(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】出血創傷を処置するための生成物
(51)【国際特許分類】
A61L 15/18 20060101AFI20220209BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220209BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20220209BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20220209BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20220209BHJP
A61L 33/00 20060101ALI20220209BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
A61L15/18
A61P17/02
A61L15/22
A61L15/22 300
A61L15/26
A61L15/28
A61L33/00
A61L15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021536096
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(85)【翻訳文提出日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019086325
(87)【国際公開番号】W WO2020127745
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268060
【氏名又は名称】ベーカー ギウリニ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】521268071
【氏名又は名称】フクール プロパティ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタッフェル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ザウアーン,ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ストラウブ,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ドルフェン,エドムンド
(72)【発明者】
【氏名】ミシェルス,カルメン
(72)【発明者】
【氏名】クルパン,カレル
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン,フランク-マルティン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AC01
4C081BA01
4C081CA02
4C081CA16
4C081CA23
4C081CA27
4C081CF11
4C081DA02
(57)【要約】
本発明は、出血創傷を処置するための、パッド又はフィルム形態の生成物であって、前記生成物が、有機ポリマー材料に微粉化された少なくとも1種の微粒子結晶性無機ポリホスフェートを含有する有機ポリマー材料から形成され、ポリホスフェートが、20℃にて5g/L未満、詳細には1g/L未満の脱イオン水中での溶解度を有し、ポリホスフェートのアニオンが、ポリホスフェートアニオン1個当たり少なくとも平均(数平均)4個のリン原子を有する、生成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における出血創傷の処置に使用するための、有機ポリマー材料から形成される可撓性シート材料の形態の作用剤であって、有機ポリマー材料が、有機ポリマー材料に微粉化形態で存在する少なくとも1種の微粒子結晶性無機ポリホスフェートを含み、ポリホスフェートが、20℃にて5g/L未満の脱イオン水中での溶解度を有し、ポリホスフェートのアニオンが、ポリホスフェートアニオン1個当たり少なくとも平均(数平均)4個のリン原子を有する、作用剤。
【請求項2】
ポリホスフェートが、アルカリ金属ポリホスフェート、アルカリ土類金属ポリホスフェート及びアンモニウムポリホスフェートから選択される、請求項1に記載の作用剤。
【請求項3】
ポリホスフェートがナトリウムポリホスフェートである、請求項1又は2に記載の作用剤。
【請求項4】
ポリホスフェートの粒子が、静的レーザー光散乱により判定される、5から40μmの範囲内の質量中央粒径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項5】
作用剤の合計重量に対して1重量%から30重量%の範囲内の量でポリホスフェートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項6】
有機ポリマー材料が熱可塑性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項7】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、脂肪族-芳香族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリアミド、ポリオレフィン、ポリシロキサン及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項6に記載の作用剤。
【請求項8】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、
i.少なくとも1種のポリラクチド及び少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルの混合物、又は
ii.ヒドロキシ酪酸と、6から12個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の少なくとも1種のコポリエステル、若しくは、そのようなコポリエステルとポリラクチドの混合物
を含む、請求項7に記載の作用剤。
【請求項9】
フィルムの形態の、請求項6から8のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項10】
フィルムの厚さと微粒子ポリホスフェートの中央粒径との比が、0.5:1から5:1の範囲内である、請求項9に記載の作用剤。
【請求項11】
有機ポリマー材料が、有機ポリマーをベースとしたヒドロゲルの形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項12】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、少なくとも1種のヒドロゲル形成ポリサッカリド、詳細には少なくとも1種の架橋カルボキシル化ポリサッカリドを含む、請求項11に記載の作用剤。
【請求項13】
有機ヒドロゲル形成ポリサッカリドが、架橋アルギネートである、請求項11又は12に記載の作用剤。
【請求項14】
パッドの形態の、請求項11から13のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項15】
無菌包装されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項16】
外科的介入、特に内臓器官に対する手術で使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項17】
