(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】低温性能が改善された鉱油系潤滑基油及びその製造方法、並びにそれを含む潤滑油製品
(51)【国際特許分類】
C10M 171/02 20060101AFI20220208BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20220208BHJP
C10M 177/00 20060101ALI20220208BHJP
C10G 45/58 20060101ALI20220208BHJP
C10N 70/00 20060101ALN20220208BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220208BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220208BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220208BHJP
C10N 40/16 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C10M171/02
C10M101/02
C10M177/00
C10G45/58
C10N70:00
C10N30:02
C10N40:08
C10N40:06
C10N40:16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517015
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(85)【翻訳文提出日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2019012372
(87)【国際公開番号】W WO2020067690
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115158
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507268341
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】509349451
【氏名又は名称】エスケー ルブリカンツ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ・ソン イェン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ハック ムック
(72)【発明者】
【氏名】オク・ジン フィ
(72)【発明者】
【氏名】ノ・キュウン ショック
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヨン レ
【テーマコード(参考)】
4H104
4H129
【Fターム(参考)】
4H104DA02A
4H104LA01
4H104PA04
4H104PA05
4H104PA12
4H129AA02
4H129CA09
4H129DA16
4H129DA19
4H129DA21
4H129KA07
4H129KA10
4H129KA12
4H129KB03
4H129NA17
4H129NA25
4H129NA32
4H129NA33
4H129NA35
(57)【要約】
本開示は、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油であって、前記潤滑基油は、9.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.5cSt(100℃)以下の動粘度、及び-50℃以下の流動点を有する、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温性能が改善された鉱油系潤滑基油であって、
前記潤滑基油は、9.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.5cSt(100℃)以下の動粘度、及び-50℃以下の流動点を有する、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項2】
前記潤滑基油は、水素化分解処理された液体ガスオイルを含む供給原料に由来し、ここで、前記処理された液体ガスオイルは、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が250℃以下であり、50%留出温度が350℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項3】
前記処理された液体ガスオイルは、0.81~0.87の比重、5.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.0cSt(100℃)以下の動粘度、5℃以下の流動点を有し、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有することを特徴とする、請求項2に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項4】
前記供給原料は、前記処理された液体ガスオイルを90重量%以上含むことを特徴とする、請求項2に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項5】
