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特表2022-515130多様式の標識及びシグナル増幅を用いた分析物検出のための生体適合性樹状ポリマーを生成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】多様式の標識及びシグナル増幅を用いた分析物検出のための生体適合性樹状ポリマーを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220209BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220209BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220209BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220209BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535589
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 US2019067987
(87)【国際公開番号】W WO2020132527
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】62/783,048
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508230226
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フレイサー スコット イー.
(72)【発明者】
【氏名】レストレポ サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ダンハム ジョセフ ピー.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ61
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR35
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4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
本明細書では、重合トリガーを使用して、制御された様態で、相補的な樹状核酸モノマーの対から樹状生体適合性ポリマーを生成する方法が記載される。樹状モノマーは、自己組織化が可能な核酸及び有機ポリマーから構成される。急速冷却を必要としないプロセス、分岐点移動前にヘアピン安定性の一時的措置を与える「ゆらぎクランプ」設計、及び増幅システムの複数の組織体を含めた、様々な追加の改善が、本明細書に記載される。状況に応じて、本技術は、特定の核酸分子、小分子、タンパク質、及びペプチド等の多岐にわたる分析物の存在を明らかにするために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの分子であって、各分子が、
(a)核酸ヘアピン、
(b)核酸ステム、
(c)結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに
(d)有機ポリマー
を含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ前記少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列が、前記少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、前記少なくとも2つの分子と、
分析物結合剤に連結された少なくとも1つの核酸トリガーであって、核ステム及び結合樹状突起に相補的である、前記少なくとも1つの核酸トリガーと
を含む、組織体であって、
さらに、前記少なくとも2つの分子のうちの1つが、前記結合樹状突起において、前記伸長樹状突起に相補的である少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む、前記組織体。
【請求項2】
前記少なくとも2つの分子の各々が、前記結合樹状突起において、前記伸長樹状突起に相補的である少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項3】
少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む前記結合樹状突起が、前記伸長樹状突起に少なくとも40%相補的な最大5つまでのヌクレオチドを含む、請求項2に記載の組織体。
【請求項4】
前記最大5つまでのヌクレオチドが、前記核酸ステムの近位にある、請求項3に記載の組織体。
【請求項5】
前記伸長樹状突起に少なくとも40%相補的である最大5つまでのヌクレオチドが、前記有機ポリマーに隣接する、請求項4に記載の組織体。
【請求項6】
前記有機ポリマーが、3~18炭素長である、請求項5に記載の組織体。
【請求項7】
前記結合樹状突起が、前記伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドを含む、請求項2に記載の組織体。
【請求項8】
前記少なくとも3つのヌクレオチドが、前記核酸ステムの近位にある、請求項7に記載の組織体。
【請求項9】
前記伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドが、前記有機ポリマーの近位にある、請求項7に記載の組織体。
【請求項10】
前記有機ポリマーが、1~6炭素長である、請求項7に記載の組織体。
【請求項11】
キー配列をさらに含む、請求項7に記載の組織体。
【請求項12】
前記キー配列が、前記結合樹状突起の少なくとも3つのヌクレオチドに相補的であり、かつ前記伸長樹状突起の少なくとも3つのヌクレオチドに相補的である、請求項8に記載の組織体。
【請求項13】
前記ヘアピン配列及び前記結合樹状突起配列が、約6~10ヌクレオチドである、請求項1に記載の組織体。
【請求項14】
前記ヘアピン配列及び前記結合樹状突起配列が、約11~13ヌクレオチドである、請求項1に記載の組織体。
【請求項15】
前記伸長樹状突起が、約13~16ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項16】
前記伸長樹状突起が、約10~25ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項17】
前記核酸トリガーが、約12~48ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項18】
前記核酸トリガーが、約34~38ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項19】
前記核酸ステムが、約6~15ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項20】
前記核酸ステムが、約22~26ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項21】
前記有機ポリマーが、ポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項22】
ポリエチレングリコールが、約16~20炭素長を含む、請求項21に記載の組織体。
【請求項23】
前記分析物結合剤が、ポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項24】
前記分析物結合剤が、ペプチドまたはタンパク質を含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項25】
前記分析物結合剤が、抗体を含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項26】
伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項27】
前記標識ポリヌクレオチドが、フルオロフォア、発色団、色素原、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ナノ粒子、元素標識、金属キレートポリマー、バーコード、及び/または連続バーコードを含む、請求項26に記載の組織体。
【請求項28】
少なくとも2つの追加の分子であって、前記追加の分子の各々が、
(a)核酸ヘアピン、
(b)核酸ステム、
(c)結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに
(d)有機ポリマー
を含み、さらに、少なくとも1つの追加の第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の追加の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ前記少なくとも1つの追加の第2の分子の核酸ヘアピン配列が、前記少なくとも2つの追加の第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、前記少なくとも2つの追加の分子と、
前記少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な核酸アドレスならびに前記少なくとも2つの追加の分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的な第2のトリガーを含む、リンカーと
をさらに含む、請求項1に記載の組織体。
【請求項29】
前記少なくとも2つの追加の分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項28に記載の組織体。
【請求項30】
前記標識ポリヌクレオチドが、フルオロフォア、発色団、色素原、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ナノ粒子、元素標識、金属キレートポリマー、バーコード、及び/または連続バーコードを含む、請求項28に記載の組織体。
【請求項31】
各々が核酸及び有機ポリマーを含む少なくとも2つの分子を加える工程と、
核酸を含むトリガー分子をさらに加える工程と、
自己組織化重合を誘発する工程と
を含む、重合方法であって、
各分子が別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、前記方法。
【請求項32】
前記少なくとも2つの分子の各々が、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記核酸トリガーが、分析物結合剤を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成する工程であって、前記標識ポリヌクレオチドが標識剤を含む、工程
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも2つの分子の各々が、
(a)核酸ヘアピン、
(b)核酸ステム、
(c)結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに
(d)有機ポリマー
を含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ前記少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列が、前記少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、
少なくとも1つの核酸トリガーが、分析物結合剤に連結されており、前記核酸トリガーが、前記核ステム及び前記結合樹状突起に相補的である、
請求項31に記載の方法。
【請求項36】
標識ポリヌクレオチドを伸長樹状突起に結合させることによって検出可能なシグナルを生成する工程であって、前記標識ポリヌクレオチドが標識剤を含む、工程
を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも2つの追加の分子であって、前記追加の分子の各々が、
(a)核酸ヘアピン、
(b)核酸ステム、
(c)結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに
(d)有機ポリマー
を含み、さらに、少なくとも1つの追加の第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の追加の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ前記少なくとも1つの追加の第2の分子の核酸ヘアピン配列が、前記少なくとも2つの追加の第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、前記少なくとも2つの追加の分子と、
(e)前記少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な核酸アドレスならびに前記少なくとも2つの追加の分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的な第2のトリガーを含む、リンカーと
をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による支援を受けた研究または開発に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与されたHD075605に基づく政府の支援によりなされた。当該政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本明細書では、分析物の標識及び検出のための樹状モノマーに関連する方法及び組成物が記載される。
【背景技術】
【0003】
背景
複雑な混合物中で関連性のある分析物を検出するための革新的な解決策に対する必要性が存在する。ほとんどの分析物は、検出標識として使用されるべき固有のシグナルを有しない。故に、色素原またはフルオロフォア等の容易に検出可能なマーカーで分析物を標識するための新たな技術が決定的に必要とされている。さらに、シグナル増幅を可能にする技術は一般に、それらがシグナル対ノイズ比を増強し、それによって検出の簡便性及び精度を増大させるため、直接標識法よりも好ましい。さらに、採用するのに最も適した標識は、例えば、試料の性質、分析物、または分析の背景に依存し得る特定の状況に応じて、様々であり得る。よって、使用することができ、かつシグナルが増幅される標識の種類における柔軟性は、別の所望の特徴を構成する。理想的な分析物検出方法は、標識の柔軟性及びシグナル増幅能力を提供しつつ、分析物を検出する簡便な方式を組み合わせるであろう。よって、検出の感度、精度、及び信頼性に有益であるように高いシグナル対ノイズ比を生成するためのシグナル増幅を付与しつつ、異なる生物学的部分に結合することが可能な標識剤に対する大きな必要性が当該技術分野に存在する。
【0004】
