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▶ シーエスエル・ベーリング・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】キルスイッチを有するドナーT細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/867 20060101AFI20220208BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220208BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220208BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220208BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220208BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/113 130Z
C12N5/10
C12N15/09 110
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K35/17 Z
A61K35/12
A61K35/28
A61K45/00
A61K31/365
A61K31/519
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536370
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019068239
(87)【国際公開番号】W WO2020139800
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/784,494
(32)【優先日】2018-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500501443
【氏名又は名称】シーエスエル・ベーリング・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ウォルター・アルマ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・フィリップ・サイモンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・バートレット
(72)【発明者】
【氏名】チー-リン・リー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA19
4C084AA22
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086CB09
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA06
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
開示した方法は、一般にT細胞治療の副反応を防止する、処置する、抑制する、制御するまたはそうでなければ軽減する工程を対象とし、T細胞治療は、免疫再構築を加速し、移植片対悪性効果を誘導し、および/または腫瘍細胞を標的化するように設計する。いくつかの実施形態では、本開示は、第1の核酸配列に作動可能に連結する第1の発現制御配列を含む発現ベクターを提供し、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼをノックダウンするshRNAをコードする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、該第1の核酸配列は、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、該shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、前記発現ベクター。
【請求項2】
shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの核酸配列を有する、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
第1の発現制御配列はPolIIIプロモーターまたはPolIIプロモーターを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項6】
PolIIIプロモーターは7skプロモーター、変異型7skプロモーター、H1プロモーター、またはEF1aプロモーターである、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項9】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項10】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項11】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項12】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列を有する、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項13】
第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、該第1の核酸配列は、HPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、該shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも90%配列同一性を有する、前記発現ベクター。
【請求項14】
shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項16】
shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれかの核酸配列を有する、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項17】
第1の発現制御配列はPolIIIプロモーターまたはPolIIプロモーターを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項18】
PolIIIプロモーターは7skプロモーター、変異型7skプロモーター、H1プロモーター、またはEF1aプロモーターである、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項20】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項21】
7skプロモーターは配列番号14の核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項22】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項23】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項24】
変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列を有する、請求項18に記載の発現ベクター。
【請求項25】
請求項1~24に記載の発現ベクターのいずれか1つによって形質導入した宿主細胞であって、該宿主細胞は形質導入後に実質的にHPRTを欠損する、前記宿主細胞。
【請求項26】
T細胞である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
T細胞は、ヘルパーCD4+T細胞、細胞傷害性CD8+T細胞、メモリーT細胞、調節性CD4+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアント、およびガンマデルタT細胞からなる群から選択される、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
リンパ球である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項25~28のいずれか一項に記載の宿主細胞を含む医薬組成物であって、該宿主細胞は薬学的に許容される担体または賦形剤と共に製剤化されている、前記医薬組成物。
【請求項30】
HPRTを欠損した細胞を生成する方法であって:
請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによって宿主細胞の集団を形質導入する工程;および
形質導入した宿主細胞の集団を少なくともプリン類似体と接触させることによってHPRTを欠損した細胞を正に選択する工程
を含む前記方法。
【請求項31】
プリン類似体は、6TGおよび6-メルカプトプリンからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:
ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、前記工程;
実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;
造血幹細胞(HSC)移植片を患者に投与する工程;
HSC移植片の投与後、治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程;および
場合により、副反応が生じた場合、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与する工程
を含む前記方法。
【請求項33】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、メトトレキサート(MTX)またはミコフェノール酸(MPA)からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
プリン類似体は6-チオグアニン(6TG)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
正の選択は、実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体およびアロプリノールと接触させる工程を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:
ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、前記工程;
実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;および
HSC移植片の投与と同時にまたはHSC移植片の投与後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程
を含む前記方法。
【請求項43】
1またはそれ以上の用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
正の選択は、実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
プリン類似体は6TGである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される、請求項42~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
その処置を必要とする患者において血液のがんを処置する方法であって:
ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、前記工程;
実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;
HSC移植片を患者に投与することによって少なくとも部分的な移植片対悪性腫瘍効果を誘導する工程;および
残存病変または疾患再発の検出後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程
を含む前記方法。
【請求項54】
少なくとも1用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与し、GvHDまたはCRSの少なくとも1つの症状を抑制する工程をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
プリン類似体は6TGである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む、請求項53~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される、請求項53~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される、請求項53~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:
ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルをドナーサンプル内のリンパ球にトランスフェクトすることによって生成される、前記工程;
実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;
HSC移植片を患者に投与する工程;
HSC移植片の投与後、治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程
を含む前記方法。
【請求項65】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質をさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
Casタンパク質はCas9タンパク質を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
Casタンパク質はCas12タンパク質を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
1またはそれ以上の用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与する工程をさらに含む、請求項64~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む、請求項64~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
プリン類似体は6TGである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む、請求項64~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される、請求項64~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される、請求項64~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
送達ビヒクルはナノカプセルである、請求項64に記載の方法。
【請求項83】
送達ビヒクルは、1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである、請求項64に記載の方法。
【請求項84】
その処置を必要とする患者において血液のがんを処置する方法であって:
ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルをドナーサンプル内のリンパ球にトランスフェクトすることによって生成される、前記工程;
実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;
HSC移植片を患者に投与することによって少なくとも部分的な移植片対悪性腫瘍効果を誘導する工程;および
残存病変または疾患再発の検出後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程
を含む前記方法。
【請求項85】
少なくとも1用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与し、GvHDまたはCRSの少なくとも1つの症状を抑制する工程をさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
プリン類似体は6TGである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む、請求項84~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む、請求項84~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質をさらに含む、請求項84~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
Casタンパク質はCas9タンパク質を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
Casタンパク質はCas12タンパク質を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
送達ビヒクルはナノカプセルである、請求項84~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
送達ビヒクルは、1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである、請求項84~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
HPRTを欠損したリンパ球によって患者を処置する方法であって:
(a)ドナー対象からリンパ球を単離する工程;
(b)単離したリンパ球を請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによって形質導入する工程;
(c)形質導入し単離したリンパ球を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供する工程;
(d)造血幹細胞移植後に治療有効量の改変したリンパ球の調製物を患者に投与する工程;
(e)場合により、患者において移植片対宿主疾患(GvHD)の発生後にジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与する工程
を含む前記方法。
【請求項105】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤はプリン類似体を含む、請求項104または105に記載の方法。
【請求項107】
プリン類似体は6TGである、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
HPRTを欠損したリンパ球によって患者を処置する方法であって:
(a)ドナー対象からリンパ球を単離する工程;
(b)単離したリンパ球を、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルと接触させ、HPRTを欠損したリンパ球の集団を提供する工程;
(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供する工程;
(d)造血幹細胞移植後に治療有効量の改変したリンパ球の調製物を患者に投与する工程;および
(e)場合により、患者において移植片対宿主疾患(GvHD)の発生後にジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与する工程
を含む前記方法。
【請求項110】
ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、MTXまたはMPAからなる群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤はプリン類似体を含む、請求項109または110に記載の方法。
【請求項112】
プリン類似体は6TGである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む、請求項109~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む、請求項109~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質をさらに含む、請求項109~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
Casタンパク質はCas9タンパク質を含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
Casタンパク質はCas12タンパク質を含む、請求項116に記載の方法。
【請求項119】
Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
送達ビヒクルはナノカプセルである、請求項109~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
送達ビヒクルは、1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである、請求項109~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、該改変したリンパ球の調製物は:
(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;
(b)単離したリンパ球を請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターによって形質導入すること;および
(c)形質導入し単離したリンパ球を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供すること
によって生成される前記使用。
【請求項124】
造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、該改変したリンパ球の調製物は:
(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;
(b)単離したリンパ球を、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルと接触させ、実質的にHPRTを欠損したリンパ球の集団を提供すること;および
(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供すること
によって生成される、前記使用。
【請求項125】
医薬組成物であって、請求項1~24のいずれか一項に記載の発現ベクターおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、前記医薬組成物。
【請求項126】
キットであって、
(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNA;および
(ii)Casタンパク質
を含む、前記キット。
【請求項127】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される、請求項126に記載のキット。
【請求項128】
ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有する、請求項126または127に記載のキット。
【請求項129】
ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも98%配列同一性を有する、請求項126または127に記載のキット。
【請求項130】
キットであって:
(i)配列番号25~39のいずれか1つを含むガイドRNA;および
(ii)Casタンパク質
を含む、前記キット。
【請求項131】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される、請求項130に記載のキット。
【請求項132】
ナノカプセルであって、
(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNA;および
(ii)Casタンパク質
を含む、前記ナノカプセル。
【請求項133】
Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される、請求項132に記載のナノカプセル。
【請求項134】
ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有する、請求項132または133に記載のナノカプセル。
【請求項135】
ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも98%配列同一性を有する、請求項132または133に記載のナノカプセル。
【請求項136】
少なくとも1つの標的化部分を含む、請求項132~135のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項137】
ポリマーシェルを含む、請求項132~136のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項138】
ポリマーナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性のモノマー、およびクロスリンカーを含む、請求項132~136のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項139】
請求項132~138のいずれか一項に記載のナノカプセルをトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項140】
造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、該改変したリンパ球の調製物は:
(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;
(b)単離したリンパ球を請求項132~136のいずれか一項に記載のナノカプセルと接触させること;および
(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供すること
によって生成される、前記使用。
【請求項141】
請求項1~26の発現ベクターのいずれか1つをカプセル化しているナノカプセル。
【請求項142】
ポリマーシェルを含む、請求項141に記載のナノカプセル。
【請求項143】
ポリマーナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性のモノマー、およびクロスリンカーを含む、請求項141に記載のナノカプセル。
【請求項144】
第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、該第1の核酸配列は、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、該shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有し、ここで該発現ベクターは発現のための別の導入遺伝子を含まない、前記発現ベクター。
【請求項145】
第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、該第1の核酸配列は、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、該shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有し、ここで、該shRNAをコードする該第1の核酸配列は、発現のための唯一の配列である、前記発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる、2018年12月23日に出願された米国仮出願第62/784,494号の出願日の利点を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、遺伝子治療、特に、造血幹細胞および/またはリンパ球、例えば発現ベクターによって形質導入したT細胞に関する。本開示は、例えばCRISPR-Casシステムによる遺伝子編集にも関する。
【背景技術】
【0003】
同種異系造血幹細胞移植(allo-HSCT)は、鎌状赤血球症のような血液悪性腫瘍および血液細胞の遺伝性疾患のための根治療法である。allo-HSCTに関連するチャレンジは、ドナー細胞の適切な供給源の同定を含む。適合する血縁ドナー(MRD)および適合する非血縁ドナー(MUD)は、関連するリスクのより低いHSCの供給源を提供するが、これらのドナーの利用可能性は、ほとんどみんながすぐにドナーを得られるハプロタイプ一致のドナー(典型的には親または兄弟)の利用可能性と比較して著しく低減される。しかしながら、allo-HSCTのためのハプロタイプ一致のドナーの使用に関連する合併症があり、最も重要なのは移植片対宿主病(GvHD)の発生の可能性であり、これはallo-HSCTの成功への障害となったままである。allo-HSCTを受ける患者のおよそ半数が処置を必要とするGvHDを発生し、患者の10%より多くがそのために死亡し得ると考えられる。GvHDは、胃腸管、皮膚、粘膜、肝臓および肺を含む複数の臓器系が関与する不均一な症状を示す。免疫抑制剤は、GvHDを防止および低減するための中心戦略として寄与してきた。近年、コルチコステロイドによるGvHDの標準的な処置は、多くの患者がステロイド難治性疾患を発症するため、成功が非常に限定されている。急性および慢性GvHDの処置における最良の第二選択および第三選択アプローチを含む明確なコンセンサスはない(非特許文献1を参照)。
【0004】
GvHD発生のリスクを低減するため、ハプロタイプ一致の移植は、T細胞を枯渇させることが多い。しかしながら、ドナーT細胞の欠如は、移植レシピエントを免疫無防備状態にし、移植した患者において致死性の感染症の割合の増加をもたらし得る。さらに、より近年の研究では、ドナーT細胞の存在が、CD4+およびCD8+T細胞生着に必要な期間の延長(2年まで)のためのT細胞免疫を提供することに加え、ドナー細胞生着を著しく改善し、それによりHSCTを繰り返す潜在的必要性を減らすことを示している。
【0005】
allo-HSCT悪性腫瘍設定では、ドナーT細胞の存在によって与えられる利点は、抗腫瘍活性、または移植片対腫瘍(GVT)効果(移植片対白血病-GVLとしても公知)を含む。HSCT後の再発後の疾患の緩和をもたらすドナーリンパ球輸注(DLI)の最初の報告は、1990年の慢性骨髄性白血病(CML)を有する患者においてである。DLIの前に、HSCT後に再発する患者はその疾患に屈してしまったようであり、わずかな患者しか2回目の移植を受けなかった。CMLにおける成功の後、次にDLIは急性白血病および骨髄腫のような他の血液の悪性腫瘍に利用された。したがって、重要なチャレンジは、GVT効果の適切なバランスに関連し、GVT効果は、持続的な緩和を可能にする要因であるが、GvHDに関連する毒性の要因でもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jamil,M.O.&Mineishi,S.Int J Hematol(2015年)101:452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒト幹細胞を改変する遺伝子治療戦略は、多くのヒトの疾患の治療にかなり有望である。ドナーT細胞の積極的な貢献を同時に維持しながらGvHDを最小にするアプローチが開発されるまで、allo-HSCTの最大の治療可能性は実現しないであろうと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様には、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する、発現ベクターがある。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの核酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の発現制御配列はPolIIIプロモーターまたはPolIIプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、PolIIIプロモーターは7skプロモーター、変異型7skプロモーター、H1プロモーター、またはEF1aプロモーターである。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列を含む。
【0010】
本開示の第2の態様には、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも90%配列同一性を有する、発現ベクターがある。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号8、9、10、および11のいずれか1つの核酸配列を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の発現制御配列はPolIIIプロモーターまたはPolIIプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、PolIIIプロモーターは7skプロモーター、変異型7skプロモーター、H1プロモーター、またはEF1aプロモーターである。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは配列番号14の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列と少なくとも97%配列同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、変異型7skプロモーターは配列番号15の核酸配列を含む。
【0012】
本開示の第3の態様には、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターによって形質導入した宿主細胞であって、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する、宿主細胞がある。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、発現ベクターによる形質導入後に実質的にHPRTを欠損する。いくつかの実施形態では、宿主細胞はリンパ球、例えばT細胞である。
【0013】
本開示の第4の態様には、宿主細胞を含む医薬組成物であって、宿主細胞は薬学的に許容される担体または賦形剤と共に製剤化され、宿主細胞は、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターによって形質導入されており、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、医薬組成物がある。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、発現ベクターによる形質導入後に実質的にHPRTを欠損する。いくつかの実施形態では、宿主細胞はリンパ球、例えばT細胞である。
【0014】
本開示の第5の態様には、実質的にHPRTを欠損した細胞を生成する方法であって:発現ベクターによって宿主細胞の集団を形質導入する工程、および形質導入した宿主細胞の集団を少なくともプリン類似体と接触させることによってHPRTを欠損した細胞を正に選択する工程を含む方法がある。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6-チオグアニン(6TG)および6-メルカプトプリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0015】
