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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(54)【発明の名称】偏光干渉法用のレーザー装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20220209BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20220209BHJP
   H01S 5/0687 20060101ALI20220209BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20220209BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20220209BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01N21/41 101
H01S5/0687
H01S5/183
H01S5/062
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536105
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 FR2019053109
(87)【国際公開番号】W WO2020128293
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】1873212
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516290759
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドゥ・テクノロジー・ドゥ・トロワ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE TECHNOLOGIE DE TROYES
(71)【出願人】
【識別番号】521268222
【氏名又は名称】フェーズラボ インストゥルメント
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイラント,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブルヤン,オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ツーヘン
【テーマコード(参考)】
2G059
5F173
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE05
2G059EE09
2G059GG01
2G059GG04
2G059GG06
2G059JJ19
2G059JJ30
5F173SA15
5F173SE01
5F173SF03
5F173SF33
5F173SF40
(57)【要約】
本発明は、時間位相変調レーザー光源とともにパッシブ位相遅延素子を使用した、偏光干渉法用のレーザー装置に関する。本装置は、電気横方向TE成分と磁気横方向TM成分との干渉に基づいて、干渉計、エリプソメータ、または位相敏感表面プラズモン共鳴バイオセンサ型の測定装置の感度の向上を可能にする一方で、小型で省スペースの機器を提案する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間位相変調レーザービーム(S変調)を送達するように適合された偏光干渉法用のレーザー装置(D)であって、
-電源電流によって給電され、かつ波長(λ)の偏光光源レーザービーム(S光源)を送達するように構成され、それぞれ電気横方向TE、および磁気横方向TMと呼ばれる、2つの非ゼロの直交直線偏光成分を含む、縦単一モードレーザー光源(1)と、
-前記光源レーザービーム(S光源)の前記波長の時間変調を駆動するように構成される、前記レーザー光源の電子的時間変調手段(2)と、
-前記TEおよびTM偏光成分用の2つの異なる光路を生成するパッシブ位相遅延素子(3)であって、前記光源レーザービーム(S光源)を受光して、前記時間位相変調レーザービーム(S変調)を供給するために、前記光源レーザービーム(S光源)の前記波長変調によって、前記TE成分とTM成分との間に時間変調された位相差を導入するように構成される、パッシブ位相遅延素子とを含む、レーザー装置(D)。
【請求項2】
前記レーザー光源(1)が、前記波長の千分の1未満の波長可変範囲で、前記レーザーに給電するための前記電流によって波長変調できる半導体レーザーである、請求項1に記載のレーザー装置(D)。
【請求項3】
前記半導体レーザー式光源(1)が、垂直共振器面発光レーザーダイオード(VCSEL)である、請求項2に記載のレーザー装置(D)。
【請求項4】
前記位相遅延素子(3)が、複屈折を有する部品を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザー装置(D)。
【請求項5】
前記位相遅延素子(3)が、前記光源レーザービーム(S光源)の前記TEまたはTM偏光成分のうちの1つに沿って配向された光軸を有する複屈折結晶を含む、請求項4に記載のレーザー装置(D)。
【請求項6】
-前記ビームを(S参照)および(S変調)の少なくとも2つの部分に分割することを意図した、前記位相遅延素子(3)の出力部にある参照ビームスプリッタ(4)であって、前記第1の部分(S参照)は、前記時間位相変調レーザービーム(S変調)の参照部分になり、前記ビームスプリッタは、前記参照部分を、前記時間位相変調レーザービーム(S変調)とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビームスプリッタ(4)と、
-参照偏光子(5’)を介して前記参照部分(S参照)を受光することを意図した、入力部を有する参照光検出器(5)であって、前記参照光検出器(5)は、前記参照部分(S参照)を表す第1の変調電気信号(Iref)の形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器(5)と、
-前記参照部分(S参照)の、前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの直交成分間の平均位相差(Δref)を抽出するために、前記電気信号(Iref)を受信して解析するように構成された、参照電子解析ユニット(6a)とをさらに備え、
前記参照部分(S参照)を表す前記変調電気信号(Iref)が、前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する振幅項(Aref)と、位相項とを含み、
前記参照電子解析ユニット(6a)が、前記電気信号(Iref)の解析によって、前記参照部分(S参照)の前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の前記平均位相差(Δref)を推論して、前記振幅項(Aref)を抽出するように構成され、
前記参照電子解析ユニット(6a)が、前記レーザー光源(1)の前記時間変調を調整し、前記平均位相差(Δref)を安定させることによって平均波長λを安定させるため
に、前記レーザー光源の前記時間変調手段(2)に補正係数を与えるようにさらに構成される、
請求項1から5のいずれか一項に記載のレーザー装置(D’)。
【請求項7】
前記参照電子解析ユニット(6a)が、前記平均位相差(Δref)を安定させるサーボ制御ループを構成するために、前記レーザー光源の前記時間変調手段(2)に接続される、請求項6に記載のレーザー装置(D’)。
【請求項8】
サンプル(7)の特性を測定するように構成された偏光干渉計Iであって、
-時間位相変調レーザービーム(S変調)を送達するように適合された、請求項1から7のいずれか一項によるレーザー装置(D)または(D’)と、
-光学機械的界面(70)と、
-解析光検出器(8)および解析偏光子(8’)と、
-電子解析ユニット(6b)とを備え、
単純な支持体または光結合システムである前記光学機械的界面(70)は、さまざまな光学素子を含むことができ、出力ビーム(Sサンプル)を生成するように前記サンプルを光学的に励起するために、使用者が所望する光励起条件下で、前記サンプルに向かって前記時間位相変調レーザービーム(S変調)を伝送するように構成され、