血液凝固を低下させる作用剤で以前に処置されている、又は凝血異常を有する患者で使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の作用剤を製造する方法であって、ポリホスフェート及び任意選択でさらなる止血剤の、有機ポリマー材料中への組み込みを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における出血創傷を処置するための、詳細にはヒト、とりわけ、抗凝固剤の投与により血液凝固が影響を受けている患者における出血創傷を処置するための作用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト及び動物の組織層傷害は、それらの内部の血管を損傷することがあり、これにより、皮膚上又は体内の患部で血液漏出が引き起こされ得る。血液漏出の段階後、自然な血液凝固が始まる。血液凝固は、生理学的な防御機構としての液体血液の固化を指す。血液凝固は、いくつかの凝固因子が関与する2つの複雑なカスケード酵素反応経路に基づく。両経路は、一般的に内因系経路及び外因系経路として公知であり、創傷閉鎖に関与する血餅の形成において主な役割を果たす不溶性フィブリン鎖の形成を引き起こす。第IIa凝固因子としても公知のトロンビンは、この場合、フィブリン形成を引き起こすだけではなく、正のフィードバックを通して凝固カスケードにおいていくつかの点で活性化効果も有するので、重要な役割を果たす。その一方で、Hageman因子としても公知の第XII因子は、凝固カスケードの内因系経路の開始において作用し、最終的にプロトロンビンからトロンビンの形成を誘発する。
【0003】
自然血液凝固は、大抵は外傷が発生した直後に始まるが、創傷閉鎖、及び付随する止血を引き起こすのに多少時間がかかる比較的遅いプロセスである。したがって多くの場合、例えば衛生上の理由で、又は創傷の大きさ若しくは血流の強度の理由で過剰な失血が懸念される場合は、止血の促進が望ましい。周知の止血方法、例えば創傷の被覆、圧迫包帯及びステープルの適用、又は創傷の縫合は、不十分なことが多く、特に内臓器官における血管傷害の場合、困難を伴ってのみ可能である、又は全く不可能である。止血の改善を助けることが意図されている方法、例えば血液凝固を促進する物質、例としてフィブリングルーの創傷領域への導入は、したがって従来技術から公知である。
【0004】
無機物質の止血剤としての使用は、繰り返し記載されている。例えば、US4,822,349及びUS2003/0133990は、出血創傷を処置するための、脱水ゼオライトをベースとした作用剤の使用について記載している。脱水ゼオライトは、漏出した血液から水を吸収することにより血液凝固を誘発させ、このプロセスにおいて放出された熱が創傷閉鎖を促進することが想定される。そのような作用剤は、QuickClot(登録商標)の商品名で一定期間市場に出されていた。しかし使用すると、重度の組織損傷が付随することが何度もあった(J. K. Wrightら、J. Trauma 57(2004年)、224~230頁を参照のこと)。脱水ゼオライトをベースとした作用剤の難点の解消は、US2006/0039994に記載されている、リン酸アルミニウムをベースとした分子ふるいにより達成されている。
【0005】
WO2006/088912は、粘土鉱物、例えばベントナイト又はカオリンの止血効果について記載している。カオリンをベースとした当該止血剤は、Woundstat(登録商標)の商品名で市場に出されている。この場合も、血液凝固は、漏出した血液からの水の吸収により誘発されると考えられ、ポリアクリル酸により生じる機械的な創傷閉鎖も、これらの作用剤で提示される。しかしこれらの作用剤は、組織損傷の発生及び塞栓症の発症が理由で、もはや使用されていない(さらなる証拠を示すG. Lawtonら、JR. Army Med. Corps 155(4)(2009年)309~314頁を参照のこと)。
【0006】
WO2015/063190は、結晶性の水不溶性無機ポリホスフェートの止血効果について記載している。これらのポリホスフェートの止血効果は、第XII因子により媒介されるとみられる凝固カスケードの接触活性化に基づくと考えられ、続いてこれにより、内因系経路を経由したトロンビン形成、ひいては、フィブリノーゲンからのフィブリン形成が誘発される。これらのポリホスフェートは、典型的には粉末の形態で適用される。
【0007】
しかし出血創傷の場合、微粒子物質、例えば粉末の取扱いが問題となる。例えば、出血が大量である場合、物質が創傷領域からすぐに洗い流される危険性があるので有効性は低下し、一方出血が軽度の場合は、物質は血流に入り込み、望ましくない効果、例えば血栓性血餅の形成を、創傷からかなり離れた体の一部に引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、取扱いしやすく、止血効果を有するが従来技術の欠点がない作用剤を提供することである。ヒトにおける軽度及び重度両方の出血創傷、詳細には手術創傷、並びに/又は抗凝固剤の投与により血液凝固が抑制されている患者に作用剤を使用することを可能にすべきである。作用剤は、発生する出血を効率的に鎮静化させるべきである。さらに、製造が簡単且つ安価であるべきであり、従来の方法を使用した医療行為における使用が簡単且つ確実であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、結晶性の水不溶性無機ポリホスフェート、例えばWO2015/063190に記載されているものの止血効果は、これらがポリマーマトリックス中に微粉化形態で包埋されている場合、失われない。これにより、例えば、止血効果を有するパッド又はフィルムの製造が可能となり、このパッド又はフィルムは、当該粉末より容易に哺乳動物、詳細にはヒトにおける出血創傷に適用できる。
【0010】
既に述べられているように、水不溶性無機ポリホスフェートの止血効果は、第XII因子の接触活性化に基づくと仮定されるはずであるため、これは驚くべきことである。
【0011】
したがって、本発明は有機ポリマー材料から形成される可撓性シート材料の形態の、詳細にはパッド又はフィルムの形態の作用剤であって、有機ポリマー材料が、有機ポリマー材料に微粉化形態で存在する少なくとも1種の微粒子結晶性無機ポリホスフェートを含み、ポリホスフェートが、20℃にて5g/L未満、詳細には1g/L未満の脱イオン水中での溶解度を有し、ポリホスフェートのアニオンが、ポリホスフェートアニオン1個当たり少なくとも平均(数平均)4個のリン原子を有する、作用剤に関する。
【0012】
本発明は、詳細には、哺乳動物における出血創傷を処置するための、詳細にはヒト、とりわけ、抗凝固剤の投与により血液凝固が影響を受けている患者における出血創傷を処置するための、そのような作用剤の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シート材料は一般的に、通常少なくとも1cm2、詳細には少なくとも2cm2、又は少なくとも3cm2の面積を有する、肉眼で見えるシート状の構造を意味すると理解される。面積上限は、全体を通じてさほど重要ではない。本発明による使用では、構造の面積は通常、2000cm2、とりわけ1000cm2の値を超えない。詳細には、これは、1から2000cm2の範囲内、又は2から1500cm2の範囲内又は3から1000cm2の範囲内である。厚さは、シート材料のタイプに応じて広い範囲で変動させてよく、1μmから20mmの範囲内、詳細には10μmから10mmの範囲内である。厚さの判定は、それ自体公知の手段で判定され得る。ここで述べた値は、シート材料における最少5つの異なる試験点で判定された厚さの平均値である。
【0014】
本発明のシート材料は可撓性であり、すなわちこれらに、少なくとも面法線に対して機械力の作用下で弾性変形を加えることができる。この変形能は、その寸法、詳細にはその厚さに関して、好適な弾性を有するポリマー材料から形成されるシート材料により確保される。典型的なポリマー材料の弾性率は、20℃にて、典型的には0.001から3.0GPaの範囲内、詳細には0.1から1.2GPaの範囲内である。
【0015】
本発明によれば、シート材料は、微粒子結晶性無機ポリホスフェートが微粉化形態で存在する有機ポリマー材料から形成される。繊維から構成されている繊維シート材料と対照的に、本発明のシート材料では、有機ポリマー材料は、以下ポリホスフェート粒子と呼ぶ微粒子結晶性無機ポリホスフェートの粒子が、微粉化形態で存在する、又はポリホスフェート粒子が微粉化形態で包埋されているシート状マトリックスを形成する。言い換えれば、有機ポリマー材料は、ポリホスフェート粒子が包埋されているコヒーレント層を形成する。ポリホスフェート粒子は、この場合、有機ポリマー材料に完全に包囲されていても、又は部分的に包囲されていてもよい。