本明細書では、これらの基準を満たす方法及び組成物が記載される。具体的に述べると、樹状生体適合性ポリマーが、重合トリガーの存在によって開始されるように、制御された様態で相補的な樹状核酸モノマーの対から生成される。樹状モノマーは、核酸及び有機ポリマーから構成される。各ポリマーは、標識を付着させ、かつ生物学的に適合性のシグナル増幅技術を構成するために使用され得る、およそ200個の樹状突起を含有する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、少なくとも2つの分子であって、各分子が、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、該少なくとも2つの分子と、分析物結合剤に連結された少なくとも1つの核酸トリガーであって、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である、該少なくとも1つの核酸トリガーとを含む、組織体が記載される。他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約10~24ヌクレオチドである。他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約6~10ヌクレオチドである。他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約11~13ヌクレオチドである。他の実施形態では、伸長樹状突起は、約10~20ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、伸長樹状突起は、約13~16ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、伸長樹状突起は、約10~25ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、約12~48ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、約34~38ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸ステムは、約12~30ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸ステムは、約6~15ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸ステムは、約22~26ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、有機ポリマーは、ポリエチレングリコールを含む。他の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約16~20炭素長を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ペプチドまたはタンパク質を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、抗体を含む。他の実施形態では、該方法は、伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態では、標識ポリヌクレオチドは、フルオロフォア、発色団、色素原、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ナノ粒子、元素標識、金属キレートポリマー、バーコード、及び/または連続バーコードを含む。
【0006】
他の実施形態では、少なくとも2つの分子のうちの1つは、結合樹状突起において、伸長樹状突起に相補的な少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む。他の実施形態では、少なくとも2つの分子の各々が、結合樹状突起において、伸長樹状突起に相補的である少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む。他の実施形態では、該少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む結合樹状突起は、伸長樹状突起に少なくとも40%相補的な最大5つまでのヌクレオチドを含む。他の実施形態では、該最大5つまでのヌクレオチドは、核酸ステムの近位にある。他の実施形態では、伸長樹状突起に少なくとも40%相補的である最大5つまでのヌクレオチドは、有機ポリマーに隣接する。他の実施形態では、有機ポリマーは、3~18炭素長である。他の実施形態では、結合樹状突起は、伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドを含む。他の実施形態では、該少なくとも3つのヌクレオチドは、核酸ステムの近位にある。他の実施形態では、伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドは、有機ポリマーの近位にある。他の実施形態では、有機ポリマーは、1~6炭素長である。他の実施形態では、組織体は、キー配列をさらに含む。他の実施形態では、キー配列は、結合樹状突起の該少なくとも3つのヌクレオチドに相補的であり、かつ伸長樹状突起の該少なくとも3つのヌクレオチドに相補的である。
【0007】
本明細書ではさらに、各々が核酸及び有機ポリマーを含む少なくとも2つの分子を加える工程と、核酸を含むトリガー分子をさらに加える工程と、自己組織化重合を誘発する工程とを含む、重合方法であって、各分子が別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、方法が記載される。他の実施形態では、少なくとも2つの分子の各々は、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、分析物結合剤を含む。他の実施形態では、該方法は、別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成する工程であって、該標識ポリヌクレオチドが標識剤を含む、工程を含む。他の実施形態では、少なくとも2つの分子の各々は、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、少なくとも1つの核酸トリガーは、分析物結合剤に連結されており、該核酸トリガーは、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である。他の実施形態では、該方法は、標識ポリヌクレオチドを伸長樹状突起に結合させることによって検出可能なシグナルを生成することを含み、該標識ポリヌクレオチドは標識剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】システム構成要素。2つの相補的な樹状モノマーが示され、各々が、有機ポリマースペーサーと共に、ヘアピンループ、ステム、ならびに核酸樹状突起、結合及び伸長樹状突起の三部分構造を含有する(図1A及びB)。核酸トリガーが示される(図1C)。核酸ドメイン結合樹状突起1-ヘアピンループ1’、ステム2-ステム2’、及び結合樹状突起3-ヘアピンループ3’は、相補的である(すなわち、1-1’、2-2’、及び3-3’は相補的であり、ハイブリダイズすることができる)。ドメイン5~6は、伸長樹状突起である。ドメイン4(赤)は、モノマー安定性を維持し、樹状突起の機能を促進するために必須である、有機ポリマーから構成されるスペーサー要素である。トリガー(図1C)は、領域1に結合して、図1Aにおける第1の分子のヘアピンループを分岐点移動によって開口させることができる(配列3’-2’の類似のヘアピンもまた、図1Bの第2の分子を開口させるために採用され得る)。ヘアピンAが開口すると、これは、配列1’-2’の露出を導くヘアピンBのためのトリガーとして作用し得る配列3’-2’を露出させる。このようにして、樹状ポリマーが、モノマー単位の誘発された自己組織化によって形成される。
図2】組織化したときの構成要素。トリガー(1)と相補的な樹状モノマー(2)との間の化学的相互作用によって作出された樹状ポリマー(4)。ポリマー(3)から伸長する伸長樹状突起に注目されたい。
図3】自己組織化機構。核酸トリガーは、直接使用され得るか(図3A)、または別の核酸オリゴヌクレオチドに付着させられ得る/それによって伸長され得るか(図3B)、またはビーズもしくはタンパク質/ペプチド等の固体基質に付着させられ得る(図3C)。トリガーは、分析物結合剤を含有し得、かかる結合剤は、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、抗体に特異的であり得、それによって、図1及び図2の増幅、重合プロセスが、分析物が分析物結合剤に結合させられる基礎的な「検出」技法とは分離した個別の構成ステップとなることを可能にする。
図4】多様式の樹状突起付着。伸長樹状突起(3)へのハイブリダイゼーションによる標識(5)の樹状ポリマー(4)への直接付着の例。各樹状突起が最終的に標識されるであろうが、ここでは明確化のために1つのみが示されることに留意されたい。標識は、フルオロフォア、量子ドット、色素原、オリゴヌクレオチド等を含み得る。この場合もまた、ここでの「標識」ステップは、図1及び図2の増幅、重合プロセスから分離されることが強調される。
図5】コストを削減するための一般的な標識戦略。標識アプローチの変形形態では、リンカーオリゴヌクレオチド(5)は、「アドレス」(分岐に対する相補的配列)及び標識結合配列(緑色)から構成される。この戦略は、複数のシステムに対して1種類の標識化オリゴ(6)のみを必要とするため、大幅なコスト節約をもたらす。
図6】二次増幅戦略の例。「アドレス」及び二次トリガー配列(5における青)を含有するリンカーオリゴ(5)は、第2の重合事象及びそれ故、追加ラウンドの増幅の種をまくために使用される。これは、二次増幅(すなわち、n個の分析物分子の2乗乗数)をもたらす。
図7】アガロースゲル電気泳動。左から:dnaラダー、モノマーのみ、モノマー対開始因子(すなわち、トリガー)の比1/10、モノマー対開始因子の比1/50、モノマー対開始因子の比1/100、dnaラダー。レーン4~5ではゲルの上部に豊富な高分子量の分子が存在し、下部にモノマーが存在しない(今や全てのモノマーがポリマーに組み込まれている)ことに留意されたい。対照的に、レーン2(モノマーのみ)では、バックグラウンドシグナルの増幅のみが生じ、ほとんどのモノマーはゲルの下部にある。
図8】インビボ標識。図8A.樹状ポリマー(二次標識としてalexa-488フルオロフォアを含有する)で標識されたDrosophila胚であり、分節遺伝子even-skippedの発現ドメインを明らかにしている。図8B.二次増幅によって生成された蛍光ビーコン(alexa-488フルオロフォアを含有する)で標識されたDrosophila胚であり、分節遺伝子even-skippedの発現ドメインを明らかにしている。
図9】インビボ標識。樹状ポリマー(ユーロピウム151を含有する二次標識を有する)で標識されたDrosophila胚であり、分節遺伝子even-skippedの発現ドメインを明らかにしている。
図10】抗体に基づく検出。別の実施形態では、ここで、重合トリガー/開始因子にコンジュゲートされた抗体に由来する樹状ポリマーを生成することができることが実証される。コンジュゲートされていない抗体のレーンでは重合(高分子量バンド)は見られないが、低分子量モノマーのみが見られるため、増幅は特異的である。
図11A】バーコード検出スキーム。標識-消去-標識アプローチは、MUSE樹状突起(3)に相補的であり、かつ余分な6~10ヌクレオチド長のオーバーハングを含有する標識オリゴヌクレオチド(6)を交替させることで機能する。標識オリゴヌクレオチド配列に完全に相補的な消去体オリゴヌクレオチド(6’)を使用して、分岐点移動によって標識オリゴヌクレオチドを除去することができる。これにより、異なるフルオロフォア(7)を有する新たな標識オリゴヌクレオチドの付加が可能になる。
図11B】バーコード検出スキーム。標識-消光-標識技法では、追加の15ヌクレオチドの「オーバーハング」配列を含有する、標識する樹状ポリマー上の樹状突起配列に相補的な第1のオリゴヌクレオチドが、第1のバーコード標識を構成する。「オーバーハング」は、第1の標識のオーバーハングに相補的な1つのオーバーハング及び次の標識を係留する役目を果たす第2のオーバーハングの2つのオーバーハングを含有する、dsDNA「消光体」標識を係留する役目を果たす。「消光体」標識オリゴヌクレオチドは、ダブシル等の短距離消光体及びフルオロフォアを含有する。前の標識のオーバーハングへの消光体標識のハイブリダイゼーションにより、消光体及び前のフルオロフォアが非常に近い距離に配置され、これにより最初のフルオロフォアの蛍光が消光され、「消光体」標識上に含まれるフルオロフォアのみがシグナルを放射し得る。このようにして、後続の「消光体」標識を互いにn回ハイブリダイズさせて、バーコードを生成することができる。
図12】標識-消光-標識の例。対照は、「消光体」標識が存在しない場合、ここで樹状ポリマーで標識された転写産物を検出するために3%のレーザー出力が必要とされることを示す。消光された結果は、消光されたシグナルを検出するためにレーザー出力が30%に増大される必要があったことを示す。Alexa 647の結果は、消光体に加えて、第2のフルオロフォアが構造体に加えられたことを確認するものである。
図13】イムノMUSE。図13A.MUSEトリガーにコンジュゲートされた抗GFP抗体で検出されたGFP融合タンパク質。図13B.樹状ポリマー(二次標識としてalexa-488フルオロフォアを含有する)で標識されたDrosophila胚であり、even-skippedエクソンを明らかにしている。
図14】量子ドット標識。樹状ポリマー(QDot655標識を含有する)で標識されたDrosophila胚であり、分節遺伝子even-skippedの発現ドメインを明らかにしている。
図15】イムノMUSE。図15A.GFP融合タンパク質(緑色で示される)を発現しているDrosophila胚。図15B.alexa-594フルオロフォア(赤色で示される)による、GFPに対する抗体及びMUSE増幅を採用した免疫蛍光アッセイ。ヘアピン安定性の立体障害。
図16】立体障害。MCPコンジュゲートヘアピン。(レーン1)は開始因子の不在下で増幅するが、一方で、コンジュゲートされていないヘアピンは安定したままである(レーン3)。これは、MCPがヘアピンの準安定性を強く乱すことを示している。さらに、開始因子の不在下(レーン1)または存在下(レーン2)にかかわらず、増幅は、コンジュゲートされていないヘアピン(レーン4)と比較して有効でない。
図17】非常に短いMUSEヘアピンの卓越した安定性の証拠。非常に短いMUSEヘアピン(ここでは6ヌクレオチドの足がかり、10ヌクレオチドのステム、16ヌクレオチドの樹状突起)は、保管条件ではそれらのヘアピン立体構造のままであり、これにより、急速冷却の不在下において、それらは開始因子の不在下では増幅しないが(レーン1)、開始因子の存在下では完全に増幅する(レーン2)。対照的に、HCRヘアピンは、実際には保管中にヘアピンではなく、これにより、それらは、実験が実施される直前にヘアピン立体構造となるように急速冷却されない場合、非特異的に(レーン3)及び不十分に(レーン4)増幅する。
図18】MUSEヘアピンの迅速な増幅。短いMUSEヘアピン((ここでは10ヌクレオチドの足がかり、15ヌクレオチドのステム、12ヌクレオチドの樹状突起)は、45分で完全に増幅するが(レーン2)、開始因子の不在下では増幅しない(レーン1)。
図19】MUSEヘアピンの非常に迅速な増幅。非常に短いMUSEヘアピン(ここでは6ヌクレオチドの足がかり、8ヌクレオチドのステム、10ヌクレオチドの樹状突起)は、4分で完全に増幅するが(レーン2)、開始因子の不在下では増幅しない(レーン1)。
図20】ロックされたゆらぎクランプ。a.足がかり、b.ステム、c.ループ、d.樹状突起、e.「キー」。この構造では、足がかり及び最初の6塩基は相補的であり、それによってヘアピンを完全に固定化する。樹状突起に対する相補的オリゴを使用して、分岐点移動によりヘアピンをロック解除することができる。ここでは、キーは樹状突起の完全長であるが、それは、例えばヘアピンを完全にはロック解除しないように、より短いことも可能である。
図21】最適化された増幅因子設計。ここでは、増幅因子システムを生成するために1つのみの配列a(及びその相補配列a)が使用される。
図22】従来の増幅因子設計。この増幅因子設計では、増幅因子システムを生成するために2つの配列a及びc(及びそれらの相補配列)が使用される。
図23】代替的な増幅因子設計。足がかり及びループが相補的であるこの設計はまた、図2に示される元のシステムと比較して、可能性のあるシステムの数を倍増させる。しかしながら、a及びaがステムを形成する、可能性のあるヘアピンを許容することによって、それは結果として生じる増幅因子を弱体化させ得る。
図24】ゆらぎクランプ設計。1.樹状の部分的にロックされたヘアピン:a)足がかり、b)ステム、c)ループ、d)樹状突起、)有機ポリマー。破線:相補的塩基。2.ロック位置にある、樹状の部分的にロックされたヘアピン。有機ポリマーは、足がかり樹状突起-ステム接合部での完全な塩基スタッキングを防止する。加えて、有機ポリマーにおいて機械的張力が蓄積する。3.同数の対合した塩基を有するが、有機ポリマーは有しない樹状ヘアピンとの比較。残りの対合していない塩基は、足がかり媒介性分岐点移動反応を誘発するには不十分である。
図25】1.足がかり媒介性反応における通常の樹状ヘアピン対部分的にロックされたヘアピンのシグナル対ノイズ比較。+は、誘発された反応を表す。-は、自発的反応を表す。2.上記の電気泳動の結果の定量。増幅効率を算出するために、各レーンにつき、上部バンドの強度を上部バンド及び下部バンドの両方の強度の和で除した。反応特異性は、シグナルレーンの増幅効率をノイズレーンの増幅効率で除することによって算出した。
