(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】車両用のロッカ構造およびそれを取得する方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20220209BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20220209BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20220209BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/15 B
F16F7/12
F16F7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532442
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2019087107
(87)【国際公開番号】W WO2020136265
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515291203
【氏名又は名称】オートテック エンジニアリング エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リモウシン、ヴィクター ニコラス サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ロパテギ サンズ、ウナイ
(72)【発明者】
【氏名】ジラウド ドゥ ポエト、クエンティン ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203AA34
3D203BB12
3D203CA04
3D203CA21
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA37
3D203CA66
3D203CA74
3D203CB04
3D203CB05
3D203DB05
3D203DB06
3J066AA22
3J066BA03
3J066BB01
3J066BD07
3J066BE01
3J066BF02
3J066BG08
(57)【要約】
チャネル(CH)が間に規定されるように、車両の長手方向(L)を有する第1の鋼プロファイル(1)および第2の鋼プロファイル(2)を備え、第1のプロファイル(1)および第2のプロファイル(2)が垂直中央区画(13)を備える、車両用のロッカ構造(R1~R3)であって、チャネル(CH)内に配置された第1の衝撃吸収要素(3)を備え、第1の衝撃吸収要素(3)が、中央接合区画(33)によって接合された上側ローブ(31)および下側ローブ(32)が規定される閉じた鋼プロファイルであり、上側ローブ(31)が上側接合フランジ(11、21)のより近くに、下側ローブ(32)が下側接合フランジ(21、22)のより近くに位置する、ロッカ構造(R1~R3)。本発明はまた、ロッカ構造を取得する方法、ならびに本発明のロッカ構造を備えた車両に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、横断方向、および垂直方向が互いに直交するように、前記長手方向、前記横断方向、および前記垂直方向が規定された、車両用のロッカ構造であって、前記ロッカ構造が、第1の鋼プロファイルと第2の鋼プロファイルとを備え、前記ロッカ構造が前記車両に取り付けられたとき、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルが前記長手方向を有し、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルそれぞれに、陥凹部と、上側接合フランジと、下側接合フランジとが規定され、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの間が前記上側接合フランジおよび前記下側接合フランジによって接合されて、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの間にチャネルが規定され、前記第1の鋼プロファイルが、実質的に前記垂直方向を含む中央区画を有し、前記第2の鋼プロファイルが、実質的に前記垂直方向を含む中央区画を有し、前記ロッカ構造が更に、前記チャネル内に配置された第1の衝撃吸収要素を備え、前記第1の衝撃吸収要素が、中央接合区画によって接合された上側ローブおよび下側ローブが規定される閉じた鋼プロファイルであり、前記上側ローブが前記上側接合フランジのより近くに位置し、前記下側ローブが前記下側接合フランジのより近くに位置し、前記上側ローブの上面および前記下側ローブの下面が、湾曲した中央部分によって分離された同じ線上に配置された平行な2つの直線部分で作られる、ロッカ構造。
【請求項2】
前記上側ローブが、前記第1の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接する部分を有し、前記下側ローブが、前記第1の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接する部分と、前記第2の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接する部分とを有する、請求項1に記載のロッカ構造。
【請求項3】
前記上側ローブの部分が、前記第2の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接し、前記第2の鋼プロファイルを補完する区画を有し、前記上側ローブの前記部分が前記第2の鋼プロファイルに接合される、請求項1または2に記載のロッカ構造。
【請求項4】
前記中央接合区画が直線的であり、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの前記中央区画に平行である、請求項1から3のいずれか一項に記載のロッカ構造。
【請求項5】
前記中央接合区画を、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接する前記部分に接合する、前記上側ローブおよび前記下側ローブの区画が直線的である、請求項2または3に記載のロッカ構造。
【請求項6】
前記上側ローブの前記上面および前記下側ローブの前記下面が前記第1の鋼プロファイルに向かって広がるように、前記上側ローブおよび前記下側ローブが前記中央接合区画に対して非対称である、請求項1から5のいずれか一項に記載のロッカ構造。
【請求項7】
前記中央接合区画と前記第1の鋼プロファイルとの間、および(/または)前記中央接合区画と前記第2の鋼プロファイルとの間に配置された第2の衝撃吸収要素を更に備え、前記第2の衝撃吸収要素が長方形または正方形の断面を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のロッカ構造。
【請求項8】
前記第2の衝撃吸収要素が、MS1200、MS1500、またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である、請求項7に記載のロッカ構造。
