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特表2022-514867移植片対宿主病(GvHD)の防止又は処置のための抗CCR7 MABの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】移植片対宿主病(GvHD)の防止又は処置のための抗CCR7 MABの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220208BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20220208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220208BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220208BHJP
   A01N 1/02 20060101ALI20220208BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220208BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C07K16/28
A61P37/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K35/12
A61K35/28
A61K35/15
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61L27/38 300
A61L27/38
C12N5/071
A01N1/02
C12P21/08 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535292
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 EP2019085991
(87)【国際公開番号】W WO2020127509
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213727.3
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19215366.6
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521266099
【氏名又は名称】カタパルト セラピューティクス ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】CATAPULT THERAPEUTICS B.V.
(71)【出願人】
【識別番号】521266103
【氏名又は名称】ウニベルシダット オートノマ デ マドリード
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD AUTONOMA DE MADRID
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クエスタ マテオス, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ムニョス カレヤ, セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ポルテロ サインス, イチャソ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス グラシア デ ソリア, マリア デル バレ
(72)【発明者】
【氏名】トリビオ マリア, ルイサ
(72)【発明者】
【氏名】テロン フェルナンデス, フェルナンド
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C081
4C085
4C087
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA20
4B065AA90X
4B065BA21
4B065BD14
4B065CA44
4C081BA12
4C081CD34
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BB64
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA23
4C087MA44
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA06
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H011BB19
4H011CA01
4H011CB05
4H011CB08
4H011CD02
4H011DH11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)の防止及び/又は処置、好ましくは造血幹細胞移植術(HSCT)、より好ましくは同種造血幹細胞移植術における新規な治療剤としての使用のためのCCR7受容体に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む新規な使用及び方法を提供する。本発明のGVHDは急性(aGVHD)及び/又は慢性(cGVHD)、好ましくは急性であり得る。抗体及び抗原結合断片は、CCR7を発現する免疫細胞をex vivo又はin vitroにおいて選択的に除去することが可能であり、CCR7受容体を発現する免疫細胞を選択的に死滅させること並びにGVHDの発症及び進展に関与する前記免疫細胞の遊走及び活性化を障害/阻止することがin vivoにおいて可能である。CCR7受容体を発現する免疫細胞を除去する、死滅させる、並びに該細胞の遊走及び活性化を障害/阻止するための前記抗体の使用が開示され、したがって、急性型と慢性型の両方におけるGVHDを防止及び処置するための代替療法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー細胞を含む移植体のレシピエントにおける移植片対宿主病(GVHD)を防止又は処置することにおける使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
CCL19及びCCL21から選択される少なくとも1種のCCR7リガンドによるCCR7依存性細胞内シグナル伝達及びCCR7受容体内部移行のうちの少なくとも1つを阻害することに関して100nM以下のIC50を有する、請求項1に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
実質的なアゴニスト効果を伴わずにCCR7依存性細胞内シグナル伝達を阻害する、請求項2に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
抗CCR7抗体が、参照抗CCR7抗体のKよりも最大で20倍高い、ヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに対するKを有し、参照抗CCR7抗体が、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
キメラ、ヒト化、又はヒト抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2である抗ヒトCCR7抗体のHVRを有する抗体である、請求項5に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
レシピエントにおけるCCR7発現細胞を死滅させること、該細胞のアポトーシスを誘導すること、該細胞の遊走を阻止すること、該細胞の活性化を阻止すること、該細胞の増殖を阻止すること、及び該細胞の播種を阻止することのうちの少なくとも1つを実現する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
ドナー細胞を含む移植体が、臓器、組織、前駆細胞、幹細胞、及び造血細胞のうちの1つ又は複数を含む移植体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
ドナー細胞を含む移植体が、造血幹又は前駆細胞を含む移植体である、請求項8に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
レシピエントが悪性障害に罹患しており、好ましくは、GVHDの防止又は処置が、移植片対腫瘍効果又は移植片対白血病効果を維持又は促進する、請求項9に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
GVHDの防止又は処置が、
a)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受ける前の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、
b)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた後、且つ好ましくはレシピエントがGVHDの症状を示す前又はレシピエントがGVHDと診断される前の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、
c)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた後、且つ好ましくはレシピエントがGVHDの症状を示した後又はレシピエントがGVHDと診断された後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、
d)ドナー細胞を含む移植体であって、抗CCR7抗体又はその抗原結合断片とのex vivoでのインキュベーションによって移植術前に調製された、移植体のレシピエントへの抗CCR7抗体の投与、及び
e)GVHDの再燃後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
レシピエントへの移植術のためのドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を調製するためのex vivoでの方法であって、
a)ドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を請求項2~7のいずれか一項に記載の抗CCR7抗体又はその抗原結合断片とインキュベートするステップであり、それによって抗CCR7抗体が、前記臓器、組織、又は細胞調製物におけるCCR7発現ドナー細胞の、i)数の減少及びii)活性の阻害のうちの少なくとも1つを実現する、ステップ、並びに
b)任意選択で、抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞のうちの少なくとも一方を前記臓器、組織、又は細胞調製物から取り除くステップ
を含む、方法。
【請求項13】
抗CCR7抗体が、前記臓器、組織、又は細胞調製物を移植術前に保存するために使用される保存溶液に含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記臓器又は組織が、抗CCR7抗体を含む保存溶液を用いて灌流又は洗浄される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞が、抗CCR7抗体及びそれと結合したCCR7発現ドナー細胞の親和性精製によって、前記細胞調製物から取り除かれる、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、医学及び薬学の分野、特に臓器、組織、又は細胞移植術及び移植法における使用のための生物製剤の分野に関する。より詳細には、本発明は移植片対宿主病の防止及び処置に有用な抗CCR7受容体抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、造血幹細胞移植術(HSCT)は様々な血液疾患、例えば、造血器腫瘍、白血病、又は再生不良性貧血を処置することを目的として広く実施されている。さらに、細胞移植術は医療分野における有用な処置方法である。HSCTは幹細胞供給源又はドナーの選択における相違に従って分類される。一般的な幹細胞供給源としては、腸骨稜(Aschan.J.Br Med Bull.2006;77~78:23~36)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)又はプレリキサホル動員末梢血幹細胞(Bacigalupoら、Haematologica.2002年8月;87(増刊8号):4~8)、及び臍帯血(Kestendjievaら、Cell Biol Int.2008年7月;32(7):724~32)から収集される骨髄が挙げられる。HSCTは、幹細胞が患者自身に由来する場合は自家であることができ、幹細胞が、主及び副組織適合性同一性を共有する遺伝子型が同一の個々の血縁ドナー、ヒト白血球抗原(HLA)同一同胞ドナー、拡大家族のメンバーのうちのHLA適合ドナー、HLA同一非血縁ドナー、非適合血縁ドナー、非適合非血縁ドナー、非適合臍帯血ドナー、並びにハプロタイプ非適合血縁ドナーを含む健常人由来である場合は同種であることができる。
【0003】
しかしながら、高度に洗練された治療手法を使用しているにもかかわらず、HSCTは、いくつかの合併症、例えば、移植片対宿主病(GvHD)、感染性疾患、静脈閉塞症、ドナー移植片拒絶、及び基礎疾患の再発によって引き起こされる相当な死亡率と依然として関連し、これらの合併症のうちGvHDは、最大30~70%の患者に影響を及ぼして著しい罹患率及び死亡率と関連するために対処しなければならない、同種異系HSCT後の最も高頻度且つ重篤な合併症である。
【0004】
GVHDは古典的には、急性形態と慢性形態とに分けられる。急性GVHD(aGVHD)は典型的には移植後の生着時から100日の間に生じ、慢性GVHD(cGVHD)はHSCTの100日後よりも後に生じる。両方の型のGVHDは疾患の臨床的重症度に応じて複数の程度にさらに細分される。しかしながら、この時間による区別は新たな治療手法のために曖昧になってきており、GVHDは両方の特徴を共有する重複型症候群を含んでいる。(Ferrara,J.L.ら、Lancet、2009.373(9674):1550~61頁;Filipovich,A.H.ら、Biol Blood Marrow Transplant、2005.11(12):945~56頁)。さらに、GVHDは多くの場合単一の疾患として考えられており、2つの時期:HSCT後早期に生じるGVHDの急性期、及びGVHDが移植術の経過の後期に現れる慢性期に分割されている(MacDonaldら、Blood.2017;129(1):13~21)。
【0005】
急性GVHDは主に皮膚、胃腸管、及び肝臓に影響を及ぼす。皮膚病変は通例、水疱とスティーブンス・ジョンソン症候群を模倣する中毒性表皮壊死症とを伴う、最も極度な場合には水疱形成及び潰瘍形成するおそれがある斑状丘疹状皮疹で構成される。胃腸所見としては、腹部疝痛及び腹痛、下痢、血便、イレウス、食欲不振、悪心、並びに嘔吐が挙げられる。肝疾患は、胆汁うっ滞、したがって高ビリルビン血症及び上昇したアルカリホスファターゼをもたらす毛細胆管に対する損傷に起因する。
【0006】
慢性GVHDは通例、皮膚、眼、口、胃、肝臓、肺、関節、及び泌尿生殖器系に通例影響を及ぼす硬化症及び線維症を伴う全身性硬化症等の自己免疫疾患に類似している。典型的な皮膚所見は、硬化及び多形皮膚萎縮、並びに苔癬型病変である。肺の場合では、閉塞性細気管支炎は、細気管支の損傷及び閉塞の結果であり、高い死亡率を生じる。
【0007】
造血系もまた一般的には、急性と慢性の両方において胸腺損傷及び血球減少の影響を受けている。
【0008】
GVHDを防止、処置、又は抑制するための一部の方法は、免疫抑制薬、例えば、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンA及びタクロリムス(FK506))、抗増殖剤(メトトレキセート及びミコフェノール酸モフェチル)、mTOR阻害薬(シロリムス又はラパマイシン)、並びにステロイド、例えばプレドニゾンの使用によるものである。近年の手法は、成熟T細胞を移植細胞集団(移植片)からin vivoにおいて取り除くことを含む、シクロホスファミド又は抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、及び他の処置、例えば、体外循環式光化学療法、リツキシマブ等のモノクローナル抗体、B細胞シグナル伝達を妨害するキナーゼ阻害薬、制御性T細胞の増大等を用いて自己反応性T又はBリンパ球の活性化及び/又は増殖を防止又は限定することを対象とする。しかしながら、これらの手法の開発は有望であるにもかかわらず、グルココルチコイドは、その薬剤が非特異的且つ幅広い免疫抑制効果を有するために長期使用の実質的な副作用があるにもかかわらず依然として標準的な一次療法を構成し、グルココルチコイドの毒性は高く、したがって、易感染性免疫系又は腫瘍の再燃に起因する感染性疾患が問題になってきている(Zeiser及びBlazard.N Engl J Med 2017;377:2565~79.DOI:10.1056/NEJMra1703472)。したがって、GVHDをより選択的に回避するための効果的な処置又は防止方法、及びそのための薬物の開発が現在依然として待望されている。したがって、先行技術による方法の深刻な不都合を受けない代替的及び改善した治療手法に関する当技術分野における必要性が依然として存在する。
【0009】
ヒトCCモチーフ受容体7(以下「CCR7」と称す)は、EBV感染によってリンパ球選択的に発現することが当初見出された7回膜貫通ドメインGタンパク質共役受容体(GPCR)である(Birkenbachら、1993、J.Virol.67:2209~2220)。CCR7はCCL19及びCCL21と命名された2種のケモカインと選択的に結合する。ホメオスタシス及び炎症において、CCR7はナイーブT及びBリンパ球、セントラルメモリーT細胞(TCM)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の一部のサブセット、半成熟及び成熟DC、並びに形質細胞様DCに発現する(Forster Rら、Cell 1999;99:23~33;Comerford Iら、Cytokine Growth Factor Rev.2013年6月;24(3):269~83)。これらの白血球サブセットにおいて、CCR7は遊走、組織化、及び活性化を制御する。
【0010】
一部の刊行物は、CCR7を発現するドナーT細胞がGVHDの病因と関連することがあると報告している(Porteroら、2014、Blood 124:3930;Portero-Sainzら、2017、Bone Marrow Transplant.52、745~752頁;Coghillら、2010、Blood.115(23):4914~22)。しかしながら、この文献のいずれも、CCR7の標的化が先行技術による方法の副作用に関する不都合を伴わずにGVHDの防止又は処置のために効果的に使用することができることを開示していない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、先行技術による手法の不都合を克服する、GVHDを防止及び処置するための医薬及び治療手法を提供することである。特に、本発明の目的は同種HSCTの生存率を改善することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、ドナー細胞を含む移植体のレシピエントにおける移植片対宿主病(GVHD)を防止又は処置することにおける使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片に関する。好ましくは、抗CCR7抗体は、CCL19及びCCL21から選択される少なくとも1種のCCR7リガンドによるCCR7依存性細胞内シグナル伝達及びCCR7受容体内部移行のうちの少なくとも1つを阻害することに関して100nM以下のIC50を有する。より好ましくは、抗CCR7抗体は、実質的なアゴニスト効果を伴わずにCCR7依存性細胞内シグナル伝達を阻害する。最も好ましくは、抗CCR7抗体は、参照抗CCR7抗体のKdよりも最大で20倍高い、ヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに対するKdを有し、参照抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である。
