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特表2022-515077急性骨髄性白血病の治療のための、CD70及びベネトクラクス、BCL-2阻害剤、組合せ療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】急性骨髄性白血病の治療のための、CD70及びベネトクラクス、BCL-2阻害剤、組合せ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220209BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220209BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20220209BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20220209BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220209BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220209BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/706
A61K31/437
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021534948
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019085982
(87)【国際公開番号】W WO2020127503
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1820582.3
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911007.1
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1917701.3
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(71)【出願人】
【識別番号】507052337
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハンス デ ハード
(72)【発明者】
【氏名】サムソン ファング
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス レウピン
(72)【発明者】
【氏名】ルク ヴァン ロムパエイ
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン オクセンバイン
(72)【発明者】
【氏名】カルステン リーター
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4C084AA19
4C084AA22
4C084AA23
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA16
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC02
4C086ZC20
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、組合せ療法、特に骨髄性悪性腫瘍の治療のための組合せ療法に関する。この組合せ療法は、急性骨髄性白血病(AML)の治療に特に有用である。この組合せ療法は、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及びBCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及び(ii) BCL-2阻害剤を含む、組合せ。
【請求項2】
(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及び(ii) BCL-2阻害剤を含む請求項1記載の組合せであって、該BCL-2阻害剤は、下記に示される化合物(I)、
【化1】
若しくはその医薬として許容し得る塩である、前記組合せ。
【請求項3】
前記CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖ドメイン(VH)並びに可変軽鎖ドメイン(VL)を含み、ここでVHドメイン並びにVLドメインは、下記CDR配列:
配列番号:3を含むか若しくはこれからなるHCDR3;
配列番号:2を含むか若しくはこれからなるHCDR2;
配列番号:1を含むか若しくはこれからなるHCDR1;
配列番号:7を含むか若しくはこれからなるLCDR3;
配列番号:6を含むか若しくはこれからなるLCDR2;及び
配列番号:5を含むか若しくはこれからなるLCDR1:
を含む、請求項1又は請求項2記載の組合せ。
【請求項4】
前記CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:4と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号:8と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項3記載の組合せ。
【請求項5】
前記CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号:8で表されるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項4記載の組合せ。
【請求項6】
前記抗体はIgGである、請求項1~5のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項7】
前記抗体は、ADCC活性、CDC活性又はADCP活性を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項8】
前記抗体は脱フコシル化抗体ドメインを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項9】
前記抗体はARGX-110(クサツズマブ)である、請求項1~6のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項10】
前記抗原結合断片は、抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイン(VH);単鎖抗体(scFv);F(ab')2断片;Fab断片;Fd断片;Fv断片;1本アームの(一価の)抗体;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び、そのような抗原結合断片の組合せ、アセンブリ若しくはコンジュゲーションにより形成された任意の抗原結合断片、からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合断片及びBCL-2阻害剤は、個別の組成物として製剤化される、請求項1~10のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項12】
前記組合せは、少なくとも1つの追加の抗癌剤、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療剤を含む、請求項1~11のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項13】
前記抗癌剤は、急性骨髄性白血病(AML)の治療剤である、請求項12記載の組合せ。
【請求項14】
前記組合せは低メチル化剤を追加的に含む、請求項1~13のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項15】
前記低メチル化剤はアザシチジンである、請求項14記載の組合せ。
【請求項16】
前記低メチル化剤はデシタビンである、請求項14記載の組合せ。
【請求項17】
前記CD70抗体又はその抗原結合断片及びBCL-2阻害剤は、急性骨髄性白血病のヒト対象へ投与された場合に相乗的な治療を提供するために充分な量で、それぞれ組合せ内に存在する、請求項1~16のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項18】
前記CD70抗体又はその抗原結合断片並びにBCL-2阻害剤は、NOMO-1、MOLM-13、NB4及びMV4-11から選択されたAML細胞株で培養された場合に相乗的な細胞死滅を提供するために充分な量で、それぞれ組合せ内に存在する、請求項1~17のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項19】
療法における使用のための、請求項1~18のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項20】
ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ。
【請求項21】
ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片であって、BCL-2阻害剤と組合せて投与される、前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
前記抗体又はその抗原結合断片が化合物(I)、
【化2】
若しくはその医薬として許容し得る塩と組合せて投与される、請求項21記載の使用のための、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
前記対象へは、アザシチジン若しくはデシタビンが追加的に投与される、請求項21又は請求項22記載の使用のための抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のためのBCL-2阻害剤であって、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片と組合せて投与される、前記BCL-2阻害剤。
【請求項25】
前記BCL-2阻害剤は、化合物(I)、
【化3】
又はその医薬として許容し得る塩である、請求項24記載の使用のためのBCL-2阻害剤。
【請求項26】
前記対象へは、アザシチジン若しくはデシタビンが追加的に投与される、請求項24又は請求項25記載の使用のためのBCL-2阻害剤。
【請求項27】
ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療方法であって、該対象へ、請求項1~18のいずれか1項記載の組合せの有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍を治療する方法であって、
(i) 該対象へCD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップ; 及び
(ii) 該対象へ、BCL-2阻害剤、好ましくは化合物(I)若しくはその医薬として許容し得る塩を投与するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項29】
前記骨髄性悪性腫瘍は、新たに診断された又は再発性/不応性骨髄性悪性腫瘍から選択される、請求項27又は請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記骨髄性悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);骨髄増殖性腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML); 及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される、請求項27~29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記骨髄性悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記対象は、新たに診断された、標準的な強化化学療法に不適格なAML患者である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記対象は、新たに診断された75歳以上のAML患者、又は、新たに診断され、かつ標準的な強化化学療法の使用を妨げる併存疾患を有するAML患者である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記CD70抗体又はその抗原結合断片は、0.1~25 mg/kgの範囲、好ましくは10 mg/kgの用量で投与される、請求項27~33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記BCL-2阻害剤は、100 mg~600 mgの範囲の用量で投与される、請求項27~34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記組合せはアザシチジンを追加的に含む、又は、前記方法は前記対象へアザシチジンを投与する追加的ステップを含む、請求項27~35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記アザシチジンは、70~80 mg/m2、好ましくは75 mg/m2の用量で投与される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記組合せはデシタビンを追加的に含む、又は、前記方法は前記対象へデシタビンを投与する追加的ステップを含む、請求項27~35のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記デシタビンは、15~25 mg/m2、好ましくは20 mg/m2の用量で投与される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記CD70抗体又はその抗原結合断片が投与される用量及びBCL-2阻害剤が投与される用量は、それぞれ前記組合せが相乗的な治療を提供するように選択される、請求項27~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記患者の芽球カウントをモニタリングすることを更に含む、請求項31~40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記患者の骨髄芽球カウントが、5%未満まで減少する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
治療前と比べて、前記患者の骨髄芽球カウントが5%~25%まで減少し、そして治療前と比べた骨髄芽球パーセンテージは50%を超えて減少する、請求項41記載の方法。
【請求項44】
部分奏効又は完全奏効を誘導する、請求項27~43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
血小板回復を伴う完全奏効を誘導する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
好中球回復を伴う完全奏効を誘導する、請求項44又は45記載の方法。
【請求項47】
8週間以上の、赤血球若しくは血小板、又は両方の輸血依存離脱を誘導する、請求項27~46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
生存期間を延長する、請求項27~47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
骨髄性悪性腫瘍の治療に使用される治療剤の標準に対する生存期間を延長する、請求項27~48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
陰性である微小残存病変状態を誘導する、請求項27~49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
前記対象へ骨髄移植を供することを更に含む、請求項27~50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療に適している、1以上の追加の抗癌剤を投与することを更に含む、請求項27~51のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記1以上の追加の抗癌剤は、AMLの治療に適している薬剤から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記1以上の追加の抗癌剤は、セレクチン阻害剤(例えば、GMI-1271); FMS様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3)阻害剤(例えば、ミドスタウリン若しくはギルテリチニブ); サイクリン依存性キナーゼ阻害剤; アミノペプチダーゼ阻害剤; JAK/STAT阻害剤; シタラビン;フルダラビン; アントラサイクリン化合物(例えば、ダウノルビシン、イダルビシン); ドキソルビシン; ヒドロキシウレア; ビクセオス(Vyxeos); IDH1又はIDH2阻害剤、イドヒファ(Idhifa)(若しくはエナシデニブ)又はチブソボ(Tibsovo)(若しくはイボシデニブ)等; Smoothened阻害剤、グラスデギブ等; BETブロモドメイン阻害剤; CD123又はCD33標的化剤; HDAC阻害剤; LSC標的化剤; AML骨髄ニッチ標的化剤; NEDD8活性化酵素阻害剤、ペボネジスタット等; G-CSF、並びに、トポイソメラーゼ阻害剤、ミトキサントロン、セリネクソル及びエトポシド等、から選択される、請求項52又は53記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、組合せ療法、特に骨髄性悪性腫瘍治療用の組合せ療法に関する。この組合せ療法は、急性骨髄性白血病(AML)の治療用に特に有用である。この組合せ療法は、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及びBCL-2阻害剤、例えばベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩を含む。この組合せ療法は更に、追加の抗癌剤、例えばアザシチジン又はデシタビン等のAMLの治療に使用される薬剤を含むこともできる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
