(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】斜めの衝突部分を有する電子コレクタ
(51)【国際特許分類】
H01J 35/04 20060101AFI20220209BHJP
H01J 35/08 20060101ALI20220209BHJP
H01J 35/14 20060101ALI20220209BHJP
H01J 35/00 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H01J35/04
H01J35/08 B
H01J35/14
H01J35/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534376
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019085559
(87)【国際公開番号】W WO2020127201
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317016811
【氏名又は名称】エクシルム・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】トゥオヒマー、トミ
(72)【発明者】
【氏名】ルンドストレーム、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン、ビョルン
(57)【要約】
X線源の相互作用領域(I)内に液体ターゲット(J)を提供するように構成された液体ターゲット源(110)と、電子ビームが液体ターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、相互作用領域に向けられた電子ビーム(122)を提供するように構成された電子源(120)と、電子ビームの進行方向に沿って見たときに、相互作用領域の下流に距離を置いて配置された電子コレクタ(130)とを備えるX線源(100)が開示される。電子コレクタは、衝突する電子ビームの電子を吸収するように構成された衝突部分(132)を備え、衝突部分は、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して斜めになるように配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源(100)であって、
前記X線源の相互作用領域(I)内に液体ターゲット(J)を提供するように構成された液体ターゲット源(110)と、
電子ビームが前記液体ターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、前記相互作用領域に向けられた電子ビーム(122)を提供するように構成された電子源(120)と、
前記電子ビームの進行方向に沿って見たときに、前記相互作用領域の下流に距離を置いて配置された電子コレクタ(130)と
を備え
前記電子コレクタは、衝突する前記電子ビームの電子を吸収するように構成された衝突部分(132)を備え、
前記衝突部分は、前記衝突部分における前記電子ビームの前記進行方向に対して斜めになるように配置され、
前記衝突部分は、前記電子コレクタ内に延在する凹部の内面の一部を形成し、
前記凹部は、前記電子ビームが前記凹部の底部に直接衝突することを防ぐように方向付けされている、
X線源。
【請求項2】
前記衝突部分は、前記衝突部分における前記電子ビームの前記進行方向に対して斜めの法線を有する面から形成されている、請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記衝突部分は、前記衝突する電子ビームによって伝達される吸収電力密度を低減するための表面構造を備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項4】
前記衝突部分は、前記衝突部分が前記衝突部分における前記進行方向に直交する場合と比較して、吸収電力密度が少なくとも低減係数だけ低減されるように選択された入射角で前記電子ビームが衝突することができるように配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項5】
前記低減係数は、少なくとも5、例えば少なくとも10である、請求項4に記載のX線源。
【請求項6】
前記入射角は、1.5度~30度、例えば3度~20度、例えば3度~10度の範囲である、請求項4又は5に記載のX線源。
【請求項7】
前記衝突部分は、前記電子ビームの断面全体を収容するように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項8】
前記凹部は、前記電子コレクタ内に止まり孔を形成するボアである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項9】
前記凹部は、そのような凹部を有さない電子コレクタと比較して、入射電子が前記電子コレクタから逃げる確率が低くなるように配置されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項10】
前記凹部の入口の上流に配置されたアパーチャ(140)を更に備え、前記アパーチャの断面は、前記凹部の断面よりも小さい、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項11】
前記電子コレクタから熱を運び去るための冷却装置を更に備え、前記冷却装置は、前記電子コレクタを通って冷却流体を導くための冷却チャネルを備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項12】
