(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】物体表面検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20220209BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535992
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2019126916
(87)【国際公開番号】W WO2020125745
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】201811565436.X
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】309012351
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロ エレクトロニクス イクイプメント(グループ)カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼雪山
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲暁▼青
(72)【発明者】
【氏名】申永▲強▼
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA42
2G051AA51
2G051AA56
2G051AB01
2G051AB02
2G051AB04
2G051BA10
2G051BA20
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA06
2G051CB05
2G051DA06
(57)【要約】
本発明は物体表面検出装置及び検出方法を提供しており、検出装置は、検出対象となる物体を照射する光を発生するように構成される光源ユニットと、検出対象となる物体を載置するように構成される作業台ユニットと、検出対象となる物体の表面の異物により発生された散乱光を受光するように構成される検知ユニットとを含み、前記作業台ユニットは前記検知ユニットに対して平行移動面内に第1の方向に沿って運動し、前記検知ユニットは時間遅延積分型TDIラインカメラを含み、前記検知ユニットの線検知視野は第2の方向に沿って配置され、前記第1の方向の垂直方向と第2の方向との挟角θは0°よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる物体を照射する入射光を発生するように構成される光源ユニットと、
前記検出対象となる物体を載置するように構成される作業台ユニットと、
前記入射光が前記検出対象となる物体の表面により形成された散乱光を受光するように構成される検知ユニットと、を含み、
前記作業台ユニットは前記検知ユニットに対して平行移動面内に第1の方向に沿って運動し、
前記検知ユニットは時間遅延積分型TDIラインカメラを含み、前記検知ユニットの線検知視野は第2の方向に沿って配置され、前記平行移動面内に前記第1の方向の垂直方向と前記第2の方向との挟角θは0°よりも大きい、物体表面検出装置。
【請求項2】
前記挟角θは、前記光源ユニットが前記検出対象となる物体の表面で形成された照明視野の強度の均一性とTDIラインカメラのステージ数と負の相関がある、請求項1に記載の物体表面検出装置。
【請求項3】
粒度検出再現性は前記挟角θと正の相関がある、請求項1又は2に記載の物体表面検出装置。
【請求項4】
前記光源ユニットが発生した入射光の入射角度はαであり、前記検知ユニットの検知角度はβであり、α≠βである、請求項1、2又は3に記載の物体表面検出装置。
【請求項5】
前記入射光が前記検出対象となる物体の表面により形成された散乱光と反射光を分離するように構成されるビーム分離ユニットを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の物体表面検出装置。
【請求項6】
前記光源ユニットは線状光源であり、前記検出対象となる物体の表面で形成された照明視野は線状照明視野である、請求項1~5のいずれか一項に記載の物体表面検出装置。
【請求項7】
