記載の使用。
【請求項50】
前記組織は組織工学のための組織である、請求項40に記載の使用。
【請求項51】
臓器保存システムであって、該臓器保存システムは、臓器を通じて灌流流体を灌流させるよう動作可能な迂回灌流流体システムと、臓器を支持する流体リザーバであって、灌流流体または賦形剤を前記流体リザーバに供給する連続または半連続供給アセンブリと流体連通状態にあり、前記灌流流体を前記流体リザーバから除去して消費済み成分を前記灌流流体から分離かつ除去するときに前記灌流流体の濾過を可能にする分離装置とさらに流体連通状態にある、流体リザーバと、前記迂回灌流流体システムを通じて前記灌流流体を循環させるポンプとを備えている、臓器保存システム。
【請求項52】
前記灌流流体がヘモグロビン系灌流流体である、請求項51に記載の臓器保存システム。
【請求項53】
前記灌流流体が赤血球系灌流流体である、請求項51に記載の臓器保存システム。
【請求項54】
前記灌流流体が、請求項19~24のいずれか1つに記載の酸素化製剤完成品である、請求項51に記載の臓器保存システム。
【請求項55】
請求項1から54に記載される特徴のうち1つ以上の任意の組み合わせを含む、組成物、システム、および/または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は概して、酸素化培地、具体的にはエクスビボで組織や臓器を保存するための酸素化培地、および該酸素化培地の作成と使用の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の段落は、本発明の開示に対する背景技術として提供される。しかしこれらの段落は、その中で論じられているものが先行技術、または当業者が知り得る範囲の一部であることを認めるものではない。
【0003】
多くの場合、医療行為では、生きた被験者の体外で臓器または組織を保存することが望ましい。ゆえに例えば、腎臓、肺、または心臓などの重要臓器は、移植ドナーから除去され、生きた被験者から分離された状態、一般に「エクスビボ」と呼ばれる状態で一時的に維持されてから、被移植者へと臨床移植することができる。エクスビボでの生存を維持するために、臓器または組織を十分に酸素化された状態に維持するのが重要であることがよく知られている。適切な酸素供給が行われないと、細胞代謝は停止し、細胞損傷が生じ、最終的には細胞や組織が死に至る。
【0004】
したがって、臓器および組織のエクスビボ保存に適合する酸素供給用の様々な技法が開発されている。これにより例えば、臓器または組織は、液体培地を含む保持容器の中で保存可能となる。培地の酸素化は、液体培地に酸素をある程度連続的に供給するよう構成された循環システム、すなわちポンプを備えさせることで達成することができる。このように臓器または組織の保存を達成するよう設計されたシステムは、機械灌流システムとして知られている。
【0005】
全体として臓器および組織が安全にエクスビボで保存可能な時間を延ばすことに労力を向けてきたことで、様々な酸素運搬培地が発達してきた。このため、例えば血液、その酸素運搬成分である赤血球、ヘモグロビン、ならびに化学修飾されたヘモグロビン誘導体は、ヘモグロビンベースの酸素運搬体すなわちHBOCとしても知られており、臓器および組織のエクスビボ保存に使用されている。しかし、従来技術に公知である血液ベースの酸素運搬体の使用に伴い重大な欠点が存在する。例えば、全血を使用するには、生理学的温度すなわち37℃、またはそれに近い温度での操作が必要であり、十分な量の献血血液に対する利用可能性に左右される。さらに、赤血球生存、赤血球溶解、凝固、および生物汚染物質(特に、血液媒介性疾患、例えばB型肝炎やヒト免疫不全ウイルス(HIV)を伝達する汚染物質)の存在はすべて、従来の血液ベースの酸素運搬体の有用性、具体的には、前記培地の使用時に臓器および組織がエクスビボで保存可能な時間を制限してしまう。
【0006】
ある特定量のヘモグロビンが赤血球から単離されたときに、メトヘモグロビンとして知られるヘモグロビン変異体に変換されるという所見から、酸素運搬体としてヘモグロビンやHBOCの使用に伴う大きな問題が生じる。メトヘモグロビンでは、タンパク質のヘム基中の鉄分は酸素に対する分子結合部位として機能し、鉄(Fe3+)状態で存在するが、鉄(Fe2+)状態では存在しない。メトヘモグロビンは酸素に結合できないため、酸素運搬体として機能することができない。さらにメトヘモグロビンは、タンパク質からのヘム基の解離による変性、およびタンパク質のアンフォールディング変性の影響を受けやすいことが知られている。アンフォールドタンパク質はヘモグロビン調製物に悪影響を及ぼす可能性があり、これには沈殿物の形成が挙げられる。
【0007】
当技術分野で公知の酸素運搬培地を提供する別の手法は、酸素を可溶化可能なパーフルオロカーボン系合成分子の使用を含む。合成炭素-フッ素分子は化学的に不活性であるとともに製造が容易であるが、その酸素溶解度はヘモグロビンよりも低い。パーフルオロカーボン調製物は、事実上水との混和性がないため乳化が必要となる。この乳化によりパーフルオロカーボン調製物は不安定になり、保存が困難になる。
【0008】
別の労力として、組織および臓器を非生理学的温度、例えば8℃未満で保存することで臓器または組織の細胞代謝を止めることに焦点が当てられてきたが、このような技法では細胞損傷が生じてしまい、低温で長期間保存すると臓器または組織は死滅してしまう。さらにこのような温度では、診断または研究、および開発目的のために得た組織または臓器に関するデータは、生理学的に関連性がない場合がある。
【0009】
臓器および組織をエクスビボで保存するまた別の技法は、高気圧酸素または部分的降圧酸素(high partial oxygen pressures)への臓器または組織の曝露を含む。しかし、このような技法の使用は概して、より大きな臓器または組織が使用される、具体的に臓器または組織の内部にある細胞が酸素枯渇を受けるときに生じる課題、または、非生理学的温度での保存に関連する課題を解決するものではない。
【0010】
ゆえに、酸素運搬培地の使用を含む臓器および組織のエクスビボ保存の技法は当技術分野で公知のものであるが、公知の酸素運搬培地に伴う多くの欠点が依然として存在することが明白である。そのため当技術分野では、酸素運搬培地および該酸素運搬培地を作成する方法の改善が必要とされており、具体的には、組織および臓器をエクスビボで保存するための酸素運搬培地の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
以下の段落は、読者に後述のより詳細な説明を紹介することを意図したものであり、本発明の開示において請求される主題を定める、または制限することを意図したものではない。
【0012】
1つの広範な態様では、本発明の開示は、臓器および組織のエクスビボ保存用の酸素化培地に関連する。したがって、一態様では、本明細書の教示に従い本発明の開示は、少なくとも一実施形態において、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分を提供するものであり、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、ヘモグロビン重量約20%~約90%のヘモグロビン調製物を含む場合がある。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、ヘモグロビン重量約30%~約80%のヘモグロビン調製物を含む場合がある。
【0015】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、ヘモグロビン重量約40%~約70%のヘモグロビン調製物を含む場合がある。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、ヘモグロビン重量約50%~約60%のヘモグロビン調製物を含む場合がある。
【0017】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含む場合がある。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含む場合がある。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含む場合がある。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、前記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含む場合がある。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、前記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含む場合がある。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、前記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含む場合がある。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物と