本開示の第6の態様には、副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、工程;実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;HSC移植片を患者に投与する工程、HSC移植片の投与後、治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程;および、場合により、副反応が生じた場合、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与する工程を含む方法がある。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、メトトレキサート(MTX)またはミコフェノール酸(MPA)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。
【0017】
いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む。
【0018】
本開示の第7の態様には、副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、工程;実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;およびHSC移植片の投与と同時にまたはHSC移植片の投与後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程を含む方法がある。いくつかの実施形態では、方法は、1またはそれ以上の用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む。
【0020】
本開示の第8の態様には、その処置を必要とする患者において血液のがんを処置する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、発現ベクターによってドナーサンプル内のリンパ球を形質導入することによって生成される、工程;実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;HSC移植片を患者に投与することによって少なくとも部分的な移植片対悪性腫瘍効果を誘導する工程;および残存病変または疾患再発の検出後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程を含む方法がある。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与し、GvHDまたはCRSの少なくとも1つの症状を抑制する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む。
【0022】
本開示の第9の態様には、副反応を軽減しながら、その処置を必要とする患者にリンパ球輸注の利点を提供する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルをドナーサンプル内のリンパ球にトランスフェクトすることによって生成される、工程;実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;HSC移植片を患者に投与する工程;HSC移植片の投与後、治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程;および、場合により、副反応が生じた場合、MTXを投与する工程を含む方法がある。
【0023】
いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas12タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%同一性を有するガイドRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%同一性を有するガイドRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルはナノカプセルである。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、1またはそれ以上の用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む。
【0026】
本開示の第十の態様には、その処置を必要とする患者において血液のがんを処置する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成する工程であって、実質的にHPRTを欠損したリンパ球は、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルをドナーサンプル内のリンパ球にトランスフェクトすることによって生成される、工程;実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択し、改変したリンパ球の集団を提供する工程;HSC移植片を患者に投与することによって少なくとも部分的な移植片対悪性腫瘍効果を誘導する工程;および残存病変または疾患再発の検出後に治療有効量の改変したリンパ球の集団を患者に投与する工程を含む方法がある。
【0027】
いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas12タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%同一性を有するガイドRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%同一性を有するガイドRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは、ナノカプセルである。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与し、GvHDまたはCRSの少なくとも1つの症状を抑制する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成した実質的にHPRTを欠損したリンパ球をプリン類似体とアロプリノールの両方と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、複数用量の改変したリンパ球が患者に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球の総投与量は約0.1×10個の細胞/kg~約730×10個の細胞/kgを含む。
【0029】
本開示の第11の態様には、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠損したリンパ球によって患者を処置する方法であって:(a)ドナー対象からリンパ球を単離する工程;(b)単離したリンパ球を発現ベクターによって形質導入する工程;(c)形質導入し、単離したリンパ球を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供する工程;(d)造血幹細胞移植後に治療有効量の改変したリンパ球の調製物を患者に投与する工程;および(e)場合により、患者において移植片対宿主疾患(GvHD)の発生後にメトトレキサートまたはミコフェノール酸を投与する工程を含む方法がある。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤は、プリン類似体を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。
【0031】
本開示の第12の態様には、HPRTを欠損したリンパ球によって患者を処置する方法であって:(a)ドナー対象からリンパ球を単離する工程;(b)単離したリンパ球を、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルと接触させ、HPRTを欠損したリンパ球の集団を提供する工程;(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供する工程;(d)造血幹細胞移植後に治療有効量の改変したリンパ球の調製物を患者に投与する工程;および(e)場合により、患者において移植片対宿主疾患(GvHD)の発生後にジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与する工程を含む方法がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤はMTXまたはMPAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤は、プリン類似体を含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、6TGの量は約1~約15μg/mLの間の範囲である。
【0033】
いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分は、配列番号25~39からなる群から選択される核酸配列を標的化するガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、HPRTをノックアウトするように適合させた成分はCasタンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas12タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12aタンパク質である。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質はCas12bタンパク質である。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルはナノカプセルである。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルは1つまたはそれ以上の標的化部分を含むナノカプセルである。
【0034】
本開示の第13の態様には、造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、改変したリンパ球の調製物は:(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;(b)単離したリンパ球を発現ベクターによって形質導入すること;および(c)形質導入し、単離したリンパ球を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供することによって生成される、使用がある。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、および5~11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0035】
本開示の第14の態様には、造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、改変したリンパ球の調製物は:(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;(b)単離したリンパ球を、HPRTをノックアウトするように適合させた成分を含む送達ビヒクルと接触させ、HPRTを欠損したリンパ球の集団を提供すること;および(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供することによって生成される、使用がある。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルはナノカプセルである。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有するgRNA、およびCasタンパク質(例えば、Cas9タンパク質、Cas12aタンパク質、またはCas12bタンパク質)を含む。
【0036】
本開示の第15の態様には、医薬組成物であって、(i)第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含むレンチウイルス発現ベクターであって、第1の核酸配列は、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここでshRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、レンチウイルス発現ベクター;ならびに(ii)薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物がある。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれかの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。
【0037】
本開示の第16の態様には、キットであって、(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するガイドRNA;および(ii)Casタンパク質を含む、キットがある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも97%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas12aである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas12bである。
【0038】
本開示の第17の態様には、ナノカプセルであって、(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNA;および(ii)Casタンパク質を含む、ナノカプセルがある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも97%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは少なくとも1つの標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルはポリマーシェルを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性のモノマー、およびクロスリンカーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、イミダゾール基を有するモノマーを含まない。
【0039】
本開示の第18の態様には、ナノカプセルをトランスフェクトされた宿主細胞であって、ナノカプセルは、(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNA;および(ii)Casタンパク質を含む、宿主細胞がある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質およびCas12タンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも97%配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、配列番号25~39のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは少なくとも1つの標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルはポリマーシェルを含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性のモノマー、およびクロスリンカーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、イミダゾール基を有するモノマーを含まない。
【0040】
本開示の第19の態様には、造血幹細胞移植後に、その処置を必要とする対象にリンパ球輸注の利点を提供するための改変したリンパ球の調製物の使用であって、改変したリンパ球の調製物は:(a)ドナー対象からリンパ球を単離すること;(b)単離したリンパ球をナノカプセルと接触させることによって生成し、ナノカプセルは、(i)配列番号25~39のいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNA;および(ii)Casタンパク質を含み;ならびに(c)HPRTを欠損したリンパ球の集団を、HPRTを欠損したリンパ球を正に選択する薬剤に曝露し、改変したリンパ球の調製物を提供することによって生成される、使用がある。いくつかの実施形態では、gRNAは配列番号25~39のいずれか1つの配列を含む。
【0041】
本開示の第20の態様には、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターを含むナノカプセルであって、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する、ナノカプセルがある。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、少なくとも1つの標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、ポリマーシェルを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性のモノマー、およびクロスリンカーを含む。
【0042】
他の「オフスイッチ」法と比較して、本開示の方法に従って処置した造血幹細胞(HSC)(T細胞を含む)は、「自殺遺伝子」を発現する必要がない。むしろ、本開示の方法は、血液の細胞に望ましくない効果を引き起こさない内在性遺伝子のノックダウンまたはノックアウト、および全体的に優れた結果を提供する。出願者は、本明細書に記載の方法に従って、遺伝子改変した細胞、HSC(またはリンパ球)の集団の所与のex vivoでの6TGケモセレクションは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤(例えば、メトトレキサート(MTX))を投与することにより、in vivoで細胞の定量的除去を可能にする対象への投与のために提供されることを提出する。さらに、本開示の方法に記載の処置は、「キルスイッチ」が組み込まれていない治療より、ドナーT細胞の潜在的な高用量およびより積極的な治療を提供する。さらに、改変したT細胞の数を調節するためのジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤の使用は、GvHDを処置する既存の方法と臨床的に両立でき、すなわち、MTXは、本開示の改変したT細胞を受けない患者においてGvHD症候群の緩和を助けるために使用される。
【0043】
出願者は、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子によって形質導入したドナーリンパ球と比較して、本開示の方法に記載の処置は、細胞の除去をもたらし、および将来的な輸注の可能性を除外する免疫原性を含む制限を軽減する(Zhou X、Brenner MK、“Improving the safety of T-Cell therapies using an inducible caspase-9 gene、”Exp Hematol.2016年11月;44(11):1013~1019頁参照、その開示を参照によってその全体を本明細書に組み入れる)ことをさらに提出する。また、出願者は、本方法が、HSV-tkドナーリンパ球の望まないクリアランスをもたらさない、GvHD以外の同時臨床条件のためのガンシクロビルの使用を可能にすることを提出する(例えば、ガンシクロビルは、近年記載した方法が利用される場合、allo-HSCT設定に一般的であるコントロールCMV感染症に投与する工程から除外されない)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】T細胞を、HPRTをノックダウンするように適合させた発現ベクターまたはHPRTをノックアウトするように構成されたペイロード(例えば、Casタンパク質およびgRNA)を含むナノカプセルに接触させる一般的な方法を示す図である。図は、改変したT細胞を用いた処置の副反応が観察されるイベントでのような、キルスイッチが活性化されることをさらに図解している。
図2】sh734の二次構造および理論的一次DICER切断部位(矢印)を示す図である(配列番号1も参照)。二次構造は、約-30.9kcal/molのMFE値を有する。
図3】sh616についての二次RNA構造および最小自由エネルギー(dG)を示す図である(配列番号5も参照)。
図4】sh211についての二次RNA構造および最小自由エネルギー(dG)を示す図である(配列番号6も参照)。
図5】sh734の改変バージョン(sh734.1)を示す図である(配列番号7も参照)。二次構造は、約-36.16kcal/molのMFE値を有する。
図6】人工miRNA734(111nt)の新規設計図を示す図である。5’および3’DROSHA標的部位ならびに5’および3’DICER切断部位は二次構造中の矢印で示されている(配列番号8も参照)。
図7】人工miRNA211(111nt)の新規設計図を示す図である(配列番号9も参照)。
図8】天然のmiRNA 16-2構造に由来する第3世代のmiRNAスキャフォールドである、miRNA-3G骨格に包埋しているsh734を示す図である(配列番号11も参照)。
図9】天然のmiRNA 16-2構造に由来する第3世代のmiRNAスキャフォールドである、miRNA-3G骨格に包埋しているsh211を示す図である(配列番号10も参照)。
図10】ヒト7skプロモーター突然変異を示す図である。TATAボックス(高く薄いボックス)と比べて7skプロモーターでのシス遠位配列エンハンサー(DSE)および近位配列エンハンサー(PSE)エレメント(長く広いボックス)中に導入された突然変異(矢印)および欠失が図解されている。これらの突然変異および他の物は、Boyd,D.C.、Turner,P.C.、Watkins,N.J.、Gerster,T.&Murphy,S. Functional Redundancy of Promoter Elements Ensures Efficient Transcription of the Human 7SK Gene in vivo、Journal of Molecular Biology 253、677~690頁(1995)により記載されており、前記文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み込む。
図11】改変したT細胞を調製しその改変したT細胞をそれを必要とする患者に投与する工程を説明するフローチャートである。
図12A】6TGを用いた改変した細胞の首尾よくいったex vivo選択および増殖(LV形質導入によるHPRTノックダウンまたはCRISPR/Cas9ナノカプセルによるノックアウト)を描いている図である。これら最初の予備実験はK562細胞において実施した(ヒト不死化骨髄性白血病株)(rsh7-GFP=HPRTをノックダウンする短鎖ヘアピンからHPRT/GFPレンチウイルスベクター;ナノRNP-HPRT=HPRTをノックアウトするCRISPR/Cas9リボ核タンパク質ナノカプセル)。図12Aは、MOI=5(感染効率)=5でshHPRT-GFPベクターを用いて形質導入されたK562細胞は、6TGを用いてex-vivo選択して、10日でshHPRTを保有する95%を超える細胞の状態に到達することができることを図示している。
図12B】6TGを用いた改変した細胞の首尾よくいったex vivo選択および増殖(LV形質導入によるHPRTノックダウンまたはCRISPR/Cas9ナノカプセルによるノックアウト)を描いている図である。これら最初の予備実験はK562細胞において実施した(ヒト不死化骨髄性白血病株)(rsh7-GFP=HPRTをノックダウンする短鎖ヘアピンからHPRT/GFPレンチウイルスベクター;ナノRNP-HPRT=HPRTをノックアウトするCRISPR/Cas9リボ核タンパク質ナノカプセル)。図12Bは、HPRTノックアウト細胞もCRISPR RNPナノカプセルにより、600nMまたは900nMの6TG下10日で全集団中95%よりも高く到達できることを図示している。これらのデータは、6TGケモセレクション(chemoselection)を通じて高含量の遺伝子改変細胞を生成する実現可能性を示唆している。
図13A】CEM細胞に対する6TGを用いた正の選択(ex vivo)の効果を示す図である。
図13B】CEM細胞のHPRTノックアウト集団が6TGの処理下で3日目から17目まで増加したことを示す図である。
図14A】K562細胞に対するMTXを用いた負の選択の効果を示す図である。
図14B】K562細胞に対するMTXを用いた負の選択の効果を示す図である。
図15A】CEM細胞に対するMTXまたはMPAを用いた負の選択の効果を示す図である。
図15B】CEM細胞に対するMTXまたはMPAを用いた負の選択の効果を示す図である。
図16】K562細胞に対するMTXを用いた負の選択の効果を示す図である。
図17】デオキシチミジン三リン酸(dTTP)の合成のための新規経路を示す図である。
図18】6TGの存在下でのHPRT欠損細胞の選択を示す図である。
図19】改変したT細胞を調製し、患者の免疫系が少なくとも部分的に再構成されるように、幹細胞移植に続いてその改変したT細胞を患者に投与する工程を説明するフローチャートである。
図20】改変したT細胞を調製し、改変したT細胞がGVM効果を誘導するのを支援するように、幹細胞移植に続いてその改変したT細胞を患者に投与する工程を説明するフローチャートである。
図21】改変したT細胞を調製し(HPRT欠損であるCAR-T細胞)、その改変したT細胞をそれを必要とする患者に投与する工程を説明するフローチャートである。
図22】HPRTの相対的な発現レベルを示し、その時点でHPRT欠損細胞をプリン類似体で選び出すカットオフをさらに示す図である。
図23】オンターゲットおよびオフターゲット効果について試験された種々のガイドRNAを図示する表を詳細に説明する図である。
図24】HPRTノックアウトジャーカット細胞における発光対6TG濃度を描くグラフを提供する図である。
図25】HPRTノックアウトおよび野生型ジャーカット細胞のウェスタンブロットを提供する図であり、アクチンがタンパク質対照として使用された。
図26】緑色蛍光タンパク質(GFP)対HPRTノックアウト生存優位性のグラフを詳細に説明する図であり、グラフは生存細胞の割合対時間を提供している。
図27】GFP対HPRTノックアウト細胞の蛍光活性化セルソーティング(FACS)からのデータを提供する図である。
図28】野生型ジャーカット細胞についてのメトトレキサート(MTX)用量応答の決定を詳細に説明するグラフを提供する図であり、グラフは生細胞の割合を示している。
図29】HPRTノックアウトおよび野生型ジャーカット細胞についてのメトトレキサート用量応答の決定を示すグラフを提供する図であり、グラフは用量応答対メトトレキサート濃度の変化を示している。
図30A】レンチウイルスベクターTL20cw-7SK/sh734-UbC/GFPを用いて形質導入されたHPRTノックダウンジャーカットT細胞に応じたFACSデータを提供する図である。
図30B】レンチウイルスベクターTL20cw-UbC/GFP-7SK/sh734を用いて形質導入されたHPRTノックダウンジャーカットT細胞に応じたFACSデータを提供する図である。
図31】レンチウイルスベクターTL20cw-7SK/sh734-UbC/GFPまたはTL20cw-UbC/GFP-7SK/sh734を用いて形質導入されたHPRTノックダウンCEM細胞を用いた6TG選択を図示するグラフを提供する図である。
図32】本開示のいくつかの実施形態に従ってレンチウイルスベクター内に含まれるエレメントを示す図である。図は、他のエレメントに対するある特定のエレメントの相対的な配向をさらに示している。例えば、7sk駆動sh734エレメントを、UbC駆動GFPと比べて同じ方向にまたは反対方向に向けてもよい。さらに、図は、7sk駆動sh734エレメントを、他のベクターエレメントの上流にまたは下流、例えば、UbC駆動GFPの上流または下流に置くことがあることを図示している。
図33】4つのベクターのうちの1つを用いた形質導入後のGFPを発現する細胞の割合のグラフを提供する図である。
【0045】
配列リスト
本明細書に添付の核酸およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.1.822に規定のように、ヌクレオチド塩基の標準的な文字省略、およびアミノ酸の3文字コードを使用して示される。配列リストは、参照により本明細書に組み入れる、2019年12月19日に作成された「Calimmune-072WO_ST25.txt」という名の、26KBのASCIIテキストファイルとして提出された。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
反対に明確に指示しない限り、1つより多くの工程または行為を含む本明細書で主張する任意の方法では、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が引用される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0047】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数の参照を含む。同様に、単語「または(or)」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、「および(and)」を含むことを意図する。
【0048】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、1つまたはそれ以上の要素のリストを参照して、句「少なくとも1つ」は、要素のリストのいずれか1つまたはそれ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、特に要素のリスト内に列挙された各および全ての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリストの要素のいずれかの組合せを除外しないと理解されるべきである。この定義は、要素が、場合により、句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で特に同定された要素以外を、特に同定したそれらの要素に関連してもしなくても表し得ることも許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない(および場合により、B以外の要素を含む)少なくとも1つ、場合により1つより多くのAを含む、;別の実施形態では、Aが存在しない(および場合により、A以外の要素を含む)少なくとも1つ、場合により1つより多くのBを含む、;さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、場合により1つより多くのAを含む、および少なくとも1つ、場合により1つより多くのBを含む(および場合により、他の要素を含む);等を指すことができる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」等は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。特に、各用語は、「少なくとも以下」を意味する開かれた用語であると解釈されるものであり、さらなる特徴、制限、態様等を除外しないとも解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、およびcを有するデバイス」は、少なくとも構成要素a、b、およびcを含むデバイスを意味する。同様に、句:「工程a、b、およびcを含む方法」は、方法が少なくとも工程a、b、およびcを含むことを意味する。さらに、工程および方法は特定の順序で本明細書に概説されるが、当業者は工程および方法の順序は変わり得ることを認識するであろう。
【0050】
明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、「または」は、上記の「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目を分ける場合、「または」もしくは「および/または」は、包括的である、すなわち少なくとも1つの包括であるが、いくつかの要素または要素のリストの1つより多く、ならびに、場合により、さらなるリストにない項目も含むと解釈されるべきである。「の1つのみ(only one of)」もしくは「の厳密に1つ(exactly one of)」のような反対に明確に指定した用語のみ、または特許請求の範囲で使用する場合、「からなる(consisting of)」は、いくつかの要素または要素のリストの厳密に1つの要素の包括を指す。一般に、本明細書で使用する場合、用語「または」は、「いずれか(either)」、「の1つ(one of)」、「の1つのみ(only one of)」または「の厳密に1つ(exactly one of)」のような排他的な用語によって先行される場合、排他的な代替物(すなわち「1つまたはその他であるが両方ではない」)を示すとだけ解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用する場合、「基本的に~からなる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「投与する(administer)」または「投与する(administering)」は、組成物、製剤、または特定の薬剤を、本明細書に記載のものを含む、処置を必要とする対象(例えば、ヒト患者)に提供することを意味する。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「Casタンパク質」は、Casタンパク質、またはその断片を含むRNAガイドヌクレアーゼを指す。Casタンパク質は、CRISPR(クラスター化して規則的な配列の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeat))関連ヌクレアーゼとも呼ばれる。CRISPRは、可動遺伝要素(ウイルス、転移性要素および接合性プラスミド)に対する保護を提供する適応免疫系である。CRISPRクラスターは、スペーサー、先行する可動要素に対する配列相補性、および標的侵入核酸を含有する。CRISPRクラスターは、CRISPR RNA(crRNA)へと転写およびプロセシングされる。Casタンパク質は、限定はされないが、Cas9タンパク質、Cas9オルソログによってコードされるCas9様タンパク質、Cas9様合成タンパク質、Cpf1タンパク質、Cpf1オルソログによってコードされるタンパク質、Cpf1様合成タンパク質、C2c1タンパク質、C2c2タンパク質、C2c3タンパク質、ならびにこれらのバリアントおよび改変を含む。Casタンパク質のさらなる例としては、限定はされないが、Cpf1、C2c1、C2c3、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas13a、Cas13b、およびCas13cを含む。Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas100、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、C2c1、C2c3、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas13a、Cas13b、およびCas13c。