近年、新しい癌治療の開発は、癌進行に関与する、分子標的、特にタンパク質に焦点を当てるようになった。腫瘍の成長、侵襲及び転移に関与する分子標的のリストは拡大し続けており、そのリストには腫瘍細胞により過剰発現されたタンパク質、並びに脈管系及び免疫系等の腫瘍成長を支援するシステムに関連する標的が含まれる。これらの分子標的と相互作用するように設計された治療薬又は抗癌剤の数も又、増加し続けている。現在、数多くの標的化された癌用医薬品が臨床使用のために承認され、更に多くのものが開発の途中にある。
【0003】
CD70は、多くのタイプの血液系悪性腫瘍及び固形癌におけるその構成的発現のために、特に興味深い分子標的として特定されている(Junkerらの文献、(2005) J Urol. 173:2150-3; Sloanらの文献、(2004) Am J Pathol. 164:315-23; Held-Feindt及びMentleinの文献、(2002) Int J Cancer,98:352-6; Hishimaらの文献、(2000) Am J Surg Pathol. 24:742-6; Lensらの文献、(1999) Br J Haematol. 106:491-503; Boursalianらの文献、(2009) Adv Exp Med Biol. 647:108-119; Wajant H.の文献、(2016) Expert Opin Ther Targets, 20(8):959-973)。CD70は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーに属する、II型膜貫通型糖タンパク質であり、その同族の細胞表面受容体CD27への結合を通じて、その作用を媒介する。CD70及びCD27の両方は、免疫系の複数の細胞種により発現され、並びにCD70-CD27シグナル伝達経路は、免疫応答のいくつかの異なる態様の制御に関連している。このことは、CD70の過剰発現が、関節リウマチ及び乾癬性関節炎並びに狼瘡を含む様々な自己免疫疾患において発生するという事実を反映している(Boursalianらの文献、(2009) Adv Exp Med Biol. 647:108-119; Hanらの文献、(2005) Lupus,14(8):598-606; Leeらの文献、(2007) J Immunol. 179(4):2609-2615; Oelkeらの文献、(2004) Arthritis Rheum. 50(6):1850-1860)。
【0004】
CD70発現は、B細胞リンパ腫、腎細胞癌及び乳癌を含む、いくつかの癌の予後不良に関係するとされている(Bertrandらの文献、(2013) Genes Chromosomes Cancer, 52(8):764-774;Jilaveanuらの文献、(2012) Hum Pathol. 43(9):1394-1399;Petrauらの文献、(2014) J Cancer,5(9):761-764)。CD70発現は又、高い割合の症例で転移性組織上に認められており、このことはこの分子の癌進行における重要な役割を示している(Jacobsらの文献、(2015) Oncotarget,6(15):13462-13475)。造血系列の腫瘍細胞上のCD70及びその受容体CD27の構成的発現は、腫瘍細胞の増殖及び生存を直接的に制御する、CD70-CD27シグナル伝達中枢の役割に関係するとされている(Gotoらの文献、(2012) Leuk Lymphoma,53(8):1494-1500; Lensらの文献、(1999) Br J Haematol. 106(2):491-503; Nilssonらの文献、(2005) Exp Hematol. 33(12):1500-1507; van Doornらの文献、(2004) Cancer Res. 64(16):5578-5586)。
【0005】
腫瘍、特にCD27を共発現しない固形腫瘍上でのアップレギュレートされたCD70発現も又、様々な方法で腫瘍微小環境における免疫抑制に貢献する。例えば、制御性T細胞上のCD27へ結合するCD70は、マウスにおいて、Tregの頻度を増大し、腫瘍特異的なT細胞応答を減少させ、且つ腫瘍成長を促進することが示されている(Clausらの文献、(2012) Cancer Res. 72(14):3664-3676)。腎細胞癌、神経膠腫及び膠芽球細胞腫の細胞において示されたように、CD70-CD27シグナル伝達は又、Tリンパ球の腫瘍誘導されたアポトーシスにより、免疫応答を弱めることもできる(Chahlaviらの文献、(2005) Cancer Res. 65(12):5428-5438;Diegmannらの文献、(2006) Neoplasia,8(11):933-938;Wischusenらの文献、(2002) Cancer Res,62(9):2592-2599)。最後に、CD70発現は又、T細胞枯渇にも関係し、これによりリンパ球は、より分化したフェノタイプを採用し、且つ腫瘍細胞を死滅することができない(Wangらの文献、(2012) Cancer Res, 72(23):6119-6129;Yangらの文献、(2014) Leukemia、28(9):1872-1884)。
【0006】
癌進行におけるCD70の重要性を考慮すると、CD70は、抗癌療法の魅力的な標的であり、且つこの細胞表面タンパク質を標的とする抗体が、臨床研究中である(Jacobらの文献、(2015) Pharmacol Ther. 155:1-10; Silenceらの文献、(2014) mAbs、6(2):523-532)。
【発明の概要】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片を含む組合せ療法に関する。前記の通り、腫瘍の成長に関与するタンパク質のリストは、拡大し続けており、これら2以上のタンパク質を標的とする組合せ療法は、抗癌治療としてますます魅力的なものとなっている。本発明の組合せ療法において、CD70に結合する抗体又はその抗原結合断片は、BCL-2阻害剤、例えばベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩と組み合せられる。癌細胞におけるBCL-2の過剰発現はアポトーシスに対する耐性を付与することから、このタンパク質の阻害は腫瘍細胞死を促進できる。本明細書で説明される通り、ベネトクラクスは、BCL-2タンパク質の強力で選択的な小分子阻害剤の一例である。本明細書に記載されているように、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片と、BCL-2阻害剤、例えばベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩との組合せは、癌、特に、急性骨髄性白血病(AML)等の骨髄性悪性腫瘍治療用の効果的な療法を提供する。
【0008】
第一の態様において、本発明は、(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及び(ii) BCL-2阻害剤を含む組合せを提供する。いくつかの好ましい実施態様において、BCL-2阻害剤は、下記に示される化合物(I)
【化1】
又はその医薬として許容し得る塩である。
化合物(I)は、本明細書ではベネトクラクスとも呼ばれる。
【0009】
いくつかの実施態様において、CD70へ結合する抗体又は抗原結合断片は:(i) 可変重鎖(VH)ドメイン並びに可変軽鎖(VL)ドメインを含み、このVHドメイン並びにVLドメインは、重鎖CDR(HCDR3、HCDR2及びHCDR1)及び軽鎖CDR(LCDR3、LCDR2及びLCDR1): 配列番号:3を含むか若しくはこれからなるHCDR3; 配列番号:2を含むか若しくはこれからなるHCDR2; 配列番号:1を含むか若しくはこれからなるHCDR1; 配列番号:7を含むか若しくはこれからなるLCDR3; 配列番号:6を含むか若しくはこれからなるLCDR2; 並びに配列番号:5を含むか若しくはこれからなるLCDR1:を含む、抗体又は抗原結合断片、(ii) 配列番号:4と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号:8と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、抗体又は抗原結合断片;又は、(iii) ARGX-110、から選択される。いくつかの実施態様において、抗体はIgG、好ましくはIgG1である。
【0010】
本組合せのCD70抗体又は抗原結合断片は、1以上のエフェクター機能を有することもできる。いくつかの実施態様において、抗体又は抗原結合断片は、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害)活性を有し; 及び/若しくは脱フコシル化抗体ドメインを含み; 及び/若しくはCDC(補体依存性細胞傷害)活性を有し; 並びに/又はADCP(抗体依存性細胞貪食)活性を有する。好ましい実施態様において、CD70抗体はARGX-110である。
【0011】
いくつかの実施態様において、本組合せのCD70抗原結合断片は: 抗体軽鎖可変ドメイン(VL); 抗体重鎖可変ドメイン(VH); 単鎖抗体(scFv); F(ab’)2断片; Fab断片; Fd断片; Fv断片; 1本アームの(一価の)抗体; ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又は、そのような抗原結合断片の組合せ、アセンブリ若しくはコンジュゲーションにより形成された任意の抗原結合分子、からなる群から独立して選択される。
【0012】
いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片及びBCL-2阻害剤は、個別の組成物として製剤化される。いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片、及びベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩は、個別の組成物として製剤化される。
【0013】
本発明の組合せは、1以上の追加の治療薬、例えば、少なくとも1つの追加の抗癌剤、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療剤を含み得る。いくつかの実施態様において、追加の抗癌剤は、急性骨髄性白血病(AML)の治療剤である。好ましい実施態様において、組合せは、低メチル化剤、好ましくはアザシチジン又はデシタビンを含む。
【0014】
更なる態様において、本発明は療法における使用のための、本発明の第一の態様に従った組合せを提供する。特に、本発明は、ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、本発明の第一の態様に従った組合せを提供する。本発明は又、ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療方法であって、その対象へ、本発明の第一の態様に従ったいずれかの組合せの有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明は又、ヒト対象の悪性腫瘍、好適には骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片であって、BCL-2阻害剤、好ましくは化合物(I)若しくはその医薬として許容し得る塩と組合せて投与される、抗体分子を提供する。本発明は又、ヒト対象の悪性腫瘍の治療における使用のための、BCL-2阻害剤、好ましくは化合物(I)若しくはその医薬として許容し得る塩を提供し、そのBCL-2阻害剤、好ましくは化合物(I)若しくはその医薬として許容し得る塩は、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片と組合せて投与される。
【0016】
本発明の組合せは、それらが相乗効果を示すために特に有利である。従って、本発明の全ての見地での実施態様において好ましくは、CD70抗体又はその抗原結合断片が本組合せで投与及び/又は提供される用量、並びにBCL-2阻害剤が本組合せで投与及び/又は提供される用量は、それぞれその組合せが相乗的な治療を提供するように選択される。
【0017】
本発明の組合せのいくつかの好ましい実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片及びBCL-2阻害剤は、NOMO-1、MOLM-13、NB4及びMV4-11から選択されたAML細胞株で培養された場合に相乗的な細胞死滅を提供するために充分な量で、それぞれ本組合せ内に存在する。
【0018】
本発明の組合せを使用して治療される悪性腫瘍に関して、この悪性腫瘍は、新たに診断された骨髄性悪性腫瘍; 再発性若しくは難治性骨髄性悪性腫瘍;又は、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);骨髄増殖性腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML); 及び、慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される骨髄性悪性腫瘍であってもよい。特に好ましい実施態様において、本発明の組合せは急性骨髄性白血病(AML)の治療用である。
【0019】
いくつかの実施態様において、本発明の方法に従って治療される対象又は患者は、新たに診断された、標準的な強化化学療法に不適格なAML患者である。この対象は、新たに診断された75歳以上のAML患者、又は、新たに診断された標準的な強化化学療法の使用を妨げる併存疾患を有するAML患者でもよい。
【0020】
いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、0.1~25 mg/kgの範囲、好ましくは10 mg/kgの用量で投与される。それとは別に、又はそれに加えて、BCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩は、100 mg~600 mgの範囲の用量で投与されてもよい。好ましい実施態様において、本明細書に記載の方法は、アザシチジンを追加的に含む組合せを投与することを含み、このアザシチジンは、75 mg/m2の用量で投与される。更に好ましい実施態様において、本明細書に記載の方法は、デシタビンを追加的に含む組合せを投与することを含み、このデシタビンは、20 mg/m2の用量で投与される。
【0021】
いくつかの実施態様において、本方法は更に、患者の芽球カウントをモニタリングすることを含む。患者の末梢血及び/又は骨髄の芽球カウントは減少させることができ、例えば25%未満まで減少、例えば5%まで減少、例えば5%未満まで減少、例えば微小残存病変レベルまで減少、例えば検出不能レベルまで減少させることもできる。いくつかの実施態様において、骨髄芽球カウントは5%~25%の間まで減少し、そして治療前と比べた骨髄芽球パーセンテージは50%を超えて減少する。
【0022】
いくつかの実施態様において、本方法は部分奏効を誘導する。いくつかの実施態様において、本方法は完全奏効を誘導し、任意で血小板回復及び/又は好中球回復を伴う。本方法は、8週間以上、10週間以上、12週間以上の、赤血球若しくは血小板、又は両方の輸血依存離脱を誘導することもある。いくつかの実施態様において、本方法は、30日間後又は60日間後の死亡率を低下させる。
【0023】
いくつかの実施態様において、本方法は生存期間を延長する。例えば、本方法は、本組合せで治療される特定の骨髄性悪性腫瘍の治療に使用される1又は複数の治療剤の標準に対して、生存期間を延長することもある。本方法は、陰性である微小残存病変状態を誘導することもある。
【0024】
いくつかの実施態様において、本方法はその対象へ骨髄移植を供するステップを更に含む。或いは又はそれに加えて、本方法は、1以上の追加的な抗癌剤を投与するステップを更に含むこともできる。この1以上の追加的な癌剤は、骨髄性悪性腫瘍、好ましくはAMLの治療に適している任意の薬剤から選択されてもよい。好ましい薬剤は、セレクチン阻害剤(例えば、GMI-1271); FMS様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3)阻害剤(例えば、ミドスタウリン); サイクリン依存性キナーゼ阻害剤; アミノペプチダーゼ阻害剤; JAK/STAT阻害剤; シタラビン;アントラサイクリン化合物(例えば、ダウノルビシン、イダルビシン); ドキソルビシン; ヒドロキシウレア; ビクセオス(Vyxeos); IDH1又はIDH2阻害剤、イドヒファ(Idhifa)(若しくはエナシデニブ)又はチブソボ(Tibsovo)(若しくはイボシデニブ)等; Smoothened阻害剤、グラスデギブ等、BETブロモドメイン阻害剤、CD123又はCD33標的化剤、HDAC阻害剤、LSC標的化剤、AML骨髄ニッチ標的化剤、及びNEDD8活性化酵素阻害剤、ペボネジスタット等、から選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
(図面)
図1】クサツズマブ及びデシタビンの共処置は、NOMO-1 AML細胞を相乗的に排除する。NOMO-1 AML細胞を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識化NK細胞(1:1比)の存在下で、ビヒクル、クサツズマブ、ベネトクラクス又はデシタビンを、単独又は一定比率の組合せで処置した。ウェル当たりのNOMO-1 AML細胞数を72時間後にカウントし、アネキシンV染色により生細胞の度合い(degree)を決定し、薬剤処置の効果を、ビヒクル処置した細胞に対する生存細胞比率として算出した。組合せインデックス(CI)値を算出し、作用比率(Fa:fraction affected)値に対して0~10の間の値をプロットした。相乗作用及び/又は拮抗作用を評価するFa-CIプロット(Chou-Talalayプロット)を示す。0、0.5、及び1のFa値は、0%、50%、及び100%の死滅細胞に対応する。1未満のCI、1であるCI、1を超えるCIは、それぞれ相乗作用、相加作用、及び拮抗作用を表す。IC50は、Ve/Cusa組合せ(低いFa)及びVe/De/Cusa組合せ(高いFa)がIC50濃度へ達する時のFa値を表す。Ve/De、ベネトクラクス及びデシタビン; De/Cusa、デシタビン及びクサツズマブ; Ve/Cusa、ベネトクラクス及びクサツズマブ; Ve/De/Cusa、ベネトクラクス及びデシタビン及びクサツズマブ。