【0013】
一実施形態では、本発明の使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片は、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体である。好ましくは、抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2である抗ヒトCCR7抗体のHVRを有する抗体である。
【0014】
一実施形態では、本発明の使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片は、レシピエントにおけるCCR7発現細胞を死滅させること、該細胞のアポトーシスを誘導すること、該細胞の遊走を阻止すること、該細胞の活性化を阻止すること、該細胞の増殖を阻止すること、及び該細胞の播種を阻止することのうちの少なくとも1つを実現する抗CCR7抗体である。
【0015】
レシピエントにおけるGVHDを防止又は処置するための本発明の方法又は使用において、ドナー細胞を含む移植体は好ましくは、臓器、組織、前駆細胞、幹細胞、及び造血細胞のうちの1つ又は複数を含む移植体である。より好ましくは、ドナー細胞を含む移植体は、造血幹又は前駆細胞を含む移植体である。最も好ましくは、レシピエントは悪性障害に罹患しており、好ましくは、GVHDの防止又は処置は、移植片対腫瘍効果又は移植片対白血病効果を維持又は促進する。
【0016】
レシピエントにおけるGVHDを防止又は処置するための本発明の方法又は使用において、好ましくは、GVHDの防止又は処置は、a)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受ける前の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、b)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた後、且つ好ましくはレシピエントがGVHDの症状を示す前又はレシピエントがGVHDと診断される前の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、c)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた後、且つ好ましくはレシピエントがGVHDの症状を示した後又はレシピエントがGVHDと診断された後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、d)ドナー細胞を含む移植体であって、上で定義された抗CCR7抗体又は抗原結合断片とのex vivoでのインキュベーションによって移植術前に調製された、移植体のレシピエントへの抗CCR7抗体の投与、及びe)GVHDの再燃後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、レシピエントへの移植術のためのドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を調製するためのex vivoでの方法であって、a)ドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を上で定義された抗CCR7抗体又はその抗原結合断片とインキュベートするステップであり、それによって抗CCR7抗体が、臓器、組織、又は細胞調製物におけるCCR7発現ドナー細胞の、i)数の減少及びii)活性の阻害のうちの少なくとも1つを実現する、ステップ、並びにb)任意選択で、抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞のうちの少なくとも一方を臓器、組織、又は細胞調製物から取り除くステップを含む、方法に関する。好ましくは、方法において、抗CCR7抗体は、臓器、組織、又は細胞調製物を移植術前に保存するために使用される保存溶液に含まれる。より好ましくは、方法において、臓器又は組織は、抗CCR7抗体を含む保存溶液を用いて灌流又は洗浄される。最も好ましくは、方法において、抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞は、抗CCR7抗体及びそれと結合したCCR7発現ドナー細胞の親和性精製によって、細胞調製物から取り除かれる。
【0018】
本発明のex vivoでの方法は好ましくは、上に記載した本発明の使用のための方法のステップd)において使用される移植体を調製することにおいて使用される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の説明]
定義
本明細書において、「GVHD」は、宿主に移植された移植片におけるリンパ球等が宿主組織を外来組織として認識して攻撃する疾患として定義される。この場合、本明細書で使用される「レシピエント」又は「宿主」という用語は、移植されるか又は植え込まれる細胞、組織、又は臓器を受ける対象(移植患者)を指す。これらの用語は、例えば、ドナー骨髄、ドナー精製造血前駆体、ドナー末梢血、ドナー臍帯血、ドナーT細胞、又は膵島移植片の投与を受ける対象を指すことがある。移植組織は同系ドナーに由来しても同種ドナーに由来してもよい。「ドナー」という用語は、本明細書で使用する場合、レシピエント又は宿主に移植されるか又は植え込まれる組織が取得される対象を指す。例えば、ドナーは、レシピエント又は宿主に投与される骨髄、末梢血、臍帯血、T細胞、又は他の組織が由来する対象であり得る。本発明は、主としてヒトを標的とし、ヒト患者に好適に使用される。しかしながら、本発明は、少なくとも免疫反応による抗体形成が観察される非ヒト動物に使用してもよい。ヒトという用語は任意の対象を成人対象及び小児集団として同定し、小児集団という用語は誕生から十八(18)歳の集団の部分であることが意図される。
【0020】
「抗体」という用語は、最も広い意味において使用され、具体的には、所望の生物学的及び/又は免疫学的活性を呈する限り、例えば、アンタゴニスト、中和抗体、全長又は完全モノクローナル抗体を含む単一抗CCR7モノクローナル抗体、ポリエピトープ特異性を有する抗CCR7抗体組成物、ポリクローナル抗体、多価抗体、一本鎖抗CCR7抗体、並びにFab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む抗CCR7抗体の断片(下記を参照のこと)を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は本明細書において抗体と交換可能に使用される。抗体はヒト抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。
【0021】
「抗CCR7抗体」又は「CCR7に結合する抗体」という用語は、CCR7を標的とすることにおける診断剤及び/又は治療剤として有用となるほど十分な親和性によりCCR7と結合することが可能な抗体を指す。好ましくは、抗CCR7抗体と、関連のない非CCR7タンパク質との結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)又はELISAによって測定した場合、抗体とCCR7との結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、CCR7に結合する抗体は、1mM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(K)を有する。ある特定の実施形態では、抗CCR7抗体は、異なる種由来のCCR7の間で保存されているCCR7のエピトープに結合する。
【0022】
「単離した抗体」とは、天然環境の構成成分から同定され、分離及び/又は回収された抗体である。
【0023】
基本的な4鎖抗体単位は、2本の同一な軽(L)鎖と2本の同一な重(H)鎖とから構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体単位とJ鎖と呼ばれる追加のポリペプチドとからなり、したがって10の抗原結合部位を含有し、分泌型IgA抗体は、重合して、2~5つの基本的な4鎖単位とJ鎖とを含む多価集合体を形成することができる)。IgGの場合、4鎖単位は一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖と連結しており、2本のH鎖はH鎖アイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合によって互いに連結している。各H及びL鎖はまた、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V)、それに続いて、α及びγ鎖のそれぞれに関しては3つの定常ドメイン(C)、μ及びεアイソタイプに関しては4つのCドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V)、それに続いて、他方の末端に定常ドメイン(C)を有する。VはVとアラインメントされ、Cは重鎖の第1の定常ドメイン(C1)とアラインメントされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの界面を形成すると考えられている。VとVとの対合は一緒に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性に関しては、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P.Stites、Abba I.Terr、及びTristram G.Parslow(編)、Appleton&Lange、Norwalk、CT、1994、第6章71頁を参照のこと。
【0024】
いかなる脊椎動物種由来のL鎖も、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に別個の型のうちの1つに割り当てることができる。重鎖の定常ドメイン(C)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称される重鎖を有する。γ及びαクラスは、C配列及び機能の比較的小さな相違に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。
【0025】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「V」と称されることがある。軽鎖の可変ドメインは「V」と称されることがある。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0026】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが配列の点において抗体間で大きく異なるという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗体の特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は可変ドメインの110アミノ酸の範囲にわたって均等には分布していない。その代わりに、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸長の「超可変領域」(HVR)と呼ばれる極めて可変性のより短い領域によって分離された、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の区間からなる。未変性の重及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、大部分がβシート配置を取って3つの超可変領域によって接続される4つのFRを含み、超可変領域は、βシート構造と接続し、場合によってはβシート構造の部分を形成するループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRによって非常に近接して一緒に保持され、他方の鎖からの超可変領域と共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体を抗原に結合することに直接的には関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)への抗体の関わりを呈する。
【0027】
「完全」抗体とは、抗原結合部位と、CLと、少なくとも重鎖定常ドメイン、すなわちC1、C2、及びC3とを含む抗体である。定常ドメインは、未変性配列定常ドメイン(例えばヒト未変性配列定常ドメイン)であっても、そのアミノ酸配列バリアントであってもよい。好ましくは、完全抗体は1つ又は複数のエフェクター機能を有する。
【0028】
本明細書における目的のための「裸の抗体」とは、細胞傷害性部分にも放射性標識にもコンジュゲートしていない抗体である。
【0029】
「抗体断片」は、完全抗体の一部分、好ましくは完全抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062[1995]を参照のこと);一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。一実施形態では、抗体断片は、完全抗体の抗原結合部位を含み、したがって抗原と結合する能力を保持する。
【0030】
Fc断片は、ジスルフィドによって一緒に保持される両方のH鎖のカルボキシ末端部を含む。抗体のエフェクター機能は、ある特定の型の細胞に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもあるFc領域における配列によって決定される。
【0031】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に同種の抗体の集団、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在することがある起こり得る天然に存在する変異を除いては同一である集団から取得される抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、異なる決定基(エピトープ)に対するものである、異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、単一の抗原部位に対するものである。モノクローナル抗体は、他の抗体を混入させずに合成することができるという点で好都合である。「モノクローナル」という修飾語句は、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に有用なモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製しても、細菌細胞、真核動物細胞、又は植物細胞での組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照のこと)を使用して作出してもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClacksonら、Nature、352:624~628(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.、222:581~597(1991)に記載されている技法を使用してファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
【0032】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、所望の生物学的活性を呈する限り、重及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であり、鎖(複数可)の残りの部分が、別の種に由来するか又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体及びそのような抗体の断片における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体が含まれる(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851~6855(1984)を参照のこと)。本明細書における目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が挙げられる。
【0033】
非ヒト(例えばげっ歯類)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大半の部分に関して、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここで、レシピエントの超可変領域由来の残基は、抗体の所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基と置き換えられている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの数個のフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基と置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに向上させるために行われる。一般には、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全ての超可変ループが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、全て又は実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のFRである、典型的には2つの可変ドメインを含み得る。ヒト化抗体は、任意選択で、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域である免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含み得る。さらなる詳細に関しては、Jonesら、Nature 321:522~525(1986);Riechmannら、Nature 332:323~329(1988);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照のこと。また、それらに引用されている以下の総説論文及び参考文献:Vaswani及びHamilton、Ann.Allergy,Asthma and Immunol.、1:105~115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions、23:1035~1038(1995);Hurle及びGross、Curr.Op.Biotech.、5:428~433(1994)も参照のこと。
【0034】
