(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】三次元印刷のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20220208BHJP
B29C 64/259 20170101ALI20220208BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220208BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220208BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/259
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536306
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(85)【翻訳文提出日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 IL2019051438
(87)【国際公開番号】W WO2020141518
(87)【国際公開日】2020-07-09
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラスマン、バラク
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213AA45
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL32
4F213WL52
(57)【要約】
三次元印刷の方法は、構築材料配合物を注出するためにノズルアレイ(122)を有する印刷ヘッド(16)を操作することであって、前記印刷ヘッドは前記構築材料配合物を含むカートリッジ(212)に直接接続され、前記印刷ヘッドは前記カートリッジから受け取った構築材料配合物を前記ノズルアレイに搬送するチャネル(218)を備える、操作することと;前記構築材料配合物を前記チャネルから廃棄することと;廃棄された構築材料配合物とは異なる構築材料配合物を含むカートリッジをチャネルに接続することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築材料配合物を注出するためにノズルアレイを有する印刷ヘッドを操作することであって、前記印刷ヘッドは、前記構築材料配合物を含むカートリッジに直接接続され、前記印刷ヘッドは、前記カートリッジから受け取った構築材料配合物を前記ノズルアレイに搬送するチャネルを備える、操作することと、
前記構築材料配合物を前記チャネルから廃棄することと、
前記廃棄された構築材料配合物とは異なる構築材料配合物を含むカートリッジを前記チャネルに接続することと、
を含む、三次元印刷の方法。
【請求項2】
前記印刷ヘッドが、少なくとも2つの異なる構築材料配合物を注出する複数のノズルアレイを有し、
前記印刷ヘッドが複数のカートリッジに直接接続され、前記複数のカートリッジの各々は異なる構築材料配合物を含み、
前記印刷ヘッドが複数のチャネルを有するマニホールドを含み、前記複数のチャネルの各々は別個のカートリッジから受け取った構築材料配合物を別個のノズルアレイに搬送する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃棄することが、前記マニホールドの第1のチャネルから第1の構築材料配合物を廃棄することであり、前記接続することが、前記マニホールドの前記第1のチャネル以外の少なくとも1つのチャネル内に少なくとも1種類の構築材料配合物を維持しながら行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの構築材料配合物が、25℃で50cPs以下の粘度を特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの構築材料配合物が、少なくとも2つの硬化性材料を含み、かつ25℃で50cPs以下の粘度を特徴とするモデル材料配合物系であり、前記少なくとも2つの硬化性材料の平均分子量が500g/mol以下である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記配合物系が、硬化したときに非エラストマー性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含み、前記少なくとも1つの配合物が、
硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの疎水性硬化性材料と、
硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料と、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記配合物系が、硬化したときにエラストマー性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含み、前記少なくとも1つの配合物が、
エラストマー性硬化性材料と、
単官能硬化性材料と、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの配合物が二官能硬化性材料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各々が異なる構築材料配合物を含む複数のカートリッジと、
複数のノズルアレイを有し、前記複数のカートリッジに直接接続された印刷ヘッドであって、複数のチャネルを有するマニホールドを含み、前記複数のチャネルの各々は別個のカートリッジから受け取った構築材料配合物を別個のノズルアレイに搬送する、印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを操作するコントローラと、
を備え、
前記複数のカートリッジに直接接続されていない印刷ヘッドを有しない、三次元印刷システム。
【請求項10】
複数の流れ制御デバイスをさらに備え、前記コントローラは、前記流れ制御デバイスを選択的に制御するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記カートリッジの数が前記ノズルの数よりも多く、前記マニホールドがM個の入口ポート及びN個の出口ポートを備え、M>Nであり、Mは前記カートリッジの数であり、Nは前記ノズルアレイの数である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
複数の流れ制御デバイスをさらに備え、前記コントローラは、前記カートリッジのうちの少なくとも1つから構築材料配合物が流出すことを防止するために、前記流れ制御デバイスを選択的に制御するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラが、前記ノズルアレイのうちの少なくとも1つを操作して、所定の位置で各チャネルから構築材料配合物を廃棄させるように構成され、かつ流れ制御デバイスを操作して、前記廃棄された構築材料配合物とは異なる構築材料配合物の前記各チャネルへの流れを確立するように構成される、請求項10及び請求項11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記廃棄することが、第1のノズルアレイを介して、前記マニホールドの第1のチャネルから第1の構築材料配合物を廃棄することであり、前記流れを確立することが、少なくとも1種類の構築材料配合物を前記マニホールドの前記第1のチャネル以外の少なくとも1つのチャネル内に維持しながら、第2の構築材料配合物のための流れを確立することである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、前記第1のノズルアレイを制御して、前記第1の構築材料配合物及び前記第2の構築材料配合物を、同じ層に属する位置に、かつ前記層上における前記印刷ヘッドの別々の通過の間に注出させるように構成される、請求項13及び請求項14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記所定の位置が、三次元物体が前記システムによって作製される作業面上の区域外の、前記作業面上にある、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記所定の位置が、前記システムによって作製される三次元物体の内部領域にある、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記所定の位置が、三次元物体が前記システムによって作製される体積内の犠牲領域中にある、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記印刷ヘッドの外側で前記構築材料を加熱する予熱システムを有しない、請求項9~請求項18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記印刷ヘッドが、50℃未満の温度で前記構築材料配合物を注出するように構成される、請求項9~請求項19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月31日に出願された米国仮特許出願第62/786,577号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、印刷に関し、より具体的には、三次元印刷のための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
付加製造(additive manufacturing;AM)は、付加形成工程を介してコンピュータデータから直接、任意の形状の構造を作製することを可能にする技術である。任意のAMシステムの基本的な動作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすることと、結果を二次元位置データに変換することと、層ごとに三次元構造を作製する制御機器にデータを供給することとからなる。
【0004】
付加製造は、3Dインクジェット印刷等の三次元(3D)印刷、電子ビーム溶解、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結、積層物体製造、熱溶解積層法などを含む、作製方法に対する多くの異なるアプローチを伴う。
【0005】
いくつかの3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、構築材料の層ごとのインクジェット堆積によって実行されている。したがって、構築材料は、ノズルセットを有する注出ヘッドから注出され、支持構造上に層を堆積する。構築材料に応じて、前記層はその後適切なデバイスを使用して硬化又は固化されうる。
【0006】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば、すべて同一の譲受人による米国特許第6,259,962号明細書、同第6,569,373号明細書、同第6,658,314号明細書、同第6,850,334号明細書、同第7,183,335号明細書、同第7,209,797号明細書、同第7,225,045号明細書、同第7,300,619号明細書、同第7,479,510号明細書、同第7,500,846号明細書、同第7,962,237号明細書及び同第9,031,680号明細書に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元印刷の方法が提供される。本方法は、構築材料配合物を注出するためにノズルアレイを有する印刷ヘッドを操作することであって、前記印刷ヘッドは前記構築材料配合物を含むカートリッジに直接接続され、前記印刷ヘッドは前記カートリッジから受け取った前記構築材料配合物を前記ノズルアレイに搬送するチャネルを備える、操作することと、前記構築材料配合物を前記チャネルから廃棄することと、前記廃棄された構築材料配合物とは異なる構築材料配合物を含むカートリッジを前記チャネルに接続することと、を含む。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記印刷ヘッドは、少なくとも2つの異なる構築材料配合物を注出する複数のノズルアレイを有し、前記印刷ヘッドは、複数のカートリッジに直接接続され、前記複数のカートリッジの各々は異なる構築材料配合物を含み、前記印刷ヘッドは、複数のチャネルを有するマニホールドを含み、前記複数のチャネルの各々は別個のカートリッジから受け取った構築材料配合物を別個のノズルアレイに搬送する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記廃棄することは、前記マニホールドの第1のチャネルから第1の構築材料配合物を廃棄することであり、前記接続することは、前記マニホールドの前記第1のチャネル以外の少なくとも1つのチャネル内に少なくとも1種類の構築材料配合物を維持したまま行われる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの構築材料配合物は、25℃において50cPs以下の粘度を特徴とする。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの構築材料配合物は、少なくとも2つの硬化性材料を含み、かつ25℃において50cPs以下の粘度を特徴とするモデル材料配合物系であり、前記少なくとも2つの硬化性材料の平均分子量は500g/mol以下である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記配合物系は、硬化したときに非エラストマー性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含み、少なくとも1つの配合物は、硬化したときに80℃よりも高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの疎水性硬化性材料と、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料と、を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記配合物系は、硬化したときにエラストマー性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含み、前記少なくとも1つの配合物は、エラストマー性硬化性材料及び単官能硬化性材料を含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの配合物は、二官能硬化性材料を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元印刷システムが提供される。前記システムは、それぞれ異なる構築材料配合物を含む複数のカートリッジと、複数のノズルアレイを有し、前記複数のカートリッジに直接接続された印刷ヘッドであって、複数のチャネルを有するマニホールドを含み、前記複数のチャネルの各々は別個のカートリッジから受け取った構築材料配合物を別個のノズルアレイに搬送する、印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを操作するコントローラと、を備える。本発明の好ましい実施形態によれば、前記三次元印刷システムは、前記複数のカートリッジに直接接続されていない印刷ヘッドを有しない。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記システムは、複数の流れ制御デバイスを備え、前記コントローラは、前記流れ制御デバイスを選択的に制御するように構成される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記カートリッジの数は前記ノズルの数よりも多く、前記マニホールドはM個の入口ポート及びN個の出口ポートを備え、M>Nであり、Mは前記カートリッジの数であり、Nは前記ノズルアレイの数である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記システムは、複数の流れ制御デバイスを備え、前記コントローラは、前記カートリッジのうちの少なくとも1つから構築材料配合物が流出することを防止するために、前記流れ制御デバイスを選択的に制御するように構成される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記コントローラは、前記ノズルアレイのうちの少なくとも1つを操作して、所定の位置で各チャネルから構築材料配合物を廃棄させるように構成され、かつ流れ制御デバイスを操作して、前記廃棄された構築材料配合物とは異なる構築材料配合物の前記各チャネルへの流れを確立するように構成される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記廃棄することは、第1のノズルアレイを介して前記マニホールドの第1のチャネルから第1の構築材料配合物を廃棄することであり、前記流れを確立することは、少なくとも1種類の構築材料配合物を前記マニホールドの前記第1のチャネル以外の少なくとも1つのチャネル内に維持しながら、第2の構築材料配合物のための流れを確立することである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記コントローラは、前記第1のノズルアレイを制御して、前記第1の構築材料配合物及び前記第2の構築材料配合物を、同じ層に属する位置に、かつ前記層上における印刷ヘッドの別々の通過の間に注出するように構成される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記所定の位置は、三次元物体が前記システムによって作製される作業面の区域外の、前記作業面上にある。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記所定の位置は、前記システムによって作製される三次元物体の内部領域にある。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記所定の位置は、三次元物体が前記システムによって作製される体積の犠牲領域内にある。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記システムは、前記印刷ヘッドの外側で前記構築材料を加熱する予熱システムを有しない。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記印刷ヘッドは、50℃未満の温度で前記構築材料配合物を注出するように構成される。
【0027】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0028】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実装は、選択されたタスクを手動で、自動で、又はそれらの組み合わせで実行又は完了することを伴うことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用してハードウェア、ソフトウェア若しくはファームウェア、又はそれらの組み合わせによって実装することができる。