【0026】
図2】クサツズマブ及びデシタビンの共処置は、NOMO-1 AML細胞を相乗的に排除する。各組合せのデータを個々にCI-Faプロットして、図1に示す。(A)ベネトクラクス及びデシタビン; (B)デシタビン及びクサツズマブ; (C)ベネトクラクス及びクサツズマブ; (D)ベネトクラクス、デシタビン及びクサツズマブ。
【0027】
図3】クサツズマブ及びデシタビンの共処置は、NB4 AML細胞を相乗的に排除する。NB4 AML細胞を、CFSE標識化NK細胞(1:1比)の存在下で、ビヒクル、クサツズマブ、ベネトクラクス又はデシタビンを、単独又は一定比率の組合せで処置した。ウェル当たりのNB4 AML細胞数を72時間後にカウントし、アネキシンV染色により生細胞の度合いを決定し、薬剤処置の効果を、ビヒクル処置した細胞に対する生存細胞比率として算出した。組合せインデックス(CI)値を算出し、作用比率(Fa)値に対して0~10の間の値をプロットした。相乗作用及び/又は拮抗作用を評価するFa-CIプロット[Chou-Talalayプロット]を示す。0、0.5、及び1のFa値は、0%、50%、及び100%の死滅細胞に対応する。(A)ベネトクラクス及びデシタビン; (B)ベネトクラクス及びクサツズマブ; (C)デシタビン及びクサツズマブ; (D)ベネトクラクス、デシタビン及びクサツズマブ。
【0028】
図4】クサツズマブ及びデシタビンの共処置は、MOLM-13 AML細胞を相乗的に排除する。MOLM-13 AML細胞を、CFSE標識化NK細胞(1:1比)の存在下で、ビヒクル、クサツズマブ、ベネトクラクス又はデシタビンを、単独又は一定比率の組合せで処置した。ウェル当たりのMOLM-13 AML細胞数を72時間後にカウントし、アネキシンV染色により生細胞の度合いを決定し、薬剤処置の効果を、ビヒクル処置した細胞に対する生存細胞比率として算出した。組合せインデックス(CI)値を算出し、値を作用比率(Fa)値に対してプロットした。相乗作用及び/又は拮抗作用を評価するFa-CIプロット[Chou-Talalayプロット]を示す。0、0.5、及び1のFa値は、0%、50%、及び100%の死滅細胞に対応する。(A)ベネトクラクス及びデシタビン; (B)ベネトクラクス及びクサツズマブ; (C)デシタビン及びクサツズマブ; (D)ベネトクラクス、デシタビン及びクサツズマブ。
【0029】
図5】クサツズマブ及びデシタビンの共処置は、MV4-11 AML細胞を相乗的に排除する。MV4-11 AML細胞を、CFSE標識化NK細胞(1:1比)の存在下で、ビヒクル、クサツズマブ、ベネトクラクス又はデシタビンを、単独又は一定比率の組合せで処置した。ウェル当たりのMV4-11 AML細胞数を72時間後にカウントし、アネキシンV染色により生細胞の度合いを決定し、薬剤処置の効果を、ビヒクル処置した細胞に対する生存細胞比率として算出した。組合せインデックス(CI)値を算出し、値を作用比率(Fa)値に対してプロットした。相乗作用及び/又は拮抗作用を評価するFa-CIプロット[Chou-Talalayプロット]を示す。0、0.5、及び1のFa値は、0%、50%、及び100%の死滅細胞に対応する。
【0030】
図6】組合せたベネトクラクス及びクサツズマブ処置は、白血病幹細胞(LSC)をインビトロで相乗的に排除する。患者P1~P3由来のCD34CD38AML LSCを、NK細胞(1:1比)の存在下で、クサツズマブ(Cusa: 0.3 μg/ml)若しくはベネトクラクス(Ve: 6 nM)を単独、又は組合せて、二連で一晩培養し、続いてメチルセルロース内に播種(プレーティング)した。14日後に、コロニー形成を評価した。(A)処置後最初の(第一)播種によるウェル当たりのコロニー絶対数; (B)第一播種から採取した細胞を再播種し(第二播種)、14日後に、コロニー形成及びウェル当たりのコロニーを評価した。 データを平均値±S.D.として示す。統計: 一元配置ANOVA; Tukeyの事後検定; *、P<0.05; **、P<0.01; ***、P<0.001。
【0031】
図7】組合せたベネトクラクス及びクサツズマブ処置は、LSCをインビトロで相乗的に排除する。示されたデータは図6のデータに対応し、各患者へのビヒクル処置後のウェル当たりコロニー数の平均値でノーマライズした。(A)第一播種; (B)第二播種。
【0032】
図8】組合せたベネトクラクス及びクサツズマブの処置は、LSCをインビトロで相乗的に排除する。患者P4及びP5由来のCD34CD38AML LSCを、NK細胞(1:1比)の存在下で、クサツズマブ(Cusa: 0.3 μg/ml)、ベネトクラクス(Ve: 6 nM)若しくはデシタビン(0.01 μM)を単独又は組合せて、二連で一晩培養し、続いてメチルセルロース内に播種した。14日後に、コロニー形成を評価した。データを平均値±S.D.として示す。(A)単独患者由来の結果; (B)患者P4由来及び患者P5由来の結果。
【0033】
図9】ビヒクル(Veh)又はベネトクラクス(Ven)で24又は48時間処置後の、(ハウスキーピング遺伝子の割合としての)CD70 mRNA発現。
図10】ベネトクラクスの存在下(灰色棒)及び不存在下(黒色棒)の、MOLM-13及びNOMO-1細胞によるCD70タンパク質発現及びCD70 mRNA発現。有意性は、スチューデントのt検定を使用して決定した。MFI=平均蛍光強度。***P<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(詳細な説明)
(A.定義)
別に定義しない限りは、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0035】
「組合せ療法」-本明細書において使用する、用語「組合せ療法」とは、対象、例えばヒト対象に、2種以上の治療薬が与えられる治療を指す。本明細書記載の「組合せ」は、組合せ療法における使用のためのものである。2種以上の治療薬は典型的には、単独の疾患、本明細書においては癌又は悪性腫瘍を治療するために、投与される。本発明の組合せ又は組合せ療法は、CD70に結合する抗体若しくは抗原結合断片及びBCL-2阻害剤、好ましくは小分子阻害剤ベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩を含む。本明細書に記載される通り、組合せ療法に含まれる薬剤は、それを必要とする対象又は患者への投与のために、投薬用に共製剤化されてもよく、又は例えば個別の組成物として、個別に提供されてもよい。
【0036】
「抗体」-本明細書において使用する、用語「抗体」は、完全長抗体及びそのバリアントを包含することを意図しており、改変された抗体、ヒト化抗体、生殖細胞系列性抗体を含むが、これに限定されるものではない。本明細書において典型的に使用される用語「抗体」は、2本の重鎖及び2本の軽鎖の組合せを有するイムノグロブリンポリペプチドを指し、そのポリペプチドは、目的の抗原(本明細書においてはCD70)に対し有意な特異的免疫反応活性を有する。IgGクラスの抗体に関しては、この抗体は、分子量約23,000ダルトンの2本の同一のポリペプチド軽鎖、及び分子量53,000~70,000の2本の同一の重鎖を含む。これら4本の鎖は、「Y字」配置でジスルフィド結合により連結され、ここで軽鎖は、「Y字」の口から始まり且つ可変領域にわたって重鎖を括弧で囲むように(bracket)している。抗体の軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のいずれかと結合されているだろう。一般に軽鎖及び重鎖は、互いに共有結合され、これら2本の重鎖の「尾」部は、ジスルフィド共有結合により、又はイムノグロブリンがハイブリドーマ、B細胞又は遺伝子操作された宿主細胞のいずれかにより産生される場合は非共有結合により、互いに結合されている。重鎖において、アミノ酸配列は、Y字配置の分岐端でのN-末端から、各鎖の底のC-末端へと並んでいる。
【0037】
当業者は、重鎖は、幾つかのサブクラス(例えばγ1~γ4)を伴う、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類されることを理解するであろう。この鎖の本質により、抗体の「クラス」は、各々、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEと決定される。イムノグロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1等は、良く特徴付けられており、機能的特化を有することが知られている。本明細書において使用する用語「抗体」は、抗体の任意のクラス又はサブクラス由来の抗体を包含している。
【0038】
「抗原結合断片」-本明細書において使用する用語「抗原結合断片」は、完全長抗体の部分若しくは一部、又は無傷の若しくは完全な抗体よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体鎖であるが、抗原結合活性は維持している断片を指す。抗体の抗原結合断片は、抗体として、同じ抗原(例えば、CD70)に対して特異的な免疫反応活性を示すペプチド断片を含む。本明細書において使用する用語「抗原結合断片」は、抗体軽鎖可変ドメイン(VL);抗体重鎖可変ドメイン(VH);単鎖抗体(scFv);F(ab’)2断片;Fab断片;Fd断片;Fv断片;一本アームの(一価の)抗体;ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又は、そのような抗原結合断片の組合せ、アセンブリ若しくはコンジュゲーションから形成された任意の抗原結合分子、から選択された抗体断片を包含することが意図されている。本明細書において使用する用語「抗原結合断片」は同様に、ユニボディ、ドメイン抗体、及びナノボディからなる群から選択される抗体断片を包含することを意図してもよい。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体若しくは抗体鎖の、化学的又は酵素的処理によるか、又は組換え手段により得ることができる。
【0039】
「特異性」及び「多重特異性抗体」-本明細書記載の組合せ療法における使用のための抗体及び抗原結合断片は、CD70等の特定の標的抗原に結合する。抗体及び抗原結合断片は、それらの標的抗原へ「特異的に結合する」ことが好ましく、ここで用語「特異的に結合する」とは、所定の標的、例えばCD70等と優先的に免疫反応する任意の抗体又は抗原結合断片の能力を指す。本組合せ及び方法の抗体及び抗原結合断片は、単一特異性であってもよく、且つ特定の標的に特異的に結合する1以上の結合部位を含むことができる。本組合せ及び方法の抗体及び抗原結合断片は、「多重特異性抗体」フォーマット、例えば二重特異性抗体に組み込まれることもでき、ここでこの多重特異性抗体は、2以上の標的抗原に結合する。多重特異性を達成するために、「多重特異性抗体」は、典型的には、異なるVH-VL対を有する重鎖及び軽鎖ポリペプチドの異なる組合せ又は対形成を含むように操作される。多重特異性、とりわけ二重特異性抗体は、ナイーブ(native)抗体、例えばFc領域にコンジュゲートされた異なる特異性のFabアームを有するY字型抗体等の、全体的構造を採用するように操作されてもよい。或いは、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体は、例えば、異なる特異性を有する複数の可変ドメイン又は可変ドメイン対がFc領域の両端に配置されるような、非ナイーブ型構造を採用するように操作されてもよい。
【0040】
「改変された抗体」-本明細書で使用する、用語「改変された抗体」は、天然には生じない変更された抗体の合成形態を含み、例えば、少なくとも2つの重鎖部分を含むが2つの完全重鎖は含まない抗体(ドメイン欠失された抗体又はミニボディ等);(2以上の異なる抗原へ、又は単独抗原上の異なるエピトープへ、結合するように変更された)抗体の多重特異性形態(例えば、二重特異性、三重特異性等);scFv分子へ結合された重鎖分子等がある。scFv分子は、当分野で公知であり、例えば米国特許第5,892,019号に説明されている。加えて、用語「改変された抗体」は、抗体の多価の形態(例えば、同じ抗原の3以上のコピーに結合する抗体である、三価、四価等)を含む。別の実施態様では、本発明の改変された抗体は、CH2ドメインを欠く少なくとも1つの重鎖部分を含み、且つ受容体リガンド対の一員の結合部分を含むポリペプチドの結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0041】
「ヒト化置換」-本明細書で使用する、用語「ヒト化置換」とは、抗体のVH又はVLドメイン中の特定の位置に存在するアミノ酸残基が、参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換をいう。参照ヒトVH又はVLドメインは、ヒト生殖細胞系列によりコードされたVH又はVLドメインであってよい。ヒト化置換は、本明細書に定義されたように、抗体のフレームワーク領域及び/又はCDRで行うことができる。
【0042】
「ヒト化バリアント」-本明細書において使用する用語「ヒト化バリアント」又は「ヒト化抗体」とは、参照抗体と比べ1以上の「ヒト化置換」を含むバリアント抗体を指し、ここでこの参照抗体の部分(例えば、VHドメイン及び/若しくはVLドメイン又は少なくとも1つのCDRを含むそれらの一部)は、非ヒト種由来のアミノ酸を有し、且つ「ヒト化置換」は、非ヒト種由来のアミノ酸配列内で起こる。
【0043】
「生殖細胞系列化バリアント」-本明細書において使用する用語「生殖細胞系列化バリアント」又は「生殖細胞系列化抗体」は具体的には、その中で「ヒト化置換」によって、抗体のVH又はVLドメイン中の特定の位置(複数可)に存在する1以上のアミノ酸残基が、ヒト生殖細胞系列によりコードされた参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に生じるアミノ酸残基で置換されている「ヒト化バリアント」を指す。任意の所定の「生殖細胞系列化バリアント」に関して、生殖細胞系列化バリアントへと置換された置き換えアミノ酸残基は、専ら若しくは主として単独のヒト生殖細胞系列コードされたVH又はVLドメインから得られることが一般的である。用語「ヒト化バリアント」及び「生殖細胞系列化バリアント」は、しばしば互換的に使用される。1以上の「ヒト化置換」をラクダ類由来の(例えば、ラマ由来の)VH又はVLドメインへ導入すると、結果としてラクダ類(ラマ)由来VH又はVLドメインの「ヒト化バリアント」が作製される。この置換されて中に入るアミノ酸残基が主として若しくは専ら単独のヒト生殖細胞系列コードされたVH又はVLドメイン配列に由来する場合、その結果は、ラクダ類(ラマ)由来のVH又はVLドメインの「ヒト生殖細胞系列化バリアント」となるであろう。
【0044】
「CD70」-本明細書において使用する、用語「CD70」又は「CD70タンパク質」又は「CD70抗原」は互換的に使用され、且つTNFRSF7/CD27のリガンドである、TNFリガンドファミリーの一員を指す。CD70は、CD27L又はTNFSF7としても公知である。用語「ヒトCD70タンパク質」又は「ヒトCD70抗原」又は「ヒトCD70」は、互換的に使用され具体的には、ヒト体内及び/若しくは培養ヒト細胞株の表面上で天然に発現されるナイーブヒトCD70タンパク質、並びに組み換え型及びその断片を含むヒトホモログを指す。ヒトCD70の具体例は、NCBI参照配列寄託番号NP_001243で示されたアミノ酸配列、又はその細胞外ドメインを有するポリペプチドを含む。
【0045】
「BCL-2ファミリー」-本明細書において使用する、用語「BCL-2ファミリー」又は「BCL-2タンパク質ファミリー」は、BCL-2に関連するアポトーシス促進タンパク質及びアポトーシス阻害タンパク質のコレクションを指すものであり、Delbridgeらの文献、(2016) Nat Rev Cancer. 16(2): 99-109を参照されたい。このファミリーの少なくとも16メンバーが、3種の機能性群:(i) BCL-2様タンパク質(例えば、BCL-2、BCL-XL/BCL2L1、BCLW BCL2L2、MCL2、BFL1/BCL2A1); (ii) BAX及びBAK; 並びに(iii) BH3単独タンパク質(例えば、BIM、PUMA、BAD、BMF、BID、NOXA、HRK、BIK)に分類されて存在する。タンパク質BCL-2ファミリーは、ファミリーのアポトーシス阻害メンバー(例えば、BCL-2、BCL-XL)と共に、本質的なアポトーシス経路の調節に不可欠な役割を果たし、通常はアポトーシス促進メンバー(例えば、BAX及びBIM)に拮抗する。例えば遺伝子転座、増幅、過剰発現及び突然変異によるBCL-2ファミリーメンバーの調節解除は、多くの癌で観察されてきた。この調節解除の下流効果はしばしばアポトーシス抵抗性であり、それにより癌成長が促進される。
【0046】
「BCL-2」-本明細書において使用する、「BCL-2」又は「BCL-2タンパク質」は、ヒトにおいて特定されるBCL-2タンパク質ファミリーの第一のメンバー、即ち、B細胞リンパ腫2を指す。ヒトBCL-2をコードするcDNAは1986年にクローニングされ、このタンパク質のアポトーシス阻害における重要な役割が1988年に明らかにされた。BCL-2は、いくつかの異なる種類の癌においてアップレギュレートされることが確認された。例えば、BCL-2は、濾胞性リンパ腫においてt(14;18)染色体転座により活性化される。BCL-2遺伝子の増幅も又、白血病(CLL等)、リンパ腫(B細胞リンパ腫等)及び幾つかの固形腫瘍(例えば、小細胞性肺癌)を含む異なる癌において報告された。ヒトBCL-2はBCL-2遺伝子(UniProtKB-P10415)によりコードされ、NCBI参照配列NP_000624.2及びNP_000648.2として示されるアミノ酸配列を有する。
【0047】