前記電子コレクタによって吸収される電流を測定するための構成(150)を更に備える、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のX線源。
【請求項13】
相互作用領域における、電子ビームと液体ターゲットとの間の相互作用によってX線放射を発生させるように構成されたX線源における方法であって、
前記電子ビームを前記相互作用領域に向けること(610)と、
前記電子ビームの進行方向に沿って見たときに、前記相互作用領域の下流に距離を置いて配置された電子コレクタの衝突部分に前記電子ビームを衝突させること(620)と
を備え、
前記衝突部分は、前記衝突部分における前記電子ビームの前記進行方向に対して傾めであり、前記電子コレクタ内に延在する凹部の内面の一部を形成し、
前記凹部は、前記電子ビームが前記凹部の底部に直接衝突することを防ぐように方向付けされている、
方法。
【請求項14】
前記衝突する電子ビームによって発生した電流を測定すること(630)と、
前記電子ビームによって送達される吸収電力密度を計算することと、
前記吸収電力密度を所定の閾値未満に保つために、前記電子ビームの集束角及び電力のうちの少なくとも1つを調整すること(640)と
を更に備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電子ビームを前記液体ターゲット上で移動させること(650)と、
前記衝突する電子ビームによって発生した電流を測定すること(660)と、
前記移動させること及び測定することに基づいて、前記電子ビームのスポットサイズを計算すること(670)と
を更に備える、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される発明は、一般に、電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を発生させる電子衝突X線源に関する。特に、本発明は、ターゲットの下流で電子ビームを収集するための技法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームをターゲットに向けることによってX線放射を発生させ得る。このようなシステムでは、真空チャンバ内の衝突領域でターゲットに衝突する電子ビームを作り出すために、高電圧カソードを備える電子源が採用される。ターゲットは、典型的には、相互作用領域を通って伝搬する液体金属ジェットのような液体ジェットとして提供される。
【0003】
電子ビームの伝搬方向に見てターゲットの背後には、相互作用領域/ターゲットを通過する電子ビームの電子を処理するために電子コレクタが配置され得る。コレクタは、電子及びそれらの運動エネルギーを吸収するための電子ダンプ、及び/又は相互作用領域を通過する電子を特徴付けるためのセンサであり得る。
【0004】
いずれの場合も、吸収された電子によって引き起こされる熱による損傷を回避するために、コレクタの適切な熱管理を確実にすることが重要である。これは、X線源のより高い性能及び輝度に対する一般的な追求を満たすために電子ビームの電力密度を増加させる場合に特に重要である。
【0005】
従って、増加する熱負荷に対処することができるX線源及びコレクタが必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、電子コレクタの熱管理が改善されたX線源を提供することである。結果として、本発明は、このような供給源が、電子コレクタ材料を損傷することなく、より高い性能で動作するのを助けることが想定される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、X線源の相互作用領域内に液体ターゲットを提供するように構成された液体ターゲット源と、電子ビームが液体ターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、相互作用領域に向けられた電子ビームを提供するように構成された電子源と、電子ビームの進行方向に沿って見たときに、相互作用領域の下流に距離を置いて配置された電子コレクタとを備えるX線源が提供される。電子コレクタは、衝突する電子ビームの電子を吸収するように構成された衝突部分を備える。衝突部分は、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して斜めになるように配置されている。
【0008】
第2の態様によれば、相互作用領域における、電子ビームと液体ターゲットとの間の相互作用によってX線放射を発生させるように構成されたX線源における方法が提供される。本方法は、電子ビームを相互作用領域に向けることと、電子ビームの進行方向に沿って見たときに、相互作用領域の下流に距離を置いて配置された電子コレクタの衝突部分に電子ビームを衝突させることとを備える。衝突部分は、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して傾めである。
【0009】
電子ビームの電子が電子コレクタの衝突部分に衝突すると、それらのエネルギーの少なくとも一部が電子コレクタによって吸収され、熱エネルギーに変換される。電子コレクタは、電子コレクタに伝達される熱エネルギーの総量と、電子コレクタの特定の部分にわたる電力分散という少なくとも2つの要因の影響を受け得る。これら2つの要因について以下に説明する。
【0010】
伝達されるエネルギーの総量は、電子コレクタの一般的な加熱として理解され得る。適切な熱放散、又は電子コレクタからの熱伝達により、コレクタの平均温度が適切な範囲内に維持されることを確実にし得る。熱伝達は、例えば、能動的に循環する冷却流体によって実現される能動冷却、又はコレクタと熱接触して配置されたヒートシンク若しくは冷却フランジによって実現される受動冷却を採用し得る。一般に、電子ビームの総電力は、コレクタの全体的な加熱の決定要因であり、従って、コレクタの過熱を回避するために制御され得る。
