(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】高精度インダクタを含む多層電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20220209BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20220209BHJP
H01P 1/203 20060101ALI20220209BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220209BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
H01F27/00 S
H03H7/075 Z
H01P1/203
H01F17/00 D
H01G4/40 321A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535615
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 US2019067378
(87)【国際公開番号】W WO2020132187
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】エイブイエックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,クワン
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアンヌ
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J006
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070CB13
5E070CB17
5E082AB03
5E082BB01
5E082DD08
5J006HB05
5J006JA01
5J006JA03
5J006JA04
5J006JA11
5J006LA01
5J006LA22
5J024AA01
5J024BA11
5J024CA01
5J024CA03
5J024CA04
5J024CA09
5J024DA04
5J024DA25
5J024DA33
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
多層電子デバイスは、複数の誘電体層と、入力および出力を有する信号経路とを備えることができる。インダクタは、複数の誘電体層のうちの1つの上に形成された導電層を備えることができ、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続し、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続することができる。インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、第1の直線縁部と平行であり、第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を含むことができる。第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、第1の直線縁部からオフセットすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層電子デバイスであって、
複数の誘電体層と、
入力および出力を有する信号経路と、
前記複数の誘電体層のうちの1つの上に重なる導電層を備えるインダクタであって、前記インダクタは、第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続される、インダクタと、
を備え、
前記インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有し、
前記第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における前記第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、前記第1の方向において前記第1の直線縁部からオフセットされる、多層電子デバイス。
【請求項2】
前記インダクタは、前記第1の方向において前記第2の直線縁部における第2の幅を有し、前記第2の幅と前記第1の幅との比は、約1.02~約1.9の範囲をとる、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項3】
前記外周は、前記第1の直線縁部と前記第2の直線縁部との間を延びる、幅不連続部の縁部を含む、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項4】
前記幅不連続部の縁部は、前記第1の直線縁部および前記第2の直線縁部に垂直である、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項5】
前記幅不連続部の縁部は、前記インダクタの長手方向中心線の角部から、少なくとも約30マイクロメートル(30ミクロン)だけ離間される、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項6】
前記オフセット距離は、最小線幅に概ね等しい、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項7】
前記インダクタは、約10未満の長さ対平均幅比を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項8】
前記インダクタは、約1mm未満の平均幅を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項9】
前記インダクタは、約2mm未満の有効長を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項10】
前記インダクタは、更なる幅不連続部の縁部を備え、前記更なる幅不連続部の縁部および前記幅不連続部の縁部は、前記インダクタの長手方向中心線または横方向中心線のうちの少なくとも一方に対して対称である、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項11】
前記多層電子デバイスは、フィルタとして構成される、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項12】
前記フィルタは、約6GHzよりも大きい特性周波数を有する、請求項11に記載の多層電子デバイス。
【請求項13】
前記特性周波数は、ローパス周波数、ハイパス周波数、またはバンドパス周波数の上限のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の多層電子デバイス。
【請求項14】
第2の導電層および第1の導電層は、100マイクロメートル(100ミクロン)未満だけZ方向において離間される、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項15】
グラウンドプレーンと、前記第1の導電層または前記第2の導電層のうちの少なくとも一方を前記グラウンドプレーンに電気的に接続するビアとを更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項16】
IPC TM-650 2.5.5.3に従って25℃の動作温度および1MHzの周波数において決定される、約100未満の誘電率を有する誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項17】
IPC TM-650 2.5.5.3に従って25℃の動作温度および1MHzの周波数において決定される、約100よりも大きい誘電率を有する誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項18】
エポキシを備える誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項19】
有機誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項20】
前記有機誘電材料は、液晶ポリマーまたはポリフェニルエーテルのうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項21】
多層電子デバイスを形成する方法であって、
複数の誘電体層を設けるステップと、
前記複数の誘電体層のうちの少なくともいくつかの上に重なる複数の導電層を形成して、入力および出力を有する信号経路を形成するステップと、
を含み、
前記信号経路は、第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続されたインダクタを備え、前記インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有し、前記第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における前記第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、前記第1の直線縁部からオフセットされる、方法。
【請求項22】
多層電子デバイスのためのインダクタを設計する方法であって、
前記インダクタのための目標インダクタンス値に基づいて前記インダクタのための有効長および幅を選択するステップと、
前記インダクタの突起部に関連付けられたオフセット距離をサイズ設定するステップであって、前記オフセット距離は、前記インダクタの周囲の第1の直線縁部と、前記インダクタの前記周囲の第2の直線縁部との間にあり、前記オフセット距離は、500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満であり、前記第1の直線縁部は前記第1の方向において外方を向き、前記第2の直線縁部は、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向く、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/782,501号、および2019年5月20日に出願された同第62/850,106号の優先権を主張し、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
多層電子デバイス(multilayer electronic device)は、多くの場合、インダクタを含む。例えば、多層フィルタは、多くの場合に、特定のインダクタンス値を提供するように設計された1つまたは複数のインダクタを含む。しかしながら、そのようなインダクタのインダクタンスに対する精密制御は、インダクタの寸法を精密に制御することを伴うため、達成することが困難である可能性がある。
【0003】
高周波数無線信号通信等の高周波数信号のフィルタリングが近年ますます一般的になっている。無線接続性のためのデータ送信速度の増大に対する需要により、5Gスペクトル周波数を含む高周波数で動作するように構成されたものを含む高周波数コンポーネントに対する需要が増してきた。高周波数用途は、多くの場合、非常に低いが精密なインダクタンス値を有するインダクタを必要とする。より小さなインダクタンス値を達成することは、より小さなインダクタを必要とし、インダクタンス値を精密に制御することに関連付けられた難易度を更に増大させる。したがって、高精度インダクタを備える多層フィルタが当該技術分野において求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の1つの実施形態によれば、多層電子デバイスが、複数の誘電体層と、入力および出力を有する信号経路とを備えることができる。多層電子デバイスは、複数の誘電体層のうちの1つの上に重なる導電層を備えるインダクタを備えることができる。インダクタは、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続し、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続することができる。インダクタは、第1の方向において外方(outward)を向いた第1の直線縁部(straight edge)と、第1の直線縁部と平行であり、第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有することができる。第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、第1の直線縁部からオフセットすることができる。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、多層電子デバイスを形成する方法が、複数の誘電体層を設けることと、複数の誘電体層のうちの少なくともいくつかの上に複数の導電層を形成して、入力および出力を有する信号経路を形成することとを含むことができる。信号経路は、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続されたインダクタを備えることができる。インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、第1の直線縁部と平行であり、第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有することができる。第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、第1の直線縁部からオフセットすることができる。
