(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】粉体コーティング用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20220209BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220209BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20220209BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20220209BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20220209BHJP
C09D 127/16 20060101ALN20220209BHJP
【FI】
C08L27/12
C08L67/02
C09D167/00
C09D127/12
C09D5/03
C09D127/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535584
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019086626
(87)【国際公開番号】W WO2020127938
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 雄大
(72)【発明者】
【氏名】カペロ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】デヴィスム,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ノゲス,アントーニ
(72)【発明者】
【氏名】カーサデヴァル,リュイス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD131
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002CD143
4J002CF032
4J002CF042
4J002CK013
4J002CM013
4J002EP016
4J002ER006
4J002ER026
4J002EU186
4J002EV286
4J002FD090
4J002FD143
4J002FD146
4J002GH00
4J002HA09
4J038CD111
4J038DD081
4J038DG111
4J038DG261
4J038HA166
4J038JB21
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA02
4J038NA03
4J038NA04
4J038PA02
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC05
(57)【要約】
本発明は、以下のブレンドを含む樹脂組成物に関する:a)10~90重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂、及びb)90~10重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂。ここで、重量%はフルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリマー樹脂の総重量に基づく。本発明は、また、そのような樹脂組成物を製造するための方法、そのような樹脂組成物を含む粉体コーティング組成物、及びそのような樹脂組成物の使用、特に建築用粉体コーティングに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリマー樹脂の総重量を基準として、
a)10~90重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂、及び、
b)90~10重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂
のブレンドを含み、
前記半結晶性ポリエステル樹脂は、好ましくは鎖状脂肪族及び/又は脂環式構造を有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリエステル樹脂は、
鎖状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の中から選択される少なくとも1種のポリカルボン酸、及び、
鎖状脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールの中から選択される少なくとも1種のポリオール
から誘導される単位を含み、好ましくはそれらからのみなり、
前記ポリカルボン酸は、鎖状脂肪族C
4-C
8ジカルボン酸、好ましくは鎖状脂肪族C
4-C
6ジカルボン酸、及び/又は、脂環式ジカルボン酸の中から好ましくは選択され、アジピン酸、コハク酸、1,5-ペンタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びそれらの組合せの中からより好ましくは選択され、
前記ポリオールは、鎖状脂肪族C
2-C
8ジオール、好ましくは鎖状脂肪族C
2-C
6ジオール、好ましくは鎖状脂肪族C
4-C
6ジオール、及び/又は、脂環式ジオールの中から好ましくは選択され、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びそれらの組合せの中からより好ましくは選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記半結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度が75~150℃、好ましくは90~130℃である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記半結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定して、55℃未満、好ましくは-20~50℃、より好ましくは-15~40℃であり、及び/又は、前記半結晶性ポリエステル樹脂が、10℃/分の加熱速度でDSCによって測定して、20~100J/g、好ましくは25~90J/gの融解熱を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記半結晶性ポリエステル樹脂が、15~70mg KOH/g、好ましくは20~40mg KOH/gの水酸基価を有しており、かつ10mg KOH/g未満、好ましくは5mg KOH/g未満の酸価を有している、請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記半結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnが1500~15000、好ましくは2000~5000であり、及び/又は、前記半結晶性ポリエステル樹脂が165℃、せん断速度30s