【0011】
コレクタの特定の部分にわたる電力分散は、電子ビームの総電力と衝突部分上に電子ビームによって形成されたスポットの面積との比として決定される電力密度として理解され得る。代替的に、衝突部分の各点に供給される最大電力が代わりに考慮され得る。コレクタ材料の、熱による損傷が発生し得る損傷閾値が存在すると仮定される場合、X線源は、電子ビームの総電力を低減することによって又は最大電力密度を低減することによって、この閾値未満で動作され得る。
【0012】
本発明は、後者に基づく、すなわち最大電力密度を低減することによる解決策を提供する。これは、電子がコレクタに衝突する表面積が、電子ビームの進行方向に直交するようにとった場合の電子ビームの断面積よりも大きくなるように衝突部分を配置することによって達成される。これは、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して斜めになるように、すなわち衝突部分が電子ビームに対して非直交となるように衝突部分を配置することによって、及び/又は衝突部分の面積を増大させる表面構造を衝突部分に設けることによって達成され得る。衝突部分、ひいては電子スポットの面積を増大させると、電力密度が低減する。結果として、損傷閾値を超える危険を冒さずに、電子ビームの総電力を増加させることができる。
【0013】
電子ビームの入射角(衝突部分の表面の法線に対して測定される)は、電子の散乱に影響を及ぼし得ることが認識される。入射角が増加すると、衝突時に後方散乱する電子の数が増加し、入射角が減少すると、散乱が低減し得る。散乱の増加は、吸収される電流、従って吸収される熱エネルギーを低減し得るため、熱負荷の観点から有利であり得る。しかしながら、チャンバ内に存在する後方散乱電子の数を制御し、コレクタが検出器又はセンサとして使用される場合には測定の精度を高めるために、可能な限り多くの入射電子を収集することが望まれ得る。衝突部分を斜めに方向付けした結果として生じ得る散乱の増加は、その場合、散乱電子を収集するための、アパーチャ又は凹部のような電子捕捉構造をコレクタに追加することによって補償され得る。例示的な実施形態について、図面に関連して更に詳細に説明する。
【0014】
衝突部分は、電子ビームの少なくとも一部がコレクタに衝突するコレクタのエリア又は領域によって画定され得る。従って、衝突部分の横方向の広がりは、衝突する電子ビームによってコレクタ上に形成される電子スポットの幅によって決定され得る。横方向の広がりは、電子ビームの入射角が増加するように衝突部分を傾斜させることによって増加し得る。円形の断面を有する電子ビームの場合、楕円形又は卵形のスポットになるが、線形の断面を有する電子ビームの場合、衝突部分を傾斜させる方向に応じて、より太い又はより長いスポットになる。
【0015】
しかしながら、衝突部分が、電子スポットによって画定される表面全体、又はスポットによって覆われる表面の一部分を指し得ることは認識されるであろう。従って、電子スポットは、いくつかの例では、コレクタの1つ又はいくつかの衝突部分を覆い得、衝突部分の1つ1つが、電子ビームに対して異なる向きを有し得る。換言すると、同じ電子ビームが複数の異なる入射角でコレクタに衝突し得る。これは、例えば、ピラミッド構造によって達成され得、ピラミッドの各側面は、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して斜めである衝突部分を形成し得る。
【0016】
衝突部分は、いくつかの例では、二次元表面によって形成され得る。そのような表面の斜度は、その法線と衝突部分における電子ビームの進行方向との間の角度によって定義され得る。この角度は、電子ビームの断面が表面に投影されるときに増加したスポットを提供するために0度よりも大きく、好ましくは、投影を確実にするために90度よりも小さいであろう。
【0017】
代替的に、衝突部分は、例えば円筒又は球体に一致し得る三次元表面によって形成され得る。そのような場合、衝突部分の斜度は、衝突部分における電子ビームの進行方向と衝突部分の中心点に対する接平面の法線との間の角度によって決定され得る。
【0018】
別の言い方をすれば、衝突部分は、電子スポットの面積が、衝突部分に投影されたときにその最小値を超えるように配置され得る。
【0019】
衝突部分は、上述した二次元表面又は三次元表面と一致する実質的に滑らかな表面から形成され得る。しかしながら、衝突部分が、凹部、突出部、又は段のような表面構造を備え得ることは認識されるであろう。これらの場合、斜度に関連して上述した「二次元表面」及び「三次元表面」という用語は、衝突部分の平均表面を指し得る。平均表面は、例えば、実際の衝突部分の二次元表面近似であり得、斜度すなわち入射角は、衝突部分の中心点に対する接平面の法線によって定義され得る。
【0020】
一例では、衝突部分の実際の表面は、テラス又は階段状の表面として形成され得る。この表面の斜度は、実際の表面に適合する平均平面の法線によって決定され得る。
【0021】
本出願の目的のために、「斜め(oblique)」という用語は、衝突部分における電子ビームの進行方向に対して平行でも直角でもないという意味で使用される。進行方向は、いくつかの例では、電子ビームを制御するように構成された電子光学システムの光軸を指し得る。衝突部分における電子ビームの進行方向は、衝突方向と呼ばれ得る。衝突部分は、衝突部分に投影されたときに電子ビームの断面が歪む場合、斜めであると考えることができる。「傾いた(slanting)」又は「ある角度で配置される」といった他の用語は、本開示全体を通して交換可能に使用され得る。入射角という用語は、衝突部分の平均平面と衝突方向に沿った電子ビームの中心線との間の角度として理解されるべきである。平面の場合、平均平面は衝突部分と同じであるが、構造化された表面の場合、平均平面は、構造が画定されるベースラインとして見られ得る。曲面の場合、平均平面は、衝突部分における電子ビームの中心点における接平面に対応する。
