(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(54)【発明の名称】MIMOシステム中でのチャネル推定
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0417 20170101AFI20220208BHJP
【FI】
H04B7/0417 130
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550243
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2020051653
(87)【国際公開番号】W WO2020173627
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】201910149645.4
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390028587
【氏名又は名称】ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRITISH TELECOMMUNICATIONS PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 Braham Street,London,E1 8EE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【氏名又は名称】森川 元嗣
(72)【発明者】
【氏名】ダイ、リンロン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ジンボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ビチャイ
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハオ、モー
(57)【要約】
通信チャネルを通して通信するように配置されたダウンリンクデバイス及びアップリンクデバイスを備える多入力多出力(MIMO)通信システム中でチャネル推定を実行する方法であって、方法は、アップリンクデバイスにおいて、角度領域中の第1のチャネルベクトルのそれぞれの要素を各々示す角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第1のアンテナとの間のチャネル利得を表す第1のチャネルベクトルを分析することと、最大のチャネル利得を表す角度領域中の第1のチャネルベクトルの要素を含む値ベクトルを角度領域支持点のセットから生成することと、値ベクトルのインジケーションをアップリンクデバイスからダウンリンクデバイスにフィードバックすることと、ダウンリンクデバイスにおいて、同じ角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第2のアンテナとの間のチャネル利得を表す第2のチャネルベクトルを分析することと、送信ステアリング行列を角度領域支持点のセットから生成することと、アップリンクデバイスからフィードバックされた値ベクトルのインジケーションと生成された送信ステアリング行列とから第1のチャネルベクトルの推定値を生成することとを備える、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャネルを通して通信するように配置されたダウンリンクデバイス及びアップリンクデバイスを備える多入力多出力(MIMO)通信システム中でチャネル推定を実行する方法であって、前記方法は、
前記アップリンクデバイスにおいて、
角度領域中の第1のチャネルベクトルのそれぞれの要素を各々示す角度領域支持点のセットを識別するために、前記角度領域中の前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスの第1のアンテナとの間のチャネル利得を表す前記第1のチャネルベクトルを分析することと、
最大のチャネル利得を表す前記角度領域中の前記第1のチャネルベクトルの要素を含む値ベクトルを前記角度領域支持点のセットから生成することと、
前記値ベクトルのインジケーションを前記アップリンクデバイスから前記ダウンリンクデバイスにフィードバックすることと、
前記ダウンリンクデバイスにおいて、
同じ角度領域支持点のセットを識別するために、前記角度領域中の前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスの第2のアンテナとの間のチャネル利得を表す第2のチャネルベクトルを分析することと、
送信ステアリング行列を前記角度領域支持点のセットから生成することと、
前記アップリンクデバイスからフィードバックされた前記値ベクトルの前記インジケーションと生成された前記送信ステアリング行列とから前記第1のチャネルベクトルの推定値を生成することと
を備える、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスとの間の前記チャネルをモデル化するチャネル行列の推定値を生成するために前記第1のチャネルベクトルの前記推定値を使用することを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記ダウンリンクデバイスから送信されるべきデータをプリコーディングする際に使用するための推定された前記チャネル行列を使用してデジタルプリコーディング行列を導出することを更に備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アップリンクデバイスは、前記ダウンリンクデバイスから通信を受信するためにのみ前記第1のアンテナを使用し、前記ダウンリンクデバイスから通信を受信し、前記ダウンリンクデバイスに通信を送信するために前記第2のアンテナを使用するように配置される、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記角度領域中の前記第1のチャネルベクトルを前記分析するステップは、離散フーリエ変換(DFT)行列を使用して前記第1のチャネルベクトルを前記角度領域に変換することを備える、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記角度領域支持点のセットは、前記角度領域中の第1のチャネル行列の非ゼロ要素から識別される、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記値ベクトルは、前記角度領域中の前記第1のチャネルベクトルのP個の最大要素を選択することによって生成され、ここで、Pは、前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスとの間の分解可能な経路の数である、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、コードブックを使用して前記アップリンクデバイスにおいて前記値ベクトルを量子化することを備え、前記値ベクトルの前記インジケーションは、前記コードブックに対する選択されたインデックスを備える、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記値ベクトルの前記インジケーションは、前記値ベクトルの大きさを更に備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択された前記インデックスと前記値ベクトルの大きさとのみが、前記アップリンクデバイスから前記ダウンリンクデバイスにフィードバックされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
選択された前記インデックスI
nは、
【数1】
に従って選択され、ここで、
【数2】
は、前記値ベクトル
【数3】
のエルミート共役であり、
【数4】
は、前記コードブックであり、c