【0006】
本開示の別の態様によれば、多層電子デバイスのためのインダクタを設計する方法が、インダクタのための目標インダクタンス値に基づいてインダクタのための有効長および幅を選択することを含むことができる。方法は、インダクタの突起部(protrusion)に関連付けられたオフセット距離をサイズ設定することを含むことができる。オフセット距離は、インダクタの周囲の第1の直線縁部と、インダクタの周囲の第2の直線縁部との間にあることができる。オフセット距離は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%未満とすることができる。第1の直線縁部は第1の方向において外方を向くことができ、第2の直線縁部は、第1の直線縁部と平行にすることができ、第1の方向において外方を向くことができる。
【0007】
当業者に対する、本開示の十分で実施可能な開示は、その最良の実施態様を含めて、添付の図面を参照しながら本明細書の残りの部分において、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の態様によるバンドパスフィルタの簡単な概略図である。
【
図2】本開示の態様による別のバンドパスフィルタの簡単な概略図である。
【
図3A】本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタの斜視図である。
【
図3B】本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタの斜視図である。
【
図4A】
図3Aおよび
図3Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図4B】
図3Aおよび
図3Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図4C】
図3Aおよび
図3Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図4D】
図3Aおよび
図3Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図4E】
図3Aおよび
図3Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図5A】
図3A~
図4Eを参照して上記で説明したフィルタの第3のインダクタの平面図である。
【
図5B】本開示の態様による一対の突起部を含むインダクタの実施形態の平面図である。
【
図5C】本開示の態様による突起部を含むインダクタの実施形態の平面図である。
【
図5D】本開示の態様による一対の突起部を含むインダクタの別の実施形態の平面図である。
【
図6A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
【
図6B】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
【
図7A】
図6Aおよび
図6Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図7B】
図6Aおよび
図6Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図7C】
図6Aおよび
図6Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図7D】
図6Aおよび
図6Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図8A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
【
図9A】
図8Aおよび
図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図9B】
図8Aおよび
図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図9C】
図8Aおよび
図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図9D】
図8Aおよび
図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
【
図10A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
【
図12】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失(insertion loss)およびリターン損失(return loss)の値を含む試験データのプロットである。
【
図13】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失およびリターン損失の値を含む試験データのプロットである。
【
図14】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失およびリターン損失の値を含む試験データのプロットである。
【
図15】本開示の態様による、フィルタのコンピュータ分析からの挿入損失およびリターン損失の値を含むシミュレーションデータのプロットである。
【
図16】本開示の態様による、フィルタのコンピュータ分析からの挿入損失およびリターン損失の値を含むシミュレーションデータのプロットである。
【
図17】本開示の態様による、フィルタのコンピュータ分析からの挿入損失およびリターン損失の値を含むシミュレーションデータのプロットである。
【
図18】本開示の態様による、フィルタを含む試験アセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および図面における参照符号の繰り返しの使用は、本開示の同じまたは類似の特徴または要素を表すことが意図される。
本考察は例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広い態様を限定することは意図されていないことが当業者には理解されるべきであり、このより広い態様は例示的な構造において具体化される。
【0010】
概して言えば、本開示は、複数の誘電体層と、入力および出力を有する信号経路とを備える多層電子デバイスを対象とする。多層電子デバイスは、複数の誘電体層のうちの1つの上に形成された導電層を備えるインダクタを備える。インダクタは、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続することができ、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続することができる。
【0011】
インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、第1の直線縁部と平行であり、第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有することができる。第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、第1の直線縁部からオフセットすることができる。
【0012】
突起部をオフセット距離と関連付けることができる。突起部は僅かに、インダクタの平均幅を増大させることができ、インダクタのインダクタンスを低下させる。インダクタンスは、一般的に、インダクタの長さに比例するが、インダクタの幅に反比例する。換言すれば、インダクタンスは、誘導性素子の長さ対平均幅比に比例することができる。したがって、誘導性素子の幅および長さに対する僅かな調節を用いて、インダクタンスを微調整することができる。このため、そのような突起部は、インダクタの幅全体を調節するよりも、インダクタのインダクタンスに対しより精密な調節をもたらすことができる。
【0013】
多層フィルタは1つまたは複数の誘電材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の誘電材料は低い誘電率を有することができる。誘電率は、約100未満、いくつかの実施形態では約75未満、いくつかの実施形態では約50未満、いくつかの実施形態では約25未満、いくつかの実施形態では約15未満、およびいくつかの実施形態では約5未満とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、誘電率は、約1.5~100、いくつかの実施形態では約1.5~約75、およびいくつかの実施形態では約2~約8の範囲をとることができる。誘電率は、25℃の動作温度および1MHzの周波数においてIPC TM-650 2.5.5.3に従って決定することができる。誘電正接は、約0.001~約0.04、いくつかの実施形態では約0.0015~約0.0025の範囲をとることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の誘電材料は、有機誘電材料を含むことができる。例示的な有機誘電体は、PolycladのLD621およびPark/Nelco CorporationのN6000シリーズ等のポリフェニルエーテル(PPE)をベースとする材料、Rogers CorporationまたはW.L.Gore&Associates,Inc.の液晶ポリマー(LCP)等のLCP、Rogers Corporationの400シリーズ等の炭化水素複合体、ならびにPark/Nelco Corp.のN4000シリーズ等のエポキシ系積層体を含む。例えば、例は、エポキシ系N4000-13、LCPに積層された臭素を用いない材料、高K材料を有する有機層、未充填高K有機層、Rogers4350、Rogers4003材料、ならびに、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、およびグラフト樹脂等の他の熱可塑性材料、または類似の低誘電率で低損失の有機材料を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、誘電材料は、セラミック充填エポキシとすることができる。例えば、誘電材料は、ポリマー(例えば、エポキシ)等の有機化合物を含むことができ、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化亜鉛、低火度ガラス付きのアルミナ、または他の適当なセラミックもしくはガラス接着材料等のセラミック誘電材料の粒子を含有することができる。
【0016】
しかしながら、N6000、エポキシ系N4000-13、LCPに積層された臭素を用いない材料、高K材料を有する有機層、未充填高K有機層、(Rogers Corporationの)Rogers4350、Rogers4003材料、ならびに、炭化水素、テフロン、FR4、エポキシ、ポリアミド、ポリイミド、およびアクリレート、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、BT樹脂化合物(例えば、Speedboard C)、熱硬化性樹脂(例えば、Hitachi MCL-LX-67F)、およびグラフト樹脂等の他の熱可撓性材料、または類似の低誘電率で低損失の有機材料を含む他の材料が利用されてもよい。
【0017】
加えて、いくつかの実施形態では、限定ではないが、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化亜鉛、低火度ガラス付きのアルミナ等の、セラミック、半導体もしくは絶縁材料、または他の適切なセラミックまたはガラス接着材料を含む非有機誘電材料を用いることができる。代替的に、誘電材料は、回路基板材料して一般的なエポキシ(セラミック混合有りまたはなし、グラスファイバー有りまたはなし)等の有機化合物、または誘電体として普及している他のプラスチック等の有機化合物であってもよい。これらの場合、導体は、通例、パターンを提供するように化学的にエッチングされた銅箔である。また更なる実施形態において、誘電材料は、NPO(COG)、X7R、X5R X7S、Z5U、Y5Vおよびチタン酸ストロンチウムのうちの1つ等の比較的高誘電率(K)を有する材料を含むことができる。そのような例において、誘電材料は、100を超える、例えば、約100~約4000の範囲内の、いくつかの実施形態では、約1000~約3000の範囲内の誘電率を有することができる。
【0018】
1つまたは複数の導電層を誘電体層上に直接形成することができる。代替的に、コーティングまたは中間層は、導電層とそれぞれの誘電体層との間に配置することができる。本明細書において用いられるとき、「上に形成される」とは、誘電体層上に直接形成された導電層、または間に中間層もしくはコーティング層を有して誘電体層の上に重なる導電層を指すことができる。
【0019】
導電層は、多岐にわたる導電性材料を含むことができる。例えば、導電層は、銅、ニッケル、金、銀、または他の金属もしくは合金を含むことができる。
いくつかの実施形態では、多層電子デバイスは、入力および出力を有する信号経路を含むことができる。信号経路は、誘電体層のうちの1つまたは複数の上に重なり、1つまたは複数のビアに接続された、1つまたは複数の導電層を含むことができる。
【0020】
ビアは、誘電体層のうちの1つまたは複数に形成することができる。例えば、ビアは、1つの誘電体層上の導電層を、別の誘電体層上の導電層に電気的に接続することができる。ビアは、銅、ニッケル、金、銀、または他の金属もしくは合金等の多岐にわたる導電性材料を含むことができる。ビアは、貫通孔をドリル加工(例えば、機械的ドリル加工、レーザードリル加工)し、例えば、無電気めっきまたは銅シードを用いて貫通孔に導電性材料をめっきすることによって形成することができる。ビアを導電性材料で充填し、導電性材料の堅柱が形成されるようにすることができる。代替的に、貫通孔の内面は、ビアが中空となるようにめっきすることができる。