【0016】
典型的な可撓性シート材料は、フィルム及びパッドである。フィルムは、通常1mm以下、多くは500μm以下、詳細には250μm又は200μm以下の厚さ、例えば1から1000μmの範囲内、多くは5から500μm、詳細には10から250μmの範囲内又は20から200μmの範囲内の厚さを有するシート材料を意味すると理解される。パッドは、1mm超の厚さ、例えば1から20mmの範囲内、詳細には2から10mmの範囲内の厚さを有するクッション形状のシート材料である。
【0017】
結晶性及び水に本質的に不溶性、すなわち20℃にて5g/L未満、詳細には1g/L未満の脱イオン水中での溶解度を有する、WO2015/063190に記載されているすべての結晶性無機ポリホスフェートは、原則として、ポリホスフェートとして好適である。
【0018】
本発明のシート材料に存在する無機ポリホスフェートは、結晶性であり、通常、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、詳細には少なくとも98%の結晶化度を有する。ポリホスフェートの結晶化度は、X線粉末回折法により、それ自体公知の手段で、例えばWO2015/063190に記載されている方法に従って判定され得る。この方法では、ディフラクトグラムで検出された反射の半値幅は、それ自体公知の手段で結晶化を定量化するために使用される。
【0019】
本発明のシート材料に存在する結晶性無機ポリホスフェートのポリホスフェートアニオンは、典型的には、ポリホスフェートアニオン1個当たり平均(数平均)少なくとも6、詳細には少なくとも8又は少なくとも10、とりわけ少なくとも12又は少なくとも15個のリン原子を有する。当業者は、この種のポリホスフェートにおけるポリホスフェートアニオンすべてが、典型的にはアニオン1個当たり同一数のリン原子を有するとは限らないが、その代わりポリホスフェートアニオン1個当たりのリン原子数が異なることを分かっている。詳細には、本発明のポリホスフェートのポリホスフェートアニオンは、ポリホスフェートアニオン1個当たり平均(数平均)4から2000、多くは6から1000又は8から500、好ましくは10から400又は12から300、詳細には15から200個のリン原子を有する。ポリホスフェートアニオンにおけるリン原子の数平均数は、それ自体公知の手段で、例えば31P固体NMRにより、例えばWO2015/063190に記載されている方法を使用して判定され得る。
【0020】
結晶性無機ポリホスフェートは、好ましくは、本質的に水に不溶性である結晶性アルカリ金属ポリホスフェート、アルカリ土類金属ポリホスフェート及びアンモニウムポリホスフェートから選択される。結晶性ポリホスフェートのカチオンは、したがって、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムイオンであり、詳細にはNa+、K+、NH4
+、Ca2+及びMg2+から、好ましくはNa+、K+、NH4
+及びCa2+から選択される。
【0021】
水不溶性の結晶性無機ポリホスフェートのアニオンは、結晶性ポリホスフェートにおけるポリホスフェートアニオンの合計量に対して、通常本質的に、すなわち少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%、詳細には少なくとも95mol%の範囲で、直鎖状又は環状である。そのようなポリホスフェートのアニオンはしたがって、2個のリン原子のいずれかが酸素原子を経由して互いに接続しているメタホスフェート単位PO3
-の鎖である。「鎖の長さ」はしたがって、ポリホスフェートアニオンに存在するメタホスフェート単位PO3
-の数を意味すると理解される。本発明の直鎖状結晶性ポリホスフェートは、式A:
【0022】
【0023】
式Aでは、nは、平均4から2000、多くは6から1000又は8から500、好ましくは10から400又は12から300、詳細には15から200の数(数平均)を表す。Mは、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムイオンから、Na+、K+、NH4
+、1/2Ca2+及び1/2Mg2+から、好ましくはNa+、K+、NH4
+及び1/2Ca2+から選択されるカチオン又はカチオン等価物を表す。「1/2Ca2+」及び「1/2Mg2+」という表現は、この場合、式Aのポリホスフェートに存在する各Ca2+又はMg2+が、二重正電荷のため、式Aにおける2個のカチオンMを表すことを意味する。
【0024】
結晶性無機ポリホスフェートは、好ましくは、結晶性無機ポリリン酸ナトリウム、詳細には式Aの直鎖状ポリリン酸ナトリウムから選択される。詳細には、結晶性無機ポリホスフェートは、いわゆるMaddrell塩であり、Maddrellの塩としても公知である。Maddrellの塩としても公知のMaddrell塩は、典型的には、ポリホスフェートアニオン1個当たり平均少なくとも20個のリン原子を有する、高縮合直鎖状ポリリン酸ナトリウムを意味すると当業者により理解される。
【0025】
本発明のパッド及びフィルムに存在する結晶性ポリホスフェートは、その高い純度を特徴とする。これらはしたがって、水溶性成分を少量のみ含む。ここで水溶性と呼ばれる成分は、粉末形態で、25℃にて、1時間に少なくとも50重量%の速度で水中に溶解するものである。そのような水溶性成分は、典型的には、高い水溶解度を有するモノ-、ピロ-及びトリホスフェート、また環状メタホスフェート、例えばトリ-、テトラ-又はヘキサメタホスフェートである。水溶性成分の割合は通常、ポリホスフェートの合計重量に対して8重量%未満、好ましくは5重量%未満、詳細には3重量%未満である。残留水分の形態でやはり結晶性ポリホスフェートに存在し得る水の割合は、ポリホスフェートの合計重量に対して、普通は1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、詳細には0.3重量%未満である。(ポリ)ホスフェート又は水ではない構成要素の割合は、ポリホスフェートの合計重量に対して、通常0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、詳細には0.01重量%未満である。
【0026】
本発明の作用剤に存在する結晶性無機ポリホスフェートは、シート材料を形成するポリマー材料に、微粉化形態で、すなわち結晶性ポリホスフェート粒子の形態で存在する。ポリマー材料はしたがって、典型的には、それに分布したポリホスフェート粒子を包囲する、又は少なくとも部分的に包囲する連続マトリックスを形成する。
【0027】
結晶性無機ポリホスフェート粒子の粒子サイズは通常、その生成に使用される結晶性無機ポリホスフェートに対応する。結晶性ポリホスフェート粒子は、典型的には0.1から80μmの範囲内、詳細には0.3から50μmの範囲内の粒子サイズを有する。結晶性ポリホスフェート粒子は、普通は3から50μmの範囲内、詳細には5から40μmの範囲内、とりわけ10から30μmの質量中央粒径を有する。ここで述べられている値は、生成に使用される結晶性無機ポリホスフェートの粒子サイズ/粒度の、いわゆる積分質量分布のd50値である。
【0028】
結晶性無機ポリホスフェート粒子の粒子サイズ分布は、典型的には、ISO 13320:2009に記載されている方法に従って、静的レーザー光散乱により判定される。それぞれの粒度の質量分画は、そこから判定され得る。或いは、それぞれの粒度又は粒度範囲の質量分画は、DIN 66165:2016-08に従って、事前に較正された系での機械ふるい分けによる複数のふるいを使用したポリホスフェートの分別により判定され得る。ここで、また本明細書において以下で特に指定がない限り、微粒子物質の粒子サイズ分布は、ISO 13320:2009に記載されている方法に従って静的レーザー光散乱により判定される。
【0029】
