(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】マロン酸セミアルデヒドからの3-HPおよびアセチル-CoA誘導体の共産生経路
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20220209BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220209BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220209BHJP
C12P 7/52 20060101ALI20220209BHJP
C12P 19/32 20060101ALI20220209BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20220209BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20220209BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N1/19
C12N1/15
C12P7/52
C12P19/32
C12N15/60
C12N15/53
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534949
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2019001345
(87)【国際公開番号】W WO2020128618
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007767
【氏名又は名称】ブラスケム エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドリノ パウロ モイセズ ラドュアン
(72)【発明者】
【氏名】マガリャエス ベアトリス レイテ
(72)【発明者】
【氏名】ガルゼラニ フェリペ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD05
4B064AF26
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
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4B064DA16
4B065AA15X
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4B065AA80Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB15
4B065CA10
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、共通の単一の中間体としてのマロン酸セミアルデヒドから、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびにこれらの誘導体を共産生するために、遺伝子改変された微生物を利用する方法を提供する。本開示は、マロン酸セミアルデヒドから3-HPおよびアセチル-CoA誘導体を共産生する改変された微生物をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる、組換え微生物であって、以下:
(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/または
(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物。
【請求項2】
1-プロパノールを産生することができ、以下:
(a)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒する、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)(a)もしくは(b)からのプロピオニル-CoAから1-プロパノールへの変換を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはプロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を一緒に触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項3】
3-HPの誘導体が、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項4】
アセチル-CoAの誘導体が、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項5】
アセチル-CoAの産生において生成される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部が、3-HPおよび/または3-HP誘導体の産生において還元同等物の供給源として利用される、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項6】
好気的、微嫌気的、または嫌気的産生プロセス、好ましくは嫌気的プロセスにおいて、3-HPおよび/またはその誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/または誘導体を共産生する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項7】
細菌、真菌、または酵母より選択される、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項8】
クロストリジウム属(Clostridium)の種、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridum ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、ユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、クロストリジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、アルカリバクラム・バッチィ(Alkalibaculum bacchii)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、カンジダ属(Candida)の種、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、ムーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、アセトネマ・ロンガム(Acetonema longum)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)、クロストリジウム・グリコリカム(Clostridium glycolicum)、クロストリジウム・マグナム(Clostridium magnum)、クロストリジウム・マヨンベイ(Clostridium mayombei)、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、スポロミュサ・オバータ(Sporomusa ovata)、サーモアセトゲニウム・ファエウム(Thermoacetogenium phaeum)、アセトバクテリウム・カルビノリカム(Acetobacterium carbinolicum)、スポロミュサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)、ムーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、ユーバクテリウム・アグレガンス(Eubacterium aggregans)、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム(Treponema azotonutricium)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バシラス属(Bacillus)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シェフェルソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)、およびテリスポロバクター・グリコリカス(Terrisporobacter glycolicus)からなる群より選択される親微生物に由来する、請求項7記載の組換え微生物。
【請求項9】
酵母である、請求項7記載の組換え微生物。
【請求項10】
酵母がサッカロミセス・セレビシエである、請求項9記載の組換え微生物。
【請求項11】
3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、MCR-Nterm.Cau(SEQ ID NO:105)、ADH.Ae(SEQ ID NO:106)、MMSB.Bce(SEQ ID NO:107)、YDFG-0.Ec(SEQ ID NO:108)、YMR226C(YDF1)(SEQ ID NO:109)、またはHPD1(SEQ ID NO:110)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項1記載の組換え生物。
【請求項12】
3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、YMR226C(YDF1)(SEQ ID NO:109)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項11記載の組換え生物。
【請求項13】
3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、HPD1(SEQ ID NO:110)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項11記載の組換え生物。
【請求項14】
マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、MSD.Pa(SEQ ID NO:111)、MSD.Cal(SEQ ID NO:112)、iolA(SEQ ID NO:113)、iolA(SEQ ID NO:114)、iolA(SEQ ID NO:115)、mmsA(SEQ ID NO:116)、dddC(SEQ ID NO:117)、またはiolA(SEQ ID NO:118)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項1記載の組換え生物。
【請求項15】
マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、MSD.Pa(SEQ ID NO:111)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項14記載の組換え生物。
【請求項16】
マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、MSD.Cal(SEQ ID NO:112)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項14記載の組換え生物。
【請求項17】
マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、mcr(SEQ ID NO:278)、matA、MLYCD(SEQ ID NO:279)、kivD(SEQ ID NO:280)、kdcA(SEQ ID NO:281)、ARO10(SEQ ID NO:282)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項1記載の組換え生物。
【請求項18】
マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、mcr(SEQ ID NO:278)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項17記載の組換え生物。
【請求項19】
マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、kivD(SEQ ID NO:280)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項17記載の組換え生物。
【請求項20】
マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ARO10(SEQ ID NO:282)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項17記載の組換え生物。
【請求項21】
オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子が、(SEQ ID NO:1)または(SEQ ID NO:274)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項1記載の組換え生物。
【請求項22】
オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子が、(SEQ ID NO:1)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項21記載の組換え生物。
【請求項23】
オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子が、(SEQ ID NO:274)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項21記載の組換え生物。
【請求項24】
請求項1記載の組換え微生物を、発酵性炭素供給源と、3-HPまたは誘導体およびアセチル-CoAまたは誘導体を産生するための条件下で、かつ該産生するために十分な期間にわたって接触させることにより、3-HPおよび/またはその誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/またはその誘導体を共産生する方法。
【請求項25】
炭素供給源が、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記組換え微生物が、好気的、微嫌気的、または嫌気的産生プロセス、好ましくは嫌気的プロセスにおいて、3-HPおよび/または誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/または誘導体を共産生する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
アセトンを産生し、かつ以下:
(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)アセトアセトリル(acetoacetryl)-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および
(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項28】
チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG10(SEQ ID NO:209)、thlA(SEQ ID NO:210)、atoB(SEQ ID NO:211)、H16_B0759(SEQ ID NO:212)、Msed_0656(SEQ ID NO:213)、またはAAT1(SEQ ID NO:214)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項27記載の組換え生物。
【請求項29】
チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG10(SEQ ID NO:209)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項28記載の組換え生物。
【請求項30】
アセトアセチル-CoAシンターゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、nphT7(SEQ ID NO:285)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項28記載の組換え生物。
【請求項31】
アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:219および220)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:221および222)またはctfA/ctfB(SEQ ID NO:223および224)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項27記載の組換え生物。
【請求項32】
アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項31記載の組換え生物。
【請求項33】
ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼおよびヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG13(SEQ ID NO:283)およびyngG(SEQ ID NO:284)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項27記載の組換え生物。
【請求項34】
アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、Adc.Ca(SEQ ID NO:225)、Adc.Cbe(SEQ ID NO:226)、Adc(SEQ ID NO:227)、Adc(SEQ ID NO:228)、Adc(SEQ ID NO:229)またはAdc.Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項27記載の組換え生物。
【請求項35】
アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、Adc.Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする、請求項34記載の組換え生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月18日に出願された米国仮出願第62/781,511号に対する優先権を主張し、その内容は参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して、汎用および特殊化学物質の産生に関し、より具体的には、マロン酸セミアルデヒド(MSA)から3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HPまたは3-HPA)およびアセチル-CoA誘導体を産生するための統合されたバイオプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
3-HPの誘導体としては、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、ポリプロピレンなどが挙げられる。アセチル-CoAの誘導体としては、アセトン、2-プロパノール、プロペン、ポリプロピレンなどが挙げられる。これらの分子の多くは、かなりの量の化学的廃棄物と共に合成化学を介して産生される。
【0004】
これらの分子の産生から生じる化学的廃棄物を最小化して、これらの3-HPおよびアセチル-CoA誘導体を利用するプロセスおよび分子のための、より環境に優しいかつ費用効果の高いアプローチを探求する必要性が存在する。
【0005】
本明細書に記載されるように、本開示は、3-HPおよびアセチル-CoA誘導体の発酵的共産生のための方法および組成物を提供する。
【0006】
配列表に関する声明
本出願に付随する配列表は、紙コピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含有するテキストファイルの名称はBRSK_020_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは906kbであり、2019年12月18日に作成され、電子的に提出されている。
【発明の概要】
【0007】
開示の概要
本開示は、1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる組換え微生物であって、以下:(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/または(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物を提供する。
【0008】
いくつかの態様では、組換え微生物は、1-プロパノールを産生することができ、組換え微生物は、以下:(a)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒する、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)(a)もしくは(b)からのプロピオニル-CoAから1-プロパノールへの変換を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはプロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を一緒に触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む。
【0009】
いくつかの態様では、3-HPの誘導体は、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。いくつかの態様では、アセチル-CoAの誘導体は、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。いくつかの態様では、アセチル-CoAの産生において生成される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部は、3-HPおよび/または3-HP誘導体の産生において還元同等物の供給源として利用される。
【0010】
いくつかの態様では、組換え微生物は、好気的または嫌気的産生プロセス、好ましくは嫌気的プロセスにおいて、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)、アセチル-CoA、1-プロパノールおよび/または2-プロパノールを産生する。
【0011】
いくつかの態様では、微生物は、細菌、真菌、または酵母より選択される。いくつかの態様では、組換え微生物は、クロストリジウム属(Clostridium)の種、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridum ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、ユーバクテリウム・リモサム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、クロストリジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、アルカリバクラム・バッチィ(Alkalibaculum bacchii)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、カンジダ属(Candida)の種、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、ムーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、アセトネマ・ロンガム(Acetonema longum)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)、クロストリジウム・グリコリカム(Clostridium glycolicum)、クロストリジウム・マグナム(Clostridium magnum)、クロストリジウム・マヨンベイ(Clostridium mayombei)、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinckii)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、スポロミュサ・オバータ(Sporomusa ovata)、サーモアセトゲニウム・ファエウム(Thermoacetogenium phaeum)、アセトバクテリウム・カルビノリカム(Acetobacterium carbinolicum)、スポロミュサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)、ムーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、ユーバクテリウム・アグレガンス(Eubacterium aggregans)、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム(Treponema azotonutricium)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バシラス属(Bacillus)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シェフェルソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)、およびテリスポロバクター・グリコリカス(Terrisporobacter glycolicus)からなる群より選択される親微生物に由来する。いくつかの態様では、組換え微生物は酵母である。いくつかの態様では、酵母はサッカロミセス・セレビシエである。
【0012】
いくつかの態様では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、MCR-Nterm.Cau(SEQ ID NO:105)、ADH.Ae(SEQ ID NO:106)、MMSB.Bce(SEQ ID NO:107)、YDFG-0.Ec(SEQ ID NO:108)、YMR226C(YDF1)(SEQ ID NO:109)、またはHPD1(SEQ ID NO:110)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、YMR226C(YDF1)(SEQ ID NO:109)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、HPD1(SEQ ID NO:110)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0013】
いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、MSD.Pa(SEQ ID NO:111)、MSD.Cal(SEQ ID NO:112)、iolA(SEQ ID NO:113)、iolA(SEQ ID NO:114)、iolA(SEQ ID NO:115)、mmsA(SEQ ID NO:116)、dddC(SEQ ID NO:117)、またはiolA(SEQ ID NO:118)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、MSD.Pa(SEQ ID NO:111)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、MSD.Cal(SEQ ID NO:112)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0014】
いくつかの態様では、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、mcr(SEQ ID NO:278)、matA、MLYCD(SEQ ID NO:279)、kivD(SEQ ID NO:280)、kdcA(SEQ ID NO:281)、ARO10(SEQ ID NO:282)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、mcr(SEQ ID NO:278)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、kivD(SEQ ID NO:280)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、ARO10(SEQ ID NO:282)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0015】
いくつかの態様では、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子は、(SEQ ID NO:1)または(SEQ ID NO:274)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子は、(SEQ ID NO:1)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子は、(SEQ ID NO:274)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0016】
いくつかの態様では、組換え微生物は、以下:(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)アセトアセトリル(acetoacetryl)-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む。
【0017】
いくつかの態様(embodoiemnts)では、チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、ERG10(SEQ ID NO:209)、thlA(SEQ ID NO:210)、atoB(SEQ ID NO:211)、H16_B0759(SEQ ID NO:212)、Msed_0656(SEQ ID NO:213)、またはAAT1(SEQ ID NO:214)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、ERG10(SEQ ID NO:209)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAシンターゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、nphT7(SEQ ID NO:285)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0018】
いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:219および220)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:221および222)またはctfA/ctfB(SEQ ID NO:223および224)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0019】
いくつかの態様では、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼおよびヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、ERG13(SEQ ID NO:283)およびyngG(SEQ ID NO:284)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、Adc.Ca(SEQ ID NO:225)、Adc.Cbe(SEQ ID NO:226)、Adc(SEQ ID NO:227)、Adc(SEQ ID NO:228)、Adc(SEQ ID NO:229)またはAdc Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子は、Adc.Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする。
【0020】
本開示は、請求項1または2のいずれかに記載の組換え微生物を、発酵性炭素供給源と、3-HPまたは誘導体およびアセチル-CoAまたは誘導体を産生するための条件下で、かつ該産生するために十分な期間にわたって接触させることにより、3-HPおよび/またはその誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/またはその誘導体を共産生する方法を提供する。いくつかの態様では、炭素供給源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素より選択される。いくつかの態様では、組換え微生物は、好気的または嫌気的産生プロセス、好ましくは嫌気的プロセスにおいて、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)、アセチル-CoA、1-プロパノールおよび/または2-プロパノールを産生する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】共通の単一の中間体としてマロン酸セミアルデヒドを用いる3-HPおよびアセチル-CoAの産生のための新規の組み合わせた経路を図示する。陰影をつけた支流は、本経路においてマロン酸セミアルデヒドにより置き換えられる、中間体としてマロニル-CoAを用いるマロン酸セミアルデヒドの産生のための通常の経路を特定する。
【
図2】ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc遺伝子)またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh遺伝子)活性を通じた、酵母細胞におけるオキサロ酢酸生成のための2つの経路を図示する。
【
図3】オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの経路を図示する。典型的な経路は中間体としてアスパラギン酸およびベータ-アラニンを利用し、新たな経路はデカルボキシラーゼ(oxdc)を利用してオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドを直接的に産生する。
【
図4】中間体としてのマロニル-CoAを通じた(標準的な経路)およびマロン酸セミアルデヒドを用いる直接的な(新たな経路)、アセチル-CoAの産生のための2つの経路を図示する。
【
図5】4工程プロセスおよび2工程プロセスによる3-HPからの1-プロパノールの産生のための経路を図示する。
【
図6】グルコースからのアセトンの産生経路、および経路において産生される過剰なNAD(P)Hである。
【
図7】オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへ、そして1-プロパノールおよびアセトンへの組み合わせた経路、ならびに組み合わせた経路のレドックス中性状態を図示する。
【
図8】触媒性酵素および対応するマロン酸セミアルデヒド中間体を含む、グルコースからマロン酸セミアルデヒドへの経路を図示し、特に、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドを産生するのに利用されるオキサロ酢酸デカルボキシラーゼを特定する。
【
図9】触媒性酵素および対応するマロン酸セミアルデヒド中間体を含む、マロン酸セミアルデヒドからアセトンへの経路を図示する。
【
図10】マロン酸セミアルデヒド中間体および対応する補因子を含む、マロン酸セミアルデヒドからプロパノールへの経路を図示する。
【
図11】触媒性酵素および対応するマロン酸セミアルデヒド中間体を含む、マロン酸セミアルデヒドからプロパノールへの経路を図示する。
【
図12】マロン酸セミアルデヒド中間体および対応する補因子を含む、マロン酸セミアルデヒドからアクリル酸への経路を図示する。
【
図13】実施例2に関する突然変異体に関する経路および酵母遺伝子型を図示する。
【
図14】選択された酵素を使用して中性レドックス均衡を示す1-プロパノールおよびアセトンの共産生経路を図示する。
【
図15】好気的条件における1-プロパノールおよびアセトンの共産生の化学量論を図示する。
【