【0029】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的な実施形態による1つ又は複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。所望により、前記データプロセッサは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。所望により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/又はキーボード若しくはマウスなどのユーザ入力デバイスもまた、所望により提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載される。ここで詳細に図面を特に参照すると、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による座標変換を説明する概略図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による座標変換を説明する概略図である。
【
図4】
図4は、典型的な予熱プロセスの概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明のいくつかの実施形態による印刷システムの概略図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による印刷システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、印刷に関し、より具体的には、三次元印刷のための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、かつ/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素及び/又は方法の構成及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0034】
本実施形態の方法及びシステムは、物体の形状に対応する構成済みパターンで複数の層を形成することによって、層ごとにコンピュータオブジェクトデータに基づいて三次元物体を製造する。コンピュータオブジェクトデータは、限定はしないが、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、OBJファイルフォーマット(OBJ)、3D製造フォーマット(3MF)、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットとすることができる。
【0035】
本明細書で使用される「物体(object)」という用語は、物体全体又はその一部を指す。
【0036】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中、装置は、二次元の層又は表面上の複数の目標位置を訪れ、各目標位置又は目標位置のグループについて、前記目標位置又は目標位置のグループが構築材料配合物で占有されるべきかどうか、及びどの種類の構築材料配合物をそこに送達するべきかを決定する。この決定は、前記表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷、より好ましくは三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、構築材料配合物は、支持構造上に層状に構築材料配合物を堆積させるために、ノズルの1つ又は複数のアレイ(配列)を有する印刷ヘッドから注出される。したがって、AM装置は、占有されるべき目標位置に構築材料配合物を注出し、他の目標位置を空のままにする。装置は、典型的には、ノズルの複数のアレイ(配列)を含み、その各々は、異なる構築材料配合物を注出するように構成することができる。したがって、異なる標的位置は、異なる構築材料配合物によって占有され得る。構築材料配合物の種類は、モデル材料配合物及びサポート材料配合物という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。前記サポート材料配合物は、作製プロセス及び/又は他の目的、例えば、中空若しくは多孔性の物体を提供する間に、物体又は物体部分を支持するための支持マトリックス又は構造として機能する。サポート構造は、例えばさらなる支持強度のために、モデル材料配合要素をさらに含むことができる。
【0038】
前記モデル材料配合物は、一般に、付加製造に使用するために配合され、単独で、すなわち、任意の他の物質と混合又は組み合わせる必要なく、三次元物体を形成することができる組成物である。
【0039】
最終的な三次元物体は、前記モデル材料配合物から作られ、又は複数のモデル材料配合物の組み合わせ、若しくはモデル材料配合物とサポート材料配合物との組み合わせから作られ、又はこれらの改変物から作られる(例えば、硬化により)。これらの操作はすべて、固体自由形状作製法の当業者に周知である。
【0040】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2つ以上の異なるモデル材料配合物を注出することによって製造され、各材料配合物は、AM装置の(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)ノズルの異なるアレイから注出される。いくつかの実施形態では、異なるモデル材料配合物を注出する、ノズルの2つ以上のそのようなアレイは、両方ともAM装置の同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、異なるモデル材料配合物を注出するノズルの複数のアレイは、別個の印刷ヘッドに配置され、例えば、第1のモデル材料配合物を注出するノズルの第1のアレイは、第1の印刷ヘッドに配置され、第2のモデル材料配合物を注出するノズルの第2のアレイは、第2の印刷ヘッドに配置される。
【0041】
いくつかの実施形態では、モデル材料配合物を注出するノズルのアレイと、サポート材料配合物を注出するノズルのアレイとは、両方とも、同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、モデル材料配合物を注出するノズルのアレイと、サポート材料配合物を注出するノズルのアレイとは、両方とも、別個に同じ印刷ヘッドに配置される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を
図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備える注出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、以下に記載される
図2A~
図2Cに示されるように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられた、ノズルの1つ又は複数のアレイ122を備え、それを通して液体構築材料配合物124が注出される。
【0043】
好ましくは、しかし必須ではないが、装置114は三次元印刷装置であり、この場合、前記印刷ヘッドは印刷ヘッドであり、前記構築材料配合物はインクジェット技術を介して注出される。一部の用途では、付加製造装置が三次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態に従って企図される付加製造装置の代表的な例には、熱溶解積層装置及び溶融材料配合物堆積装置(fused material formulation deposition apparatus)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
各印刷ヘッドは、所望により、かつ好ましくは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱デバイス)及び材料配合物レベルセンサを所望により含み得る1つ又は複数の構築材料配合物リザーバを介して供給される。構築材料配合物を注出するために、例えば圧電インクジェット印刷技術におけるように、印刷ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させるために印刷ヘッドに電圧信号が印加される。各ヘッドの注出速度は、ノズルの数、ノズルの種類、及び印加される電圧信号速度(周波数)に依存する。本発明に関連して、感熱印刷ヘッドの使用も考慮される。圧電印刷ヘッド及び感熱印刷ヘッドはいずれも、固体自由形状製造法の当業者に知られている。
【0045】
好ましくは、必須ではないが、注出ノズル又はノズルアレイの全体の数は、注出ノズルの半分がサポート材料配合物を注出するように指定され、注出ノズルの半分がモデル材料配合物を注出するように指定されるように選択される、すなわち、モデル材料配合物を吐出するノズルの数がサポート材料配合物を吐出するノズルの数と同じであるように選択される。
図1Aの代表例では、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c及び16dが示されている。各ヘッド16a、16b、16c、及び16dは、ノズルアレイを有する。この実施例において、ヘッド16a及び16bは、モデル材料配合物用に指定することができ、ヘッド16c及び16dは、サポート材料配合物用に指定することができる。したがって、ヘッド16aは、あるモデル材料配合物を注出することができ、ヘッド16bは、別のモデル材料配合物を注出することができ、ヘッド16c及び16dはいずれも、サポート材料配合物を注出することができる。代替的な実施形態では、例えば、ヘッド16c及び16dを組み合わせて、サポート材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドとしてもよい。別の代替的な実施形態では、任意の1つ又は複数の前記印刷ヘッドは、2つ以上の材料配合物を堆積させるための2つ以上のノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデル材料配合物、又はモデル材料配合物及びサポート材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有することができ、各配合物は、異なるアレイ又は異なる数のノズルを介して堆積される。
【0046】
しかし、本発明の範囲を限定するものではなく、モデル材料配合物の印刷ヘッド(モデリングヘッド)の数と、サポート材料配合物印刷用ヘッド(サポートヘッド)の数とは、異なっていてもよいことを理解されたい。一般に、モデル材料配合物を注出するノズルのアレイの数、サポート材料配合物を注出するノズルのアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、サポート材料配合物の最大注出速度とモデル材料配合物の最大注出速度との間の所定の比率aを提供するように選択される。所定の比率aの値は、好ましくは、形成される各層において、モデル材料配合物の高さがサポート材料配合物の高さに等しくなることを確実にするように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0048】
例えば、a=1の場合、サポート材料配合物の全体的な注出速度は、すべてのノズルのアレイが動作する場合、一般にモデル材料配合物の全体的な注出速度と同じである。
【0049】
装置114は、例えば、p個のノズルからなるm個のアレイをそれぞれ有するM個のモデリングヘッドと、q個のノズルからなるs個のアレイをそれぞれ有するS個のサポートヘッドとを、M×m×p=S×s×qとなるように備えることができる。M×m個のモデリングアレイ及びS×s個のサポートアレイの各々は、アレイのグループから組み立て及び分解が可能な別個の物理的ユニットとして製造することができる。この実施形態では、そのような各アレイは、所望により、かつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0050】
装置114は、堆積された材料配合物を硬化させることができる光、熱などを放出するように構成された任意のデバイスを含むことができる固化デバイス324をさらに備えることができる。例えば、固化デバイス324は、使用されるモデル材料配合物に応じて、例えば、紫外線若しくは可視若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る、1つ又は複数の放射線源を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、固化デバイス324は、モデル材料配合物を硬化又は固化させる役割を果たす。
【0051】
固化デバイス324に加えて、装置114は、所望により、かつ好ましくは、溶媒蒸発のための追加の放射線源328を備える。放射線源328は、所望により、かつ好ましくは赤外線を発生させる。本発明の様々な例示的な実施形態では、固化デバイス324は、紫外線を発生させる放射線源を備え、放射線源328は赤外線を発生させる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1つ又は複数のファンなどの冷却システム134を備える。
【0053】
前記印刷ヘッド及び放射線源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を往復移動するように好ましくは動作するフレーム又はブロック128内に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源は、印刷ヘッドの後に続いて、印刷ヘッドによって注出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に位置決めされている。一般的な慣例に従い、X-Y-Zデカルト座標系が、X-Y平面がトレイ360に平行になるように選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、例えばローラ326などの1つ又は複数のレベリングデバイス132をさらに備える。レベリングデバイス326は、新たに形成された層の上に次の層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを整え、レベリングし、かつ/又は確立する役割を果たす。レベリングデバイス326は、好ましくは、レベリング中に発生した過剰な材料配合物を収集するための廃棄物収集デバイス136を備える。廃棄物収集デバイス136は、前記材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を備えることができる。
【0054】
使用中、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で、所定の構成で構築材料配合物を選択的に注出する。構築材料配合物は、典型的には、1つ又は複数の種類のサポート材料配合物及び1つ又は複数の種類のモデル材料配合物を含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射源126によるモデル材料配合物の硬化が行われる。堆積したばかりの層の開始点に戻る、ヘッドの逆方向の通過において、所定の構成に従って、構築材料配合物の追加の注出を実行することができる。印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動の経路をたどる、レベリングデバイス326によって整えられてもよい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの開始点に戻ると、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層を続いて構築することができる。あるいは、印刷ヘッドは、順方向と逆方向の移動の間で、又は2回以上の順方向-逆方向の移動の後に、Y方向に移動してもよい。1つの層を完成させるために印刷ヘッドによって実行される一連の走査は、本明細書では1回の走査サイクルと呼ばれる。
【0055】
層が完成すると、トレイ360は、続いて印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ方向に下げられる。この手順を繰り返して、三次元物体112を層ごとに形成する。
【0056】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の印刷ヘッドの順方向通過と逆方向通過との間でZ方向に変位されてもよい。このようなZ変位は、表面にレベリングデバイスを一方向から接触させ、他方向からは接触させないために実行される。
【0057】
システム110は、所望により、かつ好ましくは、複数の構築材料配合物の容器又はカートリッジを備え、複数の構築材料配合物を作製装置114に供給する構築材料配合物供給システム330を備える。
【0058】
制御ユニット152は、作製装置114を制御し、所望により、かつ好ましくは供給システム330も制御する。制御ユニット152は、典型的には、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などのコンピュータオブジェクトデータに基づいた作製命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、制御ユニット152は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイにおける構築材料配合物の温度を制御する。
【0059】
製造データが制御ユニット152にロードされると、制御ユニット152は、ユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を使用して、又はユニット152と通信するユーザインターフェース116を使用して、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインターフェース116は、キーボード、タッチスクリーンなどであるがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の種類のものとすることができる。例えば、制御ユニット152は、追加の入力として、色、特徴的な歪み及び/又は転移温度特性、粘度、電気的性質、磁気的性質などであるがこれらに限定されない、構築材料配合物の1つ又は複数の種類及び/又は属性を受信することができる。他の属性及び属性群も企図される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態による、物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的な例を
図1B~
図1Dに示す。
図1B~
図1Dは、システム10の上面図(
図1B)、側面図(
図1C)及び等角図(
図1D)を示す。
【0061】
本実施形態では、システム10は、トレイ12及び複数のインクジェット印刷ヘッド16を備え、各インクジェット印刷ヘッド16は、それぞれ1又は複数の、分離されたノズル群を有する1又は複数のノズルのアレイを有する。トレイ12は、ディスクの形状を有してもよく、又は環状であってもよい。垂直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も企図される。
【0062】
