IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲンティアン アクティーゼルスカブの特許一覧

特表2022-514833全血試料中のヘマトクリット値の測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】全血試料中のヘマトクリット値の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220208BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220208BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20220208BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/483 C
G01N33/49 B
G01N33/53 D
G01N33/72 A
G01N21/27 A
C12Q1/02
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021534221
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019086468
(87)【国際公開番号】W WO2020127837
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1851609-6
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1950567-6
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジップロック
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519355677
【氏名又は名称】ゲンティアン アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】GENTIAN AS
【住所又は居所原語表記】Postboks 733, 1509 Moss, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】カミラ ファント
(72)【発明者】
【氏名】カタリーン スンデ
(72)【発明者】
【氏名】エーリング スンドレハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】オロブ ワールステン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA36
2G045DA51
2G059AA01
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB13
2G059CC16
2G059CC17
2G059CC18
2G059DD02
2G059DD12
2G059DD20
2G059EE02
2G059EE12
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF04
2G059FF08
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059HH06
2G059JJ02
2G059JJ03
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM12
2G059MM14
2G059NN01
2G059PP04
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB17
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QS13
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
全血試料中のヘマトクリット値は、ラテラルフローアッセイ装置で測定でき、全血試料を血液スポットが形成される基材に塗布し、塗布から1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影し、前記画像を画像分析に供し、かつ前記画像から抽出された少なくとも1つのパラメータ値に基づいてヘマトクリット値を決定する。このような試薬不要のヘマトクリット値測定は、検体を測定するためのラテラルフローアッセイ装置内に統合でき、このアッセイの精度の大幅な向上に貢献する。
【選択図】図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテラルフローアッセイ装置で全血試料中のヘマトクリット値を測定するための光学的方法であって、(i)試料を基材に塗布して血液スポットをその基材上に形成する工程;(ii)前記塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程;(iii)前記画像を分析して少なくとも1種のパラメータを前記画像から抽出する工程;および(iv)前記少なくとも1種の抽出されたパラメータの値に基づいて前記ヘマトクリット値を決定する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記全血試料は未処理の試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像は、前記塗布工程後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の抽出されたパラメータは、前記血液スポットの反射率または前記血液スポットの面積である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積の両方を測定し、次いで予備ヘマトクリット値と関連付けして、この2つの平均を前記ヘマトクリット値の値として用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記反射率値は、390nm~1000nmの範囲内、好ましくは650nm~1000nmの範囲内の少なくとも1種の波長、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記反射率は、800nmの波長で測定される、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反射率は、660nmおよび940nmの波長で測定される、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(ii)で撮影された前記画像に含まれる画素の中央強度値として測定される、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
基準試料の基準ヘマトクリット値が遠心分離によって決定される較正工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
まず前記試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定し、次に前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換することによって、前記ヘマトクリット値を決定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘモグロビン濃度を、前記ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換して、これにより前記ヘマトクリット値(%)を得る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
全血試料中の検体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ法であって、
a)全血の未処理試料を前記ラテラルフローアッセイでの第1の表面に塗布して、その表面に血液スポットを形成する工程、
b)前記塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程、
c)前記画像を分析して、前記試料のヘマトクリット値を示す第1の値を測定する工程、
d)前記試料中の前記検体の量を示す第2の値を測定する工程、および
e)工程c)で測定された前記ヘマトクリット値、および工程d)で測定された前記検体の量に基づいて、前記試料中の前記検体の濃度を決定する工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記検体は、フェリチン、トランスフェリン、血漿カルプロテクチン、C反応性タンパク質(CRP)、シスタチンC、血漿プロカルシトニン(PCT)、および抗CCP抗体から選択される、請求項13に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項15】
前記画像は、前記塗布工程(a)後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される、請求項13または14に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項16】
工程(c)で測定された前記第1の値は、前記血液スポットの反射率または前記血液スポットの面積である、請求項13~15のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項17】
前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積の両方を測定し、予備ヘマトクリット値に関連付けて、この2つの平均を前記ヘマトクリット値の値として用いる、請求項16に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項18】
前記反射率は、390nm~1000nmの範囲内、好ましくは650nm~1000nmの範囲内の少なくとも1種の波長、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される、請求項16または17に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項19】
前記反射率は、800nmの波長で測定される、請求項16~18のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項20】
前記反射率は、660nmおよび940nmの波長で測定される、請求項16~19のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項21】
前記反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(b)で撮影された前記画像に含まれる画素の中央強度値として測定される、請求項16~20のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項22】
基準試料の基準ヘマトクリット値を遠心分離によって決定する較正工程をさらに含む、請求項13~21のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項23】
前記試料中のヘモグロビン濃度をまず光学的に測定し、前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換することによって、前記ヘマトクリット値を決定する、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘモグロビン濃度を、前記ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換して、これにより前記ヘマトクリット値(%)を得る、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
全血試料中のヘマトクリット値を測定するためのシステムであって、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成される検出器、および前記血液スポットの前記反射率および/または前記寸法を前記試料のヘマトクリット値に関連付けるように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイ装置を含む、システム。
【請求項26】
全血試料中のヘマトクリット値を測定するためのシステムであって、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成される検出器、および既知のヘモグロビン濃度に対して得られた反射率および/または寸法の値に基づいて、前記血液スポットの前記反射率および/または前記寸法を前記試料のヘモグロビン濃度に関連付け、かつ前記ヘマトクリット値を算出するように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイを含む、システム。
【請求項27】
全血試料中の血漿カルプロテクチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗カルプロテクチン抗体を有する結合パッド、固定された抗カルプロテクチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項28】
全血試料中のシスタチンCの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗シスタチンC抗体を有する結合パッド、固定された抗シスタチンC抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項29】
全血試料中のフェリチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗フェリチン抗体を有する結合パッド、固定された抗フェリチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項30】
全血試料中の血漿プロカルシトニンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗プロカルシトニン抗体を有する結合パッド、固定された抗プロカルシトニン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項31】
全血試料中のC反応性タンパク質(CRP)の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗CRP抗体を有する結合パッド、固定された抗CRP抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項32】
全血試料中の抗CCP抗体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置であって、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合されるCCPペプチドを有する結合パッド、固定された抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む、装置。
【請求項33】
全血試料を収容するための前記基材が、前記ラテラルフローアッセイの前記結合パッドと流体連通して配置され、前記基材がガラス繊維系濾材である、請求項27~32のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ装置。
【請求項34】
全血試料を収容するための前記基材が、前記ラテラルフローアッセイの前記結合パッドと平行に配置されかつ流体連通されておらず、前記基材が、ガラス繊維系濾材、セルロース系濾材、および不浸透性の表面を有する基材から選択される、請求項27~32のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ装置。
【請求項35】
少なくとも、光源、反射光を検出しかつ/または前記ラテラルフロー装置の基材表面に形成される血液スポットの寸法を測定するように構成される検出器、および前記血液スポットの反射率および/または寸法をヘマトクリット値に関連付けて、かつ全血試料中の検体の濃度を算出する際にこのヘマトクリット値を用いるように構成されるプロセッサを含む、請求項27~32のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ装置を収容する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全血試料の臨床分析の分野、ならびに全血試料中のヘモグロビン量および/またはヘマトクリット値、すなわち赤血球の体積分率を測定する方法に関し、特に簡素で手頃な機器を用い、かついかなる試薬も使用せずに、全血試料中のヘモグロビンおよび/またはヘマトクリット値を迅速に測定する方法に関する。本開示はまた、全血試料のヘマトクリット値を考慮に入れて、全血試料を分析しかつ血漿中の検体の濃度を定量的に測定するためのラテラルフロー(側流)アッセイの方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液検査は現代医学の基本であり、今日、文字通り数百もの検体の存在および濃度を測定することが可能である。血液検査を用いて、患者の生理学的状態および生化学的状態を決定し、それらの結果から、栄養状態、健康、様々な病気の有無、治療の有効性、臓器機能を判定し、さらに例えば薬物乱用を検出するための中心的な存在である。これを目的とする方法および装置は、その範囲として、比較的単純な試験片から単一の試料で数百の試験を実施するための試薬を保持できる分析ロボットに及ぶ。
