(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】電解反応により二酸化炭素(CO2)をCOに変換する方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/089 20210101AFI20220209BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20220209BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20220209BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20220209BHJP
C25C 1/16 20060101ALI20220209BHJP
C25C 1/20 20060101ALI20220209BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20220209BHJP
【FI】
C25B11/089
C25B1/23
C25B9/65
C25B9/00 Z
C25C1/16 A
C25C1/20
C25B11/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535880
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019086440
(87)【国際公開番号】W WO2020127821
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518436250
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
(71)【出願人】
【識別番号】519226908
【氏名又は名称】コレージュ・ド・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルク・フォントケイヴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトル・モーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ウォーカリー
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ラメゾン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
4K058
【Fターム(参考)】
4K011AA20
4K011AA25
4K011AA29
4K011AA68
4K011DA11
4K021AB25
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB04
4K021BB05
4K021CA05
4K058BA31
4K058BB02
(57)【要約】
本発明は、亜鉛と銀との金属析出物を含む電極、そのような電極を製造する方法、そのような電極を含む電解装置、及びそのような電極をカソードとして使用する、CO2をCOへと電解還元する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面の少なくとも一部が亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含む電極であって、
前記金属析出物が、0.1 m
2・g
-1以上、とりわけ0.5 m
2・g
-1以上、例えば0.7 m
2・g
-1以上、例えば1 m
2・g
-1以上の比表面積を有する、電極。
【請求項2】
前記導電性支持体が、金属(例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、鉄、ニッケル又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化銅インジウムガリウム、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素〔特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さないガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本来導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体、若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされているポリマー、半導体〔例えば、シリコン(例えばアモルファスシリコン若しくは結晶シリコン)、ハロゲン化鉛ペロブスカイト、又はハロゲン化スズペロブスカイト)、並びにそれらの混合物から選択される導電性材料を含み、
場合により、前記電極は、1つ以上の追加の処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)による処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えばイオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー、多環芳香族ポリマー、ポリベンゾイミダゾール(PBI)又はそれらの混合物〕による処理に曝されたものであってよい、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記金属析出物が、0.1~500 m
2・g
-1の間、とりわけ0.5~200 m
2・g
-1の間、特に1~100 m
2・g
-1の間、好ましくは1~50 m
2・g
-1の間、例えば1~30 m
2・g
-1の間、例えば1~25 m
2・g
-1の間の比表面積を有する、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記金属析出物が、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、とりわけ少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg
0.13Zn
0.87相を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記金属析出物が、1μm~500μmの間、例えば1μm~300μmの間、例えば1μm~280μmの間、好ましくは5μm~270μmの間の厚さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記金属析出物が、1μm~500μmの間、特に1μm~200μmの間、好ましくは20μm~100μmの間の平均細孔径の多孔質構造を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
次の一連の工程:
(i)導電性支持体を用意する工程、
(ii)前記導電性支持体を、亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液中に少なくとも部分的に浸漬する工程、及び
(iii)前記導電性支持体と第2の電極との間に電流又は電位を印加して、前記導電性支持体上に亜鉛と銀との金属析出物を形成させて、前記導電性支持体と第2の電極との間の電流密度を、-0.1 A・cm
-2以下、とりわけ-10 A・cm
-2~-0.1 A・cm
-2の間、好ましくは-5 A・cm
-2~-0.1 A・cm
-2の間にする工程
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極を製造するための方法。
【請求項8】
前記亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液が、
- 亜鉛塩(例えば、ZnSO
4、ZnCl
2、Zn(ClO
4)
2、Zn(NO
3)
2、ZnBr
2若しくはZn3(PO
4)
2)、酸化された亜鉛種(例えばZnO)、Zn(OH)
3-系の塩、Zn(OH)
4
2-系の塩、ZnO
2
2-系の塩、又はそれらの混合物、特にZnSO
4、及び
- 銀塩(例えば、AgCl、AgNO
3、AgClO
3、Ag
2CO
3、Ag
3PO
4、AgClO
4、Ag
2SO
4、AgF、AgNO
2)、酸化された銀種(例えば、Ag
2O、AgOH)、又はそれらの混合物、特にAgNO
3
を含有する酸性水溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記亜鉛と銀との金属析出物が、前記導電性支持体から取り除かれて、第2の導電性支持体へと適用される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電極を含む電解装置。
【請求項11】
電気エネルギー源、特に、間欠的再生可能エネルギー源(例えば、太陽電池パネル又は風力タービン)と連結された、請求項10に記載の電解装置。
【請求項12】
次の工程:
a)アノードとカソードとを含む電解装置を用意する工程であって、前記カソードが、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極である工程、
b)前記電解装置の前記カソードを、ガス状又は液状のCO
2含有組成物にさらす工程、
c)前記アノードと前記カソードとの間に電流又は電位を印加して、二酸化炭素をCOへと還元する工程
を含む、二酸化炭素(CO
2)をCOに変換する方法。
【請求項13】
100~100000 kPa、とりわけ100~50000 kPa、例えば100~20000 kPa、例えば100~10000 kPa、とりわけ100~8000 kPa、例えば100~6000 kPa、例えば100~5000 kPa、例えば100~1000 kPaのCO
2圧下で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
10~100℃、とりわけ20~100℃、例えば50~80℃の温度で行う、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス状又は液状のCO
2含有組成物が、CO
2含有陰極水溶液又はガス状CO