図16】嫌気的条件における1-プロパノールおよびアセトンの共産生の化学量論を図示する。
【
図17】好気的条件における1-プロパノールおよび2-プロパノールの共産生の化学量論を図示する。
【
図18】嫌気的条件における1-プロパノールおよび2-プロパノールの共産生の化学量論を図示する。
【
図19】好気的条件における2-プロパノールの産生の化学量論を図示する。
【
図20】グルコースから3-HPを産生するための生物を操作するためのワークフローを図示する。
【
図21】酵素N°1についての速度論的パラメーターを実証するプロットおよび値である。
【
図22】酵素N°6についての速度論的パラメーターを実証するプロットおよび値である。
【
図23】酵素N°7についての速度論的パラメーターを実証するプロットおよび値である。
【
図24】酵素N°8についての速度論的パラメーターを実証するプロットおよび値である。
【
図25】酵素N°9についての速度論的パラメーターを実証するプロットおよび値である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の詳細な説明
本開示は、一般に、共通の単一の中間体としてのマロン酸セミアルデヒドから、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA誘導体を共産生するために、遺伝子改変された微生物を利用する方法を対象とする。本開示は、マロン酸セミアルデヒドから3-HPおよびアセチル-CoA誘導体を共産生する改変された微生物をさらに提供する。
【0023】
マロン酸セミアルデヒドからの3-HPおよびアセチル-CoA、ならびにこれらの誘導体の共産生は新規であり、共産生は、高い収率で産物を共産生する、レドックスが均衡した経路のセットを結果としてもたらす。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が他に明確に規定しなければ、複数の指示対象を含む。そのため、例えば、「1つの酵素(an enzyme)」への言及は複数のそのような酵素を含み、「その微生物(the microorganism)」への言及は1つまたは複数の微生物への言及を含む、などである。
【0025】
本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「有する」、「有すること」、「含有する」、「含有すること」という用語、またはこれらの任意の他のバリエーションは、非排他的な包含をカバーすることが意図される。要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明示的に列記されないか、またはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に本来備わっている他の要素を含んでもよい。さらに、そうでないことが明示的に述べられなければ、「または」は包含的な「または」を指し、排他的な「または」を指すものではない。
【0026】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」という用語は交換可能に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはこれらのアナログである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知の任意の機能を行うことができる。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖分析から定義された座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾されたヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含んでもよい。ヌクレオチド構造への修飾が存在する場合、該修飾は、ポリマーのアセンブリの前または後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列には非ヌクレオチド成分が差し挟まれていてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどにより、重合後にさらに修飾されてもよい。
【0027】
「相補性」は、伝統的なワトソン-クリックまたは他の非伝統的な種類のいずれかにより別の核酸配列と水素結合を形成する核酸の能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子中の残基のパーセンテージを指し示す(例えば、10個中の5、6、7、8、9、10個はそれぞれ50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)。「完全に相補的」は、核酸配列の全ての連続する残基が第2の核酸配列中の同じ数の連続する残基と水素結合することを意味する。「実質的に相補的」は、本明細書において使用される場合、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド、もしくはそれを上回る個数のヌクレオチドの領域にわたる少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%の相補性の程度を指し、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。相補性パーセントを評価する目的のためなどの配列同一性は、任意の好適なアライメントアルゴリズムにより測定されてもよく、該アルゴリズムとしては、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlにおいて利用可能なEMBOSS Needle alignerを参照;任意でデフォルトの設定を用いる)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiにおいて利用可能なBLAST alignment toolを参照;任意でデフォルトの設定を用いる)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlにおいて利用可能なEMBOSS Water alignerを参照;任意でデフォルトの設定を用いる)が挙げられるがこれらに限定されない。最適なアライメントは、デフォルトのパラメーターを含む、選択されたアルゴリズムの任意の好適なパラメーターを使用して評価されてもよい。
【0028】
本明細書において使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNAもしくは他のRNA転写物などに)転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードされるポリペプチドは、総称的に「遺伝子産物」と称されることがある。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞中でのmRNAのスプライシングを含んでもよい。
【0029】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書において交換可能に使用される。ポリマーは直鎖状または分岐鎖状であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸を差し挟まれていてもよい。該用語はまた、修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、修飾は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他のマニピュレーション、例えば、標識成分とのコンジュゲーションである。本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸、例えば、グリシンおよびDまたはLの両方の光学異性体、ならびにアミノ酸アナログおよびペプチド模倣物を含む。
【0030】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、「おおよそ」という用語と同義に使用される。実例を挙げると、量に関する「約」という用語の使用は、参照される値のわずかに外側の値、例えば、プラスまたはマイナス0.1%~10%を指し示す。
【0031】
「生物学的に純粋な培養物」または「実質的に純粋な培養物」という用語は、培養物の複製を妨げるのに十分な量、または通常の微生物学的技術により検出されるのに十分な量の他の微生物種を含有しない、本明細書に記載の微生物種の培養物を指す。
【0032】
本明細書において使用される場合、「制御配列」は、オペレーター、プロモーター、サイレンサー、またはターミネーターを指す。
【0033】
本明細書において使用される場合、「導入される」は、天然に存在する導入ではなく、現代のバイオテクノロジーの手段による導入を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「構成的プロモーター」は、ほとんどの条件下および/またはほとんどの発生ステージの間に活性なプロモーターである。バイオテクノロジーにおいて使用される発現ベクターにおいて構成的プロモーターを使用するいくつかの利点があり、該利点は、トランスジェニック細胞または生物を選択するために使用されるタンパク質の高いレベルの産生;容易な検出および定量化を可能とする、レポータータンパク質またはスコア付け可能なマーカーの高いレベルの発現;調節的な転写システムの一部分である転写因子の高いレベルの産生;生物において遍在的な活性を要求する化合物の産生;および発生の全てのステージの間に要求される化合物の産生などである。
【0035】
本明細書において使用される場合、「非構成的プロモーター」は、ある特定の条件下、ある特定の種類の細胞中、および/またはある特定の発生ステージの間に活性なプロモーターである。例えば、誘導性プロモーター、および発生制御下のプロモーターは非構成的プロモーターである。本明細書において使用される場合、「誘導性」または「抑制性」プロモーターは、化学または環境因子の制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによる転写に影響を与えることがある環境条件の例としては、嫌気的条件、ある特定の化学物質、光の存在、酸性または塩基性条件などが挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される場合、「機能的に連結した」という用語は、1つの核酸配列の機能が他の核酸配列により調節されるような単一の核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現を調節することができる(すなわち、そのコード配列はプロモーターの転写制御下にある)場合にそのコード配列と機能的に連結している。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向性で調節配列に機能的に連結し得る。別の例では、本開示の相補的RNA領域は、直接的もしくは間接的のいずれかにおいて、標的mRNAに対して5'、もしくは標的mRNAに対して3'、もしくは標的mRNA内で機能的に連結され得、または第1の相補的な領域は標的mRNAに対して5'であり、その相補体は3'である。
【0037】
「シグナル配列」という用語は、本明細書において使用される場合、ペプチドおよびポリペプチドを細胞の位置または細胞外環境に標的指向させるアミノ酸配列を指す。シグナル配列は典型的にはポリペプチドのN末端部分にあり、典型的には酵素的に除去される。シグナル配列を有するポリペプチドは、全長および/またはプロセシングされていないと称される。シグナル配列が除去されたポリペプチドは、成熟したおよび/またはプロセシングされたと称される。
【0038】
「外因性」という用語は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関して本明細書において使用される場合、天然の所与の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において通常または天然に見出されないかつ/または産生されない分子を指す。他方、「内因性」または「ネイティブ」という用語は、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関して本明細書において使用される場合、天然の所与の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において通常または天然に見出されるかつ/または産生される分子を指す。
【0039】
「異種」という用語は、改変された宿主細胞の文脈において本明細書において使用される場合、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などであって、以下の少なくとも1つが該当するものを指す:(a)分子は宿主細胞にとって外来的(「外因性」)である(すなわち、天然に見出されない);(b)分子は所与の宿主微生物もしくは宿主細胞において天然に見出される(例えば、「内因性」である)が、細胞において非天然の位置もしくは非天然の量で産生される;かつ/または(c)分子は内因性のヌクレオチドもしくはアミノ酸配列とはヌクレオチドもしくはアミノ酸配列において異なっているため、内因的に見出されるような内因性のヌクレオチドもしくはアミノ酸とはヌクレオチドもしくはアミノ酸配列において異なる分子は、細胞において非天然(例えば、天然に見出されるより多く)の量で産生される。
【0040】
「ホモログ」という用語は、第1のファミリーまたは種の元々の酵素または遺伝子に関して本明細書において使用される場合、第1のファミリーまたは種の元々の酵素または遺伝子に対応する第2のファミリーまたは種の酵素または遺伝子であると機能、構造、またはゲノム解析により決定される第2のファミリーまたは種の別個の酵素または遺伝子を指す。ホモログは、最も多くの場合に、機能、構造、またはゲノムの類似性を有する。遺伝子プローブおよびPCRを使用して酵素または遺伝子のホモログを容易にクローニングできる技術が公知である。ホモログとしてクローニングされた配列の同一性は、機能アッセイを使用してかつ/または遺伝子のゲノムマッピングにより確認することができる。
【0041】
タンパク質は、遺伝子によりコードされるアミノ酸配列が第2の遺伝子のそれに類似したアミノ酸配列を有する場合に第2のタンパク質に対して「相同性」を有しまたは「相同」である。代替的に、タンパク質は、2つのタンパク質が「類似した」アミノ酸配列を有する場合に第2のタンパク質に対して相同性を有する。そのため、「相同タンパク質」という用語は、2つのタンパク質が類似したアミノ酸配列を有することを意味することが意図される。ある特定の事例では、2つのタンパク質の間の相同性は、進化により関連がある、その共有される祖先を示唆する。「相同配列」または「ホモログ」という用語は、機能的に関連すると考えられ、信じられ、またはそれが既知である。機能的な関係性は、(a)配列同一性の程度および/または(b)同じもしくは類似した生物学的機能が挙げられるがこれらに限定されない多数のやり方のいずれか1つで指し示されてもよい。好ましくは、(a)および(b)の両方が指し示される。配列同一性の程度は様々であってもよいが、一局面では、少なくとも50%(当技術分野において公知の標準的な配列アライメントプログラムを使用した場合)、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F. M. Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.718,Table 7.71において議論されるものなどの当技術分野において容易に利用可能なソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。いくつかのアライメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd、Oxford、U.K.)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。他の非限定的なアライメントプログラムとしては、Sequencher(Gene Codes、Ann Arbor、Michigan)、AlignX、およびVector NTI(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。類似した生物学的機能としては、同じもしくは類似した酵素反応を触媒すること;基質もしくは補因子について同じもしくは類似した選択性を有すること;同じもしくは類似した安定性を有すること;様々な発酵条件(温度、pH、など)に対して同じもしくは類似した寛容性を有すること;および/または様々な代謝性基質、生成物、副生成物、中間体などに対して同じもしくは類似した寛容性を有することを挙げることができるがこれらに限定されない。生物学的機能における類似性の程度は様々であってもよいが、一局面では、所与の生物学的機能を決定するための当業者に公知の1つまたは複数のアッセイにしたがって、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。
【0042】
本開示の遺伝子は、一般名、それらの核酸配列、および核酸配列から翻訳されるアミノ酸配列を用いて参照されることがある。公知の遺伝子についてアクセッション番号において与えられる参照を使用して、当業者は、他の生物、細菌株、酵母、真菌、哺乳動物、植物などにおける同等の遺伝子を決定することができる。この作業は、他の微生物に由来する遺伝子との配列アライメントを実行することおよび別の生物において対応する遺伝子をクローニングための縮重プローブを設計することにより決定され得るコンセンサス配列を利用して行われる。
【0043】
本明細書において使用される場合、「過剰発現」は、遺伝子または酵素の発現が、非改変微生物と比較して増加していることを意味する。酵素の発現の増加は、前記酵素をコードする遺伝子の発現を増加させることにより得られる。非改変微生物が所与の遺伝子を発現しなかった場合、この遺伝子を発現させるための前記微生物の改変もまた、前記遺伝子の発現の増加、そのため過剰発現と考えられる。遺伝子の発現の増加は、当業者に公知の全ての技術により実行されてもよい。これに関して、過剰発現が意図される核酸の上流での強いプロモーターの実施態様、またはプロモーター、特に強いプロモーターと、ターミネーターとの間での前記核酸の複数のコピーの導入の実施態様が特に言及され得る。
【0044】
本明細書において使用される場合、「誘導性」プロモーターは、(1)1つもしくは複数の特定の代謝物の存在下で(培地中の代謝物の濃度が高ければ高いほど、プロモーター活性はより強い)、または(2)低濃度の1つもしくは複数の代謝物の存在下、もしくはその非存在下でその活性が誘導される、すなわち、増加されるプロモーターを意味する。これらの代謝物は、その存在の増加がプロモーターの活性を誘導するものとは異なる。培地中の代謝物の濃度が低ければ低いほど、プロモーター活性はより強い。
【0045】
本明細書において使用される場合、酵素/タンパク質の「活性」および「機能」は、本開示の文脈において交換可能に使用および呼称され、(1)所望の反応を触媒する酵素の、または(2)ある特定の方式で作用するタンパク質の能力である。
【0046】
本明細書において使用される場合、「好気的条件」は、好気性または通性嫌気性微生物が最終電子受容体として酸素を使用するために十分な培養培地中の酸素の濃度を指す。
【0047】
本明細書において使用される場合、「嫌気的条件」は、酸素の量が液体培地中で約0%未満の飽和の溶解酸素であることを意味することが意図される、酸素の濃度に関する培養または増殖条件を指す。該用語はまた、約0%未満の酸素の雰囲気と共に維持された液体または固体培地の密封チャンバーを含むことが意図される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「微好気的条件」は、酸素の濃度が標準的な温度および圧力下の空気中におけるものより低い、すなわち、存在する全気体の約6%までの酸素濃度である培養培地中の酸素の濃度を指す。
【0049】
「バリアント」という用語は、本明細書に記載の任意のポリペプチドまたは酵素を指す。バリアントはまた、多量体の1つまたは複数の成分、個々の成分を含む多量体、個々の成分を複数で含む多量体(例えば、参照分子の多量体)、化学的分解産物、および生物学的分解産物を包含する。特に、非限定的な局面で、酵素は、参照酵素をコードするポリペプチド配列の任意の部分における変更を理由として参照酵素と比べて「バリアント」であってもよい。参照酵素のバリアントは、参照酵素の調製物の酵素活性を測定するために使用される標準的なアッセイにおいて少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、またはそれより高い%の酵素活性を有し得る。いくつかの局面では、バリアントはまた、本開示の全長、またはプロセシングされていない酵素に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指すことがある。いくつかの局面では、バリアントはまた、本開示の成熟した、またはプロセシングされた酵素に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指すことがある。
【0050】
本明細書において使用される場合、「微生物(microorganism)」または「微生物(microbe)」という用語は広く解釈されるべきである。交換可能に使用されるこれらの用語は、2つの原核ドメイン、細菌および古細菌を含むがこれらに限定されない。
【0051】
本明細書において使用される場合、「単離する」、「単離された」、「単離された微生物」、および同様の用語は、1つまたは複数の微生物が、特定の環境(例えば、培地、水、反応チャンバーなど)において一緒に存在する材料の少なくとも1つから分離されていることを意味することが意図される。そのため、「単離された微生物」はその天然に存在する環境において存在せず、むしろ、本明細書に記載の様々な技術を通じて微生物がその天然の状況から除去され、天然に存在しない存在状態に入れられたと考えられる。そのため、単離された株または単離された微生物は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、または胞子(または株の他の形態)として存在してもよい。局面では、単離された微生物は、商業的にまたは産業上の許容される担体であり得る、許容される担体と関連付けられていてもよい。
【0052】
本開示のある特定の局面では、単離された微生物は、「単離された生物学的に純粋な培養物」として存在する。特定の微生物の単離された生物学的に純粋な培養物は、前記培養物が他の生きた生物を実質的に含まず、問題とする個々の微生物のみを含有することを表すことが当業者により認められる。培養物は様々な濃度の前記微生物を含有し得る。本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物は多くの場合に「より低い純度のまたは純粋でない材料とは必然的に異なる」ことに留意する。例えば、In re Bergstrom,427 F. 2d 1394,(CCPA 1970)(精製されたプロスタグランジンについて議論している)を参照;In re Bergy,596 F.2d 952(CCPA 1979)(精製された微生物について議論している)も参照;Parke-Davis&Co. v. H. K. Mulford&Co.,189 F. 95(S.D.N.Y.1911)(Learned Hand、精製されたアドレナリンについて議論している)、aff'd in part, rev'd in part,196 F. 496(2d Cir. 1912)も参照;これらのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられる。さらには、いくつかの局面では、本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物培養物の範囲内に見出されるはずである濃度のある特定の定量的な度合、または純度限界を提供する。これらの純度値の存在は、ある特定の局面では、本開示の微生物を、天然の状態で存在する微生物から区別するさらなる属性である。例えば、Merck&Co. v. Olin Mathieson Chemical Corp.,253 F. 2d 156(4th Cir. 1958)(微生物により産生されるビタミンB12の純度限界について議論している)(参照により本明細書に組み入れられる)を参照。
【0053】
本開示の微生物は、胞子および/または植物細胞を含んでもよい。いくつかの局面では、本開示の微生物は、生存しているが培養不可能(viable but non-culturable)(VBNC)な状態の微生物を含む。本明細書において使用される場合、「胞子(spore)」または「胞子(spores)」は、生存および分散のために適合した細菌および真菌により産生される構造物を指す。胞子は休止した構造物として一般に特徴付けられるが、胞子は発芽のプロセスを通じて分化することができる。発芽は、代謝活性、成長、および生殖が可能な植物細胞への胞子の分化である。単一の胞子の発芽は、単一の真菌または細菌植物細胞を結果としてもたらす。真菌胞子は無性生殖の単位であり、いくつかの場合では、真菌寿命サイクルにおける必要な構造物である。細菌胞子は、植物細胞の生存または成長の助けに通常ならないことがある生存条件のための構造物である。
【0054】
本明細書において使用される場合、「微生物組成物」は、1つまたは複数の本開示の微生物を含む組成物を指す。
【0055】
本明細書において使用される場合、「担体」、「許容される担体」、「商業的に許容される担体」、または「産業上の許容される担体」は、それと共に微生物を投与し、貯蔵し、または移動させることができる、微生物に有害な効果をもたらさない、希釈剤、補助剤、賦形剤、または媒体を指す。
【0056】
「生産力(yield potential)」という用語は、本明細書において使用される場合、生合成経路からの産物の収率を指す。一局面では、生産力は、出発化合物の重量当たりの最終産物の重量によるパーセントとして表現されてもよい。
【0057】
「熱力学的最大収率」という用語は、本明細書において使用される場合、原材料と比較した産物のエネルギー値に基づく、グルコースなどの所与の原材料の発酵から得られる産物の最大収率を指す。通常の発酵において、例えば、光、水素ガスまたはメタンまたは電気などの追加のエネルギー供給源の使用なしで、産物は原材料より多くのエネルギーを含有することができない。熱力学的最大収率は、原材料からの全てのエネルギーおよび質量が産物に変換される産物収率を表す。この収率は、算出が可能であり、特有の経路とは独立している。産物への特有の経路が熱力学的最大収率より低い収率を有する場合、それは質量を損失しており、産物へのより効率的な経路で向上または置換できる可能性が最も高い。
【0058】
「レドックスが均衡した」という用語は、消費するのと同じだけのレドックス補因子を総合的に産生する反応のセットを指す。レドックス補因子が均衡しまたは均衡に近くなるような代謝経路の設計および生物の操作は、通常、所望の化合物のより効率的な、より高い収率の産生を結果としてもたらす。レドックス反応は常に、同時に起こる2つの半反応、一方は酸化反応、他方は還元反応として、一緒に起こる。レドックスプロセスにおいて、還元体は酸化体に電子を伝達する。そのため、反応において、還元体または還元剤は電子を喪失して酸化され、酸化体または酸化剤は電子を獲得して還元される。一局面では、レドックス反応は生物学的システムにおいて起こる。生物学的エネルギーは、レドックス反応の手段により頻繁に貯蔵および放出される。光合成は、二酸化炭素から糖への還元および水から分子状酸素への酸化を伴う。逆反応、呼吸は、糖を酸化して二酸化炭素および水を産生する。中間工程として、還元された炭素化合物を使用してニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)が還元され、これは次にプロトン勾配の作出に寄与し、これはアデノシン三リン酸(ATP)の合成を駆動し、酸素の還元により維持される。レドックス状態という用語は、多くの場合に、細胞または臓器などの生物学的システムにおけるGSH/GSSG、NAD+/NADHおよびNADP+/NADPHの均衡を記載するために使用される。レドックス状態は、その相互変換がこれらの比に依存する代謝物(例えば、乳酸およびピルビン酸、ベータ-ヒドロキシブチル酸、およびアセト酢酸)のいくつかのセットの均衡に反映される。異常なレドックス状態は、低酸素、ショック、および敗血症などの様々な有害な状況において発生し得る。
【0059】
本明細書において使用される場合、「生産性」という用語は、1時間当たりに産生されるバイオ産物(本明細書に記載の産物)の総量を指す。
【0060】
本明細書において使用される場合、「マロン酸セミアルデヒド(malonate semialdehyde)」、「マロニックセミアルデヒド(malonic semialdehyde)」、および「3-オキソプロパン酸」は交換可能に使用され、本開示のC3H4O3分子を記載する。
【0061】
本明細書において使用される場合、酵素の「増強した活性」は、酵素の特有の触媒活性の増加、および/または、例えば、酵素をコードする遺伝子の過剰発現により得られる、細胞中の酵素の量/利用可能性の増加のいずれかを指摘する。
【0062】
本出願は、概して、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生するために、改変された微生物を利用する方法に関し、改変された微生物自体にさらに関する。
【0063】
いくつかの局面では、本開示は、1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる組換え微生物であって、以下:(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/または(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ、ならびに/または(iii)オキサロ酢酸からマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAシンセターゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物を対象とする。
【0064】
いくつかの局面では、組換え微生物は1-プロパノールを産生することができる。いくつかの局面では、組換え微生物は、以下:(a)3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/トランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、および3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するアクリリル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)プロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)プロピオニル-CoAからのプロピオンアルデヒドの産生を触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびプロピオンアルデヒドからの1-プロパノールの産生を触媒するアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む。
【0065】
いくつかの局面では、組換え微生物はアセトンを産生することができる。いくつかの局面では、組換え微生物は、以下:(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を含む。
【0066】
いくつかの局面では、組換え微生物は、3-HPおよびアセチル-CoAの両方、ならびに/またはこれらの誘導体の産生のためにマロン酸セミアルデヒドを触媒する。いくつかの局面では、組換え微生物は、オキサロ酢酸に作用してマロン酸セミアルデヒドを産生することができるデカルボキシラーゼを含む。いくつかの局面では、3-HPの誘導体は、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。いくつかの局面では、アセチル-CoAの誘導体は、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。
【0067】
いくつかの局面では、アセチル-CoAの産生において組換え微生物により産生される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部は、3-HPの産生において還元同等物の供給源として利用される。
【0068】
いくつかの局面では、微生物は、細菌、真菌、または酵母より選択される。いくつかの局面では、組換え微生物は酵母である。いくつかの局面では、酵母はサッカロミセス・セレビシエである。いくつかの局面では、酵母は、好気性および嫌気性増殖することができる。
【0069】
いくつかの局面では、組換え微生物は、クロストリジウム属の種、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモサム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクラム・バッチィ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、ムーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロンガム、ブラウティア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリカム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨンベイ、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロミュサ・オバータ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カルビノリカム、スポロミュサ・テルミチダ、ムーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグレガンス、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バシラス属の種、カンジダ属の種、カンジダ・クルセイ、コリネバクテリウム属の種、ヤロウィア・リポリティカ、シェフェルソミセス・スチピチス、およびテリスポロバクター・グリコリカスからなる群より選択される親微生物に由来する。
【0070】
いくつかの局面では、本開示は、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を産生する方法であって、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体が産生されるまで炭素供給源を含む原材料を含有する培養培地中で組換え微生物を培養することを含む、方法を対象とする。
【0071】
いくつかの局面では、本開示は、1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる組換え微生物を産生する方法であって、以下:(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/またはまたは(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ、ならびに/または(iii)オキサロ酢酸からマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAシンセターゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることを含む、方法を対象とする。
【0072】
いくつかの局面では、組換え微生物は1-プロパノールを産生することができる。
【0073】
いくつかの局面では、方法は、以下:(a)3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/トランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、および3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するアクリリル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)プロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)プロピオニル-CoAからのプロピオンアルデヒドの産生を触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびプロピオンアルデヒドからの1-プロパノールの産生を触媒するアルコールデヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることをさらに含む。いくつかの局面では、組換え微生物はアセトンを産生することができる。いくつかの局面では、方法は、以下:(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることをさらに含む。