【0003】
全血は、血漿中に懸濁された赤血球、血小板、および白血球で構成される。健康な個体の血液では、赤血球が過半数の細胞を占めていて、この赤血球は、血液にその赤色を付与し酸素結合能力を有するヘモグロビン(Hb)を含んでいる。血漿は、主に水(約93%)からなり、また塩、種々のタンパク質や脂質、ならびにグルコースなどのその他の成分からなっている。血漿はまた、数千には届かないが数百もの微量の生化学的化合物を含み、そのうちの多くが臨床検体として確定されているが、依然として他の化合物が検討対象となっている。試験施設で実施される検査または分析は、多くの場合、血漿または血清を基本としている。但し治療現場(POC)の用途で、全血試料が使用できる場合には、試料を分析に供する前に血清または血漿を分離する工程を回避することが望ましい。
【0004】
ヘモグロビン
ヘモグロビン(Hb)は、全ての脊椎動物の赤血球での酸素の輸送に関与する鉄含有金属タンパク質である。哺乳類では、Hbは赤血球の乾燥含有量の約96重量%を占め、かつ総含有量の約35重量%を占めている。
【0005】
Hbの測定方法は、1世紀以上前に初めて開発され、これは臨床医が利用できる初期の診断用血液検査のうちの1つとなった。今日ではHb濃度測定は、通常、全血計数値の一部として、最も一般的に実施される血液検査のうちの1つである。例えば、通常は献血の前後に試験される。結果はg/Lで示され、場合によっては、g/dLまたはmol/Lで示される。正常な値は、男性では14~18g/dL、女性では12~16g/dL(妊婦では11~14g/dL)であり、子供では11~16g/dLである(Henny H. Billett, Chapter 151「臨床法でのヘモグロビンおよびヘマトクリット:身体的かつ実験室的な検査の歴史」Hemoglobin and Hematocrit, in Clinical Methods: The History, Physical and Laboratory Examinations, Walker HK, Hall WD, Hurst JW, eds., Boston: Butterworths; 1990. 3rd editionを参照)。
【0006】
濃度が正常より低い場合を貧血と呼ぶ。貧血は、失血、赤血球産生の減少、および赤血球分解の増大が原因である可能性がある。献血に加えて、失血の原因として、特に外傷や胃腸出血が挙げられる。赤血球の産生の減少は、鉄の欠乏、ビタミンB12の不足、地中海貧血症、および骨髄中の複数の新生物によって引き起こされる可能性がある。赤血球分解の増大は、鎌状赤血球性貧血などの遺伝性疾患、マラリアなどの感染症、特定の自己免疫疾患などの多くが原因である可能性がある。
【0007】
元々は1950年代に開発されたヘモグロビンシアニド(HiCN)試験は、Hbの濃度を測定する全ての新規な方法を評価しかつ標準化する国際血液学標準化委員会(ICSH)の推奨方法として依然存在している。ICSHは1966年に設立され、それ以来活動を継続し、標準化されたHiCN法の推奨項目を確立かつ改訂して、正確な既知濃度の滅菌アンプル化したHiCN溶液である国際標準製剤の製造および流通を体系化しかつ監督している。
【0008】
HemoCue(登録商標) 201装置(スウェーデンのHemoCue AB社製)などの携帯型のヘモグロビン計で、治療現場の環境および献血センターでのヘモグロビンの正確な測定が可能である。これらの装置は、本質的に溶液の色強度を測定できる光度計である。
【0009】
測定は、反応容器としても機能する使い捨て型のマイクロキュベット内で実施される。赤血球からのHbの放出とHbの安定な着色生成物への転換の両方のために必要な試薬は、このキュベットの壁面に乾燥形態で存在している。ここで必要となるのは、毛細血管、静脈、または動脈の少量血液試料(典型的には10μL)のマイクロキュベットへの導入、およびマイクロキュベットの機器内への挿入だけである。この機器は、上記のHiCN標準を使用して工場で事前に校正されていて、試験溶液の吸光度を自動的に総ヘモグロビン濃度(ctHb)に変換する。結果は1分未満以内に表示される。
【0010】
試薬不要の分析器は、2006年より市販されていて(HemoCue(登録商標) 301)、最近は、無試薬キュベットおよび測光法を使用するDiaSpect Tm(EKF Diagnostics plc/DiaSpect Medical GmbH製)が導入され、結果は約1秒以内に提供される。
【0011】
ヘマトクリット
血液試料中の濃厚赤血球の体積分率を、ヘマトクリット値(Hct)と呼び、全試料体積の%として表す。通常のHct値はかなり一定していて、成人男性では40%~54%、成人女性では36%~48%の範囲にある(同上のHenny H. Billett, 1990を参照)。これらの基準値からのずれは、一般に、貧血、白血病、腎臓感染症、または食事不足などの重大な疾患の兆候と見做されるが、妊娠や過激な運動などの明確な条件を示している場合もある。
【0012】
Hctの干渉はまた、種々の検体の濃度を全血、血漿、または血清中で測定する際に重要な問題であると考えられている。血漿中にのみ存在する検体の濃度が全血試料の体積または重量に関連して得られる場合には、Hctを考慮する必要がある。そうしないと、Hctの変動は、全ての定性的かつ定量的な臨床での血液分析で重大な誤差を引き起こす可能性がある。
【0013】
Hctを見極める重要性を説明するためには、2つの全血試料、すなわち一方は100g/Lという低いHbを有する患者から得られた試料、他方は180g/Lという非常に高いHbを有する患者から得られた試料(両方の値は生理学的に関連している)を検討するのがよい。第1の患者のHctは約30%であり、第2の患者のHctは約56%となる。このことは、試料容量が25μLである場合に、第1の患者では分析に使用できる血漿は17.5μLであり、第2の患者では11μLしかないことを意味する。血漿中に存在する検体の濃度を決定する場合に、これらの変動はかなり重要となる。
【0014】
アルカリ性のフェリシアン化カリウムとシアン化カリウムの溶液(ドラブキン試薬:Drabkin’s reagent)の存在下で、ヘモグロビンおよび(スルフヘモグロビンを除く)その誘導体をメトヘモグロビンにまず酸化した後に、540nmでHbの定量的な比色測定を実施できることは周知である。メトヘモグロビンはシアン化カリウムと反応して、540nmに最大吸収率を有するシアノメトヘモグロビンを形成する。540nmで測定された色強度は、総ヘモグロビン濃度に比例する。
【0015】
Hbを測定する紙ベースの試験もまた、Yangらによって2013年に開示されている(Yang et al.,「供給源が限定される環境で、血中ヘモグロビン濃度を測定するための単純な紙ベース試験」Simple Paper-Based test for Measuring Blood Hemoglobin Concentration in Resource-Limited Settings, Clinical Chemistry, (2013) 59:10, 1506-1513を参照)。この試験では、血液とドラブキン試薬の混合物の20μLの液滴を、パターン化されたクロマトグラフィー紙に滴下する。得られた血液の染みを25分間乾燥させて、走査して赤/緑/青(RGB)の色モデルに基づいてデジタル画像を分析する。緑の波長帯は最良の線形的な一致を示し、血液試料中のHbを定量するために選択された。
【0016】
非接触の拡散反射分光法を使用するHctの予測方法が提示されている(Capiau, et al., 「非接触の拡散反射分光法を使用する新規かつ非破壊的な乾燥血液スポットに基づくヘマトクリット予測方法」A Novel, Non-destructive, Dried Blood Spot-Based Hematocrit Prediction Method Using Noncontact Diffuse Reflectance Spectroscopy, Analytical Chemistry. 2016, 88, 6538-6546を参照)。この結果では、乾燥血液スポット(DBS)を走査するだけで、おおよそのHctを導き出すのに十分であることを示していた。静脈血は、抗凝固剤としてリチウムヘパリンを用いて、同意する健康な採血ボランティアから採血管内に採取された。採血日に、Whatman 903濾紙に25μLの血液を沈着して、乾燥血液スポット(DBS)を調製した。血液スポットは、いずれも周囲条件で少なくとも2時間乾燥させた。得られたDBSは、乾燥直後に分析するか、あるいは分析まで乾燥剤を入れてジップロックのビニール袋内に保管した。DBSは、室温で少なくとも5か月間、かつ高温(60℃)では少なくとも最長3日間安定であることが分かった。DBSを10Wのタングステンハロゲン光源を用いて照射し、分光計により354~1042nmの反射光強度の波長依存性を記録した。
【0017】
血中ヘマトクリットの比色定量のためのヒストグラムを用いる分析技術が2017年に提案され、研究者らは、特注の光学プラットフォームを介して、スマートフォンに装着のカメラをマイクロ流体チップと統合するヘマトクリット検出のためのスマートフォンに基づく「ヒストグラムアプリ」を開発した。(Jalal et al., 「スマートフォンに基づく迅速なヘマトクリット値測定のためのヒストグラム分析」Histogram analysis for smartphone-based rapid hematocrit determination, Biomed Opt Express. 2017 Jul 1; 8(7): 3317-3328を参照)。
【0018】
米国特許US 8,730,460号(Yan et al., 「血液ヘモグロビン濃度の紙ベースの分光光度検出」Paper Based Spectrophotometric Detection of Blood Hemoglobin Concentration、)は、血中Hb濃度の紙ベースの分光光度検出法を開示し、これは分光光度技術を用いて、血液試料を含む紙媒体を通過する特定波長での光透過率を測定する。この光透過情報を、血中Hb濃度の算出に用いる。特定の実施態様では、紙媒体を化学的に処理して、光透過情報の測定の前に血液試料を溶解してもよい。
【0019】
国際特許出願WO 2017/087834号は、複数の標的分子を検出するための多重診断分析カートリッジの一般的な概念を開示している。一実施態様は、前処理モジュール、試料添加ウェルの遠位にあるフェリチン免疫測定用の並列分析領域、C反応性タンパク質免疫測定領域、およびヘモグロビン比色分析領域を有する多重診断分析カートリッジに関する。
【発明の概要】
【0020】
本発明者らは、意外にも、全血試料中のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン濃度を、基材に塗布して前記試料の反射率の測定によって迅速かつ正確に決定できることを見出した。この測定は、血液試料が乾燥するのを待たずに、試料を基材に塗布した後に非常に速やかに、さらには実質的に塗布の直後に実施できる。本発明者らはまた、血漿中の検体の濃度を測定するためのラテラルフロー型の分析中に、またはその分析と並行して実施するHctの測定により、検体の濃度を算出する際にこの測定済みのHctを考慮に入れると、その結果の精度が著しく改善されることを見出した。
【0021】
従って、本明細書の第1の側面は、ラテラルフローアッセイ装置で全血試料中のヘマトクリット値を測定するための光学的方法に関し、この方法は、(i)試料を基材に塗布して血液スポットを形成する工程;(ii)塗布後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程;(iii)前記画像を分析して少なくとも1種のパラメータを抽出する工程;(iv)少なくとも1種の抽出されたパラメータの値に基づいてヘマトクリット値を決定する工程を含む。
【0022】
上記側面の一実施態様によれば、全血試料は、未処理の試料である。
【0023】
上記側面の別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、画像は、塗布工程後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される。
【0024】
上記側面のさらに別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記少なくとも1種の抽出されたパラメータは、前記血液スポットの反射率、あるいは前記血液スポットの面積である。好ましくは、前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積の両方を測定し、次いで予備ヘマトクリット値と関連付けて、この2つから得られた平均をヘマトクリット値の測定値(値)として用いる。
【0025】
上記側面のさらに別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率値は、390nm~1000nmの範囲内、好ましくは650nm~1000nmの範囲内の少なくとも1種の波長、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される。好ましくは、反射率は、800nmで測定されるか、あるいは660nmおよび940nmの両方で測定される。
【0026】
一実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(ii)で撮影された前記画像に含まれる画素の中央強度値として測定される。
【0027】
別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記方法はさらに、基準試料の基準ヘマトクリット値が遠心分離によって測定される較正工程を含む。
【0028】
さらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、ヘマトクリット値は、まず前記試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定し、次に前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換して決定される。好ましくは、ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換し、それによりヘマトクリット値(%)を得る。
【0029】
本開示の第2の側面は、全血試料中の検体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ方法に関し、この方法は
a)全血の未処理試料を前記ラテラルフローアッセイでの第1の表面に塗布して、その表面に血液スポットを形成する工程、
b)塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程、
c)前記画像を分析して、前記試料のヘマトクリット値を示す第1の値を測定する工程、
d)試料中の検体の量を示す第2の値を測定する工程、および
e)工程c)で測定されたヘマトクリット値、および工程d)で測定された検体の量に基づいて、試料中の検体の濃度を決定する工程
を含む。
【0030】
第2の側面の実施態様によれば、前記検体は、フェリチン、トランスフェリン、血漿カルプロテクチン、C反応性タンパク質(CRP)、シスタチンC、血漿プロカルシトニン(PCT)、および抗CCP抗体から選択される。
【0031】
第2の側面のさらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記画像は、塗布工程(a)後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される。
【0032】
第2の側面の別の実施態様によれば、この実施態様は前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記少なくとも1種のパラメータは、前記血液スポットの反射率、あるいは前記血液スポットの面積である。好ましくは、前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積を測定し、次いで予備ヘマトクリット値と関連付けて、この2つから得られた平均値をヘマトクリット値の測定値として用いる。
【0033】
第2の側面の別の実施態様によれば、この実施態様は前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率値は、390nm~1000nmの範囲内、好ましくは650nm~1000nmの範囲内の少なくとも1種の波長で、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される。好ましくは、反射率は、800nmで測定されるか、あるいは660nmおよび940nmの両方で測定される。
【0034】
第2の側面の一実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(b)で撮影された画像に含まれる画素の中央強度値として測定される。