【0053】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、クラス2 CRISPR関連タンパク質である。本明細書で規定する場合、「クラス2型CRISPR-Casシステム」は、エフェクター複合体(例えばCas9)として単一のタンパク質で機能するCRISPR-Casシステムを指す。本明細書で規定する場合、「クラス2タイプII CRISPR-Casシステム」は、そのcas遺伝子の中でもCas9遺伝子を含むCRISPR-Casシステムを指す。「クラス2タイプII-A CRISPR-Casシステム」は、cas9遺伝子およびCsn2遺伝子を含むCRISPR-Casシステムを指す。「クラス2タイプII-B CRISPR-Casシステム」は、cas9遺伝子およびcas4遺伝子を含むCRISPR-Casシステムを指す。「クラス2タイプII-C CRISPR-Casシステム」は、Cas9遺伝子を含むが、Csn2遺伝子もCas4遺伝子も含まないCRISPR-Casシステムを指す。「クラス2タイプV CRISPR-Casシステム」は、そのcas遺伝子にcas12遺伝子(Cas12a、12bまたは12c遺伝子)を含むCRISPR-Casシステムを指す。「クラス2タイプVI CRISPR-Casシステム」は、そのCas遺伝子にCas13遺伝子(Cas13a、13bまたは13c遺伝子)を含むCRISPR-Casシステムを指す。各野生型Casタンパク質は、1つまたはそれ以上の同種ポリヌクレオチド(もっとも典型的にはRNA)と相互作用し、核タンパク質複合体(最も典型的にはリボ核タンパク質複合体)を形成する。さらなるCasタンパク質は、Haftら、”A Guild of 45 CRISPR-Associated(Cas)Protein Families and Multiple CRISPR/Cas Subtypes Exist in Prokaryotic Genomes、PLoS Comput.Biol.、2005年、11月;1(6):e60によって記載される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は改変Casタンパク質、例えば本明細書で同定したCasタンパク質のいずれかの改変バリアントである。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「Cas9」または「Cas9タンパク質」は、標的ポリヌクレオチドに相補性な配列を持つCRSPR RNA(crRNA)によってガイドされるわずかなエンドヌクレアーゼ活性(例えば、ポリヌクレオチド内でホスホジエステル結合を切断する)を示し得る酵素(野生型または組換え)を指す。Cas9ポリペプチドは、当技術分野で公知であり、例えば、細菌および古細菌のような原核生物起源を含む、様々な生物起源のいずれかからのCas9ポリペプチドを含む。細菌のCas9は、放線菌門(例えば、アクチノマイセス・ネスルンディ)Cas9、アクウィフェクス門Cas9、バクテロイデス門Cas9、クラミジア門Cas9、緑色非硫黄細菌門Cas9、シアノバクテリアCas9、エルシミクロビウム門Cas9、フィブロバクター門Cas9、ファーミキューラス門Cas9(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9、ストレプトコッカス・サーモフィラスCas9、リステリア・イノキュアCas9、ストレプトコッカス・アガラクチアCas9、ストレプトコッカス・ミュータンスCas9、およびエンテロコッカス・フェシウムCas9)、フソバクテリウム門Cas9、プロテオバクテリア(例えば、髄膜炎菌、カンピロバクター・ジェジュニおよびカンピロバクターラリ)Cas9、スピロヘータ(例えば、トレポネーマ・デンティコラ)Cas9等を含む。古細菌のCas9は、ユリ古細菌門Cas9(例えば、メタノコッカス・マリパルディスCas9)等を含む。様々なCas9および関連ポリペプチドが公知であり、例えば、Makarovaら(2011年)Nature Reviews Microbiology 9:467~477頁、Makarovaら(2011年)Biology Direct 6:38、Haftら(2005年)PLOS Computational Biology I:e60 and Chylinskiら(2013年)RNA Biology 10:726~737頁;K.Makarovaら、An updated evolutionary classification of CRISPR-Cas systems.(2015年)Nat.Rev.Microbio.13:722~736頁;およびB.Zetscheら、Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease of a class2 CRISPR-Cas system.(2015年)Cell.163(3):759~771頁に概説されている。
【0055】
他のCas9ポリペプチドは、フランシセラ・ツラレンシス亜種ノビシダCas9、パスツレラ・マルトシダCas9、マイコプラズマ・ガリセプティカムF系統Cas9、ニトラチフラクター・サルスギニスDSM16511系統Cas9、パルビバクラム・ラバメンティボランスCas9、ロゼブリア・インテスティナリスCas9、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)Cas9、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカスCas9、アゾスピリルム属B510 Cas9、スファエロカエタ(Sphaerochaeta)・グロブス バディ系統cas9、フラボバクテリウム・カラムナーレCas9、フラヴィコラ・タフェンシスCas9、バクテロイデス・コプロフィルスCas9、マイコプラズマ・モービレCas9、ラクトバチルス・ファルシミニスCas9、ストレプトコッカス・パステウリアヌスCas9、ラクトバチルス・ジョンソニイCas9、スタフィロコッカス(Staphylococcus)・シュディンテルメディウスCas9、フィリファクター・アロキスCas9、トレポネーマ・デンティコラCas9、レジオネラ・ニューモフィラパリス系統Cas9、ステレラ・ウォズワーセンシスCas9、およびコリネバクター・ジフテリアCas9を含む。用語「Cas9」は、Cas9の任意のアイソフォームを含む、任意のCas9ファミリーのCas9ポリペプチドを含む。本明細書に具体的に記載または提供するものを超えた、様々なCas9ホモログ、オルソログ、およびバリアントのアミノ酸配列は、当業者に公知であり、一般に利用可能であり、当業者の範囲内であり、したがって本開示の精神および範囲内である。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「Cas12」または「Cas12タンパク質」は、限定はされないが、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12eのようなCas12タンパク質を含む任意のCas12タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質は、機能性Cas12タンパク質、特にアシダミノコッカス属BV3L6株(Uniprot Entry:U2UMQ6;Uniprot Entry Name:CS12A_ACISB)からのCas12a/Cpf1タンパク質またはフランシセラ・ツラレンシス(Uniprot Entry:A0Q7Q2;Uniprot Entry Name:CS12A_FRATN)からのCas12a/Cpf1タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも85%(または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Cas12タンパク質は、天然に見出されるタンパク質と実質的に同一であるCas12ポリペプチド、または天然に見出されるCas12タンパク質と少なくとも85%配列同一性(または少なくとも90%配列同一性、または少なくとも95%配列同一性、または少なくとも96%配列同一性、または少なくとも97%配列同一性、または少なくとも98%配列同一性、または少なくとも99%配列同一性)を有し、実質的に同じ生物活性を有するCas12ポリペプチドであり得る。Cas12aタンパク質の例としては、限定はされないが、FnCas12a、AsCas12a、LbCas12a、Lb5Cas12a、HkCas12a、OsCas12a、TsCas12a、BbCas12a、BoCas12aまたはLb4Cas12aが挙げられ;Cas12aは、好ましくはLbCas12aである。Cas12bタンパク質の例としては、限定はされないが、AacCas12b、Aac2Cas12b、AkCas12b、AmCas12b、AhCas12b、AcCas12bが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用する場合、句「有効量」は、研究者、獣医、医師または他の医療従事者によって考えられる、組織、システム、動物、またはヒトの診断、生物または医学的応答を誘発するであろう本明細書に記載の組成物または製剤の量を指す。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「発現カセット」は、RNA、および、いくつかの実施形態では、続いてタンパク質を発現することができるベクター内の1つまたはそれ以上の遺伝子配列を指す。発現カセットは、少なくとも1つのプロモーターおよび少なくとも1つの目的の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、少なくとも1つのプロモーター、少なくとも1つの目的の遺伝子、および発現のための分子(例えばRNAi)をコードする少なくとも1つのさらなる核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、カセット内の核酸がRNAへと転写され、必要な場合、タンパク質またはポリペプチドへと翻訳され、形質転換した細胞(例えば、形質導入した幹細胞)において活性に必要な適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内区画への標的化または細胞外区画への分泌によって生物活性のための適切な区画へと転位置されるように、ベクター内で位置的および順に方向付けされる。いくつかの実施形態では、カセットは、ベクターへの挿入が容易になるように適合させたその3’端および5’端を有し、例えば、各端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「機能性核酸」は、タンパク質をコードする転写物と直接相互作用することによってタンパク質の発現を減らす能力を有する分子を指す。siRNA分子、リボザイム、およびアンチセンス核酸は、例示的な機能性核酸を構成する。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、生物機能と関連する任意のDNAのセグメントを広く指す。遺伝子は、限定はされないが、コード配列、プロモーター領域、シス調節配列、調節タンパク質の特異的認識配列である非発現DNAセグメント、遺伝子発現に寄与する非発現DNAセグメント、所望のパラメーターを持つように設計されたDNAセグメント、またはこれらの組合せを含む配列を包含する。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子サイレンシング」は、下方調節、ノックダウン、分解、阻害、抑制、抑圧、防止、または遺伝子、転写物および/またはポリペプチド産物の発現の低下を記載することを意味する。遺伝子サイレンシングおよび干渉は、mRNA転写物のポリペプチドへの翻訳の防止も記載する。いくつかの実施形態では、翻訳は、mRNA転写物の分解またはmRNA翻訳の遮断によって防止、阻害され、または低下する。
【0062】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子発現」は、それにより生物学的に活性なポリペプチドがDNA配列から産生される細胞のプロセスを指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「ガイドRNA」または「gRNA」は、ヌクレアーゼ活性を有するCRISPRエフェクターを標的に向け、特定の標的核酸を切断することができるRNA分子を指す。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「造血細胞移植(hematopoietic cell transplant)」または「造血細胞移植(hematopoietic cell transplantation)」は、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯静脈血移植、または任意の他の多能性造血幹細胞の起源を指す。同様に、用語「幹細胞移植」または「移植」は、薬学的に許容される担体と接触している(例えば懸濁している)幹細胞を含む組成物を指す。カテーテルを通して、そのような組成物を対象に投与することができる。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、本開示の方法を使用して改変される細胞を指す。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、発現ベクターが発現される哺乳動物細胞である。好適な哺乳動物宿主細胞としては、限定はされないが、ヒト細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞(例えば、アカゲザル細胞)、ヒト前駆細胞または幹細胞、293細胞、HeLa細胞、D17細胞、MDCK細胞、BHK細胞、およびCf2Th細胞を含む。特定の実施形態では、本開示の発現ベクターを含む宿主細胞は、造血前駆細胞/幹細胞(例えば、CD34陽性造血前駆細胞/幹細胞)、単球、マクロファージ、末梢血単核細胞、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、または樹状細胞のような造血細胞である。本開示の発現ベクターによって形質導入する造血細胞(例えば、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、および/または単球/マクロファージ)は、同種、自家または適合した兄弟由来であり得る。造血前駆細胞/幹細胞は、いくつかの実施形態では、CD34陽性であり、患者の骨髄または末梢血から単離される。単離したCD34陽性造血前駆細胞/幹細胞(および/または本明細書に記載の他の造血細胞)は、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のように発現ベクターによって形質導入する。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ」または「HPRT」は、HPRT1遺伝子(例えば、配列番号12を参照)によってコードされるプリン代謝に関与する酵素を指す。HPRT1は、X染色体に位置し、したがって男性では単一コピーで存在する。HPRT1は、5-ホスホリボシル1-ピロリン酸からプリンへと5-ホスホリボシル(phosphoroibosyl)基を転移することにより、ヒポキサンチンのイノシン一リン酸への変換、およびグアニンのグアノシン一リン酸への変換を触媒するトランスフェラーゼをコードする。酵素は、主に、新しいプリン合成での使用のため、分解したDNAからのプリンの再利用に機能する。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「インデル」は、挿入および欠失の混合により名付けられた変異を指す。それは、違いが、元々、配列挿入により、または配列欠失により引き起こされたか分からない場合、2つのアレル間の長さの違いを指す。挿入/欠失のヌクレオチドの数が3で割り切れず、タンパク質コード領域で生じる場合、それはフレームシフト変異(フレームシフト変異は、一般に、異なるアミノ酸をコードする変異後のコドンのリーディングを引き起こす)でもある。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「レンチウイルス」は、分裂および非分裂細胞に感染することができるレトロウイルスの属を指す。レンチウイルスのいくつかの例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス:HIV 1型、およびHIV 2型を含む)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体;羊の脳炎(ビスナ)または肺炎(マエディ)を引き起こす、ビスナ・マエディ、ヤギの免疫不全、関節炎、および脳症を引き起こす、ヤギ関節炎脳炎ウイルス;ウマに自己免疫性溶血性貧血、および脳症を引き起こす、ウマ伝染性貧血ウイルス;ネコに免疫不全を引き起こす、ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシのリンパ節腫大、リンパ球増加症、および中枢神経系感染症を引き起こす可能性のある、ウシ免疫不全ウイルス(BIV);ならびに類人霊長類に免疫不全および脳症を生き起こす、サル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルス由来の核酸の任意の形態を示すために使用され、形質導入により細胞へと遺伝物質を移行するために使用される。用語は、DNAおよびRNAのようなレンチウイルスベクターの核酸、これらの核酸のカプセル化形態、およびウイルスベクター核酸がパッケージされたウイルス粒子を包含する。
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「ノックダウン(knock down)」または「ノックダウン(knockdown)」は、遺伝子発現へのRNAiの効果に関して使用する場合、遺伝子発現のレベルが阻害され、実質的に同じ条件だがRNAiの非存在下で調べた場合に通常観察されるレベル以下まで低減されることを意味する。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「ノックアウト(knock-out)」または「ノックアウト(knockout)」は、内在性遺伝子の発現の部分的または完全な抑制を指す。これは、一般に、遺伝子の一部を欠失することにより、または一部を第2の配列と置き換えることによって達成されるが、終始コドンの導入、重要なアミノ酸の変異、イントロンジャンクションの除去等のような遺伝子への他の改変によっても引き起こされる。したがって、「ノックアウト」構築物は、細胞に導入する場合、細胞において内在性DNAによってコードされるポリペプチドまたはタンパク質の発現の抑制(部分的または完全)をもたらす、DNA構築物のような核酸配列である。いくつかの実施形態では、「ノックアウト」は、点変異、挿入、欠失、フレームシフト、またはミスセンス変異のような変異を含む。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「感染多重度」または「MOI」は、感染標的(例えば、細胞)に対する因子(例えば、ファージまたはより一般的には、ウイルス、細菌)の比率を意味する。例えば、ウイルス粒子を接種した細胞の群を参照する場合、感染多重度またはMOIは、指定した空間に存在する標的細胞の数に対するウイルス粒子の数の比である。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「ミニ細胞」は、二分裂の間に、DNA分離を伴う細胞分裂の調整の障害によって生じる、無核形態の細菌細胞を指す。ミニ細胞は、特定の状況で、およびミニ細胞とは対照的に自然発生的に生成および放出される他の小胞とは異なり、特定の遺伝子再編成またはエピソーム遺伝子発現によらない。本開示のミニ細胞は、二分裂の間に、DNA分離を伴う細胞分裂の調整の障害によって生じる、無核形態の大腸菌または他の細菌細胞である。原核生物の染色体複製は、中間細胞隔膜形成を含む、正常な二分裂と関連する。大腸菌では、例えば、minCDのようなmin遺伝子の変異は、細胞分裂中に細胞極において隔膜形成の阻害を除去し、正常な娘細胞および無核ミニ細胞の産生をもたらし得る。de Boerら、1992年;Raskin & de Boer、1999年;Hu & Lutkenhaus、1999年;Harry、2001年を参照。ミニ細胞は、特定の状況で、およびミニ細胞とは対照的に自然発生的に生成および放出される他の小胞とは異なり、特定の遺伝子再編成またはエピソーム遺伝子発現によらない。本開示を実施するため、ミニ細胞は無傷の細胞壁(「無傷のミニ細胞」)を持つことが望ましい。minオペロン変異に加えて、無核ミニ細胞は、隔膜形成に影響する他の遺伝子再編成または変異の範囲、例えば枯草菌のdivIVB1においても生成される。Reeve and Cornett、1975年;Levinら、1992年を参照。ミニ細胞は、細胞分裂/染色体分離に関与するタンパク質の遺伝子発現のレベルの攪乱後にも形成される。例えば、minEの過剰発現は、極分裂およびミニ細胞の産生をもたらす。同様に、染色体の無いミニ細胞は、染色体分離における欠損、例えば、枯草菌のsmc変異(Brittonら、1998年)、枯草菌のspoOJ欠失(Iretonら、1994年)、大腸菌のmukB変異(Hiragaら、1989年)、および大腸菌のparC変異(Stewart and D’Ari、1992年)から生じ得る。遺伝子産物はトランスに供給される。高コピー数プラスミドから過剰発現される場合、例えば、CafAは細胞分裂の割合を増加および/または複製後の染色体分配を阻害し(Okadaら、1994年)、連鎖する細胞および無核ミニ細胞の形成をもたらし得る(Wachiら、1989年;Okadaら、1993年)。ミニ細胞は、グラム陽性またはグラム陰性起源の任意の細菌細胞から調製される。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「変異」は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のような配列の、天然、野生型、標準またはそれぞれの配列の参照バージョン、すなわち非変異配列からの変化を指す。変異遺伝子は、変異遺伝子産物をもたらし得る。変異遺伝子産物は、非変異遺伝子産物と1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が異なる。いくつかの実施形態では、変異遺伝子産物をもたらす変異遺伝子は、相当する非変異ヌクレオチド配列と約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上の配列同一性を有し得る。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「ナノカプセル」は、1つまたはそれ以上の成分、例えば1つもしくはそれ以上のタンパク質および/または1つもしくはそれ以上の核酸をカプセル化するシェル、例えばポリマーシェルを有するナノ粒子を指す。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、約200ナノメートル(nm)以下、例えば、約1~200nmの間、または約5~約200nmの間、または約10~約150nmの間、または15~100nm、または約15~約150nmの間、または約20~約125nmの間、または約50~約100nmの間、または約50~約75nmの間の平均直径を有する。他の実施形態では、ナノカプセルは、約10nm~約20nm、約20nm~約25nm、約25nm~約30nm、約30nm~約35nm、約35nm~約40nm、約40nm~約45nm、約45nm~約50nm、約50nm~約55nm、約55nm~約60nm、約60nm~約65nm、約70nm~約75nm、約75nm~約80nm、約80nm~約85nm、約85nm~約90nm、約90nm~約95nm、約95nm~約100nm、または約100nm~約110nmの間の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、約1時間、または約2時間、または約3時間、または約4時間、または約5時間、または約6時間、または約12時間、または約1日、または約2日、または約1週間、または約1か月で分解されるように設計される。いくつかの実施形態では、ナノカプセルの表面は、約1~約15ミリボルト(mV)の間の電荷(例えば標準的なリン酸溶液中で測定される)を有し得る。他の実施形態では、ナノカプセルの表面は、約1~約10mVの間の荷電を有し得る。
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「正に荷電したモノマー」または「陽イオン性モノマー」は、実効正電荷、すなわち+1、+2、+3を有するモノマーを指す。いくつかの実施形態では、正に荷電したモノマーは、正に荷電した基を含むモノマーである。本明細書で使用する場合、用語「負に荷電したモノマー」または「陰イオン性モノマー」は、実効負電荷、すなわち-1、-2、-3を有するモノマーを指す。いくつかの実施形態では、負に荷電したモノマーは、負に荷電した基を含むモノマーである。本明細書で使用する場合、用語「中性のモノマー」は、実効中性電荷を有するモノマーを指す。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、相互侵入ポリマー網目、およびオリゴマーの包括であると規定される。したがって、用語ポリマーは、用語ホモポリマー、コポリマー、相互侵入ポリマー網目等と、本明細書で交換可能に使用される。用語「ホモポリマー」は、単一種のモノマー由来のポリマーと規定される。用語「コポリマー」は、2つのモノマー種の共重合によって得られるコポリマー、3つのモノマー種から得られたコポリマー(「ターポリマー」)、4つのモノマー種から得られたコポリマー(「クウォーターポリマー」)等を含む、1つより多くの種のモノマー由来のポリマーと規定される。用語「コポリマー」は、ランダムコポリマー、交互コポリマー、グラフトコポリマー、およびブロックコポリマーの包括であるとさらに規定される。その用語が一般に使用されるように、コポリマーは、相互侵入ポリマー網目を含む。用語「ランダムコポリマー」は、鎖における任意の所与の部位での所与のモノマー単位を見出す可能性が隣接する単位の性質に依存しない、巨大分子を含むコポリマーとして規定される。ランダムコポリマーでは、モノマー単位の配列分布は、ベルヌーイ統計学に従う。用語「交互コポリマー」は、交互配列に2種のモノマー単位を含む巨大分子を含むコポリマーと規定される。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「クロスリンカー」は、2つまたはそれ以上の分子鎖、ドメイン、または他の部分の間の連結(例えば、分子内連結または分子間連結)を提供する結合または部分を指す。いくつかの実施形態では、クロスリンカーは、連結された分子を形成する分子鎖間の連結を形成する分子である。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結した」は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、エンハンサーまたは転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列の間の機能性結合を指し、ここで、適切な分子(例えば、転写アクチベータータンパク質)が発現制御配列に結合すると、発現制御配列は第2の配列に相当する核酸の転写および/または翻訳に影響する。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結したポリヌクレオチドを開始および転写する。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞で作動するプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30ベース上流に位置するATリッチ領域および/または転写の開始から70~80塩基上流に見出される別の配列、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域を含む。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体または賦形剤」は、一般的に、安全、非毒性、および生物学的ではなく、または望ましくないものではない、医薬製剤の調製に有用である担体または賦形剤を指し、獣医用途ならびにヒト医薬用途に許容される担体または賦形剤を含む。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「レトロウイルス」は、宿主細胞ゲノムにインテグレートされるcDNAコピーへと、レトロウイルス逆転写酵素によって逆転写されるRNAゲノムを有するウイルスを指す。レトロウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターを作製すル方法は、当技術分野で公知である。簡潔に言うと、レトロウイルスベクターを構築するため、目的の遺伝子をコードする核酸は、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムへと挿入され、複製欠損であるウイルスを産生する。ビリオンを産生するため、gag、pol、およびenv遺伝子を含有するが、LTRおよびパッケージング成分を持たないパッケージング細胞株が構築される(Mannら、Cell、Vol.33:153~159頁、1983年)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と一緒にcDNAを含有する組換えプラスミドがこの細胞株へと導入されると、パッケージング配列は組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングさせ、次いでそれらは培養培地へと分泌される。組換えレトロウイルスを含有する培地は、次いで回収され、場合により濃縮され、遺伝子移入に使用される。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「siRNA」または「低分子干渉RNA」は、約10ヌクレオチド~数十ヌクレオチドから構成される短い二本鎖RNAを指し、RNAi(RNA干渉)を誘導し、すなわち標的mRNAの分解を誘導または標的mRNAの切断により標的遺伝子の発現を阻害する。RNA干渉(「RNAi」)は、多くの真核生物で保存された、遺伝子発現の転写後阻害の方法であり、標的遺伝子のmRNAに相同な配列を有するセンスRNAおよびそれに対して相補性な配列を有するアンチセンスRNAから構成される二本鎖RNAが細胞等に導入され、それにより標的遺伝子のmRNAの分解を選択的に誘導することができ、または標的遺伝子の発現を阻害することができる現象を指す。RNAiは、細胞に存在する短い(すなわち約30ヌクレオチドより短い)二本鎖RNA分子によって誘導される(Fire A.ら、Nature、391:806~811頁、1998年)。siRNAが細胞に導入されると、siRNAの配列に相補性なヌクレオチド配列を有する標的遺伝子のmRNAの発現が阻害されるであろう。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「低分子ヘアピンRNA」または「shRNA」は、アンチセンス領域、ループ部分およびセンス領域を含むRNA分子を指し、ここで、センス領域はアンチセンス領域と塩基対を形成して二重ステムを形成する相補性なヌクレオチドを有する。転写後プロセシングの後、RNaseIIIファミリーのメンバーである酵素によって媒介される切断イベントにより、低分子ヘアピンRNAは低分子干渉RNAへと変換される。本明細書で使用する場合、句「転写後プロセシング」は、転写後に起こり、例えば酵素および/またはDroshaによって媒介されるmRNAプロセシングを指す。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、ヒト、マウスまたは霊長類のような哺乳動物を指す。典型的には、哺乳動物はヒト(ホモサピエンス)である。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「実質的にHPRTを欠損した」は、HPRT遺伝子発現のレベルが少なくとも約50%減少した細胞、例えば宿主細胞を指す。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約55%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約60%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約65%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約70%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約75%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約80%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約85%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約90%減少する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約95%減少する。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約40%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約35%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約30%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約25%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約20%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約15%である。他の実施形態では、残りのHPRT遺伝子発現は最大約10%である。
【0087】
本明細書で使用する場合、用語「形質導入する」または「形質導入」は、トランスフェクションよりも感染の手段によるウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用する遺伝子の送達を指す。例えば、レトロウイルスベクター(細胞への核酸の導入のための発現ベクターとして使用する改変レトロウイルス)によって運ばれる抗HPRT遺伝子は、感染およびプロウイルスのインテグレーションによって細胞へと形質導入される。したがって、「形質導入遺伝子」は、レトロウイルスまたはベクター感染およびプロウイルスインテグレーションによって細胞へと導入された遺伝子である。ウイルスベクター(例えば、「形質導入するベクター」)は、遺伝子を「標的細胞」または宿主細胞へと形質導入する。
【0088】
本明細書で使用する場合、用語「トランスフェクション」は、非ウイルス方法によって細胞へと裸のDNAを導入する方法を指す。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「形質導入」は、ウイルスベクターを使用する細胞のゲノムへの外来DNAの導入を指す。
【0090】
本明細書で使用する場合、特定の条件に関して、用語「処置(treatment)」、「処置する(treating)」、または「処置する(treat)」は、所望の薬理的および/または生理的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状の完全または部分的な防止の観点では予防であり、および/または疾患および/または疾患に起因する有害事象の部分的または完全な治癒の観点では治療であり得る。本明細書で使用する場合、「処置」は、対象、特にヒトにおける疾患または障害の任意の処置を包含し、:(a)疾患に罹りやすいがまだ疾患を有すると診断されていない対象において疾患または障害が生じるのを防止すること;(b)疾患または障害を阻害すること、すなわちその発生を停止させること;および(c)疾患または障害を軽減または緩和すること、すなわち疾患もしくは障害の回帰を引き起こすおよび/または1つまたはそれ以上の疾患もしくは障害の症状を軽減することを含む。「処置(treatment)」は、疾患、障害または症状の非存在下でも、薬理学的な効果を提供するための薬剤の送達または治療の投与も包含し得る。用語「処置(treatment)」は、いくつかの実施形態で使用され、宿主における、好ましくは哺乳動物対象における、より好ましくはヒトにおける疾患または障害を軽減する本開示の化合物の投与を指す。したがって、用語「処置(treatment)」は:特に宿主が疾患に罹りやすいがまだ疾患を有すると診断されていない場合、宿主において障害が生じるのを防止すること;障害を阻害すること;および/または障害を緩和または後退させることを含み得る。本開示の方法が障害の防止を対象とする限り、用語「防止する」は、疾患状態が完全に阻止されることを必要としないことが理解される。むしろ、本明細書で使用する場合、用語防止するは、疾患の発症前に本開示の化合物の投与を行うことができるように、障害に感受性のある集団を同定する当業者の能力を指す。用語は、疾患状態が完全に避けられなければならないことを意味しない。
【0091】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、別の核酸分子の細胞への侵入、例えば移行、輸送等を媒介することができる核酸分子を指す。移行する核酸は、通常、ベクター核酸分子に連結される、例えばベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、自立複製を導く配列を含んでよく、または宿主細胞DNAへのインテグレーションを可能にするのに十分な配列を含んでよい。当業者には明らかであるように、ウイルスベクターは、核酸に加えて、移行する核酸の侵入を媒介する様々なウイルス成分を含み得る。多くのベクターが当技術分野で公知であり、限定はされないが、線状ポリヌクレオチド、イオンまたは両親媒性化合物と関連するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスベクターを含む。ウイルスベクターの例としては、限定はされないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)等が挙げられる。