iは、前記コードブックCの量子化されたベクトルであり、Bは、前記コードブックにアクセスするためのビット数である、請求項8~10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
識別された前記角度領域支持点のセットの各角度領域支持点は、前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスとの間のそれぞれの経路についてのビーム発射角に依存する、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記送信ステアリング行列は、前記角度領域支持点のセットから計算された1つ以上のビーム発射角を使用して生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記角度領域支持点のセットφは、以下によって与えられる:
【数5】
ここで、dは、前記ダウンリンクデバイスの隣接するアンテナ素子間の間隔であり、λは、前記ダウンリンクデバイスから発せられた信号の波長であり、Nは、前記ダウンリンクデバイスにおけるアンテナ素子の数であり、φ
pは、前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスとの間のp番目の経路に沿って前記ダウンリンクデバイスによって発せられた信号のビームの発射角である、請求項1~13のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記角度領域中の前記第2のチャネルベクトルを前記分析するステップは、前記離散フーリエ変換(DFT)行列を使用して前記第2のチャネルベクトルを前記角度領域に変換することを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記MIMO通信システムは、時分割複信(TDD)MIMO通信システムである、請求項1~15のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
通信チャネルを通して通信するように構成されたダウンリンクデバイス及びアップリンクデバイスを備える多入力多出力(MIMO)通信システムであって、
前記アップリンクデバイスは、
複数のアンテナと、
角度領域中の第1のチャネルベクトルのそれぞれの要素を各々示す角度領域支持点のセットを識別するために、前記角度領域中の前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスの第1のアンテナとの間のチャネル利得を表す前記第1のチャネルベクトルを分析することと、
最大のチャネル利得を表す前記角度領域中の前記第1のチャネルベクトルの前記要素を含む値ベクトルを前記角度領域支持点のセットから生成することと、
前記値ベクトルのインジケーションを前記ダウンリンクデバイスにフィードバックすることと
を行うように構成された処理ユニットと
を備え、
前記ダウンリンクデバイスは、
複数のアンテナと、
同じ角度領域支持点のセットを識別するために、前記角度領域中の前記ダウンリンクデバイスと前記アップリンクデバイスの第2のアンテナとの間のチャネル利得を表す第2のチャネルベクトルを分析することと、
送信ステアリング行列を前記角度領域支持点のセットから生成することと、
前記アップリンクデバイスからフィードバックされた前記値ベクトルの前記インジケーションと生成された前記送信ステアリング行列とから前記第1のチャネルベクトルの推定値を生成することと
を行うように構成された処理ユニットと
を備える、MIMO通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO通信システム中でのチャネル推定の実行に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリメートル波(mmWave)ワイヤレス通信システムは、ワイヤレスデバイスの増加する帯域幅要件を満たすことが有望であるため、その関心が高まっている。mmWaveシステムは、典型的には、30~300GHzの周波数帯域中で動作する。これは、ロングタームエボリューション(LTE(登録商標))ネットワークのために現在使用されているサブ6GHz帯域よりも遥かに大きい周波数帯域であり、その結果として、サブ6GHz帯域中で動作する既存のシステムで現在サポートされることができる帯域幅と比較して、より大きい帯域幅がサポートされることができる。
【0003】
mmWave通信に関連する1つの問題は、経験される可能性がある比較的高い自由空間経路損失である。この高い経路損失は、遮断(blockage)を経験する信号又は長距離にわたって通信される信号において重度の減衰を引き起こす可能性がある。
【0004】
この問題を克服するためのアプローチは、多入力多出力(MIMO)システム内でmmWave通信を実装することである。mmWave通信の比較的短い波長は、MIMOシステムのアンテナ間隔が低減されることを可能にし、その結果として、比較的大きいアンテナアレイ(例えば、256~1024個のアンテナ素子を含む)がサブ6GHz帯域中で動作するときに達成可能なものと比較して比較的小さい物理的サイズでパックされることを可能にする。これらの大きいアンテナアレイは、mmWaveのより高い周波数通信によって引き起こされる高い経路損失を効果的に補償することが可能である。
【0005】
MIMOシステムは、フルデジタルプリコーディングを伴って実装され得る。フルデジタルプリコーディングを伴う実例的なMIMO基地局(BS)が
図1に示されている。
【0006】
基地局100は、デジタルプリコーダ102と、デジタルプリコーダ102に結合された複数の無線周波数(RF)チェーン(全体的に104で示される)とを備える。各RFチェーンは、アンテナ(全体的に108で示される)に結合される。ここで示される例では、各RFチェーンは、増幅器によってそれぞれのアンテナに結合される。増幅器は、全体的に106で示される。
【0007】
デジタルプリコーダ102は、全体的に110で示される複数のデータストリームを受信し、各受信されたデータストリームの振幅及び位相を制御して、所望の方向及び利得を有するアンテナ108から送信されるビームを達成するように動作する。データストリームは、プリコーディングされると、RFチェーン104を通過する。各RFチェーンは、単一のデータストリームをサポートし得る。RFチェーンは、アンテナ108による送信のために、デジタルプリコーディングされたデータストリームをアナログ信号に変換するように動作する。各RFチェーンは、典型的には、受信されたデジタルプリコーディングされたデータストリームからアナログ信号を生成するためのトランシーバ回路を含む。トランシーバ回路は、例えば、デジタル-アナログ(DAC)変換器、ミキサ、及び周波数変換器を含み得る。各RFチェーンによって生成された出力信号は、次いで、それぞれの増幅器によって増幅され、それぞれのアンテナから送信される。
【0008】
代替として、MIMOシステムは、アナログ領域とデジタル領域との間でプリコーディング動作を分割するハイブリッドプリコーディングを使用して実装され得る。デジタルプリコーディングは、各RFチェーンに関連付けられた重みを制御するためにデジタルプリコーダを使用して実装されることができる。アナログプリコーディングは、位相シフタを使用してアンテナによって送信される信号の位相を制御することによって実装されることができる。
【0009】
基地局とMIMOシステムのユーザデバイスとの間の通信チャネルに対する正確なチャネル状態情報(CSI)推定は、MIMOシステムの性能にとって重要であることが理解されている。例えば、ダウンリンク送信レート(即ち、BSからユーザデバイスへの送信レート)は、異なるデータストリーム間の干渉を低減するためにプリコーディングに依存し得る。従って、CSIの正確な知識を使用して、プリコーディングのパラメータを設定して、干渉を低減し、故に性能を改善することができる。
【0010】