前記光源ユニットはレーザ光源又は発光ダイオードLED光源を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の物体表面検出装置。
【請求項8】
前記線状照明視野は前記線検知視野と平行である、請求項6に記載の物体表面検出装置。
【請求項9】
前記TDIラインカメラの配置方向を調整してロックするように構成される調整ユニットを更に含む、請求項1に記載の物体表面検出装置。
【請求項10】
光源ユニットは検出対象となる物体の表面を照射して照明視野を形成することと、
作業台ユニットの平行移動面内に第1の方向の垂直方向と第2の方向との挟角θが0°よりも大きいように、検知ユニットの位置を調整することであって、前記第1の方向は、前記平行移動面内に前記検知ユニットに対する前記作業台ユニットの運動方向であり、前記第2の方向は、前記検知ユニットの線検知視野の配置方向である、調整することと、
前記作業台ユニットが、前記検出対象となる物体を載置して平行移動面内に前記第1の方向に沿って運動させ、前記検知ユニットが前記検出対象となる物体の表面を走査することと、
前記検知ユニットが、前記検出対象となる物体の表面で形成された散乱光を受光して少なくとも2回露光させ、光信号を電気信号に変換し、且つ少なくとも2回露光させた電気信号を遅延積分処理し、前記検出対象となる物体の表面の粒度情報を取得することと、を含む、物体表面検出方法。
【請求項11】
前記挟角θは、前記照明視野の照度、時間遅延積分型TDIラインカメラのステージ数及び粒度検出再現性指標に基づいて設定される、請求項10に記載の物体表面検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出願日が2018年12月20日、出願番号が201811565436.X号の中国専利出願の優先権を主張し、該発明の全部内容を参照によって本発明に援用される。
【0002】
本発明の実施例は、物体表面異物検出技術の分野に関し、例えば、物体表面検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体集積回路又はフラットパネルディスプレイの製造プロセスにおいて、製品の歩留まりを向上させるために、汚染の抑制は極めて重要である。レチクル、シリコンウェーハ、ガラス基板などを露光する前に異物(外来粒子、指紋、傷、ピンホールなどを含む)の検出を行う必要がある。
【0004】
リソグラフィ装置に集積されている粒子検出装置は、一般に暗視野散乱測定技術を採用しており、
図1は関連技術における物体表面異物検出装置の構造模式図であり、レチクル表面の粒度検出を例にとって、
図1に示すように、放射光源10から発する光線11はレチクル40上の異物により散乱され、散乱された信号光12は検知ユニット20に入射する。しかし、この検出装置の構造は、粒子のミラーククロストーク(特にレチクルの下表面がクロムである場合は特に顕著となる)及びレチクルの下表面のマスクパターンのクロストークの影響を受ける。検知信号の信号対雑音比に大きな影響を与え、更に検出精度に影響を与える。
【0005】
上記の問題に対して、特許文献1(中国出願番号:201610877673.4号)は、光源の入射角、検知ユニットの検知角及び照明視野の制約を制御することにより、粒子のミラークロストーク問題及びマスクパターンのクロストーク問題を解決することを開示している。しかしながら、前工程のリソグラフィは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)リソグラフィの要求に比べて、粒度検出再現性及び検出可能な粒径の下限(検出可能な最小粒子)がはるかに高く、粒度検出再現性及び検出可能な粒径の下限の指標を満足できないため、粒度検出装置の粒度検出再現性を向上して検出可能な粒径の範囲を拡大する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、検出装置の粒度検出再現性を向上して検出可能な粒径の範囲を拡大し、更に物体表面異物検出の精度を向上しつつ、異物の粒度が小さすぎることによる検出漏れの問題を回避するために、物体表面検出装置及び検出方法を提供する。
【0007】
本発明の実施例は、物体表面検出装置を提供しており、該物体表面検出装置は、