を含んでおり、ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビンを含む場合があるが、HBOCを実質的に含まない。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物はHBOCを含む場合があるが、非修飾ヘモグロビンを実質的に含まない。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、前記ヘモグロビン調製物はヘモグロビンとHBOCとの混合物を含む場合がある。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、前記水性ヘモグロビン希釈剤は、乳酸リンゲル液、またはその修飾形態であってもよい。
【0029】
少なくとも1つの実施形態では、前記水性赤血球希釈剤は、乳酸リンゲル液、またはその修飾形態であってもよい。
【0030】
少なくとも1つのさらなる態様では、本発明の開示は、少なくとも1つの実施形態において、酸素化培地完成品を提供するものであり、該酸素化培地完成品は、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%の本発明の開示に係る酸素化成分と
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む残余の培地と
を含む。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化培地完成品は、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分であって、該酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含んでおり、
(i)前記第1の調製物はヘモグロビン調製物であり、該ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、
(ii)前記第2の調製物は赤血球調製物であり、該赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、前記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
前記混合物は、前記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む残余の培地と
を含む。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、前記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約5%~約35%の酸素化成分を含む場合がある。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約10%~ヘモグロビン重量約30%の酸素化成分を含む場合がある。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約15%~ヘモグロビン重量約25%の酸素化成分を含む場合があり、酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物とを含んでおり、
ここで、
上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約20%の酸素化成分を含む場合があり、酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物とを含んでおり、
ここで、
上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0036】
少なくとも1つのさらなる態様では、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、エクスビボで使用するための酸素化培地完成品を調製する方法をさらに提供し、上記方法は、
(i)ヘモグロビン調製物を提供する工程であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、工程と、
(ii)赤血球調製物を提供する工程であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、工程と、
(iii)酸素化成分を形成するために、上記ヘモグロビン調製物と上記赤血球調製物とを混合する工程であって、そうすることで上記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むようになる、工程と、
(iv)賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1つの製剤成分、および場合により酸素化培地完成品を製剤化するのに適した他の成分を用いて上記酸素化成分を製剤化する工程とを含む。
【0037】
少なくとも1つの態様において、酸素化培地完成品は、少なくともヘモグロビン重量約1%の酸素化成分を含むことができる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分を含むことができる。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物の量は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約20%~約90%の量のヘモグロビン調製物を含むように混合され得る。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物の量は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約30%~約80%の量のヘモグロビン調製物を含むように混合され得る。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物の量は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約70%の量のヘモグロビン調製物を含むように混合され得る。
【0042】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物の量は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約50%~約60%の量のヘモグロビン調製物を含むように混合され得る。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含むことができる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含むことができる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態では、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含むことができる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含むことができる。
【0047】
少なくとも1つの実施形態では、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含むことができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含むことができる。
【0049】
少なくとも1つの実施形態では、上記酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでいる、ヘモグロビン調製物と、
(ii)赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでいる、赤血球調製物とを含んでおり、
ここで、
上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量に等しい量の赤血球調製物を含むように形成され、および、
(iii)上記酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約15%~ヘモグロビン重量約25%の酸素化成分を含む。
【0050】
少なくとも1つのさらなる態様では、本開示は、少なくとも1つの態様において、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分の使用をさらに提供し、この酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、ここで、
(i)上記第1の調製物はヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、および、
(ii)上記第2の調製物は赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0051】
少なくとも1つのさらなる態様では、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、組織または臓器のエクスビボ保存のための酸素化培地完成品の使用をさらに提供し、上記酸素化培地完成品は、
(a)ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分であって、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含んでおり、
ここで、
(i)上記第1の調製物はヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり、および、
(ii)上記第2の調製物は赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり、
ここで、