【0022】
電子コレクタは、電子ビームの電子を吸収する主機能を指す電子ダンプと呼ばれ得る。代替的又は追加的に、コレクタは、それに衝突する電子を特徴付けるための検出器又はセンサと呼ばれ得る。コレクタには、吸収された電子を電流として運び去ることを可能にするための電気接続部を設けることができる。コレクタがセンサとして機能する場合、吸収された電子を検出又は定量化するために電流が測定され得る。センサは、センサに衝突する電子ビームの存在(及び、適用可能であれば、電力又は強度)を検出するのに適した構成であり得る。いくつかの例を挙げると、電子コレクタは、電荷感応エリア(例えば、電流計を介して接地された導電性プレート)、シンチレータ、光センサ、電荷結合素子(CCDなど)であり得、又はそれらを備え得る。
【0023】
好ましくは、電子コレクタの衝突部分は、X線源の電子-光軸に中心があり、電子ビームが衝突部分に衝突することができることを確実にするために、(電子源から見て)相互作用領域の下流又は後方に位置している。
【0024】
「液体ターゲット」又は「液体アノード」とは、液体ジェット、すなわちノズルを通って押し出され、X線源の真空チャンバの内部を通って伝搬する液体の流れと理解され得る。液体ターゲットの進行方向が電子ビームの進行方向と交差する空間内の位置は、相互作用領域と呼ばれ得る。液体ターゲットは一般に、液体の本質的に連続した流れ又はストリームから形成され得るが、ジェットが、追加的又は代替的に、複数の液滴を備え得ること、更には複数の液滴から形成され得ることが認識されるであろう。液体ターゲットの更なる実施形態は、1つ又はいくつかの電子ビームと連続して又は同時に相互作用するように配置され得る複数のジェットを含み得る。
【0025】
ターゲット用の液体は、好ましくは低融点を有する液体金属、例えばインジウム、スズ、ガリウム、鉛、若しくはビスマス、又はそれらの合金であり得ることは認識されるであろう。液体の更なる例には、水及びメタノールが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、衝突部分は、衝突する電子ビームによって送達される吸収電力密度を低減するための表面構造を備え得る。表面構造は、例えば、衝突部分の表面積を増加させる折り畳み構造又は段付き構造であり得る。
【0027】
一実施形態によれば、衝突部分は、衝突部分が衝突方向に直交する場合と比較して、吸収電力密度が少なくとも低減係数だけ低減されるように選択された入射角で電子ビームが衝突することができるように配置され得る。そのような低減は、例えば、衝突部分上に電子スポットを形成するときに電子ビームの断面が少なくとも同様の係数だけ増加するように衝突部分を配置することによって得られ得る。入射電子ビームの局所的な入射角が衝突部分に対して垂直でないという条件で、吸収される電力が低減し得る。従って、そのような実施形態では、吸収電力密度を上記低減係数だけ低減するという目的は、電子ビームの断面を同じ係数だけ増加させることなく実現され得る。低減係数は、少なくとも5、例えば少なくとも10であり得る。入射角は、1.5度~30度、例えば3度~20度、例えば3度~10度の範囲内で選択され得る。
【0028】
一実施形態によれば、衝突部分は、電子ビームの断面全体を収容するように構成される。この構成は、電子スポットの面積よりも大きい面積を有する衝突部分を選択することによって、及び/又は衝突部分よりも大きくない投影電子スポットをもたらす入射角を選択することによって達成され得る。本実施形態は、電子ビーム全体又は少なくともその断面全体が衝突部分に衝突することを可能にするという点で有利である。これは、電子の吸収を容易にし、電子ビームによって供給される電流のより正確な測定を容易にする。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、衝突部分は、電子コレクタの本体内に延在する凹部又は窪みの内面の一部を形成し得る。凹部は、例えば、電子コレクタ内に止まり孔を形成するボア又はチャネルであり得る。電子コレクタが真空チャンバ内に配置されることとなるため、電子コレクタ内の孔は、実質的には開いていないであろう。孔の底部は、孔自体とは別の部材の一部として提供されて得るが、実際上は、孔は、止まり孔と見なされなければならない。孔の断面は多くの形状を有し得、ボアの長さに沿って一定である必要はない。散乱電子を捕捉し、それによって比較的高い吸収を提供するために、凹部が採用され得る。低減した後方散乱は、所与の量の照射された電荷に対する信号レベルの観点から比較的高い応答として現れるので、これは、コレクタをセンサとして使用するときに有利である。吸収比を高め、測定信号の品質を向上させるために、凹部をより深く(場合によってはより狭く)することができる。
【0030】
一実施形態によれば、ボアは、電子ビームがボアの底部に直接衝突することを防ぐ角度で方向付けされ得る。換言すると、ボアの側面によって形成される衝突部分は、電子ビームの断面全体を収容することができるように方向付けされ得る。衝突部分から散乱する電子は、散乱事象中にエネルギーを失うため、そして更に電子密度が吸収及び散乱により低減されるため、過熱の危険性なくボアの底部に到達し得る。ボアは、衝突部分において少なくとも1つの散乱事象を経験することなく電子ビームがボアの底部に到達する直接経路が存在しないように配置されるべきである。
【0031】
