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特表2022-515180塩素製造用酸化ルテニウム担持触媒の製造方法及びそれにより製造された触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】塩素製造用酸化ルテニウム担持触媒の製造方法及びそれにより製造された触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/46 20060101AFI20220209BHJP
   C01B 7/04 20060101ALI20220209BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
B01J23/46 301M
C01B7/04 A
B01J37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535987
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2019017378
(87)【国際公開番号】W WO2020130460
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0167842
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520263899
【氏名又は名称】ハンファ ソルーションズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イ カラム
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウ ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンジン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BE06C
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA02X
4G169EC02X
4G169EC03X
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC10
(57)【要約】
本発明は、塩素を製造するための酸化ルテニウム担持触媒の製造方法に関し、さらに詳しくは、ルテニウム成分が担体の外表面に担持される程度を著しく向上させた触媒を提供し、これを用いて塩素の製造する時、低い反応温度にもかかわらず、高い塩素の転化率を提供する触媒の製造方法及びそれにより製造された触媒に関する。本発明の実施例によれば、塩素製造用の酸化ルテニウム触媒であって、(a)ルテニウム化合物を有機溶媒に溶解して溶液を製造してチタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の担体に担持させるステップ;(b)乾燥するステップ;(c)焼成するステップを含む酸化ルテニウム担持触媒の製造方法が提供される。本発明の実施例によれば、特に、チタニア担体の外表面の各層にのみ酸化ルテニウムを含有させる触媒をアルカリ前処理なしで製造して簡素化した工程を提供することができ、よって、スケールアップの面から有利な効果を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素製造用の酸化ルテニウム触媒であって、
(a)ルテニウム化合物を有機溶媒に溶解して溶液を製造してチタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の担体に担持させるステップ;
(b)前記担持させるステップの後、乾燥するステップ;及び
(c)前記乾燥するステップの後、焼成するステップを含む酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(a)ステップの有機溶媒はモノアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項3】
前記モノアルコールはC3以上の第一級アルコールであることを特徴とする請求項2に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(a)ステップのチタニア担体は比表面積が5~300m/gであることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項5】