トレイ12及びヘッド16は、所望により、かつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間で相対的な回転移動を可能にするように、取り付けられる。この相対的な回転移動は、(i)ヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するようにトレイ12を構成すること、(ii)トレイ12に対して垂直軸14を中心に回転するようにヘッド16を構成すること、又は(iii)垂直軸14を中心に異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するようにトレイ12及びヘッド16の両方を構成することによって達成され得る。システム10のいくつかの実施形態は、トレイがヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)に特に重点を置いて後述されるが、本出願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も企図していることを理解されたい。本明細書に記載のシステム10の実施形態のいずれも、構成(ii)及び(iii)のいずれかに適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提供される当業者は、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
【0063】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では垂直方向zと呼ぶ。
【0064】
本明細書で使用される「半径方向位置」という用語は、軸14から特定の距離にあるトレイ12上又はその上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸14からの特定の距離、かつ中心が軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0065】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上又は上方の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0066】
本明細書で使用される「垂直位置」という用語は、特定の点において垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0067】
トレイ12は、三次元印刷の構築プラットフォームとして機能する。1つ又は複数の物体が印刷される作業面積は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業区域は環状である。作業区域は26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成の間ずっと、同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば、振動方式で)回転方向を反転させる。トレイ12は、所望により、かつ好ましくは取り外し可能である。トレイ12を取り外すことは、システム10のメンテナンスのため、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には、1つ又は複数の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)が設けられ、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば、異なる重量)や異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などに指定される。トレイ12の交換は、必要に応じて、手動又は自動で行うことができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下方の位置からトレイ12を取り外し、交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換デバイス36を備える。
図1Bの代表的な図では、トレイ交換デバイス36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動部38として示されているが、他の種類のトレイ交換デバイスも企図される。
【0068】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、任意の上述のAMシステムに使用することができる。
【0069】
図2A~
図2Bは、1つ(
図2A)及び2つ(
図2B)のノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16を示す。アレイ内のノズルは、好ましくは直線に沿って直線状に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の直線状ノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、所望により、かつ好ましくは、互いに平行であり得る。印刷ヘッドがノズルの2つ以上のアレイ(例えば、
図2B)を有する場合、ヘッドのすべてのアレイに同じ構築材料配合物を供給しても、同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる構築材料配合物を供給してもよい。
【0070】
システム110と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、かつ好ましくは、走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0071】
システム10と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、かつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で半径方向に(半径方向に平行に)配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いに対して角度をなし、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ1に位置決めすることができ、別のヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ2に位置決めすることができる。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはφ1-φ2であり、2つのヘッドの直線状ノズルアレイ間の角度もφ1-φ2である。
【0072】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの印刷ヘッドは、典型的には互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが
図2Cに示されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、システム10は、ヘッド16の下方に位置する安定化構造体30を、安定化構造体30とヘッド16との間にトレイ12が位置するように、備える。安定化構造体30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減する役割を果たすことができる。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、安定化構造体30はまた、好ましくは、安定化構造体30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12を有する)ように回転する。
【0074】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、所望により、かつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に平行な垂直方向zに沿って移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって前記垂直距離を変化させる構成では、安定化構造体30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。前記垂直距離が垂直方向に沿ってヘッド16によって変化する構成では、トレイ12の垂直位置を固定したまま、安定化構造体30も固定された垂直位置に維持される。
【0075】
垂直移動は、垂直駆動部28によって確立することができる。1つの層が完成すると、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を所定の垂直間隔だけ増加させる(例えば、ヘッド16に対してトレイ12を下げる)ことができる。この手順を繰り返して、三次元物体を層状に形成する。
【0076】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び所望により、かつ好ましくは、システム10の1つ又は複数の他の構成要素の動作、例えばトレイ12の移動は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、前記回路によって読み取り可能な不揮発性メモリ媒体とを有することができ、前記メモリ媒体は、前記回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するような制御動作を回路に実行させるプログラム命令を記憶する。
【0077】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータオブジェクトデータに基づいて作製命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することができる。オブジェクトデータフォーマットは、典型的には、デカルト座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータオブジェクトデータ内の各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、所望により、かつ好ましくは、変換された座標系で作製命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータオブジェクトデータによって提供される元の座標系で作製命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0078】
座標の変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能になる。固定トレイを有する非回転システムでは、前記印刷ヘッドは、典型的には、直線に沿って固定トレイの上方を往復移動する。そのようなシステムでは、ヘッドの注出速度が均一であれば、印刷解像度はトレイ上の任意の点で同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントのすべてのノズルが同時にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、所望により、かつ好ましくは、異なる半径方向位置で等量の過剰な材料配合を確保するように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表的な例は、物体の3つのスライス(各スライスは物体の異なる層の作製命令に対応する)を示す
図3A~
図3Bに提供されており、
図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、
図3Bは、座標変換の手順をそれぞれのスライスに適用した後の同じスライスを示す。
【0079】
典型的には、コントローラ20は、作製命令に基づいて、かつ後述する記憶したプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0080】
一般的に、コントローラ20は、三次元物体をトレイ12上に印刷するなどのために、トレイ12の回転中に、構築材料配合物の液滴を層状に注出するように印刷ヘッド16を制御する。
【0081】
システム10は、所望により、かつ好ましくは、使用されるモデル材料配合物に応じて、例えば、紫外線若しくは可視若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る、1つ又は複数の放射線源18を備える。放射線源は、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むがこれらに限定されない任意の種類の放射線放出デバイスを含むことができる。放射線源18は、モデル材料配合物を硬化又は固化させる役割を果たす。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射線源18の動作は、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は放射線源18を作動及び停止させることができ、所望により、放射線源18によって生成される放射線の量も制御することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1つ又は複数のレベリングデバイス32をさらに備える。レベリングデバイス32は、新たに形成された層の上に次の層を形成する前に、新たに形成された層を整える役割を果たす。いくつかの実施形態では、レベリングデバイス32は、円錐ローラの形状を有し、その対称軸34はトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面はトレイの表面に平行になるように位置決めされる。この実施形態は、システム10(
図1C)の側面図に示されている。
【0083】
前記円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0084】
前記円錐ローラの開口角は、好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間に一定の比率が存在するように選択される。この実施形態は、ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pが点pの垂直方向に下方の点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、ローラ32が層を効率的にレベリングすることを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、軸14から最も近い距離において半径R1、及び軸14から最も遠い距離において半径R2を有する円錐台形状を有し、パラメータh、R1及びR2は、関係R1/R2=(R-h)/hを満たし、ここでRは、ローラの軸14から最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0085】
レベリングデバイス32の動作は、所望により、かつ好ましくは、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、レベリングデバイス32を作動及び停止させることができ、所望により、垂直方向(軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行で、軸14に向かって又はそれから離れる)に沿ってその位置を制御することもできる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業区域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向に沿ったヘッド16の移動は、所望により、かつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。
【0087】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)ノズルの異なるアレイから異なる材料配合物を注出することによる物体の作製を企図する。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択された材料配合物の組み合わせ及びそれらの性質を規定する能力を提供する。本実施形態によれば、層を用いた各材料配合物の堆積の空間位置は、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を達成するために、又は2つ以上の異なる材料配合物による実質的に同じ三次元位置又は隣接する三次元位置の占有を達成するために規定され、その結果、層内の材料配合物の堆積後の空間的組み合わせを可能にすることにより、それぞれの位置又は複数の位置で複合材料配合物を形成する。
【0088】
モデル材料配合物の任意の堆積後の組み合わせ又は混合が企図される。例えば、特定の材料配合物が注出された後、当該材料配合物はその元の性質を維持していてもよい。しかし、同じ又は近くの場所に注出される別のモデル材料配合物又は他の注出される材料配合物と同時に注出される場合、注出された材料配合物とは異なる性質又は性質群を有する複合材料配合物が形成されてもよい。
【0089】
したがって、本実施形態は、物体の異なる部分において、物体の各部分を特徴付けるために所望される性質に従って、広範囲の材料配合物の組み合わせの堆積、及び材料配合物の複数の異なる組み合わせからなり得る物体の作製を可能にする。
【0090】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作のさらなる詳細は、米国特許出願公開第2010/0191360号に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
典型的なインクジェット印刷ヘッドは、1つ又は複数のチャネルを有するマニホールドを備え、各チャネルは、それぞれのノズルアレイによってそれぞれの配合物を注出するために、液体材料配合物を別個の印刷ヘッドノズルアレイに搬送する。ノズルアレイは、印刷ヘッドオリフィスプレート上に取り付けられ、注出用の一定量の材料配合物を保持するためのセルキャビティをそれぞれ有する複数のノズルと、材料配合物が注出される出口ポートと、を備える。特定のノズルアレイ内のすべてのノズルのセルキャビティは、典型的には、ヘッドのマニホールドの特定の別個のチャネルに流体接続される。
【0092】
多くの従来の三次元印刷システムでは、構築材料配合物は、ヘッドのマニホールドに入る前に、構築材料及び印刷ヘッドに適した作業温度まで予熱される。予熱は、典型的には、印刷ヘッド内で行われる加熱に加えて行われる。典型的な予熱プロセスを
図4に示す。予熱要素160は、材料供給部42(又は330)とヘッド16との間の流体経路に位置決めされる。予熱要素160は、ヘッド16から離間しており、導管162を介して供給部42と流体連通し、導管164を介してヘッド16と流体連通する。印刷ヘッドに予熱器を取り付けた構成も知られている。導管162には、コントローラ20(又は152)によって制御され、供給部42から予熱器160へ、かつ予熱器160からヘッド16への構築材料の流れを生成するように構成されたポンプ170が設けられる。
【0093】
本発明者らは、特定のヘッドによって注出される構築材料が別の構築材料に交換される場合、対象の予熱器、リザーバ、及びヘッドへの流体経路に存在するすべての材料は、例えば、「パージ」としても知られるプロセスにおいて、印刷区域の外側に材料を注出するように印刷ヘッドを操作することによって廃棄されなければならないことを見出した。したがって、予熱器及びリザーバの使用は、物体が印刷されている間にパージ事象が実行される場合、システムによって生成される廃棄物の量を著しく増加させ、全体的な印刷時間を増加させる。
【0094】
従来のシステムはまた、制御可能に構築材料を導管164及びヘッド16から予熱要素160又は供給部42に引き込むことを可能にするための流体引き込みループ166を備えることがある。流体引き込みループ166は、典型的には、ループ166内の流れを制御するためのポンプ168を備える。いくつかのシステムはまた、注出のために印刷ヘッドマニホールドに入る前に加熱された材料を保持するためのリザーバ172を備える。本発明者らは、この引き込みプロセスは全体的なパージ時間及び発生する廃棄物の量を増加させるので、この方策は最適ではないことを見出した。
