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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20220209BHJP
   B01D 67/00 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 71/00 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20220209BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20220209BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D67/00
B01D69/00
B01D69/10
B01D71/00
B01D71/02
B01D71/34
B01D71/64
B01D71/68
C02F1/44 D
C02F1/44 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535815
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 GB2019053648
(87)【国際公開番号】W WO2020128502
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1821126.8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520185281
【氏名又は名称】ジー2オー ウォーター テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】リュウ カンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ピアーズ デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィレス クリス
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA04
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA32
4D006GA41
4D006MA08
4D006MA09
4D006MA10
4D006MA31
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC05X
4D006MC18
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC49
4D006MC52
4D006MC54
4D006MC62
4D006MC63
4D006NA46
4D006NA50
4D006NA51
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB08
4D006PB09
4D006PB24
4D006PB52
4D006PB55
4D006PC11
4D006PC80
(57)【要約】
好適には水分離用の分離膜が記載されている。この膜は、多孔質の基材層と、この基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含む。この活性層は、処理された二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の第1の態様によれば、好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、前記活性層が、処理された二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を含む分離膜が提供される。
【請求項2】
分離膜、好適には請求項1に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意に前記基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 任意に二次元材料を含む組成物の第1層を形成し、次いで前記二次元材料を含む組成物のさらなる層を前記第1層に付与することにより、前記基材を前記二次元材料を含む組成物と接触させる工程であって、層は、任意に、後続の層の付与の前に乾燥されてもよい工程と、
c. 任意に、前記膜を乾燥する工程と、
d. 工程(b)で付与された前記二次元材料を処理して、レーザー放射線等の高エネルギー放射線、化学物質、高温、熱エネルギー及び/又は圧力を前記二次元材料に印加すること等により、任意に、前記組成物のさらなる層の付与及び後続の処理の前に、前記組成物の第1層を処理することにより、前記二次元材料の官能基の変化を引き起こす工程と、
e. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項3】
好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、前記活性層は、各々二次元材料を含む少なくとも2つのコーティング層を含み、前記活性層の前記コーティング層のうちの少なくとも1つは前記活性層の別のコーティング層とは異なる分離膜。
【請求項4】
分離膜、好適には請求項1又は請求項3に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意に前記基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 前記基材を二次元材料を含む組成物と接触させて、第1のコーティング層を形成する工程と、
c. 二次元材料を含む1つ以上の組成物の1つ以上のさらなるコーティング層を前記第1層に付与し、任意に後続の層の付与の間に前記層のうちの1つ以上を乾燥する工程と、
d. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含み、前記複数のコーティング層のうちの少なくとも1つは別のコーティング層とは異なる方法。
【請求項5】
前記活性層が、1~100nmの直径を有するナノチャネルを含む請求項1又は請求項3に記載の膜。
【請求項6】
分離膜、好適には請求項1、請求項3又は請求項5に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を準備する工程と、
b. 前記基材を、二次元材料及びナノ繊維を含むコーティング組成物と接触させる工程と、
c. 工程(b)によって製造された前記膜を弱酸、例えば1~6のpHを有する酸と接触させることにより、前記ナノ繊維を除去する工程と、
d. 前記二次元材料を、好ましくはレーザー処理、化学処理、及び/又は熱処理によって処置する、好ましくは還元する工程と、
e. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記基材が、ポリマー基材、無機フィラーを含むポリマー基材、セラミック基材、複合材基材、薄膜複合材基材等の金属基材、無機基材、無機-有機基材、金属基材、織られたモノフィラメント若しくは織られたマルチフィラメント等の織られたフィラメント、及び/若しくは不織基材、並びに/又はキャスト基材を含む請求項1、請求項3又は請求項5に記載の膜。
【請求項8】
前記基材が、多孔質フィルム、多孔質プレート、多孔質中空繊維基材、管状繊維基材、嵩高い多孔質材料の形態にあり、好ましくはフィルムの形態にある請求項1、請求項3、請求項5又は請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記ポリマー基材が、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリスルホン担持ポリアミド複合材基材等の薄膜複合材(TFC)のうちの1つ以上から選択される請求項1、請求項3、請求項5、請求項7又は請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記基材の細孔の平均サイズが0.1nm~30,000nm、好ましくは200nm~5000nmであってもよい請求項1、請求項3、請求項5、及び請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の膜。
【請求項11】
前記活性層が、前記二次元材料を含むコーティング組成物から形成されている請求項1、請求項3、請求項5、及び請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の膜。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、担体及び/又は添加剤と共に二次元材料を含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項13】
前記二次元材料が、グラフェン又はその誘導体、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、好適にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、ポリマー、グラフェンエアロゲル、二次元金属-有機フレームワーク、三次元金属-有機フレームワーク、並びに/又は遷移金属ジカルコゲナイド及びその誘導体のうちの1つ以上を含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項14】
前記二次元材料がグラフェン又はその誘導体を含む請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項15】
前記グラフェン又はその誘導体が、酸化グラフェン、酸化グラフェンからの還元型酸化グラフェン、ボトムアッププロセスによる還元型酸化グラフェン、グラファイトからの処理による酸化されたグラフェン、官能化グラフェン、官能化酸化グラフェン、官能化された還元型酸化グラフェン、及び/又は官能化された酸化されたグラフェン、これらの複合体、並びにそれらの分散体のうちの1つ以上から選択される請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項16】
前記グラフェン又はその誘導体が、1つ以上の酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、水和グラフェン、アミノ系グラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化された還元型酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ヒドラジド官能化グラフェン、ヒドラジン官能化グラフェン、アミド官能性グラフェン、アミンPEG官能化グラフェン、グラフェン複合材料、及び/又はポリマーグラフェンエアロゲルから選択される請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項17】
前記グラフェン又はその誘導体が酸化グラフェンである請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項18】
前記二次元材料の酸素原子含有率が、1%~60%、例えば2%~50%、例えば3%~45%、又は5%~44%、又は10%~44%、好ましくは15%~44%の範囲にある請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項19】
前記組成物が、好ましくはCu(OH)、Cd(OH)及びZr(OH)のうちの1つ以上から選択される、好適には金属酸化物ナノストランドの形態の繊維を含む請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項20】
前記コーティング組成物が、バーコーティング、フレキソコーティング、インクジェット印刷、スクリーンコーティング又はスロットコーティングを用いて前記基材にコーティングされる請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項21】
前記活性層が、複数のコーティング層を含んでもよく、好ましくは前記複数の層のうちの少なくとも1つが後続の層の付与の前に処理されたものである請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項22】
前記活性層の前記コーティング層が、前記二次元材料内で前記活性層にわたる漸減する、漸増する又は変動する還元レベルの勾配を含む請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項23】
前記二次元材料が、前記二次元材料をレーザー放射線、マイクロ波放射線、紫外線、Eビーム線、プラズマ処理、電子線、軟X線、ガンマ線、アルファ線等の放射線、化学処理、圧力処理及び/又は熱処理に、好ましくはレーザー放射線及び/又はプラズマ処理に曝露することよって処理される、好適には還元される請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項24】
前記二次元材料が、前記二次元材料をレーザー放射線、好ましくはガスレーザー、常磁性イオン、化学レーザー、金属蒸気レーザー、色素レーザー、又は自由電子レーザーに曝露することによって処理される、好適には還元される請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項25】