特に指定がない限り、粒子サイズ/粒度に関連する百分率は、重量に対する百分率を意味すると理解されるべきである。これに関連して、d90値は、ポリホスフェート粒子の90重量%が下回る粒度/粒子サイズを指す。d10値は、ポリホスフェート粒子の10重量%が下回る粒度/粒子サイズを指す。d50値は、粒状体の質量中央値の粒度/粒子サイズを指す。生成に使用される結晶性ポリホスフェートの粒子サイズ分布は、好ましくは、最大70μm、詳細には最大50μm、とりわけ最大40μmのd90値を有する。生成に使用される結晶性ポリホスフェートの粒子サイズ分布は、好ましくは、少なくとも0.5μm、詳細には少なくとも1μm、とりわけ少なくとも2μmのd10値を有する。
【0030】
本発明の作用剤は、典型的には、作用剤の合計重量に対して、1重量%から30重量%の範囲内の量で、詳細には2重量%から20重量%の範囲内の量で、とりわけ3重量%から15重量%の範囲内の量で結晶性無機ポリホスフェートを含む。
【0031】
シート材料を構成する有機ポリマー材料は通常、有機ポリマーをベースとした熱可塑性ポリマー材料又はヒドロゲルである。
【0032】
本発明の第1の群の実施形態では、ポリマー材料は、熱可塑性ポリマー材料である。これらは、ポリマー材料+ポリホスフェートの合計質量に対して、普通は少なくとも50重量%の1種以上の有機熱可塑性ポリマーからなる。詳細には、この種の熱可塑性ポリマー材料における有機熱可塑性ポリマーの割合は、ポリマー材料+ポリホスフェートの合計質量に対して、少なくとも60重量%、とりわけ少なくとも65重量%である。この種の熱可塑性ポリマー材料における有機熱可塑性ポリマーの割合は、ポリマー材料+ポリホスフェートの合計質量に対して、多くは50重量%から99重量%、詳細には少なくとも60重量%から97重量%、とりわけ65重量%から95重量%である。この群の実施形態では、本発明の作用剤におけるポリホスフェート含有量は、ポリマー材料+ポリホスフェートの合計質量に対して、典型的には1重量%から30重量%の範囲内、詳細には2重量%から20重量%の範囲内、とりわけ3重量%から15重量%の範囲内である。
【0033】
熱可塑性ポリマー材料における好適な有機熱可塑性ポリマーの例は、主に縮合ポリマー、例えば、脂肪族ポリエステル、部分芳香族ポリエステル及びまた芳香族ポリエステルを含むポリエステル、さらに、脂肪族ポリアミド及び部分芳香族ポリアミドを含むポリアミド、脂肪族ポリエステルアミド及び部分芳香族ポリエステルアミドを含むポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートであるが、付加ポリマー、例えばポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、HMW及びUHMW、ポリプロピレン、例えばアタクチック、シンジオタクチック又はイソタクチックポリプロピレンを含むポリオレフィン、並びにポリイソプレン、例えばアタクチック、シンジオタクチック又はイソタクチックポリイソプレン、ポリ尿素並びにポリエステルウレタン及びポリエーテルウレタンを含むポリウレタン、また、ポリシロキサン及び上述のポリマーのブレンドでもある。好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、脂肪族-芳香族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリアミド、ポリオレフィン、及び/又はそれらの混合物から選択される。詳細には、ポリマー材料は、ポリエステル及びポリエステルカーボネート、並びにそれらの混合物から特に選択される少なくとも1種の縮合ポリマーを含む。
【0034】
熱可塑的に加工可能なポリマー材料は、好ましくは、75から250℃の範囲内のガラス転移温度又は融点を有する少なくとも1種の有機ポリマーを含む。ポリマーが融点を有する、すなわち部分的に結晶性又は結晶性である場合、好ましくは75から250℃の範囲内の融点を有する。ポリマーが非晶質である場合、好ましくは75から250℃の範囲内のガラス転移温度を有する。融点又はガラス転移温度は、普通はDIN EN ISO 11357:2017に従って動的示差熱量測定(DSC)により判定される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、熱可塑的に加工可能なポリマー材料は、主要な成分として、すなわち、それに含有される有機ポリマーに対して、少なくとも50重量%の範囲で、詳細には少なくとも60重量%の範囲で、とりわけ少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、脂肪族-芳香族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリアミド、ポリオレフィン及び/又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0036】
本発明のこの好ましい実施形態では、熱可塑的に加工可能なポリマー材料は、主要な成分として、詳細には:
i.少なくとも1種のポリラクチド及び少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルの混合物、
又は
ii.ヒドロキシ酪酸と、6から12個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の少なくとも1種のコポリエステル、若しくは、そのようなコポリエステルとポリラクチドの混合物、
又は
iii.少なくとも1種のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン若しくはポリプロピレン、
又は
iv.シンジオタクチック、イソタクチック若しくはアタクチックポリイソプレン、
又は
v.ポリシロキサン
を含む。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、熱可塑的に加工可能なポリマー材料は、主要な成分として、すなわち、それに含有される有機ポリマーに対して、少なくとも50重量%の範囲で、詳細には少なくとも60重量%の範囲で、とりわけ少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で、少なくとも1種の生分解性ポリマーを含む。
【0038】
「生分解性」という用語は、当該物質、この場合はポリマーが、1992年からのOECDガイドライン301Bの試験(無機スラッジにおける堆肥化中のCO2放出の測定、及び理論上起こり得る最大のCO2放出との比較)において、25℃にて7日後、少なくとも5%分解されることを意味すると理解される。
【0039】
好ましい生分解性ポリマーの例は、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、脂肪族-芳香族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリアミド、脂肪族-芳香族ポリエステルアミド、及びそれらの混合物である。詳細には、生分解性ポリマーは、脂肪族-芳香族ポリエステル及びそれらとポリヒドロキシアルカノエート及び/又はポリラクチドとの混合物から選択される。
【0040】
部分芳香族ポリエステルは、脂肪族-芳香族ポリエステル、すなわち芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物をベースとしたポリエステル、また芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物の混合物をベースとしたポリエステルとも呼ばれる。脂肪族-芳香族ポリエステルは、詳細には脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物の混合物をベースとしたポリエステルである。
【0041】
脂肪族ジカルボン酸は、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、2-メチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、α-ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、フマル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、スベリン酸、ジグリコール酸、オキサロ酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イタコン酸、マレイン酸及びそれらの混合物である。好ましい脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸及びそれらの混合物から選択される。