前記潤滑基油内の炭化水素分子の平均炭素数は14~25であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項6】
前記潤滑基油内の炭素数が13以下である炭化水素の含有量は、全体潤滑基油に対して25重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項7】
前記潤滑基油は10~50重量%のナフテン系炭化水素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項8】
前記潤滑基油は、0.3≦(C
n+C
a)/C
p≦0.7であり、
ここで、C
nはナフテン系炭化水素の重量%であり、C
aは芳香族炭化水素の重量%であり、C
pはパラフィン系炭化水素の重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項9】
前記潤滑基油は、25重量%<C
n+C
a<45重量%であり、
ここで、C
nはナフテン系炭化水素の重量%であり、C
aは芳香族炭化水素の重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項10】
前記潤滑基油は500cSt(-40℃)以下の動粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項11】
前記潤滑基油は、引火点が110℃以上であり、150℃での蒸発減量が20重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が200℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑基油を20~99重量%含み、-40℃以下の流動点を有する、潤滑油製品。
【請求項13】
前記潤滑油製品は合成基油を含まないことを特徴とする、請求項12に記載の潤滑油製品。
【請求項14】
前記潤滑油製品はポリアルファオレフィン(PAO)またはエステル系基油を含まないことを特徴とする、請求項12に記載の潤滑油製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油及びその製造方法、並びにそれを含む潤滑油製品に係り、より詳細には、水素化分解処理された液体ガスオイル(treated-liquid gas oil、t-LGO)から製造される、超低粘度の低温性能が改善された鉱油系潤滑基油及びその製造方法、並びにそれを含む潤滑油製品に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑基油とは、潤滑油製品の原料となるものであり、一般的に優れた潤滑基油は、高い粘度指数を有し、安定性(酸化、熱、UVなど)に優れるうえ、揮発性が少ない特性を持つ。米国石油協会API(American Petroleum Institute)では、潤滑基油を品質によって下記表1のとおりに分類している。
【0003】
【0004】
一般に、鉱油系潤滑基油の中でも、溶剤抽出法によって製造された潤滑基油は主にグループI、水添改質法で製造された潤滑基油は主にグループII、高度の水素化分解反応によって製造された粘度指数の高い潤滑基油は主にグループIIIに該当する。
【0005】
一方、酷寒期又は極地などの過酷な温度で利用可能な潤滑油製品に対する必要性が存在する。このため、従来の潤滑基油に流動点降下剤、粘度改質剤などの添加剤を追加することにより、潤滑油製品の低温特性の改善を図っている。しかし、前記添加剤は、過量含有する場合には潤滑油製品自体の性能を阻害するおそれがあるため、その添加に制限が伴う。これにより、潤滑基油自体の低温性能が改善された潤滑基油が求められている。
【0006】
このような潤滑基油は、低い粘度及び低い流動点を有することが要求される。これに適した潤滑基油としては、合成基油であるポリアルファオレフィン(Poly Alpha Olefins、PAOs)及びエステル系基油がある。前記PAOは、優れた粘度安定性及び低温流動性を有し、エステル系基油も、優れた粘度安定性を有する。ところが、前記PAO及びエステル系基油は、コストの面で高いという欠点を持つ。
【0007】
そこで、前記合成基油と同等か或いはそれより優れた低温性能を有しながら、前記合成基油に比べて価格競争力のある鉱油系潤滑基油を製造しようとする努力が続けられてきた。例えば、従来の燃料油水素化分解工程(Hydro Cracking、HC)と連携して潤滑基油の供給原料を製造する工程は、減圧蒸留工程で生産された減圧ガス油を水素化分解しながら発生する未転換油(Unconverted Oil、UCO)を用いる方法がある。この方法では、留分中に含まれている硫黄、窒素、酸素及び金属成分などの不純物を除去する水素化処理工程を経た後、主反応工程である水素化分解工程を通過しながら軽質炭化水素に相当量が転換され、一連の分別蒸留工程を経て、分解された各種のオイル及びガスを分離して軽質留分を製品化する。前記反応において、一般にパスあたりの反応転換率が40%程度に設計され、パスあたりの転換率を100%にすることは実質的に不可能なので、最後の分別蒸留工程では、常に未転換油(UCO)が発生し、その一部を外部に抜き出して潤滑基油の原料として使用し、残りを水素化分解工程に再循環させる。
【0008】