「超可変領域」、「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性である、及び/又は抗原結合を担う構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つの超可変領域を含み、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)含む。いくつかの超可変領域描写が使用され、本明細書に包含される。超可変領域は一般に、「相補性決定領域」若しくは「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、Kabat番号付けシステムに従って番号付けした場合の、VLにおける残基約24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)周辺と、VHにおける約31~35(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)周辺;Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))、並びに/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、Chothia番号付けシステムに従って番号付けした場合の、VLにおける残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)と、VHにおける26~32(H1)、52~56(H2)、及び95~101(H3);Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.196:901~917(1987))、並びに/又は「超可変ループ」/CDR由来のアミノ酸残基(例えば、IMGT番号付けシステムに従って番号付けした場合の、VLにおける残基27~38(L1)、56~65(L2)、及び105~120(L3)と、VHにおける27~38(H1)、56~65(H2)、及び105~120(H3);Lefranc,M.P.ら、Nucl.Acids Res.27:209~212(1999)、Ruiz,M.ら、Nucl.Acids Res.28:219~221(2000))を含む。任意選択で、抗体は以下の点、すなわちHonneger,A.及びPlunkthun,A.J.(Mol.Biol.309:657~670(2001))に従って番号付けした場合の、VLにおける28、36(L1)、63、74~75(L2)、及び123(L3)、並びにVHにおける28、36(H1)、63、74~75(H2)、及び123(H3)のうちの1つ又は複数において、対称的な挿入を有する。本発明の抗体の超可変領域/CDRは、好ましくはIMGT番号付けシステムに従って定義され、番号付けされる。
【0035】
「フレームワーク」又は「FR」残基とは、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0036】
「遮断」抗体又は「アンタゴニスト」抗体とは、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低下させる抗体である。好ましい遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。
【0037】
「アゴニスト抗体」とは、本明細書で使用する場合、目的のポリペプチドの少なくとも1つの機能活性を模倣する抗体である。
【0038】
「結合親和性」とは一般に、分子(例えば抗体)の単結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XとパートナーYとの親和性は一般に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に、抗原と緩慢に結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に、抗原とより速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する多様な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれも本発明の目的に使用することができる。具体的な例証的実施形態は以下に記載されている。
【0039】
「K」又は「K値」は、ビアコア(BIAcore)(商標)-2000又はビアコア(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を25℃で、約10~50応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップと共に使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって測定することができる。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を供給業者の説明書に従って用いて活性化する。抗原を、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)の結合タンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入して、未反応基をブロックする。動態測定のために、抗体又はFabの2倍段階希釈(0.78nM~500nM)を25℃の0.05%Tween20を含むPBS(PBST)におよそ25μl/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software、バージョン3.2)を使用して、会合及び解離センサーグラムを同時フィッティングすることによって算出する。平衡解離定数(K)を、koff/konの比として算出する。例えばChen,Y.ら(1999)J.Mol Biol 293:865~881を参照のこと。オン速度が上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって10-1-1を超える場合、オン速度は、分光計、例えばストップフロー搭載分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備える8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)において測定される、漸増濃度の抗原の存在下におけるpH7.2のPBS中20nM抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)の増加又は減少を測定する蛍光消光技法を使用することによって決定することができる。
【0040】
本発明の「オン速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「kon」は、ビアコア(商標)-2000又はビアコア(商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を上に記載したように使用する、上に記載したのと同じ表面プラズモン共鳴技法を用いて決定することもできる。
【0041】
目的の抗原、例えばポリペプチドCCR7抗原標的「と結合する」抗体とは、抗原を発現する細胞又は組織を標的とすることにおける治療剤として有用となるほど十分な親和性により抗原と結合し、他のタンパク質と有意には交差反応しない抗体である。そのような実施形態では、抗体と「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)解析又は放射免疫沈降(RIA)によって決定した場合、抗体とその特定の標的タンパク質との結合の約10%未満であり得る。抗体と標的分子との結合に関して、「特異的結合」、又は特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的のエピトープ「に特異的に結合する」若しくは「に対して特異的」であるという用語は、非特異的相互作用と測定可能なほど異なる結合を意味する。特異的結合は例えば、分子の結合を、一般に結合活性を有しない類似した構造の分子である対照分子の結合と比較して決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的と類似する対照分子、例えば過剰量の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、標識標的とプローブとの結合が過剰な未標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。「特異的結合」、又は特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的のエピトープ「に特異的に結合する」若しくは「に対して特異的」であるという用語は、本明細書で使用する場合、例えば、少なくとも約10-4M、或いは少なくとも約10-5M、或いは少なくとも約10-6M、或いは少なくとも約10-7M、或いは少なくとも約10-8M、或いは少なくとも約10-9M、或いは少なくとも約10-10M、或いは少なくとも約10-11M、或いは少なくとも約10-12M以上の標的に対するK(上に記載したように決定することができる)を有する分子によって呈することができる。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに、いかなる他のポリペプチドにもポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく結合する場合の結合を指す。
【0042】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(未変性配列Fc領域又はアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因し、抗体アイソタイプにより変動する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP);細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御;並びにB細胞活性化が挙げられる。
【0043】
「Fc領域」という用語は、本明細書では、未変性配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通例、Cys226位又はPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで及ぶように定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムに従うと残基447)は、例えば、抗体の作製若しくは精製の間に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって取り除かれ得る。したがって、完全抗体の組成は、全てのK447残基が取り除かれた抗体集団、K447残基が一切取り除かれていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0044】
「機能的Fc領域」は未変性配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)の下方制御等が挙げられる。そのようなエフェクター機能は、Fc領域が結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と結び付くことを一般に必要とし、例えば本明細書の定義に開示される様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0045】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」とは、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌型Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合し、その後標的細胞を細胞毒により死滅させることを可能にするという細胞傷害性の一形態を指す。抗体は細胞傷害性細胞を「武装」させ、そのような死滅に絶対的に必要とされる。ADCCを媒介することに関する主な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457~92(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されているin vitro ADCCアッセイが実施されてもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に又は付加的に、目的の分子のADCC活性はin vivoにおいて、例えば動物モデル、例えばClynesら(USA)95:652~656(1998)に開示されている動物モデルにおいて評価してもよい。国際公開第2000/42072号(Presta)は、FcRとの結合が改善又は減弱した抗体バリアントを記載している。例えばShieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)も参照のこと。
【0046】
「ヒトエフェクター細胞」とは、1つ又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞は天然供給源、例えば血液から単離してもよい。
【0047】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」とは、補体の存在下における標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1の構成成分(C1q)と、同種抗原と結合する(適切なサブクラスの)抗体との結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoroら(1996、J.Immunol.Methods 202:163)に記載されているCDCアッセイが実施されてもよい。変更されたFc領域アミノ酸配列を有する抗体バリアント(バリアントFc領域を有する抗体)、及び向上又は低下したC1q結合能力を有する抗体バリアントは、例えば米国特許第6,194,551(B1)号及び国際公開第1999/51642号に記載されている。例えばIdusogieら(2000、J.Immunol.164:4178~4184)も参照のこと。C1q結合を向上させ、それによりCDC活性を向上させるような1つの置換は、本発明の抗体に好都合に適用することができるE333A置換である。
【0048】
「配列同一性」は、本明細書では、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)配列又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列を比較することによって決定される配列間の関係性として定義される。当技術分野では、「同一性」は、場合に応じて、アミノ酸又は核酸配列の文字列間の一致によって決定される、そのような配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列の間の「類似性」は、あるポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換体を、第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」及び「類似性」は公知の方法によって容易に算出することができる。「配列同一性」又は「配列類似性」という用語は、2つの(ポリ)ペプチド又は2つのヌクレオチド配列が、好ましくは全長(比較における少なくとも最も短い配列の)にわたって最適にアラインメントされ、例えば初期パラメータを使用するClustalW(1.83)、GAP、又はBESTFITプログラムによって一致の数を最大化してギャップの数を最小化する場合、本明細書の他の箇所で定義される少なくともある特定の百分率の配列同一性を共有することを意味する。GAPは、Needleman及びWunschグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列を全長にわたってアラインメントし、一致の数を最大化してギャップの数を最小化する。一般に、GAP初期パラメータは、ギャップ生成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)が使用される。ヌクレオチドの場合、使用される初期スコア行列はnwsgapdnaであり、タンパク質の場合、初期スコア行列はBlosum62である(Henikoff及びHenikoff、1992、PNAS 89、915~919)。本発明のタンパク質配列をアラインメントするのに好ましい多重アラインメントプログラムは、blosum行列及び初期設定(ギャップ開始ペナルティ:10、ギャップ伸長ペナルティ:0.05)を使用するClustalW(1.83)である。配列アラインメント及び配列同一性百分率に関するスコアは、コンピュータプログラム、例えばAccelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752 USAから入手可能なGCG Wisconsin Package、バージョン10.3を使用するか又はオープンソースソフトウェア、例えばEmbossWIN、バージョン2.10.0におけるプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを使用する)若しくは「water」(局所Smith Watermanアルゴリズムを使用する)を使用して、上記のGAPの場合と同じパラメータを使用するか又は初期設定(「needle」と「water」の両方の場合、タンパク質アラインメントとDNAアラインメントの両方に関して、初期ギャップ開始ペナルティは10.0であり、初期ギャップ伸長ペナルティは0.5であり;初期スコア行列はタンパク質に関してはBlossum62であり、DNAに関してはDNAFullである)を使用して決定され得る。配列が実質的に異なる全体の長さを有する場合は、局所アラインメント、例えばSmith Watermanアルゴリズムを使用する局所アラインメントが好ましい。或いは、類似性又は同一性百分率は、アルゴリズム、例えば、FASTA、BLAST等を使用して公開データベースを検索することによって決定してもよい。
【0049】
[発明の詳細な説明]
本発明は、CCR7受容体が一部のリンパ球様細胞及び抗原提示細胞(APC)に高度に発現するという知見に基づく。前記細胞において、CCR7は、GVHDの発症及び進展の根底にあるプロセスであるリンパ節(LN)を含むリンパ組織への進入において主要な役割を果たす。本発明者らは、抗CCR7抗体がマウスのGVHDモデルにおいて注目に値する治療効果を生み出すことを驚くべきことに見出した。GVHDは、移植片のレシピエントへの抗CCR7抗体の投与によって、顕著な副作用を伴わずに抑制することができる。in vivoモデルは、抗体を用いたCCR7標的化が疾患をいかにして防止し、発症した場合はGVHDをいかにして寛解するかを示し、したがって、CCR7受容体を急性GVHDと慢性GVHDの両方におけるmAb療法のための興味深い標的とする。CCR7に対するモノクローナル抗体(mAb)、すなわちCCR7受容体におけるエピトープを認識し、好ましくはCCR7依存性細胞内シグナル伝達を阻害することが可能な抗体は、CCR7ドナー及びレシピエント免疫細胞を死滅させること、並びに/又は該細胞の遊走、活性化、及び/若しくは増殖、及び/若しくは播種を阻止することがin vivoにおいて可能である一方で、CCR7免疫細胞には影響を及ぼさず、したがって例えばGVLを維持し、GVHD症状及び生存期間をin vivoにおいて改善する。
【0050】