【0074】
いくつかの局面では、組換え微生物は、3-HPおよびアセチル-CoAの両方、ならびに/またはこれらの誘導体の産生のためにマロン酸セミアルデヒドを触媒する。いくつかの局面では、3-HPの誘導体は、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。いくつかの局面では、アセチル-CoAの誘導体は、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される。いくつかの局面では、アセチル-CoAの産生において組換え微生物により産生される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部は、3-HPの産生において還元同等物の供給源として利用される。いくつかの局面では、組換え微生物は、オキサロ酢酸に作用してマロン酸セミアルデヒドを産生することができるデカルボキシラーゼを含む。
【0075】
いくつかの局面では、微生物は、細菌、真菌、または酵母より選択される。いくつかの局面では、組換え微生物は酵母である。いくつかの局面では、酵母は、好気性および嫌気性増殖することができる。いくつかの局面では、酵母はサッカロミセス・セレビシエである。
【0076】
いくつかの局面では、組換え微生物は、クロストリジウム属の種、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモサム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクラム・バッチィ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、ムーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロンガム、ブラウティア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリカム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨンベイ、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロミュサ・オバータ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カルビノリカム、スポロミュサ・テルミチダ、ムーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグレガンス、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バシラス属の種、カンジダ属の種、カンジダ・クルセイ、コリネバクテリウム属の種、ヤロウィア・リポリティカ、シェフェルソミセス・スチピチス、およびテリスポロバクター・グリコリカスからなる群より選択される親微生物に由来する。
【0077】
微生物集団の生成
遺伝子改変
本開示の1つまたは複数の微生物に導入される遺伝子改変は、標的遺伝子の調節配列を変更しまたは消失させてもよい。いくつかの局面では、本開示の1つまたは複数の微生物に導入される遺伝子改変は、1つまたは複数の微生物に新たな形質または表現型を導入してもよい。1つまたは複数の調節配列もまた挿入されてもよく、これには、異種調節配列、および遺伝子バリエーションが導入される微生物に対応する動物、植物、真菌、酵母、細菌、またはウイルスのゲノム内に見出される調節配列が含まれる。さらに、調節配列は、微生物培養物中の遺伝子の発現レベルに基づいて選択されてもよい。遺伝子バリエーションは、標的部位に特異的に導入される予め決定された遺伝子バリエーションであってもよい。いくつかの局面では、遺伝子バリエーションは、1つまたは複数の微生物染色体に導入される核酸配列である。いくつかの局面では、遺伝子バリエーションは、1つまたは複数の染色体外核酸配列に導入される核酸配列である。遺伝子バリエーションは、標的部位内のランダム突然変異であってもよい。遺伝子バリエーションは、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入または欠失であってもよい。いくつかの場合では、複数の異なる遺伝子バリエーション(例えば、2、3、4、5、10、またはそれより多い)が、単離された細菌の1つまたは複数に導入される。複数の遺伝子バリエーションは、同じまたは異なる種類、および任意の組合せの、上記の種類のいずれかであり得る。いくつかの場合では、複数の異なる遺伝子バリエーションが連続的に導入され、第1の単離工程後に第1の遺伝子バリエーション、第2の単離工程後に第2の遺伝子バリエーションなどというように導入され、微生物中に複数の所望の改変が蓄積される。
【0078】
一般に、「遺伝子バリエーション」という用語は、参照ゲノムもしくはその部分、または参照遺伝子もしくはその部分などの参照ポリヌクレオチドと比べてポリヌクレオチド配列に導入された任意の変化を指す。遺伝子バリエーションは「突然変異」と称されることがあり、遺伝子バリエーションを含む配列または生物は「遺伝子バリアント」または「突然変異体」と称されることがある。遺伝子バリエーションは任意の数の効果を有することができ、該効果は、遺伝子発現、代謝、および細胞シグナル伝達を含むいくつかの生物学的活性の増加または減少などである。遺伝子バリエーションは、標的部位に特異的に導入され、または無作為に導入され得る。遺伝子バリエーションを導入するために様々な分子ツールおよび方法が利用可能である。例えば、遺伝子バリエーションは、ポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、飽和突然変異誘発、断片シャッフリング突然変異誘発、相同組換え、リコンビニアリング(recombineering)、ラムダレッド媒介性組換え、CRISPR/Cas9システム、化学的突然変異誘発、およびこれらの組合せを介して導入され得る。遺伝子バリエーションを導入する化学的方法としては、化学的突然変異誘発原、例えば、メタンスルホン酸エチル(EMS)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、N-ニトロソウレア(EN U)、N-メチル-N-ニトロ-N'-ニトロソグアニジン、4-ニトロキノリンN-オキシド、硫酸ジエチル、ベンゾピレン、シクロホスファミド ブレオマイシン、トリエチルメラミン(triethylmelamine)、アクリルアミド単量体、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジエポキシアルカン(例えば、ジエポキシブタン)、ICR-170、ホルムアルデヒド、プロカルバジン塩酸塩、エチレンオキシド、ジメチルニトロソアミン、7,12ジメチルベンズ(a)アントラセン、クロラムブシル、ヘキサメチルホスホルアミド、およびビスルファン(bisulfan)などへのDNAの曝露が挙げられる。放射線突然変異誘導因子としては、紫外放射線、γ照射、X線、および高速中性子衝撃が挙げられる。遺伝子バリエーションはまた、例えば、紫外光と共にトリメチルプソラレンを使用して核酸に導入され得る。移動性DNAエレメント、例えば、転位性エレメントのランダムまたは標的指向挿入は、遺伝子バリエーションを生成するための別の好適な方法である。遺伝子バリエーションは、例えば、エラープローンPCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して無細胞インビトロシステムにおける増幅の間に核酸に導入され得る。遺伝子バリエーションは、DNAシャッフリング技術(例えば、エクソンシャッフリング、およびドメインスワッピングなど)を使用してインビトロで核酸に導入され得る。遺伝子バリエーションはまた、細胞中のDNA修復酵素の欠損の結果として核酸に導入することができ、例えば、細胞中の突然変異体DNA修復酵素をコードする突然変異体遺伝子の存在は、細胞のゲノム中に高い頻度の突然変異(すなわち、約1突然変異/100遺伝子~1突然変異/10,000遺伝子)を生成することが予期される。DNA修復酵素をコードする遺伝子の例としては、Mut H、Mut S、Mut L、およびMut U、ならびに他の種におけるこれらのホモログ(例えば、MSH 1 6、PMS 1 2、MLH 1、GTBP、およびERCC-1など)が挙げられるがこれらに限定されない。遺伝子バリエーションを導入する様々な方法の例示的な記載は、例えば、Stemple(2004)Nature 5:1-7;Chiang et al.(1993)PCR Methods Appl 2(3):210-217;Stemmer(1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10747-10751;ならびに米国特許第6,033,861号、および同第6,773,900号において提供される。
【0079】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、開示される核酸配列表の任意の1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、開示される核酸配列表の任意の1つまたは複数と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有する任意の1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、開示される核酸配列表の任意の1つまたは複数と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する任意の1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。
【0080】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、本開示の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、開示されるアミノ酸配列表の任意の1つまたは複数と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を共有する1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、開示されるアミノ酸配列表の任意の1つまたは複数と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。
【0081】
微生物に導入される遺伝子バリエーションは、トランスジェニック、シスジェニック、ゲノム内、属内、属間、合成、進化(evolved)、再構成(rearranged)、またはSNPとして分類されてもよい。所望の突然変異を導入するためにCRISPR/Cas9(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/CRISPR関連(Cas)システムが使用され得る。CRISPR/Cas9は、侵入性核酸のサイレンシングをガイドするためにCRISPR RNA(crRNA)を使用することによりウイルスおよびプラスミドに対する適応免疫を細菌および古細菌に提供する。Cas9タンパク質(またはその機能的な同等物および/もしくはバリアント、すなわち、Cas9様タンパク質)は、crRNAおよびtracrRNAと呼ばれる(ガイドRNAとも呼ばれる)2つの天然に存在するまたは合成のRNA分子とのタンパク質の会合に依存するDNAエンドヌクレアーゼ活性を天然に含有する。いくつかの場合では、2つの分子は、共有結合的に連結して単一の分子(シングルガイドRNA(「sgRNA」とも呼ばれる)を形成する。そのため、Cas9またはCas9様タンパク質はDNA標的指向RNA(該用語は2分子ガイドRNA構成および単分子ガイドRNA構成の両方を包含する)と会合し、それはCas9またはCas9様タンパク質を活性化させ、タンパク質を標的核酸配列にガイドする。Cas9またはCas9様タンパク質がその天然の酵素機能を保持する場合、それは標的DNAを切断して二本鎖切断を作出し、それはゲノム変更(すなわち、編集:欠失、挿入(ドナーポリヌクレオチドが存在する場合)、置換えなど)に繋がり、それにより、遺伝子発現を変更することができる。Cas9のいくつかのバリアント(該バリアントはCas9様という用語により包含される)は、減少したDNA切断活性を有するように変更されている(いくつかの場合では、それらは標的DNAの両方の鎖の代わりに単一の鎖を切断し、他の場合には、それらは著しく低減したDNA切断活性を有しない)。遺伝子バリエーションを導入するためのCRISPRシステムのさらなる例示的な記載は、例えば、US879596およびDi Carlo et al.(2013.Nucl. Acids Res.,7(41):4336-4343)に見出され得る。
【0082】
部位特異的突然変異誘発とも呼ばれるオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発は、典型的には合成DNAプライマーを利用する。この合成プライマーは所望の突然変異を含有し、突然変異部位の辺りの鋳型DNAに相補的であるため、DNAと関心対象の遺伝子中でハイブリダイズすることができる。突然変異は、単一の塩基変化(点突然変異)、複数の塩基変化、欠失、もしくは挿入、またはこれらの組合せであってもよい。一本鎖プライマーは次に、遺伝子の残りをコピーするDNAポリメラーゼを使用して伸長される。そのようにしてコピーされた遺伝子は、突然変異した部位を含有し、次にベクターとして宿主細胞に導入され、クローニングされてもよい。最後に、突然変異体は、所望の突然変異を含有することをチェックするためのDNAシークエンシングにより選択され得る。
【0083】
遺伝子バリエーションは、エラープローンPCRを使用して導入され得る。この技術において、関心対象の遺伝子は、配列の複製の忠実度を欠乏した条件下でDNAポリメラーゼを使用して増幅される。結果として、増幅産物は配列中に少なくとも1つのエラーを含有する。遺伝子が増幅され、結果としてもたらされる反応生成物が鋳型分子と比較した場合に配列中に1つまたは複数の変更を含有する場合、結果としてもたらされる生成物は、鋳型と比較して突然変異誘発されている。ランダム突然変異を導入する別の手段は、細胞を化学的突然変異誘発原、例えば、ニトロソグアニジンまたはメタンスルホン酸エチル(Nestmann,Mutat Res 1975 June;28(3):323-30)に曝露することであり、遺伝子を含有するベクターは次に宿主から単離される。
【0084】
相同組換え突然変異誘発は、外因性のDNA断片および標的とされたポリヌクレオチド配列の間の組換えを伴う。二本鎖切断が起こった後、切断の5'末端の辺りのDNAの切片は、切除と呼ばれるプロセスにおいて切断除去される。後続する鎖侵入工程において、壊れたDNA分子のオーバーハングの3'末端は次に、壊れていない類似したまたは同一のDNA分子に「侵入」する。方法は、遺伝子を欠失させ、エクソンを除去し、遺伝子を付加し、点突然変異を導入するために使用され得る。相同組換え突然変異誘発は、永久的または条件的なものであり得る。典型的には、組換え鋳型もまた提供される。組換え鋳型は、別々のベクター中に含有される別のベクターの成分であってもよく、または別々のポリヌクレオチドとして提供されてもよい。いくつかの局面では、組換え鋳型は、部位特異的ヌクレアーゼによりニッキングまたは切断された標的配列内またはその近くなどにおいて、相同組換えにおける鋳型として役立つように設計される。鋳型ポリヌクレオチドは任意の好適な長さであってもよく、例えば、約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000個、もしくはそれを上回る個数のヌクレオチドの長さであるか、または約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000個、もしくはそれを上回る個数のヌクレオチドの長さより長い。いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列を含むポリヌクレオチドの一部分に相補的である。最適にアライメントされた場合、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列の1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド、もしくはそれを上回る個数のヌクレオチド、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100ヌクレオチド、もしくはそれを上回る個数のヌクレオチドより長い)とオーバーラップする可能性がある。いくつかの局面では、鋳型配列および標的配列を含むポリヌクレオチドが最適にアライメントされた場合、鋳型ポリヌクレオチドの最も近いヌクレオチドは、標的配列から約1、5、10、15、20、25、50、75、100、200、300、400、500、1000、5000、10000ヌクレオチド、またはそれを上回る個数のヌクレオチド以内にある。相同組換えの方法において有用な部位特異的ヌクレアーゼの非限定的な例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼが挙げられる。そのようなヌクレアーゼの使用のさらなる記載について、例えば、US8795965およびUS20140301990を参照。
【0085】
遺伝子バリエーションの導入は不完全なプロセスであり得るため、処理された細菌集団中のいくつかの細菌は所望の突然変異を有するが他のものはそうではないということがある。いくつかの場合では、所望の遺伝子バリエーションを有する細菌を富化するように選択圧力を適用することが望ましい。伝統的に、成功裏の遺伝子バリアントについての選択は、抗生物質抵抗性遺伝子の挿入または非致死的な化合物を致死的な代謝物に変換することができる代謝活性の消失などの場合におけるように、遺伝子バリエーションに付与または消失されるいくつかの機能性のためのまたはそれに反対する選択を伴った。(例えば、選択マーカーの要求もなしに)所望の遺伝子バリエーションのみが導入を必要とされるように、ポリヌクレオチド配列自体に基づく選択圧力を適用することも可能である。この場合、遺伝子バリエーションを導入しようとする参照配列に対して選択が有効に方向付けられるように、選択圧力は、標的部位に導入される遺伝子バリエーションを欠いたゲノムを切断することを含み得る。典型的には、切断は、標的部位の100ヌクレオチド以内(例えば、標的部位におけるまたは標的部位内の切断を含めて、標的部位から75、50、25、10ヌクレオチド、またはそれを下回る個数のヌクレオチド以内)で起こる。切断は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼからなる群より選択される部位特異的ヌクレアーゼにより方向付けられてもよい。そのようなプロセスは、相同組換え用の鋳型が提供されないことを除いて、標的部位における相同組換えを増強するためのプロセスに類似している。結果として、所望の遺伝子バリエーションを欠いた細菌は切断を受ける可能性がより高く、修復されないままの切断は細胞死を結果としてもたらす。選択を生き延びた細菌は次に、形質の向上の供与を評価するために単離されてもよい。
【0086】
CRISPRヌクレアーゼは、切断を標的部位に方向付けるための部位特異的ヌクレアーゼとして使用されてもよい。突然変異した微生物の選択の向上は、Cas9を使用して非突然変異細胞を殺傷することにより得られ得る。微生物は次に組織から再単離され得る。非バリアントに反対する選択のために用いられるCRISPRヌクレアーゼシステムは、相同組換え用の鋳型が提供されないことを除いて、遺伝子バリエーションの導入に関して上記したものに類似した要素を用いることができる。標的部位に方向付けられた切断は、そのため、影響を受けた細胞の死を増強する。
【0087】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)システム、およびメガヌクレアーゼなどの、標的部位において切断を特異的に誘導するための他のオプションが利用可能である。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することにより生成される人工的なDNAエンドヌクレアーゼである。ZFNは、所望のDNA配列を標的とするように操作することができ、これは、ジンクフィンガーヌクレアーゼが独特の標的配列を切断することを可能にする。細胞に導入される場合、ZFNは、二本鎖切断を誘導することにより細胞中の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用され得る。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TAL(転写活性化因子様)エフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することにより生成される人工的なDNAエンドヌクレアーゼである。TALENは、実際的に任意の所望のDNA配列に結合するように迅速に操作することができ、細胞に導入される場合、TALENは、二本鎖切断を誘導することにより細胞中の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用され得る。メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)は、大きい認識部位(12~40塩基対の二本鎖DNA配列)により特徴付けられるエンドデオキシリボヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、高度に標的とされたやり方で配列を置き換え、排除しまたは改変するために使用され得る。タンパク質操作を通じてそれらの認識配列を改変することにより、標的とされた配列は変化され得る。メガヌクレアーゼは、細菌、植物または動物のいずれであれ、全てのゲノム種を改変するために使用することができ、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般的にグループ化される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが挙げられる。
【0088】
いくつかの局面では、内因性または外因性遺伝子の発現を増強する方法は、遺伝子の1つまたは複数の補充的コピーを染色体またはプラスミドに導入することである。いくつかの局面では、内因性または外因性遺伝子の発現を増強する別のやり方は、遺伝子の内因性プロモーターを遺伝子の外因性プロモーター、より強いプロモーターで置き換えること、または遺伝子の外因性プロモーター、より強いプロモーターを使用することである。いくつかの局面では、プロモーターは同種または異種である。
【0089】
いくつかの局面では、本開示の微生物は、形質転換された微生物細胞の選択のために有用な1つまたは複数の選択マーカーを含むように改変される。いくつかの局面では、選択マーカーは、本開示の遺伝子を含むDNA構築物、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および/または経路を介して導入される。
【0090】
いくつかの局面では、選択マーカーは抗生物質抵抗性マーカーである。抗生物質抵抗性マーカーの実例としては、NAT1、AURl-C、HPH、DSDA、KAN<R>、およびSH BLE遺伝子産物が挙げられるがこれらに限定されない。S.ノーセイ(S. noursei)からのNAT 1遺伝子産物はノーセオスリシンに対する抵抗性を付与し、サッカロミセス・セレビシエからのAURl-C遺伝子産物はオーレオバシジンA(Auerobasidin A)(AbA)に対する抵抗性を付与し、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumonia)のHPH遺伝子産物はハイグロマイシンBに対する抵抗性を付与し、大腸菌(E. coli)のDSDA遺伝子産物は、単独の窒素供給源としてD-セリンを含むプレート上で細胞が増殖することを可能とし、Tn903トランスポゾンのKAN<R>遺伝子はG418に対する抵抗性を付与し、ストレプトアロテイカス・ヒンドゥスタナス(Streptoalloteichus hindustanus)からのSH BLE遺伝子産物はゼオシン(ブレオマイシン)に対する抵抗性を付与する。いくつかの局面では、抗生物質抵抗性マーカーは、本開示の遺伝子改変された微生物細胞が単離された後に欠失される。
【0091】
いくつかの局面では、選択マーカーは、遺伝子改変された微生物細胞において栄養要求性(auxotrophy)(例えば、栄養要求性(nutritional auxotrophy))をレスキューする。そのような局面では、親微生物細胞は、アミノ酸またはヌクレオチド生合成経路において機能する1つまたは複数の遺伝子産物、例えば、1つまたは複数の栄養分(栄養要求性表現型)の補充なしの培地中で親微生物細胞を増殖できなくする、酵母におけるHIS3、LEU2、LYS1、LYS2、MET 15、TRP1、ADE2、およびURA3遺伝子産物などにおける機能的な妨害を含む。栄養要求性表現型は次に、妨害された遺伝子産物の機能的なコピーをコードする染色体組込みを用いて親微生物細胞を形質転換することによりレスキューすることができ(NB:遺伝子の機能的なコピーは、クルベロミセス(Kluveromyces)、カンジダなどの近い種を起源とし得る)、生成された遺伝子改変された微生物細胞は、親微生物細胞の栄養要求性表現型の喪失に基づいて選択され得る。
【0092】
微生物の異なる種類からの遺伝子が細胞に導入される(酵母遺伝子が細菌へ、細菌遺伝子が酵母へ、ウイルス遺伝子が酵母へ、など)場合、遺伝子は、遺伝子が導入されている宿主中での発現のために最適なコドン用法を用いて合成されるようにトランスコード(コドン最適化)されてもよい。いくつかの局面では、いくつかの遺伝子の(アミノ酸配列ではなく)ヌクレオチド配列は、同じ遺伝子またはホモログの内因性コピーとの組換えを最小化するようにトランスコードされてもよい。いくつかの局面では、遺伝子は、遺伝子の内因性コピーを欠失させ、必要な場合には遺伝子の新たなコピーを誘導性プロモーターの制御下に置くことにより、誘導性とされてもよい。
【0093】
いくつかの局面では、本開示は、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒド、またはその塩のうちの1つへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸配列を対象とし、相互に排他的でない方式の種類:(1)過剰発現、すなわち、1つもしくは複数のコピーが微生物に導入されること、および/または(2)少なくとも1つの核酸が強いもしくは誘導性プロモーターの制御下に置かれることを使用して微生物中で発現され得る。
【0094】
プロモーター
いくつかの局面では、(i)構成的な強いプロモーター(強いプロモーターと称される場合がある)、および(ii)誘導性プロモーターを含む、様々なプロモーターが関心対象のコード配列の所望の発現のために使用されてもよい。
【0095】
いくつかの局面では、プロモーターは酵母プロモーターである。異なる培地中での相対的な活性と共に酵母プロモーターのリストはKeren et al.(2013. Molecular Systems Biology,9:701)に見出され得る。所与の遺伝子の構成的な過剰発現を可能とするプロモーターはVelculescu et al.(1997. Cell,88:243-251)に見出され得る。
【0096】
いくつかの局面では、強いプロモーターは、以下:pTDH3(SEQ ID NO:13)、pENO2(SEQ ID NO:14)、pTEF KI(SEQ ID NO:15)、pTEF3(SEQ ID NO:16)、pTEF1(SEQ ID NO:17)、pADH1(SEQ ID NO:18)、pGMP1(SEQ ID NO:19)、pFBA1(SEQ ID NO:20)、pPDC1(SEQ ID NO:21)、pCCW12(SEQ ID NO:22)、およびpGK1(SEQ ID NO:23)より選択されてもよい。
【0097】
いくつかの局面では、本開示による強いプロモーターは、pTDH3、pENO2、pTEF-KI、pTEF3、pTEF1、pADH1、pGMP1、pFBA1、pPDC1、pCCW12およびpGK1からなる群より独立して選択される。
【0098】
本明細書に記載されるように、誘導性プロモーターは、その活性が生物または非生物因子の存在または非存在により、そしてまた前記因子の量により制御されるプロモーターである。よって、所与の因子の量が増加したまたは増加された場合にそれらの活性は誘導およびそのため増加される。
【0099】
いくつかの局面では、pSAM4プロモーターを含む組換え酵母の培養培地中のメチオニンの量を増加させることは、このプロモーターの制御下での遺伝子の転写を誘導し、そのため増加させる。いくつかの局面では、pCTR1プロモーターを含む組換え酵母の培養培地中の銅の量を低減することは、このプロモーターの制御下での遺伝子の誘導された、およびそのため増加された転写に繋がる。
【0100】
この理由から、以下のプロモーターは、本明細書において「誘導性プロモーター」と称される。
【0101】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、銅で誘導可能なプロモーター、メチオニンで誘導可能なプロモーターおよびスレオニンで誘導可能なプロモーターを含む群より選択されてもよく、pSAM4-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:24)、pCUP1-1-銅誘導性(SEQ ID NO:25)、pCUP1.cgla-銅誘導性(SEQ ID NO:26)、pCUP1.sba-銅誘導性(SEQ ID NO:27)、pACU1-銅誘導性(SEQ ID NO:28)、pACU2-銅誘導性(SEQ ID NO:29)、pACU3p-銅誘導性(SEQ ID NO:30)、pACU4p-銅誘導性(SEQ ID NO:31)、pACU5-銅誘導性(SEQ ID NO:32)、pACU6-銅誘導性(SEQ ID NO:33)、pACU7-銅誘導性(SEQ ID NO:34)、pACU8-銅誘導性(SEQ ID NO:35)、pACU9-銅誘導性(SEQ ID NO:36)、pACU10p-銅誘導性(SEQ ID NO:37)、pACU11-銅誘導性(SEQ ID NO:38)、pACU12-銅誘導性(SEQ ID NO:39)、pACU13-銅誘導性(SEQ ID NO:40)、pACU14-銅誘導性(SEQ ID NO:41)、pACU15-銅誘導性(SEQ ID NO:42)、pGAL/CUP1p-銅誘導性(SEQ ID NO:43)、pCRS5-銅誘導性(SEQ ID NO:44)、およびpCHA1-スレオニン誘導性(SEQ ID NO:45)からなる群より選択されてもよい。
【0102】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、pSAM4、pCUP1-1、pCUP1.Cgla、pCUP1.Sba、pACU1、pACU2、pACU3p、pACU4p、pACU5、pACU6、pACU7、pACU8、pACU9、pACU10p、pACU11、pACU12、pACU13、pACU14、pACU15、pGAL/CUP1p、pCRS5、およびpCHA1からなる群より選択されてもよい。これらのプロモーターの活性はそのため、上記に指し示されるようにメチオニン、銅またはスレオニンの存在を増加させることにより誘導される。
【0103】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、(1)銅の非存在に起因して誘導可能なプロモーター(すなわち、プロモーターの活性は銅の非存在により増加し、培地中に銅が少なければ少ないほど、これらのプロモーターの活性はより高い)、(2)リジンの非存在に起因して誘導可能なプロモーター(すなわち、プロモーターの活性はリジンの非存在により増加し、培地中にリジンが少なければ少ないほど、これらのプロモーターの活性はより高い)、および(3)メチオニンの非存在に起因して誘導可能なプロモーター(すなわち、プロモーターの活性はメチオニンの非存在により増加し、培地中にメチオニンが少なければ少ないほど、これらのプロモーターの活性はより高い)より選択されてもよい。いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、pCTR1-銅誘導性(SEQ ID NO:46)、pCTR3-銅誘導性(SEQ ID NO:47)、pCUR1-銅誘導性(SEQ ID NO:48)、pCUR2-銅誘導性(SEQ ID NO:49)、pCUR3-銅誘導性(SEQ ID NO:50)、pCUR4-銅誘導性(SEQ ID NO:51)、pCUR5p-銅誘導性(SEQ ID NO:52)、pCUR6-銅誘導性(SEQ ID NO:53)、pCUR7-銅誘導性(SEQ ID NO:54)、pCUR8-銅誘導性(SEQ ID NO:55)、pCUR9-銅誘導性(SEQ ID NO:56)、pCUR10-銅誘導性(SEQ ID NO:57)、pCUR11-銅誘導性(SEQ ID NO:58)、pCUR12-銅誘導性(SEQ ID NO:59)、pCUR13-銅誘導性(SEQ ID NO:60)、pCUR14-銅誘導性(SEQ ID NO:61)、pCUR15-銅誘導性(SEQ ID NO:62)、pCUR16-銅誘導性(SEQ ID NO:63)、pCUR17-銅誘導性(SEQ ID NO:64)、pLYS1-リジン誘導性(SEQ ID NO:65)、pLYS4-リジン誘導性(SEQ ID NO:66)、pLYS9-リジン誘導性(SEQ ID NO:67)、pLYR1p-リジン誘導性(SEQ ID NO:68)、pLYR2p-リジン誘導性(SEQ ID NO:69)、pLYR3p-リジン誘導性(SEQ ID NO:70)、pLYR4p-リジン誘導性(SEQ ID NO:71)、pLYR5p-リジン誘導性(SEQ ID NO:72)、pLYR6p-リジン誘導性(SEQ ID NO:73)、pLYR7p-リジン誘導性(SEQ ID NO:74)、pLYR8-リジン誘導性(SEQ ID NO:75)、pLYR9-リジン誘導性(SEQ ID NO:76)、pLYR10-リジン誘導性(SEQ ID NO:77)、pLYR11-リジン誘導性(SEQ ID NO:78)、pMET17-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:79)、pMET6-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:80)、pMET14-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:81)、pMET3-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:82)、pSAM1-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:83)、pSAM2-メチオニン誘導性(SEQ ID NO:84)、pMDH2-グルコース誘導性(SEQ ID NO:85)、pJEN1-グルコース誘導性(SEQ ID NO:86)、pICL1-グルコース誘導性(SEQ ID NO:87)、pADH2-グルコース誘導性(SEQ ID NO:88)、およびpMLS1-グルコース誘導性(SEQ ID NO:89)からなる群より選択される。
【0104】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、pCTR1、pCTR3、pCUR1、pCUR2、pCUR3、pCUR4、pCUR5p、pCUR6、pCUR7、pCUR8、pCUR9、pCUR10、pCUR11、pCUR12、pCUR13、pCUR14、pCUR15、pCUR16、pCUR17、pLYS1、pLYS4、pLYS9、pLYR1p、pLYR2p、pLYR3p、pLYR4p、pLYR5p、pLYR6p、pLYR7p、pLYR8、pLYR9、pLYR10、pLYR11、pMET17、pMET6、pMET14、pMET3、pSAM1、pSAM2、pMDH2、pJEN1、pICL1、pADH2、およびpMLS1からなる群より選択されてもよい。
【0105】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、銅で誘導可能なプロモーター、銅の非存在に起因して誘導可能なプロモーター、グルコースの非存在に起因して誘導可能なプロモーター、リジンの非存在に起因して誘導可能なプロモーター、メチオニンで誘導可能なプロモーター、メチオニンの非存在に起因して誘導可能なプロモーター、およびスレオニンで誘導可能なプロモーターを含む群より選択されてもよい。
