IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョージアン ルイジアメイ バイオテック カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2022-514815CDR1領域に突然変異したヒト化CD19 scFvを有するCAR-T細胞
<>
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図1
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図2
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図3
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図4
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図5
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図6
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図7
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図8
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図9
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図10
  • 特表-CDR1領域に突然変異したヒト化CD19  scFvを有するCAR-T細胞 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】CDR1領域に突然変異したヒト化CD19 scFvを有するCAR-T細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220208BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220208BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K38/17
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530316
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(85)【翻訳文提出日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2019109633
(87)【国際公開番号】W WO2020108090
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/773,112
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521230551
【氏名又は名称】ジョージアン ルイジアメイ バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG RUIJIAMEI BIOTECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 807-808,Kechuang Building A,No.586 Xihuan Road, Keqiao Economic Development Park,Keqiao District,Shaoxing,Zhejiang 312000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー リージュン
(72)【発明者】
【氏名】ゴルボフスカヤ ヴィータ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA41
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】本発明は、CDR1にバリンからグリシンへの突然変異を有するヒト化CD19一本鎖可変断片(scFv)であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するヒト化VHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するヒト化VLを含むものに関する。また、本発明は、CD19キメラ抗原受容体融合タンパク質であって、N末端からC末端へ、(i)本発明の一本鎖可変断片(scFv)、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)少なくとも一つの共刺激ドメイン、および(iv)活性化ドメインを含むものに関する。
【解決手段】体内と体外のCAR-T細胞において、このようなヒト化されたCD19-CAR-T細胞はサイトカインIFN-γを分泌し、特異的な殺傷活性を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化CD19の一本鎖可変断片(scFv)であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するVHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するVLを含むこと、
を特徴とするscFv。
【請求項2】
さらにVHとVLの間のリンカーを含むこと、
を特徴とする請求項1に記載のscFv。
【請求項3】
配列番号7で示されるアミノ酸配列を有すること、
を特徴とする請求項2に記載のscFv。
【請求項4】
キメラ抗原受容体(CAR)融合タンパク質であって、N末端からC末端へ、
(i)請求項1に記載のscFv、
(ii)膜貫通ドメイン、
(iii)少なくとも一つの共刺激ドメイン、および
(iv)活性化ドメイン
を含むことを特徴とするCAR融合タンパク質。
【請求項5】
配列番号14で示されるアミノ酸配列を有すること、
を特徴とする請求項4に記載のCAR融合タンパク質。
【請求項6】
抗ヒトCD19の抗体であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するVHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するVLを含むこと、
を特徴とする抗体。
【請求項7】
請求項1に記載のscFv、または請求項4に記載のCAR融合タンパク質、または請求項6に記載の抗体をコードすることを特徴とする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含むこと、
を特徴とするベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターまたは外来染色体として組み込まれた請求項7に記載の核酸分子を含むか、染色体に外来の請求項7に記載の核酸分子が組み込まれているか、あるいは請求項1に記載のscFv、または請求項4に記載のCAR融合タンパク質、または請求項6に記載の抗体を発現すること、
を特徴とする宿主細胞。
【請求項10】
請求項1に記載のscFv、または請求項4に記載のCAR融合タンパク質、または請求項8に記載のベクター、または請求項9に記載の細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有すること、
を特徴とする製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト化CD19-CAR-T細胞であって、含まれるCD19 scFvがCD19 scFv VH CDR1領域に突然変異を有するものに関する。本発明のヒト化CD19-CAR-T細胞は、特異的に白血病細胞の生長を低下させ、かつ白血病およびリンパ腫の患者の細胞治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、非常に将来性のある癌の治療方法になりつつある。T細胞またはTリンパ球は免疫系の有効な武器で、持続的に正常細胞における外来抗原または非正常細胞(たとえば癌細胞または感染された細胞)を捜索することができる。遺伝子修飾されたCAR(キメラ抗原受容体)構築物を有するT細胞は、腫瘍特異性T細胞の設計において最も見られる方案である。腫瘍関連抗原(TAA)を標的とするCAR-T細胞は患者に導入することができ(養子細胞移植またはACTと呼ばれる)、有効な免疫治療方法の代表的なものである[1,2]。化学療法または抗体技術と比べ、CAR-T技術の利点は、リプログラミングされた遺伝子改変T細胞が患者の体内において増殖して存在し続けることができる(「生きている薬」)[1,3,4]。
【0003】
通常、CARはN末端に位置するモノクローナル抗体から誘導された一本鎖可変断片(scFv)、ヒンジ領域、膜貫通ドメインおよびいくつかの細胞内共刺激ドメイン((i)CD28、(ii)CD137(4-1BB)、CD27またはほかの共刺激ドメイン)、ならびに直列に連結したCD3-ζ活性化ドメインを含む(図1)[1,2]。CARの発展は、第一世代(共刺激ドメインなし)から、第二世代(一つの共刺激ドメインを有する)、第三世代(複数の共刺激ドメインを有する)になってきた。生成する二つの共刺激ドメインを有するCAR(すなわち、いわゆる第三世代のCAR)は、CAR-T細胞の細胞毒性を増強させ、そしてCAR-T細胞の持続性を改善することで、その抗腫瘍活性を増強させる。CARの構造は図1に示す。左欄は第一世代のCAR(共刺激ドメインなし)の構造で、中央は第二世代のCARで(一つの共刺激ドメインCD28または4-BBを有する)、右欄は第三世代のCAR(二つまたは複数の共刺激ドメインを有する)である。当該図はGolubovskayaa, Wu,Cancers,2016[6]からのものである。