前記(b)ステップの乾燥は80~120℃の空気条件で3~5時間の間行われることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(c)ステップの後、完成された触媒全体100重量部に対して、酸化ルテニウム5重量部以下で含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項7】
前記(c)ステップの焼成は300~400℃で2~4時間の間行った後、室温まで冷却させることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項8】
前記塩素製造用は塩化水素を酸化させて塩素を製造することを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項9】
前記酸化ルテニウム担持触媒は担持するステップの後、乾燥前の触媒全体100重量部に対して、前記担体は70~80重量部、前記ルテニウム化合物は5重量部以下、前記有機溶媒は15~25重量部であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ルテニウム担持触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法で製造された酸化ルテニウム担持触媒。
【請求項11】
前記酸化ルテニウム担持触媒は粉末、粒子及びペレットの形態から選択される少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項10に記載の酸化ルテニウム担持触媒。
【請求項12】
前記酸化ルテニウム担持触媒はVMS測定値である(S/R)が0.5以下であることを特徴とする請求項10に記載の酸化ルテニウム担持触媒。
【請求項13】
前記請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法で製造された触媒の存在下における塩化水素の酸化による塩素の製造方法。
【請求項14】
前記塩素の製造方法で、反応温度は200~300℃であることを特徴とする請求項13に記載の塩化水素の酸化による塩素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素を製造するための酸化ルテニウム担持触媒の製造方法に関し、さらに詳しくは、ルテニウム成分がチタニア担体の外表面に担持される程度を著しく向上させた触媒を提供し、これを用いて塩素の製造する時、低い反応温度にもかかわらず、高い塩素の転化率を提供する触媒の製造方法及びそれにより製造された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化水素を触媒酸化法によって製造する方法は、Deacon Processから派生し、触媒としては代表的にはルテニウム系触媒、銅系触媒、セリウム系触媒がある。特に、ルテニウム系触媒は銅系触媒、セリウム系触媒に比べて少量の触媒と低い反応温度で活性が高いことを特徴とする。
【0003】
前述したルテニウム系触媒のうち酸化ルテニウム担持触媒は塩化水素を酸素で酸化させて塩素を製造する触媒として有用である。現在、商用化が報告された住友社の大韓民国登録特許第10-1561812号は塩素の製造方法であって、ルテニウム化合物を担体に担持した触媒、これらを担持後に酸化処理して得られた担持酸化ルテニウム触媒、これらを担持後に還元処理した後に酸化処理して得られた担持酸化ルテニウム触媒又は担体の外表面の各層にのみ酸化ルテニウムを含有させて触媒に含有されるルテニウムの単位重量あたり活性を高める触媒などを使用して塩化水素を酸化させて塩素を製造する方法が提案されている。
【0004】
しかし、上記開示された方法には担体の外表面の各層にのみ酸化ルテニウムを含有させるためにはアルカリの前担持処理などが求められる点から触媒の製造方法が複雑化する短所がある。
【0005】
塩化水素の酸化で塩素を製造する方法は平衡反応であり、反応温度が高いほど平衡的に不利となり平衡転化率が低くなる。したがって、低い反応温度を有する触媒であるほど反応において平衡的に有利となりより高い塩化水素の転化率が得られる。
【0006】
しかし、従来の技術で言及された触媒の大半は主に高温で高い活性を示し、さらには高温運転時に数か月の短期間で触媒の性能が減少する現象を示している。すなわち、担持酸化ルテニウムは熱安定性や触媒寿命の2つの条件を同時に満足することには困難があるというのが実情である。
【0007】
日本公開特許第2014-105128では塩化水素を酸素で酸化し塩素を製造する方法に関するものに使用される酸化ルテニウム触媒の製造方法を開示しており、上記触媒の担持に使用される溶媒としてアルコールを開示しているが、チタニア担体の外表面にのみルテニウム成分を担持できる内容に対する構成及び効果についての記載がないという点で限界がある。
【0008】