【0042】
芳香族ジカルボン酸は、詳細にはテレフタル酸である。
【0043】
脂肪族ジオールは、詳細には、2から12個の炭素原子、詳細には4から6個の炭素原子を有する分岐状又は直鎖状アルカンジオールである。好適なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-ブチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-イソブチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジオール、とりわけエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール及び2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール(ネオペンチルグリコール)である。
【0044】
脂肪族-芳香族ポリエステルは、特に好ましくは、ポリブチレンアゼレート-co-ブチレンテレフタレート(PBAzeT)、ポリブチレンブラシレート-co-ブチレンテレフタレート(PBBrasT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)及びポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、並びにそれらの混合物から選択される。
【0045】
ポリラクチドは、ポリ乳酸及びポリ乳酸コポリマー、例えばポリラクチド-co-ポリグリコール酸(PLGA)を含む。ポリヒドロキシアルカノエートは、詳細には4から12個の炭素原子を有する3-又は4-ヒドロキシアルカン酸、例えばポリヒドロキシブチレート、例えばポリ-4-ヒドロキシブチレート及びポリ-3-ヒドロキシブチレートのホモ-及びコポリエステル、ポリヒドロキシバレレート、例えば3-ヒドロキシ吉草酸のホモ-及びコポリエステル、ポリヒドロキシヘキサノエート、例えば3-ヒドロキシヘキサン酸のホモ及びコポリマーを含む。これらのうち、詳細には、上述のヒドロキシ酪酸と、好ましくは6から12個の炭素原子を有する長鎖ヒドロキシアルカン酸のコポリエステル、例えばヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸のコポリエステル、例として(P(3HB)-co-P(3HV))、またヒドロキシ酪酸とヒドロキシヘキサン酸のコポリエステルが特に好ましい。
【0046】
部分芳香族ポリアミドは、脂肪族-芳香族ポリアミド、すなわち芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジアミノ化合物をベースとしたポリアミド、また芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジアミノ化合物の組合せをベースとしたポリアミドとも呼ばれる。
【0047】
部分芳香族ポリエステルアミドは、脂肪族-芳香族ポリエステルアミド、すなわち芳香族ジカルボン酸並びに脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂肪族ジアミノ化合物の組合せをベースとしたポリエステルアミド、また芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の組合せ、及び脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂肪族ジアミノ化合物の組合せをベースとしたポリエステルアミドとも呼ばれる。
【0048】
脂肪族-芳香族ポリエステルは、詳細には脂肪族ジカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジヒドロキシ化合物の混合物をベースとしたポリエステルである。
【0049】
熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、好ましくは、それに含有される有機ポリマーに対して、少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル、詳細には、特に好ましいと述べられている少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルを含む。詳細には、少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルは、主要な成分であり、ポリマー材料に存在する有機ポリマーに対して、少なくとも50重量%、詳細には少なくとも60重量%を構成する。
【0050】
詳細には、熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、すなわち少なくとも50重量%の範囲で、好ましくは少なくとも60重量%の範囲で、詳細には少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で、少なくとも1種のポリラクチド、及び少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル、詳細には特に好ましいと述べられている少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルの混合物を含む。
【0051】
好ましい群の実施形態では、熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、主要な成分として、すなわち、それに含有される有機ポリマーに対して、少なくとも50重量%の範囲で、好ましくは少なくとも60重量%の範囲で、詳細には少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で
- 1重量%から40重量%、詳細には2重量%から30重量%の少なくとも1種のポリラクチド、並びに
- 60重量%から99重量%、詳細には70重量%から98重量%の少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル、詳細には特に好ましいと述べられている少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル
を含む混合物を含み、重量%の値は、ポリラクチド及び脂肪族-芳香族ポリエステルの合計質量に基づく。
【0052】
さらなる好ましい群の実施形態では、熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、主要な成分として、すなわち、それに含有される有機ポリマーに対して、少なくとも50重量%の範囲で、好ましくは少なくとも60重量%の範囲で、詳細には少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で、ヒドロキシ酪酸と、6から12個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の少なくとも1種のコポリエステル、例えばヒドロキシ酪酸と、ヒドロキシ吉草酸の少なくとも1種のコポリエステル、例として(P(3HB)-co-P(3HV))、並びに/若しくはヒドロキシ酪酸と、ヒドロキシヘキサン酸のコポリエステル、又は1種以上のそのようなコポリエステルと少なくとも1種のポリラクチドの混合物を含む。
【0053】
有機ポリマーに加えて、ポリマー材料は、典型的な加工助剤も含み得る。
【0054】
加工助剤は、分散剤、滑沢剤、疎水化剤、フェーズプロモーター(phase promoter)、架橋剤、混合改善剤(mixing improver)、可塑剤、触媒及び抗酸化剤、また鎖延長剤を含む。加工助剤は、好ましくは生理学的に適合可能であり、且つ/又は医療用具における使用が許可されている。
【0055】