図26】4°の保存液から直接使用したヘアピン。室温(21°)で1時間30分増幅。
図27】ベンチで一晩(17時間)維持し、直接使用したヘアピン。室温(21°)で1時間30分増幅。
図28】指数関数的決定論的MUSEシステムの図示。
図29】循環的MUSEシステムの図示。
図30】指数関数的決定論的MUSEシステムのプロセスの図示。
図31】循環的MUSEシステムのプロセスの図示。ステムと樹状突起との間のスペーサーが増幅に必要であることの実証。MUSEシステム:A、A’(スペーサーなし)。
図32】部分的にロックされたシステムの追加の試験。部分的にロックされたシステムは、増幅効率の軽微なコストと引き換えに、元のシステムよりも特異的である。
図33】部分的にロックされたシステムの追加の試験。部分的にロックされたシステムは、増幅効率の軽微なコストと引き換えに、元のシステムよりも特異的である。
図34】二次システムのためのトリガーを担持する一次システムからなる二次増幅因子システムの試験。ここで急速冷却は実施されなかった。
図35】二次MUSEシステムを用いた単一分子蛍光インサイチュハイブリダイゼーションの検証。高含量及び低含量の標的の検出、ならびに検出及び増幅における高特異性の実証。ここで急速冷却は実施されなかった。システム:MUSE B。
図36】単一分子蛍光インサイチュハイブリダイゼーションのための一組の直交性の二次MUSE増幅因子の検証。高含量及び低含量の標的の検出ならびに高い増幅特異性の実証。ここで急速冷却は実施されなかった。
図37】非変性トリガーコンジュゲーションアプローチによる免疫蛍光法のための一組の直交性の二次MUSE増幅因子の検証。4種のウサギモノクローナルの同時使用及びPD-L1としての低含量の標的の検出に注目されたい。20μm。
図38】イメージング質量分析法によるインサイチュハイブリダイゼーションのための一組の直交性の二次MUSE増幅因子の検証。
図39】イメージング質量分析法による、余分なシグナル増幅を用いたタンパク質の検出のための一組の直交性の二次MUSE増幅因子の検証。
図40】直接的二次システムにおける2つの対とは対照的にMUSE増幅因子の1つの対のみを用いた間接的循環的増幅スキームの検証。このアプローチは、二次を超える増幅を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
記載したように、MUSE(多様式普遍的シグナル増強(Multimodal Universal Signal Enhancement))は、目的とする分析物の検出後にシグナル増幅を可能にするナノテクノロジーである。当該技術分野における他の検出及び標識技法と比較して、MUSEは高度に汎用的である。第1に、MUSEは、様々な分析物を検出することができ、検出スキームにほぼ完全に非依存性である。検出は、当該分析物に対して慣例的に(例えば、DNA及びRNA分析物の場合はインサイチュハイブリダイゼーション、タンパク質及びペプチドの場合は免疫組織化学法)実施される。第2に、MUSEは、フルオロフォア、量子ドット、及び元素標識のような異なる標識と広く適合性である。これらの2つの特徴は、複数の好まれる標識を介してシグナルが出力される、事実上全ての種類の生物学的高分子の検出を可能にする。MUSEは、検出、増幅、及び標識という3つの構成ステップによってこの汎用性を達成する。伝統的な分析物検出スキームは、これらの構成ステップの不都合な重複を伴う。例えば、RNAのインサイチュハイブリダイゼーションは、しばしば線形様式で、標識出力に直接関連する検出を伴う。PCRは、検出のためのハイブリダイゼーション間の重複を伴い、繰り返されるハイブリダイゼーションは増幅を与え、繰り返されるハイブリダイゼーションステップを介した増幅は、出力シグナルに直接関係する。対照的に、MUSEは、自己組織化核酸ポリマーの特性を利用することによって、検出、増幅、及び標識の構成ステップを分離する。増幅は、モノマーが自己組織化して樹状ポリマーとなる設計された能力によって達成される。結果として、出力シグナルの生成及び伝播は、伝統的な分析物検出スキームによっては達成不可能な様態で増幅から分離される。
【0010】
樹状ポリマーに依存する記載の組成物及び方法を使用して、特定の核酸分子、小分子、タンパク質、及びペプチドを含む多岐にわたる分析物の存在を明らかにし、それによって異なる生物学的部分を検出する際の柔軟性を提供することができる。本組成物及び方法は、i)図1に示されるような、有機ポリマー「スペーサー」をさらに含む、核酸ヘアピンループ、ステム、及び核酸樹状突起からなる三部分分子、ii)一本鎖核酸オリゴヌクレオチドを含む重合トリガー、iii)分析物検出に使用される親和性リガンド(すなわち、分析物結合剤)、を含み、その組成は、核酸オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド等の間で様々であり得る。
【0011】
この三部分モノマーは、モノマー機能を保存しながら標識柔軟性を可能にするこの技術の重要な革新である。モノマーからの核酸ポリマーの生成は、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)を介して以前に達成されている。しかしながら、分岐モノマーが、二次増幅(すなわち、n個の分析物分子の2乗乗数)を達成する手段として構想されたものの、既存のモノマー検出システムは、核酸のみから構成されていた。核酸ヘアピンは、足がかり-分岐相互作用に基づいて潜在的に不安定化または拘束される。この理由で、HCRアプローチは、足がかり-分岐相互作用を制限する基礎的な核酸化学によって厳格に制限される。
【0012】
本発明者らの知る限りでは、核酸分岐ヘアピンを用いた二次増幅の成功は達成されていない。加えて、二次標識付着のために両方の樹状ポリマーを利用する既存の形式はなく、よって、多様式検出を容易に可能にすることはできない。記載の組成物及び方法の開発において、本発明者らはまた、核酸主鎖の剛性が二次標識ハイブリダイゼーションの効率を低下させることを発見しており、核酸分岐ポリマーの別の制限を強調している。
【0013】
分岐核酸ポリマーの制限を補正するために、重要な革新は、核酸ヘアピンのステムと核酸樹状突起との間の有機ポリマー「スペーサー」の開発であった。スペーサーは、足がかりと樹状突起との間の相互作用を最小化し、ヘアピンの安定性を最適化し、ハイブリダイゼーション中の立体障害を最小化し、モノマーの化学的特性を変化させ、(例えば、光開裂性(photoclivable)または親水性スペーサーを選定することによって)さらに官能化され得る。さらに、スペーサーは、より大きな柔軟性及び運動の自由度を樹状突起に提供することによって樹状突起から樹状ポリマーのステムを隔離し、よって、立体障害及びポリマーステムと標識との間の他の潜在的な相互作用を制限する。MUSEの設計上の利点は、HCRと比較したときにはるかに優れたアプローチを提供する。
【0014】
変動する試薬純度の堅固な許容
例えば、HCRのような分岐核酸戦略は、典型的には、切断されたモノマーが反応を終結させ得ることから、DNAオリゴがほぼ100%純粋であることを必要とする。1/10のモノマーが切断される場合、これは、平均して10単位後にポリマー成長の中断につながるであろう。非常に精緻な変性PAGE電気泳動のみが100%近い純度のレベルを可能にする。しかしながら、電気泳動精製は、どの分子がモノマーオリゴに付着させられ得るかである。ある特定のalexaフルオロフォア付着化学物質(アミノ、チオール)は、変性PAGE中に使用される試薬(尿素、過硫酸アンモニウム)によって強く影響を受け、これにより、100%純粋なオリゴ及び100%コンジュゲートされた(標識された)オリゴの両方を有することは不可能となる。これは、既存の分岐核酸技術の不利点であり、オリゴへの標識の付着が増幅ステップから分離されない場合の直接的な結果である。
【0015】
MUSEは、増幅及び標識を分離することによって解決策を提供する。樹状モノマーは、変性PAGEによって容易に精製され得る。本発明者らが標識として使用するオリゴは、HPLCを介して約80%の純度でオーダーすることができる。ほとんどの場合、切断された標識は、完全長の標識によって打ち負かされ、それによって試薬についての変動する純度の堅固な許容を可能にする。加えて、MUSE標識化オリゴは、既に最小の長さであるため、切断されたものは全くハイブリダイズしない可能性が高く、それによって分岐反応の時期尚早な終結を防止する。よって、切断された標識オリゴは、切断されたモノマーほど劇的にはシグナル増幅に影響を及ぼさない。
【0016】
標識コストの削減
MUSEの別の利点は、それが標識のコストからモノマーのコストを分離することである。HCRのような伝統的な分岐核酸技術は、長くて高価なモノマーを含む。PAGE精製の必要性は、収率にさらに影響を及ぼす。このアプローチの重大な欠点は、必要とされる付着化学反応修飾及び標識分子の遂行が、それでもなお、その後に必要とされる厳しい精製ステップに起因して失われることである。モノマー及び標識合成の分離はまた、より高い収率に寄与し、これもまた総コストを削減する。
【0017】
伝統的な分岐DNA技法の不利点は、標識の組または多重化標識が研究のために必要とされる場合に程度を増す。HCR等の伝統的な分岐DNA技法は、採用したい任意のalexa-fluorに対して完全な検出-増幅-標識システムを必要とする。対照的に、MUSEは、付着化学反応修飾及び標識のコストをヘアピンのコストから分離することによってコストを制御する。増幅システムを一定に保つことによって、標識の組または多重化標識が、標識交換によって達成され得る。これは、開始因子提示分子に関連する余分なコストを考慮すると、とりわけ有利である。MUSEの場合、開始因子提示分子は、1つの増幅システムに関連付けられる。HCR等の伝統的な分岐DNA技法では、alexa-fluorの色(または最終的には、使用される標識の化学的性質)の変更は、新たな全検出-増幅-標識システムを必要とする。
【0018】
PEGスペーサーの利点
ポリマーPEGスペーサーはさらに、DNAリン酸骨格の連続性を断つことによって増幅及び標識を分離する役割を果たす。これは、樹状突起-ヘアピン屈曲点での柔軟性を増大させ、足がかりと樹状突起との間の潜在的な塩基対形成相互作用を最小化する。利用可能な核酸設計空間によって制約されるであろう、DNAのみからなる樹状ヘアピンの工作を試みる代わりに、ヘアピン配列を修飾することなくMUSE樹状突起を変化させることができ、またはその逆も可能である。これは、MUSEシステムの設計を大幅に簡略化し、これにより並行して作動する数百のシステムを開発できるようになる。さらに、それは、互いに独立してヘアピン及び樹状突起の配列の最適化を可能にし、これにより最適なヘアピン及び最適な樹状突起を設計することができるようになる。スペーサーの不在下では、これは常に可能とは限らない。
【0019】
標識交換
増幅後の標識交換の可能性は、伝統的な分岐DNA技法と比較して、MUSEの重要な利点である。seqFISHまたはMERFISH等の連続バーコード化スキームは、数千の標的の同時分析を可能にすることから、次第に普及してきている。seqFISHでは、シグナル増幅を提供するためにHCRが採用される。各HCRポリマーは、各バーコード化ラウンド間にDNAseで消化される必要がある。故に、各ラウンドはおよそ24時間かかる。
【0020】
対照的に、MUSE標識は、例えば、本発明者らの標識-消去-標識アプローチを用いて、また、緩衝液中の塩濃度を低下させるか、または温度を上昇させるか、またはホルムアミド等のハイブリダイゼーションエネルギーを低下させる試薬の使用によって、樹状突起から除去され得る。MUSE標識は、1サイクル当たりおよそ2時間で除去され、交換され得る。バーコード化スキームは多くのラウンド(最大30まで)を必要とするので、これは顕著により短い手順をもたらす。標識交換の別の事例は、多様式の標識交換の事例を伴うであろう。ここで、使用者は、蛍光標識を用いて実験を開始して試料の高解像度画像を得、次いで、それらをMCPと迅速に交換して同じ試料に対する高度に多重化されたデータを得ることが可能である。
【0021】
準安定性
MUSEヘアピンは、HCRを含む他の分岐DNA技法に勝る顕著な熱安定性の利点を有する。HCRモノマーは、「準安定」(すなわち、それらが使用される濃度の溶液中で、比較的長い時間、それらのヘアピン構造を維持することができる)として説明される。しかしながら、一定時間後、とりわけ保管及び輸送中に、それらはヘアピン二次構造から外れ、一層より安定で熱力学的に有利なホモダイマー構造をとる。
【0022】
本発明者らは、非常に短いMUSEヘアピン(6~10ヌクレオチドの足がかり、15ヌクレオチド未満のステム)を含めた短いMUSEヘアピンが、異なりかつ優れた化学的性質を提示することを発見した。これらのMUSEヘアピンは、それらがとる唯一の立体構造がヘアピン構造であるため、準安定を上回る。HCR等の一部の分岐DNA技法は、形成を確実にするために、実験前にヘアピンが急速冷却されることを必要とする。これは、ホモダイマーを95°で2~5分間変性させ、次いで30分間室温に冷却することによって達成される。最新のMUSEヘアピンは、保管から直接用いることができる。次に記載される増幅速度の向上と組み合わせると、この変化は、HCR反応から18時間超の時間を節約する。これもまた、MUSEが1営業日で用いられ得る技法となることから、使用者にとって重要である。
【0023】
増幅速度
HCRポリマーは、それらの最終的なサイズに達するまでにおよそ12時間を要する。現行のMUSEシステムは1時間~15分を要する。
【0024】
本明細書では、各々が核酸及び有機ポリマーを含む少なくとも2つの分子と、核酸を含むトリガー分子と、を含み、該少なくとも2つの分子及びトリガー分子が、自己組織化重合のために構成されており、さらに、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、組織体が記載される。他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、分析物結合剤を含む。
【0025】
本明細書ではさらに、少なくとも2つの分子であって、各分子が、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、該少なくとも2つの分子と、分析物結合剤に連結された少なくとも1つの核酸トリガーであって、該核酸トリガーが、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である、該少なくとも1つの核酸トリガーと、を含む、組織体が記載される。
【0026】
他の実施形態では、少なくとも2つの分子のうちの1つは、結合樹状突起において、伸長樹状突起に相補的な少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む。他の実施形態では、少なくとも2つの分子の各々が、結合樹状突起において、伸長樹状突起に相補的である少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む。他の実施形態では、該少なくとも2つの連続したヌクレオチドを含む結合樹状突起は、伸長樹状突起に少なくとも40%相補的な最大5つまでのヌクレオチドを含む。他の実施形態では、該最大5つまでのヌクレオチドは、核酸ステムの近位にある。他の実施形態では、伸長樹状突起に少なくとも40%相補的である最大5つまでのヌクレオチドは、有機ポリマーに隣接する。種々の実施形態では、少なくとも40%は、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、またはそれよりも多くを含む。他の実施形態では、有機ポリマーは、3~18炭素長である。種々の実施形態では、有機ポリマーは、6~19炭素長である。他の実施形態では、結合樹状突起は、伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、少なくとも60%は、60~70%、70~80%、80~90%、またはそれよりも多くを含む。他の実施形態では、該少なくとも3つのヌクレオチドは、核酸ステムの近位にある。他の実施形態では、伸長樹状突起に少なくとも60%相補的な少なくとも3つのヌクレオチドは、有機ポリマーの近位にある。他の実施形態では、有機ポリマーは、1~6炭素長である。他の実施形態では、組織体は、キー配列をさらに含む。他の実施形態では、キー配列は、結合樹状突起の該少なくとも3つのヌクレオチドに相補的であり、かつ伸長樹状突起の該少なくとも3つのヌクレオチドに相補的である。