上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される、ヘモグロビン重量約1%~約39%の酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分とを含む、残余の培地とを含む。
【0052】
少なくとも1つの実施形態では、エクスビボ保存は静的エクスビボ保存であり得る。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、エクスビボ保存は動的エクスビボ保存であり得る。
【0054】
少なくとも1つの実施形態では、 エクスビボ保存は、酸素化培地完成品を濾過するための濾過装置を備えるように構成された機械灌流システムの使用を含む動的エクスビボ保存であり得る。
【0055】
少なくとも1つの実施形態では、上記エクスビボ保存は、動的エクスビボ保存であり得、上記動的エクスビボ保存は、上記酸素化培地完成品、または賦形剤、または希釈剤に対する連続または半連続供給アセンブリと、上記酸素化培地完成品を連続濾過する濾過装置とを備えるように構成された機械灌流システムの使用を含む。
【0056】
少なくとも1つの実施形態では、濾過装置は、接線方向流れに基づく濾過装置であり得る。
【0057】
少なくとも1つの実施形態では、臓器は被移植者へ移植される臓器であり得る。
【0058】
少なくとも1つの実施形態では、臓器は肺、心臓、肝臓、または腎臓であり得る。
【0059】
少なくとも1つの実施形態では、臓器はヒト臓器であり得る。
【0060】
少なくとも1つの実施形態では、組織は移植片受容者に移植される組織であり得る。
【0061】
少なくとも1つの実施形態では、組織は組織工学のための組織であり得る。
【0062】
その別の態様に従って、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、臓器保存システムを提供し、上記臓器保存システムは、臓器を通じて灌流流体を灌流させるようも動作可能な迂回灌流流体システムと、臓器を支持する流体リザーバであって、灌流流体または賦形剤を上記流体リザーバに供給する連続または半連続供給アセンブリと流体連通状態にあり、上記灌流流体を上記流体リザーバから除去して消費済み成分を上記灌流流体から分離かつ除去するときに上記灌流流体の濾過を可能にする分離装置とさらに流体連通状態にある、流体リザーバと、上記迂回灌流流体システムを通じて上記灌流流体を循環させるポンプとを備える。
【0063】
少なくとも1つの実施形態では、臓器保存システムは、ヘモグロビンベースの灌流流体による灌流に使用することができる。
【0064】
少なくとも1つの実施形態では、臓器保存システムは、赤血球ベースの灌流流体による灌流に使用することができる。
【0065】
少なくとも1つの実施形態では、臓器保存システムは、本開示の酸素化培地完成品による灌流に使用することができる。
【0066】
他の特徴と利点または本開示は以下の詳細な記載から明らかになる。しかしながら、本開示の精神および範囲内の様々な変更および修正が、詳細な説明から当業者に明白になるため、この詳細な説明は、本開示の具体的な実施形態を示唆しながらも、例示目的のためにのみ与えられることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、様々なプロセス、方法、および組成物を説明して、主張される主題の実施形態の例を提供する。以下に記載される実施形態は、主張される主題を限定するものではなく、主張される主題は、以下に記載されるものとは異なるプロセス、方法、または組成物を包含することができる。主張される主題は、以下に記載されるプロセス、方法、または組成物の特徴のすべてを有する任意のプロセス、方法、または組成物に限定されず、あるいは以下に記載される複数のプロセス、方法、または組成物に共通する特徴に限定されない。以下に記載されるプロセス、方法、または組成物が、主張される主題の実施形態ではない可能性がある。本文書で主張されていない、以下に記載されているプロセス、方法、または組成物で開示されている主題は、例えば、継続特許出願など、別の保護手段の主題である可能性があり、出願人、発明者、または所有者は、本文書での開示により、いかなるそのような主題を放棄、否認、または公衆に捧げることを意図していない。
【0068】
本明細書や請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを明記していない限りは、複数の参照物を含む。本明細書全体にわたって、特段の定めのない限り、「含む(comprise)、(comprises)、および(comprising)」は、排他的ではなく包括的に用いられ、結果として、記載される整数または整数のグループは1つ以上の他の記載されていない整数または整数のグループを含むことがある。「または(or)」という用語は、例えば、「いずれか(either)」によって修飾されない限り、包括的である。「および/または」という用語は、包括的な「or」を表すように意図される。すなわち、「Xおよび/またはY」は、例えば、XまたはY、あるいは、その両方を意味するように意図される。さらなる例として、X、Y、および/またはZは、X、Y、またはZ、あるいはこれらの任意の組み合わせを意味するように意図される。
【0069】
分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性についての範囲が本明細書で使用されるとき、範囲のすべての組み合わせと部分的な組み合わせ(sub-combinations)、およびその特異的な実施形態が含まれるように意図される。操作上の例の場合以外に、あるいは、別段の定めのない限り、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表現するすべての数は、「約(about)」との用語によりすべての例で修正されるものとして理解されたい。数または数の範囲について言及するときの「約」という用語は、言及される数または数の範囲が、実験的な可変性の範囲内の(または統計的実験誤差内の)概算であることを意味し、ゆえに、数または数の範囲は、文脈によって容易に認識されるように、明示された数または数の範囲の1%-15%の間で変動することがある。さらに、本明細書に記載されている任意の値の範囲は、その範囲の限界値、および所定の範囲内の任意の中間値または部分範囲を具体的に含むことが意図されており、そのような中間値および部分範囲はすべて個別に具体的に開示されている(例えば、1~5の範囲には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5が含まれる)。同様に、本明細書で使用されている「実質的に」や「約」などの他の程度の用語は、最終結果が大きく変化しないような修飾された用語の合理的な逸脱量を意味する。これらの程度を表す用語は、修飾された用語の逸脱が修飾する用語の意味を否定しない場合に、この逸脱を含むものと解釈されなければならない。
【0070】
特段の定めのない限り、本明細書に記載される製剤に関して使用される科学的および技術的な用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを記載することを目的としており、本発明の範囲を制限することを意図しておらず、それは請求項によってのみ定義される。
【0071】
本明細書で言及されるすべての公開物、特許、および特許出願は、あたかも個々の公開物、特許、または特許出願が、引用によって全体として組み込まれるよう具体的に示されるかのように、同じ程度まで引用により全体として本明細書に組み込まれている。
【0072】
定義
本明細書で互換的に使用される「赤血球(red blood cellまたはerythrocyte)という用語は、血液中を循環するヘモグロビンを含む非核細胞を意味し、一般的に血液の赤い色の原因となる。
【0073】
本明細書で使用される「エクスビボ」という用語は、臓器、組織、または細胞が、ヒトまたは動物の通常の血液循環から完全にまたは部分的に分離されているような、ヒトまたは動物の体外を意味する。
【0074】
「酸素化培地完成品を形成するために酸素化成分を製剤化する」ことにより、酸素化成分を、限定されないが、希釈剤または賦形剤を含む少なくとも1つの他の成分と接触させ、酸素化培地完成品が形成されるまで、混合し、均質化し、または調製することを意味する。
【0075】
本明細書で使用される「酸素化培地完成品」という用語は、エクスビボでの使用に適した酸素化成分を含む、完全に製剤化された酸素化培地を指す。
【0076】
本明細書で使用される「HBOC」または「ヘモグロビンベースの酸素担体」という用語は、ヘモグロビン分子が、例えば、ヘモグロビン分子の化学的架橋、重合、またはヘモグロビンの他の分子への共役、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランとの共役などによって修飾されている酸素運搬ヘモグロビン誘導体を指す。
【0077】
本明細書で交換可能に使用される「ヘモグロビン」および「ヘモグロビン分子」という用語は、生体内で酸素を輸送する赤血球内に含まれるタンパク質を指す。ヘモグロビンの各分子は、4つのサブユニット、つまり、2つのα鎖と2つのβ鎖を有し、これらが四量体構造で配置されている。各サブユニットは、酸素を結合する鉄分を含む中心である1つのヘム基を含んでいる。このため、各ヘモグロビン分子は4つの酸素分子を結合することができる。本明細書では、この用語自体が、その天然の変異体を含む天然のヘモグロビンを指し、さらに、任意の無脊椎動物または脊椎動物、すなわち、ヒトから得られるヘモグロビンも含み、限定されないが、例えば、ヒトのヘモグロビン、ウシのヘモグロビン、ヒツジのヘモグロビン、およびブタのヘモグロビンを含む。