日本公開特許第2013-169516号でも塩化水素の酸化法に使用される酸化ルテニウム触媒の製造方法を開示しており、触媒担持に使用される溶媒としてアルコールを開示しているが、200~300℃の低温でも高い塩素転化率を導出する具体的な内容は開示することができなかったという点で限界がある。
【0009】
大韓民国公開特許第2014-0102205号は酸化ルテニウム及びシリカがチタニア担体に担持されている酸化ルテニウムの製造方法に関するものを提供する。ただし、この場合もチタニア担体の外表面にのみルテニウム成分を担持できる構成や効果について具体的な言及がないという点で多少限界がある。
【0010】
したがって、上記問題を克服し単に溶媒としてアルコールを使用する点に加えて反応工程を簡素化するとともに担体の外表面にのみルテニウム成分を担持して、低い反応温度でも高い収率を有する高活性触媒の開発が切実に求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本公開特許第2014-105128号(2014.06.09)
【特許文献2】日本公開特許第2013-169516号(2015.11.06)
【特許文献3】大韓民国公開特許第2014-0102205号(2014.08.21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は塩化水素を酸化させて塩素を生産する工程に使用される酸化ルテニウム担持触媒の製造方法を提供することにある。
【0014】
特に、担体の外表面にのみ酸化ルテニウムを含有させる触媒をアルカリ前処理なしで製造して簡素化した工程を提供することに目的がある。
【0015】
よって、ルテニウム成分が担体の外表面に担持される程度を示すVMS測定値(S/R)が0に近い触媒を提供することに目的がある。
【0016】
また、本発明の目的は塩素の製造工程で低い反応温度、好ましくは250℃前後でも高い塩化水素の転化率の高い活性を有する高分散酸化ルテニウム担持触媒の製造方法及びそれにより製造される酸化ルテニウム担持触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0018】
本発明の実施例によれば、塩素製造用の酸化ルテニウム担持において、(a)ルテニウム化合物を有機溶媒に溶解して溶液を製造してチタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の担体に担持させるステップ;(b)乾燥するステップ;(c)焼成するステップ;を含む酸化ルテニウム担持触媒の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の実施例によれば、前記酸化ルテニウム担持触媒は乾燥前の触媒全体100重量部に対して、前記担体は70~80重量部、前記ルテニウム化合物は5重量部以下、前記有機溶媒は15~25重量部を含むことができる。
【0020】
上記(a)ステップの有機溶媒はモノアルコールであることを特徴とし、好ましくはC3以上の第一級アルコールであり、1-プロパノールであり得る。ただし、これに限定されない。
【0021】
本発明の実施例によれば、上記(a)ステップのチタニア担体は比表面積が5~300m/gであることを特徴とする。好ましくは5~100m/gが提供されるが、ただし、これに限定されない。
【0022】
また、上記(b)ステップの乾燥は80~120℃の空気条件で3~5時間の間行われ、乾燥するステップの後、乾燥後の触媒全体100重量部に対して、酸化ルテニウム5重量部以下を含むことができる。好ましくは2重量部が含まれ得る。
【0023】
上記(c)ステップの焼成は300~400℃で2~4時間の間行われ得る。
【0024】
本発明の実施例によれば、前記担体は、チタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上を含む粉末担体混合物、チタニア及びアルミナゾル、有機バインダ及び蒸留水を混合して混合物を製造するステップ;前記混合物を圧出するステップ;乾燥及び成形体に切断するステップ;及び焼成するステップを含む酸化ルテニウム担持触媒の製造方法が提供される。また、この場合、前記担体は乾燥前の全体100重量部に対して、前記粉末担体混合物は30~50重量部、チタニア及びアルミナゾル1~9重量部、有機バインダ0.5~1.5及び蒸留水20~40重量部を含むことができる。
【0025】
本発明の実施例によれば、上記の製造方法で製造された酸化ルテニウム担持触媒が提供される。製造された触媒は塩化水素を酸化させて塩素を製造することに用いられ得る。
【0026】
上記の酸化ルテニウム担持触媒は粉末、粒子及びペレットの形態から選択される少なくとも1つ以上であることができ、好ましくはペレットの形態が提供される。また、酸化ルテニウム担持触媒はVMS測定値である(S/R)が0.5以下であることを特徴とする。