【0106】
いくつかの局面では、誘導性プロモーターは、pSAM4、pCUP1-1、pCUP1.Cgla、pCUP1.Sba、pACU1、pACU2、pACU3p、pACU4p、pACU5、pACU6、pACU7、pACU8、pACU9、pACU10p、pACU11、pACU12、pACU13、pACU14、pACU15、pGAL/CUP1p、pCRS5、pCHA1、pCTR1、pCTR3、pCUR1、pCUR2、pCUR3、pCUR4、pCUR5p、pCUR6、pCUR7、pCUR8、pCUR9、pCUR10、pCUR11、pCUR12、pCUR13、pCUR14、pCUR15、pCUR16、pCUR17、pLYS1、pLYS4、pLYS9、pLYR1p、pLYR2p、pLYR3p、pLYR4p、pLYR5p、pLYR6p、pLYR7p、pLYR8、pLYR9、pLYR10、pLYR11、pMET17、pMET6、pMET14、pMET3、pSAM1、pSAM2、pMDH2、pJEN1、pICL1、pADH2およびpMLS1からなる群より選択されてもよい。
【0107】
いくつかの局面では、同一または異なる誘導性プロモーターは、好ましくは、配列SEQ ID NO:13~89に対して少なくとも80/85/90/95/96/97/98/99/100%の同一性を有する配列からなる群より選択される核酸の配列により特徴付けられてもよい。
【0108】
いくつかの局面では、Blazeck&Alper(2013)Biotechnol. J. 8 46-58に記載されるような合成プロモーターもまた使用され得る。
【0109】
本開示の強いおよび誘導性または抑制性プロモーターは、サッカロミセス(Saccharomycetes)綱からの任意の生物を起源とすることができ、特に、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・カステリイ(Saccharomyces castelii)、サッカロミセス・バヤナス(Saccharomyces bayanus)、サッカロミセス・アルボリコラ(Saccharomyces arboricola)、サッカロミセス・クドリアブゼビイ(Saccharomyces kudriavzevii)、アシュビヤ・ゴシッピイ(Ashbya gossypii)、クルベロミセス・ラクチス(Kluveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、デバリオミセス・カステリイ(Debaryomyces castelii)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolitica)、およびシバーリンドネラ・ジャディニイ(Cyberlindnera jadinii)からなる群より独立して選択される生物を起源とすることができる。
【0110】
いくつかの局面では、強い、弱い、および誘導性プロモーターは、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・カステリイ、サッカロミセス・バヤナス、サッカロミセス・アルボリコラ、サッカロミセス・クドリアブゼビイ、およびクルベロミセス・ラクチスからなる群より選択される生物を起源としてもよい。
【0111】
ターミネーター
いくつかの局面では、組換え微生物は、サッカロミセス・セレビシエ中を含む酵母細胞中で機能的な適切な転写ターミネーター配列を含む。いくつかの局面では、同一または異なる転写ターミネーターは、Yamanishi et al.,(2013)ACS synthetic biology 2,337-347に見出され得る。
【0112】
いくつかの局面では、ターミネーターは、以下:
・グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、アイソザイム2をコードする遺伝子からのtTDH2(TDH2遺伝子=配列SEQ ID NO:90)、
・tCYC1(=配列SEQ ID NO:91)、
・tTDH3(=配列SEQ ID NO:92)、
・アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子からのtADH1(ADH1遺伝子=配列SEQ ID NO:93)、
・アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子からのtADH2(ADH2遺伝子=配列SEQ ID NO:94)、
・トリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子からのtTPI1(TPI1遺伝子=配列SEQ ID NO:95)、
・O-アセチルホモセリン-O-アセチルセリンスルフヒドリラーゼをコードする遺伝子からのtMET17(Met17遺伝子=配列SEQ ID NO:96)、
・エノラーゼIIをコードする遺伝子からのtENO2(ENO2遺伝子=配列SEQ ID NO:97)、
・tMET3(=配列SEQ ID NO:98)、
・3-ホスホグリセリン酸キナーゼをコードする遺伝子からのtPGK1(PGK1遺伝子=配列SEQ ID NO:99)、
・tDIT1(=配列SEQ ID NO:100)
・tRPL3(=配列SEQ ID NO:101)
・tRPL41B(=配列SEQ ID NO:102)
・tRPL15A(=配列SEQ ID NO:103)
・tIDP1(=配列SEQ ID NO:104)
を含む群より選択されてもよい。
【0113】
いくつかの局面では、同一または異なるターミネーターは、好ましくは、SEQ ID NO:90~104に対して少なくとも80/85/90/95/96/97/98/99/100%の同一性を有する配列からなる群より選択される核酸の配列により特徴付けられてもよい。
【0114】
マロン酸セミアルデヒド、その塩、およびその誘導体
マロン酸セミアルデヒドおよびその塩は、価値のある化合物の産生のための鍵となる中間体である。経済的関心対象のこれらの化合物としては、マロン酸セミアルデヒドまたはその塩から直接的に産生されるもの、例えば、アクリル酸、1-プロパノール、イソプロパノール、3-ヒドロキシプロピオン酸、およびプロピオン酸が挙げられるが、マロニル-CoAに由来するもの、大抵はポリケチドシンターゼにより(例えば、フロログルシノールおよびフラボノイド)ならびに脂肪酸シンターゼにより産生されるもの、またはメバロン酸に由来するもの、例えば、ファルネシル-PP、スクアレンおよび誘導体、または3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル酸経路に由来するものも挙げられる。
【0115】
マロン酸セミアルデヒドおよびその塩は、酵母中でマロニル-CoAおよびベータ-アラニンから天然に産生される。しかしながら、マロニル-CoAおよびその塩の産生はエタノール生合成経路と競合しているため、マロン酸セミアルデヒドへのフラックス誘導が困難となる。
【0116】
さらに、ベータ-アラニンからの産生は、オキサロ酢酸のアミノ化、続いてベータ-アラニンの脱アミノ化を要求し、多数の酵素を伴う。
【0117】
酵母中でのマロン酸セミアルデヒドおよびその塩の産生を促すために、オキサロ酢酸の脱カルボキシル化により1工程でマロン酸セミアルデヒドを得ることが提案されている(US2010/0021978)。しかしながら、天然の経路において効率的にこの変換を行うことができる天然の酵素は知られていない。オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化の酵素活性は本明細書においてオキサロ酢酸1-デカルボキシラーゼ(MSA形成性)と称され、ピルビン酸をもたらすオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.3)と混同されるべきではない。
【0118】
US2010/0021978は、マロン酸セミアルデヒドまたはその塩のうちの1つにおいてオキサロ酢酸のこの脱カルボキシル化を行うための乱雑的なデカルボキシラーゼ、例えば、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ、アルファ-ケトグルタル酸デカルボキシラーゼ、アルファ-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼまたはピルビン酸デカルボキシラーゼの使用を提案している。この文献は、マロン酸セミアルデヒドを通じて3ヒドロキシプロピオン酸を産生するための大腸菌中でのベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼの使用を例示する。
【0119】
US2018/032830は、3-ヒドロキシプロピオン酸を産生するために3-オキソプロパン酸(マロン酸セミアルデヒド)においてオキサロ酢酸のこの脱カルボキシル化を行うためのピルビン酸デカルボキシラーゼなどのデカルボキシラーゼの使用を提案および例示する。
【0120】
US8809027は、3-ヒドロキシプロピオン酸を産生するためにマロン酸セミアルデヒドにおいてオキサロ酢酸の脱カルボキシル化を行うためのピルビン酸デカルボキシラーゼ、2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼおよびアルファ-ケトグルタル酸デカルボキシラーゼの使用を提案および例示する。
【0121】
上述の認可前の公報の発明者らは、インセルロおよびインビトロの両方でそれらのコグネイト基質に対するカルボキシラーゼ活性を検出できたかもしれないが、本発明者らは、オキサロ酢酸に対する全てのこれらの酵素のいかなる活性も検出できなかった。
【0122】
よって、酵母中、特に酵母サッカロミセス・セレビシエ中で発現された場合に、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒド、またはその塩のうちの1つへの変換を効率的に触媒することができる酵素の必要性が当技術分野において依然として存在する。
【0123】
マロン酸セミアルデヒドは、以下の構造:
を有する化合物である。
【0124】
いくつかの局面では、化合物は、塩基または塩の形態で存在してもよい。いくつかの局面では、塩は、以下の構造:
を有するマロン酸セミアルデヒドであり得る。
【0125】
いくつかの局面では、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、ホスホニウム、またはスルホニウム塩などの有機陽イオン塩もまた関わり得る。
【0126】
いくつかの局面では、マロン酸セミアルデヒド誘導体は、マロン酸セミアルデヒド、またはその塩のうちの1つを産生する微生物中に天然または人工的に存在する少なくとも1つの酵素による改変後に、マロン酸セミアルデヒド、またはその塩のうちの1つから得られ得る化合物である。
【0127】
いくつかの局面では、マロン酸セミアルデヒドの誘導体としては、プロパノール、プロパナール、アクリル酸、アクリリル-CoA、アセチル-CoA、3-HP、アクリレート、アセトン、イソプロパノール、プロピオネート、プロピオニル-CoA、3-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシプロピオニル-CoA、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチレート、フロログルシノール、フラボノイド、カンナビノイド、ファルネシル-PP、およびスクアレンが挙げられる。
【0128】
いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオネート、アクリリル-CoA、プロピオニル-CoA、プロパナールおよびプロパノールは、
図11に詳述される工程を通じてマロン酸セミアルデヒドまたはその塩のうちの1つから得られ得る。PCSは、クロロフレクサス・アグレガンス(Chloroflexus aggregans)、ロセイフレクサス・カステンホルジイ(Roseiflexus castenholzii)、またはクロロフレクサス・オーランチアカス(Chloroflexus aurantiacus)のPCSなどのプロピオニル-CoAシンターゼを表す。この反応は、限定されないが、EC番号6.2.1.17/6.2.1.36を有する酵素、例えば、表3に列記されるものにより触媒され得る。ADHEは、クロストリジウム・ベイジェリンキイまたはクロストリジウム・アルブスティ(Clostridium arbusti)からのADHEなどのアルコールデヒドロゲナーゼEを表す。この反応は、限定されないが、EC番号1.1.1.1/1.2.1.4/1.2.1.5を有する酵素、例えば、表7に列記されるものにより触媒され得る。
【0129】
いくつかの局面では、アクリル酸およびアクリレートは、文献(Chu et al. Direct fermentation route for the production of acrylic acid. Metabolic Engineering,32(2015),23-29)において既に実証された合成経路として、マロン酸セミアルデヒドまたはその塩のうちの1つから、3-HPへのCoAの取り付け、
図12に図示されるような3-HP-CoAからアクリリル-CoAへの脱水、およびアクリリル-CoAからのCoAの脱離を伴う複数工程酵素反応により得られ得る。マロン酸セミアルデヒドからアクリリル-CoAへの工程は、限定されないが、EC番号1.1.1.381を有する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ、例えば、表1に列記されるもの、限定されないが、EC番号2.8.3.1/6.2.1.17/6.2.1.36を有する使用され得る3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ、例えば、表4に列記されるもの、限定されないが、EC番号4.2.1.116/4.2.1.55/4.2.1.150/4.2.1.17を有する使用され得る3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ/エノイル-CoAヒドラターゼ、例えば、表5に列記されるもの、およびアシル-CoAヒドロラーゼまたはチオエステラーゼ(表14)により触媒され得る。アクリル酸は、脱水反応を介して化学的に誘導され得る。3-ヒドロキシプロピオン酸の脱水方法は当技術分野において周知である。例えば、3-HPの変換についてのその教示が本明細書に組み入れられる米国特許第8,846,353 B2号は、発酵ブロス中に存在する3-HPが、限定されないが、NaH2PO4-シリカゲル、H3PO4-シリカゲル、CuSO4-シリカゲルおよびゼオライトH-β-H3PO4のような酸触媒の存在下で蒸気相反応において脱水され得る方法を記載する。米国特許第2,469,701号は、粉末化金属銅の存在下で約150~190℃の温度において減圧下で維持されたリン酸または硫酸などの濃縮された脱水触媒に3-ヒドロキシプロピオン酸を徐々に加えること、および蒸留により触媒から形成された水性アクリル酸を分離することによる反応のための他の例を記載する。3-HPを含有する水性相はまた、反応蒸留を介して脱水して流体アクリル酸溶液を与えることができ、該溶液は、米国特許第US 8,198,481 B2号に記載されるように懸濁結晶化または層結晶化による任意での精製工程に進めることができる。
【0130】
いくつかの局面では、マロン酸セミアルデヒドは、Wilding et al.(2016. Appl. Microbiol Biotechnol,82:3846-3856)に記載のシュードノマス・プチダ(Pseudonomas putida)からのKES23460などのマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(E. C. 1.2.1.18)によりアセチル-CoAに変換され得る。
図9を参照。アセチル-CoAは次に、Tamakawa et al. Appl Microbiol Biotechnol(2013)97:6231-6239に記載されるようにイソプロパノールを産生するための出発点となる。
【0131】
いくつかの局面では、プロピオニル-CoAはマロン酸セミアルデヒドから得られる。プロピオニル-CoAは次に、Erbilgin et al.(2016)PLoS Biol 14(3):e1002399. doi:10.1371/journal. pbio. 1002399およびReinscheid et al.(1999)Microbiology 145,503-513に記載されるホスホトランスアセチラーゼ(E.C.2.3.1.)および酢酸キナーゼ(E.C.2.7.2.1)の逐次的な触媒作用を通じてプロピオン酸に変換され得る。
【0132】
いくつかの局面では、マロン酸セミアルデヒドは、Alber et al.(2006)Journal of bacteriology 188,8551-8559に記載されるようにマロニル-CoAレダクターゼ(E.C 1.2.1.75)によりマロニル-CoAに変換され得る。
図4を参照。マロニル-CoAは次に、Yang and Cao(2012)Appl Microbiol Biotechnol93:487-495に記載されるようにフロログルシノールシンターゼ(E.C.2.3.1.253)を使用してフロログルシノールおよび誘導体を合成するための出発点となる。
【0133】
マロニル-CoAは、フラボノイド生合成のために要求される主要なビルディングブロックおよび多くの場合にボトルネックである(Johnson et al.(2017)Metabolic Engineering 44:253-264)。マロン酸セミアルデヒドは、Alber et al.(2006)Journal of bacteriology 188,8551-8559に記載されるようにマロニル-CoAレダクターゼ(E.C 1.2.1.75)によりマロニル-CoAに変換され得る。マロニル-CoAは次に、Batra,Priya,and Anil K. Sharma.(2013)3 Biotech 6:439-59;およびMou,et al.(2015)PLoS ONE 10(6)に記載されるようにフラボノイド合成を促すために使用され得る。
【0134】
アセチル-CoAもまた、ファルネシル-PPおよび誘導体生合成、例えばスクアレンのために要求される主要なビルディングブロックおよび多くの場合にボトルネックである。上述したように、マロン酸セミアルデヒドは、例えば、Wilding et al.(2016)Appl. Env. Microbiology,82,3846-3856に記載のシュードモナス・プチダからのKES23460のようなマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(E.C 1.2.1.18)によりアセチル-CoAに変換され得る。アセチル-CoAは次に、Wang,J.;Li,Y.;Liu,D. Cloning and Characterization of Farnesyl Diphosphate Synthase Gene Involved in Triterpenoids Biosynthesis from Poria cocos. Int. J. Mol. Sci. 2014,15,22188-22202に記載されるようにファルネシルPPおよび誘導体を産生するための出発点となる。
【0135】
いくつかの局面では、カンナビノイドは、全てのカンナビノイドの前駆体であるアセチル-CoAからマロン酸セミアルデヒドまたはその塩のうちの1つから得られ得る。マロン酸セミアルデヒドは、例えば、Wilding et al.に記載のシュードモナス・プチダからのKES23460のようなマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(E.C 1.2.1.18)によりアセチル-CoAに変換され得る。アセチル-CoAは次に、Carvalho et al.(2017)FEMS Yeast Research,17,fox037. doi:10.1093/femsyr/fox037に記載されるようにカンナビノイドを産生するための出発点となる。
【0136】
いくつかの局面では、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル酸は、マロン酸セミアルデヒドまたはその塩のうちの1つから以下のように得られ得る。上述したように、マロン酸セミアルデヒドは、例えば、Wilding et al.に記載のシュードモナス・プチダからのKES23460のようなマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(E.C 1.2.1.18)によりアセチル-CoAに変換され得る。アセチル-CoAは次に、Gogerty and Bobic(2010)Appl Microbiol Biotechnol 76:8004-8010に記載されるように3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチル酸生合成のための出発点となる。
【0137】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、マロン酸セミアルデヒドおよび/または関心対象の誘導体を得るために上記の酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列を含んでもよい。マロン酸セミアルデヒド、またはその塩のうちの1つから、関心対象のマロン酸セミアルデヒド誘導体への必要な変換を行う酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列は、微生物中に天然に存在すること(内因性)ができ、かつ/または当業者に周知の方法にしたがって導入遺伝子として微生物に組み込まれ得る。
【0138】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、上記に定義されるようなオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸配列に加えて、3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸を含んでもよい。
【0139】
いくつかの局面では、この態様による3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼは、EC番号1.1.1.381を有する3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、例えば、表1に列記されるものであり得るがこれらに限定されない。
【0140】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、上記に定義されるようなオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸遺伝子に加えて、(i)3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたはマロニル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸および(ii)プロピオニル-CoAシンターゼをコードする少なくとも1つの核酸を含んでもよい。
【0141】
いくつかの局面では、この態様による3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼは、EC番号1.1.1.381を有する3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、例えば、表1に列記されるものであり得るがこれらに限定されない。使用され得るプロピオニル-coAシンターゼ(PCS)は、限定されないが、表3に列記されるもののようにEC番号6.2.1.17/6.2.1.36を有する。
【0142】
いくつかの局面では、本開示の組換え微生物は、上記に定義されるようなオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸遺伝子に加えて、(i)3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたはマロニル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸、(ii)プロピオニル-CoAシンターゼまたは3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/トランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸ならびに(iii)少なくとも1つのアルコールデヒドロゲナーゼEまたはアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼを含んでもよい。
【0143】
いくつかの局面では、本開示の3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼは、限定されないが、EC番号1.1.1.381を有する3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、例えば、表1に列記されるものであってもよい。いくつかの局面では、本開示のプロピオニル-CoAシンターゼ(PCS)は、限定されないが、EC番号6.2.1.17/6.2.1.36を有するPCS、例えば、表3に列記されるものであってもよい。
【0144】
いくつかの局面では、限定されないが、使用され得る本開示のADHEは、EC番号1.1.1.1/1.2.1.4/1.2.1.5を有する酵素、例えば、表7に列記されるものである。いくつかの局面では、プロピオニル-CoAからプロパノールを変換するために2つの酵素を使用することができる。限定されないが、EC番号1.2.1.10/1.2.1.87を有する酵素、例えば、表8に列記されるものまたはEC番号2.3.1.8/2.7.2.1を有する酵素、例えば、表10に列記されるもの、およびEC番号1.1.1.1/1.1.1.2を有する酵素、例えば、表9に列記されるものを使用することができる。
【0145】
いくつかの局面では、組換え微生物は、上記に定義されるようなオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸配列に加えて、(i)3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたはマロニル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸および(ii)プロピオン酸-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を含んでもよい。
【0146】
いくつかの局面では、プロピオン酸-CoAトランスフェラーゼは、限定されないが、参照E.C.2.8.3.1を有する酵素であってもよい。
【0147】
いくつかの局面では、3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼは、EC番号1.1.1.381を有する3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたはマロニル-CoAレダクターゼ、例えば、表1に列記されるものであってもよいがこれらに限定されない。いくつかの局面では、プロピオン酸-CoAトランスフェラーゼは、EC番号2.8.3.1/6.2.1.17/6.2.1.36を有するプロピオン酸-CoAトランスフェラーゼまたは3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ、例えば、表4に列記されるものであってもよいがこれらに限定されない。
【0148】
いくつかの局面では、組換え微生物は、上記に定義されるようなオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする核酸遺伝子に加えて、(i)3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたはマロニル-CoAレダクターゼをコードする少なくとも1つの核酸、(ii)プロピオン酸-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも1つの核酸および(iii)少なくとも1つの3-ヒドロキシプロピオニルコエンザイムAデヒドラターゼを含んでもよい。
【0149】
いくつかの局面では、3-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼおよび/またはマロニル-CoAレダクターゼは、限定されないが、EC番号1.1.1.381を有する酵素、例えば、表1に列記されるものであってもよい。いくつかの局面では、使用され得るプロピオン酸-CoAトランスフェラーゼまたは3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼは、限定されないが、EC番号2.8.3.1/6.2.1.17/6.2.1.36、例えば、表4に列記されるものを有する。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオニルコエンザイムAデヒドラターゼは、限定されないが、EC番号4.2.1.116/4.2.1.55/4.2.1.150/4.2.1.17を有する酵素、例えば、表5に列記されるものであってもよい。
【0150】
いくつかの局面では、本開示は、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる組換え微生物、いくつかの局面では微生物を対象とする。いくつかの局面では、これらの酵素は、以下の通りのSEQ ID NO:1により特徴付けられ、
配列中、
X
1は、ロイシン、リジン、アルギニンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
2は、ロイシンおよびリジンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
3は、スレオニンおよびセリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、X
4は、フェニルアラニン、アスパラギン、アラニン、イソロイシンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
5は、システインおよびアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、X
6は、ロイシン、アスパラギンおよびアラニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、かつ
X
7は、アラニンおよびロイシンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、但し、酵素は、配列SEQ ID NO:1であって、X
1がロイシンを表し、X
2がロイシンを表し、X
3がスレオニンを表し、X
4がフェニルアラニンを表し、X
5がシステインを表し、X
6がロイシンを表し、かつX
7がアラニンを表す、配列を有し得ない。
【0151】
いくつかの局面では、X1は、リジン、アルギニンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表す。いくつかの局面では、X1は、アルギニンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表す。いくつかの局面では、X1はアルギニンである。
【0152】
いくつかの局面では、本開示の酵素は、X1がアルギニンである、上記に定義されるようなSEQ ID NO:1の酵素である。
【0153】
いくつかの局面では、X2はロイシンを表す。
【0154】
いくつかの局面では、X1はバリンを表し、かつX2はリジンを表す。
【0155】
いくつかの局面では、X3はスレオニンを表す。
【0156】
いくつかの局面では、X1はアルギニンであり、X2はロイシンを表し、かつX3はスレオニンを表す。
【0157】
いくつかの局面では、X4はフェニルアラニンまたはアスパラギンを表す。
【0158】
いくつかの局面では、SEQ ID NO:1の配列の酵素は、
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、かつX4がフェニルアラニンを表し、または
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、かつX4がアスパラギンを表すようなものである。
【0159】
いくつかの局面では、X5はシステインを表す。
【0160】
いくつかの局面では、配列SEQ ID NO:1の酵素は、
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、かつX5がシステインを表し、または
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、かつX5がシステインを表すようなものである。
【0161】
いくつかの局面では、X6は、ロイシンおよびアスパラギンからなる群より選択されるアミノ酸を表す。いくつかの局面では、X6はロイシンである。
【0162】
いくつかの局面では、X1はバリンを表し、X2はリジンを表し、かつX6はアスパラギンを表す。
【0163】
いくつかの局面では、配列SEQ ID NO:1の酵素は、
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、かつX6がロイシンであり、または
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、かつX6がロイシンであるようなものである。
【0164】
いくつかの局面では、X7はアラニンを表す。
【0165】
いくつかの局面では、配列SEQ ID NO:1の酵素は、
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンであり、かつX7がアラニンであり、または
X1がアルギニンもしくはリジンであり、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンであり、かつX7がアラニンであるようなものである。
【0166】
いくつかの局面では、本開示の酵素は、以下からなる群より選択される:
(i)配列SEQ ID NO:1の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、かつX7がアラニンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:2の酵素)
(ii)配列SEQ ID NO:1の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、かつX7がアラニンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:3の酵素)
(iii)配列SEQ ID NO:1の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、かつX7がアラニンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:4の酵素)
(iv)配列SEQ ID NO:1の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、かつX7がロイシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:5の酵素)、および
(v)配列SEQ ID NO:1の酵素であって、配列中、X1がバリンを表し、X2がリジンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアスパラギンを表し、X5がシステインを表し、X6がアスパラギンを表し、かつX7がアラニンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:6の酵素)。
【0167】
いくつかの局面では、本開示は、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる組換え微生物、いくつかの局面では微生物を対象とする。いくつかの局面では、これらの酵素は、
を含むアミノ酸配列により特徴付けられ、
配列中、
X
1は、ロイシン、リジン、アルギニンおよびバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
2は、ロイシンおよびリジンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
3は、スレオニンおよびセリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