一実施形態によれば、凹部の入口には、電子を凹部内に導くためにテーパ状又は漏斗状の表面部分が設けられ得る。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、X線源は、凹部の入口の上流に配置されたアパーチャを備え得る。アパーチャは、後方散乱電子を捕捉するために設けられ得、一例では、凹部の断面より小さいであろう。アパーチャは、電子ビームのアライメント及び幅測定中に使用可能な既知のサイズ及び/又は位置基準を提供する目的を果たすことができる。アパーチャは更に、電子ビームが電子コレクタのどの部分に到達することができるかを制限し、それによって電子コレクタの局所的な過熱を防止することができる。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、X線源は、電子コレクタから熱を運び去るための冷却装置を更に備える。冷却装置は、例えば、コレクタを通って冷却流体を導くための冷却チャネルを備え得る。冷却流体は、いくつかの例では、脱イオン化され得る。
【0034】
一実施形態によれば、X線源は、電子コレクタによって吸収される電流を測定するための構成を備え得る。本装置は、例えば、電流を表す信号を生成するように構成された電流計を含み得る。更に、電子コレクタは、全ての電流が電流計を通過することを確実にするために、システムの残りの部分から電気的に絶縁され得る。衝突部分は、互いに電気的に絶縁された複数のサブ部分に分割され、各々が1つの電流計に接続され得る。各それぞれのサブ部分を通過する電流を測定することによって、電子ビームが衝突部分のどこに衝突するかが計算され得る。この情報は、電子ビームをアラインするときに使用され得る。
【0035】
測定された電流は、電子ビームによって送達される吸収電力密度を計算するために使用され得る。入射電子のごく一部しかコレクタから散乱しないため、総測定電流に寄与しないと仮定すると、総入射電力は、測定された吸収電流に加速電圧を乗じることによって計算され得る。電力密度の最大値は、電子ビームが電子コレクタに最初に衝突したときに生じる。最初の衝突から散乱し、電子コレクタとの後続の衝突の後に吸収される電子は、入射電子の少なくとも一部が最初の衝突中に吸収されるため、及び散乱により残りの電子がより大きな表面にわたって分散するため、より低い電力密度でそれを行い得る。従って、最初の衝突中に吸収される電力は、総入射電力に、電子コレクタ内の材料、加速電圧、及び電子ビームと衝突部分との間の角度によって決定される吸収確率を乗じることによって計算され得る。吸収電力密度を得るためには、電子ビームが衝突部分に衝突する面積が必要である。面積は、電子ビーム断面の形状、集束角、焦点から衝突部分までの距離、電子ビームと衝突部分との間の角度から計算され得る。吸収電力密度は、吸収される電力を電子ビームが衝突部分に衝突する面積で割ったものとして計算され得る。
【0036】
計算された吸収電力密度は、次いで、吸収電力密度を所定の損傷閾値未満に保つために、電子ビームの集束角、入射角、及び電力のうちの少なくとも1つを調整するための入力として使用され得る。集束角は、例えば、電子光学システムによって調整され得、入射角は、電子コレクタを移動又は傾斜させることによって調整され得る。
【0037】
電子光学システムは更に、電子コレクタが走査中にターゲットによって少なくとも部分的に覆い隠されるように、電子ビームを液体ターゲット上で移動させるために採用され得る。電子コレクタで検出された結果として得られる信号は、電子ビームの断面のサイズを計算するために使用され得る。
【0038】
本発明によるX線源は、電子コレクタのようなセンサからのデータを処理及び分析するための1つ又はいくつかの処理手段を備えるシステムに実装され得る。システムはまた、本出願で開示される方法に従って、電子源、液体ターゲット源、及び電子光学系のようなX線源の異なる部分を動作させるための1つ又はいくつかのコントローラを備え得る。
【0039】
いくつかの態様による方法について上で説明した実施形態における特徴のいずれかが、他の態様によるデバイスと組み合わされ得ることは認識されるであろう。
【0040】
本発明の更なる目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な開示、図面、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明する実施形態以外の実施形態を作成できることを理解するであろう。
【0041】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施形態によるX線源の概略斜視図である。
【
図2】電子コレクタの向きを開示する、一実施形態によるX線源の一部の概略断面図である。
【
図3a】電子コレクタとその衝突部分の向きの一例を概略的に例示する。
【
図3b】電子コレクタとその衝突部分の向きの別の例を概略的に例示する。
【
図3c】電子コレクタとその衝突部分の向きの更に別の例を概略的に例示する。
【
図3d】電子コレクタとその衝突部分の向きの更に別の例を概略的に例示する。
【
図4】一実施形態によるX線源の電子コレクタの断面図である。
【
図5】電力密度低減と入射角との関係を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
同様の参照番号は、図面上の同様の要素に使用される。別段の指示がない限り、図面は概略的であり、縮尺通りではない。
【0044】
図1は、一般に、液体ターゲット源110と、電子源120と、電子コレクタ130とを備えるX線源100を示す。この装置は、図面に示されるようにハウジング10の外側に配置され得る電圧源30、センサ手段150、及びコントローラ手段40についての例外である可能性のあるものを除いて、気密ハウジング10の内側に配置され得る。電磁相互作用によって機能する様々な電子光学構成要素20は、同じくハウジング10の内部にそのように設けられ得るか、又は電磁場をそれほど遮蔽しない場合にはハウジング10の外側に配置され得る。