【0092】
発現ベクター
本開示は、いくつかの実施形態では、発現のための少なくとも1つの核酸配列を含む発現ベクター(例えば、レンチウイルス発現ベクター)を提供する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、HPRT遺伝子をノックダウンする、またはそうでなければHPRT遺伝子発現の減少をもたらすように設計した因子をコードする第1の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現は80%またはそれ以上低下する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示は、第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、第1の核酸配列は、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する、発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは、配列番号2、5、6、および7のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAは、発現ベクターにおける発現のための唯一の導入遺伝子である。
【0094】
いくつかの実施形態では、基本的に発現のための導入遺伝子として第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列からなる発現ベクターであって、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、発現ベクターを提供する。特に、いくつかの実施形態では、基本的に発現のための唯一の導入遺伝子としての第1の核酸配列からなる発現ベクターであって、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、発現ベクターを提供する。
【0095】
さらなる態様では、導入遺伝子として第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含む発現ベクターであって、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有し、ここで、第1の核酸配列は発現のための要素のみである、発現ベクターを提供する。特に、いくつかの実施形態では、発現のための唯一の導入遺伝子として第1の核酸配列を含む発現ベクターであって、第1の核酸配列はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をノックダウンするshRNAをコードし、ここで、shRNAは配列番号2、5、6、および7のいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有する、発現ベクターを提供する。
【0096】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは自己不活性化レンチウイルスベクターである。他の実施形態では、発現ベクターはレトロウイルスベクターである。レンチウイルスゲノムは、通常、5’長い末端反復配列(LTR)、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリー遺伝子(nef、vif、vpr、vpu)および3’LTRへと組織される。ウイルスLTRは、U3、RおよびU5と呼ばれる3つの領域へと分けられる。U3領域は、エンハンサーおよびプロモーター要素を含有する。U5領域は、ポリアデニル化シグナルを含有する。R(反復)領域は、U3領域とU5領域を分け、R領域の転写された配列は、ウイルスRNAの5’端と3’端の両方に見られる。例えば、”RNA Viruses:A Practical Approach”(Alan J.Cann,Ed.,Oxford University Press、(2000年));O Narayan and Clements(1989年)J.Gen.Virology,Vol.70:1617~1639頁;Fieldsら(1990年)Fundamental Virology Raven Press.;Miyoshi H,Blamer U,Takahashi M,Gage F H,Verma I M.(1998年)J Virol.、Vol.72(10):8150 7、および米国特許第6,013,516号を参照。HSCに感染させるために使用されたレンチウイルスベクターの例は、以下の論文に記載され、その各々がその全体を参照により本明細書に組み入れる:Evansら、Hum Gene Ther.、Vol.10:1479~1489頁、1999年;Caseら、Proc Natl Acad Sci USA、Vol.96:2988~2993頁、1999年;Uchidaら、Proc Natl Acad Sci USA、Vol.95:11939~11944頁、1998年;Miyoshiら、Science、Vol.283:682~686頁、1999年;およびSuttonら、J. Virol.、Vol.72:5781~5788頁、1998年。
【0097】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは改変レンチウイルスであり、したがって、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができる。いくつかの実施形態では、改変レンチウイルスゲノムは、ウイルス複製に必要なレンチウイルスタンパク質の遺伝子を欠損し、したがって、標的細胞における複製のような望まない複製を防止する。いくつかの実施形態では、改変ゲノムの複製のために必要なタンパク質は、組換えレトロウイルスまたはレンチウイルスの産生の間に、パッケージング細胞株においてトランスに提供される。
【0098】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスの5’および3’長い末端反復配列(LTR)からの配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスの5’LTRからのRおよびU5配列、ならびにレンチウイルスからの不活性化または自己不活性化3’LTRを含む。いくつかの実施形態では、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0099】
レンチウイルス発現ベクターのさらなる成分(ならびにそのようなベクターを合成および/または産生する方法)は、米国特許出願公開第2018/0112220号に開示され、その開示は、その全体を参照により本明細書に組み入れる。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、配列番号16の骨格と少なくとも90%同一性を有するTL20c骨格を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、配列番号16の骨格と少なくとも95%同一性を有するTL20c骨格を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、配列番号17の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、配列番号17の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、WPRE要素またはRev応答要素の少なくとも1つを含む(例えば、それぞれ配列番号18および19を参照)。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で検討したレンチウイルスベクターは、インテグレーションを生じるものであっても、インテグレーションを生じるものでなくてもよい(インテグレーション欠損レンチウイルスとも呼ばれる)。本明細書で使用する場合、用語「インテグレーション欠損レンチウイルス」または「IDLV」は、宿主細胞のゲノムへとウイルスゲノムをインテグレートする能力を欠損するインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。いくつかの出願では、インテグレーションを生じるレンチウイルスベクターの使用は、インテグレーションを生じるレンチウイルスによって誘導される挿入変異の可能性を避けることができる。インテグレーション欠損レンチウイルスベクターは、典型的には、レンチウイルスのインテグラーゼ遺伝子を変異することにより、またはLTRの結合配列を改変することにより生成される(例えば、Sarkisら、Curr.Gene.Ther.、6:430~437頁(2008年)を参照)。レンチウイルスインテグラーゼは、HIV-1 Pol領域によってコードされ、その領域は、逆転写、核内移行、およびウイルス粒子アセンブリーを含む他の重要な活性をコードするので、欠失させることができない。インテグラーゼタンパク質を変更するpolにおける変異は、以下の2つのクラスの1つに分類される:インテグラーゼ活性にのみ選択的に影響するもの(クラスI);または多面的な効果を有するもの(クラスII)。N末端およびC末端に渡る変異、ならびにインテグラーゼタンパク質の触媒コア領域は、粒子形成および逆転写を含む複数の機能に影響するクラスII変異を生成する。クラスI変異は、触媒活性、DNA結合、線状エピソームプロセシングおよびインテグラーゼの多量体化へのそれらの影響を制限する。最も一般的なクラスI変異部位は、D64、D116、およびE152を含む、インテグラーゼの触媒コアにおける三つ組の残基である。各変異は、NILVの導入遺伝子発現を維持しながら、通常の、インテグレーションを生じるベクターより最高4log低いインテグレーションの頻度でインテグレーションを効果的に阻害することが示された。インテグレーションを阻害する別の代替方法は、それぞれ5’および3’LTRの末端で、U3領域の12塩基対領域内またはU5領域の11塩基対領域内のインテグラーゼDNA結合部位(LTRatt部位)に変異を導入することである。これらの配列は、インテグラーゼ媒介末端プロセシング後に曝露される保存された末端CAジヌクレオチドを含む。保存されたCA/TGジヌクレオチドにおける単一または二重変異は、インテグレーション頻度の最大3~4logの減少をもたらす;しかしながら、効果的なウイルス形質導入のための全ての他の必要な機能を保持する。
【0101】
いくつかの実施形態では、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。本明細書で使用する場合、用語「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」は、AAVベクターゲノムを含有するAAVウイルス粒子を意味する(それは、順に、本明細書で言及する第1および第2の発現カセットを含む)。全ての血清型のAAVベクター、好ましくはAAV-1からAAV-9、より好ましくはAAV-1、AAV-2、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、およびこれらの組合せを含むことを意味する。異なる血清型の組合せから生じるAAVベクターは、ハイブリッドAAVベクターと呼ばれる。一実施形態では、AAVベクターは、AAV-1、AAV-2、AAV-4、AAV-5、およびAAV-6、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される。一実施形態では、AAVベクターはAAV-5ベクターである。一実施形態では、AAVベクターは、AAV-2逆位末端配列(ITR)を含むAAV-5ベクターである。また本開示によって検討するのは、自然発生のウイルスタンパク質、例えば1つまたはそれ以上のキャプシドタンパク質のバリアントを含むAAVベクターである。
【0102】
HPRT遺伝子のノックダウンをもたらす成分
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子をノックダウンするように設計した因子をコードする核酸配列は、RNA干渉因子(RNAi)である。いくつかの実施形態では、RNAi因子は、shRNA、マイクロRNA、またはこれらのハイブリッドである。
【0103】
RNAi
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列を含む。RNA干渉は、複合の多段階な酵素方法、例えば配列特異的二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)を含む方法によって、相同転写物の分解を誘発することによる遺伝子発現の転写後サイレンシングのアプローチである。RNAi経路の簡単なモデルは、2ステップに基づき、それぞれリボヌクレアーゼ酵素を含む。第1のステップでは、トリガーRNA(dsRNAまたはmiRNA一次転写物のいずれか)は、RNaseII酵素DICERおよびDroshaにより、短い、干渉RNA(siRNA)へとプロセシングされる。第2のステップでは、siRNAは、エフェクター複合体RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)へとロードされる。siRNAは、RISCアセンブリー中にほどかれ、一本鎖RNAがmRNA標的とハイブリダイズする。遺伝子サイレンシングは、RNaseH酵素Argonaute(Slicer)による標的mRNAの酵素分解の結果であると考えられる。siRNA/mRNA二重鎖がミスマッチを含有する場合、mRNAは切断されない。むしろ、遺伝子サイレンシングは翻訳阻害の結果である。
【0104】
いくつかの実施形態では、RNAi因子は、阻害またはサイレンシング核酸である。本明細書で使用する場合、「サイレンシング核酸」は、特定の配列と相互作用し、遺伝子発現を阻害することができる任意のポリヌクレオチドを指す。サイレンシング核酸の例としては、RNA二重鎖(例えば、siRNA、shRNA)、ロックド核酸(「LNA」)、アンチセンスRNA、siRNAまたはshRNAのセンスおよび/またはアンチセンス配列をコードするDNAポリヌクレオチド、DNAザイム、またはリボザイムが挙げられる。当業者は、遺伝子発現の阻害が、必ずしも特定の列挙した配列からの遺伝子発現である必要はなく、例えば特定の配列によって制御される配列からの遺伝子発現であり得ることを認識するであろう。
【0105】
干渉RNAを構築する方法は、当技術分野で公知である。例えば、干渉RNAは、2つの別々のオリゴヌクレオチドからアセンブルされ、1つの鎖はセンス鎖であり、他の鎖はアンチセンス鎖であり、アンチセンスおよびセンス鎖は自己相補性である(すなわち、各鎖は他の鎖のヌクレオチド配列に相補性であるヌクレオチド配列を含む;例えばアンチセンス鎖およびセンス鎖が二重または二本鎖構造を形成する場合);アンチセンス鎖は、標的核酸分子またはその部分(すなわち、望まない遺伝子)のヌクレオチド配列に相補性であるヌクレオチド配列を含み、センス鎖は標的核酸配列またはその部分に相当するヌクレオチド配列を含む。あるいは、干渉RNAは、単一のオリゴヌクレオチドからアセンブルされ、自己相補性センスおよびアンチセンス領域は、核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカーによって連結される。干渉RNAは、自己相補性センスおよびアンチセンス領域を有する、二重鎖、非対称の二重鎖、ヘアピン、または非対称のヘアピン二次構造によるポリヌクレオチドであり、アンチセンス領域は、別々の標的核酸分子またはその部分のヌクレオチド配列に相補性であるヌクレオチド配列を含み、センス領域は標的核酸配列またはその部分に相当するヌクレオチド配列を有する。干渉RNAは、2つまたはそれ以上のループ構造ならびに自己相補性センスおよびアンチセンス領域を含むステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドであり、アンチセンス領域は標的核酸分子またはその部分のヌクレオチド配列に相補性であるヌクレオチド配列を含み、センス領域は標的核酸配列またはその部分に相当するヌクレオチド配列を有し、環状ポリヌクレオチドはin vivoまたはin vitroのいずれかでプロセシングされ、RNA干渉を媒介することができる活性なsiRNA分子を生成することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、干渉RNAコード領域は、センス領域、アンチセンス領域およびループ領域を有する自己相補性RNA分子をコードする。発現される場合、そのようなRNA分子は、望ましい「ヘアピン」構造を形成し、本明細書で「shRNA」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、ループ領域は通常約2~約10ヌクレオチド長の間である(ほんの一例として、配列番号20参照)。他の実施形態では、ループ領域は約6~約9ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、センス領域およびアンチセンス領域は約15~約30ヌクレオチド長の間である。転写後プロセシングの後、低分子ヘアピンRNAは、RNaseIIIファミリーのメンバーである酵素DICERによって媒介される切断イベントによってsiRNAへと変換される。次いで、siRNAは、それと相同性を共有する遺伝子の発現を阻害することができる。さらなる詳細は、それらの開示がその全体を本明細書に参照により組み入れる、Brummelkampら、Science 296:550~553頁、(2002年);Leeら、Nature Biotechnol.、20、500~505頁、(2002年);Miyagishi and Taira、Nature Biotechnol 20:497~500頁、(2002年);Paddisonら、Genes & Dev.16:948~958頁、(2002年);Paul、Nature Biotechnol、20、505~508頁、(2002年);Sui、Proc.Natl.Acad.Sd.USA、99(6)、5515~5520頁、(2002年);およびYuら、Proc NatlAcadSci USA 99:6047~6052頁、(2002年)に記載される。
【0107】
shRNA
いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する(本明細書では、「sh734」と呼ばれる)。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の核酸配列を有する。
【0108】
いくつかの実施形態では、配列番号1の核酸配列は、改変される。いくつかの実施形態では、改変は:(i)hsa-miR-22ループ配列(例えば、CCUGACCCA)(配列番号21)の組み込み;(ii)2または3つのヌクレオチド(例えばTA)を有するスペーサーのような5’~3’ヌクレオチドスペーサーの付加;(iii)1つまたはそれ以上のヌクレオチド(例えばG)の付加のような5’開始の改変;および/または(iv)2つのヌクレオチド5’および3’のステムおよびループへの付加(例えば5’Aおよび3’T)。一般に、第1世代のshRNAは、低分子RNAの不均一な混合物へとプロセシングされ、前駆体転写物の蓄積がin vivoでの配列依存的および非依存的両方の非特異的オフターゲット効果を誘導することが示された。したがって、DICERプロセシングおよび特異性の現行の理解に基づき、sh734の構造およびDICERプロセシング能力および有効性を最適化するであろう設計に設計規則が適用された(Gu,S.、Y.Zhang、L.Jin、Y.Huang、F.Zhang、M.C.Bassik、M.Kampmann、and M.A.Kay.2014年.Weak base pairing in both seed and 3’regions reduce RNAi off-targets and enhances si/shRNA designs.Nucleic Acids Research 42:12169~12176頁も参照)。
【0109】
いくつかの実施形態では、配列番号1の核酸配列は、2つのヌクレオチド5’および3’(例えば、それぞれGおよびC)をヘアピンループ(配列番号20)に付加し、それによりガイド鎖を約19ヌクレオチド長から約21ヌクレオチド長に伸長し、ループをhsa-miR-22ループCCUGACCCA(配列番号21)と置き換えることによって改変し、配列番号2のヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号2の配列を有する。配列番号2によってコードされるshRNAは、配列番号1と比較して、HPRTの同様のノックダウンを達成すると考えられる。同様に、配列番号2によってコードされるshRNAの発現によるHPRTのノックダウンを通して実質的にHPRTを欠損した細胞は、チオグアニン類似体(例えば、6TG)を使用する選択を可能にすると考えられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ベクター内に存在するRNAiは、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも90%配列同一性を有する核酸分子のような核酸分子をコードする。いくつかの実施形態では、ベクター内に存在するRNAiは、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する核酸分子のような核酸分子をコードする。いくつかの実施形態では、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも90%配列同一性を有する核酸分子は、宿主細胞の細胞質に見出される。
【0111】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも90%配列同一性を有する少なくとも1つの核酸分子を含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号3または配列番号4の核酸配列と少なくとも95%配列同一性を有する少なくとも1つの核酸分子を含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号3または配列番号4の核酸配列を有する少なくとも1つの核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する配列を有する(本明細書では、「shHPRT616」と呼ばれる)。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号5の配列を有する(図3も参照)。
【0113】
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する配列を有する(本明細書では、「shHPRT211」と呼ばれる)。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号6の配列を有する(図4も参照)。
【0114】
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する配列を有する(本明細書では、「shHPRT734.1」と呼ばれる)(図5も参照)。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。さらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。よりさらなる実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列は、配列番号7の配列を有する(図5も参照)。
【0115】
マイクロRNA
マイクロRNA(miR)は、それらの標的遺伝子の発現を転写後に調節する非コードRNAの群である。これらの一本鎖分子は、細胞質でのそれらの翻訳を防ぐようにそれらの標的mRNAの3’未翻訳領域(UTR)に結合する他のタンパク質とmiRNA媒介サイレンシング複合体(miRISC)複合体を形成する。
【0116】
いくつかの実施形態では、shRNA配列は、マイクロRNA二次構造に埋め込まれる(「マイクロRNAベースのshRNA」)。いくつかの実施形態では、HPRTを標的化するshRNA核酸配列は、マイクロRNA二次構造に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、HPRT内のコード配列を標的化し、HPRT発現のノックダウンを達成し、これは付随する経路の飽和、および細胞毒性またはオフターゲット効果なくHPRTを標的化するshRNAの利用と等価であると考えられる。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、新規の人工マイクロRNA shRNAである。そのような新規のマイクロRNAベースのshRNAの産生は、その開示がその全体を参照により本明細書に組み入れる、Fang,W.&Bartel,David P.The Menu of Features that Define Primary MicroRNAs and Enable De Novo Design of MicroRNA Genes.Molecular Cell 60、131~145頁に記載される。
【0117】
いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号8の配列を有する(「miRNA734-Denovo」)(図6も参照)。配列番号8のRNA形態は、配列番号22を有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも80%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、配列番号9の核酸配列を有する(「miRNA211-Denovo」)(図7も参照)。配列番号9のRNA形態は、配列番号23を有する。
【0119】
他の実施形態では、マイクロRNAベースのshRNAは、第三世代miRNA足場改変miRNA16-2である(以降「miRNA-3G」)(例えば、図8および図9を参照)。そのようなmiRNA-3G分子の合成は、その開示がその全体を参照により本明細書に組み入れる、Watanabe,C.,Cuellar,T.L.&Haley,B.“Quantitative evaluation of first,second,and third generation hairpin systems reveals the limit of mammalian vector-based RNAi、”RNA Biology 13、25~33頁(2016年)に記載される。
【0120】
いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の配列と少なくとも96%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の配列と少なくとも98%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の配列と少なくとも99%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号10の核酸配列を有する(「miRNA211-3G」)(図9も参照)。
【0121】
いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも80%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を有する。他の実施形態では、miRNA-3Gは、配列番号11の核酸配列を有する(「miRNA734-3G」)(図8も参照)。
【0122】
いくつかの実施形態では、sh734shRNAは、17ヌクレオチド塩基対ステムおよび4ヌクレオチドループを有するmiRNA-451(配列番号24を参照)構造を模倣するように適合される(miR-451は薬物輸送タンパク質P糖タンパク質を調節する)。特に、この構造は、DICERによるプロセシングを必要としない。pre-451 mRNA構造は、Ago2により、続いてポリ(A)特異的リボヌクレアーゼ(PARN)により切断され、成熟miRNA-451構造模倣体を生成すると考えられる。Ago-shRNAは内在性miR-451の構造を模倣し、DICER非依存性である利点を有し得る。これは、可変3’-5’エキソヌクレアーゼ活性による、パッセンジャーローディングのオフターゲット効果を制限すると考えられる(成熟23~26nt)(Herrera-Carrillo,E.,and B.Berkhout.2017年.DICER-independent processing of small RNA duplexes:mechanistic insights and applications.Nucleic Acids Res.45:10369~10379頁を参照)。単一RNAi活性ガイドのオフターゲット効果の効果的な減少、細胞性RNAi DICER機構の飽和がないことを含む、shRNAの代替のDICER非依存的プロセシングを利用する利点が存在するとも考えられ、より短いRNA二重鎖は生来のRIG-I応答を誘発しにくいようである。
【0123】
RNAiの代替物
RNAiの組み込みの代替物として、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、メッセンジャーRNA(mRNA)の部位に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列を含み得る。本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質をコードする核酸と特異的にハイブリダイズし、タンパク質の転写または翻訳を干渉する。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドはDNAを標的化し、その複製および/または転写を干渉する。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、pre-mRNA(すなわち、mRNAの未成熟な一本鎖である前駆体mRNA)、およびmRNAを含むRNAと特異的にハイブリダイズする。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、RNAのタンパク質翻訳の部位への移行、RNAからのタンパク質の翻訳、1つまたはそれ以上のmRNA種を産生するRNAのスプライシング、およびRNAが関与するまたはRNAによって促進される触媒活性に影響し得る。そのような干渉の全効果は、標的タンパク質発現を調節する、低下させる、または阻害することである。
【0124】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、エキソンスキッピング因子またはエキソンスキッピング導入遺伝子をコードする核酸配列を組み込む。本明細書で使用する場合、句「エキソンスキッピング導入遺伝子」または「エキソンスキッピング因子」は、エキソンスキッピングを生成することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする任意の核酸を指す。「エキソンスキッピング」は、タンパク質産生の間にpre-mRNAレベルでスキップおよび除去されるエキソンを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソン内のスプライス部位または調節要素と干渉し得ると考えられる。これは、遺伝子変異の存在にもかかわらず、トランケートした、部分的に機能性のタンパク質をもたらし得る。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であってよく、pre-メッセンジャーRNAの変異部位へと結合し、エキソンスキッピングを誘導することができる。
【0125】
エキソンスキッピング導入遺伝子は、エキソンスキッピングを生じ得る因子をコードし、そのような因子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、エキソン内のスプライス部位または調節要素と干渉し、遺伝子変異の存在にもかかわらず、トランケートした、部分的に機能性のタンパク質をもたらし得る。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、変異特異的であってよく、pre-メッセンジャーRNAの変異部位へと結合し、エキソンスキッピングを誘導することができる。エキソンスキッピングのためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは当技術分野で公知であり、一般に、AONと呼ばれる。そのようなAONは、低分子核RNA(「snRNA」)を含み、それは、核に限定され、スプライシングまたは他のRNAプロセシング反応に関与する、低分子RNA分子のクラスである。アンチセンスオリゴヌクレオチドの例、それを設計する方法、および関連する産生方法が、例えば、その開示がその全体を参照により本明細書に組み入れる、米国特許出願公開第20150225718号、第20150152415号、第20150140639号、第20150057330号、第20150045415号、第20140350076号、第20140350067号、および第20140329762号に開示される。
【0126】
いくつかの実施形態では、本開示の発現ベクターは、HPRTの発現中にエキソンスキッピングをもたらす、またはHPRT重複変異(例えば、エキソン4における重複変異)をもたらすエキソンスキッピング因子をコードする核酸を含む(その開示がその全体を参照により本明細書に組み入れる、Baba Sら Novel mutation in HPRT1 causing a splicing error with multiple variations.Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2017年1月 2;36(1):1~6頁を参照)。
【0127】
いくつかの実施形態では、HPRTは、スプライソソームトランススプライシングによって、改変した変異配列で置き換えられ、したがってHPRTを促進することができる。いくつかの実施形態では、これは(1)標的RNAにおいてコード配列を置き換える変異コード領域、(2)5’または3’スプライス部位、および/または(3)結合ドメイン、すなわち標的HPRT RNAに相補性であるアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を必要とする。いくつかの実施形態では、3つ全ての要素が必要である。
【0128】
プロモーター
開示された発現ベクター内に組み込まれた核酸配列のそれぞれの発現を駆動するのに種々のプロモーターが使用される。例えば、RNAi(例えば、抗HPRT shRNA)をコードする第1の核酸配列は、Pol IIIプロモーターまたはPol IIプロモーターの1つから選択される第1のプロモーターから発現される。同様に、別の例によって、HPRTを下方調節するミクロRNAベースのshRNAをコードする第1の核酸配列は、Pol IIIプロモーターまたはPol IIプロモーターの1つから選択される第1のプロモーターから発現される。一部の実施形態では、プロモーターは、当業者に公知である構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターでもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターはHIV LTRの少なくとも一部(例えば、TAR)を含む。
【0129】
適切なプロモーターの非限定的例は、RNAポリメラーゼI(pol I)、ポリメラーゼII(pol II)、またはポリメラーゼIII(pol III)プロモーターを含むがこれらに限定されない。「RNAポリメラーゼIIIプロモーター」または「RNA pol IIIプロモーター」または「ポリメラーゼIIIプロモーター」または「pol IIIプロモーター」とは、細胞中その天然の状況において、RNAポリメラーゼIIIと会合するもしくは相互作用してその作動可能に連結した遺伝子を転写する任意の無脊椎動物プロモーター、脊椎動物プロモーター、もしくは哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ブタ、ウシ、霊長類、サル、等のプロモーター、または選択された宿主細胞においてRNAポリメラーゼIIIと相互作用して作動可能に連結した核酸配列を転写する、天然であれ操作されたものであれ、その任意の変異体のことを意味する。本開示の発現ベクターでの使用に適したRNA pol IIIプロモーターは、ヒトU6、マウスU6、およびヒトH1他を含むがこれらに限定されない。