前記解析光検出器(8)は、前記解析偏光子(8’)を介して前記出力ビーム(Sサンプル)を受光するように構成された入力部を備え、かつ前記解析光検出器(8)は、第2の変調電気信号(Iサンプル)の形態で第2の干渉信号を生成するように構成され、
前記電子解析ユニット(6b)は、前記解析光検出器(8)に接続され、かつ前記サンプル(7)の特性を判定するために、前記変調電気信号(Iサンプル)を受信して解析するように構成される、偏光干渉計I。
【請求項9】
前記サンプル(7)の光学特性を判定するように構成された偏光干渉計Iであって、
-前記電子解析ユニット(6b)が、前記電気信号(Iサンプル)の解析によって、振幅項(Aサンプル)と、前記出力ビーム(Sサンプル)の前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の平均位相項(Δサンプル)とを抽出して、前記サンプル(7)の前記光学特性を判定できるように構成され、
前記偏光干渉計が、
-前記ビームを(S参照)および(S変調)の少なくとも2つの部分に分割するように構成された、前記位相遅延素子(3)の出力部にある参照ビームスプリッタ(4)であって、前記部分(S参照)は、前記時間位相変調レーザービーム(S変調)の参照部分になり、かつ前記時間位相変調レーザービーム(S変調)とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビームスプリッタ(4)と、
-参照偏光子(5’)を介して前記参照部分(S参照)を受光するように構成された、入力部を有する参照光検出器(5)であって、前記参照光検出器(5)は、前記参照部分(S参照)を表す第1の変調電気信号(Iref)の形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器(5)と、
-前記電気信号(Iref)を受信して解析するように構成された、参照電子解析ユニット(6a)とを備え、
前記参照電子解析ユニット(6a)は、前記参照部分(S参照)の、前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの直交成分間の平均位相差(Δref)を抽出して、式Δ=Δサンプル-Δrefによって、付加定数内で、前記サンプルによって誘起される光学的な位相差の増分(Δ)を計算するようにさらに構成される、
請求項8に記載の偏光干渉計I。
【請求項10】
請求項9に記載の偏光干渉計Iを備える、サンプル(7)のエリプソパラメータ(Δエリプソメトリ)を判定するように構成されたエリプソメータであって、
前記偏光干渉計(I)の前記光学機械的界面(70)は、前記サンプルを受けることができ、
-前記位相変調レーザービーム(S変調)と前記サンプル(7)との間の相互作用が、前記サンプル(7)の表面での反射であり、
前記レーザー装置がレーザー装置D’のときは、
-前記ビームを(S参照)および(S変調)の少なくとも2つの部分に分割するように構成された、前記位相遅延素子(3)の出力部にある参照ビームスプリッタ(4)であって、前記部分(S参照)は、前記時間位相変調レーザービーム(S変調)の参照部分になり、かつ前記時間位相変調レーザービーム(S変調)とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビームスプリッタ(4)と、
-参照偏光子(5’)を介して前記参照部分(S参照)を受光するように構成された、入力部を有する参照光検出器(5)であって、前記参照光検出器(5)は、前記参照部分(S参照)を表す第1の変調電気信号(Iref)の形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器(5)と、
-前記電気信号(Iref)を受信して解析するように構成された、参照電子解析ユニット(6a)とを備え、
前記参照部分(S参照)を表す前記変調電気信号(Iref)が、前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する振幅項(Aref)と、位相項とを含み、
前記参照電子解析ユニット(6a)が、前記電気信号(Iref)の解析によって、前記振幅項(Aref)とともに、前記参照部分(S参照)の前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の平均位相差(Δref)を抽出するように構成され、
前記エリプソパラメータ(Δエリプソメトリ)が、式(Δエリプソメトリ)=(Δサンプル)-(Δref)によって、付加定数内で求められる、
エリプソメータ。
【請求項11】
サンプル(7)のエリプソパラメータ(tanΨ)を判定するように構成され、かつ第1の追加検出チャネルを含み、前記第1の追加検出チャネルが、
-前記出力ビーム(Sサンプル)の一部を取り込んで、偏光部分と呼ばれるビーム(StanΨ)の形態で、前記出力ビーム(Sサンプル)の前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分のうちの1つを選択するように構成された、第1の偏光選択ビームスプリッタ装置(9a)と、
-前記偏光部分(StanΨ)を受光して、前記偏光部分の光強度の特性である電気信号(ItanΨ)を生成するように構成された、完全なエリプソメトリ用の光検出器(10)とを備え、
前記第1の追加検出チャネルが、前記解析光検出器(8)および前記完全なエリプソメトリ用の光検出器(10)のそれぞれからの前記電気信号(Iサンプル)および(ItanΨ)を使用して、前記サンプルの前記エリプソパラメータ(tanΨ)を判定するように構成される、
請求項10に記載のエリプソメータ。
【請求項12】
サンプル(7)のエリプソパラメータ(tanΨ)を判定するように構成され、かつ第2の追加検出チャネルをさらに含み、前記第2の追加検出チャネルが、
-前記出力ビーム(Sサンプル)の一部を取り込んで、それぞれTE偏光部分およびTM偏光部分と呼ばれる2つのビーム(StanΨ_TE)および(StanΨ_TM)の形態で、前記出力ビーム(Sサンプル)の前記電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分を選択するように構成された、第2の偏光選択ビームスプリッタ装置(9b)と、
-前記TE偏光部分(StanΨ_TE)およびTM偏光部分(StanΨ_TM)をそれぞれ受光して、前記TE偏光部分(StanΨ_TE)の光強度の特性である電気信
号(ItanΨ_TE)、および前記TM偏光部分(StanΨ_TM)の光強度の特性である電気信号(ItanΨ_TM)をそれぞれ生成するように構成された、TE光検出器およびTM光検出器と呼ばれる2つの光検出器(101)および(102)とを備え、
前記第2の追加検出チャネルが、前記TE光検出器(101)および前記TM光検出器(102)のそれぞれからの前記電気信号(ItanΨ_TE)および(ItanΨ_TM)を使用して、前記サンプルの前記エリプソパラメータ(tanΨ)を判定するように構成される、
請求項10に記載のエリプソメータ。
【請求項13】
微小流体層(MF)からなるサンプル(7)の特性を判定するように構成された表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサであって、解析される生物学的または生化学的媒質に対応し、前記バイオセンサは、
-請求項8または9のいずれか一項による偏光干渉計(I)、あるいは請求項10から12のいずれか一項によるエリプソメータと、
-プリズムに支持される取り外し可能なバイオチップであって、解析される前記微小流体層(MF)を受けられる薄い共鳴性金属層(ME)、またはやはり(ME)と呼ばれる別の光共振器が蒸着され、前記バイオチップは、請求項8または9のいずれか一項による前記偏光干渉計、あるいは請求項10から12のいずれか一項によるエリプソメータによって解析される前記サンプルを構成し、その結果前記時間位相変調レーザービーム(S変調)を遮断するように構成される、取り外し可能なバイオチップとを備え、
-前記時間位相変調レーザービーム(S変調)と前記サンプルとの相互作用が、前記微小流体層(MF)との相互作用における前記バイオチップの前記共振器(ME)の共鳴性光学励起からなり、前記出力ビーム(Sサンプル)を生成し、
