(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】カソードユニット及びカソードユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20220208BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20220208BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220208BHJP
H01M 4/1315 20100101ALI20220208BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220208BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220208BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220208BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220208BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220208BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20220208BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20220208BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20220208BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20220208BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20220208BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220208BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20220208BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/1315
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/80 C
H01G11/38
H01G11/56
H01G11/46
H01G11/68
H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535217
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 EP2019085581
(87)【国際公開番号】W WO2020127215
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】102018222129.4
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】516386144
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルズィテート ドレスデン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヒッパウフ フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】シャム ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ツォーク セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥエス ホルファー
(72)【発明者】
【氏名】カスケル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】デルフラー スザンヌ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA27
5E078BA44
5E078BB23
5E078BB27
5E078BB33
5E078DA11
5E078DA17
5E078FA13
5E078FA23
5H017AA04
5H017AS10
5H017CC28
5H017DD05
5H017EE05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029DJ16
5H029EJ12
5H029HJ02
5H029HJ14
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA12
5H050GA08
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、固体電池用のカソードユニットおよびカソードユニットの製造方法に関する。カソードユニットは、電極材料と、固体電解質材料と、導電性添加剤と、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレンとを有する複合材料からなる層を有する。複合材料は、1重量パーセント未満のポリテトラフルオロエチレンを含み、ポリテトラフルオロエチレンは少なくとも部分的にフィブリル化ポリテトラフルオロエチレンとして存在する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極材料と、固体電解質材料と、導電性添加剤と、結合剤としてのポリテトラフルオロエチレンとを有する複合材料からなる層を有する固体電池用カソードユニットであって、
複合材料は、1重量パーセント未満のポリテトラフルオロエチレンを含み;そして
ポリテトラフルオロエチレンは少なくとも部分的にフィブリル化ポリテトラフルオロエチレンとして存在することを特徴とする、
カソードユニット。
【請求項2】
前記複合材料は、導電性の前記電極材料を60重量パーセントから99重量パーセント含むことを特徴とする、
請求項1に記載のカソードユニット。
【請求項3】
前記電極材料は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
1_
xCo
xO
2、LiFePO
4、LiMnO
2、LiMn
2O
4、Li
2Mn
3NiO
8、LiNi
xCo
yMn
zO
2、LiNi
xCo
yAl
zO
2(ここで、x+y+z=1)、Li
4Ti
5O
12、Li
2FeSiO
4、Na
2S、Na
xMnO
2、Na
3V
2(PO
4)
3、NaFePO
4、Na
2FePO
4F、NaNiMnO
2、Na
2TiO
7および/またはNa-Ti
2(PO
4)
3またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、
請求項1または2に記載のカソードユニット。
【請求項4】
前記固体電解質材料は、Li
2S-P
2S
5、Li
2S-GeS
2、Li
2S-B
2S
3、Li
6PS
5CI、Li
2S-SiS
2、Li
2S-P
2S
5-LiX(X=CI、Br、I)、Li
2S-P
2S
5-Li
2O、Li
2S-P
2S
5-Li
2O-Lil、Li
2S-SiS
2-Lil、Li
2S-SiS
2-LiBr、Li
2S-SiS
2-LiCI、Li
2S-SiS
2-B
2S
3-Lil、Li
2S-SiS
2-P
2S
5-Lil、Li
2S-P
2S
5-Z
mS
n(ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される)、Li
2S-SiS
2-Li
3PO
4、Li
2S-SiS
2-Li
pMO
q(ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される)、Na
2S-P
2S
5、Na
2S-GeS
2、Na
2S-B
2S
3、Na
6PS
5CI、Na
2S-SiS
2、Na
2S-P
2S
5-NaX(X=CI、Br、I)、Na
2S-P
2S
5-Na
2O、Na
2S-P
2S
5-Na
2O-Nal、Na
2S-SiS
2-Nal、Na
2S-SiS
2-NaBr、Na
2S-SiS
2-NaCI、Na
2S-SiS
2-B
2S
3-Nal、Na
2S-SiS
2-P
2S
5-Nal、Na
2S-P
2S
5-Z
mS
n(ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される)、Na
2S-SiS
2-Na
3PO
4、Na
2S-SiS
2-Na
pMO
q(ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される)またはこれらの混合物の材料を含むことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載のカソードユニット。
【請求項5】
集電体は、アルミニウムを含むか、またはアルミニウムから形成され、および/または好ましくは両面コーティングを有する集電体層、発泡金属、織布、またはプライマー層を備えた集電体層として形成されていることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカソードユニット。
【請求項6】
前記複合材料は無溶剤であることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1項に記載のカソードユニット。
【請求項7】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、完全に一軸または完全に二軸配向したポリテトラフルオロエチレンとして存在することを特徴とする、
請求項1から6のいずれか1項に記載のカソードユニット。
【請求項8】
前記電極材料は、前記電極材料の粒子に塗布された保護層を含むことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1項に記載のカソードユニット。
【請求項9】
前記保護層は、Li
2O-ZrO
2を含むことを特徴とする、
請求項8に記載のカソードユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のカソードユニットを有する固体電池。