先行特許である韓国特許第10-1399207号は、未転換油を用いた高級潤滑基油供給原料の製造方法に関するものであり、未転換油の一部を第2水素化分解工程に供給し、再循環させて未転換油から高級潤滑基油を製造する方法を開示するだけであり、潤滑基油を製造するための供給原料として、水素化分解処理された液体ガスオイルを使用することを開示していない。
【0009】
また、先行特許である韓国特許第10-1679426号は、未転換油を用いた高級潤滑基油の製造方法に関するものであり、2種以上の未転換油を用いて潤滑基油を製造することを開示するだけであり、未転換油以外の物質を供給原料にして潤滑基油を製造することを開示していない。
【0010】
このため、前述したように、合成基油に対して価格競争力を備えながらも、同等又はより優れた低温性能を有する新しい鉱油系潤滑基油に対する要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本開示の第1観点は、上述した高価の合成基油を代替することができる、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を提供することにある。
本開示の第2観点は、第1観点の潤滑基油を含む潤滑油製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1観点を達成するために、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油は、9.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.5cSt(100℃)以下の動粘度、及び-50℃以下の流動点を有する。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、水素化分解処理された液体ガスオイルを含む供給原料に由来し、ここで前記処理された液体ガスオイルは、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が250℃以下であり、50%留出温度が350℃以下である。
【0014】
本開示の一実施形態によれば、前記処理された液体ガスオイルは、0.81~0.87の比重、5.0cSt(40℃)以下の動粘度、2.0cSt(100℃)以下の動粘度、5℃以下の流動点を有し、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有する。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、前記処理された液体ガスオイルを90重量%以上含む。
【0016】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油内の炭化水素分子の平均炭素数は14~25である。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油内の炭素数が13以下である炭化水素の含有量は、全体潤滑基油に対して25重量%以下である。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、10~50重量%のナフテン系炭化水素を含む。
【0019】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、0.3≦(CN+CA)/CP≦0.7であり、ここで、CNはナフテン系炭化水素の重量%であり、CAは芳香族炭化水素の重量%であり、CPはパラフィン系炭化水素の重量%である。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、25%≦CN+CA≦45%であり、ここで、CNはナフテン系炭化水素の重量%であり、CAは芳香族炭化水素の重量%である。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、500cSt(-40℃)以下の動粘度を有する。
【0022】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、引火点が110℃以上であり、150℃での蒸発減量が20重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が200℃以上である。
【0023】
本開示の第2観点を達成するための潤滑油製品は、本開示の第1観点の潤滑基油を20~99重量%含み、-40℃以下の流動点を有する。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑油製品は、合成基油を含まない。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑油製品は、ポリアルファオレフィン(PAO)またはエステル系基油を含まない。
【発明の効果】
【0026】
本開示による潤滑基油は、従来の低粘度潤滑基油に比べて低い粘度及び流動点を有するので、改善された低温性能を示す。前記潤滑基油は、低温性能が重要な超低粘度の高性能潤滑油製品や極低温地方で使用される潤滑油製品への適用が可能である。また、従来の鉱油系潤滑基油と適切に配合することにより、要求される性能を満足する潤滑油製品を製造することができる。
【0027】
従来、前記潤滑油製品を製造する場合、要求される性能を満足するためにはPAOやエステル系基油などの高価な合成基油を使用しなければならなかったが、本開示による潤滑基油で合成基油を代替することが可能となり、経済的な面での利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の一実施形態による水素化分解処理された液体ガスオイル(t-LGO)を用いて潤滑基油を製造する概略工程図である。