【0027】
他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約6~10ヌクレオチドである。他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約10~24ヌクレオチドである。例えば、ヘアピン配列及び結合樹状突起は、6、7、8、9、または10ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、ヘアピン配列及び結合樹状突起配列は、約11~13ヌクレオチドである。他の実施形態では、伸長樹状突起は、10~25(16~25を含む)ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、伸長樹状突起は、約10~20ヌクレオチドを含む。例えば、伸長樹状突起は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、伸長樹状突起は、約13~16ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、約12~48ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、約34~38ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、ステムは、約6~15ヌクレオチドである。他の実施形態では、核酸ステムは、約12~30ヌクレオチドを含む。例えば、核酸ステムは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、核酸ステムは、約24ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、有機ポリマーは、ポリエチレングリコールを含む。自己組織化重合のために構成された上記の配列の組織体の例としては、少なくとも2つの分子であって、各々が、6ヌクレオチドの結合樹状突起及びヘアピン配列、10ヌクレオチドの核酸ステム、ならびに16ヌクレオチドの伸長樹状突起を含み、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、該少なくとも2つの分子が挙げられる。自己組織化重合のために構成された上記の配列の組織体の別の例としては、少なくとも2つの分子であって、各々が、8ヌクレオチドの結合樹状突起及びヘアピン配列、10ヌクレオチドの核酸ステム、ならびに18ヌクレオチドの伸長樹状突起を含み、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、該少なくとも2つの分子が挙げられる。自己組織化重合のために構成された上記の配列の組織体のさらなる例としては、少なくとも2つの分子であって、各々が、10ヌクレオチドの結合樹状突起及びヘアピン配列、15ヌクレオチドの核酸ステム、ならびに25ヌクレオチドの伸長樹状突起を含み、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、該少なくとも2つの分子が挙げられる。
【0028】
他の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約16~20炭素長を含む。他の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約2nmの長さを含む。他の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約3~8塩基対の長さを含む。他の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約4塩基対の長さを含む。種々の実施形態では、ポリマーは、核酸ステムを樹状突起につなげる。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、約6~10ヌクレオチドのヘアピン配列、約6~15ヌクレオチドの核酸ステム、約6~10ヌクレオチドの結合樹状突起、約10~25(16~25を含む)ヌクレオチドの伸長樹状突起、及び約16~20炭素長のポリマーを含む、モノマーである。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、約11~13ヌクレオチドのヘアピン配列、約22~26ヌクレオチドの核酸ステム、約11~13ヌクレオチドの結合樹状突起、約13~16ヌクレオチドの伸長樹状突起、及び約16~20炭素長のポリマーを含む、モノマーである。他の実施形態では、目的とする分析物は、核酸を含む。他の実施形態では、目的とする分析物は、低分子を含む。他の実施形態では、目的とする分析物は、ポリマーを含む。他の実施形態では、目的とする分析物は、ペプチドまたはタンパク質を含む。
【0029】
他の実施形態では、分析物結合剤は、ポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ペプチドまたはタンパク質を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、抗体を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ペプチドまたはタンパク質を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ペプチド核酸を含む。他の実施形態では、分析物結合剤は、ロックト核酸を含む。
【0030】
他の実施形態では、組織体は、伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、標識ポリヌクレオチドは、フルオロフォア、発色団、色素原、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ナノ粒子、元素標識、金属キレートポリマー、バーコード、及び/または連続バーコード(当業者に既知の複数の他の標識剤を含む)を含む。
【0031】
種々の実施形態では、フルオロフォアは、フルオレセイン、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight fluors、ATTO色素、またはそれらの任意の類似体もしくは誘導体を含む。一部の実施形態では、本発明の標識には、フルオレセイン及びフルオレセインの化学的誘導体;エオシン;カルボキシフルオレセイン;フルオレセインイソチオシアネート(FITC);フルオレセインアミダイト(FAM);エリスロシン;ローズベンガル;細菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から分泌されるフルオレセイン;メチレンブルー;レーザー色素;ローダミン色素(例えば、ローダミン、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123、オーラミンO、スルホローダミン101、スルホローダミンB、及びテキサスレッド)が含まれるが、これらに限定されない。種々の実施形態では、本発明の標識には、Alexa-350、Alexa-405、Alexa-430、Alexa-488、Alexa-500、Alexa-514、Alexa-532、Alexa-546、Alexa-555、Alexa-568、Alexa-594、Alexa-610、Alexa-633、Alexa-647、Alexa-660、Alexa-680、Alexa-700、またはAlexa-750を含む蛍光色素のAlexa Fluorファミリーが含まれる。
【0032】
種々の実施形態では、量子ドットは、半導体ナノ結晶を含む。種々の実施形態では、半導体は、周期表のII~VI、III~V、及びIV族の元素から構築される。種々の実施形態では、量子ドットは、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlAs、AlSb、PbS、PbSe、Ge、及びSi、ならびにそれらの3元及び4元混合物を含む。種々の実施形態では、量子ドットは、より大きなバンドギャップを有する半導体のオーバーコート層を含む。種々の実施形態では、半導体ナノ結晶は、それらの均一なナノメートルサイズを特徴とする。「ナノメートル」サイズとは、約150オングストローム(Å)未満、好ましくは12~150Åの範囲内を意味する
【0033】
種々の実施形態では、組織体は、追加の少なくとも2つの分子と、最初の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的な核酸配列アドレス及び追加の少なくとも2つの分子のための二次トリガーを含むリンカー分子と、をさらに含み、該追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子は、自己組織化重合のために構成されている。種々の実施形態では、最初の少なくとも2つの分子及びトリガーは、第1の自己組織化重合であり、追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子は、第2の自己組織化重合である。種々の実施形態では、第1及び第2の自己組織化重合は、二次増幅である。他の実施形態では、組織体は、追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。
【0034】
本明細書ではさらに、少なくとも2つの分子であって、各分子が、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列が、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的である、該少なくとも2つの分子と、分析物結合剤に連結された少なくとも1つの核酸トリガーであって、該核酸トリガーが、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である、該少なくとも1つの核酸トリガーと、を含む、組織体のキット、ならびにキットの使用説明書が記載される。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子、及びトリガーは、自己組織化重合のために構成されている。種々の実施形態では、組織体は、25~50単位の第1、第2の分子及び核酸トリガーサブ組織体、約50~100単位の第1、第2の分子及び核酸トリガーサブ組織体、約100~150単位の第1、第2の分子及び核酸トリガーサブ組織体、約150~200単位の第1、第2の分子及び核酸トリガーサブ組織体、または200単位以上の第1、第2の分子及び核酸トリガーサブ組織体を含むポリマーを生成することが可能である。
【0035】
種々の実施形態では、キットは、追加の少なくとも2つの分子と、最初の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的な核酸配列アドレス及び追加の少なくとも2つの分子のための二次トリガーを含むリンカー分子と、の導入をさらに含み、該追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子は、自己組織化重合のために構成されている。種々の実施形態では、組織体は、25~50単位の追加の第1、第2の分子及びリンカーサブ組織体、約50~100単位の追加の第1、第2の分子及びリンカーサブ組織体、約100~150単位の追加の第1、第2の分子及びリンカーサブ組織体、約150~200単位の追加の第1、第2の分子及びリンカーサブ組織体、または200単位以上の追加の第1、第2の分子及びリンカーサブ組織体を含むポリマーを生成することが可能である。
【0036】
他の実施形態では、キットは、最初の少なくとも2つの分子、及び/または追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、キットは、2つ以上の標識ポリヌクレオチドを含み、これらの各々が、最初の少なくとも2つの分子及び/または追加の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的である。
【0037】
種々の実施形態では、上記の組織体のうちの2つ以上が組織化される。種々の実施形態では、一次システムの樹状突起は、二次システムを誘発することができ、その逆も可能である。種々の実施形態では、上記の組織体のうちの2つ以上は、分岐点移動及び増幅が可能である。種々の実施形態では、使用される最後のシステムの樹状突起に相補的な標識化オリゴが、例えば、フルオロフォアをハイブリダイズするために採用され得る。
【0038】
追加の実施形態では、上記の組織体のうちの2つ以上が組織化される。種々の実施形態では、上記の組織体のうちの2つ以上は、分岐点移動が可能であるが、増幅は可能でない。種々の実施形態では、各対におけるヘアピンの足がかりとループとの間に完全な相補性は存在しない。例えば、一次システムにおいて、ヘアピンAのループ(3’)は、ヘアピンBの足がかり(3)に相補的であるが、その逆は成り立たない(Xは、1に相補的でない)。種々の実施形態では、一次システムの樹状突起は、二次システムを誘発することができ、その逆も可能である。種々の実施形態では、それでも組織体のうちの2つ以上は、対を形成し得る。
【0039】
本明細書では、各々が核酸及び有機ポリマーを含む少なくとも2つの分子を加えることと、核酸を含むトリガー分子をさらに加えることと、自己組織化重合を誘発することと、を含み、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、重合方法が記載される。他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む。他の実施形態では、核酸トリガーは、分析物結合剤を含む。他の実施形態では、別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成することであって、該標識ポリヌクレオチドが標識剤を含む、該生成すること。他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む、核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、少なくとも1つの核酸トリガーは、分析物結合剤に連結されており、該核酸トリガーは、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である。他の実施形態では、検出可能なシグナルを生成することは、標識ポリヌクレオチドを伸長樹状突起に結合させることを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。他の実施形態では、標識剤は、フルオロフォア、発色団、色素原、量子ドット、蛍光ミクロスフェア、ナノ粒子、元素標識、金属キレートポリマー、バーコード、及び/または連続バーコード(当業者に既知の複数の他の標識剤を含む)を含む。種々の実施形態では、ポリマーは、核酸ステムを樹状突起につなげる。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、約6~10ヌクレオチドのヘアピン配列、約6~15ヌクレオチドの核酸ステム、約6~10ヌクレオチドの結合樹状突起、約10~25(16~25を含む)ヌクレオチドの伸長樹状突起、及び約16~20炭素長のポリマーを含む、モノマーである。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、約11~13ヌクレオチドのヘアピン配列、約12~30ヌクレオチドの核酸ステム、約11~13ヌクレオチドの結合樹状突起、約13~16ヌクレオチドの伸長樹状突起、及び約16~20炭素長のポリマーを含む、モノマーである。他の実施形態では、核酸トリガーは、約12~48ヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、ポリマーは、核酸ステムを樹状突起につなげる。種々の実施形態では、少なくとも2つの分子は、核酸トリガーに対して、約1:25、1:50、1:100、1:200、及びそれらの間の全ての範囲の比で加えられる。
【0040】