【0130】
pol IIプロモーターの例は、Ef1アルファ、CMV、およびユビキチンを含むがこれらに限定されない。他の特定のpol IIプロモーターは、アンキリンプロモーター(Sabatino DE,ら、Proc Natl Acad Sd USA.(24):13294~9頁(2000))、スペクトリンプロモーター(Gallagher PG,ら、J Biol Chem.274(10):6062~73頁、(2000))、トランスフェリン受容体プロモーター(Marziali G,ら、Oncogene.21(52):7933~44頁、(2002))、バンド3/アニオントランスポータープロモーター(Frazar TF,ら、MoI Cell Biol(14):4753~63頁、(2003))、バンド4.1プロモーター(Harrison PR,ら、Exp Cell Res.155(2):321~44頁、(1984))、BcI-Xlプロモーター(Tian C,ら、Blood 15;101(6):2235~42頁(2003))、EKLFプロモーター(Xue L,ら、Blood.103(11):4078~83頁(2004)).Epub 2004年2月5日)、ADD2プロモーター(Yenerel MN,ら、Exp Hematol.33(7):758~66頁(2005))、DYRK3プロモーター(Zhang D,ら、Genomics 85(1):117~30頁(2005))、SOCSプロモーター(Sarna MK,ら、Oncogene 22(21):3221~30頁(2003))、LAFプロモーター(To MD,ら、bit J Cancer l;115(4):568~74頁、(2005))、PSMAプロモーター(Zeng H,ら、JAndrol(2):215~21頁、(2005))、PSAプロモーター(Li HW,ら、Biochem Biophys Res Commun 334(4):1287~91頁、(2005))、プロバシンプロモーター(Zhang J,ら、145(l):134~48頁、(2004)).Epub 2003年9月18日)、ELAM-Iプロモーター/E-セレクチン(Walton T,ら、Anticancer Res.18(3A):1357~60頁、(1998))、シナプシンプロモーター(Thiel G,ら、ProcNatl Acad Sd USA.,88(8):3431~5頁(1988))、ウィルブランド因子プロモーター(Jahroudi N,Lynch DC.MoI Cell-5zo/.14(2):999~1008頁、(1994))、FLTl(Nicklin SA,ら、Hypertension 38(l):65~70頁、(2001))、Tauプロモーター(Sadot E,ら、JMoI Biol.256(5):805~12頁、(1996))、チロシナーゼプロモーター(Lillehammer T,ら、Cancer Gene Ther.(2005))、パンダープロモーター(Burkhardt BR,ら、Biochim Biophys Acta.(2005))、神経特異的エノラーゼプロモーター(Levy YS,ら、JMolNeurosci.21(2):121~32頁、(2003))、hTERTプロモーター(Ito H,ら、Hum Gene Ther 16(6):685~98頁、(2005))、HRE応答エレメント(Chadderton N,ら、IntJRadiat Oncol Biol Phys.62(l):2U~22頁、(2005))、lckプロモーター(Zhang DJ,ら、J Immunol. 174(11):6725~31頁、(2005))、MHCIIプロモーター(De Geest BR,ら、Blood.101(7):2551~6頁、(2003), Epub 2002年11月21日)、およびCDl Icプロモーター(Lopez-Rodriguez C,ら、J Biol Chem.272(46):29120~6頁(1997))を含むがこれらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態では、HPRTをノックダウンするように設計された薬剤の発現を駆動するプロモーターは、RNA pol IIIプロモーターである。いくつかの実施形態では、HPRTをノックダウンするように設計された薬剤の発現を駆動するプロモーターは、7skプロモーター(例えば、7SKヒト7SK RNAプロモーター)である。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、アクセションAY578685(ホモサピエンス細胞株HEK-293 7SK RNAプロモーター領域、完全配列、アクセションAY578685)により提供される核酸配列を有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14の配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号14に示される核酸配列を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、利用される7skプロモーターは、7skプロモーターと比べて少なくとも1つの突然変異および/または欠失をその核酸配列に含む。適切な7skプロモーター突然変異はBoyd,D.C.、Turner,P.C.、Watkins,N.J.、Gerster,T.&Murphy,S.Functional Redundancy of Promoter Elements Ensures Efficient Transcription of the Human 7SK Gene in vivo.Journal of Molecular Biology 253、677~690頁(1995)に記載されており、前記文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。いくつかの実施形態では、sh734を含む、プロモーター駆動トランス遺伝子の発現レベルを調節するため7skプロモーター中に機能的突然変異または欠失をシス調節エレメントで作成する。記載される突然変異を使用して、Pol IIIプロモーターにより駆動されるsh734発現レベル間の相関性を確立し、6TG療法の存在下で安定した選択を受ける機能性ならびに長期の安定性および安全性を導入する。7skプロモーター突然変異の位置は図10に描かれている。
【0134】
いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15の配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15の配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15の配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15の配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15の配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、7skプロモーターは、配列番号15に示される核酸配列を有する。
【0135】
他の実施形態では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。使用し得る組織特異的プロモーターのいくつかの非限定的例は、lck(例えば、Garvinら、MoI.Cell Biol.8:3058~3064頁、(1988)およびTakaderaら、MoI.Cell Biol.9:2173~2180頁、(1989)参照)、ミオゲニン(Yeeら、Genes and Development 7:1277~1289頁(1993))、およびthyl(Gundersenら、Gene 113:207~214頁、(1992))を含む。
【0136】
プロモーターに作動可能に連結した核酸配列の組合せの非限定的例は以下の表に示されている。
【0137】
【表1】
【0138】
ベクターの産生
いくつかの実施形態では、HPRTをノックダウンするように適合された核酸配列を含むカッセットのような発現カセットは、レンチウイルス発現ベクターのような発現ベクター中に挿入されて、発現のための少なくとも1つのトランス遺伝子を有するベクターが提供される。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、pTL20c、pTL20d、FG、pRRL、pCL20、pLKO.1 puro、pLKO.1、pLKO.3G、Tet-pLKO-puro、pSico、pLJM1-EGFP、FUGW、pLVTHM、pLVUT-tTR-KRAB、pLL3.7、pLB、pWPXL、pWPI、EF.CMV.RFP、pLenti CMV Puro DEST、pLenti-puro、pLOVE、pULTRA、pLJM1-EGFP、pLX301、pInducer20、pHIV-EGFP、Tet-pLKO-neo、pLV-mCherry、pCW57.1、pLionII、pSLIK-Hygro、およびpInducer10-mir-RUP-PheSからなる群から選択し得る。他の実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、AnkT9Wベクター、T9Ank2Wベクター、TNS9ベクター、lentiglobin HPV569ベクター、lentiglobin BB305ベクター、BG-1ベクター、BGM-1ベクター、d432βAγベクター、mLAβΔγV5ベクター、GLOBEベクター、G-GLOBEベクター、βAS3-FBベクター、V5ベクター、V5m3ベクター、V5m3-400ベクター、G9ベクター、およびBCL11A shmirベクターから選択し得る。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、pTL20c、pTL20d、FG、pRRLおよびpCL20からなる群から選択し得る。さらに他の実施形態では、レンチウイルス発現ベクターはpTL20cである。
【0139】
いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号13の配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、発現カセットは、配列番号13の配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、発現カセットは、配列番号13の配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、発現カセットは、配列番号13の配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を含む。さらに他の実施形態では、発現カセットは、配列番号13の配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を含む。さらなる実施形態では、発現カセットは、配列番号13の核酸配列を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号17の核酸配列を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも90%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも95%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも96%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも97%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも98%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の配列と少なくとも99%同一性を有する核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。いくつかの実施形態では、プラスミドは、配列番号16の核酸配列を有するTL20ウイルス骨格を含む。
【0142】
1つまたはそれ以上の実施形態では、HPRT遺伝子を標的にするshRNAをコードする第1の核酸配列は、発現ベクター中の、他のベクターエレメントに対して異なる配向で挿入される(例えば、図32間の7skプロモーターの配向を比較されたい)。例えば、7sk駆動sh734エレメントを、実施例に記載されるUbC駆動GFPのようなトランス遺伝子と比べた場合、同じ方向にまたは反対方向に向けてもよい。さらに他の実施形態では、HPRT遺伝子を標的にするshRNAをコードする第1の核酸配列は、発現ベクター中の異なる位置に、すなわち、他のベクターエレメントの上流にまたは下流に、例えば、UbC駆動GFPの上流にまたは下流に挿入してもよい。他のベクターエレメントに対して7sk発現カセットの異なる位置および/または配向はsh734の発現を増強し得ると考えられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのような、他のベクターエレメントに対して上流に位置している。
【0144】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのような、他のベクターエレメントに対して下流に位置している。
【0145】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットとUbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントは同じ方向に向けられている。
【0146】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットとUbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントは反対方向に向けられている。
【0147】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対してフォワード方向に向けられている。
【0148】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対してリバーズ方向に向けられている。
【0149】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対して上流に位置しておりフォワード方向に向けられている。
【0150】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対して上流に位置しておりリバーズ方向に向けられている。
【0151】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対して下流に位置しておりフォワード方向に向けられている。
【0152】
いくつかの実施形態では、7sk/sh734発現カセットは、UbC駆動GFPのようなその他のベクターエレメントに対して下流に位置しておりリバーズ方向に向けられている。
【0153】
HPRTを下方調節するまたはHPRTをノックアウトする薬剤の非ウイルス送達
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子をノックダウンするように設計された薬剤(RNAiを含む発現構築物を含む)は、他の非ウイルス送達ビヒクルであるナノカプセルを通じて送達される。この方法を通じた該薬剤の送達は、発現されたRNAiまたは発現ベクター由来の他の薬剤によってHPRTの下方調節を実現する代替案を表す。本明細書にさらに記載されているように、アンチセンスRNA、エキソンスキッピングのために設計されたオリゴヌクレオチド、またはナノカプセルを使用する遺伝子編集機構を送達することが可能である。
【0154】
一般に、ナノカプセルは、高分子膜またはコーティングに取り囲まれている貯蔵場所または空洞に活性分子が閉じ込められている典型的なコアシェル構造を示す小胞系である。いくつかの実施形態では、典型的なナノカプセルの殻はポリマー膜またはコーティングで作られている。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは生分解性または生体浸食性ポリマー物質に由来しており、すなわち、ナノカプセルは生分解性および/または浸食性ポリマーナノカプセルである。例えば、ノックダウンおよび/またはノックアウトのための成分は、ポリ乳酸-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)のような1つまたはそれ以上の生分解性ポリマーを含むナノカプセル内にカプセル化される。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、2つの異なる正に荷電したモノマー、少なくとも1つの中性モノマー、およびクロスリンカーを含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、酵素的に分解可能なナノカプセルである。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、単一タンパク質コアおよびペプチドにより架橋された薄いポリマー殻からなる。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、それがプロテアーゼにより特異的に認識可能であり切断されることが可能であるように選択してもよい。いくつかの実施形態では、切断可能なクロスリンカーは、プロテアーゼまた別の酵素の基質となるペプチド配列または構造を含む。
【0155】
ナノカプセルの例は、米国特許出願第9,782,357号に記載されるナノカプセル;米国特許出願公開第2017/0354613号、および米国特許出願公開第2015/0071999号に記載されるナノカプセル;ならびに国際公開第2016/085808号および国際公開第2017/205541号に記載されるナノカプセルを含むがこれらに限定されない。前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。いくつかの実施形態では、前述の刊行物に記載されるナノカプセルは、ノックダウンおよび/またはノックアウトのための成分、例えば、Casタンパク質および/またはgRNAを輸送するおよび/またはカプセル化するように改変してもよい。他の適切なナノカプセル、その合成方法、および/またはカプセル化方法は、米国特許出願公開第2011/0274682号にさらに開示されており、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。HPRTのノックダウンまたはノックアウトを実現するための成分を輸送するおよび/またはカプセル化するように改変してもよいさらに他の適切なナノカプセルは、国際公開第2013/138783号、国際公開第2013/033717号、および国際公開第2014/093966号に記載されており、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0156】
いくつかの実施形態では、ナノカプセルは特定の細胞型(例えば、T細胞、CD34造血幹細胞および前駆細胞)をin vivoで標的にするように適合される。例えば、ナノカプセルは、ポリマーナノカプセルに結合された1つまたはそれ以上の標的化部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、標的化部分は特定の細胞型までポリマーナノカプセルを送達し、細胞型は、免疫細胞、血液細胞、心細胞、肺細胞、視覚細胞、肝細胞、腎細胞、脳細胞、中枢神経系の細胞、末梢神経系の細胞、がん細胞、ウイルスが感染した細胞、幹細胞、皮膚細胞、腸管細胞、および/または聴細胞を含む群から選択される。いくつかの実施形態では、標的化部分は抗体である。
【0157】
いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、少なくとも1つの標的化部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、2つ~6つの間の標的化部分を含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は抗体である。いくつかの実施形態では、標的化部分は、CD117、CD10、CD34、CD38、CD45、CD123、CD127、CD135、CD44、CD47、CD96、CD2、CD4、CD3、およびCD9マーカーのいずれか1つを標的にする。いくつかの実施形態では、標的化部分は、CD29、CD44、CD90、CD49a-f、CD51、CD73(SH3)、CD105(SH2)、CD106、CD166、およびStro-1マーカーを含む、ヒト間葉系幹細胞CDマーカーのいずれか1つを標的にする。いくつかの実施形態では、標的化部分は、CD34、CD38、CD45RA、CD90、およびCD49を含むヒト造血幹細胞のいずれか1つを標的にする。
【0158】
該ナノカプセルに適したペイロードは、HPRTを標的にする合成オリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA、およびAgo-shRNAを含む。いくつかの実施形態では、ペイロードを、Pol IIIまたはPol II駆動プロモーターカセットで発現してもよい。
【0159】
他の実施形態では、HPRTを下方調節するための薬剤をバイオナノカプセル内で製剤化してもよく、バイオナノカプセルは遺伝子操作された微生物により産生されるナノサイズカプセルである。いくつかの実施形態では、バイオナノカプセルは、ウイルス表面抗原粒子(例えば、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)粒子)のようなウイルスタンパク質由来または改変ウイルスタンパク質由来粒子である。他の実施形態では、バイオナノカプセルは、脂質二重膜およびウイルス表面抗原粒子のようなウイルスタンパク質由来または改変ウイルスタンパク質由来粒子を含むナノサイズカプセルである。該粒子は、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞のような真核細胞から精製することができる。カプセルのサイズは、約10nm~約500nmの間の範囲でもよい。他の実施形態では、カプセルのサイズは、約20nm~約250nmの間の範囲でもよい。さらに他の実施形態では、カプセルのサイズは、約80nm~約150nmの間の範囲でもよい。
【0160】
アンチセンスRNA
アンチセンスRNA(asRNA)は、細胞内で転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)鎖に相補的な一本鎖RNAである。いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、アンチセンスRNAは細胞中に導入されて、相補的mRNAと塩基対合し翻訳機構を物理的に妨害することにより相補的mRNAの翻訳を阻害すると考えられる。別の言い方をすれば、アンチセンスRNAは、特定のmRNAとの相補的な関係を示す一本鎖RNA分子である。
【0161】
アンチセンスRNAは、遺伝子制御のために利用されて、タンパク質合成のために使用されるmRNAを特異的に標的化する。アンチセンスRNAは、相補的mRNAと物理的に対になって結合し、したがって、mRNAが翻訳機構において処理される能力を阻害する。いくつかの実施形態では、ホスホロチオエート改変アンチセンスオリゴヌクレオチドを利用して、HPRT mRNAのコード領域内の配列を標的化する。これらのオリゴヌクレオチドは、上記のように、標的に向けられたナノ粒子を使用して、特定の細胞集団および解剖学的部位に送達することができる。
【0162】
エキソンスキッピング
本明細書に記述されているように、エキソンスキッピングを利用して、HPRT遺伝子内に欠損を作り出しHPRT欠損をもたらしてもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド(改変したオリゴヌクレオチドを含む)をナノカプセルによって送達してもよく、オリゴヌクレオチドは、スプライシングされていないHPRT mRNAを標的化し、活性に必要なイントロンの早期終結またはスキッピングを媒介するように設計される。HPRT重複突然変異、例えば、エキソン4での重複突然変異(Baba S,ら、「Novel mutation in HPRT1 causing a splicing error with multiple variations」、Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.2017年1月2日;36(1):1~6頁参照)を導入すればHPRTタンパク質のスプライシングエラーおよび機能的不活化を引き起こすことができると考えられる。スプライソソームトランススプライシングにより、HPRTを改変した突然変異配列で置き換えるのは、HPRTをノックダウンするための潜在的治療戦略である。これは、(1)標的RNA中のコード配列を置き換える突然変異コード領域、(2)5’または3’スプライス部位、および(3)標的RNAに相補的である結合ドメイン、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列を必要とすると考えられる。
【0163】
オリゴヌクレオチドを、それがヌクレアーゼ抵抗であるように構造的に改変してもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、改変した骨格または非天然ヌクレオシド間連鎖を有する。改変した骨格を有する該オリゴヌクレオチドは、骨格にリン原子を保持するオリゴヌクレオチドおよび骨格にリン原子がないオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、そのヌクレオシド間骨格にリン原子がない改変したオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオチドであると見なすことができる。他の実施形態では、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間連鎖の両方、すなわち、骨格が新規の基で置き換えられるように改変される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つの該オリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが明らかにされているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格を含有するアミドで置き換えられる。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的にまたは間接的に結合している。改変したオリゴヌクレオチドは、1つまたはそれ以上の置換された糖部分も含有し得る。オリゴヌクレオチドは、核酸塩基(当技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)改変物または置換物も含み得る。ある特定の核酸塩基は、本開示のオリゴマー化合物の結合親和性を増やすために特に有用である。これらは、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンを限定せずに含む。5-メチルシトシン置換物は、核酸二重鎖安定性を約0.6~約1.2℃増加することが明らかにされており、より詳しくは、2’-O-メトキシエチル糖改変物と組み合わせた場合、現在好ましい塩基置換物である。
【0164】
HPRTをノックアウトするための遺伝子編集
本開示は、HPRTのノックアウト用の組成物も提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集手法を使用してHPRTをノックアウトしてもよい。例えば、単離された細胞を、HPRT標的CRISPR/Cas9 RNPでまたはHPRT標的CRISPR/Cas12a RNPで処理してもよい。本明細書で提供される「リボ核タンパク質複合体」とは、核タンパク質およびリボ核酸を含む複合体または粒子のことである。本明細書で提供される「核タンパク質」とは、核酸(例えば、RNA、DNA)に結合することができるタンパク質のことである。核タンパク質がリボ核酸に結合する場合、それは「リボ核タンパク質」と呼ばれる。リボ核タンパク質とリボ核酸の間の相互作用は、直接的、例えば、共有結合による、または間接的、例えば、非共有結合(例えば、静電気相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子双極子、双極子誘起双極子、ロンドン分散)、リングスタッキング(Pi効果)、疎水性相互作用および同類のもの)によるでもよい。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質は、リボ核酸に非共有結合しているRNA結合モチーフを含む。例えば、RNA結合モチーフ中の正に荷電した芳香族アミノ酸残基(例えば、リジン残基)は、RNAの陰性核酸リン酸骨格と静電気相互作用を形成し、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成し得る。リボ核タンパク質の非限定的例は、リボソーム、テロメラーゼ、RNAseP、hnRNP、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)および核内低分子RNP(snRNP)を含む。リボ核タンパク質は酵素でもよい。実施形態では、リボ核タンパク質はエンドヌクレアーゼである。したがって、いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体はエンドヌクレアーゼおよびリボ核酸を含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCRISPR関連タンパク質9である。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCRISPR関連タンパク質12aである。
【0165】
いくつかの実施形態では、リボ核酸はガイドRNAである(例えば、配列番号25~39参照)。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質9はリボ核酸に結合しており、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成する。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCas9でありリボ核酸はガイドRNAである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質12aはリボ核酸に結合しており、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成する。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCas12aでありリボ核酸はガイドRNAである。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質12bはリボ核酸に結合しており、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成する。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼはCas12bでありリボ核酸はガイドRNAである。したがって、ガイドRNA(またはgRNA)は、核タンパク質に結合することができるリボヌクレオチド配列を含み、それによって、リボ核タンパク質複合体を形成し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは1つまたはそれ以上のRNA分子を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは標的部位に相補的であるヌクレオチド配列を含む。相補的ヌクレオチド配列は、標的部位へのリボ核タンパク質複合体の結合を媒介し、それによって、リボ核タンパク質複合体の配列特異性を提供し得る。したがって、いくつかの実施形態では、ガイドRNAは標的核酸に相補的である。
【0166】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA(例えば、配列番号25~39のガイドRNAのうちのいずれか)は標的核酸配列に結合する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約50%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約55%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約60%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約65%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約70%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約75%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約80%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約85%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約90%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約96%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約97%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約98%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの相補体は、標的核酸の約99%の配列同一性を有する。
【0167】
本明細書で提供される標的核酸配列は、細胞により発現される核酸配列である。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は外来性核酸配列である。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は内在性核酸配列である。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は細胞遺伝子の一部を形成する。したがって、いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、細胞遺伝子またはその断片に相補的である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、標的核酸配列に約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%相補的である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、細胞遺伝子の配列に約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%相補的である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは細胞遺伝子配列に結合する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子内の配列(配列番号12)を標的化するgRNAを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集に必要なgRNAおよび別の成分はナノカプセル内で提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒトX染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置にある配列を標的化するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置を有する配列を標的化するgRNAを含み、標的化された配列は約14~約28連続塩基対に及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置を有する配列を標的化するgRNAを含み、標的化された配列は約15~約26連続塩基対に及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置を有する配列を標的化するgRNAを含み、標的化された配列は約16~約24連続塩基対に及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置を有する配列を標的化するgRNAを含み、標的化された配列は約17~約22連続塩基対に及ぶ長さを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置を有する配列を標的化するgRNAを含み、標的化された配列は約18~約22連続塩基対に及ぶ長さを有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも95%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも96%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも97%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも98%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも99%同一性を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号25~39のうちのいずれか1つを含むgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物はナノカプセルであり、gRNAおよび遺伝子編集のための別の成分(例えば、Casタンパク質)はナノカプセル内に含まれる。