検出対象となる物体を照射する入射光を発生するように構成される光源ユニットと、
検出対象となる物体を載置するように構成される作業台ユニットと、
入射光が検出対象となる物体の表面により形成された散乱光を受光するように構成される検知ユニットと、を含み、
作業台ユニットは検知ユニットに対して平行移動面内に第1の方向に沿って運動し、
検知ユニットは時間遅延積分型(Time Delay Integration,TDI)ラインカメラを含み、検知ユニットの線検知視野は第2の方向に沿って配置され、平行移動面内に第1の方向の垂直方向と第2の方向との挟角θは0°よりも大きい。
【0008】
本発明の実施例は、物体表面検出方法を更に提供しており、該物体表面検出方法は、
光源ユニットは検出対象となる物体の表面を照射して照明視野を形成することと、
作業台ユニットの平行移動面内に第1の方向の垂直方向と第2の方向との挟角θが0°よりも大きいように、検知ユニットの位置を調整することであって、第1の方向は、平行移動面内に検知ユニットに対する作業台ユニットの運動方向であり、第2の方向は、検知ユニットの線検知視野の配置方向であることと、
作業台ユニットが、検出対象となる物体を載置して平行移動面内に第1の方向に沿って運動させ、検知ユニットが検出対象となる物体の表面を走査することと、
検知ユニットが、検出対象となる物体の表面で形成された散乱光を受光して少なくとも2回露光させ、光信号を電気信号に変換し、且つ少なくとも2回露光させた電気信号を遅延積分処理し、検出対象となる物体の表面の粒度情報を取得することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は関連技術における物体表面検出装置の構造模式図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例一に係る物体表面検出装置の構造模式図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例一に係る検知ユニットの検知視野の配置方向の偏向模式図である。
【
図4】
図4は関連技術におけるTDIラインカメラの動作原理の模式図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例一に係るTDIラインカメラの動作原理の模式図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例に係る異なる偏向角度により異なる粒度の異物の粒子階調再現性に与える影響の模式図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例二に係る物体表面検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明を説明する。ここで説明される具体的な実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を説明するためにのみ使用されることが理解される。なお、説明の便宜上、構造全体ではなく、本発明に関連する一部のみが図面に示されている。
【0011】
システム分析によると、上記粒度検出装置の粒度検出再現性及び検出可能な粒径の範囲に影響する主な要因は、マルチラインTDIラインカメラの充填率が100%未満であり、充填率は通常90%にしか達しておらず、且つ短期間内に国際市場で充填率が100%のマルチラインTDIカメラを取得できないことである。
【0012】
実施例一
本発明の実施例一は物体表面検出装置を提供しており、該装置は半導体集積回路又はフラットパネルディスプレイの製造プロセスにおいて、レチクル、シリコンウェーハ又はガラス基板などを露光する前に異物の粒度を検出するために使用可能である。
図2は本発明の実施例一に係る物体表面検出装置の構造模式図であり、
図2に示すように、該物体表面検出装置は、光源ユニット100と、作業台ユニット200と、検知ユニット300とを含む。本実施例において、光源ユニット100は、検出対象となる物体を照射する入射光101を発生し、検出対象となる物体400の表面を照射して照明視野を形成するように構成される。作業台ユニット200は、検出対象となる物体400を載置するように構成され、作業台ユニット200は検出対象となる物体400を載置して検知ユニット300に対して平行移動面内に第1の方向に沿って運動させる。模式的に、