例えば、図1に図示されるように、図1Aにおける第1の分子の結合デンドリマー1は、図1Bにおける第2の分子のヘアピン1’に相補的である。これら第1及び第2の分子は各々、相補的核酸配列2-2’を含むステムを含有する。図1Aにおける第1の分子のヘアピン配列3は、図1Bにおける第2の分子の結合樹状突起3’に相補的である。図1Aにおける第1の分子は、伸長樹状突起5を含み、図1Bにおける第2の分子は、別の伸長樹状突起6を含む。それぞれ、図1A及び図1Bの第1及び分子の両方が、有機ポリマーを含み得るスペーサードメイン4を含む。第3の分子である、図1Cの核酸トリガーは、図1Aの第1の分子の結合樹状突起1に結合して、第1の分子を開口させることができる(配列3’-2’の類似のヘアピンもまた採用され得る)。図1Aの第1の分子の開口は、配列ヘアピン3’及びステム2’を露出させ、これが、図1Bの第2の分子のヘアピン3及びステム2’のためのトリガーとして作動する。第2の分子のヘアピン1’及びステム2’の露出は、最初の核酸トリガーと同様に作動し、再び別の第1の分子を開口させて、別の第2の分子の開口を導く。このようにして、樹状ポリマーが、誘発された自己組織化によって形成される。組織化した第1及び第2の分子ならびにトリガーの、結果として生じるポリマーが図2に示される。伸長樹状突起5及び/または6は各々、または両方とも、分析物、標識、または追加のポリマーに直接結合し得る。
【0041】
種々の実施形態では、該方法は、追加の少なくとも2つの分子と、最初の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的な核酸配列アドレス及び追加の少なくとも2つの分子のための二次トリガーを含むリンカー分子と、の導入をさらに含み、該追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子は、自己組織化重合のために構成されている。種々の実施形態では、最初の少なくとも2つの分子及びトリガーは、第1の自己組織化重合であり、追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子の導入は、第2の自己組織化重合である。種々の実施形態では、第1及び第2の自己組織化重合は、二次増幅である。他の実施形態では、組織体は、追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。例えば、追加のポリマーの種をまくための伸長樹状突起5及び/または6の使用は、図6に図示されるように、二次増幅を支持する。
【0042】
種々の実施形態では、自己組織化重合は、少なくとも2つの分子、及びトリガー分子の、1分間~60分間、1時間~12時間、12~24時間、24時間以上のインキュベーションを含む。種々の実施形態では、これは、1、2、3、4、5、5~10、10~30、30~60、1~2時間、または2時間以上にわたるインキュベーションを含む。種々の実施形態では、インキュベーションは、2~24時間にわたる。さらなるリンカー分子が、1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的なアドレス及びさらに加えられる少なくとも2つの分子のためのトリガーを含む、種々の実施形態では、リンカー分子、及びさらに加えられる少なくとも2つの分子のための二次インキュベーションは、1分間~60分間、1時間~12時間、12~24時間、24時間以上にわたる。種々の実施形態では、これは、1、2、3、4、5、5~10、10~30、30~60、1~2時間、または2時間以上にわたるインキュベーションを含む。種々の実施形態では、インキュベーションは、2~24時間にわたる。
【0043】
本明細書では、各々が核酸及び有機ポリマーを含む少なくとも2つの分子を、核酸を含む少なくとも1つのトリガー分子を含む材料に加えることと、自己組織化重合を誘発することと、を含み、各分子が、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む、重合方法が記載される。他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む。他の実施形態では、少なくとも1つの核酸トリガー分子は、分析物結合剤を含む。他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起及び伸長樹状突起を含む核酸樹状突起、ならびに有機ポリマーを含み、さらに、少なくとも1つの第1の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第2の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、かつ少なくとも1つの第2の分子の核酸ヘアピン配列は、少なくとも1つの第1の分子の核酸結合樹状突起配列に相補的であり、少なくとも1つの核酸トリガーは、分析物結合剤に連結されており、該核酸トリガーは、少なくとも第1の1つの分子の核ステム及び結合樹状突起に相補的である。
【0044】
種々の実施形態では、材料は、固体または液体基質等の基質を含む。種々の実施形態では、固体基質は、ガラス、組織培養表面、または当業者に既知の任意の類似の基質を含む。種々の実施形態では、少なくとも1つのトリガー分子は、固体表面に付着させられ、例えば、表面上に堆積させた複数の1つまたは複数のトリガー分子(例えば、アレイ)である。種々の実施形態では、少なくとも1つのトリガー分子は、液体基質内に分散させられる。
【0045】
種々の実施形態では、材料は、目的とする分析物を含む。種々の実施形態では、材料は、ホールマウント、組織スライス、1つまたは複数の組織及び細胞等を含めた、生物学的検体である。種々の実施形態では、目的とする分析物は、トリガー分子の分析物結合剤に結合させられる。種々の実施形態では、生物学的検体は、固体基質の表面上に堆積させられる。種々の実施形態では、生物学的検体は、液体基質内に分散させられる。
【0046】
他の実施形態では、該方法は、別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成することを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。他の実施形態では、検出可能なシグナルを生成することは、標識ポリヌクレオチドを伸長樹状突起に結合させることを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。他の実施形態では、該方法は、最初の少なくとも2つの分子、及び/または追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、該方法は、2つ以上の標識ポリヌクレオチドを含み、これらの各々が、最初の少なくとも2つの分子及び/または追加の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的である。
【0047】
種々の実施形態では、該方法は、溶液中の核酸配列の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、固相(ISH)中の核酸配列の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、溶液中の低分子の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、固相中の低分子の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、溶液中のペプチド及びタンパク質の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、固相中のペプチド及びタンパク質の検出及び/またはシグナル増幅、または両方と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、ELISA及び免疫蛍光法等の、一次抗体からのシグナル増幅と組み合わせて使用される。種々の実施形態では、該方法は、ELISA及び免疫蛍光法等の、二次抗体からのシグナル増幅と組み合わせて使用される。
【0048】
本明細書ではまた、目的とする分析物を含有する試料を用意することを含む方法も記載される。種々の実施形態では、該方法は、少なくとも2つの分子を加えることと(各分子は、核酸及び有機ポリマーを含む)、核酸を含むトリガー分子をさらに加えることと、重合を誘発することと、を含み、各分子は、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む。他の実施形態では、該方法は、トリガーに結合させた試料と、少なくとも2つの分子を加えることと(各分子は、核酸及び有機ポリマーを含む)、核酸を含むトリガー分子をさらに加えることと、重合を誘発することと、を含み、各分子は、別の分子に対する1つまたは複数の相補的配列を含む。
【0049】
他の実施形態では、少なくとも2つの分子は各々、核酸ヘアピン、核酸ステム、結合樹状突起、伸長樹状突起を含む。種々の実施形態では、ポリマーは、核酸ステムを樹状突起につなげる。他の実施形態では、核酸トリガーは、分析物結合剤を含む。他の実施形態では、該方法は、別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成することを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。
【0050】
種々の実施形態では、該方法は、追加の少なくとも2つの分子と、最初の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的な核酸配列アドレス及び追加の少なくとも2つの分子のための二次トリガーを含むリンカー分子と、の導入をさらに含み、該追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子は、自己組織化重合のために構成されている。種々の実施形態では、最初の少なくとも2つの分子及びトリガーは、第1の自己組織化重合であり、追加の少なくとも2つの分子及びリンカー分子の導入は、第2の自己組織化重合である。種々の実施形態では、第1及び第2の自己組織化重合は、二次増幅である。他の実施形態では、組織体は、追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。
【0051】
他の実施形態では、該方法は、別の分子に相補的な標識ポリヌクレオチドを結合させることによって検出可能なシグナルを生成することを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。他の実施形態では、検出可能なシグナルを生成することは、標識ポリヌクレオチドを伸長樹状突起に結合させることを含み、該標識ポリヌクレオチドは、標識剤を含む。他の実施形態では、該方法は、最初の少なくとも2つの分子、及び/または追加の少なくとも2つの分子の伸長樹状突起に相補的な標識ポリヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、該方法は、2つ以上の標識ポリヌクレオチドを含み、これらの各々が、最初の少なくとも2つの分子及び/または追加の少なくとも2つの分子の1つまたは複数の伸長樹状突起に相補的である。
【0052】
種々の実施形態では、該方法は、バーコード配列の生成を含む。種々の実施形態では、該方法は、オーバーハング配列、シグナル標識、及び伸長樹状突起に相補的な配列を含む、第1のオリゴヌクレオチドの添加と、第1のオリゴヌクレオチドのオーバーハングに相補的な第1のdsDNAオーバーハング、及び第2のdsDNAオーバーハングの2つのオーバーハングを含有する消光体標識を含む、dsDNAオリゴヌクレオチドの導入と、を含む。種々の実施形態では、dsDNAオリゴヌクレオチド消光体標識は、ダブシル及びフルオロフォア等の短距離消光体を含む。種々の実施形態では、1つまたは複数のdsDNA消光体標識を互いにn回ハイブリダイズさせて、バーコードを生成することができる。
【0053】
種々の実施形態では、該方法は、標識オリゴヌクレオチド及び消去体オリゴヌクレオチドを含む、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む。種々の実施形態では、標識オリゴヌクレオチドは、伸長樹状突起に相補的な第1のオーバーハング配列、及び第2のオーバーハング配列を含む。種々の実施形態では、消去体オリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドに相補的な配列を含む。種々の実施形態では、該方法は、標識オリゴヌクレオチドで標識された分析物に消去体オリゴヌクレオチドを導入することによって消去することと、消去体-標識dsDNAオリゴヌクレオチドダイマーを洗い流すことと、追加の標識オリゴヌクレオチドを加えることと、を含む。種々の実施形態では、標識-消去-標識サイクルは、n回繰り返されて、バーコードが生成される。
【実施例
【0054】
実施例1
分子機構
発明者らのアプローチは、次のように機能する:樹状モノマーの相補的な対を使用して、核酸ハイブリダイゼーション及び分岐点移動の連鎖反応によって重合トリガーの存在下で、制御可能な様態で、自己組織化により樹状ポリマーを生成することができる(図1及び図2)。トリガーは、直接、または親和性リガンドと組み合わせてのいずれかで使用することができる(図3及び図4)。親和性リガンドの性質は、検出されるべき分析物の種類を定義する。ポリマーの各樹状突起を使用して、例えば、フルオロフォア、量子ドット、または金属キレートポリマー等の好まれる標識を付着させることができる(図5)。各樹状ポリマーは、およそ200個の樹状突起を含有する。故に、多数の標識を目的とする標的に最終的に連結し、そのシグナルを劇的に増加させ、その検出を迅速かつ明確にすることができる。重合の後、核酸モノマーを樹状突起に直接ハイブリダイズさせることによって(増幅の前または後のいずれかで)、または標的樹状突起に相補的な固有の配列及び標識化核酸モノマーを含む核酸二重鎖を形成させることによってのいずれかで、標識が行われ得る(図6)。第2のアプローチは、必要とされる高価なパーツの数が、同時に標識されるべき要素の数によって分割されるように、単一の標識化核酸モノマーを任意の特定の相補的標識に結合させることができるため、多重化標識のコストを劇的に減少させるという追加の利点を有する(図6)。比較的低コストで多数のリガンドのシグナルを同時に標識及び増幅する潜在能力は、HCR等の類似の技術と比較した、このアプローチの重要な利点である。二次標識を採用して、別個のシステムのためのトリガー配列を隣接させることによって二次増幅を実施することもできる。このアプローチの主要な利点は、分析物結合/標識及びシグナル増幅に関与するプロセスの分離であり、というのも、従来の技法がこれら2つのステップを統合するか、またはそれらに密接に依存するためである。
【0055】
実施例2
利点
別の考慮事項:一部のフルオロフォア及び他のシグナル標識は、立体障害等の二次構造効果に起因してヘアピンオリゴヌクレオチドと適合性でない。相補的プローブ標識は、これらの効果を排除し、二次構造をとり得る長いオリゴヌクレオチドへの直接付着に対して合成収率を増加させる。類似の目標を可能にする他の方法と比較して、本発明者らのアプローチはいくつかの利点を有する:
-むき出しの直接標識された構造(例えば、HCRにおけるもの)の代わりに樹状ポリマーを生成することによって、本発明者らのアプローチは、採用することができ、そのシグナルが増幅される標識の性質において、はるかに高い柔軟性及びモジュール性を提供する。これにより、使用者は、特定の状況に応じて、最も適切な好まれる標識を選定することが可能になる。これは、本明細書に記載の方法に対して直交的に使用して相補的な情報を提供し得る様々な検出方法のように、使用者に柔軟性を提供する。
-HCRと比較して、本発明者らの方法は、ヘアピンの複雑性を低く保つこと、及び標識化核酸モノマーを組み合わせて使用して多岐にわたるビーコンを標識することを可能にすることによって、コストを顕著に削減する。
-分岐DNAアプローチと比較して、本発明者らの方法は、樹状DNA構造を自律的に生成し、これにより使用者は、数ラウンドの核酸ハイブリダイゼーションを実施する必要性から解放される。
-伝統的なアプローチは煩わしくエラーが発生しやすく、このため、この技法はユーザーフレンドリーではない。
-分岐DNAと比較して、本発明者らの方法は、合成がより容易な構成要素を採用しており、これは、顕著な節約及び収率の増加をもたらす。ホールマウント試料検出等の一部の事例では、利用される比較的小さなヘアピン構造は、より大きな構造と比較して拡散能力が優れており、それによってシグナル発生の利点を提供する。