前記二次元材料が、前記二次元材料を、好ましくはH、NaOH及び/又はヒドラジン(N)、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムボロハイドライド、塩酸、メラトニン、ポリフェノール、ビタミンC、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、NaSO、NaHSO、NaS、NaS9HO、SOCl、及びSO等の硫黄含有化合物、好ましくはヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム及び/又はアスコルビン酸等の処理剤の適用による化学処理に供することによって処理される、好適には還元される請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項26】
前記二次元材料が、前記二次元材料を、前記コーティング組成物又はコーティング後の前記膜の処理に適用される水熱等の熱処理に供することによって処理され、好適には還元され、好ましくは熱処理が、窒素等の不活性雰囲気下で、及び/又は少なくとも80℃、例えば少なくとも100℃、例えば100℃~800℃、例えば100℃~700℃、100℃~500℃、100℃~400℃、100℃~500℃、好ましくは100℃~450℃の温度で適用される請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項27】
処理された前記二次元材料の酸素原子及び/又は窒素原子の含有率が、0%~65%、例えば0.5%~50%、0.8%~48%、1%~49%、1.2%~46%、1.5%~45%、例えば1.8%~44%、2.0%~44%、2.2%~44%、2.2%~43%、例えば2.5%~43%、3.0%~43%、好ましくは3.5%~43%又は10~43%である請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項28】
前記活性層が、第1の酸素含有率を有する二次元材料を含む第1層と、第2の酸素含有率を有する二次元材料を含む第2層とを含み、前記第1及び第2の酸素含有率が異なる請求項1から請求項27のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項29】
前記第1の酸素含有率が30~50%であり、前記第2の酸素含有率が1~30%である請求項1から請求項28のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項30】
前記第1の酸素含有率を含む層が、前記基材と前記第2の酸素含有率を含む前記第2層との間に配置されている請求項1から請求項29のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項31】
処理された前記二次元材料が、0.1W/mK~6,000W/mK、例えば1W/mK~5,500W/mK、1.5W/mK~5,000W/mK、例えば2W/mK~4,500W/mK、2.5W/mK~4,100W/mK、3W/mK~3,800W/mK、例えば3.5W/mK~3,300W/mK、4W/mK~3,000W/mK、例えば4.5W/mK~2,500W/mK、5W/mK~2,000W/mK、5.5W/mK~1,700W/mK、好ましくは6W/mK~1,500W/mK、6.5W/mK~1,300W/mK、より好ましくは7W/mK~1,100W/mK、8W/mK~900W/mK、最も好ましくは9W/mK~800W/mKの範囲の熱伝導率を有する請求項1から請求項30のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項32】
処理された前記二次元材料が、1×10-6S/m~600,000S/m、例えば5×10-6S/m~300,000S/m、8×10-6S/m~100,000S/m、1×10-5S/m~50,000S/m、例えば3×10-5S/m~28,000S/m、8×10-5S/m~25,000S/m、1×10-4S/m~24,000S/m、例えば3×10-4S/m~23,000S/m、5×10-4S/m~20,000S/m、好ましくは1×10-3S/m~17,000S/m、5×10-3S/m~14,000S/m、より好ましくは1×10-2S/m~10,000S/m、5×10-2S/m~8,000S/m、例えば0.1S/m~7,000S/m、最も好ましくは1S/m~6,000S/mの範囲の電気伝導率を有する請求項1から請求項31のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項33】
処理された前記二次元材料が、アミノ基;長鎖(例えばC16~C50)の脂肪族アミノ基等の脂肪族アミノ基;ポルフィリン官能化二級アミノ基、及び/又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン基等の3-アミノプロピルトリアルコキシシラン基を含み、好ましくはアミノ官能化された処理された二次元材料が、アミノ官能化された処理された酸化グラフェンである請求項1から請求項32のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項34】
処理された前記二次元材料が、アミノ系グラフェン(CONH(CH)NH、NH-TTP、アルキルアミン官能化GO、及び/又はアンモニア官能化酸化グラフェンの添加によるもの等)、イソシアネート修飾GO、(-CO-NHR基等)、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ポリマーグラフェンエアロゲル、アジド-、アルキン官能化GO、ポリ(アリルアミン)修飾、DNA又はタンパク質修飾(非共有結合)を含む請求項1から請求項33のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項35】
処理された前記二次元材料が、NO、-NH、-SOH、ハロゲン化物、-N、-MgBr及び/又は-SH基等の前記二次元材料のエッジに向かって付着した官能基を含み、好ましくは前記官能化された処理された二次元材料が、未処理の二次元材料と比較して、板状体のエッジに向かって、より多くのこのような基を含む請求項1から請求項34のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項36】
前記活性層が、前記膜の製造時に繊維を使用しその後で除去し、及び/又は前記二次元材料を処理することによって好適に形成されたマイクロチャネル又はナノチャネルを含む請求項1から請求項35のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項37】
前記二次元材料の処理が、チャネル、例えばマイクロチャネル又はナノチャネルを形成し、これらのチャネルが、閉ループ又は開ループ、電子回路のパターン、グリッド及び/又は芸術的なパターンの形態にある請求項1から請求項36のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項38】
前記ナノチャネル又はマイクロチャネルが、0.1~1000nmの直径、例えば0.1~850nm、0.2~750nm、0.3~500nm、好ましくは0.4~250nm、又は0.45~150nm、又は0.45~100nm、0.45~75nm、より好ましくは0.45~50nm又は0.45~10nm、最も好ましくは0.45~5nmの直径を有してもよい請求項1から請求項37のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項39】
前記膜が、油/水分離、分子分離、水域環境中の医薬残留物を除去するための医薬分離、薬物分離、バイオフィルトレーション、例えば微生物と水との分離、脱塩、好適には海水脱塩、又は選択的イオン分離、及び核廃水から核放射性元素を除去するための核廃水分離、重金属除去、バイオリファイナリー、洗濯水処理、乳濃縮、損傷した腎臓フィルタを交換するための生理的分離及び血液分離等の血液処理、並びに/又は植物、例えば草等の供給源に由来するバイオプラットフォーム分子の分離、あるいは家庭用水処理、工業用水処理、例えば工業用洗濯排水、食品・飲料製造、化学製造排水、製紙処理、埋立地からの排水、農業、酪農・チーズ製造(チーズ製造からの塩水処理を含む)、牛乳濃縮、ジャガイモ等の作物からのタンパク質回収のためのものである請求項1から請求項38のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項40】
前記膜が、例えば脱塩若しくは油水の分離等の水分離のため、又は化学的な分離のためのものである請求項1から請求項39のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項41】
前記二次元材料が、前記基材層への前記二次元材料の付与後に処理される請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜に関する。より具体的には、本発明は、二次元材料を含有する膜のコーティング後の処理に、及び二次元材料の異なるコーティング層を有する膜の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離は、多孔質材料を用いて成分の混合物を分離するもので、一般的には膜の表面に圧力等の駆動力を加えるか、又は駆動力を加えずに、例えば重力による方法で行われる。
【0003】
膜分離は、液体と液体、固体と液体、イオンと液体、液体と気体、気体と気体の分離に応用されてもよい。
【0004】
膜分離は、他の水の処理又は分離の技術に比べて、原理的に低コスト、設置スペースが少ない、熱入力が少ない、エネルギー消費が少ない、化学処理が少ない、除去効率が高い、使用済み媒体の再生の必要性が低いとの理由で好まれている。膜分離は、水処理において、固体、微粒子、有機分子、溶存種、イオン、微生物、染料分子、バクテリア、天然有機物、乳濃縮、ウイルスの除去に広く適用できる。膜分離は、産業排水処理、生活用水浄化、食品及び飲料の加工、乳製品加工、洗濯水処理、埋立地浸出水、紙パルプ排水、ファインケミカル製造、油性水処理から海水淡水化まで様々な多くの用途に使用されている。
【0005】
通常、分離膜は、特徴的な細孔径や目的の用途に応じて分類される。精密濾過膜(MF)は、0.1~100μmの範囲の細孔径を持ち、バクテリア、嚢胞、酵母細胞、懸濁粒子、顔料、及びアスベストを除去するために使用することができる。限外濾過膜(UF)は、0.01μm~0.1μmの範囲の細孔径を持ち、タンパク質、コロイド粒子、及びウイルスを除去するために使用することができる。ナノ濾過膜(NF)は、0.001~0.01μmの範囲の細孔径を持ち、多価イオン、溶存化合物、中サイズの有機分子、小さなタンパク質、小さなコロイド粒子等を選択するために使用することができる。逆浸透膜(RO)は、0.001μm未満の細孔径を持ち、イオンや小さい有機分子を除去するために使用することができる。
【0006】
現在、市販されている分離膜は、広い範囲の用途において十分な性能を発揮している。しかしながら、新しいきれいな水資源を生産し、既存の水資源をより低い資本コスト及び運営コストで保護するためには、向上し調整可能な耐汚損性(耐ファウリング性)、サイズ排除、より高い選択性、低エネルギー入力でのより高い生産性、長い寿命、向上した耐薬品性及び機械的耐性、並びにより少ない製造上の欠陥等の特性を有するより高度な膜が必要とされている。従って、これらの要求を満たす特性を有する新しい材料、膜システム、処理技術が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ナノポーラス材料は、水分離膜に適用されてもよいが、しかしながら、そのような材料の使用は、スケーラビリティ(拡張性)、機械的強度、化学的堅牢性、寿命、液体媒体への溶解に関連して課題があり、また、材料の高コスト及びナノポーラス材料の組み込みに必要なその後の製造プロセスの高コストに関連しても課題がある。それゆえ、分離、特に水処理用途のための改善された膜が必要とされている。それゆえ、本発明の態様の目的は、上記の問題又はその他の問題のうちの1つ以上に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、この基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、この活性層が、処理された二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を含む分離膜が提供される。
【0009】
本明細書において使用される場合、二次元材料に関する「処理された」は、その二次元材料を含むコーティング組成物の形成後に、並びに/又はその二次元材料を基材層に付与(塗布)後にプロセスに供された二次元材料が、処理前の、好適には、その二次元材料を基材に付与する前の二次元材料の官能基と比較して、二次元材料の官能基に変化を起こした、例えば、官能基の数、種及び/若しくは分布を変化させたことを意味する。好ましくは、基材層への二次元材料の付与後。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、分離膜、好適には本発明の第1の態様に係る膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意にこの基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 任意に二次元材料を含む組成物の第1層を形成し、次いでこの二次元材料を含む組成物のさらなる層をその第1層に付与する(加える)ことにより、上記基材を上記二次元材料を含む組成物と接触させる工程であって、上記層は、任意に、後続の層の付与の前に乾燥されてもよい工程と、
c. 任意に、上記膜を乾燥する工程と、
d. 工程(b)で付与された二次元材料を処理して、レーザー放射線等の高エネルギー放射線、化学物質、高温、熱エネルギー及び/又は圧力を二次元材料に印加すること等により、任意に、上記組成物のさらなる層の付与及び後続の処理の前に、上記組成物の第1層を処理することにより、上記二次元材料の官能基の変化を引き起こす工程と、
e.任意に、上記膜を乾燥する工程と