【0045】
電子源120は、一般に、電圧源30によって動力供給された、カソードを備え、カソードは、加速アパーチャに向かって加速され得る電子ビーム122を発生させるように構成され、この時点で、電子ビームは、整列板の配列と、レンズと、偏向プレートの配列とを備える電子光学システム20に入る。整列手段、偏向手段、及びレンズの可変特性は、コントローラ40によって提供される信号によって制御可能である。図面は、静電型であることを示唆する方法で整列手段、集束手段、及び偏向手段を象徴的に描写しているが、本発明は、電磁装置又は静電及び電磁電子光学構成要素の混合物を使用することによって等しく良好に具現化され得る。
【0046】
電子光学システム20の下流で、出射電子ビーム122は、相互作用領域Iにおいて、液体ターゲット源110の高圧ノズルを使用可能にすることによって作り出され得る液体ターゲットJと交差する。これは、X線が発生し得る場所である。X線は、電子ビーム122と一致しない方向にハウジング10から導出され得る。相互作用領域Iを超えて続く電子ビーム122の部分は、アパーチャ140が設けられた導電性スクリーンによって遮られない限り、電子コレクタ130に到達する。この実施形態では、スクリーンは、相互作用領域Iと電子コレクタ130との間に配置された円形アパーチャ140を有する接地プレートである。アパーチャ140は、明確に限定されたエリアを画定し、このエリアは、電子ビーム122をアラインするときに、及び電子コレクタ130から散乱した電子を収集するための基準構造として使用され得る。更に、アパーチャは、電子ビームが電子コレクタの最外縁に到達することを防ぎ得る。いくつかの実施形態では、これらの外縁は薄く、任意のヒートシンクから比較的遠く離れて配置され得る。電子がこれらの部品に衝突することを防ぐことは、これらの部品を熱過負荷、例えば融解から保護する方法であり得る。一方、アパーチャは、高い熱負荷を受け、別個の冷却(図示せず)を必要とし得る。
【0047】
電子コレクタ130は、衝突する電子の少なくとも一部を吸収するように構成された衝突部分132を備える。衝突部分132は、この例では、電子ビーム122に面する電子コレクタ130の表面部分によって形成され得る。衝突部分132を画定する表面部分は、電子ビーム122の衝突方向に対して斜めの角度で配置され得る。この例では、衝突部分132は、電子ビーム122の衝突方向に対して平行でも直交でもない斜平面を表し得る。
【0048】
電子コレクタ130は、吸収された電流が、それが接続されている電流計150を通過することを可能にするように、システムの残りの部分から電気的に絶縁された導電性プレートとして形成され得る。電流計からの信号を調べることによって、吸収された電子の総数が推定され得る。衝突部分の表面に対する接線に対して測定される入射角は、電子ビーム122の垂直入射と比較して吸収電力密度が低減されるように選択され得る。吸収電力密度は、例えば、衝突部分の実際の斜度に応じて、少なくとも5分の1に低減され得る。
【0049】
電子ビーム122に対して衝突部分132を傾斜させることによって、垂直入射と比較して衝突面積が増大し得る。円形の電子ビームスポットは、例えば、入射角が小さくなるにつれてより楕円形になり得る。更に、吸収されるエネルギーは、角度が小さくなるにつれて低減される。垂直入射の場合、入射電子の約半分が吸収され得るが、残りの半分は表面から散乱し得る。入射角が0度に近づくと、吸収されるエネルギーは0に近づき、入射が衝突部分の表面に平行な場合、実質的に吸収は全く行われない。
【0050】
図2は、
図1に関連して開示された実施形態と同様に構成され得るX線源100の一部を例示する。本例では、電子ダンプ又は電子センサとも呼ばれ得る電子コレクタ130は、凹部134を備える本体から形成され得る。凹部は、この例に示されるように、本体に止まり孔を形成するボア134であり得る。ボア134の長さ軸は、電子ビームがボア134の内面132に衝突し得るように、電子ビーム122の衝突方向に対して傾斜しているであろう。好ましくは、電子コレクタ130の傾斜角は、電子ビーム122の断面のどの部分も止まり孔134の底部に到達しないように、電子ビーム122によって形成されたスポット全体がボア134の内壁132によって形成された衝突部分によって収容され得るように選択される。
【0051】
電子コレクタ130の追加の機能は、電子ビーム122の入射電子の量を測定することであり得る。これは、システムを較正するとき、及び衝突部分132上に形成された電子スポットサイズを測定するときに利用され得る。この場合、電子コレクタ130によって吸収されない電子の量、すなわち衝突部分132から散乱する電子の数を最小にすることが望ましい。これを達成するための1つの方法は、電子ビームが
図2に示されるボア孔のような凹部に入ることを可能にすることであり得る。これは、散乱電子がコレクタ130から逃げ得る立体角を効果的に小さくする。傾いた底面を有する真っ直ぐな孔134は、孔の底部における吸収電力密度が、溶融が開始するまで材料の加熱を引き起こし得るため、実現可能な解決策ではないであろう。従って、衝突部分が入射電子ビーム122に対して斜めになるように孔134を傾斜させ、それによって、電子が、底面ではなく孔134の内壁132に衝突するようにする。電子が衝突する表面132は、例えば孔134が円対称性を有する場合、湾曲していてもよいが、上で概説したものと同様の説明は、他の構成にも適用可能である。
【0052】
孔134の直径は、全ての可能な電子ビーム構成について、電子ビーム122全体が内壁132に衝突し得るように選択されるべきである。一方、上述したように、散乱電子が逃げることができる立体角はできるだけ小さくされるべきである。これらの要件を調和させるために、テーパ状の入口孔が設けられ得る。測定能力を更に向上させるために、