【0035】
別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記方法は、基準試料の基準ヘマトクリット値を遠心分離によって決定する較正工程を含む。
【0036】
さらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、ヘマトクリット値は、まず前記試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定し、次に前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換して決定される。好ましくは、ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換し、これによりヘマトクリット値(%)を得る。
【0037】
本開示の第3の側面は、全血試料中のヘマトクリットを測定するためのシステムに関し、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、少なくとも1つの光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成された検出器、および既知のヘマトクリット値から得られた反射率および/または寸法の記憶された値に基づいて、血液スポットの反射率および/または寸法を前記試料のヘマトクリット値に関連付けるように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイ装置を含む。
【0038】
第4の側面は、全血試料中のヘマトクリットを測定するためのシステムに関し、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、少なくとも1つの光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成された検出器、および既知のヘモグロビン濃度から得られた反射率および/または寸法の記憶された値に基づいて、血液スポットの反射率および/または寸法を前記試料のヘモグロビン濃度と関連付け、かつ前記ヘモグロビン濃度に基づいてヘマトクリット値を計算するように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイ装置を含む。
【0039】
一側面は、全血試料中の血漿カルプロテクチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗カルプロテクチン抗体を有する結合パッド、固定された抗カルプロテクチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0040】
別の側面は、全血試料中のシスタチンCの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗シスタチンC抗体を有する結合パッド、固定された抗シスタチンC抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0041】
さらに別の側面は、全血試料中のフェリチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗フェリチン抗体を有する結合パッド、固定された抗フェリチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0042】
別の側面は、全血試料中の血漿プロカルシトニンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗プロカルシトニン抗体を有する結合パッド、固定された抗プロカルシトニン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0043】
別の側面は、全血試料中のC反応性タンパク質(CRP)の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗CRP抗体を有する結合パッド、固定された抗CRP抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0044】
別の態様は、全血試料中の抗CCP抗体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される1つ以上の環状シトルリン化ペプチド(CCP)を有する結合パッド、固定された抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0045】
いずれか1つの上記側面によるラテラルフローアッセイ装置の一実施態様では、前記基材は、前記ラテラルフローアッセイの結合パッドと流体連通して配置され、前記基材はガラス繊維系濾材である。
【0046】
いずれか1つの上記側面によるラテラルフローアッセイ装置の別の実施態様では、前記基材は、前記ラテラルフローアッセイの結合パッドと平行に配置され、かつその結合パッドとは流体連通されておらず、前記基材は、ガラス繊維系濾材、セルロース系濾材、および不浸透性の表面を有する基材から選択される。
【0047】
前述の要約は、例示の目的のみであり、何ら限定を意図するものではない。前記の側面、実施態様、および形態の各例に加えて、さらなる側面、実施態様、および形態は、以下の図面および詳細な説明を参照することによって明確になる。
【0048】
本発明は、添付の図面を参照して、例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、実施例で使用される種々の構成を代表していて、カメラ、試料ホルダー、ランプなどを含む機器の実験的な構成を模式的に示す。
【0050】
図2図2は、血液スポットの写真画像から開始して、関連の画素がどのように識別されるかを示す。血液スポットと背景の明暗に基づいて、スポットがマスクされて、次の分析のために関連の画素が識別される。
【0051】
図3図3は、本発明の実施態様によるラテラルフロー装置の概略断面を示す。この装置は、試料パッド(1)または基材などの全血試料を受け入れるための部分を含み、この部分は、支持体すなわち裏打ち材(10)上に配置された追加の基材、媒体すなわち濾材(2、3、6)と流体連通するように配置される。
【0052】
図4図4は、本発明の実施態様による装置の概略断面を示し、この装置では、膜(100)が試料パッド(1)上に配置されている。この膜は、溶血を伴わないか最小限の溶血で赤血球を血漿から分離する機能を持つことができる。
【0053】
図5図5は、本発明の別の実施態様による装置の概略断面を示し、この装置では、試料は、収容手段(12)、例えば支持体すなわち裏打ち材(11)の凹部に添加され、その収容手段から、前記試料は、前記裏打ち材(11)上に配置された追加の媒体すなわち濾材と流体連通するようになる。
【0054】
図6図6は、図3に示す実施態様による装置の平面概略図を示す。
【0055】
図7図7は、図4に示す実施態様による装置の平面概略図を示し、この装置では、膜(100)が濾材または試料パッド(1)上に配置されている。
【0056】
図8図8は、図5に示す実施態様による装置の平面概略図を示す。
【0057】
図9図9は、別の実施態様による装置の平面概略図を示し、この装置は、ラテラルフローアッセイ装置の流路に平行に配置された別個の収容手段(13)、および第1の媒体または試料パッド(1)を含み、前記媒体すなわち濾材は、支持体(20)上の追加の媒体すなわち濾材と流体連通している。前記別個の収容手段は、凹部、支持体すなわち裏打ち材(10、11、20)表面の区切られた領域、またはセルロース系濾紙またはガラス繊維系濾紙などの濾紙であってもよい。
【0058】
図10図10は、1種の濾紙での光学的ヘモグロビン測定の結果を示すブランド-アルトマンプロット(Bland Altman plot)である。測定値の差異(g/dL)および平均値(g/dL)を、それぞれy軸およびx軸に示す。
【0059】
図11図11は、別種の濾紙での光学ヘモグロビン測定の結果を示す別のブランド-アルトマンプロットである。測定値の差異(g/dL)および平均値(g/dL)を、それぞれy軸およびx軸に示す。
【0060】
図12図12は、支持体すなわち裏打ち材(10)および前記支持体に配置された媒体すなわち濾材(1)、(2)、(3)および(6)を有する、ラテラルフロー試験の組立品に使用される中間体を示す。この中間体を横方向に切断すると、ラテラルフローアッセイの断片が形成され、ここで(1)は試料添加パッドに対応し、(2)は結合パッドであり、(3)は試験列とコントロール列を備えた濾材であり、(6)は吸収パッドすなわち吸い上げパッドであり、これら全てが、支持体すなわち裏打ち材(10)上に配置されている。
【0061】
図13図13は、試作分析装置の分解図であり、この図では、特に濾材すなわち媒体(1)、(2)、(3)および(6)を封入し、かつ試料投入部(201)およびそれぞれ試験列(4)およびコントロール列(5)を露出する1つ以上の開口部(202)を有する筐体(200)を示している。
【0062】
図14図14A~Dは、種々の波長、すなわち543nm(A)、590nm(B)、660nm(C)、および940nm(D)について、信号(バックグラウンド補正後の血液スポットの画素の中央強度値)に対するヘモグロビン濃度の相関を示す。
【0063】
図15図15は、660nmの光学フィルターを用いて4種の異なる濾材で試験された6個の異なる試料について、画素強度から抽出された適合最頻値(mode-of-fit)のパラメータがHb濃度(g/L)と如何に相関するかを示すグラフである。
【0064】
図16図16は、660nmの光学フィルターを用いて4種の異なる濾材で試験された6個の異なる試料について、画素強度から抽出された適合最頻値のパラメータがヘマトクリット体積分率(%)と如何に相関するかを示すグラフである。
【0065】
図17図17は、660nmの光学フィルターを用いて4種の異なる濾材で試験された18個の異なる試料について、画素強度から抽出された適合最頻値のパラメータがHb濃度(g/L)と如何に相関するかを示すグラフである。曲線は上から下の順序に、WhatmanTM 17 Chr濾紙、Whatman(登録商標) 2668セルロースクロマトグラフィー紙、ガラス繊維系濾材GF/DVA、およびガラス繊維系濾材VF2であり、ガラス繊維系濾材の両者ともGE Healthcare製である。
【0066】
図18図18は、(図15図17と同様に)660nmの光学フィルターを用いて4種の異なる濾材で試験された18個の異なる試料について、画素強度から抽出された適合最頻値のパラメータがヘマトクリット体積分率(%)と如何に相関するかを示すグラフである。種々の濾紙の曲線はまた、同一の順序で図中に表示されている。
【0067】
図19図19は、6種の異なる波長、すなわち543.5nm、590nm、660nm、780nm、800nm、および940nmで試験された4種の異なる濾材のピアソン相関(適合最頻値対Hb)を示すグラフである。
【0068】
図20図20は、6種の異なる波長、すなわち543.5nm、590nm、660nm、780nm、800nm、および940nmについて、時間(15~300秒)の関数としてのピアソン相関(中央値対Hb)を示すグラフである。
【0069】
図21図21は、全血試料の添加後15秒に、かつ780nmの光学フィルターを用いて測定されたHb濃度の関数として中央画素値を示すグラフである。2次多項式近似を用いて、予測モデルを定式化した。
【0070】
図22図22は、前述のグラフから計算された予測モデルを用いて、血液添加後の時間(15~300秒)の関数としての真のHb濃度(g/L)と割当てHb濃度(g/L)との間の平均値の差として測定された経時的なHbの予測可能性を示すグラフである。
【0071】
図23図23は、全血を用いた変更ラテラルフロー試験で測定されたカルプロテクチン濃度と、血漿を用いた濁度分析との間の相関を示す。全血検査では、44.5%の一定のHct値(黒丸)、または光学的に予測されたHct値(白丸)のいずれかを使用した。
【0072】
図24図24は、血漿中の濁度測定と対比して、変更ラテラルフロー試験を用いて測定され、かつ44.5%の仮想のHct値に対し調節された全血中のカルプロテクチンの相対偏差を示す。
【0073】
図25図25は、血漿中の濁度測定と対比して、変更ラテラルフロー試験を用いて測定され、かつ光学的に予測されたHct値に対し調節された全血中のカルプロテクチンの相対偏差を示す。その結果によると、カルプロテクチンの全血ラテラルフロー試験では、Hct値を予測して考慮すると、高い精度の結果が得られることを確認した。
【0074】
図26図26は、3次多項式に適合された800nmでのHct値と中央画素値との間の相関を示す。
【0075】
図27図27は、3次多項式に適合されたHct値と血液スポットの面積との間の相関を示している。
【0076】
図28図28は、血液スポットでの画素の中央強度値および面積に基づくHct値の決定を組み合わせると、精度の改善が達成されることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明を説明する前提として、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその同等物によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様のみを説明する目的で使用されていて、限定を意図しないことは当然である。
【0078】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈で明らかにそうではないことを明示しない限り、複数の指示対象を含むことを指すのは当然である。
【0079】
「全血試料」などでの用語「試料」は、人体または動物の体から採取された試料を指し、その試料をその人体または動物の体に戻すことはない。
【0080】
本明細書で使用される用語「全血」は、その全ての構成要素を含む血液を指す。言い換えれば、全血は、赤血球、白血球、血小板などの血球、およびその中に血球が懸濁する血漿の両方を含む。
【0081】
本明細書で使用される用語「血漿」は、血液の液体培地を示し、水、血漿タンパク質、および血清アルブミン、血液凝固因子、免疫グロブリン(抗体)、ホルモン、二酸化炭素、その他の種々のタンパク質、および種々の電解質(主にナトリウムおよび塩素イオン)などの微量のその他の物質を含有する実質的に水溶液である。
【0082】
本明細書で使用される用語「血清」は、凝固タンパク質が除去された血漿を指す。
【0083】
さらなる実施態様では、基材表面に塗布された試料は、未処理の全血試料である。本明細書で使用される用語「未処理」は、当然ではあるが、試料を(例えば患者から採血により)採取した後に、かつそれを本発明の方法に供する前に、(例えば、分画手法、濾紙表面などでの全血の乾燥、例えば試料の保管、および水中への再溶解による乾燥血液試料の再構成などの)さらなる試料処理を実施しないことである。
【0084】
但し、例えば冷蔵庫または冷凍庫でのその試料自体の保管は、上記で定義された処理工程と見做さない。従って、試料は、採取直後に基材表面に塗布してもよく、あるいは試料を1時間以上~1日以上または1週間以上に亘って保存した後に装置内に導入してもよい。
【0085】
さらに、全血試料は、試料の長期保存時に血餅の形成を引き起こし、それによりその存在がその後の分析を妨害する可能性がある血液凝固因子を含むので、抗凝固剤(すなわち血液凝固の阻害剤)の添加もまた、本発明の意味する範囲内である試料の処理には当たらない。抗凝固剤として作用する複数の化合物が、当技術分野では周知である。抗凝固剤の例として、特に、天然または合成の(すなわち、化学合成および/または組換えDNA技術によって得られる)ビタミンK拮抗薬、天然または合成の直接トロンビン阻害剤、クエン酸塩、シュウ酸塩、ヘパリン、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0086】
他の実施態様では、全血試料は、対象から直接(すなわち、上記の定義のように未処理の形態で)基材表面に塗布される。特に全血試料は、対象の指先での穿刺から採取してもよい。例えば指先を穿刺した後に、外部からの操作なしに毛細管力によって血液が導入されるように血液を毛細管と接触させて、漏出する血液を採取してもよい。次に、毛細管は、血液が通過できるように、または血液が装置内に能動的に移動できるように、使用される分析装置に対して配置されてもよい。あるいは穿刺された指先を、(例えば、その開口部に接する指先を直接押して)穿刺から漏出する血液が装置内に導入され得るように、以下に詳述される装置の開口部のうちの1つの直ぐ近傍に配置してもよい。
【0087】
人体または動物の体から採取される血液試料の採取および取扱いについて、針、注射器、マイクロキュベットなどの使用を含む標準化された方法が存在する。これらの方法は、当業者には周知である。試料の現在最も好ましい形態は、リチウムヘパリン処理された全血試料である。いくつかの噴霧被覆されたリチウムヘパリンを含有する採血管が存在し、様々な市販品、例えばカナダのOakville, OntarioにあるBecton, Dickinson社からのBD Vacutainer(登録商標)が入手可能である。
【0088】