【
図2】本開示の一実施形態による潤滑基油のUV吸光度を測定した結果をプロットして示すものである。
【
図3】本開示の一実施形態による潤滑基油の硫酸呈色試験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付図面に関連している以下の詳細な説明と好適な実施形態からさらに明らかになるが、本開示が必ずしもこれに限定されるものではない。また、本開示を説明するにあたり、関連している公知の技術についての具体的な説明が本開示の要旨を不要に曖昧にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本開示で使用される用語「未転換油(UCO)」は、燃料油の製造のための水素化分解工程に供給されたが、水素化分解反応が行われていない未反応オイルを意味する。
【0031】
また、本開示で使用される用語「処理された液体ガスオイル(t-LGO)」は、水素化分解工程の後に分別蒸留によって分離された液体ガスオイルを意味する。
【0032】
潤滑基油
本開示は、処理された液体ガスオイル(t-LGO)を含む供給原料に由来する低動粘度及び低流動点を有する、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を提供する。
【0033】
本開示の処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、燃料油を製造するための水素化分解工程の生成物に由来し、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、収得前または収得後に接触脱ろう工程(CDW)に導入できる。すなわち、本開示の一実施形態によれば、前記水素化分解工程の生成物のうち、分別蒸留された、処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、後で接触脱ろう工程を経ることができ、所望の性状を有する潤滑基油は、前記接触脱ろう工程の生成物から分離、回収できる。本開示の他の実施形態によれば、前記水素化分解工程の生成物の一部は、接触脱ろう工程に供給され、前記接触脱ろう反応工程の生成物のうち、処理された液体ガスオイル(t-LGO)の性状に該当するオイルが分離、回収されて潤滑基油として適用できる。
【0034】
明確な理解を助けるために、
図1は本開示の一実施形態による水素化分解処理された液体ガスオイル(t-LGO)を用いて潤滑基油を製造する概略工程図を示す。
図1は減圧ガス油(VGO)を原料とする燃料油水素化工程で処理された液体ガスオイル(t-LGO)を用いて鉱油系潤滑基油を製造する本開示の一実施形態による概略工程図である。
図1を参照すると、本開示の一実施形態は、常圧蒸留工程(Crude Distillation Unit、CDU)から分離された常圧残渣油(Atmospheric Residue、AR)を減圧蒸留工程(V)で蒸留して減圧ガス油(VGO)と減圧残渣油(Vacuum Residue、VR)に分離し、前記減圧ガス油(VGO)を順次水素化処理工程(HDT)及び水素化分解工程(HDC)に供給する。水素化分解工程(HDC)を経た減圧ガス油(VGO)は、後で分別蒸留工程(Fs)に供給され、前記分別蒸留工程(Fs)を介して処理された液体ガスオイル(t-LGO)が分離される。前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、接触脱ろう工程(CDW)に供給され、前記接触脱ろう工程の生成物から本開示の潤滑基油が回収される。
【0035】
水素化処理工程(HDT)は、例えば、減圧ガス油(VGO)などの石油留分に含まれている硫黄、窒素、酸素、及び金属成分などの不純物を除去する工程であり、水素化処理工程(HDT)を経た後、水素化分解工程(HDC)の水素化分解過程を介して、前記石油留分は硬質炭化水素に転換される。前記水素化処理工程(HDT)及び水素化分解工程(HDC)は、本開示で用いられる、処理された液体ガスオイル(t-LGO)の収得を妨げなければ、従来のいずれの工程条件でも適用が可能である。
【0036】
本開示の一実施形態によれば、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、ASTM D2887による模写蒸留試験での10%留出温度が250℃以下、50%留出温度が350℃以下、好ましくは10%留出温度が240℃以下、50%留出温度が340℃以下、より好ましくは10%留出温度が230℃以下、50%留出温度が330℃以下であり得る。ASTM D2887試験は、ガスクロマトグラフィーの模写蒸留試験を介して試料の沸点を分析する方法であって、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)の温度を徐々に増加させると、t-LGO内の炭化水素成分がキャピラリーカラム(capillary column)を介して溶出され、同一の条件で測定された標準物との比較を介して沸点分布を示すことができる。前記留出温度が当該範囲から外れる場合、これを用いて製造する基油製品の動粘度及び低温粘度が高くなって潤滑油の性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