【0078】
本明細書で使用される「実質的に純粋」とは、実体、例えば、細胞、あるいは、化学的または生化学的な化合物、例えば、ヘモグロビンなどの、自然に付随する成分から分離したものを指す。典型的には、試料中の全物質(体積、湿潤または乾燥重量、またはモルパーセントまたはモル分率)の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、または98%、および最も好ましくは少なくとも99%が目的の実体である場合、実体は実質的に純粋である。赤血球調製物に関して、この用語はさらに、5%、4%、3%、2%、または1%以下の非赤血球細胞を含む調製物を含む、非赤血球細胞、例えば、白血球および血小板の分離形態を指す。純度は、任意の適切な方法、例えば、タンパク質の場合には、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはHPLC分析によって、そして赤血球の場合には、フローサイトメトリーによって測定することができる。一般的な実施
【0079】
概観では、驚くべきことに、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物を含む調製物を、一定量の赤血球と混合することで、酸素化成分として使用できることがわかった。特に、ヘモグロビン重量約10%~約99%のヘモグロビン調製物を、ヘモグロビン重量の残余の酸素化成分を含む赤血球調製物と混合することができる。本発明の酸素化成分を用いて、酸素化培地完成品を調製することができる。酸素化培地完成品は、組織または臓器の酸素化を提供し、それによって臓器および組織のエクスビボ保存を媒介するのに適している。驚くべきことに、本開示の酸素化培地完成品では、少量のメトヘモグロビンしか形成されず、したがって、臓器または組織の長時間の酸素化と保存が可能である。さらに、本開示の酸素化成分および酸素化培地完成品は、限定された赤血球溶解と限定された凝固を示す。本開示の酸素化培地完成品は、例えば、静的な条件で少なくとも約6時間、または機械灌流システムを使用して少なくとも12時間など、長時間にわたって臓器および組織をエクスビボで保存することを可能にする。本開示の酸素化培地完成品のさらに別の重要な利点は、広い温度範囲内で使用できることである。例えば、酸素化培地完成品を、約2℃という低い温度と、約40℃という高い温度で使用することが可能である。本発明の酸素化成分と酸素化培地完成品は、安全かつ経済的に製造することができ、製造方法も本明細書に含まれる。このように、本開示は、移植のために組織および臓器を保存するために、および、他の用途のために、例えば、外科的処置の間に、およびエクスビボで使用される酸素化培地完成品を調製するために使用することができる新規な酸素化成分を提供する。
【0080】
以下において、選択された実施形態が記載される。これに応じて、本開示は、1つの実施形態において、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分を提供し、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物との混合物を含み、ここで、(i)上記第1の調製物はヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含んでおり;および、(ii)上記第2の調製物は赤血球調製物であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含んでおり、上記赤血球調製物の残余は水性赤血球希釈剤を含んでおり;ここで、上記混合物は、上記酸素化成分がヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、およびヘモグロビン重量の残余に等しい量の赤血球調製物を含むように形成される。
【0081】
一般に、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物またはHBOC調製物、あるいはこれらの混合物、および赤血球調製物を最初に提供することによって調製可能である。
【0082】
一実施形態では、赤血球、ヘモグロビン、およびHBOC調製物は、ソースとして全血を用いて製造することができる。本明細書に従って使用することができる適切な血液には、無脊椎動物または脊椎動物の動物またはヒトの血液が挙げられ、限定されないが、ヒトの血液、ウシの血液、ブタの血液、ウマの血液、およびヒツジの血液を含む哺乳類と鳥類の血液が含まれる。血液溶液は、生きている生物または死んでいる生物から収集してもよく、例えば、米国特許第5,084,558号と第5,296,465号に記載されている方法論を含む、当該技術分野で知られている任意の技術と装置を用いて収集され得る。血液は、新鮮なものであってもよいし、古い試料、例えば、血液バンク研究所からの期限切れの血液であってもよい。加えて、血液は保存および/または凍結されていてもよい。ヒト血液が使用される場合、血液溶液が血液媒介病原菌の存在、例えば、HIVやB型肝炎について、スクリーニングされることが好ましい。好ましくは、本開示の方法に従って使用するために、血液媒介病原菌を含まない血液を選択する。採血時には、血液凝固を防ぐために抗凝固剤を血液に添加することが好ましい。使用可能な抗凝固剤としては、ヘパリン、ヒルジン、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸が挙げられる。抗凝固剤は、水溶液または粒子形態で提供されてもよい。
【0083】
血液から赤血球を分離するためには、当該技術分野で知られている任意の赤血球分離技術を使用することができる。これには、大きな血液凝集体(例えば、50μm以上)とデブリ(debris)を除去するための遠心分離および/または浸透濾過(straining and filtering)技術の使用が含まれる。したがって、1つ以上のプロピレン800μm~50μmのフィルターが使用されてもよい。赤血球が約5~10μmの大きさであることに留意されたい。
【0084】
いくつかの実施形態では、赤血球の細胞膜の完全性を維持するpHおよびモル浸透圧濃度を有する等張溶液、例えば、285~315mOsmのモル浸透圧濃度を有するクエン酸ナトリウム(約6.0 g/l)と塩化ナトリウム(約8.0 g/l)溶液を用いた透析濾過によって、赤血球を血液からさらに分離することができる。本発明に従って使用できる透析濾過フィルターには、赤血球をより小さな成分から実質的に分離する微多孔性膜が含まれ、例えば、Spectrum labsから入手可能な改良型ポリエーテルスルホン中空線維タンジェンシャルフロー・フィルトレーション膜が挙げられる。等張液は、バッチでも連続でも、典型的には濾液が失われるのとほぼ同じ速度で加えることができる。この工程では、赤血球よりも小さい血液溶液の成分、一般的には血液の血漿部分、例えば、抗体や血清アルブミンなどの細胞外血液タンパク質が、赤血球から濾液として分離され、これらは保持され、連続的またはバッチ式に等張液に添加される。使用する等張液の量は様々であり、例えば、血液溶液の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、または7倍の量である。いくつかの実施形態では、十分な量の等張液を使用して、少なくとも約90%から95%(モル/モル)の血漿タンパク質を除去し、実質的に純粋な赤血球調製物、例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の純度を有する赤血球調製物を得る。
【0085】
血液から赤血球を単離し、実質的に純粋な赤血球調製物を得るために使用される技術は、所望のものであってよく、例えば、赤血球を単離するための方法が米国特許5,955,581号に記載されているなど、当該技術分野で知られている任意の技術を含む。
【0086】
ヘモグロビン重量約1%~約40%を含む赤血球調製物を調製するために、赤血球調製物は、生理学的に適合する水性の赤血球希釈剤、すなわち、赤血球が実質的に無傷のままであり、赤血球がその生理学的酸素運搬能力を実質的に保持する水性の希釈剤と混合することができる。したがって、例えば、赤血球調製物は、生理食塩水、乳酸リンゲル液、または改良された乳酸リンゲル液を用いて希釈することができる。水性の赤血球希釈剤の量は様々であり、例えば、完全に希釈された赤血球調製物は、ヘモグロビンを、ヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、赤血球調製物の残余は水性の赤血球希釈剤を含み、または、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含み、赤血球製剤の残余は水性の赤血球希釈剤を含み、または、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含み、赤血球製剤の残余は水性の赤血球希釈剤を含み、または、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約15%~約25%の量で含み、赤血球製剤の残余は水性の赤血球希釈剤を含み、または、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含み、赤血球製剤の残余は水性の赤血球希釈剤を含むように、選択され得る。
【0087】