【0021】
多層電子デバイスは、インダクタを含むことができる。インダクタは、複数の誘電体層のうちの1つの上に形成された導電層を含むことができる。インダクタは、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続することができ、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続することができる。例えば、インダクタは、信号経路の一部分を形成することができるか、または信号経路とグラウンドとの間に接続することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、インダクタは、少なくとも1つの角部(corner)を含むことができる。角部は、約20°よりも大きい角度(例えば、90°)を有することができる。インダクタは、1つ~9つ以上の角部を有することができ、いくつかの実施形態では、インダクタは6つ未満の角部を有することができ、いくつかの実施形態では4つ未満の角部を有することができ、いくつかの実施形態では3つ未満の角部を有することができ、いくつかの実施形態では2つ未満の角部を有することができる。いくつかの実施形態では、インダクタは、角部を有していなくてもよい。いくつかの実施形態では、インダクタは、全円または部分円の「ループ」を定義することができる。例えば、インダクタは、半円未満の「ループ」を定義することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、誘電体層のうちの少なくともいくつかは、約180マイクロメートル(180ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約120マイクロメートル(120ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)未満、いくつかの実施形態では60マイクロメートル(60ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)、いくつかの実施形態では約40マイクロメートル(40ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約30マイクロメートル(30ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約20マイクロメートル(20ミクロン)未満の厚みを有することができる。例えば、インダクタの導電層は、約180マイクロメートル(180ミクロン)、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)の厚みを有する誘電体層上に形成することができる。
【0024】
誘電体層に1つまたは複数のビアを形成することができる。ビアは、異なる複数の導電層を電気的に接続することができる。例えば、ビアは誘電体層に形成することができ、この誘電体層上にインダクタの導電層が形成される。そのようなビアは、インダクタを、信号経路の一部分またはグラウンド(例えば、グラウンドプレーン)等のフィルタの別の部分と接続することができる。いくつかの実施形態では、Z方向におけるそのようなビアの長さは、そのようなビアが形成される誘電体層の厚みと等しくすることができる。例えば、そのようなビアは、約180マイクロメートル(180ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)未満の長さを有することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、一連のビアおよび中間層は、インダクタを、グラウンドプレーンまたは信号経路の一部分等の別の導電層と接続するように垂直方向に配列することができる。一連のビアおよび中間層のZ方向における垂直総長は、約10ミクロン~約500マイクロメートル(500ミクロン)、いくつかの実施形態では約30マイクロメートル(30ミクロン)~約300マイクロメートル(300ミクロン)、いくつかの実施形態では約40マイクロメートル(40ミクロン)~約200マイクロメートル(200ミクロン)、およびいくつかの実施形態では約60マイクロメートル(60ミクロン)~約150マイクロメートル(50ミクロン)の範囲をとることができる。
【0026】
ビアは、多岐にわたる適切な幅を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ビアの幅は、約20マイクロメートル(20ミクロン)~約200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では約40マイクロメートル(40ミクロン)~約180マイクロメートル(180ミクロン)、いくつかの実施形態では約60マイクロメートル(60ミクロン)~約140マイクロメートル(40ミクロン)、およびいくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)~約120マイクロメートル(120ミクロン)の範囲をとることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、多層電子デバイスは、多層フィルタとして構成することができる。多層フィルタは、高周波数で動作するように構成することができる。多層フィルタは、6GHzよりも高い特性周波数(例えば、ローパス周波数、ハイパス周波数、バンドパス周波数の上限、またはバンドパス周波数の下限)を有することができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、約6GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約10GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約15GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約20GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約25GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約30GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約35GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約40GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約45GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約50GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約60GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約70GHzよりも高い、およびいくつかの実施形態では約80GHzよりも高い特性周波数を有することができる。
【0028】
多層フィルタは、多層フィルタのパスバンド周波数範囲内の周波数についての低い挿入損失等の優れた性能特性を呈することができる。例えば、パスバンド周波数範囲内の周波数についての平均挿入損失は、-15dBよりも大きく、いくつかの実施形態では-10dBよりも大きく、いくつかの実施形態では-5dBよりも大きく、いくつかの実施形態では-2.5dB以上よりも大きくすることができる。
【0029】
加えて、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲外の優れた周波数の拒絶(rejection of frequencies)を呈することができる。いくつかの実施形態では、パスバンド周波数範囲外の周波数についての挿入損失は、約-15dB未満、いくつかの実施形態では約-25dB未満、いくつかの実施形態では約-35dB未満、およびいくつかの実施形態では約-40dB未満とすることができる。
【0030】
加えて、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲からパスバンド外の周波数への急なロールオフを呈することができる。例えば、パスバンド周波数範囲のすぐ外側の周波数について、挿入損失は、約0.1dB/MHz、いくつかの実施形態では、約0.2dB/MHzよりも高い、いくつかの実施形態では約0.3dB/MHzも高い、およびいくつかの実施形態では約0.4dB/MHzよりも高い比率で減少することができる。
【0031】
多層フィルタは、広範にわたる温度にわたって一定した性能特性(例えば、挿入損失、リターン損失等)を呈することもできる。いくつかの実施形態では、多層フィルタの挿入損失は、大きな温度範囲にわたって5dB以下未満で変動することができる。例えば、多層フィルタは、約25℃で、第1の周波数において第1の挿入損失を呈することができる。多層フィルタは、第2の温度で、概ね第1の周波数において第2の挿入損失を呈することができる。第1の温度と第2の温度との間の温度差は、約70℃以上、いくつかの実施形態では約60℃以上、いくつかの実施形態では約50℃以上、いくつかの実施形態では約30℃以上、およびいくつかの実施形態では約20℃以上とすることができる。例として、第1の温度は25℃とすることができ、第2の温度は85℃とすることができる。別の例として、第1の温度は25℃とすることができ、第2の温度は-55℃とすることができる。第2の挿入損失と第1の挿入損失との差は、約5dB以下、いくつかの実施形態では約2dB以下、いくつかの実施形態では約1dB以下、いくつかの実施形態では、約0.75dB以下、いくつかの実施形態では約0.5dB以下、およびいくつかの実施形態では、約0.2dB以下とすることができる。
【0032】
しかしながら、他の実施形態では、多層電子デバイスは、インダクタを含む任意の適切なタイプのデバイスとすることができることを理解されたい。例えば多層電子デバイスは、多層インダクタ、多層インダクタアレイ、多層変換器(例えば、バラン)等とすることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、デバイスは、約0.5mm~約30mm、いくつかの実施形態では、約1mm~約15mm、およびいくつかの実施形態では約2mm~約8mmの範囲をとる総長を有することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、デバイスは、約0.2mm~約20mm、いくつかの実施形態では約0.5mm~約15mm、いくつかの実施形態では約1mm~約10mm、およびいくつかの実施形態では約2mm~約8mmの範囲をとる総長を有することができる。
【0035】
デバイスは、通常、低プロファイルまたは薄型にすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、デバイスは、約100マイクロメートル(100ミクロン)~約2mm、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(50ミクロン)~約1mm、およびいくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)~約300マイクロメートル(300ミクロン)の範囲をとる全体厚を有することができる。
【0036】
用いられる特定の構成にかかわらず、本発明者らは、多層電子デバイスのインダクタの導電層の形状に対する選択的制御を通じて、インダクタのインダクタンスに対する精密な制御を達成することができることを発見した。より詳細には、インダクタの平均幅は、1つまたは複数の突起部を用いて精密に調節することができる。突起部は、インダクタの長さ対平均幅非に対する優れた制御を提供することができ、これにより、インダクタのインダクタンス値の精密な制御が可能になる。
【0037】
多層電子デバイスは導電層を含むことができる。導電層は、多岐にわたる適切な技法を用いて形成することができる。サブトラクティブ、セミアディティブ、またはフルアディティブプロセスを、導電性材料のパネルまたはパターン電気めっきと共に用い、その後プリントおよびエッチングステップを行って、パターニングされた導電層を定義することができる。フォトリソグラフィ、めっき(例えば、電解めっき)、スパッタリング、真空蒸着、プリント、または他の技法を用いて、導電層を形成することができる。例えば、導電性材料の薄い層(例えば、箔)を、誘電体層の表面に接着(例えば、積層)することができる。導電性材料の薄い層を、マスクおよびフォトリソグラフィを用いて選択的にエッチングして、誘電材料の表面上の導電性材料の所望のパターンを生成することができる。
【0038】
