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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】アルカリ電解質の再生
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20220208BHJP
   C25B 1/16 20060101ALI20220208BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20220208BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20220208BHJP
   H01M 8/083 20160101ALI20220208BHJP
【FI】
C25B15/08 304
C25B1/16
H01M10/54
H01M8/18
H01M8/083
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536025
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 IL2019051349
(87)【国際公開番号】W WO2020129047
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/782,630
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513287255
【氏名又は名称】フィナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ヤクポフ イルヤ
(72)【発明者】
【氏名】ダニーノ アヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィーヴァー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ガラガー シーン ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】メネガッツォ ニコラ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H031
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AB01
4K021BA17
4K021BB01
4K021BB03
4K021BC02
4K021DB05
4K021DB31
4K021DC15
5H031AA00
5H031RR01
5H126AA07
5H126AA10
5H126HH10
(57)【要約】
電解質再生のための方法及びシステムであって、空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を電気分解により再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させ、再生アルカリ電解質を形成し、かつ同一カチオン塩を上記電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質カチオンを置き換える方法及びシステムが提供される。この再生は連続的に行われてもよく、さらに、上記アノード液を送出するように構成された塩タンク内で上記SE及び上記同一カチオン塩を混合すること、カソード液を送出するように構成されたカソード液タンクから再生アルカリ電解質を除去すること、及び上記塩タンクから上記アノード液へと送出される溶液からATHを濾過することを含む。任意に、上記塩は緩衝塩であってもよく、場合によっては電気分解による再生を強化するために化学反応が用いられてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を、電気分解により再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させ、再生アルカリ電解質を形成する工程と、
同一カチオン塩を前記電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質カチオンを置き換える工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ATHを前記アノード液から沈殿させる工程と、前記電気分解で使用されたカソード液から前記再生アルカリ電解質を除去する工程とをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SEの連続したバッチに対して実施される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
連続的に実施され、かつ
前記アノード液を送出するように構成されたアノード液タンク内で前記SE及び前記同一カチオン塩を混合する工程と、
前記カソード液を送出するように構成されたカソード液タンクから前記再生アルカリ電解質を除去する工程と、
前記アノード液から前記アノード液タンクへと送り返される溶液から前記ATHを濾過する工程と
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
連続的に実施され、かつ
前記アノード液を送出するように構成された塩タンク内で前記SE及び前記同一カチオン塩を混合する工程と、
前記カソード液を送出するように構成されたカソード液タンクから前記再生アルカリ電解質を除去する工程と、
前記塩タンクから前記アノード液へと送出される溶液から前記ATHを濾過する工程と
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記同一カチオン塩が、アニオンとして、硝酸アニオン、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオンのいずれかを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ電解質がKOH及びNaOHのいずれかを含み、前記同一カチオン塩が、それぞれ対応してK及びNaの硝酸塩、リン酸塩並びに/又は炭酸塩を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記同一カチオン塩が、弱いアニオンを有する緩衝塩であり、前記方法が、前記アノード液タンクを連続的に撹拌する工程をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記同一カチオン塩が、アニオンとして、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオンを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同一カチオン塩が炭酸塩を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換する化学反応において、前記電解質を再生する工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Ca(OH)からCaCOへの変換反応において、前記電気分解を化学的な電解質の再生で部分的に置き換える工程をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
電気化学的再生の前にSEをKHCOに添加する工程をさらに含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を化学的に再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させる工程と、
同一カチオン炭酸塩を電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質のカチオンを置き換える工程と、
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換する化学反応において、前記電解質を再生する工程と
を含む方法。
【請求項15】