正確なダウンリンクチャネル推定値を取得することにおける困難性は、BSにおけるアンテナの数が増加するにつれて増加する可能性があることが分かっている。アップリンクチャネルとダウンリンクチャネルとの間のチャネル相互関係(channel reciprocity)が成り立つシステムでは、これらの問題は、アップリンクチャネル推定値からプリコーディング用のCSIを取得することによって回避されることができる。しかしながら、完全なチャネル相互関係が成り立たないある特定のワイヤレスシステムが存在する。例えば、いくつかのユーザデバイスは、ダウンリンク方向で受信するために用いるよりも少ないアンテナを、アップリンク方向で送信するために用いるように構成される。これは、送信RFチェーンが受信RFチェーンよりも電力及びハードウェア集約的であることに基づいて、デバイスの電力及びハードウェア要件を低減するために行われ得る。これらの場合、部分的なチャネル相互関係のみが成り立ち、完全なCSI推定値を取得するためには、ユーザデバイスからBSへの何らかの形態のチャネルフィードバックが望ましくなる。
【発明の概要】
【0011】
本発明によると、通信チャネルを通して通信するように配置されたダウンリンクデバイス及びアップリンクデバイスを備える多入力多出力(MIMO)通信システム中でチャネル推定を実行する方法が提供され、方法は、
アップリンクデバイスにおいて、
角度領域中の第1のチャネルベクトルのそれぞれの要素を各々示す角度領域支持点(angular domain support points)のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第1のアンテナとの間のチャネル利得を表す第1のチャネルベクトルを分析することと、
最大のチャネル利得を表す角度領域中の第1のチャネルベクトルの要素を含む値ベクトルを角度領域支持点のセットから生成することと、
値ベクトルのインジケーションをアップリンクデバイスからダウンリンクデバイスにフィードバックすることと、
ダウンリンクデバイスにおいて、
同じ角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第2のアンテナとの間のチャネル利得を表す第2のチャネルベクトルを分析することと、
送信ステアリング行列(transmit steering matrix)を角度領域支持点のセットから生成することと、
アップリンクデバイスからフィードバックされた値ベクトルのインジケーションと生成された送信ステアリング行列とから第1のチャネルベクトルの推定値を生成することと
を備える。
【0012】
方法は、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間のチャネルをモデル化するチャネル行列の推定値を生成するために第1のチャネルベクトルの推定値を使用することを更に備え得る。
【0013】
方法は、ダウンリンクデバイスから送信されるべきデータをプリコーディングする際に使用するための推定されたチャネル行列を使用してデジタルプリコーディング行列を導出することを更に備え得る。
【0014】
アップリンクデバイスは、ダウンリンクデバイスから通信を受信するためにのみ第1のアンテナを使用し、ダウンリンクデバイスから通信を受信し、ダウンリンクデバイスに通信を送信するために第2のアンテナを使用するように配置され得る。
【0015】
角度領域中の第1のチャネルベクトルを分析するステップは、離散フーリエ変換(DFT)行列を使用して第1のチャネルベクトルを角度領域に変換することを備え得る。
【0016】
角度領域支持点のセットは、角度領域中の第1のチャネル行列の非ゼロ要素から識別され得る。
【0017】
値ベクトルは、角度領域中の第1のチャネルベクトルのP個の最大要素を選択することによって生成され得、ここで、Pは、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間の分解可能な経路(resolvable paths)の数である。
【0018】
方法は、コードブックを使用してアップリンクデバイスにおいて値ベクトルを量子化することを備え得、値ベクトルのインジケーションは、コードブックに対する選択されたインデックスを備え得る。
【0019】
値ベクトルのインジケーションは、値ベクトルの大きさ(magnitude)を更に備え得る。
【0020】
選択されたインデックスと値ベクトルの大きさとのみが、アップリンクデバイスからダウンリンクデバイスにフィードバックされ得る。
【0021】
選択されたインデックスI
nは、
【数1】
に従って選択され得、ここで、
【数2】
は、値ベクトル
【数3】
のエルミート共役であり、
【数4】
は、コードブックであり、c
iは、コードブックCの量子化されたベクトルであり、Bは、コードブックにアクセスするためのビット数である。
【0022】
識別された角度領域支持点のセットの各角度領域支持点は、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間のそれぞれの経路についてのビーム発射角(beam angle of departure)に依存し得る。
【0023】
送信ステアリング行列は、角度領域支持点のセットから計算された1つ以上のビーム発射角を使用して生成され得る。
【0024】
角度領域支持点のセットφは、以下によって与えられる:
【数5】
ここで、dは、ダウンリンクデバイスの隣接するアンテナ素子間の間隔であり、λは、ダウンリンクデバイスから発せられた信号の波長であり、Nは、ダウンリンクデバイスにおけるアンテナ素子の数であり、φ
pは、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間のp番目の経路に沿ってダウンリンクデバイスによって発せられた信号のビームの発射角である。
【0025】
角度領域中の第2のチャネルベクトルを分析するステップは、離散フーリエ変換(DFT)行列を使用して第2のチャネルベクトルを角度領域に変換することを備え得る。
【0026】
MIMO通信システムは、時分割複信(TDD)MIMO通信システムであり得る。
【0027】
本開示の第2の態様によると、通信チャネルを通して通信するように構成されたダウンリンクデバイス及びアップリンクデバイスを備える多入力多出力(MIMO)通信システムが提供され、
アップリンクデバイスは、
複数のアンテナと、
角度領域中の第1のチャネルベクトルのそれぞれの要素を各々示す角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第1のアンテナとの間のチャネル利得を表す第1のチャネルベクトルを分析することと、
最大のチャネル利得を表す角度領域中の第1のチャネルベクトルの要素を含む値ベクトルを角度領域支持点のセットから生成することと、
値ベクトルのインジケーションをダウンリンクデバイスにフィードバックすることと
を行うように構成された処理ユニットと
を備え、
ダウンリンクデバイスは、
複数のアンテナと、
同じ角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスの第2のアンテナとの間のチャネル利得を表す第2のチャネルベクトルを分析することと、
送信ステアリング行列を角度領域支持点のセットから生成することと、
アップリンクデバイスからフィードバックされた値ベクトルのインジケーションと生成された送信ステアリング行列とから第1のチャネルベクトルの推定値を生成することと
を行うように構成された処理ユニットと
を備える。
【0028】
本発明は、ここから、添付の図面を参照して例として説明される。図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】完全にデジタルプリコーディングされたMIMO送信機の例を示す。
【
図3】本開示によるチャネル推定を実行するためのステップのフローチャートを示す。
【
図4A】角度領域中のチャネルベクトルによって定義された関数の例を示す。
【
図4B】角度領域中のチャネルベクトルによって定義された関数の例を示す。
【
図5】本明細書で説明されるチャネル推定技法を用いて達成されたデータレートを従来のチャネル推定技法と比較するシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