図2の矢印で示す方向である。検知ユニット300は、検出対象となる物体400の表面で形成された散乱光を受光するように構成される。本実施例において、光源ユニット100から発する入射光101は、検出対象となる物体400の表面を照射して照明視野を形成し、入射光は異物の表面で散乱され、発生した散乱光102の一部は検知ユニット300に入射し、照明視野内に検出対象となる物体の表面で発生された反射光は検知ユニット300に入射できない。検知ユニット300は画像形成光路とTDIラインカメラとを含み、異物の表面の散乱光102は画像形成光路により集光され、TDIラインカメラの受光素子で画像を形成し、TDIラインカメラの受光素子は光信号を電気信号に変換する。本発明の実施例において、検出対象となる物体400は、レチクル、シリコンウェーハ又はガラス基板などであってもよい。
【0013】
図3は本発明の実施例一に係る検知ユニットの検知視野の配置方向の偏向模式図であり、TDIラインカメラは線検知視野を有し、
図3に示すように、
図3の矢印で示す方向は作業台の運動方向であり、破線枠310は関連技術における線検知視野の作業台ユニット200への垂直投影を示し、関連技術において線検知視野の作業台ユニット200への垂直投影の配置方向は、作業台の運動方向と垂直である。実線枠320は、本発明の実施例における線検知視野の作業台ユニット200への垂直投影を示し、本発明の実施例において、線検知視野の作業台ユニット200への垂直投影は、第2の方向に沿って配置され、第2の方向は作業台の運動方向と垂直ではない。即ち、本発明の実施例における線検知視野は、関連技術における線検知視野の配置方向に対して一定の角度θだけ偏向される。
【0014】
図4は関連技術におけるTDIラインカメラの動作原理の模式図であり、模式的に
図4に示すように、TDIラインカメラは線検知視野を有し、該線検知視野はm行及び4列の画素311からなる配列を含み、mは4よりもはるかに大きいため、線検知視野と考えられてもよい。画素311は、光信号を電気信号に変換するように構成される受光素子であり、隣接する行の画素311の間に非感光性領域312が存在し、非感光性領域312は光信号に応答できないため、TDIラインカメラの充填率は100%に達することができない。作業台ユニットの運動方向は線検知視野の配置方向と垂直であるため、検出過程に、作業台ユニットの運動に伴って、異物の線検知視野における画像の移動軌跡は非感光性領域312の延在方向と平行であり、画像が移動する過程に、TDIラインカメラは異物を複数回露光させ、各列の感光性領域に誘導電荷が発生し、複数回発生した電荷を累積加算して積分し、最終にコンピュータ構成要素に電気信号を出力する。
図4において、線検知視野は4列の感光性領域を含み、即ち、画像の移動過程に発生した電荷を4回累積加算して積分する必要があり、該線検知視野においる感光性領域の列数は、ステージ数又は線数とも称し、該TDIラインカメラは4ステージ又は4線TDIラインカメラとも称する。当業者は、検知ユニットはコンピュータ構成要素に接続でき、コンピュータ構成要素は、検知ユニットにより送信した電気信号を受信して処理し、異物の粒度を取得するために用いられることを理解すべきである。異物の画像が感光性領域に完全に入ると、異物の画像の軌跡Aも感光性領域内に完全に入り、検出結果に影響を与えない。しかし、異物の画像の一部又は全部が非感光性領域に入ると、異物の画像の軌跡Bの一部又は全部は非感光性領域に入り、非感光性領域は光電変換機能を有さないため、誘導電荷が発生せず、それにより最終に出力される電気信号が弱くなる。このように、同じ粒度の異物の検出結果は大きく異なるか、又は同一の異物を複数回検出した検出結果は大きく異なり、即ち、粒度検出再現性は低くなる。また、異物の画像の一部又は全部が非感光性領域に入るため、出力された電気信号は非常に弱くなり、粒度検出結果は不正確になり、電気信号が予め設定された閾値よりも低い場合、システムは、該異物の粒度が製造要求を満たし、露光品質に影響を与えず、検出漏れの問題は発生しないと判定するが、該異物の粒度は、実際に測定された粒度よりもはるかに大きい。
【0015】