【請求項9】
前記第1の衝撃吸収要素が、MS1500またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である、請求項1から8のいずれか一項に記載のロッカ構造。
【請求項10】
前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルがHT1150で作られる、請求項1から9のいずれか一項に記載のロッカ構造(。
【請求項11】
上側部分および下側部分を有し、前記上側部分が前記第1の鋼プロファイルの前記上側接合フランジと前記第2の鋼プロファイルの前記上側接合フランジとの間にあり、前記下側部分が前記上側ローブの前記上面の直線部分に固定される、第1のプレートと、
上側部分および下側部分を有し、前記下側部分が前記第1の鋼プロファイルの前記下側接合フランジと前記第2の鋼プロファイルの前記下側接合フランジとの間にあり、前記上側部分が前記下側ローブの前記下面の直線部分に固定される、第2のプレートと
を更に備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のロッカ構造。
【請求項12】
長手方向、横断方向、および垂直方向が互いに直交するように、前記長手方向、前記横断方向、および前記垂直方向が規定された、車両用のロッカ構造を取得する方法であって、
a)陥凹部、上側接合フランジ、および下側接合フランジが規定されるように、第1の鋼プロファイルを提供する段階と、
b)中央接合区画によって接合された上側ローブおよび下側ローブが規定され、前記上側ローブの上面および前記下側ローブの下面が、湾曲した中央部分によって分離された同じ線上に配置された平行な2つの直線部分で作られた、第1の衝撃吸収要素が取得されるように、好ましくはロール成形プロセスによって、ブランクを管状プロファイルに変形する段階と、
c)陥凹部、上側接合フランジ、および下側接合フランジが規定されるように、第2の鋼プロファイルを提供する段階と、
d)前記第1の鋼プロファイルの前記陥凹部側で、前記第1の衝撃吸収要素を前記第2の鋼プロファイルに接合する段階と、
e)チャネルが前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの間に規定され、前記上側ローブが前記上側接合フランジのより近くに位置し、前記下側ローブが前記下側接合フランジのより近くに位置するように、前記第1の衝撃吸収要素が配置されるよう、前記第1の鋼プロファイルおよび前記第2の鋼プロファイルの間を前記上側接合フランジおよび前記下側接合フランジによって接合する段階と
を備える方法。
【請求項13】
前記上側ローブが、前記第1の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分を有し、前記下側ローブが、前記第1の鋼プロファイルの前記中央区画に隣接する部分と、前記第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分とを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階b)およびc)の間に、第2の衝撃吸収要素を前記第1の鋼プロファイルに接合する段階を更に備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
車両であって、前記車両の第1の側面および第2の側面にそれぞれ、請求項1から11のいずれか一項に記載のロッカ構造を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホワイトボディの分野に関する。より具体的には、本発明は、補強材なしのロッカを用いて衝撃エネルギーをより良好に吸収するか、またはアルミニウム補強材を有するロッカと同様のエネルギー吸収レベルを有することを可能にするとともに、製造コストを低減する、ロッカ構造に関する。また、ロッカ構造を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッカ構造は車両の重要な部品である。これらの構造は、剛性およびスチフネスと、構造が提供する塑性変形によるエネルギー吸収能力との組み合わせによって、車両の安全性、および車両内にいる乗員の安全性を改善する。
【0003】
かかる安全性機能を提供するために、ロッカ構造は、車両の衝撃または激突時に多量のエネルギーを吸収することができるように、機械的に設計されなければならず、このようにして、人命を危険に晒すことがある、車両の内部の著しい圧潰をもたらさず、ならびに/あるいは車両の構造の他の部分の破断または変形をもたらさない。
【0004】
ロッカ構造の重要性は、電気車両、例えば電気自動車(即ち、EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(即ち、PHEV)などでは更に大きい。これは、上述した車中の人間に対する安全性(部品もしくは要素が車両の車室内にいる人間に当たらないこと)に加えて、ロッカ構造が、主に車両の最下部に配置される、自動車の電池セルに対するあらゆる損傷を回避するのに必須であるためである。したがって、ロッカ構造が衝撃のエネルギーに耐えることができない場合、車両の構造の一部が電池セルに衝突し、それによって電池セルを損傷することがあり、そのことが、内部に収容された物質の漏れや、高温のこともあるガスの放出や、更には電池セルの爆発を引き起こし、それによって更に、車中にいる人間の生命が危険に晒されることがある。
【0005】
安全性の観点から見たロッカ構造の重要性にかかわらず、自動車業界は常に、動力車両の生産コストおよび動力車両の運用コストの両方を低減しようと努力している。運用コストとは、保守管理および車両を運転するのに必要な燃料にかかるコストである。したがって、可能であれば、車両のありとあらゆる部品の重量および製造コストが低減されるべきである。
【0006】
従来技術において、ロッカ構造を改善する試みが成されてきた。一部の従来技術のロッカ構造は、アルミニウム押出しを用いて製造されてきたが、これは、従来のプロセス(リモートスポット溶接、リモートレーザ溶接)と比較して、接合がより複雑でコストがかかるマルチマテリアルアセンブリにつながる。
【0007】
特許文献US-9045175-B2は、重量が低減されるように2つの成形プレート部材を接合することによって形成されるロッカ構造を記載している。2つの成形プレート部材は、衝撃または激突のイベント時にエネルギーを吸収するH字形構造を形成するように接合される。
【0008】
特許文献DE-10003878-B4は、上記車両構造を補強する追加要素を備える車両構造を記載している。特に、車両構造は、キャビティを形成する外側プロファイルを備え、追加要素はキャビティ内部にあり、H字形の内側プロファイルである。追加要素は、衝撃または激突のイベント時にエネルギーを吸収するため、外側プロファイルに接着される。
【0009】
特許文献EP-1122152-A2は、ビーム形状の補強用中空構造部材を含む構造を開示している。
【0010】
特許文献EP-2976250-B1は、構造のキャビティ内部にあるプロファイルの形態である複数の補強部材を有する車両用の構造を記載している。