【0004】
本分野では、改良された治療効果が改善され、かつ毒性が低下した養子T細胞の免疫療法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、突然変異したCD19 scFvを有するヒト化CD19-CAR-T細胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面では、ヒト化CD19の一本鎖可変断片(scFv)であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するVHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するVLを含むものを提供する。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記のscFvは、VHとVLの間のリンカーを含む。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記のscFvは、配列番号7で示されるアミノ配列を有する。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記のscFvは、配列番号4で示されるアミノ配列を有する。
【0010】
本発明の第二の側面では、キメラ抗原受容体(CAR)融合タンパク質であって、N末端からC末端へ、
(i)本発明の第一の側面に記載のscFv、
(ii)膜貫通ドメイン、
(iii)少なくとも一つの共刺激ドメイン、および
(iv)活性化ドメイン
を含むものを提供する。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記のキメラ抗原受容体融合タンパク質は、下記式Iの構造を有する。
【0012】
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (I)
(式中において、
各「-」は独立に連結ペプチドまたはペプチド結合である。
Lは任意にシグナルペプチド配列である。
scFvは本発明の第二の側面に記載のscFvである。
Hは任意にヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。)
【0013】
もう一つの好適な例において、前記のLは、CD8、GM-CSF、CD4、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記のLは、CD8由来のシグナルペプチドである。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8、CD28、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のヒンジ領域である。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8由来のヒンジ領域である。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記のTMは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通ドメインである。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記のTMは、CD8由来の膜貫通ドメイン、および/またはCD28由来の膜貫通ドメインである。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記のCは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の共刺激シグナル分子である。
【0020】
もう一つの好適な例において、Cは、4-1BB由来の共刺激シグナル分子、および/またはC28由来の共刺激シグナル分子である。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記のCAR融合タンパク質は、配列番号14で示されるアミノ配列を有する。
【0022】
本発明の第三の側面では、抗ヒトCD19の抗体であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するVHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するVLを含むものを提供する。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、ヒトCD19タンパク質に結合している。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、動物由来の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはこれらの組み合わせから選ばれる。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は二本鎖抗体または一本鎖抗体である。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記の抗体はモノクローナル抗体である。
【0027】
本発明の第四の側面では、
(I) 本発明の第一の側面に記載のscFv、または本発明の第三の側面に記載の抗体、ならびに
(II) 任意に発現および/または精製を補助するタグ配列
を有する組み換えタンパク質を提供する。
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列は6Hisタグを含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質(またはポリペプチド)は融合タンパク質を含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は、単量体、二量体、または多量体である。
【0028】
本発明の第五の側面では、
(a) 本発明の第一の側面に記載のscFv、または本発明の第三の側面に記載の抗体、ならびに
(b) 検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分とカップリングするカップリング部分
を含む抗体薬物複合体を提供する。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記の抗体部分と前記のカップリング部分は化学結合またはリンカーを介してカップリングしている。
【0030】
本発明の第六の側面では、本発明の第一の側面に記載のscFv、または本発明の第二の側面に記載のCAR融合タンパク質、または本発明の第三の側面に記載の抗体をコードする核酸分子を提供する。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記核酸分子は、本発明の第一の側面に記載のscFvをコードし、かつ配列番号1で示されるVLをコードする核酸配列および配列番号2で示されるVLをコードする核酸配列を有する。
【0032】
本発明の第七の側面では、本発明の第六の側面に記載の核酸分子を含むベクターを提供する。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記のベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0035】
本発明の第八の側面では、本発明の第七の側面に記載のベクターを含有するか、あるいは染色体に外来の本発明の第六の側面に記載の核酸分子が組み込まれたか、あるいは本発明の第一の側面に記載のscFvを発現するか、あるいは本発明の第二の側面に記載のCAR融合タンパク質を発現するか、あるいは本発明の第三の側面に記載の抗体を発現する宿主細胞を提供する。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記細胞は単離された細胞で、および/または前記細胞は遺伝子改変された細胞である。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記細胞は哺乳動物の細胞である。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記細胞はT細胞である。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は、遺伝子改変された免疫細胞である。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の遺伝子改変された免疫細胞は、T細胞またはNK細胞を含み、好ましくは(i)キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)、または(ii)キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)である。
【0041】