2含有組成物である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛と銀との金属析出物を含む電極、そのような電極を製造する方法、そのような電極を含む電解装置、及び、そのような電極をカソードとして使用する、CO2をCOへと電解還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2排出からのCOの形成、及びそれに続く高付加価値化学工業原料への変換は、多数の炭素循環の閉鎖シナリオの一経路である[1]。COは、CO2から製造する最も入手しやすい中間体であり、十分に使いこなされた熱化学法(フィッシャー・トロプシュ反応、カティバ法、ホスゲン合成等)による大規模スケール、又はファインケミストリー用途(ヒドロホルミル化、ヒドロキシカルボニル化等)のための小規模スケールのいずれかで、変換され得る。しかし、現在、CO製造は、ほぼ完全に化石燃料改質法に依存している。化石燃料改質法は、吸熱反応であり、わずかなエネルギー入力しか必要としないものの、完全に持続不可能である。
【0003】
過去数十年の間に、COを現場で高度に柔軟に小規模から中規模までのスケールで製造するための持続可能且つより安全な経路を提供する、再生可能に動力供給されるCO2電気化学還元法の出現が確認された[2、3]。化石燃料ベースのプロセスを代替するためには、CO2電解槽は、コスト競争力があるのみならず工業的に重要なCOトン数を製造する必要がある。
【0004】
この需要を満たすために、様々な電極触媒が提案されてきており、その中では不均一表面が、その安定性及び利用しやすさのため傑出している。Horiによる最初の研究により、CO2からCOへの著しい選択性を有する3つの金属表面、Ag、Au及びZnが脚光を浴びた[4、5、6]。Au及びAgに関して、それらの傑出した触媒性能とナノ構造化しやすさとの両方に起因して、記録的活性が報告され[7、8、9、10]、これらにより大きい電気化学的活性表面積(ECSA)がもたらされた。したがって、これらの貴金属は、工業用途用の操作仕様を満たし得るが、高くて変動する価格及び限られた総合的入手可能性のために、その実施は非現実的であり、低い貴金属含有量を有する触媒の開発が必要である。
【0005】
Znは、COを生成する部類において唯一の非貴金属である。しかし、Au及びAgと比べると、Zn系触媒についてはほとんど報告がない[11、12、13、14、15]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、以下のパラメータ:
- CO製造に関する選択性、即ち、H2及びギ酸の典型的な付随形成を最低限に抑えて、形成されたCOを、実質的な精製なしに直接回収可能にする必要がある、
- 豊富に存在し、そのため経済的である非貴金属を主に含む触媒材料の使用
を満たす、CO2電解還元技術を介したより効果的なCO生成システムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その表面の少なくとも一部が亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含む電極であって、該金属析出物が、0.1 m2・g-1以上の比表面積を有する、且つ/あるいは、少なくとも1重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg0.13Zn0.87相を含む、電極、並びにそのような電極を含む電解装置に関する。
【0008】
本発明は、次の一連の工程:
(i)導電性支持体を準備する工程、
(ii)該導電性支持体を、亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液中に少なくとも部分的に浸漬する工程、及び
(iii)該導電性支持体と第2の電極との間に電流又は電位を印加して、該導電性支持体と該第2の電極との間の電流密度が、-0.1 A・cm-2以下、とりわけ-10 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間、好ましくは-5 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間になるようにする工程
を含む、本発明による電極の製造方法にも関する。
工程(iii)での電流又は電位の印加により、導電性支持体上への亜鉛及び銀の電着、したがって亜鉛と銀との金属析出物の形成が可能になる。特別な一実施形態によると、亜鉛と銀との金属析出物は、最初の導電性支持体から取り除かれて、第2の導電性支持体に適用される。
【0009】
本発明は、本発明による電極を使用し、且つ次の工程:
a)アノードとカソードとを含む電解装置を用意する工程であって、
該カソードが、本発明による電極であり、したがって、その表面の少なくとも一部が亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含み、
該金属析出物が、0.1 m2・g-1以上の比表面積を有し、且つ/あるいは、少なくとも1重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg0.13Zn0.87相を含む、工程、
b)該電解装置の該カソードを、ガス状又は液状のCO2含有組成物、例えば、CO2含有陰極水溶液又はガス状CO2含有組成物にさらす工程、
c)該アノードと該カソードとの間に電流又は電位を印加して、電極触媒的に二酸化炭素をCOへと還元する工程
を含む、二酸化炭素(CO2)をCOに変換する方法にも関する。
【0010】
触媒材料として亜鉛と銀との金属析出物を含む本発明によるカソード(本明細書ではAgドープZn電極とも呼ぶ)を使用することにより、CO2からCOへの電解還元が可能になる。該カソードは、高活性且つCO選択性であり、少なくとも70%、とりわけ少なくとも75%、例えば少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%のCOを含有するガス状生成物をもたらすことが判明した。特に、本発明によるカソードにより、96.5%もの高いCO2からCOへの選択性がもたらされ得、その選択性は、操作の40hにわたって平均して90%超、及び100hにわたって平均して85%超に維持され得る。
【0011】
所与の過電圧でのCOの触媒(catalytic)部分電流密度は、Ag含有量と共に増大するが、CO2の1バールでの低いCO2溶解性に基づくCO2物質輸送の制限により、-21.0m A・cm-2において横ばいになる。CO2圧を上昇させて、水性CO2濃度を高めると、この問題を克服することができ、-286m A・cm-2もの高いCO部分電流密度が達成された。
【0012】
定義
「電極」とは、本発明の趣旨では、電子を捕獲又は供与することができる電子伝導体を意味する。酸化反応がアノードで起こり、還元反応がカソードで起こる。
【0013】
「金属析出物」とは、支持体(例えば導電性支持体)上での金属の析出、特に電着により得られる材料を意味する。該金属析出物を、次いで、その析出に使用した支持体上に維持してもよく、又は除去して別の支持体に適用してもよい。
【0014】
「ガス状又は液状のCO2含有組成物」とは、CO2を溶液中に溶解した状態又は気体としてのいずれか一方で含む液体組成物又は気体組成物、特に液体組成物又は気体組成物の流れを意味する。カソード反応に必要な別の任意の反応物質、例えば、プロトン源、特に、例えば以下で記載するように、液状又は蒸気状のいずれか一方の水が存在していてもよい。
【0015】
「電解液」とは、本発明では、物質がその中に溶解しているためその溶液が導電性である溶液、好ましくは水溶液を意味する。該物質を「電解質」と呼ぶ。「陰極液」は、カソードで使用される「電解液」である。「陽極液」は、アノードで使用される「電解液」である。
【0016】
本発明の目的で、「電解槽」とも呼ばれる用語「電解装置」は、電気エネルギー、特に再生可能電気エネルギーを化学エネルギーに変換する装置を意味すると意図される。
【0017】
「膜電極接合体電解槽」とは、伝導性カソード材料と伝導性アノード材料とが各側面に付着したイオン交換膜(例えば、プロトン交換膜、アニオン交換膜又はバイポーラ膜又は任意の種類のイオン交換膜)を含む電解装置を意味する。各電極での各半反応によって生成されるイオンは、アノードからカソードへと直接に膜を横切って流れるため、この構成では電子伝導性のために水性電解質が必要とされない。代わりに、ガス状CO2含有組成物を、カソードでの基質として使用してもよい一方、液状又はガス状のいずれか一方の電子源、例えば水を、アノードでの基質として使用できる。
【0018】
「ガス拡散電極ベース電解槽」とは、ガス拡散電極をカソードとして含む電解槽を意味し、該ガス拡散電極は、一方の側では陰極液と接触し、反対側では気体(例えばガス状CO2)と接触しており、該気体は、ガス拡散電極を通して流れて(貫流して)カソード/陰極液界面に達し得る。「ガス拡散電極」とは、本発明による金属析出物が塗布されている多孔質電子伝導体(例えばガス拡散層(GDL))、特に疎水性炭素系材料からなる、気体(例えばガス状CO2)が貫流し得る電極を意味する。
【0019】
本発明の目的で、用語「導電性支持体」とは、電気を伝導し得る支持体を意味する。
【0020】
本発明の趣旨の範囲内では、溶液/流体に「浸漬した」とは、電極を該溶液/流体中へと少なくとも部分的に潜入させることを意味する。
【0021】
「亜鉛と銀との合金の相」とは、亜鉛と銀とを含む均一相を意味する。合金相は、例えば、次の組成:Ag0.13Zn0.87を有してもよい。亜鉛と銀との合金の1つ以上の相の存在及びその量は、X線回折によって測定できる。
【0022】
「均一相」とは、その組成が相のどの位置でも実質的に同じである相を意味する。
【0023】
金属析出物の「比表面積」とは、物理吸着技術及びさらなるBET分析により測定した、金属析出物の比表面積を意味する。特に、比表面積は、例えばBelSorp Max構成で77Kにおいて測定した、クリプトンの吸着等温線に基づくBET分析により測定できる。
【0024】
「(C1~C6)アルキル」とは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素鎖を意味し、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等を含むがこれらに限定されず、メチル又はエチルが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】0、1.0、1.9、5.6、9.4又は20.1%のY%で製造されたY%AgドープZn電極のSEM画像を低倍率(左列)及び高倍率(右列)で示す。
【
図2】左から右へ:5.6%AgドープZn電極からの典型的な樹枝状構造の、(a)STEM暗視野画像、及び(b)Zn及び(c)AgのZn-Kα及びAg-Lα信号に基づいたXEDS元素マップを示す。これらは、Ag及びZnがナノスケールで均一に配分されていることを示している。