部分的なチャネル相互関係のみの場合に完全なCSI推定値を取得する問題に対処するため1つのアプローチは、BSとユーザデバイスの受信専用アンテナとの間のチャネルについてのチャネル推定値(即ちチャネルベクトル)をBSにフィードバックすることである。これは、BS及びユーザデバイスに知られているベクトルの量子化コードブックの使用を通じて制限されたフィードバックを実行することによって行われ得る。ユーザデバイスにおいて、チャネルベクトルが、コードブックを使用して量子化され、チャネルベクトルを量子化するコードブックの選択されたベクトルに対するインデックスが、BSにフィードバックされる。このアプローチのフィードバックオーバーヘッドは、Bビットであり、ここで、Bは、コードブックをインデックス付けするために必要とされるビット数である(即ち、コードブックは、2Bまでの量子化されたベクトルを含む)。このアプローチでは、典型的には、全次元チャネルベクトルが量子化される(例えば、N個のアンテナを含むBSの場合、N要素チャネルベクトルが量子化され、BSにフィードバックされる)。
【0031】
本開示は、チャネルベクトルが角度領域中で分析されるMIMOシステム中でのチャネル推定を実行するためのアプローチを対象とする。角度領域中で表されるチャネルベクトルは、本明細書では角度領域チャネルベクトルと呼ばれ得る。MIMOシステムは、ダウンリンクデバイス(例えば、BS)及びアップリンクデバイス(例えば、ユーザデバイス)を含む。アップリンクデバイスにおいて、角度領域(即ち、角度領域チャネルベクトル)中で表されるチャネルベクトルの1つ以上の要素のセットが識別される。このチャネルベクトルは、ダウンリンクデバイスには知られていない。各識別された要素の値は、MIMOシステムのダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間のそれぞれの物理的経路についてのチャネル利得を表し得る。いくつかの例では、角度領域チャネルベクトルの識別された要素のセットは、そのベクトルの非ゼロ要素のセットである。識別された要素のセットは、これらの点が角度領域中のチャネルベクトルの非ゼロ成分を識別するので、本明細書では角度領域支持点と呼ばれる。角度領域支持点のセットから、最大チャネル利得を表す角度領域ベクトルの要素から形成されたベクトルが識別される。このベクトルは、本明細書では値ベクトルと呼ばれ得る。値ベクトルは、典型的には、N未満のサイズであり、ここで、Nは、ダウンリンクデバイスにおけるアンテナの数であり、いくつかの例ではサイズLであり得、ここで、Lは、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスとの間の分解可能な物理的経路の数である。大規模MIMOシステムでは、典型的には、LがNよりも著しく少ない。識別された値ベクトルのインジケーションが、次いで、例えば量子化コードブックを使用してアップリンクデバイスからダウンリンクデバイスにフィードバックされる。ダウンリンクデバイスにおいて、ダウンリンクデバイスに知られている更なるチャネルベクトルが角度領域中で分析されて、同じ角度領域支持点のセットが識別される。これらの角度領域支持点は、ダウンリンクデバイスにおいて未知のチャネルベクトルの推定値を生成するために、フィードバックされた量子化されたベクトルと共に使用される。このアプローチは、量子化されたN次元チャネルベクトルをフィードバックする必要なしに、チャネル推定値がダウンリンクデバイスにおいて形成されることを可能にする。それはまた、アップリンクデバイスとダウンリンクデバイスとの両方に共通であると識別された角度領域支持点をフィードバックする必要性を回避する。これは、チャネルフィードバックオーバーヘッドを低減することができる。
【0032】
ここから、本開示の態様が、以下でより詳細に説明される。
【0033】
図2は、MIMO通信システム200を示す。システム200は、ダウンリンクデバイス202及びアップリンクデバイス204を備える。ダウンリンクデバイス202は、例えば基地局(BS)、又はより一般的にはMIMO送信機であり得る。アップリンクデバイス204は、ユーザデバイス、又はMIMO受信機であり得る。ダウンリンクデバイス202は、ダウンリンク方向でワイヤレス通信信号を通信チャネル206を通してデバイス204に送信するように動作する。チャネルによって定義される物理的通信経路の数は、Pと示される。この例では、例示のためにP=3である。Pは、有意な又は分解可能な物理的経路の数を示す。分解可能な又は有意な経路は、信号電力が何らかの閾値を超える経路であり得る。散乱物体208及び210は、部分的に分解可能な経路を定義する、ダウンリンクデバイス202から受信された信号を散乱させるように動作する。
【0034】
MIMOシステム200は、時分割複信(TDD)システム(TDD MIMOシステム)である。
【0035】
ダウンリンクデバイス202は、デジタルプリコーダ212と、全体的に214で示されるRFチェーンのセットと、アンテナアレイ216と、処理ユニット218とを備える。アンテナアレイ216は、N個のアンテナを備える。この例におけるアンテナアレイ216は、均一線形アレイ(ULA:uniform linear array)である。
【0036】
デジタルプリコーダ212は、複数Nsのデータストリーム220を受信し、それらのストリームに対してデジタルプリコーディングを実行する。プリコーディングされたストリームは、次いで、RFチェーン214を通過する。各RFチェーンは、単一のデータストリームをサポートし得る。RFチェーンの数は、アンテナの数Nに等しくあり得る。RFチェーンは、アンテナアレイ216に接続される。
【0037】
アップリンクデバイス204は、この例ではULAでもあるレンズアレイ222を備える。レンズアレイ222は、M個のアンテナを備える。
図2に示される例では、M=2である。レンズアレイ222は、RFチェーン224のセットに結合される。RFチェーンのセットは、デジタルコンバイナ226に結合される。アップリンクデバイス204は、処理ユニット228を更に備える。
【0038】
動作中、プリコーダ212は、複数Nsのデータストリームを受信する。プリコーダは、それらのデータストリームに対してデジタルプリコーディングを実行する。プリコーディングは、各データストリームの重み及び/又は位相を調整することを含み得る。プリコーディングは、異なるデータストリーム間の干渉を低減するために実行され得る。プリコーディングは、デジタルプリコーディング行列Fをデータストリームに適用することによって実行され得る。プリコーディングされたデータストリームは、アナログ信号を生成するために、RFチェーン214のセットを通して渡される。単一のデータストリームが、各RFチェーンを通過し、即ち、各RFチェーンは、単一のデータストリームをサポートする。RFチェーンによって生成されたアナログ信号は、そのRFチェーンを通過したデータストリームを示すか又は表す。RFチェーンによって生成された信号は、チャネル206を通したアップリンクデバイス204への送信のためにアンテナアレイ216に渡される。信号は、アンテナアレイ216によって送信された信号が離散数のビームを形成するように、アレイ216のアンテナに送られる。ビームは、特定の進行方向又は角度に集束された1つ以上の信号の集合を指す。信号は、ビームが各通信経路に沿って進むように、即ち、各ビームがそれぞれの物理的経路に沿って進むように、アンテナアレイ216から送信される。この例示された例では、発せられた信号は、3つのビーム、即ち、第1の経路上を進む第1のビーム、第2の経路上を進む第2のビーム、及び第3の経路上を進む第3のビームを形成する。
【0039】
各ビームは、アンテナアレイ216からの発射角(AoD)を有する。発射角は、アレイに関して定義された基準方向に対して測定され得る。第1の経路上のビームについての発射角はφ1と示され、第2の経路上のビームについての発射角はφ2と示され、第3の経路上のビームについての発射角はφ3と示される。
【0040】