任意のそのようなプロセスについて有限分解(finite resolution)が達成可能である。「最小線幅」は、用いられるプロセスの最小の正確に製造可能な特徴サイズとして定義することができる。いくつかの実施形態では、最小線幅は、約100マイクロメートル(100ミクロン)以下、いくつかの実施形態では約75ミクロン以下、いくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)以下、いくつかの実施形態では約20マイクロメートル(20ミクロン)以下、いくつかの実施形態では約10ミクロン以下、およびいくつかの実施形態では約5ミクロン以下とすることができる。「最小面積ユニット」は、最小線幅の二乗として定義することができる。最小面積ユニットは、約0.01mm2以下、いくつかの実施形態では約0.005mm2以下、いくつかの実施形態では約0.0025mm2以下、およびいくつかの実施形態では約0.0001mm2以下とすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、短いかつ/または幅広いインダクタを用いて、非常に低いインダクタンス値を達成することができる。そのような低インダクタンス値は、高周波数の用途について望ましい場合がある。長さ対平均幅比は、インダクタの長さを、インダクタの平均幅で除算したものとして定義することができる。いくつかの実施形態では、長さ対平均幅比は、約60未満、いくつかの実施形態では約20未満、いくつかの実施形態では約10未満、いくつかの実施形態では約8未満、いくつかの実施形態では約6未満、いくつかの実施形態では約4未満、いくつかの実施形態では約2未満、いくつかの実施形態では約1未満、およびいくつかの実施形態では約0.5未満とすることができる。
【0040】
インダクタは、約1000マイクロメートル(1000ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満の平均幅を有することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、インダクタは、第1のロケーションと第2のロケーションとの間の有効長を有することができる。有効長は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間の導電層に沿った長さとして定義することができる。例えば、有効長は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間に接続された(例えば、X-Y平面における)インダクタの様々な直線部分の長さの和に等しくすることができる。インダクタの有効長は、約5mm未満、いくつかの実施形態では約3mm未満、いくつかの実施形態では約2mm未満、いくつかの実施形態では約1mm未満、いくつかの実施形態では約800マイクロメートル(800ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満とすることができる。
【0042】
インダクタは、インダクタの幅を僅かに増大させる特徴(例えば、突起部)を含むことができる。突起部は、インダクタのインダクタンスを僅かに低下させることができる。より詳細には、インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、第1の直線縁部と平行であり、第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有することができる。第2の直線縁部は、オフセット距離だけ第1の直線縁部からオフセットすることができる。突起部は、第1の直線縁部からオフセットされた第2の直線縁部によって形成することができる。
【0043】
オフセット距離は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約400ミクロン未満、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約75ミクロン未満、およびいくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)未満とすることができる。オフセット距離は、約8最小線幅以下、いくつかの実施形態では約4最小線幅以下、いくつかの実施形態では約2最小線幅以下、およびいくつかの実施形態では概ね1最小線幅とすることができる。
【0044】
オフセット距離は、第1の直線縁部における第1の方向におけるインダクタの第1の幅の約90%以下、いくつかの実施形態では80%以下、いくつかの実施形態では70%以下、いくつかの実施形態では60%以下、いくつかの実施形態では、50%以下、40%以下、いくつかの実施形態では30%以下、いくつかの実施形態では20%以下、いくつかの実施形態では10%以下、いくつかの実施形態では5%以下、およびいくつかの実施形態では2%以下とすることができる。突起部は、インダクタの長さ対平均幅比を、30%以下、いくつかの実施形態では20%以下、いくつかの実施形態では10%以下、いくつかの実施形態では5%以下、およびいくつかの実施形態では2%以下だけ低減することができる。
【0045】
このため、第1の直線縁部におけるインダクタの第1の幅に対する第2の直線縁部におけるインダクタの第2の幅の比は、約1.9未満、いくつかの実施形態では約1.8未満、いくつかの実施形態では約1.7未満、いくつかの実施形態では約1.6未満、いくつかの実施形態では約1.5未満、いくつかの実施形態では約1.4未満、いくつかの実施形態では約1.3未満、いくつかの実施形態では約1.2未満、いくつかの実施形態では約1.1未満、いくつかの実施形態では約1.05未満、およびいくつかの実施形態では約1.02未満とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の直線縁部におけるインダクタの第1の幅に対する第2の直線縁部におけるインダクタの第2の幅の比は、約1.02よりも大きく、いくつかの実施形態では約1.05よりも大きく、いくつかの実施形態では約1.1よりも大きく、いくつかの実施形態では約1.2よりも大きくすることができる。そのような寸法により、突起部が突起部におけるインダクタの幅を微調整し、それによってインダクタのインダクタンスを微調整することを可能にすることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、突起部またはタブは、約70マイクロメートル(70ミクロン)以上の、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)よりも大きい、いくつかの実施形態では約120マイクロメートル(120ミクロン)よりも大きい、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(150ミクロン)よりも大きい、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)よりも大きい、およびいくつかの実施形態では約220マイクロメートル(220ミクロン)よりも大きい有効長を有することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、インダクタは複数の突起部を備えることができる。例えば、インダクタは、一対の突起部を含むことができる。一対の突起部は、インダクタに沿って第1のロケーションから第2のロケーションに延びるインダクタの中心線に対し対称とすることができる。いくつかの実施形態では、一対の突起部は、横方向中心線に対し対称とすることができる。
【0048】
第1の直線縁部と第2の直線縁部との間に幅不連続部の縁部(width discontinuity edge)が延びることができる。幅不連続部の縁部は、第1の直線縁部および第2の直線縁部に直交することができる。幅不連続部の縁部は、インダクタの長手方向中心線の角部から、少なくとも約30マイクロメートル(30ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも50マイクロメートル(50ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも80マイクロメートル(80ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも100マイクロメートル(100ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも300マイクロメートル(300ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも500マイクロメートル(500ミクロン)だけ離間させることができる。
I.多層フィルタ
図1は、本開示の態様による多層フィルタ100の簡単な概略図である。フィルタ100は、1つまたは複数のインダクタ102、104、106と、1つまたは複数のコンデンサ108、110、112とを備えることができる。入力電圧(
図1においてV
iによって表される)を、フィルタ100に入力することができ、出力電圧(
図1においてV
oによって表される)をフィルタ100によって出力することができる。バンドパスフィルタ100は、パスバンド周波数範囲内の周波数が実質的に影響を受けずにフィルタ100を透過することを可能にしながら、低周波数および高周波数を大幅に低減することができる。上記で説明した簡単なフィルタ100は、バンドパスフィルタの簡単な例にすぎず、本開示の態様を、より複雑なバンドパスフィルタに適用することができることを理解されたい。加えて、本開示の態様は、例えば、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタを含む他のタイプのフィルタに適用されてもよい。
【0049】
図2は、本開示の態様によるバンドパスフィルタ200の例示的な実施形態の概略図である。フィルタ200の入力202と出力204との間に信号経路201を定義することができる。フィルタ200の入力202とグラウンド206との間で入力電圧(
図1においてV
iによって表される)をフィルタ200に入力することができる。出力204とグラウンド206との間で出力電圧(
図1においてV
oによって表される)をフィルタ200によって出力することができる。
【0050】
フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第1のインダクタ208および第1のコンデンサ210を備えることができる。第1のインダクタ208および第1のコンデンサ210は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214を備えることができる。第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214は、信号経路201と直列に接続することができる(例えば、信号経路201の一部分を形成することができる)。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214を備えることができる。第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214は、信号経路201と直列に接続することができる(例えば、信号経路201の一部分を形成することができる)。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222を備えることができる。第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。
【0051】
インダクタ208、212、216、220のインダクタンス値、およびコンデンサ210、214、218、222の容量値を選択して、バンドパスフィルタ200の所望のバンドパス周波数範囲を生成することができる。バンドパスフィルタ200は、パスバンド周波数範囲内の周波数が実質的に影響を受けずにフィルタ200を透過することを可能にしながら、パスバンド周波数範囲外の周波数を大幅に低減することができる。
【0052】
図3Aおよび
図3Bは、本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタ300の斜視図である。
図3Cは、
図3Aおよび
図3Bのフィルタ300の側面図である。
図3A~
図3Cを参照すると、バンドパスフィルタ300は、複数の誘電体層(明確にするために透明)を備えることができる。
図3Cを参照すると、第1の誘電体層304、第2の誘電体層306、および第3の誘電体層308を積層して、一体構造を形成することができる。フィルタ300は、プリント回路基板等の実装表面(mounting surface)302に実装することができる。導電層303、305、307、309は、誘電体層304、306、308上に形成することができる。導電層303は、第1の誘電体層304の底面に形成することができる。導電層305、307は、第2の誘電体層306のそれぞれ上面および底面に形成することができる。グラウンドは、フィルタ300の底面(導電層303の底面)に沿って露出および/または終端するグラウンドプレーン312を含むことができる。実装表面は、グラウンドプレーン312と接続するための1つまたは複数の端子310を含むことができる。
【0053】
図4A~
図4Eは、フィルタ300の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。より詳細には、
図4Aは、実装表面302および第1の導電層303を示す。
図4Bは、第1の誘電体層304の底面に形成されたグラウンドプレーン312を示す。
図4Cは、第1の誘電体層304の上面に形成された導電層305を更に示す。
図4Dは、第2の誘電体層306上に形成された導電層307を更に示す。
図4Eは、第3の層308上に形成された導電層309を示す。誘電体層304、306、308は、様々なパターニングされた導電層303、305、307、309の相対的再配置を示すために透明である。
【0054】