したがって、第1の態様では、本発明は、ドナー細胞を含む移植体のレシピエントにおけるGVHDの防止及び処置のうちの少なくとも一方における使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片に関する。好ましくは、レシピエント細胞及びドナー細胞のうちの少なくとも一方はヒト細胞である。移植体は、好ましくは免疫細胞、より好ましくはレシピエント組織に対する免疫応答を引き起こしてGVHDを媒介し得る免疫コンピテント細胞(例えば成熟T細胞)を含むドナー細胞を含む。GVHDは急性又は慢性GVHDであり得る。好ましくは、GVHDは急性GVHDである。GVHDを「処置すること」とは、本明細書で使用する場合、GVHDを抑制すること、GVHDの発生%を減少させること、GVHDを処置すること、GVHDの1つ又は複数の臨床所見を寛解又は減弱すること、及び処置される対象の生存率を改善することを意味すると理解される。GVHDを「防止すること」とは、本明細書で使用する場合、「予防」を意味すると理解される。in vivoでの予防とは、GVHDの発症を抑制すること、GVHDの開始を遅延させること、GVHDの発生%を減少させること、発生した場合はGVHDの1つ又は複数の臨床所見を軽減すること等を意味する。
【0051】
本発明における使用のための抗CCR7抗体又はその抗原結合断片は、CCR7に特異的に結合するいかなる抗原結合タンパク質であってもよい。CCR7に結合する本発明の抗原結合タンパク質は好ましくは、例えば、抗CCR7抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体変異タンパク質、及び抗体バリアントを含む本明細書において上で定義された最も広い意味における抗CCR7抗体である。本発明の抗CCR7抗体は好ましくは、単離した抗体である。好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、霊長類CCR7、より好ましくはヒトCCR7に結合する。ヒトCCR7の参照アミノ酸配列は例えば、NP_001288643、NP_001288645、NP_001288646、NP_001288647、NP_001829、NP_001288642、及びNP_031745である。この配列のアミノ酸1~24は、発現の間に切断される膜移行シグナルペプチドを含む。ヒトCCR7のアミノ酸25~59は、Y32及びY41位に硫酸化チロシン残基を含むN末端細胞外ドメインを構成する。様々なアレルバリアントが、上述の参照配列と比較して1つ又は複数のアミノ酸置換を有するヒトCCR7に関して公知である。本発明における「ヒトCCR7」はこれらのアレルバリアントを、少なくともバリアントが細胞外ドメインとCCR7の機能とを有する限り、含む。本発明における使用のための抗CCR7抗体は好ましくは、CCR7、好ましくはヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0052】
本発明における使用のための抗CCR7抗体は好ましくは、CCL19及びCCL21から選択される少なくとも1種のCCR7リガンドによるCCR7依存性細胞内シグナル伝達、CCR7依存性機能、及び/又はCCR7受容体内部移行を阻害する中和抗体である。抗CCR7抗体は好ましくは、CCL19及びCCL21から選択される少なくとも1種のCCR7リガンドによるCCR7依存性細胞内シグナル伝達及び/又はCCR7受容体内部移行を阻害することに関して、例えば本明細書の実施例に記載されているアッセイにおいて決定することができる150、100、80、50、30、25、20、15、10、5、又は3nM以下のIC50を有する。或いは、抗体の最大のIC50は、同じアッセイにおいて試験した場合の参照抗CCR7抗体のIC50を参照することによって定義される。したがって、好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、参照抗CCR7抗体のIC50よりも最大で10、5、2、1.5、1.2、1.1、又は1.05倍高いIC50を有し、参照抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である。
【0053】
本発明の抗CCR7抗体は好ましくは、実質的なアゴニスト効果を伴わずに、より好ましくは検出可能なアゴニスト効果を伴わずに、例えば本明細書の実施例に記載されているアッセイにおいて決定することができる、上に記載したCCR7依存性細胞内シグナル伝達を阻害する。
【0054】
本発明における使用のための抗CCR7抗体は好ましくは、CCR7、好ましくはヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに対する最小の親和性を有する。抗体の最小の親和性は、本明細書では好ましくは、同じアッセイにおいて試験した場合の参照抗CCR7抗体のKを参照することによって定義される。したがって、好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、ヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに対する参照抗CCR7抗体のKよりも最大で100、50、20、10、5、2、1.5、1.2、1.1、又は1.05倍高い、ヒトCCR7のN末端細胞外ドメインに対するKを有し、参照抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である。参照のKよりも最大で10倍高い数のKを有する抗体は、最小で参照抗体の親和性の10分の1の親和性を有する抗体であることが本明細書において理解される。したがって、参照抗体が1×10-9MのKを有する場合、当該抗体は1×10-8M以下のKを有する。
【0055】
上で定義された特徴のうちの1つ又は複数を有し、本発明における使用に好適な抗CCR7抗体の例としては、例えば、それらの全てが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,865,170号、国際公開第2009/139853号、国際公開第2014/151834号、及び国際公開第2017/025569号に記載されているモノクローナル抗体が挙げられる。
【0056】
本発明における使用のための好ましい抗CCR7抗体は、アミノ酸配列「ZxLFE」を含むか又はそれからなるエピトープに特異的に結合する抗体であり、ここで、Zは硫酸化チロシンであり、xはいかなるアミノ酸であってもよく、Fは疎水性アミノ酸と置き換えられてもよい。したがって、本発明の抗体は好ましくは、ヒトCCR7のN末端細胞外ドメインの41~45位におけるアミノ酸配列「ZTLFE」を含むか又はそれからなるエピトープに特異的に結合する。抗体は好ましくはヒトCCR7に対して特異的である。そのような好ましい抗CCR7抗体は好ましくは、ヒトCCR7又は「ZTLFE」エピトープを含む合成抗原、好ましくは本明細書の実施例に記載されている合成抗原SYM1899に対する最小の親和性を有する。したがって、好ましくは、抗CCR7抗体は、好ましくは合成抗原SYM1899に対する1×10-8M、5×10-9M、2×10-9M、1.8×10-9M、1×10-9M、1×10-10M、又は1×10-11M以下のKを有する。或いは、抗体の最小の親和性は、同じアッセイにおいて試験した場合の参照抗CCR7抗体のKを参照することによって定義される。したがって、好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、ヒトCCR7又は「ZTLFE」エピトープを含む合成抗原(好ましくは本明細書の実施例に記載されている合成抗原SYM1899)に対する参照抗CCR7抗体のKよりも最大で10、5、2、1.5、1.2、1.1、又は1.05倍高い、その抗原に対するKを有し、参照抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である。参照のKよりも最大で10倍高い数のKを有する抗体は、最小で参照抗体の親和性の10分の1の親和性を有する抗体であることが本明細書において理解される。したがって、参照抗体が1×10-9MのKを有する場合、当該抗体は1×10-8M以下のKを有する。
【0057】
本発明における使用のための抗CCR7抗体は好ましくは、最大のkoff速度定数によりヒトCCR7又は「ZTLFE」エピトープを含む合成抗原(好ましくは本明細書の実施例に記載されている合成抗原SYM1899、配列番号3)に結合する。したがって、好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、1×10-3、1×10-4、又は1×10-5-1以下のkoff速度定数を有する。或いは、抗体の最大のkoff速度定数は、同じアッセイにおいて試験した場合の参照抗CCR7抗体のkoff速度定数を参照することによって定義される。したがって、好ましくは、本発明の抗CCR7抗体は、ヒトCCR7又は「ZTLFE」エピトープを含む合成抗原(好ましくは本明細書の実施例に記載されている合成抗原SYM1899)に対する参照抗CCR7抗体のkoff速度定数よりも最大で10、5、2、1.5、1.2、1.1、又は1.05倍高いその抗原に結合し、参照抗CCR7抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2であるマウス抗CCR7抗体である。
【0058】
本発明における使用のための1つのそのような好ましい抗体は、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号1であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号2である参照マウス抗ヒトCCR7抗体のHVRであって、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2017/025569号に定義されている、HVRを有する抗体である。
【0059】
本発明における使用のための抗CCR7抗体はキメラ抗体、例えばマウス-ヒト抗体であってもよい。しかしながら、好ましくは、抗体はヒト化又はヒト抗体である。
【0060】
本発明における使用のためのヒト化抗体は好ましくは、抗体が投与される対象において抗体に対する免疫原性応答をほとんど又は全く誘発しない。例えば、本発明における使用のためのヒト化抗体は、宿主対象において、例えば配列番号1及び2の配列を含む本来のマウス抗体と比較して実質的に低下したレベルのヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発する、及び/又は誘発すると予期される。好ましくは、ヒト化抗体は、最小のヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発する、及び/若しくは誘発すると予期されるか、又はヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を誘発しない、及び/若しくは誘発しないと予期される。最も好ましくは、本発明の抗体は、臨床的に許容されるレベル又はそれ未満の抗マウス抗体応答を誘発する。
【0061】
ヒト化は、Winter及び共同研究者ら(Jonesら、Nature、321:522~525(1986);Reichmannら、Nature、332:323~327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534~1536(1988))の方法に従って、超可変領域配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって本質的に実施することができる。実際には、ヒト化抗体は典型的には、一部の超可変領域残基、及び場合により一部のフレームワーク領域(FR)残基がげっ歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体を作出することにおいて使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、免疫原性を低減し、抗原に対する特異性及び親和性を保持するために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従うと、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列がヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として認められる(Sunsら、J.Immunol.、151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol、196:901(1987))。別の方法は、軽又は重鎖の特定の亜群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークがいくつかの異なるヒト化抗体に使用されてもよい(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.、151:2623(1993))。
【0062】
抗体が抗原に対する高親和性及び他の有利な生物学的特性を保持したままヒト化されることはさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従うと、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列及び様々な概念上のヒト化産物の解析の方法によって調製される。本発明の上記の実施形態のいずれかのヒト化抗CCR7抗体は好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4領域である重鎖定常領域を含む。本発明の上記の実施形態のいずれかのヒト化抗CCR7抗体は好ましくは、C1q結合、補体依存性細胞傷害;Fc領域結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害及び食作用からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター機能を保有する機能的Fc領域を含む。
【0063】
本発明における使用のための好ましいヒト化抗体は、例えば国際公開第2017/025569号に記載されている、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号4であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号5である抗体である。
【0064】
ヒト化の代替として、ヒト抗体が生成されてもよい。「ヒト抗体」とは、公知の標準的な方法のいずれかによって作製される、完全ヒト軽及び重鎖並びに定常領域を含有する抗体を意味する。例えば、免疫化すると、内因性免疫グロブリン産生の非存在下においてヒト抗体の全レパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)が利用可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系列変異マウスにおける抗体重鎖連結領域PH遺伝子のホモ接合型欠失が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことは記載されている。そのような生殖細胞系列変異マウスへのヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、免疫化後にヒト抗体の産生をもたらすことができる。例えばJakobovitsら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、90:255 1(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255~258(1993)を参照のこと。或いは、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら、Nature 348:552~553(1990))は、ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体断片をin vitroにおいて作製するために使用することができる。この技法に従うと、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfd等の繊維状バクテリオファージのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面に機能的抗体断片として表出される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択は、結果的にそれらの機能特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択でもある。したがって、ファージはB細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは多様な型式において実施することができ、型式の概説に関しては、例えばJohnson,Kevin S.及びChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology 3:564~57 1(1993)を参照のこと。ヒト抗体は、in vitroにおいて活性化させたB細胞によって、又は免疫系がヒト細胞を用いて再構成されたSCIDマウスによって生成することもできる。ヒト抗体が取得されると、そのコードDNA配列を単離し、クローニングし、適切な発現系、すなわち好ましくは哺乳動物由来の細胞株に導入することができ、その後、細胞株はヒト抗体を発現して培養培地に放出し、その培養培地から抗体を単離することができる。
【0065】
本発明における使用のための好ましいヒト抗体は、例えば国際公開第2014/151834号に記載されている、重鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号6であり、軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列が配列番号7又は8である抗体である。
【0066】
本発明の範囲内での使用のために含まれる、CCR7受容体に結合する抗体の機能的断片は、断片が由来する全長抗体の少なくとも1つの結合機能及び/又は調節機能を保持する。好ましい機能的断片は、対応する全長抗体の抗原結合機能(例えば哺乳動物CCR7受容体と結合する能力)を保持する。特に好ましい機能的断片は、哺乳動物CCR7受容体に特徴的な1つ又は複数の機能を阻害する能力、例えば結合活性、並びに/又はシグナル伝達活性及び/若しくは細胞応答の刺激の阻止を保持する。例えば、一実施形態では、機能的断片は、CCR7とその1つ若しくは複数のリガンドとの相互作用を阻害することができる、及び/又は1つ若しくは複数の受容体媒介性機能を阻害することができる。
【0067】