-1で0.005~10Pa.sの溶融粘度を有する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリマー樹脂及び前記半結晶性ポリマー樹脂の総重量に対して、60~90重量%の前記フルオロポリマー樹脂a)と、10~40重量%の前記半結晶性ポリエステル樹脂b)とを含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマー樹脂が、ポリビニリデンフロライドホモポリマー及びポリ(ビニリデンフロライド-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーの中から選択される、請求項1乃至7の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記フルオロポリマー樹脂は、前記半結晶性ポリエステル樹脂よりも高い溶融温度を有する、請求項1乃至8の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
フレーク又はペレットの形態、あるいは粉末の形態で、好ましくはレーザー粒度測定によって測定して10~250μmより好ましくは30~150μmの粒子体積中位径Dv50を有する、請求項1乃至9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
ブレンダー中で、好ましくは押出機中で、a)前記フルオロポリマー樹脂をb)前記半結晶性ポリエステル樹脂と、前記半結晶性ポリエステル樹脂の融点よりも高い温度で、前記半結晶性ポリエステル樹脂が溶融状態で、ブレンドして、ブレンドを形成し、
場合により、冷却後、前記ブレンドをフレーク、ペレット又は粉末に変換する、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記フルオロポリマー樹脂が、ブレンドする工程の間、溶融することなく固体状態のままである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載の又は請求項11若しくは12に記載の方法によって得られる少なくとも1つの樹脂組成物を含み、好ましくは、架橋剤と、任意選択で、顔料、流動剤、脱気剤、ワックス及びこれらの組み合わせの中から選択される他の添加剤とをさらに含む、粉体コーティング組成物。
【請求項14】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の樹脂組成物の、粉体コーティング組成物における、好ましくは架橋性粉体コーティング組成物における、好ましくは建築用粉体コーティング用の使用。
【請求項15】
請求項13に記載の粉体コーティング組成物を塗布して、任意に硬化させることによって、得られる、粉体コーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー及び半結晶性ポリエステル樹脂をベースとし粉体コーティングに有用な新しい樹脂組成物並びにそのような組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境汚染への関心が高まっているため、コーティング産業は揮発性有機化合物(VOC)を使用しない方向に移行している。
【0003】
粉体コーティングは、VOCを全く含まず排気処理又は廃水処理を必要としないので、環境的に有望な技術である。さらに、過剰な材料を再生利用することができる。
【0004】
アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂をベースとする粉体コーティングが歴史的に使用されているが、それらは劣った耐候性を示す。
【0005】
他方、フルオロポリマーをベースとするコーティングは耐候性がある。しかしながら、フルオロポリマーは粉砕するのが困難であり、フッ素化樹脂を含むコーティング材料は一般に水又は溶媒を含み、粉末の形態ではない。
【0006】
上記の問題に対処するために、フルオロポリマー及び別の樹脂を含有する粉体コーティングを開発する試みがなされてきた。
【0007】
文献EP 3 165 581は、ポリビニリデンフロライド及びアクリル樹脂を含む粉体コーティング材料のための組成物、並びに、前記組成物からなる第1の粉末と、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はシリコーン樹脂からなる第2の粉末とを含む粉体コーティング材料を記載している。
【0008】
文献US2015/0072151には、フッ素化脂環式樹脂とポリエステルポリマーとを含む粉体コーティング組成物であって、ポリエステルポリマーがC8-15芳香族多塩基性カルボン酸化合物から誘導される単位とC2-10多価アルコール化合物から誘導される単位とを含むことが記述されている。
【0009】
入手可能なポリエステルの大部分は、非晶質ポリエステルである。しかしながら、そのような非晶質ポリエステル樹脂は、フルオロポリマー樹脂と相溶性がなく、このため、これら2つの樹脂を混合した場合に不均一なブレンドが生じる。この非相溶性は樹脂ブレンドに入れることができるフルオロポリマー樹脂の量を制限し、品質及び耐候性が低下したコーティングをもたらす。
【0010】
さらに、コーティングは、使用中に様々な化学薬品で洗浄され得るので、溶剤に対して良好な耐性を示すことが重要である。
【0011】
したがって、良好な耐候性及び良好な耐溶剤性を有するコーティングを製造することを可能にし、費用効果があり、容易に粉末化することができる樹脂組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の目的は、
a)10~90重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂、及び
b)90~10重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂を、
前記フルオロポリマー樹脂及び前記半結晶性ポリマー樹脂の総重量を基準としてブレンドして含み、
前記半結晶性ポリエステル樹脂が、好ましくは鎖状脂肪族及び/又は脂環式構造を有する、樹脂組成物を提供することである。
【0013】
幾つかの実施形態では、半結晶ポリエステル樹脂は、以下から誘導された単位を含み、好ましくはこれらのみからなる。
鎖状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の中から選択される少なくとも1種のポリカルボン酸、及び
鎖状脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから選択される少なくとも1種のポリオール。
【0014】
幾つかの実施形態において、ポリカルボン酸は、鎖状脂肪族C4-C8ジカルボン酸、好ましくは鎖状脂肪族C4-C6ジカルボン酸、及び/又は、脂環式ジカルボン酸の中から選択され、より好ましくはアジピン酸、コハク酸、1,5-ペンタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びそれらの組合せの中から選択され、