「BCL-2阻害剤」-本明細書において使用する、BCL-2阻害剤は、BCL-2の活性を特異的に阻害することのできる任意の薬剤、化合物又は分子、特にBCL-2のアポトーシス阻害活性を阻害することのできる薬剤、化合物又は分子を指す。本明細書に記載の組合せに好適に使用されるBCL-2阻害剤の例には、B細胞リンパ腫相同性3(BH3)模倣化合物(Merinoらの文献、(2018) Cancer Cell. 34(6): 879-891)が含まれる。特定のBCL-2阻害剤は、下記に限定されるものではないが、ベネトクラクス、ABT-737(Oltersdorf,Tらの文献、(2005) Nature 435: 677-681)、ナビトクラクス/ABT-263(Tse,C.らの文献、(2008) Cancer Res. 68: 3421-3428)、BM-1197(Bai,L.らの文献、(2014) PLoS ONE 9: e99404)、S44563(Nemati,F.らの文献、(2014) PLoS ONE 9: e80836)、BCL2-32(Adam,A.らの文献、(2014) Blood 124: 5304)、AZD4320(Hennessy,E.J.らの文献、(2015) ACS Medicinal Chemistry annual meeting https://www.acsmedchem. org/ama/orig/abstracts/mediabstractf2015.pdf abstr. 24)、及びS55746(国際標準ランダム化比較試験登録番号(ISRCTN)http://www.isrctn.com/ ISRCTN04804337(2016))を含む。BCL-2阻害剤の更なる例は、Ashkenazi,Aらの文献、(2017) Nature Reviews Drug Discovery 16: 273-284に記載されており、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0048】
「ベネトクラクス」-本明細書において使用する、用語「ベネトクラクス」は、下記化学構造を有する化合物を指す。
【化2】
この化合物は、本明細書において「化合物(I)」として表される。ベネトクラクスは、BCL-2タンパク質の、強力で、選択的かつ経口的に生体利用可能な阻害剤である。その実験式はC45H50C1N7O7Sであり分子量は868.44である。ベネトクラクスは、水への溶解性が非常に低い。ベネトクラクスは、化学的には、4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミド)として表すことができる。ベネトクラクスの別名にはABT-199;化学名1257044-40-8; GDC-0199が含まれる。
【0049】
ベネトクラクスは、2015年に米国食品医薬品局(FDA)から、治療前に少なくとも1回の療法を受けた慢性リンパ性白血病(CLL)又は小リンパ性白血病(SLL)の成人患者の治療について承認を受けた。ベネトクラクスは又、米国において、75歳以上の成人若しくは強化誘導化学療法の使用を妨げる併存疾患を持つ成人において、新たに診断された急性骨髄性白血病(AML)を治療するための、アザシチジン又はデシタビン又は低用量シタラビンとの組合せでの使用について承認を受けている。
【0050】
「骨髄性悪性腫瘍」-本明細書において使用する、用語「骨髄性悪性腫瘍」は、造血幹細胞又は前駆細胞の何らかのクローン性疾患を指す。骨髄性悪性腫瘍又は骨髄性悪性疾患は、慢性及び急性症状を含む。慢性症状は、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含み、急性症状は急性骨髄性白血病(AML)を含む。
【0051】
「急性骨髄性悪性腫瘍」-本明細書において使用される、「急性骨髄性白血病」又は「AML」は、骨髄細胞に関与する造血性新生物を指す。AMLは、低下した分化能を有する骨髄前駆体のクローン増殖により、特徴付けられる。AML患者は、骨髄における芽球細胞の蓄積を呈する。本明細書において使用される「芽球細胞」又は単なる「芽球」は、破壊された分化能を示すクローン性骨髄前駆細胞を指す。芽球細胞は典型的には又、AML患者の末梢血中にも蓄積する。AMLと通常に診断されるのは、患者が骨髄又は末梢血中に、20%以上の芽球細胞を示す場合である。
【0052】
「標準的な強化化学療法」-本明細書で使用される、「標準的な強化化学療法」(本明細書では、「強化誘導療法」又は「誘導療法」とも称する)は、いわゆる「7+3」誘導化学療法を指し、高投与量シタラビン7日間、それに続く3日間のアントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン又はイダルビシン)投与により特徴づけられる。標準的な強化化学療法は、適格性のある新たに診断されたAML患者へ、典型的には化学療法が成功した後に、患者に幹細胞移植を行うことを意図して、AMLの完全寛解の誘導を目的として与えることができる。本明細書記載のように、新たに診断されたAML患者全員が、標準的な強化化学療法に適格性を有するわけではない。
【0053】
「白血病幹細胞」-本明細書において使用する、「白血病幹細胞」又は「LSC」は、AMLに関連する芽球細胞のサブセットである。LSCは、免疫欠損レシピエントへ移植されると白血病性疾患を引き起こすことが可能な、幹細胞特性を有する芽球細胞である。LSCは、白血病を引き起こすことにより自己再生可能であるが、又、本来の疾患に似ているが自己再生不能な非LSC型の従来の芽球細胞へも部分的に分化することができる。LSCは、原発性(primary)AML芽球細胞の比率として、10,000個中1個から100万個中1個までの範囲の頻度で発生する(Pollyea及びJordanの文献、(2017)、Blood, 129:1627-1635、引用により本明細書中に組み込まれている)。LSCは、CD34+、CD38-、又任意でCD45-及び/若しくはCD123+である細胞として特徴付けることもできる。LSCは又、CD45dim、SSClo、CD90+CD34+細胞として特徴付けてもよい。
【0054】
「抗癌剤」-本明細書において使用される場合、抗癌剤は、癌成長を直接若しくは間接に、予防、阻害又は治療をすることが可能である任意の薬剤を指す。そのような薬剤は、化学療法薬、免疫療法薬、血管新生阻害剤、放射性核種等を含み、その多くの例が、当業者には公知である。
【0055】
(B.CD70抗体及びBCL-2阻害剤での組合せ療法)
本発明は、(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片、及び(ii) BCL-2阻害剤を含む組合せ療法を提供する。
本明細書に記載される通り、CD70は抗癌療法のための魅力的な標的として特徴づけられてきた。CD70は、多くの種類の血液系悪性腫瘍及び固形癌において恒常的に発現され、その発現は、いくつかの癌の予後不良に関係するとされている。CD70を標的とする複数の抗体が開発されており、そのいくつかは臨床研究まで進んでいる。
【0056】
CD70を標的とする抗体は、骨髄性悪性腫瘍の治療、特に急性骨髄性白血病(AML)を有する対象の治療に、特に効果があることが明らかになった。AML患者において、CD70抗体、ARGX-110、を検証する第I/II相臨床試験の結果により、この症状において、特に、標準的な強化化学療法(WO2018/229303号を参照)に不適格と分類された新たに診断された患者において、驚くべきその有効性が明らかになった。この臨床試験において特に注目されるのは、CD70抗体は、アザシチジンと組合せて使用した時に、AML患者の白血病幹細胞(LSC)を効率良く減少したことである。試験で患者から単離されたLSCの検査は、骨髄性細胞への分化を示すLSCの非対称分裂が増加した証拠を示した。まとめると、これらの結果は、CD70抗体がAML患者のLSCプールを枯渇させることを示し、それによって寛解の予後が高まり、さらに、再発リスクが減少する。
【0057】
本発明は、CD70抗体又はその抗原結合断片をBCL-2阻害剤と組合せる。
BCL-2タンパク質は、BCL-2ファミリーのメンバーである。このファミリーは、20を超えるタンパク質を含む。BCL-2ファミリーのメンバーは、本質的なアポトーシス経路の制御に関係しており、細胞の生存及び死の間のバランスを制御する基本的役割を担う。
【0058】
BCL-2タンパク質は、BCL-2ファミリーのアポトーシス阻害メンバーであり、多くの異なる種類の癌においてアップレギュレートされている。BCL-2の過剰発現は、腫瘍細胞がアポトーシス促進タンパク質を捕捉することによりアポトーシス回避することを可能とさせる。BCL-2は、多くの血液系悪性腫瘍中で高度に発現され、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫等の疾患において、主要な生存促進タンパク質である。BCL-2を阻害することにより、このタンパク質のアポトーシス阻害性又は生存促進活性も阻害される。
【0059】
BCL-2を含むBCL-2ファミリーのアポトーシス阻害メンバーは、原発性AMLサンプル内で過剰発現することが報告されている(Bogenbergerらの文献、(2014) Leukemia 28(2); 1657-65)。BCL-2の過剰発現は又、AML患者から得られた白血病幹細胞(LSC)内でも報告されている(Lagadinouらの文献、(2013) Cell Stem Cell 12(3); 329-341)。生体外LSC集団内でのBCL-2の阻害は、休止期のLSCの選択的根絶を導いた(Lagadinouらの文献、(2013) Cell Stem Cell 12(3); 329-341)。
【0060】
理論によって範囲を縛るものではないが、本発明の組合せは、CD70抗体又は抗原結合断片及びBCL-2阻害剤を組合せた治療的効果、特にLSCのレベルでの組合せた効果のために、AML治療用に特に効果的であると考えられる。LSCの自己再生能は、これらの細胞の持続性が疾患の再発に寄与する主因であることを意味する。
【0061】
実施例に示されるように、本発明の組合せは、AML細胞に対する相乗的治療の有効性、即ち、組合せにより誘導される阻害レベルが単剤療法単独の相加効果よりも大きいこと、を示す。相乗的相互作用を決定する方法は、当業者によく知られており、実施例に記載されている。組合せから相乗効果が生じるかどうかを決定する好ましい方法は、Chou-Talalay法である(引用により本明細書中に組み込まれているChou,TC.の文献、Cancer Res. (2010) 70(2); 440-6)。
【0062】
本発明の組合せの相乗効果は、AML患者からの原発性LSC細胞の強力な阻害として表された。従って、本発明の組合せ療法は、芽球細胞及びLSCコンパートメントの両方を標的とし、それにより疾患の寛解可能性を改善する一方で、再発リスクを減少させる。
【0063】
本発明の組合せのいくつかの好ましい実施態様において、BCL-2阻害剤は、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩である。ベネトクラクスは、BCL-2の小分子阻害剤であり、US2010/0305122(引用により本明細書中に組み込まれている)に記載されている。
BCL-2を阻害することにより、ベネトクラクスはこのタンパク質のアポトーシス阻害性又は生存促進活性を阻害する。ベネトクラクスは、CLL細胞の大部分及びBCL-2を過剰発現するリンパ腫細胞株において迅速にアポトーシスを誘導する。
【0064】
初期の研究では、ベネトクラクスがAML療法として有用であるかもしれないことが示された(Konoplevaらの文献、(2016) Cancer Discov. 6(10); 1106-17)。しかし、ベネトクラクスは、単剤療法としては限られた活性しか持たないことが判明した。それに続く研究で、低メチル化剤、即ちアザシチジン及びデシタジン(decitadine)、と組合せたベネトクラクスの有効性が調査され、これらの組合せが特別に有効であることが判明した(Bogenbergerらの文献、(2015) Leuk Lymphoma, 56(1): 226-229)。ベネトクラクスと、アザシチジン、デシタビン、又は低用量シタラビンのいずれかとの組合せを検証するために、臨床試験が実施された(Dinardoらの文献、(2018) Lancet Oncol. 19(2): 216-228; Dinardoらの文献、(2019) Blood 133(1); 7-17)。これらの試験の結果により、75歳以上の成人又は強化誘導化学療法の使用を妨げる併存疾患がある成人での、新たに診断された急性骨髄性白血病(AML)の治療用に、アザシチジン、デシタビン、又は低用量シタラビンと組合せてたベネトクラクスの使用についてFDA承認が導かれた。
【0065】
本発明の別のいくつかの実施態様において、BCL-2阻害剤は、B細胞リンパ腫相同性3(BH3)模倣物化合物である。いくつかの実施態様において、BCL-2阻害剤は、ABT-737、ナビトクラクス、BM-1197、S44563、BCL2-32、AZD4320又はS55746から選択される。
【0066】
(CD70抗体)
CD70に結合する抗体又は抗原結合断片であって本明細書記載のいずれかの組合せに組み込まれ得るものは:以下に限定されるものではないが、CD70のCD27との相互作用を阻害するCD70抗体又は抗原結合断片;CD70結合に関して、CD27と競合するCD70抗体又は抗原結合断片;CD70が誘導するCD27シグナル伝達を阻害するCD70抗体又は抗原結合断片;Treg活性化及び/又は増殖を阻害するCD70抗体若しくは抗原結合断片;CD70発現細胞を枯渇させるCD70抗体又は抗原結合断片;CD70発現細胞の溶解を誘導するCD70抗体又は抗原結合断片;ADCC、CDC機能性を有し、かつ/又はADCPを誘導するCD70抗体若しくは抗原結合断片を含む。
【0067】
例示的CD70抗体は、WO2012/123586(引用により本明細書中に組み込まれている)に説明されたARGX-110、SGN-70(WO2006/113909、及びMcEarChernらの文献、(2008) Clin Cancer Res. 14(23):7763、これら両方は引用により本明細書中に組み込まれている)、並びにWO2006/044643及びWO2007/038637(各々引用により本明細書中に組み込まれている)に説明されたそれらのCD70抗体である。
【0068】
WO2006/044643は、抗体エフェクタードメインを含むCD70抗体を説明しており、それは、ADCC、ADCP又はCDCの1以上を仲介することができ、CD70発現している癌に対する細胞増殖抑制効果若しくは細胞傷害効果を発揮するか、又はCD70発現している免疫学的障害へ免疫抑制効果を発揮するかのいずれかを行うことができるが、細胞増殖抑制剤若しくは細胞傷害剤へコンジュゲートされる必要はない。本明細書で例示される抗体は、1F6及び2F2と記される、2個のモノクローナル抗体の抗原結合領域をベースにしている。
【0069】
WO2007/038637は、CD70に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を説明している。これらの抗体は、1×10-7M以下のKDでのヒトCD70への結合により特徴付けられる。これらの抗体は又、786-O等の、CD70を発現する腎細胞癌腫瘍細胞株に結合し、且つそれによってインターナリゼーションされる。
【0070】
ARGX-110はIgG1抗CD70抗体であり、クサツズマブとしても知られる。ARGX-110は、CD70のその受容体CD27との相互作用を阻害することが示されている(Silenceらの文献、(2014) MAbs. Mar-Apr;6(2):523-32、引用により本明細書中に組み込まれている)。特にARGX-110は、CD70が誘導するCD27シグナル伝達を阻害することが示された。CD27シグナル伝達のレベルは、例えば、Rietherらの文献(J. Exp. Med.(2017) 214(2); 359-380)に説明された血清可溶性CD27の測定によるか、又はSilenceらの文献(MAbs(2014) 6(2): 523-32)に説明されたIL-8発現の測定により、決定することができる。理論により拘束されるものではないが、CD27シグナル伝達の阻害は、Treg細胞の活性化及び/又は増殖を低下させ、これにより抗腫瘍エフェクターT細胞の阻害を減少すると考えられる。AGRX-110は又、CD70発現している腫瘍細胞を枯渇させることも明らかにされた。特に、ARGX-110は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を介して、CD70発現する腫瘍細胞を溶解し、並びに又CD70発現細胞の抗体依存性細胞貪食(ADCP)を増加することが示されている(Silenceらの文献、前掲)。
【0071】
ARGX-110又はクサツズマブのCDR、VH及びVLアミノ酸配列を、下記表に示す。
(表1)
【表1】
【0072】
いくつかの実施態様において、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、可変重鎖ドメイン(VH)並びに可変軽鎖ドメイン(VL)を含み、ここでVHドメイン並びにVLドメインは、下記CDR配列:
配列番号:3を含むか若しくはこれからなるHCDR3;
配列番号:2を含むか若しくはこれからなるHCDR2;
配列番号:1を含むか若しくはこれからなるHCDR1;
配列番号:7を含むか若しくはこれからなるLCDR3;
配列番号:6を含むか若しくはこれからなるLCDR2;及び
配列番号:5を含むか若しくはこれからなるLCDR1:
を含む。
【0073】
いくつかの実施態様において、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、任意で上記CDR配列を有する抗体又は抗原結合断片であり、IgG、好ましくはIgG1である。いくつかの実施態様において、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:4と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%同一である配列を含むか又はこれからなる可変重鎖ドメイン(VHドメイン)、及び配列番号:8と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%若しくは少なくとも95%同一である配列を含むか又はこれからなる可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)を含む。いくつかの実施態様において、CD70へ結合する抗体分子は、配列番号:4を含むか又はこれからなる可変重鎖ドメイン(VHドメイン)、及び配列番号:8を含むか又はこれからなる可変軽鎖ドメイン(VLドメイン)を含む。VH及び/又はVLドメインが参照配列と特定パーセンテージの同一性を有すると特定された実施態様では、VH及び/又はVLドメインは、その参照配列のCDR配列を保持してもよい。特に、配列番号4及び8に関して本明細書で特定されたCD70抗体又は抗原結合断片は、配列番号1~3及び5~7によって表されるCDR配列を保持してもよい。