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、この基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、この活性層は、各々二次元材料を含む少なくとも2つのコーティング層を含み、活性層のコーティング層のうちの少なくとも1つはその活性層の別のコーティング層とは異なる分離膜が提供される。
【0012】
語句「活性層のコーティング層のうちの少なくとも1つは活性層の別のコーティング層と異なる」は、分離活性における実質的な差を生じるコーティング層間の実質的な差に関するということは明らかであろう。「異なる」は、コーティング層のうちの1つが他のコーティング層よりも上に配置されていることを含まないことも明らかであろう。
【0013】
本発明の第3の態様の膜の活性層は、1つ以上のさらなるコーティング層を含んでいてもよく、各コーティング層は、別のコーティング層と同じであってもよいし、他のコーティング層と異なっていてもよい。
【0014】
コーティング層は、別のコーティング層と異なる構造(例えば、層内のナノチャネルの存在、及び/若しくはより大きいか若しくはより小さい厚さに起因する)を含んでもよく、並びに/又は、別の層と異なる組成物を含んでもよい。コーティング層は、別の層と異なる官能基、異なる官能基の量、異なる構造(例えば、異なる粒子/プレート構造及び/若しくはサイズ)を有する二次元材料を含んでいてもよい。コーティング層は、別の層への追加の添加剤及び/又は追加の二次元材料を含んでいてもよい。
【0015】
好適には、活性層のコーティング層は、二次元材料を含むラメラ構造を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、分離膜、好適には本発明の第1又は第3の態様に係る膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意にこの基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 上記基材を二次元材料を含む組成物と接触させて、第1のコーティング層を形成する工程と、
c. 二次元材料を含む1つ以上の組成物の1つ以上のさらなるコーティング層を第1層に付与し、任意に後続の層の付与の間に上記層のうちの1つ以上を乾燥する工程と、
d. 任意に、上記膜を乾燥する工程と
を含み、上記複数のコーティング層の少なくとも1つは別のコーティング層とは異なる方法が提供される。
【0017】
本発明の第4の態様に係る方法において、層を形成するために使用されるコーティング組成物のうちの少なくとも1つは、そのコーティング組成物の別のものと異なっていてもよい。
【0018】
本発明の態様の膜の活性層は、ナノチャネルを含んでいてもよく、好適には、活性層を形成するためのコーティング組成物は、ナノ繊維を含む。このナノチャネルは、1~100nmの直径又は幅を有していてもよい。第2の態様の方法は、膜を弱酸と接触させることにより、ナノ繊維を除去する工程を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の第5の態様によれば、膜、好適には、本発明のいずれかの態様に係る膜であって、活性層が、1~100nmの直径を有するナノチャネルを含む膜が提供される。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、分離膜、好適には本発明のいずれかの態様に係る膜の製造方法であって、
a. 任意に、基材を準備する工程と、
b. この基材を、二次元材料及びナノ繊維を含むコーティング組成物と接触させる工程と、
c. 工程(b)によって製造された膜を弱酸、例えば1~6のpHを有する酸と接触させることにより、上記ナノ繊維を除去する工程と、
d. 上記二次元材料を、好ましくはレーザー処理、化学処理、及び/又は熱処理によって処置する、好ましくは還元する工程と、
e. 任意に、上記膜を乾燥する工程と
を含む方法が提供される。
【0021】
本発明の膜は、液体の分離、液体/気体の分離、気体/気体の分離、液体/固体の分離等、あらゆる種類の分離のためのものであってよい。好適には、本発明の膜は、油/水分離、分子分離、水域環境中の医薬残留物を除去するための医薬分離、薬物分離、バイオフィルトレーション、例えば微生物と水との分離、脱塩、好適には海水脱塩、又は選択的イオン分離、及び核廃水から核放射性元素を除去するための核廃水分離、重金属除去、バイオリファイナリー、洗濯水処理、乳濃縮、損傷した腎臓フィルタを交換するための生理的分離及び血液分離等の血液処理、並びに/又は植物、例えば草等の供給源に由来するバイオプラットフォーム分子の分離、あるいは家庭用水処理、工業用水処理、例えば工業用洗濯排水、食品・飲料製造、化学製造排水、製紙処理、埋立地からの排水、農業、酪農・チーズ製造(チーズ製造からの塩水処理を含む)、牛乳濃縮、ジャガイモ等の作物からのタンパク質回収等のためのものである。好適には、当該膜は油/水分離及び脱塩のためのものである。
【0022】
本発明のいずれかの態様の基材層は、分離プロセス中に活性層を支持するように動作可能な任意の多孔質材料を含んでもよい。この基材は、同じ多孔質材料又は異なる多孔質材料の1つ以上の層を含んでもよい。異なる多孔質材料は、化学組成、厚さ、形態(モルホロジー)及び/又は構造の点で異なっていてもよい。
【0023】
上記基材は、ポリマー基材、無機フィラーを含むポリマー基材、セラミック基材、複合材基材、薄膜複合材基材等の金属基材、無機基材、無機-有機基材、金属基材、織られたモノフィラメント若しくは織られたマルチフィラメント等の織られたフィラメント、及び/若しくは不織基材、並びに/又はキャスト基材(注型基材)を含んでもよい。織られたフィラメント及び不織基材は、同じ又は異なる化学的性質を有する繊維から形成されていてもよく、例えば、そのような基材は、第1の材料から形成された第1の成分と、第2の材料から形成された第2の成分とを含んでもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)とポリエチレンテレフタレート(PET)との混合物を含んでもよい。好ましくは、上記基材は、セラミック基材、又はポリスルホンもしくはポリエーテルスルホン、ポリアミド基材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のポリマー基材、又はゼオライト若しくはアルミナ基材であり、最も好ましくはポリマー基材である。
【0024】
上記基材は、多孔質フィルム、多孔質プレート、多孔質中空繊維基材、管状繊維基材、嵩高い多孔質材料の形態にあってもよい。好適には、上記基材はフィルムの形態であり、好ましくは、実質的に平面フィルムである。
【0025】
多孔質フィルムは、セラミック多孔質フィルム、ポリマー多孔質フィルム、ポリマー不織フィルム、及び無機-有機多孔質フィルムから選択されてもよい。好適には、ポリマー多孔質フィルム、又は、ポリマー不織フィルムである。
【0026】
基材は、少なくとも2つの多孔質フィルム、多孔質プレート、多孔質繊維基材、及び/又は嵩高い多孔質材料を含んでいてもよい。
【0027】
有利には、複数の多孔質フィルム、多孔質プレート、多孔質繊維基材、及び/又は嵩高い多孔質材料を含む基材は、機械的特性の改善、輸送量(フラックス)の改善を提供することができ、かつ/又はコストを削減することができる。
【0028】
セラミック多孔質基材は、ゼオライト、シリコン、シリカ、アルミナ、ジルコニア、ムライト、ベントナイト、及びモンモリロナイト粘土基材のうちの1つ以上から選択された材料から形成されてもよい。
【0029】
ポリマー多孔質織物基材又は不織基材は、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリ(エーテル)スルホン(PES)、変性ポリ(エーテル)スルホン(m-PES)、酢酸セルロース(CA)、ポリ(ピペラジン-アミド)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)、ポリアミド-尿素、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリプロピレン、ポリ(フタラジノンエーテルケトン)、及び薄膜複合多孔質フィルム(TFC)のうちの1つ以上から選択される材料から形成されてもよい。好適には、TFCは、多孔質ポリマー支持膜上にその場で重合された超薄の「バリア」層を含み、例えば、ポリスルホン膜上に形成された界面合成ポリアミドの市販されているポリアミド由来のTFC、及び/又はポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリピペラジンアミド/ポリ(フタラジノンビフェニルエーテルスルホン)(PPBES)、加水分解三酢酸セルロース(CTA)/酢酸セルロース(CA)TFC、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリ乳酸(PLA)、PET/PP、若しくは異なるポリマーの混合物等のTFC等の他のTFC、例えば支持層の上にキャスト層がコーティングされた支持層等の不織層又は複合層等が挙げられる。
【0030】
堆積(蒸着)用のポリマー基材は、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)、酢酸セルロース(CA)、三酢酸セルロース(TCA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エーテル)スルホン(PES)、変性ポリ(エーテル)スルホン(m-PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン担持ポリアミド複合材基材等の薄膜複合材(TFC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリ乳酸(PVA)、PET/PPのうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0031】
上記基材は、不織基材、又は基材が異なるポリマーの混合物を含む複合材基材、例えば、支持層の上にキャスト層でコーティングされた支持層を含む基材等を含んでもよい。
【0032】
好ましくは、上記ポリマー基材は、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び薄膜複合体(TFC)のうちの1つ以上から選択され、例えば、ポリスルホン担持ポリアミド複合材基材が挙げられる。
【0033】
上記多孔質基材は、ナノ構造セラミック多孔質基材、無機-有機多孔質基材、ナノ多孔質不織布、及び/又はナノ粒子ドープ膜等の、ナノテクノロジーベースの多孔質基材であってもよい。
【0034】
ナノ構造化セラミック多孔質基材は、2つ以上の層から形成されてもよく、好適には、ゼオライト、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア等のうちの1つ以上のような従来の圧力駆動セラミック材料を含む第1の層と、好適には、第1の層の少なくとも一部の上に延びる第2の層とを備え、この第2の層は、水熱結晶化又はドライゲル変換法等を介して合成されたゼオライト、酸化チタン、アルミナであってもよい。他のナノ構造のセラミック多孔質基材は、反応性基材又は触媒コーティングされたセラミック表面基材であってもよい。このような基材は、有利にも活性層との強い相互作用をもたらし、フィルタの安定性を向上させる可能性がある。
【0035】
無機-有機複合多孔質基材は、多孔質有機ポリマー基材に含まれる無機粒子から形成されていてもよい。無機-有機複合多孔質基材は、ポリスルホン多孔質膜を伴うジルコニアナノ粒子から選択された材料から形成されてもよい。有利には、無機-有機複合多孔質基材は、良好な機械的強度を有する製造が容易で低コストの基材、及び/又は改善された選択性(例えば、改善された油分離)の組み合わせを提供してもよい。ポリスルホンを伴うジルコニアナノ粒子のような無機-有機多孔質基材は、有利にも、高い透過性を提供してもよい。他の無機-有機多孔質基材は、1種類以上の無機粒子を含む薄膜ナノコンポジット基材、金属ベースのフォーム(アルミニウムフォーム、銅フォーム、鉛フォーム、ジルコニウムフォーム、スズフォーム、金フォーム等)、有機-無機混合マトリックスを形成するために有機マトリックス中に無機フィラーを含む混合マトリックス基材から選択されてもよい。
【0036】
多孔質基材は、ナノ不織布を含んでもよい。有利には、ナノ不織布は、高い多孔性、高い表面積、及び/又は制御可能な機能性を提供する。この不織布は、直径がナノスケールの繊維を含んでもよい。この不織布は、酢酸セルロース、セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに/又はポリウレタンから、好適には電界紡糸によって、好適には酢酸セルロース及びポリウレタンを使用して形成されていてもよい。
【0037】
上記基材は、フラットシート素材、プレート、又は中空繊維として製造され、中空繊維基材、チューブ状基材、又はスパイラル巻きの膜基材等のいくつかのタイプの膜基材のうちの1つにされてもよい。適切なフラットシート基材は、Dow Filmtec(ダウ・フィルムテック)やGE Osmonics(ジーイー・オスモニクス)から入手されてもよい。
【0038】
有利なことに、多孔質ポリマー基材の形態の基材は、加工のしやすさを向上させ、かつ/又は低コストを実現することができる。
【0039】
基材層は、任意の適切な細孔径を有してもよい。基材の細孔の平均サイズは、用途に応じて0.1nm~30,000nm、好ましくは200nm~5000nmであってよい。基材は、典型的には、精密濾過膜又は限外濾過膜である。
【0040】