一部の実施形態では、本発明の抗CCR7抗体は、軽鎖及び/又は重鎖抗体定常領域を含む。当技術分野で公知のいかなる抗体定常領域も使用することができる。軽鎖定常領域は、例えばカッパ又はラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ又はラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域であり得る。したがって、本発明の抗CCR7抗体は、いかなるアイソタイプの定常領域、すなわち、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域、並びにIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域を含む定常領域を有してもよい。一実施形態では、軽又は重鎖定常領域は、天然に存在する定常領域の断片、誘導体、バリアント、又は変異タンパク質である。異なるサブクラス又はアイソタイプの抗体を目的の抗体から誘導するための技法、すなわちサブクラススイッチングは公知である。したがって、IgG抗体は例えばIgM抗体から誘導してもよく、逆もまた同様である。そのような技法は、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を保有するが、親抗体のアイソタイプ又はサブクラスと異なる抗体アイソタイプ又はサブクラスと関連する生物学的特性も呈する新たな抗体の調製を可能にする。組換えDNA技法が用いられてもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローニングしたDNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAがそのような手順に用いられ得る。Lanttoら(2002、Methods Mol.Bio1.178:303~16)も参照のこと。したがって、本発明の抗CCR7抗体には、例えば本明細書に開示される1つ又は複数の可変ドメイン配列を含み、所望のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、及びIgD)を有する抗体、並びにそのFab又はF(ab’)2断片が含まれる。さらに、IgG4が所望される場合、Bloomら(1997、Protein Science 6:407)に記載されているように、ヒンジ領域に点変異(CPSCP→CPPCP)を導入して、IgG4抗体に異種性をもたらすおそれがあるH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を緩和することもまた所望され得る。
【0068】
本発明の抗CCR7抗体は好ましくは、C1q結合、補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害及び食作用からなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター機能を保有する機能的Fc領域を含む。
【0069】
本発明の抗CCR7抗体は、エフェクター機能を改善するように、例えば抗体のADCC及び/又はCDCを増強するように改変することができる。これは、抗体のFc領域に1つ又は複数のアミノ酸置換を導入することによって達成することができる。本発明の抗体のFc領域における好ましい置換は、例えばIdusogieら(2000、J.Immunol.164:4178~4184)に記載されているような、C1q結合を向上させ、それによりCDC活性を向上させる置換である。C1q結合を向上させる、Fc領域における好ましい置換はE333A置換である。
【0070】
糖タンパク質、例えば抗体のアミノ酸骨格に付加されるグリコシル基は、いくつかの単糖又は単糖誘導体によって形成され、異なる哺乳動物又は組織由来の細胞において産生される同じ抗体において異なり得る組成をもたらす。加えて、グリコシル基の異なる組成は、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介することにおける効力に影響を及ぼし得ることが示されている。したがって、これらの特性を、異なる供給源由来の抗体のグリコシル化のパターンを研究することによって改善することが可能である。そのような手法の一例はNiwaら(2004、Cancer Res、64(6):2127~33)である。
【0071】
代替的に又は付加的に、システイン残基(複数可)がFc領域に導入され、それによりFc領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にしてもよい。そのように生成されるホモ二量体抗体は、改善した内部移行能力、並びに/又は向上した補体媒介性細胞死滅及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る。Caronら(1992、J.Exp Med.176:1191~1195)及びShopes(1992、Immunol.148:2918~2922)を参照のこと。増強した抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolffら(1993、Cancer Research 53:2560~2565)に記載されているヘテロ二機能性架橋剤を使用して調製することもできる。或いは、二重Fc領域を有する抗体は、操作することができ、それにより増強した補体溶解及びADCC能力を有し得る。Stevensonら(1989、Anti-Cancer Drug Design 3:219~230)を参照のこと。抗体の血清半減期を増加させるために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されているように、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(とりわけ抗体断片)に組み込んでもよい。本明細書で使用する場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivoでの血清半減期を増加させることを担うIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0072】
本発明の好ましい抗CCR7抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む、ヒトアロタイプG1m17,1の重鎖定常領域(Jefferis及びLefranc(2009)MAbs第1巻第4号、1~7頁を参照のこと)を含む。より好ましくは、本発明の抗体におけるヒトアロタイプG1m17,1の重鎖定常領域は、E333A置換を含み、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0073】
本発明における使用のための抗CCR7抗体は、いくつかの従来の技法のいずれによって調製することもできる。抗CCR7抗体は通例、当技術分野で公知の任意の技法を使用して、組換え発現系において作製される。例えば、Shukla及びThoemmes(2010、「Recent advances in large-scale production of monoclonal antibodies and related proteins」、Trends in Biotechnol.28(5):253~261)、Harlow及びLane(1988)「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、並びにSambrook及びRussell(2001)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NYを参照のこと。当技術分野で公知のいかなる発現系も、本発明の組換えポリペプチドを作出するために使用することができる。一般には、宿主細胞は、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターを用いて形質転換される。
【0074】
一実施形態では、本発明は、ドナー細胞を含む移植体のレシピエントにおけるGVHDを処置及び/又は防止するための、本明細書において上で定義された抗CCR7抗体又はその抗原結合断片の使用であって、好ましくは、抗CCR7抗体効果が、好ましくはレシピエントにおける、CCR7発現細胞の死滅、該細胞のアポトーシスの誘導、該細胞の遊走の阻止、並びに/又は該細胞の播種の阻止、CCR7発現細胞の活性化の阻止、CCR7発現細胞の成熟及び分化の阻止のうちの少なくとも1つを含む、使用に関する。抗CCR7抗体がこれらの効果のうちの1つ又は複数を発揮するCCR7発現細胞は好ましくは、ドナーに由来する移植免疫細胞であっても、宿主由来、すなわちレシピエントに由来する免疫細胞であってもよいCCR7発現免疫細胞である。ドナー又は宿主由来CCR7発現免疫細胞の例としては、例えば、CD4+T細胞とCD8+T細胞の両方のT細胞、例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞、及び細胞傷害性T細胞等、B細胞、例えばナイーブB細胞及び濾胞性B細胞等、抗原提示細胞(APC)、例えば、例えば成熟樹状細胞(mDC)及び血漿細胞様DCを含む樹状細胞等が挙げられる。例えば、CCR7受容体を発現する細胞は従来の方法によって同定することができ、例えば、CCR7受容体の表面発現は一般に当技術分野で公知であるフローサイトメトリーによって解析することができる。CCR7受容体を発現する細胞の死は、任意の従来の方法、例えばレシピエント由来のCCR7細胞の非存在又はクリアランスを決定することによって決定することができる。好ましくは、本発明の抗CCR7抗体の使用は、レシピエントのリンパ節、末梢血、脾臓、胸腺、及び骨髄のうちの少なくとも1つ、とりわけリンパ器官への、又はレシピエントにおけるGVHDの上皮標的組織のいずれかへのCD45ドナー細胞の浸潤を防止又は抑制し、より好ましくは、抗CCR7抗体又はその抗原結合断片は、レシピエントにおけるリンパ節、末梢血、脾臓、胸腺、及び骨髄のうちの少なくとも1つ、とりわけレシピエントのリンパ器官への、又はレシピエントにおけるGVHDの上皮標的組織のいずれかへのCCR7、CD45ドナー細胞の浸潤を防止又は抑制する。
【0075】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の抗CCR7抗体の治療的使用は好都合には、例えば、レシピエントにおける、CCR7T細胞及びAPCを死滅させること、並びに/又はCCR7T細胞及びAPCの遊走を障害すること及び/若しくは播種を阻止すること、並びに/又はCCR7+T細胞及びAPCの活性化若しくは分化若しくは成熟を障害若しくは阻止することによって、GVHDの特異的防止又は処置をin vivoにおいて可能にするはずである。大半の場合、補体依存性細胞溶解(CDC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が非コンジュゲート抗CCR7抗体の臨床的有用性を担うと考えられているが、アポトーシス又は細胞周期停止の誘導もまた実質的な役割を果たし得る。抗CCR7抗体の適用の場合、免疫細胞の遊走を障害及び/若しくは阻止すること、並びに/又は免疫細胞の活性化、分化、増殖、若しくは成熟を障害若しくは阻止することは追加の関連する作用機序である。
【0076】
したがって、好ましくは、一実施形態では、本発明は、本発明の抗CCR7抗体の使用であって、抗CCR7抗体がCCR7受容体を発現するドナー及び/若しくはレシピエント細胞の二次リンパ組織への遊走を障害する、並びに/又はドナー細胞の、リンパ節、脾臓、及び粘膜関連リンパ組織(MALT)、例えばパイエル板を含む二次リンパ組織への播種を阻止するための、使用に関する。
【0077】
GVHDが本発明に従って防止又は処置される移植体のレシピエントは好ましくは、臓器、前駆細胞、幹細胞、造血細胞、造血前駆細胞、又は造血幹細胞を含む移植体又は移植片のレシピエントである。移植体又は移植片は同系移植体であっても同種移植体であってもよいが、好ましくは同種ドナー細胞を含む移植体又は移植片である。移植体は、例えば、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、顔(又はその部分)、角膜、皮膚、手、脚、陰茎、骨、子宮、胸腺等を含むいかなる種類の臓器又は組織も含むことができる。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の抗CCR7抗体又は抗原結合断片は、造血細胞移植片のレシピエントにおけるGVHDを防止又は処置するために使用される。より詳細には、同種造血幹細胞移植術(HSCT)後のGVHDを防止又は処置するために使用される。
【0079】
本発明の方法において使用されるドナー細胞は、全又は精製骨髄細胞、骨髄由来の精製造血前駆体又は幹細胞、末梢血由来の精製造血前駆細胞又は幹細胞、G-CSF等の成長因子又はプレリキサホル等の抗CXCR4剤を用いて骨髄由来の造血前駆体を動員した後の、造血前駆体又は幹細胞が濃縮されたアフェレーシス産物由来の(精製)臍帯血細胞又は末梢血細胞であり得る。ドナーT細胞が導入される本発明の方法では、細胞移植片は、T細胞の追加輸注を伴う全若しくは精製骨髄細胞、臍帯血細胞、又は精製幹細胞を含み得る。したがって、一実施形態では、本発明に従って使用されるドナー細胞は、T細胞、ワルトンゼリー由来の脾臓、臍帯血、羊水、及び歯髄細胞、胎盤由来細胞、毛根由来細胞、並びに/又は脂肪組織由来細胞、リンパ球、単球及び/若しくはマクロファージを含む細胞懸濁液、幹細胞含有組織、幹細胞含有臓器、免疫細胞含有組織、並びに免疫細胞含有臓器のうちの少なくとも1つを含むか又はそれに由来する。一実施形態では、本発明に従って使用されるドナー細胞は、骨髄幹細胞、末梢血幹細胞、臍帯血幹細胞、骨髄の成体幹細胞、例えば非接着性骨髄由来細胞(NA-BMC)、胚性幹細胞、及び/又は初期化成体幹細胞(すなわち人工多能性細胞)を含むか又はそれに由来する造血幹細胞(造血前駆細胞としても公知)である。
【0080】
造血(幹)細胞移植片のレシピエントは血液障害又は非血液障害を有し得る。血液障害は非新生物血液障害であっても血液悪性腫瘍であってもよい。非悪性血液障害、特に造血細胞不全障害は、先天性又は後天性免疫不全、異常ヘモグロビン症、酵素欠損症、又は自己免疫疾患を引き起こす遺伝子障害、重症再生不良性貧血、サラセミア、鎌状赤血球貧血、免疫学的欠陥、重症複合免疫不全(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、先天性代謝異常、リソソーム蓄積障害、ペルオキシソーム機能の障害、自己免疫疾患、リウマチ性疾患、及び上記のいずれかのぶり返しからなる群から選択され得る。血液悪性腫瘍は、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、前骨髄球性白血病(PML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、多発性骨髄腫(MM)、及び神経芽腫からなる群から選択され得る。造血(幹)細胞移植片のレシピエントは非血液固形腫瘍(例えば、腎細胞癌、結腸直腸癌等)を有してもよい。
【0081】
造血(幹)細胞移植片のレシピエントは、好ましくは造血(幹)細胞移植片を受ける前に、骨髄破壊的前処置レジメン、若しくは非骨髄破壊的前処置レジメン、若しくは強度減弱前処置において処置することができるか、又はいずれにおいても処置することができない。
【0082】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗CCR7抗体の使用であって、GVHDの防止又は処置が、レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受ける前、(ほぼ)同時、及び/又は後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与を含む、使用に関する。抗CCR7抗体が、レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けるのと(ほぼ)同時に投与される場合とは、好ましくは、抗CCR7抗体が互いから96、72、24、12、6、又は3時間以内に投与されることを意味する。好ましくは、GVHDの防止又は処置は、a)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受ける前の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、b)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた48、72、又は96時間後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、c)レシピエントがドナー細胞を含む移植体を受けた後、且つ好ましくはレシピエントがGVHDの症状を示した後又はGVHDがレシピエントにおいて診断された後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与、及びd)GVHDの再燃後の、レシピエントへの抗CCR7抗体の投与のうちの少なくとも1つを含む。
【0083】
レシピエントが移植体を受ける前の抗CCR7抗体の投与は、ドナー細胞を含む移植体を受けることに関してレシピエントを前処置することができ、したがって、GVHDを防止すること、又は少なくともGVHDが生じるリスクを低減することを可能にし得るという点で望ましいと考えられる。したがって、好ましくは、抗CCR7抗体は、少なくともレシピエントが移植体を受ける前、より好ましくはレシピエントが移植体を受ける少なくとも5、10、20、若しくは40分、又は1、2、4、8、12、24、若しくは48時間前に投与される。
【0084】
レシピエントが移植体を受けた後の抗CCR7抗体の投与は、レシピエント宿主に対するドナー免疫攻撃を軽減し、ドナーの移植体及び/又は細胞のレシピエントによる許容をさらに促進し得るという点で望ましいと考えられる。好ましくは、抗CCR7抗体は、レシピエントが移植体を受けた後、GVHDの発生率を減少させる及び/又はGVHDの1つ若しくは複数の症状を寛解若しくは減弱する必要がある限り、必要があるごとに投与される。投与の回数及び投与量は、抗CCR7抗体の血清半減期にも依存することがあり、それに応じて調節してもよい。本発明の好ましい実施形態では、抗CCR7抗体は、レシピエントが移植体を受ける前と受けた後の両方において投与される。
【0085】
しかしながら、本明細書の実施例が実証するように、アロ反応性応答が移植体を受けたレシピエントにおいて生じた後のレシピエントへの抗CCR7抗体の投与は、少なくとも生存率を改善するという点で、GVHDを処置することにおいて依然として効果的である。したがって、本発明の一実施形態では、抗CCR7抗体は、ドナー細胞を含む移植体を有するレシピエントに、レシピエントがGVHDの臨床所見及び/若しくは検出可能なアロ反応性応答を示した後、並びに/又は、好ましくはGVHDがレシピエントにおいて診断された後に投与される。そのような場合、レシピエントは、抗CCR7抗体を用いた事前処置も抗CCR7抗体の事前投与(複数可)も受けていなくてもよい。
【0086】
レシピエントが移植体を受けた後にレシピエントに投与される抗CCR7抗体は、i)レシピエントが移植体又は移植片を受けたこと、ii)レシピエントにおいてGVHDの症状が発生したこと、iii)レシピエントにおいてアロ反応性応答が検出されたこと、及びiv)レシピエントがGVHDと診断されたことのうちの少なくとも1つの、少なくとも1、2、3、5、7、10、14、21、又は28日後に投与することができる。
【0087】
本発明の別の実施形態では、抗CCR7抗体は、ドナー細胞を含む移植体であって、抗CCR7抗体とのex vivoでのインキュベーションによって、好ましくは以下に記載する方法に従って移植術前に調製された、移植体のレシピエントに投与される。レシピエントに投与される抗CCR7抗体は、移植体を移植術前に調製するためのex vivoでの方法において使用される抗CCR7抗体と同じとすることができるが、同じである必要はない。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、抗CCR7抗体又はその抗原結合断片は、移植体とは別に、好ましくは移植体を投与するすぐ前又はすぐ後に少なくとも1回投与される。この文脈における「すぐ」とは、24時間以内、好ましくは8時間以内、より好ましくは6時間以内、より好ましくは4時間以内、より好ましくは2時間以内、最も好ましくは1時間以内を意味する。「とは別に」とは、CCR7抗体又はその抗原結合断片の投与が移植体と別の容器、例えばシリンジに含まれることを意味する。好ましくは、CCR7抗体又はその抗原結合断片は、移植体の投与の少なくとも10秒、より好ましくは少なくとも1分前、より好ましくは少なくとも10分前、最も好ましくは少なくとも1時間前に投与される。別の好ましい実施形態では、移植体は、CCR7抗体又はその抗原結合断片の投与の少なくとも10秒、より好ましくは少なくとも1分前、より好ましくは少なくとも10分前、最も好ましくは少なくとも1時間前に投与される。