【0074】
本明細書記載の組合せに組み込まれ得るCD70抗体又はその抗原結合断片は、抗体薬剤複合体(ADC)を含む。ADCは、例えば、アウリスタチン及びマイタンシン又は他の細胞傷害剤等の、活性物質に結合された抗体である。いくつかのADCは、抗体ブロッキング及び/又はエフェクター機能 (例えば、ADCC、CDC、ADCP)を維持する一方で、又コンジュゲートされた活性物質を、標的(例えば、CD70)を発現している細胞へ送達する。抗CD70 ADCの例は、ボルセツズマブマホドチン(SGN-75としても公知、Seattle Genetics社)、SGN-70A(Seattle Genetics社)、及びMDX-1203/BMS936561(Bristol-Myers Squibb社)を含み、その各々は本発明に従って使用することができる。好適な抗CD70 ADCは又、WO2008074004及びWO2004073656に説明されており、これらも各々引用により本明細書中に組み込まれている。
【0075】
(ベネトクラクス)
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、本明細書に記載のCD70抗体又は抗原結合断片は、ベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩と組合せられる。ベネトクラクスは、本明細書に記載される通り、BCL-2の小分子阻害剤である。
【0076】
本明細書に記載の組合せ療法における使用のためのベネトクラクスは、それがBCL-2タンパク質を効果的に阻害するような任意の適切な形態で提供できる。そのような形態は、下記に限定されるものではないが、任意の適切な多形、無定形若しくは結晶形態、又は任意の異性体若しくは互変異性形態を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組合せ療法は、US2010/0305122(引用により本明細書中に組み込まれている)に記載のプロセスに従って合成されたベネトクラクスを含む。別の実施態様において、本明細書に記載の組合せ療法は、EP3333167、WO2017/156398、WO2018/029711、CN107089981(A)、WO2018/069941、WO2017/212431、WO2018/009444、CN107648185(A)、WO2018/167652、WO2018/157803、CZ201769(いずれも引用により本明細書中に組み込まれている)のいずれか1つに記載の形態、又はプロセスに従って合成されたベネトクラクスを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組合せ療法は、WO2012/071336(引用により本明細書中に組み込まれている)に記載の結晶又は塩形態のいずれかのベネトクラクスを含む。
【0077】
本発明に従った使用のための医薬として許容し得る塩は、酸性基又は塩基性基の塩を含む。医薬として許容し得る酸付加塩は、下記に限定されるものではないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシネート(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及び、パモ酸塩(即ち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))を含む。医薬として許容し得る塩は、様々なアミノ酸と共に形成することができる。好適な塩基塩は、下記に限定されるものではないが、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、及びジエタノールアミン塩を含む。
【0078】
本明細書に記載の組合せ療法における使用のためのベネトクラクスは、水和物、無水物又は溶媒和物の形態で提供されてもよい。
ベネトクラクスは、AbbVie Inc社及びGenentech社によって、ベネクレクスタ(登録商標)の商品名で市販され販売されている。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組合せは、CD70及びベネクレクスタ(登録商標)へ結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0079】
(追加的な薬剤)
本発明の組合せは、1以上の追加的な薬剤、例えば1以上の追加の抗癌剤を含むことができる。
いくつかの実施態様において、本組合せは1以上の「ヌクレオシド代謝阻害剤」(NMI)を含む。NMIは、ヌクレオチド(DNA及び/又はRNA)の後生的な修飾(例えば、メチル化、脱メチル化、アセチル化、又は脱アセチル化)を妨げる分子である。ヌクレオシド代謝阻害剤の例には、低メチル化剤(HMA)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、並びにブロモドメイン及びエクストラターミナル(BET)阻害剤が含まれる。好ましいヌクレオシド代謝阻害剤は低メチル化剤である。低メチル化剤は、DNA及び/又はRNAの正常なメチル化を阻害する。低メチル化剤の例は、アザシチジン、デシタビン及びグアデシタビンである。
【0080】
好ましい実施態様において、本発明の組合せは追加的にアザシチジン(本明細書では、アザシチジン、AZA又はazaとも呼ばれる)を含む。従って、好ましい実施態様において、本発明は、(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii)ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩; 及び(iii) アザシチジンを含む組合せを提供する。
【0081】
更に好ましい実施態様において、本発明の組合せは追加的にデシタビンを含む。従って、好ましい実施態様において、本発明は(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii)ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩; 及び(iii)デシタビンを含む組合せを提供する。
【0082】
アザシチジンはシチジンのアナログであり、デシタビンはそのデオキシ誘導体である。アザシツジン(Azacitdine)及びデシタビンは、プロモーター低メチル化により遺伝子発現をアップレギュレートすることが知られているDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)の阻害剤である。そのような低メチル化は、細胞機能を破壊し、その結果、細胞傷害効果を生じる。
【0083】
いくつかの実施態様において、本発明の組合せは追加的にシタラビンを含む。シタラビン(「シトシンアラビノース」又は「ara-C」としても知られる)は、AMLの治療に一般的に使用される化学療法薬である。高用量シタラビンは、新たに診断されたAML患者に通常使用される「7+3」標準的誘導化学療法の一部を形成する。低用量のシタラビンは、標準的な誘導化学療法への適格性を有さないAML患者に使用されてもよい。例えば、低投与量シタラビンをベネトクラクスと組合せて、標準的な誘導化学療法に不適格であると新たに診断されたAML患者に処方される。本発明の組合せは、低用量シタラビンを追加的に含むことができる。
【0084】
いくつかの実施態様において、本発明の組合せは追加の抗癌剤を含む。1以上の追加的な癌薬剤を、骨髄性悪性腫瘍、好ましくはAMLの治療に好適ないずれかの薬剤から選択することができる。好ましい薬剤は: セレクチン阻害剤(例えば、GMI-1271); FMS様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3)阻害剤(例えば、ミドスタウリン又はギルテリチニブ); サイクリン依存性キナーゼ阻害剤; アミノペプチダーゼ阻害剤; JAK/STAT阻害剤; シタラビン;フルダラビン; アントラサイクリン化合物(例えば、ダウノルビシン、イダルビシン); ドキソルビシン; ヒドロキシウレア; ビクセオス(Vyxeos); IDH1又はIDH2阻害剤、イドヒファ(Idhifa)(若しくはエナシデニブ)又はチブソボ(Tibsovo)(若しくはイボシデニブ)等; Smoothened阻害剤、グラスデギブ等; BETブロモドメイン阻害剤; CD123又はCD33標的化剤; HDAC阻害剤; LSC標的化剤; AML骨髄ニッチ標的化剤; NEDD8活性化酵素阻害剤、ペボネジスタット等; G-CSF、並びに、トポイソメラーゼ阻害剤、ミトキサントロン、セリネクソル及びエトポシド等から選択してもよい。
【0085】
(組合せの製剤)
本明細書に記載の組合せの薬剤は、それを必要とする対象又は患者、好ましくはそれを必要とするヒト対象又は患者へ施される組合せ療法を可能にする任意の様式で、組合せ又は製剤化されることができる。本組合せは、単回用量投与又は多回用量投与のために製剤化されることができる。
いくつかの実施態様において、本組合せの薬剤は、共製剤化、即ち、単独の医薬組成物として製剤化、されてもよい。薬剤が共製剤化された実施態様では、組合せ又は組成物は薬剤の同時投与に好適となる。
【0086】
好ましい実施態様において、本明細書に記載の組合せの薬剤は、個別の組成物又は医薬組成物として製剤化される。薬剤が別々に製剤化される実施態様において、異なる薬剤又は組成物を、同時又は個別に投与する可能性も存在する。異なる組成物が、個別に投与される場合、いずれの順番で薬剤が連続的投与されてもよい。薬剤の投与の間の間隔は、任意の好適な時間間隔でよい。異なる組成物の投与は、(単回用量投与のために)一度に、又は(多回用量投与のために)反復して実施されてもよい。
【0087】
本明細書に記載の組合せのCD70抗体又は抗原結合断片は、任意の好適な医薬担体、アジュバント及び/又は賦形剤を用いて製剤化されてもよい。ヒト治療用途のための抗体の製剤技術は、当分野において周知であり、例えば、Wangらの文献、(2007) Journal of Pharmaceutical Sciences,96:1-26において検証されており、その文献の内容はその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。本抗体組成物の製剤化に使用することができる医薬として許容し得る賦形剤は、下記に限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン等、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース-ベースの物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含む。
【0088】
BCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩)は、任意の適切な医薬担体、アジュバント及び/又は賦形剤を使用して製剤化してもよい。適切な薬剤には、例えば、カプセル化材料又は、吸収促進剤、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、フレーバー剤、保湿剤、潤滑剤、香料、防腐剤、噴射剤、放出剤、滅菌剤、甘味剤、可溶化剤、湿潤剤及びそれらの混合物等の添加物が含まれる。
【0089】
いくつかの実施態様において、本組成物は、対象へのいずれか好適な投与経路を介した投与のために製剤化され、その投与は、下記に限定されるものではないが、筋肉内、静脈内、皮内、腹腔内注射、皮下、硬膜外、経鼻、経口、経直腸、局所、吸入、口腔内(例えば、舌下)、及び経真皮投与を含む。いくつかの実施態様において、本組成物は、水溶液、錠剤、カプセル、粉末又は任意のその他好適な剤形として製剤化される。
【0090】
固形剤形で経口投与されるBCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)を含む組成物の調製のための賦形剤には、例えば、寒天、アルギン酸、水酸化アルミニウム、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、1,3-ブチレングリコール、カルボマー、ヒマシ油、セルロース、酢酸セルロース、カカオバター、コーンスターチ、コーン油、綿実油、クロスポビドン、ジグリセリド、エタノール、エチルセルロース、ラウリン酸エチル(ethyl laureate)、オレイン酸エチル、脂肪酸エステル、ゼラチン、胚芽油、ブドウ糖、グリセロール、地豆(groundnut)油、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イソプロパノール、等張食塩水、乳糖、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、麦芽、マンニトール、モノグリセリド、オリーブ油、落花生油、リン酸カリウム塩、じゃがいもデンプン、ポビドン、プロピレングリコール、リンゲル液、紅花油、ごま油、カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビトールナトリウム、大豆油、ステアリン酸、フマル酸ステアリル、ショ糖、界面活性剤、タルク、トラガカント、テトラヒドロフルフリルアルコール、トリグリセリド、水、及びそれらの混合物が含まれる。液体剤形で経口投与されるBCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)を含む組成物の調製のための賦形剤には、例えば、1,3-ブチレングリコール、ヒマシ油、コーン油、綿実油、エタノール、ソルビタン脂肪酸エステル、胚芽油、地豆油、グリセロール、イソプロパノール、オリーブ油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ごま油、水、及びそれらの混合物が含まれる。浸透圧的に投与されるBCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)を含む組成物の調製のための賦形剤には、例えば、クロロフルオロ炭化水素、エタノール、水及びそれらの混合物が含まれる。非経口投与されるBCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)を含む組成物の調製のための賦形剤には、例えば、1,3-ブタンジオール、ヒマシ油、コーン油、綿実油、ブドウ糖、胚芽油、地豆油、リポソーム、オレイン酸、オリーブ油、落花生油、リンゲル液、紅花油、ごま油、大豆油、米国薬局方(U.S.P.)又は等張性塩化ナトリウム溶液、水及びそれらの混合物が含まれる。
【0091】
本組合せの薬剤が別々に、即ち個別の組成物として、製剤化される実施態様において、その個別の組成物は、同じ経路での投与のために製剤化することができる。本組合せの薬剤が別々に、即ち個別の組成物として、製剤化される実施態様において、その個別の組成物は、異なる経路での投与のために製剤化することもできる。例えば、CD70抗体又は抗原結合断片は、静脈内投与用に製剤化してもよく、BCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)は経口投与用に製剤化してもよい。
【0092】
上記の通り、本発明の組合せ療法はベネクレクスタ(登録商標)を含むことができる。ベネクレクスタ(登録商標)は、AbbVie Inc社及びGenentech社によって市販され販売されるベネトクラクス製品である。ベネクレクスタ(登録商標)経口投与用錠剤は、有効成分として10、50、若しくは100 mgのベネトクラクスを含む淡黄色又はベージュ色の錠剤として提供される。各錠剤は又、次の不活性成分:コポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ポリソルベート80、フマル酸ステアリルナトリウム、及びリン酸カルシウム二塩基性を含む。更に、10 mg若しくは100 mgのコーティング錠には、下記:黄色酸化鉄、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、タルク、及び二酸化チタンが含まれる。50 mgのコーティング錠にも又、下記:黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、ポリビニルアルコール、タルク、ポリエチレングリコール及び二酸化チタンが含まれる。CD70抗体又は抗原結合断片とベネクレクスタ(登録商標)とを組合せた実施態様として、CD70抗体又は抗原結合断片は静脈内投与用に製剤化してもよい一方、ベネクレクスタ(登録商標)を上記の錠剤形態の1つ以上として提供することもできる。
【0093】
CD70抗体又は抗原結合断片及びBCL-2阻害剤(好ましくはベネトクラクス)に加えて、薬剤を含むか又はこれらからなる本発明の組合せとして、1以上の追加的な薬剤をその他の薬剤と比較して、同じ経路又は異なる経路で投与するために製剤化してもよい。例えば、本組合せが(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii)ベネトクラクス又はその医薬として許容し得るもの; 及び(iii) アザシチジンを含む好ましい実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は静脈内投与してもよく、ベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩は経口投与してもよい一方、アザシチジンを皮下注射で投与してもよい。本組合せが(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii)ベネトクラクス又はその医薬として許容し得るもの; 及び(iii) デシタビンを含む好ましい実施態様において、本抗体又は抗原結合断片は静脈内投与してもよく、ベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩は経口投与してもよい一方、デシタビンは皮下注射で投与してもよい。
【0094】
(C.治療方法)
本発明の第一の態様に従って記載された組合せ療法は、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療方法で使用することができる。
【0095】
本発明は、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片であって、BCL-2阻害剤と組合せて投与される抗体又はその抗原結合断片を提供する。本発明は又、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のためのBCL-2阻害剤であって、CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片と組合せて投与されるBCL-2阻害剤を提供する。