発せられたビームは、チャネルを通して通信され、デバイス204において受信される。各ビームは、到来角(AoA:angle of arrival)でアンテナアレイ222に入射する。各ビームについての到来角は、アレイ222関して定義された基準方向に対して測定される。第1の経路上のビームについての到来角はθ1と示され、第2の経路上のビームについての到来角はθ2と示され、第3の経路上のビームについての到来角はθ3と示される。
【0041】
ビームは、アンテナアレイ222において受信される。アレイ222のアンテナは、チェーン224のセットのRFチェーンに結合される。アレイ222の各アンテナは、それぞれのRFチェーンに結合され得る。RFチェーン224は、デバイス202のRFチェーン214とは逆の動作を実行する。即ち、RFチェーン214は、アナログ信号を生成するために、受信されたプリコーディングされたデータストリームに対して処理動作を実行するのに対して、RFチェーン224は、受信されたアナログ信号からプリコーディングされたデータストリームのデジタル信号表現を生成するように動作する。各RFチェーンによって生成されたデジタル信号は、次いで、コンバイナ226に通信される。コンバイナ226は、復号されたデータストリーム230を生成するために、デバイス202のプリコーダ212によってデータストリームに適用されたプリコーディングを不要にする又は除去するように動作する。
【0042】
デバイス204における受信された信号は、以下のようにモデル化されることができる:
【数6】
【0043】
式(1)では、yは、ダウンリンクデバイス204において受信された信号ベクトルであり、Hは、デバイス202とデバイス204との間のチャネルをモデル化する空間チャネル行列であり、Fは、デジタルプリコーダ212によって適用されたデジタルプリコーダ行列であり、sは、デバイス202からの送信された信号ベクトルであり、nは、雑音ベクトルである。
【0044】
ベクトルyは、サイズM×1であり、即ちM要素ベクトルである。ベクトルsは、サイズN×1であり、即ちN要素ベクトルである。チャネル行列Hは、M×N行列、即ちM行及びN列を有する行列である。チャネル行列Hは、以下のように定義される:
【数7】
ここで、h
iは、デバイス202のアンテナとデバイス204のi番目のアンテナとの間のチャネルベクトルを表す。各チャネルベクトルh
iは、従って、N×1ベクトル(即ちN要素ベクトル)であり、チャネルベクトルのj番目の要素[h
i]
jは、ダウンリンクデバイス202のj番目のアンテナとアップリンクデバイス204のi番目のアンテナとの間のチャネルを表す。
【0045】
デジタルプリコーダ行列Fは、N×N行列である。雑音ベクトルnは、以下を満たす加法性白色ガウス雑音(AWGN:additive white Gaussian noise)ベクトルである:
【数8】
ここで、σ
2は、雑音電力の分散を表し、I
Mは、M×M単位行列( identity matrix)である。
【0046】
プリコーダ行列Fは、以下の電力制約を満たす:
【数9】
ここで、ρは、受信機における平均受信信号電力である。
【0047】
送信された信号ベクトルsは、以下を満たす:
【数10】
【0048】
アンテナアレイ216は、均一線形アレイ(ULA)であり、そのため、チャネルをモデル化するチャネル行列は、以下のように表されることができる:
【数11】
ここで、g
pは、p番目の物理的経路についての経路利得であり、a(φ、N)及びa(θ、M)は、それぞれダウンリンクデバイス202及びアップリンクデバイス204におけるアレイ応答ベクトルであり、φ
pは、p番目の経路についての発射角であり、θ
pは、p番目の経路についての到来角である。g
pの値は、CN(0、1)を満たし、
【数12】
である。
【0049】
アレイ応答ベクトルa(φ、N)は、以下のように書かれることができる:
【数13】
ここで、λは、信号の波長であり、dは、ダウンリンクデバイス202における隣接するアンテナ間の間隔である。λ及びdの値は、同じ単位、例えばメートルで表される。
【0050】
行列Aは、以下のように定義されることができる:
【数14】
【0051】
そして、ベクトルg
mは、以下のように定義されることができる:
【数15】
【0052】
これらの定義により、(式(2)及び(6)を使用して)以下が得られる:
【数16】
【0053】
行列Aは、送信ステアリング行列、即ちダウンリンクデバイス202のアレイ216のステアリング行列である。
【0054】
式(10)は、チャネルベクトルhmが発射角φに依存するステアリング行列Aと、受信機利得ベクトルと見なされ得るgmとから決定されることができることを概説している。
【0055】
図2に示される例では、アップリンクデバイス204は、2つのアンテナ素子を含み、このことから、H=[h
1,h
2]
である。式10から、以下のようになる:
【数17】
【0056】
アップリンクデバイス204は、そのアンテナのうちの第1のアンテナ(アンテナ1と呼ばれる)がデバイス202からダウンリンク送信を受信し、デバイス202にアップリンク送信を通信するように配置され、そのアンテナのうちの第2のアンテナ(アンテナ2と呼ばれる)がデバイス202からダウンリンク送信を受信するようにだけ配置されるように構成される。即ち、デバイス204は、アンテナ2からのアップリンク送信を通信することができず、即ち、アンテナ2からアップリンク方向に信号を送信することができない。その結果として、チャネル206の部分的な相互関係のみが存在し、それは、ダウンリンクデバイス202が、例えばアップリンクチャネル推定技法を通じて、デバイス202のアンテナとデバイス204のアンテナ1との間のチャネルベクトルを示すチャネルベクトルh1の推定値を決定することが可能であるが、同様の技法を使用してh2(デバイス202のアンテナとデバイス204のアンテナ2との間のチャネルベクトルを示す)を正確に推定することができないことを意味する。
【0057】
ここから、ダウンリンクデバイス202におけるチャネルベクトルh
2を推定するためのアプローチが、
図3におけるフローチャートを参照して説明される。以下の説明では、ダウンリンクデバイス202がチャネルベクトルh
1の推定値を(例えばアップリンクチャネル推定を通じて)計算することが可能であると仮定される。また、アップリンクデバイス204が、例えばダウンリンクチャネル推定を通じて、チャネルベクトルh
1及びh
2の両方の推定値を計算することが可能であると仮定される。
【0058】
ステップ302において、アップリンクデバイス204は、チャネルベクトルh
2についての角度領域支持点のセットを識別するために、角度領域中のベクトルh
2を分析する。ステップ302は、デバイス204の処理ユニット228によって実行され得る。デバイス204は、
【数18】
と示される、チャネルベクトルh
2の角度領域表現を分析することによって、角度領域中のチャネルベクトルh
2を分析する。言い換えれば、
【数19】
は、h
2の角度領域ベクトルであるか、又は別の言い方をすれば、
【数20】
は、角度領域中のチャネルベクトルh
2である。各角度領域支持点は、角度領域ベクトル
【数21】
のそれぞれの要素を示すか又は識別する。
【0059】
角度領域ベクトル
【数22】
は、チャネルベクトルh
2に対して離散フーリエ変換(DFT)を実行することによって生成されることができる。これは、DFT行列を使用して実装され得る。チャネルベクトルh
2は、角度領域ベクトル
【数23】
を生成するために、DFT行列Dで乗算されることができる。数学的には、デバイス204は、以下に従って角度領域ベクトルを生成する:
【数24】
【0060】
DFT行列Dは、以下のように表されることができる:
【数25】
【0061】
このことから、Dの要素は、以下によって与えられる:
【数26】
ここで、p
’、q
’=0、1、・・・、N-1である。
【0062】
角度領域支持点を識別するために角度領域ベクトルの分析がどのように使用されることができるかを理解するために、アップリンクデバイス204が単一のアンテナのみを含み(即ち、M=1)、1つの物理的経路のみが存在する(即ち、P=1)例を考える。この場合、a(θ、M)=1であり、式(10)は以下のように低減する:
【数27】