本発明の第九の側面では、本発明の第二の側面に記載のCAR融合タンパク質を発現する遺伝子改変免疫細胞を製造する方法であって、本発明の第六の側面に記載の核酸分子または本発明の第七の側面に記載のベクターをT細胞またはNK細胞の中に形質導入することにより、前記遺伝子改変免疫細胞を得る工程を含む方法を提供する。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記の方法は、さらに、得られた工学化された免疫細胞に対して機能および有効性の検出を行う工程を含む。
【0043】
本発明の第十の側面では、本発明の第一の側面に記載のscFv、または本発明の第二の側面に記載のCAR融合タンパク質、または本発明の第七の側面に記載のベクター、または本発明の第八の側面に記載の細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する製剤を提供する。
【0044】
本発明の第十一の側面では、癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造のための、本発明の第一の側面に記載のscFv、本発明の第二の側面に記載のCAR融合タンパク質、本発明の第三の側面に記載の抗体、本発明の第四の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第五の側面に記載の抗体薬物複合体、または本発明の第八の側面に記載の細胞の使用を提供する。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記血液腫瘍は、急性骨髄球性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記固形腫瘍は、胃癌、胃癌腹膜転移、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、リンパ癌、鼻咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、脳膠細胞腫、子宮内膜癌、睾丸癌、結直腸癌、尿路腫瘍、甲状腺癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記固形腫瘍は、卵巣癌、中皮腫、肺癌、膵癌、乳癌、肝臓癌、子宮内膜癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0049】
本発明の第十二の側面では、本発明の第八の側面に記載の細胞を製造するためのキットであって、容器と、前記容器内にある本発明の第六の側面に記載の核酸分子、または本発明の第七の側面に記載のベクターとを含むキットを提供する。
【0050】
本発明の第十三の側面では、癌または腫瘍の予防および/または治療のための、本発明の第八の側面に記載の細胞、または本発明の第十の側面に記載の製剤の使用を提供する。
【0051】
本発明の第十四の側面では、疾患を治療する方法であって、治療が必要な対象に適量の本発明の第八の側面に記載の細胞、または本発明の第十の側面に記載の製剤を施用する工程を含む方法を提供する。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記疾患は癌または腫瘍である。
【0053】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】CARの構造を示す。
図2】ヒト化CD19-CAR構築物の構造である。
図3】CDR1領域に突然変異(V27G)があるヒト化CD19モデルを示す。
図4】ヒト化FAB抗体およびフローサイトメーターを使用したFACSによって検出されたヒト化CD19-CAR構築物を示す。
図5】ヒト化CD19-CAR-T細胞がHela-CD19細胞を殺傷したが、Hela細胞を殺傷しなかったことを示す。
図6】ヒト化CD19-CAR-T細胞がHeLa-CD19陽性細胞に対してIFN-γを分泌したことを示す。*、p<0.05、ヒト化CAR-T細胞がマウスCD19-CAR-T細胞、T細胞およびモックCAR-T(Mock CAR-T)細胞と比べ、Hela-CD19細胞に対して分泌したIFN-γである。
図7】ヒト化CD19-CAR-T細胞が顕著にマウス異種移植腫瘍の生長を低下させたことを示す。
図8】ヒト化CD19-CAR-T細胞が顕著にNSGマウス体内におけるRaji-ルシフェラーゼ異種移植腫瘍の全光束(total flux、イメージング信号)を低下させたことを示す。P<0.05、CD19-CAR-T細胞とモック(Mock)、1×PBSで処理されたマウスである。
図9】ヒト化CD19-CAR-T細胞が顕著にRaji異種移植モデルマウスの生存時間を延長させたことを示す。Kaplan-Meier生存曲線では、マウス由来CD19-CAR-T細胞およびモックCAR-T細胞と比べ、VH CDR1領域が突然変異(V27G)したヒト化CD19-CAR-T細胞がマウスの生存時間を延長させたことが示された。各マウスに1×107個細胞で、CAR-T細胞を静脈注射した。 *、p<0.05、hCD19-41BB-CD3 CAR-T細胞がモックCAR-T細胞と比べ、**、p<0.05、mCD19-41BB-CD3 CAR-T細胞がモックCAR-T細胞と比べた。
図10】突然変異していないヒト化CD19 CAR-T細胞で処理されたマウスと比べ、VH CDR1にV27G突然変異があるヒト化CD19 CARがマウスの生存時間を延長させたことを示す。
図11】マウス体内に注射した後、ヒトFABで検出されたヒト化CD19-CAR-T細胞を示す。抗FMC63ウサギ抗体はマウス由来CD19-CAR-T細胞を、ヒト抗-(Fab'2)抗体はヒト化CD19-CAR-T細胞を検出した。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本明細書で用いられるように、「キメラ抗原受容体(CAR)」は融合タンパク質で、抗原に結合できる細胞外ドメイン、細胞外ドメインが異なるポリペプチドから誘導される膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。「キメラ抗原受容体(CAR)」は「キメラ受容体」、「T-body」または「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることもある。「抗原に結合できる細胞外ドメイン」とはある抗原に結合できる任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドである。「細胞内ドメイン」とは既知のシグナルを伝達することによって細胞内における生物過程を活性化または抑制するドメインとして作用する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドである。
【0056】
「CDR」は抗体VHまたはVL鎖の相補性決定領域で、抗原との結合に非常に重要である。
【0057】
本明細書で用いられるように、「ヒト化抗体」は非ヒト由来の抗体で、そのタンパク質配列は人体内で自然に生成する抗体バリアントとの類似性が増加するように修飾されている。
【0058】
本明細書で用いられるように、「ドメイン」とはポリペプチドにおけるほかの領域と独立してかつ特定の構造にフォルディングした領域である。
【0059】
本明細書で用いられるように、「一本鎖可変領域断片(scFv)」とは抗体から誘導される一本鎖ポリペプチドで、抗原に結合する能力を維持する。scFvの実例は組み換えDNA技術によって形成される抗体ポリペプチドを含み、その中で免疫グロブリン重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)断片のFv領域がスペーサー配列を介して連結している。scFvを遺伝子改変する各種の方法は当業者に熟知のものである。
【0060】
本明細書で用いられるように、「腫瘍抗原」とは抗原性を有する生物分子で、その発現が癌につながる。
【0061】
CD19
CD19はB細胞抗原で、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)および非ホジキンスリンパ腫を含むすべてのB細胞悪性腫瘍において発現される。このように白血病およびリンパ腫で一般的に発現されることで、当該抗原はCAR-T細胞がターゲティングする注目の標的になっている[3]。
【0062】
CD19の構造とシグナル伝達
ヒトCD19タンパク質は95 kDaの膜貫通糖タンパク質で、556個のアミノ酸からなる。以下に示すように、20~291番目は細胞外ドメインで、292~313番目は膜貫通ドメインで、314~556番目は細胞内ドメインである(細胞外ドメインは下線で表記されている)。免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、B細胞抗原受容体(BCR)依存性および非依存性シグナル伝達を仲介する。CD19はBCRおよびほかの細胞表面のタンパク質と結合し、ほかのキナーゼおよびリガンドとの結合によって細胞内シグナル伝達を調節する。CD19シグナルはSrcファミリーのキナーゼ、PI3Kキナーゼ、Abl、AKT依存性シグナル経路に関連する。CD19はB細胞が仲介する生存シグナル伝達および免疫応答のバイオマーカーである。
10 20 30 40 50
MPPPRLLFFL LFLTPMEVRP EEPLVVKVEE GDNAVLQCLK GTSDGPTQQL
60 70 80 90 100
TWSRESPLKP FLKLSLGLPG LGIHMRPLAI WLFIFNVSQQ MGGFYLCQPG
110 120 130 140 150
PPSEKAWQPG WTVNVEGSGE LFRWNVSDLG GLGCGLKNRS SEGPSSPSGK
160 170 180 190 200
LMSPKLYVWA KDRPEIWEGE PPCLPPRDSL NQSLSQDLTM APGSTLWLSC