上記基材層の細孔径は、0.1nm~100,000nm、例えば0.5nm~50,000nm、1nm~25,000nm、5nm~20,000nm、10nm~10,000nm、例えば50nm~9,000nm、100nm~8,500nm、100nm~8,000nm、120nm~8,000nm、150nm~7,500nm、例えば200nm~5,000nmであってもよい。好ましくは、上記基材の細孔径は、上記二次元材料の粒子よりも小さい。例えば、グラフェンが500nmのサイズの粒子の形態である場合、上記多孔質基材の細孔径は500nmよりも小さいことが好ましい。
【0041】
上記基材は、任意の適切な厚さを有していてもよい。基材の厚さは、0.1~20,000μm、又は0.1~15,000μm、例えば0.5~10,000μm、又は1~5,000μm、又は3~2,500μm、好ましくは5~1,500μm、より好ましくは10~1,200μm、例えば15~1,000μm、又は20~900μm、例えば25~800μmであってもよい。任意に、上記基材は、5~700μm、例えば8~600μm、又は8~500μm、好ましくは10~450μmの厚さを有してもよい。
【0042】
好ましくは、上記基材の厚さは10~1,000μmである。
【0043】
好適には、上記基材は、ポリスルホン基材、ポリアミド基材及び/又はセラミック基材から選択される。上記基材は、ポリプロピレン基材、及び/又はポリテトラフルオロエチレン基材、及び/又はセラミック基材から選択されていてもよい。
【0044】
好ましくは、上記セラミック基材は、ゼオライト、酸化チタン、及びジルコニア、例えば、ゼオライト及びジルコニアのうちの1つから選択される。
【0045】
上記基材は、例えば0~1μm、例えば500nm未満又は300nm未満、例えば200nm未満又は100nm未満、好ましくは70nm未満又は50nm未満、より好ましくは30nm未満の表面粗さ、好適にはRz、を有してもよい。有利には、低い表面粗さは、活性層の構造の改善された均一性を提供することができる。
【0046】
活性層を受けるように動作可能な基材の表面は、親水性であってもよい。好適には、基材表面上のコーティング組成物の接触角は、90°未満、例えば70°未満、好ましくは50°未満である。
【0047】
上記基材は、好適にはコーティング組成物を付与する前に、化学処理、放射線処理、プラズマ処理及び/又は熱処理等で処理されてもよく、好ましくは化学処理及び/又は放射線処理で処理されてもよい。好適には、基材は、コーティング組成物が接触されるべき表面の一部分にわたって処理される。
【0048】
有利には、基材の表面の処理は、コーティング層に強化された界面接着性及びコーティング層の均一性を提供することができ、それゆえ、膜の寿命、及び/又は水処理中の選択性、除去率、輸送速度(フラックス率)等の性能、並びに活性層の改良された均一性を強化することができる。
【0049】
例えば、コーティング組成物を受けるように動作可能な基材の表面は、親水化に供されたものであってもよい。有利には、表面の親水化は、湿潤特性及び界面接着性を改善することができる。上記基材の処理は、表面官能基の付加、好適には形成、及び/又は親水性添加剤の添加を含んでいてもよい。導入される表面官能基は、ヒドロキシル基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基及びアミン基のうちの1つ以上を含んでもよい。官能基の形成は、プラズマ処理、酸化還元反応、放射線、UV-オゾン処理、及び/又は化学処理のうちの1つの技術によって達成されてもよい。親水性添加剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ナノフィラー、表面改質高分子、及び双性イオンから選択されてもよい。親水性添加剤の添加は、所望の機能性を有する添加剤を処理された膜表面にコーティング又は堆積させることによって行ってもよい。
【0050】
有利には、ポリマー基材の表面処理は、例えば、コーティング材料による表面の流動性及び濡れ性を改善することによって、基材上の活性層の均一性の改善をもたらすことができる。表面処理は、コーティング液による表面の濡れが改善されることで、基材上の活性層の密着性が向上し、これが分離効率及び寿命をさらに向上させる可能性もある。ポリマー基材上の上記親水性及び/又は機能性の存在は、より均一な構造、改善された連続性、改善された密着性、及び向上した分離効率を有する活性層を提供する。この親水性及び/又は機能性は、フィルタの寿命の延長及び安定性を膜に提供する可能性もある。
【0051】
表面処理は特性を改善することもでき、これには膜の防汚性能、強化された塩除去及び/又は強化された分子選択性及び/又は強化された透過性が含まれる。汚損(ファウリング)は、膜のフラックスや耐用年数の低下につながる。汚損は、有機物付着、生物付着、微粒子付着、コロイド付着のうち1つ以上が原因となりうる。
【0052】
セラミック基材や金属基材の場合、基材を処理しないことが好ましい。
【0053】
二次元材料、すなわち、少なくとも部分的に前処理された形態の二次元材料を含むコーティング組成物が、活性層を形成するために基材上に堆積されてもよい。
【0054】
本発明のいずれかの態様のコーティング組成物は、担体及び/又は金属酸化物と共に二次元材料を含んでもよい。
【0055】
上記二次元材料は、グラフェン又はその誘導体、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、好適にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、ポリマー、グラフェンエアロゲル、二次元金属-有機フレームワーク、3次元金属-有機フレームワーク、並びに/又は遷移金属ジカルコゲナイド及びその誘導体のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0056】
好ましくは、上記二次元材料は、グラフェン又はその誘導体を含む。
【0057】
グラフェンの誘導体には、酸化グラフェン、酸化グラフェンからの還元型酸化グラフェン、ボトムアッププロセスによる還元型酸化グラフェン、グラファイトからの処理による酸化されたグラフェン、官能化グラフェン、官能化酸化グラフェン、官能化された還元型酸化グラフェン、及び/又は官能化された酸化されたグラフェン、これらの複合体、並びにそれらの分散体等の任意のグラフェン系材料が含まれてもよい。
【0058】
活性層の上記の二次元材料は、当業者に公知の適切な方法のいずれかを用いて製造されてもよい。二次元のシリセン、ゲルマニウム及びスタネンは、超高真空吸引下での表面支援型エピタキシャル成長によって製造されてもよい。六方晶の二次元h-窒化ホウ素は、機械的な切断、窒化ホウ素ナノチューブの切開(unzipping)、化学的な官能化及び超音波処理、固体状態反応、溶媒による剥離と超音波処理等、いくつかの方法で製造されてもよい。これらの方法の中でも、化学的方法が最も高い収率で得られることが判明している。例えば、h-窒化ホウ素は、ホウ素源及び窒化物源としてボラジンを用いて、単結晶遷移金属基板上で合成されてもよい。メラミン及び炭素繊維をマイクロ波で直接加熱することで、二次元の窒化炭素を調製することができる。金属-有機フレームワーク(MOF)は、100~140℃等の高温で原料を混合し、次いで分離することで、その場でのソルボサーマル合成法により製造できる。二次元の二硫化モリブデンは、機械的剥離、液体剥離、化学的剥離等、いくつかの方法で得ることができる。これらの方法の中でも、化学的剥離が高い収率をもたらすことが判明している。1つの例は、リチウムを用いて、遠心分離及び分離を用いて二硫化モリブデンを化学的に剥離する化学的剥離である。二次元の二硫化タングステンは、堆積-熱アニール法:タングステンを真空吸引又は堆積した後、硫黄を添加して熱アニールする方法で調製できる。ポリエチレングリコールをグラフトした酸化グラフェンをカップリングし、そのあと凍結乾燥することで、ポリマー/グラフェンエアロゲルを製造することができる。
【0059】
グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、水和グラフェン、アミノ系グラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化された還元型酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ヒドラジド官能化グラフェン、ヒドラジン官能化グラフェン、アミド官能性グラフェン、アミンPEG官能化グラフェン、グラフェン複合材料、及び/又はポリマーグラフェンエアロゲル等の任意のグラフェン系材料を含んでもよい。好ましくは、グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェンである。グラフェン及びその誘導体は、Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ)及び/又は任意の他の適切な製造業者から市販品として入手されてもよい。
【0060】
上記二次元材料は、単層又は多層、好ましくは多層の形態であってよい。この二次元材料は、単層、2層、又は複数層の二次元材料を含む粒子から形成されていてもよく、複数とは3層~10層と定義されてもよい。好適には、二次元材料の粒子は、1~50層、例えば、2~20層又は3~10層を含む。好適には、粒子の少なくとも30重量%が1~8層、例えば2~6層又は3~5層を含み、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は95重量%、又は98重量%又は99重量%がそのような数の層を含む。粒子内の層の数は、原子間力顕微鏡法(AFM又は透過型電子顕微鏡法(TEM))を用いて測定されてもよい(TT-AFM、AFM workshop Co.(エーエフエム・ワークショップ)、カリフォルニア州、米国)。
【0061】
その二次元材料の粒子における隣接する格子面間のd-間隔は、0.34nm~1000nm、例えば0.34nm~500nm、又は0.4~500nm、又は0.4~250nm、例えば0.4~200nm、又は0.4~150nm、又は0.4~100nm、又は0.4~50nm、又は0.4~25nm、又は0.4~20nm、又は0.4~18nm、例えば0.45~17nm、0.45~16nm、0.45~15nm、又は0.45~14nm、例えば0.45~10nmであってもよい。
【0062】
二次元材料のサイズ分布は、二次元材料の少なくとも30重量%が、1nm~20,000nm、例えば2~15,000nm、5nm~10,000nm、10nm~7,500nm、例えば15nm~3,500nm、20nm~3,000nm、又は25nm~3,000nm、好適には30nm~2,500nm、40nm~2,500nm、又は好ましくは50nm~2,500nmの横方向のサイズを有するようなものであってもよく、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は95重量%、又は98重量%、又は99重量%がそのような横方向のサイズを有するようなものであってもよい。GOのサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡法(TEM、JEM-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて測定されてもよい。
【0063】
例えば、二次元材料の横方向のサイズは、透過型電子顕微鏡法(TEM、JEM-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて測定されてもよく、同じサイズのナノシート(Mi)の数(Ni)が測定されてもよい。そして、平均サイズは、式1によって算出されてもよい。
【数1】
上記式中、Miはナノシートの直径であり、Niは直径Miを持つサイズの数である。
【0064】
二次元材料の酸素原子含有率は、1%~60%、例えば2%~50%、例えば3%~45%、又は5%~44%、又は10%~44%、好適には15%~44%の範囲であってもよい。
【0065】
上記二次元材料は、組成物(ペースト)の総重量に対して0.0001重量%~20重量%、例えば0.0002重量%~10重量%、例えば0.001~5重量%、好ましくは0.005~1重量%、例えば0.01重量%~0.5重量%、又は0.02重量%~0.5重量%の量で、コーティング組成物中に存在してもよい。
【0066】
担体は、水、有機溶媒又はそれらの混合物であってもよい。好適には、担体は、エタノール、プロパノール、グリコール、第三ブタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド/アルコール/グリコールの混合物、水/アルコール/グリコール、グリコール/水/第三ブタノール、水/アセトンの混合物、水/エタノール混合液、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(EG)、N-メチル-2-ピロリドン、イソプロピルアルコール、鉱油(ミネラルオイル)、ジメチルホルムアミド、テルピネオール、エチレングリコール、又はそれらの混合物から選択される。
【0067】
好ましくは、上記担体は水/エタノール、例えば50/50体積%の水/エタノール、水に任意に1種以上の安定剤、例えば酸化リチウムを加えたもの;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド又はテルピネオール、最も好ましくは、水:エタノール、例えば50:50体積%の水/エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミドである。好ましくは水である。
【0068】
酸素原子含有率が30%以下である二次元材料を含む組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよく、好適には、この組成物は、担体としての水と、界面活性剤とを含む。
【0069】