-前記サンプル(7)の前記出力ビーム(Sサンプル)特性が、前記解析光検出器(8)によって感知されるように構成され、
-前記電子解析ユニット(6b)が、前記サンプル(7)の特性を判定するために、前記解析光検出器(8)によって生成された前記出力ビーム(Sサンプル)を表す前記変調電気信号(Iサンプル)を解析するように構成される、
バイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、干渉計における干渉法およびノイズ削減、ならびにエリプソメータまたはバイオセンサなどの、干渉計から派生する、または干渉計に結合される他の測定装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1893977号明細書、またはフランス特許第2685962号明細書に記載されているように、エリプソメトリによる測定のために干渉法による装置を使用することが知られている。また、例えば、本願の発明者による国際出願公開第2017153378号、および国際出願公開第2009080998号、あるいは米国特許第7233396号明細書に記載されているように、分子標的を検出できる表面プラズモン共鳴(SPR)測定のために、干渉法による装置を使用することも知られている。このような装置は、音響光学変調器、光弾性変調器、またはフレネル菱面体などの、かさが高く高価な装置で実施されることが多い。
【0003】
エリプソメトリによる測定、または表面プラズモン共鳴測定のいずれの場合にも、測定感度を向上させるために高位相分解能が必要とされる。この高分解能は、測定装置を通過する信号の位相の時間変調に起因する場合がある。実際には、位相変調器を使用せずに定常信号を測定する他のシステムに対する、さまざまな位相変調システムの本質的な利点は、振幅および位相の回復時に周波数解析によって可能になるノイズの削減であり、これは特に、検出された干渉信号の変調周波数で同期検出を使用することによる。米国特許第5485271号明細書には、電子光学的な位相変調器を組み込んだ、干渉法によるエリプソメータが記載されている。他の技術では、測定装置の構成部品の複屈折の変調によって得られる位相変調が可能であり、例えば、米国特許第7339681号明細書に記載されている液晶セルを使用したものや、あるいは米国特許第8004676号明細書に記載されている光弾性変調器を使用したものがある。また、位相変調は光源の波長の変調によって得ることができ、例えば、本発明者が提案した国際出願公開第2017/153378号では、小型の干渉計、ならびにこれから派生した生化学センサについて述べているが、これは、この変調を実施するために、2つの離れた層から2つの反射を生成する特定の光学チップが必要になり、その用途が特定のサンプルに限定され、いかなる光励起条件も許容されない。
【0004】
また、共通光路干渉計と呼ばれる干渉計を使用することも知られており、干渉法による測定のノイズを削減するために、サンプルと結びつく参照ビームおよび信号ビームが同じ光路に沿って可能な限り変位され、それはこの種の干渉計の環境振動に対する耐性が良好なことによる。
【0005】
また、Vaillantらが『An unbalanced interferometer insensitive to wavelength drift.』(Sensors and Actuators A:Physical,268,188-192(2017))で説明しているように、非対称干渉計を使用することも知られており、これは干渉信号から振幅信号および位相信号を抽出できるように、使用する光源の低波長変調に対する2つの干渉アーム間の光路差が充分に大きく、その結果充分な位相変調が得られる。しかしながら、この種の装置では、2つのビームの幾何学的経路が共通ではないため、システムの安定性が制限される。
【0006】
さらに、前述した技術の欠点は、高い測定精度および感度を得るための、その実施装置
の空間要件ならびに費用にある。干渉計のノイズを最小化する興味深い手法として、フィールドの2つの直交成分間の位相差を測定する偏光干渉計の使用があり、この場合は、フィールドの2つの成分が通る経路を相対的に共通化できることによる。それにもかかわらず、1つの成分の他方に対する位相変調には、ビームを光学的に分割することと、前述したような、光弾性変調器などの特定の器具が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者が解決しようとしている技術的な問題は、SPR装置ではなくエリプソメータ内で、実施を簡素化し、偏光干渉計型の干渉測定装置の感度を向上させ、さらにこの種の装置を統合することであり、前記偏光干渉計内で位相差の状態を判定するための、従来のアクティブな位相変調器の使用、および可動部品の使用を避けることによって、その空間要件および重量を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した欠点を克服しながらこの問題を解決するために、出願人は、時間位相変調レーザービームを送達するように適合された、偏光干渉法用のレーザー装置であって、
・電源電流によって給電され、かつ波長λの偏光光源レーザービームS光源を送達するように構成され、それぞれ電気横方向TE、および磁気横方向TMと呼ばれる、2つの非ゼロの直交直線偏光成分を含む、縦単一モードレーザー光源と、
・光源レーザービームS光源の波長の時間変調を駆動するように構成される、レーザー源の電子的時間変調手段と、
・前記TEおよびTM偏光成分用の2つの異なる光路を生成するパッシブ位相遅延素子であって、光源レーザービームS光源を受光して、前記時間位相変調レーザービームS変調を供給するために、光源レーザービームS光源の波長変調によって、前記TE成分とTM成分との間に時間変調された位相差を導入するように構成される、パッシブ位相遅延素子とを含む、レーザー装置を開発した。
【0009】
本明細書で後述するように、フィールドのTEおよびTM成分の2つの成分の幾何学的経路は、好適なことに一定である。
【0010】
好適には、レーザー装置の縦単一モードレーザー光源は半導体レーザーであってもよく、レーザーに給電するための電流で、波長の千分の1未満の波長可変範囲で波長変調することができる。この低い波長可変範囲は、ほとんどのレーザーダイオード製品に備わっている。
【0011】
好ましくは、レーザー装置の縦単一モードレーザー光源を構成できる半導体レーザーは、VCSELと呼ばれる垂直共振器面発光レーザーダイオードであってもよい。しかしながら、VCSELでない場合、より広範囲な調整が可能で、通常はより高価なレーザーが使用される場合がある。
【0012】
さらに、レーザー装置のパッシブ位相遅延素子は、複屈折を有する構成要素を含んでもよく、特に、光源レーザービームS光源の前記TEまたはTM偏光成分のうちの1つに沿って配向された光軸を有する、複屈折結晶を含んでもよい。
【0013】
レーザー装置は、
・ビームをS参照およびS変調の少なくとも2つの部分に分割することを意図した、位相遅延素子の出力部にある参照ビームスプリッタであって、第1の部分S参照は、時間位相変調レーザービームS変調の参照部分になり、前記ビームスプリッタは、参照部分を、時間位相変調レーザービームS変調とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビー
ムスプリッタと、
・参照偏光子を介して前記参照部分S参照を受光することを意図した、入力部を有する参照光検出器であって、前記参照光検出器は、前記参照部分S参照を表す第1の変調された電気信号Irefの形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器と、
・参照部分S参照の、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの直交成分間の平均位相差Δrefを抽出するために、前記電気信号Irefを受信して解析するように構成された、参照電子解析ユニットとをさらに備えてもよく、
前記参照部分S参照を表す前記変調電気信号Irefは、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する振幅項Arefと、位相項とを含み、
前記参照電子解析ユニットは、前記電気信号Irefの解析によって、参照部分S参照の電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の平均位相差Δrefを抽出して、前記振幅項Arefを抽出するように構成され、