ポリマー材料及びポリホスフェートに加えて、熱可塑性ポリマー材料をベースとした作用剤は、任意選択で、無機ポリホスフェート以外のフィラーを含み得る。さらなるフィラーは、詳細には無機フィラー、例えば普通は熱可塑性ポリマー材料に使用されるものを含む。さらなるフィラーは、好ましくは生理学的に適合可能であり、且つ/又は医療用具における使用が許可されている。好適なフィラーの例は、チョーク、シリカゲル及び粘土鉱物、例えば滑石又はベントナイト及びそれらの混合物である。
【0056】
他のフィラーは、ISO 13320:2009に記載されている方法に従って、又は、DIN 66165:2016-08に従って、事前に較正された系での機械ふるい分けによる複数のふるいを使用したフィラーの分別により、静的レーザー光散乱により判定され、普通は3から50μmの範囲内、詳細には5から40μmの範囲内、とりわけ10から30μmの質量中央粒径(d50値)を有する。
【0057】
加工助剤の割合は、典型的には0重量%から5重量%の範囲内である。さらなるフィラーの割合は、ポリマー材料+ポリホスフェート+さらなるフィラーの合計質量に対して、典型的には0重量%から25重量%の範囲内、又は1重量%から25重量%の範囲内である。ポリホスフェート及びそれとは異なるフィラーの合計質量は、ポリマー材料+ポリホスフェート+さらなるフィラーに対して、典型的には1重量%から50重量%の範囲内、詳細には2重量%から40重量%の範囲内、とりわけ3重量%から35重量%の範囲内である。
【0058】
本発明の第2の群の実施形態では、ポリマー材料は、有機ポリマーをベースとしたヒドロゲルである。これらは、架橋しており、水膨張性であるが同時に水不溶性のポリマーをベースとした、ヒドロゲル形成剤とも呼ばれる水含有ゲルである(Rompp Chemie-Lexikon、第10版、Georg Thieme Verlag 1997年、1835頁及びそこに引用されている文献を参照のこと)。
【0059】
好適なヒドロゲル形成剤は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリビニルピロリドン、架橋ポリアルキレンエーテル及び好ましくは架橋ポリサッカリド、例えばカラギーナン、ゲラン-アガロース、キサンタン、デンプン、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン及びアルギネートである。架橋ポリサッカリドをベースとするヒドロゲルの概説は、J. T. Oliveiraら、「Natural-Based Polymers for Biomedical Applications」、第18章:「Hydrogels from polysaccharide-based materials:Fundamentals and applications in regenerative medicine」、Woodhead Publishing in Biomaterials、2008年、485~514頁、https://doi.org/10.1533/9781845694814.4.485、及びD. Pasquiら、Polymers 2012、4、1517~1534頁;doi:10.3390/polym4031517で見出せる。ポリサッカリドの架橋は、共有結合架橋剤により、また配位架橋剤により、例えば多価金属イオンの塩により生じ得る。これらは、詳細にはアルカリ土類金属の塩、詳細にはカルシウム塩、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウム又は硫酸カルシウム、また亜鉛塩、例えば塩化亜鉛又は硫酸亜鉛を含む。
【0060】
本発明による好ましいヒドロゲルは、ヒドロゲル形成剤として、少なくとも1種の架橋ポリサッカリド、詳細には少なくとも1種の架橋カルボキシル化ポリサッカリド、例えばカルボキシメチルセルロース、ペクチン及びアルギネート、とりわけ架橋アルギネートを含む。カルボキシル化ポリサッカリドの架橋は、詳細には配位架橋剤により生じる。詳細には、架橋は、多価金属イオンの塩により生じる。これらは、詳細には、上述のアルカリ土類金属の塩、また上述の亜鉛塩を含む。
【0061】
この第2の群の実施形態では、本発明の作用剤は、典型的には、ヒドロゲル+ポリホスフェートの合計質量に対して、1重量%から20重量%の範囲内の量で、詳細には2重量%から15重量%の範囲内の量でヒドロゲル形成剤を含む。ヒドロゲル形成剤に加えて、ヒドロゲルは、水及び結晶性無機ポリホスフェートを含む。ヒドロゲルにおける水含有量は、ヒドロゲル形成剤、水及びポリホスフェートの合計質量に対して、好ましくは20重量%から80重量%の範囲内である。この群の実施形態では、本発明の作用剤におけるポリホスフェート含有量は、ヒドロゲル形成剤、水及びポリホスフェートの合計質量に対して、典型的には1重量%から30重量%の範囲内、詳細には2重量%から20重量%の範囲内、とりわけ3重量%から15重量%の範囲内である。
【0062】
上述の成分に加えて、本発明のヒドロゲルをベースとした作用剤は、その製造に必要なさらなる成分を含み得る。これらは、詳細には緩衝剤及び凝固遅延剤、例えばアルカリ金属ピロホスフェート、並びに非架橋ヒドロゲル形成剤と、使用される架橋剤、例えば無機酸及びその塩の反応中に形成された反応生成物を含む。
【0063】
本発明の作用剤は、結晶性無機ポリホスフェート以外の、止血効果を有することが公知の1種以上のさらなる作用剤も含み得る。概説は、例えばG. Lawtonら、JR. Army Med. Corps 155(4)(2009年)309~314頁と、さらなる証拠で見出される。これは、好ましくは有機作用剤、例えばキトサン、その誘導体、トロンビン、フィブリン又はフィブリノーゲンである。止血効果を有するそのような他の作用剤の割合は通常、本発明の作用剤の重量に対して10重量%以下、好ましくは本発明の作用剤の重量に対して5重量%以下である。詳細には、本発明の作用剤は、結晶性無機ポリホスフェート以外の、止血効果を有するさらなる無機作用剤を一切含有しない。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の作用剤は、無菌形態で使用される。したがって本発明は、無菌である本発明の作用剤、及び、比較的長期の保存期間にわたっても無菌状態を損なわないように包装に封入されている無菌形態の本発明の作用剤にも関する。
【0065】
本発明の特に好ましい群の実施形態は、少なくとも1種の結晶性無機ポリホスフェートを含む上に記載されている熱可塑性ポリマー材料でできているフィルムに関する。
【0066】
好ましいフィルムは、10から250μmの範囲内、詳細には20から200μmの範囲内の厚さを有する。詳細には、これらは、結晶性無機ポリホスフェートとして、3から50μmの範囲内、詳細には5から40μmの範囲内、とりわけ10から30μmの質量中央粒径d50を有するポリホスフェートを含む。詳細には、粒径は、フィルムの厚さと微粒子ポリホスフェートの質量中央粒径との比が、0.5:1から5:1の範囲内になるように調整される。
【0067】
熱可塑性ポリマー材料、ポリホスフェート、さらなる成分及び割合に関連する、上で述べられている優先傾向に関して、同じことがフィルムに存在する成分に準用される。
【0068】
詳細には、フィルムに存在する熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、1種以上の有機熱可塑性ポリマーのフィルム材料の合計質量に対して、少なくとも50重量%の範囲で存在する。詳細には、この種の熱可塑性ポリマー材料における有機熱可塑性ポリマーの割合は、フィルム材料の合計質量に対して、少なくとも60重量%、とりわけ少なくとも65重量%である。この種の熱可塑性ポリマー材料における有機ポリマーの割合は、フィルム材料の合計質量に対して、多くは50重量%から99重量%、詳細には少なくとも60重量%から97重量%、とりわけ65重量%から95重量%である。この群の実施形態では、フィルム材料におけるポリホスフェート含有量は、ポリマー材料+ポリホスフェートの合計質量に対して、典型的には1重量%から30重量%の範囲内、詳細には2重量%から20重量%の範囲内、とりわけ3重量%から15重量%の範囲内である。
【0069】