ポリオールは、鎖状脂肪族C2-C8ジオール、好ましくは鎖状脂肪族C2-C6ジオール、より好ましくは鎖状脂肪族C4-C6ジオール、及び/又は、脂環式ジオールの中から選択され、より好ましくは1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びそれらの組合せの中から選択される。
【0015】
幾つかの実施形態において、半結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度は、75~150℃、好ましくは90~130℃である。
【0016】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が10℃/分の加熱速度でDSCによって決定して、55℃未満、好ましくは-20~50℃、より好ましくは-15~40℃である。
【0017】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂が15~70mg KOH/g、好ましくは20~40mg KOH/gの水酸基価及び10mg KOH/g未満、好ましくは5mg KOH/g未満の酸価を有する。
【0018】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnが1500~15000、好ましくは2000~5000である。
【0019】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂が10℃/分の加熱速度でDSCによって測定して、20~100J/g、好ましくは25~90J/gの融解熱を有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂が165℃、30s-1のせん断速度で0.005~10Pa.sの融解粘度を有する。
【0021】
幾つかの実施形態では、樹脂組成物がフルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリマー樹脂の総重量に基づいて、60~90重量%の前記フルオロポリマー樹脂a)及び10~40重量%の前記半結晶性ポリエステル樹脂b)を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、フルオロポリマー樹脂は、ポリビニリデンフロライドホモポリマー及びポリ(ビニリデンフロライド-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーの中から選ばれる。
【0023】
幾つかの実施形態では、フルオロポリマー樹脂が半結晶性ポリエステル樹脂よりも高い溶融温度を有する。
【0024】
幾つかの実施形態では、樹脂組成物はフレーク又はペレットの形態である。
【0025】
幾つかの実施形態では、樹脂組成物は粉末の形態である。
【0026】
幾つかの実施形態では、樹脂組成物がレーザー粒度測定によって決定して、10~250μm、好ましくは30~150μmの粒子体積中位径Dv50を有する。
【0027】
本発明の別の目的は、半結晶性ポリエステル樹脂が溶融状態であり、半結晶性ポリエステル樹脂の融点より高い温度で、フルオロポリマー樹脂a)と半結晶性ポリエステル樹脂b)とをブレンダー、好ましくは押出機でブレンドしてブレンドを形成することを含み、上記のような樹脂組成物を製造するための方法を提供する。
【0028】
幾つかの実施形態では、本方法が、冷却後、ブレンドをフレーク、ペレット又は粉末に変換する、更なるステップを含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、フルオロポリマー樹脂がブレンド工程中に溶融することなく固体状態のままである。
【0030】
本発明の別の目的は、上記に定義された少なくとも1つの樹脂組成物を含むか、又は上記の方法によって得られる粉体コーティング組成物を提供することである。
【0031】
幾つかの実施形態では、粉体コーティング組成物が架橋剤、並びに、任意に、顔料、流動剤、脱気剤、ワックス及びそれらの組み合わせの中から選択される他の添加剤をさらに含む。
【0032】
本発明の別の目的は、粉体コーティング組成物、好ましくは架橋性粉体コーティング組成物における、上記のような樹脂組成物の使用を提供することである。
【0033】
幾つかの実施形態において、使用は、建築用粉体コーティング用である。
【0034】
本発明の別の目的は、上記のように粉体コーティング組成物を塗布し、任意に硬化させることによって得られる粉体コーティングを提供することである。
【0035】
本発明は、上記の要求を満たすことを可能にする。特に、本発明は、費用効果が高く、安定で、均一な樹脂組成物を提供し、容易に粉末に粉砕され、そして、良好な耐候性、良好な接着特性、高性能耐久性、良好な耐溶剤性、優れた全体的外観の有利な特徴のうち1つ又は好ましくは幾つかを有するコーティングをもたらすことができる。本発明の樹脂組成物は通常の粉体コーティング製造プロセスを使用して粉砕することができ、外装コーティング用途に使用することができる。
【0036】
これは、フルオロポリマー樹脂と半結晶性ポリエステル樹脂であるポリエステル樹脂とのブレンドを使用することによって達成される。半結晶性ポリエステル樹脂、特に鎖式脂肪族及び/又は脂環式構造の半結晶性ポリエステル樹脂の使用は、フルオロポリマー樹脂とポリエステル樹脂との間の相溶性を改善することを可能にする。また、フルオロポリマー樹脂にポリエステル樹脂を添加することにより、フルオロポリマー樹脂単独に比べて粉砕性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、以下の説明において、限定されることなく、より詳細に説明される。
【0038】
特に言及しない限り、本出願におけるパーセンテージは重量パーセンテージである。
【0039】
樹脂組成物
第1の態様において、本発明は、
a)少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂、及び、
b)少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂
のブレンドを含む樹脂組成物に関する。
【0040】
「半結晶性」とは、非晶質を意味する。樹脂が半結晶性であるか非晶質であるかを確立する相変化はEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、Volume 4,pages 482-519,1986 (Wiley lnterscience)に記載されているように、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)によって検出することができる。樹脂は、それが識別可能な結晶化又は溶融ピークを示さない場合、非晶質であると考えられる。樹脂は、少なくとも1つの結晶化又は溶融ピークを示す場合、半結晶性であると考えられる。一般に、DSC曲線において異なる融解ピークが観察される場合、これらの複数のピークは、融解範囲によって特定される。なお、本明細書で定義される「半結晶性」という用語は、厳密には半結晶ポリマー(すなわち、識別可能なガラス転移温度Tgを示すポリマー)だけでなく、結晶ポリマー(すなわち、識別可能なガラス転移温度Tgを示さないポリマー)を包含していることに注意されたい。