【0027】
本発明の実施例によれば、前記触媒の存在下で塩化水素の酸化による塩素の製造方法が提供される。この時、塩素の製造反応温度は200~300℃が提供され、好ましくは250℃が提供され得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明による塩化水素の酸化による塩素の製造に使用される触媒を提供する効果がある。
【0029】
本発明の実施例によれば、特に、チタニア担体の外表面の各層にのみ酸化ルテニウムを含有させる触媒をアルカリ前処理なしで製造して簡素化した工程を提供することができ、よって、スケールアップの面から有利な効果を提供できる。
【0030】
特に、ルテニウム成分が担体の外表面に担持される程度を示すVMSによって測定して、S/R値が0に近い触媒を提供する効果がある。
【0031】
本発明の実施例によれば、塩素の製造工程で低い反応温度、好ましくは250℃前後でも高い塩化水素の転化率の高い活性を有する高分散酸化ルテニウム担持触媒の製造方法を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0032】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように十分に詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0033】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0034】
本発明の実施例によれば、塩素製造用の酸化ルテニウム触媒であって、(a)ルテニウム化合物を有機溶媒に溶解して溶液を製造してチタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の担体に担持させるステップ;(b)乾燥するステップ;(c)焼成するステップを含む酸化ルテニウム担持触媒の製造方法が提供される。
【0035】
公知の技術と異なって本発明による触媒の場合、酸化ルテニウム成分をチタニア担体の外表面の各層にのみ含有させるためのアルカリ前処理が不要である。よって、担持、乾燥、焼成の3ステップで簡単な製造が可能であるように提供する。よって、触媒の高活性は維持するとともに製造方法の簡素化による以後のスケールアップの面で有利を提供できる。これは製造工程において時間及び経済の面で有利な効果を提供できる。
【0036】
本発明の実施例によれば、上記酸化ルテニウム担持触媒は乾燥前の触媒全体100重量部に対して、上記担体は70~80重量部、上記ルテニウム化合物は5重量部以下、上記有機溶媒は15~25重量部を含むことができる。
【0037】
特に、上記酸化ルテニウムは乾燥及び焼成ステップの後、最終的に生成される触媒で5重量部以下を含む。好ましくは2~4重量部を含むことができ、最も好ましくは2重量部が提供される。
【0038】
上記担体としてチタニア担体はアナターゼ型チタニア又はルチル型チタニア、非晶質チタニア又はこれらの混合物が使用可能である。
【0039】
また、チタニア担体はアルミナ、ジルコニア又は酸化ニオブなどの酸化物を含有できる。本発明の実施例によれば、好ましくはルチル型チタニアが提供される。
【0040】
チタニア担体の比表面積は通常用いられるBET法によって測定されることができ、比表面積は5~300m/g、好ましくは5~100m/gが提供される。比表面積が上記範囲を超えると酸化ルテニウムの熱安定性の確保に困難が生じる場合があり、上記範囲未満だと高分散が難しく、触媒の活性も低くなる問題がある。
【0041】
アルミナ担体の場合は好ましくはα-アルミナが提供される。α-アルミナは高い熱伝導性を有し反応運転時に熱安定性の確保に役立つことができ、さらには低いBET比表面積を有するので、他の不純物の吸収を起こしにくい点から好ましい。
【0042】
本発明の実施例によれば、上記ルテニウム化合物は錯塩の形態で存在が可能であり、ハロゲン化物、ハロゲノ酸塩、オキソ酸塩、オキシハロゲン化物、塩化物などの金属塩を含むことができる。例えば、RuCl及びRuBr、KRuCl、KRuCl、KRuO、NaRuO、RuOCl、RuOCl、RuOClなどを含むことができるが、これに限定されない。
【0043】
本発明の実施例によれば、ルテニウム化合物は好ましくはハロゲン化物が提供され、最も好ましくは塩化物を含む塩化ルテニウムが提供される。ルテニウム化合物としては場合によってルテニウム化合物の水和物が提供されることができ、上記ルテニウム化合物から選択される2種以上が提供され得る。
【0044】