【0095】
本発明者は、上記課題を解決するための探索において、予熱器が不要な状況が多いことを見出した。特に、予熱器は、低い動作温度で材料を注出するシステムでは不要である。そのようなシステムとしては、高粘度材料配合物を注出することができる注出ヘッドを有するシステムが挙げられ、この場合加熱によって粘度を低下させる必要はない。別の例としては、低い作業温度(例えば、50℃未満)で吐出可能な低粘度材料配合物を注出するように設計されたシステムが挙げられる。上記のいずれの場合も、配合物は、典型的には、供給カートリッジから出る間にこれらの配合物の作業温度に近くなるか又は作業温度と同じになるので、予熱された配合物の連続供給を確実にするために予熱器を使用する必要はない。予熱した配合物を保存するための専用のリザーバも不要になる。したがって、構成部品がより少ないため、エネルギー及び時間の節約、並びにシステムによって生成される廃棄物の削減に加えて、本発明者によって見出された解決策はまた、より小型で、より安価で、より環境に優しいシステムを提供する。さらに、カートリッジと印刷ヘッドとの間で使用される材料がより少ないシステムは、印刷ヘッドの特定のチャネルにおいて、ある材料から別の材料への迅速な切り替えを可能にする。例えば、印刷ブロックの通過/走査の間や、通過の途中においてさえも、切り替えを行うことができる。これは、印刷システムが限られた数の印刷チャネルしか備えないが、多数の材料を使用して物体を製造することが望ましい場合に特に有用であり得る。特定の実施形態では、単一のチャネルを有する印刷ヘッドによって複数の材料を注出することができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態に適した構築材料供給スキームの概略図を
図5A及び
図5Bに示す。供給方式は、上述のシステム10及び110のいずれにも適している。
【0097】
図5Aは、複数のカートリッジ212からノズルのそれぞれの複数のアレイ122に構築材料を分配する複数のチャネル214を含むマニホールド210を示す。
図5Aには、3つのカートリッジ212及びノズルの3つのアレイ122が示されているが、単一のカートリッジ及び単一のアレイも含む任意の数のカートリッジ及び任意の数のアレイが企図されることを理解されたい。
図5Aに示されるマニホールド210は、3対3型(3つの入口ポート及び3つの出口ポート)であるが、任意の他の種類のマニホールドを使用することができる。典型的には、マニホールド210の入口ポートの数はカートリッジの数に等しく、マニホールド210の出口ポートの数はノズルのアレイの数に等しい。
図5Aは、カートリッジの数がノズルのアレイの数(この例では3つ)と同じである実施形態を示す。カートリッジの数がノズルのアレイの数と同じではない(例えば、ノズルのアレイよりもカートリッジが多い)好ましい実施形態を、
図5Bを参照して以下に説明する。
【0098】
(例えば
図2Bに概略的に示すように)同じ注出ヘッドのオリフィスプレート内にアレイ122のうちの2つ、3つ、又はそれ以上があってもよい。あるいは、(例えば、
図2Aに概略的に示すように)異なる注出ヘッドのオリフィスプレート内にアレイ122の各々があってもよい。またあるいは、(例えば、
図2Bに概略的に示すように)注出ヘッドのうちの1つのオリフィスプレート内にアレイ122のうちの2つ、3つ、又はそれ以上があってもよい。あるいは、(例えば、
図2Aに概略的に示すように)異なる注出ヘッドのオリフィスプレート内にアレイ122の各々があってもよい。
【0099】
各アレイ122は、マニホールド210の異なるチャネル214と流体連通している。特定のカートリッジ212からカートリッジ212のそれぞれのチャネル214を介してそれぞれのノズルアレイ122に入る構築材料の流れは、これらに限定されないが、弁及び/又はポンプなどの流れ制御デバイス216によって制御することができる。流れが重力によって確立される実施形態では、流れ制御デバイス216はバルブとして具現化すれば十分である。重力によって、又は重力のみによって流れを確立することができない実施形態では、流れ制御デバイス216はポンプを含む。各カートリッジ212について、流れは、好ましくは、それぞれのカートリッジ212と、マニホールド210のそれぞれのチャネル214と、の間の直接的な流体連通を確立する導管218を介しており、構築材料を内部に保持又は維持する追加の構成要素、例えば予熱器又はリザーバを通過することはない。これは、材料が最初に予熱器160に流入するため供給部42からヘッド16への構築材料の直接の流れがない従来のシステム(例えば、
図4に示すシステム)とは異なる。
【0100】
好ましい実施形態では、AMシステムは、1つ又は複数のカートリッジに直接接続されていない注出ヘッドを有しない。
【0101】
図5Bは、異なる注出ヘッドが、異なるマニホールドを介して、異なるセットのカートリッジによって供給される構築材料供給スキームを示す。
図5Bには、各々が4つのカートリッジによって供給されるように配置された2つの注出ヘッド16a及び16bのブロックが示されているが、本実施形態は任意の数のヘッドを企図している。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのヘッドについて、ヘッドに接続されるカートリッジの数は、このヘッドのノズルアレイの数よりも多い。これらの実施形態では、このヘッドを供給するマニホールドはM対N型であり、M>Nであり、ここでMはヘッドに供給するカートリッジの数であり、Nはヘッドのノズルアレイの数である。以下に例示されるように、これにより、前記システムは、多くの異なる種類の材料から物体を作製することができる。具体的には、物体を作製する材料の数は、システム内にあるノズルアレイの数よりも多くすることができる。
【0103】
図5Bの概略図では、限定と見なされるべきではないが、ヘッド16aは、2つのノズルアレイ122a及び122bを備え、4対2マニホールド210aを介して4つのカートリッジ212-1、212-2、212-3、212-4に接続され、ヘッド16bは、2つのノズルアレイ122c及び122dを備え、4対2マニホールド210bを介して4つのカートリッジ212-5、212-6、212-7、212-8に接続される。各カートリッジ内の材料は、流れ制御デバイス2161~2168を介してそれぞれのマニホールドに送達される。
【0104】
そのような構成の使用の例示的な実施形態では、トレイのある領域上におけるブロックの第1の通過(例えば、これに限定されないが、システム110の順方向走査)中に、第1のセットの流れ制御デバイス(本実施例では、デバイス216-1、216-4、216-6、及び216-7)が作動し、その結果、例えば、アレイ122aがカートリッジ212-1からの材料を注出し、アレイ122bがカートリッジ212-4からの材料を注出し、アレイ122cがカートリッジ212-6からの材料を注出し、アレイ122dがカートリッジ212-7からの材料を印刷する。ブロックの第2の通過(例えば、これに限定されないが、システム110の逆方向走査)において、第2のセットの流れ制御デバイス(例えば、本実施例ではデバイス216-2、216-5、及び216-7)が作動し、その結果、例えば、アレイ122a及びアレイ122bは両方ともカートリッジ212-2からの材料を注出し、アレイ122cはカートリッジ212-5からの材料を注出し、アレイ122dは引き続き(上述の順方向走査と同様に)カートリッジ212-7からの材料を注出する。したがって、この実施例は、4つのノズルアレイを使用して、6つの異なる材料(カートリッジ212-1、212-2、212-4、212-5、212-6、及び212-7に含まれる)から物体を作製することを説明する。
【0105】
第2のセットの流れ制御デバイスの作動の前に、パージ又は「スピッティング」プロトコルが使用され、マニホールド内、及び所望により導管内の第1の材料の流れからの残留材料が注出されて、それぞれのマニホールドチャネルを空にする。そのようなパージは、印刷された物体にとって重要ではない領域(例えば、これに限定されないが、物体のコアなどの、内部の見えない部分内)、又はサポート材料が注出されるべき物体の領域、又は印刷区域の外側で(例えば、サービスステーションにおいて、トレイの空の場所においてなど)行うことができる。
図5に示す構成の利点は、導管218、マニホールド212、及びノズル122に存在する材料の量が非常に少ないため、構築材料廃棄物の量が最小限となり、いずれにしても予熱器を使用する従来のシステムの廃棄物よりも大幅に少ないことである。
【0106】
図5A及び
図5Bに示すスキームで使用することができる注出ヘッドとしては、低い作業温度(例えば、50℃未満)で構築材料配合物を注出するように設計及び構成された任意の三次元印刷ヘッドが挙げられる。
【0107】
例えば、前記印刷ヘッドを使用して、25℃で50cPs以下の粘度を特徴とするモデル材料配合物を注出することができる。さらなる例として、前記印刷ヘッドを使用して、2つ以上の硬化性材料を含み、25℃で50cPs以下の粘度を特徴とするモデル材料配合物系を注出することができる。好ましくは、前記少なくとも2つの硬化性材料の平均分子量は、500g/mol以下である。本実施形態の印刷ヘッドによって注出され得る配合物系のより詳細な説明は、以下の実施例の項に記載される。
【0108】
別の例として、低い作業温度(例えば、50℃未満)でより高い粘度を特徴とする材料配合物を注出することができる印刷ヘッド、例えば、これらに限定されないが、約25℃で30cpsを超える、又は50cPsを超える、又は55cPsを超える、又は60cPsを超える、又は65cPsを超える、又は70cPsを超える粘度を特徴とする構築材料を注出することができる印刷ヘッドが挙げられる。
【0109】
カートリッジとマニホールドとの間の直接接続は、マニホールド、導管及び/又はポンプ内の材料の残留部のみを廃棄することによって、ある印刷ヘッドによって注出される材料の迅速な交換又は取替を可能にする。これらの構成要素内の材料の量は通常少ないため、廃棄は時間がかからず無駄が少なく、したがって環境に優しい。材料の残留部が廃棄されると、異なる構築材料を保持する新しいカートリッジを導管に接続することができ、印刷プロセスを再開することができる。
【0110】
前記マニホールドからの構築材料の廃棄は、好ましくは、特定のカートリッジからの特定の構築材料を、その注出のために構成されたそれぞれの印刷ヘッドノズルアレイに搬送するチャネルからのみ行われる。これにより、同じ印刷ヘッドに接続された別のカートリッジを交換することなく、印刷ヘッドに接続されたカートリッジを交換することができる。
【0111】
代表的な実施例として、構築材料Aを保持する第1のカートリッジと構築材料Bを保持する第2のカートリッジとが同じマニホールドに接続され、このマニホールドは材料Aを第1のチャネルを通して第1のノズルアレイに導き、材料Bを第2のチャネルを通して第2のノズルアレイに導くと仮定する。前記ヘッドが操作されると、材料A及びBを注出する。材料Bを材料Cと交換することが所望される場合、ヘッドは、印刷されている物体に影響を与えない印刷区域の領域(例えば、物体の内部部位、サポート材料が注出されるべき領域など)に材料Bを廃棄したり、印刷区域外の場所(サービスステーション)に運ばれたりすることができ、第2のノズルアレイは、第2のチャネル、並びにそれぞれの導管及びポンプから材料Bを廃棄するように作動する。材料Aは、第1のチャネル内に残っていてもよい。その後、材料Cを含む第3のカートリッジを第2のチャネルに接続することができ、材料A及びCで印刷プロセスを継続することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0113】
「例示的な(exemplary)」という用語は、本明細書では「例、事例又は例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例示的な」として説明されている任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではなく、及び/又は他の実施形態からの特徴の組み込みを除外するべきではない。
【0114】
「所望により(optionally)」という用語は、本明細書では「提供される実施形態もあり、提供されない実施形態もある」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り、複数の「所望による」特徴を含むことができる。
【0115】
「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」」という用語及びそれらの活用形は、「含むがそれに限定されない」ことを意味する。
【0116】
「からなる(consisting of)」」という用語は、「含み、かつそれに限定される」ことを意味する。
【0117】
「本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、かかる追加の成分、工程及び/又は部分が特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限られることを意味する。
【0118】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その、前記(the)」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物も包含する複数の化合物を含み得る。
【0119】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0120】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲(ranging/ranges between)」、及び第1の指示数「から(to)」第2の指示数「までの範囲(ranging/ranges from)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示数並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0121】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態に置いて適宜提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、かかる実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0122】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0123】
ここで、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0124】
<好適な配合物系>
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元物体の付加製造に使用可能なモデル材料配合物系であって、本明細書で定義されるように、25℃で50cPs以下の粘度を特徴とするモデル材料配合物系が提供される。
【0125】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部によれば、配合物系における各配合物は、25℃で40cPs以下、又は30cPs以下、又は25cPs以下、又は20cPs以下、さらには20cPs未満の粘度を特徴とする。
【0126】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、配合物系中の各配合物は、25℃で約8~約50cPs、又は約8~約40cPs、又は約8~約30cPs、又は約8~約25cPs、又は約8~約20cPs、又は約8~約15cPsの範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0127】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、配合物系中の各配合物は、30℃で約8~約50cPs、又は約8~約40cPs、又は約8~約30cPs、又は約8~約25cPs、又は約8~約20cPs、又は約8~約15cPsの範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0128】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、配合物系中の各配合物は、25℃で約8~約50cPs、又は約8~約40cPs、又は約8~約30cPs、又は約8~約25cPs、又は約8~約20cPs、又は約8~約15cPsの範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の粘度を特徴とする。
【0129】
「配合物系」とは、1つ又は複数の配合物、すなわち1つ又は複数のモデル材料配合物を含む系を意味し、ここで系中の各配合物は、示された粘度を特徴とする。配合物系が2つ以上のモデル材料配合物を含む場合、それは多配合物系であり、多材料物体を形成するために組み合わせて使用することができる2つ以上のモデル材料配合物を含む。
【0130】
配合物系が2つ以上の配合物を含む場合、各配合物は同じ又は異なる粘度を特徴とすることができるが、それでも、各配合物は特許請求の範囲に記載の粘度を特徴とする。
【0131】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、本明細書中に記載されるような付加製造プロセスでの使用に適しているか、又は使用可能である。
【0132】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、本明細書中に記載されるような3Dインクジェット印刷での使用に適しているか、又は使用可能である。
【0133】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、前記印刷ヘッドから前記ノズルアレイを通って容易に注出されるような必要な粘度を特徴とし、必要な表面張力を特徴とし、注出(インクジェット印刷)ヘッド及び/又はその中のノズルアレイの詰まりを回避するようにジェット条件において十分に安定(非反応性)であるので、前記ジェット印刷装置、特にインクジェット印刷ヘッド及びその中の、配合物を注出するノズルのアレイと互換性がある。
【0134】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、当技術分野において認識され、本明細書に記載されるような、3Dインクジェット印刷システムのすべての要件を満たす。
【0135】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、本明細書中で定義されるような2つ以上の硬化性材料を含む。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、前記配合物系中の各配合物は、本明細書中で定義されるような2つ以上の硬化性材料を含む。
【0137】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料は、本明細書で定義されるように、モノマー硬化性材料、オリゴマー硬化性材料、又はモノマー硬化性材料とオリゴマー硬化性材料との混合物とすることができる。