前記参照電子解析ユニットは、レーザー光源の時間変調を調整し、平均位相差Δrefを安定させることによって平均波長λを安定させるために、光源の時間変調手段に補正係数を与えるようにさらに構成される。
【0014】
好適には、前記参照電子解析ユニットは、平均位相差Δrefを安定させるサーボ制御ループを構成するために、レーザー光源の時間変調手段に接続される。
【0015】
任意で、位置合わせを容易にする目的で、多重の寄生反射を回避するために、さまざまな界面に、反射処理または反射防止処理を施したビームスプリッタを使用すれば有用であろう。それでもなお、多重の寄生反射を抑制するためだけに、またはこれに加えて、例えば、非平行面の使用、あるいは/および厚いブレードの使用を含む、最初の反射と最初の伝送との空間的な区別による、他の手段を使用することができる。
【0016】
本願は、サンプルの特性を測定するように構成された偏光干渉計であって、
-時間位相変調レーザービームS変調を送達するように適合された、前述したレーザー装置と、
-光学機械的界面と、
-解析光検出器および解析偏光子と、
-電子解析ユニットとを備え、
前記光学機械的界面は、単純な支持部または光結合システムであり、さまざまな光学素子を含むことができ、使用者が所望する光励起条件下で、サンプルに向かって時間位相変調レーザービームS変調を伝送するように構成され、その結果、時間位相変調レーザービームS変調が前記サンプルと相互作用して、出力ビームSサンプルを生成し、
前記解析光検出器は、解析偏光子を介して前記出力ビームSサンプルを受光するように構成された入力部を備え、かつ前記解析光検出器は、第2の変調電気信号Iサンプルの形態で第2の干渉信号を生成するように構成され、
前記電子解析ユニットは、解析光検出器に接続され、かつ前記サンプルの特性を判定するために、前記変調電気信号Iサンプルを受信して解析するように構成される、偏光干渉計をさらに提案する。
【0017】
より詳細には、前記光学機械的界面は、単純な支持部、または光結合システムであり、さまざまな光学部品を含むことができ、サンプルを光学的に励起して出力ビームSサンプルを生成するために、使用者が所望する光励起条件下で、サンプルに向かって時間位相変調レーザービームS変調を伝送するように構成される。
【0018】
より詳細には、出力ビームSサンプルを表す変調電気信号Iサンプルは、出力ビームSサンプルの、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する振
幅項Aサンプルと、サンプルによって誘起された、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の光学的な位相差の増分Δを含む、位相項Δサンプルとを含む。結果として、電子解析ユニットは、前記電気信号Iサンプルを解析することによって、前記振幅項Aサンプルと、出力ビームSサンプルの、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の前記平均位相項Δサンプルとを抽出し、前記サンプルの光学特性を判定できるように構成される。レーザー装置が、上述したように、
・ビームをS参照およびS変調の少なくとも2つの部分に分割するように構成された、位相遅延素子の出力部にある参照ビームスプリッタであって、前記部分S参照は、時間位相変調レーザービームS変調の参照部分になり、かつ時間位相変調レーザービームS変調とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビームスプリッタと、
・参照偏光子を介して前記参照部分S参照を受光するように構成された、入力部を有する参照光検出器であって、前記参照光検出器は、前記参照部分S参照を表す第1の変調電気信号Irefの形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器と、
・前記電気信号Irefを受信して解析し、ΔサンプルおよびAサンプルを判定するように構成された、参照電子解析ユニットとをさらに備えるときは、
サンプルによって誘起される光学的な位相差の増分Δは、式Δ=Δサンプル-Δrefによって、付加定数内で求められる。
【0019】
本願は、前述したように、偏光干渉計を備える、サンプルのエリプソパラメータΔエリプソメトリを判定するように構成されたエリプソメータをさらに提案し、
-サンプルは、偏光干渉計の光学機械的界面に配置することができ、
-位相変調レーザービームS変調とサンプルとの間の相互作用が、前記サンプルの表面での反射であり、
上述したように、レーザー装置が、
・ビームをS参照およびS変調の少なくとも2つの部分に分割するように構成された、位相遅延素子の出力部にある参照ビームスプリッタであって、前記部分S参照は、時間位相変調レーザービームS変調の参照部分になり、かつ時間位相変調レーザービームS変調とは別の方向へ伝播するように構成される、参照ビームスプリッタと、
・参照偏光子を介して前記参照部分S参照を受光するように構成された、入力部を有する参照光検出器であって、前記参照光検出器は、前記参照部分S参照を表す第1の変調電気信号Irefの形態で、第1の干渉信号を生成するように構成される、参照光検出器と、
・前記電気信号Irefを受信して解析し、ΔサンプルおよびAサンプルを判定するように構成された、参照電子解析ユニットとを備えるときは、
前記参照部分S参照を表す変調電気信号Irefが、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する振幅項Arefと、位相項とを含み、
参照電子解析ユニットが、前記振幅項Arefとともに、前記電気信号Irefの解析によって、参照部分S参照の、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の前記平均位相差Δrefを抽出するように構成され、
エリプソパラメータΔエリプソメトリが、式Δエリプソメトリ=Δサンプル-Δrefによって、付加定数以内で求められる。
【0020】
「サンプルは偏光干渉計の光学機械的界面に配置できる」という文言は、偏光干渉計の光学機械的界面がサンプルを受けられることを意味するものとする。
【0021】
提案するエリプソメータの第1の変形実施形態において、後者の前記エリプソメータは、第1の追加検出チャネルをさらに備えてもよく、前記第1の追加検出チャネルは、
-出力ビームSサンプルの一部を取り込み、偏光部分と呼ばれるビームStanΨの形態で、出力ビームSサンプルの電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分のうち
の1つを選択するように構成された、第1の偏光選択ビームスプリッタ装置と、
-前記偏光部分StanΨを受光して、偏光部分の光強度の電気信号ItanΨ特性を生成するように構成された、完全なエリプソメトリ用の光検出器とを備え、
前記第1の追加検出チャネルは、解析光検出器および完全なエリプソメトリ用の光検出器のそれぞれからの電気信号IサンプルおよびItanΨを使用して、サンプルのエリプソパラメータtanΨを判定するように構成される。
【0022】
提案するエリプソメータの第2の変形実施形態では、上述した第1の変形実施形態とは異なり、前記エリプソメータは第2の追加検出チャネルをさらに備えてもよく、前記第2の追加検出チャネルは、
-出力ビームSサンプルの一部を取り込み、それぞれTE偏光部分およびTM偏光部分と呼ばれる2つのビームStanΨ_TEおよびStanΨ_TMの形態で、出力ビームSサンプルの電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分を選択するように構成された、第2の偏光選択ビームスプリッタ装置と、
-前記TE偏光部分StanΨ_TEおよびTM偏光部分StanΨ_TMをそれぞれ受光して、TE偏光部分StanΨ_TEの光強度の電気信号ItanΨ_TE特性、およびTM偏光部分StanΨ_TMの光強度の電気信号ItanΨ_TM特性をそれぞれ生成するように構成された、TE光検出器およびTM光検出器と呼ばれる2つの光検出器とを備え、
-第2の追加検出チャネルは、TE光検出器およびTM光検出器からの電気信号ItanΨ_TEおよびItanΨ_TMを使用して、サンプルのエリプソパラメータtanΨを判定するように構成される。