【0041】
半結晶性(又は結晶性)ポリエステル樹脂は、粉体コーティングに使用されるような従来の非晶質ポリエステル樹脂とはそれらが不均一な形態(すなわち、相の混合物を含む)を有し、通常、室温で不透明で白色であり、それらの比較的低い溶融粘度に加えて、それらの非晶質対応物よりも、一般的な有機溶媒、例えば、キシレン、ホワイトスピリット及びケトンにはるかに不溶性である点で異なる。半結晶性ポリエステル樹脂は、一般に、高度の構造規則性(すなわち、化学的、幾何学的及び/又は空間的対称性)を有する。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、以下のブレンドを含む。
a)10~90重量%の少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂、及び
b)90~10重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂
ただし、フルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリマー樹脂の総重量に基づく。
【0043】
好ましくは、フルオロポリマー樹脂は、フルオロポリマー樹脂と半結晶性ポリマー樹脂との総重量に対して、60~90重量%、より好ましくは70~80重量%の量でブレンド中に存在する。
【0044】
好ましくは、半結晶性ポリエステル樹脂は、フルオロポリマー樹脂と半結晶性ポリマー樹脂との総重量に対して、10~40重量%、より好ましくは20~30重量%の量でブレンド中に存在する。
【0045】
本発明による樹脂組成物は、フレーク又はペレットの形態であってもよい。そのような樹脂組成物のフレーク又はペレットは、粉砕して粉末にすることを意図した中間生成物を構成する。
【0046】
あるいは、樹脂組成物が粉末の形態であってもよい(この場合、「粉末樹脂組成物」とも呼ばれる)。
【0047】
本発明の粉末樹脂組成物では、フルオロポリマー樹脂と半結晶性ポリエステル樹脂とがブレンドを形成する。すなわち、本発明の粉末樹脂組成物は、フルオロポリマー樹脂と半結晶性ポリエステル樹脂とを含む粒子を含む。このように、それは、フルオロポリマー樹脂の粉末と半結晶性ポリエステル樹脂の粉末との混合物から生じる粉末組成物とは異なる。
【0048】
好ましくは、粉末樹脂組成物の粒子が10~250μm、好ましくは30~150μm、例えば10~30μm、又は、30~50μm、又は、50~100μm、又は、100~150μm、又は、150~200μm、又は、200~250μmの体積中位径Dv50を有する。
【0049】
Dv50は、粒子の累積粒度分布の50番目の百分位数(体積)における粒度である。このパラメーターは、レーザー粒度測定によって決定され得る。
【0050】
幾つかの実施形態では、樹脂組成物が少なくとも1種のフルオロポリマー樹脂と少なくとも1種の半結晶性ポリエステル樹脂からのみ本質的になるか、又はそれらからのみなる。
【0051】
半結晶性ポリエステル樹脂
半結晶性ポリエステル樹脂は、好ましくは鎖式半結晶性ポリエステル樹脂である。
【0052】
半結晶性ポリエステル樹脂は、(環状)脂肪族及び/又は芳香族ポリオールと(環状)脂肪族及び/又は芳香族ポリカルボン酸又はこれらの酸に基づく無水物、エステル又は酸塩化物との重縮合反応に基づくものであってもよい。適切なポリオールの例には1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1-4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、水素化ビスフェノールA(又は2,2-(ジシクロヘキサノール)プロパン)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール及び3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノエート(CA、登録番号=115-20-4)が含まれる。使用することができる好適なポリカルボン酸には、2~22個のメチレン基を有する鎖式(環式)脂肪族ポリカルボン酸及び/又は芳香族ポリカルボン酸が含まれ、特に、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸及びナフタレンジカルボン酸が含まれる。
【0053】
しかしながら、好ましくは、半結晶性ポリエステル樹脂は、鎖状脂肪族及び/又は脂環式構造を有する。特に、半結晶性ポリエステル樹脂は鎖状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の中から選択される少なくとも1種のポリカルボン酸と、鎖状脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールの中から選択される少なくとも1種のポリオールとから誘導される単位を含むことができる。
【0054】
好ましくは、半結晶性ポリエステル樹脂は、芳香族ポリカルボン酸(芳香族ジカルボン酸など)及び/又は芳香族ポリオールから誘導される単位を含まない。
【0055】
半結晶性ポリエステル樹脂は、鎖状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の中から選択される少なくとも1種のポリカルボン酸と、鎖状脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールの中から選択される少なくとも1種のポリオールとから誘導される単位から本質的になるか又はそれらからなることができる。
【0056】
有利には、鎖状脂肪族ジカルボン酸は、鎖状脂肪族C4-C8ジカルボン酸であり、より好ましくは鎖状脂肪族C4-C6ジカルボン酸である。例えば、鎖状脂肪族C4ジカルボン酸、鎖状脂肪族C5ジカルボン酸、鎖状脂肪族C6ジカルボン酸、鎖状脂肪族C7ジカルボン酸及び/又は鎖状脂肪族C8ジカルボン酸であってもよい。
【0057】
有利には、脂環式ジカルボン酸は、C6-C8脂環式ジカルボン酸である。
【0058】
好ましくは、ポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、1,5-ペンタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びそれらの組み合わせの中から選択される。
【0059】
好ましくは、鎖状脂肪族ジオールは、鎖状脂肪族C2-C8ジオールであり、より好ましくは鎖状脂肪族C2-C6ジオールであり、さらに好ましくは鎖状脂肪族C4-C6ジオールである。鎖状脂肪族ジオールは、鎖状脂肪族C2ジオール、鎖状脂肪族C3ジオール、鎖状脂肪族C4ジオール、鎖状脂肪族C5ジオール、鎖状脂肪族C6ジオール、鎖状脂肪族C7ジオール及び/又は鎖状脂肪族C8ジオールであってもよい。
【0060】