前記アルカリ電解質が、KOH及び/又はNaOHを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プロセス内の水のレベルを調節する工程をさらに含む請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記水のレベルが、必要なときに前記カソード液に水を添加することにより調節される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
システムであって、
電気分解ユニットであって、カチオン選択性セパレータによって分離されたアノード液を有するアノード及びカソード液を有するカソード、並びに前記電気分解ユニットにおいて電気分解プロセスを実行するように構成された制御装置を含む電気分解ユニットと、
前記アノード液に使用済みアルカリ電解質(SE)を供給するように構成された使用済みアルカリ電解質(SE)供給部と、
前記アノード液から水酸化アルミニウム(ATH)を除去するように構成された水酸化アルミニウム(ATH)収集ユニットと、
前記カソード液から再生アルカリ電解質を除去するように構成された再生電解質収集ユニットと
を含み、
前記アノード液は、対応する電解質のカチオンを置き換えるために使用される同一カチオン塩を含むシステム。
【請求項19】
必要なときに前記同一カチオン塩を前記アノード液に添加するように構成された塩ユニットをさらに含む請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記アノード液と流体連通するアノード液タンク、及び前記カソード液と流体連通するカソード液タンクをさらに含み、
前記システムが、アノード液タンク及びカソード液タンクとの間でそれぞれ前記アノード液及びカソード液を連続的に循環させるように構成されている請求項18又は請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記ATH収集ユニット及び前記再生電解質収集ユニットが、前記電気分解ユニットの後で、それぞれのアノード液タンク及びカソード液タンクの前に配置されている請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記アノード液タンクが連続的に撹拌され、
前記同一カチオン塩が、弱いアニオンを有する緩衝塩であり、
前記ATH収集ユニットが、前記アノード液タンクの後で、前記電気分解ユニットの前に配置され、前記再生電解質収集ユニットが、前記電気分解ユニットの後で、前記カソード液タンクの前に配置されている請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記同一カチオン塩が、アニオンとして、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオンを含む請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記同一カチオン塩が炭酸塩を含む請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換するように構成された化学反応チャンバをさらに含み、
前記化学反応チャンバが、少なくとも前記アノード液タンクと流体連通しており、
前記再生電解質の一部が前記化学反応チャンバにおいて再生される請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
システムであって、
水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換するように構成された化学反応チャンバと、
同一カチオン炭酸塩溶液を含み、前記化学反応チャンバと流体連通する塩タンクであって、前記システムは、前記塩タンクと前記化学反応チャンバとの間で溶液を連続的に循環させるように構成されている塩タンクと、
前記塩タンクに使用済みアルカリ電解質(SE)を供給するように構成された使用済みアルカリ電解質(SE)供給部であって、前記同一カチオン炭酸塩溶液は前記SEと同じカチオンを有する使用済みアルカリ電解質(SE)供給部と、
前記塩タンクから前記化学反応チャンバへと送出される前記溶液から水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させて濾過するように構成された水酸化アルミニウム(ATH)収集ユニットと、
前記化学反応チャンバから再生アルカリ電解質を除去するように構成された再生電解質収集ユニットと
を含むシステム。
【請求項27】
前記アルカリ電解質が、KOH及び/又はNaOHを含む請求項18から請求項26のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質処理の分野に関し、より詳細には、例えば、金属空気電池の動作又は他の化学プロセスの生成物としての使用済み電解質の再生に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電気化学電源、特にアルカリ電解質を有するAl空気電池及び燃料電池は、アノードからの金属の溶解の結果として、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)を生じ、これは、金属空気電源の効率を低下させ、電解質溶液の交換を必要とする。加えて、金属水酸化物は、多くの有用な化学プロセスの副生成物である(例えば、アルミナ製造のバイエル(Bayer)プロセス、例えば水素製造のためのアルミニウム金属のアルカリへの溶解、アルミニウムのアノード(陽極)酸化プロセス等はすべて、アルミン酸アルカリ溶液を生成する)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
以下は、本発明の最初の理解を提供する簡略化された要約である。この要約は、必ずしも重要な要素を特定したり、本発明の範囲を限定したりするものではなく、単に以下の説明の導入部として機能するものである。
【0004】
本発明の1つの態様は、空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を、電気分解により再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させ、再生アルカリ電解質を形成する工程と、同一カチオン塩を上記電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質カチオンを置き換える工程とを含む方法を提供する。
【0005】
本発明のこれらの、追加の、及び/若しくは他の態様並びに/又は利点は、以下の詳細な説明に記載されており、詳細な説明から推論できる可能性があり、及び/又は本発明の実施によって学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施形態をよりよく理解するために、また、本発明がどのように実施されうるかを示すために、これより、純粋に例示として、添付の図面を参照することにする。図面では、全体にわたって同様の数字は対応する要素又はセクションを示す。
【0007】
図1図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を再生するための電気分解ユニットを備えたシステムの高レベルの模式図である。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を再生するためのシステムの高レベルの模式図である。
図3図3は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を再生するためのシステムの高レベルの模式図である。
図4図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る、電気分解により使用済み電解質を再生するためのマルチセルシステムの高レベルの模式図である。
図5図5は、本発明のいくつかの実施形態に係る、電気分解により、及び化学的に使用済み電解質を再生するためのシステムの高レベルの模式図である。
図6図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を化学的に再生するためのシステムの高レベルの模式図である。
図7A図7Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って操作される電気分解セルを用いたセル要素間の電圧の例である。
図7B図7Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って操作される電気分解セルを用いたセル要素間の電圧と比較するための従来技術の電気分解の例である。