4は、フェニルアラニン、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、バリン、ロイシン、トリプトファンおよびアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
5は、システインおよびアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
6は、ロイシン、アスパラギン、アラニン、バリンおよびセリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
7は、アラニン、ロイシン、スレオニン、グリシンおよびアスパラギンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
8は、スレオニンまたはイソロイシンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
9は、セリンまたはスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
10は、アラニンまたはバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
11は、ヒスチジンまたはアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
12は、グルタミンまたはアルギニンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
13は、アスパラギンまたはアスパラギン酸からなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
14は、アスパラギンまたはアスパラギン酸からなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
15は、グルタミン酸またはグリシンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
16は、イソロイシンまたはバリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
X
17は、フェニルアラニンまたはセリンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、かつ
X
18は、グルタミン酸またはグリシンからなる群より選択されるアミノ酸を表し、
但し、酵素は、
配列SEQ ID NO:274であって、X
1がロイシンを表し、X
2がロイシンを表し、X
3がスレオニンを表し、X
4がフェニルアラニンを表し、X
5がシステインを表し、X
6がロイシンを表し、X
7がアラニンを表し、X
8がスレオニンを表し、X
9がセリンを表し、X
10がアラニンを表し、X
11がヒスチジンを表し、X
12がグルタミンを表し、X
13がアスパラギンを表し、X
14がアスパラギンを表し、X
15がグルタミン酸を表し、X
16がイソロイシンを表し、X
17がフェニルアラニンを表し、かつX
18がグルタミン酸を表す、配列
を有し得ない。
【0168】
本発明による酵素は特に、以下からなる群より選択され得る:
(i)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:2の酵素)、
(ii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:242の酵素)、
(iii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がイソロイシンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギン酸を表し、X15がグリシンを表し、X16がイソロイシンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:243の酵素)、
(iv)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がグリシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:244の酵素)、
(v)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:245の酵素)、
(vi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:247の酵素)、
(vii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:248の酵素)、
(viii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:249の酵素)、
(ix)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:250の酵素)、
(x)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:251の酵素)、
(xi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:252の酵素)、
(xii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がグリシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:253の酵素)、
(xiii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:254の酵素)、
(xiv)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグリシンを表し、X16がバリンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:255の酵素)、
(xv)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグリシンを表し、X16がイソロイシンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:256の酵素)、
(xvi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がイソロイシンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギン酸を表し、X15がグリシンを表し、X16がイソロイシンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:257の酵素)、
(xvii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がロイシンを表し、X8がイソロイシンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギン酸を表し、X15がグリシンを表し、X16がイソロイシンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:258の酵素)、
(xviii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:259の酵素)、
(xix)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がバリンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:260の酵素)、
(xx)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がアスパラギンを表し、X8がイソロイシンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギン酸を表し、X15がグリシンを表し、X16がイソロイシンを表し、X17がセリンを表し、かつX18がグリシンを表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:261の酵素)、
(xxi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がフェニルアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がスレオニンを表し、X10がバリンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:262の酵素)、
(xxii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアラニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:263の酵素)、
(xxiii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がロイシンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:264の酵素)、
(xxiv)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がバリンを表し、X7がアラニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:265の酵素)、
(xxv)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がバリンを表し、X7がグリシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:266の酵素)、
(xxvi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がセリンを表し、X7がアスパラギンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:267の酵素)、
(xxvii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がグリシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:268の酵素)、
(xxviii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がグリシンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がアルギニンを表し、X12がグルタミンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:269の酵素)、
(xxix)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:270の酵素)、
(xxx)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がロイシンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギンを表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がイソロイシンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:271の酵素)、
(xxxi)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がアルギニンを表し、X5がシステインを表し、X6がバリンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:272の酵素)、および
(xxxii)配列SEQ ID NO:274の酵素であって、配列中、X1がアルギニンを表し、X2がロイシンを表し、X3がスレオニンを表し、X4がトリプトファンを表し、X5がシステインを表し、X6がセリンを表し、X7がスレオニンを表し、X8がスレオニンを表し、X9がセリンを表し、X10がアラニンを表し、X11がヒスチジンを表し、X12がアルギニンを表し、X13がアスパラギン酸を表し、X14がアスパラギンを表し、X15がグルタミン酸を表し、X16がバリンを表し、X17がフェニルアラニンを表し、かつX18がグルタミン酸を表す、酵素(すなわち、アミノ酸配列SEQ ID NO:273の酵素)。
【0169】
3-HPおよびその誘導体
3-HP誘導体としては、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、アクリリル-CoA、およびポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0170】
アセチル-CoAおよびその誘導体
アセチル-CoA誘導体としては、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0171】
3-HPおよびアセチル-CoA、これらの塩、およびこれらの誘導体の共産生
高い収率を結果としてもたらすレドックス均衡経路を作出するためにアセチル-CoA経路との3-HP経路の組合せが本明細書において採用される。3-HP誘導体としては、アクリル酸(acrylyc acid)、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンを挙げることができる。アセチル-CoA誘導体としては、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンを挙げることができる。
【0172】
3-HPおよびアセチル-CoA誘導体の産生の収率の損失についての解決策を求めて、我々は組換え酵母中でのアセチル-CoA誘導体産生との3-HP誘導体産生の新規の経路の組合せを特定する。グルコースからの1-プロパノール生合成は、マロン酸セミアルデヒドから1-プロパノールへの変換のための還元力補因子の利用可能性に高度に依存し、1分子のマロン酸セミアルデヒドを1分子の1-プロパノールに変換するために4つのNAD(P)H補因子が要求される。グルコースからのマロン酸セミアルデヒドの生合成はある程度のNAD(P)H補因子を生成するが、1-プロパノールへのそのようなマロン酸セミアルデヒド変換を維持するために十分なNAD(P)Hは形成されない。1-プロパノール自体の生合成のために要求される残りのNAD(P)H補因子は、好気的条件下である程度のグルコースを燃焼することで提供されるはずであるが、そうすることでその全体収率能力は低減される。本発明は、アセトンの生合成と1-プロパノールの生合成を組み合わせることによりそのようなレドックス不均衡および生産力制限を克服する。アセトンは高度に酸化される分子であるので、グルコースからのその生合成は還元力NAD(P)H補因子の正味の産生に連鎖する。1-プロパノール生合成のために要求されるNAD(P)Hは解糖およびアセトン生合成の両方に由来するので、1-プロパノールおよびアセトンの両方の共産生は、標的産物に対するある特定の炭素フロー比の下でレドックスが均衡している。
【0173】
図15および
図16に記載されるように、1-プロパノールおよびアセトンの共産生は、好気的および嫌気的の両方の発酵条件下でレドックスが均衡しており、嫌気的条件下で生産力は増加する。好気的発酵条件下での1-プロパノールおよびアセトン共産生経路の化学量論は、1 グルコース+0.33 O2→0.67 アセトン+0.67 1-プロパノール+1.33 H2O+2 CO2であり、0.437g/g産物/グルコースの最大理論収率である。
図15に示されるように、6分子のマロン酸セミアルデヒドが3分子のグルコースから産生され、4分子のマロン酸セミアルデヒドがアセトン生合成に使われ、2分子が1-プロパノール生合成に使われて、NAD(P)H補因子を正味で中性レドックス均衡となるように調整する。
【0174】
対照的に、嫌気的発酵条件下での1-プロパノールおよびアセトン共産生経路の化学量論は、1 グルコース→0.6 アセトン+0.8 1-プロパノール+0.8 H2O+1.8 CO2であり、0.46g/g産物/グルコースの最大理論収率である。
図16に示されるように、10分子のマロン酸セミアルデヒドが5分子のグルコースから産生され、中性レドックス均衡となるように6分子のマロン酸セミアルデヒドがアセトン生合成に使われ、4つが1-プロパノール生合成に使われる。レドックスが均衡した1-プロパノールおよびアセトン共産生経路の例が
図14に示され、図中、補因子NADHおよびNADPHは完璧に平衡化され、上部解糖およびアセトン生合成において生成される6つのNADH補因子は1-プロパノール生合成において消費され、上部解糖において生成される2つのNADPH補因子は1-プロパノール生合成において使用され、2分子の1-プロパノールおよび1.5分子のアセトンの産生のために2.5分子のグルコースが消費されると考えられる。これは、本発明に記載および列記される特有の酵素を使用することにより達成され得る。より精密には、NAD+に対する厳格な要求を示す(NADHのみを生成する)サッカロミセス・セレビシエからのネイティブな遺伝子(TDH1、TDH2およびTDH3)を使用する代わりに、NAD+およびNADP+のいずれでも高い活性を示す(そのためNADHおよびNADPHを生成する)クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)からのグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ酵素候補(GAPDH)を使用することができる。その上、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からのマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素候補は、マロン酸セミアルデヒドをアセチル-CoAに変換することができ、補因子としてNAD+に対する厳格な要求を示す。マロン酸セミアルデヒドを3-HPに変換するためにカンジダ・アルビカンスからの高度に活性のNADH依存性3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ酵素(遺伝子HPD1によりコードされる)が使用され得る。最後に、3-HPからプロピオニル-CoAへの変換は、NADPH依存性酵素を使用することにより行われるが、プロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生は、NADH依存性デヒドロゲナーゼ酵素により行われ得る。この共産生経路はレドックス中性かつ小過剰のATPを用い、所望の化合物のより効率的かつより高い収率の産生を結果としてもたらす。さらには、均衡した経路は嫌気的条件下で行われる可能性を有し、これは同じ収率を有する好気的プロセスと比較した場合にいくつかのプロセス上の利点をもたらす。例えば、産生発酵槽に空気が供給される必要がないため、エアーコンプレッサーと共にキャペックスの低減、およびこれらの機器により消費されるユーティリティーと共にオペックスの低減がある。別の著しい利点は、好気的発酵槽においては発酵槽のサイズが増加するにつれて気相から液相への酸素の移動がより困難となるためそのサイズを最大値まで限定することを主な理由として、嫌気的発酵槽は好気的発酵槽よりも大きい最大サイズを有することができるため、同じ年間産生のために嫌気的プロセスは好気的プロセスよりも少ない数のより大きい発酵槽を有することができ、これは最終的に嫌気的プロセスのための発酵槽およびその付属物と共により小さいキャペックスを表す。その上、嫌気的条件において収率の向上があり、1-プロパノールおよびアセトンの共産生は、これらの産物が3:4の比(アセトン:1-プロパノール)で産生されると仮定して、グルコース1g当たり0.46gの溶媒のより高い合計収率に繋がる。
【0175】
嫌気的条件下で、マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoA生成を含む提案される経路は、嫌気的条件におけるアセチル-CoA利用可能性である、アセチル-CoA誘導体の産生についての最大の経路操作上の課題の一部を回避する。
【0176】
さらには、アセチル-CoAの産生のための新たな経路は、典型的なアセチル-CoA産生経路とは別個であるピルビン酸とは独立している。追加的に、3-HP誘導体のための経路はまた、マロニル-CoAとは独立している典型的な3-HP産生経路とは別個である。
【0177】
いくつかの局面では、組換え微生物は、アセチル-CoAを介してマロン酸セミアルデヒドからアセトンを産生することができる。提案されるアセトン経路は、ピルビン酸とは独立しているアセチル-CoAへのマロン酸セミアルデヒドの変換に依拠し、典型的なアセチル-CoA産生経路とは異なっており、TCAサイクルへのピルビン酸の逸脱による収率損失を軽減する。また、マロン酸セミアルデヒドは、オキサロ酢酸の脱カルボキシル化またはβ-アラニン経路により産生され、酵母中でマロニル-CoAから天然に産生されるマロン酸セミアルデヒドとは異なっている。マロニル-CoAおよびその塩の天然の産生はエタノール生合成と競合しているため、マロン酸セミアルデヒドへのフラックス誘導が困難となる。
【0178】
いくつかの局面では、微生物のネイティブなグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、外因性バージョンにより置き換えられる。ネイティブな酵母グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、グリセルアルデヒド-3-リン酸から1,3-ビスホスホグリセリン酸への変換を触媒して、NAD+からNADHへの変換と共にアルデヒドの酸化を結果としてもたらす。この酵素の他のバージョンが文献に記載されており、その場合、酵素活性はNADP+からNADPHへの変換を結果としてもたらす。Martinez et al.(2008. Metabolic Engineering,10(6):352-359)を参照。NADP依存性酵素でのネイティブなNAD依存性酵素の置換えは、所望の化合物の産生を支援するより良好な均衡した経路を提供する。いくつかの局面では、1つまたは複数のネイティブでないグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼがネイティブな酵素を置き換える。いくつかの局面では、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫より選択される。いくつかの局面では、使用され得るグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、限定されないが、EC番号1.2.1.12を有し、例えば、クロストリジウム・アセトブチリカム(gapC)またはクルイベロミセス・ラクチス(gdp1)からのものである。
【0179】
3-HPおよびアセチル-CoAの産生のための新規の組み合わせた経路は、共通の単一の中間体としてマロン酸セミアルデヒドを有する。マロン酸セミアルデヒドの産生のための通常の経路は、中間体としてマロニル-CoAを有する(Suyama et al.,2017)。そうでなくて、本経路においては、マロン酸セミアルデヒドは、中間体としてオキサロ酢酸を有する。
図1を参照。
【0180】
上記のような産物を産生する伝統的な経路に関する上述の問題は中間体の利用可能性を抑圧し、低い活性を有する酵素を結果としてもたらす。
図1に指し示されるように、マロニル-CoAへの伝統的な経路はアセチル-CoAからであるが、アセチル-CoAのかなりの部分はTCAサイクルに方向付けられる。そのため限られた量のマロニル-CoAが形成される(0.01~0.023nmolmg-1の細胞乾燥重量であり、これは総CoAプールの0.5%に過ぎない)(Rathnasingh et al.,2012)。追加的に、マロニル-CoAは脂肪酸代謝における重要な中間体であり、本明細書に記載の産物のための経路にこの化合物を再方向付けすることは困難である。さらには、マロニル-CoAからマロン酸セミアルデヒドへの変換は、37℃での低い活性(50℃で最大活性、37℃で65%の減少)およびマロニル-CoAについての高いKm値(30μM)を有するレダクターゼにより行われる(Rathnasingh et al.,2012)。本経路は、マロン酸セミアルデヒドの産生のための中間体としてオキサロ酢酸を利用することによりこれらの問題を解消することができる。
【0181】
図2に図示されるように、酵母細胞は、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc遺伝子)またはリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh遺伝子)活性を通じた、オキサロ酢酸生成のための2つの経路を有する。ピルビン酸カルボキシラーゼは低い触媒活性を有するビオチン依存性酵素であるので、その触媒性ターンオーバーは、オキサロ酢酸の高いレベルを提供するために十分ではない。さらには、TCAサイクルにより生成されるオキサロ酢酸は、高い炭素フラックスを供給するのに有用ではないことが見出された。本経路は、ピルビン酸の代わりにホスホエノールピルビン酸(PEP)からオキサロ酢酸を産生することによりこれらの問題を解消することができる。高濃度のオキサロ酢酸を達成するために、細菌酵素ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼが組換え微生物において利用される。いくつかの局面では、関心対象の微生物は、1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)および/または1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(pepck)の導入により改変される。いくつかの局面では、1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)および/または1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(pepck)は、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫より選択される。いくつかの局面では、1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)および/または1つもしくは複数のホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(pepck)は大腸菌からのものである。
【0182】
オキサロ酢酸が形成されると、
図3に図示されるように、分子はオキサロ酢酸から直接的にまたはβ-アラニンの中間体形成を通じてマロン酸セミアルデヒドに変換され得る。
【0183】
いくつかの局面では、オキサロ酢酸からのマロン酸セミアルデヒドに方向付けられた産生は、デカルボキシラーゼ、例えば、アルファ-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ、または2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼにより行われる。いくつかの局面では、組換え微生物は、1つまたは複数のアルファ-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kdca)、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ(mdlc)、および/または2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼ(oxdc)を含む。いくつかの局面では、1つまたは複数のアルファ-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ、および/または2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫より選択される。いくつかの局面では、アルファ-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼは、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)からのものである。いくつかの局面では、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼは、シュードモナス・プチダからのものである。いくつかの局面では、2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼは、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)またはユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)からのものである。
【0184】
β-アラニンを通じたマロン酸セミアルデヒドの産生は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aat2)によるアスパラギン酸へのオキサロ酢酸のアミノ基転移、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(pand)によるβ-アラニンへのアスパラギン酸の変換ならびにβ-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(baat)および/またはβ-アラニントランスアミナーゼ(pyd4)によるマロン酸セミアルデヒドへのβ-アラニンの変換を伴った。いくつかの局面では、組換え微生物は、1つまたは複数のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ、および/またはβ-アラニントランスアミナーゼを含む。いくつかの局面では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ、および/またはβ-アラニントランスアミナーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫より選択される。いくつかの局面では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)からのものである。いくつかの局面では、アスパラギン酸デカルボキシラーゼは、トリボリウム・カスタネウム(Tribolium castaneum)からのものである。いくつかの局面では、アスパラギン酸デカルボキシラーゼは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)からのものである。いくつかの局面では、ベータ-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼは、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)からのものである。いくつかの局面では、ベータ-アラニントランスアミナーゼは、ラカンセア・クルイベリ(Lachancea kluyveri)からのものである(表16)。
【0185】
マロン酸セミアルデヒドは、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼにより3-HPに変換され得る。いくつかの局面では、組換え微生物は、限定されないが、EC番号1.1.1.381を有する酵素、例えば、表1に列記されるものであり得る1つまたは複数の3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼを含む。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫からのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ(mcr-1)は、クロロフレクサス・オーランチアカスからのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ(adh)は、アルスロバクター・エンクレンシス(Arthrobacter enclensis)からのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ(mmsb)は、バシラス・セレウスからのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ(ydfg-0)は、大腸菌からのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ(YDF1)は、サッカロミセス・セレビシエからのものである。いくつかの局面では、3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼは、優先的にカンジダ・アルビカンスからのもの(HPD1)である。
【0186】
(表1)マロン酸セミアルデヒドから3-HPへの変換のための酵素候補
【0187】
マロン酸セミアルデヒドは、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼを使用して1工程反応によりまたはマロニル-CoAシンセターゼもしくはマロニル-CoAレダクターゼおよびマロニル-CoAデカルボキシラーゼを含むマロニル-CoAを通じた2工程反応によりアセチル-CoAに変換され得る。いくつかの局面では、複数または大部分のマロン酸セミアルデヒドはオキサロ酢酸から産生される。いくつかの局面では、複数または大部分のマロン酸セミアルデヒドはマロニル-CoAから産生されない。この工程に対する酵素候補は、限定されないが、EC番号1.2.1.18/1.2.1.27を有する酵素、例えば、表2に列記されるものであり得る。
【0188】
(表2)マロン酸セミアルデヒドからアセチル-CoAへの変換のための酵素候補
【0189】
代替的に、アセチル-CoAを産生するための別のオプションは、オキサロ酢酸からの、マロニル-CoAを通じた、2-ケト酸デカルボキシラーゼおよびマロニル-CoAデカルボキシラーゼを含む2工程経路である。
図4を参照。提示されるいずれの経路も中間体としてピルビン酸を利用せず、通常の経路とは異なり、サイトゾルアセチル-CoAの利用可能性に問題がある嫌気的条件におけるアセチル-CoA生成のための興味深い解決策である。
【0190】
いくつかの局面では、組換え微生物は、1つまたは複数のマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、マロニル-CoAシンセターゼ、マロニル-CoAレダクターゼ、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ、および/または2-ケト酸デカルボキシラーゼを含む。いくつかの局面では、1つまたは複数のマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、マロニル-CoAシンセターゼ、マロニル-CoAレダクターゼ、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ、および/または2-ケト酸デカルボキシラーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫からのものである。いくつかの局面では、使用され得るマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼは、限定されないが、EC番号1.2.1.18/1.2.1.27を有し、例えば、表2に列記されるもの、優先的にはカンジダ・アルビカンスまたはシュードモナス・エルギノーサからのMSDである。
【0191】
いくつかの局面では、マロニル-CoAシンセターゼ(MatB)は、リゾビウム・トリフォリイ(Rhizobium trifolii)からのものである。いくつかの局面では、マロニル-CoAシンセターゼ(AAE13)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からのものである。いくつかの局面では、マロニル-CoAシンセターゼ(ACSF3B)は、ヒト(Homo sapiens)からのものである。いくつかの局面では、マロニル-CoAレダクターゼ(mcr)は、クロロフレクサス・オーランチアカスからのものである。
【0192】
いくつかの局面では、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ(MatA)は、リゾビウム・トリフォリイからのものである。いくつかの局面では、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ(MLYCD)は、ヒトからのものである。いくつかの局面では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(kivd)は、ラクトコッカス・ラクチスからのものである。いくつかの局面では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(KdcA)は、ラクトコッカス・ラクチスからのものである。いくつかの局面では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(ARO10)は、サッカロミセス・セレビシエからのものである。