用語「基材」は、分析のために全血試料を受入可能な任意の基材を指し、好ましくは均質な色調の平滑な基材、最も好ましくはセルロース系濾材またはガラス繊維系濾材などの繊維状基材を指す。
【0089】
「ヘマトクリット数値(hematocrit value)」または「ヘマトクリット値(hematocrit level)」という用語は、血液中の赤血球(RBC)の体積分率(体積%)を指す。測定値は、赤血球の数と寸法に依存し、性別、年齢、健康状態によって異なる。通常、成人男性では約40%~54%、成人女性では36%~48%である。赤血球の目的は肺から体組織への酸素の輸送であるため、血液試料のヘマトクリット値(赤血球の体積%)は、酸素を送達する能力の判断基準になる可能性がある。ヘマトクリット値が高過ぎるあるいは低過ぎる場合は、血液障害、脱水症、またはその他の病状を示す可能性がある。異常に低いヘマトクリット値の場合は、貧血、すなわち赤血球の総量の減少を示唆する可能性があり、異常に高いヘマトクリットの場合は、赤血球増加症と呼ばれる。
【0090】
本開示での用語「検体」は、血液および血漿中に存在する全ての臨床的に関連する検体、例えば、抗体、ホルモン、およびタンパク質を指し、例えば限定はされないが、フェリチン、血漿カルプロテクチン、シスタチンC、プロカルシトニン、およびC反応性タンパク質を指す。抗体の例として、自己抗体、ならびにウイルスおよび細菌などの感染病原体に対する抗体、例えば、抗CCP、抗ストレプトリジン-O、抗HIV、抗肝炎(抗HBc、抗HBsなど)、ボレリアに対する抗体、および微生物タンパク質に対する特異的抗体が挙げられる。
【0091】
本説明での第1の側面は、ラテラルフローアッセイ装置で全血試料中のヘマトクリット値を測定するための光学的方法に関し、この方法は、(i)試料を基材に塗布して血液スポットを形成する工程;(ii)塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程、(iii)前記画像を分析して少なくとも1種のパラメータを抽出する工程;および(iv)少なくとも1種の抽出されたパラメータの値に基づいてヘマトクリット値を決定する工程を含む。
【0092】
上記側面の実施態様によれば、全血試料は未処理の試料である。ここで未処理とは、試薬が試料に添加されていないことを意味する。好ましくは、さらに基材内にまたは試料が添加される表面に、いかなる試薬も添加も固定もされない。
【0093】
上記側面の別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、画像は、塗布工程後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される。治療現場の用途では、結果を迅速に取得できることが望ましい。従って、本発明の方法では、試料をラテラルフロー型装置に適用してから数秒以内に読み取りが既に実行済みとできることは顕著な利点となる。
【0094】
上記側面のさらに別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記少なくとも1つの抽出されたパラメータは、前記血液スポットの反射率または前記血液スポットの面積である。好ましくは、前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積の両方が測定され、次いで予備ヘマトクリット値と関連付けて、この2つからの平均値をヘマトクリット値の測定値として使用する。
【0095】
上記側面のさらに他の態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、390nm~1000nmの範囲、好ましくは650nm~1000nmの範囲の少なくとも1種の波長、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される。好ましくは、反射率は、800nmで測定されるか、あるいは660nmおよび940nmの両方で測定される。
【0096】
一実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(ii)で撮影された前記画像内に含まれる画素の中央強度値として測定される。
【0097】
別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記方法は、基準試料の基準ヘマトクリット値が遠心分離によって測定される較正工程をさらに含む。
【0098】
さらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、ヘマトクリット値は、まず前記試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定し、次に前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換して決定される。好ましくは、ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換し、それによりヘマトクリット値(%)を得る。
【0099】
本開示の第2の側面は、全血試料中の検体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ方法に関し、この方法は
a)全血の未処理試料を前記ラテラルフローアッセイでの第1の表面に塗布して、その表面に血液スポットを形成する工程、
b)塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程、
c)前記画像を分析して、前記試料のヘマトクリット値を示す第1の値を測定する工程、
d)試料中の検体の量を示す第2の値を測定する工程、および
e)工程c)で測定されたヘマトクリット値、および工程d)で測定された検体の量に基づいて、試料中の検体の濃度を決定する工程
を含む。
【0100】
第2の側面の実施態様によれば、検体は、フェリチン、トランスフェリン、血漿カルプロテクチン、C反応性タンパク質(CRP)、シスタチンC、血漿プロカルシトニン(PCT)、および抗CCP抗体から選択される。
【0101】
第2の側面のさらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記画像は、塗布工程(a)後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される。
【0102】
第2の側面の別の実施態様によれば、この実施態様は前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記少なくとも1種のパラメータは、前記血液スポットの反射率、あるいは前記血液スポットの面積である。好ましくは、前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積を測定し、次いで予備ヘマトクリット値と関連付け、この2つから得られた平均値をヘマトクリット値の測定値として使用する。
【0103】
第2の側面の別の実施態様によれば、この実施態様は前記側面の全ての他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、390nm~1000nmの範囲、好ましくは650nm~1000nmの範囲の少なくとも1種の波長で、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される。好ましくは、反射率は、800nmで測定されるか、あるいは660nmおよび940nmの両方で測定される。
【0104】
第2の側面の一実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、反射率は、800nmの光学フィルターを用いて撮影された画像内に含まれる画素の中央強度値として測定される。
【0105】
別の実施態様によれば、この実施態様は他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、前記方法は、基準試料の基準ヘマトクリット値を遠心分離によって決定する較正工程を含む。
【0106】
さらに別の実施態様によれば、この実施態様はまた他の側面および他の実施態様と自在に組合せ可能であり、ヘマトクリット値は、まず前記試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定し、次に前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換して決定される。好ましくはヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換し、これによりヘマトクリット値(%)を得る。
【0107】
本開示の第3の側面は、全血試料中のヘマトクリットを測定するためのシステムに関し、前記システムは、その基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、少なくとも1つの光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成された検出器、および既知のヘマトクリット値から得られた反射率および/または寸法の記憶された値に基づいて、血液スポットの反射率および/または寸法を前記試料のヘマトクリット値と関連付けるように構成されたプロセッサを有するラテラルフローアッセイ装置を含む。
【0108】
第4の側面は、全血試料中のヘマトクリットを測定するためのシステムに関し、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成された基材、少なくとも1つの光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成された検出器、および既知のヘモグロビン濃度から得られた反射率および/または寸法の記憶された値に基づいて、血液スポットの反射率および/または寸法を前記試料のヘモグロビン濃度と関連付け、かつ前記ヘモグロビン濃度に基づいてヘマトクリット値を算出するように構成されたプロセッサを有するラテラルフローアッセイを含む。
【0109】
一側面は、全血試料中の血漿カルプロテクチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗カルプロテクチン抗体を有する結合パッド、固定された抗カルプロテクチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0110】
別の側面は、全血試料中のシスタチンCの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗シスタチンC抗体を有する結合パッド、固定された抗シスタチンC抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0111】
さらに別の側面は、全血試料中のフェリチンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗フェリチン抗体を有する結合パッド、固定された抗フェリチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0112】
別の側面は、全血試料中の血漿プロカルシトニンの濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗フェリチン抗体を有する結合パッド、固定された抗フェリチン抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0113】
別の側面は、全血試料中のC反応性タンパク質(CRP)の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される抗CRP抗体を有する結合パッド、固定された抗CRP抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0114】
別の態様は、全血試料中の抗CCP抗体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置に関し、前記装置は、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、マーカーに結合される1つ以上の環状シトルリン化ペプチド(CCP)を有する結合パッド、固定された抗体の少なくとも1つの試験列を備えた膜、および吸収性パッドを含む。
【0115】
上記側面のいずれか1つによるラテラルフローアッセイ装置の一実施態様では、前記基材は、前記ラテラルフローアッセイの結合パッドと流体連通して配置され、前記基材は、ガラス繊維系濾材である。ガラス繊維系基材を用いる場合は、反射率を、650nm~1000nmの範囲の波長で測定するのが好ましい。
【0116】
上記側面のいずれか1つによるラテラルフローアッセイ装置の別の実施態様では、前記基材は、前記ラテラルフローアッセイの結合パッドと平行に配置されかつ流体連通されておらず、前記基材は、ガラス繊維系濾材、セルロース系濾材、および不浸透性の表面を有する基材から選択される。セルロース系基材を用いる場合は、反射率を、550nm~630nmの範囲の波長で測定するのが好ましい。
【0117】
別の実施態様は、上記の実施態様のいずれか1つによるラテラルフローアッセイ装置を収容する装置である。この装置は、少なくとも、光源、反射光を検出しかつ/または前記ラテラルフロー装置の基材表面に形成された血液スポットの寸法を測定するように構成される検出器、および血液スポットの反射率および/または寸法をヘマトクリット値に関連付け、かつこのヘマトクリット値を全血試料中の検体の濃度を算出する際に使用するように構成されるプロセッサを含む。
【0118】
他の実施態様は、既知のヘマトクリット値について得られた反射率および/または寸法の記憶された値に基づいて、血液スポットの反射率および/または寸法をヘマトクリット値に変換するように構成されるプロセッサに関する。さらに、前記プロセッサは、全血試料を分析に供する環境で、血漿中に存在する別の検体の値を算出する際に試料のヘマトクリット値を考慮に入れるように構成される。前記プロセッサは、メモリに記憶されたソフトウェア命令を実行することができる、適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路などのうちの1つ以上の任意の組合せを用いて提供され、従ってこれはコンピュータプログラム製品であってもよい。このプロセッサは、本明細書に開示される方法のいずれか1つ、例えば、本明細書に添付された特許請求の範囲で定義される方法を実行するように構成できる。
【0119】
このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)および読み取り専用メモリ(ROM)の任意の組合せであってもよい。メモリはまた、永続的記憶を含み、これは、例えば、磁気メモリ、光メモリ、ソリッドステートメモリ、さらに遠隔装着されたメモリのうちのいずれかの単品または組合せであってもよい。
【0120】
プロセッサでのソフトウェア命令の実行中にデータを読み取りおよび/または記憶するためのデータメモリもまた提供される。このデータメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)および読み取り専用メモリ(ROM)の任意の組合せとしてもよい。
【0121】
本明細書に開示されるラテラルフローアッセイのための装置および/またはシステムは、他の外部エンティティと通信するためのI/Oインターフェースをさらに含んでもよい。必要に応じて、I/Oインターフェイスにはユーザーインターフェイスも含まれる。
【0122】
本明細書に提示される概念を曖昧にしないように、その他の構成要素は割愛する。
【0123】
上記側面および実施態様では、全血試料の基材への塗布は、血液滴などの試料を、クロマトグラフィー紙、セルロース系の濾材、またはガラス繊維系の濾材などの実質的に平坦な繊維構造へ塗布することを含む。例えば紙または濾材などの基材の寸法は、試料の量に比例させるので、例えば25μLの血液滴は、スポットの端部が紙または濾材の端部に到達することなく、実質的に丸形のスポットを形成する。その例として、幅5mmの濾紙の断片が初めは試験されたが、大多数の例では、15mm×15mmの正方形が用いられ、試料(25μL)が各正方形のほぼ中央に塗布された。試料容量がより多い場合には、それに応じて紙または濾材の寸法もより大きくする。試料容量は、当業者により選択でき、例えば、測定される検体、検体の生理学的濃度、および分析の感度などの目的の分析に応じて、10μL、20μL、25μL、50μL、100μLであってもよい。
【0124】
驚くべきことに、血漿中に存在する上記の検体は、ラテラルフロー試験に使用される全血試料で高精度に測定でき、かつ本明細書に開示される方法および装置は、特に医療現場の環境では多くの利益をもたらす。
【0125】
本明細書に開示される方法の1つの重要な利点は、それらの方法が、いずれのHctおよび/またはHb測定試薬の使用にも依存しないことである。これにより、分析が簡素化されるだけでなく、さらにコストを削減し、ならびにHbの測定で最も頻繁に使用される試薬が2つの毒性の高い化学物質であるフェリシアン化カリウムとシアン化カリウムであることを考慮すると、リスクも低減できる。
【0126】
フェリシアン化カリウムおよびシアン化カリウムなどの試薬の排除により、ラテラルフローアッセイ装置が保管中でもより安定であるというさらなる利点を有し、またこれらの試薬およびその他の試薬は、水分を吸収しかつ/あるいはアッセイの他の成分と反応する傾向があるので、より長期の保管寿命を保証できる。