【0023】
本願は、微小流体層MFからなるサンプルの特性を判定するように構成された表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサをさらに提案し、これは解析される生物学的または生化学的媒質に相当し、バイオセンサは、
-前述した偏光干渉計、またはエリプソメータと、
-プリズムに支持される取り外し可能なバイオチップであって、解析される微小流体層MFを受けられる薄い共鳴性金属層ME、またはやはりMEと呼ばれる別の光共振器が蒸着され、バイオチップは、前述した偏光干渉計、あるいは前述したエリプソメータによって解析されるサンプルを構成し、その結果、時間位相変調レーザービームS変調を遮断するように構成される、取り外し可能なバイオチップとを備え、
-時間位相変調レーザービームS変調とサンプルとの相互作用が、微小流体層MFとの相互作用におけるバイオチップの共振器MEの共鳴性光学励起からなり、前記出力ビームSサンプルを生成し、
-サンプルの前記出力ビームSサンプル特性が、解析光検出器によって感知されるように構成され、
-電子解析ユニットが、前記サンプルの特性を判定するために、解析光検出器によって生成された出力ビームSサンプルを表す前記変調電気信号Iサンプルを解析するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願の他の利点および特徴は、限定的でない例によって示され、添付の図面を参照してなされる以下の説明によるものである。
【0025】
図1a】提案するレーザー装置の第1の実施形態を概略的に示す。
図1b】提案するレーザー装置の第2の実施形態を概略的に示す。
図2a】提案する偏光干渉計の第1の実施形態を概略的に示す。
図2b】提案する偏光干渉計の第2の実施形態を概略的に示す。
図3a】完全なエリプソメトリ用のエリプソメータの、第1の変形実施形態を実施するために提案される偏光干渉計の、Aと称する部分を概略的に示す。
図3b】完全なエリプソメトリ用のエリプソメータの、第2の変形実施形態を実施するために提案される偏光干渉計の、Aと称する部分を概略的に示す。
図4a】完全なエリプソメトリ用のエリプソメータで得られた実験結果を示す。
図4b】完全なエリプソメトリ用のエリプソメータで得られた実験結果を示す。
図5】表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサを実施するために提案される偏光干渉計の、Aと称する部分を概略的に示す。
図6a図5に示すような表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサで得られた実験結果を示す。
図6b図5に示すような表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサで得られた実験結果を示す。
【0026】
図1から図6bは、以下の詳細な説明および実施例でさらに詳しく言及され、本発明をその範囲を限定することなく図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aを参照すると、レーザー装置Dの第1の実施形態は、縦単一モードレーザー光源1を備える。「縦単一モード光源」という用語は、単一モードを有するレーザー光源、あるいは本質的に主として縦モードを有し、かつこれと比較して、無視またはフィルタリングされるほど充分に小さい他の縦モードを有し得る、レーザー光源を意味する。フィールドを単色と考えられるならば、複合フィールド空間分布を使用できる場合は、光源は必ずしも横単一モードである必要はない。このレーザー光源1は、電源電流で給電される。単一モードレーザー光源1の波長λは、時間変調手段2によって時間変調される。レーザー光源1から出た光源レーザービームS光源は、電気横方向TEおよび磁気横方向TMと呼ばれる2つの非ゼロの直交直線偏光成分を含む。光源レーザービームS光源は、光源レーザービームS光源のTE成分とTM成分との間に位相差を導入する、パッシブ位相遅延素子3を通過する。レーザー光源1の波長の時間変調によって、TE成分とTM成分との間の位相差もまた時間変調される。したがって、パッシブ位相遅延素子3から出るビームは、時間位相変調レーザービームS変調になる。「位相変調レーザービーム」という用語は、2つの偏光成分が互いに変調されたレーザービームを意味する。前記装置では、位相変調は、フィールドの2つの成分に対して一定の幾何学的経路を保つことによって実施でき、レーザー光源自身の変調以外にアクティブな変調装置がない場合は、変調が生じる成分はパッシブになる。
【0028】
より正確を期すために、位相変調はフィールドの2つの成分に対して一定の幾何学的経路を保つことで実施できるものとすると、フィールドの2つの成分が通る幾何学的経路は経時的に変化せず、特に、これらの成分間に位相差が生じる素子、すなわち安定性を高めるために固定され、かつモノリシックであることが好ましいパッシブ位相遅延素子にこれが当てはまることは理解されよう。
【0029】
好ましくは、レーザー光源1は、垂直共振器面発光レーザーダイオード(VCSEL)などの半導体レーザーである。
【0030】
さらに、レーザー光源1の波長の時間変調は、レーザー光源1に給電する電流の時間変調によって実行することができる。レーザー光源1の波長の時間変調は、通常は波長の千分の一未満の波長可変範囲で実施される。したがって、フィールドの前記成分間にこの位相変調を生じさせるために、複屈折変調やその他の種類の変調器を使用する必要はない。
【0031】
特に、パッシブ位相遅延素子3は、例えば、複屈折結晶などの複屈折を有する部品を含む、またはこの部品で構成されてもよい。この特定の事例では、複屈折結晶は好適には、
光源レーザービームの2つの直交横偏光成分のうちの1つに沿った光軸を有する。従来、このような2つの偏光成分は、ある所定の入射面に関して、「電気横方向」および「磁気横方向」を表す、TEおよびTMと呼ばれている。TEおよびTMフィールドの成分が通る幾何学的経路は、後で完全に共通化することができる。フィールドの2つの成分間の位相変調は、したがって、ビームを遮断する可能なサンプル、ならびにレンズ、プリズム、または結合格子などのサンプルの励起に使用される光学素子の性質に依存することなく、独立して生成される。
【0032】
「共通の幾何学的経路」という用語によって、TEおよびTMフィールドの成分の光線が空間的に重畳されることが理解されよう。このような構成によって、例えば、さまざまなビームによって生じるノイズをプーリングすることが可能になって装置がより安定し、このことはTEおよびTM成分が通る光路の相違によらない。光路は、幾何学的経路で遭遇する屈折率の積によって定義されることが想起される。
【0033】
前の段落で述べた、サンプルの励起に使用される光学素子により、例えば入射角を定義することが可能になり、より一般的には、サンプルの照明条件を定義することが可能になる。「サンプルを励起する」という言葉は、レーザー装置を使用して、サンプル内に電磁場を生成することを意味する。
【0034】
特に、フィールドの2つの成分間に存在する平均位相差を安定させるため、あるいはさらに制御するために、より一般的には、レーザー装置から発散する偏光状態を制御するために、この装置に別の素子を追加することもできる。特に、図1bを参照すると、レーザー装置Dは、パッシブ位相遅延素子3の出力部で、時間位相変調レーザービームS変調の、S参照と呼ばれる参照部分を取り込める参照ビームスプリッタ4を備える、参照アームをさらに有することができ、時間位相変調レーザービームS変調の方向以外の方向へ参照部分を伝播する。この参照部分S参照は、参照偏光子5’に伝送され、これを介して、この参照部分S参照のTEおよびTMの2つの成分が干渉する。その経路に従って参照偏光子5’を通過した参照部分S参照は参照光検出器5によって遮断され、参照光検出器5は変調電気信号Irefを送達する。
【0035】
この変調電気信号Irefは、参照電子解析ユニット6aによって受信され解析される。変調電気信号Irefは、時間位相変調干渉項を含み、参照部分S参照の電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する、振幅Arefを有する。
【0036】
実際には、変調電気信号Irefは、参照光検出器によって検出される干渉信号を表し、これは以下の式で記述することができる。