図8図8は、本発明のいくつかの実施形態に係る、ATH沈殿のpH依存性を示す実験データを提供する。
図9図9は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法を示す高レベルのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本発明の様々な態様が記載される。説明の目的のために、本発明の完全な理解を提供するために、特定の構成及び詳細が示されている。しかしながら、本発明は、本明細書中に示された特定の詳細がなくても実施できることも、当業者には明らかであろう。さらには、周知の特徴は、本発明を不明瞭にしないために、省略又は簡略化されている可能性がある。図面を具体的に参照するとき、示された特定事項は例示であり、本発明の説明的な論述を目的としたものに過ぎず、本発明の原理及び概念的側面についての最も有用で容易に理解できる説明であると考えられるものを提供することを目的として提示されていることが強調される。この点において、本発明の基本的な理解に必要な以上に詳細に、本発明の構造的な詳細を示す試みはなされておらず、図面を用いて解釈される説明は、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具現化されうるかを当業者に明らかにするものである。
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、以下の説明に記載された、又は図面に示された構造の詳細及び構成要素の配置にその適用が限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な方法で実施又は遂行されてもよい他の実施形態に適用可能であるだけでなく、開示された実施形態の組み合わせにも適用可能である。本明細書で採用されている言い回しや専門用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではないことも理解されたい。
【0010】
本発明の実施形態は、使用済み電解質を再生するための効率的かつ経済的な方法及び機構を提供し、これによりエネルギー貯蔵装置、特に金属空気電池の技術分野に改善をもたらす。電解質再生のための方法及びシステムであって、空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を、電気分解により再生して、水酸化アルミニウム(三水酸化アルミニウム、ATH)を沈殿させ、再生アルカリ電解質を形成し、かつ同一カチオン塩を上記電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質カチオンを置き換える方法及びシステムが提供される。この再生は連続的に行われてもよく、さらに、上記アノード液を送出するように構成された塩タンク内で上記SE及び上記同一カチオン塩を混合すること、カソード液を送出するように構成されたカソード液(陰極液)タンクから上記再生アルカリ電解質を除去すること、及び上記塩タンクから上記アノード液へと送出される溶液からATHを濾過することを含んでもよい。任意に、上記塩は緩衝塩であってもよく、場合によっては、電気分解による再生を強化するために化学反応が用いられてもよい。
【0011】
様々な実施形態では、塩がアノード液に添加される電気分解プロセスを用いて使用済み電解質が再生された。具体的には、電気分解に基づく方法により、アルカリ溶液がアルミン酸塩水溶液から分離・回収された。ある実施形態では、アノード液への塩の添加を用いる膜電気分解セルを使用して、アルカリ環境に可溶である水酸化物錯アニオンの水溶液からアルカリ溶液(例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム)が回収された。例えば、式[M(OH)-p(式中、Mは金属を示し、nは3以上の整数であり、pは1以上の整数である(例えば、pは1又は2に等しい))の水酸化物錯アニオンを含む溶液が使用された。特定の実施形態では、Mは、式M(OH)(m<n)の難溶性又は水不溶性の水酸化物を形成する金属を示す。非限定的な例として、アルミン酸イオンAl(OH) 、亜鉛酸イオンZn(OH) 2-、及びスズ酸イオンSn(OH) 2-等の両性水酸化物のアニオン(対応する両性水酸化物は、それぞれAl(OH)、Zn(OH)及びSn(OH)である)のアルカリ塩から水酸化アルカリ溶液が回収された。水酸化物錯アニオンは水和されていてもよい。しかしながら、簡単にするために、上記の式では水分子は示されていない。
【0012】
以下に報告する実験結果は、カソード(陰極)及びアノード(陽極)を備え、アノード液としてのK[Al(OH)]水溶液、カソード液としてのKOHを用いて操作され、カリウム含有塩がアノード液に添加された膜電気分解セルに電流を流すと、Al(OH)がアノード液溶液から沈殿するとともに、カリウムイオンがアノード側から陽イオン交換膜(又はセパレータ)を介してカソード側に連続的に移動し、水酸化カリウム溶液が徐々に生成されてセルのカソード側で回収されることを示す。十分に高濃度の水酸化カリウム溶液、例えば5%以上の濃度に達すると、カソード液はセルから取り出され、金属空気電池のリザーバにリサイクルされる。
【0013】
カソードは、従来のカソード又は酸素消費型のカソードを含んでもよい。例えば、水素を発生させる電気分解セルにおいて従来のカソードを使用すると、カソード上及びアノード上の反応は以下のようになり(標準水素電極-SHEに対して)、
カソード側で:4HO+4e→2H+4OH (E=-0.83V対SHE)
アノード側で:4OH→O+2HO+4e (E=-0.40V対SHE)
理論電圧は:1.23Vである。水素発生型のカソードを酸素消費型のカソードに置き換えると、カソード上及びアノード上の反応は
カソード側で:O+2HO+4e→4OH (E=+0.40V対SHE)
アノード側で:4OH→O+2HO+4e (E=-0.40V対SHE)
となる。
上述のいずれのセルでも、アノード液では水酸化アルミニウムが沈殿する。
[Al(OH) (aq)→Al(OH)3(s)+OH (aq)
【0014】
開示された方法は、アノード及びカソードを備えた膜電気分解セルに電流を流すことを含み、セルのアノード液溶液は、水酸化物錯アニオンのアルカリ塩と、水酸化物錯アニオンのアルカリ塩の中のアルカリカチオンと同じアルカリカチオンを含む塩とを含む。開示された方法に従ってセルを動作させると、アノード液溶液中の水酸化アルカリの濃度が低下し、カソード液溶液中の水酸化アルカリの濃度が上昇する。これらの濃度変化は、セルを通過する電流の結果である。水酸化物錯アニオンは、典型的には式[M(OH)-p、すなわち[M(OH)-1又は[M(OH)-2のものであり、式中、Mは多価金属カチオン(Al+3又はZn+2等)であり、nは3以上の整数であり、pは1又は2であってもよい。特定の実施形態では、カソード液中の水酸化アルカリ濃度の上昇により、カソード液中に濃厚水酸化アルカリ溶液が得られる。膜電気分解セルのカソード区画で生成された濃厚水酸化アルカリ溶液は、金属空気電池の電解質として使用可能であってもよい。膜電気分解セルのアノード側で発生する元素酸素は、酸素消費型のカソードの外面に供給されてもよい。特定の実施形態では、アノード液溶液は、金属空気電池の電解質リザーバから供給されてもよく、カソード液溶液の濃度は、徐々に増加して濃厚水酸化アルカリ溶液を形成してもよく、結果として得られる濃厚水酸化アルカリ溶液の少なくとも一部は、金属空気電池の電解質に添加されてもよい。
【0015】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を再生するための電気分解ユニット110を備えたシステム100の高レベルの模式図である。電気分解ユニット110は、カチオン選択性セパレータ115によって分離されたアノード液122を有するアノード112及びカソード液128を有するカソード118と、電気分解ユニット110において電気分解プロセスを実行するように構成された制御装置116とを含んでもよい。システム100は、アノード液122にアルカリ電解質(SE)を供給するように構成された使用済みアルカリ電解質(SE)供給部102と、アノード液122から水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させて濾過するように構成された水酸化アルミニウム(ATH)収集ユニット108と、カソード液128から再生アルカリ電解質を除去するように構成された再生電解質収集ユニット109とをさらに含む。制御装置116は、両矢印で模式的に示されるように、システム100内の要素のいずれかから、情報及び制御コマンドをそれぞれ受信及び送信するように構成されてもよい。例えば、制御装置116は、電気分解ユニット110のいずれかをその動作パラメータに関して制御するように構成されてもよく、また、SE供給部102、ATH収集ユニット108及び再生電解質収集ユニット109、並びに塩ユニット121(下記参照)を、それぞれの材料の提供及び収集に関して制御するように構成されてもよい。