また、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、0.81乃至0.87、好ましくは0.82乃至0.86の比重を有することができる。比重の場合は、潤滑基油の性能に直接影響を及ぼすものではないが、処理された液体ガスオイル(t-LGO)の異物混入有無の判断に役立つ。
【0038】
また、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、40℃で5.0cSt以下、好ましくは4.7cSt以下、より好ましくは4.5cSt以下の動粘度を有することができ、100℃で2.0cSt以下、好ましくは1.8cSt以下、より好ましくには1.6cSt以下の動粘度を有することができる。動粘度は、流体の粘度を前記流体の密度で割った値を意味する。一般に、潤滑基油における粘度とは動粘度をいい、測定温度は国際標準化機構(ISO)の粘度分類によって40℃、100℃と定めている。
【0039】
また、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、5℃以下、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、最も好ましくは-15℃以下の流動点を有することができる。オイルを冷却させると、粘度が徐々に増大して流動性を失って固まり始めるが、このときの温度を凝固点といい、流動点は、凝固点に達する前の流動性を認めることができる温度を意味する。通常、凝固点よりも2.5℃高い温度をいう。
【0040】
また、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、硫黄及び窒素をそれぞれ2.0重量%以下で含有することができる。好ましくは、前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、硫黄及び窒素をそれぞれ1.0重量%以下で含有することができる。前記硫黄及び窒素は、微量の存在時にも後続工程の触媒及び最終製品の安定性などに悪影響を及ぼすおそれがあるので、通常、前述したように水素化処理工程(HDT)によって除去される。
【0041】
本開示の一実施形態によれば、前記供給原料は、処理された液体ガスオイル(t-LGO)を90%以上、好ましくは95%以上含むことができる。最も好ましくは、前記供給原料は、処理された液体ガスオイル(t-LGO)100%で構成できる。前記供給原料内の処理された液体ガスオイル(t-LGO)が90%未満含まれる場合には、本開示が目的とする、低温性能が改善された潤滑基油を得ることが難しくなる。
【0042】
前述したように、本開示において前記処理された液体ガスオイル(t-LGO)は、収得前または収得後に接触脱ろう工程(CDW)に導入される。接触脱ろう工程(CDW)は、低温性状を悪くするN-パラフィンを異性化(isomerization)反応又はクラッキング(cracking)反応によって低減又は除去する工程を意味する。したがって、接触脱ろう反応を経れば、優れた低温性状を持つことができるため、所望の潤滑基油の流動点規格を合わせることができる。本発明の一実施形態によれば、前記接触脱ろう工程(CDW)は、250~410℃の反応温度、30~200kg/cm2の反応圧力、0.1~3.0hr-1の空間速度(LHSV)及び150~1000Nm3/m3の供給原料に対する水素の体積比条件下で行われ得る。
【0043】
また、前記脱ろう工程に使用可能な触媒は、分子篩(Molecular Sieve)、アルミナ及びシリカ-アルミナから選択される酸点を有する担体と、周期律表第2族、第6族、第9族及び第10族元素から選択される1つ以上の水素化機能を有する金属を含み、特に第9族及び第10族(すなわち、VIII族)金属の中ではCo、Ni、Pt、Pdが好ましく、第6族(すなわち、VIB族)金属の中ではMo、Wが好ましい。前記酸点を有する担体の種類としては、分子篩(Molecular Sieve)、アルミナ、シリカ-アルミナなどを含み、この中でも、分子篩は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト(Zeolite))、SAPO、ALPOなどをいうものであって、10員酸素環(10-membered Oxygen Ring)を有するMedium Pore分子篩であるSAPO-11、SAPO-41、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48などと、12員酸素環を有するLarge Pore分子篩が使用できる。
【0044】
本開示において、前記脱ろう工程を経た留分は、さらに水素化仕上げ触媒の存在下の水素化仕上げ工程(Hydrofinishing、HDF)に導入される。前記水素化仕上げ工程(HDF)は、水素化仕上げ触媒の存在下に製品別の要求規格に応じて脱ろう処理された留分のオレフィン及び多環芳香族を除去して安定性を確保する工程である。特に、ナフテン系潤滑基油の製造の観点からは、芳香族の含有量及びガス吸湿性などを最終制御する工程である。本発明の一実施形態によれば、前記水素化仕上げ工程(HDF)は、150~300℃の温度、30~200kg/cm2の圧力、0.1~3h-1の空間速度(LHSV)及び300~1500Nm3/m3の流入した留分に対する水素の体積比条件下で行われ得る。
【0045】