【0089】
したがって、好ましくは、処置は移植体とは別に抗CCR7抗体又はその抗原結合断片のレシピエントへの少なくとも1回の投与を含む。
【0090】
本発明のさらに別の実施形態では、抗CCR7抗体は、GVHDの再燃の後にレシピエントに投与され、レシピエントは、抗CCR7抗体を用いた事前処置も抗CCR7抗体の事前投与(複数可)も受けていなくてもよい。
【0091】
別の態様では、本発明は、本発明の使用のための、本明細書で定義される抗CCR7抗体(又はその抗原結合断片)を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は好ましくは、抗CCR7抗体又はその医薬誘導体若しくはプロドラッグを、対象への投与に関して薬学的に許容される担体、アジュバント、又はビヒクルと一緒に少なくとも含む。前記医薬組成物は、本明細書において以下に記載される、有効量の組成物のそれを必要とする対象への投与による処置の方法において使用することができる。「対象」という用語は、本明細書において「レシピエント」という用語と交換可能に使用され、本明細書で使用する場合、哺乳動物として分類される全ての動物を指し、これらに制限されないが、霊長類及びヒトを含む。対象は好ましくは、任意の年齢又は人種のヒト男性又は女性である。
【0092】
「薬学的に許容される担体」という用語には、本明細書で使用する場合、薬学的投与と適合性の、任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤等が含まれることが意図される(例えば「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、Roweら編、第7版、2012、www.pharmpress.comを参照のこと)。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は当技術分野で周知である。いかなる従来の媒体又は薬剤も活性化合物と非適合性である場合を除いて、組成物における媒体又は薬剤の使用は企図される。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投薬量及び濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、緩衝剤、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ツイーン(TWEEN)(商標)、プルロニクス(PLURONICS)(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0093】
本発明の抗体は同じ製剤に存在しても異なる製剤において投与されてもよい。投与は同時であっても逐次であってもよく、いずれの順番においても効果的であり得る。
【0094】
追加の活性化合物も本発明の医薬組成物に組み込むことができる。したがって、特定の実施形態では、本発明の医薬組成物はまた、処置される特定の適応症に必要な2種以上の活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補活性を有する2種以上の活性化合物を含有してもよい。例えば、化学療法剤、サイトカイン、鎮痛剤、又は免疫調節剤、例えば免疫抑制剤若しくは免疫賦活剤をさらに提供することが望ましいことがある。そのような他の活性剤の有効量は、とりわけ、医薬組成物に存在する本発明の抗体の量、疾患若しくは障害又は処置の種類等に依存する。
【0095】
GVHDの単剤処置又は防止における使用に加えて、本発明の抗体及び医薬組成物は、組合せ療法を提供するために他の薬物と共に使用してもよい。他の薬物は、同じ組成物の部分を形成しても、同じ時点又は異なる時点での投与のための別々の組成物として提供されてもよい。組合せ療法は患者に対する相乗的な治療効果を有し得る。特定の実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載される医学的状態の他の処置と共に組み合わせてもよい。他の治療剤としては、これらに限定されないが、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード[例えばメクロレタミン]、シクロホスファミド、メルファラン、及びクロラムブシル)、アルキルスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、及びストレプトゾシン)、トリアゼン(例えばダカルバジン)、代謝拮抗剤(例えば葉酸類似体、例えばメトトレキセート)、ピリミジン類似体(例えばフルオロウラシル及びシタラビン)、プリン類似体(例えば、フルダラビン、イダルビシン、シトシンアラビノシド、メルカプトプリン、及びチオグアニン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド及びテニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシン)、ジブロモマンニトール、デオキシスペルグアリン、ジメチルミレラン、並びにチオテパ、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)、ペントスタチン、免疫抑制薬剤、例えば、ステロイド(例えばプレドニゾン及びメチルプレドニゾロン)、カルシニューリン阻害薬(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス、又はFK506)、哺乳動物標的のラパマイシン(mTOR)阻害薬(シロリムス又はラパマイシン)、ミコフェノール酸モフェチル、サリドマイド、レナリドミド、アザチオプリン、モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ(抗インターロイキン(IL)-2)、インフリキシマブ(抗腫瘍壊死因子)、エタネルセプト、MEDI-205(抗CD2)、abx-cbl(抗CD147))、アレムツズマブ(抗CD52)、リツキシマブ(抗CD20)、並びにポリクローナル抗体(例えばATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗ヒスタミン薬、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的処置、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗ホルモン、様々な症状のための治療薬、例えば、鎮痛薬、利尿薬、抗利尿薬、抗ウイルス、抗生物質、サイトカイン、栄養補助薬、貧血治療薬、血液凝固治療薬、骨治療薬、精神及び心理治療薬等が挙げられる。加えて、本発明の抗体及び医薬組成物は、GVHDの開始を防止するために、免疫抑制薬剤、例えば、カルシニューリン阻害薬(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス、若しくはFK506)、哺乳動物標的のラパマイシン(mTOR)阻害薬(シロリムス若しくはラパマイシン)、又は抗増殖剤(例えば、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキセート)、胸腺照射、光線療法、メルファラン、シクロホスファミド又はATGを用いたT細胞のin vivoでの除去、或いは抗体(例えば抗CD3)を用いたT細胞のex vivoでの除去を含むがこれらに限定されないGVHDに対する予防としての他の種類の療法と併用して、移植術の前又はほぼ同時に使用してもよい。加えて、本発明の抗体及び医薬組成物は、ステロイド(例えばプレドニゾン及びメチルプレドニゾロン)、体外循環式光化学療法、ペントスタチン、キナーゼ阻害薬(例えばルキソリチニブ、イブルチニブ)、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)、NK細胞又は制御性T細胞又は間葉系幹細胞を用いる細胞療法、モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、トシリズマブ等)又は融合タンパク質(例えば、アバタセプト、アレファセプト)を用いる免疫療法、T細胞遊走の阻害薬(例えばマラビロク)等を含むがこれらに限定されないGVHDに対する処置としての他の種類の療法と併用して使用してもよい。
【0096】
本発明の抗体の投与前に標的細胞の表面のCCR7又は他の標的タンパク質の発現を上方制御するためにサイトカインを用いて患者を処置することもまた有用であり得る。サイトカインはまた、免疫エフェクター機能を刺激するために、除去抗体又は放射性標識抗体の投与と同時、又は前、又は後に投与され得る。
【0097】
加えて、本発明のGVHDの処置又は防止のための抗CCR7抗体の使用は、移植前の骨髄破壊的、非骨髄破壊的、又は強度減弱前処置による処置を含む、移植体のレシピエントへの前処置レジメンの投与をさらに含んでもよい。これらの処置は、基礎疾患を根絶し、宿主免疫系を抑制及び根絶して、ドナー幹細胞が移植片拒絶のリスクを伴わずに骨髄に定着することを可能にする。骨髄破壊的又は強度減弱又は非骨髄破壊的処置の投与は、混合造血キメリズム又は完全造血キメリズムを誘導するために使用してもよい。全身照射(TBI)レジメン並びに/又はブスルファン及び/若しくはシクロホスファミドを用いる化学療法レジメンは骨髄破壊的レジメンの例である。本明細書で使用する場合、「非骨髄破壊的」とは、骨髄細胞を死滅させるが、有意な数のレシピエントにおいて骨髄不全に由来する死を引き起こさない処置を指す。これは、混合ドナー/レシピエントキメリズムを少なくとも伴うドナー幹細胞生着を可能にする。宿主造血発生の最終的な消失は、免疫ドナー細胞の移植片対宿主効果によって達成され、最終的には完全ドナーキメリズムをもたらす。低線量TBI、フルダラビン、ATG、減少用量のブスルファン、又はそれらの組合せは非骨髄破壊的レジメンとして使用される。RICレジメンは、骨髄破壊的レジメンの高い毒性を防止するが、移植片拒絶を防止するのに十分な基礎疾患の制御及び免疫抑制を実現する中間の手法である。一般的なRICレジメンにはフルダラビン及びメルファランが含まれるが、多くの他の薬剤がRIC処置のために導入されている。
【0098】
ある実施形態では、本発明の抗体は、前記化合物を身体からの急速な消失から保護することができる担体、例えば埋込剤及びマイクロカプセル化送達系、例えばリポソームを含む放出制御型製剤と共に調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。そのような製剤の調製のための方法は、当業者には明らかだろう。標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液もまた薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号、国際公開第2010/095940号に記載されている当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0099】
本発明の抗体(又はその断片)の投与経路は、経口、非経口、吸入、又は局所であり得る。「非経口」という用語には、本明細書で使用する場合、静脈内、動脈内、リンパ内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、又は経膣投与が含まれる。非経口投与の静脈内形態が好ましい。「全身投与」とは、経口、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与を意味する。当然、治療又は予防効果のために必要とされる抗体の量は、選択される抗体、処置される状態の性質及び重症度、並びに患者により変動し得る。加えて、抗体は、例えば漸減用量の抗体を用いるパルス注入によって好適に投与され得る。好ましくは、投薬は注射、最も好ましくは、部分的には投与が短期であるか慢性であるかに応じて静脈内又は皮下注射によって与えられる。
【0100】
したがって、特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は非経口投与に好適な形態、例えば、滅菌液剤、懸濁剤、又は適切な単位剤形の凍結乾燥製剤であり得る。注射使用に好適な医薬組成物には、滅菌注射液剤又は分散体の即時調製のための滅菌水溶液(ここでは水溶性)又は分散体、及び滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモホールEM(BASF、Parsippany、N.J.)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌状態でなければならず、容易な通針性が存在する程度まで流動性であるべきである。組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用から守られなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、薬学的に許容されるポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適した流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、分散体の場合に必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。
【0101】
注射組成物の長期にわたる吸収は、組成物に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0102】
滅菌注射液剤は、必要とされる量の活性化合物(例えばポリペプチド又は抗体)を、必要に応じて上に列挙した成分のうちの1つ又はそれらの組合せと共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散体は活性化合物を、基本的な分散媒と上に列挙した成分からの必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液剤の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、有効成分と、以前に滅菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分との粉末を得る真空乾燥及びフリーズドライである。
【0103】
特定の実施形態では、前記医薬組成物は静脈内(IV)又は皮下(SC)を介して投与される。適当な賦形剤、例えば充填剤、緩衝剤、又は界面活性剤が使用され得る。言及した製剤は、当技術分野で周知であり、例えば「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(Allen,L.V.編、第22版、2012、www.pharmpress.com)を含む様々な情報源により詳細に記載されている、非経口投与組成物を調製するための標準的な方法を使用して調製することができる。
【0104】
医薬組成物、すなわち非経口組成物を容易な投与及び投薬量の均一性のために投薬単位形態に製剤化することはとりわけ好都合である。投薬単位形態とは、本明細書で使用する場合、処置される対象のための単位投薬量として適している物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体との関連において所望の治療効果を生み出すように算出された所定の分量の活性化合物(本発明の抗体)を含有する。本発明の投薬単位形態に関する仕様は、活性化合物の特有の特徴及び達成される特定の治療効果、並びに個体の処置のためのそのような活性化合物を配合する技術分野に内在する限定に左右され、且つそれらに直接依存する。
【0105】
一般に、本発明の抗体の有効投与量は、選択される化合物の相対的な有効性、処置される障害の重症度、及び罹患している個体の体重に依存し得る。しかしながら、活性化合物は、0.001~1,000mg/kg体重/日、好ましくは約0.01~約100mg/kg体重/日、最も好ましくは約0.05~10mg/kg体重/日の範囲の典型的な1日総用量において、典型的には1日に1回又は2回以上、例えば1日1、2、3、又は4回投与することができる。より詳細には、本発明の使用に関して、抗CCR7抗体は、好ましくは1~1000、2~500、5~200、10~100、20~50、又は25~35mg/kg体重/日の投薬量で投与され、好ましくは1、2、4、7、14、又は28日ごとに複数の用量で投与される。
【0106】
患者への抗体の投与に加えて、本出願は、遺伝子療法による抗体の投与を企図する。国際公開第96/07321号は、細胞内抗体を生成するための遺伝子療法の使用に関する。
【0107】
医薬組成物は、容器、包装容器、又は分注装置に投与の説明書と一緒に含まれ得る。
【0108】
本発明の抗体及び医薬組成物は、組合せ療法を提供するために他の薬物と共に使用してもよい。他の薬物は、同じ組成物の部分を形成しても、同じ時点又は異なる時点での投与のための別々の組成物として提供されてもよい。
【0109】
さらなる態様では、本発明は、レシピエントへの移植術のためのドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を調製するためのex vivo又はin vitroでの方法に関する。方法は好ましくは、a)ドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を本明細書で定義される抗CCR7抗体又はその抗原結合断片とインキュベートするステップであり、それによって好ましくは抗CCR7抗体が、臓器、組織、又は細胞調製物におけるCCR7発現ドナー細胞の、i)数を減少させること及びii)活性を阻害することのうちの少なくとも1つを実現する、ステップ、並びにb)任意選択で、抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞のうちの少なくとも一方を臓器、組織、又は細胞調製物から取り除くステップを含む。好ましくは、抗CCR7抗体は、ドナー臓器、組織、又は細胞調製物のレシピエントにおけるGVHDの発生のリスクを低減する、及び/又はGVHDの重症度を軽減するのに十分な程度まで臓器、組織、又は細胞調製物におけるCCR7発現ドナー細胞の、数を減少させる及び/又は活性を阻害するのに十分/効果的な量及び時間で、臓器、組織、又は細胞調製物とインキュベートされる。例えば、抗CCR7抗体は、移植体におけるCCR7発現ドナー細胞の活性を実質的に阻害する、好ましくは活性を少なくとも40%低下させる、より好ましくは活性を少なくとも80%低下させる、最も好ましくは活性を少なくとも90%低下させるのに十分/効果的な量及び時間で、ドナー臓器、組織、又は細胞調製物とインキュベートされる。又は例えば、抗CCR7抗体は、移植体におけるCCR7発現ドナー細胞の数を実質的に低減させる、好ましくは数を少なくとも40%減少させる、より好ましくは数を少なくとも80%減少させる、最も好ましくは数を少なくとも90%減少させるのに十分/効果的な量及び時間で、ドナー臓器、組織、又は細胞調製物とインキュベートされる。ドナー臓器、組織、又は細胞調製物におけるCCR7発現ドナー細胞が好ましくはCCR7発現免疫細胞、より好ましくは、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、又はAPCのうちの少なくとも1つ又は複数を含むCCR7発現免疫細胞であることは本明細書によって理解される。