次に、ヘモグロビンおよびHBOCに目を向けると、一実施形態では、単離された赤血球をソースとして使用し、そこからヘモグロビンを抽出して単離されたヘモグロビン調製物を得ることができる。したがって、例えば、単離された赤血球を溶解させることができる。当該技術分野で知られている赤血球を溶解させるための任意の技術を使用することができ、これには任意の機械的溶解技術または化学的溶解技術が含まれるが、ただし、このような技術は、酸素を輸送および放出するヘモグロビンの能力に実質的に悪影響を及ぼさないことが条件である。
【0088】
一実施形態では、単離された赤血球は、赤血球溶解物を得るために赤血球に低張性ショックを与えることによって溶解可能である。本発明に従って使用することができる適切な低張液としては、例えば、リン酸緩衝液3.75mM、pH7.2、または水が挙げられ、これらを赤血球と混合し、混合物を氷上で、例えば、1時間培養して、溶解した赤血球調製物を得ることができる。その後、ヘモグロビン画分は、固体クロマトグラフィー媒体上でのヘモグロビンの初期保持を伴う吸収ベースの方法、その後の溶媒ベースの溶出、または不純物の保持とヘモグロビンのフロースルーを伴うフロースルーベースの技術を含む、クロマトグラフィー分離技術を含む様々な適切なタンパク質精製技術を使用して、赤血球溶解液から得ることができる。その他のクロマトグラフィー技術としては、親和性クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が挙げられる。ヘモグロビンを単離し、さらに使用可能な単離されたヘモグロビン調製物を得るためのクロマトグラフィー技術としては、例えば、米国特許5,691,453号、Andrade et al., Int. J. Biol. Macromol, 2004, 34: 233-240, and Lu et al., Artif. Cells Blood Substit. Immobil. Biotechnol. 2004, 32: 2004に記載されているものが挙げられる。あるいは、ヘモグロビンを単離するために、赤血球溶解物を、例えば、水相抽出、膜ベースの精密濾過および限外濾過技術、ならびにタンジェンシャルフローベースの技術を含む、非クロマトグラフィーベースの精製技術にかけることができる。使用することができる限外濾過技術は、Feins et al. 2005, J. Membr. Sci 248: 137-148に記載されているものを含む。使用することができるタンジェンシャルフローベースの技術は、例えば、Palmer et al., 2009, in Biotechnol. Progr, 2009, 26 (1) 189-199と、Elmer et al., Biotechnol. Progr. 2009, 25(5) 1402-1410に記載されているものを含む。ヘモグロビンを得るために使用できる二相水性抽出技術は、米国特許5,407,579号に記載されているものを含む。
【0089】
前述の技術、またはそれらの組み合わせあるいは改変、または他の適切な技術を用いて、いくつかの実施形態では、実質的に純粋なヘモグロビン調製物を得ることができ、例えば、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の純度を有する調製物が含まれる。
【0090】
前述の技術、またはその組み合わせあるいは改変、または他の適切な技術を用いて得られたヘモグロビンは、非修飾ヘモグロビン、すなわち、化学的に修飾されていないヘモグロビンである。
【0091】
いくつかの実施形態では、前述の技術、その組み合わせまたは改変に従って得られたヘモグロビンを使用して、本明細書に従って非修飾ヘモグロビンを含むヘモグロビン調製物を調製することができる。非修飾ヘモグロビンを含むヘモグロビン調製物を調製するために、非修飾ヘモグロビンを生理学的に適合する水性ヘモグロビン希釈剤と混合することができる。したがって、例えば、ヘモグロビンは、生理食塩水、または乳酸リンゲル液、または改良された乳酸リンゲル液を用いて希釈することができる。水性のヘモグロビン希釈剤の量は変動することがあり、例えば、完全に希釈されたヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビンを、ヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性のヘモグロビン希釈剤を含み、あるいは、上記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビンを、ヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性のヘモグロビン希釈剤を含み、あるいは、上記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビンを、ヘモグロビン重量約5%~約35%の量で含み、あるいは、上記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビンを、ヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性のヘモグロビン希釈剤を含み、あるいは、上記ヘモグロビン調製物が、非修飾ヘモグロビンを、約15%~約25%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性のヘモグロビン希釈剤を含むように、選択され得る。前述のヘモグロビン調製物は、修飾ヘモグロビンを実質的に含まない。
【0092】
いくつかの実施形態では、ヘモグロビン調製物を調製するためにヘモグロビン製剤を含むことができ、例えば、単離されたヘモグロビンをリポソームに封入し、リポソーム封入ヘモグロビン(LEH)を形成するための製剤が含まれ得る。例えば、米国特許出願第2014/0212477号を参照。
【0093】
赤血球から得られたヘモグロビンを使用して、例えば、ヘモグロビン分子の架橋によって、または、ヘモグロビン分子を化学修飾することによって、重合HBOC調製物を含むHBOC調製物を調製することができる。重合ヘモグロビン分子の例は、米国特許第5,955,581号;米国特許第号5,895,810号;米国特許出願US2012/0028899、およびPCT特許出願PCT/CA2017/051111に記載されている。化学修飾されたヘモグロビン分子の例としては、多糖結合ヘモグロビン(例えば、PCT特許出願PCT/CA99/00260)、ポリアルキレンオキシド結合ヘモグロビン(例えば、米国特許第5,650,388号)、およびポリエチレングリコール(PEG)結合ヘモグロビン(例えば、米国特許第5,750,725号、米国特許第7,144,989号、ならびに米国特許第8,609,815)が挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に従って、HBOCを含むヘモグロビン調製物を調製するために、前述の技術、その組み合わせまたは改変に従って得られたHBOC調製物を使用することができる。HBOCを含むヘモグロビン調製物を調製するために、HBOC調製物を、生理学的に適合する水性ヘモグロビン希釈剤と混合することができる。したがって、例えば、HBOC調製物は、食塩水、乳酸リンゲル液、または修飾乳酸リンゲル液を使用して希釈することができる。水性ヘモグロビン希釈剤の量は変動する場合があり、例えば、完全に希釈されたヘモグロビン調製物が、ヘモグロビン重量約1%~約40%の量でHBOCを含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約5%~約35%の量でHBOCを含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約5%~約35%の量で;または、ヘモグロビン重量約10%~約30%の量でHBOCを含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約15%~約25%の量でHBOCを含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含むように選択され得る。前述のHBOC調製物は、非修飾ヘモグロビンを実質的に含まない。したがって、HBOC調製物は、10%(w/w)より少ない、5%(w/w)より少ない、または1%(w/w)より少ない非修飾ヘモグロビンを含有することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、非修飾ヘモグロビンとHBOCの混合物は、ヘモグロビン調製物を調製するために使用することができる。そのような混合物は、上述される技術またはその組み合わせあるいは改変を使用して、非修飾ヘモグロビンを含むヘモグロビン調製物とHBOC調製物とを得て、非修飾ヘモグロビンとHBOCの実質的に均質な混合物を得るために、2つの調製物を接触させ、混合することによって調製することができる。混合物内のHBOC調製物と非修飾ヘモグロビン調製物との相対量は、変動する場合があり、希望に応じて選択される。したがって、例えば、非修飾ヘモグロビンとHBOCとの混合物を含む調製物は、完全に希釈されたヘモグロビン調製物が、ヘモグロビン重量約1%~約40%の量で、HBOCおよび非修飾ヘモグロビンをともに含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物は、ヘモグロビン重量約5%~約35%の量でHBOCおよび非修飾ヘモグロビンをともに含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物は、ヘモグロビン重量約5%~約35%の量で;またはヘモグロビン重量約10%~約30%の量で、HBOCおよび非修飾ヘモグロビンをともに含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;あるいは、完全に希釈されたヘモグロビン調製物は、ヘモグロビン重量約15%~約25%の量で、HBOCおよび非修飾ヘモグロビンをともに含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含むように選択され得る。