【0170】
いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも90%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも95%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも96%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも97%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも98%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置に位置する標的配列と少なくとも99%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するgRNAを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置の標的配列の相補体は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置の標的配列の相補体は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置の標的配列の相補体は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、X染色体内の約134460145~約134500668に及ぶ位置の標的配列の相補体は、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも99%同一性を有する。
【0172】
宿主細胞
本開示は、本開示の新規の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。「宿主細胞」または「標的細胞」とは、本開示の組成物、例えば、発現ベクターまたはナノカプセルを使用して形質転換される(すなわち、形質導入されるまたはトランスフェクトされる)ことになる細胞を意味する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、HPRTをノックダウンするよう適合された核酸をコードする発現ベクターでの形質導入後、実質的にHPRT欠損になる。他の実施形態では、宿主細胞は、HPRTのノックアウトを実現するように設計された成分を含むナノカプセルでのトランスフェクション後、実質的にHPRT欠損になる。HPRTをノックダウンする発現ベクターで宿主細胞を形質導入するまたはHPRTをノックアウトするナノカプセルで宿主細胞をトランスフェクトする方法は、同時係属中の米国特許出願第16/038,643号に記載されており、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は単離されるおよび/または精製される。
【0173】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、発現ベクターを発現することができる哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物宿主細胞は、ヒト細胞、マウス細胞、非ヒト霊長類細胞(例えば、アカゲザル細胞)、ヒト前駆細胞または幹細胞、293細胞、HeLa細胞、D17細胞、MDCK細胞、BHK細胞、およびCf2Th細胞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の発現ベクターを含む宿主細胞は、造血前駆細胞/幹細胞(例えば、CD34陽性造血前駆細胞/幹細胞)、単球、マクロファージ、末梢血単核球、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、または樹状細胞のような造血細胞である。
【0174】
本開示の発現ベクターで形質導入されるまたはナノカプセルでトラスフェクトされる造血細胞(例えば、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球および/または単球/マクロファージ)は、同種異系間の、自己の、または適合兄弟姉妹由来が可能である。造血前駆細胞/幹細胞は、いくつかの実施形態では、CD34陽性であり、患者の骨髄または末梢血から単離することができる。単離されたCD34陽性造血前駆細胞/幹細胞(および/または本明細書に記載される他の造血細胞)は、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される発現ベクターで形質導入される。
【0175】
いくつかの実施形態では、改変した宿主細胞は薬学的に許容される担体と組み合わされる。いくつかの実施形態では、宿主細胞または形質導入された宿主細胞は、PLASMA-LYTE A(例えば、静脈内投与のための無菌非発熱性等張溶液;その場合、1リットルのPLASMA-LYTE Aは、140mEqナトリウム、5mEqカリウム、3mEqマグネシウム、98mEq塩化物、27mEqアセテート、および23mEqグルコン酸のイオン濃度を有する)で製剤化される。他の実施形態では、宿主細胞または形質導入された宿主細胞は、約8%と約10%の間のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む溶液である、PLASMA-LYTE Aの溶液で製剤化される。いくつかの実施形態では、約2×10個未満の宿主細胞/形質導入された宿主細胞が、PLASMA-LYTE AおよびDMSOを含む1mLあたりの製剤に存在する。
【0176】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示に従った発現ベクターでの形質導入後に実質的にHPRT欠損になる。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子発現のレベルは少なくとも約80%低減される。20%またはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現を有する細胞は、6TGのようなプリン類似体に感受性であり、プリン類似体を用いたその選択を可能にすると考えられる(例えば、図22参照)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、配列番号3または配列番号4の少なくとも1つと少なくとも90%同一性を有する核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、配列番号3または配列番号4の少なくとも1つと少なくとも95%同一性を有する核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、配列番号3または配列番号4の少なくとも1つを含む核酸分子を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、宿主細胞の形質導入は、本開示の発現ベクターおよび形質導入効率を増やす1つまたはそれ以上の化合物に宿主細胞をin vitro、ex vivo、またはin vivoで接触させることにより増やしてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、形質導入効率を増やす1つまたはそれ以上の化合物は、プロスタグランジンEP受容体シグナル伝達経路を刺激する化合物、すなわち、1つまたはそれ以上の化合物の非存在下でプロスタグランジンEP受容体の下流の細胞シグナル伝達活性と比べて1つまたはそれ以上の化合物に接触させた細胞においてプロスタグランジンEP受容体の下流の細胞シグナル伝達活性を増やす1つまたはそれ以上の化合物である。いくつかの実施形態では、形質導入効率を増やす1つまたはそれ以上の化合物は、プロスタグランジンE2(PGE2)、またはその類似体もしくは誘導体を含むがこれらに限定されない、プロスタグランジンEP受容体リガンドである。他の実施形態では、形質導入効率を増やす1つまたはそれ以上の化合物は、レトロネクチン(組換えヒトフィブロネクチン断片の63kD断片、Takaraより入手可能);Lentiboost(膜シーリングポロクサマー、Sirion Biotechから入手可能)、硫酸プロタミン、シクロスポリンH、およびラパマイシンを含むがこれらに限定されない。さらに他の実施形態では、形質導入効率を増やす1つまたはそれ以上の化合物は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマーF127)を含む。
【0178】
医薬組成物
本開示は、本明細書で開示される1つまたはそれ以上の発現ベクターおよび/または非ウイルス送達ビヒクル(例えば、ナノカプセル)を含む、医薬組成物を含む組成物も提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される発現ベクターおよび/または非ウイルス送達ビヒクルの少なくとも1つの有効量ならびに薬学的に許容される担体を含む。例えば、ある特定の実施形態では、医薬組成物は、有効量の発現ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む。有効量は、当業者であれば、対象の身体サイズ、体重、年齢、健康、性別、民族性、およびウイルス力価のような要因に基づいて容易に決定することができる。
【0179】
本開示の別の態様では、(a)HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする核酸配列を含む発現ベクター;および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物がある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は乳濁液として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はミセル内で製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はポリマー内にカプセル化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はリポソーム内にカプセル化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はミニセルまたはナノカプセル内にカプセル化される。
【0180】
本開示の別の態様では、(a)それぞれのナノカプセルが適合されたノックアウトHPRTへのペイロード(例えば、Cas9タンパク質またはCas12aタンパク質および/または配列番号25~39のうちのいずれか1つのgRNAのようなgRNA)を含む、ナノカプセルの集団;および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物がある。いくつかの実施形態では、ナノカプセルはポリマーナノカプセルである。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、特定の型の細胞へのリボ核タンパク質またはリボ核タンパク質複合体の送達を促進する少なくとも1つの標的化部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは浸食性または生分解性である。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、pH感受性クロスリンカーを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約50nm~約250nmの間の範囲であるサイズを有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約200ナノメートル(nm)未満またはこれに等しい平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約1~200nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約5~約200nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約10~約150nm、または15~100nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約15~約150nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約20~約125nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約50~約100nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ポリマーナノカプセルは、約50~約75nmの間の平均径を有する。いくつかの実施形態では、ナノカプセルの表面は約1~約15ミリボルト(mV)の間の電荷(例えば標準リン酸塩溶液において測定される)を有し得る。他の実施形態では、ナノカプセルの表面は約1~約10mVの間の電荷を有し得る。
【0182】
語句「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」とは、動物またはヒトに投与された場合、有害な、アレルギー性の、または他の都合の悪い反応を生じない分子実体および組成物のことである。例えば、発現ベクターは薬学的に許容される担体と一緒に製剤化される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、溶剤、バッファー、溶液、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤ならびにヒトへの投与に適した医薬品のような医薬品を製剤化する際の使用に適した同類のものを含む。製薬担体と一緒の化合物の製剤化のための方法は、当技術分野では公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science、(第17版.Mack Publishing Company、Easton、Pa.1985年);およびGoodman&Gillman’s:The Pharmacological Basis of Therapeutics(第11版、McGraw-Hill Professional、2005年)に記載されており;前記文献のそれぞれの開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0183】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示される発現ベクター、ナノカプセル、または組成物のいずれでも、投与されたサイレンシング核酸が約0.1mg/kg~約1mg/kgの範囲の濃度を達成するのを可能にするいかなる濃度で含んでもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1重量%~約99.9重量%までの量で発現ベクターを含んでもよい。任意の医薬組成物内での包含に適した薬学的に許容される担体は、水、緩衝水、例えば、通常生理食塩水のような生理食塩水またはハンクスもしくはアール平衡溶液のような平衡生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸、等を含む。医薬組成物を、静脈内、筋肉内または皮下投与のような非経口投与用に製剤化してもよい。非経口投与用の医薬組成物は、薬学的に許容される無菌水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液ならびに無菌注射液または分散液への復元用の無菌粉末を含んでもよい。適切な水溶性および非水溶性担体、溶剤、希釈剤またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、等のような)、カルボキシメチルセルロースおよびその混合物、植物油(オリーブオイルのような)、注射可能な有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を含む。
【0184】
医薬組成物は経口投与用に製剤化される。経口投与用の固体剤形は、例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒を含んでいてもよい。該固体剤形では、組成物は、クエン酸ナトリウムおよび/もしくはリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの薬学的に許容される担体ならびに/またはデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤もしくは延長剤;カルボキシルメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアのような結合剤;グリセリンのような保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;アセチルアルコール、グリセリンモノステアレートのような湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤(absorbants);ならびに/またはタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤を含んでいてもよい。経口投与用の液体剤形は、例えば、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含んでいてもよい。液体剤は、水もしくは他の溶剤のような不活性希釈液、可溶化剤ならびに/またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(例えば、綿実油、トウモロコシ油、胚芽油、ひまし油、オリーブオイル、ゴマ油のような)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにそれらの混合物のような乳濁液を含んでいてもよい。
【0185】
医薬組成物は、その送達を増強する浸透増強剤を含んでいてもよい。浸透増強剤は、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、ジカプリン酸(dicaprate)、レクリネート(reclineate)、モノオレイン、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセリル1-モノカプレート、モノおよびジ-グリセリドのような脂肪酸ならびにそれらの生理的に許容される塩を含んでいてもよい。組成物は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸塩、ホモバニリン酸塩)のようなキレート剤をさらに含んでいてもよい。
【0186】
医薬組成物は、本明細書で開示される発現ベクターのいずれかをカプセル化形態で含んでもよい。例えば、発現ベクターは、ポリ乳酸-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)のような生分解性ポリマーによりカプセル化される、またはリポソームにカプセル化されるもしくはミクロ乳濁液内に分散される。リポソームは、例えば、リポフェクチンまたはリポフェクタミンでもよい。別の例では、組成物は、無核細菌ミニ細胞中にまたはこの上に本明細書で開示される発現ベクターを含んでいてもよい(Giacaloneら、Cell Microbiology 2006年、8(10):1624~33頁)。本明細書で開示される発現ベクターはナノ粒子と組み合わせてもよい。
【0187】
安定した産生細胞株
本開示の別の態様には、ウイルス力価を生成するための安定な産生細胞株があり、安定な産生細胞株はGPR、GPRG、GPRT、GPRGT、またはGPRT-Gパッキング細胞株のうちの1つに由来する。いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株はGPRT-G細胞株に由来する。いくつかの実施形態では、安定な産生細胞株は、(a)少なくとも抗HPRT shRNAをコードする核酸配列を組換えプラスミド中にクローニングすることにより発現ベクターを合成する(すなわち、合成されたベクターは本明細書に記載されるベクターのうちいずれか1つでよい);(b)合成されたベクターからDNA断片を作成する;(c)(i)合成されたベクターから生成されたDNA断片から、および(ii)抗生物質耐性カセットプラスミド由来のDNA断片からコンカテマーアレイを形成する;(d)パッキング細胞株の1つに形成されたコンカテマーアレイをトランスフェクトする;ならびに(e)安定な産生細胞株を単離することにより、生成される。安定な産生細胞株を形成する追加の方法は、2016年5月12日に提出された国際出願PCT/US2016/031959に開示されており、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0188】
キット
いくつかの実施形態には、本明細書に記載される発現ベクターを含むキットまたは発現ベクターを含む組成物がある。キットは容器を含んでいてよく、容器は、発現ベクターまたは組成物を経口または非経口剤形で含むビンでもよく、それぞれの剤形は単位用量の発現ベクターを含む。キットは、本明細書に記載される方法に従った対象の処置を指示するラベルまたは同類のものを含んでいてもよい。同様に、他の実施形態には、本明細書に記載されるHPRTをノックアウトするよう適合されたペイロードを含むナノカプセルの集団を含む組成物を含むキットがある。
【0189】
いくつかの実施形態では、キットは追加の活性剤を含んでいてもよい。追加の活性剤を、ベクターまたはベクターを含む組成物を収納する容器から離れている容器に収納してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、プリン類似体(例えば、6TG)の1つまたはそれ以上の用量、ならびに、場合により、条件付けおよび/またはケモセレクションのためにプリン類似体を投与するための説明書を含んでいてもよい(それらの工程は本明細書にさらに記載されている)。他の実施形態では、キットはMTXまたはMPAの1つまたはそれ以上の用量、および、場合により、本明細書に記載される負の選択のためにMTXまたはMPAを投与するための説明書を含んでいてもよい。
【0190】
実質的にHPRT欠損のリンパ球(「改変したリンパ球」)の製造
本開示の一態様には、HPRT欠損リンパ球、例えば、T細胞(本明細書では「改変したリンパ球」または「改変したT細胞」とも呼ばれる)を産生する方法がある。図11に関連して、宿主細胞、すなわち、リンパ球(例えば、T細胞)は先ずドナーから収集される(工程110)。造血幹細胞(HSC)もドナーから収集される実施形態では、リンパ球、例えば、T細胞を、HSC移植片が収集されたのと同じドナーからまたは異なるドナーから収集してもよい。これらの実施形態では、細胞を、HSC移植片用の細胞と同時にまたは異なる時間に収集してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は同じ動員された末梢血HSC収穫から収集される。いくつかの実施形態では、これは、CD34陰性画分(CD34-陽性細胞はドナー移植片についての標準治療により収集された)または前駆体T細胞移植片が想定されている場合にはCD34-陽性HSC移植片の一部が可能であると考えられる。
【0191】
当業者であれば、細胞をいかなる手段によって収集してもよいことを認識する。例えば、細胞を、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、または単に簡単な静脈採血を通じて収集してもよい。HSC移植片が改変のための細胞と同時に収集される実施形態では、HSC移植片は、収集されたリンパ球、例えば、T細胞の操作および試験のための時間を与えられるように凍結保存される。T細胞の非限定的例は、TヘルパーT細胞(例えば、Th1、Th2、Th9、Th17、Th22、Tfh)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、ガンマデルタT細胞、および細胞傷害性リンパ球(CTL)を含む。
【0192】
細胞の収集に続いて、リンパ球、例えば、T細胞は単離される(工程120)。リンパ球、例えば、T細胞を、当業者に公知である任意の手段によって収集された細胞の凝集体から単離してもよい。例えば、CD3+細胞を、CD3ミクロビーズおよびMACS分離システム(Miltenyi Biotec)によって、収集された細胞から単離してもよい。CD3マーカーはすべてのT細胞上で発現され、T細胞受容体に関連すると考えられている。ヒト末梢血リンパ球の約70~約80%および胸腺細胞の約65~85%がCD3+であると考えられている。いくつかの実施形態では、CD3+細胞はCD3ミクロビーズで磁気的に標識されている。次に、細胞懸濁液は、MACS分離器の磁場に置かれているMACSカラム上にロードされる。磁気的に標識されているCD3+細胞はカラム上に保持される。非標識細胞は貫流し、この細胞画分はCD3+細胞が枯渇している。磁場からカラムを取り除いた後、磁気的に保持されたCD3+細胞は正に選択された細胞画分として溶出させることができる。
【0193】
代わりに、CD62L+T細胞は、IBA life sciences CD62L Fab Streptamer単離キットによって、収集された細胞から単離される。ヒトCD62L+T細胞の単離は正の選択により実施される。PBMCは磁気CD62L Fab Streptamersで標識される。標識された細胞は強力な磁石に単離され、そこで細胞は磁石側の管壁のほうに移動する。このCD62L陽性細胞画分は収集され、細胞は強力な磁石にビオチンを添加することによりすべての標識試薬から遊離される。磁気Streptamersは管壁のほうに移動し、標識のない細胞は上澄みに残る。ビオチンは洗浄することにより取り除く。得られた細胞製剤はCD62L+T細胞が高度に濃縮されており、純度は90%を超える。枯渇工程もカラムも必要としない。
【0194】
代わりの実施形態では、リンパ球、例えば、T細胞は工程120では単離されず、むしろ工程110で収集された細胞の凝集体がそれに続く改変に使用される。いくつかの実施形態では、細胞の凝集体をそれに続く改変に使用してもよいが、いくつかの例では、改変の方法は、細胞の全凝集体内の特定の細胞集団に対して特異的であってもよい。これは、いくつかの方法、例えば、標的化遺伝子ベクター送達により、または、例えば、HPRTに対するshRNAの発現を特定の細胞型、すなわち、T細胞に向けることにより、遺伝子改変を特定の細胞型に向けることで実行できると考えられる。
【0195】
T細胞の単離に続いて、T細胞はHPRT活性を減らす(工程130)、すなわち、HPRT遺伝子の発現を減らすように処理される。例えば、T細胞を、約50%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約45%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約40%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約35%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約30%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約25%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約20%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約15%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、約10%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現、または約5%もしくはそれよりも少ない残りのHPRT遺伝子発現を有するように処理してもよい。
【0196】
リンパ球、例えば、T細胞は、いくつかの方法に従って改変される。いくつかの実施形態では、T細胞を、本明細書に記載されるようなHPRT遺伝子に向けられたshRNAをコードする発現ベクター、例えば、レンチウイルスベクターでの形質導入により改変してもよい。例えば、発現ベクターは、HPRTをノックダウンするshRNAであって、配列番号2、5、6、および7のうちのいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有するshRNAをコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含んでいてもよい。別の例として、発現ベクターは、HPRTをノックダウンするshRNAであって、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれかの配列と少なくとも90%同一性を有するshRNAをコードする第1の核酸配列に作動可能に連結した第1の発現制御配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、発現ベクターはナノカプセル内にカプセル化される。
【0197】
代わりに、リンパ球、例えば、T細胞を、HPRTをノックアウトするように適合されたペイロードを含むナノカプセルでのトランスフェクションにより改変してもよく、すなわち、遺伝子編集手法を使用してHPRTをノックアウトしてもよい。例えば、T細胞を、本明細書に記載される、HPRT標的化CRISPR/Cas9 RNP、CRISPR/Cas12a RNP、またはCRISPR/Cas12b RNPで処理してもよい。いくつかの実施形態では、ナノカプセルは、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも90%配列同一性を有するgRNAを含んでいてもよい。他の実施形態では、ナノカプセルは、配列番号25~39のうちのいずれか1つと少なくとも95%配列同一性を有するgRNAを含んでいてもよい。
【0198】
T細胞が工程130で改変された後、HPRT欠損T細胞の集団が選び出されるおよび/または増殖される(工程140)。いくつかの実施形態では、培養により、生着能力が増強された細胞(例えば、中央記憶またはT幹細胞表現型)が同時に選び出され増殖される。いくつかの実施形態では、培養期間は14日未満である。いくつかの実施形態では、培養期間は7日未満である。
【0199】
いくつかの実施形態では、細胞を選び出し増殖する工程は、HPRT欠損(または実質的にHPRT欠損)リンパ球、例えば、T細胞の集団を、グアノシン類似体代謝拮抗物質(6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)、またはアザチオプリン(AZA)のような)を用いてex vivoで処理することを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球、例えば、T細胞は6-チオグアニン(「6TG」)の存在下で培養され、したがって、工程130で改変されなかった細胞を殺傷する。6TGは、細胞においてdGTP生合成を妨害することができるグアニン類似体である。チオ-dGは複製中グアニンの代わりにDNA中に取り込むことができ、取り込まれるとメチル化されることが多い。このメチル化は適切なミスマッチDNA修復を妨害することができ、細胞周期停止をもたらすおよび/またはアポトーシスを開始することができる。6TGは、急速に分裂する細胞に対するその毒性のせいで、ある特定の種類の悪性腫瘍を持つ患者を処置するために臨床的に使用されてきた。6TGの存在下では、HPRTは細胞においてDNAおよびRNA中への6TGの組込みを担当する酵素であり、適切なポリヌクレオチド合成および代謝を遮断する(図18参照)。一方、サルベージ経路はHPRT欠損細胞において遮断される(図18参照)。したがって、細胞はプリン合成に新規の経路を使用する(図17参照)。しかし、HPRT野生型細胞では、細胞はサルベージ経路を使用し、6TGはHPRTの存在下で6TGMPに変換される。6TGMPはリン酸化によりチオグアニン二リン酸塩(TGDP)およびチオグアニン三リン酸塩(TGTP)に変換される。同時に、酵素リボヌクレオチド還元酵素によってデオキシリボシル類似体が形成される。6TGが高度に細胞傷害性であることを考慮すると、6TGは、機能的HPRT酵素と一緒に細胞を殺傷する選択剤として使用することができる。
【0200】
次に、生成されたHPRT欠損細胞はプリン類似体にex vivoで接触させる。ノックダウン手法では、細胞中にまだ残りのHPRTが存在している場合があり、HPRTノックダウン細胞は一定範囲のプリン類似体を許容することができるが高投与量/量では殺傷されると考えられる。この状況では、ex vivo選択に使用されるプリン類似体の濃度は約15μM~約200nMまでの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ex vivo選択に使用されるプリン類似体の濃度は約10μM~約50nMまでの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ex vivo選択に使用されるプリン類似体の濃度は約5μM~約50nMまでの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、濃度は約2.5μM~約10nMまでの範囲に及ぶ。他の実施形態では、濃度は約2μM~約5nMまでの範囲に及ぶ。さらに他の実施形態では、濃度は約1μM~約1nMまでの範囲に及ぶ。
【0201】
HPRTのノックアウト手法では、HPRTをHPRTノックアウト細胞から完全に取り除くまたはほぼ完全に取り除いてもよく、生成されたHPRT欠損細胞はプリン類似体に対して高度に許容的になると考えられる。いくつかの実施形態では、ex vivo選択に使用されるプリン類似体の濃度はこの場合では約200μM~約5nMまでの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、ex vivo選択に使用されるプリン類似体の濃度はこの場合では約100μM~約20nMまでの範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、濃度は約80μM~約10nMまでの範囲に及ぶ。他の実施形態では、濃度は約60μM~約10nMまでの範囲に及ぶ。さらに他の実施形態では、濃度は約40μM~約20nMまでの範囲に及ぶ。
【0202】
他の実施形態では、細胞の改変(例えば、HPRTのノックダウンまたはノックアウトを通じて)は、HPRT欠損細胞についてのex vivo選択が必要ではない、すなわち、6TGまたは他の同様の化合物での選択が必要ではないほど十分効率的であってよい。
【0203】