上記コーティング組成物は、活性層の特性を調整するための添加剤、例えば、他の金属及び/又は繊維、例えば、ナノストランドの形態の金属酸化物繊維;及び/又は、Au、Fe、Cu、Cu(OH)、Cd(OH)及び/又はZr(OH)等のドーパントを含有してもよい。このような添加剤は、二次元材料の細孔径及びチャネル構造を制御し、高水輸送速度のためのマイクロチャネルやナノチャネルを形成するために膜に加えられてもよい。
【0070】
好ましくは、上記組成物は、好適には金属酸化物ナノストランドの形態の繊維を含む。連続繊維又はステープル化繊維等、任意のタイプの適切な繊維が使用されてもよい。金属酸化物ナノストランドは、Cu(OH)、Cd(OH)及びZr(OH)のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0071】
ナノチャネルを形成するために使用される繊維は、0.1~1000nmの直径、例えば、0.1~850nm、0.2~750nm、0.3~500nm、又は0.4~250nm、又は0.45~150nm、又は0.45~100nm、0.45~75nm、好ましくは、0.45~50nm、又は0.45~10nm、好ましくは0.45~5nmの直径を有していてもよい。
【0072】
繊維の長さは、1nm~100μm、例えば2nm~75μm、又は3nm~50μm、例えば100nm~15μm、又は500nm~10μmの範囲にあってもよい。
【0073】
上記コーティング組成物が印刷によって付与されるためのものである場合の繊維の長さは、2nm~10μm、好ましくは100nm~10μm、より好ましくは200nm~10μmの範囲であってもよい。長さが大きすぎるとノズルの詰まりの原因となる可能性があり、短すぎるとケーブだけが発生する可能性がある。
【0074】
繊維は、二次元材料濃度の0.01%~150%、例えば0.01%~100%、0.01%~50%、0.01%~20%、好ましくは0.01%~10%の濃度で、コーティング組成物中に存在してもよい。
【0075】
コーティング組成物中の繊維の濃度は、0.0001mg/ml~10mg/ml、例えば、0.0005mg/ml~9mg/ml、0.001mg/ml~8mg/ml、例えば、0.005mg/ml~7mg/ml、0.007mg/ml~6mg/ml、例えば、0.008mg/ml~5.5mg/ml、0.009mg/ml~5mg/ml、例えば0.01mg/ml~4.5mg/ml、0.02mg/ml~4mg/ml、例えば0.03mg/ml~3.5mg/ml、0.04mg/ml~3mg/ml、例えば0.05mg/ml~2.5mg/mlであってもよい。
【0076】
好適には、使用前に、機械的除去又は溶解等により、繊維が除去される。例えば、コーティング組成物が基材に付与された後、繊維は、例えば、酸、例えば1~6のpHを有する酸、好ましくはエチレンジアミン四酢酸を用いて溶解することにより、例えば、膜を酸性溶液、例えば0.15M EDTA水溶液に好適には20分間浸漬し、任意に続いて脱イオン水で繰り返し洗浄することにより、除去されてもよい。有利なことに、金属酸化物ナノストランドのような繊維を使用することで、同様の塩/分子除去率を維持しながら、膜の水輸送速度を大幅に改善することができる。
【0077】
本発明のいずれかの態様のコーティング組成物は、機械的混合、例えばリーディングエッジ-トレーリングブレード撹拌(leading edge-trailing blade stirring)、セラミックボール粉砕及びミリング、Silverson高せん断ミキサーを用いた機械的混合、ガラスビーズによる機械的ミリング、例えばEiger Torranceモーターミル、Ultra Turraxホモジナイザー、乳鉢と乳棒による粉砕、機械的ロールミリング、超音波処理、非音波処理のうちの1つ又は組み合わせを用いて、1つ以上の成分を担体若しくは溶媒に分散又は溶解させることによって調製されてもよい。繊維は、分散状態で超音波処理又は機械的ブレンドによってコーティング組成物と混合されてもよい。
【0078】
コーティング組成物中の成分の凝集物や大きなサイズの成分を濾別するために、遠心分離機が使用されてもよい。
【0079】
コーティング組成物の予備分離は、所望のコーティング方法のために成分のサイズ及びサイズ分布を制御するために使用されてもよい。例えば、コーティング組成物を0.45μmのポリマー膜に通して、20μmのノズルサイズのインクジェットプリンタ用のインクを形成してもよい。
【0080】
本発明のいずれかの態様に係る方法は、コーティング組成物を、重力堆積、真空吸引又は吸引若しくは蒸着、ディップコーティング、圧力堆積、印刷、好ましくはデジタル印刷、例えばインクジェット印刷、エアロゾル印刷、3D印刷、オフセットリソグラフィ印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷技術、パッド印刷、バーコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スクリーンコーティング、グラビアコーティング、及び当業者に公知の他の印刷又はコーティング技術を用いて基材上にコーティングすることを含んでもよい。
【0081】
好ましくは、上記コーティング組成物は、バーコーティング、フレキソコーティング、インクジェット印刷、スクリーンコーティング又はスロットコーティングを用いて基材にコーティングされる。
【0082】
インクジェット印刷の方法は、例えば圧電性若しくは熱によるドロップオンデマンド(DOD)インクジェット印刷;又は連続インクジェット印刷(CIJ)であってもよく、好ましくは、インクジェット印刷はDODインクジェット印刷である。
【0083】
カートリッジの滴下量は、1pl~1000pl、又は1pl~500pl、又は2pl~250pl、又は3pl~100pl、好適には5~50pl、又は8~30pl、例えば10plであってもよい。インクジェット印刷法の電圧及び発射周波数は、コーティング組成物の波形に依存してもよい。発射電圧は、10~50Vであってもよい。発射周波数は、3kHz~30kHz、好適には約5kHzであってもよい。インクジェットプリンタのカートリッジ温度は、10℃~50℃、好適には約20℃~40℃であってもよい。インクジェットプリンタのステージ温度は、20℃~60℃、好適には約21℃であってもよい。
【0084】
コーティング速度は、コーティング付与(塗工)方法に依存する。例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、又はバーコーティングについてのコーティング速度は、0.01m/s~500m/s、例えば0.03m/s~450m/s、0.05m/s~400m/s、0.08m/s~350m/s、例えば0.1m/s~300m/s、0.12m/s~250m/s、0.15m/s~200m/s、0.17m/s~150m/s、例えば0.2m/s~100m/s、0.4m/s~70m/s、例えば0.5m/s~60m/s、0.7m/s~50m/s、0.8m/s~40m/s、0.9m/s~30m/s、例えば1m/s~20m/sであってもよい。
【0085】
真空吸引又は堆積用のコーティング組成物の粘度は、0.1~8000cPa、例えば0.5~7000cPa、又は0.5~6000cPa、又は0.5~5000cPa、例えば0.5~4000cPa、又は0.75~3000cPa、例えば0.75~2000cPa、又は0.75~1000cPa、又は0.75~800cPa、例えば1~700cPa、又は1~600cPa、好ましくは1~500cPa、又は1~250cPa、1~200cPa、1~100cPA、又は2~80cPaであってもよい。
【0086】
コーティング組成物の表面張力は、1~1000mN/m、例えば2~900mN/m、又は3~800mN/m、例えば4~700mN/m、又は5~600mN/m、又は6~500、好ましくは8~400mN/m、又は9~300mN/m、より好ましくは10~200mN/m、又は15~150mN/m、又は25~100mN/mであってもよい。
【0087】
コーティング組成物は、コーティングプロセスを繰り返すか、又はマルチコーティングプロセスを使用することにより、上記活性層が1つ以上のコーティング層から形成されるように、基材に付与されてもよい。
【0088】
コーティング層は、同じ又は異なるコーティング組成物の1つ以上からコーティングされてもよい。
【0089】
上記活性層は、複数のコーティング層を含んでもよく、その際、それらの層のうちの少なくとも1つが後続の層の堆積の前に処理された。好ましくは、各層は後続の層の堆積の前に処理された。複数のコーティング層を含む活性層の層は、処理の種類及び/又は処理の程度の点で、異なる処理を受けたものであってもよい。そのため、上記層のうちの少なくとも1つは、他の層と異なる機能性を有する二次元材料を含んでもよい。例えば、複数の層は、基材に隣接する活性層の上部から活性層の下部に向かって、二次元材料の還元レベルが減少する勾配を含んでもよい。勾配は逆方向に作られていてもよい。
【0090】
勾配の存在は、活性層と基材との間の密着性を高める可能性があり、また、膜全体の耐汚損性を高める可能性もある。
【0091】
勾配は直線的であっても、変動していてもよく、例えば、処理のレベルが最初に増加又は減少し、その後再び減少又は増加してもよく、規則的又は不規則なパターンであってもよい。
【0092】
変動した勾配は、膜全体の耐汚損性を向上させる可能性がある。変動した勾配は、分子を選択的にふるいにかけることができる可能性もある。
【0093】
二次元材料の処理
基材上の二次元材料を処理することにより、二次元材料の官能基に変化を与え、例えば、官能基の数、種及び/又は分布を変化させてもよい。例えば、処理によって二次元材料が還元されたり、二次元材料に官能性を付加することで二次元材料が機能化したりすることがある。
【0094】
二次元材料を官能化するためのその二次元材料の処理は、例えば、二次元材料の既存のヒドロキシル基、カルボキシル基及び/又はエポキシ基との反応によって、二次元材料の官能基を追加又は変更してもよい。官能化には、共有結合による修飾及び非共有結合による修飾が含まれる。共有結合による修飾方法は、求核置換反応、求電子置換反応、縮合反応、及び付加反応に分類することができる。
【0095】
上記二次元材料は、その二次元材料をレーザー放射線、マイクロ波放射線、紫外線、Eビーム線、プラズマ処理、電子線、軟X線、ガンマ線、アルファ線等の放射線、化学処理及び/又は熱処理に曝露することよって処理されてもよく、好適には還元されてもよい。レーザー放射線及びプラズマ処理が好ましい。
【0096】
基材上の二次元材料を化学的に、熱的に又は放射線により処理することは、化学的還元型GO(CRGO)、熱的還元型酸化グラフェン(TRGO)又は放射線還元型酸化グラフェン(RRGO)を形成するために使用することができる。
【0097】
二次元材料をレーザー放射線で処理するために使用されるレーザー源は、ガスレーザー、常磁性イオン、化学レーザー、金属蒸気レーザー、色素レーザー、自由電子レーザー、ガスダイナミックレーザー、ラマンレーザー、核励起レーザー、半導体レーザー、固体レーザーから選択されてもよく、例えば、窒素レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、キセノンイオンレーザー、炭酸ガスレーザー、一酸化炭素レーザー、エキシマレーザー、例えばフッ化水素レーザー、重水素レーザー、化学酸素ヨウ素レーザー、全気相ヨウ素レーザー、例えばスチルベンレーザー、クマリンレーザー、ローダミンレーザー、例えばヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウム水銀レーザー、ヘリウムセレンレーザー、ヘリウム銀レーザー、ストロンチウム蒸気レーザー、ネオン銅レーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー、金蒸気レーザー、マンガンレーザー、例えばルビーレーザー、Nd:YAGレーザー、NdCrYAGレーザー、Er:YAGレーザー、ネオジムYLF固体レーザー、ネオジムドープオルトバナジン酸イットリウムレーザー、ネオジムドープイットリウムカルシウムオキソボレートNd:YCa4O(BO3)3レーザー、ネオジムガラスレーザー、チタンサファイアレーザー、ツリウムレーザー、イッテルビウムレーザー、イッテルビウムドープガラスレーザー、ホルミウムYAGレーザー、クロムZnSeレーザー、セリウムドープリチウムストロンチウム(又はフッ化アルミニウムカルシウムレーザー)、プロメチウム147ドープリン酸塩ガラスレーザー、クロムドープクリソベリルレーザー、エルビウムドープ及びエルビウムイッテルビウム、3価ウランドープフッ化カルシウム固体レーザー、2価サマリウムドープフッ化カルシウムレーザー、Fセンターレーザー、例えば半導体レーザーダイオードレーザー、GaNレーザー、InGaNレーザー、AlGaInPレーザー、AlGaAsレーザー、鉛塩レーザー、垂直共振器面発光レーザー、量子カスケードレーザー、ハイブリッドシリコンレーザーから選択されてもよい。好ましくは、ガスレーザー、常磁性イオン、化学レーザー、金属蒸気レーザー、色素レーザー、又は自由電子レーザーである。
【0098】
レーザー放射線の波長は、150nm~360,000nm、例えば150nm~300,000nm、155nm~250,000nm、例えば150nm~200,000nm、例えば162nm~150,000nm、例えば165nm~100,000nm、例えば166nm~80,000nm、170nm~60,000nm、例えば175nm~45,000nm、例えば176nm~35,000nm、例えば177nm~25,000nm、例えば178nm~20,000nm、179nm~15,000nm、180nm~10,000nm、182nm~5,000nm、183nm~3,500nm、例えば185nm~3,000nm、188nm~2,000nm、189nm~1,000nm、例えば190nm~900nm、又は192nm~650nmであってもよい。