【0138】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料は、本明細書中で定義されるような、モノマー硬化性材料とオリゴマー硬化性材料との混合物を含む。
【0139】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、モノマー硬化性材料とオリゴマー硬化性材料との間の重量比は、少なくとも1:1であり、好ましくはより高く、例えば、1.1:1、又は1.2:1、又は1.3:1、又は1.5:1、又は1.6:1、又は1.7:1、又は1.8:1、又は1.9:1、又は2:1、さらにはそれよりも高い。
【0140】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、モノマー硬化性材料とオリゴマー硬化性材料との間の重量比は、1:1~5:1、又は1:1~4:1、又は1.2:1~4:1の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0141】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料は、モノマー硬化性材料とオリゴマー硬化性材料との混合物を含み、モノマー硬化性材料の量は、硬化性材料の総重量の少なくとも50重量%である。
【0142】
いくつかの実施形態では、モノマー硬化性材料の量は、硬化性材料の総重量の少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%である。
【0143】
例示的な実施形態では、モノマー硬化性材料の量は、硬化性材料の総重量の80重量%~90重量%である。
【0144】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料の平均分子量は、500g/mol以下である。
【0145】
「平均分子量」とは、配合物中のすべての硬化性材料の分子量の合計を、配合物中の硬化性材料の数で割ったものを意味する。本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料の平均分子量は、200~500g/mol、又は250~500g/mol、又は300~500g/molの範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0146】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料の相対平均分子量は、500g/mol以下である。
【0147】
「相対平均分子量」とは、配合物又は配合物系中の硬化性材料の濃度に対する配合物又は配合物系中の硬化性材料の平均分子量、すなわち、以下のように、各成分について、配合物又は配合物系中の分子量と相対濃度との合計を、配合物又は配合物系中の硬化性材料の総濃度で除算したものを意味する。
(MW×Aの重量%+MW×Bの重量%)/硬化性材料の総重量%
【0148】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記2つ以上の硬化性材料の相対平均分子量は、200~500g/mol、又は250~500g/mol、又は300~500g/molの範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。上述のように、本実施形態の配合物系中の1つ又は複数の配合物に含まれる硬化性材料は、弾性、硬度、剛性、及び熱安定性などの可変性質、並びにシェル構造及び非シェル構造を含む様々な構造を特徴とする広範囲の硬化材料を提供するように選択することができる。
【0149】
本明細書に記載の配合物系は、本明細書に記載の硬化性材料を含むことができ、同じ物体において、例えば、剛性材料で作られた部分、エラストマー性材料で作られた部分、高いHDT(熱安定性)を有する材料で作られた部分、及び高い耐衝撃性を有する材料で作られた部分を、これらすべての配合物の低温での低粘度を利用しながら、物体の選択された領域に所望の性質を有する材料を提供するモデル配合物を選択することによって提供することができる。
【0150】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、硬化したときに非エラストマー性剛性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含む。
【0151】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、硬化したときにエラストマー性材料を提供する少なくとも1つの配合物を含む。
【0152】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、一緒に使用されるときに、コア領域、及びコア領域を少なくとも部分的に取り囲む少なくとも1つのエンベロープ領域を特徴とするシェル付き物体を形成するのに適した少なくとも2つの配合物を含む。前記2つの配合物は、シェル付き物体について前述したような性質を特徴とするように選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、そのような配合物系は、硬化したときに高いHDT(例えば、60℃超)を特徴とする材料を提供する第1の配合物と、硬化したときに高い耐衝撃性(例えば、35J/m超)を特徴とする材料を提供する第2の配合物とを含む。いくつかの実施形態では、そのような配合物系は、特定の比率の弾性率を特徴とする材料を提供する2つの配合物を含む。
【0153】
本明細書全体を通して、「ゴム」、「ゴム状材料」、「エラストマー性材料」及び「エラストマー」という語句は、エラストマーの特性を特徴とする材料を説明するために交換可能に使用される。「ゴム状様材料(rubbery-like material)」又は「ゴム様材料」という語句は、熱可塑性ポリマーの加硫を伴う従来のプロセスではなく、付加製造(例えば、3Dインクジェット印刷)によって調製された、ゴムの特性を特徴とする材料を説明するために使用される。
【0154】
「ゴム状様材料」という用語は、本明細書では互換的に「エラストマー性材料」とも呼ばれる。
【0155】
エラストマー又はゴムは、低いTg(例えば、10℃未満、好ましくは0℃未満、さらには-10℃未満)を特徴とする可撓性材料である。
【0156】
本明細書において、「Tg」は、E’’曲線の極大値の箇所として定義されるガラス転移温度を指し、E’’は温度の関数としての材料の損失弾性率である。大まかに言えば、Tg温度を含む温度範囲で昇温すると、材料、特に高分子材料の状態は、ガラス状態からゴム状態に徐々に変化する。
【0157】
本明細書において、「Tg範囲」は、E’’値が、上で定義したTg温度でのE’’値の少なくとも半分である(例えば、その値まででありえる)温度範囲である。
【0158】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ポリマー材料の状態は、上で定義したTg範囲内でガラス状態からゴム状態に徐々に変化すると想定される。Tg範囲の最低温度は、本明細書ではTg(低)と称し、Tg範囲の最高温度は、本明細書ではTg(高)と称する。
【0159】
本明細書に記載のいずれかの実施形態では、「Tgより高い温度」という用語は、Tg温度より高い温度、又はより好ましくはTg(高)より高い温度を意味する。
【0160】
以下に、本明細書及び当技術分野で使用されるゴム状材料を特徴付ける性質のいくつかを記載する。
【0161】
ショアA硬度は、ショア硬度又は単に硬度とも呼ばれるが、タイプAデュロメータスケールによって定義される、持続的な押し込み(permanent indentation)に対する材料の耐性を表す。ショア硬度は、通常、ASTM D2240に従って決定される。エラストマー性材料は、典型的には、低いショア硬度、例えば100未満によって特徴付けられる。
【0162】
弾性率は、弾性係数又はヤング率、又は引張弾性率、又は「E」とも呼ばれ、力が加えられたときの弾性変形に対する材料の抵抗を表し、言い換えれば、相反する力が軸に沿って加えられたときにその軸に沿って変形する物体の傾向を表す。弾性率は、典型的には、引張試験(例えば、ASTM D 624による)によって測定され、弾性変形領域における応力-歪み曲線の線形勾配によって決定される。ここで、応力は、変形を引き起こす力を、力が加えられる面積で除算したものであり、歪みは、変形によって引き起こされた何らかの長さパラメータの変化の、前記長さパラメータの元の値に対する割合である。応力は材料にかかる引張力に比例し、歪みはその長さに比例する。エラストマーの弾性率は、典型的には低く、例えば1000MPa未満である。
【0163】
破損点伸び(elongation at failure)εRは、本明細書及び当技術分野では破断点伸び(elongation at break)とも呼ばれるが、(極限引張強度に等しい引張応力を加えたときに)試験される材料の破損が(例えば、破裂又はネッキングとして)生じる前に起こり得る最大歪み(伸び)として決定される。
伸びは、材料の均一な断面の伸長であり、以下のように元の長さの割合として表される。
伸び%=((最終の長さ-元の長さ)/元の長さ)×100
伸びは、典型的には、ASTM D412に従って決定される。
【0164】
エラストマーの伸びは、典型的には高く、例えば50%超又は100%超又は200%超である。回復率は、試験材料に引張応力を与えた後に解放することによって、材料(例えば、弾性層)が破損点伸びにほぼ等しい(所望により破損点伸びの約90%、所望により破損点伸びの約95%、所望により破損点伸びの約98%、所望により破損点伸びの約99%であり、破損点伸びは同等のサンプルを使用して決定することができる)事前歪みを受けた後の、事前歪みに対する長さの減少の割合として決定される。したがって、例えば、200%である破損点伸びまで伸ばされ、引張応力の解放時に、元の長さに対して20%の歪みに特徴付けられる状態に戻る材料は、90%の回復率(すなわち、200%-20%を200%で割る)を有するものとして特徴付けられる。エラストマーの回復率は、典型的には高く、例えば50%超、又は70%超又はそれ以上である。
【0165】
引張強度は、引張に対する材料の耐性、すなわち、引き延ばす方向の荷重に耐える材料の能力を表し、破裂前のエラストマー性複合材の延伸中に加えられる最大応力(MPa)として定義される。引張強度は、典型的には、引張試験(例えば、ASTM D 624による)によって測定され、本明細書及び当技術分野に記載されるように、応力-歪み曲線の最高点として決定される。
【0166】
Z引張伸びは、Z方向に印刷したときに、本明細書に記載のように測定される伸びである。
【0167】
引裂抵抗(tear resitance;TR)は、本明細書及び当技術分野において「引裂強度」とも呼ばれ、材料を引き裂くのに必要な最大の力をN/mmで表したものであり、この力はサンプルの長軸に実質的に平行に作用するものである。引裂抵抗は、ASTM D 412法によって測定することができる。ASTM D 624を使用して、引裂の形成(引裂開始)に対する抵抗及び引裂の拡張(引裂伝播)に対する抵抗を測定することができる。典型的には、試料は、2つのホルダ間に保持され、変形が生じるまで均一な引張力が加えられる。次いで、引裂抵抗は、加えられた力を材料の厚さで割ることによって計算される。引裂抵抗が低い材料は、耐摩耗性が低い傾向がある。
【0168】
定伸長下の引裂抵抗は、定伸長(破断点伸び未満)に供したときに試験片が裂けるのに必要な時間を表す。この値は、例えば、以下の実施例の項に記載されるような「Oリング」試験で決定される。
【0169】
本明細書及び当技術分野において、材料は、上述の1つ又は複数の性質がエラストマー性材料を特徴付ける範囲内にあることを特徴とする場合、エラストマーとして定義される。
【0170】
非エラストマー性材料は、本明細書で使用される場合、エラストマー性を示さない材料を指し、例えば、室温を超えるTg及び/又は高いショア硬度及び/又は高い弾性率及び/又は低い伸び率を特徴とする剛性材料である。
【0171】
[非エラストマー性材料]
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部によれば、本発明の実施形態の配合物系における少なくとも1つの配合物は、硬化したときに非エラストマー性(剛性)材料を提供する。
そのような配合物は、その少なくとも一部に非エラストマー性剛性材料を含む物体の付加製造における使用に適している。
【0172】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、非エラストマー性材料を提供する配合物は、本明細書中のそれぞれの実施形態で示されるような性質を特徴とする親水性材料と疎水性材料との混合物を含む。
【0173】
本明細書全体を通して、「親水性」という用語は、典型的には水素結合による、水分子との結合の一時的な形成の原因となる化合物又は化合物の一部(例えば、化合物中の化学基)の物理的性質を表す。
【0174】
親水性の化合物又は化合物の一部(例えば、化合物中の化学基)は、典型的には電荷分極し、水素結合が可能なものである。
【0175】
親水性の化合物又は基は、典型的には、水分子と強い水素結合を形成する1つ又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む。そのようなヘテロ原子としては、酸素及び窒素が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、親水性の化合物又は基中の炭素原子の数とヘテロ原子の数との比は10:1以下であり、例えば8:1、より好ましくは7:1、6:1、5:1、4:1、又はそれより下になり得る。なお、化合物及び基の親水性は、化合物又は化学基中の疎水性部分と親水性部分との間の比からも生じる場合があり、上記の比のみに依存しないことに留意されたい。
【0176】
親水性化合物は、油又は他の疎水性溶媒よりも水に容易に溶解する。親水性化合物は、例えば、オクタノール及び水相でLogPを決定する場合、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満の温度、例えば25℃において、LogPが0.5未満であるものとして決定することができる。
【0177】
あるいは、親水性化合物は、例えばハンセンパラメータによって、溶媒としての水との相互作用について計算した場合に、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満、例えば25℃において、1より高い相対エネルギー距離(RED)を有するものとして決定することができる。
【0178】
親水性化合物は、化合物を親水性にする1つ又は複数の親水性基を有することができる。そのような基は、典型的には、酸素及び窒素などの1つ又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む極性基である。親水性基は、例えば、モノマー単官能硬化性材料の1つ又は複数の置換基、又はオリゴマー単官能硬化性材料の2つ以上の置換基又は内部基(interrupting groups)であり得る。親水性基は、例えば、モノマー多官能硬化性材料の1つ又は複数の置換基、又はモノマー多官能硬化性部分の連結部分の1つ又は複数の置換基又は内部基であり得る。親水性基は、例えば、オリゴマー多官能硬化性材料中のオリゴマー連結部分の2つ以上の置換基又は内部基であり得る。
【0179】
例示的な親水性基としては、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、チオカルボキシレート、オキソ(=O)、直鎖アミド、ヒドロキシ、(C1~4)アルコキシ、(C1~4)アルコール、ヘテロ脂環式(例えば、本明細書で定義されるヘテロ原子に対する炭素原子の比を有する)、ラクトンなどの環状カルボキシレート、ラクタムなどの環状アミド、カルバメート、チオカルバメート、シアヌレート、イソシアヌレート、チオシアヌレート、尿素、チオ尿素、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)、及び本明細書に以下で定義される用語としての親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分、並びにそれらの任意の組み合わせ(例えば、示した親水性基のうちの2つ以上を含む親水性基)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
いくつかの実施形態では、親水性基は、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、ヘテロ脂環式、アルキレングリコール及び/又は親水性オリゴマー部分であるか、又はそれらを含む。
【0181】
本明細書で使用される親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分は、本明細書で定義される親水性基を含むポリマー鎖を含む。親水性基は、例えば、ポリ(アルキレングリコール)又は親水性ペンダント基のように、ポリマー部分の主鎖内のヘテロ原子であり得る。本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリマー又はオリゴマー部分は、好ましくは10~40個の繰り返し骨格単位、より好ましくは10~20個の繰り返し骨格単位を有する。
【0182】
本発明のいくつかの実施形態による親水性単官能硬化性材料は、式Iによって表されるビニル含有化合物とすることができる:
【0183】
【0184】
式中、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、本明細書で定義される親水性基である、及び/又は親水性基を含む。
【0185】
式I中の(=CH2)基は重合性基を表し、典型的には、材料がUV硬化性材料となるように、UV硬化性基である。
【0186】
例えば、R1は、本明細書で定義される親水性基であり、R2は、化合物が本明細書で定義される親水性である限り、非親水性基、例えば、水素、C(1~4)アルキル、C(1~4)アルコキシ、又は任意の他の置換基である。
【0187】
いくつかの実施形態では、R1はカルボキシレートであり、前記化合物は単官能アクリレートモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、R2はメチルであり、前記化合物は単官能メタクリレートモノマーである。他の実施形態では、R2は、親水性置換基、すなわち、本明細書に記載の親水性基であるか、本明細書に記載の親水性基を含む置換基である。
【0188】
これらの実施形態のいずれかの一部では、カルボキシレート基-C(=O)-OR’は、親水性基であるR’を含む。例示的なR’基としては、本明細書に記載されるように、ヘテロ脂環式基(モルホリン、テトラヒドロフラン、オキサリジンなど、電子供与性ヘテロ原子に対する炭素原子の比(carbon atoms to electron-donating heteroatoms)が5:1以下)、ヒドロキシル、C(1~4)アルコキシ、チオール、アルキレングリコール又はポリマー部分若しくはオリゴマー部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なモノマー単官能アクリレートとしては、アクリロイルモルホリン(ACMO)が挙げられる。
【0189】
いくつかの実施形態では、R1はアミドであり、いくつかの実施形態では、R1はラクタムなどの環状アミドであり、前記化合物はビニルラクタムである。いくつかの実施形態では、R1はラクトンなどの環状カルボキシレートであり、前記化合物はビニルラクトンである。
【0190】