バンドパスフィルタ300は、入力318および出力320を有する信号経路316を備えることができる。信号経路316は、入力318および出力320を電気的に接続することができる。より詳細には、信号経路316は、複数の誘電体層、ならびに/または複数の誘電体層304、306、308内およびこれらの誘電体層上に形成され、入力318と出力320との間に電気的に接続されたビアを備えることができる。信号経路316は、入力318を、第1の層304と第2の層306との間に配設された中間導電層324と電気的に接続する1つまたは複数のビア322を備えることができる。信号経路316は、中間層324を第2の誘電体層306上に形成された導電層328と電気的に接続する1つまたは複数のビア326を備えることができる。
【0055】
第2の層360の上面に形成された信号経路316の一部分336と、誘電材料の第2の層306の下面に形成された導電層330との間に第1のコンデンサを形成することができる。導電層330は、グラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。フィルタ300の第1のコンデンサは、
図2の回路
図200の第1のコンデンサ210と対応することができる。導電層330は、信号経路316の一部分336と容量結合することができる。導電層330は、Z方向における信号経路316の一部分336から離間させることができる。導電層330は、1つまたは複数のビア334によってグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。
【0056】
第1のコンデンサは、第1のコンデンサの電極の相対的ずれに対し影響を受けにくくすることができる。これは「自己整合」として説明することができる。
図4Dに最も良好に見られるように、信号経路316の一部分336は、通常、第1のコンデンサの導電層330よりも(例えば、X方向およびY方向において)寸法を小さくすることができる。加えて、信号経路316の一部分336は、X-Y平面において、信号経路316の他の要素および他の部分との接続を定義することができる。そのような接続は、X方向またはY方向における僅かなずれにより、第1のコンデンサの容量性エリアが変化しないようにサイズ設定することができる。より詳細には、導電層330と信号経路316の一部分336との間の(例えば、X-Y平面における)有効重複エリアのサイズは、第2および第3の層304、306のX方向またはY方向における僅かなずれの影響を受けにくくすることができる。
【0057】
例えば、信号経路316の一部分336は、一部分336の反対側のコネクタ部分338の(例えばY方向における)幅と等しい(例えばY方向における)幅を有する(例えばX方向に延びる)タブ337を含むことができる。同様に、等しい幅を有することができる接続部340が、(例えばY方向における)一部分336の反対側から延びることができる。結果として、Y方向における相対的ずれにより、導電層330と信号経路316の一部分336との間の重複エリアを変化させないことができる。
【0058】
フィルタ300は、信号経路316およびグラウンドプレーン312と電気的に接続された第1のインダクタ342を含むことができる。フィルタ300の第1のインダクタ342は、
図2の回路
図200の第1のインダクタ208と対応することができる。第1のインダクタ342は、コネクタ部分338によって、第1のコンデンサを形成する信号経路316の一部分336と接続することができる。第1のインダクタ342は、1つまたは複数のビア344(
図3Bに最も良好に見られる)によってグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。
【0059】
フィルタ300の信号経路316は第2のインダクタ346を含むことができ、第2のインダクタ346は、
図2の回路
図200の第2のインダクタ212と対応することができる。第2のインダクタ346は、第3の層308(
図3Cに最も良好に見られる)上に形成することができる。第2のインダクタ346は、第1のロケーション349および第2のロケーション351の各々において、信号経路316と電気的に接続することができる。換言すれば、第2のインダクタ346は、入力318と出力320との間で信号経路316の一部分を形成することができる。
【0060】
1つまたは複数のビア348は、第1のロケーション349において第2のインダクタ346を第2の層306(
図3B、
図4Dおよび
図4Eに最も良好に見られる)の信号経路316の一部分354と接続することができる。1つまたは複数のビア348が、第2のロケーション351において第1の誘導性素子346を第2の層306の上面の信号経路316の一部分369の各々、および第2の層306の底面の導電層352(以下で説明する、信号経路316の一部分354と共に第2のコンデンサを形成する)と接続することができる。
図3Aおよび
図4Eにおいて最も良好に見られるように、インダクタ346は4つの角部を有することができる。したがって、第1のインダクタ346は、半円を超える「ループ」を形成することができる。
【0061】
第2のコンデンサは、導電層352と、信号経路316の一部分354との間に形成することができる。第2のコンデンサは、
図2の回路
図200の第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のコンデンサは自己整合コンデンサとすることができる。
【0062】
フィルタ300の第3のインダクタ356は、
図2の回路
図200の第3のインダクタ216と対応することができる。第3のインダクタ356は、第1のロケーション357における1つまたは複数のビア360によって、第2のインダクタ346と接続された信号経路316の一部分369と接続することができる。第3のインダクタ356は、第2のロケーション359における1つまたは複数のビア360によって、出力320と接続された信号経路316の一部分361と接続することができる。信号経路316の一部分361は、1つまたは複数のビア366および/または中間層368によって、出力320と電気的に接続することができる。換言すれば、第3のインダクタ356は、第2のインダクタ346と出力320との間で信号経路316の一部分を形成することができる。第3のインダクタ356は、第3のインダクタ356の他の部分に沿った場所よりも、突起部364においてより大きな幅を有することができる。
【0063】
第3のコンデンサは、第3のインダクタ356と並列に形成することができる。第3のコンデンサは、
図2の回路
図200の第3のコンデンサ214と対応することができる。フィルタ300の第3のコンデンサは、信号経路316の一部分369と容量性結合された導電層367を含むことができる。
【0064】
第4のインダクタ370は、ビア374によって、第1のロケーション371において信号経路316と、第2のロケーション373においてグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。ビア374は、中間層376によって接続することができる。フィルタ300の第4のインダクタ370は、
図2の回路
図200の第4のインダクタ220と対応することができる。フィルタ300の第4のインダクタ370は、出力320と電気的に接続された信号経路316の一部分361において、信号経路316と接続することができる。第4のインダクタ370は、3つの角部372を有することができ、概ね四分円のループを形成することができる。
【0065】
第4のコンデンサは、出力320と接続された信号経路316の一部分361と容量性結合された導電層380を含むことができる。第4のコンデンサの導電層380は、ビア382によって、グラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。第4のコンデンサは、
図2の回路
図200の第4のコンデンサ222と対応することができる。
II.例示的なインダクタ
インダクタンスは、通常、誘導性素子の長さに比例するが、誘導性素子の幅に反比例する。換言すれば、インダクタンスは、誘導性素子の長さ対平均幅比に比例することができる。したがって、誘導性素子の幅および長さに対する僅かな調節を用いてインダクタンスを微調整することができる。これは、例えば、高周波数用途について非常に低いインダクタンスを呈するように設計されたインダクタの場合に特に有用とすることができる。
【0066】
図5Aは、
図3A~
図4Eを参照して上述したフィルタ300の第3のインダクタ356の平面図である。上記で示したように、インダクタ356は、第1のロケーション357および第2のロケーション359においてビア360と接続することができる。
【0067】
インダクタ356は、外周502を有することができる。外周502は、インダクタ356を形成する導電層の境界を定義することができる。外周502は、第1の方向(例えば、正のY方向)において外方を向いた第1の直線縁部504を含むことができる。外周502は、第1の直線縁部504と平行であり、第1の方向(例えば、正のY方向)において外方を向いた第2の直線縁部506を含むことができる。第2の直線縁部506はオフセット距離508だけ第1の直線縁部504からオフセットすることができる。オフセット距離508は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満とすることができる。いくつかの実施形態では、オフセット距離508は、第1の直線縁部504においてインダクタの第1の幅510の約90%未満とすることができる。いくつかの実施形態では、オフセット距離508は、単一の最小線幅510(例えば、約50マイクロメートル(50ミクロン))に概ね等しくすることができる。(
図5Aの格子点によって表される)最小線幅510は、正確にパターニングすることができる最小特徴サイズとして定義することができる。
【0068】
外周502は、第1の直線縁部504と第2の直線縁部506との間に延びる幅不連続部の縁部509を含むことができる。幅不連続部の縁部509は、第1の直線縁部504および第2の直線縁部506に垂直にすることができる。
【0069】
インダクタ356は、第1の直線縁部504において(例えば、幅不連続部の縁部509に近接して)第1の幅510を有することができる。第1の幅510は、第1の直線縁部504に垂直な局所的幅方向(例えばY方向)において定義することができる。インダクタ356は、第2の直線縁部506において(例えば、幅不連続部の縁部509に近接して)第2の幅512を有することができる。第2の幅512は、局所的幅方向(例えばY方向)において定義することができる。第2の幅512は、第1の幅510よりも大きくすることができる。オフセット距離508は、第2の幅512から第1の幅510を減算したものに等しくすることができる。
【0070】
図3A~
図4Eを参照して上記で説明したように、インダクタ356は、第1のロケーション537および第2のロケーション538においてビアと接続することができる。長手方向中心線514は、第1のロケーション537と第2のロケーション538との間でインダクタ356に沿って延びることができる。長手方向中心線514は、インダクタ356の有効長に等しい長さを有することができる。長手方向中心線514は、1つまたは複数の角部516を含むことができる。幅不連続部の縁部509は、インダクタ356の長手方向中心線514の角部516から距離518だけ離間させることができる。距離518は、少なくとも30マイクロメートル(30ミクロン)とすることができる。この例において、距離518は、インダクタ356の幅を増大させるように作用するタブまたは突起部364の有効長と対応することができる。
【0071】
インダクタ356は、インダクタ356の長手方向中心線514に垂直なそれぞれの局所的幅方向において定義された多岐にわたる幅を有することができる。インダクタ356は、それぞれ、長手方向中心線514に沿って各々と関連付けられた長さによって重み付けされた、インダクタ356の幅の平均である平均幅を有することができる。インダクタ356の長さ対平均幅比は、インダクタ356の有効長をインダクタ356の平均幅で除算したものとして定義することができる。
【0072】
突起部364のうちの1つまたは複数の寸法(例えば、オフセット距離508、有効長518)の調節を用いて、インダクタ356の平均幅および長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ356のインダクタンスを微調整することができる。例示的な平均幅および長さ対平均幅比が「実施例」セクションにおいて提供される。
【0073】
図5Bを参照すると、インダクタ530は、
図8A~
図9Eを参照して以下で説明するフィルタ800の第3のインダクタ820と類似することができるが、
図5Bに示すインダクタ530は、本開示の態様によるオフセット縁部を含む点が異なる。
【0074】
インダクタ530は外周532を有することができる。外周532は、インダクタ530を形成する導電層の境界を画定することができる。外周502は、第1の方向(例えば正のY方向)において外方を向く第1の直線縁部534を含むことができる。外周532は、第1の直線縁部534と平行であり、第1の方向(例えば正のY方向)において外方を向いた第2の直線縁部536を含むことができる。第2の直線縁部536は、オフセット距離538だけ第1の直線縁部534からオフセットすることができる。オフセット距離538は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満とすることができる。いくつかの実施形態では、オフセット距離538は、単一の最小線幅510(例えば、約50マイクロメートル(50ミクロン))に概ね等しくすることができる。
【0075】
外周532は、第1の直線縁部534および第2の直線縁部536の間に(例えばY方向に)延びる、幅不連続部の縁部539を含むことができる。幅不連続部の縁部539は、第1の直線縁部534および第2の直線縁部536に垂直にすることができる。