【0099】
レーザー放射線の強度は、1×10W/cm~1×1029W/cm、例えば5×10W/cm及び1×1028W/cm、1×10W/cm及び1×1027W/cm、1×10W/cm及び1×1026W/cm、例えば5×10W/cm及び1×1025W/cm、1×10W/cm及び1×1024W/cm、5×10W/cm及び1×1023W/cm、例えば1×10W/cm及び1×1022W/cm、5×10W/cm及び1×1021W/cm、例えば1×10W/cm及び1×1020W/cmの範囲にあってもよい。
【0100】
レーザースキャン数は、1及び1000、例えば1及び900、1及び800、1及び700、1及び600、1及び500、1及び400、1及び300、1及び200、1及び100、1及び90、1及び80、1及び70、1及び60、1及び50、1及び40、1及び35、1及び30、例えば1及び25、1及び20、例えば1及び15であってもよい。
【0101】
レーザー走査速度は、0.1mm/s~1000mm/s、例えば0.5mm/s~900mm/s、1mm/s~850mm/s、1.5mm/s~800mm/s、2mm/s~750mm/s、2.5mm/s~700mm/s、例えば3mm/s~650mm/s、5mm/s~600mm/s、6mm/s~550mm/s、例えば7mm/s~500mm/s、8mm/s~450mm/s、8.5mm/s~400mm/s、例えば9mm/s~350mm/s、10mm/s~300mm/s、例えば11mm/s~250mm/sであってもよい。
【0102】
レーザーエネルギー密度(フルエンス)は、0.001J/cm~100J/cm、例えば0.003J/cm~90J/cm、0.005J/cm~85J/cm、0.007J/cm~80J/cm、0.01J/cm~75J/cm、0.02J/cm~70J/cm、0.03J/cm~65J/cm、例えば0.04J/cm~60J/cm、0.05J/cm~55J/cm、0.055J/cm~50J/cm、例えば0.06J/cm~45J/cm、0.065J/cm~40J/cm、例えば0.07J/cm~35J/cm又は0.07~30J/cmであってもよい。
【0103】
レーザー放射線のパルス長は、フェムト秒からナノ秒、マイクロ秒、連続波のいずれであってもよい。
【0104】
レーザービームの直径又は幅は、0.1nm~1cm、例えば0.5nm~0.7cm、1nm~0.5cm、5nm~0.2cm、例えば10nm~0.1cm、15nm~500μm、16nm~700μm、17nm~100μm、18nm~80μm、例えば20nm~15μmの範囲であってもよい。
【0105】
レーザー放射線は、周囲の雰囲気や真空吸引や雰囲気、又は窒素、ヘリウム、アルゴン若しくは二酸化炭素等の不活性ガスの雰囲気で行ってもよい。
【0106】
基材上の二次元材料は、好適にはその二次元材料を還元するために、化学処理に供されてもよい。
【0107】
基材上の二次元材料を還元するために、還元剤の溶液が使用されてもよい。その化学溶液は、好適にはH、NaOH及び/又はヒドラジン(N)、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムボロハイドライド、塩酸、メラトニン、ポリフェノール、ビタミンC、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、NaSO、NaHSO、NaS、NaS9HO、SOCl、及びSO等の含硫黄化合物、好ましくはヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム及び/又はアスコルビン酸から選択される処理剤を含んでいてもよい。
【0108】
溶液中の処理剤の濃度は、選択された処理剤に依存する。例えば、水中のH、NaOH及び/又はN等の処理剤の量は、溶液の総重量に対して0.01重量%~90重量%、例えば0.05重量%~85重量%、0.09重量%~80重量%、0.1重量%~75重量%、例えば0.5重量%~70重量%、0.9重量%~65重量%、1重量%~60重量%、1.5重量%~55重量%、1.7重量%~50重量%、例えば2重量%~45重量%、2.5重量%~40重量%、2.7重量%~35重量%、例えば3重量%~30重量%の範囲であってもよい。
【0109】
処理剤は、コーティング組成物を基材に適用する前に、コーティング組成物に添加されてもよい。
【0110】
処理のための温度は、0~200℃、例えば10~150℃、例えば15~120℃、又は16~110℃、例えば17~100℃、例えば18~90℃、好ましくは19~90℃であってもよい。
【0111】
好適には、二次元材料の処理は、処理剤を膜に通過させることを含み、かつ/又は膜に処理剤を含浸させてもよい。
【0112】
処理は、コーティング組成物若しくはコーティング後の膜の処理に適用される水熱等の熱処理を含んでもよいし、又はそれからなってもよい。熱処理は、窒素等の不活性雰囲気下で、及び/又は、少なくとも80℃、例えば少なくとも100℃、例えば100℃~800℃、例えば100℃~700℃、100℃~500℃、100℃~400℃、100℃~500℃、好ましくは100℃~450℃の温度で適用されてもよい。
【0113】
有利には、処理された膜は、改善された選択的ふるい分け、改善されたサイズ排除、改善されたイオン除去、化合物除去、油除去、バクテリア除去、ウイルス除去、嚢胞除去等の改善された除去率、例えば改善された輸送速度等の改善された性能を提供してもよい。
【0114】
処理された二次元材料の特徴は、コーティング組成物の二次元材料に関連して、すなわち、前処理された形態の二次元材料に関連して、例えば、二次元材料の種類、二次元材料の形態、二次元材料のd-間隔、二次元材料のサイズ分布、及び/又は二次元材料の原子含有率に関しては、上で規定されたような特徴のいずれか1つ以上に従ったものであってよい。
【0115】
有利には、処理された膜は、所望の親水性に調整され、かつ/又は、膜の電気伝導性及び/又は熱伝導性を高めるように調整されることが可能である。
【0116】
処理された膜の親水性は、処理後に表面に残る官能基又は酸素若しくは窒素等の極性原子の割合によって制御されてもよい。
【0117】
親水性は、X線光電子分光法を用いて、当業者に公知の方法に従って、処理された二次元材料に残っている官能基の数を算出すること、又は酸素若しくは窒素等の極性原子の割合を測定することによって経験的に定量化することができる。
【0118】
二次元材料、好適にはレーザー処理された二次元材料の酸素原子又は窒素原子の含有率は、0%~65%、例えば0.5%~50%、0.8%~48%、1%~49%、1.2%~46%、1.5%~45%、例えば1.8%~44%、2.0%~44%、2.2%~44%、2.2%~43%、例えば2.5%~43%、3.0%~43%、例えば3.5%~43%又は10~43%であってもよい。
【0119】
その処理された二次元材料は、0.1W/mK~6,000W/mK、例えば1W/mK~5,500W/mK、1.5W/mK~5,000W/mK、例えば2W/mK~4,500W/mK、2.5W/mK~4,100W/mK、3W/mK~3,800W/mK、例えば3.5W/mK~3,300W/mK、4W/mK~3,000W/mK、例えば4.5W/mK~2,500W/mK、5W/mK~2,000W/mK、5.5W/mK~1,700W/mK、例えば6W/mK~1,500W/mK、6.5W/mK~1,300W/mK、7W/mK~1,100W/mK、8W/mK~900W/mK、9W/mK~800W/mKの範囲の熱伝導率を有してもよい。
【0120】
処理された二次元材料は、好ましくは、9W/mK~800W/mKの熱伝導率を有する。
【0121】
処理された二次元材料は、1×10-6S/m~600,000S/m、例えば5×10-6S/m~300,000S/m、8×10-6S/m~100,000S/m、1×10-5S/m~50,000S/m、例えば3×10-5S/m~28,000S/m、8×10-5S/m~25,000S/m、1×10-4S/m~24,000S/m、例えば3×10-4S/m~23,000S/m、5×10-4S/m~20,000S/m、1×10-3S/m~17,000S/m、5×10-3S/m~14,000S/m、例えば1×10-2S/m~10,000S/m、5×10-2S/m~8,000S/m、例えば0.1S/m~7,000S/m、1S/m~6,000S/mの範囲の電気伝導率を有していてもよい。
【0122】
好適には、処理された官能化された二次元材料は、二次元材料の処理前に比べて、少なくとも1種類の官能基の数が多い。その官能化された処理された二次元材料は、アミノ基;長鎖(例えばC16~C50)の脂肪族アミノ基等の脂肪族アミノ基;ポルフィリン官能化二級アミノ基、及び/又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン基等の3-アミノプロピルトリアルコキシシラン基を含んでいてもよい。好ましくは、アミノ官能化された処理された二次元材料は、アミノ官能化された処理された酸化グラフェンである。このような官能化は、第二鉄酸の選択的なふるい分けの改善をもたらすことができる。官能化された処理された二次元材料は、既存の-COOH基、-OH基、及びC-O-C基を利用した酸化グラフェン(GO)の処理から形成されてもよい。
【0123】
官能化された処理されたグラフェン又はその誘導体は、以下のものであってもよい:アミノ系グラフェン(CONH(CH)NH、NH-TTP、アルキルアミン官能化GO、及び/又はアンモニア官能化酸化グラフェンの添加によるもの等)、イソシアネート修飾GO(-CO-NHR基等)、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ポリマーグラフェンエアロゲル、アジド、アルキン官能化GO、ポリ(アリルアミン)修飾、DNA又はタンパク質修飾(非共有結合)等。官能化された処理されたグラフェン又はその誘導体は、NO、-NH、-SOH、ハライド、-N、-MgBr及び/又は-SH基等の、二次元材料のエッジに向かって付着した官能基を含んでいてもよい。好適には、官能化された処理されたグラフェン又はその誘導体は、未処理のグラフェン又はその誘導体と比較して、板状体のエッジに向かって、より多くのこのような基を含んでいる。活性層は、ポリスチレン及び/若しくはポリエーテルスルホン等のポリマー、並びに/又はピレン及びその誘導体、テトラシアノキノジメンタン、ペリレン誘導体、及び/若しくはその他の芳香族種等の小分子との非共有結合をもたらすπ-π相互作用を回復させた官能化された還元型酸化グラフェンを含んでもよい。
【0124】
活性層の厚さは、少なくとも0.5nm、例えば少なくとも0.7nm又は少なくとも0.9nmであってもよい。活性層は、1nm~8000nm、例えば2~5000nm、又は3~4000nm、例えば4~3000nm、又は5~2000nm、又は5~1000nm、又は10~500nm、例えば10~400nm、又は10~200nm、好ましくは10~100nm又は5~60nmの厚さを有してもよい。
【0125】
好ましくは、上記活性層は実質的に二次元材料から、好適にはグラフェン又はその誘導体から、より好ましくは処理されたグラフェン又はその誘導体形成されている。
【0126】
活性層又は各コーティング層における二次元材料の量は、少なくとも1重量%、又は少なくとも5重量%、例えば5~100重量%、例えば10~100重量%、15~99重量%、20~99.9重量%、20~99.8重量%、50~99.7重量%、80~99.7重量%、好ましくは85~99.7重量%であってもよい。
【0127】
活性層は、活性層の特性を調整するための添加剤、例えば他の金属及び/又は繊維、例えば金属酸化物繊維、例えばナノストランド及び/又はドーパント、例えばAu、Fe、Cu、Cu(OH)、Cd(OH)及びZr(OH)を含んでいてもよい。このような添加剤は、層間距離に影響を与えてもよく、かつ/又は高い水輸送速度のためのマイクロチャネル若しくはナノチャネルを形成してもよい。
【0128】
上記活性層は、膜の製造時に繊維を使用しその後で除去したり、かつ/若しくは二次元材料を処理したりすることによって好適に形成されたマイクロチャネル又はナノチャネルをさらに含んでいてもよい。有利なことに、活性層内のマイクロチャネル及び/又はナノチャネルの存在は、水流束(水輸送量)を著しく増加させ、膜の耐汚損特性を向上させることが判明している。
【0129】
その二次元材料の処理された部分は、二次元材料の全体であってもよいし、二次元材料の一部であってもよい。例えば、活性層は、少なくとも1つのコーティング層の表面で、活性層の表面で、少なくとも1つのコーティング層を介して、及び/又は活性層全体を介して処理された二次元材料を含んでもよい。二次元材料の部分的な処理は、例えば、マイクロチャネル又はナノチャネル等のチャネルを形成するために使用されてもよく、これらのチャネルは、閉ループ又は開ループ、電子回路のパターン、グリッド(格子)、及び/又は芸術的なパターンの形態にあってもよい。
【0130】
ナノチャネル又はマイクロチャネルは、0.1~1000nmの直径、例えば、0.1~850nm、0.2~750nm、0.3~500nm、又は0.4~250nm、又は0.45~150nm、又は0.45~100nm、0.45~75nm、好ましくは0.45~50nm、又は0.45~10nm、好ましくは0.45~5nmの直径を有していてもよい。
【0131】
ナノチャネルの存在は、ナノチャネルを含まない活性層と比較して、輸送速度を少なくとも50%、例えば100%、又は150%、又は500%、又は1000%増加させてもよい。
【0132】
活性層にマイクロチャネル及び/又はナノチャネルが存在すると、膜の寿命又は故障を監視するために使用できる電気伝導率や熱伝導率等の機能を提供することができる。例えば、膜の故障は、導電性チャネルへの損傷により、チャネルのその部分での電圧又は電流の強度が変化することで検出可能であってもよい。