【数1】

ここでETEおよびETMは、参照部分S参照のTEおよびTM成分の振幅であり、
Mは1以下の係数であり、
【数2】

であり、
Δmodは、電流変調機能の選択によって、正弦曲線状であることが好ましいが必ずしもそうでなくともよい、時間変調位相項である。この種の変調信号Irefの解析については、特に、Al Mohtar,Abeerらによる参考文献『Generalize
d lock-in detection for interferometry:application to phase sensitive spectroscopy and near-field nanoscopy.』(Optics express 22.18(2014):22232-22245)、および米国特許第9518869号明細書に詳説され、解析を行うために、一般化同期検出と呼ばれる、修正した同期検出を使用することを提案している。一般化同期検出の使用により、振幅Arefおよび位相Δref情報の抽出が効率的に可能になり、本明細書の場合、Δrefは、前述した成分TEとTMとの間の位相差を特徴付ける。
したがって、参照電子解析ユニット6aは、位相変調干渉項を含むこの電気信号Irefから、参照部分S参照の電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の平均位相差Δrefを抽出し、かつ前記振幅項Arefを抽出することができる。したがってこの方法により、前記位相差Δrefを、定義間隔を曖昧にすることなく抽出することが可能になる。あるいは、特定の時間変調機能に対する他の抽出方法が考えられ、連続的な一定の位相差に基づく方法、またはセロダインランプ変調と呼ばれるランプ変調の使用などがある。特に注意すべきは、電流の変調によってレーザーの強度の時間変調がさらに生じ、これが強度項E TE、E TM、およびA refの平均値近辺での変調を生じさせることである。この付随的な変調は、処理時に考慮されない場合は、位相差の測定に干渉する可能性がある。前述したような一般化同期検出によって、やはり振幅が時間変調される信号の処理が可能になり、かつ理想的には位相変調深度を調整することによって、この問題を克服することができる。あるいは、前記強度項E TE、E TM、およびA refに対するこの変調は、一定の誤差と引き換えに無視することができ、そうでない場合は、測定した強度Irefを、使用された変調機能を知ったうえで、この変調を補うように補正することができる。このようにして構成されたレーザー装置は、D’と称される。
【0037】
さらに、平均位相差Δrefを安定させることによって、参照電子解析ユニット6aは、レーザー光源1の時間変調手段2に補正係数を提供でき、その結果、レーザー光源1の時間変調を調整し、その平均波長λを安定させる。したがって、図1bに点線で示すように、参照電子解析ユニット6aはレーザー光源の時間変調手段2に接続でき、その結果、平均位相差を安定させるサーボ制御ループを構成して、平均位相差Δrefを安定させる。
図2aおよび図2bは、2つの偏光干渉計を示し、1つは図2aによる、レーザー装置Dを備えるIであり、もう1つは図2bによる、レーザー装置D’を備えるI’である。干渉計IおよびI’は、レーザー装置DまたはD’のそれぞれの出力部にある部分Aに、レーザー装置DまたはD’から時間位相変調レーザービームS変調で照射される、光学機械的界面70を有し、時間位相変調レーザービームS変調をサンプル7に伝送し、このサンプルは、フィールドの2つの成分間に誘起される相対的な位相差、そしておそらくは相対的な減衰によって、いくつかの特性を光学的に測定しようとするものである。時間位相変調レーザービームS変調は、次に、サンプル7と相互作用して出力ビームSサンプルを生成し、これは、サンプルによって伝送、反射、または回折もされ得る。光学機械的界面70の出力部で、出力ビームSサンプルは解析偏光子8’を通過し、これを通して、出力ビームSサンプルのTEおよびTMの2つの成分が干渉する。その経路に従って解析偏光子8’を通過した出力ビームSサンプルは解析光検出器8によって遮断され、解析光検出器8は、出力ビームSサンプルのTEおよびTMの2つの成分の干渉を表す、変調電気信号Iサンプルを送達する。この変調電気信号Iサンプルは、電子解析ユニット6bによって受信され解析される。特に、出力ビームSサンプルを表す変調電気信号Iサンプルは、出力ビームSサンプルの電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分の振幅の積に比例する、2乗された振幅項A サンプル、位相項Δサンプル、および位相の時間変調を含み、これはすなわち2つの偏光成分間の位相差である。時間位相変調に加えて、前述した位相差は、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の光学的な位相差の増分Δを含み、これはサンプルとの相互作用の結果生じる反射、伝送、または回折中にサン
プル7によって誘起され、これは特に、使用者が所望する照射条件で光を固体、気体、または液体のサンプルへ伝達するために使用される、レンズ、ミラー、または格子などの1つまたはいくつかの光学部品によって生成される。数学的には、この性質は以下の式に置き換えることができる。
【数3】
【0038】
また特に、参照電子解析ユニットは、前記電気信号Iサンプルを解析することによって、前記振幅項Aサンプルと、出力ビームSサンプルの電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分間の、前記平均位相項Δサンプルとを抽出するように構成でき、特に、干渉計がI’型の場合、すなわち参照アームを備えたレーザー装置D’を含んでいる場合は、特にΔ=Δサンプル-Δrefで計算される光学的な位相差の増分Δによって、既知のΔでサンプルを校正するなどして、容易に判定できる付加定数内で前記サンプルの光学特性を判定することが可能になる。
【0039】
図2bに示されているI’型の偏光干渉計はさらに、反射または伝送において動作するエリプソメータとして使用することができる。この両方の事例で、サンプル7は偏光干渉計I’の界面70に配置される。サンプル7に入射する時間位相変調レーザービームS変調は、その表面で鏡面的に反射される、あるいは前記伝送用のサンプルによって鏡面的に伝送され、解析偏光子8’および解析光検出器8によって遮断される、出力ビームSサンプルとして伝播する。電子解析ユニット6bは、上述したように、式Δエリプソメトリ=Δサンプル-Δrefによって、エリプソパラメータΔエリプソメトリを付加定数内で抽出することを可能にする。
【0040】
図3aは、図2bに示すエリプソメータの第1の変形実施形態を示し、部分Aは、後述する追加要素を含む。実際には、この第1の変形実施形態では、前述したエリプソメータは、サンプル7のエリプソパラメータtanΨを判定できるようにする、第1の追加検出チャネルをさらに備える。この追加チャネルは、解析偏光子8’の上流に第1の偏光選択ビームスプリッタ装置9aを備え、これは、出力ビームSサンプルの一部を取り込んで、出力ビームSサンプルのこの部分の、電気横方向TEまたは磁気横方向TMの2つの成分のうちの1つを、偏光部分と呼ばれるビームStanΨの形態でフィルタリングできるようにする。この偏光部分StanΨは、完全なエリプソメトリ用の光検出器によって遮断され、これは偏光部分の光強度の特性である電気信号ItanΨを生成する。次に、解析光検出器8から出た信号Iサンプルの解析から得られた数量Aサンプル、および完全なエリプソメトリ用の光検出器10から得られたItanΨをそれぞれ使用して、サンプルのエリプソパラメータtanΨが判定される。
【0041】
実際に、パラメータtanΨは、以下の式によって従来通りエリプソメトリで求められる。
【数4】

、ここでrTMおよびrTEは、出力ビームSサンプルのTMおよびTE成分によってもたらされるサンプル反射計数である。したがって、パラメータtanΨは、使用される実験構成に応じて、以下の式によって得られる、いずれかの2乗によって求められる。
第1の追加検出チャネルでTE成分が回収される場合は、
【数5】

、あるいは、第1の追加検出チャネルでTM成分が回収される場合は、
【数6】

となる。
【0042】