【0096】
好ましい実施態様において、BCL-2阻害剤は、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩である。
本発明は更に、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための、本発明の第一の態様に従った組合せを提供する。
【0097】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療方法であって、本発明の第一の態様に従った組合せを対象へ投与することを含む方法を提供する。本発明は又、ヒト対象の悪性腫瘍、特に骨髄性悪性腫瘍の治療方法であって、(i) 対象へCD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップ; 及び(ii) 対象へBCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩を投与するステップを含む方法を提供する。本方法のステップ(i)及び(ii)は、いずれの順番で行ってもよい。
【0098】
本発明の第一の態様の組合せに関して上記で記載された全ての実施態様は、同様に本明細書に記載の方法へ適用できる。
用語「悪性腫瘍」は、異常細胞が制御できない様式で増殖し、周囲組織を浸潤する疾患を包含する。身体の血液系及びリンパ系に入った悪性細胞は、体内の遠位部位へ移動し、第二部位へ転移することができる。いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、CD70、CD27、又は両方を発現している癌前駆細胞又は幹細胞の産生を含む悪性腫瘍の治療に関する。本明細書に記載される通り、アップレギュレートされたCD70発現は、腎細胞癌、転移性乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫及び鼻咽頭癌を含む、異なる種類の癌において検出される。CD70及びCD27の共発現も又、急性リンパ芽球性リンパ腫及びT細胞リンパ腫を含む造血系の悪性腫瘍において検出される。いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、CD70発現、CD27発現又は両方に関連している、前述の悪性腫瘍のいずれかの治療に関する。
【0099】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、骨髄性悪性腫瘍を治療するためのものであり、ここで骨髄性悪性腫瘍は造血幹細胞又は前駆細胞の任意のクローン性疾患を指す。本発明の方法に従って治療される骨髄性悪性腫瘍は、新たに骨髄性悪性腫瘍と診断された、又は再発性/難治性の骨髄性悪性腫瘍であってもよい。
【0100】
いくつかの実施態様において、骨髄性悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);骨髄増殖性腫瘍(MPN);慢性骨髄性白血病(CML);及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)から選択される。好適な実施態様において、骨髄性悪性腫瘍は急性骨髄性白血病(AML)である。
【0101】
骨髄性悪性腫瘍は、WHO 2008分類及びこの分類への2016年改訂と組合せたものに従って類別して診断することができ、特に引用により本明細書中に組み込まれているArberらの文献、(2016) Blood, 127(20):2391-2405を参照されたい。
【0102】
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄細胞に関する造血性新生物を指す。AMLは、低下した分化能を持つ骨髄前駆体のクローン増殖により特徴付けられる。AML患者は、骨髄中に芽球細胞の蓄積を示す。芽球細胞は又、AML患者の末梢血中にも蓄積する。典型的なAMLは、患者が骨髄中又は末梢血中に20%以上の芽球細胞を示す場合に診断される。
【0103】
WHO分類に従うと、AMLは一般的に以下のサブタイプ:反復性遺伝子異常を伴うAML;骨髄異形成関連変化を伴うAML;治療関連骨髄性腫瘍;骨髄肉腫;ダウン症候群関連骨髄増殖症;芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍;及び、分類不能のAML(例えば、急性巨核芽球性白血病、急性好塩基球性白血病)を含む。
【0104】
AMLは又、フランス-アメリカ-イギリス(FAB)分類に従って分類することもでき、これはサブタイプ:M0(急性骨髄芽球性白血病、最小分化型);M1(急性骨髄芽球性白血病、未成熟型);M2(急性骨髄芽球性白血病、顆粒球成熟型);M3(前骨髄球性白血病、若しくは急性前骨髄球性白血病(APL));M4(急性骨髄単球性白血病);M4eo(骨髄単球性、骨髄好酸球増加を伴う);M5(急性単芽球性白血病(M5a)若しくは急性単球性白血病(M5b));M6(急性赤白血病、赤白血病(M6a)及び希少純赤白血病(M6b)を含む);又はM7(急性巨核芽球性白血病)を含む。
【0105】
本明細書において使用される「AML」は、特記しない限り、WHO分類及び/又はFAB分類が包含する症状のいずれかを指す。いくつかのAMLサブタイプは、比較的予後良好のもの、一部は予後中間のもの、そして一部は予後不良のものと考えられる。当業者は、どのサブタイプがリスクのある範疇に入るであろうかを知っている。
【0106】
骨髄異形成症候群(MDS)は、異形成症、血球減少症、並びに/又は、骨髄細胞密度及び/若しくは骨髄細胞分化の異常変化、例えば芽球細胞浸潤の増大、により特徴付けられる。WHO分類に従うと、MDSは一般的に、以下のサブタイプ:単一血球系統の異形成を伴うMDS(以前は「単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症」と称され、不応性貧血、不応性好中球減少症、及び不応性血小板減少症を含む);環状鉄芽球を伴うMDS、単一血球系統の異形成を伴うサブタイプ及び多血球系統の異形成を伴うサブタイプを含む(以前は「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」と称された);多血球系統の異形成を伴うMDS(以前は「多血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症」と称された);芽球増加を伴うMDS(MDS-EB、以前は「芽球増加を伴う不応性貧血」と称された)、これは芽球パーセンテージに基づき、更にMDS-EB-1及びMDS-EB-2へと下位分類できる;単独欠損(5q)を伴うMDS;並びに、分類不能型MDSを包含する。
【0107】
MDSは又、フランス-アメリカ-イギリス(FAB)分類に従って分類することもでき、これはサブタイプ:M9980/3(不応性貧血(RA));M9982/3(環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS));M9983/3(芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB));M9984/3(移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-T));並びに、M9945/3(慢性骨髄単球性白血病(CMML))を包含する。
【0108】
本明細書において使用される「MDS」は、特記しない限り、WHO分類及び/又はFAB分類が包含する症状のいずれかを指す。AML及びMDSの両方に関して本明細書においては、WHO分類でのカテゴリー化が好ましい。
【0109】
骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、MDSに類似しているが、WHO分類に従うと、MPNは一般的に、以下のサブタイプ:慢性骨髄性白血病(CML);慢性好中球性白血病(CNL);真性赤血球増加症(PV);原発性骨髄線維症(PMF);本態性血小板血症(ET);慢性好酸球性白血病、非特定型;及び分類不能型MPNを包含している。
【0110】
慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び非定型慢性骨髄性白血病(aCML)は、WHO分類に従うとMDS/MPN障害の範疇に収まり、その理由は、これらはMDS及びMPNの間で重複する、臨床的な特徴、臨床検査における特徴及び形態学的特徴を備えた骨髄腫瘍を示すからである。
【0111】
(患者の特徴付け)
本明細書記載の方法に従って治療される患者又は対象、特にAML患者又は対象は、新たに診断された疾患、再発した疾患又は原発性難治性疾患を有することもある。
【0112】
新たに診断されたAML患者を治療するための標準アプローチは、高投与量でのシタラビン7日間、それに続くアントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン又はイダルビシン)3日間の投与を特徴とする、「標準的な7+3強化化学療法」アプローチである。強化化学療法は、AMLの完全寛解の誘導を目的として施され、典型的には化学療法が成功した後に患者は幹細胞移植を受ける意図を伴う。
【0113】
標準的な強化化学療法は、著しい毒性及び副作用と関連し、それは、これらの影響を忍容できない患者には不適切であることを意味する。これら患者は、「標準的な強化化学療法に不適格」と称される。患者は、標準的な強化化学療法に不適格であることがあり、例えば、患者がその毒性を忍容できない1以上の併存疾患を示すか、又はそれらの疾患を特徴付ける予後因子が、標準的な強化化学療法の好ましくない転帰を示す場合がある。標準的な強化化学療法に対する個々の患者の適格性の決定は、個々の患者の病歴及び臨床指針(例えば、全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)ガイドライン、これは引用により本明細書中に組み込まれている)を考慮して、臨床医により行われるであろう。60歳を超えるAML患者は、治療されるAMLの細胞遺伝子異常及び/又は分子異常を含む、考慮するべき他の要因を伴う場合は、しばしば標準的な強化化学療法に不適格と評価されることが多い。
【0114】
標準的な強化化学療法に不適格な患者は、代わりに低投与量シタラビン(LDAC)等の低強度化学療法を受けてもよい。標準的な強化化学療法に不適格であってLDACも適格ではない患者は、ヒドロキシ尿素(HU)及び輸血支援を含む、最善の支持療法(BSC)を受けることができる。
【0115】
本明細書記載の方法に従って治療される患者又は対象は、「標準的な強化化学療法に不適格」として分類されたものであってもよい。本発明の組合せは、より少ない副作用を有することが予想され得る標的化療法を含む。このように、上記で特定されたいずれかの理由のために標準的な強化化学療法に不適格とみなされる患者は、本発明の組合せで治療することができる。
【0116】
上記の通り、ベネトクラクスは、75歳以上又は強化誘導化学療法の使用を妨げる併存疾患を有する成人で新たに診断されたAMLの治療用に、アザシチジン、デシタビン又は低用量シタラビンと組合せて使用することが米国で承認されている。従って、いくつかの実施態様において、特にBCL阻害剤がベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩である実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者又は対象は、75歳以上の、新たに診断されたAML患者である。更なる実施態様において、本明細書に記載の方法に従って治療される患者又は対象は、強化誘導療法の使用を妨げる併存疾患を有している、新たに診断されたAML患者である。強化誘導化学療法の使用を妨げる併存疾患を有する患者は、少なくとも1つの下記基準: ベースライン米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスが2~3、重度の心臓若しくは肺の併存疾患、中等度の肝臓障害、又はCLcr<45 ml/分、に基づいて分類できる。このような実施態様は、本発明に従った組合せのBCL-2阻害剤が、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩である場合に特に好ましい。
【0117】
本明細書に記載の方法に従って治療される患者又は対象は、他の治療、例えば標準的な強化化学療法に適格であってもよいが、代替的な治療の選択肢として本明細書に記載の組合せ療法を受けてもよい。例えば、本明細書に記載の方法に従って治療される患者又は対象は、標準的な強化化学療法にも適格な、新たに診断されたAML患者であってもよい。
【0118】
(追加的な治療薬)
本明細書に記載の方法は、1以上の追加の治療薬、例えば追加の抗癌剤の投与を含むことができる。いくつかの実施態様において、本方法は、骨髄性悪性腫瘍の治療における使用のための1以上の薬剤、例えばAMLの治療における使用に好適な薬剤、の投与を含む。このような薬剤は、下記に限定されるものではないが:セレクチン阻害剤(例えば、GMI-1271); FMS様チロシンキナーゼ受容体3(FLT3)阻害剤(例えば、ミドスタウリン若しくはギルテリチニブ); サイクリン依存性キナーゼ阻害剤; アミノペプチダーゼ阻害剤; JAK/STAT阻害剤; シタラビン;フルダラビン;アントラサイクリン化合物(例えば、ダウノルビシン、イダルビシン); ドキソルビシン; ヒドロキシウレア; ビクセオス(Vyxeos); IDH1又はIDH2阻害剤、イドヒファ(Idhifa)(若しくはエナシデニブ)又はチブソボ(Tibsovo)(若しくはイボシデニブ)等; Smoothened阻害剤、グラスデギブ等;BETブロモドメイン阻害剤、CD123又はCD33標的化剤; HDAC阻害剤;LSC標的化剤、AML骨髄ニッチ標的化剤; NEDD8活性化酵素阻害剤、ペボネジスタット等; G-CSF、並びに、トポイソメラーゼ阻害剤、ミトキサントロン、セリネクソル及びエトポシド等、を含む。
【0119】
好ましい実施態様において、本明細書に記載の方法は、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくは低メチル化剤である更なる薬剤の投与を含む。特に好ましい低メチル化剤は、アザシチジン及びデシタビンである。上記の通り本明細書では、いくつかの実施態様において、(i) CD70抗体又はその抗原結合断片; 及び(ii)BCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくは医薬として許容し得る塩を含む本発明の組合せは、追加的な薬剤、例えばアザシチジン若しくはデシタビンを含むように製剤化してもよい。
【0120】
或いは、本組合せが(i) CD70へ結合する抗体又は抗原結合断片; 及び(ii)BCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩からなる実施態様において、対象へその組合せを投与する方法は、追加的な薬剤、例えばアザシチジン若しくはデシタビン投与する更なるステップを含むこともできる。従って、好ましい実施態様において、本発明は、ヒト対象の骨髄性悪性腫瘍、好適にはAMLを治療する方法であって、対象へ:(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii) BCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩; 及び(iii) アザシチジン若しくはデシタビンを投与すること、を含む方法を提供する。同様に、本明細書で提供されるのは、ヒト対象の骨髄性悪性腫瘍、好適にはAMLの治療における使用のための組合せであって:(i) CD70へ結合する抗体又はその抗原結合断片; (ii) BCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩; 及び(iii) アザシチジン若しくはデシタビン、を含む組合せである。
【0121】
(投与用量)
実施例で示されるように、本発明の組合せはAML細胞に有効な相乗的治療を示す―即ち、本組合せによって誘導される阻害のレベルは単剤療法単独の効果の相加よりも大きい。
【0122】
相乗的相互作用の決定法は、当業者に公知であり、実施例に記載した。組合せで相乗効果が生じたか否かを決定する好適な方法は、Chou-Talalay法(Chou, TC.の文献、Cancer Res.2010 Jan 15;70(2):440-6、引用により本明細書中に組み込まれている)である。
【0123】
Chou-Talalay法においては、CI<1は相乗効果を示し、CI=1は相加効果を示し、CI>1は拮抗作用を示す。図1に示されるように、本発明の組合せから生じる相乗効果の存在及び範囲は、組合せの阻害的効果の強さに従い変化する。組合せの阻害的効果自体の強さは、組合せの合計濃度に依存する。
【0124】
従って好ましくは、本発明の全ての見地での実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量、並びにBCL-2阻害剤が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量は、それぞれその組合せが相乗的な治療を提供する-即ち、その組合せがChou-Talalay法で決定される1未満のCIを示す、ように選択される。好ましい投与用量は、組合せが0.5未満のCIを示すものである。
【0125】
好ましくは、いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量、並びにBCL-2阻害剤が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量は、その組合せがChou-Talalay法で決定されるCIが1未満及びFaが>0.5を示すようにそれぞれ選択される。
【0126】
本実施例で示されるように、相乗効果も又、抗CD70抗体(ARGX-110)、BCL-2阻害剤(ベネトクラクス)及びHMA(デシタビン)の組合せで観察された。従って、本発明の見地でのいくつかの好ましい実施態様において、本組合せがHMAを含む場合、CD70抗体又はその抗原結合断片が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量、BCL-2阻害剤が本組合せで投与及び/若しくは提供される用量、並びにHMAが本組合せで投与及び/若しくは提供される用量は、その組合せが治療で相乗効果を提供するようにそれぞれ選択される。