【請求項11】
固体電池用のカソードユニットの製造方法であって、
電極材料、固体電解質材料、導電性添加剤、および結合剤としてのポリテトラフルオロエチレンから粉末混合物が製造され、粉末混合物は1重量パーセント未満のポリテトラフルオロエチレンを含み;そしてここで、
少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンが粉末混合物に対する剪断力の作用によって粉末混合物中に形成され、
その後、粉末混合物を柔軟な複合層に成形するカソードユニットの製造方法。
【請求項12】
前記少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンの形成が、粉砕、ウォームシャフトもしくはカレンダロール装置、混練装置、モルタル装置、またはこれらの組み合わせで混合することによって行われることを特徴とする、
請求項11に記載のカソードユニットの製造方法。
【請求項13】
前記柔軟な複合層への前記粉末混合物の成形は、圧延、プレス、または押出によって行われることを特徴とする、
請求項11または12に記載のカソードユニットの製造方法。
【請求項14】
集電体層への可撓性の前記複合層の塗布は、60℃から120℃の温度範囲で積層することを特徴とする、
請求項11から13のいずれか1項に記載のカソードユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードユニット及びカソードユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、リチウムイオン電池の非常に有望な更なる開発である。固体電池では、液体電解質系の代わりに、固体として存在するリチウムイオン伝導体 (またはナトリウムイオン伝導体) が電解質として用いられる。それは、活物質粒子間のイオン伝導体として、およびアノードとカソード間のイオン伝導性セパレータとして同時に機能する。ここで重要なことは、粉末状電極混合物の大規模処理の可能性、および可能な限り多くの接触点と可能な限り少ない中空空間を有する固体電解質と活物質との間に密接な接触面が形成される可能性である。
【0003】
固体電池は、特に、使用される電解質の種類(酸化物系、硫化物系、ポリマー系)に関連して分類することができる。酸化物固体電解質は、高い化学的および機械的安定性を有する。しかし、非多孔質で薄い電極あるいは固体電解質膜への加工は、焼結温度の高さが大きな課題となる。硫化物電解質材料も、大面積にわたってほとんど堆積しない。例えば、US 2016/248120 A1に記載されているような湿式化学プロセスによる塗布のためのアノード、カソード、および電解質層に異なるバインダー溶媒混合物が使用され、それ以外の場合には、層の塗布で、その下の層の溶媒和が起こり得るからである。数重量パーセントまたは数質量パーセントの比較的高いバインダー含有量、およびそれから生じるより高い電気的およびイオン的抵抗は、このようなプロセスにおいて不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記欠点を克服し、電気抵抗及びイオン抵抗をできるだけ低くしたカソードユニットを大規模で製造できるカソードユニット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載のカソードユニット及び請求項11に記載のカソードユニットの製造方法によって達成される。有利な実施形態およびさらなる開発が、従属クレームに記載されている。
【0006】
固体電池用カソードユニット、好ましくはアルカリイオン固体電池またはリチウム電池またはナトリウム電池は、複合材料の層を有する。複合材料は、電極材料と、固体電解質材料と、導電性添加剤と、結合剤としてのポリテトラフルオロエチレン (PTFE) と、を有する。複合材料は、1重量パーセント未満のポリテトラフルオロエチレンを有し、ポリテトラフルオロエチレンは、少なくとも部分的にフィブリル化ポリテトラフルオロエチレンとして存在する。
【0007】
フィブリル化ポリテトラフルオロエチレンを結合剤として使用することにより、結合剤の使用量を減らすことができ、カソードユニットの1重量パーセント未満の少量のポリテトラフルオロエチレンのみが必要となり、電気的特性が改善される。複合材料は、典型的には無溶媒であり、より簡単な処理やより簡単な塗布、および自立膜の形成を可能にする。
【0008】
カソードユニットは、複合材料の層が塗布される導電性材料からなる集電体を有することができる。ここで、「導電性」という用語は、室温、すなわち25℃で105 S/mを超える導電率を有する任意の材料として理解されるべきである。代替的にまたは追加的に、複合材料の層は、典型的には同様に導電性である導電性添加剤の割合の高さに対応して選択されるという点で導電性であってもよい。
【0009】
複合材料中のポリテトラフルオロエチレンは、所望の機械的特性を設定するために、少なくとも部分的に一軸および/または二軸配向ポリテトラフルオロエチレンとして存在することができる。当然のことながら、ポリテトラフルオロエチレンは、完全に一軸または完全に二軸配向または整列したポリテトラフルオロエチレンとして存在することもできる。
【0010】