【0016】
上記電解質再生プロセスは、関与するカチオンの非限定的な例としてカリウム(K)を用いて説明される。アノード液122中のSE102は、例えば約12~14の高いpHで典型的に溶液中にあるKAl(OH)を含む。電気分解ユニット110の動作時に、プロトンがアノード液122に放出され(2HO→O+4H)、pHを低下させ、典型的には約10~11の低いpHでATH(Al(OH))を沈殿させる。放出されたカチオン、例えば、Kは、濃度勾配に沿ってカソード液128に移動し、そこから電解質(例えば、KOH)が再生される。
【0017】
様々な実施形態において、アノード液122は、K及び/若しくはNa、場合によってはLi等の他のアルカリ性カチオン、又は有機カチオン(例えば、水酸化コリン電解質HOCHCHN(CHOH等におけるコリン、(CHNCHCHCHOH、)等の対応する電解質カチオンを置き換えるために使用される同一カチオン塩120を含む。同一カチオン塩120は、一度だけアノード液122に導入されてもよいし、例えば、必要なときに同一カチオン塩120をアノード液122に添加するように構成された塩ユニット121から、必要なときに補充されてもよい。同一カチオン塩の例は、K及び/又はNa等のカチオンと、硝酸アニオン、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオン等のアニオンとを含む。有利なことに、同一カチオン塩120の添加は、電解質再生プロセスの間、それぞれのカチオン(例えば、K及び/又はNa)の濃度を高く維持する。というのも、それぞれのカチオンがセパレータ115(カソード液128からアノード液122へのOH拡散を妨げる)を介してカソード液128に拡散し、消費されて再生電解質109を与えるからである。同一カチオン塩120は、このようにして、同一カチオンの一定の勾配を提供し、この勾配は、SEがアノード液122で枯渇しても、カソード液128へのその同一カチオン塩の連続的な拡散をサポートする。さらに、同一カチオン塩120のアニオンは、ATH沈殿の最適な速度を維持する安定したアノード液pH(<12、例えば、約10~11)を維持することに寄与する。カソード液128は、再生電解質109の必要な濃度と同様又は近いKOH濃度、例えばpH>14に達してもよい。例えば、20~30重量%のカソード液128を除去して、プロセスの最後に、及び/又はプロセス中に定期的に再生電解質109を得てもよい。
【0018】
特定の実施形態では、アルカリ同一カチオン塩120は、アルカリ金属イオン(又はコリン等の有機イオン)と、CO 2-、HCO 、Cl、Br、I、NO 、SO 2-、リン酸アニオン、クエン酸アニオン、ギ酸アニオン又は酢酸アニオン等の一価又は多価のアニオンとを含む。同一カチオン塩120の特定の非限定的な例は、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、又はそれらの組み合わせ、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、又はそれらの組み合わせのいずれかを含む。特定の実施形態では、開示された方法及びシステムは、共役種(同一カチオン塩のアニオンの共役酸等)をアノード液に添加することをさらに含んでもよい。非限定的な例では、共役酸は、HCO、HCO 、HPO 2-、HPO 、HSO 、ギ酸、クエン酸、クエン酸水素、クエン酸二水素、酢酸等のいずれかを含んでもよい。
【0019】
特定の実施形態では、アノード112は、例えば約0.05mm~2.5mmの厚さの薄いプレートの形態であってもよく、低い酸素発生過電圧を示してもよく、チタン、ニッケル、又は銀等の金属から作製されてもよく、場合によっては、酸化白金、又は場合によっては酸化銀、酸化ルテニウム、又は酸化ニッケル・コバルト等の金属酸化物によってコーティングされてもよい。
【0020】
特定の実施形態では、カソード118は、米国特許第8,142,938号明細書に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれているようなガス拡散電極及び/若しくは空気電極、並びに/又は銀/酸化ジルコニウム粒子、白金粒子、二酸化マンガン粒子等の酸素還元を促進する電極活物質粒子を利用する任意の空気電極を含んでもよい。
【0021】
特定の実施形態では、セパレータ115は、アルカリカチオン(例えば、K、Na)をアノード液から膜を横切ってカソード液に輸送することを可能にする膜(複数可)を含んでもよい。カチオン交換膜は、その表面に固定された負荷電基を有していてもよく、良好な機械的強度、カチオンに対する低イオン抵抗、アニオンに対する高イオン抵抗、及びアルカリ環境における良好な化学的安定性を示すように構成されていてもよい。
【0022】
特定の実施形態では、アノード液122及びカソード液溶液128のそれぞれのアノード区画及びカソード区画は、制御装置116と通信し、電気分解中に発生する温度変化を検出して報告するように構成された、それぞれの電解質溶液中に浸漬された温度測定デバイス(複数可)(例えば、温度計(複数可)、熱電対(複数可)又は温度を測定するための他のデバイスのいずれか)を含んでもよい。温度の測定は、温度の測定が作業範囲外の値を示すと、加熱/冷却手段の起動を誘発する自動フィードバック信号を生成するために使用されてもよい。例えば、制御装置116は、動作温度を15℃~95℃の範囲内に維持するように構成されていてもよい。
【0023】
操作において、アノード液122は、使用済み電解質溶液(沈殿した金属水酸化物で濁っているか、又は固液分離後に澄んでいるかのいずれか)から得られたK[Al(OH)]等の水酸化物錯アニオン、例えば式[M(OH)又は[M(OH)2-のアルカリ塩の水溶液を含んでもよい。非限定的な例では、アノード液122の濃度は、20~250グラムAl/リットルの範囲内であってもよい。非限定的な例では、アノード液122の濃度は、1~7M Alの範囲内であってもよい。カソード液溶液128は、例えば、1重量%超、3重量%超、1%~30重量%、又は5%~20重量%の初期濃度(C)を有する水酸化アルカリ溶液を含んでもよい。バッチ式運転では、カソード側の水酸化アルカリの最終濃度(C)が、少なくとも1%(C≧C+1)及び/又は少なくとも10重量%、例えば10重量%~40%増加した後に、電気分解が終了されてもよい。所望の濃度に達すると、カソード液溶液128は、カソード側から取り出され、貯蔵リザーバ109に移されてもよい。特定の実施形態では、貯蔵された濃厚水酸化アルカリ溶液は真水で希釈されて、次の生産サイクルのための出発カソード液溶液を形成してもよい。
【0024】
図2及び3は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を再生するためのシステム100の高レベルの模式図である。システム100は、例えば、図1に示されているように、バッチで操作されてもよいが、図2は、連続的な電解質再生及びATH沈殿を実施するためのシステム100の構成を概略的に示す。システム100は、電気分解ユニット110のアノード液122及びカソード液溶液128との間で対応する溶液をそれぞれ循環させるために、それらと流体連通するアノード液タンク132及びカソード液溶液タンク138をさらに含んでもよい。アノード液タンク132は、ATHが沈殿し、例えばフィルタ135又は任意の他の固体/液体分離手段(例えば、フィルタリング及び/若しくは遠心分離を含む)によって濾過されるアノード液溶液を受け取り、SEを受け取り、アノード液溶液を送出してもよく、一方でカソード液タンク138は、再生電解質(例えば、KOH)が除去されるカソード液溶液を受け取り、場合によっては必要に応じて水を添加してカソード液溶液を送出してもよい。システム100は、それぞれのアノード液タンク及びカソード液タンク132、138との間で、アノード液及びカソード液溶液を連続的に循環させるように構成されてもよい。ATH収集ユニット108及び再生電解質収集ユニット109は、電気分解ユニット110の後で、それぞれのアノード液タンク及びカソード液溶液タンク132、138の前に配置されてもよい。