【0076】
インダクタ530は、第3の直線縁部540と、第2の直線縁部536および第3の直線縁部540の間に延びる第2の不連続部の縁部542を有することができる。第3の直線縁部540は、第1の直線縁部534と平行に、第1の直線縁部534と位置合わせし、タブまたは突起部544が形成されるようにすることができる。突起部544は、第2の直線縁部536と平行な方向に長さ546を有することができる。
【0077】
インダクタ530は、第1のロケーション550および第2のロケーション552においてビアと接続することができる。長手方向中心線554は、第1のロケーション550と第2のロケーション552との間でインダクタ530に沿って延びることができる。長手方向中心線554は、インダクタ530の有効長に等しい長さ556を有することができる。
【0078】
インダクタ530は更なる突起部558を備えることができる。更なる突起部558は、突起部544と同じ方式で、インダクタ530の外周532の直線縁部560および幅不連続部の縁部561に対して定義することができる。更なる突起部558と関連付けられたオフセット距離562を、突起部544と同じ方式で直線縁部560間に定義することができる。
【0079】
更なる突起部558(関連付けられた幅不連続部の縁部561を含む)は、長手方向中心線554および/または横方向中心線563に対して突起部554(関連付けられた幅不連続部の縁部539、542を含む)と対称にすることができる。インダクタ540全体を、長手方向中心線554および/または横方向中心線563に対して対称にすることができる。
【0080】
インダクタ530は、第1の直線縁部534において第1の幅564を有することができる。第1の幅564は、第1の直線縁部534に垂直な局所的幅方向(例えばY方向)において定義することができる。インダクタ530は、第2の直線縁部536において(例えば、幅不連続部の縁部539に近接して)第2の幅566を有することができる。第2の幅566は、局所的幅方向(例えばY方向)において定義することができる。第2の幅566は、第1の幅564よりも大きくすることができる。この例において、第2の幅566と第1の幅564との差は、オフセット距離542、561の和に等しくすることができる。
【0081】
インダクタ530は、第1の幅564と関連付けられた長手方向中心線554に沿った第1の長さ570を有することができる。インダクタ530は、突起部554、558の546の長さに等しい、第2の幅556に沿った長さを有することができる。インダクタ530は、幅564、566と関連付けられた長さ546、570に従って重み付けされたインダクタ530の幅564、566の平均である平均幅を有することができる。インダクタ530の長さ対平均幅比は、インダクタ530の有効長556をインダクタ530の平均幅で除算したものとして定義することができる。
【0082】
突起部558のうちの1つまたは複数の寸法および/またはロケーションの調節を用いて、インダクタ530の平均幅および長さ対平均幅比を微調整し、それによって、インダクタ530のインダクタンスを微調整することができる。例示的な平均幅および長さ対平均幅比が「実施例」セクションにおいて提供される。
【0083】
図5Cは、本開示の態様によるインダクタ572の平面図である。インダクタ572は、
図10A~
図11Dを参照して以下で説明するフィルタ1000の第3のインダクタ1020と類似することができるが、インダクタ572は、
図5Aおよび
図5Bを参照して上記で説明した方式で第1の直線縁部576からオフセット距離575だけオフセットされた第1の直線縁部576および第2の直線縁部577を含むことができる点が異なる。第1の直線縁部576は第2の直線縁部577に垂直にすることができる。幅不連続部の縁部578は、直線縁部576、577間に接続することができる。幅不連続部の縁部578は、直線縁部576、577に垂直にすることができる。オフセット距離575は、直線縁部576、577に垂直な方向において定義することができる。インダクタ572は、幅不連続部の縁部578と関連付けられた突起部574を含むことができる。
【0084】
インダクタ572は、第1のロケーション581および第2のロケーション583においてビアと接続することができる。第1のロケーション581および第2のロケーション583間で長手方向中心線571を定義することができる。第1のロケーション581および第2のロケーション583間で長手方向中心線571に沿って、インダクタ572の有効長579を定義することができる。インダクタ572は、
図5Aおよび
図5Bを参照して上記で説明したのと同じ方式で縁部576、577に対して定義することができる第1の幅580および第2の幅582を有することができる。インダクタ572は、第1および第2の幅580、582とそれぞれ関連付けられた第1および第2の長さ584、585を有することができる。
【0085】
インダクタ572は、長手方向中心線571に沿ったそれぞれの関連付けられた長さ584、585に従って重み付けされたインダクタ572の幅580、582の平均である平均幅を有することができる。インダクタ572の長さ対平均幅比は、インダクタ572の有効長579をインダクタ572の平均幅で除算したものとして定義することができる。寸法および/またはロケーションを調節して、突起部574を用いてインダクタ572の平均幅および長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ572のインダクタンスを微調整することができる。例示的な平均幅および長さ対平均幅比が「実施例」セクションにおいて提供される。
【0086】
図5Dを参照すると、インダクタ587は、
図5Aおよび
図5Bを参照して説明した方式で様々なそれぞれの直線縁部589、長さ596、オフセット距離597および不連続部の縁部596に対して定義された2つの突起部588を含むことができる。インダクタ587は、
図10A~
図11Dを参照して以下で説明するフィルタ1000の第4のインダクタ1024と類似することができるが、インダクタ587が2つの突起部588を含む点が異なる。
【0087】
インダクタ587は、第1のロケーション593および第2のロケーション594間で長手方向中心線592に沿って第1の長さ590および第2の長さ591の和に等しい有効長を有することができる。第1および第2の長さ590、591は、長手方向中心線592に平行に定義することができる。インダクタ587および長手方向中心線592は角部595を含むことができる。
【0088】
インダクタ587は、直線縁部589に垂直に測定された様々な幅を有することができる。様々な幅は長手方向中心線592に沿って定義することができる。インダクタ587は、
図5Aを参照して上記で説明したのと同様の方式で計算される平均幅を有することができる。突起部586のうちの1つまたは複数の寸法および/またはロケーションの調節を用いて、インダクタ587の平均幅および長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ587のインダクタンスを微調整することができる。例示的な平均幅および長さ対平均幅比が「実施例」セクションにおいて提供される。
III.更なる例示的な実施形態
図6Aは、本開示の態様による多層フィルタ600の別の実施形態の斜視図を示す。
図6Bは、
図6Aの多層フィルタ600の別の斜視図を示す。フィルタ600は、通常、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似した方式で構成することができる。フィルタ600は、入力602と、出力604と、入力602および出力604を接続する信号経路606とを備えることができる。フィルタ600は、1つまたは複数のグラウンド電極610と電気的に接続されたグラウンドプレーン608も備えることができる。
【0089】
フィルタ600は、グラウンドプレーン608と電気的に接続された第1のインダクタ612を備えることができる。第1のインダクタ612は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ600は、グラウンドプレーン608と電気的に結合された第1のコンデンサ614を備えることができる。第1のコンデンサ614は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のコンデンサ210と対応することができる。
【0090】
フィルタ600は、互いに並列に接続された第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618を備えることができる。第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618は、入力602と出力604との間で信号経路606の一部分を形成することができる。フィルタ600は、互いに並列に接続され、入力602と出力604との間で信号経路606の一部分を形成することができる第3のインダクタ620および第3のコンデンサ622を備えることができる。第3のインダクタ620および第3のコンデンサ622は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ600は、互いに並列に接続され、信号経路606とグラウンドプレーン608との間で接続された第4のインダクタ624および第4のコンデンサ626を備えることができる。第4のインダクタ624および第4のコンデンサ626は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0091】
インダクタ612、616、620、624およびコンデンサ614、618、622、626は、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したのと類似した方式でビア627によって接続することができる。インダクタ612、616、620、624の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路606と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路606またはグラウンドプレーン608と接続することができる。インダクタ612、616、620、624の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ612、616、620、624の各々が、それぞれの有効長に沿ったそれぞれの幅を有することができる。
【0092】
図6Cは、
図6Aおよび
図6Bのフィルタ600の側面図である。バンドパスフィルタ600は、複数の誘電体層(明確にするために
図6Aおよび
図6Bにおいて透明である)を備えることができる。
図6Cを参照すると、第1の層632、第2の層636、および第3の層640を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層632、636、640の上に導電層630、634、638、642を形成することができる。第1の誘電体層632の底面に導電層630を形成することができる。第2の誘電体層636のそれぞれ上面および底面に導電層634、638を形成することができる。第3の誘電体層640の上面に導電層642を形成することができる。
【0093】
図7A~
図7Dは、
図6A~
図6Cのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。より詳細には、
図7Aは、プリント回路基板等の実装表面628を示す。第1の導電層630は、第1の層632の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン608を含むことができる。
図7Bは、第1の誘電体層632上に形成された第2の導電層634を更に示す。第2の導電層634は、第1のコンデンサ614、第2のコンデンサ618、第3のコンデンサ622および第4のコンデンサ626を備えることができる。
図7Cは、第2の誘電体層636上に形成された第3の導電層638を更に示す。第3の導電層638は、信号経路606の一部分および第1のインダクタ612を備えることができる。
図7Dは、第4の誘電体層640上に形成された第4の導電層642を示す。第4の導電層642は、第2のインダクタ616、第3のインダクタ622、および第4のインダクタ624を備えることができる。誘電体層632、636、640は、様々なパターニングされた導電層630、634、638、642の相対的再配置を示すために透明である。
【0094】
図8Aは、本開示の態様による多層フィルタ800の別の実施形態の斜視図を示す。フィルタ800は、通常、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似した方式で構成することができる。フィルタ800は、入力802と、出力804と、入力802および出力804を接続する信号経路806とを備えることができる。フィルタ800は、1つまたは複数のグラウンド電極810と電気的に接続されたグラウンドプレーン808も含むことができる。
【0095】