-色素原/チラミドアプローチと比較して、この技術は、はるかに大きな程度の多重化を可能にする。さらに、この技術は核酸化学に依存しているので、生体適合性であり、目的とする試料に対する影響が最小である。故に、それはより簡易であり、免疫組織化学法、免疫蛍光法、及び核酸配列決定等の、同じ試料の並行または順次の研究をより許容する。
【0056】
実施例3
樹状増幅因子の設計考慮事項。
記載のアプローチは、組み合わせを標識するのに極めて多数の配列設計を可能にする。例えば、12ヌクレオチド長の足がかり/ループ、24ヌクレオチド長のステム、及び15ヌクレオチド長の樹状突起を有するシステムの場合、412×424×412×4×15=463=8.5×1037通りの可能性のある配列が存在する。この驚くべき程に大きな設計空間は、非常に多数のまたは直交性のシステムを生成する可能性を提供する。本発明者らは、最適に増幅するシステムを生成するための設計基準を確立した。
【0057】
例えば、理想的な配列の組み合わせは、好ましいヘアピン二次構造に対する代替的立体構造の最小化、足がかりと樹状突起との間の相互作用の最小化、及びステムの安定性の最大化を含む、ある特定の設計基準を満たす。より詳細には、配列は、足がかりの前端、足がかりの最後の位置及びステムの最初の2つの位置(一般にはステム内)、及び樹状突起の前端等の重要な位置における塩基スタッキング相互作用を最大化するように選定される。これらの設計基準を満たす様々な例となる配列が示される。
【0058】
実施例4
自己組織化樹状重合システムについての例となる配列
【0059】
実施例5
例示的な標識技法:Drosophila胚プロトコル
Drosphilia胚を標識するための例示的な技法が本明細書に記載される。4%PFA中で固定され、-20°のメタノール中で保管された胚から開始して、試料を以下のように操作する。
1.再水和する
a.PBS中80%のメタノール、5分間
b.PBS中50%のメタノール、5分間
c.PBS中25%のメタノール、5分間
2.ProK処理
a.PBST中3μg/mlのProK中で13分間インキュベートする。
b.氷上に1時間移す。
c.proKを2mg/mlのグリシンで2分間ブロックする。
d.グリシンによるブロックを繰り返す。
e.PBSTで2回すすぐ。
f.PBST中で3×5分間洗浄する。
3.後固定
a.振とうしながらPBST中4%のPFA中で20分間固定する。
b.PBST中で3×5分間洗浄する。
4.プローブハイブリダイゼーション
a.100μlの予備加熱した(45°)ハイブリダイゼーション緩衝液を加える。
b.45°で30分間インキュベートする。
c.0.1μl(0.5pM)の各1μMプローブ保存液を100μlの予備加熱した(45°)ハイブリダイゼーション緩衝液に加えることによって、プローブ溶液を調製する。
d.「プレハイブリダイゼーション」緩衝液を除去する。
e.-試料はここで保管され得る(1~2週間)。
f.上記で調製した100μlのハイブリダイゼーション緩衝液+プローブを加える。
g.45°で4時間または一晩インキュベートする。
h.予備加熱した(45°)洗浄緩衝液で洗浄する。
i.4×15分間
5.樹状ポリマーの生成
a.上記の最後の洗浄ステップ中に、急速冷却を開始する:
i.2μlの各ヘアピン溶液を別個のeppiに入れる。
ii.95度で90秒間融解させる。
iii.室温で30分間引き出しに入れる。
iv.この間に、洗浄緩衝液を100μlの増幅緩衝液と交換する。室温で保つ。
v.(少なくとも10分後に)「事前増幅」緩衝液を除去する。
vi.100μlの室温の増幅緩衝液をH1に加え、次いでH2に移し、最後に試料に移す。
vii.光から保護して、室温で1時間または最大一晩インキュベートする。
viii.5倍SSCTで洗浄する。
1.2×5分間
2.2×30分間
6.標識
i.100μlの5倍SSCT中1ピコモルの標識を加える。
ii.室温で1時間ハイブリダイズさせる。
iii.5倍SSCT中で4×15分間洗浄する。
7.マウントし、撮像する
【0060】
II.FFPEスライドプロトコル
1.パラフィン除去
500μlのキシレンを加える、3分間
500μlのキシレンを加える、3分間
500μlの1:1のキシレンエタノールを加える、3分間
500μlのエタノールで洗浄する、3分間
500μlのエタノールで洗浄する、3分間
2.再水和する
95%のエタノール、3分間
70%のエタノール、3分間
50%のエタノール、3分間
PBST、3分間
PBST、3分間
3.プロテイナーゼK消化
スライドを10μg/mLのプロテイナーゼK溶液に37°で40分間浸漬する。
スライドをPBST中、室温で2×3分間洗浄する。
4.プレハイブリダイゼーション
2つの加湿されたチャンバーを、一方は45°、他方は65°で事前に温める。
縁をキムワイプで拭き取ることによってスライドを乾燥させる。
400μLのプローブハイブリダイゼーション緩衝液を組織試料の上部に加える。
65°の加湿されたチャンバーの内部で10分間プレハイブリダイズさせる。
0.2pmolの各プローブ(1プローブ当たり1μLの1μM保存液)を100μLの45°のプローブハイブリダイゼーション緩衝液に加えることによって、プローブ溶液を調製する。
プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、縁をキムワイプで拭き取ることによってスライド上の余剰の緩衝液を落とす。
400μLのプローブ溶液を組織試料の上部に加える。
組織試料にカバーガラスをかけ、45°の加湿されたチャンバー内で2~4時間または一晩インキュベートする。
45°の洗浄緩衝液1ml中で4回洗浄する。
5.プローブを洗浄する
45°の事前に温めた洗浄緩衝液で4×15分間洗浄する。
5倍SSCTで2回洗浄する。
6.モノマーを調製する:
100ulの反応体積当たり2ulのヘアピン1及び2が必要とされる。
急速冷却:95°で3分間→氷上で3分間→室温で25分間
7.事前増幅
400μlの増幅緩衝液を加える、室温で10分間
事前増幅緩衝液を拭き取る。
増幅緩衝液中にヘアピンを加える。
室温で1時間から最大一晩インキュベートする。
8.モノマーを洗浄する
室温の5倍SSCTで4×15分間洗浄する。
1ピコモルの標識を加える。
1時間ハイブリダイズさせる。
室温の5倍SSCTで4×15分間洗浄する。
9.マウントし、撮像する
【0061】
III.抗体増幅プロトコル
PBST中での一次抗体の洗浄後まで、通常の抗体染色プロトコルを進める。
1.モノマーを調製する:
100ulの反応体積当たり2ulのモノマー1及び2が必要とされる。
各々2μlのモノマーを別個に急速冷却する。
急速冷却:95°で3分間→氷上で3分間→室温で25分間
2.増幅
モノマーを適切な量の5倍SSCTと混合する。
5倍SSCT中の適切な量の事前に調製されたモノマーを試料に加える。
室温で1時間から最大一晩インキュベートする。
3.モノマーを洗浄する
室温の5倍SSCTで4×15分間洗浄する。
1ピコモルの標識を加える。
1時間ハイブリダイズさせる。
室温の5倍SSCTで4×15分間洗浄する。
4.マウントし、撮像する
緩衝液:
5倍SSCT-750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸三ナトリウム、0.1%のTween 20、1リットルの再蒸留水。
緩衝液:
5倍SSCT-750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸三ナトリウム、0.1%のTween 20、1リットルの再蒸留水。
5倍SSCT
5倍SSC-0.1%のTween 20
ハイブリダイゼーション緩衝液-50%のホルムアミド、5倍SSC、9mMのクエン酸(pH6)、50μg/mLのヘパリン、1倍デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、0.1%のTween 20。
洗浄緩衝液-50%のホルムアミド、5倍SSC、9mMのクエン酸(pH6)、50μg/mLのヘパリン、0.1%のTween 20。
増幅緩衝液-5倍SSCT、10%の硫酸デキストラン。
【0062】
実施例6
バーコード標識アプローチ
多様式設計は、それ自体が組み合わせアプローチを組み込む標識技法のさらなる変形形態を含む、異なる標識剤の利用を可能にする。例えば、連続バーコード化アプローチは、バーコード化されたS(ここで、Sは、異なるシグナル種(例えば、異なる波長で放射するフルオロフォア)の数であり、nは、連続標識実行数である)の生成を可能にする。
【0063】
樹状ポリマーを使用して、バーコード配列を生成することができる。本発明者らは、研究されている試料に対して穏やかである、緩衝液中での蛍光標識の迅速な周囲温度での交換を可能にすることによって伝統的な方法を改善する2つのアプローチを考案した。標識-消光-標識技法では、追加の15ヌクレオチドの「オーバーハング」配列を含有する、標識する樹状ポリマー上の樹状突起配列に相補的な第1のオリゴヌクレオチドが、第1のバーコード標識を構成する。「オーバーハング」は、第1の標識のオーバーハングに相補的な1つのオーバーハング及び次の標識を係留する役目を果たす第2のオーバーハングの2つのオーバーハングを含有する、dsDNA「消光体」標識を係留する役目を果たす。「消光体」標識オリゴヌクレオチドは、ダブシル等の短距離消光体及びフルオロフォアを含有する。前の標識のオーバーハングへの消光体標識のハイブリダイゼーションにより、消光体及び前のフルオロフォアが非常に近い距離に配置され、これにより最初のフルオロフォアの蛍光が消光され、「消光体」標識上に含まれるフルオロフォアのみがシグナルを放射し得る。このようにして、後続の「消光体」標識を互いにn回ハイブリダイズさせて、バーコードを生成することができる。
【0064】
標識-消去-標識アプローチは、2つのオリゴヌクレオチド種を必要とする。標識は、樹状突起に相補的であり、12塩基対のオーバーハングを含む。消去体は、12塩基対のオーバーハングを含めた標識に完全に相補的である。標識置換を開始するために、消去体オリゴヌクレオチドを、事前に標識された試料に加える。標識のオーバーハングへの消去体のハイブリダイゼーションは分岐点移動事象を誘発し、これにより消去体-標識dsDNAオリゴヌクレオチドダイマーが、樹状突起から切り離された標識として生成される。次いで、消去体-標識ダイマーは洗い流され得る。最後に、新たな標識が試料に加えられる。これらの標識-消去-標識サイクルをn回繰り返して、バーコードを生成することができる。標識-消光-標識アプローチと比較して、この方法は、より簡易かつより安価である。
【0065】
実施例7
追加のプロトコル
記載したように、MUSEは、検出、増幅、及び標識という3つの構成ステップを含む。検出は通常、当該分析物(例えば、DNA及びRNA分析物の場合はインサイチュハイブリダイゼーション、タンパク質及びペプチドの場合は免疫組織化学法)及び研究されている試料の種類に対して慣例的に実施される。分析物の検出後、核酸モノマーの自己組織化を伴う一般的な増幅プロセス。MUSEは、好まれる異なる標識と適合性であり、したがって、標識プロトコルは、使用されている標識の種類に応じて様々である。下記の追加の検出、増幅、及び標識プロトコル、ならびに代表的な結果。
【0066】
実施例8
検出プロトコル
検出プロトコルは、MUSE増幅及び標識ステップとは独立している。適合性に関して、唯一の要件は、MUSE増幅ステップの前に試料が適合性の緩衝液(例えば、5倍SSCT、PBS)中にあることである。
【0067】
下記は、DNA、RNA、及びタンパク質検出のための検出プロトコルの例である。
【0068】
実施例9
FFPEスライド上でのDNAインサイチュハイブリダイゼーション
1.2倍SSCT+50%のホルムアミド中で、92℃で3分間インキュベートする。
2.60℃の2倍SSCT+50%のホルムアミドを有するコプリンジャーに移す。
3.20分間インキュベートする。
4.スライドを取り出し、室温に冷却させる。
5.2倍SSCT、50%のホルムアミド、10%(w/v)の硫酸デキストラン、10μgのRNase A、及び10~20ピコモルのプローブから構成される25μlのハイブリダイゼーション緩衝液を加える。
6.カバーガラスで覆い、ゴムセメントで封入する。
7.ゴムセメントを室温で5’空気乾燥させる。
8.92℃で3分間変性させる。
9.スライドを加湿されたチャンバーに移す。37℃で一晩ハイブリダイズさせる。
10.カバーガラスを除去し、60℃の2倍SSCTを有する事前に温めたコプリンジャー内でスライドを15分間洗浄する。
11.室温の2倍SSCTを含有するコプリンジャーに移し、
12.10分間インキュベートする。
13.室温の0.2倍SSCを含有するコプリンジャーにスライドを移し、
14.10分間インキュベートする。
15.スライドの縁を濾紙で拭き取ってほとんどの緩衝液を除去する。スライドは乾燥させないこと。
16.マウント媒体を加え、マウントする。
【0069】
実施例10
Drosophila胚上でのRNAインサイチュハイブリダイゼーション
1.PBS中80%のメタノール、5分間
2.PBS中50%のメタノール、5分間
3.PBS中25%のメタノール、5分間
4.PBST中3μg/mlのProK中で13分間インキュベートする。
5.氷上に1時間移す。
6.proKを2mg/mlのグリシンで2分間ブロックする。
7.繰り返す。
8.PBSTで2回すすぐ。
9.PBST中で3×5分間洗浄する。
10.後固定
11.振とうしながらPBST中4%のPFA中で20分間固定する。
12.PBST中で3×5分間洗浄する。
13.100μlの予備加熱した(45℃)ハイブリダイゼーション緩衝液を加える。
14.45℃で30分間インキュベートする。
15.0.1μl(0.5pM)の各1μMプローブ保存液を100μlの予備加熱した(45℃)ハイブリダイゼーション緩衝液に加えることによって、プローブ溶液を調製する。
16.「プレハイブリダイゼーション」緩衝液を除去する。
17.上記で調製した100μlのハイブリダイゼーション緩衝液+プローブを加える。
18.45℃で一晩インキュベートする。
19.予備加熱した(45℃)洗浄緩衝液で4回洗浄する。
20.1mLの5倍SSCTを加える。
【0070】
実施例11
Ffpeスライド上でのRNAインサイチュハイブリダイゼーション
1.500μlのキシレンを加える、3分間
2.500μlのキシレンを加える、3分間
3.500μlの1:1のキシレンエタノールを加える、3分間
4.500μlのエタノールで洗浄する、3分間
5.500μlのエタノールで洗浄する、3分間
6.500μlの95%エタノールで洗浄する、3分間
7.500μlの70%エタノールで洗浄する、3分間
8.500μlの50%エタノールで洗浄する、3分間
9.500μlのPBSTで洗浄する、3分間
10.500μlのPBSTで洗浄する、3分間
11.スライドを2μg/mLのプロテイナーゼK溶液に37℃で40分間浸漬する。
12.スライドをPBST中、室温で2×3分間洗浄する。
13.縁をキムワイプで拭き取ることによってスライドを乾燥させる。
14.400μLのプローブハイブリダイゼーション緩衝液を組織試料の上部に加える。
15.45℃の加湿されたチャンバーの内部で10分間プレハイブリダイズさせる。
16.プローブ溶液を調製する(1μlの1μMプローブミックスを使用)。
17.プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、縁をキムワイプで拭き取ることによってスライド上の余剰の緩衝液を落とす。
18.100μLのプローブ溶液を組織試料の上部に加える。
19.組織試料にカバーガラスをかけ、45℃の加湿されたチャンバー内で4時間インキュベートする。
20.45℃の事前に温めた洗浄緩衝液で4×15分間洗浄する。
21.5倍SSCTで2回洗浄する。
【0071】
実施例12
免疫蛍光コンジュゲーション戦略
抗体/親和性リガンドは、例えば、アミノ、マレイミド、及びビス-スルホン架橋剤を含む様々な方式でssDNA MUSEトリガーにコンジュゲートされ得る。
【0072】
コンジュゲーションプロトコル(例えば、ビス-スルホン-PEG4-DBCO)
1.PBS+10mMのEDTAを調製する。
2.200μgのPan Ras抗体を100KDAのカラム中、PBS-EDTAに2回緩衝液交換する。
3.70μlのPBS+EDTAに再懸濁する。
4.対照のために10μlを取り置く。
5.10倍過剰のTCEPを使用する。
6.適切な量のTCEP 1mMを抗体に加える。