210 220 230 240 250
GVPPDSVSRG PLSWTHVHPK GPKSLLSLEL KDDRPARDMW VMETGLLLPR
260 270 280 290 300
ATAQDAGKYY CHRGNLTMSF HLEITARPVL WHWLLRTGGW KVSAVTLAYL
310 320 330 340 350
IFCLCSLVGI LHLQRALVLR RKRKRMTDPT RRFFKVTPPP GSGPQNQYGN
360 370 380 390 400
VLSLPTPTSG LGRAQRWAAG LGGTAPSYGN PSSDVQADGA LGSRSPPGVG
410 420 430 440 450
PEEEEGEGYE EPDSEEDSEF YENDSNLGQD QLSQDGSGYE NPEDEPLGPE
460 470 480 490 500
DEDSFSNAES YENEDEELTQ PVARTMDFLS PHGSAWDPSR EATSLGSQSY
510 520 530 540 550
EDMRGILYAA PQLRSIRGQP GPNHEEDADS YENMDNPDGP DPAWGGGGRM

GTWSTR (配列番号16)
【0063】
本発明の突然変異したCD19 scFv
本発明者は、VH CDR1領域の突然変異(V27G)を含むヒト化CD19 scFvを作り、当該突然変異を含むヒト化CD19 scFvの配列に基づいて特異的にCD19を標的とするCAR-T細胞を製造した。本発明者は、CD19抗原を過剰発現する癌細胞を標的とするため、ヒト化CD19-CAR-T細胞を製造した。本発明のヒト化CD19-CAR-T細胞は白血病癌細胞に対して高レベルのIFN-γを分泌してHeLa-CD19陽性標的細胞を殺傷するが、対照のHela細胞を殺傷しない。
【0064】
本発明は、マウスクローンFMC63由来のヒト化抗ヒトCD19抗体であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するヒト化VHおよび配列番号5で示されるアミノ酸配列を有するヒト化VLを含むものに関する。一つの実施形態において、ヒト化抗ヒトCD19抗体は一本鎖可変断片(scFv)である。
【0065】
また、本発明は、キメラ抗原受容体融合タンパク質であって、N末端からC末端へ、(i)抗CD19の一本鎖可変断片(scFv)(本発明)、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)少なくとも一つの共刺激ドメイン、および(iv)活性化ドメインを含むものに関する。
【0066】
図2は、ヒト化CD19-CAR構築物の構造を示す。VHのCDR1領域に突然変異(V27G)を含むヒト化CD19 scFv(クローン11)を示す。第二世代のCD19-CARを使用した。
【0067】
本発明者は、CD19 scFvのCDR1領域に突然変異V27Gがあるヒト化CD19-scFvを製造し、そして当該ヒト化CD19-scFvをCARの製造に使用することにより、白血病細胞に対するCD19-41BB-CD3-CAR-T(hCD19-CAR-T)細胞を製造した。本発明のヒト化CD19-CAR-T細胞は高レベルのIFN-γを分泌し、HeLa-CD19細胞との細胞毒性試験において陽性を示したが、Hela細胞とは陽性を示さなかったことから、CAR-T細胞はCD19過剰発現の標的癌細胞に対して特異的な殺傷活性を有することが示された。
【0068】
本発明のヒト化CD19-scFvは、マウスCD19-scFvと比べる利点がヒト化CD19 scFvのヒトに対する低い免疫原性を含む。そのため、ヒト化CD19-CAR-T細胞は多くの臨床使用において治療剤として有利である。
【0069】
突然変異していないヒト化CD19-scFvと比べ、、本発明のVH CDR1に突然変異(VHにおけるV27G)を含むヒト化CD19-scFvの利点は、突然変異したヒト化CD19-CAR T細胞によって治療されるマウスの生存時間を延長させることを含む。
【0070】
本発明のヒト化CD19 scFvは、免疫治療のための使用:毒素/薬物結合抗体、モノクローナル治療抗体およびCAR-T細胞による免疫治療に有用である。
【0071】
本発明のヒト化CD19 scFvを使用したヒト化CD19-CAR-T細胞は有効にCD19陽性癌細胞系におけるCD19抗原をターゲティングする。
【0072】
ヒト化CD19-CAR-T細胞は、異なる化学療法:チェックポイント阻害剤、標的療法、小分子阻害剤や抗体と併用することができる。
【0073】
ヒト化CD19-CAR-T細胞はCD19陽性癌細胞の臨床使用に有用である。
【0074】
共刺激ドメインの修飾:CD28、4-1BBなどはその治療効果の増加に有用である。タグが結合したヒト化CD19 scFvはCARの生成に有用である。
【0075】
ヒト化CD19-CAR-T細胞は、異なる安全スイッチ:t-EGFR、RQR(リツキシマブ-CD34-リツキシマブ)、誘導性カスパーゼ9(caspase-9)などとともに使用することができる。
【0076】
第三世代のCAR-Tまたはほかの共刺激シグナル伝達ドメインはCAR内における同様のヒト化CD19-scFvに有用である。
【0077】
ヒト化CD19 CARはほかの腫瘍抗原または腫瘍微環境を標的とするCAR、たとえばVEGFR-1-3、PDL-1と組み合わせることができ、またCD19およびCD3またはほかの抗原を標的とする二重特異性抗体を製造して治療に使用することもできる。
【0078】
ヒト化CD19-CAR-T細胞は癌幹細胞または腫瘍始原細胞への対抗に有用で、両者は化学療法に最も耐性があって侵襲性腫瘍を形成する可能性がある。
【0079】
ベクター
また、本発明は、本発明のCAR配列をコードするDNA構築物を提供する。
【0080】
所期の分子をコードする核酸配列は本分野で既知の組み換え方法、たとえば遺伝子を発現する細胞においてライブラリーをスクリーニングすること、既知の当該遺伝子を含むベクターから当該ベクターを得ること、あるいは標準の技術で当該遺伝子を含む細胞および組織から直接単離することによって得ることができる。必要により、興味のある遺伝子は合成によって生産することもできる。
【0081】
また、本発明は本発明の発現カセットが挿入されたベクターを提供する。レトロウイルス、たとえばレンチウイルス由来のベクターは、導入された遺伝子の長期間で、安定した組み込みおよびその子細胞における増殖を可能にするため、長期間の遺伝子の移動を実現させる適切な道具である。レンチウイルスは、増殖しない細胞、たとえば肝細胞に導入することができるため、発癌性レトロウイルス、たとえばマウス白血病ウイルスのベクターを超える利点を持つ。また、低免疫原性という利点もある。
【0082】
簡単に要約すると、通常、本発明の発現カセットまたは核酸配列を操作可能にプロモーターに連結し、そしてそれを発現ベクターに組み込む。当該ベクターは、真核細胞の複製および組み込みに適する。典型的なクローニングベクターは、所期の核酸配列の発現を調節するのに使用できる転写と翻訳のターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む。
【0083】
本発明の発現構築体は標準の遺伝子送達プロトコールによって、核酸免疫および遺伝子療法に使用することもできる。遺伝子送達の方法は、本分野では既知である。たとえば、米国特許番号5,399,346、5,580,859、5,589,466を参照し、ここで引用によって全文を取り込む。もう一つの実施形態において、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0084】
当該核酸は様々な種類のベクターにクローニンすることができる。たとえば、当該核酸がクローニングできるベクターは、プラスミド、ファージ、ファージ誘導体、動物ウイルスやコスミドを含むが、これらに限定されない。特定の興味のあるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターを含む。
【0085】
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態によって細胞に提供することができる。ウイルスベクターの技術は本分野公知のもので、そしてたとえばSambrookら(2001, レキュラー・クローニング:研究室マニュアル, コールド・スプリング・ハーバー研究所, ニューヨーク)およびほかのウイルス学と分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして使用できるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスやレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。通常、適切なベクターは少なくとも1種類の有機体において作用する複製開始点、プロモーター配列、便利な制限酵素切断部位および1つまたは複数の選択できるマーカーを含む(たとえば、WO01/96584、WO01/29058および米国特許番号6,326,193)。
【0086】
すでに多くのウイルスに基づいたシステムが開発され、哺乳動物細胞への遺伝子の導入に使用されている。たとえば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットホームを提供する。本分野で既知の技術によって選択された遺伝子をベクターに挿入してレトロウイルス顆粒にパッケージングすることができる。当該組み換えウイルスは、さらに分離されて体内または体外の対象細胞に送達される。多くのレトロウイルスシステムは本分野では既知である。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターは本分野では既知である。一部の実施形態において、レンチウイルスベクターが使用される。