【0193】
3-HPから、例として1-プロパノールを含むいくつかの化合物が産生され得る。1-プロパノールの産生のために、3-HPは、プロピオニル-CoAシンターゼにより行われる単一工程反応によりまたは3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼを伴う複数工程反応によりプロピオニル-CoAに変換される必要がある。次にプロピオニル-CoAは、二機能性アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.1/1.2.1.4/1.2.1.5、表7に列記されるものなど)によりまたはアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)(表8)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.2.1.10/1.2.1.87、表9に列記されるものなど)により1-プロパノールに変換される必要がある。
図5に図示されるように、1-プロパノールの産生は、均衡した経路がないNAD(P)Hに対する高い需要を有する。
【0194】
いくつかの局面では、組換え微生物は、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫からの1つまたは複数のプロピオニル-CoAシンターゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、アクリリル-CoAレダクターゼ、アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼおよび/またはアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む。いくつかの局面では、使用され得る1つまたは複数のプロピオニル-CoAシンターゼは、限定されないが、EC番号6.2.1.17/6.2.1.36を有する酵素、例えば、表3に列記されるものである。いくつかの局面では、使用され得る3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/トランスフェラーゼは、限定されないが、EC番号2.8.3.1/6.2.1.17/6.2.1.36を有する酵素、例えば、表4に列記されるものである。いくつかの局面では、使用され得る3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼは、限定されないが、EC番号4.2.1.116/4.2.1.55/4.2.1.150/4.2.1.17を有する酵素、例えば、表5に列記されるものである。いくつかの局面では、アクリリル-CoAレダクターゼは、限定されないが、表6に指し示される生物からのものであり、かつ/または表6に指し示される遺伝子に対応する。いくつかの局面では、使用され得るアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼは、限定されないが、EC番号1.1.1.1/1.2.1.4/1.2.1.5を有する酵素、例えば、表7に列記されるものである。いくつかの局面では、プロピオニル-CoAをプロパノールに変換するための他の候補が使用される(EC番号:1.2.1.10/1.2.1.87、例えば、表8に列記されるもの、EC番号2.3.1.8/2.7.2.1、例えば、表9に列記されるもの、およびEC番号2.3.1.8/2.7.2.1、例えば、表10に列記されるもの)。
【0195】
(表47)オキサロ酢酸からの、マロニル-CoAを通じたアセチル-CoAへの変換のための酵素候補
【0196】
(表3)三機能性プロピオニル-CoAシンターゼのための酵素候補
【0197】
(表4)3-HPから3-ヒドロキシプロピオニル-CoAへの変換のための酵素候補(3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ)
【0198】
(表5)3-ヒドロキシプロピオニル-CoAからアクリリル-CoAへの変換のための酵素候補(3-ヒドロキシプロピオニル-coAデヒドラターゼ/エノイル-CoAヒドラターゼ)
【0199】
(表6)アクリリル-CoAからプロピオニル-CoAへの変換のための酵素候補(アクリリル-CoAレダクターゼ)
【0200】
(表7)プロピオニル-CoAからプロパノールへの変換のための酵素候補(アルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ)
【0201】
(表8)プロピオニル-CoAからプロピオンアルデヒドへの変換のための酵素候補(アルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化))
【0202】
(表9)プロピオンアルデヒドからプロパノールへの変換のための酵素候補
【0203】
(表10)プロピオニル-CoAからプロピオンアルデヒドへの変換のための酵素候補
【0204】
アセチル-CoAからいくつかの化合物を産生することができ、例としてはアセトンを挙げることができる。アセトンの産生のために、アセチル-CoAは、チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼによりアセトアセチル-CoAに変換される必要がある。代替的に、アセトアセチル-CoAは、アセトアセチル-CoAシンターゼによりマロニル-CoAを通じて形成され得る。アセトアセチル-CoAが形成されると、アセト酢酸へのその変換は、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼにより、またはヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼおよびヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼによりHMG-CoAを通じて為され得る。アセトンへのアセト酢酸の変換は、アセト酢酸デカルボキシラーゼにより為される。
図6に図示されるように、アセトンの産生は過剰なNAD(P)Hを有し、これもまた非均衡の経路である。
【0205】
いくつかの局面では、組換え微生物は、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫からの1つまたは複数のチオラーゼ、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチル CoAシンターゼ、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ、および/またはアセト酢酸デカルボキシラーゼを含む。いくつかの局面では、使用され得る1つまたは複数のチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼは、限定されないが、EC番号2.3.1.9を有し、例えば、表11に列記されるものであり、使用され得るアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼは、限定されないが、EC番号2.8.3.8/2.8.3.9を有し、例えば、表12に列記されるものであり、使用され得るヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ、および/またはアセト酢酸デカルボキシラーゼは、限定されないが、EC番号4.1.1.4を有する酵素を有し、例えば、表13に列記されるものである。
【0206】
(表11)アセチル-CoAからアセトアセチル-CoAへの変換のための酵素候補(アセチルトランスフェラーゼ)
【0207】
(表12)アセトアセチル-CoAからアセト酢酸への変換のための酵素候補(アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼ)
【0208】
(表13)アセト酢酸からアセトンへの変換のための酵素候補(アセト酢酸デカルボキシラーゼ)
【0209】
3-HP誘導体の産生に関するNAD(P)Hおよびアセチル-CoA誘導体の産生に関する過剰なNADHの高い需要を解決するために、均衡した経路を結果としてもたらすための両方の経路の組合せを我々は示唆する。
図7に図示されるように、1-プロパノールおよびアセトンのためのこれらの経路の組合せは、例えば、これらの産物が好気的条件下で1:1の比(アセトン:1-プロパノール)で産生されると仮定して、グルコース1g当たり0.437gの溶媒の高い合計収率に繋がる(
図15)。提案される共産生経路はレドックス中性であり、かつ小過剰のATPを伴い、所望の化合物のより効率的かつ高い収率の産生を結果としてもたらす。さらには、均衡した経路は、嫌気的条件下で行われる可能性を有し、これは、エアーコンプレッサーを用いるキャペックスおよびオペックスの低減、ならびに産生発酵槽を用いるキャペックスの減少のような、パラグラフ[0264]において既に述べた利点に起因して、より低い産生コストのプロセスの可能性を表すことがある。その上、嫌気的条件において収率の向上があり、1-プロパノールおよびアセトンの共産生は、これらの産物が3:4の比(アセトン:1-プロパノール)で産生されると仮定して、グルコース1g当たり0.46gの溶媒のより高い合計収率に繋がる(
図16)。
【0210】
いくつかの局面では、2-プロパノールは、アセトンの脱水素により得ることができ、かつ1-プロパノールと共産生され得る。3-HPA誘導体経路におけるNADPH/NADHの要求は、アセチル-CoA誘導体経路からの過剰なNADPH/NADHを補う。
図17によれば、1-プロパノールおよび2-プロパノールの産生のためのこれらの経路の組合せは、これらの産物が好気的条件下で2:5の比(1-プロパノール:2-プロパノール)で産生されると仮定して、グルコース1g当たり0.39gの溶媒の高い合計収率に繋がる。
【0211】
いくつかの局面では、2-プロパノールは、アセトンの酵素的脱水素により得ることができ、かつ嫌気的条件下で1-プロパノールと共産生され得、これは、
図18によれば、これらの産物が嫌気的条件下で1:1の比(1-プロパノール:2-プロパノール)で産生されると仮定して、グルコース1g当たり0.44gの溶媒のより高い合計収率に繋がる。このプロセスは、好気的プロセスに関して、より低いコストのプロセスの可能性を表すことがある。
【0212】
(表14)アクリリル-CoAをアクリル酸に変換するための酵素(アシル-CoAヒドロラーゼまたはチオエステラーゼ)
【0213】
(表15)2-プロパノールデヒドロゲナーゼの酵素候補
【0214】
(表16)β-アラニン経路によるマロン酸セミアルデヒドの産生に関与する遺伝子
【0215】
【0216】
遺伝子改変を検出する方法
本開示は、本明細書において教示される微生物を検出するのに有用なプライマー、プローブ、およびアッセイを教示する。いくつかの局面では、本開示は、WT親株を検出する方法を提供する。他の局面では、本開示は、親株またはWT株に由来する操作または改変された微生物を検出する方法を提供する。いくつかの局面では、本開示は、微生物において遺伝子の変更を特定する方法を提供する。
【0217】
いくつかの局面では、本開示のゲノム操作方法は、改変された微生物における非天然ヌクレオチド「ジャンクション」配列の作出に繋がる。これらの天然に存在しないヌクレオチドジャンクションは、本明細書において教示される微生物における特定の遺伝子の変更の存在の指標となる診断の一種として使用され得る。
【0218】
本技術は、独特に設計されたプライマーおよびプローブを含む、特化した定量PCR方法の利用を介してこれらの天然に存在しないヌクレオチドジャンクションを検出することができる。いくつかの局面では、本開示のプローブは、天然に存在しないヌクレオチドジャンクション配列に結合する。いくつかの局面では、伝統的なPCRが利用される。他の局面では、リアルタイムPCRが利用される。いくつかの局面では、定量PCR(qPCR)が利用される。いくつかの局面では、微生物のゲノムDNAまたはゲノム外DNAに挿入された異種配列を特定するためにPCR方法が使用される。
【0219】
そのため、本開示は、リアルタイムでのPCR産物の検出のための2つの一般的な方法:(1)任意の二本鎖DNAにインターカレートする非特異的蛍光色素、および(2)プローブのその相補的配列とのハイブリダイゼーション後にのみ検出を可能とする蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブの利用をカバーし得る。いくつかの局面では、天然に存在しないヌクレオチドジャンクションのみが、教示されるプライマーを介して増幅され、結果的に非特異的色素を介して、または特異的ハイブリダイゼーションプローブの利用を介して検出され得る。他の局面では、本開示のプライマーは、ジャンクション配列のいずれかの側に隣接するように選択され、そのため、増幅反応が起こる場合、前記ジャンクション配列が存在する。
【0220】
本開示の局面は、穏やか~ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で天然に存在しないヌクレオチドジャンクション配列に結合することができる他のヌクレオチド分子と共に、前記天然に存在しないヌクレオチドジャンクション配列分子自体を伴う。いくつかの局面では、穏やか~ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で前記天然に存在しないヌクレオチドジャンクション配列に結合することができるヌクレオチド分子は「ヌクレオチドプローブ」と称される。
【0221】
いくつかの局面では、ゲノムDNAが試料から抽出され、qPCRを使用することにより本開示の微生物の存在を定量化するために使用され得る。qPCR反応において利用されるプライマーは、野生型ゲノムの独特の領域または操作された非属間突然変異体株の独特の領域を増幅するためにPrimer Blast(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/)により設計されたプライマーであり得る。qPCR反応は、フォワードおよびリバース増幅プライマーのみを使用して、SYBR GreenER qPCR SuperMix Universal(Thermo Fisher P/N 11762100)キットを使用して実行することができ、代替的に、Kapa Probe Forceキット(Kapa Biosystems P/N KK4301)を、増幅プライマーならびに5'末端のFAM色素標識、内部ZEN消光剤、および副溝結合剤および3'末端の蛍光消光剤を含有するTaqManプローブ(Integrated DNA Technologies)と共に使用することができる。
【0222】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、1つまたは複数の核酸配列の増幅をリアルタイムで定量化する方法である。PCRアッセイのリアルタイム定量化は、関心対象の増幅している核酸および較正標準品として作用し得る適切な対照核酸配列を比較することによりPCR増幅工程により生成されている核酸の量の決定を可能とする。
【0223】
標的核酸配列を定量化するために増加した特異性を要求するqPCRアッセイにおいてTaqManプローブが多くの場合に利用される。TaqManプローブは、プローブの5'末端に取り付けられたフルオロフォアおよび3'末端に取り付けられた消光剤を有するオリゴヌクレオチドプローブを含む。TaqManプローブが、プローブの5'および3'末端が互いに近接に接触した状態のままである場合、消光剤がフルオロフォアからの蛍光シグナルの伝達を防止する。TaqManプローブは、特有のプライマーセットにより増幅された核酸領域内でアニールするように設計される。Taqポリメラーゼがプライマーを伸長させて新生鎖を合成する際に、Taqポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は、鋳型にアニールしたプローブを分解する。このプローブ分解はフルオロフォアを解放するため、消光剤への近接性を破壊し、フルオロフォアの蛍光を可能とする。qPCRアッセイにおいて検出される蛍光は、放出されるフルオロフォアおよび反応に存在するDNA鋳型の量に正比例する。
【0224】
qPCRの特徴により実施者は、伝統的なPCRアッセイの増幅産物の観察のために一般に要求されるゲル電気泳動調製物の労働集約的な増幅後工程を排除することが可能となる。従来のPCRを上回るqPCRの利益は相当なものであり、これには、増加した速度、使用の容易さ、再現性、および定量的能力が含まれる。
【0225】
微生物
本明細書に記載されるように、いくつかの局面では、組換え微生物は原核微生物である。いくつかの局面では、原核微生物は細菌である。「細菌」、または「真正細菌」は、原核生物のドメインを指す。細菌としては、以下のような少なくとも11の別個の群が挙げられる:(1)グラム陽性(グラム+)細菌;これには2つの主要な副分類がある:(1)高G+C群(アクチノミセス(Actinomycetes)、マイコバクテリア(Mycobacteria)、マイクロコッカス(Micrococcus)、その他)(2)低G+C群(バシラス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococci)、ストレプトコッカス(Streptococci)、マイコプラズマ(Mycoplasmas));(2)プロテオバクテリア(Proteobacteria)、例えば、紅色光合成+非光合成グラム陰性細菌(最も「一般的な」グラム陰性細菌を含む);(3)シアノバクテリア(Cyanobacteria)、例えば、酸素発生型光栄養生物;(4)スピロヘータ(Spirochetes)および関連種;(5)プランクトミセス(Planctomyces);(6)バクテロイデス(Bacteroides)、フラボバクテリア(Flavobacteria);(7)クラミジア(Chlamydia);(8)緑色硫黄細菌;(9)緑色非硫黄細菌(嫌気性光栄養生物も);(10)放射線抵抗性マイクロコッカスおよび類縁種;(11)サーモトガ(Thermotoga)およびサーモシフォ(Thermosipho)好熱菌。
【0226】
「グラム陰性細菌」としては、球菌、非腸内桿菌、および腸内桿菌が挙げられる。グラム陰性細菌の属としては、例えば、ナイセリア(Neisseria)、スピリラム(Spirillum)、パスツレラ(Pasteurella)、ブルセラ(Brucella)、エルシニア(Yersinia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィラス(Haemophilus)、ボルデテラ(Bordetella)、エシェリヒア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、バクテロイデス(Bacteroides)、アセトバクター(Acetobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アゾトバクター(Azotobacter)、スピリラ(Spirilla)、セラチア(Serratia)、ビブリオ、リゾビウム(Rhizobium)、クラミジア、リケッチア(Rickettsia)、トレポネーマ(Treponema)、およびフソバクテリウム(Fusobacterium)が挙げられる。
【0227】
「グラム陽性菌」としては、球菌、非胞子形成桿菌、および胞子形成桿菌が挙げられる。グラム陽性細菌の属としては、例えば、アクチノミセス(Actinomyces)、バシラス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)、ラクトバシラス、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ミクソコッカス(Myxococcus)、ノカルジア(Nocardia)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、およびストレプトミセス(Streptomyces)が挙げられる。
【0228】
いくつかの局面では、本開示の微生物は真菌または酵母である。
【0229】
いくつかの局面では、組換え微生物は真核微生物である。いくつかの局面では、真核微生物は酵母である。例示的な局面では、酵母は、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、ハンセヌラ(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、イサトチェンキア(Issatchenkia)、ジゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、デバリオミセス(Debaryomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、パキソレン(Pachysolen)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、ロドトルラ(Rhodotorula)、およびミクソジマ(Myxozyma)からなる群より選択される属のメンバーである。
【0230】
いくつかの局面では、組換え微生物は原核微生物である。例示的な局面では、原核微生物は、エシェリヒア、クロストリジウム、ザイモモナス(Zymomonas)、サルモネラ、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス、バシラス、ラクトバシラス、エンテロコッカス(Enterococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ、パエニバシラス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)からなる群より選択される属のメンバーである。
【0231】
いくつかの局面では、本開示の方法において使用するための微生物は、ヤロウィア、カンジダ、サッカロミセス、ピキア、ハンセヌラ、クルイベロミセス、イサトチェンキア、ジゴサッカロミセス、デバリオミセス、シゾサッカロミセス、パキソレン、クリプトコッカス、トリコスポロン、ロドトルラ、ミクソジマ、エシェリヒア、クロストリジウム、ザイモモナス、サルモネラ、ロドコッカス、シュードモナス、バシラス、ラクトバシラス、エンテロコッカス、アルカリゲネス、クレブシエラ、パエニバシラス、アルスロバクター、コリネバクテリウム、およびブレビバクテリウムからなる群より選択され得る。
【0232】
いくつかの局面では、本明細書に記載の方法の結果としてもたらされる微生物は、以下の属:ナイセリア、スピリラム、パスツレラ、ブルセラ、エルシニア、フランシセラ、ヘモフィラス、ボルデテラ、エシェリヒア、サルモネラ、シゲラ、クレブシエラ、プロテウス、ビブリオ、シュードモナス、バクテロイデス、アセトバクター、アエロバクター、アグロバクテリウム、アゾトバクター、スピリラ、セラチア、ビブリオ、リゾビウム、クラミジア、リケッチア、トレポネーマ、フソバクテリウム、アクチノミセス、バシラス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリシペロトリックス、ラクトバシラス、リステリア、マイコバクテリウム、ミクソコッカス、ノカルジア、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、ストレプトミセス、サッカロミセス、ピキア、およびアスペルギルス(Aspergillus)のいずれかより選択される種であってもよい。
【0233】
いくつかの局面では、本開示の方法において使用するための微生物としては、クロストリジウム属の種、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモサム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクラム・バッチィ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、ムーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロンガム、ブラウティア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリカム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨンベイ、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、カンジダ・クルセイ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロミュサ・オバータ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カルビノリカム、スポロミュサ・テルミチダ、ムーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグレガンス、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バシラス属の種、コリネバクテリウム属の種、ヤロウィア・リポリティカ、シェフェルソミセス・スチピチス、およびテリスポロバクター・グリコリカスが挙げられる。いくつかの局面では、組換え微生物は、本明細書に開示される微生物のいずれか1つより選択される親微生物に由来する。
【0234】
いくつかの局面では、酵母は、細菌より迅速かつより高い密度で培養することができ、商用/産業上の状況における無菌環境を要求しない。いくつかの局面では、酵母細胞は、細菌よりも容易に培養培地から分離することができ、産物の抽出および精製のプロセスを単純化する。
【0235】
いくつかの局面では、本開示の方法において使用される微生物としては、サッカロミセス、カンジダ、アシュビヤ(Ashbya)、デケラ(Dekkera)、ピキア(ハンセヌラ)、デバリオミセス、クラビスポラ(Clavispora)、ロデロミセス(Lodderomyces)、ヤロウィア、ジゴサッカロミセス(Zigosaccharomyces)、シゾサッカロミセス、トルラスポラ(Torulaspora)、クルイベロミセス、ブレタノミセス(Brettanomycces)、クリプトコッカス、またはマラセチア(Malassezia)属より選択される酵母が挙げられる。
【0236】
いくつかの局面では、酵母は、サッカロミセス、デケラ、シゾサッカロミセス、クルイベロミセス、トルラスポラ ジゴサッカロミセス、またはブレタノミセス属より選択されるクラブツリー陽性酵母であってもよい。
【0237】
いくつかの局面では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ブラウディ、サッカロミセス・ダグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・バヤナス、ジゴサッカロミセス・バイリイ(Zigosaccharomyces bailii)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、デケラ・ブルセレンシス(Dekkera brucelensis)、デケラ・インテルメディア(Dekkera intermedia)、ブレタノミセス・カステルシイ(Brettanomycces custersii)、ブレタノミセス・インテルメジウス(Brettanomycces intermedius)、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces themotolerens)、トルラスポラ・グロボサ(Torulaspora globosa)、およびトルラスポラ・グラブラータ(Torulaspora glabrata)より選択されてもよい。
【0238】
いくつかの局面では、酵母はサッカロミセス属からのものであってもよい。いくつかの局面では、酵母はサッカロミセス・セレビシエであってもよい。
【0239】
いくつかの局面では、本開示の組換え酵母は、本明細書に記載の少なくとも1つの核酸配列または遺伝子の挿入に起因してオキサロ酢酸をマロン酸セミアルデヒドに脱カルボキシル化することができる。いくつかの局面では、本開示の組換え酵母はさらに、1つまたは複数の3-HPおよびアセチル-CoA誘導体を共産生することができる。いくつかの局面では、マロン酸セミアルデヒドは、1つまたは複数の3-HPおよびアセチル-CoA誘導体の共産生のための基質である。
【0240】
「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」という用語は本明細書において交換可能に使用され、内因性酵素を発現または過剰発現するように、異種酵素、例えば、ベクター中、組込み構築物中に含まれるもの、または内因性遺伝子の発現において変更を有するものを発現するように、遺伝子改変された微生物を指す。「変更」により、遺伝子の発現、またはRNA分子もしくは1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットをコードする同等のRNA分子のレベル、または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットの活性が、発現レベル、または活性が変更の非存在下で観察されるよりも大きくまたは小さくなるように上方調節または下方調節されていることが意味される。例えば、「変更する」という用語は「阻害する」を意味し得るが、「変更する」という語の使用はこの定義に限定されない。「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」という用語は、特定の組換え微生物を指すだけでなく、そのような微生物の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。ある特定の改変が、突然変異または環境上の影響のいずれかに起因して後続する世代において起こり得るので、そのような子孫は親細胞に実際には同一でないことがあるが、本明細書において使用されるような該用語の範囲内に依然として含まれる。
【0241】
培養条件
本開示の方法において使用される微生物の培養は、本開示の微生物を培養するためおよび該微生物を使用して基質を発酵させるための当技術分野において公知のいくつもの方法を使用して実行されてもよい。
【0242】
発酵は、任意の好適なバイオリアクター、例えば、連続撹拌槽バイオリアクター、バブルカラムバイオリアクター、エアリフトバイオリアクター、流動床バイオリアクター、充填床バイオリアクター、フォトバイオリアクター、固定化細胞反応器、トリクルベッド反応器、移動床バイオフィルム反応器、バブルカラム、ガスリフト発酵槽、膜反応器、例えば、中空繊維膜バイオリアクターにおいて実行されてもよい。いくつかの局面では、バイオリアクターは、微生物が培養される第1の増殖反応器、および増殖反応器からの発酵ブロスが供給され、発酵産物のほとんどが産生される第2の発酵反応器を含む。いくつかの局面では、バイオリアクターは、微生物の培養ならびに提供される基質および/または原材料などの炭素供給源からの発酵産物の産生を同時に達成する。
【0243】
いくつかの局面では、本開示は、(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体の産生のための組換え微生物の使用に関する。いくつかの局面では、組換え微生物は酵母である。
【0244】
いくつかの局面では、本開示は、(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体を産生する方法であって、
(a)本明細書に記載の組換え微生物を培養培地中で培養する工程、ならびに
(b)培養培地から(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体を回収する工程
を含む、方法にさらに関する。いくつかの局面では、組換え微生物は酵母である。
【0245】
いくつかの局面では、本明細書に記載の微生物は、適切な培養培地中、約20℃~約37℃の範囲内の温度、好ましくは27~34℃の範囲内の温度で増殖される。
【0246】
いくつかの局面では、本開示の組換え酵母はS.セレビシエ種に属し、温度は、適切な培養培地中、27~34℃の範囲内であってもよい。
【0247】
いくつかの局面では、酵母用の好適な増殖培地は、一般的な商業的に調製された培地、例えば、酵母窒素基剤、硫酸アンモニウム、および炭素/エネルギー供給源としてのデキストロース)を含むブロスまたはYPD培地、最も増殖させるための最適な割合でのペプトン、酵母抽出物、およびデキストロースのブレンド物である。いくつかの局面では、他の定義されたまたは合成の増殖培地もまた使用されてもよく、特定の微生物の増殖のための適切な培地は、微生物学または発酵科学の技術分野における当業者により公知である。
【0248】
本開示の組換え酵母のための培養培地の例は、D. Burke et al.,Methods in yeast Genetics-A cold spring harbor laboratory course Manual(2000)に記載されている。
【0249】
いくつかの局面では、発酵のための好適なpH範囲はpH 3.0~pH 7.5であってもよく、pH 4.5~pH 6.5は初期条件として好ましい。
【0250】
いくつかの局面では、発酵は、好気的条件、微好気的条件、または嫌気的条件下で行われてもよい。
【0251】
いくつかの局面では、発酵培地中の産物の量は、当技術分野において公知の多数の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはガスクロマトグラフィー(GC)を使用して決定され得る。
【0252】
いくつかの局面では、本方法は、バッチ発酵方法を用いてもよい。古典的なバッチ発酵は、培地の組成が発酵の開始時に設定され、発酵の間に人工的な変更に供されない閉じたシステムである。そのため、発酵の開始時に、培地は所望の1つまたは複数の生物を接種され、システムに何も加えることなく発酵が起こることが可能とされる。典型的には、しかしながら、「バッチ」発酵は、炭素供給源の追加に関してバッチであり、温度、pHおよび酸素濃度などの因子を制御する試みが多くの場合に為される。バッチシステムにおいて、システムの代謝物およびバイオマス組成は、発酵が中止される時点まで絶えず変化する。バッチ培養物内で細胞は静止遅滞期(static lag phase)を通じて高増殖対数期へ、そして最後に増殖速度が減少または停止した静止期まで進行する。処理されない場合、静止期の細胞は最終的に死亡する。対数期の細胞は一般に、最終産物または中間体の産生の大部分の原因となる。
【0253】
いくつかの局面では、フェドバッチシステムもまた使用されてもよい。フェドバッチシステムは典型的なバッチシステムに類似しているが、発酵が進行するにつれて炭素供給源基質が増加的に加えられるという例外を伴う。フェドバッチシステムは、細胞の代謝を阻害するためにカタボライト抑制(例えば、グルコース抑制)が適当な場合および培地中に限られた量の基質を有することが望ましい場合に有用である。フェドバッチシステム中の実際の基質濃度の測定は困難であり、したがってpH、溶解酸素およびC02などの廃棄気体の分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。
【0254】
様々な発酵がSunderland et al.,(1992)に記載されており、該文献は参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの局面では、発酵はバッチモードにおいて行われ、方法は連続発酵に適応可能であることが想定される。
【0255】
連続発酵は、定義された連続的に発酵培地がバイオリアクターに加えられ、等量の条件培地が処理のために同時に除去される開いたシステムである。連続発酵は一般に、細胞が主に対数期の増殖である一定の高密度に培養物を維持する。
【0256】
連続発酵は、細胞増殖または最終産物濃度に影響を与える1つの因子または任意の数の因子のモジュレーションを可能とする。例えば、1つの方法は、固定された比率で炭素供給源または窒素レベルなどの限定的栄養分を維持し、かつ全ての他のパラメーターの変動を許容する。他のシステムでは、培地濁度により測定される細胞濃度を一定に保ったまま、増殖に影響を与える多数の因子を連続的に変更することができる。連続的なシステムは定常状態増殖条件を維持しようとするため、培地の除去に起因する細胞損失は発酵における細胞増殖速度に対して均衡されなければならない。連続発酵プロセスのために栄養分および増殖因子をモジュレートする方法の他に、産物形成の速度を最大化する技術は、産業微生物学の技術分野において周知である。
【0257】