複合材料は、60重量パーセントから99重量パーセント、好ましくは100パーセントの量の電極材料を含むことができる。複合材料は、通常、十分な結合剤が利用可能な少なくとも0.1重量パーセントのポリテトラフルオロエチレンを含む。複合材料は、好ましくは0.5重量パーセント未満のポリテトラフルオロエチレンを含み、特に好ましくは0.1重量パーセントから0.4重量パーセントである。
【0011】
電極材料は、例えば、硫化物カソードを形成するために、硫黄、硫化リチウム (Li2S) 、リチウム金属酸化物、ナトリウム金属酸化物、またはそれらの混合物を含むことができる。特に、導電性電極材料は、遷移金属酸化物、好ましくは、LiCoO2、LiNiO2、LiNi1_xCoxO2、LiFePO4、LiMnO2、LiMn2O4、Li2Mn3NiO8、LiNixCoyMnzO2、LiNixCoyAlzO2 (ここで、x+y+z=1) 、Li4Ti5O12、Li2FeSiO4またはこれらの混合物を含むことができる。ナトリウムを含有する対応する類似体、好ましくはNa2S、NaxMnO2、Na3V2(PO4)3、NaFePO4、Na2FePO4F、NaNiMnO2、Na2TiO7および/または、NaTi2(PO4)3を等しく使用することができる。電極材料としてAMO2型の多層酸化物を用いることもできる。ここで、A=Li、Na、M=Co、Mn、Niである。前記異なる材料は、一般に、互いに組み合わせて電極を形成することもできる。
【0012】
固体電解質材料は、Li2S-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-B2S3 Li2S-SiS2、Li5PS6CI、Li2S-P2S5-LiX(X=CI、Br、I)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-Lil、Li2S-SiS2-Lil、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCI、Li2S-SiS2-B2S3-Lil、Li2S-SiS2-P2S5-Lil、Li2S-P2S5-ZmSn (ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される) 、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq、 (ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される) 、Na2S-P2S5、Na2S-GeS2、Na2S-B2S3、Na6PS5CI、Na2S-SiS2、Na2S-P2S5-NaX (X=CI、Br、I)、Na2S-P2S5-Na2O、Na2S-P2S5-Na2O-Nal、Na2S-SiS2-Nal、Na2S-SiS2-NaBr、Na2S-SiS2-NaCI、Na2S-SiS2-B2S3-Nal、Na2S-SiS2-P2S5-Nal、Na2S-P2S5-ZmSn (ここで、mおよびnは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される) 、Na2S-SiS2-Na3PO4、Na2S-SiS2-NapMOq (ここで、pおよびqは整数であり、MはP、SiまたはGeから選択される) 、またはこれらの混合物からなる材料を含むことができる。リチウムは、一般に、本出願において命名された全ての化合物においてナトリウムで置換され得る。固体電解質材料は、典型的には、粉末混合物中に1重量パーセントから35重量パーセントの間で存在する。導電性添加剤としてカーボンナノチューブ、ブラックカーボン、グラファイト、グラフェン及び/又はカーボンナノファイバーを1重量パーセントから5重量パーセントの範囲で複合材料に含有させることができる。固体電解質材料は、典型的には電気化学的に活性な材料である。導電性添加剤は、電気化学的に不活性な材料であり得る。
【0013】
電極材料は、この材料の粒子に塗布される保護層を含むことができる。この保護層は、固体電解質材料と電極材料との間の副反応を防止すべきものである。保護層は、例えば、Li2O-ZrO2または他の金属酸化物を含むことができる。電極材料の全ての粒子は、典型的には2 - 5 nmの厚さを有する保護層を有することができる。
【0014】
導電性の集電体は、通常、導電性材料、好ましくはアルミニウムを含むか、または完全にこの材料から形成される。代替的または追加的に、集電体は、特に、好ましくは両面コーティングを有する平面集電体である集電体層として、発泡金属として、または発泡体、繊維織物、非捲縮繊維として形成された集電体層またはプライマー層を備えた集電体層として形成され得る。ここで、プライマー層は同様に平面であり得る。
【0015】
本発明の固体電池用カソードユニットの製造方法は、電極材料と、固体電解質材料と、導電性添加剤と、結合剤としてのポリテトラフルオロエチレンとから、粉末混合物を製造することを特徴とする。ここでの粉末混合物は、ポリテトラフルオロエチレンを1重量パーセント未満の割合で有する。少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンが、粉末混合物に対する剪断力の作用によって、粉末混合物中に形成される。粉末混合物は続いて柔軟な複合層に成形される。好ましくは、可撓性の複合層を導電性の集電体に塗布してカソードユニットを形成する。可撓性複合層および/または集電体をその後にコンパクト化するための手段を設けることもできる。