【0087】
付加のプロモーターエレメント、たとえばエンハンサーは転写が開始する頻度を調節することができる。通常、これらは開始点の上流の30~110 bpの領域に位置するが、最近、多くのプロモーターは開始点の下流の機能エレメントも含むことが明らかになった。プロモーターエレメントの間の間隔は、エレメントが別のエレメントに対して逆さまになったか、移動した場合、プロモーターの機能が維持できるように、可動性のものが多い。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーターエレメントの間の間隔は、活性が低下することなく、50 bpまで増加することができる。プロモーターによって、単一のエレメ ントは共同にまたは独立に作用し、転写を開始させる。
【0088】
適切なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。当該プロモーター配列は操作可能にそれに連結した任意のポリヌクレオチド配列を高レベルで発現させることができる強力な構成型プロモーター配列である。適切なプロモーターのもう一例は、伸長因子1α(EF-1α)である。しかし、ほかの構成型プロモーター配列を使用してもよく、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バール(Epstein-Barr)ウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、およびヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されず、ヒト遺伝子プロモーターは、たとえばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーターやクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は構成型プロモーターの使用に限定されない。誘導型プロモーターも本発明の一部として考えられる。誘導型プロモーターの使用は分子スイッチを提供し、それによって、そのような発現が必要な場合、操作可能に誘導型プロモーターに連結したポリヌクレオチド配列の発現を開始させ、あるいは発現が必要ではない場合、発現を終止させることができる。誘導型プロモーターの例は、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターやテトラサイクリンプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0089】
CARポリペプチドまたはその一部の発現を評価するため、細胞に導入された発現ベクターは選択できるマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のうちの任意の一方または両方を含むようにすることによって、ウイルスベクターで形質導入または感染された細胞群から発現細胞を同定および選択することもできる。また、選択できるマーカーは単独のDNA断片に載せて共形質移入のプロセスに使用することができる。選択できるマーカー遺伝子およびレポーター遺伝子の両者の隣接する領域には、いずれも適切な調節配列を有することによって、宿主細胞において発現できるようにしてもよい。有用な選択できるマーカーは、たとえば抗生物質耐性遺伝子、たとえばneoなどを含む。
【0090】
レポーター遺伝子は形質導入された可能性のある細胞の同定および調節配列の機能性の評価に使用される。通常、レポーター遺伝子は、レシピエントの有機体または組織に存在しないか、レシピエントの有機体または組織によって発現され、そしてその発現が容易に検出できる性質、たとえば酵素活性によって明確に示すことができるポリペプチドをコードする遺伝子である。DNAがすでにレシピエントの細胞に導入されると、レポーター遺伝子の発現は適切な時間で測定される。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素、分泌型アルカリホスファターゼや緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む(たとえば、Ui-Teiら,2000FEBS Letters479:79-82)。適切な発現系は公知で、かつ既知の技術によって製造するか、市販品として入手することができる。通常、最高レベルのレポーター遺伝子の発現を示す、少なくとも5つのフランキング領域を有する構築体はプロモーターと同定される。このようなプロモーター領域はレポーター遺伝子に連結され、かつ試薬のプロモーターを調節して転写を活性化させる能力の評価に使用することができる。
【0091】
遺伝子を細胞に導入する方法および細胞において遺伝子を発現させる方法は、本分野では既知である。発現ベクターの内容において、ベクターは本分野における任意の方法によって宿主細胞、たとえば、哺乳動物、細菌、酵母や昆虫の細胞に容易に導入することができる。たとえば、発現ベクターは物理、化学または生物学の手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0092】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外来核酸を含む細胞を生産する方法は本分野では公知である。たとえば、Sambrookら(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照する。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する好適な方法は、リン酸カルシウム形質導入である。
【0093】
興味のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターを使用する方法を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、すでに最も幅広く使用される、遺伝子を哺乳動物、たとえばヒト細胞に挿入する方法になっている。ほかのウイルスベクターはレンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルスなどからのものでもよい。例えば、米国特許番号5,350,674および5,585,362を参照する。
【0094】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段は、コロイド分散系、たとえば大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、やリポソームを含む脂質に基づいた系を含む。体外および体内の送達担体(delivery vehicle)として使用される例示的なコロイド系はリポソーム(たとえば、人工膜小胞)である。
【0095】
非ウイルス送達系を使用する場合、例示的な送達担体はリポソームである。脂質製剤を使用し、核酸を宿主細胞に導入することが考えられる(体外、エクスビボ(ex vivo)または体内)。また、当該核酸は脂質と関連してもよい。脂質と関連した核酸は、リポソームの水性の内部に封入し、リポソームの脂質二重層に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両者に連結する連結分子を介してリポソームに接着し、リポソームに取り込まれ、リポソームと複合体化し、脂質を含む溶液に分散し、脂質と混合し、脂質と配合し、懸濁液として脂質に含まれ、ミセルに含まれるか、ミセルと複合体化し、あるいはほかの形態で脂質と結合することができる。組成物と関連する脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターは溶液における具体的な構造のいずれにも限定されない。たとえば、二重層の構造において、ミセルとして、または「崩壊した」構造で存在してもよい。簡単に溶液に分散し、大きさや形状が異なる集合体を形成してもよい。脂質は脂肪物質で、天然の脂質でも合成の脂質でもよい。たとえば、脂質は細胞質で自然に発生する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、たとえば脂肪酸、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類やアルデヒド類のような化合物を含む。
【0096】
非ウイルス送達系を使用する場合、例示的にゲノム編集技術、たとえばCRISPR-Cas9、ZFNやTALENによって本発明を完成させる。
【0097】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0098】
DNA構築物はさらにシグナルペプチドコード配列を含む。好ましくは、当該シグナルペプチド配列は抗原結合ドメインの核酸配列の上流に連結している。
【0099】
治療的使用
本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質導入された細胞を含む。形質導入されたT細胞はCARによるT細胞の応答を誘導することができる。
【0100】
そのため、本発明は、哺乳動物の標的細胞群または組織に対するT細胞による免疫応答を刺激する方法であって、哺乳動物に本発明のCAR-T細胞を施用する工程を含む方法も提供する。
【0101】