【0011】
多量のエネルギーを吸収することができ、アルミニウム補強材を有するロッカと同様の重量を有し、生産のコスト効率が良い、電気自動車を含む車両に適したロッカ構造を提供することに関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様は、3つの方向が互いに直交するように、長手方向、横断方向、および垂直方向が規定された車両用のロッカ構造を指し、ロッカ構造は、第1の鋼プロファイルと第2の鋼プロファイルとを備え、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、プロファイルは長手方向を有し、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルそれぞれに、陥凹部と、上側接合フランジと、下側接合フランジとが規定され、プロファイルの間はそれら上側接合フランジおよび下側接合フランジによって接合されて、2つのプロファイルの間にチャネルが規定され、第1のプロファイルは実質的に垂直方向を有する中央区画を備え、第2のプロファイルは実質的に垂直方向を有する中央区画を備え、ロッカ構造は更に、チャネル内に配置された第1の衝撃吸収要素を備え、第1の衝撃吸収要素は、中央接合区画によって接合された上側ローブおよび下側ローブが規定される閉じた鋼プロファイルであり、上側ローブは上側接合フランジのより近くに位置し、下側ローブは下側接合フランジのより近くに位置する。
【0013】
本開示によるロッカ構造は、一般に動力車両に適した、また特に、どちらも通常は車両の最下部に電池セルを含む、電気自動車および/またはプラグインハイブリッド電気自動車に適した、エネルギー吸収能力を特徴とする。
【0014】
本開示によるロッカ構造の製造は、少なくとも、第1の衝撃吸収要素が管状の鋼構造を成形することによって(例えば、ロール成形によって)製造されることにより、従来技術のロッカ構造を製造するプロセスに対して単純化され、このプロセスは、例えば押出しよりもコスト効率が良い。更に、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルは鋼で作られるので、それらの融合も単純化され、そのことによっても製造プロセスが簡単になる。
【0015】
好ましくは、上側ローブは、第1の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分を有し、下側ローブは、第1の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分と、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分とを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、上側ローブの部分は、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する。これらの実施形態の一部では、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する上側ローブの部分は、第2の鋼プロファイルを補完する区画を有し、上側ローブの上記部分は第2の鋼プロファイルに接合される。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する下側ローブの部分は、第2の鋼プロファイルを補完する区画を有し、下側ローブの上記部分は第2の鋼プロファイルに接合される。
【0018】
第2の鋼プロファイルに隣接するローブの部分の配置、第2のプロファイルを補完する上記部分における区画の提供、ならびに第2の鋼プロファイルに対する上記部分の接合はそれぞれ、第1の衝撃吸収要素と第2の鋼プロファイルとの間の融合を改善し、それによってロッカ構造のエネルギー吸収能力を改善してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルはそれぞれΩ形状の(即ち、大文字のオメガ形状の)区画を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、中央接合区画は直線的であり、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルの中央区画に平行である。
【0021】
中央接合区画のかかる配置によって、上記区画でそれに接合することが簡単になり、それによってロッカ構造の生産が更に単純化される。中央接合区画の2つの縁部を互いに接合することで、ローブが、またしたがってロッカ構造全体が補強される。
【0022】
いくつかの実施形態では、中央接合区画を第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分に接合する、上側ローブおよび下側ローブの区画は直線的である。
【0023】
これらの区画は、衝撃の間、またロッカ構造が変形されている間、力を横断方向および垂直方向の両方に伝達することを可能にする。したがって、区画は、衝撃によって生じる力を分配することを可能にする。換言すれば、横断方向にしたがった力を、垂直成分を有する力に分解することが可能であり、それによって変形がより多くの次元にわたって分配される。
【0024】
上記に加えて、かかる直線的な区画は、変形の間、第1の衝撃吸収要素と第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルとの間に、より信頼性の高い接触面を有することを可能にする。したがって、補強が所望の運動力学を有するようになるので、部品の滑動が低減されるかまたは更には回避されるとともに、良好なレベルのエネルギー吸収が達成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、上側ローブの上面および下側ローブの下面が第1の鋼プロファイルに向かって広がるように、上側ローブおよび下側ローブは中央接合区画に対して非対称である。
【0026】
上側ローブおよび下側ローブのこの配置によって、第1の衝撃吸収要素をチャネルおよびロッカ構造のプロファイルに適合させることが可能になる。更に、ローブが第1の鋼プロファイルに向かって広がっていることによって、横断方向に向いた力を垂直成分を有する力に変換することが可能になり、それによって、横断方向の侵入が回避され、垂直方向の変形によって吸収されるエネルギーが増加する。
【0027】
いくつかの実施形態では、上側ローブの上面および下側ローブの下面は、湾曲した中央部分によって分離された同じ線上に配置された平行な2つの直線部分で作られる。
【0028】
ローブのこれらの面の形状によって、それらの区画の強度が増加する。結果として、ロッカ構造が吸収できるエネルギーが増加する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ロッカ構造は、中央接合区画と第1の鋼プロファイルとの間、および(/または)中央接合区画と第2の鋼プロファイルとの間に配置された第2の衝撃吸収要素を更に備える。
【0030】