いくつかの局面では、方法は、バッチ、フェドバッチ、または連続プロセスのいずれかを使用して実施されてもよく、任意の公知の発酵モードが好適である。追加的に、細胞は、全細胞触媒として基材上に固定化され、産生のための発酵条件に供されてもよいことが想定される。
【0258】
(1)マロン酸セミアルデヒド、(2)3-HP、およびアセチル-CoA、これらの塩のうちの1つ、またはこれらの誘導体の産生をいっそう向上させるために、特定の態様は、上記のものなどの適切な培養培地中で組換え酵母細胞を培養することからなってもよく、前記培養培地は、最適な量の炭素供給源、特にグルコースを含む。
【0259】
いくつかの局面では、細胞は、全培養持続期間の一部分の間にのみそのような最適な培養培地中で培養される。いくつかの局面では、酵母細胞は、培養の開始後10時間またはそれより長い時間、前記最適な培養培地中でインキュベートされ、これは培養の開始後11、12、13、14、15もしくは16時間またはそれより長い時間を包含する。
【0260】
いくつかの局面では、細胞は、培養の開始後5時間~15時間の範囲内の期間の間にそのような最適な培養培地中で培養され、該期間は、培養の開始後6時間~10時間、例えば、8時間を含む。
【0261】
いくつかの局面では、前記最適な培養培地中に含まれる炭素供給源はグルコースからなる。好ましい態様では、前記最適な培養培地は、15% w/wまたはそれより多いグルコースを含めて、12% w/wまたはそれより多いグルコースを含む。好ましい態様では、前記最適な培養培地は、最大で35% w/wのグルコースを含めて、最大で40% w/wのグルコースを含む。
【0262】
いくつかの局面では、(1)マロン酸セミアルデヒド、(2)3-HP、および(3)アセチル-CoA、これらの塩のうちの1つ、またはこれらの誘導体を産生する方法は、工程(a)および(c)の間に、前記最適な培養培地中で酵母細胞を培養することからなる中間工程(b)をさらに含んでもよい。
【0263】
産物の単離/精製
いくつかの局面では、(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体を産生する方法は、少なくとも(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体の単離の1つまたは複数の工程を含む。いくつかの局面では、方法は、第1の反応において、1つの発酵においてマロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体を産生および単離/精製して、精製/単離された産物を第2の反応(発酵/バイオリアクター)に加えて(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体の産生を推進することを含む。
【0264】
いくつかの局面では、培養培地から(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体、のうちの1つまたは複数を回収することは多数の技術により達成されてもよく、該技術としては、蒸留、ガスストリッピング、パーベーパレーション、選択的沈殿、または液体抽出が挙げられるがこれらに限定されない。
【0265】
いくつかの局面では、組換え微生物は、(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体を培養培地にエクスポートし、そのため、培養プロセスを単純化する。
【0266】
いくつかの局面では、産物は、(1)マロン酸セミアルデヒド、その塩のうちの1つ、またはマロン酸セミアルデヒド誘導体、(2)3-HP、その塩のうちの1つ、または3-HP誘導体、および(3)アセチル-CoA、その塩のうちの1つ、またはアセチル-CoA誘導体、のうちの1つまたは複数として参照される。
【0267】
いくつかの局面では、産物は、蒸留により培地から収集される。いくつかの局面では、共沸混合物、特に水との共沸混合物を形成させることにより産物の単離を促すために、蒸留は、培養培地とは異なる成分を伴ってもよい。この成分は、有機溶媒、例えば、シクロヘキサン、ペンタン、ブタノール、ベンゼン、トルエン、トリクロロエチレン、オクタン、ジエチルエーテル、またはこれらの混合物である。
【0268】
いくつかの局面では、ガスストリッピングは、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、水素、窒素、またはこれらの混合物の間で選択されるストリッピングガスを用いて達成される。いくつかの局面では、液体抽出は、疎水性相として有機溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、またはドデカンを用いて達成される。
【0269】
いくつかの局面では、微生物の所望の数が達成されたら、使用済みの培地は、産物を単離するためのプロセスに供される。いくつかの局面では、微生物の所望の密度が達成されたら、使用済みの培地は、産物を単離するためのプロセスに供される。いくつかの局面では、微生物は溶解され、細胞デブリは遠心分離機において溶液からペレット化される。いくつかの局面では、産物は、溶媒抽出プロセスまたは勾配超遠心分離プロセスの補助により細胞ペレット画分または液体画分から収集される。
【0270】
微生物組成物
いくつかの局面では、本開示の微生物は、微生物組成物となるように組み合わせられる。
【0271】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は固体である。固体組成物が使用される場合、1つまたは複数の担体材料を含むことが所望されることがあり、該材料としては、鉱物土類(mineral earths)、例えば、シリカ、タルク、カオリン、石灰岩、チョーク、クレイ、ドロマイト、珪藻土;硫酸カルシウム;硫酸マグネシウム;酸化マグネシウム;ゼオライト、炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;トレハロース;キトサン;シェラック;アルブミン;デンプン;スキムミルク粉末;スイートホエイ粉末;マルトデキストリン;ラクトース;イヌリン;デキストロース;および植物起源の産物、例えば、穀物ミール、樹皮ミール、木材ミール、およびナットシェルミールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0272】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は液体である。さらなる局面では、液体は、水もしくはアルコールもしくは生理食塩水を含んでもよい溶媒または炭水化物溶液を含む。いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、結合剤、例えば、ポリマー、カルボキシメチルセルロース、デンプン、およびポリビニルアルコールなどを含む。
【0273】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、サッカリド(例えば、単糖、二糖、三糖、多糖、およびオリゴ糖など)、ポリマーサッカリド、脂質、ポリマー脂質、リポ多糖、タンパク質、ポリマータンパク質、リポタンパク質、核酸、核酸ポリマー、シリカ、無機塩ならびにこれらの組合せを含む。さらなる局面では、微生物組成物は、寒天、アガロース、ゲルライト、およびゲランガムなどのポリマーを含む。いくつかの局面では、微生物組成物は、プラスチックカプセル、エマルション(例えば、水および油)、膜、ならびに人工膜を含む。いくつかの局面では、エマルションまたは連結ポリマー溶液は本開示の微生物組成物を含んでもよい。Harel and Bennett(米国特許第8,460,726 B2号)を参照。
【0274】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、固体形態(例えば、分散凍結乾燥胞子)または液体形態(貯蔵培地中に散在した微生物)で存在する。いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、使用の直前に懸濁液を形成させるために乾燥形態で液体に加えられる。
【0275】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、0.750未満、0.700未満、0.650未満、0.600未満、0.550未満、0.500未満、0.475未満、0.450未満、0.425未満、0.400未満、0.375未満、0.350未満、0.325未満、0.300未満、0.275未満、0.250未満、0.225未満、0.200未満、0.190未満、0.180未満、0.170未満、0.160未満、0.150未満、0.140未満、0.130未満、0.120未満、0.110未満、0.100未満、0.095未満、0.090未満、0.085未満、0.080未満、0.075未満、0.070未満、0.065未満、0.060未満、0.055未満、0.050未満、0.045未満、0.040未満、0.035未満、0.030未満、0.025未満、0.020未満、0.015未満、0.010未満、または0.005未満の水分活性(aw)を有する。
【0276】
いくつかの局面では、本開示の微生物組成物は、約0.750未満、約0.700未満、約0.650未満、約0.600未満、約0.550未満、約0.500未満、約0.475未満、約0.450未満、約0.425未満、約0.400未満、約0.375未満、約0.350未満、約0.325未満、約0.300未満、約0.275未満、約0.250未満、約0.225未満、約0.200未満、約0.190未満、約0.180未満、約0.170未満、約0.160未満、約0.150未満、約0.140未満、約0.130未満、約0.120未満、約0.110未満、約0.100未満、約0.095未満、約0.090未満、約0.085未満、約0.080未満、約0.075未満、約0.070未満、約0.065未満、約0.060未満、約0.055未満、約0.050未満、約0.045未満、約0.040未満、約0.035未満、約0.030未満、約0.025未満、約0.020未満、約0.015未満、約0.010未満、または約0.005未満の水分活性(aw)を有する。
【0277】
水分活性値は、Saturated Aqueous Solutionsの方法(Multon, "Techniques d'Analyse E De Controle Dans Les Industries Agroalimentaires" APRIA(1981))により、または実行可能なRobotronic BT湿度計もしくは他の湿度計もしくは検湿器を使用する直接的な測定により決定される。
【0278】
原材料
いくつかの局面では、本開示は、3-HPおよびアセチル-CoA誘導体を産生および/または回収/単離する方法を対象とする。回収/収集/単離は、蒸留、膜ベースの分離 ガスストリッピング、溶媒抽出、および拡張床吸着などの当技術分野において公知の方法によるものであり得る。
【0279】
いくつかの局面では、原材料は炭素供給源を含む。いくつかの局面では、炭素供給源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素より選択されてもよい。一局面では、炭素供給源は糖である。一局面では、糖はグルコースまたはそのグルコースのオリゴマーである。一局面では、グルコースのオリゴマーは、フルクトース、スクロース、デンプン、セロビオース、マルトース、ラクトースおよびセルロースより選択される。一局面では、糖は五炭糖である。一局面では、糖は六炭糖である。いくつかの局面では、原材料は、1つまたは複数の五炭糖ならびに/または1つまたは複数の六炭糖を含む。いくつかの局面では、原材料は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの局面では、原材料は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの局面では、原材料は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む。
【0280】
いくつかの局面では、微生物は、1つもしくは複数の五炭糖(ペントース)および/または1つもしくは複数の六炭糖(ヘキソース)を利用する。いくつかの局面では、微生物は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの1つまたは複数を利用する。いくつかの局面では、微生物は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を利用する。いくつかの局面では、微生物は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組合せのうちの1つまたは複数を利用する。利用される炭素供給源は、多様な炭素含有基質を包含してもよく、一般に微生物の選択によってのみ限定される。
【0281】
いくつかの局面では、ヘキソースは、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-タグトース(D-tagtose)、D-ソルボース、D-フルクトース、D-プシコース、および当技術分野において公知の他のヘキソースより選択されてもよい。いくつかの局面では、ペントースは、D-キシロース、D-リボース、D-アラビノース、D-リキソース、D-キシルロース、D-リブロース、および当技術分野において公知の他のペントースより選択されてもよい。いくつかの局面では、ヘキソースおよびペントースは、本明細書に開示される任意のヘキソースおよびペントースの左旋性のまたは右旋性エナンチオマーより選択されてもよい。
【0282】
いくつかの局面では、発酵は、一般に、培養されている微生物に適応させた適切な培養培地を用いて発酵槽/バイオリアクター中で実行される。いくつかの局面では、培地は少なくとも1つの単純炭素供給源を含有する。いくつかの局面では、培地は追加の基質を含有する。
【0283】
いくつかの局面では、追加の基質は、本明細書に記載の炭素供給源;スタート(start)もしくはセルロース、またはこれらの混合物などの多糖;チーズホエイ浸透物、コーンスティープリカー、てんさい糖蜜、および大麦麦芽などの再生可能な原材料からの未精製混合物のいずれか1つまたは複数を含んでもよい。
【0284】
いくつかの局面では、培地は、好適な鉱物、塩、補因子、緩衝剤、ならびに培養物の増殖および所望の産物の産生のために必要な酵素経路の促進のために好適な他の成分をさらに含有してもよい。
【0285】
いくつかの局面では、増殖期の間にバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、少なくとも5kgの炭水化物/m3、少なくとも10kgの炭水化物/m3、少なくとも20kgの炭水化物/m3、少なくとも30kgの炭水化物/m3、少なくとも40kgの炭水化物/m3、少なくとも50kgの炭水化物/m3、少なくとも60kgの炭水化物/m3、少なくとも70kgの炭水化物/m3、少なくとも80kgの炭水化物/m3、少なくとも90kgの炭水化物/m3、少なくとも100kgの炭水化物/m3、少なくとも150kgの炭水化物/m3、少なくとも200kgの炭水化物/m3、少なくとも250kgの炭水化物/m3、少なくとも300kgの炭水化物/m3、少なくとも400kgの炭水化物/m3、少なくとも500kgの炭水化物/m3、少なくとも600kgの炭水化物/m3、少なくとも700kgの炭水化物/m3、最大800kgの炭水化物/m3である。いくつかの局面では、増殖期の間にバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、約10kgの炭水化物/m3から、最大で500kgの炭水化物/m3の範囲内である。
【0286】
いくつかの局面では、増殖期のために要求される時間は1~200時間で変動する。さらなる局面では、増殖期の時間は5~50時間である。時間は、炭水化物フィードおよび/または原材料に依存する。
【0287】
本明細書において使用される場合、「適切な培養培地」は、微生物細胞の維持および/または増殖に必須または有益な栄養分、例えば、炭素供給源または炭素基質、窒素供給源、例えば、ペプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウム;リン供給源、例えば、リン酸一カリウムまたはリン酸二カリウム;微量元素(例えば、金属塩)、例えば、マグネシウム塩、コバルト塩、および/またはマンガン塩;ならびに増殖因子、例えば、アミノ酸、ビタミン、および増殖促進剤などを含む、無菌液体培地などの培地を意味する。本開示による「炭素供給源」または「炭素基質」または「炭素の供給源」という用語は、微生物の正常な増殖をサポートするために当業者により使用され得る炭素の任意の供給源を表し、これには、ヘキソース(グルコース、ガラクトースまたはラクトースなど)、ペントース、単糖、オリゴ糖、二糖(スクロース、セロビオースまたはマルトースなど)、糖蜜、デンプンまたはその誘導体、セルロース、ヘミセルロースおよびこれらの組合せが含まれる。
【0288】
いくつかの局面では、産生期の間にバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、少なくとも50kgの炭水化物/m3、少なくとも60kgの炭水化物/m3、少なくとも70kgの炭水化物/m3、少なくとも80kgの炭水化物/m3、少なくとも90kgの炭水化物/m3、少なくとも100kgの炭水化物/m3、少なくとも150kgの炭水化物/m3、少なくとも200kgの炭水化物/m3、少なくとも250kgの炭水化物/m3、少なくとも300kgの炭水化物/m3、少なくとも400kgの炭水化物/m3、少なくとも500kgの炭水化物/m3、少なくとも600kgの炭水化物/m3、少なくとも700kgの炭水化物/m3、少なくとも800kgの炭水化物/m3、少なくとも900kgの炭水化物/m3、最大1000kgの炭水化物/m3である。いくつかの局面では、産生期の間にバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、約100kgの炭水化物/m3から、最大で800kgの炭水化物/m3の範囲内である。
【0289】
いくつかの局面では、産生期のために要求される時間は5~500時間で変動する。さらなる局面では、産生期のための時間は、バッチおよびフェドバッチ操作について10~300時間で変動する。他の局面では、産生期の時間は、連続発酵を用いて最大300時間である。
【0290】
いくつかの局面では、1段階プロセスのためにバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、少なくとも50kgの炭水化物/m3、少なくとも60kgの炭水化物/m3、少なくとも70kgの炭水化物/m3、少なくとも80kgの炭水化物/m3、少なくとも90kgの炭水化物/m3、少なくとも100kgの炭水化物/m3、少なくとも150kgの炭水化物/m3、少なくとも200kgの炭水化物/m3、少なくとも250kgの炭水化物/m3、少なくとも300kgの炭水化物/m3、少なくとも400kgの炭水化物/m3、少なくとも500kgの炭水化物/m3、少なくとも600kgの炭水化物/m3、少なくとも700kgの炭水化物/m3、少なくとも800kgの炭水化物/m3、少なくとも900kgの炭水化物/m3、最大1000kgの炭水化物/m3である。いくつかの局面では、産生期の間にバイオリアクター/増殖培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、約100kgの炭水化物/m3から、最大で800kgの炭水化物/m3の範囲内である。
【0291】
いくつかの局面では、1段階プロセスにおける産生期のために要求される時間は5~500時間で変動する。さらなる局面では、1段階プロセスにおける産生期のために要求される時間は5~300時間で変動する。
【0292】
いくつかの局面では、1段階または複数段階産生プロセスは、約5時間、約10時間、約25時間、約50時間、約75時間、約100時間、約125時間、約150時間、約175時間、約200時間、約225時間、約250時間、約275時間、約300時間約325時間、約350時間、約375時間、約400時間、約425時間、約450時間、約475時間、または約500時間を要する。
【0293】
いくつかの局面では、1段階または複数段階産生プロセスは、5時間、10時間、25時間、50時間、75時間、100時間、125時間、150時間、175時間、200時間、225時間、250時間、275時間、300時間325時間、350時間、375時間、400時間、425時間、450時間、475時間、または500時間を要する。
【実施例】
【0294】
実施例1: マロン酸セミアルデヒドを産生するための組換えS.セレビシエ株の作製
標準的な酵母分子遺伝学手順(Methods in yeast Genetics-A cold spring harbor laboratory course Manual(2000)、D. Burke,D. Dawson,T. Stearns CSHL Press)を使用して標準株から組換えサッカロミセス・セレビシエ株を構築した。
【0295】
配列相同性を共有する遊離DNA末端を効率的に組み換える酵母の能力を使用して以下の遺伝子を組換え酵母に組み込んだ。
【0296】
より具体的には、クローニングされるコード配列を人工的に合成した。異種配列(非酵母)について、酵母コドン用法を使用して同義コード配列を得るために核配列(nucleic sequences)を改変した。制限酵素および古典的なクローニング技術を使用して、転写プロモーターおよび転写ターミネーターの間に各合成配列をクローニングした。各プロモーター配列には、上流遺伝子のターミネーターの配列に相同的な50~200ヌクレオチドの配列が先行する。同様に、各遺伝子(遺伝子はプロモーター-コード配列-ターミネーターを含む)のターミネーターには、直後の遺伝子に相同的な配列が後続する。そのため、組み込まれる単位のそれぞれは、上流の単位および下流の単位の両方との50~200ヌクレオチドのオーバーラップを有する。第1の単位について、プロモーターには、組込みが起こる座位の酵母染色体ヌクレオチドに相同的な50~200ヌクレオチドが先行する。同様に、最後の単位について、ターミネーターには、組込みが起こる座位の酵母染色体ヌクレオチドに相同的な50~200ヌクレオチドが後続する。
【0297】
各単位は次にプラスミド構築物からPCR増幅されて、オーバーラップする配列を有する直鎖DNAのX単位がもたらされる。組換え事象を選択するためにこの遺伝子の少なくとも1つは栄養要求性マーカーである。全ての直鎖状断片で酵母を一度に形質転換し、組換え酵母は、使用されたマーカーに関する栄養要求について選択される。配列の組込みは次にPCRおよびシークエンシングにより検証される。利用される合成生物学の局面は、Tian J. et al.,Mol. Biosyst. 2009;5(7):714-22に記載される。
【0298】
実施例2: 酵母の改変方法
組換え酵母は、β-アラニン合成の障害を持つ突然変異体酵母(Δfms1)である。帰結として、酵母は、パントテン酸(panthotenate)について栄養要求株であり、パントテン酸を欠乏した培地において増殖できない。同じ酵母において、サッカロミセス・セレビシエには存在しないβ-アラニンアミノトランスフェラーゼ活性をコードする遺伝子であるラカンセア・クルイベリからのPYD4が発現される。
【0299】
この酵素はマロニックセミアルデヒドをβ-アラニンに変換することができる(Andersen et al. 2007 FEBS Journal 274,1804-1817)。この酵母はそのため、培地中のパントテン酸の非存在下で増殖できるようにするマロニルセミアルデヒドを産生できる活性を欠いている。
図13を参照。
【0300】
この酵母は、P.プチダからのベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼの発現でパントテン酸非含有培地において増殖することが依然としてできない。実際に、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼは、オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒することができない。
【0301】
別々の酵母において、以下の酵素をインビボで試験した。
【0302】
本明細書に記載されるような配列SEQ ID NO:274の本発明の酵素の1つをΔfms1-Pyd4lk株において発現させた場合、この酵母はパントテン酸非含有培地において増殖することができた。
【0303】
これらのインビボの結果は、本開示の酵素は、オキサロ酢酸から、マロニックセミアルデヒドまたはその誘導体のうちの1つ、例えば、マロン酸セミアルデヒドなどへの変換を触媒することを示す。
【0304】
実施例3: MSAからの3-HPの産生
3-HPデヒドロゲナーゼ
ほとんどの3-HPデヒドロゲナーゼ酵素(表1)は、マロン酸セミアルデヒドを3-ヒドロキシプロピオン酸に変換するための補因子としてNADPHを受容するが、レドックス均衡経路を得るためにNADHの使用が望ましい。この問題を熟慮するために、サッカロミセス細胞においても活性の、酵母カンジダ・アルビカンスからのHPD1遺伝子によりコードされる3-HPデヒドロゲナーゼを特定し、プロピオニル-CoA分解経路において働く3-HPデヒドロゲナーゼとして特徴付けたところ、補因子として優先的にNADHを使用しながらマロン酸セミアルデヒドからの効率的な3-HP合成を持続させることが実証された。したがって、全長HPD1.Cal遺伝子をクローニングし、サッカロミセス・セレビシエ細胞において、強いプロモーターの制御下、プラスミドで発現させ、他の酵素と比較した。アッセイにおいて、20mMのマロン酸セミアルデヒドおよび2mMの補因子(NADPHまたはNADH)を使用した。BSTFAを用いた誘導体化後にGC-MS/MSにより3-HPを測定した(データ示さず)。
【0305】
(表18)3-HPデヒドロゲナーゼを試験するための構築された株
【0306】
(表19)異なる3-HPデヒドロゲナーゼを用いて構築されたプラスミド
【0307】
(表20)補因子消費に基づく3-HPデヒドロゲナーゼの活性(インビトロ)。
【0308】
HPD1.Calは、MSAからの3-HP形成の触媒作用において高度に活性であり、かつ補因子としてNADHの優先的な使用を示すことがさらに実証された。
【0309】
実施例4: グルコースからの3-HPの産生 - PEPからオキサロ酢酸への炭素フラックスの再結びつけ
この実施例は、マロン酸セミアルデヒドから3-HPへの酵素変換を記載する。MSAをβ-アラニン経路により産生した(
図3)。
【0310】
オキサロ酢酸への炭素フローの再方向付けは、(i)弱いプロモーター(pNUP57またはpMET25ΔF)からPYK1遺伝子を発現させることおよび(ii)タンパク質の半減期を特有のデグロン(PYK1-7)へのその融合により減少させることにより酵母ピルビン酸キナーゼ活性を強く減弱しながらの、大腸菌からのホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK.Ec)の強い発現に基づく、オキサロ酢酸シャントの実施態様を通じて達成され得る。そのような戦略は、WO2019011945A1およびWO2019011948A1に記載されている。
【0311】
操作ワークフロー(
図20)は、pLow-PYK1-7は1つの染色体中にのみ存在するので不活性のオキサロ酢酸シャントを含む二倍体株で開始され、オキサロ酢酸シャント活性化を可能とする胞子形成工程により終了する。最終の一倍体株はYA4963およびYA4968である(表21)。
【0312】
株をそのため、嫌気的増殖条件:50mLの閉Falconチューブ中8%のグルコースの存在下の10mLのリッチ培地中で3-HPの産生についてアッセイした。135rpmでの撹拌(50mmの振盪直径)。GC/FIDを使用する48hの増殖後(1-ブタノールの存在下での3-HP抽出後)に3-HP分析を行った。
【0313】
(表21)PEPからの炭素フラックスの再結びつけを向上させるために構築された株
【0314】
発酵条件において、PYK1減弱株(YA4963-21CおよびYA4963-25A)は、PYK1減弱を伴わないそれらの親株(DA2124-12)(0.9g/Lの3-HP)よりも多くの3-HP(7.8g/Lの3-HP)を産生した(表22)。
【0315】
(表22)PYK1-7減弱後の3-HPの産生(インビボ)
【0316】
Aust,A.;Yun,S. L.;Suelter,C.H.(1975)Methods Enzymol. 42C,176-182に記載されるようにピルビン酸キナーゼ活性を決定した。
【0317】
実施例5: オキサロ酢酸デカルボキシラーゼを通じたグルコースからの3-HPの産生
オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ酵素候補を探し、オキサロ酢酸をマロン酸セミアルデヒドに変換する活性酵素を与え、かつ第2の工程においてグルコースからMSA、3-HPおよび誘導体を産生する新規の発酵代謝経路を活用するために操作することに成功した。
【0318】
オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ酵素操作のR&D努力およびMDLC酵素(シュードモナス・プチダ)の操作結果の規模の実例を示すために、結果としてもたらされる活性を、アスパラギン酸からβ-アラニンへの変換を触媒する野生型アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(トリボリウム・カスタネアムのPAND.Tca)を用いて類似したアプローチにおいて得られた値と比較することができる。以前に記載したように、酵素アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(PAND.Tca)の使用によりβ-アラニン経路を通じてグルコースから5~8g/Lの3-HPを産生することに成功した。以下の表に記載されるように、バリアントMDLC-54は、アスパラギン酸デカルボキシラーゼPAND.Tca(4分の1の活性のみ)と同程度に活性であることが示され、そのようなバリアントはインビボでグルコースからの3-HPの産生を持続させることができることを指し示した(表23)。
【0319】
(表23)MDLC-54およびPAND.Tcaの活性
【0320】
pH 6の100mMのリン酸緩衝液中に50、100、150および200μgの総タンパク質を含有する酵母細胞抽出物を用いてオキサロ酢酸(20mM)、MgSO4.7H2O(2mM)、TPP(2mM)、NADPH(2mM)および精製YdfG酵素(4μg/100μL)の存在下30℃で40分間オキサロ酢酸デカルボキシラーゼアッセイを実行した。BSTFAを用いた誘導体化後にGC/MS/MSにより3-HPの形成を測定した。
【0321】
pH 7の100mMのリン酸緩衝液中に20、40、60および80μgの総タンパク質を含有する酵母細胞抽出物を用いてアスパラギン酸(20mM)の存在下30℃で20分間アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(PAND.Tca)を実行した。AQC(6-アミノキノリル-n-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いた誘導体化後にUPLC/UVによりベータ-アラニンの形成を測定した。
【0322】
これらの結果に基づいて、異なるMDLCバリアントを発現する酵母の抽出物を使用して、KmおよびVmaxの度合を通じて本発明の酵素の速度論的特性を分析するためのアッセイを追加的に行う。
【0323】
漸増濃度のオキサロ酢酸(2.5、5、10、20、40、80および120mM)、大腸菌からの精製YdfG(NADP依存性3-ヒドロキシ酸ヒドロゲナーゼ-EC 1.1.1.298)(4μg/100μL)ならびに2mMのNADPHの存在下で100μgの酵母抽出物を用いて速度論的アッセイを30分間実行する。
【0324】
BSTFA(N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)を用いる誘導体化後にGC/MS/MSにより測定される3-HPの形成を通じて本発明の酵素の効率をアッセイする。
【0325】
陰性対照として、本発明による酵素を含まない酵母抽出物に対してこのアッセイを行う。有意な活性は検出されない。
【0326】
酵素N°1(SEQ ID NO:2)、酵素N°6(SEQ ID NO:242)、酵素N°7(SEQ ID NO:243)、酵素N°8(SEQ ID NO:244)または酵素N°9(SEQ ID NO:245)のいずれかを含む酵母株を用いて得られた結果を特に
図21、
図22、
図23、
図24、および
図25にそれぞれ示す。
【0327】
非常に低いKmが得られることを観察することができ、本発明の酵素は非常に有効であることを実証する。
【0328】
実施例6: MSAからのアセトンの産生
MSAからのアセチル-CoAの産生
表2の遺伝子をクローニングし、サッカロミセス・セレビシエ細胞において、強いプロモーターの制御下、プラスミドで発現させた(表24)。
【0329】
補因子としてNADPを使用してMSD活性は検出されなかった。補酵素としてNADを使用して、MSD.CalおよびMSD.Paの両方は40nmol.min-1.mg-1の活性と共に活性であった(表25)。
【0330】
pH 7.5のリン酸緩衝液100mM中、80mMのベータ-アラニン、20mMのオキソグルタル酸、100μMのピリドキサールホスフェート、1mMのNAD、0.5mMのコエンザイムAおよび1mMのDTTの存在下で検討した株からの酵母抽出物をインキュベートした。ベータ-アラニンおよびオキソグルタル酸をPYD-4トランスアミナーゼによりMSDおよびβ-アラニンにおいて変換した。340nMでのUV吸光度によりNADHの出現を追跡することによりMSD活性を次にモニターした。オキソグルタル酸もしくはベータ-アラニンのいずれかを省略した場合、またはMSD活性が発現されない株において、340nMでの吸光度の増加は観察されなかった。このアッセイは、Andersen and Piskur FEBS journal,(2007)274,1804-1817およびWaters and Venables FEMS Microbiology Letters 34(1986)279-282から適応させた。
【0331】
【0332】
(表25)補因子消費に基づくマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼの活性
【0333】
アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生
アセチル-CoAからアセトアセチル-CoAへの変換のために、Hiser L,et al.(1994)ERG10 from Saccharomyces cerevisiae encodes acetoacetyl-CoA thiolase J Biol Chem 269(50):31383-9にしたがって、この反応を触媒することができる酵素ERG10(S.セレビシエ)を優先的に使用した(データ示さず)。
【0334】
インビボでのアセチル-CoAからのアセトンの産生
アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/アセト酢酸デカルボキシラーゼの最良の組合せを特定するために、マロン酸セミアルデヒドの産生を可能とするβ-アラニンシャントを通じて炭素フラックスを方向付けた(
図3)YA4565-2株において異なる遺伝子候補の組合せをクラスターとして統合した(表26)。
【0335】
【0336】
フィルターを有する2つの1mLピペットチップを有するシリコンキャップを用いて閉じたエルレンマイヤーフラスコ中2%のグルコースの存在下で25mLのリッチ培地中で株を培養し、撹拌を135rpm(50mmの振盪直径)で維持した。試料を分析まで氷中に保つか、または-20℃で凍結する。24hの増殖後にGC/MSヘッドスペースによりアセトンを測定した(表27)。
【0337】
(表27)提案される遺伝子を使用したアセトンの産生(インビボ)
【0338】
両方のシリーズの株において、最も効率的なアセト酢酸デカルボキシラーゼはパエニバシラス・ポリミキサのADC-0であった。酵素の最良の組合せは、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼATOA-0-大腸菌のATOD-0およびパエニバシラス・ポリミキサのアセト酢酸デカルボキシラーゼADC-0に対応した。アセトンの産生を増加させるために、MSD.PaおよびPanD.Tcaの追加のコピーをYA5060およびYA5062株のゲノム内に組み込んだ(表28)。
【0339】
(表28)アセトンを産生するための遺伝子の追加のコピーを用いて構築された株
【0340】
結果としてもたらされた株YA5182およびYA5183を、シリコンキャップ+フィルターを有する2つの1mLピペットチップを有するエルレンマイヤーフラスコ中8%のグルコースの存在下で25mLのリッチ培地中で増殖させた。撹拌を135rpm(50mmの振盪直径)で維持し、GC/MS-MSヘッドスペース分析により48hの増殖後にアセトンの産生を測定した(表29)。