【0133】
堆積(蒸着)で基材上に堆積した活性層の厚さは、一定量の組成物の濃度、例えば0.001mg/mlを100ml用いることで制御されてもよい。
【0134】
本発明の膜は、任意のタイプの分離のためのものであってもよい。好適には、当該膜は、脱塩又は油水分離等の水分離のためのもの、又は化学的な分離のためのものである。
【0135】
塩化物はポリマー基材に有害である可能性があり、コーティングされた膜は塩化物をふるい、塩化物とポリマー基材との接触を減らす可能性があり、基材の寿命を延ばす可能性がある。
【0136】
本明細書で使用される用語「ラメラ構造」は、少なくとも2つの重なり合う層を有する構造を意味する。本明細書で使用される用語「活性層」は、層を横切る分離を提供するように動作可能な層を意味する。本明細書で使用される用語「二次元材料」は、100nm未満の少なくとも1つの次元を有する材料を意味する。
【0137】
本明細書において、脂肪族という用語は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、完全に飽和していてもよく、又は1つ以上の不飽和単位を含んでいてもよいが、芳香族ではない炭化水素部分を意味する。「不飽和」という用語は、1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を有する部位を意味する。それゆえ、「脂肪族」という用語は、アルキル基、脂環式基、アルケニル基又はアルキニル基を包含することを意図している。脂肪族基は、好ましくは、1~15個の炭素原子、例えば、1~14個の炭素原子、1~13個の炭素原子を含み、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13個の炭素原子を有する脂肪族基である。
【0138】
アルキル基は、1~15個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基は、好ましくは1~14個の炭素原子、1~13個の炭素原子を含み、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13個の炭素原子を有するアルキル基である。具体的には、アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル等、及びこれらの異性体が挙げられる。
【0139】
アルケニル基及びアルキニル基はそれぞれ、2~12個の炭素原子、例えば2~11個の炭素原子、2~10個の炭素原子、例えば2~9個、2~8個又は2~7個の炭素原子を含む。このような基は、2つ以上の炭素-炭素不飽和結合を含んでいてもよい。
【0140】
脂環式基は、3~15個の炭素原子、例えば3~14個の炭素原子若しくは3~13個の炭素原子を有する飽和若しくは部分的に不飽和の環状脂肪族単環式又は多環式(縮合、橋架け及びスピロ縮合を含む)の基、すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13個の炭素原子を有する脂環式基であってもよい。好ましくは、脂環式基は、3~12個、より好ましくは3~11個、さらに好ましくは3~10個、さらにより好ましくは3~9個の炭素原子、又は3~8個の炭素原子、又は3~7個もしくは3~6個の炭素原子を有する。用語「脂環式」は、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及びシクロアルキニル基を包含する。脂環式基は、-CH-シクロヘキシル等の1つ以上の連結又は非連結のアルキル置換基を有する脂環式環を含んでもよいことが理解されるであろう。具体的には、C3~15シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、イソボルニル及びシクロオクチルが挙げられる。
【0141】
アリール基は、6~14個の炭素原子、例えば6~13個の炭素原子、6~12個の炭素原子、若しくは6~11個の炭素原子を有する単環式又は多環式の基である。アリール基は、好ましくは「C6~12アリール基」であり、6、7、8、9、又は10個の炭素原子で構成されるアリール基であり、単環式環基、又は二環式環基等の縮合環基を含む。具体的には、「C6~10アリール基」の例としては、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル又はアズレニル等が挙げられる。インダン及びテトラヒドロナフタレン等の縮合環もアリール基に含まれるということに留意されたい。
【0142】
ヘテロ脂肪族及びヘテロアリールにおける用語「ヘテロ」の使用は、当該技術分野で周知である。ヘテロ脂肪族及びヘテロアリールは、本明細書で定義されているように、それぞれ該当する基の鎖及び/若しくは環において、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている脂肪族基又はアリール基を指す。ヘテロ原子は、硫黄及び/又は酸素のうちの1つ以上であってもよい。
【0143】
ヘテロ原子(複数可)は、多官能アミンのアミン基が多官能アミン反応性と反応する能力を取り除かない任意の形態にあってよい。ヘテロ原子(複数可)は、C~C15アルコキシ等のエーテル基;末端の場合はヒドロキシル基;硫黄及び酸素の複素環;及び/又は少なくとも2つの硫黄原子を含むポリスルフィド等のポリスルフィド基の形態であってもよい。
【0144】
好ましくは、アルコキシ基は、1~8個の炭素原子を含み、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、及びそれらの異性体から好適に選択される。
【0145】
本願明細書で使用する場合、特に明示的に規定しない限り、値、範囲、量、又はパーセンテージを表す数字等のすべての数字は、たとえ「約」という語が明示的に現れていなくても、「約」という語が前に置かれているかのように読むことができる。「約」は、記載された値の±10%と定義されてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲はすべて、その中に含まれるすべての部分範囲を含むことが意図されている。単数形は複数形を包含し、その逆もまた然りである。例えば、本明細書では、「a」基材、「an」活性層、「a」コーティング組成物、「a」二次元材料等に言及されているが、これらの各成分の1つ以上及び他の任意の成分を使用することができる。本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマー、ならびにホモポリマー及びコポリマーの両方を指し、接頭辞「ポリ」は2つ以上を意味する。例えば含む、及び同様の用語は、例えば、含むがこれに限定されないことを意味する。加えて、本発明を「…を含む」という用語で説明してきたが、本明細書に詳述されているプロセス、材料、及び水性コーティング組成物は、「本質的に…からなる」又は「…からなる」と記載されてもよい。
【0146】
本明細書に含まれるすべての特徴は、任意の組み合わせで上記の態様のいずれかと組み合わせられてもよい。
【0147】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明の実施形態がどのように実施されうるかを示すために、これより、例として以下の実施例を参照することにする。
【実施例
【0148】
例1 - 異なるグラフェン系材料を用いた多層コーティングによる還元型酸化グラフェン膜の調製
酸素原子含有率が40%の酸化グラフェンを1mg/mlで含むインクを、フレキソコーティング技術を用いて、細孔径25nmのポリスルホン基材にコーティングし、コーティングの厚さは約20nmであった。常温常圧で乾燥させた後、酸素原子含有率10%の還元型酸化グラフェンを1mg/mlで含む別のインクを、フレキソコーティング法を用いて、上記からのコーティングした酸化グラフェンの表面にコーティングし、コーティングの厚さは約20nmであった。次いで得られた膜の性能を評価したところ、還元型酸化グラフェンのみをコーティングした場合と比較して、寿命が100%、色素分子除去率が50%向上することが判明した。
【0149】
例2 - 基材処理及び異なるグラフェン系材料を用いた還元型酸化グラフェン膜の調製
細孔径25nmのポリスルホン基材を、0.25M NaOHに20分間浸した後、脱イオン水で洗浄し、40℃で1時間乾燥させた。次に、酸素原子含有率が40%の酸化グラフェンを1mg/mlで含むインクをフレキソコーティング技術を用いて上記基材にコーティングした。コーティングの厚さは約20nmである。常温常圧で乾燥させた後、酸素原子含有率が10%の還元型酸化グラフェンを1mg/mlで含む別のインクを、フレキソコーティング法を用いて、上記からのコーティングした酸化グラフェンの表面にコーティングした。コーティングの厚さは約20nmである。次いで得られた膜の性能を評価したところ、還元型酸化グラフェンのみをコーティングした場合と比較して、寿命が200%、色素分子除去率が50%向上することが判明した。
【0150】
例3 - 後処理法による還元型酸化グラフェン膜の調製
細孔径25nmのポリスルホン基材を、0.25M NaOHに20分間浸した後、脱イオン水で洗浄し、40℃で1時間乾燥させた。次に、酸素原子含有率が40%の酸化グラフェンを1mg/mlで含むインクをフレキソコーティング技術を用いて上記基材にコーティングした。コーティングの厚さは約40nmである。常温常圧で乾燥させた後、このコーティングした表面を0.1Mの水素化ホウ素ナトリウム水溶液に0.5時間浸漬した。次いで得られた膜の性能を評価したところ、コーティングしていない基材の0%に比べて、60%の色素分子除去率を示すことが判明した。
【0151】
例4 - 後処理による分離膜の調製
細孔径25nmのポリスルホン基材を0.25M NaOHに20分間浸漬した後、脱イオン水で洗浄し、40℃で1時間乾燥させた。次いで、酸素原子含有率が40%の酸化グラフェンを1mg/mlで含み、直径2nm及び長さ1μmのCu(OH)ナノストランド0.5mg/mlを混合したインクを、フレキソコーティング技術を用いて基材にコーティングし、コーティングの厚さは約100nmであった。常温常圧で乾燥させた後、このコーティングした表面を0.1Mの水素化ホウ素ナトリウム水溶液に0.5時間浸してグラフェン酸化物を還元し、0.15Mのエチレンジアミン四酢酸と共に濾過してナノストランドを溶解し、ナノチャネルを形成した。次いで得られた膜の性能を評価したところ、酸化グラフェンをコーティングした膜と比較して、輸送速度が少なくとも300%、色素分子除去率が40%と大幅に向上することが判明した。
【0152】
本願に関連して本明細書と同時又は先行して提出され、本明細書とともに公開されているすべての書類及び文書に注意を払い、そのような書類及び文書の内容はすべて参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0153】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示されているすべての特徴、及び/又は、そのように開示されている任意の方法又はプロセスのすべての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。
【0154】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示されている各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同じ目的、同等の目的、又は類似の目的を果たす代替の特徴で置き換えられてもよい。従って、特に明示しない限り、開示されている各特徴は、同等又は類似の特徴の一般的な系列の一例に過ぎない。
【0155】
本発明は、上述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つ又は任意の新規の組み合わせ、あるいは、そのように開示された任意の方法又はプロセスの工程の任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせにも及ぶ。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の第1の態様によれば、好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、前記活性層が、処理された二次元材料の少なくとも2つの層を含むラメラ構造を含む分離膜が提供される。
【請求項2】
分離膜、好適には請求項1に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意に前記基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 任意に二次元材料を含む組成物の第1層を形成し、次いで前記二次元材料を含む組成物のさらなる層を前記第1層に付与することにより、前記基材を前記二次元材料を含む組成物と接触させる工程であって、層は、任意に、後続の層の付与の前に乾燥されてもよい工程と、
c. 任意に、前記膜を乾燥する工程と、
d. 工程(b)で付与された前記二次元材料を処理して、レーザー放射線等の高エネルギー放射線、化学物質、高温、熱エネルギー及び/又は圧力を前記二次元材料に印加すること等により、任意に、前記組成物のさらなる層の付与及び後続の処理の前に、前記組成物の第1層を処理することにより、前記二次元材料の官能基の変化を引き起こす工程と、
e. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項3】
好適には水分離のための分離膜であって、多孔質基材層と、前記基材層の少なくとも一部の上に配置された活性層とを含み、前記活性層は、各々二次元材料を含む少なくとも2つのコーティング層を含み、前記活性層の前記コーティング層のうちの少なくとも1つは前記活性層の別のコーティング層とは異なる分離膜。
【請求項4】