【0063】
【0064】
式(15)から、Dのp番目の行は以下のように与えられるようになる:
【数29】
【0065】
式(7)、(16)、(17)、及び(18)を使用すると、
【数30】
のp番目の要素は、以下のように書かれることができる:
【数31】
ここで、
【数32】
である。
【0066】
式(19)の係数を取ると以下が得られる:
【数33】
ここで、
【数34】
である。
【0067】
式(20)は、
【数35】
がサンプリング点η
pにおける関数f(η
p)のサンプルであることを実証する。言い換えれば、角度領域ベクトル
【数36】
の要素の値は、サンプル点η
pにおける関数f(η
p)によって与えられる。関数f(η
p)は、中心点f(0)を有するsinc状の分布を有する。
【0068】
式(20)から、η
p=0のとき、以下のようになる:
【数37】
ここで、p
0は、関数f(η
p)の中心点に対応する角度領域ベクトル
【数38】
の要素である。p
0の値は、従って、以下のように与えられる:
【数39】
ここで、
【数40】
は、p
0が最も近い整数に与えられることを示す(p
0は角度領域ベクトルの要素を識別するので)。
【0069】
φ
1が式(21)を満たすとき、角度領域ベクトル
【数41】
は、1つの非ゼロ要素p
0のみを有する。φ
1が式(21)を満たさない場合には、
【数42】
は、複数の非ゼロ要素を有し得る。しかしながら、典型的なシステムでは、N(ダウンリンクデバイス202におけるアンテナの数)の値が比較的大きいので、
【数43】
は、依然として、点p
0の周りに分布され、点p
0の近傍のベクトル要素のみが無視できない値を取るであろう。言い換えれば、式(21)を満たさない場合であっても、角度領域ベクトル
【数44】
の無視できない値が、依然として、ベクトル要素p
0の周りに集中されるであろう。
【0070】
図4A及び
図4Bは、実例的なf(η
p)及び
【数45】
を例示する。
図4Aは、φ
1が式(21)を満たす場合を実証し、
図4Bは、φ
1が式(21)を満たさない場合を実証する。
図4Aでは、角度領域ベクトルの唯一の非ゼロ要素がp
0であることが分かる。
図4Bは、角度領域ベクトルが複数の非ゼロ要素を含むが、p
0の近傍内のもの(404及び406において示される)のみが無視できない値を有することを示す。両方の図では、円形のマーキングは、角度領域ベクトル
【数46】
の要素の値を示す。実線は、角度領域中のチャネルベクトルによって定義された関数f(η
p)を示す。
【0071】
上記の説明は、1つの物理的経路が、角度領域ベクトルの要素p
oに対応する角度領域中のチャネルベクトルについての単一の中心点を形成することを例示する。別の言い方をすれば、チャネルベクトルは、角度領域ベクトルの要素p
oに対応する単一の中心点を有する角度領域中の関数を定義する。中心点は、要素p
oと正確に整列し得るか(φ
1が式(21)を満たす場合)、又は要素p
oは、関数の中心点に最も近い要素であり得る(例えば
図4Bに示されるように、φ
1が式(21)を満たさない場合)。中心点(及び故に要素p
o)は、物理的経路についてのビームの発射角φ
1に依存する。
【0072】
デバイス202と204との間に複数の物理的経路が存在するとき、角度領域ベクトル
【数47】
は、ベクトル
【数48】
のそれぞれの要素に対応する単一の中心点を各々有する関数の線形結合を定義する。言い換えれば、P個の物理的経路について、角度領域ベクトル
【数49】
は、P個の関数の線形結合を定義し、ここで、P個の関数の各々は、角度領域ベクトルの要素
【数50】
に対応する単一の中心点を有する。各要素数
【数51】
は、それぞれの物理的経路についてビーム発射角に依存し、即ち、要素数
【数52】
は、物理的経路pについてのビーム発射角に依存し、ここで、p=1、・・・、Pである。この要素のセットは、本明細書では角度領域支持点のセットと呼ばれる。
【0073】
図2に示された実例的なシステムに戻って参照すると、アップリンクデバイス204は、以下によって与えられる、ベクトルについての角度領域支持点のセットΦ
2を計算するために、角度領域ベクトル
【数53】
を分析する:
【数54】
【0074】
このことから、各角度領域支持点は、角度領域ベクトルのそれぞれの要素を識別する。角度領域支持点の各々における角度領域ベクトル
【数55】
の値は、それぞれの物理的経路についての利得を表す。
【0075】
ステップ304において、アップリンクデバイス204は、角度領域支持点のセットから値ベクトルを生成する。このステップはまた、処理ユニット228によって実行され得る。
【0076】
値ベクトルは、最大チャネル利得を表す角度領域ベクトル
【数56】
の要素から形成される。値ベクトルは、角度領域ベクトルのL個の最大要素を選択することによって生成され得る。いくつかの例では、L=Pである。他の例では、LはP未満である。
【0077】
数学的に、値ベクトルは、最初にDFT行列Dの選択された行をチャネルベクトルh
2に適用することによって計算されることができる。適用されるべきDFT行列の行は、角度領域制御点によって決定される。特に、角度領域支持点に等しい行番号( row numbers)を有する行が、チャネルベクトルに適用されるべきである。これは、数学的に以下のように表される:
【数57】
【0078】
又は、別の言い方をすれば:
【数58】
ここで、
【数59】
は、P個の角度領域支持点Φ
2によって識別された角度領域ベクトル
【数60】
のP個の要素から形成されたベクトルである。ベクトル
【数61】
は、中間値ベクトルと呼ばれ得る。
【0079】
ベクトル
【数62】
は、次いで、そのノルムによって降順にソートされ、次いで、最大のチャネル利得を表すL個の要素が選択される。これは、ベクトル
【数63】
のL個の最大要素を選択することによって行われ得る。
【0080】
数学的には:
【数64】
ここで、
【数65】
は、降順に要素の大きさによってソートされた中間値ベクトルに等しく、
【数66】
は、角度領域ベクトル
【数67】
の最大のL個の要素から形成されたL要素ベクトルである。言い換えれば、ベクトル
【数68】
は、L個の最大チャネル利得を表す角度領域ベクトルのL個の要素から形成される。
【0081】
値ベクトルは、この例では、ベクトル
【数69】
である。下付き文字「2」は、値ベクトルがチャネルベクトルh
2について形成されていることを示すことに留意されたい。
【0082】
上述されたように、Lの値は、実装形態に応じて選択されることができ、いくつかの例では、分解可能な物理的経路の数Pに等しい。Lの値=Pである場合、ベクトル
【数70】
のL個の最大要素を選択するステップを実行する必要はない。このことから、いくつかの配列では、値ベクトルは、ベクトル
【数71】
であるか、又はそれは、角度領域支持点によって識別された全てのP個の要素が保持される場合、ベクトル要素がソートされる必要がないことに基づいて、ベクトル
【数72】
であり得る。
【0083】
ステップ306において、アップリンクデバイス204は、生成された値ベクトルのインジケーションをダウンリンクデバイス202にフィードバックする。
【0084】
処理ユニット228は、値ベクトルのインジケーションをRFチェーン224に通信し得、RFチェーン224は、次いで、アンテナアレイ222のアンテナ1(これは、アップリンク方向に送信することが可能な唯一のアンテナである)に渡される値ベクトルのインジケーションを表すアナログ信号を生成する。アンテナ1は、次いで、値ベクトルのインジケーションを表す信号をアップリンク方向でデバイス202に送信し、デバイス202に値ベクトルのインジケーションをフィードバックする。
【0085】