塩化ルテニウムは粉末形態で用いて溶媒中に混合されることができ、溶媒には固体担体が懸濁されて沈殿体を形成して固体担体に沈積され得る。上記担持は含浸又は浸漬を含み、この場合、温度は通常適用される0~100℃、好ましくは0~50℃であってその圧力は通常適用される0.1~1MPa、好ましくは大気圧である。担持は空気雰囲気下又は窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性気体雰囲気下で行われることができ、この時、水蒸気を含むことができる。好ましくは上記不活性気体雰囲気下で行われることが提供されるが、これに限定されない。
【0045】
上記(a)ステップの有機溶媒はモノアルコールであることができ、C3以上の第一級アルコールであるものが提供される。好ましくは1-プロパノールが提供される。本発明によれば、公知の技術に対して、溶媒として蒸留水、イオン交換水又は超純水などの高純度の水の代わりにアルコール溶媒を提供する。
【0046】
本発明の実施例によれば、好ましくはC3アルコール系有機溶媒を提供し、好ましくは1-プロパノールを提供して、溶液の高い濡れ性(wettability)と疎水性(hydrophobicity)を活用してヒドロキシ基が存在する酸化チタン成形担体の外表面にのみルテニウム成分を担持することができ、酸化チタン成形担体又は粉末担体の表面に担持されるルテニウムの分散度を高められる効果を提供する。
【0047】
すなわち、C3アルコール系の疎水性及び濡れ性を利用して高活性触媒を提供できる。特に、超純水又はエタノールを使用して担持した触媒の外表面の担持程度と触媒性能に対して、アルコール溶媒であるプロパノールを使用して担持した触媒の方が外表面の担持程度がより優れ、高い初期活性を提供する。
【0048】
このような効果を提供するために、本発明は下記のVMSによる結果の導出を提供する。
【0049】
ルテニウム成分が担体の外表面に担持される程度は下記数式で表した。ルテニウム成分の外表面担持程度をVMS(visual measurement system)によって測定した。下記数式の数字が0に近いほど外表面に担持される程度が高いことを意味する。
【数1】
R:円柱形触媒の水平断面(円)の最外縁の任意の一点(A)から同一水平断面の中心までの距離
S:上記点(A)から同一水平断面の中心までの直線上に測定される距離であって、点(A)から酸化ルテニウム成分が無くなる点(B)までの距離
【0050】
本発明の実施例によれば、[表3]の外表面担持程度(S/R)結果値を踏まえて、本発明による触媒の製造方法及びそれにより製造された触媒によれば、溶媒として超純水を使用する場合に対して1-プロパノールを使用した場合、外表面担持程度が0に近いことがわかる。よって、本発明による触媒の場合、ヒドロキシ基が存在する酸化チタン担体の外表面にのみルテニウム成分を担持できることを提供する。
【0051】
さらには担持、乾燥、焼成の3ステップで製造が可能であるので簡単な製造方法を提供し、スケールアップの効果も提供できる。
【0052】
上記(b)ステップの乾燥は80~120℃の空気条件で3~5時間の間行われ得る。乾燥は回転及び攪拌をしながら乾燥させることができる。乾燥容器を振動させるか、容器内に具備された撹拌機を用いることによっても可能であり、これに限定されない。乾燥温度は通常適用される室温~100℃程度が提供され、圧力の場合も通常適用される0.1~1MPa、好ましくは大気圧が提供され得る。
【0053】
乾燥するステップの後、乾燥後の触媒全体100重量部に対して、酸化ルテニウム5重量部以下を含むことができる。好ましくは2重量部が含まれ得る。
【0054】
上記(c)ステップの焼成は300~400℃で2~4時間の間行われ得る。その後、室温まで冷却させることが提供される。焼成温度は通常適用される温度として、好ましくは250~450℃が提供される。酸化性気体としては例えば酸素を含む気体が挙げられる。その酸素濃度は通常適用される1~30容量%程度が提供される。酸素源としては一般に空気や純粋な酸素が提供され、必要によっては不活性気体又は水蒸気が含まれ得る。酸化性気体としては好ましくは空気が提供されることができ、空気流下の電気炉で約350℃で焼成を約3時間ほど経た後、室温に冷却して最終的には酸化ルテニウム触媒の製造が可能である。
【0055】
上述のように、本発明の実施例によれば、酸化ルテニウムがチタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の担体に担持されている担持酸化ルテニウムの製造が可能である。この場合、通常、ルテニウムの酸化数は4で、二酸化ルテニウム(RuO)が提供される。ただし、酸化数及び形態はこれに限定されない。
【0056】
本発明の実施例によれば、上記担体は下記の方法で製造される。
【0057】