図1に開示されたもののような外部アパーチャ140が設けられ得る。アパーチャ140は、電子ビームをアパーチャ140の内外に走査するときに周知の基準を提供し得る。
【0053】
孔134が円筒形である実施形態では、電子ビームが孔の底部に直接衝突すべきでないことに対応するボアの角度に関する要件は、孔の幅と長さとの間の関係として表され得る。円筒の場合、関連する幅は、ちょうどボアの直径である。他の円筒形状では、関連する幅は、ボアの方向によって画定される。関連する幅がDで示され、ボアの長さがLで示される場合、電子ビームとボアとの間の角度に関する要件は、それがtan-1(D/L)よりも大きくなければならないことである。電子ビームが電子コレクタ上で走査される実施形態では、電子ビームの衝突方向は走査中にわずかに変化し得、そのような場合、電子ビームが孔の底部に直接衝突しないことを確実にするためには、全ての達成可能な衝突方向について条件が満たされなければならない。
【0054】
図3aは、電子ビームの衝突方向、すなわちこの例にあるように電子光学システムの光軸Oに対する、電子コレクタ130の衝突部分132の傾斜角θ、すなわち斜度の向きの概略図である。電子ビーム122は、衝突部分132の上流に距離Lで位置する焦点を有し得る。焦点角度αは、この場合、距離Lと共に、衝突部分132上に投影される電子スポットのサイズを決定し得る。電子スポットのサイズは、この例では、衝突部分132の利用可能な全表面のサイズDより小さいであろう。吸収される電子エネルギーと、焦点角度αと、衝突部分の相対的な向き及びサイズとの間の関係についてのより詳細な説明が以下に続く。
【0055】
図3bは、湾曲した衝突部分132を有する電子コレクタ130の一部を例示する。衝突部分132の傾斜角すなわち斜度θは、衝突部分132、すなわちこの場合では電子スポットの中心点Cにおける入射角として定義され得る。中心点Cは、電子スポットによって画定されるエリアの中央又は質量中心として決定され得る。
図3bでは、入射角θは、質量中心に対する接平面と電子ビーム122の衝突方向Oとの間の角度として示されている。本発明の実施形態では、衝突方向が接平面に対して垂直である場合と比較して、ビーム電力がより広いエリアにわたって分散されこととなるため、湾曲した衝突部分に対しても斜めの衝突を提供することが有利である。
【0056】
図3cは、電子ビーム122が衝突するように配置された表面が複数のセグメントを含む実施形態による電子コレクタの衝突部分132を示す。各セグメントは、電子ビームの斜め衝突を提供するように配置される。
図3cの実施形態では、入射角θは、同じ大きさを有するが、連続したセグメントについて符号が異なる。その結果、同じ入射角を提供するように配置された平面の場合と同じように面積及び後方散乱が増加する。
図3cに示される実施形態の利点は、衝突方向Oに向かって角度をなして設けられた平面と比較して必要な体積が小さいことであり得る。
【0057】
図3dは、一実施形態による電子コレクタの衝突部分132を示しており、これは、
図1、
図2、
図3a及び
図3bに関連して説明した電子コレクタと同様に構成され得る。衝突部分132には、衝突部分132の折り畳まれた表面を形成する、段136のような表面構造が設けられている。この場合、入射角θは、電子ビーム122と衝突部分132の表面に適合した平均平面P(又は表面)との間の角度として定義され得る。上で説明した場合と同様に、衝突部分132の傾斜は、表面(又は平面)Pの中央における入射角θによって特徴付けられ得る。この実施形態は、構造化された表面を衝突部分上に設けた実施形態と、衝突方向に対して斜めの角度で衝突部分を設けた実施形態とを組み合わせたものである。構造が十分に小さいという条件で、この組合せは、電子コレクタ上の電子ビームの投影面積が入射角によって決定されるのに対して、後方散乱の確率が局所的な衝突角によって決定される状況をもたらし得る。局所的な衝突角は、入射角と表面構造の両方の影響を受ける。
図3dに示される特定の実施形態では、電子が表面に対して垂直に局所的に衝突するため、他の入射角θと比較して後方散乱の確率を効果的に下げ得ることに留意されたい。従って、この構成は、別の向きに設けられた同じ表面の場合と比べて、より大きな割合の入射電子を吸収し、結果としてより多くのエネルギーを吸収し得る。表面の向きはまた、吸収された電子によって生じる熱負荷の分布に寄与する衝突部分の面積を決定する。当業者であれば、割り当てられた空間内で測定精度及び熱管理を確実にするために、表面構造及び入射角の適切な組合せを見出すであろう。
【0058】
電子ビームの電力を電子コレクタ130にわたって分散させるためのこれら全ての努力にもかかわらず、依然としてX線源の熱管理を更に改善する必要性があり得る。これは、例えば、電子コレクタ130を能動的に冷却することによって達成され得る。
図4は、
図1~
図3dの実施形態と同様に構成され得る電子コレクタ130の一例を示し、衝突部分132は、比較的大きな熱容量を有する本体内に設けられる。本体には更に、チャネル136のような冷却装置が設けられ得、それを通して、冷却剤が本体に送り出され得る。吸収された電流を測定する必要がある場合、冷却装置は、この測定を妨害しないように電子コレクタ本体から電気的に絶縁され得る。1つの可能性は、冷却構成要素をシステムの残りの部分から電気的に絶縁し、非イオン性冷却剤(例えば、脱イオン水)を提供することであり得る。冷却剤の抵抗の変化に対してロバストである、電子コレクタによって受け取られる電子の数の測定を達成するには、電子機器設計中にいくらかの注意が必要であり得、これは、当業者が、いかなる発明的努力なしに対処することができるものであろう。
【0059】