また、水素化仕上げ工程に使用される触媒は、金属を担体に担持して使用され、前記金属は、水素化機能を有する第6族、第8族、第9族、第10族、第11族元素から選択された一つ以上の金属を含み、好ましくは、Ni-Mo、Co-Mo、Ni-Wの金属硫化物系又はPt、Pdの貴金属を使用することができる。また、水素化仕上げ工程に使用される触媒の担体としては、表面積の広いシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はゼオライトを使用することができ、好ましくは、アルミナ又はシリカ-アルミナを使用することができる。
【0046】
一方、前述したように処理された液体ガスオイル(t-LGO)を含む供給原料から製造される本開示の潤滑基油は、40℃で9.0cSt以下、好ましくは8.0cSt以下、より好ましくは7.0cSt以下の動粘度を有することができる。また、前記潤滑基油は、100℃で2.5cSt以下、好ましくは2.3cSt以下、より好ましくは2.0cSt以下の動粘度を有することができる。また、前記潤滑基油は、-50℃以下、好ましくは-60℃以下の流動点を有することができる。潤滑基油の低温性能について、動粘度及び流動点は、低温性能を判断することができる代表的な性状に該当する。要求される潤滑基油の粘度は潤滑基油の目的によって異なるが、温度が減少するほど流体の動粘度は増加するが、低温性能の改善を目的とする本開示における潤滑基油の動粘度は低いほど好ましい。また、潤滑基油の流動点が低いほど、より低温の環境で適用が可能なので、本開示による潤滑基油は、極地又は高い低温性能を要求する潤滑油製品などへの適用が可能であるという利点がある。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、潤滑基油内の炭化水素分子あたり14~25個、好ましくは14~22個、より好ましくは14~20個の平均炭素数を有することができる。前記平均炭素数が14個未満である場合には、引火点及び蒸発減量があまりにも低くなるという問題が発生するおそれがあり、前記平均炭素数が25個を超える場合には、低温性能(低温粘度及び流動点)があまり高くなり、潤滑油自体の性能を満足させることが難しくなるという問題が発生するおそれがある。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油内の炭素数が13以下である炭化水素分子の含有量は、全体潤滑基油に対して25重量%以下、好ましくは22重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり得る。前記潤滑基油内の炭素数が13以下である炭化水素分子の含有量が全体潤滑基油に対して25重量%を超える場合には、引火点が減少して高温での安定性が低下し、蒸発減量が増加して潤滑油の交替周期が短くなるという問題点が発生するおそれがある。
【0049】
また、本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、10~50重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~50重量%のナフテン系炭化水素を含むことができる。ナフテン系炭化水素の含有量が10重量%未満である場合には、アニリン点が増加して潤滑油製品の製造時に添加剤との相応性が減少し、引火点が減少するという問題が発生するおそれがある。これに対し、ナフテン系炭化水素の含有量が50重量%を超える場合には、酸化安定性及び熱安定性が減少するという問題が発生するおそれがある。
【0050】
本開示の潤滑基油において、潤滑基油内の炭化水素の種類別含有量は、潤滑基油の性状に有意な影響を及ぼす。より具体的には、パラフィン系炭化水素の場合は、潤滑基油内の含有量が増加するほど潤滑性能が増加し、酸化安定性及び熱安定性が向上し、温度変化による粘度維持能力が向上するが、低温での流れ性は減少する。また、芳香族炭化水素の場合は、潤滑基油内の含有量が増加するほど添加剤との相応性が向上するが、酸化安定性及び熱安定性が低下し、有害性が増加する。また、ナフテン系炭化水素の場合は、潤滑基油内の含有量が増加するほど添加剤との相応性が向上し、低温での流れ性が向上するが、酸化安定性及び熱安定性が低下する。一方、本開示における前記潤滑基油内の炭化水素の種類別含有量は、ASTM D2140又はASTM D3238試験に規定された組成分析方法によって測定される。
【0051】
本発明の発明者は、本発明の潤滑基油の性状が次の関係式によって影響されることを見出した。本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、0.3≦(CN+CA)/CP≦0.7であり得る。ここで、CNはナフテン系炭化水素の重量%、CAは芳香族炭化水素の重量%、CPはパラフィン系炭化水素の重量%である。前記(Cn+Ca)/Cp値が0.3未満である場合には、目的とする潤滑基油の低い流動点の達成が難しくなるという問題点がある。これに対し、前記(Cn+Ca)/Cp値が0.7を超える場合には、目的とする潤滑基油の低温粘度の達成が難しくなるという問題点がある。
【0052】
本開示の他の実施形態によれば、前記潤滑基油は、25重量%≦Cn+Ca≦45重量%であり得る。同様に、前記(Cn+Ca)値が25重量%未満である場合には、目的とする潤滑基油の低い流動点の達成が難しくなるという問題点があり、これに対し、(Cn+Ca)値が45重量%を超える場合には、目的とする潤滑基油の低温粘度の達成が難しくなるという問題点がある。