いくつかの実施形態では、生成されたHPRT欠損細胞は、プリン類似体におよびキサンチン酸化酵素(XO)の阻害剤であるアロプリノールの両方に接触させる。XOを阻害することにより、さらに利用可能になった6TGがHPRTにより代謝されることになる。6TGがHPRTにより代謝されると、6TGは細胞にとって有毒な代謝物である6TGNを形成する(6TGNは一リン酸塩(6TGMP)、二リン酸塩(6TGDP)および三リン酸塩(6TGTP)を包含する)(図14参照)。(例えば、Curkovicら、Low allopurinol doses are sufficient to optimize azathioprine therapy in inflammatory bowel disease patients with inadequate thiopurine metabolite concentrations.Eur J Clin Pharmacol.2013年8月;69(8):1521~31頁;Gardinerら、Allopurinol might improve response to azathioprine and 6-mercaptopurine by correcting an unfavorable metabolite ratio.J Gastroenterol Hepatol.2011年1月;26(1):49~54頁;Seinenら、The effect of allopurinol and low-dose thiopurine combination therapy on the activity of three pivotal thiopurine metabolizing enzymes: results from a prospective pharmacological study.J Crohns Colitis.2013年11月;7(10):812~9頁;およびWallら、Addition of Allopurinol for Altering Thiopurine Metabolism to Optimize Therapy in Patients with Inflammatory Bowel Disease.Pharmacotherapy.2018年2月;38(2):259~270頁参照。前記文献のそれぞれの開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。)
【0204】
いくつかの実施形態では、アロプリノールは、プリン類似体の導入に先立って生成されたHPRT欠損細胞に導入される。他の実施形態では、アロプリノールは、プリン類似体の導入と同時に生成されたHPRT欠損細胞に導入される。さらに他の実施形態では、アロプリノールは、プリン類似体の導入に続いて生成されたHPRT欠損細胞に導入される。
【0205】
選択と増殖に続いて、改変したリンパ球、例えば、T細胞生成物は試験される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞生成物は標準的遊離試験(例えば、活性、マイコプラズマ、生存率、安定性、表現型、等;Molecular Therapy:Methods&Clinical Development 4巻 2017年3月 92~101頁参照、前記文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる)に従って試験される。
【0206】
他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞生成物は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤(例えば、MTXまたはMPA)に対する感受性について試験される。MTXとMPAの両方を含むジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、プリンの新規合成を阻害するが、異なる作用機序を有すると考えられている。例えば、MTXは、テトラヒドロ葉酸(THF)合成に関与する酵素である、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を競合的に阻害すると考えられている。DHFRは、ジヒドロ葉酸の活性なテトラヒドロ葉酸への変換を触媒する。葉酸は、DNA合成に必要なヌクレオシドチミジンの新規合成に必要とされる。その上、葉酸塩はプリンおよびピリミジン塩基生合成にとって不可欠なので、合成は阻害されることになる。ミコフェノール酸(MPA)は、イノシン-5’-一リン酸(IMP)からグアノシン-5’-一リン酸(GMP)の新規合成に不可欠な酵素である、イノシン-5’-一リン酸デハイドロゲナーゼ(IMPDH)の強力で可逆的で非競合的な阻害剤である。
【0207】
したがって、MTXまたはMPAの両方を含む、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤は、DNA、RNA、チミジレート、およびタンパク質の合成を阻害する。MTXまたはMPAは、DHFRを阻害することにより新規の経路を遮断する。HPRT-/-細胞では、サルベージも新規の経路も機能的ではなく、プリン合成をもたらさず、したがって、細胞は死滅する。しかし、HPRT野生型細胞は、機能的なサルベージ経路を持ち、そのプリン合成が行われ、細胞は生存する。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は実質的にHPRT欠損である。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約70%はMTXまたはMPAに対して感受性である。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約75%はMTXまたはMPAに対して感受性である。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約80%はMTXまたはMPAに対して感受性である。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約85%はMTXまたはMPAに対して感受性である。他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約90%はMTXまたはMPAに対して感受性である。さらに他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約95%はMTXまたはMPAに対して感受性である。さらに他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞集団の少なくとも約97%はMTXまたはMPAに対して感受性である。
【0208】
いくつかの実施形態では、リババリン(ribavarin)(IMPDH阻害剤);VX-497(IMPDH阻害剤)(Jain J、VX-497:a novel、selective IMPDH inhibitor and immunosuppressive agent、J Pharm Sci.2001年5月;90(5):625~37頁参照);ロメテレキソール(DDATHF、LY249543)(GARおよび/またはAICAR阻害剤);チオフェン類似体(LY254155)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)、フラン類似体(LY222306)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Habeckら、A Novel Class of Monoglutamated Antifolates Exhibits Tight-binding Inhibition of Human Glycinamide Ribonucleotide Formyltransferase and Potent Activity against Solid Tumors、Cancer Research 54、1021~2026頁、1994年2月参照);DACTHF(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Chengら、Design、synthesis、and biological evaluation of 10-methanesulfonyl-DDACTHF、10-methanesulfonyl-5-DACTHF、and 10-methylthio-DDACTHF as potent inhibitors of GAR Tfase and the de novo purine biosynthetic pathway;Bioorg Med Chem.2005年5月16日;13(10):3577~85頁参照);AG2034(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Boritzkiら、AG2034:a novel inhibitor of glycinamide ribonucleotide formyltransferase、Invest New Drugs.1996年;14(3):295~303頁参照);LY309887(GARおよび/またはAICAR阻害剤)((2S)-2-[[5-[2-[(6R)-2-アミノ-4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イル]エチル]チオフェン-2-カルボニル]アミノ]ペンタン二酸);アルムタ(LY231514)(GARおよび/またはAICAR阻害剤)(Shihら、LY231514、pyrrolo[2,3-d]pyrimidine-based antifolate that inhibits multiple folate-requiring enzymes、Cancer Res.1997年3月15日;57(6):1116~23頁参照);dmAMT(GARおよび/またはAICAR阻害剤)、AG2009(GARおよび/またはAICAR阻害剤);フォロデシン(Immucillin H、BCX-1777;trade names Mundesine and Fodosine)(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ[PNP]の阻害剤)(Kicskaら、Immucillin H、a powerful transition-state analog inhibitor of purine nucleoside phosphorylase、selectively inhibits human T lymphocytes(T-cells)、PNAS 2001年4月10日.98(8)4593~4598頁参照);およびイムシリン-G(プリンヌクレオシドホスホリラーゼ[PNP]の阻害剤)を含むがこれらに限定されない代替薬剤をMTXまたはMPAの代わりに使用してもよい。
【0209】
工程110から140までに従って産生される改変したT細胞のMTXまたはMPAに対する感受性を考慮すると、本明細書に記載されるように、MTXまたはMPA(または別のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤)を使用してHPRT欠損細胞を選択的に取り除いてもよい。いくつかの実施形態では、MTXまたはMPAの類似体または誘導体をMTXまたはMPAの代わりに使用してもよい。MTXの誘導体は米国特許出願第5,958,928号および国際公開第2007/098089号に記載されており、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0210】
処置の方法
いくつかの実施形態では、工程110から140までに従って製造される改変したリンパ球、例えば、T細胞は患者に投与される(工程150)。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞、(または本明細書に記載されるCAR T細胞もしくはTCR T細胞)は単回投与(例えば、単回ボーラス、または一定期間にわたる投与、例えば、約1~4時間もしくはそれよりも長い時間にわたる輸注)で患者に提供される。他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞の複数回投与が行われる。改変したリンパ球、例えば、T細胞の複数の用量が投与される場合、それぞれの用量は同じでも異なっていてもよい(例えば、漸増用量、漸減用量)。
【0211】
いくつかの実施形態では、改変したT細胞の投与の量は、対象の体重のCD3陽性T細胞含有量/kgに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、改変したT細胞の全用量は、約0.1×10/kg体重~約730×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の実施形態では、改変したT細胞の全用量は、約1×10/kg体重~約500×10/kg体重の範囲に及ぶ。さらに他の実施形態では、改変したT細胞の全用量は、約1×10/kg体重~約400×10/kg体重の範囲に及ぶ。さらなる実施形態では、改変したT細胞の全用量は、約1×10/kg体重~約300×10/kg体重の範囲に及ぶ。さらなる実施形態では、改変したT細胞の全用量は、約1×10/kg体重~約200×10/kg体重の範囲に及ぶ。
【0212】
複数用量が提供される場合、投与頻度は約1週間~約36週間の範囲に及んでもよい。同様に、複数用量が提供される場合、改変したT細胞の各用量は約0.1×10/kg体重~約240×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の実施形態では、改変したT細胞の各用量は約0.1×10/kg体重~約180×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の実施形態では、改変したT細胞の各用量は約0.1×10/kg体重~約140×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の実施形態では、改変したT細胞の各用量は約0.1×10/kg体重~約100×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の実施形態では、改変したT細胞の各用量は約0.1×10/kg体重~約60×10/kg体重の範囲に及ぶ。他の投与戦略は、Gozdzik Jら、により記載されており(Adoptive therapy with donor lymphocyte infusion after allogenic hematopoietic SCT in pediatric patients、Bone Marrow Transplant、2015年1月;50(1):51~5頁)、前記特許文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0213】
改変したリンパ球、例えば、T細胞を単独でまたは全体治療戦略の一部として投与してもよい。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は、HSC移植の約2~約4週間後のようなHSC移植に続いて投与される。例えば、いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞はHSC移植の執行後に投与されて、移植後免疫欠損を防止するまたは軽減する一助となる。改変したリンパ球、例えば、T細胞は、短期間(例えば、約3~約9か月)免疫再構築および/または保護を提供し得ると考えられる。別の例として、および他の実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞はがん治療の一部として投与されて、移植片対悪性腫瘍(GVM)効果または移植片対腫瘍(GVT)効果を誘導する一助となる。さらなる例として、改変したT細胞は、HPRT欠損でありがん処置戦略の一部として投与されるCAR-T細胞またはTCR改変T細胞である。これらの処置手段のそれぞれに従った改変したリンパ球、例えば、T細胞の投与は、本明細書にさらに詳細に記載されている。当然のことながら、当業者であれば、いかなる基礎疾患のための他の処置も、改変したリンパ球、例えば、T細胞の投与に先立って、これに続いて、またはこれと同時に起きてもよいことを認識している。
【0214】
リンパ球、例えば、T細胞の患者への投与により、本明細書に列挙する副作用を含む望ましくない副作用がもたらされる場合がある。例えば、患者を改変したT細胞を含むリンパ球で処置した(例えば、HPRTのノックダウンまたはノックアウトによって)後に、移植片対宿主病が起こる場合がある。本開示のいくつかの態様では、工程150での改変したリンパ球、例えば、T細胞の投与に続いて、患者は、GvHDを含むがこれに限定されないいかなる副作用の発生についてもモニターされる。万一GvHD(またはGvHDの症状)のような何らかの副作用が生じた場合、副作用、例えば、GvHDを抑制する、低減する、制御する、または他の方法で軽減しようとして、改変したリンパ球、例えば、T細胞の少なくとも一部を取り除くために工程160でMTXまたはMPAが患者に投与され(in vivo)る。いくつかの実施形態では、MTXまたはMPAは単回用量で投与される。他の実施形態では、複数用量のMTXおよび/またはMPAが投与される。
【0215】
本開示の改変したリンパ球、例えば、T細胞は(ex vivoで選び出され患者または哺乳動物対象に投与された後は)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤(MTXまたはMPAの両方を含む)に対するその感受性を考慮すると、調節可能な「オン」/「オフ」スイッチとしての役目を果たし得ると考えられる。調節可能なスイッチは、万一何らかの副作用が起きた場合には、患者へのMTXの投与を通じて、改変したリンパ球、例えば、T細胞の少なくとも一部をin vivoで選択的に殺傷することにより、免疫系再構成の調節を可能にする。この調節可能なスイッチは、副作用が低減されたまたは他の方法で軽減された後に免疫系再構成をさらに可能にするためMTX投与に続いて患者に改変したリンパ球、例えば、T細胞をさらに投与することによりさらに調節される。同様に、調節可能なスイッチは、万一何らかの副作用が起きた場合には、MTXの投与を通じて、改変したリンパ球、例えば、T細胞の少なくとも一部をin vivoで選択的に殺傷することにより、移植片対悪性腫瘍効果の調節を可能にする。その上、GVM効果は、副作用が低減されるまたは他の方法で軽減された後、それに続いて改変したリンパ球、例えば、T細胞のさらなるアリコートを患者に投与することにより微調整される。この同じ原理がCAR-T細胞療法またはTCR改変T細胞を用いた療法に当てはまり、再び、MTX投与を通じてCAR-T細胞またはTCR改変T細胞に選択的にスイッチをオン/オフすることができる。これを考慮して、当業者であれば、患者の処置を監督しているいかなる医療従事者も、副作用を寄せ付けないまたは許容できるもしくは受け入れられる範囲内にとどめておきながら、免疫系再構成および/またはGVM効果のバランスを保つことができることを認識する。上記により、有害作用を軽減しながら患者処置が増強される。
【0216】
いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約100mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約90mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約80mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約70mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約60mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約50mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約40mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約30mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約2mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約10mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約8mg/m/輸注の範囲に及ぶ。他の実施形態では、投与されるMTXの量は約2.5mg/m/輸注~約7.5mg/m/輸注の範囲に及ぶ。さらに他の実施形態では、投与されるMTXの量は約5mg/m/輸注である。さらなる実施形態では、投与されるMTXの量は約7.5mg/m/輸注である。
【0217】
いくつかの実施形態では、2回と6回の間の輸注が行われ、輸注はそれぞれが同じ投与量または異なる投与量(例えば、漸増投与量、漸減投与量、等)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、投与は1週間単位で、または2ヶ月単位で行ってもよい。
【0218】
さらに他の実施形態では、少なくともいくつかの改変したリンパ球、例えば、T細胞、および免疫系を再構成する、がんを標的化する、またはGVM効果を誘導することに対するその付随する効果を保存しながら、制御されない副作用、例えば、GvHDを解消するように、投与されるMTXの量は滴定される。これに関して、改変したリンパ球、例えば、T細胞の利点の少なくともいくらかは、副作用、例えば、GvHDを寛解しながらそれでも認識されると考えられる。いくつかの実施形態では、追加の改変したリンパ球、例えば、T細胞は、MTXでの処置に続いて、すなわち、副作用、例えば、GvHDの解消、抑制、または制御に続いて、投与される。
【0219】
いくつかの実施形態では、対象は、HSC移植後に副作用を制御するまたは防止するように、改変したリンパ球、例えば、T細胞の投与に先立ってMTXの用量を受ける。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞の投与に先立ってMTXでの既存の処置は停止され、次に、改変したリンパ球、例えば、T細胞での処置に続いて副作用が発生すると、同じまたは異なる投与量で(および同じまたは異なる投薬スケジュールを使用して)再開される。これに関して、当業者であれば、必要に応じておよび医療産業で公知である標準治療と整合するようにMTXを投与することができる。
【0220】
追加の処置戦略
図19は、症状の発生時にGvHDを低減する、抑制する、または制御する1つの方法を図示している。最初、細胞を工程210でドナーから収集する。細胞は、移植用のHSCを提供したのと同じドナーから(工程260参照)または異なるドナーから収集してもよい。次に、リンパ球は収集した細胞から単離し(工程220)、リンパ球がHPRT欠損になるように処理する(工程230)(すなわち、HPRTのノックダウンまたはノックアウトによって)。単離された細胞を処理する方法は本明細書に示されている。実質的にHPRT欠損である改変したリンパ球、例えば、T細胞の集団に到達するため、本明細書に記載されるように、処理された細胞は正に選択され増殖される(工程240)。次に、改変したリンパ球、例えば、T細胞は後の使用のために保管される。HSC移植片を受けこと(工程260)に先立って、患者は標準治療(工程250)(例えば、高線量移植前放射線、化学療法、および/もしくはプリン類似体を用いた処置;または低線量移植前放射線、化学療法、および/もしくはプリン類似体を用いた処置)により骨髄破壊的移植前治療で処置される。いくつかの実施形態では、患者は、移植前処置での処置に続いて約24~約96時間の間でHSC移植片を用いて処置される(工程260)。
【0221】
図20は、症状の発生時にGvHDを低減する、抑制する、または制御する1つの方法を図示している。最初、細胞を工程310でドナーから収集する。細胞を、移植用のHSCを提供したのと同じドナーから(工程335参照)または異なるドナーから収集してもよい。次に、リンパ球は収集した細胞から単離し(工程320)、リンパ球がHPRT欠損になる(工程330)ように処理する。単離された細胞を処理する方法は本明細書に示されている。実質的にHPRT欠損である改変したリンパ球、例えば、T細胞の集団に到達するため、本明細書に記載されるように、処理された細胞は選び出され増殖される(工程340)。次に、改変したリンパ球、例えば、T細胞は後の使用のために保管される。がん、例えば、血液がんに罹っている患者は、がんの提示およびステージ分類の時期に患者にとって利用可能である標準治療(例えば、放射線および/またはバイオ医薬品を含む化学療法)に従って処置してもよい(工程315)。患者はHSC移植の候補者であってもよく、そうである場合には、移植前処置(工程325)が実施される(例えば、高線量移植前放射線または化学療法により)。悪性腫瘍では、いくつかの実施形態において、血液系を完璧に、またはできる限り完璧近くまで「一掃し」、したがって、できる限り多くの悪性腫瘍細胞を死滅させることを望むと考えられている。該移植前処置の目標は、がん細胞を集中的に処置し、それによってがん再発の可能性を少なくし、免疫系を不活化して幹細胞移植片拒絶の可能性を低減し、ドナー細胞が骨髄まで進むのを可能にすることである。いくつかの実施形態では、前処置は、シクロホスファミド、シタラビン(AraC)、エトポシド、メルファラン、ブスルファン、または高線量全身照射のうちの1つもしくはそれ以上の投与を含む。次に、患者はアロジェニックHSC移植片で処置される(工程335)。いくつかの実施形態では、アロジェニックHSC移植片は、少なくとも部分的なGVM、GVT、またはGVL効果を誘導する。移植に続いて、患者は、残存または再発疾患についてモニターされる(工程350)。万一該残存または再発疾患が現れたら、改変したリンパ球、例えば、T細胞(工程340で産生する)は、GVM、GVT、またはGVT効果が誘導されるように、患者に投与される(工程360)。改変したリンパ球、例えば、T細胞は、いくつかの投与の経過の間に単回投与で注入してもよい。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は、HSC移植後約1日~約21日の間に投与される。いくつかの実施形態では、改変したT細胞は、HSC移植後約1日~約14日の間に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は、HSC移植後約1日~約7日の間に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は、HSC移植後約2日~約4日の間に投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球、例えば、T細胞は、HSC移植と同時にまたはHSC移植の数時間以内(例えば、HSC移植1、2、3、または4時間後)に投与される。
【0222】
本開示の別の態様では、改変CAR T細胞であって、HPRT欠損である改変CAR T細胞を、それを必要とする患者に投与することによりがんに罹った患者を処置する方法が開示される。図21は、がんに罹った患者を処置し、それに続いていかなる有害な副作用でも低減する、抑制する、または制御する1つの方法を図示する。最初、細胞を工程410でドナーから収集する。次に、リンパ球を収集した細胞から単離し(工程420)、改変して、HPRT欠損であるCAR T細胞を提供する。
【実施例1】
【0223】
6TG選択を用いたHPRTノックダウン対ノックアウト
K562細胞は、0日目に(0)、HPRTをノックダウンするように設計された核酸配列および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質導入する(MOI=1/2/5);またはHPRTをノックアウトするCRISPR/Cas9およびsgRNAを含むナノカプセルでトランスフェクトされた(100ng/5×10細胞)。6TGを3日目から14日目までずっと培地中に添加した。培地は3~4日ごとに新しくした。GFPはフロー機械上で分析し、InDel%はT7E1アッセイを用いて分析した。図12Aは、形質導入されたK562細胞のGFP+集団は6TGの処理下で3日目から14日目まで増加し、GFP+集団は処理なしでほぼ一定していたことを図示している。図12Bは、K562細胞のHPRTノックアウト集団は6TGの処理下で3日目から14日目まで増加し、さらに高投与量(900nM)の6TGは投与量300/600nMの6TGと比べた場合もっと迅速な選択がもたらされたことを図示している。6TG選択過程は、3日目から14日目まで、6TGの300nMという同じ濃度でHPRTノックダウン細胞(MOI=1)と比べた場合HPRTノックアウト細胞上でもっと迅速に起きたことに注目するべきである。ノックダウンとノックアウトの間の違いは、ノックアウト手法によるHPRTの完全除去と比べた場合のRNAiノックダウン手法によるあるレベルの残りのHPRTにより説明することができた(図22も参照)。したがって、HPRTノックアウト細胞は、6TGに対してはるかに高い許容度を有すると考えられ、HPRTノックダウン細胞と比べて6TGのもっと高い投与量(900nM)ではるかに迅速に成長すると考えられた。
【0224】
CEM細胞は、0日目に、HPRTをノックダウンするように設計された核酸および緑色蛍光タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質導入されたまたはHPRTに向けてのCRISPR/Cas9およびsgRNAを含むナノカプセルでトランスフェクトされた。6TGを3日目から17日目まで培地中に添加した。培地は3~4日ごとに新しくした。GFPをフロー機械上で分析し、InDel%をT7E1アッセイにより分析した。図13Aは、形質導入されたK562細胞のGFP+集団は6TGの処理下で3日目から17日目まで増加し、GFP+集団は処理なしでほぼ一定していたことを図示している。図13Bは、CEM細胞のHPRTノックアウト集団は6TGの処理下で3日目から17日目まで増加し、さらに高投与量(900nM)の6TGは投与量300/600nMの6TGと比べた場合もっと迅速な選択がもたらされたことを示している。6TG選択過程は、3日目から17日目まで、6TGの同じ濃度でHPRTノックダウン細胞(MOI=1)よりむしろHPRTノックアウト細胞上でもっと迅速に起きたことに注目するべきである。
【実施例2】
【0225】
MTXまたはMPAを用いた負の選択
形質導入されたまたはトランスフェクトされたK562細胞(実施例1のK562細胞のような)は0日目から14日目までMTXありまたはなしで培養された。培地は3~4日ごとに新しくした。GFPをフロー機械上で分析し、InDel%をT7E1アッセイにより分析した。図14Aは、形質導入されたK562細胞のGFP集団が0.3μMのMTXの処理下で減少したことを示している。一方、細胞の集団はMTXなしでは一定していた。図14Bは、トラスフェクトされたK562細胞が、HPRTノックダウン集団と比べた場合、0.3μMのMTXを用いた処理下ではより速いペースで除去されたことを示している。
【0226】
形質導入されたまたはトランスフェクトされたCEM細胞(実施例1のCEM細胞のような)は0日目から14日目までMTXありまたはなしで培養された。培地は3~4日ごとに新しくした。GFPをフロー機械上で分析し、InDel%をT7E1アッセイにより分析した。図15Aは、形質導入されたK562のGFP集団が1μMのMPAまたは0.3μMのMTXまたは10μMのMPAの処理下で減少し、細胞の集団は非処理の群については一定していたことを示している。図15Bは、CEM細胞のHPRTノックアウト集団が、1μMのMPAまたは0.3μMのMTXまたは10μMのMPAの処理下ではより速いペースで除去されたことを示している。
【実施例3】
【0227】
K562細胞についてのMTXを用いた負の選択
K562細胞は、(i)希釈係数16でのTL20cw-GFPウイルススープ、(ii)希釈係数16でのTL20cw-Ubc/GFP-7SK/sh734ウイルススープ(GFPおよびHPRTをノックダウンするように設計されたshRNAを順次にコードしているウイルススープ);または(iii)希釈係数16でのTL20cw-7SK/sh734-UBC/GFPウイルススープ(HPRTをノックダウンするように設計されたshRNAおよびGFPを順次にコードするウイルススープ)を用いて形質導入された(図16参照)。K562細胞は、希釈係数1024でもTL20cw-7SK/sh734-UBC/GFPウイルススープにより形質導入された(HPRTをノックダウンするように設計されたshRNAをコードしている核酸をコードするウイルススープ)(図16にも示されている)。形質導入の3日後、すべての細胞は0.3μMのMTX3を含有する培地を用いて培養された。図16に示されるように、90%よりも大きいGFP+集団から開始して、GFPまたはGFP-sh734形質導入細胞はGFP+集団に低減を示さず、sh734-GFP形質導入細胞はGFP+集団の選択解除を示した(高希釈(1024)と低希釈(16)レベルの両方で)。sh734-GFP形質導入細胞およびGFP-sh734形質導入細胞についてベクターコピー数(VCN)あたり相対的なsh734発現を測定した。結果によれば、メトトレキサートは、sh734高発現レンチウイルスベクター(TL20cw-7SK/sh734-UBC/GFP)で形質導入した細胞のみを選択解除することができ、sh734低発現レンチウイルスベクター(TL20cw-UBC/GFP-7SK/sh734)では選択解除できないことが示唆された。この実施例により、異なるベクター設計が(同じshRNAを有するベクターでさえ)shRNAヘアピンの発現に影響を与え、形質導入細胞をMTXでの処理により選択できるかどうかを判定するのに使用できることが実証された。
【実施例4】
【0228】
改変したT細胞のトランスフェクション/形質導入、選択および増殖
一次ヒトT細胞精製は、大量のバッフィーパック(オーストラリア赤十字血液サービス)由来の末梢血単核球(PBMC)を使用して実施し、下流適用のために十分な数のT細胞を濃縮させた。残りの細胞を、アロ抗原に応答したT細胞増殖の評価のような将来のT細胞機能分析のために凍結保存した。精製されたT細胞は、固定化された抗CD3および組換えヒト(rh)IL-2を用いて(現在公開されているプロトコールREFにより)48時間in vitroで刺激され、続いてHPRT遺伝子の改変のために、レンチウイルスで形質導入されたまたはDNA含有ナノ粒子でトランスフェクトされた。これらの改変したT細胞は培養され(2~3日間)、続いてrhIL-2の存在下で最長14日間さらに増殖させた。培養条件を通じてずっと、蛍光トレーサ(例えば、GFP)の検出、ならびにHPRT遺伝子発現レベルの検出のための定量的RT-PCR(qPCR)により決定した場合の、遺伝子改変を首尾よく受けた細胞の割合の評価のためにサンプルが収集された。
【0229】
遺伝子改変後14日目に、遺伝子改変されたT細胞の選択は6-チオグアニン(6TG)を使用して実施し、すべての非改変T細胞の負の選択に必要な用量を評価した。6TG用量の滴定により、この選択法に対する潜在的なドナー依存的感受性およびプリン類似体に対する既知のTPMT遺伝子型依存的感受性にこれがどのように関係している可能性があるのかの評価も可能になる。6TG用量滴定の調査は、shRNA発現のレベルに基づいて用量ウィンドウ変動性の可能性を評価するのにも役立つ。選択に続いて、種々のサイトカインの組合せ(IL-2/IL-7/IL-15/IL-21)を選択して改変したT細胞を増殖させた。増殖させたT細胞集団は最終的に、メトトレキサートの使用による「キルスイッチ」活性化に対する感受性について試験された。
【実施例5】
【0230】
改変した一次ヒトT細胞の機能的評価
改変したT細胞の機能的な能力を、遺伝子改変および培養条件の潜在的な重要性を理解するためin vitro法を使用して評価した。培養物内のT細胞サブタイプ割合は、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞サブタイプ、メモリーT細胞サブタイプ、調節性T細胞、等の評価を含め、ならびにCD3/CD4/CD8/CD25/CD27/CD28/CD45RA/RO/CD56/CD62L/CD127またはFoxP3およびCD44のような細胞表面T細胞マーカーを含めて、表現型が決定された。長期にわたる培養条件の結果としてのT細胞消耗の潜在的展開もフローサイトメトリーを使用して評価した。ウイルスペプチドに反応する遺伝子改変T細胞の機能的能力を、T細胞増殖およびサイトカイン放出アッセイを使用して評価した。エプスタインバーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)のようなウイルス由来のウイルスペプチドへのこの機能的応答は特に関連があると考えられる。なぜならば、これらは免疫抑制という文脈で再活性化された主要なウイルスであり、臨床中の患者と関連しているからである。