一つの実施形態において、本発明は、T細胞が本発明のCARを発現するように遺伝子修飾され、かつCAR-T細胞が必要なレシピエントに注入される、細胞療法を含む。注入される細胞は、レシピエント体内における腫瘍細胞を殺滅することができる。抗体療法と異なり、CAR-T細胞は体内で複製可能で、持続的に腫瘍を抑える長期間の持久性が生じる。
【0102】
一つの実施形態において、本発明のCAR-T細胞は安定した体内におけるT細胞の増殖を経て延長した時間で持続することができる。また、CARによる免疫応答は養子免疫療法の工程の一部でもよく、ここで、CAR修飾T細胞はCARにおける高原結合ドメインに特異的な免疫応答を誘導する。たとえば、抗CD19のCAR-T細胞はCD19陽性細胞に抵抗する特異的な免疫応答を引き起こす。
【0103】
本明細書で公開されたデータは、具体的に抗CD19 scFv、ヒンジおよび膜貫通領域、および4-1BBとCD3ζシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクターを公開したが、本発明は構築体の各構成部分の任意の数の変化を含むと解釈されるべきである。
治療できる適応症は、CD19陽性腫瘍および過剰なB細胞による疾患を含む。CD19陽性腫瘍は、CD19陽性の非固形腫瘍(たとえば血液腫瘍、たとえば白血病やリンパ腫)または固形腫瘍を含む。本発明のCARで治療する癌の種類は、癌、胚細胞腫瘍や肉腫、および一部の白血病やリンパ性悪性腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、および悪性腫瘍、たとえば肉腫、癌やメラノーマを含むが、これらに限定されない。成人腫瘍/癌および児童腫瘍/癌も含む。
【0104】
血液癌は血液または骨髄の癌である。血液(または血液原性)癌の例は、白血病を含み、それに急性白血病(たとえば急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球型、単核球性や赤白血病)、慢性白血病(たとえば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髓性白血病や慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンスリンパ腫(無痛および重症の場合)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、H鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病や脊髄形成異常が含まれる。
【0105】
固形腫瘍は、通常、嚢腫や液体領域の組織の腫瘤を含まない。固形腫瘍は良性でも悪性でもよい。異なる種類の固形腫瘍はこれらを形成する細胞の種類によって命名される(たとえば肉腫、癌やリンパ腫)。固形腫瘍は、たとえば肉腫および癌の例は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、リンパ性悪性腫瘍、膵臓癌、卵巣癌を含む。
【0106】
本発明のCAR修飾T細胞は哺乳動物に対する体外免疫および/または体内療法のワクチンとしても有用である。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0107】
体外免疫について、i)細胞の増殖、ii)CARをコードする核酸の細胞への導入、および/またはiii)細胞の凍結保存のうちの少なくとも一つが細胞を哺乳動物に施用する前に体外で行われる。
【0108】
体外プロトコールは本分野では公知で、そして後記でより完全に検討される。簡単に言えば、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離して本明細書で公開されるCARを発現するベクターで遺伝子修飾を行う(すなわち、体外形質転換または形質導入)。CAR修飾細胞は哺乳動物のレシピエントに施用し、治療の有益な効果を提供することができる。哺乳動物のレシピエントはヒトでもよく、そしてCAR修飾細胞はレシピエント自身の細胞でもよい。必要により、細胞はレシピエントに対して同種異系、同系(syngeneic)または異種でもよい。
【0109】
体外免疫について細胞に基づいたワクチン以外、本発明は、体内免疫によって患者における抗原に対する免疫応答を引き起こす組成物および方法も提供する。
【0110】
通常、本明細書に記載のような活性化および増殖した細胞は免疫障害の個体に生じる疾患を治療および予防するために使用することができる。特に、本発明のCAR修飾T細胞はCCLを治療するために使用することができる。一部の実施形態において、本発明の細胞はCCLが発症する恐れがある患者を治療するために使用される。そのため、本発明は、CCLを治療または予防する方法であって、必要な被験者に治療有効量の本発明のCAR修飾T細胞を施用する工程を含む方法を提供する。
【0111】
本発明のCAR修飾T細胞は単独で、または薬物組成物として希釈剤および/またはほかの成分、たとえばIL-2、IL-17やほかのサイトカインまたは細胞群と合わせて施用することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本明細書に記載の標的細胞群を含み、一つまたは複数の薬学または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせてもよい。このような組成物は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩衝食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、キレート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の組成物は、静脈内で施用するように調製することが好ましい。
【0112】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)が必要な疾患に適する形態によって施用することができる。施用の数量および頻度は、患者の病床、および患者の疾患の種類と重篤度のような要素によって決まるが、適切な投与量は臨床試験によって決定する。
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、医師によって決められる。通常、本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、104~109個細胞/kg体重の投与量、好ましくは105~106個細胞/kg体重の投与量(これらの範囲内におけるすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,NewEng.J. of Med.319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適な投与量および治療プランは、患者の疾患の所見をモニタリングしてそれに基づいて調整して治療することができ、医学分野の技術者によって容易に決めることができる。
対象への組成物の施用は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射または腹膜内で患者に施用されてもよい。一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は皮内または皮下注射によって患者に施用される。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物はi.v.注射によって施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい。
【0113】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかのT細胞を治療的レベルに増殖させる方法によって活性化および増殖した細胞を使用し、任意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、アザシチジン(ARA-Cとして知られる)のような試薬で治療するもの、あるいはMS患者に対するナタリズマブによる治療または乾癬患者に対するエファリズマブによる治療またはPML患者に対するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンA、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルやFK506、抗体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増殖した免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増殖した細胞は外科手術前または外科手術後に施用される。
【0114】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピエントによって変わる。ヒトへ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×106個~1×1010個の本発明の修飾されたT細胞(たとえば、CAR-T 19細胞)を、たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0115】
以下、実施例によってさらに本発明を説明する。下記実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、制限的なものとは解釈されない。
【0116】
実施例