有利には、脂環式ジオールは、C6-C8脂環式ジオールであってもよい。
【0061】
好ましい実施形態では、ポリオールは、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びそれらの組み合わせの中から選択される。
【0062】
特に好ましい形態では、半結晶性ポリエステル樹脂は、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレン1,4シクロヘキサンジカルボキシレート及び1,4シクロヘキサンジメタノールペンタジオネートの中から選択される。
【0063】
顕著な結晶性を有するポリエステル樹脂の形成のためには、重縮合反応に使用されるポリカルボン酸及びポリオールが偶数の炭素原子を含有することが好ましいが、必須ではない。対称的に置換された脂肪族環状試薬、例えば1,4-シクロヘキサンジカルボン酸や1,4-シクロヘキサンジメタノールを使用すると、結晶化が促進される傾向がある。しかしながら、このような試薬は熱硬化性ポリエステル粉体コーティングの通常の硬化温度よりも高い融点を有する半結晶性ポリエステル樹脂を製造する傾向があり、好ましくは、式HO(CH2)nOHのジオール又は式HOOC(CH2)nCOOHのジカルボン酸と組み合わせて使用することが好ましく、式中、nは偶数であり、好ましくは2~8、例えば4又は6であり、より低い融点を有する半結晶性ポリエステル樹脂が製造される。
【0064】
しかし、これは、奇数個の炭素原子を含有するモノマーポリカルボン酸又はポリオールの重縮合反応における使用、又は、ポリマー中の結晶化度を促進することが知られているある実験技術の使用、例えば、ポリエステル生成物をそのガラス転移温度(Tg)とその融点(Tm)との間の中間温度に或る期間維持すること、若しくは、ポリエステルが周囲温度に冷却される前に或る期間そのTmを超えて維持されるように、1,3-ジクロロベンゼン又はジフェニルエーテルなどの高沸点有機溶媒中で合成を行う(又は最終ポリエステル樹脂を処理する)ことを排除しない。カルボン酸基含有ポリエステル樹脂における結晶性を促進するためのこれら及び他の技術は、単独で又は組み合わせて使用され得る。
【0065】
半結晶性ポリエステル樹脂は、上記樹脂の2種以上の混合物であってもよい。
【0066】
半結晶性ポリエステル樹脂は、75℃~150℃、好ましくは90~130℃の溶融温度を有してもよく、例えば、75~90℃、又は、90~100℃、又は、100~110℃、又は、110~120℃、又は、120~130℃、又は、130℃~150℃の溶融温度を有していてもよい。溶融温度は、ISO 11357-3:1999 Plastics-Differential scanning calorimetry(DSC) Part3に従って加熱速度10℃/分で測定することができる。
【0067】
半結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、55℃未満であることが好ましく、-20~50℃であってもよく、-15~40℃であることがより好ましい。幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂は、-20~-10℃、又は、-10~0℃、又は、0~10℃、又は、10~20℃、又は、20~30℃、又は、30~40℃、又は40~50℃、又は50~55℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、ISO 11357-2 Plastics-Differential scanning calorimetry(DSC) Part2に従って加熱速度10℃/分で測定することができる。DSCによって試験すると、半結晶性ポリエステル樹脂は2つのガラス転移を示すことがあり、その一方はポリエステル樹脂中の自由に移動可能な非晶質領域に起因し、他方は、隣接する微結晶によって運動が拘束される非晶質領域に起因する。これらの場合、両方のTg値は、上述の温度範囲内にある。
【0068】
半結晶性ポリエステル樹脂は、少なくとも15mg KOH/gの水酸基価を有することが好ましい。これは、それが適切に硬化されることを確実にすることを可能にする。最も好ましくは、半結晶性ポリエステル樹脂が少なくとも20mg KOH/gの水酸基価を有する。それは、好ましくは70mg KOH/g以下、最も好ましくは40mg KOH/g以下の水酸基価を有する。特に、水酸基価は、15~20mg KOH/g、又は、20~25mg KOH/g、又は、25~30mg KOH/g、又は、30~35mg KOH/g、又は、35~40mg KOH/g、又は、40~50mg KOH/g、又は、50~60mg KOH/g、又は、60~70mg KOH/gであり得る。水酸基価は、DIN 53240-2に従って測定することができる。
【0069】
また、好ましくは、半結晶性ポリエステル樹脂が10mg KOH/g以下、特に5mg KOH/g以下の酸価を有する。酸価は、ASTM D-1639-90に従って測定することができる。
【0070】
このような水酸基価及び酸価を有する半結晶性ポリエステル樹脂は、酸よりも過剰なアルコールを用いて、ポリオールとポリカルボン酸(又はこれらの酸に基づく無水物、エステル、酸塩化物)を重縮合反応させることにより調製し得る。
【0071】
代替的かつやや好ましい実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂が少なくともグラム当たり15mg KOH/g、最も好ましくは少なくとも20mg KOH/gの酸価を有する。それは、70mg KOH/gを超えない、最も好ましくは40mg KOH/g以上とならない酸価を有し得る。例えば、それは、15~20mg KOH/g、又は、20~30mg KOH/g、又は、30~40mg KOH/g、又は、40~55mg KOH/g、又は、55~70mg KOH/gの酸価を有し得る。それは、10mg KOH/g以下、特に5mg KOH/g以下の水酸基価を有し得る。このような水酸基価及び酸価を有する半結晶性ポリエステル樹脂は、アルコールよりも過剰の酸を使用して、ポリオールとポリカルボン酸(又はこれらの酸に基づく無水物、エステル又は酸塩化物)との重縮合反応によって調製され得る。
【0072】
15~70mg KOH/gの水酸基価及び10mg KOH/g未満の酸価を有する半結晶性ポリエステル樹脂は、高い酸価及び低い水酸基価を有する半結晶性ポリエステル樹脂よりも、フルオロポリマー樹脂との良好な相溶性を有する。
【0073】
半結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは、1500以上であることが好ましい。このような数平均分子量を持つ半結晶性ポリエステル樹脂は、コーティングの靭性に寄与することができる。少なくとも2000の数平均分子量Mnが特に好ましい。
【0074】
半結晶性ポリエステル樹脂のMnは、好ましくは15000以下、最も好ましくは5000以下である。4000までの数平均分子量が特に言及されるべきである。数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0075】