図5は本発明の実施例一に係るTDIラインカメラの動作原理の模式図であり、
図5に示すように、TDIラインカメラの動作原理は
図4に示す動作原理と類似し、相違点は、作業台ユニットの運動方向は線検知視野の配置方向と垂直ではないため、検出過程に、作業台の運動に伴って、異物の線検知視野における画像の移動軌跡は、非感光性領域312の延在方向と平行ではないことであり、
図5のC及びDに示すように、2本の軌跡C及びDにより走査された非感光性領域の面積はほぼ同じであるため、非感光性領域312により出力された電気信号に与える影響が低減され、異物の画像が入る領域に係らず、同じ粒度の異物に対応する電気信号はほぼ同じであり、最終に得られた検出結果の再現性が高く、また、粒度検出結果の不正確及び検出漏れの問題は発生しない。本発明の実施例は、線検知視野の配置方向を関連技術における線検知視野に対して適切な角度だけ偏向させることにより、検出可能な最小粒子の粒度は、関連技術における20μmから5μm以下に低下し、前工程のリソグラフィのニーズを満たす。
【0016】
本発明の実施例に係る物体表面検出装置は、作業台ユニットが検出対象となる物体を載置して検知ユニットに対して第1の方向に沿って運動させ、検知ユニットにおけるTDIラインカメラの線検知視野が第2の方向に沿って配置され、第1の方向の垂直方向と第2の方向との挟角θが0°よりも大きく、このようにして、TDIラインカメラにおける非充填領域により粒度検出再現性及び検出可能な粒径の下限に与える影響を低減し、粒子検出装置の粒度検出再現性を向上して検出可能な粒径の範囲を拡大し、検出可能な異物の粒度がより小さくなり、更に物体表面異物検出の精度を向上しつつ、異物粒度が小さすぎることによる検出漏れの問題を回避する。
【0017】
以下の表1は、本発明の実施例における線検知視野の配置方向が関連技術における線検知視野に対して55mradだけ偏向させることによって異なる粒度の粒子階調再現性に与える影響を示している。
【表1】
【0018】
本実施例において、粒子階調は検出した異物の画像の階調値を示し、粒子階調再現性は粒度検出再現性を解析するために使用され、粒子階調再現性が低いほど、粒度検出再現性が高くなる。該表1からわかるように、関連技術における線検知視野に対して線検知視野の配置方向を55mradだけ偏向させることにより、粒度が5μmの異物は、粒子階調再現性が87.53%から12.6%に低減し、他の粒度の異物の粒子階調再現性も大幅に低下する。したがって、関連技術における線検知視野に対して線検知視野の配置方向を55mradだけ偏向させることにより、粒度検出再現性を大幅に向上させ、且つ粒度がより小さい異物の粒度検出再現性をより明らかに向上させることができる。
【0019】
一実施例において、作業台ユニットの運動方向と線検知視野の作業台ユニットへの垂直投影の配置方向との挟角θ(又は本発明の実施例において関連技術における線検知視野線に対する検知視野の配置方向の偏向角度θ)の取りうる値の範囲は0°よりも大きく且つ90°以下であってもよい。
【0020】
一実施例において、光源ユニット100は、レーザ光源又は発光ダイオード(Light Emitting Diode,LED)光源を含み、特性が異なる複数のビームを含む混合光源を採用してもよい。一実施例において、光源ユニット100は線状光源であり、検出対象となる物体400の表面で形成された照明視野は線状照明視野であり、線状照明視野は線検知視野と平行に配置される。模式的に
図2に示すように、超狭線幅のレーザスポットを採用して照明し、斜め入射方法を採用して検出対象となる物体400の表面で線状照明視野を形成し、検知ユニット300は斜め受光方法を採用して散乱光を受光し、粒子のミラーククロストーク及びマスクパターンのクロストークの問題を解消する。一実施例において、光源ユニット100が発生した光の入射角度はαであり、検知ユニット300の検知角度はβであり、α≠βであり、これにより検出対象となる物体400の表面の反射光は検知ユニット300に入射できない。
【0021】
一実施例において、粒子のミラーククロストークの抑制は、照明視野半値幅s≦2h*tanφ-0.5wを満たす必要があることにしたがって、粒子のミラーククロストークを抑制できる照明視野の半値幅を調整し、ただし、hは検出対象となる物体(例えば、レチクル)の厚みであり、φは検知される受光角度が検出対象となる物体での屈折角であり、wは検知視野の幅である。