2つの衝撃吸収要素を提供することによって、異なる厚さの再分割が可能になり、またロッカ構造を異なる激突時要件により良好に適合させることが可能になる。
【0031】
エネルギーの一部は第1の衝撃吸収要素でも受け止められるが、第2の衝撃吸収要素は、衝撃の開始時にエネルギーのほとんどを吸収してもよい。第2の衝撃吸収要素は、エネルギーの大部分を、ロッカ構造を変形させながらその中央で吸収するが、一旦完全に変形または破断すると、残りのエネルギーは第1の衝撃吸収要素によって吸収されることになる。全体として、2つの衝撃吸収要素は、ロッカ構造が吸収できるエネルギーの量を改善することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2の衝撃吸収要素は長方形または正方形の断面を有する。
【0033】
第2の衝撃吸収要素のかかる幾何学形状は、そのエネルギー吸収能力を更に改善してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2の衝撃吸収要素は、MS1200、MS1500、またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の衝撃吸収要素は、MS1200、MS1500、またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のおよび/または第2のプロファイルはHT1150で作られる。
【0037】
いくつかの実施形態では、ロッカ構造は、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、第1の鋼プロファイルが車両から外側に面するように適合される。これらの実施形態では、第2の鋼プロファイルは、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、内側に、即ち車両の車室に向かって面する。
【0038】
他のいくつかの実施形態では、ロッカ構造は、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、第2の鋼プロファイルが車両から外側に面するように適合される。これらの実施形態では、第1の鋼プロファイルは、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、内側に、即ち車両の車室に向かって面する。
【0039】
ロッカ構造は、これら2つの構成のどちらかで車両に取り付けられてもよい。ロッカ構造は、第1の衝撃吸収要素がチャネル内でどのように配置されるかに応じて、衝撃からエネルギーを吸収し、ロッカ構造が第2の衝撃吸収要素を備える実施形態では、エネルギー吸収能力は、チャネル内における第2の衝撃吸収要素の配置にも依存する。
【0040】
いくつかの実施形態では、ロッカ構造は更に、
上側部分および下側部分を備え、上側部分が第1のプロファイルの上側接合フランジと第2のプロファイルの上側接合フランジとの間にあり、第1のプレートの下側部分が上側ローブの上面の直線部分に固定される、第1のプレートと、
上側部分および下側部分を備え、下側部分が第1のプロファイルの下側接合フランジと第2のプロファイルの下側接合フランジとの間にあり、第2のプレートの上側部分が下側ローブの下面の直線部分に固定される、第2のプレートと、を備える。
【0041】
このように、第1のプレートおよび第2のプレートは、第1の衝撃吸収要素を第1の鋼プロファイルに、また第2の鋼プロファイルに固定するのに使用されてもよい。この固定方法は、第1の衝撃吸収要素を第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルの一方に溶接することに対して、溶接のコストが減少する、以降の組立て段階の柔軟性が増加する、第1の衝撃吸収要素と第1のプロファイルおよび第2のプロファイルとの間に接合が提供されるといった利点をもたらす。
【0042】
ロッカ構造が比較的長い長さを有する場合、保持プレートの数を長さに比例して増加させることができる。
【0043】
本発明の第2の態様は、3つの方向が互いに直交するように、長手方向、横断方向、および垂直方向が規定された、車両用のロッカ構造を取得する方法に関し、方法は、
a)陥凹部、上側接合フランジ、および下側接合フランジが規定されるように、第1の鋼プロファイルを提供する段階と、
b)中央接合区画によって接合された上側ローブおよび下側ローブが規定された第1の衝撃吸収要素が取得されるように、ブランクを管状プロファイルに変形する段階(ロール成形プロセス)と、
c)第1の鋼プロファイルの陥凹部側で、第1の衝撃吸収要素を第1の鋼プロファイルに接合する段階と、
d)陥凹部、上側接合フランジ、および下側接合フランジが規定されるように、第2の鋼プロファイルを提供する段階と、
e)チャネルが2つのプロファイルの間に規定され、上側ローブが上側接合フランジのより近くに位置し、下側ローブが下側接合フランジのより近くに位置するように、第1の衝撃吸収要素が配置されるよう、第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルの間をそれらの上側接合フランジおよび下側接合フランジによって接合する段階と、を備える。
【0044】
本発明の方法によって、重量が低減され、一般に動力車両に適した、また特にEVおよびPHEVに適したエネルギー吸収能力を有する、ロッカ構造を製造することが可能である。
【0045】
管状プロファイルは、例えば、ロール成形プロセスを用いて取得される。管状プロファイルは閉じたプロファイルを有するので、結果として得られる第1の衝撃吸収要素も閉じたプロファイルを有し、したがって、後者はその周囲を閉じるために2つの端部を溶接する必要がなく、これは、第1の衝撃吸収要素の生産時間の短縮および機械的特性の改善の両方にとって有利である。プロファイルを閉じるように端部が互いに接合される場合、影響を受ける部分は機械的に弱いことがあり、したがって衝撃イベントの際、そのエネルギー吸収が悪影響を受ける。
【0046】
方法のいくつかの実施形態では、上側ローブは、第1の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分を有し、下側ローブは、第1の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分と、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分とを有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は更に、段階b)およびc)の間に、第2の衝撃吸収要素を第1の鋼プロファイルに接合する段階を備える。
【0048】