【
図3】1.0、1.9、5.6、9.4又は20.1%のY%で製造されたY%AgドープZn電極のPXRDパターンの典型的部分を示す。純粋なZnに割り当てられるピークはライトグレーで強調されている。Ag
0.13Zn
0.87に割り当てられるピークはダークグレーで強調されている。
【
図4】1.0、1.9、5.6、9.4又は20.1%のY%で製造されたY%AgドープZn電極の、Ag3d領域及びZn2p領域でのXPSスペクトルを示す。
【
図5】1.9%AgドープZn電極上でのCO、H
2及びHCOOHの形成に関する(a)ファラデー効率並びに(b)触媒全電流密度及び部分電流密度を示す。すべての実験は、0.1MCsHCO
3を含有する二室Hセル中、20 ml・min
-1のCO
2流を用いて行った。平均値及びエラーバーは、少なくとも3つのデータ点に基づいて計算している。
【
図6】-10m A・cm
-2の定電流密度を通している間の1.9%AgドープZn電極の長期電解データを示す。記録された電位(実線)を左軸に示し、CO(黒塗り四角)及びH
2(白抜き丸)のファラデー効率を右軸に示す。星印は電解質を交換した時点を示す。すべての実験は、0.1MCsHCO
3を含有する二室Hセル中、20 ml・min
-1のCO
2流を用いて行った。
【
図7】1.0~20.1%のAgドープZn電極上でのCO、H
2及びHCOOHの形成に関するファラデー効率を示す。すべての実験は、0.1MCsHCO
3を含有する二室Hセル中、20 ml・min
-1のCO
2流を用いて行った。
【
図8】%Ag含有量(1.0%~20.1%へと)と電位を上昇させたY%AgドープZn電極上での触媒全電流密度(実線)及びCO形成に関する部分電流密度(破線)を示す。すべての実験は、0.1MCsHCO
3を含有する二室Hセル中、20 ml・min
-1のCO
2流を用いて行った。
【
図9】析出時間を延ばして析出させた1.9%AgドープZn電極を用いたCO生産の(a)ファラデー効率及び(b)対応する部分電流密度を示す。j
CO-1バール閾値(約-21m A・cm
-2)は、1バールでの水性媒体中の限定的なCO
2溶解ゆえに克服できない、CO形成の部分電流密度(j
CO)の限界を示す。いずれの場合も、0.1MCsHCO
3中、20 ml・min
-1のCO
2流量で電気分解を行った。
【
図10】単室反応器内の0.1MCsHCO
3中の9.4%AgドープZn電極を用いた、様々なCO
2圧での(a)-200m A・cm
-2及び(b)-400m A・cm
-2での定電流電解を示す。CO、H
2及びHCOOH形成の、電流密度(左軸)及びファラデー効率(右軸)を示す。表示されている場合、エラーバーは、少なくとも3つの個別実験の標準偏差に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0026】
電極
本発明による電極は、その表面の少なくとも一部が亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含み、該金属析出物が、0.1 m2・g-1以上の比表面積を有し、且つ/あるいは、少なくとも1重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg0.13Zn0.87相を含む。
【0027】
導電性支持体は、(例えば電着によって)金属析出物を形成するために使用される支持体又は別の支持体であり得る。特別な一実施形態によると、金属、即ち亜鉛及び銀は、金属析出物を形成するための電着によって支持体上に析出されている。
【0028】
導電性支持体は、いくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料を含むか、又はいくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料からなる。
【0029】
導電性材料は、特に、金属(例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、鉄、ニッケル又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化銅インジウムガリウム、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素〔特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さず、疎水処理(例えばポリテトラフルオロエチレンの添加)を伴っているか又は伴っていない、ガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本質的に導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされたポリマー、半導体〔例えば、シリコン(例えば、アモルファスシリコン、結晶シリコン)、ハロゲン化鉛ペロブスカイト又はハロゲン化スズペロブスカイト〕、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0030】
特に、導電性材料は、金属(例えば、銅、銀、鉄、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン、例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素(特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素)、半導体(例えば、シリコン)、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0031】
この支持体は、電極としての使用に適切な任意の形態をとり得、当業者は、用途により、そのような支持体の形状及び寸法を決定することができる。例えば、シート、フォイル、プレート、メッシュ又は発泡体の形態であり得る。特に、炭素系又は金属系又はポリマー系の支持体の場合には、3Dプリントすることができる。
【0032】
そのような支持体の表面は、少なくとも部分的に金属析出物で覆われている。有利には、支持体の表面の少なくとも5%、特に少なくとも20%、とりわけ少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%が金属析出物で覆われている。特別な一実施形態によると、支持体の表面全体が、金属析出物で覆われている。
【0033】
金属析出物は、好ましくは、少なくとも0.1 m2・g-1、とりわけ少なくとも0.5 m2・g-1、例えば少なくとも0.7 m2・g-1、例えば少なくとも1 m2・g-1の比表面積を有する。特に、金属析出物は、例えば、0.1~500 m2・g-1の間、とりわけ0.5~200 m2・g-1の間、特に1~100 m2・g-1の間、好ましくは1~50 m2・g-1の間、例えば1~30 m2・g-1の間、とりわけ1~25 m2・g-1の間に含まれる比表面積を有する。
【0034】
金属析出物は、少なくとも1重量%、とりわけ少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相を含んでもよい。金属析出物は、100重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相からなってもよい。亜鉛と銀との合金は、特に、次の組成:Ag0.13Zn0.87の合金であってもよい。したがって、金属析出物は、100%のAg0.13Zn0.87からなっていても、特に前述により定義した合金量を含む、Ag0.13Zn0.87とZnとの混合物からなっていてもよい。
亜鉛と銀との合金の1つ以上の相の存在及びその量は、X線回折によって測定することができる。
【0035】
金属析出物は、有利には、1μm~500μmの間、例えば1μm~300μmの間、例えば1μm~250μmの間、とりわけ5μm~250μmの間、好ましくは5μm~200μmの間の厚さを有する。
そのような厚さは、特に、走査型電子顕微鏡法(SEM)により、例えば走査型電子顕微鏡Hitachi S-4800を使用して試料横断面を測ることによって、測定することができるる。
【0036】
金属析出物は、有利には、多孔質構造も有する。
金属析出物は、有利には、1μm~500μmの間、特に1μm~200μmの間、とりわけ5μm~100μmの間、好ましくは20μm~100μmの間の平均細孔径の多孔性を有する。
平均細孔径は、走査型電子顕微鏡法(SEM)又は走査型トンネル顕微鏡法(STM)によって、好ましくは走査型電子顕微鏡法(SEM)によって、例えば走査型電子顕微鏡Hitachi S-4800を使用して得られる画像を利用して測定することができる。
【0037】
電極は更に、その製造の任意の段階で、1つ以上の追加処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末)又はそれらの組み合わせによる処理、その疎水性を改質するための、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)による処理、及び/又は、その親イオン性(ionophilicity)を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、ポリベンゾイミダゾール(PBI)又はそれらの混合物〕による処理にさらされたものであってもよい。
【0038】
そのような電極は、以下で詳述する方法により入手可能であり、以下で記載するようにCOへのCO2電解還元に使用することができる。
【0039】
電極の製造
本発明は、次の一連の工程:
(i)導電性支持体を用意する工程、
(ii)該導電性支持体を、亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液中に少なくとも部分的に浸漬する工程、及び
(iii)該導電性支持体と第2の電極との間に電流又は電位を印加して、該導電性支持体と第2の電極との間に、-0.1 A・cm-2以下、とりわけ-10 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間、好ましくは-5 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間の電流密度を有するようにする工程
を含む、本発明による電極の製造方法にも関する。
【0040】
●工程(i)
導電性支持体は、最終電極中又は別の電極中に存在する導電性支持体であり得る。
【0041】