発明者は、ヒト化CD19-scFv-CAR構築物をレンチウイルスベクターのXba IとEcoR I部位にクローニングした。pCD510-FMC63-28zレンチウイルスCAR構築物は、Xba IとEco RIクローニング部位の間にヒト化CD19 scFv-41BB-CD3ζ挿入物を含む。
293T細胞にレンチウイルスが生じ、RT-PCR方法によって力価を測定した。その後、等投与量のレンチウイルスでT細胞に形質導入した。
【0117】
実施例1
ヒト化CD19抗体:VHとVLおよびscFv配列
発明者は、マウスCD19 FMC63 scFvクローン由来のCD19 scFvをヒト化し、そして体内治療効果のデータに基づいてCDR1に突然変異があるヒト化scFv(クローン11)を選択した。ヒト化CD19 scFvの構造は、VL-連結ペプチド-VHである。連結ペプチドはG S T S G S G K P G S G E G S T K G (配列番号7)である。
【0118】
太字でヒト化CD19 VL のヌクレオチド配列(配列番号1)を、デフォルトのフォントでVHのヌクレオチド配列(配列番号2、太字で突然変異(ggc)コードGを表示する)を示し、中間(斜体、小さいフォント)は連結ペプチド(G S T S G S G K P G S G E G S T K G (配列番号7))をコードするヌクレオチド配列(配列番号3)である。
gatattcagatgacccagagcccgagcagcctgagcgcgagcgtgggcgatcgcgtgacc
attacctgccgcgcgagccaggatattagcaaatatctgaactggtatcagcagaaaccg
ggcaaagcgccgaaactgctgatttatcataccagccgcctgcatagcggcgtgccgagc
cgctttagcggcagcggcagcggcaccgattttaccctgaccattagcagcctgcagccg
gaagattttgcgacctattattgccagcagggcaacaccctgccgtatacctttggcggc
ggcaccaaagtggaaattaaa
ggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggc
caggtgcagctgcaggaaagcggcccgggcctggtgaaaccgagcgaaaccctgagcctg
acctgcaccgtgagcggcggcagcctgccggattatggcgtgagctggattcgccagccg
ccgggcaaaggcctggaatggattggcgtgatttggggcagcgaaaccacctattataac
agcgcgctgaaaagccgcgtgaccattagcgtggataccagcaaaaaccagtttagcctg
aaactgagcagcgtgaccgcggcggataccgcggtgtattattgcgcgaaacattattat
tatggcggcagctatgcgatggattattggggccagggcaccctggtgaccgtgagcagc
(配列番号15)
【0119】
ヒト化CD19 scFv(配列番号4):太字はVLで、デフォルトフォントはVHで、CDR領域は下線で示し、突然変異はVHの27番目のアミノ酸に位置し(配列番号6)、大きい斜体のG(VHのV27G)で表示されている。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPYTFGGGTKVEIK
G S T S G S G K P G S G E G S T K G
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号4)
【0120】
タンパク質では、太字でVLのアミノ酸配列(配列番号5)を、デフォルトの非斜体でVHのアミノ酸配列(配列番号6)を突出して示し、中間の斜体になった小さいフォントは連結ペプチドのアミノ酸配列(配列番号7)である。
【0121】
三次元モデリングおよび結合実験により、発明者は、ヒト化CD19抗体におけるVH CDR1領域の突然変異が抗体とCD19抗原の結合を良くすることを見出した。図3は、クローン11の突然変異、VH CDR1 V27Gを示す。
【0122】
実施例2
ヒト化CD19-CAR配列
ヒト化CD19-CAR構築物の設計プランは図2に示す。EF1aプロモーターを持つレンチウイルスベクターでヒト化scFv CAR配列をクローニングした。
【0123】
以下のヌクレオチド配列は、本発明のCD8リード-ヒト化CD19 scFv-CD8ヒンジ-TM8-41BB-CD3ζを示す。CAR構造は、ヒトCD8シグナルペプチド、ヒト化CD19 scFv(VL-連結ペプチド-VH)、CD8ヒンジ、CD8膜貫通、41BB共刺激およびCD3ζ活性化ドメインを含む(図2)。
【0124】
CD8リード配列-CD19 scFv(VL-連結ペプチド-VH)-CD8ヒンジ-CD8 TM-41BB-CD3ζ:
<CD8リード>
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCG(配列番号8)
【0125】
<ヒト化CD19(VL-連結ペプチド-VH)、クローン11 scFv>(コードV27Gの突然変異ggcは太字で表示する)
gatattcagatgacccagagcccgagcagcctgagcgcgagcgtgggcgatcgcgtgacc
attacctgccgcgcgagccaggatattagcaaatatctgaactggtatcagcagaaaccg
ggcaaagcgccgaaactgctgatttatcataccagccgcctgcatagcggcgtgccgagc
cgctttagcggcagcggcagcggcaccgattttaccctgaccattagcagcctgcagccg
gaagattttgcgacctattattgccagcagggcaacaccctgccgtatacctttggcggc
ggcaccaaagtggaaattaaa
ggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggc
caggtgcagctgcaggaaagcggcccgggcctggtgaaaccgagcgaaaccctgagcctg
acctgcaccgtgagcggcggcagcctgccggattatggcgtgagctggattcgccagccg
ccgggcaaaggcctggaatggattggcgtgatttggggcagcgaaaccacctattataac
agcgcgctgaaaagccgcgtgaccattagcgtggataccagcaaaaaccagtttagcctg
aaactgagcagcgtgaccgcggcggataccgcggtgtattattgcgcgaaacattattat
tatggcggcagctatgcgatggattattggggccagggcaccctggtgaccgtgagcagc(配列番号15)

<CD8ヒンジ>
ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT (配列番号9)

<CD8 TM>
ATCTACATCTGGGCGCCCCTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGC (配列番号10)

<4-1BB共刺激ドメイン>
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG (配列番号11)

<CD3ζ>
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACAAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAATAG (配列番号12)
【0126】
<EcoRI制限酵素切断部位>
gaattc (配列番号13)
【0127】
翻訳されたヒト化CD19-4-1BB-CD3-CARタンパク質のアミノ酸配列(構築物の構造は図3を参照する)で、VH CDR1突然変異は太字・下線で表示する。
M A L P V T A L L L P L A L L L H A A R P D I Q M T Q S P S S L S A S V G D R V T I T C R A S Q D I S K Y L N W Y Q Q K P G K A P K L L I Y H T S R L H S G V P S R F S G S G S G T D F T L T I S S L Q P E D F A T Y Y C Q Q G N T L P Y T F G G G T K V E I K G S T S G S G K P G S G E G S T K G Q V Q L Q E S G P G L V K P S E T L S L T C T V S G G S L P D Y G V S W I R Q P P G K G L E W I G V I W G S E T T Y Y N S A L K S R V T I S V D T S K N Q F S L K L S S V T A A D T A V Y Y C A K H Y Y Y G G S Y A M D Y W G Q G T L V T V S S T T T P A P R P P T P A P T I A S Q P L S L R P E A C R P A A G G A V H T R G L D F A C D I Y I W A P L A G T C G V L L L S L V I T L Y C K R G R K K L L Y I F K Q P F M R P V Q T T Q E E D G C S C R F P E E E E G G C E L R V K F S R S A D A P A Y K Q G Q N Q L Y N E L N L G R R E E Y D V L D K R R G R D P E M G G K P R R K N P Q E G L Y N E L Q K D K M A E A Y S E I G M K G E R R R G K G H D G L Y Q G L S T A T K D T Y D A L H M Q A L P P R (配列番号14)