R1及びR2の一方又は両方が、ポリマー部分又はオリゴマー部分、例えば、本明細書で定義されるような親水性オリゴマー部分を含む場合、式Iの単官能硬化性化合物は、例示的に、オリゴマー単官能硬化性材料である。別の場合、式Iの単官能硬化性化合物は、例示的に、モノマー単官能硬化性材料である。
【0191】
例示的なオリゴマー単官能硬化性材料としては、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー誘導体、モノ(メタ)アクリル化ポリオールオリゴマー、親水性置換基を有するモノ(メタ)アクリル化オリゴマー、及びモノ(メタ)アクリル化ポリエチレングリコール(例えば、メトキシポリエチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。(メタ)アクリル化とは、オリゴマー又はポリマーがアクリレート又はメタクリレート官能基を含むことを意味する。
【0192】
いくつかの実施形態では、R1は、本明細書で定義されるポリ(アルキレングリコール)である。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態による親水性多官能硬化性材料は、式IIによって表すことができる:
【0194】
【0195】
式中、
R3、R4及びR5の各々は、独立して、水素、C(1~4)アルキル、又は本明細書で定義される親水性基であり、
L1、L2及びL3の各々は、独立して、連結部分であるか、又は存在せず、
P1及びP2の各々は、独立して、本明細書で定義される親水性基であるか、又は存在せず、
X1、X2及びX3の各々は、独立して、C(1~4)アルキル、又は本明細書で定義される親水性基であるか、又は存在せず、
n、m及びkの各々は0、1、2、3又は4であり、
ただし、n+m+kは少なくとも2であり、R3、R4、R5、X1、X2、X3、P1及びP2のうちの少なくとも1つは、本明細書で定義される親水性基である。
【0196】
X1、X2及びX3のうちの1つ、2つ又はすべてが(これらが存在する場合)オキソである、式IIの多官能硬化性材料は、多官能アクリレートであり、上述のように親水性基によってさらに置換され得る。R3、R4及びR5のうちの1つ又は複数が(これらが存在する場合)メチルである場合、硬化性材料は多官能メタクリレートである。
【0197】
X1、X2及びX3のうちの1つ、2つ又はすべてが(これらが存在する場合)オキソである多官能硬化性材料は、アクリレート及びメタクリレート官能性部分の組み合わせを含んでもよい。
【0198】
いくつかの実施形態では、前記アクリレート又はメタクリレート多官能硬化性材料はモノマーであり、P1及びP2のいずれもポリマー又はオリゴマー部分ではない。これらの実施形態のいくつかでは、P1及びP2の一方又は両方は、本明細書に記載の親水性基、例えば、アルキレングリコール、又は本明細書で定義される、任意の他の親水性連結基、短鎖(例えば、1~6つの炭素原子)、又は置換若しくは非置換炭化水素部分である。
【0199】
いくつかの実施形態では、P1及びP2の一方又は両方は、本明細書で定義されるポリマー又はオリゴマー部分であり、硬化性化合物は、オリゴマー多官能硬化性材料、例えば、X1、X2及び/又はX3について本明細書に記載されるように、オリゴマー多官能アクリレート又はメタクリレートである。P1及びP2がいずれも存在する場合、L2は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール及びそれらの任意の組み合わせを含む炭化水素などの連結部分であり得る。例示的なそのような硬化性材料としては、エトキシ化又はメトキシ化ポリエチレングリコールジアクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。
【0200】
他の非限定的な例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、及び部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマーが挙げられる。
【0201】
いくつかの実施形態では、P1及びP2のうちの1つ又は複数は、本明細書で定義されるポリ(アルキレングリコール)部分であるか、又はそれを含む。
【0202】
式IIのアクリレート又はメタクリレート多官能硬化性材料の任意の実施形態の一部では、R3、R4及びR5のうちの1つ又は複数は、例えば、本明細書の式I中のR1及びR2について記載されるような親水性基である。これらの実施形態では、P1及び/又はP2は、存在しても存在しなくてもよく、本明細書で定義されるように、材料が親水性である限り、親水性基であってもなくてもよく、又は親水性基を含んでも含まなくてもよい。
【0203】
あるいは、X1、X2及びX3のうちの1つ、2つ又はすべては(これらが存在する場合)、多官能硬化性材料中の少なくとも1つの官能性部分がビニルエーテルであるように、-O-であり得る。
【0204】
いくつかの実施形態では、n及びmはそれぞれ1であり、kは0であり、X1はOであり、X2は存在せず、化合物はビニルエーテルであり、置換されていてもいなくてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、L1、L2、L3、P1及びP2は存在せず、化合物は単量体ビニルエーテルである。単量体ビニルエーテルの例としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
【0205】
いくつかの実施形態では、P1及びP2は存在せず、L1及びL2の一方は、1つ又は複数の親水性基によって置換されたアルキレン鎖である。例示的なそのような硬化性化合物は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルである。
【0206】
いくつかの実施形態では、P1及びP2のうちの1つ又は複数は、本明細書で定義される親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分である。いくつかの実施形態では、P1及びP2のうちの1つ又は複数は、本明細書で定義されるポリ(アルキレングリコール)部分であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー部分は、1つ又は複数のビニルエーテル置換基によって置換される。
【0207】
式IIに関する任意の実施形態の一部では、重合性基の置換基R3、R4及びR5のうちの1つ又は複数は、本明細書の式IのR1及びR2について記載される親水性基であり得る。
【0208】
式IIに関する任意の実施形態の一部では、P1及びP2がポリマー部分又はオリゴマー部分である場合、この部分は、主鎖内に本明細書で定義される親水性ヘテロ原子を含んでもよく、又は本明細書に記載されるように、主鎖が親水性基で置換されてもよい。
【0209】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、親水性硬化性材料の各々は、例えば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、モノマー又はオリゴマーの、単官能又は多官能の、アクリレート又はメタクリレートである。
【0210】
本明細書に記載の任意の実施形態の一部によれば、本明細書に記載の親水性硬化性材料は、水溶性又は水混和性である。
【0211】
本明細書に記載の任意の実施形態の一部によれば、本明細書に記載の親水性硬化性材料は、本明細書では極性硬化性材料とも呼ばれる。
【0212】
本明細書に記載の「疎水性」硬化性材料は、水及びオクタノールについて測定したときの、1より高い、好ましくはより高いLogPによって特徴付けられる材料を指す。
【0213】
疎水性硬化性材料は、本明細書中に提示されるような式I及び式IIによって表すことができ、式中、どの基も親水性基ではないか、又は少数の基のみが親水性基である。
【0214】
疎水性硬化性材料としては、非限定的な例として、単官能アクリレート又は単官能メタクリレートが挙げられ、式I中のR’は、アルキル、シクロアルキル、アルカリール、アリールなどである。
【0215】
疎水性硬化性材料としては、非限定的な例として、多官能アクリレート又は多官能メタクリレートが挙げられ、式IIの変数R’の大部分は、アルキル、シクロアルキル、アルカリール、アリールなどであるか、又はそれらを含む。
【0216】
これらの実施形態の文脈において使用可能な例示的な多官能硬化性材料は、脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー及び/又はモノマー性ジアクリレートなどのジアクリレート、好ましくは、限定されないが、イソボルニルジアクリレートなどの短鎖ジアクリレートを含む。
【0217】
例示的な多官能硬化性材料は、本明細書に記載の式IIを有することができるが、R3、R4、R5、P1及びP2は、存在する場合、非親水性基であるか、又は合わせて非親水性化合物をもたらす。
【0218】
例示的な単官能硬化性材料としては、非限定的な例として、イソボルニルアクリレート又はイソボルニルメタクリレートが挙げられる。
【0219】
疎水性硬化性材料は、典型的には水不溶性又は水不混和性である。
【0220】
疎水性硬化性材料は、本明細書では無極性硬化性材料とも呼ばれる。
【0221】
疎水性化合物は、水よりも油又は他の疎水性溶媒に容易に溶解する。疎水性化合物は、例えば、LogPがオクタノール及び水相で決定される場合、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満の温度、例えば25℃で、LogPが1より高いものとして決定することができる。
【0222】
あるいは、疎水性化合物は、例えばハンセンパラメータによって、溶媒としての水との相互作用について計算した場合に、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満、例えば25℃で、1未満の相対エネルギー距離(RED)を有するものとして決定することができる。これらの任意の実施形態の一部では、硬化したときに非エラストマー性剛性材料を提供する配合物は、
硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの疎水性硬化性材料、及び
硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料
を含む。
【0223】
本明細書全体を通して、硬化性材料の性質がその硬化後の材料について言及されるときは常に、前記硬化後の材料は、かかる硬化後の硬化性材料のみから構成されるものである。
【0224】
非エラストマー性材料について本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の25~60重量%、又は28~55重量%であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0225】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記疎水性硬化性材料は、単官能硬化性材料と多官能硬化性材料との混合物を含み、これらの実施形態のいくつかでは、多官能硬化性材料は、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書中に記載される、二官能硬化性材料である。
【0226】
いくつかの実施形態では、疎水性モノマー単官能硬化性材料の濃度は、それを含む配合物の総重量の28~60重量%の範囲であり、いくつかの実施形態では、40~50重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、疎水性多官能(例えば、二官能)硬化性材料の濃度は、それを含む配合物の総重量の0~25重量%の範囲であり、いくつかの実施形態では、20~25重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0228】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料の総量は、少なくとも1つの配合物の総重量の15~35重量%である。
【0229】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記親水性硬化性材料は、単官能硬化性材料と多官能硬化性材料との混合物を含み、これらの実施形態のいくつかでは、多官能硬化性材料は、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらの任意の組み合わせにおいて本明細書中に記載される、二官能硬化性材料である。
【0230】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の15~30重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0231】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性多官能硬化性材料の量は、前記少なくとも1つの配合物の総重量の0~5重量%の範囲である。
【0232】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに非エラストマー性剛性材料を提供する配合物は、
硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの疎水性硬化性材料、
硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料、及び
硬化したときに25℃~50℃の範囲のTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料
のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0233】
これらの任意の実施形態の一部では、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の0~15の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0234】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料は、少なくとも1つの疎水性単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの疎水性多官能(例えば、二官能)硬化性材料を含み、それぞれが独立して、効果したときに上記Tgを提供する。
【0235】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~5重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0236】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~10重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0237】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の0~30の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0238】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料は、少なくとも1つの親水性単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの親水性多官能(例えば、二官能)硬化性材料を含み、それぞれが独立して、硬化したときに上記Tgを提供する。
【0239】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~5重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0240】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~30重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0241】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、硬化したときに25℃~80℃の範囲のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の0から15の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0242】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、本明細書中に記載される非エラストマー性剛性材料を提供する配合物中の疎水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の35~75重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、非エラストマー性剛性材料を提供する配合物中の親水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の20~60重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0243】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、非エラストマー性剛性材料を提供する配合物は、室温において15センチポアズ以下、又はさらに低い粘度を特徴とする硬化性材料をさらに含む。そのような材料は、本明細書では「反応性希釈剤」とも呼ばれる。例示的なそのような材料としては、低分子量単官能ジビニルエーテル及び低分子多官能ジビニルエーテル(例えば、DVE 2、DVE 3)、並びに低分子量単官能(メタ)アクリレート及び低分子多官能(メタ)アクリレート(例えば、短いアルキル又は短いアルキレン鎖を特徴とする)が挙げられる。
【0244】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~7重量%の範囲である。
【0245】
前述の実施形態に記載された配合物のうちの1つ又は複数を含む配合物系は、配合物系が1つのモデル材料配合物を含む場合には単一吐出モードで、又は配合物系が2つ以上のモデル材料配合物を含む場合にはDMモードを含むマルチマテリアルモード(PolyJet)で、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用することができる。
【0246】
2つ以上の配合物が使用される場合、配合物は、示された粘度を特徴とし、かつそれぞれの実施形態のいずれかに記載の硬化性材料を含む限り、例えば、以下に記載されるように、異なる反応性(硬化性成分)及び/又は異なる非反応性(非硬化性)成分によって、互いに異なることができる。
【0247】
以下では、単一のモデル材料、又はデジタルマテリアルを含む複数の材料から作られたシェルのない三次元物体を提供する配合物系で使用可能な配合物の例示的かつ非限定的な実施形態について記載する。
【0248】
これらの実施形態による例示的な配合物系において、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の50~60重量%であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0249】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料は、それぞれの実施形態において本明細書に記載されるように、少なくとも1つの単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの多官能硬化性材料を含む。