【0016】
粒状形態で存在し、15μmまでのサイズを有する複数の小粒子から構成されるか、または粒状もしくは断片的な混合物もしくはバルク材料である材料として理解されるべき粉末混合物によって、単純な処理が保証される。粉末混合物は、取り扱いを簡単にするために、乾燥形態で存在させることができる。加えて、粉末混合物はまた、DIN EN ISO 6186規格の意味では、注入することができない。「乾燥」は、粉末混合物の成分が、液体または液体凝集状態で存在する材料を含まない固体として存在するように、本文書の枠組み内で理解されるべきである。この粉末混合物は溶媒を含まず、溶媒なしで集めることができる。「可撓性複合層」は、室温で破壊することなく180°まで曲げるか、折りたたんだり、広げたりできる複合層と理解されるべきである。曲げ半径は、特に90μmから100μm、特に好ましくは100μmである。
【0017】
少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンの形成は、効率的なフィブリル化を確実にするために、粉砕、ウォームシャフトもしくはカレンダー圧延装置、混練装置、すりこぎ装置、またはこれらの方法の組合せで混合することによって行うことができる。少なくとも部分的にフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンの形成は、典型的には、室温で行われる。しかしながら、0.5重量パーセント未満のバインダー含有量に到達するためには、好ましくは60℃から100℃、特に好ましくは90℃から100℃、特に100℃の高温で形成が行われる。しかし、ポリテトラフルオロエチレンは、完全にフィブリル化された形態でも存在し得る。
【0018】
粉末混合物の可撓性複合層への成形は、典型的には、圧延、プレス、または押出しによって行われる。しかしながら、上記方法の組み合わせを用いることもできる。
【0019】
導電性集電体層への可撓性複合層の塗布は、典型的には、60℃から120℃、好ましくは80℃から100℃の温度で行われる。
【0020】
説明した方法は、説明したカソードを製造するために使用することができ、すなわち、説明したカソードは、説明した方法によって製造することができる。
【0021】
本発明による固体電池またはリチウム電池は、上記の特性を有するカソードユニットを含む。
【0022】
本発明の実施形態を図面に示し、
図1から
図10を参照して以下に説明する。
【0023】
次のものが示される:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1に対応する固体電解質膜を有するカソードを示す図。
【
図3】
図1に対応する固体電解質膜とアノードを備えたカソードを示す図。
【
図5】0重量パーセントのバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイルを示す図。
【
図6】
図5に対応する0.1重量パーセントのバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイルを示す図。
【
図7】
図5に対応する0.3重量パーセントのバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイルを示す図。
【
図8】
図5に対応する0.7重量パーセントのバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイルを示す図。
【
図9】
図5に対応する1重量パーセントのバインダー含有量を有するテストセルの放電電圧プロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
カソードユニットを形成する第1電極2を有する基板膜またはキャリア膜としてのアルミニウムからなる導電性の集電体層1を、
図1の概略側面図に示す。第1電極2は、本実施形態では、粉末状の複合材料で形成されている。この複合材料は、85重量パーセントのリチウムニッケルマンガンコバルト (NCM) 、13重量パーセントのリチウムLi
2S-P
2S
5などの固体電解質材料、2重量パーセントの導電性カーボンナノチューブを導電性添加剤として、0.1重量パーセントのポリテトラフルオロエチレンを結合剤として有する。ここでのバインダー含有量は、NCM:C:SEの比が85::2:13である総質量に関係している (SEは固体電解質をその省略形としてマークすべきである) 。得られた複合材料は粉末状で、乾燥し、無溶媒であるが、注入用ではない。この複合材料は、モルタルに配合することができる。この過程で複合材料を形成する混合物または粉末混合物にせん断力が作用し、力ベクトルに沿ってフィブリルが形成される。次の工程では、ローラを用いて複合材料を板上で所望の層厚に圧延し、キャリア膜1上に積層する。キャリア膜1の厚みは20μm未満であり、カーボンプライマーを設けてもよい。カソードユニットの最終的な成形は、スタンピングまたはレーザ切断によって行われる。
【0026】