【0127】
別の利点は、迅速な応答時間であり、これにより献血者などを選別する際に、医師または診療所に訪問中に直ぐに結果を得ることが可能となる。迅速な応答時間はまた、Hb値およびHct値の測定を血漿中の他の検体の濃度を測定するアッセイに統合でき、かつHct値の変動に対して補正が可能となる。本発明者らは、これにより、Hctの平均値(総母集団での平均値または患者の性別での平均値)を用いる測定と比較して、検体測定値の精度を著しく改善できることを示している。Hct値の統合された測定では、患者の性別、年齢、場合によっては健康状態に基づいてHct値を推定する方法よりも遥かに信頼性が高くなる。
【0128】
別の利点は、この方法および装置が基材、例えば紙に基づいており、個別のキュベットを必要としないことにあり、これにより、この方法ならびにこの方法を用いる装置をより簡潔で低コストにする。凍結乾燥試薬を含むキュベットの使用と比較して、アッセイの方法および装置は、より安定であり、かつ周囲湿度の変動に対する感受性がより低くなる。
【0129】
さらに別の利点は、試料の長時間の乾燥を必要とする従来技術の方法とは対照的に、即時の測定は、試料の混同を回避するのに役立ち、患者の長い待機時間を回避し、あるいはこの方法が自動化されるとより高い処理能力が可能となる。
【0130】
本明細書に開示される方法は、高速かつ簡潔であることに加えて、驚くほど高精度である。以前までの本発明者らが得た経験に基づくと、その精度は、±7g/L以内のHb値、または約±2%以内のHct値である。
【0131】
別の利点として、カメラセンサー技術は、あるいは提示の目的に適するいかなる検出器の構成も、比較的安価で容易に入手可能できることにあり、これにより本発明の構想を利用する分析装置の構築を経済的にできる。この方法はまた、自動化にも十分に適していて、これは別の重要な利点である。
【0132】
本明細書に開示の方法はまた、試料調製での別個の工程として、またアッセイ装置への試料の取扱いでの初期の工程として、例えば血漿から赤血球を分離するために試料がいわゆる血液濾材に塗布にされる場合に、既存のかつ将来の臨床分析方法と統合でき、あるいは同時にまたは連続的に実行できる。この環境では、特に650nm~1000nmの範囲である波長範囲が、セルロース系基材およびガラス繊維系基材に対し同等に適用可能であることは、重要な利点となる。また溶血が望ましくないアッセイにもこの方法を統合できるので、血液を溶血せずにHct値の測定を実行できることもまた利点である。というのは、血漿の変色は結果の読み取りに干渉し、あるいは溶血は、検体または試薬を妨害しアッセイを損なう物質を放出するからである。
【実施例
【0133】
実施例1:光学的なヘモグロビン値測定
材料および方法
光学装置、ソフトウェア、および方法
70mm f/2,8 DG Macro Art lensを備えたSony A7 IIミラーレス民生用カメラ装置(日本のSony社製)を用いて画像を撮影した。カメラには、フル形式のCMOSセンサーが搭載され、24MPの画像を提供する。
【0134】
白色のStyrofoam(登録商標)の輸送箱を用いて照明箱を作製し、家庭用の暖色系LED照明装置(3000K)を購入してこの箱内に設置した。照明を画像の種類に合わせて調整した。紙表面の試料スポットを検討する際には、箱内の多くの側面からの光線を使用して、また毛細管内の試料を検討する際には、反射を避けるために、光源を目的物の下部に配置して、目的物を下部から照射した。また白色バランスカード(米国のPorta-Brace社製)を、画像とする目的物の架台として使用した。必要に応じて、ティッシュペーパー/ペーパータオルを用いて光を拡散させた。
【0135】
カメラを、試験毎に同一の位置に正確に配置したが、種々のカメラ設定、センサーと目的物間の種々の距離、および(目的の距離に手動で調節された)種々の焦点設定を用いた。全ての画像はRAW形式(Sony RAW)で撮影された。RAW形式のカラー画像は3色の列であり、かつBayerの色フィルターが存在するので、緑色の列には画像画素の50%の情報が含まれ、赤色と青色の帯域には画像画素の25%の情報が含まれる。
【0136】
赤色列(R)を用いて画像を分析して、RAW画像を直接的に読み取る良い方法は見出し難いために、RAW画像をTIF形式に変換した。このことは、全ての色帯域での全ての画素の色強度値を取得するために脱モザイク処理が実施されたことを意味する。さらに、RAWからTIFへの変換でγ補正処理が実施されていてもよい。
【0137】
タグ付き画像ファイル形式(略してTIFFまたはTIF)は、ラスターグラフィックス画像を記憶するためのコンピュータファイル形式である。画像データを無損失形式で記憶する機能により、TIFFファイルは便利な画像アーカイブとなる。というのは、標準のJPEGファイルとは異なり、無損失圧縮を用いるTIFFファイルは、画質を損なうことなく編集および再保存できるからである。
【0138】
Sony Imaging Edgeソフトウェア(日本のSony社製)を用いて、ARW画像を開き、それらをTIFに変換した。次に画像を(表示用の)広色域RGB(Wide Gamut RGB)および(イメージセンサーのダイナミックレンジは14ビットであるが)16ビットとして保存した。画像を適切なサイズに保つように、圧縮が実施される場合もある。全体として、RAW画像の元の信号はTIF変換で転換され、将来の検討のための生画像の読み取りは後回しにした。
【0139】
RAW画像はそれ自体が画像ではないので、RAW画像を用いる部分的に充填された数字の行列/配列のみでは、クラスタリングなどの通常の画像分析は実行できない。各画素について、RAW画像には単一の色値のみが存在し、画素の50%には緑色の信号が含まれ、25%の画素には赤色の信号が含まれ、かつ25%の画素には青色の信号が含まれる。但し画像には非常に多くの画素が存在するために、アルゴリズムでは、1つの画素がその隣接する画素の色強度を取得すると仮定する。
【0140】
血液試料
10個の全血の非ゲルヘパリン試料を、2018年8月15日および8月27日の2回にわたって採取した。各回毎に異なる提供者を用いた。試料には、Hemocue 201(スウェーデンのHemocue AB社製)での測定値とドラブキンでの測定値の平均値を取ってヘモグロビン濃度を割り当てた(ドラブキン測定は、フェリシアン化カリウムとシアン化カリウムを含む溶液中に血液を希釈する、標準化された分光光度法である。フェリシアン化カリウムは、ヘム中の鉄を第2鉄状態に酸化してメトヘモグロビンを生成し、これをシアン化カリウムによってヘミグロビンシアニド(HiCN)に変換する。HiCNは安定した着色生成物であり、溶液中では540nmに最大吸収率を有し、ベール-ランベルトの法則(Beer-Lambert’s law)に厳密に従う。540nmでの希釈試料の吸収率を、同等のヘモグロビン濃度が既知である標準HiCN溶液の同一の波長での吸収率と対比する。試薬は英国のRandox Laboratories社から入手した)。
【0141】
2018年8月15日に採取した10個の試料から、対応する血漿で希釈しかつ取り出された赤血球を急激添加して、試料のうちの1個から一組の8個の検定試料を作製した。また残りの試料を希釈・混合して合計22個の試料を用いた。当初の考えとしては、8個の検定試料から検量曲線を形成し、22個の試料を用いて割当て濃度に対して22個の試料を評価することであった。しかしこの方策は断念して、代わりに検定試料および残りの試料を全て、ヘモグロビン定量のためのモデルのモデル構築およびその検証に使用した。2分割による交差検証を用い、かつ得られたモデルを用いて全ての試料の濃度を評価した。これは完璧な方策とは言えないが、モデル構築に関与しなかった試料によりモデルを評価するためには、試料の数は少なすぎるので個別のホールドアウト設定を見込むことはできないと判断した。
【0142】
2018年8月27日に採取した10個の試料から、これら試料を対応する血漿によって混合・希釈して合計36個の試料を調製した。全ての試料を、モデル構築および検証の目的に用いた。上記のように2分割の交差検証を実施し、ホールドアウト設定は用いなかった。
【0143】
1.1:濾紙表面の光学的測定
濾紙(ドイツのMerck KgaA社製のWhatman(登録商標) 2668セルロースクロマトグラフィー紙)試料を手で切断した。上述の光学装置を使用して、カメラ設定は、ISO感度:160、シャッター速度:1/100、および絞り:10とした。
【0144】
100μLの血液を濾紙片にピペットで移し、各試料について、塗布直後に、すなわち推定時間で塗布後1分未満に画像を撮影した。
【0145】
画像から手で縁部を切り出してTIFに変換した。切り出しは2000×2000画素とし、紙表面の記載番号を切り出す必要があるために、血液スポットを画像の中央に配置させるとは限らなかった。血液スポットの寸法は、ヘモグロビン濃度と相関することが分かった。
【0146】
画像を濃淡階調に変換して、0.7の濃淡階調強度を閾値とした。次に、各2値化画像内の白い画素の数を計数して、血液で覆われた面積を測定した。その後に、各色帯域について各血液スポットからの統計データ、ならびに各色帯域のバックグラウンド信号の平均値および中央値を採取した。バックグラウンド補正信号を、血液スポット信号にバックグラウンド信号を掛け算して生成した。生成された統計データおよび血液スポットに属する画素数の割当て濃度に対する相関は、血液スポット信号の中央値が、割当て濃度と高度に関連することを示していた。また、画像内の血液画素の数が割当て濃度とかなりよく関連するように思われる。興味深いことに、赤色帯域のバックグラウンドも濃度と相関があるが、これはおそらく一部の血液画素がバックグラウンドを汚染していて、使用されるフィルター値を高めることを意味している。8g/dL未満の試料(この場合は1試料)は排除した。
【0147】
補正後の赤色、緑色、および青色の各帯域の中央値、および血液画素の数を表す特性値を用いて、多変量モデルを作成した。最終的なデータ集合を標準化しPC変換した。モデル構築では、補正後の色帯域の中央値を表す4つのPCA成分の全てを用いた。線形カーネルを用いたMLRとSVMは、Rおよびパッケージカレット(package caret)を用いて実行された。モデル化では濃度を重みとして使用した。モデルは2分割交差検証を実施して構築され、全ての試料は最終モデルによって予測された。ホールドアウト設定は使用しなかった。MLRモデルおよびSVMモデルの平均値を表示する。2つの試料の偏差は1g/dLを超えていて、最も問題のある試料は約15g/dLの高い値の試料のように思われる。
【0148】
この結果を、図10にブランド-アルトマンプロットとして示す。
【0149】
種々の紙質を使用する試験もまた実施した。50μLの全血をWhatman(登録商標) 17 CHRセルロースクロマトグラフィー紙の手による切断片に塗布した。この試験では、背景照明のみの使用に代えて、箱の全側面にLEDを配置するように、光の設定は毛細管試験とは変更した。カメラ設定は、ISO感度:160、シャッター速度:1/100、および絞り:10とした。
【0150】
他の全ての試験と同様に、色温度を2800Kに設定した。その結果を、図11にブランド-アルトマンプロットとして示す。
【0151】
1.2比較例:20μLのVITREX(登録商標)毛細管での光学的測定
全血試料を20μLのVITREX(登録商標)ガラス製毛細管(デンマークのVitrex Medical A/S社製)に採取し、上述のカメラを用いて白色バランスカードの背景に対し照明箱内で写真を撮った。このカメラ設定は、ISO感度:250、シャッター速度:1/80、および絞り:10とした。この画像を、Sony Imaging Edgeを用いて傾き補正して切り出した。
【0152】
画像を濃淡階調に変換して、画素を毛細管に属する0.7未満の濃淡階調強度に従って区分し、残部を背景に属するものとした。0.7の選択は、背景領域の殆どの画素強度が約0.85であるという事実に基づいた。区分された保存画像の例では、この区分がかなり合理的であることを示していた。但しより高度な区分/切り出しも実施できた可能性もある。カットオフの選択は、結果に僅かに影響するようである。0.6、0.7、0.8を試したところ、0.7が最も適切であると思われる。また1未満のバックグラウンド信号は、白色とは異なる背景を示す。背景は白色バランスカードであるので、白色バランスを調整することもできたが、この調整はしなかった。全ての画像を、同一の照明条件の下で同一の照明箱内で撮影する。
【0153】
赤色領域の信号の平均値および中央値によって背景を分割かつ乗算する試みにより、バックグラウンド信号の調整を試行した。相関は僅かに改善されたが、おそらく大幅な改善ではなかった。適切なバックグラウンド補正はおそらく重要となる。相関関係を見ると、バックグラウンドの中央値によって補正される信号の中央値は、予測因子として最良の選択であるように思われる。
【0154】
モデル構築の前に、3つの予測因子は、標準化後にPCA変換された。これにより、3つのPCA成分の全てを備えたMLRモデルが最適に機能した。このモデルは1/割当て濃度で重み付けされた。線形カーネルを用いたSVMなどの他のモデルも試行したが、結果の改善はなかった。MLRとSVMの平均値を使用して、図11に示すブランド-アルトマンプロットを得たが、この図は、いくつかの試料では割当てられた値に対して1g/dLを超える偏差があることを示している。
【0155】
40μLのVITREX(登録商標)毛細管を用いる試験も実施され、同等の結果が得られた(結果は示さず)。同様に毛細管を使用する追加の試験を実行したが、ここでは毛細管を白色バランスカードから分離するために、毛細管を白色バランスカードに接着させた発泡支持体上に配置するか、あるいは2個の黒いプラスチック片の間に毛細管を配置した。毛細管の露出を変更する様々なカメラ設定も試された。
【0156】
1.3比較例:長方形毛細管での光学的測定
全血試料を長方形のガラス毛細管(ドイツのHilgenberg GmbH社製)に採取し、上述のカメラを用いて白色バランスカードの背景に対し照明箱内で撮影した。このカメラの設定は、ISO感度:200、シャッター速度:1/80、および絞り:10とした。
【0157】
画像を3000×500画素に切り出し、広色域16ビットの非圧縮TIFとして保存した。バックグラウンド補正信号を、血液の信号をバックグラウンド信号で除算して生成した。生成された統計データおよび血液に属する画素数の割当て濃度に対する相関関係は、血液信号の中央値が割当て濃度と中程度に関連することを示していた。8g/dL未満の試料(この場合は1試料)は排除した。6個の試料の偏差は1g/dLを超えており、最も問題のある試料は約15g/dLの高い値の試料であると見受けられ、一般には予測値は割当てられた値に比べて下回っている。
【0158】
これらの結果は、デジタル画像の色分析に基づく光学的なヘモグロビンの定量が実行可能であり、本試験では、試料が紙媒体に塗布された場合に、ガラス毛細管に比較して分析
【0159】
はより良好に実施できることを示していた。
実施例2:濾紙表面での光学的Hb値測定
材料および方法
光学装置、ソフトウェア、および方法
実施例1に関連して説明したように、70mmのf/2,8 DG Macro Art lensを備えたSony A7 IIミラーレス民生用カメラ装置(日本のSony社製)を設置した。
【0160】
試験装置は、図1に模式的に示されている。図中では、箱1の前面が取り外されていて、カメラ2、「架台」すなわち試料を保持する試料ホルダー3、カメラ2のレンズから種々の距離に「架台」を配置するための調節可能な支持体4が見られる。4個の光源5、6、7、および8が箱内に配置され、個別にオンとオフを切替え可能であった。光は、各光源の前に紙スクリーン9を配置して拡散できるようにした。試料10は、カメラ2のレンズの真下の「架台」に配置された。
【0161】
各試験で、カメラは同じ場所に正確に配置されたが、異なるカメラ設定、センサーと目的物との間の異なる距離、および(目的の距離に手動で調節される)異なる焦点設定を用いた。実施例1で開示したように、ここでも全ての画像をARW形式(Sony Alpha RAW形式)で撮影し、赤色列(R)を用いて分析した。実施例1と同様に、Sony Imaging Edgeソフトウェア(日本のSony社製)を用いて、RAW画像を開きTIFに変換した。次にこの画像を、(表示用の)広色域RGBおよび(画像センサのダイナミックレンジは14ビットであるが)16ビットとして保存した。画像を適切な寸法に保持するために、圧縮が実施される場合もあった。
【0162】
血液試料
最初の試験のために、10個の全血非ゲルヘパリン試料を2回にわたって採取した。提供者は毎回異なった。この試料には、Hemocue 201(スウェーデンのHemocue AB社製)での測定値と(英国のRandox Laboratories社からの試薬および説明書による)ドラブキンでの測定値の平均値を取って、ヘモグロビン濃度を決めた。
【0163】
2回のうちの初回に採取された10個の試料から、対応する血漿で希釈しかつ赤血球を除去した対応する血漿を急激添加して、試料のうちの1個から一組8個の検定試料を作製した。また試料を希釈・混合して、合計22個の試料を用いた。検定試料および22個の試料を、Hb定量のためのモデルのモデル構築および検証に使用した。2分割の交差検証を用い、得られたモデルを用いて全ての試料の濃度を評価した。