フィルタ800は、グラウンドプレーン808と電気的に接続された第1のインダクタ812を備えることができる。第1のインダクタ812は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ800は、グラウンドプレーン808と電気的に接続された第1のコンデンサ814を備えることができる。第1のコンデンサ814は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のインダクタコンデンサ210と対応することができる。フィルタ800は、互いに並列に接続された第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818を備えることができる。第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818は、入力802と出力804との間で信号経路806の一部分を形成することができる。フィルタ800は、互いに並列に接続され、入力802と出力804との間で信号経路806の一部分を形成することができる、第3のインダクタ820および第3のコンデンサ822を備えることができる。第3のインダクタ820および第3のコンデンサ822は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ800は、互いに並列に接続され、信号経路806とグラウンドプレーン808との間で接続された第4のインダクタ824および第4のコンデンサ826を備えることができる。第4のインダクタ824および第4のコンデンサ826は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0096】
インダクタ812、816、820、824およびコンデンサ814、818、822、826は、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したのと同様の方式でビア827によって接続することができる。インダクタ812、818、820、824の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路806と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路806またはグラウンドプレーン808と接続することができる。インダクタ812、818、820、824の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ812、818、820、824の各々は、そのそれぞれの有効長に沿ってそれぞれの幅を有することができる。
【0097】
図8Bは、
図8Aのフィルタ800の側面図である。バンドパスフィルタ800は、複数の誘電体層(明確にするために
図8Aにおいて透明である)を備えることができる。
図8Bを参照すると、第1の層832、第2の層836および第3の層840を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層832、836、840上に導電層830、834、838、842を形成することができる。第1の誘電体層832の底面に導電層830を形成することができる。それぞれ、第2の誘電体層836の上面および底面に導電層834、838を形成することができる。第3の誘電体層840の上面に導電層842を形成することができる。
【0098】
図9A~
図9Dは、
図8Aおよび
図8Bのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる誘電体層が示される。より詳細には、
図9Aは、プリント回路基板等の実装表面828を示す。第1の導電層830は、第1の層832の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン808を含むことができる。
図9Bは、第1の誘電体層832上に形成された第2の導電層834を更に示す。第2の導電層834は、第1のコンデンサ814、第2のコンデンサ818、第3のコンデンサ822および第4のコンデンサ826を含むことができる。
図9Cは、第2の誘電体層836上に形成された第3の導電層838を更に示す。第3の導電層838は、信号経路806の一部分と、第1のインダクタ812とを含むことができる。
図9Dは、第4の誘電体層840上に形成された第4の導電層842を示す。第4の導電層842は、第2のインダクタ816、第3のインダクタ822および第4のインダクタ824を含むことができる。誘電体層832、836、840は、様々なパターニングされた導電層830、834、838、842の相対的再配置を示すために透明である。
【0099】
図10Aは、本開示の態様による多層フィルタ1000の別の実施形態の斜視図を示す。
図10Bは、
図10Aの多層フィルタ1000の別の斜視図を示す。フィルタ1000は、通常、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似の方式で構成することができる。フィルタ1000は、入力1002と、出力1004と、入力1002および出力1004を接続する信号経路1006とを含むことができる。フィルタ1000は、1つまたは複数のグラウンド電極1010と電気的に接続されたグラウンドプレーン1008も含むことができる。
【0100】
フィルタ1000は、グラウンドプレーン1008と電気的に接続された第1のインダクタ1012を備えることができる。第1のインダクタ1012は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ1000は、グラウンドプレーン1008と電気的に結合された第1のコンデンサ1014を含むことができる。第1のコンデンサ1014は、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第1のインダクタコンデンサ210と対応することができる。フィルタ1000は、互いに並列に接続された第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018を含むことができる。第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018は、入力1002と出力1004との間で信号経路1006の一部分を形成することができる。フィルタ1000は、互いに並列に接続され、入力1002と出力1004との間で信号経路1006の一部分を形成することができる第3のインダクタ1020および第3のコンデンサ1022を備えることができる。第3のインダクタ1020および第3のコンデンサ1022は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ1000は、互いに並列に接続され、信号経路1006とグラウンドプレーン1008との間で接続された第4のインダクタ1024および第4のコンデンサ1026を備えることができる。第4のインダクタ1024および第4のコンデンサ1026は、それぞれ、
図2を参照して上記で説明した回路
図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0101】
インダクタ1012、1016、1020、1024およびコンデンサ1014、1018、1022、1026は、
図3~
図5Dを参照して上記で説明したのと類似した方式でビア1027によって接続することができる。インダクタ1012、10110、1020、1024の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路1006と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路1006またはグラウンドプレーン1008と接続することができる。インダクタ1012、10110、1020、1024の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ1012、10110、1020、1024の各々が、それぞれの有効長に沿ったそれぞれの幅を有することができる。
【0102】
図10Bは、
図10Aおよび
図10Bのフィルタ1000の側面図である。バンドパスフィルタ1000は、複数の誘電体層(明確にするために
図10Aにおいて透明である)を備えることができる。
図10Bを参照すると、第1の層1032、第2の層1036、第3の層1040を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層1032、1036、1040の上に導電層1030、1034、1038、1042を形成することができる。第1の誘電体層1032の底面に導電層1030を形成することができる。第2の誘電体層1036のそれぞれ上面および底面に導電層1034、1038を形成することができる。第3の誘電体層1040の上面に導電層1042を形成することができる。
【0103】
図11A~
図11Dは、
図10Aおよび
図10Bのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる誘電体層が示される。より詳細には、
図11Aは、プリント回路基板等の実装表面1028を示す。第1の導電層1030は、第1の層1030の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン1008を含むことができる。
図11Bは、第1の誘電体層1032上に形成された第2の導電層1034を更に示す。第2の導電層1034は、第1のコンデンサ1014、第2のコンデンサ1018、第3のコンデンサ1022および第4のコンデンサ1026を備えることができる。
図11Cは、第2の誘電体層1036上に形成された第3の導電層1038を更に示す。第3の導電層1038は、信号経路1006の一部分および第1のインダクタ1012を備えることができる。
図11Dは、第4の誘電体層1040上に形成された第4の導電層1042を示す。第4の導電層1042は、第2のインダクタ1016、第3のインダクタ1022、および第4のインダクタ1024を備えることができる。誘電体層1032、1036、1040は、様々なパターニングされた導電層1030、1034、1038、1042の相対的再配置を示すために透明である。
【0104】
IV.用途
本明細書において説明したフィルタの様々な実施形態は、任意の適切なタイプの電気コンポーネントにおいて用途を見出すことができる。フィルタは、高周波数無線信号を受信、送信、または他の形で用いるデバイスにおいて特定の用途を見出すことができる。例示的な用途は、スマートフォン、信号中継器(例えば、スモールセル)、中継局およびレーダを含む。
【0105】
V.試験およびシミュレーションデータ
コンピュータモデルを用いて、本開示の態様による多層フィルタをシミュレートした。加えて、フィルタが構築され、試験された。
【0106】
誘電体層の厚みは、通常、約180マイクロメートル(「ミクロン」)未満とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の層304、632、832、1032は、約60マイクロメートル(60ミクロン)の厚みとすることができる。第2の層306、636、836、1036は、約20マイクロメートル(20ミクロン)の厚みとすることができる。第3の層308、640、840、1040は、約60マイクロメートル(60ミクロン)の厚みとすることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、フィルタの全体長さは、4.3mmとすることができる。全体幅は約4mmとすることができる。全体厚は約230マイクロメートル(230ミクロン)とすることができる。
【0108】
図12~
図17は、様々なフィルタのための試験結果およびシミュレーションデータを表す。
図12を参照すると、本開示の態様による多層フィルタが構築され試験された。測定された挿入損失(S
21)値および測定されたリターン損失(S
11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。測定パスバンドは、約13.2GHz~約15.8GHzである。
【0109】
図13を参照すると、本開示の態様による多層フィルタが構築され、試験された。測定された挿入損失(S
21)値および測定されたリターン損失(S
11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。パスバンドは約16.1GHz~約18.2GHzである。
【0110】
図14を参照すると、
図3A~
図4Eを参照して上記で説明した多層フィルタ300のシミュレートおよび構築の双方が行われ、物理的に試験された。測定された挿入損失(S
21)値および測定されたリターン損失(S
11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。パスバンドは約17.0GHz~約21.2GHzである。
【0111】
図15を参照すると、
図6A~
図7Dを参照して上記で説明した多層フィルタ600がシミュレートされた。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~50GHzでプロットされている。パスバンドは約24.6GHz~約27.8GHzである。
【0112】
図16を参照すると、
図8A~
図9Dを参照して上記で説明した多層フィルタ800がシミュレートされた。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~55GHzでプロットされている。パスバンドは約34.6GHz~約37.4GHzである。
【0113】
図17を参照すると、
図10A~
図11Dを参照して上記で説明した多層フィルタ1000がシミュレートされた。シミュレートされた挿入損失(S
21)値およびシミュレートされたリターン損失(S
11)値が0GHz~70GHzでプロットされている。パスバンドは約42.9GHz~約46.6GHzである。
実施例