【0341】
(表29)MSD.PaおよびPanD.Tcaのより多くの遺伝子コピーを有する株によるアセトンの産生
【0342】
実施例7: 3-HPからのプロパノールの産生
インビトロでのクロロフレクサス・オーランチアカスのプロピオニル-CoAシンターゼを使用する3-HPからのプロピオニル-CoAの産生
2つの戦略:a)強いプロモーターの制御下のPCS.Cau遺伝子の複数のコピーの組込みならびにb)任意の有害な組換え事象を回避するためのいくつかの再コード化アルゴリズムにより得られる遺伝子の異なる同義配列の使用および評価を使用してクロロフレクサス・オーランチアカスのPCSの活性を測定した。最良のバリアントはPCS-A.Cauであり、活性は遺伝子コピーの数にしたがってより高かった。30℃での酵素活性が50℃でのものより8分の1から10分の1であったことは注目に値する。
【0343】
Alder and Fuchs(2002)Journal of biological chemistry,277(14),12137-12143に記載されるようにUPLC/UVによりプロピオニル-CoAの産生により結果を測定した。
【0344】
(表30)プロパノールを産生するために異なるPCS遺伝子を用いて構築された株
【0345】
(表31)補因子消費により評価された異なる温度におけるPCSの異なるバリアントの活性
【0346】
単一の酵素を使用する3-HPからのプロピオニル-CoAの産生(インビトロ)
3-HP-CoAトランスフェラーゼのスクリーニング
カプリアビダス・ネカターおよびクロストリジウム・プロピオニカムからの3-ヒドロキシプロピオニル-coAトランスフェラーゼ活性をアッセイした。本質的にVolodina E.,Schurmann M.,Lindenkamp N.,Steinbuchel A.(2014)Appl Microbiol Biotechnol 98:3579-3589に記載されるようにインビトロ活性を測定した。株YA4951-4、YA4952-2およびYA5067(表32)の粗抽出物をダイアフィルトレーションし(カットオフ3Kda)、タンパク質含有量を評価した。5、10、20、40、80または160μgのタンパク質を含有する抽出物を、20mMの3 HP、2mMのアセチル-CoA、1mMのNADPHおよび2mMのMgCl2の存在下30℃で30分間インキュベートした。反応を次に1%のHClO4の添加により停止させ、形成された3ヒドロキシプロピオニル-CoAの量をHPLCにより決定した。最大活性の酵素はクロストリジウム・プロピオニカムからのPCTであった。
【0347】
(表32)3-HPから3-HP-CoAを産生するための異なるPCT遺伝子を用いて構築された株
【0348】
(表33)アセチル-CoA消費により測定されたPCTの活性
【0349】
3-HP-CoAデヒドラターゼのスクリーニング
メタロスファエラ・セデュラ(HPCD.Mse)、バシラス属の種(HPCD.Bsp)、スポラナエロバクター・アセチゲネス(HPCD-0.Sac)からの3-HP-CoAデヒドラターゼおよびルエゲリア・ポメロイのエノイル-CoAヒドラターゼ(ENCD.Rp)をアッセイした。以下のプラスミドを用いて株YA4952-2を形質転換させた。
【0350】
(表34)3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ/エノイル-CoAヒドラターゼを用いて構築されたプラスミド
【0351】
本質的にAsao,M.&Alber,B.E(2013). Journal of Bacteriology 195,4716-4725に記載されるようにインビトロ活性を測定した。表34に記載のプラスミドを用いて形質転換された株YA4952-2の粗抽出物をダイアフィルトレーション(カットオフ3Kda)し、タンパク質含有量を評価した。5、10、20、40または80μgのタンパク質を含有する抽出物を、20mMの3 HP、2mMのアセチル-CoA、1mMのNADPHおよび2mMのMgCl2の存在下30℃で30分間インキュベートした。反応を次に1%のHClO4の添加により停止させ、形成されたアクリリル-CoAの量をHPLCにより決定した。メタロスファエラ・セデュラおよびスポラナエロバクター・アセチゲネスの3-HP-CoAデヒドラターゼは他の候補よりもわずかに活性であった。
【0352】
(表35)アクリリル-CoAピーク面積により測定された3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼの活性
*定量限界
【0353】
アクリリル-CoAレダクターゼのスクリーニング
ルエゲリア・ポメロイのアクリリル-CoAレダクターゼを、本質的にAsao,M.&Alber,B.E(2013). Journal of Bacteriology 195,4716-4725に記載されるようにインビトロでアッセイした。株YA4952-2の粗抽出物をダイアフィルトレーション(カットオフ3Kda)し、タンパク質含有量を評価した。5、10、20または30μgのタンパク質を含有する抽出物を、20mMの3 HP、2mMのアセチル-CoA、1mMのNADPHおよび2mMのMgCl2の存在下30℃で30分間インキュベートした。反応を次に1%のHClO4の添加により停止させ、形成されたプロピオニル-CoAの量をHPLCにより決定した。ルエゲリア・ポメロイからのACRは酵母細胞中で高度に活性であることを観察することができた。
【0354】
(表36)ルエゲリア・ポメロイからのアクリリル-CoAレダクターゼを用いて構築された株
【0355】
(表37)補因子消費により測定されたアクリリル-CoAレダクターゼの活性
【0356】
インビトロでのプロピオニル-CoAからのプロパノールの産生
この工程のために、プロピオニル-CoAを1-プロパノールに変換するために2つの異なる経路を使用することができる。1つ目のものはクロストリジウム・アルブスティの多機能性ADHE酵素の実施態様に依拠し、2つ目のものは、アルコールデヒドロゲナーゼADH1の内因性過剰発現ありまたはなしでパラバークホルデリア・ゼノボランスまたはサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)からのプロピオニル-CoAレダクターゼによるプロピオンアルデヒドの中間体形成を通じて進行する。基質として1mMのプロピオニル-CoAを使用して340nmでNADH消費をモニターすることにより反応を測定した。結果は、サルモネラ・エンテリカからのPDUP酵素は反応を触媒するための最良の候補であることを実証した。
【0357】
(表38)プロピオニル-CoAレダクターゼおよびアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性を試験するために構築された株
【0358】
(表39)補因子消費により測定されたプロピオニル-CoAレダクターゼおよびアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性
【0359】
インビトロでの3-HPからのプロパノールの産生
YA5214およびYA5215株の細胞抽出物を使用してインビトロで3-HPからのプロパノールの産生をアッセイした。アッセイは、20mMの3-HP+2mMのアセチル-CoA+2.8mMのNADPH+4mMのNADHを使用して、2mg/mLの細胞抽出物の存在下30℃で60分間、pH 6.5の0.1Mのリン酸緩衝液中で実行した。GC/MS-MSヘッドスペース分析により1-プロパノールの産生をモニターした。
【0360】
【0361】
インビボでの3-HPからのプロパノールの産生
1-プロパノールの合成を評価するために、YA5212、YA5214およびYA5215株をグルコースの存在下で増殖させ、3-HPを供給した。細胞を、シリコンキャップ+フィルターを有する2つの1mLピペットチップを有するエルレンマイヤーフラスコ中4%のグルコースの存在下で25mLのリッチ培地中で増殖させた。24hの培養後に、別の4%のグルコースを加えた。撹拌を135rpm(50mmの振盪直径)で維持した。GC/MS-MSヘッドスペース分析により、増殖培地中での1-プロパノールの存在を測定した。
【0362】
(表41)1-プロパノールを産生するために構築された株
【0363】
【0364】
実施例8: 1-プロパノールおよびアセトン共産生経路の中性レドックス均衡への到達を助長するためのクルイベロミセス・ラクチスからのgdp1による酵母ネイティブGAPDH遺伝子の置換え
[208]に記載されるように、中性レドックス均衡を伴う1-プロパノールおよびアセトンの共産生のための嫌気性株を生成する代謝操作方法がある。酸化されたNAD+補因子に対する厳格な要求を伴う酵素を3つの遺伝子(TDH1、TDH2およびTDH3)によりコードするサッカロミセス・セレビシエのグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の、NAD+またはNADP+のいずれかを受容し、そしてまた両方の化合物について類似した親和性を示す、クラブツリー陰性酵母クルイベロミセス・ラクチスからのGAPDH(GDP1.Klによりコードされる)による置換えが本実施例に記載される。
【0365】
PEPに向けた十分な炭素フラックスを持続させるために要求される最小のGAPDH活性を決定するために、3つの酵母GAPDHアイソザイムのそれぞれの寄与を野生型および突然変異体株の両方においてアッセイした。TDH1Δ、TDH2Δ、TDH3Δ三重突然変異体酵母細胞は生存可能でなかったため、単一または二重TDH欠失を有する株を操作し、結果としてもたらされた株の粗抽出物内でGAPDH活性をアッセイした。
【0366】
【0367】
TDH3活性アッセイは、Nakajima H,Itakura M,Kubo T,Kaneshige A,Harada N,Izawa T,Azuma YT,Kuwamura M,Yamaji R,Takeuchi T.(2017)J Biol Chem 292(11):4727-4742に記載される通りである。
【0368】
【0369】
TDH3の欠失はGAPDH活性の4倍の減少に繋がる。TDH1、TDH2またはTDH1およびTDH2の両方はGAPDH活性に対して効果を有さず、TDH2およびTDH3の両方の欠失は8倍の活性減少に繋がった。TDH3遺伝子は酵母細胞におけるGAPDH活性のほとんどの原因となることに留意することもまた重要である。
【0370】
クルイベロミセス・ラクチスGAPDH酵素の活性を測定するために、TDH1欠失株において強いプロモーターの制御下でGDP1.Klを発現させ、野生型細胞と比較した。
【0371】
(表45)GDP1.Kl活性を測定するために構築された株
【0372】
【0373】
GDP1.Klは、サッカロミセス・セレビシエ細胞において発現されて、NAD+またはNADP+のいずれかを消費した。この活性は、GDP1.Klのコピー数の増加と共に3つのS.セレビシエTDH遺伝子の欠失を補うために強いようである。
【0374】
その上、マロン酸セミアルデヒドから3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)への変換を触媒するHPD1酵素(カンジダ・アルビカンス)の使用と組み合わせたGAPDHの置換えを使用して、中性レドックス均衡に達することができる。
【0375】
実施例9: 1-プロパノールおよびアセトンの共産生
先行する実施例に記載されるように、B-アラニン経路を通じたグルコースからの3-HP、MSAおよびアセトンのインビボでの産生が実証された。その上、培養培地に1~5g/Lの3HPを補充してインビボでの3HPから1-プロパノールへの変換の実証に成功した。オキサロ酢酸デカルボキシラーゼの操作されたバリアントはオキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの変換について増加した活性を有することを考慮すれば、そのような増強したオキサロ酢酸デカルボキシラーゼの操作されたバリアントは、グルコース発酵からのマロン酸セミアルデヒドおよびマロン酸セミアルデヒド誘導体、例えば、1-プロパノールの産生を持続させることができることが予期される。例えば、最良の操作されたオキサロ酢酸デカルボキシラーゼバリアントの1つは、インビトロでの酵素実験下で、アスパラギン酸からβ-アラニンへの変換を触媒するPAND酵素(panD、トリボリウム・カスタネアム)と比較して4~5倍だけ低いことを示し、そのような操作されたバリアントはグルコースからの3-HPのインビボでの産生を持続させることを指し示した(データ示さず)。
【0376】
本明細書に開示される情報に基づいて、例えば標的1-プロパノール経路酵素を、以前に記載されたものなどの既にアセトン産生性の操作された株に導入することにより1-プロパノールおよびアセトンを共産生するための操作された微生物株を生成することができる。その上、嫌気的発酵条件下でのβ-アラニン経路を通じたグルコースからの3-HPのインビボでの産生は以前に成功裏に実証されている。そのため、そのような3HPA産生株は、1-プロパノールおよびアセトン経路の両方の標的酵素を導入した後に1-プロパノールおよびアセトンを共産生し始めることが予期される。
【0377】
例えば、そのような1-プロパノールおよびアセトンを共産生する操作された株は、シリコンキャップ+フィルターを有する2つの1mLピペットチップありまたはなしのエルレンマイヤーフラスコ中4%のグルコースの存在下で25mLのリッチ培地中で増殖され得る。24hの培養後に、別の4%のグルコースを加える。撹拌を135rpm(50mmの振盪直径)で維持する。標準的なGC/MS-MSヘッドスペース分析により、培養培地中での1-プロパノールおよびアセトンの存在を測定する。
【0378】
実施例10: 1-プロパノールおよび2-プロパノールの共産生
実施例9に記載されるように、例えば標的1-プロパノール経路酵素を、以前に記載されたものなどの既にアセトン産生性の操作された株に導入することにより1-プロパノールおよびアセトンを共産生するための操作された微生物株を生成することができる。その上、嫌気的発酵条件下でのβ-アラニン経路を通じたグルコースからの3-HPのインビボでの産生は以前に成功裏に実証されている。そのため、そのような3HPA産生株は、1-プロパノールおよびアセトン経路の両方の標的酵素を導入した後に1-プロパノールおよびアセトンを共産生し始めることが予期される。次に、1-プロパノールおよび2-プロパノールを共産生するために、例えば表15に列記されるような2-プロパノールデヒドロゲナーゼを、実施例9に記載の株に導入することができる。
【0379】
1-プロパノールおよび2-プロパノールの共産生を評価するために、株は、シリコンキャップ+フィルターを有する2つの1mLピペットチップありまたはなしのエルレンマイヤーフラスコ中4%のグルコースの存在下で25mLのリッチ培地中で増殖され得る。24hの培養後に、別の4%のグルコースを加える。撹拌を135rpm(50mmの振盪直径)で維持する。標準的なGC/MS-MSヘッドスペース分析により、培養培地中での1-プロパノールおよび2-プロパノールの存在を測定する。
【0380】
番号付けされた態様
態様1. 1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる、組換え微生物であって、以下:
(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/または
(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒する、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物。
態様2. 1-プロパノールを産生することができる、態様1の組換え微生物。
態様3. 以下:
(a)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒する、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)(a)もしくは(b)からのプロピオニル-CoAから1-プロパノールへの変換を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはプロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を一緒に触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、態様2の組換え微生物。
態様4. アセトンを産生することができる、態様1の組換え微生物。
態様5. 以下:
(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および
(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、態様4の組換え微生物。
態様6. チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG10(SEQ ID NO:209)、thlA(SEQ ID NO:210)、atoB(SEQ ID NO:211)、H16_B0759(SEQ ID NO:212)、Msed_0656(SEQ ID NO:213)、またはAAT1(SEQ ID NO:214)を含むアミノ酸配列をコードする、態様5の組換え微生物。
態様7. チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG10(SEQ ID NO:209)を含むアミノ酸配列をコードする、態様6の組換え微生物。
態様8. アセトアセチル-CoAシンターゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、nphT7(SEQ ID NO:285)を含むアミノ酸配列をコードする、態様5の組換え微生物。
態様9. アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:219および220)、ctfA/ctfB(SEQ ID NO:221および222)またはctfA/ctfB(SEQ ID NO:223および224)を含むアミノ酸配列をコードする、態様5の組換え微生物。
態様10. アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、atoA/atoD(SEQ ID NO:215および216)を含むアミノ酸配列をコードする、態様9の組換え微生物。
態様11. ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼおよびヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、ERG13(SEQ ID NO:283)およびyngG(SEQ ID NO:284)を含むアミノ酸配列をコードする、態様5の組換え微生物。
態様12. アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、Adc.Ca(SEQ ID NO:225)、Adc.Cbe(SEQ ID NO:226)、Adc(SEQ ID NO:227)、Adc(SEQ ID NO:228)、Adc(SEQ ID NO:229)またはAdc.Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする、態様5の組換え微生物。
態様13. アセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする内因性および/または外因性核酸分子が、Adc.Pp(SEQ ID NO:230)を含むアミノ酸配列をコードする、態様12の組換え微生物。
態様14. 3-HPおよびアセチル-CoAの両方、ならびに/またはこれらの誘導体の産生のためにマロン酸セミアルデヒドを触媒する、態様1の組換え微生物。
態様15. 3-HPの誘導体が、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様1の組換え微生物。
態様16. アセチル-CoAの誘導体が、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様1の組換え微生物。
態様17. 細菌、真菌、または酵母より選択される、態様1の組換え微生物。
態様18. クロストリジウム属の種、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモサム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクラム・バッチィ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、ムーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロンガム、ブラウティア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリカム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨンベイ、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロミュサ・オバータ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カルビノリカム、スポロミュサ・テルミチダ、ムーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグレガンス、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バシラス属の種、コリネバクテリウム属の種、ヤロウィア・リポリティカ、シェフェルソミセス・スチピチス、およびテリスポロバクター・グリコリカスからなる群より選択される親微生物に由来する、態様1の組換え微生物。
態様19. 酵母である、態様17の組換え微生物。
態様20. 酵母がサッカロミセス・セレビシエである、態様19の組換え微生物。
態様21. 酵母が好気性および嫌気性産生が可能である、態様19の組換え微生物。
態様22. オキサロ酢酸に作用してマロン酸セミアルデヒドを産生することができるデカルボキシラーゼを含む、態様14の組換え微生物。
態様23. 3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を産生する方法であって、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体が産生されるまで炭素供給源を含む原材料を含有する培養培地中で組換え微生物を培養することを含む、方法。
態様24. 1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる組換え微生物を産生する方法であって、以下:
(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ならびに/または
(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることを含む、方法。
態様25. 組換え微生物が1-プロパノールを産生することができる、態様24の方法。
態様26. 以下:
(a)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)3-HPからプロピオニル-CoAへの変換を触媒する、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ/CoAトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、およびアクリリル-CoAレダクターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)(a)もしくは(b)からのプロピオニル-CoAから1-プロパノールへの変換を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはプロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を一緒に触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)およびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることをさらに含む、態様24の方法。
態様27. 組換え微生物がアセトンを産生することができる、態様24の方法。
態様28. 以下:
(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および
(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を組換え微生物に導入することおよび/または組換え微生物において過剰発現させることをさらに含む、態様27の方法。
態様29. 組換え微生物が、3-HPおよびアセチル-CoAの両方、ならびに/またはこれらの誘導体の産生のためにマロン酸セミアルデヒドを触媒する、態様24の方法。
態様30. 3-HPの誘導体が、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様24の方法。
態様31. アセチル-CoAの誘導体が、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様24の方法。
態様32. 微生物が、細菌、真菌、または酵母より選択される、態様24の方法。
態様33. 組換え微生物が、クロストリジウム属の種、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモサム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクラム・バッチィ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、ムーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロンガム、ブラウティア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリカム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨンベイ、クロストリジウム・メトキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキイ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロミュサ・オバータ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カルビノリカム、スポロミュサ・テルミチダ、ムーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグレガンス、トレポネーマ・アゾトヌトリシウム、大腸菌、サッカロミセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バシラス属の種、コリネバクテリウム属の種、ヤロウィア・リポリティカ、シェフェルソミセス・スチピチス、およびテリスポロバクター・グリコリカスからなる群より選択される親微生物に由来する、態様24の方法。
態様34. 組換え微生物が酵母である、態様32の方法。
態様35. 酵母がサッカロミセス・セレビシエである、態様34の方法。
態様36. 組換え微生物が、好気的、微嫌気的、または嫌気的産生プロセス、好ましくは嫌気的プロセスにおいて、3-HPおよび/または誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/または誘導体を共産生する、態様34の方法。
態様37. 組換え微生物が、オキサロ酢酸に作用してマロン酸セミアルデヒドを産生することができるデカルボキシラーゼを含む、態様29の方法。
態様38. アセチル-CoAの産生において産生される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部が、3-HPおよび/またはその誘導体の産生において還元同等物の供給源として利用される、態様24の方法。
態様39. アセチル-CoAの産生において産生される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部が、3-HPおよび/またはその誘導体の産生において還元同等物の供給源として利用される、態様1の組換え微生物。
態様40. 1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、3-ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)およびアセチル-CoA、ならびに/またはこれらの誘導体を共産生することができる、組換え微生物であって、以下:
(a)マロン酸セミアルデヒドからの3-HPの産生を触媒する3-ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)(i)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、および/または
(ii)マロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼ、およびマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(c)ベータ-アラニンを中間体として有する、オキサロ酢酸からのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼおよび/またはβ-アラニントランスアミナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物。
態様41. 1-プロパノールを産生することができ、以下:
(a)3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するプロピオニル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)3-ヒドロキシプロピオニル-CoAシンセターゼ、3-ヒドロキシプロピオニル-CoAデヒドラターゼ、および3-HPからのプロピオニル-CoAの産生を触媒するアクリリル-CoAレダクターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(c)プロピオニル-CoAからの1-プロパノールの産生を触媒するアルコール/アルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、態様40の組換え微生物。
態様42. アセトンを産生することができ、以下:
(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および
(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、態様40の組換え微生物。
態様43. 3-HPの誘導体が、アクリル酸、1-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様40~42の組換え微生物。
態様44. アセチル-CoAの誘導体が、アセトン、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様40~42の組換え微生物。
態様45. 1つまたは複数の炭素供給源を含む原材料から、アセトンおよび/またはその誘導体を産生することができる、組換え微生物であって、以下:
(a)(i)オキサロ酢酸からマロン酸セミアルデヒドへの脱カルボキシル化を触媒することができる酵素をコードする、少なくとも1つの内因性および/もしくは外因性核酸分子、または
(ii)ベータ-アラニンを中間体として有する、オキサロ酢酸からのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼおよび/もしくはβ-アラニントランスアミナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/もしくは外因性核酸分子
をコードする、少なくとも1つの内因性および/もしくは外因性核酸分子、
(iii)(i)もしくは(ii)からのマロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、または
(iv)(i)もしくは(ii)からのマロン酸セミアルデヒドからマロニル-CoAへの変換を触媒するマロニル-CoAレダクターゼおよび/もしくは2-ケトデカルボキシラーゼ、ならびにマロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するマロニル-CoAデカルボキシラーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)アセチル-CoAからアセトンへの変換を触媒することができる少なくとも1つまたは複数の内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数を含む、組換え微生物。
態様46. 以下:
(a)アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するチオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(b)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するアセトアセチル-CoAシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(c)アセトアセチル-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、
(d)(i)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ、および
(ii)HMG-CoAからのアセト酢酸の産生を触媒するヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼ
をコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子、ならびに
(e)アセト酢酸からのアセトンの産生を触媒するアセト酢酸デカルボキシラーゼをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
のうちの1つまたは複数をさらに含む、態様45の組換え微生物。
態様47. アセトンの誘導体が、2-プロパノール、プロペン、およびポリプロピレンからなる群より選択される、態様46の組換え微生物。
態様48. アセトンの産生において産生される過剰なNAD(P)Hの少なくとも一部が、共産生経路において還元同等物の供給源として利用される、態様46の組換え微生物。
態様49. 共産生経路が3-HP経路である、態様48の組換え微生物。
態様50. 好気的、微好気的、または嫌気的産生プロセスにおいてアセトンを産生する、態様40~48の組換え微生物。
態様51. 態様1のいずれかの組換え微生物を、発酵性炭素供給源と、3-HPまたは誘導体およびアセチル-CoAまたは誘導体を産生するための条件下で、かつ該産生するために十分な期間にわたって接触させることにより、3-HPおよび/またはその誘導体ならびにアセチル-CoAおよび/またはその誘導体を共産生する方法。
態様52. 態様の組換え微生物を、発酵性炭素供給源と、アセトンまたは誘導体を産生するための条件下で、かつ該産生するために十分な期間にわたって接触させることにより、アセトンまたは誘導体を産生する方法。
態様53. 炭素供給源が、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素より選択される、態様51または52の方法。
態様54. 好気的、微好気的、または嫌気的産生プロセスにおいてアセトンを産生する、態様51または52の組換え微生物。
【0381】
参照による組込み
本明細書において参照される全ての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、参照により全ての目的のために全体が組み入れられる。しかしながら、本明細書において参照される任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、および特許出願の言及は、それらが世界の任意の国で有効な先行技術を形成しまたは一般的な技術常識の一部分を形成することの承認または何らかの形態の示唆ではなく、またそのように解釈されるべきではない。さらに、以下の参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】