いくつかの実施形態では、方法は更に、中央接合区画を形成する第1の衝撃吸収要素の2つの部分を互いに接合する段階を備え、上記2つの部分は溶接を用いて互いに接合される。これらの実施形態の一部では、溶接は、リモートレーザ溶接、リモートスポット溶接、またはローラを用いた溶接のうち1つを備える。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の衝撃吸収要素は、溶接を用いて、第1の鋼プロファイルの陥凹部側で第1の鋼プロファイルに接合される。これらの実施形態の一部では、溶接は、リモートレーザ溶接またはリモートスポット溶接を備える。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルは、上側ローブの部分が第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接するように接合される。これらの実施形態の一部では、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する上側ローブの部分は、第2の鋼プロファイルを補完する区画を有し、上側ローブの上記部分は第2の鋼プロファイルに接合される。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する下側ローブの部分は、第2の鋼プロファイルを補完する区画を有し、下側ローブの上記部分は第2の鋼プロファイルに接合される。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルはそれぞれΩ形状の(即ち、大文字のオメガ形状の)区画を有して提供される。
【0053】
いくつかの実施形態では、中央接合区画は直線的であり、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルの中央区画に平行である。
【0054】
いくつかの実施形態では、中央接合区画を第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルの中央区画に隣接する部分に接合する、上側ローブおよび下側ローブの区画は直線的である。
【0055】
いくつかの実施形態では、上側ローブの上面および下側ローブの下面が第1の鋼プロファイルに向かって広がるように、上側ローブおよび下側ローブは中央接合区画に対して非対称である。
【0056】
いくつかの実施形態では、上側ローブの上面および下側ローブの下面は、湾曲した中央部分によって分離された同じ線上に配置された平行な2つの直線部分で作られる。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は更に、中央接合区画と第1の鋼プロファイルとの間、および/または中央接合区画と第2の鋼プロファイルとの間に、第2の衝撃吸収要素を提供する段階を備える。これらの実施形態の一部では、方法は更に、溶接を用いて第2の衝撃吸収要素を第1の鋼プロファイルまたは第2の鋼プロファイルに接合する段階を備える。これらの実施形態の一部では、溶接は、リモートレーザ溶接またはリモートスポット溶接を備える。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2の衝撃吸収要素は長方形または正方形の断面を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、第2の衝撃吸収要素は、MS1200、MS1500、またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1の衝撃吸収要素は、MS1500またはMS1700マルテンサイト系自動車用鋼である。
【0061】
いくつかの実施形態では、第1のプロファイルおよび第2のプロファイルはHT1150で作られる。
【0062】
いくつかの実施形態では、ロッカ構造は、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、第1の鋼プロファイルが車両から外側に面するように適合される。これらの実施形態では、第2の鋼プロファイルは、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、内側に、即ち車両の車室に向かって面する。
【0063】
他のいくつかの実施形態では、ロッカ構造は、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、第2の鋼プロファイルが車両から外側に面するように適合される。これらの実施形態では、第1の鋼プロファイルは、ロッカ構造が車両に取り付けられたとき、内側に、即ち車両の車室に向かって面する。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法は更に、第1の鋼プロファイルが車両から外側に面し、第2の鋼プロファイルが車両の車室に向かって内側に面するように、ロッカ構造を車両に取り付ける段階を備える。他のいくつかの実施形態では、方法は更に、第2の鋼プロファイルが車両から外側に面し、第1の鋼プロファイルが車両の車室に向かって内側に面するように、ロッカ構造を車両に取り付ける段階を備える。
【0065】
本発明の第1の態様に関して記載したのと同様の利点が、本発明のこの態様にも当てはまる。
【0066】
本発明の第3の態様は、車両の第1の側面に本発明の第1の態様による第1のロッカ構造と、車両の第2の側面に本発明の第1の態様による第2のロッカ構造とを備える、車両に関する。
【0067】
いくつかの実施形態では、車両は、電気自動車(即ち、EV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(即ち、PHEV)である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
説明を完全にし、本発明のより良い理解を提供するため、一連の図面を提供する。上記図面は、説明の不可欠な部分を形成し、本発明の実施形態を例証するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明をどのように実施することができるかの例である。上記図面は、以下の図を含む。
【0069】
【
図1】従来技術のロッカ構造の断面を示す概略図である。
【
図2】
図1の従来技術のロッカ構造を示す斜視図である。
【
図3】実施形態によるロッカ構造の断面を示す概略図である。
【
図4】実施形態によるロッカ構造の断面を示す概略図である。
【
図5】実施形態によるロッカ構造の断面を示す概略図である。
【
図6A】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図6B】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図6C】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図6D】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図6E】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図7A】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図7B】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図7C】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図7D】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図7E】実施形態によるロッカ構造のシミュレートした変形プロセスを示す図である。