7.抗体を室温で1時間還元する。
8.抗体をアミコン50中、PBS+10mMのEDTAで2回緩衝液交換する。
9.60μlのPBS+10mMのEDTAに再懸濁する。
10.5倍モル過剰のビス-スルホン-PEG4-DBCO試薬を加える。
11.ピペット操作によってよく混合する。
12.室温で一晩インキュベートする。
13.30KDaのカラム中、PBSに3回緩衝液交換する。
14.50μlのPBSに再懸濁する。
15.対照のために25μlを取り置く。
16.PBS中の2倍過剰のオリゴ-アジドを使用する。
17.4℃で一晩インキュベートする。
18.30KDaのカラム中、PBSで3回緩衝液交換する。
19.100μlのPBS中で回収する。
【0073】
実施例13
免疫染色プロトコル
免疫染色は、最終的な洗浄がPBS中である限り、使用者に好まれる任意の方式で実施され得る。
1.試料を一次抗体の適切な希釈物とともに室温で2時間(または4℃で一晩)インキュベートする。
2.PBS+0.1%Tween-20中で3×10分間洗浄する。
3.3%の熱失活させたヤギ血清中で30分間ブロックする。
4.適切な濃度の二次抗体(通常は1/500)とともに室温で1時間インキュベートする。
5.PBS中で3×10分間洗浄する。
【0074】
実施例14
増幅プロトコル
記載した理由で、核酸モノマーの自己組織化を伴う一般的な増幅プロセスを利用する。
1.MUSEヘアピン(2μl/反応溶液100μl)を95℃で3分間変性させる。
2.氷上に10分間置く。
3.室温で20分間置く。
4.ヘアピンを増幅ミックスと混合する。
5.事前にハイブリダイズさせた免疫染色された試料上に置く。
6.室温で一晩増幅させる。
7.5倍SSCT中で4×15分間洗浄する。
【0075】
実施例15
標識プロトコル-蛍光
蛍光標識コンジュゲーション戦略
フルオロフォアは、アミノ、マレイミド、またはクリック媒介性コンジュゲーションを含む(ただし網羅的ではない)様々な方式でオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ得る。例示的なコンジュゲーションプロトコルが提供される。
【0076】
標識の可能性
標識としてフルオロフォアにコンジュゲートされたssDNAオリゴヌクレオチドを使用することができる。しかしながら、シグナルをさらに増強するために、最大で4つまでのフルオロフォアを(各5’、3’末端に)含有するdsDNA標識を使用することも可能である。
【0077】
フルオロフォア標識プロトコル
ISHまたはIFから開始:
1.100μlのハイブリダイゼーション溶液当たり2μlのフルオロフォア標識を加える。
2.ハイブリダイゼーション緩衝液中で、室温で2時間ハイブリダイズさせる。
3.5倍SSCT中で2×15分間洗浄する。
4.PBS中で2×15分間洗浄する。
5.マウントし、撮像する。
【0078】
実施例16
標識プロトコル-量子ドット
量子ドットコンジュゲーション戦略
量子ドットは、様々な方式でオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ得る。例示的なコンジュゲーションプロトコルが提供される。
【0079】
量子ドット標識プロトコル
1.ISHまたはIFから開始:
2.100ulのハイブリダイゼーション溶液当たり2μlの量子ドット標識を加える。
3.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
4.5倍SSCT中で2×15分間洗浄する。
5.PBS中で2×15分間洗浄する。
6.マウントし、撮像する。
【0080】
実施例17
標識プロトコル-元素
元素標識コンジュゲーション戦略
元素標識は、マレイミド化学を介してチオールまたはジチオール部分を含有するオリゴヌクレオチドに金属キレート化ポリマー(Fluidigm Corp.)をコンジュゲートすることによって生成される。コンジュゲーションのためのプロトコルは下記に見出すことができる。
【0081】
元素標識生成プロトコル
1.オリゴをTE緩衝液に200μMまで再懸濁する。
2.混合:50μL(200μM)のオリゴ対20μlのTE緩衝液
3.30μlの0.5MのTCEPを加える。
4.室温で少なくとも2時間静置する。
5.-MCPに純粋な同位体を事前投入する-
6.ステップIIの後、30分間待つ。
7.ポリマー管を10秒間迅速に遠沈させる。
8.95μLのL-緩衝液でポリマーを再懸濁する。
9.ピペット操作によってよく混合する。
10.5μLの同位体溶液(総計2mM)を加える。
11.ピペット操作によってよく混合する。
12.37℃で30~40分間インキュベートする。
13.35分後:
14.200μLのL-緩衝液を3K UFカラムに加える。
15.同位体投入済みのMCP溶液を、L-緩衝液を含有する3K UFカラムに加える。
16.室温で最高速度で25分間スピンする。
17.300μLのC-緩衝液を3K UFカラムに加える。
18.室温で最高速度で30分間スピンする。
19.-還元されたジチオール-オリゴを回収する-
20.ステップ15と同時に1つの遠心分離機を使用する。
21.300μLのC-緩衝液を3K UFカラムに加える。
22.TCEP中の還元されたジチオール-オリゴを3K UFカラムに加える。
23.室温で最高速度で15分間スピンする。
24.300μLのC-緩衝液を3K UFカラムに加える。
25.室温で最高速度で20分間スピンする。
-投入済みのMCP及び還元されたジチオール-オリゴを回収する-
26.精製された同位体投入済みのMCPを含有する3K UFカラムを回収する。
27.精製された還元されたジチオール-オリゴを含有する3K UFカラムを回収する。
-投入済みのMCPを還元されたジチオール-オリゴにコンジュゲートする-
28.3K UFカラム中の投入済みのMCPを60μLのC-緩衝液に再懸濁する。
29.ピペット操作によってよく混合する。
30.C-緩衝液中の投入済みのMCPを、還元されたジチオール-オリゴを含有する3K UFカラムに移す。
31.37°で2時間インキュベートする。
32.5mMのTCEP(1ulの0.5MのTCEP)を加える。
33.さらに30分間インキュベートする。
34.C-緩衝液中の投入済みのMCP及び還元されたジチオール-オリゴを、還元されたジチオール-オリゴを含有する10K UFカラムに移す。
-同位体がコンジュゲートされたオリゴを洗浄する。
35.MCPを含有する10K UFカラムに300μLのW-緩衝液を加える。
36.室温で最高速度で10分間スピンする。
37.500ulの超純水で4回洗浄する。
-MCPを回収する-
38.MCPを含有する10K UFカラムに30μLの5倍SSCTを加える。
39.UFカラムの壁をすすぐ。
40.UFカラムを新たな収集管の中に反転させる。
41.1000Gで2分間スピンする。
42.1回繰り返す。
43.Qubit ssDNAキットで測定する。
44.1uMの保存液を調製する。
【0082】
元素標識プロトコル
1.ISHまたはIHCから開始して、
2.100ulのハイブリダイゼーション溶液当たり2μlの元素標識を加える。
3.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
4.5倍SSCT中で2×15分間洗浄する。
5.PBS中で2×15分間洗浄する。
6.ddH2O中で迅速にすすぐ。
7.空気乾燥させる。
8.Fluidigm HyperionユニットまたはMIBIに適合されたnanoSIMSセットアップで撮像する。
【0083】
実施例18
二次増幅
二次増幅は、核酸のインサイチュハイブリダイゼーション及び免疫組織化学アッセイのシグナルをさらに増幅するために実施され得る。
【0084】
二次増幅プロトコル
1.MUSEヘアピン(2μl/反応溶液100μl)を95℃で3分間変性させる。
2.氷上に10分間置く。
3.室温で20分間置く。
4.ヘアピンを増幅ミックスと混合する。
5.事前にハイブリダイズさせた免疫染色された試料上に置く。
6.室温で一晩増幅させる。
7.5倍SSCT中で4×15分間洗浄する。
8.2μlの二次アダプターを100μlのハイブリダイゼーション溶液と混合する。
9.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
10.5倍SSCT中で4×15分間洗浄する。
11.洗浄中に、二次増幅系のためのヘアピン形成(ステップ1~4)を繰り返す。
12.室温で一晩増幅させる。
13.5倍SSCT中で4×15分間洗浄する。
14.2μlの標識を100μlのハイブリダイゼーション溶液と混合する。
15.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
16.5倍SSCT中で2×15分間洗浄する。
17.PBSで2×15分間洗浄する。
18.マウントし、撮像する。
【0085】
実施例19
バーコード
スペクトルバーコード
スペクトルバーコードは、増幅システム毎に2つの異なる標識(例えば、Muse1A alexa488+Muse1B alexa594)を採用して、例えば、5つのフルオロフォアとの52種の組み合わせを生成する。スペクトルバーコードについては、(前述した)フルオロフォア標識と同様に進めることが必要である。
【0086】
連続バーコード
連続バーコード化アプローチは、バーコード化されたSn(ここで、Sは、異なるシグナル種(例えば、異なる波長で放射するフルオロフォア)の数であり、nは、連続標識実行数である)の生成を可能にする。
【0087】
樹状ポリマーを使用して、バーコード配列を生成することができる。本発明者らは、研究されている試料に対して穏やかである、緩衝液中での蛍光標識の迅速な周囲温度での交換を可能にすることによって公開された方法を改善する2つのアプローチを考案した。
【0088】
標識-消光-標識技法では、追加の15ヌクレオチドの「オーバーハング」配列を含有する、標識する樹状ポリマー上の樹状突起配列に相補的な第1のオリゴヌクレオチドが、第1のバーコード標識を構成する。「オーバーハング」は、第1の標識のオーバーハングに相補的な1つのオーバーハング及び次の標識を係留する役目を果たす第2のオーバーハングの2つのオーバーハングを含有する、dsDNA「消光体」標識を係留する役目を果たす。「消光体」標識オリゴヌクレオチドは、ダブシル等の短距離消光体及びフルオロフォアを含有する。前の標識のオーバーハングへの消光体標識のハイブリダイゼーションにより、消光体及び前のフルオロフォアが非常に近い距離に配置され、これにより最初のフルオロフォアの蛍光が消光され、「消光体」標識上に含まれるフルオロフォアのみがシグナルを放射し得る。このようにして、後続の「消光体」標識を互いにn回ハイブリダイズさせて、バーコードを生成することができる。
【0089】
標識-消去-標識アプローチは、2つのオリゴヌクレオチド種を必要とする。標識は、樹状突起に相補的であり、12塩基対のオーバーハングを含む。消去体は、12塩基対のオーバーハングを含めた標識に完全に相補的である。標識置換を開始するために、消去体オリゴヌクレオチドを、事前に標識された試料に加える。標識のオーバーハングへの消去体のハイブリダイゼーションは分岐点移動事象を誘発し、これにより消去体-標識dsDNAオリゴヌクレオチドダイマーが、樹状突起から切り離された標識として生成される。次いで、消去体-標識ダイマーは洗い流され得る。最後に、新たな標識が試料に加えられる。これらの標識-消去-標識サイクルをn回繰り返して、バーコードを生成することができる。標識-消光-標識アプローチと比較して、この方法は、より簡易かつより安価である。
【0090】
標識-消光-標識プロトコル
試料が5倍SSCT中にあると想定して、
1.100μl当たり2μlの1μMの標識1を加える。
2.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
3.5倍SSCT中で3×10分間洗浄する。
4.撮像する。
5.100μl当たり2μlの1μMの標識2を加える。
6.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
7.5倍SSCT中で3×10分間洗浄する。
8.撮像する。
【0091】
標識-消去-標識プロトコル
試料が5倍SSCT中にあると想定して、
1.100μl当たり2μlの1μMの標識1を加える。
2.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
3.5倍SSCT中で3×10分間洗浄する。
4.撮像する。
5.100μl当たり2μlの1μMの標識2及び消去体を加える。
6.室温で2時間ハイブリダイズさせる。
7.5倍SSCT中で3×10分間洗浄する。
8.撮像する。
【0092】
実施例20
非二量体形成ヘアピン
1.非二量体形成ヘアピン
i.配列(5’-3’)
【0093】
配列に関する備考:
A.MUSEヘアピンの場合、上記の配列は、追加の樹状突起及び3~18炭素の長さのPEGスペーサーを担持する:
B.ヘアピン設計の重要な側面は、ループ及びステムをできる限り短く保つことである:
-3~8、優先的には5~6ヌクレオチドのループ、
-8~15、優先的には10~12ヌクレオチドのステム。
【0094】
実施例21
ゆらぎクランプヘアピン
2.ゆらぎクランプヘアピン
i.配列、固定化塩基は、太字下線付きで強調表示される(5’-3’):
【0095】
固定化塩基の数ならびにそれらの位置及び分布は、固定化強度を調節するために用いることができる。本発明者らは、ステム及びスペーサーに最も近位の位置での2~3塩基対のクランプが理想的であることを見出した。
【0096】
スペーサーの長さもまた、固定化強度を調節するために用いることができる。18炭素のスペーサーはクランプを不安定化させ、9炭素のスペーサーは理想的であるようであり、3炭素のスペーサーは非常に強力なクランプを生成する。ヌクレオチドスペーサーまたは脱塩基部位は、完全な固定化及び不活性なヘアピンをもたらす。
【0097】
代替として、ヘアピンは、完全に固定化され得、樹状突起に対する相補配列であることができる(「キー」を使用して、それらを分岐点移動によって完全にまたは部分的にロック解除することができる。これは、ヘアピンが(例えば、長い試料の内部で拡散するように)溶液中に長時間一緒になって存在する必要がある状況において望ましい場合がある。
【0098】
これらのシステムの図示が図20~24に示される。
【0099】
ii.プロトコル:
標準的なMUSE適用の場合、プロトコルに変更はない。単に、標準的なヘアピンの代わりにゆらぎクランプヘアピンが使用される。
【0100】
完全にロックされたヘアピンの場合、プロトコルは修正が必要となろう:
1.ロックされた一次ヘアピンを試料に加える(100μlの増幅緩衝液当たり2μlの6μMの溶液)。増幅の準備ができるまで試料を保管する。
2.一次ヘアピンをロック解除する。
-100μlの増幅緩衝液当たり2μlの6μMのヘアピンキーの保存溶液を加える。
3.一次増幅:
-増幅を室温(20~25℃)で30分間~6時間進行させる。
4.未反応の一次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
5.ロックされた二次ヘアピンを試料に加える(100μlの増幅緩衝液当たり2μlの6μMの溶液)。二次増幅の準備ができるまで試料を保管する。
6.二次増幅:
-増幅を室温(20~25℃)で30分間~6時間進行させる。
7.二次ヘアピンをロック解除する。
-100μlの増幅緩衝液当たり2μlの6μMのヘアピンキーの保存溶液を加える。
8.未反応の二次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
9.100μlの標識緩衝液当たり2μlの1μMの標識を加える。
-標識を樹状突起に30~45分間ハイブリダイズさせる。
10.ハイブリダイズしていない標識を洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
緩衝液:
増幅/標識緩衝液:2~10%の硫酸デキストランを含む2~5倍SSC。
洗浄緩衝液:1~5倍SSC。
20倍SSC緩衝液(HCLでpH7に調整)=3Mの塩化ナトリウム+300mMのクエン酸三ナトリウム
【0101】
実施例22
例示的なMUSE二次増幅反応(標準)
1.一次MUSEヘアピンを急速冷却する:
-2ulの6μMの各一次ヘアピンの保存液をエッペンドルフ管内にピペットで取る。
-加熱蓋付きのヒートブロック上でヘアピンを95℃で3分間変性させる。
-氷上に5分間置く。
-室温で20分間置く。