導電性支持体は、いくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料を含むか、又はいくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料からなる。
【0042】
導電性材料は、特に、金属(例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、鉄、ニッケル又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化銅インジウムガリウム、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素〔特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さず、疎水処理(例えばポリテトラフルオロエチレンの添加)を伴うか又は伴わない、ガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本質的に導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされたポリマー、半導体〔例えば、シリコン(例えば、アモルファスシリコン、結晶シリコン)、ハロゲン化鉛ペロブスカイト又はハロゲン化スズペロブスカイト〕、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0043】
特に、導電性材料は、金属(例えば、銅、銀、鉄、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン、例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素(特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素)、半導体(例えば、シリコン)、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0044】
該支持体は、電極としての使用に適切な任意の形態をとり得、当業者は、用途により、そのような支持体の形状及び寸法を決定することができる。例えば、シート、フォイル、プレート、メッシュ又は発泡体の形態であり得る。特に、炭素系又は金属系又はポリマー系の支持体の場合に、3Dプリントすることが可能である。
【0045】
支持体は更に、1つ以上の追加処理、特に、電極の伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、電極の疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、電極の親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理、にさらされたものであってもよい。
【0046】
該導電性支持体は、有利には、工程(ii)及び(iii)を行う前に、当業者に公知の技術により洗浄及び研磨される。
【0047】
●工程(ii)
析出されることとなる亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液は、特に、
- 亜鉛塩〔例えば、ZnSO4、ZnCl2、Zn(ClO4)2、Zn(NO3)2、ZnBr2若しくはZn3(PO4)2〕、酸化された亜鉛種(例えばZnO)、Zn(OH)3-系の塩、Zn(OH)4
2-系の塩、ZnO2
2-系の塩、又はそれらの混合物、特にZnSO4、及び
- 銀塩(例えば、AgCl、AgNO3、AgClO3、Ag2CO3、Ag3PO4、AgClO4、Ag2SO4、AgF、AgNO2)、酸化された銀種(例えば、Ag2O、AgOH)、又はそれらの混合物、特にAgNO3
を含有する酸性水溶液である。
【0048】
全金属イオン(即ち亜鉛イオン及び銀イオン)は、溶液中、有利には、0.1mM~10Mの間、とりわけ1mM~1Mの間、例えば0.05M~0.5Mの間の濃度で、とりわけ約0.2Mで存在する。
【0049】
酸性溶液中の亜鉛イオン/銀イオン比は、最終電極中での望ましい亜鉛/銀比に依存する。工程(iii)で印加される-4 A・cm-2の電流密度では、最終金属析出物中でのAg及びZnの総モル量に対するAgモル含有量の比は、酸性溶液中でのAg+及びZn2+の総金属濃度に対する前駆体Ag+濃度の比より、典型的には2倍高い。
【0050】
水溶液に導入される酸は、有機であろうと無機であろうと任意の酸であり得る。例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ギ酸又は酢酸、とりわけ硫酸であり得る。好ましくは、硝酸でない。この酸は、酸性水溶液中に、有利には、0.1mM~10Mの間、とりわけ10mM~3Mの間、例えば0.1M~3Mの間、とりわけ0.1M~2Mの間、とりわけ0.5M~2Mの間、特に0.5M~1.5Mの間の濃度で、例えば約0.5M又は1.5Mで存在し得る。
【0051】
溶液のイオン組成をより都合よく制御するために、酸性水溶液は、有利には、脱イオン水を用いて製造する。
【0052】
支持体の表面全体にわたる析出物が望ましいか、又は支持体の表面の一部のみにわたる析出物が望ましいかに応じて、析出されることとなる金属イオンを含有する酸性水溶液中に導電性支持体を完全又は部分的に浸漬する。
【0053】
支持体の表面の一部上にのみ析出物を得るためには、金属析出物で覆われるべきでない支持体の部分上に絶縁材製のマスクを適用することも想定することができる。その場合、その上にマスクが適用された支持体全体を、析出されることとなる金属イオンを含有する酸性水溶液中に浸漬してもよい。該マスクは、金属の析出後に、支持体から除去される。
【0054】
●工程(iii)
この工程では、導電性支持体がカソードとして作用し、第2の電極はアノードとして作用する。
【0055】
第2の電極を、有利には、析出されることとなる金属イオンを含有する酸性水溶液中に浸漬させるが、第1の電解液と電気接続された別の電解液中に浸漬することも可能である。単一電解液、即ち析出されることとなる亜鉛イオンと銀イオンとを含有する酸性水溶液の使用が依然として好ましい。
【0056】
第2の電極の性質は重要ではない。電解プロセスによる電着を実施するためには欠かせないだけである。例えば、白金電極若しくはチタン電極又は炭素電極でさえもよい。
【0057】
導電性支持体と第2の電極との間に電流又は電位(還元電流/電位)を印加して、-0.1 A・cm-2以下、とりわけ-10 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間、好ましくは-5 A・cm-2~-0.1 A・cm-2の間、好ましくは-4 A・cm-2~-0.5 A・cm-2の間の電流密度を有するようにする。
【0058】
望ましい量の金属析出物を得るために十分な時間、とりわけ10~500sの間、例えば10~200sの間、とりわけ20~180sの間、好ましくは30~160sの間に含まれる時間にわたって電流又は電位を印加する。
【0059】
電着は、有利には、定電流法により、即ち、析出過程の間じゅう定電流/電位を印加して行う。
【0060】
電流又は電位を印加すると、いくつかの還元反応がカソードで起こる:
- 一方では、次の反応:
Mx+ + xe-→M
による、金属イオンの、酸化状態0の金属への還元〔式中、MはZn又はAgを表し、xはその初期酸化状態を表す(Znの場合は2でAgの場合は1)〕;及び
- 他方では、次の反応:
2H+ + 2e-→H2
による、プロトンの、二水素への還元。
【0061】
同様に、電流又は電位を印加すると、アノードでは酸化反応が起こる。この酸化反応の性質は重要ではない。例えば、水の酸化であってもよい。
【0062】
本発明による方法は、シード処理及び水素発生支援電着を通して、大表面積のZn-Agの成長を可能にする。したがって、金属析出物を、電着の一工程によって製造することができる
。
【0063】
電流又は電位を印加したら、その表面の少なくとも一部が金属析出物で覆われた導電性支持体を、その中に浸漬させた溶液から取り出してもよい。洗浄、とりわけ水(例えば蒸留水)での洗浄をしてから、とりわけ真空下、又は不活性ガス(アルゴン、窒素、ヘリウム等)下若しくは空気の流動下で、乾燥させる。
【0064】
そのように得られた電極を、次いで、追加の処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理、にさらしてもよい。
【0065】
第1の実施形態によると、表面の少なくとも一部が金属析出物で覆われた導電性支持体を、例えば、本発明による電極として使用してもよい。その場合、本発明による電極は、電着の一工程、及び場合により上述したさらなる追加処理工程によって製造することができる。
【0066】
第2の実施形態によると、得られた亜鉛と銀との金属析出物を、最初の導電性支持体から(例えば、導電性支持体から機械的に取り外すことにより)除去し、第2の導電性支持体、例えば多孔質導電性支持体上に適用して、本発明による電極を形成させる。これは、任意の析出技術、例えば、導電性支持体上へのインクの塗布(例えば、ドロップキャスティング又はスプレーイング)により行い得る。そのようなインクは、電気化学分野の当業者には公知の任意の技術によって製造され、且つ有利には、揮発性溶媒(例えば、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、又は他の任意の溶媒)、金属析出物除去から得られた粉末、並びに、場合により、導電性支持体と塗布される金属析出物との最適な付着及び導電性を確保するための追加的なイオノマー〔例えば、プロトン交換膜(例えばNafion(商標))、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕を含む。これは、有機電解質又は水性電解質、及び金属析出物の懸濁液を含有する組成物中での電気泳動によって行うこともできる。その場合、導電性支持体を、金属析出物の懸濁粒子がそこに静電吸引される、電気泳動の電極として使用する。支持体上への金属析出物の塗布前、塗布中又は塗布後に、電極の追加の処理工程、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理を行ってもよい。
【0067】
電解装置
本発明は、上述により定義した、COへのCO2電解還元に使用できる、本発明による電極を含む電解装置にも関する。
【0068】
そのような電解装置は、第2の電極を含む。一方の電極は、酸化が起こるアノードとして作用し、他方の電極は、還元が起こるカソードとして作用する。
【0069】