【0164】
2回目に採取された10個の試料から、対応する血漿で試料を混合・希釈して、合計36個の試料を調製した。全ての試料をモデル構築と検証の目的に使用した。上記のように、2分割の交差検証を実行した。ホールドアウト設定は使用しなかった。
【0165】
濾紙(ドイツのMerck KGaA社製のWhatman(登録商標) 2668セルロースクロマトグラフィー紙)の試料を手で切った。上記のように光学機器を用いて、カメラ設定は、ISO感度:160、シャッター速度:1/100、および絞り:10とした。
【0166】
血液の試料を濾紙片にピペットで移して、各試料について、塗布直後に、すなわち推定時間で塗布後1分未満に画像を撮影した。試料量は100μLの血液であった。
【0167】
この画像を手で切り出しTIFに変換した。切り出しは2000×2000画素であり、紙への記載番号を切り出す必要があるため、血液スポットが画像の中央にあるとは限らなかった。血液スポットの寸法は、ヘモグロビン濃度と相関することが分かった。
【0168】
画像を濃淡階調に変換して、0.7の濃淡階調強度を閾値とした。次に、各2値化画像内の白い画素の数を計数して、血液で覆われた面積を測定した。その後に、各色帯域について各血液スポットからの統計データ、ならびに各色帯域のバックグラウンド信号の平均値および中央値を採取した。バックグラウンド補正信号を、血液スポット信号にバックグラウンド信号を掛け算して生成した。生成された統計データと血液スポットに属する画素数の割当て濃度に対する相関は、血液スポット信号の中央値が、割当て濃度と高度に相関することを示していた。また、画像内の血液画素の数が割当て濃度とかなりよく相関するように思われる。興味深いことに、赤色帯域のバックグラウンドもまた濃度と相関があるが、これはおそらく一部の血液画素がバックグラウンドを汚染していて、使用されるフィルター値を高める可能性があることを意味している。8g/dL未満の試料(この場合は1試料)は排除した。
【0169】
補正後の赤色、緑色、および青色の各帯域の中央値、および血液画素の数を表す特性値を使用して、多変量モデルを作成した。最終的なデータ集合を標準化しPC変換した。モデル化では、補正後の色帯域の中央値を表す4つのPCA成分の全てを使用した。線形カーネルを用いたMLRおよびSVMは、Rおよびパッケージカレットを用いて実行された。モデル化では、濃度を重みとして使用した。モデルは2分割交差検証を実施して構築され、全ての試料は最終モデルによって予測された。ホールドアウト設定は使用されなかった。MLRモデルおよびSVMモデルの平均値を表示する。2つの試料の偏差は1g/dLを超えていて、最も問題のある試料は約15g/dLの高い値の試料のように思われる。
【0170】
種々の紙質を使用する試験もまた実施した。50μLの全血をWhatman(登録商標) 17 CHRセルロースクロマトグラフィー紙の手による切断片に塗布した。この試験では光の設定を毛細管試験から変更し、背景照明のみの使用に代えて箱の全側面にLEDを配置した。カメラの設定は、ISO感度:160、シャッター速度:1/100、および絞り:10とした。他の全ての試験と同様に、色温度を2800Kに設定した。
【0171】
実施例3:紙表面でのHb値の光学的測定-大規模試験
有志の提供者からの新鮮なリチウムヘパリン静脈血を採取する。20人の提供者に由来する合計60個の試料を以下のように調製した。その20人の提供者は、2個のバイアルのリチウムヘパリン血液を提供した。1個のバイアルを遠心分離を掛けて血漿を得て、これを用いて同じ提供者からの血液を希釈した。20個の元の試料の一部を、対応する血漿を用いて元の濃度の約75%まで希釈して、合計20個の試料を得た。元の試料の一部を混合し、その一部を対応する血漿で約50%に希釈して、Hb濃度が80~180g/Lの範囲にある合計60個の試料を作製した。各試料のHb濃度を、以下の3種の異なる方法を用いて割り当てた。
-HemoCue 201+装置(スウェーデンAngelholmのHemocue AB社製)を用いた分析
-手動のドランキン方法(英国CrumlinのRandox Laboratories社からの試薬および説明書)
-CO酸素測定法(例えば、Attia et al.,「ヒトヘモグロビン、ヘモグロビン誘導体の測定」Determination of Human Hemoglobin Derivatives, Hemoglobin, 2015; 39(5): 371-374を参照)
【0172】
結果から分かったことは、3つの全ての値を比較した場合に、合計60個の試料のうち47個のCVが3.8%未満であった。3種の方法の平均値を各試料に割り当てた。
【0173】
いくつかの試験を実施して、全ての試験でWhatmanTM CHR 17クロマトグラフィー紙に添加された25μLの全血を使用した。543.5nm、590nm、660nm、および940nmの帯域通過フィルターを選択して使用した。
【0174】
Sony A7 II colour 24 MPカメラをSigma Art 70 mm f/ 2.8レンズと共に使用し、画像を、Sony ARW形式(RAW形式)、露光時間:1/50秒、ISO感度:100、および絞り:13で撮影した。
【0175】
装置は、実施例1で説明の装置に非常に類似していた(図1を参照)。16mmのレンズ伸展具をSony A7 IIカメラに取り付け、次にSigma Art 70 mm f/ 2.8レンズを取り付けた。レンズには、日除けを取り付け、黒いテープを用いて約2cmに延伸した。試験中の光の条件を安定にするために、箱を黒いアルミホイルで被覆した。光を拡散し、影を避けるようにティッシュペーパーを用いた。試料を照射するために、それぞれが100ルーメンおよび2900Kの色温度を持つ3個の小さなLEDスポット光を使用した。光源は、目的のスペクトル領域に適合させた。UV-VIS領域で作動の場合は白色LED光を使用し、NIR領域で動作の場合はハロゲン光を使用した。
【0176】
血液試料を濾紙片にピペットで移し、塗布直後に、すなわち推定時間で塗布後1分未満に画像を撮影した。試料量は100μLの血液であった。
【0177】
全ての画像は重複して撮影され、(血液のない)背景画像を、各試験の開始時および終了時に撮影した。血液スポットは、背景と血液の間の明暗を分析して識別され、各スポットの画素に合焦するために各スポットに対してマスクを形成した。図2を参照。
【0178】
Sony社のカラーカメラ装置を用いて血液スポットを撮影した後に、試料を、Pixelink PL-D795MU-5MPモノクロカメラ(5MP、2/3センサー)およびVZM 100iビデオレンズ(Edmund Optics社製)を用いるモノクロカメラ装置に直ちに移送した。レンズの端部には手動のフィルターホイールが取り付けられて、異なるフィルターを交換して使用できる。画像を、γ補正なしに8ビットのTIFとして撮影した。レンズの絞りは全開にして、倍率を0.75倍、露光時間を70ミリ秒に設定した。最初に590nmフィルターを用い、約2700Kの色温度を有する2個の50WのLEDスポット光で試料を照射した。ここでも、試料ごとに重複の画像を撮影して、いくつかの時点で空白画像/背景画像を撮影した。試料およびカメラは、変化する外光条件が画像に影響を与えないように、遮光材(Thorlabs製)で封入された。
【0179】
543.5nmフィルターを用いて試験を繰り返した。660nmフィルターに変更する場合には、光源を1個の50W(350ルーメン)のLEDに変更し、上述のように試験を繰り返した。
【0180】
様々な画像処理技術を使用した後に、最終信号(R、G、およびBの色帯域)を全ての画像から抽出し、対応するヘモグロビン濃度と相関させた。Hb濃度との信号の相関に関して、最良の結果は、γ補正およびバックグラウンド分割(画像/バックグラウンド)で達成され、約0.90のピアソン相関が全ての帯域で達成された。注意点として、ピアソン相関は、2つの変数が直線的に相関する程度を示す-1~1の間の数である。
【0181】
最終モデルを構築する前に、全てのデータを用いて、600nmでの線形モデルおよび940nmでの2次多項式モデルを構築した。これらのモデルを構築するために、生データを60%のトレーニング群と40%の試験群に分割した。モデルを、Rのカレットパッケージ(分類および回帰トレーニング)で3分割の交差検定を用いて構築した。試験群を、両方のモデルで予測して平均化した。ブランド-アルトマン分析が実行された。この工程を、集合データの様々な分割により3回繰り返し、3回の実行で平均的な一致限界を得た。これらの結果は、3つの異なる分割の検証と試験群の平均95%の一致限界が、平均してブランド-アルトマンの-6~6g/Lの95%の一致限界を与えることを示していた。平均して1.67試料のみが5%より高い偏差を示した。
【0182】
各波長ごとに1つずつ2つのモデルを構築し、各モデルからヘモグロビン値を予測し、次いで2つの結果を平均すると、かなり正確なヘモグロビン推定値が得られることが分かった。この場合の95%では、予測値は割当て値から±0.7g/dL以内であり、これは、ヘモグロビンPOC装置の典型的なバイアス仕様に非常に近いものである。
【0183】
要約すると、この方法では、高品質の濾紙に一滴の血液を加えて、かつカメラ、レンズ、1つ以上の適切な帯域フィルターあるいは狭帯域のLEDを用いて血液スポットを画像化することにより、新鮮な全血試料中のヘモグロビンを正確に定量できる。結論として、これらの初期の試験により、660nmはHb濃度測定のための優れた単一の指示因子であり、660nmと940nmの組合せは優れた予測因子であることが示されている。
【0184】
実施例4:(1人の提供者からの)6個の試料を用いて種々の濾材を評価する試験
血液試料として、Hb値:168g/Lを持つ1人の提供者がこの試験に志願した。この提供者の血液から、67g/L、100g/L、136g/L、168g/L、199g/L、および216g/Lの濃度の6個の試料を調製した。
【0185】
基材/濾材:この試験で評価された種々の濾材を表1に示す。
【表1】
【0186】
光学フィルター:この試験で評価された光学フィルターおよび対応する露光時間を、表2に示す。
【表2】
【0187】
これらの試験は、実質的に上記のように実施され、試験装置は、図1に示す装置に対応し実質的に同一であり、同一の4個の濾材および6個の異なる光学フィルターを使用した。但しこの例では、表2に示すように、フィルター毎に露光時間が最適化された。画像は16ビットのTIFとして保存された。
【0188】
25μLの血液試料を調製して、Hb値およびHct値を、Hemocue 201装置(スウェーデンHemocue AB製)およびドラブキン測定(英国のRandox Laboratories社からの試薬および説明書)およびHaematokrit 200遠心分離器(ドイツTuttlingenのAndreas Hettich GmbH & Co.KG製)を用いて測定した。試料を15mm×15mm平方の試験基材に塗布した。血液スポットを画像化し画像を分析して、まず構成画素を識別した(図2を参照)。血液を塗布していない基材の画像と対比して、画像の照度特性の不均一性を補正した。
【0189】
規定した血液スポットに隣接する「紙の画素」の強度も調べて、背景を補正した。次いで画素強度のヒストグラムから、平均値、中央値、最頻値、かつ適合最頻値などの様々なパラメータを抽出した。「適合最頻値(mode-of-fit)」という表現では、ここでは規定した血液スポット内で最も一般的な画素強度を示すことを意図している。但し画素強度全体のヒストグラムは若干ノイズが多いために、「最頻値」だけでは実行可能な選択にはならない。それに代えて、滑らかな連続曲線を、最も一般的な画素強度が抽出されるヒストグラムのピークに適合させた。
【0190】
中央値および適合最頻値のパラメータが、それはヒストグラムに対する適合ピーク値を表しノイズを無視できるので、現在では最も有望であると考えられる。
【0191】
実施例5:(3人の提供者からの)18個の試料を用いる試験
別の回の測定では、血液を3人の提供者から採取して、50~166g/Lの範囲の種々のHb値を有する合計18個の試料に希釈した。この試験設定は同一で図1に示した装置に対応し、4個の同じ濾材と6個の異なる光学フィルターを使用した。
【0192】
図15および17に示す結果は、660nmを用いて、各画像での補正済みのスポット内の画素値から適合最頻値(mode-of-fit)を抽出すると、4個の濾材全てについて良好な相関が得られたことを示す。測定値をヘマトクリット値と相関させると、図16および図18に示すように、同様に良好な結果が得られた。
【0193】
図19は、6個の異なる波長での4個の異なる濾材について、適合最頻値とHb値との間のピアソン相関を示す。このグラフは、4個の濾材全てが660nmから少なくとも800nmの波長範囲内で使用できることを示している。ヘマトクリット値に対応する相関プロットは、本質的に同一であるため省略する。
【0194】
ガラス繊維系濾材は、より短い波長である543.5nmおよび590nmでは十分に機能しなかったが、660nm、780nm、および800nmではセルロース系濾材の性能と同等であったことが確認できる。溶血が懸念されない用途、すなわち例えば血漿中に存在する検体の別の測定と並行して、例えばHct体積分率の測定が別個に実施される用途では、セルロース系濾材が基材として選択されることが想定される。逆に、Hct値の測定が他の検体の1つ以上の分析と連続して実施される場合には、溶血を最小限に抑えるか、完全に防止することが好ましい。これは特にラテラルフローアッセイに当てはまる。血漿中に存在する検体の定量測定がラテラルフローアッセイの下流で実施される場合には、血漿が試験片に沿ってさらに移動する前にHct値が測定される非溶血性の試料パッドまたは基材を用いることが好ましい。これらの代替の実施態様は、例えば、図6および図9に示されている。図6で、部材1は、その他のラテラルフローアッセイ断片または流路と流体連通されている試料パッドを表している。この実施態様では、基材または試料パッド1は、好ましくは、ガラス繊維系濾材あるいは類似の非溶血性基材である。
【0195】
図9に概略的に示される実施態様では、部材13は、ラテラルフローアッセイと流体連通していない試料の添加位置を表す。ここで試料を、試料パッド1と並行して別個の試料の添加部位13(凹部、不浸透性または半浸透性の基材、膜または濾紙、好ましくはセルロース系濾紙であってもよい)に添加する。
【0196】
Hb値およびHct値を測定する能力が経時的に維持されるか否かを評価するために、一連の測定を実施した。この試験には、WhatmanTM 17 CHRクロマトグラフィー紙を使用した。12個の異なる試料を20の時点(15から300秒、15秒間隔)で分析した。その結果を図20に示し、この図は6個の異なる光学フィルターでの時間の関数としてピアソン相関(中央値対Hb値)を示している。より長い波長、すなわち少なくとも780nm、800nm、および940nmの場合には、試料は測定パラメータに関して非常に安定であることが明確に分かる。660nmの一連の測定値は精度が低くなるものの、平均として660nmの測定値もまた、経時的に良好な相関を示すことが分かる。
【0197】
本発明者らは、780nmで測定された、血液試料の添加後15秒で得られたHb値の結果に第2次多項式を適合させて予測モデルを構築した。図21を参照。
【0198】
次にこのモデルを用いて、残りの19の時点(30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、190、205、220、235、250、265、280、295、および300秒)でHb値を予測した。その結果を図22に示すが、ここには、真のHb値と割当てHb値の平均値の差(g/L)が時間の関数として示されている。この予測モデルに基づくと、予測能力は時間が経つにつれて低下することが分かる。図20に基づいて、測定は試料の塗布から1~60秒以内に実行する必要があると考えられる。但し少なくとも波長780nm、800nm、および940nmを使用する場合には、この方法は少なくとも最初の300秒間は安定していると見做すことができる。
【0199】
実施例6:ラテラルフローに基づくフェリチン定量アッセイ
材料および方法
実施例で使用するラテラルフローアッセイの一般的な構成を、図12および図13に示す。
【0200】
フェリチン標準(60、120、180、240、300、360、420、480、540、および600ng/mL、ならびに1、10、100、および1000ng/mL)を、10mMのトリス-HCl、140mMのNaCl、1mL/LのProClin 950、1%のBSAからなるpH7.4の緩衝液中にヒト肝臓フェリチン(コード:P103-7、BBI Solutions社製)を希釈して調製した。
【0201】
抗フェリチン抗体(IgG)を、BBI Solutions社から入手し(フェリチンpAbコード:BP230-3)、抗フェリチン抗体と結合したユーロピウムを、製造業者の手順に従って、英国のExpedeon社からのユーロピウム結合キットを用いて調製した。約2.3×1010のユーロピウム粒子/mLの溶液(0.01%)を使用し、2mMのホウ酸塩、10%のトレハロース、1mL/LのProClin 950を含むpH9.5の緩衝液中に保存した。ガラス繊維パッド(GFCP203000、ドイツのMillipore/Merck KGaA社製)をこの溶液中に浸し、続いて37℃のオーブン中で一晩乾燥させて、結合パッド(2)を調製した。