【0022】
次に、粒子のミラーククロストークを抑制できる照明視野の中心光強度と照明視野の半値幅の縁部での光強度を調整し、本実施例において、照明視野の中心光強度と照明視野の半値幅の縁部での光強度は、i_center/i_edge>(i_min p1/i_max p1_mir)*snr1を満たし、ただし、i_centerは照明視野の中心光強度であり、i_edgeは粒子のクロストークを抑制する照明視野の半値幅の縁部での光強度であり、i_min p1は検出対象となる最小粒子の受光信号であり、i_max p1_mirは、検出対象となる最大粒子のミラークロストーク信号であり、snr1は、粒子のクロストークを抑制するために満たす必要がある信号対雑音比である。
【0023】
マスクパターンのクロストークを抑制する照明視野の半値幅を調整する。本実施において、マスクパターンのクロストークの抑制は、照明視野の半値幅s<=h*(tanφ+tanγ)を満たす必要があり、ただし、hは検出対象となる物体の厚みであり、φは検知される受光角度が検出対象となる物体での屈折角であり、γは入射角が検出対象となる物体での屈折角である。
【0024】
マスクパターンのクロストークを抑制する照明視野の中心光強度と照明視野の半値幅の縁部での光強度を調整する。本実施例において、照明視野の中心光強度及び照明視野の半値幅の縁部の光強度は、i_center/i_edge>(i_min p2/i_max p2)*snr2を満たし、ただし、i_centerは照明視野の中心光強度であり、i_edgeは画像クロストークを抑制する照明視野の半値幅の縁部での光強度であり、i_min p2は検出対象となる最小画像の受光信号、i_max p2はマスクパターンのクロストークの最大信号であり、snr2はマスクパターンのクロストークを抑制するために満たす必要がある信号対雑音比である。
【0025】
以下、一連のデータを使用して本発明の物体表面粒子検出方法を説明する。検出粒子p1のダイナミックレンジは5~1000μmであり、マスクパターンのピッチ範囲は80nm~1μmであり、検出視野幅wは1mmであり、検出対象となる物体(例えば、レチクル)の屈折率は1.46であり、検出対象となる物体の厚みhは3mmであり、光源の入射角度αは75°~80°であり、検知装置の受光角度βは55°~60°であり、粒子のクロストークを抑制するために満たす必要がある信号対雑音比は5であり、マスクパターンのクロストークを抑制するために満たす必要がある信号対雑音比は2である。
【0026】
上記から分かるように、粒子のミラーククロストーク及びマスクパターンのクロストークの抑制は、同時に以下の2点を満たす必要がある。照明視野幅の7.5mmでの光強度は、照明視野の中心光強度の1/2000未満であることを満たす必要があり、照明視野幅の8.8mmでの光強度は、照明視野の中心光強度の1/5000未満であることを満たす必要がある。
【0027】
照明視野の中心光強度と照明視野の半値幅の縁部での光強度は上記の関係を満たす前提下で、照明視野の強度の均一性はよいほど、偏向する必要な角度θは小さくなり、即ち、照明視野の強度の均一性が良好な場合、小さな角度θだけ偏向すれば、良好な粒度検出再現性及び粒度検出精度を取得可能である。即ち、挟角θは、光源ユニットが検出対象となる物体表面で形成された照明視野の強度の均一性と負の相関がある。
【0028】
TDIラインカメラのステージ数が大きいほど、又は線数が多いほど、TDIラインカメラの検出の感度と精度が高くなるため、小さな角度θだけ偏向すれば、良好な粒度検出再現性及び粒度検出精度を取得可能である。即ち、挟角θはTDIラインカメラのステージ数と負の相関がある。
【0029】
一実施例において、粒度検出再現性は、挟角θと正の相関があり、即ち、作業台ユニットの運動方向の垂直方向と線検知視野の配置方向との挟角θが大きいほど、粒度検出再現性が高くなる。
図6は本発明の実施例に係る異なる偏向角度により異なる粒度の異物の粒子階調再現性に与える影響の模式図であり、
図6に示すように、