【
図8】一実施形態によるロッカ構造の組立てを示す概略図である。
【
図9】電池に対する側面衝撃保護のためのフレームの側面構成要素としての本発明の実用的実施形態を示す図である。
【
図10】電池と本発明のロッカビームとの間の空間が、電池を損傷することなく内側に変形することができるように示されている、
図9に示されるフレーム内における電池の最適な配置を示す図である。
【
図11A】一実施形態によるロッカ構造の断面を示す概略図である。
【
図11B】一実施形態によるロッカ構造を示す概略斜視図である。
【
図12A】ロッカ構造の内部をより良く見せるために第1の鋼プロファイル1を示していない、一実施形態によるロッカ構造を示す概略斜視図である。
【
図12B】ロッカ構造の内部をより良く見せるために第1の鋼プロファイル1を示していない、一実施形態によるロッカ構造を示す概略斜視図である。
【
図12C】一実施形態によるロッカ構造を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、車両用の従来技術のロッカ構造50の断面を概略的に示している。
【0071】
ロッカ構造50は、キャビティもしくはチャネルを提供するように互いに接合された2つのプレート51、52によって形成された外側部分または構造と、衝撃時のエネルギーの大部分を吸収する部分または構造である内側部分または構造53とを含む。
【0072】
基準軸が
図1に示されている。Lは長手方向軸、Tは横断方向軸、Vは垂直軸である。また、矢印はロードパスを示すが、エネルギーがロッカ構造50によってどのように吸収されるかが、例証の目的で
図1に示されている。
【0073】
衝突が起こったとき、例えば、一番上の矢印の方向にしたがって自動車がロッカ構造50に、特に外側部分または構造の外側プレート51(即ち、ロッカ構造50が車両に取り付けられたときに外側に面するプレート)に衝撃を与えるかまたは激突したとき、衝突のエネルギーは外側プレート51によって部分的に吸収されるが、エネルギーの大部分は内側部分または構造53で受け止められる。エネルギーは、矢印で示されるように、内側部分または構造53のリブに伝達され、それらによって吸収される。リブは、内側部分または構造53の壁とともに粗い縁部を形成するので、つまり平滑な移行部は形成しないので、かかる縁部の不連続性が、内側部分または構造53のエネルギー吸収能力に、したがってロッカ構造50のエネルギー吸収能力に悪影響を及ぼす。これは、内側部分または構造53が衝撃によって変形した際に、(衝撃の残りのエネルギーを吸収する必要があるにもかかわらず)耐えられる力の強度が低くなり、内側部分または構造53の形状がエネルギーを吸収するのに非効率的になることによる。
【0074】
内側部分または構造53が一旦破断すると、ロッカ構造50はより多くのエネルギーを吸収できず、したがって残りのエネルギーは車両の他の部分に、例えば車両がEVまたはPHEVの場合は電池セルに伝達される。
【0075】
図2は、
図1の従来技術のロッカ構造50を斜視図で示している。
【0076】
認識することができるように、ロッカ構造50はL軸の長さを延在し、車両に取り付けられたとき、ロッカ構造50の長さは車両の側面の一部を覆う。
【0077】
図1を参照して記載した上述の限定に加えて、押出しを用いた内側部分または構造53の生産は、コスト効率が良くないロッカ構造50の製造プロセスをもたらす。更に、金属で作られる内側部分または構造53の複雑な形状により、ロッカ構造50が著しい重量を特徴とし、それによって車両の全体重量が増加することは容易に明白である。
【0078】
図3は、一実施形態によるロッカ構造R1の断面を概略的に示している。
【0079】
ロッカ構造R1は、第1の鋼プロファイル1と第2の鋼プロファイル2とを備え、それらは両方ともL軸に沿って延在し、それによって長さ方向寸法を有し、車両に取り付けられたとき、ロッカ構造R1の長さ方向寸法は車両の側面の一部を覆う。第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2は、鋼プレート、または例えばHT1150で作られた鋼プレート状要素であってもよい。
【0080】
第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2は、それらの陥凹部がロッカ構造R1内にチャネルCHを提供するように配置される。この目的のため、第1の鋼プロファイル1の第1のまたは上側接合フランジ11は、第2の鋼プロファイル2の第1のまたは上側接合フランジ12に接合され、第1の鋼プロファイル1の第2のまたは下側接合フランジ21は、第2の鋼プロファイル2の第2のまたは下側接合フランジ22に接合される。第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2の第1のまたは上側接合フランジ11、12と第2のまたは下側接合フランジ21、22との間には、中央区画13、23があり、それらは、必須ではないが好ましくは、上記フランジ11、12、21、22と実質的に平行であり(-15°~15°の角度を形成し、エンドポイントはこの範囲内に含まれる)、また好ましくは、中央区画13、23は実質的にV軸に沿って延在する(-15°~15°の角度を形成し、エンドポイントはこの範囲内に含まれる)。ロッカ構造R1が車両に取り付けられたとき、V軸は実質的に車両の垂直寸法に対応する。フランジ11、12、21、22および中央区画13、23はしたがって、第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2のそれぞれに陥凹部が規定されるように提供される。この実施形態では、第1の鋼プロファイルおよび第2の鋼プロファイルはそれぞれΩ形状を特徴とするように提供される。
【0081】
ロッカ構造R1は更に、チャネルCHの内部に、やはりL軸に沿って延在する閉じた鋼プロファイルである、第1の衝撃吸収要素3を備える。第1の衝撃吸収要素3は、好ましくは、ブランクを管状体またはプロファイルに変形して、第1のまたは上側ローブ31と、第2のまたは下側ローブ32と、中央接合区画33とを有する形状にすることによって提供される。管状体またはプロファイルの変形は、例えば、プレス機を用いて実行されてもよい。管状体またはプロファイルは連続的な閉じた本体なので、結果として得られる第1の衝撃吸収要素3は閉じた鋼プロファイルである。
【0082】
第1のまたは上側ローブ31は、第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2の第2のまたは下側接合フランジ21、22よりも第1のまたは上側接合フランジ11、12に近いが、第2のまたは下側ローブ32は、第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2の第1のまたは上側接合フランジ11、12よりも第2のまたは下側接合フランジ21、22に近い。第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32は、必須ではないが好ましくは、等しいまたは類似の寸法を有する(即ち、一方のローブの断面内の面積は、他方のローブの断面内の面積に等しいか、または他方のローブの断面内の面積の80%~120%である)ので、ロッカ構造R1のエネルギー吸収が改善される。