【0202】
第2の例では、結合パッドは、抗ヒトフェリチン結合コロイド金で調製された。金ナノ粒子(英国のExpedeon社製のInnovaCoat(登録商標) GOLD - 20 OD 80nmの金結合キット)を、製造元の手順に従って抗フェリチン抗体(BBI Solutions社製、コード番号:BP230-3)に結合した。結合されたナノ粒子を、2mMのホウ酸塩、10%のトレハロース、および1mL/LのProClin 950からなるpH9.5の緩衝液を用いて、1.1×1010粒子/mL(OD=1)に希釈した。ガラス繊維パッド(GFCP203000、ドイツのMillipore/Merck KGaA社製)をこの溶液に浸し、続いて37℃のオーブンで一晩乾燥させて、結合パッド(2)を調製した。
【0203】
第3の例では、結合パッドは、抗ヒトフェリチン結合着色ラテックスビーズで調製された。黒色のラテックスビーズ(英国のExpedeon社製のラテックス結合キット-400nm Black)を、製造元の手順に従って抗フェリチン抗体(BBI Solutions社製、コード番号:BP230-3)に結合した。結合ラテックスビーズを、2mMのホウ酸塩、10%のトレハロース、1mL/LのProClin 950からなるpH9.5の緩衝液を用いて、約2.8×109粒子/mL(0.01%)に希釈した。ガラス繊維パッド(ドイツのMillipore/Merck KGaA社製のGFCP203000)をこの溶液中に浸し、続いて37℃のオーブンで一晩乾燥させて、結合パッド(2)を調製した。
【0204】
試料パッド(1)として、2つの異なるガラス繊維濾材、すなわちLF1およびMF1(両方ともGE Healthcare社製)、セルロース繊維濾材(ドイツのMillipore/Merck KGaA社製のCFSP001700)、およびクロマトグラフィー紙(GE Healthcare社製のCHR17または31ET)とガラス繊維濾材(GE Healthcare社製のMF1)の組合せを検討した。セルロース繊維濾材は、主に緩衝液中のフェリチンを用いる初期研究に用いた。試料パッドの最後の例、すなわちクロマトグラフィー紙(CHR17または31ET)とガラス繊維濾材(MF1)の組合せでは、この両方の構成要素は、裏打ち板の試料塗布領域に取り付けられた。クロマトグラフィー紙の幅は12mmであり、幅7mmのガラス繊維に2mm分を重ねて取り付けた。この構成を用いて、単一の試験片の表面で、同じ血液試料を用いてHbとフェリチンを定量した。
【0205】
ラテラルフロー試験片は、試料パッド(1)、結合パッド(2)、および吸収性パッド(6)を、2つの異なるニトロセルロース膜(Hi-Flow Plus 90, HF090MC100およびHi-Flow Plus 180,HF180MC100、両方ともドイツのMillipore/Merck KGaA社製)から選択された事前取付け膜(3)を備えた膜裏打ち板(10)に取り付けて構築され、ここで前記膜の90と180の数字は吸上げ率を示し、すなわち液体が膜を横切って4cm移動するのに、それぞれ90秒または180秒を要することを示す。種々の構成要素は、約2mm分重なって組み立てられ、良好な吸い上げ性を確保した。
【0206】
試験列(4)およびコントロール列(5)は、インドのMDI Membrane Technologies社製のEASY PRINTERTMを用いる膜(3)表面に印刷され、試験列(4)には1mg/mLの抗フェリチン(IgG)の溶液を用い、コントロール列(5)には1mg/mLの抗IgG(sigma Aldrich製のヤギ抗ウサギIgG、コード番号:SAB3700883-2mg)を用いた。膜および裏打ち板を37℃のオーブン中で一晩乾燥させ、阻害溶液(Thermo Fisher Scientific製のSuperBlockTM T20 (TBS) Blocking Buffer、コード番号:37536)を噴霧して、37℃でさらに2時間乾燥させた。これにより、図12に示す中間体が生成された。
【0207】
幅約4mmかつ長さ約60mmの薄片を、紙カッターを用いて切断した。これらの断片を、図13に示すようにプラスチック製筐体内に配置した。プラスチック筐体(200)には、試料パッド(1)の一部を露出する試料投入口(201)と、試験列(4)およびコントロール列(5)を露出する窓部(202)を設置した。
【0208】
6.1:肝臓フェリチン基準
50μLの試料を試料パッドに加え、続いて自動ピペットを用いて100mMのトリスHCl、50mMのNaCl、1.5%のTween、および1%のBSAからなるpH7.4の「追跡緩衝液」を50μL加えた。
【0209】
抗ヒトフェリチン結合ユーロピウムビーズを用いて検出するために、約365nmの光を発生するUV系LEDで膜を照射し、放射光を二色フィルターを備えたCCDセンサーを用いて約610nmで測定した。5分後に読取りを実施した。結果は、関連する濃度域である100ng/mLで良好な感度を示している。
【0210】
抗ヒトフェリチン結合金ナノ粒子を用いて検出するために、約525nmの光を発生するLEDで膜を照射し、反射光をCCDセンサーで捕捉した。5分後に読取りを実施した。予備の結果は、関連する濃度域である100ng/mLで良好な感度を示している。
【0211】
抗ヒトフェリチン結合着色ラテックスビーズを用いて検出するために、約525nmの光を発生するLEDで膜を照射し、反射光をCCDセンサーで捕捉した。5分後に読取りを実施した。予備の結果は、関連する濃度域である100ng/mLで良好な感度を示している。
【0212】
試験列の強度は、濃度に対してほぼ直線の相関を示した。さらにコントロール列は実質的に一定のままであり、これによりEu粒子の凝集が顕著である可能性はないと言える。時間分解測定を用いる試験により、この手法もまた実行可能であることを示している。
【0213】
6.2:血液試料のフェリチン単独検出
全血試料を、健康な採血ボランティアから採取して、本明細書に開示されるラテラルフローアッセイを用いて試験した。血液試料(25μL)を、毛細管を用いて試料パッド(MF1、GE healthcare社製)に移した。75μLの追跡緩衝液(70mMのトリスHCl、80mMのNaCl、1%のtween 20、1%のBSA、0.01%のproClin 950、pH7.4)を、ピペットを用いて試料パッドに加えた。5分後に、試験列とコントロール列の強度をCCDカメラを用いて評価した。
【0214】
抗ヒトフェリチン結合ユーロピウムビーズを用いて検出するために、約365nmの光を発生するUV系LEDで膜を照射し、放射光を二色フィルターを備えたCCDセンサーを用いて約610nmで測定した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、臨床化学分析装置であるArchitect c4000(米国Abbot Park, IllinoisのAbbot Core Laboratory社製)で評価した。
【0215】
抗ヒトフェリチン結合金ナノ粒子を用いて検出するために、約525nmの光を発生するLEDで膜を照射し、反射光をCCDセンサーで捕捉した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、Architect c4000で評価した。
【0216】
抗ヒトフェリチン結合着色ラテックスビーズを用いて検出するために、約525nmの光を発生するLEDで膜を照射し、反射光をCCDセンサーを用いて測定した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、Architect c4000で評価した。
【0217】
6.3:血液試料の同一試験片でHbとフェリチンの両方の検出
全血試料を、健康な採血ボランティアから採取して、本明細書に開示されるラテラルフローアッセイを用いて試験した。血液試料(25μL)を、毛細管を用いて組合せ試料パッド(すなわち、試料パッド(MF1)と組み合わせたクロマトグラフィー紙(CHR17))内のクロマトグラフィー紙に移した。
【0218】
血液塗布の直後に、Hb値をクロマトグラフィー紙表面で読み取った。この紙を暖色系LEDスポット光(約2800~3000K)で照射し、(実施例1の1.1節に従って)反射光をCMOSセンサーを用いて測定した。
【0219】
Hb値の読取り後に、75μLの追跡緩衝液(70mMのトリスHCl、80mMのNaCl、1%のtween 20、1%のBSA、0.01%のproClin 950、pH7.4)を、ピペットを用いてクロマトグラフィー紙に塗布した。5分後に、CCDカメラを用いて、フェリチン試験列とコントロール列の強度を評価した。この試料のHb値は、手動によるRandox Drabkinsでの値およびHemoCue 201での値の平均値を用いて決定した。
【0220】
抗ヒトフェリチン結合ユーロピウムビーズを用いて検出するために、約365nmの光を発生するUV系LEDで膜を照射して、放射光を二色フィルターを備えたCCDセンサーを用いて約610nmで測定した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、Architect c4000で評価した。
【0221】
抗ヒトフェリチン結合金ナノ粒子を用いて検出するために、暖色系LEDスポット光(約2800~3000K)で膜を照射し、反射光をCMOSセンサーを用いて測定した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、Architect c4000で評価した。
【0222】
抗ヒトフェリチン結合着色ラテックスビーズを用いて検出するために、約525nmの光を発生するLEDで膜を照射し、反射光をCCDセンサーを用いて測定した。この試料中の血漿フェリチン濃度は、Randox社のフェリチン免疫測定法(https://www.randox.com/ferritin/)を用いて、Architect c4000で評価した。
【0223】
考察
標準型のラテラルフローアッセイにより、この方法が実現可能であることが確認でき、また濾紙表面でのヘモグロビンの光学的測定の結果と併せると、これらの2つの検体のための組合せラテラルフローアッセイが実現可能と思われる。これらの2つの検体は、濃度は大きく異なり106の絶対値で離れているが、同一のアッセイ装置でこれら2つの検体を同時に測定あるいはほぼ同時に測定できるのは、まさに驚くべきことである。
【0224】
実施例7:フェリチンの測定値へのHct値の影響
ガラス繊維系の試料パッド、それと流体連通にある抗フェリチン抗体を備える結合パッド、および濾材の下流にある固定された抗フェリチン抗体またはその断片を含むラテラルフローアッセイを、組み立てて試験する。全血試料が試料パッドに塗布されると、試料を塗布してから1~10秒以内に血液スポットの反射率および面積を測定する。この読取り値に基づいて、ヘマトクリット体積分率を算出する。
【0225】
血漿フェリチン濃度を、約5分の培養期間後に読み取り、その前に算出した試料のHct値を考慮して、そのフェリチン濃度を提供する。男性と女性それぞれについて(同上のHenny H. Billett, 1990が示す範囲内の)Hct値の正規分布を仮定すると、各性別での平均値または全ての患者の平均値の代わりに、予測された(算出された)Hct値を使用することにより、大多数の患者で精度が向上した。
【0226】
実施例8:血漿カルプロテクチン
血漿および血液中のカルプロテクチンは、炎症および感染の有用なバイオマーカーであり、全血試料中のカルプロテクチンを測定するためのPOC試験が、大幅に改善されるものと思われる。但しここでは、Hct値の変動がアッセイに利用できる血漿の量に影響を与えるので、真のHct値を考慮に入れることが非常に重要になる。理論的な実施例では、Hct値が、成人男性および成人女性の正常範囲内のままであるにしても、高いかまたは低い値の場合に、血漿中の1.5mg/Lというカルプロテクチン値は著しく過小評価ならびに過大評価される可能性があることを本発明者らは想定している。
【0227】
以下の表に示されるように、血漿中の1.5mg/mLのカルプロテクチンの真の値は、正常なHct値の範囲内にあるものの、高いHct値を有する男性患者では1.30mg/Lとして表示される。逆にこの値は、Hct値が低い患者では大幅に過大評価され、男性患者では1.70mg/L、Hct値が低い女性患者では1.66mg/Lとなる。このような誤差は、誤った診断に繋がる可能性がある。
【0228】
正常範囲外のHct値を有する患者の場合には、誤差はさらに重大になると思われる。
【表3】
【0229】
上記の内容は、血漿を分離するために、かつHct値の即時測定を可能にするためにガラス繊維濾材を備えたラテラルフローアッセイ装置を用いて、実際の試験によりこの後に示すように確認できた。その結果を実施例13に示す。
【0230】
実施例9:シスタチンC
シスタチンCは、腎臓機能の代替マーカーとして出現した塩基性の等電点を有する小タンパク質である。腎機能のマーカーとしてシスタチンCを使用する正当性は、クレアチニンの場合と同様の基本論理に従っている。シスタチンCは、分泌されずにまた血流に戻らずに、むしろ尿細管上皮細胞に再吸収されてそれに続いて分解されるので、その他の内来性マーカーの使用を紛糾させる筋肉量、年齢、または性別などの非腎性作用因子の一部を避けることができる。
【0231】
シスタチン値の増大は、全ての原因によるより高い死亡リスクと関連し、シスタチンCの最高の五分位(≧1.29mg/L)は、心臓血管要因、心筋梗塞、および多変量調節後の脳卒中からの死亡リスクの顕著な上昇と関連することが示されている。シスタチンCは、クレアチニンよりも高齢者の死亡および心血管事象リスクの強力な予測因子であると結論付けられた(Shiplak M.G. et al., 「高齢者におけるシスタインCならびに死亡および心血管事象リスク」Cystatin C and the Risk of Death and Cardiovascular Events among Elderly Persons, May 19, 2005, N Engl J Med 2005; 352:2049-2060, DOI: 10.1056/NEJMoa043161を参照)
【0232】
本発明者らは、血漿中のシスタチンC値は、値が成人男性および成人女性の正常範囲内であっても、高Hct値または低Hct値の場合に著しく過小評価ならびに過大評価される可能性があることを想定している。以下の表4に示すように、血漿中の真の値である1.03mg/mLは、正常なHct値の範囲内であるが、Hct値が高い男性患者では0.89mg/L、また女性患者では0.92mg/Lと表示される。逆にHct値が低い患者では、この値は大幅に過大評価される。このような誤差は、誤った診断に繋がる可能性がある。未確認であるが異常値の患者、すなわちHCT値が非常に低いまたはHCTが非常に高い患者は、血漿シスタチンC値の非常に不正確な測定、かつ腎糸球体濾過率の不正確な判断を受けやすい。
【表4】
【0233】
実施例10:フェリチン
血漿中のフェリチン濃度は、体内の鉄貯蔵量を反映することが一般的に知られている。集団での鉄状態の大規模な調査によりフェリチンは検討されてきた。また、鉄代謝の臨床的障害の評価にも有用であることが見出されている。血漿中の低フェリチン値は、合併症のない鉄欠乏性貧血の診断の高い予測値となる。血中フェリチンの正常範囲は、(成人男性の場合は)20~500ng/mLおよび(成人女性の場合は)20~200ng/mLである。最近、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の生存率を予測するための有用な手段として、フェリチン対ヘモグロビン比が提案されている。腫瘍進行の潜在的なパラメータであるフェリチン対ヘモグロビン比は、進行性NSCLC患者の生存期間と直接的な相関がある、全生存期間にわたる重要な予後因子であった(Sookyung Lee et al., 「進行性非小細胞肺癌患者でのフェリチン対ヘモグロビン比の予後値」 Prognostic Value of Ferritin-to-Hemoglobin Ratio in Patients with Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer, J Cancer 2019; 10(7):1717-1725. doi:10.7150/jca.26853)。
【0234】
本発明者らは、血漿中のフェリチン測定値がヘマトクリット値に大きく依存し、かつフェリチンの濃度が、値が成人男性および成人女性の正常範囲内であっても、高Hct値または低Hct値の場合に著しく過小評価ならびに過大評価される可能性があると想定している。このことは、フェリチン濃度の新規の診断応用が提供されるにつれて、より重要になりつつある。フェリチン測定値へのHct値の変動の影響を以下の表に示す。
【表5】
【0235】
この影響は、例えば種々の形態の癌で遭遇するフェリチン値に対して、さらに低い値ではより顕著となる。本発明者らは、血漿中フェリチン値が、Hct値が低い患者では過大評価され、Hct値が高い患者では過小評価されて、それにより低フェリチン値が見落とされる可能性があると想定している。
【0236】
実施例11:PCT-血漿プロカルシトニン