【0128】
実施例3
ヒト化CD19-CAR-T細胞の白血病細胞に対する殺傷およびCD19陽性癌細胞に対するIFN-γの分泌
図2に示すように、ヒト化CD19-CAR構築物でヒト化CD19-CAR-T細胞を設計した。モックscFv(無関連scFv)でモックCAR-T細胞を製造し、陰性対照とした。FACSによってヒト化CD19-CAR-T細胞によって発現されたCD19 scFvを検出した。
【0129】
結果を図4に示す。ヒトFAB抗体でヒト化CD19-CAR構築物に対してFACS検出を行った。ヒト化CD19-CARレンチウイルスをT細胞に形質導入した後、ヒト化CD19-CAR陽性細胞を検出した。CD3ZはCD3ζ活性化ドメインを示す。
【0130】
実施例4
ヒト化CD19-CAR-T細胞がHela-CD19細胞を殺傷したが、Hela細胞を殺傷しなかった。
【0131】
本発明のヒト化エフェクターCD19-CAR-T細胞を標的としてHela-CD19標的細胞およびHela(CD19-陰性)対照細胞とインキュベートし、そしてリアルタイム細胞毒性測定を行った(RTCA、[4]に記載の通りである)。
【0132】
結果を図5に示す。ヒト化CD19-CAR-T細胞は特異的にHela-CD19細胞を殺傷し、T細胞およびモックCAR-T細胞と比べ、CAR-T細胞で処理された標的細胞数(細胞指数)が顕著に減少した(図5、上欄)。ヒト化CD19-CAR-T細胞はCD19陰性Hela細胞を殺傷せず、T細胞、モックおよびCAR-T細胞はCD19陰性Hela細胞の殺傷において有意差がなかった(図5、下欄)。これは、ヒト化CD19-CAR-T細胞はCD19抗原に対するターゲティングに高い特異性があり、CD19陽性細胞のみを殺傷し、CD19陰性Hela細胞を殺傷しないことを示す(図5)。
【0133】
[4]に記載のように、xCELLigenceリアルタイム細胞毒性分析によってヒト化CD19-CAR-Tおよびマウス由来CD19-41BB-CD3 CAR-T細胞の細胞毒性を検出した。Y軸は正規化細胞指数を、X軸は時間を単位とする時間を示す。右側は上から下へ、標的細胞、そして標的細胞を入れた以下のエフェクター細胞:T細胞、モックCAR-T細胞、マウス由来CD19-CAR-T細胞、ヒト化CD19 CAR-T細胞を示す。
【0134】
実施例5
ヒト化CD19 CAR-T細胞のHeLa-CD19細胞に対するIFN-γの分泌
ヒト化CD19-CAR-T細胞および標的Hela-CD19をともにインキュベートした後の上清液を収集し、そして[5]に記載のように、IFN-γの測定を行った。
【0135】
結果を図6に示す。ヒト化CD19-CAR-T細胞はHeLa-CD19に対して分泌されたIFN-γが明らかにT細胞およびモックCAR-T細胞よりも高かった。ヒト化CD19-CAR-T細胞はIFN-γを分泌するレベルが顕著にマウス由来CD19-CAR-T細胞よりも高かった(P<0.05)ことから、ヒト化CD19-CAR-T細胞のほうがCD19陽性標的細胞に抵抗する活性が高いことが示唆された。
【0136】
実施例6
ヒト化CD19-CAR-T細胞のRaji異種移植腫瘍の体内における生長に対する抑制
[4]に記載のように、Raji-ルシフェラーゼ陽性細胞をNSGマウスに静脈注射し、そして翌日に1×107個のヒト化CD19-CAR-T細胞を注射した。IVISシステムでイメージングによってRaji異種移植腫瘍細胞の生長の様子を検出した。
【0137】
結果を図7に示す。対照、未処理およびモックCAR-T細胞と比べ、ヒト化CD19-CAR-T細胞が顕著にRaji異種移植腫瘍の生長を低下させた。ヒト化CAR-T細胞は、マウス由来CD19-CAR-T細胞よりもRaji腫瘍の生長に対する抑制が明らかであった。
【0138】
14日目のイメージングの数量化結果は図8に示すように、マウス由来およびヒト化CD19-CAR-T細胞はいずれも顕著にイメージング信号(光子/秒を単位とする全光束)を低下させたことを示す。
【0139】
実施例7
CD19-CAR-Tで処理されたマウスと比べ、ヒト化CD19-CAR-T細胞が顕著にRaji異種移植モデルマウスの生存時間を延長させた
Kaplan-Meier生存曲線では、マウス由来CD19-CAR-T細胞または対照モックCAR-T細胞と比べ、マウスにヒト化CD19-CAR-T細胞を注射すると、マウスの生存時間が顕著に増えたことが示された(図9)。これは、マウス由来CD19-CAR-T細胞と比べ、ヒト化CD19-CAR-T細胞が優勢で向上した治療効果を有することを示す。
【0140】
実施例8
突然変異していないヒト化CD19 CAR-T細胞で処理されたマウスと比べ、VH CDR1にV27G突然変異があるヒト化CD19 CARがマウスの生存時間を延長させた
VH CDR1にV27G突然変異がある(クローン11)ヒト化CD19-CARおよび突然変異がないヒト化CD19-CARを比較した。図10に示す「無突然変異huCD19」はマウスクローンFMC63由来のヒト化抗体で、CDR領域に突然変異がない。「無突然変異huCD19」はクローン11と同様のVL配列を有するが、VHのフレームワーク領域が異なる。一般的に、抗原結合活性はCDR領域に影響されるが、フレームワーク領域に影響されない。
図10における結果から、VHにV27G突然変異があるヒト化CD19 CARで治療されたマウスは、突然変異がないヒト化CD19-CAR-T細胞で治療されたマウスよりも、マウスの生存時間が延長したことが示された。
【0141】
実施例9
マウス体内にCD19-CAR-T細胞を注射した後、CD19またはFAB抗体およびFACSによって検出した
Raji異種移植腫瘍細胞を有するマウスにCAR-T細胞を注射した後7日目に、マウスの血液を収集して体内におけるCAR-T細胞を検出した。
【0142】
結果を図11に示す。7日後、ウサギ抗-FMC63 scFv抗体(Promab)でマウス由来CD19-CAR-T細胞を、またはヒトFABでヒト化CD19-CAR-T細胞を検出したところ、いずれも容易にマウス体内においてCD19-CAR-T細胞を検出することができた。これはCAR-T細胞が体内において存在し続けたことを示し、Raji異種移植腫瘍の生長が顕著に抑制されたことと一致する。
【0143】
参考文献
1. Maus, M.V.; Haas, A.R.; Beatty, G.L.; Albelda, S.M.; Levine, B.L.; Liu, X.; Zhao, Y.; Kalos, M.; June, C.H. キメラ抗原受容体を発現するT細胞がヒトのアナフィラキシーを起こす(T cells expressing chimeric antigen receptors can cause anaphylaxis in humans). Cancer Immunol Res 2013, 1, 26-31.
2. Maus, M.V.; Grupp, S.A.; Porter, D.L.; June, C.H. 抗体で修飾されたT細胞:CARが血液系悪性腫瘍において重要な役割を果たす(Antibody-modified t cells: Cars take the front seat for hematologic malignancies). Blood 2014, 123, 2625-2635.
3. Eshhar, Z.; Waks, T.; Gross, G. T体/CAR T細胞の出現(The emergence of t-bodies/car t cells). Cancer J 2014, 20, 123-126.
4. Berahovich, R.; Xu, S.; Zhou, H.; Harto, H.; Xu, Q.; Garcia, A.; Liu, F.; Golubovskaya, V.M.; Wu, L. Flagで標識されたCD19特異性のCAR-T細胞が体内と体外でCD19を持つ固形腫瘍細胞を除く(Flag-tagged cd19-specific car-t cells eliminate cd19-bearing solid tumor cells in vitro and in vivo). Front Biosci (Landmark Ed) 2017, 22, 1644-1654.
5. Golubovskaya, V.; Berahovich, R.; Zhou, H.; Xu, S.; Harto, H.; Li, L.; Chao, C.C.; Mao, M.M.; Wu, L. CD47-CAR-T細胞が有効に標的癌細胞を殺傷しかつ膵臓腫瘍の生長を遮断する(Cd47-car-t cells effectively kill target cancer cells and block pancreatic tumor
growth). Cancers (Basel) 2017, 9.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022514815000001.app
【国際調査報告】