値ベクトルのインジケーションは、アップリンクデバイス204及びダウンリンクデバイス202の両方に知られている量子化コードブックCを使用して生成され得る。量子化コードブックは、量子化ベクトルのセットから形成される。アップリンクデバイス204は、生成された値ベクトルを量子化するために、量子化コードブックCを使用することができる。値ベクトルを量子化するために選択された量子化ベクトルをインデックス付けする量子化コードブックに対するインデックスが、次いで、ダウンリンクデバイス202にフィードバックされることができる。言い換えれば、ダウンリンクデバイスにフィードバックされた値ベクトルのインジケーションは、量子化コードブックに対する選択されたインデックスを備える。コードブックの量子化ベクトルは、単位ノルムベクトルであり得る。この場合、処理ユニット228はまた、値ベクトルの大きさを計算し、これをインデックスと共に量子化コードブックにフィードバックし得る。このことから、コードブックが単位ノルムベクトルを含む実装形態では、値ベクトルのインジケーションは、コードブックCに対する選択されたインデックスと値ベクトルの大きさとを備える。
【0086】
コードブックCは、数学的に以下のように表されることができる:
【数73】
ここで、2
Bは、コードブック中の量子化ベクトルの数であり、Bは、コードブックをインデックス付けするのに必要とされるビット数であり、即ち、各コードブックインデックスは、Bビットである。
【0087】
処理ユニット228は、値ベクトル
【数74】
に最も密接に一致する、コードブックCからの量子化ベクトルc
iを選択し得る。具体的には、処理ユニット228は、以下に従って値ベクトルを量子化するために、コードブックCのインデックスI
nを選択し得る:
【数75】
【0088】
インデックスI
n及び値ベクトルの大きさ
【数76】
が、次いで、ダウンリンクデバイス202にフィードバックされる。
【0089】
値ベクトル
【数77】
のインジケーションは、アンテナアレイ216及びRFチェーン214によってダウンリンクデバイス202において受信され、処理ユニット218に渡される。
【0090】
ステップ308において、ダウンリンクデバイス202は、ステップ302においてアップリンクデバイスによって識別された同じ角度領域支持点のセットを識別するために、デバイスに知られているチャネルベクトルh1を分析する。これは、処理ユニット218によって実行され得る。
【0091】
ダウンリンクデバイス202は、角度領域中のチャネルベクトルh
1を分析することによって角度領域支持点を識別する。角度領域中に表されたチャネルベクトルh
1は、
【数78】
と示され、即ち、
【数79】
は、角度領域ベクトルである。角度領域ベクトル
【数80】
は、離散フーリエ変換(DFT)行列Dを使用してチャネルベクトルh
1に対してDFTを実行することによって生成されることができる。チャネルベクトルh
1は、角度領域ベクトル
【数81】
を生成するために、DFT行列Dで乗算されることができる。数学的には、デバイス202は、以下に従って角度領域ベクトルを生成する:
【数82】
【0092】
ダウンリンクデバイス202は、アップリンクデバイス204がステップ302に関して上記で説明された角度領域ベクトル
【数83】
を分析した方法と類似の方法でと角度領域支持点を生成するために、角度領域ベクトル
【数84】
を分析する。そうする際、ダウンリンクデバイス202は、以下によって与えられる、Φ
1と示される、ベクトル
【数85】
についての角度領域支持点のセットを生成する:
【数86】
【0093】
ベクトル
【数87】
についての角度領域支持点は、従って、式(23)によって与えられるベクトル
【数88】
についての角度領域支持点に等しい。これを見るために、ベクトル
【数89】
についての角度領域支持点は、発射角φ
pにのみ依存し、到来角θ
pには依存しないことに留意されたい。式(11)及び(12)から、h
1=Ag
1及びh
2=Ag
2であり、式(8)から、ステアリング行列Aが角度領域支持点と同じ発射角に依存することも観察された。ベクトルh
1及びh
2は、従って、共通の角度領域支持を有する、即ち、それらは、同等の角度領域支持点を共有する。これは、MIMOシステム200の物理的解釈と一致しており、典型的には、アップリンクデバイス204の隣接するアンテナ間の距離は、散乱物体(例えば、208及び210)とアップリンクデバイスとの距離よりも遙かに小さい。これは、2つのアンテナについての物理的伝播経路が同じ散乱物体を介し、そのため、2つのアンテナについてのチャネルベクトルが同じ発射角に依存することを意味する。
【0094】
ステップ310において、ダウンリンクデバイス202は、角度領域支持点の計算されたセットΦ1から送信ステアリング行列Aを生成する。以下でより詳細に説明されるように、ダウンリンクデバイス202は、角度領域支持点Φ1から計算された1つ以上の発射角から送信ステアリング行列を生成する。一般に、ダウンリンクデバイス202は、L個の最大チャネル利得を表す角度領域ベクトルのそれぞれのL個の要素から計算されたL個の発射角から送信ステアリング行列を生成する。即ち、送信ステアリング行列Aは、L個の最大チャネル利得を表すL個の角度領域支持点のセットから生成される。
【0095】
角度領域支持点Φ
1から最大チャネルチェーンを表すL個の角度領域支持点のセットを識別するために、ダウンリンクデバイス202は、角度領域支持点Φ
1から値ベクトルを生成する。値ベクトルは、最大チャネル利得を表す角度領域ベクトル
【数90】
の要素から形成される。値ベクトルは、角度領域ベクトル
【数91】
のL個の最大要素を選択することによって生成される。
【0096】
数学的には、値ベクトルは、最初にDFT行列Dの選択された行をチャネルベクトルh
1に適用することによって、上記で説明された値ベクトル
【数92】
と類似の方法で計算される。適用されるべきDFT行列の行は、角度領域制御点Φ
1によって決定される。特に、角度領域支持点に等しい行番号を有する行が、チャネルベクトルに適用されるべきである。これは、数学的に以下のように表される:
【数93】
【0097】
又は、別の言い方をすれば:
【数94】
ここで、
【数95】
は、P個の角度領域支持点Φ
1によって識別された角度領域ベクトル
【数96】
のP個の要素から形成されたベクトルである。ベクトル
【数97】
は、中間値ベクトルと呼ばれ得る。
【0098】
ベクトル
【数98】
は、次いで、そのノルムによって降順にソートされ、次いで、最大のチャネル利得を表すL個の要素が選択される。これは、ベクトル
【数99】
のL個の最大要素を選択することによって行われ得る。
【0099】
数学的には:
【数100】
ここで、
【数101】
は、降順に要素の大きさによってソートされた中間値ベクトルに等しく、
【数102】
は、角度領域ベクトル
【数103】
の最大のL個の要素から形成されたL要素ベクトルである。言い換えれば、ベクトル
【数104】
は、L個の最大チャネル利得を表す角度領域ベクトル
【数105】
のL個の要素から形成される。ベクトル
【数106】
は、ダウンリンクデバイス202によって計算された値ベクトルである。下付き文字「1」は、値ベクトルがチャネルベクトルh
1について形成されていることを示す。
【0100】
ダウンリンクデバイスは、ソートされた次元での、
【数107】
の要素の
【数108】
への配列を記述するインデックスベクトルI
1を更に計算する。ベクトルI
1は、従って、
【数109】
の再配列を示すP要素ベクトルである。ベクトルI
1の最初のL個の要素は、従って、最大チャネル利得を表すベクトル
【数110】
のL個の要素を識別又はインデックス付けする。
【0101】
最大チャネル利得を表すL個の角度領域支持点のセットは、従って、以下に従って角度領域支持点のセットΦ
1から識別されることができる:
【数111】
【0102】
このことから、要約すると、ダウンリンクデバイス202は、そのデバイスに知られているチャネルベクトルh
1からP個の角度領域支持点のセットΦ
1を計算する。これらの角度領域支持点の各々は、角度領域ベクトル
【数112】
のそれぞれの要素を識別する。最大チャネル利得を表すL個の角度領域支持点
【数113】
のセットが次いで識別され、ここで、Lは、P以下である。上記で説明された例では、この点のセットは、P個の角度領域支持点のセットΦ
1によって識別された角度領域ベクトル
【数114】
のP個の要素から形成された中間値ベクトル
【数115】