担体の場合、チタニア及びアルミナから選択される少なくとも1つ以上の粉末担体混合物、チタニア及びアルミナゾル、有機バインダ及び蒸留水を混合して混合物を製造するステップ;上記混合物を圧出するステップ;乾燥及び成形体に切断するステップ;及び焼成するステップを含めて製造されることを特徴とする。
【0058】
この時、担体の乾燥前の担体全体100重量部に対して、上記粉末担体混合物は30~50重量部、チタニア及びアルミナゾル1~9重量部、有機バインダ0.5~1.5及び蒸留水20~40重量部を含むことができる。
【0059】
これを混合して、直径2~3のmmφの麺状のストランドに圧出し、これを乾燥して成形を行う。この時、乾燥は50~70℃であって、1~3時間乾燥させることが提供される。この後、2~4mmの長さの成形体に切断を提供する。この場合、400~800℃で空気条件で2~4時間焼成することを提供する。乾燥及び焼成の詳細な条件は、上述の触媒の乾燥及び焼成の条件が通常適用できるので省略する。
【0060】
本発明の実施例によれば、最終的な酸化ルテニウム担持触媒を製造するために、ルテニウム触媒組成物に適した粒子大きさ、大きさ分布、表面積、気孔構造などを満足する上記の担体の製造方法で製造された担体を適用して最終的に最適化された酸化ルテニウム担持触媒を提供できる。
【0061】
本発明の実施例によれば、上記塩素製造用は塩化水素を酸化させて塩素を製造することを特徴とすることができる。この場合、上記の製造方法で製造された酸化ルテニウム担持触媒を用いることができる。
【0062】
上記の酸化ルテニウム担持触媒は粉末、粒子及びペレットの形態から選択される少なくとも1つ以上であることができ、好ましくはペレット又は粉末の形態であって、最も好ましくはペレットの形態が提供される。直径は好ましくは5mm以下である。成形体の直径が大きすぎると、触媒の活性度で不利を提供できる。
【0063】
本発明の実施例によれば、酸化ルテニウム担持触媒はVMS測定値である(S/R)が0.5以下であることを特徴とする。よって、後述する塩素製造反応での温度条件でも高い活性を提供できる。
【0064】
本発明の実施例によれば、上記のいずれか一項による製造方法で製造された触媒の存在下で塩化水素の酸化による塩素の製造方法が提供される。反応の方式は固定相方式又は移動相方式、気相反応などが提供され、好ましくは気相反応が提供される。この酸化反応は平衡反応であり過度な高温で行うと平衡転化率が低下するため、比較的低温で行うことが好ましく、反応温度は通常100~500℃、好ましくは200~450℃、最も好ましくは250℃が提供される。また、反応圧力は通常0.1~5MPa程度である。酸素源としては空気を使用してもよく、純粋な酸素を使用してもよい。塩化水素に対する酸素の理論的なモル量は1/4モルであるが、通常0.1~10倍の酸素が提供される。また、塩化水素の供給速度は触媒1Lあたりガス供給速度(L/h;0℃、1気圧換算)、すなわちGHSVで示し、通常10~20000h-1程度である。ただし、この時投入される触媒の量は主に温度、触媒の量及び製造される塩素生成物の量に応じて若干の変形は可能である。
【0065】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されることはできない。
【0066】
ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【実施例
【0067】
実施例1
<担体の製造>
チタニア粉末40.0gと有機バインダ0.8g、60℃に加熱した超純水29.0g及びチタニアゾル5.0gと混合させた。得られた化合物を直径2.0mmφの麺状ストランドに圧出し、60℃空気中で2時間乾燥させた後、2~4mm長さの成形体に切断した。得られた成形体を600℃空気中で3時間の間焼成させた。
【0068】
<酸化ルテニウム担持触媒の製造>
上記得られたチタニア担体5.0gに塩化ルテニウム水和物0.2gを1-プロパノール1.33gに溶解して製造した溶液を含浸させた後、100℃空気中で4時間の間乾燥させた。乾燥された固体を空気流下の電気炉で350℃焼成(calcination)を3時間経た後、徐々に室温まで冷却させて最終的に酸化ルテニウム含有量が2.0重量部である酸化ルテニウム触媒を得た。また、VMSによって測定したルテニウム成分の外表面担持程度は0.32であった。
【0069】
<酸化ルテニウム担持触媒の初期活性評価>
上記得られた酸化ルテニウム担持触媒0.3gを直径2mmのα-アルミナボール1.5gで希釈させて石英製の反応管(内径8mm)に充填した。上記反応管に触媒層を300℃の温度で加熱し常圧下に塩化水素及び酸素気体をそれぞれ22.5mL/minの速度で供給して反応を実行した。反応開始2時間後の時点で、反応管出口の気体を15%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを10分の間実行した。続いて、ヨウ素滴定法で塩素の生成量を測定し、下記[数式2]によって塩化水素の転化率を計算し、結果を表1に示した。