【0083】
第1のまたは上側接合フランジ31の第1の部分311は、第1の鋼プロファイル1の中央区画13に隣接し、第2のまたは下側接合フランジ32の第1の部分321も中央区画13に隣接する。この実施形態では、第1のまたは上側接合フランジ31の第2の部分312は、第2の鋼プロファイル2の中央区画23に隣接し、第2のまたは下側接合フランジ32の第2の部分322も、第2の鋼プロファイル2の中央区画23に隣接する。第1のまたは上側ローブ31の第1の面または上面313、および第2のまたは下側ローブ32の第1の面または下面323はそれぞれ、湾曲した中央部分314、324によって分離された同じ線上に配置される2つの直線平行部分を有する。
【0084】
図3で認識することができるように、第1のまたは上側ローブ31の第1の面または上面313および第2のまたは下側ローブ32の第1の面または下面323が、第1の鋼プロファイル1に向かって広がるように、第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32は、中央接合区画33に対して非対称である。
【0085】
この実施形態では、第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32それぞれの第2の部分312、322は、第2の鋼プロファイル2に対して補完的な区画を有する。かかる区画を提供することで、第1の衝撃吸収要素3と第2の鋼プロファイル2との間の融合を補強することによって、ロッカ構造R1のエネルギー吸収能力は更に改善される。更に、この実施形態では、上記第2の部分312、322は、例えば、やはり上記融合を補強する溶接を用いて、第2の鋼プロファイル2に接合される。
【0086】
この実施形態では、ロッカ構造R1が車両に取り付けられたとき、第1の鋼プロファイル1は外側に面し、したがって、ロッカ構造R1が車両に取り付けられたとき、第2の鋼プロファイル2は車両の内側に面する。第1の鋼プロファイル1は、車両のロッカパネルの一部であってもよく、またはロッカパネルで覆われてもよい。
【0087】
図4は、一実施形態によるロッカ構造R2の断面を概略的に示している。
【0088】
ロッカ構造R2は、
図3のロッカ構造R1と類似しているが、ロッカ構造R1とは対照的に、第1の鋼プロファイル1と第1の衝撃吸収要素3との間に配置された第2の衝撃吸収要素4を更に含み、更に、例えば溶接を用いて、第2の衝撃吸収要素4が第1の鋼プロファイル1に接合される。
【0089】
第2の衝撃吸収要素4は、例えば、ただし非限定的に、断面が正方形または長方形の形状を特徴とする、閉じた鋼プロファイルである。第2の衝撃吸収要素4は、第1の鋼プロファイル1から衝撃を受けるとエネルギーの一部を吸収し、上記衝撃吸収要素4がエネルギー吸収によって一旦破断または変形すると、残りのエネルギーは第1の衝撃吸収要素3によって吸収される。
【0090】
第1の衝撃吸収要素3および第2の衝撃吸収要素4を使用することによって、ロッカ構造R2が異なる激突時要件に適合されるように、更にまたはより柔軟に構成することが可能になる。
【0091】
図5は、一実施形態によるロッカ構造R3の断面を概略的に示している。
【0092】
ロッカ構造R3は、
図4のロッカ構造R2と類似しているが、ロッカ構造R2とは対照的に、第1の衝撃吸収要素3および第2の衝撃吸収要素4の両方がT軸に対して反転して配置される。したがって、第2の衝撃吸収要素4は、第1の衝撃吸収要素3と第2の鋼プロファイル2との間に配置され、第1の鋼プロファイル1ではなく第2の鋼プロファイル2に接合され、第1の衝撃吸収要素3は、とりわけ、第1のまたは上側ローブ31の第1の面または上面313と第2のまたは下側ローブ32の第1の面または下面323とが、第1の鋼プロファイル1の代わりに第2の鋼プロファイル2に向かって広がるように配置される。
【0093】
ロッカ構造R3の第1の衝撃吸収要素3は、第2の鋼プロファイル2ではなく第1の鋼プロファイル1に接合された、第1のまたは上側ローブの部分ならびに/あるいは第2のまたは下側ローブの部分を有する。
【0094】
図1~
図2のものなど、従来技術のロッカ構造と比較して、
図3~
図5のロッカ構造R1~R3のチャネルを埋める材料はより少量であるが、ロッカ構造R1~R3のエネルギー吸収は低減されず、それは、次の
図6A~
図6Eおよび
図7A~
図7Eに示されるように、(ロッカ構造R2~R3における)第1の衝撃吸収要素3および第2の衝撃吸収要素4の設計、ならびにロッカ構造R1~R3の異なる部分の配置によるものである。
【0095】
図6A~
図6Eは、
図4のロッカ構造R2のシミュレートした変形プロセスを示しており、変形プロセスは有限要素解析を用いてシミュレートしている。特に、
図6Aは、衝撃または激突イベント前のロッカ構造R2を示し、
図6B~
図6Dは、ロッカ構造R2が変形する際にどのようにエネルギーを吸収するかを示し、
図6Eは、衝撃または激突イベント後のロッカ構造R2を示している。
【0096】
衝突は、第1の鋼プロファイル1が位置する、ロッカ構造R2の一番左側の部分から起こっている。
図6B~
図6Dで認識することができるように、第1の衝撃吸収要素3および第2の衝撃吸収要素4は両方とも平滑な丸み付けられた縁部を備え、したがってそれらが受ける塑性変形によって顕著なエネルギー吸収が達成される。
【0097】
図6Bでは、第1の衝撃吸収要素3は、第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32の両方が、衝撃または激突の間に第1の鋼プロファイル1に接触すると、接触した部分からエネルギーを吸収し始め、また、第2の衝撃吸収要素4は、ロッカ構造R2の中央部でエネルギーを吸収し始め、したがって衝撃エネルギーは衝撃吸収要素3、4の両方にわたって分散されることが分かる。中央部では、
図6Cに示されるように、第2の衝撃吸収要素4が第1の衝撃吸収要素3の中央接合区画によって支持された状態で変形する際に、第2の衝撃吸収要素4によって多量のエネルギーが最初に吸収され、それによって、エネルギーが第1の衝撃吸収要素3に伝達され、中央接合区画で吸収される。同時に、第1の衝撃吸収要素3の第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32は、それらの第2の鋼プロファイル2に隣接する部分が大きくなるように変形し、それによってエネルギーを更に吸収するように形作られる。
【0098】
図6Cに円で示されるように、第2のまたは下側ローブ32の部分は破断し、したがって上記部分は圧潰するが、
図6Dおよび6Eで分かるように、第2のまたは下側ローブ32の残りの部分は完全には圧潰せず、それによって、
図6Dに円で示されるように、少なくとも残りの部分が破断するまで、残りのエネルギーの一部を吸収する。
図6D~
図6Eで分かるように、第1の衝撃吸収要素3の第1のまたは上側ローブ31は、楕円で表されるように、変形するが破断しない。
【0099】
図7A~
図7Eは、