有利には、本装置は、本発明による電極を、特にCO2をCOに変換するためのカソードとして使用する。
【0070】
アノードは、技術分野において伝統的にアノードとして使用され、且つ当業者には公知の任意の電極であり得る。そのようなアノードは、アノード全体を構成するか、又は導電性支持体上に適用されたアノード触媒を含む。
【0071】
アノード触媒は、例えば、金属(例えば、銅、鋼鉄、鉄、ニッケル、銀、金、アルミニウム、白金、コバルト、銅、イリジウム、ルテニウム、ニッケル、チタン)、金属酸化物〔例えば、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)若しくはインジウムドープ酸化スズ(ITO)、又はそれらの混合物〕であり得る。
【0072】
支持体は、場合によりいくつかの異なる導電性材料からなる複合材料の形態の任意の適切な導電性材料を含み、該導電性材料は、とりわけ炭素〔とりわけ、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さず、疎水処理(例えばポリテトラフルオロエチレンの添加)を伴うか又は伴わない、ガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本質的の導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされたポリマー、半導体(例えば、シリコン又はペロブスカイト)、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0073】
アノードは、電極としての使用に適切な任意の形態をとり得、当業者は、用途により、そのような電極の形状及び寸法を決定することができる。例えば、シート、フォイル、プレート、メッシュ又は発泡体の形態であり得る。特に、炭素系又は金属系又はポリマー系の支持体の場合に3Dプリントが可能である。
【0074】
アノードは更に、その製造の任意の段階で、1つ以上の追加の処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理にさらされたものであってもよい。
【0075】
そのような装置は、特に、電気化学分野の当業者には公知の別の要素、例えば、1つ以上の別の電極(特に電位参照電極)、エネルギー源、膜、1つ以上のイオノマー、支持塩、試薬流を可能にする装置、形成された気体を収集する装置等を含む。しかし、当業者には、そのような電気化学装置を製作し実装する方法が完全に知られている。
【0076】
特に、電解装置は、電気エネルギー源(例えば、間欠的エネルギー源)と連結されていてもよい。特に、再生可能電力源、特に間欠的再生可能エネルギー源、例えば、太陽電池パネル又は風力タービンであり得る。しかし、電気エネルギーの別の任意の供給源が使用可能である。
【0077】
CO2をCOに変換する方法
二酸化炭素(CO2)をCOに変換する本発明による方法は、本発明による電極を使用し、且つ次の工程:
a)アノードとカソードとを含む電解装置を用意する工程であって、該カソードが、本発明による電極であり、
その表面の少なくとも一部が、亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含み、
該金属析出物が、0.1 m2・g-1以上の比表面積を有し、且つ/あるいは、少なくとも1重量%の亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg0.13Zn0.87相を含む、工程、
b)該電解装置の該カソードを、ガス状又は液状のCO2含有組成物(例えば、CO2含有陰極水溶液又はガス状CO2含有組成物)にさらす工程、
c)該アノードと該カソードとの間に電流又は電位を印加して、二酸化炭素を一酸化炭素へと還元する工程
を含む。
【0078】
●工程(a)
本発明の方法で使用する電解装置は、アノードとカソードとを含む。
【0079】
電解装置のカソードは、本発明による電極であり、その表面の少なくとも一部が亜鉛と銀との金属析出物で覆われた導電性支持体を含み、該金属析出物が、0.1 m2・g-1以上の比表面積を有し、且つ/あるいは、少なくとも1重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相、例えばAg0.13Zn0.87相を含む。
【0080】
導電性支持体は、(例えば電着によって)金属析出物を形成するために使用される支持体、又は別の支持体であり得る。特別な一実施形態によると、金属(即ち亜鉛及び銀)は、金属析出物を形成するための電着によって支持体上に析出されている。
【0081】
導電性支持体は、いくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料を含むか、又はいくつかの異なる導電材料からなる複合材料であり得る導電性材料からなる。
【0082】
導電性材料は、特に、金属(例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛、銀、金、鉄、ニッケル又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化銅インジウムガリウム、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素〔特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さず、疎水処理(例えばポリテトラフルオロエチレンの添加)を伴うか又は伴わない、ガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本質的に導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされたポリマー、半導体〔例えば、シリコン(例えば、アモルファスシリコン、結晶シリコン)、ハロゲン化鉛ペロブスカイト又はハロゲン化スズペロブスカイト〕、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0083】
特に、導電性材料は(金属、例えば、銅、銀、鉄、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン、例えば、銅、鋼鉄、アルミニウム、亜鉛又はチタン)、金属酸化物〔例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)又はインジウムドープ酸化スズ(ITO)〕、金属硫化物(例えば、硫化カドミウム又は硫化亜鉛)、炭素(特に、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素)、半導体(例えば、シリコン)、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0084】
該支持体は、電極としての使用に適切な任意の形態をとり得、当業者は、用途により、そのような支持体の形状及び寸法を決定することができる。例えば、シート、フォイル、プレート、メッシュ又は発泡体の形態であり得る。特に、炭素系又は金属系又はポリマー系の支持体の場合、3Dプリントすることが可能である。
【0085】
そのような支持体の表面は、少なくとも部分的に金属析出物で覆われている。有利には、支持体の表面の少なくとも5%、特に少なくとも20%、とりわけ少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%が金属析出物で覆われている。特別な一実施形態によると、支持体の表面全体が、金属析出物で覆われている。
【0086】
金属析出物は、有利には、少なくとも0.1 m2・g-1、とりわけ少なくとも0.5 m2・g-1、例えば少なくとも0.7 m2・g-1、例えば少なくとも1 m2・g-1の比表面積を有する。特に、金属析出物は、例えば、0.1~500 m2・g-1の間、とりわけ0.5~200 m2・g-1の間、特に1~100 m2・g-1の間、好ましくは1~50 m2・g-1の間、例えば1~30 m2・g-1の間、とりわけ1~25 m2・g-1の間の比表面積を有する。
【0087】
金属析出物は、少なくとも1重量%、とりわけ少なくとも5重量%、特に少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相を含んでいてよい。金属析出物は、100重量%の、亜鉛と銀との合金の1つ以上の相からなってもよい。亜鉛と銀との合金は、特に、次の組成:Ag0.13Zn0.87の合金であってもよい。したがって、金属析出物は、100%のAg0.13Zn0.87からなっていても、特に上述により定義した合金量を含むAg0.13Zn0.87とZnとの混合物からなっていてもよい。
亜鉛と銀との合金の1つ以上の相の存在及びその量は、X線回折によって測定できる。
【0088】
金属析出物は、有利には、1μm~500μmの間、例えば1μm~300μmの間、例えば1μm~250μmの間、とりわけ5μm~250μm、好ましくは5μm~200μmの間の厚さを有する。
そのような厚さは、特に、走査型電子顕微鏡法(SEM)により(例えば走査型電子顕微鏡Hitachi S-4800を使用して)電極横断面を測ることによって測定することができる。
【0089】
金属析出物は、同じく有利には、多孔質構造を有する。
金属析出物は、有利には、1μm~500μmの間、特に1μm~200μmの間、とりわけ5μm~100μmの間、好ましくは20μm~100μmの間の平均細孔径の多孔性を有する。
平均細孔径は、走査型電子顕微鏡法(SEM)又は走査型トンネル顕微鏡法(STM)により、好ましくは走査型電子顕微鏡法(SEM)により、例えば走査型電子顕微鏡Hitachi S-4800を使用して得られる画像を利用して測定することができる。
【0090】
カソードは更に、その製造の任意の段階で、1つ以上の追加の処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理にさらされたものであってもよい。
【0091】
アノードは、技術分野において伝統的にアノードとして使用され、且つ当業者には公知の任意の電極であり得る。そのようなアノードは、アノード全体を構成するか、又は導電性支持体上に適用されたアノード触媒を含む。
【0092】
アノード触媒は、例えば、金属(例えば、銅、鋼鉄、鉄、ニッケル、銀、金、アルミニウム、白金、コバルト、銅、イリジウム、ルテニウム、ニッケル、チタン)、金属酸化物〔例えば、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)若しくはインジウムドープ酸化スズ(ITO)、又はそれらの混合物〕であり得る。