【数2】
【0070】
実施例2
実施例1で得た触媒に対して触媒層の温度を283℃で使用したことを除けば実施例1と同じ方式で、初期活性評価を実行した。結果を[表1]に示した。
【0071】
実施例3
実施例1で得た担体5.0gに塩化ルテニウム水和物0.067gを1-プロパノール0.44gに溶解して製造した溶液を含浸させた後、100℃空気中で4時間の間乾燥させた。上記担持方法を3回繰り返した。乾燥された固体を空気流下の電気炉で350℃焼成(calcination)を3時間経た後、徐々に室温まで冷却させて最終的に酸化ルテニウム含有量が2.0重量部である酸化ルテニウム触媒を得た。また、VMSによって測定したルテニウム成分の外表面担持程度は1であった。
【0072】
実施例1と同じ方式で、初期活性評価を実行した。結果を表1に示した。
【0073】
実施例4
<酸化ルテニウム担持触媒の製造>
チタニア粉末5.0gに塩化ルテニウム水和物0.2gを1-プロパノール1.05gに溶解して製造した溶液を含浸させた後、100℃空気中で4時間の間乾燥させた。乾燥された固体を空気中電気炉で350℃焼成(calcination)を3時間経た後、徐々に室温まで冷却させて最終的に酸化ルテニウム含有量が2.0重量部である酸化ルテニウム触媒を得た。
【0074】
<酸化ルテニウム担持触媒の初期活性評価>
上記得た酸化ルテニウム担持触媒0.3gをチタニア粉末0.6gで希釈させて石英製の反応管(内径8mm)に充填した。上記反応管に、触媒層を250℃の温度で加熱し常圧下に塩化水素及び酸素気体をそれぞれ22.5mL/minの速度で供給して反応を実行した。反応開始2時間後の時点で、反応管出口の気体を15%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることで、サンプリングを10分の間実行した。続いて、ヨウ素滴定法で塩素の生成量を測定して塩化水素の転化率を計算して[表2]に示した。
【0075】
比較例1
酸化ルテニウム担持触媒の製造時、塩化ルテニウム水和物0.2gを超純水1.65gに溶解して製造した水溶液を使用したことを除けば、実施例1と同じ方式で酸化ルテニウム担持触媒を製造した。VMSによって測定したルテニウム成分の外表面担持程度は1であった。得られた酸化ルテニウム担持触媒に対して、実施例1と同じ方式で、初期活性評価を実行した。結果を[表1]に示した。
【0076】
比較例2
酸化ルテニウム担持触媒の製造時、塩化ルテニウム水和物0.2gを超純水1.3gに溶解して製造した水溶液を使用したことを除けば、実施例4と同じ方式で酸化ルテニウム担持触媒を製造した。得られた酸化ルテニウム担持触媒に対して、実施例4と同じ方式で、初期活性評価を実行した。結果を[表2]に示した。
【0077】
比較例3
酸化ルテニウム担持触媒の製造時、塩化ルテニウム水和物0.2gをエタノール1.3gに溶解して製造した溶液を使用したことを除けば、実施例1と同じ方式で酸化ルテニウム担持触媒を製造した。VMSによって測定したルテニウム成分の外表面担持程度は0.41であった。得られた酸化ルテニウム担持触媒に対して、実施例1と同じ方式で、初期活性評価を実行した。結果を[表1]に示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0078】
担持方法を変えて溶媒を使用してプロパノールを使用して担持した実施例1~4の場合、超純水又はエタノールを使用して担持した比較例1~3の触媒と比べて、外表面担持程度(S/R)値が著しく低く0により近くなることが認められる。また、外表面担持程度(S/R)値が低くなることにより転化率も向上することが認められる。
【0079】
したがって、本発明による触媒は1-プロパノールなどアルコール有機溶媒を使用して製造した酸化ルテニウム担持触媒であって、ペレット形態のチタニア担体の外表面の各層にのみ酸化ルテニウムを含有させる触媒を簡素化した工程で提供することができ、さらには塩素の製造工程で低い反応温度、好ましくは250℃前後でも高い塩化水素転化率の高い活性を有する触媒を提供できることが認められる。これは、以後の触媒の製造工程でスケールアップの面から有利を提供できる。
【0080】
以上、本発明の具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0081】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。
【国際調査報告】