図3のロッカ構造R1のシミュレートした変形プロセスを示しており、変形プロセスは有限要素解析を用いてシミュレートしている。特に、
図7Aは、衝撃または激突イベント前のロッカ構造R1を示し、
図7B~
図7Dは、ロッカ構造R1が変形する際にどのようにエネルギーを吸収するかを示し、
図7Eは、衝撃または激突イベント後のロッカ構造R1を示している。
【0100】
衝突は、第1の鋼プロファイル1が位置する、ロッカ構造R1の一番左側の部分から起こっている。
図7B~
図7Dで認識することができるように、第1の衝撃吸収要素4は平滑な丸み付けられた縁部を備え、したがってそれらが受ける塑性変形によって顕著なエネルギー吸収が達成される。
【0101】
図7Bでは、第1の衝撃吸収要素3は、第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32の両方が、衝撃または激突の間に第1の鋼プロファイル1に接触すると、接触した部分からエネルギーを吸収し始め、中央接合区画は、第2の鋼プロファイル2に隣接する、第1のまたは上側ローブ31および第2のまたは下側ローブ32の部分の拡大を支援することが分かる。
【0102】
図7Cに円で示されるように、第2のまたは下側ローブ32の部分は、破断することなくエネルギー吸収に耐えることができる。エネルギー吸収が進むにつれて、
図7Dに示されるように、中央接合区画が第1の鋼プロファイル1に接触し、それによってエネルギーを更に吸収し、一方で第1のまたは上側ローブ32は変形されるが(楕円で示される)、同様にエネルギーを吸収する。
【0103】
図8は、一実施形態によるロッカ構造の組立てを概略的に示している。
【0104】
ロッカ構造は、チャネルを提供するように互いに接合される、第1の鋼プロファイル1および第2の鋼プロファイル2を備える。ロッカ構造は更に、第1の衝撃吸収要素3と、
図4および
図5の実施形態を参照して記載した第2の衝撃吸収要素4の形態の第2の衝撃吸収要素とを備え、これらの衝撃吸収要素3、4はそれぞれチャネル内にある。特に、追加の衝撃吸収要素4は、第1の衝撃吸収要素3と第1の鋼プロファイル1との間に配置される。
【0105】
図9は、電気自動車の電池の保護フレームにおける側面構成要素Rとしての、本発明の適用例を示している。中央には、力に対抗し、電池の損傷を回避するように補強された、構造的電池Bがある。フレームは、全ての激突状況において、最大限のエネルギー吸収および最小限の電池侵入(minimum battery intrusion)を提供することによって、電池の追加の保護を提供する。
【0106】
図10は、フレームに対する電池Bの配置を示している。特に、ロッカビームの位置に対応するもの(ロッカ吸収区域)と、補強された電池のための空間(電池剛性区域)と、力入力の矢印によって示される横方向衝撃によって変形された場合、ロッカビームRによって占められることになる、両方の間に配設された領域(電池吸収区域)との3つの区域を見ることができる。
【0107】
図11Aおよび
図11Bは、第1のプレート41および第2のプレート42が第1の衝撃吸収要素3を支持する、ロッカ構造R4の同じ実施形態の異なる図を開示している。
【0108】
第1のプレート41は、垂直方向Vに延在する上側部分と横断方向に延在する下側部分とを接合するベント部分を備える。第1のプレート41の上側部分は、第2のプロファイル2の上側接合フランジ12と第1のプロファイル1の上側接合フランジ11との間に固定される。この固定は、例えば、第1のプレート41の上側部分を上側接合フランジ12および上側接合フランジ11に溶接することによって達成することができる。第1のプレート41の下側部分は、上側ローブ31の上面313の直線部分に固定される。この固定は、例えば、第1のプレート41の下側部分を上側ローブ31の上面313の直線部分に溶接することによって達成することができる。
【0109】
第2のプレート42は、垂直方向に延在する下側部分と横断方向に延在する上側部分とを接合するベント部分を備える。第2のプレート42の下側部分は、第2のプロファイル2の下側接合フランジ22と第1のプロファイル1の下側接合フランジ21との間に固定される。この固定は、例えば、第2のプレート42の下側部分を下側接合フランジ22および下側接合フランジ21に溶接することによって達成することができる。第2のプレート42の上側部分は、下側ローブ32の下面323の直線部分に固定される。この固定は、例えば、第2のプレート42の上側部分を下側ローブ32の下面323の直線部分に溶接することによって達成することができる。
【0110】
上側ローブ31の湾曲した中央部分314は、一方の直線部分が第2のプロファイル2に近い別の直線部分よりも第1のプロファイル1の近くにあるように、上側ローブ31の上面313の直線部分を分離する。下側ローブ32の湾曲した中央部分324は、一方の直線部分が第2のプロファイル2に近い別の直線部分よりも第1のプロファイル1の近くにあるように、下側ローブ32の下面323の直線部分を分離する。第1のプレート41の下側部分は、第1のプロファイル1に近い方の上側ローブ31の直線部分に固定されてもよい。第2のプレート42の上側部分は、第2のプロファイル2に近い方の下側ローブ32の直線部分に固定されてもよい。
【0111】
接合される部品が鋼とは異なる材料で作られている場合、プレートは、ねじ、ボルト、または等価の別個の要素を用いて接合することもできる。
【0112】
図12A、
図12B、および
図12Cは、複数の第1のプレート41および複数の第2のプレート42を備えるロッカ構造R5の一実施形態の異なる概略図を示している。第1のプレート41の下側部分は、第2のプロファイル2よりも第1のプロファイル1(図示なし)に近い上側ローブ31の直線部分に固定されてもよい。第2のプレート42の上側部分は、第1のプロファイル1(図示なし)よりも第2のプロファイル2に近い下側ローブ32の直線部分に固定されてもよい。
【0113】
ロッカ構造R5は、ロッカ構造R5の前部に配置されたものと、ロッカ構造R5の後部に配置された別のものと、それらの間にある別のものとの、3つの第1のプレート41を備える。ロッカ構造R5は、ロッカ構造R5の前部に配置されたものと、ロッカ構造R5の後部に配置された別のものとの、2つの第2のプレート42を備える。ロッカ構造R5の前部の第1のプレート41および第2のプレート42は、同じ垂直線に配置されてもよい。ロッカ構造R5の後部の第1のプレート41および第2のプレート42は、同じ垂直線に配置されてもよい。
【0114】
本明細書では、「備える」という用語およびその派生形(「備えている」など)は、排他的な意味で理解されるべきではなく、つまり、これらの用語は、記載され定義されるものが更なる要素、段階などを含むことがあるという可能性を除外するものと解釈されるべきではない。
【0115】
他方で、本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態に限定されないことが明らかであり、(例えば、材料、寸法、構成要素、構成などの選択に関して)特許請求の範囲において定義されるような本発明の一般的範囲内にあるものと当業者がみなすことができる、あらゆる変形例も包含する。
【国際調査報告】