【0093】
支持体は、場合によりいくつかの異なる導電性材料からなる複合材料の形態の任意の適切な導電性材料を含み得、該導電性材料は、とりわけ炭素〔とりわけ、カーボンフェルト、グラファイト、ガラス状炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ホウ素ドープダイヤモンドの形態の炭素、微多孔質層を有するか又は有さず、疎水処理(例えばポリテトラフルオロエチレンの添加)を伴うか又は伴わない、ガス拡散層(GDL)の任意の形態の炭素〕、本質的に導電性であるか又は導電材料(例えば、金属、半導体若しくは導電性ポリマー)のフィルムでの被覆により導電性にされたポリマー、半導体(例えば、シリコン又はペロブスカイト)、並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0094】
アノードは、電極としての使用に適切な任意の形態をとり得、当業者は、用途により、そのような電極の形状及び寸法を決定することができる。例えば、シート、フォイル、プレート、メッシュ又は発泡体の形であり得る。特に、炭素系又は金属系又はポリマー系の支持体の場合、3Dプリントすることが可能である。
【0095】
アノードは更に、その製造の任意の段階で、1つ以上の追加の処理、特に、その伝導性を改質するための、例えば、炭素系材料(例えば、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、ホウ素ドープダイヤモンド粉末又はそれらの組み合わせ)による処理、その疎水性を改質するための、例えばPTFEによる処理、及び/又は、その親イオン性を改質するための、例えば、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕による処理、にさらされたものであってもよい。
【0096】
カソード及び電解装置は、上述により定義したとおりであり得る(それぞれ上述した「電極」の部及び「電解装置」の部を参照)。特に、カソードは、上述したとおりに製造され得る(「電極の製造」の部を参照)。
【0097】
●工程(b)
電解装置のカソードを、ガス状又は液状のCO2含有組成物(例えば、CO2含有陰極水溶液又はCO2含有ガス)にさらす。これは、大気圧又はより高圧で、とりわけ100~100000 kPa、とりわけ100~50000 kPa、例えば100~20000 kPa、例えば100~10000 kPa、とりわけ100~8000 kPa、例えば100~6000 kPa、例えば100~5000 kPa、例えば100~1000 kPaのCO2圧で行い得る。これは更に、好ましくは10~100℃、とりわけ20~100℃、例えば50~80℃の温度で行い得る。
【0098】
第1の実施形態によると、ガス状又は液状のCO2含有組成物は、CO2含有陰極水溶液である。この場合、カソードを、特に、そのような陰極液に浸漬させる。特に、金属析出物で覆われたカソードの一部を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に陰極液中に浸漬させる必要がある。
【0099】
好ましくは、とりわけCO2ガスを溶液中に直接バブリングさせることにより、水溶液をCO2で飽和させる。
【0100】
より高圧のCO2の使用は、陰極液中に溶解したCO2の量を増大させるため、COへのCO2の電解還元の改善が可能になる。
【0101】
有利には、陰極液が、炭酸水素イオン(HCO3
-)塩(例えば、炭酸水素イオンのアルカリ金属塩又は第四級アンモニウム塩)を含む。アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム又はセシウム、好ましくはセシウムであり得る。第四級アンモニウムは、式NR1R2R3R4
+を有し得る(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、好ましくは同一であり、(C1~C6)アルキル、例えばメチル又はエチルである)。第四級アンモニウムは、特に、テトラメチルアンモニウム又はテトラエチルアンモニウムであり得る。好ましくは、炭酸水素イオン塩がCsHCO3である。陰極液中への連続的なCO2バブリングが、消費されたCO2の再生を可能にすることに留意されたい。
【0102】
炭酸水素イオン塩の濃度は、有利には、10M未満、例えば1M未満、とりわけ0.5M未満である。濃度は、0.01M~0.5Mの間、とりわけ0.05M~0.2Mの間である。例えば、約0.1Mであってもよい。
【0103】
溶液のイオン組成をより都合よく制御するために、陰極液は、有利には、脱イオン水を用いて製造する。
【0104】
第2の実施形態によると、ガス状又は液状のCO2含有組成物が、とりわけ流れの形のCO2含有ガス(例えばガス状CO2、特にガス状CO2流)である。この場合、電解装置は、特に、ガス拡散電極ベース電解槽である。その結果、カソードは、有利には、本発明による金属析出物で少なくとも部分的に覆われており、好ましくは、(例えば、ポリテトラフルオロエチレン層の塗布により)疎水処理にさらされたものである、多孔質導電性支持体からなる。カソードは、CO2含有ガスから陰極液を隔てる一方で、それを通過するCO2の流れを可能にする。特に、金属析出物で覆われたカソードの一部が、少なくとも部分的に、好ましくは完全に陰極液にさらされる必要がある。カソードの多孔質構造を通ってCO2が拡散するため、カソードは更にCO2にもさらされる。
【0105】
好ましくは、ガス状CO2流を、0.1mL・min-1・cm-2
electrode~500mL・min-1・cm-2
electrode、とりわけ0.1mL・min-1・cm-2
electrode~200mL・min-1・cm-2
electrode、例えば0.2mL・min-1・cm-2
electrode~100mL・min-1・cm-2
electrode、好ましくは0.5mL・min-1・cm-2
electrode~50mL・min-1・cm-2
electrodeの流量(電極のcm-2当たりで表現)で流す。上述したとおり、大気圧よりも高いCO2圧を使用して、ガス/カソード/陰極液界面でのCO2供給を増大させることができる。
【0106】
好ましくは、陰極液が、水酸化物塩(OH-)(例えば、水酸化物のアルカリ金属塩)を含む、アルカリ性水溶液を含む。特に、アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム、リチウム又はセシウム、好ましくはカリウム又はナトリウムであり得る。その代わりに、陰極液が、炭酸水素イオン(HCO3
-)塩(例えば、炭酸水素イオンのアルカリ金属塩又は第四級アンモニウム塩)を含んでいてもよい。アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム又はセシウム、好ましくはセシウムであり得る。第四級アンモニウムは、式NR1R2R3R4
+を有し得る(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、好ましくは同一であり、(C1~C6)アルキル、例えばメチル又はエチルである)。第四級アンモニウムは、特に、テトラメチルアンモニウム又はテトラエチルアンモニウムであり得る。好ましくは、炭酸水素イオン塩がCsHCO3である。
【0107】
水酸化物塩の濃度は、有利には、15M未満、とりわけ12M未満、例えば10M未満である。好ましくは、0.1M以上であり、特に1M以上である。炭酸水素イオン塩の濃度は、有利には、15M未満、例えば12M未満、とりわけ10M未満、好ましくは、0.1M以上であり、特に1M以上である。
【0108】
溶液のイオン組成をより都合よく制御するために、陰極液を、有利には、脱イオン水を用いて製造する。
【0109】
第3の実施形態によると、ガス状又は液状のCO2含有組成物が、CO2含有ガス、例えば加湿CO2であり、特に加湿CO2流である。この場合、電解装置は、特に、膜電極接合体電解槽である。その結果、カソードは、多孔質電極(例えば、導電性支持体としてガス拡散層、金属メッシュ又は発泡体を含む多孔質電極)であり、有利には、本発明による金属析出物で少なくとも部分的に覆われており、且つ、場合により、伝導性を改善するための、イオノマー〔例えば、アニオン交換ポリマー(例えばSustainion(商標))、多環芳香族ポリマー(例えばFumion(商標))、PBI又はそれらの混合物〕で処理された、多孔質電極である。特に、金属析出物で覆われたカソードの一部は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、加湿CO2流にさらされる必要がある。
【0110】
好ましくは、加湿CO2流を、0.1mL・min-1・cm-2
electrode~500mL・min-1・cm-2
electrode、とりわけ0.1mL・min-1・cm-2
electrode~200mL・min-1・cm-2
electrode、例えば0.2mL・min-1・cm-2
electrode~100mL・min-1・cm-2
electrode、好ましくは0.5mL・min-1・cm-2
electrode~50mL・min-1・cm-2
electrodeの流量(電極のcm-2当たりで表現)で流す。
【0111】
大気圧より高い加湿CO2圧の使用は、電極/膜界面でのCO2供給を増大させる。CO2圧は、好ましくは100~100000 kPa、とりわけ100~50000 kPa、例えば100~20000 kPa、例えば100~10000kPである。より高温での加湿CO2の使用もまた電極の均質な水分を促進し、カソードでの液体の蓄積を回避する。温度は、好ましくは10~100℃、とりわけ20~100℃、例えば50~80℃である。
【0112】
同様にして、電解装置のアノードを、例えば、液状〔例えば水からなるか、又は水溶液、好ましくは、該分野の当業者には公知の酸化され得る安価な反応剤(例えば、塩化物アニオンからなる反応剤)の水溶液からなる〕又はガス状のいずれか一方であり得るアノード流体にさらす。ガス状アノード流体は、水蒸気、又は酸化され得る別の安価な反応剤(例えばメタン)からなり得る。流体は、流れであってもなくてもよい。
【0113】
したがって、電解装置のアノードは、陽極液(即ち、液状のアノード流体)、例えば陽極水溶液にさらしてもよい。特に、アノードをその陽極液に浸漬する。
【0114】
その場合、陽極水溶液は、水酸化物塩(OH-)(例えば水酸化物のアルカリ金属塩)を含むアルカリ水溶液であってもよい。特に、アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム、リチウム又はセシウム、好ましくはカリウム又はナトリウムであり得る。