分離膜、好適には請求項1又は請求項3に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を、任意に前記基材を化学処理及び/又は放射線処理、及び/又はプラズマ処理、及び/又は熱処理で処理することにより、準備する工程と、
b. 前記基材を二次元材料を含む組成物と接触させて、第1のコーティング層を形成する工程と、
c. 二次元材料を含む1つ以上の組成物の1つ以上のさらなるコーティング層を前記第1層に付与し、任意に後続の層の付与の間に前記層のうちの1つ以上を乾燥する工程と、
d. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含み、前記複数のコーティング層のうちの少なくとも1つは別のコーティング層とは異なる方法。
【請求項5】
前記活性層が、1~100nmの直径を有するナノチャネルを含む請求項1又は請求項3に記載の膜。
【請求項6】
分離膜、好適には請求項1、請求項3又は請求項5に記載の膜の製造方法であって、
a. 任意に基材を準備する工程と、
b. 前記基材を、二次元材料及びナノ繊維を含むコーティング組成物と接触させる工程と、
c. 工程(b)によって製造された前記膜を弱酸、例えば1~6のpHを有する酸と接触させることにより、前記ナノ繊維を除去する工程と、
d. 前記二次元材料を、好ましくはレーザー処理、化学処理、及び/又は熱処理によって処置する、好ましくは還元する工程と、
e. 任意に、前記膜を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記基材が、ポリマー基材、無機フィラーを含むポリマー基材、セラミック基材、複合材基材、薄膜複合材基材等の金属基材、無機基材、無機-有機基材、金属基材、織られたモノフィラメント若しくは織られたマルチフィラメント等の織られたフィラメント、及び/若しくは不織基材、並びに/若しくはキャスト基材を含む、かつ/又は
前記基材が、多孔質フィルム、多孔質プレート、多孔質中空繊維基材、管状繊維基材、嵩高い多孔質材料の形態にあり、好ましくはフィルムの形態にある、かつ/又は
前記ポリマー基材が、ポリアミド(PA)、ポリスルホン(PSf)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリスルホン担持ポリアミド複合材基材等の薄膜複合材(TFC)のうちの1つ以上から選択される、かつ/又は
前記基材の細孔の平均サイズが0.1nm~30,000nm、好ましくは200nm~5000nmであってもよい請求項1、請求項3又は請求項5に記載の膜。
【請求項8】
前記活性層が、前記二次元材料を含むコーティング組成物から形成されている、かつ/又は
前記コーティング組成物が、担体及び/若しくは添加剤と共に二次元材料を含む、かつ/又は
前記二次元材料が、グラフェン若しくはその誘導体、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、好適にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、ポリマー、グラフェンエアロゲル、二次元金属-有機フレームワーク、三次元金属-有機フレームワーク、並びに/若しくは遷移金属ジカルコゲナイド及びその誘導体のうちの1つ以上を含む請求項1、請求項3、請求項5又は請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記二次元材料がグラフェン若しくはその誘導体を含む、かつ/又は
前記グラフェン若しくはその誘導体が、酸化グラフェン、酸化グラフェンからの還元型酸化グラフェン、ボトムアッププロセスによる還元型酸化グラフェン、グラファイトからの処理による酸化されたグラフェン、官能化グラフェン、官能化酸化グラフェン、官能化された還元型酸化グラフェン、及び/若しくは官能化された酸化されたグラフェン、これらの複合体、並びにそれらの分散体のうちの1つ以上から選択される、かつ/又は
前記グラフェン若しくはその誘導体が、1つ以上の酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、水和グラフェン、アミノ系グラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化された還元型酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ヒドラジド官能化グラフェン、ヒドラジン官能化グラフェン、アミド官能性グラフェン、アミンPEG官能化グラフェン、グラフェン複合材料、及び/若しくはポリマーグラフェンエアロゲルから選択される、かつ/又は
前記グラフェン若しくはその誘導体が酸化グラフェンである、かつ/又は
前記二次元材料の酸素原子含有率が、1%~60%、例えば2%~50%、例えば3%~45%、若しくは5%~44%、若しくは10%~44%、好ましくは15%~44%の範囲にある、かつ/又は
前記組成物が、好ましくはCu(OH) 、Cd(OH) 及びZr(OH) のうちの1つ以上から選択される、好適には金属酸化物ナノストランドの形態の繊維を含む、かつ/又は
前記コーティング組成物が、バーコーティング、フレキソコーティング、インクジェット印刷、スクリーンコーティング若しくはスロットコーティングを用いて前記基材にコーティングされる請求項1から請求項のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項10】
前記活性層が、複数のコーティング層を含んでもよく、好ましくは前記複数の層のうちの少なくとも1つが後続の層の付与の前に処理されたものである、かつ/又は
前記活性層の前記コーティング層が、前記二次元材料内で前記活性層にわたる漸減する、漸増する若しくは変動する還元レベルの勾配を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項11】
前記二次元材料が、前記二次元材料をレーザー放射線、マイクロ波放射線、紫外線、Eビーム線、プラズマ処理、電子線、軟X線、ガンマ線、アルファ線等の放射線、化学処理、圧力処理及び/若しくは熱処理に、好ましくはレーザー放射線及び/若しくはプラズマ処理に曝露することよって処理される、好適には還元される、かつ/又は
前記二次元材料が、前記二次元材料をレーザー放射線、好ましくはガスレーザー、常磁性イオン、化学レーザー、金属蒸気レーザー、色素レーザー、若しくは自由電子レーザーに曝露することによって処理される、好適には還元される、かつ/又は
前記二次元材料が、前記二次元材料を、好ましくはH 、NaOH及び/若しくはヒドラジン(N )、アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムボロハイドライド、塩酸、メラトニン、ポリフェノール、ビタミンC、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、Na SO 、NaHSO 、NaS 、Na S9H O、SOCl 、及びSO 等の硫黄含有化合物、好ましくはヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム及び/若しくはアスコルビン酸等の処理剤の適用による化学処理に供することによって処理される、好適には還元される、かつ/又は
前記二次元材料が、前記二次元材料を、前記コーティング組成物若しくはコーティング後の前記膜の処理に適用される水熱等の熱処理に供することによって処理され、好適には還元され、好ましくは熱処理が、窒素等の不活性雰囲気下で、及び/若しくは少なくとも80℃、例えば少なくとも100℃、例えば100℃~800℃、例えば100℃~700℃、100℃~500℃、100℃~400℃、100℃~500℃、好ましくは100℃~450℃の温度で適用される、かつ/又は
処理された前記二次元材料の酸素原子及び/若しくは窒素原子の含有率が、0%~65%、例えば0.5%~50%、0.8%~48%、1%~49%、1.2%~46%、1.5%~45%、例えば1.8%~44%、2.0%~44%、2.2%~44%、2.2%~43%、例えば2.5%~43%、3.0%~43%、好ましくは3.5%~43%若しくは10~43%である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項12】
前記活性層が、第1の酸素含有率を有する二次元材料を含む第1層と、第2の酸素含有率を有する二次元材料を含む第2層とを含み、前記第1及び第2の酸素含有率が異なる、かつ/又は
前記第1の酸素含有率が30~50%であり、前記第2の酸素含有率が1~30%である、かつ/又は
前記第1の酸素含有率を含む層が、前記基材と前記第2の酸素含有率を含む前記第2層との間に配置されている、かつ/又は
処理された前記二次元材料が、0.1W/mK~6,000W/mK、例えば1W/mK~5,500W/mK、1.5W/mK~5,000W/mK、例えば2W/mK~4,500W/mK、2.5W/mK~4,100W/mK、3W/mK~3,800W/mK、例えば3.5W/mK~3,300W/mK、4W/mK~3,000W/mK、例えば4.5W/mK~2,500W/mK、5W/mK~2,000W/mK、5.5W/mK~1,700W/mK、好ましくは6W/mK~1,500W/mK、6.5W/mK~1,300W/mK、より好ましくは7W/mK~1,100W/mK、8W/mK~900W/mK、最も好ましくは9W/mK~800W/mKの範囲の熱伝導率を有する、かつ/又は
処理された前記二次元材料が、1×10 -6 S/m~600,000S/m、例えば5×10 -6 S/m~300,000S/m、8×10 -6 S/m~100,000S/m、1×10 -5 S/m~50,000S/m、例えば3×10 -5 S/m~28,000S/m、8×10 -5 S/m~25,000S/m、1×10 -4 S/m~24,000S/m、例えば3×10 -4 S/m~23,000S/m、5×10 -4 S/m~20,000S/m、好ましくは1×10 -3 S/m~17,000S/m、5×10 -3 S/m~14,000S/m、より好ましくは1×10 -2 S/m~10,000S/m、5×10 -2 S/m~8,000S/m、例えば0.1S/m~7,000S/m、最も好ましくは1S/m~6,000S/mの範囲の電気伝導率を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項13】
処理された前記二次元材料が、アミノ基;長鎖(例えばC16~C50)の脂肪族アミノ基等の脂肪族アミノ基;ポルフィリン官能化二級アミノ基、及び/若しくは3-アミノプロピルトリエトキシシラン基等の3-アミノプロピルトリアルコキシシラン基を含み、好ましくはアミノ官能化された処理された二次元材料が、アミノ官能化された処理された酸化グラフェンである、かつ/又は
処理された前記二次元材料が、アミノ系グラフェン(CONH(CH )NH 、NH -TTP、アルキルアミン官能化GO、及び/若しくはアンモニア官能化酸化グラフェンの添加によるもの等)、イソシアネート修飾GO、(-CO-NHR基等)、オクタデシルアミン官能化された還元型酸化グラフェン、ポリマーグラフェンエアロゲル、アジド-、アルキン官能化GO、ポリ(アリルアミン)修飾、DNA若しくはタンパク質修飾(非共有結合)を含む、かつ/又は
処理された前記二次元材料が、NO 、-NH 、-SO H、ハロゲン化物、-N 、-MgBr及び/若しくは-SH基等の前記二次元材料のエッジに向かって付着した官能基を含み、好ましくは前記官能化された処理された二次元材料が、未処理の二次元材料と比較して、板状体のエッジに向かって、より多くのこのような基を含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項14】
前記活性層が、前記膜の製造時に繊維を使用しその後で除去し、及び/若しくは前記二次元材料を処理することによって好適に形成されたマイクロチャネル若しくはナノチャネルを含む、かつ/又は
前記二次元材料の処理が、チャネル、例えばマイクロチャネル若しくはナノチャネルを形成し、これらのチャネルが、閉ループ若しくは開ループ、電子回路のパターン、グリッド及び/若しくは芸術的なパターンの形態にある、かつ/又は
前記ナノチャネル若しくはマイクロチャネルが、0.1~1000nmの直径、例えば0.1~850nm、0.2~750nm、0.3~500nm、好ましくは0.4~250nm、若しくは0.45~150nm、若しくは0.45~100nm、0.45~75nm、より好ましくは0.45~50nm若しくは0.45~10nm、最も好ましくは0.45~5nmの直径を有してもよい請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【請求項15】
前記膜が、油/水分離、分子分離、水域環境中の医薬残留物を除去するための医薬分離、薬物分離、バイオフィルトレーション、例えば微生物と水との分離、脱塩、好適には海水脱塩、若しくは選択的イオン分離、及び核廃水から核放射性元素を除去するための核廃水分離、重金属除去、バイオリファイナリー、洗濯水処理、乳濃縮、損傷した腎臓フィルタを交換するための生理的分離及び血液分離等の血液処理、並びに/若しくは植物、例えば草等の供給源に由来するバイオプラットフォーム分子の分離、あるいは家庭用水処理、工業用水処理、例えば工業用洗濯排水、食品・飲料製造、化学製造排水、製紙処理、埋立地からの排水、農業、酪農・チーズ製造(チーズ製造からの塩水処理を含む)、牛乳濃縮、ジャガイモ等の作物からのタンパク質回収のためのものである、かつ/又は
前記膜が、例えば脱塩若しくは油水の分離等の水分離のため、若しくは化学的な分離のためのものである、かつ/又は
前記二次元材料が、前記基材層への前記二次元材料の付与後に処理される請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の膜又は方法。
【国際調査報告】