別の理論的な実施例では、本発明者らは、0.15μg/Lの血漿プロカルシトニン値は、値が成人男性および成人女性の正常範囲内であっても、高Hct値または低Hct値の場合に著しく過小評価ならびに過大評価される可能性があると想定している。以下の表に示すように、血漿中の0.15μg/Lの真の値は、正常なHct値範囲内にあるにもかかわらず、Hct値が高い患者では0.13μg/Lと表示される。逆にHct値が低い患者では、その値は大幅に過大評価される(0.17μg/L)。このような誤差は、誤った診断に繋がる可能性がある。
【0237】
正常範囲外のHct値を有する患者の場合には、誤差はさらに重大なものになる。
【表6】
【0238】
一般的な考慮事項(Mayo Clinic Laboratoriesからの情報):生後72時間を超える子供および成人では、0.15ng/mL未満の値により、重大な細菌感染と診断されることはありえない。0.15~2.0ng/mLのプロカルシトニン(ProCT)では、(全身症状ではない)限局性感染がこの低い値に関連する可能性があるために、感染していないとは言えない。2.0g/mLを超える値は、全身性の細菌感染/敗血症、あるいは重度の肺炎、髄膜炎、または腹膜炎などの重度の限局性細菌感染を強く示唆している。これらの値はまた、大火傷、重度の外傷、急性多臓器不全、あるいは大規模な腹部または心胸部手術などの重度の非感染性炎症性刺激の後に発生する可能性がある。非感染性で上昇する場合には、ProCT値は24~48時間後に低下し始めるはずである。
【0239】
自己免疫疾患、慢性炎症過程、ウイルス感染症、および軽度の限局性細菌感染症は、まれに、0.5ng/mLを超えるProCTの上昇をもたらす。
【0240】
実施例12:C反応性タンパク質-CRP
この理論的な実施例では、本発明者らは、5mg/Lの血漿中のCRP値は、値が成人男性および成人女性の正常範囲内であっても、高Hct値または低Hct値の場合に著しく過小評価ならびに過大評価される可能性があると想定している。以下の表に示すように、血漿中の5mg/mLの真の値は、正常なHct値の範囲内にあるにもかかわらず、Hct値が高い男性患者では4.4mg/Lと表示される。逆にHct値が低い患者では、この値は大幅に過大評価される。このような誤差は、誤った診断に繋がる可能性がある。
【0241】
正常範囲外のHct値を有する患者の場合に、誤差はさらに重大になる。これは、高感度CRP試験(hs-CRP)を実施する際に重大な結果をもたらす可能性がある。hs-CRP試験を実施して、患者の心臓病リスクを評価する。現状で使用中のリスク評価値は次のとおりである。
【0242】
2.0mg/L未満のhs-CRP値は、低いリスクを示すが、2.0mg/Lを超えるhs-CRP値は、高いリスクを示す。
【0243】
以下の表は、Hct値が高い患者では、hs-CRP値が過小評価されるリスクがあることを示している。これにより、心臓病を患うリスクを持っている患者が特定されなくなる可能性がある。Hct値がさらに高い、いわゆる異常値の患者の場合には、誤差はさらに大きくなる。
【表7】
【0244】
実施例13:全血試料中に測定された血漿カルプロテクチン
血清カルプロテクチンを定量する市販のラテラルフローアッセイ(スイスのBuhlmann Laboratories AGからのQuantum Blue(登録商標) sCAL/MRP8/14)を以下のように変更した。試験カセットを慎重に開いて、ラテラルフロー片を取り出した。試料パッドを結合パッドから取り外し、同じ幅および長さのVF2血液濾材(GE Healthcare社からの結合ガラス繊維濾材)と交換した。カセットを組立て直した。カセットの一般的な構造は基本的に図13に示す通りであり、試料パッド(1)を交換した。
【0245】
様々なHct値およびカルプロテクチン値の合計40個の全血試料を、健康な採血ボランティアから採取した。各試料のHct値は、遠心分離器(ドイツTuttlingenのAndreas Hettich GmbH & Co.KG製のHaematokrit 200遠心分離器)によって割り当てられた。10μLの全血試料をVF2濾材にピペットで移し、通常の試料添加口またはsCAL試験カセットのウェルを経て画像化した。Pixelink PL-D795MU-5MPモノクロカメラ(5MP、2/3センサー)とVZM 100iビデオレンズ(Edmund Optics社製)を用いて、血液スポットを画像化した。800nm帯域通過フィルター(Thorlabs社製;FB800-10)を用いた。この画像は、γ補正なしで16ビットTIF(2048×2448画素)として撮影した。露光時間は1500ミリ秒であった。色温度が約2700Kの2個の50WのLEDスポット光で、試料を照射した。5個の空白画像を撮影し、血液スポットを画像化する前に、(画素ごとに)平均して照射特性を定義した。試料およびカメラを、変動する外光条件が画像に影響を与えないように、遮光材(Thorlabs製)で包囲した。
【0246】
後処理での第1の工程として、血液スポットの全ての画像を(画素ごとに)照射特性によって分割した。次に血液スポットを構成する画素を、区分化を用いて識別した。血液スポットを構成する画素数を、「血液スポットの面積」の尺度として用いた。このスポットの「重心」に位置する半径で250個の画素の円を、中央画素値が計算される領域として規定した。
【0247】
血液スポットの面積および(血液スポット中心の)中央画素値の両方を用いて、血液試料のHct値を予測した。
【0248】
血液スポットの画像化を実施した際には、90μLの(同上のsCALキット中に提供される)追跡緩衝液を加え、カルプロテクチン濃度を、市販のラテラルフロー試験読取り器(Quantum Blue(登録商標)、スイスのBuhlmann Laboratories AG製)を用いて製造元の説明書に従って12分後に決定した。
【0249】
市販のラテラルフロー装置の変更がその性能に如何に影響するかについても調査した。まず本発明者らは、変更前の装置で4.7μg/mLと測定されるのと同量のカルプロテクチンを加え、[60μL(ハイ・コントロール:4.7μg/mL)+36μLの追跡緩衝液]を変更後の試験装置に加えた。これを3回繰り返したところ、2.26μg/mL、1.65μg/mL、および2.11μg/mLの結果を得た。
【0250】
次に、同量のカルプロテクチンを加えて、変更前の試験で2.35μg/mLを測定し、[30μL(ハイ・コントロール:4.7μg/mL)+66μLの追跡緩衝液]を変更後の試験に加えた。これも3回繰り返したところ、1.07μg/mL、1.39μg/mL、および1.05μg/mLの結果を得た。
【0251】
これらの6つの測定値は、変更した試験により(平均で)2.18倍だけ小さな濃度が得られることを示している。従って、変更試験で測定された全ての値を、Gentianの濁度測定の結果と比較する前に2.18を掛け算した。
【0252】
変更したラテラルフロー試験は、全血試料をうまく操作するように見受けられた。変更試験では、血漿中のGentianの比濁基準法(GCAL(登録商標)、ノルウェーのGentian AS製)と同じ予想範囲内で(全血中の)カルプロテクチン濃度を測定した。この第1の一連の試験では、血清中のカルプロテクチンの未変更のラテラルフロー試験(sCAL、上記のように変更)と比較して、偏差はかなり高くなった。
【0253】
しかしながら平均偏差はゼロに近く、これは有望と言える。全ての試料でHct値を44.5%で一定であると仮定すると、1.96標準=2.21μg/mLまたは75.22%となる測定カルプロテクチン濃度の変動が得られる。平均偏差は0.30μg/mLまたは10.10%であった。血液スポットの光学画像化に基づいてHct値を決定し、このHct値をカルプロテクチンの結果に適用すると、偏差が大幅に低減される。この試験では、1.96標準=2.02μg/mLまたは66.56%の測定カルプロテクチン濃度の変動が記録された。平均偏差は0.08μg/mLまたは0.26%であった。これらの結果を図23~25に示す。
【0254】
従って、Hct値の予測およびその補正は、測定カルプロテクチン濃度の変動に正の効果を有するように示される。専門的に組み立てられた断片試験を使用すると、より大きな効果が得られる可能性がある。
【0255】
実施例14:ヘマトクリット値の決定のための面積測定および強度測定の組合せ
種々のHct値を有する合計10個の試料を以下のように調製した。3本の4mLのLi-ヘパリン管を、健康な提供者からの静脈血で満たした。この管を1000gで10分間4℃で遠心分離を掛けてRBC(赤血球)を沈殿させた。血漿とRBCを分離し、様々な比率で混合して、20.85~58.50%の範囲のHct値で10個の試料を調製した。これは25~60%の生理学的範囲を包含する。各試料の総量は600μLであった。各試料の真のHct値は、Haematocrit 200装置(Hettich社製)を用いて、2回の測定の平均値に基づいて割り当てられた。
【0256】
各Hct値について、VF2(5×20mm)ガラス繊維濾紙表面に5個の血液スポット(10μL)を生成し、800nmの光学フィルターおよび1500ミリ秒の露光時間を用いて撮像した。血液スポットを、背景(血液のない画像)と比較して識別し、関心領域(ROI)の円が血液スポットの重心に配置され、円内の中央画素値を算出した。血液スポット全体の面積も算出した。バックグラウンド補正後のROIでの(800nmの)中央画素値は、割当てHct値とよく相関した。3次多項式に基づく予測モデルは、14.24%の割当て値に対する相対偏差(1.96標準偏差)を示した。図26を参照。
【0257】
血液スポット面積はまた、割当てHct値と相関することが示された。3次多項式に基づく予測モデルは、20.38%の割当て値に対する相対偏差(1.96標準偏差)を示した。図27を参照。
【0258】
しかしながら、2つのモデルの組合せ、すなわち2つのモデルからの予測値を平均することにより、約10.50%の割当て値に対する相対偏差(1.96標準偏差)を示した。図28を参照。この図は、1)中央画素強度と2)血液スポット面積に基づいて2つの別々のHct予測モデルからの予測値を平均するHct予測モデルを定式化して達成された精度の改善(1.96標準=10.50%)を示している。これらの2つの別々のHct予測モデルのみでも、精度はそれぞれ1.96標準=14.24%および20.38%であった。
【0259】
理論に拘束されることを望まないが、これらの2つのモデルの組合せが、それぞれ低いHct値および高いHct値での全血の色調、粘度、または粘弾性の変化によって引き起こされる偏差を補正して、この2つモデルの組合せは、Hct値の光学的測定に対する非常に精度の高い手法を提供すると、本発明者らは考える。
【0260】
さらなる詳述の必要はなく、当業者は、実施例を含む本説明内容を用いて、本発明を最大限に利用できると考えられる。また本発明はその好ましい実施態様について本明細書に記載されていて、かつ本発明は本発明者らにとって現時点で既知の最良の様式で構成されているが、当業者には明白と思われる様々な変更や修正が、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく実施できることは当然である。
【0261】
従って、種々の側面および実施態様が本明細書に開示されているが、その他の側面および実施態様も当業者には明白である。本明細書に開示される種々の側面および実施態様は、例示を目的としており、限定することを意図するものではなく、正確な範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2020-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料中の検体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ法であって、
a)全血の未処理試料を前記ラテラルフローアッセイでの第1の表面に塗布して、その表面に血液スポットを形成する工程、
b)前記塗布工程後の1~300秒以内に前記血液スポットの画像を撮影する工程、
c)前記画像を分析して、前記試料のヘマトクリット値を示す第1の値を測定する工程、
d)前記試料中の前記検体の量を示す第2の値を測定する工程、および
e)工程c)で測定された前記ヘマトクリット値、および工程d)で測定された前記検体の量に基づいて、前記試料中の前記検体の濃度を決定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記検体は、フェリチン、トランスフェリン、血漿カルプロテクチン、C反応性タンパク質(CRP)、シスタチンC、血漿プロカルシトニン(PCT)、および抗CCP抗体から選択される、請求項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項3】
前記画像は、前記塗布工程(a)後の1~180秒以内、好ましくは1~120秒以内、より好ましくは1~30秒以内、最も好ましくは1~10秒以内に撮影される、請求項またはに記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項4】
工程(c)で測定された前記第1の値は、前記血液スポットの反射率または前記血液スポットの面積である、請求項のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項5】
前記血液スポットの反射率および前記血液スポットの面積の両方を測定し、予備ヘマトクリット値に関連付けて、この2つの平均を前記ヘマトクリット値の値として用いる、請求項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項6】
前記反射率は、390nm~1000nmの範囲内、好ましくは650nm~1000nmの範囲内の少なくとも1種の波長、例えば、660nm、780nm、800nm、および940nmから選択される少なくとも1種の波長で測定される、請求項またはに記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項7】
前記反射率は、800nmの波長で測定される、請求項のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項8】
前記反射率は、660nmおよび940nmの波長で測定される、請求項のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項9】
前記反射率は、800nmの光学フィルターを用いて、工程(b)で撮影された前記画像に含まれる画素の中央強度値として測定される、請求項のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項10】
基準試料の基準ヘマトクリット値を遠心分離によって決定する較正工程をさらに含む、請求項のいずれか一項に記載のラテラルフローアッセイ法。
【請求項11】
前記試料中のヘモグロビン濃度をまず光学的に測定し、前記ヘモグロビン濃度をヘマトクリット値に変換することによって、前記ヘマトクリット値を決定する、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘモグロビン濃度を、前記ヘモグロビン濃度(g/dL)を3倍に掛け算してヘマトクリット値に変換して、これにより前記ヘマトクリット値(%)を得る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
全血試料中の血漿カルプロテクチン、シスタチンC、フェリチン、血漿プロカルシトニン、C反応性タンパク質(CRP)、および抗CCP抗体から選択される検体の濃度を測定するためのシステムであって、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成される検出器、および前記血液スポットの前記反射率および/または前記寸法を前記試料のヘマトクリット値に関連付けるように構成され、かつ前記検体の濃度を測定する際にこの測定されたHctを考慮に入れるように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイ装置を含む、システム。
【請求項14】
全血試料中の血漿カルプロテクチン、シスタチンC、フェリチン、血漿プロカルシトニン、C反応性タンパク質(CRP)、および抗CCP抗体から選択される検体の濃度を測定するためのシステムであって、前記システムは、基材上に全血試料が塗布されるとその基材上に血液スポットを形成するように構成される基材、光源、前記血液スポットから反射された光を検出しかつ前記血液スポットの反射率および/または寸法を測定するように構成される検出器、および既知のヘモグロビン濃度に対して得られた反射率および/または寸法の値に基づいて、前記血液スポットの前記反射率および/または前記寸法を前記試料のヘモグロビン濃度に関連付け、かつ前記ヘマトクリット値を算出するように構成され、かつ前記検体の濃度を測定する際にこの算出されたHctを考慮に入れるように構成されるプロセッサを有するラテラルフローアッセイを含む、システム。
【請求項15】
全血試料中の血漿カルプロテクチン、シスタチンC、フェリチン、血漿プロカルシトニン、C反応性タンパク質(CRP)、および抗CCP抗体から選択される検体の濃度を測定するためのラテラルフローアッセイ装置を収容する装置であって、少なくとも、光源、反射光を検出しかつ/または前記ラテラルフロー装置の基材表面に形成される血液スポットの寸法を測定するように構成される検出器、および前記血液スポットの反射率および/または寸法をヘマトクリット値に関連付けて、かつ全血試料中の前記検体の濃度を算出する際にこのヘマトクリット値を用いるように構成されるプロセッサを含む、装置。
【国際調査報告】