【0115】
水酸化物塩の濃度は、有利には、15M未満、とりわけ12M未満、例えば10M未満である。好ましくは、水酸化物塩の濃度は、0.1M以上、特に1M以上である。
【0116】
陽極水溶液は、同じく、有機であろうと無機であろうと、プロトン源を含む酸性水溶液であり得る。例えば、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ギ酸、炭酸又は酢酸、とりわけ硫酸又は炭酸であり得る。好ましくは、硝酸でない。
【0117】
水酸化物塩の濃度は、有利には、15M未満、とりわけ12M未満、例えば10M未満である。好ましくは、0.1M以上、特に1M以上である。
【0118】
陽極水溶液は更に、炭酸イオン(CO3
2-)塩(例えば炭酸イオンのアルカリ金属塩)を含んでもよい。アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム又はセシウム、好ましくはセシウムであり得る。好ましくは、炭酸イオン塩がCs2CO3である。
【0119】
炭酸イオン塩の濃度は、有利には、15M未満、例えば10M未満、例えば1M未満、とりわけ0.5M未満である。好ましくは、0.01M以上、特に0.05M以上である。0.01M~0.5Mの間、とりわけ0.05M~0.2Mの間でありる。例えば、約0.1Mであってもよい。
【0120】
陽極水溶液は更に、炭酸水素イオン(HCO3
-)塩(例えば炭酸水素イオンのアルカリ金属塩)を含んでもよい。アルカリ金属は、カリウム、ナトリウム又はセシウム、好ましくはセシウムであり得る。好ましくは、炭酸水素イオン塩がCsHCO3である。陰極液中への連続的なCO2バブリングが、拡散した重炭酸アニオンの再生を可能にすることに留意されたい。
【0121】
炭酸水素イオン塩の濃度は、有利には、15M未満、例えば10M未満、例えば1M未満、とりわけ0.5M未満である。好ましくは、0.01M以上、特に0.05M以上である。0.01M~0.5Mの間、とりわけ0.05M~0.2Mの間であり得る。例えば、約0.1Mであってもよい。
【0122】
溶液のイオン組成をより都合よく制御するために、水性陽極液は、有利には、脱イオン水を用いて製造する。
【0123】
陰極液も使用する場合、陰極液と陽極液とを同じ溶液にして、アノードとカソードとを同じ溶液にさらす/浸漬してもよい。アノードとカソードとを同じ溶液にさらさないか、又はカソードを溶液にさらさない場合、電荷又は溶媒分子が一方のチャンバから他方のチャンバへと通過できるように、カソードチャンバとアノードチャンバとを、例えば、イオン(例えばプロトン)交換膜、浸透膜、バイポーラ膜、又は透析膜又は多孔質セラミックによって分離してもよい。
【0124】
陽極水溶液は、特に、陰極水溶液も使用される場合、又は電解装置がガス拡散電極ベース電解槽である場合に使用され得る。
【0125】
電解装置のアノードは更に、ガスであり、特にガス状流であるアノード流体にさらされてもよい。特に、このガスは、水蒸気、加湿キャリアガス(例えば、窒素又はアルゴン)、酸化され得る安価なガス状反応剤(例えばメタン)、又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、加湿窒素からなる。
【0126】
その場合、電解装置は、特に、膜電極接合体電解槽である。有利には、アノードが、多孔質電極(例えば、ガス拡散層担持電極、金属メッシュ担持電極又は発泡体担持電極)である。特に、アノードは、少なくとも部分的に、好ましくは完全にガス状流にさらされている。
【0127】
好ましくは、ガス状流を、0.1mL・min-1・cm-2
electrode~500mL・min-1・cm-2
electrode、とりわけ0.1mL・min-1・cm-2
electrode~200mL・min-1・cm-2
electrode、例えば0.2mL・min-1・cm-2
electrode~100mL・min-1・cm-2
electrode、好ましくは0.5mL・min-1・cm-2
electrode~50mL・min-1・cm-2
electrodeの流量(電極のcm-2当たりで表現)で流す。
【0128】
ガス状流の圧力は、好ましくは100~100000 kPa、とりわけ100~50000 kPa、例えば100~20000 kPa、例えば100~10000 kPaである。実際、大気圧より高いガス状流の圧力の使用は、膜電極接合体電解槽の電極/膜界面での水の供給の増大を可能にする。温度は、好ましくは10~100℃、とりわけ20~100℃、例えば50~80℃である。実際、より高温でのガス状流の使用もまた電極の均質な水分を促進し、アノードでの液体の蓄積を回避する。
【0129】
●工程(c)
電解装置のアノードとカソードとの間に電流又は電位を印加すると、カソードでは二酸化炭素(CO2)及び場合により水(H2O)の還元が起こり、アノードでは酸化反応が起こる。
【0130】
酸化反応の性質は、とりわけ陽極液流体の性質及びアノードの性質に依存する。二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)の還元は、次の半反応:
(1)CO2 + H2O + 2e-→CO + 2OH-
(2)CO2 + H2O + 2e-→HCOO- + OH-
(3)2H2O + 2e-→H2 + 2OH-
により起こり得る。
【0131】
本発明の枠組において、還元は、主に半反応(1)により起こり、CO生産の高い選択性並びにH2及びギ酸(HCOOH)の少量生産をもたらす。したがって、本発明によるCO2電解還元によって得られるガス状生成物は、少なくとも70%、とりわけ少なくとも75%、例えば少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%のCOを含有する。
【0132】
2つの電極間に印加される電流は、電池電位に依存する。この電流は、上述した実施形態の各々において印加される電位、二酸化炭素の圧力、電極組成、及び装置設定に依存して変動する。本発明によるカソードと参照電極としての可逆水素電極(RHE)との間に印加される電位は、-0.5V vs RHEよりも更に負であり得、例えば-0.6V vs RHE~-3V vs RHEの間、とりわけ-0.7V vs RHE~-2V vs RHEの間、その上-0.8V vs RHE~-1.5V vs RHEの間でさえ、その上-0.8V vs RHE-~1.4V vs RHEの間でさえもあり得る。
【0133】
圧力及び/又は温度の条件は、工程(b)に関して上述により定義したとおりであり得る。
【実施例】
【0134】
電極製造
異なる指定がない限り、析出の前にP1200及びP2400のエメリー紙で順々に研磨してから水中で超音波処理した1cm2のZn フォイル(GoodFellow社、99.99+%、1mm)上に、電極を製造した。次いで、各電極を、目標Ag含有量に依存して、X%が0%~10%の間で変化する、X%AgNO3と(100-X)%ZnSO4との間に配分された0.2M金属塩の1.5MH2SO4水溶液中に浸漬し、Ag/AgCl(KCl塩)参照極とPt対極とを有する三電極設定を用いて、-4 A・cm-2に30s(異なる指定がない限り)の間さらした。それぞれの場合、析出後に、電極を直ちにmilliQ水ですすぎ、空気乾燥させた。
AgNO3(99.9999%)及びH2SO4(99.8%)は、Sigma-Aldrich社から入手し、さらに精製することなく使用した。ZnSO4/7H2O(99.5%)は、Roth chemicals社から入手した。
【0135】
構造特定
X-Max 50mm2 Oxford EDX分光器を装備したSU-70 Hitachi FEGSEMにより、撮像及びエネルギー分散型X線分光法を行った。表面特徴を観察するための撮像設定は5kVであった。定量分析及びマッピング用の設定は15kVであった。この電圧用の参照として使用した標準は、Geller microanalytical laboratory社(ボストン、MA)から入手した。この電圧で分析された体積は、約700nmの直径を有するほぼ球である。この値は、単一散乱モンテカルロシミュレーションを用いて計算した。透過型電子顕微鏡像及び化学マップは、Jeol 2100F顕微鏡を用いて200kVで操作して入手した。
化学マップは、X線検出及び地図作成(cartography)用のJeolシステムを装備した同じ顕微鏡を用いてSTEMモードで入手した。金属電極の元素組成は、プラスチックブレードを使用して、析出した粉末をZnプレート支持体からそっとスクラッチした後に、金属構造を20%HNO3(Sigma-Aldrich社、65%)中に溶解してからThermoFisher iCAP 6000装置でICP-AESにより検査した。
BelSorp Max構成で77Kにおいて測定したKr吸着等温線の分析から表面積を得た。測定前に、試料を真空下、130℃において少なくとも7h処理した。表面積は、BETモデルを用いて推定した(Kr横断面積0.210nm2)。BET測定から得られた、 m2・g-1で示される比表面積値は、便宜上、1cm2の平面Zn支持体上に析出した電極の質量を掛けることにより、cm2
phys
・cm-2
geoの物理的表面積に換算した。
粉末X線回折(PXRD)測定は、CuKα線(λKα1=1.54056Å、λKα2=1.54439Å)を用いたBRUKER D8 Advance回折計及びLynxeye XE検出器を使用してBragg-Brentanoジオメトリで行った。
平面(「geo」)電極のcm2当たり得られる電気化学的活性(「echem」)表面積は、二重層容量測定技術を使用して測定した。この容量は、ファラデー現象が起こらない電位において得られるサイクリックボルタモグラムの幅と、そのサイクリックボルタモグラムを行うために使用した走査速度との間の直線関係の傾きとして決定する。そのような実験はCO2飽和0.1MCsHCO3中で行い、オペランド電気化学的活性表面積の最も実際的な値を得るために、電気分解直後に85%iR補正を適用した。
【0136】
電気化学性能試験
電極触媒反応測定は、Bio-logic SP300ポテンショスタットを使用して行った。バイポーラ交換膜(AMV Selemion(登録商標)、ACG Engineering社)によって分離された二室を有する、作用極とPt対極との間の電極間距離は6cmであり、Ag/AgCl参照極(飽和KCl)が、作用極から0.5cm離れて配置されている、H型セルを使用した。0.1M CsHCO3(Sigma-Aldrich社、99.9%)水溶液を陽極液と同様に陰極液として使用し、後者は、実験に先立ち、陰極液のpHが6.8に達するまでCO2飽和させた(CO2、Linde社、HiQ5.2)。電気分解中、カソード室の底部のフリットを通して20mL・min-1で絶えずCO2をバブリングし、生成したガス状生成物及び過剰CO2は、オンライン測定用ガスクロマトグラフのガス注入口へと流した。電位は、関係:E vs. RHE=E vs. Ag/AgCl + 0.197 + 0.059xpH により可逆水素電極(RHE)に対して示す。