【0025】
様々な実施形態において、アノード液タンク及び/又はカソード液溶液タンク132、138はそれぞれ、図3に撹拌器133によって模式的に示されているように、それらの中で均質な溶液を維持するために、例えば連続的に、撹拌又は高速撹拌(揺動撹拌)されてもよい。
【0026】
特定の実施形態では、アノード液タンク132は、アノード液122から物理的に分離して(かつアノード液122との液体連通を維持しながら)、同一カチオン塩120が添加され、同一カチオン塩120がモニターされる塩タンク132として構成されてもよい。有利なことに、ATHの沈殿は速度的に遅いので、ATHの沈殿をKOHの再生から分離することで、ATHの沈殿の速度によって電解質の再生を制限せず、プロセスの速度を、それらの空間的な分離に加えて時間的に切り離す方法で、溶液の量及び流量を調整することが可能になる。
【0027】
これに対応して、以下では、「アノード液タンク」及び「塩タンク」という用語は、互換的に使用される。特定の実施形態では、ATHの沈殿及び濾過は、ATHの沈殿及び電気分解を空間的に切り離して、塩タンク132の中及び/又は後に実施されてもよい。
【0028】
特定の実施形態では、同一カチオン塩120として緩衝塩(例えば、アニオンとして弱塩基を有する)を使用することは、図3に示されるように、ATHの除去を単純化するために、アノード液溶液の必要なpH値を維持することを助けるとともに、アノード液溶液が電気分解ユニット110に入る前にATHを沈殿させることを可能にする。これに対応して、ATH収集ユニット108は、アノード液タンク132の後、電気分解ユニット110の前に配置されてもよい。緩衝塩の例は、K及び/又はNa等のカチオンと、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオン等のアニオンとを含む。図3に示す非限定的な例では、緩衝塩120は、Kカチオン(非限定的な例として、対応するKOH電解質を再生するためのもの)を有し、KHAn→Kn+1Anの反応を受け、それに続いてpHが上昇し、ATHが沈殿し、緩衝塩がKn+1Anとしてアノード液122へと送出され、電気分解後にKHAnとして塩タンク132に戻されるものとして模式的に示されている。例えば、炭酸塩の場合、KHAn→Kn+1Anは、炭酸水素カリウム(KHCO)から炭酸カリウム(KCO)への中和反応(バランスは取れていない)を表してもよい。例えば、特定の実施形態は、本明細書に記載の電気化学的再生の前に、別の工程(例えば、中和反応)としてSEをKHCOに添加することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記電気分解プロセスは、約10時間、約15時間、又は約20時間のいずれかで実施されてもよい。いくつかの実施形態では、電気分解プロセス時間(例えば、膜電気分解セル110に電流を流す時間、セルに電流を印加する時間、セルに電流を強制的に流す時間、電流の伝導を可能にする酸化/還元反応の発生時間等)は、1時間~20時間、5時間~15時間、1時間~50時間、1時間~100時間、0.1時間~100時間、1分~5時間、10時間~30時間、1分~1時間、2時間~25時間、10時間~75時間等の範囲であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記電気分解プロセスは、室温、昇温した温度、又は室温より低い温度のいずれかで実施されてもよい。いくつかの実施形態では、このプロセスは、最初に室温で実施されてもよく、その後、例えば、30℃~40℃、25℃~55℃、20℃~30℃、25℃~65℃、25℃~80℃等の温度範囲のいずれかに昇温されてもよい。いくつかの実施形態では、上記電気分解プロセスは、5℃~10℃、10℃~20℃、15℃~25℃、20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、10℃~80℃、60℃~80℃、及び80℃~100℃のいずれかの温度範囲で開始されてもよい。いくつかの実施形態では、上記電気分解は、例えば、制御装置116及び冷却/加熱装置(例えば、水冷装置)によって維持される所望の範囲内に温度制御され、維持されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記電気分解プロセスは、100mA/cm、50mA/cmのいずれか、又は10mA/cm~50mA/cm、50mA/cm~100mA/cm、10mA/cm~500mA/cm、25mA/cm~75mA/cm、50mA/cm~250mA/cm、50mA/cm~150mA/cm、150~300mA/cm、300~400mA/cm、及び400~600mA/cmの範囲のいずれかの電流密度で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、電気分解プロセスに使用されるカソード液、アノード液、又はそれらの組み合わせの体積は、産業上の実施に応じて、100~150cc、100cc~200cc、50cc~150cc、20cc~200cc、75cc~125cc、10cc~100cc、100cc~1000cc、100cc~500cc、500cc~1000ccの範囲のいずれか、又は場合によっては複数リットルのより大きな体積であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、電気分解の前及び後の初期KOHアノード液濃度は、それぞれ約30%及び約15%のいずれか、又は25%~30%(初期)及び15%~20%(最終)、25%~30%(初期)及び10%~20%(最終)、25%~35%(初期)及び10%~20%(最終)、25%~45%(初期)及び10%~25%(最終)、20%~40%(初期)及び5%~20%(最終)、15%~20%(初期)及び5%~10%(最終)、15%~50%(初期)及び5%~25%(最終)、15%~25%(初期)及び5%~15%(最終)、10%~50%(初期)及び1%~30%(最終)、10%~20%(初期)及び1%~5%(最終)、5%~15%(初期)及び1%~50%(最終)の範囲のいずれかであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記同一カチオン塩の濃度は、高い、例えば、1M超、5M超、8M超、10M超等であってもよく、又は、カソード液128中の高いKOH濃度(例えば、約8M)でK勾配を維持するために、システム内のできるだけ高い濃度であってもよい。様々な実施形態において、同一カチオン塩は、固体又は溶液として、また、適切な温度の範囲、例えば、アノード液温度に合わせるか、又はそれとは異なる温度で添加されてもよく、アノード液温度を制御するために使用されてもよい。添加された塩の量は、例えば、プロセス成分の濃度の重み及び/又は導電率、電圧降下等の電気的パラメータ等の様々なプロセスパラメータに応じて、制御装置116によって監視及び制御されてもよい。いくつかの実施形態では、同一カチオン塩は、HCO/HCO 、HCO /CO 2-、HPO /HPO 2-、HPO 2-/PO 3-、HSO /SO 2-、ギ酸/ギ酸アニオン、酢酸/酢酸アニオン、クエン酸/クエン酸二水素、クエン酸二水素/クエン酸水素、及びクエン酸水素/クエン酸アニオンのいずれか等の酸塩基共役物をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、pHを制御するために、電解質カチオン以外のカチオン及び/又は同一カチオン塩のアニオン以外のアニオンを含む一定量の酸又は塩基が添加されてもよい。
【0034】
特定の実施形態では、電解質再生システム(複数可)100は、アルカリ電解質を有する金属/空気電池で駆動される電気自動車(EV)にサービスを提供する電気自動車のバッテリーメンテナンスセンターに配置されてもよい。メンテナンスセンターに到着すると、電気自動車からSEの少なくとも一部が排出され、本明細書に開示されているような再生に供されてもよい。再生された電解質及び/又は新鮮な電解質は、電気自動車に供給されてもよい(例えば、それぞれの電池に付随するリザーバに供給される)。対応するポンプユニット(複数可)は、EVからシステム100へのSEの転送、及び再生された/新鮮な電解質のEVへの返送を容易にするように構成されてもよい。受け取られたSE及び提供された再生/新鮮な電解質の組成を推定するための対応するユニットは、指定された要件に従って実施された再生プロセス及び電解質の提供を調整するために、システム100と連携して構成されてもよい。酸素及び電解質の温度調節手段のための、例えばガス出口も、システム100の一部であってよく、場合によっては制御装置116によって制御される。再生電解質(及び/又は場合によっては使用済み電解質)を希釈するために、水も、制御装置116の制御下で供給されてもよい。