複合材料は、代替的に、粉末混合物または溶媒添加剤を含まないバルク材料としてカレンダーギャップに直接添加することができる。ドイツ出願特許DE 10 2017 208 220に記載されているように、二つのカレンダーローラの異なる回転速度が、例えば10:9から10:4の比で使用される。2:1の回転速度の比、例えば、10 mm/s:5 mm/sまたは20 mm/sから10 mm/sが有利である。これにより、ギャップ内の複合材料にせん断力が作用し、ローラ走行方向に沿ってフィブリルが形成される。高速回転するローラ上に層形成が生じる。次の工程では、層を基板膜1上に積層し、スタンピングまたはレーザー切断によって最終的な成形を行う。さらに、カレンダーギャップ内に膜を形成することにより、膜形成中に含まれる層の大きな圧縮が既に可能になる。このために重要なのは、複合材料に用いられる粉体の粒度分布であり、この粉体の粒度分布を互いに協調させて、大きな粒子の隙間をできるだけ効率よく小さな粒子で埋め、気孔率を低く保つことである。したがって、プレス前の密度は1.7 - 1.9 g/cm3であり、これは50から55パーセントの気孔率に対応する。プレス成形後の密度は原則として3.5 g/cm3であり、気孔率は10パーセントまでの値で理想的な気孔率0パーセントに近づく。
【0027】
処理は、60℃から100℃の間の高温で有利な方法で行われ、その結果、必要な結合剤含有量またはバインダー含有量がかなり減少する。このようにして得られるカソードユニットは、基板膜1-第1電極2の層列を有する。第1電極2は、典型的には、その組成において、カソード材料が60から99重量パーセント、固体電解質材料が13から35重量パーセント、導電性添加剤が2から5重量パーセントの構造を有し、結合剤 (ポリテトラフルオロエチレン) は、全質量の0.1から1重量パーセントを構成する。上述したプレスは、典型的には、最終的にプロセスステップとして行われる。これは、電解液の流動性を確保するために、290 MPaから450 MPa、好ましくは300 MPaの圧力で行われる。固体電解質材料が関与する全ての処理工程は、保護ガス、例えば、希ガス、好ましくはアルゴン、または窒素、または-50℃未満の露点を有する乾燥空気の下で行うことが好ましい。
【0028】
図2には、キャリア膜1と第1電極2とのカソードユニットが
図1に対応する図で示されており、ここで、固体電解質膜3が、集電体層としてのキャリア膜1が直接接触して取り付けられる第1電極2の反対側の側面または表面に直接接触して、すなわち間をあけずに接触して配置されている。キャリア膜1と第1電極2とは、厚さを除いて同一の大きさで、互いに整列して配置されているが、固体電解質膜3は、第1電極2よりも幅が広い。繰り返し要素には、この図および以下の図において同じ参照番号が付されている。
【0029】
図3は、
図1および
図2に対応する図において、
図2に示す構造に加えて、アノードユニットが、固体電解質膜3の一側面の反対側に配置された側面に取り付けられた固体電池を示す。アノードユニットは、第2電極4と第2集電層としての第2基板膜5とが互いに直接接触して形成されている。第2電極4は、固体電解質膜に直接接触している。固体電解質膜、第2電極4および第2キャリア膜5は、第2キャリア膜5の膜厚が最も薄く、第2電極4の膜厚が最も厚く、固体電解質膜3の膜厚が第2電極4の膜厚と第2キャリア膜5の膜厚との間になるように、互いに整列して配置されている。キャパシタンスは、典型的には、互いに調整されており、そこから厚みが生じる。第1電極は、例えば、100μmの厚さを有することができ、第2電極は、例えば、10μmまでの厚さを有するリチウムアノードである。また、第1キャリア膜1と第2キャリア膜5の膜厚を同一にすることもできる。第1電極2の厚さは、固体電解質膜3の厚さよりも厚く、第1キャリア膜1の厚さよりも厚い。一次および二次電池用の電池電極は、上記記載の方法を用いて、好ましくはリチウムイオン化合物もしくはナトリウムイオン化合物、固体スーパーキャパシタ電極、またはあらゆる種類の硫化物電解質である感湿性材料もしくは溶媒感受性材料の層を用いて製造することができる。
【0030】
図4は、NCM固体電解質 (SE) 、炭素繊維 (CNF) の質量比が85:13:2、全質量の0.3重量パーセントがポリテトラフルオロエチレン (PTFE) からなる乾燥膜の走査型電子顕微鏡写真 (SEM写真) である。
【0031】
図5から
図9に、上記記載の固体電池のテストセルの各放電電圧プロファイルを示す。ここでは、それぞれの電圧がキャパシタンスの上に入力される。ポリテトラフルオロエチレンの割合は、
図5において、0重量パーセント;
図6において、0.1重量パーセント;
図7において、0.3重量パーセント;
図8において、0.7重量パーセント;
図10では、1重量パーセントである。
【0032】
図10では、虚数部が実数部の上に入力されるインピーダンス測定がナイキスト線図で示されている。測定曲線は、0.1重量パーセント、0.3重量パーセントおよび1重量パーセントの割合でバインダーを有するテストセルを示す。各固体電池の内部抵抗は、ポリテトラフルオロエチレンの割合が増加するにつれて増加する。
【0033】
実施例でのみ開示された実施形態は、互いに組み合わせて、個別に請求することができる。
【国際調査報告】