好ましい群の実施形態では、フィルムに存在する熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、すなわち少なくとも50重量%の範囲で、好ましくは少なくとも60重量%の範囲で、詳細には少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で:
- 1重量%から40重量%、詳細には2重量%から30重量%の少なくとも1種のポリラクチド、及び
- 60重量%から99重量%、詳細には70重量%から98重量%の少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル、詳細には、特に好ましいと述べられている少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル
を含む混合物を含み、重量%単位の値は、ポリラクチド及び脂肪族-芳香族ポリエステルの合計質量に対する。
【0070】
さらなる好ましい群の実施形態では、フィルムに存在する熱可塑的に加工可能な有機ポリマー材料は、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、すなわち少なくとも50重量%の範囲で、好ましくは少なくとも60重量%の範囲で、詳細には少なくとも80重量%の範囲で又は少なくとも90重量%の範囲で、ヒドロキシ酪酸と6から12個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の少なくとも1種のコポリエステル、例えば、ヒドロキシ酪酸とヒドロキシ吉草酸の少なくとも1種のコポリエステル、例として(P(3HB)-co-P(3HV))、並びに/若しくはヒドロキシ酪酸とヒドロキシヘキサン酸のコポリエステル、又は1種以上のそのようなコポリエステルと少なくとも1種のポリラクチドの混合物を含む。
【0071】
これらのフィルムは、任意選択で、少なくとも1種のさらなる無機フィラーを含む。詳細には、さらなるフィラーは、チョーク、滑石及び/又はそれらの混合物である。さらなるフィラーの割合は、存在する場合、典型的には、フィルム材料の合計質量に対して1重量%から25重量%の範囲内である。ポリホスフェート、及び任意選択で存在するそれとは異なるフィラーの合計質量は、フィルム材料に対して、好ましくは50重量%、詳細には40重量%、とりわけ35重量%以下であり、典型的には、1重量%から50重量%の範囲内、詳細には2重量%から40重量%の範囲内、とりわけ3重量%から35重量%の範囲内である。
【0072】
本発明の別の特に好ましい群の実施形態は、少なくとも1種の結晶性無機ポリホスフェートを含む、上に記載されているヒドロゲルでできているパッドに関する。
【0073】
好ましいパッドは、4から20mmの範囲内、詳細には10から17mmの範囲内の厚さを有する。詳細には、これらは、結晶性無機ポリホスフェートとして、5から40μmの範囲内、詳細には10から30μmの範囲内の質量中央粒径d50を有するポリホスフェートを含む。
【0074】
ヒドロゲル形成剤、ポリホスフェート、さらなる成分及び割合に関連する、上で述べられている優先傾向に関して、同じことがパッドに存在する成分に準用される。
【0075】
詳細には、パッドは、ヒドロゲル形成剤として少なくとも1種の架橋ポリサッカリド、詳細には少なくとも1種の架橋カルボキシル化ポリサッカリド、とりわけ架橋アルギネートを含む。カルボキシル化ポリサッカリドの架橋は、詳細には配位架橋剤により生じる。詳細には、架橋は、多価金属イオンの塩により生じる。これらは、詳細には上述のアルカリ土類金属の塩、また上述の亜鉛塩を含む。
【0076】
詳細には、パッドは、パッドの合計質量に対して、2重量%から15重量%の範囲内の量でヒドロゲル形成剤を含む。ヒドロゲル形成剤に加えて、パッドは、水及び結晶性無機ポリホスフェートを含む。パッドにおける水含有量は、パッドの合計質量に対して、好ましくは30重量%から90重量%の範囲内である。詳細には、パッドにおけるポリホスフェート含有量は、パッドの合計質量に対して、典型的には1重量%から30重量%の範囲内、詳細には2重量%から20重量%の範囲内、とりわけ3重量%から15重量%の範囲内である。
【0077】
本発明の作用剤の製造は、ポリマー材料からの公知のシート材料の製造との類推により、それ自体公知の手段で生じ得る。製造は、典型的にはポリホスフェート、及び任意選択でさらなる止血剤の、有機ポリマー材料への組み込みを含む。このためのプロセスは、当業者によく知られている。
【0078】
熱可塑性ポリマー材料をベースとした本発明の作用剤、例えばフィルムは、望ましい熱可塑性ポリマーを、無機ポリホスフェート、並びに任意選択で加工助剤及び/又は他のフィラーと複合物に加工することと、この複合物を使用して、それ自体公知の手段で、例えば押出によりシート材料、例えばフィルムを製造することにより簡潔な手段で製造できる。
【0079】
ヒドロゲルをベースとした本発明の作用剤、例えばパッドは、望ましい無機ポリホスフェート、及び任意選択で1種以上のさらなるフィラーを、水中の非架橋ヒドロゲル形成剤の溶液中で懸濁すること、ヒドロゲル形成剤の架橋を生じさせること、並びに架橋プロセス中にシート材料を、例えば注型により、又は押出により形成することにより、簡潔な手段で製造できる。
【0080】
出血創傷の処置では、本発明の作用剤は通常、創傷領域に適用され、その結果創傷又は創傷領域は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に又は十分に、作用剤により被覆される。これが適用された後で、シート状作用剤は、創傷組織のすぐ近くの場所にあり、又はそれと接触し、血液と接触した状態になる。可撓性のため、作用剤は、創傷の形状にある程度まで適合し、創傷表面を少なくとも部分的に被覆することが可能である、又は、作用剤は、適用前に創傷のおよその形状を既に有する。したがって異なる創傷又は出血源でも、当業者が、個々の場合に理想的な本発明の止血処置剤を選択すること、及び、例えば必要とされる大きさに切って、創傷領域に対するその形状を適合させることは困難ではない。シート状の構造のため、本発明の作用剤は、出血創傷に容易に適用できる。
【0081】
止血効果のため、本発明の作用剤は、出血創傷の処置に特に好適である。これらは、表面的な皮膚傷害であり得るが、体組織への傷害、詳細には、例えば外科的介入中に発生し、結果として広範になりがちな、場合によってはまた大量の血流を生じることが多い、内臓器官の組織への損傷でもあり得る。作用剤が創傷領域から洗い流される、又は血流に入り込む危険性は、そのシート状の特質により除外される。さらに、適用される作用剤は、出血創傷に圧迫をかけることにより血流中に直接導入され得、その結果、凝固がより効率的に発生する。
【0082】
本発明の作用剤は、したがって、外科的介入、特に内臓器官に対する手術における使用に特に好適である。
【0083】
作用剤はさらに、救急医療の全分野に使用できる。
【0084】
本発明の作用剤は、後続する数値及び実施例で、より詳細に明らかになる。
出発材料:
PBAT:BASF SE、Ludwigshafenからのポリブチレンアジペートテレフタレート、Ecoflex(登録商標)、
PBST:IRe Chemicals Ltd.、South Koreaからのポリブチレンスクシネートテレフタレート、
PLA:Nature Worksからのポリ乳酸PLA 2003D、
チョーク:1μmのd50値を有する市販のチョーク粉末、Omya GmbH、Cologneからの製品、
滑石:2.2から15μmのd50値を有する市販の滑石、
Maddrell塩:15μmのd50値、<3重量%の可溶性成分の割合、>95%の結晶化度、ポリホスフェートアニオン1個当たり44個のP原子の平均数、及びP2O5として計算して70重量%のホスフェート含有量を有する粉末形態の高分子量結晶性ポリリン酸ナトリウム、
アルギン酸ナトリウム:<15重量%乾燥減量を示し、177μmの粒子サイズを有する、Hewico Produktions u. Handels GmbHからのHewigum Na 1、この水中の1重量%溶液は、22℃にて700mPasの粘度を有する、
CaSO4:10μmのd50値を有する硫酸カルシウム二水和物粉末、分析グレード(SRL Pharma、LudwigshafenからのLuxopharm(登録商標)F211)、