を計算することによって識別される。中間値ベクトルは、次いで、そのノルムによって降順にソートされ、最大チャネル利得を表すL個の要素が、インデックスベクトルI
1によって識別される。インデックスベクトルは、次いで、P個の角度領域支持点のセットΦ
1中の対応するL個の角度領域支持点をインデックス付けするために使用される。
【0103】
式(31)及び(36)に従って、l=1、・・・、Lについての発射角φ
lは、以下のように、L個の角度領域支持点の識別されたセットから計算されることができる:
【数116】
【0104】
式(8)に従って、L個の識別された発射角についてのステアリング行列Aは、ダウンリンクデバイス202によって以下のように計算される:
【数117】
【0105】
行列Aは、ダウンリンクデバイス202において計算された角度領域制御点のセットΦ1から計算された送信ステアリング行列を表す。それは、N×L行列である。
【0106】
ステップ312において、デバイス202は、
【数118】
と示される、チャネルベクトルh
2のアップリンク推定値を、デバイス204からフィードバックされた値ベクトル
【数119】
のインジケーションとデバイス202において計算されたステアリング行列Aとから計算する。
【0107】
具体的には、ダウンリンクデバイス202は、以下に従って、チャネルベクトル推定値
【数120】
を計算することができる:
【数121】
ここで、c
Fは、デバイス204からフィードバックされたインデックスI
nに従って選択されたコードブックCからの量子化ベクトルであり、
【数122】
は、デバイス204からフィードバックされた値ベクトル
【数123】
の大きさである。
【0108】
ベクトル
【数124】
は、ダウンリンク推定技法を通じて計算されることができなかったチャネルベクトルh
2の計算された推定値である。
【0109】
チャネルベクトルを計算するための上記で説明されたアプローチは、チャネル推定の従来の技法に勝るいくつかの利点を提供することができる。量子化され、ダウンリンクデバイス202にフィードバックされるベクトルは、低減された次元のL次元ベクトルであり、ここで、Lは、分解可能な物理的経路の数であるP以下である。物理的経路の数は、典型的には、ダウンリンクデバイスにおけるアンテナの数Nよりも遙かに少なく、このことから、本アプローチは、N次元ベクトルが量子化されフィードバックされる制限されたフィードバックの従来のアプローチと比較して勝っている。量子化されるべきベクトルのサイズを低減することによって、より正確な量子化が、所与のサイズのコードブックに対してを実行されることができる。更に、角度領域中のチャネル間に相関があり、このことから、ダウンリンクデバイスの異なる受信機のチャネルは、共通の角度領域支持を有する(即ち、それらは角度領域点の共通のセットを共有する)ことが理解されている。これは、角度領域支持点のフィードバックが省略されることを可能にし、チャネルフィードバックオーバーヘッドを低減する。
【0110】
図5は、上記のアプローチが、比較的低いチャネルフィードバックオーバーヘッドを用いて高い合計レート性能が達成されることを可能にすることを実証する、本発明者らによって取得されたシミュレーション結果を示す。
【0111】
このシミュレーションでは、値ベクトル
【数125】
が、6ビットのランダムベクトル量子化(RVQ)コードブックを使用して量子化される。理想的なチャネル状態情報(CSI)を用いて達成されることができる合計レート性能が502に示されている。最適な(即ち量子化されていない)値ベクトル
【数126】
を使用して達成されることができる合計レート性能が504に示されている。本フィードバック方式及び6ビットのRVQコードブックを使用して量子化された値ベクトル
【数127】
用いて達成されることができる合計レート性能が506に示され、RVQコードブックを使用する従来の制限されたフィードバックが508に示されている。本明細書で説明されるフィードバック方式は、N次元ベクトルを量子化する従来のRVQコードブック方式よりも性能が優れていることが観察される。更に、値ベクトルを量子化することによって被る性能損失は比較的小さいことが観察されることができ、それは、従来の方式と比較してチャネルフィードバックオーバーヘッドを増加させることなく、良好な性能を有するチャネルフィードバック方式が達成されることができることを意味する。
【0112】
チャネルベクトルh
2の推定値を計算すると、ダウンリンクデバイス202は、完全なCSIを取得するために、推定されたチャネルベクトル
【数128】
と(例えば、アップリンクチャネル推定から取得された)計算されたチャネルベクトル推定値h
1とを使用してチャネル行列Hの推定値を計算することができる。チャネル行列Hを計算すると、ダウンリンクデバイス202は、更新されたプリコーディング行列Fを計算することができる。これを行うために、ダウンリンクデバイスは、以下のようにチャネル行列を分解するために、特異値分解(SVD)を使用することができる:
【数129】
ここで、Uは、左特異行列であり、Σは、降順の特異値から成る対角行列であり、Vは、右特異行列である。
【0113】
プリコーディング行列Fは、次いで、以下のように、Vの最初のM個の列から計算されることができる:
【数130】
ここで、I
Mは、M×M単位行列である。
【0114】
ダウンリンクデバイスは、次いで、更新された又は最適化されたプリコーディング行列Fを使用して、アンテナアレイ216を通して信号を通信することができる。
【0115】
本明細書で説明される例では、アップリンクデバイス204は、2つのアンテナを含み、それらのうちの1つは、アップリンク方向に送信することができない。これは例示のみを目的としたものであり、本明細書で説明された技法は、任意の適切な数のアンテナを有するダウンリンクデバイスに適用可能であることが理解されるであろう。一般に、本明細書で説明された技法は、ダウンリンクデバイスとアップリンクデバイスのアンテナとの間のチャネルベクトルhについての推定値が、ダウンリンクデバイスにとって利用可能な他のチャネルベクトル(例えば、アップリンク推定技法を使用して取得される)と、アップリンクデバイスからフィードバックされた角度領域中のチャネルベクトルhの要素を含む値ベクトルのインジケーションとを使用して、ダウンリンクデバイスにおいて計算されることを可能にする。いくつかの実装形態では、例えば、アップリンクデバイスは、8つのアンテナを含み得、それらのうちの4つは、ダウンリンク送信を受信することに限定される(即ち、4つのアンテナのみが、アップリンク次元で送信することが可能である)。
【0116】
上記の例では、L個の角度領域支持点のセットが識別され、チャネルベクトル推定値を計算するために使用される。いくつかの例では、LはPに等しい。これらの状況では、アップリンクデバイスにおいて値ベクトルを生成するために、ベクトル
【数131】
をソートし、L個の要素を選択する必要がないことがあり、ベクトル
【数132】
が値ベクトルとして取られ得、それは次いで、量子化され、ダウンリンクデバイスにフィードバックされる。更に、ダウンリンクデバイスにおいて、ベクトル
【数133】
を計算することによってL個の角度領域支持点のセットを識別する必要がないことがあり、代わりに、行列Aを計算するために使用されるP個の発射角が、式(37)に従ってP個の角度領域制御点のセットΦ
1から直接計算されることができる。
【0117】
本出願人は、本明細書で説明された各個々の特徴及び2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを、そのような特徴又は特徴の組み合わせが本明細書で開示された任意の問題を解決するかどうかにかかわらず、且つ特許請求の範囲を限定することなく、そのような特徴又は組み合わせが当業者の共通の一般的知識に照らして全体として本明細書に基づいて実施されることが可能な範囲まで、分離して開示する。出願人は、本発明の態様が任意のそのような個々の特徴又は特徴の組み合わせから成り得ることを示す。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】