【0096】
赤血球調製物およびヘモグロビン調製物も販売業者から得ることができる。ヘモグロビンの販売業者としては、Thomas ScientificおよびSigma Aldrichが挙げられる。赤血球の販売業者としては、赤十字などの血液バンクが挙げられる。
【0097】
非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物を含む調製物および赤血球調製物が得られると、2つの調製物を接触させて、実質的に均質な混合物が得られるまで混合することができる。ヘモグロビン赤血球調製物および赤血球調製物の量は変動する場合がある。
【0098】
一実施形態では、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約10%~約99%の酸素化成分を含むような量のヘモグロビン調製物と、100%に対するヘモグロビン重量の残余(つまり、約1~約90%)の酸素化成分が赤血球調製物を構成するような量の赤血球調製物とを構成するように調製され得る。
【0099】
一実施形態では、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約20%~約90%の酸素化成分を含むような量のヘモグロビン調製物と、100%に対するヘモグロビン重量の残余(つまり、約10%~約80%)の酸素化成分が赤血球調製物を構成するように、赤血球調製物の量とを構成するように調製され得る。
【0100】
一実施形態では、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約30%~約80%の酸素化成分を含むような量のヘモグロビン調製物と、100%に対するヘモグロビン重量の残余(つまり、約20%~約70%)の酸素化成分が赤血球調製物を構成するような量の赤血球調製物とを構成するように調製され得る。
【0101】
一実施形態では、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約40%~約70%の酸素化成分を含むような量のヘモグロビン調製物と、100%に対するヘモグロビン重量の残余(つまり、約30%~約60%)の酸素化成分が赤血球調製物を構成するような量の赤血球調製物とを構成するように調製され得る。
【0102】
一実施形態では、酸素化成分は、ヘモグロビン調製物がヘモグロビン重量約50%~約60%の酸素化成分を含むような量のヘモグロビン調製物と、100%に対するヘモグロビン重量の残余(つまり、約40%~約50%)の酸素化成分が赤血球調製物を構成するような量の赤血球調製物とを構成するように調製され得る。
【0103】
1つの例示的な実施形態において、本開示は、酸素化培地完成品の製剤化のための酸素化成分を含み、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、ここで、
(i)上記第1の調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物を、ヘモグロビン重量約5%~約15%の量で含むヘモグロビン調製物であり、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;ならびに、
(ii)上記第2の調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含む赤血球調製物であり、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含み;ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、および、上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される。
【0104】
1つの例示的な実施形態において、上記酸素化成分は、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分を含むことができ、上記酸素化成分は第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、ここで、
(i)上記第1の調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含むヘモグロビン調製物であり、上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;ならびに、
(ii)上記第2の調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含む赤血球調製物を含み、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含み;ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される。
【0105】
このように得られた混合物は、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分として使用することができる。
【0106】
簡潔にまとめると、非修飾ヘモグロビン調製物、あるいは場合に応じて、HBOC調製物、または非修飾ヘモグロビンとHBOCの混合物を含有する調製物が提供され、および個別に、赤血球調製物が提供される。非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物を含む調製物、および赤血球調製物は、酸素化成分を得るために混合される。
【0107】
一実施形態では、酸素化成分を、完成した酸素化、特に、希釈剤または賦形剤での使用に適している少なくとも1つの他の成分と接触させることができる。したがって、他の態様では、本開示は、
(a)ヘモグロビン重量約1%~ヘモグロビン重量約39%の酸素化成分であって、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、ここで、
(i)上記第1の調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含むヘモグロビン調製物であり、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;ならびに、
(ii)上記第2の調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含む赤血球調製物であり、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含み;ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、混合物が形成される、酸素化成分;および、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により、酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分を含む、上記酸素化培地の残余を含む、酸素化培地完成品を提供する。
【0108】
本開示は、少なくとも1つの実施形態において、酸素化培地完成品を製剤化するための酸素化成分の使用をさらに提供し、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、
(i)上記第1の調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含むヘモグロビン調製物であり、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;ならびに、
(ii)上記第2の調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含む赤血球調製物であり、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含み;ここで、
酸素化成分が、ヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される。
【0109】
酸素化成分および希釈剤または賦形剤は、好ましくは希釈剤または賦形剤および酸素化成分の均質な混合物が形成されるまで、混合されるか、均質化されるか、あるいは調製され、ここで、そのような混合物は酸素化培地としての使用に適している。希釈剤または賦形剤は、任意の適切な希釈剤または賦形剤であってもよく、および、希釈剤または賦形剤は、例えば、溶液、懸濁液、ゲル、あるいは液体としてなど、任意の形態で提供されてもよい。含めることができる希釈剤には、等張食塩水、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)などの緩衝液が含まれ、使用することができる賦形剤には乳酸リンゲル液が含まれる。
【0110】
随意に、酸素化培地完成品を調製するための酸素化成分および希釈剤または賦形剤に加えて、複数の他の成分、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の成分が提供され得る。複数の成分を含む本明細書の実施形態では、そのような成分は、順次にまたは同時に混合され得る。
【0111】