【0035】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を電気分解により再生するためのマルチセルシステム100の高レベルの模式図である。
【0036】
特定の実施形態では、システム100は、膜電気分解セルで実施されるアルカリアルミン酸塩溶液からの例えばKOHの分離の効率を高めるように設計された、段階的に減少する電解質濃度にわたって多段階の電気分解プロセスを実施するように構成された、複数の電気分解ユニット110A、110B等を含んでもよい。1つの膜セルを含む1回の電気分解プロセスの間に、カソード液中のKOHの濃度は徐々に増加し、アノード液中のその濃度は減少する。ある程度の電気分解時間が経過すると、濃度勾配(カソード液中の濃度が高く、アノード液中の濃度が低い)により、アノード液からカソード液へのKイオンの通過効率が低下する。この効果を克服するために、使用済み電解質が、第1の電気分解セル110Aのアノード区画にアノード液溶液として導入されてもよい。使用済み電解質のKOH濃度は、例えば、30%程度であってもよい。カソード液として、約15%のKOH溶液が導入されてもよい。上記電気分解プロセスは、セルに電流を流すことによって開始することができる。電気分解中、Kイオンはセル膜を介してアノード液からカソード液へと移動する。ある程度の電気分解の時間が経過すると、アノード液中のKOH濃度が約30%から約15%に低下する。同時に、カソード液中のKOH濃度は約15%から約30%に上昇する。この時点で、カソード液溶液は再生電解質として使用することができ、除去する、例えば貯蔵庫又は対応するバッテリーに移すことができる。次いで、(現在、約15%のKOH濃度の)アノード液は、第2のセルのアノード液を形成する第2の電気分解セル110Bのアノード区画に移されてもよい。第2のセルのカソード液には、数パーセントの濃度のKOH(例えば、2%~3%のKOH又は3%~5%のKOH)を含む溶液が導入されてもよい。このようにKOH濃度を低くすることで、電気分解時にアノード液からカソード液へのKイオンの通過効率を高めることができる。その後、第2のセルに電流を流してそのセルで電気分解が開始されてもよい。供給された電流の結果、Kイオンは、膜を介してアノード区画からカソード区画に移動する。それに伴い、カソード液中のKOH濃度は上昇し(例えば、1~5%から約15%へ)、アノード液中のKOH濃度は低下する(例えば、15%から約1~5%へ)。上記プロセスのこの工程により、使用済み電解質溶液からより多くのKOHを抽出することができる。第2のセルの電気分解で得られたアノード液溶液は廃棄されてもよい。第2のセルの電気分解から得られたカソード液溶液は、第1の電気分解プロセスのための所望のKOH濃度(約15%)を有するので、第1の電気分解セルのカソード区画に移されてもよい。
【0037】
2つの電気分解セル110A、110Bにおける2つの電気分解プロセスは、連続的に、かつ様々な時間に渡って実施されてもよい。セル110Aにおける各第1の電気分解プロセスの完了後、再生電解質を含む第1のKOH濃縮カソード液溶液は、貯蔵されてもよいし、電池に移送されてもよいし、電池の一部である電解質リザーバに移送されてもよいし、及び/又は任意の他の電解質リザーバに移送されてもよい。ユニット110Bにおける第2の電気分解プロセスに使用されるカソード液は、特定の実施形態ではKOHと水から作られてもよく、及び/又は、特定の実施形態ではKOHを含む固体/湿潤固体の洗浄水であってもよい。上述のカスケードアプローチでは、任意の数の電気分解プロセスが使用されてもよく、例えば、2つ以上のセルが使用されてもよい。単一の電気分解セル110について本明細書に記載された任意の実施形態は、上記複数のセルのいずれかで実施されてもよい。
【0038】
特定の実施形態では、追加のプロセスを並行して実施し、並行プロセスからの溶液を組み合わせてもよい。
【0039】
特定の実施形態では、上記2段階の電気分解プロセスは、使用済み電解質をセルのアノード液溶液として導入し、水酸化アルカリ溶液をカソード液セルに入れ、セルに電流を流すことによって第1の電気分解工程を実行し、電気分解によってカソード液中の水酸化アルカリ濃度の上昇を引き起こすことによって、単一の電気分解セル110で実施されてもよい。この第1の電気分解工程の間に、アノード液中の水酸化アルカリ濃度が低下し、この第1の電気分解工程に続いて、セルからカソード液が除去され、新しいカソード液溶液がカソード区画に導入されてもよい。第1の電気分解工程から得られたアノード液溶液は、アノード区画に残る。次に、セルに電流を流して第2の電気分解工程が行われ、電気分解によってカソード液中の水酸化アルカリ濃度を上昇させてもよい。この第2の電気分解工程の間に、アノード液中の水酸化アルカリ濃度はさらに低下し、この第2の電気分解工程に続いて、セルからカソード液が除去され、新しいカソード液溶液がカソード区画に導入されてもよい。第2の電気分解工程から得られたアノード液溶液は廃棄されてもよい。
【0040】
特定の実施形態では、システム100は、多数の電気分解セル110を相互に接続した、連続的に動作するトレインを含んでもよく、上記電気分解プロセスは、そのトレインで実施されてもよく、このトレイン内のセルのアノード部分を通る液体の逆流(アノード液フロー)、及びトレイン内のセルのカソード部分を通る液体の逆流(カソード液フロー)を可能にしてもよい。このようなアノード液とカソードの組織化を提供するために、トレイン内の1番のセルのアノード区画の出口は、2番のセルのアノード区画の入口に接続する等してもよいし、トレイン内の最後のセルのカソード区画の出口は、最後の前のセルのカソード区画の入口に接続する等してもよい。使用済み電解質は、1番のセルのアノード区画の入口に供給されてもよく、低濃度のアルカリ溶液は、最後のセルのカソード区画の入口に供給されてもよい。再生電解質は、1番のセルのカソード区画の出口から排出されてもよく、アルミニウム化合物を含む低濃度アルカリ溶液は、最後のセルの出口から排出されてもよい。
【0041】
図5は、本発明のいくつかの実施形態に係る、電気分解により、及び化学的に使用済み電解質を再生するためのシステム100の高レベルの模式図である。非限定的な図解では、カリウムベースの電解質は、電気分解と化学的プロセスとを組み合わせることによって、カリウム炭酸塩を用いて再生される。システム100は、水酸化カルシウム(Ca(OH))を炭酸カルシウム(CaCO)に変換するように構成され、少なくとも塩(アノード液)タンク132と流体連通する化学反応チャンバ140をさらに含んでもよい。例えば、化学反応チャンバ140は、KCO+Ca(OH)→CaCO+2KOHという反応を行うように構成されていてもよい。ATH沈殿後の例えばKCOを有するアノード液溶液の一部は、水酸化カルシウムを受け取って、炭酸カリウムを使用して炭酸カルシウムを生成するとともに電解質を再生する化学反応チャンバ140へと送出されてもよい。様々な実施形態において、電解質を再生する電気分解プロセス及び化学プロセスは、指定された要件に従って電解質再生のバランスをとるために監視及び制御されてもよい。特定の実施形態では、炭酸カルシウムは、その後、生石灰(CaO)を得るために加熱されてもよい。