【0053】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、また、-40℃で測定したとき、550cSt以下、好ましくは520cSt以下、より好ましくは500cSt以下の低温粘度を有することができる。潤滑基油の動粘度が-40℃で550cStを超える場合には、動粘度があまり高くて極低温環境で潤滑基油としての機能が難しくなるという問題点がある。
【0054】
本開示の一実施形態によれば、前記潤滑基油は、引火点が110℃以上であり、150℃での蒸発減量が20重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が200℃以上であり得る。好ましくは、前記潤滑基油は、引火点が120℃以上であり、150℃での蒸発減量が18重量%以下であり、ASTM D2887による模写蒸留試験での5%留出温度が220℃以上であり得る。潤滑油は、様々な分野で適用されるために、前記分野で発生しうる熱に対する抵抗を持たなければならない。例えば、特定の引火点を有する潤滑油は、前記引火点よりも高い温度で点火するおそれがあり、前記引火点よりも高い温度が要求される環境で潤滑油としての適用が不可能である。また、潤滑基油の低い蒸発性は、オイルの消耗を減らし、オイルの耐久性を増加させるので、低粘度の潤滑油を製造する上で重要である。前記模写蒸留試験での5%留出温度が200℃未満である場合には、潤滑基油としての引火点及び蒸発減量性能を満たさないという問題が発生するおそれがある。本開示において、前記潤滑基油の引火点は、ASTM D92-COC法によって測定される。また、蒸発減量は、ASTM D5800試験で温度条件を250℃の代わりに150℃にして測定される。
【0055】
潤滑油製品
本開示は、低温性能が改善された鉱油系潤滑基油を含む潤滑油製品を提供する。前記低温性能が改善された潤滑基油として、前述した潤滑基油が使用される。
【0056】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、本開示による潤滑基油を20~99重量%含むことができる。本開示による潤滑基油の含有量は、潤滑油製品の用途及び目的に応じて多様に調節可能であり、本開示による潤滑基油は、所望の製品仕様に合わせて他の鉱油系潤滑基油製品と適切に配合して使用できる。
【0057】
前記潤滑油製品は、-40℃以下、好ましくは-45℃以下、より好ましくは-50℃以下の流動点を有することができる。
【0058】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は合成基油を含有しない。例えば、前記潤滑油製品は、PAO又はエステル系基油を含まない。高価なPAO又はエステル系潤滑基油を用いなくても、本開示による潤滑基油を含有することにより、優れた低温性能を有する潤滑油製品の製造が可能である。
【0059】
本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、例えば酸化防止剤、防錆剤、清浄分散剤、消泡剤、粘度向上剤、粘度指数向上剤、極圧剤、流動点降下剤、腐食防止剤、又は乳化剤などであり、但し、潤滑油製品に一般的に添加される添加剤であれば、これに限定されない。
【0060】
前記潤滑油製品は、低温性能が要求される分野又は環境で使用が可能であり、従来のPAO又はエステル系潤滑基油で製造された潤滑油製品を代替することが可能である。前記潤滑油製品は、例えば、自動車用衝撃吸収オイル(shock absorber oil)、極地用油圧作動油、電気絶縁油などであり得るが、これに限定されない。
【0061】
また、本開示による一実施形態において、前記潤滑油製品は、プラスチック、光沢剤、製紙産業、繊維潤滑油、殺虫剤基剤油、製薬組成物、化粧品、食品及び食品処理機械類の潤滑処理などに使用されるホワイトオイル(white oil)として適用が可能である。
【0062】
以下、本開示の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本開示をより容易に理解するために提供されるものに過ぎない。本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
実施例
1.潤滑基油(YUBASE1)の製造
減圧ガス油(VGO)を原料とする燃料油水素化工程の生成物を分別蒸留してt-LGOを得た。得られたt-LGOの性状は下記表2のとおりであり、各性状の数値は、ASTM法によって測定された。
【0064】
【0065】
前記得られたt-LGOを接触脱ろう反応器に供給し、接触脱ろう工程の生成物を水素化仕上げ反応器に供給した。前記接触脱ろう反応器の工程条件及び水素化仕上げ反応器の工程条件は、下記表3に示す。その後、水素化仕上げ反応器の生成物が潤滑基油として回収された。
【0066】
【0067】
2.製造された潤滑基油の性状及び組成の分析
前述したように製造された潤滑基油の組成及び性状を分析した。前記組成及び性状はそれぞれ表4及び表5に示す。
【0068】
【0069】
潤滑基油内の前記炭化水素の類型別含有量は、ASTM D2140試験方法によって測定された。前記表4に示すように、YUBASE1の(CN+CA)/CPは0.3乃至0.7の範囲内であり、CN+CAは25wt%乃至45wt%の範囲内であることを確認することができる。
【0070】
【0071】
前記表5に示すように、本開示の潤滑基油は、合成基油ではなく、鉱油系潤滑基油に該当するにも拘らず、別の添加剤の追加なしでも低い動粘度及び優れた低温性能を有する潤滑基油を確認することができる。