一実施形態では、追加の成分は、血液中で通常見られる化合物、例えば、カルシウムイオン;塩化物イオン;ナトリウムイオン;マグネシウムイオン;リン酸イオン;あるいはそれらの混合物などの、血液中で通常見られるイオンを含むことができ、それらの各々は、様々な化学形、例えば、塩化ナトリウムなど、および、様々な製剤、例えば、食塩水などの形態で提供され得る。酸素化培地完成品を調製するために含めることができる追加の他の成分は、緩衝薬、例えば、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)(MES);酸化還元剤、例えば、スルフヒドリル、例えば、グルタチオン、アスコルビン酸(アスコルビン酸塩)、n-アセチルシステイン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADH)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH);ヒドロキシエチルデンプンまたはアルブミンなどのコロイド;グルコースまたはラクトビオン酸などの単糖類あるいは二糖類を含む、糖類;アミノ酸;スーパーオキシドジスムターゼなどの、酸素ラジカルの存在を制限する薬剤;例えば、メトモヘモグロビンレダクターゼなどの、メトヘモグロビンの形成を制限する薬剤;抗生物質;または、それらの混合物である。いくつかの実施形態では、病態または病状を改善することができる薬理学的化合物さえも含み得る。
【0112】
賦形剤または希釈剤を含む他の成分の量は変動する場合があるが、典型的に、酸素化成分は、酸素化培地完成品の少なくともヘモグロビン重量1%を構成する。
【0113】
一実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約1%~ヘモグロビン重量約39%の酸素化成分を含み得る。
【0114】
一実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約5%~ヘモグロビン重量約35%の酸素化成分を含み得る。
【0115】
一実施形態では、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約10%~モグロビン重量約30%の酸素化成分を含み得る。
【0116】
1つの例示的な実施形態において、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約15%~ヘモグロビン重量約25%の酸素化成分を含むことができ、上記酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物を、ヘモグロビン重量約5%~ヘモグロビン重量約15%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含む、ヘモグロビン調製物と、ならびに、
(ii)赤血球調製物であって、上記赤血球調製物は、モグロビンをヘモグロビン重量約10%~約30%の量で含み、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含む、赤血球調製物と、を含み、ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約40%~約60%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される。
【0117】
1つの例示的な実施形態において、酸素化培地完成品は、ヘモグロビン重量約20%の酸素化成分を含み、上記酸素化成分は、
(i)ヘモグロビン調製物であって、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約10%の量で含み、ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含む、ヘモグロビン調製物と、ならびに、
(ii)赤血球調製物であって、上記赤血球調製物は、ヘモグロビンをヘモグロビン重量約20%の量で含む赤血球調製物を含み、および赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含む、赤血球調製物と、を含み、ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約50%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される。
【0118】
したがって、前述の方法に従って、酸素化培地完成品を調製することができる。それゆえ、本開示は、さらなる実施形態において、エクスビボでの使用のための酸素化培地完成品を調製する方法を含み、上記方法は、
(i)ヘモグロビン調製物を提供する工程であって、上記ヘモグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、上記ヘモグロビン調製物の残余は水性ヘモグロビン希釈剤を含む、工程と、
(ii)赤血球調製物を提供する工程であって、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含む、工程と、
(iii)酸素化成分が、ヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、酸素化成分を形成するために、ヘモグロビン調製物および赤血球調製物を混合する工程と、
(iv)賦形剤および希釈剤から選択される少なくとも1つの製剤成分、および場合により酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分を用いて、酸素化成分を製剤化する工程と、を含む。
【0119】
一実施形態では、酸素化培地完成品は、短期間または長期間にわたって、例えば、1~2日から最大1年よりも長く保存することができる。酸素化培地完成品は、酸素環境を有する無菌の密閉容器、例えば、密閉されたガラス容器、ステンレス鋼容器、または保存用バッグに保存されるのが好ましい。保存容器は、水分の蒸発および培地の濃縮を防ぐために、水を通さないことがさらに好ましい。低酸素環境を達成するために、保存容器は密閉される前に、例えば、窒素雰囲気で覆われ得る。いくつかの実施形態では、自己酸化、つまり、メトヘモグロビンの形成を防ぐために、酸素化培地完成品を一酸化炭素で処理する場合がある。酸素化培地を保存するために、容器は、保存のために冷蔵され得るか(0℃~4℃)、または、酸素化培地は、例えば、-20℃から-80℃で凍結されるか、あるいは冷凍庫で保存され得る。
【0120】
さらなる態様では、本開示は、一実施形態において、組織または臓器のエクスビボでの保存のための酸素化培地完成品の使用を提供し、上記酸素化培地完成品は、
(a)ヘモグロビン重量約1%の~約39%の酸素化成分であって、上記酸素化成分は、第1の調製物と第2の調製物の混合物を含み、ここで、
(i)上記第1の調製物はモグロビン調製物であり、上記モグロビン調製物は、非修飾ヘモグロビン、HBOC、またはそれらの混合物をヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、および上記ヘモグロビン調製物の残余が水性ヘモグロビン希釈剤を含み;ならびに、
(ii)上記第2の調製物は赤血球調製物であり、上記赤血球調製物はヘモグロビンをヘモグロビン重量約1%~約40%の量で含み、および上記赤血球調製物の残余が水性赤血球希釈剤を含み;ここで、
上記酸素化成分が、ヘモグロビン重量約10%~約99%の量のヘモグロビン調製物、および上記ヘモグロビン重量の残余と等しい量の赤血球調製物を含むように、上記混合物が形成される、酸素化成分と、
(b)希釈剤または賦形剤から選択される少なくとも1つの他の製剤成分と、場合により、酸素化培地完成品の製剤化に適した他の成分と、を含む、上記酸素化培地の残余と、を含む。
【0121】
一実施形態では、本開示の酸素化培地完成品は、例えば、患者への後の移植のために、または患者への再移植のために臓器が保存される場合に、あるいは、臓器が輸送を必要とする場合に、臓器を保護するために、エクスビボで臓器または組織の酸素含量を維持するべく使用することができる。臓器移植は、自家移植(つまり、同じ被験体の身体のある部分から身体の別の部分への臓器の移植)、同種移植(つまり、ある被験体から別の被験体への臓器の移植)、または異種移植(つまり、ある種の被験体から別の種の被験体への臓器の移植)であり得る。これに関して使用することができる個体の臓器としては、限定されることなく、肝臓、腎臓、心臓、肺、腸、および膵臓が挙げられる。臓器は、発達または生命の任意の段階、または任意の年齢のもの、あるいは、ヒト臓器、または別の脊椎動物から入手可能な臓器を含む任意の起原のものであってもよい。
【0122】
一実施形態では、本開示の酸素化培地完成品は、組織を保護するために、または、組織工学のために、エクスビボの組織の酸素含量を維持するべく使用され得る。したがって、例えば、組織が後の移植のため、または患者への移植術のため、または患者の再移植のために保存される場合、あるいは組織が輸送を必要とする場合、あるいは、組織がエクスビボでの実験、例えば、癌腫瘍およびその処置に関する研究のために使用される場合、組織を保存することができる。組織移植は、自家移植(つまり、同じ被験体の身体のある部分から身体の別の部分への組織の移植)、同種移植(つまり、ある被験体から別の被験体への組織の移植)、または異種移植(つまり、ある種の被験体から別の種の被験体への組織の移植)であり得る。組織移植のさらなる例としては、複合組織同種移植(composite tissue allotransplants)、例えば、手足、顔が挙げられる。