【0042】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に係る、使用済み電解質を化学的に再生するためのシステム100の高レベルの模式図である。特定の実施形態では、電気分解は、少なくとも一時的に、炭酸カルシウム(CaCO)の生成によって完全に置き換えられてもよい。システム100は、水酸化カルシウム141を炭酸カルシウム149に変換するように構成された化学反応チャンバ140と、同一カチオン炭酸塩溶液を含み、化学反応チャンバ140と流体連通する塩タンク132とを備えてもよく、システム100は、塩タンク132と化学反応チャンバ140との間で溶液を連続的に循環させるように構成されている。システム100はさらに、使用済みアルカリ電解質(SE)を塩タンク132に供給するように構成された使用済みアルカリ電解質(SE)供給部102(上記同一カチオン炭酸塩溶液は、SEと同じカチオンを有する)と、塩タンク132から化学反応チャンバ140へと送出される溶液からフィルタリングユニット135によってATHを沈殿させて濾過するように構成された水酸化アルミニウム(ATH)収集ユニット108と、化学反応チャンバ140から再生アルカリ電解質を除去するように構成された再生電解質収集ユニット109とを備える。化学反応チャンバ140における原理反応は、KCO+Ca(OH)→CaCO+2KOHを含んでもよく、再生電解質と炭酸カルシウムが得られ、その後、炭酸カルシウムを加熱して生石灰を得てもよい。
【0043】
様々な実施形態において、図1~6の要素は、任意の動作可能な組み合わせで組み合わせてもよく、特定の図で特定の要素を図示し、他の図で特定の要素を図示しないことは、単に説明の目的を果たすものであり、非限定的である。
【0044】
図7A及び図7Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って操作される電気分解セル110を用いたセル要素間の電圧の例を、従来技術の電気分解と比較してそれぞれ示す。同一カチオン塩120の添加なしに使用済み電解質への電気分解プロセスを動作させる従来技術の例図7Bに示されているように、セル間の電圧は3時間の動作後に飽和し、これは、おそらくセルにわたるカチオン勾配の減少に起因して、再生プロセスを効果的に停止させるアノード間の電圧(Vアノードと表記)の急な上昇によるものである。対照的に、図7Aに示された非限定的な例で開示された結果のように電気分解を実施すると、システム100は、すべてのセル構成要素(アノード112、膜115及びカソード118、それぞれの電圧Vが示されている)にわたる安定した動作可能な電圧を8時間維持し、プロセス全体の間継続する(2つの下向きのピークが測定アーチファクトであることに留意されたい)。
【0045】
図8は、実施例6で以下に説明するように、本発明のいくつかの実施形態に係るATH沈殿のpH依存性を示す実験データを提供する。図8は、KHCOが使用済み電解質に注入される際のpH遷移を示しており、領域AはKOHの中和に対応し、領域BはAl(OH) のAl(OH)及びOHへの分解に対応し、領域Cは、pHがほぼ排他的にCO 2-対HCO の比に依存する溶液に対応する。
【0046】
図9は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法200を示す高レベルのフロー図である。方法の段階は、任意に方法200を実施するように構成されてもよい上述のシステム100に関して実施されてもよい。方法200は、以下の段階をその順序によらず含んでもよい。
【0047】
方法200は、空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を、電気分解により再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させ、再生アルカリ電解質を形成する工程(段階210)と、同一カチオン塩を上記電気分解で使用されたアノード液に添加して、対応する電解質カチオンを置き換える工程(段階220)とを含んでもよい。方法200は、ATHをアノード液から沈殿させる工程(段階230)と、電気分解で使用されたカソード液から再生アルカリ電解質を除去する工程(段階240)とをさらに含む。様々な実施形態において、方法200は、SEの連続したバッチに対して、及び/又は連続的に実施されてもよい(段階250)。
【0048】
任意に、方法200は、電気化学的再生段階210の前に、別の工程(例えば、中和反応)としてSEをKHCOに添加する工程(段階205)をさらに含んでもよい。
【0049】
特定の実施形態では、方法200は、アノード液を送出するように構成されたアノード液タンク(若しくは塩タンク)内でSE及び同一カチオン塩を混合する工程(段階260)、カソード液を送出するように構成されたカソード液タンクから再生アルカリ電解質を除去する工程(段階268)、及びアノード液からアノード液タンクへと送り返される溶液からATHを濾過する工程(段階262)、並びに/又は塩タンクからアノード液へと送出される溶液からATHを濾過する工程(段階264)をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、同一カチオン塩は、カチオンとしてカリウム及び/又はナトリウム(アルカリ電解質はKOH及び/又はNaOHを含む)、並びにアニオンとしてその硝酸アニオン、リン酸アニオン及び/又は炭酸アニオンのいずれかを含んでいてもよい。方法200は、アノード液タンクを連続的に撹拌する工程(段階295)をさらに含んでもよい。
【0050】
特定の実施形態は、同一カチオン塩として弱いアニオンを有する緩衝塩、例えば、アニオンとしてリン酸アニオン及び/又は炭酸アニオンを有する緩衝塩を使用する工程(段階270)を含む。緩衝塩が炭酸塩を含む場合、方法200は、炭酸塩を使用して、水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換する反応において電解質を再生する工程(段階280)、例えば、対応する化学反応で電解質を再生する工程をさらに含んでもよい。様々な実施形態において、方法200は、Ca(OH)からCaCOへの変換反応において、電気分解を化学的な電解質の再生で少なくとも部分的に置き換える工程(段階285)をさらに含んでもよい。
【0051】
特定の実施形態では、化学プロセスによる電気分解の完全な代替の場合、方法200は、空気アルミニウム電池からの溶解したアルミニウム水和物を含む使用済みアルカリ電解質(SE)を化学的に再生して、水酸化アルミニウム(ATH)を沈殿させる工程(段階210)、同一カチオン炭酸塩を電気分解で使用されたアノード液に添加して対応する電解質のカチオンを置き換える工程(段階220)、及び水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換する化学反応において電解質を再生する工程(段階280)を含んでもよい。上記アルカリ電解質は、KOH及び/又はNaOHを含んでいてもよい。
【0052】
開示された方法200のいずれも、例えば、必要なときにカソード液に水を添加することによって、プロセス内の水のレベルを調節する工程(段階290)を含んでもよい。
【実施例
【0053】
以下では、システム100及び方法200の準備及び操作に関する非限定的な例が提供される。これらの例は、開示された方法200及びシステム100の適用可能性を例示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
例1 - システムのセットアップ
システムは、2つの区画(PMMAから作られ、1つはアノード液用、1つはカソード液用であり、それぞれ2.5L。各タンクのサイズは10×10×16cmであり、膜が2つの区画を分離している)を備える。蠕動ポンプ(Hontile Industrial Co.LTD(ホンタイル・インダストリアル))により、電気分解膜セル内の電解質の循環が可能となっている。この電気分解セルは電源(Mancon Hcs 3042)に接続されており、電圧/電流がコンピュータで記録されるとともに、アノード液区画のpHが一貫して監視される。
【0055】
濾過した使用済み電解質(SE)100mlを入れた別のビーカーを、アノード液区画に隣接して配置する。使用済み電解質の組成は、108g/lのKOH、857g/lのKAl(OH)、及び500g/lのHOである。SEは、必要に応じて蠕動ポンプの助けを借りて、アノード液に滴下される。
【0056】
アノード液区画は1500mlの2.5M KCO(5N、Sigma Aldrich(シグマ・アルドリッチ)>98%)溶液(pH約12.6)で満たし、カソード液区画は1500mlの20% KOH溶液(w/w、約5N、GADOT Ltd.(ガドット))で満たした。
【0057】
電位印加中、自動滴定装置(Metrohm(メトローム)、Titrotherm 859)を用いて行うKOH濃度分析のために、カソード液区画から試料(1ml)を採取する(40分毎)。
【0058】
例2 - 電気分解膜セルの組み立て