【0072】
一方、前述したように、従来の低温性能が要求される分野で潤滑基油としてPAOが主に使用された。このため、本開示の潤滑基油がPAOを代替して使用することができるか否かは、本開示の重要な目的に該当する。本開示による潤滑基油(YUBASE1、以下「YU-1」という)の性状及びPAOの性状は、下記表6で比較される。
【0073】
【0074】
前記表6に示すように、本開示の潤滑基油(YU-1)は、PAOに比べて優れた或いは類似の動粘度及び流動点を有することが分かる。
【0075】
3.潤滑油製品の性能確認
潤滑油製品に製造された場合の本開示による潤滑基油の低温性能を確認するために、表4の組成及び表5の性状を有する潤滑基油(YU-1)を含む潤滑油製品を製造し、その性能を確認した。
【0076】
(1)自動車用衝撃吸収オイル
YU-1を用いて、自動車用衝撃吸収装置に使用される潤滑油製品を製造した。前記製品の組成は、下記表7のとおりである。
【0077】
【0078】
また、前記衝撃吸収オイルの性状は、表8に示す。
【0079】
【0080】
表8に示すように、YU-1潤滑基油を使用することにより、PAOの使用なしでも、優れた性能を有する衝撃吸収オイルの製造が可能であることを確認することができる。
【0081】
(2)極地用油圧作動油ISO VG 32
YU-1と、SKルーブリーコンチュ社から入手可能なグループIII基油であるYU-L3とを配合して、ISO粘度等級32に該当する極地用油圧作動油を製造した。前記YU-L3の性状は、下記表9のとおりである。
【0082】
【0083】
また、前記極地用油圧作動油の組成は、下記表10に示す。
【0084】
【0085】
また、前記極地用油圧作動油の性状は、表11に示す。
【0086】
【0087】
表11に示すように、YU-1とYU-L3とが配合された油圧作動油は、-40℃で低いブルックフィールド粘度を有し、且つ低い流動点を有するので、優れた低温性能を有する製品であることが分かる。これにより、PAOを使用しなくても、低温性能に優れた鉱油系潤滑油製品の設計が可能であることが分かる。
【0088】
(3)極地用油圧作動油ISO VG 15
YU-1を用いて、ISO粘度等級15に該当する極地用油圧作動油を製造した。前記極地用油圧作動油の組成は、下記表12に示す。
【0089】
【0090】
また、前記極地用油圧作動油の性状は、下記表13に示す。
【0091】
【0092】
表13に示すように、YU-1を用いて製造された油圧作動油は、-40℃で低いブルックフィールド粘度及び低い流動点を有するという点で低温性能に優れた製品であることが分かる。
【0093】
(4)電気絶縁油
YU-1と、SKルーブリーコンチュ社から入手可能なグループIII基油であるYU-3とを配合して、電気絶縁油を製造した。前記YU-3の性状は、下記表14のとおりである。
【0094】
【0095】
前記2種類の基油の含有量比を異ならせて、それによる電気絶縁油の性状を試験した。試験結果は、下記表15にまとめた。
【0096】
【0097】
表15に示すように、YU-1の含有量が増加するほど引火点は減少するが、粘度及び流動点がさらに改善されるという利点があることを確認することができる。上記の結果から、YU-1に他の鉱油系潤滑基油を適切に配合することにより、国際標準規格を満足する電気絶縁油の設計が可能であることが分かる。
【0098】
(5)ホワイトオイルの適用可能性
YU-1のFood Gradeホワイトオイルとして活用できるか否かを実験によって確認した。
【0099】
1)UV吸光度の測定
米国食品医薬品局(FDA)で規定するFood Gradeホワイトオイルに該当するかを確認するために、YU-1に直接光を照射して波長帯260~350nmのUV吸光度を測定した。測定結果は、
図2に示した。
【0100】
実験の結果、前記波長帯でYU-1のUV吸光度が0.1よりも小さいことを確認した。米国食品医薬品局(FDA)で規定するFood Gradeホワイトオイルの最大UV吸光度は0.1である。これは、IP 346 methodによるDMSO抽出法によるUV吸光度値を意味する。DMSO抽出法によるUV吸光度値は、一般的に試料に直接光を照射して測定した吸光度値よりもその値が低く測定されることが知られている。このため、本開示のYU-1の場合は、直接光を照射して測定した吸光度値が0.1以下であるので、DMSO抽出法によってUV吸光度を測定するときにさらに低い吸光度値を持つことが自明である。したがって、本開示のYU-1がFood Gradeを満足することが分かった。
【0101】
2)硫酸呈色試験
YU-1に含有されている不純物の量がホワイトオイルとして活用可能な範囲内であるか否かを確認するために、硫酸を用いて定性的な実験を行った。硫酸呈色試験は、ASTM D565に規定された試験方法に基づいて行われた。硫酸呈色試験の結果は、
図3に示した。
【0102】
図3に示すように、YU-1の変色程度は、標準物の変色程度に比べて少ないことが確認された。したがって、YU-1内の不純物量がホワイトオイルとして活用可能な範囲内であることが分かる。
【0103】
前記UV吸光度の測定及び硫酸呈色試験によって、YU-1がFood Gradeホワイトオイルとして活用可能であることを確認した。
【0104】
本開示の単なる変形ないし変更はいずれも、本開示の範囲に属するものであり、本開示の具体的な保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。
【国際調査報告】