【0123】
一実施形態では、本開示の酸素化培地完成品を使用して、研究開発目的のために、例えば、バイオマーカーの発見のために、組織工学あるいはバイオファブリケーションのために、またはバイオリアクターとしての臓器組織の使用のために、臓器を維持することができる。
【0124】
一実施形態では、臓器または組織は、静的モードでの保存を可能にする保存システムを使用して保存することができる。他の実施形態では、臓器または組織は、動的なモードでの保存を可能にする保存システムを使用して保存することができる。静的モードでは、臓器は、本開示の酸素化培地を含む溶液に浸される。動的モードでは、臓器は、本開示の酸素化培地完成品、および、例えば、ポンプシステム、または、温度を調節するための装置、つまり、機械潅流システムを含む1つ以上の機械装置を使用して灌流される。様々な保存システムが当該技術分野で既知であり、例として、PCT特許出願:PCT/US2013/049573およびPCT/US2016/051122、ならびに、米国特許出願:U.S.2008/0038811およびU.S.2010/0304352が挙げられる。
【0125】
いくつかの実施形態では、保存システムは分離装置を含むように構成され得る。これらの実施形態では、分離装置により、非修飾ヘモグロビン、HBOC、または赤血球、あるいは追加の成分のいずれかを含む酸素化培地完成品からある成分を除去すること、および新鮮な成分と交換することが可能になる。したがって、例えば、保存システムは、酸素化培地完成品あるいは賦形剤のための連続的あるいは半連続的な供給アセンブリ、分離装置、およびポンプ、さらに随意に、酸素化カートリッジを含むように構成することができる。保存システムは、連続的あるいは半連続的に酸素化培地または賦形剤を供給し、酸素化培地完成品または賦形剤を濾過し、それを供給アセンブリからの新鮮な酸素化培地または賦形剤と交換し、したがって、賦形剤または酸素化培地完成品の連続的あるいは半連続的な回復(refreshment)を可能にするために動作させるこができる。使用することができる分離装置は、例えば、接線流システムを使用して、順次にあるいは実質的に連続的に動作させ、酸素化培地または賦形剤の連続的な回復を可能にすることができるフィルター、あるいは、周期的に使用するために設置され得るフィルターを含む。当業者によって理解されるように、フィルターおよびフィルターの孔径は、酸素化培地完成品の特定の成分の選択的な除去を容易にするために選択され得る。
【0126】
本開示は、一実施形態において、臓器を通じて潅流流体を灌流させるように実施可能な迂回潅流流体システムを含む、臓器保存システムをさらに含み、上記臓器保存システムは、臓器を支持する流体リザーバを含み、上記流体リザーバは、潅流流体あるいは賦形剤を流体リザーバに供給する連続的または半連続的な供給アセンブリと流体接続状態にあり、上記流体リザーバはさらに、潅流流体から消費済み成分を分離または除去するために、流体リザーバから潅流流体を除去する際に潅流流体の濾過を可能にする分離装置と、迂回流体システムを通じて潅流流体を循環させるためのポンプと流体接続状態にある。上記システムはさらに、酸素化カートリッジを随意に含み得る。臓器保存システムは、本開示の酸素化培地完成品と併せて使用され得るか、または他の潅流流体、例えば、他のヘモグロビンベースの潅流流体、あるいは他の赤血球ベースの潅流流体と併せて使用され得る。
【0127】
本開示の酸素化培地完成品を使用して臓器または組織を保存することができる期間は、変動し得る。例えば、臓器または組織は、本開示の酸素化培地完成品を使用して、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、または少なくとも約12時間にわたって静的に保存することができ;あるいは、例えば、臓器または組織は、本開示の酸素化培地完成品を使用して、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約1週間、約2週間、あるいは約4週間にわたって動的に保存することができる。
【0128】
酸素化培地完成品は、エクスビボで臓器または組織を保存するために、最低約2℃から最高約40℃の範囲で様々な温度で使用されてもよい。エクスビボで臓器または組織を保存するために、酸素化培地完成品を使用することができる他の温度範囲は、約5℃~約35℃、約10℃~約30℃、および約15℃~約25℃の温度を含む。酸素化培地完成品はさらに、エクスビボで臓器または組織を保存するためにおよそ生理的温度で、つまり、ヒト組織およびヒト臓器の場合は37℃、あるいは、室温、つまり、約18℃~約23℃で使用されてもよい。温度は、様々な状況において、例えば、保存されている特定の臓器または組織、あるいは保存期間に応じて変動する場合がある。さらに、温度は、例えば、様々な温度でのエクスビボ保存の評価、または、様々な温度レジメンを様々な期間にわたって使用することによって、調節または最適化することができ、および最適化された温度を選択することができる。
【0129】
使用される酸素化培地の治療量は変動する場合がある。「治療上有効な量」との用語は、本開示の目的のために、その意図した目的、つまり、臨床用途、あるいは臨床的または医学的な研究または開発の目的のために、残存する臓器または組織の十分なエクスビボの酸素化を達成するのに有効な酸素化培地の量を指す。個々の状況は異なる場合があるが、使用される酸素化培地完成品の有効な量の最適な範囲の決定は、当業者の技術の範囲内である。一般に、治療上有効な量の酸素化培地あるいは酸素化成分をもたらすために必要とされる投与量は、当業者によって調節することができ、従来の考慮すべき事項を用いて、例えば、適切な従来の薬理学的または獣医学的なプロトコルにより当業者によって決定され得る、組織、臓器、保存時間、組織または臓器の健康あるいは物理性によって、変動する。
【0130】
ここで理解され得るように、酸素化成分および酸素化培地完成品は、本開示の方法に従って調製することができ、その方法は、臓器または組織の長期保存を可能にする。完成した培地は、多くのエクスビボの臨床プロセスおよび臨床開発プロセスに適用することができる。
【0131】
もちろん、本開示の上記実施形態は、例示のみを意図しており、決して限定するものではない。説明される実施形態は、構成、詳細、および操作の順序といった多くの変更の影響を受けやすい。むしろ、本発明は、請求項によって定義される範囲内のそのような変更すべてを包含するように意図され、全体としての説明と一致する広い解釈が与えられるべきである。
【実施例
【0132】
以下に、本開示の構成を表す実施形態に加えて、本開示の方法を実施するためのさらに特定の実施形態の例が提供される。上記実施例は、例示目的のみのために提供されるものであり、いかなる方法においても本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0133】
実施例1-エクスビボで使用するための酸素化成分の調製
濾過によって単離されたヘモグロビンから主になる低い純度の赤血球タンパク質画分を、グルタルアルデヒドを使用して重合し、その後、シアノ水素化ホウ素を用いて還元し、適切な緩衝液(n-アセチルシステインを有する乳酸リンゲル液)に入れることで、グルタルアルデヒドとシアノ水素化ホウ素を濾過によって除去し、それにより、ヘモグロビン重量11g/dL(11%)であるHBOC溶液を得た。上記HBOC溶液は、濾過または放射線照射のいずれかによりエンドポイント殺菌することができる。濃厚赤血球(pRBC)は、血液採取保存および分配を専門とする多数の機関の1つ、例えば、赤十字から商業的に得ることができる。酸素化成分は、HBOC溶液とpRBCを1対1で混合することによって、調製することができる。その後、酸素化成分を、必要に応じてすぐに使用して、例えば、実施例2で記載されるような酸素化培地完成品を調製することができる。
【0134】
実施例2-エクスビボで使用するための酸素化培地完成品の調製
実施例1に記載される酸素化成分を使用して、および、上記酸素化成分を、生理食塩水、グルコース、および抗生物質を含有するあらかじめパッケージされた無菌等張性希釈剤と混合して、酸素化培地完成品を調製することができる。上記酸素化成分および希釈剤を、最終ヘモグロビン濃度がヘモグロビン重量10g/dL(10%)になる前に室温で混合して、酸素化培地完成品を得ることができる。酸素化培地完成品の温度は、エクスビボでの使用前に調節されてもよい。
【0135】
実施例3-酸素化培地完成品のエクスビボでの使用
酸素化培地完成品のエクスビボでの使用は、新たに単離されたヒトあるいは動物の臓器、例えば、腎臓を含む場合があり、その臓器は、流体を脈管構造に通すためにカニューレを挿入され、温度制御されたタンクにおいて、ベストプラクティス(best practices)の無菌条件下で、実施例1および2に従って調製された酸素化培地完成品の中で懸濁される。酸素化培地完成品は、臓器への損傷を回避するために、適切な流量および圧力設定で、臓器および汚水槽を通って循環させることができる。上記酸素化培地は、循環ループ中の酸素化カートリッジを使用することによって、酸素化させておくことができる。代謝が望まれる場合には、温度を生理学的標準に制御することができる。単に長期保存が望まれる場合には、温度を下げることができる。グルコースおよび代謝産物のレベルは、既存の分析機器を使用してモニタリングすることができ、レベルが適切でない場合、透析濾過によって希釈剤の交換を開始することができる。臓器は、意図した用途、例えば、移植に必要とされるまで、またはその状態が意図した用途には悪化しすぎているとみなされるまで、維持することができる。
【国際調査報告】