図6の4つの曲線は上から下へ順に、粒度が5μm、20μm、40μm及び60μmの異物の粒子階調再現性が偏向角度に伴って変化する曲線であり、同じ粒度の異物の場合、粒度が5μmの異物を例にとって、作業台ユニットの運動方向の垂直方向と線検知視野の配置方向との挟角θ、即ち、関連技術における線検知視野に対する線検知視野の配置方向の偏向角度が大きいほど、粒子階調再現性が小さくなり、粒度検出再現性が高くなることを示している。
【0030】
一実施例において、複数の条件を入力して粒径3sigmaの値を取得するように、照明視野の半値幅、検知視野の半値幅及びステージ数、テスト対象物(例えば、レチクル)の厚み及び屈折率などの条件に従って、粒径3sigmaのシミュレーションモデルを構成でき、ただし、粒径3sigmaは、粒度検出再現性を解析するために使用され、粒径3sigmaの値が小さいほど、粒度検出再現性が高くなる。以下の表2は、関連技術における線検知視野に対して本発明の実施例における線検知視野の配置方向を55mradだけ偏向させた場合のシミュレーションと実験テストにより得られた粒径3sigmaの比較表である。
【0031】
【表2】
該表2からわかるように、シミュレーション結果と実験テスト結果の間に大きな違いがなく、それらはともに同じ偏向角度で異物の粒度が大きいほど、粒度検出再現性が高くなることを示している。
【0032】
一実施例において、該物体表面異物検出装置は、検出対象となる物体の表面で発生した反射光と異物により発生した散乱光を分離するように構成されるビーム分離ユニットを更に含む。
図2に示すように、入射角度はαで検知角度はβであり、αとβは等しくない方式を採用することにより、反射光の大部分を遮断でき、検出対象となる物体400の表面の反射光は検知ユニット300に入射できない。しかし、反射光の一部が検知ユニット300の視野の縁部に入射することが依然として存在し、反射光の光強度は散乱光102に重畳されることにより、異物の粒度の検出は不正確になる。本発明の実施例に係る物体表面異物検出装置は、ビーム分割ユニット(図示せず)を更に含み、入射光101が検出対象となる物体400の上表面で反射されてから反射光が発生し、ビーム分離ユニットは反射光と散乱光102を分離する。一実施例において、検知ユニット300は画像形成光路と時間遅延積分型TDIラインカメラとを含み、散乱光102と反射光をビーム分離ユニットで分離した後、散乱光102は画像形成光路によりTDIカメラに集光される。本実施例において、ビーム分離ユニットは反射プリズムを用いてもよく、反射プリズムの表面領域は、光通過領域と光反射領域に分割され、本実施例において、散乱光102は光通過領域から入射し、反射プリズム内部で反射されてから検知ユニット300に入射し、反射光は反射領域に入射し、ユニット300の受光領域外に反射されることにより、反射光と散乱光102の分離を実現し、反射光が検知ユニット300内に入射しないことを確保し、更に反射光により検出精度に与える影響を回避する。
【0033】
一実施例において、該物体表面異物検出装置はTDIラインカメラの配置方向を調整してロックするように構成される調整ユニットを更に含む。一実施例において、光源ユニットは線状光源であり、検出対象となる物体の表面で形成された照明視野は線状照明視野であり、線状照明視野は線検知視野と平行に配置される。調整ユニットは、作業台ユニットの運動方向と線検知視野の作業台ユニットへの垂直投影の配置方向との挟角θを調整しつつ、光源ユニットを調整して線状照明視野と線検知視野を平行に配置させるように、TDIラインカメラの配置方向を調整してロックするように構成される。調整が完了した後、光源ユニットとTDIラインカメラの位置をロックし、動作過程に光源ユニットとTDIラインカメラの位置ずれを防止する。
【0034】
本発明の実施例は、本発明の実施例一に記載のいずれか1つの物体表面検出装置を含むリソグラフィ装置を更に提供する。
【0035】
実施例二
本発明の実施例は、物体表面検出方法を更に提供しており、本発明の実施例一に記載のいずれか1つの物体表面検出装置を用いて検出し、
図7は本発明の実施例二に係る物体表面検出方法のフローチャートであり、
図7に示すように、該方法は、以下のステップを含む。
S110は、光源ユニットは検出対象となる物体の表面を照射して照明視野を形成することである。
S120は、作業台ユニットの平行移動面内に第1の方向の垂直方向と第2方向との挟角θが0°よりも大きいように検知ユニットの位置を調整することである。