【0127】
CD70抗体、特にARGX-110は、骨髄性悪性腫瘍、特にAMLの治療に比較的低用量でも有効であることがわかった。従って、本発明の全方法のいくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、1用量当たり0.1 mg/kg~25 mg/kgの範囲、例えば0.1 mg/kg~20 mg/kgの範囲の用量で投与される。いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、1用量当たり1 mg/kg~20 mg/kgの範囲の用量で投与される。本明細書に記載の範囲は、特記しない限り範囲の終点を含む。例えば、0.1~25 mg/kgの範囲の用量の投与は、0.1 mg/kg用量での投与及び25 mg/kg用量での投与を含み、かつ二つの終点の間の全ての用量での投与も含む。
【0128】
本発明の方法のいくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、0.1 mg/kg~15 mg/kgの範囲の用量で投与される。いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、0.5 mg/kg~2 mg/kgの範囲の用量で投与される。いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、1 mg/kg、3 mg/kg、10 mg/kg、若しくは20 mg/kgの用量で投与される。いくつかの好ましい実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、1 mg/kgの用量で投与される。いくつかの好ましい実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片は、10 mg/kgの用量で投与される。
【0129】
いくつかの実施態様において、CD70抗体又は抗原結合断片の多回用量の投与が行われる。いくつかのこのような実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片のそれぞれの用量投与は、10~20日、任意で12~18日の間隔を空ける。いくつかの実施態様において、抗CD70抗体のそれぞれの用量投与は、14~17日の間隔を空ける。
【0130】
本組合せのBCL-2阻害剤、好ましくはベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩は、その化合物が有効であるように決定された任意のレジメンに従って投与され得る。AML治療におけるベネクレクスタ(登録商標)の使用のためにFDAが規定した情報では、増量期、それに続く維持期を有する投薬スケジュールを提案している。ベネクレクスタ(登録商標)がアザシチジン又はデシタビンと組合せて処方される場合は、投薬スケジュールは:第1日に100 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与;第2日に200 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与;第3日に400 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与; そしてその後は、毎日400 mgのベネクレクスタ(登録商標)を75 mg/m2のアザシチジン又は20 mg/m2のデシタビンと組合せて、疾患進行又は許容できない毒性が観察されるまで投与することからなることが推奨される。ベネクレクスタ(登録商標)を低用量シタラビンと組合せて処方する場合、投薬スケジュールは:第1日に100 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与;第2日に200 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与;第3日に400 mgのベネクレクスタ(登録商標)投与; そしてその後は、毎日600 mgのベネクレクスタ(登録商標)を20 mg/m2と組合せて、疾患進行又は許容できない毒性が観察されるまで投与することからなることが推奨される。
【0131】
いくつかの実施態様において、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩の、個々の投与用量、例えば経口での投与用量は、100mg~600mgの範囲である。いくつかの実施態様において、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩は、一日あたり400mg用量で投与される。いくつかの実施態様において、ベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩は、一日あたり600mg用量で投与される。前記記載のように、ベネトクラクスの一日あたり固定用量での投薬は、その前に例えば3日間の増量期間を置くことができ、その期間中、維持期間の毎日投与用量へ達するまで増加するベネトクラクス投与用量を患者へ投与する。
【0132】
本組合せがヌクレオシド代謝阻害剤を含む、又は本方法がヌクレオシド代謝阻害剤を投与することを含む本発明の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は1日あたり20~100 mg/m2の範囲の用量で投与されてもよい。既に記載したとおり、本明細書に記載の範囲は、特記しない限り範囲の終点を含む。例えば、1日あたり20~100 mg/m2の範囲の用量の投与は、1日あたり20mg/m2用量での投与及び1日あたり100 mg/m2用量での投与を含み、かつ二つの終点の間の全ての用量での投与も含む。
【0133】
いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤はアザシチジンであり、1日あたり70~80 mg/m2の範囲の用量で投与される。いくつかの好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤はアザシチジンであり、1日あたり75 mg/m2の用量で投与される。
【0134】
いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤はデシタビンであり、1日あたり15~25 mg/m2の範囲の用量で投与される。いくつかの好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤はデシタビンであり、1日あたり20 mg/m2の用量で投与される。
【0135】
本発明の組合せがヌクレオシド代謝阻害剤を含む、又は本方法がヌクレオシド代謝阻害剤を投与することを含む本発明の実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は5~10日間の毎日投与用量で投薬期間にわたり投与されてもよい。即ち、ヌクレオシド阻害剤の1の投与用量が、ある期間又は5、6、7、8、9若しくは10日間の長さで毎日投与される。いくつかの好ましい実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、7日間の毎日投与用量で投薬期間にわたり投与される。好ましいヌクレオシド代謝阻害剤はアザシチジンである。
【0136】
いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤は、1回の投薬期間の終了時及び次の投薬期間の開始時は18~25日の間隔が置かれる反復投薬期間の投薬レジメンに従って投与される。即ち、投薬レジメンは、ヌクレオシド阻害剤の1回用量が毎日投与される(例えば、5、6、7、8、9又は10日間)少なくとも2回の投薬期間を含み、1回の投薬期間の終了時及び次の投薬期間の開始時は、18、19、20、21、22、23、24、又は25日の間隔が置かれる。いくつかの実施態様において、1回の投薬期間の終了時及び次の投薬期間の開始時は21日間の間隔が置かれる。
【0137】
いくつかの実施態様において、それぞれの投薬期間は同一の長さ(例えば7日)である。いくつかの実施態様において、それぞれの投薬期間の終了時及び次の投薬期間の開始時の間には同じ日数(例えば21日)の間隔が置かれる。
【0138】
いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の最初の投与用量は、CD70抗体又はその抗原結合断片の最初の用量投与の7~21日後に投与される。いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の最初の投与用量は、CD70抗体又はその抗原結合断片の最初の用量投与の10~17日後に投与される。いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の最初の投与用量は、CD70抗体又はその抗原結合断片の最初の用量投与の14日後に投与される。
【0139】
いくつかの実施態様において、ヌクレオシド代謝阻害剤の毎日投与用量の一つは、CD70抗体又はその抗原結合断片の投与用量と同日に投与される。即ち、対象へCD70抗体(又はその抗原結合断片)及びヌクレオシド代謝阻害剤の両方を投与する本発明の方法の実施態様において、CD70抗体及びヌクレオシド代謝阻害剤両方の投薬レジメンが、CD70抗体の予定された用量投与の少なくとも1つが、ヌクレオシド代謝阻害剤の予定された毎日用量投与の1つと同日であるものである。その日は、ヌクレオシド代謝阻害剤の投薬期間の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目又は7日目であってもよい。
【0140】
いくつかの実施態様において、CD70抗体又はその抗原結合断片の投与用量は、毎日14~17日間投与され、ヌクレオシド代謝阻害剤は、毎日投与用量7日間の反復投薬期間の投薬レジメンに従って投与され、ここで、1の投薬期間の終了時及び次の投薬期間の開始時は21日の間隔を置き、最初の投薬期間の最初の毎日投与用量は、抗CD70抗体又はその抗原結合断片の最初の用量投与の14日後に投与される。
【0141】
いくつかの実施態様において、1の患者治療サイクルは28日からなり、ヌクレオシド代謝阻害剤、好ましくはアザシチジン又はデシタビンは、サイクルの第1日目に開始される5、6、7、8、9又は10日間、毎日投与される。本明細書に記載の治療方法は、複数の治療サイクルを含み得る。それぞれの治療サイクルは、その前の治療サイクルの複製であってもよい。いくつかの実施態様において、CD70抗体、BCL阻害剤(好ましくはベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩)及びアザシチジンで治療される患者は、28日からなるサイクルで治療され、その28日間サイクルの最初の7日間にアザシチジンが毎日投与される。いくつかの実施態様において、CD70抗体、BCL阻害剤(好ましくはベネトクラクス又はその医薬として許容し得る塩)及びデシタビンで治療される患者は、28日からなるサイクルで治療され、その28日間サイクルの最初の5日間にデシタビンが毎日投与される。患者が28日間サイクルで、CD70抗体、BCL阻害剤(好ましくはベネトクラクス若しくはその医薬として許容し得る塩)及びヌクレオシド代謝阻害剤(好ましくはアザシチジン若しくはデシタビン)で治療される実施態様において、CD70抗体はその28日間サイクルの第3日及び/又は第17日に投与されてもよい。好ましい実施態様において、CD70抗体はARGX-110である。更に好ましい実施態様において、CD70抗体(例えば、ARGX-110)は、10 mg/kgの用量で投与される。
【0142】
本発明の更なる利点は、組合せ療法の最初の期間に続くNMI(例えば、アザシチジン)の投与を漸減又は停止できることである。長期間のNMI治療から生じる蓄積された毒性、例えば、非芽球細胞種に対するNMIの影響から生じる血球減少症等、の可能性が存在する。従って、最初の期間後のNMIの投与用量の漸減又は停止によってそのような毒性のリスクが減少し、非芽球細胞種が回復できるであろう。いくつかの実施態様において、本発明に従った治療は、患者へCD70抗体、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラクス)及びNMIを、上記記載の実施態様のいずれかに従った組合せ療法として、第一ステージ(誘導療法)において投与し、次の第二ステージにおいて患者へCD70抗体、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラクス)及びNMIを組合せ療法として投与することを含むが、第二ステージ(維持療法)のNMIの用量は、第一ステージで投与されるNMIの用量より少ない。第二ステージでのNMIの用量はゼロでもよい。
【0143】
このような実施態様において、第二ステージ(即ち、維持療法)で投与されるCD70抗体の用量は、既に記載した実施態様に従った任意の用量である。即ち、いくつかの実施態様において、投与用量は0.1 mg/kg~25 mg/kg、例えば0.1 mg/kg~20 mg/kg、例えば1 mg/kg~20 mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様において、投与用量は1用量当たり0.1 mg/kg~15 mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様において、投与用量は0.5 mg/kg~2 mg/kgの範囲である。いくつかの実施態様において、投与用量は1 mg/kg、3 mg/kg、10 mg/kg、又は20 mg/kgである。いくつかの実施態様において、投与用量は1 mg/kgである。いくつかの実施態様において、投与用量は10 mg/kgである。
【0144】
第一ステージ(即ち、誘導療法)の期間、第二ステージ(即ち、維持療法)への移行タイミング及びNMIの用量を漸減又は完全に停止する限度は、個々の患者に応じて調整される因子であり、個々の患者の療法への応答及びその病歴に応じて、その臨床医によって決定される。従って次の実施態様は非限定的実施例として提供される。
いくつかの実施態様において、誘導療法は、患者へ、その骨髄及び/又は末梢血芽球パーセンテージが10%未満、任意で5%未満となるまで施される。いくつかの実施態様において、誘導療法は、少なくとも5回のNMI投薬期間、任意で少なくとも6、7、8、9、又は少なくとも10回のNMI投薬期間で施される。
【0145】
いくつかの実施態様において、維持期間におけるNMIの用量は1日あたり50 mg/m2を超えず、任意で1日あたり40 mg/m2を超えず、任意で1日あたり30 mg/m2を超えず、任意で1日あたり20 mg/m2を超えない。いくつかの実施態様において、維持期間におけるNMIの用量はゼロである。
【0146】
本明細書の他の箇所で説明される通り、本組合せの薬剤は、任意の好適な投与経路による投与のために製剤化されてもよい。従って、本発明の方法に従った薬剤の投与は、任意の好適な経路を介することができ、個々の薬剤が同じ経路を経由する必要はない。例えば、CD70抗体又はその抗原結合断片を静脈内投与する一方、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラクス)を経口投与してもよい。患者又は対象へアザシチジン又はデシタビン等の低メチル化剤を投与する実施態様においては、これら薬剤を、注射によって静脈内又は皮下に投与することもできる。
【0147】
(治療効果)
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、患者の芽球カウント、即ち芽球細胞の数、のモニタリングを含む。本明細書で使用される「芽球細胞」又は「芽球」は、骨髄内の骨髄前駆細胞である骨髄芽球又は骨髄系芽球を指す。健常個体において、芽球は末梢血循環中には認められず、骨髄中には5%未満の芽球細胞が存在する。骨髄性悪性腫瘍の、特にAML及びMDSの罹患対象において、破壊された分化能を持つ異常な芽球の産生増大があり、これら異常芽球の過剰生成は、患者の末梢血循環若しくは骨髄又はこれら両方中の芽球カウントをモニタリングすることにより、検出することができる。
【0148】
骨髄又は末梢血中の芽球細胞の比率は、当分野において公知の方法、例えば、対象の骨髄生検若しくは末梢血スメアから得られた細胞のフローサイトメトリー評価又は細胞の細胞形態評価により評価することができる。芽球の比率は、サンプル中の全細胞に対して決定される。例えば、フローサイトメトリーを使用して、全細胞数に対するCD45dim、SSClow細胞の数を用い、芽球細胞の比率を決定することができる。更なる例として、細胞の形態評価は、検査視野中の細胞の総数に対し、形態的に同定された芽球の数を決定するために、使用することができる。
【0149】
いくつかの実施態様において、骨髄中の芽球細胞の比率を、25%未満、20%未満、例えば10%未満まで減少させる方法が提供される。いくつかの実施態様において、骨髄中の芽球細胞の比率を、5%未満まで減少させる方法が提供される。いくつかの実施態様において、骨髄中の芽球細胞の比率を、約5%~約25%に減少させる方法が提供され、ここで又、本方法を実行する前(若しくは治療前)の骨髄芽球細胞パーセンテージと比べた骨髄芽球細胞のパーセンテージは、50%を超えて減少する。
【0150】
いくつかの実施態様において、末梢血中の芽球細胞の比率を、25%未満、20%未満、例えば10%未満にまで減少させる方法が提供される。いくつかの実施態様において、末梢血中の芽球細胞の比率を、5%未満にまで減少させる方法が提供される。いくつかの実施態様において、末梢血中の芽球細胞の比率を、約5%~約25%に減少させる方法が提供され、ここで又、本方法を実施する前(若しくは治療前)の末梢芽球細胞のパーセンテージと比べて末梢血芽球細胞の比率の減少は、50%を超えて減少する。
芽球細胞パーセンテージの臨床決定のために、典型的には細胞の形態(細胞形態学としても知られる)評価が好ましい。
【0151】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、完全奏効を誘導する。AML治療の文脈において、完全奏効又は「完全寛解」は:骨髄芽球<5%;循環芽球及びアウエル小体を伴う芽球の不存在;髄外性疾患の不存在;ANC≧1.0×109/L(1000μL);血小板カウント≧100×109/L(100,000μL);として定義され、これについてはDohnerらの文献、(2017) Blood, 129(4):424-447を参照されたい。