幾つかの実施形態では、半結晶性ポリエステル樹脂のMnが1500~2000、又は、2000~3000、又は、3000~4000、又は、4000~5000、又は、5000~6000、又は、6000~7000、又は、7000~8000、又は、8000~9000、又は、9000~10000、又は、10000~11000、又は、11000~12000、又は、12000~13000、又は、13000~14000、又は、14000~15000である。
【0076】
半結晶性ポリエステル樹脂は、20~100J/g、好ましくは25~90J/gの融解熱を有することができる。融解熱はISO 11357-3:1999に従ってDSCによって測定することができ、加熱速度10℃/分で測定することができる。実施例において、融解熱は、20~25J/g、又は、25~30J/g、又は、30~40J/g、又は、40~50J/g、又は、50~60J/g、又は、60~70J/g、又は、70~80J/g、又は、80~90J/gであり得る。
【0077】
半結晶性ポリエステル樹脂は、165℃で30s-1のせん断速度で0.005~10Pa.sの融解粘度を有する。特に、融解粘度は、165℃で30s-1のせん断速度で0.005~0.05Pa.s、又は、0.05~0.5Pa.s、又は、0.5~1Pa.s、又は、1~2Pa.s、又は、2~3Pa.s、又は、3~4Pa.s、又は、4~6Pa.s、又は、6~8Pa.s、又は、8~10Pa.sであり得る。融解粘度は、ASTM D-4287-00に従って165℃で測定することができる。
【0078】
半結晶性ポリエステル樹脂は、DE 10 2006 057837に記載されているように調製することができる。
【0079】
フルオロポリマー樹脂
フルオロポリマー樹脂は、少なくとも1つのフッ素原子を含むビニルモノマー、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するビニルモノマー、及び、少なくとも1つのフルオロアルコキシ基を有するビニルモノマーの中から選択されるモノマーの少なくとも1つの単位を骨格に含んでいてもよい。一例として、このモノマーは、ビニルフロライド;ビニリデンフロライド;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)などのペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル;ペルフルオロ(1,3-ジオキソール);ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD);XがSO2F、CO2H、CH2OH、CH2OCN又はCH2OPO3Hである式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2Xの生成物;式CF2=CFOCF2CF2SO2Fの生成物;nが1、2、3、4又は5である式F(CF2)nCH2OCF=CF2の生成物;R1が水素又はF(CF2)mでありmが1、2、3又は4である式R1CH2OCF=CF2の生成物;R2がF(CF2)pでありpが1、2、3又は4である式R2OCF=CH2の生成物;ペルフルオロブチルエチレン(PFBE);3,3,3-トリフルオロプロペン又は2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンである。
【0080】
フルオロポリマー樹脂は、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。
【0081】
好ましくは、フルオロポリマー樹脂が上述のモノマーの中から選択される一又はそれ以上のモノマーからの単位からのみなる。非フッ素化モノマーからの単位を含むフルオロポリマー樹脂と比較して、このようなフルオロポリマー樹脂は、より良好な耐候性を示し得、したがって、樹脂組成物により良好な耐候性を提供し得る。
【0082】
あるいは、フルオロポリマー樹脂は、また、エチレンのような非フッ素化モノマーからの単位を含み得る。有利には、フルオロポリマー樹脂がポリビニリデンフロライド樹脂である。
【0083】
ポリビニリデンフロライド樹脂は、好ましくはホモポリマーである。
【0084】
他の実施形態では、ポリビニリデンフロライド樹脂がビニリデンフロライド単位及び一又はそれ以上の他のモノマーからの単位を含むか又はそれらからなるコポリマーであってもよい。他のモノマーの例としては、ビニルフロライド;トリフルオロエチレン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)などのペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル;ペルフルオロ(1,3-ジオキソール);ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD);XがSO2F、CO2H、CH2OH、CH2OCN又はCH2OPO3Hである式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2Xの生成物;式CF2=CFOCF2CF2SO2Fの生成物;nが1、2、3、4又は5である式F(CF2)nCH2OCF=CF2の生成物;R’が水素又はF(CF2)zであり、zが1、2、3又は4である式R’CH2OCF=CF2の生成物;R’’がF(CF2)zでzが1、2、3又は4である式R’’OCF=CH2の生成物;ペルフルオロブチルエチレン(PFBE);3,3,3-トリフルオロプロペン又は2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンである。ヘキサフルオロプロピレンが好ましい。ポリビニリデンフロライドコポリマーは、また、エチレンモノマーからの単位を含み得る。好ましくは、ポリビニリデンフロライド樹脂がコポリマーである場合、それは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%のビニリデンフロライド単位を含有する。
【0085】
フルオロポリマー樹脂は、上記樹脂の2種以上の混合物であってもよい。
【0086】
フルオロポリマーはASTMD3835に従ったキャピラリーレオメトリーにより、せん断速度100s-1及び230℃で測定して3000Pa.sより低く、より好ましくは1500Pa.sより低い粘度を有することができる。
【0087】
有利には、フルオロポリマー樹脂が半結晶性ポリエステル樹脂よりも高い溶融温度を有する。
【0088】
粉体コーティング組成物
別の態様では、本発明が粉末形態で上記のような樹脂組成物を含む粉体コーティング組成物に関する。
【0089】
好ましくは、粉体コーティング組成物が硬化性(又は架橋性)粉体コーティング組成物である。
【0090】
粉体コーティング組成物は、粉体コーティング組成物の総重量に基づいて、5~90重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは40~90重量%、より好ましくは60~90重量%、より好ましくは70~80重量%のフルオロポリマー樹脂を含み得る。