【0137】
生成物特定
H2及びガス状CO2還元生成物は、Haysep D及びMoleSieve 5Aカラム、熱伝導度型検出器(TCD)、及びメタナイザーを備えた水素炎イオン化型検出器(FID)を装備したガスクロマトグラフィー(GC、Multi-Gas Analyzer #5 SRI Instruments社)により、アルゴンをキャリアガスとして使用して分析した。GCは、CO2中のH2、CO、CH4、C2H4、C2H6、C3H6、C3H8、C4H8及びC4H102500ppmを含有する標準ガス混合物(Messer社)を使用して較正した。液相生成物は、イオン交換クロマトグラフィー(シュウ酸塩に対しては883 Basic IC、Metrohm社)及びNMR分光法(Bruker AVANCE III 300分光計)を使用して定量した。
【0138】
(実施例1)
様々なAgドープZn電極の製造及び特定
前駆体Ag+濃度を変化させて製作した様々なAgドープZn電極を生成するために、電極製造に関する上述した一般的条件を使用した。そのように生成されたAg-Zn電極を、以下ではY%AgドープZn電極と呼び、Y%は、ICP-AESによって測定された、(小数点第一位に丸めて)1.0%、1.9%、5.6%、9.4%又は20.1%に等しい、組み込まれた原子%Agである(Table 1(表1))。
【0139】
走査型電子顕微鏡法(SEM)は、最低%Ag(1.0%)においてさえも、純粋なZnのスタック配置に対して大幅に改善された構造化を提供する、高い表面積の微多孔質樹枝状構造が達成されることを明らかにした(
図1)。%Agを高めるに従って、樹枝状構造の密度も電極厚さも更に増大し(Table 1(表1))、Kr吸着測定及び後続のBET分析により確認される、高い物理的表面積(BET SA)がもたらされた(Table 1(表1))。値は、1.0%から20.1%までのAgドープZn電極へと、それぞれ176~3133cm
2
phys・cm
-2
geoの間に及び、以前に報告されたZn系触媒の表面積に対して傑出した範囲に及んだ[13]。
【0140】
【0141】
AgドープZn電極の合金化特質は、走査型TEM-エネルギー分散型X線分光法(STEM-EDXS)元素マッピングと組み合わせた高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM)により証拠付けられた。これにより、ナノスケールでの構造内におけるAg及びZnの均一な配分が示された(
図2)。
【0142】
電極から回収された粉末の粉末X線回折(PXRD)により、六方晶系P6
3/mmc空間群において示され得る2セットのピークの存在を明らかにした(
図3)。第1のピークセット(ライトグレー領域により表示)は、格子定数α=2.67Å及びc=4.92Åを示すことができ、純粋なZnに相当する。第2のピークセット(ダークグレー領域)の強度は、組み込まれた%Agが高まるに従ってZnピークを犠牲にして増大し、α=2.82Å及びc=4.39Åを示すことができ、Ag
0.13Zn
0.87相に相当する[16、17]。20.1%の%Agでは、PXRDパターンにおいてAg
0.13Zn
0.87ピークのみが観察される。
【0143】
各電極の表面組成及び近表面組成(最高で526nmまでの深さ)を、それぞれX線光電子分光法(XPS)及び15kVのSEM-XEDSにより調査した(
図4)。両方の実験とも、電着後に、最低%Ag(1.0%)においてさえもAg及びZnの存在を明らかにし、ナミュー石のような硫酸亜鉛種による少量のSも明らかにした。水性媒体中で負電位を印加した後の同等の測定により、そのようなAg-Zn合金構造の安定性が証明されたのに対して、ナミュー石相は、その分光信号の消失によって検証されるように、除去された。
【0144】
(実施例2)
1.9%AgドープZn電極の電極触媒性能
バイポーラ膜によって分離された二室Hセル中、0.1MCsHCO
3を電解質として使用して電気化学的研究を行った。カソード室はあらかじめCO
2飽和させ、電気分解の間じゅう連続的にCO
2を20mL・min
-1で流した。それぞれの定電位電解(CPE)後に、オンラインガスクロマトグラフィー(GC)及び
1H-NMRにより生成物を分析した。
まず1.9%AgドープZn電極の電位依存性活性を調査した(
図5)。CPE中の生成物分析は、特に-0.9V~-1.1V vs. RHEの間でCO発生の著しい選択性を示し、その場合、FE
COは、>90%であり、寄生副反応は抑制された(FE
H2<7%及びFE
HCOOH<2.5%、
図5)。電極は更に、目立って頑丈であり、-10m A・cm
-2の定電流密度での40hの連続運転にわたり90%超の平均FE
COが得られた(
図6)。40h~100hの間で選択性のわずかな低下が認められ、85%の平均FE
COがもたらされ、100hの運転にわたって5.3%のFE
HCOOH及びFE
H2<5%であった。
【0145】
(実施例3)
AgドープZn電極の電極触媒性能-Ag含有量の影響
Ag含有量が、その対応するAgドープZn電極に及ぼす影響を確認するために、さらなる電気化学分析を行った。生成物分布の分析は、すべての電極が主生成物としてCOを生成したことを示し(
図7)、最適なFE
COに達するために必要とされる過電圧は、%Agと共に低下した。即ち、1.0%AgドープZn電極及び1.9%AgドープZn電極は、それぞれ93%及び91%の最高FE
COを-1.0V vs. RHEで示し、5.6%AgドープZn電極及び9.4%AgドープZn電極は、90%及び97%の最高FE
COを-0.9V vs. RHEで得たのに対して、20.1%AgドープZn電極は、-0.8V vs. RHEで85%の最高FE
COに達した。
図8は、触媒電流密度(j
total)が%Agと共に増大することを示し、それは、電極の利用可能な物理的表面積の増大と相関関係にある(Table 1(表1))。対応する、CO形成の部分電流密度(j
CO、
図8の破線)は、j
totalの大部分を占め、低い過電圧では同じ傾向に従う。しかし、高いj
total(>-20m A・cm
-2)では、j
totalとj
COとの間で不一致が認められ、j
COは約-21m A・cm
-2で頭打ちになるのに対して、j
totalは上昇し続けた。このプラトー効果は、特に、最大表面積を有するAg-Zn電極で著しい(即ち、9.4%AgドープZn電極及び20.1%AgドープZn電極)。なぜなら、低い過電圧で高い電流が得られたからである。このj
COプラトーに達すると、FE
COは、20.1%AgドープZn電極により最も明らかに例示されるように、FE
H2のサージに有利に低下した(
図7)。これは、電極の本質的制限というよりむしろ、CO
2の低溶解性による水溶液中でのCO
2物質輸送の制限に帰する。
【0146】
(実施例4)
AgドープZn電極の電極触媒性能-厚さの影響
1.9%AgドープZn電極を、43μm~288μmの間の異なる厚さとする以外は同じナノ構造で製造した(比表面積分析により確認、Table 2(表2))。
【0147】
【0148】
これは、同一電着条件下、電極の析出時間を15~90sに変化させることにより達成した。それらの電極触媒活性の分析は、j
COの上昇がほとんど認めらないことを明らかにし、43μm厚超の電極は全活性に著しくは加算されない余分材料を含有することを示唆する(
図9)。他方、前記の電極の電気化学的活性表面積は、43~150μmの間の厚さと共に増大し続け、電解質浸透は触媒活性の制限とはならないことを示唆する(Table 2(表2))。j
COへの制限は、差し当たり、電極内で43μmを超えないCO
2物質輸送に帰し得る。
【0149】
(実施例5)
AgドープZn電極の電極触媒性能-CO
2圧の影響
CO
2物質輸送の最も制限的なパラメータは、本明細書に示されるAgドープZn電極の電極触媒性能への著しい負荷であるその水溶解度である。それは、高めたCO
2圧でのCO
2電極触媒還元を行うことで確認された。この実験には9.4%AgドープZn電極を選択した。なぜなら、この電極は、低い過電圧で「j
CO-1バール」プラトーを示したからである。この実験は、O
2の生産を回避するために、グラファイト対極を用いる一室高圧反応器中で行った。さもないとCO
2還元効率を犠牲にしてカソード上で好ましく還元されるからである。-200m A・cm
-2の定電流密度(j
total)を流しながら、3つのCO
2圧を試験した(1バール、3バール及び6バール)。1バールでは、印加された-200m A・cm
-2の電流が、主に、H
2発生に費やされた(
図10a、69%のFE
H2)。なぜなら、1バールでの溶存CO
2が、CO
2還元反応率を制限したからである。溶存CO
2の量が増大すると(CO
2圧の上昇と共に)、-21m A・cm
-2プラトーをはるかに上回るj
CO値が達成された。即ち、3バール及び6バールでは、j
COは、それぞれ-131m A・cm
-2及び-188m A・cm
-2へと劇的に増大し、後者は、94%のFE
COに相当し、それは、すでに考察したCO
2物質輸送制限の不在下に記録された本来の最高の性能の範囲にある。高圧セルはアノードとカソードとが同室内で動作する必要があったことを考慮に入れると、すべてのCOがCO
2還元に由来したことを確認するために、対照実験を用いた。0.1MCsHCO
3中、Ar下でPtカソードを用いた、-200m A・cm
-2の電流密度でのアノードグラファイト酸化反応の分析は、少量のCO
2及び微量のCOが生産され(FE
CO<1.6%)、平行して大量のH
2がカソードから生産されることを示した。それゆえ、アノード反応は、主に、グラファイト表面官能基の酸化であり、いくらかのCO
2を生産し得るが、COはごくわずかである。この対照に関して、CO
2圧へのj
COの依存性及び観察された100%のtotalFEは、完全にカソードでのCO発生に関する確証であった。
図10bに示される電流密度と圧力とのより高いセットでは(-400m A・cm
-2)、-297m A・cm
-2(即ち86%のFE
CO)と同程度の高さのj
COが達成され、主にZn系電極触媒での新記録を立てる。
【0150】
【国際調査報告】