本実施例において、第1の方向は平行移動面内に検知ユニットに対する作業台ユニットの運動方向であり、第2の方向は検知ユニットの線検知視野の配置方向である。
S130は、作業台ユニットは検出対象となる物体を載置して平行移動面内に第1の方向に沿って運動させ、検知ユニットは検出対象となる物体の表面の異物を走査することである。
S140は、検知ユニットは検出対象となる物体の表面で形成された散乱光を受光して少なくとも2回露光させ、光信号を電気信号に変換し、且つ少なくとも2回露光させた電気信号を遅延積分処理し、検出対象となる物体の表面の粒度情報を取得することである。
【0036】
一実施例において、光源ユニットはレーザ光源又はLED光源を含み、特性が異なる複数のビームを含む混合光源を採用してもよい。一実施例において、光源ユニットは線状光源であり、検出対象となる物体の表面で形成された照明視野は線状照明視野であり、線状照明視野は線検知視野と平行に配置される。模式的に、超狭線幅のレーザスポットを採用して照明し、斜め入射方法を採用して検出対象となる物体の表面で線状照明視野を形成し、検知ユニットは斜め受光方法を採用して散乱光を受光し、粒子のミラーククロストーク及びマスクパターンのクロストーク問題を解消する。一実施例において、光源ユニットが発生した光の入射角度はαであり、検知ユニットの検知角度はβであり、α≠βであり、これにより検出対象となる物体表面の反射光は検知ユニットに入射できない。検知ユニットは画像形成光路と時間遅延積分型TDIラインカメラとを含み、異物の表面の散乱光は画像形成光路により集光され、TDIラインカメラの受光素子で画像を形成し、TDIラインカメラの受光素子は光信号を電気信号に変換する。
図5を参照し、該線検知視野はm行及び4列の画素311からなる配列を含み、mは4よりもはるかに大きいため、線検知視野と考えられてもよい。画素311は、光信号を電気信号に変換するように構成される受光素子であり、隣接する行の画素311の間に非感光性領域312が存在し、非感光性領域312は光信号に応答できないため、TDIラインカメラの充填率は100%に達することができない。作業台ユニットの運動方向は線検知視野の配置方向と垂直ではないため、検出過程に、作業台の運動に伴って、異物の線検知視野における画像の移動軌跡は、非感光性領域の延在方向と平行ではなく、
図5のC及びDに示すように、2本の軌跡C及びDにより走査される非感光性領域の面積はほぼ同じであるため、非感光性領域により出力された電気信号に与える影響が低減され、異物の画像が入る領域に係らず、同じ粒度の異物に対応する電気信号はほぼ同じであり、最終に得られた検出結果の再現性が高く、また、粒度検出結果の不正確及び検出漏れの問題は発生しない。また、テスト対象物の表面上の同一位置に対する複数回の検出は、異なる行のTDIラインカメラにより検出できる。
【0037】
本発明の実施例に係る物体表面粒子検出方法は、検知ユニットの位置を調整することで、検知ユニットに対する作業台ユニットの運動方向の垂直方向と線検知視野の配置方向との挟角θが0°よりも大きくなり、このようにして、TDIラインカメラにおける非充填領域により粒度検出再現性及び検出可能な粒径の下限に与える影響を低減し、粒子検出装置の粒度検出再現性を向上して検出可能な粒径の範囲を拡大し、検出可能な異物粒度がより小さくなり、更に物体表面異物検出の精度を向上しつつ、異物粒度が小さすぎることによる検出漏れの問題を回避する。
【0038】
一実施例において、照明視野の照度、TDIラインカメラのステージ数及び粒度検出再現性指標に基づいて挟角θを設定する。
【0039】
挟角θは、光源ユニットによって検出対象となる物体の表面で形成された照明視野の強度の均一性とTDIラインカメラのステージ数と負の相関があるため、事前に実験によってデータを取得し、シミュレーションモデルを構成し、粒度検出再現性指標を決定した場合、挟角θと照明視野の強度の均一性及びTDIラインカメラのステージ数との間の関係を取得することができる。検知ユニットの位置の後続調整過程に、このシミュレーションモデルに基づいて、対応する粒度検出再現性指標、照明視野の強度の均一性及びTDIラインカメラのステージ数などのパラメーターを入力し、調整する挟角θの大きさを取得可能である。
【国際調査報告】