【0091】
粉体コーティング組成物は、粉体コーティング組成物の総重量に基づいて、5~90重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは10~60重量%、より好ましくは10~40重量%、より好ましくは20~30重量%の半結晶性ポリエステル樹脂を含むことができる。
【0092】
好ましい実施形態では、粉体コーティング組成物は架橋剤を含む。架橋剤は、好ましくはイソシアネート系架橋剤であり、より好ましくはポリイソシアネート系架橋剤であり、より好ましくはブロック化ポリイソシアネート架橋剤である。しかし、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホンアミド樹脂、尿素樹脂又はアニリン樹脂などのアミン架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤又はトリグリシジルイソシアヌレート架橋剤などの他の架橋剤も挙げることができる。
【0093】
架橋剤は、粉体コーティング組成物の総重量に基づいて、2~8重量%、好ましくは3~6重量%の量で存在し得る。
【0094】
粉体コーティング組成物は、また、例えば顔料、流動剤、脱気剤、ワックス及びそれらの組み合わせの中から選択される他の添加剤を含み得る。これらの他の添加剤は、粉体コーティング組成物の総重量に対して、好ましくは10~30重量%、好ましくは20~25重量%の量である。これらの添加剤は、Bodo Muller、Ulrich Poth著「Coatings Formulation」(2nd Revised Edition, Hanover、Vincentz Network,2011, European Coatings Tech Files, ISBN 978-3-86630-891-6.)に記載されているように、粉体コーティングの調合担当者に通常知られている。
【0095】
幾つかの実施形態では、粉体コーティング組成物が上述の成分又は上述の成分の任意の組み合わせからのみ本質的になるか又はそれらからのみなる。
【0096】
製造工程
もう1つの態様において、本発明は、ブレンダー中で、半結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度よりも高い温度で、フルオロポリマー樹脂と溶融状態の半結晶性ポリエステル樹脂とをブレンドして、好ましくは均質であるブレンドを形成することを含む、上記樹脂組成物の製造方法に関する。
【0097】
この方法において、フルオロポリマー樹脂及び半結晶ポリエステル樹脂の性質並びに樹脂組成物に関するブレンド中のそれらの量に関する前述の特徴はすべて同様に適用される。
【0098】
「均質ブレンド」とは、巨視的に均質なブレンド、つまり肉眼で相分離が見られないブレンドを意味する。
【0099】
ブレンダーは、好ましくは押出機又は共混練機、より好ましくは二軸スクリュー押出機又は共混練機である。
【0100】
好ましくは、ブレンドされるフルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリエステル樹脂が粉末形態である。
【0101】
有利には、本方法がブレンドを冷却した後に、ブレンドをフレーク、ペレット又は粉末に変換する工程をさらに含む。
【0102】
本方法が、ブレンドを粉末に変換する工程を含む場合、粉末樹脂組成物が製造されるが、これは上述の通りであってもよい。好ましくは、ブレンドが最初にフレーク又はペレットのような固体化合物に形成され、固体化合物が粉砕されて粉末にされる。この工程を実行するために、ハンマーミル、ピンミル、アトリションディスク、衝撃式分級機などを用いた粉砕機など、どのような粉砕技術を用いてもよい。
【0103】
本方法は、例えば粉末をふるいにかけることによって、所望の粒度分布を有する粉末粒子を選択する工程を含んでもよい。
【0104】
好ましい実施形態では、フルオロポリマー樹脂がブレンドする工程中に溶融することなく固体状態のままである。このような実施形態では、ブレンド工程が半結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度よりも高いがフルオロポリマー樹脂の溶融温度よりも低い温度で実施される。フルオロポリマー樹脂は、有利には1~50μm、より好ましくは2~15μmのDv50を有する粉末として使用することができる。これにより、ブレンド工程後に形成される化合物の粉砕性を向上させることができる。
【0105】
ブレンド工程は、フルオロポリマー樹脂及び半結晶性ポリエステル樹脂を他の成分ともブレンドすることを含むことができる。
【0106】
本発明は、また、上記の方法に従って製造された樹脂組成物又は粉末樹脂組成物に関する。
【0107】
別の態様では、本発明は、粉体コーティング組成物成分(すなわち、上記のような樹脂組成物、及び、例えば架橋剤、顔料、流動剤、脱気剤及び/又はワックス)を混合することを含む、上記の粉体コーティング組成物の製造方法に関する。
【0108】
混合工程は、成分を粉末形態で乾式ブレンドする工程であってもよい。
【0109】
あるいは、混合工程は、一部又は全部の成分を溶融混練する工程であってもよい。次に、本ブレンドを凝固後に粉砕して粉末にする。成分の一部のみを溶融ブレンドし粉砕して粉末にすると、得られた粒子は粉末形態の残りの成分と乾式ブレンドされる。
【0110】
混合工程は、1つまたは幾つかのステップで実行されてもよく、成分は任意の順序で混合されてもよい。
【0111】
本発明は、また、上記の方法に従って製造された粉体コーティング組成物に関する。
【0112】
用途
別の態様では、本発明は、粉末状の形態の上記樹脂組成物(すなわち、粉末樹脂組成物)の粉体コーティング組成物における使用に関する。前記粉体コーティング組成物は、架橋性粉体コーティング組成物であることが好ましい。
【0113】
好ましくは、樹脂組成物又は粉体コーティング組成物は建築用粉体コーティング又は自動車用塗料に使用される。
【0114】
有利には、前記建築用粉体コーティングは高い耐候性を有する。例えば、当該コーティングは、ASTM D-523-60Eに従って測定した場合、500時間後に80%以上の光沢保持率を示し得る。
【0115】
建築用粉体コーティングは、10年以上持続し得る。
【0116】
別の態様では、本発明は、
上記の樹脂組成物を粉末形態(すなわち、粉末樹脂組成物)で、又は、上記の粉体コーティング組成物で、基材上に塗布すること、
粉末樹脂組成物又は粉体コーティング組成物を溶融させること
を含む、基材をコーティングするための方法に関する。
【0117】
基材は、木材であってもよいしアルミニウムや鋼等級のような金属であってもよい。
【0118】
粉末樹脂組成物又は粉体コーティング組成物の溶融は、粉体で覆われた基材を、粉体の溶融温度よりも高い温度、例えば160℃~280℃、好ましくは180℃~250℃の温度で加熱することによって行うことができる。
【0119】