2.一次増幅:
-一次ヘアピン(100μlの増幅緩衝液当たり2μl)を混合し、試料に加える。
-増幅を室温(20~25℃)で30~45分間進行させる。
3.未反応の一次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
4.二次MUSEヘアピンを急速冷却する:
-2ulの6μMの各二次ヘアピンの保存液をエッペンドルフ管内にピペットで取る。
-加熱蓋付きのヒートブロック上でヘアピンを95℃で3分間変性させる。
-氷上に5分間置く。
-室温で20分間置く。
5.二次増幅:
-二次ヘアピン(100μlの増幅緩衝液当たり2μl)を混合し、試料に加える。
-増幅を室温(20~25℃)で30~45分間進行させる。
6.未反応の二次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
7.2μlの1μMの標識を試料標識緩衝液に加える。
-標識を樹状突起に30~45分間ハイブリダイズさせる。
8.ハイブリダイズしていない標識を洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
緩衝液:
増幅/標識緩衝液:2~10%の硫酸デキストランを含む2~5倍SSC。
洗浄緩衝液:1~5倍SSC。
20倍SSC緩衝液(HCLでpH7に調整)=3Mの塩化ナトリウム+300mMのクエン酸三ナトリウム
【0102】
実施例23
MUSE二次増幅反応(急速冷却なし)
1.一次増幅:
-一次ヘアピン(100μlの増幅緩衝液当たり2μl)を混合し、試料に加える。
-増幅を室温(20~25℃)で30~45分間進行させる。
2.未反応の一次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
3.二次増幅:
-二次ヘアピン(100μlの増幅緩衝液当たり2μl)を混合し、試料に加える。
-増幅を室温(20~25℃)で30~45分間進行させる。
4.未反応の二次ヘアピンを洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
5.2μlの1μMの標識を試料標識緩衝液に加える。
-標識を樹状突起に30~45分間ハイブリダイズさせる。
6.ハイブリダイズしていない標識を洗浄する。
-洗浄緩衝液で10分間、3回洗浄する。
緩衝液:
増幅/標識緩衝液:2~10%の硫酸デキストランを含む2~5倍SSC。
洗浄緩衝液:1~5倍SSC。
20倍SSC緩衝液(HCLでpH7に調整)=3Mの塩化ナトリウム+300mMのクエン酸三ナトリウム
【0103】
実施例24
最適化された樹状増幅因子システムの設計
本発明者らは、その他の方法における2つの配列と対比して各ヘアピンの足がかり及びループに対して1つの配列の使用のみを必要とする樹状増幅因子システムのための一般的設計を見出した。この最適化は、例えば、足がかりにはS2W3(a)及びステムにはS2W2S4W2(b)(ここで、S=GまたはCであり、W=AまたはTである)等の一組の縮重配列を有して、生成され得る可能なシステムの数を倍増させる。縮重配列を使用したヘアピンの設計は、ある組における全てのヘアピンが同じG/C含有量の特性ならびに類似の塩基対合及び塩基スタッキング特性を有することを確実にする。他方で、S2W3に対しては、2=32通りの配列しか存在しない。この最適化されたヘアピン設計を用いて、その他の方法における16種と対比して32種の増幅因子システムが設計され得る。
【0104】
実施例25
指数関数的決定論的MUSE増幅スキーム
このスキームは、互いにハイブリダイズし得るが、増幅は不可能な2つのシステムを必要とする。これは、上記のシステムとの主要な相違である。これらのシステムは、各対におけるヘアピンの足がかりとループとの間に完全な相補性が存在しないため、増幅することはできない。例えば、一次システムにおいて、ヘアピンAのループ(3’)は、ヘアピンBの足がかり(3)に相補的であるが、その逆は成り立たない(Xは、1に相補的でない)。それでもそれらは、対を形成し得る。一次システムの樹状突起は、二次システムを誘発することができ、その逆も可能である。このスキームは、デンドリマーがn回にわたって2nだけ成長することを確実にする。最後に、使用される最後のシステムの樹状突起に相補的な標識オリゴが、例えば、フルオロフォアをハイブリダイズするために採用され得る。このシステムの図示が図28及び図30に示される。
【0105】
実施例26
循環的MUSE増幅スキーム
このスキームは、総計4つのヘアピンに対して2つの増幅システム(一次及び二次)を必要とする。一次システムの樹状突起は、二次システムを誘発することができ、その逆も可能である。一次システム及び二次システムによる増幅ラウンドを交替させることによって、非常に複雑なデンドリマーが生成され得る。最後に、使用される最後のシステムの樹状突起に相補的な標識オリゴが、例えば、フルオロフォアをハイブリダイズするために採用され得る。このシステムの図示が図29及び図31に示される。
【0106】
実施例27
さらなる実施態様
A.抗体へのトリガーのコンジュゲーションのための好ましいアプローチ
このアプローチは、非変性、非還元のものであり、抗体の抗原結合ドメインに影響を及ぼさない。
1.抗体は、(例えば、ベータ-ガラクトシダーゼまたはEndoS2酵素により)それらのIgG重鎖の炭水化物ドメインを短縮することによって修飾される。反応は、37℃で6~18時間実施される。
2.次いで、アジド含有炭水化物が、抗体のIgG重鎖の修飾された炭水化物ドメインに付着させられる(例えば、GalT酵素β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼY289Lを介したUDP-GalNAzの付着)。反応は、30℃で12~18時間実施される。
3.トリガーオリゴヌクレオチドは、トリガーオリゴヌクレオチド上のアミン反応性またはアミン含有部分を介してアジド修飾抗体にコンジュゲートされる(例えば、sDIBOまたはDIBOによるシクロオクチン官能化)。反応は、混合インキュベーターにおいて、抗体に対して5~10倍過剰のトリガーで、25℃で6~18時間行われる。
【0107】
B.一般的設計原理
不安定なホモダイマーを生成しながら極めて安定なヘアピンを生成し得るオリゴヌクレオチドを設計することが必要である。この目的で:
1.ホモダイマー安定性は、ヘアピン安定性を維持しながらステム長をできる限り短く維持することによって最小化されなければならない。
2.ヘアピン安定性は、塩基組成(G/C含有量)ならびにステム及びループ/足がかり長を調整することによって最大化されなければならない。ループ及び足がかりは、4~8(優先的には6)ヌクレオチド長、ステムは、10~12ヌクレオチド長であるべきである。
3.ヘアピンは、所望の二次構造が優勢で準排他的な生産される構造であるように、設計される必要がある。
4.樹状システムに関して、最適なヘアピンの折り畳みだけでなく最適な増幅も確保するために、樹状突起と足がかりとの間だけでなくステムまたはループとの撹乱相互作用も排除されなければならない。
5.場合によっては、二次の樹状突起は、樹状突起により誘導される撹乱を最小化するために、読み出しオリゴヌクレオチドにプレハイブリダイズされ得る。
6.場合によっては、樹状突起を有しない直接標識されたヘアピンが、二次増幅システムにおける二次ヘアピンとして使用され得る。
7.同時に使用される直交性のシステムの群を設計する場合、オリゴヌクレオチド配列は、直交性の群における全てのヘアピン対の間で全ての配列が最小量のミスマッチを提示するように選定される必要がある。6ヌクレオチドのループ及び足がかりならびに10ヌクレオチドのステムを有するシステムの場合、最小量のミスマッチは、5超であるべきである。しかしながら、ミスマッチが、望まれないハイブリダイゼーション(C/Cミスマッチ等)に対する撹乱の強度を最大化するように選定される場合、その数は、1ヌクレオチドほどにも少ない程度までさらに低減され得る。
【0108】
C.非天然塩基対の使用
増幅反応の偶発的な誘発等の天然に存在するオリゴヌクレオチドとの不要な相互作用を最小化するために、天然に存在しないヌクレオチド類似体を使用することができる。
【0109】
人工ヌクレオチドの使用は、用いることができるヌクレオチドのアルファベットをさらに拡大し、これは設計され得る、可能性のあるヘアピンの数を大幅に拡大する。
【0110】
使用され得る非天然塩基対の例:
-ハチモジDNA、人工拡大遺伝情報システム(Artificially Expanded Genetic Information Systems)(Z:P及びS:B塩基対)。
-IsoG:IsoC。
-dNaM及びdTPT3
-7-(2-チエニル)イミダゾ[4,5-b]ピリジン(Ds)及び4-[3-(6-アミノヘキサンアミド)-1-プロピニル]-2-ニトロピロール(Px)
-d5SICS及びdNaM
【0111】
D.異なるMUSEシステムの例となる配列:
【0112】
上述の種々の方法及び技法は、本発明を実施するためのいくつかの手段を提供する。当然ながら、本明細書に記載の任意の特定の実施形態に従って、記載される目的または利点の必ずしも全てが達成され得るわけではないことを理解されたい。よって、例えば、当業者であれば、本方法が、本明細書で教示または示唆され得る他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点の群を達成または最適化する様態で実施され得ることを認識しよう。様々な有利及び不利な代替物が本明細書で言及される。一部の好ましい実施形態は、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を具体的に含む一方、他のものは、1つの、別の、またはいくつかの不利な特徴を具体的に除外するが、さらに他のものは、1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴の包含によって、現在の不利な特徴を具体的に軽減することを理解されたい。
【0113】
さらに、当業者であれば、異なる実施形態から種々の特徴の適用性を認識しよう。同様に、上記で考察した種々の要素、特徴、及びステップ、ならびにそのような各要素、特徴、またはステップに対する他の既知の均等物は、本明細書に記載の原理に従って方法を実施するために当業者によって組み合わされ、適合され得る。種々の要素、特徴、及びステップの中には、多様な実施形態において具体的に含まれるものもあれば、具体的に除外されるものもある。
【0114】
本発明は、ある特定の実施形態及び実施例の関連で開示されているが、本発明の実施形態は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替的な実施形態及び/またはそれらの使用及び修正及び均等物に拡張されることが当業者によって理解されよう。
【0115】
多くの変形形態及び代替的要素が本発明の実施形態で開示されている。なおもさらなる変形形態及び代替的要素が当業者には明らかであろう。これらの変形形態の中には、限定されるものではないが、卵管上皮、細胞、オルガノイド、及びそれらの組織生成物、卵管上皮を生成する方法、卵巣癌等のがんに関連する核酸、ペプチド、及びタンパク質配列を含む予後判定及び/または診断パネル、ならびに本発明の教示を通して作出される生成物の特定の使用に関連する技法がある。本発明の種々の実施形態は、これらの変形形態または要素のいずれかを具体的に含むか、または除外することができる。
【0116】
一部の実施形態では、本発明のある特定の実施形態を記載し、特許請求するために使用される、成分の量、濃度等の特性、反応条件等を表す数字は、一部の事例では、「約」という用語によって修飾されているものと理解されたい。したがって、一部の実施形態では、明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて様々であり得る近似値である。一部の実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の一部の実施形態の広い範囲について記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載される数値は、実行可能な限り正確に報告される。本発明の一部の実施形態で提示される数値は、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を含有し得る。
【0117】
一部の実施形態では、「a」及び「an」及び「the」という用語ならびに本発明の特定の実施形態を説明する文脈において(とりわけ以下の特許請求の範囲のうちのある特定の文脈において)使用される類似の指示対象は、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈され得る。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に入る各々の別個の値を個々に言及する簡潔な方法としての役目を果たすことが意図されているにすぎない。本明細書で別途指示されない限り、個々の値の各々は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書のある特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、または例示的な文言(例えば、「等」)の使用は、本発明をよりよく明らかにすることが意図されているにすぎず、別途特許請求される本発明の範囲に制限を課さない。明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に必須の任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0118】
本明細書に開示される本発明の代替的な要素または実施形態の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群の成員は、個々に、または群の他の成員もしくは本明細書に見出される他の要素と任意に組み合わせて言及され得、特許請求され得る。群の1つまたは複数の成員は、利便性及び/または特許性の理由から、群に含められ得るか、または群から削除され得る。任意のそのような包含または削除が生じた場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の記述を満たすように修正された群を含有するものと本明細書ではみなされる。
【0119】
本発明を実施するための本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態に対する変形形態が、前述の説明を読めば当業者に明らかとなろう。当業者は、そのような変形形態を適宜採用することができ、本発明は、本明細書に具体的に記載されるものとは異なって実施され得ることが企図される。したがって、本発明の多くの実施形態は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される発明の主題の全ての修正及び均等物を含む。その上、本明細書で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、上述の要素のその全ての可能性のある変形形態における任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0120】
さらに、本明細書全体を通して特許及び印刷された刊行物に対して多数の参照がなされている。上記で引用された参考文献及び印刷された刊行物の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に個々に組み込まれる。
【0121】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例示説明するものであることを理解されたい。採用され得る他の修正が、本発明の範囲内にあり得る。よって、限定ではなく例として、本発明の代替的構成が本明細書の教示に従って利用され得る。したがって、本発明の実施形態は、示され、記載される正確なものに限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11A
図11B
図12
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図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
【配列表】
2022515130000001.app
【国際調査報告】