図4は、図3aの方式のエリプソメータで得られた、ガラスおよびシリカ・オン・シリコンのサンプルの屈折率および厚さの測定表を示す。
【0043】
図3bは、図2bに示すエリプソメータの第2の変形実施形態を示し、部分Aは、後述する追加要素を含む。実際には、この第2の変形実施形態では、先に図2bで述べたエリプソメータは、サンプル7のエリプソパラメータtanΨの判定を可能にする、第2の追加検出チャネルをさらに備える。この追加検出チャネルは、解析偏光子8’の上流に第2の偏光選択ビームスプリッタ装置9bを備え、これは、出力ビームSサンプルの一部を取り込んで、出力ビームSサンプルのこの部分の、電気横方向TEおよび磁気横方向TMの2つの成分を、それぞれTE偏光部分およびTM偏光部分と呼ばれる、StanΨ_TEおよびStanΨ_TMの2つのビームの形態で選択して、2つの別の方向に伝播できるようにする。TE偏光部分およびTM偏光部分は、それぞれが光検出器101および光検出器102のそれぞれに受光され、これらはそれぞれTE光検出器およびTM光検出器と呼ばれる。次に、TE光検出器101の電気信号ItanΨ_TE、およびTM光検出器102の電気信号ItanΨ_TMを使用して、サンプルのエリプソパラメータtanΨが判定される。
【0044】
図5は、表面プラズモン共鳴検出システム型のバイオセンサを概略的に示し、レーザー装置Dを備え、解析される生物学的または生化学的な媒質7に対応する微小流体層MFと相互作用する、光共振器MEからなるサンプルの特性を判定することができる。このバイオセンサは、(上述した干渉計Iとまったく同様に)レーザー装置Dの出力部にある部分Aに、時間位相変調レーザービームS変調を受光する取り外し可能なバイオチップ11を備え、これはプリズム110を含むことができ、またはより一般的には、解析される媒質7を表す微小流体層MFと相互作用する光共振器MEで形成されたサンプルを、光学的に励起できる結合光学部品を含むことができる。このバイオチップは界面70に配置され、時間位相変調レーザービームS変調を遮断する。時間位相変調レーザービームS変調は、バイオチップの金属層MEの表面で、表面プラズモン共鳴波を励起し、反射される前に、微小流体層との界面で、解析される媒質7と相互作用してビームSサンプルを生成する。出力ビームSサンプルは解析偏光子8’によって遮断され、その後にある解析光検出器8が電気信号Iサンプルを送達する。解析光検出器8に結合された電子解析ユニット6bは、上述したように、前記サンプル7の特性を判定することができる。図6aおよび図6bは、先に図5で説明し図示したバイオセンサで得られた測定の種類を示す。これらの図については、以下に示す実施例でより詳しく説明する。
【実施例
【0045】
実施例1:レーザー装置の実施
【0046】
レーザー装置は、図1aから図1bに示すように、「完全な」エリプソメトリによる測定、または位相敏感SPR検出に適用できる偏光干渉計を実装し、例えば、処理ガラスなどの薄層または多層型のサンプル7、あるいはマイクロエレクトロニクスに使用されるサンプルの特性の判定を可能にするように、以下の部品で作成される。
-縦単一モードレーザー光源1:670nmにおいて波長可変範囲が0.2nm/mAの「VC670M-TO46GL」に準ずるVCSEL。
-レーザー光源2の電子的時間変調手段:前述したVCSELの注入電流の正弦変調であって、例えば、4mAに等しい十分な平均値iと、好ましくはノイズを削減するために(電子部品の性能に従って)最大100kHz、またはそれ以上の高周波とを有し、i(t)=i+βsin(Ωt)の関係で表される。
-パッシブ位相遅延素子3:複屈折0.22、長さ10mmのイットリウムバナデート結晶(YVO4)。
-参照ビームスプリッタ4:BSS04(Thorlabs社)などに準ずるスプリッタブレード、またはスプリッタキューブ。
-参照偏光子5’:LPVISE050-A(Thorlabs社)などの、使用する波長に適合する偏光子。
-参照光検出器5:使用する波長、および使用する変調周波数に適合した光検出器で、例えば、PDA36A-EC(THORLABS社)などに準ずる可視光用シリコンフォトダイオード。
-参照電子解析ユニット6a:NI USB-6363(National Instrument社)などに準ずる電子的なデータ収集カード(acquisition card)。
【0047】
時間変調は、通常は使用する縦単一モードレーザー光源の注入電流の変調によって実施される。変調は好ましくは正弦曲線状であるが、離散的または連続的な位相差で干渉検出を実施するために、他の変調を使用することができる。正弦曲線状である場合、注入電流i(t)の変調は、前述したようにi+βsin(Ωt)型である。前述したVCSEL型の場合、iは通常は4mAの範囲内にある。電流変調は、P(t)=P+γsin(Ωt)=P(1+μsin(Ωt))とほぼ等しい光学的な電力変調を誘起し、Pは電力DC成分、μは変調のAC振幅、Ωは変調のパルスである。この電力変調は、λ(t)=λ+δsin(Ωt)とほぼ等しい波長変調を誘起し、λは平均波長、δは波長変調深度である。このような(電流だけでなく電力および波長にもよる)変調の存在下では、ビームが前述した複屈折YVO4結晶を通過するとすぐに、TE成分とTM成分との間に位相変調が生成される。誘起された位相変調は、正弦曲線状である場合はasin(Ωt)で表され、位相変調深度は以下の式で求められる。
【数7】

Δlは、遅延素子3内のフィールドの、2つの成分間の光路差である。実際には、Vaillantらが『An unbalanced interferometer insensitive to wavelength drift』(Sensors and Actuators A:Physical,268,188-192)において別の枠組みで説明しているように、位相変調a=3.83radで作動することは興味深い。前記参考文献では、この位相変調深度の選択によって、結果生じた干渉信号をより簡単に解析し、振幅情報Aサンプル、および所望の位相項Δサンプルのみを抽出することが可能になる。
【0048】
本明細書の事例では、時間位相変調を得るために、YVO4結晶の複屈折(n-n
)と長さLとは、この積L(n-n)によって求められる光路差が少なくともミリメートルの大きさになるようにされ、これは、可視光の10,000ラジアンの範囲内の、TM成分とTE成分との間の累積的な位相差に相当する。この累積的な光路差は、前述した成分で生成される。
【0049】
実施例2:パラメータΔエリプソメトリの測定
【0050】
エリプソメータは、前述し図2bに示したように、実施例1で説明したレーザー装置から、パラメータΔエリプソメトリを判定するために作成される。
【0051】
前述したエリプソメータを実施するために、以下のものをさらに使用する。
-時間位相変調レーザービームS変調がサンプルと相互作用するように、実施例1によるレーザー装置から出る時間位相変調レーザービームS変調をサンプル7へ向けて伝送して、出力ビームSサンプルを生成するように構成された、光学機械的界面70。
-解析偏光子8’:LPVISE050-A偏光子(Thorlabs社)。
-解析光検出器8:PDA36A-EC(THORLABS社)などに準ずるシリコンフォトダイオード。
-電子解析ユニット6b:NI USB-6363(National Instrument社)などに準ずる電子的なデータ収集カード。
【0052】
エリプソパラメータΔエリプソメトリは、式Δエリプソメトリ=Δサンプル-Δrefによって付加定数内で求められ、Δサンプルは、解析光検出器8から抽出された電気信号Iサンプルの位相パラメータであり、サンプルによって誘起された出力ビームSサンプルの、TE成分とTM成分との間の位相差に相当する。
【0053】
実施例3:薄層型多層サンプルの屈折率および厚さのエリプソメトリによる測定
【0054】
ΔエリプソメトリおよびtanΨパラメータを判定するために、図3aに示すようなエリプソメータが、実施例2で説明したエリプソメータから作成され、さらに、
-第1の偏光選択ビームスプリッタ装置9aであって、LPVISE050-A(Thorlabs社)などの偏光子の前に置かれる、BSS04(Thorlabs社)などの単純なスプリッタと、
-完全なエリプソメトリ用の光検出器10とを備える。
【0055】
エリプソパラメータΔエリプソメトリは、実施例2の通りに得られる。
パラメータ(tanΨ)は、使用する実験構成によって、第1の追加検出チャネルでTE成分が回収される場合は