好ましくは、基材をコーティングする方法は、基材上に塗布された粉末樹脂組成物又は粉体コーティング組成物を硬化させる工程を含む。この工程は、粉末樹脂組成物又は粉体コーティング組成物を溶融させる工程と同時に行ってもよい。硬化は、粉末樹脂組成物又は粉体コーティング組成物を例えば160℃~280℃、好ましくは180℃~250℃の温度で加熱することによって誘導されてもよい。
【0120】
基材のコーティングは、静電スプレーによって行ってもよい。このような場合、基材をコーティングするための工程は、
粉体(粉末樹脂組成物または粉体コーティング組成物)を帯電させるステップと、
帯電した粉体を基材に吹き付けるステップと、
粉体が付着した基材を粉体の溶融温度以上の温度で加熱するステップと
を含んでいてもよい。
【0121】
別の態様では、本発明が上記のような少なくとも1つの樹脂組成物の使用から生じる粉体コーティングに関する。
【0122】
本発明は、また、上記のような少なくとも1つの粉体コーティング組成物を塗布し、任意に硬化させることによって得られる粉体コーティングに関する。
【0123】
本発明は、また、上記粉体コーティングを含む物体に関する。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0125】
実施例1
化合物A~Dを以下のように準備した。
化合物A:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
30~45mg KOH/gのOH官能性(又はヒドロキシル価)、110℃の融点、20.9J/gの融解熱及び1Pa.s未満の溶融粘度を有するOH官能性半結晶性ポリエステル(ポリブチレンサクシネート)、
架橋剤(Vestagon B-1530、Evonik)、及び
TiO2色素(CR95、Ishihara)
を52.5/19.6/2.9/25重量比でかつ140℃でブレンドした。
【0126】
化合物B:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
30~45mg KOH/gのOH官能性、110℃の融点、20.9J/gの融解熱及び1Pa.s未満の溶融粘度を有するOH官能性半結晶性ポリエステル(ポリブチレンサクシネート)、
架橋剤(Vestagon B-1530,Evonik)、
ベンゾイン、及び、
TiO2色素(CR95、Ishihara)
を53.2/19.7/3.1/1/23重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0127】
化合物C:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
17重量%のHFP、115℃の融点及び3kPoの粘度を有するPVDF-HFPコポリマー、
30~45mg KOH/gのOH官能性、110℃の融点、20.9J/gの融解熱及び1Pa.s未満のISO 3129によって測定した溶融粘度を有するOH官能性半結晶性ポリエステル(ポリブチレンサクシネート)、
架橋剤(Vestagon B-1530,Evonik)、
ベンゾイン、及び、
TiO2色素(R960、Dow)
を49.2/4/19.7/3.1/1/23重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0128】
化合物D:
30~36mg KOH/gの酸官能性(又は酸価)、61℃のガラス転移温度、ASTM D4287により165℃で測定された15Pa.sの溶融粘度を有する非晶質ポリエステル(Reafree 5700、アルケマ・コーティング・レジン)、
架橋剤(TGIC)、
ベンゾイン、及び、
TiO2色素(CR95、Ishihara)
を、70.7/5.3/1/23の重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0129】
化合物E:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
38~48mg KOH/gのOH官能価、60℃のガラス転移温度、DIN 53229によって測定した30Pa.sの溶融粘度を有するOH官能性非晶性ポリエステル(Reafree 17014、アルケマ・コーティング・レジン)、
架橋剤(Vestagon B1530、Evonik)
ベンゾイン、及び、
TiO2色素(R960、Dow)
を、51.8/18.4/3.8/1/23の重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0130】
化合物F:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
30~36mg KOH/gの酸官能性、61℃のガラス転移温度、ASTM D4287により165℃で測定された15Pa.sの溶融粘度を有する非晶質ポリエステル(Reafree 5700、アルケマ・コーティング・レジン)、
架橋剤(TGIC)、
ベンゾイン、及び、
TiO2色素(R960、Dow)
を、51.8/20.7/1.6/1/23の重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0131】
化合物G:
169℃の融点及び6kPoの溶融粘度を有するPVDFホモポリマー、
17重量%のHFP、115℃の融点及び3kPoの粘度を有するPVDF-HFPコポリマー、
30~45mg KOH/gのOH官能性、110℃の融点、20.9J/gの融解熱及び1Pa.s未満の溶融粘度を有するOH官能性半結晶性ポリエステル(ポリブチレンサクシネート)、
架橋剤(Vestagon B-1530,Evonik)、
脱気剤(BYK3955P、BYK)、及び、
TiO2色素(R960、Dow)
を46.3/5.8/20.3/2.9/2/22.8重量比でかつ110℃でブレンドした。
【0132】
全ての化合物をそれぞれ高速ブレンダーで粉砕し、125μmメッシュでふるい分けした。ふるい分けされた粉末をクロム化アルミニウムパネル上に静電噴霧し、220℃で15分間ベーキングした。
【0133】
化合物A~C及びGのコーティングは本発明によるものであり、化合物D~Fのコーティングは比較例である。
【0134】
次に、コーティングを以下の特性について評価した。
AAMA 2605-13 8.4.1.1によるクロスハッチ接着;
ASTM D3359-02による逆衝撃クロスハッチ接着;
AAMA 2605-13 A5.2.2によるダイレクトインパクト及びリバースインパクト;
ASTM D4752(200 double rub)によるMEK耐溶剤性;この試験は、溶剤及び洗浄薬品に対する耐性を評価することを可能にする;
粉砕能力:以下の方法に従った;20gの材料を、Ultra Centrifugal Mill ZM 200のような高速ブレンダー中でRetschにより15秒間粉砕する;125μm開口ふるいを通過した材料の重量を測定する;
ASTM D3451によるQUV試験500時間後の光沢保持率によって評価した耐候性;光沢保持率が80%以上である場合、コーティングは「合格」と記載され、光沢保持率が80%未満である場合、コーティングは「不合格」と記載される。
【0135】
【国際調査報告】