【0152】
本方法は、血小板回復を伴う完全奏効、即ち血小板カウントが>100×109/L (100,000/μL)である応答、を達成することができる。これらの方法は、好中球回復を伴う完全奏効、即ち好中球カウントが>1.0×109/L(1000/μL)である応答、を達成することができる。その代わりに又はそれに加えて、本方法は、8週間又はそれよりも長く、10週間又はそれよりも長く、12週間又はそれよりも長く、赤血球細胞若しくは血小板又はそれら両方の輸血依存離脱を誘導することができる。
【0153】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、陰性である微小残存病変又は測定可能残存病変(又はMRD)状態を誘導するが、これについてはSchuurhuisらの文献、(2018) Blood, 131(12): 1275-1291を参照されたい。
いくつかの実施態様において、本明細書記載の方法は、最少残存病変を伴わない完全奏効(CRMRD-)を誘導し、これについては前掲のDohnerらの文献を参照されたい。
【0154】
本方法は、部分奏効を達成するか、又は部分寛解を誘導することができる。AML治療の文脈において、部分奏効又は部分寛解は、骨髄芽球パーセンテージが5%~25%減少し、そして治療前骨髄芽球パーセンテージの減少が少なくとも50%となることを含み、これについては前掲のDohnerらの文献を参照されたい。
【0155】
本明細書記載の方法は、生存期間を延長することができる。本明細書において使用する用語「生存期間(survival)」は、全生存期間、生存期間1年、生存期間2年、生存期間5年、無事象生存期間、無増悪生存期間を指す。本明細書記載の方法は、治療される特定疾患又は症状のためのゴールドスタンダード治療と比べて、生存期間を延長することができる。ゴールドスタンダード治療は又、最良実践、標準ケア、標準的医療ケア又は標準療法としても定義できる。いずれか所定の疾患のために、例えば様々な国において異なる臨床実践に応じた1以上のゴールドスタンダード治療があるだろう。骨髄性悪性腫瘍に関して既に利用可能であるこれらの治療は多様であり、化学療法、放射線治療、幹細胞移植及びいくつかの標的化療法を含む。更に、米国及び欧州両方の臨床指針は、骨髄性悪性腫瘍、例えばAMLの標準治療を管理しており、これについてはO’Donnellらの文献、(2017) Journal of the National Comprehensive Cancer Network, 15(7):926-957、及びDohnerらの文献、(2017) Blood, 129(4):424-447を参照し、これらは両方共引用により組み込まれている。
本発明の方法は、骨髄性悪性腫瘍のためのいずれかの標準治療を受けている患者に比べ、生存期間を延長又は改善することができる。
【0156】
本明細書記載の方法は、患者又は対象を骨髄移植に供する更なるステップを含むことができる。
本明細書記載の方法は又、骨髄性悪性腫瘍を有する患者又は対象を骨髄移植のために準備させるために、使用することもできる。前記記載のように、本発明の方法は、骨髄又は末梢血中の芽球細胞の絶対数又は相対数を減少させるために、実行することができる。いくつかの実施態様において、本方法は、移植前の骨髄及び/又は末梢血中の芽球細胞カウントを減少させるために実行される。本方法は、患者又は対象を骨髄移植の準備のために、芽球細胞カウントを5%未満まで減少させるために使用することができる。
【0157】
(D. キット)
本明細書記載の組合せは、使用説明書を含むように包装されたキットの形状で提供されてもよい。
【0158】
(参考文献の組込み)
様々な刊行物が、前述の説明において及び以下の実施例を通じて引用されており、その各々は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【実施例
【0159】
(実施例)
最近の第I相臨床試験において、高齢かつ不適合なAML患者を、ADCC活性増強ヒト化モノクローナル抗CD70抗体(mAb)クサツズマブ(本明細書ではARGX-110とも呼ばれる)をHMAと組合せて治療すると、臨床活性及び好ましい忍容性プロファイルを約束することが示された。
【0160】
BCL-2アンタゴニストであるベネトクラクスは、ケア標準と組み合わせた第I及び第II相臨床試験における高齢のAML患者で、酸化的リン酸化の抑制により白血病幹細胞(LSC)を標的にして排除して非常に有望な活性を示した(Pollyeaらの文献、Nature Medicine(2018)24; 1859-1866)。しかし、ベネトクラクス等の新規な薬剤を併用しても、難治性又は再発性となる患者が依然として存在する。ベネトクラクスを、異なってはいるが補完的な作用機構を伴うクサツズマブと組み合わせると、LSCの排除が成功可能であろうとの仮説が立てられた。
【0161】
(方法)
この仮説を検証するために、薬剤組合せ研究をChou-Talalay法(Chou TCの文献、Cancer Research(2010)70(2); 440-6)に従って、MOLM-13、NB-4、及びNOMO-1細胞等のCD70発現AML細胞株においてインビトロで実施した。MOLM-13 AML細胞はFLT3-ITDを発現し、NOMO-1細胞はt(9; 11)(p22; q23)を発現する。これらそれぞれの遺伝的異常は、患者の転帰に予後不良をもたらす。NB-4は急性前骨髄球性白血病(APL)細胞株であり、このAPLはAML患者のサブセットである。注目すべきことに、NOMO-1細胞及びMOLM-13細胞は、mRNA及びタンパク質濃度において測定される高レベルのCD70を発現する。MOLM-13 AML細胞も又BCL-2を発現し、BCL-2阻害に敏感である(Linらの文献、Scientific Reports(2016)6; 27696)。
【0162】
MOLM-13細胞(Matsuoらの文献、Leukemia (1997) 11 (9): 1469-77)、NOMO-1細胞(Katoらの文献、Acta Haematol Jpn, 1986)、MV4-11細胞及びNB4細胞(Lanotteらの文献、Blood (1991) 77 (5); 1080-86)は、ATCCから購入した。細胞株をマイコプラズマフリー検査し、ATCCが推奨するFCS含有培地で、GlutaMAXサプリメント、100 U / mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含む95%空気及び5%CO2の加湿雰囲気で37℃で培養増殖した。
【0163】
最初に、それぞれのAML細胞株からの細胞を、デシタビン、クサツズマブ又はベネトクラクス単独で処置し、それぞれの処置に対してのIC50を決定した。105 個のAML細胞を、健常個体由来のCFSE標識化NK細胞の存在下(1:1比)、クサツズマブ(0.1、1.0及び10 μg/ml)、ベネトクラクス(0.5及び200 nM)、デシタビン(0.01~1μM)の濃度範囲、又はビヒクルで処置した。このアッセイは3連で行った。
【0164】
IC50決定により、次に続く相乗効果実験のための下記作業濃度を特定した:
(1) IC50、MOLM-13細胞:(デシタビン:0.01 nM、ベネトクラクス: 0.42 nM、クサツズマブ: 0.68 μg/ml)
(2) IC50、NOMO-1細胞:(デシタビン: 0.001 nM、ベネトクラクス: 3.4 nM、クサツズマブ: 0.14 μg/ml)
(3) IC50、NB4細胞:(デシタビン: 4.8 nM、ベネトクラクス: 17.3 nM、クサツズマブ: 0.3 μg/ml)
(4) IC50、MV4-11細胞:(デシタビン: 2.36 nM、ベネトクラクス: 5 nM、クサツズマブ: 1.2 μg/ml)。
【0165】
相乗効果を決定するために、等効力比(IC501/IC502、又はIC501/IC502/IC503)で、各薬剤が細胞死滅に等しく寄与するような一定の組合せ比実験を実施した。組合せ剤の用量反応は、既に説明されているように(Rietherらの文献、Sci Transl Med(2015) 7(298); 298ra119)、全ての用量/用量の組合せについて2連の技術的複製で評価した。
【0166】
NOMO-1、MOLM-13、NB-4又はMV4-11のAML細胞株を、ビヒクル、デシタビン、クサツズマブ若しくはベネトクラクス単独、ベネトクラクス及びデシタビン、デシタビン及びクサツズマブ、若しくはベネトクラクス及びクサツズマブそれぞれ二種の組合せ、又はデシタビン、クサツズマブ及びベネトクラクス三種の組合せで処置した。全ての組合せを、三種の高濃度及び三種の低濃度(特定されたIC50よりも、高い濃度及び低い濃度)で、一定比で試験した。細胞はCFSE標識化NK細胞(1:1比)の存在下で培養した。アネキシンV染色72 時間後に生存AML細胞数を評価し、薬剤処置の効果を、ビヒクル処置した細胞に対する生存細胞比率として算出した。
【0167】
組合せインデックス(CI)を、CompuSynソフトウェアを使用して算出して作用比率(Fa)値に対してプロットした。全ての組合せにおける組合せインデックス(CI)を作用比率(Fa)に対してプロットした結果を図1に示し、個々の組合せについては図2に示す。
【0168】
0、0.5、及び1のFa値は、0%、50%、及び100%の死滅細胞に対応する。1未満のCI、1であるCI、1を超えるCIは、それぞれ相乗作用、相加作用、及び拮抗作用を表す。IC50は、それぞれのIC50濃度の組合せに到達するFa値を表す。相乗作用を評価するFa-CIプロット法の原理及び利点は、例えばChou TCの文献、Cancer Research(2010)70(2); 440-6及びZhaoらの文献、Front Biosci(Elite編).(2010) 2; 241-249で提供されている(これらそれぞれは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0169】
上記に加え、クサツズマブ/ベネトクラクス組合せ及びクサツズマブ/ベネトクラクス/HMA組合せの効果を、AML患者由来の原発性LSCで試験した。原発性CD34CD38白血病幹細胞(LSC)を、新たに診断されたAML患者から単離し、クサツズマブ、デシタビン、若しくはベネトクラクス単剤療法又はその組合せで処置した。次に、LSCのコロニー形成能及び再播種能に対する効果を評価した。
【0170】
特別に、3人のAML患者(P1、P2及びP3)由来のCD34CD38AML LSCを、NK細胞(1:1比)の存在下でクサツズマブ(Cusa: 0.3 μg/ml)又はベネトクラクス(Ve: 6nM)と共にそれぞれ二連で、単剤として一晩培養又は組合せて一晩培養し、続いてメチルセルロースに播種した。更に2人のAML患者(P4及びP5)由来のCD34CD38AML LSCを、NK細胞(1:1比)の存在下でクサツズマブ(Cusa: 0.3 μg/ml)、デシタビン(0.01μM)、又はベネトクラクス(Ve: 6nM)と共に、単剤として又は組合せて一晩培養した。14日後にコロニー形成を評価した。
【0171】
(結果)
(1. クサツズマブはベネトクラクス及び/又はデシタビンと組合せて使用すると、インビトロでAML細胞株を排除する場合に相乗効果を示した)
クサツズマブと組合せたベネトクラクス及び/又はデシタビンは、CD70発現 NOMO-1 AML細胞を広い用量範囲で相乗的に排除した(図1及び図2B~Dを参照)。
【0172】
より腫瘍死滅に関連するより高い効果レベル(Fa>0.7)(Chouの文献、2010)で、本組合せは強力な相乗効果を示した。重要なことには、ベネトクラクス及びクサツズマブ(Ven/Cusa)並びにベネトクラクス、クサツズマブ及びデシタビン(Ven/Cusa/Dec)のCIは0.1に近く、非常に強力な相乗効果を示した。ベネトクラクス及びデシタビン(Ven/Dec)並びにクサツズマブ及びデシタビン(Cusa/Dec)も又、最大限のCIが約0.5で、高い効果レベルの相乗効果を達成した。Ven/Cusa組合せの相乗効果は、Ven/Cusa/Dec組合せで観察された相乗効果と似ていた。
【0173】
同様の結果がNB4及びMV4-11のAML細胞株で観察され、全てのクサツズマブの組合せが高い効果レベル(Fa>0.5)で強力な相乗効果を示した(図3及び図5を参照)。
【0174】
MOLM-13細胞株では、二種の組合せ全てが、より低い効果レベルで相乗効果を示した。ベネトクラクス/デシタビン及びクサツズマブ(cusatutzumab)/デシタビンは、それぞれ0.4のFa及び0.6のFaより下の薬剤濃度でのみ相乗効果を示した。より腫瘍死滅に関連する高めの効果レベル(Faが約0.7~0.8)では、クサツズマブ(cusatutzumab)/ベネトクラクスの組合せは強力な相乗効果を示したが(図4を参照)、最大の効果レベルではいくらかの拮抗作用が観察された。ベネトクラクス、デシタビン及びクサツズマブ3種の組合せは、全ての効果レベルで低レベルの拮抗作用を示した。
【0175】
(2. クサツズマブはベネトクラクス及び/又はデシタビンと組合せて使用すると、インビトロで原発性ヒトAML白血病幹細胞(LSC)を排除する場合に相乗効果を示した)
クサツズマブ/ベネトクラクス組合せの原発性ヒトAMLに対する効果を評価するために、5人のAML患者(P1~P5)由来のLSC、CD34 CD38 LSCを処置した。患者の特徴を下記に示す。
【0176】
(表2:患者P1-P5の特徴)
【表2】
【0177】
患者P1、P2及びP3の結果を、図6及び図7に示す。図6は、処置後に形成されたウェル当たりのコロニーの絶対数を示し、LSC数の指標である。図7は、それぞれの患者のビヒクル処置群でのウェル当たりのコロニー平均値の比率として示した同一データを示す。
【0178】
図6及び7は、AML細胞株で観察されたクサツズマブ及びベネトクラクスの間での相乗効果は、いずれかの単独処置と比較して、強力かつ有意なLSC数の減少として現れることを示す(図6A及び図7A)。
図6B及び7Bは、LSC数を減少させる効果は、第一コロニーを処置分子の不存在下で再播種したときにも維持されたことを示す。
【0179】
患者P4及びP5の結果を図8に示す。これらの患者では、クサツズマブ、デシタビン及びベネトクラクス3種の組合せは、クサツズマブ及びベネトクラクス2種の組合せと同じ有効性を示した。これは、3種の組合せはVen/Cusaの組合せ(図1)と比べると相乗効果の増加が観察されなかった事実と一致する。
【0180】
(3.ベネトクラクスはCD70発現を増大する)
CD70の発現に対するベネトクラクスの効果を、mRNA及びタンパク質両方のレベルで評価した。結果を図9及び図10に示し、ベネトクラクスの存在下では、AML細胞においてCD70発現がアップレギュレートされたことが明らかに示された。
【0181】
(結論)
本実験は、クサツズマブ及びベネトクラクス並びに/又は低メチル化剤(例えば、アザシチジン若しくはデシタビン)での組合せ療法が、それぞれの単剤療法単独よりも効果的なAML治療を提供できるかどうかを決定するために実施した。更に、本組合せ治療が相乗的治療効果を示すことができるかどうかも探求した。
【0182】
組合せインデックス(CI)値はChou-Talalay法によって提供され、薬剤の組合せが相乗的、相加的、又は拮抗的様式で相互作用するかどうかを判断するための確立された手段である。ベネトクラクス及びクサツズマブが相乗的様式で作用する可能性があるとの仮説を示したが、その理由は機構的に、ベネトクラクスでの治療がAML細胞でCD70のアップレギュレーションをもたらすことを示せたからである(図9及び10)。これは、ベネトクラクスがLSCをクサツズマブによる細胞溶解性死滅を受けやすくすることを意味するだろう。しかし、Chouの文献、2010(Chou Cancer Res.(2010)Jan 15; 70(2):440-6、引用により本明細書中に組み込まれている)に記載されているように、個々の薬剤が作用する機構についてある程度の知識がある場合でも、薬剤間の相乗効果を予測することは困難である。
【0183】
図1~5に示したデータは、Ven/Cusaの組合せは、AML細胞に対して、特に高い効果レベルで、強い相乗効果を示したことを明らかにする。強力な相乗効果は、更に低メチル化剤としてデシタビンを含む3種の組合せで維持された。
【0184】
この相乗効果は、これら薬剤を組合せた場合に、単剤療法で同一の効果を達成するために必要な濃度と比較して、有意に低いそれぞれの薬剤濃度が使用できることを示すので、特に有利である。
【0185】
細胞株実験がベネトクラクス/クサツズマブの組合せの強い相乗効果を示したため、この組合せを原発性AML LSCで試験した。原発性LSCは、潜在的な治療効果の厳密でより臨床的に関連する評価を提供するが、それはこれらの細胞がAMLの異常な増殖特性を促進するからである。
【0186】
細胞株で観察されたVen/Cusa組合せ療法の相乗効果は、ヒト患者由来の原発性AML白血病幹細胞(LSC)の強力な減少として現れた(図6~8)。これらのデータは、全ての患者サンプルについて、組合せ療法がいずれかの療法単独よりもある程度有意に大きくLSCコロニー形成を阻害したことを示す。このデータがVen/Cusa組合せの成分間の相乗効果を示すことは明らかである(利用可能な原発性細胞数が少ないため、Chou-Talalay法を使用して相乗効果を試験することはできなかった)。
【0187】
LSC機能に対するクサツズマブ/ベネトクラクス処置の効果を、インビトロで逐次的再播種実験によって、より厳格な方法で分析した場合、第一播種後に観察された組合せ処置後のコロニー形成障害は、次に続いた再播種中も維持された。これは、クサツズマブ及びベネトクラクスが再播種中に存在しなかったにも拘らず、LSC及びその増殖能の効果的な減少を示したケースである。
【0188】
3種の組合せであるクサツズマブ/ベネトクラクス/デシタビンは、クサツズマブ/ベネトクラクス組合せ治療と同じ程度に、原発性ヒトLSCのコロニーを減少させ、かつ再播種能を低下させた。従って、デシタビン等のHMAを含む必要なしに、クサツズマブ及びベネトクラクスの組合せを使用してAMLの効果的な治療を達成でき、それによって患者の毒性療法への曝露を減らすことができるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022515077000001.app
【国際調査報告】