TSPP:ピロリン酸四ナトリウムE450(iii)、BK Giulini、Ladenburg。
【0085】
フィルムの一般的な製造手順
例えば以下を用いた押出のための製造手順をプロセスパラメーターと共に指定されたい。
複合物は、表1に列挙されている出発材料からTSAモデルEMP 26-40押出機で生成され、これは、26:40のD/L比を有し、200rpmのスクリュー速度、14から15barのノズル上流圧、表1aで示されている温度プロファイルで作動する。
【0086】
それぞれの複合物を、LeistritzモデルZSE 40フィルム押出機で15μmの平均厚さを有するフィルムに加工し、これは、26:40のD/L比を有し、180rpmのスクリュー速度及び11から12barのノズル上流圧力で作動する。
【0087】
【0088】
【0089】
ヒドロゲルでできているパッドの一般的な製造手順
アルギン酸ナトリウム及びピロリン酸四ナトリウムを、表2に示されている量でビーカー中の水に溶解した。これに、固体Maddrell塩及び硫酸カルシウム二水和物粉末、ピロリン酸四ナトリウムを、表2に示されている量で撹拌しながら連続して添加し、混合物を、次いで、表2に示されている撹拌速度でさらに40sec又は90sec撹拌した。このようにして得られたおよそ75mlの懸濁液部を、8.5cmの直径を有するペトリ皿中に注ぎ、皿を23℃にて1h放置した。これにより、15mmの厚さを有し、Maddrell塩含有量が9重量%、水含有量が約85重量%のパッドが得られた。
【0090】
【0091】
以下の調査を実行して、市販の創傷包帯との比較により、本発明のシート材料の止血効果を判定した。
【0092】
用いられた創傷包帯は、表1に示されており、以下TSと呼ばれる本発明のフィルム3、及び商用のカオリン含有繊維創傷包帯QuickClot Combat Gauze(登録商標)(Z-Medica)、以下RSであった。
【0093】
26匹の飼育ブタ(79±2.4kg)を2群に分け、これらをフィルムTS(n=14)又は創傷包帯RS(n=12)で処置した。ベースラインである全身血行動態及び大腿動脈における局所の通過時間流量測定(TTFM)の測定後、血流プローブの近位において大腿動脈の4.7mm穿刺によって、標準化された複雑な鼠径部傷害を施した。重度のショックの指標として、60mmHg未満の目標動脈収縮期圧を達成するために、制御不能な出血を促した。すべてに創傷包帯を、200mmHgの連続的圧力を加えて、5分間適用した。5分後、圧迫を解除し、止血を回復した。血行動態のベースライン値は、容量補充により回復し、カテコールアミン及び血液学的パラメーターを2時間記録した。応答-変数データは、休止時間分布(failure time distribution)の形態で提示され、事象までの時間は、止血を停止する時間又は実験の終了までと定義される。データは、Kaplan-Meier法により分析し、数件のCox回帰で補足した。独立した変数は、直接測定した血行動態の変数及び事象時間の値の間の差を含んでおり、これらは、ベースライン及びショック誘導の差として計算した。
【0094】
動物26匹のうち26匹すべてで、ショック事象の後の回復中に、創傷包帯により止血が達成された。処置したブタ26匹のうち10匹で新たに出血を発生させた。RSで処置した動物3匹/12匹(25%)及びTSで処置した動物7匹/14匹(50%)で、新たに出血させた(p=0.19)。新たな出血までの時間は、群間で有意差を示さなかった(中央値:TS 45min vs. RS 50min、p<0.983)。2群の間で大腿動脈血流に統計的な有意差はなく、結果は同等であった。
【手続補正書】
【提出日】2020-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における出血創傷の処置に使用するための、有機ポリマー材料から形成される可撓性シート材料の形態の作用剤であって、有機ポリマー材料が
、少なくとも1種の微粒子結晶性無機ポリホスフェートを含み、
有機ポリマー材料が、微粒子結晶性無機ポリホスフェートの粒子が、有機ポリマー材料に微粉化形態で存在するシート状マトリックスを形成し、ポリホスフェートが、20℃にて5g/L未満の脱イオン水中での溶解度を有し、ポリホスフェートのアニオンが、ポリホスフェートアニオン1個当たり少なくとも平均(数平均)4個のリン原子を有する、作用剤。
【請求項2】
ポリホスフェートが、アルカリ金属ポリホスフェート、アルカリ土類金属ポリホスフェート及びアンモニウムポリホスフェートから選択される、請求項1に記載の作用剤。
【請求項3】
ポリホスフェートがナトリウムポリホスフェートである、請求項1又は2に記載の作用剤。
【請求項4】
ポリホスフェートの粒子が、静的レーザー光散乱により判定される、5から40μmの範囲内の質量中央粒径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項5】
作用剤の合計重量に対して1重量%から30重量%の範囲内の量でポリホスフェートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項6】
有機ポリマー材料が熱可塑性である、請求項1から5のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項7】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリラクチド、脂肪族-芳香族ポリエステル、脂肪族-芳香族ポリアミド、ポリオレフィン、ポリシロキサン及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項6に記載の作用剤。
【請求項8】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、
i.少なくとも1種のポリラクチド及び少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルの混合物、又は
ii.ヒドロキシ酪酸と、6から12個の炭素原子を有するヒドロキシアルカン酸の少なくとも1種のコポリエステル、若しくは、そのようなコポリエステルとポリラクチドの混合物
を含む、請求項7に記載の作用剤。
【請求項9】
フィルムの形態の、請求項6から8のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項10】
フィルムの厚さと微粒子ポリホスフェートの中央粒径との比が、0.5:1から5:1の範囲内である、請求項9に記載の作用剤。
【請求項11】
有機ポリマー材料が、有機ポリマーをベースとしたヒドロゲルの形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項12】
有機ポリマー材料が、それに含有される有機ポリマーに対して、主要な成分として、少なくとも1種のヒドロゲル形成ポリサッカリド、詳細には少なくとも1種の架橋カルボキシル化ポリサッカリドを含む、請求項11に記載の作用剤。
【請求項13】
有機ヒドロゲル形成ポリサッカリドが、架橋アルギネートである、請求項11又は12に記載の作用剤。
【請求項14】
パッドの形態の、請求項11から13のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項15】
無菌包装されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項16】
外科的介入、特に内臓器官に対する手術で使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項17】
血液凝固を低下させる作用剤で以前に処置されている、又は凝血異常を有する患者で使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の作用剤。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の作用剤を製造する方法であって、ポリホスフェート及び任意選択でさらなる止血剤の、有機ポリマー材料中への組み込みを含む、方法。
【国際調査報告】