以下の寸法および比は例として与えられるにすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、より精度の高い導電層の成形を達成し、結果としてより小さな最小線幅をもたらすことができるプロセスを用いることができる。
【0114】
再び
図5Aを参照すると、インダクタ356は、示されるような寸法を有することができ、ここで、(X方向およびY方向における)各最小線幅510は約51マイクロメートル(51ミクロン)である。換言すれば、この実施例セクションのために、
図5Aは縮尺通りに描かれたとみなすことができる。インダクタ356は、概ね5.36最小線幅501(例えば、約272マイクロメートル(272ミクロン))の平均幅を有する。総有効長は14最小線幅501(例えば、約711マイクロメートル(711ミクロン))である。このため、インダクタ356の長さ対平均幅比は約2.61である。
【0115】
比較して、突起部364のない類似のインダクタは、約5.14最小線幅501(例えば、約261マイクロメートル(261ミクロン))の平均幅、および約2.72の長さ対平均幅比を有する。このため、突起部364は、平均幅を約4%増大させ、長さ対平均幅比を約4%減少させた。更に、突起部364と関連付けられた距離518(例えば、長さ)を、単一の最小線幅501(例えば、約51マイクロメートル(51ミクロン))だけ増大させることによって、インダクタ534の平均幅が約1.3%のみ増大し、長さ対平均幅比が約1.3%のみ減少する。このため、突起部364の寸法の調節を用いて、長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ356のインダクタンスを微調整することができる。
【0116】
再び
図5Bを参照すると、インダクタ530は、示されるような寸法を有することができ、ここで、(X方向およびY方向における)各最小線幅は約51マイクロメートル(51ミクロン)である。換言すれば、この実施例セクションのために、
図5Bは縮尺通りに描かれたとみなすことができる。インダクタ530は、約5.29最小線幅501(例えば、約269マイクロメートル(269ミクロン))の平均幅および約1.32の長さ対平均幅比を有することができる。比較して、突起部588のない類似のインダクタは、4最小線幅501(例えば約203マイクロメートル(203ミクロン))の平均幅、および約1.75の長さ対平均幅比を有する。このため、突起部544、558は、平均幅を約32%増大させ、長さ対平均幅比を約24%減少させた。更に、突起部558の長さ546を、単一の最小線幅510だけ増大させることによって、インダクタ530の平均幅が約8.1%のみ増大し、長さ対平均幅比が約8.8%のみ減少する。このため、突起部544、558のうちの1つまたは複数の寸法の調節を用いて、長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ530のインダクタンスを微調整することができる。
【0117】
再び
図5Cを参照すると、インダクタ572は、示されるような寸法を有することができ、ここで、(X方向およびY方向における)各最小線幅510は約51マイクロメートル(51ミクロン)である。換言すれば、この実施例セクションのために、
図5Cは縮尺通りに描かれたとみなすことができる。インダクタ572は、約6.8最小線幅501(例えば、約345マイクロメートル(345ミクロン))の平均幅および約0.88の長さ対平均幅比を有することができる。比較して、突起部574のない類似のインダクタは、6最小線幅501(例えば約305マイクロメートル(305ミクロン))の平均幅、および約1の長さ対平均幅比を有する。このため、突起部574は、平均幅を約14%増大させ、長さ対平均幅比を約12%減少させた。
【0118】
更に、突起部574の有効長(第2の長さ585)を、単一の最小線幅510(例えば、約51マイクロメートル(51ミクロン))だけ減少させることによって、インダクタ572の平均幅が約2.5%のみ増大し、長さ対平均幅比が約2.44%のみ減少する。このため、突起部574の寸法の調節を用いて、長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ572のインダクタンスを微調整することができる。
【0119】
再び
図5Dを参照すると、インダクタ587は、約4.8最小線幅501(例えば約244マイクロメートル(244ミクロン))の平均幅、および約2.08の長さ対平均幅比を有することができる。比較して、突起部588のない類似のインダクタは、4.4最小線幅510(例えば約224マイクロメートル(224ミクロン))の平均幅、および約2.27の長さ対平均幅比を有する。このため、突起部588は、平均幅を約9.1%増大させ、長さ対平均幅比を約8.3%減少させた。
【0120】
更に、突起部588の有効長596を、単一の最小線幅510(例えば約51マイクロメートル(51ミクロン))だけ増大させることによって、インダクタ587の平均幅が約2.08%のみ増大し、長さ対平均幅比が約2.04%のみ減少する。このため、突起部588のうちの1つまたは複数の寸法の調節を用いて、長さ対平均幅比を微調整し、それによってインダクタ587のインダクタンスを微調整することができる。
試験方法
図18を参照すると、本開示の態様に従って、試験アセンブリ1800を用いて、多層フィルタ1802の挿入損失およびリターン損失等の性能特性を試験することができる。フィルタ1802は、試験基板1804に実装することができる。入力線1806および出力線1808は、各々試験基板1804に接続された。試験基板1804は、入力線1806をフィルタ1802の入力と電気的に接続し、出力線1808をフィルタ1802の出力と電気的に接続するマイクロストリップ線1810を含むことができる。入力信号が、ソース信号発生器(例えば、1806 Keithley 2400シリーズのソース測定ユニット(SMU)、例えば、Keithley 2410-C SMU)を用いて入力線に適用され、フィルタ1802の結果としての出力が、(例えば、ソース信号発生器を用いて)出力線18108において測定された。これは、フィルタの様々な構成について繰り返された。
【0121】
当業者であれば、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示のこれらのおよび他の変更および変形を行うことができる。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的および部分的の双方で入れ替えることができることを理解されたい。更に、当業者であれば、上記の説明が例示の目的にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される本開示を限定することを意図しないことを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2020-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層電子デバイスであって、
複数の誘電体層と、
入力および出力を有する信号経路と、
前記複数の誘電体層のうちの1つの上に重なる導電層を備えるインダクタであって、前記インダクタは、第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続される、インダクタと、
を備え、
前記インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有し、
前記第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における前記第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、前記第1の方向において前記第1の直線縁部からオフセットされる、多層電子デバイス。
【請求項2】
前記インダクタは、前記第1の方向において前記第2の直線縁部における第2の幅を有し、前記第2の幅と前記第1の幅との比は、約1.02~約1.9の範囲をとる、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項3】
前記外周は、前記第1の直線縁部と前記第2の直線縁部との間を延びる、幅不連続部の縁部を含む、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項4】
前記幅不連続部の縁部は、前記第1の直線縁部および前記第2の直線縁部に垂直である、請求項3に記載の多層電子デバイス。
【請求項5】
前記幅不連続部の縁部は、前記インダクタの長手方向中心線の角部から、少なくとも約30マイクロメートル(30ミクロン)だけ離間される、請求項3に記載の多層電子デバイス。
【請求項6】
前記オフセット距離は、最小線幅に概ね等しい、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項7】
前記インダクタは、約10未満の長さ対平均幅比を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項8】
前記インダクタは、約1mm未満の平均幅を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項9】
前記インダクタは、約2mm未満の有効長を有する、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項10】
前記インダクタは、更なる幅不連続部の縁部を備え、前記更なる幅不連続部の縁部および前記幅不連続部の縁部は、前記インダクタの長手方向中心線または横方向中心線のうちの少なくとも一方に対して対称である、請求項3に記載の多層電子デバイス。
【請求項11】
前記多層電子デバイスは、フィルタとして構成される、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項12】
前記フィルタは、約6GHzよりも大きい特性周波数を有する、請求項11に記載の多層電子デバイス。
【請求項13】
前記特性周波数は、ローパス周波数、ハイパス周波数、またはバンドパス周波数の上限のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の多層電子デバイス。
【請求項14】
第2の導電層および第1の導電層は、100マイクロメートル(100ミクロン)未満だけZ方向において離間される、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項15】
グラウンドプレーンと、前記第1の導電層または前記第2の導電層のうちの少なくとも一方を前記グラウンドプレーンに電気的に接続するビアとを更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項16】
IPC TM-650 2.5.5.3に従って25℃の動作温度および1MHzの周波数において決定される、約100未満の誘電率を有する誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項17】
IPC TM-650 2.5.5.3に従って25℃の動作温度および1MHzの周波数において決定される、約100よりも大きい誘電率を有する誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項18】
エポキシを備える誘電材料を更に備える、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項19】
有機誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層電子デバイス。
【請求項20】
前記有機誘電材料は、液晶ポリマーまたはポリフェニルエーテルのうちの少なくとも一方を含む、請求項19に記載の多層電子デバイス。
【請求項21】
多層電子デバイスを形成する方法であって、
複数の誘電体層を設けるステップと、
前記複数の誘電体層のうちの少なくともいくつかの上に重なる複数の導電層を形成して、入力および出力を有する信号経路を形成するステップと、
を含み、
前記信号経路は、第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続されたインダクタを備え、前記インダクタは、第1の方向において外方を向いた第1の直線縁部と、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向いた第2の直線縁部とを含む外周を有し、前記第2の直線縁部は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における前記第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満のオフセット距離だけ、前記第1の直線縁部からオフセットされる、方法。
【請求項22】
多層電子デバイスのためのインダクタを設計する方法であって、
前記インダクタのための目標インダクタンス値に基づいて前記インダクタのための有効長および幅を選択するステップと、
前記インダクタの突起部に関連付けられたオフセット距離をサイズ設定するステップであって、前記オフセット距離は、前記インダクタの周囲の第1の直線縁部と、前記インダクタの前記周囲の第2の直線縁部との間にあり、前記オフセット距離は、500マイクロメートル(500ミクロン)未満、かつ前記第1の直線縁部における第1の方向における前記インダクタの第1の幅の約90%未満であり、前記第1の直線縁部は前記第1の方向において外方を向き、前記第2の直線縁部は、前記第1の直線縁部と平行であり、前記第1の方向において外方を向く、方法。
【国際調査報告】