【0110】
レシピエントへの移植術のためのドナー由来の臓器、組織、又は細胞調製物を調製するための本発明の方法は好ましくは、in vitro又はex vivo環境において実践される方法であり、ex vivoは、ドナー臓器、組織、又は細胞調製物が、脳死ドナー、又は循環死(circulatory death)により死亡しているドナーの身体に依然として存在している間に抗CCR7抗体を用いて、ドナーの身体への抗CCR7抗体の投与によって処理されることを排除しない。
【0111】
in vitro又はex vivo環境に関連するGVHDの臨床的処置又は防止に関する上記の開示の全てはこの実践に適用される。したがって、抗CCR7抗体は、臓器、組織、又は細胞調製物を移植術前に保存するために使用される保存溶液に含まれ得る。例えば、抗CCR7抗体は、臓器移植体のための保存溶液に、臓器の免疫細胞と結合してその活性を阻害するのに十分な量添加されてもよい。加えて、抗CCR7抗体は、臓器移植体のための保存溶液に、臓器の免疫細胞と結合してその数を低減させるのに十分な量添加されてもよい。そのような保存溶液は、異なる種類の臓器、例えば、心臓、腎臓、及び肝臓、並びにそれら由来の組織の保存に好適であり得る。市販の保存溶液の一例はPlegisol(Abbott)であり、起源と関係して命名されている他の保存溶液としては、UW液(University of Wisconsin)、Stanford液、及び改良Collins液が挙げられる(J.Heart Transplant(1988)第7巻(6):456 4467)。保存溶液はまた、従来の共溶媒、賦形剤、安定化剤、及び/又は緩衝剤を含有してもよい。抗CCR7抗体を含有する保存溶液又は緩衝液はまた、臓器移植体を移植術又は保管前に洗浄するか又は濯ぐために使用してもよい。したがって、移植される臓器又は組織は、好ましくは移植術前に抗CCR7抗体を含む保存溶液を用いて灌流することができる。例えば、抗CCR7抗体を含有する保存溶液は単離した心臓をフラッシュ灌流するために使用してもよく、単離した心臓は次いで保存溶液に4℃で保管される。
【0112】
別の実施形態では、本発明の実践は、臓器又は組織移植体を移植術前に前処理するために使用され得る。移植術前に、抗CCR7抗体又は断片は、移植体から活性Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、又はAPCを除くために洗浄用緩衝液に添加され得る。
【0113】
保存溶液又は洗浄緩衝液における抗CCR7抗体又は断片の濃度は、移植体の種類に応じて変動し得る。本発明においては、前記インキュベートするステップは例えば1分~7日間実行され得る。本発明の方法及び使用における、抗CCR7抗体(例えば未結合抗CCR7抗体)及びCCR7発現ドナー細胞のうちの少なくとも一方を臓器、組織、又は細胞調製物から取り除くことに関しては、前記ステップを実施する様々な手段が当業者に公知である。抗体を移植片から取り除く1つの例示的な手段は移植片を洗浄することである。洗浄することは、移植片が細胞懸濁液を構成するか又は細胞懸濁液である場合は、例えば遠心分離を用いることによって行われ得る。或いは、抗CCR7抗体及びCCR7発現ドナー細胞は、抗CCR7抗体及び好ましくはそれと結合したCCR7発現ドナー細胞の親和性精製によって、移植される細胞調製物(例えば、骨髄細胞、末梢血細胞、又は臍帯血細胞)から取り除くことができる。したがって、好ましくは、精製に使用される親和性リガンドは抗CCR7抗体の抗原結合能に影響を及ぼさず、抗CCR7抗体へ結合したCCR7発現ドナー細胞は細胞調製物から同時精製することができる。親和性精製のための方法は、当技術分野で周知であり、例えば親和性リガンドが固相担体材料、例えば磁気ビーズ、又は親和性(カラム)クロマトグラフィーにおいて使用される固相担体材料に固定化される方法が挙げられる。
【0114】
インキュベートする上記ステップにおいて用いられる抗体の量は特に限定されない。適切な量は、当業者であれば容易に決定することができ、例えば使用される移植片の種類に依存し得る。好ましくは、本発明においては、前記インキュベートするステップは、0.1μg~100mgの抗体量を用いて実行される。抗体の好適な量の選択は十分に当業者の専門的知識の範囲内である。一般に、抗体のより高い量又は濃度はそれぞれ、移植片が組織を含むか若しくは組織である場合、又は臓器を含むか若しくは臓器である場合に好ましい。さらに、使用される抗体の正確な量又は濃度の選択はそれぞれ、そのような組織又は臓器のサイズにも依存し得る。
【0115】
本文書及びその特許請求の範囲において、「含む(comprise)」という動詞及びその活用形は、非限定的な意味において使用され、その語に続く項目が含まれるが具体的に言及されていない項目が排除されるものではないことを意味する。加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、ただ1つの要素のみが存在するということを文脈が明確に要求していない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は通例「少なくとも1つ」を意味する。
【0116】
「約」又は「およそ」という語は、数値との関連において使用される場合(例えば、約10)、好ましくはその値が示された値(10)の0.1%多いか又は少ない値であってもよいことを意味する。
【0117】
本明細書に引用される全ての特許及び参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0118】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1A】抗CCR7抗体がGVHD発症を防止することにおいて効果的であることを示すグラフである。A)3つの実験群における相対的な体重減少。PBSを用いてマウスを処置した対照群(n=4)、非関連抗体を用いてマウスを処置したアイソタイプ対照(IC)群(n=5)、及びCCR7を標的とする抗体を用いてマウスを処置した抗CCR7群(n=5)。0日目の体重を100%とした。P値は抗CCR7群と他の群との比較解析結果を指す。
図1B】B)全ての実験群のカプラン・マイヤー生存曲線。
図1C】C)各実験群から取得した末梢血(PB)の連続試料に見出されたヒトCD45+細胞の百分率。
図1D】D)動物を安楽死させた際に採取したリンパ組織(骨髄及び脾臓)に見出されたヒトCD45+細胞の百分率。
図2A】抗CCR7抗体が早期段階のGVHDを処置することにおいて効果的であることを示すグラフである。A)実験群における相対的な体重減少。非関連抗体を用いてマウスを処置したアイソタイプ対照(IC)群(n=5)、及びCCR7を標的とする抗体を用いてマウスを処置した抗CCR7群(n=5)。0日目の体重を100%とした。P値は抗CCR7群と他の群との比較解析結果を指す。
図2B】B)各実験群のカプラン・マイヤー生存曲線。
図2C】C)各実験群から取得した末梢血(PB)の連続試料に見出されたヒトCD45+細胞の百分率。
図2D】D)動物を安楽死させた際に採取したリンパ組織(骨髄及び脾臓)に見出されたヒトCD45+細胞の百分率。
図3A】抗CCR7抗体が早期及び後期段階のGVHDを処置することにおいて効果的であることを示すグラフである。A)実験群における相対的な体重減少。非関連抗体を用いてマウスを+3日目(n=2)、+7日目(n=2)、又は+10日目(n=1)に初めて処置したアイソタイプ対照(IC)群。CCR7を標的とする抗体を用いてマウスを+3日目(n=5)、+7日目(n=5)、又は+10日目(n=5)に初めて処置した抗CCR7群。0日目の体重を100%とした。P値は抗CCR7群と他の群との比較解析結果を指す。
図3B】B)各実験群のカプラン・マイヤー生存曲線。各IC群からの全ての動物を1つの単一の群に群分けした。
図4】抗CCR7 mAbの選択を示すグラフである。CCR7を標的とするいくつかの商業的な抗体クローンを、CCL19及びCCL21へ向かうCCR7媒介性遊走を阻止する能力(A)、並びに補体によって媒介される標的細胞死滅(CDC)を誘導する効力(B)に基づいて特徴付けた。遊走(投入の%、基底、CK、150503、及び2H4ではn=2;6B3、3D12、H60ではn=1)とCDC(特異的溶解%、n=2)の両方を、CCR7発現慢性リンパ性白血病細胞に対して、材料及び方法の節に記載されている手順に従って試験した。棒は平均±SDを表す。これらの結果に基づいて、クローン150503を選択して、GVHDにおけるin vitro及びin vivoでの概念実証を実施した。
図5A】中和抗CCR7抗体の作用機序を示すグラフである。A)CCR7を遮断することはアフェレーシス由来のT及びTCM細胞の標的媒介性細胞遊走を中和する。遊走する投入細胞の%の減少として表されるCCR7リガンド相互作用に対する特異的拮抗作用をCD4及びCD8T細胞サブセットに関して示す。両方の場合において、アフェレーシスから単離した血清飢餓PBMC(n=3)を、10μg/mlの抗CCR7又はそれぞれのアイソタイプ対照(IC)と30分間プレインキュベートした。次いで、1μg/mlのCCL19又はCCL21によって誘導された走化性をヌードトランスウェルチャンバにおいてアッセイした(4時間)。基底遊走は、走化性刺激がない場合の自然遊走を表す。下部チャンバに遊走した細胞を染色し、フローサイトメトリーによって計数した。遊走した細胞の百分率(投入%)を、材料及び方法に述べるように算出した。
図5B】B)抗CCR7 mAbはT及びTCMを特異的に除去する。補体活性化によって媒介される特異的溶解(CDC)の%として表されるCCR7陽性細胞に対する特異的除去をCD4及びCD8T細胞サブセットに関して示す。両方の場合において、アフェレーシス由来の標的細胞(n=3)を、10μg/mlの抗CCR7又はそれぞれのアイソタイプ対照(IC)と30分間インキュベートし、次いでウサギ補体に1.5時間曝露した。細胞溶解を、フローサイトメトリーによる各サブセットにおける7-AAD取込みの定量によって決定した。特異的溶解の百分率を、材料及び方法に示す式に従って算出した。棒は平均±SDを表す。ns、有意ではない;、p<0.05;**、p<0.01;***p<0.001。
図6】アフェレーシスにおける注入したCCR7+T細胞亜集団の割合がCMVとも再発率とも相関しないことを示すグラフである。 A~B)移植術後の最初の6か月以内のレシピエントのCMV感染状況を比較する、アフェレーシスにおける注入したCCR7T細胞亜集団の割合。アフェレーシス試料をフローサイトメトリーによって解析し、移植後にCMV DNAを示す患者に注入した試料(n=60)と示さない患者に注入した試料(n=43)とに分けた。CMVを有する又は有しない患者に注入したCD4CCR7(A)及びCD8CCR7(B)亜集団の百分率を示す。CMV再活性化を決定するために、57コピー/ml超のウイルス負荷のカットオフ値を使用した。
【0120】
C~D)再発した疾患を有する又は有しない患者を比較する、アフェレーシスにおける注入したCCR7T細胞亜集団の割合。アフェレーシス試料をフローサイトメトリーによって解析し、移植後に再発した患者に注入した試料(n=25)と再発しなかった患者に注入した試料(n=78)とに分けた。再発した疾患を有する又は有しない患者に注入したCD4CCR7(C)及びCD8CCR7(D)亜集団の百分率を示す。
図7】アフェレーシスにおける注入したCCR7+T細胞亜集団の割合が再発性疾患と相関しないことを示すグラフである。アフェレーシス試料をフローサイトメトリーによって解析し、移植後に再発した患者に注入した試料(あり)と再発しなかった患者に注入した試料(なし)とに分けた。再発した疾患を有する又は有しない患者を比較する、アフェレーシスにおけるCCR7T細胞(CD4又はCD8)亜集団の割合を、A)骨髄異形成症候群(MDS);「あり」ns CD4 p=0.4199;CD8 p=0.2117、B)急性リンパ芽球性白血病(ALL);「あり」ns CD4 p=0.5758;CD8 p=0.1908、C)急性骨髄性白血病(AML);「あり」ns CD4 p=0.1638;CD8 p=0.4126、D)ホジキンリンパ腫(HD);「あり」ns CD4 p=0.5106;CD8 p=0.8873、E)非ホジキンリンパ腫(NHL);「あり」ns CD4 p=0.9926;CD8 p=0.7369、F)多発性骨髄腫(MM)を含む異なる血液障害に関して示す。
【実施例
【0121】
実施例1:GVHDを処置するための手段としてのCCR7に対する抗体
材料及び方法
試料、試薬、及びフローサイトメトリー(FCM)
健康なボランティア由来の末梢血試料をインフォームドコンセント後に取得した。その後、CCR7発現の解析を正常T及びBリンパ球に対して実施した。フィコエリスリン(PE)コンジュゲートマウス抗ヒトCCR7をR&D Systems(McKinley Place、MN)から購入した。全ての場合において、適切なアイソタイプ対照(IC)を含めた。免疫蛍光染色をFACS CANTO IIフローサイトメーターにおいてDIVAソフトウェア(BD Biosciences)を使用して解析した。末梢血単核細胞(PBMC)をフィコール勾配遠心分離(Histopaque-1077、Sigma-Aldrich、Madrid、Spain)によって単離した。
【0122】
GVHDの異種マウスモデル
GVHD in vivoモデルをNOD/SCID-IL2Rγnullマウスにおいて開発した。この目的のために、全てのモデルにおいて動物に2Gyを亜致死的に照射し、4時間後、健康なボランティア由来の8×10個のヒト末梢血単核細胞(PBMC)(200μlのPBS中)を各照射マウスに静脈内接種した。6~10週齢の雄マウスと雌マウスの両方をin vivoでの概念実証に使用した。実験をCentro de Biologia Molecular Severo Ochoa(CBMSO)の動物施設において、スペイン法及びCBMSO倫理委員会ガイドラインに従って実行した。
【0123】
マウスにおいて評価した臨床パラメータには、体重減少、背弯姿勢(脊柱後弯)、皮膚変化、後肢麻痺(又は運動性の低下)、及び頻呼吸が含まれた。末梢血(PB)への浸潤を研究するために、血液試料を実験中の異なる時点において採取した。異なる組織への浸潤を解析するために、マウスを安楽死させ、脾臓及び骨髄(BM)を含む臓器/組織を採取し、構成要素に分けた。両方の場合において、細胞を、ヒト特異的抗CD45 FITC-mAb(クローンHI30、BD Biosciences、www.bdbiosciences.com)を用いて標識し、次いでフローサイトメトリーによって解析した。
【0124】
マウスにおける抗CCR7抗体の防止的使用
ドナー細胞におけるCCR7を遮断することの有効性を評価するために、マウスを防止的設定において使用した。この目的のために、マウスを、精製マウス抗ヒトCCR7 mAb(n=5匹;クローン150503、アイソタイプIgG2a、R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)、又は非関連アイソタイプ対照(IC)抗体(n=5匹;IgG2a、Biolegend、San Diego、CA、USA)、又はPBS(n=4匹)のいずれかを用いて最初に処置した。抗CCR7 mAbとICの両方を約10mg/kg(約200μg/匹)腹腔内注射した。2時間後、各動物に単一の健康なドナー由来のPBMCを接種した。動物は4用量以上の抗CCR7、IC、又はPBSを4日ごとに受けた。PB試料を移植後+10、+13、+18、+21日目に解析した。BM及び脾臓は、動物を安楽死させた後に解析した。
【0125】
GVHDピークの間の抗CCR7抗体の治療的使用
抗CCR7 mAbの治療有効性を研究するために、モデルを開発して、抗CCR7 mAbがPBにおいて見出されたアロ反応性集団に対して影響を与えたか否か、及びこの手法がGVHD症状を減弱したか否かを評価した。このモデルにおいて、PBMC保有マウスを、約10mg/kg(約200μg/匹)の抗CCR7(n=5)又はその対応するIC(n=5)を用いて生着後+5日目に初めて処置した。処置を3日ごとに繰り返した。PB試料採取を移植術後+10、+13、+18、+25日目に実行した。脾臓及びBM試料採取は、動物を安楽死させた際に実行した。実験をPBMC生着の33日後に終了した。
【0126】
別のモデルによって、アロ反応性ピークの間又は後の異なる時間点において抗CCR7を使用することの有効性を評価した。この目的のために、20匹のヒトPBMC保有マウスを、抗CCR7(n=15)又はIC(n=5)を用いて処置した。抗CCR7処置群において、5匹は+3日目に初回用量を受け、5匹は+7日目に初回用量を受け、5匹は+10日目に初回用量を受けた。IC処置群において、2匹は生着後+3日目、2匹は+7日目、1匹は+10日目に初めて処置した。実験を+26日目に終了した。
【0127】
CCR7依存性細胞内シグナル伝達の阻害を決定するためのアッセイ
ヒトCCR7過剰発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるCCL19及び/又はCCL21媒介性細胞内シグナル伝達を阻害する抗CCR7抗体の能力を、確立した標準的なβ-アレスチン動員アッセイ(パスハンター(PathHunter)(商標)、DiscoverX、Fremont、CA、USA;Southernら、2013、J Biomol Screen.18(5):599~609)によって決定した。
【0128】
細胞遊走の阻害を決定するためのアッセイ
リガンドCCL19及びCCL21によって誘導される、ヒトCCR7受容体を内因性に発現するヒトT細胞リンパ腫細胞の遊走(走化性)を阻害する抗CCR7抗体の能力を、細胞遊走アッセイにおいて決定した。
【0129】
細胞遊走アッセイを、8μmの孔径の挿入部材を備えるトランスウェル二重チャンバ(Costar、Cambridge、MA、USA)を使用して実施した。下部チャンバは、0.5%BSAを補充したHamF12培地に希釈したリガンド(CCL19又はCCL21)を含有した。CCR7モノクローナル抗体とプレインキュベートしたCCR7内因性発現細胞(T細胞リンパ腫(HuT-78))を挿入部材に入れ、チャンバ組立体を37℃でインキュベートした。下部チャンバにおける膜貫通遊走細胞の量を、細胞溶解の後にDNA染色(CyQuant GR色素溶液、Life Technologies Ltd、UK)によって決定した。
【0130】
補体依存性細胞傷害(CDC)のためのアッセイ
CDCアッセイをCuesta-Mateosら(Cancer Immunol Immunother.2015、64:665~76)に記載されているように実施した。簡潔に述べると、2×10個のPBMC標的細胞を96ウェル丸底プレートに、示された濃度の精製抗CCR7、アレムツズマブ(抗CD52)、又はIC抗体と一緒にプレーティングした。37℃で30分後、細胞を洗浄し、事前熱不活性化(56℃、30分)を行ったか又は行っていない25%ウサギ補体(Serotec、Oxford、UK)を含有する完全RPMI1640培地を添加した。1.5時間後、細胞を、抗CD19-FITC、抗CD3-PE、及び抗CD5-APC mAbを用いて染色して、CLL細胞集団とT細胞集団とを識別した。7-AADを生存排除色素(viability exclusion dye)として使用した。特異的溶解(SL%)の百分率を、式:100×(活性化補体を有する死細胞%-不活性化補体を有する死細胞%)/(100-不活性化補体を有する死細胞%)を用いて算出した。
【0131】
アゴニスト効果の非存在を決定するためのアッセイ