電子コレクタ130の例示された例は、アパーチャ140と、電子をボア134に導くための斜平面138とを更に含み、ボア134は、斜めに配置された衝突部分132を提供するために、電子ビームの衝突方向Oに対して非ゼロかつ非直交角度で延在する。アパーチャは、測定された吸収電流がアパーチャを通過する電子によって支配されることを確実にするために、衝突部分から電気的に絶縁され得る。
【0060】
既に述べたように、散乱電子の数は、入射角θが小さくなるにつれて増加し得る。結果として、吸収されるエネルギーは、入射角θの関数として表され得る。この挙動は、正弦関数としてモデル化され得、吸収されるエネルギーは、定数に入射エネルギーと入射角θの正弦とを乗じたものに設定され得る。電子ビーム122が円形でない場合、例えば線焦点が適用される場合、電子スポットのより小さい寸法が引き出されるように配置された斜平面130を提供することが有利であり得る。
【0061】
衝突部分132の表面のサイズは、全ての実際的な場合において有限であり得る。これは、入射角θに下限があることを意味する。電子コレクタ130の目的が電子ビーム122の電子を吸収することであるため、ビーム122全体が衝突部分132内に収まることが好ましい。無限の表面の場合、焦点角度αの半分よりも大きい入射角θがあれば十分である(
図3a参照)。しかしながら、有限サイズ、例えばDを有する表面の場合、入射角θは、以下に従って大きくすべきである:
【数1】
ここで、Lは電子ビーム焦点から電子コレクタの中心までの距離である。
【0062】
入射角θの上限を有するために、電力密度は、法線入射と比較して少なくとも何らかの係数だけ低減され得ると考えられ得る。入射電子ビーム122の断面が円形であると仮定すると、衝突部分上に投影される断面は、電子コレクタ130上に衝突面積Aを有する楕円となり、これは以下のように表され得る:
【数2】
θがπ/2に等しい場合、これは以下のように単純化される:
【数3】
衝突面積Aに対するこの式を用いて、吸収電力密度pは、入射角θの関数として以下のように表され得る:
【数4】
ここで、P
0は総ビーム電力であり、Cは吸収率であり、これは少なくとも原理的には電子エネルギー、すなわち加速電圧に依存する。入射角θの関数としての電力密度の低減は、以下のように計算され得る:
【数5】
【0063】
図5は、所与の所望の低減係数に対する最大許容入射角θを視覚化した図である。同じプロットで角度θの下限を視覚化するために、電子コレクタ表面132のサイズが電子ビーム焦点と電子コレクタとの間の距離Lと同程度であると仮定する。次いで、角度の下限は、焦点角度の1.5倍として近似され得る。
【0064】
0.02ラジアンの焦点角度α(
図5の破線)は、小さな角度であると考えられ得、カソード輝度及び20μm未満のスポットサイズを有することを求める要望によって制限される。0.2ラジアンの焦点角度α(
図5の実線)は、大きな角度と考えられ得、現在の電子光学構成要素を用いた球面収差によって制限される。焦点角度αを更に増加させるためには、多極補正器のようなより複雑な電子光学系が必要であり得る。
【0065】
上記の計算は、X線源を構成するための基礎として機能することができる。特に、上で開示した入射角は、特定の電力密度低減を達成するために使用され得る。入射角の調整は、いくつかの実施形態によれば、衝突部分の向きを手動又は自動で調整することによって、電子ビームのアラインメント又は向きを修正することによって、及び/又は電子ビームの焦点角度を変えることによって行われ得る。
【0066】
図6は、本発明のいくつかの実施形態による方法のフローチャートである。本方法は、
図1~
図5を参照して説明した先の実施形態のいずれか1つによるX線源において実行され得、以下のステップを備え得る:
電子ビームを相互作用領域に向けること610;
電子コレクタの衝突部分に電子ビームを衝突させること620;
衝突する電子ビームによって発生した電流を測定すること630;
電子ビームによって送達される吸収電力密度を計算すること;
吸収電力密度を所定の閾値未満に保つために、電子ビームの集束角及び電力のうちの少なくとも1つを調整すること640;
電子ビームを液体ターゲット上で移動させること650;
衝突する電子ビームによって発生した電流を測定すること660;及び
移動させること及び測定することに基づいて、電子ビームのスポットサイズを計算すること670。
【0067】
図6に概説される例示的な方法のような、本明細書に開示される技術は、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つによるX線源に、特許請求の範囲によって定義される方法のいずれかを実行させるようにプログラム可能なコンピュータを制御するためのコンピュータ読取可能な命令として具現化され得る。そのような命令は、命令を記憶する有形の不揮発性コンピュータ読取可能な媒体を備えるコンピュータプログラム製品の形態で分散され得る。
【0068】
当業者は、上で説明した例となる実施形態に限定されるものではない。反対に、添付の特許請求の範囲内で多くの修正及び変形が可能である。特に、1つよりも多くのターゲット又は1つよりも多くの電子ビームを備えるX線源及びシステムが、本発明の概念の範囲内で考えられる。更に、本明細書で説明したタイプのX線源は、医療診断、非破壊試験、リソグラフィ、結晶解析、顕微鏡法、材質科学、顕微鏡法表面物理学、X線回折による蛋白質構造決定、X線光分光法(XPS)、臨界寸法小角X線散乱(CD-SAXS)、及び蛍光X線(XRF)によって例示されるがこれらに限定されない特定の用途に合わせて調整されたX線光学系及び/又は検出器と有利に組み合わせられ得る。追加的に、開示された例に対する変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
【国際調査報告】