【0250】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の25~60重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0251】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~25重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0252】
例示的な実施形態では、硬化したときに80℃を超えるTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料は、それを含む配合物の総重量の50~60重量%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の濃度で、単官能硬化性材料のみを含む。
【0253】
例示的な実施形態では、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料は、イソボルニルアクリレートであるか、又はイソボルニルアクリレートを含む。
【0254】
これらの実施形態による例示的な配合物系において、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の15~30重量%であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに80℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料は、少なくとも1つの単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの多官能硬化性材料を含む。
【0255】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の15~25重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0256】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの多官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の0~5重量%の範囲、例えば3重量%であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。例示的な実施形態では、前記多官能材料は、三官能材料、例えばイソシアヌレートトリアクリレートである。
【0257】
例示的な実施形態では、硬化したときに50℃より高いTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料は、ACMOであるか、又はACMOを含む。
【0258】
これらの実施形態による例示的な配合物系において、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料の総量は、存在する場合、それを含む配合物の総重量の0~15重量%、又は5~15重量%、又は10~15重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0259】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの疎水性硬化性材料は、少なくとも1つの単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの多官能硬化性材料を含む。
【0260】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの単官能硬化性材料の量は、それらを含む配合物の総重量の0~5重量%又は1~3重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0261】
これらの実施形態のいくつかでは、前記少なくとも1つの多官能硬化性材料の量は、前記少なくとも1つの配合物の総重量の0~15重量%、又は5~15重量%、又は8~12重量%の範囲である。
【0262】
これらの実施形態による例示的な配合物系において、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する少なくとも1つの親水性硬化性材料の総量は、存在する場合、それを含む配合物の総重量の0~10重量%、又は1~10重量%、又は2~8重量%の範囲、例えば約5重量%であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0263】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する前記少なくとも1つの親水性硬化性材料は、存在する場合、少なくとも1つの単官能硬化性材料及び/又は少なくとも1つの多官能硬化性材料を含み、いくつかの実施形態では、上記の量の単官能硬化性材料のみを含む。
【0264】
これらの実施形態による例示的な配合物系では、配合物は、本明細書に記載の反応性希釈剤を、配合物の総重量の約1~約10重量%、又は約3~約7重量%、又は約5~約7重量%(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の濃度でさらに含む。これらの実施形態の文脈での使用に適した例示的な硬化性材料を以下の表1に提示する。
【0265】
[エラストマー性材料]
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、本実施形態の配合物系における少なくとも1つの配合物は、硬化したときに本明細書中で定義されるようなエラストマー性材料を提供する。
【0266】
そのような配合物は、少なくとも一部にエラストマー性材料を含む物体の付加製造における使用に適している。
【0267】
本明細書中に記載される任意の実施形態の一部では、エラストマー性材料を提供する配合物は、主として、本明細書で定義されるような1つ又は複数のエラストマー性硬化性材料を含み、さらに、本明細書に記載されるような親水性材料及び/又は疎水性材料を含む1つ又は複数の非エラストマー性材料を含み、これらは、本明細書のそれぞれの実施形態では示されるような性質を特徴とするように選択することができる。
【0268】
「エラストマー性硬化性材料」という語句は、硬化条件(例えば、硬化エネルギー)に曝露されると、エラストマー(ゴム、又はゴム様材料)の性質を特徴とする硬化した材料を提供する、本明細書で定義される硬化性材料を記載する。
【0269】
エラストマー性硬化性材料は、典型的には、重合された及び/又は架橋された材料に弾性を付与する部分に連結された、適切な硬化条件に曝露されると重合をおこす1つ又は複数の重合性(硬化性)基を含む。そのような部分としては、典型的には、本明細書で定義される、アルキル、アルキレン鎖、炭化水素、アルキレングリコール基又は鎖(例えば、本明細書で定義されるオリゴ(アルキレングリコール)若しくはポリ(アルキレングリコール))、ウレタン、オリゴウレタン、又はポリウレタン部分など(前述のものの任意の組み合わせを含む)が挙げられ、本明細書では「エラストマー性部分」とも呼ばれる。
【0270】
本発明のいくつかの実施形態によるエラストマー性単官能硬化性材料は、上記の式Iによって表されるビニル含有化合物とすることができ、式中、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されるように、エラストマー性部分であるか、かつ/又はエラストマー性部分を含む。
【0271】
例えば、R1は、本明細書で定義されるエラストマー性部分であるか、又はエラストマー性部分を含み、R2は、硬化した材料のエラストマー性を妨げない限り、例えば、水素、C(1~4)アルキル、C(1~4)アルコキシ、又は任意の他の置換基である。
【0272】
いくつかの実施形態では、R1はカルボキシレートであり、前記化合物は単官能アクリレートモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、R2はメチルであり、前記化合物は単官能メタクリレートモノマーである。
【0273】
これらの任意の実施形態の一部では、カルボキシレート基-C(=O)-OR’は、本明細書に記載されるエラストマー性部分であるR’を含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、R1はアミドであり、前記化合物は単官能アクリルアミドモノマーである。これらの実施形態のいくつかでは、R2はメチルであり、前記化合物は単官能メタクリルアミドモノマーである。
【0275】
(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドは、本明細書全体を通して、集合的に(メタ)アクリル材料と呼ばれる。
【0276】
いくつかの実施形態では、R1は環状アミドであり、いくつかの実施形態では、R1はラクタムなどの環状アミドであり、前記化合物はビニルラクタムである。いくつかの実施形態では、R1はラクトンなどの環状カルボキシレートであり、前記化合物はビニルラクトンである。
【0277】
R1及びR2の一方又は両方がポリマー部分又はオリゴマー部分を含む場合、式Iの単官能硬化性化合物は、例示的なポリマー単官能硬化性材料又はオリゴマー単官能硬化性材料である。別の場合、式Iの単官能硬化性化合物は、例示的なモノマー性単官能硬化性材料である。
【0278】
多官能エラストマー性材料において、2つ以上の重合性基は、本明細書中に記載されるように、エラストマー性部分を介して互いに連結される。
【0279】
いくつかの実施形態では、多官能エラストマー性材料は、本明細書に記載されるような式Iによって表すことができ、式中、R1は、本明細書に記載されるように、重合性基によって終端するエラストマー性材料を含む。
【0280】
例えば、二官能エラストマー性硬化性材料は、式I*によって表すことができる:
【0281】
【0282】
式中、Eは、本明細書に記載されるエラストマー性連結部分であり、R’2は、R2について本明細書で定義される通りである。
【0283】
別の例では、三官能エラストマー性硬化性材料は、式IIIによって表すことができる:
【0284】
【0285】
式中、Eは、本明細書に記載されるエラストマー性連結部分であり、R’2及びR’’2は、それぞれ独立して、R2について本明細書で定義される通りである。
【0286】
いくつかの実施形態では、多官能(例えば、二官能、三官能又はそれ以上)エラストマー性硬化性材料は、式IVによって集合的に表すことができる:
【0287】
【0288】
式中、
R2及びR’2は本明細書で定義される通りであり、
Bは、本明細書で定義される二官能又は三官能分岐単位であり(X1の性質に依存する)、
X2及びX3は、それぞれ独立して、存在しないか、本明細書に記載されるエラストマー性部分であるか、又はアルキル、炭化水素、アルキレン鎖、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、ウレタン部分、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、
X1は存在しないか、又は、それぞれが所望によりメタ(アクリレート)部分(O-C(=O)CR’’2=CH2)で置換(例えば、終端)される、アルキル、炭化水素、アルキレン鎖、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、ウレタン部分、及びエラストマー性部分、並びにそれらの任意の組み合わせから選択されるか、あるいは、X1は、
【0289】
【0290】
であり、式中、
曲線は付着点を表し、
B’は分岐単位であり、Bと同じか、又は異なり、
X’2及びX’3は、それぞれ独立して、X2及びX3について本明細書で定義される通りであり、
R’’2及びR’’’2は、R2及びR’2について本明細書で定義される通りであり、
ただし、X1、X2、及びX3のうちの少なくとも1つは本明細書に記載されるエラストマー性部分であるか、又は前記エラストマー性部分を含む。
【0291】
本明細書で使用される「分岐単位(branching unit)」という用語は、マルチラジカル、好ましくは脂肪族基又は脂環式基を記載する。「マルチラジカル」とは、連結部分が2つ以上の原子及び/又は基若しくは部分間を連結するように2つ以上の付着点を有することを意味する。
【0292】
すなわち、分岐単位は、物の1つの位置、基又は原子に付着すると、当該1つの位置、基又は原子に連結された2つ以上の官能基を作り出し、したがって単一の官能性を2つ以上の官能性に「分岐」させる化学的部分である。
【0293】
いくつかの実施形態では、分岐単位は、2つ、3つ又はそれ以上の官能基を有する化学部分に由来する。いくつかの実施形態では、分岐単位は、本明細書に記載の分岐アルキル又は分岐連結部分である。
【0294】
4つ以上の重合性基を特徴とする多官能エラストマー性硬化性材料も企図され、例えば、式IVに提示される構造において、より高い分岐を有する分岐単位Bを含む、若しくは本明細書で定義される2つの(メタ)アクリレート部分を特徴とするX1部分を含む、式IVに提示される構造と同様の構造を特徴とすることができる。または、式IIIに提示される構造において、例えばエラストマー性部分に付着した別の(メタ)アクリレート部分を含む、式IIIに提示される構造と同様の構造を特徴とすることができる。
【0295】
いくつかの実施形態では、エラストマー性部分、例えば式IのRa又は式I*、III及びIVのEとして示される部分は、直鎖又は分岐であってもよい、好ましくは3つ以上又は4つ以上の炭素原子である、アルキル;好ましくは3つ以上又は4つ以上の炭素原子の長さのアルキレン鎖;本明細書で定義されるアルキレングリコール;好ましくは4つ以上の原子の長さの、本明細書で定義されるオリゴ(アルキレングリコール)又はポリ(アルキレングリコール);好ましくは4つ以上の炭素原子の長さの、本明細書で定義される、ウレタン、オリゴウレタン又はポリウレタン;及びこれらの任意の組み合わせであるか、それらを含む。
【0296】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、エラストマー性硬化性材料は、本明細書に記載されるような(メタ)アクリル系硬化性材料であり、いくつかの実施形態ではアクリレートである。
【0297】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、エラストマー性硬化性材料は、単官能エラストマー性硬化性材料であるか、又は単官能エラストマー性硬化性材料を含む。いくつかの実施形態では、前記単官能エラストマー性硬化性材料は、式Iによって表され、式中、R1は、-C(=O)-OR’であり、R’は、本明細書で定義される、アルキレン鎖(例えば、長さが4つ以上、好ましくは6つ以上、好ましくは8つ以上の炭素原子)又はポリ(アルキレングリコール)鎖である。
【0298】
いくつかの実施形態では、エラストマー性硬化性材料は、多官能エラストマー性硬化性材料であるか、又は多官能エラストマー性硬化性材料を含む。いくつかの実施形態では、前記多官能エラストマー性硬化性材料は、式I*によって表され、式中、Eは、本明細書で定義される、アルキレン鎖(例えば、長さが4つ以上又は6つ以上の炭素原子)及び/又はポリ(アルキレングリコール)鎖である。
【0299】
いくつかの実施形態では、エラストマー性硬化性材料は、多官能エラストマー性硬化性材料であるか、又は多官能エラストマー性硬化性材料を含む。いくつかの実施形態では、前記多官能エラストマー性硬化性材料は、式IIIによって表され、式中、Eは分岐アルキル(例えば、長さが3つ以上、又は4つ以上、又は5つ以上の炭素原子)である。
【0300】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、エラストマー性硬化性材料は、例えば、式I、I*、III又はIVの、エラストマー性アクリレート又はエラストマー性メタクリレート(アクリルエラストマー又はメタクリルエラストマーとも呼ばれる)である。いくつかの実施形態では、前記アクリレート又はメタクリレートは、硬化したときにポリマー材料が0℃未満又は-10℃未満のTgを特徴とするように選択される。
【0301】
例示的なエラストマー性アクリレート及びエラストマー性メタクリレートの硬化性材料としては、2-プロペン酸、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル] オキシ] エチルエステル(例示的なウレタンアクリレート)、並びにSR335(ラウリルアクリレート)及びSR395(イソデシルアクリレート)の商品名(Sartomer製)で市販されている化合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、SR350D(三官能トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、SR256(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、SR252(ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート)、SR561(アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート)の商品名(Sartomer製)で市販されている化合物が挙げられる。さらなる例としては、Genomerファミリー(例えば、Genomer 1122)として市販されている硬化性材料が挙げられる。
【0302】
他のアクリル材料、例えば1つ又は複数のアクリレート基又はメタクリレート基の代わりに1つ又は複数のアクリルアミド基を特徴とするアクリル材料なども企図されることに留意されたい。
【0303】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、エラストマー性硬化性材料は、1つ又は複数の単官能エラストマー性硬化性材料(例えば、式Iとして表されるような単官能エラストマー性アクリレート)及び1つ又は複数の多官能(例えば、二官能)エラストマー性硬化性材料(例えば、式I*、III又はIVで表されるような二官能エラストマー性アクリレート)を、本明細書中に記載される任意の各実施形態において含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、追加の硬化性材料は、単官能アクリレート又は単官能メタクリレート(単官能(メタ)アクリレート)である。非限定的な例としては、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート、アクリロイルモルホリン(ACMO)、テトラヒドロフチルアクリレート、米国Sartomer社によって商品名SR-339で市販されているフェノキシエチルアクリレート、例えばCN131Bの名称で市販されているものなどのウレタンアクリレートオリゴマー、並びにAM方法論で使用可能な任意の他のアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0305】