【0231】
最後に、ドナー改変したT細胞培養物のそれぞれを、凍結保存された(および遺伝子型を決定された)ハプロタイプ一致のドナーPBMCに対するアロ反応性についてin vitro増殖アッセイを使用して評価した。これは、移植という文脈において潜在的なアロ反応性を模倣して測定するように設計されている。遺伝子改変したT細胞プール内での調節性T細胞の区画の機能的能力もこの文脈において潜在的に評価できると考えられる。
【実施例6】
【0232】
メトトレキサート投与後に「残存」遺伝子改変したT細胞集団の表現型および機能的特徴付け
キルスイッチ誘導およびGvHDまたはCRSのような状態の解消後にレシピエント内に存在する残りの遺伝子改変した細胞について理解する能力とは、増殖し適切な数で適切な機能を持って再構成する遺伝子改変細胞の能力である。したがって、ドナー細胞枯渇についての最小閾値レベル続いて適切な拡張性および機能活性を理解するのは重要である。第三者により実施される臨床試験は、キルスイッチ活性化により2時間以内にドナーT細胞がin vivoで>99%枯渇したこと、ならびにGvHDおよびCRSの症状の解消が24~48時間以内に起こったことを明らかにした。さらに、レシピエントにおいて残っている<1%の改変した細胞は、GvHDまたはCRSの再活性化をもたらすことなく再増殖することができる。キルスイッチの活性化により活発に増殖しているドナーアロ反応性T細胞が優先的に死亡し、したがって、GvHD/CRSの再発をもたらす可能性のあるT細胞レパートリーが枯渇するという仮説。再増殖した細胞のex vivo分析により、残りのレパートリーがウイルス抗原を認識してこれに応答できることが明らかにされており、レシピエントが免疫無防備状態にはならないことを示している。さらに、これらの試験でのレシピエントは100日まで無疾患のままであり、この限定された追跡調査期間を過ぎてからのデータはまだ入手できていない。最後に、ドナー細胞関連合併症のせいでこれらの細胞の枯渇が後になって必要になる場合には、残存/再増殖した集団が第2の経過でキルスイッチ誘導に依然として感受性であるのか否かが判定される。
【実施例7】
【0233】
マウスモデルにおけるin vivo実証実験研究
GvHD-抵抗性とGvHD-感受性ヒト化NSGマウスの両方での改変したT細胞のin vivo挙動および特性を調べるために動物研究を行った。最初の研究は、T細胞生着および改変したT細胞におけるMTX誘導「キルスイッチ」機能を評価することを目標とした。これらの研究は、GvHD抵抗性マウスにおいて行われた。続く研究は、GvHDのマウスモデルを確立し、「キルスイッチ」を試験する臨床的関連in vivo設定を提供することを目標とした。T細胞用量、分布および機能を明確に理解し、併せてMTX応答性を理解して、in vivo POC研究を、白血病チャレンジを受けるGvHD感受性マウスにおいて行った。改変したT細胞は、GVT応答を開始する能力を維持しながらMTX「キルスイッチ」の引き金を引いてGvHDを最小限に抑えることにより操作することができることが明らかになった。
【実施例8】
【0234】
T細胞用量、生着、分布、生存およびメトトレキサート感受性を理解する
維持された生着に最適なT細胞用量を確立するために、MHC KO NSGマウス(GvHD抵抗性)に異なる用量の改変したT細胞を移植した。異なる時点で、リンパおよび非リンパ器官でのT細胞の分布を分析した。
【0235】
本明細書に言及される通りに決定された最適T細胞用量を使用して(i)、マウスを生着に続く24~48時間異なる用量のメトトレキサートを用いて処置した。リンパおよび非リンパ器官における残りのT細胞の数は、改変したT細胞がどれくらいの速度で取り除かれるのかを理解するように設計された分析時間経過で決定した。
【0236】
改変したT細胞移植片の寿命およびこれらT細胞のMTX感受性を経時的に調べるための並行研究を開始した。改変したT細胞の最適用量を受けたマウスは6ヶ月に達し、次にMTX誘導「キルスイッチ」の引き金を引いた。リンパおよび非リンパ器官における残りのT細胞の数は、以前に決められた最適分析時間に決定された。遅発性急性または慢性GvHDでは場合に応じて、改変したT細胞が、後の時点で引き金が引かれたときにどれほどよくMTX「キルスイッチ」に応答できたかが示された。
【実施例9】
【0237】
GvHDマウスモデルの確立および特徴付けならびに改変したT細胞移植片の分析
GvHDを開始するため、放射線条件付けNSGマウスに、前処理後2~24時間以内に最適用量の改変したT細胞を移植した。発表文献から、GvHDは約25日目までにこれらのマウスで発症し(身体姿勢、活動性、毛皮と皮膚の状態および体重減少がモニターされた)、疾患エンドポイントに約55日目までに到達した(GvHDの臨床症状を抱えたまま、>20%の体重減少)。万一疾患進行が著しく遅くなるまたは急速になる場合は、最適用量よりもそれぞれもっと高いまたはもっと低いT細胞用量を試験することができるであろう(文献に基づけばおおよそ10~10個のT細胞)。
【0238】
T細胞用量および疾患動態学を最適化して、T細胞生着を時間経過解析で調べた。異なる器官のT細胞播種はGvHDの構成でありこれは本発明者等のモデルで調べた。時間経過解析時点は、観察されるGvHDの発症および重症度により決定された。
【0239】
改変したT細胞がリンパ器官においてはっきり検出可能である場合、T細胞(CD4+およびCD8+)機能性を分析する。T細胞は種々の刺激(例えば、PMA、CD3/CD28)を用いてin vitroで刺激され、表現型、増殖、サイトカイン産生およびex vivo抗腫瘍細胞傷害性について分析した。T細胞を、潜在ウイルス再活性化に応答するその能力の基準として、ウイルスペプチド、例えば、CMV、EBVおよびFLU(Proimmune ProMix CEFペプチドプール)に応答するその能力について特に分析した。
【実施例10】
【0240】
GvHDモデルにおけるメトトレキサート誘導「キルスイッチ」の活性化
NSGマウスに照射を行い、以前決定した最適条件によって改変したT細胞を移植した。GvHDの急性または慢性期に、マウスには、最適用量を含む異なる用量のMTXを投与した。末梢血中の改変したT細胞の割合を実験終了まで毎週決定した。マウスを発症中の進行性疾患から救済することができるかどうかを確かめるため、GvHD発症をモニターした。種々の器官中への改変したT細胞の浸潤を、GvHDの重症度を全身レベルで理解するために定量化した。
【実施例11】
【0241】
GVT/GvHDマウスモデルにおける改変したT細胞POC
NSGマウスに照射を行い、以前決定した最適条件によって改変したT細胞を移植した。照射後24時間以内に、マウスはP815 H2-Kd細胞株の用量を受けて白血病を確立した。P815細胞を、腫瘍成長のin vivo体内分布および評価のためにGFPを発現するよう前もって形質導入した。GvHDの発症時、マウスは最適用量のMTXを用いて処置され、疾患進行ならびに白血病負荷量を実験終了までモニターした。
【実施例12】
【0242】
HPRTノックアウトガイドRNA
図23および続く表は、オンターゲットおよびオフターゲット効果について調べられた種々のガイドRNAを示している。「IDT-4」(配列番号36)は、本明細書に記載される実験のような残りのノックアウト実験のためのリードgRNAとして選ばれた。配列番号39(「Nat論文」)はYoshioka,S.ら.(2016).Development of a mono-promoter-driven CRISPR/Cas9 system in mammalian cells.Scientific Reports、5、18341頁から導かれており、前記文献の開示はこれにより参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0243】
【表2】
【実施例13】
【0244】
6-TGに対するHPRT標的ノックアウト抵抗性
方法
ジャーカット細胞には、ガイドRNA(gRNA;GS-4;IDT-4と名付けられる)を含有するリボ核タンパク質(RNP)複合体をCas9およびtracrRNAと一緒に電気穿孔した。tracrRNAを介してgRNAをトランスフェクトされたことが確かめられた細胞は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して精製され、それに続いて72時間培養された。次に、増加する濃度の6-チオグアニン(6-TG)を形質導入された培養細胞に投与して抵抗性を評価した。野生型(非改変)ジャーカット細胞を対照として使用した。
【0245】
結果
発光(ATP検出)を使用して細胞生存率を評価した。IDT-4改変細胞は、増加する用量の6-TG(10μMまで試験した)に対して抵抗性を示した。非改変ジャーカット細胞(野生型)は、6-TGの濃度が増加するにしたがって細胞生存率の減少を示した(図24参照)。
【0246】
非改変(WT)およびIDT-4改変ジャーカット細胞をウェスタンブロットを使用してHPRTタンパク質についても分析した(図25参照)。非改変ジャーカット細胞(WT)は、HPRTの検出可能なレベルを予測されるサイズ(25kDA)で示し、IDT-4改変細胞は検出不可能なレベルのHPRTを有していた。アクチンタンパク質検出(下パネル)はタンパク質負荷対照として使用した。
【実施例14】
【0247】
長期細胞生存率/生存
方法
HPRTノックアウトジャーカット細胞(ガイドRNA IDT-4で改変されている;実施例1に記載されている通り;HPRT-/-と名付けられている)を、GFPを単独で(WT GFP)発現するように改変されたジャーカット細胞と一緒におおよそ等しい割合で混合した。
【0248】
細胞は、培養物中のGFP+細胞の割合を再評価する前に18日間標準培養条件下で培養した。
【0249】
結果
18日目の細胞のGFP割合は1日目と実質的に類似しており(図26参照)、GFP+野生型細胞の開始割合に経時的に有意な変化はなく(図27参照)、細胞がHPRTタンパク質欠損であることに生存優位性も生存不利性もないことを示していた。6-TG存在下での改変した細胞での生存優位性が活性なHPRT酵素が存在しないせいであることをこれはさらに確証している。
【実施例15】
【0250】
HPRTノックアウトジャーカット細胞-メトトレキサート感受性
方法および結果
(A)MTX用量応答
ジャーカット細胞(非改変、WT)を増加する濃度のメトトレキサート(MTX)を用いて培養し、WT細胞を殺傷するのに必要なMTX投与量ウィンドウを決定した(図28参照)。0.00625~0.025μMの間のMTXの用量範囲を、それに続くHPRTノックアウト(IDT-4改変)ジャーカット細胞の評価のために選択した。
【0251】
(B)HPRTノックアウトMTX用量応答
MTXに対するHPRTノックアウト(IDT-4改変)ジャーカット細胞の用量応答を非改変ジャーカット細胞(WT)と比較して、MTXに対する感受性を判定した(図29参照)。HPRTノックアウト(IDT-4改変)ジャーカット細胞は、5日間培養した場合の野生型細胞と比べて0.00625および0.0125μMの濃度でMTXに対する感受性が増加したことを示した。
【実施例16】
【0252】
HPRTノックダウンジャーカット細胞
方法
ジャーカットT細胞は、レンチウイルスベクター(A)TL20cw-7SK/sh734-UbC/GFPまたは(B)TL20cw-UbC/GFP-7SK/sh734を用いて改変した。ジャーカット細胞は、室温で90分間2,500rpmで遠心分離し、続いて37℃で60分間インキュベートすることにより、1mlの無希釈ウイルス含有培地(VCM)を8ng/mlのポリブレンと一緒に使用してそれぞれのレンチウイルスベクターで形質導入した。次に、細胞は、フローサイトメトリーを使用して形質導入効率を決定する(GFP陽性細胞)前に、形質導入およびVCMの除去後4日間培養した。
【0253】
結果
ジャーカット細胞は、回転接種後4日目に高い形質導入効率を示し、sh734-GFP(図30A参照)は4日目に76.2%のGFP+細胞を生じ、GFP-sh734ウイルス(図30B参照)は77.2%のGFP+細胞を生じた。改変したジャーカット細胞は3日間、6-TG選択(10μM、6-TGに対する野生型非改変ジャーカット細胞の感受性を評価して作成された以前のデータに基づいて)下に置いた。選択プロトコールにより、改変した細胞株のそれぞれについて87%まで(図30A参照)および90%(図30B参照)GFP+細胞までの増加がもたらされ、非改変細胞の死亡およびsh734含有細胞の増強された生存を示した。
【実施例17】
【0254】
HPRTノックダウンCEM T細胞
方法
CEM T細胞は、レンチウイルスベクターTL20cw-7SK/sh734-UbC/GFP(sh734-GFP)およびTL20cw-UbC/GFP-7SK/sh734(GFP-sh734)を用いて改変した。
【0255】
CEM細胞は、室温で90分間2,500rpmで遠心分離し、続いて37℃で60分間インキュベートすることにより、1mlの無希釈ウイルス含有培地(VCM)を10ng/mlのポリブレンと一緒に用いて回転感染させた。GFP+細胞の割合は4日後にフローサイトメトリーにより決定した。形質導入効率は比較的低かった。
【0256】
改変したCEM細胞は、合計で17日間の5μMの6-TGを用いた6-TG選択を受けさせた。sh734を含有する細胞は6-TGにより首尾よく選択され、sh734-GFPの場合は28.8%GFP+まで、GFP-sh734の場合は42.4%GFP+まで増加し、これらの細胞が非形質導入細胞よりも生存優位性を有することを示した(図31参照)。
【実施例18】
【0257】
ベクター生成-HPRTノックダウン
候補ベクターを、7SK/sh734を含む発現カセットをpTL20cwベクター中に挿入することにより調製した(例えば、図32参照)。具体的には、以下の表に収載され短鎖ヘアピンを含むベクターが生成された。
【0258】
【表3】
【実施例19】
【0259】
形質導入/トランスフェクション
K562またはジャーカット細胞は、HPRTをノックダウンするように設計された核酸配列および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸配列を含むベクターで形質導入された(MOI 0.1~5);またはCRISPR/Cas9およびHPRTへのsgRNA(100ng/5×10細胞)を含むナノカプセルでトランスフェクトされた。
【実施例20】
【0260】
HPRTのノックダウンおよび6TG抵抗性
6-TGストック溶液を、形質導入/トランスフェクション後3日目または4日目に、形質導入した/トランスフェクトしたK562またはジャーカット細胞を含有する培地中に添加した。6-TGは、14日目またはそれよりも長くまで最終濃度、例えば、K562細胞で300nMおよびジャーカット細胞で2.5μMまで維持した。培地は3~4日ごとに新たにした。GFPはフロー機械で分析し、VCNはVCN ddPCRアッセイにより分析し、InDel%はT7E1アッセイを用いて分析した。結果は図33での以下の表に提供されている。
【0261】
【表4】
【0262】
追加の実施形態
第1の追加の実施形態には、リンパ球輸注の利点を、副反応を軽減しながらその処置を必要とする患者に提供する方法であって:ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成することと;HPRT欠損リンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;HSC移植片を患者に投与し、HSC移植片の投与に続いて改変したリンパ球の集団を患者に投与することと;場合により、副反応が生じた場合にはメトトレキサート(MTX)を投与することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、処置を受ける患者は、感染と闘い、生着を支援し、疾患再発を防止するT細胞を受けるという利点を受ける。さらに、万一GvHDが生じた場合には、T細胞は、1つまたはそれ以上の用量のMTXの投与を通じて取り除かれてもよい。
【0263】
いくつかの実施形態では、HPRT欠損リンパ球は、HPRTをノックアウトするように適合させたペイロード(例えば、配列番号25~39のうちのいずれか1つの配列を有するガイドRNAを含むペイロード)を含むナノカプセルの集団を用いたリンパ球のトランスフェクションによりのような、HPRT遺伝子のノックアウトを通じて生成される。他の実施形態では、HPRT欠損リンパ球は、RNA干渉剤をコードする核酸配列(例えば、配列番号1、2、および5~11のうちのいずれか1つの配列を有するshRNAをコードする核酸)を含む発現ベクターを用いたリンパ球の形質導入によりのような、HPRT遺伝子のノックダウンを通じて生成される。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成されたHPRT欠損リンパ球をプリン類似体(例えば、6-チオグアニン(6TG)、6-メルカプトプリン(6-MP)、またはアザチオプリン(AZA))に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、正の選択は、生成されたHPRT欠損リンパ球をプリン類似体および第2の薬剤(例えば、アロプリノール)に接触させることを含む。いくつかの実施形態では、プリン類似体は6TGである。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は単回ボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、改変したリンパ球は複数用量として投与される。いくつかの実施形態では、各用量は約0.1×10個の細胞/kg~約240×10個の細胞/kgを含む。いくつかの実施形態では、MTXは場合により、GvHDの診断時に投与される。いくつかの実施形態では、投与されるMTXの量は約2mg/m/輸注~約8mg/m/輸注の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態では、MTXは滴定された用量で投与される。
【0264】
本開示の方法は、プリンの再利用を促進する、酵素ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)をコードする遺伝子の改変によってプリンサルベージ経路を利用すると考えられる。遺伝子ノックアウトまたは遺伝子ノックダウンによってHPRT発現を阻害すると、改変した細胞は生存を新規のプリン生合成経路にもっぱら依存するようになる。非改変細胞では、HPRTを通じて変換されるプリン類似体6-チオグアニン(6TG)の送達は、最後に6-チオグアニンヌクレオチド(6TGN)を蓄積させ、このヌクレオチドはS期中のDNA中への取り込みを含むいくつかの機序を介して細胞にとって有毒になる。遺伝子改変細胞においてHPRT酵素を阻害し、それに続いて、種々の白血病ならびに重い炎症性疾患の処置において既に使用されている薬剤である6TGを用いて処置すると、これらの細胞に非改変細胞よりも生存優位性を与え、したがって、in vitroで、および、潜在的にin vivoで改変した細胞を選択する機序を提供する。さらに、メトトレキサート(MTX)を用いた場合のように、これらのHPRT酵素欠損細胞における新規のプリン生合成経路を阻害すると、細胞アポトーシスを生じ(非機能的でもあるプリンサルベージ経路のせいで)、それによって、別の承認された薬剤を改変した細胞において「キルスイッチ」誘導因子として使用することができる機序を提供する。
【0265】
第2の追加の実施形態には、造血幹細胞(「HSC」)においてHPRT発現を低減するまたは排除する成分を含む組成物がある。いくつかの実施形態では、HSCはリンパ球系細胞である。いくつかの実施形態では、リンパ球系細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、組成物は、HPRT遺伝子のノックダウンを実現する第1の成分を含む。他の実施形態では、組成物は、HPRT遺伝子のノックアウトを実現する第1の成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、HPRT遺伝子をノックダウンするように適合させた薬剤(例えば、RNA干渉剤(RNAi))をコードする第1の核酸を含むレンチウイルス発現ベクターを含む。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、HSCを標的化するように適合させたナノカプセルのようなナノカプセル内に組み込まれていてもよい。
【0266】
第3の追加の実施形態には、HPRTのノックダウンを実現するRNAiをコードする核酸配列を含む発現ベクターがある。いくつかの実施形態では、レンチウイルス発現ベクターは、HSCのような選択可能な遺伝子改変された細胞を産生するのに適している。いくつかの実施形態では、ex vivoで形質導入されたHSCは、処置を必要とする患者に投与される。いくつかの実施形態では、RNAiをコードする核酸は、HPRTを標的化する低分子ヘアピン型リボ核酸分子(「shRNA」)をコードする。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有し、そこでは第1の核酸配列は、7skプロモーターまたはその突然変異したバリアントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有し、そこでは第1の核酸配列は、7skプロモーターまたはその突然変異したバリアントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有し、そこでは第1の核酸配列は、7skプロモーターまたはその突然変異したバリアントに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号1の配列を有し、そこでは第1の核酸配列は、7skプロモーターまたはその突然変異したバリアントに作動可能に連結されている。
【0267】
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の配列と少なくとも90%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の配列と少なくとも95%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の配列と少なくとも97%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号2の配列を有する。
【0268】
いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5、6、および7のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5、6、および7のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5、6、および7のうちのいずれか1つと少なくとも95%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5、6、および7のうちのいずれか1つと少なくとも97%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するshRNAをコードする第1の核酸配列は、配列番号5、6、および7のうちのいずれか1つの配列を有する。
【0269】
いくつかの実施形態では、第1の核酸配列はPol IIIプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーターは、ホモサピエンス細胞株HEK-293 7sk RNAプロモーターである(例えば、配列番号14参照)。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーターは、配列番号14と比べてその核酸配列に単一の突然変異を含む7skプロモーターである。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーターは、配列番号14と比べてその核酸配列に複数の突然変異を含む7skプロモーターである。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーターは、配列番号14と比べてその核酸配列に欠失を含む7skプロモーターである。いくつかの実施形態では、Pol IIIプロモーターは、配列番号14と比べてその核酸配列に突然変異と欠失の両方を含む7skプロモーターである。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号14の配列と少なくとも95%同一性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号14の配列と少なくとも97%同一性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号14の配列と少なくとも98%同一性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号14の配列と少なくとも99%同一性を有するプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号14を有するプロモーターに作動可能に連結されている。
【0270】
第4の追加の実施形態には、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列を含むレンチウイルス発現ベクターがある。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれか1つと少なくとも95%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれか1つと少なくとも97%同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、配列番号8、9、10、および11のうちのいずれか1つの配列を有する。いくつかの実施形態では、HPRT遺伝子を標的化するマイクロRNAベースのshRNAをコードする核酸配列は、本明細書に記載されるプロモーターのいずれかを含む、Pol IIIまたはPol IIプロモーターに作動可能に連結されている。
【0271】
第5の追加の実施形態には、(a)HPRTを標的化するshRNAをコードする第1の部分;および(b)HPRTを標的化するshRNAをコードする配列の発現を駆動する第1のプロモーターをコードする第2の部分を含むポリヌクレオチド配列がある。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは(c)中心ポリプリントラクトエレメントをコードする第3の部分;および(d)Rev応答エレメントをコードする第4の部分をさらに含む(配列番号19)。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、WPREエレメント(例えば、配列番号18を含むWPREエレメント)をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、インスレーターをさらに含む。
【0272】
第6の追加の実施形態には、発現ベクターで形質導入されているまたは、それぞれがHPRT発現を低減するように設計されている薬剤(例えば、HPRTのノックダウンではRNAi)を含むナノカプセルでトランスフェクトされているHSC(例えば、CD34HSC)がある。いくつかの実施形態では、HSCはT細胞である。いくつかの実施形態では、形質導入されたHSCは、その処置を必要とする対象に投与してもよい細胞療法製品を構成し、例えば、形質導入されたHSCを用いて処置された患者は、感染と闘い、生着を支援し、疾患再発を防止する細胞(ex vivoで増殖させることができるT細胞のような)を受けるという利点を受けた。
【0273】
第7の追加の実施形態には、発現ベクターのいずれか1つで形質導入された宿主細胞があり、宿主細胞はHPRT欠損である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0274】
第8の追加の実施形態には、宿主細胞を含む医薬組成物があり、宿主細胞は薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に製剤化される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、宿主細胞を発現ベクターで形質導入することにより導き出されるHPRT欠損宿主細胞である。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0275】
第9の追加の実施形態には、HPRT欠損細胞を生成する方法であって、宿主細胞の集団を発現ベクターで形質導入することと、形質導入された宿主細胞の集団を少なくともプリン類似体に接触させることによりHPRT欠損細胞を正に選択することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、プリン類似体は、6TGおよび6-メルカプトプリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0276】
第10の追加の実施形態には、副反応を軽減しながらリンパ球輸注の利点をその処置を必要とする患者に提供する方法であって:ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成し、ここでHPRT欠損リンパ球は、ドナーサンプル内のリンパ球を発現ベクターで形質導入することにより生成することと、HPRT欠損リンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;HSC移植片を患者に投与することと;治療有効量の改変したリンパ球の集団をHSC移植片の投与に続いて患者に投与することと;場合により、副反応が生じた場合にはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を投与することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0277】
第11の追加の実施形態には、副反応を軽減しながらリンパ球輸注の利点をその処置を必要とする患者に提供する方法であって:ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成し、ここでHPRT欠損リンパ球は、ドナーサンプル内のリンパ球を発現ベクターで形質導入することにより生成することと;HPRT欠損リンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;改変したリンパ球の集団をHSC移植片の投与と同時にまたはその後で患者に投与することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、方法は、1つまたはそれ以上の用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0278】
第12の追加の実施形態には、その処置を必要とする患者において血液がんを処置する方法であって:ドナーサンプルからHPRT欠損リンパ球を生成し、ここでHPRT欠損リンパ球は、ドナーサンプル内のリンパ球を発現ベクターで形質導入することにより生成することと;HPRT欠損リンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;HSC移植片を患者に投与することにより少なくとも部分的移植片対悪性腫瘍効果を誘導することと;残存疾患または疾患再発の検出に続いて患者に改変したリンパ球の集団を投与することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1用量のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤を患者に投与して、GvHDまたはCRSの少なくとも1つの症状を抑制することをさらに含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0279】
第13の追加の実施形態には、患者をヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)欠損リンパ球で処置する方法であって、(a)ドナー対象からリンパ球を単離することと;(b)単離したリンパ球を発現ベクターで形質導入することと;(c)形質導入した単離されたリンパ球を、HPRT欠損リンパ球を正に選択する薬剤に曝露して改変したリンパ球の調製物を提供することと;(d)治療有効量の改変したリンパ球の調製物を造血幹細胞の移植に続いて患者に投与することと;(e)場合により、患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症に続いてメトトレキサートまたはミコフェノール酸を投与することとを含む方法がある。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含み、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、shRNAは配列番号1の配列と少なくとも95%同一性を有する。
【0280】
第14の追加の実施形態には、副反応を軽減しながらリンパ球輸注の利点をその処置を必要とする患者に提供する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成し、ここで実質的にHPRTを欠損したリンパ球がドナーサンプル内のリンパ球をエンドヌクレアーゼおよびHPRTを標的化するgRNAを含む送達ビヒクルでトランスフェクトすることにより生成されることと:実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;患者にHSC移植片を投与することと;HSC移植片の投与に続いて患者に治療有効量の改変したリンパ球の集団を投与することと;場合により、副反応が生じた場合にはMTXを投与することとを含む方法がある。
【0281】
第15の追加の実施形態には、副反応を軽減しながらリンパ球輸注の利点をその処置を必要とする患者に提供する方法であって:ドナーサンプルから実質的にHPRTを欠損したリンパ球を生成し、ここで実質的にHPRTを欠損したリンパ球が、ドナーサンプル内のリンパ球をCasタンパク質(例えば、Cas9、Cas12a、Cas12b)およびHPRT遺伝子を標的化するgRNAを含む送達ビヒクルでトランスフェクトすることにより生成されることと:実質的にHPRTを欠損したリンパ球をex vivoで正に選択して改変したリンパ球の集団を提供することと;患者にHSC移植片を投与することと;HSC移植片の投与に続いて患者に治療有効量の改変したリンパ球の集団を投与することと;場合により、副反応が生じた場合にはMTXを投与することとを含む方法がある。
【0282】
第16の追加の実施形態には、第1の核酸配列に作動可能に連結された第1の発現制御配列を含む発現ベクターで形質導入されたリンパ球があり、第1の核酸配列はHPRTをノックダウンするshRNAをコードし、ここでshRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態では、shRNAは配列番号2、5、6、7、8、9、10、および11のいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、リンパ球は、発現ベクターを用いた形質導入に続いて実質的にHPRT欠損になる。いくつかの実施形態では、リンパ球はT細胞である。
【0283】
本明細書において言及されるおよび/または出願データシートに収載される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物のすべては、参照によりその全体を本明細書に組み込む。実施形態の態様は、必要な場合には、さらなる実施形態を提供するために種々の特許、出願および刊行物の概念を用いるように改変することができる。
【0284】
本開示はいくつかの例示的実施形態を参照して記載されてきたが、本開示の原理の精神および範囲内に収まる数多くの他の改変および実施形態を当業者であれば考案することができることは理解されるべきである。より詳しくは、本開示の精神から逸脱することなく、前述の開示、図面、および添付の特許請求の範囲内で主題の組合せ配置の構成部品および/または配置において合理的な変動および改変が可能である。構成部品および/または配置における変動および改変に加えて、代替の使用も当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31
図32
図33
【配列表】
2022514954000001.app
【国際調査報告】