【数8】

、あるいは第1の追加検出チャネルでTM成分が回収される場合はその逆の、いずれかの式で求められる。実際には、(tanΨ)とA サンプル/ItanΨとの間の比例係数は、既知のサンプルで校正実験を行うだけで予め設定することができる。この例では、比例係数は、既知のサンプルでパラメータtanΨを測定することによって事前に決定される。
【0056】
ΔエリプソメトリおよびtanΨパラメータから、従来のエリプソメトリにおけるように、複雑な屈折率、既知の薄層の厚さ、または粗度などにつながる他の未知のパラメータ
を判定することができる。図4は、先述したエリプソメータで作成された一連の実験結果を示す。
【0057】
実施例4:薄層または多層スタック型サンプルの屈折率および厚さのエリプソメトリによる測定
【0058】
ΔエリプソメトリおよびtanΨパラメータを判定するために、図3bに示すようなエリプソメータが、実施例2で説明したエリプソメータから作成され、さらに、
-第2の偏光選択ビームスプリッタ装置9bであって、LPVISE050-A(Thorlabs社)などの偏光子の前に置かれる、BSS04(Thorlabs社)などの単純なスプリッタ、またはブルースター入射角で動作する単純なスプリッタと、
-PDA36A-EC(THORLABS社)などに準ずる、増幅され得るシリコンフォトダイオードの、2つの光検出器101および102とを備える。
【0059】
エリプソパラメータΔエリプソメトリは、実施例2および3の通りに得られる。上述したように、パラメータtanΨは、これを2乗することによって直接求められる。
【数9】

tanΨ_TEおよびItanΨ_TMは、TE光検出器およびTM光検出器からの信号である。ビームが同一の比率で共有される場合は、比例係数は相等しい。実際には、比例係数は、例えば既知のサンプルで校正実験を行うだけで、予め設定することができる。ΔエリプソメトリおよびtanΨパラメータから、従来のエリプソメトリにおけるように、測定サンプル内の複雑な屈折率、および層の厚さを判定することができる。
【0060】
実施例5:表面プラズモン共鳴型の測定、およびチオール化PEG(ポリエチレングリコール-SH)の検出
【0061】
図5に示すバイオセンサは、ここではチオール化PEGの蒸着を監視するためにサンプル7のパラメータを測定可能にする、表面プラズモン共鳴型の検出用途用に作成される。サンプルは、ここでは微小流体層内に存在するチオール化PEG(ポリエチレングリコール-SH)を含む溶液と相互作用する、約45nmの金層で形成された光共振器(ME)からなる。図5に示すこのバイオセンサは、実施例1で述べたレーザー装置に、図5に示すように以下のものを追加することによって作られる。
-光学機械的界面70:支持体。
-解析偏光子8’:LPVISE050-A偏光子(Thorlabs社)。
-解析光検出器8:PDA36A-EC(THORLABS社)などに準ずるシリコンフォトダイオード。
-電子解析ユニット6b:NI USB-6363(National Instrument社)などに準ずる電子的なデータ収集カード。
-界面70に配置され、解析するサンプルを構成するチオール化PEG層を受けられる金の金属層ME(厚さ45nm)が蒸着された、プリズム110を備える、好ましくは取り外し可能なバイオチップ11。
【0062】
この特定の事例では、解析光検出器8は、多点測定を可能にする撮像素子である。バイオセンサは、プリズム(110)を介したクレッチマン配置と呼ばれる配置で使用される。前述したように、バイオセンサの偏光干渉計によって判定できるパラメータΔ=Δサンプル-Δrefは、通常は他の種類のSPR測定装置ではアクセスできない。図6aは、
チオール化PEG微小流体層と接触している金層の機能化の測定値を示す。この種の測定によって蒸着層の光学幾何学的な情報を得ることが可能になり、ここでは特に、反応がわずかにしか進行しなくなるまでの時間(例えば3500秒)を知ることができる。
【0063】
実施例6:表面プラズモン共鳴型の測定、およびさまざまな量の40merDNAの検出
【0064】
図6bは、さまざまな関心領域内でのパラメータΔの経時的な変化によって、表面に結合しているさまざまな量のDNAを検出することを目的とした測定結果(位相センサーグラム)を示す。参照信号との比較により、環境変化、例えばチップ自身の温度変化などの、標的自身とは無関係な振幅および位相パラメータの変動を回避することが可能になる。使用される微小流体層は、ここでは、40merコドンの相補的DNA鎖からなる。したがって色の度合いが異なる曲線(黒~薄い灰色)は、解析した濃度の特徴的な変化の動態を有し、ここでは25nM~500nMである。観察される曲線は、従来の等温ラングミュア式吸着プロセスに従っている。
【0065】
実施例1によるレーザー装置で実行される、上述したSPR型の測定は、本願で提案するような他の特性を有するレーザー装置の使用、例えば、中赤外または近赤外などの他の任意の波長で動作するレーザー光源、例えば、同じ位相変調(すなわち3.84rad)で約850mmの波長で動作するVCSELでも実施でき、また、この位相変調を実施するために電流変調をmAに適合させることによって、システムの構成要素をこの波長で動作させることも可能であることに留意されたい。
【0066】
他の実施形態も考えられる。例えば、別の実施形態は多角度測定を備えることができ、エリプソメトリ、または表面プラズモン共鳴による検出のいずれの適用事例においても複数の入射角による測定が行われ、あるいは逆に、測定サンプルの出力時のビームが、サンプルと相互作用した後に、いくつかの異なる角度に従って分割される。入射角が複数ある場合は、例えば、入射面で集束するビームを得るために、試験するサンプルを受ける界面の上流に円筒レンズを配置でき、これによってサンプルを照射する複数の入射角が得られ、サンプルは、(例えば、ダイオードアレイ型の)直線検出器で感知された、いくつかの方向で受光した拡張されたビームを反射する。
【0067】
また、実施例6で述べたように、解析光検出器8、完全なエリプソメトリ用の光検出器10、ならびに光検出器TE101および光検出器TM102は、測定サンプルを撮像し、これらのサンプルの特性の二次元マップを取得できる、二次元センサであってもよい。この場合は、CCDまたはCMOSセンサなどのあらゆる種類の二次元センサ、あるいはビームの中央合わせを補助することも可能な4分割フォトダイオードなど、検出領域の数を少なくした光検出器を使用することができる。
【0068】
また、サンプルが充分に透明な場合は、伝送時にエリプソメトリによる測定を実施することができる。解析スペクトル範囲を拡張するために、複数のレーザー光源を使用することもできる。また、エリプソメトリによる解析は、特に層の密度または粗度を考慮できるモデルで判定したエリプソパラメータから、サンプルについての追加情報を得るように拡張することができる。
【0069】
また、SPR装置にはエリプソメトリによる測定を統合でき、これはバイオチップを構成する層の特性、例えば、金蒸着の厚さ、または機能化層の厚さ(または密度)、あるいは微小流体層を通過して表面に付着している、分析対象物の分子層などの判定に使用することができる。したがってバイオチップは、機能化プロセスの各段階でエリプソメトリによる測定装置を使用した、任意の生化学種(病原菌、たんぱく質、バクテリア、生物マー
カ)の測定に対応でき、これは通常は、特に抗体、DNA、またはアプタマーを使用して標的を検出できるように、SPRバイオチップで実施される。
【0070】
この説明で使用される光学機械的な界面70の例は、限定的なものではない。したがって、実施例5にあるような単純な支持体、あるいは実施例5にあるような、共鳴素子を備えた、または備えていない結合プリズムに加えて、サンプルの共鳴を光学的に励起するために結合格子またはレンズを使用することができる。特に、SPR装置は、通常は本明細書に記載した実施例にあるような結合素子を必要とする。結合素子により、必要に応じて複数の励起角度が得られるようになる。SPR装置による優先的な励起は、臨界超過角度での励起であり、クレッチマン配置として知られる。したがって、光学機械的界面の重要な役割は入射角を定義することであり、より一般的には、サンプルに対する照射条件を定義することである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】