いくつかの実施形態では、追加の硬化性材料は、多官能アクリレート又は多官能メタクリレート(多官能(メタ)アクリレート)である。多官能(メタ)アクリレートの非限定的な例としては、米国Sartomer社によって商品名SR-9003で市販されているプロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(TETTA)、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DiPEP)、並びに例えば、Ebecryl 230として市販されている脂肪族ウレタンジアクリレートが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの非限定的な例としては、エトキシ化又はメトキシ化ポリエチレングリコールジアクリレート又はジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマー、例えばCNN91として市販されているポリエステル系ウレタンジアクリレートが挙げられる。
【0306】
硬化したときにエラストマー性材料を提供する配合物に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、配合物は、
本明細書で説明される任意の各実施形態において、1つ又は複数のエラストマー性硬化性材料、及び1つ又は複数の単官能硬化性材料
を含む。
【0307】
いくつかの実施形態では、配合物は、1つ又は複数の二官能硬化性材料をさらに含む。
【0308】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、前記1つ又は複数のエラストマー性硬化性材料は、本明細書に記載されるように、少なくとも1つの単官能エラストマー性硬化性材料を含む。所望により、前記1つ又は複数のエラストマー性硬化性材料は、さらに、多官能エラストマー性硬化性材料、例えば、本明細書に記載のエラストマー性二官能材料を含む。
【0309】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、前記エラストマー性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%である。エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、前記エラストマー性硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の約30~約70重量%、又は約35~約65重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0310】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、1つ又は複数の非エラストマー性単官能硬化性材料の総量は、それを含む配合物の総重量の約20~約60重量%、又は約30~約60重量%、又は約40~約60重量%、又は約45~約60重量%、又は約45~約55重量%、又は約50~約55重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0311】
これらの実施形態による前記単官能硬化性材料は、親水性であっても疎水性であってもよく、硬化したときに80℃以上のTg又は25℃未満のTgのいずれかを特徴とする材料を提供するようなものであってもよい。
【0312】
いくつかの実施形態では、前記単官能硬化性材料は、硬化したときに80℃以上のTgを特徴とする材料を提供する1つ又は複数の疎水性単官能硬化性材料を含む。例示的なそのような材料は、本明細書に記載されている。
【0313】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに80℃以上のTgを特徴とする材料を提供する疎水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の約20~約30重量%、又は約25~約30重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0314】
いくつかの実施形態では、前記単官能硬化性材料は、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する1つ又は複数の疎水性単官能硬化性材料を含む。例示的なそのような材料は、本明細書に記載の通りである。
【0315】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する疎水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の25重量%以下であり、いくつかの実施形態では、約10~約25重量%又は約20~約25重量%であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。例示的な材料を以下の表2に提示する。
【0316】
これらの実施形態のいくつかでは、硬化したときに25℃未満のTgを特徴とする材料を提供する親水性単官能硬化性材料の量は、それを含む配合物の総重量の10重量%以下であり、いくつかの実施形態では、存在しないか、又は約5~約8重量%、又は約5~約6重量%の量(それの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)で存在する。例示的な材料を表2に提示する。
【0317】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、二官能硬化性材料は、配合物中に存在する場合、それを含む配合物の総重量の約1~約15重量%の量(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)であり、いくつかの実施形態では、存在しないか、又はそれを含む配合物の総重量の1~10重量%、3~6重量%、例えば約4~約5重量%の量である。
【0318】
これらの実施形態のいくつかでは、前記二官能硬化性材料は、高分子量の二官能硬化性材料、例えば、1000g/mol超、又は2000g/mol超、又は3000g/mol超、又はさらにそれより高い分子量の官能硬化性材料である。
【0319】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、前記配合物は、所望により、非反応性材料、好ましくは可塑剤として作用するポリマー材料をさらに含み、好ましくは室温で15センチポアズ以下又は10センチポアズ以下又は5センチポアズ以下の粘度を特徴とする。そのような非反応性材料の量は、前記配合物中に存在する場合、それを含む配合物の総重量の1~15重量%、又は約5~約15重量%、又は約5~約10重量%、又は約9~約10重量%の範囲(それの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)であり得る。例示的なそのような材料には、300~1000g/molの分子量を特徴とする、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び同様の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0320】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、前記配合物系は、本明細書に記載される2つ以上のエラストマー性モデル材料配合物を含み、これらは硬化性材料の化学組成によって互いに異なる場合があり、これにより、変化可能なエラストマー性が提供される、かつ/又は非硬化性材料の化学組成によって互いに異なる場合がある。
【0321】
エラストマー性材料に関して本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物又は配合物系は、硬化したときに、少なくとも200%、又は少なくとも250%、又は少なくとも280%、又は少なくとも290%、又はこれより大きい伸びを特徴とするエラストマー性材料を提供する。
【0322】
[追加の実施形態]
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、前記配合物系は、別段の指定がない限り、1つの配合物からなる。
【0323】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、1つ又は複数のモデル材料配合物は、硬化性材料の重合を開始させるための開始剤をさらに含む。
【0324】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部によれば、本明細書に記載される配合物又は配合物系に含まれる硬化性材料のすべてがUV硬化性材料であり、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される配合物又は配合物系に含まれる硬化性材料のすべてがアクリレート及び/又はメタクリレートなどのUV硬化性アクリル材料である。
【0325】
これらの実施形態のいくつかでは、前記配合物系は光開始剤をさらに含む。
【0326】
適切な光開始剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン及びキサントンなどのベンゾフェノン(芳香族ケトン);2,4,6-トリメチルベンゾリジフェニルフォスフィンオキサイド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルフォスフィンオキサイド(TEPO)、ビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO)などのアシルフォスフィンオキサイド系光開始剤;並びにベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテルが挙げられる。光開始剤の例としては、α-アミノケトン、ビスアシルホスフィンオキサイド(BAPO)、及びIrgacure(登録商標)の商品名で市販されているものが挙げられる。
【0327】
光開始剤は、単独で、又は共開始剤と組み合わせて使用することができる。ベンゾフェノンは、フリーラジカルを生成するために、アミンなどの第2の分子を必要とする光開始剤の一例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは水素引き抜きによって第3級アミンと反応し、アクリレートの重合を開始するアルファ-アミノラジカルを生成する。共開始剤のクラスの非限定的な例としては、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。
【0328】
光開始剤を含有する配合物中の光開始剤の濃度は、それを含む配合物の総重量の約0.1~約5重量%、又は約1~約5重量%、好ましくは約1~約3重量%の範囲(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)であり得る。
【0329】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、モデル材料配合物は、本明細書に上述される成分に加えて、本明細書では非反応性材料とも称する、1つ又は複数のさらなる薬剤をさらに含むことができる。
【0330】
そのような薬剤としては、例えば、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、充填材、顔料、分散剤、及び/又は衝撃改質剤(強化剤若しくは靱性改質剤)が挙げられる。
【0331】
前記配合物系が2つ以上の配合物を含む場合、前記非反応性薬剤は、系中のモデル材料配合物の1つ又はすべてに独立して含まれ得る。
【0332】
「充填材」という用語は、ポリマー材料の性質を改変し、及び/又は最終製品の品質を調整する不活性材料を表す。充填材は、無機粒子、例えば炭酸カルシウム、シリカ、及び粘土であってもよい。
【0333】
重合中又は冷却中の収縮を低減するために、例えば、熱膨張係数を低下させ、強度を高め、熱安定性を高め、コストを低減し、及び/又はレオロジー特性を導入するために、前記モデル配合物に充填材を添加してもよい。
【0334】
いくつかの実施形態では、モデル配合物は、界面活性剤及び/又は分散剤を含む。界面活性剤を使用して、前記配合物の表面張力を、典型的には10ダイン/cm~50ダイン/cm、例えば約30ダイン/cmである、吐出又は印刷プロセスに必要な値まで低下させることができる。例示的なそのような薬剤として、シリコーン表面添加剤、例えばBYKファミリーのシリコーン表面添加剤が挙げられる。
【0335】
本明細書に記載される任意の例示的なモデル材料配合物において、界面活性剤の濃度は、それを含む配合物又は配合物系の総重量の0~約1重量%の範囲であり、例えば、0、0.01、0.05、0.1、0.5又は約1重量%であり、それらの間の任意の中間値を含む。
【0336】
本明細書に記載される任意の例示的なモデル材料配合物において、分散剤の濃度は、それを含む配合物又は配合物系の総重量の0~約2重量%の範囲であり、例えば、0、0.1、0.5、0.7、1、1.2、1.3、1.35、1.4、1.5、1.7、1.8又は約2重量%であり、それらの間の任意の中間値を含む。
【0337】
適切な安定剤(安定化薬剤)としては、例えば、高温で配合物を安定化する、熱安定剤が挙げられる。
【0338】
いくつかの実施形態では、前記モデル配合物は、1つ又は複数の顔料を含む。いくつかの実施形態では、前記顔料の濃度は、35重量%未満、又は25重量%未満、又は15重量%未満である。例示的な実施形態では、顔料を含む配合物中の顔料の量は、顔料を含む配合物の総重量の0.1~5重量%、又は1~5重量%、又は1~3重量%、又は1~2重量%である。
【0339】
前記顔料は、白色顔料であってもよい。前記顔料は、有機顔料若しくは無機顔料、又は金属顔料、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0340】
いくつかの実施形態では、前記モデル配合物は、染料をさらに含む。
【0341】
いくつかの実施形態では、白色顔料と染料の組み合わせを使用して、硬化した着色材料を調製する。
【0342】
前記染料は、広範な種類の溶媒可溶性染料のいずれであってもよい。いくつかの非限定的な例には、黄色、オレンジ色、茶色及び赤色のアゾ染料;緑色及び青色のアントラキノン及びトリアリールメタン染料;並びに黒色のアジン染料が挙げられる。
【0343】
本明細書に記載される任意の実施形態の一部では、1つ又は複数のモデル材料配合物は、強化剤を含む。
【0344】
強化剤の非限定的な例としては、エラストマー性材料が挙げられる。代表的な例としては、限定されないが、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロックゴム、ランダムスチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレントリブロックゴム、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-酢酸ビニル及びニトリルゴムが挙げられる。好ましい薬剤は、ポリブタジエンなどのエラストマーである。エラストマー性材料などの強化剤は、分散/溶解相中のエラストマー性材料をモデル材料配合物に組み込むことによって、前記配合物に添加することができる。
【0345】
エラストマー性材料の濃度は、エラストマー性材料を含有する配合物の重量に対して、約0.10phr~約10phr、又は約0.1phr~約5phrの範囲であり得る。
【0346】
あるいは、エラストマー性材料の濃度は、エラストマー性材料を含有する配合物の総重量の約0.1重量%~約20重量%の範囲であってもよい。
【0347】
他の衝撃改質剤、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、アラミドケブラー、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(ザイロン)、並びに他の極性及び非極性衝撃改質剤も企図される。
【0348】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のモデル材料配合物は、重合阻害剤をさらに含む。
【0349】
本明細書中に記載される任意の例示的なモデル材料配合物において、阻害剤の濃度は、それを含む配合物又は配合物系の総重量の0~約2重量%又は0~約1重量%の範囲であり、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は約1重量%(それらの間の任意の中間値を含む)である。
【0350】
[硬化したときに非エラストマー性(剛性)材料を提供するモデル材料配合物]
以下の表1は、非エラストマー性(剛性)材料の3Dインクジェット印刷での使用、例えば、シングルジェット及びポリジェット(PolyJet)技術(DMモードを含む)における使用、及びD-ABSモードにおいてシェル付き物体を印刷するためのパートA配合物(RF)及びパートB配合物(DLM)の両方としての使用、に適したモデル材料配合物の例示的な化学組成を提示する。
【0351】
本譲受人による、米国特許出願公開第2013/0040091号明細書及びPCT/IB2017/055696号明細書に詳細に記載されているように、シェル付き物体の製造は、RF(強化材(reinforcer))とも呼ばれる第1の配合物であるパートA、及びDLMとも呼ばれる第2の配合物であるパートBという2つの配合物を使用して行われる。
【0352】
好ましくは、第1の配合物(パートA、RF)は、硬化したときに高いHDT(例えば、70℃超、又は90℃超)を特徴とする剛性材料を提供し、第2の配合物(パートB、DLM)は、硬化したときに、硬化後の第1の配合物(RF)から得られた材料よりも剛性が低く、靱性が高く(例えば、アイゾットノッチ衝撃試験で30J/mol超、又は35J/mol超、例えば約30~100J/m)、かつ硬化後の第1の配合物RFよりもHDTが低い(例えば、約40~41℃のHDT)ことを特徴とする材料を提供する。
【0353】
表1では、印刷モードに特に言及がない場合は常に、示された濃度はすべてのモードを代表するものである。
【0354】
【0355】
【0356】
[硬化したときにエラストマー性材料を提供するモデル材料配合物]
以下の表2は、例えば、DMモードを含むシングルジェット及びPolyJet技術における、本明細書で定義されるエラストマー性材料の3Dインクジェット印刷での使用に適したモデル材料配合物の例示的な化学組成を示す。
【0357】
一般的に言えば、エラストマー性材料を形成するための例示的な配合物は、30重量%以上の濃度のエラストマー性硬化性材料を、配合物の総重量の60重量%以下の総重量の1つ又は複数の非エラストマー性単官能硬化性材料、及び所望により配合物の総重量の10重量%以下、好ましくは6重量%以下の総重量の1つ又は複数の非エラストマー性二官能硬化性材料と組み合わせて含み、さらに所望により室温で低粘度(例えば、20cPs未満)であることを特徴とする1つ又は複数の非反応性材料(非反応性希釈剤)を含む。
【0358】
【0359】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及びその広範な範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0360】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。項の見出しが使用される場合、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0361】
さらに、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】