純度99.6%のニッケル板をアノードとし、カソードはPhinergy(フィナジー)(商標)製の空気カソードである。膜は、市販のN551WX KNafion(ナフィオン)膜である。テフロン(登録商標)製のスリーブに包まれた亜鉛線が、膜の両側に隣接して配置されている。アノードとカソードの電位(対Zn/ZnO)が一貫して記録される。
【0059】
例3 - 検査したパラメータ及び実験条件I
上記セルを、室温で100mA/cm(膜表面積に正規化)の定電流下で操作した。最初に、SEを添加する前に、アノード液のpHを低い値(約10.5)に調整した。SEの添加は、pHが9~10.5に維持されるように手動で調整した。
【0060】
この実験で評価したパラメータは以下の通りであった。アノード及びカソードの電位(対参照電極);膜(及び溶液抵抗)によって引き起こされるiR低下;苛性電流効率(caustic current efficiency、CCE);及び電位印加時の水輸送(ml/mol K又はmol/mol K単位の電気浸透抵抗係数)。
【0061】
さらなる実験では、静的な電気分解膜セルと上述のシステムの両方で、100%のCCEを実証することができた。さらに、SEを別個に(すなわち、電位印加中又はアノード液区画中ではなく)アノード液区画から採取した部分に滴下し、結果のATHをDLSで分析して粒度分布を得た。
【0062】
上記実験は、SEをアノード液に添加した後、pH範囲が維持され、pH=15付近(アノード液を10倍に希釈した後、測定されたpHが14であったという意味で)で安定に保たれた。さらに、電位の時間プロファイルはSE添加の前後で全く変わらず、SE発生器の電位は印加中も一定であった。この条件での膜を介した水の輸送は、約50ml/mol Kであった。
【0063】
例4 - 検査したパラメータ及び実験条件II
このプロセスの苛性帯電効率を計算するために、静的な小型電気分解セルを占有した。膜(Nafion N551WX)のサイズは、約12cmであった。アノード液区画及びカソード液区画の容積はそれぞれ100mlであった。上記の例3に示した実験と同様に、カソードは空気カソード(Phinergy)であり、アノードは1mmのニッケル板99.6%であった。100mA/cm(膜表面積に対して)の電流を印加した。アノード液組成は炭酸カリウム/炭酸水素カリウム2.5Nであり、カソード液濃度は20%KOH w/w(重量/重量)であった。電流印加は室温で1時間続けた。実験終了時にカソード液溶液からアリコートを採取してKOH濃度を分析し、苛性電流効率(η)を、η(%)=100・ΔnKOH(カソード液)/(I・t/F)の関係式に従って算出した。式中、ΔnKOH(カソード液)は、カソード液区画内のKOH量の変化(単位:モル)を表し、Iは電流(単位:A)を表し、tは、時間(単位:秒)を表し、Fはファラデー(Faraday)定数である。カソード液区画内のKOH量の変化は、最終KOH濃度と最終体積との乗算値から、初期KOH濃度と初期体積との乗算値を差し引くことで算出した。苛性帯電効率は100%であることがわかった。
【0064】
例5 - 検査したパラメータ及び実験条件III
第1の実験からのアノード液(pH9.2、約2.5N炭酸カリウム/炭酸水素カリウム)から100mlの部分を取り出し、別のガラスビーカーに入れた。濾過した使用済み電解質(108g/l KOH、857g/l KAl(OH)、及び500g/l HO)を、温度を55~65℃に保った上記ガラスビーカーにゆっくりと滴下した。pHが8.2に達した時点で滴定を中止した。得られたATHの沈殿物を直接光散乱法で分析した。ATH沈殿物の粒度分布は約10μmであり、1~60μmの範囲であった。
【0065】
例6 - 緩衝剤による中和
特定の実施形態では、SEをKHCOに添加してもよく、及び/又はKHCOを電気化学的再生の前に、別の工程(例えば、中和反応)としてSEに添加してもよい。
【0066】
緩衝塩溶液からのATH沈殿の依存性を説明するために、50mlの使用済み電解質(101g/l KOH、1017g/l KAl(OH)及び479g/l HO)の部分をガラスビーカーに入れ、室温で磁気的に撹拌した。使用済み電解質を入れたビーカーの上部に内径1mmのPTFEキャピラリーチューブの切片を固定し、反対側の端をKHCOの飽和水溶液を入れたシリンジを備えたシリンジインフュージョンポンプ(Harvard Apparatus(ハーバード・アパレイタス)、モデル番号2400-006)に接続した。次いで、このポンプを、飽和したKHCOを2ml/分の流量で注入するように構成した。最後に、pHプローブ(Fisher Scientific(フィッシャー・サイエンティフィック)、Accumet AR50)を上記ガラスビーカーに導入し、電解質の中和プロセスを監視した。図8は、使用済み電解質にKHCOを注入したときのpHの遷移を示しており、領域AはKOHの中和に対応し、領域BはAl(OH) のAl(OH)及びOHへの分解に対応し、領域Cは、pHがほぼ排他的にCO 2-対HCO の比に依存する溶液に対応する。
【0067】
例7 - 中和された電解質中のアルミニウム含有量
例6の複製実験では、選択したpH間隔で液体部分のアリコートを採取し、濾過し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって元素組成を分析した。溶存アルミニウムの含有量は、表1にまとめたように、pH及び添加したKHCOの関数として変化した。
【0068】
【表1】
【0069】
有利なことに、開示されたシステム100及び方法200は、使用済み電解質を処理する従来技術の方法、例えば、特徴の中でも特に、利用可能なカリウム濃度勾配、変化するpH勾配、SEフィードの必要な変更、及び/又は金属イオン濃度勾配によって制限される膜電気分解の様々なアプローチを教示する米国特許出願公開第2012/0292200号明細書、米国特許出願公開第2013/0048509号明細書、米国特許出願公開第2016/0149231号明細書等の制限を、電気分解に使用されるアノード液に同一カチオン塩を添加して、対応する電解質カチオンを置き換えることにより克服する。
【0070】
以上の説明において、一実施形態は、本発明の一例又は実施態様である。「1つの実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」又は「いくつかの実施形態」の様々な登場は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではない。本発明の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈で説明されることがあるが、その特徴は、別々に又は任意の適切な組み合わせで提供されてもよい。逆に、本発明は、明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されることがあるが、本発明は、単一の実施形態で実施されてもよい。本発明の特定の実施形態は、上で開示された異なる実施形態からの特徴を含んでもよく、特定の実施形態は、上で開示された他の実施形態からの要素を組み込んでもよい。特定の実施形態の文脈における本発明の要素の開示は、その特定の実施形態のみでの使用を限定するものとはみなされない。さらには、本発明は様々な方法で実行又は実施することができ、本発明は上記の説明で概説したもの以外の特定の実施形態で実施することができることを理解されたい。
【0071】
本発明は、それらの図又は対応する説明に限定されるものではない。例えば、フローは、図示された各ボックスや状態を通って移動する必要はなく、また、図示され説明されたものと全く同じ順序で移動する必要もない。本明細書で使用される技術用語及び科学用語の意味は、特に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものである。本発明は限られた数の実施形態に関して説明されてきたが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ好ましい実施形態の一部を例示するものであると解釈されるべきである。他の可能な変形例、変更例、及び応用例もまた、本発明の範囲内である。従って、本発明の範囲は、これまで説明してきた内容によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的な均等物によって限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【国際調査報告】