高濃度(267nM)で試験した、モノクローナル抗体と結合する抗ヒトCCR7を、ヒトCCR7過剰発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における誘導された検出可能な細胞内アゴニスト効果(の非存在)に関して、確立した標準的なβ-アレスチン動員アッセイ(パスハンター(商標)、DiscoverX、Fremont、CA、USA;Southernら、2013、J Biomol Screen.18(5):599~609)を使用して試験した(データは示していない)。関連のないIgG2aを陰性対照として使用し、CCR7の天然リガンドであるCCL21を陽性対照として使用した。抗ヒトCCR7結合抗体は、陰性対照と同様に細胞内アゴニスト効果を誘導しない場合、検出可能な細胞内アゴニスト効果を欠くことが見出される。
【0132】
ビアコア親和性測定
モノクローナル抗体の親和性を標準状態下においてビアコア測定によって決定した。モノクローナル抗体を適切なセンサー表面に固定化し、ヒトCCR7のN末端に由来する残基19~49を含む硫酸化抗原SYM1899((pyroGlu)DEVTDDZIGDNTTVDZTLFESLCSKKDVRNK、配列番号3)、ここでZは硫酸化チロシンを表す)の溶液をセンサー表面に流した。
【0133】
結果
抗CCR7の防止的投与はGVHD発症を阻止する
hPBMCの生着前の初回防止用量の抗CCR7、及び生着後の連続する4用量を受けたマウスはいかなるGVHD臨床徴候も発症しなかった。対照的に、IC又はPBSを受けたマウスは体重減少を含む臨床徴候を示した(図1A)。体重差は移植術後+9~+12日目の間に観察された(IC対抗CCR7、p=0.045;及びPBS対抗CCR7、p=0.0134)。注目すべきことに、抗CCR7を受けた動物は実験を通して体重をむしろ増加させた。したがって、抗CCR7抗体は全生存期間を延長した(図1B)。抗CCR7 mAbを用いて処置した動物はいかなる臨床徴候も発症せず、最大で、動物を屠殺した時間点である32日まで生存し、この期間を正真正銘の無病期間とした。対照的に、重度の臨床徴候を呈する対照マウスは、+11、+13、+14、及び+18日目に安楽死させた。+13、+14、及び+18日目に、抗CCR7処置群からの1匹の動物を屠殺して、臓器浸潤に関する比較解析を準備した。抗CCR7抗体を受けたいずれの動物も臨床徴候を示さず、純粋に実験的な目的のための屠殺であった。したがって、これらの日数の間、抗CCR7処置マウスはいかなる臨床徴候も発症せず、体重を増加させ、したがって、反応性ドナー細胞の存在は抗CCR7処置マウス由来のPBにおいて検出されなかった(図1C)。対照的に、対照のPBにおけるGVHD誘発性細胞の存在は経時的に増加した。屠殺の時点で、浸潤をBM及び脾臓において解析した(図1D)。PBにおける所見と一致して、GVHD誘発性細胞は抗CCR7 mAbを用いて処置した動物由来のリンパ組織において見られなかった。反対に、対照群ではこれらの組織の一定の浸潤が存在した(BM対照対BM抗CCR7:34.6%対0.57%、p=0.002;BM IC対BM抗CCR7:41.7%対0.57%、p=0.003/脾臓対照対脾臓抗CCR7:70.1%対0.17%、p≦0.001;脾臓IC対脾臓抗CCR7 71.3%対0.17%、p≦0.001)。対照群間では、差は観察されなかった(PBS対IC:BM、p=0.57/脾臓、p=0.86)。
【0134】
抗CCR7の治療投与はGVHDを寛解する
抗CCR7抗体の治療有効性をin vivoにおいて実証するために、アロ反応性応答が生じた場合に動物を処置するモデルを使用した。+3~+5日目に起こっていたこれらの応答は、GVHD病原性における主要な原因である。したがって、1つのモデルにおいて、ヒトPBMCを免疫不全マウスに生着させた。動物を、IC(n=5)又は抗CCR7抗体(n=5)のいずれかを用いて処置した。初回用量の抗体を+5日目に投与し、連続投薬を2日ごとに行った。このモデルにおいて、抗CCR7抗体は動物の体重に正に影響を与えた(図2A)。対照的に、対照動物は体重を減少させた。差は+12日目に初めて観察された。加えて、抗CCR7療法は全生存期間を延長した(図2B)。
【0135】
抗CCR7 mAbを用いて処置した動物はいかなる臨床徴候も発症せず、最大で、動物を屠殺した時間点である33日まで生存し、この期間を正真正銘の無病期間とした。対照的に、重度の臨床徴候を呈する対照マウスは、+12、+20、及び+28日目に安楽死させた。+12及び+28日目に、抗CCR7処置群からの1匹の動物を屠殺して、臓器浸潤に関する比較解析を準備した。抗CCR7抗体を受けたこれらの動物のいずれも臨床徴候を示さず、屠殺は実験的な目的を有した。したがって、これらの日数の間、抗CCR7処置マウスはいかなる臨床徴候も発症せず、体重を増加させ、したがって、反応性ドナー細胞の存在は抗CCR7処置マウス由来のPBにおいて検出されなかった(図2C)。対照的に、対照のPBにおけるGVHD誘発性細胞の存在は経時的に増加した。注目すべきことに、PB浸潤における有意差は+10日目から観察された(対照群対抗CCR7群:12.6%対2.6%;p=0.02)。これらの差は+12日目に拡大し、実験の終了まで異なったままである(47.3%対6.5%;p<0.001)(図2C)。屠殺の時点で、浸潤をBM及び脾臓において分析した(図2D)。PBにおける所見と一致して、わずかな割合のGVHD誘発性細胞が抗CCR7 mAbを用いて処置した動物由来のリンパ組織(BM及び脾臓)において見られた。反対に、対照群ではこれらの組織の一定の浸潤が存在した(BM対照対BM抗CCR7:27.3%対3.5%;p=0.005/脾臓対照対脾臓抗CCR7:59.2%対8.4%;p=0.006)。
【0136】
別のモデルにおいて、本発明者らは、疾患の開始後の異なる時点でGVHDを処置することにおける抗CCR7抗体の有効性を評価することを目的とした。この目的のために、抗CCR7抗体を生着後の異なる時間点で投与した。動物を、ドナーPBMCの生着の+3、+7、及び+10日目に処置した。15匹のマウスを、抗CCR7抗体を用いて処置し(5匹を+3日目、5匹を+7日目、5匹を+10日目)、5匹のマウスを、ICを用いて処置した(2匹を+3日目、2匹を+7日目、1匹を+10日目)。全てのマウスは連続用量を2日ごとに実験の終了まで受けた。初回用量の抗CCR7抗体を+3日目に受けたマウスは、体重の増加を示し、全生存期間を延長した(図3A及び3B)。抗CCR7 mAbを用いて処置した動物はいかなる臨床徴候も発症せず、最大で、屠殺した時点である26日まで生存し、この期間を正真正銘の無病期間とした。対照的に、対照マウスは14日の全生存期間中央値を示した。注目すべきことに、+7又は+10日目から抗CCR7抗体を用いて処置した動物は、処置が+3日目に開始されたマウスよりも最も悪い転帰を示した。しかしながら、処置が+7又は+10日目にようやく開始された動物は、それぞれの対照よりも良好な転帰を依然として示した。初回用量を+7又は+10日目に受けた一部の動物は+19日目まで生きたが、それぞれの対照群における動物は+12日目よりも長く生存しなかった。
【0137】
抗CCR7抗体はヒトT及びTCM細胞のCCL19及びCCL21へ向かうin vitroでの走化性を障害する
これらの結果は、本発明者らが、適した移植片を選択するためのバイオマーカーとしてではなく、抗体に基づく療法のための標的化可能な受容体としてのCCR7の有用性を評価することを促した。標的化可能な受容体としてのCCR7の有用性を評価するために、CCR7-リガンド相互作用を遮断できること、及びCDC又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を介して標的細胞を死滅させることを特色とする抗体を選択し、使用した(図4)。
【0138】
次いで、アフェレーシス由来のhPBMCのリガンド駆動走化性を阻害する選択したmAbの能力を最初に評価した。予期されたように、PBMCをICとプレインキュベートした場合、CCL19又はCCL21の培地への添加は、CCR7及びTCMサブセットの遊走を惹起し(図5A)、Tコンパートメントにおいてより顕著な効果を有した。しかしながら、10μg/mlの抗CCR7 mAbの結合は、これらの細胞において遊走を基底レベルまで低下させた。反対に、TEM及びTEMRAはCCR7リガンドに応答した遊走をせず、したがって、抗CCR7はTEM及びTEMRAの行動に影響を与えなかった。
【0139】
抗CCR7抗体はCDCを介してCCR7ヒトT及びTCM細胞を特異的に除去する
以前に述べられたように(Cuesta-Mateos C.Targeting CCR7 in T-cell Prolymphocytic Leukemia.CONTROL-T:International Conference April 2016 Mature T-cell lymphomas - molecular pathology, modeling of cellular dynamics, and therapeutic approaches.2016)、選択した抗体はCDCを介して腫瘍T細胞を死滅させるのに十分強力であったが、その抗体の健康なCCR7T細胞サブセットに対する効果はこれまで取り上げられてこなかった。したがって、in vitro CDCアッセイを、アフェレーシス由来の新鮮hPBMCを用いて実施した。CD4又はTCM細胞に結合すると、10μg/mlの抗CCR7は強力なCDC活性を媒介した(図5B)。類似した結果がCD8細胞において観察された。反対に、抗CCR7 mAbはCCR7陰性TEM及びTEMRAを残存させ、このことは、抗CCR7療法がエフェクター細胞、したがって、病原体からの保護及びGVL効果を維持し得ることを示した。この見解をさらに探究するために、移植片におけるCCR7細胞の数が移植術後の最初の6か月以内のCMV再活性化と相関するか否かを研究したが、CD4CCR7又はCD8CCR7細胞の割合(図6A及び6B)においても絶対数(データは示していない)においても、明確な差はCMV再活性化を有する患者と有しない患者との間で見られなかった。さらに、多変量ロジスティック回帰分析(表1)は、移植片におけるCCR7細胞の割合がCMV再活性化のリスク因子ではないことを確認した[CD4(p=0.144);CD8(p=0.092)]。
【0140】
【表1】
【0141】
同様に、移植片におけるCCR7細胞の割合又は絶対数は移植術後に再発した疾患の率と相関せず、この場合も、再発した患者と再発しなかった患者との間に明確な差は見られなかった(図6C及び6D、並びにデータは示していない)。したがって、多変量ロジスティック回帰分析(表1)は、移植片におけるCCR7細胞の割合が再発した疾患のリスク因子ではないことを確認した[CD4(p=0.702);CD8(p=0.362)]。最後に、移植片におけるCCR7細胞の割合と再発の発症率との関連性の欠如を、患者を基礎疾患の診断に従って群分けした場合にさらに確認した(図7)。まとめると、これらの結果はCMV感染又は再発した疾患を予測するためのバイオマーカーとしてのCCR7(アフェレーシスにおける)の使用を不可能にしたが、付随して読み取れることとして、このことは、移植片におけるCCR7細胞の割合を減少させることを目的とするいかなる手法も、より高い感染のリスクともより高い再発の率とも関連しないことを示唆した。
【0142】
抗CCR7 mAbはアゴニスト効果を伴わずにCCR7シグナル伝達を遮断する
高濃度(267nM)で試験した、配列番号1及び2のHVRを有するモノクローナル抗体は、確立した標準的なΒ-アレスチン動員アッセイ(パスハンター(商標)、DiscoverX、Fremont、CA、USA;Southernら、2013、J Biomol Screen.18(5):599~609)によって決定した場合、ヒトCCR7過剰発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞においていかなる検出可能なアゴニスト効果も示さなかった(データは示していない)。
【0143】
考察
GVHDは、同種異系移植術後に誘導される、致死的となり得る高頻度の合併症である。ドナー細胞におけるより高いCCR7発現がより高いグレードのレシピエント二次リンパ器官(SLO)浸潤、したがって同種異系免疫応答をもたらし得るアロ抗原を見出すより高い可能性と相関することが近年実証された。本発明者らの以前のデータはSLOへの遊走がCCR7に依存することを実証し、CCR7リガンドへ向かう遊走とGVHDの発症及びグレードとの関連性が立証されている(Portero-Sainz,Iら、Bone Marrow Transplantation(2017)、1~8)。同様に、他の刊行物は、ナイーブT細胞及びTCMがaGVHDとcGVHDの両方の発症における主要な担い手であると提唱するが(Yakoub-Agha,I.ら、Leukemia、2006.20(9):1557~65頁;Distler,E.ら、Haematologica、2011.96(7):1024~32頁;Cherel,M.ら、Eur J Haematol、2014.92(6):491~6頁)、ナイーブT細胞はTCMよりも大きいレシピエント抗原に対して応答する能力を有する。これらのデータは、ナイーブT細胞、TCM、及びいくつかのAPCにおける高密度という理由だけでなく、疾患進行及び病原性における決定的な役割という理由によっても、CCR7を免疫療法における治療標的として使用する可能性を示唆する。この意味において、本発明者らは、NHPへの抗CCR7抗体の投与がナイーブT細胞及びTCM細胞の選択的減少をもたらすことをin vivoにおいて実証した(データは示していない)。さらに、抗CCR7抗体がCCR7発現T細胞のCCR7リガンドへ向かう遊走を阻止することにおいて効果的であることを示した(データは示していない)。最後に、抗CCR7抗体は、in vivoマウスモデルを用いて実証されたように、GVHDを防止及び処置することにおいて効果的である。注目すべきことに、最も有効な治療手法は+3~+5日目における抗CCR7抗体の投与を伴い、したがって、シクロホスファミドがHSCTにおけるアロ反応性を防止するために使用される治療可能時間域と重なった(Luznik,L.ら、Biol Blood Marrow Transplant、2002.8(3):131~8頁)。まとめると、抗CCR7抗体の前臨床使用に関する結果は、CCR7発現細胞(ナイーブT細胞及びTCMを含む)を除去すること並びに/又は該細胞のSLOへの遊走を中和することがGVHDを防止及び/又は処置する合理的な手法であることを確認する。したがって、CCR7発現細胞を除去すること及び/又はSLOへの遊走を阻止することによって、アロ反応性CCR7発現細胞は活性化しなくなり、したがってGVHDの発症を障害することができる。
【0144】
したがって、Sasakiら(2003、J Immunol、170(1):588~96頁)は、CCL21アンタゴニストの早期使用がドナーT細胞のリンパ節への進入、したがってGVHD発症を防止したことを示した。Duttらは、ナイーブCD62L細胞の除去がGVHD開始を遅延し、前臨床in vivoモデルにおいてOSを延長したことを示した(Dutt,S.ら、Blood、2005.106(12):4009~15頁)。同様に、臨床設定において、CD45RA発現ナイーブT細胞のアフェレーシスからの除去はGVHDの発症率及び発症に影響を与えた(Touzot,F.ら、J Allergy Clin Immunol、2015.135(5):1303~9頁 e1~3;Shook,D.R.ら、Pediatr Blood Cancer、2015.62(4):666~73頁;Triplett,B.M.ら、Bone Marrow Transplant、2015.50(7):1012頁)。しかしながら、これらの全ての論文では、抗CCR7療法と対照的に、TCM細胞は標的とされていない。結論として、近年の証拠が感染症に対する免疫がCCR7+細胞に依存しないことを示唆しており(Choufi,B.ら、Bone Marrow Transplant、2014.49(5):611~5頁)、したがって、CCR7発現細胞を除去及び/又は遮断することがレシピエント患者に安全な手法であると考えられる、ということに言及することは重要である。
【0145】
実施例2:GVHDの低いリスクを有する患者の同定
材料及び方法
La Princesa University Hospital、Madrid、SpainにおいてアロHSCTを受けた103組のドナー-レシピエントのコホート(表2を参照のこと)を分析した(Portero-Sainzら、2017)。研究プロトコルは倫理委員会(照会番号PI-624)によって承認され、ヘルシンキ宣言に従って実施された。
【0146】
【表2】

【0147】
表現型同定
アフェレーシス試料を、以前に記載したように、抗体の7色パネル(表3)を用いて染色した(Portero-Sainzら、2017)。T細胞サブセットの相対及び絶対数は総白血球細胞数を指す。T、TCM、TEM、及びTEMRAサブセットを以下の抗体:CD45RA-FITC、CD62L-PE、CD3-APC、CD4-PB(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて同定した。
【0148】
【表3】
【0149】
治療抗体
精製マウス抗ヒトCCR7 mAb(IgG2aアイソタイプ)をR&D Systems(MN、USA)から購入し、適合アイソタイプ対照(IC)をBiolegend(CA、USA)から購入した。
【0150】
統計分析
定性的変数を相対度数(百分率、%)及び絶対度数(数、n)として示す。定量的変数を代表値(平均)及び分散度(SD又はSEM)として表す。群間の定性的データをピアソンのχ2検定又はフィッシャーの正確確率検定によって適宜比較した。等分散性を有する(ルビーン検定)定量的変数を、t検定又は一元配置分散分析(ANOVA)を使用して分析した。マン・ホイットニーのU検定又はクラスカル・ウォリス検定を分散不均一性に関して使用した。
【0151】
二項ロジスティック回帰分析をPortero-Sainzら(2017)によって記載された患者のコホートにおいて適宜実施して、交絡変数:年齢、HLA及びCMV状況、性別、前処置レジメン、注入したCD3及びCD34の数、同種感作、HSCT後の再発、基礎となる疾患、移植片の供給源、並びに予防手段によって調整したGVHD及びCMV再活性化(又は再発した疾患)の予測変数を同定した。
【0152】
例示的な単変量解析を実施して、従属変数aGVHD、cGVHD、及びCMV感染又は再発した疾患と関連する変数を調査した(P<0.05)。単変量解析に関する確率閾値に達する交絡変数(P<0.10)を多変量ロジスティック回帰モデルに含めた。本発明者らの以前のモデル(Portero-Sainzら、2017)からのaGVHDリスクスコアの感度±95%CIをROC曲線によって推定した。CMV感染リスクスコアの感度を同様に算出した。有意性をP<0.05の値に設定した。CMV再活性化を決定するために、57コピー/ml超のウイルス負荷のカットオフ値を使用した。統計分析を、Stataバージョン13.0(College Station、TX、USA)を使用して実施した。
【0153】
結果
CCR7細胞の割合に基づくアフェレーシス選択はGVHDを防止することも遅延させることもしない
GVHDを発症するリスクが低いアフェレーシスを選択するための潜在的なカットオフ点を確立するために、本発明者らのコホートに対して感度分析(ROC曲線)を実施し、25パーセンタイル(<3.6%)を任意に選択して、低い割合のCCR7+T細胞を移植された患者を同定した。表4に見られるように、25パーセンタイル以内の割合(<3.6%)のCD4CCR7細胞を含む移植片を受けた87.88%(75.23%~100%)の患者はaGVHDを発症しなかった。CD8CCR7の場合、アフェレーシスにおける2.2%未満の細胞(25パーセンタイル)の選択は、cGVHDに関する88.57%(76.60%~100%)の感度と関連した。
【0154】
【表4】
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】